(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】熱エネルギー貯蔵及び回収システム
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
F28D20/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514504
(86)(22)【出願日】2021-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 US2021039289
(87)【国際公開番号】W WO2022051018
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523013776
【氏名又は名称】フォトン・ボールト・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】PHOTON VAULT LLC
【住所又は居所原語表記】1448 Asterbell Dr,San Ramon,CA 94582 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケントウェル・リー・マコーミック
(57)【要約】
本発明は、いくつかの態様において、伝熱流体を含み、グラファイト成形体、例えば膨張グラファイトと熱結合して配置される1つ以上の流体輸送ビアを有する蓄熱システムを提供する。グラファイト成形体は次に、結合骨材材料と熱的に結合して配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む蓄熱システム:
A.伝熱流体を備える1つ又は複数の流体輸送ビア、
B.前記1つ又は複数のビアが熱的に結合して配置される、グラファイト成形体:
C.前記グラファイト成形体が熱的に結合して配置される、結合骨材材料。
【請求項2】
前記グラファイト成形体が膨張グラファイトを含む、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記1つ又は複数のビアが、前記グラファイト成形体の層に隣接して熱的に結合して配置される、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記グラファイト成形体が、前記骨材材料の層に隣接して熱的に結合して配置される、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項5】
前記1つ又は複数のビアが、前記グラファイト成形体の層に隣接して熱的に結合して配置され、かつ
前記グラファイト成形体が、前記骨材材料の層に隣接して熱的に結合して配置される、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項6】
前記骨材材料の層は、前記骨材材料の層の面に対して斜めに貫通して延びる穿孔を含む、請求項5に記載の蓄熱システム。
【請求項7】
前記層の少なくとも1つが圧縮される、請求項5に記載の蓄熱システム。
【請求項8】
前記ビアがステンレス鋼を含む、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項9】
前記ビアがステンレス鋼のチューブを含む、請求項8に記載の蓄熱システム。
【請求項10】
前記伝熱流体が、二酸化炭素、共晶混合物、伝熱油、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、炭化水素、及び冷媒ガスのいずれかを含む、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項11】
前記結合骨材材料が、(i)コンクリート、及び(ii)砂とメタケイ酸ナトリウムとの複合材のいずれかを含む、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項12】
以下を含む、蓄熱器を製造する方法:
A.1つ又は複数の流体輸送ビアをグラファイト成形体と熱的に接触させて配置すること、及び
B.前記グラファイト成形体を結合骨材材料と熱的に接触させて配置すること。
【請求項13】
ステップ(A)は、前記1つ又は複数の流体輸送ビアを配置して前記グラファイト成形体の層と熱的に接触させることを含み、かつ
ステップ(B)は、前記グラファイト成形体の層を配置して前記骨材材料の層と熱的に接触させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(A)は、前記グラファイト成形体の層が前記1つ又は複数の流体輸送ビアと熱的に接触して配置された後、前記グラファイト成形体の層を圧縮することを含み、かつ
