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特表2023-540227吸着蒸留によりエチルベンゼンを分離するための複合吸着剤およびその応用
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  • 特表-吸着蒸留によりエチルベンゼンを分離するための複合吸着剤およびその応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】吸着蒸留によりエチルベンゼンを分離するための複合吸着剤およびその応用
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/13 20060101AFI20230914BHJP
   C07C 15/073 20060101ALI20230914BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20230914BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20230914BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230914BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20230914BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C07C7/13
C07C15/073
C07C15/08
B01J20/18 D
B01J20/28 Z
B01J20/34 E
B01D15/00 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513399
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-04-18
(86)【国際出願番号】 CN2021114167
(87)【国際公開番号】W WO2022042508
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202010870602.8
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】▲クィエ▼思遠
(72)【発明者】
【氏名】唐文成
(72)【発明者】
【氏名】趙明
(72)【発明者】
【氏名】田龍勝
(72)【発明者】
【氏名】高思亮
(72)【発明者】
【氏名】▲パング▼偉偉
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4H006
【Fターム(参考)】
4D017AA04
4D017BA05
4D017CA05
4D017CB01
4D017DB03
4D017EA01
4G066AA62B
4G066BA09
4G066BA20
4G066CA51
4G066DA09
4G066GA16
4G066GA32
4G066GA33
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AD17
4H006DA15
4H006DA35
(57)【要約】
吸着蒸留によりCアレーンからエチルベンゼンを分離するための複合吸着剤であって、1~50質量%のキシレン吸着剤と、50~99質量%のキャリア液体とを含み、前記キャリア液体はアルカン、アリール置換アルカン、デカリンおよびアルキル置換デカリンのうちの1つまたは2つから選択され、前記アルカンはC10-C26アルカンであり、前記アリール置換アルカンはC13-C16アリール置換アルカンである。前記複合吸着剤は他のCアレーンと比較して、エチルベンゼンの揮発性を高めることができ、したがって、吸着蒸留によりCアレーンから高純度エチルベンゼンを分離することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~50質量%のキシレン吸着剤と50~99質量%のキャリア液とを含み、前記キャリア液はアルカン、アリール置換アルカン、デカリンおよびアルキル置換デカリンのうちの1つまたは2つから選択され、前記アルカンはC10-C26アルカンであり、前記アリール置換アルカンはC13-C16アリール置換アルカンである、吸着蒸留によりCアレーンからエチルベンゼンを分離するための複合吸着剤。
【請求項2】
前記複合吸着剤は、キシレン吸着剤を5~35質量%、キャリア液を65~95質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の複合吸着剤。
【請求項3】
前記キシレン吸着剤は、カチオン部位を占めるIA族および/またはIIA族金属イオンを有するY分子篩であることを特徴とする請求項1に記載の複合吸着剤。
