(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(54)【発明の名称】組換え微生物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20230914BHJP
C12P 7/42 20060101ALI20230914BHJP
C12N 15/52 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P7/42
C12N15/52 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521339
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 US2022015493
(87)【国際公開番号】W WO2022170191
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ファンミン
(72)【発明者】
【氏名】ケプケ,マイケル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD05
4B064CA02
4B064CA19
4B064CB18
4B064CC24
4B065AA15Y
4B065AA23X
4B065AA26Y
4B065AA80Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA05
(57)【要約】
微生物は、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)を産生するように遺伝子操作される。微生物は、カルボキシド栄養性アセトゲンである。微生物は、CO/CO
2を固定するためのWood-Ljungdahl経路を使用してアセチル-coAを産生する。このような酵素を含有する微生物由来のβ-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼが導入される。更に、アセチル-coAカルボキシラーゼも導入され得る。3-HPの産生を改善することができる。これは、改善されたプロモータ又はより高いコピー数又は触媒的により効率的な酵素によって達成することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ及びマロン酸セミアルデヒドレダクターゼを含む外来性酵素の群をコードする核酸を含む、炭素源から3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)を産生することができる、組換えC1固定細菌。
【請求項2】
ピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、及びアスパラギン酸デカルボキシラーゼを含む外来性酵素の群をコードする核酸を更に含み、前記核酸がプロモータに作動可能に連結されている、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
アラニンデヒドロゲナーゼ及び2,3-アラニンアミノムターゼを含む外来性酵素の群をコードする核酸を更に含み、前記核酸がプロモータに作動可能に連結されている、請求項1に記載の細菌。
【請求項4】
Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Clostridium aceticum、Clostridium formicoaceticum、Clostridium magnum、Butyribacterium methylotrophicum、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Eubacterium limosum、Moorella thermoacetica、Moorella thermautotrophica、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、Oxobacter pfennigii、及びThermoanaerobacter kivuiからなる群から選択される、請求項1に記載の細菌。
【請求項5】
C.ljungdahlii及びC.autoethanogenumからなる群から選択されるClostridium種である、請求項4に記載の細菌。
【請求項6】
アセチル-コエンザイムAカルボキシラーゼをコードする核酸を更に含み、前記核酸が、前記細菌における発現のためにコドン最適化されている、請求項1に記載の細菌。
【請求項7】
前記アセチル-コエンザイムAカルボキシラーゼが、Clostridium、Metallosphaera、Sulfolobus、又はChloroflexus属のメンバーから誘導される、請求項6に記載の細菌。
【請求項8】
β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ及びマロン酸セミアルデヒドレダクターゼを含む外来性酵素の群をコードする前記核酸が、前記細菌における発現のためにコドン最適化されている、請求項1に記載の細菌。
【請求項9】
アルデヒド:フェロドキシンオキシドレダクターゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼを含む外来性酵素の群をコードする核酸を更に含み、前記核酸がプロモータに作動可能に連結されている、請求項1に記載の細菌。
【請求項10】
外来性酵素の群をコードする前記核酸が、1,3-プロパンジオールの産生を可能にする、請求項9に記載の細菌。
【請求項11】
