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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】遠隔外科手術縫合糸システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/068 20060101AFI20230913BHJP
   A61B 17/064 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A61B17/068
A61B17/064
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537890
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021048888
(87)【国際公開番号】W WO2022051512
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】62/706,682
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523074342
【氏名又は名称】ヴェステック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】エドガー,ジョン ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】リシャール,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ウルフマン,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ストーカー,ケント
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC03
4C160CC06
4C160CC11
4C160MM33
(57)【要約】
本明細書で説明するシステム、デバイス、及び方法は、患者の血管にグラフト又は他の物体を固定するための縫合糸を送達するための血管内デバイスに関する。いくつかの実施形態では、縫合糸は、互いに接合された近位端部と、互いに平行に延在する長尺状の本体とを有する1組の2つの脚であって、U字形状の構造を形成する1組の2つの脚を含む。縫合糸送達システムは、扁平な形態で縫合糸を含むように構成されたハウジングと、ハウジング内に配置されたリボン状の遠位部分を有し、及び1組の形成物を含む展開要素であって、ここで、ハウジング及び展開要素の1組の形成物は、集合的に、縫合糸がハウジングの開口を通って放出されるまで、縫合糸を扁平な形態に拘束するように構成される、展開要素とを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された近位端部と、互いに平行に延在する長尺状の本体とを有する1組の2つの脚であって、前記1組の2つの脚はU字形状の構造を形成し、前記1組の脚は、グラフトの一部分及び前記グラフトの前記一部分に隣接する血管壁に侵入するように構成される尖ったチップで終端する遠位端部を有する、1組の2つの脚;
前記U字形状の構造に結合されたテール
を含む、縫合糸であって、
前記縫合糸は、前記テールが、前記2つの脚の前記長尺状の本体の方向とは反対の方向に延在する扁平な形態から、前記テール及び前記1組の2つの脚が湾曲している湾曲形態へ移行するように構成されており、
前記縫合糸が前記湾曲形態にあるとき、前記1組の脚及び前記テールは、反対方向に力を加えるように構成されて、前記1組の脚及び前記テールが、前記グラフトの前記一部分及び前記血管壁を互いに対して保持するように構成されるようにする、縫合糸。
【請求項2】
前記縫合糸は、前記扁平な形態でハウジング内に保持されるように構成され、及び前記ハウジングから放出されると、前記湾曲形態へ自動的に移行するように構成される、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項3】
前記縫合糸は、前記縫合糸の前記尖ったチップが最初に前記ハウジングを出る状態で、前記ハウジングにある開口を経由して前記ハウジングから放出されるように構成される、請求項2に記載の縫合糸。
【請求項4】
前記縫合糸の前記尖ったチップは、前記ハウジングから出る最中に、湾曲し、及び前記グラフトの前記一部分及び前記血管壁に侵入するように構成される、請求項3に記載の縫合糸。
【請求項5】
前記湾曲形態にある前記縫合糸は、環状ループを形成するように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の縫合糸。
【請求項6】
前記テールの少なくとも一部分は、前記縫合糸が前記湾曲形態にあるとき、前記環状ループの外周囲内に配置されるように構成される、請求項5に記載の縫合糸。
【請求項7】
前記1組の脚及び前記テールは、前記縫合糸が前記湾曲形態にあるとき、前記環状ループの外周囲に沿って配置されるように構成される、請求項5に記載の縫合糸。
【請求項8】
前記テールの少なくとも一部分は、前記縫合糸が前記湾曲形態にあるとき、前記環状ループの外周囲の外側に配置されるように構成される、請求項5に記載の縫合糸。
【請求項9】
前記縫合糸が、前記湾曲形態にあり、且つ前記グラフトの前記一部分及び前記血管壁を互いに対して保持するように位置決めされるとき、前記縫合糸の前記テールは、前記1組の脚の少なくとも一部分間に配置される前記グラフトの前記一部分に押し付けるように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の縫合糸。
【請求項10】
前記縫合糸は超弾性材から形成される、請求項1~9のいずれか1項に記載の縫合糸。
【請求項11】
前記縫合糸は、金属チューブをレーザー切断することによって形成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の縫合糸。
【請求項12】
前記縫合糸は、金属チューブの一部分をレーザー切断し、及び前記切断された部分の1つ以上のエッジを、それらに丸みをつけるように、電解研磨することによって、形成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の縫合糸。
【請求項13】
前記1組の脚及び前記テールは、前記縫合糸が前記湾曲形態にあるとき、クランプ又は締め付け力を発生させるように構成される、請求項1~12のいずれか1項に記載の縫合糸。
【請求項14】
扁平な形態で縫合糸を含むように構成されたハウジングであって、前記ハウジングは、前記ハウジングの内部から前記縫合糸を放出するための開口を画成して、前記縫合糸が、前記扁平な形態から湾曲形態へ自動的に移行し得るようにする、ハウジング;
前記ハウジング内に配置された、リボン状の遠位部分を有する展開要素であって、前記展開要素の前記リボン状の遠位部分は、前記縫合糸とインターフェースをとるように構成された1組の形成物を備える表面を有し、前記ハウジング及び前記展開要素の前記1組の形成物は、集合的に、前記縫合糸が前記ハウジングの前記開口を通って放出されるまで、前記扁平な形態に前記縫合糸を拘束するように構成される、展開要素;及び
前記ハウジングの前記開口から前記縫合糸を放出するために、前記ハウジングに対して前記展開要素を動かすように構成された制御機構
を含む、縫合糸送達システム。
【請求項15】
前記ハウジングは、イントロデューサチップに結合される遠位端部と、前記展開要素の周りに配置される近位端部とを有する、請求項14に記載の縫合糸送達システム。
【請求項16】
前記展開要素は、前記ハウジング内で自由に動く遠位端部と、長尺状シャフトを介して前記制御機構に結合される近位端部とを有する、請求項15に記載の縫合糸送達システム。
【請求項17】
前記長尺状シャフトは第1の長尺状シャフトを含み、前記縫合糸送達システムは、さらに:
ルーメンを画成するカテーテル;及び
前記イントロデューサチップに結合された第2の長尺状シャフトであって、前記第1及び第2の長尺状シャフトは、前記カテーテルの前記ルーメン内で同心円状に配置される、第2の長尺状シャフト
を含む、請求項16に記載の縫合糸送達システム。
【請求項18】
さらに:
第3の長尺状シャフト;及び
前記ハウジングの前記開口を縫合部位に押し付けるように拡張するように構成された偏倚機構であって、前記イントロデューサチップに結合された遠位端部と、前記第3の長尺状シャフトに結合された近位端部とを有する、偏倚機構
を含み、
前記第3の長尺状シャフトは、前記カテーテルの前記ルーメン内で前記第1及び第2の長尺状シャフトと同心円状に配置される、請求項17に記載の縫合糸送達システム。
【請求項19】
前記第3の長尺状シャフトは、前記偏倚機構を拡張させるために、前記イントロデューサチップに対して動かされ得る、請求項18に記載の縫合糸送達システム。
【請求項20】
前記偏倚機構が拡張されると、前記制御機構は、前記展開要素を動かして、前記ハウジングの前記開口から前記縫合糸を放出するように構成されて、前記縫合糸が前記縫合部位を通るように方向付けられるようにする、請求項18又は19に記載の縫合糸送達システム。
【請求項21】
さらに前記縫合糸を含み、ここで、前記縫合糸は、前記ハウジングの前記開口から出て前記縫合部位に侵入するように構成される侵入チップを有する1組の2つの脚を含む、請求項20に記載の縫合糸送達システム。
【請求項22】
前記縫合糸の前記1組の脚は、一緒に接合される近位端部を有して、前記1組の脚がU字形状の構造を形成するようにする、請求項21に記載の縫合糸送達システム。
【請求項23】
前記縫合糸はさらにテールを含み、このテールは、前記U字形状の構造とは反対方向に延在し、及び前記侵入チップが前記縫合部位に侵入した後、前記1組の脚間に配置された材料に押し付けるために前記ハウジングの前記開口から出るように構成される、請求項22に記載の縫合糸送達システム。
【請求項24】
前記展開要素の前記遠位部分上にある前記1組の形成物は、前記縫合糸の脚をそれぞれ受け入れるための第1及び第2の領域と、前記縫合糸のテールを受け入れるための第3の領域とを含む、請求項14~21のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項25】
前記展開要素の前記1組の形成物は、前記縫合糸の前記脚が互いに平行に延在し、且つ前記縫合糸の複数の部分に係合して、展開要素が動くときに前記縫合糸を動かすことを保証するように構成される、請求項14~21のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項26】
前記1組の形成物は、互いに平行に延在する1組のより小さいリッジと、前記1組のより小さいリッジの近位に配置されるより大きいリッジとを含む、請求項24又は25に記載の縫合糸送達システム。
【請求項27】
前記縫合糸が前記ハウジング内に配置され、及び前記展開要素の前記遠位部分によって少なくとも部分的に拘束されると、前記縫合糸の前記脚は前記より大きいリッジの対向する側にそれぞれ配置され、及び前記縫合糸の前記テールは前記1組のより小さいリッジ間に配置される、請求項26に記載の縫合糸送達システム。
【請求項28】
前記ハウジングは長方形の断面を有する、請求項14~27のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項29】
前記ハウジングは軟質プラスチック材料で形成される、請求項28に記載の縫合糸送達システム。
【請求項30】
前記ハウジングは、前記開口の近くで前記ハウジング内に配置された支持部材料を含んで、前記ハウジングの前記内部から放出されるときに、前記ハウジングに損傷を与えることなく、縫合糸が前記支持部に沿って摺動できるようにする、請求項29に記載の縫合糸送達システム。
【請求項31】
前記ハウジングは、金属材料で形成され、及び前記ハウジングの可撓性をもたらすために、前記縫合糸を放出するための前記開口に対向する側に複数の特徴を含む、請求項28に記載の縫合糸送達システム。
【請求項32】
前記縫合糸は、前記ハウジングの前記開口の遠位で、前記ハウジング内に含まれ、及び前記制御機構は、前記縫合糸を放出するために、前記縫合糸を前記開口の方へ向かって引くために近位方向に前記展開要素を動かすように構成される、請求項14~31のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項33】
前記ハウジングは、前記縫合糸を含む複数の縫合糸を含むように構成され、前記複数の縫合糸は、前記ハウジングの長さに沿って連続的に配置されるように構成される、請求項14~32のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項34】
前記展開要素の前記遠位部分は、繰り返しの形成物パターンを含み、複数の組の形成物が、それぞれ、前記複数の縫合糸のうちの異なる縫合糸とインターフェースをとるように構成されている、請求項33に記載の縫合糸送達システム。
【請求項35】
前記制御機構は、前記展開要素を動かして、前記複数の縫合糸の各縫合糸を前記ハウジングから連続的に放出するように構成される、請求項33に記載の縫合糸送達システム。
【請求項36】
前記ハウジング及び前記展開要素の前記1組の形成物は、集合的に、前記縫合糸の長さの至る所で前記縫合糸を拘束するように構成されて、前記縫合糸の前記脚が、前記ハウジングの前記開口から、互いに平行に延在し且つ前記開口の平面に対して実質的に垂直であるように送達されるようにする、請求項14~35のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項37】
前記ハウジング及び前記複数の形成物は、集合的に、半径方向に前記縫合糸の各脚を拘束するように構成されて、前記脚が前記開口から放出されるときに、前記縫合糸の前記脚が互いに対して平行のままであるようにする、請求項14~32のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項38】
扁平な形態で縫合糸を含むように構成されたハウジングであって、前記ハウジングは、前記ハウジングの内部から前記縫合糸を放出するための開口を画成して、前記縫合糸が、前記扁平な形態から湾曲形態へ自動的に移行し得るようにし、前記ハウジングは、前記縫合糸が前記ハウジングの前記開口を通って放出されるまで、前記扁平な形態に前記縫合糸を少なくとも部分的に拘束する、ハウジング;
前記ハウジング内に配置された遠位部分を有する展開要素であって、前記展開要素の前記遠位部分は、前記縫合糸とインターフェースをとるように構成された1つ以上の形成物を有する、展開要素;
シャフトの周りに配置された偏倚機構であって、前記偏倚機構は、前記偏倚機構が前記ハウジング及び前記展開要素の前記遠位部分に対してほぼ平行に延在する非展開形態と、縫合部位に前記ハウジングを押し付ける非対称的な形状を形成するために、前記偏倚機構の一部分が前記ハウジングから離れるような方向に外側へ撓む拡張形態との間を移行するように構成される、偏倚機構;及び
前記ハウジングから前記縫合糸を放出して前記縫合糸を前記縫合部位に展開するために、前記偏倚機構が前記展開形態にあるとき、前記ハウジングに対して前記展開要素を動かすように構成された制御機構
を含む、縫合糸送達システム。
【請求項39】
前記偏倚機構は、複数の可撓性のストランドの編組ワイヤから形成されたメッシュである、請求項38に記載の縫合糸送達システム。
【請求項40】
前記編組ワイヤは、ニチノール、Elgiloy、又はステンレス鋼ワイヤである、請求項39に記載の縫合糸送達システム。
【請求項41】
前記シャフトは第1のシャフトを含み、及び前記偏倚機構の遠位端部は、前記第1のシャフトの遠位端部に配置されたイントロデューサに結合され、前記縫合糸送達システムは、さらに:
前記偏倚機構の近位端部に結合され、及び前記第1のシャフトの一部分の周りに同心円状に配置された第2のシャフトであって、前記第1及び第2のシャフトは、互いに対して動いて、前記偏倚機構を前記展開状態へ移行させるように構成される、第2のシャフト
を含む、請求項38~40のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項42】
前記制御機構は第1の制御機構を含み、前記縫合糸送達システムは、さらに、前記第1のシャフトに対して前記第2のシャフトを前進させて、前記偏倚機構を前記拡張形態に移行させるように構成された第2の制御機構を含む、請求項41に記載の縫合糸送達システム。
【請求項43】
前記偏倚機構の前記一部分は、前記ハウジングから離れるように半径方向外側に、前記シャフトの長手方向軸に対して約270度まで撓むように構成される、請求項38~40のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項44】
さらに、前記偏倚機構が前記拡張形態に移行されるまで、前記制御機構の動きをロックするように構成されたロッキング機構を含む、請求項38~43のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項45】
前記拡張形態にある前記偏倚機構は、さらに、前記ハウジングの裏面の方へ向かって半径方向外側に撓むように構成される部分を含む、請求項38~44のいずれか1項に記載の縫合糸送達システム。
【請求項46】
前記縫合糸送達システムの偏倚機構を拡張することであって、前記偏倚機構は、拡張時に、前記縫合糸送達システムのハウジングを、血管内に配置されたグラフトの一部分に押し付けるように構成され、前記ハウジングは、縫合糸を扁平な形態に拘束するように構成され、及び開口を含み、その開口を通って、前記ハウジングから前記縫合糸が展開され得、前記縫合糸が中立の湾曲形態に移行し得るようにすること;
