(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電気泳動ディスプレイのための反射性マイクロセルおよびその作製方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1675 20190101AFI20230914BHJP
G02F 1/167 20190101ALN20230914BHJP
【FI】
G02F1/1675
G02F1/167
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514412
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 US2020049660
(87)【国際公開番号】W WO2022055471
(87)【国際公開日】2022-03-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハリス, ジョージ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】アンセス, ジェイ ウィリアム
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BA05
2K101BD02
2K101BD15
2K101BD18
2K101BD28
2K101BD33
2K101BD49
2K101BD57
2K101BD58
2K101BD63
2K101BD65
2K101BD75
2K101BF32
2K101BF42
2K101EE02
2K101EG01
2K101EG52
2K101EJ14
(57)【要約】
ポリマーフィルムは、荷電粒子の第1のグループおよび第2のグループの分散体を含む複数のテーパ状マイクロセルを含む。荷電粒子の第1のグループおよび第2のグループは、反対の電荷極性を有する。テーパ状マイクロセルは、壁を含み、壁の少なくともの一部は、荷電粒子の第1のグループを弾くように構成されている。電気泳動ディスプレイのための積層体を作製する方法も、提供され、方法は、ポリマーフィルムの層を通して離型シート内に複数のテーパ状マイクロセルをエンボス加工し、エンボスフィルムを形成することと、保護シート上で伝導性材料層にエンボスフィルムを積層し、積層フィルムを形成することと、ポリマーフィルムから離型シートを除去し、積層フィルムの各マイクロセルの内部への開口部を形成することと、マイクロセルに分散流体を充填することと、マイクロセルを密封することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子の第1のグループおよび第2のグループの分散体を含む複数のテーパ状マイクロセルを備えるポリマーフィルムであって、前記荷電粒子の第1のグループは、光吸収性を有し、前記荷電粒子の第2のグループの電荷極性と反対の電荷極性を有し、前記荷電粒子の第2のグループは、光散乱性を有し、
前記テーパ状マイクロセルは、壁を含み、前記壁の少なくともの一部は、前記荷電粒子の第1のグループを弾くように構成され、
前記壁の前記一部は、鏡面を備える、
ポリマーフィルム。
【請求項2】
前記荷電粒子の第1のグループは、黒色である、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記荷電粒子の第2のグループは、白色である、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
前記テーパ状マイクロセルは、円錐形である、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
前記テーパ状マイクロセルは、角錐形である、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記テーパ状マイクロセルは、逆角錐形状を有する、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
前記テーパ状マイクロセルは、逆円錐形状を有する、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
前記テーパ状マイクロセルは、逆三角柱形状を有する、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項9】
前記壁の前記一部は、拡散反射性表面を備える、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項10】
前記壁の前記一部は、前記荷電粒子の第1のグループの前記電荷極性に類似した電荷極性を有する、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項11】
前記壁の前記一部は、低エネルギー表面材料を備える、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項12】
前記低エネルギー表面材料は、フッ素化ポリマーを含む、請求項11に記載のポリマーフィルム。
【請求項13】
電気泳動ディスプレイのための積層体を作製する方法であって、
ポリマーフィルムの層を通して離型シート内に複数のテーパ状マイクロセルをエンボス加工し、エンボスフィルムを形成することと、
保護シート上で伝導性材料層に前記エンボスフィルムを積層し、積層フィルムを形成することと、
前記ポリマーフィルムから前記離型シートを除去し、前記積層フィルムの各マイクロセルの内部への開口部を形成することと、
前記マイクロセルに分散流体を充填することと、
前記マイクロセルを密封することと
を含む方法。
