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  • 特表-洗浄組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】洗浄組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230914BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20230914BHJP
   C11D 7/34 20060101ALI20230914BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C11D7/32
C11D7/34
C11D7/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513846
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 US2021047981
(87)【国際公開番号】W WO2022047175
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/070,886
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/152,486
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クニール、エミール エー
(72)【発明者】
【氏名】ドリー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】水谷篤史
【テーマコード(参考)】
4H003
5F157
【Fターム(参考)】
4H003DA09
4H003DA12
4H003DA15
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB06
4H003EB13
4H003EB14
4H003EB20
4H003EB22
4H003FA04
5F157AA29
5F157AA30
5F157AA42
5F157AA46
5F157AA47
5F157AA48
5F157AA51
5F157AA63
5F157AA64
5F157AA65
5F157BC03
5F157BD03
5F157BD04
5F157BD05
5F157BD06
5F157BD09
5F157BE42
5F157BE55
5F157BF12
5F157BF38
5F157BF49
5F157DB57
(57)【要約】
本開示は、1)少なくとも1種の酸化還元剤と、2)ポリアミノポリカルボン酸である、少なくとも1種のキレート剤と、3)置換若しくは非置換ベンゾトリアゾールである、少なくとも1種の腐食防止剤と、4)少なくとも1種のスルホン酸と、5)水とを含有する洗浄組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)少なくとも1種の酸化還元剤と、
2)ポリアミノポリカルボン酸である、少なくとも1種のキレート剤と、
3)置換若しくは非置換ベンゾトリアゾールである、少なくとも1種の腐食防止剤と、
4)少なくとも1種のスルホン酸と、
5)水と、
を含む洗浄組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の酸化還元剤は、ヒドロキシルアミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の酸化還元剤は、前記組成物の約0.1重量%~約5重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリアミノポリカルボン酸は、モノ又はポリアルキレンポリアミンポリカルボン酸、ポリアミノアルカンポリカルボン酸、ポリアミノアルカノールポリカルボン酸、及びヒドロキシアルキルエーテルポリアミンポリカルボン酸からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアミノポリカルボン酸は、ジエチレントリアミン五酢酸である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリアミノポリカルボン酸は、前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の腐食防止剤は、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、及びヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基によって置換されていてもよいベンゾトリアゾールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の腐食防止剤は、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の腐食防止剤は、前記組成物の約0.05重量%~約1重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種のスルホン酸は、式(I)で表されるスルホン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
R-SOH (I)
(式中、RはC-C12アルキル基、C-C12シクロアルキル基、又はアリール基であり、前記C-C12アルキル基、C-C12シクロアルキル基、又はアリール基は、ハロゲン、OH、NH、NO、COOH、C-C12シクロアルキル基、ハロゲンで置換されていてもよいC-C12アルコキシ基、及びOHで置換されていてもよいアリール基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基によって置換されていてもよい。)
【請求項11】
前記少なくとも1種のスルホン酸は、メタンスルホン酸を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種のスルホン酸は、前記組成物の約1重量%~約10重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のpH調整剤をさらに含み、前記pH調整剤は金属イオンを含まない塩基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種のpH調整剤は、環状アミン又はアルカノールアミンを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種のpH調整剤は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン又はモノエタノールアミンを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種のpH調整剤は、前記組成物の約0.1重量%~約3重量%である、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記水は、前記組成物の約55重量%~約98重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
水溶性アルコール類、水溶性ケトン類、水溶性エステル類、及び水溶性エーテル類からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1種の有機溶媒は、エチレングリコールブチルエーテルを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種の有機溶媒は、前記組成物の約0.1重量%~約40重量%である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
pHが約4~約7である、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
ヒドロキシルアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、メタンスルホン酸、及び水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量のヒドロキシルアミンと、
前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の量のジエチレントリアミン五酢酸と、
前記組成物の約0.05重量%~約1重量%の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、
前記組成物の約1重量%~約10重量%の量のメタンスルホン酸と、
前記組成物の約0.1重量%~約3重量%の量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンと、
前記組成物の約75重量%~約98重量%の量の水と、を含み、
pHが約4~約7である、
請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物の約0.5重量%~約2重量%の量のヒドロキシルアミンと、
前記組成物の約0.1重量%~約0.5重量%の量のジエチレントリアミン五酢酸と、
前記組成物の約0.1重量%~約0.5重量%の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、
前記組成物の約2重量%~約5重量%の量のメタンスルホン酸と、
前記組成物の約0.5重量%~約2重量%の量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンと、
前記組成物の約85重量%~約95重量%の量の水と、を含み、
pHが約4.5~約6である、
請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
エチレングリコールブチルエーテルをさらに含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量のヒドロキシルアミンと、
前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の量のジエチレントリアミン五酢酸と、
前記組成物の約0.05重量%~約1重量%の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、
前記組成物の約1重量%~約10重量%の量のメタンスルホン酸と、
