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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/10 20060101AFI20230914BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230914BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
C12N9/10 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515092
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 US2021049326
(87)【国際公開番号】W WO2022055902
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/075,763
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521387785
【氏名又は名称】キュリー カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ミルチェック,エリカ エム.
(72)【発明者】
【氏名】シンデル,ウィル
(57)【要約】
広域スペクトル微生物防除および/または保存のための酵素ベースの組成物がここに開示される。開示された組成物は、任意選択により酵素前駆体の形態である架橋酵素を含み、抗菌ペプチド、タンパク質、ポリマーを含み、任意選択により化学保存剤を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)任意選択により酵素前駆体の形態である、少なくとも1種の架橋酵素を、(b)任意選択により抗菌活性を有する、酵素、ペプチド、および/またはタンパク質からなる群から選択される少なくとも1種の構成成分と組み合わせて、任意選択により(c)少なくとも1種の化学保存剤とさらに組み合わせて、含む組成物であって、
ここで、(b)と組み合わせて、任意選択により(c)とさらに組み合わせて、(a)を含む前記組成物が、保存剤および抗菌薬からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の架橋酵素が、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ソルターゼ、ホルミルグリシン生成酵素、およびスルフヒドリルオキシダーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の架橋酵素が、トランスグルタミナーゼである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の架橋酵素が、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の架橋酵素が、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
抗菌活性を有する前記少なくとも1種の構成成分が、リゾチーム、キチナーゼ、リパーゼ、リシン、リゾスタフィン、グルカナーゼ、DNase、RNase、ラクトフェリン、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトナーゼ、アシラーゼ、ディスパーシンB、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ナイシン、バクテリオシン、シデロフォア、ポリミキシン、およびデフェンシンからなる群から選択される、請求項1、2または5に記載の組成物。
【請求項7】
抗菌活性を有する前記少なくとも1種の構成成分が、リゾチーム、キチナーゼ、リパーゼ、リシン、リゾスタフィン、グルカナーゼ、DNase、RNase、ラクトフェリン、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトナーゼ、アシラーゼ、ディスパーシンB、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ナイシン、バクテリオシン、シデロフォア、ポリミキシン、およびデフェンシンからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
抗菌活性を有する前記少なくとも1種の構成成分が、リゾチーム、キチナーゼ、リパーゼ、リシン、リゾスタフィン、グルカナーゼ、DNase、RNase、ラクトフェリン、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトナーゼ、アシラーゼ、ディスパーシンB、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ナイシン、バクテリオシン、シデロフォア、ポリミキシン、およびデフェンシンからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の化学保存剤が、第四級アンモニウム化合物、界面活性剤、カオトロピック剤、有機酸、アルコール、グリコール、アルデヒド、酸化剤、パラベン、イソチアゾリノン、およびカチオン性ポリマーからなる群から選択される、請求項1、2または5に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の化学保存剤が、第四級アンモニウム化合物、界面活性剤、カオトロピック剤、有機酸、アルコール、グリコール、アルデヒド、酸化剤、パラベン、イソチアゾリノン、およびカチオン性ポリマーからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の化学保存剤が、第四級アンモニウム化合物、界面活性剤、カオトロピック剤、有機酸、アルコール、グリコール、アルデヒド、酸化剤、パラベン、イソチアゾリノン、およびカチオン性ポリマーからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
(a)が酵素前駆体であり、(b)が酵素を含み、さらに、前記酵素前駆体および前記酵素が相互作用して、保存剤および抗菌薬からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する活性酵素を生成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
任意選択により酵素前駆体の形態である、少なくとも1種の架橋酵素をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む発現ベクターであって、
前記異種核酸配列が、任意選択により少なくとも1種の調節配列に作動可能に連結され、前記発現ベクターが、宿主細胞を形質転換して、前記形質転換された宿主細胞が不活性化される、阻害される、または死滅するように、前記少なくとも1種の架橋酵素を細胞内または細胞外のいずれかで発現させることができる、発現ベクター。
【請求項14】
前記少なくとも1種の架橋酵素が、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ソルターゼ、ホルミルグリシン生成酵素、およびスルフヒドリルオキシダーゼからなる群から選択される、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
前記少なくとも1種の架橋酵素が、トランスグルタミナーゼである、請求項13または14に記載の発現ベクター。
【請求項16】
前記少なくとも1種の架橋酵素が、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項13または14に記載の発現ベクター。
【請求項17】
前記少なくとも1種の架橋酵素が、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項15に記載の発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年9月8日に出願された米国仮出願第63/075,763号の利益を主張する。
【0002】
連邦資金による研究に関する陳述
本発明は、全米科学財団(National Science Foundation)から授与された助成金第2026057号の下で、政府の支援を受けて部分的になされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
参照による組み込み
XXXXXX付けで作製され、本明細書に添付された、XXKBのサイズを有するXXXXXという名称のファイルに提供される配列表は、その全体が参照により組み込まれる。
【0004】
分野
本分野は、保存剤および/または抗菌剤(preservative and/or antimicrobial agent)として使用するための活性架橋酵素およびその製剤に関する。
【背景技術】
【0005】
背景
細菌または真菌の攻撃から製剤を保護および保存するための保存剤組成物は、当該技術分野において公知であり、パーソナルケア製品、家庭用および工業用製品、健康および衛生製品、ならびに医薬(pharmaceuticals)などの分野における広範な用途を有する。従来の保存剤混和物は、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド放出剤、フェノール化合物、第四級アンモニウム化合物、ハロゲン化化合物、および/またはパラベンなどの伝統的な活性成分を含むが、これはこれらのタイプの化合物によって達成される良好な細菌および殺真菌特性による(米国特許第9,661,847号明細書)。化学物質および小分子に加えて、殺生物酵素およびタンパク質は、食品産業(Malhotra, et al. (2015) Frontiers in Microbiology 6:611)、ヘルスケア産業(Kaplan, et al. (2010) Journal of Dental Research 89:205-218)、および海洋産業(Olsen, et al. (2007) Biofouling 23:369-383)において生体適合性保存剤として使用されている。これらの酵素の例としては、殺生物活性のために酸化種を生成するオキシダーゼおよびペルオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼ);微生物(例えば、真菌、ウイルス、細菌)の表面を分解するプロテアーゼ、加水分解酵素、およびリアーゼ(例えば、リゾチーム、リゾスタフィン、スブチリシン、アミラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、リパーゼ)を含めた溶菌酵素;RNAまたはDNAなどの核酸を加水分解するヌクレアーゼ(例えば、ラクトフェリン、DNase、RNase);ならびに細胞壁に細孔を作り、細胞破裂と細胞内容物の漏出を引き起こすことによって微生物を死滅させる(kill)抗菌ペプチド(例えば、ナイシン、ペディオシン)が挙げられる。保存剤混和物中の抗菌薬間の相加効果は、個々の成分の濃度を低下させるだけでなく、微生物が複数の作用モードによって攻撃され、広域スペクトル抗菌作用を提供するため、抗菌薬耐性を妨げる。
【0006】
酵素ベースの抗菌組成物(antimicrobial composition)は、他によって同定されている。例えば、米国特許第5,326,561号明細書は、キチン分解酵素、グルカン分解酵素およびセルラーゼなどの溶菌酵素を使用する抗真菌組成物を開示する。しかしながら、このような酵素は、(a)コンディショナーおよび光沢増強剤として使用されるエステル、(b)タンパク質(例えば、ケラチンおよびペプチド毛髪/皮膚状態)、ならびに/または(c)炭水化物(例えば、ガムおよび他の増粘剤)を含有する消費者製品の調合法を破壊することができるため、溶菌酵素の使用は問題となる場合がある。したがって、有害な副作用なしに抗菌(例えば、殺菌および殺真菌)活性を有する薬剤が依然として必要である。
【0007】
アルキル化剤および架橋化学剤は、広域スペクトル微生物防除に成功裏に用いられている。その主なものは、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドなどのアルデヒドベースの殺生物剤であり、これらは長年にわたって広域スペクトル抗菌活性を有することが公知である。これらのアルデヒドは、細胞機能に必要なタンパク質、酵素、および核酸などのきわめて重要な細胞構成成分を架橋することが周知である。この作用は、微生物増殖の阻害または細胞死をもたらす。しかしながら、アルデヒドの反応特性は、それらが望ましくない化学反応を通して製剤内で速やかに分解し得ることを意味する。さらに、ホルムアルデヒドはカテゴリー3 CMR(発がん性、変異誘発性、および生殖毒性)に分類される。
【0008】
ホルムアルデヒドを徐々に放出する少数の抗菌薬が現在も使用され、商業的に製造されている。有効で広く受け入れられている抗菌薬が不足しているため、産業界ではDMDMヒダントイン、イミダゾリジニル尿素、およびジアゾリジニル尿素などのホルムアルデヒド供与体を使用し続けることを余儀なくされている。これらの物質によって放出されたホルムアルデヒドは、その反応性アルデヒド官能基を介していくつかの化粧品成分と反応することができる。例えば、入手可能で世界的に承認された唯一のUV-A吸収剤であるアボベンゾンは、ホルムアルデヒド誘導体によって放出されるホルムアルデヒドと反応する。これは日焼け止め製剤の欠点である。
【0009】
国際公開日が2020年9月10日であるPCT出願公開第2020/181099号は、活性型または酵素前駆体の形態のいずれかで架橋酵素を有し得る抗菌組成物を開示しており、このような組成物は、製品の保存可能期間を改善するために使用することができる。
【0010】
