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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】研磨組成物及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20230914BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230914BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230914BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230914BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
H01L21/304 622D
C09G1/02
C09K3/14 550D
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514073
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021047534
(87)【国際公開番号】W WO2022046893
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/071,711
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェイファー、ザカリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、エリク
(72)【発明者】
【氏名】バレストロス、カール
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158DA12
3C158EB01
3C158ED10
3C158ED11
3C158ED12
3C158ED22
3C158ED26
5F057BA15
5F057BB14
5F057BB15
5F057BB16
5F057BB19
5F057BB22
5F057BB23
5F057BB24
5F057BB25
5F057BB26
5F057BB29
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA05
5F057EA06
5F057EA07
5F057EA08
5F057EA09
5F057EA12
5F057EA22
5F057EA23
5F057EA26
5F057EA27
(57)【要約】
本開示は、少なくとも1種の研磨剤;少なくとも1種のpH調整剤;及び少なくとも1種のバイオサーファクタントを含む研磨組成物、並びに基板を研磨するために前記研磨組成物を用いる方法に関する。前記バイオサーファクタントは、糖脂質、リポペプチド、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の研磨剤;
少なくとも1種のpH調整剤;並びに、
糖脂質、リポペプチド、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のバイオサーファクタント
を含む研磨組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の研磨剤は、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、若しくはジルコニアの共形成物、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、コーティングされた研磨剤、表面改質研磨剤、並びにこれらの混合物、からなる群から選択される、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の研磨剤は、前記組成物の約0.01重量%~約50重量%の量である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のバイオサーファクタントは、ラムノ脂質、ソホロ脂質、トレハロース脂質、マンノシルエリスリトール脂質、及びこれらの混合物からなる群から選択される糖脂質を含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のバイオサーファクタントは、モノラムノ脂質、ジラムノ脂質、又はこれらの混合物からなる群から選択されるラムノ脂質を含む、請求項4に記載の研磨組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のバイオサーファクタントは、式(III)のソホロ脂質を含む、請求項4に記載の研磨組成物。
【化1】

式中、R及びRはそれぞれH又はCOCHを表し;RはH又はCHを表し;そしてRは、RがHである場合は、飽和若しくは不飽和のC12~C16炭化水素基を表し、Rは、RがCHである場合は、飽和若しくは不飽和のC11~C15炭化水素基を表す。
【請求項7】
前記少なくとも1種のバイオサーファクタントが、式(IV)のソホロ脂質を含む、請求項4に記載の研磨組成物。
【化2】

式中、R及びRはそれぞれH又はCOCHを表し;RはH又はCHを表し;そしてRは、RがHである場合は、飽和若しくは不飽和のC12~C16炭化水素基を表し、Rは、RがCHである場合は、飽和若しくは不飽和のC11~C15炭化水素基を表す。
【請求項8】
前記糖脂質は、酸性型ソホロ脂質を約5重量%以上~約95重量%以下含む、請求項4に記載の研磨組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のバイオサーファクタントは、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、リケニシン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるリポペプチドを含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種のバイオサーファクタントは、前記研磨組成物中における唯一の界面活性剤である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のバイオサーファクタントは、前記組成物の約0.0001重量%~約10重量%の量である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種のバイオサーファクタントとは別個の、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群から選択される第2の界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種のpH調整剤は、前記組成物の約0.0001重量%~約30重量%の量である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項14】
アゾール化合物、防錆剤(corrosion inhibitor)、酸化剤、キレート剤、及び水溶性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項15】
前記組成物が約1~約14のpHを有する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の研磨組成物を基板の表面に付与するステップ;及び
