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特表2023-540229再生可能な原料の水素化処理のための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】再生可能な原料の水素化処理のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20230914BHJP
   B01J 23/883 20060101ALI20230914BHJP
   B01J 27/051 20060101ALI20230914BHJP
   B01J 23/882 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
B01J23/883 M
B01J27/051 M
B01J23/882 M
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023513417
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 TH2021000051
(87)【国際公開番号】W WO2022055437
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】10202008815X
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520235977
【氏名又は名称】グリーン テクノロジー リサーチ シーオー.,エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】GREEN TECHNOLOGY RESEARCH CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】シリミトラトラクル,スパコーン
(72)【発明者】
【氏名】ソッドサイ,ナッタポン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA07A
4G169BB08A
4G169BC10A
4G169BC29A
4G169BC53A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD15A
4G169CB35
4G169CB62
4G169DA05
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169FA08
4G169FB50
4G169ZA04A
4G169ZA08A
4G169ZA12A
4G169ZA13A
4G169ZA16A
4G169ZA19A
4G169ZA41A
4G169ZA42A
4H129BA03
4H129BB05
4H129BC15
4H129BC16
4H129KA08
4H129KB03
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC04X
4H129KC14X
4H129KC16X
4H129KC17X
4H129KC21X
4H129KD15X
4H129KD15Y
4H129KD24X
4H129KD24Y
4H129KD38X
4H129NA37
4H129NA44
4H129NA45
(57)【要約】
本発明は、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料から1つ以上の炭化水素生成物を製造する方法を提供する。再生可能な原料と希釈剤を混合し、希釈原料を形成する工程;希釈原料に水素ガスを供給又は提供し、水素ガスが希釈原料に溶解して溶存水素が富化された希釈原料を形成する工程;溶存水素を富化した希釈原料を、少なくとも反応帯を有し、少なくとも触媒床を備えた反応器に、予め決定された条件下で少なくとも導入して、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに(例えば、1つ以上の蒸留ユニットおよび1つ以上の吸着ユニットを使用することにより)処理することができる反応流出物を形成する工程を含む方法である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料から1つ以上の炭化水素生成物を製造する方法であって、該方法は、
希釈原料を形成するため、再生可能な原料を希釈剤で希釈する工程;
希釈原料を水素ガス及び硫化剤と接触させて、溶存水素が富化された反応流出物を形成するため、水素ガスが希釈原料に溶解して溶存水素が富化された希釈原料を形成する工程;
溶存水素を富化した希釈原料を触媒床を含む反応器に導入して、溶存水素が富化された反応流出物を形成する工程;
さらに、反応流出物を水素ガス及び硫化剤と接触させて、水素ガスを反応流出物に溶解し、溶存水素が富化された反応流出物を形成する工程;
さらに、溶存水素が富化された反応流出物を、触媒床を含む少なくとも追加の反応器に導入することで、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに処理することができる更なる反応流出物を調製する工程を備え、
さらに、反応器中の未溶解水素のガス容積分率がわずか0.1から0.25であることを特徴とする、再生可能な原料から炭化水素生成物を製造する方法。
【請求項2】
予め決定された量で、各反応器に、硫化剤および/または水素ガスを通過させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高温高圧分離器を使用して、反応流出物または更なる反応流出物からガス状副産物を分離する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応流出物又は更なる反応流出物から副産物を分離し、さらに反応流出物又は更なる反応流出物から希釈剤を回収するために、反応流出物又は更なる反応流出物を、順次配置された分離器に供給して、水素化処理生成物を得る工程;
回収された希釈剤を希釈剤源に再注入する工程;及び、
水素化処理生成物を精製するために、水素化処理生成物を1つ以上の蒸留カラム及び吸着ユニットに供給して、1以上の精製炭化水素生成物を得る工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
再生可能な原料は、動物油、植物油、または1つ以上の動物油と1つ以上の植物油との組み合わせである、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
再生可能な原料は、獣脂油、鯨油、魚油、漂白パーム油(BPO)、精製漂白脱臭パーム油(RBDPO)、パームオレイン、パームステアリン、パーム脂肪酸留出物、キャノーラ油、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、ジャトロファ油、バラニテス油、菜種油、トール油、麻種子油、オリーブ油、亜麻仁油、マスタード油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、またはこれら任意の2種以上の油の組み合わせである、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
再生可能な原料は、新鮮な油、使用済み油、廃油、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
希釈剤は、n-パラフィンを含む、または、希釈剤は、12個の炭素原子を含むn-パラフィンを含む、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
再生可能な原料に対する希釈剤の比率は、約99重量%の希釈剤/1重量%の原料から約50重量%の希釈剤/50重量%の原料である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
反応器内の触媒床の容積に対する水素ガスの比は、3または900Nm/mの範囲にあり、および/または再生可能な原料に対する水素ガスの比は、約10から約700Nm/m(約0.001から約0.054g/g)の範囲である、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
触媒は、NiおよびMoからなる群から選択される2つの遷移金属のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
触媒はさらに別の遷移金属またはV族元素を含み、および/または触媒は、担体上に担持される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
担体は、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、およびアルミナとシリカとの混合物(Al-SiO)からなる群から選択される酸性多孔質固体担体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
担体は、フッ化アルミナ、ZSM-12、ZSM-21、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-32、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-57、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-41、MAPO-11、MAPO-31、ゼオライトY、ゼオライトL又はβ-ゼオライトである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料から1つ以上の炭化水素生成物を製造するためのシステムであり、触媒床を含む反応器を含むシステムであって、
反応器は、溶存水素を富化した希釈原料を反応させて、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに処理することができる反応流出物を生成するためのものであり、
溶存水素を富化した希釈原料は、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料を希釈剤を用いて希釈して希釈原料を形成し、次いで、硫化剤を添加し、そして希釈原料に水素ガスを通過させて、水素ガスを希釈原料に溶解させて、溶存水素が富化された希釈原料を形成することによって調製され、
さらに、反応流出物を水素ガスおよび硫化剤とさらに接触させて溶存水素が富化された反応流出物を形成するため、触媒床を含む追加の反応器を少なくとも含み、追加の反応器は、溶存水素を富化した反応流出物を反応させて、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに処理することができる更なる反応流出物を生成するためのものであり、
そして、反応器中の未溶解水素のガス容積分率はわずか0.1から0.25であることを特徴とする、システム。
【請求項16】
反応器または追加の反応器がさらに使用され、硫化剤、および/または水素ガスが、予め決定された量で反応器を通過する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
反応流出物または更なる反応流出物からガス状副産物を分離するため、各反応器または追加の反応器の後に配置された高温高圧分離器をさらに備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
反応流出物または更なる反応流出物から副産物を分離し、反応流出物または更なる反応流出物から希釈剤を回収して、水素化処理物を得るため、順次配置された1つ以上の分離器を有し、
1つ以上の精製炭化水素生成物を得るために水素化処理生成物を精製するための1つ以上の蒸留カラム及び吸着ユニットをさらに備える、請求項15乃至17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
再生可能な原料は、動物油、植物油、又は1つ以上の動物油と1つ以上の植物油との組み合わせである、請求項15乃至18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
