(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20230914BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20230914BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20230914BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H05K7/20 F
H01L23/36 M
G06F1/20 B
G06F1/20 C
G06F1/16 312E
G06F1/16 312F
G06F1/16 312G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514472
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 US2021048979
(87)【国際公開番号】W WO2022051571
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517182930
【氏名又は名称】ネオグラフ ソリューションズ,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー,グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】フィンクバイナー,チャド
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ, ロバート エー.
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322AB06
5E322EA11
5E322FA04
5E322FA09
5F136BC05
5F136BC07
5F136EA12
5F136FA23
5F136FA82
(57)【要約】
熱管理システムを有する電子デバイスが提供される。この熱管理システムは、少なくとも150ミクロンの厚さをもつモノリシックなグラファイト素子を有する。このグラファイト素子は、少なくとも約700 W/mKの熱伝導率をもつ。このグラファイト素子は、内部接着剤を有さず、すなわち、このグラファイト素子は、モノリシックである。この熱管理システムは、複数の電子部品を備える熱源と機能的に接触している。好ましくは、この複数の電子部品は、積層されたマザーボード上に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約150ミクロンの厚さと少なくとも約700 W/mKの熱伝導率をもち、内部接着剤を有さない、グラファイト素子を含む熱管理システムを備える、電子デバイスであって、
前記熱管理システムは、熱源と機能的に接触し、
前記熱源は、複数の電子部品を備え、
前記複数の電子部品は、積層されたマザーボードに配置される、電子デバイス。
【請求項2】
前記デバイスは15 mm以下の厚さをもつ、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記グラファイト素子は、モノリシックである、請求項1又は2の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記デバイスは、前記デバイスの第一の主面に第一のユーザインタフェースを、前記デバイスの第二の主面に第二のユーザインタフェースを有する、請求項1~3の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記グラファイト素子の前記厚さは、少なくとも約200ミクロンに含まれる、請求項1~4の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記グラファイト素子の前記厚さは、少なくとも約200ミクロンに含まれ、
前記熱伝導率は、少なくとも約800 W/mKに含まれる、請求項1~5の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記熱伝導率は、少なくとも約1000 W/mKに含まれる、請求項1~6の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記熱管理システムは、一つ以上のフィンを有さない、請求項1~7の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記熱管理システムは、略平面状の主体を有し、前記主体の平面の外側の向きに、前記平面状の主体から延びる前記熱管理システムの部分を有さない、請求項1~7の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記グラファイト素子は、3.8 cm2/s超過の拡散率をもつ、請求項1~9の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項11】