前記ハウジング内に配置された展開要素を近位に動かして前記縫合糸を前記ハウジングから部分的に展開させて、前記縫合糸の1組の脚が前記ハウジングの前記開口から出て湾曲して、前記グラフトの前記一部分及び前記血管に侵入するように、前記縫合糸送達システムの制御機構を1回以上操作すること;及び
前記展開要素を引き続き近位に動かして、前記縫合糸を前記ハウジングから十分に展開させて、前記脚とは反対側に延在する前記縫合糸のテールが、前記ハウジングの前記開口から出て湾曲して、前記縫合糸の前記1組の脚間に配置された材料に押し付けるようにして、前記グラフト及び前記血管を互いに対して保持するようにするために、前記制御機構を追加的に1回以上の操作すること
を含む、縫合糸送達方法。
【請求項47】
前記縫合糸送達システムの偏倚機構を拡張することであって、前記偏倚機構は、拡張時に、前記縫合糸送達システムのハウジングを、血管内に配置されたグラフトの一部分に押し付けるように構成され、前記ハウジングは、縫合糸を扁平な形態に拘束するように構成され、及び開口を含み、その開口を通って、前記ハウジングから前記縫合糸が展開され得、前記縫合糸が中立の湾曲形態に移行し得るようにすること;
前記縫合糸送達システムの制御機構が前記縫合糸送達システムの駆動システムと係合するようにする第1の位置にある、前記縫合糸送達システムのモード選択器を用いて、前記ハウジング内に配置された展開要素を近位に動かして、前記縫合糸を前記ハウジングから部分的に展開するために、前記制御機構を1回以上操作すること;
前記モード選択器を第2の位置に設定することに応答して、前記駆動システムから前記第2のアクチュエータを係合解除すること;及び
前記展開要素を遠位に動かして、前記縫合糸を前記ハウジング中へ戻るように引っ込めること
を含む、縫合糸送達方法。
【請求項48】
さらに:
前記偏倚機構を収縮させて、前記ハウジングが、前記血管内の新しいロケーションへ動かされ得るようにすること;
前記ハウジングが前記新しいロケーションへ動かされた後、前記偏倚機構を拡張させて、前記偏倚機構が前記ハウジングを前記グラフトの新しい部分に押し付けるようにすること;
前記モード選択器が前記第1の位置に設定されることに応答して、前記制御機構を前記駆動システムと係合すること;及び
前記縫合糸を前記ハウジングから十分に展開させるために、前記制御機構を1回以上操作すること
を含む、請求項47に記載の縫合糸送達方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年9月2日出願の米国仮特許出願第62/706,682号(表題「Remote Surgical Suture System」)の優先権を主張し、その開示全体を参照することにより本書に援用する。
【0002】
技術分野
[0002] 本開示は、概して、血管内デバイス及びその方法、特に血管内縫合糸送達システム及び血管疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 遠隔外科手術及び介入処置は、外傷及び開腹手術(open surgery)に予測される合併症を回避するために行われることが多い。例は、腹部大動脈瘤(AAA:abdominal aortic aneurysms)の治療、又はAAA血管内修復のために経皮的に配置されるグラフトであり、これにより、開腹手術による大動脈修復の重度の外傷(major trauma)を回避し得る。遠隔外科手術及び介入処置は、心臓、肝臓、腎臓などを含む主要臓器で行われ得る。低侵襲手術又は遠隔外科手術の他の例は、低侵襲の胃腸手術及び筋骨格手術である。
【0004】
[0004] しかしながら、開腹手術は、より良好な長期転帰をもたらし得、これは、部分的には、外科医が、所望の長期的結果を達成するためにグラフト及び他の材料を患者の血管に取り付けるために縫合糸を確実な方法で使用し得るためである。遠隔外科手術及び介入処置は、開腹手術を行うときに外科医が配置するような確実な縫合糸を模倣するようには、縫合糸の配置を達成できない場合がある。上述のAAAグラフトは、外科的に結ばれた縫合糸によって、患者が年を取って体が変化するにつれてグラフトと大動脈が互いに対して動かないようにすることを保証する例である。一般に適所で縫合されていない血管内グラフトによる合併症は、血管内漏出、動脈瘤不全のリスクの増加などを含み得る。同様の例が、上記でリストしたような体の他の領域における開腹手術と比較すると、しばしば、確実に縫合糸を配置することができないという同じ理由で、低侵襲遠隔外科手術に存在する。
【0005】
[0005] グラフトを適所に保持することを意図するデバイスのいくつかの例が存在する。一例は、グラフトのロケーションへ経皮的に送達され及び大動脈壁にグラフトを定着させる(anchor)ために使用され得る定着機構(anchoring mechanism)である。例えば、2012年4月17日発行の米国特許第8,157,146号(表題「Stapling Device」)、及び2014年1月14日発行の米国特許第8,627,992号(表題「Endovascular Stapler))には、グラフト及び大動脈と固定するためのステープルを送達するためのステープル送達デバイスの例が説明されている。しかしながら、そのようなデバイスは、それらの能力が、複数の定着機構又はステープルの送達に、及び定着機構が後退して出るのを防止するためにグラフトと大動脈を一緒にクランプする定着機構又はステープルの送達に、限定され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] それゆえ、しっかりと保持及びクランプでき、並びに複数個の縫合糸を送達できる、経皮的処置で配置され得るシステム、デバイス、及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
[0007] 本明細書で説明するシステム、デバイス、及び方法は、患者の血管にグラフト又は他の物体を固定するための縫合糸を送達するための血管内デバイスに関する。いくつかの実施形態では、縫合糸は:互いに接合された近位端部と、互いに平行に延在する長尺状の本体とを有する1組の2つの脚であって、1組の2つの脚はU字形状の構造を形成し、1組の脚は、グラフトの一部分及びグラフトの一部分に隣接する血管壁に侵入するように構成される尖ったチップで終端する遠位端部を有する、1組の2つの脚;U字形状の構造に結合されたテールであって、縫合糸は、テールが、2つの脚の長尺状の本体の方向とは反対の方向に延在する扁平な形態から、テール及び1組の2つの脚が湾曲している湾曲形態へ移行するように構成されており、縫合糸が湾曲形態にあるとき、1組の脚及びテールは、反対方向に力を加えるように構成されて、1組の脚及びテールは、グラフトの一部分及び血管壁を互いに対して保持するように構成される、テールを含む。
【0008】
[0008] いくつかの実施形態では、縫合糸送達システムは:扁平な形態で縫合糸を含むように構成されたハウジングであって、ハウジングは、ハウジングの内部から縫合糸を放出するための開口を画成して、縫合糸が、扁平な形態から湾曲形態へ自動的に移行し得る、ハウジング;ハウジング内に配置された、リボン状の遠位部分を有する展開要素であって、展開要素のリボン状の遠位部分は、縫合糸とインターフェースをとるように構成された1組の形成物(formations)を備える表面を有し、ハウジング及び展開要素の1組の形成物は、集合的に、縫合糸がハウジングの開口を通って放出されるまで、縫合糸を扁平な形態に拘束するように構成される、展開要素;及びハウジングに対して展開要素を動かして、ハウジングの開口から縫合糸を放出するように構成されたアクチュエータを含む。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態では、縫合糸送達システムは:扁平な形態で縫合糸を含むように構成されたハウジングであって、ハウジングは、ハウジングの内部から縫合糸を放出するための開口を画成して、縫合糸が、扁平な形態から湾曲形態へ自動的に移行し得るようにし、ハウジングは、縫合糸がハウジングの開口を通って放出されるまで、縫合糸を扁平な形態に少なくとも部分的に拘束する、ハウジング;ハウジング内に配置された遠位部分を有する展開要素であって、展開要素の遠位部分は、縫合糸とインターフェースをとるように構成された1つ以上の形成物を有する、展開要素;シャフトの周りに配置された偏倚機構であって、偏倚機構は、偏倚機構がハウジング及び展開要素の遠位部分に対してほぼ平行に延在する非展開形態と、縫合部位にハウジングを押し付ける非対称的な形状を形成するために、偏倚機構の一部分が、ハウジングから離れるような方向に外側へ撓む拡張形態との間を移行するように構成される、偏倚機構;及びハウジングから縫合糸を放出して縫合糸を縫合部位に展開するために、偏倚機構が展開形態にあるとき、ハウジングに対して展開要素を動かすように構成されたアクチュエータを含む。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態では、縫合糸送達方法は:縫合糸送達システムの偏倚機構を拡張させるために、縫合糸送達システムの第1の制御機構を操作することであって、偏倚機構は、拡張時に、縫合糸送達システムのハウジングを、血管内に配置されたグラフトの一部分に押し付けるように構成され、ハウジングは、縫合糸を扁平な形態に拘束するように構成され、及びハウジングから縫合糸が展開され得る開口を含んで、縫合糸が、中立の湾曲形態に移行し得るようにすること;ハウジング内に配置された展開要素を近位に動かして、縫合糸をハウジングから部分的に展開させて、縫合糸の1組の脚が、ハウジングの開口から出て湾曲して、グラフトの一部分及び血管に侵入するようにするために、縫合糸送達システムの第2の制御機構を1回以上操作すること;及び展開要素を引き続き近位に動かして、縫合糸をハウジングから十分に展開して、脚とは反対に延在する縫合糸のテールが、ハウジングの開口から出て湾曲して、縫合糸の1組の脚間に配置された材料に押し付けるようにして、グラフト及び血管を互いに対して保持するようにするために、第2の制御機構を追加的に1回以上操作することを含む。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態では、縫合糸送達方法は:縫合糸送達システムの偏倚機構を拡張させるために、縫合糸送達システムの第1の制御機構を操作することであって、偏倚機構は、拡張時に、縫合糸送達システムのハウジングを、血管内に配置されたグラフトの一部分に押し付けるように構成され、ハウジングは、縫合糸を扁平な形態に拘束するように構成され、及びハウジングから縫合糸が展開され得る開口を含み、縫合糸が、中立の湾曲形態に移行し得るようにすること;縫合糸送達システムの第2の制御機構が縫合糸送達システムの駆動システムと係合されるようにする第1の位置にある、縫合糸送達システムのモード選択器を用いて、ハウジング内に配置された展開要素を近位に動かして、縫合糸をハウジングから部分的に展開させるために、第2の制御機構を1回以上操作すること;モード選択器を第2の位置に設定することに応答して、第2の制御機構を駆動システムから係合解除すること;及び展開要素を遠位に動かして、縫合糸をハウジング中へ戻るように引っ込めることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な説明
図1】[0012]ある実施形態による、縫合糸を血管内に送達するための縫合糸送達システムの概略的なブロック図である。
図2】[0013]ある実施形態による縫合糸送達システムのカテーテル組立体の概略図である。
図3】[0014]ある実施形態による縫合糸送達システムのハンドル組立体の概略図である。
図4】[0015]ある実施形態による縫合糸の概略図である。
図5A】[0016]様々な実施形態による縫合糸の異なる例を示す。
図5B】[0016]様々な実施形態による縫合糸の異なる例を示す。
図5C】[0016]様々な実施形態による縫合糸の異なる例を示す。
図5D】[0016]様々な実施形態による縫合糸の異なる例を示す。
図5E】[0016]様々な実施形態による縫合糸の異なる例を示す。
図6A】[0017]ある実施形態による、異なる形態にある縫合糸送達システムのカテーテル組立体を概略的に示す。
図6B】[0017]ある実施形態による、異なる形態にある縫合糸送達システムのカテーテル組立体を概略的に示す。
図7A】[0018]ある実施形態による、縫合糸を血管内に送達するための例示的な縫合糸送達システムの側面図である。
図7B】[0019]ある実施形態による例示的な縫合糸送達システムの遠位部分の詳細な図である。
図8A】[0020]ある実施形態による、拡張した偏倚機構を有する例示的な縫合糸送達システムの側面図である。
図8B】[0021]ある実施形態による、拡張した偏倚機構を有する例示的な縫合糸送達システムの遠位部分の詳細な図である。
図9A】[0022]ある実施形態による縫合糸送達システムのハンドルの側面図である。
図9B】[0022]ある実施形態による縫合糸送達システムのハンドルの断面図である。
図10】[0023]ある実施形態による、近位ハンドル構成要素と遠位カテーテル構成要素との間の接続部を示す、縫合糸送達システムの概略図である。
図11A】[0024]ある実施形態による縫合糸送達システムのハンドルの斜視図である。
図11B】[0024]ハンドルの内部を示すために、いくつかのハウジング部分を図示しない、図11Aの縫合糸送達システムのハンドルの図である。
図11C】[0025]図11Aの縫合糸送達システムのハンドルの異なる要素の詳細な図である。
図11D】[0025]図11Aの縫合糸送達システムのハンドルの異なる要素の詳細な図である。
図11E】[0025]図11Aの縫合糸送達システムのハンドルの異なる要素の詳細な図である。
図11F】[0025]図11Aの縫合糸送達システムのハンドルの異なる要素の詳細な図である。
図12】[0026]ある実施形態による縫合糸送達システムの縫合糸前進及び引っ込め要素の斜視図である。
図13】[0027]ある実施形態による縫合糸送達システムの縫合糸前進及び引っ込め要素の遠位部分の詳細な図である。
図14A】[0028]ある実施形態による、図12~13に示す縫合糸前進及び引っ込め要素と一緒に使用され得る例示的な縫合糸の異なる図である。
図14B】[0028]ある実施形態による、図12~13に示す縫合糸前進及び引っ込め要素と一緒に使用され得る例示的な縫合糸の異なる図である。
図14C】[0028]ある実施形態による、図12~13に示す縫合糸前進及び引っ込め要素と一緒に使用され得る例示的な縫合糸の異なる図である。
図15】[0029]ある実施形態による縫合糸送達システムの縫合糸前進及び引っ込め要素の斜視図である。
図16】[0030]ある実施形態による縫合糸送達システムの縫合糸前進及び引っ込め要素の遠位部分の詳細な図である。
図17A】[0031]ある実施形態による、図15~16に示す縫合糸前進及び引っ込め要素と一緒に使用され得る例示的な縫合糸の異なる図である。
図17B】[0031]ある実施形態による、図15~16に示す縫合糸前進及び引っ込め要素と一緒に使用され得る例示的な縫合糸の異なる図である。
図17C】[0031]ある実施形態による、図15~16に示す縫合糸前進及び引っ込め要素と一緒に使用され得る例示的な縫合糸の異なる図である。
図18】[0032]実施形態による、縫合糸が配置されている縫合糸前進及び引っ込め要素の例である。
図19A】[0033]ある実施形態による縫合糸送達システムの偏倚機構の図である。
図19B】[0033]ある実施形態による縫合糸送達システムの偏倚機構の図である。
図19C】[0034]ある実施形態による縫合糸送達システムの偏倚機構アクチュエータの例を示す。
図20A】[0035]ある実施形態による、縫合糸送達システムからの縫合糸の放出の進行を示し、ここで、縫合糸は、システムの1つの側面から放出される。
図20B】[0035]ある実施形態による、縫合糸送達システムからの縫合糸の放出の進行を示し、ここで、縫合糸は、システムの1つの側面から放出される。
図20C】[0035]ある実施形態による、縫合糸送達システムからの縫合糸の放出の進行を示し、ここで、縫合糸は、システムの1つの側面から放出される。
図20D】[0035]ある実施形態による、縫合糸送達システムからの縫合糸の放出の進行を示し、ここで、縫合糸は、システムの1つの側面から放出される。
図20E】[0035]ある実施形態による、縫合糸送達システムからの縫合糸の放出の進行を示し、ここで、縫合糸は、システムの1つの側面から放出される。
図20F】[0035]ある実施形態による、縫合糸送達システムからの縫合糸の放出の進行を示し、ここで、縫合糸は、システムの1つの側面から放出される。
図21A】[0036]ある実施形態による、縫合糸送達デバイスからの縫合糸の放出の進行を示し、ここで、縫合糸は、システムの遠位端部から放出される。
図21B】[0036]ある実施形態による、縫合糸送達デバイスからの縫合糸の放出の進行を示し、ここで、縫合糸は、システムの遠位端部から放出される。
図21C】[0036]ある実施形態による、縫合糸送達デバイスからの縫合糸の放出の進行を示し、ここで、縫合糸は、システムの遠位端部から放出される。
図22】[0037]ある実施形態による縫合糸送達システムの例示的な遠位端部を示す。
図23】[0037]ある実施形態による縫合糸送達システムの例示的な遠位端部を示す。
図24】[0037]ある実施形態による縫合糸送達システムの例示的な遠位端部を示す。
図25A】[0038]ある実施形態による、接続された縫合糸の例を示す。
図25B】[0039]ある実施形態による、他の縫合糸に接続するための接続要素を備える縫合糸の詳細な図である。
図26A】[0040]ある実施形態による、接続された縫合糸の異なる図を示す。
図26B】[0040]ある実施形態による、接続された縫合糸の異なる図を示す。
図27A】[0041]ある実施形態による、縫合糸を配置するための例示的なプロセスのフローチャートを示す。
