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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】メチル化状態の検出
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230914BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20230914BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230914BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/6816 Z ZNA
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022580318
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2021067880
(87)【国際公開番号】W WO2022002958
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】20182947.0
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521493329
【氏名又は名称】ペンタベース エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベンディクセン,カミラ コールディング
(72)【発明者】
【氏名】ピーターセン,ラスムス コーフォード
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,ウルフ ベック
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
(57)【要約】
本発明は、目的の標的核酸配列における少なくとも1つの目的のヌクレオチド(NOI)のエピジェネティック修飾状態を決定するための方法に関する。本発明は、疎水性ヌクレオチドを含む特定のオリゴヌクレオチドが、修飾されていない標的核酸と比較して、エピジェネティック修飾された標的核酸に対する融解温度に有意差を有するという発見に基づく。方法は、例えば、診断において複数の用途を有する。本発明は、そのような方法で使用するためのオリゴヌクレオチド、特にベースプライマーも提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピジェネティック修飾状態、例えば、目的の非修飾標的核酸配列中の少なくとも1つの目的のヌクレオチド(NOI)のメチル化状態を決定する方法であって、前記標的核酸配列は、前記NOIを含む標的アンカー配列を含み、前記方法が、
a.アンカー配列(An)を含むオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、前記アンカー配列は、前記標的アンカー配列に対して少なくとも50%相補的な配列であり、前記アンカー配列は、前記NOIに対して相補的な前記ヌクレオチドとそのすぐ5’側にあるヌクレオチドとの間に位置する少なくとも1つの疎水性ヌクレオチド(H)を含む、ステップと、
b.前記NOIがメチル化などの修飾をされていない場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高い温度で、前記オリゴヌクレオチドを前記目的の標的核酸とインキュベートするステップと、
c.前記オリゴヌクレオチドが前記目的の標的核酸にアニールするか否かを検出するステップと、
それにより、前記エピジェネティック修飾状態、例えば前記メチル化状態を決定するステップと、を含み、
i.ここで、前記疎水性ヌクレオチド(H)は、以下の構造
X-Y-Q
を有し、式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン・クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、前記ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位と前記インターカレーターとを連結するリンカー部分であり、
ii.前記オリゴヌクレオチドは、構造5’-An-Lp-St-3’を有し、式中、
Anは、アンカー配列であり;
Lpは、前記目的の標的核酸配列に対して相補的でないループ配列であり、前記ループ配列は、ループ構造もしくはステム構造などの突出構造を形成することができる単一の核酸配列からなるか、またはループ構造もしくはステム構造などの突出構造を形成することができる複合体を形成するために、少なくとも部分的に互いにハイブリダイズすることができる2つ以上の核酸配列からなり;
Stは、標的スターター配列にハイブリダイズすることができるスターター配列であり、ここで、前記標的スターター配列は、前記標的アンカー配列に対して5’に位置する前記標的核酸配列の配列である、
方法。
【請求項2】
前記目的の標的核酸が、DNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目的の標的核酸が、RNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法を実施する前に、前記目的の非修飾核酸配列が、バイサルファイト変換、制限酵素消化、またはTET酵素変換を含む処理に供されていない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記NOIが、シトシンである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
A.
i.前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、前記疎水性ヌクレオチド(複数可)を含む前記オリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、少なくとも1つのメチル化シトシンなどの少なくとも1つのメチル化NOIを含む、オリゴヌクレオチドと;
ii.前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、前記疎水性ヌクレオチド(複数可)を含む前記オリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、メチル化シトシンなどのメチル化NOIを含まない、オリゴヌクレオチドと;
の融解温度の絶対差、および
B.
i.A.の前記オリゴヌクレオチドと同一であるが、前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合、前記疎水性ヌクレオチド(複数可)を含まないオリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、A.i.と同数のメチル化NOI、例えばA.i.と同数のメチル化シトシンを含む、オリゴヌクレオチドと;
ii.A.の前記オリゴヌクレオチドと同一であるが、前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合、前記疎水性ヌクレオチド(複数可)を含まないオリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、メチル化シトシンなどのメチル化NOIを含まない、オリゴヌクレオチドと;
の融解温度の絶対差が、
前記目的の標的核酸配列においてメチル化されていない代わりに、メチル化されているシトシンなどのNOIあたり、少なくとも0.50℃、例えば少なくとも0.75℃、好ましくは少なくとも1.0℃の差であり、ここで前記差は、A-Bであり、前記差は、正の差であり、ここで、前記融解温度は、0.02M NaHPO、0.02M NaCl、および2mM EDTAを含むTM緩衝液中で測定される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
i.前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、前記疎水性ヌクレオチドを含む前記オリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、少なくとも1つのメチル化シトシンなどの少なくとも1つのメチル化NOIを含む、オリゴヌクレオチドと;
ii.前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、前記疎水性ヌクレオチドを含む前記オリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、メチル化シトシンなどのメチル化NOIを含まない、オリゴヌクレオチドと;
の融解温度間の絶対差が、
前記目的の標的核酸配列においてメチル化されていない代わりに、メチル化されているシトシンなどのNOIあたり、少なくとも1.6℃、例えば少なくとも1.8℃、例えば少なくとも2.0℃、例えば少なくとも2.2℃、好ましくは少なくとも2.4℃であり、前記融解温度は、0.02M NaHPO、0.02M NaCl、および2mM EDTAを含むTM緩衝液中で測定される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アンカー配列が、配列-N-H-G-を含み、式中、-G-が、前記目的のシトシンに対して相補的であり、-N-が、C、G、AおよびTからなる群から選択され、前記目的のシトシンの隣接ヌクレオチドに対して相補的である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記シトシンが、CpG部位にあり、前記アンカー配列が、配列-C-H-G-を含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アンカー配列が、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば1~10の範囲、例えば2~10の範囲、例えば3~10の範囲、例えば4~10の範囲の疎水性ヌクレオチド(H)を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アンカー配列が、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば2~10の範囲、例えば2~5の範囲、例えば3~5の範囲、例えば4~5の範囲の-N-H-G-配列を含み、ここで、各Nは、個別に、C、G、AおよびTからなる群から選択され、各配列-N-G-は、目的のシトシンとその隣接ヌクレオチドに相補的である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
2つ以上のNOIがCpG部位に位置し、前記アンカー配列が、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば2~5の範囲、例えば3~5の範囲、例えば4~5の範囲の-C-H-G-配列を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)およびc)が共に、PCRを実施することを含み、前記温度が、前記PCRの1つ以上のサイクルにおける前記アニーリング温度として使用される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドが、2つ、3つ、またはそれ以上の別個のオリゴヌクレオチドなどの、2つ以上の別個のオリゴヌクレオチドとしてコードされる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドが単一のオリゴヌクレオチドとしてコードされる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドが、第1および第2の核酸配列からなり、前記第1の核酸配列は、前記標的DNAに対して相補的な前記アンカー配列(An)と、前記目的の標的核酸配列に対して相補的でないループ配列の第1の部分とを含み、前記第2の核酸配列は、前記ループ配列の前記第1の部分に少なくとも部分的にハイブリダイズすることができる前記ループ配列の第2の部分を含み、前記第2の核酸配列は、前記スターター配列(St)をさらに含み、前記第1および第2の核酸は、ハイブリダイズすると、突出構造を形成することができる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記アンカー配列(An)が、8~30の範囲、例えば8~20の範囲、例えば10~20の範囲、例えば15~20の範囲のヌクレオチドからなり、前記ヌクレオチドの1つ以上は、疎水性ヌクレオチド(複数可)である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記アンカー配列(An)が、前記標的アンカー配列に対して少なくとも85%相補的である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記スターター配列(St)が、標的スターター配列に対して100%相補的である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記標的アンカー配列および前記標的スターター配列が、互いから10ヌクレオチド以内、例えば8ヌクレオチド以内、例えば5ヌクレオチド以内に位置する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
LpおよびStが、Lp-Stからなるオリゴヌクレオチドが、その相補的配列と共に少なくとも50℃、例えば少なくとも55℃、例えば少なくとも65°Cの融解温度を有するように選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
LpおよびStが一緒になって、少なくとも15ヌクレオチド、例えば少なくとも17ヌクレオチド、例えば15~45ヌクレオチドの範囲、例えば17~35ヌクレオチドの範囲、例えば17~25ヌクレオチドの範囲からなる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
Lpが疎水性ヌクレオチドを含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
Lpが、2つ以上の核酸配列からなり、St配列に共有結合により連結していない前記核酸配列(複数可)が、1つ以上の疎水性ヌクレオチドを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
Stが疎水性ヌクレオチドを含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記オリゴヌクレオチドと前記目的のメチル化標的核酸配列との間の前記融解温度が、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の非メチル化標的核酸配列との間の前記融解温度よりも、少なくとも5℃高い、例えば少なくとも6℃高い、例えば6~15℃高い範囲、例えば6~12℃高い範囲である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
目的の非メチル化標的核酸配列と比較した、前記オリゴヌクレオチドと前記メチル化標的核酸配列との間の融解温度の前記差は、非メチル化標的核酸配列と比較して、前記疎水性ヌクレオチドを欠いていることを除いて同一配列のオリゴヌクレオチドと前記メチル化標的核酸配列との間の融解温度の差より少なくとも1℃高い、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ステップb)およびc)が共に、リアルタイムPCRを実施することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記Ctが、非メチル化標的核酸配列を鋳型として使用して行った対照PCRのCtよりも低い場合に、前記目的の核酸がメチル化されているとみなされる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ステップb)およびステップc)が共に、PCRを実施することを含み、前記PCRの少なくとも最初のサイクルが、前記NOIがメチル化されていない場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の前記融解温度よりも高いアニーリング温度を使用する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ステップb)の前記温度が、前記NOIがメチル化されていない場合の前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも少なくとも2℃高い、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ステップb)およびステップc)が共に、PCRを実施することを含み、前記PCRの少なくとも最初のサイクルが、前記NOIがメチル化されていない場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の前記融解温度よりも高く、前記NOIがメチル化されている場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の前記融解温度より最大で4℃高い、例えば最大で2℃高い、同じかまたは低い、アニーリング温度を使用する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ステップb)およびステップc)が共に、PCRを実施することを含み、前記PCRの少なくとも前記最初のサイクルが、前記NOIがメチル化されていない場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の前記融解温度よりも高く、前記NOIがメチル化されている場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の前記融解温度より最大で4℃高い~最大で4℃低い、アニーリング温度を使用する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ステップb)およびc)が共に、PCRを実施することを含み、前記PCRの少なくとも前記最初のサイクルが55~80℃の範囲のアニーリング温度を使用する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記PCRの少なくとも前記最初のサイクルが、30~120秒の範囲の間、前記アニーリング温度でインキュベーションすることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ステップb)中の前記オリゴヌクレオチドの濃度が、300~700nMの範囲である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記PCRが、1つ以上のメチル特異的増幅サイクルおよび1つ以上の一般的増幅サイクルを含み、前記メチル特異的増幅サイクル(複数可)が、
a.核酸を融解するステップと、
b.メチル特異的条件下でのアニーリングおよび伸長ステップと、を含み、
前記一般的増幅サイクルが、
a.核酸を融解するステップと、
b.一般的な条件下でのアニーリングおよび伸長ステップと、を含み、
ここで、前記融解することは、少なくとも90℃の温度でインキュベーションすることを含み、メチル特異的条件下での前記アニーリングおよび前記伸長は、一般的条件下でのアニーリングおよび伸長よりも高い温度で実施される、請求項13~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記アニーリングが、45~90秒の範囲で、例えば45~75秒の範囲で、例えば約60秒間行われる、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
1~100の範囲のメチル特異的増幅サイクルを含む、請求項37~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記PCRが、前記オリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして使用して実施され、前記PCRが、前記目的の標的核酸配列の下流にある配列と少なくとも90%同一、例えば100%同一であるリバースプライマーの使用をさらに含む、請求項13~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記PCRが、PCR産物の検出のための検出可能なプローブの使用を含み、前記プローブが、前記PCR反応の産物に少なくとも90%相補的なオリゴヌクレオチドおよび検出可能な標識を含む、請求項13~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記プローブが1つ以上の疎水性ヌクレオチドを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
目的の標的核酸配列が、サンプルから精製されたDNAに含まれる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記サンプルが、前記目的の核酸のメチル化に関連する臨床状態を患っているか、またはその臨床状態を有するリスクがある個体から得られたサンプルである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