【請求項4】
前記キシレン吸着剤は、NaY分子篩であることを特徴とする請求項3に記載の複合吸着剤。
【請求項5】
前記Y分子篩の結晶粒子の粒径は0.1~2ミクロンであることを特徴とする請求項3または4に記載の複合吸着剤。
【請求項6】
前記アルカンはC10-C24n-アルカンであり、前記アリール置換アルカンはC13-C16ジフェニルアルカンであり、前記アルキル置換デカリンのアルキルはC-C12アルキルであり、置換アルキルの数は1~4個であることを特徴とする請求項1に記載の複合吸着剤。
【請求項7】
前記アルカンはC11-C20n-アルカンであり、前記アルキル置換デカリンのアルキルはC-C10アルキルであることを特徴とする請求項6に記載の複合吸着剤。
【請求項8】
アレーン混合物を吸着蒸留塔(3)の中央部に導入し、請求項1に記載の複合吸着剤を前記吸着蒸留塔(3)の上部に導入し、吸着蒸留の後、前記吸着蒸留塔の頂部からエチルベンゼンを排出し、キシレンに富む複合吸着剤を塔の底部から排出し、これを蒸留脱着塔(4)の中央部に入れ、蒸留脱着後、塔の上部から混合キシレンを排出し、塔の底部で再生された複合吸着剤を得て、再利用のために前記吸着蒸留塔の上部に戻すことを含む、吸着蒸留によりエチルベンゼンを分離する方法。
【請求項9】
前記吸着蒸留塔の頂部圧力は0.01~0.2MPaであり、塔板の理論数量は30~100であり、前記複合吸着剤は90~130℃の温度で塔に入り、塔の底部温度が140~250℃であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記吸着蒸留塔に入る前記複合吸着剤の前記キシレン吸着剤の、Cアレーン混合物に対する質量比は1.5~6であり、前記キャリア液の前記キシレン吸着剤に対する質量比は1.5~20であり、還流比は1~15であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記蒸留脱着塔の頂部圧力は0.01~0.15MPaであり、塔板の理論数量は20~50であり、塔の底部温度が160~280℃であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記蒸留脱着塔の還流比が0.3~3であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アレーン混合物におけるエチルベンゼンの含有量が10~85質量%であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸着蒸留分離用複合吸着剤及びその応用に関し、具体的には、前記複合吸着剤を用いた吸着蒸留によりCアレーンのエチルベンゼンを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチルベンゼンは、主にスチレンの製造に使用される重要な基礎化学物質である。現在、エチルベンゼンは、主にベンゼンとエチレンのアルキル化により製造されている。石油精製および化学工業では、豊富なエチルベンゼン資源を有する。エチルベンゼンは、改質C留分の約18質量%およびエチレン分解C留分の約50質量%を占める。この部分のエチルベンゼンを直接的に分離することができれば、エチレンとベンゼンの使用量を節約し、化学工業資源の配分を最適化することができる。さらに、C留分のエチルベンゼンを分離した後、アレーン複合プラントの原料としてエチルベンゼンを含まないまたはエチルベンゼンを大幅に減少させたキシレンを使用すると、アレーン複合プラントの機能が大幅に向上される。したがって、混合Cアレーンからエチルベンゼンを効率的に分離する新しい方法を開発する必要がある。
【0003】
現在、Cアレーンからエチルベンゼンを分離する方法は、超蒸留法、吸着法、抽出法の3種類がある。超蒸留法を用いてC留分からエチルベンゼンを分離することは、伝統的な方法である。混合Cアレーンの4種の異性体の沸点は近く、エチルベンゼンとp-キシレンの沸点差はわずか2.2℃であるため、蒸留で分離することは困難である。
【0004】
GB1198592は単一または複数の蒸留塔を使用してCアレーンを分離する方法が記載されており、これは、少なくとも250、好ましくは365の塔板および100~250:1の還流比を必要とする。この方法は、蒸留によりエチルベンゼン、オルト-キシレン、パラ-キシレンおよびメタ-キシレンの混合物を分離することができる。パラ-キシレンは、結晶化によりパラ-キシレンとメタ-キシレンの混合物からさらに分離され、他の成分は異性化される。この方法はエネルギー消費が高く、経済的利点を有さない。
【0005】
