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特表2023-540124テクスチャ形成済みガラス物品及びその作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】テクスチャ形成済みガラス物品及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20230913BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C03C15/00 Z
G02B5/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515119
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 US2021048445
(87)【国際公開番号】W WO2022051280
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】63/074,761
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,シンユィ
(72)【発明者】
【氏名】セカラ,クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ワンホイ
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ユィホイ
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,キャメロン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】セナウィラトネ,ジャヤンサ
(72)【発明者】
【氏名】ワイドマン,デイヴィッド リー
【テーマコード(参考)】
2H042
4G059
【Fターム(参考)】
2H042BA04
2H042BA16
4G059AA01
4G059AB05
4G059AB09
4G059AC01
4G059BB04
4G059BB12
4G059BB14
4G059BB15
4G059BB16
(57)【要約】
テクスチャ形成済みガラス物品は:16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラスで構成される本体であって、上記本体は少なくとも1つの第1の表面を有する、本体と;上記第1の表面から延在する複数の多面体状表面特徴部分であって、上記複数の多面体状表面特徴部分はそれぞれ、上記第1の表面上の基部、上記第1の表面から延在する複数の小面、及び上記基部における10μm以上かつ350μm以下の表面特徴部分サイズを備え、各上記多面体状表面特徴部分の上記複数の小面は互いに向かって集束する、多面体状表面特徴部分とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチャ形成済みガラス物品であって:
16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラスで構成される本体であって、前記本体は少なくとも1つの第1の表面を有する、本体と;
前記第1の表面から延在する複数の多面体状表面特徴部分であって、前記複数の多面体状表面特徴部分はそれぞれ、前記第1の表面上の基部、前記第1の表面から延在する複数の小面、及び前記基部における10μm以上かつ350μm以下の表面特徴部分サイズを備え、各前記多面体状表面特徴部分の前記複数の小面は互いに向かって集束する、多面体状表面特徴部分と
を備える、テクスチャ形成済みガラス物品。
【請求項2】
各前記多面体状表面特徴部分の前記複数の小面は、互いに向かって集束して少なくとも1つの頂点を形成し、前記少なくとも1つの頂点は、先鋭形状、丸みを帯びた形状、又は切頭形状である、請求項1に記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【請求項3】
前記テクスチャ形成済みガラス物品の表面粗度Raは2μm以上である、請求項1に記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【請求項4】
前記テクスチャ形成済みガラス物品の透過ヘイズは40%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【請求項5】
前記複数の多面体状表面特徴部分それぞれの前記基部は、少なくとも3つの辺を備え、少なくとも1つの前記辺が少なくとも1つの別の前記辺に向かって集束する、請求項1~3のいずれか1項に記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【請求項6】
ガラス物品を形成する方法であって、前記方法は:
アルミノシリケートガラス物品をエッチング液と接触させるステップであって、前記アルミノシリケートガラス物品は16重量%以上のAlを含み、少なくとも1つの表面を有し、また前記エッチング液のpHは2.2以下である、ステップ;
前記アルミノシリケートガラス物品を洗浄するステップ;並びに
前記アルミノシリケートガラス物品を乾燥させて前記テクスチャ形成済みガラス物品を形成するステップであって、前記テクスチャ形成済みガラス物品は、前記テクスチャ形成済みガラス物品の第1の表面から延在する複数の多面体状表面特徴部分を備え、前記複数の多面体状表面特徴部分はそれぞれ、前記第1の表面上の基部、前記第1の表面から延在する複数の小面、及び前記基部における10μm以上かつ350μm以下の表面特徴部分サイズを備え、各前記多面体状表面特徴部分の前記複数の小面は互いに向かって集束する、ステップ
を含む、方法。
【請求項7】
前記エッチング液のpHは1.9以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記エッチング液は:
5重量%以上かつ60重量%以下の塩;及び
2重量%以上かつ20重量%以下の酸
を含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記塩は、塩化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、又はこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸は塩酸、フッ化水素酸、又はこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本明細書は、2020年9月4日出願の米国仮特許出願第63/074,761号、発明の名称「テクスチャ形成済みガラス物品及びその作製方法(Textured Glass Articles and Methods of Making Same)」の利益を主張するものであり、上記仮特許出願は参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本明細書は一般にガラス物品に関し、特に、強化された触覚的印象と強反射性の外観とを有するガラス物品に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミノシリケートガラス物品は、優れたイオン交換性及び落下性能を示すことができる。家電業界を含む様々な業界で、同一又は同等の強度及び破壊靭性を有する、テクスチャ形成された反射性材料が望まれている。しかしながら従来のテクスチャ形成プロセスは、特定のアルミノシリケートガラス物品に対して、所望のテクスチャ及び外観を形成できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、強化された触覚的印象と強反射性の外観とを有するアルミノシリケートガラス物品を製造するための別の方法に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様A1によると、テクスチャ形成済みガラス物品は:16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラスで構成される本体であって、上記本体は少なくとも1つの第1の表面を有する、本体と;上記第1の表面から延在する複数の多面体状表面特徴部分であって、上記複数の多面体状表面特徴部分はそれぞれ、上記第1の表面上の基部、上記第1の表面から延在する複数の小面、及び上記基部における10μm以上かつ350μm以下の表面特徴部分サイズを備え、各上記多面体状表面特徴部分の上記複数の小面は互いに向かって集束する、多面体状表面特徴部分とを備えてよい。
【0006】
第2の態様A2は、各上記多面体状表面特徴部分の上記複数の小面が、互いに向かって集束して少なくとも1つの頂点を形成し、上記少なくとも1つの頂点は、先鋭形状、丸みを帯びた形状、又は切頭形状である、第1の態様A1に記載の物品を含む。
【0007】
第3の態様A3は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の表面粗度Raが2μm以上である、第1の態様A1又は第2の態様A2に記載の物品を含む。
【0008】
第4の態様A4は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の透過ヘイズが40%以上である、第1の態様A1~第3の態様A3のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0009】
第5の態様A5は、上記複数の多面体状表面特徴部分それぞれの上記基部が、少なくとも3つの辺を備え、少なくとも1つの上記辺が少なくとも1つの別の上記辺に向かって集束する、第1の態様A1~第4の態様A4のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0010】
第6の態様A6は、上記複数の多面体状表面特徴部分がそれぞれ、上記基部から延在する樹状構造を備える、第1の態様A1~第5の態様A5のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0011】
第7の態様A7は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の平均表面粗度Saが0.75μm以上かつ10μm以下である、第1の態様A1~第6の態様A6のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0012】
第8の態様A8は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の高さの二乗平均平方根の平均Sqが1μm以上かつ2μm以下である、第1の態様A1~第7の態様A7のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0013】
第9の態様A9は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の平均界面展開面積Sdrが7%以上かつ25%以下である、第1の態様A1~第8の態様A8のいずれか1つに記載の物品を含む。
第10の態様A10は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の最小減衰自己相関長さSalが0.020mm以上かつ0.1mm以下である、第1の態様A1~第9の態様A9のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0014】
第11の態様A11は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の平均ピーク曲率が8000mm-1以上かつ17000mm-1以下である、第1の態様A1~第10の態様A10のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0015】
第12の態様A12は、上記テクスチャ形成済みガラス物品のピーク位置最大値(ピークGU)が50GU以上かつ150GU以下である、第1の態様A1~第11の態様A11のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0016】
第13の態様A13は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の半値全幅が20GU以上かつ40GU以下である、第1の態様A1~第12の態様A12のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0017】
第14の態様A14は、上記テクスチャ形成済みガラス物品のGU値の範囲が100GU以上かつ250GU以下である、第1の態様A1~第13の態様A13のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0018】
第15の態様A15は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の歪度が0.25以上かつ0.9以下である、第1の態様A1~第14の態様A14のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0019】
第16の態様A16は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の超過尖度が0.5以上かつ3以下である、第1の態様A1~第15の態様A15のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0020】
第17の態様A17は、上記テクスチャ形成済みガラス物品が、入射角から少なくとも1°離れた位置に出現する少なくとも1つのピークを含む双方向反射率分布関数(bi‐directional reflectance distribution function:BRDF)スペクトルを有する、第1の態様A1~第16の態様A16のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0021】