目的の核酸を前処理して、メチル化ヌクレオチドを検出可能な部分に変換するステップを含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
バイサルファイト変換ステップを含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
個体が臨床状態に罹患しているか否かのリスク、または個体が臨床状態になるリスクを決定するための方法であって、ここで、前記臨床状態は、目的の核酸中におけるNOIのメチル化状態に関連し、
a.前記個体から得られたサンプルを提供することと;
b.先行請求項のいずれか一項に記載の方法を実施することによって、前記サンプル中の前記NOIの前記メチル化状態を決定することであって、前記メチル化状態は、前記臨床状態の存在または前記臨床状態になるリスクを示す、決定することと、を含む、方法。
【請求項48】
それを必要とする個体における臨床状態の治療の効果の可能性を決定するための方法であって、ここで、前記臨床状態の前記治療の前記効果は、目的の核酸中におけるNOIの前記メチル化状態に関連し、
a.前記個体から得られたサンプルを提供することと;
b.請求項1~43のいずれか一項に記載の方法を実施することによって、前記サンプル中の前記NOIの前記メチル化状態を決定することであって、前記メチル化状態は、前記臨床状態に対する異なる治療レジメンの効果を示す、決定することと、を含む、方法。
【請求項49】
前期臨床状態ががんである、請求項47~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記がんが、神経膠芽腫である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなるオリゴヌクレオチド:
5’(N)-HG-(N)-HG-(N)-3’
(式中、Nは、任意のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であり;
Gは、ヌクレオチドグアニンであり;
nは、0以上の整数であり;
mは、1以上の整数であり;
pは、0以上の整数であり;
Hは、疎水性ヌクレオチドであり、
ここで、前記疎水性ヌクレオチドは、以下の構造
X-Y-Q
を有し、式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン・クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位と前記インターカレーターとを連結するリンカー部分である)。
【請求項52】
前記オリゴヌクレオチドが、以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなる、請求項51に記載のオリゴヌクレオチド:
5’(N)-HG-(N)-HG-(N)-HG-(N)-3’
(式中、
pは、1以上であり;
qは、0以上の整数である)。
【請求項53】
前記オリゴヌクレオチドが、以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなる、請求項51~52のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド:
5’(N)-HG-(N)-HG-(N)-HG-(N)-HG-(N)-3’
(式中、
qは、1以上の整数であり;
uは、0以上の整数である)。
【請求項54】
nが、0~4の範囲の整数であり、例えばnが1である、請求項51~53のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項55】
mが、1~8の範囲、例えば1~6の範囲の整数である、請求項51~54のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項56】
pが、1~50の範囲、例えば1~30の範囲、例えば1~10の範囲、例えば1~6の範囲の整数である、請求項51~55のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項57】
qが、1~50の範囲、例えば1~30の範囲、例えば1~10の範囲、例えば1~6の範囲の整数である、請求項51~56のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項58】
uが、1~50の範囲、例えば1~30の範囲、例えば1~10の範囲、例えば1~6の範囲の整数である、請求項51~57のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項59】
少なくとも1つのHのすぐ5’側にある前記ヌクレオチドが、シトシン(C)である、請求項51~58のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項60】
Hのすぐ5’側にあるすべてのヌクレオチドが、シトシン(C)である、請求項51~59のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項61】
すべてのインターカレーターなどの少なくとも1つのQが、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、チオ、シアノ、アルキルチオ、複素環、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルボアルコイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、アミノ、アルコキシルおよびアミドからなる群から選択される1つ以上と任意により置換されたポリアロマート(polyaromate)およびヘテロポリアロマート(heteropolyaromate)からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【請求項62】
前記ポリアロマートまたはヘテロポリアロマートが、少なくとも3つの環、例えば4つの環からなる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【請求項63】
前記インターカレーターが、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、as-インダセン、s-インダセン、ビフェニレン、アセナフチレン、フェナレン、ヘプタレン、フェナントラン(phenanthrane)、フルオランテン、フェナントロリン、フェナジン、フェナントリジン、アントラキノン、ピレン、アントラセン、ナフテン(napthene)、フェナントレン、フルレン(flurene)、ピセン、クリセン、ナフタセン(naphtacene)、アクリドン、ベンゾアントラセン、スチルベン、オキサロピリドカルバゾール、アジドベンゼン、ポルフィリンおよびソラレン、ならびにそれらの誘導体からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【請求項64】
すべてのインターカレーターなどの少なくとも1つのQが、ピレンまたはピリド[3’,2’:4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(1H)-オンまたは7,9-ジメチル-ピリド[3’,2’,4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(3H)-オンを含むか、またはこれらからなる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【請求項65】
少なくとも1つ、例えばすべての骨格モノマー単位が、ホスホロアミダイトからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【請求項66】
前記オリゴヌクレオチドが、請求項43~57のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドである、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなるオリゴヌクレオチド:
5’(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-3’
(式中、Nは、任意のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であり;
Cは、ヌクレオチドシトシンであり;
Gは、ヌクレオチドグアニンであり;
nは、0以上の整数であり;
mは、1以上の整数であり;
pは、0以上の整数であり;
Hは、疎水性ヌクレオチドであり、
ここで、前記疎水性ヌクレオチドは、以下の構造
X-Y-Q
を有し、式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン・クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位と前記インターカレーターとを連結するリンカー部分である)。
【請求項68】
前記オリゴヌクレオチドが、以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなる、請求項67に記載のオリゴヌクレオチド:
5’(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-3’
(式中、
pは、1以上であり;
qは、0以上の整数である)。
【請求項69】
前記オリゴヌクレオチドが、以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなる、請求項67~68のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド:
5’(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-3’
(式中、
qは、1以上の整数であり;
uは、0以上の整数である)。
【請求項70】
n、m、p、qおよびuが、請求項54~58のいずれか一項で定義されたとおりである、請求項67~69のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項71】
QおよびXが請求項61~65のいずれか一項で定義されたとおりである、請求項67~70のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
メチル化は、4つのDNA塩基のうちの1つにメチル基が付加されるDNAのエピジェネティック修飾の一例である。最も一般的には、メチル基は、核酸塩基の5位でシトシンに付加される。プロモーター領域のDNAメチル化は、遺伝子発現の調節に関与している。
【0002】
がんが進行すると、いくつかの遺伝子がプロモーターの過剰メチル化によりサイレンシングされ、これにより、遺伝子転写が抑制される。特定の遺伝子のメチル化は、がんの予後因子として使用され得るが、患者にとって最適な治療の選択にも使用できる。脳腫瘍である神経膠芽腫中では、MGMT(O6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ)プロモーターのメチル化は、テモゾロミド(TMZ)などのアルキル化化学療法に対するより良好な予後およびより効率的な応答と相関している。したがって、神経膠芽腫の患者は、多くの場合、MGMTのメチル化について検査される。
【0003】
メチル化の検出にはいくつかの方法が利用可能であり、ゴールドスタンダード法ではDNAのバイサルファイト前処理を必要とする。この前処理により、非メチル化シトシンがウラシルに変換されるが、メチル化シトシンは変化しない。バイサルファイト処理は、時間を要し、大量のDNAを投入する必要があり、反応時間が短すぎる場合には、不完全な非メチル化シトシンの変換となり、反応時間が長すぎる場合には、メチル化シトシンの変換となる可能性があるため、偽の結果となる傾向がある。これは、偽陽性および偽陰性の両方の結果のリスクにつながる。バイサルファイトを使用しない方法も開発されているが、それらはすべて別の変換を必要とするか、またはPCRベースではない。バイサルファイト変換用のキットは市販されているが、典型的には、少なくとも15の操作ステップを必要とする。
【0004】
疎水性ヌクレオチド、例えばインターカレート核酸(INA(商標))は、インターカレーターなどの疎水性部分を含む。インターカレーターは、DNAまたはRNA二重鎖のスタッキングに関与できる平坦な共役芳香環またはヘテロ芳香環系である。疎水性ヌクレオチドは、ワトソン・クリック型塩基対合には参加しない。疎水性ヌクレオチドが組み込まれているオリゴヌクレオチドが非修飾DNA配列に結合した場合、疎水性部分自体が、DNAヘリックスの中心に置かれる。疎水性ヌクレオチドとDNA塩基との間の相互作用により、二本鎖DNAの安定性が上昇する。
【発明の概要】
【0005】
核酸を変換することなく、核酸塩基のメチル化を分析するなど、核酸の核酸塩基のエピジェネティック修飾を検出するための簡素な方法は、メチル化された核酸がより迅速に検出されること、変換ステップ中のサンプルの損失がないこと、および不完全または非特異的である変換に基づく不確実性がないことにより有益である。臨床現場では、メチル化状態などのエピジェネティック修飾を早期に検出することにより、患者の診断がより迅速になり、これにより治療を早期に開始できる可能性がある。より良い方法では、例えば、がんの治療および監視または診断などにおいて、メチル化のレベルをより適切に定量化し、メチル化状態の使用を拡大することができる可能性がある。
【0006】
本発明は、核酸におけるエピジェネティック修飾の検出、例えばメチル化DNAの検出のための非常に迅速な方法を提供する。これらの方法は、少なくとも1つの疎水性ヌクレオチドを含む合成オリゴヌクレオチドが、核酸塩基にエピジェネティック修飾を含むDNAおよびエピジェネティック修飾を含まないDNAに対して(設計に合わせて)、それぞれ驚くほど高い親和性(融解温度)の差を有することができるという発見に基づく。これは特に、疎水性ヌクレオチドが合成オリゴヌクレオチド内に配置され、潜在的にエピジェネティック修飾されたヌクレオチド(メチル化など)と標的核酸上のそのすぐ3’側のヌクレオチドとの間にインターカレートするようになる場合である。
【0007】
本発明の方法は、あらゆる種類の核酸におけるあらゆるヌクレオチドのエピジェネティック修飾を検出するために使用できるが、この方法は、DNAにおけるシトシンメチル化の検出に特に有用である。そのような場合、合成オリゴヌクレオチドは、疎水性ヌクレオチドが、潜在的にメチル化されたシトシンとそのすぐ3’側のヌクレオチド(ほとんどの場合グアニン)との間にインターカレートするように配置されるように設計されることが好ましい。
【0008】
この驚くほど高い融解温度の差は、様々な方法を使用して、核酸のメチル化状態を容易に検出するために活用され得る。例えば、核酸のメチル化状態は、簡素なPCR法によって検出することができる。重要なことは、本発明の方法では、核酸の前処理が必要ないことである。したがって、核酸のメチル化は、疎水性ヌクレオチド(複数可)を含む適切なプライマーを設計することにより、ワンステップPCRで検出できる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、方法は、以下により詳細に記載される、ベースプライマーと呼ばれる種類のプライマーを使用して実施される。
【0010】
これは、目的の標的核酸配列中の少なくとも1つの目的のヌクレオチド(NOI)のメチル化状態を決定する方法を提供する本発明の一態様であり、標的核酸配列は、NOIを含む標的アンカー配列を含み、本方法が、
a.アンカー配列(An)を含むオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、アンカー配列は、標的アンカー配列に対して少なくとも50%相補的な配列であり、アンカー配列は、NOIに対して相補的なヌクレオチドとそのすぐ5’側のオリゴヌクレオチド中のヌクレオチドとの間に位置する少なくとも1つの疎水性ヌクレオチド(H)を含む、ステップと;
b.NOIがメチル化されていない場合、オリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高い温度で、オリゴヌクレオチドを目的の標的核酸とインキュベートするステップと、
c.オリゴヌクレオチドが目的の標的核酸にアニールするか否かを検出するステップと、
それによってメチル化状態を決定するステップと、を含み、
式中
i.疎水性ヌクレオチド(H)は、構造
X-Y-Q
を有し、式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込まれ得る骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン・クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり、
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位とインターカレーターとを連結するリンカー部分である。
【0011】
また、これは、目的の非修飾標的核酸配列中の少なくとも1つの目的のヌクレオチド(NOI)のメチル化状態を決定する方法を提供する本発明の一態様であり、標的核酸配列は、NOIを含む標的アンカー配列を含み、本方法が、
a.アンカー配列(An)を含むオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、アンカー配列は、標的アンカー配列に対して少なくとも50%相補的な配列であり、アンカー配列は、NOIに対して相補的なヌクレオチドとそのすぐ5’側にあるヌクレオチドとの間に位置する少なくとも1つの疎水性ヌクレオチド(H)を含む、ステップと;
b.NOIがメチル化されていない場合、オリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高い温度で、オリゴヌクレオチドを目的の標的核酸とインキュベートするステップと、
c.オリゴヌクレオチドが目的の標的核酸にアニールするか否かを検出するステップと、
それによってメチル化状態を決定するステップと、を含み、
式中、
i.疎水性ヌクレオチド(H)は、構造
X-Y-Q
を有し、式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込まれ得る骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン・クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり、
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位とインターカレーターとを連結するリンカー部分であり、
ii.オリゴヌクレオチドは、構造5’-An-Lp-St-3’を有し、式中、
Anは、アンカー配列であり;
Lpは、目的の標的核酸配列に対して相補的でないループ配列であり、ループ配列は、ループ構造もしくはステム構造などの突出構造を形成することができる単一の核酸配列からなるか、またはループ構造もしくはステム構造などの突出構造を形成することができる複合体を形成するために、少なくとも部分的に互いにハイブリダイズすることができる2つ以上の核酸配列からなり;
Stは、標的スターター配列にハイブリダイズすることができるスターター配列であり、ここで、標的スターター配列は、標的アンカー配列に対して5’に位置する標的核酸配列の配列である。
【0012】
別の態様では、本発明は、個体が臨床状態に罹患しているか否かのリスク、または個体が臨床状態になるリスクを決定するための方法を提供し、ここで、臨床状態は、目的の核酸中におけるNOIのメチル化状態に関連し、本方法は、
a.個体から得られたサンプルを提供することと;
b.本明細書に開示される方法を実施することによって、サンプル中のNOIのメチル化状態を決定することであって、メチル化状態は、臨床状態の存在または臨床状態になるリスクを示す、決定することと、を含む。
【0013】
いくつかの態様では、本発明は、それを必要とする個体における臨床状態の治療の効果の可能性を決定するための方法を提供し、ここで、臨床状態の治療の効果は、目的の核酸中におけるNOIのメチル化状態に関連し、本方法は、
a.個体から得られたサンプルを提供することと;
b.本明細書に開示される方法を実施することによって、サンプル中のNOIのメチル化状態を決定することであって、メチル化状態は、臨床状態に対する異なる治療レジメンの効果を示す、決定することと、を含む。
【0014】
いくつかの態様では、以下の一般構造を含むまたはこの構造からなるオリゴヌクレオチドが提供される:
5’(N)-HG-(N)-HG-(N)-3’
(式中、Nは、任意のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であり;
Gは、ヌクレオチドグアニンであり;
nは、0以上の整数であり;
mは、1以上の整数であり;
pは、0以上の整数であり;
Hは、疎水性ヌクレオチドであり、
ここで、疎水性ヌクレオチドは、以下の構造を有し;
X-Y-Q
式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン・クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位とインターカレーターとを連結するリンカー部分である)。
【0015】
さらに別の態様では、以下の一般構造を含むまたはこの構造からなるオリゴヌクレオチドが提供される:
5’(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-3’