3-HPが、アクリル酸、アクリロニトリル、塗料、紙、接着剤、織物、特殊コーティング、インク、超吸収性ポリマーポリアクリレート、1,3-プロパンジオール、溶媒、接着剤、化粧品、ポリトリメチレンテレフタレート、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、食品、飼料添加物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料に変換される、請求項1に記載の細菌。
【請求項12】
ガス状CO含有及び/又はCO
2含有基質を、請求項1に記載の組換えC1固定細菌の培養物を培養培地中に含有するバイオリアクターに通して、前記細菌により前記CO及び/又はCO
2が3-HPに変換されるようにすることと、前記3-HPを前記バイオリアクターから回収することと、を含むプロセスである、CO及び/又はCO
2を3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)に変換する方法。
【請求項13】
前記細菌を、ガス状炭素源を含む培地中で増殖させることを含み、前記炭素源がCO及び/又はCO
2を含む、請求項1に記載の細菌を培養する方法。
【請求項14】
前記細菌を、エネルギー源を含む培地中で増殖させることを含み、前記エネルギー源がCO及び/又はCO
2を含む、請求項1に記載の細菌を培養する方法。
【請求項15】
前記培養が偏性嫌気性である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記培養が偏性嫌気性である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記炭素源が、産業廃棄物又はオフガスを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記エネルギー源が、産業廃棄物又はオフガスを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
3-HPが、アクリル酸、アクリロニトリル、塗料、紙、接着剤、織物、特殊コーティング、インク、超吸収性ポリマーポリアクリレート、1,3-プロパンジオール、溶媒、接着剤、化粧品、ポリトリメチレンテレフタレート、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、食品、飼料添加物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料に変換される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
3-HPが、アクリル酸、アクリロニトリル、塗料、紙、接着剤、織物、特殊コーティング、インク、超吸収性ポリマーポリアクリレート、1,3-プロパンジオール、溶媒、接着剤、化粧品、ポリトリメチレンテレフタレート、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、食品、飼料添加物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料に変換される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年2月8日に出願された米国仮特許出願第63/147,108号の利益を主張し、この全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府の権利)
本開示は、米国エネルギー省によって授与された援助協定第DE-SC0019090号の下、政府支援によって行われた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本開示は、CO及び/又はCO2を含む基質の微生物発酵による3-ヒドロキシプロピオン酸[3-HP]の産生のための組換え微生物及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
3-ヒドロキシプロピオン酸[3-HP]は、ポリマー材料の生成のための前駆体として、及び化学原料として作用するプラットフォーム化学物質である。ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)[P(3-HP)]は、非常に高い熱安定性などの有望な特性を有する生分解性ポリマーである。
【0005】
3-HPは、塗料、紙、接着剤、織物、特殊コーティング、インク、及び超吸収性ポリマーポリアクリレートの製造に使用されるアクリル酸、溶媒、接着剤、化粧品として、又はカーペット及び織物に使用されるポリトリメチレンテレフタレートを製造するために有用な1,3-プロパンジオール、食品の調製において、飼料添加物として、及び栄養産業における保存料として使用される3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、を含む多くの貴重な工業用化学物質を誘導するために使用することができる。
【0006】
3-HPは、米国エネルギー省によって3番目に重要な再生可能化学物質として列挙されており、3-HPの世界市場開放は、年間363万トンであると推定されている(Sauer et al,2008,Bozell et al,2010,US DOE report:48-49)。
【発明の概要】
【0007】
本開示の目的は、既知の方法を超える1つ以上の利点を提供し得る組換え微生物及び微生物発酵による3-HPの産生のための方法を提供すること、又は少なくとも公衆に有用な選択肢を提供することである。
【0008】
本開示は、概して、とりわけ、CO及び/又はCO2を含む基質の微生物発酵による3-HPの産生のための方法、並びにそのような方法において有用な組換え微生物を提供する。これは、2つの異なるCO2固定経路を組み合わせることで、単一の代謝産物を産生させる。
【0009】
第1の態様では、本開示は、CO及び/又はCO2を含む基質の発酵によって3-HP及び任意選択的に1つ以上の他の産物を産生させることができる嫌気性アセトゲン性組換え微生物を提供する。
