(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】放射性薬剤および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 51/08 20060101AFI20230914BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230914BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230914BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230914BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61K51/08 100
A61K51/08 200
A61P35/00
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513672
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 IB2021000589
(87)【国際公開番号】W WO2022043754
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523066152
【氏名又は名称】センター フォー プローブ ディベロップメント アンド コマーシャリゼーション (シーピーディーシー)
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マッカン ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ケリー ユスティナ
(72)【発明者】
【氏名】ビローネ ポール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB12
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD22Z
4C076DD30Z
4C076DD43Q
4C076DD49Q
4C076DD59Q
4C076FF63
4C084AA12
4C084NA14
4C084ZB26
4C085HH03
4C085KA11
4C085KA29
4C085KB12
4C085KB91
4C085LL18
(57)【要約】
放射性薬剤
177Lu-DOTATATE化合物、組成物、およびキットを提供する。さらに提供するのは、
177Lu-DOTATATE化合物の合成法および
177Lu-DOTATATE化合物を含む処置の方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体;
(b)少なくとも25mg/mLの濃度の1つまたは複数の安定剤化合物
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体が、少なくとも5mCi/mLの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体が、少なくとも10mCi/mLの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
2つ以上の安定剤を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
1つまたは複数の安定剤が、1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
1つまたは複数の安定剤が、1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのアスコルベート化合物および少なくとも1つのゲンチセート化合物を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
1つまたは複数の安定剤化合物が、30mg/mL以上の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
1つまたは複数の安定剤化合物が、40mg/mL以上の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
1つまたは複数の安定剤化合物が、50mg/mL以上の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
水性製剤である、請求項1~10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体が、以下の構造:
に相当する、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の放射化学的純度が、HPLC分析で3日の間95%以上である、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記組成物の放射化学的純度が、HPLC分析で5日の間95%以上である、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
177Lu-DOTATATEを調製するための方法であって、
ルテチウム-177およびテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)を1つまたは複数の安定剤化合物の存在下で混合する段階であって、
ここで、1つまたは複数の安定剤化合物が10mg/mL以上の量で存在し、
それによりルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を形成する、段階
を含む、方法。
【請求項16】
テトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)を含む水性製剤をルテチウム-177と混合する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
1つまたは複数の安定剤化合物が、20mg/mL以上の量で存在する、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
1つまたは複数の安定剤化合物が、30mg/mL以上の量で存在する、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
1つまたは複数の安定剤化合物が、40mg/mL以上の量で存在する、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
1つまたは複数の安定剤化合物が、50mg/mL以上の量で存在する、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
1つまたは複数の安定剤化合物のそれぞれが、10mg/mL以上の量で存在する、請求項15~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
1つまたは複数の安定剤が、1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項15~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
1つまたは複数の安定剤が、1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む、請求項15~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
1つまたは複数の安定剤が、少なくとも10mg/mLの量の1つまたは複数のゲンチセート化合物および少なくとも30mg/mLの量の1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項15~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
1つまたは複数の安定剤が、少なくとも15mg/mLの量の1つまたは複数のゲンチセート化合物および少なくとも40mg/mLの量の1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項15~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物が加熱される、請求項15~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記混合物が60分以下の間加熱される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記混合物が50分以下の間加熱される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記混合物が40分以下の間加熱される、請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記混合物が30分以下の間加熱される、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記混合物が20分以下の間加熱される、請求項26記載の方法。
【請求項32】
前記混合物が15分以下の間加熱される、請求項26記載の方法。
【請求項33】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物が約80℃±10℃で加熱される、請求項15~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物が約80℃±5℃で加熱される、請求項15~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
加熱に続いて前記混合物を冷却する段階をさらに含む、請求項15~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
混合する段階に続いて、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体が製剤組成物と混ぜられる、請求項15~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
製剤組成物が、1つまたは複数の安定剤化合物を含む水性組成物である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
製剤組成物が、10mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
製剤組成物が、20mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項37記載の方法。
【請求項40】
製剤組成物が、30mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項37記載の方法。
【請求項41】
製剤組成物が、40mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項37記載の方法。
【請求項42】
製剤組成物が、50mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項37記載の方法。
【請求項43】
製剤組成物が、1つまたは複数の金属イオン封鎖剤をさらに含む、請求項36~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
ルテチウム-177のテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との組み込みにより、98モルパーセントを超える
177Lu-DOTATATEが提供される、請求項15~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
ルテチウム-177のテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との組み込みにより、99モルパーセントを超える
177Lu-DOTATATEが提供される、請求項15~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
ルテチウム-177の酸性水性製剤をテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)と混合する、請求項15~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
ルテチウム-177のハロゲン化水素または酸ハロゲン化物水性製剤をテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)と混合する、請求項15~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
