(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】光ファイバ線引きプロセス過程での流体軸受の並進移動
(51)【国際特許分類】
C03B 37/027 20060101AFI20230914BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20230914BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C03B37/027 A
G02B6/02 356A
G02B6/44 301B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515607
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 US2021046118
(87)【国際公開番号】W WO2022055665
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グレゴルスキー,スティーヴン ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】モーガン,ケネス スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】クイン,リチャード アラン
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,ブラッドリー ケント
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ジョン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,ディヴィッド アンドリュー
【テーマコード(参考)】
2H250
4G021
【Fターム(参考)】
2H250BA03
2H250BA22
2H250BA32
2H250BB07
2H250BC02
4G021HA05
(57)【要約】
光ファイバの製造方法は、線引き経路に沿って、光ファイバ母材から裸光ファイバを線引きするステップを含む。また、本方法は、線引きするステップの過程で、第1の流体軸受を第1の位置から第2の位置に移動するステップをさらに含む。第1の位置は、線引き経路から外れた位置とされ、第2の位置は、線引き経路内に配置されるため、第1の流体軸受を第2の位置に移動することにより、線引き経路の少なくとも第1の区間の方向が変化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの製造方法であって、該方法は、
線引き経路に沿って、光ファイバ母材から裸光ファイバを線引きするステップと、
前記線引きするステップの過程で、第1の流体軸受を第1の位置から第2の位置に移動するステップと、
を含み、
前記第1の位置は、前記線引き経路から外れた位置とされ、前記第2の位置は、前記線引き経路内に配置されるため、前記第1の流体軸受を前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも第1の区間の方向が変化する、方法。
【請求項2】
前記第1の流体軸受を前記第2の位置に移動するステップの後に、前記裸光ファイバを被覆層で被覆するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上のプロセス条件が満たされたことを判定するステップと、
前記1つ以上のプロセス条件が満たされたと判定した後に、前記第1の流体軸受を前記第1の位置から前記第2の位置に移動するステップと、をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のプロセス条件が、最低線引き速度、所定のファイバ径、所定のファイバ張力、又は被覆システムがオン位置にある旨の判定を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記線引き経路に対して直線の経路、円弧状の経路、S字経路、横断する経路、又は斜めの経路のうちの少なくとも1つの経路で、前記第1の流体軸受を前記第1の位置から前記第2の位置に移動するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の流体軸受を前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも前記第1の区間の方向が、第1の方向から第2の方向に変化し、
前記第2の方向は、前記第1の方向に対して実質的に垂直である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上のプロセス条件が満たされたと判定した後に、前記線引きするステップの過程で、第2の流体軸受を第1の位置から第2の位置に移動するステップをさらに含み、
前記第2の流体軸受の前記第1の位置は、前記線引き経路から外れた位置とされ、前記第2の流体軸受の前記第2の位置は、前記線引き経路内に配置されるため、前記第2の流体軸受を前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも第2の区間の方向が変化する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記線引き経路の前記第1の区間の少なくとも一部と前記線引き経路の前記第2の区間の一部の長さが重なっている、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、2020年9月9日を出願日とする米国仮特許出願第63/075983号の優先権の利益を主張する2020年9月28日に出願されたオランダ特許出願第2026551号の優先権の利益を主張するものであり、これらのすべての内容は、本明細書の依拠するところとし、参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、光ファイバ線引きプロセスの過程で流体軸受を並進移動することを対象とし、より詳細には、光ファイバ線引きプロセスの過程で、流体軸受を並進移動してファイバ線引き経路を延伸するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、光ファイバ母材(optical fiber preform)からの光ファイバの線引きは、上下方向に延びる鉛直方向の直線経路に沿って行われてきた。すなわち、上の位置に光ファイバ母材を配置し、そこから光ファイバを下方向に線引きしていた。しかし、線引き経路がこのような鉛直方向の直線経路であるため、線引きプロセスへの追加や変更を、システムの全高を上げることなく行うことが難しかった。また、光ファイバ線引き経路の線引きタワーが、設置先の建物の天井又はその近傍にすでに届いてしまっている場合も考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、直線状の線引き経路に構成要素を追加する(例えば、システムに改良を加える)ためには、建物施設の高さを上げるための追加工事が必要となり、それによって、コストが非常に嵩む恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
光ファイバ線引きプロセスを完全に鉛直方向とはしないことにより、システムの変更や更新を行うためのコストが大幅に削減される。例えば、線引き経路の一部を水平方向に延びるようにすることで、構成要素の追加などのシステム変更を容易かつ高い費用対効果で行うことが可能となる。このように水平方向に延びる線引き経路の場合、システムに新しい構成要素を追加しても、システム設置先の建物施設の高さを上げるための工事が必要とならない。
【0006】
さらに、線引き経路の少なくとも一部が水平方向に延びるようにすることには、光ファイバにポリマー被覆を施す前に、光ファイバの冷却時間を長くとることができるという利点もある。したがって、かかる線引き経路を用いることにより、線引き経路上に高価な冷却機構を導入する必要性を排除又は低減することができる。本明細書に開示の線引き経路は、コストの低いポリマー被覆の使用や、被覆速度の高速化、ファイバ冷却性能の向上を可能にする、より効率的なプロセス経路を提供するものである。
【0007】
本明細書に開示の実施形態は、線引き経路が鉛直方向にも非鉛直方向にも延びる光ファイバ線引きシステム及びプロセスを提供するものである。さらに、本開示の実施形態に係る線引き経路は、線引きプロセスの過程で経路の方向を変化させることができるため、システムの適応性を高めることもできる。
【0008】
第1の態様では、光ファイバの製造方法が開示される。本方法は、線引き経路に沿って、光ファイバ母材から裸光ファイバを線引きするステップを含む。線引きするステップの過程で、第1の流体軸受が第1の位置から第2の位置に移動する。第1の位置は、線引き経路から外れた位置とされ、第2の位置は、線引き経路内に配置されるため、第1の流体軸受を第2の位置に移動することにより、線引き経路の少なくとも第1の区間の方向が変化する。
