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特表2023-540136排気ガス水素濃縮を介した触媒の性能強化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】排気ガス水素濃縮を介した触媒の性能強化
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/36 20060101AFI20230913BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230913BHJP
   F01N 9/00 20060101ALI20230913BHJP
   F02M 27/02 20060101ALI20230913BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230913BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20230913BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20230913BHJP
   C01B 3/08 20060101ALI20230913BHJP
   C01B 3/06 20060101ALI20230913BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20230913BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
F01N3/36 B
F01N3/28 Q
F01N9/00
F02M27/02 A
F02M27/02 B
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J23/46 311A
C01B3/00 Z
C01B3/08 Z
C01B3/08 B
C01B3/06
C01B3/02 H
C01B3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515395
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-03-07
(86)【国際出願番号】 US2021049240
(87)【国際公開番号】W WO2022055852
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/075,550
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】スン,シヤン
(72)【発明者】
【氏名】チー,チュンシン
(72)【発明者】
【氏名】ルヴィンスキー,パヴェル
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AB00
3G091BA03
3G091BA14
3G091BA19
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4G169CA13
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4G169FA06
4G169FA08
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4G169FB19
4G169FB78
4G169FC06
4G169FC07
(57)【要約】
本開示は、ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理するためのシステムを提供する。このシステムは、コールドスタート期間中、制御された分量の水素ガスを触媒物品の上流にある排気ガス流に導入するように構成されている。そのような排気流を処理する関連方法が更に提供される。そのようなシステム及び方法は、ガソリンエンジンからのガス状排気物流中の炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物のうちの1つ以上のレベルを低減するのに有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理するためのシステムであって、
前記ガソリンエンジンの下流にあり、前記ガソリンエンジンと流体連通している触媒物品と、
水素ガス(H)の供給源と、
前記触媒物品より上流に位置し、前記排気ガス流と接触するフィードバックセンサと、
前記フィードバックセンサと通信する制御ユニットと、を備え、
前記システムが、コールドスタート期間中に、前記H供給源からのHを前記触媒物品の上流にある前記排気ガス流に導入するように構成され、前記フィードバックセンサが、前記H導入を調節することによって前記排気ガス流中にHを提供するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記触媒物品が、三元変換(TWC)触媒物品、四元変換触媒物品、選択触媒還元(SCR)触媒物品、直接酸化触媒物品、アンモニア酸化(AMOx)触媒物品、及び触媒化煤フィルタ(CSF)物品、又はそれらの組み合わせから選定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記触媒物品が、基材、前記基材上に配置された第1の触媒層、及び前記第1の触媒層上に配置された第2の触媒層を含み、
前記第1の触媒層が、第1のパラジウム成分、第1の耐火性金属酸化物担体、及び第1の酸素貯蔵成分を含み、前記第1のパラジウム成分の少なくとも一部分が、前記第1の耐火性金属酸化物担体に含浸され、前記第1のパラジウム成分の別の部分が、前記第1の酸素貯蔵成分に含浸され、かつ
前記第2の触媒層が、第2のパラジウム成分、第2の耐火性金属酸化物担体、第2の酸素貯蔵成分、ロジウム成分、及び第3の耐火性金属酸化物担体を含み、前記第2のパラジウム成分の少なくとも一部分が、前記第2の耐火性金属酸化物担体に含浸され、前記第2のパラジウム成分の別の部分が、前記第2の酸素貯蔵成分に含浸され、前記ロジウム成分が、前記第3の耐火性金属酸化物担体に含浸される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記フィードバックセンサが、広帯域酸素センサ(UEGO)及び温度センサを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
の前記供給源が、車載圧縮水素槽である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
の前記供給源が、車載水素発生器である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記車載水素発生器が、アルコール改質器、アンモニア分解装置、電解装置、燃料改質器、排気ガス改質器、又はそれらの組み合わせを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記車載水素発生器が、前記触媒物品より上流に位置し、前記排気ガス流と流体連通している触媒改質物品を備える排気ガス改質器である、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記車載水素発生器が、アルミニウムのナノ粒子、アルミニウム/ニッケルのナノ粒子、アルミニウム/シリカのナノ粒子、アルミニウム/コバルトのナノ粒子、アルミニウム/マグネシウムのナノ粒子、アルミナのナノ粒子、マグネシウムのナノ粒子、マグネシウム/ニッケルのナノ粒子、亜鉛のナノ粒子、水素化ホウ素ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むドーパントを含む少なくとも1つのH発生成分を含み、前記少なくとも1つのH発生成分が、前記ガソリンエンジン内での前記燃料の燃焼前にガソリン燃料に添加される、請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
前記触媒物品より上流にあり、前記フィードバックセンサより上流にあり、前記排気ガス流及び前記H供給源と流体連通しており、前記制御ユニットと通信するH注入物品を更に備え、前記H注入物品が、前記H供給源からのHを前記触媒物品の上流にある前記排気ガス流に導入するように構成した、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムが、前記触媒物品の上流又は前記触媒物品内にある前記排気ガス流温度が約90℃~約190℃の範囲内にあるとき、前記H供給源からのHを前記排気ガス流に導入するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記触媒物品の上流又は前記触媒物品内にある前記排気ガス流の温度が約90℃~約550℃の範囲内にあるとき、前記排気ガス流が、約20体積%以下のHを含有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記排気ガス流が、約2体積%以下のH、又は約0.5体積%以下のHを含有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムが、前記H供給源からのHを前記排気ガス流に導入して、一定期間、約-0.014~約-0.345よりも負ではないΔλ値を提供するように構成され、
【数1】
λ°が、事前に定義された値であり、
【数2】
が、以下の式に従って時間の長さについて計算された、前記排気ガス流の走行平均空燃比であり、
【数3】
式中、(N)が、この時間の長さに含まれるポイントの数であり、
【数4】
が、各ポイントでの空燃比である、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
Δλが、約-0.060、又は約-0.014である、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、
前記排気ガス流を、前記ガソリンエンジンの下流に位置し、前記排気ガス流と流体連通している触媒物品と接触させることと、
供給源からの水素ガス(H)を前記触媒物品の上流にある前記排気ガス流に導入することと、
前記触媒物品より上流にある前記排気ガス流中のHの体積による濃度を制御することであって、前記Hの体積による濃度を制御することが、前記H導入を調節することを含む、制御することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記触媒物品が、三元変換(TWC)触媒物品、四元変換触媒物品、選択触媒還元(SCR)触媒物品、直接酸化触媒物品、アンモニア酸化(AMOx)触媒物品、及び触媒化煤フィルタ(CSF)物品、又はそれらの組み合わせから選定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒物品が、基材、前記基材上に配置された第1の触媒層、及び前記第1の触媒層上に配置された第2の触媒層を含み、
前記第1の触媒層が、第1のパラジウム成分、第1の耐火性金属酸化物担体、及び第1の酸素貯蔵成分を含み、前記第1のパラジウム成分の少なくとも一部分が、前記第1の耐火性金属酸化物担体に含浸され、前記第1のパラジウム成分の別の部分が、前記第1の酸素貯蔵成分に含浸され、かつ
前記第2の触媒層が、第2のパラジウム成分、第2の耐火性金属酸化物担体、第2の酸素貯蔵成分、ロジウム成分、及び第3の耐火性金属酸化物担体を含み、前記第2のパラジウム成分の少なくとも一部分が、前記第2の耐火性金属酸化物担体に含浸され、前記第2のパラジウム成分の別の部分が、前記第2の酸素貯蔵成分に含浸され、前記ロジウム成分が、前記第3の耐火性金属酸化物担体に含浸される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
制御することが、前記触媒物品より上流又は前記触媒物品の内部にある前記排気ガス流の温度が約90℃~約550℃、又は約90℃~約190℃の範囲内にあるときにHを前記排気ガス流に導入することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記Hが、約200秒間導入される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記H導入を調節することが、
フィードバックセンサ、温度センサ、又はそれらの組み合わせから信号を取得することであって、前記フィードバックセンサが、前記触媒物品より上流に位置し、前記温度センサが、前記触媒物品より上流又は前記触媒物品の内部に位置し、両方のセンサが、前記排気ガス流と接触する、取得することと、
前記信号を使用して導入されたHの分量を制御することと、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記排気ガス流が、約20体積%以下のH、約2体積%以下のH、又は約0.5体積%以下のHを含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
を前記排気ガス流に導入することと、
一定期間、約-0.345よりも負ではないΔλ値を提供することと、を含み、
【数5】
λ°が、事前に定義された値であり、
【数6】
が、以下の式に従って時間の長さについて計算された、前記排気ガス流の走行平均空燃比であり、
【数7】
式中、(N)が、この時間の長さに含まれるポイントの数であり、
【数8】
が、各ポイントでの空燃比である、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
Δλが、約-0.060、又は約-0.014である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
