(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】大腿骨ステムオフセット調整システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/36 20060101AFI20230914BHJP
A61F 2/46 20060101ALN20230914BHJP
A61B 17/56 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
A61F2/36
A61F2/46
A61B17/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515866
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(85)【翻訳文提出日】2023-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2021074467
(87)【国際公開番号】W WO2022053426
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ジルアール
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA05
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC18
4C097SC01
4C160LL12
4C160LL27
(57)【要約】
本発明は、大腿骨の髄内管(3)を基準として大腿骨インプラント(2)を調整するための大腿骨ステムオフセット調整システム(1)に関し、調整システム(1)は、大腿骨支持部(5)と、ユーザ調整要素(6)と、ステム支持部(7)と、ユーザ調整要素(6)を大腿骨支持部(5)において回転可能に保持する第1のリンク部材(8)と、ユーザ調整要素(6)とステム支持部(7)とを一体的に回転可能に連結する第2のリンク部材(9)と、ユーザ調整要素(6)とステム支持部(7)とを摺動可能に接続する第3のリンク部材とを備え、第1のリンク部材(8)、第2のリンク部材(9)、および第3のリンク部材のうちの少なくとも2つ、好ましくはそれらの長手軸は、実質的に共通の平面上に配置されており、平面は回転軸に対して垂直である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨の髄内管(3)を基準として大腿骨インプラント(2)を調整するため、特に髄内管(3)に対応するステム(4)に対する大腿骨インプラントのオフセット位置を調整するための大腿骨ステムオフセット調整システム(1)であって、
前記調整システム(1)は、
前記大腿骨インプラント(2)に接続されるように適合されている大腿骨支持部(5)と、
回転軸を中心に回転可能に前記大腿骨支持部(2)によって保持されるユーザ調整要素(6)であって、前記回転軸は、好ましくは前記髄内管(3)の長手軸に対応する、ユーザ調整要素(6)と、
前記髄内管(3)、特に前記髄内管(3)に対応する前記ステム(4)に接続されるように適合されているステム支持部(7)であって、ステム支持部(7)は、一体的に回転可能に前記ユーザ調整要素(6)に連結され、摺動軸に沿って摺動可能に前記ユーザ調整要素(6)に接続されており、前記摺動軸は、前記回転軸に対して垂直である、ステム支持部(7)と、
を備え、
前記大腿骨支持部(5)において、前記ユーザ調整要素(6)を回転可能に保持する第1のリンク部材(8)と、前記ユーザ調整要素(6)と前記ステム支持部(7)とを一体的に回転可能に連結する第2のリンク部材(9)と、前記ユーザ調整要素(6)と前記ステム支持部(7)とを摺動可能に接続する第3のリンク構成(14、15、16)とを特徴とし、
前記第1のリンク部材(8)、前記第2のリンク部材(9)、および前記第3のリンク構成(14、15、16)のうちの少なくとも2つ、好ましくはそれらの長手軸、好ましくは少なくとも前記第1のリンク部材(8)および前記第2のリンク部材(9)は、実質的に共通の平面上に配置されており、前記平面は、前記回転軸に対して垂直である、大腿骨ステムオフセット調整システム(1)。
【請求項2】
前記第1のリンク部材(8)および前記第2のリンク部材(9)は、締結要素(10)によって一体的に形成されている、請求項1に記載の大腿骨ステムオフセット調整システム(1)。
【請求項3】
前記締結要素(10)の半径方向外側部が、前記第1のリンク部材(8)を形成し、
前記締結要素(10)の半径方向内側部が、前記第2のリンク部材(9)を形成する、請求項2に記載の大腿骨ステムオフセット調整システム(1)。
【請求項4】
前記締結要素(10)は、2つのピンによって形成されており、
前記ピンは、同軸上に配置され、軸方向に離間しており、好ましくは前記ステム支持部(7)の両側に配置される、請求項2または請求項3に記載の大腿骨ステムオフセット調整システム(1)。
【請求項5】
前記第1のリンク部材(8)は、好ましくは前記大腿骨支持部(5)の内周面にある、前記大腿骨支持部(5)の円周溝(11)と係合する、請求項1~4のいずれかに記載の大腿骨ステムオフセット調整システム(1)。
【請求項6】
前記第2のリンク部材は、前記ステム支持部(7)の外縁面(12)と係合(9)し、
前記外縁面(12)は、前記第2のリンク部材(9)の前記長手軸に対して垂直であり、
前記第2のリンク部材(9)は、好ましくは、前記ステム支持部(7)の軸方向端面を越えて軸方向に係合する、請求項1~5のいずれかに記載の大腿骨ステムオフセット調整システム(1)。