【0009】
第2の態様では、光ファイバの製造装置が開示される。本装置は、線引き経路に沿って、光ファイバ母材から裸光ファイバを線引きするように構成された線引き機構を備えている。また、本装置は、と、光ファイバを線引きしている過程で、第1の位置から第2の位置に移動するように構成された第1の流体軸受をさらに備えている。第1の位置は、線引き経路から外れた位置とされ、第2の位置は、線引き経路内に配置されるため、第1の流体軸受を第2の位置に移動することにより、線引き経路の少なくとも第1の区間の方向が変化する。
【0010】
以下の詳細な説明において、本明細書に記載のプロセス及びシステムのさらなる特徴及び利点を記載する。下記のさらなる特徴及び利点は、当業者であれば、ある程度はその説明からただちに理解するであろうし、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、及び添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって理解することであろう。
【0011】
上述の概略的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、種々の実施形態を説明するものであり、特許請求する主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、種々の実施形態のさらなる理解のために添付するものであり、本明細書に組み込まれ、その一部をなすものとする。図面は、本明細書に記載の種々の実施形態を例示的に示すものであり、以下の詳細な説明と合わせて、特許請求する主題の原理及び作用を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面に記載の実施形態は、説明的かつ例示的なものであり、特許請求の範囲によって定義される主題を限定することを意図したものではない。以下の図面と併せて読むことにより、後述の例示的な実施形態の詳細な説明を理解することができるであろう。なお、図面において、同様の構造については同様の参照番号で示す。
【
図1A】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図1B】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図2A】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図2B】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図3A】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図3B】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図3C】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図4A】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図4B】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図4C】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図4D】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図5A】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図5B】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムの模式図
【
図6】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、光ファイバ製造システムで使用する流体軸受の分解図
【
図7】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、
図6に示す流体軸受の部分側面図
【
図8】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、
図6に示す流体軸受にガイドスロットを取り付けた状態を示す他の部分側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明において、本開示のさらなる特徴及び利点を記載する。下記のさらなる特徴及び利点は、当業者であれば、詳細な説明から明らかとなるであろうし、あるいは、特許請求の範囲及び添付の図面とともに以下の詳細な説明に記載される本開示を実施することにより理解するであろう。
【0014】
当業者であれば、本開示の構成及び他の構成要素が、特定の材料に何ら限定されないことを理解するであろう。本明細書に記載の本開示について、本明細書において特に断りのない限り、多種多様な材料で他の例示的な実施形態を作り出すことができる。
【0015】
また、例示的な実施形態に示す本開示の要素の構成及び配置が、例示に過ぎないことに留意することも重要である。本開示においては、ごく限られた数の実施形態のみを詳細に説明しているが、当業者が本開示を検討すれば、本開示に記載の主題の新規性及び非自明性を有する教示及び利点から実質的に逸脱しない範囲で、多くの変形(例えば、種々の要素のサイズ、寸法、構造、形状及び比率の変更や、パラメータの値、取り付け配置、使用する材料、色、向きなどの変更など)が可能であることを直ちに理解するであろう。例えば、一体形成された要素として示す要素を複数の部品で構成することができ、あるいは、複数の部品として示す要素を一体形成することもできる。また、インタフェースの操作についても逆にするなどの変更が可能であるほか、本システムの構造、及び/又は部材又は接続部などの要素の長さや幅を変更することができ、要素間に設けられる調整位置の性質や数も変更することができる。本システムの要素及び/又はアセンブリは、十分な強度又は耐久性を実現する多種多様な材料のいずれかから、多種多様な色、質感、組み合わせで構成することができることに留意されたい。したがって、このような変形のすべてを本開示の範囲に含むことを意図している。その他の置換、変形、変更、及び省略についても、本開示の趣旨から逸脱しない範囲で、他の所望の例示的な実施形態の設計、動作条件、及び配置において行うことができる。
【0016】
次に、本開示の好ましい実施形態について詳細に説明する。添付の図面は、これら好ましい実施形態の例を示すものである。図面全体を通して、同一又は類似の箇所は、可能な限り同一の参照番号を用いて示す。
【0017】
次に、
図1A及び
図1Bを参照すると、光ファイバを製造するように構成された光ファイバ製造システム100が模式的に示されている。光ファイバ製造システム100は、線引き炉110と、ファイバ冷却機構115と、1つ以上の流体軸受120と、ファイバ被覆ユニット130と、ファイバ回収ユニット140とを備えている。
図1A及び
図1Bに示すように、線引き経路102は、線引き炉110からファイバ回収ユニット140まで延在する、製造過程で光ファイバ10が進む経路である。以下に詳述するように、線引き経路102は、1つ以上の線引き経路区間を有している。
【0018】
図1A及び
図1Bに示すように、線引き炉110内に光ファイバ母材12を配置し、そこから光ファイバ10を線引きする。ファイバ被覆ユニット130に到達する前の光ファイバ10は、裸光ファイバである。光ファイバ母材12は、光ファイバの製造に適した任意のガラスなどの材料で構成することができる。
【0019】
光ファイバ10は、ファイバ冷却機構115を通過する際に冷却される。ファイバ冷却機構115は、当技術分野において公知の任意の、光ファイバを冷却するための機構とすることができる。例えば、ファイバ冷却機構115を、外気中で光ファイバ10を冷却するよりも速い又は遅い速度での光ファイバ10の冷却を促進可能なガスで満たすことができる。例えば、ファイバ冷却機構115は、徐冷デバイスである。いくつかの実施形態では、ファイバ冷却機構115は、空気冷却管又はヘリウムジェット冷却管を利用して、光ファイバ10を冷却する。いくつかの実施形態では、システム100がファイバ冷却機構115を備えない構成も企図されている。
【0020】
ファイバ被覆ユニット130は、光ファイバ10に1つ以上の被覆層を塗布することができる。
図1A及び
図1Bに示すように、ファイバ被覆ユニット130は、一次被覆ユニット134及び二次被覆ユニット136を備えることができる。一次被覆ユニット134は、光ファイバ10に一次被覆を施すことができ、二次被覆ユニット136は、光ファイバ10に二次被覆を施すことができる。一次被覆ユニット134及び/又は二次被覆ユニット136は、光ファイバ10にポリマー系保護被覆、例えば、アクリレート被覆を施すことができる。