再生可能な原料は、獣脂油、鯨油、魚油、漂白パーム油(BPO)、精製漂白脱臭パーム油(RBDPO)、パームオレイン、パームステアリン、パーム脂肪酸留出物、キャノーラ油、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、ジャトロファ油、バラニテス油、菜種油、トール油、麻種子油、オリーブ油、亜麻仁油、マスタード油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、またはこれら任意の2種以上の油の組み合わせである、請求項15乃至18のいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
再生可能な原料は、新鮮な油、使用済み油、廃油、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項15乃至18のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
希釈剤はn-パラフィンを含む、または希釈剤は12個の炭素原子を含むn-パラフィンを含む、請求項15乃至18のいずれかに記載のシステム。
【請求項23】
再生可能な原料に対する希釈剤の比率は、約99重量%の希釈剤/1重量%の原料から約50重量%の希釈剤/50重量%の原料である、請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
反応器内の触媒床の容積に対する水素ガスの比は、3または900Nm/m3の範囲であり、および/または再生可能な原料に対する水素ガスの比は、約10から約700Nm/m(約0.001から約0.054g/g)の範囲である、請求項15乃至23のいずれかに記載のシステム。
【請求項25】
触媒は、NiおよびMoからなる群から選択される2つの遷移金属のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項26】
触媒は、別の遷移金属またはV族元素をさらに含み、および/または触媒は、担体上に担持される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
触媒の担体は、アルミナ(AlO)、シリカ(SiO)およびアルミナとシリカとの混合物(Al-SiO)からなる群から選択される酸性多孔質固体担体である、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
触媒の担体は、フッ化アルミナ、ZSM-12、ZSM-21、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-32、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-57、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-41、MAPO-11、MAPO-31、ゼオライトY、ゼオライトL又はβ-ゼオライトである、請求項26に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な原料(feedstock)の水素化処理のための方法及びシステムに関する。特に、再生可能な原料は、トリグリセリド、遊離脂肪酸、またはそれらの組み合わせを含む。
【背景技術】
【0002】
本発明の理解を助けるため、本発明の背景について、以下に述べる。しかしながら、この論述は、本出願以前に、出版されたり、知られたり、いかなる管轄区における一般常識の一部であった、いかなる材料に関する承認や認可されていることとは異なることを評価すべきである。
【0003】
水素化プロセスは、典型的には、水素化処理および水素化分解の2つの別個のプロセスを指す。水素化処理は、水素ガスまたは水素含有ガスと、適切な触媒を用いて油分子複合体をより小さな炭化水素分子に分解するプロセスである。一般に、水素化処理プロセスは、トリクルベッド反応器において行われる三相プロセスであり、トリクルベッド反応器は、選定された再生可能な原料(例えば、動物油、動物性脂肪または植物油など)が、高温及び高圧下、また、水素ガスの存在(反応器内で連続的に流れる)下で、反応器に充填された触媒又は適切な触媒と接触するように構成されている。
【0004】
反応器では、水素ガスが再生可能な原料に接触すると、水素ガスは、何らかの反応が起こる前に、一定の条件下(例えば、約200℃から約400℃の範囲の温度および約20バール(bar)から約50バールの範囲の圧力)で再生可能な原料中に溶解する。それにもかかわらず、再生可能な原料中の水素ガスの低溶解性は、水素化処理プロセスに制限を課すため、再生可能な原料との反応を行うための水素の量が不十分となるシナリオを与える。
【0005】
上記の制限を緩和するために、従来の水素化処理プロセスは、供給される水素ガスの多大な過剰な量を必要とし、これはまた、生成物流と一緒に反応器を出た未使用の水素ガスが大量となることに繋がる。未使用の水素ガスは、回収され、反応器内に再注入することにより再利用することができるが、圧縮機を用いて圧縮し、反応器と少なくとも同等の圧力まで昇圧する必要があり、水素化処理工程の運転コストが増大する。
【0006】
上記に鑑み、上述した欠点の少なくとも1つを改善する水素化処理プロセスを開発する必要性が存在する。また、高純度のn-パラフィンを有する相転移材料、工業用溶剤及びバイオナフサを含む所望の炭化水素生成物を調製するため、再生可能な原料を水素化処理するためのプロセスを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の態様の1つは、エンジン、自動車部品、建物、ならびに他の用途での使用に適した炭化水素生成物を調製するためにさらに処理することができる水素化処理油を製造することである。
【0008】
本発明の別の態様は、出発原料又は原材料として石油化学原料を用いることなく、水素化処理プロセスから水素化処理油を製造することである。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、高純度の水素化処理油を製造し、または高純度の炭化水素生成物を生成するためにさらに処理することができる水素化処理油を製造することである。
【0010】
しかも、本発明の別の態様は、大過剰な量の水素ガスの存在なしに、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む原料を水素化処理するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料から1つ以上の炭化水素生成物を製造する方法であって、該方法は、希釈原料を形成するため、再生可能な原料を希釈剤で希釈する工程;希釈原料を水素ガス及び硫化剤と接触させて、水素ガスが希釈原料に溶解して溶存水素が富化された希釈原料を形成し、溶存水素を富化した希釈原料を触媒床を含む反応器に導入して、溶存水素が富化された反応流出物(reaction effluent)を形成する工程;さらに、反応流出物を水素ガス及び硫化剤と接触させて、水素ガスを反応流出物に溶解し、溶存水素が富化された反応流出物を形成する工程;さらに、溶存水素が富化された反応流出物を、触媒床を含む少なくとも追加の反応器に導入することで、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに処理することができる更なる反応流出物を調製する工程を備え、さらに、反応器中の未溶解水素のガス容積分率がわずか0.1から0.25であることを特徴とする、再生可能な原料から炭化水素生成物を製造する方法である。
【0012】
いくつかの実施形態では、該方法は、予め決定された量で各反応器に水素ガスを通過させる工程をさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、該方法は、高温高圧分離器を使用して、反応流出物または更なる反応流出物からガス状副産物を分離する工程をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、希釈工程と接触工程とを同時に行うことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、該方法は、反応流出物または更なる反応流出物から希釈剤を回収し、回収された希釈剤を希釈剤源に再注入する工程をさらに含む。
【0016】
いくつかの実施態様では、反応流出物又は更なる反応流出物から副産物を分離し、さらに反応流出物又は更なる反応流出物から希釈剤を回収するために、反応流出物又は更なる反応流出物を、順次配置された分離器に供給して、水素化処理生成物を得る工程;及び、水素化処理生成物を精製するために、水素化処理生成物を1つ以上の蒸留カラム及び吸着ユニットに供給して、1つ以上の精製炭化水素生成物を得る工程を、更に備える。
【0017】
いくつかの実施形態では、再生可能な原料は、動物油、植物油、またはそれらの組み合わせである。
【0018】
いくつかの実施形態では、再生可能な原料は、1つ以上の動物油と1つ以上の植物油との組み合わせである。
【0019】
いくつかの実施形態では、再生可能な原料は、獣脂油(tallow oil)、鯨油、魚油、漂白パーム油(bleached palm oil)(BPO)、精製漂白脱臭パーム油(refined bleached deodorized palm oil)(RBDPO)、パームオレイン、パームステアリン、パーム脂肪酸留出物、キャノーラ油、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、ジャトロファ油、バラニテス油、菜種油、トール油、麻種子油(hempseed oil)、オリーブ油、亜麻仁油、マスタード油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、またはこれら任意の2種以上の油の組み合わせである。
【0020】
いくつかの実施形態では、再生可能な原料は、新鮮な油、使用済み油、廃油、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0021】
いくつかの実施形態では、希釈剤は、n-パラフィンを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、希釈剤は、12個の炭素原子を含むn-パラフィンを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、再生可能な原料に対する希釈剤の比率は、約99重量%の希釈剤/1重量%の原料から約50重量%の希釈剤/50重量%の原料である。
【0024】
いくつかの実施形態では、反応器内の触媒床の容積に対する水素ガスの比は、3または900Nm/mの範囲にある。
【0025】
いくつかの実施形態では、再生可能な原料に対する水素ガスの比は、約10から約700Nm/m(約0.001から約0.054g/g)の範囲である。
【0026】
いくつかの実施形態では、触媒は、NiMo、CoMo、NiCoMoおよびNiWからなる群から選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、触媒は、NiおよびMoからなる群から選択される2つの遷移金属のうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、触媒はさらに別の遷移金属またはV族元素を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、触媒は、担体上に担持される。
【0030】
いくつかの実施形態では、担体は、アルミナ(AI)、シリカ(SiO)、およびアルミナとシリカとの混合物(AI-SiO)からなる群から選択される酸性多孔質固体担体である。
【0031】
いくつかの実施形態では、担体は、フッ化アルミナ、ZSM-12、ZSM-21、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-32、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-57、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-41、MAPO-11、MAPO-31、ゼオライトY、ゼオライトL又はβ-ゼオライトである。