【請求項7】
前記第3のリンク構成(14、15、16)は、前記ステム支持部(7)の第1の摺動部(14)と、前記第1の摺動部(14)を受容する前記ユーザ調整要素(6)の摺動ガイド部(15)によって形成されており、
前記摺動ガイド部(15)および/または前記第1の摺動部(14)は、前記摺動軸の前記方向に長い長方形形状を有する、請求項1~6のいずれかに記載の大腿骨ステムオフセット調整システム(1)。
【請求項8】
前記第3のリンク構成(14、15、16)は、前記締結要素(10)、特に前記締結要素(10)の軸方向端面と、前記締結要素(10)を受容する前記ステム支持部(7)の第2の摺動部(16)、特に前記締結要素(10)の前記軸方向端面によって形成されており、
前記第2の摺動ガイド部(16)は、前記摺動軸の前記方向に長い長方形形状を有し、前記外縁面(12)を形成している、請求項6または請求項7に記載の大腿骨ステムオフセット調整システム(1)。
【請求項9】
前記大腿骨ステムオフセット調整システム(1)は、前記大腿骨支持部(5)に対する前記ユーザ調整要素(6)の前記調整済み回転位置を示すオフセット方向スケール(17)を備え、
前記オフセット方向スケール(17)は、好ましくは、前記ユーザ調整要素(6)の外周面上の数字(17)と、前記大腿骨支持部(5)の円周面上の基準マーク(18)とによって形成される、請求項1~8のいずれかに記載の大腿骨ステムオフセット調整システム(1)。
【請求項10】
前記大腿骨ステムオフセット調整システム(1)は、前記ステム支持部(7)に対する前記ユーザ調整要素(6)の前記調整済み摺動位置を示すオフセット量スケール(19)を備え、
前記オフセット量スケール(19)は、好ましくは、前記ユーザ調整要素(6)の窓(20)と、前記ステム支持部(7)の端面上のオフセットマーク(21)とによって形成される、請求項1~9のいずれかに記載の大腿骨ステムオフセット調整システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節形成術、特に、膝関節形成術および全膝関節形成術に関する。より具体的には、本発明は、外科医が大腿骨の髄内管に対して大腿骨インプラントを効率的かつ正確に調整することを可能にするデバイスに関する。特に、本発明は、大腿骨ステムオフセット調整システム/デバイス/器具(以下、調整システムまたは調整器具とも称される)に関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節は、動作中に人の脚が屈曲または関節運動することを可能にする。膝では、下骨(脛骨)が上骨(大腿骨)と接する。膝の近位において、大腿骨は、大腿顆として知られる2つの突出部を有する。大腿顆は、脛骨の上端で線維軟骨と係合する。膝関節は、靭帯、被膜、筋肉、および腱によって保持されている。膝構造では、4つの靭帯が特に顕著であり、膝の両側に靭帯が1つずつあり、中央に2つの靭帯がある。中央靭帯のうち、1つの靭帯は前方を向いており、もう1つは後方を向いている。膝蓋骨または膝頭は、膝関節の前方で支持されている骨片である。機能的には、膝蓋骨はシールドの役割をする。
【0003】
膝関節は、長期にわたって過度に使用されたり、疾患、または外傷によって、ほぼまたは完全に機能不能になってしまうことがある。最良の治療法は、全置換術(関節形成術)である場合が多い。全膝関節形成術では、膝で接合される大腿骨表面および脛骨表面が、完全に置換される。このプロセスの最初のステップは、顆表面およびその下にある部分を除去することである。大腿骨人工コンポーネントのためのクリアランスを提供するために、大腿骨の遠位端が切除される。同様に、脛骨人工コンポーネントのための平坦な表面を提供するために、脛骨の近位部が切除される。人の体重は、股関節に近接する大腿骨の頭部から足首へと移動する。適切な体重移動を継続できるようにするために、大腿骨人工デバイス(インプラント)と脛骨人工デバイス(インプラント)が設置される際には、適切な膝のアライメントが維持されなければならない。人工具が適切に機能するためには、これらの切除から生じる大腿骨表面および脛骨表面だけでなく、大腿骨インプラントおよび脛骨インプラントも正確にアライメントされなければならない。さらに、膝の屈曲および伸展を安定させるためには、大腿骨と脛骨インプラントが、適切に離間していなければならない。
【0004】
骨が人工コンポーネントを受け入れるように適切に準備されると、外科医は、通常、人工具の製造業者によって提供される人工コンポーネントの「トライアル」システムを利用する。トライアルコンポーネントは、様々なサイズおよび形状で利用可能なサンプル人工コンポーネントであり、人工具の的確なサイズや形状、および実際に患者における正確なアライメント、調整、および配向を評価するために、準備された骨に一時的に配置されることを目的としている。大腿骨の髄内管に対して(トライアル)大腿骨コンポーネントのオフセット位置を調整するために、大腿骨ステムオフセット調整システムが使用される。
【0005】
さらに、大腿骨インプラントと脛骨インプラントの間の屈曲ギャップおよび伸展ギャップを評価するために、患者は、様々な厚さのブロック/テンプレートを使用するトライアル整復を受ける。このトライアル整復は、トライアルインプラントを含む関節を、その関節のために選択された典型的な動作で動かすことを意味する。膝が不安定または正しくアライメントされていない場合には、例えば、より厚いまたはより薄い脛骨インプラントが使用される可能性がある。