前記組成物の約0.1重量%~約3重量%の量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンと、
前記組成物の約0.5重量%~約10重量%の量のエチレングリコールブチルエーテルと、
前記組成物の約75重量%~約98重量%の量の水と、を含み、
pHが約4~約7である、
請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物の約0.5重量%~約2重量%の量のヒドロキシルアミンと、
前記組成物の約0.1重量%~約0.5重量%の量のジエチレントリアミン五酢酸と、
前記組成物の約0.1重量%~約0.5重量%の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、
前記組成物の約2重量%~約5重量%の量のメタンスルホン酸と、
前記組成物の約0.5重量%~約2重量%の量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンと、
前記組成物の約1重量%~約5重量%の量のエチレングリコールブチルエーテルと、
前記組成物の約85重量%~約95重量%の量の水と、を含み、
pHが約4.5~約6である、
請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
ヒドロキシルアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、モノエタノールアミン、メタンスルホン酸、及び水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量のヒドロキシルアミンと、
前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の量のジエチレントリアミン五酢酸と、
前記組成物の約0.05重量%~約1重量%の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、
前記組成物の約1重量%~約10重量%の量のメタンスルホン酸と、
前記組成物の約0.1重量%~約3重量%の量のモノエタノールアミンと、
前記組成物の約75重量%~約98重量%の量の水と、を含み、
pHが約4~約7である、
請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物の約0.5重量%~約2重量%の量のヒドロキシルアミンと、
前記組成物の約0.1重量%~約0.5重量%の量のジエチレントリアミン五酢酸と、
前記組成物の約0.1重量%~約0.5重量%の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、
前記組成物の約2重量%~約5重量%の量のメタンスルホン酸と、
前記組成物の約0.5重量%~約2重量%の量のモノエタノールアミンと、
前記組成物の約85重量%~約95重量%の量の水と、を含み、
pHが約4.5~約6である、
請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
エチレングリコールブチルエーテルをさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量のヒドロキシルアミンと、
前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の量のジエチレントリアミン五酢酸と、
前記組成物の約0.05重量%~約1重量%の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、
前記組成物の約1重量%~約10重量%の量のメタンスルホン酸と、
前記組成物の約0.1重量%~約3重量%の量のモノエタノールアミンと、
前記組成物の約0.5重量%~約10重量%の量のエチレングリコールブチルエーテルと、
前記組成物の約75重量%~約98重量%の量の水と、を含み、
pHが約4~約7である、
請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物の約0.5重量%~約2重量%の量のヒドロキシルアミンと、
前記組成物の約0.1重量%~約0.5重量%の量のジエチレントリアミン五酢酸と、
前記組成物の約0.1重量%~約0.5重量%の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、
前記組成物の約2重量%~約5重量%の量のメタンスルホン酸と、
前記組成物の約0.5重量%~約2重量%の量のモノエタノールアミンと、
前記組成物の約1重量%~約5重量%の量のエチレングリコールブチルエーテルと、
前記組成物の約85重量%~約95重量%の量の水と、を含み、
pHが約4.5~約6である、
請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
ヒドロキシルアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、エチレングリコールブチルエーテル、メタンスルホン酸、及び水を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量のヒドロキシルアミンと、
前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の量のジエチレントリアミン五酢酸と、
前記組成物の約0.05重量%~約1重量%の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、
前記組成物の約1重量%~約10重量%の量のメタンスルホン酸と、
前記組成物の約1重量%~約40重量%の量のエチレングリコールブチルエーテルと、
前記組成物の約55重量%~約98重量%の量の水と、を含み、
pHが約4~約7である、
請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物の約0.5重量%~約2重量%の量のヒドロキシルアミンと、
前記組成物の約0.1重量%~約0.5重量%の量のジエチレントリアミン五酢酸と、
前記組成物の約0.1重量%~約0.5重量%の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、
前記組成物の約1重量%~約5重量%の量のメタンスルホン酸と、
前記組成物の約3重量%~約40重量%の量のエチレングリコールブチルエーテルと、
前記組成物の約55重量%~約95重量%の量の水と、を含み、
pHが約4.5~約6.5である、
請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
ポストエッチング残渣及び/又はポストアッシング残渣を有する半導体基板を、請求項1~36のいずれか一項に記載の洗浄組成物と接触させる工程を含む、
半導体基板から残渣を洗浄する方法。
【請求項38】
表面に金属層を有する半導体基板の処理方法であって、
酸化金属層を形成すべく前記金属層を酸化させる工程と、
請求項1~36のいずれか一項に記載の洗浄組成物を前記酸化金属層に接触させることにより前記半導体基板から前記酸化金属層を除去する工程と、
を含む、半導体基板の処理方法。
【請求項39】
前記金属層は、コバルト、ルテニウム、モリブデン、銅、タングステン、チタン、アルミニウム、又はこれらの合金を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記酸化させる工程は、薬液を前記半導体基板上の前記金属層と接触させることを含み、前記薬液は、水、過酸化水素水溶液、アンモニアと過酸化水素の水溶液、フッ化水素酸と過酸化水素の水溶液、硫酸と過酸化水素の水溶液、塩酸と過酸化水素の水溶液、酸素溶解水、オゾン溶解水、過塩素酸水溶液、及び硫酸水溶液からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記酸化させる工程は、酸化性ガスを前記金属層に接触させること、酸化性雰囲気下で前記金属層を加熱すること、あるいは酸化性ガスを用いて前記金属層にプラズマ処理を施すことを含む、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月23日付で出願された米国仮特許出願第63/152,486号及び2020年8月27日付で出願された米国仮特許出願第63/070,886号に基づいて優先権を主張し、その内容は参照することによって全文が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、半導体基板用の洗浄組成物及び半導体基板の洗浄方法に関する。より詳細には、本開示は、基板上に付着した金属層又は誘電体材料層をエッチングした後の半導体基板に用いる洗浄組成物、並びにバルクレジスト除去後に基板上に残存する残渣の除去に関する。
【背景技術】
【0003】
集積回路デバイスの製造において、フォトレジストは、一連のフォトリソグラフィ及びエッチング(例えば、プラズマエッチング)工程によってレチクルのオリジナルマスクパターンをウェハ基板上に転写するための中間マスクとして使用される。集積回路デバイスの製造プロセスにおける主要な工程の1つは、パターン形成されたフォトレジスト膜のウェハ基板からの除去である。一般に、この工程は2つの方法のうち一方によって実施できる。
【0004】
一方の方法は、フォトレジストで被覆された基板を、主に有機溶媒とアミンとからなるフォトレジスト剥離液に接触させる湿式剥離工程を含む。しかし、一般にこのような剥離液は、特にフォトレジスト膜が製造中にUV照射及びプラズマ処理された場合、フォトレジスト膜を完全かつ確実に除去することができない。一部のフォトレジスト膜は、このような処理によって高度に架橋され、剥離液への溶解がより困難となる。さらに、これらの従来の湿式剥離法で使用される化学物質は、ハロゲン含有ガスによる金属層又は酸化物層のプラズマエッチング中に形成される無機又は有機金属残留材料の除去には効果的でない場合がある。
【0005】
フォトレジスト膜除去の他の方法は、フォトレジストで被覆したウェハを酸素ベースのプラズマに暴露して、プラズマアッシングとして知られるプロセスで基板からレジスト膜を燃焼させるものである。しかしながら、プラズマアッシングも、上述したプラズマエッチング副産物の除去には十分に有効ではない。代わりに、上記プラズマエッチング副産物の除去は、典型的には、処理された金属及び誘電体薄膜を次いで特定の洗浄液に暴露することによって達成される。
【0006】