第18の態様A18は、上記アルミノシリケートガラスが:52重量%以上かつ62重量%以下のSiO;16重量%以上かつ28重量%以下のAl;0重量%以上かつ5重量%以下のB;8重量%以上かつ13重量%以下のNaO;0重量%以上かつ0.2重量%以下のKO;0重量%以上かつ4重量%以下のLiO;及び0重量%以上かつ1.5重量%以下のMgOを含む、第1の態様A1~第17の態様A17のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0022】
第19の態様A19は、上記アルミノシリケートガラスが:52重量%以上かつ62重量%以下のSiO;16重量%以上かつ28重量%以下のAl;0重量%以上かつ5重量%以下のB;8重量%以上かつ13重量%以下のNaO;0重量%以上かつ0.2重量%以下のKO;0重量%以上かつ4重量%以下のLiO;及び0重量%以上かつ1.5重量%以下のMgOを含む、第1の態様A1~第17の態様A17のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0023】
第20の態様A20は、上記テクスチャ形成済みガラス物品が電子デバイスの裏蓋である、第1の態様A1~第19の態様A19のいずれか1つに記載の物品を含む。
【0024】
第21の態様A21によると、ガラス物品を形成する方法は:アルミノシリケートガラス物品をエッチング液と接触させるステップであって、上記アルミノシリケートガラス物品は16重量%以上のAlを含み、少なくとも1つの表面を有し、また上記エッチング液のpHは2.2以下である、ステップ;上記アルミノシリケートガラス物品を洗浄するステップ;並びに上記アルミノシリケートガラス物品を乾燥させて上記テクスチャ形成済みガラス物品を形成するステップであって、上記テクスチャ形成済みガラス物品は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の第1の表面から延在する複数の多面体状表面特徴部分を備え、上記複数の多面体状表面特徴部分はそれぞれ、上記第1の表面上の基部、上記第1の表面から延在する複数の小面、及び上記基部における10μm以上かつ350μm以下の表面特徴部分サイズを備え、各上記多面体状表面特徴部分の上記複数の小面は互いに向かって集束する、ステップを含んでよい。
【0025】
第22の態様A22は、上記エッチング液のpHが1.9以下である、第21の態様A21に記載の方法を含む。
【0026】
第23の態様A23は、上記エッチング液が:5重量%以上かつ60重量%以下の塩;及び2重量%以上かつ20重量%以下の酸を含む、第21の態様A21又は第22の態様A22に記載の方法を含む。
【0027】
第24の態様A24は、塩化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、又はこれらの組み合わせを含む、第23の態様A23に記載の方法を含む。
【0028】
第25の態様A25は、上記酸が塩酸、フッ化水素酸、又はこれらの組み合わせを含む、第23の態様A23又は第24の態様A24に記載の方法を含む。
【0029】
第26の態様A26は、上記アルミノシリケートガラス物品を上記エッチング液と接触させる上記ステップが、アルミニウム系沈殿物より多量のケイ素系沈殿物を生成する、第21の態様A21~第25の態様A25のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0030】
第27の態様A27は、上記エッチング液が:25重量%以上かつ45重量%以下の塩化アンモニウム;5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び40重量%以上かつ60重量%以下の水を含む、第21の態様A21~第26の態様A26のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0031】
第28の態様A28は、上記エッチング液が:25重量%以上かつ45重量%以下の塩化アンモニウム;5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素アンモニウム;5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び40重量%以上かつ60重量%以下の水を含む、第21の態様A21~第26の態様A26のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0032】
第29の態様A29は、上記エッチング液が:25重量%以上かつ45重量%以下のフッ化水素アンモニウム;10重量%以上かつ20重量%以下の塩酸;及び40重量%以上かつ60重量%以下の水を含む、第21の態様A21~第26の態様A26のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0033】
第30の態様A30は、上記エッチング液が:10重量%以上かつ20重量%以下の硫酸カリウム;5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び5体積%以上かつ15体積%以下の塩酸を含む、第21の態様A21~第26の態様A26のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0034】
第31の態様A31は、上記エッチング液が:25重量%以上かつ45重量%以下の塩化カリウム;5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び5体積%以上かつ15体積%以下の塩酸を含む、第21の態様A21~第26の態様A26のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0035】
第32の態様A32は:前面、背面、及び側面を有するハウジング;少なくとも一部が上記ハウジング内に設けられた電気部品であって、上記電気部品は、少なくとも1つのコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの上記前面に、又は上記前面に隣接して設けられる、電気部品;並びに上記ディスプレイを覆うように配置された、上記第1の態様A1に記載のガラス物品を備える、消費者向け電子デバイスを含む。
【0036】
本明細書に記載のテクスチャ形成済みガラス物品の更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載されており、その一部は、当業者には「発明を実施するための形態」から容易に明らかとなるか、又は以下の「発明を実施するための形態」、特許請求の範囲、及び添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実践することによって理解されるだろう。
【0037】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」の両方は、様々な実施形態を説明するものであり、請求対象の主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、これらの様々な実施形態の更なる理解を提供するために含まれており、また本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本明細書に記載の上記様々な実施形態を図示し、本記載と併せて、請求対象の主題の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】エッチングプロセスによって形成された従来のガラス物品の光学顕微鏡画像
図2】エッチングプロセスによって形成された従来のガラス物品の光学顕微鏡画像
図3】エッチングプロセスによって形成された従来のガラス物品の光学顕微鏡画像
図4】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態による、テクスチャ形成済みガラス物品の概略斜視図
図5】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態による、テクスチャ形成済みガラス物品それぞれの概略平面図
図6】本明細書に記載されている1つ以上の実施形態による、テクスチャ形成済みガラス物品を形成する方法のフローチャート
図7】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるエッチングプロセスのあるステップの概略図
図8】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるエッチングプロセスの別のステップの概略図
図9】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるエッチングプロセスの別のステップの概略図
図10】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるエッチングプロセスの別のステップの概略図
図11】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品のいずれかを組み込んだ例示的な電子デバイスの平面図
図12図11の例示的電子デバイスの斜視図
図13図11の例示的電子デバイスの斜視図
図14】エッチングプロセスによって形成された従来のガラス物品のX線回折(X‐ray diffraction:XRD)スペクトル
図15】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図16】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品のXRDスペクトル
図17】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の、倍率50倍での光学顕微鏡画像
図18図17に示されているテクスチャ形成済みガラス物品の、倍率200倍での光学顕微鏡画像
図19】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の、倍率50倍での光学顕微鏡画像
図20図19に示されているテクスチャ形成済みガラス物品の、倍率200倍での光学顕微鏡画像
図21】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の、倍率50倍での光学顕微鏡画像
図22図21に示されているテクスチャ形成済みガラス物品の、倍率200倍での光学顕微鏡画像
図23】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の、倍率50倍での光学顕微鏡画像
図24図23に示されているテクスチャ形成済みガラス物品の、倍率200倍での光学顕微鏡画像
図25】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図26】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図27】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図28】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図29】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図30】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図31】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図32】比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の2mm×2mmのエリアの白色光干渉測定表面画像
図33図32に示されている比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の175μm×235μmのエリアの白色光干渉測定表面画像
図34】比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の2mm×2mmのエリアの白色光干渉測定表面画像
図35図34に示されている比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の175μm×235μmのエリアの白色光干渉測定表面画像
図36】比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の2mm×2mmのエリアの白色光干渉測定表面画像
図37図36に示されている比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の175μm×235μmのエリアの白色光干渉測定表面画像
図38】比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の2mm×2mmのエリアの白色光干渉測定表面画像
図39図38に示されている比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の175μm×235μmのエリアの白色光干渉測定表面画像
図40】比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の2mm×2mmのエリアの白色光干渉測定表面画像
図41図40に示されている比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の175μm×235μmのエリアの白色光干渉測定表面画像
図42】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態による、入射角(angle of incidence:AOI)及び試料の配向を示す双方向反射率分布関数(BRDF)セットアップにおける白色光照明の概略図
図43】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態による、20°の入射角(AOI)でのテクスチャ形成済みガラス物品のBRDFスペクトル
図44】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態による、40°のAOIでのテクスチャ形成済みガラス物品のBRDFスペクトル
