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特表2023-540197食物繊維組成物の個別化、その方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】食物繊維組成物の個別化、その方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/21 20160101AFI20230914BHJP
【FI】
A23L33/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512322
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021073698
(87)【国際公開番号】W WO2022043475
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】20193534.3
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/129,159
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ベルガー, ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】エマミ, ナシュミル
(72)【発明者】
【氏名】ラモス, リサ, マルチェラ
(72)【発明者】
【氏名】ル ロワ, キャロリン
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB03
4B018LB04
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD47
4B018ME14
(57)【要約】
本発明は、食物繊維製品及び組成物についてのCAZymeプロファイル及び推奨に基づいて個体のために食物繊維を個別化する方法、ならびに迅速かつ容易な使用を促進するシステムを提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別化された繊維推奨を個体に提供する方法であって、前記個体のCAZymeプロファイルを決定することを含む、方法。
【請求項2】
前記個体のCAZymeプロファイルが、食事評価ツールによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記食事評価ツールが、食事暦法質問票、簡易食事評価手段、頻度食物調査票、又は、食事摂取評価において使用される技術ベースのツール、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記食事評価ツールが、果物、野菜、豆類、全粒穀物、ナッツ類及び種子類、ジャガイモ、酪農製品、飲料及び軽食の消費を測定して、特定の期間内の繊維消費の多様性を推定し、前記個体のCAZymeプロファイルを決定することを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記食事評価ツールが、全粒小麦粉、豆、ジャガイモ、トマト、ピーマン、カリフラワー、リンゴ、バナナ、茶、糖及びミルクの消費を測定して、特定の期間内の繊維消費の多様性を推定し、前記個体のCAZymeプロファイルを決定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記個体のCAZymeプロファイルが、前記個体由来の生体試料、好ましくは糞便試料によって、追加的に又は代替的に決定され得る、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記個別化された繊維推奨が、70g/日未満の1日当たり繊維摂取量であり、前記個体の性別によって決定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1日当たりの前記繊維推奨が、好ましくは、女性の場合20g~28g/日であり、70g/日を超えない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
1日当たりの前記繊維推奨が、好ましくは、男性の場合30g~38g/日であり、70g/日を超えない、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記個別化された繊維推奨が、好ましくは消費可能な食物繊維の形態の繊維である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記個別化された繊維推奨が、高繊維食料品を含有する、食品製品、飲料製品、又はダイエタリー・サプリメントである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
消費可能な食物繊維の形態の前記個別化された繊維推奨が、70g/日の繊維を超えない量の、果実、野菜、豆類、全粒穀物、ナッツ類及び種子類、皮付きジャガイモ及びダークチョコレートを含む高繊維食料品から選択され、女性の場合、20g~28g/日の繊維の量で個別化され、及び男性の場合、30g~38g/日の繊維の量で個別化される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
100g当たり少なくとも約2.0g~10.0gの量の繊維を含有する果実を含む前記高繊維食料品が、以下:
パッションフルーツ10.0g/100g;アボカド6.7g/100g;ラズベリー6.5g/100g;ブラックベリー5.3g/100g;グァバ5.0g/100g;カキ(柿)4.5g/100g;マンゴー3.5g/100g;洋ナシ3.1g/100g;バナナ2.6g/100g;リンゴ2.4g/100g;ブルーベリー2.4g/100g;又はイチゴ2.0g/100g;を含む群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
100g当たり少なくとも約1.0g~10.0gの量の繊維を含有する野菜を含む前記高繊維食料品が、以下:
アーティチョーク8.6g/100g;ケール3.6g/100g;ニンジン2.8g/100g;ビート2.8g/100g;ブロッコリー2.6g/100g;芽キャベツ2.6g/100g;ホウレンソウ2.2g/100g;カリフラワー2.0g/100g;ピーマン1.2g/100g又はトマト1.2g/100g;を含む群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
100g当たり少なくとも約5.0g~9.0gの量の繊維を含有する豆類を含む前記高繊維食料品が、以下:
黒豆8.7g/100g;スプリットピー8.3g/100g;レンズマメ7.9g/100g;ヒヨコマメ7.6g/100g;インゲンマメ6.4g/100g;ベイクドビーンズ5.5g/100g;ライマメ5.3g/100g;又は枝豆5.2g/100g;を含む群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
100g当たり少なくとも約2.8g~14.5gの量の繊維を含有する全粒穀物を含む前記高繊維食料品が、以下:
オオムギ17.0g/100g;全粒小麦粉11g/100g;エンバク10.6g/100g;キノア2.8g/100g;又はポップコーン14.5g/100g;を含む群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
100g当たり少なくとも約7.0g~35.5gの量の繊維を含有するナッツ類及び種子類を含む前記高繊維食料品が、以下:
チアシード34.4g/100g;カボチャ種子18.4g/100g;アーモンド12.5g/100g;ピスタチオ10.0g/100g;ココナッツ9.0g/100g;ヒマワリ種子8.6g/100g;又はクルミ7.0g/100g;を含む群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記高繊維食料品が、100g当たり少なくとも約2.5gの量の繊維を含有する皮付きジャガイモを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記高繊維食料品が、100g当たり少なくとも約10.9gの量の繊維を含有する、少なくとも70%のカカオを含有するダークチョコレートを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記個別化された繊維推奨が、消費可能な食物繊維及び繊維サプリメントの形態である、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
繊維サプリメントの前記個別化された繊維推奨が、グアー繊維、サイリウム、グルコマンナン又はβ-グルカンを含有するサプリメントから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の非治療的方法であって、
(i)個々の対象のCAZymeプロファイルを決定すること、
(ii)個別化された繊維組成物の推奨を提供すること、及び
(iii)個別化された繊維組成物を送達すること、を含む方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載のコンピュータにより実施される方法であって、
(i)個々の対象のCAZymeプロファイルを決定すること、及び
(ii)個別化された繊維組成物の推奨を提供すること、を含む方法。
【請求項24】
請求項23に記載のコンピュータにより実施される方法であって、
(i)個々の対象のCAZymeプロファイルを決定すること、
(ii)個別化された繊維組成物の推奨を提供すること、を含み、更に、
(iii)個別化された繊維組成物を送達すること、を含む方法。
【請求項25】
個別化された繊維推奨を個体に提供するためのシステムであって、
(i)前記個体のCAZymeプロファイルを決定するための入力モジュールと、
(ii)前記個体のCAZymeプロファイルと食物繊維摂取との関係を計算するための計算モジュールと、
(iii)前記個体のために食物繊維組成物を推奨するための推奨モジュールと、を含むシステム。
【請求項26】
請求項25に記載の個別化された繊維推奨を個体に提供するためのシステムであって、
(iv)前記個別化された食物繊維組成物を送達するための出力モジュールを更に含むシステム。
【請求項27】
請求項25又は26に記載のシステムであって、前記個別化された食物繊維組成物が、食品製品、飲料製品、もしくはダイエタリー・サプリメント、又は個体に送達されるキット・オブ・パーツにおけるそれらの組み合わせからなる群から選択される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CAZymeプロファイルならびに食物繊維製品及び組成物についての推奨に基づいて、個体のために食物繊維を個別化する方法、ならびに迅速かつ容易な使用を促進するシステムを提供する。
【0002】
[背景技術]
食物繊維は、あらゆる健康的な食事において必須の部分である。食事の中で、繊維は、主に、野菜、果実、全粒穀物、及び豆類に存在する。繊維は、一般的に2つのタイプ、すなわち可溶性及び不溶性のタイプに分類され、いずれも健康上重要な役割を果たす。不溶性繊維は、水に溶解せず、糞便に嵩を加え、便秘を予防する。可溶性繊維は、水を吸収し、消化系においてゲル様物質を形成する。可溶性繊維は、コレステロールレベルを低下させるのに役立ち、また血糖レベルを調節するのに役立ち、それにより、健康に係る慢性的な症状のリスクの低減において決定的な役割を果たし得る[Threapleton et al.,2013]。
【0003】
食物繊維と健康上の転帰との関連が知られているにもかかわらず、ほとんどの人々は、普段の食生活から十分な繊維を得ていない。いくつかの推定によれば、米国などの西洋諸国における適切な食物繊維の摂取勧告を満たしているのは、人口のわずか5%である。これは、ほとんどの人々が毎日の繊維摂取を増加させることにより利益を得ることができることを意味する。
【0004】
健康に対する繊維の有益な効果は、主に、これらの複雑な繊維構造を分解して短鎖脂肪酸(SCFA)などの代謝産物を産生する能力を有する腸内微生物が介在する[Makki et al.,2018]。微生物が食物繊維を分解する能力は、糖質関連酵素(CAZymes)をコードする遺伝子に依存する。したがって、マイクロバイオームの組成は、繊維を利用する個体の能力に影響を及ぼし、宿主の繊維に関連する健康上の利益に影響を及ぼす。
【0005】
糖質関連酵素(CAZymes)は、消化されていない食物繊維を分解する能力を腸内微生物に付与する。各個体について、微生物のゲノムは、0から300を超えるコード遺伝子の範囲のCAZymesの固有の数及び組み合わせをコードし[Flint et al.,2012]、これは、個々のマイクロバイオームが食物繊維を分解するその能力において異なることを意味する。この高い個体間変動性にもかかわらず、Bhattacharya et al.,(2015)及びKaur et al.,(2020)は、CAZymeプロファイルクラスターを同定することに成功し、これらが地理的領域の違い及び食物摂取の違いに対応することを実証した。彼らはまた、ヒトの腸におけるCAZymesの豊富さが年齢と負に相関する一方で、健康なBMIとは正に相関することを見出した。
【0006】
特定のタイプ及び量の食物繊維を利用する食事習慣は、マイクロバイオームの能力を規定し得る。CAZymeプロファイルを使用して、どの繊維が個体のマイクロバイオームで分解されて、その後宿主に対して正の効果を発揮する生成物を生成する可能性が高いか、を予測することができる(Makki et al.,2018)。
【0007】
腸内マイクロバイオーム及び宿主の健康に対する繊維補給の効果を評価する臨床試験に関する報告は、多くの場合決定的なものではなく、集団の一部が繊維補給に応答する一方で、集団の残部は測定できる効果を示していない[Kovatcheva-Datchary.,et al 2015]。これは、部分的には、マイクロバイオームの多様性及び繊維を利用する能力における、個体間の差異に起因する。CAZymeプロファイルに基づいて繊維を利用する個体の能力を考慮せずに単に食物繊維摂取を増加させるだけでは、有益な健康転帰を保証することはできない。
【0008】
今日まで、食事介入及び製品開発は、繊維の多様性を考慮することなく、かつ個々のマイクロバイオームがそれらの繊維を利用する能力を考慮することなく、主に可溶性プレバイオティック繊維、例えばイヌリン、FOS、GOSを添加することによって、総繊維消費量を増加させることに焦点を当ててきた。MyBioma又はCarbiotixなどの食物繊維の消費を監視するデジタル方法も、多様な繊維を利用する個々のマイクロバイオームの能力を考慮してはいない。すなわち、宿主個体のマイクロバイオームが、繊維の分解を可能にする酵素(CAZymes)のセットを有していない可能性があるため、繊維の消費が増加しても宿主個体に顕著な健康上の利益を与えることがない場合があり得る。
【0009】
食物繊維を特に1日当たり70gを超える量で増加させる場合の更なる追加の問題は、腸の快適さ(gut comfort)に関して望ましくない副作用が存在することであり、増量により、腹痛、鼓脹、鼓腸、便秘及び/又は下痢などのいくつかの異なる症状がもたらされる場合があり、これらの症状は、長期にわたる高繊維食に対する個体のコンプライアンスの維持にとり有害である。
【0010】
