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特表2023-540306三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物、これを用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びこの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物、これを用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20230914BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20230914BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20230914BHJP
   C09D 183/10 20060101ALI20230914BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230914BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230914BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20230914BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230914BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20230914BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230914BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C09D175/04
C23C28/00 A
C23C2/06
C09D183/10
C09D7/63
C09D7/61
C09D7/20
C09D7/65
B32B15/095
B32B27/20 A
B32B27/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514468
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 KR2021011845
(87)【国際公開番号】W WO2022050718
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0111426
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ス-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ウォン-ホ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4K027
4K044
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AA21B
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4F100AB03A
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4F100AB09C
4F100AB10
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4F100AB18C
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4F100AK25B
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4F100EH46B
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4J038JC32
4J038KA03
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4K044AB02
4K044BA10
4K044BB03
4K044BC02
4K044BC09
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、及び固有の表面色相特性を付与することができる表面処理組成物を提供するためのものである。本発明は、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びアクリル-ウレタン補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;メラミン系硬化剤5~25重量%;無機添加剤0.5~10重量%;シランカップリング剤0.5~10重量%;密着増進剤0.1~2重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含む表面処理組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の固形分100重量%に対して、
高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びアクリル-ウレタン補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;
メラミン系硬化剤5~25重量%;
無機添加剤0.5~10重量%;
シランカップリング剤0.5~10重量%;
密着増進剤0.1~2重量%;
着色顔料0.1~2重量%;及び
顔料安定化剤0.1~1重量%を含む、表面処理組成物。
【請求項2】
前記高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びアクリル-ウレタン補助樹脂は、1:4.5:4.5~9:0.5:0.5の重量比で混合された、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項3】
前記高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃であり、重量平均分子量(Mw)が100,000~200,000である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
前記低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-30℃~-20℃であり、重量平均分子量(Mw)が30,000~70,000である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
前記アクリル-ウレタン補助樹脂は、
メチルメタアクリレート(MMA)及びブチルアクリレート(BA)からなる群から選択された1種以上の構造単位を含むアクリル樹脂、及び
ポリカーボネート系ウレタン樹脂が共重合された、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50℃~70℃であり、重量平均分子量(Mw)80,000~120,000である、請求項5に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
前記メラミン系硬化剤は、メトキシメチル基、メチロール基、及びイミノ基からなる群から選択された1種以上の官能基を含み、
前記官能基は、カルボキシル基を含有する樹脂を架橋させる、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
前記無機添加剤は、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル及びジルコニアゾルからなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項9】
前記シランカップリング剤は、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエチルオルソシリケート、テトラメチルオルソシリケート、3-アミノプロピルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-(1,3ジメチルブチリデン)-3-(トリエポキシシラン)-1-プロパンアミン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及びN-[2-(ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項10】
前記シランカップリング剤は、ギ酸、酢酸、リン酸、塩酸、及び硝酸からなる群から選択された1種以上の酸によって加水分解される、請求項9に記載の表面処理組成物。
【請求項11】
前記密着増進剤は、リン酸エステル(Ester phosphate)及びリン酸アンモニウム(Ammonium phosphate)からなる群から選択された1種以上である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項12】
前記着色顔料は、チタン、鉛、鉄、銅及びクロムからなる群から選択された1種以上の無機顔料;及びアゾ系有機顔料からなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項13】
前記顔料安定化剤は、カルボキシル系高分子である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項14】
表面処理組成物は溶媒をさらに含み、
表面処理組成物の総重量を基準に固形分含有量が20~40重量%であり、残部溶媒である、請求項1から13のいずれか一項に記載の表面処理組成物。
【請求項15】
前記溶媒は、溶媒の総重量を基準にアルコール3~10重量%及び残部水を含む、請求項14に記載の表面処理組成物。
【請求項16】
鋼板;
前記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層;及び
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された表面処理皮膜層を含み、
前記表面処理皮膜層は、請求項1から13のいずれか一項に記載の表面処理組成物から形成された、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項17】
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、界面に形成されたAl濃化層を含み、
前記Al濃化層の占有面積率は70%~100%である、請求項16に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項18】
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、Al:0.2~15重量%、Mg:0.5~3.5重量%、残部Zn及び不可避不純物を含む、請求項16に記載の三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項19】
前記表面処理皮膜層は、厚さが1μm~10μmである、請求項16に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項20】
三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に請求項1から13のいずれか一項に記載の表面処理組成物をコーティングする段階;及び
前記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項21】
前記表面処理組成物を2.5μm~50μmの厚さでコーティングする、請求項20に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物、これを用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びこの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、純粋亜鉛めっき鋼板に比べて、赤錆に対する耐食性に優れた鋼材として、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)を含有した溶融亜鉛合金めっき層を有する鋼板は、露出面のほとんどが亜鉛(Zn)または亜鉛合金(Zn alloy)で構成され、一般的な生活環境や特に湿潤雰囲気に晒される場合、表面に白錆の発錆現象が起こる。また、めっき層に含まれているマグネシウム及びアルミニウムは、亜鉛より酸素親和力が高いため、亜鉛に結合する酸素が不足する場合、黒変現象が発生しやすい。
【0003】
従来には、防錆処理の一環として、金属表面を5~100mg/mのクロメートで前処理した後、有機皮膜を形成した。しかし、前処理剤に含まれるクロム(Cr)などの重金属による付加的な前処理設備と工程の必要性とともに、重金属廃水による作業者の安全性が問題となった。また、水洗水及び廃水などで発生する6価クロム含有溶液は、特殊な処理工程により処理する必要があるため、製造費用が上昇するという問題があり、クロメート処理されためっき鋼板も使用中または廃棄時にクロムイオンが溶出する問題があって、環境汚染の問題が深刻であった。
【0004】
このような問題を解決しながら耐食性を確保するために、従来技術はクロムが含有されていない耐食用金属コーティング剤などの表面処理剤を開発した。一例として、特許文献1及び特許文献2には、重リン酸アルミニウムを含有したり、タンニン酸に酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、イミダゾールなどの芳香族カルボン酸と界面活性剤などの組み合わせを介して皮膜物質を形成する技術が開示されているが、これらは耐食性が劣化するという問題点がある。特許文献3には、炭酸ジルコニウム、バナジルイオン及びジルコニウム化合物などで構成された表面処理剤が開示されているが、これは耐食性が良好であるのに対し、耐黒変性に脆弱であるという問題点がある。
【0005】