を導入することが、前記ガソリンエンジン内でのガソリンの燃焼中にHを発生させることを更に含み、Hを発生させることが、燃焼前に少なくとも1つのH発生成分を前記ガソリンに添加することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのH発生成分が、アルミニウムのナノ粒子、アルミニウム/ニッケルのナノ粒子、アルミニウム/シリカのナノ粒子、アルミニウム/コバルトのナノ粒子、アルミニウム/マグネシウムのナノ粒子、アルミナのナノ粒子、マグネシウムのナノ粒子、マグネシウム/ニッケルのナノ粒子、亜鉛のナノ粒子、水素化ホウ素ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むドーパントを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
車両を更に含み、前記車両が、前記ガソリンエンジン及び前記触媒物品を備える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つのH発生成分が、前記車両に搭載された前記ガソリンに添加されるか、又は前記車両の外部で前記ガソリンに添加される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
を導入することが、Hを発生させることを更に含み、Hを発生させることが、前記排気ガス流を排気ガス改質触媒と接触させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
ガソリンエンジンからのガス状排気物流中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び微粒子状物質のうちの1つ以上のレベルを低減する方法であって、前記ガス状排気物流を、請求項1~15のいずれか一項に記載の排気ガス処理システムと接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2020年9月8日に出願された米国仮特許出願第63/075,550号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理するためのシステムに関する。本開示はまた、そのような排気ガス流の浄化における触媒物品の触媒活性を改善する方法に関する。このシステム及び方法は、排気ガス流中の還元剤として水素を使用する。
【0003】
ガソリンエンジンの排出についての環境規制は、年々より厳しくなっている。ますます厳しくなる排出規制により、低いエンジン排気温度での窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、及び炭化水素(HC)排出を管理するための改善された能力を有する排出ガス処理システムを開発する必要性が高まっている。様々な自動車製造業者にとっての主要な課題は、非メタン炭化水素及び窒素酸化物(NMHC+NO)の制限などの、新しい環境規制の制限を満たすことである。
【0004】
ガソリンエンジンによって動力供給された車両からの排気ガスは、典型的には、1つ以上の三元変換(three-way conversion、TWC)自動車触媒で処理される。TWC触媒は、典型的には、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)などの白金族金属(platinum group metals、PGM)を含有し、化学量論的空気/燃料条件で、又はそれに近い条件で動作されるエンジンの排気物中のCO、HC、及びNO汚染物質を削減するのに効果的である。化学量論的条件をもたらす空気対燃料の正確な割合は、燃料中の炭素と水素との相対的な割合によって変化する。空燃(A/F)比は、内燃機関などの燃焼プロセスに存在する空気対燃料の質量比である。化学量論的A/F比は、ガソリンなどの炭化水素燃料の、二酸化炭素(CO)及び水への完全燃焼に対応している。したがって、記号λは、特定のA/F比を所与の燃料についての化学量論的A/F比で除算した結果を表すために使用され、そのため、λ=1は、化学量論的混合気、λ>1は、燃料リーン混合気、λ<1は、燃料リッチ混合気である。電子燃料噴射システム及び吸気システムを有する従来のガソリンエンジンは、絶えず変化する空気-燃料混合気を提供し、リーン排気物とリッチ排気物の間を迅速かつ継続的に循環する。しかしながら、TWC触媒は、ガソリンエンジンがリーンになるときにNO排出物を低減するには効果的ではない。更に、内燃エンジンの排気物を処理するために利用される触媒は、いわゆる「コールドスタート」期間中にあまり効果的ではなく、この「コールドスタート」期間は、排気ガス流及び排気ガス処理システム(例えば、TWC)が低温(すなわち、150℃未満)であるときの処理プロセスの開始時の期間であることがよく知られている。これらの低温では、排気ガス処理触媒は、一般に、HC、NO、及び/又はCO排出物を効果的に処理するのに十分な触媒活性を示さない。コールドスタート条件中のCO、HC、及びNOの軽減のための様々な排気ガス処理システムが存在するが、低いエンジン排気温度でのCO、HC、及びNO排出物を管理するための改善された能力を有する排出ガス処理システムを開発する必要性が依然として存在する。
【0005】
本開示は、一般に、ガソリンエンジンの排気ガス流中の汚染物質の削減のためのシステム及び関連方法であって、このシステムが、触媒物品及び水素ガス(H)の供給源を備える、システム及び関連方法を提供する。このシステムは、コールドスタート期間中に、H供給源からのHを触媒物品の上流にある排気ガス流に導入するように構成され、H導入を調節することによって排気ガス流中のHに対するCOの体積による比を提供するように構成されている。驚くべきことに、本開示によれば、コールドスタート期間中に少量の水素ガス(H)を排気ガス流に導入することにより、TWC活性を高め、非メタン炭化水素及び窒素酸化物(NMHC+NO)排出物を最小限に抑えることができることが見出された。
【0006】
したがって、一態様では、本開示は、ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理するためのシステムであって、ガソリンエンジンの下流にあり、ガソリンエンジンと流体連通している三元変換(TWC)触媒物品と、水素ガス(H)の供給源と、TWC触媒物品より上流に位置し、排気ガス流と接触するフィードバックセンサと、フィードバックセンサと通信する制御ユニットと、を備え、このシステムが、コールドスタート期間中に、H供給源からのHをTWC触媒物品より上流にある排気ガス流に導入するように構成され、フィードバックセンサが、H導入を調節することによって排気ガス流中にHを提供するように構成されている、システムを提供する。
【0007】
一実施形態では、TWC触媒物品は、基材、基材上に配置された第1の触媒層、及び第1の触媒層上に配置された第2の触媒層を含み、第1の触媒層が、第1のパラジウム成分、第1の耐火性金属酸化物担体、第1の酸素貯蔵成分を含み、第1のパラジウム成分の少なくとも一部分が、第1の耐火性金属酸化物担体に含浸され、第1のパラジウム成分の別の部分が、第1の酸素貯蔵成分に含浸され、かつ第2の触媒層が、第2のパラジウム成分、第2の耐火性金属酸化物担体、第2の酸素貯蔵成分、ロジウム成分、及び第3の耐火性金属酸化物担体を含み、第2のパラジウム成分の少なくとも一部分が、第2の耐火性金属酸化物担体に含浸され、第2のパラジウム成分の別の部分が、第2の酸素貯蔵成分に含浸され、ロジウム成分が、第3の耐火性金属酸化物担体に含浸される。
【0008】
一実施形態では、フィードバックセンサは、広帯域酸素センサ(UEGO)及び温度センサを備える。
【0009】
一実施形態では、Hの供給源は、車載圧縮水素槽である。
【0010】
一実施形態では、Hの供給源は、車載水素発生器である。一実施形態では、車載水素発生器は、アルコール改質器、アンモニア分解装置、電解装置、燃料改質器、排気ガス改質器、又はそれらの組み合わせを備える。一実施形態では、車載水素発生器は、触媒物品より上流に位置し、排気ガス流と流体連通している触媒改質物品を備える排気ガス改質器である。一実施形態では、車載水素発生器は、アルミニウムのナノ粒子、アルミニウム/ニッケルのナノ粒子、アルミニウム/シリカのナノ粒子、アルミニウム/コバルトのナノ粒子、アルミニウム/マグネシウムのナノ粒子、アルミナのナノ粒子、マグネシウムのナノ粒子、マグネシウム/ニッケルのナノ粒子、亜鉛のナノ粒子、水素化ホウ素ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むドーパントを含む少なくとも1つのH発生成分を含み、少なくとも1つのH発生成分が、ガソリンエンジン内での上記燃料の燃焼前にガソリン燃料に添加される。
【0011】
一実施形態では、このシステムは、TWC触媒物品より上流にあり、フィードバックセンサより上流にあり、排気ガス流及びH供給源と流体連通しており、制御ユニットと通信するH注入物品であって、H供給源からのHを触媒物品の上流にある排気ガス流に導入するように構成された、H注入物品を更に備える。
【0012】
一実施形態では、このシステムは、TWC触媒物品の上流又はTWC触媒物品内にある排気ガス流温度が約90℃~約190℃の範囲内にあるとき、排気ガス流にHを導入するように構成されている。
【0013】
一実施形態では、TWC触媒物品の上流又はTWC触媒物品内にある排気ガス流の温度が約90℃~約550℃の範囲内にあるとき、排気ガス流は、約20体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約18体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約16体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約14体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約12体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約10体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約8体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約6体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約4体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約2体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約1体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約0.5体積%以下のHを含有する。
【0014】
一実施形態では、このシステムは、排気ガス流にHを導入して、一定期間、約-0.345よりも負ではないΔλ値を提供するように構成され、
【数1】
λ°が、事前に定義された値であり、
【数2】
が、以下の式に従って時間の長さについて計算された、排気ガス流の走行平均空燃比であり、
【数3】
式中、(N)が、この時間の長さに含まれるポイントの数であり、
【数4】
が、各ポイントでの空燃比である。
【0015】
一実施形態では、Δλは、約-0.014~約-0.345である。一実施形態では、Δλは、約-0.060である。一実施形態では、Δλは、約-0.014である。
【0016】
別の態様では、ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、排気ガス流を、ガソリンエンジンの下流に位置し、排気ガス流と流体連通しているTWC触媒物品と接触させることと、H供給源からの水素ガス(H)をTWC触媒物品の上流にある排気ガス流に導入することと、TWC触媒物品より上流にある排気ガス流中のHの体積による濃度を制御することであって、Hの体積による濃度を制御することが、H導入を調節することを含む、制御することと、を含む、方法が提供される。
【0017】
一実施形態では、TWC触媒物品は、基材、基材上に配置された第1の触媒層、及び第1の触媒層上に配置された第2の触媒層を含み、第1の触媒層が、第1のパラジウム成分、第1の耐火性金属酸化物担体、及び第1の酸素貯蔵成分を含み、第1のパラジウム成分の少なくとも一部分が、第1の耐火性金属酸化物担体に含浸され、第1のパラジウム成分の別の部分が、第1の酸素貯蔵成分に含浸され、かつ第2の触媒層が、第2のパラジウム成分、第2の耐火性金属酸化物担体、第2の酸素貯蔵成分、ロジウム成分、及び第3の耐火性金属酸化物担体を含み、第2のパラジウム成分の少なくとも一部分が、第2の耐火性金属酸化物担体に含浸され、第2のパラジウム成分の別の部分が、第2の酸素貯蔵成分に含浸され、ロジウム成分が、第3の耐火性金属酸化物担体に含浸される。
【0018】
一実施形態では、Hの体積による濃度を制御することは、TWC触媒物品より上流又はTWC触媒物品の内部にある排気ガス流の温度が約90℃~約550℃の範囲内にあるとき、排気ガス流にHを導入することを含む。一実施形態では、Hの体積による濃度を制御することは、TWC触媒物品より上流又はTWC触媒物品の内部にある排気ガス流の温度が約90℃~約190℃の範囲内にあるとき、排気ガス流にHを導入することを含む。一実施形態では、Hは、約200秒間導入される。
【0019】
一実施形態では、H導入を調節することは、フィードバックセンサ及び/又は温度センサから信号を取得することであって、フィードバックセンサが、TWC触媒物品より上流に位置し、温度センサが、TWC触媒物品より上流又はTWC触媒物品の内部に位置し、両方のセンサが、排気ガス流と接触する、取得することと、上記信号を使用して導入されたHの分量を制御することと、を含む。
【0020】