図27B】[0041]ある実施形態による、縫合糸を配置するための例示的なプロセスのフローチャートを示す。
図28A】[0042]ある実施形態による、縫合糸ハウジングの展開窓又は開口の近くに配置される縫合糸送達システムの支持要素の詳細な図を提供する。
図28B】[0042]ある実施形態による、縫合糸ハウジングの展開窓又は開口の近くに配置される縫合糸送達システムの支持要素の詳細な図を提供する。
図28C】[0042]ある実施形態による、縫合糸ハウジングの展開窓又は開口の近くに配置される縫合糸送達システムの支持要素の詳細な図を提供する。
図29】[0043]ある実施形態による縫合糸送達システムの例示的な縫合糸ハウジングを示す。
図30】[0044]ある実施形態による、縫合糸ハウジングから間違って出る縫合糸の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
[0045] 本明細書には、縫合糸を送達するためのシステム、デバイス、及び方法が説明されている。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるシステム、デバイス、及び方法は、大動脈の一部分とグラフトを結び付ける(例えば、縫合する)ために使用され得、内視鏡的スリーブ状胃形成術(endoscopic sleeve gastroplasty)の最中、腹腔鏡やロボットによるヘルニア修復の最中、又は任意の他の低侵襲外科手術の最中に縫合糸を配置する。
【0014】
[0046] いくつかの実施形態では、本開示で説明したデバイスは、グラフトと血管壁を互いに固定するために縫合糸を送達するように設計された介入医療デバイスである。場合によっては、グラフトは、患者の体内組織から形成され得、他の場合には、グラフトは、他の組織から組み換えて作られ(engineered)得る(例えば、プラスチック、ファブリック、又は縫合糸が侵入し得る他の好適な軟部及び柔軟組織)。例示的な実施形態では、血管内グラフトは、AAA修復のために大動脈に固定され得る。例えば、AAA修復の例示的な処置は、一般的に、大動脈の内部にグラフトを送達すること、その後、グラフトを適所に固定して、血流用の安定したチャンネルを形成することを含む。グラフトが適所になった後、開示のデバイスは、隣接する血管壁にグラフトを固定するために、グラフトの部位へ複数個の縫合糸を送達するために使用され得る。
【0015】
[0047] 図1は、実施形態による、患者の体内に縫合糸110を配置するための例示的な縫合糸送達システム100の概略図である。縫合糸110は、カテーテル組立体130を経由して患者の体の一部分中へ送達され得る。いくつかの実施形態では、カテーテル組立体130の遠位部分は、縫合を必要とする体のある領域(例えば、グラフトが、患者の大動脈などの血管壁に固定される必要がある領域)へ導かれ得る。カテーテル組立体130の遠位部分はガイドワイヤによって導かれ得る。例えば、カテーテル組立体130は、ガイドワイヤを受け入れ得るガイドワイヤルーメン(図示せず)を画成し、且つガイドワイヤに沿って縫合部位まで導かれ得る。その代わりに又はそれに加えて、カテーテル組立体130の遠位部分は、アクセス又はイントロデューサシースを経由して縫合部位まで導かれ得る。例えば、アクセスシースは、患者の脈管構造内に配置され得、及びカテーテル組立体130の遠位部分は、アクセスシースを通って縫合部位まで前進させられ得る。カテーテル組立体130の遠位部分は、組織及び/又は他の材料(例えば、大動脈及びグラフト)を結び付けるか又は互いに固定するために縫合を必要とする縫合部位又は領域に縫合糸を放出するように構成され得る。図1に示すように、カテーテル組立体130は、縫合糸110を含むように構成された縫合糸ハウジング134を含み得る。縫合糸ハウジング134は、縫合糸110を内部に拘束し得(例えば、下記でさらに説明するように、扁平な状態などの第1の状態に)且つ縫合糸110を放出するための好適な展開窓又は開口を含み得るエンクロージャを形成する。縫合糸ハウジング134のエンクロージャは、縫合糸110を含むための任意の好適な形を有し得る。いくつかの実施形態では、縫合糸ハウジング134は、長尺状の形状を有し得、及びその断面領域は、長方形、四角形、台形、円形などとし得る又は実質的にそうとし得る。
【0016】
[0048] 縫合糸110は、組織と他の材料を一緒にクランプするように構成され得る。例えば、縫合糸110は、組織と他の材料を一緒にクランプする、相反する力を加えるか、又はそのような組織及び他の材料に締め付け効果を生み出す、異なる部分を含み得る。様々な実施形態では、縫合糸110は、縫合糸ハウジング134から放出されるときに、形状が変わる(例えば、曲がる及び/又は折り重なる)ように構成される。換言すると、縫合糸110は、縫合糸が縫合糸ハウジング134から放出されるときに、第1の形態から第2の形態へ移行するように構成され得る。第1の形態は、拘束形態、例えば、扁平な形態などとし得る。第2の形態は、中立又は展開形態、例えば、湾曲形態などとし得る。場合によっては、縫合糸110は、縫合糸110が縫合糸ハウジング134から放出されるときに、展開形態へ自動的に又は自然発生的に移行するように構成され得る。例えば、縫合糸110は、形状記憶材料又は超弾性材で形成され得るため、縫合糸ハウジング134から放出されている間に中立状態(例えば、湾曲状態)へ戻るように構成され得る。或いは、場合によっては、縫合糸110のそれらの展開形態への移行を容易にするか又は引き起こすために、力及び/又はトルクが縫合糸110に加えられ得る。例示的な形状記憶材料又は超弾性材は、金属、例えばニッケル-チタン合金(ニチノール(Nitinol))、ステンレス鋼、Elgiloyすなわちコバルト合金、プラスチック、又は扁平にされるのに所望の可撓性及び強度を有し並びに縫合糸ハウジング134から放出されると所望の状態へ形を変えて(reform)異なる材料又は組織を効果的に一緒にクランプできる当業界で公知の他の材料とし得る。例示的な実施形態では、ニチノール50(Ni0.5Ti0.5)、ニチノール60(Ni0.4Ti0.6)、又はNi1-xTiによって説明される他の組成のニチノールが使用されてもよい。場合によっては、縫合糸110は、プラスチック、金属、又はプラスチック材料及び/又は金属材料の組み合わせから作製され得る。いくつかの実施形態では、下記でさらに説明するように、縫合糸110は、コーティング、例えば放射線不透過性のコーティング、又はマーカーを含み得る。縫合糸110の様々な実施形態については、図4~5Eを参照して下記でさらに説明する。
【0017】
[0049] カテーテル組立体130は、さらに、縫合糸前進/引っ込め要素(SARE:suture advancement/retraction element)すなわち縫合糸展開要素132を含む。縫合糸の前進の一部として、SARE132は、縫合糸ハウジング134から縫合糸110を放出するように構成される。いくつかの実施形態では、SARE132は、縫合糸ハウジング134に設けられた展開窓(例えば、開口)の方へ向かって縫合糸を動かし且つ縫合糸を展開窓から押し出すことによって、縫合糸110のそれぞれを放出するように構成される。縫合糸を引っ込めることの一部として、SARE132は、部分的に縫合糸ハウジング134中へ戻るように放出される縫合糸を引っ込めるように構成される。いくつかの実施形態では、SARE132は、縫合糸ハウジング134の展開窓から離れるように縫合糸を動かすことによって、縫合糸を引っ込め得る。いくつかの実施形態では、SARE132は、縫合糸ハウジング134内で摺動させる(例えば、前進させたり引っ込めたりする)ことによって、縫合糸134を動かすように構成され得る。例えば、SARE132の遠位部分は、ハウジング134内に配置され、及び縫合糸110を動かすためにハウジングに対して摺動するか又は動くように構成され得る。SARE132を使用する縫合糸ハウジング134からの縫合糸110の前進及び引っ込めのさらなる詳細について下記で説明する。さらに、SARE132の様々な実施形態についても下記で説明する。
【0018】
[0050] いくつかの実施形態では、SARE132は、少なくとも扁平な形状を有する領域を備える長尺状の構造として実現され得る。例えば、SARE132は、リボン状の構造を有し得るか、又はリボン状の構造を有する、縫合糸110(例えば、遠位部分)を受け入れる部分を有し得る。いくつかの実施形態では、SARE132は、スレッド(sled)、例えば、長方形の断面領域を有する長尺状の条片として実現され得る。SARE132は、縫合糸134のそれぞれの部分を受け入れるように構成される複数の形成物を含み得る。いくつかの実施形態では、複数の形成物は繰り返しパターンを有し得、サブセット又は形成物が、個々の縫合糸を受け入れるように構成されるようにする。いくつかの実施形態では、複数の形成物は、縫合糸110の一部分を受け入れてそれとインターフェースをとるためにリッジ、刻み目、溝、チャンネル、カナル(canal)、又は任意の他の好適な構造を含み得る。いくつかの実施形態では、縫合糸110は、SARE132の一部分の長さに沿って、例えば、複数の形成物が配置されるSARE132の遠位部分に沿って、連続的に(例えば、列をなして)配置され得る。SARE132及び縫合糸ハウジング134は集合的に、縫合糸110を第1の形態(例えば、扁平な形態)に拘束するように構成され得る。いくつかの実施形態では、SARE132は、例えば、自然な湾曲状態へ戻る縫合糸110の自然な湾曲又は反り(warping)を最小限にするか又は減らすために、その全長に沿って各縫合糸110とインターフェースをとるように構成され得る。認識され得るように、湾曲形態に記憶固定(memory set)されているが、縫合糸ハウジング134内で扁平な状態に拘束されている縫合糸110は、それらの湾曲形態へ戻る傾向を有し得る(例えば、捩じれ又は反りによって)。そのようなものとして、SARE132は、縫合糸の意図しない動きを減らすために、縫合糸の複数の部分を受け入れて半径方向に拘束するように構成される複数の形成物を備えて設計され得、それにより、それら縫合糸の複数の部分が、ハウジング134の展開窓に対して実質的に垂直に縫合糸ハウジング134から出ることを保証する。縫合糸の半径方向の拘束のさらなる詳細が、図13及び図16を参照して提供される。
【0019】
[0051] カテーテル組立体130は、さらに、カテーテル組立体130の遠位端部に位置するイントロデューサチップ138を含む。イントロデューサチップ138は、カテーテル組立体130の導入、及び患者の脈管構造を通って、縫合を必要とする患者の領域までのナビゲーションを容易にするように構成された、非外傷性の構造とし得る(例えば、実質的に円錐形、球形、又は他の非外傷性の形状を有する)。いくつかの実施形態では、イントロデューサチップ138は縫合糸ハウジング134の遠位端部に結合され得る一方で、SARE132の遠位端部は、ハウジング134内で自由に動く(free floating)とし得る。そのようなものとして、下記でさらに説明するように、イントロデューサチップ138、ハウジング134、及び/又はカテーテル組立体130の他の構成要素が、例えば、偏倚機構136によって、患者の体内の適所に定着されるか又は保持されると、SARE132は、ハウジング134に対して動く又は摺動するように構成され得る。
【0020】
[0052] カテーテル組立体130はまた、偏倚機構136を含む。偏倚機構136は、形状が変わる(例えば、拡張する)ように構成される。換言すると、偏倚機構136は、偏倚機構136がカテーテル組立体130の長手方向軸に対して全体的に又は実質的に平行に延在し得る第1の非展開形態から、偏倚機構136が長手方向軸から外側へ撓む(bows)第2の展開又は拡張形態まで移行するように構成され得る。いくつかの実施形態では、偏倚機構136は、例えばグラフトなどの材料を、組織の一部分、例えば血管壁(例えば、大動脈壁)に押し付けるように展開され得る。偏倚機構136は、縫合糸110を含むハウジング134の一部分をグラフト及び組織壁に押し付け、縫合糸110が展開され得るハウジング134の窓がグラフトに押し付けられるようにするように構成され得る。縫合糸110を展開するためのハウジング134及び窓のそのような配置は、縫合糸送達システム110が、窓を通して縫合糸を展開又は送達することができるようにし得、縫合糸がグラフト及び血管壁に直接接触し、且つそれらに侵入し得るようにする。それらが展開されるときの縫合糸のさらなる詳細、及び縫合糸がどのように組織にクランピング効果又は締め付け効果を生み出すかについては、後で図面を参照して説明する。
【0021】
[0053] 例示的な実施形態では、偏倚機構136は、血管又は体腔(例えば、大動脈、グラフト、又は任意の他の好適な血管又は体腔)に挿入され得、及び偏倚機構136が縫合用の材料の一部分に直接接触するように、拡張され得る。その拡張形態にある偏倚機構は、それ自体及びそれに結合された他の構成要素を患者の解剖学的構造内の適所に固定するために、血管又は体腔の壁に押し付けるように構成され得る。そのような固定又は定着は、カテーテル組立体130の遠位部分及び/又はカテーテル組立体130の遠位部分にある様々な構成要素が、縫合処置の最中に動かないようにすることを保証し得る。例えば、偏倚機構136は、イントロデューサチップ138に結合され得、これはまた、縫合糸ハウジング134に結合され得る。そのようなものとして、偏倚機構136の拡張は、グラフト又は血管壁に対してイントロデューサチップ136及び縫合糸ハウジング134を適所に維持し得る。その後、SARE134は、縫合糸ハウジング134から縫合糸を展開するために、縫合糸ハウジング134内を動き得る(例えば、摺動する)。場合によっては、偏倚機構136は、カテーテル組立体130の遠位部分が患者の解剖学的構造に対して動くことを可能にするために、非展開状態にされ得る(例えば、その非拡張状態へ戻る)。いくつかの実施形態では、偏倚機構136は、複数のワイヤで形成された拡張可能なメッシュ又はバスケットとして実現され得る。いくつかの実施形態では、複数のワイヤは、ステンレス鋼などの金属材料で形成され得るが、他の実施形態では、複数のワイヤは、可撓性ポリマー又はプラスチックで形成され得る。いくつかの実施形態では、偏倚機構136はバルーンとして実現され得る。いくつかの実施形態では、偏倚機構136は、内側又は他のシャフトを他方に対して動かすことによって、展開され得る。例えば、偏倚機構136の遠位端部は内側シャフトに結合され得、及び偏倚機構136の近位端部は外側シャフトに結合され得る。そのため、内側又は外側シャフトの他方に対する動きによって、偏倚機構136を展開させる、すなわち、偏倚機構をその非拡張形態からその拡張形態へ移行させ得る。いくつかの実施形態では、縫合糸送達システム100の近位端部には(例えば、ハンドル組立体140内に)マークが設けられ得、これは、外科医に、偏倚機構136の拡張の度合又は程度に関する手引きを提供する。いくつかの実施形態では、偏倚機構136は、約5mm~約60mm(それらの間の全ての値及び部分的な範囲を含む)の最大直径を有する構造へと拡張するように構成され得る。偏倚機構136の他の詳細及び実施形態について下記でさらに説明する。
【0022】
[0054] 様々な実施形態によれば、及び図1に示す開示の実施形態と一致して、カテーテル組立体130の様々な動作は、ハンドル組立体140を使用することにより医療専門家(例えば、外科医)によって制御される。例えば、外科医は、SARE132を介して縫合糸110を展開する及び/又は引っ込めるために、偏倚機構136を展開する、部分的に展開する、若しくは収縮させるために、又は患者の体内の新しい位置へカテーテル組立体130を動かすために、ハンドル組立体140の複数の要素を操作(operate)し得る。場合によっては、ハンドル組立体140を操作する外科医によって導かれるカテーテル組立体130の動作は、外科的処置の最中に取得したイメージングに基づき得る。例示的な実施形態では、イメージングは、患者の体内のグラフト及び/又は組織を通して縫合糸110が適切に配置されているかどうかを決定するために、又は外科的処置に影響を与え得る任意の関連の事象(例えば、内出血、組織の間違った折り重なり、組織の破裂など)を観察するために、使用され得る。外科的処置の最中に、任意の好適なイメージングが使用され得る。例えば、超音波イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)システムを使用するイメージング、又は内部に配置されたカメラや光学機器を使用するイメージングが使用され得る。図示しないが、いくつかの実施形態では、システム110は、偏倚機構の展開及び/又は個々の縫合糸の展開の画像又は映像を撮るように位置決めされる撮像デバイスを含み得る。
【0023】
[0055] ハンドル組立体140は縫合糸展開駆動システム(SDDS:suture deployment drive system)142を含む。いくつかの実施形態では、SDDS142は、SARE132を動かすための好適な機構を含み得る。例示的な実施形態では、好適な機構は、SARE132と動作可能に結合された展開レバー(DL:deployment lever)とし得る。DLの動きによって、SARE132の動きを制御し、及び、その結果、患者の体内に位置する組織への又はそこからの縫合糸110の展開及び/又は引っ込めを制御し得る。いくつかの実施形態では、SDDS142は、SARE132を動かすために操作され(manipulated)得る(例えば、押し下げられる、摺動される、又は他の方法で動かされる)ボタン又は他の制御機構を含み得る。いくつかの実施形態では、SDDS142は、ハンドル組立体140の外側ハウジングに結合され得、及びハンドル組立体140の外側ハウジングは、例えば、1つ以上の接続要素(例えば、シャフト、締結具、接合部など)によって、SARE132に結合され得る。展開駆動システム142の様々な実施形態について下記でさらに説明する。