一方、特許文献4にはチタン系、ジルコニウム系、リン酸系、モリブデン系化合物などで構成された表面処理剤が開示されているが、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などが用いられた溶融亜鉛合金めっき鋼板では、黒変現象が抑制できないという問題がある。特許文献5には、モリブデン酸アンモニウム、水分散ウレタン樹脂、イソプロピルアミン、炭酸ジルコニウムアンモニウム、エポキシ系シランカップリング剤、シリカゾルで構成された表面処理剤が開示されているが、十分な耐食性を付与することができないという問題点がある。
【0006】
一方、鉄鋼素材を建築資材用に使用するためには、表面特性が美麗である必要があり、顧客がこれを使用する際に、既存の溶融亜鉛めっき鋼材及び溶融亜鉛合金めっき鋼材と素材表面との区別が可能であるように固有の色相を付与する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本公開特許公報昭53-28857号公報
【特許文献2】日本公開特許公報昭51-71233号公報
【特許文献3】日本公開特許公報2002-332574号公報
【特許文献4】日本登録特許公報平7-096699号公報
【特許文献5】日本公開特許公報2005-146340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような実情に鑑みて案出されたものであり、建築資材として用いられる三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び固有の表面色相特性を付与することができる表面処理組成物を提供することを一つの目的とする。
【0009】
また、顔料の分散安定性に優れ、長時間保管後の使用時にも沈殿及び凝集が発生せず、溶融亜鉛合金めっき鋼板に優れた表面光沢を付与することができる表面処理組成物を提供することを他の目的とする。
【0010】
また、環境汚染物質であるクロムなどの重金属成分を全く含まないため、人体に無害であり、環境汚染による問題を生じさせない表面処理組成物を提供することを他の目的とする。
【0011】
また、本発明は、優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、及び固有の表面色相特性を有する溶融亜鉛合金めっき鋼板及びこの製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によると、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂、及びアクリル-ウレタン補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;メラミン系硬化剤5~25重量%;無機添加剤0.5~10重量%;シランカップリング剤0.5~10重量%;密着増進剤0.1~2重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含む表面処理組成物が提供される。
【0013】
本発明の一実施形態によると、鋼板;上記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層;及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された表面処理皮膜層を含み、上記表面処理皮膜層は、上記表面処理組成物から形成された、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態によると、三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に上記表面処理組成物をコーティングする段階;及び上記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表面処理組成物を溶融亜鉛合金めっき鋼板上にコーティングして表面処理皮膜層を形成することにより、優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、及び固有の表面色相特性を有する溶融亜鉛合金めっき鋼板を提供することができる。
【0016】
また、本発明に係る表面処理組成物は顔料の分散安定性に優れ、長時間保管後の使用時にも沈殿及び凝集が発生せず、溶融亜鉛合金めっき鋼板に優れた表面光沢を付与することができる。
【0017】
また、本発明に係る表面処理組成物は、環境汚染物質であるクロムなどの重金属成分を全く含まないため、人体に無害であり、環境汚染による問題を引き起こさない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、様々な実施形態を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明は、溶液安定性に優れ、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に適用する際に、優れた平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を有し、優れた表面特性を有する三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物に関するものである。また、本発明は、上記表面処理組成物を用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
【0020】
本発明の一実施形態に係る表面処理組成物は、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂、及びアクリル-ウレタン補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;メラミン系硬化剤5~25重量%;無機添加剤0.5~10重量%;シランカップリング剤0.5~10重量%;密着増進剤0.1~2重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含むことができる。
【0021】
一実施形態において、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に優れた耐食性、耐水性、及び耐溶剤性を付与することができる成分である。上記高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂は、これに限定されるものではないが、シリコンポリマーとポリカーボネートポリオールから合成されることができ、合成時に三次元(Trimer)イソシアネート高分子を使用することによって自己架橋結合(Self-Crosslinking)の特性を有する。
【0022】
高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100,000~200,000であることができる。重量平均分子量が100,000未満の場合、十分な耐食性の確保が困難であるのに対し、重量平均分子量が200,000を超過する場合、溶液安定性が低下し、皮膜の硬度が大きくなって加工性が低下するという問題が発生することがある。
【0023】
高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-20℃~-10℃であることができる。ガラス転移温度が-20℃未満の場合、十分な耐食性の確保が難しいのに対し、ガラス転移温度が-10℃を超過する場合、溶液安定性が低下し、皮膜の硬度が大きくなって加工性が低下するという問題が発生することがある。
【0024】
一実施形態において、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に軟質特性を付与して加工性及び密着性を高めることができる成分である。上記低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、これに限定されるものではないが、シリコンポリマーとポリカーボネートポリオールから合成されることができる。低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂とは異なり、自己架橋結合の特性を有しない。
【0025】
低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂の重量平均分子量は30,000~70,000であることができる。重量平均分子量が30,000未満の場合、皮膜の密度低下により十分な耐食性の確保が困難であるのに対し、重量平均分子量が70,000を超過する場合、皮膜に軟質特性の付与効果が不十分であって加工性及び密着性が低下するという問題が発生することがある。
【0026】
低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30℃~-20℃であることができる。ガラス転移温度が-30℃未満の場合、皮膜の密度低下により十分な耐食性の確保が難しいのに対し、ガラス転移温度が-20℃を超過する場合、皮膜に軟質特性の付与効果が不十分であって加工性及び密着性が低下するという問題が発生することがある。
【0027】
一実施形態において、アクリル-ウレタン補助樹脂は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に緻密な皮膜を形成し、耐熱密着性を向上させるための成分である。アクリル-ウレタン補助樹脂は、アクリル樹脂とポリカーボネート系ウレタン樹脂との共重合体であることができる。アクリル樹脂は、メチルメタアクリレート(MMA)及びブチルアクリレート(BA)からなる群から選択された1種以上の構造単位を含むことができる。
【0028】
ポリカーボネート系ウレタン樹脂の重量平均分子量は80,000~120,000であることができる。重量平均分子量が80,000未満の場合、皮膜の緻密度及び耐熱密着性の向上効果が十分でないのに対し、重量平均分子量が120,000を超過する場合、皮膜の硬質性が過度であって加工性が低下するという問題が発生することがある。
【0029】
ポリカーボネート系ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃~70℃であることができる。ガラス転移温度が50℃未満の場合、耐熱密着性の向上効果が十分でないのに対し、ガラス転移温度が70℃を超過する場合、皮膜の硬質性が過度であって加工性が低下するという問題が発生することがある。
【0030】
樹脂混合物は、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂:低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂:アクリル-ウレタン補助樹脂が1:4.5:4.5~9:0.5:0.5、好ましくは1:0.5:0.5~9:0.5:0.5、より好ましくは2:0.5:0.5~9:0.5:0.5の重量比で混合されたものであることができる。例えば、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂:低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂:アクリル-ウレタン補助樹脂を2:0.5:0.5の重量比で混合して使用することができ、より好ましくは1:0.5:0.5の重量比で混合して使用することができる。
【0031】
樹脂混合物中の高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂の含有量が少なすぎる場合、鋼板の平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が低下することがある。一方、樹脂混合物中の高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂の含有量が多すぎる場合、鋼板の加工部耐食性、耐黒変性が低下されることがある。
【0032】
一実施形態において、樹脂混合物の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して70~90重量%であることができる。樹脂混合物の含有量が70重量%未満の場合、十分な耐食性及び耐アルカリ性確保が困難であり、樹脂混合物の含有量が90重量%を超過する場合には、表面処理組成物内の硬化剤及び無機化合物の含有量が比較的少なくなるため、耐食性が却って低下し、溶液安定性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0033】
一実施形態において、メラミン系硬化剤は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物の主剤樹脂及び補助樹脂と反応して緻密な架橋結合を形成することによって強固な塗膜を形成する役割を果たすことができる。また、上記メラミン系硬化剤は、メトキシメチル基、メチロール基及びイミノ基からなる群から選択された1種以上の官能基を含むことができ、上記官能基がカルボキシル基を含有する骨格重合体樹脂と架橋することができる。このとき、骨格重合体樹脂は、本発明の一実施形態による主剤樹脂、補助樹脂を意味する。
【0034】
メラミン系硬化剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して5~25重量%であることができる。メラミン系硬化剤の含有量が5重量%未満の場合、十分な架橋結合を形成することができなくて、物性向上が期待できず、メラミン系硬化剤の含有量が25重量%を超過する場合、過度の架橋結合により溶液の安定性が低下して、経時により固形化する現象が発生する可能性がある。
【0035】
一実施形態において、無機添加剤は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理溶液組成物を用いて表面処理される三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に耐水性及び耐黒変性を付与するための成分である。上記無機添加剤としては、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル及びジルコニアゾルからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0036】
