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特表2023-540370ピリド[1,2-a]ピリミドン化合物の末梢性T細胞リンパ腫を治療するための用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ピリド[1,2-a]ピリミドン化合物の末梢性T細胞リンパ腫を治療するための用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20230914BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C07D471/04 111
C07D471/04 CSP
A61K31/519
A61P9/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K38/48
A61K39/395 N
A61P7/00
A61K31/675
A61K31/706
A61K31/475
A61K31/7048
A61K31/573
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515603
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 CN2021118417
(87)【国際公開番号】W WO2022057812
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】202010967168.5
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】フォン, ファン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シュンジァン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, イン
(72)【発明者】
【氏名】ハン, シー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, リー
(72)【発明者】
【氏名】マー, ルイティン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ナイイン
【テーマコード(参考)】
4C065
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA03
4C065BB10
4C065CC01
4C065DD01
4C065EE02
4C065HH06
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL03
4C065LL04
4C065PP03
4C065PP12
4C084AA02
4C084AA19
4C084DC22
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA51
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086CB21
4C086DA10
4C086DA35
4C086EA10
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA51
(57)【要約】
末梢性T細胞リンパ腫を治療するためのピリド[1,2-a]ピリミドン化合物又はその医薬組成物、及びピリド[1,2-a]ピリミドン化合物を用いて末梢性T細胞リンパ腫を治療する方法又は用途に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢性T細胞リンパ腫を治療するための式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【化1】
【請求項2】
前記末梢性T細胞リンパ腫は、再発性又は難治性末梢性T細胞リンパ腫から選ばれ、任意に、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前の療法での治療を受けて客観的寛解が認められた後に、疾患が再び発生したか、又は前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前の療法での治療を受けたことがあるが客観的寛解がない請求項1に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
前記末梢性T細胞リンパ腫は、非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、又は節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(NKTCL)から選ばれ、
任意に、前記非特定型末梢性T細胞リンパ腫は、GATA3過剰発現型、TBX21過剰発現型又は細胞傷害性遺伝子過剰発現型から選ばれる請求項1又は2に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前に1つ又は2つ以上の療法での治療を受けたことがあり、任意に、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前に1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの療法での治療を受けたことがある請求項1~3のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前にはペグアスパラガーゼ又はL-アスパラギナーゼを含む1つ又は2つ以上の療法を受けたことがある患者である請求項1~4のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
前記以前の療法は、薬物治療、放射線療法、又は造血幹細胞移植を含む請求項4に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
前記薬物治療は、インターフェロン治療、化学療法又は標的薬物治療を含み、前記放射線療法は、全リンパ節照射及び亜全リンパ節領域照射から選ばれ、任意に、前記放射線療法は、照射野放射線療法、病変リンパ節放射線療法又は病巣部放射線療法を含み、前記造血幹細胞移植は、自家造血幹細胞移植、又は同種造血幹細胞移植を含む請求項6に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項8】
