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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】サーメット装飾アイテム
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/58 20060101AFI20230914BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20230914BHJP
   G04B 37/22 20060101ALI20230914BHJP
   G04B 19/12 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C04B35/58 014
C04B35/58 007
A44C5/00 C
G04B37/22 V
G04B19/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512442
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2021068836
(87)【国際公開番号】W WO2022053199
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】20195335.3
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルトヴィル,ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ファレ,ヤン
(57)【要約】
本発明は、サーメット素材からなる装飾アイテムに関する。サーメット素材は、70から97重量%のセラミック相と、3から30重量%の金属結合剤相とを含む。金属結合剤は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金および銀からなるリストから選択される少なくとも1つの元素またはその合金を備える。セラミック相は、窒化物相と、任意に酸化物相および/または酸窒化物相を備える。サーメット素材の総重量に対して、窒化物相は70から97重量%の割合で存在し、酸化物相および/または酸窒化物相は0から15重量%の割合で存在する。
本発明はまた、本アイテムを製造するために実施される方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーメット素材からなる装飾アイテムであって、前記サーメット素材は、70から97重量%のセラミック相と、3から25重量%の金属結合剤相とを含み、前記金属結合剤は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金および銀からなるリストから選択される少なくとも1つの元素またはそれらの合金を備え、前記セラミック相は、窒化物相と、任意に酸化物相および/または酸窒化物相とを含み、前記サーメット素材の総重量に対して、前記窒化物相は70から97重量%の割合で存在し、前記酸化物相および/または酸窒化物相は0から15重量%の割合で存在する、装飾アイテム。
【請求項2】
請求項1に記載のアイテムであって、前記金属結合剤相は4から22重量%の割合で存在し、前記セラミック相は78から96重量%の割合で存在し、前記サーメット素材の総重量に対して、前記窒化物相は、78から96重量%の割合で存在し、前記酸化物相および/または酸窒化物相は、0から15重量%の割合で存在することを特徴とする、アイテム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアイテムであって、前記窒化物相は、Al、Ti、Si、Mn、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo、W、B窒化物のリストから選択される1または複数の窒化物を含むことを特徴とする、アイテム。
【請求項4】
請求項3に記載のアイテムであって、前記窒化物は、Al、Si、Ti、Ta、Nb、Zr窒化物から選択されることを特徴とする、アイテム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアイテムであって、前記酸化物および酸窒化物は、それぞれ、Al、Ti、Si、Mn、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo、W、B酸化物および酸窒化物と、これらの元素の酸化物および酸窒化物の組み合わせとを備えるリストから選択されることを特徴とする、アイテム。
【請求項6】
請求項5に記載のアイテムであって、前記酸化物および酸窒化物は、Al、Si、Ti、Ta、Nb、Zr酸化物および酸窒化物から選択されることを特徴とする、アイテム。