無機添加剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.5~10重量%であることができる。無機添加剤の含有量が0.5重量%未満の場合、十分な耐水性及び耐黒変性の確保が期待できず、無機添加剤の含有量が10重量%を超過する場合、耐黒変性の向上効果が僅かであり、耐食性が低下するという問題点が発生することがある。
【0037】
一実施形態において、シランカップリング剤は、表面処理組成物の水溶性有機樹脂と無機添加剤との間の強固な結合を形成するために、上記水溶性有機樹脂を変性させてカップリング結合反応を行うための成分である。シランカップリング剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.5~10重量%であることができる。シランカップリング剤の含有量が0.5重量%未満の場合、有機樹脂と無機添加剤とのカップリング結合の際に、求められるシランカップリング剤の量が不足して耐食性の確保が難しく、シランカップリング剤の含有量が10重量%を超過する場合には、有機樹脂との反応後に、未反応されたシランカップリング剤が存在して加工後の耐食性が低下するという問題点がある。
【0038】
シランカップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエチルオルソシリケート、テトラメチルオルソシリケート、3-アミノプロピルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-(1,3ジメチルブチリデン)-3-(トリエポキシシラン)-1-プロパンアミン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及びN-[2-(ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択された1種以上を使用することができる。
【0039】
上記シランカップリング剤は、ギ酸、酢酸、リン酸、塩酸、及び硝酸からなる群から選択された1種以上の酸によって加水分解されることができる。
【0040】
一実施形態において、密着増進剤は、鋼板と樹脂との密着性を向上させて皮膜の剥離を防止し、高湿環境下でめっき層まで水分が浸透することを防止するための成分である。密着増進剤としては、リン酸エステル(Ester phosphate)及びリン酸アンモニウム(Ammonium phosphate)からなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0041】
密着増進剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.1~2重量%であることができる。密着増進剤の含有量が0.1重量%未満の場合、密着性向上及び水分浸透の防止効果が不十分であり、密着増進剤の含有量が2重量%を超過する場合には、表面処理組成物の溶液安定性が低下するという問題点がある。
【0042】
一実施形態において、着色顔料は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に色相を付与して、美麗な表面特性を付与するための成分である。着色顔料としては、チタン、鉛、鉄、銅及びクロムからなる群から選択された1種以上の無機顔料;及びアゾ系有機顔料;からなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0043】
着色顔料の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.1~2重量%であることができる。着色顔料の含有量が0.1重量%未満の場合、十分な色相の発現が困難であり、着色顔料の含有量が2重量%を超過する場合、溶液安定性及び耐食性が低下するという問題点が発生する可能性がある。
【0044】
一実施形態において、顔料安定化剤は、着色顔料をキャッピング(Capping)させて皮膜内で着色顔料を均一に分散させ、これによって皮膜の光沢度を向上させるための成分である。上記顔料安定化剤は、カルボキシル系高分子であることができるが、これに限定されない。
【0045】
顔料安定化剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.1~1重量%であることができる。顔料安定化剤の含有量が0.1重量%未満の場合、十分な溶液安定性の確保が難しく、顔料安定化剤の含有量が1重量%を超過する場合、皮膜内の過度の残留成分により皮膜の光沢が却って低下するという問題点が発生することがある。
【0046】
一実施形態において、表面処理組成物は、各成分を希釈させるための溶媒として水を含み、上記水は脱イオン水または蒸留水であることができる。上記溶媒は、本発明の各構成成分の他に残部として含まれるものであり、その含有量は60~80重量%であることができる。さらに、一実施形態に係る表面処理組成物は、溶液安定性を確保するために補助溶媒としてアルコールをさらに含むことができ、上記アルコールはエタノール、イソプロピルアルコールであることができる。上記アルコールは、全溶媒中の3~10重量%含まれることができる。
【0047】
本発明の一実施形態に係る水溶性有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理組成物で表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、耐食性、耐黒変性に優れるだけでなく、表面色相及び光沢に優れる。また、本発明の一実施形態に係る表面処理組成物は、有害環境物質である6価クロムを含有せず、人体に無害な水溶性有機樹脂及び無機化合物を主成分として含むことにより、人体に対する被害及び環境汚染の問題を防止する効果がある。
【0048】
本発明の一実施形態によると、上述の表面処理組成物で表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板が提供される。
【0049】
具体的には、上記表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、鋼板、上記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層、及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層を含むことができる。
【0050】
上記素地鋼板及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、界面に形成されたAl濃化層を含み、上記Al濃化層の占有面積率は70%~100%であることができる。また、上記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、Al:0.2~15重量%、Mg:0.5~3.5重量%、残部Zn及び不可避不純物を含むことができる。
【0051】
一実施形態において、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、素地鉄及びZn-Al-Mg系合金めっき層の界面に形成されたAl濃化層を含み、Al濃化層の占有面積率は70%~100%、より好ましくは73%~100%であることができる。ここで、占有面積率とは、めっき鋼板の表面から素地鉄の厚さ方向に投影してみたとき、3次元的な曲げなどを考慮せずに、平面を仮定する場合の素地鉄の面積に対するAl濃化層の面積の比を意味する。Al濃化層の占有面積率を70%以上確保する場合、Al濃化層は微細な粒子が連続的に形成された形態を有することになり、めっき性及びめっき密着性を著しく向上させることができる。
【0052】
本発明の一実施形態による三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板において、Mgは三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の耐食性向上のために非常に重要な役割を果たし、腐食環境下でめっき層の表面に緻密な亜鉛水酸化物系腐食生成物を形成することにより、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の腐食を効果的に防止する。本発明において、目的とする耐食効果を確保するためには、めっき層にMgが0.5重量%以上含まれる必要があり、より好ましくは0.9重量%以上含まれる必要がある。但し、その含有量が過度の場合、めっき浴表面にMg酸化性ドロスが急増して、微量元素添加による酸化防止効果が相殺される。これを防止するための側面で、Mgはめっき層に3.5重量%以下含まれる必要があり、より好ましくは3.2重量%以下含まれる必要がある。
【0053】
本発明の一実施形態に係る三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板において、Alはめっき浴内のMg酸化物ドロス形成を抑制し、めっき浴内のZn及びMgと反応してZn-Al-Mg系金属間化合物を形成することにより、めっき鋼板の耐腐食性を向上させる。上記効果を得るためには、めっき層にAlが0.2重量%以上含まれる必要があり、より好ましくは0.9重量%以上含まれる必要がある。但し、その含有量が過度の場合、めっき鋼材の溶接性及びリン酸塩処理性が劣化することがある。これを防止するための側面で、Alはめっき層に15重量%以下含まれる必要があり、より好ましくは12重量%以下含まれる必要がある。
【0054】
上記有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層は、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びアクリル-ウレタン補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;メラミン系硬化剤5~25重量%;無機添加剤0.5~10重量%;シランカップリング剤0.5~10重量%;密着増進剤0.1~2重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含む表面処理組成物から形成されることができる。上記表面処理組成物は、上述と同様の技術的特徴を有するため、重複して説明しない。
【0055】
一実施形態において、表面処理皮膜層は、上述した表面処理組成物が乾燥されて形成されたコーティング層であり、有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層に含まれる揮発性物質が全て揮発した後に残った成分に該当する。これにより、上記有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層には溶媒である水またはアルコールが含まれておらず、また、有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理成分に含まれていた溶媒も含まれていない。したがって、有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層に含まれる成分は、全固形分100重量%を基準とした含有量に該当する。
【0056】
本発明の一実施形態によると、三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に上述した表面処理組成物をコーティングする段階;及び上記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法が提供される。
【0057】
一実施形態において、表面処理組成物は2.5~50μmの厚さでコーティングされることができる。また、コーティングされた表面処理組成物は、乾燥工程を経て乾燥皮膜層を形成し、上記乾燥皮膜層の厚さは1~10μmであることができる。表面処理組成物のコーティング厚さが2.5μm未満の場合、鋼板粗さの酸部位に表面処理組成物が非常に薄く塗布されて、耐食性が低下するという問題が発生することがあり、厚さが50μmを超過する場合には、皮膜層が非常に厚く形成されて加工性が劣化し、溶液処理の費用上昇により経済性に問題が発生する可能性がある。
【0058】
表面処理組成物をコーティングする方法は、通常的に行われるコーティング方法であれば特に制限しないが、例えば、ロールコーティング、スプレー、浸漬、スプレースキージング、及び浸漬スキージングから選択されたいずれか一つのコーティング方法で行われることが好ましい。
【0059】
三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上にコーティングされた表面処理組成物を乾燥する工程は、素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準に70~250℃の温度で行われることが好ましい。乾燥温度が素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準に70℃未満であると、有機樹脂の硬化反応が完璧に行われず、強固な皮膜構造が形成されず、耐食性及び耐アルカリ性が劣ることがある。一方、乾燥温度が素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準に250℃を超過すると、水冷過程の間に水蒸気及びヒューム発生により作業生産性が悪くなり、蒸発した水蒸気が乾燥設備の上部に凝縮される結露現象により製品の表面品質が劣る可能性がある。
【0060】
一方、上記乾燥工程は、熱風乾燥炉または誘導加熱炉で実施することが好ましい。熱風乾燥炉を用いて表面処理組成物を乾燥する場合、熱風乾燥炉の内部温度は、100~300℃であることが好ましい。誘導加熱炉を用いて表面処理組成物を乾燥する場合、誘導加熱炉に印加される電流は1000~5000Aであることが好ましく、1500~3500Aであることがさらに好ましい。上記熱風乾燥炉の内部温度が100℃未満であるか、誘導加熱炉に印加される電流が1000A未満であると、表面処理組成物の硬化反応が完璧に行われず、耐食性及び耐アルカリ性が劣ることがある。また、上記熱風乾燥炉の内部温度が300℃を超過するか、誘導加熱炉に印加される電流が5000Aを超過すると、水冷過程の間に水蒸気及びヒューム発生により作業生産性が悪くなり、蒸発した水蒸気が乾燥設備の上部に凝縮される結露現象により製品の表面品質が劣化することがある。
【0061】