前記熱管理システムは、少なくとも一つの電子部品に接着される、請求項1~10の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記熱源に隣接している前記熱管理システムの部分の表面積は、前記熱源の表面積より大きい、請求項1~11の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記熱管理システムは、ファン、ヒートパイプ、及びベイパーチャンバーを有さない、請求項1~12の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項14】
前記熱管理システムは、能動的冷却媒体を有さない、請求項1~13の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記熱管理システムは、前記熱源に隣接し、前記熱源と機能的に接触している第一の主面を有し、
前記第一の主面は、熱源と直接機能的に接触している第一の部分と、前記熱源と直接機能的に接触していない第二の部分と、を有する、請求項1~14の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項16】
前記第二の部分の表面積は、前記熱源の表面積より大きい、請求項15に記載の電子デバイス。
【請求項17】
前記第二の部分の前記表面積は、前記熱源の前記表面積の少なくとも50%に含まれる、請求項15に記載の電子デバイス。
【請求項18】
前記第二の部分の前記表面積は、前記熱源の前記表面積の少なくとも75%に含まれる、請求項17に記載の電子デバイス。
【請求項19】
前記第二の部分の前記表面積は、前記熱源の前記表面積と略同じである、請求項17に記載の電子デバイス。
【請求項20】
前記第二の部分の前記表面積は、前記マザーボードの前記表面積と略同じである、請求項17に記載の電子デバイス。
【請求項21】
少なくとも約150ミクロンの厚さと少なくとも約700 W/mKの熱伝導率をもち、内部接着剤を有さない、グラファイト素子を含む熱管理システムを備える、電子デバイスであって、
前記熱管理システムは、前記デバイスの熱源と機能的に接触し、
前記デバイスの厚さは、15 mm以下に含まれる、電子デバイス。
【請求項22】
前記デバイスの厚さは、10 mm以下に含まれる、請求項21に記載の電子デバイス。
【請求項23】
前記グラファイト素子は、モノリシックである、請求項21又は22に記載の電子デバイス。
【請求項24】
前記デバイスは、前記デバイスの第一の主面に第一のユーザインタフェースを、前記デバイスの第二の主面に第二のユーザインタフェースを有する、請求項21~23の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項25】
前記グラファイト素子の前記厚さは、少なくとも約200ミクロンに含まれる、請求項21~24の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項26】
前記グラファイト素子の前記厚さは、少なくとも約200ミクロンに含まれ、
前記熱伝導率は、少なくとも約800 W/mKに含まれる、請求項21~25の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項27】
前記熱伝導率は、少なくとも約1000 W/mKに含まれる、請求項21~26の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項28】
前記熱管理システムは、一つ以上のフィンを有さない、請求項21~27の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項29】
前記熱管理システムは、略平面状の主体を有し、前記主体の平面の外側の向きに、前記平面状の主体から延びる前記熱管理システムの部分を有さない、請求項21~27の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項30】
前記グラファイト素子は、3.8 cm2/s超過の拡散率をもつ、請求項21~29の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項31】
前記熱管理システムは、少なくとも一つの電子部品に接着される、請求項21~30の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項32】
前記熱源に隣接している前記熱管理システムの部分の表面積は、前記熱源の表面積より大きい、請求項21~31の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項33】
前記熱管理システムは、ファン、ヒートパイプ、及びベイパーチャンバーを有さない、請求項21~32の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項34】