(式中、Nは、任意のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であり;
Cは、ヌクレオチドシトシンであり;
Gは、ヌクレオチドグアニンであり;
nは、0以上の整数であり;
mは、1以上の整数であり;
pは、0以上の整数であり;
Hは、疎水性ヌクレオチドであり、
ここで、疎水性ヌクレオチドは、以下の構造を有し;
X-Y-Q
式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン・クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位とインターカレーターとを連結するリンカー部分である)。
【0016】
本発明は、添付の特許請求の範囲によってさらに定義される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】融解温度(T)の決定を示す図である。標識させたオリゴヌクレオチドとその相補的標的の二本鎖を加熱することにより、鎖が互いから解離するときに、RFUが減少する(実施例1を参照)。黒い点は、融解温度を示す。A)プローブ/標的二本鎖の融解曲線。融解温度は、傾きが最も急になる点である。B)Aの融解曲線の1次の負の導関数(-dF/dT)である。曲線の最大値は、融解温度である。
図2】メチル化DNA(mC)および非メチル化DNA(non.mC)のそれぞれのΔCtを示す図である。ΔCtは、参照アッセイのCt値とmCまたは非mC DNAのメチル特異的アッセイのCt値との差としてそれぞれ計算される。黒い線は計算の説明であり、正確なCt値のマークではないことに留意されたい。
図3】ベースプライマーアプローチを示す図である。ベースプライマーは、エピジェネティック修飾の可能性がある領域を標的とする疎水性ヌクレオチド(複数可)を含むアンカー(黒)、ループ(濃灰色)、およびスターター配列(薄灰色)からなる。A)鋳型DNAがメチル化されている場合、アンカー配列は、鋳型に対して高い親和性を有し、ベースプライマーのアンカー配列およびスターター配列は、鋳型DNAにアニールし、伸長が生じ得る。B)ベースプライマーは、非メチル化鋳型に対して高い親和性を有しないため、選択した条件で非メチル化鋳型DNAに結合するものでない。これにより、非メチル化鋳型は、確実に増幅されない。濃灰色の線は、鋳型鎖、薄灰色は、アンプリコン、黒い円は、メチル化部位を表すことに留意されたい。ベースプライマーがプライマーとして作用する場合、ループ配列およびアンカー配列は、リバースプライマーのために働く可能性のある鋳型に組み込まれる。ベースプライマーを含む鋳型を使用したリバースプライマーからの伸長は、通常、ほとんどのDNAポリメラーゼが、疎水性ヌクレオチドを読み取ることができないため、アンカー配列において停止する。ループ配列およびスターター配列は、メチル特異的増幅が発生後、通常のプライマーとして機能する(BioRender.comで作成)。
図4】それぞれ、相補的なメチル化配列または非メチル化配列にハイブリダイズする場合の、異なる設計および疎水性ヌクレオチドを含む異なる種類のプローブの融解温度(ΔT)の差の棒グラフを示す図である。プローブMGMT_Z、MGMT_E,MGMT_E2、MGMT_E3およびMGMT_Ref(表1の配列を参照)は、それぞれ、非メチル化(MGMT_0mC)標的または完全メチル化(MGMT_1,2,3,4mC)標的のいずれか(表1の配列を参照)と個別に混合した。完全メチル化標的と非メチル化標的との間の融解温度の差が示されている。各溶融実験で3回の複製を作製した。平均値は、バーの上に表示する。
図5】標的MGMT_1,2,3,4mCおよびMGMT_0mCにそれぞれハイブリダイズしたプローブMGMT_Eおよび参照プローブMGMT_Ref(表1の配列を参照)の融解ピーク(融解曲線の1次の負の導関数)を示す図である。MGMT_Eは、メチル化標的および非メチル化標的の両方にハイブリダイズしたときに、高い融解温度を有するが、同時に、参照プローブと比較して、これらの間の識別が向上する(ΔTが大きくなる)ことが確認される。
図6】プローブ下のメチル化部位の数とプローブの親和性との間に相関関係があることを示すグラフである。メチル化部位の数とプローブMGMT_Eの融解温度との線形フィットが示されている。線形フィットは、それぞれ1つのメチル化シトシンを有する、標的MGMT_1mC、MGMT_2mC、MGMT_3mC、MGMT_4mC、ならびにそれぞれ2つおよび4つのメチル化シトシンを有するMGMT_2,3mC、およびMGMT_1,2,3,4mC(表3の配列を参照)にハイブリダイズされたプローブMGMT_Eの融解温度に適用した。各溶融実験で3回の複製を作製した。
図7】AmpliQueenマスターミックス(PentaBaseから入手可能)中でのプローブMGMT_Eの融解ピークを示す図である。標的MGMT_1,2,3,4mCおよびMGMT_0mCの各々にハイブリダイズさせたプローブMGMT_Eの融解曲線の1次の負の導関数。MGMT_E/MGMT_0mC二本鎖は、80℃で最初に完全に解離することが確認される。これにより、約80℃で、プローブMGMT_Eがマスターミックス中のメチル化相補配列に選択的に結合することが可能であることが示唆される。
図8】異なるアニーリング時間と温度下でのベースプライマーと参照プライマーと間のシグナル(ΔCt)に対するPCRサイクルの差の棒グラフを示す図である。メチル特異的アッセイと参照アッセイと間のΔCt、およびメチル化DNAと非メチル化DNAと間のΔΔCtの差を使用して、最適なアニーリング条件を示す。アニーリング温度および時間は図に示す。参照アッセイでは、以下の実施例のセクション「ベースプライマーの設計」に記載のとおり700nM MGMT_Fw2CおよびMGMT_Rev2Cならびに500nM MGMT_Probe2Eを使用した。メチル特異的アッセイでは、MGMT_Fw2Cの代わりに、MGMT_FwLoop4Cプライマーを使用した。79℃での実験のために、MGMT_Probe2Eの代わりに、1%ZUBR Greenを使用した。
図9】メチル化および非メチル化DNAに対する参照およびメチル特異的アッセイのPCR曲線を示す図である。プローブの相対蛍光単位(RFU)は、サイクルに対応させてプロットしている。PCRプログラムE(表10を参照)を使用した。テストしたサンプルは、IDH U87 WT(mC)から単離したメチル化DNA、および対照として健康なドナーから得たDNA(非mC)であった。700nM MGMT_Fw2C、700nM MGMT_Rev2Cおよび1%ZUBR Greenは、参照アッセイ(Ref)で使用し、メチル特異的アッセイは、MGMT_Fw2Cの代わりに、700 nM MGMT_FwLoop4Cを有していた。
図10】異なるアニール時間および温度でのMGMT_FwLoop5C(配列については表12を参照)のドットプロットを示す図である。メチル特異的アッセイと参照アッセイと間のΔCtと、メチル化DNAと非メチル化DNAと間のΔΔCtの差を使用して、アニーリング時間および温度の変化の効果を示す。A)アニーリング時間を30秒に固定し、温度を変化させた。B)アニーリング温度を81℃に固定し、アニーリング時間を変化させた。参照アッセイは、700nM MGMT_Fw2C_suEおよびMGMT_Rev2C_suEおよび1%ZUBR Greenを有していた。メチル特異的アッセイは、MGMT_Fw2C_suEの代わりに、MGMT_FwLoop5Cを含む。
図11】メチル化および非メチル化DNAに対する参照アッセイおよびメチル特異的アッセイのPCR曲線を示す図である。RFUは、サイクルに対応させてプロットしている。PCRプログラムF(表15を参照)を使用した。参照アッセイでは、700nM MGMT_Fw2C_suE、700nM MGMT_Rev2C_suEおよび1% ZUBR Greenを使用し、メチル特異的アッセイでは、MGMT_Fw2C_suEの代わりに、500nM MGMT_FwLoop5Cを有した。
図12】参照アッセイおよびメチル特異的アッセイの線形結果を示す図である。Ctは、鋳型の入力量の対数と対応させてプロットされている[log(q)]。A)参照アッセイの結果。B)MGMT_FwLoop5Cを用いたメチル特異的アッセイの結果。PCRプログラムFを使用した。参照アッセイでは、700nM MGMT_Fw2C_suE、700nM MGMT_Rev2C_suEおよび1% ZUBR Greenを使用し、メチル特異的アッセイでは、MGMT_Fw2C_suEの代わりに、500nM MGMT_FwLoop5Cを有した。
図13】MyGo ProリアルタイムPCR機器(It-Islifescience)での感度試験結果を示す図である。ΔCtは、メチル化率%に対応させて、プロットしている。PCRプログラムF(表15を参照)を使用した。参照アッセイでは、700nM MGMT_Fw2C_suE、700nM Rev2Cおよび1% ZUBR Greenを使用し、メチル特異的アッセイでは、MGMT_Fw2C_suEの代わりに、500nM MGMT_FwLoop5Cを有した。
図14】異なる種類の変異プローブ(ミスマッチを有するプローブ)のTおよびΔTの棒グラフを示す図である。E型(E_M1、E_M2、E_M3、E_M4、E_M5)の疎水性ヌクレオチドを含むMGMTプローブおよび(E)変異(ミスマッチ)を含まないMGMTプローブは、それぞれ非メチル化(0mC)または完全メチル化(1,2,3,4mC)標的と個別に混合した。テストしたMGMTプローブおよびMGMT標的配列を表20に示す。メチル化標的と非メチル化標的との間の融解温度の差が示されている。平均値は、バーの上に示す。
図15】アンカー配列中にミスマッチを有するベースプライマーを使用して、BaseTyper(商標)リアルタイムPCR機器で実施された感度試験を示す図である。A)ΔCtは、メチル化率%に対応させて、プロットしている。B)ΔCtは、log(メチル化率%)に対応させて、プロットしている。PCRプログラムG(表23を参照)を使用した。700nMMGMT_Fw2C、700nMRev2E、および500nMMGMT_Probe2Eを参照アッセイで使用し、メチル特異的アッセイでは、MGMT_Fw2Cの代わりに、700nMMGMT_FwLoop5D_M5を有した。鋳型は、CpGメチルトランスフェラーゼ(New England Biolabs Inc,Ipswich,MA,USA)を使用してメチル化させたMGMTプロモーター領域からの人工DNAであった。B)で直線性が観察され、これは、アッセイが定量的であることを示す。
図16】相補的標的配列上のアンカー配列(An)の3’末端とスターター配列(St)の5’末端との間にヌクレオチドのギャップを有するベースプライマーを示す図である。0、2、および4ヌクレオチドのギャップを有するベースプライマーを示す(BioRender.comで作成)。
図17】アンカー配列中にミスマッチを有するベースプライマーのΔCtの棒グラフを示す図である。ベースプライマーは、相補的標的配列上のアンカー配列の3’末端とスターター配列の5’末端との間にヌクレオチドのギャップを有するように設計した。PCRプログラムH(表25を参照)を使用した。参照アッセイには、700nM MGMT_Fw2C、700nM MGMT_Rev2E、および500nM MGMT_Probe2Eを使用し、メチル特異的アッセイには、MGMT_Fw2Cの代わりに、表24に記載されている700nMのベースプライマーを使用した。ΔCtは、100%メチル化(100%mC)、10%メチル化(10%mC)、および非メチル化DNA(non.mC)についてプロットしている。鋳型は、CpGメチルトランスフェラーゼ(New England Biolabs Inc,Ipswich,MA,USA)を使用してメチル化させたMGMTプロモーター領域からの人工DNAであった。
図18】補助プライマー複合体の設計アプローチを示す図である。補助プライマー複合体は、2つのプライマーからなる。補助プライマーと呼ばれる1つのプライマー(濃灰色)は、標的DNAに相補的なアンカー配列と、標的配列に相補的でないステム配列と、を含む。ステム配列は、第2のプライマーの配列に相補的である。第2のプライマーは、プライマーの3’末端において、標的DNAに相補的な配列を有する。それにより、2つのプライマーは、三次複合体を作る。A)選択された条件では、複合体は、鋳型DNAがメチル化されている場合にのみ安定する。補助プライマー複合体の第2のプライマーは、残りのPCRサイクルに使用される。B)鋳型DNAがメチル化されていない場合、補助プライマー複合体は、選択条件では安定せず、増幅は生じない(BioRender.comで作成)。
図19】補助プライマー複合体のPCR曲線を示す図である。相対蛍光単位(RFU)は、サイクルに対応させてプロットしている。PCRプログラムH(表25を参照)を使用した。参照アッセイには、700nM MGMT_Fw2C、700nM MGMT_Rev2E、および500nM MGMT_Probe2Eを使用し、メチル特異的アッセイには、MGMT_Fw2Cの代わりに、700nM MGMT_Primer_1Dおよび50nM MGMT_Assist_1A_Eを使用した。鋳型は、MGMTプロモーター領域(non.mC)およびCpGメチルトランスフェラーゼ(New England Biolabs Inc,Ipswich,MA,USA)を使用してメチル化させた同じ鋳型(mC)からの人工DNAであった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
「アンカー配列」という用語は、オリゴヌクレオチド内、好ましくはベースプライマー内に含まれる配列を指す。アンカー配列は、目的のヌクレオチド(NOI)に対して相補的なヌクレオチドに隣接して位置する1つ以上の疎水性ヌクレオチドを含む。さらに、アンカー配列は、「標的アンカー配列」と呼ばれる目的の標的核酸配列の一部にハイブリダイズすることができる。「アンカー配列」は、本明細書において「An」と略される。
【0019】
本明細書で使用される「ベースプライマー」という用語は、アンカー配列(An)、ループ配列(Lp)、およびスターター配列(St)を含む、またはそれらからなるオリゴヌクレオチドを指す。ベースプライマーは、本明細書中以下により詳細に記載される。アンカー配列およびスターター配列は、標的核酸配列に対して少なくとも部分的に相補的であり、したがってそれにハイブリダイズすることができるが、ループ配列は、標的核酸配列に対して相補的ではない。典型的には、ループ配列およびスターター配列はいずれも、疎水性ヌクレオチドを含まない。ベースプライマーが、アンカー配列とループ配列との間に疎水性ヌクレオチドを含む場合、そのような疎水性ヌクレオチドは、アンカー配列の一部であると考えられる。「ループ配列」および「突出配列」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0020】
本明細書で使用される「相補的」という用語は、ワトソン・クリック塩基対によってヌクレオチドの別の連続配列と塩基対合できるヌクレオチドの連続配列を指す。
【0021】
本明細書で使用される「疎水性ヌクレオチド」という用語は、本明細書の以下のセクション「疎水性ヌクレオチド」で詳細に説明される疎水性ヌクレオチドを指す。特に、本発明による疎水性ヌクレオチドは、リンカーを介してヌクレオチド/ヌクレオチド類似体/骨格モノマー単位に接続されたインターカレーターを含有する。
【0022】
本明細書で使用される「融解温度」という用語は、二本鎖を形成することができる核酸配列のハイブリダイズされていない形態に対して、50%のハイブリダイズされた形態が存在する程度の温度を摂氏で表す。融解温度は、(T)とも称され得る。核酸の融解は、二本鎖核酸分子の2つの鎖の熱分離を指す。融解温度は、好ましくは、以下の実施例1に記載のとおり決定される。融解温度は、本発明の方法を実施するために使用される同じ溶液(例えば、緩衝液)中で決定されることが好ましい。
【0023】
「ヌクレオチドのメチル化」または「メチル化ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの核酸塩基が、核酸塩基中に通常存在するもの(エピジェネティック修飾のない核酸中)と比較して、追加のメチル基で共有結合により修飾されていることを指す。異なるメチル化が本発明に関連するが、好ましいメチル化は、シトシンのメチル化である。多くの場合、メチル基は、ピリミジン環の5番目の原子に付加され、5-メチルシトシン(5-mC)を作出する。
【0024】
【化1】
【0025】
シトシンのメチル化は、「CpG部位」とも呼ばれ得るCpGジヌクレオチド中において、シトシンがグアニンの直前に置かれる場合に特に一般的である。ゲノムの特定の領域には、多数のCpG部位が含有されている。そのような領域は、「CpGアイランド」と呼ばれることがある。
【0026】
本明細書で使用される「ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド、例えば、天然に存在するリボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはリボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドの天然に存在する誘導体を指す。ヌクレオチドとしては、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)またはシトシン(C)の4つの核酸塩基の1つを含むデオキシリボヌクレオチド、およびアデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)またはシトシン(C)の4つの核酸塩基の1つを含むリボヌクレオチドが挙げられる。簡潔にするために、特定の核酸塩基を含むヌクレオチドは、本明細書では単に核酸塩基の名前で呼ばれることがある。例として、シトシン(C)を含むヌクレオチドは、「シトシン」または「C」と呼ばれることもある。
【0027】
本明細書で使用される「目的のヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのメチル化状態を調査することが望ましいヌクレオチドを指す。目的のヌクレオチドは、任意のヌクレオチドであり得るが、好ましくは、目的のヌクレオチドは、シトシン(C)である。「目的のヌクレオチド」は、本明細書では「NOI」と略される。
【0028】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体および/または疎水性ヌクレオチドのオリゴマーを指す。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、任意により1つ以上の疎水性ヌクレオチドを含むヌクレオチドのオリゴマーである。
【0029】
「目的の標的核酸配列」という用語は、「標的アンカー配列」を含む核酸配列を指し、「標的アンカー配列」は、少なくとも1つのNOIを含む。
【0030】
「標的アンカー配列」という用語は、NOIを含む目的の標的核酸配列の部分を指す。「アンカー配列」は、標的アンカー配列にハイブリダイズすることができる。
【0031】
「エピジェネティック変化」という用語は、そのような修飾が核酸塩基のスタッキング効率を変化させることを考慮して、核酸の核酸塩基に自然に起こり得る修飾を指す。
【0032】
本明細書で使用される「エピジェネティック修飾」という用語は、典型的には娘細胞に遺伝する核酸塩基の共有結合修飾を指す。エピジェネティック修飾は、好ましくはメチル化であるが、アルキル化、アセチル化、ヒドロキシル化、メトキシ化、または核酸塩基の他の修飾であってもよい。
【0033】
本明細書で使用される「非修飾」という用語は、目的の核酸が、非メチル化ヌクレオチドを検出可能な部分に変換するためかつ/またはメチル化ヌクレオチドを検出可能な部分に変換するための修飾または前処理のステップを受けていないことを指す。そのような修飾または前処理の例としては、バイサルファイト変換、制限酵素消化またはTET酵素変換が挙げられる。したがって、本明細書で定義される非修飾は、メチル化核酸または非メチル化核酸のいずれかに選択的に作用する核酸処理または修飾がないことのみを指す。メチル化核酸と非メチル化核酸を識別しない希釈、DNA精製、または酵素処理などの、メチル化核酸または非メチル化核酸のいずれかに選択的に作用または識別することができない前処理ステップまたは修飾は、本明細書で使用されるこの用語には含まれない。
【0034】
標的核酸配列中での目的のヌクレオチドのメチル化状態
本発明は、標的核酸配列中の少なくとも1つのNOIのエピジェネティック(メチル化など)状態を決定する方法に関する。
【0035】
この方法は、アンカー配列を含むオリゴヌクレオチドの使用に基づいており、アンカー配列は、1つ以上の疎水性ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、本明細書の以下のセクション「アンカー配列を含むオリゴヌクレオチド」に記載されるオリゴヌクレオチドのいずれかであり得る。アンカー配列を含むオリゴヌクレオチドは、エピジェネティック修飾(例えば、メチル化)を伴う核酸配列に対して、エピジェネティック修飾のない核酸配列に対する親和性とは著しく異なる親和性を有する。例えば、アンカー配列を含むオリゴヌクレオチドは、非メチル化核酸と比較して、メチル化核酸に対して著しく高い親和性を有する。この親和性の差は、以下に説明するように、様々な方法でメチル化などのエピジェネティック修飾を検出するために使用できる。
【0036】
したがって、本発明の方法は、一般に、NOIが、調査されるパターンとは異なるエピジェネティック修飾パターンを有する場合、オリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高い温度で、オリゴヌクレオチドを目的の標的核酸とインキュベートするステップb)を含む。