本開示は、アルデヒドベースの架橋化学保存剤の代替物を例示する。具体的には、この開示は、微生物防除のための架橋酵素の使用を通して、酵素ベースのメカニズムを提供する。架橋酵素は、ある特定の官能基またはペプチド配列に対して非常に精密であり、化学保存剤または生物学的ベースの抗菌薬(例えば、ペプチド、タンパク質および酵素)との適合性を可能にする。本明細書に提示される酵素は、分子量が10kDaより大きく、皮膚浸透のリスクが低いことを意味する。さらに、本明細書に提示される酵素は、核酸と反応せずにアミノ酸残基を架橋すること、安全性の重要な懸念を緩和すること、ならびにホルムアルデヒドのような化学架橋剤に関連する変異誘発性および発がん性の特性に非常に特異的である。架橋酵素は、広域スペクトル微生物防除のための化学架橋剤に代わる環境に優しい持続可能な代替物を提供する。
【発明の概要】
【0011】
要旨
第1の実施形態では、(a)任意選択により酵素前駆体(zymogen)の形態である、少なくとも1種の架橋酵素を、(b)任意選択により抗菌活性(antimicrobial activity)を有する、酵素、ペプチド、および/またはタンパク質からなる群から選択される少なくとも1種の構成成分と組み合わせて、任意選択により(c)少なくとも1種の化学保存剤とさらに組み合わせて、含む組成物であって、ここで、(b)と組み合わせて、任意選択により(c)とさらに組み合わせて、(a)を含む組成物が、保存剤および抗菌薬からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する、組成物が開示される。
【0012】
第2の実施形態では、少なくとも1種の架橋酵素は、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ソルターゼ、ホルミルグリシン生成酵素、およびスルフヒドリルオキシダーゼからなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1種の架橋酵素は、トランスグルタミナーゼである。最も好ましくは、少なくとも1種の架橋酵素は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0013】
第3の実施形態では、抗菌活性を有する本明細書に記載される実施形態のいずれかの少なくとも1種の構成成分は、リゾチーム、キチナーゼ、リパーゼ、リシン、リゾスタフィン、グルカナーゼ、DNase、RNase、ラクトフェリン、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトナーゼ、アシラーゼ、ディスパーシンB、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ナイシン、バクテリオシン、シデロフォア、ポリミキシン、およびデフェンシンからなる群から選択されることが開示される。
【0014】
第4の実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかの少なくとも1種の化学保存剤は、第四級アンモニウム化合物、界面活性剤、カオトロピック剤、有機酸、アルコール、グリコール、アルデヒド、酸化剤、パラベン、イソチアゾリノン、およびカチオン性ポリマーからなる群から選択されることが開示される。
【0015】
第5の実施形態では、(a)少なくとも1種の架橋酵素が酵素前駆体の形態であり、(b)少なくとも1種の構成成分が酵素を含み、さらに、酵素前駆体および酵素が相互作用して、保存剤および抗菌薬からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する活性酵素を生成することが開示される。
【0016】
第6の実施形態では、少なくとも1種の、任意選択により酵素前駆体の形態の架橋酵素をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む発現ベクターが開示され、前記異種核酸配列は、任意選択により、少なくとも1種の調節配列に作動可能に連結され、発現ベクターは、宿主細胞を形質転換して、形質転換された宿主細胞が不活性化される、阻害される、または死滅するように、少なくとも1種の架橋酵素を細胞内または細胞外のいずれかで発現させることができる。さらに、少なくとも1種の架橋酵素は、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ソルターゼ、ホルミルグリシン生成酵素、およびスルフヒドリルオキシダーゼからなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1種の架橋酵素は、トランスグルタミナーゼである。最も好ましくは、少なくとも1種の架橋酵素は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0017】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)成熟型のトランスグルタミナーゼ(Tgase)配列に対応する。
【0018】
配列番号2は、配列番号1の成熟型の配列のバリアントに対応する。
【0019】
配列番号3は、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)Tgase酵素前駆体型(pro-Tgase)のバリアントの配列に対応する。
【0020】
配列番号4は、C末端ヘキサ-His-タグを含有するストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)酵素前駆体型(pro-TAMEP;UniProt P83543)の野生型Pro-TAMEP配列に対応する。
【0021】
配列番号5は、C末端ヘキサ-His-タグを含有するストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)酵素前駆体型(pro-SM-TAP;UniProt P83615)の野生型Pro-SM-TAP配列に対応する。
【0022】
配列番号6は、配列番号2におけるストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)のバリアントトランスグルタミナーゼ配列 成熟型(N末端メチオニンおよびC末端ペプチドリンカーおよびヘキサ-His-Tagを含む)に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0024】
この開示では、多くの用語および略語が使用される。特に断りのない限り、以下の定義が適用される。
【0025】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に他のことを示していない限り、複数の指示対象を含む。例えば、用語「化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」は、例えば、本明細書で互換的に使用され得る。
【0026】
用語「および/または」および「または」とは、本明細書で互換的に使用され、他を含むかまたは含まない、2つの特定された特色または構成要素の各々の特定の開示を指す。したがって、本明細書において「Aおよび/またはB」のような語句で使用される用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことを意図する。同様に、「A、Bおよび/またはC」などの語句を使用する場合、用語「および/または」は、以下の態様:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)の各々を包含することを意図する。
【0027】
文脈が明確に他のことを示していない限り、単数を使用する単語は複数を含み、逆もまた同様である。
【0028】
用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む」(includes)、「含んでいる(including)」、「有する」、およびそれらの活用形は互換的に使用され、「含んでいるが、これらに限定されない」ことを意味する。態様が、言語「含んでいる」で本明細書に記載されている場合は常に、「からなる」および/または「から本質的になる」という用語で記載されている他の類似の態様も提供されることが理解される。
【0029】
用語「からなる」とは、「含んでおり、これらに限定されている」を意味する。
【0030】
用語「から本質的になる」とは、組成物の特定された材料、または方法の特定されたステップ、および材料または方法の基本的特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の材料またはステップを意味する。
【0031】
この出願全体を通して、種々の実施形態を範囲形式で提示することができる。範囲形式における記載は、単に便宜性および簡潔性のためであり、本明細書に記載される実施形態の範囲に対する柔軟性のない限定と解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、その範囲内のすべての可能なサブ範囲および個々の数値を具体的に開示したものと考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~2、1~3、1~4、および1~5、2~3、2~4、2~5、2~6、3~4、3~5、3~6などのサブ範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を有すると考えられるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0032】
本明細書で使用される用語「約」は、値または範囲の変動の程度、例えば、規定された値、または規定された範囲の限界の10%以内、5%以内、もしくは1%以内を許容することができる。
【0033】
用語「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」とは、本明細書で互換的に使用され、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」または「ポリペプチド」は、アミノ酸残基のポリマー配列を含む。IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature(JCBN)に準拠して定義されているアミノ酸の1文字および3文字のコードは、この開示全体を通じて使用される。1文字Xとは、20個のアミノ酸のいずれかを指す。また、ポリペプチドは、遺伝暗号の縮重のために、2つ以上のヌクレオチド配列によってコードされ得ることも理解される。変異は、親アミノ酸の1文字のコード、それに続く位置番号、次に、変異アミノ酸の1文字のコードによって命名することができる。例えば、87位のグリシン(G)をセリン(S)に変異させることは、「G087S」または「G87S」として表される。修飾を記載する場合、括弧内に列挙されたアミノ酸の後の位置は、列挙されたアミノ酸のいずれかによるその位置での置換のリストを示す。例えば、6(L、I)は、6位がロイシンまたはイソロイシンで置換され得ることを意味する。時には、配列において、スラッシュ(/)が置換を定義するために使用され、例えば、F/Vは、その位置にフェニルアラニンまたはバリンを有し得ることを示す。
【0034】
用語「架橋酵素」とは、グルタミンもしくはアスパラギンのアミド官能基、リジンのアミン基、またはチロシンのフェノール官能基などのタンパク質またはポリペプチドのアミノ酸残基の官能基と、(a)分子間または分子内反応のいずれかによって、タンパク質またはポリペプチドアミノ酸残基の異なる反応性官能基、例えば、リジンのアミン官能基、セリンのヒドロキシル基、またはチロシンのフェノール性ヒドロキシル基との、あるいは、(b)目的の分子または物質の反応性官能基との間の反応を触媒する酵素を指す。「架橋酵素」の一例は、第一級アミン、例えば、リジン分子のイプシロンアミンと、タンパク質-またはペプチド-結合のグルタミンのアシル基との間のイソペプチド結合の形成を触媒するトランスグルタミナーゼ(Tgase、EC2.3.2.13)である。「架橋酵素」の第2の例は、チロシナーゼ(EC1.14.18.1)であり、溶媒に曝露されたリシル、チロシルおよびシステイニル残基、ならびに多数の小分子と容易に架橋を形成する、チロシンおよびドーパミンなどのフェノールを酸化して反応性のo-キノンを形成する銅含有オキシダーゼである。「架橋酵素」の第3の例は、植物、真菌および細菌に見られる多銅オキシダーゼであるラッカーゼであり、一電子酸化を行うフェノール基質を酸化し、架橋を生じさせる。「架橋酵素」の第4の例は、リジルオキシダーゼであり、他のタンパク質およびペプチドならびに多数の小分子と架橋を形成する、リジン分子の反応性アルデヒドへの変換を触媒する銅依存性オキシダーゼである。
【0035】
用語「シグナル配列」および「シグナルペプチド」とは、タンパク質の成熟または前駆体形態の分泌または直接輸送に関与し得るアミノ酸残基の配列を指す。シグナル配列は、典型的には、前駆体または成熟タンパク質配列のN末端に位置する。シグナル配列は、内因性であっても外因性であってもよい。シグナル配列は、通常、成熟タンパク質には存在しない。シグナル配列は、典型的には、タンパク質が輸送された後、シグナルペプチダーゼによってタンパク質から切断される。
【0036】
用語「酵素前駆体(zymogen)」および「プロ酵素(proenzyme)」とは、本明細書において互換的に使用され、例えばプロ配列のタンパク質分解的切断を介して触媒作用により活性または成熟酵素に変換され得る酵素の不活性前駆体を指す。
【0037】
タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの「成熟または活性」型という用語は、シグナル、サイレンシング、またはシャペロン化プロペプチド配列を伴わないタンパク質、ポリペプチド、または酵素の機能的形態を指す。さらに、成熟酵素は、所望の活性(例えば、抗菌性および/または保存性(antimicrobial and/or preservative))を維持しながら、成熟配列に対して切断されてもよい。
【0038】
アミノ酸配列または核酸配列に関して用語「野生型」は、アミノ酸配列または核酸配列が天然のまたは天然に存在する配列であることを示す。本明細書で使用される場合、用語「天然に存在する」とは、天然に見出されるもの(例えば、タンパク質、アミノ酸、または核酸配列)を指す。逆に、用語「天然に存在しない」とは、天然に見出されないもの(例えば、実験室で生産された組換え/操作された核酸およびタンパク質配列、または野生型配列の修飾)を指す。