パッドを前記基板の前記表面と接触させて前記パッドを前記基板に対して動かすステップ、 を含む基板を研磨する方法。
【請求項17】
前記基板が、SiN、SiC、TiN、TaN、W、シリコン酸化物、Cu、Co、Ru、Mo、Ti、Ta、Al、炭素、シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、若しくはp-Si、又はこれらの組み合わせを含む表面を有するウェハである、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、研磨組成物及びそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願への相互参照
本願は、2020年8月28日に出願された米国仮出願番号63/071,711からの優先権を主張し、該仮出願の内容はその全体が参照により本開示に取り込まれる。
【0003】
半導体産業は、プロセス及び集積の革新を通じてのデバイスのさらなる小型化によりチップ性能を向上させるよう不断に駆り立てられている。化学機械研磨/平坦化(CMP)は、トランジスタレベルにおける多くの複雑な集積スキームを可能とし、それによって増加したチップ密度を容易化するため、強力な技術である。
【0004】
CMPは、表面ベースの化学反応と同時並行で、研磨ベースの物理的プロセスを用いて材料を除去することによりウェハ表面を平坦化/平板化するのに用いられるプロセスである。一般に、CMPプロセスは、ウェハ表面を研磨パッドに接触させて研磨パッドをウェハに対して動かす間に、CMPスラリー(水性化学調合物)をウェハ表面に付与することを含む。スラリーは典型的には研磨成分及び溶解した化学成分を含み、化学成分は、ウェハ上に存在してCMPプロセスの中でスラリー及び研磨パッドと相互作用することとなる材料(例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物等の誘電体材料、等々)に応じて大きく変動しうる。
【発明の概要】
【0005】
この概要は、詳細な説明においてさらに後述される概念のセレクションを紹介するために設けられたものである。このサマリーは、特許請求の範囲に記載の主題の重要又は必須の特徴を同定することを意図したものではなく、特許請求の範囲の主題の範囲を制限する助けとして用いられることを意図したものでもない。
【0006】
1つの態様において、本開示は、少なくとも1種の研磨剤;少なくとも1種のpH調整剤;並びに、糖脂質、リポペプチド、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のバイオサーファクタント、を含む研磨組成物を1つの特色とする。
【0007】
別の態様では、本開示は、本開示に記載の研磨組成物を基板の表面に付与するステップ;及びパッドを前記基板の前記表面と接触させて前記パッドを前記基板に対して動かすステップ、を含む基板を研磨する方法を1つの特色とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
●詳細な説明
本開示は、研磨組成物及びそれを使用して半導体基板を研磨する方法に関する。
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1種のバイオサーファクタントを含む研磨組成物に関する。本開示で用いる場合、用語「バイオサーファクタント」は、疎水性基(例えばアルキル鎖)と親水性基(例えば、カルボン酸基)の両方を含む有機分子等の両親媒性有機分子であって、生物(例えば、微生物)によって製造される両親媒性有機分子を表すことが意図されている。CMP産業で一般的に用いられている界面活性剤は、石油系前駆体及び/又はエネルギー集約型化学反応を用いて製造される。対照的に、バイオサーファクタントは、好ましい環境及びエネルギープロファイル(例えば、生分解性及び/又はエネルギー集約性がより低いプロセスによる製造)を有することが可能でありながらも、先進のCMP操作を実行するのに必要な性能特性を与えることが依然として可能である。加えて、その独自の化学構造のために、バイオサーファクタントは単独で用いられた場合又はバイオサーファクタントではない界面活性剤と組み合わせて用いられた場合に、CMP操作の際に向上した性能(例えば、特定の誘電体膜及び/又は金属膜の除去速度を減少させることによる基板成分間での向上した研磨選択性)も与えることができる。したがって、CMP産業におけるバイオサーファクタントの使用は、顕著に減少した環境フットプリントと組み合わさった向上した又は持続した性能のための機会を提示する。
【0009】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、少なくとも1種の研磨剤;少なくとも1種のpH調整剤;及び少なくとも1種のバイオサーファクタントを含む。1つ又は複数の実施形態では、本開示に係る研磨組成物は、約0.01重量%~約50重量%の少なくとも1種の研磨剤、約0.0001重量%~約30重量%の少なくとも1種のpH調整剤、約0.0001重量%~約10重量%の少なくとも1種のバイオサーファクタント、及び残りの重量パーセントを占める(例えば、約30重量%~約99.99重量%の)溶媒(例えば、脱イオン水)を含んでもよい。
【0010】
1つ又は複数の実施形態では、本開示は、使用前に2倍にまで、又は4倍にまで、又は6倍にまで、又は8倍にまで、又は10倍にまで、又は15倍にまで、又は20倍にまで水で希釈されてもよい、濃縮研磨組成物を提供する。他の実施形態では、本開示は、前記研磨組成物、水、及び任意に(optionally)酸化剤を含む、使用時点での(point-of-use)(POU)研磨組成物を提供する。
【0011】
1つ又は複数の実施形態では、POU研磨組成物は、約0.01重量%~約25重量%の少なくとも1種の研磨剤、約0.0001重量%~約10重量%の少なくとも1種のpH調整剤、約0.0001重量%~約5重量%の少なくとも1種のバイオサーファクタント、及び残りの重量パーセントを占める(例えば、約65重量%~約99.99重量%の)溶媒(例えば脱イオン水)を含んでもよい。
【0012】
1つ又は複数の実施形態では、濃縮研磨組成物は、約0.02重量%~約50重量%の少なくとも1種の研磨剤、約0.0002重量%~約30重量%の少なくとも1種のpH調整剤、約0.0002重量%~約10重量%の少なくとも1種のバイオサーファクタント、及び残りの重量パーセントを占める(例えば、約35重量%~約99.98重量%の)溶媒(例えば脱イオン水)を含んでもよい。
【0013】
1つ又は複数の実施形態では、前記少なくとも1種の(例えば、2種又は3種の)研磨剤は、カチオン性研磨剤、実質的に中性の研磨剤、及びアニオン性研磨剤からなる群から選択される。1つ又は複数の実施形態では、前記少なくとも1種の研磨剤は、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、これらの共形成物(co-formed products)(つまり、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、又はジルコニアの共形成物)、コーティングされた研磨剤、表面改質研磨剤、並びにこれらの混合物、からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の研磨剤はセリアを含まない。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の研磨剤は高い純度を有し、アルコールは約100ppm未満であり、アンモニアは約100ppm未満であり、ナトリウムカチオン等のアルカリカチオンは約100ppb未満である。研磨剤は、POU研磨剤の全重量に対して、約0.01%~約12%(例えば、約0.5%~約10%)、あるいはその任意の部分範囲、の量で存在してもよい。