前記薬物治療で使用される薬物は、ペグアスパラガーゼ、アスパラギナーゼ(例えば、L-アスパラギナーゼ)、シクロホスファミド、イホスファミド、ビンクリスチン、ビンデシン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ドキソルビシン、アドリアマイシン、エピルビシン、デキサメタゾン、メトトレキサート、シタラビン、カルボプラチン、シスプラチン、ベンダムスチン、フルダラビン、ミトキサントロン、エトポシド、プロカルバジン、ゲムシタビン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メスナ、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、アザシチジン、プララトレキサート、ロミデプシン、ベリノスタット、チダミド、ボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイド、ロイコボリン、リツキシマブ、ゲノリムズマブ(Genolimzumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、シンチリマブ(Sintilimab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、アベルマブ(Avelumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、G-CSF、又は前記1つ又は複数の薬物の組み合わせから選ばれる請求項7に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
末梢性T細胞リンパ腫の治療の投与期間は、2~6週間である請求項1~8のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項10】
末梢性T細胞リンパ腫の治療の1日用量は、1~100mgから選ばれる請求項1~9のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
末梢性T細胞リンパ腫の治療の1日投与回数は、1回、2回又は3回である請求項1~10のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項12】
末梢性T細胞リンパ腫を治療する薬物の製造における式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用。
【化2】
【請求項13】
末梢性T細胞リンパ腫を治療するための式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用。
【化3】
【請求項14】
式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む末梢性T細胞リンパ腫を治療するための医薬組成物。
【化4】
【請求項15】
患者に有効量の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物を与えることを含む末梢性T細胞リンパ腫の治療方法。
【化5】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2020年9月15日に中国国家知識産権局へ提出された中国特許出願第202010967168.5号の優先権と利益を主張し、前記出願で開示されている内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
<技術分野>
本願は、医薬品化学の分野に属し、ピリド[1,2-a]ピリミドン化合物の末梢性T細胞リンパ腫を治療するための用途に関する。
【背景技術】
【0003】
PI3K経路は、ヒトのがん細胞で変異が最も頻繁に起きる場所であり、細胞の増殖、活性化及びシグナル増幅を引き起こすことができる。
【0004】
PI3Kキナーゼ(ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ、phosphatidylinositol-3-kinase、PI3K)は脂質キナーゼのファミリーに属し、調節サブユニットp85又はp101と触媒サブユニットp110からなる脂質キナーゼで、ホスファチジルイノシトールのイノシトール環の3’-OH末端をリン酸化することができ、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate、PIP2)を触媒してホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸(phosphatidylinositol 3,4,5-trisphosphate、PIP3)にリン酸化させることによって下流のAktなどを活性化して細胞の増殖、生存、代謝などに重要な役割を果たす。したがって、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼを阻害すると、PI3K経路に影響を与え、がん細胞の増殖と活性化を阻害することができる。
【0005】
がん抑制遺伝子PTEN(phosphatase and tension homolog deleted on chromosome ten)はPIP3を脱リン酸化させてPIP2を生成することによって、PI3K/Aktシグナル伝達経路の負の調節を実現し、細胞の増殖を阻害しアポトーシスを促進する。がんにおいてPI3K遺伝子変異と増幅が頻繁に発生することと、がんにおけるPTENの欠失などは、PI3Kが腫瘍の発生に密接な関係があることを示している。
【0006】
WO2015192760では、PI3K阻害剤としての一連の化合物が開示され、具体的には、次の構造を有する式I化合物が開示されている。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015/192760号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、患者の末梢性T細胞リンパ腫を治療するための式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【化2】
【0009】
本願の別の態様において、患者の末梢性T細胞リンパ腫を治療する薬物の製造における式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0010】
本願の別の態様において、患者の末梢性T細胞リンパ腫を治療するための式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【0011】
本願の別の態様において、患者に有効量の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を与えることを含む患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療方法を提供する。
【0012】