【0006】
既知の大腿骨ステムオフセット調整システムでは、オフセット調整はあるべき場所で行われるが、調整システムの構造およびサイズのせいで、調整システムが(トライアル)大腿骨インプラントを越えて突出してしまう。特に、任意の方向にオフセットを調整するには、通常、回転運動と一方向にガイドされる摺動運動とが組み合わされるので、システムは、接続部品の様々な相対可動性のために、特に軸方向において、ある程度の設置空間を必要とする。特に不利なのは、屈曲ギャップおよび伸展ギャップの評価を正しく行うためには、調整システムを取り外さなければならず、この取り外しは、時間がかかり、追加の作業工程となってしまうことである。
【0007】
したがって、外科医が迅速かつ効率的に(トライアル)大腿骨インプラントをアライメントできるように、調整システムが患者に取り付けられたままで、オフセット調整を行うことができ、伸展ギャップおよび屈曲ギャップの寸法決めができる、コンパクトで小さい構造を有するより良い大腿骨ステムオフセット調整システムが必要とされ得る。
【発明の概要】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する大腿骨ステムオフセット調整システムによって解決される。本発明のさらなる有利な発展は、従属請求項それぞれの主題に対してなされる。
【0009】
大腿骨ステムオフセット調整システムは、大腿骨の髄内管を基準として(髄内管に対して)、(トライアル)大腿骨インプラント(人工具)、特に下肢大腿骨インプラントを調整する(正しく配置する)ためのものである。大腿骨ステムオフセット調整システムは、特に、髄内管に対応する(トライアル)ステムに対して大腿骨インプラントのオフセット位置を調整するためのものである。
【0010】
調整システムは、大腿骨支持部を備える。大腿骨支持部は、大腿骨インプラントに(固定的に/静的に/非回転的に、および変位不可能に)接続されるように適合されている。例えば、大腿骨支持部は、ネジやピン等の大腿骨取付要素によって、大腿骨インプラントに固定的に取り付けられてよい。
【0011】
さらに、調整システムは、ユーザ調整要素を備える。ユーザ調整要素は、ホイール等のノブ状要素によって形成されてよい。ユーザ調整要素は、手動で操作可能な(外科医によって掴まれる)調整ホイールとして形成されることが好ましい。ユーザ調整要素は、回転軸を中心に回転可能に大腿骨支持部によって保持/受容されている。すなわち、ユーザ調整要素は、大腿骨支持部とユーザ調整要素が互いに回転可能に保たれるように、大腿骨支持部に取り付けられている(ユーザ調整要素は、大腿骨支持部に対して回転軸を中心に回転するように、大腿骨支持部に接続されている)。回転軸は、調整システムの長手軸/髄内管の軸に対応することが好ましい。このように、ユーザ調整要素に対する大腿骨支持部(つまり、大腿骨インプラント)のオフセット方向(時計位置)を設定することができる。
【0012】
さらに、調整システムは、ステム支持部を備える。ステム支持部は、髄内管に(固定的に/静的に/非回転的に、および変位不可能に)接続されるように適合されている。特に、ステム支持部は、(大腿骨の)髄内管に対応するステムに接続されるように適合されている。ステム支持部は、一体的に回転可能にユーザ調整要素に連結されている。すなわち、ステム支持部は、ステム支持部とユーザ調整要素が回転的に互いに連結されるように、ユーザ調整要素に取り付けられている(ステム支持部は、ユーザ調整要素と一体的に回転するようにユーザ調整要素に接続されている)。さらに、ステム支持部は、摺動軸に沿って摺動可能にユーザ調整要素に受容されている/接続されている。ステム支持部は、一方向に摺動可能にユーザ調整要素に受容されることが好ましい。すなわち、ステム支持部は、ユーザ調整要素に対して摺動軸に沿って摺動可能に、ユーザ調整要素に接続されている。摺動軸は、回転軸に対して垂直である(つまり、調整システムの長手軸に対して垂直である)。このように、ユーザ調整要素に対するステム支持部(つまり、ステム)のオフセット量を設定することができる。大腿骨支持部はユーザ調整要素に対して自由に回転するので、ユーザ調整要素とステム支持部がそれに沿って互いに摺動可能である摺動軸は、ユーザ調整要素と大腿骨支持部の間の相対回転と共に回転し、その結果、相対回転と一方向相対摺動との組合せが、大腿骨支持部とステム支持部の間のオフセット位置を任意の方向に調整するように変換される。
【0013】
言い換えれば、大腿骨ステムオフセット調整システムは、オフセット位置を調整するためにオフセット方向およびオフセット量を調整可能なように、大腿骨インプラントをステムに機能的に接続する。オフセット方向は、ユーザ調整要素に対して(ステム支持部と一緒に)大腿骨支持部を回転軸を中心に回転させることによって、設定される。オフセット量は、回転軸に垂直な摺動軸に沿って、ステム支持部に対して(大腿骨支持部と一緒に)ユーザ調整要素を摺動させることによって、設定される。したがって、大腿骨ステムオフセット調整システムは、摺動軸に沿った摺動調整を提供し、摺動軸は、回転軸を中心に回転可能である。したがって、回転軸に垂直な任意の方向で、大腿骨インプラントをステムに対して変位させることができる。
【0014】