ルテチウム-177の塩酸水性製剤をテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)と混合する、請求項1~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
177Lu-DOTATATEを調製するための方法であって、
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)を含む水性製剤とを、1つまたは複数のアスコルベート化合物の存在下で混合する段階であって、
ここで、1つまたは複数のアスコルベート化合物が30mg/mL以上の量で存在し、
それによりルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を形成する、段階
を含む、方法。
【請求項50】
177Lu-DOTATATEを調製するための方法であって、
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)を含む水性製剤とを、1つまたは複数のゲンチセート化合物の存在下で混合する段階であって、
ここで、1つまたは複数のゲンチセート化合物が10mg/mL以上の量で存在し、
それによりルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を形成する、段階
を含む、方法。
【請求項51】
177Lu-DOTATATEを調製するための方法であって、
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)を含む水性製剤とを、1つまたは複数のアスコルベート化合物および1つまたは複数のゲンチセート化合物から選択される1つまたは複数の安定剤化合物の存在下で混合する段階であって、
ここで、1つまたは複数の安定剤化合物は10mg/mL以上の量で存在し、
それによりルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を形成する、段階
を含む、方法。
【請求項52】
1つまたは複数の安定剤化合物が、20mg/mL以上の量で存在する、請求項51記載の方法。
【請求項53】
1つまたは複数の安定剤化合物が、25mg/mL以上の量で存在する、請求項51記載の方法。
【請求項54】
1つまたは複数の安定剤化合物が、30mg/mL以上の量で存在する、請求項51記載の方法。
【請求項55】
1つまたは複数の安定剤化合物が、40mg/mL以上の量で存在する、請求項51記載の方法。
【請求項56】
1つまたは複数の安定剤化合物が、50mg/mL以上の量で存在する、請求項51記載の方法。
【請求項57】
1つまたは複数のゲンチセート化合物が、10mg/mL以上の量で存在する、請求項51~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
1つまたは複数の安定剤が、少なくとも10mg/mLの量の1つまたは複数のゲンチセート化合物および少なくとも30mg/mLの量の1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項51~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
1つまたは複数の安定剤が、少なくとも15mg/mLの量の1つまたは複数のゲンチセート化合物および少なくとも40mg/mLの量の1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項51~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物が加熱される、請求項51~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
前記混合物が40分以下の間加熱される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記混合物が30分以下の間加熱される、請求項60記載の方法。
【請求項63】
前記混合物が20分以下の間加熱される、請求項60記載の方法。
【請求項64】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物が、約80℃±10℃で加熱される、請求項51~63のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
加熱に続いて前記混合物を冷却する段階をさらに含む、請求項51~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
混合する段階に続いて、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体が製剤組成物と混ぜられる、請求項51~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
製剤組成物が、1つまたは複数の安定剤化合物を含む水性組成物である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
製剤組成物が、10mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項67記載の方法。
【請求項69】
製剤組成物が、20mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項67記載の方法。
【請求項70】
製剤組成物が、30mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項67記載の方法。
【請求項71】
製剤組成物が、40mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項67記載の方法。
【請求項72】
製剤組成物が、50mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項67記載の方法。
【請求項73】
製剤組成物が、1つまたは複数の金属イオン封鎖剤をさらに含む、請求項66~72のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
ルテチウム-177のテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との組み込みにより、98モルパーセントを超える
177Lu-DOTATATEが提供される、請求項51~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項75】
ルテチウム-177のテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との組み込みにより、99モルパーセントを超える
177Lu-DOTATATEが提供される、請求項51~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
ルテチウム-177のハロゲン化水素または酸ハロゲン化物水性製剤をテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)と混合する、請求項51~75のいずれか一項記載の方法。
【請求項77】
ルテチウム-177の塩酸水性製剤をテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)と混合する、請求項51~75のいずれか一項記載の方法。
【請求項78】
(1)ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体と(2)少なくとも25mg/mLの濃度の1つまたは複数の安定剤化合物とを含む組成物が提供される、請求項51~77のいずれか一項記載の方法。
【請求項79】
前記組成物が、30mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項78記載の方法。
【請求項80】
前記組成物が、40mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項78記載の方法。
【請求項81】
前記組成物が、50mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項78記載の方法。
【請求項82】
前記組成物が、少なくとも5mCi/mLの量で存在するルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を含む、請求項51~81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
前記組成物が、少なくとも10mCi/mLの量で存在するルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を含む、請求項51~81のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
前記組成物が2つ以上の安定剤を含む、請求項51~83のいずれか一項記載の方法。
【請求項85】
1つまたは複数の安定剤が1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項51~84のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
1つまたは複数の安定剤が1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む、請求項51~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を含む組成物を、それを必要としている患者に投与する段階をさらに含む、請求項15~86のいずれか一項記載の方法。
【請求項88】
癌に罹患している患者を処置するための方法であって、
(a)ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)を含む水性製剤とを、1つまたは複数のアスコルベート化合物および1つまたは複数のゲンチセート化合物から選択される1つまたは複数の安定剤化合物の存在下で混合する段階であって、それによりルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を形成する、段階
を含み、
ここで、(1)ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体と(2)少なくとも25mg/mLの濃度の1つまたは複数の安定剤化合物とを含む組成物が提供され、
(b)該組成物を該患者に投与する段階
を含む、方法。
【請求項89】
前記組成物が、30mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項88記載の方法。
【請求項90】
前記組成物が、40mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項88記載の方法。
【請求項91】
前記組成物が、50mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項88記載の方法。
【請求項92】
前記組成物が、少なくとも5mCi/mLの量で存在するルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を含む、請求項88~91のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
前記組成物が、少なくとも10mCi/mLの量で存在するルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を含む、請求項88~91のいずれか一項記載の方法。
【請求項94】
前記組成物が2つ以上の安定剤を含む、請求項88~93のいずれか一項記載の方法。
【請求項95】
1つまたは複数の安定剤が1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項88~94のいずれか一項記載の方法。
【請求項96】
1つまたは複数の安定剤が1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む、請求項88~95のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
アスコルベート化合物をルテチウム-177および/もしくはテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)ならびに/またはルテチウム-177および/もしくはテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)の錯体と混合する段階の前に、アスコルベート化合物の純度を決定する段階をさらに含む、請求項15~96のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