金属含有基板は一般に腐食しやすい。例えば、アルミニウム、銅、アルミニウムと銅の合金、窒化タングステン、タングステン、コバルト、酸化チタン、他の金属及び金属窒化物等の材料を含む基板は、腐食しやすい。さらに、集積回路デバイスにおける誘電体(例えば、層間誘電体又は超低誘電率(ultra low-k)誘電体)は、従来の洗浄用薬剤を使用することによってエッチング可能である。また、デバイス寸法の小型化に伴い、集積回路デバイス製造業者が許容する腐食量は縮小する傾向にある。
【0007】
同時に、残渣の除去が困難となり、腐食を従来よりも低いレベルに制御する必要があることから、洗浄液は安全に使用でき、環境に配慮したものでなければならない。
【0008】
したがって、洗浄液は、エッチング及び/又はアッシング残渣の除去に効果的であり、また、露出した全ての基板材料に対して非腐食性である必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、多段階製造プロセスにおける中間工程として、半導体基板から残渣(例えば、プラズマエッチング残渣及び/又はプラズマアッシング残渣)並びに他の材料(例えば、酸化金属)を除去するのに有用な、非腐食性洗浄組成物を対象とする。上記残渣は、残留フォトレジスト等の有機化合物の比較的不溶性の各種混合物;有機金属化合物;酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化チタン(TiOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化タンタル(TaOx)、及び酸化ハフニウム(HfOx)等の金属酸化物(これらは露出した金属からの反応副産物として形成され得る);アルミニウム(Al)、アルミニウム/銅合金、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、コバルト(Co)等の金属;ホウ素ドープタングステン(WBx)等のドープ金属;窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlOxNy)、窒化ケイ素(SiN)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)等の金属窒化物;これらの合金;及びその他の物質を含む。本明細書に記載される洗浄組成物の利点は、直面する広範囲の残渣を洗浄可能である点、そして一般に露出した基板材料(例えば、露出した金属酸化物(AlOx等)、金属(例えば、アルミニウム、アルミニウム/銅合金、銅、チタン、タンタル、タングステン、及びコバルト)、金属窒化物(例えば、窒化シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、及び窒化タングステン)、並びにこれらの合金)に対して非腐食性である点である。
【0010】
一態様において、本開示は、1)少なくとも1種の酸化還元剤と、2)ポリアミノポリカルボン酸である、少なくとも1種のキレート剤と、3)置換若しくは非置換ベンゾトリアゾールである、少なくとも1種の腐食防止剤と、4)少なくとも1種のスルホン酸と、5)水とを含む(例えば、これらから成る、あるいは本質的にこれらから成る)洗浄組成物を特徴とする。
【0011】
別の態様において、本開示は、半導体基板から残渣を洗浄する方法を特徴とする。上記方法は、ポストエッチング残渣及び/又はポストアッシング残渣を含む半導体基板を本明細書に記載の洗浄組成物と接触させることを含む。例えば、上記方法は、以下の工程を含んでもよい:(a)ポストエッチング残渣及び/又はポストアッシング残渣を含む半導体基板を提供する工程、(b)上記半導体基板を本明細書に記載の洗浄組成物と接触させる工程、(c)上記半導体基板を適切なリンス溶剤でリンスする工程、(d)任意選択的に、リンス溶剤を除去し且つ上記半導体基板の完全性を損なわない任意の手段によって、上記半導体基板を乾燥させる工程。
【0012】
さらに別の態様において、本開示は、表面に金属層を有する半導体基板を洗浄処理する方法を特徴とする。上記方法は、(1)酸化金属層を形成すべく上記金属層を酸化させる工程と、(2)本明細書に記載の洗浄組成物を上記酸化金属層と接触させることによって、上記半導体基板から上記酸化金属層を除去する工程と、を含む。
【0013】
本発明の1又は複数の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例2に記載される配合FE-8~FE-12によるブランケットCo基板の、デジタルエッチング後の表面粗度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書の定義においては、特段の記載がない限り、表示される全ての百分率は、洗浄組成物の全重量に対する重量百分率であると理解されるべきである。特段の記載がない限り、周囲温度は摂氏約16℃と約27℃の間、例えば25℃と定義される。
【0016】
本明細書の定義においては、用語「層」と「フィルム」は互換的に使用される。
【0017】
本明細書の定義においては、「水溶性」の物質(例えば、水溶性アルコール、水溶性ケトン、水溶性エステル、又は水溶性エーテル)は、25℃の水に少なくとも5重量%の溶解性を有する物質を指す。
【0018】
一般に、本開示は、1)少なくとも1種の酸化還元剤と、2)ポリアミノポリカルボン酸である、少なくとも1種のキレート剤と、3)置換若しくは非置換ベンゾトリアゾールである、少なくとも1種の腐食防止剤と、4)少なくとも1種のスルホン酸と、5)水とを含む洗浄組成物(例えば、非腐食性洗浄組成物)に関する。
【0019】
一部の実施形態において、本開示の組成物は、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)の酸化還元剤を含有し、これにより、フォトレジスト残渣、金属残渣、及び金属酸化物残渣等の半導体表面上の残渣の溶解を促進すると考えられる。本明細書の定義においては、用語「酸化還元剤」は、半導体の洗浄プロセスにおいて酸化及び/又は還元を誘発し得る化合物を指す。適切な酸化還元剤の一例は、ヒドロキシルアミンである。一部の実施形態において、本明細書に記載の酸化還元剤又は洗浄組成物は、過酸化物(例えば、過酸化水素)を含まない。
【0020】
一部の実施形態において、少なくとも1種の酸化還元剤は、本開示の洗浄組成物に対し最小で約0.1重量%(例えば、最小で約0.2重量%、最小で約0.3重量%、最小で約0.4重量%、最小で約0.5重量%、最小で約0.6重量%、最小で約0.7重量%、最小で約0.8重量%、最小で約0.9重量%、又は最小で約1重量%)及び/又は最大で約5重量%(例えば、最大で約4.5重量%、最大で約4重量%、最大で約3.5重量%、最大で約3重量%、最大で約2.5重量%、最大で約2重量%、最大で約1.5重量%、又は最大で約1重量%)とすることができる。
【0021】
一部の実施形態において、本開示の組成物は、ポリアミノポリカルボン酸であってもよい少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)のキレート剤を含有する。本開示の目的において、ポリアミノポリカルボン酸は、複数(例えば、2、3、又は4)のアミノ基及び複数(例えば、2、3、又は4)のカルボン酸基を有する化合物を指す。ポリアミノポリカルボン酸キレート剤の適切なクラスは特に限定されるものではないが、モノ又はポリアルキレンポリアミンポリカルボン酸、ポリアミノアルカンポリカルボン酸、ポリアミノアルカノールポリカルボン酸、及びヒドロキシアルキルエーテルポリアミンポリカルボン酸を含む。
【0022】
適切なポリアミノポリカルボン酸キレート剤は特に限定されるものではないが、ブチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミンジプロピオン酸、1、6-ヘキサメチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、及び(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸を含む。
【0023】
一部の実施形態において、本開示の組成物は、最小で約0.01重量%(例えば、最小で約0.02重量%、最小で約0.04重量%、最小で約0.05重量%、最小で約0.06重量%、最小で約0.08重量%、最小で約0.1重量%、最小で約0.12重量%、最小で約0.14重量%、最小で約0.15重量%、最小で約0.16重量%、最小で約0.18重量%、又は最小で約0.2重量%)及び/又は最大で約0.5重量%(例えば、最大で約0.45重量%、最大で約0.4重量%、最大で約0.35重量%、最大で約0.3重量%、最大で約0.25重量%、又は最大で約0.2重量%)のポリアミノポリカルボン酸キレート剤を含む。
【0024】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)の腐食防止剤を含有する。一部の実施形態において、腐食防止剤は、置換若しくは非置換ベンゾトリアゾールから選択できる。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、このような洗浄組成物は、腐食防止剤を含まない洗浄組成物との比較において、半導体基板中に存在する可能性があり且つ洗浄組成物によって除去されるべきではない物質(例えば、Co、ホウ素ドープタングステン(WBx)、タングステン、TiN、SiOx、AlOx、又はSiN)との大幅に向上した適合性を呈し得ると考えられる。
【0025】
置換ベンゾトリアゾールの適切なクラスは特に限定されるものではないが、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、及びヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基によって置換されたベンゾトリアゾールを含む。置換されたベンゾトリアゾールは、さらに、1つ以上のアリール基(例えば、フェニル基)又はヘテロアリール基と縮合したものを含む。
【0026】
