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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】逆浸透膜前処理用シリカ除去試薬
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20230101AFI20230914BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230914BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20230914BHJP
【FI】
C02F1/52 K
C02F1/44 D
C02F1/56 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513883
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 CN2021111590
(87)【国際公開番号】W WO2022042284
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202010896874.5
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】チン ニン
(72)【発明者】
【氏名】ハン リンフォン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ チュンポー
【テーマコード(参考)】
4D006
4D015
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006KA01
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KB13
4D006KB14
4D006PA01
4D015BA19
4D015BA21
4D015BB09
4D015BB13
4D015DA13
4D015DA16
4D015DA19
4D015DB02
4D015DC08
4D015EA15
4D015FA02
4D015FA17
(57)【要約】
【課題】水性系におけるシリカ汚染を低減する方法が提供される。
【解決手段】この方法は、第二鉄塩及びマグネシウム塩を含む組成物を水性媒体に添加して、水性媒体中でシリカを沈殿させ、沈降シリカを形成することを含む。この方法はまた、水性媒体から沈降シリカの少なくとも一部を除去して、水性上清を形成することも含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性系におけるシリカ汚染を低減する方法であって、前記方法は、
第二鉄塩及びマグネシウム塩を含む組成物を水性媒体に添加して、前記水性媒体中でシリカを沈殿させ、沈降シリカを形成することと、
前記水性媒体から前記沈降シリカの少なくとも一部を除去して、水性上清を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第二鉄塩が、塩化第二鉄、塩化第二鉄水和物、ポリ塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マグネシウム塩が、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム一水和物、硫酸マグネシウム七水和物、炭酸マグネシウム、又はこれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、前記水性媒体に添加する前に前記第二鉄塩と前記マグネシウム塩とを混合することによって調製される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マグネシウム塩が、無水マグネシウム塩である、請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マグネシウム塩が、塩化マグネシウムであり、前記第二鉄塩が、塩化第二鉄である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記マグネシウム塩が、硫酸マグネシウムであり、前記第二鉄塩が、ポリ硫酸第二鉄である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、約10ppm~約2,000ppmの範囲の量で前記水性媒体に添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリアクリルアミド系凝集剤を前記水性媒体に添加することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアクリルアミド系凝集剤が、約0.05ppm~約5ppmの量で添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