本願の一部の実施形態において、本願の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩は、単一の活性剤として使用される。
【0013】
本願の一部の実施形態において、本願の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩は、治療有効量の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であってもよい。一部の実施形態において、前記医薬組成物は、単位用量医薬組成物である。
【0014】
本願の別の態様において、式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む末梢性T細胞リンパ腫を治療するための医薬組成物を提供する。
【0015】
本願の別の態様において、患者に治療有効量の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物を与えることを含む患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療方法を提供する。
【0016】
本願の別の態様において、末梢性T細胞リンパ腫を治療するためのキットを提供し、前記キットは、本願に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物(好ましくは、単位用量の形態である)と、取扱説明書とを含む。
【0017】
「発明の詳細な説明」
末梢性T細胞リンパ腫:
本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫は、再発性又は難治性末梢性T細胞リンパ腫から選ばれる。
【0018】
本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前に1つ又は2つ以上の療法での治療を受けたことがある。本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前に1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの療法での治療を受けたことがある。
【0019】
本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前に第一選択、第二選択又は第三選択及びそれ以上の療法での治療を受けたことがある末梢性T細胞リンパ腫の患者である。
【0020】
本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前の療法での治療を受けて客観的寛解が認められた後に、疾患が再び発生したか、又は前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前の療法での治療を受けたことがあるが客観的寛解がない。本願の一部の実施形態において、前記客観的寛解がないとは、治療期間中に疾患が安定しているか又は疾患が進行していることを指す。
【0021】
本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前に第一選択以上の全身療法を受けたことがあり、最後に受けた療法では客観的寛解がない(治療期間中に疾患が安定しているか又は疾患が進行している)ことが確認されているか、又は治療後に疾患が進行する末梢性T細胞リンパ腫の患者である。
【0022】
本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前の療法での治療を受けたことがある再発性又は難治性末梢性T細胞リンパ腫患者である。
【0023】
本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前にはペグアスパラガーゼ又はL-アスパラギナーゼを含む1つ又は2つ以上の療法を受けたことがある患者である。
【0024】
本願の一部の実施形態において、前記以前の療法は、薬物治療、放射線療法、又は造血幹細胞移植を含む。
【0025】
本願の一部の実施形態において、前記以前の療法の薬物治療は、インターフェロン治療、化学療法、又は標的薬物治療を含む。
【0026】
本願の一部の実施形態において、前記以前の療法の化学療法で使用される薬物は、ペグアスパラガーゼ、アスパラギナーゼ(例えば、L-アスパラギナーゼ)、シクロホスファミド、イホスファミド、ビンクリスチン、ビンデシン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ドキソルビシン、アドリアマイシン、デキサメタゾン、メトトレキサート、シタラビン、カルボプラチン、シスプラチン、ベンダムスチン、フルダラビン、ミトキサントロン、エトポシド、プロカルバジン、ゲムシタビン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メスナ、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、又はアザシチジンを含む。
【0027】
本願の一部の実施形態において、前記以前の療法の標的薬物治療は、抗腫瘍葉酸類似体治療、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤治療、プロテアソーム阻害剤治療、免疫調節阻害剤治療、又は免疫チェックポイント阻害剤治療を含む。
【0028】
本願の一部の実施形態において、前記抗腫瘍葉酸類似体は、プララトレキサートを含む。
【0029】
本願の一部の実施形態において、前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、ロミデプシン、ベリノスタット、又はチダミドを含む。
【0030】
本願の一部の実施形態において、前記プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブを含む。
【0031】
本願の一部の実施形態において、前記免疫調節阻害剤は、レナリドミド、又はサリドマイドを含む。
【0032】
本願の一部の実施形態において、前記免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死受容体-1(PD-1)阻害剤及びそのリガンド-1(PD-L1)阻害剤を含む。本願の一部の実施形態において、前記免疫チェックポイント阻害剤は、ゲノリムズマブ(Genolimzumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、シンチリマブ(Sintilimab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、アベルマブ(Avelumab)、又はアテゾリズマブ(Atezolizumab)を含む。
【0033】