【請求項14】
前記ポリマーフィルムは、金属化表面を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記積層するステップに先立って前記ポリマーフィルムの表面に非伝導性反射コーティングを適用することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーフィルムは、反射性添加剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
カラーフィルタアレイが、前記保護シートと前記伝導性材料層との間に位置している、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記充填するステップは、
各マイクロセルの前記内部への前記開口部を有する前記積層フィルムを真空チャンバ内に設置することと、
各マイクロセルの前記内部を真空状態にし、前記真空チャンバ内に真空を作り出すことと、
各マイクロセルの前記開口部へと前記分散流体を適用することと、
前記真空チャンバ内の前記真空を解放することと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記充填するステップは、前記分散流体を充填された超音波浴処理器内に、各マイクロセルの前記内部への前記開口部を有する前記積層フィルムを浸漬することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記充填するステップは、
前記分散流体の流動点または凝固点を上回る沸点を有する溶媒で各マイクロセルの前記内部を充填することと、
各マイクロセルの前記内部への前記開口部を有する前記積層フィルムを前記分散流体中に浸漬することと、
前記溶媒の前記沸点を下回るまで前記溶媒の前記温度を下げ、各マイクロセルの前記内部の中に前記分散流体を引き込むことと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記密封するステップは、シーラントを用いて各マイクロセルの前記開口部を被覆することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、電気泳動ディスプレイに関する。より具体的には、一局面では、本発明は、電気泳動ディスプレイのための電気泳動流体を含む向上したマイクロセルに関する。別の局面では、本発明は、電気泳動ディスプレイのための向上したマイクロセルを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
材料またはディスプレイに適用される場合、用語「電気光学(electro-optic)」は、イメージング技術におけるその従前の意味において、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2の表示状態を有する材料を指すように本明細書中で使用され、材料は、材料への電場の印加によってその第1の表示状態からその第2の表示状態へと変化させられる。その光学特性は、典型的には、ヒトの眼に知覚可能なカラーであるが、光透過率、反射率、ルミネッセンス、または機械読取を意図されているディスプレイの場合、それは、可視範囲外の電磁波長の反射率が変化するという意味における疑似色等の別の光学特性であってもよい。
【0003】
用語「グレー状態(gray state)」は、イメージング技術におけるその従前の意味において、ピクセルの2つの極端な光学状態の中間の状態を指すように本明細書中で使用され、これらの2つの極端な状態の間での黒色-白色遷移を必ずしも意味しない。例えば、下記に言及されるE Ink特許および公開された出願のうちのいくつかは、極端な状態が白色および濃青色であり、それによって、中間の「グレー状態(gray state)」が実際には薄青色である電気泳動ディスプレイを説明している。実際、すでに記述されたように、光学状態の変化は、カラーの変化では全くない場合もある。用語「黒色(black)」および「白色(white)」は、以降、ディスプレイの2つの極端な光学状態を指すように使用され得、通常、厳密には黒色および白色ではない極端な光学状態、例えば前述の白色および暗青色状態を含むものとして理解されるべきである。用語「単色(monochrome)」は、以降、グレー状態が介在することなくそれらの2つの極端な光学状態のみにピクセルを駆動する駆動スキームを示すように使用され得る。
【0004】
用語「双安定(bistable)」および「双安定性(bistability)」は、当該技術におけるそれらの従前の意味において、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えるディスプレイであって、その第1の表示状態または第2の表示状態のうちのいずれか一方を呈するために、有限持続時間のアドレッシングパルスを用いて任意の所与の要素が駆動された後、アドレッシングパルスが終了した後に、表示要素の状態を変更するために要求されるアドレッシングパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍の間、その状態が持続するようなディスプレイを指すように本明細書中で使用される。米国特許第7,170,670号(特許文献1)では、グレースケールが可能であるいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイがその極端な黒色および白色状態においてだけではなくその中間グレー状態においても安定しており、同一のことがいくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが、示されている。このタイプのディスプレイは、適切には、「双安定(bistable)」よりむしろ「多安定(multi-stable)」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定(bistable)」が、双安定および多安定ディスプレイの両方を網羅するように本明細書中で使用される。
