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特表2023-540177ヘアピンアダプターを使用して配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ヘアピンアダプターを使用して配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230914BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20230914BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230914BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511647
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2021074931
(87)【国際公開番号】W WO2022053610
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/077,271
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】スレッター,アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR14
4B063QR62
4B063QR63
4B063QS26
(57)【要約】
二本鎖核酸断片を含む配列決定ライブラリーを濃縮するための方法が本明細書に開示され、二本鎖断片の末端における1つ以上のアダプターを有する二本鎖断片のライブラリーを調製することと、二本鎖断片を変性させて、一本鎖断片を形成することと、二本鎖断片のライブラリー中の少なくとも1つのインサートの標的配列に結合し、非標的配列に結合しない、伸長プライマーをハイブリダイズさせることと、を含む。一実施形態では、アダプターは、ヘアピンアダプターであり、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用する伸長プライマーからの伸長は、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的なヘアピンアダプターの配列の全部又一部を除去する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸配列決定ライブラリーを調製する際に使用するためのアダプターであって、
a.5’末端及び3’末端を有する第1の鎖と、
b.5’末端及び3’末端を有する第2の鎖と、を含み、
前記第1の鎖の前記3’末端の部分及び前記第2の鎖の前記5’末端の部分が、相補的であり、第1の二本鎖領域を形成し、
前記第1の鎖の前記5’末端の部分及び前記第2の鎖の前記3’末端の部分が、非相補的であり、
前記第1の鎖の前記5’末端の前記部分が、第2の二本鎖領域を含む、アダプター。
【請求項2】
前記第2の二本鎖領域が、ヘアピン構造である、請求項1に記載のアダプター。
【請求項3】
前記第2の二本鎖領域が、非核酸部分を含む、請求項1又は2に記載のアダプター。
【請求項4】
前記非核酸部分が、リンカーである、請求項3に記載のアダプター。
【請求項5】
前記第1の鎖の前記5’末端が、エキソヌクレアーゼによって分解可能でないリンカー部分を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載のアダプター。
【請求項6】
前記第1の二本鎖領域が、少なくとも5つの連続したヌクレオチドである、請求項1~5のいずれか一項に記載のアダプター。
【請求項7】
前記第2の二本鎖領域が、少なくとも5つの連続したヌクレオチドである、請求項1~6のいずれか一項に記載のアダプター。
【請求項8】
前記第2の鎖の前記5’末端が、リン酸化されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のアダプター。
【請求項9】
前記第1の鎖及び前記第2の鎖における全てのシトシン塩基が、メチル化されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のアダプター。
【請求項10】
前記アダプターが、捕捉部分を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のアダプター。
【請求項11】
核酸配列決定ライブラリーを調製する方法であって、
a.複数の二本鎖核酸断片を生成することと、
b.請求項1~10のいずれか一項に記載のアダプターを、前記複数の二本鎖核酸断片の少なくとも1つの末端に結合させることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記アダプターが、タグメンテーションを介して結合している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アダプターが、ライゲーションを介して結合している、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
核酸配列決定ライブラリーを調製するためのキットであって、
a.請求項1~10のうちのいずれか一項に記載のアダプターと、
b.前記アダプターの部分にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマーと、
c.少なくとも1つの酵素と、
d.dNTPと、を含む、キット。
【請求項15】
前記少なくとも1つの酵素が、エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記少なくとも1つの酵素が、ポリメラーゼである、請求項14又は15に記載のキット。
【請求項17】
少なくとも1つの構成要素が、凍結乾燥又は乾燥形態にある、請求項14~16のいずれか一項に記載のキット。
【請求項18】
二本鎖断片の配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法であって、
a.前記配列決定ライブラリーを調製することであって、各断片が、
i.二本鎖核酸を含むインサートと、
ii.前記二本鎖断片の一方又は両方の鎖の5’末端におけるヘアピンアダプターであって、前記ヘアピンアダプターが増幅プライマー配列及び前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む、ヘアピンアダプターと、を含む、調製することと、
b.前記二本鎖断片を変性させて、一本鎖断片を形成することと、
c.5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、
i.前記配列決定ライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する1つ以上の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、
ii.前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列の全部又は一部を除去することと、を含む、方法。
【請求項19】
前記増幅プライマー配列に結合する増幅プライマーを使用して断片を増幅することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヘアピンアダプターが、前記増幅プライマー配列と前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列との間にリンカーを更に含み、かつ/又は前記2つ以上の伸長プライマーが、リンカーを介して結合している、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記リンカーが、エキソヌクレアーゼによって分解可能ではない、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼが、Taqである、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の伸長プライマー及び/又は伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成するために使用される前記ポリメラーゼが、伸長後に除去される、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の伸長プライマー及び/又は伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成するために使用される前記ポリメラーゼを除去することが、固相可逆的固定化(SPRI)ビーズによって、かつ/又は熱感受性ポリメラーゼを変性させることによって生じる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
1つ以上の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成することが、ウラシルを含む反応混合物を用いて行われる、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ウラシルを含む反応混合物を用いて生成された前記核酸鎖が、1つ以上のウラシル特異的除去試薬(USER)によって切断される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
USERが、ウラシルDNAグリコシラーゼ及びエンドヌクレアーゼVIIIである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
USERが、ウラシルDNAグリコシラーゼ及びエンドヌクレアーゼVIIIの活性を有する単一酵素である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ライブラリー中の複数の二本鎖断片が、前記標的配列を含まない、請求項18~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ヘアピンアダプターが前記ライブラリーの二本鎖断片に含まれ、前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列の全部又は一部が存在する、請求項18~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記標的配列を含まない前記ライブラリー中の複数の二本鎖断片において、前記ヘアピンアダプターを制限エンドヌクレアーゼで切断することを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ウラシルを含む反応混合物を用いて生成された前記核酸鎖が、制限エンドヌクレアーゼ消化に耐性である、請求項25~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記制限エンドヌクレアーゼが、前記増幅プライマー配列の前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列との会合によって形成された二本鎖核酸において、切断する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
二本鎖断片の配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法であって、
a.前記配列決定ライブラリーを調製することであって、各断片が、
i.二本鎖核酸を含むインサートと、
ii.前記二本鎖断片の一方又は両方の鎖の前記5’末端におけるヘアピンアダプターと、を含み、前記ヘアピンアダプターが、
1.第1のセットのヌクレオチド配列であって、前記第1のセットのヌクレオチド配列がアダプター配列及び前記アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む、第1のセットのヌクレオチド配列と、
2.第2のセットのヌクレオチド配列であって、前記第2のセットのヌクレオチド配列が増幅プライマー配列及び前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含み、
前記第1のセットのヌクレオチド配列が前記第2のセットのヌクレオチド配列よりも前記インサートに近い、第2のセットのヌクレオチド配列と、
3.前記アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列と前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列との間のリンカーと、を含む、調製することと、
b.前記二本鎖断片を変性させて、一本鎖断片を形成することと、
c.5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、
i.前記配列決定ライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた前記標的配列に結合する第1の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、前記核酸鎖を生成するための前記反応混合物が、ウラシルを含み、
ii.前記アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列の全部又は一部を除去することと、
d.前記第1の伸長プライマーを除去することと、
e.USERを提供することと、
f.5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、
i.二本鎖断片の前記ライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、
ii.前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列の全部又は一部を除去することと、を含む、方法。
【請求項35】
前記増幅プライマー配列に結合する増幅プライマーを使用して断片を増幅することを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記増幅プライマー配列の前記相補体及び/又は前記アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列と前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列との間の前記リンカーが、エキソヌクレアーゼによって分解可能ではない、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記増幅プライマー配列の前記相補体及び/又は前記アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列と前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列との間の前記リンカーが、ウラシルを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のプライマーを使用して核酸鎖を生成した後、前記ヘアピンアダプターを制限エンドヌクレアーゼで切断することを更に含み、前記ヘアピンアダプターが前記ライブラリーの二本鎖断片に含まれ、前記アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列の全部又は一部が存在する、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のプライマー伸長を使用して生成された前記核酸鎖が、ウラシルを含み、制限エンドヌクレアーゼ消化に耐性である、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ヘアピンアダプターが、前記増幅プライマー配列と前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間にリンカーを更に含む、請求項34~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記リンカーが、エキソヌクレアーゼによって分解可能でない、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
USERが、第1のプライマー伸長によって生成された前記核酸鎖、前記ヘアピンアダプターに含まれた前記リンカー、及び/又は前記アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列を切断する、請求項34~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
USERが、ウラシルDNAグリコシラーゼ及びエンドヌクレアーゼVIIIである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
USERが、ウラシルDNAグリコシラーゼ及びエンドヌクレアーゼVIIIの活性を有する単一酵素である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記第1及び第2の伸長プライマーが、異なる配列に結合する、請求項34~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第1及び第2の伸長プライマーが、前記二本鎖核酸の同じ鎖に結合する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼが、Taqである、請求項34~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリメラーゼが、断片を増幅する前に除去される、請求項34~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第2の伸長プライマーが、前記プライマーを使用して核酸鎖を生成した後に除去される、請求項34~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記ポリメラーゼ及び/又は第2の伸長プライマーが、SPRIビーズを使用して、かつ/又は熱感受性ポリメラーゼを変性させることによって除去される、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
二本鎖断片の配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法であって、
a.前記配列決定ライブラリーを調製することであって、各断片が、