前記熱管理システムは、能動的冷却媒体を有さない、請求項21~33の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項35】
前記熱管理システムは、前記熱源に隣接し、前記熱源と機能的に接触している第一の主面を有し、
前記第一の主面は、熱源と直接機能的に接触している第一の部分と、前記熱源と直接機能的に接触していない第二の部分と、を有する、請求項21~34の何れかに記載の電子デバイス。
【請求項36】
前記第二の部分の表面積は、前記熱源の表面積より大きい、請求項35に記載の電子デバイス。
【請求項37】
前記第二の部分の前記表面積は、前記熱源の前記表面積の少なくとも50%に含まれる、請求項35に記載の電子デバイス。
【請求項38】
前記第二の部分の前記表面積は、前記熱源の前記表面積の少なくとも75%に含まれる、請求項37に記載の電子デバイス。
【請求項39】
前記第二の部分の前記表面積は、前記熱源の前記表面積と約同じである、請求項37に記載の電子デバイス。
【請求項40】
前記第二の部分の前記表面積は、前記マザーボードの前記表面積と約同じである、請求項37に記載の電子デバイス。
【請求項41】
少なくとも約150ミクロンの厚さと少なくとも約700 W/mKの熱伝導率をもち、内部接着剤を有さない、グラファイト素子を含む熱管理システムを備える、電子デバイスであって、
前記熱管理システムは、追加の熱放散要素を有さず、
前記熱管理システムは、熱源と機能的に接触し、
前記熱源は、複数の電子部品を備え、
前記複数の電子部品は、積層されたマザーボードに配置される、電子デバイス。
【請求項42】
前記デバイスは15 mm未満の厚さをもつ、請求項41に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年9月4日に出願された米国仮特許出願第63/074,876号の優先権及び利益を主張し、当該出願のすべての内容が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
モノのインターネット(IoT)によって、電子デバイスは日常生活の至る所にあるものとなり、特に持ち運び型電子デバイスが顕著である。かつては誰もが鍵を持っていたところ、今では全員が携帯(セルラー)電話を持っている。かつての鍵と同様に、携帯電話は我々の仕事や多くのレジャー時間活動のアクセスポイントである。
【0003】
携帯電話がますます活動の中心となるにつれて、そのような電話の機能は劇的に向上している。2007年以降、「スマート」な携帯電話が一般的になり、電話、テキスト、メール専用の携帯電話を置き換えた。そのような機能については、携帯電話を使って世界中からビデオ会議を行ったり、最新の映画を観たり、世界の隅々から商品やサービスを自宅まで届けてもらったりすることができる。デバイス自体も、マルチディスプレイ、高解像度カメラ、折り畳み式など、変化している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示されているのは、電子デバイスである。このデバイスは、携帯電話、ノートパソコン、タブレットなどの持ち運び型電子デバイスとして説明されるが、この技術は、複数の電子部品の熱管理が必要であり、能動的冷却ではなく受動的冷却が好まれるか必要とされるあらゆるタイプの電子デバイスに適用可能である。
【0005】
能動的冷却とは、ヒートパイプ、ベイパーチャンバー、ファンなどの冷却媒体を使用して熱を伝達する冷却技術を指す。受動的冷却は冷却媒体を含まず、強制対流システムでもない。
【0006】
本開示の態様に従って、熱管理システムを有する電子デバイスが提供される。この熱管理システムは、少なくとも150ミクロンの厚さをもつモノリシックなグラファイト素子を有する。このグラファイト素子は、少なくとも約700 W/mKの熱伝導率をもつ。このグラファイト素子は、内部接着剤(バインダーとも呼ばれる)を有さない。この熱管理システムは、複数の電子部品を備える熱源と機能的に接触している。好ましくは、この複数の電子部品は、積層されたマザーボード上に配置される。
【0007】
本開示の態様に従って、熱源と機能的に接触しているグラファイト素子を備える電子デバイスが提供される。この熱源は、積層されたマザーボード上に配置される複数の電子部品を備える。このグラファイト素子は、好ましくは、少なくとも約150ミクロンの厚さをもつモノリシックなグラファイト素子である。このグラファイト素子は、少なくとも約700 W/mKの熱伝導率をもつ。このグラファイト素子は、内部接着剤(バインダーとも呼ばれる)を有さない。好ましいタイプのグラファイトは、フレキシブルグラファイトである。このデバイスは、15 mm以下の厚さをもってもよい。
【0008】