アスコルベート化合物が組み込み反応において有効であることを決定する段階と、有効なアスコルベート化合物をルテチウム-177および/もしくはテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)ならびに/またはルテチウム-177および/もしくはテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)の錯体と混合する段階とを含む、請求項97記載の方法。
【請求項99】
アスコルベート化合物がアスコルビン酸塩である、請求項97または98記載の方法。
【請求項100】
アスコルベート化合物がアスコルビン酸ナトリウムである、請求項97~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項101】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体が、以下の構造:
に相当する、請求項15~100のいずれか一項記載の方法。
【請求項102】
ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体が
177Lu-DOTATATE(
177Lu-オクトレオテート)である、請求項1~101のいずれか一項記載の組成物または方法。
【請求項103】
請求項15~102のいずれか一項記載の方法によって得ることができる、
177Lu-DOTATATE。
【請求項104】
請求項15~102のいずれか一項記載の方法によって得た、
177Lu-DOTATATE。
【請求項105】
請求項103または104記載の
177Lu-DOTATATEを含む、薬学的組成物。
【請求項106】
前記組成物の放射化学的純度が、25℃で3日以上の間95%以上である、請求項105記載の薬学的組成物。
【請求項107】
前記組成物の放射化学的純度が、25℃で5日以上の間95%以上である、請求項105記載の薬学的組成物。
【請求項108】
前記組成物が、10mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項105~107のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項109】
前記組成物が、20mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項105~107のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項110】
前記組成物が、25mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項105~107のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項111】
前記組成物が、30mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項105~107のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項112】
前記組成物が、40mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項105~107のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項113】
前記組成物が、50mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、請求項105~107のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項114】
1つまたは複数の安定剤が1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項108~113のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項113】
1つまたは複数の安定剤が1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む、請求項108~114のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項114】
1つまたは複数の安定剤が、少なくとも10mg/mLの量の1つまたは複数のゲンチセート化合物および少なくとも30mg/mLの量の1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項108~113のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項115】
1つまたは複数の安定剤が、少なくとも15mg/mLの量の1つまたは複数のゲンチセート化合物および少なくとも40mg/mLの量の1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項108~113のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項116】
前記組成物が、30mg/mL以上の量で存在する1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項108~113のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項117】
前記組成物が、40mg/mL以上の量で存在する1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、請求項108~113のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項118】
前記組成物が、10mg/mL以上の量で存在する1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む、請求項108~117のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項119】
請求項1~14のいずれか一項または請求項103~118のいずれか一項記載の
177Lu-DOTATATEまたは薬学的組成物を含む、単回投与量キット。
【請求項120】
請求項1~14のいずれか一項または請求項103~118のいずれか一項記載の
177Lu-DOTATATEまたは薬学的組成物を含む、複数回投与量キット。
【請求項121】
請求項1~14のいずれか一項または請求項103~118のいずれか一項記載の
177Lu-DOTATATEまたは薬学的組成物を含む、密封容器。
【請求項122】
癌に罹患している対象の処置の方法であって、請求項1~14のいずれか一項または請求項103~121のいずれか一項記載の
177Lu-DOTATATEまたは薬学的組成物の有効量を対象に投与する段階を含む、方法。
【請求項123】
前記対象が神経内分泌腫瘍に罹患している、請求項122記載の方法。
【請求項124】
前記対象が、前腸、後腸、中腸、肺、卵巣、髄質、副腎髄質、副腎、腎臓、下垂体、甲状腺、または傍神経節に由来する神経内分泌腫瘍に罹患している、請求項122記載の方法。
【請求項125】
神経内分泌腫瘍がソマトスタチン受容体陽性であることを評価する段階をさらに含む、請求項123または124記載の方法。
【請求項126】
神経内分泌腫瘍がソマトスタチン受容体陽性であることが、
68Ga-DOTATATEおよび陽電子放出断層撮影スキャンによって示される、請求項125記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年8月27日提出の米国特許仮出願第63/071138号の優先権を主張し、この出願はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
放射性薬剤177Lu-DOTATATE(177Lu-オクトレオテート)およびその薬学的組成物を提供する。さらに提供するのは、177Lu-DOTATATE化合物の調製の方法および177Lu-DOTATATEを含む薬学的組成物である。
【背景技術】
【0003】
背景
放射性薬剤は、様々な治療および診断適応症に使用されてきた。特に、放射性標識分子は、様々な悪性腫瘍を処置するのに有用であった。
【0004】
これらの薬剤の使用は、安定性および貯蔵寿命に関することを含む、一定の課題を提示する。特に、放射性核種を含む治療組成物は、調製および貯蔵中に放射線分解を起こし得る。放射線分解中、放射性核種の放出物は薬剤の他の基と反応し、それによって薬剤の分解および望まれない効果をもたらす。
【0005】
したがって、さらなる改善された放射性薬剤を有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明者らはここで、特に、放射性薬剤177Lu-DOTATATE化合物、化合物の調製の方法、ならびに177Lu-DOTATATEを含む薬学的組成物および処置の方法を提供する。
【0007】
本発明者らはここで、特に、(1)高レベルの177Lu組み込み、緩和な反応温度および/または短い反応時間を含む、高純度の177Lu-DOTATATEを製造する新しい方法、ならびに(2)調製後に長い貯蔵期間にわたって放射化学的純度を維持する(例えば、>90または95%、3、4または5日以上、25℃)、新しい177Lu-DOTATATE薬学的組成物を見出した。例えば、以下の実施例の結果を参照されたい。
【0008】
好ましい方法および薬学的組成物は、比較的多量の1つまたは複数の安定剤、特に多量の1つもしくは複数のアスコルベート化合物および/または1つもしくは複数のゲンチセート化合物を含む。
【0009】
特に、(a)ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体;および(b)少なくとも25mg/mLの濃度の1つまたは複数の安定剤化合物を含む、薬学的組成物を提供する。
【0010】
一定の局面において、適切には、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体は、少なくとも5、10、15、20、25または30mCi/mLの量で存在する。
【0011】
一定の局面において、1つまたは複数の安定剤は、1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む。
【0012】
一定の局面において、1つまたは複数の安定剤は、1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む。
【0013】
一定の好ましい局面において、薬学的組成物は、2つ以上の別個の安定剤を含む。特に好ましい局面において、薬学的組成物は、少なくとも1つのアスコルベート化合物および少なくとも1つのゲンチセート化合物を含む安定剤を含む。
【0014】
一定の好ましい局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、30mg/mL以上の量で薬学的組成物中に存在する。
【0015】
一定の好ましい局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、40mg/mL以上の量で薬学的組成物中に存在する。
【0016】
一定の好ましい局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、50mg/mL以上の量で薬学的組成物中に存在する。
【0017】
一定の好ましい局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、約25、30、35または40mg/mL~45、50、55、60、65、70、75または80mg/mLの量で薬学的組成物中に存在する。
【0018】
一定の好ましい局面において、薬学的組成物は、2つの別個の安定剤、特に(1)アスコルビン酸塩および/またはアスコルビン酸などのアスコルベート化合物、ならびに(2)ゲンチジン酸などのゲンチセート化合物を含む。
【0019】
適切には、薬学的組成物は水性製剤である。一定の好ましい局面において、薬学的組成物は、エタノールまたは他の有機溶媒などのアルコールを含まない。一定の好ましい局面において、薬学的組成物は、エタノールまたは他の有機溶媒などのアルコールを少なくとも実質的に含まない(すなわち、全組成物重量に基づいて5、4、3、2、1または0.5重量パーセント未満)。
【0020】
化合物テトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)は、以下の構造
1:
を有する。
【0021】
177Lu-DOTATATEは、上記化合物
1のルテチウム-177錯体であり、以下の構造
2:
で表し得る。
【0022】
1つの局面において、177Lu-DOTATATE(上記の構造2)を調製するための方法であって、ルテチウム-177およびテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE、上記の構造(1)を1つまたは複数の安定剤化合物の存在下で混合する段階、ならびに177LuとDOTATATEとの錯体を形成する段階を含む方法を提供する。177LuおよびDOTATATEを混合する段階を含み得る、177LuとDOTATATEとの錯体(例えば、上記の構造2を含むような錯体)を形成するためのこの反応は、本明細書において「組み込み反応」と呼ぶことがある。