【請求項7】
請求項6に記載のアイテムであって、前記セラミック相は、Ti窒化物相およびZr酸化物相からなることを特徴とする、アイテム。
【請求項8】
請求項6に記載のアイテムであって、前記セラミック相は、Nb窒化物相およびNb酸化物相からなることを特徴とする、アイテム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のアイテムであって、前記金属結合剤相は、不純物を別として、パラジウム、プラチナ、銀または金合金からなることを特徴とする、アイテム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のアイテムであって、前記金属結合剤相は金合金を含み、前記金合金は、銅、銀、パラジウムおよび窒素から選択される1または複数の元素を備えることを特徴とする、アイテム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のアイテムであって、500から1,300、好ましくは550から1,250のビッカース硬さHV30を有することを特徴とする、アイテム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のアイテムであって、
-前記セラミック相がTi窒化物およびZr酸化物を含み、前記金属結合剤相がPdまたはAu合金を含むとき、
-前記セラミック相がTaまたはNb窒化物を含み、前記金属結合剤相がPdを含むとき、
-前記セラミック相がTi窒化物を含み、前記金属結合剤相がPtを含むとき、
-前記セラミック相がNb窒化物、Nb酸化物を含み、前記金属結合剤相がPtを含むとき、
-前記セラミック相がNb窒化物を含み、前記金属結合剤相がAu合金を含むとき、
1,000を超えるビッカース硬さHV30を有することを特徴とする、アイテム。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のアイテムであって、2.8MPa.m1/2以上の強靭性KiCを有することを特徴とする、アイテム。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のアイテムであって、CIELAB色空間において、最小60、好ましくは最小65、より好ましくは最小75のL*成分を有することを特徴とする、アイテム。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のアイテムであって、黄色であり、CIELAB色空間において、a*成分は0から+5の間であり、b*成分は+20から+30の間であることを特徴とする、アイテム。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のアイテムであって、白色であり、CIELAB色空間において、a*成分は-3から+3の間であり、b*成分は-3から+3の間であることを特徴とする、アイテム。
【請求項17】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のアイテムであって、白色と黄色の間の色を有し、CIELAB色空間において、a*成分は0から+3の間であり、b*成分は0から+10の間であることを特徴とする、アイテム。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載のアイテムであって、胴部、裏蓋、ベゼル、リューズ、ブレスレットの環、ダイヤル、針およびダイヤルのインデックスを備えるリストから選択される外部計時器の構成部品に関することを特徴とする、アイテム。
【請求項19】
装飾アイテムの製造方法であって、
a)セラミック粉末と金属結合剤粉末との混合物を製造するステップであって、前記セラミック粉末は、窒化物と、任意に酸化物および/または酸窒化物とを備え、金属結合剤粉末は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、銀からなるリストから選択される少なくとも1つの元素またはその合金を備えるステップと、
b)前記混合物を前記アイテムの形にするブランクを形成するステップと、
c)1,100から2,100℃までの温度で、好ましくは1,400から1,750℃までの温度で、30分から20時間の間、好ましくは30分から2時間の間、前記ブランクを焼結するステップと、
の連続ステップを備える方法であって、
前記方法において、前記セラミック粉末は70から97重量%、好ましくは75から97重量%、より好ましくは78から96重量%存在し、金属結合剤粉末は3から25重量%、より好ましくは4から22重量%存在することを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、ステップa)の前記混合物は、