したがって、健康上の利益を最適化し、腸の快適さに関連する望ましくない副作用を最小限に抑え、個体による長期コンプライアンスを確保することができる、個別化された目標食物繊維推奨を提供することが必要とされている。加えて、これらの食物繊維推奨をユーザーフレンドリーなシステムで送達(deliver)することが必要とされている。
【0011】
[発明の概要]
本発明は、食物繊維食料品、食品、飲料及びダイエタリー製品、食品組成物及び飲料組成物、ならびにダイエタリー・サプリメントについてのCAZymeプロファイル及び推奨に基づいて、個体のために食物繊維を個別化するための方法及びシステムを提供する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、個体のための個別化された繊維推奨(personalized fiber recommendation)のための方法が提供され、該方法は、該個体のCAZymeプロファイルを決定することを含む。
【0013】
一実施形態では、個体のための個別化された繊維推奨のための方法であって、該個体のCAZymeプロファイルが、食事評価ツールによって、好ましくは食物摂取頻度調査などのアンケートの形態で、決定される方法が提供される。
【0014】
別の実施形態では、CAZymeプロファイルが、食事評価ツールによって、好ましくは食物摂取頻度調査によって、決定される、個体のための個別化された繊維推奨のための方法であって、果実、野菜、豆類、全粒穀物、ナッツ類及び種子類、ジャガイモ(potatoes)、酪農製品、飲料及び軽食の消費を測定して、特定の期間内の繊維消費の多様性を推定し、該個体のCAZymeプロファイルを決定することを含む方法が提供される。
【0015】
一実施形態では、該食事評価ツール、好ましくは該食物摂取頻度調査は、全粒小麦粉、豆、ジャガイモ、トマト、ピーマン、カリフラワー、リンゴ、バナナ、茶、糖及びミルクの消費を測定して、特定の期間内の繊維消費の多様性を推定し、該個体のCAZymeプロファイルを決定するために使用される。
【0016】
別の実施形態では、上記個体のCAZymeプロファイルは、該個体由来の生体試料、好ましくは糞便試料によって、追加的に又は代替的に決定され得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、個体のCAZymeプロファイルを基準CAZymeプロファイルと比較して、個別化された繊維推奨を選択するのに役立つ、その個体についてのCAZymeクラスター基準を決定する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、個別化された繊維推奨は、70g/日未満の1日当たり繊維摂取量であり、個体の性別によって決定される。
【0019】
女性のための一実施形態では、1日当たりの繊維推奨は、好ましくは20g~28g/日であり、70g/日を超えない。
【0020】
男性のための一実施形態では、1日当たりの繊維推奨は、好ましくは30g~38g/日であり、70g/日を超えない。
【0021】
いくつかの実施形態では、個別化された繊維推奨は、好ましくは、消費可能な食物繊維の形態の繊維である。
【0022】
いくつかの実施形態では、個別化された繊維推奨は、高繊維食料品を含有する、食品製品、飲料製品、又はダイエタリー・サプリメントである。
【0023】
いくつかの実施形態では、消費可能な食物繊維の形態の個別化された繊維推奨は、70g/日の繊維を超えない量の、果実、野菜、豆類、全粒穀物、ナッツ類及び種子類、皮付きジャガイモ及びダークチョコレートを含む高繊維食料品から選択され、女性の場合、20g~28g/日の繊維の量で個別化され、及び男性の場合、30g~38g/日の繊維の量で個別化される。
【0024】
いくつかの実施形態では、100g当たり少なくとも約2.0g~10.0gの量の繊維を含有する果実を含む高繊維食料品は、以下:
パッションフルーツ10.0g/100g;アボカド6.7g/100g;ラズベリー 6.5g/100g;ブラックベリー5.3g/100g;グァバ5.0g/100g;カキ(柿)4.5g/100g;マンゴー3.5g/100g;洋ナシ3.1g/100g;バナナ2.6g/100g;リンゴ2.4g/100g;ブルーベリー2.4g/100g;又はイチゴ2.0g/100g;を含む群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、100g当たり少なくとも約1.0g~10.0gの量の繊維を含有する野菜を含む高繊維食料品は、以下:
アーティチョーク8.6g/100g;ケール 3.6g/100g;ニンジン2.8g/100g;ビート2.8g/100g;ブロッコリー2.6g/100g;芽キャベツ2.6g/100g;ホウレンソウ2.2g/100g;カリフラワー2.0g/100g;ピーマン1.2g/100g又はトマト1.2g/100;を含む群から選択されるg。
【0026】
いくつかの実施形態では、100g当たり少なくとも約5.0g~9.0gの量の繊維を含有する豆類を含む高繊維食料品は、以下:
黒豆8.7g/100g;スプリットピー8.3g/100g;レンズマメ7.9g/100g;ヒヨコマメ7.6g/100g;インゲンマメ6.4g/100g;ベイクドビーンズ5.5g/100g;ライマメ5.3g/100g;又は枝豆5.2g/100g;を含む群から選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、100g当たり少なくとも約2.8g~14.5gの量の繊維を含有する全粒穀物を含む高繊維食料品は、以下:
オオムギ17.0g/100g;全粒小麦粉11g/100g;エンバク10.6g/100g;キノア2.8g/100g;又はポップコーン(popcorn)14.5g/100g;からなる群から選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、100g当たり少なくとも約7.0g~35.5gの量の繊維を含有するナッツ類及び種子類を含む高繊維食料品は、以下:
チアシード34.4g/100g;カボチャ種子18.4g/100g;アーモンド12.5g/100g;ピスタチオ10.0g/100g;ココナッツ9.0g/100g;ヒマワリ種子8.6g/100g;又はクルミ7.0g/100g;を含む群から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、高繊維食料品は、100g当たり少なくとも約2.5gの量の繊維を含有する皮付きジャガイモを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、高繊維食料品は、100g当たり少なくとも約10.9gの量の繊維を含有する、少なくとも70%のカカオを含有するダークチョコレートを含む。
【0031】
他の実施形態では、個別化された繊維推奨は、消費可能な食物繊維及び栄養補助食品の形態である。
【0032】
食物繊維サプリメントが使用される実施形態では、繊維サプリメントは、グアー繊維、サイリウム、グルコマンナン又はβ-グルカンを含有するサプリメントから選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、以下:
(i)個々の対象のCAZymeプロファイルを決定すること、
(ii)個別化された繊維組成物の推奨を提供すること、及び
(iii)該個別化された繊維組成物を送達すること、を含む非治療的方法が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、以下を含むコンピュータによって実施される方法が提供される:
(i)個々の対象のCAZymeプロファイルを決定すること、及び
(ii)個別化された繊維組成物の推奨を提供すること。
【0035】
更なる実施形態では、コンピュータによって実施される方法は、更に以下:
(iii)個別化された繊維組成物を送達すること、を含む。
【0036】