【0024】
[0056] ハンドル組立体140は、さらに、偏倚機構136の拡張/収縮を制御するように構成された偏倚機構アクチュエータ144を含む。例示的な実施形態では、偏倚機構アクチュエータ144は、偏倚機構136を展開させるために動かされ得る(例えば、摺動される)スライダー又は他の好適な構成要素(例えば、ボタン、ホイールなど)を含み得る。いくつかの実施形態では、ハンドル組立体140は、スライダーが前進した距離を示すマークを含み得、これは、偏倚機構136が拡張した度合又は量に対応し得るか又はそれと関連付けられ得る。例えば、マークは、偏倚機構136が、直径約5ミリメートル(mm)、約10mm、約15mm、約20mm、約25mm、約30mm、約35mm、約40mm、約45mm、約50mm、約55mm、又は約60mm(それらの間の全ての値及び範囲を含む)を有するまで拡張したときを、示し得る。偏倚機構アクチュエータ144の様々な実施形態について下記で後の図面を参照して説明する。
【0025】
[0057] 図2は、実施形態による、縫合糸送達システムのカテーテル組立体230の例を示す。カテーテル組立体230は、例えばカテーテル組立体130を含む、本明細書で説明する他のカテーテル組立体と構造的及び/又は機能的に同様である構成要素を含み得る。例えば、カテーテル組立体230は、イントロデューサチップ238、偏倚機構236、SARE232、縫合糸ハウジング234、SARE232に配置された1組の縫合糸210、及び縫合糸ハウジング234に配置された展開窓233を含む。さらに、カテーテル組立体230は、SARE232、偏倚機構236及び/又はカテーテル組立体230の他の構成要素を、縫合糸送達デバイスの近位端部に配置されたアクチュエータ及び/又は駆動構成要素に結合するために使用され得る1つ以上のシャフト231、235を含む。カテーテル組立体230はまた、シャフト231、235及び/又はカテーテル組立体230の他の構成要素を受け入れるためのルーメンを画成する外側シース220又はカテーテル220を含み得る。
【0026】
[0058] いくつかの実施形態では、偏倚機構236は、イントロデューサチップ238に結合された遠位端部と、シャフト235に結合された近位端部とを含み得る。いくつかの実施形態では、シャフト235は偏倚機構236に直接取り付けられてもよいが、他の実施形態では、シャフト235は、1つ以上の他の構成要素を介して偏倚機構236に結合され得る。同様に、いくつかの実施形態では、イントロデューサチップ238は偏倚機構236に直接取り付けられ得るが、他の実施形態では、イントロデューサチップ238は、1つ以上の他の構成要素を介して偏倚機構236に結合され得る。例えば、特定の実施形態では、イントロデューサ238は、追加的なシャフト(例えば、シャフト235のルーメン内に配置されるシャフト、すなわち内側シャフト)の遠位端部に結合され得、及び偏倚機構236の遠位端部は、この追加的なシャフトに結合され得る。いくつかの実施形態では、シャフト235がイントロデューサチップ238の方へ向かって動くとき、シャフト235の遠位端部とイントロデューサチップ238との間の距離は短くなるため、偏倚機構236の遠位端部と近位端部との間の距離が短くなる。そのような動きによって、偏倚機構236を非拡張形態から拡張形態へ移行させ得る。この例示的な実施では、偏倚機構236は、互いに織られているか又は交互に重ねられている複数のワイヤで形成された、拡張可能なメッシュ、例えば、ワイヤケージ、バスケット、又は他のメッシュ様の構造である。ワイヤは、任意の好適な材料、例えば、ニチノール、ステンレス鋼、Elgiloy又はコバルト合金、プラスチック、又は所望の可撓性及び強度を有する当業界で公知の他の材料などで形成され得る。いくつかの実施形態では、偏倚機構236は、偏倚機構236の遠位端部と近位端部との間の距離次第で、異なる量だけ拡張され得る。シャフト235は、多くても最大距離だけ、イントロデューサチップ238の方へ向かって動くように構成され得るため、偏倚機構236の最大標的拡張を生じる。いくつかの実施形態では、偏倚機構236は、その最大拡張状態において、約20mm、約30mm、約40mm、約50mm、約60mm、約75mm、又は約100mmの直径(それらの間の全ての値及び範囲を含む)を有し得る。場合によっては、シャフト235は、1組の別個の位置へ動くように構成され得(例えば、1組の別個の位置でロックするように構成される)、これにより、偏倚機構236のための1組の別個の拡張形状又はサイズを生じる。或いは、シャフト235は、初期位置(例えば、非拡張偏倚機構236に対応する)から最も遠い位置まで連続的に動く(すなわち、最大標的距離だけ動く)ように構成され得る。例示的な実施形態では、下記でその後の図面を参照してさらに説明するように、シャフト235の動きは、外科医によってスライダーにより制御される。
【0027】
[0059] 場合によっては、偏倚機構236は、第1の形状及び第1の拡張体積を有する第1の形態まで拡張し得、並びに第2の形状及び第2の拡張体積を有する第2の形態まで拡張し得る。いくつかの実施形態では、第1の拡張体積は、第2の拡張体積よりも大きいとし得る。いくつかの実施形態では、第1の形状は第2の形状とは異なってもよい。例示的な実施形態では、下記にさらに示すように、第1の形状又は第2の形状の少なくとも一方は、偏倚機構236の中心軸に対して対称でなくてもよい。いくつかの実施形態では、偏倚機構236は、非対称的な構造又は形状に拡張してもよく、例えば、そこでは、ハウジング234から見て外方を向く偏倚機構236の側は、外側へ(例えば、ハウジング236から見て外方に)拡張するように構成される一方で、ハウジング234に対面する偏倚機構236の側は、真っすぐなまますなわち拡張されないままとなるように構成される。そのような実施形態では、ハウジング234に対面する偏倚機構236の側は、ハウジング234と全体的に同一平面上にあり及び/又はそれに対して平行に延在し得、偏倚機構236が、拡張時に、ハウジング234を著しく変形させる(例えば、湾曲させたり又は曲げたりする)ことなく、ハウジング234をグラフト材料及び/又は組織の一部分に押し付けるようにする。或いは、いくつかの実施形態では、偏倚機構236は、その中心軸に対して対称的に拡張するように構成され得る。
【0028】
[0060] いくつかの実施形態では、シャフト235は、偏倚機構236に結合されなくてもよいが、偏倚機構236を覆うシースとして実現され得る。そのため、シースは、偏倚機構236をシースから出して拡張させるか又はシース中へと引っ込めることをそれぞれ可能にするために、引っ込められたり又は前進させられたりし得る。いくつかの実施形態では、偏倚機構236は、シャフト235内に配置された長尺状の要素(例えば、シャフト又はロッド)に結合されてもよく、及びシャフト235は、この長尺状の要素に対して動くように構成され得る。そのような実施形態では、偏倚機構236は、シャフト235がカテーテル組立体230の遠位端部から離れる方向(すなわち、イントロデューサチップ238から離れる方向)に動かされるときに、自己拡張する(例えば、形状記憶又は超弾性材から形成されているために)ように構成された拡張可能なメッシュとし得る。場合によっては、偏倚機構236に対するシャフト235の位置次第で、偏倚機構236は、十分に拡張されても(例えば、シャフト235が、カテーテル組立体230の遠位端部から離れるように十分に引っ込められるか若しくは最大限動かされるとき)、十分に収縮されても(例えば、シャフト235が、カテーテル組立体230の遠位端部の方へ向かって十分に展開されるか若しくは最大限動かされるとき)、又はBAS235が部分的に引っ込められる(又は、換言すると、部分的に展開される)ときに部分的に拡張されてもよい。拡張可能なメッシュである偏倚機構236のこの例示的な実施では、メッシュは、任意の好適な形状記憶材料、例えばニチノール、ステンレス鋼などから形成され得る。
【0029】
[0061] 拡張したメッシュとして形成された偏倚機構236は、偏倚機構236を実施するための1つの取り得る説明に役立つ方法であり、及び様々な他の実施法が使用されてもよいことが認識され得る。例えば、偏倚機構236は、任意の好適な流体(例えば、気体又は液体、例えば食塩水)を使用して膨張され/しぼませられ得る、拡張可能なバルーンとし得る。
【0030】
[0062] 図2は、さらに、展開窓又は開口233を含む縫合糸ハウジング234を示す。偏倚機構236が拡張されると、偏倚機構236は、ハウジング234の一部分をグラフト及び/又は組織の一部分に押し付けるように構成される。特に、偏倚機構236は、拡張時に、ハウジング234の展開窓233がグラフト及び/又は組織に押し付けられるようにするように構成され得る。展開窓233は、そこを通して、1個以上の縫合糸210がハウジング234内から展開されるようにし得る。縫合糸は、ハウジング234の窓233から、1度に1個が前進させられ得る。縫合糸が展開される度に、偏倚機構236は、非展開又は非拡張状態にされ得、及びカテーテル組立体230は、ハウジング234がグラフト及び/又は組織の異なる領域に位置するように、動かされる。そのため、偏倚機構236は、ハウジング234をグラフト及び/又は組織の新しい領域に押し付けるために、再度拡張又は展開され得る。いくつかの実施形態では、ハウジング234は、少なくとも1個の縫合糸、少なくとも2個の縫合糸、少なくとも3個の縫合糸、少なくとも4個の縫合糸、少なくとも5個の縫合糸、少なくとも6個の縫合糸、少なくとも7個の縫合糸、少なくとも8個の縫合糸、少なくとも9個の縫合糸、又は少なくとも10個の縫合糸を、それらの間の全ての値及び範囲を含め、収納する又は含むように構成され得る。例示的な実施形態では、ハウジング234は、1~4個の縫合糸を収納する又は含むように構成され得る。
【0031】
[0063] 図2に示す例示的な実施形態では、SARE232はハウジング234内に配置され得る。SARE232は、シャフト231に取り付けられる近位端部を有し得る。使用中、シャフト231の動きによってSARE232の動きを引き起こして、縫合糸210を展開及び/又は引っ込めさせるようにSARE232が制御され得るようにする。いくつかの実施形態では、縫合糸210は、窓233に対して遠位であるハウジング234の遠位部分内に配置され得、各縫合糸210が、展開窓233を通して縫合糸を展開するように引かれ得るようにする。そのような実施形態では、シャフト231及びSARE232は、縫合糸210を展開するために、近位に(すなわち、イントロデューサチップ238から離れるように)動かされ得、及び縫合糸210をハウジング234中へ戻るように引っ込めさせるために、遠位に(すなわち、イントロデューサチップ238の方へ向かって)動かされ得る。或いは、他の実施形態では、SARE232は、縫合糸210を展開させるために、イントロデューサチップ238の方へ向かって動かされても及び/又は縫合糸210を引っ込めさせるために、イントロデューサチップ238から離れるように動かされてもよい。
【0032】
[0064] 図2に示す開示の実施形態と一致して、SARE232は、縫合糸ハウジング234内で動き得る。図1を参照して説明したように、縫合糸210は、扁平な形態に保持され得、及び下記でさらに説明するように、SARE232の表面に配置された形成物内に受け入れられ得る。SARE232及びハウジング234は集合的に、縫合糸210をそれらの扁平な形態に拘束し得る。縫合糸210は、縫合糸ハウジング234内に格納されているとき、弾性応力を受け得る。縫合糸(又は縫合糸の少なくとも一部分)が展開窓233と位置合わせし且つ展開窓233を通って展開されるようにSARE232が動くとき、縫合糸は、展開窓から出るときに自動的に湾曲してもよい(例えば、曲がる)。縫合糸放出のプロセスを示す例示的な実施形態は、下記で図20A~20Fを参照してさらに説明される。
【0033】
[0065] カテーテル組立体230は、さらに、例えば、カテーテル組立体230の挿入及び/又はナビゲーションのために滑らかなプロファイルを提供するように、要素231~236の少なくともいくつかの部分を囲む又は受け入れるように構成された外側シース220を含む。いくつかの実施形態では、外側シース220は、例えば、カテーテル組立体230の遠位端部にある1つ以上の構成要素(例えば、縫合糸ハウジング、偏倚機構、SAREなど)を覆うために、カテーテル組立体230の遠位部分に対して動くように構成され得る。そのようなものとして、外側シース220は、体内へのカテーテル組立体230の初期の送達の最中にSARE、偏倚機構、及び他の遠位の構成要素を覆い得、且つ偏倚機構及びSAREの作動前に引っ込められ得る、引っ込め可能なシースとし得る。いくつかの実施形態では、シャフト231、235は、シース220内に同心円状に配置され得る。例えば、シャフト235は、シャフト231のルーメン内に配置され得る、又は逆も同様である。
【0034】
[0066] 使用中、縫合糸210は、偏倚機構236が拡張された後、展開されるように構成され得る。偏倚機構236は、拡張時に、ハウジング234及びカテーテル組立体230の他の構成要素をグラフト及び/又は血管内の適所に定着させ得るか又は保持し得る。偏倚機構236によってもたらされる定着は、縫合糸送達システムのSARE232及び/又は他の構成要素が作動されるときに変化しない正確なロケーションに縫合糸210が展開されることを保証し得る。いくつかの実施形態では、縫合糸210は、偏倚機構236が適切に拡張されるまで、展開を防止されてもよい。例えば、ロッキング機構は、偏倚機構236が適切に拡張されるまで、縫合糸210の展開を防止するために使用され得る。そのようなロッキング機構は、図3を参照してさらに説明されるように、モード選択器によって実施され得る。いくつかの実施形態では、ロッキング機構は、偏倚機構236の展開に応答して、例えば、シャフト235が少なくとも最小又は事前設定距離前進して偏倚機構を少なくとも部分的に展開させることに応答して、縫合糸展開制御機構を解放するように構成され得るインターロックとし得る。
【0035】
[0067] 図3は、実施形態による、縫合糸送達システムのハンドル組立体340の例を示す。ハンドル組立体340は、本明細書で説明する他のハンドル組立体、例えば、ハンドル組立体140などと構造的及び/又は機能的に同様である構成要素を含み得る。ハンドル組立体340は、本明細書で説明するカテーテル組立体、例えば、カテーテル組立体130及び/又は230などのいずれかとし得るカテーテル組立体330に結合され得る。ハンドル組立体340は、ハンドルハウジング349を含み得る。ハンドルハウジング349は、縫合糸展開駆動システム342、縫合糸展開制御機構343、並びに任意選択的に形態341A~341Cを有するモード選択システム又はモード選択器341及び/又は縫合糸個数選択機構(SNSM:suture number selection mechanism)345を収納又は支持し得る。ハンドル組立体340はまた、偏倚機構アクチュエータ344を含み得る。
【0036】
[0068] 縫合糸展開制御機構343及び縫合糸展開駆動システム342は、医療専門家(例えば、外科医)が、例えば、グラフト及び/又は患者の組織を通す縫合糸の展開を制御することを可能にする。例示的な実施形態では、外科医は、縫合糸展開制御機構343によって縫合糸の展開を制御する。縫合糸展開制御機構343は、例えば、レバー、ボタン、ホイール、スライダーなどのような任意の好適なトリガー又は起動デバイスとし得る。縫合糸展開制御機構343が縫合糸展開駆動システム342に結合され、及び操作又は作動される(例えば、押し下げられる又は前後に動かされる(pumped))と、縫合糸展開駆動システム342は、カテーテル組立体のSARE又は縫合糸展開要素(例えば、スレッド又はリボン状の構造として実現され得るSARE232)を動かして、縫合糸を、カテーテル組立体の縫合糸ハウジング(例えば、縫合糸ハウジング234)から出して前進させる。上述の通り、縫合糸展開要素は、縫合糸ハウジング内に部分的に配置され得、及び1個以上の縫合糸とインターフェースをとり得る。いくつかの実施形態では、縫合糸展開制御機構343の操作によって、ハンドル組立体340の第1の部分をハンドル組立体340の第2の部分に対して動かし得る。ハンドル組立体340の第1の部分は、カテーテル組立体の縫合糸展開要素に結合され得る一方で、ハンドル組立体340の第2の部分は、カテーテル組立体の縫合糸ハウジングに結合され得る。そのようなものとして、ハンドル組立体340の第2の部分に対するハンドル組立体340の第1の部分の動きによって、カテーテル組立体の縫合糸展開要素を縫合糸ハウジングに対して動かし得る。いくつかの実施形態では、縫合糸展開制御機構343の操作は、縫合糸ハウジングに対して縫合糸展開要素を近位(すなわち、ハンドル組立体340の方へ向かう方向)に動かし得、及び縫合糸ハウジングの縫合糸展開窓の遠位に位置決めされた縫合糸は、展開するために、縫合糸展開窓の方へ向かって近位に引かれ得る。
【0037】
[0069] いくつかの実施形態では、個々の各縫合糸は、複数の段階で縫合糸ハウジングから放出され得る。例えば、縫合糸展開制御機構343の各操作又は作動(例えば、レバー、ボタン、又は他の制御機構の各前後の動き(pump)又は押し下げ)によって、縫合糸は、部分的な量だけ、縫合糸ハウジングの縫合糸展開窓から出るように前進され得、例えば、展開窓233から部分的に放出され得る。一連の作動後、縫合糸は十分に展開され得る。十分に展開される前、外科医は、縫合糸の展開を逆にし得る(例えば、縫合糸を引っ込める)。展開駆動システム342、及び縫合糸展開制御機構343の動作のさらなる詳細について下記で説明する。
【0038】