本発明によれば、大腿骨ステムオフセット調整システムは、大腿骨支持部において、ユーザ調整要素を回転可能に保持する第1のリンク部材/部と、ユーザ調整要素とステム支持部とを回転可能に連結する第2のリンク部材/部と、ユーザ調整要素とステム支持部とを摺動可能に接続する第3のリンク構成(部材/部)とを備える。第1のリンク部材による回転可能な保持、第2のリンク部材による一体的に回転可能な連結、および第3のリンク構成による摺動可能な接続は、同時に存在する。さらに、第1のリンク部材による回転可能な保持、第2のリンク部材による一体的に回転可能な連結、および第3のリンク構成による摺動可能な接続は、形状嵌合によってもたらされることが好ましく、第1のリンク部材、第2のリンク部材、および第3のリンク部材/構成の構造/幾何学的形状によって規定される。
【0015】
第1のリンク部材、第2のリンク部材、および第3のリンク構成/部材のうちの少なくとも2つ、好ましくはそれらの長手軸は、実質的に共通の平面上に配置される。第1のリンク部材および第2のリンク部材が、実質的に共通の平面上に配置されることが好ましい。共通の平面は、回転軸に対して垂直である。実質的に共通の平面上とは、平面上の正確な配置や平面の公差範囲だけでなく、回転軸に沿って0mm(平面上の正確な配置)から最大10mmまで(第1のリンク部材、第2のリンク部材、および第3のリンク部材のうちの少なくとも2つの間のわずかな軸方向オフセット)、好ましくは最大5mmまで(第1のリンク部材、第2のリンク部材、および第3のリンク部材のうちの少なくとも2つの間の小さな軸方向オフセット)延在し得る共通の軸方向範囲内での配置も意味する。
【0016】
言い換えると、第1のリンク部材、第2のリンク部材、および第3のリンク部材(の長手軸)のうちの2つまたは全てが、(共通の)平面上に配置されている。リンク部材が同一平面上に配置されることにより、大腿骨ステムオフセット調整システムは、平面に垂直な方向、すなわち回転軸/長手方向に沿う長さが短くなり、軸方向にコンパクトな設計となる。大腿骨ステムオフセット調整システムのサイズが小さいと、(トライアル)大腿骨インプラント、特に(トライアル)大腿骨インプラントの厚さに調整システムをまとめることができるので、調整システムが大腿骨インプラントを越えて突出しない。したがって、調整システムを配置したままで、伸展ギャップおよび屈曲ギャップのトライアル整復を行うことができる。これにより、外科医が、時間を節約して調整を行うことができるということが利点である。
【0017】
要するに、本発明によれば、(大腿骨支持部と、ユーザ調整要素と、ステム支持部との間の機能的接続を提供する)第1のリンク部材、第2のリンク部材、および第3のリンク部材のうちの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも第1のリンク部材および第2のリンク部材が、従来技術によって提案されるように軸方向に離間しているのではなく、半径方向に離間している/入れ子になっている/並んでいる。本質的に同一の半径方向平面上(すなわち、同一の軸方向範囲内)にまとめられていることにより、軸方向に短い調整器具を提供することができる。
【0018】
好ましい実施形態によれば、第1のリンク部材と第2のリンク部材は、締結要素によって一体的に形成されていてよい。言い換えると、第1のリンク部材と第2のリンク部材は、同一のコンポーネントによって形成されていてよい。すなわち、締結要素は、ユーザ調整要素を大腿骨支持部に対して自由に回転できるようにするだけでなく、ユーザ調整要素をステム支持部に一体的に回転するように接続させることができる。(第1および第2のリンク部材の)2つの機能の一体的な設計により、コンポーネントの数を少なくすることが必要とされる。さらに、第1および第2のリンク部材が同じコンポーネントによって形成されているので、これらの長手軸は、一致する、つまり、必ず同じ平面上に配置される。これは、上述したように、調整システムの軸方向設計が小さくなることを意味する。
【0019】
好ましい実施形態によれば、締結要素の半径方向外側部は、第1のリンク部材を形成してよく、締結要素の半径方向内側部は、第2のリンク部材を形成してよい。このように、調整システムの軸方向長さを小さくするために、リンク部材を半径方向に並べて配置してよい。換言すれば、締結要素は、半径方向で、大腿骨支持部とユーザ調整要素の間に配置されており(これらを自由に回転可能に互いに接続し)、かつ、半径方向で、ユーザ調整要素とステム支持部の間に配置されている(これらを回転不可能に互いに接続する)。
【0020】
好ましい実施形態によれば、締結要素は、2つのピンによって形成されてよい。これらのピンは、互いに同軸に配置されてよい。これらのピンは、軸方向に離間して配置されてよい。好ましくは、これらのピンは、ステム支持部の(円周方向で)対向する位置に、特にステム支持部に接触するように、配置されてよい。円周方向で対向する配置は、(相対回転の防止に加えて、)ピンに対する(つまり、ユーザ調整要素に対する)ステム支持部の半径方向(すなわち、円周方向に垂直な方向)の(並進)移動が防止されるので、有利である。
【0021】
好ましい実施形態によれば、第1のリンク部材は、大腿骨支持部の円周溝と係合してよい。好ましくは、円周溝は、大腿骨支持部の内周面に形成されていてよい。大腿骨支持部に対するユーザ調整要素の360°自由な回旋/回転を提供するために、円周溝は、360°の円周溝であってよい。好ましくは、ユーザ調整要素と大腿骨支持部が互いに並進的に連結されるように、第1のリンク部材が円周溝と係合してよい。
【0022】
