(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】MEMSジャイロスコープのための回路および相応の回路の動作方法
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5614 20120101AFI20230914BHJP
【FI】
G01C19/5614
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516073
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2021074894
(87)【国際公開番号】W WO2022053595
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】102020211467.6
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ビスコンティ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ネグト,アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB08
2F105CC04
2F105CD01
2F105CD05
2F105CD11
(57)【要約】
本発明は、振動運動を励起可能な少なくとも1つの質量を備えたMEMSジャイロスコープのための回路(100)であって、さらに:周期的なテスト信号(31)を生成するための信号発生回路(30)であり、このテスト信号(31)は、駆動回路(10)の第1のMEMS側信号入力(13)および/または読取回路(20)の第2のMEMS側信号入力(23)に印加可能であり、かつ応答測定信号を生じさせ、これにより、応答測定信号を基礎として、復調信号(12a、12b)と応答測定信号の間の位相ズレが決定可能である信号発生回路(30)を含む回路(100)に関する。さらに、MEMSジャイロスコープの相応の動作方法が特許請求される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動運動を励起可能な少なくとも1つの質量を備えたMEMSジャイロスコープのための回路(100)であって、
a)前記質量の前記振動運動を監視するための、第1のMEMS側信号入力(13)を備えた駆動回路(10)であり、
前記質量の前記振動運動に追従する位相ロックループ(15)を含み、かつ
前記質量の規定の励起振動を励起および維持するための駆動信号(11)を生成するために構成されている駆動回路(10)、
b)検出方向での前記質量の振れを捕捉するための、および前記振れを電気的な測定信号(M
R,Q)に変換するための、第2のMEMS側信号入力(23)を備えた読取回路(20)であり、
前記測定信号(M
R,Q)が、前記位相ロックループ(15)によって提供された少なくとも1つの復調信号(12a、12b)によって復調されることにより、前記測定信号(M
R,Q)から希望信号(R
A)および直交信号(Q
A)を生成するために構成されている読取回路(20)を含む、回路(100)において、
さらに、
c)周期的なテスト信号(31)を生成するための信号発生回路(30)であり、
前記テスト信号(31)が、前記駆動回路(10)の前記第1のMEMS側信号入力(13)および/または前記読取回路(20)の前記第2のMEMS側信号入力(23)に印加可能であり、かつ応答測定信号を生じさせ、これにより、前記応答測定信号を基礎として、前記復調信号(12a、12b)と前記応答測定信号の間の位相ズレが決定可能である信号発生回路(30)を含む、
ことを特徴とする回路(100)。
【請求項2】
前記信号発生回路(30)が、選択的にアクティブ化可能およびスイッチオフ可能である、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記信号発生回路(30)が、正弦波状のテスト信号(31)を生成するために構成されており、かつ/または予想され得る駆動振動の周波数を備えたテスト信号(31)を生成するために構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回路。
【請求項4】
前記アナログの測定信号(M
R,Q)中の直交誤差を補正するための直交補正回路(50)が設けられており、
前記直交補正回路(50)が、前記駆動回路(10)の前記MEMS側入力信号(13)を基礎として、アナログの直交補正信号(51)を生成し、前記アナログの直交補正信号(51)により、前記測定信号(M