本開示の態様に従って、少なくとも約150ミクロンの厚さと少なくとも約700 W/mKの熱伝導率をもつフレキシブルグラファイト素子を含む熱管理システムを備える電子デバイスが提供される。好ましくは、このフレキシブルグラファイト素子は、内部接着剤を有さない。この熱管理システムは、追加の熱放散要素を有さなくてもよい。さらに、この熱管理システムは、熱源と機能的に接触している。この熱源は、複数の電子部品を備え、この複数の電子部品は、積層されたマザーボード上に配置される。
【0009】
特に指定がない限り、「機能的接触」は、熱源から熱管理システム、特にグラファイト素子に熱が放散されることを意味するように、本明細書で使用される。特に指定がない限り、「直接機能的接触」は、物理的に隣接しているか、又は機能的接触が確立できる方法で触れていることを意味するように、本明細書で使用される。
【0010】
上記の本開示の態様は、電子デバイスが持ち運び型であるかどうかに関係なく、以下の種類の電子デバイス及びその他のすべてに同様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本明細書に開示される実施形態の模式図である。
【
図2】
図2は、実施例で使用されるデバイスの背面カバーを取り外した内部の図である。
【
図3a】
図3aは、実施例で開示される試験サンプルを含むデバイスの内部図である。
【
図3b】
図3bは、実施例で開示されるVC対照を含むデバイスの内部図である。
【
図4】
図4は、通常動作中(「no」)と充電中(「yes」)の両方の画面温度のグラフである。
【
図5】
図5は、通常動作中(「no」)と充電中(「yes」)の両方の性能結果のグラフである。
【
図6】
図6は、通常動作中(「no」)と充電中(「yes」)の両方のCPUからの熱放散結果のグラフである。
【
図7】
図7は、通常動作中(「no」)と充電中(「yes」)の両方のGPUからの熱放散結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、電子デバイスに関するものである。このような電子デバイスには、持ち運び型や据え置き型の電子デバイスが含まれる。このようなデバイスの例としては、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、ウェアラブルデバイスなどが挙げられる。これらのデバイスには、折り畳み式のデバイスも含まれる。この適用可能なデバイスには、デバイスの少なくとも二つの主面にユーザインタフェースを有するデバイスも含まれる(例えば、Nubia(登録商標) X Phone)。第二のユーザインタフェース付きの電話は、リアスクリーン付きの電話と呼ばれることがある。本開示に従って、この電子デバイスは、デバイスの第一の主面に第一のユーザインタフェースを、デバイスの第二の主面に第二のユーザインタフェースを有してもよい。この実施形態は、車両や他の交通手段の構成要素にも同様に適用可能である。
【0013】
本開示の熱管理システムは、15 mm以下、好ましくは12.5 mm以下の厚さをもつ電子デバイスに特に有利である。好ましい厚さは、10 mm以下である。このデバイスの好ましい厚さの非限定的な例示範囲は、約15 mm未満から約5 mmまでである。この範囲に含まれる特定のデバイスには、携帯電話、タブレット、持ち運び型ゲームシステム、家庭用品、IoTデバイス、及び時計や医療デバイスなどのウェアラブルデバイスが含まれる。
【0014】
上記のデバイスに適用可能な熱管理システムは、少なくとも約150ミクロンの厚さをもつフレキシブルグラファイト素子を含む。このグラファイト素子は、少なくとも約700 W/mKの面内熱伝導率をもつ。このグラファイト素子は、内部接着剤を有さない。接着剤を有さないことは、バインダーレスとも呼ばれ得る。熱管理システムは、複数の電子部品を備える熱源と機能的に接触している。好ましくは、複数の電子部品は、積層されたマザーボード上に配置される。このグラファイト素子は、「モノリシック」と呼ばれ得る。
【0015】
本開示の他の態様において、上記の電子デバイスに適用可能な熱管理システムは、熱源と機能的に接触しているグラファイト素子を含む。この熱源は、積層されたマザーボード上に配置される複数の電子部品を含む。グラファイト素子は、好ましくは、少なくとも約150ミクロンの厚さをもつモノリシックなグラファイト素子である。このグラファイト素子は、少なくとも約700 W/mKの面内熱伝導率をもつ。このグラファイト素子は、内部接着剤が有さなくてもよい。好ましいタイプのグラファイトは、フレキシブルグラファイトである。好ましくは、このデバイスは、15 mm以下の厚さをもつ。このデバイスは、10 mm以下の厚さをもってもよい。
【0016】
本開示の他の態様は、少なくとも約150ミクロンの厚さと少なくとも約700 W/mKの熱伝導率をもつグラファイト素子を含む熱管理システムを備える電子デバイスである。グラファイト素子は、フレキシブルグラファイト素子であってもよい。好ましくは、このフレキシブルグラファイト素子は、内部接着剤を有さない。この熱管理システムは、追加の熱放散要素を有さなくてもよい。さらに、この熱管理システムは、熱源と機能的に接触している。この熱源は、電子デバイス内の熱源であってもよい。この熱源は、複数の電子部品を備えてもよい。ここで、この複数の電子部品は、積層されたマザーボード上に配置される。