【0023】
1つまたは複数の安定剤化合物は、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45または50mg/mL以上を含む、7mg/mL以上の量で、組み込み反応および/または薬学的組成物中に適切に存在する。
【0024】
好ましい局面において、テトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)を水性製剤としてルテチウム-177と混合する。
【0025】
さらなる好ましい局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、12、15、20または25mg/mL以上の量で組み込み反応および/または薬学的組成物中に存在する。一定の局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、30mg/mL以上の量で組み込み反応および/または薬学的組成物中に存在する。さらなる局面において、1つまたは複数の安定剤は、40mg/mL以上の量で組み込み反応および/または薬学的組成物中に存在する。さらなる局面において、1つまたは複数の安定剤は50mg/mL以上の量で組み込み反応および/または薬学的組成物中に存在する。
【0026】
一定の好ましい局面において、2つ以上の別個の安定剤化合物のそれぞれは、10mg/mL以上の量で組み込み反応および/または薬学的組成物中に存在する。
【0027】
一定の好ましい局面において、組み込み反応および/または薬学的組成物中に存在する1つまたは複数の安定剤は、1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む。一定の好ましい局面において、組み込み反応および/または薬学的組成物中に存在する1つまたは複数の安定剤は、1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む。
【0028】
一定の好ましい局面において、組み込み反応および/または薬学的組成物中に存在する1つまたは複数の安定剤は、少なくとも7、8、9もしくは10mg/mLの量の1つもしくは複数のゲンチセート化合物および少なくとも15、20、25もしくは30mg/mLの量の1つもしくは複数のアスコルベート化合物、または少なくとも15mg/mLの量の1つもしくは複数のゲンチセート化合物および少なくとも40mg/mLの量の1つもしくは複数のアスコルベート化合物を含む。
【0029】
一定の局面において、組み込み反応および/または薬学的組成物中に存在する安定剤の少なくとも1つは、アスコルベート化合物、特にアスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルビン酸塩である。
【0030】
好ましくは、薬学的組成物を提供するための組み込み反応または177Lu-DOTATATEへの添加の前に、アスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルベート化合物を、純度またはルテチウム-177およびテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)の組み込み反応を阻害し得る材料が存在しないことについて評価する。例えば、アスコルビン酸金属塩、例えばアスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルベート化合物のロットからの試料を、ルテチウム-177およびテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)の試験規模(小規模)組み込み反応などで試験して、アスコルベート化合物ロットが確実にルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体の形成または形成された錯体の放射化学的安定性に経時的に悪影響をおよぼさないようにすることができる。
【0031】
したがって、アスコルベート化合物をルテチウム-177および/もしくはテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)ならびに/またはルテチウム-177および/もしくはテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)の錯体と混合する段階の前に、アスコルベート化合物の純度を決定する段階を含む方法を提供する。適切には、アスコルベート化合物を、組み込み反応において有効であると決定し、方法は、有効なアスコルベート化合物をルテチウム-177および/もしくはテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)ならびに/またはルテチウム-177および/もしくはテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)の錯体と混合する段階を含む。そのような方法において、アスコルベート化合物は、アスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルビン酸塩であってもよい。
【0032】
一定の好ましい局面において、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物が加熱される。特定の局面において、混合物が、60分以下、50分以下、40分以下、30分以下、20分以下、または15分以下の間加熱される。
【0033】
一定の好ましい局面において、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物が、約80℃±10℃、または約80℃±5℃で加熱される。
【0034】
一定の好ましい局面において、本発明の方法は、加熱に続いて混合物を冷却する段階を含む。
【0035】
一定の好ましい局面において、混合する段階に続いて、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体が製剤組成物と混ぜられる。好ましくは、製剤組成物は、1つまたは複数の安定剤化合物を含む水性組成物である。製剤組成物は、適切には、5、6、7、8、9または10mg/mL以上の量、20mg/mL以上の量、30mg/mL以上の量、40mg/mL以上の量、または50、60、70、80または90mg/mL以上の量で存在する1つまたは複数の安定剤化合物を含む。
【0036】
一定の好ましい局面において、製剤組成物は、1つまたは複数の金属イオン封鎖剤をさらに含む。
【0037】
一定の好ましい局面において、177Lu-DOTATATEを提供するためのルテチウム-177のテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)へのまたはDOTATATEとの組み込みは、好ましくは、組み込み反応において使用するルテチウム-177のモル当量に基づいて98モルパーセントを超えるか、または99モルパーセントを超える。
【0038】
一定の好ましい局面において、ルテチウム-177の酸性水性製剤を、テトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)と混合する。好ましくは、ルテチウム-177のハロゲン化水素または酸ハロゲン化物水性製剤をテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)と混合する。例えば、ルテチウム-177の塩酸水性製剤をテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)と混合する。
【0039】
1つの局面において、提供するのは、本明細書に記載の方法によって得ることができる、または得た177Lu-DOTATATEである。
【0040】
1つの局面において、提供するのは、本明細書に記載の177Lu-DOTATATEを含む薬学的組成物である。好ましくは、組成物の放射化学的純度は、25℃で3日以上の間95%以上、または25℃で4日以上の間95%以上、または25℃で5日以上の間95%以上である。本明細書において言及するとおり、放射化学的純度は好ましくはHPLC分析によって評価する。
【0041】
1つの局面において、提供するのは、本明細書に記載の177Lu-DOTATATEまたは薬学的組成物を含む単回投与量キットである。さらに、提供するのは、本明細書に記載の177Lu-DOTATATEまたは薬学的組成物を含む複数回投与量キットである。
【0042】
1つの局面において、提供するのは、癌に罹患している対象の処置の方法である。方法は、本明細書に記載の177Lu-DOTATATEまたは薬学的組成物の有効量を対象に投与する段階を含む。
【0043】
一定の局面において、対象は神経内分泌腫瘍に罹患している。一定の局面において、対象は、前腸、後腸、中腸、肺、卵巣、髄質、副腎髄質、副腎、腎臓、下垂体、甲状腺、または傍神経節に由来する神経内分泌腫瘍に罹患している。
【0044】
一定の局面において、対象は、胃腸膵管系神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、前腸、中腸および後腸神経内分泌腫瘍に罹患している。
【0045】
一定の局面において、対象は切除不能または転移性神経内分泌腫瘍に罹患している。
【0046】
一定の局面において、方法は、患者の神経内分泌腫瘍がソマトスタチン受容体陽性であることを、例えば68Ga-DOTATATEおよび陽電子放出断層撮影スキャンで評価することによって、処置のために患者を特定する段階を含む。
【0047】
本明細書に開示する疾患または障害を処置するための、177Lu-DOTATATE化合物および組成物の使用も提供する。
【0048】
さらに提供するのは、本明細書に開示する疾患または障害を処置するための、177Lu-DOTATATE化合物および組成物を含む薬剤の製造法である。
【0049】
本発明の他の局面を以下に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、
177Lu-DOTATATEを製造するための例示的工程を示す。
【
図2】
図2は、実施例1の例示的作製工程のフローチャートを示す。
【
図3】
図3は、実施例3に開示するLu-177の組み込み%に対する反応時間、温度、およびpHの影響を示す。
【
図4】
図4は、実施例3に開示するLu-177の組み込み%に対するアスコルビン酸ナトリウムおよびゲンチジン酸の影響を示す。
【
図5】試料2の分析のラジオHPLCクロマトグラム(実施例3)。UV(220nm)と放射能検出器トレースとの重ね合わせ。実施例3に開示するとおり、
177Lu-DOTATATEはt
R=10.2分で溶出し、前駆体ペプチドはt
R=11.4分で溶出した。
【
図6】
図6(
図6A~6Bを含む)。
図6A:様々な量のゲンチジン酸による反応中の化学不純物のHPLC分析。
図6B:異なる温度で加熱した反応中の化学不純物のHPLC分析。
177Lu-DOTATATEはt
R=10.2分で溶出し、前駆体ペプチドはt
R=11.4分で溶出した。
【
図7】
図7は、以下の実施例3に開示するとおり、製剤スクリーニング試料の第5日のラジオHPLCスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
詳細な説明
前述のとおり、
177Lu-DOTATATEは化合物
1:
のルテチウム-177(
177Lu
3+)錯体であり、以下の構造
2:
で表し得る。
【0052】
177Lu-DOTATATEは、177Lu-テトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテートまたは177Lu-4,7,10-トリカルボキシメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル-アセチル-D-Phe-Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Thr-Cys-Thr-OHの化学(IUPAC)名でも表される。177Lu-DOTATATEはC65H90[177Lu]N14O19S2の分子式および1610.61g/molの分子量(平均分子量)を有する。
【0053】
化合物、方法、および薬学的組成物/製剤を含む、本発明を、便宜上、後述する以下の定義を参照して記載する。特に記載がないかぎり、本明細書において用いられる以下の用語は次のとおりに定義される。
【0054】
定義
本明細書において用いられる「a」、「an」、「the」なる用語および本発明の文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される類似の用語は、本明細書において特に記載がないかぎり、または文脈によって明確に否定されないかぎり、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0055】