いくつかの実施形態では、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料から1つ以上の炭化水素生成物を製造するためのシステムは、触媒床を含む反応器を含むシステムであって;反応器は、溶存水素を富化した希釈原料を反応させて、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに処理することができる反応流出物を生成するためのものであり;溶存水素を富化した希釈原料は、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料を希釈剤を用いて希釈して希釈原料を形成し、次いで、硫化剤を添加し、そして希釈原料に水素ガスを通過させて、水素ガスを希釈原料に溶解させて、溶存水素が富化された希釈原料を形成することによって調製され;さらに、反応流出物を水素ガスおよび硫化剤とさらに接触させて溶存水素が富化された反応流出物を形成するため、触媒床を含む追加の反応器を少なくとも含み、追加の反応器は、溶存水素を富化した流出物を反応させて、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに処理することができる更なる反応流出物を生成するためのものであり;そして、反応器中の未溶解水素のガス容積分率はわずか0.1から0.25である、システムである。
【0032】
いくつかの実施形態では、反応器または追加の反応器がさらに使用され、硫化剤が添加され、水素ガスが予め決定された量で反応器を通過する。
【0033】
いくつかの実施形態では、各反応器または追加の反応器の後に配置された高温高圧分離器は、反応流出物または更なる反応流出物からガス状副産物を分離する。
【0034】
いくつかの実施形態では、該システムは、反応流出物または更なる反応流出物から副産物を分離し、反応流出物または更なる反応流出物から希釈剤を回収して、水素化処理物を得るため、順次配置された1つ以上の分離器を有し;また、1つ以上の精製炭化水素生成物を得るために水素化処理生成物を精製するための1つ以上の蒸留カラムや吸着ユニットをさらに備える。
【0035】
いくつかの実施形態では、システムで使用される再生可能な原料は、動物油、植物油、又はこれらの組み合わせである。
【0036】
いくつかの実施形態では、システムで使用される再生可能な原料は、1つ以上の動物油と1つ以上の植物油との組み合わせである。
【0037】
いくつかの実施形態では、システムで使用される再生可能な原料は、獣脂油(tallow oil)、鯨油、魚油、漂白パーム油(BPO)、精製漂白脱臭パーム油(RBDPO)、パームオレイン、パームステアリン、パーム脂肪酸留出物、キャノーラ油、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、ジャトロファ油、バラニテス油、菜種油、トール油、麻種子油、オリーブ油、亜麻仁油、マスタード油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、またはこれら任意の2種以上の油の組み合わせである。
【0038】
いくつかの実施形態では、システムで使用される再生可能な原料は、新鮮な油、使用済み油、廃油、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0039】
いくつかの実施形態では、システムで使用される希釈剤は、n-パラフィンを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、システムで使用される希釈剤は、12個の炭素原子を含むn-パラフィンを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、システムで使用される再生可能な原料に対する希釈剤の比率は、約99重量%の希釈剤/1重量%の原料から約50重量%の希釈剤/50重量%の原料である。
【0042】
いくつかの実施形態では、システムで使用される反応器内の触媒床の容積に対する水素ガスの比は、3または900Nm/mの範囲である。
【0043】
いくつかの実施形態では、システムで使用される再生可能な原料に対する水素ガスの比は、約10から約700Nm/m(約0.001から約0.054g/g)の範囲である。
【0044】
いくつかの実施形態では、システムで使用される触媒は、NiMo、CoMo、NiCoMoおよびNiWからなる群から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、システムで使用される触媒は、NiおよびMoからなる群から選択される2つの遷移金属のうちの少なくとも1つを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、システムで使用される触媒は、別の遷移金属またはV族元素をさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、システムで使用される触媒は、担体上に担持される
【0048】
いくつかの実施形態では、システムで使用される触媒の担体は、アルミナ(AlO)、シリカ(SiO)およびアルミナとシリカとの混合物(Al-SiO)からなる群から選択される酸性多孔質固体担体である。
【0049】
いくつかの実施形態では、システムで使用される触媒の担体は、フッ化アルミナ、ZSM-12、ZSM-21、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-32、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-57、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-41、MAPO-11、MAPO-31、ゼオライトY、ゼオライトL又はβ-ゼオライトである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図面の簡単な説明を記載する。
【0051】
本発明を以下の図面を参照して説明するが、例示であり、限定されるものではない。
【0052】
図1図1は、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはこれらの組み合わせを含む原料を水素化処理するための本発明の方法の一例を示す概略図である。
【0053】
図2図2は、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはこれらの組み合わせを含む原料を水素化処理して、相転移材料および工業用溶媒を含む生成物を調製するための本発明の方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。本明細書で使用される用語は、実施形態を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。更に、別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。明確性および一貫性のために、図面全体にわたって同じ参照番号が使用される。
【0055】
本明細書において、用語「相転移材料(PCM)」は、16個の炭素原子、17個の炭素原子、及び18個の炭素原子を有するn-パラフィンを本質的に含む直鎖炭化水素化合物を意味する。
【0056】
本明細書において、用語「実質的に含まない」、「ほぼ含まない」又はこれらの類義語が、化合物(例えば、水素化処理生成物流又は相転移材料)中の副生成物(例えば、硫黄、オレフィン、芳香族、アルコール、またはそれらの組み合わせ)の文脈で使用される場合、その化合物中の100ppmw未満、50ppmw未満、20ppmw未満、10ppmw未満、5ppmw未満、または1ppmw未満の量を意味する。
【0057】
本明細書において、文脈が他の意味を必要としない限り、用語「含む」、又はその変形である「備える」のような単語は、特定の整数または整数のグループの包含を意味するが、他の任意の整数または整数のグループの除外を意味するものではないと理解される。
【0058】
本明細書全体を通して、文脈が他の意味を必要としない限り、用語「含有する」等の単語は、特定の整数または整数のグループの包含を意味するが、他の任意の整数または整数のグループの除外を意味するものではないと理解される。
【0059】
本明細書において、用語「約」は、典型的には、記載された値の+/-5%、より典型的には、記載された値の+/-4%、より典型的には、記載された値の+/-3%、より典型的には、記載された値の+/-1%、さらに典型的には、記載された値の+/-0.5%を意味する。
【0060】
本開示を通じて、特定の実施形態は、範囲フォーマットで開示される。範囲フォーマットの記述は、単に利便性および簡潔性のために過ぎず、開示された範囲の範囲の限定として解釈されるべきではない。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、全ての可能なサブ範囲も具体的に開示していると考えられるべきである。例えば、1~6との範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等のサブ範囲、並びにその範囲内の個々の数字、例えば1、2、3、4、5及び6を具体的に開示すると考えられるべきである。また、数値範囲は整数に限定されず、小数も含むことができる。これは、範囲の広さに関わらず適用される。
【0061】
本発明の他の態様は、図面と関連して、本発明の特定の実施形態の以下の説明を参照することにより、当業者には明らかである。
【0062】
本発明は、従来の三相水素化処理工程とは異なる、二相水素化処理方法を提供する。特に、二相水素化処理方法は、液相の再生可能な原料および固体触媒(いくつかの実施形態では触媒)を少なくとも含み、該液相の再生可能な原料は反応器内で連続相である。さらに特には、二相水素化処理方法は、少なくとも、再生可能な原料を希釈剤と混合して希釈原料を形成し;希釈原料に硫化剤を添加し;希釈原料に水素ガスを供給または提供して、水素ガスが希釈原料に溶解して溶存水素が富化された希釈原料を形成し;溶存水素が富化された希釈原料を、予め決定した条件下(例えば、水素化を好適に実施できるような条件下)で、少なくとも1つの触媒床を備える少なくとも1つの反応帯を有する少なくとも1つの反応器に供給することを少なくとも含み、これにより、本質的にn-パラフィンを含む炭化水素化合物である反応流出物を調製する。この反応流出物をさらに処理して(例えば、1つ以上の蒸留ユニット及び1つ以上の吸着ユニットを使用することにより)、工業用溶媒、相転移材料(PCM)又は双方を調製することも可能である。二相水素化処理方法において複数の反応器が使用される場合、先行反応器(例えば、第2の反応器)からの反応流出物流は、後続反応器(例えば、第3の反応器)に供給される前に、水素ガスおよび硫化剤と接触することができ、したがって、水素ガスは、水素化処理プロセスにおいて反応した水素を補充するために反応物流出流に溶解することができ、触媒の効率を維持することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明において水素化処理される再生可能な原料は、任意の植物または動物由来の油、脂肪、遊離脂肪酸などであり得る。特に、再生可能な原料は、トリグリセリドまたは遊離脂肪酸を含有するもの等の任意の油であってよく、ここで、主要成分は、C12~C20部分を有する脂肪族炭化水素鎖を含む。
【0064】
いくつかの好ましい実施形態では、再生可能な原料は、植物および/または動物由来の油であってよく、1つ以上のトリグリセリドを含んでもよい。更に、再生可能な原料は、トリグリセリドの混合物を含んでもよい。1つ以上のトリグリセリドを含む再生可能な原料は、松、菜種、ヒマワリ、ジャトロファ、コステレチア属の植物、及びこれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される植物に由来することができる。1つ以上のトリグリセリドを含む再生可能な原料はまた、キャノーラ油、パーム油、ヤシ油、パーム核油、ヒマワリ油、大豆油、粗トール油、及びこれらのうちのいずれか2つ以上の組み合わせからなる群から選択される植物油であってもよい。更に、1つ以上のトリグリセリドを含む再生可能な原料は、家禽脂、黄色グリース、獣脂、使用済の植物油またはバイオマスの熱分解からの油を含むことができる。更に、再生可能な原料は、藻類油などの海産油であってもよい。
【0065】