【0005】
長年の間、集中的な研究および開発の関心の対象である1つのタイプの電気光学ディスプレイは、複数の荷電粒子が電場の影響下で流体を通して移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較されたとき、良好な輝度およびコントラスト、広範な視野角、状態の双安定性、ならびに低電力消費の属性を有し得る。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期画質に関する問題が、それらの広範な利用を妨げてきた。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向にあり、これらのディスプレイに関する不適正な耐用寿命をもたらす。
【0006】
上記に言及されたように、電気泳動媒体は、流体の存在を要求する。殆どの従来技術の電気泳動媒体では、この流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生産されることもできる。例えば、Kitamura, T., et al., “Electrical toner movement for electronic paper-like display”, IDW Japan, 2001, Paper HCS1-1、および、Yamaguchi, Y., et al., “Toner display using insulative particles charged triboelectrically”, IDW Japan, 2001, Paper AMD4-4を参照されたい。米国特許第7,321,459号(特許文献2)および第7,236,291号(特許文献3)も参照されたい。そのようなガスベースの電気泳動媒体は、粒子沈降を許す向きにおいて、例えば、媒体が鉛直平面に配置される看板において媒体が使用されるとき、そのような沈降に起因する、液体ベースの電気泳動媒体と同一のタイプの問題を被ると考えられる。実際、粒子沈降は、液体の粘度と比較して、ガス懸濁流体のより低い粘度が電気泳動粒子のより急速な沈降を可能にするため、ガスベースの電気泳動媒体において液体ベースの電気泳動媒体より深刻な問題であると考えられる。
【0007】
Massachusetts Institute of Technology (MIT), E Ink Corporation, E Ink California, LLC.および関連会社に譲渡された、またはこれらの名義における多数の特許および出願が、カプセル化されたマイクロセル電気泳動媒体および他の電気光学媒体において使用される種々の技術を説明している。カプセル化された電気泳動媒体は、多数の小型カプセルを備え、それらの各々自体が、流体媒体内を電気泳動で移動可能な粒子を含む内相と、内相を囲むカプセル壁とを備える。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されておらず、代わりに、キャリア媒体内、典型的には、ポリマーフィルム内に形成された複数の空洞内に保たれている。例えば、国際出願公開第WO02/01281号、および公開された米国出願第2002/0075556号を参照されたい。上記に説明された技術は、例えば、これらの特許および出願において見出され得る:
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加剤(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号を参照)。
(b)カプセル、バインダー、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号を参照)。
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法(例えば、米国特許第6,672,921号、第6,751,007号、第6,753,067号、第6,781,745号、第6,788,452号、第6,795,229号、第6,806,995号、第6,829,078号、第6,833,177号、第6,850,355号、第6,865,012号、第6,870,662号、第6,885,495号、第6,906,779号、第6,930,818号、第6,933,098号、第6,947,202号、第6,987,605号、第7,046,228号、第7,072,095号、第7,079,303号、第7,141,279号、第7,156,945号、第7,205,355号、第7,233,429号、第7,261,920号、第7,271,947号、第7,304,780号、第7,307,778号、第7,327,346号、第7,347,957号、第7,470,386号、第7,504,050号、第7,580,180号、第7,715,087号、第7,767,126号、第7,880,958号、第8,002,948号、第8,154,790号、第8,169,690号、第8,441,432号、第8,582,197号、第8,891,156号、第9,279,906号、第9,291,872号、および第9,388,307号、ならびに米国特許出願公開第2003/0175480号、第2003/0175481号、第2003/0179437号、第2003/0203101号、第2013/0321744号、第2014/0050814号、第2015/0085345号、第2016/0059442号、第2016/0004136号、および第2016/0059617号を参照)。