好ましい実施形態によれば、第2のリンク部材は、ステム支持部の外縁面と係合/接触してよい。外縁面は、第2のリンク部材の長手軸に対して垂直であってよい。したがって、外縁面に沿う方向、すなわち第2のリンク部材の長手軸に垂直な方向での、ユーザ調整要素に対するステム支持部の並進が可能である。言い換えると、第2のリンク部材は、摺動運動が可能なように、ステム支持部の外縁面と係合する。第2のリンク部材は、好ましくはステム支持部の軸方向端面を越えて、軸方向に係合してよい。したがって、軸方向/回転軸に垂直で半径方向に垂直な方向での並進のみが可能である。したがって、外縁面と第2のリンク部材(締結要素)との係合によって、摺動軸に沿った一方向の移動がガイドされる。単一のコンポーネント、すなわち、締結要素は、すべての必要な相対運動を可能にするだけでなく、コンポーネント(ユーザ調整要素、ステム支持部、大腿骨支持部)を互いに固定する(コンポーネントの他のすべての相対運動を止める)。
【0023】
好ましい実施形態によれば、第3のリンク構成(/部材)は、ステム支持部の第1の摺動部と、第1の摺動部を受容するユーザ調整要素の摺動ガイド部とによって形成されてよい。摺動ガイド部および/または第1の摺動部は、摺動軸の方向に長い長方形形状を有してよい。したがって、摺動運動は、これらの部の形状嵌合によってガイドされてよい。第1の摺動部は、外縁面に対して遠位に配置されていることが好ましい。さらに、摺動ガイド部は、締結要素に対して遠位に配置されていることが好ましい。
【0024】
好ましい実施形態によれば、第3のリンク構成(/部材)は、締結要素と、ステム支持部の第2の摺動部、特に締結要素の半径方向内側部とによって形成されてよい。特に、第3のリンク構成は、締結要素の軸方向端面と、締結要素の軸方向端面を受容するステム支持部の第2の摺動部とによって形成されてよい。第2の摺動ガイド部は、摺動軸の方向に長い長方形形状を有してよい。第2の摺動ガイド部は、外縁面を形成してよく、それにより、締結要素の半径方向内側部が外縁面に接触することによってガイドされ、摺動軸に沿った摺動運動が可能となる。したがって、摺動運動は、これらの部の形状嵌合によってガイドされてよい。また、第2の摺動ガイド部と外縁面との一体的な設計により、調整システムのコンパクトな構成を提供することができる。
【0025】
好ましい実施形態によれば、大腿骨ステムオフセット調整システムは、大腿骨支持部に対するユーザ調整要素の調整済み回転位置を示すオフセット方向スケールを備えてよい。例えば、オフセット方向スケールは、ユーザ調整要素の外周面上の、特に等距離で離間された、数字によって形成されてよい。さらに、オフセット方向スケールは、大腿骨支持部上の、特に大腿骨支持部の円周面上の、基準マークによって形成されてよい。したがって、トライアル大腿骨インプラントと同じオフセット方向で、最終インプラントを容易に配置することができる。
【0026】
好ましい実施形態によれば、大腿骨ステムオフセット調整システムは、ステム支持部に対するユーザ調整要素の調整済み摺動位置を示すオフセット量スケールを備えてよい。したがって、トライアル大腿骨インプラントと同じオフセット量だけ、最終インプラントをオフセットして容易に配置することができる。
【0027】
好ましい実施形態によれば、オフセット量スケールは、ユーザ調整要素の窓と、ステム支持部の(軸方向)端面上のオフセットマークとによって形成されてよい。好ましい実施形態によれば、大腿骨ステムオフセット調整システムは、大腿骨支持部に接続された大腿骨インプラントをさらに備えてよい。ユーザ調整要素の軸方向端面は、大腿骨インプラントの軸方向端面に対して近位にあってよい。すなわち、ユーザ調整の軸方向端面は、大腿骨インプラントに対して軸方向/長手方向に凹んでいる。これにより、伸展ギャップおよび屈曲ギャップの評価中に、調整器具を取り付けられたままにしておくことができる。
【0028】
言い換えれば、本発明の目的は、器具を配置した状態で、屈曲ギャップおよび伸展ギャップを行うことを可能にする大腿骨ステムオフセット調整システムを有することである。器具の目標は、髄内管を基準として、大腿骨インプラントを最良の位置に配置することである。調整システムは、0~5mmの追加のオフセットを有する360°自由回転調整システムのおかげで、この位置決めを可能にする。調整システムの設計はさらに、調整システムを配置したままで、屈曲ギャップおよび伸展ギャップのトライアル整復を行うことを可能にする。これは、トライアル大腿骨の厚さに器具をまとめることが可能な器具設計のおかげである。
【0029】
調整システムは、大腿骨髄内管に良好に配置されたときに、器具の時計位置を示す回転部であるユーザ調整要素(ホイール)を備える。このユーザ調整要素は、ホイールの2つのピンと大腿骨支持部の溝のおかげで、大腿骨支持部において回転することがない。調整システムは、調整システムをトライアル大腿骨に固定することを可能にする部品である(トライアル)大腿骨支持部を備える。調整システムは、(トライアル)ステムに接続可能な部品である(トライアル)ステム支持部を備える。(トライアル)ステム支持部は、回転(360°自由)でホイールに連結され、さらに、両方の部品の長方形形状のおかげで、0~5mm(オフセット)の並進を可能にする。オフセット値は、ホイールの窓に表示される。ホイールに固定されたピンの内側部は、並進を可能にしながら、両方の部品(トライアルステム支持部とホイール)を接合することを可能にする。ホイールに固定されたピンの外側部は、大腿骨支持部の内側溝のおかげで、大腿骨支持部内での自由回転を可能にする。両方の部品(トライアルステム支持部とホイール)の長方形形状は、ホイールとトライアルステム支持部の間の並進(オフセット)を可能にする。
【0030】
