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特表2023-540203針を把持および/または保持および/または案内するための外科用器具を製造するための方法
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  • 特表-針を把持および/または保持および/または案内するための外科用器具を製造するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】針を把持および/または保持および/または案内するための外科用器具を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/062 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A61B17/062 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512447
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2021073062
(87)【国際公開番号】W WO2022038234
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】102020210664.9
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トム シュヴァイツァー
(72)【発明者】
【氏名】コービン モッツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリアス デュッチェンドルフ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB23
4C160NN01
(57)【要約】
本発明は、針を把持および/または保持および/または案内するための外科用器具を製造するための方法であって、方法は、a)第1アーム部(10)と第2アーム部(10’)を提供することであって、前記第1アーム部(10)と前記第2アーム部(10’)はそれぞれ、凹部を有する遠位保持ジョー(30、30)を有し、それぞれ、遠位保持ジョー(30、30’)の自由端にはんだデポ領域を有する、前記提供することと、b)第1アーム部(10)の遠位保持ジョー(30)内の凹部に硬質金属インサート(40)を挿入し、第2アーム部(10’)の遠位保持ジョー(30’)内の凹部に硬質金属インサート(40’)を挿入することと、c)第1アーム部(10)と第2アーム部(10’)とを接合することであって、接合されるとき、第1アーム部(10)と第2アーム部(10’)とは、接合状態において接合部(20)において互いに対して枢動可能となるように取り付けられる、前記接合することと、d)それぞれの場合にはんだで、第1アーム部(10)のはんだデポ領域を充填し、第2アーム部(10)のはんだデポ領域を充填することと、e)それぞれの場合に、はんだを使用して、第1アーム部(10)の遠位保持ジョー(30)内の凹部に挿入された硬質金属インサート(40)を第1アーム部(10)にはんだ付けし、第2アーム部(10’)の遠位保持ジョー(30’)内の凹部に挿入された硬質金属インサート(40’)を第2アーム部(10’)にはんだ付けすることと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針を把持および/または保持および/または案内するための外科用器具(1)を製造するための方法であって、
a)第1アーム部(10)と第2アーム部(10’)を提供することであって、前記第1アーム部(10)と前記第2アーム部(10’)はそれぞれ、凹部を有する遠位保持ジョー(30、30’)を有し、それぞれ、前記遠位保持ジョー(30、30’)の自由端にはんだデポを有する、前記提供することと、
b)前記第1アーム部(10)の前記遠位保持ジョー(30)内の前記凹部に硬質金属インサート(40)を挿入し、前記第2アーム部(10’)の前記遠位保持ジョー(30’)内の前記凹部に硬質金属インサート(40’)を挿入することと、
c)前記第1アーム部(10)と前記第2アーム部(10’)とを接合することであって、前記第1アーム部(10)と前記第2アーム部(10’)とが、接合状態において関節部(20)において互いに対して枢動可能に取り付けられる、前記接合することと、
d)それぞれの場合にはんだで、前記第1アーム部(10)の前記はんだデポを充填し、前記第2アーム部(10)の前記はんだデポを充填することと、