【0010】
特定の一実施形態では、微生物は、3-HP生合成経路において1つ以上の酵素(又はその1つ以上のサブユニット)を発現するように適合され、酵素は、組換え微生物が誘導される元である親微生物に天然に存在しない。別の実施形態では、微生物は、3-HP生合成経路において1つ以上の酵素(又はその1つ以上のサブユニット)を過剰発現するように適合され、この酵素は、組換え微生物が誘導される元である親微生物に天然に存在している。一実施形態では、微生物は、親微生物中に天然に存在しない3-HP生合成経路中の1つ以上の酵素(又はその1つ以上のサブユニット)を発現し、親微生物中に天然に存在する3-HP生合成経路中の1つ以上の酵素(又はその1つ以上のサブユニット)を過剰発現するように適合される。
【0011】
一実施形態では、1つ以上の酵素は、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(BAPAT)(EC2.6.1.19)、マロン酸セミアルデヒドレダクターゼ(malonic semialdehyde reductase、MSR)(EC1.1.1.59及びEC1.1.1.295)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acetyl-CoA Carboxylase、ACC)(EC6.4.1.2)、及びそれらのいずれか1つの機能的に等価なバリアントからなる群から選択される。
【0012】
一実施形態では、親微生物は、CO及び/又はCO2を含む基質を発酵させてアセチル-CoAを産生することができるが、アセチル-CoAを3-HPに変換することはできず、組換え微生物は、アセチル-CoAの3-HPへの変換に関与する1つ以上の酵素(又はその1つ以上のサブユニット)を発現するように適合されている。
【0013】
一実施形態では、微生物は、親微生物にネイティブの1つ以上の核酸の発現を増加させるように適合された1つ以上の外来性核酸を含み、その1つ以上の核酸は、本明細書で前述した酵素(又はその1つ以上のサブユニット)のうちの1つ以上をコードする。
【0014】
一実施形態では、発現を増加させるように適合された1つ以上の外来性核酸は、調節エレメントである。一実施形態では、調節エレメントはプロモータである。
【0015】
一実施形態では、プロモータは構成的プロモータである。一実施形態では、プロモータは、Wood-Ljungdahl遺伝子クラスター又はホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼオペロンプロモータを含む群から選択される。
【0016】
一実施形態では、微生物は、本明細書で前述した酵素(又はその1つ以上のサブユニット)の1つ以上をコードし、発現するように適合された1つ以上の外来性核酸を含む。一実施形態では、微生物は、酵素(又はその1つ以上のサブユニット)のうちの少なくとも2つをコードし、発現するように適合された1つ以上の外来性核酸を含む。
【0017】
一実施形態では、1つ以上の外来性核酸は、核酸構築物又はベクターであり、特定の一実施形態では、上記で言及された酵素の1つ以上を、任意の組み合わせでコードするプラスミドである。
【0018】
一実施形態では、外来性核酸は発現プラスミドである。
【0019】
一実施形態では、親微生物は、嫌気性アセトゲンの群から選択される。
【0020】
特定の一実施形態では、親微生物は、カルボキシド栄養性アセトゲン細菌の群から選択され、一実施形態では、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Clostridium aceticum、Clostridium formicoaceticum、Clostridium magnum、Butyribacterium methylotrophicum、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Eubacterium limosum、Moorella thermoacetica、Moorella thermautotrophica、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、Oxobacter pfennigii、及びThermoanaerobacter kivuiを含む群から選択される。
【0021】
一実施形態では、親微生物は、Clostridium autoethanogenum又はClostridium ljungdahliiである。特定の一実施形態では、微生物は、Clostridium autoethanogenum DSM23693である。別の特定の実施形態では、微生物は、Clostridium ljungdahlii DSM13528(又はATCC55383)である。
【0022】
一実施形態では、親微生物は、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ及び/若しくはアセチル-CoAカルボキシラーゼ、又はその1つ以上のサブユニットをコードする1つ以上の遺伝子を欠く。
【0023】
第2の態様では、本開示は、微生物において発現された場合に、微生物がCO及び/又はCO2を含む基質の発酵によって3-HPを産生することを可能にする、1つ以上の酵素(又はその1つ以上のサブユニット)をコードする核酸を提供する。
【0024】
一実施形態では、核酸は、微生物において発現された場合に、微生物がCOを含む基質の発酵によって3-HPを産生することを可能にする、2つ以上の酵素(又はその1つ以上のサブユニット)をコードする。
【0025】
一実施形態では、酵素は、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ及びアセチルCoAカルボキシラーゼ、並びにそれらのいずれか1つ以上の機能的に等価なバリアントから選択される。