【0037】
好ましくは、温度は、NOIがメチル化されていないときのオリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高くなるように選択され、温度は、NOIがメチル化されているときのオリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度より最大で2℃高いか、それに等しいか、またはそれより低い。
【0038】
いくつかの実施形態では、温度は、NOIがメチル化されていないときのオリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも少なくとも2℃高くなるように選択され、温度は、NOIがメチル化されているときのオリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度より最大で2℃高いか、それに等しいか、またはそれより低い。
【0039】
本明細書の別の場所に記載したとおり、融解温度で、約50%のハイブリダイズ形態および非ハイブリダイズ形態が存在する。したがって、融解温度よりも高い温度では、典型的には、一部のハイブリダイゼーションが依然として生じる。したがって、融解温度よりわずかに高い温度、例えば2℃まで高い温度を使用することができる。
【0040】
親和性の差、したがってメチル化などのエピジェネティック状態は、様々な異なる方法を使用して検出できる。非常に簡潔に言えば、アンカー配列を含むオリゴヌクレオチドと標的核酸配列との間の融解温度を決定することができ、これに基づいてエピジェネティック状態を決定することができる。
【0041】
好ましくは、方法は、増幅ステップを含み、増幅は、NOIがメチル化されている場合にのみ増幅が起こるように、またはNOIがメチル化されていない場合にのみ増幅が起こるように設計される。これは、メチル化標的核酸へのアンカー配列を含むオリゴヌクレオチドのアニーリングを可能にするが、非メチル化標的配列へのオリゴヌクレオチドのアニーリングを可能にしない温度を使用する、1つ以上のステップを含むアッセイを設計することによって達成することができる。
【0042】
好ましい方法は、PCRに基づく方法であり、特に、本明細書の以下のセクション「PCR」に記載されるPCRに基づく方法のいずれかである。
【0043】
上記で説明したとおり、本発明の方法の1つの利点は、本方法が、バイサルファイト変換、制限酵素消化またはTET酵素変換など、非メチル化またはメチル化ヌクレオチドを検出可能な部分に変換するための標的核酸の前処理を必要としないことである。
【0044】
バイサルファイトは、非メチル化シトシンをウラシルに変換する。5-メチルシトシンは、変化しないままである。これにより、メチル化状態に応じて塩基対配列に差が生じ、PCRなどによってメチル化DNAと非メチル化DNAとの差を検出できる。
【0045】
メチル化感受性制限酵素を使用して、サンプルのメチル化状態を決定することもできる。通常、メチル化感受性制限酵素は、メチル化非感受性アイソシゾマーと共に存在する。このような酵素セットの例は、HpaIIおよびMspIであり、両方とも配列CCGGを認識し、CGジヌクレオチドの前を切断する酵素である。HpaIIは、非メチル化CCGGのみを切断し、MspIは、メチル化および非メチル化CCGG部位を両方とも切断する。これにより、メチル化DNAと非メチル化DNAとの消化の差を検出することができ、PCRによって分析できる。
【0046】
TET酵素変換は、2種類の酵素APOBECおよびTET2に依存する。TET2は、5-メチルシトシンを5-カルボキシシトシンに変換する。この変換により、5-メチルシトシンがAPOBECによって変換されるのを防ぎ、これにより、非メチル化シトシンのみを脱アミノ化してウラシルとし、これにより、PCRなどによる、メチル化DNAと非メチル化DNAとの差の検出が可能になる。
【0047】
いくつかの実施形態では、目的の標的核酸配列は、修飾されていない。したがって、方法が、目的の核酸を前処理して、非メチル化ヌクレオチドを検出可能な部分に変換するおよび/またはメチル化ヌクレオチドを検出可能な部分に変換するステップを含まないことは、本発明に含まれる。いくつかの実施形態では、目的の標的核酸配列は、本明細書に開示される方法を実施する前に、バイサルファイト変換、制限酵素消化、またはTET酵素変換を含む処理を受けていない。特に、方法が、バイサルファイト変換のステップを含まないことが好ましい。
【0048】
標的核酸配列
標的核酸配列は、メチル化状態などのエピジェネティクスを決定することが望ましい、少なくとも1つのヌクレオチド(NOI)を含む任意の核酸配列であり得る。標的核酸配列は、典型的には、目的の短い配列を含む長い核酸配列であり、本明細書では「標的アンカー配列」と呼ばれる。標的アンカー配列は、少なくとも1つのNOIを含む。
【0049】
好ましくは、核酸は、DNAであるが、核酸は、RNAなどの他の種類の核酸であってもよい。好ましい実施形態では、核酸は、ゲノムDNAである。本方法は、天然に存在する配列のエピジェネティック修飾、特にシトシンのメチル化を決定するために有利に使用することができる。
【0050】
好ましくは、エピジェネティック修飾は、メチル化であるが、アルキル化、アセチル化、ヒドロキシル化、メトキシ化、または核酸塩基の他の修飾であってもよい。
【0051】
標的アンカー配列は、1つ以上のNOIを含む。本発明のオリゴヌクレオチドのアンカー配列は、アンカー配列が標的アンカー配列とハイブリダイズできるような方法で選択される。典型的には、アンカー配列は、標的アンカー配列に対して少なくとも50%相補的である。
【0052】
多くの場合、メチル化など、修飾されていてもいなくてもよいいくつかのNOIが、標的核酸配列内に近接して置かれている。そのような場合、ヌクレオチドのすべての全体的な修飾(メチル化)状態を決定することが望ましい場合がある。これは、NOIあたり1つの疎水性ヌクレオチドを含むアンカー配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することにより、以下に記載する本発明の方法によって行うことができる。1つまたはいくつかのNOIの修飾(メチル化)状態のみが決定されることも本発明に含まれる。ここでも、これは、調査するNOIごとに1つの疎水性ヌクレオチドを含むアンカー配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することによって行うことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、エピジェネティック修飾状態が臨床状態に関連する1つ以上のNOIを含む核酸配列であり得る。例えば、NOIのメチル化状態は、以下の「臨床状態」のセクションでより詳細に説明するように、臨床状態の存在、臨床状態の進行、臨床状態を獲得するリスク、または特定の治療方法に対する感受性と関連付けることができる。NOIのメチル化状態が臨床状態に「関連」しているということは、それがその臨床状態の原因であることを意味するのではなく、所定のメチル化状態がその臨床状態に関してより一般的であることを意味する。
【0054】
NOIは、エピジェネティック修飾状態を検出することが望ましい任意のヌクレオチドであり得る。好ましい実施形態では、NOIは、シトシン(C)であり、さらにより好ましくは、NOIは、CpG部位に位置するシトシンである。最も好ましい実施形態では、NOIのエピジェネティック修飾は、CpG部位のメチル化である。
【0055】
標的核酸は、標的核酸配列を含む任意の組成物中に含まれ得る。多くの場合、標的核酸は、核酸サンプル中に含まれる。サンプルは、エピジェネティック状態(例えば、メチル化状態)を決定することが望ましい任意の供給源から得られたものであり得る。例えば、サンプルは、ヒトなどの哺乳動物から得ることができる。サンプルは、少なくとも部分的に精製されてもよい、すなわち、サンプルは、少なくとも部分的に精製された核酸を含んでもよい。したがって、目的の標的核酸配列は、サンプルから精製されたDNA中に含まれ得る。
【0056】
本明細書の他の箇所に記載されているように、標的アンカー配列は、アンカー配列に少なくとも部分的に相補的である。したがって、標的核酸がDNAなどの二本鎖核酸である場合、アンカー配列は通常、DNAの一方の鎖と少なくとも部分的に同一であり、標的アンカー配列はDNAの他方の鎖に位置する。
【0057】
アンカー配列を含むオリゴヌクレオチド
本発明は、少なくとも1つのNOIのメチル化状態などのエピジェネティックを決定するための方法に関し、方法は、アンカー配列(An)を含むオリゴヌクレオチドの使用を採用し、ここで、アンカー配列は、本明細書では「標的アンカー配列」と示されるNOIを含む標的核酸配列内のある部位に対して少なくとも50%相補的な配列である。アンカー配列は、好ましくは、NOIに対して相補的なヌクレオチドとそのすぐ5’側のオリゴヌクレオチド中のヌクレオチドとの間に位置する少なくとも1つの疎水性ヌクレオチド(H)を含む。
【0058】
NOIがCである本発明の実施形態では、アンカー配列は、したがって好ましくは配列-H-G-を含み、ここで、Gは、目的のCに相補的である。
【0059】
アンカー配列は、隣接する2つの疎水性ヌクレオチドを含まないことが好ましい。したがって、アンカー配列は、特に、配列-N-H-G-を含み、ここで、Nは、任意のヌクレオチドであり、配列-N-G-は、目的のシトシンおよびその隣接ヌクレオチドに対して相補的である。特に、Nは、C、G、AおよびTからなる群から選択され得る。
【0060】
NOIが、CpG部位にあるCである実施形態では、アンカー配列が、配列-C-H-G-を含むことが好ましい。
【0061】
アンカー配列は、2つ以上の疎水性ヌクレオチドを含み得る。したがって、アンカー配列は、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば1~10の範囲、例えば2~10の範囲、例えば3~10の範囲、例えば4~10の範囲の疎水性ヌクレオチド(H)を含み得る。
【0062】
アンカー配列は、特に、NOIあたり1つの疎水性ヌクレオチドを含み得る。疎水性ヌクレオチドは、好ましくはすべて、NOIに対して相補的なヌクレオチドとそのすぐ5’側のオリゴヌクレオチド中のヌクレオチドとの間に位置する。さらに、アンカー配列は、追加の疎水性ヌクレオチドも含み得る。
【0063】
本発明の実施形態では、標的核酸配列がCである2つ以上のNOIを含む場合、アンカー配列は、2つ以上の-N-H-G-配列を含み得、ここで各Nは、個別に任意のヌクレオチドであり得る。好ましくは、アンカー配列は、CであるNOIあたり1つの-N-H-G-配列を含み、各-N-G-配列は、目的のシトシンおよびその隣接ヌクレオチドに対して相補的である。したがって、アンカー配列は、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば2~5の範囲、例えば3~5の範囲、例えば4~5の範囲の-N-H-G-配列を含むことができ、ここで、各Nは、個別に任意のヌクレオチドであり、各配列-N-G-は、目的のシトシンおよびその隣接ヌクレオチドに対して相補的である。特に、Nは、C、G、AおよびTからなる群から選択され得る。
【0064】
本発明の実施形態では、標的核酸配列がCpG部位に位置するCである2つ以上のNOIを含む場合、アンカー配列は、CpG部位に位置するCであるNOIあたり1つの-C-H-G-配列を含むことができる。したがって、アンカー配列は、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば2~5の範囲、例えば3~5の範囲、例えば4~5の範囲の-C-H-G-配列を含むことができる。
【0065】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、以下の一般構造からなるアンカー配列を含む:
5’(N)-HG-(N)-HG-(N)-3’
(式中、Nは、任意のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であり;
Gは、ヌクレオチドグアニンであり;
nは、0以上の整数であり;
mは、1以上の整数であり;
pは、0以上の整数であり;
Hは、疎水性ヌクレオチド、例えば以下に記載する疎水性ヌクレオチドのいずれかである)。
【0066】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、以下の一般構造からなるアンカー配列を含む:
5’(N)-HG-(N)-HG-(N)-HG-(N)-3’
(式中、
pは、1以上であり;
qは、0以上の整数である)。
【0067】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、以下の一般構造からなるアンカー配列を含む:
5’(N)-YG-(N)-YG-(N)-YG-(N)-YG-(N)-3’
(式中、
qは、1以上の整数であり;
uは、0以上の整数である)。
【0068】
Yは、拡張IUPACコードによるCまたはTを表す。
【0069】
上述のオリゴヌクレオチドに関して、nは、例えば、0~4の範囲の整数であってもよく、例えば、nは、1であってもよく、mは、例えば1~8の範囲、例えば1~6の範囲の整数であってもよく、pは、例えば1~50の範囲、例えば1~30の範囲、例えば1~10の範囲、例えば1~6の範囲の整数であってもよく、qは、例えば1~50の範囲、例えば1~30の範囲、例えば1~10の範囲、例えば1~6の範囲の整数であってもよく、uは、例えば1~50の範囲、例えば1~30の範囲、例えば1~10の範囲、例えば1~6の範囲の整数であってもよい。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドは、以下に記載するベースプライマーである。そのような実施形態では、アンカー配列は、ループ配列およびスターター配列に連結され、そのような実施形態では、オリゴヌクレオチドの3’部分は、ループ配列およびスターター配列の両方を含有するのに十分な長さである。
【0071】
上で説明したとおり、NOIは、CpG部位に位置するシトシンであり得る。そのような場合、少なくとも1つのHのすぐ5’側にあるヌクレオチドは、シトシン(C)であることが好ましい。すべてのNOIがCpG部位に位置するシトシンである場合、HがNOIに対して相補的なGに隣接している場合、Hのすぐ5’側にあるすべてのヌクレオチドがシトシン(C)であることが好ましい。
【0072】
アンカー配列を含むオリゴヌクレオチドは、非メチル化標的核酸配列よりも高い親和性でメチル化標的核酸配列にアニールする。したがって、オリゴヌクレオチドと目的のメチル化標的核酸配列との間の融解温度は、多くの場合、オリゴヌクレオチドと目的の非メチル化標的核酸配列との間の融解温度よりも、少なくとも5℃高い、例えば少なくとも6℃高い、例えば6~15℃高い範囲、例えば6~12℃高い範囲である。
【0073】
特に、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドが、疎水性ヌクレオチドを含まない同様のオリゴヌクレオチドと比較して、メチル化対非メチル化標的核酸に対する親和性においてより大きな差を有するという発見に基づく。この親和性の差が大きいことにより、PCRなどの簡素な方法でメチル化をうまく検出することができる。目的の非メチル化標的核酸配列と比較した、本発明のオリゴヌクレオチドとメチル化標的核酸配列との間の融解温度の差は、好ましくは、非メチル化標的核酸配列と比較して、疎水性ヌクレオチドを欠いていることを除いて同一配列のオリゴヌクレオチドとメチル化標的核酸配列との間の融解温度の差より少なくとも1℃高い。
【0074】
シトシンメチル化などのNOIメチル化、すなわち、目的の標的核酸などの核酸中にメチル化シトシン(複数可)が存在することにより、核酸がオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするときの融解温度に差が生じる。この差は、メチル化NOIの数に依存し、検出が困難な場合がある。本発明のオリゴヌクレオチドの疎水性ヌクレオチドは、それ以外は同一であるが疎水性ヌクレオチドを含まないオリゴヌクレオチドと比較して、非メチル化対メチル化NOIに対する親和性の差を増幅する。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドは、メチル化シトシンなどのメチル化NOIの数に応じて、目的の標的配列にハイブリダイズした場合に、疎水性ヌクレオチドを含まない同一のオリゴヌクレオチドと比較して、融解温度の大きい差をもたらし、したがって、メチル化NOIの存在の検出が容易になる。
【0075】
いくつかの実施形態では、
A.
i.目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、疎水性ヌクレオチド(複数可)を含む本発明のオリゴヌクレオチドであって、目的の核酸配列が、少なくとも1つのメチル化シトシンなどの少なくとも1つのメチル化NOIを含む、オリゴヌクレオチドと;
ii.目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、疎水性ヌクレオチド(複数可)を含む本発明のオリゴヌクレオチドであって、目的の核酸配列が、メチル化シトシンなどのメチル化NOIを含まない、オリゴヌクレオチドと;
の融解温度の絶対差、および
B.
i.A.のオリゴヌクレオチドと同一であるが、目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合、疎水性ヌクレオチド(複数可)を含まないオリゴヌクレオチドであって、目的の核酸配列が、A.i.と同数のメチル化NOI、例えばA.i.と同数のメチル化シトシンなどを含む、オリゴヌクレオチドと;
ii.A.のオリゴヌクレオチドと同一のオリゴヌクレオチドであるが、目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合、疎水性ヌクレオチド(複数可)を含まないオリゴヌクレオチドであって、目的の核酸配列は、メチル化シトシンなどのメチル化NOIを含まない、オリゴヌクレオチドと;
の融解温度の絶対差が、
目的の標的核酸配列においてメチル化されていない代わりに、メチル化されているシトシンなどのNOIあたり、少なくとも0.50℃、例えば少なくとも0.75℃、好ましくは少なくとも1.0℃の差であり、ここで差は、A-Bであり、差は、正の差である。好ましい実施形態では、融解温度は、0.02M NaHPO、0.02M NaCl、および2mM EDTAを含むTM緩衝液中で測定される。
【0076】
いくつかの実施形態では、
i.目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、疎水性ヌクレオチドを含む本発明のオリゴヌクレオチドであって、目的の核酸配列が、少なくとも1つのメチル化シトシンなどの少なくとも1つのメチル化NOIを含む、オリゴヌクレオチドと;
ii.目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、疎水性ヌクレオチドを含む本発明のオリゴヌクレオチドであって、目的の核酸配列が、メチル化シトシンなどのメチル化NOIを含まない、オリゴヌクレオチドと;
の融解温度間の絶対差は、
シトシンなどのNOIあたり、少なくとも1.6℃、例えば少なくとも1.8℃、例えば少なくとも2.0℃、例えば少なくとも2.2℃、好ましくは少なくとも2.4℃であり、これは、目的の標的核酸配列においてメチル化されていない代わりにメチル化されている。好ましい実施形態では、融解温度は、0.02M NaHPO、0.02M NaCl、および2mM EDTAを含むTM緩衝液中で測定される。
【0077】
比較のために、いくつかの実施形態では、
i.上記段落に記載のオリゴヌクレオチドと同一のオリゴヌクレオチドであるが、目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合、疎水性ヌクレオチドを含まないオリゴヌクレオチドであって、目的の核酸配列は、少なくとも1つのメチル化シトシンなどの少なくとも1つのメチル化NOIを含む、オリゴヌクレオチドと;
ii.上記段落に記載のオリゴヌクレオチドと同一のオリゴヌクレオチドであるが、目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合、疎水性ヌクレオチドを含まないオリゴヌクレオチドであって、目的の核酸配列は、メチル化シトシンなどのメチル化NOIを含まない、オリゴヌクレオチドと;
の融解温度の絶対差が、
目的の標的核酸配列中でメチル化されていない代わりにメチル化されているシトシンなどのNOIあたり、最大で1.0℃、例えば、最大で0.9℃、例えば、最大で0.8℃である。好ましい実施形態では、融解温度は、0.02M NaHPO、0.02M NaCl、および2mM EDTAを含むTM緩衝液中で測定される。
【0078】
好ましくは、アンカー配列(An)は、8~30の範囲、例えば8~20の範囲、例えば10~20の範囲、例えば15~20の範囲のヌクレオチドからなり、ヌクレオチドの1つ以上は、疎水性ヌクレオチド(複数可)である。
【0079】
言及したように、アンカー配列(An)は、標的アンカー配列に対して少なくとも50%相補的であり、好ましくは、アンカー配列(An)は、標的アンカー配列に対して少なくとも85%相補的である。いくつかの実施形態では、アンカー配列は、標的アンカー配列に対して100%相補的であり得る。しかしながら、好ましい実施形態では、アンカー配列は、標的アンカー配列に対して100%相補的ではない。
【0080】
ベースプライマー