【0021】
流体軸受120を使用して、線引き経路102に沿って線引き中の光ファイバ10を案内、搬送することができる。以下に詳述するように、流体軸受120は、光ファイバ被覆ユニット130で光ファイバ10に被覆層を塗布(することにより、被覆光ファイバ15を形成)し終えるまでは、光ファイバ10がいかなる表面とも機械的接触を持つことがないように、光ファイバ10を案内、搬送してシステム100を通過させる。
図1A及び
図1Bに示すように、第1の実施形態において、システム100は、3つの流体軸受121、122、123を備えている。ただし、これより多い又は少ない数の流体軸受を使用し得ることも企図されている。
【0022】
流体軸受120は、線引き炉110とファイバ被覆ユニット130との間の線引き経路102に沿って配置することができる。なお、
図1A及び
図1Bでは、流体軸受120をファイバ冷却機構115の下流側に配置しているが、線引き経路102に沿ってファイバ冷却機構115の上流側に、1つ以上の流体軸受120を配置し得ることも企図されている。
【0023】
動作時には、光ファイバ母材12から線引きされた光ファイバ10は、線引き炉110を出て線引き経路102に沿って進み、ファイバ冷却機構115に到達するとそこで冷却されて、その後、ファイバ被覆ユニット130で被覆を施される。ファイバ被覆ユニット130に到達する前の光ファイバ10は、裸光ファイバである。光ファイバ10は、ファイバ被覆ユニット130で被覆を施されて、被覆光ファイバ15になった後、システム100内で様々な他の処理段階(図示せず)を経てから、ファイバ回収ユニット140に到達する。
【0024】
ファイバ回収ユニット140は、1つ以上の線引き機構142を備えている。線引き機構142により、光ファイバ10に張力を加えて、システム100全体にわたり、光ファイバ10を線引きする際に必要な張力を光ファイバ10に与えている。また、ファイバ回収ユニット140は、ファイバ格納スプール144をさらに備えており、ファイバ格納スプール144で、被覆光ファイバ15を巻き取ることができる。
【0025】
図1Aに、システム100の第1の配置設定を示す。システム100の第1の配置設定では、線引き経路102は、真っ直ぐな(又は実質的に真っ直ぐな)鉛直線上にある。
図1Aには、光ファイバ10の線引きプロセス開始後のシステム100の第1の配置設定を示している。したがって、
図1Aは、線引きプロセス過程におけるシステム100の第1の配置設定を示している。
【0026】
線引きプロセスの過程で、1つ以上の流体軸受120が、
図1Aに示す第1の配置設定から
図1Bに示す第2の配置設定に移動することができる。例えば、第1の流体軸受121は、
図1Aに示す第1の位置から
図1Bに示す第2の位置に移動することができる。
図1A及び
図1Bに示す実施形態では、第1の流体軸受121は、第1の位置から第2の位置に移動するため左へ移動する。
図1Aに示すように、第1の流体軸受121の第1の位置は、線引き経路102から外れた位置とされる。よって、第1の位置にあるとき、第1の流体軸受121は、線引き経路上には配置されず、光ファイバ10と係合していない。一方、
図1Bに示すように、第1の流体軸受121の第2の位置は、線引き経路102内に配置される。よって、第2の位置にあるとき、第1の流体軸受121は、線引き経路102に沿って線引き中の光ファイバ10と係合する。したがって、第1の流体軸受121を第1の位置から第2の位置に移動することにより、線引き経路102の少なくとも第1の区間104の方向が変化する。
【0027】
図1Aに示すように、第1の流体軸受121が第1の位置にあるとき、線引き経路102の第1の区間104は、鉛直(又は、実質的に鉛直)な方向である第1の方向に進んでいる。第1の流体軸受121を第1の位置から第2の位置に移動することにより、線引き経路102の第1の区間104の方向が、第1の方向から第2の方向へと変化する。
図1A及び
図1Bの実施形態では、第2の方向は水平(又は、実質的に水平)な方向であり、したがって、第2の方向は、第1の方向に対して実質的に垂直とされる。
【0028】
第1の流体軸受121を第1の位置から第2の位置に移動することにより、線引き経路102の第1の区間104の方向が約90度変化する。ただし、第1の流体軸受121を第1の位置から第2の位置に移動することにより、線引き経路102の第1の区間104の方向が、約90度以下、又は約60度以下、又は約45度以下、又は約30度以下、又は約15度以下、又は約10度以下、又は約5度以下、又は約90度以上、又は約100度以上、又は約120度以上変化することも企図されている。
【0029】
図1A及び
図1Bにさらに図示するように、第2の流体軸受122及び第3の流体軸受123も、それぞれ第1の位置から第2の位置に移動することができる。第1の流体軸受121と同様に、第2の流体軸受122及び第3の流体軸受123の第1の位置をいずれも、線引き経路102から外れた位置とし、第2の流体軸受122及び第3の流体軸受123の第2の位置をいずれも、線引き経路102内に配置することができる。
図1A及び
図1Bに示す実施形態では、第2の流体軸受122は、第1の位置から第2の位置に移動するため右へ移動し、第3の流体軸受123は、第1の位置から第2の位置に移動するため左へ移動する。したがって、第2の流体軸受122及び第3の流体軸受123をそれぞれの第1の位置から第2の位置に移動することにより、線引き経路102の少なくとも一部の区間の方向が変化する。
【0030】
例えば、第2の流体軸受122を第1の位置から第2の位置に移動することにより、線引き経路102の第2の区間106の方向が、第1の方向から第2の方向へと変化する。
図1A及び
図1Bの実施形態では、(第2の流体軸受122が第1の位置にあるときの)線引き経路102の第2の区間106の第1の方向は、鉛直(又は、実質的に鉛直)な方向である。さらに、(第2の流体軸受122が第2の位置にあるときの)線引き経路102の第2の区間106の第2の方向は、水平(又は、実質的に水平)な方向である。したがって、第2の区間106の第2の方向は、第2の区間106の第1の方向に対して実質的に垂直とされる。
【0031】
なお、線引き経路102の第1の区間104の第1の方向と第2の区間106の第1の方向が、互いに平行(又は、実質的に平行)且つ同一の方向を向いていることにも留意されたい。一方、
図1Bに示す配置設定において、第1の区間104の第2の方向は、第2の区間106の第2の方向とは反対の方向とされる。さらに、流体軸受121、122、123がそれぞれの第1の位置からそれぞれの第2の位置に移動した後、
図1Bに示すように、ファイバ冷却機構115からの線引き経路102の出口(点A)は、ファイバ被覆ユニット130への線引き経路102の入口(点B)と同一軸線上に整列される。
【0032】
第1の区間104と第2の区間106とは、線引き経路102における、区別できる別個の区間とすることができる。しかしながら、第1の区間104と第2の区間106の、線引き経路102に沿った長さの少なくとも一部が重なることも企図されている。
【0033】
システム100の複数の流体軸受120は、一斉に移動してもよいし、1つ以上の流体軸受が移動した後に、1つ以上の他の流体軸受が移動してもよい。例えば、第1の流体軸受121及び第3の流体軸受123の第2の位置への移動を、第2の流体軸受122の第2の位置への移動の前に行うことができる。他の実施形態では、第2の流体軸受122の第2の位置への移動を、第1の流体軸受121及び第3の流体軸受123の移動の前に行う。
【0034】
いくつかの実施形態では、線引き経路102の区間の方向を変化させるために、2つ以上の流体軸受120を移動する必要がある場合がある。例えば、第1の区間104及び第2の区間106を水平方向に移動するとともに、線引き経路102の点Aと点Bを同一軸線上に整列させるためには、第1の流体軸受121、第2の流体軸受122、及び第3の流体軸受123を、それぞれの第1の位置から第2の位置に移動する必要があると考えられる。
【0035】
流体軸受120の第1の位置から第2の位置への移動は、1つ以上のプロセス条件が満たされたことを判定した後に行うことができる。そのようなプロセス条件としては、例えば、光ファイバ10の所定の線引き速度、光ファイバ10の所定のファイバ径、光ファイバ10の所定のファイバ張力、又はシステム100がオン位置にある旨の判定、が挙げられる。流体軸受20の移動は、光ファイバ10の線引きプロセスの過程で1つ以上のプロセス条件が満たされて初めて行うこともできる。いくつかの実施形態では、所定のファイバ径は、目標ファイバ径の約±1マイクロメートルとすることができる。一例を挙げれば、目標ファイバ径が約125マイクロメートルの場合、所定のファイバ径は、約124マイクロメートル~約126マイクロメートルである。さらに、所定のファイバ張力は、目標ファイバ張力の±50%程度とすることができる。
【0036】