腐食防止剤としての使用に適したベンゾトリアゾールは特に限定されるものではないが、ベンゾトリアゾール(BTA)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、5-フェニルチオールベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、4-クロロベンゾトリアゾール、5-ブロモベンゾトリアゾール、4-ブロモベンゾトリアゾール、5-フルオロベンゾトリアゾール、4-フルオロベンゾトリアゾール、ナフトトリアゾール、トリルトリアゾール、5-フェニルベンゾトリアゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール、4-ニトロベンゾトリアゾール、2-(5-アミノペンチル)-ベンゾトリアゾール、1-アミノベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール(5-メチルベンゾトリアゾール又は5MBTAともいう)、ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、4-メチルベンゾトリアゾール、4-エチルベンゾトリアゾール、5-エチルベンゾトリアゾール、4-プロピルベンゾトリアゾール、5-プロピルベンゾトリアゾール、4-イソプロピルベンゾトリアゾール、5-イソプロピルベンゾトリアゾール、4-n-ブチルベンゾトリアゾール、5-n-ブチルベンゾトリアゾール、4-イソブチルベンゾトリアゾール、5-イソブチルベンゾトリアゾール、4-ペンチルベンゾトリアゾール、5-ペンチルベンゾトリアゾール、4-ヘキシルベンゾトリアゾール、5-ヘキシルベンゾトリアゾール、5-メトキシベンゾトリアゾール、5-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-ベンゾトリアゾール、5-t-ブチルベンゾトリアゾール、5-(1’,1’-ジメチルプロピル)-ベンゾトリアゾール、5-(1’,1’,3’-トリメチルブチル)ベンゾトリアゾール、5-n-オクチルベンゾトリアゾール、及び5-(1’,1’,3’,3’-テトラメチルブチル)ベンゾトリアゾールを含む。
【0027】
一部の実施形態において、少なくとも1種の腐食防止剤は、本開示の洗浄組成物に対し最小で約0.05重量%(例えば、最小で約0.1重量%、最小で約0.15重量%、最小で約0.2重量%、最小で約0.25重量%、最小で約0.3重量%、最小で約0.35重量%、最小で約0.4重量%、最小で約0.45重量%、又は最小で約0.5重量%)及び/又は最大で約1重量%(例えば、最大で約0.9重量%、最大で約0.8重量%、最大で約0.7重量%、最大で約0.6重量%、最大で約0.5重量%、最大で約0.4重量%、最大で約0.3重量%、最大で約0.2重量%、又は最大で約0.1重量%)とすることができる。
【0028】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)のスルホン酸を含む。一部の実施形態において、上記少なくとも1種のスルホン酸は、式(I)のスルホン酸を含む:
R-SOH (I)
式中、RはC-C12アルキル基、C-C12シクロアルキル基、又はアリール基であり、前記アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基は、ハロゲン、OH、NH、NO、COOH、C-C12シクロアルキル基、ハロゲンで置換されていてもよいC-C12アルコキシ基、及びOHで置換されていてもよいアリール基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基によって置換されていてもよい。一部の実施形態において、Rは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基等のC-Cアルキル基である。本明細書で使用される場合、用語「アルキル基」は、直鎖状若しくは分岐状であってもよい飽和炭化水素基を指す。本明細書において使用される場合、用語「シクロアルキル基」は、飽和環状炭化水素基を指す。本明細書において使用される場合、用語「アリール基」は、1つ以上の芳香環(例えば、2つ以上の縮合芳香環)を有する炭化水素基を指す。一部の実施形態において、アリール基は、6~10個の環炭素を有していてもよい。
【0029】
適切なスルホン酸の例としては特に限定されるものではないが、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロエチルスルホン酸、パーフルオロ(エトキシエタン)スルホン酸、パーフルオロ(メトキシエタン)スルホン酸、ドデシルスルホン酸、パーフルオロドデシルスルホン酸、ブタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、オクチルスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸、シクロヘキシルスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、ベンジルスルホン酸、ヒドロキシフェニルメタンスルホン酸、ナフチルメタンスルホン酸、ノルボルナンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、ブロモベンゼンスルホン酸、フルオロベンゼンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、2-ヒドロキシ-5-スルホ安息香酸、トルエンスルホン酸(例えば、パラトルエンスルホン酸)、メチルクロロベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルベンゼンスルホン酸、ピクリルスルホン酸、ジクロロベンゼンスルホン酸、ジブロモベンゼンスルホン酸、及び2,4,5-トリクロロベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0030】
一部の実施形態において、少なくとも1種のスルホン酸は、本開示の洗浄組成物に対し最小で約1重量%(例えば、最小で約1.2重量%、最小で約1.4重量%、最小で約1.5重量%、最小で約1.6重量%、最小で約1.8重量%、最小で約2重量%、最小で約2.2重量%、最小で約2.4重量%、最小で約2.5重量%、最小で約2.6重量%、最小で約2.8重量%、又は最小で約3重量%)及び/又は最大で約10重量%(例えば、最大で約9重量%、最大で約8重量%、最大で約7重量%、最大で約6重量%、最大で約5重量%、最大で約4重量%、最大で約3重量%、又は最大で約2重量%)とすることができる。
【0031】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、スルホン酸を含む洗浄組成物は、洗浄組成物によって処理される半導体基板の表面粗度を最小とすることができると考えられる。
【0032】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、pHを約4~約7に制御するために、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)のpH調整剤(例えば、酸又は塩基)を任意選択により含有することができる。一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物のpHは、最小で約4(例えば、最小で約4.2、最小で約4.4、最小で約4.5、最小で約4.6、最小で約4.8、又は最小で約5)から最大で約7(例えば、最大で約6.8、最大で約6.6、最大で約6.5、最大で約6.4、最大で約6.2、最大で約6、最大で約5.8、最大で約5.6、又は最大で約5.5)とすることができる。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、pHが4未満の洗浄組成物は、特定の金属(例えば、Co、W、又はWBx)又は誘電体材料のエッチング速度を望ましくないレベルまで増大させるものと考えられる。さらに、特定の理論に束縛されることを望むものではないが、pHが7を超える洗浄組成物は、エッチング残渣又はアッシング残渣の洗浄能力が低下し、洗浄が不完全となるものと考えられる。有効なpHは、本明細書に記載の洗浄組成物に使用される成分の種類及び量に応じて変化し得る。
【0033】
pH調整剤が必要である場合、pH調整剤の所要量は、異なる配合における他の成分(例えば、ヒドロキシルアミン、スルホン酸、及び腐食防止剤)の濃度変化に伴って変化し、また使用される特定のpH調整剤の分子量の関数として変化し得る。一部の実施形態において、pH調整剤は、本開示の洗浄組成物に対し最小で約0.1重量%(例えば、最小で約0.2重量%、最小で約0.4重量%、最小で約0.5重量%、最小で約0.6重量%、最小で約0.8重量%、最小で約1重量%、最小で約1.2重量%、最小で約1.4重量%、又は最小で約1.5重量%)及び/又は最大で約3重量%(例えば、最大で約2.8重量%、最大で約2.6重量%、最大で約2.5重量%、最大で約2.4重量%、最大で約2.2重量%、最大で約2重量%、又は最大で約1.8重量%)とすることができる。一部の実施形態において、pH調整剤は、本明細書に記載の洗浄組成物から除外されてもよい。
【0034】
一部の実施形態において、pH調整剤は、いかなる金属イオンも含まない(微量の金属イオン不純物を除く)。適切な金属イオンフリーpH調整剤としては、酸及び塩基が挙げられる。pH調整剤として使用できる適切な酸としては、カルボン酸が挙げられる。例示的なカルボン酸は特に限定されるものではないが、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、モノカルボン酸のα-ヒドロキシ酸及びβ-ヒドロキシ酸、ジカルボン酸のα-ヒドロキシ酸若しくはβ-ヒドロキシ酸、又はトリカルボン酸のα-ヒドロキシ酸及びβ-ヒドロキシ酸が挙げられる。適切なカルボン酸の例としては、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、又は安息香酸が挙げられる。
【0035】
pH調整剤として使用できる適切な塩基としては、水酸化アンモニウム、第四級アンモニウムヒドロキシド、モノアミン(アルカノールアミンを含む)、及び環状アミンが挙げられる。適切な第四級アンモニウムヒドロキシドの例としては特に限定されるものではないが、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、テトラエタノールアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、及びベンジルトリブチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。適切なモノアミンの例としては特に限定されるものではないが、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、及びベンジルアミンが挙げられる。適切なアルカノールアミンの例としては特に限定されるものではないが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びアミノプロピルジエタノールアミンが挙げられる。