本発明は、少なくとも1つのNOIのメチル化状態などのエピジェネティック状態を決定するための方法に関し、本方法は、アンカー配列(An)を含むオリゴヌクレオチドの使用を利用する。好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドは、このセクションに記載のベースプライマーである。
【0081】
本発明によるベースプライマーは、以下の構造を有するオリゴヌクレオチドである;
5’-An-Lp-St-3’
式中、Anは、アンカー配列であり;
Lpは、ループ配列であり;
Stは、スターター配列である。
【0082】
アンカー配列(An)は、好ましくは、本明細書で「標的アンカー配列」と示されるNOIを含む標的核酸配列内のある部位に対して少なくとも50%相補的な配列である。アンカー配列は、好ましくは、NOIに対して相補的なヌクレオチドとそのすぐ5’側のオリゴヌクレオチド中のヌクレオチドとの間に位置する少なくとも1つの疎水性ヌクレオチド(H)を含む。アンカー配列は、特に、本明細書の上記のセクション「アンカー配列を含むオリゴヌクレオチド」で説明したアンカー配列のいずれかであり得る。
【0083】
ループ配列(Lp)は、標的核酸配列に任意の有意な程度にはハイブリダイズしない配列である。したがって、好ましくは、Lpは、目的の核酸配列に相補的ではない。ループ配列は、突出構造を形成することができる単一の核酸配列からなり得るか、または少なくとも部分的に互いにハイブリダイズして、突出構造を形成することができる複合体を形成することができる2つ以上の核酸配列からなり得る。いくつかの実施形態では、突出構造は、ループ構造である。いくつかの実施形態では、突出構造は、ステム構造である。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、したがって、第1および第2の核酸配列からなることができ、第1の核酸配列は、標的DNAに対して相補的なアンカー配列(An)と、目的の標的核酸配列に対して相補的でないループ配列の第1の部分とを含み、第2の核酸配列は、ループ配列の第1の部分に少なくとも部分的にハイブリダイズすることができるループ配列の第2の部分を含み、第2の核酸配列は、スターター配列(St)をさらに含む。ハイブリダイズすると、第1および第2の核酸は、ステム構造などの突出構造を形成することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、第1、第2および第3の核酸配列からなり得、第1の核酸配列は、標的DNAに対して相補的なアンカー配列(An)と、目的の標的核酸配列に対して相補的でないループ配列の第1の部分とを含み、第2の核酸配列は、ループ配列の第1の部分に少なくとも部分的にハイブリダイズすることができるループ配列の第2の部分を含み、第2の核酸配列は、スターター配列(St)をさらに含み、第3の核酸配列は、第1の領域で第1のオリゴヌクレオチドの3’末端の一部にハイブリダイズし、第2の領域で第2のオリゴヌクレオチドの5’末端の一部にハイブリダイズすることができる。ハイブリダイズすると、第1、第2、および第3の核酸は、ループ構造などの突出構造を形成することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、単一のオリゴヌクレオチドとしてコードされる。いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、2つ以上の別個のオリゴヌクレオチドとしてコードされる。
【0087】
スターター配列(St)は、標的核酸配列にハイブリダイズできるが、低親和性でハイブリダイズする配列である。したがって、本発明の方法に使用される条件下では、スターター配列は、アンカー配列もアニールしない限り、標的核酸配列にアニールしないことが好ましい。スターター配列(St)は、好ましくは、伸長可能であり、したがってスターター配列は、プライマーとして働くことができるものである。したがって、スターター配列は、好ましくは、本明細書では「標的スターター配列」と呼ばれる標的核酸配列のある部位に対して少なくとも90%相補的である。
【0088】
標的スターター配列は、標的アンカー配列の5’側に位置する標的核酸配列の配列である。標的スターター配列は、標的アンカー配列のすぐ5’側に位置し得るが、配列間にスペースがあってもよい。したがって、標的スターター配列は、1~20ヌクレオチドの範囲、例えば2~10ヌクレオチドの範囲、例えば2~5ヌクレオチドの範囲で、標的アンカー配列から分離され得る。
【0089】
上記のように、スターター配列は、標的スターター配列に対して少なくとも90%相補的であるが、標的スターター配列に対して100%相補的であってもよい。
【0090】
ベースプライマーは、PCRに基づく方法に特に有用であり、ベースプライマーは、標的核酸配列の増幅に使用できるプライマー対の1つのプライマーである。アンカー配列の設計に基づいて、アンカー配列は、メチル化された標的核酸配列に高親和性でアニールし、これにより、スターター配列のアニールも可能になる。アニーリング後、PCRに従来から使用されている任意のDNAポリメラーゼなどのポリメラーゼを使用して、ベースプライマーを伸長することができる。ポリメラーゼが産物で最初の疎水性ヌクレオチドに遭遇したときに、最初の逆転写が典型的に終了し、したがってアンカー配列の少なくとも一部が欠失する。しかし、次のPCRラウンドでもベースプライマーをプライマーとして使用できるが、これは、ループ配列およびスターター配列が、最初の増幅ラウンドの産物にアニーリングできるためである。
【0091】
ポリメラーゼは通常、鋳型が疎水性ヌクレオチドを含む位置で伸長を停止するので、ベースプライマーがアンカー配列とループ配列との間に疎水性ヌクレオチドを含むことが好ましい場合がある。疎水性ヌクレオチドなどは、アンカー配列の一部と見なされる。
【0092】
したがって、スターター配列およびループ配列は両方とも、疎水性ヌクレオチドを含まないことも好ましい。しかし、ループ配列が2つ以上の核酸配列からなる場合、スターター配列に共有結合により連結していない核酸配列(複数可)は、1つ以上の疎水性ヌクレオチドを含んでもよい。
【0093】
ループ配列およびスターター配列は、標的からの最初の増幅後のラウンドのプライマーとして機能する。したがって、ループ配列およびスターター配列(-Lp-St-)は、それらがプライマーとして機能できるような方法で設計するべきである。したがって、Lp-Stからなるオリゴヌクレオチドは、その相補配列に対して少なくとも50℃、例えば少なくとも55℃、例えば少なくとも65℃の融解温度を有することが好ましい。一般に、ループ配列およびスターター配列が一緒になって、少なくとも15ヌクレオチド、例えば少なくとも17ヌクレオチド、例えば15~45ヌクレオチドの範囲、例えば17~35ヌクレオチドの範囲、例えば17~25ヌクレオチドの範囲からなることが好ましい。
【0094】
上記のように、スターター配列は、標的核酸配列に低親和性でアニーリングするものである。したがって、スターター配列は長すぎないことが好ましい。好ましくは、スターター配列は、5~15の範囲、例えば8~14の範囲、例えば10~12の範囲のヌクレオチドからなる。
【0095】
ベースプライマーは、アンカー、ループおよびスターター配列に加えて追加の部分を含んでもよい。例えば、ベースプライマーは、検出可能な標識に連結され得る。しかし、好ましい実施形態では、ベースプライマーは、アンカー、ループおよびスターター配列からなる。
【0096】
他のオリゴヌクレオチド
本発明による好ましいオリゴヌクレオチドが上記に記載されているが、本発明は、一実施形態では、例えば、最大3℃、例えば、最大2°CのTの差などの、メチル化および非メチル化標的核酸配列に対して同様の親和性を有するオリゴヌクレオチドも提供する。NOIがCpG部位に位置するシトシンである場合、そのようなオリゴヌクレオチドは、以下の一般構造を含み得るか、またはそれからなり得る:
5’(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-3’
(式中、Nは、任意のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であり;
Cは、ヌクレオチドシトシンであり;
Gは、ヌクレオチドグアニンであり;
nは、0以上の整数であり;
mは、1以上の整数であり;
pは、0以上の整数であり;
Hは、疎水性ヌクレオチドであり、
ここで、疎水性ヌクレオチドは、以下の構造を有し;
X-Y-Q
式中、
X、QおよびYは、本明細書の「疎水性ヌクレオチド」のセクションに記載のとおりであり得る)。
【0097】
オリゴヌクレオチドは、特に、以下の一般構造を有し得る:
5’(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-3’
(式中、
pは、1以上であり;
qは、0以上の整数である)。
【0098】
一実施形態では、そのようなオリゴヌクレオチドは、以下の一般構造を含むか、またはその一般構造からなる:
5’(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-3’
(式中、
qは、1以上の整数であり;
uは、0以上の整数である)。
【0099】
n、m、p、qおよびuは、例えば、本明細書の上記セクション「アンカー配列を含むオリゴヌクレオチド」に記載されているとおりであり得る。
【0100】
疎水性ヌクレオチド
本発明で使用されるオリゴヌクレオチドは、1つ以上の疎水性ヌクレオチドを含む。本発明による疎水性ヌクレオチドは、以下の構造を有する:
X-Y-Q
(式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン・クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位とインターカレーターとを連結するリンカー部分である)。
【0101】
インターカレーターQは、任意のインターカレーターであり得る。本発明によるインターカレーターという用語は、核酸の核酸塩基と共スタッキングすることができる、少なくとも1つの本質的に平坦な共役系を含む任意の分子部分を包含する。好ましくは、本発明によるインターカレーターは、核酸の核酸塩基と共スタッキングすることができる、少なくとも1つの本質的に平坦な共役系から本質的になる。
【0102】
インターカレーターは、少なくとも1つのπ(ファイ)電子系を含み、本発明によれば、π電子系を含む他の分子と相互作用することができる。これらの相互作用は、インターカレーターの疎水性相互作用に正または負の様式で寄与することができる。Hunter and Sanders(1990)J.Am Chem.Soc.112:5525-5534は、2つのπ電子系が互いに積極的に相互作用できる様々な方向および条件を提唱した。
【0103】
インターカレーターは、国際特許出願WO2017/045689、p.30,l.26~p.40,l.3のセクション「インターカレーター」に記載されているインターカレーターのいずれかであり得る。例えば、インターカレーターは、同国際特許出願WO2017/045689のp.32-39に記載の構造のいずれかを有し得、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
一実施形態では、すべてのインターカレーターなどの少なくとも1つのQは、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、チオ、シアノ、アルキルチオ、複素環、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルボアルコイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、アミノ、アルコキシルおよびアミドからなる群から選択される1つ以上と任意により置換されたポリアロマート(polyaromate)およびヘテロポリアロマート(heteropolyaromate)からなる群から選択される。上記ポリアロマートまたはヘテロポリアロマートは、少なくとも3つの環、例えば4つの環からなり得る。
【0105】
インターカレーターは、例えば、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、as-インダセン、s-インダセン、ビフェニレン、アセナフチレン、フェナレン、ヘプタレン、フェナントラン(phenanthrane)、フルオランテン、フェナントロリン、フェナジン、フェナントリジン、アントラキノン、ピレン、アントラセン、ナフテン(napthene)、フェナントレン、フルレン(flurene)、ピセン、クリセン、ナフタセン(naphtacene)、アクリドン、ベンゾアントラセン、スチルベン、オキサロピリドカルバゾール、アジドベンゼン、ポルフィリンおよびソラレン、ならびにそれらの誘導体からなる群から選択され得る。
【0106】
一実施形態では、すべてのインターカレーターなどの少なくとも1つのQは、ピレンまたはピリド[3’,2’:4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(1H)-オンまたは7,9-ジメチル-ピリド[3’,2’,4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(3H)-オンを含むか、またはこれらからなる。特に、すべてのインターカレーターなどの少なくとも1つはピレンであってもよい。
【0107】
本発明によるヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の骨格モノマー単位は、核酸または核酸類似体の骨格への組み込みに関与するヌクレオチドの一部である。骨格モノマー単位(X)は、インターカレーターに共有結合により連結しているリンカー(Y)に共有結合により連結していることが好ましい。本発明によるオリゴヌクレオチド類似体にインターカレーターを組み込むために、任意の好適な骨格モノマー単位を使用することができる。
【0108】
骨格モノマー単位は、国際特許出願WO2017/045689、セクション「Backbone monomer unit」、p.40,l.5~p.56,l.3に記載の骨格モノマー単位のいずれであってもよい。骨格モノマー単位は、国際特許出願WO03/052132、セクション「Backbone monomer unit」、p.24,l.27~p.43,l.14に記載の骨格モノマー単位のいずれであってもよい。
【0109】
本発明の特に好ましい実施形態では、疎水性ヌクレオチドは、ホスホロアミダイトを含む骨格モノマー単位を含み、より好ましくは、骨格モノマー単位は、三価ホスホロアミダイトまたは五価を含む。
【0110】
好適な三価ホスホロアミダイトは、核酸および/または核酸類似体の骨格に組み込むことができる三価または五価ホスホロアミダイトである。通常、アミダイト基自体は、核酸の骨格に組み込まれ得ず、むしろアミダイト基またはアミダイト基の一部が、脱離基および/または保護基として機能し得る。しかし、骨格モノマー単位がホスホロアミダイト基を含むことが好ましく、これは、そのような基が、核酸骨格への骨格モノマー単位の組み込みを容易にし得るためである。
【0111】
本発明によるインターカレーターヌクレオチドのリンカーは、インターカレーターと疎水性ヌクレオチドの骨格モノマーとを接続する部分であり、好ましくはインターカレーターと骨格モノマー単位とを共有結合により連結する。リンカーは、1つ以上の原子(複数可)または原子間の結合(複数可)を含み得る。
【0112】
本明細書の上記で定義された骨格およびインターカレーターの定義により、リンカーは、骨格とインターカレーターとを連結する最短経路である。インターカレーターが、骨格に直接連結している場合、リンカーは、結合である。
【0113】
リンカーは、通常、原子の鎖または原子の分枝鎖からなる。鎖は、飽和ならびに不飽和であり得る。リンカーはまた、共役結合を伴うまたは伴わない環構造であってもよい。
【0114】
例えば、リンカーは、C、O、S、N、P、Se、Si、Ge、SnおよびPbからなる群から、好ましくはC、O、S、NおよびPからなる群から選択される、さらにより好ましくはCである原子の鎖を含み得、鎖の一端は、インターカレーターに接続され、鎖の他端は、骨格モノマー単位に接続される。
【0115】
リンカーは、例えば、国際特許出願WO2017/045689、セクション「Linker」、p.56,l.5~p.59,l.10に記載のリンカーのいずれかであり得る。リンカーはまた、WO03/052132、セクション「Linker」、p.54,l.15~p.58,l.7に記載のリンカーのいずれかであり得る。
【0116】
PCR
本発明の方法は、好ましくは、(b)NOIが、調査するエピジェネティック修飾状態を含まない場合、例えばNOIが、メチル化されていない場合、本発明のオリゴヌクレオチドを目的の標的核酸と共に、オリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高い温度でインキュベートするステップと、(c)オリゴヌクレオチドが目的の標的核酸にアニールするか否かを検出するステップと、を含む。
【0117】
これらのステップは、好ましい実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の一部として実施され得る。PCRは、好ましくは、オリゴヌクレオチドが目的のエピジェネティック修飾状態を含まない場合に、オリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高い温度で、PCRのほとんどのステップ、またはすべてのステップが行われるような方法で実施される。PCRのほとんどのステップ、またはすべてのステップさえもが、NOIがメチル化されていない場合には、オリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高い温度であるが、NOIがメチル化されている場合には、オリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の増幅を可能にするのに十分低い温度で実施されるような方法で、PCRが実施される場合、さらにより好ましい。
【0118】
PCRは、典型的には、
i.融解温度、
ii.アニーリングおよび伸長温度
において、複数サイクルのインキュベーションを含む。
【0119】
アニーリングおよび伸長温度は、同じまたは異なる温度であり得る。
【0120】
好ましくは、NOIがメチル化されていない場合、少なくとも最初のサイクル、好ましくはPCRの1つ以上のサイクル、例えばPCRのほとんどのサイクル、例えばPCRのすべてのサイクルで、アニーリングおよび伸長温度が、オリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高いような方法でPCRが実施される。さらに、温度は、NOIがメチル化された場合に、オリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度より最大で2℃高くまたは低くなるように選択され得る。
【0121】
アニーリング温度は、特定のオリゴヌクレオチドに依存するが、例えば、55~80℃の範囲であり得る。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態では、PCRのステップの長さおよび/または温度は、PCR中に変更される。特に、最初のサイクル、例えば最初の1~5サイクルは、メチル化DNAがより特異な方法で増幅されるような方法で実施され得る。したがって、PCRは、1つ以上のエピジェネティック修飾特異的増幅サイクルおよび1つ以上の一般的増幅サイクルを含むことができ、エピジェネティック修飾特異的増幅サイクル(複数可)は、
a.核酸を融解するステップと、
b.エピジェネティック修飾特異的条件下でアニーリングする(および伸長させる)ステップと、を含み、
一般的な増幅サイクルは、
a.核酸を融解するステップと、
b.一般的な条件下でアニーリングする(および伸長させる)ステップと、を含む。
【0123】
融解は、典型的には少なくとも90℃である融解温度でのインキュベーションを含む。エピジェネティック修飾特異的条件下でのアニーリングおよび伸長は、通常、一般的条件下でのアニーリングおよび伸長よりも高い温度で、例えば、一般的条件下でのアニーリングおよび伸長に使用される温度より少なくとも1℃高い、例えば少なくとも2℃高い温度で行われる。この方法は、任意の好適な数のエピジェネティック修飾特異的増幅サイクル、例えば、1~100の範囲のエピジェネティック修飾特異的増幅サイクルを含み得る。
【0124】
アニーリング(および伸長)温度でインキュベートするステップは、任意の好適な時間にわたって実施され得る。例えば、PCRの少なくとも最初のサイクルは、5~120秒の範囲、例えば10~90秒の範囲のアニーリング温度でのインキュベーションを含んでもよい。アニーリングはまた、例えば30~90秒の範囲で、例えば45~75秒の範囲で、例えば約60秒で実施されてもよい。
【0125】
PCRは、一般に、目的の標的核酸配列を増幅することができる一組のプライマーの使用を伴う。好ましくは、プライマーのうちの1つは、本発明によるオリゴヌクレオチドであり、より好ましくは、ベースプライマーである。フォワードプライマーが本発明によるオリゴヌクレオチド、例えばベースプライマーである場合、リバースプライマーは、典型的には従来のプライマーであり、逆もまた同様である。
【0126】
当業者は、PCRで使用される本発明のオリゴヌクレオチドの有用な濃度を決定することができる。例えば、濃度は、300~700nMの範囲内、例えば、約500nMであってもよい。
【0127】