[0070] いくつかの実施形態では、モード選択システム又はモード選択器341は、縫合糸展開制御機構343との展開駆動システム342の結合を決定する。モード選択システム341は、使用者が、展開駆動システム342との縫合糸展開制御機構343の係合と、展開駆動システム342からの縫合糸展開制御機構343の係合解除との間を切り替えることを可能にする。いくつかの実施形態では、縫合糸展開制御機構343は、モード選択システム341を介して展開駆動システム342のラチェット又はラチェットチューブへ係合及び/又はそこから係合解除され得る駆動要素(例えば、駆動用クラスプ)を含み得る。モード選択器は、使用者が:縫合糸展開制御機構343を閉鎖形態又は位置にロックし、及びその作動(例えば、押圧する又は押すこと)を防止する、「P」モードと説明のために特定される第1のモード(第1の形態341Aに対応する)と;縫合糸を送達するために、縫合糸展開制御機構343を展開駆動システム342と係合する、「D」モードと説明のために特定される第2のモード(第2の形態341Bに対応する)と;及び縫合糸展開制御機構343を展開駆動システム342から係合解除する、「N」モードと説明のために特定される第3のモード(第3の形態341Cに対応する)との間で切り替えることを可能にする。「N」モードでは、駆動システム342から係合解除されている縫合糸展開制御機構343は、使用者が、例えば、縫合糸ハウジングに結合されるハンドル組立体340の第2の部分に対して、縫合糸展開要素に結合されるハンドル組立体340の第1の部分を動かすことによって、縫合糸を縫合糸ハウジング中へ戻るように引っ込めることができるようにする。使用中、モード選択器341は、使用者が縫合糸の予想外の展開を防止したいときに、例えば、カテーテル組立体の挿入、ナビゲーション、及び/又は再配置中に、「P」モードに設定され得る。モード選択器341は、使用者が1個以上の縫合糸を展開したいときに、「D」モードに設定され得る。及びモード選択器341は、使用者が1個以上の縫合糸を引っ込めたいときに、「N」モードに設定され得る。モード選択システム341のさらなる実施形態について下記で説明する。
【0039】
[0071] 任意選択的に、いくつかの実施形態では、縫合糸送達デバイスの縫合糸ハウジングは、数個の縫合糸(例えば、2個、3個、4個、5個など)を収納し得る。いくつかの実施形態では、ハンドル組立体340は、複数個の縫合糸の展開中に、1個の縫合糸を次の縫合糸から割り出す(index)ように構成されるSNSM345を含み得る。例えば、ハンドル組立体340は段付きの軌道を含み得、それにより、軌道の各段は、単一の縫合糸を十分に展開させるために縫合糸展開要素が横切る距離に対応する。突起又は歯が、軌道内に配置され、及び軌道の各段の端部に接触するまで軌道内で前進し得る。この突起は、(1つ以上の介在する構成要素によって)縫合糸展開要素に結合され得る。そのようなものとして、ひとたび1個の縫合糸を展開するための距離が縫合糸展開要素によって横切られたら、軌道は、縫合糸展開要素のさらなる動きをロックして、第1の縫合糸と同じロケーションでの第2の縫合糸の予想外の展開を防止し得る。そのような実施形態では、SNSM345は、使用者が軌道の次の段上へと突起を前進させることを可能にする制御機構とし得、それにより、第2の縫合糸を展開させることを可能にする。いくつかの実施形態では、SNSM345は、突起を軌道の次の段中へと前進させるように回転され得るホイール又はノブとし得る。SNSM345は、計数器の機能を果たすマークを含み得、それにより、外科医が、外科医が展開中の縫合糸の個数を選択することを可能にする。SNSM345は、縫合糸が確実に一度に1個選択的に展開されるように構成され得る。換言すると、SNSM345は、同じロケーションに2個の縫合糸が展開されるのを防止し得る。例示的な実施形態では、SNSM345がホイールとして実現されると、規定量によるホイールの回転によって、展開用の縫合糸の選択を可能にし得る。
【0040】
[0072] 偏倚機構アクチュエータ344は、偏倚機構236を展開(例えば、拡張させる)又は収縮させ得るように構成された任意の好適なスライダー、レバー、ボタンなどとし得る。例示的な実施形態では、偏倚機構アクチュエータ344は、収縮した偏倚機構236に対応する第1の位置と、十分に拡張した偏倚機構236に対応する第2の位置との間で動くように構成された横方向摺動要素とし得る。様々な実施形態では、第1の位置と第2の位置との間の横方向摺動要素の位置は、部分的に拡張した偏倚機構236に対応し得る。いくつかの実施形態では、ハンドル組立体340に存在するマーク又は他の印が、使用者に、偏倚機構の拡張の度合を示し得る。例えば、第1のマークは、摺動要素が第1のマークと位置合わせされている場合、偏倚機構が直径約5mmまで拡張されていることを示し得、及び第2のマークは、摺動要素が第2のマークと位置合わせされている場合、偏倚機構が直径約10mmまで拡張されていることを示し得る。いくつかの実施形態では、偏倚機構が一定の直径まで拡張されたことを示すマークは、例えば、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mmなどのうちの1つ以上、又はそれらの間の任意の他の増分及び/又は値を含み得る。
【0041】
[0073] 図4は、縫合糸410のある実施形態の概略図を示す。縫合糸410は、例えば、縫合糸110、210などを含む、本明細書で説明する他の縫合糸と構造的及び/又は機能的に同様とし得る。
【0042】
[0074] 縫合糸410は、ブリッジ要素416を介して接続された、第1のプロング(prong)又は脚411A及び第2のプロング又は脚411Bを有し得、それらは一緒に、U字形状の構造を形成する。ある実施形態では、脚411A及び411Bは、互いに接合された近位端部と、互いに平行に延在する長尺状の本体とを有し得る。両脚411A及び411Bは、グラフト及び/又は組織に侵入するように構成された、鋭いそれぞれの端部又は尖ったチップ412A及び412Bを有してもよい。任意選択的に、縫合糸410はテール414を含み得、これは、任意選択的に開口415を含み得る。テール414は長尺状の領域としてもよい。いくつかの実施形態では、テール414の長さは、脚411A及び411Bの長さを下回り得、例えば、テール414の長さは、脚411A及び411Bの長さの約半分とし得る。或いは、テール414の長さは、脚411A及び411Bよりも長いとし得る。開口415は、任意の好適な形状とし得る(例えば、実質的に長方形、卵形、円形など)。例示的な実施形態では、開口415は、数個の縫合糸が、開口415を通過し得る接続要素(例えば、ワイヤ、糸などのセグメントなどの長尺状の要素)を介して接続されることを可能にするように構成され得る。いくつかの実施形態では、テール414は、任意選択的に、任意の好適な形状(例えば、円形状)とし得る構造413及びテール端部を含んでもよい。例示的な実施形態では、鋭いエッジがないことによって組織損傷及び/又は組織破裂を予防し得るため、テール414は、構造413に滑らかに移行し得る(例えば、移行部は、鋭いエッジを有していないとし得る)。同様に、テール414は、脚411A及び411Bに接続されたブリッジ要素416に滑らかに移行し得る。
【0043】
[0075] 様々な実施形態では、縫合糸410は、縫合糸ハウジング234から放出されると、展開状態又は形態へ丸まる(例えば、曲がる又は湾曲する)ように構成される。例えば、縫合糸410は、形状記憶又は超弾性材で形成され得、及び湾曲又は環状形状を形成する中立状態を有し得る。いくつかの実施形態では、縫合糸410は、金属チューブをレーザー切断することから形成され得る。そのようなものとして、その中立状態では、縫合糸410は、金属チューブの横断面に対応するループ又は環状形状を形成し得る。いくつかの実施形態では、縫合糸410は、縫合糸送達デバイスの縫合糸ハウジング(例えば、縫合糸ハウジング134)内で、真っすぐにされた又は扁平な形態に拘束され得る。扁平な形態では、縫合糸のテール414は、2つの脚411A及び411Bの長尺状の本体の方向とは反対の方向に延在し得る。縫合糸410が縫合糸ハウジングから放出されると、縫合糸410は、その湾曲すなわち中立形態に戻り得、そこでは、テール414並びに2つの脚411及び411Bが湾曲され、且つ反対方向に力を加えて、テール414並びに2つの脚411及び411Bが、集合的にグラフト及び/又は血管壁を一緒に保持するように構成されるようにし得る。特に、テール414並びに2つの脚411A及び411Bは、グラフトのセクション及び血管壁を互いに対して維持し得るクランプ力又は締め付け効果を生み出し得る。例えば、2つの脚411Aは、環状形状又はループを形成するように湾曲し得、並びにテール414は、ひとたび湾曲したら、ループの有効径を小さくし、それにより、締め付け効果を生み出すように構成され得る。この締め付け効果又はクランプは、さらに、脚411A及び411Bとテール414との間に保持されるグラフト及び/又は組織に対する縫合糸410のしっかりとした保持を請け合い得る。
【0044】
[0076] いくつかの実施形態では、テール414は開口415を有し得、これは、より広い幅のテール414につながり得る。いくつかの実施形態では、より広い幅のテールは、テールによって加えられるクランプ力を増し得る。いくつかの実施形態では、開口415は、複数個の縫合糸414を結合するために使用され得る接続要素を受け入れるように構成され得る。接続された縫合糸のさらなる詳細について、図25A~26Bを参照して説明する。
【0045】
[0077] いくつかの実施形態では、縫合糸410がテール414を含まないとき(例えば、接合された脚411A及び411Bのみを含む)、縫合糸410は、図5Aに示すような形状S1を有する湾曲形態に移行し得る。或いは、いくつかの実施形態では、テール414を含まない(例えば、接合された脚411A及び411Bのみを含む)縫合糸410は、図5Bに示すようなより平坦な形状S2を有する湾曲形態に移行し得る。いくつかの実施形態では、より平坦な形状S2は、組織(例えば、グラフト組織及び大動脈組織)を形状S1よりも互いに近くに結び付けることができるため、有益とし得る。
【0046】
[0078] いくつかの実施形態では、脚411A及び411Bとテール414とを含む縫合糸410は、図5Cに示すような形状S3を有する湾曲形態に移行し得る。テール414は、グラフト及び/又は組織をさらに結び付ける又はクランプするために、脚411Aと411Bとの間に配置された組織及び/又は材料を押圧するために使用され得る。テール414は、図5Cに示すように曲がるように構成され得、テール414がテール411A及び411BのU字形状の構造を通り越して高い曲げ半径を有するようにし、縫合糸410の直径内に入り込んで、縫合糸410のクランプを高める。いくつかの実施形態では、脚411A及び411Bとテール414とを含む縫合糸410は、図5Dに示すような形状S4を有する湾曲形態に移行し得る。形状S4は、より平らとし得、及びより大きなクランプ力を生じ得る。例示的な実施形態では、形状S4を形成するテール414は、形状S3を形成するテール414よりも幅が広いとし得、それはまた、テール414によって生成されるクランプ力を増し得る。
【0047】
[0079] いくつかの実施形態では、縫合糸410は、放射線不透過性マーカー又は放射線不透過性のコーティングを含む領域を含み得る。例えば、テール414、ブリッジ要素416、又は脚411A及び/又は411Bは、放射線不透過性マーカー(例えば、リング、カラー、バンド、又はプレート)を含み得るか、又は放射線不透過性材料で被覆され得る。例えば、テール414の一部分は、放射線不透過性マーカーを含み得るか、又は放射線不透過性材料で被覆され得る。例示的な実施形態では、放射線不透過性材料は、白金、金などとし得る。
【0048】
[0080] 様々な実施形態では、縫合糸410は、ニチノール又はステンレス鋼などの金属チューブをレーザー切断することによって作られ得る。いくつかの実施形態では、縫合糸410をレーザー切断した後、縫合糸410は、例えば、組織の意図しない切断を回避するために、丸みを帯びたエッジを作り出すために電解研磨又は他の方法によって研磨され得る。他の材料が使用されてもよいが、ニチノール又はステンレス鋼は、ばねのようなレジリエンス及び強度を備える材料の例示であり、それらは、湾曲した形状に形成され、送達のために扁平にされ、及び十分に展開されるとそれらの湾曲した形状へ戻され得る。それらの湾曲形状へ戻るように移行された縫合糸410は、縫合糸414の脚411A、411Bとテール414との間に保持された材料が、一緒に維持されて、生理的な力、例えば、大動脈内の血流に抗してそのような材料を一緒に保持することを保証する、十分なクランプ力又は締め付け力を生み出し得る。
【0049】
[0081] 図5Eは、湾曲形態にある縫合糸410に関する別の形状S5を示し、ここでは、テール414は、プロング411Aと411Bとの間に収まるように構成される。図5Eの縫合糸410は、上述の通り、金属チューブから縫合糸410をレーザー切断することによって製造され得る。図示の通り、その湾曲形態にある縫合糸410の直径は、縫合糸が切断される金属チューブの断面の直径にほぼ対応し得る。
【0050】
[0082] 図6A~6Bは、カテーテル組立体430及びハンドル組立体440を含む縫合糸送達デバイスを概略的に示す。図6Aは、縫合糸送達デバイスの偏倚機構436が非拡張又は非展開形態にある第1の形態にある縫合糸送達デバイスを示すが、図6Bは、偏倚機構436が拡張又は展開形態にある第2の形態にある縫合糸送達デバイスを示す。図6A及び図6Bに示す縫合糸送達デバイス、並びにカテーテル組立体430及びハンドル組立体440は、本明細書で説明する他の縫合糸送達デバイス、カテーテル組立体、及び/又はハンドル組立体と構造的及び/又は機能的に同様とし得る。例えば、カテーテル組立体430は、イントロデューサチップ438、偏倚機構436、縫合糸前進/引っ込め要素(SARE)432、縫合糸ハウジング434、1組の縫合糸410、及び展開窓433を含む。さらに、カテーテル組立体430は、シャフト431、435、437及び外側シース420を含む。
【0051】
[0083] シャフト431、435、437は、シース420内に同心円状に位置決めされ得る。例えば、シャフト431は、シャフト435の周りに位置決めされ得、これは、次に、シャフト437の周りに位置決めされ得る。そのようなものとして、シャフト431、435、437及びシース420は、共通の長手方向軸を有し得る。シャフト431、435、437のそれぞれは、カテーテル組立体430の異なる構成要素に結合され得、シャフト431、435、437の互いに対する動きによって、そのような構成要素を動かし及び/又は操作し得るようにする。シャフト437は、縫合糸送達デバイスの全長を通って、例えば、イントロデューサチップ438からハンドル組立体440の近位側面441まで、延在し得る。いくつかの実施形態では、シャフト437は、カテーテル組立体430の長手方向軸と位置合わせされる中心シャフトとみなされ得る。シャフト437は、例えば、ガイドワイヤを受け入れるためのルーメンを画成し得る。そのようなものとして、縫合糸送達デバイスは、患者の脈管構造内に位置決めされたガイドワイヤに沿って前進させられるか又は導かれるように構成され得る。いくつかの実施形態では、シャフト437は、偏倚機構436の遠位端部に結合され得、及びシャフト435は、偏倚機構436の近位端部に結合され得る。その結果、偏倚機構は、シャフト437に対してシャフト435を動かすことによって、拡張され得る。いくつかの実施形態では、シャフト431は、SARE432の近位端部に結合され得る。SARE432は、縫合糸ハウジング434内に配置され且つ縫合糸ハウジング434内を移動又は摺動し得る遠位部分を有し得る。図1~4を参照して上述した通り、それゆえここでは再度詳述しないが、SARE432は、縫合糸410を受け入れるように構成される形成物を含み得、及び縫合糸ハウジング434と集合的に、SARE432は、縫合糸410を縫合糸ハウジング434内で扁平な形態に拘束し得る。
【0052】
[0084] 様々な実施形態では、カテーテル組立体430の遠位部分、例えば、イントロデューサチップ438、縫合糸ハウジング434、及び偏倚機構436を含む部分は、腔又は生体管腔内で拡張した偏倚機構436を使用することによって、適所に固定されるように構成される。上述の通り、偏倚機構436は、シャフト437に対するシャフト435の動きに応答して拡張され得る。例示的な実施形態では、偏倚機構346は、拡張可能及び収縮可能なメッシュ、ケージ、又はバスケットである。メッシュ、ケージ、又はバスケットは、任意の好適な材料(例えば、ニチノール、ステンレス鋼、プラスチックなど)で形成されたワイヤから作製され得る。
【0053】
[0085] 偏倚機構436は、シャフト435がイントロデューサチップ438の方へ向かって動かされるとき、拡張され得る。いくつかの実施形態では、偏倚機構436は、図6Bに概略的に示すように、非対称的に拡張するように構成され得る。例えば、偏倚機構436は、縫合糸ハウジング434の方へ向く側436bよりも大きい量、縫合糸ハウジング434から見て外方に向く側436aに拡張するように構成され得る。偏倚機構436は、非拡張状態においては、シャフト437の周りに対称的に(又はシャフト437の周りに実質的に対称的に)配置され得、及び拡張状態においては、シャフト437の周りに非対称的に配置され得る。
【0054】
[0086] 拡張後、偏倚機構436は、イントロデューサチップ438及び縫合糸ハウジング434(図6B参照)を適所に定着させるように構成され得る。例えば、偏倚機構436は、血管の壁に接触して押し付けて、それ自体及びそれに取り付けられた他の構成要素を適所に定着させるように構成され得る。特に、偏倚機構436の側436aは、血管の壁及び/又はグラフト材料に直接接触して押し付けるように構成され得、並びに偏倚機構436の側436bは、縫合糸ハウジング434を血管の壁及び/又はグラフト材料に押し付けるように構成され得る。そのようなものとして、集合的に、カテーテル組立体430の複数の側が血管の壁及び/又はグラフト材料に押し付けられて、カテーテル組立体430の遠位部分を適所に定着させる。