【0039】
用語「に由来する」は、用語「を起源とする」、「から得られる」、「から入手可能」、「から単離される」、「から精製される」、および「から作製される」を包含し、一般に、ある特定の材料が、別の特定された材料においてその起源を発見するか、または別の特定された材料を参照して記載することができる特色を有することを示す。
【0040】
用語「単離される」、「精製される」、「分離される」、および「回収される」とは、本明細書で使用される場合、それが自然に会合する少なくとも1種の構成成分から取り出される材料(例えば、タンパク質、核酸、または細胞)を指す。例えば、これらの用語は、例えば、無傷の生物学的システムなどの、その本来の状態で見出されるように、通常それに付随する構成成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を指すことができる。単離された核酸分子は、通常、核酸分子を発現する細胞に含有される核酸分子を含むが、核酸分子は、染色体外またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0041】
アミノ酸残基位置に関して本明細書で使用される場合、「に対応している」または「に対応する(corresponds to)」または「に対応する(correspond to)」または「対応する」とは、タンパク質もしくはペプチド中の列挙された位置におけるアミノ酸残基、またはタンパク質もしくはペプチド中の列挙された残基と類似している、相同である、もしくは同等であるアミノ酸残基を指す。本明細書で使用される場合、「対応する領域」とは、一般に、関連するタンパク質または参照タンパク質中の類似の位置を指す。
【0042】
用語「アミノ酸」とは、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドの基本的な化学構造単位を指す。特定のアミノ酸を同定するために本明細書で使用される以下の略語は、表1に見出すことができる。
【0043】
【表1】
【0044】
当業者は、開示されたアミノ酸配列に関連する機能を保持しながら、本明細書に開示されたアミノ酸配列の修飾を行うことができることを理解する。例えば、所定の部位で化学的に同等なアミノ酸の産生をもたらすが、コードされたタンパク質の機能的特性には影響を及ぼさない遺伝子の変化が一般的であることは、当該技術分野において周知である。
【0045】
本明細書における用語「変異」とは、限定されないが、置換、挿入、および欠失(切断を含む)を含む、親配列に導入された変化を指し、それにより「変異体」を生成する。変異の結果としては、限定されないが、親配列によってコードされるタンパク質には見出されない新たな特徴、特性、機能、表現型または形質の作製が挙げられる。
【0046】
関連(および誘導体)タンパク質は、「バリアント」または「変異体」タンパク質を包含し、これらの用語は、本明細書において互換的に使用される。バリアントタンパク質は、別の(すなわち親)タンパク質および/または互いに、少数のアミノ酸残基によって異なる。バリアントは、それが由来する親タンパク質と比較して、1つまたは複数のアミノ酸変異(例えば、アミノ酸欠失、挿入または置換)を含み得る。あるいはまたはさらに、バリアントは、例えば、BLAST、ALIGN、およびCLUSTALなどの配列アラインメントツールを用いて決定した場合、参照タンパク質または核酸との特定された程度の配列同一性を有し得る。例えば、バリアントタンパク質または核酸は、参照配列と少なくとも約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはさらに99.5%のアミノ酸配列同一性、およびそれらの間の整数パーセンテージを有し得る。
【0047】
用語「最適化されたコドン」とは、種々の宿主の形質転換のための核酸分子の遺伝子またはコード領域を指す場合、DNAがコードするポリペプチドを変化させることなく、宿主生物の典型的なコドン使用を反映するように、核酸分子の遺伝子またはコード領域におけるコドンの変化を指す。
【0048】
用語「遺伝子」とは、コード配列に先行する(5’非コード配列)およびコード配列に続く(3’非コード配列)調節配列を含む、特定のタンパク質を発現する核酸分子を指す。「天然遺伝子」とは、自然界でそれ自体の調節配列とともに見出される遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」とは、天然には一緒に見出されない調節配列およびコード配列を含む天然の遺伝子ではない任意の遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ供給源に由来するが天然に見出されるものとは異なる様式で整列される調節配列およびコード配列を含み得る。「内因性遺伝子」とは、生物のゲノム中のその天然の位置における天然の遺伝子を指す。「外来」遺伝子とは、宿主生物において通常は見出されないが、遺伝子移入により宿主生物に導入される遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然生物に挿入された天然の遺伝子、またはキメラ遺伝子を含み得る。「導入遺伝子」は、形質転換手順によってゲノムに導入された遺伝子である。
【0049】
用語「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を指す。「適切な調節配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、内部、または下流(3’非コード配列)に位置し、関連するコード配列の転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節配列には、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、およびステム-ループ構造が含まれ得る。
【0050】
用語「作動可能に連結される」とは、一方の機能が他方によって影響を及ぼされるように、単一の核酸分子上の核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターは、コード配列の発現に影響を及ぼすことができる、すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある場合、コード配列と作動可能に連結される。コード配列は、センスまたはアンチセンス配向で調節配列に作動可能に連結することができる。
【0051】
用語「調節配列」または「制御配列」は、本明細書において互換的に使用され、生物内で特定の遺伝子の発現を増加または低下させることができるヌクレオチド配列のセグメントを指す。調節配列の例としては、限定されないが、プロモーター、シグナル配列、オペレーターなどが挙げられる。上述のように、調節配列は、目的のコード配列/遺伝子にセンスまたはアンチセンス配向で作動可能に連結され得る。
【0052】
「プロモーター」または「プロモーター配列」とは、遺伝子の転写を開始するためにRNAポリメラーゼを結合することに関与する調節配列を指す。プロモーターは、誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターであり得る。
【0053】
「3’非コード配列」とは、コード配列の下流に位置するDNA配列を指し、転写の終結などの、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことができる調節シグナルをコードする配列を含む。
【0054】
本明細書で使用される用語「形質転換」は、宿主生物への核酸分子の移入または導入を指す。核酸分子は、直鎖状または環状形態のDNAとして導入することができる。核酸分子は、自律的に複製するプラスミドであり得るか、または産生宿主のゲノムに組み込まれ得る。形質転換された核酸を含有する宿主は、「形質転換された」または「組換え」または「トランスジェニック」生物または「形質転換体」と呼ばれる。
【0055】
用語「組換え」および「操作された」とは、別途分離された核酸配列の2つのセグメントの人工的な組合せを指し、例えば、化学合成によるか、または遺伝子操作技術による核酸の単離されたセグメントの操作による。例えば、1つまたは複数のセグメントまたは遺伝子が、天然にまたは実験室の操作のいずれかによって、異なる分子、同じ分子の別の部分から、または人工配列から挿入されたDNAは、遺伝子において、およびからその後、生物において新たな配列の導入をもたらす。用語「組換え」、「トランスジェニック」、「形質転換された」、「操作された」、「遺伝子操作された」および「外因性遺伝子発現について修飾された」は、本明細書において互換的に使用される。
【0056】
用語「ベクター」とは、1つまたは複数の細胞型に核酸を導入するように設計されたポリヌクレオチド配列を指す。ベクターとしては、限定されないが、クローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ粒子、バクテリオファージ、カセットなどが挙げられる。
【0057】
本明細書で使用される「発現ベクター」とは、適切な宿主中でDNAの発現を行うことができる適切な制御配列に作動可能に連結されたDNA配列を含むDNA構築物を意味する。このような制御配列は、転写を行うプロモーター、転写を制御するための任意のオペレーター配列、mRNA上の適切なリボソーム結合部位をコードする配列、エンハンサー、ならびに転写および翻訳の終結を制御する配列を含み得る。
【0058】
本明細書で使用される用語「発現」とは、前駆体または成熟型のいずれかでの機能的末端産物(例えば、mRNAまたはタンパク質)の産生を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指すこともできる。
【0059】
遺伝子の発現は、遺伝子の転写およびmRNAの前駆体または成熟タンパク質への翻訳を含む。
【0060】
「成熟」タンパク質とは、翻訳後にプロセシングされたポリペプチド、すなわち、そこから一次翻訳産物中に存在する任意のシグナル配列、プレペプチドまたはプロペプチドが除去されたものを指す。
【0061】
「前駆体」タンパク質とは、mRNAの翻訳の一次産物を指し、すなわち、プレペプチドおよびプロペプチドが依然として存在する。プレペプチドおよびプロペプチドは、限定されないが、細胞内局在化シグナルであり得る。
【0062】
「安定形質転換」とは、核ゲノムと細胞小器官ゲノムの両方を含む、宿主生物のゲノムへの核酸断片の移入を指し、遺伝的に安定な遺伝をもたらす。
【0063】
対照的に、「一過性の形質転換」とは、組み込みまたは安定な遺伝を伴わない遺伝子発現をもたらす、宿主生物の核またはDNA含有細胞小器官への核酸断片の移入を指す。
【0064】
用語「組換え構築物」、「発現構築物」、「組換え発現構築物」および「発現カセット」は、本明細書において互換的に使用される。組換え構築物は、核酸断片の人工的な組合せ、例えば、すべてが天然に一緒に見出されるわけではない調節配列およびコード配列を含む。例えば、構築物は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ供給源に由来するが、天然に見出される異なる様式で整列された調節配列およびコード配列を含み得る。このような構築物は、それ自体で使用され得るか、またはベクターと併せて使用され得る。ベクターを用いる場合には、ベクターの選択は、当業者に周知のように宿主細胞を形質転換するために使用される方法に依存する。例えば、プラスミドベクターを使用することができる。当業者は、宿主細胞を成功裏に形質転換し、選択し、増殖させるためにベクター上に存在しなければならない遺伝的エレメントを十分に認識している。当業者はまた、異なる独立した形質転換事象が異なるレベルおよびパターンの発現をもたらし得ること(Jones et al., (1985) EMBO J 4:2411- 2418; De Almeida et al., (1989) Mol Gen Genetics 218:78-86)、したがって、複数の事象が、典型的には、所望の発現レベルおよびパターンを示す細胞株を得るためにスクリーニングされることを認識する。このようなスクリーニングは、DNAのサザン分析、mRNA発現のノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイム定量PCR(qPCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、タンパク質発現のイムノブロット分析、酵素または活性アッセイ、および/または表現型分析を含む、標準的な分子生物学的、生化学的、および他のアッセイを用いて達成することができる。
【0065】
用語「宿主」および「宿主細胞」は、本明細書において互換的に使用され、組換え構築物を安定にまたは一時的に導入して遺伝子を発現させることができる、ヒトであるか非ヒトであるかを問わず、植物、生物、または、任意の植物もしくは生物の細胞などの任意の原核細胞または真核細胞を指す。この用語は、増殖中に起こる変異のために親細胞と同一でない、親細胞の任意の子孫を包含する。
【0066】
用語「抗菌薬(抗菌(性)、抗微生物(性)(antimicrobial))」とは、細菌、真菌、ウイルス、酵母、カビなどの任意の微生物を死滅させ、不活化し、または増殖を阻害することを意図された任意の薬剤または薬剤の組合せを指す。用語「抗菌(性)(抗微生物性(antimicrobial))」および「殺生物(性)(biocidal)」は、本明細書において互換的に使用される。
【0067】
用語「広域スペクトル抗菌薬(broad spectrum antimicrobial)」は、広範囲の微生物、例えば、グラム陽性菌、グラム陰性菌、酵母、カビ、ウイルスなどに対して作用するものである。
【0068】
用語「増強する(potentiate)」とは、効果的にし、活性にし、またはより効果的にしもしくは活性にすることを指す。
【0069】