i.二本鎖核酸を含むインサートと、
ii.前記二本鎖断片の一方又は両方の鎖の5’末端におけるヘアピンアダプターであって、前記ヘアピンアダプターが増幅プライマー配列及び前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む、ヘアピンアダプターと、を含む、調製することと、
b.前記二本鎖断片を変性させて、一本鎖断片を形成することと、
c.プライマーミックスと、ライゲーション活性及びポリメラーゼ活性を有し、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有しない、酵素のミックスと、を使用し、
i.プライマーミックスの第1の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、前記プライマーミックスが、第1の伸長プライマー及びブロックされた第2の伸長プライマーを含み、前記第1の伸長プライマー及び前記ブロックされた第2の伸長プライマーが、前記二本鎖核酸に含まれた目的の異なる配列に結合し、
ii.前記第1の伸長プライマーを使用して生成された前記核酸鎖を、前記ブロックされた第2の伸長プライマーにライゲーションすることと、
d.インサートに結合していないプライマーミックスを除去することと、
e.前記ブロックされた第2の伸長プライマーを脱ブロックすることと、
f.5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、
i.ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、
ii.前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列の全部又は一部を除去することと、を含む、方法。
【請求項52】
前記増幅プライマー配列に結合する増幅プライマーを使用して断片を増幅することを更に含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ヘアピンアダプターが、前記増幅プライマー配列と前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列との間にリンカーを更に含む、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記リンカーが、エキソヌクレアーゼによって分解可能でない、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ブロックされた第2の伸長プライマーが、脱ブロックされない限り、核酸鎖を生成することができない、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ブロックされた第2の伸長プライマーが、少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列及び前記第1の伸長プライマーによって結合された前記配列の5’に結合する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーのアニーリング及び伸長温度が、前記第2の伸長プライマーの融解温度を上回る、請求項51~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記ブロックされた第2の伸長プライマーが、60℃未満の融解温度で前記インサートに結合し、かつ/又は前記ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成することが、60℃以上の温度で行われる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の伸長プライマーが、増幅の前に除去される、請求項51~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記第2の伸長プライマーが、SPRIビーズ又はエキソヌクレアーゼを使用して除去される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
1つ以上の伸長プライマーが、遺伝子特異的プライマーである、請求項18~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記ヘアピンアダプターが、二本鎖断片の一方の鎖の前記5’末端にある、請求項18~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記ヘアピンアダプターが、二本鎖断片の両方の鎖の前記5’末端にある、請求項18~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記ヘアピンアダプターが、ライゲーション又はタグメンテーションによって組み込まれる、請求項18~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記増幅プライマー配列及び前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列が、各々、少なくとも14ヌクレオチドを含む、請求項18~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記増幅プライマー配列及び前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列が、各々、14~60ヌクレオチドを含む、請求項18~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記ヘアピンアダプターが、安定性を増加させるための1つ以上の増強を含み、任意選択的に、増強が、1つ以上の修飾核酸又はロックド核酸である、請求項18~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記ヘアピンアダプターが、60℃以上、65℃以上、又は70℃以上の温度で、前記増幅プライマー配列の前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列との会合を維持する、請求項18~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記増幅プライマー配列が、A14、A14’、B15、又はB15’配列を含む、請求項18~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記増幅プライマー配列が、前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列と会合している場合、増幅プライマーが、前記ヘアピンアダプターに含まれた前記増幅プライマー配列に結合することができない、請求項18~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な前記配列が、前記増幅プライマー配列の前記相補体と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、又は99%以上の配列同一性を有する配列を含む、請求項18~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列が、前記増幅プライマー配列の前記相補体を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
二本鎖断片の一方又は両方の鎖が、前記ヘアピンアダプターの3’の1つ以上の追加のアダプターを含む、請求項18~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
二本鎖断片が、一方又は両方の鎖の3’末端における1つ以上のアダプターを含む、請求項18~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記1つ以上のアダプターが、プライマー配列、インデックスタグ配列、捕捉配列、バーコード配列、切断配列、若しくは配列決定関連配列、又はそれらの組み合わせを含む、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項76】
増幅プライマーを使用して断片を増幅することが、前記ヘアピンアダプターを破壊することができない、請求項19~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
増幅プライマーを使用して断片を増幅するために使用される前記ポリメラーゼが、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くか、又は増幅プライマーを使用して断片を増幅するために使用される前記ポリメラーゼが、鎖置換ポリメラーゼではない、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
断片を増幅するために使用される前記ポリメラーゼが、Q5である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記増幅が、ブリッジ増幅である、請求項19~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
増幅された断片の配列決定を更に含む、請求項19~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記方法が、前記インサートの全配列の配列決定を可能にする、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記二本鎖核酸が、DNA又はRNAを含む、請求項18~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記二本鎖核酸が、無細胞DNA又はエクソーム試料を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記方法が、断片重複排除に使用される、請求項18~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
二本鎖断片の配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法であって、
a.前記配列決定ライブラリーを調製することであって、前記二本鎖断片の各断片が、末端アダプター間に配置されたインサートを含み、各末端アダプターが、
第1のセットのヌクレオチド配列であって、前記第1のセットのヌクレオチド配列がアダプター配列及び前記アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む、第1のセットのヌクレオチド配列、
前記第1のセットのヌクレオチド配列の3’終端から離れて伸長する増幅プライマー配列を含む、調製することと、
b.前記二本鎖断片を変性させて、分離鎖を形成することであって、各分離鎖が、前記インサートの一本鎖部分を含む、形成することと、
c.配列特異的伸長プライマーを、前記インサートの前記一本鎖部分の相補配列にアニーリングすることと、
d.前記アニーリングした伸長プライマーから相補鎖を伸長させて、二本鎖末端を有する相補鎖及び分離鎖の二重鎖を形成することであって、前記二本鎖末端が、前記相補鎖の3’末端及び前記分離鎖の5’末端を含む、形成することと、
e.二本鎖アダプターを前記二重鎖の各二本鎖末端にライゲーションすることと、
f.前記二重鎖を変性させることと、
g.前記二重鎖の変性鎖を増幅して、増幅産物を生成することと、を含む、方法。
【請求項86】
前記増幅産物を配列決定することを更に含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
インデックス配列を有するプライマーを使用して、前記増幅産物を配列決定することを含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記二本鎖末端にAオーバーハングを付加することを更に含み、前記二本鎖アダプターが、相補Tオーバーハングを含む、請求項85又は86に記載の方法。
【請求項89】
前記二本鎖アダプターが、第2の増幅プライマー配列及び前記第2の増幅プライマー配列に対する相補配列を含む、請求項85~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記第1のセットのヌクレオチド配列の前記3’終端から離れて伸長する前記増幅プライマー配列が、前記第2の増幅プライマー配列とは異なる配列を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記配列特異的伸長プライマーが、それぞれ異なる標的配列に対して複数の異なる配列を含む、請求項85~89のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年9月11日に出願された「METHODS OF ENRICHING A TARGET SEQUENCE FROM A SEQUENCING LIBRARY USING HAIRPIN ADAPTORS」と題する米国仮出願第63/077,271号の優先権及び利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。当該ASCIIコピーは、2021年9月8日に作成され、名前がIP-2043-PCT_SL.txtであり、サイズが806バイトである。
【0003】
(発明の分野)
本開示は、ヘアピンアダプターを使用して配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮する調製に関する。
【背景技術】
【0004】
配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮することは、遅くて複雑なワークフローによって妨げられる可能性がある。例えば、ハイブリダイゼーション捕捉方法を使用するライブラリー濃縮は、ハイブリダイゼーション捕捉工程の前にライブラリー全体の増幅を必要とする。更に、標的化増幅を用いた濃縮の従来のアプローチは、断片末端情報が失われる可能性がある。
【0005】
本方法は、配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するためにヘアピンアダプターを使用する。場合によっては、単一の増幅工程は、配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮することができる。ヘアピンアダプターを用いるこれらの方法は、断片末端情報の損失を回避することができ、これは、無細胞DNAの分析及び断片重複排除(fragment deduplication)アプローチに有用であり得る。
【発明の概要】
【0006】
本明細書によれば、二本鎖ライブラリー断片の一方又は両方の鎖の5’末端におけるヘアピンアダプターを使用して、配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮する方法が本明細書に記載される。また、フォークアダプター(forked adaptor)及びフォークアダプターを有する配列決定ライブラリーを生成するための方法及びキットが本明細書に記載される。
【0007】
核酸配列決定ライブラリーを調製する際に使用するためのアダプターが本明細書に開示され、5’末端及び3’末端を有する第1の配列と、5’末端及び3’末端を有する第2の配列と、を含み、第1の配列の3’末端の部分及び第2の配列の5’末端の部分が、相補的であり、第1の二本鎖領域を形成し、第1の配列の5’末端の部分及び第2の配列の3’末端の部分が、非相補的であり、第1の鎖の5’末端の部分が、第2の二本鎖領域を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、第2の二本鎖領域は、ヘアピン構造である。いくつかの実施形態では、第2の二本鎖領域は、非核酸部分を含む。いくつかの実施形態では、非核酸部分は、リンカーである。いくつかの実施形態では、第1の鎖の5’末端は、エキソヌクレアーゼによって分解可能でない部分を含む。いくつかの実施形態では、第1の二本鎖領域は、少なくとも5つの連続したヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、第2の二本鎖領域は、少なくとも5つの連続したヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、第2の鎖の5’末端は、リン酸化されている。いくつかの実施形態では、第1の鎖及び第2の鎖の全てのシトシン塩基は、メチル化されている。いくつかの実施形態では、アダプターは、捕捉部分を更に含む。
【0009】
また、核酸配列決定ライブラリーを調製する方法も本明細書に記載され、複数の二本鎖核酸断片を生成することと、複数の二本鎖核酸断片の少なくとも一方の末端に、1つ以上のフォークアダプターを結合させることと、を含む。いくつかの実施形態では、アダプターは、タグメンテーションを介して結合している。いくつかの実施形態では、アダプターは、ライゲーションを介して結合している。
【0010】
また、核酸配列決定ライブラリーを調製するためのキットも本明細書に記載され、フォークアダプターと、アダプターの部分にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマーと、少なくとも1つの酵素と、dNTPと、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの酵素は、エキソヌクレアーゼ活性を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの酵素は、ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの構成要素は、凍結乾燥形態又は乾燥形態にある。
【0012】
二本鎖断片の配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法が本明細書に開示され、配列決定ライブラリーを調製することであって、各断片が、二本鎖核酸を含むインサートと、二本鎖断片の一方又は両方の鎖の5’末端におけるヘアピンアダプターと、を含み、ヘアピンアダプターが、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む、調製することと、二本鎖断片を変性させて、一本鎖断片を形成することと、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、配列決定ライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去することと、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、方法は、増幅プライマー配列に結合する増幅プライマーを使用して断片を増幅することを更に含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、増幅プライマー配列と増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間にリンカーを更に含む。いくつかの実施形態では、当該リンカーは、エキソヌクレアーゼによって分解可能ではない。