【0017】
上記の一般的な実施形態は、以下でさらに説明される。以下の説明は、上記のすべての一般的な実施形態に適用可能である。
【0018】
このグラファイト素子に関して、好ましいタイプのグラファイトは、フレキシブルグラファイトである。フレキシブルグラファイトの適切な例は、アメリカ・オハイオ州レイクウッドのNeoGraf Solutions, LLCから入手可能なNeoNxGen(登録商標)フレキシブルグラファイト(「NNG」)である。NNGの適切なグレードには、N-150、N-200、N-250、N-270、N-300や、PシリーズグレードのP-150やP-200などが含まれる。適切なフレキシブルグラファイトは、1.75 g/cm3 から2.15 g/cm3(1.85 g/cm3から2.10 g/cm3、1.90 g/cm3から2.10 g/cm3、及び1.95 g/cm3から2.05 g/cm3を含む)の範囲内の密度をもってもよい。適切なフレキシブルグラファイトは、最大6 GHzの周波数で、少なくとも100 dB(少なくとも150 dB、少なくとも200 dB、少なくとも225 dB、及び少なくとも250 dBを含む)の電磁干渉(EMI)遮蔽効果をもってもよい。
【0019】
このグラファイト素子は、グラファイトの単一片を備える。これは、モノリシックなグラファイト片とも呼ばれ得る。これはさらに、このグラファイト素子は、接着剤やバインダーを使用して接着された二つ以上のグラファイト片で構成されていない、又は、このグラファイト素子は、接着剤やバインダーを有さない、とも言い換えられる。
【0020】
このグラファイト素子は、少なくとも約150ミクロンの厚さをもつ。他の例示的な厚さには、少なくとも約175ミクロン、少なくとも約200ミクロン、少なくとも約250ミクロン、及び少なくとも約300ミクロンが含まれる。一部の適用物では、このグラファイト素子の厚さが約500ミクロンに限定されることがあるが、この限定はすべての適用物には適用されない。
【0021】
このグラファイト素子は、少なくとも約700 W/mKの面内熱伝導率をもつ。必要に応じて、このグラファイト素子は、少なくとも約800 W/mKの熱伝導率をもってもよい。さらなる例示的な熱伝導率には、約1000 W/mK以上が含まれる。他の好ましい熱伝導率には、約1100 W/mK以上が含まれる。
【0022】
このグラファイト素子の面間熱伝導率は、約6 W/mK未満であり、好ましくは、約5 W/mK未満である。
【0023】
このグラファイト素子は、少なくとも約3.8 cm2/s(3.8 cm2/s超過を含む。)、好ましくは、少なくとも約4 cm2/sの拡散率をもつ。拡散率の好ましい範囲の非限定的な例には、約5~10 cm2/sが含まれる。
【0024】
任意で、この熱管理システムのグラファイト素子は、その外面の一つ以上に保護コーティングを有してもよい。適切なコーティングのタイプの一例は、PETフィルムである。
【0025】
他の任意の要素として、このグラファイト素子は、グラファイト素子の主面の一方又は両方に適用される接着剤を有してもよい。このグラファイト素子に適用される接着剤は、グラファイト素子を熱源に接着させるために使用され得る。さらなる任意の実施形態として、この接着剤は、グラファイト素子を、熱源を構成する一つ以上の電子部品のみに接着させるために使用される。さらなる任意の実施形態では、このグラファイト素子は、保護コーティングが施されるグラファイト素子の一つ以上の面と、このシステムを熱源に接着させるための熱管理システムの外部コーティングとしての接着剤と、の両方を含んでもよい。本明細書に開示される実施形態は、前述の任意の構成要素に限定されない。他の任意の構成要素が必要に応じて含まれてもよい。
【0026】
任意で、本明細書に開示される熱管理システムは、一つ以上のフィンを有さなくてもよい。好ましくは、この熱管理システムは、略平面状の主体を有し、この主体の平面の外側の向きに、この平面上の主体から延びる熱管理システムの部分を有さない。
【0027】
他の任意の構成として、好ましくは、この熱管理システムは、ファン、ヒートパイプ及び/又はベイパーチャンバーを有さない。これらの実施形態において、好ましくは、この熱管理システムは、能動的冷却要素又は能動的冷却媒体を有さない。
【0028】