【0026】
一実施形態では、核酸は、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼ、又はそれらのいずれか1つ以上の機能的に等価なバリアントをコードする核酸配列を任意の順序で含む。
【0027】
一実施形態では、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼをコードする核酸は、配列番号13の配列を有するか、又はその機能的に等価なバリアントである。一実施形態では、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼをコードする核酸は、配列番号14の配列を有するか、又はその機能的に等価なバリアントである。一実施形態では、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼをコードする核酸は、配列番号15の配列を有するか、又はその機能的に等価なバリアントである。
【0028】
一実施形態では、本開示の核酸は、プロモータを更に含む。一実施形態では、プロモータは、その制御下で遺伝子の構成的発現を可能にする。特定の一実施形態では、Wood-Ljungdahlクラスタープロモータが使用される。別の特定の実施形態では、ホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼオペロンプロモータが使用される。特定の一実施形態では、プロモータは、C.autoethanogenum由来である。
【0029】
第3の態様では、本開示は、第2の態様の1つ以上の核酸を含む核酸構築物又はベクターを提供する。
【0030】
特定の一実施形態では、核酸構築物又はベクターは、発現構築物又はベクターである。特定の一実施形態では、発現構築物又はベクターはプラスミドである。
【0031】
第4の態様では、本開示は、第7の態様の核酸又は第3の態様のベクター若しくは構築物のいずれか1つ以上を含む宿主生物を提供する。
【0032】
第5の態様では、本開示は、本開示の第3の態様で言及される発現構築物又はベクターと、メチル化構築物又はベクターとを含む組成物を提供する。
【0033】
好ましくは、組成物は、本開示の第1の態様による組換え微生物を産生することができる。
【0034】
特定の一実施形態では、発現構築物/ベクター及び/又はメチル化構築物/ベクターはプラスミドである。
【0035】
第6の態様では、本開示は、本開示の第1の態様の組換え微生物を使用して、CO及び/又はCO2を含む基質を発酵させることを含む微生物発酵による、3-HP、及び任意選択的に1つ以上の他の産物の産生のための方法を提供する。
【0036】
一実施形態では、方法は、
(a)CO及び/又はCO2を含む基質を、本開示の第1の態様の1つ以上の微生物の培養物を含有するバイオリアクターに提供する工程と、
(b)バイオリアクター内で培養物を嫌気的に発酵させて、3-HPを産生させる工程と、を含む。
【0037】
一実施形態では、方法は、
(a)工業プロセスの結果として産生されるCO及び/又はCO2を含有するガスが大気中に放出される前に、そのガスを捕捉する工程と、
(b)本開示の第1の態様の1つ以上の微生物を含有する培養物によって、少なくとも3-HPを産生させるために、CO及び/又はCO2を含有するガスを嫌気的に発酵させる工程と、を含む。
【0038】
方法の態様の特定の実施形態では、微生物は、水性培養培地中で維持される。
【0039】
方法の態様の特定の実施形態では、基質の発酵は、バイオリアクター内で行われる。
【0040】
好ましくは、CO及び/又はCO2を含む基質は、CO及び/又はCO2を含むガス状基質である。一実施形態では、基質は、産業廃棄物ガスを含む。特定の実施形態では、ガスは、製鋼所廃ガス又は合成ガスである。
【0041】
特定の一実施形態では、基質は、COを含む基質である。
【0042】
基質がCO2を含むがCOを含まない本開示の実施形態では、基質は、好ましくは、H2も含む。
【0043】
一実施形態では、基質は、CO及びCO2を含む。一実施形態では、基質は、CO2及びH2を含む。別の実施形態では、基質は、CO、CO2、及びH2を含む。
【0044】
一実施形態では、基質は、典型的には、少なくとも約20体積%~約100体積%のCO、20体積%~70体積%のCO、30体積%~60体積%のCO、及び40体積%~55体積%のCOなど、主要な割合のCOを含有する。特定の実施形態では、基質は、約25体積%、又は約30体積%、又は約35体積%、又は約40体積%、又は約45体積%、又は約50体積%のCO、又は約55体積%のCO、又は約60体積%のCOを含む。
【0045】
特定の実施形態では、本方法は、3-HP及び任意選択的に1つ以上の他の産物を発酵ブロスから回収する工程を更に含む。
【0046】
第7の態様では、本開示は、第6の態様の方法によって産生された場合の3-HPを提供する。
【0047】
別の態様では、本開示は、本開示の第1の態様の微生物の産生のための方法であって、微生物がCO及び/又はCO2を含む基質の発酵によって3-HP及び任意選択的に1つ以上の他の産物を産生することができるように、親微生物を1つ以上の外来性核酸で形質転換することを含む方法を提供し、ここで、親微生物は、CO及び/又はCO2を含む基質の発酵によって3-HPを産生することができない。
【0048】
特定の一実施形態では、親微生物は、親微生物中に天然に存在しない3-HP生合成経路における1つ以上の酵素を発現するように適合された1つ以上の外来性核酸で形質転換される。別の実施形態では、親微生物は、親微生物中に天然に存在する3-HP生合成経路における1つ以上の酵素を発現するように適合された1つ以上の核酸で形質転換される。別の実施形態では、親微生物は、親微生物中に天然に存在しない3-HP生合成経路における1つ以上の酵素を発現し、親微生物中に天然に存在する3-HP生合成経路における1つ以上の酵素を過剰発現するように適合された1つ以上の外来性核酸で形質転換される。