一実施形態では、排気ガス流は、約20体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約18体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約16体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約14体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約12体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約10体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約8体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約6体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約4体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約2体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約1体積%以下のHを含有する。一実施形態では、排気ガス流は、約0.5体積%以下のHを含有する。
【0021】
一実施形態では、この方法は、排気ガス流にHを導入することと、一定期間、約-0.345よりも負ではないΔλ値を提供することと、を含み、
【数5】
λ°が、事前に定義された値であり、
【数6】
が、以下の式に従って時間の長さについて計算された、排気ガス流の走行平均空燃比であり、
【数7】
式中、(N)が、この時間の長さに含まれるポイントの数であり、
【数8】
が、各ポイントでの空燃比である。
【0022】
一実施形態では、Δλは、約-0.014~約-0.345である。一実施形態では、Δλは、約-0.060である。一実施形態では、Δλは、約-0.014である。
【0023】
一実施形態では、Hを導入することは、ガソリンエンジン内でのガソリンの燃焼中にHを発生させることを更に含み、Hを発生させることが、燃焼前に少なくとも1つのH発生成分をガソリンに添加することを含む。
【0024】
一実施形態では、少なくとも1つのH発生成分は、アルミニウムのナノ粒子、アルミニウム/ニッケルのナノ粒子、アルミニウム/シリカのナノ粒子、アルミニウム/コバルトのナノ粒子、アルミニウム/マグネシウムのナノ粒子、アルミナのナノ粒子、マグネシウムのナノ粒子、マグネシウム/ニッケルのナノ粒子、亜鉛のナノ粒子、水素化ホウ素ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むドーパントを含む。
【0025】
一実施形態では、この方法は、ガソリンエンジン及びTWC触媒物品を備える車両を更に含む。一実施形態では、少なくとも1つのH発生成分は、車両に搭載されたガソリンに添加される。一実施形態では、少なくとも1つのH発生成分は、車両の外部でガソリンに添加される。
【0026】
一実施形態では、Hを導入することは、Hを発生させることを更に含み、Hを発生させることが、排気ガス流を排気ガス改質触媒と接触させることを含む。
【0027】
別の態様では、ガソリンエンジンからのガス状排気物流中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び微粒子状物質のうちの1つ以上のレベルを低減する方法であって、ガス状排気物流を、本明細書に記載される排気ガス処理システムと接触させることを含む、方法が提供される。
【0028】
本開示のこれら及び他の特徴及び態様は、以下に簡潔に記載される添付の図面と共に以下の詳細な説明で明らかになるであろう。本開示は、上記の実施形態のうちの2つ、3つ、4つ、又はそれ超の任意の組み合わせ、並びに本開示に記載される任意の2つ、3つ、4つ、又はそれ超の特徴又は要素の組み合わせを、そのような特徴又は要素が本明細書の具体的な実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かにかかわらず、含む。本開示では、文脈が明らかに他のことを示さない限り、本開示のいずれかの分けることが可能な特徴又は要素が、その様々な態様及び実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であると考えられるべきであると、全体として読み取られることが意図される。本開示の他の態様及び特徴は、以下から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本開示の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、添付図面では、参照符号は、開示の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は、例示的にすぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される開示は、添付の図において、限定としてではなく、例として図示される。図の簡潔化及び明確化のために、図に示される特徴は、必ずしも縮尺に合わせて描かれているわけではない。例えば、一部の特徴の寸法は、分かりやすくするために他の特徴に対して誇張されている場合がある。更に、適切であると考えられる場合、参照符号を複数の図の間で繰り返し用いて、対応する又は類似の要素を示す。
【0030】
図1】本開示による排出処理システムの実施形態の概略図である。
図2】本開示による排出処理システムの別の実施形態の概略図である。
図3】本開示による排出処理システムの更に別の実施形態の概略図である。
図4】本開示による排出処理システムの更なる実施形態の概略図である。
図5】本開示による排出処理システムの更に別の実施形態の概略図である。
【0031】
本開示は、一般に、関連方法と共に、ガソリンエンジンの排気ガス流中の汚染物質を削減するためのシステムを提供する。このシステムは、触媒物品(例えば、三元変換(TWC)触媒)及び水素ガス(H)の供給源を含む。このシステムは、コールドスタート期間中に、H供給源からのHを触媒物品の上流にある排気ガス流に導入するように構成され、H導入を調節することによって排気ガス流中のHに対するCOの体積による比を提供するように構成されている。驚くべきことに、本開示によれば、コールドスタート期間中に少量の水素ガス(H)を排気ガス流に導入することにより、下流の触媒(例えば、TWC)活性を高め、非メタン炭化水素及び窒素酸化物(NMHC+NO)の排出を最小限に抑えることができることが見出された。
【0032】
本開示のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本開示は、以下の説明に記述される構成又はプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な手法で実施又は実施することができる。
【0033】
本開示で使用される用語に関して、以下の定義が提供される。
【0034】
冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。
【0035】
本明細書全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」という用語は、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下など、±5%以下を指し得る。全ての数値は、明示的に示されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾される。当然ながら、「約」という用語によって修飾された値には、特定の値が含まれる。例えば、「約5.0」には5.0を含める必要がある。
【0036】
「結合している(associated)」という用語は、例えば、「備えられている」、「接続されている」、又は「通信している」、例えば、「電気的に接続されている」又は「流体連通している」、あるいはある機能を実行するように他の手法で接続されていることを意味する。「関連する(associated)」という用語は、直接的に関連している、又は、例えば、1つ以上の他の物品若しくは要素を介して間接的に関連していることを意味し得る。
【0037】
「触媒」又は「触媒材料(catalyst material)」又は「触媒組成物」又は「触媒性材料(catalytic material)」という用語は、反応を促進する材料を指す。触媒物品を製造するために、本明細書で開示される基材は、触媒組成物でコーティングされる。コーティングは、「触媒コーティング組成物」又は「触媒コーティング」である。「触媒組成物」及び「触媒コーティング組成物」という用語は、同義語である。
【0038】
本開示における「触媒物品」という用語は、触媒コーティング組成物を有する基材を含む、物品を意味する。本システムでは、排気ガス流は、上流端部に進入し、下流端部から退出することによって触媒物品を通過させる。触媒物品の入口端部は、「上流」端部又は「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部又は「後」端部と同義である。
【0039】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される「構成された」という用語は、「含む」又は「含有する」という用語と同様に、制限のない用語であることを意図している。「構成された」という用語は、他の可能な物品又は要素を除外することを意味するものではない。「構成された」という用語は、「適応された」と同等の場合がある。
【0040】
現在のシステムは、1つ以上の「機能性物品」又は単に「物品」を備える。機能性物品は、1つ以上のある特定の機能性要素、例えば、リザーバ、チューブ、ポンプ、バルブ、電池、回路、メータ、ノズル、反応器、フィルタ、漏斗などを備える。このシステムは、一体型である、つまり、相互接続された物品及び/又は要素を有する。
【0041】
「流体連通」という用語は、同じ排気ライン上に位置決めされた物品を指すために使用され、すなわち、共通の排気流が、相互に流体連通している物品を通過する。流体連通している物品は、排気ライン内で相互に隣接し得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「モレキュラーシーブ」という語句は、ゼオライト及び他の骨格材料(例えば、同形置換材料)などの骨格材料を指し、これらは、微粒子状形態で、1つ以上の促進剤金属と組み合わせて、触媒として使用され得る。モレキュラーシーブは、一般的に四面体型の部位を含み、かつ実質的に均一な細孔分布を有し、約20Å以下の平均細孔径を有する、広範な三次元網目構造の酸素イオンに基づく材料である。
【0043】
モレキュラーシーブは、主に、(SiO)/AlO四面体の頑強な網目構造によって形成される空隙の形状に従って区別することができる。空隙への入口は、入口開口部を形成する原子について、6個、8個、10個、又は12個の環原子から形成される。モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブのタイプ、並びにモレキュラーシーブ格子に含まれるカチオンのタイプ及び量に依存して、直径が約3Å~約10Åの範囲である、かなり均一な細孔径を有する結晶性材料である。CHAは、八環細孔開口部及び二重六環二次構造単位を有し、かつ4個の環接続による二重六環構造単位の接続から生じるケージ様構造を有する、「八環」モレキュラーシーブの例である。モレキュラーシーブは、小細孔、中細孔、及び大細孔のモレキュラーシーブ、又はそれらの組み合わせを含む。細孔径は、最大環径によって画定される。
【0044】
「NO」という用語は、NO及びNOなどの窒素酸化物化合物を指す。
【0045】
コーティング層に関連する「上」及び「上方」という用語は、同義語として使用され得る。「上に直接」という用語は、直接接触していることを意味する。開示される物品は、ある特定の実施形態では、第2のコーティング層「上」に1つのコーティング層を含むと示され、そのような文言は、コーティング層間の直接接触が要求されない、介在層を伴う実施形態を包含することが意図されている(すなわち、「上」は「上に直接」とは同等ではない)。
【0046】
本明細書で使用される場合、「酸素貯蔵成分」(OSC)という用語は、多価状態を有し、かつ還元条件下で一酸化炭素(CO)及び/又は水素などの還元剤と能動的に反応し、次いで酸化条件下で酸素又は窒素酸化物などの酸化剤と反応することができる実体を指す。酸素貯蔵成分の例としては、セリア、ランタナ、プラセオジム、ネオジミア、ニオブ、ユーロピア、サマリア、イッテルビア、イットリア、ジルコニア、及びセリアに加えてそれらの混合物などの、希土類酸化物が挙げられる。
【0047】
白金族金属(PGM)成分は、PGM(Ru、Rh、Os、Ir、Pd、Pt、及び/又はAu)を含む任意の成分を指す。例えば、PGMは、原子価がゼロの金属形態であってもよく、又はPGMは、酸化物形態であってもよい。「PGM成分」についての言及は、任意の原子価状態でのPGMの存在を考慮に入れている。「白金(Pt)成分」、「ロジウム(Rh)成分」、「パラジウム(Pd)成分」、「イリジウム(Ir)成分」、「ルテニウム(Ru)成分」などの用語は、触媒のか焼又は使用時に分解するか、さもなければ触媒活性形態、通常は金属又は金属酸化物に変換する、それぞれの白金族金属化合物、錯体などを指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「選択触媒還元」(SCR)という用語は、窒素性還元剤を使用して、窒素酸化物を二窒素(N)に還元する触媒性プロセスを指す。本明細書で使用される場合、「窒素酸化物」及び「NO」という用語は、窒素の酸化物を意味している。
【0049】