吸着によるエチルベンゼンの分離は2種類があり、1つは、Cアレーンの非エチルベンゼン成分を優先的に吸着し、ラフィネートからエチルベンゼン製品を得る。例えば、US3917734、US4079094およびUS4108915はそれぞれCa-X/Y、Sr-K-XまたはSr-Xゼオライトを用いて、Cアレーンのキシレン異性体を優先的に吸着し、ラフィネートからエチルベンゼン製品を得るが、このような吸着剤を用いて高純度のエチルベンゼン製品を得ることは困難であり、その純度は原料の組成物の影響を受けやすい。もう1つは、エチルベンゼンを優先的に吸着することである。CN100577617Cは、加圧スイング吸着法を用いて、混合Cアレーンのエチルベンゼンとパラ-キシレンとを分離する方法が開示されている。加圧スイング吸着による分離の際、吸着床層をパージするためにパージガスが使用され、使用される吸着剤はZSM-5分子篩である。このような吸着剤はp-キシレンおよびエチルベンゼンをともに吸引物とし、それらを分離することはできない。目的生成物であるp-キシレンとエチルベンゼンに対する吸着剤の選択性は低い。
【0006】
抽出蒸留方法は分離効率を向上するために、抽出剤を使用して、分離される成分の相対揮発度を増加させる方法である。現在報告されている、抽出蒸留によりエチルベンゼンを分離する溶剤は、理想的な選択性を提供することができず、分離効率は低い。
【0007】
US4292142は、抽出蒸留によりエチルベンゼンと、パラ-キシレンとを分離する方法が開示されている。無水マレイン酸および無水フタル酸は、抽出蒸留の複合溶剤として使用される。無水マレイン酸および無水フタル酸の凝固点を下げるために、酸素含有化合物をさらに添加することができる。溶剤比が1.5の条件で、エチルベンゼンとp-キシレンの相対揮発度は1.22に達する。
【0008】
US5135620は抽出蒸留によりCアレーンからエチルベンゼンを分離する方法が開示されており、炭化水素スルホン酸の銅(I)塩を共留剤として用いて、抽出蒸留によりCアレーンからエチルベンゼンを分離する。前記スルホン酸は、p-トルエンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、p-ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフトールスルホン酸またはハロゲンベンゼンスルホン酸を含む。まずは共留剤を抽出蒸留塔に導入し、エチルベンゼンに富む成分を塔の頂部から排出し、キシレンを溶解した共留剤を塔の底部から排出する。キシレンおよび共留剤は、蒸留塔を通して分離することができる。キシレンを塔の頂部から排出し、キシレンを溶解した共留剤を塔の底部から排出し、抽出蒸留塔に戻す。溶剤比が2の条件で、エチルベンゼンとp-キシレンの相対揮発度は1.16に達する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、吸着蒸留によりCアレーンからエチルベンゼンを分離するための複合吸着剤及びその応用を提供することである。前記複合吸着剤は他のCアレーンと比較してエチルベンゼンの揮発性を高めることができ、したがって、吸着蒸留によりCアレーンから高純度エチルベンゼンを分離することができる。
【0010】
本発明により提供される、吸着蒸留によりCアレーンからエチルベンゼンを分離する複合吸着剤は、1~50質量%のキシレン吸着剤と50~99質量%のキャリア液とを含み、前記キャリア液はアルカン、アリール置換アルカン、デカリンおよびアルキル置換デカリンのうちの1つまたは2つから選択される。前記アルカンはC10-C26アルカンであり、前記アリール置換アルカンはC13-C16アリール置換アルカンである。
【0011】
本発明により提供される複合吸着剤は、キシレン吸着剤を適正量のキャリア液と混合することにより得られる。吸着蒸留という方法によりCアレーンのエチルベンゼンとキシレンを分離し、高純度のエチルベンゼン製品を得ることに用いることができる。前記方法は、固定投資およびエチルベンゼンを分離するためのエネルギー消費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】吸着蒸留によりCアレーンからエチルベンゼンを分離する本発明により提供される方法の流れの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明により提供される複合吸着剤は、キシレン吸着剤およびキャリア液を含む。前記キシレン吸着剤は吸着蒸留過程でキシレンを吸着し、Cアレーンのキシレンからエチルベンゼンを容易に分離することができる。前記キャリア液体は、キシレン吸着剤を運んで流動するために使用され、Cアレーンと反応せず、且つ沸点が180℃以上であることが好ましい。このように、吸着蒸留過程において、キャリア液が吸着蒸留塔の頂部に揮発せず、キシレンを吸着した吸着剤を蒸留脱着塔に運ぶことができる。吸着剤のキシレンは、蒸留脱着塔で脱着される。キャリア液は再生されたキシレン吸着剤を運び、再利用のために吸着蒸留塔に戻す。前記吸着剤はキシレンの各異性体に対するエチルベンゼンの揮発性を著しく高めることができ、吸着蒸留によりCアレーンから高純度のエチルベンゼンを分離することができる。