いくつかの他の好ましい実施形態では、再生可能な原料は、トリグリセリド、遊離脂肪酸、またはそれらの組み合わせを含む。再生可能な原料は、植物由来の油、動物由来の油またはそれらの組み合わせであってもよく、ここで、油は、C12からC13の炭素原子を有する脂肪族炭化水素鎖を含有する主成分を含む。トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料は、牛脂油、鯨油および魚油などの動物油;漂白パーム油(BPO)、精製漂白脱臭パーム油(RBDPO)、パームオレイン、パームステアリン、パーム脂肪酸留出物、キャノーラ油、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、砂漠植物からの油(例えば、ジャトロファ油、バラニテス油など)、菜種油、トール油、麻種子油、オリーブ油、亜麻仁油、マスタード油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、植物油は、粗植物油(原油)、精製植物油、または食用植物油であってもよい。特定の実施形態では、再生可能な原料は、新鮮な油、使用済み油、廃油、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。さらに、再生可能な原料の選択は、可用性およびコストに依存し、これにより、二段階の水素化処理プロセスを柔軟に適用することができる。
【0066】
上記したように、本発明は、希釈剤を再生可能な原料に提供又は供給して希釈原料とすることが必要である。希釈原料を形成することにより、反応器に供給する前に水素ガスを希釈原料に溶解させることが容易になる。希釈原料の形成はまた、水素化処理プロセスに必要な水素ガスが溶存水素の形態で希釈原料中に存在するので、反応器に多くの過剰量の水素ガスを供給する必要がない。
いくつかの実施形態では、水素ガスは反応器に供給する前に希釈原料に溶解するが、希釈原料中の水素の溶解性は、表1に示されるように、低いままである。従って、水素化処理プロセスに利用可能な水素の量が制限され、不十分であり得るため、水素化処理プロセスの動作に影響を及ぼし得る。
【0067】
【表1】
【0068】
このような状況を克服するために、1つ以上の反応器が本発明において使用されることができ、各反応器は少なくとも触媒床を含む反応帯を少なくとも含む。特に、先行反応器(例えば、第1の反応器)から反応流出物流を得ると、それを後続反応器(例えば、第2の反応器)に供給する前に、水素化処理プロセスにおいて反応した水素を補充するために、かかる1反応器からの反応流出物流を水素ガスと接触させることが必要である。したがって、水素化処理プロセス全体にわたって十分な水素が存在することを確実にする。
【0069】
いくつかの実施形態では、反応器の数は、水素化処理される再生可能な給原料および希釈剤の組成および量に基づいて決定できる。反応器の数はまた、水素化処理プロセスを実施するための温度及び圧力によって決定されてもよい。これらの因子を決定した後、希釈原料または反応流出物流と接触するのに必要な水素ガスの量、水素ガスの再生可能な原料への割合、反応流出物流に水素ガスを添加するのに必要な回数などを適切に決定することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、二相水素化処理プロセスはアルカンを生成するための水素化、脱炭酸および脱カルボニル、ならびに脂肪酸のアルキル鎖中の二重結合の水素化を含む3つの主反応を含む。その結果、二相水素化処理プロセスは、トリグリセリド分子からのプロパン及び対応する脂肪酸のn-脂肪族炭化水素を含む生成物(これらに限定されなるわけではない)、及び、一酸化炭素及び二酸化炭素(トリグリセリド中の酸素含有量からの)及び蒸気の形態の水等の副産物を生成する。反応器からの水の除去は重要であり、水の存在が、触媒寿命および再生可能な原料中の水素溶解度に影響を及ぼすからである。
【0071】
反応器に加えて、二相水素化処理プロセスはまた、所望する水素化処理生成物から形成された副産物を除去するための少なくとも1つの分離器を備えることができる。これは、熱交換器、分離器およびフラッシュ容器が、望ましくない熱および水素化処理生成物流からの水を含む副産物を各反応器から除去するために、各反応器の後に提供されることを必要とする従来の水素化処理プロセスとは異なっている。
【0072】
いくつかの好ましい実施形態では、二相水素化処理プロセスで使用される分離器は、高温高圧分離器(HHPS)とすることができる。HHPSは、水素化処理生成物流を水素ガスと接触させる前に、反応器から得られた反応流出物流から望ましくないガス状副産物を分離するために、反応器の下流に配置され得る。いくつかの実施形態では、反応流出物流から分離されるガス状副産物には、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、プロパン、硫化水素(HS)、少量の水素ガス、および少量のガス状水素化生成物を含む。
【0073】
いくつかの他の実施形態では、本発明のプロセスは、更に、適切な触媒を選択することを含む。触媒は、NiMo、CoMo、NiCoMoおよびNiWからなる群から選択することができる。特定の実施形態では、触媒は、NiおよびMoからなる群から選択される2つの遷移金属のうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、触媒は、他の遷移金属またはV族元素をさらに含むことができる。
【0074】
使用する前に、触媒は、触媒を反応帯に装填し、約150℃~約400℃の温度および約1バール~約50バールの圧力で水素の存在下で金属酸化物を硫化水素(HS)と反応させることによって達成される硫化プロセスを通して活性化される。硫化剤は、二硫化炭素、二硫化二炭素物、及び、チオール、スルフィド、ジスルフィドの官能基を少なくとも1つ有するパラフィン化合物(CS-40)からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、触媒の活性化に使用される硫化剤中の硫黄の量は、金属酸化物を金属硫化物に変換するのに必要な量の約2倍又は約0.10重量%~5重量%である。別の態様では、装填される触媒は、約0.5重量%~約20重量%であってもよい。再生可能な原料及び水素ガスの量に基づいて、必要とされる触媒の量を算出することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、触媒は、担体上に担持されてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、触媒を担持する支持体(担体)は、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、またはアルミナとシリカ(Al-SiO)との混合物などの酸性の多孔質固体担体であってもよい。いくつかの他の好ましい実施形態では、触媒を担持する担体は、フッ化アルミナ、ZSM-12、ZSM-21、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-32、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-57、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-41、MAPO-11、MAPO-31、ゼオライトY、ゼオライトLまたはp-ゼオライトであってもよい。溶存水素が富化された希釈原料を、担体上の触媒に通すことにより、再生可能な原料のn-パラフィン系鎖のオレフィン性または不飽和部分の水素化が実施される。更に、担体は、触媒のための高表面積担体として機能することができるため、触媒のより高い効率を達成することができる。したがって、触媒がより良好に分散されるので、水素化、脱酸素化および異性化などの反応がより効率的に行われる。
【0076】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの触媒床に添加される水素ガスの制御された量(rate)は、すべての反応帯およびすべての原料について水素化のために利用可能な水素の量を最大化し、溶解限界を超える水素の量を最小化または除外するように決定される。触媒床の容積に対する水素ガスの比は、3、20、40、50、100、150、200、250、300、350、400、500、600、700、800または900Nm/mの範囲である。原料は、約10~約700Nm/m(約0.001~約0.054g/g)、約10~約650Nm/m(約0.001~約0.050g/g)、約10~約600Nm/m(約0.001~約0.047g/g)、約10~約550Nm/m(約0.001~約0.044g/g)、約10~約500Nm/m(約0.001~約0.039g/g)、約10~約450Nm/m(約0.001~約0.035g/g)、約10~約400Nm/m(約0.01~約0.032g/g)、約10~約380Nm/m(約0.001~約0.030g/g)、約10~約350Nm/m(約0.001~約0.028g/g)または約10~約320Nm/m(約0.001~約0.025g/g)の範囲である。いくつかの実施形態では、図1に示すように、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料201を水素化処理するためのプロセスを提供することが好ましい。特に、水素化処理される再生可能な原料は、動物油または植物油である。更に、水素化処理される再生可能な原料は、1種以上の動物油と1種以上の植物油との組み合わせであってもよい。例えば、水素化処理される再生可能な原料としては、獣脂油、鯨油、魚油、漂白パーム油(BPO)、精製漂白脱臭パーム油(RBDPO)、パームオレイン、パームステアリン、パーム脂肪酸留出物、キャノーラ油、コーン油、ひまわり油、大豆油、ジャトロファ油、バラニテス油、菜種油、トール油、麻種子油、オリーブ油、亜麻仁油、マスタード油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、又はこれらの任意の2種以上の油の組み合わせとすることができる。特定の実施形態では、水素化処理される再生可能な原料は、新鮮な油、使用済み油、廃油、またはそれらの任意の組み合わせとすることができる。
【0077】
図1に示すように、再生可能な原料201を水素化処理する前に、再生可能な原料201に希釈剤202を添加して希釈原料203を形成することが好ましい。再生可能な原料201に添加される希釈剤202は、新鮮なn-パラフィン原料、及び、本発明のプロセスから回収され、希釈剤供給流又は希釈剤源に再注入されるn-パラフィンの一部、又はそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの好ましい実施形態では、希釈剤202は、C10~C20の炭素原子を有するn-パラフィンを含み得る。特に、炭素数12のn-パラフィンが好ましい。希釈剤の組成は、70~100重量%の範囲の、n-デカン(C10)、n-ウンデカン(C11)、n-ドデカン(C12)、n-トリデカン(C13)、n-テトラデカン(C14)又はこれらの混合物であってもよい。該組成物の残部は、n-パラフィンのより重い画分である。いくつかの他の好ましい実施形態では、希釈剤202は、液相を約400℃および約35バールの圧力に維持する能力を有し、また後述する水素化処理反応条件で0.5重量%、1.0重量%、2.0重量%または3重量%以上の水素溶解度を有することができる。更に、希釈剤202が、本発明のプロセスから回収され、希釈剤供給流又は希釈剤源に再注入されるn-パラフィンの一部である場合、n-パラフィン流出液中の低沸限界成分(light key components)と希釈剤202との間の比揮発度は1.1以上であることを確実にすることが必要であり得る。
【0078】
さらに、特定の実施形態では、再生可能な原料201に対する希釈剤202の比(再生可能な原料201に添加される)は、約99重量%の希釈剤/1重量%の原料~約95重量%の希釈剤/5重量%の原料、約95重量%の希釈剤/5重量%の原料~約90重量%の希釈剤/10重量%の原料、約80重量%の希釈剤/20重量%の原料~約70重量量%の希釈剤/30重量量%の原料または約60重量%の希釈剤/40重量%の原料~約50重量%の希釈剤/50重量%の原料であってもよい。いくつかの実施形態では、原料201と希釈剤202とを、周囲温度および大気圧で混合することができ、これにより、希釈原料203を予め調製し、ストックすることができる。