個別化された繊維組成物の送達は、食品、飲料製品、栄養補助食品、又はこれらのいずれかの組み合わせの形態であり得る。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、個体への個別化された繊維推奨のためのシステムであって、以下:
(i)該個体のCAZymeプロファイルを決定するための入力モジュール、
(ii)該個体のCAZymeプロファイルと食物繊維摂取との関係を計算するための計算モジュール、及び
(iii)該個体のために食物繊維組成物を推奨するための推奨モジュール、を含む、システムが提供される。
更なる実施形態では、本発明のシステムは、更に以下:
(iv)該個別化された食物繊維組成物を送達するための出力モジュール、を含み得る。
【0038】
個別化された食物繊維組成物の送達は、食品製品、飲料製品、もしくはダイエタリー・サプリメント、又はキット・オブ・パーツにおけるそれらの組み合わせの形態であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】CAZymeプロファイルに基づくクラスタリングを示す。 3通りの主要クラスターを示す、クラスターごとのPCAスコアプロットである。クラスター1は白の丸、クラスター2は灰色の丸、クラスター3は黒の丸で示す。
図2】各CAZymeの重量による寄与を示す。 この図は、異なる3通りのCAZymeプロファイルを示す。クラスター1、クラスター2及びクラスター3のCAZymeプロファイルをy軸上に示す。x軸は、3通りのクラスターの各々にそれぞれ対応するCAZymesを示す。アスタリクス()は、対応するクラスターの各々に対する特定のCAZymeの相関性を示す。正の値は、クラスターにおける特定のCAZymeの富化に対応し、負の値は枯渇を表す。
図3】予測モデルCAZymeクラスターの精度を示す。 モデル至適化(最も重要な食物変数の選択によって行われる)の前後の食物摂取頻度調査に基づく各クラスターにおける試料の予測の精度を表す曲線下面積(AUC)のボックスプロットである(1は、クラスターの予測の100%が正しいことを意味し、0.5は、50%で最小値が偶然に得られることを意味する)。
図4】クラスター及び食料品カテゴリごとのGini係数を示す。 Gini係数は、母集団にわたる各クラスターの予測に対する食料品の寄与の分布重要度(distribution importance)の尺度である。
図5】コンピュータにより実施されるシステムを示す。 この図は、個体のCAZymeプロファイルを決定し、繊維食料品の推奨を個別化するために使用されるシステムの一例である、コンピュータ実装システムを示す。
図6A】食物摂取頻度調査。 参加者から回収され、参加者のCAZymeプロファイルを決定するために使用される、典型的なアンケートを示す。
図6B】食物摂取頻度調査。 参加者から回収され、参加者のCAZymeプロファイルを決定するために使用される、典型的なアンケートを示す。
図6C】食物摂取頻度調査。 参加者から回収され、参加者のCAZymeプロファイルを決定するために使用される、典型的なアンケートを示す。
図6D】食物摂取頻度調査。 参加者から回収され、参加者のCAZymeプロファイルを決定するために使用される、典型的なアンケートを示す。
【0040】
[発明を実施するための形態]
本明細書に記載する全ての百分率は、別途記載のない限り、組成物の総重量によるものである。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0041】
本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数又は分数を含むと理解されるべきである。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。
【0042】
本発明及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの」(「a」、「an」及び「the」)には、別段の指示がない限り、複数の参照物も含まれる。したがって、例えば、「1つの構成要素(a component)」又は「その構成要素(the component)」についての言及は、2つ以上の構成成分を含む。
【0043】
用語「含む/備える(comprise)」、「含む/備える(comprises)」、及び「含んでいる/備えている(comprising)」は、排他的なものではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。しかしながら、本明細書に開示されている組成物は、本明細書において具体的に開示されていない要素を含まない場合がある。したがって、「含む/備える(comprising)」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている構成要素「を本質的に含む(consisting essentially of)」実施形態、及び特定されている構成要素「を含む(consisting of)」実施形態の開示を含む。本明細書で開示される任意の実施形態は、本明細書で開示される任意の他の実施形態と組み合わせることができる。
【0044】
本明細書において使用する場合、用語「例」及び「例えば~など(such as)」は、その後に用語の列挙が続くときは特に、単に例示的かつ説明的なものにすぎず、排他的又は包括的なものとみなされるべきではない。本明細書で使用するとき、別の状態「に関連する/伴う(associated with)」又は「と関連付けられる(linkedwith)」状態は、これらの状態が同時に起こることを意味し、好ましくは、これらの状態が同じ基礎症状によって引き起こされることを意味し、最も好ましくは、特定されている状態のうちの一方が他方の特定されている状態によって引き起こされることを意味する。
【0045】
用語「食品」、「食料品(foodstuff)」、「食品製品」、及び「食品組成物」は、ヒトなどの個体による摂取が意図され、かかる個体に対して食物繊維を提供する少なくとも1種の成分を提供する、製品又は組成物を意味する。
【0046】
用語「飲料」又は「飲料製品」は、ヒトなどの個体による経口摂取が意図され、かかる個体に対して食物繊維を提供する少なくとも1種の成分を提供する、液体製品又は液体組成物を意味する。
【0047】
用語「ダイエタリー・サプリメント」は、食物繊維を含有する少なくとも1つの成分を提供する、典型的には経口摂取されることが意図される製品を意味する。ダイエタリー・サプリメントは、個体が普段の食事では繊維の1日あたりの推奨量を得ることができない場合に推奨される。ダイエタリー・サプリメントは、典型的には、グアー繊維、サイリウム、グルコマンナン又はβ-グルカンを含有する。
【0048】
本明細書に記載されている多くの実施形態を含む本開示の組成物は、本明細書に開示されている要素、並びに本明細書に記載されている又は記載されていなくとも食生活において有用である任意の追加の又は任意選択の原材料、構成成分又は要素を含んでよい、それらからなっていてよい、又はそれらから本質的になっていてよい。
【0049】
本明細書で使用するとき、用語「単離された」は、単離されていない場合に例えば自然界において見られるようにその化合物と一緒に見られ得る、1種以上の他の化合物又は成分から、分けられていることを意味する。好ましくは、例えば「単離された」は、特定されている食物繊維が、自然界で典型的に一緒に存在する他の細胞材料の少なくとも一部分から分離されていることを意味する。いくつかの実施形態では、食物繊維の量は、食料品100グラム当たりのグラム数で計算される。例えば、リンゴは、リンゴ100g当たり2.4gの食物繊維を含有する。
【0050】