本願の一部の実施形態において、前記以前の療法の標的薬物は、プララトレキサート、ロミデプシン、ベリノスタット、チダミド、ボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイド、ゲノリムズマブ(Genolimzumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、シンチリマブ(Sintilimab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、アベルマブ(Avelumab)、又はアテゾリズマブ(Atezolizumab)を含む。
【0034】
本願の一部の実施形態において、前記以前の療法の薬物治療で使用される薬物は、ペグアスパラガーゼ、アスパラギナーゼ(例えば、L-アスパラギナーゼ)、シクロホスファミド、イホスファミド、ビンクリスチン、ビンデシン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ドキソルビシン、アドリアマイシン、エピルビシン、デキサメタゾン、メトトレキサート、シタラビン、カルボプラチン、シスプラチン、ベンダムスチン、フルダラビン、ミトキサントロン、エトポシド、プロカルバジン、ゲムシタビン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メスナ、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、アザシチジン、プララトレキサート、ロミデプシン、ベリノスタット、チダミド、ボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイド、ロイコボリン、リツキシマブ、ゲノリムズマブ(Genolimzumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、シンチリマブ(Sintilimab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、アベルマブ(Avelumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、G-CSF、又は前記1つ又は複数の薬物の組み合わせを含み、好ましくは、前記以前の療法の薬物治療で使用される薬物は、ペグアスパラガーゼ、L-アスパラギナーゼ、シクロホスファミド、イホスファミド、ビンクリスチン、ビンデシン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ドキソルビシン、アドリアマイシン、デキサメタゾン、メトトレキサート、シタラビン、カルボプラチン、シスプラチン、ベンダムスチン、フルダラビン、ミトキサントロン、エトポシド、プロカルバジン、ゲムシタビン、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メスナ、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、プララトレキサート、ロミデプシン、ベリノスタット、チダミド、ボルテゾミブ、レナリドミド、ゲノリムズマブ(Genolimzumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、シンチリマブ(Sintilimab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、アベルマブ(Avelumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、G-CSF、又は前記1つ又は複数の薬物の組み合わせを含む。
【0035】
本願の一部の実施形態において、前記以前の療法の化学療法は、AOEP療法、AOEP+G-CSF療法、AspaMetDex療法、B療法、BAC療法、CHOP療法、miniCHOP療法、CHOEP療法、CHOEPとチダミドの併用療法、CIFOX療法、COP療法、COEP-L療法、DHAP療法、DDGP療法、EPOCH療法、DA-EPOCH療法、ESHAP療法、GDP療法、GDPE療法、GEMOX療法、FC療法、FM療法、HyperCVAD療法、ICE療法、LOP療法、MA療法、P-GEMOX療法、SMILE療法、V-CAP療法、又は前記療法とリツキシマブ(以下、「R」と略称することがある)の併用を含み、好ましくは、前記以前の療法の化学療法は、AOEP療法、AOEP+G-CSF療法、AspaMetDex療法、R-HyperCVAD療法、BR療法、CHOP療法、R-CHOP療法、R-miniCHOP療法、CHOEP療法、COP療法、COEP-L療法、DHAP療法、R-DHAP療法、DA-EPOCH療法、DA-EPOCH-R療法、DDGP療法、ESHAP療法、FCR療法、FMR療法、GDP療法、R療法、R-GDP療法、R-GDPE療法、GEMOX療法、HyperCVAD療法、ICE療法、R-ICE療法、LOP療法、VR-CAP療法、R-GEMOX療法、P-GEMOX療法又はR-高用量シタラビン療法を含む。
【0036】
本願の一部の実施形態において、前記以前の療法の放射線療法は、全リンパ節照射(TLI)及び亜全リンパ節領域照射(STLI)から選ばれる。本願の一部の実施形態において、前記放射線療法は、照射野放射線療法(IFRT)、病変リンパ節放射線療法(INRT)又は病巣部放射線療法(ISRT)を含む。
【0037】
本願の一部の実施形態において、前記以前の療法の造血幹細胞移植は、自家造血幹細胞移植、又は同種造血幹細胞移植を含む。
【0038】
本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫は、非特定型末梢性T細胞リンパ腫(Peripheral T-cell lymphoma,not otherwise specified、PTCL-NOS)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(Angioimmunoblastic T-cell lymphoma、AITL)、未分化大細胞リンパ腫(Anaplastic large cell lymphoma、ALCL)、又は節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(NK/T cell lymphoma、NKTCL)から選ばれる。
【0039】
本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫は、非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)から選ばれる。
【0040】
本願の一部の実施形態において、前記非特定型末梢性T細胞リンパ腫は、GATA3過剰発現型、TBX21過剰発現型、又は細胞傷害性遺伝子過剰発現型から選ばれる。