e)それぞれの場合に、前記はんだを用いて、前記第1アーム部(10)の前記遠位保持ジョー(30)内の前記凹部に挿入された前記硬質金属インサート(40)を前記第1アーム部(10)にはんだ付けし、前記第2アーム部(10’)の前記遠位保持ジョー(30’)内の前記凹部に挿入された前記硬質金属インサート(40’)を前記第2アーム部(10’)にはんだ付けすることと、を備える、方法。
【請求項2】
ステップbを実行するとき、前記硬質金属インサート(40、40’)は、前記遠位保持ジョー(30、30’)内の前記凹部に形状嵌合的に挿入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップbを実行するとき、前記硬質金属インサート(40、40’)のノーズ状の形状嵌合セクションは、前記遠位保持ジョー(30、30’)内の前記凹部の相補的な領域に挿入され、それによって形状嵌合的に保持されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記はんだデポはそれぞれ、細長い空洞、好ましくは角無しの断面を有する前記細長い空洞の形態であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記空洞は、0.3mm~2mm、好ましくは0.8mm~1.2mmの内径、および/または、4mm~15mm、好ましくは7mm~12mmの長さを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップcは、ステップbとステップeとの間に、特にステップbとステップdとの間に実行されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
使用される前記はんだは、ニッケルはんだであり、特にNi600、Ni610、Ni612、Ni620、Ni630、Ni631、Ni650、Ni700、Ni710、Ni720、Ni800およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップdを実行するとき、前記はんだデポはそれぞれ、前記遠位保持ジョー(30、30’)の前記自由端の端面に形成された入口開口部を介して前記はんだで充填されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップdは、ステップbとステップeとの間に、特にステップcとステップeとの間に行われることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップeを実行するとき、前記はんだは、それぞれの場合、前記はんだデポ内の出口開口部から出て、前記出口開口部は、前記遠位保持ジョー(30、30’)内の前記凹部の底部へ開口することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記入口開口部と前記出口開口部は、互いに鋭角または垂直に配置されることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップeの後に、前記方法は、前記はんだデポを除去するステップfをさらに備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップfを実行するとき、前記はんだデポはそれぞれ、所定の破断線または破断点、特に、それぞれの場合に前記遠位保持ジョー(30、30’)の円周方向に形成された所定の破断線または破断点を破断することによって除去され、
前記所定の破断線または破断点はそれぞれ、好ましくは、前記はんだデポを備える前記遠位保持ジョー(30、30’)の前記自由端と、前記遠位保持ジョー(30、30’)の前記自由端に隣接する、前記遠位保持ジョー(30、30’)のはんだデポなしセクションと、の間に形成されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針、特に外科用針を把持および/または保持および/または案内するための外科用器具を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊な外科用器具、特に外科用針ホルダは、外科用針を把持し、保持し、案内するために使用される。
【0003】