R,Q)が復調前に付与されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の回路。
【請求項5】
前記回路が集積回路として実現されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の回路。
【請求項6】
複数の予め設定された動作モードから1つの動作モードを選択するために制御手段が設けられており、前記動作モードが、少なくとも
前記信号発生回路(30)がテスト信号(31)を供給せず、かつ前記MEMSジャイロスコープが入力信号を前記駆動回路(10)の前記第1のMEMS側信号入力(13)および前記読取回路(20)の前記第2のMEMS側信号入力(23)に供給する測定モード、ならびに
前記MEMSジャイロスコープが入力信号を前記駆動回路(10)および前記読取回路(20)に供給せず、かつ前記信号発生回路(30)がテスト信号(31)を前記駆動回路(10)の前記第1のMEMS側信号入力(13)および/または前記読取回路(20)の前記第2のMEMS側信号入力(23)に供給するテストモードを含む、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の回路。
【請求項7】
テストモードでのMEMSジャイロスコープの動作方法であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の回路(100)を備えた前記MEMSジャイロスコープが具備されている動作方法において、
前記MEMSジャイロスコープが非アクティブ化されるステップと、
前記信号発生回路(30)によって生成された周期的なテスト信号(31)が、前記駆動回路(10)の前記第1のMEMS側信号入力(13)および/または前記読取回路(20)の前記第2のMEMS側信号入力(23)に印加され、これにより応答測定信号を生じさせるステップと、
前記応答測定信号が、前記駆動回路(10)の前記位相ロックループ(15)によって提供された復調信号(12)で復調されるステップと、
を特徴とする動作方法。
【請求項8】
前記応答測定信号を復調すると応答希望信号が生成され、前記応答希望信号を基礎として、前記復調信号と前記応答測定信号の間の前記位相ズレが決定されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記回路(100)が、請求項4に記載の前記アナログの測定信号(M
R,Q)中の直交誤差を補正するための直交補正回路(50)を含む方法において、前記周期的なテスト信号(31)が前記駆動回路(10)の前記第1のMEMS側信号入力(13)にのみ印加され、前記読取回路(20)の前記MEMS側入力(23)には印加されず、こうして得られた前記応答希望信号を基礎として、前記復調信号と応答測定信号の間の位相ズレに対する前記直交補正回路(50)の寄与が決定されることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記テストモードで決定された、前記復調信号と応答測定信号の間の位相ズレが、前記MEMSジャイロスコープの較正および/または再較正、とりわけ前記MEMSジャイロスコープのオフセット補正の基となることを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSジャイロスコープのための回路および相応の回路の動作方法に関する。本発明はとりわけ、MEMSジャイロスコープの動作回路内の位相ズレを確定するための回路および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMSジャイロスコープ(Mikro-Elektro-Mechanisches-System)の最も重要な特性の1つは、温度、負荷、および寿命に依存したそのオフセット安定性である。ジャイロスコープ内の出力オフセットの主な寄与は、機械的構造によって生成される直交信号であり、この直交信号はその後、位相が完璧にはレート信号と揃っていない復調信号によってベースバンドに復調される。これは一般的に、機械的な駆動運動に由来しておりMEMSジャイロスコープの動作回路内の同期を引き出すために使用される駆動信号と、ジャイロスコープ機構の読取部によって提供されるレート信号および直交信号との間の位相ズレが原因と考えられ得る。直交信号は、MEMSジャイロスコープの生産に起因する非対称性によって生じる。これにより振動は、駆動方向にだけでなく検出方向(読取方向)にも生じる。この振動は互いに対して90°の位相ズレを有する。
【0003】
アーキテクチャ例に関する遅延の基本的な項目を
図1および
図2に示しており、これに関し