【0036】
一部の実施形態において、pH調整剤は、環状アミンを含んでもよい。一部の実施形態において、環状アミンは、式(I)の環状アミンを含む:
【0037】
【化1】
【0038】
式中、nは1、2、又は3であり;mは1、2、又は3であり;R~R10は各々独立してH、C-Cアルキル、又はアリールであり;Lは-O-、-S-、-N(R)-、又は-C(R)-であり、R及びRは各々独立してH、C-Cアルキル、又はアリールであり;R11は、Hであるか、あるいはRと共に、LとR11が結合しているC原子との間に第2結合を形成している。
【0039】
一部の実施形態において、式(I)におけるLは-N(R)-である。このような実施形態では、nは2とすることができ;mは1又は3とすることができ;R~R10はそれぞれHとすることができ;R11は、Rと共に、LとR11が結合しているC原子との間に第2結合を形成できる。このようなアミンの例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU;
【0040】
【化2】
【0041】
)及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN;
【0042】
【化3】
【0043】
)が挙げられる。
【0044】
一部の実施形態において、式(I)におけるLは-C(R)-である。このような実施形態では、nは2とすることができ;mは2とすることができ、R~R11はそれぞれHとすることができる。このようなアミンの一例は、オクタヒドロ-2H-キノリジン(
【0045】
【化4】
【0046】
)である。
【0047】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載の環状アミン又はアルカノールアミンは、洗浄組成物のpHを調整し、洗浄組成物により処理された半導体基板の表面粗度を低減し、洗浄プロセス中に除去されることを意図していない露出した基板材料(例えば、CoやWBx等の露出した金属又は誘電体材料)に対するこのような洗浄組成物のエッチング速度を低下させることによって、洗浄組成物の腐食効果を低減すると考えられる。
【0048】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、水を含んでもよい。好ましくは、水は脱イオン化されており、超高純度であり、有機汚染物質を含まず、その最小抵抗値は約4~約17MΩである。より好ましくは、水の抵抗値は最小で17MΩである。
【0049】
一部の実施形態において、水は、本開示の洗浄組成物に対し最小で約55重量%(例えば、最小で約60重量%、最小で約65重量%、最小で約70重量%、最小で約72重量%、最小で約75重量%、最小で約76重量%、最小で約78重量%、最小で約80重量%、最小で約82重量%、最小で約84重量%、最小で約85重量%、最小で約86重量%、最小で約88重量%、又は最小で約90重量%)及び/又は最大で約98重量%(例えば、最大で約97重量%、最大で約96重量%、最大で約95重量%、最大で約94重量%、最大で約93重量%、最大で約92重量%、最大で約91重量%、又は最大で約90重量%)とすることができる。
【0050】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、水溶性アルコール、水溶性ケトン、水溶性エステル、及び水溶性エーテル(例えば、グリコールジエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種(例えば、2種、3種、4種、又はそれ以上)の水溶性有機溶媒を任意選択により含有することができる。
【0051】
水溶性アルコールのクラスは特に限定されるものではないが、アルカンジオール(限定されるものではないが、アルキレングリコールを含む)、グリコール、アルコキシアルコール(限定されるものではないが、グリコールモノエーテルを含む)、飽和脂肪族一価アルコール、不飽和非芳香族一価アルコール、及び環状構造を有する低分子量アルコールを含む。水溶性アルカンジオールの例としては特に限定されるものではないが、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ピナコール、及びアルキレングリコールが挙げられる。水溶性アルキレングリコールの例としては特に限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールが挙げられる。
【0052】
水溶性アルコキシアルコールの例としては特に限定されるものではないが、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、並びにグリコールモノエーテル等の水溶性グリコールエーテルが挙げられる。水溶性グリコールモノエーテルの例としては特に限定されるものではないが、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル(エチレングリコールブチルエーテル又はEGBEともいう)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-エトキシ-1-プロパノール、プロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノベンジルエーテル、並びにジエチレングリコールモノベンジルエーテルが挙げられる。
【0053】
水溶性飽和脂肪族一価アルコールの例としては特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-ペンタノール、t-ペンチルアルコール、及び1-ヘキサノールが挙げられる。
【0054】
水溶性不飽和非芳香族一価アルコールの例としては特に限定されるものではないが、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-ブテニルアルコール、3-ブテニルアルコール、及び4-ペンテン-2-オールが挙げられる。
【0055】
環状構造を有する水溶性の低分子量アルコールの例としては特に限定されるものではないが、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、及び1,3-シクロペンタンジオールが挙げられる。
【0056】
水溶性ケトンの例としては特に限定されるものではないが、アセトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、ジアセトンアルコール、2-ブタノン、2,5-ヘキサンジオン、1,4-シクロヘキサンジオン、3-ヒドロキシアセトフェノン、1,3-シクロヘキサンジオン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。
【0057】
水溶性エステルの例としては特に限定されるものではないが、酢酸エチル;エチレングリコールモノアセテート及びジエチレングリコールモノアセテート等のグリコールモノエステル;並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールモノエーテルモノエステルが挙げられる。
【0058】
一部の実施形態において、少なくとも1種の有機溶媒は、本開示の洗浄組成物に対し最小で約0.1重量%(例えば、最小で約0.2重量%、最小で約0.4重量%、最小で約0.5重量%、最小で約0.6重量%、最小で約0.8重量%、最小で約1重量%、最小で約1.5重量%、最小で約2重量%、最小で約2.5重量%、最小で約3重量%、最小で約5重量%、又は最小で約10重量%)及び/又は最大で約40重量%(例えば、最大で約38重量%、最大で約35重量%、最大で約30重量%、最大で約25重量%、最大で約20重量%、最大で約15重量%、最大で約10重量%、最大で約9重量%、最大で約8重量%、最大で約6重量%、最大で約5重量%、最大で約4重量%、又は最大で約3.5重量%)とすることができる。
【0059】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、比較的高い量(例えば、約6重量%~約36重量%)の水溶性グリコールモノエーテル(例えば、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル)を本明細書に記載の洗浄組成物中に含めることで、洗浄組成物によって処理される半導体基板の表面粗度を大幅に低減させ得ることが、予想外にも判明した。
【0060】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、ヒドロキシルアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン又はモノエタノールアミン、メタンスルホン酸、及び水を含んでもよい。一部の実施形態において、このような洗浄組成物は、エチレングリコールブチルエーテルをさらに含んでもよい。
【0061】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、(1)上記組成物の約0.1重量%~約5重量%(例えば、約0.5重量%~約2重量%)の量のヒドロキシルアミンと、(2)上記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%(例えば、約0.1重量%~約0.5重量%)の量のジエチレントリアミン五酢酸と、(3)上記組成物の約0.05重量%~約1重量%(例えば、約0.1重量%~約0.5重量%)の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、(4)上記組成物の約1重量%~約10重量%(例えば、約2重量%~約5重量%)の量のメタンスルホン酸と、(5)上記組成物の約0.1重量%~約3重量%(例えば、約0.5重量%~約2重量%)の量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン又はモノエタノールアミンと、(6)上記組成物の約75重量%~約98重量%の量(例えば、約85重量%~約95重量%)の量の水とを含んでもよく、上記組成物のpHは、約4~約7(例えば、約4.5~約6)である。一部の実施形態において、このような洗浄組成物は、組成物の約0.5重量%~約10重量%(例えば、約1重量%~約5重量%)の量のエチレングリコールブチルエーテルをさらに含んでもよい。