図45】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態による、50°のAOIでのテクスチャ形成済みガラス物品のBRDFスペクトル
図46】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態による、60°のAOIでのテクスチャ形成済みガラス物品のBRDFスペクトル
図47】比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図48図47に示されている比較例のテクスチャ形成済みガラス物品のComplete Angle Scatter Instrument(CASI)スペクトル
図49】比較例のテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図50図49に示されている比較例のテクスチャ形成済みガラス物品のCASIスペクトル
図51】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図52図51に示されているテクスチャ形成済みガラス物品のCASIスペクトル
図53】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図54図53に示されているテクスチャ形成済みガラス物品のCASIスペクトル
図55】本明細書に図示及び記載されている1つ以上の実施形態によるテクスチャ形成済みガラス物品の光学顕微鏡画像
図56図55に示されているテクスチャ形成済みガラス物品のCASIスペクトル
【発明を実施するための形態】
【0039】
これより、強化された触覚的印象と強反射性の外観とを有するテクスチャ形成済みガラス物品の様々な実施形態を詳細に参照する。実施形態によると、テクスチャ形成済みガラス物品は:16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラスで構成される本体であって、上記本体は少なくとも1つの第1の表面を有する、本体と;上記第1の表面から延在する複数の多面体状表面特徴部分であって、上記複数の多面体状表面特徴部分はそれぞれ、上記第1の表面上の基部、上記第1の表面から延在する複数の小面、及び上記基部における10μm以上かつ350μm以下の表面特徴部分サイズを備え、各上記多面体状表面特徴部分の上記複数の小面は互いに向かって集束する、多面体状表面特徴部分とを含む。テクスチャ形成済みガラス物品及びその作製方法の様々な実施形態を、添付の図面を具体的に参照しながら本明細書で説明する。
【0040】
本明細書において、範囲が、「約(about)」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現される場合がある。範囲がこのように表現される場合、別の実施形態は、上記1つの特定の値から、及び/又は上記別の特定の値までを含む。同様に、先行語句「約」の使用によって、値が近似値として表現されている場合、上記特定の値は別の実施形態を形成することが理解されるだろう。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関係においても、他方の端点とは独立しても、重要であることが理解されるだろう。
【0041】
本明細書中で使用される場合、方向に関する用語、例えば「上(up)」、「下(down)」、「右(right)」、「左(left)」、「前(front)」、「後(back)」、「上部(top)」、「下部(bottom)」は、図示されている状態の図面を参照して使用されているだけのものであり、絶対的な配向を含意することを意図したものではない。
【0042】
特段の記載がない限り、本明細書に記載のいずれの方法が、その複数のステップをある具体的な順序で実施することを必要とするものとして解釈されること、又はいずれの装置によって具体的な配向が要求されることは、全く意図されていない。従って、ある方法クレームが、その複数のステップが従うべき順序を実際に示していない場合、又はいずれの装置クレームが、個々の構成部品に対してある順序若しくは配向を実際に記載していない場合、又は上記複数のステップがある具体的な順序に限定されることが請求項又は本説明において具体的に言明されていない場合、又はある装置の構成部品に対する具体的な順序若しくは配向が記載されていない場合、ある順序を暗示することは、いかなる点においても一切意図されていない。これは、以下を含む、解釈に関するいずれの可能な非明示的基礎に関しても当てはまる:ステップ、操作フロー、構成部品の順序、又は構成部品の配向の構成に関する論理問題;文法的な編成又は句読法に由来する平易な意味;及び本明細書に記載された実施形態の数又はタイプ。
【0043】
本明細書において使用される場合、単数形「ある(a、an)」及び「上記(the)」は、そうでないことが文脈によって明示されていない限り、複数の指示物を含む。従って例えば、「ある」部品に関する言及は、そうでないことが文脈によって明示されていない限り、2つ以上のこのような部品を有する態様を含む。
【0044】
本明細書に記載のガラス組成物の実施形態では、構成成分(例えばSiO、Al等)の濃度は、特段の記載がない限り、酸化物ベースの重量パーセント(重量%)で指定される。
【0045】
本明細書に記載のX線回折(XRD)スペクトルは、Bruker Corporation(マサチューセッツ州ビレリカ)製の、LYNXEYE XE‐T検出器を備えるD8 ENDEAVOR X線回折システムを用いて測定される。
【0046】
本明細書に記載の光学顕微鏡画像は、合わせて200倍又は500倍の倍率のために、20倍又は50倍と対物レンズと、複数の10倍の接眼レンズとを有する、Nikon Eclipse L200N光学顕微鏡を用いて得られる。
【0047】
本明細書に記載の「表面特徴部分サイズ(surface feature size)」は、倍率200倍での光学顕微鏡検査を用いて測定される。500μm×1000μmの2つの異なる走査エリアの画像を取得する。各画像において、大きい方から10個の表面特徴部分の基部の断面を横断する最大距離を測定する。「表面特徴部分サイズ」は、2つの走査エリアからのこれら20個の表面特徴部分の基部の断面を横断する最大距離の平均を指す。例えば三角形状の基部を有する表面特徴部分の場合、基部の断面を横断する最大距離は、三角形状の基部の高さである。長方形状の基部を有する表面特徴部分の場合、基部の断面を横断する最大距離は、基部を横断する対角線上の測定値である。六角形状の基部を有する表面特徴部分を有する表面特徴部分の場合、基部の断面を横断する最大距離は、対向する頂点間の最大測定値である。
【0048】
本明細書に記載の「表面特徴部分高さ(surface feature height)」は、表面特徴部分の基部と表面特徴部分の最も高い頂点との間の距離を指す。
【0049】
本明細書に記載の「小面角度(facet angle)」は、アルミノシリケートガラス物品の第1の表面に対して垂直な平面と小面との間の角度を指す。小面角度は、表面特徴部分のarctan(高さ/(長さの1/2))によって測定される。
【0050】
本明細書に記載の「透過ヘイズ(transmittance haze)」は、全光線透過率にわたる全ての透過光に対する、法線から2.5°を超える角度で散乱された透過光の比率を指す。本明細書に記載の透過ヘイズは、特段の指示のない限り、波長範囲380nm~720nm、厚さ0.8mmで、標準的なCIE‐C光源を用いてASTM D1003に従って測定される。
【0051】
本明細書に記載の「表面粗度(Surface roughness:Ra)」は、評価長さ内で記録された平均線からのプロファイルの高さの偏差の絶対値の算術平均によって定量化された、テクスチャ形成済みガラス物品の表面テクスチャを指し、これはMitutoyo SJ‐310表面粗度計によってISO1997に従って測定される。特に明記されていない限り、本明細書で報告される値は、マイクロメートル、即ちμmを単位として報告されている。
【0052】
本明細書に記載の表面構造データは、白色光干渉計(Contour GT‐X、Bruker Corporation、米国マサチューセッツ州ビレリカ)を用いて収集された。50倍の対物レンズ、及び0.55倍ズームレンズを用いてデータを収集した。垂直走査干渉測定を「VXI」オプションで使用して、各表面ポイントの位置を計算する際に使用する位相データも記録した。以下の4つのエリアを収集した:175μm×235μm(スティッチングなし)、500μm×500μm(スティッチングあり)、1mm×1mm(スティッチングあり)、及び2mm×2mm(スティッチングあり)。MountainsMap 8 (Digital Surf、ブザンソン(フランス))を用いて、図31~40の画像等の画像を生成した。これらの画像を用いて、本明細書に記載のテクスチャ形成済みガラス物品、例えば表9に示されている、結果として得られるテクスチャ形成済みガラス物品の、平均表面粗度、高さの二乗平均平方根の平均、平均界面展開面積、最小減衰自己相関長さ、及び平均ピーク曲率を計算した。平坦形状除去を用いてこのデータをレベリングし、平滑化関数を用いて測定されていないピクセル(データの1%未満)を埋めた。形状除去後の基礎表面について、表面の概要の指標を計算した。それ以上のフィルタリング又はデータ加工は実施しなかった。
【0053】
本明細書に記載される、MountainsMap 8を用いて計算される「平均表面粗度(平均Sa)」は、ISO25178に従って測定される、白色光干渉計で収集された4つのエリアにわたる算術平均高さを指す。
【0054】
本明細書に記載される、MountainsMap 8を用いて計算される「高さの二乗平均平方根の平均(mean root mean square height:平均Sq)」は、ISO25178に従って測定される、白色光干渉計で収集された4つのエリアにわたる高さの標準偏差を指す。
【0055】
本明細書に記載される、MountainsMap 8を用いて計算される「平均界面展開面積(mean developed interfacial area:平均Sdr)」は、ISO25178に従って測定される、白色光干渉計で収集された4つのエリアにわたる、平面定義エリアに対する、テクスチャが寄与する追加の表面積のパーセンテージを指す。
【0056】
本明細書に記載される、MountainsMap 8を用いて計算される「最小減衰自己相関長さ(fastest decay autocorrelation length:Sal)」は、ISO25178に従って測定される、白色光干渉計で収集された2mm×2mm(スティッチングあり)のエリアにわたる、自己相関関数が特定の値s(デフォルトでは0.2)へ最も速く減衰する方向の水平距離を指す。
【0057】
本明細書に記載される、MountainsMap 8を用いて計算される「平均ピーク曲率(mean peak curvature:Spc)」は、ISO25178に従って測定される、白色光干渉計で収集された2mm×2mm(スティッチングあり)のエリアにわたる、表面上の主要なピークの曲率の算術平均を指す。
【0058】
本明細書中で示されている顕微鏡画像を取得した。
【0059】
本明細書に記載のグレースケール分布は、光ファイバ導光路に結合された高強度白色LED(Metaphaser LED Light Engine、Metaphase Technologies、米国ペンシルバニア州ブリストル)を用いて物品を照明することによって収集された。上記物品の表面から反射した光を、カメラ/レンズの組み合わせ(Stingray F‐125B、Allied Vision Technologies Gmbh、シュタットローダー(ドイツ);及びM112FM50、株式会社タムロン、埼玉県(日本))によって収集した。レンズ口径はf/2.8であり、作動距離はおよそ300mmであり、露光時間は6msであり、利得は0dbに設定された。収集された画像を用いて、本明細書に記載のテクスチャ形成済みガラス物品、例えば表9に示されている、結果として得られるテクスチャ形成済みガラス物品の、ピーク位置最大値、半値全幅、ピーク位置最大値の値の範囲、歪度、及び超過尖度を計算した。
【0060】
本明細書に記載の「GU」は、グレースケール単位(grayscale unit)を指す。
【0061】
本明細書に記載される、物品の表面から反射した光によって収集された画像から計算される「ピーク位置最大値(location of peak maximum:ピークGU)」は、振幅が最大になるグレースケール値を指す。
【0062】
本明細書に記載される、物品の表面から反射した光によって収集された画像から計算される「半値全幅(full width at half maximum:FWHM)」は、最大振幅の半分となるY軸上の点の間で測定された曲線の幅を指す。
【0063】
本明細書に記載される、物品の表面から反射した光によって収集された画像から計算される「GU値の範囲(range of GU values)」は、所与の画像における最高のグレースケール値と最低のグレースケール値との間の差を指す。
【0064】
本明細書に記載される、物品の表面から反射した光によって収集された画像から計算される「歪度(skewness)」は、実数値ランダム変数の、その平均に関する分布の非対称性を指す。参考までに、正規分布の歪度はゼロである。
【0065】
本明細書に記載の「超過尖度(excess kurtosis)」は、尖度マイナス3を指し、標準正規分布尖度との直接比較として使用される。
【0066】
本明細書に記載の双方向反射率分布関数(BRDF)は、以下に示すように、Scatter Works製のReflet 180Sゴニオメータ又はComplete Angle Scatter Instrument(CASI)を用いて測定された。Reflet 180Sは、10までのダイナミックレンジでBRDFを測定し、鏡面及び拡散面の検査を可能にする。Reflet 180Sでは、光源としてハロゲン光のコリメートビームが使用され、既知の拡散反射率標準を用いてRefletシステムを較正することにより、BRDF信号に対する余弦補正が適用された。CASIシステムは、可変の検出器口径とコヒーレントレーザ光源とを用いて、高解像度の角度測定を実施する。このシステムは、1013までのダイナミックレンジでBRDFスペクトルを測定し、角度スペクトル内の詳細な特徴を検出できる。
【0067】