任意で、熱源に隣接する熱管理システムの部分の表面積は、その熱管理システムと機能的に接触している熱源の表面積より大きい。さらにこれは、グラファイト素子にも同様に適用され、すなわち、このグラファイト素子は、熱管理システムと機能的に接触している熱源の表面積より大きな表面積をもつ。本開示の熱管理システム及び/又はグラファイト素子に従うさらなる特定の態様では、熱源と機能的に接触している、その熱源に隣接する第一の主面を有する。この第一の主面は、熱源と直接機能的に接触している第一の部分と、熱源と直接機能的に接触していない第二の部分と、を有する。この第二の部分の表面積は、熱源の表面積より大きい。あるいは、この第二の部分の表面積は、熱源の表面積の少なくとも10%を含む。あるいは、この第二の部分の表面積は、熱源の表面積の少なくとも25%を含む。さらにあるいは、この第二の部分の表面積は、熱源の表面積の少なくとも50%を含む。さらにあるいは、この第二の部分の表面積は、熱源の表面積の少なくとも75%を含む。さらにあるいは、この第二の部分の表面積は、熱源の表面積と略同じ表面積であるか、又は熱源の表面積の約100%を含む。さらにあるいは、この第二の部分の表面積は、マザーボードの表面積と略同じ表面積であるか、又はマザーボードの表面積の約100%を含む。第三の構成では、この第二の部分の表面積は、熱源の表面積よりも小さくてもよい。
【0029】
図1に示されているのは、「熱源」120と略同じ表面積をもつ熱管理システム110(「ヒートスプレッド」)を備える、本開示の電子デバイス100である。この実施形態では、熱源120は、積層されたマザーボード130を含んでもよい。図示のように、積層されたマザーボード130は、マザーボード130の一方の面に、GPUなど少なくとも一つのチップを有し、マザーボード130の他方の面に、CPUなど少なくとも第二のチップ(図示せず)を有するプリント基板を備え、これにより熱源120が形成される(あらゆる少なくとも二つのチップがマザーボード130を形成するために使用されてもよい)。本明細書で説明されている熱管理システム(110)のいずれかは、熱源120と機能的に接触して配置される。熱管理システム110は、熱源120に接着されてもよく、例えば、熱源120の少なくとも一つの電子部品に接着されてもよい。
図1に示すように、熱管理システム110(ヒートスプレッド)は、熱を発生させるチップ(すなわち、熱源)と略同じ表面積をもつ。加えて、この熱対策は、デバイスのミッドプレート140(「シャーシ」とも呼ばれる)上に配置されてもよい。その場合、選ばれた熱管理システムは、ミッドプレート140にも接着されてもよい。これは、ギャップパッド(図示せず)の有無に関わらず実現されてもよい。
【0030】
本開示の熱管理システムは、デバイスのタッチ温度(表面温度とも呼ばれる)を最小化させる電子デバイスを作成するために使用される。表面温度を定義する一つの基準に、ASTM C1055がある。2016年9月版のElectronics Cooling Magazineに引用されている基準の要約は、以下のとおりである。
【0031】
ASTM C1055(接触火傷損傷を引き起こす発熱システム表面の状態に関する基準ガイド)は、表面温度が140°F以下に保たれることを推奨している。これは、平均的な人が140°Fの表面に最大5秒間触れても、不可逆的な火傷損傷を受けないためである。
【0032】
【0033】
ASTM C1055によれば、さらに電子デバイスにとって好ましいことは、(「熱さ」を超えて)痛みの閾値とされる44°C(~111°F)以下の表面温度で動作することである。比較として、同じ記事では、46°CがOSHAによって非常に高いリスクレベルとされている。本明細書に開示される熱管理システムは、デバイスが痛みの閾値以下で動作するように、電子デバイスに組み込むことができる。
【0034】
本明細書で開示される熱管理システムを使用することによって実現され得る利点には、以下の一つ以上が含まれる。(1)使いやすさ、熱管理システムの製造の簡素化。(2)熱管理システムは、内部接着剤層やその他の絶縁材料などの非活性な構成要素が少ない。(3)熱管理システムの取り付けの容易さ。(4)熱管理システムには寿命がない。(5)熱管理システムは、作動媒体(例えば、ベイパーチャンバー媒体の蒸発/凝縮潜熱)に依存しない。さらなる利点として、この熱管理システムは、200ミクロン以上の厚さと少なくとも1000 W/mKの面内熱伝導率である熱伝導率をもってもよい。
【実施例】
【0035】
本明細書に開示される熱管理システムを、現行の市販で利用可能な熱管理システム(「OEM熱管理システム」)と比較して評価するため、Samsung(登録商標) Note 10携帯電話(「デバイス」)が使用された。このOEM熱管理システムには、マザーボード上のGPU及びCPUと機能的に接触しているベイパーチャンバーを含む一つの実施形態が含まれていた。この実施形態では、ベイパーチャンバーはミッドプレート(シャーシ)に隣接している。ベイパーチャンバーと反対側には、GPU及びCPUを含む積層されたマザーボードがある。このマザーボードは完全に遮蔽された。この実施形態は、
図4~7に「VC」として示される。他の試験された市販の選択肢には、
図4~7に「3/sg」として示される、70ミクロンの合成グラファイトの3層スタック、及び
図4~7に「4/sg」として示される、70ミクロンの合成グラファイトの4層スタックが含まれる。3/sg及び4/sgの熱管理システムの各層の間には、接着剤が使用された。三つすべての代替手段は、対照又はまとめて「対照群」である。各対照は、試験中にマザーボードに接着された。
