(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】タンクインターフェースの少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面を除氷または解氷する方法、タンクインターフェース
(51)【国際特許分類】
F17C 13/10 20060101AFI20230914BHJP
B60K 15/04 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F17C13/10
B60K15/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516100
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2021072892
(87)【国際公開番号】W WO2022063490
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】102020212080.3
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ケマー,ヘラーソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】リンク,マティアス
【テーマコード(参考)】
3D038
3E172
【Fターム(参考)】
3D038CC14
3E172AA02
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
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3E172BB13
3E172BB17
3E172BD03
3E172DA62
3E172DA63
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA22
3E172EA23
3E172EB02
3E172EB18
(57)【要約】
本発明は、タンクインターフェース(2)の少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)を除氷または解氷する方法であって、水素で動作可能な車両のタンクノズル(3)および/またはタンクパイプ(4)に少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)が形成されている、方法に関する。本発明によれば、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)が補給過程中および/または補給過程後に加熱される。本発明は、さらに、タンクインターフェース(2)、および本発明によるタンクインターフェース(2)を備える水素で動作可能な車両に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクインターフェース(2)の少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)を除氷または解氷する方法であって、水素で動作可能な車両のタンクノズル(3)および/またはタンクパイプ(4)に少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)が形成されている、方法において、前記少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)が補給過程中および/または補給過程後に加熱されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)が加熱カートリッジまたは加熱スリーブを用いて加熱されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)が誘導加熱されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水素で動作可能な車両のタンクノズル(3)および/またはタンクパイプ(4)に形成された少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)を有するタンクインターフェース(2)において、前記少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)は、加熱装置によって加熱可能である、および/または水が的確に導出、収容、もしくは吸着されるような性状であることを特徴とする、タンクインターフェース。
【請求項5】
前記少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)が、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる疎水性コーティングを有することを特徴とする、請求項4に記載のタンクインターフェース(2)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)がナノコーティングを有することを特徴とする、請求項4または5に記載のタンクインターフェース(2)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)が、発熱反応して水を吸着するゼオライト層を有することを特徴とする、請求項4から6までのいずれか1項に記載のタンクインターフェース(2)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)が前記タンクパイプ(4)の端面側および/または外周側に形成されていることを特徴とする、請求項4から7までのいずれか1項に記載のタンクインターフェース(2)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面(1)が前記タンクノズル(3)の端面側および/または内周側に形成されていることを特徴とする、請求項4から8までのいずれか1項に記載のタンクインターフェース(2)。
【請求項10】
請求項4から9までのいずれか1項に記載のタンクインターフェース(2)を備える水素で動作可能な車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のタンクインターフェースの少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面を除氷または解氷する方法に関する。本発明は、さらに、水素で動作可能な車両のタンクノズル(Tankpistole)および/またはタンクパイプ(Tankstutzen)に形成された少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面を有するタンクインターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
水素で動作する燃料電池システムは、エネルギー転換および交通転換において決定的な役割を果たす大きな可能性があると言われている。最初の大量生産への適用がすでに市場で利用可能である。