(d)マイクロセルに充填し、密封するための方法(例えば、米国特許第7,144,942号および第7,715,088号を参照)。
(e)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号を参照)。
(f)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、ならびにディスプレイにおいて使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号を参照)。
(g)カラー形成およびカラー調節(例えば、米国特許第7,075,502号および第7,839,564号を参照)。
(h)ディスプレイを駆動するための方法(例えば、米国特許第7,012,600号および第7,453,445号を参照)。
(i)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号を参照)。
(j)米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に説明されているような非電気泳動ディスプレイ、ならびにディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の適用(例えば、米国特許出願公開第2015/0005720号および第2016/0012710号を参照)。
【0008】
マイクロセル電気泳動ディスプレイは、典型的には、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに苛まれず、多種多様な可撓性および剛性被印刷物上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する。
【0009】
電気泳動ディスプレイは、通常、電気泳動材料層と、電気泳動材料の反対側に配置されている少なくとも2つの他の層とを備え、これらの2つの層のうちの一方は、電極層である。殆どのそのようなディスプレイでは、両方の層が、電極層であり、電極層のうちの一方または両方が、ディスプレイのピクセルを画定するようにパターン化されている。例えば、一方の電極層は、細長い行電極へとパターン化され得、他方は、行電極に対して直角に延びる細長い列電極へとパターン化され得、ピクセルは、行電極と列電極との交点によって画定される。代替として、およびより一般的に、一方の電極層は、単一の連続電極の形態を有し、他方の電極層は、ピクセル電極のマトリクスへとパターン化され、それらの各々は、ディスプレイの1つのピクセルを画定する。ディスプレイとは別個のスタイラスペン、プリントヘッド、または類似の可動電極との使用を意図されている別のタイプの電気泳動ディスプレイでは、電気泳動層に隣接する層のうちの一方のみが、電極を備え、電気泳動層の反対側の層は、典型的には、可動電極が電気泳動層を損傷させることを阻止することを意図されている保護層である。
【0010】
電気泳動ディスプレイを含む電気光学ディスプレイは、高価であり得、例えば、可搬型コンピュータにおいて見出されるカラーLCDの費用は、典型的には、コンピュータの費用全体のうちのかなりの割合である。そのようなディスプレイの使用が、可搬型コンピュータよりはるかに安価である携帯電話および携帯情報端末(PDA)等のデバイスへと広がっているため、そのようなディスプレイの費用を低減させることに対する大きな圧力が、存在する。上記に議論されたような可撓性被印刷物上での印刷技法によって電気泳動媒体層を形成する能力は、コーティングされた紙、ポリマーフィルム、および類似の媒体の生産のために使用される業務用機器を使用したロールツーロールコーティング等の大量生産技法を使用することによってディスプレイの電気泳動構成要素の費用を低減させる可能性を切り開く。
【0011】
現行の電気泳動ディスプレイは、白色光学状態における非効率的な反射率にも苛まれ得る。例えば、
図1を参照すると、ポリマーフィルム内にエンボス加工された複数の立方体マイクロセル10が、黒色色素12および白色色素14を含む電気泳動流体を充填されている。マイクロセル10は、層として黒色および白色電気泳動ディスプレイ内に組み込まれ得る。ディスプレイの1つまたはそれより多くのピクセルが白色光学状態を表示しているとき、(
図1において上方から見られた場合)かなりの量の光が、観察者へと戻るように反射されるのではなく白色色素層14を透過し得る。マイクロセル10に進入した光は、失われ、おそらく、黒色色素層12によって吸収される。光損失は、くすんだカラー状態の一因となり得る。
【0012】
したがって、白色光学状態等のある光学状態中、向上した反射率を伴う電気泳動ディスプレイのためのマイクロセル設計に関する必要性が、存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7170670号明細書
【特許文献2】米国特許第7321459号明細書
【特許文献3】米国特許第7236291号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概要)
本発明の一局面は、荷電粒子の第1のグループおよび第2のグループの分散体を含む複数のテーパ状マイクロセルを備えるポリマーフィルムを提供することである。荷電粒子の第1のグループは、荷電粒子の第2のグループの電荷極性と反対の電荷極性を有し得る。テーパ状マイクロセルは、壁を含み、壁の少なくともの一部は、荷電粒子の第1のグループを弾くように構成されている。
【0015】