【0015】
いくつかの実施形態では、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼは、Taqである。いくつかの実施形態では、伸長プライマー及び/又は伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成するために使用されるポリメラーゼは、伸長後に除去される。いくつかの実施形態では、伸長プライマー及び/又は伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成するために使用されるポリメラーゼを除去することは、固相可逆的固定化(solid-phase reversible immobilization、SPRI)ビーズによって、かつ/又は感熱性ポリメラーゼを変性させることによって行われる。
【0016】
いくつかの実施形態では、伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成することは、ウラシルを含む反応混合物を用いて行われる。いくつかの実施形態では、ウラシルを含む反応混合物を用いて生成された核酸鎖は、1つ以上のウラシル特異的除去試薬(uracil-specific excision reagent、USER)によって切断される。いくつかの実施形態では、USERは、ウラシルDNAグリコシラーゼ及びエンドヌクレアーゼVIIIである。いくつかの実施形態では、USERは、ウラシルDNAグリコシラーゼ及びエンドヌクレアーゼVIIIの活性を有する単一酵素である。
【0017】
いくつかの実施形態では、ライブラリー中の複数の二本鎖断片は、標的配列を含まない。いくつかの実施形態では、当該ヘアピンアダプターは、ライブラリーの二本鎖断片に含まれ、アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部が存在する。いくつかの実施形態では、方法は、標的配列を含まないライブラリー中の複数の二本鎖断片において、ヘアピンアダプターを制限エンドヌクレアーゼで切断することを更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、ウラシルを含む反応混合物を用いて生成された核酸鎖は、制限エンドヌクレアーゼ消化に耐性である。いくつかの実施形態では、核酸鎖へのウラシルの組み込みは、以前は制限エンドヌクレアーゼ切断部位であった配列を変化させ、それによって、鎖及びその相補体を切断から保護する。いくつかの実施形態では、制限エンドヌクレアーゼは、増幅プライマー配列の増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との会合によって形成された二本鎖核酸において、切断する。
【0019】
また、二本鎖断片の配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法も本明細書に開示され、配列決定ライブラリーを調製することであって、各断片が、二本鎖核酸を含むインサートと、二本鎖断片の一方又は両方の鎖の5’末端におけるヘアピンアダプターと、を含み、ヘアピンアダプターが、第1のセットのヌクレオチド配列であって、第1のセットのヌクレオチド配列がアダプター配列及びアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む、第1のセットのヌクレオチド配列と、第2のセットのヌクレオチド配列であって、第2のセットのヌクレオチド配列が、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含み、第1のセットのヌクレオチド配列が、第2のセットのヌクレオチド配列よりもインサートに近い、第2のセットのヌクレオチド配列と、アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列と増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間のリンカーと、を含む、調製することと、二本鎖断片を変性させて、一本鎖断片を形成することと、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、(1)配列決定ライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する第1の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、核酸鎖を生成するための反応混合物が、ウラシルを含み、(2)アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去することと、第1の伸長プライマーを除去することと、USERを提供することと、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、(1)二本鎖断片のライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、(2)増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去することと、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、増幅プライマー配列に結合する増幅プライマーを使用して断片を増幅することを更に含む。いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列の相補体及び/又はアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列と増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間のリンカーは、エキソヌクレアーゼによって分解可能ではない。
【0021】
いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列の相補体及び/又はアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列と増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間のリンカーは、ウラシルを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法は、第1のプライマーを使用して核酸鎖を生成した後、ヘアピンアダプターを制限エンドヌクレアーゼで切断することを更に含み、当該ヘアピンアダプターがライブラリーの二本鎖断片に含まれ、アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部が存在する。
【0023】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、増幅プライマー配列と増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間にリンカーを更に含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、USERは、第1のプライマー伸長によって生成された核酸鎖、ヘアピンアダプターに含まれたリンカー、及び/又はアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列を切断する。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の伸長プライマーは、異なる配列に結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の伸長プライマーは、二本鎖核酸の同じ鎖に結合する。
【0026】
いくつかの実施形態では、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼは、Taqである。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、断片を増幅する前に除去される。
【0027】
いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマーは、当該プライマーを使用して核酸鎖を生成した後に除去される。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ及び/又は第2の伸長プライマーは、SPRIビーズを使用して、かつ/又は熱感受性ポリメラーゼを変性させることによって除去される。
【0028】
また、二本鎖断片の配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法も本明細書に開示され、配列決定ライブラリーを調製することであって、各断片が、二本鎖核酸を含むインサートと、二本鎖断片の一方又は両方の鎖の5’末端におけるヘアピンアダプターと、を含み、ヘアピンアダプターが、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む、調製することと、二本鎖断片を変性させて、一本鎖断片を形成することと、プライマーミックスと、ライゲーション活性及びポリメラーゼ活性を有し、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有しない、1つ以上の酵素と、を使用し、(1)プライマーミックスの第1の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、プライマーミックスが、第1の伸長プライマー及びブロックされた第2の伸長プライマーを含み、第1の伸長プライマー及びブロックされた第2の伸長プライマーが、二本鎖核酸に含まれた目的の異なる配列に結合し、(2)第1の伸長プライマーを使用して生成された核酸鎖を、ブロックされた第2の伸長プライマーにライゲーションすることと、インサートに結合していないプライマーミックスを除去することと、ブロックされた第2の伸長プライマーを脱ブロックすることと、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、(1)ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、(2)増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去することと、を含む。
【0029】
また、二本鎖断片の配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法もまた、本明細書中に開示される。方法は、配列決定ライブラリーを調製することを含み、二本鎖断片の各断片が、末端アダプター間に配置されたインサートを含み、各末端アダプターが、第1のセットのヌクレオチド配列を含み、第1のセットのヌクレオチド配列が、アダプター配列及びアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列、第1のセットのヌクレオチド配列の3’終端から離れて伸長する増幅プライマー配列を含む。方法はまた、二本鎖断片を変性させて、分離鎖を形成することであって、各分離鎖が、インサートの一本鎖部分を含む、形成することと、配列特異的伸長プライマーを、インサートの一本鎖部分の相補配列にアニーリングすることと、アニーリングした伸長プライマーから相補鎖を伸長させて、二本鎖末端を有する相補鎖及び分離鎖の二重鎖を形成することであって、二本鎖末端が、相補鎖の3’末端及び分離鎖の5’末端を含む、形成することと、二本鎖アダプターを二重鎖の各二本鎖末端にライゲーションすることと、二重鎖を変性させることと、二重鎖の変性鎖を増幅して、増幅産物を生成することと、を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、ブロックされた第2の伸長プライマーは、それが脱ブロックされない限り、核酸鎖を生成することができない。いくつかの実施形態では、ブロックされた第2の伸長プライマーは、少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列及び第1の伸長プライマーによって結合された配列の5’に結合する。いくつかの実施形態では、ブロックされた第2の伸長プライマーは、60℃未満の融解温度でインサートに結合する。いくつかの実施形態では、ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成することは、60℃以上の温度で行われる。いくつかの実施形態では、ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーのアニーリング及び伸長温度は、第2の伸長プライマーの融解温度を上回る。いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマーは、増幅する前に除去される。いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマーは、SPRIビーズ又はエキソヌクレアーゼを使用して除去される。
【0031】
いくつかの実施形態では、1つ以上の伸長プライマーは、遺伝子特異的プライマーである。
【0032】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、二本鎖断片の一方の鎖の5’末端にある。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、二本鎖断片の両方の鎖の5’末端にある。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、ライゲーション又はタグメンテーションによって組み込まれる。いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列は、各々、少なくとも14ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列は、各々、14~60ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、安定性を増加させるための1つ以上の増強を含む。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、1つ以上の修飾核酸又はロックド核酸を含む。いくつかの実施形態では、修飾核酸は、8-アザ-7-デアザグアノシンを含む。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、60℃以上、65℃以上、又は70℃以上の温度で、増幅プライマー配列の増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との会合を維持する。
【0033】
いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列は、A14、A14’、B15、又はB15’配列を含む。いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列が、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列と会合している場合、増幅プライマーは、ヘアピンアダプターに含まれた増幅プライマー配列に結合することができない。いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列は、増幅プライマー配列の相補体と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、又は99%以上の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列は、増幅プライマー配列の相補体を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、二本鎖断片の一方又は両方の鎖は、ヘアピンアダプターの3’の1つ以上の追加のアダプターを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖断片は、一方又は両方の鎖の3’末端における1つ以上のアダプターを含む。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターの3’の1つ以上の追加のアダプター及び/又は一方又は両方の鎖の3’末端における1つ以上のアダプターは、プライマー配列、インデックスタグ配列、捕捉配列、バーコード配列、切断配列、若しくは配列決定関連配列、又はそれらの組み合わせを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、増幅プライマーを使用して断片を増幅することは、ヘアピンアダプターを破壊することができない。いくつかの実施形態では、増幅プライマーを使用して断片を増幅するために使用されるポリメラーゼは、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くか、又は増幅プライマーを使用して断片を増幅するために使用されるポリメラーゼは、鎖置換ポリメラーゼではない。いくつかの実施形態では、断片を増幅するために使用されるポリメラーゼは、Q5である。いくつかの実施形態では、増幅は、ブリッジ増幅を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、方法は、増幅された断片の配列決定を更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、インサートの全配列の配列決定を可能にする。
【0037】
いくつかの実施形態では、二本鎖核酸は、DNA又はRNAである。いくつかの実施形態では、二本鎖核酸は、無細胞DNAを含む。いくつかの実施形態では、方法は、断片重複排除ために使用される。
【0038】