テクスチャ形成済みガラス物品上の表面特徴部分の構造の説明に使用される場合、「多面体状(polyhedral)」は、平坦な多角形状の面、直線状の縁部、及び基部における10μm以上の表面特徴部分サイズを有する、3次元形状を指す。
【0068】
テクスチャ形成済みガラス物品上の表面特徴部分の構造の説明に使用される場合、「樹状(dendritic)」は、基部における10μm未満の表面特徴部分サイズを有する、分岐した構造を指す。
【0069】
エッチング液は、ガラス物品上のテクスチャ形成済み表面を得るために使用されてきた。例えばここで図1を参照すると、アンモニウムエッチング液で処理された3つのガラス物品の光学顕微鏡画像が示されている。使用されたアンモニウムエッチング液はpHが3.5であり(即ちpHが2.2より高く)、6重量%のフッ化水素酸、15重量%のフッ化水素アンモニウム、及び10体積%のプロピレングリコールを含んでいた。図1Aに示されているもののようなソーダライムシリケートガラス物品を、上述のアンモニウムエッチング液で処理する場合、エッチング液の沈殿物は主にフッ化ケイ酸金属(MSiF)からなり、これは、触覚的印象の強化と「輝く」(即ち強反射性の)外観とを提供する、大型の(即ち10μm以上の)多面体状表面特徴部分をもたらす。しかしながら、図2及び3に示されているもののような、16重量%を超えるAlを含むアルミノシリケートガラス物品を、上述のアンモニウムエッチング液で処理する場合、エッチング液の沈殿物は主に金属のアルミノフッ化物(MAlF)からなり、これは小型(即ち10μm未満)かつ樹状の表面特徴部分をもたらす。これらの樹状表面特徴部分は、有意な触覚的印象を提供しない。更に、樹状表面特徴部分は平坦な面を含むことができるものの、これらの平坦な面は比較的小さい場合があり、これによって、結果として得られるガラス物品の反射率が減衰する。
【0070】
本明細書で開示されるのは、16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラス(これは優れたイオン交換性及び落下性能を示す)を処理して所望のテクスチャ及び外観を生成できるよう、上述の問題を軽減する、テクスチャ形成済みガラス物品及びテクスチャ形成方法である。具体的には、本明細書で開示されるテクスチャ形成済みガラス物品は、強化された触覚的印象と強反射性の外観とを提供する大型の多面体状表面特徴部分を有する、アルミノシリケートガラスで構成される。16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラス物品に所望のテクスチャ形成済み表面を形成するためには、エッチング液は、大型の多面体状表面特徴部分をもたらすケイ素系沈殿物を優先的に生成し、小型の樹状表面特徴部分をもたらすアルミニウム系沈殿物を最小限に抑える必要がある。アルミニウム系沈殿物は、比較的低いpH(例えば2.2以下)において比較的高い溶解度を有するため、pHが低いエッチング液は、アルミニウム系結晶種よりも多くのケイ素系結晶種を形成でき、これは所望のテクスチャ形成済み表面をもたらす。従って本明細書に記載のエッチング液のpHは2.2以下である。
【0071】
ここで図4及び5を参照すると、本明細書に記載のテクスチャ形成済みガラス物品100は、16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラスで構成される本体102を有する。実施形態では、上記アルミノシリケートガラスは、52重量%以上かつ62重量%以下のSiO、16重量%以上かつ28重量%以下のAl、0重量%以上かつ5重量%以下のB、8重量%以上かつ13重量%以下のNaO、0重量%以上かつ0.2重量%以下のKO、0重量%以上かつ4重量%以下のLiO、及び0重量%以上かつ1.5重量%以下のMgOを含んでよい。実施形態では、上記アルミノシリケートガラスは、52重量%以上かつ67重量%以下のSiO、16重量%以上かつ28重量%以下のAl、0重量%以上かつ5重量%以下のB、8重量%以上かつ15重量%以下のNaO、0重量%以上かつ0.2重量%以下のKO、0重量%以上かつ4重量%以下のLiO、及び0重量%以上かつ5重量%以下のMgOを含んでよい。しかしながら、アルミノシリケートガラスが16重量%以上のAlを有する限り、他のアルミノシリケートガラスも考えられ、かつ可能であることを理解されたい。
【0072】
本体102は少なくとも1つの第1の表面104を含む。複数の多面体状表面特徴部分106は、第1の表面104から延在する。各多面体状表面特徴部分106は、第1の表面104上の基部108と、第1の表面104から延在する複数の小面110とを含む。
【0073】
実施形態では、各多面体状表面特徴部分106の小面110は、第1の表面104から延在し、互いに向かって集束して、多面体状表面特徴部分106の多面体形状(例えば3回対称、4回対称、6回対称等のピラミッド型)を形成する。実施形態では、各多面体状表面特徴部分106の小面110は、0.5°以上かつ12°以下の小面角度で、互いに向かって集束する。実施形態では、小面110は三角形状、長方形状、又は台形状であってよい。実施形態では、小面110は集束して、少なくとも1つの頂点112a、112b、112cを形成する。実施形態では、上記頂点は先鋭形状の頂点112a、丸みを帯びた形状の頂点112b、又は切頭形状の頂点112cであってよい。
【0074】
各多面体状表面特徴部分106の基部108は、少なくとも3つの辺114を備える。基部108の少なくとも1つの辺114は、少なくとも1つの別の辺114に向かって集束する。実施形態では、基部108は三角形状、長方形状、又は六角形状であってよい。実施形態では、基部108における表面特徴部分サイズは10μm以上かつ350μm以下である。実施形態では、基部108における表面特徴部分サイズは、10μm以上、20μm以上、又は50μm以上である。実施形態では、基部108における表面特徴部分サイズは、350μm以下、300μm以下、250μm以下、又は200μmである。実施形態では、基部108における表面特徴部分サイズは、10μm以上かつ350μm以下、10μm以上かつ300μm以下、10μm以上かつ250μm以下、20μm以上かつ350μm以下、20μm以上かつ300μm以下、20μm以上かつ250μm以下、50μm以上かつ350μm以下、50μm以上かつ300μm以下、又は50μm以上かつ250μm以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内である。
【0075】
各多面体状表面特徴部分106のこの構造は、所望の強化された触覚的印象の達成に役立つ。
【0076】
実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の表面粗度Raは、2μm以上、又は4μm以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の表面粗度Raは、12μm以下、又は10μm以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の表面粗度Raは、2μm以上かつ12μm以下、2μm以上かつ10μm以下、4μm以上かつ12μm以下、又は4μm以上かつ10μm以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0077】
実施形態では、複数の多面体状表面特徴部分106を含むテクスチャ形成済みガラス物品100は、多面体状表面特徴部分を含まないテクスチャ形成済みガラス物品に比べて相対的に高い平均Saによって示されるように、比較的粗い表面を有することができる。実施形態では、複数の多面体状表面特徴部分106を含むテクスチャ形成済みガラス物品100は、多面体状表面特徴部分を含まないテクスチャ形成済みガラス物品に比べて相対的に高い平均Sqによって示されるように、表面特徴部分高さの比較的広い分布を有することができる。
【0078】
実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の平均Saは、0.75μm以上、又は1μm以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の平均Saは、10μm以下、又は5μm以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の平均Saは、0.75μm以上かつ10μm以下、0.75μm以上かつ5μm以下、1μm以上かつ10μm以下、又は1μm以上かつ5μm以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0079】
実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の平均Sqは、1μm以上、又は1.25μm以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の平均Sqは、2μm以下、又は1.5μm以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の平均Sqは、1μm以上かつ2μm以下、1μm以上かつ1.5μm以下、1.25μm以上かつ2μm以下、又は1.25μm以上かつ1.5μm以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0080】
実施形態では、複数の表面特徴部分106を含むテクスチャ形成済みガラス物品100は、多面体状表面特徴部分を含まないテクスチャ形成済みガラス物品に比べて相対的に高い平均Sdr及び相対的に高いSalによって示されるように、比較的大きな斜面積、及び表面特徴部分間の比較的大きな距離を有することができる。
【0081】
実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の平均Sdrは、7%以上、10%以上、又は15%以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の平均Sdrは、25%以下、又は20%以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の平均Sdrは、7%以上かつ25%以下、7%以上かつ20%以下、10%以上かつ25%以下、10%以上かつ20%以下、15%以上かつ25%以下、又は15%以上かつ20%以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0082】
実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のSalは、0.020mm以上、又は0.025mm以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のSalは、0.1mm以下、又は0.09mm以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のSalは、0.020mm以上かつ0.1mm以下、0.020mm以上かつ0.09mm以下、0.025mm以上かつ0.1mm以下、又は0.025mm以上かつ0.09mm以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0083】
実施形態では、複数の多面体状表面特徴部分106を含むテクスチャ形成済みガラス物品100は、多面体状表面特徴部分を含まないテクスチャ形成済みガラス物品に比べて相対的に高いSpcによって示されるように、尖った形状の存在による他の対象物との接点の量が比較的大きくなり得る。比較的低いSpc値は、表面上の特徴部分間の接点が、比較的丸みを帯びた形状を有することを示す。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のSpcは、8000mm-1、又は10000mm-1以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のSpcは、17000mm-1以下、又は15000mm-1以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のSpcは、8000mm-1以上かつ17000mm-1以下、8000mm-1以上かつ15000mm-1以下、10000mm-1以上かつ17000mm-1以下、又は10000mm-1以上かつ15000mm-1以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0084】
実施形態では、複数の多面体状表面特徴部分106はそれぞれ、多面体状表面特徴部分106の基部108から延在する樹状構造を備えてよい。図2及び3を参照して上述したように、樹状特徴部分だけでは有意な触覚的印象又は強反射性は提供できない。しかしながら、多面体状表面特徴部分106と共に形成された場合、所望のテクスチャ形成済み表面を得ることができる。
【0085】
集束する平坦な小面110を有し、比較的大きな基部108に沿って概ね真っ直ぐである、各多面体状表面特徴部分106の構造は、光を異なる複数の方向に反射して、「輝く」(即ち強反射性の)外観を達成する。テクスチャ形成済みガラス物品の「輝く」外観は、多面体状表面特徴部分を有しないテクスチャ形成済みガラス物品に比べて相対的に大きなピークGU、FWHM、GU値の範囲、歪度、及び超過尖度によって裏付けることができる。
【0086】
GU分布内で比較的高いピークGUは、多面体状表面特徴部分106の集束する平坦な小面110からより多くの光が反射することに対応する。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のピークGUは、50GU以上、60GU以上、70GU以上、又は80GU以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のピークGUは、150GU以下、125GU以下、115GU以下、又は100GU以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品のピークGUは、50GU以上かつ150GU以下、50GU以上かつ125GU以下、50GU以上かつ115GU以下、50GU以上かつ100GU以下、60GU以上かつ150GU以下、60GU以上かつ125GU以下、60GU以上かつ115GU以下、60GU以上かつ100GU以下、70GU以上かつ150GU以下、70GU以上かつ125GU以下、70GU以上かつ115GU以下、70GU以上かつ100GU以下、80GU以上かつ150GU以下、80GU以上かつ125GU以下、80GU以上かつ115GU以下、80GU以上かつ100GU以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0087】