【0036】
図2は、バックカバーが取り外されたデバイス200を示し、マザーボード210を露わにする。
図3aでは、マザーボード210は取り外され、デバイス200の右側に配置された。本明細書に開示される熱管理システムの一実施形態(「試験サンプル」)220は、このマザーボードと機能的に接触している位置にあるデバイス200に配置された。この試験サンプルは、このマザーボード上の対応する熱源と略同じ表面積をもっていた。
図3bは、マザーボード210とベイパーチャンバーヒートスプレッド230を含むVC対照の実施形態としての、デバイス200のセットアップを示す。
【0037】
この試験サンプルには、オハイオ州レイクウッドのNeoGraf Solutions, LLCから入手可能なNeoNxGen(登録商標)フレキシブルグラファイトの270ミクロン厚のグレードを備えるグラファイト素子が含まれていた。この試験サンプルのグラファイト素子は、約1100 W/mK以上の面内熱伝導率と、約5 W/mK未満の面間熱伝導率をもっていた。この試験サンプルにはさらに、各主面にプラスチック層を、片側に試験サンプルをマザーボードに接着するための接着剤が含まれていた。この試験サンプルは、全体で約330ミクロンの厚さをもっていた。この試験サンプルは、
図4~7に「NNG」として示される。
【0038】
試験された変数には、GPU又はCPUからの熱の放散、デバイスの画面の表面温度、及びデバイスの全体的な性能が含まれていた。これらの変数は、デバイスの通常動作中(
図4~7に「no」と示される)及びデバイスが充電中のとき(
図4~7に「yes」と示される)に試験された。
【0039】
UL(登録商標)の3DMark - Slingshot Extremeは、ハイエンドスマートフォンの物理(CPU)およびグラフィックス(GPU)をスコアリングするために広く受け入れられているベンチマークとして、試験に選ばれた。定常状態の試験結果を得るために、3DMarkのプロフェッショナルバージョンが購入され、90秒のSlingshot Extremeベンチマーク試験を無限にループさせることができるように、このデバイスにインストールされた。すべての試験は、周囲の温度及び湿度が厳密に制御された静止空気環境で実施された。測定可能なパラメータには、熱電対を介した表面温度、IRカメラ(Fluke(登録商標)、Model Ti55)を介した画像、内蔵サーミスタを介した内部部品の温度(CPU、GPUなど)、CPU及びGPUのクロック周波数、並びにSlingshot Extremeベンチマークスコアを介したシステム性能が含まれる。使用されたバージョンは、Open GL(登録商標) ES3.1であった。
【0040】
各例において、熱管理システムは、ベイパーチャンバー(VC)を含むOEM対照と同じ位置で使用された。この熱管理システムは、GPU又はCPU(「熱源」)の両方と熱的に接触していた。上記に加えて、この実施形態はさらに、電話の画面、画面の下のミッドプレート、熱管理システムがミッドプレートに隣接して配置されているとして説明されてもよい。この熱インターフェースは、熱管理システムをマザーボード上のGPU及びCPUと熱的に接触させるために使用された。このマザーボードの裏面は、プラスチックカバーで覆われた。プラスチックカバーに隣接して、ワイヤレス充電器があった。このワイヤレス充電器は、デバイスの背面カバーにも隣接していた。
【0041】
図4は、試験サンプル、三つの対照サンプル、及び熱管理対策がないサンプル(「NoSpread」として示される)の性能を示すグラフであり、画面の表面温度の変数をいくつかのランで試験している。試験サンプルは、各試験やその平均において、画面温度が44°C以下に保たれた唯一の実施形態であり、これは、通常動作中及び充電中の両方で当てはまった。試験サンプルは、画面温度が痛みの閾値以下であった唯一の実験であった。驚くことに、3層の合成グラファイト対照(3/sg)は、4層の合成グラファイト対照(4/sg)より、画面温度を最小化させることに優れていた。また、興味深いことに、ベイパーチャンバー対照(VC)は、画面温度を低下させる性能が最も悪かった。一般通念では、ベイパーチャンバーなどの能動的冷却は、試験サンプルなどの受動的冷却よりも優れているとされている。
【0042】
図5に関しては、デバイスの性能が比較された。
図5に示すように、画面温度を最小化させることと同様に、試験サンプルは、いくつかのランに基づき、通常動作中及び充電の両方において最も優れた平均性能を示した。画面温度の結果と同様に、試験サンプル及び4層の合成グラファイトは、類似の量のグラファイトをもっていることで類似の結果を示したのだろうと考えられる。
図5から明らかなように、各例ではこれが当てはまらない。
【0043】
図6に関して、いくつかのランで測定された平均(最大)CPU温度によるCPUからの熱放散は、OEM対照であるベイパーチャンバー(VC)が、試験サンプル及び二つの対照スタック(3/sg及び4/sg)の受動的熱管理システムよりも優れていた唯一の例であった。他の実験では、試験サンプルは、通常動作中のCPUからの熱放散が最も良いものであった。