用語「微生物(microorganism)」および「微生物(microbe)」は、本明細書において互換的に使用され、顕微鏡でのみ見ることができるように非常に小さい生き物、すなわち、顕微鏡的生物を指す。微生物は、単細胞形態、または細胞のコロニー、またはバイオフィルムに存在し得る。微生物には、真核生物および原核生物が含まれ、例えば、細菌、古細菌、原生動物、真菌、藻類、アメーバ、ウイルスなどが含まれる。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「製品」は、本明細書に記載されるような抗菌酵素組成物、例えば、消費者向けパッケージ商品の保存または使用を必要とし得る特定の有用性を有する調製物、組成物、または製造品を指すことを意図する。例としては、限定されないが、パーソナルケア製品、家庭用製品、化粧品、店頭治療薬、医薬調製物、塗料、コーティング剤、接着剤、食品、および消費者が購入するための製剤が挙げられる。
【0071】
用語「組成物」とは、本明細書に記載される酵素(例えば、保存剤および/または抗菌薬)組成物を含む2つ以上の物質の組合せを指す。
【0072】
本明細書で使用される「有効量」とは、微生物の増殖を防止するかまたは阻害するのに十分な、本明細書において開示される保存剤組成物の量(例えば、最小発育阻止濃度(MIC))を指す。本明細書に記載される保存剤組成物は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、酵母、真菌、および/またはカビに対して活性であり得る。
【0073】
用語「病原体」とは、疾患を引き起こすことができる任意の生物または物質を指す。疾患を引き起こす生物の例としては、限定されないが、細菌、真菌、ウイルス、原生動物および寄生虫が挙げられる。
【0074】
「医薬的に許容される」とは、動物、より詳細にはヒトでの使用について、連邦もしくは州政府の規制当局により承認されるか、または米国薬局方もしくは他一般に認知されている薬局方に収載されていることを意味する。
【0075】
「医薬的に許容されるビヒクル」または「医薬的に許容される賦形剤」とは、本明細書に記載される発現ベクターまたは抗菌組成物と共に投与することができる任意の希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体を指す。
【0076】
用語「保存剤(preservative)」とは、微生物の増殖によるまたは望ましくない化学的変化による分解を防止するために製品に添加される物質または薬剤を指す。また、「保存剤」には、酸化防止剤および酸素除去物質も含まれる。このような酸化防止剤および酸素除去物質の例としては、限定されないが、アスコルビン酸、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼなどが挙げられる。保存剤を添加することができる製品の例としては、限定されないが、食品製品、飲料、医薬品(pharmaceutical drug)、塗料、生物学的試料、化粧品、木材、家庭用洗浄製品、パーソナルケア製品などが挙げられる。
【0077】
「任意の」または「任意選択により(場合により)」とは、後に記載される事象、状況、または材料が発生し得るかもしくは発生し得ない、または存在し得るかもしくは存在し得ないこと、ならびに記載は、事象、状況、または材料が発生するかまたは存在する場合、および発生しないかまたは存在しない場合を含むことを意味する。
【0078】
用語「保存可能期間(shelf life)」とは、アイテム(例えば、本明細書に記載される製品)が使用可能であり、消費に適合しているか、または販売可能である期間の長さを指す。
【0079】
本明細書に別段の定義がない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の要求がない限り、単数用語は複数形を含むものとし、複数用語は単数形を含むものとする。本開示の方法および技術は、一般に、当該技術分野において周知の従来の方法に従って行われる。一般に、本明細書に記載される生化学、酵素学、分子および細胞生物学、微生物学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法および技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されるものある。本開示の方法および技術は、一般的に、当該技術分野において周知の従来の方法に従って、また特に示されない限り、本明細書全体において引用および考察される種々の一般的およびより具体的な参考文献に記載されるように行われる。
【0080】
第1の実施形態では、(a)任意選択により酵素前駆体の形態である、少なくとも1種の架橋酵素を、(b)任意選択により抗菌活性を有する、酵素、ペプチド、またはタンパク質からなる群から選択される少なくとも1種の構成成分と組み合わせて、任意選択により(c)少なくとも1種の化学保存剤とさらに組み合わせて、含む組成物であって、ここで、(b)と組み合わせて、任意選択により(c)とさらに組み合わせて、(a)を含む組成物が、保存剤および抗菌薬からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する、組成物が開示される。
【0081】
本明細書で用いることができる適切な架橋酵素の例としては、限定されないが、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ソルターゼ、ホルミルグリシン生成酵素、およびスルフヒドリルオキシダーゼが挙げられる。
【0082】
上述のように、「架橋」とは、グルタミンもしくはアスパラギンのアミド官能基、リジンのアミン基、またはチロシンのフェノール官能基などのタンパク質またはポリペプチドのアミノ酸残基の官能基と、(a)分子間または分子内反応のいずれかによって、タンパク質またはポリペプチドアミノ酸残基の異なる反応性官能基、例えば、リジンのアミン官能基、セリンのヒドロキシル基、またはチロシンのフェノール性ヒドロキシル基との、あるいは、(b)目的の分子または物質の反応性官能基との間の反応を触媒する酵素を指す。「架橋酵素」の一例は、第一級アミン、例えば、リジン分子のイプシロンアミンと、タンパク質-またはペプチド-結合のグルタミンのアシル基との間のイソペプチド結合の形成を触媒するトランスグルタミナーゼ(Tgase、EC2.3.2.13)である。「架橋酵素」の第2の例は、チロシナーゼ(EC1.14.18.1)であり、溶媒に曝露されたリシル、チロシルおよびシステイニル残基、ならびに多数の小分子と容易に架橋を形成する、チロシンおよびドーパミンなどのフェノールを酸化して反応性のo-キノンを形成する銅含有オキシダーゼである。「架橋酵素」の第3の例は、植物、真菌および細菌に見られる多銅オキシダーゼであるラッカーゼであり、一電子酸化を行うフェノール基質を酸化し、架橋を生じさせる。「架橋酵素」の第4の例は、リジルオキシダーゼであり、他のタンパク質およびペプチドならびに多数の小分子と架橋する、リジン分子の高反応性アルデヒドへの変換を触媒する銅依存性オキシダーゼである。
【0083】
一部の実施形態では、組成物は、少なくとも1種の架橋酵素を含み、例えば、保存されるべき製品において、微生物(例えば、細菌、真菌)増殖を阻害するのに有効な量で、例えば、微生物増殖の50%~100%の、または少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のいずれかの阻害で、少なくとも1種の架橋酵素を含むかまたはそれから本質的になる。
【0084】
好ましくは、架橋酵素は、通常、活性酵素形態で細胞毒性を示すトランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、およびチロシナーゼから選択することができる。
【0085】
最も好ましくは、架橋酵素は、限定されないが、トランスグルタミナーゼ、例えば、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)トランスグルタミナーゼ(配列番号1)、またはそのバリアント(例えば、配列番号2)を含む。最も具体的には、架橋酵素は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0086】
一部の実施形態では、酵素は、限定されないが、抗菌活性および/または保存活性、ならびに配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、トランスグルタミナーゼ、例えば、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)トランスグルタミナーゼ(配列番号1)、またはそのバリアント(例えば、配列番号2)などの架橋酵素である。
【0087】
トランスグルタミナーゼ(Tgase、EC2.3.2.13)は、第一級アミン、例えば、リジン分子のε-アミンと、タンパク質-またはペプチド-結合のグルタミンのアシル基との間のイソペプチド結合の形成を触媒する酵素である。トランスグルタミナーゼは、標的タンパク質のグルタミル側鎖とリシル側鎖の間のアミド転移反応を触媒し得る。Tgase活性を有するタンパク質は、微生物、植物、無脊椎動物、両生類、魚類および鳥類において見出されている。真核生物のTgaseとは対照的に、微生物起源のTgaseはカルシウム非依存性であり、それらの実用上の主な利点である。
【0088】
一部の実施形態では、トランスグルタミナーゼは、微生物トランスグルタミナーゼ、例えば、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)のバリアントのCa2+-非依存性微生物トランスグルタミナーゼ(Tgase)である。一部の特に好ましい実施形態では、Tgaseは微生物Tgaseであり、好ましくはストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)のバリアントのCa2+-非依存性微生物トランスグルタミナーゼ(Tgase)である。一部の特に好ましい実施形態では、Tgaseは、配列番号2などの、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)Tgaseのより安定な変異バリアントである。明確に定義された微生物Tgasを表2に示し、Zhang, et al. (2010) Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 26:205-222, with additions from Steffen, et al. (2017) J. Biol. Chem. 292(38):15622-15635から再生する。
【0089】
トランスグルタミナーゼは、酵素のトランスフェラーゼクラスに属する(Heck et al. (2013) Applied Microbiology and Biotechnology 97:461-475)。トランスフェラーゼは、求核置換反応によって、メチル基、ヒドロキシメチル基、ホルマール基、グリコシル基、アシル基、アルキル基、リン酸基、および硫酸基などの官能基の移入(トランスファー(transfer))を触媒する。トランスフェラーゼは、移入した基(複数可)に基づいて10個のカテゴリーに分けることができる。移入される種々の基には、単一炭素基、アルデヒドまたはケトン基、アシル基または移入中にアルキル基となる基、グリコシル基、ならびにヘキソースおよびペントース、メチル基以外のアルキルまたはアリール基、窒素基およびリン含有基が含まれ;サブクラスは、アクセプター(例えば、アルコール、カルボキシルなど)、硫黄含有基、セレン含有基、およびモリブデンまたはタングステンに基づく。
【0090】
【表2-1】
【0091】
【表2-2】
【0092】
【表2-3】
【0093】
S.モバラエンシス(S. mobaraensis)からのTgase調製物には、魚介類、肉類、乳製品、および穀物製品におけるタンパク質架橋の一般的に安全とみなされている(GRAS)ステータスが割り当てられている(FDA/CFSAN機関の回答書簡:GRAS通知番号000004(1998)、000029(1999)、000055(2001)、および000095(2002))。市販の微生物トランスグルタミナーゼは大量に生産され、Ajinomoto US, Inc.により商品名「ACTIVA(登録商標)」で流通されている。
【0094】
リジルオキシダーゼ(LOX、EC1.4.3.13、タンパク質-リジン6-オキシダーゼとしても公知)は、第一級アミン基質を反応性アルデヒドに酸化する銅依存性酵素である。哺乳動物では5種の異なるLOX酵素、LOXおよびLOX様(LOXL)1~4が同定されており、高度に保存された触媒性カルボキシ末端ドメインおよび残りの配列におけるより多くの相違を示す。さらに、LOXタンパク質は、Grau-Bove, et al. (2015) Scientific Reports 5: Article number: 10568において概説された、多くの他の真核生物、ならびに細菌および古細菌において同定されている。
【0095】
チロシナーゼ(EC1.14.18.1)は、溶媒に曝露されたリジル、チロシル、およびシステイニル残基、ならびに多数の小分子と容易に架橋を形成する、チロシンおよびドーパミンなどのフェノールを酸化して反応性のo-キノンを形成する銅含有オキシダーゼである。自然界では、チロシナーゼは硬化およびメラニン化において重要な役割を果たしており、おそらく果物および野菜の酵素的褐変に関与する酵素として最もよく知られている。チロシナーゼは、乳清タンパク質α-ラクトアルブミンおよびβ-ラクトグロブリンの架橋を誘導することが示されている。チロシナーゼは、種々の植物、動物、および真菌種から単離され、研究されている。
【0096】