【0049】
特定の実施形態では、1つ以上の酵素は、本明細書で前述した通りである。
【0050】
特定の実施形態では、親微生物は、本明細書で前述した通りである。
【0051】
一実施形態によれば、CO又はCO2を3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)に変換するためのプロセスが提供される。ガス状CO含有及び/又はCO2含有基質は、細菌がCO及び/又はCO2を3-HPに変換するように、培養培地中のカルボキシド栄養性アセトゲンの培養物を含有するバイオリアクターに通される。カルボキシド栄養性アセトゲン細菌は、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼを発現するように遺伝子操作される。それらはまた、天然であろうと外来性であろうと、アセチル-CoAカルボキシラーゼを発現する。3-HPは、バイオリアクターから回収される。
【0052】
別の実施形態によれば、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼをコードする核酸を含む、単離された遺伝子操作されたカルボキシド栄養性アセトゲン細菌が提供される。核酸は、宿主細菌にとって外来性である。細菌は、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼを発現し、細菌は、ピルビン酸及びβ-アラニンとのアミノ基転移反応を介してマロン酸セミアルデヒドを生成する能力を獲得する。β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼは、典型的には、配列番号13のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも85%同一である。β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼは、典型的には、配列番号14のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも85%同一である。β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼは、典型的には、配列番号15のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも85%同一である。一実施形態では、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼが選択されるが、これは、ピルビン酸が中心的な代謝産物であり、酵素フラックスを駆動するなどの明確な利点を提供する補因子であるためである。
【0053】
細菌は、アセチル-コエンザイムAカルボキシラーゼをコードする外来性核酸を更に含んでもよい。核酸は、プロモータに作動可能に連結され得る。核酸はコドン最適化されていてもよい。核酸又はコードされたカルボキシラーゼは、非硫黄光合成細菌由来であり得る。細菌は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Clostridium aceticum、Clostridium formicoaceticum、Clostridium magnum、Butyribacterium methylotrophicum、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Eubacterium limosum、Moorella thermoacetica、Moorella thermautotrophica、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、Oxobacter pfennigii、及びThermoanaerobacter kivuiからなる群から選択され得る。外来性核酸のドナー細菌は、Chloroflexus aurantiacus、Metallosphaera及びSulfolobus sppなどの非硫黄光合成細菌であってもよい。
【0054】
遺伝子操作された細菌は、ガス状炭素源を含む培地中で増殖させることによって培養され得る。炭素源は、CO及び/又はCO2を含んでもよく、これらはエネルギー源又は炭素源のいずれか又は両方として使用されてもよい。細菌は、任意選択的に、厳密な嫌気性条件下で増殖され得る。炭素源は、産業廃棄物又はオフガスを含んでもよい。
【0055】
本開示はまた、本出願の明細書において言及又は示された部分、要素及び特徴に、個別に又は集合的に、前述の部分、要素又は特徴のうちの2つ以上の任意の又は全ての組み合わせで存在すると広く言われてもよく、本開示が関連する技術分野において既知の等価物を有する特定の整数が本明細書において言及されている場合、そのような既知の等価物は、個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれるとみなされる。
【0056】