追加の目的及び利点は、以下の説明において部分的に記載され、一部は説明から明白であるか、又は実践によって習得され得る。目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組み合わせによって実現及び達成されるであろう。
【0039】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも例示的かつ説明的のみであり、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0040】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、1つの(いくつかの)実施形態を図解し、明細書とともに本明細書に記載される原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】非標的配列と対照的に、断片の一方又は両方の5’末端でヘアピンアダプターを使用して、配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮する代表的な方法を示す。
図2】本開示の態様による、ヘアピンアダプターがどのように増幅プライマー配列からの増幅をブロックすることができるかを示す。
図3】本開示の態様による、ヘアピンアダプターが、少なくとも部分的に相補的である2つのセットのヌクレオチド配列(A14/A14’及びX/X’)を含む方法を示す。
図4】本開示の態様による、第1及び第2の伸長プライマー(各々、異なる標的配列に結合する)がリンカーを介して連結される方法を示す。
図5】本開示の態様による、アダプターライゲーションなし、したがって、標的インサートを含有しない断片からの双方向増幅なしとは対照的に、標的インサート含有断片の末端にライゲーションされた二本鎖アダプターを使用して、配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮する代表的な方法を示す。
図6】ヘアピンアダプター及び対照アダプターを使用したライブラリー増幅の結果を示す。
図7図6のライブラリー増幅において使用されるヘアピン及び対照アダプターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(配列の説明)
表1は、本明細書中で参照される特定の配列のリストを提供する。
【0043】
【表1】
【0044】
(発明を実施するための形態)
I.核酸配列決定ライブラリーの調製及びライブラリー調製において使用するためのアダプター
いくつかの実施形態では、アダプターは、核酸配列決定ライブラリーを調製するために使用される。
【0045】
いくつかの実施形態では、これらのアダプターは、フォークアダプター(forked adaptor)である。本明細書で使用される場合、「フォークアダプター」という用語は、2本の鎖が互いにアニーリングしている第1の末端と、2本の鎖が互いにアニーリングしていない第2の末端と、を有する二本鎖核酸を意味する。すなわち、フォークアダプターは、二本鎖領域及び一本鎖領域を含む。一実施形態では、フォークアダプターの末端は、二本鎖である。フォークアダプター又はY字型アダプターの例は、例えば、米国特許第7,741,463号、米国特許第10,253,359号、及び米国特許第9,868,982号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
いくつかの実施形態では、核酸配列決定ライブラリーを調製する際に使用するためのアダプターは、5’末端及び3’末端を有する第1の配列と、5’末端及び3’末端を有する第2の配列と、を含み、第1の配列の3’末端の部分及び第2の配列の5’末端の部分が、相補的であり、第1の二本鎖領域を形成し、第1の配列の5’末端の部分及び第2の配列の3’末端の部分が、非相補的であり、第1の鎖の5’末端の部分が、第2の二本鎖領域を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、第2の二本鎖領域は、ヘアピン構造である。いくつかの実施形態では、第2の二本鎖領域は、非核酸部分を含む。いくつかの実施形態では、非核酸部分は、リンカーである。いくつかの実施形態では、第1の鎖の5’末端は、エキソヌクレアーゼによって分解可能でない部分を含む。言い換えれば、第1の鎖の5’末端はエキソヌクレアーゼ耐性であり得る。いくつかの実施形態では、第1の二本鎖領域は、少なくとも5つの連続したヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、第2の二本鎖領域は、少なくとも5つの連続したヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、第2の鎖の5’末端は、リン酸化されている。いくつかの実施形態では、第1の鎖及び第2の鎖の全てのシトシン塩基は、メチル化されている。いくつかの実施形態では、アダプターは、捕捉部分を更に含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、核酸配列決定ライブラリーを調製する方法は、複数の二本鎖核酸断片を生成することと、複数の二本鎖核酸断片の少なくとも一方の末端にフォークアダプターを結合させることと、を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のアダプターは、タグメンテーションを介して結合している。いくつかの実施形態では、1つ以上のアダプターは、ライゲーションを介して結合している。
【0049】
多種多様なライブラリー調製が当該技術分野で公知であり、本方法は、ライブラリー生成の手段によって限定されない。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、タグメンテーション又はライゲーションを使用して調製される。例えば、タグメンテーション又はライゲーション方法を使用して、アダプター(例えば、ヘアピンアダプター、一本鎖アダプター、及び/又は二本鎖アダプター)をライブラリー断片の末端に組み込むことができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、例えば、Nextera(商標)DNA試料調製キット(Illumina,Inc.)のワークフローで例示されるように、トランスポゾンベースの技術をDNAの断片化に利用することができ、ゲノムDNAは、インプットDNAを同時に断片化及びタグ付けする(「タグメンテーション」)操作されたトランスポソームによって断片化され、それによって、断片の末端に固有のアダプター配列を含む断片化された核酸分子の集団が生成され得る。
【0051】
転位によるフォークアダプターの付加を介した配列決定ライブラリーの調製は、米国特許第10,246,746号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「タグメンテーション」という用語は、トランスポゾン末端配列を含むアダプターと複合体化したトランスポザーゼ酵素を含むトランスポソーム複合体によるDNAの修飾を指す。タグメンテーションは、二重断片の両方の鎖の5’末端へのDNAの同時フラグメンテーション及びアダプターのライゲーションもたらす。トランスポザーゼ酵素を除去するための精製工程に続いて、更なる配列を、例えばPCR、ライゲーション、又は当業者に公知の他の任意の適切な方法によって、適合断片の末端に付加することができる。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「トランスポソーム複合体」は、少なくとも1つのトランスポザーゼ(又は本明細書に記載の他の酵素)及びトランスポゾン認識配列から構成される。いくつかのそのようなシステムでは、トランスポザーゼは、転移反応を触媒することができる機能的複合体を形成するために、トランスポゾン認識配列に結合する。いくつかの態様では、トランスポゾン認識配列は、二本鎖トランスポゾン末端配列である。トランスポザーゼは、二本鎖核酸のトランスポザーゼ認識部位に結合し、トランスポゾン認識配列を二本鎖核酸に挿入する。いくつかのそのような挿入事象では、トランスポゾン認識配列(又は末端配列)の一方の鎖が二本鎖核酸に移され、開裂事象が生じる。例示的な転位手順及びシステムは、トランスポザーゼでの使用に容易に適合され得る。
【0054】
タグメンテーションは、固定化されたトランスポソーム複合体又は溶液相トランスポソーム複合体を用いて行うことができる。
【0055】
Truseq試料調製キット(Illumina,Inc.)のワークフローで例示されているように、ライゲーションによるアダプターの組み込みも周知である。
【0056】
いくつかの実施形態では、核酸配列決定ライブラリーを調製するためのキットは、フォークアダプターと、アダプターの部分にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマーと、少なくとも1つの酵素と、dNTPと、を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの酵素は、エキソヌクレアーゼ活性を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの酵素は、ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、キットの少なくとも1つの構成要素は、凍結乾燥形態又は乾燥形態にある。
【0057】
II.ヘアピンアダプターを使用して配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮する方法
ヘアピンアダプターを使用して配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法が本明細書に開示される。以下に記載するように、標的配列に結合する伸長プライマー及び5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用して、ヘアピンアダプターを特異的に「ロック解除」し、標的配列を含む断片の増幅を可能にすることができる(図1を参照されたい)。
【0058】
いくつかの実施形態では、配列決定の結果は、本方法を使用して改善される。これは、断片末端を回収し得ない濃縮方法(例えば、多重PCRを使用する直接標的化増幅)と比較して、濃縮の間に断片末端が回収されるためである。
【0059】
いくつかの実施形態では、二本鎖断片の配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法は、配列決定ライブラリーを調製することであって、各断片が、二本鎖核酸を含むインサートと、二本鎖断片の一方又は両方の鎖の5’末端におけるヘアピンアダプターと、を含み、ヘアピンアダプターが、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む、調製することと、二本鎖断片を変性させて、一本鎖断片を形成することと、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、(1)配列決定ライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、(2)増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去することと、を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む。
【0061】
本方法は、無細胞DNAなどの断片化核酸の全配列を生成するためなど、様々な用途を有する。更に、本方法は、断片重複排除に使用することができる。
【0062】
A.標的配列及び配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮
本明細書中で使用される場合、「標的配列」は、任意の目的の配列をいう。例えば、標的配列は、目的の遺伝子に含まれた配列、特定の目的の変異、又はユーザにとって任意の他の目的の配列が含まれ得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための本方法の不在下で、二本鎖核酸から生成された比較的低い割合のライブラリー断片が、標的配列を含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、ライブラリー中の複数の二本鎖断片は、濃縮前に標的配列を含まない。いくつかの実施形態では、ライブラリー中の二本鎖断片の大部分は、濃縮前に標的配列を含まない。
【0065】
いくつかの実施形態では、配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮することは、標的配列を含む断片が、濃縮前と比較して濃縮後にライブラリー中に2倍以上、5倍以上、10倍以上、20倍以上、50倍以上、100倍以上、1,000倍以上、10,000倍以上、又は100,000倍以上多く含まれることを意味する。したがって、本方法は、「濃縮ライブラリー」を生成するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本方法は、試料中に含まれる二本鎖DNAの小領域(すなわち、数キロベース)の高濃縮を可能にする。
【0066】
いくつかの実施形態では、標的配列は、ライブラリー調製のために使用される二本鎖核酸に含まれる。いくつかの実施形態では、二本鎖核酸は、標的濃縮を必要とするか、又は標的濃縮が有益である任意のタイプの試料中に含まれ得る。いくつかの実施形態では、標的配列は、無細胞DNA(cell-free DNA、cfDNA)に含まれる。いくつかの実施形態では、標的配列は、液体生検試料などの腫瘍学試料中に含まれる。いくつかの実施形態では、標的配列は、エクソーム試料に含まれる。いくつかの実施形態では、標的配列は、希少未診断疾患(rare and undiagnosed disease、RUGD)エクソーム試料に含まれる。いくつかの実施形態では、標的配列は、RNA又はcDNAライブラリーに含まれる。いくつかの実施形態では、標的配列はメチル化ライブラリーに含まれる。
【0067】
B.増幅プライマー配列を含むヘアピンアダプター
本明細書で使用される場合、「ヘアピン」とは、互いに少なくとも部分的に相補的である一対の核酸配列を含む核酸を指す。少なくとも部分的に相補的であるこれらの2つの核酸配列は、互いに結合し、核酸の折り畳みを媒介することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも部分的に相補的である2つの核酸配列は、ヘアピン二次構造を有する核酸を生成する。
【0068】
本明細書で使用される「ヘアピンアダプター」は、互いに少なくとも部分的に相補的である少なくとも1対の核酸配列を含むアダプターを指す。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、折り畳まれた二次構造を有する。
【0069】
図1は、各鎖の5’末端におけるヘアピンアダプターを有する二本鎖インサート(インサート及びインサート配列)を含むライブラリー断片を示す。図1の代表的な実施形態では、各ヘアピンアダプターは、互いに少なくとも部分的に相補的である1対の核酸配列(A14/A14’)を含む。いくつかの実施形態では、互いに少なくとも部分的に相補的である一対の核酸配列間の塩基対形成は、アダプターをヘアピン二次構造に「ロック」する。このような方法では、使用される伸長プライマーの長さを増加させて、標的配列を含む断片を増幅する方法の特異性を改善することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、互いに少なくとも部分的に相補的である2つ以上の対の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、互いに少なくとも部分的に相補的である2対の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、互いに少なくとも部分的に相補的である核酸配列の3つ以上の対の核酸配列を含む。図2は、互いに少なくとも部分的に相補的である2対の核酸配列(A14/14’対及びX/X’対)を含むヘアピンアダプターを示す。
【0071】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、増幅プライマー配列を含む。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、増幅プライマー配列と、アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部と、を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全ての部が除去されない限り、(互いに少なくとも部分的に相補的である一対の核酸配列間の塩基対形成を介して)「ロック」される。いくつかの実施形態では、ロックされたヘアピンは、ポリメラーゼが伸長して増幅プライマー配列の相補体を生成することを防止する。
【0073】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヘアピンアダプターが、後の増幅工程に使用することができる増幅プライマー配列を含むので、ヘアピンアダプターに結合していない断片の増幅をブロックする。
【0074】
このようにして、本方法は、「ロック解除された(unlocked)」ヘアピンアダプターに結合しているライブラリー断片の増幅のみを可能にする。ヘアピンアダプターに結合しなかったライブラリー断片及び「ロックされた」ヘアピンアダプターに結合したライブラリー断片は、増幅されない。望ましくない断片(すなわち、標的配列を含まない断片)の増幅を阻害するそのような手段は、下流の方法に関連するコスト及びユーザ時間を回避することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、二本鎖断片の一方の鎖の5’末端にある。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、二本鎖断片の両方の鎖の5’末端にある。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、ライゲーション又はタグメンテーションによって組み込まれる。いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列は、各々、少なくとも14ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列は、各々、14~60ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、安定性を増加させるための1つ以上の増強を含む。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、1つ以上の修飾核酸又はロックド核酸を含む。いくつかの実施形態では、修飾核酸は、8-アザ-7-デアザグアノシンを含む。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、60℃以上、65℃以上、又は70℃以上の温度で、増幅プライマー配列の増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との会合を維持する。