【0062】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、ヒドロキシルアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、エチレングリコールブチルエーテル、メタンスルホン酸、及び水を含んでもよい。一部の実施形態において、このような洗浄組成物は、pH調整剤を含まない。
【0063】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、(1)上記組成物の約0.1重量%~約5重量%(例えば、約0.5重量%~約2重量%)の量のヒドロキシルアミンと、(2)上記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%(例えば、約0.1重量%~約0.5重量%)の量のジエチレントリアミン五酢酸と、(3)上記組成物の約0.05重量%~約1重量%(例えば、約0.1重量%~約0.5重量%)の量の5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと、(4)上記組成物の約1重量%~約10重量%(例えば、約1重量%~約5重量%)の量のメタンスルホン酸と、(5)上記組成物の約1重量%~約40重量%(例えば、約3重量%~約40重量%)の量のエチレングリコールブチルエーテルと、(6)上記組成物の約55重量%~約98重量%(例えば、約55重量%~約95重量%)の量の水とを含んでもよく、上記組成物のpHは、約4~約7(例えば、約4.5~約6.5)である。
【0064】
加えて、一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、任意の成分として、追加のpH調整剤、追加の腐食防止剤、追加の有機溶媒、界面活性剤、殺生物剤、及び消泡剤等の添加剤を含有することができる。適切な消泡剤の例としては、ポリシロキサン消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン)、ポリエチレングリコールメチルエーテルポリマー、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、及びグリシジルエーテルキャップアセチレンジオールエトキシレート(参照することによって本明細書に援用される米国特許第6,717,019号に記載されたもの等)が挙げられる。
【0065】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、1種以上の添加剤成分を(2種以上の場合は任意の組み合わせで)特に除外することができる。このような成分は、ポリマー、脱酸素剤、第四級アンモニウム化合物(例えば、塩又は水酸化物)、アミン、アルカリ塩基(例えば、NaOH、KOH、LiOH、Mg(OH)、及びCa(OH))、界面活性剤、消泡剤、フッ化物含有化合物、ケイ素含有化合物(例えば、ケイ酸塩又はシラン(例えば、アルコキシシラン))、酸化剤(例えば、過酸化物、過酸化水素、硝酸第二鉄、ヨウ素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、硝酸、亜塩素酸アンモニウム、塩素酸アンモニウム、ヨウ素酸アンモニウム、過ホウ酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過ヨウ素酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、塩素酸テトラメチルアンモニウム、ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、過ホウ酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、過硫酸テトラメチルアンモニウム、過酸化水素尿素、及び過酢酸)、研磨剤、ヒドロキシカルボン酸、カルボン酸およびポリカルボン酸(例えば、アミノ基を欠くもの)、環状化合物(例えば、置換若しくは非置換ナフタレン、又は置換若しくは非置換ビフェニルエーテル等の少なくとも2つの環を有する環状化合物)、キレート剤、腐食防止剤(アゾール又は非アゾール腐食防止剤)、緩衝剤、グアニジン、グアニジン塩、有機酸及び無機酸等の酸(例えば、硫酸、亜硫酸、亜硝酸、硝酸、亜リン酸、リン酸等)、ピロリドン、ポリビニルピロリドン、金属塩(例えば、金属ハロゲン化物)、及び触媒(例えば、金属含有触媒)からなる群より選択される。
【0066】
本明細書に記載の洗浄組成物は、単に各成分を混合することによって調製でき、あるいはキットの2種組成物をブレンドすることによって調製できる。
【0067】
一部の実施形態において、本開示の洗浄組成物は、特に半導体基板からバルクフォトレジスト膜を除去すべく設計されない。むしろ本開示の洗浄組成物は、乾式又は湿式剥離法によるバルクレジスト除去後に全ての残渣を除去すべく設計することができる。したがって、一部の実施形態において、本開示の洗浄方法は、好ましくは、乾式又は湿式フォトレジスト剥離プロセスの後に採用される。このフォトレジスト剥離プロセスは、一般にエッチング又はインプラントプロセス等のパターン転写プロセスの後に実施され、あるいはパターン転写前にマスクエラーを修正するために実施される。残渣の化学的構成は、洗浄工程に先行するプロセスに依存する。
【0068】
任意の適切な乾式剥離プロセスを利用して、半導体基板からバルクレジストを除去できる。適切な乾式剥離プロセスの例としては、フッ素/酸素プラズマ又はN/Hプラズマ等の酸素ベースのプラズマアッシング;オゾン気相処理;フッ素プラズマ処理、高温H気体処理(例えば、参照することによってその全文が本明細書に援用される米国特許第5691117号に記載されているもの)等が挙げられる。加えて、当業者に知られている任意の従来の有機湿式剥離液を使用して、半導体基板からバルクレジストを除去できる。
【0069】
本開示の洗浄方法と組み合わせて使用される好ましい剥離プロセスは、乾式剥離プロセスである。好ましくは、この乾式剥離プロセスは、酸素ベースのプラズマアッシングプロセスである。このプロセスでは、真空条件下(すなわち1トル)にて高温(典型的には250℃)で活性酸素雰囲気を適用することにより、半導体基板から大部分のフォトレジストを除去する。有機材料はこのプロセスにより酸化され、プロセスガスで除去される。しかしながら、このプロセスは一般に、半導体基板から全ての無機又は有機金属汚染を除去するわけではない。後続の本開示の洗浄組成物による半導体基板の洗浄は、典型的にはこれらの残渣を除去するために必要である。
【0070】
一部の実施形態において、本開示は、半導体基板から残渣を洗浄する方法を特徴とする。このような方法は、例えば、ポストエッチング残渣及び/又はポストアッシング残渣を含む半導体基板を本明細書に記載の洗浄組成物と接触させることによって行うことができる。この方法は、接触工程後に半導体基板をリンス溶剤でリンスすること、及び/又はリンス工程後に半導体基板を乾燥させることをさらに含んでもよい。一部の実施形態において、半導体基板は、少なくとも1つの材料(例えば、露出した材料)又は少なくとも1つの材料の層をさらに含んでもよい。ここで、材料はCu、Co、W、ホウ素(B)ドープW、AlOx、AlN、AlOxNy、Ti、TiN、Ta、TaN、TiOx、ZrOx、HfOx、及びTaOxからなる群より選択される。
【0071】
一部の実施形態において、洗浄方法は以下の工程を含む:(a)ポストエッチング残渣及び/又はポストアッシング残渣を含む半導体基板を提供する工程;(b)半導体基板を本明細書に記載の洗浄組成物と接触させる工程;(c)半導体基板を適切なリンス溶剤でリンスする工程;(d)任意選択的に、リンス溶剤を除去し且つ上記半導体基板の完全性を損なわない任意の適切な手段によって、上記半導体基板を乾燥させる工程。一部の実施形態において、洗浄方法は、上記方法によって得られた半導体基板から半導体デバイス(例えば、半導体チップ等の集積回路デバイス)を形成することをさらに含む。
【0072】
一部の実施形態において、洗浄方法は、半導体基板上の特定の露出材料、例えば金属(例えば、Co、Cu、W、又はBドープW(WBx))、酸化物(例えば、酸化アルミニウム(AlOx又はAl)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx))、窒化物(例えば、TiN又はSiN)、及びポリシリコンを実質的に除去しない。例えば、一部の実施形態において、本方法は、半導体基板中の上記いずれかの材料の約5重量%以下(例えば、約3重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、又は約0.1重量%以下)を除去する。
【0073】
この方法で洗浄される半導体基板には、有機残渣及び有機金属残渣に加え、除去する必要のある各種金属酸化物が含まれる可能性がある。半導体基板は、典型的には、シリコン;シリコンゲルマニウム;GaAs等のIII-V族化合物;又はこれらの任意の組み合わせで構成される。半導体基板はさらに、相互接続機構(例えば、金属線及び誘電体材料)等の露出した集積回路構造を含んでもよい。相互接続機構に使用される金属及び金属合金は特に限定されるものではないが、アルミニウム;銅と合金化されたアルミニウム;銅、チタン、タンタル、コバルト、及びシリコン、窒化チタン、窒化タンタル、タングステン、及びこれらの合金が含まれる。半導体基板はまた、層間誘電体、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化チタン、及び炭素ドープ酸化ケイ素の層を含んでもよい。
【0074】
半導体基板は、洗浄組成物をタンクに入れ、半導体基板を洗浄組成物に浸漬及び/又は沈める;洗浄組成物を半導体基板上に噴霧する;洗浄組成物を半導体基板上に流す、あるいはこれらの任意の組み合わせ等の任意の適切な方法によって、洗浄組成物と接触させることができる。好ましくは、半導体基板は洗浄組成物中に浸漬される。
【0075】
本開示の洗浄組成物は、約90℃の温度(例えば、約25℃~約80℃、約30℃~約60℃、又は約40℃~約60℃)まで有効に使用できる。
【0076】
同様に、洗浄時間は、使用される特定の洗浄方法及び温度に応じて広範囲にわたって変化し得る。浸漬バッチプロセスで洗浄する場合、適切な時間範囲は、例えば、最大約60分間(例えば、約1分間~約60分間、約3分間~約20分間、又は約4分間~約15分間)である。
【0077】