【0055】
[0087] 様々な実施形態では、カテーテル組立体430の他の要素は、イントロデューサチップ438及び縫合糸ハウジング434に対して動くように構成される。例えば、シャフト431は、イントロデューサチップ438から離れるような方向に動いて、SARE432の上面にわたって配置された縫合糸410を含む取り付け済のSARE432に沿って引くように構成され得る。SARE432は、ハウジング434の任意の部分に固定されることなく、縫合糸ハウジング434内に配置され得る。そのようなものとして、SARE432は、縫合糸410を動かすために、ハウジング434内で動くように構成される。いくつかの実施形態では、縫合糸410は、SARE432の上面にある形成物と、形成物に対面するハウジング434の内部表面434Aとの間に拘束され得る。縫合糸410のそのような拘束によって、扁平な状態に保持されている縫合糸410を生じる。上述の通り、SARE432は、その全長に沿って各縫合糸410とインターフェースをとり、それゆえ、縫合糸410が縫合糸ハウジング434内で望ましくない方法で捩じれたり又は曲がったりするのを防止するように構成され得る。SARE432が近位に、すなわち、ハンドル組立体440の方へ向かって動くとき、SARE432は、縫合糸410を展開窓433の方へ向かって動かし得る。縫合糸410が展開窓433のすぐそばを通過するとき、縫合糸410は、縫合糸ハウジング434内から展開窓433を通して放出される最中に、湾曲するように構成される。図6Bは、展開窓433を通して放出されている縫合糸410Aを概略的に示す。
【0056】
[0088] 様々な実施形態では、外側シース420は、例えば、カテーテル組立体430の挿入及び/又は前進の最中に、カテーテル組立体430の要素のうちの少なくともいくつかを遮蔽するために使用される。いくつかの実施形態では、外側シース420は、カテーテル組立体430を患者の体内に(例えば、患者の大動脈中へ)挿入する最中に縫合糸ハウジング434及び偏倚機構436を覆い、且つ縫合糸ハウジング434及び偏倚機構436を露わにするために引っ込められるように構成され得る(例えば、外側シース420は、縫合糸ハウジング434及び偏倚機構436を露わにするためにイントロデューサチップ438から離れるように動き得る)。様々な実施形態では、下記でさらに説明するように、縫合糸送達デバイスの様々な構成要素の動きは、ハンドル組立体440の様々な制御機構を操作することによって、外科医によって制御され得る。
【0057】
[0089] 図7Aは、実施形態による、例示的な縫合糸送達デバイス700の斜視図を示す。縫合糸送達デバイス700は、本明細書で説明する他の縫合糸送達デバイス、例えば、縫合糸送達デバイス100などと構造的及び/又は機能的に同様である構成要素を含み得る。デバイス700は、カテーテル組立体730及びハンドル組立体740を含む。カテーテル組立体730の遠位部分の様々な詳細が、さらに図7Bに示される。ハンドル組立体740は、縫合糸展開制御機構743、モード選択システム741、ハンドルハウジング794、SNSM745、ラチェットチューブ746、偏倚機構アクチュエータ744、及び支持ハンドル747を含む。
【0058】
[0090] 上述の通り、縫合糸展開制御機構743は、カテーテル組立体730による縫合糸の展開を容易にするために、駆動システムと相互作用し得る。駆動システムは、イントロデューサチップ738に(例えば、中心シャフトを経由して)結合されるラチェットチューブ746を含み得る。縫合糸展開制御機構743は、外側ハウジング749に対してラチェットチューブ746を動かすために前後に動かされ得る又は押圧され得るレバーとして実現され得る。下記でさらに説明するように、外側ハウジング749に対するラチェットチューブ746の動きによって、縫合糸展開要素又はSAREの動きを引き起こし得る。モード選択システム741は、縫合糸展開制御機構743とラチェットチューブ746の結合を制御する。ラチェットチューブ746は、ハウジング749内に延在する。モード選択システム741が、駆動又は「D」モードなどの第1のモードに設定されると、縫合糸展開制御機構743は、ラチェットチューブ746と係合するように構成され得、縫合糸展開制御機構743の各前後の動きによって、ラチェットチューブ746を縫合糸展開制御機構743及びハウジング749に対して動かすようにする。或いは、モード選択システム741は、さらに下記で説明する他のモードに設定され得、ここでは、縫合糸展開制御機構743はロックされる、すなわちラチェットチューブ746と係合されない。
【0059】
[0091] SNSM745は、展開用の縫合糸の選択を制御するように構成される。上述の通り、及び後の図面により詳細に示すように、SNSM745は、突起を、段付きチャンネルの1つ以上の段を通って前進させるように構成され、これにより、複数個の縫合糸の展開を制御する。ハンドル組立体740はまた、カテーテル組立体730の偏倚機構を展開(例えば、拡張する)するように構成された偏倚機構アクチュエータ744を含む。例示的な実施形態では、偏倚機構アクチュエータ744は、ラチェットチューブ746内に位置するスリット又はチャンネル748に沿って摺動するように構成されるスライダーを含む。偏倚機構アクチュエータ744は、偏倚機構の近位端部に、例えばシャフトを介して、結合され得る。そのようなものとして、偏倚機構アクチュエータ744の前進によって、偏倚機構の近位端部をその遠位端部の方へ動かし、それを拡張させるように構成され得る。例示的な実施形態では、スリット748内の遠位位置(Dp)において、偏倚機構アクチュエータ744は、カテーテル組立体730の偏倚機構を十分に拡張させるように構成され得、及びスリット748内の近位位置(Pp)において、偏倚機構アクチュエータ744は、カテーテル組立体730の偏倚機構を十分に収縮させる又は非展開状態にするように構成され得る。DpとPpとの間の複数の位置において、偏倚機構アクチュエータ744は、カテーテル組立体730の偏倚機構を部分的に拡張させるように構成され得る。
【0060】
[0092] 図7Bは、カテーテル組立体730の遠位部分のさらなる詳細を示す。図示の通り、カテーテル組立体730の遠位部分は、イントロデューサチップ738、縫合糸ハウジング734、シャフト735、757の部分、及び偏倚機構736を含み得る。イントロデューサチップ738は、接続部C1において縫合糸ハウジング734に接続され、及び接続部C2において中心シャフト737に接続され得る。縫合糸ハウジング734は、SAREを含むように構成され得る。中心シャフト737は、接続部C3において、偏倚機構736の遠位端部に接続される。さらに、偏倚機構736は、その近位端部において、シャフト735に接続される。シャフト735は中空ルーメンを含み得、その内部にシャフト737が配置される。使用中、シャフト735は、中心シャフト737に対して摺動して、偏倚機構736を展開し得る。
【0061】
[0093] 図7Bは、さらに、展開窓733の設けられた縫合糸ハウジング734を示し、展開窓を通して、縫合糸ハウジング734内に配置された縫合糸が放出され得る。様々な実施形態では、縫合糸ハウジング734は、可撓性があるように構成されて、偏倚機構736が展開されるときに、縫合糸ハウジング734が外側へ曲がったり又は撓んだりする(例えば、カテーテル組立体730の長手方向軸から離れるように)ことができるようにする。図7Bは、さらに、シャフト735、737を取り囲み得る外側シース720を示す。いくつかの実施形態では、例えば、カテーテル組立体730の挿入又はナビゲーションの最中に、カテーテル組立体730の遠位部分における偏倚機構736、縫合糸ハウジング734、及び/又は他の構成要素の部分が、シース720内に引っ込められ得る。
【0062】
[0094] 図8Aは、偏倚機構736が拡張された状態の縫合糸送達デバイス700の斜視図を示す。カテーテル組立体730の遠位部分のさらなる詳細が図8Bに示されている。
【0063】
[0095] 図8Bに示すように、中心シャフト737の第1のセクション737Aは、接続部C2において偏倚機構736(例えば、偏倚機構736の遠位端部)と接続され、及び中心シャフト737の第2のセクション737Bは、偏倚機構736と、シャフト735のルーメンとを通過する。例示的な実施形態では、シャフト735は、接続部C3において偏倚機構736(例えば、偏倚機構736の近位端部)に接続される。図8Bに示すように、縫合糸ハウジング734は偏倚機構736に隣接している。偏倚機構736が拡張されると、縫合糸ハウジング734は、わずかに外側に偏倚する又は撓むように構成され得、例えば、縫合糸ハウジング734がグラフト及び/又は組織の一部分の表面に押し付けられ得るようにする。いくつかの実施形態では、展開窓733は、縫合糸ハウジング734に沿った、カテーテル組立体730の長手方向軸(例えば、シャフト737によって規定される長手方向軸)から最も遠い点に配置され得る。展開窓733のそのような位置決めは、展開窓733がグラフトの一部分及び/又は組織と接触してそれに押し付けて、それにより、展開窓733を通して展開された縫合糸が、グラフト及び/又は組織に侵入することを可能にすることを保証し得る。例示的な実施形態では、縫合糸ハウジング734は、例えば、その遠位端部において、シャフト737の第1のセクション737Aに接続される。
【0064】
[0096] 図9A~9Bは、ハンドル組立体740のさらなる詳細を示す。図9Aは、ハンドル組立体740の一部分の側面図を、モード選択システム741、ハンドルハウジング749、縫合糸展開制御機構743、及びSNSM745を含め、示す。さらに、ハンドル組立体740は、段付きチャンネルを形成する1組の接続したチャンネル751を含むラチェットチューブ746を含む。ラチェットチューブ746は、縫合糸展開駆動システム742の一部分を形成し得る。縫合糸展開駆動システム742はまた、縫合糸展開制御機構743(例えば、レバー)に取り付けられた駆動用クラスプ763を含み得る。縫合糸展開制御機構743が押圧されるとき、駆動用クラスプ763は、ハンドルハウジング749内に配置されたラチェットチューブ746の一部分に形成されたラチェット又は歯761を押すように構成される。図9A及び図9Bには示さないが、ラチェットチューブ746は、その近位端部において、カテーテル組立体730の中心シャフト737に取り付けられる。カテーテル組立体730の遠位部分が縫合部位に配置されて偏倚機構736が展開されるとき、縫合糸展開制御機構743を押圧することによって、ハンドルハウジング749をラチェットチューブ746に対して近位に動かし、例えば、駆動用クラスプ763がハンドルハウジング749及び縫合糸展開制御機構743と一緒に、イントロデューサチップ738から離れるような且つデバイス700の近位端部の方へ向かう方向に動く。ハンドルハウジング749は、その近位端部において、シャフト731に結合され得、これは、同様に、縫合糸ハウジング734内に配置されるSAREに結合される。そのようなものとして、ラチェットチューブ746に対するハンドルハウジング749の動きによって、SAREを縫合糸ハウジング734内で近位に動かし、これにより、縫合糸を縫合糸展開窓733の方へ向かって動かし得る。例示的な実施形態では、縫合糸展開制御機構743を押圧する度に、デバイス700の近位端部の方へ向かう駆動用クラスプ763、ハンドルハウジング749、及び縫合糸展開制御機構743の小さな別個の動きを生じる。縫合糸展開制御機構743を一度押圧することによって駆動用クラスプ763が移動する距離は、ラチェットチューブ746の隣接する歯間の距離と同じとし得る。例示的な実施形態では、展開窓733を経由して縫合糸を展開するために、縫合糸展開制御機構743は、複数回押し下げられ、その度に、縫合糸を展開窓733から出るように、予め決められた距離前進させる。毎回縫合糸展開制御機構743を押圧した後、ばね(図9A及び図9Bには示さず)が、縫合糸展開制御機構743を開放形態へ戻すように構成され得る。開放形態では、縫合糸展開制御機構743は、縫合糸展開制御機構743の自由端部がハンドルハウジング749から離間されるように位置決めされ得、及び縫合糸展開制御機構743は、ハンドルハウジング749の方へ押圧されて、ハンドルハウジング749、縫合糸展開制御機構743などを、ラチェットチューブ746に対して近位にさらに動かし得る。例示的な実施形態では、縫合糸展開制御機構743の最初の押圧の最中、脚又はプロング(例えば、縫合糸410の脚又はプロング411A及び411B)の端部が、展開窓733から出るように前進し得る。縫合糸展開制御機構743の2度目の押圧の中、脚の長尺状の本体の少なくとも一部分が、展開窓733から出るように前進させられ得る。縫合糸展開制御機構743の3度目の押圧の最中、縫合糸の脚が全体的に展開窓733から出てもよく、及び縫合糸展開制御機構743の4度目の押圧の最中、縫合糸のテール(例えば、テール414)が展開窓733から放出され得る。縫合糸全体を放出するために4回押圧する行為は、説明に役立つ例であり、及び他の回数の押圧行為が、縫合糸全体を放出させるために使用されてもよいことが認識されるべきである。様々な実施形態では、下記でさらに説明するように、部分的に放出された縫合糸は、引っ込められ得る(縫合糸が十分に放出されない場合)。
【0065】
[0097] 図9Bは、縫合糸展開制御機構743及びハンドルハウジング749がT字形状要素762に接続されている(例えば、取り付けられている)ことを示す。例示的な実施形態では、図9Bに示すように、T字形状要素762は、カテーテル組立体730のシャフト731に接続される。駆動用クラスプ763の動きによって始動されるT字形状要素762の動きは、シャフト731の動き、及びその結果、縫合糸展開要素731に取り付けられたSAREの動きを生じる。SAREの動き(例えば、デバイス700の近位端部の方へ向かう)によって、縫合糸が展開窓733を通過するときに縫合糸を展開窓733から展開させる。
【0066】
[0098] 図10は、縫合糸送達デバイス1000の異なる構成要素の動きを駆動するための接続部の詳細な図を提供して、縫合糸送達デバイス1000を説明に役立つように示す。縫合糸送達デバイス1000は、本明細書で説明する他の縫合糸送達デバイスの構成要素、例えば、縫合糸送達デバイス100及び/又は700などと構造的及び/又は機能的に同様である構成要素を含み得る。例示的な実施形態では、駆動要素1063(例えば、駆動用クラスプ)を備える縫合糸展開制御機構1043は、ラチェットチューブ1061を押して、ハンドルハウジング1049、T字形状要素1062、シャフト1031、及び縫合糸前進/引っ込め要素1032をラチェットチューブ1061に対して近位に(例えば、デバイス1000の近位端部1060の方へ向かって)動かすように構成される。同様に、ラチェットチューブ1061はシャフト1037に結合され、このシャフトは、カテーテル組立体のイントロデューサチップ1038に結合される。イントロデューサチップ1038は縫合糸ハウジング1034に結合され得る。そのようなものとして、ラチェットチューブ1061に対するハンドルハウジング1049、T字形状要素1062、及びシャフト1031の近位への動きによって、縫合糸前進/引っ込め要素1032を縫合糸ハウジング1034に対して近位に動かし得、それにより、縫合糸を縫合糸ハウジング1034の展開窓の方へ向かって近位に前進させる。
【0067】
[0099] 図f及び図11Bは、実施形態による、縫合糸送達デバイス1100用の例示的なハンドル組立体1140の詳細な図を提供する。縫合糸送達デバイス1100及びその構成要素は、本明細書で説明する他の同様の構成要素と機能的及び/又は構造的に同様とし得る。例えば、図11A及び図11Bは、縫合糸展開制御機構1143と、前述したとおり「N」、「D」及び「P」の位置間を動く(例えば、摺動する)ように構成されるスライダー又はノブ1141Aを有するモード選択システム1141と、縫合糸個数選択機構1145と、ハンドルハウジング1149とを示す。モード選択システム1141は様々な方法で実現され得るが、モード選択システム1141は、縫合糸展開制御機構1143をロックするように、及び/又は縫合糸前進/引っ込め要素の動きを駆動する構成要素から縫合糸展開制御機構1143を係合解除若しくは係合するように、構成される。モード選択システム1141は、図3を参照して説明したモード選択システム341と機能的及び/又は構造的に同様とし得る。例えば、スライダー1141Aが位置「P」に位置決めされると、「パーク(park)」モードが選択される。この位置では、縫合糸展開制御機構1143は、例えば閉鎖位置にロックされるため、適所に固定されているデバイス1100用のカテーテル組立体と関連付けられた縫合糸前進/引っ込め要素を生じる。
【0068】
[0100] モード選択システム1141が「D」モードにシフトされると、図11A及び図11Bに示すように、縫合糸展開制御機構1143は、勢いよく開放位置へ動き得る。それゆえ、「D」(「駆動」)モードでは、上述の通り、縫合糸展開制御機構1143は、縫合糸を展開するために押圧され得る。モード選択システム1141のスライダー1141Aが「N」(「中立」)モードに配置されると、ラチェットチューブ1161の歯が駆動要素1163から係合解除され得るため、縫合糸展開制御機構1143及びハウジング1049が自由に前方へ(例えば、デバイス1100の遠位端部の方へ向かって)動くことが可能になる。場合によっては、スライダー1141Aが「N」位置にあるとき、縫合糸展開制御機構1143は、例えば、ラチェットチューブ1061の段付きチャンネル(図11E参照)を経由してデバイス1100の近位端部の方へ向かって動くことを禁止され得、及び、前方へ動くことのみが可能にされ得る。