ステップ(B)は、前記グラファイト成形体の層が前記骨材材料の層と熱的に接触して配置された後、前記骨材材料の層を圧縮することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記グラファイト成形体が膨張グラファイトを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ビアがステンレス鋼を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記ビアがステンレス鋼のチューブを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
以下を含む蓄熱方法:
A.1つ又は複数の流体輸送ビアを膨張グラファイトの層と熱的に接触させて配置すること(ここで、前記ビアの少なくとも1つがステンレス鋼のチューブを含む)、
B.前記膨張グラファイトの層を、(i)砂とメタケイ酸ナトリウムの複合体、及び(ii)コンクリートのいずれかを含む層と熱的に接触させて配置すること、
C.加熱された二酸化炭素を前記1つ又は複数のビアに通すこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギー貯蔵に関する。これは、ヒートポンプや他の熱エネルギーの貯蔵に依存するシステムに適用される。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵は、エネルギー供給を調整するための重要な機能である。例えば、再生可能エネルギー源を利用するヒート ポンプは、しばしば断続的であり、需要に対して供給電力が少なすぎるか多すぎる供給に対応する必要がある。エネルギーの供給を平準化するには、エネルギーを貯蔵したり回収したりするメカニズムが必要である。例えば、工業用、商業用、及び住宅用のヒートポンプでは、余剰の熱エネルギー又は電気エネルギーが利用可能な場合(例:日中)にはエネルギー貯蔵が必要であり、暖房にエネルギーが必要な場合(例:夜中)はエネルギー回収が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
砂は、熱エネルギー貯蔵の媒体として提案されている、例えば、Schlipf et al, “Using Sand and other Small Grained Materials as Heat Storage Medium in a Packed Bed HTTESS,” Energy Procedia, v. 69, pp. 1029-1038 (2015)を参照されたい。砂などは優れた比熱容量を持ち、その文献の著者が説明したように、安価に入手できる。しかし、砂は熱伝導率が良くないため、蓄熱と回収の効率が悪くなる。
【0004】
本発明の目的は、熱エネルギー貯蔵のための改善されたシステム及び方法を提供することである。
【0005】
関連する目的は、ヒートポンプ及び他の熱エネルギーシステム用の蓄熱器で使用できるような改良されたシステム及び方法を提供することである。
【0006】
本発明のさらに別の目的は、経済的かつ効率的な改良されたシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記は、本発明によって達成される目的の一部であり、いくつかの態様では、伝熱流体を含み、グラファイト成形体、例えば膨張グラファイトと熱結合して配置された1つ又は複数の流体輸送ビアを有する蓄熱システムを提供する。グラファイト成形体は次に、結合骨材材料と熱的に結合して配置される。
【0008】
本発明の関連する態様は、例えば上記のような蓄熱システムを提供し、ビアは膨張グラファイト又はグラファイト成形体の層に隣接して熱的に結合して配置される。
【0009】
本発明のさらに関連する態様は例えば、膨張又は他のグラファイト成形体の層が結合骨材材料の層に隣接して熱的に結合して配置される、上述のような蓄熱システムを提供する。
【0010】
本発明のさらに別の関連する態様は例えば、グラファイト成形体及び/又は結合骨材材料の層が圧縮される、上述のような蓄熱システムを提供する。
【0011】
本発明のさらに別の関連する態様は例えば、ビアがステンレス鋼を含み、及び/又は伝熱流体が二酸化炭素、共晶混合物、伝熱油、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、炭化水素及び/又は冷媒ガスのいずれかを含む、上述のような蓄熱システムを提供する。