上述したように、システム100の第1の配置設定(
図1A)は、線引きプロセスの開始後に現れ得る。その場合、流体軸受120のそれぞれの第1の位置から第2の位置への移動は、光ファイバ10の線引き動作の過程で行われる。しかしながら、システム100の第1の配置設定と第2の配置設定のいずれもが、線引きプロセスの開始前に現れ得る構成も企図されている。つまり、1つ以上の流体軸受120の第1の位置から第2の位置への移動を、線引き動作の開始前に行うこともできる。
【0037】
いくつかの実施形態では、ファイバ被覆ユニット130は、1つ以上の流体軸受120の並進移動が行われた後でなければ、光ファイバ10に被覆を行わない構成とすることができる。例えば、ファイバ被覆ユニット130は、第1の流体軸受121、第2の流体軸受122、及び第3の流体軸受123のすべてが第2の位置につくまでは、光ファイバ10への被覆を行わない構成とすることができる。
【0038】
流体軸受120のそれぞれの第1の位置から第2の位置への移動は、並進移動機構150により行うことができる。並進移動機構150は、流体軸受120が光ファイバ10に係合する前に、流体軸受を任意の方向及び/又は向きに移動することができる。例えば、並進移動機構150は、光ファイバ線引き経路102に対して直線の経路、円弧状の経路、S字経路、横断する経路、又は斜めの経路で、各流体軸受120を移動することができる。また、並進移動機構150が、上記の経路のうちの1つ以上を組み合わせた経路で、1つ以上の流体軸受120を移動することも企図されている。ただし、流体軸受120を光ファイバ10に係合させた時に、流体軸受120が光ファイバ10を受けることができるような方向(例えば、流体軸受120の開口部が、光ファイバ10と軸心合わせされるような方向)に、流体軸受120を移動する必要があることに留意されたい。いくつかの実施形態では、並進移動機構150は、直線摺動装置又はエア駆動摺動装置である。
【0039】
流体軸受120の第1の位置から第2の位置への移動は、1つの平面内に保ちながら行うことができ、例えば、流体軸受120を1つの平面内で前後又は上下に動かすようにして行うことができる。また、これに加えて又は代えて、流体軸受120を1つの平面内で円弧状に移動して、第1の位置から第2の位置に移動することもできる。さらに、1つ以上の流体軸受120が、1つ以上の他の流体軸受120とは異なる機構により異なる動きをすることもできることにも留意されたい。
【0040】
図1Bは、流体軸受120が並進移動してそれぞれの第2の位置についた後のシステム100の配置設定を示している。流体軸受120が並進移動した結果、光ファイバ10は、線引き経路102に沿って蛇行したルートで延びている。より具体的には、光ファイバ10は、線引き経路102に沿って、鉛直方向にも非鉛直方向(例えば、水平方向)にも延びている。これに加えて又は代えて、光ファイバ10は、線引き経路102に沿って横断方向又は斜め方向に延びることもできる。
【0041】
図1A及び
図1Bに示すような、1つ以上の非鉛直経路区間を有する光ファイバ製造システムを提供することには、多くの利点がある。例えば、従来のような直線状のファイバ製造システムでは、ファイバ被覆ユニットの前に、被覆ユニットや冷却機構をさらに追加する場合など、新たな構成要素を追加する場合、これらすべての構成要素を鉛直方向に配置する必要があるため、システムの全高を上げる必要が生じることも多かった。一方、本明細書に記載の光ファイバ製造システム100では、ファイバ被覆ユニット130で被覆層を塗布する前の段階では、光ファイバ10は、例えば、水平方向又は斜め方向(例えば、非鉛直方向)のルートをとることができる。そのため、装置の据え付けを柔軟に行うことができるばかりでなく、据え付け後の変更・追加・更新にも、既存の生産設備内で、システムの全高を上げる必要がなく、柔軟に対応することができる。
【0042】
さらに、1つ以上の非鉛直経路を有する光ファイバ製造システムを提供することにより、線引き経路102の経路長が長くなるため、光ファイバ10がファイバ被覆ユニット130に投入される前の外気による光ファイバ10の冷却が増進される。これにより、ファイバ冷却機構115の必要がなくなり、製造コストを節約することも可能となる。さらに、以下に詳述するように、これに加えて、流体軸受120自体も、経路102に沿って線引き中の光ファイバ10を追加冷却することができる。流体軸受120による冷却が追加されることにより、線引きプロセス過程での冷却速度を従来のシステムよりも大幅に高めることができる。これにより、ファイバ被覆ユニット130への投入前時点での光ファイバ10の温度をその時点で許容可能な温度としたまま、システム100を従来のシステムよりも高速に動作させることができる。また、システム100によって得られる冷却の向上により、ファイバ被覆ユニット130において、より低コストのポリマー被覆を使用したり、被覆速度を上げたりすることも可能となる。
【0043】
図2A及び
図2Bは、光ファイバを製造するように構成された光ファイバ製造システム200を示している。
図1A及び
図1Bに示す実施形態と同様に、システム200も、線引き炉110と、ファイバ冷却機構115と、ファイバ被覆ユニット130と、ファイバ回収ユニット140とを備えている。
図2A及び
図2Bに示すように、線引き経路202は、線引き炉110からファイバ回収ユニット140まで延在する、製造過程で光ファイバ10が進む経路である。
【0044】
また、システム200は、線引き経路202に沿って線引き中の光ファイバ10を案内、搬送するための流体軸受220をさらに備えている。
図2A及び
図2Bに示す実施形態において、システム200は、5つの流体軸受221、222、223、224、225を備えている。
【0045】
図1A及び
図1Bに示す実施形態と同様に、流体軸受221、222、223、224、225も、それぞれの第1の位置から第2の位置に移動し、これにより、線引き経路202の1つ以上の区間の方向が変化する。例えば、流体軸受221、222、223、224、225のうち1つ以上の流体軸受を移動することにより、線引き経路202の第1の区間204、第2の区間206、第3の区間208、及び第4の区間210の方向が、第1の方向から第2の方向へと変化する。第1の流体軸受221、第3の流体軸受223、及び第5の流体軸受225はいずれも、第1の位置から第2の位置に移動するため左へ移動する。第2の流体軸受222及び第4の流体軸受224はいずれも、第1の位置から第2の位置に移動するため右へ移動する。
【0046】
図2Aに示すように、流体軸受221、222、223、224、225の第1の位置は、線引き経路202から外れた位置とされる。よって、第1の位置にあるとき、流体軸受は、線引き経路上には配置されず、光ファイバ10と係合していない。一方、
図2Bに示すように、流体軸受221、222、223、224、225の第2の位置は、線引き経路202内に配置される。よって、第2の位置にあるとき、流体軸受は、線引き経路202に沿って線引き中の光ファイバ10と係合する。
【0047】
図3A~
図3Cは、光ファイバを製造するように構成された光ファイバ製造システム300を示している。
図1A及び
図1Bに示す実施形態と同様に、システム300も、線引き炉110と、ファイバ冷却機構115と、ファイバ被覆ユニット130と、ファイバ回収ユニット140とを備えている。
図3A~
図3Cに示すように、線引き経路302は、線引き炉110からファイバ回収ユニット140まで延在する、製造過程で光ファイバ10が進む経路である。
【0048】
また、システム300は、線引き経路302に沿って線引き中の光ファイバ10を案内、搬送するための流体軸受320をさらに備えている。
図3A~
図3Cに示す実施形態において、システム300は、6つの流体軸受321、322、323、324、325、326を備えている。
【0049】
図1A及び
図1Bに示す実施形態と同様に、流体軸受321、322、323、324、325、326も、それぞれの第1の位置から第2の位置に移動し、これにより、線引き経路302の1つ以上の区間の方向が変化する。ただし、
図3A~
図3Cに示す実施形態では、流体軸受は段階的に移動して、第1の段階で第1の組の流体軸受が移動し、第2の段階で第2の組の流体軸受が移動し、第3の段階で第3の組の流体軸受が移動する。例えば、
図3A及び
図3Bに示すように、第1の段階では、第1の流体軸受321、第2の流体軸受322、及び第3の流体軸受323が、それぞれの第1の位置から第2の位置に移動する。第1の流体軸受321及び第3の流体軸受323はいずれも、第1の位置から第2の位置に移動するため左へ移動する。第2の流体軸受322は、第1の位置から第2の位置に移動するため右へ移動する。
図3Bに示すように、第2の流体軸受322の第2の位置は、第5の流体軸受325の第1の位置よりも右側とすることができる。
【0050】
次に、第2の段階では、第6の流体軸受326が、システム300から離れた位置から第6の流体軸受326の第1の位置に移動することができる。