PCRは、当業者に知られている任意の好適な方法で実施され得る。一実施形態では、PCRは、リアルタイムPCRである。リアルタイムPCRは、典型的には、色素などの検出可能な標識の使用を伴う。一実施形態では、PCR、例えばリアルタイムPCRは、産物の検出のために検出可能な標識を含むプローブを使用する。プローブは、PCR産物を結合できる任意のオリゴヌクレオチドであり得るが、好ましくは、プローブは、少なくとも同じ親和性で、好ましくはプライマーの各々よりも高い親和性でPCR産物を結合できるオリゴヌクレオチドである。したがって、プローブは、PCR反応の産物に対して少なくとも90%相補的なオリゴヌクレオチドおよび検出可能な標識を含み得る。好ましい実施形態では、疎水性ヌクレオチドは、プローブの親和性を高めるので、プローブは、1つ以上の疎水性ヌクレオチドを含む。
【0128】
PCRがリアルタイムPCRである場合、PCRの結果は、Ctとして決定され得る。したがって、Ctが所与の閾値未満である場合、目的の標的核酸は、メチル化されているとみなされ得る。閾値は、事前に決定するか、または関連対照を使用して決定することができる。
【0129】
プライマーおよびプローブに加えて、PCRにはPCR試薬が含有される。当業者は、好適なPCR試薬を選択することをよく知っている。一般に、PCR試薬は、少なくともヌクレオチドおよびポリメラーゼを含む。典型的には、PCR試薬は、好適な塩および緩衝液も含む。
【0130】
ポリメラーゼは、PCRに有用な任意のポリメラーゼ、例えばPCRに有用な任意のDNAポリメラーゼであり得る。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、鋳型中の任意の疎水性ヌクレオチドで伸長を停止させるポリメラーゼである。これは、日常的にPCRを使用するほとんどの従来のDNAポリメラーゼの場合である。
【0131】
臨床状態
本発明の方法は、NOIのメチル化を検出するために使用することができ、そのメチル化状態は、臨床状態に関連している。
【0132】
したがって、本発明の方法は、個体が臨床状態に罹患しているか否かのリスク、または個体が臨床状態になるリスクを決定するために使用され得、ここで、臨床状態は、目的の核酸中におけるシトシンなどのNOIのメチル化状態に関連する。このような方法は、通常、
a.個体からサンプルを提供するステップと、
b.本発明の方法を実施することにより、上記サンプル中のNOIのメチル化状態を決定するステップと、を含む。
【0133】
いくつかの態様では、個体が臨床状態に罹患しているか否かのリスク、または個体が臨床状態になるリスクを決定するための方法を提供し、ここで、臨床状態は、目的の核酸中におけるNOIのメチル化状態に関連し、本方法は、
a.個体から得られたサンプルを提供することと;
b.先行請求項のいずれか一項に記載の方法を実施することによって、サンプル中のNOIのメチル化状態を決定することであって、メチル化状態は、臨床状態の存在または臨床状態になるリスクを示す、決定することと、を含む。
【0134】
本発明の方法はまた、それを必要とする個体における臨床状態の治療の効果の可能性を決定するために使用され得、ここで、臨床状態の治療の効果は、目的の核酸中におけるシトシンのメチル化状態に関連する。このような方法は、通常、
i.個体からサンプルを提供するステップと、
ii.本発明の方法を実施することにより、上記サンプル中のNOIのメチル化状態を決定するステップと、を含む。
【0135】
本発明のいくつかの態様では、それを必要とする個体における臨床状態の治療の効果の可能性を決定するための方法を提供し、ここで、臨床状態の治療の効果は、目的の核酸中におけるNOIのメチル化状態に関連し、本方法は、
a.個体から得られたサンプルを提供することと;
b.本明細書に開示される方法を実施することによって、サンプル中のNOIのメチル化状態を決定することであって、メチル化状態は、臨床状態に対する異なる治療レジメンの効果を示す、決定することと、を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、NOIは、シトシンである。
【0137】
数種類のがん、例えば、乳がん、結腸がん、および肝がんなど、ならびに疾患、例えば、関節リウマチおよび多発性硬化症など、多くの臨床状態が、1つ以上のNOIのメチル化に関連していることが示されている。したがって、1つ以上のNOIのメチル化状態は、臨床状態の存在、臨床状態の進行、臨床状態の深刻さ、臨床状態の予後、臨床状態を獲得するリスクなどを示し得る。また、異なる治療レジメンの効果は、1つ以上のNOIのメチル化状態と関連していることが示されている。したがって、本発明の方法は、前述のすべての検出に使用することができる。臨床状態は、例えば、がん、例えば神経膠芽腫であり得る。
【0138】
好ましい実施形態では、本明細書で上記に開示された方法は、外科的ステップを伴わない。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、患者から単離されたサンプルに対して実施される。いくつかの実施形態では、サンプルは、体液サンプルである。体液サンプルは、血液、尿、痰、母乳、脳脊髄液、耳垢(耳あか)、内リンパ、外リンパ、胃液、粘液、腹水、胸水、唾液、皮脂(sebum)(皮脂(skin oil))、精液、汗、涙、膣分泌物、またはそれらの成分もしくは画分を含む嘔吐物サンプルであってもよい。体液サンプルは、混合またはプールされ得る。したがって、体液サンプルは、血液サンプルと尿サンプルとの混合物、または血液サンプルと脳脊髄液サンプルとの混合物であり得る。サンプルはまた、濾過、希釈および/または遠心分離などによって均質化され得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、皮膚、髪、細胞、または組織である。
【0140】
項目
本発明は、以下の項目によってさらに定義され得る:
1.目的の標的核酸配列中の少なくとも1つの目的のヌクレオチド(NOI)のメチル化状態を決定する方法であって、標的核酸配列は、NOIを含む標的アンカー配列を含み、本方法は、
a.アンカー配列(An)を含むオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、アンカー配列は、標的アンカー配列に対して少なくとも50%相補的な配列であり、アンカー配列は、NOIに対して相補的なヌクレオチドとそのすぐ5’側のオリゴヌクレオチド中のヌクレオチドとの間に位置する少なくとも1つの疎水性ヌクレオチド(H)を含む、ステップと;
b.NOIがメチル化されていない場合、オリゴヌクレオチドと目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高い温度で、オリゴヌクレオチドを目的の標的核酸とインキュベートするステップと、
c.オリゴヌクレオチドが目的の標的核酸にアニールするか否かを検出するステップと、
それによってメチル化状態を決定するステップと、を含み、
ここで、疎水性ヌクレオチド(H)は、以下の構造を有する;
X-Y-Q
(式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン・クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位とインターカレーターとを連結するリンカー部分である)、
方法。
【0141】
2.目的の標的核酸が、DNAである、項目1に記載の方法。
【0142】
3.NOIがシトシンである、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
4.シトシンが、CpG部位にあり、アンカー配列が、配列-C-H-G-を含む、項目3~4のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
5.アンカー配列が、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば2~10の範囲、例えば2~5の範囲、例えば3~5の範囲、例えば4~5の範囲の-N-H-G-配列を含み、ここで、各Nは、個別に、C、G、AおよびTからなる群から選択され、各配列-N-G-は、目的のシトシンとその隣接ヌクレオチドに相補的である、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
6.ステップb)およびc)が共に、PCRを実施することを含み、温度が、PCRの1つ以上のサイクルにおけるアニーリング温度として使用される、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
7.オリゴヌクレオチドが、構造5’-An-Lp-St-3’を有し、式中、
Anは、アンカー配列であり;
Lpは、ループ配列であり、目的の核酸配列に相補的でなく、
Stは、スターター配列であり、配列は、標的スターター配列に対して少なくとも90%相補的であり、標的スターター配列は、標的アンカー配列の5’に位置する標的核酸配列の配列である、
先行項目のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
8.アンカー配列(An)は、8~30の範囲、例えば8~20の範囲、例えば10~20の範囲、例えば15~20の範囲のヌクレオチドからなり、ヌクレオチドの1つ以上は、疎水性ヌクレオチド(複数可)である、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
9.アンカー配列が、配列-N-H-G-を含み、Nが、C、G、A、およびTからなる群から選択され、配列-N-G-が、目的のシトシンおよびその隣接するヌクレオチドに対して相補的である、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
10.LpおよびStが一緒になって、少なくとも15ヌクレオチド、例えば少なくとも17ヌクレオチド、例えば15~45ヌクレオチドの範囲、例えば17~35ヌクレオチドの範囲、例えば17~25ヌクレオチドの範囲からなる、項目8~9のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
11.目的の標的核酸配列が、サンプルから精製されたDNAに含まれる、先行項目のいずれかに記載の方法。
【0151】
12.個体が臨床状態に罹患しているか否かのリスク、または個体が臨床状態になるリスクを決定するための方法であって、ここで、臨床状態は、目的の核酸中におけるNOIのメチル化状態に関連し、本方法は、
a.個体からサンプルを提供することと、
b.先行項目のいずれか1つによる方法を実施することによって、サンプル中のNOIのメチル化状態を決定することと、
を含む、方法。
【0152】
13.それを必要とする個体における臨床状態の治療の効果の可能性を決定するための方法であって、ここで、臨床状態の治療の効果は、目的の核酸中におけるNOIのメチル化状態に関連し、本方法は、
a.個体からサンプルを提供することと、
b.項目1~10のいずれか1つによる方法を実施することによって、サンプル中のNOIのメチル化状態を決定することと、
を含む、方法。
【0153】
14.臨床状態ががんである、項目12~13のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
15.以下の一般構造を含むまたはこの構造からなるオリゴヌクレオチド:
5’(N)-HG-(N)-HG-(N)-3’
(式中、Nは、任意のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であり;
Gは、ヌクレオチドグアニンであり;
nは、0以上の整数であり;
mは、1以上の整数であり;
pは、0以上の整数であり;
Hは、疎水性ヌクレオチドであり、
ここで、疎水性ヌクレオチドは、以下の構造を有し;
X-Y-Q
式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン・クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位とインターカレーターとを連結するリンカー部分である)。
【0155】
16.すべてのインターカレーターなどの少なくとも1つのQは、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、チオ、シアノ、アルキルチオ、複素環、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルボアルコイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、アミノ、アルコキシルおよびアミドからなる群から選択される1つ以上と任意により置換されたポリアロマート(polyaromate)およびヘテロポリアロマート(heteropolyaromate)からなる群から選択される、先行請求項のいずれか1つに記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【0156】
実施例
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0157】
実施例1
MGMTプロモーター領域
MGMTプロモーター領域の目的の配列は、配列番号1として本明細書に含まれる:
【化2】
【0158】
配列は、129467120-129467385ヒト染色体10、GRCh38.p12である。配列番号1の下線を引いた4つのCGは、このアッセイがそのメチル化状態を分析するように設計されているCpG部位である。選択された4つのCpG部位のうち3つが、市販キット、例えば、Qiagenのパイロシーケンシングキットなどでのメチル化検出に一般的に使用されている(Qiagen.(2014)EpiTect(登録商標)Fast Bisulfite Conversion Handbook For sample lysis and complete bisulfite Sample&Assay Technologies QIAGEN Sample and Assay Technologies.Sample&Assay Technologies)。
【0159】
PCRアッセイの一般的な設定
以下の設計は、実施例12および13を除いて、すべてのPCRアッセイの設定に使用した。容量は、25μLの総反応量を含有する1つのPCRチューブ用である。
1)DNAポリメラーゼ、dNTP、MgClおよび緩衝液を含有する2xマスターミックス*(MM)12.5μL
2)プライマー/プローブ(PP)混合物7.5μL
3)精製されたゲノムDNA 5μL
【0160】
実施例12および13では、PCRアッセイの設定のために以下の設計を使用した。容量は、12μLの総反応量を含有する1つのPCRチューブ用である。
1)DNAポリメラーゼ、dNTP、MgClおよび緩衝液を含有する2xマスターミックス*(MM)6μL
2)プライマー/プローブ(PP)混合物1μL
3)精製されたゲノムDNA 5μL
*特に明記されていない場合、マスターミックス(MM)は、2xAmpliqueen(PentaBase ApSから入手可能)からなる。MgClの濃度は、Ampliqueenの作業溶液で2.25mMである。
【0161】
すべてのPCRは、MyGoPro(It-IsLifeScienceltd)、BaseCycler、またはBaseTyper(PentaBase ApS)リアルタイムPCR機器のいずれかで実施される。RFUは、PCR機器の標準設定を使用して決定する。
【0162】
およびΔT
オリゴヌクレオチドの融解温度は、温度を上げながらオリゴヌクレオチドをその相補的標的と共にインキュベートすることによって実験的に見出される。一般に、オリゴヌクレオチドは、蛍光シグナルが結合に依存するように、蛍光標識で標識される。例えば、オリゴヌクレオチドは、一端で蛍光部分に連結され、他端でクエンチャーに連結され得る。温度が低い場合、プローブは、標的に結合して二本鎖を形成し、それによって蛍光シグナルが発生し、これは、RFUとして測定される。温度が上昇するにつれて、RFUは減少し、二本鎖のTに達すると、RFUの急激な低下が検出され得る。これを図1Aに示す。Tでは、融解プロセスの開始時に結合したヌクレオチドの半分が標的から解離する。融解曲線の1次の負の導関数をプロットすることができ、この曲線のピーク(最大)が、プローブの融解温度である(図1B)。
【0163】
の差は、ある標的に結合したプローブを別の標的に結合した同じプローブから差し引いた差として計算される。
【数1】
【0164】
ΔCtおよびΔΔCtの計算
Ctは、閾値サイクル、すなわち所定の基準に基づいて産物が検出されるPCRサイクルを指す。一般に、Ctは、蛍光閾値に基づいて決定される。特に明記しない限り、PCRマシンMyGoPro、BaseCyclerまたはBaseTyperおよびそれらの関連ソフトウェアのデフォルト設定を使用する。閾値の設定は、ソフトウェアによって自動的に行われる。
【0165】
ΔCtは、参照アッセイ(すなわち、参照プライマーを使用するアッセイ)とメチル化感受性アッセイ(すなわち、疎水性ヌクレオチドを含むメチル化特異的ベースプライマーを使用するアッセイ)との間で計算される。
【数2】
【0166】
ΔΔCtは、非メチル化DNAを添加した場合のアッセイのΔCtと、鋳型としてメチル化DNAを添加した場合のアッセイのΔCtとの差として計算される。
【数3】
【0167】
したがって、ΔCtnon.mCは、非メチル化DNA鋳型を使用した場合の参照アッセイとテストアッセイとのCtの差を示す。ΔCtnon.mCは、本明細書ではΔnon.mCとも称する。ΔCtnon.mCは、アッセイの特異性を示し、可能な限り高いことが好ましい。
【0168】
ΔCtmCは、参照アッセイとメチル化DNA鋳型を使用したメチル化特異的アッセイとの間のCtの差を示す。本明細書では、ΔCtmCは、ΔmCとも称される。ΔCtmCは、可能な限り低いことが好ましいアッセイの感度を示す。
【0169】
ΔΔCtは、ΔCtnon.mCとΔCtmCとの差であり、これは、好ましくは可能な限り高いべきである。
【0170】
ベースプライマーの説明
ベースプライマーアプローチは、疎水性ヌクレオチドを使用したメチル化DNAの選択的増幅に基づく。この識別は、本明細書でベースプライマーと名付けられた単一のプライマーによって実現することができる。ベースプライマーは、3つの部分:アンカー配列、ループ配列、およびスターター配列からなる。アンカー配列は、疎水性ヌクレオチドを含有する。アンカー配列は、非メチル化DNAと比較して、メチル化DNAに結合したときに、高い熱安定性を有する。したがって、アンカー配列は、プライマーの3’末端に配置されるスターター配列の安定性をもたらすために使用される。スターター配列は、低い熱安定性を有するべきであり、したがって、アンカー配列からのサポートが得られない場合には、DNA鋳型に結合しない(図4B)。PCRは、アンカー配列が高い熱安定性で結合する場合にのみ開始され、これにより、スターター配列が結合できるようになる(図3A、「サイクル1」)。一般にポリメラーゼは、PCR反応で非メチル化ヌクレオチドを含むdNTPを追加するため、PCR中に作成されたアンプリコンには、いかなるメチル化ヌクレオチドも含有されないことに留意されたい。
【0171】
アンカー配列とスターター配列とは、ループ配列で接続されている。ほとんどのポリメラーゼは、疎水性ヌクレオチドを読み取ることができないため、この配列は有益であり、したがって、リバースプライマーが結合して相補鎖が作成されたときに、アンカー配列が切断される。スターター配列は、熱安定性が低く設計されているため、追加配列がなくては、アンプリコンに結合できない。したがって、ループ配列は、プライマーに組み込まれ、それによって、メチル特異的増幅の2サイクル後にループ配列およびスターター配列が、通常のプライマーとして機能できるようになる(図3A、「残りのサイクル」)。
【0172】
実施例2
5-メチルシトシンに対する親和性
上記の配列番号1でマークされた4つのCpGを包含する領域に対して相補的なオリゴヌクレオチドを合成した。プローブは、5’末端にFAMフルオロフォア、3’末端にブラックホールクエンチャー(BHQ)で二重標識した。プローブでは、Z型またはE型のいずれか2つの異なる疎水性ヌクレオチドを使用した。
【0173】
Z型の疎水性ヌクレオチドは、化学名3-(1-O-(4,4’-ジメトキシトリフェニルメチル)-2-O-(2-シアノエチルジイソプロピルアミドホスファイト)-1,2-ブタンジオール)-4-N-(7,9-ジメチル-3H-ピリド[3’,2’:4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-オンのホスホロアミダイトを有する。Z型の疎水性ヌクレオチドでは、インターカレーターQは、以下の構造を有する:
【0174】
【化3】
【0175】
本明細書において、Z型の疎水性ヌクレオチドは、単に「Z」と称され得る。
【0176】
E型の疎水性ヌクレオチドは、化学名(S)-1-(4,4’-ジメトキシトリフェニルメチルオキシ)-3-ピレンメチルオキシ-2-プロパノールのホスホロアミダイトを有する。E型のこの疎水性ヌクレオチドでは、インターカレーターQは、以下の構造を有する:
【0177】
【化4】
【0178】
本明細書において、E型の疎水性ヌクレオチドは、単に「E」と称され得る。
【0179】
ZまたはEのいずれかが、配列番号1の4つのCpG中のCとGとの間に位置するような方法でプローブに組み込まれた。これは、EとZのいずれが、メチル化DNA(「5-mC」と称する)と非メチル化DNA(「non.mC」と称する)とを最もうまく識別するかをテストするために行われた。
【0180】
さらに、Eは、様々な位置でテストした。CpGのCとGとの間に位置するEを含むプローブは、本明細書ではE型のプローブと称する。アニーリング時にEがCpGの直前に位置するプローブは、E2型のプローブと称され、アニーリング時にEがCpGの直後に位置するプローブは、E3型のプローブと称される。参照として、プローブを、EおよびZを含まずに作製した。異なるプローブの配列を表1に示す。