本発明の別の局面は、電気泳動ディスプレイのための積層体を作製する方法を提供することであり、方法は、ポリマーフィルムの層を通して離型シート内にテーパ状の幾何学形状を有する複数のマイクロセルをエンボス加工し、エンボスフィルムを形成することと、保護シート上で伝導性材料層にエンボスフィルムを積層し、積層フィルムを形成することと、ポリマーフィルムから離型シートを除去し、積層フィルムの各マイクロセルの内部への開口部を形成することと、マイクロセルに分散流体を充填することと、マイクロセルを密封することとを含む。
【0016】
本発明のこれらのおよび他の局面は、以下の説明に照らして明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面は、限定によってではなく実施例のみによって本概念による1つまたはそれより多くの実装を描写している。図において、同様の参照番号は、同一のまたは類似の要素を指す。
【0018】
【
図1】
図1は、黒色および白色色素を分散流体中に含む一連のマイクロセルの側面断面図である。
【0019】
【
図2a】
図2aは、白色光学状態における本発明の第1の実施形態によるマイクロセルの側面断面図である。
【0020】
【
図2b】
図2bは、黒色光学状態における
図2aのマイクロセルの側面断面図である。
【0021】
【
図3a】
図3aは、本発明の別の実施形態による4つのマイクロセルの平面図である。
【0022】
【
図3b】
図3bは、本発明のさらなる別の実施形態による6つのマイクロセルの平面図である。
【0023】
【
図3c】
図3cは、本発明のさらなる別の実施形態による3つのマイクロセルの平面図である。
【0024】
【
図4】
図4は、
図2aのマイクロセルを組み込んだ電気泳動ディスプレイの概略図の側面断面図である。
【0025】
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態による方法において使用されるエンボス加工されたポリマーフィルムおよび離型シートの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
以下の詳細な説明では、関連する教示の徹底的な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が、実施例として述べられる。しかしながら、本教示がそのような詳細を伴わずに実践され得ることは、当業者に明白であるべきである。
【0027】
本発明は、光反射率を向上させ、光損失を最小限にするマイクロセル設計を提供することを模索している。本発明の種々の実施形態によるマイクロセル設計は、黒色または暗い色素を弾く角度付けられた反射壁を提供するためのテーパ状の幾何学形状を含み得る。本発明の種々の実施形態は、マイクロセルが白色状態等の極端な光学状態を表示しているときの反射率を大幅に向上させ得る。白色状態を増大させることは、低照度条件におけるディスプレイの可視性を向上させ得、本発明によるマイクロセルを備えるフィルムがカラーフィルタアレイ(CFA)と組み合わせられたときの電気泳動ディスプレイの色域を向上させ得る。
【0028】
図2aおよび
図2bに図示されている本発明の一実施形態によると、マイクロセル10は、透明な流体中に白色色素14および黒色色素12を含み得、マイクロセル10は、見る人に面している角錐の底と、見る人から最も遠くにある角錐の頂点とを伴う逆角錐等のテーパ状の形態を有する。テーパ状の幾何学形状を提供することによって、黒色色素12は、マイクロセル10を備えるピクセルが白色状態に切り替えられているとき、マイクロセル10の先端に位置する(
図2b)。したがって、
図1のマイクロセル設計等の立方体幾何学形状と異なり、
図2bのテーパ状マイクロセル内の黒色色素12は、白色色素14のビューエリアより小さいエリアを見る人の側に有し、それによって、黒色色素12による吸収からの光損失の見込みを低減させる。
【0029】
本発明の種々の実施形態によるマイクロセルの幾何学形状は、反射率も促進する。例えば、
図2bにおいて、白色色素14を通過した光16の少なくとも一部は、マイクロセル10の壁11で反射され、白色色素層14を通して見る人へと戻り得る。当業者によって理解されるように、光16は、マイクロセル10に進入する光の一部に関する単一のあり得る経路のみを表しており、白色色素14を通してマイクロセル10に進入する全ての光によって進行される経路を提示することを意図されていない。高反射特性を伴う高分子材料を使用してマイクロセル10の壁11を形成することによって、マイクロセル10を通して散乱される光は、光が見る人へと戻るように反射され得るいくつかの点を有する。マイクロセル10の角度付けられた壁11は、好ましくは、マイクロセルの壁が再帰反射体を形成するように鏡面/鏡張りである。別の実施形態では、マイクロセル10の壁11は、鏡面/鏡張りの面ではなく拡散反射体の形態において提供され得る。これは、チタニア等の反射性充填剤を充填されているポリマーフィルム内にマイクロセル10をエンボス加工することによって成し遂げられ得る。
【0030】
マイクロセルの幾何学形状は、様々な形状において提供され得る。例えば、
図3a、
図3b、および
図3cに図示されている種々の実施形態の平面図を参照すると、マイクロセルの幾何学形状は、四角錐、三角錐、または六角錐であり得る。幾何学形状は、角錐構造に限定されない。例えば、幾何学形状は、円錐または三角柱の形態において提供され得るが、等辺多角形の角錐は、表示エリア内に類似した角度付けられた壁を有するマイクロセルの密な充塞を可能にするため、その幾何学形状が、好ましい。さらに、マイクロセルのテーパ状の幾何学形状の先端は、随意に、先端を切り取られ得るか、または半球状であり得る。しかしながら、半球状の幾何学形状は、見る人から遠くの小さなエリアに黒色または他の有色色素を充塞しないため、そのような幾何学形状は、あまり好ましくない。