【0014】
1つ又は複数の実施形態では、前記研磨剤はシリカ系研磨剤であり、例えば、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、及びこれらの混合物からなる群から選ばれるシリカ系研磨剤である。1つ又は複数の実施形態では、前記研磨剤は、有機基及び/又はシリカ非含有無機基で表面修飾されていてもよい。例えば、前記カチオン性研磨剤は式(I)の末端基を含んでもよく

-O-X-(CH-Y (I)

式中、mは1~3の整数であり、nは1~10の整数であり、XはAl、Si、Ti、Ce、又はZrであり、そしてYはカチオン性アミノ基又はチオール基である。別の例として、前記アニオン性研磨剤は、式(I)の末端基を含んでもよい。

-O-X-(CH-Y (I)

式中、mは1~3の整数であり、nは1~10の整数であり、XはAl、Si、Ti、Ce、又はZrであり、そしてYは酸性基である。
【0015】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨剤は、約1nm以上(例えば、約5nm以上、約10nm以上、約20nm以上、約40nm以上、約50nm以上、約60nm以上、約80nm以上、又は約100nm以上)~約1000nm以下(例えば、約800nm以下、約600nm以下、約500nm以下、約400nm以下、又は約200nm以下)の平均粒径を有していてもよい。本開示で用いられる場合、平均粒径(MPS)は動的光散乱技術により決定される。
【0016】
1つ又は複数の実施形態では、前記少なくとも1種の研磨剤は、本開示に記載の研磨組成物の約0.01重量%以上(例えば、約0.05重量%以上、約0.06重量%以上、約0.08重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約1.2重量%以上、約1.5重量%以上、又は約2重量%以上)~約50重量%以下(例えば、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、約8重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約2重量%以下、又は約1重量%以下)の量である。
【0017】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、必要であれば、pHを所望の値に調整するために少なくとも1種の(例えば、2種又は3種の)pH調整剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のpH調整剤は酸(例えば、有機酸若しくは無機酸)又は塩基(例えば、有機塩基若しくは無機塩基)であってもよい。例えば、前記pH調整剤は、硝酸、塩酸、硫酸、プロピオン酸、クエン酸、マロン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0018】
1つ又は複数の実施形態では、前記少なくとも1種のpH調整剤は、本開示に記載の研磨組成物の重量の約0.0001重量%以上(例えば、約0.0005重量%以上、約0.001重量%以上、約0.002重量%以上、約0.004重量%以上、約0.005重量%以上、約0.006重量%以上、約0.008重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.04重量%以上、約0.05重量%以上、約0.06重量%以上、約0.08重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、約2.5重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、又は 約5重量%以上)~約30重量%以下(例えば、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.2重量%以下、又は約0.1重量%以下)の量である。
【0019】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、酸性であっても塩基性であってもよい。いくつかの実施形態では、前記研磨組成物は約1以上約14以下の範囲のpHを有してもよい。前記研磨組成物が酸性の場合、そのpHは約1以上(例えば、約1.5以上、約2以上、約2.5以上、約3以上、約3.5以上、約4以上、約4.5以上、又は約5以上)~約7以下(例えば、約6.5以下、約6以下、約5.5以下、約5以下、約4.5以下、又は約4以下)の範囲であってもよい。前記研磨組成物が塩基性の場合、そのpHは約7以上(例えば、約7.5以上、約8以上、約8.5以上、約9以上、約9.5以上、約10以上、約10.5以上、約11以上、約11.5以上、又は約12以上)~約14以下(例えば、約13.5以下、約13以下、約12.5以下、約12以下、約11.5以下、約11以下、約10.5以上、又は約10以下)の範囲であってもよい。
【0020】
1つ又は複数の実施形態では、前記研磨組成物は、少なくとも1種の(例えば、2種又は3種の)バイオサーファクタントを含んでもよい。1つ又は複数の実施形態では、前記少なくとも1種のバイオサーファクタントは微生物成長の副産物であってもよく(つまり、バイオサーファクタントは微生物によって産生されてもよく)、例えば微生物代謝物であってもよい。前記微生物成長副産物(つまり、バイオサーファクタント)は、培養した酵母又は真菌の株(つまり微生物)から、前記微生物成長副産物の生産に関わった微生物を除去する精製プロセスを経て回収されてもよい。
【0021】
1つ又は複数の実施形態では、前記バイオサーファクタントは、糖脂質、リポペプチド、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。1つ又は複数の実施形態では、前記バイオサーファクタントは、ラムノ脂質、ソホロ脂質、トレハロース脂質、マンノシルエリスリトール脂質、及びこれらの混合物からなる群から選択される糖脂質を含む。1つ又は複数の実施形態では、前記バイオサーファクタントは、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、リケニシン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるリポペプチドを含む。
【0022】
1つ又は複数の実施形態では、前記糖脂質は、モノラムノ脂質、ジラムノ脂質、及びこれらの混合物から選択されるラムノ脂質バイオサーファクタントである。ラムノ脂質バイオサーファクタントは、微生物から放出される界面活性化合物である。それらは生分解性で、非毒性で、環境に優しい材料である。それらの生産は、発酵条件、環境因子、及び栄養利用可能性に左右される。いくつかの実施形態では、ラムノ脂質はグリコシル頭部基(つまり、ラムノース部分)、及び(例えば、1つ若しくは複数の(例えば、2つ若しくは3つの)C10~C14 3-ヒドロキシアルカン酸若しくはエステル基を含む)脂肪酸尾部を有する。いくつかの実施形態では、発酵の詳細に応じて、ラムノ脂質の脂肪酸尾部は10~28(例えば、20~28又は24~28)炭素長であってもよい。いくつかの実施形態では、前記脂肪酸尾部は、3-(ヒドロキシアルカノイルオキシ)アルカン酸(HAA)基を含んでもよい。例えば、前記脂肪酸尾部は、ラムノ脂質の脂肪酸尾部は、式(II):-R-C(O)O-R-COOH(式中、R及びRはそれぞれ独立にC10~C14の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である)の基を含んでもよい。