【0014】
本発明の前記複合吸着剤のキシレン吸着剤は、キシレンの各異性体に対するエチルベンゼンの相対揮発度を高めるために使用され、キャリア液はキシレン吸着剤を運んで流動させるために使用される。複合吸着剤は、キシレン吸着剤を5~35質量%、キャリア液を65~95質量%を含むことが好ましい。
【0015】
キシレン吸着剤は好ましくはカチオン部位を占めるIA族および/またはIIA族金属イオンを有するY分子篩であり、前記IA族金属イオンは好ましくはLiまたはNaであり、IIA族金属イオンは好ましくはSr2+またはBa2+であり、より好ましくはNaY分子篩である。
【0016】
前記Y分子篩の結晶粒子の粒径は、好ましくは0.1~2ミクロン、より好ましくは0.2~1.5ミクロンである。
【0017】
前記キャリア液はアルカン、アリール置換アルカン、デカリンおよびアルキル置換デカリンのうちの1つまたは任意の2つから選択され、前記アルカンはn-アルカンまたはイソアルカン、好ましくはC10-C24n-アルカン、より好ましくはC11-C20n-アルカンである。
【0018】
前記アリール置換アルカンは、好ましくはC13-C16ジフェニルアルカンである。
【0019】
前記アルキル置換したデカリンのアルキルは、C-C12アルキル、好ましくはC-C10アルキル、より好ましくはC-Cアルキルであってよい。置換アルキルの数は、1~4、好ましくは1~2であることができる。
【0020】
本発明により提供される吸着蒸留によりエチルベンゼンを分離する方法は、Cアレーン混合物を吸着蒸留塔の中央部に導入する工程を含み、本発明の前記複合吸着剤は吸着蒸留塔の上部に導入され、吸着蒸留の後、エチルベンゼンは吸着蒸留塔の頂部から排出され、キシレンに富む複合吸着剤は塔の底部から排出され、蒸留脱着塔の中央部に入る。蒸留脱着後、混合キシレンは塔の頂部から排出され、再生された複合吸着剤を塔の底部で得て、再利用のために吸着蒸留塔の上部に戻す。
【0021】
前記方法において、吸着蒸留塔の頂部圧力は、0.01~0.2MPaであることが好ましい。塔板の理論数量は、好ましくは30~100、より好ましくは30~80である。複合吸着剤は好ましくは90~130℃の温度で塔に入り、塔の底部温度は好ましくは140~250℃であり、塔の頂部温度は好ましくは70~100℃である。
【0022】
吸着蒸留塔に入る複合吸着剤とCアレーン混合物との質量比は好ましくは5~30、より好ましくは8~23であり、複合吸着剤のキシレン吸着剤とCアレーン混合物との質量比は好ましくは1.5~6、より好ましくは2~5であり、キャリア液とキシレン吸着剤との質量比は好ましくは1.5~20、より好ましくは2~10である。塔の上部の還流比は、1~15が好ましく、1~8がより好ましい。
【0023】
蒸留脱着塔の塔頂圧力は好ましくは0.01~0.15MPa、より好ましくは0.01~0.06MPaであり、塔板の理論数量は好ましくは20~50、より好ましくは25~45であり、塔の底部温度は好ましくは160~280℃であり、塔の頂部温度は好ましくは60~90℃である。蒸留脱着塔の上部の還流比は好ましくは0.3~3、より好ましくは0.5~2である。
【0024】
前記方法において、前記還流比は、塔の上部に戻る材料と塔の頂部から排出される材料との質量比である。
【0025】
前記吸着蒸留塔および前記蒸留脱着塔、充填塔またはプレート塔であってもよい。
【0026】
本発明において、前記Cアレーン混合物のエチルベンゼンの含有量は好ましくは10~85質量%、より好ましくは15~60質量%である。
【0027】
吸着蒸留において、相対揮発度は、溶剤の分離効果を表すために使用され、相対揮発度(α)は、蒸留プロセスの2つの成分を分離する難易度を反映することができ、分離される溶液の揮発しにくい成分jの揮発度に対する揮発しやすい成分iの揮発度の比率を指す。気液平衡に達したときに分離される2つの成分iおよびjの相対揮発度は、式(1)を用いて計算される。
【0028】
【数1】
【0029】
式(1)において、xは平衡状態での成分の液相モル分率であり、yは平衡状態での成分の気相モル分率である。αが1である場合、2つの成分の揮発性は等しく、これは2つの成分が吸着蒸留により分離することができないことを示し、αが1より大きく、かつαの値が高いほど、吸着蒸留により2つの成分をより容易に分離することができる。
【0030】
以下、本発明を、図面を参照してさらに説明する。
【0031】