【0031】
急峻な、すなわち、先端においてより鋭角である壁角度をマイクロセルの幾何学形状に提供することは、黒色色素が壁に接着することを抑止し、先端内に充塞される色素の暴露面積を最小限にし得る。さらに、より急峻な壁は、ビュー表面のより均一な色素コーティングをもたらす可能性が高い。例えば、黒色光学状態から白色光学状態に切り替えるとき、白色色素は、最初に、マイクロセルの先端内に充塞され、次いで、先端からマイクロセルのビュー表面まで移動しなければならない。マイクロセルが非常に浅い場合、白色色素によって進行される垂直距離は、ビューエリアの側方寸法に対して短い。比較的より急峻な壁に関しては、色素によって進行される側方距離と垂直距離との比率は、より低い。高い比率は、光学状態を切り替えると、ビューエリアの中心におけるより厚い色素コーティングと、ビューエリアの外周を中心としたより薄くより透過性の高いコーティングとをもたらす可能性が高い。色素の側方移動と垂直移動との比率は、各マイクロセルのビューエリア全体にわたる色素の実質的に均一な被覆率を増進するように選択されるべきである。他の因子も、マイクロセルの幾何学形状を選択するときに考慮され得る。例えば、浅い幾何学形状は、反射されるべき光に関するより短い経路を提供することによって反射率を増進する。マイクロセルの幾何学形状の寸法も、電気泳動ディスプレイの所望のディスプレイ解像度、コントラスト、および切替速度に基づいて選択されてもよい。好ましい実施形態では、マイクロセルの深度は、20~50ミクロンである。
【0032】
テーパ状の幾何学形状を伴うマイクロセルを提供することは、電気泳動ディスプレイの光学的活性表面積の増大ももたらし得る。再び
図1を参照すると、電気泳動ディスプレイの活性表面の増大は、立方体マイクロセル10の垂直壁厚を減少させること、またはマイクロレンズをマイクロセル内に組み込むことを要求する。しかしながら、マイクロセルに関する垂直壁を製造することは、マイクロセルの一部がエンボス加工プロセス中にフィルムから引き裂かれ、エンボス加工ツール上に残されたままになるというリスクのために、壁厚が減少するにつれてますます難しくなる。また、マイクロレンズの使用は、視野角の減少をもたらし得る。したがって、マイクロセルに関するテーパ状の幾何学形状の使用は、電気泳動ディスプレイの視野角範囲を損なうことなく潜在的な光学的活性表面積を増大させるより容易な製造方法を提供する。
【0033】
図4を参照すると、例えば、テーパ状の幾何学形状を有するマイクロセル10を伴うエンボス加工されたポリマーフィルムが、電気泳動ディスプレイ30に組み込まれてもよい。当業者によって理解されるように、
図4は、縮尺通りに描かれておらず、積層電気泳動ディスプレイの断面の概略描写である。複数の密封されたマイクロセル10を伴うエンボス加工されたポリマーフィルム18は、一連のピクセル電極22と、インジウムスズ酸化物(ITO)の薄い層等の光透過性伝導性材料である連続正面電極20との間に積層され得る。ピクセル電極22は、薄膜トランジスタ(TFT)の配列の形態においてバックプレーン28上に提供され得る。積層ディスプレイ30の上部層は、PET等の保護光透過性層24と、光透過性も有する、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)エリアを備える随意のCFA26とをさらに備える。マイクロセル10の各々は、荷電白色色素14および荷電黒色色素12を含む分散流体を充填される。したがって、随意のCFA26を除外することは、黒色および白色ディスプレイを提供する。層がともに積層され得るように、接着剤層が、上記に説明された1つまたはそれより多くの対の隣接する層の間に組み込まれ得る。
【0034】
電気泳動ディスプレイの代替実施形態では、単一の連続電極層がバックプレーン上に位置し、ピクセル電極がマイクロセルの視認側に位置するように、単一の連続電極層とピクセル電極との場所が、逆にされ得る。この実施形態では、単一の連続電極層が光透過性を有することは必要ではないが、ピクセル電極は、光透過性を有しなければならない。この配列では、ピクセル電極が同時にCFAとしての役割も果たし得るように有色ピクセル電極を提供することが、可能であり得る。
【0035】
本発明の別の実施形態では、テーパ状マイクロセルを作製する方法が、提供される。マイクロセル形成の当業者によって公知であるように、典型的には、エンボス加工技法が、使用され、この場合、その表面上にマイクロセルの形状のあるパターンを有するエンボス加工シリンダ等のツールが、ポリマーフィルムの上へとローリングさせられる。エンボス加工後、マイクロセルは、荷電色素を含む分散体を充填される。マイクロセルを密封するために、架橋性オリゴマーまたはモノマー流体が、充填されたマイクロセルを覆ってコーティングされ得る。代替の密封するステップは、カップを覆ってシーラント層を積層することを含み得る。
【0036】
図5を参照すると、本発明によるマイクロセルを作製および密封する最も好ましい方法は、複数のマイクロセルがテーパ状の幾何学形状を有する状態にポリマーフィルム内のマイクロセルをエンボス加工することと、エンボス加工されたポリマーフィルムを連続正面電極層に積層することと、マイクロセル内に開口部を形成することと、小さな開口部を通してマイクロセルの内部を分散流体を充填することと、マイクロセルを密封することとを含む。
【0037】