図3A及び
図3Bに示すように、第6の流体軸受326の第1の位置は、位置Cとすることができる。
【0051】
第6の流体軸受326を第1の位置に並進移動した後、第3の段階で、第4の流体軸受324、第5の流体軸受325、及び第6の流体軸受326が、それぞれの第1の位置から第2の位置に移動することができる。
図3B及び
図3Cに示すように、第4の流体軸受324及び第5の流体軸受325はいずれも、第1の位置から第2の位置に移動するため下へ移動する。第6の流体軸受326は、第1の位置から第2の位置に移動するため上へ移動する。
図3Cに示すように、第6の流体軸受326の第2の位置は、第1の流体軸受321、第4の流体軸受324、及び第5の流体軸受325の位置よりも高い位置とすることができる。
【0052】
なお、第1の段階、第2の段階、及び第3の段階を任意の順序で行うことができること、また、各段階を前の段階が終了した後に行っても、各種段階(の一部又は全体)が時間的に重なってもよいことに留意されたい。
【0053】
図3A~
図3Cに示すように、流体軸受321、322、323、324、325、326の第1の位置は、線引き経路302から外れた位置とされる。よって、第1の位置にあるとき、流体軸受は、線引き経路上には配置されず、光ファイバ10と係合していない。また、流体軸受321、322、323、324、325、326の第2の位置は、線引き経路302内に配置される。よって、第2の位置にあるとき、流体軸受は、線引き経路302に沿って線引き中の光ファイバ10と係合する。
【0054】
また、本明細書に開示の種々の実施形態において、1つ以上の流体軸受を第2の位置に移動した後に、さらに第3の位置に移動することができることも企図されている。例えば、第6の流体軸受326は、
図3Cに示す第6の流体軸受326の第2の位置に移動した後に、第2の位置の左又は右にある第3の位置にさらに移動することができる。他の例として、第3の流体軸受323は、
図3B及び
図3Cに示す第3の流体軸受323の第2の位置に移動した後に、第3の位置にさらに移動して、光ファイバ10をファイバ被覆ユニット130の入口と軸心合わせすることもできる。
【0055】
本明細書に開示の複数の実施形態において、炉110、ファイバ冷却機構115、ファイバ被覆ユニット130、及び/又はファイバ回収ユニット140も、第1の位置から第2の位置に並進移動することができる。これらの構成要素の移動は、流体軸受の移動の前、後、又は同時に行うことができる。例えば、ファイバ冷却機構115を第2の位置に並進移動して、光ファイバ10の冷却に最適な位置に配置することができる。他の例として、ファイバ被覆ユニット130を第2の位置に並進移動して、線引き経路102と軸心を合わせることもできる。
図4A~
図4Dを参照して、これらの実施形態の例についてさらに詳細に説明する。
【0056】
図4A~
図4Dは、光ファイバを製造するように構成された光ファイバ製造システム400を示している。
図1A及び
図1Bに示す実施形態と同様に、システム400も、線引き炉110と、ファイバ冷却機構115と、ファイバ被覆ユニット130と、ファイバ回収ユニット140とを備えている。
図4A~
図4Dに示すように、線引き経路402は、線引き炉110からファイバ回収ユニット140まで延在する、製造過程で光ファイバ10が進む経路である。
【0057】
また、システム400は、線引き経路402に沿って線引き中の光ファイバ10を案内、搬送するための流体軸受420をさらに備えている。
図4A~
図4Dに示す実施形態において、システム400は、4つの流体軸受421、422、423、424を備えている。
【0058】
図1A及び
図1Bに示す実施形態と同様に、流体軸受421、422、423、424も、それぞれの第1の位置から第2の位置に移動し、これにより、線引き経路402の1つ以上の区間の方向が変化する。ただし、
図4A~
図4Dに示す実施形態では、流体軸受は段階的に移動して、第1の段階で第1の組の流体軸受が移動し、第2の段階で第2の組の流体軸受が移動し、第3の段階で第3の組の流体軸受が移動し、第4の段階で第4の組の流体軸受が移動する。さらに、種々の段階で、ファイバ被覆ユニット130及びファイバ冷却機構115が、それぞれの第1の位置から第2の位置に並進移動する。
【0059】
例えば、
図4A及び
図4Bに示すように、第1の段階では、第1の流体軸受421、第2の流体軸受422、及び第3の流体軸受423が、それぞれの第1の位置から第2の位置に移動する。第1の流体軸受421及び第3の流体軸受423はいずれも、第1の位置から第2の位置に移動するため左へ移動する。第2の流体軸受422は、第1の位置から第2の位置に移動するため右へ移動する。
【0060】
次に、第2の段階で、ファイバ被覆ユニット130は、
図4Bに示す第1の位置から、
図4Cに示す第2の位置に並進移動する。ファイバ被覆ユニット130は、第1の位置から第2の位置に移動するため右へ移動する。ファイバ被覆ユニット130が第2の位置に移動することにより、ファイバ被覆ユニット130とファイバ冷却機構115との軸心がずれる。この第2の段階で、ファイバ回収ユニット140の1つ以上の構成要素を、ファイバ被覆ユニット130と共に並進移動することもできる。さらに、この第2の段階で、第3の流体軸受423を、第2の位置から第3の位置に移動する。
図4B及び
図4Cに示すように、第3の流体軸受423は、第2の位置から第3の位置に移動するため、右へ(第2の流体軸受422に比較的近くなるように)移動する。
【0061】
ファイバ被覆ユニット130を並進移動した後、第3の段階で、第4の流体軸受424が、システム400から離れた位置から第4の流体軸受424の第1の位置に移動することができる。
図4C及び
図4Dに示すように、第4の流体軸受424の第1の位置は、位置Dとすることができる。
【0062】
第4の段階で、第1の流体軸受421が、第2の位置から
図4Dに示す第3の位置に移動する。第1の流体軸受421は、第2の位置から第3の位置に移動するため下へ移動する。
図4A~
図4Dに示す実施形態では、第1の流体軸受421を第3の位置に移動することにより、ファイバ冷却機構115も、
図4Cに示す第1の位置から
図4Dに示す第2の位置に移動する。ファイバ冷却機構115は、第1の位置から第2の位置に移動するため下へ移動する。
図4Dに示すように、第1の流体軸受421の第3の位置は、ファイバ回収ユニット140と軸心合わせされた位置とすることができる。
【0063】
システム400は、光ファイバ10をファイバ冷却機構115に投入する前に、光ファイバ10を外気で冷却することができるという利点を有し得る。これにより、システム400は、高速の線引き速度で動作しながら、ファイバ冷却機構115に投入する際の光ファイバ10の温度を下げることが可能となる。
【0064】
なお、第1の段階、第2の段階、第3の段階、及び第4の段階を任意の順序で行うことができること、また、各段階を前の段階が終了した後に行っても、各種段階(の一部又は全体)が時間的に重なってもよいことに留意されたい。
【0065】
図4A~
図4Dに示すように、流体軸受421、422、423、424の第1の位置は、線引き経路402から外れた位置とされる。よって、第1の位置にあるとき、流体軸受は、線引き経路上には配置されず、光ファイバ10と係合していない。また、流体軸受421、422、423、424の第2の位置は、線引き経路402内に配置される。よって、第2の位置にあるとき、流体軸受は、線引き経路402に沿って線引き中の光ファイバ10と係合する。
【0066】
図5A及び
図5Bは、光ファイバ製造システム500を示している。光ファイバ製造システム500は、システム400と同様ではあるが、流体軸受がさらに追加されている。システム500は、光ファイバを製造するように構成されたシステムであり、
図1A及び
図1Bに示す実施形態と同様に、システム500も、線引き炉110と、ファイバ冷却機構115と、ファイバ被覆ユニット130と、ファイバ回収ユニット140とを備えている。
図5A及び
図5Bに示すように、線引き経路502は、線引き炉110からファイバ回収ユニット140まで延在する、製造過程で光ファイバ10が進む経路である。
【0067】
上記にて
図4A~
図4Dを参照しながら説明したように、システム500も、流体軸受421、422、423、424を備えている。また、これに加えて、システム500は、線引き経路502に沿って線引き中の光ファイバ10を案内、搬送するための第5の流体軸受525、第6の流体軸受526、及び第7の流体軸受527をさらに備えている。システムが
図4Dに示す配置設定をとった後、流体軸受525、526、527は、システムから離れた位置からそれぞれの第1の位置に移動することができる。
図5Aは、流体軸受525、526、527がそれぞれの第1の位置にある状態を示している。
【0068】
次に、流体軸受525、526、527は、
図5A及び