全てのその新規な態様では考慮されるべきである本開示のこれらの態様及び他の態様は、添付の図面を参照して、例としてのみ与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】ガス発酵からのClostridium autoethanogenumによる3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)及び1,3-プロパンジオール(1,3-PDO)の生合成をもたらす代謝経路を示す。異種発現を必要とする酵素工程を黒色で示し、天然の反応を灰色で示す。炭素及び水素は、Wood-Ljungdahl経路(Wood-Ljungdahl pathway、WLP)によってアセチル-CoAに同化され、次いで、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(PFOR)によってピルビン酸に変換される。ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、フマル酸ヒドラターゼ(fumarate hydratase、FH)、アスパラギン酸アンモニアリアーゼ(aspartate ammonia-lyase、AAL)、及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase、AAT)の作用によって、L-アスパラギン酸が形成される。次いで、アスパラギン酸-4-デカルボキシラーゼ(ADC)は、L-アスパラギン酸をL-アラニンに変換する。重要な経路中間体β-アラニンは、アスパラギン酸-1-デカルボキシラーゼ(PAND)の異種発現を介してL-アスパラギン酸から、又は2,3-アラニンアミノムターゼ(AAM)を介してL-アラニンから合成することができる。アラニンデヒドロゲナーゼ(ALADH)は、ピルビン酸をL-アラニンに変換するために異種発現され得る。次いで、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(BAPAT)及び/又はγ-アミノブチラートトランスアミナーゼ(GABT)は、β-アラニンをマロン酸セミアルデヒドに変換することができ、これは次いで、マロン酸セミアルデヒド(MSR)を介して3-HPに還元される。アラニントランスアミナーゼ(alanine transaminase、AT)を異種発現させて、BAPAT反応のためにL-アラニンをピルビン酸に変換することができる。グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)を異種発現させて、GABT反応のためにグルタミン酸をα-ケトグルタル酸に変換することができる。3-HPから、アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(AOR)及びアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)の作用を介して、1,3-PDOを生成することができる。NAD(P)Hは、NADPH及びNADHを含む。
【
図2A】は、Schottボトル中の異なる量の3-ヒドロキシプロピオン酸(0、0.2、0.5、1、2、5及び10g/L)の存在におけるClostridium autoethanogenumΔaor株の独立栄養増殖を示す。
図2A:増殖プロファイル。Unc=未チャレンジ;N=2;エラーバー=S.D。
【
図2B】は、Schottボトル中の異なる量の3-ヒドロキシプロピオン酸(0、0.2、0.5、1、2、5及び10g/L)の存在におけるClostridium autoethanogenumΔaor株の独立栄養増殖を示す。
図2B:ピークバイオマス。Unc=未チャレンジ;N=2;エラーバー=S.D。
【
図3】Clostridium autoethanogenumが、Schottボトル中での独立栄養増殖中に外来性3-ヒドロキシプロピオン酸を1,3-プロパンジオールに変換することができることを示す。アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(AOR)の欠失は、C.autoethanogenumで生じるこの天然反応を停止させる。N=2;エラーバー=S.D。
【
図4】ゴールデンゲート(Golden Gate、GG)法を使用した3-ヒドロキシプロピオン酸経路遺伝子のコンビナトリアルアセンブリを示す。
【
図5A】200kPaの合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2、及び10%のN
2)を用いた12ウェルプレートにおける111個の3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)コンビナトリアル株の特徴付けを示す。
図5A:エンドポイント3-HP力価。
【
図5B】200kPaの合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2、及び10%のN
2)を用いた12ウェルプレートにおける111個の3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)コンビナトリアル株の特徴付けを示す。
図5B:バイオマス濃度。
【
図5C】200kPaの合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2、及び10%のN
2)を用いた12ウェルプレートにおける111個の3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)コンビナトリアル株の特徴付けを示す。
図5C:バイオマス濃度によって正規化した3-HP力価;インキュベーション期間=8日間。
【
図6】Schottボトル中での独立栄養増殖中のコンビナトリアル株及びWT C.autoethanogenum株由来のピーク3-ヒドロキシプロピオン酸力価を示す。インキュベーション期間=14日間;N=2;エラーバー=S.D。
【
図7A】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用したバッチCSTR発酵におけるコンビナトリアル株A59Bの性能を示す。
図7A:HPLCによって分析されたバイオマス及び代謝産物プロファイル。
【
図7B】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用したバッチCSTR発酵におけるコンビナトリアル株A59Bの性能を示す。