図1では、パイプライン1からのCアレーン混合物が吸着蒸留塔3の中央部に導入される。複合吸着剤はパイプライン2から吸着蒸留塔の上部に導入される。Cアレーンは塔の内部で複合吸着剤と向流接触して吸着と蒸留を行う。Cアレーンのキシレンはキシレン吸着剤により吸着される。エチルベンゼンは塔の頂部まで蒸留されて塔の頂部のパイプライン7から排出され、凝縮されてエチルベンゼン生成物を得る。キシレンを吸着した複合吸着剤は吸着蒸留塔の底部から排出され、パイプライン5を通じて蒸留脱着塔4の中央部に入る。キシレンは蒸留により複合吸着剤から脱着され、キシレン吸着剤の脱着および再生が実現される。脱着されたキシレンは蒸留脱着塔の頂部パイプライン8から排出され、凝縮されてキシレンが得られる。再生された複合吸着剤は蒸留脱着塔の底部から排出され、再利用のためにパイプライン6およびパイプライン2を介して吸着蒸留塔に戻る。前記キシレンは、基本的にエチルベンゼンを含有せず、p-キシレンを製造するための異性化原料として使用することができる。
【0032】
以下、実施例を通じて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
実施例および比較例において、Cアレーンの各組成物の相対揮発度の測定方法は以下である:測定される試料をAgilent7694のヘッドスペースサンプラーに添加し、一定の期間放置し、気液平衡に達したときにAgilent7890クロマトグラフィーを使用して前記サンプラーの気相および液相成分を測定し、式(1)により成分の相対揮発度を計算する。
【0034】
実施例1
エチルベンゼン、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレンを同じ質量比で混合して原料油としてのCアレーン混合物を配合した。原料油のエチルベンゼンの含有量は25質量%である。キシレン吸着剤として結晶粒子の粒径が0.2~1ミクロンのNaY分子篩粉末を使用し、キャリア液としてn-テトラデカンを使用した。キシレン吸着剤をキャリア液と混合し、キシレン吸着剤含有量が20質量%、キャリア液含有量が80質量%の複合吸着剤を作製した。
【0035】
複合吸着剤および原料油をヘッドスペースサンプラーに添加した。ここで、キャリア液/キシレン吸着剤/原料油の質量比は8:2:1であり、複合吸着剤の原料油に対する質量比は10:1であった。また、80℃で45分間静置して気液平衡を達成した。組成分析のために、気相および液相をそれぞれ採取した。複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの測定された相対揮発度を表1に示す。
【0036】
実施例2
使用されたキャリア液/キシレン吸着剤/原料油の質量比が8:3:1であり、複合吸着剤の原料油に対する質量比が11:1であることを除いて、実施例1の方法と同様にして、複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0037】
実施例3
使用されたキャリア液/キシレン吸着剤/原料油の質量比が8:4:1であり、複合吸着剤の原料油にたいする質量比が12:1であることを除いて、実施例1の方法と同様にして、複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0038】
実施例4
使用されたキャリア液/キシレン吸着剤/原料油の質量比が13:2:1であり、複合吸着剤の原料油に対する質量比が15:1であることを除いて、実施例1の方法と同様にして、複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0039】
実施例5
使用されたキャリア液/キシレン吸着剤/原料油の質量比が18:2:1であり、複合吸着剤の原料油に対する質量比が20:1であることを除いて、実施例1の方法と同様にして、複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0040】
実施例6
使用されたキャリア液がn-ウンデカンであることを除いて、実施例1の方法と同様にして、複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0041】
実施例7
使用されたキャリア液がn-ヘキサデカンであることを除いて、実施例1の方法と同様にして、複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0042】
実施例8
使用されたキャリア液がジフェニルメタンであることを除いて、実施例1の方法と同様にして、複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0043】
実施例9~10
使用されたキャリア液がそれぞれブチルデカリンおよびデカリンであることを除いて、実施例1の方法と同様にして、複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0044】
実施例11
使用された原料油のエチルベンゼン/p-キシレン/o-キシレン/m-キシレンの質量比が1:2:1:1であり、原料油のエチルベンゼン含有量が20質量%であることを除いて、実施例1の方法と同様にして、複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0045】