図2では直交補正のための経路が付加されている。
普通は、残っている出力ズレはデジタルデータ経路内で、直交信号がレート信号と共に、適切に選択された理想的には位相ズレである係数によって足し合わされることで補正される。この技術の一例は、例えば米国特許第9410806号明細書または米国特許出願公開第2019/265036号明細書に記載されている。
【0004】
優れた補正を得るには、上で挙げた係数が算出されなければならない。これは、
・ 経験的に温度に依存して測定されたオフセットの適合によって可能であり、ただし欠点は、生産における温度測定の必要性であり、この温度測定は、消費者市場にとって費用および量の理由から普通は受け入れられない。
【0005】
・ 温度に依存して測定された妥当な数の抜き取り検査およびできれば室温での位相ズレの影響因子の測定をベースとした、温度に依存したオフセット挙動の予測、
によって可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9410806号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/265036号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の手法に伴う問題は、位相ズレの影響因子の測定が、普通は間接的な測定に限定されており、この間接的な測定が、ジャイロスコープへのいっそう厳しくなっている要求によって求められる精密さとの比較において、有意な誤差を生じさせ得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、振動運動を励起可能な少なくとも1つの質量を備えたMEMSジャイロスコープの動作回路が提供され、この動作回路は、少なくとも、
a)質量の振動運動を監視するための、第1のMEMS側信号入力を有する駆動回路であり、
質量の振動運動に追従する位相ロックループを含み、かつ
質量の規定の駆動振動を励起および維持するための駆動信号を生成するために構成されている駆動回路、
b)検出方向での質量の振れを捕捉するための、およびこの振れを電気的な測定信号に変換するための、第2のMEMS側信号入力を有する読取回路であり、
測定信号が、位相ロックループによって提供された少なくとも1つの復調信号によって復調されることにより、測定信号から希望信号および直交信号を生成するために構成されている読取回路、
c)周期的なテスト信号を生成するための信号発生回路であり、
このテスト信号は、駆動回路の第1のMEMS側信号入力および/または読取回路の第2のMEMS側信号入力に印加可能であり、かつ応答測定信号を生じさせ、これにより、この応答測定信号を基礎として、復調信号と応答測定信号の間の位相ズレが決定可能である信号発生回路を含む。
【0009】
好ましくは正弦波状の信号を生成する信号発生回路のおかげで位相ズレの測定が実現され、正弦波状の信号はこの場合、読取回路の入力にも駆動回路の入力にも印加される。
前述の発明は、
- 回路の位相ズレを、外部の機器による補助なしで正確に特徴づけること、
- オフセット補正のための補正係数をより正確に見積もり得ること、
- ユーザ側でも、自動的に組み込まれる方法によって位相ズレを測定し、最終的に、オフセット補正に使用される係数を更新するという可能性を提供すること、
を可能にする。
【0010】
位相ズレは位相シフトとも言う。
信号発生回路が、選択的にアクティブ化可能およびスイッチオフ可能/非アクティブ化可能であることが好ましい。
【0011】
復調信号および応答測定信号から、位相ズレが時間的にすぐに決定されることが好ましい。その代わりに復調信号および応答測定信号が時間に依存して保存され、この場合は後の時点で位相ズレが決定され得る。これに関しては例えば或る人によって測定がなされ、それから後の時点で別の人によって位相ズレが決定され得る。
【0012】
信号発生回路が、正弦波状のテスト信号を生成するために構成されており、かつ/または予想され得る駆動振動の周波数をもつテスト信号を生成するために構成されていることが好ましい。
【0013】
適用すべき信号に関する最も簡単な解決策は、矩形波信号または三角波信号を使用することであろう。しかしながら、MEMSジャイロスコープから来る実際の信号は正弦波信号なので、回路の通常動作(測定動作)と同じ挙動、したがってより信用できる測定を得るために、正弦波信号が使用されることが望ましい。
【0014】
信号発生回路が、発振回路および/またはファンクションジェネレータを含むことが好ましい。