本明細書で使用するとき、「マイクロバイオーム」は、真核生物、古細菌、細菌、及びウイルス(細菌ウイルス(例えば、ファージ)を含む)などの、対象(例えば、ヒト対象)の体内及び表面において、持続的及び一過的のいずれかで生存する微生物コミュニティの遺伝的内容(genetic content)を指し、「遺伝的内容」は、ゲノムDNA、リボソームRNA及びメッセンジャーRNAなどのRNA、エピゲノム、プラスミド、ならびにその他の全ての種類の遺伝情報を包含するものである。いくつかの実施形態では、マイクロバイオームは、具体的には、ニッチにおける微生物コミュニティの遺伝的内容を指す。
【0051】
本明細書で使用するとき、「微生物叢」は、真核生物、古細菌、細菌、及びウイルス(細菌ウイルス、例えば、ファージを含む)を含む、対象(例えば、ヒト対象)の体内及び表面において(持続的に又は一過的に)生じる微生物コミュニティを指す。いくつかの実施形態では、微生物叢は、具体的には、ニッチにおける微生物コミュニティを指す。
【0052】
本明細書で使用するとき、「食物繊維」は、ヒトの食事を構成する、例えば、果実、野菜及び穀類の形態で見出される食料品を指す。これらは、ヒト腸内酵素によって容易に消化される炭水化物、ならびにヒト小腸における消化・吸収に耐性である食物繊維、の供給源である。食物繊維は、大腸において完全な又は部分的な微生物発酵を受ける。ほとんどの食物繊維は、植物細胞壁多糖類と、分解を受けずに小腸を通過するデンプン(難消化性デンプンとして知られる)の画分とから構成される。これらの多糖は、グリコシド結合によって一緒に結合して鎖及び分枝を形成した、構造的に多様な多くの糖部分を含む。一般に、多糖が複雑であるほど、その分解のためにより多くの酵素が必要とされる。ヒトゲノムは、食物グリカン、特にデンプン、スクロース及びラクトースの消化のための酵素を最大で17種類しかコードしていない。
【0053】
本明細書で使用するとき、「可溶性繊維」は、水に溶けて、胃の中でゲル様物質を形成する繊維を指す。細菌は後に大腸内でゲルを分解する。可溶性繊維は、個体に対しいくらかのカロリーを提供する。可溶性繊維は、身体が食事性脂肪及びコレステロールを吸収する態様に影響を及ぼすことによって、血液中のLDLコレステロールを低下させ、消化を通して他の炭水化物の吸収を遅らせ、それにより血糖レベルの調節を補助できる、という利点を提供する。可溶性繊維の供給源としては、例えば、豆、果実、オート麦、ナッツ類、野菜が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用するとき、「不溶性繊維」とは、水に溶けず、ほとんど消化を受けずに胃腸管を通過する繊維のことである。不溶性繊維はカロリーを提供しない。不溶性繊維は、便の嵩を増すのを助け、人がより迅速に便を通過させるのを助ける。不溶性繊維はまた、便秘を予防するのに役立ち得る。不溶性繊維の供給源としては、例えば、果実、ナッツ類、野菜、全粒食品が挙げられる。
【0055】
本明細書で使用するとき、「食物繊維の推奨1日摂取量」は、1日あたり2000カロリーの食事に基づく。2,000カロリーの食事における食物繊維の推奨摂取量は、成人女性では約25g/日、成人男性では約38g/日である。50歳を過ぎると、女性では約21g、男性では約30gの繊維が必要となり、やや少なくなる。妊娠又は授乳中の女性は、少なくとも28g/日を目標とすべきである。
【0056】
高繊維の食事に対するアレルギーを有する個体は、普段の食生活で十分な繊維をとることが難しいと感じる場合があり、推奨される食物繊維の1日摂取量に達するために、繊維のダイエタリー・サプリメントを必要とし得る。
【0057】
本明細書で使用するとき、「食物繊維の有害な副作用」は、食物繊維をあまりにも急速に増加させること、及び/又は食物繊維のタイプを個体のCAZymeプロファイルに個別化させないことの結果であり得る。有害な副作用としては、腹痛、鼓脹、鼓腸、便秘及び/又は下痢が挙げられ得る。特に、これらの副作用は、ヒトが1日に70gを超える繊維を消費する場合に起こり得る。
【0058】
本明細書で使用するとき、「糖質関連酵素」又は「CAZymes」は、オリゴ糖及び多糖を構築又は分解する酵素である。CAZymesの分類は、CAZyデータベースhttp://www.cazy.org/において随時更新されている。
【0059】
例えば、現在の分類では、分解酵素における680,000個の配列に対して合計215個のファミリーを記載しており、その数は系統的ゲノム配列決定により指数関数的に増加している(Garron et al.,2019)。CAZyファミリーは、異なる特異性を有し得るが、共通の折り畳み、共通の触媒機構及び同じ機構を共有し、切断されるグリコシド結合の配向及び潜在的なトランスグリコシル化副反応に対する有用な予測を提供する酵素を、一緒にグループ化する。
【0060】
CAZy分類には、現在、以下のファミリーが含まれる:
グリコシド合成を触媒する機能を有するグリコシルトランスフェラーゼ(GT)、
グリコシドのグリコシド結合の加水分解を触媒する機能を有するグリコシドヒドロラーゼ(GH)、
ウロン酸を含有する多糖類を切断する機能を有する多糖リアーゼ(PL)、
糖の脱O-アセチル化又は脱N-アセチル化を触媒する機能を有する炭水化物エステラーゼ(CE)、
GH、PL及びCEが植物細胞壁を含む炭水化物を利用するのを助ける機能である補助活性(AA)、
可溶性及び結晶性の炭水化物に結合して触媒酵素(GH又はPL)をそれらの基質に向ける機能を有する炭水化物結合モジュール(CBM)、
触媒機能ではなく、触媒モジュールとの会合のために含まれる機能を有する炭水化物結合モジュール(CBM)、のファミリーが含まれる。
【0061】
サブファミリーは、より近い共通の祖先を有し、通常は分子機能においてより同様であるファミリー内に見出される、通常は所定の番号によって示されるサブグループに含まれる。
【0062】
本明細書で使用するとき、「CAZymeプロファイル」及び「CAZymeクラスター」は、様々なCAZymeファミリーについての決定を指す。
【0063】
CAZymeファミリーは、典型的には、酵素の使用基質、及び異なる食物摂取を有する個体間でのこれらの分類の豊富さの比較に従って、分類される。しかしながら、多くのCAZymeファミリーは複数の機能を有することから、例えば、当該ファミリーの一部は植物性及び動物性の両方の繊維を消化することができることから、分類は必ずしも簡単ではない。
【0064】
例えば、バクテロイデス門(Bacteroidetes phylum)の細菌は、多糖類の一次分解菌と考えられており、それらは調査された全ての生態系において見出されている。バクテロイデス門のゲノムにおいて、糖質分解酵素(CAZymes)は、多糖利用遺伝子座(PULs)と呼ばれる遺伝子クラスター内に位置している。
【0065】
本明細書で使用するとき、「個体のCAZymeプロファイル」は、いくつかの異なる方法によって決定され得る。
【0066】
本発明の一実施形態では、CAZymeプロファイルは、個々の対象からの食事摂取評価から決定され得る。好ましい実施形態では、食事摂取評価は、食物摂取頻度調査(FFQ)などのアンケートの形態であり得る。食事摂取評価はまた、食事暦法質問票、簡易食事評価手段(short dietary assessment instrument)、食事摂取評価において使用される技術ベースのツール、又は、当技術分野において利用可能な任意の他のツールを含み得る。
【0067】
該食物摂取頻度調査(FFQ)は、照会された期間にわたる通常の消費頻度を示すための応答カテゴリを有する食品及び飲料の有限リストを指す。特に、果物、野菜、豆類、全粒穀物、ナッツ類及び種子類、ジャガイモ、酪農製品、飲料及び軽食の消費を測定して、特定の期間内の繊維消費の多様性を推定し、該個体のCAZymeプロファイルを決定することを含み得る。
【0068】
更に、食物摂取頻度調査はまた、全粒小麦粉、豆、ジャガイモ、トマト、ピーマン、カリフラワー、リンゴ、バナナ、茶、糖及びミルクの消費を測定して、特定の期間内の繊維消費の多様性を推定し、該個体のCAZymeプロファイルを決定することを含み得る。