【0079】
次いで、希釈原料203を硫化剤235および次いで水素ガス204と接触させて、所望量の水素ガスを希釈原料203に溶解させることができ、溶存水素が富化された希釈原料が調製され、触媒床内の触媒の効率を維持することができる。水素ガスの量は、原料に溶解可能な量であってもよいし、過剰量であってもよい。溶解しない水素ガスは、反応帯においてガス相を形成してもよい。次いで、所望する量の水素ガスは、反応帯内の反応に十分でなければならず(反応帯内で反応される必要がある原料の容積に依存する)、および/または過剰なガス相を形成しない必要がある。特に、この工程で発生したガス相は、わずか約0.1~約0.25のガス容積分率(GVF)を有する。所望量の硫化剤は、好ましくは、液体流中の原料の容積と比較して、硫黄0~10000ppmwである。溶存水素が富化された希釈原料205を調製するための操作またはステップは、当該技術分野で知られている任意の適切な装置において実行され得る。しかしながら、希釈原料203中に水素ガスの溶解を可能にするためには、約200℃~約400℃、約250℃~約320℃、または、約250℃~360℃の温度、約20バール~約100バール、約25バール~約100バール、または、約30バール~約100バールの圧力を有する条件下で行う必要がある。いくつかの好ましい実施形態では、希釈原料203への水素ガス204(希釈原料203に供給されるべき)の比は、約0.00046~0.00233g/gである。
【0080】
いくつかの実施形態では、硫化剤235を添加する工程は、反応帯における反応工程の前に行うことができる。例えば、硫化剤235は、希釈剤と混合する間の再生可能な原料に添加することができ、または、水素ガスと接触する前の希釈原料に添加することができ、または、反応器に導入する前に、溶存水素が富化された希釈原料205に添加することができる。
【0081】
いくつかの代替の実施形態では、溶存水素が富化された希釈原料205は、上記したような2段階の操作に代えて、1段階の操作で調製されることができる。特に、溶存水素が富化された希釈原料205は、再生可能な原料201、希釈剤202および水素ガス204を同時に供給することによって調製することができる。希釈剤202の再生可能な原料201に対する比は、約99重量%の希釈剤/1重量%の原料~約95重量%の希釈剤/5重量%の原料、約95重量%の希釈剤/5重量%の原料~約90重量%の希釈剤/10重量%の原料、約80重量%の希釈剤/20重量%の原料~約70重量%の希釈剤/30重量%の原料、または、約60重量%の希釈剤/40重量%の原料~約50重量%の希釈剤/50重量%の原料とすることができ、また、水素ガス204の再生可能な原料202に対する比は、約10~約700Nm/m(約0.001~約0.054g/gまたは約0.1重量%~約5.4重量%)、10~約650Nm/m(約0.001~約0.050g/gまたは約0.1重量%~約5重量%)、約10~約600Nm/m(約0.001~約0.047g/gまたは約0.1重量%~約4.7重量%)、約10~約550Nm/m(約0.001~約0.044g/gまたは約0.1重量%~約4.4重量%)、約10~約500Nm/m(約0.001~約0.039g/gまたは約0.1重量%~約3.9重量%)、約10~約450Nm/m(約0.001~約0.035g/gまたは約0.1重量%~約3.5重量%)、約10~約400Nm/m(約0.001~約0.032g/gまたは約0.1重量%~約3.2重量%)、約10~約380Nm/m(約0.001~約0.030g/gまたは約0.1重量%~約3.0重量%)、約10~約350Nm/m(約0.001~約0。028g/gまたは約0.1重量%~約2.8重量%)または約10~約320Nm/m(約0.001~約0.025g/gまたは約0.1重量%~約2.5重量%)とすることができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、連続液相水素化処理のための再生可能な原料に対する水素の比の選択は、主に再生可能な原料の種類に依存する。例えば、RBDPOの場合、再生可能な原料に対する水素の比は、少なくとも450Nm/m(少なくとも0.035g/g、又は、約3.5重量%)、又は、少なくとも385Nm/m(少なくとも0.030g/g、又は、約3.0重量%)、又は、少なくとも320Nm/m(少なくとも0.025g/g、又は、約2.5重量%)である。精製された大豆油の場合、再生可能な原料に対する水素の比は、少なくとも550Nm/m(少なくとも0.044g/g)、または、少なくとも510Nm/m(少なくとも0.040g/g、または、約4.0重量%)、または、少なくとも385Nm/m(少なくとも0.035g/g、または、約3.5重量%)である。各種の再生可能な原料は、そのトリグリセリドおよび脂肪酸鎖の長さおよび不飽和度のために、処理済油を生成するための水素の量は異なる量を消費する。具体的には、より短い脂肪酸鎖および/または高度の不飽和度を有するトリグリセリドの水素化処理は、より高量の水素ガスを必要とする。
しかしながら、溶存水素が富化された希釈原料205を調製するために1段階の操作を行う場合には、1段階の操作は、約200℃~約400℃、約250℃~約320℃、または、約250℃~360℃の温度、更には約20バール~約100バール、約25バール~約100バール、または、約30バール~約100バールの圧力で行う必要がある。したがって、予め溶存水素が富化された希釈原料205を調製し、ストックしておくことは実現困難である。
【0083】
溶存水素が富化された希釈原料205を得た後、これを、少なくとも触媒床(少なくとも活性化された水素化処理触媒を含む)を含む反応帯を少なくとも有する第1の反応器20に供給することができる。
わかりやすくするために、以下の実施形態は、反応器が1つの触媒反応帯を有する場合に関して説明するが、これによって、反応器内の反応帯の数がこれに限定されるものではない。
【0084】
特に、溶存水素が富化された希釈原料205は、第1の反応器20に供給することができ、ここでは溶存水素が富化された希釈原料は、活性化された水素化処理触媒を含む第1の触媒床を通過することができる。溶存水素が富化された希釈原料205が、活性化された水素化処理触媒と接触すると、溶存水素が富化された希釈原料205中のn-パラフィン鎖のオレフィン系または不飽和部分が水素化処理される。その後、第1の反応器20からの反応流出物を、望ましくないガス状副産物を分離するための第1の高温高圧分離器(HHPS)228に向かわせることができる。例えば、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、プロパン、硫化水素(HS)、少量の水素ガス、および少量のガス状水素化処理生成物である。したがって、望ましくないガス状副産物は、廃棄物処理ユニット(図示せず)に向かう廃棄物流207として、第1のHHPS228から排出され、一方、分離された反応流出物は、水素化処理油、未反応原料、未反応希釈剤、少量の水素、少量の望ましくない副産物を含む第1流出物流206として、第1のHHPS228から排出される。
【0085】
次いで、第1の流出物流206を、第2の反応器21に供給する前に、所望量の水素ガス208及び所望量の硫化剤236と接触させることができる。第1の流出物流206を水素ガス208及び硫化剤236と接触させる工程は、その後の水素化処理反応に十分な水素ガスが利用可能であり、触媒の効率を維持することが容易になるため、重要である。
【0086】
溶存水素209が富化された第1の流出物流209を、第2の反応器21に供給した後、溶存水素が富化された第1の流出物流209は、活性化された水素化処理触媒を含む第2の触媒床を通過する。溶存水素が富化された第1の流出物流209が、活性化された水素化処理触媒と接触すると、溶存水素が富化された第1の流出物流209中のn-パラフィン系鎖のオレフィン系又は不飽和部分は水素化処理される。次いで、第2の反応器21からの反応流出物は、望ましくないガス状副産物を分離するための第2のHHPS229に向かわせることができる。例えば、水蒸気、二酸化炭素、一酸化水素、プロパン、硫化水素(HS)、少量の水素ガス及び少量のガス状水素化処理物である。したがって、望ましくないガス状副産物は、廃棄物処理ユニット(図示せず)に向かわせる廃棄物流211として第2HHPS229から排出され、一方、分離された反応流出物は、水素化処理油、未反応原料、未反応希釈剤、少量の水素、少量の望ましくない副産物を含む第2流出物流210として第2のHHPS229から排出される。
【0087】
同様に、第2の流出物流210を、第3の反応器22に供給する前に、第2の流出物流210を、所望量の水素ガス212及び所望量の硫化剤237と接触させて、水素ガス及び硫化剤を第2の流出物流210に溶解させることが必要である。これは、その後の水素化処理反応に十分な水素ガスが利用可能であり、触媒の効率が維持され得ることを確実にするためである。溶存水素が富化された第2の流出物流213を第3の反応器22に供給した後、溶存水素が富化された第2の流出物流213は、活性化された水素化処理触媒を含む第3の触媒床を通過する。溶存水素が富化された第2の流出物流213が、活性化された水素化処理触媒と接触すると、溶存水素が富化された第2の流出物流213中のn-パラフィン系鎖のオレフィン系又は不飽和部分が水素化処理される。第3の反応器22からの反応流出物は、その後、望ましくないガス状副産物を分離するための第3のHHPS230に向かわせることができる。例えば、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、プロパン、硫化水素(HS)、少量の水素ガス、および少量のガス状水素化処理物である。したがって、望ましくないガス状副産物は、廃棄物処理ユニット(図示せず)に向かわせる廃棄物流215として第3のHHPS229から排出され、一方、分離された反応流出物は、水素化処理油、未反応原料、未反応希釈剤、少量の水素、少量の望ましくない副産物を含む第3の流出物流214として第3のHHPS230をから排出される。
【0088】
いくつかの実施形態では、第2の反応器および/または第3の反応器に添加される水素ガスの量は、原料中に溶解することができる量で存在してもよく、または過剰な量で存在してもよい。未溶解の水素ガスは、ガス状副産物、例えば一酸化炭素、二酸化炭素、プロパン、硫化水素などと共に、反応帯内にガス相を形成することもある。次いで、所望量の水素ガスは、反応帯内の反応に十分でなければならず(反応帯で反応される必要がある原料の容積に依存する)、および/または過剰なガス相は形成してはならない。特に、この工程で発生するガス相は、約0.1~約0.25のガス容積割合(GVF)を有する。所望量の硫化剤は、液体流中の原料の容積と比較して、硫黄が0~10000ppmwとすることが好ましい。
【0089】
次いで、第3の流出物流214の一部、好ましくは全部を、第3の流出物流214中に存在又は溶解し得る不純物又はガス状汚染物質を分離するための1つ以上の分離に供してもよい。いくつかの実施形態では、第3の流出物流214は、第3の流出物流214中に存在するガス状汚染物質を分離するために、まずフラッシュ容器23に供給される。特に、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、プロパン、硫化水素(HS)、少量の水素ガス、および少量のガス状水素化処理物を含むガス状汚染物質は、第1のトップ流218として排出され、一方、残りの液体混合物は、第2の分離器24に供給される、水素化処理油、希釈剤、および水を含む第1のボトム流219として排出される。いくつかの実施形態では、第2の分離器24は、第1のボトム流219からの水成分を分離するための低圧分離器24であってもよい。一方、望ましくない水成分(第1のボトム流219から分離された)は、第2のボトム流221として第2の分離器24から排出され、残りの液体混合物は、第2の流れ220として排出される。第2の分離器24から排出されると、第2の流れ220は実質的にガス状汚染物質および水成分を含まない。
【0090】