【0023】
構造Iは、典型的なモノラムノ脂質である、RLLあるいはR1(アルファ-L-ラムノピラノシル-ベータ-ヒドロキシデカノイル-ベータ-ヒドロオキシデカノエート C2648(504g/mol)の構造を示す。
【化1】
【0024】
構造IIは、典型的なジラムノ脂質である、RRLLあるいはR2(2-O-アルファ-L-ラムノピラノシル-アルファ-L-ラムノピラノシル-ベータ-ヒドロキシデカノイル-ベータ-ヒドロオキシデカノエート C325813 (650g/mol)の構造を示す。
【化2】
【0025】
上記のとおり、モノラムノ脂質とジラムノ脂質という、ラムノ脂質の2つの主要なグループがある。モノラムノ脂質は単一のラムノース糖環を有する。モノラムノ脂質RLL(これはP. aeruginosaによって製造されることが最も多い)のための一般的名称は、C2648の式のL-ラムノシル-ベータ-ヒドロキシデカノイル-ベータ-ヒドロキシデカノエート(しばしばRha-C10-C10と称される)である。IUPAC名は、3-[3-[(2R,3R,4R,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシデカノイルオキシ]デカン酸である。
【0026】
ジラムノ脂質は、2つのラムノース糖環を有する。ジラムノ脂質RRLLのための一般的名称は、C325813の式のL-ラムノシル-L-ラムノシル-ベータ-ヒドロキシデカノイル-ベータ-ヒドロキシデカノエート(しばしばRha-Rha-C10-C10と称される)である。IUPAC名は、3-[3-[4,5-ジヒドロキシ-6-メチル-3-(3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル)オキシオキサン-2-イル]オキシデカノイルオキシ]デカン酸である。より一般的なジラムノ脂質のためのその他のいくつかの形態又は名称としては、L-ラムノピラノシル-L-ラムノピラノシル-ベータ-ヒドロキシデカノイル-ベータ-ヒドロキシデカノエート(しばしば、Rha-Rha-C10-C10と称される)、L-ラムノピラノシル-L-ラムノピラノシル-ベータ-ヒドロキシデカノイル-ベータ-ヒドロキシドデカノエート(しばしば、Rha-Rha-C10-C12と称される)、及びL-ラムノピラノシル-L-ラムノピラノシル-ベータ-ヒドロキシテトラデカノイル-ベータ-ヒドロキシテトラデカノエート(しばしば、Rha-Rha-C14-C14と称される)が挙げられる。
【0027】
本開示の研磨組成物におけるバイオサーファクタントとしての使用のためのラムノ脂質調合物は、粗ラムノ脂質でも高度精製ラムノ脂質でもよい。粗ラムノ脂質調合物はラムノ脂質を含むが、これは、外的不純物(例えば、生物的生産方法から生じる不純物)、及び/又は多様な種々のラムノ脂質混合物を両方含みうる多くの不純物を有し、これらは調合物に対して低下した効果をもたらす。高度精製ラムノ脂質調合物は、外的不純物が除去されたラムノ脂質、及び/又は、調合物に増加した効果をもたらすようにある特定のパラメータ(例えば、ジラムノ脂質に対するモノラムノ脂質の重量比)を満たすように精製されたラムノ脂質(例えば、ジラムノ脂質、モノラムノ脂質、若しくはそれらの混合物)、を含む。1つ又は複数の実施形態では、研磨組成物中におけるジラムノ脂質に対するモノラムノ脂質の重量%比は約0.1:99.9~99.9:0.1の範囲内である。例えば、研磨組成物中におけるジラムノ脂質に対するモノラムノ脂質の重量%比は、約0.1:99.9の比以上 (例えば、約0.5:99.5の比以上、約1:99の比以上、約5:95の比以上、約10:90の比以上、約15:85の比以上、約20:80の比以上、約25:75の比以上、約30:70の比以上、約35:65の比以上、約40:60の比以上、約45:55の比以上、又は約50:50の比以上)~約99.9:0.1の比以下(例えば、約99.5:0.5の比以下、約99:1の比以下、約95:5の比以下、約90:10の比以下、約85:15の比以下、約80:20の比以下、約75:25の比以下、約70:30の比以下、約65:35の比以下、約60:40の比以下、約55:45の比以下、又は約50:50の比以下)であってもよい。
【0028】
1つ又は複数の実施形態では、前記ラムノ脂質調合物は、微生物から得られた初期混合物から望まれない不純物を除去し、それから最終的な研磨組成物中に存在させるラムノ脂質のパーセント及び種類を確立し、そして研磨組成物に用いられる溶媒にラムノ脂質調合物を添加する若しくはラムノ脂質調合物に前記溶媒を添加することによってラムノ脂質調合物を単純に希釈することにより作られる。粗ラムノ脂質調合物及び高度精製ラムノ脂質調合物は、当業者に周知の方法により調製することができる。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物におけるバイオサーファクタントとしての使用のためのラムノ脂質調合物は、ラムノ脂質を約50重量%以上(例えば、約55重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上、約95重量%以上、約98重量%以上、約99重量%以上、約99.5重量%以上、又は約99.9重量%以上)含んでいてもよい。
【0029】
1つ又は複数の実施形態では、前記糖脂質はソホロ脂質バイオサーファクタントである。ソホロ脂質(ソホロース脂質又はSLとしても知られる)は、ベータグリコシド結合によって連結された二量体糖(ソホロース)とヒドロキシル脂肪酸とからなる、バイオサーファクタントのグループである。2種類のSL、つまり、酸性(非ラクトン性)SL及びラクトン性SLが存在する。酸性SLのヒドロキシル脂肪酸部分は遊離カルボン酸官能基を有する一方、ラクトン性SLのヒドロキシル脂肪酸部分はソホロースの4’’-ヒドロキシル基との分子内エステル形成によって大環状ラクトン環を形成する。ソホロース脂質は一般に2つの形態、つまり
(1)以下の構造式(III)で表されるラクトン形態
【化3】

式中、R及びRはそれぞれH又はCOCHを表し;RはH又はCHを表し;そしてRは、RがHである場合は、飽和若しくは不飽和のC12~C16炭化水素基(例えば、1つ若しくは複数の(例えば2つ、3つ、4つ、若しくは5つの)二重結合を含んでいてもよいC12~C16アルキレン基)を表し、Rは、RがCHである場合は、飽和若しくは不飽和のC11~C15炭化水素基(例えば、1つ若しくは複数の(例えば2つ、3つ、4つ、若しくは5つの)二重結合を含んでいてもよいC11~C15アルキレン基)を表す、並びに
(2)以下の式(IV)で表される酸形態
【化4】

式中、R~Rは上記で定義したとおりである、
にカテゴリー分けすることができる。ソホロ脂質バイオサーファクタントの製品例としては、Evonik(ドイツ国エッセン)から入手可能なREWOFERM SL ONEがあり、これは、酵母Candida Bombicolaの存在下でグルコース、脂肪酸、及びグリセロールとのC18不飽和エステルを発酵させて製造されたソホロ脂質の混合物(つまり、ラクトン形態及び酸形態)を含み、約30重量%~50重量%のソホロ脂質を含む。