触媒性材料又は触媒ウォッシュコートにおける「担体」は、沈殿、会合、分散、含浸、又は他の好適な方法によって金属(例えば、PGM)、安定剤、促進剤、結合剤などを受容する材料を指す。例示的な担体としては、本明細書で以下に記載されるような耐熱金属酸化物担体が挙げられる。「耐火性金属酸化物担体」は、例えば、バルクアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、シリカ、マグネシア、ネオジミア、及びそのような使用で知られている他の材料、並びに原子ドープされた組み合わせを含み、かつ高表面積又は活性化アルミナなどの活性化合物を含む、それらの物理的混合物又は化学的組み合わせを含む金属酸化物である。金属酸化物の例示的な組み合わせとしては、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミア-アルミナ、及びアルミナ-セリアが挙げられる。例示的なアルミナは、大きい細孔のベーマイト、ガンマ-アルミナ、及びデルタ/シータアルミナを含む。例示的なプロセスにおいて出発材料として使用される有用な市販のアルミナとしては、高仮比重ガンマ-アルミナ、低又は中仮比重大細孔ガンマ-アルミナ、並びに低仮比重大細孔ベーマイト及びガンマ-アルミナなどの、活性アルミナが挙げられる。そのような材料は、一般に、得られる触媒に耐久性を提供すると考えられている。
【0050】
「高表面積の耐火性金属酸化物担体」は、具体的には、約60m/gを超え、多くの場合、最大約200m/g以上、例えば最大約350m/gのBET表面積を一般に示す担体粒子を指す。「BET表面積」は、N吸着測定によって表面積を決定するためのBrunauer-Emmett-Teller法を指す通常の意味を有する。別段明記しない限り、「表面積」は、BET表面積を指す。いくつかの実施形態では、高表面積の担体材料は、約90m/g~約200m/g、又は約90m/g~約150m/gなどの、少なくとも約90m/gの表面積を有する。好適な担体の例としては、高表面積の耐火性金属酸化物担体としては、活性化されたアルミナが挙げられるが、これに限定されない。そのような活性化アルミナは通常、アルミナのガンマ相とデルタ相との混合物であるが、相当量のエータ、カッパ、及びシータアルミナ相も含有し得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒組成物、すなわち触媒コーティングが、典型的にはウォッシュコートの形態でその上に配置されているモノリシック材料を指す。1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルーモノリス及びモノリシックウォールフローフィルタである。ウォッシュコートは、液体中に特定の固体含量(例えば、約30%~約90重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、次いで、これを基材上にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。「モノリシック基材」への言及は、入口から出口まで均質かつ連続的である単一構造を意味する。
【0052】
「ウォッシュコート」は、「基材」、例えば、ハニカムフロースルーモノリス基材又は処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性であるフィルタ基材に適用される材料(例えば、触媒)の薄くて付着性のあるコーティングの当技術分野におけるその通常の意味を有する。本明細書において使用され、Heck,Ronald,and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材又は下側のウォッシュコート層の表面に配置された材料の、組成的に区別される層を含む。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有し得、各ウォッシュコート層は、何らかの態様が異なることができ(例えば、粒径又は結晶子相のような、ウォッシュコートの物理的特性が異なり得る)、かつ/又は化学触媒機能が異なり得る。
【0053】
本明細書で使用されているように、「ゼオライト」という用語は、ケイ素及びアルミニウム原子を含むモレキュラーシーブの特定の例を指す。ゼオライトは、ゼオライトのタイプ、並びにゼオライト格子に含まれるカチオンのタイプ及び量に依存して、直径が約3Å~10Åの範囲の、かなり均一な細孔径を有する結晶材料である。一般に、ゼオライトは、角を共有するTO四面体(Tは、Al若しくはSiであるか、又は任意選択的にPである)で構成された開口三次元骨格構造を有する。SiO/AlO四面体は、三次元網目構造を形成するように共通の酸素原子によって連結される。アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格酸素と緩く結合しており、残りの細孔容積は、水分子で満たされている。非骨格カチオンは一般に交換可能であり、水分子は除去可能である。
【0054】
特定の実施形態では、「アルミノシリケートゼオライト」フレームワーク型を参照することができ、これは、材料を、フレームワークにおいて置換されたリン又は他の金属を含まないゼオライトに限定し、一方、「ゼオライト」というより広い用語は、アルミノシリケート及びアルミノホスフェートを含むことを意図している。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、アルミノシリケートゼオライトである。「アルミノホスフェート」という用語は、アルミニウム原子及びリン酸原子を含む、ゼオライトの別の特定の例を指す。アルミノホスフェートは、かなり均一な細孔径を有する結晶性材料である。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、シリコアルミノホスフェートである。シリコアルミノホスフェートゼオライトは、SiO/AlO/PO四面体を含み、「SAPO」と称される。SAPOの非限定的な例としては、SAPO-34及びSAPO-44が挙げられる。
【0055】
ゼオライトは一般に、約2以上のシリカ対アルミナ(SAR)のモル比を含む。開示された触媒組成物で使用するためのゼオライトは、SAR値に関して特に限定されないが、ゼオライトと関連する特定のSAR値は、いくつかの実施形態では、(例えば、特にエージング後に)それが組み込まれる触媒組成物の性能に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、ゼオライトのSAR値は、約5~約250、約5~約200、約5~約100、及び約5~約50を含む、約2~約300の範囲内である。
【0056】
ゼオライトは、構造が特定されるフレームワークトポロジーによって分類することができる。典型的には、ゼオライトの任意の骨格タイプ、例えば、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IRN、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFW、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、又はそれらの組み合わせの骨格タイプが使用されてもよい。
【0057】
別途指示されない限り、全ての部分及び割合は、重量による。「重量パーセント(重量%)」は、別途指示されない場合、いずれの揮発性物質も含まない組成物全体に基づく、すなわち、乾燥固形物含量に基づく。
【0058】
本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書で別途指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる実施例又は例示的文言(例えば、「など」)の使用は、材料及び方法をより良好に説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲に限定を課さない。本明細書におけるいかなる文言も、特許請求されていない要素を、開示される材料及び方法の実践に必須であるものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0059】
本明細書で参照される全ての米国特許出願、公開特許出願及び特許は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0060】
I.排気ガス処理システム
本明細書に開示される排気ガス処理システムは、一般に、触媒物品、水素ガス(H)の供給源、制御ユニット、及びフィードバックセンサを備える。各システム構成要素は、本明細書において以下に更に記載される。
【0061】
触媒物品
本明細書に開示される排気ガス処理システムは、触媒物品、例えば、三元変換(TWC)触媒物品、四元変換触媒物品、選択触媒還元(SCR)触媒物品、直接酸化触媒物品、アンモニア酸化(AMOx)触媒物品、触媒化煤フィルタ(CSF)物品、又はそれらの組み合わせを備える。そのような物品は、適切な触媒組成物を配置された基材を含む。各触媒組成物及び好適な基材は、本明細書において以下で更に記載される。
【0062】
三元変換(TWC)触媒
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒物品は、TWC組成物を含むTWC触媒物品である。本明細書で使用される場合、TWC触媒は、HC、CO、及び/又はNOの変換のための当技術分野で知られている任意の触媒組成物を指す。TWC触媒は、典型的には、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)などの白金族金属(PGM)成分を含有し、多孔質担体材料に含浸される。Pt及びPdは、一般にHC及びCOの変換に使用され、一方、Rhは、NOの還元により効果的である。PGM成分(例えば、Pd、Pt、及びRh)の濃度は、変化し得るが、典型的には、含浸された多孔質担体材料の重量に対して、約0.1重量%~約10重量%であろう。任意選択的に、TWC触媒は、本明細書において上述した酸素貯蔵成分(OSC)を含み得る。TWC触媒は、典型的には、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化銅、酸化鉄、酸化プラセオジム、酸化イットリウム、酸化ネオジム、及びそれらの組み合わせなどの金属酸化物を更に含む。金属酸化物の量は変化し得るが、典型的には、約1重量%~約20重量%であろう。
【0063】
いくつかの実施形態では、TWC触媒物品は、基材、基材上に配置された第1の触媒層、及び第1の触媒層上に配置された第2の触媒層を含み、第1の触媒層が、第1のパラジウム成分、第1の耐火性金属酸化物担体、及び第1の酸素貯蔵成分を含み、第1のパラジウム成分の少なくとも一部分が、第1の耐火性金属酸化物担体に含浸され、第1のパラジウム成分の別の部分が、第1の酸素貯蔵成分に含浸され、かつ第2の触媒層が、第2のパラジウム成分、第2の耐火性金属酸化物担体、第2の酸素貯蔵成分、ロジウム成分、及び第3の耐火性金属酸化物担体を含み、第2のパラジウム成分の少なくとも一部分が、第2の耐火性金属酸化物担体に含浸され、第2のパラジウム成分の別の部分が、第2の酸素貯蔵成分に含浸され、ロジウム成分が、第3の耐火性金属酸化物担体に含浸される。
【0064】
四元触媒
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒物品は、四元触媒物品である。そのような物品は、本明細書おいて上述したTWC触媒物品を備え、フィルタを更に備える。
【0065】
選択触媒還元(SCR)触媒
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒物品は、SCR触媒である。混合金属酸化物成分、又は金属促進ゼオライトを含むものなどの、当技術分野で知られている任意のSCR触媒を使用することができる。「混合金属酸化物成分」という用語は、1種より多くの化学元素のカチオン、又はいくつかの酸化状態の単一元素のカチオンを含む酸化物を指す。1つ以上の実施形態では、混合金属酸化物は、Fe/TiO、Fe/Al、MgO/TiO、MgO/Al、MnO/Al、MnO/TiO、CuO/TiO、CeO/ZrO、TiO/ZrO、V/TiO、V/TiO/SiO、及びそれらの混合物より選択される。混合酸化物は、単相の化学化合物であっても、又は多相の物理的若しくは化学的混合物であってもよい。
【0066】
他の実施形態では、SCR触媒は、金属促進ゼオライトを含む。一般に、「促進」という用語は、ゼオライトに固有であり得る不純物を含むこととは対照的に、意図的に添加される1つ以上の成分を含む、本明細書に記載されるようなゼオライトを指す。したがって、促進剤は、意図的に添加された促進剤を有していない触媒と比較して、触媒の活性を増強するために意図的に添加される成分である。窒素の酸化物のSCR触媒を促進するために、本開示による1つ以上の実施形態では、好適な金属がゼオライトに交換される。
【0067】
好適なゼオライトは、小細孔、中細孔、又は大細孔のゼオライトであり得る。
【0068】
小細孔ゼオライトは、最大8個の四面体原子によって画定されるチャネルを含有する。本明細書で使用される場合、「小細孔」という用語は、約5オングストロームよりも小さい細孔開口部、例えば約3.8オングストロームの等級の細孔開口部を指す。例示的な小細孔ゼオライトとしては、骨格タイプACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、及びそれらの混合物又は連晶が挙げられる。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、小細孔ゼオライトである。
【0069】
中細孔ゼオライトは、10員環によって画定されるチャネルを含有する。例示的な中細孔ゼオライトとしては、骨格タイプAEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、WEN、及びそれらの混合物又は連晶が挙げられる。
【0070】
大細孔ゼオライトは、12員環によって画定されるチャネルを含有する。例示的な大細孔ゼオライトとしては、骨格タイプAFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、VET、及びそれらの混合物又は連晶が挙げられる。
【0071】