【0012】
本発明の他の関連する態様は、結合骨材がコンクリート及び/又は砂とメタケイ酸ナトリウムとの複合体を含む、例えば上述のような蓄熱システムを提供する。さらに関連する態様では、結合骨材層は、それぞれの層を通って斜めに延びる穿孔を含む。
【0013】
本発明は、他の態様において、例えば上述のタイプの蓄熱器を操作及び/又は製造する方法を提供する。1つのそのような方法は、1つ以上の流体輸送ビアを配置してグラファイト成形体と熱的に接触させ、次に、グラファイト成形体を配置して、例えば、コンクリート又は砂とメタケイ酸ナトリウムの複合材などの結合骨材と熱的に接触させることを含む。
【0014】
本発明の関連する態様は、例えば上述のように、グラファイト成形体及び骨材が層を含み、本発明の関連する態様によれば、圧縮された層を含む方法を提供する。
【0015】
本発明のさらに別の関連する態様は、例えば上述のように、加熱された二酸化炭素を1つ又は複数のビアに通すことを含む方法を提供する。
【0016】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の文章及び図面において明らかである。
【0017】
図面を参照することにより、本発明をより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例による熱エネルギー貯蔵システムを示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のシステムの蓄熱温度プロファイルを示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の熱エネルギーストレージを使用する本発明によるシステムを示す。
【
図4】
図4は、骨材媒体と伝熱層との間に穿孔砂層を有する
図1のシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によるエネルギー貯蔵システムは、伝熱流体から熱を消費し、その熱を、膨張グラファイトの層などのヒート「シンク」を使用して、砂などの結合骨材材料のバルク媒体全体に分配する。このシステムは以下の利点を有する:(i)骨材単独よりも結合骨材の熱伝導率が向上しつつ、骨材の熱質量を失わないこと、及び(ii)接着骨材よりもグラファイトヒートスプレッダの熱伝導率が優れていること。後者に関して、いくつかの実施形態は、熱伝導面に対して垂直に膨張及び圧縮されたグラファイトからなるヒートスプレッダのさらに改善された伝導率というさらなる利点を有する。
【0020】
本発明によるシステムは、熱エネルギーを迅速に貯蔵及び回収する。追加の利点には、熱源と貯蔵システムの間にわずかな温度差がある場合でも、大量の熱を吸収することが含まれる。さらに、貯蔵温度付近で長時間にわたりシステムから熱を取り出すことができる。これらの特性は、非限定的な例として、温度が高いほどより多くの電力を生成できる熱機関からのエネルギー生成に望ましいものである。
【0021】
本発明によるシステムは、非限定的な例として、工業用、商業用及び住宅用のヒートポンプ及び他の装置に適用され、熱エネルギー又は電気エネルギーが余剰にある場合(例:日中又はオフピーク時)にはエネルギー貯蔵の恩恵を受け、暖房又は発電にエネルギーが必要な場合(例:夜中又はピーク時)にはエネルギー回収の恩恵を受ける。
【0022】
以下に説明し、図面に示すのは、伝熱流体ビア、熱スプレッダの層、結合骨材の層を有する本発明の実施形態である。これは一例であり、他の実施形態は、すべて本明細書の教示の精神に従って、異なる接合骨材材料、異なる伝熱流体及びビア、異なるヒートスプレッダ材料、及び/又は、ビア、シンク及び/又は骨材の異なる幾何学的配置(層状であるかそうでないかに関係なく)を利用することができることを理解されたい。さらに、ここに示され、説明されているタイプの複数のシステム(又はそれらのシステムの変形)は、共通の熱エネルギー源又は複数の異なるそのような源から熱を抽出して貯蔵するために、及び/又は貯蔵された熱を共通の熱エネルギーの標的又は複数の異なるそのような標的に放出するために、直列又は並列又はそれらの任意の組み合わせで、組み合わせることができる。
【0023】
図1は、ハウジング100を含む本発明による蓄熱器の断面図であり、その内部には結合された骨材媒体140が配置されており、図示のように、媒体140を通って流体輸送ビア120とヒートスプレッダ(1つ又は複数)130が延びている。ヒートスプレッダ130は、それらの間で熱を伝達するため、ビア120及び結合骨材媒体140と熱的に接触する。