したがって、トライアル大腿骨コンポーネントの厚さを超えない調整システムの最小限の設計のおかげで、屈曲ギャップおよび伸展ギャップのトライアル整復を行うことができる。調整システムの寸法により、調整システムを取り外すことなく、ギャップ管理を行うことができるという主な利点を有する屈曲ギャップおよび伸展ギャップの両方を行うことを可能にし、これにより、時間が節約でき、ワークフローがより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明は、図面を用いて、好ましい実施形態に基づき、以下により詳細に説明される。図面は、概略的な性質のものであり、本発明の理解を向上させることを意図している。同じ要素は、同じ参照符号で示される。
【
図1】大腿骨ステムオフセット調整システムの分解斜視図を示す。
【
図2】大腿骨ステムオフセット調整システムの分解斜視図を示す。
【
図3】大腿骨インプラントに接続された大腿骨ステムオフセット調整システムの斜視図を示す。
【
図4】大腿骨ステムオフセット調整システムの斜視図を示す。
【
図5】大腿骨ステムオフセット調整システムの使用を説明する斜視図を示す。
【
図6】大腿骨ステムオフセット調整システムの使用を説明する斜視図を示す。
【
図7】大腿骨ステムオフセット調整システムの使用を説明する斜視図を示す。
【
図8】大腿骨ステムオフセット調整システムの使用を説明する斜視図を示す。
【
図9】大腿骨ステムオフセット調整システムの使用を説明する斜視図を示す。
【
図10】大腿骨ステムオフセット調整システムの使用を説明する斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1~
図4は、本発明による大腿骨ステムオフセット調整システム/器具1(以下、調整システム1と呼ぶ)の好ましい実施形態を示す。調整システム1は、大腿骨の髄内管3に対して(トライアル)大腿骨インプラント2(特に、下肢大腿骨インプラント)を調整(正しく配置する)するためのものである。大腿骨インプラント2の所望の後方配置を達成するために、調整システム1は、髄内管3に対応する(トライアル)ステム4に対する大腿骨インプラント2のオフセット位置の調整をガイドする。
【0033】
調整システム1は、大腿骨支持部5を備える。大腿骨支持部5は、大腿骨インプラント2に接続されるように適合されている。大腿骨支持部5は、大腿骨インプラント2に静的に大腿骨支持部5を取り付ける/固定する。すなわち、大腿骨インプラント2の向きは、大腿骨支持部5の向きに対応する。
【0034】
調整システム1は、ユーザ調整要素6を備える。ユーザ調整要素6は、大腿骨支持部5に遠位に接続されている。ユーザ調整要素6は、大腿骨支持部5によって、回転軸を中心に回転可能に保持されている。回転軸は、調整システム1の長手軸に対応する。すなわち、ユーザ調整要素6は、大腿骨支持部5とユーザ調整要素6が互いに回転可能に保たれるように、大腿骨支持部5に取り付けられている。ユーザ調整要素6は、大腿骨支持部5に一体的に並進的に接続されている。すなわち、ユーザ調整要素6は、大腿骨支持部5とユーザ調整要素6が互いに並進的に連結されるように(大腿骨支持部5とユーザ調整要素6の間で相対変位が起こらないように)、大腿骨支持部5に取り付けられている。
【0035】
調整システム1は、ステム支持部7を備える。ステム支持部7は、髄内管3、特にステム4に接続されるように適合されている。ステム支持部7は、ステム4に静的にステム支持部7を取り付ける/固定する。すなわち、ステム4の向きは、ステム支持部7の向きに対応する。ステム支持部7は、ユーザ調整要素6に近位に接続されている。ステム支持部7は、一体的に回転可能にユーザ調整要素6に連結されている。すなわち、ステム支持部7は、ステム支持部とユーザ調整要素6が回転的に互いに連結されるように(ユーザ調整要素6とステム支持部7の間で相対回転が起こらないように)、ユーザ調整要素6に取り付けられている。ステム支持部7は、摺動軸に沿って摺動可能に、ユーザ調整要素6に受容されている/接続されている。摺動軸は、回転軸に対して垂直である。すなわち、ステム支持部7は、ユーザ調整要素6に対して摺動軸に沿って摺動可能なように、ユーザ調整要素6に取り付けられている。
【0036】
換言すれば、調整システム1は、大腿骨支持部5(つまり、大腿骨インプラント2)をステム支持部7(つまり、ステム4)に機能的に接続する。回転軸を中心とする回転と、ステム支持部7に対するユーザ調整要素6の(回転軸に垂直な)摺動軸に沿った摺動との組み合わせにより、調整システム1は、回転軸に垂直な任意の所望の方向(すなわち、回転軸に垂直な平面上の任意のオフセット方向)に沿って、ステム支持部7に対する大腿骨支持部5のオフセット並進運動を調整することが可能である。
【0037】
調整システム1は、大腿骨支持部5とユーザ調整要素6が互いに回転可能に保たれるように、大腿骨支持部5とユーザ調整要素6とを取り付ける第1のリンク部材8を備える。調整システム1は、ユーザ調整要素6とステム支持部7が互いに回転的に固定されるように、ユーザ調整要素6とステム支持部7とを取り付ける第2のリンク部材9を備える。調整システム1は、ユーザ調整要素6とステム支持部7とを摺動可能に接続する第3のリンク部材を備える。
【0038】
第1のリンク部材8、第2のリンク部材9、および第3のリンク部材のうちの少なくとも2つ、好ましくはそれらの長手軸は、実質的に共通の平面上に配置されており、その平面は、回転軸に垂直である。実質的に共通の平面上とは、平面上の正確な配置や平面の公差範囲だけでなく、回転軸に沿って0mm(平面上の正確な配置)から最大10mmまで(第1のリンク部材、第2のリンク部材、および第3のリンク部材のうちの少なくとも2つの間のわずかな軸方向オフセット)、好ましくは0mmから最大5mmまで(第1のリンク部材、第2のリンク部材、および第3のリンク部材のうちの少なくとも2つの間の小さな軸方向オフセット)延在し得る共通の軸方向範囲内における配置も意味する。