単独ウェハプロセスに適した洗浄時間は、約10秒間~約5分間(例えば、約15秒間~約4分間、約15秒間~約3分間、又は約20秒間~約2分間)の範囲をとり得る。
【0078】
本開示の洗浄組成物の洗浄能力をさらに向上させるため、機械的撹拌手段が採用され得る。適切な撹拌手段の例としては、基板上での洗浄組成物の循環;基板上での洗浄組成物の流動若しくは噴霧;及び洗浄プロセス中の超音波若しくはメガソニック撹拌が挙げられる。床に対する半導体基板の向きは、任意の角度であってよい。水平方向又は垂直方向が好ましい。
【0079】
本開示の洗浄組成物は、当業者に公知の従来の洗浄ツールに使用できる。本開示の洗浄組成物の重要な利点は、全体として及び部分的に比較的無毒、非腐食性、及び非反応性の成分を含み、そのため洗浄組成物が広範囲の温度及び処理時間にわたり安定である点にある。本開示の洗浄組成物は、バッチ式及び単独式ウェハ洗浄のための既存の及び提案された半導体ウェハ洗浄プロセスツールを構築すべく使用される実質上全ての材料と化学的に適合する。
【0080】
洗浄に続いて、半導体基板は、撹拌手段の有無を問わず、約5秒間から約5分間、適切なリンス溶剤でリンスされ得る。適切なリンス溶剤の例としては特に限定されるものではないが、脱イオン(DI)水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリジノン、ガンマ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。あるいは、pH>8の水性リンス剤(希水酸化アンモニウム水溶液等)を採用できる。リンス溶剤の好ましい例としては特に限定されるものではないが、希水酸化アンモニウム水溶液、脱イオン水、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールが挙げられる。溶剤は、本明細書に記載の洗浄組成物を適用する際に使用されるものと同様の手段を用いて適用され得る。洗浄組成物はリンス工程の開始前に半導体基板から除去されていてもよく、あるいはリンス工程開始時に半導体基板と依然接触していてもよい。好ましくは、リンス工程で使用される温度は16℃と27℃の間である。
【0081】
任意選択により、半導体基板はリンス工程後に乾燥される。当該技術分野において公知の任意の適切な乾燥手段が採用できる。適切な乾燥手段の例としては、スピン乾燥、半導体基板に乾燥ガスを流す、又は熱板若しくは赤外線ランプ等の加熱手段によって半導体基板を加熱する、マランゴニ乾燥、ロタゴニ乾燥、IPA乾燥、あるいはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。乾燥時間は、採用する特定の方法に依存するが、通常は30秒間から数分間である。
【0082】
一部の実施形態において、本明細書に記載の洗浄組成物は、半導体基板から酸化金属層を除去するために使用できる。一部の実施形態において、本開示は、表面に金属層を有する半導体基板を処理する方法を特徴とし、該方法は、(1)酸化金属層を形成すべく上記金属層を酸化させることと、(2)本明細書に記載の洗浄組成物を上記酸化金属層と接触させることによって、上記半導体基板から上記酸化金属層を除去することと、を含む。この方法は「金属リセスプロセス」としても知られている。一部の実施形態において、半導体基板は、金属層若しくは金属酸化層以外の金属系材料を含んでいてもよく、このような金属系材料の一部又は全部は、上記の酸化及び除去工程によって除去され得る。
【0083】
一部の実施形態において、金属層は、単一金属又は金属の混合物(例えば、合金)を含む。一部の実施形態において、金属層は、コバルト、ルテニウム、モリブデン、銅、タングステン、チタン、アルミニウム、又はこれらの合金を含む。
【0084】
一部の実施形態において、酸化金属層は、単一金属の酸化物又は金属合金の酸化物を含む。一部の実施形態において、酸化金属層は、酸化コバルト、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化銅、酸化タングステン、酸化チタン、又は酸化アルミニウムを含む。一部の実施形態において、酸化金属層は、金属層の表面の少なくとも一部を被覆してもよく、あるいは金属層の表面全体を被覆してもよい。
【0085】
一部の実施形態において、酸化金属層は、単原子層から10原子層までの範囲をとり得る。単原子金属又は酸化金属層の厚みは、一般に、最大で約1nm(例えば、約0.3nm~約0.4nm)である。一部の実施形態において、酸化金属層は、最大で約10nm(例えば、約3~約4nm)の厚みを有していてもよい。
【0086】
一般に、酸化工程を実施する方法は特に限定されず、液体処理及び/又は気体処理を含むことができる。一部の実施形態では、液体処理は、薬液(例えば、酸化薬液)を半導体基板上の金属層に接触させることを含んでもよい。一部の実施形態では、気体処理は、酸化性ガス(例えば、オゾン又はオゾン含有ガス)を半導体基板上の金属層と接触させること、半導体基板上の金属層を酸化性雰囲気下(例えば、酸素、酸素含有ガス中等)で加熱すること、あるいは半導体基板上の金属層に対して酸化性ガス(例えば酸素含有ガス)を用いてプラズマ処理を行うこと、を含んでいてもよい。一部の実施形態では、上述した酸化方法の2つ以上を組み合わせて使用できる。
【0087】
一部の実施形態において、酸化工程は、金属を酸化させ得る薬液を半導体基板上の金属層と接触させることを含む。一部の実施形態において、薬液は、本明細書に記載の洗浄組成物とは異なる。一部の実施形態において、前記薬液は、水、過酸化水素水溶液、アンモニアと過酸化水素の水溶液、フッ化水素酸と過酸化水素の水溶液、硫酸と過酸化水素の水溶液、塩酸と過酸化水素の水溶液、酸素溶解水、オゾン溶解水、過塩素酸水溶液、及び硫酸水溶液からなる群より選択される。
【0088】
一部の実施形態において、過酸化水素水溶液は、溶液の全重量の約0.5重量%~31重量%(例えば、約3重量%~約15重量%)の量の過酸化水素を含む。
【0089】
一部の実施形態において、アンモニアと過酸化水素の水溶液は、アンモニア水溶液、過酸化水素水溶液、及び水を約1:1:1~約1:3:4.5の重量比で混合することによって形成することができ、ここでアンモニア水溶液はアンモニアを28重量%含み、過酸化水素水溶液は過酸化水素を30重量%含む。
【0090】
一部の実施形態において、フッ化水素酸と過酸化水素の水溶液は、フッ化水素酸水溶液、過酸化水素水溶液、及び水を約1:1:1~約1:3:200の重量比で混合することによって形成することができ、ここでフッ化水素酸水溶液はフッ化水素酸を49重量%含み、過酸化水素水溶液は過酸化水素を30重量%含む。
【0091】
一部の実施形態において、硫酸と過酸化水素の水溶液は、硫酸水溶液、過酸化水素水溶液、及び水を約3:1:0~約1:1:10の重量比で混合することによって形成することができ、ここで硫酸水溶液は硫酸を98重量%含み、過酸化水素水溶液は過酸化水素を30重量%含む。
【0092】
一部の実施形態において、塩酸と過酸化水素の水溶液は、塩酸水溶液、過酸化水素水溶液、及び水を約1:1:1~約1:1:30の重量比で混合することによって形成することができ、ここで塩酸水溶液は塩酸を37重量%含み、過酸化水素水溶液は過酸化水素を30重量%含む。
【0093】
本明細書において「A:B:C=x:y:z」~「A:B:C=X:Y:Z」の記述は、「A:B=x:y」~「A:B=X:Y」、「B:C=y:z」~「B:C=Y:Z」及び「A:C=x:z」~「A:C=X:Z」の範囲のうち少なくとも1つ(例えば、2つ又は3つ)を満たす。
【0094】
一部の実施形態において、酸素溶解水は、水の全重量の約20~約500重量ppmの量で酸素を含有する。
【0095】
一部の実施形態において、オゾン溶解水は、水の全重量の約1~約60重量ppmの量でオゾンを含有する。
【0096】
一部の実施形態において、過塩素酸水溶液は、溶液の全重量の約0.001重量%~60重量%の量で過塩素酸を含む。
【0097】
一部の実施形態において、硫酸水溶液は、溶液の全重量の約0.001重量%~60重量%の量で硫酸を含む。
【0098】
一部の実施形態において、本明細書に記載の薬液を被処理半導体基板と接触させる方法は特に限定されず、タンク内の薬液に被処理半導体基板を浸漬すること、被処理半導体基板に薬液を噴霧すること、被処理半導体基板上で薬液を流すこと、及びこれらの組み合わせを含むことができる。
【0099】
一部の実施形態において、酸化工程における半導体基板と薬液との接触時間は、約0.25分間~約10分間(例えば、約0.5分間~約5分間)である。一部の実施形態において、酸化工程における薬液の温度は、約20℃~約75℃(例えば、約20℃~約60℃)である。
【0100】
気体処理が用いられる実施形態において、被処理半導体基板と接触する酸化性ガス(又は雰囲気)は、酸素含有ガス(例えば、乾燥空気又は酸素)、オゾン含有ガス(例えば、オゾン)、及びこれらの混合物を含む。一部の実施形態において、酸化性ガスは、上述のガス以外の1種以上のガスを含んでもよい。一部の実施形態では、被処理半導体基板を、酸素雰囲気、オゾン雰囲気、又は酸素とオゾンを含む混合雰囲気と接触させる。
【0101】
気体処理が使用される実施形態では、半導体基板は、酸化性雰囲気下(例えば、酸素又はオゾンの存在下)又は半導体基板が酸化性ガス(例えば、酸素、オゾン、又はこれらの混合物)と接触している間に、(例えば、約40℃から約200℃まで)加熱されてもよい。
【0102】
一部の実施形態において、除去工程において、被処理半導体基板を本明細書に記載の洗浄組成物と接触させる方法は特に限定されず、酸化工程において半導体基板を薬液と接触させるにあたり上述した方法と同様の方法を含むことができる。一部の実施形態において、除去工程における半導体基板と洗浄組成物との接触時間は、約0.25分間~約10分間(例えば、約0.5分間~約5分間)である。一部の実施形態において、除去工程における洗浄組成物の温度は、約20℃~約75℃(例えば、約20℃~約60℃)である。
【0103】
一部の実施形態において、酸化金属層は、除去工程において部分的に除去することができ、あるいは完全に除去されてもよい。一部の実施形態では、酸化金属層の下の金属層の一部又は全部(例えば、酸化金属層が除去された後に洗浄組成物に露出する金属層)を、除去工程において意図的に又は必然的に除去することが可能である。被処理半導体基板が酸化金属層・金属層以外の金属系材料を含有する実施形態において、そうした金属系材料の一部又は全部を意図的又は不可避的に除去することが可能である。金属層及び/又は金属層以外の金属系材料が意図的に除去されない場合、必然的に除去される金属層及び/又は金属層以外の金属系材料の量は少ないことが好ましい。