図5Bに示すように、それぞれの第1の位置から第2の位置に移動する。第5の流体軸受525及び第7の流体軸受527はいずれも、第1の位置から第2の位置に移動するため下へ移動する。第6の流体軸受526は、第1の位置から第2の位置に移動するため上へ移動する。
【0069】
流体軸受525、526、527を第2の位置に移動することには、光ファイバ10をファイバ被覆ユニット130に投入する前に、光ファイバ10を外気でさらに冷却することができるという利点がある。これにより、システム500は、高速の線引き速度で動作しながら、ファイバ被覆ユニット130に投入する際の光ファイバ10の温度を下げることが可能となる。
【0070】
図5A及び
図5Bに示すように、流体軸受525、526、527の第1の位置は、線引き経路502から外れた位置とされる。よって、第1の位置にあるとき、これらの流体軸受は、線引き経路上には配置されず、光ファイバ10と係合していない。また、流体軸受525、526、527の第2の位置は、線引き経路502内に配置される。よって、第2の位置にあるとき、これらの流体軸受は、線引き経路502に沿って線引き中の光ファイバ10と係合する。
【0071】
なお、
図1A~
図5Bでは、流体軸受が一平面内に配置されているように示しているが、1つ以上の流体軸受を、1つ以上の他の流体軸受とは異なる平面上に配置し得ることも企図されている。例えば、
図1A及び
図1Bの実施形態を参照すると、流体軸受121、122、123がそれらの第1の位置にあるとき、第1の流体軸受121及び第3の流体軸受123を、第2の流体軸受122とは異なる平面(例えば、第2の流体軸受122の前方又は後方の平面)内に配置することができる。そして、流体軸受を第1の位置から第2の位置に移動することにより、流体軸受をすべて同一平面上に整列して、それぞれの第2の位置につけることができる。他の実施形態では、例えば、流体軸受121、122、123がそれらの第2の位置にあるとき、第1の流体軸受121及び第2の流体軸受122を、第3の流体軸受123とは異なる平面(例えば、第3の流体軸受123の前方又は後方の平面)内に配置することもできる。
【0072】
上述したように、本明細書に開示の流体軸受は、裸光ファイバ10に被覆層を塗布(することにより、被覆光ファイバ15を形成)し終えるまでは、裸光ファイバ10がいかなる表面とも機械的接触を持つことがないように、裸光ファイバ10を搬送して光ファイバ製造システムを通過させる。動作時には、流体軸受が流体の領域を提供し、裸光ファイバ10はこの流体領域を移動して、流体軸受とは機械的接触を持たずに、例えば、裸光ファイバ10に対して非反応性の流体(例えば、空気、ヘリウム)と接触した状態で進む。本明細書において、機械的接触とは、線引きプロセスにおいて固体の構成要素と接触することを指す。機械的接触をなくすことは、壊れやすい裸光ファイバ、特に、ファイバ被覆ユニット130で被覆を施される前の、非鉛直経路を進む裸光ファイバ、の品質及び健全性を維持するために重要であると考えられる。なお、ファイバ回収ユニット140による機械的接触は許容されることに留意されたい。これは、光ファイバがファイバ回収ユニット140に到達したときには、光ファイバは、既にファイバを保護する被覆層で被覆された状態となっており、よって、被覆面への機械的接触があっても、ファイバの品質や健全性には実質的に影響せず、ファイバを被覆する前とファイバの品質や健全性が変わらないためである。ただし、本明細書では、流体軸受を、線引き経路102、202、302、402、502に沿った裸光ファイバ10の移動を支援するものとして主に説明しているが、流体軸受を、被覆光ファイバ15などの任意の光ファイバにも利用できることを理解されたい。
【0073】
いくつかの実施形態では、流体軸受は、光ファイバ10が進むことが可能な流体クッション領域を提供するとともに、光ファイバ10の冷却を行うこともできる。例えば、ファイバ冷却機構115を備えない実施形態では、流体軸受がファイバ冷却機構115の冷却機能を果たすことができる。詳細には、流体軸受が、移動する流体ストリームで光ファイバ10を支持する構成を採用しているため、移動しない外気中で光ファイバを冷却するよりも速い速度で光ファイバが冷却される。光ファイバ10と流体軸受内の流体の温度差が大きいほど、流体軸受の光ファイバ10を冷却する性能は高くなる。なお、流体軸受による冷却を、ファイバ冷却機構115と併用することもできることにも留意されたい。
【0074】
図6は、本開示の実施形態に係る流体軸受1120を示す詳細図である。流体軸受1120は、第1のプレート1130と、第2のプレート1132と、内側部材1136と、第1のプレート1130及び第2のプレート1132の少なくとも一方に設けられた少なくとも1つの開口部1134と、を備えている。第1のプレート1130は弧状外表面1138を有しており、第2のプレート1132は弧状外表面1139を有している。また、第1のプレート1130と第2のプレート1132とは、互いの反対側に配置される。弧状外表面1138、1139は、対応するプレート1130、1132の円周に沿って設けられ、互いに実質的に位置合わせされている。さらに、第1のプレート1130と第2のプレート1132は、流体が流体軸受1120を通り抜けられるように、第1のプレート1130と第2のプレート1132を一体に連結する締結具(例えば、ボルト1140)で接続されている。
【0075】
第1のプレート1130は、内表面1142及び外表面1143を有しており、第2のプレート1132は、内表面1144及び外表面1145を有している。第1のプレート1130の内表面1142は、第2のプレート1132の内表面1144の方を向いており、内表面1142と内表面1144の間に、各プレート1130、1132の弧状外表面1138、1139から半径方向内側に延びるファイバ支持流路1150(
図7に図示)を形成している。ファイバ支持流路1150は、流体が流れるプレナムとして働くとともに、光ファイバ10(又は任意の他の光ファイバ)を受け入れるように構成される。これにより、流体軸受1120が回転することも光ファイバ10と流体軸受1120が機械的接触を起こすこともなく、ファイバ支持流路1150に沿って光ファイバ10が進むことが可能となる。
【0076】
図6に示すように、第1のプレート1130と第2のプレート1132の間に、内側部材1136が配置される。内側部材1136(例えば、シム1137)は、流体を少なくとも1つの開口部1134からファイバ支持流路1150内に導いて、流体が所定の流れ方向でファイバ支持流路1150を通り抜けるのを補助するように構成されている。内側部材1136は、第1のプレート1130と第2のプレート1132の間に隙間を設けるように両プレート間に配置される。いくつかの実施形態では、内側部材1136は、半径方向以外の方向の流れを抑制することにより流体の流れをさらに制御するための複数のフィンガ部(図示せず)を備えることもできる。さらに、内側部材1136は、第1のプレート1130と第2のプレート1132を実質的に接触させる封止部としても機能する。
【0077】
ここで
図7を参照すると、ファイバ支持流路1150がより詳細に示されている。
図7に示すように、ファイバ支持流路1150は、ファイバスロット1152と流体スロット1154とを有している。ファイバスロット1152は、プレート1130の弧状外表面1138及びプレート1132の弧状外表面1139から(例えば、第1のプレート1130の弧状外表面1138と第2のプレート1132の弧状外表面1139の間の開口部1160から)半径方向内側に延びて、ファイバ支持流路境界部1155で終端する。なお、本明細書では、半径方向内側に向かう方向を深さ方向とも称する。ここでの深さとは、ファイバ支持流路内の光ファイバの位置を指す。
【0078】
一方、流体スロット1154は、ファイバ支持流路境界部1155から半径方向内側に延びて、内側部材1136で終端する。動作時には、流体が、内側部材1136から流体スロット1154とファイバスロット1152を通って半径方向外側に流れて、ファイバスロット1152内に配置された光ファイバ10に流体クッションを提供することができる。これにより、光ファイバ10と流体軸受1120との機械的接触を持たせずに、線引き経路102(
図1A及び1B)に沿って光ファイバ10を案内することができる。
【0079】
ファイバ支持流路1150は、流路幅W
Cだけ離間している第1のプレート1130の内表面1142と第2のプレート1132の内表面1144との間に延在している。
図7に示す実施形態では、ファイバ支持流路1150は、開口部1160における流路幅W
Cが、ファイバ支持流路境界部1155における流路幅W
Cよりも大きいテーパ形状とされる。また、ファイバ支持流路1150の流路幅W
Cは、半径方向に可変とされる(例えば、ファイバ支持流路1150内における光ファイバ10の鉛直方向位置によって可変とされる)。
【0080】