【0181】
2つの人工標的を設計し、合成した。1つは、いかなるメチル化シトシン(mC)も含まず、もう1つは、4つのCpG部位にmCを含む。配列を、表1に示す。
【表1】
【0182】
融解温度は、実施例1に記載のとおり決定した。
【0183】
疎水性ヌクレオチドE型およびZ型を含有するプローブは、非メチル化標的(MGMT_0mC)と比較した場合、完全にメチル化された標的(MGMT_1,2,3,4mC)に結合したときに、高いTを有することが観察された。1,2,3,4mCと0mCとの融解温度の差は、プローブMGMT_Zでは、約6.6℃、プローブ用MGMT_Eでは、約9.6℃であった。さらに、参照プローブ(MGMT_Ref)も、メチル化標的にハイブリダイズしたときに、mC標的とnon.mC標的との差が3.4℃であり、高いTを有したことが観察された。図4および表2を参照されたい。
【0184】
疎水性ヌクレオチドE型の位置を調べた。EがCpGのCとGとの間に配置された場合(プローブMGMT_E)に、最良の識別が行われた。疎水性ヌクレオチドをCpGの後に配置した場合(プローブMGMT_E3)、参照プローブの場合よりも少ない識別が観察された。
【0185】
MGMT_EおよびMGMT_Refとメチル化標的(MGMT_1,2,3,4mC)および非メチル化標的(MGMT_0mC)の融解の1次の負の導関数の差を、図5に示す。
【表2】
【0186】
実施例3
5-mCの位置および数に関連するZおよびE修飾プローブの親和性
相補的標的を有するZおよびE修飾プローブの融解温度と、標的オリゴ中での5-mCの位置および数との間の相関関係を調査した。それぞれが1つのメチル化CpG部位を含む4つの異なる標的を設計した。
【0187】
さらに、2つのメチル化CpG部位を有する1つの標的を設計し、4つのメチル化CpG部位を有する別の標的を設計した。これは、5mCの数とプローブの融解温度との相関関係を調査するために行った。配列を、表3に示す。
【表3】
【0188】
融解温度における標的中のメチル化部位の位置間に有意差は観察されなかった。
【0189】
プローブのメチル化部位の数と融解温度との相関関係を調査した。非メチル化標的を除外した場合の線形フィットのRは、0.997のRが得られた。これは、標的がメチル化されている場合に線形相関があることを示している。非メチル化標的は、線形モデルにフィッティングするには、融解温度が低かった。プロットを図6に、生データを表4に示す。
【表4】
【0190】
実施例4
Ampliqueenマスターミックスでの融解試験
二本鎖を1XAmpliqueen(PentaBase ApS)で融解することにより、TM緩衝液と比較して、融解温度が約5℃低下することが示された(表5を参照)。TM緩衝液は、0.02M Na2HPO4、0.02M NaCl、および2mM EDTAを含む。MGMT_E/1,2,3,4mC二本鎖の融解温度は、約78.5℃であり、MGMT_E/0mC二本鎖の融解温度は、約69.7℃であった。MGMT/0mC二本鎖が2本の一本鎖に完全に解離するのは、80℃で初めてである。これは、融解ピーク後の温度によって見られ、-dF/dTは、0である。図7を参照されたい。
【表5】
【0191】
実施例5
ベースプライマーの設計
4つの異なる設計のベースプライマーを作製した(表6)。プライマーは、2つの異なるループ配列および2つの異なる長さの3’末端スターター配列を有するように設計した。融解温度は、ループ配列および3’末端スターター配列のTに基づいて計算され、これは、ループ配列がアンプリコンに組み込まれた後、これらの配列が1つのプライマーとして機能するためである。
【表6】
【表7】
【0192】
ベースプライマーのテスト
フォワードプライマーとして表6のベースプライマーおよびリバースプライマーMGMT_Rev2C使用して、PCRを設定した(表4)。参照アッセイでは、フォワードプライマーとしてプライマーMGMT_Fw2CおよびリバースプライマーとしてMGMT_Rev2Cを使用した(表7)。
【0193】
メチル特異的アッセイは、表7の各ベースプライマー700nMを700nM MGMT_Rev2Cおよび500nM MGMT_Probe2Eと混合することによって実施した(表7)。参照アッセイは、700nM MGMT_Fw2Cを700nM MGMT_Rev2Cおよび500nM MGMT_Probe2Eと混合することによって行った。PCRプログラムを表8に示し、PCRプログラムを最適化するための最適化プロトコールを表9に示す。
【0194】
MGMT_FwLoop3CおよびFwLoop4Cのみをプログラムの最適化に使用し、FwLoop4Cのみを79℃でテストした。この実験では、シグナル生成に、1% ZUBR Greenを含有するマスターミックスを使用した。健康なドナーからの1ng/μL非メチル化DNAおよび1ng/μLメチル化DNA(細胞株IDH U87 WTから精製)を実験に使用した。
【表8】
【表9】
【0195】
すべてのベースプライマーがDNAの増幅に有用であることが判明した。MGMT_FwLoop3BおよびFwLoop4Bは、参照アッセイと比較してメチル特異的アッセイにおいて高いCt値を有することが判明し、これは、ベースプライマーがメチル化DNAを低い効率で増幅したことを意味する。MGMT_FwLoop3CおよびFwLoop4Cは、メチル化DNAにおいて低いΔCtを有し、これはベースプライマーが参照アッセイとほぼ同じ効率で、メチル化DNAを増幅したことを意味する。しかし、FwLoop3CおよびFwLoop4Cは、メチル化DNAと非メチル化DNAとをうまく識別できなかった(ΔΔCt<0.5)。2つのベースプライマーを、より短いアニーリング時間およびより高い温度でテストし、識別が改善された(図8を参照)。
【0196】
77℃および79℃の両方のアニーリング温度で、アニール時間が20秒から30秒に延長したときに、メチル化DNAおよび非メチル化DNAの両方のΔCtが低下することが観察された(図8)。これは、ベースプライマーがメチル化された鋳型に高効率でアニーリングするのに、より多くの時間を必要とすることを示している。最高のΔΔCtは、79℃、30秒間であり、4.46±0.86であった。
【0197】
実施例6
メチル特異的前増幅
MGMT_FwLoop4Cを、メチル特異的前増幅を用いたPCRプログラムでテストした(表10)。メチル特異的アッセイは、700nMのMGMT_FwLoop4Cを700nM MGMT_Rev2Cと混合することによって行った。参照アッセイは、700nM MGMT_Fw2Cを700nM Rev2Cと混合することによって行った。1% ZUBR Greenを含有するマスターミックスを、参照アッセイおよびメチル特異的アッセイの両方で使用した。結果を、アニーリング設定として79℃で20秒間の通常の2段階増幅と比較した。上記の実施例と同じ実験設定を使用した。
【表10】
【0198】
ΔCtおよびΔΔCtは、上記の実施例1に記載のとおり決定した。
【0199】
メチル特異的前増幅サイクリングは、メチル特異的アッセイにおいて、メチル化DNAのCt値を低くし、非メチル化DNAのCt値を高くし、これにより、メチル化の識別がΔΔCt値9.93に改善された。表11を参照されたい。メチル特異的前増幅PCRのPCR曲線を図9に示す。しかし、メチル特異的アッセイでのメチル化DNAのCt値は、前増幅では依然として高く、ループ配列およびスターター配列は、2段階の非メチル特異的増幅において十分に増幅されなかったと考えられた。
【表11】
【0200】
実施例7
より高いTでのベースプライマーの設計
ベースプライマーは、2段階増幅で高温で働くように、相補配列と3’末端スターター配列に対してより高い親和性を有するループ配列で設計された。設計を、表12に示す。通常のプライマーを使用する代わりに、これらのプライマーの5’末端に疎水性ヌクレオチドを追加することによって、MGMT_Fw2CおよびMGMT_Rev2Cの親和性が上昇した。
【表12】
【0201】
新しいベースプライマーは、2段階増幅における最適なアニーリング時間および温度を見出すために、前増幅を行わずに最初に分析した。代わりに、フォワードプライマーとしてMGMT_FwLoop5Cを使用して、「メチル特異的前増幅」で説明したとおりにアッセイを混合した。PCRプログラムDは、表13に従って変更した。SW1088細胞株は、本実験および次の実験にも使用した。
【表13】
【0202】
ΔCtおよびΔΔCtは、上記の実施例1に記載のとおり決定した。
【0203】
ベースプライマーMGMT_FwLoop5Cの異なるアニーリング時間および温度でのΔCtおよびΔΔCtについて得られた結果を図10に示す。アニーリング温度を高くすることにより(時間は30秒に固定)、メチル化DNADNAおよび非メチル化DNAの両方のメチル特異的増幅が悪化することが判明した。メチル化DNAと非メチル化DNAとの最良の識別は、80℃で観察された。
【0204】
実施例8
MGMT_FwLoop5Cの滴定
ベースプライマーは、PCRプログラムEを使用したメチル特異的前増幅でテストしたが、前増幅の第2の段階では81℃を使用し、2段階増幅の第2の段階では、79℃および80℃の両方でテストした。
【表14】
【0205】
PCRプログラムEを使用するが、前増幅の第2の段階で81℃、および2段階増幅の第2の段階で80℃を使用し、MGMT_FwLoop5Cを、濃度500nM、700nM、および900nMで滴定した。濃度の変動を除いて、アッセイは、セクション「より高いTでのベースプライマーの設計」に記載のとおり行った。
【0206】
MGMT_FwLoop5Cは、メチル特異的前増幅を使用して分析した。500nMのFwLoop5Cが、ベースプライマーの最適濃度であった。ここで、ΔΔCtは12.6であり、メチル化DNAのΔCtは9.8であった。濃度が高いほど、メチル特異的増幅の悪化となる。表14の結果を参照されたい。
【表15】
【0207】
実施例9
1-保持メチル特異的増幅のテスト
メチル特異的前増幅の代わりに、1段階メチル特異的保持を調査するために、MGMT_FwLoop5Cを使用した。アッセイは、700nMの代わりに500nMのFwLoop5Cを使用して、セクション「より高いTでのベースプライマーの設計」に記載のとおり行った。PCRプログラムFを使用した(表15)。メチル保持時間は、60秒間および120秒間、80℃でテストした。
【表16】
【0208】
ベースプライマーの特異性を高めるために、5サイクルのメチル特異的増幅をメチル保持に変更した。80℃で60秒間(図11を参照)は、表14に示す5サイクルのメチル特異的増幅よりも優れていることが判明した。ΔΔCtは、12.6から14.8に増加した。生データを表16に示す。
【表17】
【0209】
実施例10
方法の検証
方法は、直線性および感度の試験を使用して、患者サンプルの評価によってさらに検証した。すべての検証サンプルは、PCRプログラムFで二重にテストした。メチル特異的アッセイは、500nM MGMT_FwLoop5Cを700nM MGMT_Rev2C_suEと混合することによって行った。参照アッセイは、700nM MGMT_Fw2C_suEを700nM Rev2C_suEと混合することによって行った。1% ZUBR Greenを含有するマスターミックスを、参照アッセイおよびメチル特異的アッセイの両方で使用した。
【0210】
参照およびメチル特異的アッセイの直線性
メチル化鋳型(SW1088細胞から精製したDNA)および非メチル化鋳型(健康な患者の血液から精製したDNA)について直線性試験を実施した。鋳型は、濃度50、25、12.5、6.25、3.13、1.56、0.78ng/μLに希釈し、参照およびメチル特異的アッセイの両方に追加した。標準曲線は、次式にフィットさせた(Kubistaら、2006):
【数4】
式中、kは傾きであり、qは、サンプル中のDNA分子の初期数である。
PCR効率は、次式で計算した(Kubistaら、2006):
【数5】
【0211】
直線性は、メチル特異的アッセイと比較して、参照アッセイの方が優れていた。直線性は、参照アッセイ上のメチル化鋳型(R=0.98)と比較して、非メチル化鋳型(R=0.998)の方が優れていた。メチル特異的アッセイでは逆の結果が見られ、直線性は、非メチル化鋳型(R=0.811)と比較して、メチル化鋳型(R=0.873)が最も優れていた。図12を参照されたい。
【0212】
PCR効率は、非メチル化鋳型では100%を超え、メチル化鋳型では100%未満であった。これにより、参照アッセイおよびメチル特異的アッセイ(FwLoop5C)の両方が説明される。結果を表17に示す。
【表18】
【0213】
メチル特異的アッセイの感度
メチル特異的アッセイの感度は、SW1088からの精製DNA 2ng/μLと健康な患者の血液からの精製DNA 2ng/μLを混合することによって分析した。次の濃度を作製した:100%、50%、25%、10%、5%、1%および0%メチル化。感度は、MyGo Pro機器で実施した。
【0214】
感度は5%であり、メチル化DNAと非メチル化DNAとの明確な識別は、ΔCt=18で設定できた。メチル化率%とΔCtとの間に直線性は観察されなかった(図13を参照)。
【0215】
結果から、ΔCtに基づいて患者を高メチル化、低メチル化、および非メチル化に大まかに分類するための提案を行うことができる。表18を参照されたい。
【表19】
【0216】
実施例11
変異(ミスマッチ)プローブの融解試験
溶融拡張試験は、MGMT_Eプローブを使用して、配列中にいくつかのミスマッチヌクレオチドを意図的に追加することによって行った。2つのプローブは、2つの変異(2つのミスマッチにつながる)で作製し、3つのプローブは、1つの変異(1つのミスマッチにつながる)で作製した。配列を、表20に示す。実験の設定は、セクション「5-メチルシトシンに対する親和性」と同じであった。
【表20】
【0217】
標的配列とのミスマッチを有するプローブは、MGMT_E_M2を除いて、非メチル化DNAよりも、メチル化DNAに対する特異性(ΔT)に影響を与えることなく、二本鎖の融解温度を低下させることが判明し、ここでは、ΔTのわずかな低下が観察された。結果を図14に示し、生データを表21に示す。この実験は、特異性を低下させることなく、例えばいくつかの高親和性CpG部位にまたがるメチル化特異的プライマーの親和性を低下させることが可能であることを示している。
【表21】
【0218】
実施例12
アンカー配列中に単一のミスマッチを有するベースプライマーの感度
アンカー配列中に単一のミスマッチを有するベースプライマーは、MGMTプロモーター領域からの合成DNAで行われた感度試験を使用して評価した。合成DNAは、製造業者のプロトコールに従って、CpGメチルトランスフェラーゼ(New England Biolabs Inc,Ipswich,MA,USA)を使用してメチル化した。希釈濃度500コピー/μLの完全にメチル化されたDNAおよび非メチル化DNAを混合して、100%、50%、25%、12.5%、6.3%、3.1%、および0%のメチル化鋳型を得た。700nM MGMT_Fw2C、700nM MGMT_Rev2E、および500nM MGMT_Probe2Eは、参照アッセイに使用し、メチル特異的アッセイには、MGMT_Fw2Cの代わりに700nM MGMT_FwLoop5D_M5を使用した(配列については、表22を参照されたい)。この試験は、PCRプログラムG(表23を参照)を使用して、BaseTyper(商標)リアルタイムPCR機器(PentaBase、Odense、Denmark)で実施した。
【表22】
【表23】
【0219】
最低検出サンプルには6.3%のメチル化DNAが含有されており、ΔCtとlog(メチル化率%)との間に線形相関が観察された(図15を参照)。線形相関に基づいて、ΔCt値に基づいてメチル化の程度を定量化することが可能である。
【0220】
アンカー配列とスターター配列との塩基対数の調査
前述のベースプライマーでは、スターター配列は、アンカー配列のすぐ3’末端で標的配列に相補的であった。アンカー配列中に単一のミスマッチを有する新しいベースプライマーは、相補的な標的配列上のアンカー配列の3’末端とスターター配列の5’末端との間にヌクレオチドのギャップを有するように設計した(図16を参照)。ベースプライマーは、2つの長さのスターター配列(AおよびB)を使用して、0、2、4、6、および8ヌクレオチドのギャップを有するように設計した。表24を参照されたい。
【表24】
【0221】
700nM MGMT_Fw2C、700n MMGMT_Rev2E、および500nM MGMT_Probe2Eを参照アッセイに使用し、メチル特異的アッセイには、MGMT_Fw2Cの代わりに、表24に列挙されている700nMのベースプライマーを使用した。500コピー/μLの非メチル化、100%メチル化、および10%メチル化合成DNAを鋳型として使用した。PCRは、BaseTyper上でPCRプログラムH(表25を参照)を使用して実施した。
【表25】
【0222】
MGMT_FwLoop5B_M5_8AおよびMGMT_FwLoop5B_M5_8Bを除いて、すべての設計が100%mC、10%mC、およびnon.mC DNAを識別できることがわかった(図17を参照)。
【0223】
実施例13
補助プライマー複合体
【0224】
別のメチル識別プライマー設計をテストした。メチル識別プライマー複合体は、アンカー配列およびステム配列を含む補助プライマーからなる。複合体の他の部分は通常のプライマーであり、補助プライマーのステム配列に部分的に相補的であり、標的配列に部分的に相補的である。非メチル化DNAに対するメチル化DNAの識別は、ベースプライマーと同じ原理によって行われる。しかし、メチル化DNAでPCRが開始された後は、通常のプライマーが残りのサイクルに使用される。この原理を図18に示す。
【0225】
補助プライマー複合体は、表26に示す配列でテストした。参照アッセイには、700nM MGMT_Fw2C、700nM MGMT_Rev2E、および500nM MGMT_Probe2Eを使用し、メチル特異的アッセイには、MGMT_Fw2Cの代わりに、700nM MGMT_Primer_1Dおよび50nM MGMT_Assist_1A_Eを使用した。500コピー/μL非メチル化および100%メチル化合成DNAを鋳型として使用した。PCRは、BaseTyper上でPCRプログラムH(表25を参照)を使用して実施した。
【表26】
【0226】
PCR曲線を図19に示す。ΔCtは、100%メチル化DNAで5.6、非メチル化DNAで9.5であり、ΔΔCtは、3.9であった。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
【配列表】
2023540161000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピジェネティック修飾状態、例えば、目的の非修飾標的核酸配列中の少なくとも1つの目的のヌクレオチド(NOI)のメチル化状態を決定する方法であって、前記標的核酸配列は、前記NOIを含む標的アンカー配列を含み、前記方法が、
a.アンカー配列(An)を含むオリゴヌクレオチドを提供するステップであって、前記アンカー配列は、前記標的アンカー配列に対して少なくとも50%相補的な配列であり、前記アンカー配列は、前記NOIに対して相補的な前記ヌクレオチドとそのすぐ5’側にあるヌクレオチドとの間に位置する少なくとも1つの疎水性ヌクレオチド(H)を含む、ステップと;
b.前記NOIがメチル化などの修飾をされていない場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高い温度で、前記オリゴヌクレオチドを前記目的の標的核酸とインキュベートするステップと、
c.前記オリゴヌクレオチドが前記目的の標的核酸にアニールするか否かを検出するステップと、
それにより、前記エピジェネティック修飾状態、例えば前記メチル化状態を決定するステップと、を含み、
i.ここで、前記疎水性ヌクレオチド(H)は、以下の構造
X-Y-Q
を有し、式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン-クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位と前記インターカレーターとを連結するリンカー部分であり、
ii.前記オリゴヌクレオチドは、構造5’-An-Lp-St-3’を有し、
式中、Anは、アンカー配列であり;
Lpは、前記目的の標的核酸配列に対して相補的でないループ配列であり、前記ループ配列は、ループ構造もしくはステム構造などの突出構造を形成することができる単一の核酸配列からなるか、またはループ構造もしくはステム構造などの突出構造を形成することができる複合体を形成するために、少なくとも部分的に互いにハイブリダイズすることができる2つ以上の核酸配列からなり;
Stは、スターター配列であり、標的スターター配列にハイブリタイズすることができ、前記標的スターター配列、前記標的アンカー配列5’に位置する前記標的核酸配列の配列である、方法。
【請求項2】
前記目的の標的核酸が、DNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目的の標的核酸が、RNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法を実施する前に、前記目的の非修飾核酸配列が、バイサルファイト変換、制限酵素消化、またはTET酵素変換を含む処理に供されていない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記NOIが、シトシンである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
A.