【0104】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、酸化金属層は、金属層よりも本明細書に記載の洗浄組成物に対してより高い溶解性を有すると考えられる。また、特定の理論に束縛されることを望むものではないが、薄い酸化金属層を形成すべく金属層の表面を酸化させ、本明細書に記載の洗浄組成物を用いて、酸化金属層を除去すること(それにより酸化金属層の下の金属層の一部を除去できる)によって、被処理半導体基板に含まれる金属層の薄い表面のみを除去(又は溶解)できると考えられる。
【0105】
一部の実施形態において、除去工程で使用される洗浄組成物は、溶解酸素量を低減するために予め脱気されていてもよい。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、洗浄組成物で酸化金属層を除去した後に露出した金属層は、洗浄組成物中の溶解酸素によって酸化されて新たな酸化金属層を形成することがあり、このため、この新規に形成された酸化金属層は、洗浄組成物によってさらに除去できると考えられる。したがって、特定の理論に束縛されることを望むものではないが、洗浄組成物中の溶解酸素量を低減することで、過剰量の金属層の除去を抑制できると考えられる。
【0106】
また、特定の理論に束縛されることを望むものではないが、酸化工程と除去工程を交互に繰り返すことで、金属層のエッチング量を高精度に制御できると考えられる。一部の実施形態において、酸化工程と除去工程の交互の実施は、少なくとも1サイクル(例えば、少なくとも3サイクル又は少なくとも5サイクル)から最大20サイクル(例えば、最大15サイクル又は最大10サイクル)行うことができ、酸化工程と除去工程の組み合わせを1サイクルとして定義する。
【0107】
一部の実施形態において、本明細書に記載の洗浄組成物を使用する集積デバイスの製造方法は、以下の工程を含んでもよい。まず、フォトレジストの層を半導体基板に塗布する。得られた半導体基板にエッチング又はインプラントプロセス等のパターン転写プロセスを施し、集積回路を形成し得る。次いで、乾式又は湿式剥離法(例えば、酸素ベースのプラズマアッシングプロセス)によってフォトレジストの大部分を除去し得る。半導体基板上に残存する残渣は、次いで、本明細書に記載の洗浄組成物を使用して上記方法にて除去され得る。半導体基板は、次いで、基板上に1つ以上の追加の回路を形成すべく処理されることができ、あるいは、例えば、アセンブリング(例えば、ダイシング及びボンディング)及びパッケージング(例えば、チップ封止)によって半導体チップに形成されるべく処理されてもよい。
【0108】
本明細書において引用される全ての刊行物(例えば、特許、特許出願刊行物、及び論文)の内容は、参照することによりその全文が本明細書に援用される。
【実施例
【0109】
以下の実施例を参照して本開示をより詳細に説明するが、実施例は例示のためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。記載された%は、特段の記載がない限り重量による(重量%)ものである。試験中の制御下での撹拌は、特段の記載がない限り、300rpmで、1インチの撹拌棒を用いて行った。
【0110】
一般手順1
配合のブレンド
計算された量の有機溶媒に撹拌しながら配合の残りの成分を添加することによって、洗浄組成物のサンプルを調製した。均一な溶液が得られた後、任意選択の添加剤(使用する場合)を添加した。
【0111】
一般手順2
ビーカー試験による洗浄評価
基板からのPER(ポストエッチング残渣)の洗浄は、フォトレジスト/TiOx/SiN/Co/ILD(ILD=層間誘電体)若しくはフォトレジスト/TiOx/SiN/W/WBx/ILDの多層半導体基板を用いて、記載の洗浄組成物により行った。多層半導体基板は、リソグラフィーでパターン化され、プラズマ金属エッチング機でエッチングされ、次いで酸素プラズマアッシングによってフォトレジストの最上層が完全に除去された状態であった。
【0112】
テストクーポンは、長さ4インチのプラスチック製ロッキングピンセットに保持され、それにより、クーポンは、本開示の洗浄組成物約200ミリリットルを入れた500ml容量のビーカー内に吊下可能となった。クーポンを洗浄組成物に浸漬する前に、洗浄組成物を、制御下で撹拌しながら所望の試験条件温度(典型的には40℃又は70℃)に予熱した。次いで、プラスチック製ピンセットに保持されたクーポンを、クーポンのPER層含有側が撹拌棒に面するように、加熱された洗浄組成物に入れて、洗浄試験を実施した。洗浄組成物を制御下で撹拌しながら試験温度で保持しつつ、クーポンを、洗浄組成物中で一定期間(典型的には2~5分間)静止させた。所望の洗浄時間完了後、クーポンを洗浄組成物から迅速に取り出し、周囲温度(17℃以下)で約400mlの脱イオン水を満たした500mlのプラスチック製ビーカーに入れ、穏やかに撹拌した。クーポンを脱イオン水のビーカー内に約15秒間放置してから、迅速に取り出したのち、イソプロパノールで約30秒間リンスした。クーポンは、ハンドヘルド窒素ブローガンからの窒素ガス流に直ちに暴露され、クーポン表面の液滴がクーポンから吹き飛ばされ、さらに、クーポンデバイス表面を完全に乾燥させた。この最後の窒素乾燥工程に続いて、クーポンをプラスチック製ピンセットホルダから取り外し、短期間保管のためにデバイス側を上にして蓋付きプラスチック製キャリアに入れた。次に、洗浄したテストクーポンデバイス表面の主要な特徴について、走査型電子顕微鏡(SEM)画像を収集した。
【0113】
一般手順3a
ビーカー試験による材料適合性評価
シリコン基板上のブランケットCo、シリコン基板上のW、シリコン基板上のBドープW(WBx)、シリコン基板上のSiO、シリコン基板上のSiN、シリコン基板上のAlOx、及びシリコン基板上のTiNを、材料適合性試験のためにダイシングし、約1インチ×1インチの正方形のテストクーポンとした。テストクーポンは、まず、金属膜(Co、W、及びWBx)について4点プローブであるCDE社の「Resmap 273」によって、又はWoollam社の「M-2000X」を使用した誘電体膜(SiO、AlOx、SiN及びTiN)についてのエリプソメトリーによって、厚み又はシート抵抗を測定した。次に、テストクーポンを4インチの長さのプラスチック製ロッキングピンセットに取り付け、一般手順2の洗浄手順に記載したように、Co、W、WBx、SiO、AlOx、SiN、又はTiN層を含むクーポンの側を撹拌棒に向けて、10分間処理した。
【0114】
最後の窒素乾燥工程の後、クーポンをプラスチック製ピンセットホルダから取り出し、蓋付きのプラスチック製キャリアに入れた。次に、金属膜(Co、W、及びWBx)について4点プローブであるCDE社の「Resmap 273」により、又はWoollam社の「M-2000X」を使用した誘電体膜(SiO、AlOx、SiN、及びTiN)についてのエリプソメトリーにより、ポスト処理テストクーポン表面のポスト厚み又はシート抵抗を収集した。
【0115】
一般手順3b
ビーカーテストを使用したデジタルエッチングプロセス
シリコン基板上のブランケットCoをダイシングし、デジタルエッチングプロセス用の約1インチ×1インチの正方形のテストクーポンとした。テストクーポンは、まず、Coフィルムについて、4点プローブであるCDE社の「Resmap 273」によって、厚み又はシート抵抗を測定した。次に、テストクーポンを長さ4インチのプラスチック製ロッキングピンセットに取り付け、テストクーポンを以下の処理サイクルで5回処理したことを除いて、一般手順2の洗浄手順で説明した処理と同様に処理した:(1)40℃の脱イオン水で30秒間、(2)25℃の洗浄組成物で30秒間又は60秒間、(3)脱イオン水でリンス。上記の5サイクルが完了した後、クーポンは直ちにハンドヘルド窒素ブローガンからの窒素ガス流に暴露され、クーポンデバイス表面を完全に乾燥させた。
【0116】
窒素乾燥工程の後、クーポンをプラスチック製ピンセットホルダから取り外し、蓋付きプラスチック製キャリア内に載置した。次いで、ポスト処理テストクーポン表面のポスト厚み又はシート抵抗を、Coフィルムについて、4点プローブであるCDE社の「Resmap 273」で収集した。
【0117】
[実施例1]
【0118】
配合例1~7(FE-1~FE-7)を一般手順1に従って調製し、一般手順2及び3aに従って評価した。配合を表1にまとめ、Co、W、BドープW(WBx)、TiN、SiO、AlOx、及びSiNの洗浄結果とエッチング速度(ER)(オングストローム/分)を表2にまとめた。表2の結果は、洗浄温度21℃で10~30分間の洗浄時間内に得られた。
【0119】
【表1】
【0120】
HA=ヒドロキシルアミン;EGBE=エチレングリコールブチルエーテル;DTPA=ジエチレントリアミン五酢酸;5MBTA=5-メチル-1H-ベンゾチアゾール;BTA=ベンゾチアゾール;MEA=モノエタノールアミン;DBU=1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン;MSA=メタンスルホン酸。
【0121】
【表2】
【0122】
ER=エッチング速度;N/A=該当なし。
【0123】
表1及び表2に示されるように、配合FE-1~FE-6(pH調整剤としてモノエタノールアミン又はDBUを含有する)は、洗浄プロセスにおいて暴露され得るCo及びWBxの少なくとも両方との優れた適合性(すなわち、比較的低いエッチング速度)を示した。一方、配合FE-7(モノエタノールアミン又はDBUを含まない)は、WBxに対して比較的高いエッチング速度を示した。
【0124】
[実施例2]
【0125】
配合例8~12(FE-8~FE-12)を、一般手順1に従って調製した。「Co ER」及び「WBx ER」を、一般手順3aに従って評価した。Coに関するデジタルエッチングロスを、一般手順3bに従って評価した。
【0126】
配合ならびにCo及びWBxに関するエッチング結果を表3にまとめ、図1に示す。結果は25℃の洗浄温度で得られた。
【0127】
【表3】
【0128】
表3に示すように、配合FE-8~FE-12は、EGBEの量が3重量%から36重量%に増加するにつれて、幾分高いCoエッチング速度を示した。また、図1に示すように、配合FE-8~FE-12は、EGBEの量が3重量%から36重量%に増加するにつれて、大幅に低減した表面粗度を示した。
【0129】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
図1
【国際調査報告】