また、上記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成した後、上記表面処理皮膜層を水冷させて最終的に表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板を提供することができる。
【0062】
本発明の一実施形態による三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法は、連続工程で行われることができ、上記連続工程の速度は80~120mpmであることが好ましい。連続工程の速度が80mpm未満であると、生産性が低下するという問題点が発生する可能性があり、120mpmを超過すると、表面処理組成物が乾燥される工程で溶液が飛散して表面欠陥を発生させることがある。
【実施例
【0063】
(実施例)
「試験用試験片の製作」
三元系溶融亜鉛合金めっき層が重量%で、Mg:1.5%、Al:1.5%、残部Znからなる三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板(めっき量片面0.5~2.0g/m)を7cm×15cm(横×縦)の大きさに切断して油分を除去した後、製造された各組成物を溶融亜鉛合金めっき鋼板にバーコーター(Bar Coater)を用いて塗布した。次に、PMT(Peak Metal Temperature(素地表面温度))180±20℃の条件で硬化させて試験用試験片を製作した。
【0064】
「試験及び評価方法」
本実施例で表面処理された鋼板の物性評価方法及び評価基準は、以下のとおりである。
<評判耐食性>
ASTM B117に規定した方法に基づいて、試験片を処理した後、経時による鋼板の白錆発生率を測定した。この時、評価基準は次のとおりである。
◎:白錆発生までにかかった時間が144時間以上
○:白錆発生までにかかった時間が96時間以上144時間未満
△:白錆発生までにかかった時間が55時間以上96時間未満
×:白錆発生までにかかった時間が55時間未満
<加工部耐食性>
試験片をエリクセン試験機(Erichsen tester)を用いて6mmの高さに押し上げた後、24時間が経過したときに白錆発生の程度を測定した。この時、評価基準は次のとおりである。
◎:48時間経過後白錆発生面積5%未満
△:48時間経過後白錆発生面積5%以上7%未満
×:48時間経過後白錆発生面積7%以上
<耐黒変性>
試験片を50℃、相対湿度95%に維持される恒温恒湿器に120時間放置することにより、試験前/後の試験片の色相変化(色差:ΔE)を観察した。この時、評価基準は次のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
<耐アルカリ性>
試験片をアルカリ脱脂溶液に60℃、2分間沈積後に水洗、Air blowing後、前/後色差(ΔE)を測定した。アルカリ脱脂溶液は、大韓パーカライジングFinecleaner L 4460 A:20g/2.4L+L 4460 B 12g/2.4L(pH=12)を使用した。この時、評価基準は次のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
<溶液安定性>
表面処理組成物を容器に入れて50℃温度の恒温オーブン中に入れ、7日間保管した後、沈殿物発生の有無を目視観察し、粘度変化を測定した。この時、評価基準は次のとおりである。
○:沈殿発生なし、粘度変化1cP未満
△:沈殿発生なし、粘度変化1cP以上5cP未満
×:沈殿発生、または粘度変化5cP以上
【0065】
「表面処理組成物の成分」
実施例で用いられた表面処理組成物の成分は、以下のとおりである:
-高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂:重量平均分子量が150,000のポリウレタン樹脂
-低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂(補助樹脂1):重量平均分子量が50,000のポリウレタン樹脂
-アクリル-ウレタン補助樹脂(補助樹脂2):メチルメタアクリレート(MMA)及びブチルアクリレート(BA)の構造単位を含むアクリル樹脂と重量平均分子量が100,000のポリカーボネート系ウレタン樹脂の共重合樹脂
-硬化剤:メラミン系硬化剤(CYMEL 303)
-無機添加剤:チタニアゾル化合物
-シランカップリング剤:ビニルトリエポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが1:1:1の重量比で混合されたシランカップリング剤
-密着増進剤:リン酸エステル化合物
-着色顔料:アゾ系有機顔料
-顔料安定化剤:カルボキシル系高分子
-溶媒:水とエタノールの混合溶媒
【0066】
(実施例1:樹脂混合物の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表1に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0067】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表1に記載した。
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1を参照すると、樹脂混合物の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例1~3は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、樹脂混合物をあまりにも少なく含んでいる比較例1は平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が不良な結果を示し、樹脂混合物をあまりにも多く含んでいる比較例2は平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、溶液安定性が不良な結果を示した。
【0070】
(実施例2:主剤樹脂と補助樹脂の含有量の比率による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を含む樹脂混合物80重量%、硬化剤10重量%、無機添加剤4重量%、シランカップリング剤4重量%、密着増進剤0.5重量%、着色顔料1重量%、顔料安定化剤0.5重量%を含む表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0071】
上記樹脂混合物において、主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を下記表2に記載された重量比で混合された。
【0072】
上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価し、評価結果を下記表2に記載した。
【0073】
【表2】
【0074】
表2を参照すると、主剤樹脂と補助樹脂の重量比が本発明が提案する含有量の比率を満たす発明例4~7は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、水溶性主剤樹脂をあまりにも少なく含んでいる比較例3は、平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が不良な結果を示し、補助樹脂1及び補助樹脂2をあまりにも少なく含んでいる比較例4は加工部耐食性、耐黒変性が不良な結果を示した。
【0075】
(実施例3:硬化剤の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表3に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0076】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表3に記載した。
【0077】
【表3】
【0078】
上記表3を参照すると、メラミン系硬化剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例8~10は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、メラミン系硬化剤をあまりにも少なく含んでいる比較例5は、溶液安定性を除いた全ての物性が不良な結果を示し、メラミン系硬化剤をあまりにも少なく含んでいる比較例6は、耐アルカリ性、溶液安定性が不良な結果を示した。
【0079】
(実施例4:無機添加剤の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表4に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0080】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表4に記載した。
【0081】
【表4】
【0082】
上記表4を参照すると、無機添加剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例11~13は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、無機添加剤をあまりにも少なく含んでいる比較例7は平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性が不良な結果を示し、無機添加剤をあまりにも多く含んでいる比較例8は、平板耐食性、加工部耐食性が不良な結果を示した。
【0083】
(実施例5:シランカップリング剤の含有量及び種類に応じた物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表5に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0084】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表5に記載した。
【0085】
【表5】
【0086】
上記表5を参照すると、シランカップリング剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例14~16は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、シランカップリング剤をあまりにも少なく含んでいる比較例9は平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性が不良な結果を示し、シランカップリング剤をあまりにも多く含んでいる比較例10は、皮膜の乾燥度が高くなってハード(Hard)な皮膜が形成され、加工後耐食性が脆く、耐黒変性が不良な結果を示した。
【0087】
一方、上記発明例15に係る組成を有する表面処理組成物についてシランカップリング剤を下記表6に記載されたシランカップリング剤に変更して表面処理組成物を製造し、上述と同様の方法で試験片を製作し、平板耐食性を評価してその結果を表6に記載した。
【0088】
【表6】
【0089】
上記表6を参照すると、発明例17~50は、平板耐食性が良好(○)または優秀(◎)な結果を示した。特に、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエポキシシラン及びメチルトリメトキシシランを2:1:2の重量比で用いた発明例46の場合、144時間以上経過した後に発生した白錆面積が0%で最も優れた結果を示した。
【0090】
(実施例6:密着増進剤の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表7に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0091】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表7に記載した。
【0092】
【表7】
【0093】
上記表7を参照すると、密着増進剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例51~53は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、密着増進剤をあまりにも少なく含んでいる比較例11は平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が不良な結果を示し、密着増進剤をあまりにも多く含んでいる比較例12は溶液安定性が不良な結果を示した。
【0094】
(実施例7:着色顔料の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表8に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0095】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。表面色相の発現程度は、表面処理組成物を処理した試験用試験片を目視で観察して、色相発現程度を優秀(◎)、良好(○)、不良(X)に区分した。評価結果を下記表8に記載した。
【0096】
【表8】
【0097】
上記表8を参照すると、着色顔料の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例54~56は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、着色顔料をあまりにも少なく含んでいる比較例13は表面色相の発現が不良な結果を示しており、着色顔料をあまりにも多く含んでいる比較例14は平板耐食性、加工部耐食性、溶液安定性が不良な結果を示した。
【0098】
(実施例8:顔料安定化剤の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表9に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0099】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、光沢度を評価した。光沢度は、表面処理組成物を処理した試験用試験片に対して入射角60°で光沢度測定機を用いて測定した。測定結果が80以上であれば良好(○)、80未満であれば不良(X)とした。評価結果を下記表9に記載した。
【0100】
【表9】
【0101】