-78から96重量%のTiNと、4から22重量%のPdまたはPt、
-80から90重量%のTiNと、10から20重量%のAg、
-75から85重量%のTiNと、15から25重量%のAu合金、
-80から90重量%のNbNと、10から20重量%のAu合金、
-85から95重量%のNbNまたはTaNと、5から15重量%のPdまたはPt、
-80から90重量%のTiNと、5から15重量%のZrOと、3から10重量%のPdまたはAu合金、
-75から85重量%のTiNと、5から15重量%のZrNと、5から15重量%のAu合金、
-70から80重量%のNbNと、5から20重量%のNbと、5から15重量%のPt、
の配合のうち1つを含むことを特徴とする、方法。
【請求項21】
請求項19または請求項20に記載の方法であって、ステップb)は圧縮または射出によって実施されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーメットタイプの素材からなる装飾アイテムに関し、具体的には計時器の外部構成部品に関する。サーメットタイプの素材は、窒化物を備えるセラミック相と、貴金属を備える金属相とからなる。
【背景技術】
【0002】
窒化物系の有色サーメットは、ニッケルまたはコバルトなどのアレルギー誘発性金属結合剤を含有する。腕時計のケースまたは宝石など、皮膚と接触する可能性のある部品を製造するためには、これらの元素を備える結合剤を使用しない組成を開発することが必須である。
【0003】
さらに、腕時計ケースなどの特定用途のために用いられるサーメットは、非常に高い耐傷性、つまり、1,000HVを超える硬さを有していなければならない。これには、金属結合剤とセラミック相との間の湿潤性を制御しながら金属結合剤の量を削減する必要がある。湿潤性が低いと、最終生成物の密度が低下し、したがって硬さが低下する。具体的には、ニッケルおよびコバルトを含まず、優良な最終性質を有する黄色窒化チタン(TiN)系の有色サーメットを、粉末冶金および従来の液相焼結によって製造することは困難である。これは主に、窒化チタンの融点が2,930℃と非常に高く、液相焼結中の金属結合剤との湿潤性が悪いためである。その結果として、焼結終了時にサーメットの多孔性が高くなり、硬さが低下する。
【0004】
硬さに加えて、高い強靭性と所望する色調が最終生成物で得られるように、異なる相の割合も調整しなければならない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、以下の基準を満たす最適な組成を有するサーメットを提案し、前述の欠点を克服することである。
-ニッケルまたはコバルトなどのアレルギー誘発性の元素を使用しないこと、
-低圧下の液相焼結(従来の焼結)によって、緻密化が可能であること、
-非常に高い耐傷性が必要とされる適用では、好ましくは、2.8MPa.m1/2以上のKiCを有する十分な強靭性を備えながら、最小硬さ500HV30、好ましくは最小硬さ550HV30、より好ましくは最小硬さ1,000HV30を有すること、
-白色から黄色の範囲の色調を有し、金属の光沢度が高いこと(65<L*≦80)。
【0006】
そのため、本発明は、サーメット素材からなる装飾アイテムを提案する。サーメット素材は、70から97重量%のセラミック相と、3から30重量%の金属結合剤相とを含む。金属結合剤は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金および銀からなるリストから選択される少なくとも1つの元素またはその合金を備える。セラミック相は、窒化物相と、任意に酸化物相および/または酸窒化物相を含む。サーメット素材の総重量に対して、窒化物相は70から97重量%の割合で存在し、酸化物相および/または酸窒化物相は0から15重量%の割合で存在する。
【0007】
具体的には、窒化チタン(TiN)系の黄色サーメットを粉末冶金および従来の液相焼結によって製造するために、酸化物および/または酸窒化物を添加することによって緻密化を促進し、硬さを高めることが提案される。
【0008】
このように開発されたサーメット素材は、研磨後に、金属結合剤としてニッケルまたはコバルトを用いるサーメットを超える金属光沢を有し、ステンレス鋼に匹敵する金属光沢を有する(L*=75~80)。これらの貴重なサーメットは、1,250HV30に達することもある硬さを有し、外部部品を製造するための十分な強靭性を有する。さらに、これらのサーメットは、完成品に近い「ニアネットシェイプ」の3D部品を得るために、圧縮または射出などの従来の粉末冶金によって成形可能である。
【0009】