【0024】
ビア120を通る伝熱流体の流れは、ヘッダー110及び150によってサポートされる。図面には一対のヘッダー110、150のみが示されている。すなわち、(ヘッダー110)への、及び(ヘッダー150)からの伝熱流体の流れをサポートするために、ハウジング100の最下層のビア120と流体的に結合している。これらのヘッダー110、150は、図示されたビア120の他のものと共に伝熱流体の流れをサポートすることができ、及び/又はその目的のために追加のヘッダーを設けることができることが理解される。
【0025】
ここでは正方形又は他の矩形の断面として示されているハウジング100は、円形又は他の断面であってもよい(規則又は不規則であり得る)。ハウジングは、倉庫が使用される環境に合わせて(例えば、地上又は地下、可動式又はその他)、金属、プラスチック、セラミック、又は当技術分野で知られている他の適切な材料で製造することができ、選択された絶縁材料又は他の材料を含むか、囲むか、又は包むことができ、これらはすべて本明細書の教示を考慮して、当業者の知識の範囲内である。
【0026】
図示の実施形態の伝熱流体121は、二酸化炭素であり、毒性がなく、不燃性であり、高温伝熱に適しており、熱機関の作動流体として適している。しかし、当業者は、例えばビフェニルとジフェニルエーテルの共晶混合物、伝熱油、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、炭化水素、冷媒ガス、又は当技術分野で知られている他の伝熱流体などの他の物質を、二酸化炭素の代わりに、又は二酸化炭素に加えて使用できることを理解でき、その中での選択は、実施形態の温度、圧力、及び他の動作条件についての本明細書の教示を考慮して、当業者の知識の範囲内である。
【0027】
ビア120及びヘッダー110、150は、導管、ヘッダー、マニホルド、配管、チューブ、又は当技術分野で知られているタイプの他の構造(まとめて「チューブ等」)を含み、これらは、図面に示され、本明細書で説明されるように、貯蔵システム及びそのそれぞれの構成要素を通して液体及び/又は気体及び/又は超臨界相の伝熱流体121を運ぶように、本明細書の教示に従って適合される。図示の実施形態では、チューブ等はステンレス鋼から製造されるが、他の実施形態では、他の金属、セラミック、プラスチック、又はそれらの複合材料を使用することができ、これらはすべて本明細書の教示を考慮して、当業者の知識の範囲内である。ビア120は、完全にハウジング100内に存在するか、又は例えば、
図3にさらに示されるように、
図1の最下層のビア120の場合、そこから突出することができる。
【0028】
伝熱流体121を運び、それに熱的に結合されることに加えて、ビア120は、例えば
図1に示されるように、ハウジング内に配置されたヒートスプレッダ130に熱的に結合される。図示の実施形態では、これらのヒートスプレッダ130は、膨張グラファイト粉末の1つ又は複数の層を含むが、代替実施形態では、グラファイトの代わりに、又はグラファイトに加えて、他のグラファイト構成及び/又は他の化合物を使用することができる。このような熱的な結合は、グラファイト130の層の上及び/又は層の間にビアを配置し、ビア120及び/又はグラファイト層130に力を加えて確実な接触を確保することによって、図示の実施形態で得られる。代わりに、又は追加的に、グラファイト層130は、その上又はその間にビアを配置する前及び/又は後に圧縮することができ、これらはすべて本明細書の教示を考慮して、当業者の知識の範囲内である。
【0029】
なお、別の実施形態は、層状グラファイト粉末以外の構成のヒートスプレッダ130を使用することができる。例えば、いくつかのそのような代替的な実施形態では、アンテナ形状又は他の樹枝状形状のグラファイト構造をヒートスプレッダ130として使用することができる。これらの構造は、小さな粒子サイズ又はより大きなサイズ(例えば、雪片サイズ又はそれ以上)であり得る。さらに、構造は、以下で説明する媒体140の層と平行に積層することができ、又はビア120からそれらの媒体140層に斜めに延在することができ、これらはすべて本明細書の教示を考慮して、当業者の知識の範囲内である。
【0030】
ヒートスプレッダ130と熱的に接触することに加えて、ビア120は、例えば
図1に示されるように、同じくハウジング100内に配置される結合骨材媒体140と熱的に接触することができる。上記のように、これは、媒体140の層の上又は層の間にビア120を配置し、上記のように力又は圧縮を適用して、ビア120とヒートスプレッダ130との間の熱結合を達成することによって実現できる。