上記表9を参照すると、顔料安定化剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例57~59は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、顔料安定化剤をあまりにも少なく含んでいる比較例15は溶液安定性が不良な結果を示し、顔料安定化剤をあまりにも多く含んでいる比較例16は光沢度が不良な結果を示した。
【0102】
(実施例9:皮膜層の厚さ及び乾燥温度による物性変化)
試験用試験片に発明例2に係る表面処理組成物をバー(BAR)コーティングし、熱風乾燥炉で乾燥させた。但し、上記表面処理組成物において、樹脂混合物は、発明例6により主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を50:25:25で混合して製造し、シランカップリング剤は発明例46により3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエポキシシラン及びメチルトリメトキシシランを2:1:2の重量比で混合して用いられた。
【0103】
皮膜層の厚さとPMT温度を下記表10に記載されたように制御した。
【0104】
【表10】
【0105】
上記表10に示されたように、1~10μmの厚さの皮膜層が形成された発明例60~63は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、形成された皮膜が薄すぎる比較例17は、平板耐食性、耐黒変性及び耐アルカリ性で普通(△)の結果を示し、加工部耐食性は不良な結果を示した。一方、厚すぎる皮膜が形成された比較例18は加工部耐食性が不良な結果を示しており、発明例63と比較して向上する物性がないため、経済的側面から10μmを超過する皮膜厚さは要求されない。一方、上記表10に示されたように、70~250℃で皮膜を乾燥させて皮膜層を形成した発明例64~66は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、乾燥温度が非常に低い比較例19は、皮膜が十分に乾燥されず、全ての物性で不良な結果を示した。一方、乾燥温度が非常に高い比較例20は、空気冷却過程(水冷)の間、鋼板で発生した水蒸気の結露現象による鋼板上のヒュームドロップにより耐黒変性が不良な結果を示した。以上で、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物、これを用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びこの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、純粋亜鉛めっき鋼板に比べて、赤錆に対する耐食性に優れた鋼材として、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)を含有した溶融亜鉛合金めっき層を有する鋼板は、露出面のほとんどが亜鉛(Zn)または亜鉛合金(Zn alloy)で構成され、一般的な生活環境や特に湿潤雰囲気に晒される場合、表面に白錆の発錆現象が起こる。また、めっき層に含まれているマグネシウム及びアルミニウムは、亜鉛より酸素親和力が高いため、亜鉛に結合する酸素が不足する場合、黒変現象が発生しやすい。
【0003】
従来には、防錆処理の一環として、金属表面を5~100mg/mのクロメートで前処理した後、有機皮膜を形成した。しかし、前処理剤に含まれるクロム(Cr)などの重金属による付加的な前処理設備と工程の必要性とともに、重金属廃水による作業者の安全性が問題となった。また、水洗水及び廃水などで発生する6価クロム含有溶液は、特殊な処理工程により処理する必要があるため、製造費用が上昇するという問題があり、クロメート処理されためっき鋼板も使用中または廃棄時にクロムイオンが溶出する問題があって、環境汚染の問題が深刻であった。
【0004】
このような問題を解決しながら耐食性を確保するために、従来技術はクロムが含有されていない耐食用金属コーティング剤などの表面処理剤を開発した。一例として、特許文献1及び特許文献2には、重リン酸アルミニウムを含有したり、タンニン酸に酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、イミダゾールなどの芳香族カルボン酸と界面活性剤などの組み合わせを介して皮膜物質を形成する技術が開示されているが、これらは耐食性が劣化するという問題点がある。特許文献3には、炭酸ジルコニウム、バナジルイオン及びジルコニウム化合物などで構成された表面処理剤が開示されているが、これは耐食性が良好であるのに対し、耐黒変性に脆弱であるという問題点がある。
【0005】
一方、特許文献4にはチタン系、ジルコニウム系、リン酸系、モリブデン系化合物などで構成された表面処理剤が開示されているが、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などが用いられた溶融亜鉛合金めっき鋼板では、黒変現象が抑制できないという問題がある。特許文献5には、モリブデン酸アンモニウム、水分散ウレタン樹脂、イソプロピルアミン、炭酸ジルコニウムアンモニウム、エポキシ系シランカップリング剤、シリカゾルで構成された表面処理剤が開示されているが、十分な耐食性を付与することができないという問題点がある。
【0006】
一方、鉄鋼素材を建築資材用に使用するためには、表面特性が美麗である必要があり、顧客がこれを使用する際に、既存の溶融亜鉛めっき鋼材及び溶融亜鉛合金めっき鋼材と素材表面との区別が可能であるように固有の色相を付与する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本公開特許公報昭53-28857号公報
【特許文献2】日本公開特許公報昭51-71233号公報
【特許文献3】日本公開特許公報2002-332574号公報
【特許文献4】日本登録特許公報平7-096699号公報
【特許文献5】日本公開特許公報2005-146340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような実情に鑑みて案出されたものであり、建築資材として用いられる三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び固有の表面色相特性を付与することができる表面処理組成物を提供することを一つの目的とする。
【0009】
また、顔料の分散安定性に優れ、長時間保管後の使用時にも沈殿及び凝集が発生せず、溶融亜鉛合金めっき鋼板に優れた表面光沢を付与することができる表面処理組成物を提供することを他の目的とする。
【0010】
また、環境汚染物質であるクロムなどの重金属成分を全く含まないため、人体に無害であり、環境汚染による問題を生じさせない表面処理組成物を提供することを他の目的とする。
【0011】
また、本発明は、優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、及び固有の表面色相特性を有する溶融亜鉛合金めっき鋼板及びこの製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によると、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂、及びアクリル-ウレタン補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;メラミン系硬化剤5~25重量%;無機添加剤0.5~10重量%;シランカップリング剤0.5~10重量%;密着増進剤0.1~2重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含む表面処理組成物が提供される。
【0013】
本発明の一実施形態によると、鋼板;上記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層;及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された表面処理皮膜層を含み、上記表面処理皮膜層は、上記表面処理組成物から形成された、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態によると、三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に上記表面処理組成物をコーティングする段階;及び上記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表面処理組成物を溶融亜鉛合金めっき鋼板上にコーティングして表面処理皮膜層を形成することにより、優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、及び固有の表面色相特性を有する溶融亜鉛合金めっき鋼板を提供することができる。
【0016】
また、本発明に係る表面処理組成物は顔料の分散安定性に優れ、長時間保管後の使用時にも沈殿及び凝集が発生せず、溶融亜鉛合金めっき鋼板に優れた表面光沢を付与することができる。
【0017】
また、本発明に係る表面処理組成物は、環境汚染物質であるクロムなどの重金属成分を全く含まないため、人体に無害であり、環境汚染による問題を引き起こさない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、様々な実施形態を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明は、溶液安定性に優れ、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に適用する際に、優れた平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を有し、優れた表面特性を有する三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物に関するものである。また、本発明は、上記表面処理組成物を用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
【0020】
本発明の一実施形態に係る表面処理組成物は、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂、及びアクリル-ウレタン補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;メラミン系硬化剤5~25重量%;無機添加剤0.5~10重量%;シランカップリング剤0.5~10重量%;密着増進剤0.1~2重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含むことができる。
【0021】
一実施形態において、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に優れた耐食性、耐水性、及び耐溶剤性を付与することができる成分である。上記高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂は、これに限定されるものではないが、シリコンポリマーとポリカーボネートポリオールから合成されることができ、合成時に三次元(Trimer)イソシアネート高分子を使用することによって自己架橋結合(Self-Crosslinking)の特性を有する。
【0022】
高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100,000~200,000であることができる。重量平均分子量が100,000未満の場合、十分な耐食性の確保が困難であるのに対し、重量平均分子量が200,000を超過する場合、溶液安定性が低下し、皮膜の硬度が大きくなって加工性が低下するという問題が発生することがある。
【0023】
高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-20℃~-10℃であることができる。ガラス転移温度が-20℃未満の場合、十分な耐食性の確保が難しいのに対し、ガラス転移温度が-10℃を超過する場合、溶液安定性が低下し、皮膜の硬度が大きくなって加工性が低下するという問題が発生することがある。
【0024】
一実施形態において、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に軟質特性を付与して加工性及び密着性を高めることができる成分である。上記低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、これに限定されるものではないが、シリコンポリマーとポリカーボネートポリオールから合成されることができる。低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂とは異なり、自己架橋結合の特性を有しない。
【0025】
低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂の重量平均分子量は30,000~70,000であることができる。重量平均分子量が30,000未満の場合、皮膜の密度低下により十分な耐食性の確保が困難であるのに対し、重量平均分子量が70,000を超過する場合、皮膜に軟質特性の付与効果が不十分であって加工性及び密着性が低下するという問題が発生することがある。
【0026】
低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30℃~-20℃であることができる。ガラス転移温度が-30℃未満の場合、皮膜の密度低下により十分な耐食性の確保が難しいのに対し、ガラス転移温度が-20℃を超過する場合、皮膜に軟質特性の付与効果が不十分であって加工性及び密着性が低下するという問題が発生することがある。
【0027】
一実施形態において、アクリル-ウレタン補助樹脂は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に緻密な皮膜を形成し、耐熱密着性を向上させるための成分である。アクリル-ウレタン補助樹脂は、アクリル樹脂とポリカーボネート系ウレタン樹脂との共重合体であることができる。アクリル樹脂は、メチルメタアクリレート(MMA)及びブチルアクリレート(BA)からなる群から選択された1種以上の構造単位を含むことができる。