「および/または」なる用語は、本明細書において、項目の組み合わせを記載する表現「および」、ならびに代替形式で項目を記載する「または」を表すための簡略表記として使用される。
【0056】
特に記載がないかぎり、本明細書に示す構造は、構造のすべての立体化学的形態;すなわち各不斉中心のRおよびS配置を含むことも意味する。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学的異性体ならびに鏡像異性体およびジアステレオマー混合物は、本発明の範囲内である。
【0057】
本明細書において用いられる「約」なる用語は、特定の値に対する許容誤差を意味し、これはいかに値を測定または決定するかに部分的に依存する。一定の局面において、本明細書において用いられる「約」は、当業者であれば、特定の用語のプラスマイナス20%までを意味すると理解するであろう。さらなる局面において、本明細書において用いられる「約」は、当業者であれば、特定の用語のプラスマイナス10%までを意味すると理解するであろう。
【0058】
本明細書において用いられる「実質的に純粋な」なる用語は、薄層クロマトグラフィ(TLC)、ゲル電気泳動、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)、核磁気共鳴(NMR)、および質量分析(MS)などの標準的な分析法によって決定される、容易に検出可能な不純物がないように見えるほど十分に均質であるか;またはさらなる精製が物質の物理的および化学的特性、または酵素的および生物学的活性などの生物学的および薬理学的特性を、検出可能に変化させないほど十分に純粋であることを意味する。一定の局面において、「実質的に純粋な」とは、標準的な分析法によって決定して、少なくとも約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%または約99.9%以上の分子が、ラセミ混合物またはその単一の立体異性体を含む、単一の化合物である、分子の集合を指す。
【0059】
本明細書において用いられ、特に記載がないかぎり、「処置する」、「処置すること」および「処置」なる用語は、疾患、障害、もしくは状態、または疾患、障害もしくは状態に関連する1つまたは複数の症状の根絶または改善を指す。一定の局面において、この用語は、疾患、障害、または状態を有する患者への本発明の製剤の投与から生じる、そのような疾患、障害、または状態の進行または悪化を最小限に抑えることを指す。いくつかの局面において、この用語は、特定の疾患、障害、または状態の症状発症後の、本明細書において提供する製剤の投与を指す。本明細書において用いられる「処置する」、「処置すること」、「処置」などの用語は、対象、例えば、哺乳動物における疾患、障害、または状態の処置を包含し、以下の少なくとも1つを含む:(i)疾患、障害、または状態を阻害すること、すなわち、その進行を部分的または完全に停止させること;(ii)疾患、障害、または状態を緩和すること、すなわち、疾患、障害、もしくは状態の症状の退行を引き起こすこと、または疾患、障害、もしくは状態の症状を改善すること;および(iii)疾患、障害、または状態の逆転または退行、好ましくは疾患、障害、または状態を排除または治癒すること。特定の態様において、「処置する」、「処置すること」、「処置」などの用語は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトにおける疾患、障害、または状態の処置を包含し、上記の(i)、(ii)、および(iii)の少なくとも1つを含む。当技術分野において公知のとおり、年齢、体重、全身の健康、性別、食餌、投与時間、薬物相互作用および状態の重症度に対する調整が必要な場合もあり、本明細書に記載の本発明に基づき、当業者による日常的な実験によって確認可能であろう。
【0060】
本明細書において用いられる、「対象」および「患者」なる用語は交換可能に使用される。「対象」および「患者」なる用語は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ラット、ネコ、イヌ、およびマウス)および霊長類(例えば、サル、チンパンジーおよびヒト)を含む哺乳動物などの動物を指す。特定の態様において、対象はヒトである。
【0061】
合成
1つの局面において、
177Lu-DOTATATE(構造
2を含む)は、
177Lu(ルテチウム177)またはそのハロゲン化物、例えば
177LuCl
3をDOTATATE(以下の構造
1を含む)と錯化または組み込むことによって調製することができる。
【0062】
化合物1 DOTATATEは、Raheem et al. Bioconjugate Chem. 2020. https://doi.org/10.1021/ acs.bioconjchem.0c00325などにおいて以前に記載されたとおり、適切に形成してもよい。化合物1 DOTATATEは市販もされている。
【0063】
本明細書において言及する177Lu-DOTATATEは、上記の構造2ならびに177Lu-DOTATATEの他の錯体を含むことが理解される。例えば、本明細書における177Lu-DOTATATEへの言及は、一般に構造2に対応するが、177Luが上記の2に示すものよりもDOTATATE分子の他の一部または部分(1つまたは複数の他の窒素などの)と実質的に錯化する化合物を含む。177Lu-DOTATATEへの言及はまた、上記の1および2に示すもの以外の立体異性体も含み得るが、1および2に示す立体異性体が好ましい。
【0064】
177Lu-DOTATATEを合成するために、組み込み反応中にルテチウム-177(177Lu)の塩形態をDOTATATEと混合することができる。177Luは適切に担体添加してもよく、またはより好ましくは担体無添加(n.c.a.)ルテチウム-177であってもよい。ルテチウム-177とDOTATATE化合物との組み込み(例えば、キレート化を含む錯化)を促進するために、好ましくは化合物の混合物は1つまたは複数の安定剤化合物の存在下である。
【0065】
1つの局面において、177Lu-DOTATATEの調製の方法は、ルテチウム-177およびテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)を1つまたは複数の安定剤化合物の存在下で混合する段階;ならびにルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体を形成する段階を含む。
【0066】
好ましくは、前述のとおり、組み込み反応中に、1つまたは複数の安定剤化合物は7、8、9または10mg/mL以上の量で存在する。一定の局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は組み込み反応中に20mg/mL以上の量で存在する。一定の局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は組み込み反応中に30mg/mL以上の量で存在する。一定の局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は組み込み反応中に40mg/mL以上の量で存在する。一定の局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は組み込み反応中に50、60または70mg/mL以上の量で存在する。
【0067】
好ましくは、1つまたは複数の安定剤は、1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む。例えば、アスコルベート化合物にはアスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルビン酸塩が含まれ得る。
【0068】
好ましくは、1つまたは複数の安定剤は、1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む。例えば、ゲンチセート化合物には、限定されないが、ゲンチジン酸が含まれ得る。
【0069】
好ましくは、組み込み反応中の1つまたは複数の安定剤は、少なくとも5、6、7、8、9または10mg/mLの量の1つまたは複数のゲンチセート化合物および少なくとも10、20、30、40または50mg/mLの量の1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む。一定の局面において、組み込み反応中の1つまたは複数の安定剤は、少なくとも15mg/mLの量の1つまたは複数のゲンチセート化合物および少なくとも40mg/mLの量の1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む。
【0070】
好ましくは、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物が加熱される。一定の局面において、混合物が20分以下の間加熱される。一定の局面において、混合物が15分以下の間加熱される。
【0071】
好ましくは、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物が約80℃±10℃の温度で加熱される。一定の局面において、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物が約80℃±5℃の温度で加熱される。
【0072】
方法は、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との混合物を加熱に続いて冷却する段階をさらに含む。
【0073】
一定の局面において、混合する段階に続いて、ルテチウム-177とテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)との錯体が製剤組成物と混ぜられる。好ましくは、製剤組成物は、1つまたは複数の安定剤化合物を含む水性組成物である。一定の局面において、製剤組成物は、5、6、7、8、9または10mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む。一定の局面において、製剤組成物は、20mg/mL以上の量の1つまたは複数の安定剤化合物を含む。一定の局面において、製剤組成物は、30mg/mL以上の量で存在する1つまたは複数の安定剤化合物を含む。一定の局面において、製剤組成物は、40mg/mL以上の量で存在する1つまたは複数の安定剤化合物を含む。一定の局面において、製剤組成物は、50、60または70mg/mL以上の量で存在する1つまたは複数の安定剤化合物を含む。
【0074】
一定の局面において、製剤組成物は、1つまたは複数の金属イオン封鎖剤をさらに含む。
【0075】
好ましくは、177Lu-DOTATATEを提供するためのルテチウム-177のテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)へのまたはDOTATATEとの組み込みは、組み込み反応において使用するルテチウム-177のモル当量に基づいて98モルパーセントを超える。一定の局面において、177Lu-DOTATATEを提供するためのルテチウム-177のテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)へのまたはDOTATATEとの組み込みは、組み込み反応において使用するルテチウム-177のモル当量に基づいて99モルパーセントを超える。
【0076】
好ましくは、ルテチウム-177の酸性水性製剤をテトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)と混合する。一定の態様において、ルテチウム-177のハロゲン化水素または酸ハロゲン化物水性製剤を、テトラアザシクロドデカン四酢酸-オクトレオテート(DOTATATE)と混合する。
【0077】
177Lu-DOTATATEの好ましい調製は、以下のステップの1つまたは複数、好ましくはそれぞれを含み得る。
1. 反応容器として機能し得るバイアルまたは他の容器でルテチウム-177を提供する。ルテチウム-177は、適切には、水性酸性製剤、例えば、HCl製剤で存在し得る。
2. DOTATATEペプチドを、1つまたは複数のアスコルベート化合物(例えば、アスコルビン酸ナトリウム)および任意に、1つまたは複数のゲンチセート化合物(例えば、ゲンチジン酸)を含む水性緩衝液組成物(反応緩衝液)と混合する。
3. ステップ2からのDOTATATEペプチドをステップ1のルテチウム-177組成物と混合する。例えば、ステップ2からのDOTATATEペプチド組成物を、ルテチウム-177を含むバイアルに添加することができる。
4. DOTATATEペプチドとルテチウム-177との混合物を次いで、好ましくは攪拌しながら加熱する、例えば、70~90℃、より典型的には75~85℃で最大6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20分間加熱しながら振盪することができる。