図7B:GC-TCDによって分析されたガスプロファイル(マイナス=取り込み)。
【
図7C】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用したバッチCSTR発酵におけるコンビナトリアル株A59Bの性能を示す。
図7C:それぞれLC-MS及びGC-MSによって分析された3-HP及び1,3-PDOプロファイル。
【
図8A】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用したバッチCSTR発酵におけるコンビナトリアル株B2Aの性能を示す。
図8A:HPLCによって分析されたバイオマス及び代謝産物プロファイル。
【
図8B】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用したバッチCSTR発酵におけるコンビナトリアル株B2Aの性能を示す。
図8B:GC-TCDによって分析されたガスプロファイル(マイナス=取り込み)。
【
図8C】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用したバッチCSTR発酵におけるコンビナトリアル株B2Aの性能を示す。
図8C:それぞれLC-MS及びGC-MSによって分析された3-HP及び1,3-PDOプロファイル。
【
図9A】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用したバッチCSTR発酵におけるコンビナトリアル株A63Bの性能を示す。
図9A:HPLCによって分析されたバイオマス及び代謝産物プロファイル。
【
図9B】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用したバッチCSTR発酵におけるコンビナトリアル株A63Bの性能を示す。
図9B:GC-TCDによって分析されたガスプロファイル(マイナス=取り込み)。
【
図9C】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用したバッチCSTR発酵におけるコンビナトリアル株A63Bの性能を示す。
図9C:それぞれLC-MS及びGC-MSによって分析された3-HP及び1,3-PDOプロファイル。
【
図10A】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用した連続CSTR発酵におけるコンビナトリアル株A59Bの性能を示す。
図10A:HPLCによって分析されたバイオマス及び代謝産物プロファイル。
【
図10B】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用した連続CSTR発酵におけるコンビナトリアル株A59Bの性能を示す。
図10B:GC-TCDによって分析されたガスプロファイル(マイナス=取り込み)。
【
図10C】合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2及び10%のN
2)を使用した連続CSTR発酵におけるコンビナトリアル株A59Bの性能を示す。
図10C:それぞれLC-MS及びGC-MSによって分析された3-HP及び1,3-PDOプロファイル。D=希釈率/日。
【発明を実施するための形態】
【0058】
実施形態の以下の説明は、一般的な用語で与えられる。本開示は、本開示を支持する実験データ、本開示の様々な態様の具体例、及び本開示を実施する手段を提供する、本明細書の以下の見出し「実施例」の下で与えられる開示から更に明確にされる。
【0059】
本発明者らは、驚くべきことに、CO及び/又はCO2を含む基質の発酵によって、カルボキシド栄養性アセトゲン微生物を3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)に操作することができた。これは、3-HPの産生のための現在の方法を勝る利点を有し得る3-HPの産生のための代替手段を提供する。更に、それは、そうでなければ大気中に放出されて環境を汚染するであろう工業プロセスからの一酸化炭素を使用する手段を提供する。本開示において、微生物は、β-アラニン経路からの酵素を発現し、これは、ガス状基質からの有意に高い力価及び多産性を有する3-HPをもたらした。
【0060】
本開示の微生物の操作において、本発明者らは、驚くべきことに、
図1に示されるように、2つの別個のCO
2固定経路を組み合わせることができた。これは、COを含む基質及び/又はCO
2を含む基質を使用して3-HPを産生させる持続可能な発酵を提供する。したがって、CO
2を固定する2つの経路が連結されて、所望の産物が産生される。
【0061】
一実施形態では、本開示は、CO
22分子の固定を可能とするアセトゲンのWood-Ljungdahl経路、及び別のCO
2分子の固定を可能とする3-HPサイクルの初期炭素固定工程である、2つの別個のCO
2固定経路(
図1)を組み合わせることによる、CO
23分子の3-HP1分子への固定を記載する。Wood-Ljungdahl経路の重要な酵素として、CO
2をCOで置き換えることもでき、COデヒドロゲナーゼ(CODH)は、生物学的水性ガスシフト反応(CO+H
2O<->CO
2+H
2)においてCOをCO
2及びエネルギーに変換することができる。CO及びCO
2の任意の混合物を使用することができる。CO
2のみが使用される場合、水素又は電気の形態のエネルギーが供給される必要があり得るが、COは、炭素及びエネルギー源の両方として機能することができる。
【0062】
本発明者らは、Clostridium autoethanogenumにおける本開示の有効性を実証したが、本開示は、上記及び本明細書において更に考察されるように、より広い群の嫌気性アセトゲン微生物並びにCO及び/又はCO2を含む基質上での発酵に適用可能である。