【0041】
本願の一部の実施形態において、前記末梢性T細胞リンパ腫は、再発性又は難治性末梢性T細胞リンパ腫から選ばれ、任意に、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前に1つ又は2つ以上の療法での治療を受けたことがあり、任意に、前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前の療法での治療を受けて客観的寛解が認められた後に、疾患が再び発生したか、又は前記末梢性T細胞リンパ腫の患者は、以前の療法を受けたことがあるが客観的寛解がなく、任意に、前記以前の療法は、薬物治療、放射線療法、又は造血幹細胞移植を含む。
【0042】
投与計画:
本願の一部の実施形態において、前記患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療の投与期間は、2~6週間である。本願の一部の実施形態において、前記患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療の投与期間は、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、又は前記いずれかの値から形成された範囲である。本願の一部の実施形態において、前記患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療の投与期間は、3週間である。
【0043】
本願の一部の実施形態において、前記患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療の1日用量は、1~100mgから選ばれる。本願の一部の実施形態において、前記患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療の1日用量は、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、30mg、31mg、32mg、33mg、34mg、35mg、36mg、37mg、38mg、39mg、40mg、41mg、42mg、43mg、44mg、45mg、46mg、47mg、48mg、49mg、50mg、51mg、52mg、53mg、54mg、55mg、56mg、57mg、58mg、59mg、60mg、61mg、62mg、63mg、64mg、65mg、66mg、67mg、68mg、69mg、70mg、71mg、72mg、73mg、74mg、75mg、76mg、77mg、78mg、79mg、80mg、81mg、82mg、83mg、84mg、85mg、86mg、87mg、88mg、89mg、90mg、91mg、92mg、93mg、94mg、95mg、96mg、97mg、98mg、99mg、100mg、又は前記いずれかの値から形成された範囲から選ばれる。本願の一部の実施形態において、前記患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療の1日用量は、1~50mg、5~50mg、10~50mg、10~40mg、又は20~40mgから選ばれる。
【0044】
本願の一部の実施形態において、前記患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療の1日投与回数は、1回、2回又は3回である。
【0045】
本願の一部の実施形態において、前記患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療の投与は、2日毎に1回投与することであってもよい。
【0046】
本願の一部の実施形態において、前記患者の末梢性T細胞リンパ腫の治療の投与計画は次のことを含む。投与期間は、2~6週間であり、1日用量は、1~40mgであり、1日投与回数は、1~3回である。
【0047】
本願の式I化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物は、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、経直腸、経頬、鼻腔内、吸入、経膣、眼内、局所、皮下、脂肪内、関節内、又は髄腔内を含むが、それらに限定されない様々な経路で投与することができる。特定の療法において、経口で投与する。
【0048】
投与の方法は、薬物の活性、毒性、患者の忍容性などの要因から総合的に決定することができる。一部の実施形態において、間隔投与の方式で本願の式I化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物を与える。
【0049】
医薬組成物:
本願の医薬組成物は、本願の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩と薬学的に許容される適切な添加物/担体を組み合わせて製造することができ、例えば、固体、半固体、液体又は気体の製剤として製造される。
【0050】
本願の一部の実施形態において、前記医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、滴丸、ペースト剤、散剤などの経口投与に適する製剤であり、好ましくは、錠剤、カプセル剤である。前記経口製剤は、本分野で周知される薬学的に許容される担体を使用して通常の方法で製造することができる。薬学的に許容される担体は、希釈剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤などを含む。
【0051】
本願の一部の実施形態において、前記医薬組成物は、単位用量医薬組成物である。一部の実施形態において、前記医薬組成物は、1~50mgの本願の式I化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含有する。一部の実施形態において、前記医薬組成物は、1mg、2mg、5mg、8mg、10mg、12mg、15mg、18mg、20mg、22mg、25mg、28mg、30mg、32mg、35mg、38mg、40mg、42mg、45mg、48mg若しくは50mg、又は前記いずれかの値を端点として構成された範囲又はその中のいずれかの値であって、例えば、2~50mg、10~40mg、5~30mg、5~20mgなどの本願の式I化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含有する。
【発明の効果】
【0052】
本願の式I化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物は、末梢性T細胞リンパ腫の増殖の低減、さらには腫瘍の解消に関して良好な有効性があり、被治療患者に良好な疾患制御率(DCR)が得られるため、被治療患者はより長い生存期間(例えば、生存期間中央値、無増悪生存期間又は全生存期間)、より長い寛解持続期間(DOR)を有する。また、本願の式I化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物は、末梢性T細胞リンパ腫の増殖を低減しながらも良好な安全性を有する。