本発明のその他の特徴および有利点は、添付図を参照して、以下に非限定的例として記載する好ましい実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるサーメットタイプの素材からなる胴部を備える計時器を示す。
図2】92重量%のTiNと8重量%のPdの組成を有する、本発明によるサーメットタイプの素材の光学顕微鏡画像を示す。
図3】84.6重量%のTiN、9.4重量%の酸化ジルコニウム(ZrO)、6重量%のPdの組成を有する、本発明によるサーメットタイプの素材の光学顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、サーメットタイプの素材からなる装飾アイテムに関する。サーメットタイプの素材は、70から97重量%のセラミック相と、3から30重量%の金属結合剤相とを含む(からなる)。好ましくは、サーメットは、75から97重量%のセラミック相と、3から25重量%の金属結合剤相とを含む(からなる)。より好ましくは、サーメットは、78から96重量%のセラミック相と、4から22重量%の金属結合剤相とを含む(からなる)。金属結合剤は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金および銀を備える元素のリストから選択される。金属結合剤はまた、たとえば、Au-3N、Au-5Nなど、これらの複数の元素の組み合わせ、またはこれらの元素のうち1つの合金の組み合わせに関していてもよい。セラミック相は、窒化物相と、任意に酸化物相および/または酸窒化物相を備える。言い換えると、セラミック相は、窒化物相と、任意に酸化物相および/または酸窒化物相からなる。酸化物相および/または酸窒化物相の目的は、機械的性質を増加させることである。酸化物相および/または酸窒化物相が存在するとき、酸化物相および/または酸窒化物相は窒化物相より少ない。より具体的には、サーメットの総重量に対して、窒化物相は70から97重量%の割合で存在し、酸化物相および酸窒化物相は0から15重量%の割合で存在する。窒化物は、Al、Ti、Si、Mn、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo、W、B窒化物、およびこれらの元素の窒化物の組み合わせを含む非排他的リストから選択される。酸化物および酸窒化物は、それぞれ、Al、Ti、Si、Mn、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo、W、B酸化物および酸窒化物、およびこれらの元素の酸化物および酸窒化物の組み合わせを含む非排他的リストから選択される。
【0012】
装飾アイテムは、腕時計、宝石の一部、ブレスレットなどの構成元素であってもよい。腕時計の製造分野では、装飾アイテムは、胴部、裏蓋、ベゼル、リューズ、ブレスレットの環、ダイヤル、針、ダイヤルのインデックスなどの外部部品であってもよい。例示として、本発明によるサーメットタイプの素材からなる胴部1を図1に示す。
【0013】
サーメットアイテムは、セラミックと金属粉の混合物から開始し、焼結によって製造される。製造方法は、以下のステップを含む。
a)可能であれば湿潤環境で様々な粉末の混合物を製造するステップ。開始粉末のメディアン径(d50)は、好ましくは、10μm未満であり、より好ましくは2から5μmの間である。混合物は、可能であれば粉砕機で製造されてもよい。それによって、製粉後に粉末の粒子のd50はミクロンほどのサイズ、またはミクロン未満のサイズにまで縮小される。本混合物は、70から97重量%、好ましくは75から97重量%、より好ましくは78から96重量%のセラミック粉末を含み、3から30重量%、好ましくは3から25重量%、より好ましくは4から22重量%の金属粉を含む。セラミック粉末は、窒化物と、任意に酸化物および/または酸窒化物を含む。より具体的には、粉末の総重量に対して、窒化物は70から97重量%、好ましくは75から97重量%、より好ましくは78から96重量%の割合で存在し、酸化物および/または酸窒化物は0から15重量%の割合で存在する。窒化物は、Al、Ti、Si、Mn、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo、W、B窒化物およびこれらの元素の窒化物の組み合わせを含む非排他的リストから選択される。有利には、窒化物は、Ti、Ta、Nb、Zr窒化物およびこれらの元素の窒化物の組み合わせから選択される。酸化物および酸窒化物は、それぞれ、Al、Ti、Si、Mn、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo、W、B酸化物および酸窒化物、およびこれらの元素の酸化物および酸窒化物の組み合わせを含む非排他的リストから選択される。有利には、酸化物および酸窒化物は、ZrまたはNb酸化物および酸窒化物から選択される。金属粉は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、銀を含む金属元素、これらの複数の元素の組み合わせおよびこれらの元素のうち1つの合金のリストから選択される。したがって、好ましくは、金は、Cu、Ag、Pd、C、Nから選択される少なくとも1つの元素との合金である。有利には、金属粉は主にパラジウム、プラチナ、銀、または銅および/または銀と合金した金を含む。金属粉は、不純物を別として、プラチナ、パラジウム、銀、または銅および/または銀と合金した金からすべてなっていてもよい。一例として、粉末混合物は、以下の重量配分のうちの1つを含んでいてもよい。