【0031】
図示の実施形態では、ビア120と媒体140との間の熱伝達は、好適にはビアと媒体との間の直接接触ではなく、ヒートスプレッダ130を介して達成される。この目的のために、図示された実施形態のヒートスプレッダ130は、媒体140と熱結合している。ヒートスプレッダ130がグラファイトの層を含む実施形態では、そのような熱結合は、グラファイトの各層を媒体140上に配置し、媒体140(図面に示されるように、それ自体が圧縮され、ハウジング100内の層として配置されてもよい)と接触させることによって達成される。
【0032】
この構成では、熱伝達流体121が、
図1のストレージの動作の「貯蔵」段階中に各ビア120を通って流れると、ビアの壁を通して、そのビアが配置されている上/中にある1つ又は複数のグラファイトヒートスプレッダ層130に熱を伝達し、次に、それらのヒートスプレッダ層130が配置されている結合骨材媒体140に伝達する。逆に、放出の間、結合骨材媒体140からの熱はグラファイトヒートスプレッダ層130を通して、ビア120の壁を介してビア120に収納された伝熱流体に伝達される。実際には、フェーズが貯蔵フェーズであるか放出フェーズであるかは、ビア120内の伝熱流体と、グラファイトヒートスプレッダ層130及びそれに隣接する結合骨材媒体140の伝熱流体との間の局所的な温度差に依存する。
【0033】
上述のように、ヒートスプレッダグラファイト層130は、ビア120内の伝熱流体121を結合骨材(又は「バルク」)媒体140に熱的に結合する。図示の実施形態では、グラファイト層130は、その「膨張」成形体(別名「膨張グラファイト」)に加工されたグラファイトから形成され、これは密度が非常に低い材料である。
図1に示されるシステムの製造中、膨張グラファイト130は結合骨材媒体140上に圧縮されて、高密度のヒートスプレッダ層を形成する。さらに、圧縮によってグラファイトの面が整列し、圧縮方向に対して垂直になる。このように整列すると、圧縮方向に垂直な面の熱伝導率は、バルクグラファイトよりもはるかに高く、金属材料の熱伝導率を超える場合がある。ビア120がグラファイトヒートスプレッダ層130を介してバルク媒体140と熱的に結合することを可能にするのは、この特性である。
【0034】
図示の実施形態のバルク媒体140は、結合骨材材料、特に結合砂である。これは、コンクリート(すなわち、砂とセメントの混合物)又はメタケイ酸ナトリウムで結合された砂から形成された複合材料であり得る。実際には、そのような複合材料は、メタケイ酸ナトリウム液を砂と混合し、ハウジング100でグラファイトヒートスプレッダ層130と接触する層に形成することによって形成される。砂/メタケイ酸塩混合物は長期間にわたって硬化する。混合物を炭酸ガスにさらすことにより、硬化をわずか数秒内に加速することができる。ほとんどのバインダーとは異なり、メタケイ酸ナトリウムは、華氏600度を超える温度に耐えられる耐火材料である。コンクリートであれケイ酸ナトリウム複合材料であれ、結合骨材は砂自体よりも熱伝導率が向上しており、グラファイト層130との圧縮を可能にするために必要な剛性を提供する。本発明の他の実施形態は、砂の代わりに、同等の熱容量の他の骨材材料(例えば、石)を利用する、及び/又は、セメント又はメタケイ酸ナトリウムの代わりに、砂又は他の骨材材料を結合するために他の化合物を利用するバルク媒体層140を利用することができ、これらはすべて本明細書の教示を考慮して、当業者の知識の範囲内である。
【0035】
いくつかの実施形態では、バルク媒体層140の1つ又は複数は、
図4の項目400として示されるように穿孔される。そのような穿孔層400は、それぞれの層400の平面(ここでは、この平面はx-y軸によって意味される)に対して斜めに(又は、より具体的には、例えば法線方向に)延びる(大きな)複数の孔410(又は、別の言い方をすれば、穿孔層400が物理的に接触している層130から及び層130の間を通る孔)を有するにもかかわらず、上述のように製造され得る。
【0036】