1つ以上の実施形態では、ゼオライトは、細孔構造、及び8つの四面体原子の最大環サイズを有する小細孔の8環ゼオライトである。他の実施形態では、小細孔ゼオライトは、d6r単位を含む。したがって、1つ以上の実施形態では、小細孔ゼオライトは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、及びそれらの組み合わせから選択される構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、CHA、AEI、AFX、ERI、KFI、LEV、及びそれらの組み合わせから選択される構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトは、CHA、AEI、及びAFXから選択される構造タイプを有する。1つ以上の実施形態では、小細孔ゼオライトは、CHA構造タイプを有する。本開示において有用であるCHA構造を有するゼオライトとしては、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、Linde D、Linde R、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-4、SAPO-47、及びZYT-6が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、CHA結晶構造を有するゼオライトは、アルミノシリケートゼオライトである。いくつかの実施形態では、アルミノシリケートゼオライトは、SSZ-13である。
【0072】
促進剤金属は、一般に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIIIB族、第IB族、及び第IIB族の遷移金属、第IIIA族の元素、第IVA族の元素、ランタニド、アクチニド、並びにそれらの組み合わせから選択され得る。したがって、1つ以上の実施形態のゼオライトは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIIIB族、第IB族、及び第IIB族の遷移金属、第IIIA族の元素、第IVA族の元素、ランタニド、アクチニド、並びにそれらの組み合わせから選択される1つ以上の金属とイオン交換され得る。更なる実施形態では、1つ以上の実施形態のゼオライトは、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、及びタングステン(W)などの1つ以上の促進剤金属とイオン交換され得る。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、銅、鉄、又はこれらの組み合わせである。
【0073】
金属イオン交換ゼオライト中に存在する促進剤金属の濃度は、変化し得るが、典型的には、金属酸化物として計算して、イオン交換ゼオライトの重量に対して、約0.1重量%~約20重量%であろう。1つ以上の実施形態では、促進剤金属は、イオン交換ゼオライトの総重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。1つ以上の実施形態では、促進剤金属は、Cuを含み、CuOとして計算されるCu含有量は、いずれの場合も、焼成イオン交換ゼオライトの総重量に基づいて、かつ揮発性物質を含まない基準として報告された、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約4重量%、約3重量%、約2重量%、約1重量%、約0.5重量%、及び約0.1重量%を含む、最大約10重量%の範囲内にある。いくつかの実施形態では、銅促進ゼオライトは、CHA骨格構造を有する。
【0074】
1つ以上の実施形態では、促進剤金属は、Feを含み、FeO3として計算されるFe含有量は、いずれの場合も、焼成イオン交換ゼオライトの総重量に基づいて、かつ揮発性物質を含まない基準として報告された、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約4重量%、約3重量%、約2重量%、約1重量%、約0.5重量%、及び約0.1重量%を含む、最約10重量%の範囲内にある。いくつかの実施形態では、鉄促進ゼオライトは、CHA骨格構造を有する。
【0075】
促進剤金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIIIB族、第IB族、及び第IIB族の遷移金属、第IIIA族の元素、第IVA族の元素、ランタニド、アクチニド、並びにそれらの組み合わせから選択され得る。
【0076】
追加の好適なSCR触媒については、例えば、全てが参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、Rivas-Cardonaらの米国特許第9,480,976号、Stiebelsらの米国特許第9,352,307号、Wanらの米国特許第9,321,009号、Andersenらの米国特許第9,199,195号、Bullらの米国特許第9,138,732号、Mohananらの米国特許第9,011,807号、Turkhanらの米国特許第8,715,618号、Boorseらの米国特許第8,293,182号、Boorseらの米国特許第8,119,088号、Fedeykoらの米国特許第8,101,146号、Marshallらの米国特許第7,220,692号を参照されたい。
【0077】
直接酸化触媒
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒物品は、炭化水素及び一酸化炭素をCO及び水に変換する酸化触媒である。当技術分野で知られている任意の好適な酸化触媒を使用することができる。典型的には、酸化触媒は、パラジウム及び/又は白金などの1つ以上のPGM、アルミナなどの担体材料、炭化水素貯蔵のためのゼオライト、並びに任意選択的に促進剤及び/又は安定剤を含む。
【0078】
アンモニア酸化(AMOx)触媒
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒物品は、AMOx触媒である。「AMOx」触媒は、アンモニアの窒素への選択的酸化を促進する触媒を指す。一般に、AMOx触媒は、SCR触媒の下流に提供されて、SCR触媒を含む排気ガス処理システムからの任意の漏れ出たアンモニアを除去することができる。AMOx触媒は、一般に、アンモニアを窒素に変換するのに好適な1つ以上の金属(典型的には、白金、パラジウム、ロジウム、又はそれらの組み合わせなどのPGM)を含有する。1つ以上の金属は、耐火金属担体などの材料上に支持される。
【0079】
触媒化煤フィルタ(CSF)
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒物品は、CSFである。CSFは、煤の濾過及び再生を提供し、下流のSCR触媒を加速させるために、又はより低い温度における煤粒子の酸化を促すために、CO及びHCをCO及びHOに酸化させるための、又はNOをNOに酸化させるための酸化触媒を運搬し得る。CSF基材は、本明細書において以下に記載するように、ウォールフローフィルタの形態である。
【0080】
基材
本明細書に記載の触媒物品は、基材上に配置された触媒組成物(例えば、TWC触媒、SCR触媒、AMOx触媒、又は酸化触媒組成物)を含む。有用な基材は、三次元であり、円柱と同様の長さ、直径、及び体積を有する。形状は、必ずしもシリンダに一致する必要はない。長さは、入口端部及び出口端部によって画定される軸方向長さである。
【0081】
基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用される任意の材料で構成されてもよく、典型的には、金属又はセラミックのハニカム構造を備える。基材は、典型的には、ウォッシュコート組成物が塗布されかつ付着している複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物の基材として機能する。
【0082】
セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えば、コージライト、コージライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、珪線石、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、葉長石、α-アルミナ、アルミノケイ酸塩、及び同等物から作製され得る。
【0083】
基材はまた、1つ以上の金属又は金属合金を含む、金属であり得る。金属基材は、チャネル壁に開口部又は「パンチアウト」を有するような任意の金属基材を含み得る。金属基材は、ペレット、圧縮金属性繊維、波形シート、又はモノリス形態などの様々な形状で採用され得る。金属基材の具体例としては、鉄が実質的又は主要な成分であるものなどの耐熱の卑金属合金が挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム、及びアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、いずれの場合も、基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10~約25重量%のクロム、約1重量%~約8重量%のアルミニウム、及び0重量%~約20重量%のニッケルを含み得る。金属基材の例としては、直線的なチャネルを有するもの、ガス流を妨害し、チャネル間のガス流の連通を開くために軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するもの、並びにブレード及びモノリス全体にわたる半径方向のガス輸送を可能にする、チャネル間のガス輸送を向上させるための穴も有するものが挙げられる。
【0084】
通路がそれを通した流体流に対して開放するように、基材の入口又は出口面からそれを通して延在する、微細な平行ガス流路を有するタイプのモノリシック基材(「フロースルー基材」)などの本明細書に開示される触媒性物品のための任意の好適な基材が、採用され得る。別の好適な基材は、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、典型的には、各通路が、基材本体の一方の端部において遮断されており、交互に位置する通路が、反対側の端面において遮断されている(「ウォールフローフィルタ」)。フロースルー及びウォールフロー基材はまた、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際出願公開第2016/070090号に教示されている。いくつかの実施形態では、触媒基材は、ウォールフローフィルタ又はフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。いくつかの実施形態では、基材は、ウォールフローフィルタである。いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材である。
【0085】
水素ガス(H)の供給源
本明細書に開示される排気ガス処理システムは、水素ガス(H)の供給源を備える。いくつかの実施形態では、Hの供給源は、圧縮Hタンクなどの車載貯蔵槽である。水素は、気体、液体、又は固体の状態で貯蔵することができる。水素は、例えば固体状態で、例えばシリコン又は水素貯蔵合金中に貯蔵することができる。固体状態の水素貯蔵は、例えば、米国特許出願公開第2004/0241507号、同第2008/0003470号、同第2008/0274873号、同第2010/0024542号、及び同第2011/0236790号に教示されており、これらの各々は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。水素吸蔵合金は、水素を可逆的に貯蔵し、例えば、米国特許第5,407,761号及び同第6,193,929号、並びに米国特許出願公開第2016/0230255号に開示されており、これらの各々は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。水素吸蔵合金は、例えば、一般にAが水素化物形成元素であり、Bが弱い又は非水素化物形成元素である変性ABタイプの金属水素化物(MH)合金である。Aは、一般に、4個以下の価電子を有するより大きな金属原子であり、Bは、一般に、5個以上の価電子を有するより小さい金属原子である。好適なAB合金は、xが約0.5~約5であるものを含む。本発明の合金は、水素を可逆的に吸収(充填)及び脱着(放出)することができる。ABタイプの合金は、例えば、カテゴリ(簡単な例で)、AB(HfNi、TiFe、TiNi)、AB(ZrMn、TiFe)、AB(HfFe、MgNi)、AB(NdCo、GdFe)、A(PrNi、CeCo)、及びAB(LaNi、CeNi)のものである。
【0086】
他の実施形態では、Hの供給源は、車載H発生器である。そのような実施形態では、排気ガス処理システムは、アルコール改質器、アンモニア分解装置、電解装置、燃料改質器、排気ガス改質器、又はそれらの組み合わせを含み得る車載H発生器を含むか、又はそれと関連付けられる。そのような実施形態では、Hは、要求に応じて発生させることができるか、例えば、車載貯蔵槽で発生させ、その後貯蔵することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、車載H発生器は、水素を発生させるように構成された水分解物品又はアンモニア分解物品を備える。水分解物品は、電気化学反応を介して、水を水素及び酸素に分解するように構成された電解セルを含み得る。例えば、水分解物品は、電気化学反応を開始するように構成された光電極を含み得る。光電極は、光源と関連付けられる。いくつかの実施形態では、光源は、発光ダイオード(LED)、例えば、青色発光ダイオードである。光源は、電池と関連付けることができる。電池は、例えば、主な再充電可能な車両用電池である。水素発生のためのデバイスは、例えば、米国特許出願公開第2007/0246351号及び同第2008/0257751号に開示されており、これらの各々は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