【0039】
図1~
図4に示す好ましい実施形態では、第1のリンク部材8の長手軸および第2のリンク部材9の長手軸が、調整システム1の長手方向に対して垂直な共通の平面上にある。特に、第1のリンク部材8と第2のリンク部材9は、締結要素10によって一体的に形成されている。締結要素10の半径方向外側部は、第1のリンク部材8を形成している。締結要素10の半径方向内側部は、第2のリンク部材9を形成している。
【0040】
第1のリンク部材8を形成する半径方向外側部は、大腿骨支持部5の円周溝11と係合する。円周溝11は、大腿骨支持部5の内周面に形成されている。円周溝11は、ユーザ調整要素6の360°自由回転を提供する360°の円周である。第1のリンク部材8は、ユーザ調整要素6と大腿骨支持部5が並進的に互いに連結されるように、円周溝11と係合する。
【0041】
第2のリンク部材9を形成する半径方向内側部は、ステム支持部7の外縁面12と係合(接触)する。第2のリンク部材9は、ユーザ調整要素6とステム支持部7が回転的に互いに連結されるように、外縁面12と係合する。外縁面12は、第2のリンク部材9の長手軸に対して垂直である。したがって、ユーザ調整要素6とステム支持部7は、外縁面12に沿って自由に並進的に摺動可能である。外縁面12は、ステム支持部7の軸方向端面13に対して近位にある。第2のリンク部材9は、軸方向端面13の後方で近位に/軸方向に係合するように、半径方向内方へ突出している。したがって、ユーザ調整要素6とステム支持部7は、長手軸に対応する軸方向で、互いに連結されている。
【0042】
締結要素10は、2つのピンによって形成されている。これらのピンは、互いに同軸に配置されている。これらのピンは、軸方向に離間している。これらのピンは、円周方向の対向する位置に配置されている。各ピンは、ユーザ調整要素6の孔を通っている。ピンは、ステム支持部7の両側に配置され、各々が、ステム支持部7の外縁面12に接触する。すなわち、ステム支持部7の並進運動は、2つのピンによってガイドされる。
【0043】
第3のリンク部材は、ステム支持部7の第1の摺動部14と、ユーザ調整要素6の摺動ガイド部15とによって形成されている。第1の摺動部14は、摺動軸方向に長い長方形形状を有する。第1の摺動部14は、ユーザ調整要素6の対応する摺動ガイド部15に受容される。摺動ガイド部15は、摺動軸方向に長い長方形形状を有する。第1の摺動部14と摺動ガイド部15は、調整要素6とステム支持部7が摺動軸に沿って互いに摺動可能に保たれるように、調整要素6とステム支持部7とを取り付けている。
【0044】
第3のリンク部材は、ステム支持部7の第2の摺動部16と、締結要素10とによって形成されている。第2の摺動部16は、摺動軸方向に長い長方形形状を有する。第2の摺動部16は、外縁面12を形成している。外縁面12は、締結要素10、特に締結要素10の半径方向内側部と係合/接触する。第2の摺動部16と締結要素10は、調整要素6とステム支持部7が摺動軸に沿って互いに摺動可能に保たれるように、調整要素6とステム支持部7とを取り付けている。
【0045】
調整器具1は、大腿骨支持部5に対するユーザ調整要素6の調整済み回転位置を示すオフセット方向スケール17を備える。オフセット方向スケール17は、大腿骨支持部の外周面上の基準マーク18に対するユーザ調整要素6の時計位置を示す、ユーザ調整要素6の外周面上の数字によって形成されている。大腿骨支持部5に対するユーザ調整要素6の回転位置は、360°調整されてよい。
【0046】
調整器具1は、ステム支持部7に対するユーザ調整要素6の調整済み摺動位置を示すオフセット量スケール19を備える。オフセット量スケール19は、ユーザ調整要素6、特に軸方向端面13に設けられた窓20と、ステム支持部7の端面上のオフセットマーク21とによって形成されている。ステム支持部7に対するユーザ調整要素6の摺動位置は、0~5mmで調整されてよい。
【0047】
大腿骨支持部5は、大腿骨支持部5に大腿骨インプラント2を固定的に接続する大腿骨取付部材22を備える。ステム支持部7は、ステム支持部7にステム4を固定的に接続するステム取付部材23を備える。
【0048】
図3は、調整器具1に取り付けられた大腿骨インプラント2を示す。大腿骨インプラント2は、伸展端面26を備えており、これに対して、脛骨と大腿骨の間の伸展ギャップが設定される。大腿骨インプラント2は、屈曲端面27を備えており、これに対して、脛骨と大腿骨の間の屈曲ギャップが設定される。軸方向端面13は、軸方向において、伸展端面26を越えて突出しない(半径方向において、屈曲端面27を越えて突出もしない)ことが分かる。したがって、調整器具1を配置したままで、屈曲ギャップおよび伸展ギャップを評価することができる。
【0049】
図4~
図10は、調整器具1の使用を示す。
図4は、大腿骨インプラント2およびステム4を取り付ける前の調整器具1を示す。第1のステップ(
図5)では、調整器具1(ステム支持部7)が、大腿骨髄内管3に対応する(トライアル)ステム4に接続される。ステム取付部材23が、ステム4に挿入される。第2のステップ(
図6)では、調整器具1(大腿骨支持部5)が、(トライアル)大腿骨インプラント2に接続される。大腿骨取付部材22が、大腿骨インプラント2の対応する凹部24と係合する。第3のステップ(