水性媒体が、約9.5~約12.5のpHを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アルミニウム化合物を前記水性媒体に添加することを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記水性上清を濾過システム、続いて逆浸透システムに供給することを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記水性媒体が、約100μs/cm~約100,000μs/cmの導電率及び約30mg/L~約250mg/Lのシリカ濃度を有し、前記水性媒体が、スケール防止剤を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水性媒体が、約10℃~約50℃の温度を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記水性媒体が、CaCOとして約0mg/L~約2,000mg/Lの総硬度を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物を添加した後に、前記水性媒体を撹拌することを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物を添加した後に、塩基を添加することを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水性媒体からシリカを除去するための、第二鉄塩及びマグネシウム塩を含む組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、水性媒体からシリカを除去することに関する。より具体的には、本発明は、水性媒体中のシリカを除去するための第二鉄塩及びマグネシウム塩を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
世界各地において、工業用水が大量のシリカを含有する場合、非晶質シリカスケールは、重大な汚染の問題を引き起こす。ほとんどの場合、大量のシリカは、工業用水が少なくとも5ppm~最大約500ppmの溶解シリカを含有し、かつ溶解形態、コロイド形態又は粒子形態のいずれかの形態で、より多い量のシリカを含有し得ることを意味する。
【0003】
シリカの溶解性は、冷却、ボイラー、地熱、逆浸透、及び製紙などの工業用途における水の効率的な使用を不利に制限する。具体的には、鉱物が処理中に濃縮される場合、約150ppmのシリカの溶解度を超える可能性があるので、水処理操作は制限される。この過剰は、非晶質シリカ及びケイ酸塩の沈殿及び堆積をもたらし、結果として装置効率の損失をもたらす可能性がある。更に、ボイラー、冷却及び精製システムなどの水処理装置の内部表面上のシリカの蓄積は、熱交換管及び膜を通る熱伝達及び流体流を減少させる。
【0004】
水処理装置上にシリカスケールが形成されると、そのようなスケールの除去は非常に困難であり、費用がかかる。したがって、高シリカ水では、冷却及び逆浸透システムは、典型的には、シリカの溶解度を超えないことを確実にするために低い水利用効率で動作する。しかしながら、これらの条件下では、逆浸透システムはそれらの純水回収率を制限しなければならず、冷却システムは水再循環を制限しなければならない。いずれの場合も排水量が多い。
【0005】
長年にわたって、シリカの堆積を抑制するために様々な添加剤が使用されてきた。工業用冷却システムにおけるシリカスケール制御のための現在の技術は、コロイド状シリカ分散剤又はシリカ重合阻害剤のいずれかの使用を含む。炭酸カルシウム及びリン酸カルシウムなどの一般的なスケール/堆積物とは異なり、シリカ重合は、その濃度が過飽和レベルを有意に上回る場合にのみ遅くすることができ、完全に停止させることができない。したがって、シリカ分散剤/スケール防止剤には一定の限界がある。最大許容溶解シリカレベルは、典型的には約200~400ppmである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリカ汚染は、多くの場合、高回収逆浸透システムの主要なボトルネックである。ゼロ液体排出(zero liquid discharge、ZLD)又は近ZLDプロセスの場合、シリカ濃度は、分散剤/スケール防止剤の限界よりも著しく高いレベルに達する可能性がある。シリカによってひどく汚染された膜は、洗浄することが非常に困難であり、完全に回収することがほとんど不可能である。したがって、膜流入液中のシリカ濃度を減少させることがしばしば必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
水性系におけるシリカ汚染を低減する方法が提供される。この方法は、第二鉄塩及びマグネシウム塩を含む組成物を水性媒体に添加して、水性媒体中でシリカを沈殿させ、沈降シリカを形成することを含む。本方法はまた、水性媒体から沈降シリカの少なくとも一部を除去して、水性上清を形成することも含む。