5. 加熱処理の完了後、前記ステップ4からの混合物を、室温(例えば25℃)以下で約0.1、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6または7分間冷却する。冷却は、1つまたは複数のアスコルベート化合物(例えばアスコルビン酸ナトリウム)および任意に、1つまたは複数のゲンチセート化合物(例えば、ゲンチジン酸)を含む水性組成物(製剤組成物)を、ステップ4の混合物を含むバイアルに添加することによって促進し得る。混合物に添加する製剤組成物は室温(例えば25℃)以下であってもよい。
6. ステップ5からの混合物を次いで、1つまたは複数のアスコルベート化合物および、一定の系において、1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む水性組成物(ステップ5で使用するのと同じ製剤組成物であってもよい)を含む容器に移してもよい。混合物を、例えば1つまたは複数の0.22μmフィルターを通して滅菌ろ過し、シリンジ、バイアルまたはIVバッグなどの容器に移してもよい。所望の投与量を、好ましくはステップ6を完了してから例えば5、4、3、2、1または0.5日以内に、患者への投与のために分注することができる。
【0078】
一定の局面において、
177Lu-DOTATATEの調製は、
図1に示す例示的工程を含む。例えば、
177Luバイアルは0.04N HCl中の
177LuCl
3を含んでもよい。特に好ましい反応緩衝液は、適切には、19mg/mLゲンチジン酸、57.3mg/mLアスコルビン酸ナトリウム、および3.7mg/mL NaOHを含んでもよい。特に好ましい製剤組成物は、18.7mg/mLゲンチジン酸、56.1mg/mLアスコルビン酸ナトリウム、5.3mg/mL NaOH、および0.4mg/mLジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を含んでもよい。
【0079】
実施例に示す他の組成物を本明細書に組み込む。
【0080】
薬学的組成物
さらなる局面において、薬学的組成物を提供する。
【0081】
好ましい薬学的組成物は、(1)ルテチウム-177とDOTATATEとの錯体および(2)1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、水性組成物を含み得る。
【0082】
さらなる好ましい薬学的組成物は、(1)ルテチウム-177とDOTATATEとの錯体および(2)1つまたは複数のゲンチセート化合物を含む、水性組成物を含み得る。
【0083】
さらなる好ましい薬学的組成物は、(1)ルテチウム-177とDOTATATEとの錯体;(2)1つまたは複数のゲンチセート化合物;および(3)1つまたは複数のアスコルベート化合物を含む、水性組成物を含み得る。
【0084】
さらなる好ましい薬学的組成物は、(1)ルテチウム-177とDOTATATEとの錯体;(2)1つまたは複数のゲンチセート化合物;(3)1つまたは複数のアスコルベート化合物;および(4)1つまたは複数の金属イオン封鎖剤を含む、水性組成物を含み得る。
【0085】
好ましくは、薬学的組成物の放射化学的純度は、組成物の調製後、組成物を25℃以下で3、4または5日以上維持する場合、少なくとも95%である。
【0086】
一定の好ましい局面において、薬学的組成物は、薬学的組成物の総重量に基づき2、1.5、1.0または0.5重量%以下の量の非キレート化ルテチウム-177を含まず、これは例えば放射能検出(HPLC放射能検出を含む)によって決定され得、組成物を25℃以下に維持すれば、そのような純度レベルは組成物の調製後3日以上にわたり示される。
【0087】
さらなる好ましい局面において、薬学的組成物は、薬学的組成物の総重量に基づき5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1または0.5重量%以下の量の放射化学的不純物を含まず、これは例えば放射能検出(HPLC放射能検出を含む)によって決定され得、薬学的組成物を25℃以下に維持すれば、薬学的組成物のそのような純度レベルは薬学的組成物の調製後3日以上にわたり示される。
【0088】
さらなる好ましい局面において、薬学的組成物は、薬学的組成物の総重量に基づき5、4、3、2、1または0.5重量%以下の量の化学的不純物を含まず、これは例えばHPLC/UV分析によって決定され得、組成物を25℃以下に維持すれば、そのような純度レベルは薬学的組成物の調製後3、4、または5日以上にわたり示される。
【0089】
さらなる好ましい局面において、薬学的組成物は、(1)2、1.5、1.0または0.5重量%以下の量の非キレート化ルテチウム-177を含まず(例えば放射能検出(HPLC放射能検出を含む)によって決定され得る);(2)5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1または0.5重量%以下の量の放射化学的不純物を含まず(例えば放射能検出(HPLC放射能検出を含む)によって決定され得る);かつ(3)5、4、3、2、1または0.5重量%以下の量の化学的不純物を含まず(例えばHPLC/UV分析によって決定され得る)、すべての重量%は薬学的組成物の総重量に基づき、組成物を25℃以下に維持すれば、そのような純度レベルは薬学的組成物の調製後3日以上にわたり示される。
【0090】
一定の好ましい局面において、本明細書において言及する放射化学的純度を含む、純度レベルは、ラジオHPLCを含むHPLC分析によって決定される。
【0091】
一定の局面において、薬学的組成物を、非経口投与、例えば静脈内、筋肉内、皮内、皮下、髄腔内または腹腔内投与のために製剤する。例えば、薬学的組成物を、静脈内、筋肉内、皮下または皮内注射用に製剤する。好ましい局面において、薬学的組成物を、静脈内投与用に製剤する。典型的な局面において、薬学的組成物を、薬学的水溶液の形態で投与してもよい。
【0092】
一定の局面において、薬学的組成物は、注射用などの水溶液、分散液または他の混合物であり、177Lu-DOTATATEならびに好ましくは(1)1つもしくは複数のアスコルベート化合物;および/または(2)1つもしくは複数のゲンチセート化合物を含む。
【0093】
一定の好ましい局面において、下記を含む薬学的水溶液、分散液または混合物を提供する。(1)ルテチウム-177とDOTATATEとの錯体;および(2)好ましくは錯体調製後の貯蔵中の組成物の放射線分解を阻害し得る、少なくとも1つの安定剤化合物。177Lu-DOTATATEは適切には、調製後1、2、3または4日以内に、少なくとも100MBq/mL、好ましくは少なくとも250MBq/mL、または少なくとも300もしくは400MBq/mLの体積放射能を提供する濃度で存在する。一定の局面において、177Lu-DOTATATEは、調製後1、2、3または4日以内に、100~1000MBq/mL、好ましくは約250~800MBq/mLの体積放射能を提供する濃度で存在する。
【0094】
一定の局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、水性薬学的組成物の少なくとも5mg/mL、好ましくは少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90または100mg/mLの総濃度で存在し得る。
【0095】
一定の局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、水性薬学的組成物の少なくとも10mg/mL、または少なくとも20、30、40、50、60もしくは70mg/mLの総濃度で存在し得る。
【0096】
一定の局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、水性薬学的組成物の少なくとも20もしくは25mg/mL、または少なくとも30、40、50、60もしくは70mg/mLの総濃度で存在し得る。
【0097】
一定の局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、ゲンチジン酸(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)もしくはその塩、アスコルビン酸(L-アスコルビン酸)もしくはその塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム)、メチオニン、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-システイン、ヒスチジン、メラトニン、エタノール、またはSe-メチオニンの1つまたは複数、好ましくはアスコルビン酸またはその塩である。
【0098】
一定の局面において、1つまたは複数の安定剤化合物は、(1)ゲンチジン酸(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)もしくはその塩または(2)アスコルビン酸(L-アスコルビン酸)もしくはその塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム)の1つまたは複数である。
【0099】
一定の局面において、薬学的水性製剤は、約25℃以下で少なくとも24時間、約25℃以下で少なくとも48時間、約25℃以下で少なくとも72時間、または約25℃以下で24時間~120時間、約25℃以下で24時間~96時間、約25℃以下で24時間~84時間、約25℃以下で24時間~72時間の貯蔵寿命、特に約25℃以下で72時間の貯蔵寿命を有する。
【0100】
一定の局面において、1、2または3つのまったく異なる安定剤化合物が、ルテチウム-177とDOTATATEとの錯体形成の間に、好ましくは1、2または3つ以上の安定剤化合物の5mg/mL以上の濃度をもたらす量で存在する。前述のとおり、好ましくは安定剤化合物の少なくとも1つはアスコルベート化合物である。
【0101】
一定の局面において、前述のとおり、1つまたは複数の安定剤化合物を、ルテチウム-177とDOTATATEとの錯体の形成後、例えばルテチウム-177とDOTATATEとの混合物の加熱完了時に添加してもよい。前述のとおり、好ましくは177Lu-DOTATATEの形成後に添加する安定剤化合物の少なくとも1つはアスコルベート化合物であり、例えば、そのような安定剤化合物を、加熱段階の完了時の温度低減時に添加する。一定の局面において、ゲンチセート化合物も、177Lu DOTATATEの形成後に添加し、例えば、そのような安定剤化合物を、加熱段階の完了時の温度低減時に添加する。これに関して、加熱を終了した直後の1つまたは複数の安定剤を含む水性製剤の添加は、177Lu DOTATATE反応混合物を冷却するよう作用し得る。
【0102】
一定の態様において、薬学的水溶液は、適切には非錯化ルテチウム-177を除去するために、例えばルテチウム-177とDOTATATEとの錯体の形成後に添加した、金属イオン封鎖剤をさらに含み得る。適切な金属イオン封鎖剤は、例えば1つまたは複数のアミノポリカルボン酸、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはその塩を、適切には水性177Lu-DOTATATE組成物の0.01~0.50mg/mLの濃度をもたらす量で含み得る。
【0103】
特に好ましい局面において、177Lu-DOTATATEを、静脈内使用のための滅菌溶液として提供する。単回用量バイアルは適切には、3.6±10%GBq~11.1±10%GBqの177Lu-DOTATATEの用量を含有する。処置サイクルあたり1回の注射で表される、4回の処置サイクルは、14.4±10%GBq~44.4±10%GBqの累積用量となる。
【0104】
好ましくは、177Lu-DOTATATE溶液のpH範囲は4.5~8.5である。特に好ましい局面において、177Lu-DOTATATE溶液のpH範囲は5~7である。
【0105】
処置の方法
前述のとおり、前腸(例えば、胃または十二指腸)、後腸(例えば、左結腸または直腸)、中腸(例えば、空腸、回腸、右結腸、または虫垂)、肺、膵臓、および他の器官(例えば、卵巣、髄質、副腎髄質、副腎(褐色細胞腫)、腎臓、下垂体、甲状腺、または傍神経節)に由来する癌を含む、癌を処置するための、177Lu-DOTATATE(上記の2を含む)の使用を提供する。
【0106】
特に、神経内分泌腫瘍のサイズを縮小するためを含む、神経内分泌腫瘍を処置するために、177Lu-DOTATATE(上記の2を含む)を使用し得る。
【0107】
このような方法において、177Lu-DOTATATE(上記の2を含む)をヒトなどの対象に、癌を処置する(例えば、腫瘍サイズの縮小)ために有効な量で、例えば、処置サイクルあたり約1または2GBq~約15GBqまたは20GBq以上、一定の局面において処置サイクルあたり3.6GBq~約11.1GBqの用量で投与することができ、地域もしくは中央の核薬局で、またはcGMP中央製造を通じて、ルテチウム-177で調製したコールドキットから調製した、バイアルもしくはシリンジ中の単位用量から、またはバイアルもしくはシリンジ中のバルク溶液として、適切に投与することができる。4回の処置サイクルを含む治療のために投与する総用量は、約14.4GBq~約40.8GBqまたは44.4GBqである。