第2の流れ220は、好ましくは蒸留カラムである第3の分離器25に供給されることができる。第3の分離器の存在は、第2の流れ220から希釈剤216を回収することを可能にし、それにより、回収された希釈剤216は、希釈剤供給流または希釈剤源(水素ガス204との接触前)に再注入することによって再使用され得る。さらに、第2の流れ220から希釈剤を回収すると、残りの液体混合物は、水素化処理生成物流222として第3の分離器25から排出されることができる。好ましい実施形態では、水素化処理生成物流222は、主として直鎖n-アルカン炭化水素化合物の混合物を含む水素化処理油相となる。特に、水素化処理生成物流222は、バイオナフサ炭化水素化合物であることができる。バイオナフサ炭化水素化合物の組成は、少なくとも90重量%のn-パラフィンおよび0~10重量%のイソパラフィンを含むことができ、パラフィンは主としてC~C18の範囲内にある。
【0091】
水素化処理生成物流222は、相転移材料(PCM)、工業用溶媒、またはその両方を形成するためにさらに処理されることができる。より好ましい実施形態では、水素化処理生成物流222は、低容量のイソパラフィン及び高容量のn-パラフィンを含む水素化処理油相である。水素化処理生成物流222中に存在するイソパラフィンは、硫黄、オレフィンおよび芳香族化合物を実質的に含まず、これによって、望ましくない有害な生成物の形成を防止しながら、イソパラフィンを無害化することができる。
【0092】
本発明は、反応器20、21、22および分離器23、24、25などの水素化処理プロセスからの水素ガスの損失を最小化することを容易にする。本発明はまた、従来の方法とは異なり、多くの過剰量の水素ガスを各反応器に供給することを必要としない。これは、12個の炭素原子を有するn-パラフィンを本質的に含む希釈剤202を再生可能な原料201に添加混合して希釈原料203を形成することにより、希釈原料203に水素ガスを容易に溶解させることができるためである。水素化処理全体の水素ガスの損失を最小限に抑えつつ、反応器に過剰な水素ガスを供給する必要がなくなることにより、本発明は、従来の方法と比較して、より経済的であるという利点を有する。
【0093】
一部の実施形態では、液空間速度は、約0.5~10.0Hr-1、約0.5~20.0Hr-1、約0.5~30.0Hr-1、約0.5~40.0Hr-1、約0.5~50.0Hr -1、約0.5~60.0Hr-1、約0.5~70.0Hr-1、約0.5~80.0Hr-1、約0.5~90.0Hr-1、約0.5~100.0Hr-1の範囲である。
【0094】
反応器20、21、22で実施される触媒反応は、発熱反応または熱を放出する反応であるが、反応器20、21、22からの熱を除去するための追加の工程は必要ではなく、これは、触媒反応から発生する熱を吸収し得る希釈剤と再生可能な原料との間の所望の望ましい比に起因して、触媒反応から発生する熱がさほど高くないためである。
【0095】
さらなる実施形態では、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料を水素化処理して、相転移材料および工業用溶媒を含む生成物を生成するための方法を好ましくは提供する。
【0096】
図2に示すように、図1に示す水素化処理プロセスから得られた水素化処理生成物流222を用いて、さらに、付加的な蒸留及び吸着を実施して、相転移剤材料(PCM)及び工業用溶媒を含む生成物を調製することができる。水素化処理生成物流222は、硫黄、オレフィンおよび芳香族化合物を実質的に含まないので、水素化処理生成物流222をさらに処理して得られるPCMは、表2に示すように、硫黄、芳香族化合物およびアルコールを実質的に含まない。
【0097】
特に、図1に示す水素化処理プロセスから得られた水素化処理生成物流222は、第1の蒸留カラム26に供給され、これにより、16個未満の炭素原子を有するn-パラフィンを含む第4のトップ流224と、第2の蒸留カラム28に供給される第4のボトム流223とを生成することができる。いくつかの実施形態では、第4のトップ流224は、第1の吸着ユニット27を通過して、所望の工業用溶媒を含む第1の留分225を生成する。
【0098】
第2の蒸留カラム28では、第4のボトム流223内の成分を分離して、少なくとも約99.0重量%のn-ヘキサデカンを含む第5のトップ流227と、第3の蒸留カラム30に供給される第5のボトム流226とを調製することができる。いくつかの実施形態では、第5のトップ流227は、第2の吸着ユニット29を通過し、これによって、精製ヘキサデカンを含む第2の留分228を生成し、または本明細書ではPCM#1と称す。
【0099】
第3の蒸留カラム30では、第5のボトム流226内の成分を分離して、少なくとも約99.0重量%のn-ヘプタデカンを含む第6のトップ流230と、第4の蒸留カラム31に供給される第6のボトム流229とを調製することができる。いくつかの実施形態では、第6のトップ流230は、第3の吸着ユニット31を通過し、これによって、精製されたヘプタデカンを含む第3の留分231を生成し、または本明細書ではPCM#2と称す。
【0100】
第4の蒸留カラム32では、第6のボトム流229内の成分を分離して、少なくとも約99.0重量%のn-オクタデカンを含む第7のトップ流233と、モバイルエンジン用の燃料に限定されないが、このような燃料油(またはバンカーオイル)として使用され得る第7のボトム流232とを調製することができる。いくつかの実施形態では、第7のトップ流233は、第4の吸着ユニット33を通過し、これによって、精製オクタデカンを含む第4の留分234を生成し、または本明細書ではPCM#3と称す。
【0101】
いくつかの他の実施形態では、複数の蒸留カラム26、28、30、32を使用する代わりに、単一の分留カラムを使用して、工業用溶媒、PCM#1、PCM#2およびPCM#3を含む複数の生成物を得ることができる。また、トップ流224、227、230、233を処理するための吸着ユニット27、29、31、33を提供することによって、これらの流れ(ストリーム)の質を向上させることが容易になり、それに含まれる望ましくない不純物または汚染物質を除去することが容易となる。例えば、吸着ユニット27、29、31、33は、揮発性有機化合物や、工業用溶媒および/またはPCMに悪臭または色を付与し得る物質などの望ましくない成分を除去する機能を有することができる。これらの望ましくない成分を除去すると、工業用溶媒および/またはPCMから悪臭または望ましくない色などの望ましくない特性を最小化または実質的に排除することができる。更に、吸着ユニットは、大気圧、約30℃~約70℃、空間速度0.5h-1~2.0h-1で機能することができる。各吸着ユニットの操作温度は、供給流に応じて選択することができるが、吸着ユニットの操作温度は維持する必要がないため、操作が容易である。
【0102】
いくつかの実施形態では、吸着ユニットは、少なくとも1つの吸着カラムを備え、各吸着カラムは、活性炭、塩基性イオン交換樹脂、酸性交換樹脂、モレキュラーシーブ、塩基性化学吸着剤および酸性化学吸着剤からなる群から選択される少なくとも1つの吸着剤を含むことができる。特定の実施形態では、モレキュラーシーブは、約3オングストローム~約15オングストロームの範囲の細孔サイズを有する。他の特定の実施形態では、塩基性化学吸着剤が好ましく使用される。
【実施例
【0103】
実施例
【0104】
実施例1:パーム油の水素化処理方法
【0105】
市場で入手し得るNiMo/Al触媒を反応器に装填し、次いで、硫化剤として二硫化炭素の存在下、約150℃~約340℃の温度及び約35バールの圧力で約24時間、硫化物形態に活性化した。該反応器に供給される硫化剤中の硫化物の量は、化学平衡に基づく硫化反応に必要な触媒の量の2倍とした。
【0106】
精製漂白脱臭パーム油(RBDPO)は、再生可能な原料として使用され、当技術分野において既知の適切な混合装置を使用して、希釈剤としてのドデカンと混合されて、室温および大気圧で、希釈原料を形成した。該希釈剤と再生可能原料との重量比は、約90:10であった。硫化剤を該希釈原料に添加し、次いで、該希釈原料を約340℃の温度に加熱し、約50~約75バールの圧力に加圧した。次いで、過剰の水素ガスを該希釈原料に通過させ、所望される量の水素ガスを該希釈原料に溶解させて、溶存水素が富化された希釈原料を形成した。この段階で供給される水素ガスの量は、水素化処理プロセス全体にわたって供給される全水素ガスの約30%であった。
【0107】
次いで、溶存水素が富化された希釈原料を、少なくとも約340℃の操作温度及び約50~約75バールの操作圧力で、触媒床を備える反応帯を少なくとも有する第1の反応器に供給して、n-パラフィン系鎖のオレフィン系又は不飽和部位の流出物を水素化した。第1反応器における触媒床の容積に対する水素ガスの量は、約600Nm/mであった。次いで、反応混合物を第1のHHPSに通過させて、水蒸気およびガス状成分をそこから分離し、これにより第1の反応流出物を得た。
【0108】
該第1の反応流出物を第2の反応器に導入する前に、第1の反応流出物を、所望する量の水素ガス(約340℃の温度に加熱され、約50~約75バールの圧力に加圧されている)及び所望する量の硫化剤と接触させて、溶存水素が富化された第1の反応流出物を形成した。この段階で供給される水素ガスの量は、水素化処理プロセス全体にわたって供給される全水素ガスの約17.5%であった。
【0109】
次いで、溶存水素が富化された第1の反応流出物を、約340℃の操作温度および約50~約75バールの操作圧力で、触媒床を備える反応帯を少なくとも有する第2の反応器に導入し、第1の反応流出物中のn-パラフィン系鎖のオレフィン系又は不飽和部位を更に水素化した。第2反応器における触媒床の容積に対する水素ガスの量は、約400Nm/mであった。次いで、反応混合物を第2のHHPSに通過させて、水蒸気及びガス状成分をそこから分離し、これにより第2の反応流出物を得た。
【0110】
該第2の反応流出物を第3の反応器に導入する前に、第2の反応流出物を、所望する量の水素ガス(約340℃の温度に加熱され、約50~約75バールの圧力に加圧されている)及び所望する量の硫化剤と接触させて、溶存水素が富化された第2の反応流出物を形成した。この段階で供給される水素ガスの量は、水素化処理プロセス全体にわたって供給される全水素ガスの約17.5%であった。
【0111】
次いで、溶存水素が富化された第2の反応流出物を、約340℃の操作温度および約50~約75バールの操作圧力で、触媒床を備える反応帯を少なくとも有する第3の反応器に導入し、第2の反応流出物中のn-パラフィン系鎖のオレフィン系又は不飽和部位を更に水素化した。第3反応器における触媒床の容積に対する水素ガスの量は、約400Nm/mであった。次いで、反応混合物を第3のHHPSを通過させて、水蒸気及びガス状成分を分離し、これにより第3の反応流出物を得た。
【0112】
該第3の反応流出物を第4の反応器に導入する前に、第3の反応流出物を、所望する量の水素ガス(約340℃の温度に加熱され、約50~約75バールの圧力に加圧されている)及び所望する量の硫化剤と接触させて、溶存水素が富化された第3の反応流出物を形成した。この段階で供給される水素ガスの量は、水素化処理プロセス全体にわたって供給される全水素ガスの約17.5%であった。
【0113】
次いで、溶存水素が富化された第3の反応流出物を、約340℃の操作温度および約50~約75バールの操作圧力で、触媒床を含む反応帯を少なくとも有する第4の反応器に導入し、第3の反応流出物中のn-パラフィン系鎖のオレフィン系又は不飽和部位を更に水素化した。第4反応器における触媒床の容積に対する水素ガスの量は、約400Nm/mであった。次いで、反応混合物を第4のHHPSに通過させて、水蒸気とガス状成分を分離し、これにより第4反応流出物を得た。
【0114】
第4の反応流出物(油相)をフラッシュ容器に通過させ、そこから溶存ガス状成分を分離し、これにより第1の分離流出物を得た。次いで、第1の分離流出物を、低圧分離器に導入して形成された水蒸気を分離し、これにより第2の分離流出物を得た。該第2の分離流出物を、更に蒸留カラムに通過させて、そこから希釈剤を分離し、これにより所望する水素化処理生成物、特に特定の水素化処理油を得た。
以下の表2は、実施例1に記載したプロセスにより得られた水素化処理油の性状を示すものである。
【0115】
【表2】
【0116】
実施例2:パーム油の水素化処理方法
【0117】
市場で入手し得るCoMo/Al触媒を反応器に装填し、次いで、硫化剤としてジメチルジスルフィドの存在下、約150℃~約340℃の温度及び約35バールの圧力で24時間、硫化物形態に活性化した。該反応器に供給される硫化剤中の硫化物の量は、化学量論的要件に基づく硫化反応に必要な触媒の量の2倍であった。