【0030】
上記から明らかなように、ソホロース脂質は、アセチル基の位置及び数、脂肪酸側鎖中における二重結合の存在若しくは不存在、脂肪酸側鎖の炭素鎖の長さ、脂肪酸側鎖中のグリコシドエーテル結合の位置、ラクトン環の一部であるソホロース部分上のヒドロキシル基の位置、並びにその他の構造パラメータによって特徴付けられる多くの誘導体を有する。
【0031】
ソホロース脂質は一般にこれらの化合物の混合物として存在する。一般に、ソホロース脂質は、扱いが難しい高度に粘性のオイル形態で製造される。しかし、疎水性が比較的高いジアセチルラクトン形態にあるソホロース脂質は、固体形態で製造することもできる。1つ又は複数の実施形態では、糖脂質は、酸性型ソホロ脂質を約5重量%以上(例えば、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、又は約50重量%以上)~約95重量%以下(例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約75重量%以下、約70重量%以下、約65重量%以下、約60重量%以下、約55重量%以下、約50重量%以下)含む、ソホロ脂質である。
【0032】
1つ又は複数の実施形態では、前記バイオサーファクタントは、本開示に記載の研磨組成物の約0.0001重量%以上(例えば、約0.0005重量%以上、約0.001重量%以上、約0.002重量%以上、約0.004重量%以上、約0.005重量%以上、約0.006重量%以上、約0.008重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.03重量%以上、約0.04重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、約2.5重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、又は約5重量%以上)~約10重量%以下(例えば、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%、又は約0.05重量%以下)の量である。
【0033】
1つ又は複数の実施形態では、1種又は複数種の(例えば、2種又は3種の)バイオサーファクタントは、本開示に記載の研磨組成物中における(1種又は複数種の)唯一の界面活性剤である。しかし、いくつかの実施形態では、前記研磨組成物は、バイオサーファクタントとは別個であって、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数種(例えば、2種又は3種の)の追加の界面活性剤も含んでもよい。
【0034】
前記カチオン性界面活性剤は特に限定されないが、その具体例としては、脂肪族(aliphatic)アミン塩及び脂肪族(aliphatic)アンモニウム塩が挙げられる。
【0035】
前記ノニオン性界面活性剤は特に限定されないが、その具体例としては、エーテル型界面活性剤、エーテルエステル型界面活性剤、エステル型界面活性剤、及びアセチレン系界面活性剤が挙げられる。エーテル型界面活性剤は特に限定されないが、その具体例としては、ポリエチレングリコールモノ-4-ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、及びトリエチレングリコールモノドデシルエーテルが挙げられる。前記エーテルエステル型界面活性剤は特に限定されないが、その具体例としては、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテルがある。前記エステル型界面活性剤は特に限定されないが、その具体例としては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、及びソルビタンエステルが挙げられる。アセチレン系界面活性剤は特に限定されないが、その具体例としては、アセチレンジオール、アセチレングリコール、及びアセチレンアルコールのエチレンオキシド付加物が挙げられる。
【0036】
前記両性界面活性剤は特に限定されないが、その具体例としては、ベタイン系界面活性剤が挙げられる。
【0037】
前記アニオン性界面活性剤は特に限定されないが、その具体例としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩(sulfate salts)、及びリン酸エステル塩(phosphate salts)が挙げられる。カルボン酸塩は特に限定されないが、その具体例としては、脂肪酸塩(例えば、石けん)及びアルキルエーテルカルボン酸塩が挙げられる。前記スルホン酸塩の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、及びα-オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。前記硫酸エステル塩は特に限定されないが、その具体例としては、高級アルコール硫酸エステル塩及びアルキル硫酸エステル塩が挙げられる。前記リン酸エステルは特に限定されないが、その具体例としては、アルキルホスフェート及びアルキルエステルホスフェートが挙げられる。
【0038】
本開示に記載の研磨組成物が、前記バイオサーファクタントとは別個の第2の界面活性剤を含む場合、前記第2の界面活性剤の量は、研磨組成物の全質量の約0.001重量%以上(例えば、約0.002重量%以上、約0.003重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、又は約0.1重量%以上)~約1重量%以下(例えば、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.2重量%以下、又は約0.1重量%以下)の範囲であってもよい。
【0039】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、アゾール化合物、防錆剤(corrosion inhibitor)、酸化剤、キレート剤、水溶性ポリマー、及び窒化物除去速度低下剤からなる群から選択される少なくとも1種の(例えば、2種、3種、又は4種の)任意使用の(optional)添加剤をさらに含んでもよい。
【0040】
前記アゾール化合物は特に限定されないが、その具体例としては、置換若しくは無置換のトリアゾール(例えば、ベンゾトリアゾール)、置換若しくは無置換のテトラゾール、置換若しくは無置換のジアゾール(例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、チアジアゾール、及びピラゾール)、並びに置換若しくは無置換のベンゾチアゾールが挙げられる。ここで、置換ジアゾール、置換トリアゾール、又は置換テトラゾールとは、ジアゾール、トリアゾール、又はテトラゾール中の1つ又は2つ又は3つ以上の水素原子を、例えばカルボキシル基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、若しくはヘキシル基)、ハロゲン基(例えば、F、Cl、Br、若しくはI)、アミノ基、又はヒドロキシル基で置き換えることで得られた化合物を指す。