外科用針ホルダは、互いに鏡像であり、関節部または関節動作点において互いに対して枢動可能に取り付けられる2つのアーム部を有する。通常、アーム部はそれぞれ、硬質金属インサートを含む遠位保持ジョーまたは遠位クランプジョーを有する。硬質金属インサートは、保持ジョーまたはクランプジョーの凹部に挿入される。硬質金属インサートのおかげで、有利には、プロファイルの摩耗の発生を遅くすることが可能である。滑りも傾きも伴わずに針を保持するために、硬質金属インサートは、十字形状のプロファイルを有することができ、プロファイルは、ピラミッドの形態に押圧されるか、またはダイヤモンド製の工具を用いてピラミッド状のチェックパターンで研削されることが可能である。
【0004】
通常、硬質金属インサートは、銀はんだを使用するいわゆるろう付けプロセスにおいて、外科用針ホルダの製造を目的とする硬化アーム部品に結合される。しかしながら、ここでの欠点は、ろう付けが微細構造の変態に関して、つまり耐食性に関しても問題となる温度を必要とすることである。これは、アーム部がマルテンサイト材料で作られている場合に特に当てはまる。別の欠点は、銀硬質はんだ自体が器具の再処理のために経時的に黒色変色を示す可能性があることである。
【0005】
代替的に、硬質金属インサートは、硬化プロセス中のいわゆる高温真空はんだ付けプロセスにおいて、外科用針ホルダの製造を目的とするアーム部に接続することができる。しかしながら、ここでの欠点は、アーム部(一般にステンレス鋼)に使用される基材またはキャリア材料と、硬質金属インサートに使用される硬質金属との異なる熱膨張係数が、硬化プロセス中の大きな温度差のために著しい影響を及ぼすことであり、そのため、硬質金属インサートを保持してクランプジョーの凹部内に正しく配置したとしても、硬化炉内で相対的な移動が起こり得ることである。
【発明の概要】
【0006】
本考案の目的は、針、特に外科用針を把持および/または保持および/または案内するための外科用器具を提供することであり、それによって、問題となっている種類の方法において生じる欠点が部分的にまたは完全に回避され、特に、針、特に外科用針を把持および/または保持および/または案内するための外科用器具が、増大された安定性と耐食性を有することとなる。
【0007】
この目的は、独立請求項1に記載の特徴を有する方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項2~13の主題である。すべての特許請求の範囲の文言は、明示的な参照によって本明細書の内容に組み込まれる。
【0008】
本発明は、針、特に外科用針を案内および/または保持および/または把持するための外科用器具を製造するための方法に関する。外科用器具は、好ましくは外科用針ホルダまたは外科用ピンセットである。
本方法は、特に時系列順に、以下のステップ、即ち、
a)第1アーム部と第2アーム部を提供することであって、第1アーム部と第2アーム部はそれぞれ、凹部を有する遠位保持ジョーを有し、それぞれ、遠位保持ジョーの自由端に、特に空洞の形態の、はんだデポを有する、前記提供することと、
b)第1アーム部の遠位保持ジョー内の凹部に硬質金属インサートを挿入し、第2アーム部の遠位保持ジョー内の凹部に硬質金属インサートを挿入することと、
c)第1アーム部と第2アーム部とを接合または接続することであって、好ましくは、第1アーム部と第2アーム部とが、接合または接続状態において関節部または関節点において互いに対して枢動可能に取り付けられる、前記接合または接続することと、
d)それぞれの場合にはんだで、第1アーム部のはんだデポを充填し、第2アーム部のはんだデポを充填することと、
e)それぞれの場合にはんだで、第1アーム部の遠位保持ジョー内の凹部に挿入された硬質金属インサートを第1アーム部にはんだ付けし、第2アーム部の遠位保持ジョー内の凹部に挿入された硬質金属インサートを第2アーム部にはんだ付けすることと、を備える。
【0009】
「はんだデポ」という表現は本発明の文脈において、はんだで充填され、充填後にはんだを維持または貯蔵するように、すなわち、はんだを利用可能にするように設計または構成されたデポ、すなわち保管または貯蔵機構を意味すると理解されるべきである。
【0010】
本発明の文脈において、「遠位」という表現は、ヒトまたは動物の身体の中心から離れていく方向を指す、または、ヒトまたは動物の身体の中心からより離れて位置することを意味することが意図される。
【0011】
本発明の文脈において、「近位」という表現は、ヒトまたは動物の身体の中心へ向かうことを指す、または、ヒトまたは動物の身体の中心により近くに位置することを意味することが意図される。
【0012】