【0003】
移動用途では、水素を貯蔵器もしくはタンクに入れて運ぶ必要がある。基本的に、水素はいわゆるクリオタンクに超低温で、または圧力タンクに加圧下で貯蔵することができる。移動用途、および水素が連続的に取り出されることが確保されていない用途については、圧力タンクが有利な解決策である。これらの圧力タンクの貯蔵圧力は700barにまでなる可能性がある。
【0004】
貯蔵された水素を使った後、タンクに新たに補給する必要がある。水素で動作する車両は、そのために水素タンクステーションに乗り入れる。補給は、タンクノズルと、それに対応する車両のタンクパイプを用いて行われる。このインターフェースは、国際的に標準化され、標準規格はプロトコルSAE J2601に規定されている。水素は、その熱力学的特性にもとづいて補給過程中に暖まるので、タンクステーションに約-40℃で貯蔵される。そのため、車両の補給時に、冷えた水素が流れる領域、特にバルブ、管および/または接続部は凍結するほど強く冷える可能性がある。それに加えて、周囲水分がタンクノズルに凝縮液として付着する可能性があり、その場合、これが凍結する。したがって、補給過程中に、タンクノズルがタンクパイプに凍着する可能性がある。車両の補給が暖かく湿った周囲環境で行われる場合、凍着の危険が特に高い。次々と迅速に行われる補給過程も、タンクノズルが暖まる時間がないため危険が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンクパイプにおけるタンクノズルの凍着は補給時間を長くすることから、本発明は、凍着を防ぐ、または少なくとも難しくするという課題にもとづいている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の特徴を有する方法、および請求項4の特徴を有するタンクインターフェースが提供される。本発明の有利な発展形態はそれぞれの従属請求項から読み取ることができる。さらに、本発明によるタンクインターフェースを備える水素で動作可能な車両が提供される。
【0007】
タンクインターフェースの少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面を除氷または解氷する方法が提案される。その場合、水素で動作可能な車両のタンクノズルおよび/またはタンクパイプに少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面が形成されている。本発明によれば、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面は、補給過程中および/または補給過程後に加熱される。
【0008】
少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面を加熱することによって、タンクインターフェースの氷結を能動的に妨害することができ、それにより、まず全く氷結しないか、または氷結したとしても氷結箇所を迅速に解氷することができる。少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面の加熱が補給過程中に行われる場合、タンクパイプにおけるタンクノズルの凍着を防ぐことができる。これに代えて、またはこれに加えて、加熱を補給過程後に行うこともでき、それにより、特にタンクノズルにおける凝縮液の形成が防がれる。このようにすることで、補給過程が迅速に相次いで行われるときの後続車両のタンクパイプにおけるタンクノズルの凍着を防ぐことができる。
【0009】
タンクノズルは、車両に水素を補給するためのタンクステーション側のインターフェースを形成する。タンクパイプは、車両の対応するインターフェースを形成する。したがって、「タンクインターフェース」という用語は、タンクノズルおよび/またはタンクパイプを指し得る。
【0010】
水素で動作可能な車両の補給時には、冷えた水素がタンクノズルとタンクパイプを介して車両のタンクに流れ込む。それにより、タンクノズルのみならずタンクパイプも少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面を形成し得る。したがって、本発明による方法を、タンクノズルおよび/またはタンクパイプの着氷防止のために用いることができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面が加熱カートリッジまたは加熱スリーブを用いて加熱される。これらの加熱装置は所要スペースが少なく、したがって狭い空間にも組み込むことができる。さらに、これらは非常に堅牢である。加熱スリーブは、特にタンクノズルおよび/またはタンクパイプの外周面または内周面を加熱するのに適している。
【0012】
これに代えて、またはこれに加えて、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面が誘導加熱されることが提案される。通常、タンクノズルおよび/またはタンクパイプは、それらの氷結の危険にさらされた表面の領域が金属、したがって導電性材料から製作されていることから、この種類の加熱が考えられる。誘導加熱装置も所要スペースが少なく、それに加えて簡単かつ安価に実現することができる。
【0013】
タンクノズルおよび/またはタンクパイプの、特に複数の氷結の危険にさらされた表面が加熱される場合、複数の加熱方式を組み合わせることもできる。
【0014】
さらに、冒頭で述べた課題を解決するために提案されるタンクインターフェースは、水素で動作可能な車両のタンクノズルおよび/またはタンクパイプに形成された少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面を有する。「タンクインターフェース」という用語は、この場合もまたタンクステーション側のインターフェースとしてのタンクノズル、および/または車両側のインターフェースとしてのタンクパイプを指し得る。本発明によれば、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面は、加熱装置によって加熱可能である、および/または、水が的確に導出、収容、もしくは吸着されるような性状である。
【0015】
加熱装置を用いて、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面を必要な場合に加熱することができ、それによりタンクパイプにおけるタンクノズルの凍着が防がれるか、またはタンクインターフェースの領域にすでに形成された氷が解氷される。さらに、加熱装置を用いて、特にそれがタンクノズルの加熱に用いられる場合に凝縮液の形成を防ぐことができる。これはタンクパイプにおける凍着のリスクを最小化することにも寄与する。
【0016】
加熱装置は、例えば加熱カートリッジまたは加熱スリーブであり得る。加熱スリーブは、特にタンクノズルおよび/またはタンクパイプの外周面または内周面を加熱するために用いることができる。これに代えて、またはこれに加えて、加熱装置が誘導加熱装置であることが提案される。
【0017】