発振回路は、正弦波状の交流電圧を生成するための電子的に実現された発振器(よって略して発振器とも言う)であり、かつファンクションジェネレータは、異なる曲線形状、とりわけ正弦、矩形、三角、および鋸歯をもち、調整可能な周波数(通常は数MHzまで)および振幅をもつ周期的な電気信号を生成するための機器である。
【0015】
読取回路は、アナログの同位相信号を相応のデジタル信号に変換するための、および/またはアナログの直交位相信号を相応のデジタル信号に変換するための、少なくとも2つのアナログ/デジタル変換器を含むことが好ましい。
【0016】
デジタル信号は、本発明による回路に接続可能な制御手段によって比較的容易に処理され得る。これはコンピュータまたはマイクロコントローラであり得る。
本発明による回路は、MEMSジャイロスコープから受信された容量値を電圧信号に変換するための少なくとも2つの容量/電圧変換器を含むことが好ましい。
【0017】
アナログの測定信号中の直交誤差を補正するための直交補正回路が設けられており、この直交補正回路は、駆動回路のMEMS側入力信号を基礎として、アナログの直交補正信号を生成し、このアナログの直交補正信号が、測定信号に復調前に付与されることが好ましい。
【0018】
この直交補正信号による付与により、直交信号が軽減されることが好ましく、さらに好ましくは解消される。
本発明による回路は、好ましくは集積回路として、より好ましくは特定用途向け集積回路(英語:application-specific integrated circuit、ASIC、さらにCustom Chip)として実現されている。
【0019】
駆動回路が振幅調整器を含むことが好ましく、この振幅調整器は、質量の規定の駆動振動の振幅を調整する。
本発明による回路内では、複数の予め設定された動作モードから1つの動作モードを選択するために制御手段が設けられており、これらの動作モードは、少なくとも:
・ 信号発生回路がテスト信号を供給せず、かつMEMSジャイロスコープが入力信号を駆動回路の第1のMEMS側信号入力および読取回路の第2のMEMS側信号入力に供給する測定モード、ならびに
・ MEMSジャイロスコープが入力信号を駆動回路および読取回路に供給せず、かつ信号発生回路がテスト信号を駆動回路の第1のMEMS側信号入力および/または読取回路の第2のMEMS側信号入力に供給するテストモードを含むことが好ましい。
【0020】
テストモードでの、本発明による回路の本発明による動作方法は、基本的に、
a)MEMSジャイロスコープが非アクティブ化されるステップ、
b)信号発生回路によって生成された周期的なテスト信号が、駆動回路の第1のMEMS側信号入力および/または読取回路の第2のMEMS側信号入力に印加され、これにより応答測定信号を生じさせるステップ、
c)応答測定信号が、駆動回路の位相ロックループによって提供された復調信号で復調 されるステップ、
を含む。
【0021】
MEMSジャイロスコープの非アクティブ化が、MEMSジャイロスコープが入力信号を駆動回路および読取回路に供給しないことを意味することが好ましい。よって接続を中断してもよいであろうし、かつ/または本来のMEMSジャイロスコープをスイッチオフしてもよいであろう。MEMSジャイロスコープの非アクティブ化は、周期的な既知の信号への、本発明による回路自体の影響だけを確定するために必要である。
【0022】
応答測定信号を復調すると応答希望信号が生成され、この応答希望信号を基礎として、復調信号と応答測定信号の間の位相ズレが決定されることが好ましい。
本発明による回路では、この回路がアナログの測定信号中の直交誤差を補正するための直交補正回路を含む場合、周期的なテスト信号が駆動回路の第1のMEMS側信号入力にのみ印加され、読取回路のMEMS側入力には印加されず、こうして得られた応答希望信号を基礎として、復調信号と応答測定信号の間の位相ズレに対する直交補正回路の寄与が決定されることが好ましい。
【0023】
テストモードで決定された、復調信号と応答測定信号の間の位相ズレが、MEMSジャイロスコープの較正および/または再較正、とりわけMEMSジャイロスコープのオフセット補正の基となることが好ましい。
【0024】
MEMSジャイロスコープの定期的および/または自動的な較正が行われることが好ましい。
本発明のさらなる一態様に基づき、MEMSジャイロスコープと、MEMSジャイロスコープの本発明による動作回路とを含むシステムが提供されている。
【0025】
本発明のさらなる一態様に基づき、本発明による回路に本発明による方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムが提供されている。