【0069】
[0101] 図11C及び図11Dは、ラチェットチューブ1161との駆動要素1163の結合を制御するように構成されるモード選択システム1141の要素1141Bを示す。いくつかの実施形態では、駆動要素1163は、ラチェットチューブ1161が駆動要素1163に対して摺動するのを防止できる歯を含み得る。いくつかの実施形態では、モード選択システム1141が「D」モードにシフトされると、駆動要素1163は、ラチェットチューブ1161と係合され、及び1度に1つの歯をラチェットチューブ1161に沿って下方に摺動し得る。モード選択システム1141が「N」モードにシフトされると、駆動要素1163は、ラチェットチューブ1161から係合解除され得、ハンドルハウジング1149がラチェットチューブ1161に対して動くことを可能にし得る。いくつかの実施形態では、駆動要素1163上の別々の歯が、ラチェットチューブ1161に対してハンドルハウジング1149の近位又は遠位への動きを可能にし得る。
【0070】
[0102] 図11E及び図11Fは、縫合糸個数選択機構1145のさらなる詳細を示す。例示的な実施形態では、縫合糸個数選択機構1145は、縫合糸展開制御機構1143、駆動要素1163、及びそれらに取り付けられた縫合糸展開要素(例えば、SDE731)の一定量の動きを可能にし、その後、縫合糸展開制御機構1143の動きが止められるように構成される。縫合糸個数選択機構1145のそのような機能によって、外科医が同じロケーションに複数個の縫合糸を展開するのを防止する。ひとたび第1の縫合糸が展開されたら、縫合糸展開制御機構1143の動きが停止され、及び外科医は、縫合糸個数選択機構1145を再設定して(又は動かして)、別の縫合糸が展開され得るようにする必要がある。縫合糸個数選択機構1145は、縫合糸が1度に1個のみ展開され得、その後、次の縫合糸が展開されることを可能にするように縫合糸個数選択機構1145が動かされ、回転され、又は再設定され得るようにする機能を提供する限り、任意の好適な方法で実現され得る。例示的な実施形態では、図11E及び図11Fに示すように、縫合糸個数選択機構1145は、突起、例えば1145C及び1145Dを有する部分1145A及び1145Bを含む。例示的な実施形態では、突起1145C、1145Dなどは、要素1145Eに結合されてもよく、部分1145A及び1145Bが、ハンドル要素1146に結合されるが、スロット1145Fを通って動いて、各段1145Gで停止するように構成される。段1145Gのうちの次の段への動きを続けるために、部分1145A及び1145Bは、目標とする別個の量だけハンドル要素1146の軸の周りで回転される必要があるかもしれない。部分1145A及び1145Bが、目標とする(例えば、最大の)別個の量だけ回転されない場合、デバイス1100の近位端部の方へ向かう部分1145A及び1145Bの動きは防止されるため、縫合糸展開制御機構1143、駆動要素1163、及びそれらに取り付けられた縫合糸展開要素(例えば、シャフト731及び縫合糸前進/引っ込め要素)の動きを防止する。
【0071】
[0103] 図12~13及び図15~16は、図14A~14C、図17A~17Cに示す様々なそれぞれの縫合糸を支持するように構成された様々な例示的な縫合糸前進/引っ込め要素を示す。そのような縫合糸前進/引っ込め要素は、本明細書で説明する他の縫合糸前進/引っ込め要素(例えば、縫合糸前進/引っ込め要素132、232)と機能的及び/又は構造的に同様とし得る。さらに図18は、例示的な縫合糸が要素の上側にわたって配置されている縫合糸前進/引っ込め要素の実施形態を示す。開示した実施形態と一致して、SARE1232は図12及び図13に示されている。SARE1232は、リボンのような形状を有する長尺状の構造にある(例えば、長方形の断面又は他の断面を有する形状であって、第1の横寸法は第2の横寸法よりも大きくて、長尺状の構造が扁平な形状を有するようにする)。様々な実施形態では、SARE1232の形状は、関連の縫合糸ハウジングに収まるような構成にされ、これは、例示的な実施形態では、長方形の断面領域を有するルーメンを画成する。
【0072】
[0104] 図13は、1組の突起又は形成物I1~I4を含むスレッド又はリボンのような構造として実現されるSARE1232を示す。例示的な実施形態では、突起の上面Tsは、縫合糸ハウジングの上側の内部表面に隣接するか又はその近くにあるように構成される。例示的な実施形態では、突起I1~I4は、縫合糸保持凹み領域1232Aによって分離される。SARE1232は、U字形状の縫合糸(例えば、テール領域、例えば図4に示すようなテール領域414を含まない縫合糸)を支持するように構成される。U字形状の縫合糸は、突起I1~I4に隣接して配置され得る。図13には、突起I3に隣接する凹み領域1232Aに配置された例示的なU字形状の縫合糸1210Cが示されている。様々な実施形態では、縫合糸1210Cが拡張するための空間が全くないかもしれないため、SARE1232が縫合糸ハウジング内に位置するときに、縫合糸1210Cは平たくされる。例えば、縫合糸1210Cの脚は、形成物I3と縫合糸ハウジングの内面との間で、縫合糸1210Cの脚がそれらの全長に沿うように、半径方向に拘束され得る。そのような拘束は、縫合糸1210Cの脚が望ましくない方法で捩じれるのを防止し、及び縫合糸1210Cの脚を、それらが互いに平行に延在するように維持する。換言すると、縫合糸1210Cは、SARE1232と縫合糸ハウジングの内部表面との間に拘束され、及び拡張するための場所がないとし得る。そのようなものとして、縫合糸1210Cの少なくとも一部分が、縫合糸ハウジング内の展開窓に到達するまで、平らにされたままである。ひとたび縫合糸1210Cが展開窓に到達すると、縫合糸1210Cの一部分は、展開窓を通って出て、及び縫合糸1210Cは、制御された方法で湾曲し得る。例えば、縫合糸1210Cは、展開窓を、展開窓の平面に対して実質的に垂直に(例えば、展開窓から、約70度~110度(全ての部分的な範囲及び値を含め)の角度をつけられて)出得る。
【0073】
[0105] 「U字形状の」縫合糸1410の例を図14A~14Cに示す。例示的な実施形態では、縫合糸1410は、図13に示すような縫合糸1210Cと同じとし得る。縫合糸1410は、組織に侵入するように構成された尖っている端部1412A及び1412Bをそれぞれ有するプロング1411A及び1411Bを有する。例示的な実施形態では、プロング1411A及び1411Bは、接続要素1416によって接続されるか、又はそれらの近位端部において接続される。図14Aは、縫合糸1410の平らにされた図を示し、及び図14Bは、丸められた縫合糸1410を示す(例えば、縫合糸1410は、縫合糸1410に外力が全く作用しないとき、丸められた形状を取り得る)。
【0074】
[0106] 図14Cは、縫合糸1410の例示的な説明に役立つ寸法を示す。例示的な実施形態では、プロング1411A及び1411Bの長さは、約10分の数インチの範囲内にあるとし得る(例えば、約0.1インチ~約1インチの範囲内であり、それらの間の全ての部分的な範囲及び値を含む)。例示的な実施形態では、プロング1411A及び1411Bの長さは、約0.5インチとし得る。様々な実施形態では、プロング1411Aと1411Bとの間の距離はまた、約100分の数インチ~10分の数インチの範囲内とし得る(例えば、約0.01インチ~約0.2インチの範囲内であり、それらの間の全ての部分的な範囲及び値を含む)。例示的な実施形態では、プロング1411Aと1411Bとの間の距離は、約0.06インチの値を有し得る。
【0075】
[0107] 例示的な実施形態では、接続要素1416は、実質的に定曲率を有し得る(例えば、接続要素1416は、円の半分の形状にあるとし得る)。或いは、接続要素1416は任意の好適な形状を有してもよい。例示的な実施形態では、縫合糸1410は、縫合糸1410の長さに沿ってどこにも尖った角を有していなくてもよい。例示的な実施形態では、接続要素1416が実質的に定曲率を有するとき、接続要素1416の曲率半径は、プロング1411Aと1411Bとの間の距離の半分とし得る(例えば、図14Cに示すように、プロング1411Aと1411Bとの間の距離が約0.06インチであるとき、曲率半径は約0.03インチとし得る)。様々な実施形態では、プロング1411A及び1411Bの幅(そうでなければ厚さと呼ぶ)は、1インチの数分の1とし得る(例えば、約0.01~0.05インチの範囲内にあるとし得る)。様々な実施形態では、縫合糸1410のサイズ、形状、及び厚さは、縫合される必要がある組織のタイプに基づいて選択される。例えば、より厚みのある組織では、より大きな縫合糸が選択されてもよく、及びより薄い、より柔らかい(gentler)組織では、より小さい縫合糸が選択されてもよい。様々な実施形態では、縫合糸前進/引っ込め要素は、外科的処置に使用される必要がある縫合糸のタイプ(例えば、サイズ、形状、及び厚さ)に基づいて選択される。様々な実施形態では、プロング1411A及び1411Bの厚さの値、並びに接続要素1416の曲率半径の値は、上述の考えられ得る値から約50%だけ変わり得る。
【0076】
[0108] 開示した実施形態と一致して、SARE1532が図15及び図16に示されている。SARE1232と同様に、SARE1532は、実質的に長尺状の、底面が長方形のプリズムである。図16は、SARE1532が突起の1組の群G1、G2などを含むことを示し、各群は、第1の組の突起(例えば、G1A及びG1B)及び第2の突起G1Cを含む。例示的な実施形態では、突起は、凹み領域1532Aの上側を覆って配置される。例示的な実施形態では、突起G1A、G1B、及びG1Cの上面は、縫合糸ハウジングの上側の内部表面に隣接するか又はその近くにあるように構成される。
【0077】
[0109] SARE1532は、テールを含む縫合糸(例えば、テール領域、例えば図4に示すようなテール領域414を含む縫合糸)を支持するように構成される。例示的な縫合糸が、突起G1A、G1B、及びG1Cに隣接して、凹み領域1532Aの表面の上側を覆って配置され得る。様々な実施形態では、SARE1532が縫合糸ハウジング内に位置するとき、縫合糸が拡張したり及び丸まったりするための空間が全くないかもしれないため、凹み領域1532Aの表面の上側を覆って配置された縫合糸は平らにされる。
【0078】
[0110] 図17Aは、テール領域1714を含む縫合糸の例示的な実施形態を示す。縫合糸1410と同様に、縫合糸1710は、組織に侵入するように構成された尖っている端部1712A及び1712Bをそれぞれ有するプロング1711A及び1711Bを有する。例示的な実施形態では、プロング1711A及び1711Bは、テール領域1714への接続部によって、接続される。図17Aは、縫合糸1710の平らにされた図を示し、及び図17Bは、丸められた縫合糸1710を示す(例えば、縫合糸1710は、縫合糸ハウジングから放出された後、丸まり得る)。例示的な実施形態では、縫合糸1710は、実質的に円形状に丸まり、直径1727は約0.16インチの値を有している。例示的な実施形態では、直径1727は、上述の値から約50%だけ変わり得る。図17Cは、縫合糸1710の例示的な説明に役立つ寸法を示す。例示的な実施形態では、プロング1711A及び1711Bの長さは、約10分の数インチの範囲内(例えば、約0.1インチ~約1インチの範囲内であり、それらの間の全ての部分的な範囲及び値を含む)にあるとし得る。例示的な実施形態では、プロング1711A及び1711Bの長さは、約0.5インチの値を有し得る。様々な実施形態では、プロング1711Aと1711Bとの間の距離はまた、約100分の数インチ~10分の数インチの範囲内(例えば、約0.01インチ~約0.2インチの範囲内であり、それらの間の全ての部分的な範囲及び値を含む)にあるとし得る。例示的な実施形態では、プロング1711Aと1711Bとの間の距離は、約0.06インチの値を有し得る。
【0079】
[0111] 例示的な実施形態では、テール領域1714は、10分の数インチの範囲内の長さを有し得、並びに接続要素1716を介してプロング1711A及び1711Bに接続され得る。接続要素1716は、図14A~14Cに示すような接続要素1416と同様とし得、及び曲率半径に同じ又は同様の値を有し得る。様々な実施形態では、プロング1711A及び1711Bの幅は、1インチの数分の1とし得る(例えば、0.01~0.05インチの範囲内とし得る)。様々な実施形態では、縫合糸1710のサイズ、形状、及び厚さは、縫合される必要がある組織のタイプに基づいて選択される。例えば、より厚みのある組織では、より大きい縫合糸が選択されてもよく、及びより薄く、より柔らかい組織では、より小さい縫合糸が選択されてもよい。様々な実施形態では、プロング1711A及び1711Bの厚さの値、並びに接続要素1716の曲率半径の値は、上述の通り、これらの要素に考えられ得る値から約50%だけ変わり得る。
【0080】
[0112] 様々な実施形態では、縫合糸前進/引っ込め要素は、外科的処置に使用される必要がある縫合糸のタイプ(例えば、サイズ、形状、及び厚さ)に基づいて選択される。
【0081】
[0113] 様々な実施形態では、縫合糸1710は、好適な材料のシート又はチューブ(例えば、ニチノール、プラスチック、ステンレス鋼など)からレーザー切断され得る。
【0082】
[0114] 図18は、スレッド又はリボンのような構造として実現されるSARE1532の例を示し、縫合糸1710が、突起又は形成物G1A、G1B、及びG1Cに隣接するSARE1532の表面の一部分の上側にわたって配置されている(例えば、縫合糸1710は、表面1532Aの上側にわたって配置されている)。形成物G1A、G1B、及びG1Cは、縫合糸1710のテールの一部分を半径方向に取り囲むように構成される2つのより小さい形成物G1A及びG1B、並びに縫合糸1710の脚1711Aと1711Bとの間に配置されるより大きい形成物G1Cを含み得る。SARE1532が縫合糸ハウジング内に配置されると、形成物G1Cは、脚1711A及び1711Bの内側に半径方向に境界を接し得る一方で、脚1711A及び1711Bの外側は、縫合糸ハウジングの内面によって境界を接され得、形成物及び縫合糸ハウジングが集合的に半径方向に縫合糸の脚1711A及び1711Bを拘束するようにする。そのような半径方向の拘束は、縫合糸の脚1711A及び1711Bの捩じれを防止し、且つ縫合糸の脚1711A及び1711Bが互いに平行のままとなることを保証し得る。そのため、縫合糸がハウジングの展開窓から出ると、縫合糸の脚1711A及び1711Bは、互いに平行に及び窓の平面に対して実質的に垂直である角度(例えば、窓に対して約70度~約110度(全ての部分的な範囲及び値を含む)の角度)で出るように構成され得る。
【0083】
[0115] 図19A及び図19Bは、実施形態による、偏倚機構1936及び縫合糸ハウジング1934の図を示す。偏倚機構1936及び縫合糸ハウジング1934は、本明細書で説明する他の偏倚機構及び縫合糸ハウジング(例えば偏倚機構136及び縫合糸ハウジング134)とそれぞれ構造的及び/又は機能的に同様とし得る。図19Aは、カテーテル組立体1930の側面図を、偏倚機構1936及び縫合糸ハウジング1934を含め、示し、及び図19Bは、カテーテル組立体1930の実質的に上面図を示す。図19Aは、偏倚機構1936の上部1936Tが底部1936Bとは異なる形状を有し得るため、偏倚機構1936の上下の非対称性を生じ得ることを示す。さらに、偏倚機構1936はまた、偏倚機構1936の遠位-近位方向に沿って及び左-右側方向に沿って非対称的とし得る。例えば、図19Bは、偏倚機構1936の遠位左側1936DLは遠位右側1936DRとは異なり、且つ両側1936DR及び1936DLとも、近位左側1936PL及び近位右側1936PRとはそれぞれ異なることを示す。例示的な実施形態では、側1936DLは、側1936PLよりも少なく拡張し得、及び側1936DRは、側1936DL又は側1936PLよりも少なく拡張し得る。任意の他の非対称性が使用されてもよいことに留意すべきである。場合によっては、特定の外科的処置次第で、特定のタイプの非対称性を有する偏倚機構が選択されてもよい。
【0084】
[0116] 図19Cは、偏倚機構アクチュエータ1944の例示的な実施形態を示す。偏倚機構アクチュエータ1944は、ハンドル要素1946に沿って、矢印1950で示す方向に摺動するように構成されたスライダー要素1944Aを含み得る。ハンドル要素1946は、スライダー要素1944Aがハンドル要素1946に沿ってどの程度動かされたかを示すマーク(例えば、0、5、10、15、20、25、30)を含み得る。例示的な実施形態では、上述の通り、スライダー要素1944Aが移動した距離は、どの程度偏倚要素1936が拡張されているかを示す。例えば、スライダー要素1944Aがマーク30にある場合、偏倚要素1936は十分に拡張され得、及びスライダー要素1944Aがマーク0にある場合、偏倚要素1936は十分に収縮され得る。
【0085】
[0117] 図20A~20Fは、開示した実施形態と一致する、縫合糸の展開の様々なステップ(又は段階)を示す。第1のステップにおいて、図20Aに示すように、縫合糸2010のプロング2012A及び12012Bが、縫合糸ハウジング2034の展開窓2033を通して展開するように構成される。例示的な実施形態では、SARE2032は、矢印2020で示されるような方向に引かれる。図20Bは、プロング2012A及び2012Bが実質的に展開されている第2のステップを示し、図20Cは、プロング2012A及び2012Bの展開が完了し、及びテール領域2014が展開される必要があるとし得る第3のステップを示す。第4のステップにおいて、図20Dに示すように、テール領域2014が展開される。テール端部2021は、組織(図20Dには示さず)を押して、縫合糸2010が、縫合するグラフト及び組織にうまく結び付けられるようにするように構成され得る。