いくつかの実施形態では、車載水素発生器は、アンモニアを窒素及び水素に分解するように構成された触媒物品(「触媒反応器」)(アンモニア分解物品)を備え得る。アンモニアの供給源は、車載アンモニアリザーバからであり得るか、又は例えば、ガス状又は液体のアンモニアを収容するように適合された(及び、必要に応じてアンモニアを放出するように適合された)タンク内に搭載されたアンモニアからであり得る。例えば、このシステムは、アンモニアを収容し、かつアンモニアを放出するように適合されたタンク(アンモニア貯蔵タンク)、及びアンモニアを水素及び窒素に分解するように構成された触媒反応器を備え得る。例えば、このシステムは、アンモニア発生システム、及びアンモニアを水素及び窒素に分解するように構成された触媒反応器を備え得る。水素を発生させ、貯蔵するための好適なシステムは、例えば、米国特許出願公開第2020/0102871号、同第2020/0032689号、同第2020/0032688号、及び同第2020/0032686号、並びに国際特許出願公開第2018/185665号及び同第2018/185655号に開示されており(全てBASF Corp.に対して)、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
いくつかの実施形態では、車載水素発生器は、ある特定の金属酸化物触媒上での酸化を介して、高温の排気ガス成分(例えば、未燃炭化水素燃料)を一酸化炭素及び水素に分解するように構成された触媒物品(「触媒改質器」)を備え得る。そのような実施形態では、触媒改質器は、触媒物品(例えば、TWC)より上流に位置し、排気ガス流と流体連通している。
【0090】
いくつかの実施形態では、車載水素発生器は、アルミニウムのナノ粒子、アルミニウム/ニッケルのナノ粒子、アルミニウム/シリカのナノ粒子、アルミニウム/コバルトのナノ粒子、アルミニウム/マグネシウムのナノ粒子、アルミナのナノ粒子、マグネシウムのナノ粒子、マグネシウム/ニッケルのナノ粒子、亜鉛のナノ粒子、水素化ホウ素ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むドーパントを含む少なくとも1つのH発生成分を含み、少なくとも1つのH発生成分が、ガソリンエンジン内での上記燃料の燃焼前にガソリン燃料に添加した。
【0091】
そのようなナノ粒子は、燃料と混合されてガソリン内燃エンジンの燃焼チャンバ内で燃焼にさらされるとき、そのような粒子の不在下で生成される通常の少量を超える水素を生成する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのH発生成分は、車両に搭載されたガソリンに添加される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのH発生成分は、車両の外部でガソリンに添加される。
【0092】
注入物品
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される排気ガス処理システムは、H供給源と流体連通しており、排気ガス流がH供給源に入るのを阻止するように構成され、かつHを排気ガス流に導入するように構成された、H注入物品、例えばバルブを備える。いくつかの実施形態では、Hは、排気ガス流に断続的に「パルス」又は放出されて、要求があれば(要求に応じて)所望の還元機能を実行することができる。H注入物品は、触媒物品と流体連通しており、触媒物品、例えばTWC触媒物品の上流にある排気ガス流にHを導入するように構成されている。H注入物品は、典型的には、内燃エンジンの下流にあり、内燃エンジンと流体連通しており、フィードバックセンサ及び制御ユニットのうちの1つ以上と通信するであろう。いくつかの実施形態では、H注入物品は、触媒物品より上流に、フィードバックセンサより上流に位置し、排気ガス流及びH供給源と流体連通しており、制御ユニットと通信し、H供給源からのHを触媒物品の上流にある排気ガス流に導入するように構成されている。
【0093】
フィードバックセンサ
排気ガス流へのHの導入(例えば注入)は、排気ガス流中のHの濃度を可燃限界未満に保つために制御される。Hの濃度は、排気ガス流中のH濃度を監視し、それに応じてHの導入を調整する(すなわち、H導入を調節する)こと、例えば、プリセット値を先に決定する質量分析法などの適切な方法を介した直接測定によって、又はセンサを使用した代理測定によって制御することができる。質量分析法を使用した直接測定は十分に確立されているが、追加の空間要件、システムの高コスト、騒音レベルの増加、整備の複雑さなどに起因して、乗用車に搭載するその使用は実用的ではない。プリセット値の利用は、先に測定された一連のパラメータ(異なる種の濃度、流量など)に基づく望ましいHの流れを計算することに基づいている。これには、車両が毎回まったく同じように動作することが必要があり、多くの状況下(外部温度、空気湿度、エンジンの使用年数の違いなど)では不正確であることが証明され得る。典型的には、最も簡単で、費用効果が高く、かつ信頼性が高い方法は、センサの使用である。
【0094】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で開示される排気ガス処理システムは、フィードバックセンサを備える。フィードバックセンサは、広帯域酸素センサ(UEGO)などの酸素センサであり得る。Oセンサ(例えば、広帯域UEGO)の使用は、排気ガスの酸化的(リーン混合気)及び還元的(リッチ混合気)な性質に関して、排気ガスの合計組成を近似する信頼性が高い方法であることが証明されている。排気ガスへのHの注入は、Oセンサの読み取り値に直接影響し、リッチシフト(λ<1)を生み出す。いくつかの十分に確立された式(例えば、Brettschneider,J.(1997),SAE Technical Papers 972989を参照されたい)を使用して、所与の排気ガス組成物についての空燃比(λ)を計算することができる。したがって、この式によって、排気物中の酸化剤及び還元剤(具体的には、H)の濃度をOセンサの読み取り値と簡単に相関させることができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、排気ガス処理システムは、排気ガス流の温度を検出するための温度センサ、例えば、触媒物品より上流に位置して排気ガス流と接触するか、触媒物品内に位置して排気ガス流と接触するか、又はこれらの両方である熱電対を更に備える。
【0096】
いくつかの実施形態では、フィードバックセンサ及び/又は温度センサは、制御ユニットと通信する。そのような実施形態では、排気ガス流へのHの導入を調節するために、フィードバックセンサ、温度センサ、又はこれらの両方からの信号が制御ユニットに送られる。
【0097】
制御ユニット
排気ガス処理システムは、エンジン電子管理アルゴリズム(電子管理システム又は電子制御ユニット(ECU))に一体化させることができる。例えば、フィードバックセンサ及び温度センサは、制御ユニットに信号を提供することができ、次いで、制御ユニットは、H導入、H発生、及び空燃比などのエンジンパラメータのうちの1つ以上を調整する。いくつかの実施形態では、制御ユニットは、それぞれ、H注入物品と通信し(すなわち、信号を提供し)、バルブを開閉させ、H導入を開始又は停止することが可能である。
【0098】
制御ユニットは、継続的又は定期的に数多くのパラメータを監視し、数多くの計算を実行する。これらのいくつかは、空燃比に関連している。例えば、車両製造業者は、2つの制御パラメータ:λ°で表される空燃比の事前定義値、及び
【数9】
で表される走行平均空燃比を定義する。空燃比の事前定義値のパラメータ(λ°)は、数学的モデリング、実験的測定、車両の電子制御ユニット(ECU)による読み取りの結果として自動生成などを通して取得され得るが、これらに限定されない。走行平均空燃比のパラメータ
【数10】
は、以下の式に従って、所与の時間生成された全ての空燃比測定値の合計
【数11】
を、この時間の長さに含まれる測定値の数(N)で除算することによって計算される。
【数12】
式中、
【数13】
は、各ポイントでの空燃比である。
【数14】
とλ°の差は、Δλで表され、以下に示される式に従って、制御ユニットによって計算される。
【数15】
【0099】
典型的なガソリンエンジンについては、約-0.345のΔλは排気ガス中の約20体積%のHに対応し、約-0.060のΔλは排気ガス中の約2体積%のHに対応し、約-0.014のΔλは排気ガス中の約0.5体積%のHに対応することが理解される。したがって、Δλ値は、フィードバックセンサからのデータを使用するECUによって計算され、H濃度の代理測定として使用することができる。したがって、ECUは、H導入を調節して、排気ガス流中にHの特定の濃度を提供するために使用され得る。
【0100】
本明細書に開示される排気ガス処理システムは、様々な非限定的な実施形態を示す図1~5を参照することによって認識され得る。図1を参照すると、例示的な一実施形態では、排気ガス処理システム(100)は、排気ガス流(12)を生成する内燃ガソリンエンジン(10)、触媒物品(22)、フィードバックセンサ(18)、制御ユニット(24)、及びH供給源(14)を備える。システム100は、H注入物品(16)及び温度センサ(20)を更に備える。温度センサ20の位置は、変化する場合があり、例えば、触媒物品22内、触媒物品22の上流、又はこれらの両方であり得る。触媒物品22、例えばTWC触媒物品は、ガソリンエンジン10の下流に位置し、ガソリンエンジン10と流体連通している。フィードバックセンサ18は、触媒物品22より上流に位置し、排気ガス流12と接触する。制御ユニット24は、フィードバックセンサ18、温度センサ20、及びH注入物品16と通信する。このシステムは、コールドスタート期間中、H供給源14からのHを触媒物品22の上流にある排気ガス流12に導入するように構成されている。フィードバックセンサ18は、制御ユニット24及びH注入物品16を介してH導入を調節することによって、排気ガス流12中のHの濃度を提供するように構成されている。
【0101】
別の例示的な実施形態(図2)では、排気ガス処理システム(110)は、排気ガス流(12)を生成する内燃ガソリンエンジン(10)、触媒物品(22)、フィードバックセンサ(18)、制御ユニット(24)、及びH発生器(26)を備える。システム110は、H注入物品(16)及び温度センサ(20)を更に備える。温度センサ20の位置は、変化する場合があり、例えば、触媒物品22内、触媒物品22の上流、又はこれらの両方であり得る。触媒物品22、例えばTWC触媒物品は、ガソリンエンジン10の下流に位置し、ガソリンエンジン10と流体連通している。フィードバックセンサ18は、触媒物品22より上流に位置し、排気ガス流12と接触する。制御ユニット24は、フィードバックセンサ18、温度センサ20、及びH発生器26と通信する。このシステムは、コールドスタート期間中、H発生器26からのHを触媒物品22の上流にある排気ガス流12に導入するように構成されている。フィードバックセンサ18は、制御ユニット24及びH発生器26を介してH導入を調節することによって、排気ガス流12中のHの濃度を提供するように構成されている。
【0102】
更に別の例示的な実施形態(図3)では、排気ガス処理システム(120)は、一酸化炭素(CO)を含む排気ガス流(12)を生成する内燃ガソリンエンジン(10)、触媒物品(22)、フィードバックセンサ(18)、温度センサ(20)、及び制御ユニット(24)を備える。温度センサ20の位置は、変化する場合があり、例えば、触媒物品22内、触媒物品22の上流、又はこれらの両方であり得る。システム120は、ガソリンエンジン10の下流に位置し、ガソリンエンジン10と流体連通しているH発生器28を備える。触媒物品22、例えばTWC触媒物品は、ガソリンエンジン10及びH発生器28の下流に位置し、それらと流体連通している。フィードバックセンサ18は、触媒物品22より上流に位置し、排気ガス流12と接触し、H発生器28の下流に位置する。このシステムは、コールドスタート期間中、H発生器28からのHを触媒物品22の上流にある排気ガス流12に導入するように構成される。フィードバックセンサ18は、制御ユニット24を介してH導入を調節することによって、排気ガス流12中のHの濃度を提供するように構成される。制御ユニット24は、フィードバックセンサ18、温度センサ20、及びガソリンエンジン10と通信する。H発生器28は、排気ガスを触媒改質器と接触させると、排気ガスの成分から追加の水素を発生させるその場プロセスを触媒する触媒改質器である。このシステムは、コールドスタート期間中、H発生器28からのHを触媒物品22の上流にある排気ガス流12に導入するように構成される。制御ユニット(24)からの信号を使用して、ガソリンエンジン(10)は、排気ガス流への水素の導入(すなわち、作製)を進める体制で機能する。これは、例えば、発生器(28)内でのHへの接触改質に追加のCO及び/又はHCが利用可能になるように、ガソリンエンジン(10)の減少した空燃比を有することによって達成することができる。
【0103】
更に別の例示的な実施形態(図4)では、排気ガス処理システム(130)は、排気ガス流(12)を生成する内燃ガソリンエンジン(10)、触媒物品(22)、フィードバックセンサ(18)、温度センサ(20)、及び制御ユニット(24)を備える。温度センサ20の位置は、変化する場合があり、例えば、触媒物品22内、触媒物品22の上流、又はこれらの両方であり得る。システム130は、燃料(36)を収容する燃料タンク(34)、及びドープ燃料(32)を収容するドープ燃料供給源(30)を更に備える。ドープ燃料供給源30は、ドープ燃料32を内燃ガソリンエンジン10に提供して、燃焼時に追加の水素を発生させるその場プロセスを促す。ドープされた燃料32は、燃料36と、アルミニウムのナノ粒子、アルミニウム/ニッケルのナノ粒子、アルミニウム/シリカのナノ粒子、アルミニウム/コバルトのナノ粒子、アルミニウム/マグネシウムのナノ粒子、アルミナのナノ粒子、マグネシウムのナノ粒子、マグネシウム/ニッケルのナノ粒子、亜鉛のナノ粒子、水素化ホウ素ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むドーパントと、を含む。ドープ燃料供給源30は、例えば、ドープ燃料32を収容する貯蔵槽を備えることができ、バルブ、ミキサ、ポンプ、計測デバイスなどのようなそのような物品を更に備えることができ、ドープ燃料32をガソリンエンジン10に搬送するように構成されている。そのような実施形態では、ドーパントは、一般に、ドープ燃料32をドープ燃料供給源30に添加する前に車両の外部で燃料と混合される。