実施例12
使用された原料油のエチルベンゼン:p-キシレン:o-キシレン:m-キシレンの質量比が2:1:1:1であり、原料油のエチルベンゼン含有量が40質量%であることを除いて、実施例1の方法と同様にして、複合吸着剤の添加後の原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
比較例1
複合吸着剤を使用しないことを除いて、実施例1の方法と同様にして、原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0048】
比較例2
複合吸着剤を使用しないことと、使用された原料油のエチルベンゼン:p-キシレン:o-キシレン:m-キシレンの質量比が1:2:1:1であることを除いて、実施例1の方法と同様にして、原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0049】
比較例3
複合吸着剤を使用しないことと、使用された原料油のエチルベンゼン:p-キシレン:o-キシレン:m-キシレンの質量比が2:1:1:1であることを除いて、実施例1の方法と同様にして、原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0050】
比較例4
原料油にn-テトラデカンのみを添加し、n-テトラデカンの原料油に対する質量比が8:1であることを除いて、実施例1の方法と同様にして、原料油のキシレン各異性体に対する、エチルベンゼンの相対揮発度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0051】
表1から分かるように、本発明の前記複合吸着剤を使用することにより、複合吸着剤を使用しない、またはキャリア液のみを使用する方法と比較して、エチルベンゼンのキシレン各異性体に対する相対揮発度を著しく高めることができ、これは、本発明の複合吸着剤を使用することによりCアレーンからエチルベンゼンを分離することができることを示している。
【0052】
実施例13
アレーン中のエチルベンゼンとキシレンとを、実施例1の複合吸着剤と原料油を用いて、図1に示す流れで分離した。吸着蒸留塔及び蒸留脱着塔の操作条件及び得られた生成物の純度を表2に示す。
【0053】
比較例5
一般的な蒸留塔を用いて、実施例1の原料油のエチルベンゼンとキシレンを分離した。蒸留塔の操作条件及び得られた生成物の純度を表2に示す。
【0054】
比較例6
抽出蒸留の方法を使用してCアレーンからエチルベンゼンを分離した。Cアレーンを抽出蒸留塔の中央部に導入し、抽出溶剤を塔の上部に導入した。抽出蒸留後、エチルベンゼンを塔頂から排出した。キシレンに富むリッチ溶剤を塔の底部から排出し、溶剤回収塔に入れた。蒸留後、キシレンを塔の頂部から排出し、希薄溶剤を塔の底部から排出して抽出蒸留塔に戻した。抽出溶剤として1,2,4-トリクロロベンゼンを使用した。Cアレーン原料油を実施例1の方法で配合した。抽出蒸留塔及び溶剤回収塔の操作条件及び得られた生成物の純度を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例14
実施例1の前記複合吸着剤を使用し、原料油は改質生成油C留分であり、エチルベンゼン:p-キシレン:m-キシレン:o-キシレンの質量比は18:19:39:24であった。C留分のエチルベンゼンとキシレンとを図1に示す流れで分離した。吸着蒸留塔及び蒸留脱着塔の操作条件及び得られた生成物の純度を表3に示す。
【0057】
比較例7
一般的な蒸留塔を使用して実施例14の原料油のエチルベンゼンとキシレンとを分離した。蒸留塔の操作条件及び得られた生成物の純度を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
実施例15
実施例1の前記複合吸着剤を使用し、原料油はエチレンクラッキングガソリンC留分であり、エチルベンゼン:p-キシレン:m-キシレン:o-キシレンの質量比は52:10:23:15であった。図1に示す流れでC留分のエチルベンゼンとキシレンとを分離した。吸着蒸留塔及び蒸留脱着塔の操作条件及び得られた生成物の純度を表4に示す。
【0060】
比較例8
通常の蒸留塔を使用して実施例15の原料油のエチルベンゼンとキシレンとを分離した。蒸留塔の操作条件及び得られた生成物の純度を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
表2~4から分かるように、一般的な蒸留塔、または抽出蒸留を単独に使用してエチルベンゼンを分離することに比べて、本発明の吸着蒸留を利用してCアレーンからエチルベンゼンを分離することは、エネルギー消費量を大幅に低減することができ、エチルベンゼン及びキシレンの分離効率を向上させることができる。
図1
【国際調査報告】