-78から96重量%のTiNおよび5から20重量%のPdまたはPt、
-80から90重量%のTiNおよび10から20重量%のAg、
-75から85重量%のTiNおよび15から25重量%のAu合金、
-80から90重量%の窒化ニオブ(NbN)および10から20重量%のAu合金、
-85から95重量%のNbNまたは窒化タンタル(TaN)および5から15重量%のPdまたはPt、
-80から90重量%のTiN、5から15重量%のZrO、および3から10重量%のPdまたはAu合金、
-75から85重量%のTiN、5から15重量%の窒化ジルコニウム(ZrN)、および5から15重量%のAu合金、
-70から80重量%のNbN、5から20重量%の五酸化ニオブ(Nb)、および5から15重量%のPt。
b)任意に、前述の混合物と有機結合剤系(パラフィン、ポリエチレンなど)とを備える第2の混合物を作成可能なステップ。
c)たとえば、射出(セラミック射出成形)、または圧縮によって、混合物を所望するアイテムの形にして、ブランクを形成するステップ。
d)不活性雰囲気下または窒素下または真空下で、1,100から2,100℃までの温度で、好ましくは1,400から1,750℃までの温度で、30分から20時間の間、好ましくは30分から2時間の間、ブランクを焼結するステップ。混合物が有機結合剤システムを含む場合、本ステップの前に、200から800℃の温度の範囲で結合解除するステップを先行してもよい。
【0014】
このようにして得たブランクを冷却し、研磨する。所望するアイテムを得るために、研磨の前にブランクを機械加工してもよい。
【0015】
本製造方法から得られたアイテムは、セラミック相および金属相を有する。その重量%は開始粉末の重量%に近い。ただし、たとえば、焼結中の汚染または変質などによって、原料粉末と焼結から得られた素材との間で、組成および割合の微細な変動が生じる可能性は否定できない。たとえば、開始粉末が同一元素の窒化物と酸化物の両方を含む場合、酸窒化物は現場で形成されることもある。金属相およびセラミック相はサーメット素材中に均一に分布される。
【0016】
アイテムは、(国際照明委員会(CIE)標準番号15、lSO7724/1、ドイツ工業規格(DIN)5033Teil7、ASTM E-1164に従って)、素材の光の反射度を示す明度L*成分が最小で60、好ましくは最小で65、より好ましくは最小で75であるCIELAB色空間を有する。色の変動範囲は、鋼色に対応する白色から、わずかに黄色を帯びた色、さらにはっきりとした黄色までである。より具体的には、白色のアイテムでは、a*成分は-3から+3の間であり、b*成分は-3から+3の間である。白色と黄色の間の色では、a*成分は0から+3の間であり、b*成分は0から+10の間である。黄色では、a*成分は0から+5の間であり、b*成分は+20から+30の間である。
【0017】
セラミック素材は、30kg(HV30)の負荷下で測定して、構成物質の種類と割合によって、500から1,300、好ましくは550から1,250のビッカース硬さを有する。有利には、セラミック素材は、非常に高い耐傷性が必要となる外部部品では、1,000ビッカースより高い硬さを有する。セラミック素材は、最小で2MPa.m1/2、好ましくは最小で2.8MPa.m1/2の強靭性KiCを有する。強靭性は、以下の式にしたがって、硬さの圧痕の対角線の四端部における亀裂の長さの測定に基づいて決定される。
【0018】
【数1】
【0019】
式中、Pは印加される負荷(N)であり、aは対角線の半分(m)であり、lは測定した亀裂の長さ(m)である。
【0020】
下記の表1は、本発明によるサーメットの様々な事例を含む。斜字および太字の値は、1,000ビッカースを超える硬さ、2.8MPa.m1/2を超える強靭性、濃い黄色用に75を超えるL*指数または25を超えるb*指数の基準を満たす。
【0021】
異なる組成の粉末の13の混合物を溶媒の存在下で、粉砕機で作製した。混合物は有機結合剤を添加せずに製造された。乾燥後、混合物は一軸圧力によって形成され、真空で焼結され、またはアルゴンまたは窒素の動的分圧60mbar下で、粉末組成に依存する温度で焼結された。焼結後、機械的性質および色指数を正確に測定するために、試料を平坦に研磨した。