好ましい方法のエンボス加工するステップは、離型シート34に積層されたポリエステル等のポリマーフィルム32内に、テーパ状の幾何学形状を有するマイクロセル10の配列をエンボス加工することを含み得る。フィルムは、例えば、金属化することによって、またはポリマーフィルム内に反射性添加剤を組み込むことによって高反射性を有するべきである。ポリマーフィルムがエンボス加工に先立って金属化される場合、金属層は、おそらく、マイクロセルの全ての縁において不連続となり、それによって、ディスプレイの正面電極と背面電極との間の電気的短絡を回避する。構造的干渉のために設計された非伝導性反射コーティングは、例えば、当業者に公知である、放出性ディスプレイのバックライト効率を向上させるために使用される市販のフィルム等のフィルムにも適用されてもよい。非伝導性反射コーティングは、典型的には、エンボス加工に耐えないことがある酸化物から成るため、コーティングは、好ましくは、エンボス加工後に適用される。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、エンボス加工されたポリマーフィルム上の反射コーティングは、誘導体反射鏡であり得る。当業者に公知であるように、誘導体反射鏡は、基板上に堆積させられた誘電材料の複数の薄い層を備える。誘導体反射鏡の反射特性は、誘電材料のタイプおよびコーティングの厚さに依存する。物理蒸着(例えば蒸発堆積およびイオンビーム支援堆積)、化学的蒸着、イオンビーム堆積、分子ビームエピタキシ、およびスパッタ堆積等の種々の薄フィルム堆積方法が、誘導体反射鏡を製造するために採用され得る。誘導体反射鏡を形成するために使用される誘電材料は、限定ではないが、アルミニウム、フッ化マグネシウム、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、硫化亜鉛(n=2.32)、および二酸化チタン(n=2.4)を含む。
【0039】
マイクロセル壁の反射率をさらに増進するために、本発明の種々の実施形態は、黒色色素がマイクロセルの壁に接着することを阻止するための特徴を含み得る。フロントビュー表面にわたる塗布、またはマイクロセルの先端内への充塞のいずれかに黒色色素の存在を限定するために、壁は、黒色色素を弾くように表面処理され得る。例えば、マイクロセル壁は、フッ素化ポリマーまたは他の低表面エネルギー材料でコーティングされ得る。代替として、マイクロセルの表面を金属化した後、マイクロセルの壁は、電気泳動黒色色素を形成するために使用される、同一の荷電性基で処理され得る。マイクロセル壁が黒色色素の電荷極性に類似した電荷極性を有する場合、マイクロセル壁は、黒色色素を弾く。
【0040】
一実施形態では、エンボス加工されたポリマーフィルムの金属化された表面は、1つもしくはそれより多くの極性基および/または1つもしくはそれより多くのポリマー/重合性基に結合されるシラン部分を有する試薬と反応し得る反応部位を含み得る。反応部位は、マイクロセル壁に反射性表面を提供するために使用される材料の化学的官能性に応じて、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基、もしくはそれらの誘導体(例えば、アミドもしくはエステル)、アルコールもしくはフェノール基、またはハロゲンであり得る。反応部位は、従前の手段によって、または、2011年5月31日に出願された米国第13/149,599号(その内容は、参照によって全体が本明細書に援用される)に説明されているような水和反応等の特別な処理によってマイクロセル壁の表面上に植設されてもよい。
【0041】
試薬の極性基は、マイクロセル壁表面に電荷を与え得る。例えば、--NH--等の極性基は、正電荷を与え得、--OHまたは--COOH等の極性基は、負電荷を与え得る。ポリマー/重合性基は、限定ではないが、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、または同等物を含む。
【0042】
反応剤は、限定ではないが、N-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン(Gelest)、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(Gelest)、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン(Gelest)、またはビニルベンジルアミノエチルアミノプロピル-トリメトキシシラン(Z-6032、Dow Corningによる)を含み得る。
【0043】
マイクロセル表面に対する試薬のシランカップリング反応は、反応性シラノール基(Si-OH)を形成するために、最初にシラン部分を加水分解することによって開始され得、反応性シラノール基は、続いて、縮合反応を介して、エンボスフィルムの表面においてヒドロキシル基と結合し得る。
【0044】
反対の電荷極性を有する白色色素がマイクロセル壁に強固に接着することを阻止するために、黒色色素上で使用されるものと同一の様式において、立体安定化層が、壁に追加され得る。例えば、シランカップリング反応後、ポリマー/重合性基は、必要な場合、ポリマー安定剤を形成するために1つまたはそれより多くのタイプのモノマー、オリゴマー、またはポリマー、およびその組み合わせと重合し得る。ポリマー安定剤は、厚さが約1nm~約50nm、好ましくは、約5nm~約30nm、より好ましくは、約10nm~約20nmの立体障壁をマイクロセル壁表面上に作り出すことを所望される。
【0045】
本発明の文脈における好適なポリマーは、限定ではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、またはポリシロキサンを含み得る。好適なモノマーは、限定ではないが、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-オクタデシルアクリレートおよびn-オクタデシルメタクリレートを含む。ポリマー安定剤に関する材料の選択は、電気泳動流体において使用される溶媒と材料との相容性に依存する。