比較的大きなFWHM及びGU値の範囲は、表面特徴部分サイズと共に増大するグレースケール値のより広い分布に対応する。
【0088】
実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のFWHMは、20GU以上、又は25GU以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のFWHMは、40GU以下、又は30GU以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のFWHMは、20GU以上かつ40GU以下、20GU以上かつ30GU以下、25GU以上かつ40GU以下、又は25GU以上かつ30GU以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0089】
実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のGU値の範囲は、100GU以上、又は125GU以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のGU値の範囲は、250GU以下、又は225GU以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100のGU値の範囲は、100GU以上かつ250GU以下、100GU以上かつ225GU以下、125GU以上かつ250GU以下、又は125GU以上かつ225GU以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0090】
歪度は、グレースケール分布の非対称性を記述する。比較的大きな歪度は、平均グレースケール値に関する正の(「右側の(right‐handed)」)非対称性に対応し、これは、多面体状表面特徴部分106の集束する平坦な小面110から反射した光の分布に対する(例えば75%四分位範囲の上限外である)高強度の寄与の量が大きいことの指標である。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品の歪度は、0.25以上、又は0.5以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の歪度は、0.9以下、又は0.75以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の歪度は、0.25以上かつ0.9以下、0.25以上かつ0.75以下、0.5以上かつ0.9以下、又は0.5以上かつ0.75以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0091】
尖度は、グレースケール分布の外れ値の尺度を提供する。分布の「裾が重い(heavy‐tailed)」ほど、存在する外れ値が多くなる。理想的な正規分布の尖度は3であるため、尖度マイナス3である超過尖度を用いると、正規分布との比較がより容易となる。3を減算することにより、理想化された正規分布の尖度がゼロにシフトされ、試料分布の追加の尖度が超過尖度と呼ばれる。比較的大きな超過尖度は、(例えば75%四分位範囲の上限外である)高強度のグレースケール値の外れ値が相当量存在することを示し、これは、多面体状表面特徴部分106の集束する平坦な小面110から反射した光の分布に対する高強度の寄与の量が大きいことに対応する。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の超過尖度は、0.5以上、又は1以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の超過尖度は、3以下、又は2.5以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の超過尖度は、0.5以上かつ3以下、0.5以上かつ2.5以下、1以上かつ3以下、又は1以上かつ2.5以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0092】
BRDFスペクトルの複数の散乱ピークは、多面体状表面特徴部分106の集束する平坦な小面110からの光の反射を示す。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100は、入射角から少なくとも1°、少なくとも5°、又は少なくとも10°離れた位置に出現する少なくとも1つのピークを含むBRDFスペクトルを生成してよい。
【0093】
テクスチャ形成済みガラス物品100の透過ヘイズを、製造品質管理のために分析できる。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の透過ヘイズは、40%以上、50%以上、又は60%以上であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の透過ヘイズは、95%以下、又は90%以下であってよい。実施形態では、テクスチャ形成済みガラス物品100の透過ヘイズは、40%以上かつ95%以下、40%以上かつ90%以下、50%以上かつ95%以下、50%以上かつ90%以下、60%以上かつ95%以下、又は60%以上かつ90%以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0094】
ここで図6を参照すると、複数の多面体状表面特徴部分を備えるテクスチャ形成済みガラス物品を化学エッチングプロセスによって形成する方法が、200に示されている。ブロック202では、図7に示されているように、まず、16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラス物品300を提供する。アルミノシリケートガラス物品300は、第1の表面と、上記第1の表面の反対側の、上記第1の表面に対して概ね平行な第2の表面とを備える、プレートの形態であってよい。実施形態では、アルミノシリケートガラス物品300を、フッ化水素酸、塩酸、又はこれらの組み合わせを含む洗浄溶液で予備洗浄してよい。実施形態では、洗浄溶液中のフッ化水素酸の量は、2.5重量%以上かつ10重量%以下であってよい。実施形態では、洗浄溶液中の塩酸の量は、2重量%以上かつ10重量%以下であってよい。実施形態では、洗浄溶液中のフッ化水素酸の濃度は、1.5M以上かつ6M以下であってよい。実施形態では、洗浄溶液中の塩酸の濃度は、0.6M以上かつ3M以下であってよい。
【0095】
図6のブロック204に戻ると、図8に示されているように、アルミノシリケートガラス物品300をエッチング液と接触させる。エッチング液はアルミノシリケートガラス物品300と反応し、アルミノシリケートガラス物品300からケイ酸塩及び/又はアルミン酸塩種を放出させる。ケイ酸塩及び/又はアルミン酸塩種はエッチング液の要素と組み合わさり、沈殿物を形成する。これらの沈殿物のエッチング液中での溶解度が低い場合、これらはアルミノシリケートガラス物品300の表面上に堆積して結晶種302(例えば塩の外皮)を形成する。
【0096】
図9に示されているように、エッチング液がアルミノシリケートガラス物品300と反応し続けると、結晶種302が成長する。結晶種302はエッチング液中で不溶性であるため、結晶種302はその場でのマスク304として機能する。マスク304は、アルミノシリケートガラス物品300の表面の複数の部分を密閉する。マスク304の周りのガラスをエッチングして除去することにより、多面体状表面特徴部分306を生成する。多面体状表面特徴部分306の形状はマスク304の形状によって決定でき、マスク304の形状は、エッチング液の組成を変更すること、及び/又はエッチング液がアルミノシリケートガラス物品300と接触する時間の長さを変更することによって、変化させることができる。
【0097】
図6のブロック206に戻ると、図10に示されているように、アルミノシリケートガラス物品300を洗浄して表面からエッチング液及び結晶種302を除去した後、乾燥させることにより、多面体状表面特徴部分306を有するテクスチャ形成済みガラス物品310を形成する。実施形態では、脱イオン(DI)水を用いてエッチング液をアルミノシリケートガラス物品300からすすぎ落とす。実施形態では、アルミノシリケートガラス物品300に付着する結晶種302は、例えばスクラバスポンジによって除去できる。図6のブロック208に戻ると、実施形態では、アルミノシリケートガラス物品300を周囲条件下で乾燥させる。あるいはアルミノシリケートガラス物品300を加熱して、このガラス物品を乾燥させてもよい。
【0098】
16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラス物品の表面上に所望のテクスチャを形成するために、本明細書に記載のエッチング液は、上記エッチング液が、ケイ素系沈殿物を優先的に生成し、アルミニウム系沈殿物の量を最小限に抑えるように、調製される。ケイ素系沈殿物(例えばフッ化ケイ酸金属(MSiF))は大型の多面体状表面特徴部分をもたらす。アルミニウム系沈殿物(例えば金属アルミノフッ化物(MAlF))は小型の樹状表面特徴部分をもたらす。アルミニウム系沈殿物はpHが低いほど(例えば2.2以下のpH値において)高い溶解度を有するため、pHが低いエッチング液ほど、アルミニウム系沈殿物に比べて多量のケイ素系沈殿物を生成でき、これは所望のテクスチャ形成済み表面をもたらす。
【0099】
従って本明細書に記載のエッチング液のpHは、2.2以下である。実施形態では、エッチング液のpHは、2.2以下、1.9以下、1.6以下、又は1.3以下であってよい。pHが1.3未満のエッチング液はケイ素系沈殿物しか生成しない場合がある。従って、アルミニウム系沈殿物の生成が望ましくない実施形態では、エッチング液のpHを1.3未満としてよい。
【0100】
実施形態では、エッチング液は、本明細書中で更に詳細に説明されるように、塩及び酸を含んでよい。
【0101】
エッチング液中に存在する塩は、結晶種の形成を促進する結晶化促進剤として作用する。実施形態では、塩は、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム、又はこれらの組み合わせを含んでよい。エッチング液中の塩の量は、結晶種が確実に形成されるために十分な多さ(例えば5重量%以上)である必要がある。溶解度に到達した後に沈殿し得る未溶解の塩を削減又は防止するために、塩の量を制限してよい(例えば60重量%以下)。未溶解の塩は、エッチング剤とは異なるエッチングを生じさせる可能性があり、テクスチャ形成済みガラス表面の均一性を失わせる可能性がある。実施形態では、エッチング液は5重量%以上かつ60重量%以下の塩を含んでよい。実施形態では、エッチング液中の塩の量は、5重量%以上、10重量%以上、又は25重量%以上であってよい。実施形態では、エッチング液中の塩の量は、60重量%以下、50重量%以下、又は45重量%以下であってよい。実施形態では、エッチング液中の塩の量は、5重量%以上かつ60重量%以下、5重量%以上かつ50重量%以下、5重量%以上かつ45重量%以下、10重量%以上かつ60重量%以下、10重量%以上かつ50重量%以下、10重量%以上かつ45重量%以下、25重量%以上かつ60重量%以下、25重量%以上かつ50重量%以下、又は25重量%以上かつ45重量%以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0102】
エッチング液中に存在する酸は、アルミノシリケートガラス物品のガラスネットワークの成分を溶解させて、多面体状表面特徴部分を形成する機能を果たす。実施形態では、酸は、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、硫酸水素塩(例えば硫酸水素ナトリウム)、又はこれらの組み合わせを含んでよい。エッチング液中の酸の量は、ガラスが確実にエッチングされてテクスチャ形成済みガラス物品が形成されるために十分な多さ(例えば2重量%以上)である必要がある。大型の多面体状表面特徴部分を確実に形成するために、酸の量を制限してよい(例えば20重量%以下)。過剰な量の酸を添加すると、多面体状表面特徴部分が腐食してサイズが小さくなり、その強化された触覚的印象及び強反射性の外観が失われる可能性がある。実施形態では、エッチング液は2重量%以上かつ20重量%以下の酸を含んでよい。実施形態では、エッチング液中の酸の量は、2重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上であってよい。実施形態では、エッチング液中の酸の量は、20重量%以下、又は15重量%以下であってよい。実施形態では、エッチング液中の酸の量は、2重量%以上かつ20重量%以下、2重量%以上かつ15重量%以下、5重量%以上かつ20重量%以下、5重量%以上かつ15重量%以下、10重量%以上かつ20重量%以下、又は10重量%以上かつ15重量%以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。
【0103】
実施形態では、エッチング液は更に溶媒を含んでよい。実施形態では、溶媒は、水、酸(例えば塩酸及び/若しくはフッ化水素酸)、又はこれらの組み合わせを含んでよい。実施形態では、エッチング液は40重量%以上かつ60重量%以下の溶媒を含んでよい。実施形態では、エッチング液中の溶媒の量は、40重量%以上、又は45重量%以上であってよい。実施形態では、エッチング液中の溶媒の量は、60重量%以下、又は55重量%以下であってよい。実施形態では、エッチング液中の溶媒の量は、40重量%以上かつ60重量%以下、40重量%以上かつ55重量%以下、45重量%以上かつ60重量%以下、又は45重量%以上かつ55重量%以下、又はこれらの端点のうちのいずれから形成されるあらゆる部分範囲内であってよい。実施形態では、エッチング液は5体積%以上かつ15体積%以下の溶媒を含んでよい。