本発明は特に、以下の利点によって区別される。遠位保持ジョーの自由端に一体化されたはんだデポを使用することによって、はんだ付けに必要なはんだの量の計量およびはんだ付けプロセス中のはんだの流れの制御が、特に有利に達成可能である。その結果、過剰なはんだと、大きすぎる硬質金属インサートと、はんだ止めの使用は不要となる。はんだの量の計量は、有利には、はんだデポの体積を介して規定することができる。はんだの流れの制御は、好ましくは毛細管現象に基づいており、それにより、はんだは、挿入された硬質金属インサートと遠位保持ジョーとの間に存在するはんだ間隙に引き込まれ、毛細管現象は、はんだ間隙の端部で絶たれ、はんだは、それ以上流れていかない。その結果、はんだの過剰およびはんだの制御されない流れに関連して導入部で説明した問題を特に有利に回避することができる。例えば、余分なはんだおよび/または突出する硬質金属インサートを研削する必要がない。代わりに、はんだ付けプロセスに続く任意の研削プロセスは、例えば、硬質金属インサートと遠位保持ジョーとの間の寸法調整や、残っているはんだ残留物の除去のためのみとすることができる。その結果、高価な超硬合金の使用量を削減することができる。したがって、本発明による方法は、改善されたプロセス信頼性によって、特に、手動作業工程量の低減によって、全体的に区別される。その結果、より高い製品品質を達成することができる。さらに、スクラップを回避し、必要とされる作業を削減することによって、製造コストを削減することができる。最後に、針を把持および/または保持および/または案内するためのより安定した外科用器具を、本発明による方法によって製造することができ、この方法によって、ストレスピークを低減し、従って、破損の危険を低減することができることが有益である。
【0013】
「硬質金属インサート」という表現は、本発明の文脈において、特に主成分として硬質金属を含む、または硬質金属からなるインサートを意味すると理解されるべきである。
【0014】
「硬質金属」という表現は、本発明の文脈において、小さな粒子として存在する硬質材料が金属または合金から構成されるマトリックスによって組み合わさって保持される金属-マトリックス複合材料を意味すると理解されるべきである。その結果、硬質金属は、純粋な硬質材料よりもいくぶん硬質ではないが、明確に丈夫である。一方、それらは、純金属と、合金と、硬化鋼よりも硬質である。
【0015】
好ましくは、第1のアーム部と第2のアーム部は、互いに鏡像である。好ましくは、第1アーム部は、近位端に第1の把持部、特に第1の指開口部を有し、第2アーム部は、近位端に第2の把持部、特に第2の指開口部を有する。
【0016】
好ましくは、第1アーム部と第2アーム部はそれぞれ、ベースまたはキャリア材料としてステンレス鋼を備える。特に、第1アーム部と第2アーム部のそれぞれでは、大部分または全体がステンレス鋼からなることができる。ステンレス鋼は、好ましくは耐食性ステンレス鋼、好ましくは耐食性マルテンサイト系ステンレス鋼、特に好ましくは材料番号1.4021を有する耐食性マルテンサイト系ステンレス鋼である。
【0017】
好ましく使用される硬質金属インサートは、コバルトおよび/またはニッケルから構成される金属マトリックスと、炭化タングステン(WC)、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化バナジウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される硬質材料と、を備える硬質金属インサートである。特に、硬質金属インサートはそれぞれ、特定の硬質金属インサートの総重量に基づいて、8重量%~20重量%のニッケル含有量および80重量%~92重量%の金属炭化物含有量、特に炭化タングステン含有量を有することができる。
【0018】
好ましくは、硬質金属インサートはまた、プロファイルされた、特に鋸歯状または歯状の表面、好ましくは十字形のプロファイルおよび/またはピラミッド状のチェックパターンを有する表面を有する。その結果、傾きおよび/または滑りを伴わない針の把持および/または保持および/または案内が、特に有利に達成可能である。
【0019】
さらに、硬質金属インサートは、包囲面取り部を有することができる。
【0020】
特に好ましくは、例えば、歯付きプロファイル、包囲面取り部、および遠位保持ジョーの凹部の形状に相補的な形状を有する硬質金属インサートは、ニアネットシェイプ形成プロセスによって製造される。
【0021】