【0108】
患者に投与する177Lu-DOTATATE放射性薬剤の有効量は一般に、患者の記録を考慮して決定する。しかしながら、有効量は適切にはおおよそ用量あたり約1または2GBq~約15GBqまたは20GBq以上の用量の範囲内であり得、より典型的には、用量あたり約3.6GBq~11.1GBq、例えば、用量あたり約3.6、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.4、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.1GBq、または上記の値の2つの間の任意の範囲であり得る。用量は、地域もしくは中央の核薬局で、またはcGMP中央製造を通じて、ルテチウム-177で調製したコールドキットから調製した、バイアルもしくはシリンジ中の単位用量から、またはバイアルもしくはシリンジ中のバルク溶液として投与することができる。
【0109】
必要または望ましい場合、処置は、有効量の177Lu-DOTATATEの複数回投与を含み得る。177Lu-DOTATATEの対象への投与を、7~56日後、例えば4~8週間の間隔で繰り返すことは一般に有益である。
【0110】
特に好ましいプロトコルにおいて、177Lu-DOTATATE剤形は、静脈内注射によって投与する滅菌水溶液である。投与計画は、約4、5、6、7または8週間隔で投与する、それぞれ3.6GBq±10%~11.1GBq±10%などの有効投与量での4回の注入などの複数回の注入を含み得る。
【0111】
一定の局面において、方法は、患者の神経内分泌腫瘍がソマトスタチン受容体陽性であることを、例えば68Ga-DOTATATEおよび陽電子放出断層撮影スキャンで評価する段階を含む。
【0112】
個人別投薬
さらなる局面において、患者の特性の1つまたは複数に基づいて、特定の患者のための投薬量を提供するために、投薬プロトコルを利用してもよい。
【0113】
特に、177Lu-DOTATATEを線量測定評価に基づく投与量で投与してもよい。例えば、177Lu-DOTATATEの投与後、患者をSPECT(例えば、3D SPECT-CT撮像法)およびプラナースキャンまたは他の分析により評価して、個別の線量測定を可能にしてもよい。複数回のスキャンを、例えば、投薬後約4、24および72時間で、もしくは単一の時点または他のスケジュールで実施してもよい。スキャンは、患者の腫瘍、腎臓および骨髄などによって吸収される線量を決定するために使用することができる。その評価に基づいて、患者の追加の投薬を変更、特に有効性または安全性を高めるために増加または減少することができる。
【0114】
加えて、患者の糸球体濾過率(GFR)も、典型的にはクレアチニン(Cr)クリアランスの決定によって評価してもよい。
【0115】
好ましくは、177Lu-DOTATATEを投与している患者を、線量測定およびCrクリアランス/GFRの両方によって評価する。このような組み合わせ評価により、患者に177Lu-DOTATATEを40mL/分および30mL/分という低いGFRで投与し得る。
【0116】
併用療法
177Lu-DOTATATE(上記の2を含む)は、適切には、対象に、1つまたは複数の他の治療剤、特に1つまたは複数の他の化学療法剤と共に、または組み合わせて投与してもよい。
【0117】
1つの局面において、対象に、177Lu-DOTATATEによる処置を、オクトレオチド(例えばサンドスタチン)またはランレオチド(例えばソマチュリンオートジェル)などの、1つまたは複数のソマトスタチン化合物の投与計画と組み合わせて行ってもよい。
【0118】
対象に、177Lu-DOTATATEによる処置を、1つまたは複数の抗癌剤、例えば、カペシタビン、テモゾロミド、ステプトゾトシン(steptozotocin)、5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、および/またはドキソルビシンの投与計画と組み合わせて行ってもよい。
【0119】
対象への療法の投与の文脈において、本明細書において用いられる「組み合わせて」なる用語は、治療的利益のための複数の療法の使用を指す。投与の文脈における「組み合わせて」なる用語は、少なくとも1つの追加の療法と共に使用する場合、対象への療法の予防的使用を指すこともできる。「組み合わせて」なる用語の使用は、療法(例えば、第1および第2の療法)を対象に投与する順序を制限しない。療法は、本明細書において開示する処置を必要としている対象への第2の療法投与の前(例えば、1分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、同時、または後(例えば、1分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に投与することができる。療法は、療法が一緒に作用し得るような順序および時間間隔内で対象に投与する。特定の態様において、療法は、それらがそれ以外で投与された場合よりも大きい利益を提供するような順序および時間間隔内で対象に投与する。任意の追加療法は、他の追加療法と任意の順序で投与することができる。
【0120】
包装された177Lu-DOTATATEおよびキット
前述のとおり、177Lu-DOTATATEを医療施設、例えば病院の検査室または核薬局などで投与直前に調製し得る、コールドキットを含む、処置キットも提供する。このようなキットにおいて、DOTATATEは、ルテチウム-177とは別の凍結乾燥または他の形態でバイアルまたは他の容器で提供してもよい。DOTATATEおよびルテチウム-177を、本明細書において開示するとおり、医療施設で反応させて、177Lu-DOTATATEを提供し、これを次いでただちに患者に投与することができる。
【0121】
キットは、本明細書に記載の177Lu-DOTATATEまたは薬学的組成物を含む単回投与量キットであってもよい。または、キットは、本明細書に記載の177Lu-DOTATATEまたは薬学的組成物を含む複数投与量キットであってもよい。
【0122】
さらなる局面において、177Lu-DOTATATEの包装された調製物または製品も提供する。包装された調製物は、(1)177Lu-DOTATATEおよび任意に(2)神経内分泌腫瘍などの癌を処置するための177Lu-DOTATATEの使用説明書を含み得る。好ましくは、包装された調製物は、治療的有効量の177Lu-DOTATATEを含むことになる。
【0123】
一定の例示的な包装された調製物または製品において、177Lu-DOTATATEは、例えば、癌、例えば神経内分泌腫瘍に罹患している対象を処置するための療法として使用するために、ラベル付きの適切な容器に包装することができる。容器は、177Lu-DOTATATEおよび本明細書において開示する1つまたは複数の適切な安定剤化合物を含むことができる。製品は、177Lu-DOTATATEを含む容器(例えば、バイアルなど)を含むことができる。加えて、製造品またはキットはさらに、例えば、神経内分泌腫瘍または他の癌などの標的状態を処置するための包装材料、使用説明書、シリンジ、送達装置を含み得る。
【0124】
包装された系または製品は、説明(例えば、印刷されたラベルもしくは挿入物、または製品の使用を説明する他の媒体(例えば、オーディオファイルまたはビデオファイル))も含み得る。説明は、容器に付随(例えば、容器に貼付)してもよく、その中の組成物を投与すべき様式(例えば、投与の頻度および経路)、そのための指示、および他の用途を記載することができる。組成物は、投与の準備ができており(例えば、用量に適した単位で存在)、1つまたは複数の追加の薬学的に許容される補助剤、担体または他の希釈剤を含み得る。
【0125】
以下の非限定例は例示である。
【実施例】
【0126】
実施例1:
177
Lu-DOTATATE製造
表1は、製造工程へのすべての投入材料を記載する。
【0127】
(表1)
1合成開始時
2用量/バッチの数に応じて
3製剤緩衝液の構成要素でもある
【0128】
以下の表2は、最終の製剤化薬物製品中の成分を記載する。
【0129】
(表2)
1総バッチ体積=16~120mL
2標的放射能濃度を得るのに要するバッチサイズおよび体積に応じた範囲
3較正時(TOC)、製造日の07:00 ETと規定
【0130】
作製工程
本項に記載するステップ1は、等級Aの生物学的安全キャビネット内で行う。本項に記載するその後のすべてのステップは、等級Aの遮蔽アイソレーター内で行う。反応緩衝液および製剤緩衝液を含むすべての溶液は、等級Cのクリーンルーム内で調製する。まとめると、組み込み反応において、DOTATATEペプチドを反応緩衝液および177LuCl3と混合し、続いて加熱し、振盪して、薬物錯体物質を生成する。
【0131】
ヒーター/シェーカーは使用前に、設置、動作および性能認定を行う。認定によって、以下のステップ4に記載の、組み込み反応(放射性標識)に必要な温度および振盪条件を指定された期間維持し得ることが確認された。
【0132】
使用するDOTATATEペプチドの量(ステップ2)は、177Lu-DOTATATE活性(それ自体は患者への投与の数およびタイミングに基づく)の全量および較正時(TOC)の放射能濃度≦0.96GBq/mLを得るのに必要な体積に基づく。TOCは製造日(DOM)の07:00 ETと規定する。
1. 必要な177Lu開始活性の量に応じて、0.04N HCl中の177LuCl3を含む供給業者のバイアルに適切な体積の0.04N HClを加えて、以下の総体積とする:
a. 1000μL(160~320μgのDOTATATEペプチドを使用する場合)
b. 2000μL(480~640μgのDOTATATEペプチドを使用する場合)。
2. 1~4×750μLのDOTATATEペプチドを、反応緩衝液中で調製する。溶液をゆっくり撹拌して、ペプチドを完全に溶解する。各750μLのDOTATATEペプチド溶液は200μgのDOTATATEを含む。
3. 1×または3×750μLのDOTATATE溶液しか必要でない場合、追加の1×600μLの反応緩衝液を調製する。
4. 反応溶液を、ステップ2からのDOTATATE溶液(該当する場合はステップ3からの反応緩衝液)600μLをステップ1からの供給業者のバイアル(希釈した177LuCl3を含む)に加えることによって調製する。反応溶液の総体積は2.2mL(160~320μgのペプチド)または4.4mL(480~640μgのペプチド)である。
5. 認定され、かつ予備加熱したヒーター/シェーカーを用いて、反応溶液を350rpmで撹拌しながら80±5℃で15±1分間加熱する。
6. 原薬を含む反応溶液バイアルを室温で少なくとも5分間冷却する。
【0133】
続くステップは、原薬(反応緩衝液中)を、直列型の2×0.22μm滅菌フィルター鎖を通して、製剤緩衝液を含む100mL滅菌バルクバイアルに移す段階、および最終薬物製品を最終容器施栓中に無菌分配する段階からなる。これらのステップを、薬物製品の移動および分配を容易にするための、様々なチューブ、シリンジ、バイアルおよび針が接続された一連の活栓からなる分配装置を用いて達成する。ステップ7~10は、等級Aの遮蔽アイソレーターユニット内で行う。
7. 177Lu-DOTATATE原薬をただちに反応バイアルから、直列型の2×0.22μm滅菌フィルター鎖を通して、(反応バイアル洗浄後)6.95~115.6mLの製剤緩衝液を含む100mLバルクバイアルに移す。このステップは薬物製品を形成し、合成の終了(EOS)を表す。
8. 無菌性およびQC試験のために、試料をこのバイアルから取り出す。
9. 患者用量を最終の30mL容器施栓中に分配する。
前述のステップ3~ステップ7までの総合成時間は、約120分である。
【0134】
図2は、好ましい例示的作製工程のフローチャートを示す。
【0135】
実施例2:処置プロトコル
神経内分泌腫瘍を有するヒト患者を、その腫瘍が68Ga-DOTATATEおよび陽電子放出断層撮影スキャンでソマトスタチン受容体陽性であることが示された後に、処置のために選択する。
【0136】
上記実施例1の表2に示す滅菌水溶液中の177Lu-DOTATATEを、患者に静脈内注射により投与する。3.6±10%GBq~11.1±10%GBqの177Lu-DOTATATEを含む、単回用量バイアルを使用する。177Lu-DOTATATEを、処置サイクルごとに1回の注射で4回の処置サイクルにわたって投与し、14.4GBq~44.4GBqの累積用量を提供する。
【0137】
実施例3:
材料と方法
小規模反応スクリーニングのために、Eppendorf Thermomixer C、96穴Eppendorf MicroplatesおよびThermoFisher 96穴プレートシーリングテープを用いた。スケールアップした反応には、VWRヒーティングブロックを用いた。分析には、放射能検出器およびAcquity QDa質量検出器を備えたWaters Acquity Arc UHPLCを用いた。クロマトグラフィ分離には、Thermo Scientific Acclaim 120 C18カラム(150×3mm、120Å、3μm)を用いた。ラジオiTLC分析には、Eckert & Ziegler AR-2000 Radio-TLC Imaging Scannerを用いた。