【0104】
実施形態では、エッチング液は、成分を混合し、少なくとも12時間にわたって撹拌する(即ちエージングする)ことによって調製される。撹拌後、上清をデカントしてエッチング液として使用する。
【0105】
実施形態では、エッチング液は:25重量%以上かつ45重量%以下の塩化アンモニウム;5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び40重量%以上かつ60重量%以下の水を含んでよい。
【0106】
実施形態では、エッチング液は:25重量%以上かつ45重量%以下の塩化アンモニウム;5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素アンモニウム;5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び40重量%以上かつ60重量%以下の水を含んでよい。
【0107】
実施形態では、エッチング液は:25重量%以上かつ45重量%以下のフッ化水素アンモニウム;10重量%以上かつ20重量%以下の塩酸;及び40重量%以上かつ60重量%以下の水を含んでよい。
【0108】
実施形態では、エッチング液は:10重量%以上かつ20重量%以下の硫酸カリウム;5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び5体積%以上かつ15体積%以下の塩酸を含んでよい。
【0109】
実施形態では、エッチング液は:25重量%以上かつ45重量%以下の塩化カリウム;5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び5体積%以上かつ15体積%以下の塩酸を含んでよい。
【0110】
本明細書に記載のテクスチャ形成済みガラス物品は、例えばスマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ウルトラブック、テレビ、及びカメラといった消費者向け又は市販用電子デバイスの裏蓋用途を含む、様々な用途に使用できる。本明細書で開示されるテクスチャ形成済みガラス物品のいずれを組み込んだ例示的な物品を図11~13に示す。具体的には、図11~13は消費者向け電子デバイス400を示し、これは:前面404、背面406及び側面408を有するハウジング402;少なくとも一部又は全体が上記ハウジング内にあり、少なくともコントローラ、メモリ及びディスプレイ410を上記ハウジングの上記前面に又は上記前面に隣接して含む、電子部品(図示せず);並びに上記ディスプレイを覆うように、上記ハウジングの上記前面に、又は上記前面全体の上に配置される、カバー基板412を含むことができる。実施形態では、ハウジング402の一部分、例えば背面406は、本明細書で開示されるテクスチャ形成済みガラス物品のいずれを含んでよい。
【実施例
【0111】
様々な実施形態をより容易に理解するために、本明細書に記載のテクスチャ形成済みガラス物品の様々な実施形態を例示した、以下の実施例を参照する。
【0112】
表1に示されているガラス組成1~3を有するガラス物品を、以下で説明されるように処理した。
【0113】
以下で説明されるように処理されるガラス物品1~3の組成を表1に示す。なお、「ガラス物品1」、「ガラス物品2」、及び「ガラス物品3」への言及は、表1に示されている各組成を有するガラス物品を指す。ガラス物品1~3への言及は、様々なエッチング液で複数回処理された同一のガラス物品1~3を指すものではない。
【0114】
【表1】
【0115】
実施例1 高pHエッチング液と低pHエッチング液との比較
表2は、比較例のエッチング液1及び実施例のエッチング液1の組成を示す。表3は、それぞれの処理時間、結果として得られるテクスチャ形成済みガラス物品それぞれの特性、及びエッチング液沈殿物それぞれの組成を示す。
【0116】
ガラス物品1及び2を、比較例のエッチング液1及び実施例のエッチング液1で処理することにより、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCG、並びに実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG及びEGを形成した。これらのガラス物品は、50mm×50mm×1.1mmのスライドであった。各エッチング液での処理前に、ガラス物品を3M HF/2.4M HCl溶液で4分間予備洗浄した。ガラス物品をエッチング液に垂直に浸漬させて、表3に示されている期間にわたって保持することにより、ガラス物品を各エッチング液で処理した。次にガラス物品をエッチング液から取り出し、DI水ですすいだ。ガラス物品に付着した塩の外皮を、スクラバスポンジで除去した。その後、ガラス物品を周囲条件下で乾燥させることにより、実施例の各テクスチャ形成済みガラス物品を形成した。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
実施例のガラス物品1及び2を比較例のエッチング液1で処理して、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCGを形成した。これらの表面が図2及び3に示されている。図示されているように、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCGは小型の樹状特徴部分を有する。ここで図14及び表3を参照すると、ガラス物品1及び2を比較例のエッチング液1で処理した結果として生じたエッチング液沈殿物の組成が、XRD分析によって決定されている。例えば、図14に示されている、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGのXRDスペクトルは、フッ化ケイ酸金属(MSiF)及び金属アルミノフッ化物(MAlF)の存在を示すピークを含んでいた。従って、結果として得られた、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCGのエッチング液沈殿物は、フッ化ケイ酸金属(MSiF)と金属アルミノフッ化物(MAlF)との混合物を含んでいた。理論によって束縛されることを望むものではないが、アルミノフッ化物の沈殿により、小型の樹状特徴部分がもたらされた。図2、3、及び14、並びに表2及び3によって例証されるように、16重量%超のAlを含むアルミノシリケートガラス物品を、pHが比較的高い(即ち2.2を超える)エッチング液で処理すると、小型の(即ち10μm未満の)樹状特徴部分が生じる。
【0120】
実施例のガラス物品1及び2を実施例のエッチング液1で処理して、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG及びEGを形成した。テクスチャ形成済みガラス物品EGの表面が図15に示されている。図示されているように、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGは大型の多面体状特徴部分を有する。ここで図16及び表3を参照すると、ガラス物品1及び3を実施例のエッチング液1で処理した結果として生じたエッチング液沈殿物の組成が、XRD分析によって決定されている。例えば、図16に示されている、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGのXRDスペクトルは、フッ化ケイ酸金属タイプの沈殿物(即ちヒエラタイト及びデマルティナイトといった、SiFを含有する沈殿物)を示すピークを含み、アルミノフッ化物タイプの沈殿物(即ちAlを含有する沈殿物)の存在を示すいかなるピークも含まなかった。従って、結果として得られた、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG及びEGのエッチング液沈殿物は、フッ化ケイ酸金属タイプの沈殿物を含み、いかなるアルミノフッ化物タイプの沈殿物も含まなかった。理論によって束縛されることを望むものではないが、フッ化ケイ酸金属タイプの沈殿物のみの沈殿により、大型の多面体状特徴部分がもたらされた。図15及び16、並びに表2及び3によって例証されるように、16重量%超のAlを含むアルミノシリケートガラス物品を、pHが比較的低い(即ち2.2以下の)エッチング液で処理すると、大型の(即ち10μm以上の)多面体状特徴部分が生じる。
【0121】
実施例2:アンモニウム塩エッチング液
表4は、実施例のアンモニウム塩エッチング液1~4の組成を示す。表5は、それぞれの処理時間、及び結果として得られるテクスチャ形成済みガラス物品それぞれの特性を示す。ガラス物品1を、実施例のエッチング液2~5で処理することにより、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG~EGを形成した。これらのガラス物品は、50mm×50mm×1.1mmのスライドであった。各アンモニウムエッチング液での処理前に、ガラス物品を5重量%のHF/HCl溶液で2分間予備洗浄した。ガラス物品をエッチング液に垂直に浸漬させて、表4に示されている期間にわたって保持することにより、ガラス物品を各エッチング液で処理した。次にガラス物品をエッチング液から取り出し、DI水ですすいだ。ガラス物品に付着した塩の外皮を、スクラバスポンジで除去した。その後、ガラス物品を周囲条件下で乾燥させることにより、実施例の各テクスチャ形成済みガラス物品を形成した。
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【0124】
40重量%の塩化アンモニウム、8重量%のフッ化水素酸、及び52重量%の水を混合することにより、実施例のエッチング液2を調製した。12時間の撹拌後、ガラス物品1の処理のために上清をポリエチレンバイアルにデカントした。
【0125】
ガラス物品1を実施例のエッチング液2で処理して、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGを形成した。その表面が図17及び18に異なる倍率で示されている。結果として得られた表面特徴部分は、表面特徴部分サイズ292μmのピラミッド型形状を有していた。表面特徴部分の頂点は先鋭であり、小面は三角形又は長方形であった。表面特徴部分の基部は、各表面特徴部分の基部から延在する樹状構造を含んでいた。実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGの透過ヘイズは88.9%であり、表面粗度Raは9.909μmであった。
【0126】
40重量%の塩化アンモニウム、8重量%のフッ化水素酸、及び52重量%の水を混合することにより、実施例のエッチング液3を調製した。12時間の撹拌後、ガラス物品2の処理のために上清をポリエチレンバイアルにデカントした。10重量%のフッ化水素アンモニウムを上清に加え、更に2時間撹拌した。
【0127】
ガラス物品1を実施例のエッチング液3で処理して、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGを形成した。その表面が図19及び20に異なる倍率で示されている。結果として得られた表面特徴部分は、表面特徴部分サイズ65μmのピラミッド型形状を有していた。表面特徴部分の頂点は先鋭であり、小面は三角形又は長方形であった。表面特徴部分の基部は、基部から延在する樹状構造を含んでいた。実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGの透過ヘイズは94.4%であり、表面粗度Raは2.307μmであった。
【0128】
32重量%のフッ化水素アンモニウム、18重量%の塩酸、及び50重量%の水を混合することにより、実施例のエッチング液4を調製した。12時間の撹拌後、ガラス物品1の処理のために上清をポリエチレンバイアルにデカントした。
【0129】
ガラス物品1を実施例のエッチング液4で処理して、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGを形成した。その表面が図21及び22に異なる倍率で示されている。結果として得られた表面特徴部分は、表面特徴部分サイズ83μmのピラミッド型形状を有していた。表面特徴部分の頂点は先鋭であった。小面は長方形であった。表面特徴部分の基部は、樹状構造を含まなかった。実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGの透過ヘイズは81.5%であり、表面粗度Raは6.295μmであった。
【0130】
27重量%のフッ化水素アンモニウム、15重量%の塩酸、及び58重量%の水を混合することにより、実施例のエッチング液5を調製した。12時間の撹拌後、ガラス物品1の処理のために上清をポリエチレンバイアルにデカントした。
【0131】
ガラス物品1を実施例のエッチング液5で処理して、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGを形成した。その表面が図23及び24に異なる倍率で示されている。結果として得られた表面特徴部分は、表面特徴部分サイズ294μmのピラミッド型形状を有していた。表面特徴部分の頂点は先鋭であり、小面は三角形であった。表面特徴部分の基部は、樹状構造を含まなかった。実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGの透過ヘイズは69.9%であり、表面粗度Raは4.841μmである。
【0132】
図17~24、並びに表4及び5によって例証されるように、16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラス物品を、pHが2.2以下のエッチング液で処理すると、基部における表面特徴部分サイズが10μm以上かつ350μm以下の多面体状表面特徴部分が形成される。
【0133】
実施例3:カリウム塩エッチング液