【0118】
精製漂白脱臭パーム油(RBDPO)は、再生可能な原料として使用され、当技術分野において既知の適切な混合装置を使用して、希釈剤としての処理油生成物と混合されて、室温および大気圧で、希釈原料を形成した。該希釈剤の再生可能原料に対する重量比は、約99:1であった。硫化剤を該希釈原料に添加し、次いで、該希釈原料を約320℃の温度に加熱し、約30~約40バールの圧力に加圧した。次いで、該希釈原料に水素ガスを通過させ、所望される量の水素ガスを該希釈原料に溶解させて、溶存水素が富化された希釈原料を形成した。この段階で供給される水素ガスの量は、水素化処理プロセス全体にわたって供給される全水素ガスの約50%であった(全水素は、新鮮な原料の3.0重量%)。
【0119】
次いで、溶存水素が富化された希釈原料を、少なくとも約340℃の操作温度及び約30~約40バールの操作圧力で、触媒床を備える反応帯を少なくとも有する第1の反応器に供給して、処理油を形成した。液空間速度を25.0Hr-1に維持する。次いで、反応混合物を第1のHHPSを通過させて、水蒸気及びガス状成分をそこから分離し、これにより第1の反応流出物を得た。
【0120】
該第1の反応流出物を第2の反応器に導入する前に、第1の反応流出物を、所望する量の水素ガス(約320℃の温度に加熱され、約30~約40バールの圧力に加圧されている)及び所望する量の硫化剤と接触させて、溶存水素が富化された第1の反応流出物を形成した。この段階で供給される水素ガスの量は、水素化処理プロセス全体にわたって供給される全水素ガスの約50%であった。
【0121】
次いで、溶存水素が富化された第1の反応流出物を、約320℃の操作温度及び約30~約40バールの操作圧力で触媒床を含む反応帯を少なくとも有する第2の反応器に導入して、処理油を形成した。液空間速度を25.0Hr-1に維持する。次いで、反応混合物を第2のHHPSを通過させて、水蒸気及びガス状成分をそこから分離し、これにより第2反応流出物を得た。
【0122】
該第2の反応流出物を低圧分離器に導入して、そこから水を分離し、これにより水素化処理油の第1の分離流出物を得た。実施例2で得られた処理油の性状を表3に示す。
【0123】
実施例2から得られた処理油は、ガス状成分が高温高圧分離器の段階で本質的に分離され得るため、溶解したガス状成分をフラッシュ容器によって分離する工程を経ることなく達成することができる。更に、実施例2で得られた処理油は、蒸留工程を経ることなく得ることもできるが、該処理油の引火点は、より低いものである。
以下の表3は、実施例2に記載したプロセスにより得られた水素化処理油の性状を示すものである。
【0124】
【表3】
【0125】
実施例3:低減された水素循環量(rate)比の効果
【0126】
従来の水素化処理プロセスでは、反応器は、典型的には、トリクルベッドとして操作されており、ここでは、水素ガスは、反応器全体にわたって連続ガス相を実行する液体被覆触媒表面を通して移送される。その結果、トリクルベッド反応は、連続ガス相を維持するための反応(水素消費量)により必要とされる容量よりも極めて大きい容量の水素流量(水素循環量)が必要となる。仮に連続ガス相が維持できなかった場合には、触媒の失活を引き起こすことがある。
【0127】
典型的には、水素化処理RBDPOで使用される水素消費率は、約2.5重量%~約3.5重量%であり、一方、従来の水素化処理で使用される水素消費量は、これらの水素消費量の約200%である。
【0128】
水素化処理油を、以下の反応条件を有する2つの反応器を使用して、実施例2に記載したプロセスに従って調製した;
・本実験における原料は、RBDPOとする;
・反応温度は約320℃とした;
・反応圧力は約35バールとした;
・希釈剤としては、処理油を用いた:
・希釈剤の再生可能な原料に対する重量比は、約99:1とした;
・液空間速度は約25.0hr-1とした;
・各反応器に装填された活性化触媒として、硫化形態のCoMo/Alを使用した;
・再生可能な原料に対する水素の量は、約3.5~6.0重量%とした;
・各反応器には、全水素化処理プロセスで供給される全水素ガスの50%量の水素ガスが供給された;
・HHPSを使用して、各反応器から得られた反応流出物からガス状成分及び水蒸気を分離した。
以下の表4は、実施例3に記載したプロセスにより得られた水素化処理油の性状を示すものである。
【0129】
【表4】
【0130】
表4から、実施例3で用いた水素循環量(rate)が3.5重量%、4重量%、5重量%、6重量%であっても、生成物の特性は変わらないことがわかる。すなわち、本発明は、水素消費量の200%以上、175%以上、150%以上、125%以上、100%以上の水素循環量を使用する利点を提供する。本発明においては、水素化処理プロセスにおいて過剰な水素ガスを使用する必要はない。
【0131】
実施例4:実施例1で得られた水素化処理油から相転移材料(PCM)を調製するプロセス
【0132】
本実施例は、実施例1に記載のプロセスから得られた水素化処理油からPCMを調製する方法である。特に、水素化処理油を、複数の蒸留ユニット及び複数の吸着ユニットに導入した。PCMの特性を表5に示す。
以下の表5は、実施例4に記載したプロセスにより得られたPCMの特性を示すものである。
【0133】
【表5】
【0134】
実施例5:調製されたPCMに対する再生可能な原料の種類の影響
【0135】
本実施例は、再生可能な原料の選択が、調製されたPCMの特性にどのように影響を及ぼすかを示すために実施された。
【0136】
水素化処理油は、実施例1に記載されたプロセスにしたがって、5つの反応器を用いて、下記の条件で調製された:
・反応温度は約360℃とした;
・反応圧力は約50~約75バールとした;
・希釈剤としては、N-ウンデカンを用いた;
・希釈剤の再生可能な原料に対する重量比は、約90:10とした;
・液空間速度は約10.0hr-1とした;
・各反応器に装填された活性化触媒として、硫化された形態のCoMo/Alを使用した;
・再生可能な原料に対する水素の量は約3.5重量%とした;
・各反応器には、全水素化処理プロセスで供給される全水素ガスの20%の量の水素ガスが供給された;
・第1の反応器内の触媒床の容積に対する水素量は、600Nm/mとした;
・第2の反応器内の触媒床の容積に対する水素の量は、400Nm/mとした;
・第3の反応器内の触媒床の容積に対する水素量は、200Nm/mとした;
・第4反応器における触媒床の容積に対する水素量は、100Nm/mとした;
・第5反応器における触媒床の容積に対する水素量は、50Nm/mとした;
・HHPSを使用して、各反応器から得られた反応流出物からガス状成分及び水蒸気を分離した。
表6は、実施例4に記載したプロセスから得られたPCMの性状を示すものである。
【0137】
【表6】
【0138】
表6の結果から、RBDPOを水素化処理するプロセスは、高容量の炭素数16のn-パラフィン及び炭素数18のn-パラフィンを生成し、これは、パーム脂肪酸の水素化処理プロセスと同様である。一方、菜種油、大豆油及び立体酸を水素化処理するプロセスは、炭素数17及び炭素数18のn-パラフィンを高容量で生成する。したがって、脂肪および/または脂肪酸を含む原料は、広範囲のn-パラフィンを製造するための再生可能な原料として使用することができ、その後、広範囲のPCMを生成および取得することが可能となる。
【0139】
実施例6:バイオナフサの調製
【0140】
本実施例では、バイオナフサを調製するためのプロセスを記載する。特に、水素化処理油は、再生可能な原料としてパーム核油及びラウリン酸を使用し、以下の反応条件を用いて、実施例1に記載の方法に従って調製した。
・3つの反応器を使用した;
・反応温度は約360℃とした;
・反応圧力は約100バールとした;
・希釈剤としては、プロセスから回収された一部のバイオナフサ及び/又は新鮮なバイオナフサを用いた;
・希釈剤の再生可能な原料に対する重量比は、約85:15とした;
・液空間速度は約10.0hr-1とした;
・各反応器に装填された活性化触媒として、硫化NiCoMo/Al触媒を使用した;
・再生可能な原料に対する水素の量は約2.2重量%とした;
・水素化処理プロセスに供給される全水素ガスの40%が第1の反応帯域に供給され、水素化処理プロセスに供給される全水素の30%が第2の反応帯域に供給され、水素化処理プロセスに供給される全水素の30%が第3の反応帯域に供給された;
・第1の反応器内の触媒床の容積に対する水素量は、600Nm/mとした;
・第2反応器内の触媒床の容積に対する水素量は、300Nm/mとした;
・第3反応器内の触媒床の容積に対する水素量は、50Nm/mとした;
・HHPSは、各反応器から得られた反応流出物から水蒸気を含むガス状副産物を分離するために、各反応器の下流に設置された。
以下の表7は、実施例6に記載したプロセスから得られたバイオナフサの性状を示すものである。
【0141】
【表7】
【0142】
比較例1
【0143】
比較例1は、実施例3と比較されるものである。比較例1は、従来の水素化処理プロセスを使用して、水素化処理油を調製したものであり、1つの反応器及び以下の反応条件を用いて実施例2に記載したプロセスにより調製されたものである;
・本例における原料は、RBDPOとする;
・反応温度は約320℃とした;
・反応圧力は約35バールとした;
・希釈剤として、処理油を用いた;
・希釈剤の再生可能な原料に対す重量比は、約70:30とした;
・液空間速度は約1.0Hr-1とした;。
・各反応器に装填された活性化触媒として、硫化された形態のCoMo/Alを使用した;
・再生可能な原料に対する水素の量は、5.0、5.5および6.0重量%で変化させた;
・HHPSを使用して、各反応器から得られた反応流出物からガス状成分及び水蒸気を分離した。
以下の表8は、従来の水素化処理プロセスから得られた水素化処理油の特性を示すものである。
【0144】
【表8】
【0145】
表8より、6重量%未満の水素再循環量、すなわち5.5%、5%を用いることは、処理油中の遊離脂肪酸含量が不完全な反応により増加し、処理油がより酸性になるため、得られる処理油中に発生する酸価が高くなったことが明らかである。換言すると、従来の水素化処理で使用される水素再循環量は、RBDPOの場合の水素消費量が2.5~3.5重量%の範囲である水素消費量の少なくとも200%でなければならない。
【0146】
比較例2
【0147】
ヤンタオ ビ(Yantao Bi)らは、バイオマス熱分解油の水素化脱酸素反応の間の組成変化の研究を実施した。この研究は、約500℃の熱分解温度で森林廃棄物から調製された熱分解油を用いて実施された。該水素化脱酸素反応は、2つの固定床反応器で連続的に実施された。第1の反応器の反応温度は、安定化のために100℃に維持し、一方、第2の反応器内の反応温度は、それぞれUPO-1、UPO-2、UPO-3およびUPO-4と称される改質熱分解油を生成するために150、210、300、360℃に維持した。
以下の表9は、熱分解油の水素化脱酸素反応から得られる熱分解油、UPO-1、UPO-2、UPO-3およびUPO-4の組成を示すものである。
【0148】
【表9】
【0149】
上記表の結果より、熱分解油を処理して得られたUPO-1、UPO-2、UPO-3、UPO-4は、n-パラフィンを含まないため、本発明とは異なり、これらの化合物は相転移材料を調製するのに用いることができない。
【0150】
比較例3
【0151】
表10~14は、本質的にトリグリセリドおよび遊離脂肪酸を含む再生可能な原料中の水素の溶解性と、本質的にトリグリセリドおよび遊離脂肪酸を含む再生可能な原料を希釈するための希釈剤として異なる数の炭素原子を有するn-パラフィンを用いた、異なる希釈原料中の水素の溶解性を示すものである。該表には、更に、炭素数がより短いn-パラフィンは、希釈原料に対してより良好な水素溶解性を提供することが示されている。
【0152】
いくつかの実施形態では、n-パラフィン以外の希釈剤を使用して、希釈原料に対する水素の溶解性を促進することができる。しかしながら、n-パラフィン以外の他の希釈剤が使用される場合、水素化処理された油生成物から希釈剤を分離することを困難にすることがあり、このことによって製造に追加のコストをかけることとなる。
以下の表10は、原料としてのトリオレインに対する水素の溶解性を示すものである。
【0153】
【表10】
【0154】
以下の表11は、希釈剤としてn-オクタデカン及び原料としてトリオレインを、90重量%の希釈剤と10%の原料の割合で使用して調製された希釈原料に対する水素の溶解性を示すものである。