【0076】
いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列は、A14配列(配列番号1)若しくはB15配列(配列番号2)、又はそれらの相補体(それぞれ、A14’若しくはB15’)を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列は、増幅プライマー配列の相補体と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、又は99%以上の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列は、増幅プライマー配列の相補体を含む。
【0078】
1.アダプター
いくつかの実施形態では、ライブラリー断片は、ヘアピンアダプターに加えて、又はその代わりに、2本鎖ライブラリー断片の両方の5’末端のみ又は両方の3’末端のみに提供される対称単一アダプター(symmetrical single adaptor)などの1つ以上のアダプターを含む(図5)。一実施形態では、対称単一アダプターは、二本鎖ライブラリー断片の一本鎖末端を生成する。一実施形態では、対称単一アダプターは、B15又はB15’アダプターである。一実施形態では、対称単一アダプターは、A14又はA14’アダプターである。
【0079】
いくつかの実施形態では、二本鎖断片の一方又は両方の鎖は、ヘアピンアダプターの3’側の1つ以上の追加のアダプターを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖断片は、一方又は両方の鎖の3’末端における1つ以上のアダプターを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、アダプター配列は、プライマー配列、インデックスタグ配列、捕捉配列、バーコード配列、切断配列、若しくは配列決定関連配列、又はそれらの組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、配列決定関連配列は、後の配列決定工程に関連する任意の配列であり得る。配列決定関連配列は、下流の配列決定工程を単純化するように作用し得る。例えば、配列決定関連配列は、他の点でアダプターを核酸断片にライゲーションする工程を介して組み込まれる配列であり得る。いくつかの実施形態では、アダプター配列は、特定の配列決定方法においてフローセルへの結合を容易にするために、P5又はP7配列(又はそれらの相補体)を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、ヘアピンに含まれた増幅プライマー配列は、ユニバーサルプライマー配列である。ユニバーサル配列は、2つ以上の核酸断片に共通の(すなわち、共有される)ヌクレオチド配列の領域である。
【0082】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、増幅プライマー配列と増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間にリンカーを更に含む。いくつかの実施形態では、このリンカーは、ヌクレオチドリンカーである。いくつかの実施形態では、このリンカーは、非ヌクレオチドリンカーである。いくつかの実施形態では、このリンカーは、合成リンカーである。いくつかの実施形態では、このリンカーは、エキソヌクレアーゼ活性がリンカーで終結するように、エキソヌクレアーゼによって分解可能ではない(すなわち、リンカーはエキソヌクレアーゼ耐性である)。
【0083】
C.二本鎖核酸
いくつかの実施形態では、ライブラリーを生成するために使用される二本鎖核酸は、DNA、RNA、又はそれらの類似体から構成される。いくつかの実施形態では、酸の供給源は、ゲノムDNA、メッセンジャーRNA、又は天然源由来の他の核酸である。いくつかの実施形態では、そのような供給源に由来する核酸を、本明細書に記載の方法において使用する前に増幅することができる。
【0084】
二本鎖核酸が由来し得る例示的な生物学的試料としては、例えば、例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、有蹄動物、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ネコ、イヌ、霊長類、ヒト、若しくは非ヒト霊長類などの哺乳動物;例えば、Arabidopsis thaliana、トウモロコシ、ソルガム、カラスムギ、コムギ、イネ、セイヨウアブラナ、若しくはダイズなどの植物;Chlamydomonas reinhardtiiなどの藻類;Caenorhabditis elegansなどの線形動物;Drosophila melanogaster、カ、ショウジョウバエ、ミツバチ、若しくはクモなどの昆虫;ゼブラフィッシュなどの魚;爬虫類;カエル若しくはXenopus laevisなどの両生類;キイロタマホコリカビ(dictyostelium discoideum);Pneumocystis cariniiなどの真菌、Takifugu rubripes、Saccharamoyces cerevisiae、若しくはSchizosaccharomyces pombe;又はPlasmodium falciparumが挙げられる。二本鎖核酸はまた、Escherichia coli、ブドウ球菌属(staphylococci)、若しくは肺炎マイコプラズマ(mycoplasma pneumoniae)などの細菌などの原核生物、古細菌;C型肝炎ウイルス若しくはヒト免疫不全ウイルスなどのウイルス;又はウイロイドに由来し得る。二本鎖核酸は、上記の生物の均質な培養物若しくは生物の集団に由来し得るか、又は代替的に、例えば、群集若しくは生態系におけるいくつかの異なる生物のコレクションに由来し得る。核酸は、当該技術分野で公知の方法(例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(2001)、又はAusubel et al,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1998)に記載されている方法が挙げられる)を使用して単離され得る(その各々は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0085】
いくつかの実施形態では、二本鎖核酸は、1つ以上のより大きな核酸の断片として得ることができる。断片化は、例えば、噴霧化、超音波処理、化学的開裂、酵素的開裂、又は物理的剪断を含む、当技術分野で公知の様々な技術のいずれかを用いて行うことができる。
【0086】
二本鎖核酸の集団又はそのアンプリコンは、本明細書に記載の方法又は組成物の特定の用途に望ましい又は適切な平均鎖長を有し得る。例えば、平均鎖長は、約100,000ヌクレオチド、50,000ヌクレオチド、10,000ヌクレオチド、5,000ヌクレオチド、1,000ヌクレオチド、500ヌクレオチド、100ヌクレオチド、又は50ヌクレオチド未満であり得る。代替的に、又は追加的に、平均鎖長は、10ヌクレオチド、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、500ヌクレオチド、1,000ヌクレオチド、5,000ヌクレオチド、10,000ヌクレオチド、50,000ヌクレオチド、又は100,000ヌクレオチド超であり得る。二本鎖核酸又はそのアンプリコンの集団の平均鎖長は、上記の最大値と最小値との間の範囲であり得る。増幅部位で生成された(又は別の手段で本明細書で作製又は使用された)アンプリコンは、上記に例示されているものから選択される上限と下限との間の範囲にある平均鎖長を有し得ることが理解されよう。
【0087】
いくつかの実施形態では、二本鎖核酸は、比較的短い平均鎖長、例えば、200ヌクレオチド未満、150ヌクレオチド未満、100ヌクレオチド未満、75ヌクレオチド未満、50ヌクレオチド未満、又は36ヌクレオチド未満を有する。比較的短い平均鎖長を有する試料タイプの例は、無細胞DNA(cfDNA)及びエクソーム配列決定試料である。
【0088】
いくつかの実施形態では、二本鎖核酸は、母体血液試料由来の無細胞DNA(cfDNA)である。いくつかの実施形態では、cfDNAは、母体血漿試料から抽出される。いくつかの実施形態では、cfDNAは非侵襲的出生前検査(noninvasive prenatal testing、NIPT)用である。いくつかの実施形態では、二本鎖核酸は、エクソームである。いくつかの実施形態では、エクソームは、希少未診断疾患(RUGD)が疑われる患者からの試料に由来する。
【0089】
D.伸長プライマー
本明細書中で使用される場合、「伸長」とは、プライマーに関して使用される場合、1つ以上のヌクレオチドがプライマーに付加されるか(例えば、ポリメラーゼ活性を介して)、又は1つ以上のオリゴヌクレオチドがプライマーに付加される(例えば、リガーゼ活性を介して)プロセスを含むことが意図される。
【0090】
いくつかの実施形態では、1つ以上の伸長プライマーは、二本鎖断片のライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する。5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用して、方法は、(1)伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成することと、(2)ヘアピンアダプター中の増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全て又は一部を除去することと、を含み得る(図1に示されるように)。いくつかの実施形態では、ロックされたヘアピンは、ポリメラーゼが、生成された核酸鎖中の増幅プライマー配列の相補体を伸長及び生成することを防止する。したがって、標的配列を含むインサートへの伸長プライマーの結合は、この断片上のヘアピンアダプターの選択的な「ロック解除」を可能にする。
【0091】
いくつかの実施形態では、1つ以上の伸長プライマーは、遺伝子特異的プライマーである。例えば、伸長プライマーは、がん遺伝子の標的配列に結合して、配列決定ライブラリーからこの標的配列を濃縮することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、方法は、単一の伸長プライマーを使用する。いくつかの実施形態では、方法は、2つ以上の伸長プライマーを使用する。
【0093】
いくつかの実施形態では、伸長プライマーは、60℃以上の融解温度を有する。いくつかの実施形態では、伸長プライマーは、60℃以上、65℃以上、又は70℃以上の融解温度を有する。いくつかの実施形態では、60℃以上の融解温度を有する伸長プライマーは、「ホットスタート」反応が非特異的結合を減少させることを可能にする。いくつかの実施形態では、伸長プライマーの融解温度は、プライマーの長さ、GC含有量、又は当業者に周知の他の要因によって制御される。
【0094】
いくつかの実施形態では、2つ以上の伸長プライマーが、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、二本鎖断片のライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去する、単一工程で使用される。いくつかの実施形態では、複数の伸長プライマーが、方法の単一工程で使用される。例えば、複数の伸長プライマーは、目的の遺伝子内の異なる標的配列又は異なる目的の遺伝子に結合することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、複数の伸長プライマーは、1つ以上のリンカー(すなわち、図4に示されているようなリンカー)を介して連結される。いくつかの実施形態では、2つの伸長プライマーは、リンカーを介して連結される。いくつかの実施形態では、1つ以上のリンカーを介して連結された複数の伸長プライマーは、より高い融解温度を有する。いくつかの実施形態では、1つ以上のリンカーを介して連結された複数の伸長プライマーは、各伸長プライマー(例えば、図4に示されているfwd1’及びfwd2’)に結合することができる標的配列を含むインサートに結合する。
【0096】
いくつかの実施形態では、2つの伸長プライマーは、以下に記載されるように、方法の間に一緒にライゲーションされ得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、異なる伸長プライマーが、方法の異なる工程で使用される。
【0098】
E.5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ
いくつかの実施形態では、方法は、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、二本鎖断片のライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成することと、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去することと、を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性は、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去することを媒介する。いくつかの実施形態では、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼは、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全て又は一部を切断する。いくつかの実施形態では、ロックされたヘアピンは、ポリメラーゼが、生成された核酸鎖中の増幅プライマー配列の相補体を伸長及び生成することを防止する。
【0100】
いくつかの実施形態では、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼは、Taqである。いくつかの実施形態では、伸長プライマー及び/又は伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成するために使用されるポリメラーゼは、伸長後に除去される。いくつかの実施形態では、伸長プライマー及び/又は伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成するために使用されるポリメラーゼを除去することは、固相可逆的固定化(SPRI)ビーズによって行われる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、熱感受性ポリメラーゼであり、変性させることによって除去される。いくつかの実施形態では、熱感受性ポリメラーゼは、完全長のBst又はDNAポリメラーゼIである。
【0101】
F.増幅
いくつかの実施形態では、方法は、増幅プライマー配列に結合する増幅プライマーを使用して断片を増幅することを更に含む。いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全て又は一部が除去された断片のみが増幅され得る。いくつかの実施形態では、ロックされたヘアピンは、ポリメラーゼが伸長して増幅プライマー配列の相補体を生成することを防止する。
【0102】
いくつかの実施形態では、増幅プライマーは、インデックス配列を含み得る(例えば、図1のi5及びi7インデックス配列を参照されたい)。これらのインデックス配列は、試料及びアレイ中の位置を同定するために使用され得る。いくつかの実施形態では、インデックス配列は、固有分子識別子(unique molecular identifier、UMI)を含む。UMIは、特許出願第WO2016/176091号、第WO2018/197950号、第WO2018/197945号、第WO2018/200380号、及び第WO2018/204423号に記載されている(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0103】
いくつかの実施形態では、増幅プライマーを使用して断片を増幅することは、ヘアピンアダプターを破壊することができない。いくつかの実施形態では、増幅プライマーを使用して断片を増幅するために使用されるポリメラーゼは、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くか、又は増幅プライマーを使用して断片を増幅するために使用されるポリメラーゼは、鎖置換ポリメラーゼではない。いくつかの実施形態では、断片を増幅するために使用されるポリメラーゼは、Q5である。いくつかの実施形態では、増幅は、ブリッジ増幅を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、試料は、固体支持体上で増幅される。
【0105】
例えば、いくつかの実施形態では、試料は、米国特許第7,985,565号及び同第7,115,400号の開示によって例示されるように、クラスタ増幅方法論を使用して増幅される(これらの各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。米国特許第7,985,565号及び同第7,115,400号の組み込まれている材料は、固定化された核酸分子のクラスタ又は「コロニー」からなるアレイを形成するために、増幅産物を固体支持体上に固定化することを可能にする固相核酸増幅の方法を記載する。そのようなアレイ上の各クラスタ又はコロニーは、複数の同一の固定化されたポリヌクレオチド鎖及び複数の同一の固定化された相補的ポリヌクレオチド鎖から形成される。そのように形成されたアレイは、本明細書では一般に「クラスタ化アレイ」と称される。米国特許第7,985,565号及び同第7,115,400号に記載されているような固相増幅反応の産物は、固定化されたポリヌクレオチド鎖と固定化された相補鎖の対をアニーリングすることによって形成されるいわゆる「ブリッジ(bridged)」構造体であり、両方の鎖は、いくつかの実施形態では、共有結合を介して、5’末端で固体支持体上に固定化されている。クラスタ増幅方法論は、固定化された核酸鋳型を使用して固定化されたアンプリコンを産生する方法の例である。他の好適な方法論を使用して、本明細書で提供される方法に従って産生された固定化されたDNA断片から固定化されたアンプリコンを産生することもできる。例えば、1つ以上のクラスタ又はコロニーは、増幅プライマーの各対の一方又は両方のプライマーが固定化されているかどうかにかかわらず、固相PCRによって形成することができる。