【0008】
いくつかの態様において、第二鉄塩は、塩化第二鉄、塩化第二鉄水和物、ポリ塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、又はこれらの組み合わせである。
【0009】
いくつかの態様において、マグネシウム塩は、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム一水和物、硫酸マグネシウム七水和物、炭酸マグネシウム、又はこれらの組み合わせである。
【0010】
いくつかの態様において、マグネシウム塩は、無水マグネシウム塩である。
【0011】
いくつかの態様において、マグネシウム塩は、塩化マグネシウムであり、第二鉄塩は、塩化第二鉄である。
【0012】
いくつかの態様において、マグネシウム塩は、硫酸マグネシウムであり、第二鉄塩は、ポリ硫酸第二鉄である。
【0013】
いくつかの態様において、組成物は、水性媒体に添加する前に第二鉄塩とマグネシウム塩とを混合することによって調製される。
【0014】
いくつかの態様において、組成物は、約10ppm~約2,000ppmの範囲の量で水性媒体に添加される。
【0015】
いくつかの態様において、本方法は、水性媒体にポリアクリルアミド系凝集剤を添加することを含む。
【0016】
いくつかの態様において、ポリアクリルアミド系凝集剤は、約0.05ppm~約5ppmの量で添加される。
【0017】
いくつかの態様において、水性媒体は、約9.5~約12.5のpHを有する。
【0018】
いくつかの態様において、本方法は、水性媒体にアルミニウム化合物を添加することを含む。
【0019】
いくつかの態様において、本方法は、水性上清を濾過システム、続いて逆浸透システムに供給することを含む。
【0020】
いくつかの態様において、水性媒体は、約100μs/cm~約100,000μs/cmの導電率及び約30mg/L~約250mg/Lのシリカ濃度を有し、水性媒体はスケール防止剤を含む。
【0021】
いくつかの態様において、水性媒体は、約10℃~約100℃の温度を有する。
【0022】
いくつかの態様において、水性媒体は、CaCOとして約0mg/L~約2,000mg/Lの総硬度を有する。
【0023】
いくつかの態様において、本方法は、組成物を添加した後に、水性媒体を撹拌することを含む。
【0024】
いくつかの態様において、本方法は、組成物を添加した後に、塩基を添加することを含む。
【0025】
いくつかの態様において、塩基はアルカリ金属水酸化物である。
【0026】
他の態様において、水性媒体からシリカを除去するための、第二鉄塩及びマグネシウム塩を含む組成物の使用が提供される。
【0027】
前述は、後に続く発明を実施するための形態をより良好に理解できるように、本開示の特徴及び技術的利点を概括的に概説した。本願の特許請求の範囲の主題を形成する、本開示の更なる特徴及び利点は、以下に説明される。開示される概念及び具体的な実施形態は、本開示と同じ目的を実行するための他の実施形態を修正又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者により理解されるべきである。そのような同等の実施形態が、添付の特許請求の範囲に明記される本開示の趣旨及び範囲から逸脱しないことも、当業者によって認識されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施形態の様々な要素の関係性及び機能は、以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解され得る。
【0029】
水性系におけるシリカ汚染を低減する方法が提供される。本方法は、第二鉄塩及びマグネシウム塩を含む組成物を水性媒体に添加して、水性媒体中でシリカを沈殿させ、沈降シリカを形成することを含む。本方法はまた、水性媒体から沈降シリカの少なくとも一部を除去して、水性上清を形成することも含む。
【0030】
水性媒体に添加される組成物は、第二鉄塩を含む。第二鉄塩の例としては、塩化第二鉄(FeCl)、塩化第二鉄水和物、ポリ塩化第二鉄、硫酸第二鉄、又はポリ硫酸第二鉄が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、第二鉄塩は、塩化第二鉄である。いくつかの態様において、第二鉄塩は、塩化第二鉄水和物である。いくつかの態様において、第二鉄塩は、硫酸第二鉄である。いくつかの態様において、第二鉄塩は、ポリ塩化第二鉄である。いくつかの態様において、第二鉄塩は、ポリ硫酸第二鉄である。
【0031】
第二鉄塩は、無水物であっても水和物であってもよい。第二鉄塩水和物の例としては、六水和物、五水和物、及び二水和物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、塩化鉄は、六水和物、五水和物、二水和物、又は他の水和物であってもよい。
【0032】