層140における熱伝達の主な機構は伝導であるのに対し、穿孔砂層400における熱伝達の主な機構は対流である。対流熱伝達により、優れた熱伝達性能を維持しながら、バルク砂のより厚い層が可能になる。スラブの厚さの限界は、レイリー数によって支配される。垂直キャビティのレイリー数の臨界値は、当技術分野で知られており、例えば、Platten, et al, “The Rayleigh-Benard problem in extremely confined geometries with and without the Soret effect,” Comptes Rendus Mecanique, Elsevier Masson, 2007, 335 (9-10), pp.638-654. 10.1016/j.crme.2007.08.011.hal-01946148.で説明される。
【0037】
図2は、貯蔵及び放出中に
図1の蓄熱システム(又は「ストレージ」)に見られる典型的な温度勾配を示している。図のx軸は、ヘッダー110からビア120、ヘッダー150へのチューブの横断に対応する。
【0038】
貯蔵サイクルの開始時の温度プロファイルは、曲線160として示されているとおりである。入口付近の温度は高いが、伝熱流体121の温度よりは低い。これにより、熱が伝熱流体からグラファイトヒートスプレッダ層130に流れ、次に結合骨材140に流れることが可能になる。流体がビア120を横切ると、有限の比熱を有するため、流体の温度が低下する。曲線160によって示されるように、ストレージの結合骨材140及びヒートスプレッダ層130の対応する温度も低下する。これにより、流体121は、熱伝達流体の温度が曲線の最小値に達するまで熱をストレージに蓄えさせ続けることができる。その時点で、流体121はその最低温度で出口に流れる。
【0039】
時間が経つにつれて、ストレージ内の媒体140の温度が上昇し、曲線170を描く。この状態では、熱伝達流体121は、ストレージ140に入るとき、最初はあまり熱を伝達しない。ストレージ内の温度が熱伝達を開始するのに十分なレベルに下がる前に、長手方向の一定距離を移動する必要がある。次に、前述のように、熱が流体からその周囲に流れ、流体121は最終的に曲線170の最低温度に近づく。それはその温度でストレージを出る。
【0040】
好ましい実施形態では、プロファイルが
図2の曲線180に近づくまで、
図1のストレージがチャージされる。この時点で、流体121からの熱伝達は、ストレージのほぼ後半で発生する。これを超えて貯蔵を続けることは可能であり、ストレージには特に害はないが、電気エネルギーの効率的な往復貯蔵及び回収システムのシステムを構築する目的では、熱貯蔵の増加は非効率につながる。非効率性は、放出中に低温流体がシステムに再注入されるときにエントロピーが生成されることによって明らかになる。曲線180で停止することにより、放出プロセス中の流体121は、熱ストレージに対して比較的小さな温度差で入る。流体121は、曲線180の最大温度近くで飽和するまで、曲線180を横切るとき(ここでは右から左へ)、熱を抽出する。
【0041】
放出は、曲線が180から170へ、そして160へと進行することを除いて、貯蔵と同じように進行する。放出サイクルの大部分では、伝熱流体は、貯蔵段階で貯蔵システムに入った流体とほぼ同じ温度で排出できる。これにより、
図1の貯蔵システムは、比較的限定されたエントロピー生成で、したがって高効率で、貯蔵された熱エネルギーを回収することができる。長い時間尺度にわたって、曲線180は最終的に温度勾配が消失する平衡に達することに留意されたい。十分に長いストレージを設計することで、この平衡の影響を十分に小さくして、数日又は数週間の時間スケールでストレージのパフォーマンスに実質的な影響を与えないようにすることができる。さらに長期の貯蔵が望ましい場合は、関連するバルブを備えたストレージユニットのネットワークを展開して、
図2に示す曲線の離散化バージョンを作成し、それによって各個別の貯蔵システムを超えた熱の平衡を防ぐことができる。
【0042】
図3は、
図1の熱エネルギーストレージを使用する本発明によるシステムの例である。ストレージは、そのハウジング100、ヘッダー110、150、及びビア120によって図面に示されている。
図3のシステムのストレージ及び他の構成要素は、流体経路(又は回路)を画定し、図面に示され、以下に説明される経路に沿って伝熱流体を運ぶのに適するような、当技術分野で知られているタイプの配管、導管、チューブ、及び他の構造(ここでも、まとめて「チューブ等」)によって結合される。経路とそれらの構造は、慣習に従って実線と方向矢印によって
図3のチューブ等として示されている。
【0043】
まず、蓄熱器をチャージするプロセスを考える。ポンプ200は、パイプを通して伝熱流体を熱収集器210に移動させる。流体は熱を獲得し、集熱器210内で温度が上昇する。集熱器210は、本明細書の教示に従って適合された当技術分野で知られている従来型のものである。
【0044】