【0106】
他の実施形態では、試料は、溶液中で増幅される。例えば、いくつかの実施形態では、試料は、切断されるか、又は他の方法で固体支持体から遊離され、次いで、増幅プライマーは、溶液中で遊離分子にハイブリダイズする。他の実施形態では、増幅プライマーを、1つ以上の初期の増幅工程のために所望の試料にハイブリダイズさせ、続いて、溶液中で後続の増幅工程を行う。いくつかの実施形態では、固定化された核酸鋳型を使用して、液相アンプリコンを生成することができる。
【0107】
本明細書に記載されているか又は当該技術分野で一般に知られている増幅方法論のいずれかを、ユニバーサルプライマー又は標的特異的プライマーとともに利用して、所望の試料を増幅できることが理解されるであろう。増幅のための好適な方法には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,003,354号に記載されているように、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)、鎖置換増幅(strand displacement amplification、SDA)、転写媒介増幅(transcription mediated amplification、TMA)及び核酸配列ベースの増幅(nucleic acid sequence based amplification、NASBA)が含まれるが、これらに限定されない。上記の増幅方法を使用して、1つ以上の目的の核酸を増幅することができる。例えば、多重PCR、SDA、TMA、NASBAなどを含むPCRを利用して、固定化DNA断片を増幅することができる。いくつかの実施形態では、目的の核酸に特異的に向けられるプライマーは、増幅反応に含まれる。
【0108】
ポリヌクレオチドの増幅に好適な他の方法としては、オリゴヌクレオチド伸長及びライゲーション、ローリングサークル増幅(rolling circle amplification、RCA)(Lizardi et al.,Nat.Genet.19:225-232(1998)、参照により本明細書に組み込まれる)、及びオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(oligonucleotide ligation assay、OLA)(一般に米国特許第7,582,420号、同第5,185,243号、同第5,679,524号、及び同第5,573,907号、欧州特許第0320308(B1)号、欧州特許第0336731(B1)号、欧州特許第0439182(B1)号、国際公開第90/01069号、国際公開第89/12696号、及び国際公開第89/09835号、その全てが参照により組み込まれる)技術、を挙げることができる。これらの増幅方法論は、固定化DNA断片を増幅するように設計され得ることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、増幅方法は、目的の核酸に特異的に向けられるプライマーを含むライゲーションプローブ増幅又はオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)反応を含み得る。いくつかの実施形態では、増幅方法は、目的の核酸に特異的に指向されるプライマーを含有するプライマー伸長ライゲーション反応を含んでもよい。目的の核酸を増幅するように特別に設計することができるプライマー伸長及びライゲーションプライマーの非限定的な例として、増幅は、米国特許第7,582,420号及び同第7,611,869号(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に例示されるようなGoldenGateアッセイ(Illumina,Inc.、San Diego,CA)に使用されるプライマーを含み得る。
【0109】
本開示の方法で使用され得る例示的な等温増幅方法としては、例えばDean et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA99:5261-66(2002)により例示される多置換増幅(Multiple Displacement Amplification、MDA)、又は例えば米国特許第6,214,587号(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)により例示される等温鎖置換核酸増幅が挙げられるが、これらに限定されない。本開示で使用され得る他の非PCRベースの方法としては、例えば、Walker et al.,Molecular Methods for Virus Detection,Academic Press,Inc.,1995、米国特許第5,455,166号、及び同第5,130,238号、並びにWalker et al.,Nucl.Acids Res.20:1691-96(1992)に記載されている鎖置換増幅(SDA)又は例えば、Lage et al.,Genome Research13:294-307(2003)に記載されている超分枝鎖置換増幅が挙げられ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。等温増幅方法は、ゲノムDNAのランダムプライマー増幅のために、鎖置換Phi29ポリメラーゼ又はBst DNAポリメラーゼの大型断片、5’→3’エキソ-とともに使用することができる。これらのポリメラーゼの使用は、それらの高い加工性及び鎖置換活性を利用する。高い加工性により、ポリメラーゼは、10~20kbの長さの断片を産生することが可能になる。上記のように、クレノウポリメラーゼなどの低いプロセッシビティと鎖置換活性を有するポリメラーゼを使用して、等温条件下でより小さな断片を産生することができる。増幅反応、条件、及び成分の更なる説明は、米国特許第7,670,810号の開示に詳細に記載されている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0110】
G.配列決定
いくつかの実施形態では、方法は、増幅された断片の配列決定を更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、インサートの全配列の配列決定を可能にする。インサートの全配列を生成する能力は、プライマーが結合する場所を越えたインサートの部分が直接標的化増幅により失われ得るので、直接標的化増幅(例えば、多重PCR)を用いる方法とは対照的である。
【0111】
本明細書に記載の濃縮方法後の配列決定は、様々な異なる方法を使用して行うことができる。
【0112】
1つの例示的な配列決定方法論は、合成による配列決定(sequencing-by-synthesis、SBS)である。SBSにおいて、核酸テンプレートに沿った核酸プライマーの伸長を監視して、テンプレート中のヌクレオチド配列を判定する。基礎となる化学プロセスは、重合(例えば、ポリメラーゼ酵素によって触媒される)であり得る。特定のポリマーベースのSBSの実施形態では、プライマーに付加されるヌクレオチドの順序及び種類の検出を使用して鋳型の配列を決定することができるように、蛍光標識ヌクレオチドを鋳型依存的にプライマーに付加する(それによってプライマーを伸長させる)。
【0113】
フローセルは、配列決定のための便利な固体支持体を提供する。例えば、第1のSBSサイクルを開始するために、1つ以上の標識されたヌクレオチド、DNAポリメラーゼなどを、1つ以上の増幅された核酸分子を収容するフローセルに流入/通過させることができる。プライマー伸長によって標識ヌクレオチドを組み込む部位は、検出することができる。任意選択的に、ヌクレオチドは、ヌクレオチドがプライマーに付加されると、更なるプライマー伸長を終結する可逆的終結特性を更に含むことができる。例えば、脱ブロック作用因子が送達されてその部分を除去するまで、その後の伸長が起こらないように、可逆的ターミネータ部分を有するヌクレオチド類似体をプライマーに付加することができる。したがって、可逆的終端を使用する実施形態では、脱ブロック試薬をフローセルに送達することができる(検出発生の前又は後)。洗浄は、様々な送達工程の間に実施することができる。次に、サイクルをn回繰り返してプライマーをn個のヌクレオチドで伸長し、それによって長さnの配列を検出することができる。本開示の方法によって生成されるアンプリコンとともに使用するために容易に適合させることができる例示的なSBS手順、流体系及び検出プラットフォームは、例えば、Bentley et al.,Nature456:53-59(2008)、国際公開第04/018497号、米国特許第7,057,026号、国際公開第91/06678号、国際公開第07/123744号、米国特許第7,329,492号、米国特許第7,211,414号、米国特許第7,315,019号、米国特許第7,405,281号、及び米国特許出願公開第2008/0108082号に記載されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0114】
パイロシークエンシングなどの、サイクル反応を使用する他の配列決定手順を使用することができる。パイロシークエンシングは、特定のヌクレオチドが新生核酸鎖に取り込まれる際の、無機ピロリン酸(PPi)の放出を検出する(Ronaghi et al.,Analytical Biochemistry242(1),84-9(1996)、Ronaghi,Genome Res.11(1),3-11(2001)、Ronaghi et al.Science281(5375),363(1998)、米国特許第6,210,891号、米国特許第6,258,568号、及び米国特許第6,274,320号、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)。パイロシークエンシングでは、放出されたPPiは、ATPスルフリラーゼによってアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate、ATP)に即座に変換されることで検出することができ、生成されたATPのレベルは、ルシフェラーゼ産生光子を介して検出することができる。したがって、配列決定反応は、発光検出システムを介して監視することができる。蛍光ベースの検出システムに使用される励起放射線源は、パイロシークエンシング手順には必要ない。本開示に従って生成されたアンプリコンへのパイロシークエンシングの適用に適合させることができる有用な流体システム、検出器、及び手順は、例えば国際公開第2012058096号、米国特許出願公開第2005/0191698(A1)号、米国特許第7,595,883号、及び同第7,244,559号に記載されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
いくつかの実施形態は、DNAポリメラーゼ活性のリアルタイムモニタリングを伴う方法を利用することができる。例えば、ヌクレオチドの取り込みは、フルオロフォア担持ポリメラーゼとγ-リン酸標識ヌクレオチドとの間の蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer、FRET)相互作用を介して、又はゼロモード導波路(zeromode waveguide、ZMW)を用いて検出することができる。FRETベースの配列決定のための技術及び試薬は、例えば、Levene et al.Science299,682-686(2003)、Lundquist et al.Opt.Lett.33,1026-1028(2008)、Korlach et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA105,1176-1181(2008)に記載され、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
いくつかのSBS実施形態は、伸長産物へのヌクレオチドの組み込み時に放出されるプロトンの検出を含む。例えば、放出されたプロトンの検出に基づく配列決定は、Ion Torrent(Guilford,CT、Life Technologiesの子会社)から市販されている電気検出器及び関連技術、又は、米国特許出願公開第2009/0026082(A1)号、米国特許出願公開第2009/0127589(A1)号、米国特許出願公開第2010/0137143(A1)号、若しくは米国特許出願公開第2010/0282617(A1)号に記載されている配列決定方法及びシステムを使用することができ、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。速度論的排除(kinetic exclusion)を使用して核酸を増幅するための本明細書に記載の方法は、プロトンを検出するために使用される基質に容易に適用することができる。より具体的には、本明細書に記載の方法を使用して、プロトンを検出するために使用されるアンプリコンのクローン集団を生成することができる。
【0117】
別の有用なシークエンシング技術は、ナノポアシークエンシングである(例えば、Deamer et al.Trends Biotechnol.18,147-151(2000);Deamer et al.Acc.Chem.Res.35:817-825(2002)、Li et al.Nat.Mater.2:611-615(2003)を参照されたく、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかのナノポアの実施形態では、核酸又は核酸から除去された個々のヌクレオチド個々のヌクレオチドは、ナノポアを通過する。核酸又はヌクレオチドがナノポアを通過するとき、各ヌクレオチドの種類は、ポアの電気コンダクタンスの変動を測定することによって識別され得る。(米国特許第7,001,792号、Soni et al.Clin.Chem.53,1996-2001(2007)、Healy,Nanomed.2,459-481(2007)、Cockroft et al.J.Am.Chem.Soc.130,818-820(2008)、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0118】
本開示による検出に適用することができるアレイベースの発現及び遺伝子型解析のための例示的な方法は、米国特許第7,582,420号、同第6,890,741号、同第6,913,884号、若しくは同第6,355,431号、又は米国特許公開第2005/0053980(A1)号、同第2009/0186349(A1)号、若しくは同第2005/0181440(A1)号に記載されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
本明細書に記載の方法の利点は、複数の核酸を並行して迅速かつ効率的に検出することを提供することである。したがって、本開示は、上記で例示されるものなどの当該技術分野において既知の技術を使用して核酸を調製及び検出することができる統合システムを提供する。したがって、本開示の統合システムは、増幅試薬及び/又は配列決定試薬を1つ以上の固定化されたDNA断片に送達することができる流体構成要素を含むことができ、システムは、ポンプ、弁、リザーバ、流体ラインなどの構成要素を含む。フローセルは、核酸を検出するための統合システムで構成及び/又は使用することができる。例示的なフローセルは、例えば、米国特許出願公開第2010/0111768(A1)号及び同第2012/0270305(A1)号に記載されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。フローセルについて例示されるように、統合システムの流体構成要素の1つ以上を増幅方法及び検出方法に使用することができる。核酸配列決定の実施形態を一例として取ると、統合システムの流体構成要素の1つ以上を、本明細書に記載の増幅方法、及び上記に例示したような配列決定方法における配列決定試薬の送達に使用することができる。代替的に、統合システムは、増幅方法を実施し、検出方法を実施するための別々の流体システムを含み得る。増幅された核酸を作成し、また、核酸の配列を決定することができる統合配列決定システムの例としては、MiSeq(商標)プラットフォーム(Illumina,Inc.、San Diego,CA)、及び米国公開第2012/0270305号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
III.ヘアピンアダプター及びウラシル特異的除去試薬又は制限エンドヌクレアーゼを使用した配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮
本明細書に記載されるヘアピンアダプターは、いくつかの異なるワークフローにおいて使用することができる。例えば、様々な異なるワークフローを使用して、標的配列を含む断片の存在を増加させ、かつ/又は標的配列を含まない断片の存在を減少させることができる。
【0121】
A.ウラシルを含む核酸鎖及びウラシル特異的除去試薬
いくつかの制限酵素は、ウラシルを含む核酸鎖を切断することができない。いくつかの実施形態では、制限エンドヌクレアーゼ切断部位内のチミンを置換すると、エンドヌクレアーゼによる切断が阻害される(Glenn et al.Biotechniques17(6):1086-1090を参照されたい)。いくつかの実施形態では、方法は、図2に示されるように、ウラシルを含み、制限酵素消化に対して耐性である核酸鎖を生成することを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、ウラシルを含む核酸鎖中のウラシルは、制限エンドヌクレアーゼ切断部位中のチミンを置換する。
【0123】
いくつかの実施形態では、ウラシルを含む核酸鎖は、増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を含み、それによって、増幅プライマー配列及びそれに少なくとも部分的に相補的な配列を含む二本鎖核酸を制限エンドヌクレアーゼ切断に対して耐性にする。
【0124】