水性媒体に添加される組成物は、マグネシウム塩を含む。マグネシウム塩の例としては、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム一水和物、硫酸マグネシウム七水和物、又は炭酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、マグネシウム塩は、酸化マグネシウムである。いくつかの態様において、マグネシウム塩は、塩化マグネシウムである。いくつかの態様において、マグネシウム塩は、塩化マグネシウム六水和物である。いくつかの態様において、マグネシウム塩は、硫酸マグネシウムである。いくつかの態様において、マグネシウム塩は、硫酸マグネシウム一水和物である。いくつかの態様において、マグネシウム塩は、硫酸マグネシウム七水和物である。いくつかの態様において、マグネシウム塩は、炭酸マグネシウムである。
【0033】
マグネシウム塩は、無水物であっても水和物であってもよい。いくつかの態様において、マグネシウム塩は、例えば、無水塩化マグネシウムなどの無水マグネシウム塩である。
【0034】
いくつかの態様において、組成物は、水性媒体に添加する前に第二鉄塩とマグネシウム塩とを混合することによって調製される。混合は、マグネシウム塩の粉末を第二鉄塩の粉末と組み合わせることを含み得る。第二鉄塩及びマグネシウム塩を一緒に予備混合すると、シリカ及び硬度の除去が相乗的に促進される。
【0035】
いくつかの態様において、マグネシウム塩と第二鉄塩との重量比は、約0.1:1~約10:1である。いくつかの態様において、マグネシウム塩と第二鉄塩との重量比は、約4:1、約2:1、約3:1、約5:1、又は約6:1である。
【0036】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、マグネシウム塩によるシリカ除去には2つの機構があると考えられる。大部分のマグネシウムは水酸化マグネシウムとして沈殿し、これが溶液中のシリカを吸収する。マグネシウムの一部は、シリカと共沈してケイ酸マグネシウムを直接形成することができる。共沈機構は、水酸化マグネシウムによるシリカ吸収よりも効率的にマグネシウム塩がシリカを除去することを可能にする。マグネシウムと酸性第二鉄塩とを予め混合し、それらを一緒に投与することによって、第二鉄塩は、マグネシウムが水酸化マグネシウムに急速に沈殿するのを防ぎ、したがって全体的なシリカ除去効率を高めると考えられる。
【0037】
組成物は、溶液からシリカを沈殿させるのに十分な有効量で水性媒体に添加することができる。いくつかの態様において、組成物は、約10ppm~約2,000ppmの範囲の量で水性媒体に添加される。
【0038】
いくつかの態様において、水性媒体に添加される組成物の量は、約10ppm~約1,000ppm、約50ppm~約500ppm、又は約100ppm~約400ppmである。いくつかの態様において、添加される組成物の量は、約100ppm、約200ppm、約300ppm、又は約400ppmである。
【0039】
本方法は、水性媒体にポリアクリルアミド系凝集剤を添加することを更に含んでもよい。いくつかの態様において、ポリアクリルアミド系凝集剤は、アニオン性ポリアクリルアミドである。ポリアクリルアミド系凝集剤は別途添加することができる。凝集剤は、組成物を水性媒体に添加した後に添加することができる。ポリアクリルアミド系凝集剤は、約0.05ppm~約5ppmの量で添加することができる。
【0040】
いくつかの態様において、本方法は、任意選択的に、水性媒体にアルミニウム化合物を添加することを含む。アルミニウム化合物は、ポリ塩化アルミニウム又は他のアルミニウム塩であってもよい。
【0041】
本方法は、組成物を添加した後に塩基を水性媒体に添加して、pHを最適レベルに調整することを更に含んでもよい。いくつかの態様において、塩基は、アルカリ金属水酸化物である。アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム及び石灰が挙げられる。本方法は、硬度レベルを低下させるために軟化試薬を添加することを更に含んでもよい。典型的な軟化剤は、例えば炭酸ナトリウム(ソーダ灰)である。当業者は、系の必要性に応じて適切な塩基及び適切な軟化剤を選択することができる。
【0042】
組成物を水性媒体に添加した後に水性媒体を撹拌又は混合して、媒体全体に組成物を分散させてもよい。媒体を撹拌する手段は、いかなる特定の構造又は技術にも限定されない。当業者は、系の必要性に応じて適切な混合手段を選択することができる。
【0043】
処理することができる水性媒体は特に限定されないが、第二鉄塩及びマグネシウム塩を含有する組成物が、廃水からシリカを相乗的に除去することが見出された。廃水を再生するために、濾過及びイオン交換などの更なる精製手段が適用される。濾過方法としては、とりわけ、マルチメディア濾過、精密濾過、及び限外濾過が挙げられる。硬度レベルを更に低下させるために、イオン交換法が適用される。いくつかの態様では、本方法は、組成物を添加した後に、水性上清を濾過システム、続いてイオン交換システム、次いで逆浸透システムに供給することを含む。