【0028】
ポリカーボネート系ウレタン樹脂の重量平均分子量は80,000~120,000であることができる。重量平均分子量が80,000未満の場合、皮膜の緻密度及び耐熱密着性の向上効果が十分でないのに対し、重量平均分子量が120,000を超過する場合、皮膜の硬質性が過度であって加工性が低下するという問題が発生することがある。
【0029】
ポリカーボネート系ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃~70℃であることができる。ガラス転移温度が50℃未満の場合、耐熱密着性の向上効果が十分でないのに対し、ガラス転移温度が70℃を超過する場合、皮膜の硬質性が過度であって加工性が低下するという問題が発生することがある。
【0030】
樹脂混合物は、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂:低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂:アクリル-ウレタン補助樹脂が1:4.5:4.5~9:0.5:0.5、好ましくは1:0.5:0.5~9:0.5:0.5、より好ましくは2:0.5:0.5~9:0.5:0.5の重量比で混合されたものであることができる。例えば、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂:低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂:アクリル-ウレタン補助樹脂を2:0.5:0.5の重量比で混合して使用することができ、より好ましくは1:0.5:0.5の重量比で混合して使用することができる。
【0031】
樹脂混合物中の高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂の含有量が少なすぎる場合、鋼板の平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が低下することがある。一方、樹脂混合物中の高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂の含有量が多すぎる場合、鋼板の加工部耐食性、耐黒変性が低下されることがある。
【0032】
一実施形態において、樹脂混合物の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して70~90重量%であることができる。樹脂混合物の含有量が70重量%未満の場合、十分な耐食性及び耐アルカリ性確保が困難であり、樹脂混合物の含有量が90重量%を超過する場合には、表面処理組成物内の硬化剤及び無機化合物の含有量が比較的少なくなるため、耐食性が却って低下し、溶液安定性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0033】
一実施形態において、メラミン系硬化剤は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物の主剤樹脂及び補助樹脂と反応して緻密な架橋結合を形成することによって強固な塗膜を形成する役割を果たすことができる。また、上記メラミン系硬化剤は、メトキシメチル基、メチロール基及びイミノ基からなる群から選択された1種以上の官能基を含むことができ、上記官能基がカルボキシル基を含有する骨格重合体樹脂と架橋することができる。このとき、骨格重合体樹脂は、本発明の一実施形態による主剤樹脂、補助樹脂を意味する。
【0034】
メラミン系硬化剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して5~25重量%であることができる。メラミン系硬化剤の含有量が5重量%未満の場合、十分な架橋結合を形成することができなくて、物性向上が期待できず、メラミン系硬化剤の含有量が25重量%を超過する場合、過度の架橋結合により溶液の安定性が低下して、経時により固形化する現象が発生する可能性がある。
【0035】
一実施形態において、無機添加剤は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物を用いて表面処理される三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に耐水性及び耐黒変性を付与するための成分である。上記無機添加剤としては、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル及びジルコニアゾルからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0036】
無機添加剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.5~10重量%であることができる。無機添加剤の含有量が0.5重量%未満の場合、十分な耐水性及び耐黒変性の確保が期待できず、無機添加剤の含有量が10重量%を超過する場合、耐黒変性の向上効果が僅かであり、耐食性が低下するという問題点が発生することがある。
【0037】
一実施形態において、シランカップリング剤は、表面処理組成物の水溶性有機樹脂と無機添加剤との間の強固な結合を形成するために、上記水溶性有機樹脂を変性させてカップリング結合反応を行うための成分である。シランカップリング剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.5~10重量%であることができる。シランカップリング剤の含有量が0.5重量%未満の場合、有機樹脂と無機添加剤とのカップリング結合の際に、求められるシランカップリング剤の量が不足して耐食性の確保が難しく、シランカップリング剤の含有量が10重量%を超過する場合には、有機樹脂との反応後に、未反応されたシランカップリング剤が存在して加工後の耐食性が低下するという問題点がある。
【0038】
シランカップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエチルオルソシリケート、テトラメチルオルソシリケート、3-アミノプロピルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-(1,3ジメチルブチリデン)-3-(トリエポキシシラン)-1-プロパンアミン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及びN-[2-(ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択された1種以上を使用することができる。
【0039】
上記シランカップリング剤は、ギ酸、酢酸、リン酸、塩酸、及び硝酸からなる群から選択された1種以上の酸によって加水分解されることができる。
【0040】
一実施形態において、密着増進剤は、鋼板と樹脂との密着性を向上させて皮膜の剥離を防止し、高湿環境下でめっき層まで水分が浸透することを防止するための成分である。密着増進剤としては、リン酸エステル(Ester phosphate)及びリン酸アンモニウム(Ammonium phosphate)からなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0041】
密着増進剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.1~2重量%であることができる。密着増進剤の含有量が0.1重量%未満の場合、密着性向上及び水分浸透の防止効果が不十分であり、密着増進剤の含有量が2重量%を超過する場合には、表面処理組成物の溶液安定性が低下するという問題点がある。
【0042】
一実施形態において、着色顔料は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に色相を付与して、美麗な表面特性を付与するための成分である。着色顔料としては、チタン、鉛、鉄、銅及びクロムからなる群から選択された1種以上の無機顔料;及びアゾ系有機顔料;からなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0043】
着色顔料の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.1~2重量%であることができる。着色顔料の含有量が0.1重量%未満の場合、十分な色相の発現が困難であり、着色顔料の含有量が2重量%を超過する場合、溶液安定性及び耐食性が低下するという問題点が発生する可能性がある。
【0044】
一実施形態において、顔料安定化剤は、着色顔料をキャッピング(Capping)させて皮膜内で着色顔料を均一に分散させ、これによって皮膜の光沢度を向上させるための成分である。上記顔料安定化剤は、カルボキシル系高分子であることができるが、これに限定されない。
【0045】
顔料安定化剤の含有量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.1~1重量%であることができる。顔料安定化剤の含有量が0.1重量%未満の場合、十分な溶液安定性の確保が難しく、顔料安定化剤の含有量が1重量%を超過する場合、皮膜内の過度の残留成分により皮膜の光沢が却って低下するという問題点が発生することがある。
【0046】
一実施形態において、表面処理組成物は、各成分を希釈させるための溶媒として水を含み、上記水は脱イオン水または蒸留水であることができる。上記溶媒は、本発明の各構成成分の他に残部として含まれるものであり、その含有量は60~80重量%であることができる。さらに、一実施形態に係る表面処理組成物は、溶液安定性を確保するために補助溶媒としてアルコールをさらに含むことができ、上記アルコールはエタノール、イソプロピルアルコールであることができる。上記アルコールは、全溶媒中の3~10重量%含まれることができる。
【0047】
本発明の一実施形態に係る水溶性有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理組成物で表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、耐食性、耐黒変性に優れるだけでなく、表面色相及び光沢に優れる。また、本発明の一実施形態に係る表面処理組成物は、有害環境物質である6価クロムを含有せず、人体に無害な水溶性有機樹脂及び無機化合物を主成分として含むことにより、人体に対する被害及び環境汚染の問題を防止する効果がある。
【0048】
本発明の一実施形態によると、上述の表面処理組成物で表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板が提供される。
【0049】
具体的には、上記表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、鋼板、上記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層、及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層を含むことができる。
【0050】
上記素地鋼板及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、界面に形成されたAl濃化層を含み、上記Al濃化層の占有面積率は70%~100%であることができる。また、上記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、Al:0.2~15重量%、Mg:0.5~3.5重量%、残部Zn及び不可避不純物を含むことができる。
【0051】
一実施形態において、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、素地鉄及びZn-Al-Mg系合金めっき層の界面に形成されたAl濃化層を含み、Al濃化層の占有面積率は70%~100%、より好ましくは73%~100%であることができる。ここで、占有面積率とは、めっき鋼板の表面から素地鉄の厚さ方向に投影してみたとき、3次元的な曲げなどを考慮せずに、平面を仮定する場合の素地鉄の面積に対するAl濃化層の面積の比を意味する。Al濃化層の占有面積率を70%以上確保する場合、Al濃化層は微細な粒子が連続的に形成された形態を有することになり、めっき性及びめっき密着性を著しく向上させることができる。
【0052】
本発明の一実施形態による三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板において、Mgは三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の耐食性向上のために非常に重要な役割を果たし、腐食環境下でめっき層の表面に緻密な亜鉛水酸化物系腐食生成物を形成することにより、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の腐食を効果的に防止する。本発明において、目的とする耐食効果を確保するためには、めっき層にMgが0.5重量%以上含まれる必要があり、より好ましくは0.9重量%以上含まれる必要がある。但し、その含有量が過度の場合、めっき浴表面にMg酸化性ドロスが急増して、微量元素添加による酸化防止効果が相殺される。これを防止するための側面で、Mgはめっき層に3.5重量%以下含まれる必要があり、より好ましくは3.2重量%以下含まれる必要がある。
【0053】
本発明の一実施形態に係る三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板において、Alはめっき浴内のMg酸化物ドロス形成を抑制し、めっき浴内のZn及びMgと反応してZn-Al-Mg系金属間化合物を形成することにより、めっき鋼板の耐腐食性を向上させる。上記効果を得るためには、めっき層にAlが0.2重量%以上含まれる必要があり、より好ましくは0.9重量%以上含まれる必要がある。但し、その含有量が過度の場合、めっき鋼材の溶接性及びリン酸塩処理性が劣化することがある。これを防止するための側面で、Alはめっき層に15重量%以下含まれる必要があり、より好ましくは12重量%以下含まれる必要がある。
【0054】