集熱器210は、貯蔵の段階では開いているバルブ220に接続する。バルブ220はバルブ280に接続し、バルブ280は貯蔵サイクルの間、閉じたままである。伝熱流体はパイプ230を通って流れ、蓄熱器のヘッダー110に接続する。上述のように、熱は、流体が管120を通ってヘッダー150に流れるときに、伝熱流体から蓄熱器のバルク媒体に伝達される。前述のバルブ220、280、ならびに
図3に示され、本明細書で説明される他のものは、本明細書の教示に従って適合される、当技術分野で知られている従来型のものである。
【0045】
ヘッダー150は、本明細書の教示を考慮して、当業者の知識の範囲内であるように、配管ネットワーク又は他の方法で配置され得る外部チューブ等240に接続する。これらのチューブ等は、伝熱流体をバルブ270及び250に運ぶ。貯蔵サイクルの間、バルブ270は閉じたままであり、バルブ250は開いている。バルブ250は、サイクルを完了するポンプ200に、伝熱流体を運ぶ。
【0046】
放出中、バルブ250及び220は閉じられ、バルブ270及び280は開かれる。図に示されている流体経路は、蓄えられた熱エネルギーを電気エネルギーに変換するためのランキン サイクルを示している。ポンプ260から始めて、流体は270を通って配管ネットワーク240に流れ、蓄熱器に入る。上述のように、伝熱流体が蓄熱器を横切るとき、蓄熱器をチャージするために使用される流体とほぼ同じ温度になるまで温度が上昇する。次に、流体はストレージからヘッダー110及び管230(これも配管ネットワーク又は他の方法で配置されてもよい)を通ってバルブ280に流れる。このバルブは流体をタービン290に運ぶが、タービン290は、本明細書の教示に従って適合された当技術分野で知られている従来型のものである。タービンは、高温流体から機械的エネルギーを抽出し、その温度を下げる。機械的エネルギーは、直接使用するか、又は本明細書の教示に従って適合される当技術分野で知られている従来型の発電機(図示せず)に電力を供給するために、使用することができる。使用可能なエネルギーを変換した後、低温流体はタービン290を出て、例えば、本明細書の教示に従って適合された当技術分野で知られているタイプの凝縮器300に入る。
【0047】
凝縮器300は、流体から空気などの外部ヒートシンクに、例えば、本明細書の教示に従って適合された当技術分野で知られているタイプの冷却塔を介して熱を伝達する。このプロセス中に、流体は液体状態に凝縮する。凝縮器から、液状流体はポンプ260に入り(これも、本明細書の教示に従って適合された当技術分野で知られている従来型のポンプである)、サイクルを完了する。
【0048】
図3のシステムのポンプ、バルブ、及び他のアクティブな構成要素の操作は、上記及び本明細書の他の箇所で説明したように、貯蔵及び放出サイクル中、又は他の方法で作業者(図示せず)によって「手動で」、機械で(例えば、デジタルデータプロセッサ、PLC又は他の制御装置又はそれらの組み合わせ(図示せず))で、又は、手動と機械の組み合わせ(すべては、本明細書の教示に従って適合された、当技術分野の慣習に従う)によって、もたらされ得る。
【0049】
図1に示し、上述した本発明の実施形態は、蓄熱器を高速に貯蔵及び放出するのに適したシステムを提供する。充電速度は、砂層の厚さ、グラファイトの厚さ、及びチューブ等の密度で調整できる。ただし、一定の温度差で貯蔵速度を上げると、システムのコストが増加する。同様に、貯蔵速度を下げると、システムのコストが削減される。例として、砂の層を考える。厚さを2倍にすると、システムは2倍の熱エネルギーを蓄えることができるが、貯蔵速度は2分の1に低下する。
図4に示すジオメトリは、砂層の厚さが増加するにつれて貯蔵速度を維持する方法を提供する。
【0050】
上に説明し、図面に示したのは、前述の目的を満たす熱エネルギーストレージ及び動作方法、ならびにそれらのストレージを組み込み、それらの方法を使用するシステムである。図示された実施形態は本発明の単なる例であり、本明細書に示され説明されたものとは異なる他の実施形態も本発明に含まれることが理解される。したがって、例えば、前述の例は、本発明によるシステムのいくつかの選択された構成要素を説明しているが、当業者であれば、図面に示され、上で説明されたものの代わりに、又はそれらに加えて、他の構成要素(例えば、圧力及び温度センサー、安全バルブ、配管及び付属品、フィルター、油分離装置、及びシステム内の構成要素の特定の選択の動作をサポートするために必要なその他の機器を含む)も、これらのシステムの流体経路に含まれてもよいことが理解される。
【国際調査報告】