表6は、実施例のカリウム塩エッチング液6~8を示す。表7は、それぞれの処理時間、及び結果として得られるテクスチャ形成済みガラス物品それぞれの特性を示す。ガラス物品1~3を、実施例のエッチング液6~8で処理することにより、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG~EGを形成した。表6に示されている成分を混合することにより、実施例のエッチング液6~8を調製した。12時間の撹拌後、実施例のガラス物品それぞれの処理のために、上清をポリエチレンバイアルにデカントした。これらのガラス物品は、3M HF/2.4M HCl溶液で4分間予備洗浄された50mm×50mm×1.1mmのスライドであった。ガラス物品をエッチング液に垂直に浸漬させて8分間保持することにより、ガラス物品をエッチング液で処理した。次にガラス物品をエッチング液から取り出し、DI水ですすいだ。ガラス物品に付着した塩の外皮を、スクラバスポンジで除去した。その後、ガラス物品を周囲条件下で乾燥させることにより、実施例の各テクスチャ形成済みガラス物品を形成した。
【0134】
【表6】
【0135】
【表7-1】
【0136】
【表7-2】
【0137】
ガラス物品1~3を実施例のエッチング液6で処理することにより、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGを得た。これらの表面がそれぞれ図25、26、及び27に示されている。HClの添加によっておよそ0という低いpHを示す実施例のエッチング液6は、ガラス物品上に、強反射性の多面体状表面特徴部分を形成した。
【0138】
ガラス物品2を実施例のエッチング液7で処理することにより、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGを得た。その表面が図28に示されている。実施例のエッチング液7は、図26に示されているような実施例のエッチング液6によって達成されるものよりも強反射性の多面体状表面特徴部分を形成した。図26及び28によって例証されるように、エッチング液中のフッ化水素酸の量を低減すると、比較的大型の表面特徴部分が得られる。理論によって束縛されることを望むものではないが、塩酸はフッ化水素酸に比べて、沈殿物をよく溶解させる。従って、フッ化水素酸の量を低減すると結晶種の密度が低下し、結晶種がより大きく成長できるようになり、比較的大型の表面特徴部分が得られる。
【0139】
ガラス物品1~3を実施例のエッチング液8で処理することにより、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGを得た。これらの表面がそれぞれ図29、30、及び31に示されている。HClの添加によっておよそ0という低いpHを示す実施例のエッチング液8は、ガラス物品上に、強反射性の多面体状表面特徴部分を形成した。
【0140】
ガラス物品2を実施例のエッチング液1で処理することにより、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EGを得た。その表面が図15に示されている。実施例のエッチング液1は、図30に示されているような実施例のエッチング液8によって達成されるものよりも強反射性の多面体状結晶構造を形成した。図15及び30によって例証されるように、エッチング液中のフッ化水素酸の量を低減すると、比較的大型の表面特徴部分が得られた。
【0141】
実施例4:表面構造データ及び光学特性
表8は、比較例のエッチング液2及び3、並びに実施例のエッチング液9及び10を示す。表9は、それぞれの処理時間、及び結果として得られるテクスチャ形成済みガラス物品それぞれの特性を示す。
【0142】
ガラス物品2を、比較例のエッチング液2及び3、実施例のエッチング液1(表2に示されている)、並びにエッチング液9及び10で処理することにより、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCG、並びに実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGを形成した。これらのガラス物品は、50mm×50mm×1.1mmのスライドであった。各アンモニウムエッチング液での処理前に、ガラス物品を3M HF/2.4M HCl溶液で2分間予備洗浄した。ガラス物品をエッチング液に垂直に浸漬させて、表9に示されている期間にわたって保持することにより、ガラス物品を各エッチング液で処理した。次にガラス物品をエッチング液から取り出し、DI水ですすいだ。ガラス物品に付着した塩の外皮を、スクラバスポンジで除去した。その後、ガラス物品を周囲条件下で乾燥させることにより、実施例の各テクスチャ形成済みガラス物品を形成した。
【0143】
【表8】
【0144】
【表9-1】
【0145】
【表9-2】
【0146】
表面構造データ
ここで図32~41を参照すると、白色光干渉計を用いて生成された、図示されている図面を用いて、表9に示されている、結果として得られたテクスチャ形成済みガラス物品の平均Sa、平均Sq、平均Sdr、Sal、及びSpcを含む表面構造データを計算した。
【0147】
例示的なテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGの平均Sa及び平均Sqは、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGの平均Sa及び平均Sqより平均58%高く、また比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGの平均Sa及び平均Sqより平均194%高かった。実施例のテクスチャ形成済みガラス物品の平均Saが相対的に高いことは、これらの表面が比較例のテクスチャ形成済みガラス物品より粗いことを示し;実施例のテクスチャ形成済みガラス物品の平均Sqが相対的に高いことは、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品の表面特徴部分高さの分布が、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品より幅広いことを示している。
【0148】
実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGの平均Sdr及びSalは、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCGの平均Sdr及びSalより高かった。実施例のテクスチャ形成済みガラス物品の平均Srd及びSalが相対的に高いことは、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品に比べて、斜面積が大きく、表面特徴部分間の距離が大きいことを示している。
【0149】
実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGのSpcは、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGのSpcの2~5倍大きく、また比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGのSpcの4~7倍大きかった。実施例のテクスチャ形成済みガラス物品のSpcが相対的に大きいことは、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品に比べて、尖った形状を原因とする他の対象物との接点の量が比較的大きいことを示している。
【0150】
図32~41及び表9によって例証されるように、16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラス物品を、pHが2.2以下のエッチング液で処理すると、平均Sa、平均Sq、平均Sdr、Sal、及びSpcが比較的高いことによって示されるように、多面体状表面特徴部分が形成される。
【0151】
グレースケール分布
再び表9を参照すると、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGのピークGUは、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGのピークGUより平均58%高く、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGのピークGUより平均32%高かった。ピークGUが比較的高いことは、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品に比べて、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品の表面から反射される光が多いことを示している。
【0152】
実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGのFWHMは、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCG両方のFWHMより、平均60%大きかった。実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGのGU値の範囲は、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGのGU値の範囲より平均150%大きく、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGのGU値の範囲より平均100%大きかった。FWHM及びGU値の範囲が大きいことは、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品の多面体状表面特徴部分のグレースケール値の分布が相対的に広いことを示している。
【0153】
実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGの歪度は、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGの歪度より平均190%高く、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGの歪度より平均600%高かった。比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCGの歪度はゼロに近かったが、これは、メインのピークに関する対称度が高いことを示している。一方、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGの歪度は、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品のいずれよりも顕著に高く、正であった。正の値は、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品に比べて、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品の分布の右側の「裾(tail)」が長く、従って光の分布に対する高強度の寄与が大きいことを示している。
【0154】
テクスチャ形成済みガラス物品の超過尖度も同じ傾向を示し、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGの超過尖度は、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCGより平均660%及び810%高かった。実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGの超過尖度は0.95から2.00超であり、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCGの超過尖度は0.020未満であった。実施例のテクスチャ形成済みガラス物品の超過尖度の上記レベルは、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品の多面体状表面構造のグレースケール値に有意な量の外れ値が存在することを示している。
【0155】
表9によって例証されるように、16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラス物品を、pHが2.2以下のエッチング液で処理すると、ピークGU、FWHM、GU値の範囲、歪度、及び超過尖度が比較的高いことによって示されるように、「輝く」(即ち強反射性の)外観を達成する多面体状表面特徴部分が形成される。
【0156】
双方向反射率分布関数(BRDF)
図42に示されているように、Reflet 180Sゴニオメータを用いて、-90°~90°の入射光照射野に対して平行な平面に沿って測定されたBRDFスペクトルを、図43~46に示す。比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CG及びCG並びに実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEG、並びにComplete Angle Scattering Instrument(CASI)ゴニオメータを用いて測定されたBRDFスペクトルが、図47~56に示されている。
【0157】
ここで図43~46を参照すると、20°、40°、50°、及び60°の入射角(AOI)それぞれにおいて測定された散乱の関数としてのBRDFスペクトルが示されている。スペクトルの左側のトラフは、検出器が光を遮断することによるものである。プロット内の基準線Rは平坦なガラス物品に対応し、テクスチャ形成が存在しない場合、各AOIを中心とする狭い鏡面反射のピークを示した。一方、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGは、AOIを横断する幅広い鏡面反射を有していた。これは、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品の、様々な視野角において「輝く」特性を示している。更に、AOIが20°から60°に増大するにつれて、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品のBRDFスペクトル内に、複数の散乱ピークが判別できるようになった。具体的には、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGは、基準線内にピークを有するだけでなく、70°付近にもピークを有していた。
【0158】
ここで図47を参照すると、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGは、従来の表面テクスチャを有するものであった。図48に示されている、対応するBRDFスペクトルは、二次ピークの兆候を示さなかった。