1つ又は複数の実施形態では、前記アゾール化合物は、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール(例えば、1-メチルベンゾトリアゾール、4-メチルベンゾトリアゾール、及び5-メチルベンゾトリアゾール)、エチルベンゾトリアゾール(例えば、1-エチルベンゾトリアゾール)、プロピルベンゾトリアゾール(例えば、1-プロピルベンゾトリアゾール)、ブチルベンゾトリアゾール(例えば、1-ブチルベンゾトリアゾール及び5-ブチルベンゾトリアゾール)、ペンチルベンゾトリアゾール(例えば、1-ペンチルベンゾトリアゾール)、ヘキシルベンゾトリアゾール(例えば、1-ヘキシルベンゾトリアゾール及び5-ヘキシルベンゾトリアゾール)、ジメチルベンゾトリアゾール(例えば、5,6-ジメチルベンゾトリアゾール)、クロロベンゾトリアゾール(例えば、5-クロロベンゾトリアゾール)、ジクロロベンゾトリアゾール(例えば、5,6-ジクロロベンゾトリアゾール)、クロロメチルベンゾトリアゾール(例えば、1-(クロロメチル)-1-H-ベンゾトリアゾール)、クロロエチルベンゾトリアゾール、フェニルベンゾトリアゾール、ベンジルベンゾトリアゾール、アミノトリアゾール、アミノベンズイミダゾール、ピラゾール、イミダゾール、アミノテトラゾール、アデニン、ベンズイミダゾール、チアベンダゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-アミノベンズイミダゾール、2-アミノ-5-エチル-1,3,4-チアジアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチルピラゾール、4-アミノ-4H-1,2,4-トリアゾール、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、前記アゾール化合物は本開示に記載の研磨組成物において防錆剤として用いることができ、それによって研磨プロセスの間における特定の材料(例えば、金属又は誘電材料)の除去を低下させることができると考えられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記アゾール化合物は、研磨組成物の約0.001重量%(例えば、約0.002重量%以上、約0.004重量%以上、約0.005重量%以上、約0.006重量%以上、約0.008重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.04重量%以上、約0.05重量%以上、約0.06重量%以上、約0.08重量%以上、又は約0.1重量%以上)~約0.2重量%以下(例えば、約0.18重量%以下、約0.16重量%以下、約0.15重量%以下、約0.14重量%以下、約0.12重量%以下、約0.1重量%以下、約0.08重量%以下、約0.06重量%以下、約0.05重量%以下、約0.04重量%以下、約0.03重量%以下、約0.02重量%以下、又は約0.01重量%以下)であってもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、任意に(optionally)、非アゾール防錆剤を含んでいてもよい。非アゾール防錆剤の例としては、アルキルアミン(例えば、エチルアミン、プロピルアミン、又はブチルアミン)及び有機ホスホン酸(例えば、エチルホスホン酸)が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記非アゾール防錆剤は、本開示に記載の研磨組成物の約0.001重量%以上(例えば、約0.002重量%以上、約0.004重量%以上、約0.005重量%以上、約0.006重量%以上、約0.008重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.04重量%以上、約0.05重量%以上、約0.06重量%以上、約0.08重量%以上、又は約0.1重量%以上)~約0.2重量%以下(例えば、約0.18重量%以下、約0.16重量%以下、約0.15重量%以下、約0.14重量%以下、約0.12重量%以下、約0.1重量%以下、約0.08重量%以下、約0.06重量%以下、約0.05重量%以下、約0.04重量%以下、約0.03重量%以下、約0.02重量%以下、又は約0.01重量%以下)であってもよい。
【0044】
前記酸化剤は特に限定されないが、その具体例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、硝酸鉄(III)、硝酸ジアンモニウムセリウム(diammonium cerium nitrate)、硫酸鉄、次亜塩素酸、オゾン、過ヨウ素酸カリウム、及び過酢酸が挙げられる。理論に拘束されることを望むものではないが、前記酸化剤は、研磨プロセス中、材料の除去を促進すると考えられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記酸化剤は、本開示に記載の研磨組成物の約0.1重量%以上(例えば、約0.2重量%以上、約0.3重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.7重量%以上、約0.8重量%以上、約0.9重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、又は約2重量%以上)~約10重量%以下(例えば、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、又は約1重量%以下)であってもよい。
【0046】
1つ又は複数の実施形態では、前記キレート剤は、グルコン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、マロン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、過酢酸、コハク酸、乳酸、アミノ酢酸、フェノキシ酢酸、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リシン、チロシン、安息香酸、アンモニア、1,2-エタンジスルホン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸、8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸、アミノメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシルアミンO-スルホン酸、メタンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、ポリアネトールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、それらの塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、前記キレート剤は、基板上の特定の物質の除去を促進する除去速度向上剤として働くことができると考えられる。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記キレート剤は本開示に記載の研磨組成物に対し約0.1重量%以上(例えば、約0.2重量%以上、約0.3重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.7重量%以上、約0.8重量%以上、約0.9重量%以上、又は約1重量%以上)~約10重量%以下(例えば、約8重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、又は約0.5重量%以下)であってもよい。
【0048】