最もよく知られ、特徴付けられているチロシナーゼは、哺乳動物由来のものである。最も広く調査されている真菌チロシナーゼは、構造的および機能的の両方の観点から、ツクリタケ(Agaricus bisporus)(Wichers, et al. (1996) Phytochemistry 43(2):333-337)およびアカパンカビ(Neurospora crassa)(Lerch (1983) Mol Cell Biochem 52(2):125-128)由来である。いくつかの細菌チロシナーゼが報告されており、ストレプトマイセス(Streptomyces)チロシナーゼが最も完全に特徴付けられている(米国特許第5,801,047号明細書および同第5,814,495号明細書)。さらに、チロシナーゼは開示されており、例えば、バチルス(Bacillus)およびミロテシウム(Myrothecium)(欧州特許第919628号明細書)、ムコール(Mucor)(特許第6115488号明細書)、ミリオコッカム(Miriococcum)(特許第60062980号)、アスペルギルス(Aspergillus)、チェトトマスチア(Chaetotomastia)、およびアスコバギノスポ(Ascovaginospora)(Abdel-Raheem and Shearer (2002) Fungal Diversity 11(5):1-19)、およびトラメテス(Trametes)(Tomsovsky and Homolka (2004) World Journal of Microbiology and Biotechnology 20(5):529-530)由来である。
【0097】
ラッカーゼは、植物、真菌、および細菌に見られる多銅酸化酵素であり、フェノール基質を酸化し、一電子酸化を行い、架橋を生じさせる。ラッカーゼによりタンパク質を架橋するための方法は、例えば、米国特許出願公開第2002/009770号明細書に開示されている。豆、穀物に由来する植物タンパク質、ならびに牛乳、卵、肉、血液、および腱を含む動物タンパク質が、適切な基質として列挙されている。真菌ラッカーゼは、米国特許出願公開第2002/019038号に開示されている。
【0098】
ソルターゼは、グラム陽性菌の膜に埋め込まれたカルシウム依存性酵素群を構成する。それらの一次アミノ酸配列に基づいて、ソルターゼは、現在、細菌細胞表面で高度に部位特異的トランスペプチド化反応を発揮する6つの異なるクラス(A~F)に割り当てられている(Spirig, et al. (2011) Mol Microbiol 82:1044-1059)。これらには、ソルターゼAによる増殖中の細胞壁への多様な機能性タンパク質の固定(Marraffini, et al. (2006) Microbiol Mol Rev 70:192-221; Mazmanian, et al. (1999) Science 285:760-763)、およびソルターゼCによる個々のピリンサブユニットからの線毛のアセンブリ(Hendrickx, et al. (2011) Nat Rev Microbiol 9:166-176)が含まれる。
【0099】
ホルミルグリシン生成酵素(FGE、EC1.8.3.7)は、真核生物および好気性微生物におけるI型スルファターゼの同時翻訳または翻訳後の活性化を触媒する銅含有オキシダーゼである(Appel et al. (2019) Proc Natl Acad Sci 116(12): 5370-5375)。これは、スルファターゼ活性部位のシステイン残基のホルミルグリシン(fGly)への酸化によって達成される。FGEの基質特異性の低さは、モノクローナル抗体におけるfGlyへの部位特異的薬物結合などの、バイオテクノロジーおよび治療的応用におけるその使用を可能にした。
【0100】
スルフヒドリルオキシダーゼ(SOX、EC1.8.3.2)は、分子酸素を電子受容体として用いることにより、タンパク質およびチオール含有小分子中の遊離スルフヒドリル基を酸化する(Faccio et al. (2011) App Microbiol Biotechnol 91(4) 957-966)。SOXは、タンパク質間のジスルフィド架橋を形成する、多くの生物の細胞内コンパートメントから単離されている。さらに、SOXは、多くの工業的に関連する生物のセクレトーム中に見出されている。
【0101】
本明細書で使用される場合、用語「同一性パーセント」は、配列を比較することによって決定した場合、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、「同一性」はまた、場合に応じて、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列のストリング間の一致するヌクレオチドまたはアミノ酸の数によって決定した場合、このような配列間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」および「類似性」は、限定されないが、Computational Molecular Biology (Lesk, AM., ed.) Oxford University Press, NY (1988); Biocomputing: Informatics and Genome Projects (Smith, D. W., ed.) Academic Press, NY (1993); Computer Analysis of Sequence Data, Part I (Griffin, AM., and Griffin, H. G., eds.) Humana Press, NJ (1994); Sequence Analysis in Molecular Biology (von Heinje, G., ed.) Academic Press (1987);およびSequence Analysis Primer (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.) Stockton Press, NY (1991)に記載される方法を含む公知の方法によって容易に計算することができる。
【0102】
同一性および類似性を決定する方法は、公に入手可能なコンピュータプログラムで体系化される。
【0103】
本明細書で使用される場合、「同一性%」または「同一性パーセント」または「PID」とは、タンパク質配列同一性を指す。同一性パーセントは、当該技術分野において公知である標準的な技術を用いて決定することができる。有用なアルゴリズムとしては、BLASTアルゴリズム(Altschul, et al., J Mol Biol, 215:403-410, 1990;およびKarlin and Altschul, Proc Natl Acad Sci USA, 90:5873-5787, 1993を参照されたい)が挙げられる。BLASTプログラムは、いくつかの検索パラメータを使用し、そのほとんどはデフォルト値に設定されている。NCBI BLASTアルゴリズムは、生物学的類似性に関して最も適切な配列を見出すが、20残基未満のクエリー配列に対しては推奨されない(Altschul, et al., Nucleic Acids Res, 25:3389-3402, 1997;およびSchaffer et al., Nucleic Acids Res, 29:2994-3005, 2001)。核酸配列検索のための例示的なデフォルトBLASTパラメータは、隣接ワード閾値=11;E値カットオフ=10;スコアリングマトリックス=NUC.3.1(マッチ=1、ミスマッチ=-3);ギャップ開口=5;およびギャップ伸長=2を含む。アミノ酸配列検索のための例示的なデフォルトBLASTパラメータは、ワードサイズ=3;E値カットオフ=10;スコアリングマトリックス=BLOSUM62;ギャップ開口=11;およびギャップ伸長=1を含む。アミノ酸配列同一性パーセント(%)値は、「参照」配列の残基の総数で割った一致する同一残基の数によって決定される。BLASTアルゴリズムは、「参照」配列を「クエリー」配列と称する。
【0104】
本明細書で使用される場合、「相同タンパク質」とは、一次、二次、および/または三次構造において明確な類似性を有するタンパク質を指す。タンパク質の相同性は、タンパク質を整列させた場合に、直鎖状アミノ酸配列の類似性を指すことができる。タンパク質配列の相同検索は、0.001で閾値(E値カットオフ)を有するNCBI BLASTからのBLASTPおよびPSI-BLASTを用いて行うことができる。Gapped BLASTおよびPSI BLASTは、新世代のタンパク質データベース検索プログラムである(Altschul SF, Madde TL, Shaffer AA, Zhang J, Zhang Z, Miller W, Lipman DJ, Nucleic Acids Res (1997) 25(17):3389-402)。この情報を用いて、タンパク質配列をグループ化することができる。
【0105】
配列アラインメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.、Madison、WI)のMegalignプログラム、VectorNTI v7.0のAlignXプログラム(Informax,Inc.、Bethesda、MD)またはEMBOSSオープンソフトウェアスイート(EMBL-EBI;Rice et al., Trends in Genetics 16, (6):276-277 (2000))を用いて行うことができる。配列の多重アラインメントは、デフォルトパラメータで、アラインメントのCLUSTAL法(例えば、CLUSTALW;例えば、バージョン1.83)(Higgins and Sharp, CABIOS, 5:151-153 (1989); Higgins et al., Nucleic Acids Res. 22:4673-4680 (1994);およびChenna et al., Nucleic Acids Res 31 (13):3497-500 (2003))、European Bioinformatics Instituteeを介したEuropean Molecular Biology Laboratoryから入手可能)を用いて行うことができる。CLUSTALWタンパク質アラインメントに適したパラメータには、GAP存在ペナルティ=15、GAP伸長=0.2、マトリックス=Gonnet(例えば、Gonnet250)、タンパク質ENDGAP=-1、タンパク質GAPDIST=4、およびKTUPLE=1が含まれる。一実施形態では、高速または低速アライメントは、低速アライメントである場合のデフォルト設定とともに使用される。あるいは、CLUSTALW法を使用するパラメータ(例えば、バージョン1.83)は、KTUPLE=1、GAPペナルティ=10、GAP伸長=1、マトリックス=BLOSUM(例えば、BLOSUM64)、WINDOW=5、およびTOP DIAGONALS SAVED=5を使用するようにも改変され得る。
【0106】
あるいは、多重配列アラインメントは、Geneous(登録商標)バージョン10.2.4からのMAFFTアラインメントを用いて、デフォルト設定、スコアリングマトリクッスBLOSUM62、ギャップオープンペナルティ1.53、およびオフセット値0.123で導出することができる。
【0107】
MUSCLEプログラム(Robert C. Edgar. MUSCLE: multiple sequence alignment with high accuracy and high throughput (Nucl. Acids Res. (2004) 32(5):1792-1797))は、多重配列アラインメントアルゴリズムのさらに別の例である。
【0108】
任意選択により抗菌活性を有する構成成分の例には、限定されないが、プロテアーゼ、加水分解酵素およびリアーゼ、例えば、リゾチーム、キチナーゼ、リパーゼ、リシン、リゾスタフィン、スブチリシン、アミラーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、DNase、RNase、ラクトフェリン、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトナーゼ、アシラーゼ、ディスパーシンB、アミラーゼ、セルラーゼ、ナイシン、バクテリオシン、シデロフォア、ポリミキシン、およびデフェンシンが挙げられる。
【0109】
本明細書に記載される組成物に使用するのに適した化学保存剤の例としては、限定されないが、第四級アンモニウム化合物、界面活性剤、カオトロピック剤、有機酸、アルコール、グリコール、アルデヒド、酸化剤、パラベン、イソチアゾリノン、およびカチオン性ポリマーが挙げられる。
【0110】
別の実施形態では、架橋酵素は酵素前駆体の形態であり、組成物は酵素を含み、酵素前駆体および酵素は、保存活性および/または抗菌活性を有する活性酵素または成熟酵素を生成するように相互作用する(例えば、酵素前駆体および酵素は、酵素前駆体が酵素前駆体の成熟形態に変換されるように相互作用する)。
【0111】
さらに別の実施形態では、任意選択により酵素前駆体の形態である、少なくとも1種の架橋酵素をコードする少なくとも1種の異種核酸配列を含む発現ベクターが開示され、前記異種核酸配列は、任意選択により、少なくとも1種の調節配列に作動可能に連結され、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞が不活化される、阻害される(例えば、形質転換された宿主細胞の増殖が阻害される)、または死滅するように、前記少なくとも1種の架橋酵素を細胞内または細胞外のいずれかで発現するように宿主細胞を形質転換することができる。
【0112】
保存剤は、微生物の増殖を抑制し、微生物汚染物質の量を減少させることによって製品の微生物学的安全性を維持するために、製品製剤に添加される抗菌成分である。米国薬局方は、化粧品およびパーソナルケア製品における保存剤の許容可能な微生物生存に関するプロトコールを公開している。これらの試験には、USP 51(抗菌効力試験)およびUSP 61(微生物限度試験)(https://www.fda.gov/files/about%20fda/published/Pharmaceutical-Microbiology-Manual.pdf)が含まれる。
【0113】
本明細書に開示される保存剤系の有効性は、限定されないが、グラム陽性菌、グラム陰性菌、酵母および/またはカビ(例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC 6538、大腸菌(E. coli)ATCC 8739、緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC 9027、C.アルビカンス(C. albicans)ATCC 10231、およびA.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)ATCC 16404)を含む、種々の微生物に対するMIC(最小発育阻止濃度)に基づいて決定される。最小発育阻止濃度(MIC)は、微生物の増殖を阻害する抗菌薬の最低濃度として定義される。微生物増殖は、例えば、分光光度法(600~650nmでの光学濃度)または細胞生存率アッセイ(例えば、BacTiter-Glo(商標)、Promega(登録商標))によって決定することができる。