【0053】
「定義と説明」
特に説明がない限り、本願で使用する用語は次の意味を有する。特定の用語は、特に定義がなければ、確定しないもの又は不明瞭なものとしてではなく、本分野の通常の意味で理解する。本願で商品名が記載される場合に、対応する商品又はその有効成分を指す。
【0054】
本明細書では、特に説明がない限り、用語「含む、含有(comprise、comprises、comprising)」又は同等な用語は開放的な表現で、列挙されている要素、成分又はステップの他に、明記していない要素、成分又はステップを含んでもよいことを意味する。
【0055】
本明細書には、説明と開示のために、特許、特許出願又は既存の刊行物が参照により全体として組み込まれる。本明細書でこれらの刊行物が参照されることが、当該刊行物が本分野で周知される常識になると認めるものではない。
【0056】
用語「薬学的に許容される」とは、人間又は動物の組織に接触して使用するのに適し、毒性又は刺激性はなく、アレルギー反応、その他の問題又は合併症を引き起こさないと医学的に判断され、利益対リスクが合理的である化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対して使用される。
【0057】
用語「薬学的に許容される塩」は、塩基イオンと遊離酸が形成した塩、酸性イオンと遊離塩基が形成した塩を含む。
【0058】
本願にいう式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の量、例えば、投与量、用量、医薬組成物中の含有量は、その遊離塩基の形態で計算する。
【0059】
本願に係る薬物の組み合わせの中の化合物は、例えば、少なくとも1つの塩基性コアを有している場合に、酸付加塩を形成できる。所望により、塩基性コアをさらに有する別の酸付加塩を形成することができる。少なくとも1つの酸性官能基(例えば、COOH)を有する化合物は塩基と塩を形成できる。化合物が、例えば、カルボキシ基とアミノ基の両方を含む場合に、分子内塩を形成できる。
【0060】
用語「患者」とは哺乳動物である。一部の実施形態において、前記患者はヒトである。
【0061】
用語「医薬組成物」とは1種又は複数種の本願の式I化合物、又は薬学的に許容されるその塩、又はその薬物の組み合わせと薬学的に許容される添加物/担体からなる混合物を指す。医薬組成物は、患者に本願の化合物又はその薬物の組み合わせを投与しやすいようにしたものである。
【0062】
用語「単位用量」とは、所定量の薬物を含有する分割不能の包装単位を指す。例えば、1錠の薬物が単位用量になる。薬箱に7つのカプセルがある場合、各カプセルが単位用量になる。又は、1瓶の注射液が単位用量になる。
【0063】
用語「治療」とは一般に所望の薬理学的及び/又は生理学的な効果を得ることを指す。当該効果は疾患及び/又は疾患に伴う副作用を部分的に又は完全に安定させるか又は治癒することである場合に、治療を目的とする。本明細書で使用する用語「治療」は、患者の疾患に対するあらゆる治療として、(a)疾患の症状の阻害、即ちその進展の阻止、又は(b)疾患の症状の寛解、即ち疾患若しくは症状の解消を含む。
【0064】
用語「有効量」とは、(i)特定の疾患、症状又は障害を治療若しくは予防し、(ii)特定の疾患、症状又は障害の1種又は複数種の症状を軽減、改善若しくは解消するか、又は(iii)本明細書に記載の特定の疾患、症状若しくは障害の1種又は複数種の症状の発生を予防又は遅延させる、本願の化合物の用量を指す。本願の化合物の「治療有効量」は当該化合物自体、疾患の状態とその重症度、投与方式及び被治療哺乳動物の年齢によって変わるものであるが、当業者がその知識や本開示の内容に基づいて決定することができる。
【0065】
がんを取り扱う文脈において、用語「難治性」とは、特定のがんは特定の治療薬を使用する療法に耐性があるか又は反応がないことを指す。特定の治療薬を使用する療法では治療しにくいがんは、当該特定の治療薬での治療を始める時(即ち、当該治療薬に初めて曝露される時)に反応がないか、又は、当該治療薬を使用して1回目に治療する間に若しくは当該治療薬を使用して後続の治療を行う間に、当該治療薬への耐性が生じるものである。
【0066】
がんを取り扱う文脈において、用語「再発」とは、特定の療法での治療を受けて客観的寛解が認められた後に、疾患が再び発生することを指す。「客観的寛解」は、完全寛解及び部分寛解を含む。
【0067】
がんを取り扱う文脈において、用語「第一選択治療」(first-line therapy)とは、疾患に対する最初の治療を指す。一般には、一連の標準療法の一部であり、例えば、手術後に行われる化学療法と放射線療法である。第一選択療法が単独で用いられるのは、最良の療法とされている。疾患を治癒できないか又は深刻な副作用を引き起こしている場合に、他の療法を追加又は採用することができる。
【0068】
本願にいう以前の療法で使用される薬物としては、次の内容、又は、治療ガイドライン若しくは関連の医学・薬学教科書を参照することができる。
AOEP療法:シタラビン、ビンデシン、エトポシド、及びデキサメタゾン。
AspaMetDex療法:アスパラギナーゼ、メトトレキサート、及びデキサメタゾン。
B療法:ベンダムスチン。
BAC療法:ベンダムスチン、及びシタラビン。
BR療法:ベンダムスチン、及びリツキシマブ。
CHOP療法:シクロホスファミド、アドリアマイシン/エピルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾン。前記CHOP療法は、CHOP-21日療法又はCHOP-14日療法を含むが、それらに限定されない。
miniCHOP療法:用量低減CHOP(用量は基準用量の1/2から1/3に低減)。
CHOEP療法:シクロホスファミド、アドリアマイシン/エピルビシン、ビンクリスチン、エトポシド、及びプレドニゾン(CHOP療法とエトポシドの併用)。
CIFOX療法:5-フルオロウラシル、及びオキサリプラチン。
COEP-L療法:シクロホスファミド、ビンクリスチン(又はビンデシン)、エトポシド、プレドニゾン(又はデキサメタゾン)、及びペグアスパラガーゼ。
COP療法:シクロホスファミド、ビンクリスチン、及びプレドニゾン。
EPOCH療法:エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、及びアドリアマイシン。
DA-EPOCH療法(Dose-adjustment EPOCH、即ち、用量調整EPOCH):エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、及びアドリアマイシン。