本発明による方法によって製造された外科用器具は、ラッチ(掛け金)フックを有するロックアームの形態のロック機構(ロック)を備えることができ、ロックアームは、上述の把持部の近傍で離れていく方向に延び、互いに向かい合う。遠位保持ジョーが閉状態にあるときに、ロックアームの前記ラッチフックは、遠位保持ジョー間のねじ山、または対応する針が自動的にしっかりと保持されたままであるように、互いに形状嵌合的に係止することができる。このロック(ロック)は、把持部がともにさらに押圧され、保持ジョーの平面に沿ってわずかに離れるように動かされた結果として、使用者が外科用器具を操作することによって解除することができる。そうすると、外科用器具と遠位保持ジョーを開くことができる。
【0022】
本発明の一実施形態では、ステップbを実行するとき、硬質金属インサートは、遠位保持ジョー内の凹部に形状嵌合的に挿入される。その結果、嵌合および位置決めにおける高度な精度が達成可能である。特に、このようにして、硬質金属インサートのずれは、完全に、または少なくとも大幅に回避することができる。
【0023】
本発明のさらなる実施形態では、ステップbを実行するとき、硬質金属インサートのノーズ状の形状嵌合セクションは、遠位保持ジョー内の凹部の相補的な(すなわち、形状相補的である)領域に挿入され、それによって形状嵌合的に保持される。ノーズ形状の形状嵌合部は原則として、(硬質金属およびアーム部のベースまたはキャリア材料、好ましくはステンレス鋼の異なる材料膨張のため)ステップeを実行しながら、硬質金属インサートとアーム部または遠位保持ジョーとの間でずれを許容する。それにもかかわらず、ノーズ形状の形状嵌合部は、特に有利には硬質金属インサートの正確な位置合わせ、特にセンタリングを確実にすることができる。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、はんだデポはそれぞれ、空洞の形態、特に細長いまたは細長くされた、特にチャネル状の空洞の形態である。特に好ましくは、空洞は、遠位保持ジョーの軸方向に延びる。空洞は原則として、多角形、特に三角形、四角形、五角形または六角形の断面を有することができる。しかしながら、好ましくは、空洞は、角を有していない、特に円形、楕円形、または楕円形の断面を有する。ステップeを実行するときのはんだの流れの特に具体的な制御は、特に空洞の細長いまたは細長くされた設計によって有利に達成可能である。
【0025】
本発明のさらなる実施形態では、空洞は0.3mm~2mm、好ましくは0.8mm~1.2mmの内径、および/または4mm~15mm、好ましくは7mm~12mmの長さを有する。ステップeを実行するためのはんだの量は、空洞の内径および/または長さを介して特に有利に制御することができる。それとは別に、前項で言及した利点が準用される。
【0026】
本発明のさらなる実施形態において、ステップcは、ステップbとステップeとの間に、特にステップbとステップdとの間に実行される。
【0027】
ステップcを実行するために、第1アーム部と第2アーム部は、例えば、ねじ、特にロックねじを用いて、関節部または関節点で互いにねじ止めすることができる。
【0028】
本発明のさらなる実施形態では、ステップdを実行するとき、はんだデポはそれぞれ、遠位保持ジョーの自由端の端面に形成された入口開口部を介してはんだで充填される。はんだデポは、例えば、計量補助器、特にシリンジを用いてはんだで充填することができる。
【0029】
本発明のさらなる実施形態において、ステップdは、ステップbとステップeとの間に、特にステップcとステップeとの間に実施される。
【0030】
本発明のさらなる実施形態では、使用されるはんだは、ニッケルはんだ、すなわち、(EN ISO 17672による)ニッケル合金またはニッケル含有合金であり、特に、Ni600、Ni610、Ni612、Ni620、Ni630、Ni631、Ni650、Ni700、Ni710、Ni720、Ni800およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
ニッケルはんだNi600は、好ましくは980℃~1060℃の溶融温度範囲を有するニッケル合金であり、ニッケル合金は、以下の構成成分、即ち、14重量%のクロムと、4.5重量%のケイ素と、3.1重量%のホウ素と、4.5重量%の鉄と、0.75重量%の炭素と、からなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0032】
ニッケルはんだNi610は、好ましくは、980℃~1070℃の溶融温度範囲を有するニッケル合金であり、以下の構成成分、即ち、14重量%のクロムと、4.5重量%のケイ素と、3.1重量%のホウ素と、4.5重量%の鉄と、からなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0033】