前記水溶性ポリマーは特に限定されないが、その具体例としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、及びヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。理論に拘束されることを望むものではないが、前記水溶性ポリマーは、除去されることを意図していない、又は研磨プロセス中により低い除去速度で除去されるべきである基板上の特定の露出した材料の除去速度を低下させる除去速度阻害剤として働くことができると考えられる。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記水溶性ポリマーは本開示に記載の研磨組成物に対し約0.01重量%以上(例えば、約0.02重量%以上、約0.03重量%以上、約0.04重量%以上、約0.05重量%以上、約0.06重量%以上、約0.07重量%以上、約0.08重量%以上、約0.09重量%以上、又は約0.1重量%以上)~約1重量%以下(例えば、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.08重量%以下、約0.06重量%以下、又は約0.05重量%以下)であってもよい。
【0050】
1つ又は複数の実施形態では、前記窒化物除去速度低下剤は、C12~C40炭化水素基(例えば、アルキル基、及び/又はアルケニル基を含む)を含む疎水性部分と、スルフィナイト基(sulfinite group)、サルフェート基、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、及びホスホネート基からなる群から選択される少なくとも1つの基を含む親水性部分とを含む化合物である。1つ又は複数の実施形態では、前記疎水性部分及び前記親水性部分は、0から10個の(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個)のアルキレンオキシド基(例えば、nが1、2、3、又は4であってもよい-(CHO-基)によって隔てられている。1つ又は複数の実施形態では、前記窒化物除去速度低下剤において、前記疎水性部分と前記親水性部分とは0個のアルキレンオキシド基によって隔てられている。理論に拘束されることを望むものではないが、前記窒化物除去速度低下剤中にアルキレンオキシド基が存在することはいくつかの実施形態では好ましくないことでありうると考えられる。アルキレンオキシド基がスラリー安定性上の問題を生じ、シリコン窒化物除去速度を増加させるおそれがあるためである。
【0051】
1つ又は複数の実施形態では、前記窒化物除去速度低下剤は、12個以上の炭素原子(C12以上)(例えば、14個以上の炭素原子(C14以上)、16個以上の炭素原子(C16以上)、18個以上の炭素原子(C18以上)、20個以上の炭素原子(C20以上)、若しくは22個以上の炭素原子(C22以上))及び/又は40個以下の炭素原子(C40以下)(例えば、38個以下の炭素原子(C38以下)、36個以下の炭素原子(C36以下)、34個以下の炭素原子(C34以下)、32個以下の炭素原子(C32以下)、30個以下の炭素原子(C30以下)、28個以下の炭素原子(C28以下)、26個以下の炭素原子(C26以下)、24個以下の炭素原子(C24以下)、若しくは22個以下の炭素原子(C22以下))を含む炭化水素基を含む疎水性部分を有する。本開示に記載の炭化水素基とは、炭素原子及び水素原子のみを含む基を指し、飽和基(例えば、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基)と、不飽和基(例えば、直鎖、分岐、若しくは環状のアルケニル基;直鎖、分岐、若しくは環状のアルキニル基;又は芳香族基(例えば、フェニル若しくはナフチル))との両方を包含しうる。1つ又は複数の実施形態では、前記窒化物除去速度低下剤の親水性部分は、ホスフェート基及びホスホネート基から選択される少なくとも1つの基を含む。用語「ホスホネート基」は、ホスホン酸基を含むことが明示的に意図されることに留意されたい。
【0052】
1つ又は複数の実施形態では、前記窒化物除去速度低下剤は、ナフタレンスルホン酸-ホルマリン縮合物、ラウリルホスフェート、ミリスチルホスフェート、ステアリルホスフェート、オクタデシルホスホン酸、オレイルホスフェート、ベヘニルホスフェート、オクタデシルサルフェート、ラクセリル(lacceryl)ホスフェート、オレス-3リン酸(oleth-3-phosphate)、及びオレス-10リン酸(oleth-10-phosphate)からなる群から選択される。
【0053】
1つ又は複数の実施形態では、前記窒化物除去速度低下剤は、本開示に記載の研磨組成物中に、組成物の全重量に対して、約0.1ppm以上(例えば、約0.5ppm以上、約1ppm以上、約5ppm以上、約10ppm以上、約25ppm以上、約50ppm以上、約75ppm以上、又は約100ppm以上)~約1000ppm以下(例えば、約900ppm以下、約800ppm以下、約700ppm以下、約600ppm以下、約500ppm以下、又は約250ppm以下)の量で含まれる。
【0054】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、有機溶媒、pH調整剤(例えば、酸若しくは塩基)、フッ素含有化合物(例えば、フッ化物化合物若しくはフッ素化ポリマー/界面活性剤)、シラン(例えばアルコキシシラン)等のケイ素含有化合物、窒素含有化合物(例えば、アミノ酸、アミン、若しくはイミン(例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)等のアミジン))、塩(例えば、ハロゲン化物塩若しくは金属塩)、ポリオール等のポリマー(例えば、非イオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、若しくはアニオン性ポリマー)、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、若しくは硝酸)、界面活性剤(例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、若しくは本開示に記載のバイオサーファクタント以外の界面活性剤)、可塑剤、酸化剤(例えば、H)、四級アンモニウム化合物(例えば、テトラアルキルアンモニウム塩等の塩若しくはテトラメチルアンモニウム水酸化物等の水酸化物)、防錆剤(例えば、アゾール防錆剤若しくは非アゾール防錆剤)、電解質(例えば、高分子電解質)、及び/又は特定の研磨剤(例えば、セリア研磨剤若しくは非イオン性研磨剤)などの、1つ又は複数の特定成分を実質的に不含有であってもよい。研磨組成物から排除することもできるハロゲン化物塩としては、アルカリ金属ハロゲン化物(例えば、ハロゲン化ナトリウム若しくはハロゲン化カリウム)又はハロゲン化アンモニウム(例えば、塩化アンモニウム)が挙げられ、フッ化物であっても、塩化物であっても、臭化物であっても、ヨウ化物であってもよい。本開示で用いられる場合、研磨組成物において「実質的に不含有」である成分とは、研磨組成物に意図的に添加されてはいない成分のことを指す。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、研磨組成物において実質的に不含有である上記の成分の1つ又は複数を、約1000ppm以下(例えば、約500ppm以下、約250ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約10ppm以下、又は約1ppm以下)有してもよい。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、上記成分の1つ又は複数を完全に不含有であってもよい。