本願中で挙げられた本発明の様々な実施形態および態様は、個別に違う記述がない限り、有利に相互に組合せ可能である。とりわけ、方法の好ましい形成形態および実施形態についての図および説明は常に、装置、システム、およびコンピュータプログラムに相応に転用可能であり、逆もまた同様である。
【0026】
本発明の有利な変形形態は従属請求項に提示されており、かつ明細書中で説明されている。
本発明の例示的実施形態を図面および以下の説明に基づいてより詳しく解説する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来技術に基づくジャイロスコープの動作回路を備えたMEMSジャイロスコープのブロック図である。
【
図2】直交補正回路を備えた従来技術に基づくジャイロスコープの動作回路を備えたMEMSジャイロスコープのさらなるブロック図である。
【
図3】本発明による回路の一実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および
図2では、従来技術に基づくジャイロスコープの動作回路10、20を備えたMEMSジャイロスコープ40のブロック図が示されている。このMEMSジャイロスコープは、駆動軸43、複数の読取軸42、および読取・伝達関数44を含む。MEMSジャイロスコープ40は、駆動側および読取側での接続ケーブル41を介し、動作回路10、20と接続されている。MEMSジャイロスコープ40の駆動側は第1の容量/電圧変換器14と接続されており、かつ読取側は第2の容量/電圧変換器24と接続されている。第1の容量/電圧変換器14は任意の増幅回路18を介して復調器17と接続されており、かつ第2の容量/電圧変換器24は任意の増幅回路18を介して復調器25と接続されている。復調器17は、位相ロックループ15と接続されており、かつ入って来る信号の位相を90°ずらす回路19を介して復調器25に接続されている。
【0029】
図1に示したアーキテクチャ例に基づき、MEMSジャイロスコープ40および動作回路10、20から成るシステムの位相ズレ誤差は、位相ロックループ15からの復調クロック12bと、MEMSジャイロスコープ40から来る復調されるべき信号との間のレート復調器25での遅延として定義される。
【0030】
φ駆動=φWD+φCVD+φAD+φCLK
φ読取=φMEMS+φWS+φCVS+φAS
φ誤差=φ駆動-φ読取
式中φMEMSは、MEMSジャイロスコープの読取・伝達関数44によって挿入される遅延であり、その一方でφWDおよびφWSは、駆動経路43または読取経路42に関するMEMSの電極と回路10、20の入力との間の配線41によって挿入される遅延である。これらの式はジャイロスコープの機械部分に特化したものであり、式の見積もりは本発明の一部ではない。
【0031】
動作回路10、20と関連する概念φCVDおよびφCVSは、駆動の容量/電圧変換器14および読取の容量/電圧変換器24(または増幅回路18)の遅延であり、φADおよびφASは、増幅回路18と、駆動用の復調17または走査用の復調25との間の動作回路10、20の遅延であり、かつφCLKは、位相ロックループ15の位相基準点とレート復調器25との間の回路19を通る復調信号の遅延である。
【0032】
図2に示されたアーキテクチャでは追加的な概念φ
QCが存在しており、φ
QCは、追加的な遅延経路を挿入する追加的な直交補正回路50の遅延である。
φ
補正=φ
WD+φ
CVD+φ
QC+φ
CVS+φ
AS
動作回路10、20にだけ関係する位相シフトは、
φ
A駆動=φ
CVD+φ
AD+φ
CLK
φ
A読取=φ
CVS+φ
AS
φ
A補正=φ
CVD+φ
QC+φ
CVS+φ
AS
である。
【0033】
同一の周期的な信号が駆動回路10および読取回路20の入力に印加されることにより、位相遅延のうち動作回路10、20に関係する部分を測定することが可能であろう。この周期的な信号が駆動回路10によって読み取られ、それにより位相ロックループ15が遮断され、かつ復調信号12bが生成されるであろう。読取回路20の側ではそれは直交信号であり、その後、レート復調器25によって復調されるであろう。つまり、レート経路の出力は、
レート=直交*sin(φS)
すなわち、入力信号(直交)が既知であれば、動作回路10、20の全体の位相遅延φSが決定され得るであろう。
【0034】
図3は、MEMSジャイロスコープの動作回路10、20内の位相ズレを確定するための本発明による回路100の一実施形態のブロック図を示す。