【0069】
一実施形態では、食事摂取アセスメントツール、特に食物摂取頻度調査は、集団特異性及び地理的特異性に合わせて調整され得る。
【0070】
好ましい実施形態では、「個体のCAZymeプロファイル」の決定は、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、線形回帰又は決定木などの教師あり機械学習アルゴリズムを介してCAZymeクラスター又はプロファイルを予測するために食物データを使用することによって行われ得る。CAZymeプロファイルを決定するこの方法は、個々の対象からの生体試料を必要としないという利点を有する。
【0071】
本発明の別の実施形態では、CAZymeプロファイルは、糞便試料から決定され得る。CAZymeプロファイルは、例えば、全ショットガンメタゲノム配列決定(MGS)、PCRなどの標的特異的配列決定などの、当技術分野で公知の方法を使用して決定することができる。
【0072】
MGSは、生体試料(この場合、糞便試料)の遺伝的成分を試験するための非標的特異的方法である。ハイスループット配列決定法を用いて、CAZymesをコードするものを含む試料の全ての遺伝物質を配列決定する。次いで、配列は、バイオインフォマティクスパイプラインを使用してアノテートを受けるよう処理される。アノテートにより、いずれの分類群の生物が試料中に存在するか、ならびに例えばCAZymesとしてのその存在度及び機能に関する情報が提供される。MGSを用いて、特定のCAZyme機能をコードする遺伝子を定量することが可能である。
【0073】
「個体のCAZymeプロファイル」は、追加的又は代替的に、個々の対象由来の生体試料から決定され得る。1つの好ましい実施形態では、CAZymeプロファイルは、糞便試料から決定され得る。
【0074】
CAZymeプロファイルクラスターは、それらのCAZymeプロファイルの類似性に従って一緒にグループ化されたサンプル群である。かかるクラスターは、当技術分野で公知の任意のクラスタリング法によってCAZymeプロファイルから予測することができる。クラスタリング方法の非限定的な例では、教師なし機械学習アルゴリズム(k平均、ディリクレ)が使用され得る。プロファイルは、dbCAN又はEggNOGなどのCAZymesをコードする遺伝子にアノテートを行うために使用される異なるアノテートパイプラインを通して決定することができる。
【0075】
本明細書で使用するとき、「繊維組成物の投与」は、典型的には、毎日送達される。
【0076】
繊維組成物は、好ましくは少なくとも週2日、より好ましくは少なくとも週3日、最も好ましくは週7日、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は更に長い期間、個体に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、数日間連続的に個体に投与される。いくつかの実施形態では、本組成物は、少なくとも30日間、60日間、又は90日間連続で毎日個体に投与することができる。好ましい実施形態では、食物繊維組成物の投与は、1日当たり70gの繊維を超過するべきではない。
【0077】
一実施形態では、繊維組成物は、女性の場合、1日あたり20g~28g/日の範囲であることが好ましい。50歳以上の女性の場合、繊維組成物は、21g/日であることが好ましい。授乳中の女性の場合、繊維組成物は、28g/日であることが好ましい。
【0078】
一実施形態では、繊維組成物は、男性の場合、30g~38g/日の範囲であることが好ましい。50歳以上の男性の場合、繊維組成物は、30g/日であることが好ましい。
【0079】
上記の投与例は、間断のない連日投与を必要とするものではない。それよりむしろ、投与期間中の2~4日間の中断など、投与には何回かの短期間の中断があってもよい。本組成物の理想的な投与継続期間は当業者により決定され得る。
【0080】
好ましい実施形態では、食物繊維組成物は、個体に経口投与される。例えば、組成物は、食品製品、飲料製品、及び/又は栄養補助食品として個体に投与することができる。
【0081】
本明細書で使用するとき、「システム」は、例えば、本明細書で開示されるコンピュータ化された推奨システムの少なくとも一部を実行するために使用可能なホストデバイス100のシステムの一例を示す図5によって示され得る。
【0082】
一実施形態では、図5に示すデバイス100は、以下の機能の一部又は全部を提供する1つ以上のサーバ及び/又は他のコンピューティングデバイスに該当する:
(a)システムのリモートユーザによる本開示のシステムへのアクセスを可能にすること、(b)リモートユーザが本開示のシステムとインターフェースすることを可能にするウェブページ(単数又は複数)を提供すること、(c)開示されるシステムを実行するために必要とされる、性別ごとの推奨繊維摂取範囲、推奨繊維消費範囲、及び食料品の繊維含有量、食事評価及び/又は食物摂取頻度調査未加工データ、CAZymeプロファイル等の基礎データを、記憶及び/又は計算すること、(d)成分を計算及び表示すること、並びに/あるいは、(e)食料品、食品製品、飲料製品、ダイエタリー・サプリメント、メニューもしくはレシピ、又は個体が自身のCAZymeプロファイルに基づいて最適な1日あたりの個別化された繊維摂取量に達するのを助けるために消費され得る他の消耗品の推奨を行うこと。
【0083】
好ましい実施形態では、基礎データの該計算は、当技術分野で知られているように、クラスター又は試料のCAZymeプロファイルに基づいて行うことができる。
【0084】
図5に示すアーキテクチャの実施例では、デバイス100は、好ましくは、アドレス/データバス113によって、1つ以上のメモリデバイス108、他のコンピュータ回路110、及び/又は1つ以上のインターフェース回路112に電気的に連結された1つ以上のプロセッサ106を含む、メインユニット104を含む。1つ以上のプロセッサ106は、INTEL PENTIUM(登録商標)又はINTEL CELERON(登録商標)ファミリーのマイクロプロセッサなどの、任意の好適なプロセッサとすることができる。PENTIUM(登録商標)及びCELERON(登録商標)は、Intel Corporationに登録された商標で、市販のマイクロプロセッサのことを言う。他の実施形態では、プロセッサ106として、他の市販の、又は特別に設計されたマイクロプロセッサを使用することができることを理解されたい。一実施形態では、プロセッサ106は、特に本開示のシステムで使用するために設計されたシステムオンチップ(「SOC」)である。
【0085】
一実施形態では、デバイス100はメモリ108を更に備える。メモリ108は、揮発性メモリと不揮発性メモリを含むことが好ましい。メモリ108は、後述するように、ホストデバイス100のハードウェア及びシステム内の他のデバイスと相互作用する1つ以上のソフトウェアプログラムを記憶することが好ましい。加えて、又はその代わりに、メモリ108に記憶されたプログラムは、クライアントデバイス102(以下で詳細に説明する)などの1つ以上のクライアントデバイスと対話して、それらのデバイスにデバイス100に記憶されたメディアコンテンツへのアクセスを提供し得る。メモリ108に記憶されたプログラムは、任意の好適な方法で、プロセッサ106によって実行することができる。
【0086】