いくつかの実施形態では、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼは、ウラシルを組み込むことができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のウラシル特異的除去試薬(USER)の使用を含む。USERは、ウラシルを含む核酸鎖を切断することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成することは、ウラシルを含む反応混合物を用いて行われる。いくつかの実施形態では、ウラシルを含む反応混合物を用いて生成された核酸鎖は、1つ以上のUSERによって切断される。いくつかの実施形態では、USERは、ウラシルDNAグリコシラーゼ及びエンドヌクレアーゼVIIIである。いくつかの実施形態では、USERは、ウラシルDNAグリコシラーゼ及びエンドヌクレアーゼVIIIの活性を有する単一酵素である。
【0127】
いくつかの実施形態では、ウラシルを含む反応混合物を用いて生成された核酸鎖は、制限エンドヌクレアーゼ消化に耐性である。
【0128】
B.制限エンドヌクレアーゼ
いくつかの実施形態では、方法は、標的配列を含まないライブラリー中の複数の二本鎖断片において、ヘアピンアダプターを制限エンドヌクレアーゼで切断することを更に含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、制限エンドヌクレアーゼは、増幅プライマー配列の増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との会合によって形成された二本鎖核酸において、切断する。
【0130】
いくつかの実施形態では、制限エンドヌクレアーゼは、アダプター配列のアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列との会合によって形成された二本鎖核酸で切断する(例えば、図2におけるA14/A14’の切断を参照されたい)。
【0131】
いくつかの実施形態では、制限エンドヌクレアーゼによる切断の効率は、エンドヌクレアーゼの切断部位を含む二本鎖DNA配列に含まれるウラシルの量が増加するにつれて減少する。いくつかの実施形態では、制限エンドヌクレアーゼは、ウラシルを含む1つ以上の二本鎖核酸を切断することができない。
【0132】
いくつかの実施形態では、制限エンドヌクレアーゼの切断部位は、チミンを含む。いくつかの実施形態では、核酸鎖へのウラシルの組み込みは、以前は制限エンドヌクレアーゼ切断部位であった配列を変化させ、それによって、鎖及びその相補体を切断から保護する。いくつかの実施形態では、制限酵素はヘアピンアダプターを切断し、オーバーハングを生成する。いくつかの実施形態では、制限酵素はヘアピンアダプターを切断し、平滑末端を生成する。
【0133】
C.USERと、少なくとも部分的に相補的である2つ以上のセットの配列を含むヘアピンアダプターと、を含む方法
いくつかの実施形態では、二本鎖断片の配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法は、配列決定ライブラリーを調製することであって、各断片が、二本鎖核酸を含むインサートと、二本鎖断片の一方又は両方の鎖の5’末端におけるヘアピンアダプターと、を含み、ヘアピンアダプターが、第1のセットのヌクレオチド配列であって、第1のセットのヌクレオチド配列がアダプター配列及びアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む、第1のセットのヌクレオチド配列と、第2のセットのヌクレオチド配列であって、第2のセットのヌクレオチド配列が、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含み、第1のセットのヌクレオチド配列が、第2のセットのヌクレオチド配列よりもインサートに近い、第2のセットのヌクレオチド配列と、アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列と増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間のリンカーと、を含む、調製することと、二本鎖断片を変性させて、一本鎖断片を形成することと、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、配列決定ライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する第1の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、核酸鎖を生成するための反応混合物が、ウラシルを含み、アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去することと、第1の伸長プライマーを除去することと、USERを提供することと、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、(1)二本鎖断片のライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、(2)増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去することと、を含む。かかる方法の代表的な例を、図2に示す。
【0134】
いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列の相補体及び/又はアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列と増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間のリンカーは、エキソヌクレアーゼ耐性である。
【0135】
いくつかの実施形態では、増幅プライマー配列の相補体及び/又はアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列と増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間のリンカーは、ウラシルを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、方法は、第1のプライマーを使用して核酸鎖を生成した後、ヘアピンアダプターを制限エンドヌクレアーゼで切断することを更に含み、当該ヘアピンアダプターがライブラリーの二本鎖断片に含まれ、アダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部が、存在し、ウラシルを含まない。
【0137】
いくつかの実施形態では、第1のプライマー伸長を使用して生成された核酸鎖は、ウラシルを含み、制限エンドヌクレアーゼ消化に耐性である。
【0138】
いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、増幅プライマー配列と増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列との間にリンカーを更に含む。いくつかの実施形態では、このリンカーは、エキソヌクレアーゼによって分解可能ではない。いくつかの実施形態では、このリンカーは、合成である。いくつかの実施形態では、このリンカーはウラシルを含むか、又はそうでなければポリメラーゼ活性を停止させるように作用する。
【0139】
いくつかの実施形態では、USERは、第1のプライマー伸長によって生成された核酸鎖、ヘアピンアダプターに含まれたリンカー、及び/又はアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列を切断する。いくつかの実施形態では、第1のプライマー伸長によって生成された核酸鎖、ヘアピンアダプターに含まれたリンカー、及び/又はアダプター配列に少なくとも部分的に相補的な配列は、1つ以上のウラシルを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の伸長プライマーは、異なる配列に結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の伸長プライマーは、二本鎖核酸の同じ鎖に結合する。
【0141】
いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマーは、当該プライマーを使用して核酸鎖を生成した後に除去される。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ及び/又は第2の伸長プライマーは、SPRIビーズを使用して除去される。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、熱感受性ポリメラーゼであり、変性させることによって除去される。いくつかの実施形態では、熱感受性ポリメラーゼは、完全長のBst又はDNAポリメラーゼIである。
【0142】
IV.ヘアピンアダプター及び複数の伸長プライマーのライゲーションを使用した配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮
いくつかの実施形態では、配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するための方法は、配列決定ライブラリーを調製することであって、各断片が、二本鎖核酸を含むインサートと、二本鎖断片の一方又は両方の鎖の5’末端におけるヘアピンアダプターと、を含み、ヘアピンアダプターが、増幅プライマー配列及び増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列を含む、調製することと、二本鎖断片を変性させて、一本鎖断片を形成することと、プライマーミックスと、ライゲーション活性及びポリメラーゼ活性を有し、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有しない、1つ以上の酵素と、を使用し、プライマーミックスの第1の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、プライマーミックスが、第1の伸長プライマー及びブロックされた第2の伸長プライマーを含み、第1の伸長プライマー及びブロックされた第2の伸長プライマーが、二本鎖核酸に含まれた目的の異なる配列に結合し、第1の伸長プライマーを使用して生成された核酸鎖を、ブロックされた第2の伸長プライマーにライゲーションすることと、インサートに結合していないプライマーミックスを除去することと、ブロックされた第2の伸長プライマーを脱ブロックすることと、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用し、(1)ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、(2)増幅プライマー配列に少なくとも部分的に相補的な配列の全部又は一部を除去することと、を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、ブロックされた第2の伸長プライマーは、それが脱ブロックされない限り、核酸鎖を生成することができない。いくつかの実施形態では、ブロックされた第2の伸長プライマーは、ブロックを含み、そのため、ブロックが除去されない限り、伸長が起こり得ない。いくつかの実施形態では、ブロックは、ブロックされた第2のプライマー上の3’リン酸の存在である。いくつかの実施形態では、ブロックされた第2のプライマーは、3’リン酸を切断するキナーゼによって脱ブロックされる。いくつかの実施形態では、脱ブロックされた第2の伸長プライマーは、核酸鎖を生成することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、ブロックされた第2の伸長プライマーは、少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列及び第1の伸長プライマーによって結合された配列の5’に結合する。
【0145】
いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマーは、60℃未満の融解温度でインサートに結合する。言い換えれば、第2の伸長プライマーは、インサートに対して比較的弱い結合を有し得る。言い換えれば、第2の伸長プライマーは、第2の伸長プライマーがブロックされているか否かにかかわらず、インサートに対して比較的弱い結合を有し得る。いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマーは、60℃超、65℃超、又は70℃超の温度でインサートから解離する。
【0146】
いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマー及びポリメラーゼは、「ホットスタート」伸長プロトコルが使用される場合、標準的な伸長プロトコルと比較して、より少ない核酸鎖を生成する。いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマー及びポリメラーゼは、温度が60℃超、65℃超、又は70℃超である場合、より少ない核酸鎖を生成する。いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマー及びポリメラーゼは、60℃超、65℃超、又は70℃超の温度で核酸鎖を生成することができない。
【0147】
いくつかの実施形態では、ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーは、60℃以上の融解温度でインサートに結合する。言い換えれば、ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーは、インサートに対して比較的強い結合を有し得る。いくつかの実施形態では、ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーは、60℃超、65℃超、又は70℃超の温度でインサートと会合したままである。いくつかの実施形態では、ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成することは、60℃以上の温度で行われる。いくつかの実施形態では、ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成することは、60℃以上、65℃以上、又は70℃以上の温度で行われる。いくつかの実施形態では、ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーのアニーリング及び伸長温度は、第2の伸長プライマーの融解温度を上回る。
【0148】
いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマーは、増幅する前に除去される。いくつかの実施形態では、第2の伸長プライマーは、SPRIビーズ又はエキソヌクレアーゼを使用して除去される。
【実施例
【0149】
実施例1.ヘアピンアダプターを使用した配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮
ヘアピンアダプターを用いる方法を使用して、配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮することができる。図1は、例示的な二本鎖断片12を示し、これは、それぞれ異なるインサート14を有する複数の断片12から形成された配列決定ライブラリーの代表的な断片である。各断片12は、両端にアダプター18を含む。図示された実施形態では、アダプター18は同じである。アダプターは、第1の鎖22及び第2の鎖23を有するフォークアダプターである。第1の鎖22及びその第2の鎖23は、二本鎖領域24を形成する。第1の鎖はまた、ヘアピン二本鎖領域26を有するヘアピン領域25と、二本鎖領域26の自己相補的部分の間に配置されたリンカー27と、を含む。
【0150】
図1の特定の例では、ヘアピン領域25は、A14及びその相補体A14’を含む。二本鎖領域26内のA14/A14’の塩基対形成は、ヘアピン領域25がインタクトである場合、A14プライマー配列が増幅プライマーへの結合に利用できないことを意味する。この例では、ヘアピン領域25の二本鎖領域26は、A14プライマー配列及びその相補体(A14’)を含む。
【0151】
図1に示されるワークフローは、断片12を変性させてプラス鎖及びマイナス鎖を得る工程を含む。図示された例では、マイナス鎖28が示されている。しかしながら、ワークフロー工程は、実施形態ではプラス鎖にも適用されることが理解されるべきである。断片12が目的の標的化インサート14aを含む場合、鎖28aは、標的化インサート14aの部分に相補的である伸長プライマー29に結合する。ヘアピン領域25のA14’配列は、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ30(例えば、Taq)を使用して除去される。ポリメラーゼ30は、以前は二本鎖であった領域26を一本鎖にし、A14配列を利用可能にする。
【0152】
次いで、ポリメラーゼ30を除去する。第1の増幅プライマー36からの完全な伸長は、鎖28aをコピーすることが可能であり、第2の増幅プライマー38は、標的配列を含むインサートを含む断片を特異的に増幅するために、生成された核酸鎖中のA14’に結合する。この方法では、ヘアピンアダプターを含まない断片(断片生成の失敗による)、又は鎖28bなどの断片若しくは鎖の増幅はなく、ヘアピンアダプター及びヘアピン領域25は「ロック」されている(すなわち、ヘアピンのA14配列及びA14’配列が互いに会合している)。ロックされたヘアピンは、ポリメラーゼがA14を越えて伸長するのを妨げる。したがって、ヘアピンを含む断片は、A14’を含む核酸鎖を生成することができず、したがって、A14プライマーによって増幅することができない。この方法における伸長プライマーの長さは、インサート配列を含むインサートへの結合に対する特異性を確実にするために増加され得る。i5及びi7配列は、インデックス配列を表し、これは、アレイ内の試料及び位置を識別するために使用され得る。ME=モザイク末端配列(トランスポザーゼがトランスポゾンを標的配列に組み込むのに必要なトランスポゾン中の配列)、及びME’=モザイク末端配列の相補体。増幅により、それぞれの末端に異なる配列決定プライマー及びインデックスを有する標的化インサート14を含む全長産物50が得られる。
【0153】