【0159】
ここで図49を参照すると、比較例のテクスチャ形成済みガラス物品CGDは、樹状表面テクスチャを有するものであった。図50に示されている、対応するBRDFスペクトルは、上記樹状構造により、二次ピークSPのいくつかの証拠を示した。
【0160】
ここで図51、53、及び55を参照すると、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品EG、EG、及びEGは、多面体状表面構造を有するものであった。図52、54、及び56に示されている、対応するBRDFスペクトルは、メインのピークから角度がおよそ15°~20°だけ離れた、2つの顕著な二次ピークを示した。理論によって束縛されることを望むものではないが、実施例のテクスチャ形成済みガラス物品のBRDFスペクトルで観察される二次ピークは、多面体状表面構造の小面からの高い反射率の特徴であると考えられる。
【0161】
図43~56によって例証されるように、16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラス物品を、pHが2.2以下のエッチング液で処理すると、BRDFスペクトルで観察される複数の散乱ピークによって証明される、「輝く」(即ち強反射性の)外観を達成する多面体状表面特徴部分が形成される。
【0162】
請求対象の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に対して様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。従って、本明細書は、本明細書に記載の様々な実施形態の修正及び変形が、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内であるという条件で、このような修正及び変形を包含することが意図されている。
【0163】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0164】
実施形態1
テクスチャ形成済みガラス物品であって:
16重量%以上のAlを含むアルミノシリケートガラスで構成される本体であって、上記本体は少なくとも1つの第1の表面を有する、本体と;
上記第1の表面から延在する複数の多面体状表面特徴部分であって、上記複数の多面体状表面特徴部分はそれぞれ、上記第1の表面上の基部、上記第1の表面から延在する複数の小面、及び上記基部における10μm以上かつ350μm以下の表面特徴部分サイズを備え、各上記多面体状表面特徴部分の上記複数の小面は互いに向かって集束する、多面体状表面特徴部分と
を備える、テクスチャ形成済みガラス物品。
【0165】
実施形態2
各上記多面体状表面特徴部分の上記複数の小面は、互いに向かって集束して少なくとも1つの頂点を形成し、上記少なくとも1つの頂点は、先鋭形状、丸みを帯びた形状、又は切頭形状である、実施形態1に記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0166】
実施形態3
上記テクスチャ形成済みガラス物品の表面粗度Raは2μm以上である、実施形態1又は2に記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0167】
実施形態4
上記テクスチャ形成済みガラス物品の透過ヘイズは40%以上である、実施形態1~3のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0168】
実施形態5
上記複数の多面体状表面特徴部分それぞれの上記基部は、少なくとも3つの辺を備え、少なくとも1つの上記辺が少なくとも1つの別の上記辺に向かって集束する、実施形態1~4のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0169】
実施形態6
上記複数の多面体状表面特徴部分はそれぞれ、上記基部から延在する樹状構造を備える、実施形態1~5のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0170】
実施形態7
上記テクスチャ形成済みガラス物品の平均表面粗度Saは0.75μm以上かつ10μm以下である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0171】
実施形態8
上記テクスチャ形成済みガラス物品の高さの二乗平均平方根の平均Sqは1μm以上かつ2μm以下である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0172】
実施形態9
上記テクスチャ形成済みガラス物品の平均界面展開面積Sdrは7%以上かつ25%以下である、実施形態1~8のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0173】
実施形態10
上記テクスチャ形成済みガラス物品の最小減衰自己相関長さSalは0.020mm以上かつ0.1mm以下である、実施形態1~9のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0174】
実施形態11
上記テクスチャ形成済みガラス物品の平均ピーク曲率は8000mm-1以上かつ17000mm-1以下である、実施形態1~10のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0175】
実施形態12
上記テクスチャ形成済みガラス物品のピーク位置最大値(ピークGU)は50GU以上かつ150GU以下である、実施形態1~11のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0176】
実施形態13
上記テクスチャ形成済みガラス物品の半値全幅は20GU以上かつ40GU以下である、実施形態1~12のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0177】
実施形態14
上記テクスチャ形成済みガラス物品のGU値の範囲は100GU以上かつ250GU以下である、実施形態1~13のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0178】
実施形態15
上記テクスチャ形成済みガラス物品の歪度は0.25以上かつ0.9以下である、実施形態1~14のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0179】
実施形態16
上記テクスチャ形成済みガラス物品の超過尖度は0.5以上かつ3以下である、実施形態1~15のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0180】
実施形態17
上記テクスチャ形成済みガラス物品は、入射角から少なくとも1°離れた位置に出現する少なくとも1つのピークを含む双方向反射率分布関数(BRDF)スペクトルを有する、実施形態1~16のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0181】
実施形態18
上記アルミノシリケートガラスは:
52重量%以上かつ62重量%以下のSiO
16重量%以上かつ28重量%以下のAl
0重量%以上かつ5重量%以下のB
8重量%以上かつ13重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ0.2重量%以下のKO;
0重量%以上かつ4重量%以下のLiO;及び
0重量%以上かつ1.5重量%以下のMgO
を含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0182】
実施形態19
上記アルミノシリケートガラスは:
52重量%以上かつ67重量%以下のSiO
16重量%以上かつ28重量%以下のAl
0重量%以上かつ5重量%以下のB
8重量%以上かつ15重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ0.2重量%以下のKO;
0重量%以上かつ4重量%以下のLiO;及び
0重量%以上かつ5重量%以下のMgO
を含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0183】
実施形態20
上記テクスチャ形成済みガラス物品は電子デバイスの裏蓋である、実施形態1~19のいずれか1つに記載のテクスチャ形成済みガラス物品。
【0184】
実施形態21
ガラス物品を形成する方法であって、上記方法は:
アルミノシリケートガラス物品をエッチング液と接触させるステップであって、上記アルミノシリケートガラス物品は16重量%以上のAlを含み、少なくとも1つの表面を有し、また上記エッチング液のpHは2.2以下である、ステップ;
上記アルミノシリケートガラス物品を洗浄するステップ;並びに
上記アルミノシリケートガラス物品を乾燥させて上記テクスチャ形成済みガラス物品を形成するステップであって、上記テクスチャ形成済みガラス物品は、上記テクスチャ形成済みガラス物品の第1の表面から延在する複数の多面体状表面特徴部分を備え、上記複数の多面体状表面特徴部分はそれぞれ、上記第1の表面上の基部、上記第1の表面から延在する複数の小面、及び上記基部における10μm以上かつ350μm以下の表面特徴部分サイズを備え、各上記多面体状表面特徴部分の上記複数の小面は互いに向かって集束する、ステップ
を含む、方法。
【0185】
実施形態22
上記エッチング液のpHは1.9以下である、実施形態21に記載の方法。
【0186】
実施形態23
上記エッチング液は:
5重量%以上かつ60重量%以下の塩;及び
2重量%以上かつ20重量%以下の酸
を含む、実施形態21又は22に記載の方法。
【0187】
実施形態24
上記塩は、塩化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態23に記載の方法。
【0188】
実施形態25
上記酸は塩酸、フッ化水素酸、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態23又は24に記載の方法。
【0189】
実施形態26
上記アルミノシリケートガラス物品を上記エッチング液と接触させる上記ステップは、アルミニウム系沈殿物より多量のケイ素系沈殿物を生成する、実施形態21~25のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
実施形態27
上記エッチング液は:
25重量%以上かつ45重量%以下の塩化アンモニウム;
5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び
40重量%以上かつ60重量%以下の水
を含む、実施形態21~26のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
実施形態28
上記エッチング液は:
25重量%以上かつ45重量%以下の塩化アンモニウム;
5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素アンモニウム;
5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び
40重量%以上かつ60重量%以下の水
を含む、実施形態21~26のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
実施形態29
上記エッチング液は:
25重量%以上かつ45重量%以下のフッ化水素アンモニウム;
10重量%以上かつ20重量%以下の塩酸;及び
40重量%以上かつ60重量%以下の水
を含む、実施形態21~26のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
実施形態30
上記エッチング液は:
10重量%以上かつ20重量%以下の硫酸カリウム;
5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び
5体積%以上かつ15体積%以下の塩酸
を含む、実施形態21~26のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施形態31
上記エッチング液は:
25重量%以上かつ45重量%以下の塩化カリウム;
5重量%以上かつ15重量%以下のフッ化水素酸;及び
5体積%以上かつ15体積%以下の塩酸
を含む、実施形態21~26のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
実施形態32
前面、背面、及び側面を有するハウジング;並びに
少なくとも一部が上記ハウジング内に設けられた電気部品であって、上記電気部品は、少なくとも1つのコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは上記ハウジングの上記前面に、又は上記前面に隣接して設けられる、電気部品
を備え、
上記ハウジングの上記背面は、実施形態1に記載のテクスチャ形成済みガラス物品を含む、消費者向け電子デバイス。
【符号の説明】
【0196】
100 テクスチャ形成済みガラス物品
102 本体
104 第1の表面
106 多面体状表面特徴部分
108 基部
110 小面
112a 先鋭形状の頂点
112b 丸みを帯びた形状の頂点
112c 切頭形状の頂点
114 辺
300 アルミノシリケートガラス物品
302 結晶種
304 マスク
306 多面体状表面特徴部分
310 テクスチャ形成済みガラス物品
400 消費者向け電子デバイス
402 ハウジング
404 前面
406 背面
408 側面
410 ディスプレイ
412 カバー基板
図1
図2
図3
図4
図5
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図44
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図46
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図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
【国際調査報告】