図7には、さらに、ファイバ支持流路1150のファイバスロット1152内に配置されている光ファイバ10を図示するとともに、(例えば、第1のプレート1130及び/又は第2のプレート1132の少なくとも1つの開口部1134で発生して、)流体スロット1154からファイバスロット1152を通り抜ける流体1151(例えば、空気)の流れが、流体軸受1120上を搬送中の光ファイバ10に接触する様子も図示している。この流体の流れにより、光ファイバ10の下方に正圧が生じ、そして、この正圧が上向き(半径方向外側)の力を与えることにより光ファイバ10の底部に作用してこれを支持し、これにより光ファイバ10を浮揚させて、光ファイバ10と流体軸受1120との実質的な機械的接触を防いでいる。この正圧は、光ファイバ10の位置をファイバ支持流路境界部1155とファイバ支持流路1150の開口部1160の間に保つように、光ファイバ10をファイバ支持流路1150のファイバスロット1152内に配置し、その鉛直方向の位置を維持するように最適化することができる。例えば、ファイバ支持流路1150を通り抜ける流体1151の流量を、流体軸受1120を通って移動する光ファイバ10をファイバスロット1152の内部に保持(支持)することができる一定の流量とすることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、内表面1142、1144における、ファイバ支持流路1150のファイバスロット1152内の部分をテーパ形状として(傾斜させて)、ファイバスロット1152のファイバ支持流路境界部1155における流路幅(すなわち、流体軸受1120を通過する光ファイバ10により形成される弧状経路内の流路幅)W
Cを、ファイバ支持流路1150の開口部1160における流路幅W
Cよりも狭くすることができる。いくつかの実施形態では、各内表面1142、1144は、0°超10°未満の角度で傾斜しており、例えば、約0.3°~約7°、又は約0.4°~約3°などの角度で傾斜している。さらに、ファイバ支持流路1150及びファイバスロット1152は、任意の深さと任意の流路幅W
Cを有することができる。異なる複数の実施形態では、ファイバスロット1152の深さは、0.25インチ(約6.35ミリメートル)超、又は0.40インチ(約10.16ミリメートル)超、又は0.55インチ(約13.97ミリメートル)超、又は0.70インチ(約17.78ミリメートル)超、又は0.85インチ(約21.59ミリメートル)超、又は0.25インチ(約6.35ミリメートル)~1.25インチ(約31.75ミリメートル)の範囲、又は0.35インチ(約8.89ミリメートル)~1.05インチ(約26.67ミリメートル)の範囲、又は0.45インチ(約11.43ミリメートル)~0.90インチ(約22.86ミリメートル)の範囲、又は0.55インチ(約13.97ミリメートル)~0.85インチ(約21.59ミリメートル)の範囲、又は0.60インチ(約15.24ミリメートル)~0.80インチ(約20.32ミリメートル)の範囲、又は0.65インチ(約16.51ミリメートル)、又は0.75インチ(約19.05ミリメートル)である。(例えば、
図7に示すような)テーパ形状のファイバ支持流路1150を用いて、流体1151がファイバ支持流路1150の幅の狭い内側部分に入って、ファイバ支持流路1150の幅の広い外側領域から出るように、流体1151をファイバ支持流路1150に注入することにより、ファイバ支持流路1150を通って放出される流体1151のクッションにより、ファイバ支持流路1150の深さの範囲内で光ファイバ10が自動的に位置決めされるようにすることができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の流体軸受が、ファイバ支持流路1150内での光ファイバ10の位置合わせを補助するためのガイドスロット2000を備える。
図8に示すように、ガイドスロット2000は、流体軸受1120の外側に配置され、流路1150内の光ファイバ10を動かして中央に寄せるのを補助する傾斜面2010及び鉛直面2020を有している。傾斜面2010は、鉛直面2020に対して様々な角度に向けることができ、例えば、約100度、又は約120度、又は約160度の角度に向けることができる。さらに、ガイドスロット2000の流体軸受1120への取り付けは、例えば、留め具、ねじ、締結具、又は接着剤などの任意の公知の取り付け手段を介して行うことができる。また、ガイドスロット2000は、光ファイバ10が流体軸受1120に対して適切な位置に配置された後に、流体軸受1120から取り外すことができる。
【0083】
本明細書において、「約(about)」ある特定の値以上、「約」ある特定の値~「約」他の特定の値、又は、「約」該他の特定の値以下、という形で範囲を表現する場合がある。このような表現で範囲を表す場合、該ある特定の値~該他の特定の値を含む他の実施形態が存在する。同様に、ある値の前に「約」をつけてその値を近似値として表現する場合、その特定の値自身によって構成される他の実施形態も存在することが理解されるであろう。また、各範囲の両端点が持つ意味は、互いに相関しているとともに互いに独立でもあることも理解されるであろう。
【0084】
本明細書において、方向性のある用語(例えば、上へ(up)、下へ(down)、右(right)、左(left)、前(front)、後(back)、上(top)、下(bottom)など)は、図面を参照したものに過ぎず、絶対的な向きを意味することを意図するものではない。
【0085】
特に断りのない限り、本明細書に記載のいかなる方法も、各ステップ(工程)を特定の順序で実施することを要請していると解釈されることを意図するものではなく、また、いかなる装置に関しても、特定の向きを要請することを意図するものではない。したがって、方法クレームにおいてそのステップの順序を実際に記載している場合、及び、装置クレームにおいて個々の構成要素の並び順や向きを実際に記載している場合を除き、又は、その他、各ステップが特定の順序に限定される旨の記載が請求の範囲若しくは発明の詳細な説明において明確になされている場合、及び、装置の構成要素の特定の並び順や特定の向きを記載している場合を除き、順序(並び順)や向きが推測されることは、いかなる点においても意図していない。これは、各ステップの並び、操作の流れ、構成要素の並び順、又は構成要素の向きについての論法の問題、文法的な構成又は句読点から導き出される通俗的な意味、本明細書に記載の実施形態の数又は種類など、解釈の根拠となり得るあらゆる非明示的事項に対して該当する。
【0086】
本明細書において、「a」、「an」、及び「the(その/前記)」で示す単数形は、文脈上明らかに複数形を含まないことが明らかである場合を除き、対応する複数形に対する言及も包含するものとする。したがって、例えば、ある構成要素を冠詞「a」で導く表現は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、その構成要素を2つ以上有する態様も包含する。
【0087】
当業者であれば、特許請求の範囲に記載の主題の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で、本明細書に記載の実施形態に種々の変形及び変更を加えることができることは明らかであろう。したがって、本明細書に記載の種々の実施形態の変形及び変更が添付の特許請求の範囲及びその均等物を逸脱しない場合に、そのような変形及び変更も本明細書の範囲に含むことが意図されている。
【0088】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0089】
実施形態1
光ファイバの製造方法であって、該方法は、
線引き経路に沿って、光ファイバ母材から裸光ファイバを線引きするステップと、
前記線引きするステップの過程で、第1の流体軸受を第1の位置から第2の位置に移動するステップと、
を含み、
前記第1の位置は、前記線引き経路から外れた位置とされ、前記第2の位置は、前記線引き経路内に配置されるため、前記第1の流体軸受を前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも第1の区間の方向が変化する、方法。
【0090】
実施形態2
前記第1の流体軸受を前記第2の位置に移動するステップの後に、前記裸光ファイバを被覆層で被覆するステップをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0091】
実施形態3
1つ以上のプロセス条件が満たされたことを判定するステップと、
前記1つ以上のプロセス条件が満たされたと判定した後に、前記第1の流体軸受を前記第1の位置から前記第2の位置に移動するステップと、をさらに含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0092】
実施形態4
前記1つ以上のプロセス条件が、最低線引き速度、所定のファイバ径、所定のファイバ張力、又は被覆システムがオン位置にある旨の判定を含む、実施形態3に記載の方法。