【0022】
試料の表面でHV30硬さ測定を行い、強靭性を前述の硬さ測定に基づいて決定した。
【0023】
研磨した試料のLab測色値を、KONICA MINOLTA CM-5分光測色計を用いて、SCI(正反射光を含む)およびSCE(正反射光を除く)測定、傾斜8°、直径8mmのMAV測定ゾーンの条件で測定した。
【0024】
これらの試験から、1,000ビッカースを超える硬さは、以下の組成で得られることが明らかである。TiN84.6%、ZrO9.4%、Pd6%(試験番号3)、NbN89.5%、Pd10.5%(試験番号4)、TaN89.5%、Pd10.5%(試験番号5)、TiN85%、Pt15%(試験番号6)、NbN75%、Nb15%、Pt10%(試験番号8)、TiN84.6%、ZrO9.4%、Au3N6%(試験番号9)、NbN86%、Au10.5%、Cu3.5%(試験番号12)。これらの同一の組成は3.3MPa.m1/2を超える強靭性を有する。
【0025】
具体的には、試験番号2(TiN92%、Pd8%)と試験番号3(TiN84.6%、ZrO9.4%、Pd6%)を比較すると、ZrOの事例において酸化物を添加する場合、ビッカース硬さが590から1,050に明らかに上昇していることがわかる。酸化物によって緻密化を改善することが可能となり、酸化物は機械的性質を増強するための補強剤として機能する。図3において、試料番号3に酸化物を添加するとき、図2の試料番号2に比べて多孔性(黒点)の減少が観測される。このように、強靭性に大きな影響を与えずに、硬さはほとんど2倍になる。同様に、試験番号7と試験番号8を比較すると、Nbを追加することによって硬さおよび強靭性の上昇が観測される。
【0026】
さらに、NbNと金合金(試験番号12)との組み合わせによって、1,000ビッカースを超える硬さの値と、4.5MPa.m1/2を超える強靭性や80に近い明度L*値、つまり、研磨したステンレス鋼と同一の明度を組み合わせることが可能となる。
【0027】
試料番号1のパラジウムの代わりに試料番号6のプラチナを結合剤として用いるとき、85%のTiNを含むこの差異によって、最大値1,192ビッカース硬さまで到達するほど硬さが上昇することが分かる。
【0028】
【表1】
*Au-3N:Au75%、Ag12.5%、Cu12.5%、添加 表1
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーメット素材からなる装飾アイテムであって、前記サーメット素材は、70から97重量%のセラミック相と、3から25重量%の金属結合剤相とを含み、前記金属結合剤は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金および銀からなるリストから選択される少なくとも1つの元素またはそれらの合金を備え、前記セラミック相は、窒化物相と、任意に酸化物相および/または酸窒化物相とを含み、前記サーメット素材の総重量に対して、前記窒化物相は70から97重量%の割合で存在し、前記酸化物相および/または酸窒化物相は0から15重量%の割合で存在する、装飾アイテム。
【請求項2】
請求項1に記載のアイテムであって、前記金属結合剤相は4から22重量%の割合で存在し、前記セラミック相は78から96重量%の割合で存在し、前記サーメット素材の総重量に対して、前記窒化物相は、78から96重量%の割合で存在し、前記酸化物相および/または酸窒化物相は、0から15重量%の割合で存在することを特徴とする、アイテム。
【請求項3】
請求項1に記載のアイテムであって、前記窒化物相は、Al、Ti、Si、Mn、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo、W、B窒化物のリストから選択される1または複数の窒化物を含むことを特徴とする、アイテム。
【請求項4】
請求項3に記載のアイテムであって、前記窒化物は、Al、Si、Ti、Ta、Nb、Zr窒化物から選択されることを特徴とする、アイテム。
【請求項5】
請求項1に記載のアイテムであって、前記酸化物および酸窒化物は、それぞれ、Al、Ti、Si、Mn、Zr、Hf、Ta、Nb、V、Cr、Mo、W、B酸化物および酸窒化物と、これらの元素の酸化物および酸窒化物の組み合わせとを備えるリストから選択されることを特徴とする、アイテム。
【請求項6】
請求項5に記載のアイテムであって、前記酸化物および酸窒化物は、Al、Si、Ti、Ta、Nb、Zr酸化物および酸窒化物から選択されることを特徴とする、アイテム。
【請求項7】
請求項6に記載のアイテムであって、前記セラミック相は、Ti窒化物相およびZr酸化物相からなることを特徴とする、アイテム。