【0044】
高回収逆浸透システムの場合、シリカは、主に原水硬度を低下させるために使用される軟化プロセスにおいて沈殿物として除去することができる。軟化中、水は、典型的には、石灰、苛性ソーダ、及びソーダ灰の組み合わせによって処理される。カルシウムは炭酸カルシウムとして沈殿し、マグネシウムは水酸化マグネシウムとして沈殿する。シリカは、マグネシウムとともに沈殿してケイ酸マグネシウムを形成することができ、より少ない程度で、カルシウムとともに沈殿してケイ酸カルシウムを形成することができる。また、アルミニウム及び第二鉄ベースの凝固剤及びポリアクリルアミド系凝集剤などの他の試薬も、沈殿物の沈降を促進するために添加される。
【0045】
流入水中のマグネシウム濃度は、満足なシリカ除去のために必要な量よりもはるかに低いことが多い。したがって、シリカ除去を促進するために、流入水中に追加のマグネシウム源を添加することが一般的に行われている。酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム及びドロマイト石灰がマグネシウム源として市販されており、酸化マグネシウムが最も一般的に使用されている。
【0046】
本明細書に開示される組成物は、約9.5~約12.5のpHを有する水性媒体からシリカを除去するのに特に有効である。いくつかの態様においては、水性媒体のpHは、約10.0~約11.5であってもよい。
【0047】
いくつかの態様においては、水性媒体は、約100μs/cm~約100,000μs/cmの導電率を有する。いくつかの態様においては、水性媒体は、約100μs/cm~約300,000μs/cm、約100μs/cm~約10,000μs/cm、又は約5,000μs/cm~約10,000μs/cmの導電率を有する。
【0048】
水性媒体の硬度は、CaCOとしてmg/Lで測定することができる。いくつかの態様においては、水性媒体は、CaCOとして約0mg/L~約2,000mg/Lの総硬度を有する。いくつかの態様においては、水性媒体の硬度は、CaCOとして約50mg/L~CaCOとして約1,500mg/Lであってもよい。いくつかの態様においては、水性媒体の硬度は、CaCOとして約10mg/L~CaCOとして約600mg/Lであってもよい。いくつかの態様においては、水性媒体の硬度は、CaCOとして約200mg/L~CaCOとして約500mg/Lであってもよい。
【0049】
本明細書に開示される組成物で処理する前の水性媒体中のシリカ濃度は、約30mg/L~約250mg/Lであってもよい。いくつかの態様においては、水性媒体中のシリカ濃度は、約50mg/L~約250mg/Lであってもよい。いくつかの態様においては、水性媒体中のシリカ濃度は、約60mg/L~約250mg/Lであってもよい。
【0050】
シリカは、溶解した、ケイ酸種、ケイ酸塩、又はそれらの錯イオンとして存在し、また、コロイドシリカ又は懸濁シリカとしても存在し得る。これらの水中の全ての供給源からの総シリカの濃度が高いほど、非晶質シリカスケール形成によって生じる問題はより困難になる。
【0051】
いくつかの態様においては、水性媒体は、約10℃~約50℃の温度を有する。いくつかの態様においては、水性媒体の温度は、約20℃~約40℃であってもよい。
【0052】
高回収逆浸透システムのための水前処理において、廃水流入物は、多くの場合、スケール防止剤を含有する。スケール防止剤は、上流の冷却水処理及び/又は逆浸透プロセスに添加して、これらのプロセスにおけるスケーリング及び堆積を防止することができる。残念ながら、スケール防止剤は、下流の軟化及びシリカ除去プロセスを妨害し、より高い操作pH及びより高い化学薬品使用量をもたらす。
【0053】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、マグネシウム塩と第二鉄塩とを予め混合し、それらを一緒に投与することによって、新たに沈殿した水酸化第二鉄は、スケール防止剤と効率的に結合し、それらの悪影響を除去する。その結果、硬度及びシリカ除去効率が増加する。
【0054】
本発明を実施するために必要ではないが、本明細書に開示される組成物は、1つ以上の腐食防止剤、1つ以上の他のスケール防止剤、1つ以上の蛍光トレーサー、又は1つ以上の水処理ポリマーと組み合わせられ得ることが企図される。
【0055】
この方法は、特定の実施形態において、当該産業において公知の他の実用品と組み合わせられ得ることが理解されるべきである。代表的な実用品には、系内の様々な添加剤の含有量を測定するためのセンサ、溶解又は微粒子汚染物質センサ、抵抗、静電容量、分光吸収又は透過率、比色測定、及び蛍光に基づく他のセンサ;並びにセンサ/コントローラ結果を分析するための数学的ツール(例えば、多変量分析、計量化学、オン/オフ投与量制御、PID投与量制御など、及びこれらの組み合わせ)が含まれる。
【0056】