【0104】
制御ユニット24は、フィードバックセンサ18、温度センサ20、及びドープ燃料供給源30と通信する。温度センサ20の位置は、変化する場合があり、例えば、触媒物品22内、触媒物品22の上流、又はこれらの両方であり得る。制御ユニット24からの信号を使用して、ドープ燃料供給源30は、コールドスタート期間中、燃焼前にドープ燃料32をガソリンエンジン10に導入する。フィードバックセンサ18は、制御ユニット24及びドープ燃料供給源30を介してH導入を調節することによって、排気ガス流12中のHの濃度を提供するように構成される。
【0105】
更に別の例示的な実施形態(図5)では、排気ガス処理システム(140)は、排気ガス流(12)を生成する内燃ガソリンエンジン(10)、触媒物品(22)、フィードバックセンサ(18)、温度センサ(20)、及び制御ユニット(24)を備える。温度センサ20の位置は、変化する場合があり、例えば、触媒物品22内、触媒物品22の上流、又はこれらの両方であり得る。システム140は、燃料(36)を収容する燃料タンク(34)と、ミキサ(40)と、アルミニウムのナノ粒子、アルミニウム/ニッケルのナノ粒子、アルミニウム/シリカのナノ粒子、アルミニウム/コバルトのナノ粒子、アルミニウム/マグネシウムのナノ粒子、アルミナのナノ粒子、マグネシウムのナノ粒子、マグネシウム/ニッケルのナノ粒子、亜鉛のナノ粒子、水素化ホウ素ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むドーパント(42)を含有するドーパント供給源(38)と、を備える。そのような構成要素は、燃焼条件下で、Hに富んだ排気ガス流を生成する。ミキサ40は、例えば、弁、ポンプ、計測デバイスなどのようなそのような物品を備えることができ、ドープ燃料32及び/又は燃料36をガソリンエンジン10に搬送するように構成される。
【0106】
ドーパント供給源38は、ミキサ40として、ドーパント42を内燃ガソリンエンジン10に提供して、燃焼時に追加の水素を発生させるその場プロセスを促す。この実施形態では、ミキサ40は、燃料36をドーパント42と混合し、コールドスタート期間中、ドープ燃料32をガソリンエンジン10に提供する。ミキサ40は、他の時間に(例えば、通常動作中)、ドーパントを含まない燃料36を送達する。フィードバックセンサ18は、制御ユニット24、燃料36、ドーパント42、及びミキサ40を介してH導入を調節することによって、排気ガス流12中のHの濃度を提供するように構成される。
【0107】
本明細書に開示される排気ガス処理システムの実施形態の各々では、排気ガス処理システムは、排気ガス流12中にH濃度を導入し、排気ガス流中にHの濃度を提供するように構成されている。H導入は、一般に、制御ユニット24からの信号を受けて、エンジン10の始動から最初の約200秒(すなわち、コールドスタート期間)の間に起こる。いくつかの実施形態では、H導入は、触媒物品22を促進するために他の時間中、例えば、長時間のアイドリング又は低速運転などの低温動作の期間中に起こり得る。排気ガス流12の温度が、温度センサ20で測定された場合に約90℃~約550℃の範囲内にあるとき、Hの導入は、約-0.345、又は約-0.060、又は約-0.014のΔλ(制御ユニット24と通信するフィードバックセンサ18によって決定された)値を提供するように調節される。いくつかの実施形態では、Hの導入は、排気ガス流12の温度が約90℃~約190℃の範囲内にあるときに調整される。
【0108】
いくつかの実施形態では、排気ガス流12は、約20体積%以下のHを含有する。いくつかの実施形態では、排気ガス流12は、約2体積%以下のHを含有する。いくつかの実施形態では、排気ガス流12は、約0.5体積%以下のHを含有する。
【0109】
II.エンジン排気を処理する方法
別の態様では、ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、排気ガス流を、ガソリンエンジンの下流に位置し、排気ガス流と流体連通しているTWC触媒物品と接触させることと、H供給源からの水素ガス(H)をTWC触媒物品の上流にある排気ガス流に導入することと、TWC触媒物品より上流にある排気ガス流中のHの体積による濃度を制御することであって、Hの体積による濃度を制御することが、H導入を調節することを含む、制御することと、を含む、方法が提供される。
【0110】
いくつかの実施形態では、Hの体積による濃度を制御することは、TWC触媒物品より上流又はTWC触媒物品の内部にある排気ガス流の温度が約90℃~約550℃の範囲内にあるとき、排気ガス流にHを導入することを含む。いくつかの実施形態では、Hの体積による濃度を制御することは、TWC触媒物品より上流又はTWC触媒物品の内部にある排気ガス流の温度が約90℃~約190℃の範囲内にあるとき、排気ガス流にHを導入することを含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、Hは、約200秒間導入される。
【0112】
いくつかの実施形態では、H導入を調節することは、フィードバックセンサ及び/又は温度センサから信号を取得することであって、フィードバックセンサが、TWC触媒物品より上流に位置し、温度センサが、TWC触媒物品より上流又はTWC触媒物品の内部に位置し、両方のセンサが、排気ガス流と接触する、取得することと、上記信号を使用して導入されたHの分量を制御することと、を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、排気ガス流は、約20体積%以下のHを含有する。いくつかの実施形態では、排気ガス流は、約2体積%以下のHを含有する。いくつかの実施形態では、排気ガス流は、約0.5体積%以下のHを含有する。
【0114】
いくつかの実施形態では、この方法は、排気ガス流にHを導入することと、一定期間、約-0.345、又は約-0.014~約-0.345よりも負ではないΔλ値を提供することと、を含む。いくつかの実施形態では、期間は、約200秒である。いくつかの実施形態では、Δλは、約-0.345である。いくつかの実施形態では、Δλは、約-0.060である。いくつかの実施形態では、Δλは、約-0.014である。
【0115】
本開示によれば、前述の体積%範囲でHの分量を導入すること、又は本明細書において上記で開示されたΔλ値の範囲を提供することは、いくつかの実施形態では、下流の触媒活性を高め、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NO)の排出物を低減することができることが見出された。いくつかの実施形態では、NO変換は、HC及びCO変換に悪影響を与えることなく、Hの導入によって改善することができる。そのような方法は、下流の触媒(例えば、TWC触媒)がまだ排出成分の変換が効率的である温度に達していないとき、コールドスタート期間中に排出物(例えば、NO)を制御するのに有用であり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、H濃度を増加することは、例えば、触媒PGMを再生することができ、及び/又は別様にPGMが低温酸化に必要な分子酸素を解離するのを抑制する硝酸塩形成を最小限に抑えることができると考えられている。
【0116】
いくつかの実施形態では、Hを導入することは、ガソリンエンジン内でのガソリンの燃焼中にHを発生させることを更に含み、Hを発生させることが、燃焼前に少なくとも1つのH発生成分をガソリンに添加することを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのH発生成分は、アルミニウムのナノ粒子、アルミニウム/ニッケルのナノ粒子、アルミニウム/シリカのナノ粒子、アルミニウム/コバルトのナノ粒子、アルミニウム/マグネシウムのナノ粒子、アルミナのナノ粒子、マグネシウムのナノ粒子、マグネシウム/ニッケルのナノ粒子、亜鉛のナノ粒子、水素化ホウ素ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むドーパントを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのH発生成分は、車両に搭載されたガソリンに添加される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのH発生成分は、車両の外部でガソリンに添加される。
【0117】
他の実施形態では、Hを導入することは、Hを発生させることを更に含み、Hを発生させることが、排気ガス流を排気ガス改質触媒と接触させることを含む。
【0118】
更なる態様では、ガソリンエンジンからのガス状排気物流中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び微粒子状物質のうちの1つ以上のレベルを低減する方法であって、ガス状排気物流を、本明細書に開示される排気ガス処理システムと接触させることを含む、方法が提供される。
【0119】
本物品、システム、及び方法は、トラック及び自動車のような移動排出物源からの排気ガス流の処理に好適である。本物品、システム、及び方法は、発電所のような固定電源からの排気流の処理にも好適である。
【0120】
本明細書に記載されている組成物、方法、及び用途に対する好適な修正及び適合が、任意の実施形態又はそれらの態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。提供される組成物及び方法は、例示的なものであり、特許請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示されている様々な実施形態、態様、及び選択肢の全ては、全ての変更で組み合わされ得る。本明細書に記載される組成物、配合物、方法、及びプロセスの範囲には、本明細書の実施形態、態様、選択肢、及び実施例の全ての実際の又は潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書で引用された全ての特許及び刊行物は、組み込まれた他の具体的な記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの具体的な教示について参照によって本明細書に組み込まれる。
【0121】
本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は、本開示の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び装置に対して様々な変形及び変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にある修正及び変更を含むことが意図される。
【0122】
本明細書全体を通して「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つ以上の実施形態では」、「ある特定の実施形態では」、「一実施形態では」、又は「ある実施形態では」などの語句が本明細書全体の様々な箇所に出現することは、必ずしも本開示の同じ実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。本明細書で引用されるあらゆる範囲は、包括的である。
【0123】
ここで、本開示は、以下の実施例を参照して記載される。本開示のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本開示は、以下の説明に記述される構成又はプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な手法で実施又は実施することができる。
【実施例
【0124】
実施例1:触媒物品の調製
Pdを含むボトムコート及びPd及びRhを含むトップコートを有する二層の三元変換(TWC)触媒物品を調製した。ボトムコートについては、0.40g/inの高表面積γ-アルミナへの硝酸Pd溶液の初期湿潤含浸により、含浸担体材料を調製し、18.6g/ftのPdの投入量を得た。得られた含浸粉末担体材料を、550℃でか焼し、スラリーにし、粉砕して、第1のスラリーを取得した。0.80g/inのセリア-ジルコニア複合材料(45重量%のCeO)を含むスラリーに硝酸Pd溶液を添加することにより、第2のスラリーを調製し、43.4g/ftのPdの投入量を得た。得られた含浸粉末を、550℃でか焼し、スラリーにし、粉砕した。水中の第1のスラリーを酸と共に第2のスラリーと組み合わせることにより、単一の水性ウォッシュコートを形成した。バリウム促進剤もその中に分散させた。アルミナバインダーをウォッシュコートスラリーに添加し、次いで、これをモノリス基材上に1.46g/inの投入量でコーティングし、基材を空気中で乾燥させ、空気中で、550℃でか焼して、TWC触媒物品の第1の(下)層を形成した。
【0125】