【0046】
ポリマーフィルム32および離型シート34の組み合わせられた厚さは、マイクロセルの幾何学形状の所望の最終寸法より大きくあるべきである。ポリマーフィルム32は、エンボス加工ツールがエンボス加工中にポリマーフィルム32を通して離型シート34内へと達することを確実にするために、エンボス加工ツール上の対応するパターンの高さより低い深度を有するべきである。離型シート34は、エンボス加工シリンダが対向するシリンダツール表面によって損傷されないように、ポリマーフィルム32とほぼ同一の弾性係数および十分な厚さを有するべきである。好ましい実施形態では、離型シートは、シリコンコーティングされたポリエチレンテレフタレートを含み得る。
【0047】
好ましい方法の積層するステップは、
図4の層24、26、および20等の保護PET層と、随意のCFAと、フロントプレーン電極フィルム(ITO)とをマイクロセルの開放端(例えば、
図5の角錐形マイクロセル10の底)の上に積層することを含み得る。電気不動態化層も、接着剤層と同様にマイクロセルとPET-ITO層との間に含まれ得る。マイクロセルのパターンがディスプレイの活性面積留分を最大限にするように密に充塞されたセルを含むように、マイクロセルに充填し、密封することに先立ってPET-ITO層をポリマーフィルムに積層することが、好ましい。
【0048】
マイクロセルの各々において開口部を形成することは、離型シート34をポリマーフィルム32から分離し、エンボス加工されたマイクロセル10の底部部分を除去し、それによって、マイクロセル10の各々の底部において小さな孔を形成することを含み得る。孔の幅は、分散流体がマイクロセルの内部に容易にアクセスすることを可能にするために十分に大きくあるべきであるが、充填後に密封することを促進するために最小限のサイズであるべきである。
【0049】
好ましい方法の充填するステップは、種々の技法によって達成され得る。
【0050】
一方法では、マイクロセルは、真空チャンバ内で離型シート34が除去された状態で積層ポリマーフィルム32およびPET-ITO層を設置することによって等、最初にマイクロセルの内部を真空状態にすることによって充填され得る。真空を適用してガスのマイクロセルを真空状態にした後、分散流体が、小さな孔を含むポリマーフィルム32の表面上に適用され、分散流体をマイクロセル内に引き込むための真空の解放が、それに続き得る。分散流体における溶媒の蒸発の可能性を最小限にするために、可能な限り小さな体積、すなわち、組み合わせられたポリマーフィルム32およびPET-ITO層の体積よりわずかに大きい体積を有する、マイクロセルに充填するために十分な体積の分散流体がポリマーフィルム32に適用されるとすぐに真空を解放する真空チャンバ内に、組み合わせられたポリマーフィルム32およびPET-ITO層を設置することが、好ましい。
【0051】
マイクロセルに充填する別の方法は、離型シート34が除去された状態で、分散流体を充填された超音波浴処理器内に積層ポリエステルフィルム32およびPET-ITO層を浸漬することを含み得る。超音波攪拌は、分散流体によって置換されるようにガスをマイクロセルの外へと駆動する。浴処理器は、必要な場合、処理を加速させるためにわずかな減圧の下に保持され得る。超音波攪拌は、連続プロセスに対してスケーラブルであることに関する潜在能力を理由として、好ましい充填方法である。
【0052】
さらなる別の充填方法は、例えば、周囲温度を下回るが分散流体の流動点または凍結温度を上回る沸点を有する溶媒蒸気でマイクロセルに充填することを含み得る。離型シート34が除去された状態の積層ポリマーフィルム32およびPET-ITO層は、次いで、分散流体中に浸漬され、続いて、マイクロセル内の溶媒蒸気の沸点を下回る温度まで冷却され得る。これは、溶媒蒸気が凝縮し、分散流体をマイクロセル内に引き込むことを引き起こす。溶媒蒸気は、好ましくは、分散流体において相溶性を有する。
【0053】
マイクロセルが分散流体を充填されるとき、好ましくは分散流体において非相溶性を有するシーラントが、マイクロセルを密封するために使用され得る。電気泳動ディスプレイの電気的、光学的、および機械的要件を同時に満たし、低い溶媒浸透性を有する積層接着剤が、マイクロセルを密封することと、本発明のマイクロセル設計を備えるフロントプレーン積層体(FPL)を形成することとのために使用され得る。代替として、FPLを形成するために積層接着剤層および随意の離型可能シートを適用することに先立って、別個のシーラントが、マイクロセルを密封するために使用され得る。ポリマーフィルム32内の開口部はポリマーフィルムの面積全体に対して小さいため、ポリマーフィルム32の表面は、シーラントを用いた湿潤および接着のための適正なエリアを提供する。シーラントはこの好ましい方法の電気泳動ディスプレイの背面非ビュー表面に適用されるため、シーラントがディスプレイの光学特性に干渉する可能性は、低い。
【0054】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、そのような実施形態は単なる実施例として提供されていることが、理解されるであろう。本発明の精神から逸脱することなく、多数の変形例、変更例、および代用例が、当業者に想起されるであろう。故に、付属の特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内に該当するあらゆる変形例を網羅することを意図されている。
【国際調査報告】