図7)では、調整器具1(ステム4)が、大腿骨髄内管3に挿入される。第4のステップ(
図8)では、オフセット方向を調整すること(大腿骨支持部5に対してユーザ調整要素6を回転させること)、およびオフセット量を調整すること(ステム支持部7に対してユーザ調整要素6を摺動させること)によって、大腿骨インプラント2が、大腿骨に嵌合するように配置される。大腿骨インプラント2は、大腿骨締結要素25によって、大腿骨に取り付けられる。調整器具1が大腿骨インプラント2の表面、特に伸展端面26(または屈曲端面27)を越えて突出しないので、調整器具1が大腿骨に取り付けられたままで(調整器具1を取り外すことなく)、屈曲ギャップのトライアル整復および伸展ギャップのトライアル整復を行うことができる。屈曲ギャップのトライアル整復(
図9)のために、屈曲距離テンプレート28が、脛骨の表面と屈曲端面27に接触して配置される。伸展ギャップのトライアル整復(
図10)のために、伸展距離テンプレート29が、脛骨の表面と伸展端面26に接触して配置される。
【0050】
オフセット量およびオフセット方向は、調整器具1のオフセット方向スケール17およびオフセット量スケール19に示される。したがって、(トライアル)大腿骨インプラント2と同じ位置/向きで、最終インプラントを配置することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨の髄内
管を基準として大腿骨インプラン
トを調整するた
めの大腿骨ステムオフセット調整システ
ムであって、
前記調整システ
ムは、
前記大腿骨インプラン
トに接続されるように適合されている大腿骨支持
部と、
回転軸を中心に回転可能に前記大腿骨支持
部によって保持されるユーザ調整要
素と、
前記髄内
管に接続されるように適合されているステム支持
部であって、ステム支持
部は、一体的に回転可能に前記ユーザ調整要
素に連結され、摺動軸に沿って摺動可能に前記ユーザ調整要
素に接続されており、前記摺動軸は、前記回転軸に対して垂直である、ステム支持
部と、
を備え、
前記大腿骨ステムオフセット調整システムは、前記大腿骨支持
部において、前記ユーザ調整要
素を回転可能に保持する第1のリンク部
材と、前記ユーザ調整要
素と前記ステム支持
部とを一体的に回転可能に連結する第2のリンク部
材と、前記ユーザ調整要
素と前記ステム支持
部とを摺動可能に接続する第3のリンク構成
とを備え、
少なくとも前記第1のリンク部材
および前記第2のリンク部
材は、実質的に共通の平面上に配置されており、前記平面は、前記回転軸に対して垂直である
ことを特徴とする、大腿骨ステムオフセット調整システ
ム。
【請求項2】
前記第1のリンク部
材および前記第2のリンク部
材は、締結要
素によって一体的に形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の大腿骨ステムオフセット調整システ
ム。
【請求項3】
前記締結要
素の半径方向外側部が、前記第1のリンク部
材を形成し、
前記締結要
素の半径方向内側部が、前記第2のリンク部
材を形成する
ことを特徴とする、請求項2に記載の大腿骨ステムオフセット調整システ
ム。
【請求項4】
前記締結要
素は、2つのピンによって形成されており、
前記ピンは、同軸上に配置され、軸方向に離間して
いることを特徴とする、請求項
2に記載の大腿骨ステムオフセット調整システ
ム。
【請求項5】
前記第1のリンク部
材は、前記大腿骨支持
部の円周
溝と係合する
ことを特徴とする、請求項
1に記載の大腿骨ステムオフセット調整システ
ム。
【請求項6】
前記第2のリンク部材は、前記ステム支持
部の外縁
面と係
合し、
前記外縁
面は、前記第2のリンク部
材の長手軸に対して垂直であ
ることを特徴とする、請求項
1に記載の大腿骨ステムオフセット調整システ
ム。
【請求項7】
前記第3のリンク構成は、前記第1のリンク部材および前記第2のリンク部材と共に、実質的に共通の前記平面上に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の大腿骨ステムオフセット調整システム。
【請求項8】
前記第3のリンク構
成は、前記ステム支持
部の第1の摺動
部と、前記第1の摺動
部を受容する前記ユーザ調整要
素の摺動ガイド
部とを備え、
前記摺動ガイド
部および/または前記第1の摺動
部は、前記摺動軸の前記方向に長い長方形形状を有する
ことを特徴とする、請求項
1に記載の大腿骨ステムオフセット調整システ
ム。
【請求項9】
前記第3のリンク構
成は、
前記ユーザ調整要素にしっかりと接続された前記締結要
素と、前記締結要
素を受容する前記ステム支持
部の第2の摺動
部と、
を備え、
前記第2の摺
動部は、前記摺動軸の前記方向に長い長方形形状を有し、前記外縁
面を形成している
ことを特徴とする、請求項
2に記載の大腿骨ステムオフセット調整システ
ム。
【請求項10】
前記大腿骨ステムオフセット調整システ
ムは、前記大腿骨支持
部に対する前記ユーザ調整要
素の前記調整済み回転位置を示すオフセット方向スケー
ルを備え
ることを特徴とする、請求項
1に記載の大腿骨ステムオフセット調整システ
ム。
【請求項11】
前記大腿骨ステムオフセット調整システ
ムは、前記ステム支持
部に対する前記ユーザ調整要
素の前記調整済み摺動位置を示すオフセット量スケー
ルを備え
ることを特徴とする、請求項
1に記載の大腿骨ステムオフセット調整システ
ム。
【国際調査報告】