【0044】
図7について、試験サンプルは、通常動作中はGPUから熱放散が最も良いが、充電中はスペクトルの反対側にある(充電中、わずかに最も高い平均温度である)。また、3層及び4層のスタック対照群(それぞれ、3/sg及び4/sg)が、通常動作中と充電中の間でGPUからの熱放散に関してどれだけ一致しているかも、興味深い。これら二つの対照サンプルに関して、通常動作又は動作中の充電といったプロセス操作は、GPUからの熱放散においてほとんど影響を与えていないようである。
【0045】
リストされた材料に関連するすべての重量は、活性レベルに基づき、したがって、特に指定されていない限り、市販で利用可能な材料に含まれる可能性がある溶剤又は副産物を含まない。
【0046】
本開示の単数の特徴又は限定に関するすべての言及は、特に指定されていないか、参照が行われる文脈でそうでないことが明示されていない限り、対応する複数の特徴又は限定を含み、その逆も同様である。したがって、本開示において、「a」又は「an」の言葉は、単数と複数の両方を含むものとして解釈される。逆に、複数の項目に関するいかなる参照も、適切な場合には、単数を含むものとする。
【0047】
特に指定されていない限り(例えば、「正確に」という用語の使用によって)、明細書及び請求項で使用される量、分子量のような性質、反応条件などを表現するすべての数字は、いかなる場合も、「約」という言葉で修正されるものとして理解される。したがって、特に指定されていない限り、以下の明細書及び請求項に定められる数値的性質は、本発明の実施形態において得られることが求められる所望の性質に応じて変動する近似値である。
【0048】
特に指定されていない限り、熱伝導率は、室温及び標準圧力(1気圧)で提供され、オングストローム法、ASTM E1225、及び/又はASTM D 5470などの標準試験プロトコルが分かっている場合は、代わりに適切な試験条件で提供される。
【0049】
本明細書で使用される方法又はプロセスのステップのすべての組み合わせは、特に指定されていないか、参照される組み合わせの文脈でそうでないことが明示されていない限り、任意の順序で実行できる。
【0050】
本明細書に開示されるすべての範囲及びパラメータ(パーセンテージ、分率、比率などを含むが、これに限定されない)は、そこに含まれる想定の部分範囲のあらゆるすべてを包含すると理解され、端点間のすべての数字を含む。例えば、「1から10」と言及された範囲には、最小値1と最大値10の間の(及び包括的な)任意の部分範囲、つまり、最小値1以上から始まるすべての部分範囲(例えば、1から6.1)、最大値10以下で終わる部分範囲(例えば、2.3から9.4、3から8、4から7)及び最後に、範囲内に含まれる各数値1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10が含まれることが考慮されるべきである。
【0051】
本開示の熱管理システム及び電子デバイスは、本明細書で説明される開示の実質的な要素及び限定だけでなく、本明細書で説明される、又は他に熱管理システム及び/又は電子デバイスで有用な、あらゆる追加の又は選択的な材料、構成要素又は限定を備え、から構成され、又は、から実質的に構成されることができる。
【0052】
明細書や請求項で「含む」という用語が使用される範囲で、これらは、請求項のつなぎ言葉として用いられる場合に解釈される「備える」という用語と類似の意味で包括的であることを意図している。さらに、「又は」という用語が用いられる範囲で(例えば、A又はB)、これは「A、又はB、又はA及びBの両方」を意味することを意図している。出願人が「A、又はBのみで、両方ではない」ことを示すことを意図している場合には、「A又はBのみで両方ではない」という用語が用いられる。したがって、本明細書での「又は」という用語の使用は包括的であり、排他的ではない。
【0053】
いくつかの実施形態では、さまざまな発明的概念を互いに組み合わせて利用することができる。加えて、特定の本開示の実施形態に関連して提示された特定の要素は、その特定の要素を組み込むことがその実施形態の明示的な条件に矛盾しない限り、すべての開示された実施形態で使用可能であると解釈されるべきである。追加の利点及び修正は、当業者に容易に認識される。したがって、この開示は、そのさらに広い態様で、本明細書に提示される具体的な詳細、代表的な装置、又は示され説明される実例に限定されない。したがって、一般的な発明概念の精神又は範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することができる。
【符号の説明】
【0054】
100 電子デバイス
110 熱管理システム
120 熱源
130 マザーボード
140 ミッドプレート
200 デバイス
210 マザーボード
220 試験サンプル
230 ベイパーチャンバーヒートスプレッド
【国際調査報告】