【0055】
1つ又は複数の実施形態では、本開示は、本開示に係る研磨組成物を基板(例えばウェハ)の表面に付与すること;及びパッド(例えば、研磨パッド)を前記基板の前記表面と接触させて、前記基板に対して前記パッドを動かすこと、を含んでもよい研磨方法を1つの特色とする。1つ又は複数の実施形態では、前記基板は、シリコン酸化物(例えば、テトラエチルオルトケイ酸(TEOS)、高密度プラズマ酸化物(HDP)、高アスペクト比プロセス酸化物(HARP)、若しくはボロホスホシリケートガラス(BPSG))、スピンオンフィルム(例えば、無機粒子に基づくフィルム若しくは架橋可能な炭素ポリマーに基づくフィルム)、シリコン窒化物、シリコン炭化物、high-K誘電体(例えば、ハフニウム、アルミニウム、若しくはジルコニウムの金属酸化物)、シリコン(例えば、ポリシリコン、単結晶シリコン、若しくはアモルファスシリコン)、炭素、金属(例えば、タングステン、銅、コバルト、ルテニウム、モリブデン、チタン、タンタル、若しくはアルミニウム)、金属窒化物(例えば、チタン窒化物若しくはタンタル窒化物)、並びにこれらの混合物又は組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物を用いる前記方法は、研磨組成物で処理された前記基板から半導体デバイスを製造するための1つ又は複数の追加のステップ(例えば、基板上への金属若しくは誘電体の堆積)を含んでもよい。例えば、前記方法は、前記研磨方法の前に以下のステップのうちの1つ又は複数を含んでもよい:(1)基板(例えば、シリコンウェハ)上にシリコン酸化物(例えば、熱酸化シリコン)を堆積させてシリコン酸化物層を形成すること、(2)前記シリコン酸化物層の上にシリコン窒化物を堆積してシリコン窒化物層を形成すること、(3)前記基板をエッチングして、トレンチ及び非トレンチ領域を形成すること、並びに(4)エッチングされた前記基板にシリコン酸化物を堆積させて、トレンチをシリコン酸化物でフィルすること。別の例として、前記方法は、前記の研磨方法の後に少なくとも1つの追加のステップを含んでもよく、その例としては、前記基板を(例えば、シリコン窒化物及びシリコン酸化物を除去するように)エッチングして、ウェハ基板上にシリコン及び/又はシリコン酸化物又はその他の異種膜を露出させること、が挙げられる。
【0057】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物を用いる前記方法は、研磨組成物で処理された前記基板から1つ又は複数のステップを経て半導体デバイスを作製することをさらに含んでいてもよい。例えば、フォトリソグラフィー、イオンインプランテーション、ドライ/ウェットエッチング、プラズマエッチング、堆積(例えば、PVD、CVD、ALD、ECD)、ウェハマウンティング、ダイカッティング、パッケージング、及び試験実行(testing)を、本開示に記載の研磨組成物で処理された前記基板から半導体デバイスを作製するために用いることができる。
【実施例
【0058】
これらの実施例では、研磨は、Fujibo H804パッドを備えたMirra CMP研磨機、並びに150mL/分~250mL/分のスラリー流速を用いて200mmウェハに対して行った。
【0059】
実施例で用いられた一般的な組成を以下の表1に示す。試験された組成物同士の違いの具体的な詳細については、それぞれの実施例について述べる際により詳細に説明する。
【表1】

【0060】
●実施例1
シリコン窒化物、シリコン酸化物(TEOS)、及びポリシリコンブランケットウェハについての除去速度(RR)を、組成物1~6を用いてウェハを研磨した際に測定した。組成物1~6は、以下の表2に示した差異点を除けば同じである。表2には、試験結果もまとめた。
【表2】
【0061】
結果は、バイオサーファクタントが最も高いローディングにおいてポリシリコン除去速度を増加したことを示している。さらに、バイオサーファクタントではない副次的な界面活性剤/ポリマーが前記研磨組成物に添加された場合シリコン窒化物に対する速度は典型的には顕著に上昇する(以下の実施例2を参照)のに対し、バイオサーファクタントの添加は、シリコン窒化物に対する速度の僅かな上昇しかもたらさなかった。さらに、NRRRはシリコン窒化物上で高い有機欠陥カウントを生み出した(組成物4を参照)が、バイオサーファクタントの添加は、研磨の間におけるin situのクリーナーとして機能するようであり、シリコン窒化物上におけるはるかに低い有機欠陥カウントを生じた。
【0062】
●実施例2
シリコン窒化物、シリコン酸化物(TEOS)、及びポリシリコンブランケットウェハについての除去速度(RR)を、組成物7~11を用いてウェハを研磨した際に測定した。組成物7~11は、それぞれ1×NRRR(つまり、界面活性剤)を含んでおり、また、組成物7がNRRR以外には界面活性剤を含んでいないこと、組成物8が10×バイオサーファクタントを含んでいること、組成物9が10×アニオン性ポリマーを含んでいること、並びに組成物10~11がバイオサーファクタントではない2つの化学的に別個のノニオン性界面活性剤のうちの1つを10×で含んでいること以外は同じであった。試験結果を表3にまとめる。
【0063】
【表3】
【0064】
結果は、上記のように、バイオサーファクタントではない、共在する界面活性剤/ポリマーをNRRRを用いた研磨組成物に含ませることは、シリコン窒化物の除去速度の顕著な増加を一般的に生じ、それによりTEOS/SiN除去速度比を低下させることを示している(組成物9~11)。これらの組成物は減少したTEOS/SiN除去選択性を有し、このことはこれらの組成物がTEOSを除去しSiNに対してはストップオンするように設計される場合、望ましくない。対照的に、組成物8にバイオサーファクタントを含ませたことは、シリコン窒化物の除去速度についての僅かな上昇及びTEOS/SiN除去速度比の僅かな低下しかもたらさないが、NRRRによって残される欠陥の顕著な減少をもたらす(上記の表2中の組成物6を参照)。
【0065】
●実施例3
シリコン窒化物、シリコン酸化物(TEOS)、及びポリシリコンブランケットウェハについての除去速度(RR)を、組成物12~20を用いてウェハを研磨した際に測定した。組成物12~20はNRRRを含んでおらず、以下の表4に示された差異点を除けば同じであった。表4には試験結果もまとめた。
【0066】
【表4】
【0067】
結果は、全ての研磨剤種類について一貫して、研磨組成物中にバイオサーファクタントを含ませることは、バイオサーファクタントの量を増加させるにつれポリシリコン除去速度の顕著な上昇を生じたことを示している。加えて、中性研磨剤及びカチオン性研磨剤を用いた場合には、シリコン窒化物の除去速度における減少があったが、このことはNRRRが研磨組成物に含まれた場合にNRRRが有機残渣欠陥を残すことを考えると、バイオサーファクタントをNRRRに対する好適な代替物とする。このような研磨組成物は、TEOSを除去しながらもシリコン窒化物上に大量の欠陥を生み出すことなくSiNでストップオンするのに用いることができるため、有利となりうる。
【0068】
本開示を本開示に記載の実施例について説明してきたが、添付の特許請求の範囲に規定される本開示の精神及び範囲から逸脱すること無しに他の改変及び変形が可能であることが理解される。
【国際調査報告】