上記有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層は、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びアクリル-ウレタン補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;メラミン系硬化剤5~25重量%;無機添加剤0.5~10重量%;シランカップリング剤0.5~10重量%;密着増進剤0.1~2重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含む表面処理組成物から形成されることができる。上記表面処理組成物は、上述と同様の技術的特徴を有するため、重複して説明しない。
【0055】
一実施形態において、表面処理皮膜層は、上述した表面処理組成物が乾燥されて形成されたコーティング層であり、有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層に含まれる揮発性物質が全て揮発した後に残った成分に該当する。これにより、上記有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層には溶媒である水またはアルコールが含まれておらず、また、有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理成分に含まれていた溶媒も含まれていない。したがって、有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層に含まれる成分は、全固形分100重量%を基準とした含有量に該当する。
【0056】
本発明の一実施形態によると、三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に上述した表面処理組成物をコーティングする段階;及び上記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法が提供される。
【0057】
一実施形態において、表面処理組成物は2.5~50μmの厚さでコーティングされることができる。また、コーティングされた表面処理組成物は、乾燥工程を経て乾燥皮膜層を形成し、上記乾燥皮膜層の厚さは1~10μmであることができる。表面処理組成物のコーティング厚さが2.5μm未満の場合、鋼板粗さの酸部位に表面処理組成物が非常に薄く塗布されて、耐食性が低下するという問題が発生することがあり、厚さが50μmを超過する場合には、皮膜層が非常に厚く形成されて加工性が劣化し、溶液処理の費用上昇により経済性に問題が発生する可能性がある。
【0058】
表面処理組成物をコーティングする方法は、通常的に行われるコーティング方法であれば特に制限しないが、例えば、ロールコーティング、スプレー、浸漬、スプレースキージング、及び浸漬スキージングから選択されたいずれか一つのコーティング方法で行われることが好ましい。
【0059】
三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上にコーティングされた表面処理組成物を乾燥する工程は、素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準に70~250℃の温度で行われることが好ましい。乾燥温度が素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準に70℃未満であると、有機樹脂の硬化反応が完璧に行われず、強固な皮膜構造が形成されず、耐食性及び耐アルカリ性が劣ることがある。一方、乾燥温度が素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準に250℃を超過すると、水冷過程の間に水蒸気及びヒューム発生により作業生産性が悪くなり、蒸発した水蒸気が乾燥設備の上部に凝縮される結露現象により製品の表面品質が劣る可能性がある。
【0060】
一方、上記乾燥工程は、熱風乾燥炉または誘導加熱炉で実施することが好ましい。熱風乾燥炉を用いて表面処理組成物を乾燥する場合、熱風乾燥炉の内部温度は、100~300℃であることが好ましい。誘導加熱炉を用いて表面処理組成物を乾燥する場合、誘導加熱炉に印加される電流は1000~5000Aであることが好ましく、1500~3500Aであることがさらに好ましい。上記熱風乾燥炉の内部温度が100℃未満であるか、誘導加熱炉に印加される電流が1000A未満であると、表面処理組成物の硬化反応が完璧に行われず、耐食性及び耐アルカリ性が劣ることがある。また、上記熱風乾燥炉の内部温度が300℃を超過するか、誘導加熱炉に印加される電流が5000Aを超過すると、水冷過程の間に水蒸気及びヒューム発生により作業生産性が悪くなり、蒸発した水蒸気が乾燥設備の上部に凝縮される結露現象により製品の表面品質が劣化することがある。
【0061】
また、上記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成した後、上記表面処理皮膜層を水冷させて最終的に表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板を提供することができる。
【0062】
本発明の一実施形態による三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法は、連続工程で行われることができ、上記連続工程の速度は80~120mpmであることが好ましい。連続工程の速度が80mpm未満であると、生産性が低下するという問題点が発生する可能性があり、120mpmを超過すると、表面処理組成物が乾燥される工程で溶液が飛散して表面欠陥を発生させることがある。
【実施例
【0063】
(実施例)
「試験用試験片の製作」
三元系溶融亜鉛合金めっき層が重量%で、Mg:1.5%、Al:1.5%、残部Znからなる三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板(めっき量片面0.5~2.0g/m)を7cm×15cm(横×縦)の大きさに切断して油分を除去した後、製造された各組成物を溶融亜鉛合金めっき鋼板にバーコーター(Bar Coater)を用いて塗布した。次に、PMT(Peak Metal Temperature(素地表面温度))180±20℃の条件で硬化させて試験用試験片を製作した。
【0064】
「試験及び評価方法」
本実施例で表面処理された鋼板の物性評価方法及び評価基準は、以下のとおりである。
<評判耐食性>
ASTM B117に規定した方法に基づいて、試験片を処理した後、経時による鋼板の白錆発生率を測定した。この時、評価基準は次のとおりである。
◎:白錆発生までにかかった時間が144時間以上
○:白錆発生までにかかった時間が96時間以上144時間未満
△:白錆発生までにかかった時間が55時間以上96時間未満
×:白錆発生までにかかった時間が55時間未満
<加工部耐食性>
試験片をエリクセン試験機(Erichsen tester)を用いて6mmの高さに押し上げた後、48時間が経過したときに白錆発生の程度を測定した。この時、評価基準は次のとおりである。
◎:48時間経過後白錆発生面積5%未満
△:48時間経過後白錆発生面積5%以上7%未満
×:48時間経過後白錆発生面積7%以上
<耐黒変性>
試験片を50℃、相対湿度95%に維持される恒温恒湿器に120時間放置することにより、試験前/後の試験片の色相変化(色差:ΔE)を観察した。この時、評価基準は次のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
<耐アルカリ性>
試験片をアルカリ脱脂溶液に60℃、2分間沈積後に水洗、Air blowing後、前/後色差(ΔE)を測定した。アルカリ脱脂溶液は、大韓パーカライジングFinecleaner L 4460 A:20g/2.4L+L 4460 B 12g/2.4L(pH=12)を使用した。この時、評価基準は次のとおりである。
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
×:ΔE>4
<溶液安定性>
表面処理組成物を容器に入れて50℃温度の恒温オーブン中に入れ、7日間保管した後、沈殿物発生の有無を目視観察し、粘度変化を測定した。この時、評価基準は次のとおりである。
○:沈殿発生なし、粘度変化1cP未満
△:沈殿発生なし、粘度変化1cP以上5cP未満
×:沈殿発生、または粘度変化5cP以上
【0065】
「表面処理組成物の成分」
実施例で用いられた表面処理組成物の成分は、以下のとおりである:
-高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂:重量平均分子量が150,000のポリウレタン樹脂
-低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂(補助樹脂1):重量平均分子量が50,000のポリウレタン樹脂
-アクリル-ウレタン補助樹脂(補助樹脂2):メチルメタアクリレート(MMA)及びブチルアクリレート(BA)の構造単位を含むアクリル樹脂と重量平均分子量が100,000のポリカーボネート系ウレタン樹脂の共重合樹脂
-硬化剤:メラミン系硬化剤(CYMEL 303)
-無機添加剤:チタニアゾル化合物
-シランカップリング剤:ビニルトリエポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが1:1:1の重量比で混合されたシランカップリング剤
-密着増進剤:リン酸エステル化合物
-着色顔料:アゾ系有機顔料
-顔料安定化剤:カルボキシル系高分子
-溶媒:水とエタノールの混合溶媒
【0066】
(実施例1:樹脂混合物の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表1に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0067】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表1に記載した。
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1を参照すると、樹脂混合物の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例1~3は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、樹脂混合物をあまりにも少なく含んでいる比較例1は平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が不良な結果を示し、樹脂混合物をあまりにも多く含んでいる比較例2は平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、溶液安定性が不良な結果を示した。
【0070】
(実施例2:主剤樹脂と補助樹脂の含有量の比率による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を含む樹脂混合物80重量%、硬化剤10重量%、無機添加剤4重量%、シランカップリング剤4重量%、密着増進剤0.5重量%、着色顔料1重量%、顔料安定化剤0.5重量%を含む表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0071】
上記樹脂混合物において、主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を下記表2に記載された重量比で混合された。
【0072】
上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価し、評価結果を下記表2に記載した。
【0073】
【表2】
【0074】
表2を参照すると、主剤樹脂と補助樹脂の重量比が本発明が提案する含有量の比率を満たす発明例4~7は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、水溶性主剤樹脂をあまりにも少なく含んでいる比較例3は、平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が不良な結果を示し、補助樹脂1及び補助樹脂2をあまりにも少なく含んでいる比較例4は加工部耐食性、耐黒変性が不良な結果を示した。
【0075】
(実施例3:硬化剤の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表3に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0076】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表3に記載した。
【0077】
【表3】
【0078】
上記表3を参照すると、メラミン系硬化剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例8~10は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、メラミン系硬化剤をあまりにも少なく含んでいる比較例5は、溶液安定性を除いた全ての物性が不良な結果を示し、メラミン系硬化剤をあまりにも少なく含んでいる比較例6は、耐アルカリ性、溶液安定性が不良な結果を示した。
【0079】
(実施例4:無機添加剤の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表4に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0080】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表4に記載した。
【0081】
【表4】
【0082】
上記表4を参照すると、無機添加剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例11~13は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、無機添加剤をあまりにも少なく含んでいる比較例7は平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性が不良な結果を示し、無機添加剤をあまりにも多く含んでいる比較例8は、平板耐食性、加工部耐食性が不良な結果を示した。
【0083】