【0114】
一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物において利用される少なくとも1種の架橋酵素は、最初は酵素前駆体の形態である。上述のように、酵素前駆体は、所望の抗菌活性および/または保存活性を有する活性酵素を与えるために切断されなければならないプロ配列で発現される不活性な酵素の前駆体(プロ酵素)である。プロ配列の切断は、しばしば細胞に対して非常に毒性である活性または成熟酵素(すなわち、成熟型の酵素前駆体)を与える。プロ酵素は、切断可能なリーダー配列とともに発現されて、細胞に対する関連酵素毒性に起因して、酵素の活性を抑制する。したがって、酵素前駆体は、それらの成熟型が抗菌特性を示す場合、抗菌剤または保存剤として使用するための有用なクラスの酵素を提示する。成熟活性酵素形態(すなわち、プロ配列なし)は、抗菌組成物および/または保存剤組成物の調製のために、開示された組成物中で使用することができる。このカテゴリー内の有用な酵素には、限定されないが、溶菌酵素(例えば、プロテアーゼ、加水分解酵素、リアーゼ、ヌクレアーゼ)および架橋酵素が含まれる。
【0115】
一部の実施形態では、本明細書に記載される不活性酵素前駆体(例えば、トランスグルタミナーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、トランスフェラーゼ、リジルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ソルターゼ、ホルミルグリシン生成酵素、またはスルフヒドリルオキシダーゼの酵素前駆体などの架橋酵素)は、組成物もしくは生成物において、または保存剤もしくは抗菌薬使用方法において、プロテアーゼなどの少なくとも1つの酵素と組み合わされる。酵素前駆体は、組成物中で酵素とともに貯蔵され得るか、または使用部位で組み合わされ得る。酵素は、例えば、製品の保存ために、または抗菌用途での使用(例えば、微生物防除のため)において、酵素前駆体を活性化するように働くことができる(例えば、酵素前駆体と相互作用して酵素前駆体を成熟型の酵素前駆体に変換する)。
【0116】
一部の実施形態では、組成物は、酵素、ペプチドなどの1種または複数の抗菌剤を含む。抗菌剤の例としては、限定されないが、キトサンが挙げられる。理論に拘束されることなく、抗菌剤の使用は、存在する架橋酵素(単数または複数)の抗菌活性とともに相加効果を有し、広域スペクトルの微生物防除をもたらすことができる。例えば、キトサンは細胞膜を破裂させ、細胞内容物の漏出をもたらす。本明細書に記載される架橋酵素は、細胞の表面上と細胞内の両方で細胞機能に不可欠なタンパク質を架橋することができる。両方の材料のこの組合せ(すなわち、抗菌酵素と抗菌剤(例えば、キトサン))は、必要とされる材料の量(すなわち、より少ない抗菌化学物質(例えば、キトサン)およびより少ない架橋酵素)を減少させ、酵素に対してさらなる安定性を提供し、経時的により大きな活性を可能にし、キトサンなどの抗菌化学物質の使用に伴い得る望ましくない効果を減少させる。
【0117】
本明細書に記載される組成物に含まれ得る公知の抗菌酵素、ペプチド、およびタンパク質の非限定的な例を表3に示す。
【0118】
【表3-1】
【0119】
【表3-2】
【0120】
【表3-3】
【0121】
一部の実施形態では、本明細書に開示される架橋酵素のいずれか、例えば、限定されないが、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ソルターゼ、ホルミルグリシン生成酵素、またはスルフヒドリルオキシダーゼは、表3に記載される1種または複数の抗菌酵素、ペプチド、またはタンパク質と組み合わせて、抗菌組成物および/または保存剤組成物中で利用して、広域スペクトル微生物防除を提供することができる。
【0122】
本明細書に記載される組成物は、抗菌化学物質を含み得る。本明細書に記載される抗菌架橋酵素、例えば、限定されないが、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ソルターゼ、ホルミルグリシン生成酵素、またはスルフヒドリルオキシダーゼは、例えば、抗菌組成物として使用するために、限定されないが、キトサン、ポリリジン、または第四級アンモニウム化合物を含む、1種または複数の抗菌化学物質(複数可)とともに製剤化することができる。抗菌化学物質の非限定的な例を以下の表4に示す。
【0123】
【表4-1】
【0124】
【表4-2】
【0125】
【表4-3】
【0126】
カチオン性生体高分子および第四級アンモニウム化合物は、細胞膜を破壊する能力のため、保存剤または保存剤増強剤として成功裏に用いられている。天然カチオン性生体高分子は、キトサンのように、それらの抗菌活性について周知である(Kong, et al. (2010) Int. J. of Food Microbiol. 144: 51-63)。細菌、酵母、および真菌などの異なる微生物群に対するキトサンの抗菌活性が公知である。第四級アンモニウム化合物(非限定的な例としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、およびポリアミノプロピルビグアニドが挙げられる)も同様に顕著な抗菌特性を有する。しかしながら、これらの第四級アンモニウム化合物は、他の化粧品成分との特定の不適合性のために、パーソナルケア産業への使用が制限されている。例えば、塩化ベンゼトニウムは、局所パーソナルケア製剤の重要な部分を形成する、アニオン性界面活性剤などの多くのアニオン性成分によって不活性化される。
【0127】
ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド供与体などの架橋剤、例えば、DMDMヒダントイン(CAS 6440-58-0)、イミダゾリジニル尿素、およびジアゾリジニル尿素(CAS 39236-46-9)もまた使用される。これらの物質によって放出されるホルムアルデヒドは、ホルムアルデヒドの広範な使用を制限する健康上の懸念に加えて、その反応性アルデヒドカルボニル官能基を介していくつかの化粧品成分と反応することができる。例えば、アボベンゾンは、ホルムアルデヒド誘導体によって放出されるホルムアルデヒドと反応する。
【0128】
パラベンはp-ヒドロキシ安息香酸のエステルである。パラベン化合物には、メチル-パラベン(CAS 99-76-3)、エチル-パラベン(CAS 120-47-8)、プロピル-パラベン(CAS 94-13-3)、ブチル-パラベン(CAS 94-26-8)、イソプロピル-パラベン(CAS 4191-73-5)、およびベンジル-パラベン(CAS 94-18-8)が含まれる。パラベンはフェノール誘導体であり、有機官能基と反応し得る、pKが10のフェノール性「ヒドロキシル」基を有する。さらに、パラベンは、内分泌かく乱物質としての役割の可能性があるため、消費者の支持を失っている。
【0129】
クロロチアゾリノン、2,4-ジクロロベンジル-アルコール、クロロキシレノール、メチルジブロモグルタロニトリル、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ジオール、クロルフェネシン、およびクロルヘキシジンなどのハロゲン化分子は、非常に反応性の高い化合物であり、それらの使用レベルは、毒性および感作を制限するために、パーソナルケア業界全体で高度に調節されている。例えば、IPBCはヨウ素含有量による甲状腺ホルモン障害のリスクがある。日本では許可されておらず、EUでは、リーブオン製品の最大0.02%でのみ認められている。同様に、EUでは、メチルジブロモグルタロニトリルの使用は、リンスオフ製品に限って最大0.1%でのみ認められている。ブロノポール、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールは、窒素含有化粧品成分のいくつかと相互作用する上で発がん性ニトロソアミンの生成に関与する。メチルクロロイソチアゾリノンの抗菌効力は、15ppm濃度のリンスオフ製品においてのみ許容される。
【0130】
本明細書に開示された広域スペクトル抗菌組成物および/または保存剤組成物は、パーソナルケア、家庭、工業、施設、油およびガス、海洋、食品および飲料、農業、動物、ならびにヒトの栄養、水の浄化などの種々の用途に使用することができることに留意されたい。
本明細書に開示された前述の非限定的な実施形態は、以下を含む:
1.(a)任意選択により酵素前駆体の形態である、少なくとも1種の架橋酵素を、(b)任意選択により抗菌活性を有する、酵素、ペプチド、および/またはタンパク質からなる群から選択される少なくとも1種の構成成分と組み合わせて、任意選択により(c)少なくとも1種の化学保存剤とさらに組み合わせて、含む組成物であって、ここで、(b)と組み合わせて、任意選択により(c)とさらに組み合わせて、(a)を含む組成物が、保存剤および抗菌薬からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する、組成物。
2.少なくとも1種の架橋酵素が、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ソルターゼ、ホルミルグリシン生成酵素、およびスルフヒドリルオキシダーゼからなる群から選択される、実施形態1の組成物。
3.少なくとも1種の架橋酵素がトランスグルタミナーゼである、実施形態1または2の組成物。
4.トランスグルタミナーゼが、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態1、2または3の組成物。
5.抗菌活性を有する少なくとも1種の構成成分が、リゾチーム、キチナーゼ、リパーゼ、リシン、リゾスタフィン、グルカナーゼ、DNase、RNase、ラクトフェリン、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトナーゼ、アシラーゼ、ディスパーシンB、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ナイシン、バクテリオシン、シデロフォア、ポリミキシン、およびデフェンシンからなる群から選択される、実施形態1、2、3または4の組成物。
6.少なくとも1種の化学保存剤が、第四級アンモニウム化合物、界面活性剤、カオトロピック剤、有機酸、アルコール、グリコール、アルデヒド、酸化剤、およびパラベンからなる群から選択される、実施形態1、2、3、4または5の組成物。
7.(a)が酵素前駆体であり、(b)が酵素を含み、さらに、酵素前駆体および酵素が相互作用して、保存剤および抗菌薬からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する酵素前駆体の活性酵素を生成する、実施形態1、2、3、4、5または6の組成物。
8.任意選択により酵素前駆体の形態である、少なくとも1種の架橋酵素をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む発現ベクターであって、ここで、前記異種核酸配列が、任意選択により少なくとも1種の調節配列に作動可能に連結され、発現ベクターが、宿主細胞を形質転換して、形質転換された宿主細胞が不活性化される、阻害される、または死滅するように、前記少なくとも1種の架橋酵素を細胞内または細胞外のいずれかで発現させることができる、発現ベクター。
9.少なくとも1種の架橋酵素が、トランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ソルターゼ、ホルミルグリシン生成酵素、およびスルフヒドリルオキシダーゼからなる群から選択される、実施形態8の発現ベクター。
10.少なくとも1種の架橋酵素がトランスグルタミナーゼである、実施形態8または9の発現ベクター。
11.トランスグルタミナーゼが、配列番号2におけるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態8、9または10の発現ベクター。
12.抗菌活性を有する少なくとも1種の構成成分が、リゾチーム、キチナーゼ、リパーゼ、リシン、リゾスタフィン、グルカナーゼ、DNase、RNase、ラクトフェリン、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトナーゼ、アシラーゼ、ディスパーシンB、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ナイシン、バクテリオシン、シデロフォア、ポリミキシン、およびデフェンシンからなる群から選択される、実施形態8、9、10または11の発現ベクター。
13.少なくとも1種の化学保存剤が、第四級アンモニウム化合物、界面活性剤、カオトロピック剤、有機酸、アルコール、グリコール、アルデヒド、酸化剤、パラベン、イソチアゾリノン、およびカチオン性ポリマーからなる群から選択される、実施形態8、9、10、11または12の発現ベクター。
14.(a)が酵素前駆体であり、(b)が酵素を含み、さらに、酵素前駆体および酵素が相互作用して、保存剤および抗菌薬からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する活性酵素を生成する、実施形態8、9、10、11、12、または13の発現ベクター。
15.トランスグルタミナーゼが、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態8、9、10、11、12、13、または14の発現ベクター。
【0131】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しているが、本発明を限定するものではない。
【0132】
実施例