インターフェース回路(単数又は複数)112は、イーサネットインターフェース及び/又はユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースなどの任意の好適なインターフェース規格を使用して、実装することができる。1つ以上の入力デバイス114は、データ及び命令をメインユニット104に入力するためにインターフェース回路112に接続することができる。例えば、入力デバイス114は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、トラックパッド、トラックボール、アイソポイント(isopoint)、及び/又は音声認識システムとしてもよい。デバイス100が遠隔デバイスによってのみ操作され又は対話されるように設計されている一実施形態において、デバイス100は入力デバイス114を含まなくてもよい。他の実施形態では、入力デバイス114は、データ入力をホストデバイス100に提供する、1つ以上のフラッシュドライブ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、クラウドストレージ、又は他の記憶デバイス若しくはソリューションなどの1つ以上の記憶デバイスを含む。
【0087】
1つ以上の記憶デバイス118もインターフェース回路112を介してメインユニット104に接続することができる。例えば、ハードドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブ、及び/又は他の記憶デバイスをメインユニット104に接続することができる。記憶デバイス118は、ブロック150によって示されるように、デバイス100により用いられる、性別ごとの好適な繊維範囲に関するデータ、各種の食品の繊維含量に関するデータ、システムのユーザに関するデータ、前に生成された食事の及び/又は食品頻度アンケートに関するデータ、ユーザ当たりのCAZymeプロファイルに関するデータ、及び開示されるシステムを実行するために必要な他のいずれかの適切なデータなどの、あらゆるタイプのデータを記憶し得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、ブロック150によって示される推奨システムは、例えば以下:
果物、野菜、豆類、全粒穀物、ナッツ類及び種子類、ジャガイモ及びダークチョコレート等の異なる食品群に分類された食物モジュール、飲料データベースモジュール、メニューデータベースモジュール(例えば、朝食、昼食、夕食、及び軽食);レシピデータベースモジュール;存在し得るアレルギー又は食物感受性を示す食事制限モジュール;を含む、異なるデータベースモジュールを記憶し得る。
【0089】
これに代えて又は加えて、記憶デバイス118は、ストレージ118へのアクセスが、インターネット、又はイーサネット回路112などの他のネットワーク接続回路を介して行われるように、クラウドベースのストレージとして実装されてもよい。
【0090】
1つ以上のディスプレイ120、及び/又はプリンタ、スピーカ、又は他の出力デバイスである119はまた、インターフェース回路112を介してメインユニット104に接続されてもよい。ディスプレイ120は、液晶ディスプレイ(LCD)、好適なプロジェクタ、又は任意の他の好適な種類のディスプレイとすることができる。ディスプレイ120は、ホストデバイス100の動作中に、ホストデバイス100のさまざまなデータ及び機能の視覚的表現を生成する。例えば、ディスプレイ120を使用して、好ましい食物繊維の範囲のデータベース、さまざま食品品目の繊維含有量のデータベース、システムのユーザのデータベース、以前に生成されたメニュー、レシピ若しくは食事のデータベース、及び/又はデバイス100で管理者が上記の他のデータベースと対話できるようにするデータベース、に関する情報を表示するために使用され得る。
【0091】
図示された実施形態では、コンピュータ化された推奨システムのユーザは、クライアントデバイス102などの好適なクライアントデバイスを使用してデバイス100と対話する。さまざまな実施形態におけるクライアントデバイス102は、ホストデバイス100によって提供又は供給されるコンテンツにアクセスすることができる任意のデバイスである。例えば、クライアントデバイス102は、ホストデバイス100へのウェブベースのインターフェースにアクセスするために好適なウェブブラウザを実行することができる任意のデバイスであってもよい。これに代えて、又はこれに加えて、本明細書で説明される機能のいくつかを提供する1つ以上のアプリケーション又はアプリケーションの一部は、クライアントデバイス102上で動作することができ、この場合、クライアントデバイス102は、推奨される1日の食物繊維の範囲又はさまざまな食品品目の繊維含有量に関するデータなどの、ホストデバイス100に記憶されたデータにアクセスするためだけに、ホストデバイス100と接続する必要がある。
【0092】
一実施形態では、デバイス(即ち、デバイス100及びクライアントデバイス102)のこの接続は、クラウド116によって図5に例示されるインターネット及び/又は他のネットワークを介したネットワーク接続によって容易になる。ネットワーク接続は、イーサネット接続、デジタル加入者線(DSL)、WiFi接続、セルラーデータネットワーク接続、電話回線ベースの接続、同軸ケーブル上の接続、又は別の好適なネットワーク接続などの、任意の好適なネットワーク接続であってもよい。
【0093】
一実施形態では、ホストデバイス100は、クラウドベースの認証及びアクセス制御、ストレージ、ストリーミング、及びフィードバックの提供などのクラウドベースのサービスを提供するデバイスである。この実施形態では、ホストデバイス100の特定のハードウェアの詳細は、本開示のシステムの実施者にとって重要ではなく、それよりも、かかる実施形態では、本開示のシステムの実施者は、1つ以上のアプリケーションプログラマインターフェース(API)を利用して、簡便な方法で、例えば、性別に基づき、食物繊維の範囲を決定するのに役立つそのユーザの属性に関する情報を入力したり、摂取される食品に関する情報を入力したり、以下でより詳細に説明する他の対話を行ったりするなど、ホストデバイス100と対話する。
【0094】
デバイス100及び/又はクライアントデバイス102へのアクセスは、適切なセキュリティソフトウェア又はセキュリティ手段によって管理することができる。個々のユーザのアクセスは、デバイス100によって定義され、及び個々のアイデンティティに従って、例えば1日にわたる、又は他の時限における、全食物繊維の消費を選択又は閲覧するなど、特定のデータ及び/又は操作に限定することができる。ホストデバイス100又はクライアントデバイス102のいずれかの他のユーザは、彼らのアイデンティティに応じて、他のデータを変更することができる。したがって、本システムのユーザは、本開示のシステムによって提供されるコンテンツにアクセスする前に、デバイス100に登録することが必要な場合がある。
【0095】
好ましい実施形態では、各クライアントデバイス102は、デバイス100に関して上述したのと同様の構造的又は設計上の構成を有する。即ち、一実施形態における各クライアントデバイス102は、表示デバイス、少なくとも1つの入力デバイス、少なくとも1つのメモリデバイス、少なくとも1つの記憶デバイス、少なくとも1つのプロセッサ、及び、少なくとも1つのネットワークインターフェースデバイスを含む。周知のデスクトップ、ラップトップ、又は(スマートフォン、タブレットコンピュータなどを含む)モバイルコンピュータシステムに共通のかかる構成要素を含めることにより、クライアントデバイス102では、対応するシステムのユーザによる相互間の対話が容易になることを理解されたい。
【0096】
さまざまな実施形態では、図5に例示されるようなデバイス100及び/又はデバイス102は、実際には、複数の異なるデバイスとして実装することができる。例えば、デバイス100は、実際には、本明細書に記載のメディアコンテンツアクセスシステムを実装するためにともに動作する複数のサーバデバイスとして実装されてもよい。様々な実施形態では、図5では示されないが、1つ以上の追加のデバイスが、デバイス100と相互作用して、本明細書に開示されるシステムへのアクセスを可能にするか又は容易にする。例えば、一実施形態では、ホストデバイス100は、ネットワーク116を介して、CAZyme情報、食物繊維含有情報、メニュープランナー、レシピデータベース、エネルギー情報、又は環境へのインパクトに関する情報などの情報についての、公的、私的、又は独自のリポジトリなどの、1つ以上の公的、私的、又は独自のリポジトリと通信する。