i.前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、前記疎水性ヌクレオチド(複数可)を含む前記オリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、少なくとも1つのメチル化シトシンなどの少なくとも1つのメチル化NOIを含む、オリゴヌクレオチドと;
ii.前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、前記疎水性ヌクレオチド(複数可)を含む前記オリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、メチル化シトシンなどのメチル化NOIを含まない、オリゴヌクレオチドと;の融解温度の絶対差、および
B.
i.A.の前記オリゴヌクレオチドと同一であるが、前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合、前記疎水性ヌクレオチド(複数可)を含まないオリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、A.i.と同数のメチル化NOI、例えばA.i.と同数のメチル化シトシンなどを含む、オリゴヌクレオチド;と
ii.A.の前記オリゴヌクレオチドと同一であるが、前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合、前記疎水性ヌクレオチド(複数可)を含まないオリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、メチル化シトシンなどのメチル化NOIを含まない、オリゴヌクレオチド;との融解温度の絶対差が、
前記目的の標的核酸配列においてメチル化されていない代わりに、メチル化されているシトシンなどのNOIあたり、少なくとも0.50℃、例えば少なくとも0.75℃、好ましくは少なくとも1.0℃の差であり、ここで前記差は、A-Bであり、前記差は、正の差であり、ここで、前記融解温度は、0.02M Na2HPO4、0.02M NaCl、および2mM EDTAを含むTM緩衝液中で測定される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
i.前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、前記疎水性ヌクレオチドを含む前記オリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、少なくとも1つのメチル化シトシンなどの少なくとも1つのメチル化NOIを含む、オリゴヌクレオチドと;
ii.前記目的の標的核酸配列にハイブリダイズした場合に、前記疎水性ヌクレオチドを含む前記オリゴヌクレオチドであって、前記目的の核酸配列が、メチル化シトシンなどのメチル化NOIを含まない、オリゴヌクレオチドと;の融解温度間の絶対差が、
前記目的の標的核酸配列においてメチル化されていない代わりに、メチル化されているシトシンなどのNOIあたり、少なくとも1.6℃、例えば少なくとも1.8℃、例えば少なくとも2.0℃、例えば少なくとも2.2℃、好ましくは少なくとも2.4℃であり、前記融解温度は、0.02M Na2HPO4、0.02M NaCl、および2mM EDTAを含むTM緩衝液中で測定される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アンカー配列が、配列-N-H-G-を含み、式中、-G-が、前記目的のシトシンに対して相補的であり、-N-が、C、G、AおよびTからなる群から選択され、前記目的のシトシンの隣接ヌクレオチドに対して相補的である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記シトシンが、CpG部位にあり、前記アンカー配列が、配列-C-H-G-を含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アンカー配列が、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば1~10の範囲、例えば2~10の範囲、例えば3~10の範囲、例えば4~10の範囲の疎水性ヌクレオチド(H)を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アンカー配列が、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば2~10の範囲、例えば2~5の範囲、例えば3~5の範囲、例えば4~5の範囲の-N-H-G-配列を含み、ここで、各Nは、個別に、C、G、AおよびTからなる群から選択され、各配列-N-G-は、目的のシトシンとその隣接ヌクレオチドに相補的である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
2つ以上のNOIがCpG部位に位置し、前記アンカー配列が、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば2~5の範囲、例えば3~5の範囲、例えば4~5の範囲の-C-H-G-配列を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)およびc)が共に、PCRを実施することを含み、前記温度が、前記PCRの1つ以上のサイクルにおける前記アニーリング温度として使用される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドが、2つ、3つ、またはそれ以上の別個のオリゴヌクレオチドなどの、2つ以上の別個のオリゴヌクレオチドとしてコードされる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドが単一のオリゴヌクレオチドとしてコードされる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドが、第1および第2の核酸配列からなり、前記第1の核酸配列は、前記標的DNAに対して相補的な前記アンカー配列(An)と、前記目的の標的核酸配列に対して相補的でないループ配列の第1の部分とを含み、前記第2の核酸配列は、前記ループ配列の前記第1の部分に少なくとも部分的にハイブリダイズすることができる前記ループ配列の第2の部分を含み、前記第2の核酸配列は、前記スターター配列(St)をさらに含み、前記第1および第2の核酸は、ハイブリダイズすると、突出構造を形成することができる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記アンカー配列(An)が、8~30の範囲、例えば8~20の範囲、例えば10~20の範囲、例えば15~20の範囲のヌクレオチドからなり、前記ヌクレオチドの1つ以上は、疎水性ヌクレオチド(複数可)である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記アンカー配列(An)が、前記標的アンカー配列に対して少なくとも85%相補的である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記スターター配列(St)が、標的スターター配列に対して100%相補的である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記標的アンカー配列および前記標的スターター配列が、互いから10ヌクレオチド以内、例えば8ヌクレオチド以内、例えば5ヌクレオチド以内に位置する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
LpおよびStが、Lp-Stからなるオリゴヌクレオチドが、その相補的配列と共に少なくとも50℃、例えば少なくとも55℃、例えば少なくとも65°Cの融解温度を有するように選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
LpおよびStが一緒になって、少なくとも15ヌクレオチド、例えば少なくとも17ヌクレオチド、例えば15~45ヌクレオチドの範囲、例えば17~35ヌクレオチドの範囲、例えば17~25ヌクレオチドの範囲からなる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
Lpが疎水性ヌクレオチドを含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
Lpが、2つ以上の核酸配列からなり、St配列に共有結合により連結していない前記核酸配列(複数可)が、1つ以上の疎水性ヌクレオチドを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
Stが疎水性ヌクレオチドを含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記オリゴヌクレオチドと前記目的のメチル化標的核酸配列との間の前記融解温度が、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の非メチル化標的核酸配列との間の前記融解温度よりも、少なくとも5℃高い、例えば少なくとも6℃高い、例えば6~15℃高い範囲、例えば6~12℃高い範囲である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
目的の非メチル化標的核酸配列と比較した、前記オリゴヌクレオチドと前記メチル化標的核酸配列との間の融解温度の前記差は、非メチル化標的核酸配列と比較して、前記疎水性ヌクレオチドを欠いていることを除いて同一配列のオリゴヌクレオチドと前記メチル化標的核酸配列との間の融解温度の差より少なくとも1℃高い、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ステップb)およびc)が共に、リアルタイムPCRを実施することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記Ctが、非メチル化標的核酸配列を鋳型として使用して行った対照PCRのCtよりも低い場合に、前記目的の核酸がメチル化されているとみなされる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ステップb)およびステップc)が共に、PCRを実施することを含み、前記PCRの少なくとも最初のサイクルが、前記NOIがメチル化されていない場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の前記融解温度よりも高いアニーリング温度を使用する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ステップb)の前記温度が、前記NOIがメチル化されていない場合の前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも少なくとも2℃高い、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ステップb)およびステップc)が共に、PCRを実施することを含み、前記PCRの少なくとも最初のサイクルが、前記NOIがメチル化されていない場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高く、前記NOIがメチル化されている場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の前記融解温度より最大で4℃高い、例えば最大で2℃高い、同じかまたは低い、アニーリング温度を使用する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ステップb)およびステップc)が共に、PCRを実施することを含み、前記PCRの少なくとも最初のサイクルが、前記NOIがメチル化されていない場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の融解温度よりも高く、前記NOIがメチル化されている場合、前記オリゴヌクレオチドと前記目的の標的核酸配列との間の前記融解温度より最大で4℃高い~最大で4℃低い、アニーリング温度を使用する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ステップb)およびc)が共に、PCRを実施することを含み、前記PCRの少なくとも最初のサイクルが55℃~80℃の範囲のアニーリング温度を使用する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記PCRの少なくとも最初のサイクルが、30~120秒の範囲の間、前記アニーリング温度でインキュベーションすることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ステップb)中の前記オリゴヌクレオチドの濃度が、300~700nMの範囲である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記PCRが、1つ以上のメチル特異的増幅サイクルおよび1つ以上の一般的増幅サイクルを含み、前記メチル特異的増幅サイクル(複数可)が、
a.核酸を融解するステップと、
b.メチル特異的条件下でのアニーリングおよび伸長ステップと、を含み、
前記一般的増幅サイクルが、
a.核酸を融解するステップと、
b.一般的な条件下でのアニーリングおよび伸長ステップと、を含み、
ここで、前記融解することは、少なくとも90℃の温度でインキュベーションすることを含み、メチル特異的条件下での前記アニーリングおよび前記伸長は、一般的条件下でのアニーリングおよび伸長よりも高い温度で実施される、請求項13~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記アニーリングが、45~90秒の範囲で、例えば45~75秒の範囲で、例えば約60秒間行われる、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
1~100の範囲のメチル特異的増幅サイクルを含む、請求項37~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記PCRが、前記オリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして使用して実施され、前記PCRが、前記目的の標的核酸配列の下流にある配列と少なくとも90%同一、例えば100%同一であるリバースプライマーの使用をさらに含む、請求項13~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記PCRが、PCR産物の検出のための検出可能なプローブの使用を含み、前記プローブが、前記PCR反応の産物に少なくとも90%相補的なオリゴヌクレオチドおよび検出可能な標識を含む、請求項13~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記プローブが1つ以上の疎水性ヌクレオチドを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
目的の標的核酸配列が、サンプルから精製されたDNAに含まれる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記サンプルが、前記目的の核酸のメチル化に関連する臨床状態を患っているか、またはその臨床状態を有するリスクがある個体から得られたサンプルである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
目的の核酸を前処理して、メチル化ヌクレオチドを検出可能な部分に変換するステップを含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
バイサルファイト変換ステップを含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
個体が臨床状態に罹患しているか否かのリスク、または個体が臨床状態になるリスクを決定するための方法であって、ここで、前記臨床状態は、目的の核酸中におけるNOIのメチル化状態に関連し、
a.前記個体から得られたサンプルを提供することと;
b.先行請求項のいずれか一項に記載の方法を実施することによって、前記サンプル中の前記NOIの前記メチル化状態を決定することであって、前記メチル化状態は、前記臨床状態の存在または前記臨床状態になるリスクを示す、決定することと、を含む、方法。
【請求項48】
それを必要とする個体における臨床状態の治療の効果の可能性を決定するための方法であって、ここで、前記臨床状態の前記治療の前記効果は、目的の核酸中におけるNOIの前記メチル化状態に関連し、
a.前記個体から得られたサンプルを提供することと;
b.請求項1~43のいずれか一項に記載の方法を実施することによって、前記サンプル中の前記NOIの前記メチル化状態を決定することであって、前記メチル化状態は、前記臨床状態に対する異なる治療レジメンの効果を示す、決定することと、を含む、方法。
【請求項49】
前記臨床状態ががんである、請求項47~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記がんが、神経膠芽腫である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなるオリゴヌクレオチド:
5’(N) -HG-(N) -HG-(N) -HG-(N) -3’
(式中、Nは、任意のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であり;
Gは、ヌクレオチドグアニンであり;
nは、0以上の整数であり;
mは、1以上の整数であり;
pは、以上の整数であり;
qは、0以上の整数であり;
Hは、疎水性ヌクレオチドであり、
ここで、前記疎水性ヌクレオチドは、以下の構造
X-Y-Q
を有し、式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン-クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位と前記インターカレーターとを連結するリンカー部分である)。
【請求項52】
前記オリゴヌクレオチドが、以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなる、請求項51に記載のオリゴヌクレオチド:
5’(N)-HG-(N)-HG-(N)-HG-(N)-HG-(N)-3’
(式中、
qは、1以上の整数であり;
uは、0以上の整数である)。
【請求項53】
nが、0~4の範囲の整数であり、例えばnが1である、請求項51~52のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項54】
mが、1~8の範囲、例えば1~6の範囲の整数である、請求項51~53のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項55】
pが、1~50の範囲、例えば1~30の範囲、例えば1~10の範囲、例えば1~6の範囲の整数である、請求項51~54のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項56】
qが、1~50の範囲、例えば1~30の範囲、例えば1~10の範囲、例えば1~6の範囲の整数である、請求項51~55のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項57】
uが、1~50の範囲、例えば1~30の範囲、例えば1~10の範囲、例えば1~6の範囲の整数である、請求項51~56のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項58】
少なくとも1つのHのすぐ5’側にある前記ヌクレオチドが、シトシン(C)である、請求項51~57のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項59】
Hのすぐ5’側にあるすべてのヌクレオチドが、シトシン(C)である、請求項51~58のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項60】
すべてのインターカレーターなどの少なくとも1つのQが、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト、チオ、シアノ、アルキルチオ、複素環、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルボアルコイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、アミノ、アルコキシルおよびアミドからなる群から選択される1つ以上と任意により置換されたポリアロマート(polyaromate)およびヘテロポリアロマート(heteropolyaromate)からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【請求項61】
前記ポリアロメートまたはヘテロポリアロメートが、少なくとも3つの環、例えば4つの環からなる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【請求項62】
前記インターカレーターが、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、as-インダセン、s-インダセン、ビフェニレン、アセナフチレン、フェナレン、ヘプタレン、フェナントラン(phenanthrane)、フルオランテン、フェナントロリン、フェナジン、フェナントリジン、アントラキノン、ピレン、アントラセン、ナフテン(napthene)、フェナントレン、フルレン(flurene)、ピセン、クリセン、ナフタセン(naphtacene)、アクリドン、ベンゾアントラセン、スチルベン、オキサロピリドカルバゾール、アジドベンゼン、ポルフィリンおよびソラレン、ならびにそれらの誘導体からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【請求項63】
すべてのインターカレーターなどの少なくとも1つのQが、ピレンまたはピリド[3’,2’:4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(1H)-オンまたは7,9-ジメチル-ピリド[3’,2’,4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(3H)-オンを含むか、またはこれらからなる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【請求項64】
少なくとも1つ、例えばすべての骨格モノマー単位が、ホスホロアミダイトからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法またはオリゴヌクレオチド。
【請求項65】
前記オリゴヌクレオチドが、請求項43~59のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドである、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなるオリゴヌクレオチド:
5’(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-3’
(式中、Nは、任意のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であり;
Cは、ヌクレオチドシトシンであり;
Gは、ヌクレオチドグアニンであり;
nは、0以上の整数であり;
mは、1以上の整数であり;
pは、0以上の整数であり;
Hは、疎水性ヌクレオチドであり、
ここで、疎水性ヌクレオチドは、以下の構造
X-Y-Q
を有し、式中、
Xは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体、または核酸もしくは核酸類似体の骨格に組み込むことができる骨格モノマー単位であり、
Qは、ワトソン-クリック水素結合に参加していないインターカレーターであり;
Yは、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体または骨格モノマー単位と前記インターカレーターとを連結するリンカー部分である)。
【請求項67】
前記オリゴヌクレオチドが、以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなる、請求項66に記載のオリゴヌクレオチド:
5’(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-3’
(式中、
pは、1以上であり;
qは、0以上の整数である)。
【請求項68】
前記オリゴヌクレオチドが、以下の一般構造を含むか、またはこの構造からなる、請求項6667のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド:
5’(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-CGH-(N)-3’
(式中、
qは、1以上の整数であり;
uは、0以上の整数である)。
【請求項69】
n、m、p、qおよびuが、請求項5357のいずれか一項で定義されたとおりである、請求項6668のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項70】
QおよびXが請求項6064のいずれか一項で定義されたとおりである、請求項6669のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023540161000001.app
【国際調査報告】