【0155】
【表11】
【0156】
以下の表12は、希釈剤としてn-テトラデカン及び原料としてトリオレインを、90重量%の希釈剤と10%の原料の割合で使用して調製された希釈原料に対する水素の溶解性を示すものである。
【0157】
【表12】
【0158】
以下の表13は、希釈剤としてn-ドデカン及び原料としてトリオレインを、90重量%の希釈剤と10%の原料の割合で使用して調製された希釈原料に対する水素の溶解性を示すものである。
【0159】
【表13】
【0160】
以下の表14は、希釈剤としてn-ウンデカン及び原料としてトリオレインを、90重量%の希釈剤と10%の原料の割合で使用して調製された希釈原料に対する水素の溶解性を示すものである。
【0161】
【表14】
【0162】
上記表より、希釈剤として炭素数の多いn-パラフィンを用いると、水素溶解性が低下することがわかる。また、希釈剤として12個の炭素原子を有するn-ドデカンを用いた場合、最も高い水素溶解性が得られる結果が示されている。しかし、炭素原子が10個未満のn-パラフィンを希釈剤として用いることは推奨されず、これは該反応条件下では液相を維持することができないためである。
【0163】
本発明の様々な他の変形および適合ができることは、本発明の本質および範囲から逸脱することがない限り、上記開示から当業者には明らかであろうことは理解されるべきである。すべてのそのような変形および適合は、本出願の特許請求の範囲内に入るものである。
【0164】
さらに、様々な実施形態からの特徴は、1つ以上の追加の実施例を形成するために組み合わせることができる。
【0165】
従来文献
ヤンタオ ビ(Yantao Bi)、ガング ワン(Gang Wang)、キュアン シ(Quan Shi)お及びジンセン グオ(Jinsen Guo)、バイオマス熱分解油の水素化脱酸素化の間の組成変化(Composition Changes during Hydrodeoxygenation of Biomass Pyrolysis Oil)、エネルギー燃料(Energy Fuels)2014、28、2571-2580頁

図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相の再生可能な原料から、第1の反応器及び少なくとも追加の反応器を含む複数の水素化処理反応器によって1つ以上の炭化水素生成物を製造する方法であって、各反応器は、硫化プロセスにより、使用する前に活性化された水素化処理触媒が設けられた触媒床を備え、再生可能な原料はトリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含むものであり、該方法は、
希釈原料を形成するため、再生可能な原料を希釈剤で希釈する工程;
溶存水素が富化された希釈原料を第1の反応器に導入する前に、
(a)希釈原料を水素ガスと接触させ、次いで水素ガスと接触した希釈原料に硫化剤を添加するか、または
(b)希釈原料に硫化剤を添加し、次いで硫化剤が添加された該希釈原料を水素と接触させることにより、溶存水素が富化された希釈原料を形成する工程;
溶存水素を富化した希釈原料を第1の触媒床を含む第1の反応器に導入して、溶存水素が富化された反応流出物を形成する工程;
さらに、溶存水素が富化された反応流出物を追加の反応器に導入する前に、反応流出物を水素ガス及び硫化剤と接触させて、水素ガスを反応流出物に溶解し、溶存水素が富化された反応流出物を形成する工程;
さらに、溶存水素が富化された反応流出物を、追加の触媒床を含む追加の反応器に導入することで、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに処理することができる更なる反応流出物を調製する工程を備え、
追加の反応器中の未溶解水素のガス容積分率(GVF)が0.1から0.25であることを特徴とする、再生可能な原料から炭化水素生成物を製造する方法。
【請求項2】
予め決定された量で、各反応器に、硫化剤および/または水素ガスを通過させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応流出物を更なる水素ガス及び硫化剤と接触させる前に、高温高圧分離により反応流出物から水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、プロパン及び硫化水素(H S)を除去して、反応流出物から望ましくないガス状副産物を分離する工程、及び/又は、高温高圧分離により、更なる反応流出物から水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、プロパン及び硫化水素(H S)を除去して、更なる反応流出物からガス状副産物を分離する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
副産物を分離し、n-パラフィンを回収し、水素化処理生成物を得るために、更なる反応流出物を、順次配置された複数の分離器に供給る工程;
回収されたn-パラフィンを、希釈剤で使用するために希釈剤源に再注入する工程;及び、
水素化処理生成物を精製するために、水素化処理生成物を1つ以上の蒸留カラム及び吸着ユニットに供給して、1以上の精製炭化水素生成物を得る工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
再生可能な原料は、動物油、植物油、または1つ以上の動物油と1つ以上の植物油との組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
再生可能な原料は、獣脂油、鯨油、魚油、漂白パーム油(BPO)、精製漂白脱臭パーム油(RBDPO)、パームオレイン、パームステアリン、パーム脂肪酸留出物、キャノーラ油、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、ジャトロファ油、バラニテス油、菜種油、トール油、麻種子油、オリーブ油、亜麻仁油、マスタード油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、またはこれら任意の2種以上の油の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
再生可能な原料は、新鮮な油、使用済み油、廃油、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
希釈剤は、70~100重量%のn-デカン(C 10 )、n-ウンデカン(C 11 )、n-ドデカン(C 12 )、n-トリデカン(C 13 )、n-テトラデカン(C 14 )又はこれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
再生可能な原料に対する希釈剤の比率は、99重量%の希釈剤/1重量%の原料から50重量%の希釈剤/50重量%の原料である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
反応器内の触媒床の容積に対する水素ガスの比は、3から900Nm/mの範囲にあり、および/または再生可能な原料に対する水素ガスの比は、10から700Nm/m (0.001から0.054g/g)の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
触媒は、NiおよびMoからなる群から選択される2つの遷移金属のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
触媒はさらに別の遷移金属またはV族元素を含み、および/または触媒は、担体上に担持される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
担体は、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、およびアルミナとシリカとの混合物(Al-SiO)からなる群から選択される酸性多孔質固体担体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
担体は、フッ化アルミナ、ZSM-12、ZSM-21、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-32、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-57、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-41、MAPO-11、MAPO-31、ゼオライトY、ゼオライトL又はβ-ゼオライトである、請求項13に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明の一態様によれば、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料から1つ以上の炭化水素生成物を製造する方法であって、該方法は、希釈原料を形成するため、再生可能な原料を希釈剤で希釈する工程;希釈原料を水素ガス及び硫化剤と接触させて、水素ガスが希釈原料に溶解して溶存水素が富化された希釈原料を形成し、溶存水素を富化した希釈原料を触媒床を含む反応器に導入して、溶存水素が富化された反応流出物(reaction effluent)を形成する工程;さらに、反応流出物を水素ガス及び硫化剤と接触させて、水素ガスを反応流出物に溶解し、溶存水素が富化された反応流出物を形成する工程;さらに、溶存水素が富化された反応流出物を、触媒床を含む少なくとも追加の反応器に導入することで、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに処理することができる更なる反応流出物を調製する工程を備え、さらに、反応器中の未溶解水素のガス容積分率が0.1から0.25であることを特徴とする、再生可能な原料から炭化水素生成物を製造する方法である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
いくつかの実施形態では、反応器内の触媒床の容積に対する水素ガスの比は、3から900Nm/mの範囲にある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
いくつかの実施形態では、担体は、フッ化アルミナ、ZSM-12、ZSM-21、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-32、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、ZSM-57、SAPO-11、SAPO-31、SAPO-41、MAPO-11、MAPO-31、ゼオライトY、ゼオライトL又はβ-ゼオライトである。
いくつかの実施形態では、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料から1つ以上の炭化水素生成物を製造するためのシステムは、触媒床を含む反応器を含むシステムであって;反応器は、溶存水素を富化した希釈原料を反応させて、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに処理することができる反応流出物を生成するためのものであり;溶存水素を富化した希釈原料は、トリグリセリド、遊離脂肪酸またはそれらの組み合わせを含む再生可能な原料を希釈剤を用いて希釈して希釈原料を形成し、次いで、硫化剤を添加し、そして希釈原料に水素ガスを通過させて、水素ガスを希釈原料に溶解させて、溶存水素が富化された希釈原料を形成することによって調製され;さらに、反応流出物を水素ガスおよび硫化剤とさらに接触させて溶存水素が富化された反応流出物を形成するため、触媒床を含む追加の反応器を少なくとも含み、追加の反応器は、溶存水素を富化した流出物を反応させて、1つ以上の炭化水素生成物を形成するためにさらに処理することができる更なる反応流出物を生成するためのものであり;そして、反応器中の未溶解水素のガス容積分率は0.1から0.25である、システムである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
いくつかの実施形態では、システムで使用される反応器内の触媒床の容積に対する水素ガスの比は、3から900Nm/mの範囲である。
【国際調査報告】