DA-EPOCH-R療法(Dose-adjustment EPOCH-R、即ち、用量調整EPOCH-R):エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、アドリアマイシン、及びリツキシマブ。
DDGP療法:デキサメタゾン、シスプラチン、ゲムシタビン、及びペグアスパラガーゼ。
DHAP療法:デキサメタゾン、高用量シタラビン、及びシスプラチン。
ESHAP療法:エトポシド、メチルプレドニゾロン、高用量シタラビン、及びシスプラチン。
FC療法:フルダラビン、及びシクロホスファミド。
FCR療法:フルダラビン、シクロホスファミド、及びリツキシマブ。
FM療法:フルダラビン、及びミトキサントロン。
FMR療法:フルダラビン、ミトキサントロン、及びリツキシマブ。
G-CSF(Granulocyte-Colony Stimulating Factor):顆粒球コロニー刺激因子。
GDP療法:ゲムシタビン、デキサメタゾン、及びシスプラチン。
GDPE療法:ゲムシタビン、デキサメタゾン、シスプラチン、及びエトポシド。
GEMOX療法:ゲムシタビン、及びオキサリプラチン。
HyperCVAD療法:A療法:シクロホスファミド、メスナ、ビンクリスチン、アドリアマイシン、及びデキサメタゾン。B療法:メトトレキサート、及びシタラビン。
ICE療法:イホスファミド、カルボプラチン、及びエトポシド。
LOP療法:ペグアスパラガーゼ、ビンクリスチン、及びプレドニゾン。
MA療法:メトトレキサート、及びシタラビン。
P-GEMOX療法:ペグアスパラガーゼ、ゲムシタビン、及びオキサリプラチン。
R療法:リツキシマブ。
療法:リツキシマブ+レナリドミド。
R-:リツキシマブと療法の併用を指す。以下を含むが、それらに限定されない。
R-CHOP療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、アドリアマイシン/エピルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾン。
R-miniCHOP療法:リツキシマブ、用量低減CHOP(用量は基準用量の1/2から1/3に低減)。
R-DHAP療法:リツキシマブ、デキサメタゾン、シタラビン、及びシスプラチン。
R-GDP療法:リツキシマブ、ゲムシタビン、デキサメタゾン、及びシスプラチン。
R-GDPE療法:リツキシマブ、ゲムシタビン、デキサメタゾン、シスプラチン、及びエトポシド。
R-GEMOX療法:リツキシマブ、ゲムシタビン、及びオキサリプラチン。
R-HyperCVAD療法:A療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、メスナ、ビンクリスチン、アドリアマイシン、及びデキサメタゾン。B療法:リツキシマブ、メトトレキサート、及びシタラビン。
R-ICE療法:リツキシマブ、イホスファミド、カルボプラチン、及びエトポシド。
【0069】
SMILE療法:デキサメタゾン、メトトレキサート、ロイコボリン、メスナ、イホスファミド、L-アスパラギナーゼ、及びエトポシド(臨床上の実際の薬物使用状況から、SMILE療法は、デキサメタゾン、メトトレキサート、イホスファミド、ペグアスパラガーゼ、及びエトポシドであってもよい)。
【0070】
V-CAP療法:ボルテゾミブ、シクロホスファミド、アドリアマイシン、及びプレドニゾン。
【0071】
VR-CAP療法:ボルテゾミブ、リツキシマブ、シクロホスファミド、アドリアマイシン、及びプレドニゾン。
【0072】
R-高用量シタラビン療法:リツキシマブ、及び高用量シタラビン。
【0073】
本願では、プレドニゾロンはプレドニゾンとも言い、両者は入れ替えて使用される。
【0074】
本願では、アドリアマイシンはドキソルビシンとも言い、両者は入れ替えて使用される。
【0075】
本願にいう化学療法は、本分野の従来技術である。当業者は従来技術における治療ガイドライン又は関連の医学・薬学教科書(例えば、2019年版中国臨床腫瘍学会(CSCO)リンパ腫診療ガイドライン)を参照して化学療法の詳細な内容(使用薬物、投与用量又は投与期間を含むが、それらに限定されない)を得ることができる。本願で挙げられる化学療法で使用される薬物は例示的なもので、化学療法に関する詳細な内容(使用薬物、投与用量又は投与期間を含むが、それらに限定されない)は治療ガイドライン又は関連の医学・薬学教科書に準拠する。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、具体的な実施例で本発明を詳しく説明する。下記の実施例は説明の目的で提供され、決して本発明を限定するためのものではない。
【0077】
実施例1:式I化合物の錠剤
【表1】
【0078】
製造方法:
1)式I化合物、微結晶セルロース、マンニトール、クロスカルメロースナトリウムをこの順に解砕整粒機に通し、ふるい分けした後に材料を収集し、次に、予混合して、予混合材料を得た。
【0079】
2)結合剤として、ヒプロメロースの水溶液を調製した。
【0080】
3)ステップ1)の予混合材料を湿式造粒機に移して、ステップ2)の結合剤を加えて造粒を開始した。
【0081】
4)調製した軟質湿材を整粒し、乾燥させて、ステアリン酸マグネシウムを加えて総混合した。
【0082】
5)打錠。
【0083】
任意に、錠剤をコーティングした。
【0084】
なお、式I化合物は、WO2015192760で開示されている方法に従って製造した。
【0085】
実施例2:末梢性T細胞リンパ腫に関する臨床試験
2.1 投与計画
投与方法:1日1回で15mg又は20mg経口投与し、21日間の連続服用を1クールとする。
【0086】
薬物:式I化合物の錠剤であり、仕様は、5mg又は20mgである。
【0087】
2.2 組み入れ基準
1)病理組織学的に確認された再発/難治性末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)であり、非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、及び節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(NKTCL)の4種類のサブタイプを含む。
2)以前に少なくとも第一選択全身療法を受けたことがあり、最後の治療期間中に又は完了後に疾患が進行しているか又は充分な治療後に客観的寛解がないことが確認されている。
3)測定可能な標的病変を少なくとも1つ有する(2014年版Lugano有効性評価基準で評価する)。
4)年齢は18歳以上であり、ECOG(PS)スコアは0~2点であり、想定生存期間は3か月以上である。
5)スクリーニング期間中で主要臓器の機能は次の基準に合致する。
血液一般検査基準(14日以内に成長因子の使用又は輸血なし):