【0086】
[0118] 図20E及び図20Fは、材料及び/又は組織T1及びT2に侵入して結び付ける縫合糸2010を示す。説明のために、図20E及び図20Fは、材料及び/又は組織T1及びT2への縫合糸2010のクランプ効果の説明を容易にする縫合糸2010並びに材料及び/又は組織T1及びT2の一定の寸法を示す。それにもかかわらず、実際の応用では、縫合糸2010並びに材料及び/又は組織T1及びT2の寸法は、著しく異なってもよく、例えば、ここでは、材料及び/又は組織T1及びT2が図示しているものよりも厚く、並びに縫合糸2010は、材料及び/又は組織T1及びT2に埋もれるように構成されることが認識され得る。そのようなものとして、図20E及び図20Fに示す縫合糸2010並びに材料及び/又は組織T1及びT2は、縮尺通りに示されていなくてもよいことに留意すべきである。例示的な実施形態では、図20Eに示すように、縫合糸2010のプロング(例えば、プロング2012A)は、ロケーションL1Aにおいて組織T1に侵入し、ロケーションL2Aにおいて組織T2に侵入し、その後、縫合糸2010が丸まるために、再度ロケーションL2Bにおいて組織T2に侵入し、及び再度ロケーションL1Bにおいて組織T1に侵入するように構成される。縫合糸1210の放出が完了すると、図20Fに示すように、テール領域2014が、テール端部2021を使用して、組織T1を押圧するように構成される。テール端部2021を用いて押圧することによって、縫合糸2010は、組織T1とT2との間の結び付きを改善するように構成される。
【0087】
[0119] 縫合糸を展開するための実施形態は、縫合糸ハウジング(例えば、図8Bに示すような縫合糸ハウジング734)の側面に位置する展開窓(例えば、図8Bに示すような展開窓733)を使用するが、縫合糸ハウジング及び展開窓の他の形態が可能である。例示的な一実施形態では、図21A~21Cに示すように、縫合糸ハウジング2134は、イントロデューサチップ(例えば、図7Bに示すようなイントロデューサチップ738)に接続されるように構成されていなくてもよいが、端部を有し得、その端部に展開窓2133が位置している。例示的な実施形態では、そのような縫合糸ハウジング2134(及び縫合糸ハウジング2134を使用するカテーテル組立体)は、カテーテル組立体の方向に対して実質的に直角であるゾーンに縫合糸を送達するために使用され得る。図21Aは、SARE2132がT1及びT2の組織の方へ向かって動き、且つ組織T1及びT2に近づく縫合糸2110を有する縫合糸ハウジング2134を示す。図21Bは、展開窓2133から展開されているときに組織T1及びT2に侵入する縫合糸2110を示し、及び図21Cは、十分に展開されており、及び組織T1とT2を結びつけている縫合糸2110を示す。
【0088】
[0120] 図22は、縫合糸ハウジング2234の端部に展開窓2233を有する縫合糸ハウジング2234を備える別の例示的なカテーテル組立体2230を示す。例示的な実施形態では、縫合糸は、展開窓2233から展開される。場合によっては、縫合糸ハウジング2234は、目標角度量だけ、規定された方向に曲がるように構成される(例えば、縫合糸ハウジング2234は、例えば、0度から45度に及ぶ角度だけ、曲がり得る)。
【0089】
[0121] 図23は、曲がることができる縫合糸ハウジング2334を備えるカテーテル組立体2330の別の実施形態を示す。例示的な実施形態では、縫合糸ハウジング2334は、縫合糸ハウジング2334の側面に位置する1つ以上の展開窓2333A~2333Cを有する。例示的な実施形態では、縫合糸ハウジング2334は、縫合される必要がある組織の表面に直角に送達され得る。続いて、縫合糸ハウジング2334に湾曲を生み出すために好適な付形用ワイヤが配置され得る。或いは、縫合糸ハウジング2334は、予め湾曲して製作されてもよく、及び矯正ワイヤ(straightening wire)(例えば、縫合糸ハウジング2334を真っすぐにし得るワイヤ)が、縫合糸ハウジング2334を配置している間、縫合糸ハウジング2334に沿って一時的に挿入されてもよい。矯正ワイヤは、縫合糸を送達している最中に除去され得るため、湾曲した縫合糸ハウジング2334を生じる。図24は、部分的に湾曲され、及び縫合糸ハウジング2434の側面に展開窓2433を有する縫合糸ハウジング2434の例を示す。
【0090】
[0122] 図25A~25B、及び図26A~26Bは、好適な可撓性接続要素2517(例えば、可撓性ワイヤ又は可撓性糸)によって一緒に鎖状でつながれる又は接続される縫合糸2510の例を示す。例示的な実施形態では、縫合糸2510は、SAREに接続されても、予め組み込まれても、及び縫合糸ハウジング内に配置されてもよい。例示的な実施形態では、SAREは、縫合糸2510間に接続要素2517を収容する空間を有するように構成され得る。連結された縫合糸を使用することによって、縫合糸間の張力の調整が必要な場合、そのような調整を行うことを可能にする。そのような調整は、組織の特徴、例えば動脈口、創傷、又は治療する必要がある他の組織の特徴や悪性腫瘍を変化させる手段を提供するために使用され得る。図25Bに示すように、及び上述したように、縫合糸2510は開口2515を含み得、そこを通って接続要素2517が配置され得る。
【0091】
[0123] 図26A及び図26Bは、縫合糸2610と同じ材料から形成され得る接続要素2617を示す。例示的な実施形態では、接続要素2617及び縫合糸2610は、同じ材料から製作され得る(例えば、ニチノール、ステンレス鋼、又は好適なプラスチックなどの材料のシート又はチューブをレーザー切断することによって)。例示的な実施形態では、接続要素2617は、患者の組織に張力をもたらすために、前もって決められた(pre-formed)張力を提供し得る(例えば、ニチノールリンクは、前もって決められた張力を有し得る)。例示的な実施形態では、接続要素2617は、縫合糸ハウジングから放出されるとき、形状が変わり得る(すなわち、丸まる)。図26Bは、SARE上に線形に配置される代わりに、複雑な形状を形成するために縫合糸が前もって整えられ(prearranged)得ることを示す(例えば、3個の縫合糸は、半円を形成するように、前もって整えられ得る)。
【0092】
[0124] 図27Aは、開示した実施形態に一致する、縫合糸を展開する例示的なプロセス2700を示す。プロセス2700のステップ2702において、カテーテル組立体の遠位部分は、標的部位の近く(例えば、縫合を必要とするグラフトの壁や組織の表面の近く)に位置決めされる。ステップ2704において、縫合糸を展開するためのデバイス(例えば、図7Aに示すようなデバイス700)が、偏倚機構を展開するために操作され(例えば、外科医によって)、縫合糸ハウジング内に位置する縫合糸展開窓が、標的部位の近くに配置されるようにする。偏倚機構は、カテーテル組立体が配置される腔内で拡張するように構成され、及び縫合糸展開窓を有する縫合糸ハウジングの少なくとも一部分を、縫合を必要とする組織(例えば、グラフト、大動脈など)の表面に押し付けるように構成される。ステップ2706において、デバイスを操作する外科医は、モード選択システムのモード選択器を、上述の通り「駆動」(モード「D」)に設定するように構成される。ステップ2708において、外科医は、上述の通り、特定の縫合糸を展開するために、縫合糸個数選択機構を特定の縫合糸個数に設定し、及びステップ2710において、縫合糸の展開を開始するために、縫合糸展開制御機構(例えば、ハンドル又はレバー)を操作することによって縫合糸展開アクチュエータを作動させるように構成される。例示的な実施形態では、縫合糸を部分的に展開した後、外科医は、ステップ2712において縫合糸の配置を確認し得る。縫合糸の配置の確認は、任意の好適な手段を使用して(例えば、上述の通り、イメージング、例えば内蔵カメラ、CTスキャン、超音波などを使用して)、成し遂げられ得る。
【0093】
[0125] 縫合糸が正しく配置されている場合(ステップ2720、Yes)、ステップ2728において、縫合糸展開アクチュエータは、縫合糸を十分に展開させるために、追加的に数回作動され得る(例えば、図9Aに示すような縫合糸展開制御機構743は、数回押圧されてもよい)。ステップ2730において、偏倚機構は非展開状態にされる(例えば、偏倚機構が拡張可能なメッシュであるとき、メッシュは十分に収縮され得る)。例示的な実施形態では、偏倚機構は、上述の通り、偏倚機構アクチュエータを作動させることによって、非展開状態にされる。ステップ2732において、外科医は、上述の通り、モード選択器を「パーク」モード(「P」モード)に設定し得る。パークモードでは、縫合糸展開制御機構(例えば、上述のような縫合糸展開制御機構)は固定され、及び新しい縫合糸は展開されないとし得る。
【0094】
[0126] 縫合糸が正しく配置されていない場合(ステップ2720、No)、ステップ2722において、上述の通り、外科医は、モード選択器を「中立」モード(「N」モード)に設定し得る。モード選択器を中立形態に設定することによって、外科医は、SARE(例えば、SARE132)をデバイス700の遠位端部の方へ向かって摺動させ、その結果、ステップ2724において、縫合糸を縫合糸ハウジング内に戻るように引っ込め得る。ステップ2726において、外科医は、縫合糸送達デバイスを操作し、及び偏倚機構を非展開状態にし得る。ステップ2726は、上述したようなステップ2730と同じとし得る。偏倚機構を非展開状態にした後、外科医は、デバイスのカテーテル組立体(例えば、デバイス700のカテーテル組立体730)を新しい部位へ動かし、その部位で縫合を実施し得る。新しい部位へ動いた後、プロセス2700は、繰り返されてもよい。
【0095】
[0127] 図27Bは、ステップ2732後に実施され得るプロセス2700のさらなる組のステップを示す。ステップ2740において、第2の縫合糸が展開される必要がある場合(ステップ2740、Yes)、外科医は、SAREが追加の縫合糸を含んでいるかどうかを決定し得る。SAREが追加の縫合糸を含んでいる場合(ステップ2742、Yes)、プロセス2700は、ステップ2702から始まって繰り返され得る。或いは、SAREが追加の縫合糸を含んでいない場合(ステップ2742、No)、ステップ2744において、カテーテル組立体730は患者の体から除去され得る(例えば、デバイス700全体が引き出されて、場合によっては、新しいカテーテル組立体が再装荷されてもよいし、又は縫合糸を含む新しいSAREに変更されてもよい)。ステップ2740において、第2の縫合糸が展開される必要がない場合(ステップ2740、No)、ステップ2744が上述の通り実施される。
【0096】
[0128] 本明細書で説明する縫合糸ハウジングは、可撓性材料(例えば、軟質プラスチック)で形成され、それゆえ、より硬質なもの(例えば、金属材料)で形成され得る縫合糸からの摩耗の影響を受けやすいとし得る。そのようなものとして、縫合糸ハウジングは、縫合糸を含むハウジングの遠位部分の長さに沿った摩耗を防止又は減少させ得る金属性支持部を含み得る。例えば、図28A~28Cは、縫合糸展開窓2833を有する縫合糸ハウジング2834の実施形態の例示的な図を示す。図28Bは、展開窓2833が、展開窓2833の近くの領域において縫合糸ハウジング2834を保護する(例えば、縫合糸の尖っている端部から)ように構成されたリップ要素又は支持部(bearing)2833A、及び/又は展開窓2833の周りの滑らかなエッジを含むことを示す。縫合糸ハウジング2834は、可撓性材料、例えばプラスチック(例えば、ポリエーテルエーテルケトン)から形成され得る。しかしながら、そのような材料は、縫合糸がデバイスから展開されるときの穿刺又は摩耗の影響を受けやすいとし得る。そのようなものとして、支持部2833Aは、縫合糸の鋭くされた端部が存在して接触し得る縫合糸ハウジング2834の内面を保護するために使用され得る。いくつかの実施形態では、支持部2833Aは、縫合糸ハウジング2834のより長い長さ部分を通って、例えば、縫合糸が収納される遠位部分全体に沿って、延在し得る。例示的な実施形態では、図28Aに示すように、リップ要素2833Aは、好適な材料(例えば、金属)の折られたシートから形成され得る。例示的な実施形態では、図28Aに示すような半径rは、展開窓2833を経由して展開された縫合糸が、滑らかで制御された方法で放出されることを保証するように、選択される。さらに、滑らかなリップ要素2833Aは、展開窓2833の周りのエッジが十分に滑らかであり、及び窓2833の近くにある組織に害を及ぼさないことを保証する。図28Cは、例示的な実施形態を示し、ここでは、縫合糸2810は、縫合糸ハウジング2834の展開窓2833から展開されている。
【0097】
[0129] いくつかの実施形態では、例えば、縫合糸の前進による経時的なハウジングの摩耗を回避するために、例えば、金属などのより硬質な材料から形成された縫合糸ハウジングを使用することが望ましいとし得る。しかしながら、そのようなハウジングに、それらの可撓性を増すための特徴が組み込まれていない限り、そのような縫合糸ハウジングは可撓性がないかもしれない。例えば、開口、ミシン目、刻み目、鋸歯状の縁などのような特徴が、縫合糸ハウジングの可撓性を増すために追加され得る。例えば、図29は、展開窓2933及び開口2980を有する例示的な縫合糸ハウジング2934を示す(図29では、いくつかの開口にのみ符号が付されている)。開口2980は、縫合糸ハウジング2934内でのSAREの動きを邪魔せず、及び縫合糸の展開を邪魔しない。例示的な実施形態では、開口2980は、縫合糸ハウジング2934の可撓性を高めることを可能にする。例えば、開口2980が設けられた縫合糸ハウジング2934は、開口が設けられていない同様の縫合糸ハウジング(例えば、縫合糸ハウジング734)よりも曲げることができる。例えば、縫合糸ハウジング2934は、金属又は金属複合材などの硬質材料で形成され、それゆえ開口2980は、縫合糸ハウジング2934を曲げることができるようにし得る。縫合糸ハウジング2934は、より硬質な材料、例えば金属から形成されることによって、支持部(例えば、支持部2833Aなど)を必要とすることなく、縫合糸の尖っている端部に耐えることができるようにし得る。縫合糸ハウジング2934の第2の側面にあることを示すが、場合によっては、縫合糸ハウジング2934の可撓性をさらに増すために、第1の側面にも開口が使用されてもよい。
【0098】
[0130] 図30は、縫合糸3010が非効率的に展開される、又は展開窓3033を経由して縫合糸ハウジング3034から不良展開される(mal-deployed)、例示的な実施形態を示す。例示的な実施形態では、縫合糸3010は、プロング又は脚3011A及び3011Bを含む。例示的な実施形態では、縫合糸3010は、本明細書で説明するもののいずれかのような縫合糸前進/引っ込め機構又はSAREによって支持されたり又は拘束されたりしなくてもよいため、プロング3011A及び3011Bが窓3033から放出されるときに、縫合糸3010は形状を変化させ始め得る(例えば、丸まる)。例えば、本明細書で説明するSAREは、縫合糸ハウジングと一緒に、縫合糸の脚を、それらの全長に沿って、半径方向に拘束し、それゆえ、脚が互いに対して丸まったり又は捩じれたりして互いに非平行にハウジングから出るのを防止し得る形成物を含み得る。SAREがなければ、縫合糸3010は、図30に示すように、窓から不良展開し得る。特に、縫合糸3010は、上述の通り、超弾性材で形成され得る。それゆえ、縫合糸3010は、縫合糸ハウジング内に拘束されると、高エネルギー状態にある。縫合糸3010の脚3011A及び3011BがSAREと縫合糸ハウジングとの間で半径方向に拘束されないと、各縫合糸の脚の高エネルギー状態は、平らにされているとき、それが許されているいずれかの自由な動きの範囲を使用して、その中立条件へ変化する方法を見つける。これは、縫合糸の脚が、図30に示すような望ましくない角度及び形で縫合糸展開窓から出ることにつながり得る。縫合糸のそのような展開は、縫合糸の配置の際の合併症につながり得る。
【0099】
[0131] 本開示の例及び説明は、例示目的を果たし、且つ要素(例えば、縫合糸)の形状の逸脱及び変形、並びに様々な構成要素の動作(例えば、偏倚部材の動作)は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書の教示に従って変更されてもよいことが理解されるべきである。
【0100】
[0132] 本明細書では、用語「約」及び/又は「およそ」及び/又は「実質的に」は、数値及び/又は範囲と一緒に使用されるとき、一般的に、列挙した数値及び/又は範囲に近い数値及び/又は範囲を指す。場合によっては、用語「約」及び「およそ」及び「実質的に」は、列挙した値の±10%以内を意味し得る。例えば、場合によっては、「約100[単位]」は、100の±10%以内(例えば、90~110)を意味し得る。用語「約」及び「およそ」は、区別しないで使用され得る。
【0101】
[0133] また、様々な発明概念が、1つ以上の方法として供され得、その例が提供されている。方法の一部として実施された行為は、任意の好適な方法で順序付けされ得る。その結果、実施形態は、説明したものと異なる順序で行為が実施されるように構成されてもよく、これは、説明に役立つ実施形態では連続的な行為として示されているものの、いくつかの行為を同時に実施することを含み得る。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図20D
図20E
図20F
図21A
図21B
図21C
図22
図23
図24
図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
図28C
図29
図30
【国際調査報告】