【0138】
natLu-DOTATATE参照標準は、ABX advanced biochemical compounds GmbH(Radeberg Germany)から購入し、DOTATATE前駆体はAuspep Clinical Peptidesから入手した。
【0139】
ラジオiTLC法
ラジオiTLC分析には、Agilent iTLC-SAクロマトグラフィーペーパーを用いた。クロマトグラフィ分離に用いた移動相は、0.1Mクエン酸緩衝液中20%CH3OHであった。ろ紙にスポットした試料体積は1μLであった。移動距離は9cmであった。
【0140】
【0141】
【0142】
緩衝液展開
組み込み反応混合物または最終薬物錯体製品混合物で所望のpHに達するための1M NaOHまたは1M HClの体積を、実験的に決定した。
【0143】
組み込み反応条件スクリーニング実験
非変数パラメーター
組み込み反応スクリーニング実験のために、以下の構成要素を各反応ウェルに加えた。
【0144】
反応混合物中のペプチド濃度は90.9μg/mLであった。各組み込み(放射性標識)反応の放射能濃度(RAC)は、実験開始時に1μCi/mLであった。7.8GBq投入放射能を用いて、比放射能3.8GBq/μgの177LuCl3による同等の製造工程におけるLu/前駆体モル比に達するように、175LuCl3を反応に加えた。
【0145】
変数パラメーター
組み込み反応条件のスクリーニングを、前述の反応緩衝液の以下の反応変数により実施し、54.5μで用いた。
*最終組み込み反応(放射性標識)混合物中で試験して規定したpH
**組み込み反応緩衝液のために規定したアスコルビン酸ナトリウムおよびゲンチジン酸濃度(0.04N HCl中の
175/177LuCl
3の添加前)。
【0146】
組み込み反応条件スクリーニングの第2回のための変数パラメーター
組み込み反応条件スクリーニングの第2回を、以下の反応変数により実施した。これらの変数のすべての順列を試験したわけではない。
*最終組み込み反応(放射性標識)混合物中で試験して規定したpH
**組み込み反応(放射性標識)緩衝液のために規定したアスコルビン酸ナトリウムおよびゲンチジン酸濃度(0.04N HCl中の
175/177LuCl
3の添加前)。
【0147】
組み込み反応条件スクリーニング実験の評価
最初の組み込み反応条件スクリーニング実験のために、各実験を反応直後にラジオiTLCにより評価した。同じ反応体積から様々な時点を採取し、iTLCろ紙上にスポットして、反応を停止した。組み込み反応実験の第2回のために、ラジオiTLCおよびラジオHPLC分析を実施した。
【0148】
製剤条件スクリーニング実験
組み込み反応
1回の組み込み反応を実施し、製剤条件スクリーニング実験のために、異なる製剤緩衝液中に分割した。組み込み反応のために以下のパラメーターを用いた。
*最終組み込み反応混合物中で規定されたパラメーター
**組み込み反応(放射性標識)緩衝液のために規定したパラメーター(最終組み込み反応混合物に達するための0.04N HCl中の
177LuCl
3の添加前)。
【0149】
非変数製剤パラメーター
製剤条件スクリーニング実験のために、以下の構成要素を各反応ウェルに加えた。
以下のパラメーターを各製剤条件試験で一定に保持した。
*最終製品混合物中で規定されたパラメーター
【0150】
変数製剤パラメーター
製剤条件のスクリーニング(
177Lu-DOTATATE薬学的組成物を提供するため)を以下の反応変数で実施した。
*最終製品中で規定されたパラメーター
【0151】
製剤スクリーニング実験の評価
製剤スクリーニング実験を、第0、1、3および5日にラジオiTLCにより分析した。試料を第5日にラジオHPLCにより分析した。
【0152】
スケールアップ実験
組み込み反応パラメーター
2つの組み込み反応を実施した。以下の構成要素を各反応容器に添加した。
【0153】
製剤パラメーター
2つの組み込み反応のために、以下の構成要素パラメーターを用いた。
*組み込み反応緩衝液のために規定したパラメーター(最終組み込み反応混合物に達するための0.04N HCl中の
177LuCl
3の添加前)。緩衝液中100mg/mLアスコルビン酸ナトリウムは組み込み反応中54mg/mLに相当する。
【0154】
2つの組み込み反応(L1およびL2)それぞれのために、2つの異なる製剤条件を用いた。以下の構成要素を組み合わせて、4つの異なる最終製品を得た。
【0155】
2つの異なる製品製剤のために、以下のパラメーターを用いた。
*放射性標識緩衝液のために規定したパラメーター(最終組み込み反応混合物に達するための0.04N HCl中の
177LuCl
3の添加前)。
【0156】
スケールアップ実験の評価
2つの組み込み反応混合物それぞれを、2つの製剤規格により製剤して、4つの試料、L1F1、L2F2、L2F1、およびL2F2を得た。4つの製品を、第0、1、2および5日にラジオiTLCおよびラジオHPLCにより試験した。製品を5日間の試験期間中、室温で貯蔵した。
【0157】
結果と考察
組み込み反応最適化
組み込み反応スクリーニングを行って、放射性金属(177Lu)組み込みに対するpH、アスコルビン酸ナトリウム濃度、ゲンチジン酸濃度、反応温度および反応時間の影響を評価した(表3)。
【0158】
【0159】
pH5、反応時間30分、および反応温度60℃で得られた最適な組み込み反応
ラジオiTLCでの反応の分析により、最適な組み込み反応(放射性標識)はpH5で達成されることが示された。反応はpH4では不良で、pH6では顕著に進行することはなかった(
図3)。反応の実施が高温かつ長時間になるほど、Lu-177の組み込みは効率的になった。
【0160】
アスコルビン酸ナトリウムは組み込み反応を改善する
アスコルビン酸ナトリウムの存在は、試験反応中の放射性金属(
177Lu)組み込みに対して著しく有益な影響をおよぼした。反応緩衝液中100mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム(放射性標識混合物中54mg/mLに相当)を含む反応は、ラジオiTLCで測定して、最も高い
177Lu組み込み%を示した。ゲンチジン酸は、試験したすべての濃度での反応中によく耐容された。
図4に示す結果を参照されたい。
【0161】
組み込み反応(放射性標識)スクリーニング実験の第2回
8つの組み込み反応を実施し、ラジオiTLCおよびラジオHPLCにより評価した(以下の表4)。
【0162】
(表4)放射性標識スクリーニング実験の第2回において試験した反応のための組み込み反応条件
【0163】
すべての試料について、観察された唯一の放射性ピークは
177Lu-DOTATATEであった(
図5)が、反応に用いた放射能は痕跡量(1μCi/mL)であったため、放射能検出器シグナルは非常に低かった。各注入後に基準線上昇と共に製品ピークの著しいテーリングも観察され、これにより試料注入あたりのより多くの材料の注入が妨害された。この問題は次の実験に持ち越され、最終的に放射能検出器内の流体経路(水)を置き換えることによって解決した。
【0164】
試料番号1、番号2および番号3の間のUVトレースの比較により、ゲンチジン酸を多く含む試料中で化学不純物の増加が検出されることが明らかとなった(
図6A参照)。HPLCでのゲンチジン酸の分析により、これらのピークのいくつかは受領したゲンチジン酸材料中に存在する不純物であることが判明した。試料番号2および番号8の間のUVトレースの比較により、より高い反応温度を用いると、化学不純物の量が増加することが示されている。対照実験から、溶液中で加熱されると、ゲンチジン酸および/またはその当初の不純物から新しい不純物が生じることが示された。
【0165】
高い濃度のアスコルビン酸ナトリウム(100mg/mL)および低い濃度のゲンチジン酸(0mg/mL)で化学純度が高まることにより、製剤スクリーニング試験におけるさらなる調査のために、試料番号3の標識条件を選択した。
【0166】
製剤評価
製剤スクリーニングを行って、177Lu-DOTATATEの安定性に対するpH、アスコルビン酸ナトリウム濃度およびゲンチジン酸濃度の影響を評価した。各試料を、第0、1、3および5日にラジオiTLCにより試験した(以下の表5~7)。
【0167】
(表5)100mg/mLのアスコルビン酸ナトリウムを含む試料の製剤スクリーニングiTLC結果
*第3日に、ウェルA1、A2、B1でわずかな緩衝液が観察された。おそらく、上部左角のプレートの不適当な密封による蒸発が原因。
【0168】
(表6)75mg/mLのアスコルビン酸ナトリウムを含む試料の製剤スクリーニングiTLC結果
*第3日に、ウェルA1、A2、B1でわずかな緩衝液が観察された。
【0169】
(表7)50mg/mLのアスコルビン酸ナトリウムを含む試料の製剤スクリーニングiTLC結果
【0170】
すべての試料を第5日にラジオHPLCにより分析した。製品のテーリングが観察され、これにより放射能検出器の基準線の上昇がもたらされた。
【0171】
製品ピークのテーリングおよび基準線上昇が試料スペクトルの解釈を複雑にしたが、実験からいくつかの一般的な結論を得ることができた(
図7)。注目すべきことに、製品がpH6であった場合、第5日に存在した不純物は少なかった。UV検出器スペクトルの比較を完了したが、大きな差は観察されなかった。スケールアップ試験のために、以下の2つの製剤条件を選択した:F1-pH6、アスコルビン酸ナトリウム75mg/mL、ゲンチジン酸15mg/mL、およびF2-pH6、アスコルビン酸ナトリウム50mg/mL、ゲンチジン酸15mg/mL。
【0172】
スケールアップおよび安定性試験
スケールアップおよび安定性試験のために、4つの異なる製品を生成するための2つの標識条件および2つの製剤条件を選択した(表8~7)。すべての試料を、第0、1、2および5日に、ラジオiTLC(表10~11)およびラジオHPLCにより分析した。製品ピークのテーリングは、放射能検出器への流体経路を置き換えた後には観察されなかった。すべての製品は、
177Lu-DOTATATEの予期された保持時間に顕著なピークを示し、製品ピークの前後両方にいくつかの不純物が溶出された。これらの不純物は、y軸のスケールを小さくすることで可視化された(
図7)。
【0173】
(表8)スケールアップおよび安定性試験のための標識条件
【0174】
(表9)スケールアップおよび安定性試験のための製剤条件
【0175】
(表10)L1スケールアップおよび安定性試験のためのラジオiTLC結果
【0176】
(表11)L2スケールアップおよび安定性試験のためのラジオiTLC結果
【0177】
前述の結果は、
177Lu-DOTATATEの合成は好ましくはpH5で進行し、試験した最も高い組み込み反応温度(60℃)を30分間用いることで、最も高い程度のLu-177組み込みが可能であったことを示している。組み込み反応混合物中のアスコルベート化合物濃度は、放射性金属組み込みと正の相関を示した。試験した最も高い濃度(反応緩衝液中100mg/mL=放射性標識混合物中54mg/mL)は、ラジオiTLCにより最良の結果をもたらした(
図4参照)。
【0178】
製剤スクリーニングにより、製品は試験したすべての条件で安定であるが、製品はpH6でpH5よりも少ない不純物を生じることが示された。スケールアップおよび安定性試験により、標識混合物中でいくつかの不純物が生じ、それらのほとんどは製品がいったん製剤されれば安定であるが、室温で5日間貯蔵する間にいくつかは増加することが判明した。一般に、製品をより低い反応温度で標識した場合、観察される不純物はより少なかった。
【0179】
実施例4:177Lu-DOTATATE単回用量バッチの組成物(97mCi/3.59GBq投入Lu-177)
以下の組成物を、上記実施例1および3に示す手順に従って調製する。すべての溶液に対し、1g/mLの密度を想定する。本明細書において一般に言及するとおり、特に記載がないかぎり、組み込み反応において反応緩衝液(または類似の用語)を使用する。本明細書において一般に言及するとおり、特に記載がないかぎり、組み込み反応混合物から177Lu-DOTATATE薬学的組成物を調製するために、製剤緩衝液(または類似の用語)を使用する。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
実施例5:177Lu-DOTATATE複数回用量バッチの組成物(2389.2mCi/88.4GBq投入Lu-177)
以下の組成物を、上記実施例1、3および4に示す手順に従って調製する。すべての溶液に対し、1g/mLの密度を想定する。パート1:
【0184】
【0185】
【0186】
実施例6:さらなる組成物
以下の組成物を、上記実施例1、3、4および5に示す手順に従って調製する。すべての溶液に対し、1g/mLの密度を想定する。
【0187】
参照による組み込み
本明細書において引用するすべての特許、公開された特許出願および他の開示の全内容は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【国際調査報告】