(実施例5:シランカップリング剤の含有量及び種類に応じた物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表5に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0084】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表5に記載した。
【0085】
【表5】
【0086】
上記表5を参照すると、シランカップリング剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例14~16は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、シランカップリング剤をあまりにも少なく含んでいる比較例9は平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性が不良な結果を示し、シランカップリング剤をあまりにも多く含んでいる比較例10は、皮膜の乾燥度が高くなってハード(Hard)な皮膜が形成され、加工部耐食性が脆く、耐黒変性が不良な結果を示した。
【0087】
一方、上記発明例15に係る組成を有する表面処理組成物についてシランカップリング剤を下記表6に記載されたシランカップリング剤に変更して表面処理組成物を製造し、上述と同様の方法で試験片を製作し、平板耐食性を評価してその結果を表6に記載した。
【0088】
【表6】
【0089】
上記表6を参照すると、発明例17~50は、平板耐食性が良好(○)または優秀(◎)な結果を示した。特に、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエポキシシラン及びメチルトリメトキシシランを2:1:2の重量比で用いた発明例46の場合、144時間以上経過した後に発生した白錆面積が0%で最も優れた結果を示した。
【0090】
(実施例6:密着増進剤の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表7に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0091】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表7に記載した。
【0092】
【表7】
【0093】
上記表7を参照すると、密着増進剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例51~53は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、密着増進剤をあまりにも少なく含んでいる比較例11は平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性が不良な結果を示し、密着増進剤をあまりにも多く含んでいる比較例12は溶液安定性が不良な結果を示した。
【0094】
(実施例7:着色顔料の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表8に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0095】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。表面色相の発現程度は、表面処理組成物を処理した試験用試験片を目視で観察して、色相発現程度を優秀(◎)、良好(○)、不良(X)に区分した。評価結果を下記表8に記載した。
【0096】
【表8】
【0097】
上記表8を参照すると、着色顔料の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例54~56は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、着色顔料をあまりにも少なく含んでいる比較例13は表面色相の発現が不良な結果を示しており、着色顔料をあまりにも多く含んでいる比較例14は平板耐食性、加工部耐食性、溶液安定性が不良な結果を示した。
【0098】
(実施例8:顔料安定化剤の含有量による物性変化)
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、硬化剤、無機添加剤、シランカップリング剤、密着増進剤、着色顔料、顔料安定化剤を表9に記載された含有量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いた。
【0099】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述した試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、光沢度を評価した。光沢度は、表面処理組成物を処理した試験用試験片に対して入射角60°で光沢度測定機を用いて測定した。測定結果が80以上であれば良好(○)、80未満であれば不良(X)とした。評価結果を下記表9に記載した。
【0100】
【表9】
【0101】
上記表9を参照すると、顔料安定化剤の含有量が本発明が提案する含有量を満たす発明例57~59は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、顔料安定化剤をあまりにも少なく含んでいる比較例15は溶液安定性が不良な結果を示し、顔料安定化剤をあまりにも多く含んでいる比較例16は光沢度が不良な結果を示した。
【0102】
(実施例9:皮膜層の厚さ及び乾燥温度による物性変化)
試験用試験片に発明例2に係る表面処理組成物をバー(BAR)コーティングし、熱風乾燥炉で乾燥させた。但し、上記表面処理組成物において、樹脂混合物は、発明例6により主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を67:16.5:16.5で混合して製造し、シランカップリング剤は発明例46により3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエポキシシラン及びメチルトリメトキシシランを2:1:2の重量比で混合して用いられた。
【0103】
皮膜層の厚さとPMT温度を下記表10に記載されたように制御した。
【0104】
【表10】
【0105】
上記表10に示されたように、1~10μmの厚さの皮膜層が形成された発明例60~63は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、形成された皮膜が薄すぎる比較例17は、平板耐食性、耐黒変性及び耐アルカリ性で普通(△)の結果を示し、加工部耐食性は不良な結果を示した。一方、厚すぎる皮膜が形成された比較例18は加工部耐食性が不良な結果を示しており、発明例63と比較して向上する物性がないため、経済的側面から10μmを超過する皮膜厚さは要求されない。一方、上記表10に示されたように、70~250℃で皮膜を乾燥させて皮膜層を形成した発明例64~66は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、乾燥温度が非常に低い比較例19は、皮膜が十分に乾燥されず、全ての物性で不良な結果を示した。一方、乾燥温度が非常に高い比較例20は、空気冷却過程(水冷)の間、鋼板で発生した水蒸気の結露現象による鋼板上のヒュームドロップにより耐黒変性が不良な結果を示した。以上で、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の固形分100重量%に対して、
高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びアクリル-ウレタン補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;
メラミン系硬化剤5~25重量%;
無機添加剤0.5~10重量%;
シランカップリング剤0.5~10重量%;
密着増進剤0.1~2重量%;
着色顔料0.1~2重量%;及び
顔料安定化剤0.1~1重量%を含む、表面処理組成物。
【請求項2】
前記高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びアクリル-ウレタン補助樹脂は、1:4.5:4.5~9:0.5:0.5の重量比で混合された、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項3】
前記高分子量ポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃であり、重量平均分子量(Mw)が100,000~200,000である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
前記低分子量ポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-30℃~-20℃であり、重量平均分子量(Mw)が30,000~70,000である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
前記アクリル-ウレタン補助樹脂は、
メチルメタアクリレート(MMA)及びブチルアクリレート(BA)からなる群から選択された1種以上の構造単位を含むアクリル樹脂、及び
ポリカーボネート系ウレタン樹脂が共重合された、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50℃~70℃であり、重量平均分子量(Mw)80,000~120,000である、請求項5に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
前記メラミン系硬化剤は、メトキシメチル基、メチロール基、及びイミノ基からなる群から選択された1種以上の官能基を含み、
前記官能基は、カルボキシル基を含有する樹脂を架橋させる、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
前記無機添加剤は、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル及びジルコニアゾルからなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項9】
前記シランカップリング剤は、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエチルオルソシリケート、テトラメチルオルソシリケート、3-アミノプロピルトリエポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-(1,3ジメチルブチリデン)-3-(トリエポキシシラン)-1-プロパンアミン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及びN-[2-(ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項10】
前記シランカップリング剤は、ギ酸、酢酸、リン酸、塩酸、及び硝酸からなる群から選択された1種以上の酸によって加水分解される、請求項9に記載の表面処理組成物。
【請求項11】
前記密着増進剤は、リン酸エステル(Ester phosphate)及びリン酸アンモニウム(Ammonium phosphate)からなる群から選択された1種以上である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項12】
前記着色顔料は、チタン、鉛、鉄、銅及びクロムからなる群から選択された1種以上の無機顔料;及びアゾ系有機顔料からなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項13】
前記顔料安定化剤は、カルボキシル系高分子である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項14】
表面処理組成物は溶媒をさらに含み、
表面処理組成物の総重量を基準に固形分含有量が20~40重量%であり、残部溶媒である、請求項1から13のいずれか一項に記載の表面処理組成物。
【請求項15】
前記溶媒は、溶媒の総重量を基準にアルコール3~10重量%及び残部水を含む、請求項14に記載の表面処理組成物。
【請求項16】
鋼板;
前記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層;及び
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された表面処理皮膜層を含み、
前記表面処理皮膜層は、請求項1から13のいずれか一項に記載の表面処理組成物から形成された、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項17】
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、界面に形成されたAl濃化層を含み、
前記Al濃化層の占有面積率は70%~100%である、請求項16に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項18】
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、Al:0.2~15重量%、Mg:0.5~3.5重量%、残部Zn及び不可避不純物を含む、請求項16に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項19】
前記表面処理皮膜層は、厚さが1μm~10μmである、請求項16に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項20】
三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に請求項1から13のいずれか一項に記載の表面処理組成物をコーティングする段階;及び
前記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項21】
前記表面処理組成物を2.5μm~50μmの厚さでコーティングする、請求項20に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【国際調査報告】