【請求項8】
請求項6に記載のアイテムであって、前記セラミック相は、Nb窒化物相およびNb酸化物相からなることを特徴とする、アイテム。
【請求項9】
請求項1に記載のアイテムであって、前記金属結合剤相は、不純物を別として、パラジウム、プラチナ、銀または金合金からなることを特徴とする、アイテム。
【請求項10】
請求項1に記載のアイテムであって、前記金属結合剤相は金合金を含み、前記金合金は、銅、銀、パラジウムおよび窒素から選択される1または複数の元素を備えることを特徴とする、アイテム。
【請求項11】
請求項1に記載のアイテムであって、500から1,300、好ましくは550から1,250のビッカース硬さHV30を有することを特徴とする、アイテム。
【請求項12】
請求項1に記載のアイテムであって、
-前記セラミック相がTi窒化物およびZr酸化物を含み、前記金属結合剤相がPdまたはAu合金を含むとき、
-前記セラミック相がTaまたはNb窒化物を含み、前記金属結合剤相がPdを含むとき、
-前記セラミック相がTi窒化物を含み、前記金属結合剤相がPtを含むとき、
-前記セラミック相がNb窒化物、Nb酸化物を含み、前記金属結合剤相がPtを含むとき、
-前記セラミック相がNb窒化物を含み、前記金属結合剤相がAu合金を含むとき、
1,000を超えるビッカース硬さHV30を有することを特徴とする、アイテム。
【請求項13】
請求項1に記載のアイテムであって、2.8MPa.m1/2以上の強靭性KiCを有することを特徴とする、アイテム。
【請求項14】
請求項1に記載のアイテムであって、CIELAB色空間において、最小60、好ましくは最小65、より好ましくは最小75のL*成分を有することを特徴とする、アイテム。
【請求項15】
請求項1に記載のアイテムであって、黄色であり、CIELAB色空間において、a*成分は0から+5の間であり、b*成分は+20から+30の間であることを特徴とする、アイテム。
【請求項16】
請求項1に記載のアイテムであって、白色であり、CIELAB色空間において、a*成分は-3から+3の間であり、b*成分は-3から+3の間であることを特徴とする、アイテム。
【請求項17】
請求項1に記載のアイテムであって、白色と黄色の間の色を有し、CIELAB色空間において、a*成分は0から+3の間であり、b*成分は0から+10の間であることを特徴とする、アイテム。
【請求項18】
請求項1に記載のアイテムであって、胴部、裏蓋、ベゼル、リューズ、ブレスレットの環、ダイヤル、針およびダイヤルのインデックスを備えるリストから選択される外部計時器の構成部品に関することを特徴とする、アイテム。
【請求項19】
装飾アイテムの製造方法であって、
a)セラミック粉末と金属結合剤粉末との混合物を製造するステップであって、前記セラミック粉末は、窒化物と、任意に酸化物および/または酸窒化物とを備え、金属結合剤粉末は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、銀からなるリストから選択される少なくとも1つの元素またはその合金を備えるステップと、
b)前記混合物を前記アイテムの形にするブランクを形成するステップと、
c)1,100から2,100℃までの温度で、好ましくは1,400から1,750℃までの温度で、30分から20時間の間、好ましくは30分から2時間の間、前記ブランクを焼結するステップと、
の連続ステップを備える方法であって、
前記方法において、前記セラミック粉末は70から97重量%、好ましくは75から97重量%、より好ましくは78から96重量%存在し、金属結合剤粉末は3から25重量%、より好ましくは4から22重量%存在することを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、ステップa)の前記混合物は、
-78から96重量%のTiNと、4から22重量%のPdまたはPt、
-80から90重量%のTiNと、10から20重量%のAg、
-75から85重量%のTiNと、15から25重量%のAu合金、
-80から90重量%のNbNと、10から20重量%のAu合金、
-85から95重量%のNbNまたはTaNと、5から15重量%のPdまたはPt、
-80から90重量%のTiNと、5から15重量%のZrOと、3から10重量%のPdまたはAu合金、
-75から85重量%のTiNと、5から15重量%のZrNと、5から15重量%のAu合金、
-70から80重量%のNbNと、5から20重量%のNbと、5から15重量%のPt、
の配合のうち1つを含むことを特徴とする、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、ステップb)は圧縮または射出によって実施されることを特徴とする、方法。
【国際調査報告】