配列決定ライブラリーから標的配列を濃縮するために、ユーザは、二本鎖DNA中の1つ以上の標的配列に結合する伸長プライマー(すなわち、標的プローブ)を生成することができる。ライブラリー生成及びタグ付けの公知の手段(例えば、Nextera、Truseqなど)を使用して、ヘアピン含有アダプター18を二本鎖断片の一方又は両方の5’末端に付加することができる。
【0154】
ライブラリーの二本鎖断片を変性させることができる。次いで、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用して、(1)二本鎖断片のライブラリー中の少なくとも1つのインサートに含まれた標的配列に結合する伸長プライマーを使用して核酸鎖を生成し、(2)A14’配列の全て又は一部を除去することができる。
【0155】
ヘアピンのA14’配列が除去された(すなわち、ヘアピンがロック解除された)断片では、次いで、増幅プライマーを使用して、ロック解除されたヘアピンアダプターを有する断片を選択的に増幅することができる。この方法を使用して、ロック解除されたヘアピンを有する断片のみが増幅される。ヘアピンのA14’配列の全部又は一部がインタクトであるヘアピンを含む断片は、増幅されない。図1に示される非標的インサート14bを含む増幅されていない例では、ヘアピンアダプター中のA14配列は、相補的A14’配列と塩基対を形成する。ヘアピンアダプターがインタクトである場合、増幅プライマーは、「ロックされた」ヘアピン二次構造のために、増幅プライマー配列に結合することができない。したがって、非標的インサートは、増幅されない。
【0156】
図1に示される方法では、第1の鎖が増幅される場合(B15’を含むプライマーを使用して)、A14’を含む核酸鎖が生成される(破線として示されている)。ライブラリー断片から新たに生成された鎖を変性させた後、A14を含む増幅プライマーは、次いで、増幅のためのA14’に結合することができる(図1の破線鎖へのA14の結合として示されている)。
【0157】
実施例2.ヘアピンアダプター及びUSER試薬を使用した配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮
配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮は、「二重ロック解除(double unlock)」法を使用して行うことができる(図2)。この代表的な方法では、ヘアピン領域25は、リンカー27を含み、これは、ウラシル又はX’配列にウラシルを含むものなどの合成リンカー60である。標的化インサート14a中の標的配列に結合する2つの伸長プライマー(fwd1 62及びfwd2 64)を逐次使用することで、「二重ロック解除」を使用する(逐次、A14’を除去し、次いでX’を除去する)ことによって、配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮の増加を可能にする。この逐次法では、第1の核酸鎖は、ウラシルを含む。制限エンドヌクレアーゼを使用して、ヘアピンアダプター中のA14/A14’配列を切断することができる。ここでは、A14’配列は除去されておらず、ウラシルを含む配列で置換されている。制限エンドヌクレアーゼ工程を使用して、標的配列を含まないインサート(すなわち、「非標的化インサート」を含む断片)を除去することができる。
【0158】
この方法を使用して、特異性を増加させるための方法における工程に基づいて、配列決定ライブラリーから標的配列を更に濃縮することができる。この方法は、2つの伸長プライマー(fwd1及びfwd2)を使用し、これらは両方とも、標的配列に結合することができ、単一のインサートに含まれ得る。言い換えれば、fwd1及びfwd2は、二本鎖DNA試料において空間的に近い標的配列に結合することができる。
【0159】
この方法におけるヘアピンアダプターは、2セットの相補的な核酸(図2におけるA14/A14’及びX/X’)を含む。この実施形態では、A14は、アダプターであり(A14’は、その相補体である)、Xは、増幅プライマー配列である(X’は、その相補体である)。更に、X’及び/又はX’とA14’との間のリンカーは、ウラシルを含むか、又はそうでなければエキソヌクレアーゼ耐性である。
【0160】
ライブラリー断片を変性させ、伸長プライマーを添加する(fwd1)。次いで、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ(例えば、Taq)を使用して、(1)fwd1を使用して核酸鎖が生成され、ここで、核酸鎖を生成するための反応混合物は、ウラシルNTPを含み、(2)A14’の全て又は一部が除去される。したがって、生成された核酸鎖は、ウラシルを含み、制限エンドヌクレアーゼ切断に耐性である。
【0161】
fwd1プライマーを除去する(エキソヌクレアーゼ又はSPRIビーズによって)。
【0162】
更に、制限酵素は、A14’が除去されず、ウラシルを含む核酸鎖で置換された任意のヘアピンアダプターを切断することができる。図2に示されるように、ウラシルを含む核酸鎖は、制限エンドヌクレアーゼによる切断からA14配列をブロックすることができる。対照的に、ウラシルを含む核酸鎖が生成されなかったライブラリー断片上のヘアピンアダプター(すなわち、fwd1プライマーに結合しなかったインサートを含む断片)は、制限エンドヌクレアーゼによって切断される。
【0163】
次いで、USERを使用して、ウラシル及び/又は合成リンカー(A14’とX’との間)若しくはX’中のウラシルを含む核酸鎖を切断することができる。次いで、fwd2プライマーが結合し得、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ(例えば、Taq)を使用して、(1)標的配列に結合するfwd2を使用して核酸鎖を生成し、(2)X’の全て又は一部が除去する。X’が除去されると、Xに結合する増幅プライマーを使用することができ、fwd1及びfwd2の両方に結合することができるインサートを含む断片を選択的に増幅することができる。この方法は、fwd1及びfwd2プライマーによって媒介される別々のロック解除工程(A14’及び次いでX’を除去すること)を含み、また、ウラシルを含まないA14/A14’を含むインタクトなヘアピンアダプターの制限エンドヌクレアーゼ切断も含むため、特異性を高めた。
【0164】
実施例3.ヘアピンアダプター及び2つの伸長プライマーのライゲーションを使用した配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮
この方法では、2つの伸長プライマー80、82(fwd1及びfwd2)が使用され、これらは両方とも、目的のインサート内の標的配列に結合する。すなわち、図3に示されるように、fwd1及びfwd2伸長プライマーは、それぞれ、個々の標的化インサート配列14aの異なる領域(例えば、非隣接領域)に結合する。エキソヌクレアーゼ活性を有さないポリメラーゼ及びリガーゼを使用して、ライゲーションされたfwd1及びfwd2構造84が生成される。このライゲーションされたプライマーは、fwd2が脱ブロックされた後、ホットスタート伸長反応のために使用され得る。すなわち、fwd2プライマーは、伸長を媒介し得ないようにブロックされる。この場合、最初の伸長は、リガーゼ及びエキソヌクレアーゼ活性を有さないポリメラーゼを含む酵素混合物を用いて行われる。エキソヌクレアーゼ活性を有さないポリメラーゼとリガーゼとのかかる混合物は、ELM混合物(例えば、Illumina DNA PCR-Freeライブラリー調製キット#1000000086922において提供されるもの)であり得る。したがって、fwd1からの伸長は、fwd2を切断することなく、fwd1とfwd2との間の核酸鎖をライゲーションする。
【0165】
ライゲーションされたfwd1-fwd2プライマーは、ライゲーションされたプライマーとインサートとの間の多数の対合したヌクレオチドに基づいて、インサートに高い親和性で結合するであろう。その後、fwd2上のブロックを除去することができる。
【0166】
fwd2プライマーは、60℃未満の融解温度を有するように、その標的配列に対して比較的低い親和性を有するように設計することができる。このようにして、「ホットスタート」伸長反応(60℃以上の温度で開始する)は、fwd2プライマーが核酸鎖を生成する前にインサートから解離することを意味する。対照的に、ライゲーションされたfwd1-fwd2脱ブロックされたプライマーは、より高い温度で結合されたままであり、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用して、(1)ライゲーションされた第1及び第2の伸長プライマーを使用して核酸鎖を産生し、(2)A14’の全て又は一部を除去することを媒介する。
【0167】
この方法を使用して、配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮は、fwd1及びfwd2の両方を用いて行われる。したがって、この方法は、fwd1に結合する標的配列とfwd2に結合する標的配列とを含む目的の断片を選択的に増幅するためのより高い特異性を有する。
【0168】
実施例4.ヘアピンアダプター及び連結された伸長プライマーを使用した配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮
図4に示される別の例において、2つのプライマー90、92は、リンカー94を介して連結され、リンカー94は、一実施形態では、標的化インサート配列に相補的ではなく、連結された伸長プライマー構造96を形成する。図4にfwd1及びfwd2として示されるプライマー90、92は、標的化インサート配列の2つの異なる非隣接領域に相補的である。リンカーがハイブリダイズせず、したがって融解温度に著しく寄与しないので、ラ連結された伸長プライマー構造の融解温度は、図4に示されるようにfwd1’及びfwd2’プライマーに対する相補配列にハイブリダイズする場合の融解温度によって支配される。
【0169】
アニーリング及び伸長は、fwd1又はfwd2伸長プライマー単独の融解温度よりも高い融解温度で起こり得る。溶融温度は、fwd1又はfwd2プライマーの一方のみが相補配列を有する場合、連結された伸長プライマー構造が結合できないように十分に高い。両方のプライマーが標的化インサート配列に結合することができる場合、連結された伸長プライマー構造は、伸長のために結合したままであり得る。したがって、存在する2つの別個の配列のより高い特異性要件が実現される。ヘアピンアダプターの二本鎖部分を除去して、示されるような5’A14配列を曝露又はロック解除するために、本明細書で一般的に考察されるエキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを使用する伸長反応において、結合した連結された伸長プライマー構造を使用することができる。
【0170】
リンカーは、2つの異なるプライマーを連結するユニバーサル配列であり得る。複数の異なる標的化インサート配列のための反応混合物を生成するために、第1及び第2のプライマーの各異なるセットは、それぞれの目的の標的配列に特異的であり得る。したがって、各々の異なる標的配列は、特異的な第1のプライマー及び特異的な第2の伸長プライマーを有し得る。しかしながら、全てのセットのライゲーション配列は、各第1プライマーをその対応する第2プライマーと連結するために使用される同じ配列であってもよい。この配置により、共通のリンカー配列によって連結されるより短い特異的配列を比較的安価にカスタム製造することが可能になる。リンカーは、リンカーが標的化インサート配列に結合しないように設計することができる。
【0171】
実施例5.ライゲーションされた二本鎖アダプターを使用した配列決定ライブラリーからの標的配列の濃縮
本明細書で考察される特定の実施形態はヘアピンアダプターに関するが、他の実施形態は、図5に示されるように、伸長媒介二本鎖アダプターライゲーションを用いて実施され得る。図5は、インサート14を有するライブラリー断片12間の比較を示し、いくつかの断片12は、標的化インサート配列14aを有し、他の断片12は標的化インサート配列14bを有しない。
【0172】
断片12は、末端アダプター100を有する。各末端アダプターは、第1の鎖101及び第2の鎖102を含む。第1の鎖101及び第2の鎖102の部分は相補的であり、二本鎖領域103を形成する。第2の鎖102の別の部分は、二本鎖領域103の3’終端から離れて伸長する一本鎖3’終端領域104を含む。図5の図示された例におけるアダプター100は、ヘアピンを含まない。
【0173】
分離した鎖を形成するための断片の変性は、標的化インサート14aを含む鎖112aに特異的にハイブリダイズする標的特異的伸長プライマー110の結合を可能にする。標的配列を含まないインサート14bを有する他の鎖112bは、反応条件下でプライマー110に結合しない。一実施形態では、方法は、それぞれの異なる標的配列に対して異なる配列を有する複数の標的特異的伸長プライマー110と併せて使用され得る。
【0174】
プライマー110からの相補鎖の伸長は、相補鎖と、非標的インサート14bを有する他の鎖112b上に存在しない二本鎖末端120を有する鎖112aとの二重鎖を生成する。二本鎖末端120は、Aオーバーハングを付加するために伸長されて、続いて、二本鎖アダプター124にライゲーションされ得る。鎖112aの5’末端でのライゲーションは、5’末端をアダプター付加(adaptorize)し、次いで、これを増幅して、標的化インサート14aを含有する本明細書で提供される異なる末端アダプターを有する完全長産物130を得ることができる。例えば、完全長産物の各鎖は、5’末端に第1の増幅プライマー配列及び3’末端に第2の増幅プライマー配列を有することができる。増幅は、本明細書で考察されるように、インデックス化プライマーを使用してもよい。図示された例は、Aオーバーハングライゲーションを示すが、二本鎖末端120は、平滑二本鎖アダプターへの平滑二本鎖非鋳型ライゲーションであってもよい。
【0175】
図示された方法では、非標的インサート14bを有する鎖112bは増幅されない。プライマー110についての結合事象は存在せず、したがって、二本鎖末端を生成するための伸長はない。したがって、プライマーセットの単一のプライマー36のみが非標的鎖112bに結合することができ、非標的鎖の増幅はない。
【0176】
実施例6.ヘアピンアダプター及び対照アダプターを使用したライブラリー増幅の結果
ヘアピン領域内に結合するプライマーとフォーク領域内に結合するプライマー(陽性対照)を使用して、ライゲーションされたヘアピンアダプターのPCR増幅の効果を試験するために実験を設計した。モデル80merオリゴヌクレオチド二本鎖DNA鋳型を、リン酸化5’末端を有する3’単一A-オーバーハングを含むように合成した。このモデル鋳型は、二本鎖DNA試料インサートの単純なモデルとして機能した。この鋳型に、2つの異なるアダプタータイプを、Illumina LIG2試薬を使用して、30℃で10分間ライゲーションした。対照二重鎖オリゴは1uMであり、アダプターは9uMであった。最初に、二重鎖ME領域、内部配列CPH4’、並びに一方のフォーク上にB15’、及び他方のフォーク上にA14を含有する対照アダプタータイプを使用した(図7対照アダプターを参照されたい)。他のアダプター型は、同じME二重鎖領域、対照アダプターと同じ上部鎖を含有したが、フォークの下部鎖は、追加の内部配列(CPH3)及びA14のヘアピンを含有した。アダプターを95℃で変性させた後、氷上で急速冷却して、Tris-Hcl(pH8)、10mM NaCl中に50μMのストックを形成した。A14とA14’との間のヘアピン配列は、5塩基長であったことに留意されたい。別々のライゲーション反応で各アダプターを付加して、二重鎖の各末端に対照アダプター又はヘアピンアダプターのいずれかを有するライゲーションされた二重鎖を作製した。PCR増幅は、内側プライマー(対照フォークアダプターについてはCPH4-ME及びA14-i5-P5、並びにヘアピンアダプターについてはCPH4-ME及びCPH3-ME)又は外側プライマー(両方のアダプターについてはA14-i5-P5及びB15-i7-P7)のいずれかを用いて行った。ライゲーションされた鋳型を7.5倍に希釈し、Illumina PCRミックス(EPM)中でPCR試薬と混合した。増幅は、最初に95℃で3分間変性させ、続いて、伸長温度の温度勾配(72℃~60℃)を用いて、95℃で20秒間、60℃で15秒間を8サイクル行った。Theに続いて、72℃で5分間の最終伸長を行い、次いで、4℃にした。増幅産物を、Agilent D1000 HS Tapestationを使用して定量した。
【0177】
図6は、伸長温度対ピークモル濃度の4つのパネルを示し、図7は、図6の結果を生成するために使用された対照及びヘアピンアダプター構造を示す。伸長温度勾配からはほとんど効果が見られないが、最も低い収量の増幅産物は、外側プライマーを用いて増幅された場合、ヘアピンアダプターを用いて明らかに見られる(右下パネル)。ヘアピンアダプターについての対照内側プライマーは、産物が、内側プライマーを用いてライゲーションされたアダプター鋳型から増幅され得ることを明確に示し、ヘアピンアダプターのライゲーションを確認する。非ヘアピンアダプターライブラリーについては、PCRが内側及び外側プライマー対から使用される場合、同様の収率が観察される。これらのデータは、ヘアピン(この場合、A14)に含まれるプライマー対が使用される場合、ヘアピンアダプター配列がPCR増幅を阻害することを示唆する。言い換えれば、ヘアピンのロックされた構成が増幅を妨げる。
【0178】
均等物
前述の明細書は、当業者が実施形態を実践することを可能にするのに十分であると考えられる。前述の説明及び実施例は、特定の実施形態を詳細に詳述し、本発明者らによって想到される最良の様式を説明する。しかしながら、前述の内容が本文にどれほど詳細にあらわれていても、実施形態は多くの方式で実施することができ、添付の特許請求の範囲及びその任意の均等物に従って解釈されるべきであることが理解されるであろう。
【0179】
本明細書で使用するとき、約という用語は、明示的に示されているか否かにかかわらず、例えば、整数、割合、及び百分率を含む数値を指す。用語は、一般に、当業者が列挙された値(例えば、同じ機能又は結果を有する)と同等であると考えられる数値の範囲(例えば、列挙された範囲の±5~10%)を指す。少なくとも及び約などの用語が数値又は範囲のリストの前にある場合、その用語はリスト内に提供される値又は範囲の全てを変更する。場合によっては、約という用語は、最も近い有効数字に丸められた数値を含んでもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023540177000001.app
【国際調査報告】