ニッケルはんだNi612は、好ましくは、溶融温度が1055℃であるニッケル合金であり、以下の構成成分、即ち、15重量%のクロムと、3.6重量%のホウ素と、からなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0034】
ニッケルはんだNi620は、好ましくは、970℃~1000℃の溶融温度範囲を有するニッケル合金であり、以下の構成成分、即ち、7重量%のクロムと、4.5重量%のケイ素と、3.1重量%のホウ素と、3重量%の鉄と、からなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0035】
ニッケルはんだNi630は、980℃~1040℃の溶融温度範囲を有するニッケル合金であり、以下の構成成分、即ち、4.5重量%のケイ素と、3.1重量%のホウ素と、からなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0036】
ニッケルはんだNi631は、好ましくは、980℃~1070℃の溶融温度範囲を有するニッケル合金であり、以下の構成成分、即ち、3.5重量%のケイ素と、1.9重量%のホウ素と、からなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0037】
ニッケルはんだNi650は、好ましくは、1080℃~1135℃の溶融温度範囲を有するニッケル合金であり、以下の構成成分、即ち、19重量%のクロムと、10重量%のケイ素と、からなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0038】
ニッケルはんだNi700は、好ましくは、875℃の溶融温度を有するニッケル合金であり、以下の構成成分、即ち、11重量%のリンからなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0039】
ニッケルはんだNi710は、好ましくは890℃の融点を有するニッケル合金であり、以下の構成成分、即ち、14重量%のクロムと、10重量%のリンと、からなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0040】
ニッケルはんだNi720は、好ましくは、880℃~950℃の溶融温度範囲を有するニッケル合金であり、以下の構成成分、即ち、25重量%のクロムと、10重量%のリンと、からなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0041】
ニッケルはんだNi800は、好ましくは、980℃~1010℃の溶融温度範囲を有するニッケル合金であり、以下の構成成分、即ち、7重量%のケイ素と、23重量%のマンガンと、4.5重量%の銅と、からなり、残りはニッケルと任意には不純物からなる。
【0042】
上述のニッケルはんだは、本発明によれば特に好ましい、なぜならば、その溶融温度範囲または溶融温度がアーム部、特に接合されたアーム部の硬化に必要とされる温度に適合するからである。結果として、ステップeを実行するとき、アーム部、特に接合されたアーム部の硬化も、同時に特に有利に達成可能である。
【0043】
本発明のさらなる実施形態では、ステップeを実行するとき、はんだは、それぞれの場合、はんだデポ内の出口開口部から出て、この出口開口部は、遠位保持ジョー内の凹部の底部へ開口している。好ましくはステップeを実行するとき、はんだは、毛細管現象による力の作用下において、はんだデポから遠位保持ジョーの凹部の底部へと進む。このことは次に、はんだデポからのはんだが、はんだギャップから漏れることなく、硬質金属インサートと遠位保持ジョーとの間に形成されるはんだギャップ内に均一に広がり得ることを意味する。さらに、ステップeが実行されている間に、遠位保持ジョーは、互いに対してはんだ付けされることを回避できる。本発明のさらなる実施形態では、入口開口部と出口開口部は、互いに鋭角または垂直に配置される。
【0044】
好ましくは、ステップeを実行するために、アーム部、特に接合されたアーム部は、はんだデポを有する遠位保持ジョーの自由端が上方に向けられるように、懸架装置の手段によってクランプまたは懸架される。結果として、ステップeを実行するとき、はんだは、前記はんだの液化と、重力および好ましくは毛細管現象のおかげで、硬質金属インサートと遠位保持ジョーとの間に形成されたはんだギャップ内に特に良好に広がることができる。