本発明による回路100は、駆動回路10、読取回路20、信号発生回路30、および任意で直交補正回路50を含む。駆動回路10は、容量/電圧変換器14、位相ロックループ15、振幅調整器16、および変調器17を含む。駆動回路10は、少なくとも3つの出力および入力13を含む。読取回路20は、容量/電圧変換器24、2つの復調器25、26、2つのアナログ/デジタル変換器21、22、および任意で信号加算器27を含む。MEMSジャイロスコープ40は、複数の振動軸(一般的に、x、y、およびz)を有し得る。振動軸ごとに1つの読取回路20が必要とされる。
図3では例示的に1つの読取回路20だけが示される。この読取回路20は、MEMSジャイロスコープ40の1つの振動軸のための入力23ならびにレート信号R
Xおよび直交信号Q
Xのための出力を有する。信号発生回路30は、周期的な信号31を生成する発振回路33およびファンクションジェネレータ32を含む。
【0035】
適用すべき信号に関する最も簡単な解決策は、矩形波信号または三角波信号を使用することであろう。しかしながら、MEMSジャイロスコープ40から来る実際の信号は正弦波信号なので、回路10、20の通常動作と同じ挙動、したがってより信頼できる測定を得るために、正弦波信号が使用されることが望ましい。
【0036】
駆動回路10の位相ロックループ15は、読取回路20の復調器25、26にそれぞれ復調信号12bおよび12aを提供し、この信号12aと12bは互いに対して90°の位相ズレを有している。読取回路20の入力23にやって来る信号は、任意で信号加算器27を介し、容量/電圧変換器24に提供される。容量/電圧変換器24はそれに提供された信号から測定信号MR,Qを生成する。測定信号MR,Qは復調信号12bと一緒に復調器25に提供され、かつ測定信号MR,Qは復調信号12aと一緒に復調器26に提供される。復調器25は、測定信号MR,Qおよび復調信号12bから希望信号(レート信号)RAを生成し、かつ復調器26は、測定信号MR,Qおよび復調信号12aから直交信号QAを生成する。希望信号RAはアナログ/デジタル変換器21に提供され、アナログ/デジタル変換器21は希望信号RAからデジタルの同位相信号RXを生成し、かつ直交信号QAはアナログ/デジタル変換器22に提供され、アナログ/デジタル変換器22は直交信号QAからデジタルの直交位相信号QXを生成する。信号RXおよびQXは、読取回路20の出力に提供されている。
【0037】
駆動回路10の入力13にやって来る信号は容量/電圧変換器14に提供される。容量/電圧変換器14はそれに提供された信号から電圧信号を生成し、この電圧信号は、振幅調整器16、位相ロックループ15、および任意で直交補正回路50に提供される。位相ロックループ15および振幅調整器16は、それに接続された変調器17を介して一緒に、位相ロックループ15および振幅調整器16に提供された電圧信号をベースとして、MEMSジャイロスコープ40の質量の規定の励起振動を励起および維持するための駆動信号11を生成する。任意の直交補正回路50は、容量/電圧変換器14の電圧信号からアナログの直交補正信号51を生成し、この直交補正信号51は、読取回路20の入力23にやって来る信号と一緒に任意の信号加算器27に提供される。理想的な場合には、直交補正信号51が、入力23に入って来る信号の直交成分を完全に相殺する。実際には、それでもなお成分は残ったままである。
【0038】
周期的な信号31は、駆動回路10の入力13および/または読取回路20の入力23に接続されている。周期的な信号31が、MEMSジャイロスコープ40の駆動信号に正確に合っていることが好ましい。
【0039】
このような正弦波信号31を駆動入力13にも読取入力23にも印加することは、直交補正50なしで回路10、20によって挿入される全体の位相復調誤差の測定を可能にする。
【0040】
φA誤差=φA読取-φA駆動=φCVS+φAS-(φCVD+φAD+φCLK)
周期的な信号31が、アクティブな直交補正50を備えた駆動回路の入力13にのみ適用される場合、周期的な信号31は、直交補正経路上の回路10、20によって挿入される位相復調誤差の測定を可能にする。
【0041】
φA誤差QC=φA補正-φA駆動
=φCVD+φQC+φCVS+φAS-(φCVD+φAD+φCLK)
=φQC+φCVS+φAS-φAD-φCLK
回路10、20および任意で回路50が一緒にASICとして実現される場合、これは、測定がその後にレートシフト補正の補正係数を更新するためのデジタルルーティンによって使用され得るあらゆるテスト環境でおよびそれどころかユーザ側で実施され得る。
【0042】
本発明を好ましい例示的実施形態によって細部にわたって詳しく図解および説明したのではあるが、本発明は、開示された例に限定されてはおらず、これを基に当業者により、本発明の保護範囲を逸脱することなくその他の形態が導き出され得る。
【国際調査報告】