別の実施形態においては、不活性蛍光トレーサーは相乗的なブレンドに含められて、投与量レベルを決定する手段を提供する。既知の割合の蛍光トレーサーは、ブレンドと同時に又は連続して添加される。有効な不活性蛍光トレーサーは、系内の他の成分と化学的に非反応性であり、かつ経時的に著しく劣化しない物質を含む。そのようなトレーサーはまた、全ての関連する濃度レベルでブレンド中に完全に(又は本質的に完全に)可溶性であるべきであり、好ましくは、蛍光強度はその濃度に実質的に比例し、系内の他の成分によって有意に消光されないか、又はさもなければ減少されないべきである。更に、不活性蛍光トレーサーは、系内の任意の他の化学的性質によって感知可能に又は有意に影響されるべきではない。「感知可能に又は有意に影響されない」という記述は、不活性蛍光化合物が、燃料エタノール中で通常遭遇する条件下で、その蛍光シグナルの約10%以下の変化を一般に有することを意味する。
【0057】
不活性蛍光トレーサーの望ましい特性としては、好ましくは以下のものが挙げられる。すなわち、系の水中に存在する光吸収物質、他の添加剤、汚染物質などと有意に重複しない蛍光励起/発光波長、高い溶解性、優れた化学的安定性、管理可能な波長における適切な蛍光特性(例えば、系内の他の成分は、それらの波長における蛍光特性に干渉すべきではない)、及び干渉を防止するために系内に存在し得る他の蛍光成分から分離される励起/発光波長;並びに系の特性に対する負の影響を回避すること。
【0058】
代表的な不活性蛍光トレーサーとしては、フルオレセイン又はフルオレセイン誘導体、ローダミン又はローダミン誘導体、ナフタレンスルホン酸(モノ-、ジ-、トリ-など)、ピレンスルホン酸(モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-など)、スルホン酸を含有するスチルベン誘導体(蛍光増白剤を含む)、ビフェニルスルホン酸、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンE(α-トコフェロール)、エトキシキン、カフェイン、バニリン、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合ポリマー、フェニルスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、多環芳香族炭化水素、アミン、フェノール、スルホン酸、カルボン酸官能基を任意の組み合わせで含有する芳香族(ポリ)環式炭化水素、N、O又はSを有する(ポリ)複素環式芳香族炭化水素、以下の部分:ナフタレンスルホン酸、ピレンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、又はスチルベンスルホン酸のうちの少なくとも1つを含有するポリマーが挙げられる。
【0059】
これらの追加のスケール抑制剤には、無機及び有機ポリリン酸、ホスホン酸、並びにポリカルボン酸が含まれ得るが、これらに限定されない。これらの抑制剤は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、及びシュウ酸カルシウムなどの他のスケールの抑制又は分散に役立ち得る。
【実施例
【0060】
実施例1:無水塩化マグネシウム及び塩化第二鉄を約4:1の重量比で微粉末として一緒に混合した。それらを石炭から化学プラントへの廃水サンプルに添加した。廃水サンプルは、以下の特性を有していた:約9.21のpH、約212,000μs/cmの導電率、約90.5mg/LのSiO濃度、CaCOとして約450mg/Lの総硬度、CaCOとして約290mg/Lのカルシウム硬度、及びCaCOとして約710mg/Lの総アルカリ度。廃水は、上流の逆浸透及び冷却水処理からの未知量のスケール防止剤を含有していた。温度を約21℃に設定した。廃水溶液のpHを、一定量のNaOHを使用して予め調整し、次いで、予め混合した塩を、約200ppmの総粉末用量で10重量%溶液を介して添加するか、又は成分を、約1分の間隔でそれぞれの塩の10重量%溶液を介して別々に添加した。全ての化学物質を添加した後、溶液を更に10分間撹拌した。次いで、アニオン性ポリアクリルアミド溶液を約0.5ppmの用量で添加し、この溶液を更に1分間撹拌し、次いで約60分間沈降させた。最終溶液は約11.0のpHを有し、上清サンプルを分析のために取り出した。この分析結果を表1に示す。
【表1】
【0061】