次いで、第2の(上)層コーティングを調製した。硝酸Pd溶液を、0.20g/inの高表面積ランタナドープガンマ-アルミナに初期湿潤含浸し、12.7g/ftのPd投入量を得た。得られた含浸粉末担体材料を、550℃でか焼し、スラリーにし、粉砕して、第1のスラリーを取得した。0.40g/inのセリア-ジルコニア複合材料(29重量%のCeO)に硝酸Pd溶液を添加することにより、第2のスラリーを調製し、12.7g/ftのPdの投入量を得た。得られた含浸粉末担体材料を、550℃でか焼し、スラリーにし、粉砕した。0.30g/inの高表面積γ-アルミナに硝酸ロジウム溶液を添加することにより、第3のスラリーを調製し、14.5g/ftRhの投入量を得た。得られた含浸粉末担体材料を、550℃でか焼し、スラリーにし、粉砕した。得られたスラリーを第1及び第2のスラリーと組み合わせた。ランタン促進剤をスラリー中に分散させ、アルミナ及びジルコニア結合剤をスラリーに添加した。次いで、得られたスラリーを、1.38g/inの投入量でモノリス基材上にコーティングし、空気中で乾燥させ、空気中で、550℃でか焼した。か焼後の総ウォッシュコート投入量は、2.5g/inであった。
【0126】
調製した触媒物品を、2つのプロトコル(エージング1又はエージング2)のいずれかを使用してエージングした。エージング1については、物品を、ZDAKW(Zyklus des Abgaszentrums deutscher Automobilhersteller zur Katalysatorweiterentwicklung;Cycle of the Exhaust Center of German Automobile Manufacturers for Further Catalyst Development)プロトコルの下で、995℃で40時間エージングした。エージング2については、物品を、10%のHO/空気中で、950℃で12時間水熱エージングした。
【0127】
実施例2:実験室反応器シミュレーション
触媒製品(エージング1及びエージング2)を、実験室反応器上でEPA連邦試験手順(FTP-72)条件下で評価し、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NO)の排出を測定した。FTP-72運転サイクルは、2016年モデルのフォードエッジ(Ford Edge)車両の挙動をシミュレーションする。
【0128】
実験室反応器により、車両の排気システムの内部の実際の触媒物品が経験するような、シミュレーションされ、制御された排気条件下(排気の温度、空燃比、排気ガス成分の濃度など)で、触媒物品性能に対する水素注入の影響を評価することができた。実験室反応器を、他の運転サイクル条件(WLTCなど)をシミュレーションし、現実的なフィールド条件において一般的な定常状態試験(着火試験、酸素貯蔵能力試験など)を実行するようにも構成した。実験室反応器は、触媒物品の上流にあるUEGOセンサ配列を収容しており、水素ガスをシミュレーションされた排気物流に注入して、CO対H比を変化させるように構成した。水素の導入に使用される水素供給源は、圧縮された水素シリンダ又は水素発生器のいずれかであった。
【0129】
第1の実験では、FTP-72サイクルの最初の200秒の間に、Hを、排気ガス流に導入して、-0.014λ又は-0.060λのリッチバイアスレベルが提供され、それぞれ0.5体積%のH又は2.0体積%のHの導入から得られるUEGO測定値にほぼ対応している。第2の実験では、FTP-72サイクルの最初の200秒の間に、Hを、0.5体積%のH又は2.0体積%のHのレベルで排気ガス流に導入した。これらの分量のHの導入により、それぞれ2.3及び1.3の中央CO/H体積比が提供された。各実験では、標準のFTP-72サイクルを「対照」として示した。各実験において、Hの導入は、総全球毎時空間速度(Global Hourly Space Velocity、GHSV)が対照と比較して影響を受けないように、キャリアガスとのバランスを取った。2つの実験の結果が表1に提供される。
【0130】
これらの結果は、あらゆる場合において、Hの導入が対照サイクルと比較してNO変換を改善したことを示した。0.5%又は2%のH注入では、HC及びCO変換に著しい悪影響はなかった(例えば、値が同じままであるか、又は<3%だけ減少した)。逆に、λバイアスH注入下では、HC及びCO変換値は、0.4%~最大19%だけ降下した。
【0131】
【表1】
【0132】
更なる実験では、触媒物品を、リーン(λ=1.060)及びリッチ(λ=0.960)条件下で、HC、CO、及びNO着火(T50;50%変換が達成される温度)について評価した。これらの条件は、実際のガソリン車両排気システム内での動作中に触媒物品が経験する典型的な条件を表す。各条件については、H(0.5体積%)の注入を、Hの注入なしと比較した。試験の他の全てのパラメータは同一であった。結果を以下の表2に提供しており、これは、0.5体積%のHの導入がHC、CO、及びNOのT50を著しく低下させ、これらの条件下での触媒物品の改善された触媒活性を実証していることを示した。
【0133】
【表2】
【0134】
ここで、本開示は、以下の実施形態を参照して記載され、本開示がこれらの実施形態に限定されず、他の実施形態が可能であり、様々な方式で実践又は実施することが可能であることを理解されたい。
【0135】
1.ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理するためのシステムであって、
ガソリンエンジンの下流にあり、ガソリンエンジンと流体連通している触媒物品と、
水素ガス(H)の供給源と、
触媒物品より上流に位置し、排気ガス流と接触するフィードバックセンサと、
フィードバックセンサと通信する制御ユニットと、を備え、
このシステムが、コールドスタート期間中に、H供給源からのHを触媒物品の上流にある排気ガス流に導入するように構成され、フィードバックセンサが、H導入を調節することによって排気ガス流中にHを提供するように構成されている、システム。
2.触媒物品が、三元変換(TWC)触媒物品、四元変換触媒物品、選択触媒還元(SCR)触媒物品、直接酸化触媒物品、アンモニア酸化(AMOx)触媒物品、及び触媒化煤フィルタ(CSF)物品、又はそれらの組み合わせから選定される、実施形態1に記載のシステム。
3.触媒物品が、基材、基材上に配置された第1の触媒層、及び第1の触媒層上に配置された第2の触媒層を含み、
第1の触媒層が、第1のパラジウム成分、第1の耐火性金属酸化物担体、及び第1の酸素貯蔵成分を含み、第1のパラジウム成分の少なくとも一部分が、第1の耐火性金属酸化物担体に含浸され、第1のパラジウム成分の別の部分が、第1の酸素貯蔵成分に含浸され、かつ
第2の触媒層が、第2のパラジウム成分、第2の耐火性金属酸化物担体、第2の酸素貯蔵成分、ロジウム成分、及び第3の耐火性金属酸化物担体を含み、第2のパラジウム成分の少なくとも一部分が、第2の耐火性金属酸化物担体に含浸され、第2のパラジウム成分の別の部分が、第2の酸素貯蔵成分に含浸され、ロジウム成分が、第3の耐火性金属酸化物担体に含浸される、実施形態1に記載のシステム。
4.フィードバックセンサが、広帯域酸素センサ(UEGO)及び温度センサを備える、実施形態1に記載のシステム。
5.Hの供給源が、車載圧縮水素槽である、実施形態1に記載のシステム。
6.Hの供給源が、車載水素発生器である、実施形態1に記載のシステム。
7.車載水素発生器が、アルコール改質器、アンモニア分解装置、電解装置、燃料改質器、排気ガス改質器、又はそれらの組み合わせを備える、実施形態5に記載のシステム。
8.車載水素発生器が、触媒物品より上流に位置し、排気ガス流と流体連通している触媒改質物品を備える排気ガス改質器である、実施形態5に記載のシステム。
9.車載水素発生器が、アルミニウムのナノ粒子、アルミニウム/ニッケルのナノ粒子、アルミニウム/シリカのナノ粒子、アルミニウム/コバルトのナノ粒子、アルミニウム/マグネシウムのナノ粒子、アルミナのナノ粒子、マグネシウムのナノ粒子、マグネシウム/ニッケルのナノ粒子、亜鉛のナノ粒子、水素化ホウ素ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むドーパントを含む少なくとも1つのH生成分を含み、少なくとも1つのH発生成分が、ガソリンエンジン内での上記燃料の燃焼前にガソリン燃料に添加した、実施形態5に記載のシステム。
10.触媒物品より上流にあり、フィードバックセンサより上流にあり、排気ガス流及びH供給源と流体連通しており、制御ユニットと通信するH注入物品であって、H供給源からのHを触媒物品の上流にある排気ガス流に導入するように構成されている、H注入物品を更に備える、実施形態1に記載のシステム。
11.このシステムが、触媒物品の上流又は触媒物品内にある排気ガス流温度が約90℃~約190℃の範囲内にあるとき、排気ガス流にHを導入するように構成されている、実施形態1に記載のシステム。
12.触媒物品の上流又は触媒物品内にある排気ガス流の温度が約90℃~約550℃の範囲内にあるとき、排気ガス流が、約20体積%以下のHを含有する、実施形態1に記載のシステム。
13.排気ガス流が、約2体積%以下のH、又は約0.5体積%以下のHを含有する、実施形態1に記載のシステム。
14.排気ガス流にHを導入して、一定期間、約-0.014~約-0.345よりも負ではないΔλ値を提供するように構成され、
【数16】
λ°が、事前に定義された値であり、
【数17】
が、以下の式に従って時間の長さについて計算された、排気ガス流の走行平均空燃比であり、
【数18】
式中、(N)が、この時間の長さに含まれるポイントの数であり、
【数19】
が、各ポイントでの空燃比である、実施形態1に記載のシステム。
15.Δλが、約-0.060、又は約-0.014である、実施形態14に記載のシステム。
16.ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、
排気ガス流を、ガソリンエンジンの下流に位置し、排気ガス流と流体連通している触媒物品と接触させることと、
供給源からの水素ガス(H)を触媒物品の上流にある排気ガス流に導入することと、
触媒物品より上流にある排気ガス流中のHの体積による濃度を制御することであって、Hの体積による濃度を制御することが、H導入を調節することを含む、制御することと、を含む、方法。
17.触媒物品が、三元変換(TWC)触媒物品、四元変換触媒物品、選択触媒還元(SCR)触媒物品、直接酸化触媒物品、アンモニア酸化(AMOx)触媒物品、及び触媒化煤フィルタ(CSF)物品、又はそれらの組み合わせから選定される、実施形態16に記載の方法。
18.触媒物品が、基材、基材上に配置された第1の触媒層、及び第1の触媒層上に配置された第2の触媒層を含み、
第1の触媒層が、第1のパラジウム成分、第1の耐火性金属酸化物担体、及び第1の酸素貯蔵成分を含み、第1のパラジウム成分の少なくとも一部分が、第1の耐火性金属酸化物担体に含浸され、第1のパラジウム成分の別の部分が、第1の酸素貯蔵成分に含浸され、かつ
第2の触媒層が、第2のパラジウム成分、第2の耐火性金属酸化物担体、第2の酸素貯蔵成分、ロジウム成分、及び第3の耐火性金属酸化物担体を含み、第2のパラジウム成分の少なくとも一部分が、第2の耐火性金属酸化物担体に含浸され、第2のパラジウム成分の別の部分が、第2の酸素貯蔵成分に含浸され、ロジウム成分が、第3の耐火性金属酸化物担体に含浸される、実施形態16に記載の方法。
19.制御することが、触媒物品より上流又は触媒物品の内部にある排気ガス流の温度が約90℃~約550℃、又は約90℃~約190℃の範囲内にあるときにHを排気ガス流に導入することを含む、実施形態16に記載の方法。
20.Hが、約200秒間導入される、実施形態16に記載の方法。
21.H導入を調節することが、
フィードバックセンサ及び/又は温度センサから信号を取得することであって、フィードバックセンサが、触媒物品より上流に位置し、温度センサが、触媒物品より上流又は触媒物品の内部に位置し、両方のセンサが、排気ガス流と接触する、取得することと、
上記信号を使用して導入されたHの分量を制御することと、を含む、実施形態16に記載の方法。
22.排気ガス流が、約20体積%以下のH、約2体積%以下のH、又は約0.5体積%以下のHを含有する、実施形態21に記載の方法。
23.
を排気ガス流に導入することと、
一定期間、約-0.345よりも負ではないΔλ値を提供することと、を含み、
【数20】
λ°が、事前に定義された値であり、
【数21】
が、以下の式に従って時間の長さについて計算された、排気ガス流の走行平均空燃比であり、
【数22】
式中、(N)が、この時間の長さに含まれるポイントの数であり、
【数23】
が、各ポイントでの空燃比である、実施形態26に記載の方法。
24.Δλが、約-0.060、又は約-0.014である、実施形態23に記載の方法。
25.Hを導入することが、ガソリンエンジン内でのガソリンの燃焼中にHを発生させることを更に含み、Hを発生させることが、燃焼前に少なくとも1つのH発生成分をガソリンに添加することを含む、実施形態26に記載の方法。
26.少なくとも1つのH発生成分が、アルミニウムのナノ粒子、アルミニウム/ニッケルのナノ粒子、アルミニウム/シリカのナノ粒子、アルミニウム/コバルトのナノ粒子、アルミニウム/マグネシウムのナノ粒子、アルミナのナノ粒子、マグネシウムのナノ粒子、マグネシウム/ニッケルのナノ粒子、亜鉛のナノ粒子、水素化ホウ素ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含むドーパントを含む、実施形態25に記載の方法。
27.ガソリンエンジン及び触媒物品を備える、車両を更に含む、実施形態26に記載の方法。
26.少なくとも1つのH発生成分が、車両に搭載されたガソリンに添加されるか、又は車両の外部でガソリンに添加される、実施形態27に記載の方法。
28.Hを導入することが、Hを発生させることを更に含み、Hを発生させることが、排気ガス流を排気ガス改質触媒と接触させることを含む、実施形態16に記載の方法。
29.ガソリンエンジンからのガス状排気物流中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び微粒子状物質のうちの1つ以上のレベルを低減する方法であって、ガス状排気物流を、実施形態1~15のいずれか1つに記載の排気ガス処理システムと接触させることを含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】