【0093】
実施形態5
前記線引き経路に対して直線の経路、円弧状の経路、S字経路、横断する経路、又は斜めの経路のうちの少なくとも1つの経路で、前記第1の流体軸受を前記第1の位置から前記第2の位置に移動するステップをさらに含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態6
前記第1の流体軸受を前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも前記第1の区間の方向が、第1の方向から第2の方向に変化し、
前記第2の方向は、前記第1の方向に対して実質的に垂直である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態7
前記1つ以上のプロセス条件が満たされたと判定した後に、前記線引きするステップの過程で、第2の流体軸受を第1の位置から第2の位置に移動するステップをさらに含み、
前記第2の流体軸受の前記第1の位置は、前記線引き経路から外れた位置とされ、前記第2の流体軸受の前記第2の位置は、前記線引き経路内に配置されるため、前記第2の流体軸受を前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも第2の区間の方向が変化する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
実施形態8
前記線引き経路の前記第1の区間の少なくとも一部と前記線引き経路の前記第2の区間の一部の長さが重なっている、実施形態7に記載の方法。
【0097】
実施形態9
前記第2の流体軸受を前記第2の流体軸受の前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも前記第2の区間の方向が、前記第2の区間の第1の方向から前記第2の区間の第2の方向に変化し、
前記第2の区間の前記第1の方向は、前記第2の区間の前記第2の方向に対して実質的に垂直である、実施形態7に記載の方法。
【0098】
実施形態10
前記第1の流体軸受を前記第1の流体軸受の前記第2の位置に移動した後、且つ前記第2の流体軸受を前記第2の流体軸受の前記第2の位置に移動した後に、前記線引き経路の前記第1の区間が、前記線引き経路の前記第2の区間と実質的に平行となる、実施形態7に記載の方法。
【0099】
実施形態11
前記第1の区間における前記線引き経路の方向は、前記第2の区間における前記線引き経路の方向と反対である、実施形態10に記載の方法。
【0100】
実施形態12
前記第1の流体軸受と前記第2の流体軸受が同時に移動する、実施形態7に記載の方法。
【0101】
実施形態13
前記第2の流体軸受を前記第2の流体軸受の前記第2の位置に移動するステップを、前記第1の流体軸受を前記第1の流体軸受の前記第2の位置に移動するステップの後に行う、実施形態7に記載の方法。
【0102】
実施形態14
前記第1の流体軸受を前記第2の位置に移動するステップの後に、前記第1の流体軸受を第3の位置に移動するステップをさらに含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
実施形態15
ファイバ冷却機構、ファイバ被覆ユニット、及びファイバ回収ユニットのうちの少なくとも1つを、第1の位置から第2の位置に移動するステップをさらに含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
実施形態16
前記第1の流体軸受を前記第2の位置に移動した後、前記線引き経路が蛇行した形状に延びる、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
実施形態17
ファイバ冷却機構で前記光ファイバを冷却するステップをさらに含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態18
前記第1の流体軸受で前記光ファイバを冷却するステップをさらに含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
実施形態19
光ファイバを製造するためのシステムであって、該システムは、
線引き経路に沿って、光ファイバ母材から裸光ファイバを線引きするように構成された線引き機構と、
前記光ファイバを線引きしている過程で、第1の位置から第2の位置に移動するように構成された第1の流体軸受と、
を含み、
前記第1の位置は、前記線引き経路から外れた位置とされ、前記第2の位置は、前記線引き経路内に配置されるため、前記第1の流体軸受を前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも第1の区間の方向が変化する、システム。
【0108】
実施形態20
前記光ファイバを被覆層で被覆するように構成されたファイバ被覆ユニットをさらに含み、
前記ファイバ被覆ユニットが、前記線引き経路に沿って前記第1の流体軸受の下流側に配置されている、実施形態19に記載のシステム。
【0109】
実施形態21
前記ファイバ被覆ユニットが、第1の位置から第2の位置に移動するように構成されている、実施形態20に記載のシステム。
【0110】
実施形態22
前記第1の流体軸受を前記第1の位置から前記第2の位置に移動するように構成された並進移動機構をさらに備える、実施形態19~21のいずれか1つに記載のシステム。
【0111】
実施形態23
前記第1の流体軸受を前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも前記第1の区間の方向が、第1の方向から第2の方向に変化し、
前記第2の方向は、前記第1の方向に対して実質的に垂直である、実施形態19~22のいずれか1つに記載のシステム。
【0112】
実施形態24
第1の位置から第2の位置に移動するように構成された第2の流体軸受をさらに含み、
前記第2の流体軸受の前記第1の位置は、前記線引き経路から外れた位置とされ、前記第2の流体軸受の前記第2の位置は、前記線引き経路内に配置されるため、前記第2の流体軸受を前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも第2の区間の方向が変化する、実施形態19~23のいずれか1つに記載のシステム。
【0113】
実施形態25
前記第2の流体軸受を前記第2の流体軸受の前記第2の位置に移動することにより、前記線引き経路の少なくとも前記第2の区間の方向が、第1の方向から第2の方向に変化し、
前記第2の区間の前記第1の方向は、前記第2の区間の前記第2の方向に対して実質的に垂直である、実施形態24に記載のシステム。
【0114】
実施形態26
前記光ファイバを冷却するように構成されたファイバ冷却機構をさらに備える、実施形態19~25のいずれか1つに記載のシステム。
【0115】
実施形態27
前記ファイバ冷却機構が、第1の位置から第2の位置に移動するように構成されている、実施形態26に記載のシステム。
【0116】
実施形態28
前記第1の流体軸受の外側に配置されたガイドスロットをさらに備え、
前記ガイドスロットが、傾斜面と鉛直面とを有している、実施形態19~27のいずれか1つに記載のシステム。
【符号の説明】
【0117】
10 光ファイバ
12 光ファイバ母材
15 被覆光ファイバ
100、200、300、400、500 光ファイバ製造システム
102、202、302、402、502 線引き経路
104、204 (線引き経路の)第1の区間
106、206 (線引き経路の)第2の区間
110 線引き炉
115 ファイバ冷却機構
120、220、320、420、1120 流体軸受
121、221、321、421 第1の流体軸受
122、222、322、422 第2の流体軸受
123、223、323、423 第3の流体軸受
130 ファイバ被覆ユニット
134 一次被覆ユニット
136 二次被覆ユニット
140 ファイバ回収ユニット
142 線引き機構
144 ファイバ格納スプール
150 並進移動機構
208 (線引き経路の)第3の区間
210 (線引き経路の)第4の区間
224、324、424 第4の流体軸受
225、325、525 第5の流体軸受
326、526 第6の流体軸受
527 第7の流体軸受
1130 第1のプレート
1132 第2のプレート
1134 (プレートの)開口部
1136 内側部材
1137 シム
1138 (第1のプレートの)弧状外表面
1139 (第2のプレートの)弧状外表面
1140 ボルト
1142 (第1のプレートの)内表面
1143 (第1のプレートの)外表面
1144 (第2のプレートの)内表面
1145 (第2のプレートの)外表面
1150 ファイバ支持流路
1151 流体
1152 ファイバスロット
1154 流体スロット
1155 ファイバ支持流路境界部
1160 (ファイバ支持流路の)開口部
2000 ガイドスロット
2010 (ガイドスロットの)傾斜面
2020 (ガイドスロットの)鉛直面
【国際調査報告】