本明細書に別段の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、この開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 2D ED., John Wiley and Sons, New York (1994)、およびHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, N.Y. (1991)は、この開示において使用される多数の用語の一般的な辞書を当業者に提供している。
【0133】
本開示は、以下の実施例においてさらに定義される。これらの実施例は、特定の実施形態を示しているが、例示としてのみ示されていることを理解されたい。
【0134】
上の説明および実施例から、当業者は、この開示の本質的特徴を確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、種々の使用および条件に適応するために種々の変更および修正を行うことができる。
【0135】
実施例
実施例1 野生型Tgase(配列番号1)の抗菌特性
配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する市販の野生型ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)トランスグルタミナーゼ(TI製剤)はAjinomotoから供給された。Tgaseは、Ajinomoto USAからActiva(登録商標)-TIの商品名で入手可能である。この製品は、99%マルトデキストリンおよび1%微生物酵素の固体調製物として販売されている。Ajinomotoは、酵素活性が81~135U/gと報告している。Activa(登録商標)-TIをそのまま使用し、接線流ろ過または透析ろ過によりマルトデキストリンから精製して酵素を濃縮した。さらに、野生型Tgase配列番号1を、前掲される文献の方法(Javitt, et al. (2017) BMC Biotechnol. 17:23)により調製した。Tgase活性は比色ヒドロキサメート活性アッセイ(Folk and Cole (1965) J Biol Chemistry 240(7):2951-2960)を用いて測定した。両調製物から同様の結果が得られた。
【0136】
American Type Culture Collection(ATCC)(Manasas、VA)から大腸菌(E. coli)ATCC 8739およびC.アルビカンス(C. albicans)ATCC 10231を取得し、-80℃の凍結グリセロールストックとして維持した。枯草菌(B. subtilis)BGSC 1A1276はBacillus Genetic Stock Center(BGSC)(Columbus、OH)から購入し、-80℃の凍結グリセロールストックとして維持した。大腸菌(E. coli)DH5-アルファおよび大腸菌(E. coli)DH10-ベータは、New England Biolabs(NEB)(Ipswich、MA)から購入し、-80℃の凍結グリセロールストックとして維持した。
【0137】
細菌培養物のMIC決定のために、大腸菌(E. coli)ATCC 8739、DH5-アルファ、DH10-ベータ、および枯草菌(B. subtilis)BGSC 1A1276をLBブロス中で一晩(16~18時間)、37℃で増殖させた。翌日、OD600を用いて飽和培養物の細胞密度を計算し、培養物を滅菌LB培地中で10~10CFU/mLに希釈して接種材料を作製し、0.003%リゾチームの存在下または非存在下(有効濃度の100分の1)で、90μLの接種材料を0.0001~0.01重量パーセントの範囲で、連続希釈したTgase配列番号1の10μLと合わせた。BioTek(登録商標)Synergy Plate ReaderでOD600により増殖曲線を測定した。場合により、翌日、BacTiter-Glo(商標)(Promega(登録商標))、製造業者のプロトコールに従う)などの細胞生存率アッセイを使用して、細胞生存率を評価することができた。OD600または発光の低下は、細胞生存率の低下を示した。結果を、未処理培養物に対する細胞数の減少パーセントとして提示する。試験条件はすべて三連で行った。
【0138】
酵母培養物のMIC決定のために、C.アルビカンス(C. albicans)ATCC 10231をYPD培地中で一晩(24時間)、30℃で増殖させた。翌日、OD600を用いて飽和培養物の細胞密度を計算し、培養物を滅菌YPD培地中で10~10CFU/mLに希釈して接種材料を作製し、90μLの接種材料を0.0001~0.01重量パーセントの範囲で、連続希釈したTgase配列番号1の10μLと合わせた。培養物を30℃で一晩増殖させ、BioTek(登録商標)Synergy Plate ReaderでOD600により増殖曲線を測定した。場合により、翌日、BacTiter-Glo(商標)(Promega(登録商標))、製造業者のプロトコールに従う)などの細胞生存率アッセイを使用して、細胞生存率を評価することができた。OD600または発光の低下は、細胞生存率の低下を示した。結果は、未処理培養物に対する細胞数の減少パーセントとして提示する。試験条件はすべて三連で行った。
【0139】
グラム陰性大腸菌(E. coli)(ATCC 8739、DH5-アルファ、およびDH10-ベータ)を、Tgase配列番号1の存在下または非存在下で増殖させた場合、Tgase配列番号1は、評価された濃度下でほとんどまたは全く検出可能な抗菌活性を示さなかった。クローニング株のDH5-アルファおよびDH10-ベータは脆弱な細胞マトリックスを有し、DNAなどの巨大分子による細胞膜の浸透をより促すので、これらの菌株を利用して、より接近可能な細胞膜を有する細胞を表した。
【0140】
グラム陽性菌クローニング株の枯草菌(B. subtilis)BGSC 1A1276を用いた場合、Tgase配列番号1の抗菌活性が観察された。枯草菌(B. subtilis)BGSC 1A1276増殖の完全な阻害は、細胞膜かく乱物質であるリゾチームを添加すると観察された。C.アルビカンス(C. albicans)および枯草菌(B. subtilis)の増殖はともに、Tgase配列番号1によって部分的に阻害される。結果を表5に列挙する。
【0141】
実施例2 Tgaseバリアント(配列番号6)の抗菌特性
配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)トランスグルタミナーゼのバリアント形態を、前掲される文献の方法(Javitt, et al. (2017) BMC Biotechnol. 17:23)により調製した。Tgase活性は比色ヒドロキサメート活性アッセイ(Folk and Cole (1965) J Biol Chemistry 240(7):2951-2960)を用いて測定した。Tgaseの細胞傷害活性は、OD600または市販のキット(BacTiter-Glo(商標)、Promega(登録商標)、製造業者のプロトコールに従う)のいずれかを用いて評価した。
【0142】
酵母または細菌のスターター培養物を、前述のように増殖させた。Tgase(配列番号6)を各培養物に0.001~1重量パーセントで添加した。培養物を一晩、30℃~37℃で増殖させ、増殖曲線をBioTek(登録商標)Synergy Plate Readerによって測定した。Tgase配列番号6は、Tgase配列番号1よりも10倍強力であることが見出され、両酵素で殺生物活性を観察することができた。表5を参照されたい。
【0143】
【表5】
【0144】
実施例3 配列番号6の最小発育阻止/殺菌剤濃度
配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)トランスグルタミナーゼのバリアント形態を、精製を補助するためのヘキサ-ヒス-タグを用いて、文献の方法(Javitt, et al. (2017) BMC Biotechnol. 17:23)によって調製した。細胞を振とうフラスコ中で増殖させ、均質化により溶解させ、Tgaseバリアント(配列番号6)を遠心分離により細胞残渣から単離した。得られた半精製酵素(清澄化溶解物)を、SDS-PAGEゲル上で、分光法により、および活性酵素の濃度に対する活性により比較した。Tgaseバリアント(配列番号6)を、MICアッセイの前に、Ni-IMACレジン上のアフィニティーカラムによりさらに精製した。Tgase活性を、比色ヒドロキサメート活性アッセイ(Folk and Cole (1965) J Biol Chemistry 240(7):2951-2960)を用いて、本明細書の実施例において測定した。酵素を、CAMHBまたはRPMI培地(細菌または真菌培地)中で2mg/mLの作用ストック濃度に希釈した。次いで、これを96ウェルマスタープレート中の適切な培地中で10回連続で2倍希釈を行い、MIC試験のための2倍開始濃度を生成した。
【0145】
塩化ベンザルコニウム(BZK)はSigma-Aldrich(登録商標)から供給され、安息香酸ナトリウムはKalaguard SBの商品名でEmerald Kalama Chemicalから供給された。
【0146】
American Type Culture Collection(ATCC)(Manasas、VA)から菌株を取得し、-80℃の凍結グリセロールストックとして維持した:黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC 6538、大腸菌(E. coli)ATCC 8739、緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC 9027、C.アルビカンス(C. albicans)ATCC 10231、およびA.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)ATCC 16404。枯草菌(B. subtilis)BGSC 1A1276はBacillus Genetic Stock Center(BGSC)(Columbus、OH)から購入し、-80℃の凍結グリセロールストックとして維持した。pH7.3のカチオン調整Mueller-Hintonブロス(CAMHB)を細菌種(特に断らない限り)での試験に使用し、pH7.0の0.165M MOPSで緩衝化したRPMI 1640培地をすべての真菌種での試験に使用した。
【0147】
MIC決定のために、細菌株(黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC 6538、大腸菌(E. coli)ATCC 8739、緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC 9027)を37℃でトリプシン大豆寒天(TSA)プレート上で一晩増殖させた。各菌株の少数のコロニーを滅菌綿棒で収集し、これを用いて、滅菌PBS中でMcFarland 0.5標準溶液(約1×10CFU/mL)を作製した。次いで、McFarland溶液をCAMHB中で1:100に希釈して接種材料を作製し、50μLのこの接種材料を96ウェルプレート中の50μLの2×被験物質と合わせ、最終濃度1×とした。試験条件はすべて二連で行った。細菌株MIC 96ウェルプレートを37℃で18~20時間インキュベートした。MICは、目に見える増殖が観察されない化合物の最低濃度として定義される。結果を表6および7に示す。
【0148】
真菌株のMIC決定のために、A.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)およびC.アルビカンス(C. albicans)をSabouraudデキストロース寒天(SDA)プレート上で増殖させた。A.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)を25℃で5~7日間増殖させる一方、C.アルビカンス(C. albicans)を37℃で24~48時間増殖させた。
【0149】
増殖の7日後、A.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)をSDAプレートから滅菌綿棒でPBSに採取した。次いで、この懸濁液を5~10分間静置した後、懸濁液中の芽胞を収集し、滅菌PBS中でMcFarland 0.5(約2×10CFU/mL)に調整した。次いで、これをRPMI培地中で1:50に希釈して接種材料を作製し、180μLの接種材料を96ウェルプレート中の20μLの10×被験物質と合わせ、最終濃度1×とした。
【0150】
C.アルビカンス(C. albicans)のコロニーを滅菌綿棒で収集し、これを用いて、滅菌PBS中でMcFarland 0.5標準溶液(約1×10CFU/mL)を作製し、次いでにRPMI培地で1:180に希釈して接種材料を作製した。次いで、90μLの接種材料を、96ウェルプレート中の10μLの10×被験物質と合わせ、最終濃度1×とした。試験条件はすべて二連で行った。
【0151】
C.アルビカンス(C. albicans)MIC 96ウェルプレートを37℃で24~48時間インキュベートした。A.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)MIC 96ウェルプレートを、対照ウェルにおける増殖が観察されるまで、25℃で最大7日間、インキュベートした。インキュベーション後、すべての96ウェルプレートを目視および吸光度OD650の分光光度計で調べた。MICは、目に見える増殖が観察されない被験物質の最低濃度として定義される。結果を表6および7Aに示す。
【0152】
最低殺菌濃度(MFC)は、各試験菌株の適切な寒天培地上に各MFC試験溶液から10マイクロリットルの液体を播種することによって決定した。液体をバイオセーフティキャビネット内で空気乾燥させ、次いで寒天プレートを適切な条件下でインキュベートした:A.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)およびC.アルビカンス(C. albicans)をSabouraudデキストロース寒天(SDA)プレート上で増殖させた。A.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)を25℃で5~7日間増殖させる一方、C.アルビカンス(C. albicans)を37℃で24~48時間増殖させた。次いで、コロニー形成を評価した。MFCは、コロニーが回収されなかったTgase(配列番号6)の最低濃度として定義される。