好中球絶対数(ANC)≧1.0×10/L、
リンパ球数(LYM)≧0.5×10/L、
CD4+Tリンパ球数≧0.2×10/L、
血小板(PLT)≧75×10/L(リンパ腫の骨髄浸潤のある患者は≧50×10/Lまで)、
ヘモグロビン(Hb)≧80g/L。
血液生化学検査基準:
アラニンアミノ基転移酵素(ALT)及びアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)≦2.5×ULN(リンパ腫が肝臓に及んでいるか又は胆道閉塞がある場合は、≦5×ULN)、
総ビリルビン(TBIL)≦1.5×ULN、
凝固機能:活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、国際標準化比(INR)、プロトロンビン時間(PT)≦1.5×ULN、
血清クレアチニン(Cr)≦1.5×ULN、又はクレアチニンクリアランス≧50mL/min。
6)女性は、研究期間中及び研究終了後から6か月以内に避妊手段(例えば、子宮内避妊用具(IUD)、避妊薬又はコンドーム)を使用することに同意し、研究群に組み入れる前の7日以内に血清又は尿による妊娠検査は陰性で、且つ非授乳期の患者である。男性は、研究期間中及び研究終了後から6か月以内に避妊手段を使用することに同意する。
7)患者は自分の意思で本研究に参加し、インフォームド・コンセントに署名し、コンプライアンスが良い。
【0088】
2.3 評価方法及び指標
2014年修正版Lugano有効性評価基準で有効性を評価する。
【0089】
主要有効性評価指標:客観的奏効率(ORR)(即ち、CR+PR例数/総例数であり、完全寛解(CR)及び部分寛解(PR)の例が含まれる)。
【0090】
副次的有効性評価指標:無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、疾患制御率(DCR)、寛解持続期間(DOR)。
【0091】
2.4 試験結果
1群の試験では、これまでに、組み入れた6例の末梢性T細胞リンパ腫患者に対して有効性評価を行ったところ、客観的奏効率(ORR)は50%(3/6)であった。結果は、式I化合物が末梢性T細胞リンパ腫に良好な治療効果を有することを示す。また、式I化合物を治療に用いる場合、良好な安全性を有する。
【0092】
また1群の試験では、これまでに、患者に対する有効性に関しては、同様に、式I化合物は末梢性T細胞リンパ腫に良好な治療効果を有することが示される。具体的には、次のとおりである。
例1:
患者は38歳の男性である。右頚部に2×2cmの腫瘤が見られた。リンパ節切除による生検の免疫組織化学:CKpan(-),EMA(-),LCA(+),CD20(+),CD79α(+),CD3(+),CD43(+),CD15(+),CD5(-),CD30(+),CD38(+),CD138(-),CD21(-),c-myc(+),ALK(-),Bcl2-2(弱+),Bcl6(-),Mum-1(+),PD-L1(+),Pax-5(-),Ki-67(+,60%),in situハイブリダイゼーション:EBER(+),右頸部リンパ節:ALK陰性未分化大細胞リンパ腫に該当。頸部、胸部及び腹部CT:両側の頚部、両側の鎖骨上窩及び腋窩に腫大リンパ節が多発。
【0093】
臨床診断後に、患者にCHOEP療法(具体的には、シクロホスファミド1g、ドキソルビシンリポソーム50mg、ビンクリスチン2mg、エトポシド0.1g、プレドニゾン0.1gである)を実施し、化学療法は4クールであった。腫瘍が完全に寛解されないため、CHOEPとチダミドの併用療法に変えて化学療法を実施し、化学療法は順調であった。患者はCHOEPとチダミドの併用による化学療法の終了後から約1か月に明らかな誘因なしに左耳介前及び耳介後にリンパ節腫大が見られ、疾患が進行していた。
【0094】
組み入れた後、式I化合物の錠剤での治療を始め、毎日15mgの式I化合物を与え、21日間を1クールとした。ベースラインSPD(複数の病変の最大垂直径の積の和)は717mmであり、2クール投与後にSPDは495mmであり、4クール投与後にSPDは409mmであった。ベースラインPET-CT:縦隔SUVmax(最大標準摂取量)1.9、肝臓SUVmax 2.6、最大摂取病変は左腮腺領域のSUVmax 7.0、4クール投与後にPET-CTは縦隔SUVmax 1.5、肝臓SUVmax 2.5を示し、最大摂取病変は左腮腺領域のSUVmax 1.5であり、全体的な有効性は完全寛解(CR)であり、新しい病変が見られなかった。
【0095】
例2:
患者は33歳の女性である。病理診断では、(左鼻腔)節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型と示され、免疫組織化学は、CK(-),CD20(+),CD2(+),CD3(+),CD4(-),CD8(-),CD43(+),CD56(+),GranzymeB(+),TIA-1(+),Ki-67(30%+),EBER/ISH(+)と腫瘍細胞であることを示す。
【0096】
臨床診断後に、患者にCOEP-L療法(ビンデシン4mg、シクロホスファミド1.2g、ペグアスパラガーゼ3750IU、エトポシド0.1g、デキサメタゾン15mg)での治療を実施し、約4週間後にSMILE療法(臨床上の実際の薬物使用状況から、デキサメタゾン40mg、メトトレキサート3g、イホスファミド2.3g、ペグアスパラガーゼ3750IU、エトポシド0.15gに調整)での治療に変え、約1か月後にP-GEMOX療法(ペグアスパラガーゼ注射液3750IU+注射用ゲムシタビン塩酸塩1.9g+オキサリプラチン注射液60mL)での治療に変え、約5週間後にAOEP化学療法+G-CSF療法での治療に変え、約6週間後にSMILE療法(デキサメタゾン40mg、メトトレキサート3g、イホスファミド2.3g、ペグアスパラガーゼ3750IU、エトポシド0.15g)での治療に変えると同時に、(メトトレキサート10mg、デキサメタゾン5mg、シタラビン50mg)を髄腔内投与して治療し、約3週間後に自家造血幹細胞移植術を行って治療し、自家造血幹細胞移植術による治療後から約2か月より、約4か月間連続で持続的にチダミド錠を服用し、1日1回で週2日服用し、1回あたり4錠であった。組み入れる前にCT結果は患者に疾患進行を示す。
【0097】
組み入れた後、式I化合物の錠剤での治療を始め、毎日15mgの式I化合物を与える。投与治療前に副鼻腔強化MRIは、測定可能な標的病変(右鼻腔の前部と外側壁)のSPDは280mmであり、肝臓は正常であり、脾臓の垂直径は12cmであることを示す。投与後に、定期的に副鼻腔の強化MRI検査を行い、2クール治療後に、SPDは117mmに低減し、有効性評価は部分寛解(PR)であり、低減率は58.2%であり、肝臓は正常であり、脾臓の垂直径は11.5cmであり、新しい病変が見られなかった。

【国際調査報告】