【0097】
一実施形態では、本開示のシステムはクライアントデバイス102を含まない。この実施形態では、本明細書に記載された機能は、ホストデバイス100上で提供され、システムのユーザは、入力デバイス114、表示デバイス120、及び出力デバイス119を使用してホストデバイス100と直接対話する。この実施形態では、ホストデバイス100は、本明細書に記載された機能のうちのいくつか又は全てをユーザ向けの機能として提供する。
【0098】
さまざまな実施形態では、本明細書で開示されるシステムは、複数のモジュールとして構成され、各モジュールは特定の機能又は機能のセットを実行する。これらの実施形態におけるモジュールは、汎用プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール、専用プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール、適切な専用ハードウェアデバイス上で実行されるファームウェアモジュール、又は、本明細書に列挙する機能を完全に回路によって実行するハードウェアモジュール(特定用途向け集積回路(「ASIC」)など)とすることができる。本明細書で説明する機能の一部又は全部を実行するために特殊なハードウェアが使用される実施形態では、本開示のシステムは、設定を制御するか、又はかかる特殊なハードウェアの機能を調整するために、1つ以上のレジスタ又は他のデータ入力ピンを使用することができる。
【0099】
例えば、システムは、個体のCAZymeプロファイルを決定するための入力モジュールと、該個体の該CAZymeプロファイルと食物繊維摂取との関係を計算するための計算モジュールと、
【0100】
個体のための食物繊維組成物を推奨するための推奨モジュールと、を含む。更に、システムは、個別化された食物繊維組成物を送達するための出力モジュールを提供することができる。
【0101】
ユーザの目標は、個々のユーザのCAZymeプロファイルに基づいて食物繊維推奨を個別化することである。システムを使用することにより、食品製品、飲料製品、ダイエタリー・サプリメント、ならびにメニュー又はレシピを提供して、1日あたりの繊維推奨量に近いものとすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるシステム及び方法は、栄養士、ヘルスケア専門家、及び個々のユーザ(例えば、スマートウォッチ又はフィットネストラッカーなどの装着型デバイスのユーザ)によって使用することができる。
【0102】
[実施例]
実施例1:CAZymeプロファイル及びCAZymeクラスターの同定
本発明者らは、食物摂取頻度調査(FFQ)を通して食習慣を報告し、全ショットガンメタゲノミクス配列決定MGSを介したCAZymeプロファイリングのための糞便試料を提供した、60人のボランティアから収集したデータを使用した。
【0103】
CAZymeプロファイルは、個々の被検者の食物摂取頻度調査より腸内微生物叢の組成として決定した。その代謝能は主に食事によって形成されていた(図5)。消費された食品は、かかる生態系に基質を提供し、予め定められた分類群の繁殖を促進する条件を提供した。その結果、本発明者らは、食料品、特に食料品中の繊維含量を評価することによって、ある種の細菌が存在する可能性と、基質利用性に適合したそれらの機能とを予測することができた。
【0104】
食物摂取頻度調査を機械学習アルゴリズムと共に使用して、ある個体が特定のCAZymeプロファイルを提示する可能性を決定した。CAZymeプロファイルを決定するこの方法は、一旦モデルが構築されると、個々の被験者からの毎度の生体試料を必要としないという利点を有した。
【0105】
次いで、食物摂取頻度調査を使用して、個体を異なるCAZymeクラスターに割り当てた(図1図2図3図4)。したがって、CAZymeクラスターは、初期モデルを構築するために用いられたコホートの糞便試料を使用して事前定義された。
【0106】
CAZymeプロファイリングを使用して、糞便試料の分析から食物繊維を分解する腸内マイクロバイオームの能力を推測した。糞便試料からのCAZymeプロファイルを、全ショットガンメタゲノム配列決定(MGS)を使用して評価した。ハイスループット配列決定法を用いて、個体由来の糞便試料の全ての遺伝物質、特にCAZymesをコードする遺伝物質を配列決定した。次に、バイオインフォマティクスパイプラインを使用して配列を処理してアノテートし、どの分類群(生物)が試料中に存在し、どの程度の量で存在するかに関する情報を提供し、更に、特定の機能をコードするCAZymesを同定及び分類した。
【0107】
生のCAZymeコピー数をCAZymesの総数によって正規化し、スケーリングした。次いで、k平均アルゴリズムを使用してCAZymeプロファイルのクラスターを定義した。
【0108】
ランダムフォレストアルゴリズムを用い、FFQデータ(摂取栄養素量に変換されていない)を使用してCAZymeクラスターを予測した。モデルを構築するために、本発明者らは、50×40個のサンプルを無作為に選択して、訓練セットを生成し、20個を試験セットに生成した。モデルの性能は、ROC曲線の曲線下面積(AUC)を計算することによって評価した。
【0109】
結果:
CAZymeプロファイルに基づく合計3つのクラスターを集団において同定した(図1図2図3図4)。各クラスターは、食物繊維を分解する腸内マイクロバイオームの能力を反映し得る特定のCAZymeプロファイルによって定義した。最適化後、食物摂取頻度調査を使用して、平均AUC=0.79を有するCAZymeクラスターを予測することができた。これらのモデルの構築には最適化プロセス中に選択された合計11種の食物を利用した(図4)。
【0110】
各クラスターを規定するCAZymesの役割の更なる調査を行い、この情報は、サブ集団のマイクロバイオームによって分解され得る糖質を決定するために使用できることを明らかにした(図2)。例示として、本発明者らは、クラスター1が、ペクチン及びペクチン様構造(ラムノガラクツロナンI-RGI)を分解することができるCAZymes[Cecchini et al.,2013]、すなわちCE8、GH28、GH 105及びPL11に富み、カリフラワー(ペクチン及びRGIを含有する)が最も重要な予測因子であることを観察した。第2に、クラスター2において、本発明者らは、このクラスターの主要な食物予測因子の1つであるピーマンにおいて見出される、アラビノガラクタン及びアラビナン(GH43)の発酵に関与するCAZymesが富むことを観察した。クラスター3では、クラスター1及びクラスター2とは異なるCAZymesプロファイル間の組合せが観察された。したがって、各クラスターにおいて富んでいたCAZymesについての詳細な分析を使用して、マイクロバイオームによって利用される可能性が最も高い繊維タイプ又は繊維ブレンドを決定し、したがって宿主に対する有益な効果を誘発することができる。
【0111】
結論:
本発明者らは、CAZymeプロファイルのクラスターが食事摂取に基づいて予測できることを実証した。更に、各クラスターにおいて富んでいたCAZymesの分析は、個々の対象によって最適に利用されるべき繊維組成物を設計するのに役立ち得る。
【0112】
参考文献
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図1
図2
図3
図4
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【国際調査報告】