加熱装置が設けられるならば、提案されるタンクインターフェースを用いて上記の本発明による方法を実行することができる。しかし本発明によるタンクインターフェースが必ずしも加熱装置を有する必要はない。
【0018】
これに代えて、またはこれに加えて提案される措置は、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面の特別な性状を企図する。この特別な性状は、水、特に凝縮液を氷結の危険にさらされた領域から除去することを特徴とする。その際、水の除去は受動的に、すなわち表面の性状のみによってもたらされる。このようにして、氷結のリスクも最小化される。
【0019】
水の除去は、特に親水性または疎水性の表面により達成することができる。水を収容する親水性表面を形成するために、表面は毛細管を有することができる。その場合、毛細管により収容された水を危険のない箇所で再び放出することができる。水をはじく疎水性表面を形成するために、表面は、それ自体が疎水性に形成されてもよいし、または疎水性コーティングを有してもよい。
【0020】
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる疎水性コーティングを有する。商標名「テフロン(登録商標)」でも呼ばれるPTFEは小さい表面張力を有し、それにより水が表面にとどまらずに「したたり落ちる」。水との接触角度は126°である。
【0021】
これに代えて、またはこれに加えて、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面がナノコーティングを有することが提案される。そのようなコーティングを用いて、表面の湿潤性も大きく低下させることができる。
【0022】
さらにこれに代えて、またはこれに加えて、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面が、発熱反応して水を吸着するゼオライト層を有することができる。一方では、このようにして水が表面から除去され、他方では、氷結を妨害する熱が発熱反応により生成される。
【0023】
少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面の性状に影響を及ぼすために提案される措置はそれぞれ、単独で、または様々に組み合わせて実行もしくは実現することができる。これは特に、通常、タンクインターフェースの複数の表面が氷結の危険にさらされる場合に適用される。それにより複数の表面が同じか、または異なった表面性状を有することができる。
【0024】
少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面を、特にタンクパイプの端面側および/または外周側に形成することができる。タンクパイプの端面および/または外周面は、通常、補給過程中にタンクノズルと1つの接触面もしくは複数の接触面を形成し、それにより、ここで提案される措置は、タンクパイプにおけるタンクノズルの凍着に対して特に効果的である。
【0025】
これに代えて、またはこれに加えて、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面がタンクノズルの端面側および/または内周側に形成されていることが企図される。タンクノズルの端面および/または内周面は、通常、タンクパイプと接触する。
【0026】
少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面が必ずしも平らに形成される必要はない。外周面または内周面の場合、これは特に弓形もしくは円弧状に延びることができる。外周面または内周面は溝および/または嵌め合い(Passungen)をさらに有することができる。表面は、縁側で面取り、または丸み付けされていてもよい。
【0027】
本発明によるタンクインターフェースのタンクパイプの好ましい適用領域は水素で動作可能な車両であるので、本発明によるタンクインターフェースを備える車両がさらに提案される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明によるタンクインターフェースのタンクパイプの模式的平面図である。
【
図3】本発明によるタンクインターフェースのタンクノズルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を添付の図面をもとにして詳しく説明する。
【0030】
図1および
図2は、水素で動作可能な車両(図示せず)のタンクパイプ4を例示的に示す。タンクパイプ4は、ここでは中空円筒形に形成されている。このタンクパイプは、シール8を有する平らな端面5と外周面6とを有する。少なくとも外周面6は、補給過程においてタンクノズル3と接触する。そのようなタンクノズル3が
図3に例示的に示されている。
【0031】
図3から見て取れるように、タンクノズル3は一種の長鼻(Ruessel)を有し、これが水素で動作可能な車両の補給のために、車両のタンクパイプ4に差し込まれる(stecken in)のではなく被嵌され(stecken auf)、それにより水素がタンクノズル3およびタンクパイプ4を介して車両のタンク(図示せず)に流れ込むことができる。
【0032】
タンクノズル3が被嵌されると、タンクノズル3の内周面7がタンクパイプ4の外周面6と接触する。接触面はそれぞれ、車両に水素を補給すると強く冷えるため、氷結の危険にさらされた表面1を形成する。これは水素の温度が約-40℃であることによる。それに加えて、冷えた表面に凝縮液が付着すると、この凝縮液が凍結する可能性がある。その結果、タンクノズル3がタンクパイプ4に凍着する可能性がある。
【0033】
補給過程後にも、特に、周囲の空気が暖かく湿っている場合、冷えた表面に凝縮液が付着する可能性がある。すぐ後に新たな補給過程が続くと、タンクノズル3が別の車両のタンクパイプ4に凍着する可能性がある。
【0034】
したがって、本発明による方法によれば、タンクインターフェース2の少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面1が加熱される。加熱によって、表面が過度に冷えることを阻止でき、それによりこの表面に凝縮液が付着しないか、または凝縮液は少なくとも凍結しない。
【0035】
したがって、本発明によるタンクインターフェース2は、本発明による方法を実行するために加熱装置(図示せず)を有する。これに代えて、またはこれに加えて、少なくとも1つの氷結の危険にさらされた表面1は、水を導出、収容、または吸着する性状を有することができる。例えば、表面1に存在する毛細管により水を収容でき、それにより危険領域から除去することができる。殊に疎水性作用するコーティング(図示せず)を表面1に設けることもでき、それにより水が表面1から簡単にしたたり落ちる。水の吸着は、表面1のゼオライト層によりもたらすことができる。ゼオライト層による吸着は、この過程が発熱であり、すなわち熱を放出し、この熱も表面を加熱するために利用できるという利点を有する。
【符号の説明】
【0036】
1 氷結の危険にさらされた表面
2 タンクインターフェース
3 タンクノズル
4 タンクパイプ
5 端面
6 外周面
7 内周面
8 シール
【国際調査報告】