結果を表7Bに示す。
【0153】
【表6】
【0154】
【表7】
【0155】
【表8】
【0156】
実施例4 Tgaseと化学保存剤の適合性
前に計算したMIC値(表6を参照されたい)を用いて、一般的な化学保存剤の存在下での大腸菌(E. coli)の増殖の減少パーセントを測定した(表8)。抗菌薬の組合せのマイクロプレートアッセイを実施して、異なる濃度のTgaseの存在が保存剤の効力を減少させるかどうかを決定した。
【0157】
大腸菌(E. coli)ATCC 8739を37℃でLBブロス中で一晩増殖させた。翌日、OD600を用いて飽和培養物の細胞密度を計算し、培養物を滅菌LB培地中で10~10CFU/mLに希釈して接種材料を作製し、90μLの接種材料を、計算されたMIC値を上回るおよび下回る濃度の化学保存剤の存在下または非存在下、0.001~0.1重量パーセントの範囲で、連続希釈したTgase配列番号6の10μLと合わせた。化学保存剤の単一濃度(MICで)およびTgase配列番号6の静止濃度(400μg/mL、0.04%w/v)を代表例として表8に示す。BioTek(登録商標)Synergy Plate ReaderでOD600により増殖曲線を測定し、細胞生存率アッセイ(BacTiter-Glo(商標)、Promega(登録商標)、製造業者のプロトコールに従う)を用いて細胞生存率を評価した。OD600または発光の低下は、細胞生存率の低下を示した。結果は、未処理培養物に対する細胞数の減少パーセントとして提示する。Tgaseの添加は保存剤の効力を減少させなかった。
【0158】
【表9】
【0159】
同様の実験を、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC 6538、緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC 9027、C.アルビカンス(C. albicans)ATCC 10231、およびA.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)ATCC 16404について、前述の培養条件を用いて行った。これらの菌株を滅菌培地中で10~10CFU/mLに希釈して接種材料を作製し、90μLの接種材料を10μLの連続希釈したTgase配列番号6と、計算されたMIC値を上回るおよび下回る濃度の化学保存剤の存在下または非存在下で、0.001~0.1重量パーセントの範囲で合わせる。BioTek(登録商標)Synergy Plate ReaderでOD600により増殖曲線を測定する。場合により、翌日、BacTiter-Glo(商標)(Promega(登録商標)、製造業者のプロトコールに従う)などの細胞生存率アッセイを使用して、細胞生存率を評価することができる。OD600または発光の低下は、細胞生存率の低下を示す。細菌株に対する保存効力も維持しながら、酵母およびカビに対するTgaseの効力を実証するために、すべての試験条件を三連で行う。
【0160】
実施例5 キトサンおよびTgase配列番号6の相加的抗菌挙動
大腸菌(E. coli)ATCC 8739を37℃でLBブロス中で一晩増殖させた。翌日、飽和培養物の細胞密度をOD600を用いて計算し、培養物を滅菌LB培地中で10~10CFU/mLに希釈して接種材料を作製し、90μLの接種材料を、キトサン(250μg/mLまたは0.025%w/v)の存在下または非存在下、0.044%w/v(440μg/mL)の濃度で10μLの連続希釈したTgase配列番号6と合わせた。BioTek(登録商標)Synergy Plate Readerで16時間にわたってOD600により増殖曲線を測定し、細胞生存率アッセイ(BacTiter-Glo(商標)、Promega(登録商標)、製造業者のプロトコールに従う)を用いて細胞生存率を評価した。OD600または発光の低下は、細胞生存率の低下を示した。結果を、未処理培養物に対する細胞数の減少パーセントとして表9に示す。
【0161】
【表10】
【0162】
実施例6 抗菌活性のための酵素前駆体とプロテアーゼの共製剤化
大腸菌(E. coli)株BL21(DE3)をNew England Biolabs(Ipswich,MA)から購入し、当該技術分野において公知である標準的方法を用いてS.モバラエンシス(S. mobaraensis)pro-Tgaseバリアント配列番号3を産生するように形質転換した。形質転換細胞を、10%グリセロール、0.75%大豆ペプトン、0.75%酵母抽出物、0.5%硫酸マグネシウム七水和物、および0.15%リン酸二水素カリウムを含有する培地中で30~34℃で最大10時間、振とうすることにより培養した。次いで、培養物を0.1~0.4mMイソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導し、20~25℃で最大24時間、撹拌しながらインキュベートした。培養物を8000×gで最大60分間、遠心分離した。上清を捨て、ペレットを50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、pH8中に20%w/vで再懸濁した。
【0163】
細胞を15000~20000psiの圧力で高圧ホモジナイザーを用いて溶解した。粗溶解物を15000×gで最大60分間、遠心分離することにより清澄化した。pro-Tgase配列番号3を含有する清澄化した溶解物を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)および分光法(A280nm)により評価した。清澄化した溶解物を、Ni-IMACレジン上のアフィニティーカラムによりさらに精製し、脱塩した。Pro-Tgase配列番号3活性を、比色ヒドロキサメート活性アッセイ(Folk and Cole (1965) J Biol Chemistry 240(7):2951-2960)を用いて測定し、pro-Tgaseの活性がほとんどないか全くないことが明らかになった。
【0164】
野生型S.モバラエンシス(S. mobaraensis)Tgaseプロテアーゼ、トランスグルタミナーゼ活性化メタロプロテアーゼ(TAMEP)配列番号4、およびS.モバラエンシス(S. mobaraensis)トリペプチジルアミノペプチダーゼ(SM-TAP)配列番号5をコードする遺伝子を、Integrated DNA Technologies(Coralville,IA)によって合成した。TAMEPおよびSM-TAPの発現構築物を、N末端SacBシグナル配列およびヘキサ-Hisタグを用いて設計し、当該技術分野において周知である方法を用いてクローニングした。枯草菌(B. subtilis)SCK6デルタ-AlaR(BioTechnical Resources(Manitowoc,WI)から購入した)を、40mg/mLのD-アラニンを添加した5mLのLB培地で、37℃にて一晩増殖させた。翌日、培養物を1.0のOD600に希釈し、キシロースを添加して最終濃度1%にした。2時間後、250μLのグリセロールおよび連結したDNAを添加し、培養チューブをさらに90分間、インキュベーターに戻した。インキュベーション後、10~1000μLの培養物をLB寒天プレート上に広げた。プレートを37℃で一晩増殖させた。翌日、各プレートから2~8個のコロニーを選択し、3mLのLBブロスに接種した。培養物を37℃で48時間、インキュベートし、上清試料を定期的に採取した。SDS-PAGEを用いて、分子量によって決定した場合、培地中への酵素の活性型の分泌を確認した。活性は、当該技術分野において周知であるプロテアーゼ活性アッセイを用いて確認した。プロテアーゼ、TAMEPおよびSM-TAPはともに、それぞれの細胞培養物から、8000×gで10分間遠心分離することにより単離した。上清をさらに精製することなく単離したまま使用した。場合により、TAMEPおよびSM-TAPを、Ni-IMACレジン上のアフィニティーカラムにより精製し、使用前に脱塩する。
【0165】
プロテアーゼTAMEPおよびSM-TAPと組み合わせたpro-Tgase配列番号3の抗菌特性は、プロテアーゼ(発現培地の総タンパク質濃度を用いて0.0001~0.1%w/v)および酵素前駆体(0.001~1%w/v)の濃度がプレート全体にわたって変化する96ウェルプレート中にマトリックスを作製することによって評価する。細菌株(黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC 6538、大腸菌(E. coli)ATCC 8739、緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC 9027)、ならびに真菌株、C.アルビカンス(C. albicans)ATCC 10231、およびA.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)ATCC 16404に対するMICを、実施例3に記載されるプロトコールを用いて決定する。抗菌特性は、吸光度OD650の分光光度計上で増殖の可視的減少が観察される2つのプロテアーゼの存在下、酵素前駆体(pro-Tgaseバリアント配列番号3)の最低濃度によって評価する。
【0166】
実施例7 チロシナーゼの抗菌特性
市販の野生型マッシュルームチロシナーゼ(T3824、凍結乾燥粉末、≧1000単位/mg固体)をSigma-Aldrichから購入し、そのまま使用した。チロシナーゼの抗菌特性は、実施例3に記載される培養条件下、チロシナーゼ(100~10,000U)で黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC 6538、大腸菌(E. coli)ATCC 8739、緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC 9027、C.アルビカンス(C. albicans)ATCC 10231、およびA.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)ATCC 16404を処理することにより評価する。吸光度OD650の分光光度計上での、細菌株または真菌株の可視増殖の減少により、抗菌特性を評価する。
【0167】
実施例8 リジルオキシダーゼの抗菌特性
市販の組換えヒトリジルオキシダーゼ(LOX-608H、1g/L緩衝液)をCreative Biomart(Shirley,NY)から購入し、そのまま使用する。リジルオキシダーゼの抗菌特性は、実施例3に記載される培養条件下、リジルオキシダーゼ(0.0001~0.1%w/v)で黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC 6538、大腸菌(E. coli)ATCC 8739、緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC 9027、C.アルビカンス(C. albicans)ATCC 10231、およびA.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)ATCC 16404を処理することにより評価する。吸光度OD650の分光光度計上での、細菌株または真菌株の可視増殖の減少により、抗菌特性を評価する。
【0168】
実施例9 ラッカーゼの抗菌特性
市販の野生型アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)ラッカーゼ(SAE0050、液体調製物)をSigma-Aldrichから購入し、使用前に透析して包装中の保存剤を除去する。ラッカーゼの抗菌特性は、実施例3に記載の培養条件下で、2,2’-アジノ-ビス-3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)(Sigma-Aldrich、10102946001)(0.0001~0.001%w/v)などの開始分子の存在下および非存在下で、ラッカーゼ(0.0001~0.1%w/v)で黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC 6538、大腸菌(E. coli)ATCC 8739、緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC 9027、C.アルビカンス(C. albicans)ATCC 10231、およびA.ブラジリエンシス(A. brasiliensis)ATCC 16404を処理することにより評価する。吸光度OD650の分光光度計上での、細菌株または真菌株の可視増殖の減少により、抗菌特性を評価する。
【0169】
アミノ酸配列
配列番号1
成熟ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)Tgase野生型
【0170】
【化1】
配列番号2
成熟ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)Tgaseバリアント
【0171】
【化2】
配列番号3
ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)Tgase酵素前駆体バリアント(pro-Tgase)
【0172】
【化3】
配列番号4
野生型ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)Pro-TAMEP(pro-TAMEP;UniProt P83543)
【0173】
【化4】
配列番号5 SM-TAP
野生型ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)Pro-SM-TAP(pro-SM-TAP;UniProt P83615)
【0174】
【化5】
配列番号6
成熟ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)Tgaseバリアント(N末端メチオニンおよびC末端ペプチドリンカーおよびHex-His-Tagを含む配列番号2)
【0175】
【化6】
【国際調査報告】