実施例2:無水硫酸マグネシウム及びポリ硫酸第二鉄を、約1:1の重量比で微粉末として一緒に混合した。それらを石炭から化学プラントへの廃水サンプルに添加した。廃水サンプルは、以下の特性を有していた。約9.64のpH、約8440μs/cmの導電率、約64.3mg/LのSiO濃度、CaCOとして約247mg/Lの総硬度、CaCOとして約217mg/Lのカルシウム硬度、及びCaCOとして約730mg/Lの総アルカリ度。廃水は主に冷却水ブローダウンからのものであり、未知量のスケール防止剤を含有していた。温度を約27℃に設定した。予め混合した塩を、約200ppmの総粉末用量で10重量%溶液を介して添加するか、又は成分を、約1分の間隔でそれぞれの塩の10重量%溶液を介して別々に添加した。塩の添加後、30重量%のNaOH溶液を滴下して、溶液のpHを約11.3に上昇させ、pH調整には約0.5分を要した。次いで、溶液を更に10分間撹拌し、アニオン性ポリアクリルアミド溶液を約0.5ppmの用量で添加し、溶液を更に1分間撹拌し続け、次いで約60分間沈降させた。最終溶液のpHは約10.90であり、上清サンプルを分析のために取り出した。この分析結果を表2に示す。
【表2】
【0062】
本明細書で開示及び特許請求される組成物及び方法の全ては、本開示を考慮して、過度の実験を伴わずに作製及び実行され得る。本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本発明の特定の好ましい実施形態が、本明細書で詳細に説明される。本開示は、本発明の原理の例示であり、本発明を例解された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。加えて、異なるように明示的に述べられない限り、「a(ある1つの)」という用語は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を含むことを意図する。例えば、「ある1つの第二鉄塩(a ferric salt)」は、「少なくとも1つの第二鉄塩」又は「1つ以上の第二鉄塩」を含むことを意図する。
【0063】
絶対項又は近似項のいずれかで与えられる任意の範囲は、双方を包含することを意図するものであり、本明細書で使用されるいかなる定義も、明確にすることを意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明の広範な範囲を明記する数値範囲及びパラメータは、近似値ではあるものの、特定の実施例で明記される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含む。更に、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲(全ての小数値及び全体値を含む)を包含するものとして理解されるべきである。
【0064】
本明細書に開示される任意の組成物は、本明細書に開示される任意の要素、成分、及び/並びに原料、又は本明細書に開示される要素、成分、又は原料のうちの2つ以上の任意の組み合わせを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなり得る。
【0065】
本明細書に開示される任意の方法は、本明細書に開示される任意の方法ステップ、又は本明細書に開示される方法ステップのうちの2つ以上の任意の組み合わせを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなり得る。
【0066】
「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義である移行句「含む(comprising)」は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素、成分、原料、及び/又は方法ステップを除外しない。
【0067】
移行句「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲に明記されていない任意の要素、成分、原料、及び/又は方法ステップを除外する。
【0068】
移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲を、特定の要素、成分、原料及び/又はステップ、並びに特許請求される発明の基本的な及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0069】
特に明記されていない限り、本明細書で言及される全ての分子量は、重量平均分子量であり、全ての粘度は、ニート(希釈されていない)ポリマーを用いて25℃で測定した。
【0070】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から生じる誤差内にある引用された値を指し、それらの誤差が判定され得ない場合、「約」は、例えば、引用された値の5%以内を指し得る。
【0071】
更に、本発明は、本明細書に記載の様々な実施形態の一部又は全部の、あらゆる可能な組み合わせを包含する。また、本明細書に記載される本発明の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者にとって明らかであろうことも理解されるべきである。そのような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行われ得る。したがって、そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】