【0045】
さらに好ましくは、ステップeは、真空炉または保護ガス炉において、例えば水素またはアルゴン雰囲気下で実行される。
【0046】
特に好ましくは、ステップeは、高温はんだ付けプロセスにおいて、特にDIN 8593-7に従って実行される。
【0047】
特にステップeによって、アーム部の硬化も特に有利に達成可能である。特に、アーム部、または本発明による手段によって製造された外科用器具は、42HRC~50HRCのHRC硬度(ロックウェル硬度)を達成することができる。したがって、特にステップeを実行する前に、独立した硬化工程は、必要ではない。これは、プロセスの流れの(さらなる)単純化であり、特に時間およびコストを節約することができることを意味する。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、ステップeが実行された後、方法は、はんだデポを除去するステップfをさらに備える。
【0049】
本発明のさらなる実施形態では、ステップfを実行するとき、はんだデポはそれぞれ、所定の破断線または所定の破断点/薄い部位を破断することによって除去される。所定の破断線または所定の破断点/薄い部位はそれぞれ、好ましくは、遠位保持ジョーの円周方向に延びる。特に好ましくは、所定の破断線または所定の破断点/薄い部位はそれぞれ、はんだデポを備える遠位保持ジョーの自由端と、遠位保持ジョーの自由端に隣接する遠位保持ジョーのはんだデポなしセクションと、の間に形成される。所定の破断線または所定の破断点/薄い部位は例えば、ミシン目、切欠き、または切り取り線の形態であってもよい。所定の破断線または所定の破断点/薄い部位は、有利には特に追加の工具を使用することなく、特にアーム部、したがって製造される外科用器具を損傷する危険性なしに、破断による(外部の)はんだデポの簡単な手作業による取り外しを可能にする。
【0050】
代替的に、ステップfを実行するとき、遠位保持ジョーの自由端は、所定の破断線または所定の破断点/薄い部位まで研削することができる。
【0051】
さらに、ステップeの後、特にステップfの後、方法は、使用される硬質金属インサートおよび/または遠位保持ジョーを研削するさらなるステップgを備えることができる。その結果、硬質金属インサートとアーム部/遠位保持ジョーとの間の公差の違いを、特に有利には無視することができ、特に、残っているはんだを除去することができる。
【0052】
本発明のさらなる利点および態様は、特許請求の範囲から、および本発明の好ましい例示的な実施形態の以下の説明から明らかになり、これらの説明は、製造例に基づいて、および図面とその関連する説明に基づいて説明される。
【0053】
(例のセクション)
(外科用針ホルダの製造方法)
外科用針ホルダのアーム部は、5.5mmの厚さを有するステンレス鋼(1.4021)のシートから製造された。その後、フライス加工を行って、関節部閉め用に凹部を製造し、また、アーム部の遠位保持ジョーの領域にそれぞれ1つの凹部を製造した。さらに、ドリル加工を行って、遠位保持ジョーの自由端に中空はんだデポを形成した。
【0054】
遠位保持ジョーの凹部に挿入される硬質金属インサートは、ニアネットシェイプ形成工程によって製造された。このようにして製造された硬質金属インサートは、それぞれ、歯付きプロファイルと、歯付きプロファイル上における包囲面取り部と、遠位保持ジョーの凹部に挿入するための一致する外形と、を有していた。例えば、プレスやMIM(金属射出成形)により、関連する硬質金属インサートを製造することができた。次に、このようにして製造された硬質金属インサートを焼結した。
【0055】
次に、硬質金属インサートを、遠位保持ジョーの凹部に形状嵌合的に挿入した。その後、アーム部をリベットピンで固定し、ロック機構によりロックした。
【0056】
硬質金属インサートをアーム部にはんだ付けするために、はんだデポを、計量装置またはシリンジによってEN ISO 17672に従って高温ニッケル系はんだで上端まで充填した。余分なはんだを取り除いた。
【0057】
次に、外科用針ホルダを、特に、アーム部の遠位保持ジョーの自由端が上方に配向されるように、懸架装置内に吊り下げた。このようにして吊り下げられた針ホルダを、硬化炉に入れた。
【0058】
次に、DIN 8593-7に従って、高温真空はんだ付けプロセスを実行した。その結果、ここで起きたことは、外科用針ホルダのアーム部への硬質金属インサートのはんだ付けだけでなく、同時に、器具のベースまたはキャリア材料(ステンレス鋼)の硬化であった。ベースまたはキャリア材料は、42HRC~50HRCの硬度を達成した。
【0059】
次に、遠位保持ジョーのはんだデポを含む自由端を除去した。前記端部は、所定の破断線を破断することによって除去され、この破断線は、遠位保持ジョーの円周方向に形成されるとともに、はんだデポを含む自由端と、隣接するはんだデポを含まない保持ジョーの部分と、の間に形成されていた。
【0060】
その後、外科用針ホルダを研削して、硬質金属インサートと針ホルダのベースまたはキャリア材料との間の公差による違いを無視し、残っているはんだを除去した。
【0061】
最後に、外科用針ホルダの表面に表面仕上げを施した。
【0062】
以下は、図面に模式的に描かれている。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明による方法によって製造できる外科用器具の一実施形態の図である。
図2】組み立てられていない状態における、図1による完成前の外科用器具の硬質金属インサートと遠位保持ジョーの詳細な図である。
図3】組み立てられた状態における、図1による完成前の外科用器具の硬質金属インサートと遠位保持ジョーの詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1に模式的に示される外科用器具1は、外科用針ホルダである。
【0065】
外科用針ホルダは、関節点20において互いに対して枢動可能に取り付けられた第1アーム部10と第2アーム部10’とを有する。好ましくは、第1アーム部10と第2アーム部10’とは互いに鏡像である。
【0066】
第1アーム部10の遠位端と第2アーム部10’の遠位端の両方は、それぞれ保持ジョー30、30’(いわゆる遠位保持ジョー)を有する。遠位保持ジョー30、30’はそれぞれ、硬質金属インサート40、40’を有する。硬質金属インサート40、40’はそれぞれ、遠位保持ジョー30、30’の凹部に形状嵌合的に挿入される。
【0067】
アーム部10、10’の近位端はそれぞれ、指開口部の形態の把持部50、50’を有する。
【0068】
遠位保持ジョー30、30’と2つの把持部50、50’との間には、2つのロックアーム62、64によって形成されるロック機構60が配置される。第1ロックアーム62は、第1アーム部10から第2アーム部10’に向かって突出している。第2ロックアーム64は、第2アーム部10’から第1アーム部10に向かって突出しており、したがって、第1ロックアーム62に取り付けられたラッチフック(図示省略)と、第2ロックアーム64に取り付けられたラッチフック65によって、2つのロックアーム62、64、したがって外科用針ホルダ1をラッチまたはロックすることができる。第1ロックアーム62のラッチフックと第2ロックアーム64のラッチフック65は、把持部50、50’が共に押圧されるときに形状嵌合ロックが達成されるように設計される。ラッチフックは例えば、サメ歯形であってもよい。
【0069】
図2は、組み立てられていない状態での、図1に示される完成前の外科用器具1の硬質金属インサート40と遠位保持ジョー30の詳細な図を模式的に示す。
【0070】
硬質金属インサート40は、好ましくは平面であり、好ましくは十字形のプロファイル41を有する。さらに、硬質金属インサート40は、ノーズ状の形状嵌合部43を有する。
【0071】
遠位保持ジョー30は、硬質金属インサート40の形状と相補的な凹部31を有する。遠位保持ジョー30の自由端33には、中空はんだデポ35(図3参照)が形成され、はんだデポ35の出口開口部36は凹部31の底部32へと開口している。
【0072】
図3は、組み立てられた状態の図1に示される完成前の外科用器具1の硬質金属インサート40と遠位保持ジョー30の詳細図を模式的に示す。
【0073】
はんだデポ35は、好ましくは遠位保持ジョー30の軸方向に延びる細長いまたはチャネル状の空洞の形態である。遠位保持ジョー30の自由端33の端面34において、はんだデポ35は、はんだデポ35をはんだで充填するための入口開口部37を有する。
【0074】
硬質金属インサート40と遠位保持ジョー30のさらなる特徴と利点に関して、図2に関する説明を完全に参照する。
【0075】
最後に、本発明による方法の利点は、以下のように再度まとめられる。即ち、ニアネットシェイプ成形法により、硬質金属インサートは、工具依存方式に、一致する外形と包囲面取り部とを有するようにすでに製造されることが可能である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】