【0063】
別段の定めがない限り、本明細書全体で使用される以下の用語は、以下のように定義される。
【0064】
「効率を高める」、「効率が高まる」などの用語は、発酵プロセスに関して使用される場合、発酵を触媒する微生物の増殖速度、上昇した産物濃度における増殖及び/又は産物産生速度を増加させること、消費される基質の体積当たりに生成される所望の産物の体積を増加させること、所望の産物の産生速度又は産生レベルを増加させること、並びに発酵の他の副産物と比較して産生される所望の産物の相対的割合を増加させること、プロセスにより消費される水の量を減少させること、及びプロセスにより利用されるエネルギー量を減少させることのうちの1つ以上を増加させることを含むがこれらに限定されない。
【0065】
「発酵」という用語は、基質中の化学変化を引き起こす代謝プロセスとして解釈されるべきである。例えば、発酵プロセスは、1つ以上の基質を受け取り、1つ以上の微生物の利用を通じて1つ以上の産物を産生させる。「発酵」、「ガス発酵」などの用語は、ガス化によって生成される合成ガスなどの1つ以上の基質を受け取り、1つ以上のC1固定微生物の利用を通じて1つ以上の産物を産生させるプロセスとして解釈されるべきである。好ましくは、発酵プロセスは、1つ以上のバイオリアクターの使用を含む。発酵プロセスは、「バッチ」又は「連続」のいずれかとして説明され得る。「バッチ発酵」は、バイオリアクターが微生物とともに、原料、すなわち炭素源で満たされ、発酵が完了するまで産物がバイオリアクター内に留まる発酵プロセスを説明するために使用される。「バッチ」プロセスでは、発酵が完了した後、産物が抽出され、バイオリアクターは、次の「バッチ」が始まる前に洗浄される。「連続発酵」は、発酵プロセスがより長期間にわたって延長され、発酵中に産物及び/又は代謝産物が抽出される発酵プロセスを説明するために使用される。好ましくは、発酵プロセスは、連続的である。
【0066】
微生物に関して使用されるとき、「非自然発生」という用語は、微生物が、言及される種の野生型株を含む言及される種の自然発生株において見られない少なくとも1つの遺伝子修飾を有することを意味することが意図される。非自然発生微生物は、典型的には、実験室又は研究施設で開発される。
【0067】
「遺伝子修飾」、「遺伝子改変」、又は「遺伝子操作」という用語は、微生物のゲノム又は核酸の人の手による操作を広く指す。同様に、「遺伝子修飾された」、「遺伝子改変された」、又は「遺伝子操作された」という用語は、そのような遺伝子修飾、遺伝子改変、又は遺伝子操作を含む微生物を指す。これらの用語は、実験室で生成された微生物と自然発生の微生物を区別するために使用され得る。遺伝子修飾の方法は、例えば、異種遺伝子発現、遺伝子又はプロモータの挿入又は欠失、核酸変異、改変遺伝子発現又は不活性化、酵素工学、指向性進化、知識ベース設計、ランダム変異導入法、遺伝子シャフリング、及びコドン最適化を含む。
【0068】
例えば、Clostridiaなどの微生物の代謝工学は、エタノールなどの天然の代謝産物以外の多くの重要な燃料及び化学分子を産生させる能力を大いに拡大することができる。しかしながら、最近までClostridiaは、遺伝的に扱いにくいとみなされたため、概して、広範な代謝工学努力は立ち入られなかった。近年、Clostridiaについては、ゲノム操作のためのいくつかの異なる方法が開発され、これには、イントロンベースの方法(Kuehne,Strain Eng:Methods and Protocols,389-407,2011)、対立遺伝子交換方法(ACE)(Heap,Nucl Acids Res,40:e59,2012;Ng,PLoS One,8:e56051,2013)、トリプルクロス(Liew,Frontiers Microbiol,7:694,2016)、I-SceIを介して媒介される方法(Zhang,Journal Microbiol Methods,108:49-60,2015)、MazF(Al-Hinai,Appl Environ Microbiol,78:8112-8121,2012)、又はその他(Argyros,Appl Environ Microbiol,77:8288-8294,2011)、Cre-Lox(Ueki,mBio,5:e01636-01614,2014)、及びCRISPR/Cas9(Nagaraju,Biotechnol Biofuels,9:219,2016)が含まれる。しかしながら、少数以上の遺伝的変化を繰り返し導入することは、遅い、骨の折れるサイクル時間、及び種にわたるこれらの遺伝学的技術の導入性に対する制限により、依然として非常に困難である。更に、我々は、C1取り込み、変換、及び産物合成に向かう炭素/エネルギー/レドックスブローを最大にするであろう修飾を確実に予測するのに、ClostridiaにおけるC1代謝をまだ十分に理解していない。したがって、Clostridiaにおける標的経路の導入は、単調で退屈な、時間がかかるプロセスのままである。
【0069】
「組換え」は、核酸、タンパク質、又は微生物が、遺伝子修飾、操作、又は組換えの産物であることを示す。概して、「組換え」という用語は、微生物の2つ以上の異なる株又は種など、複数の源から誘導される遺伝物質を含有するか、又はそれによってコードされる核酸、タンパク質、又は微生物を指す。
【0070】
「野生型」は、変異体又はバリアント形態とは区別されるように天然に存在する、生物、株、遺伝子、又は特性の典型的な形態を指す。
【0071】
「内在性」は、本開示の微生物が誘導される元である野生型又は親微生物に存在する又はそこで発現される核酸又はタンパク質を指す。例えば、内在性遺伝子は、本開示の微生物が誘導される元である野生型又は親微生物に天然に存在する遺伝子である。一実施形態では、内在性遺伝子の発現は、外来性プロモータなどの外来性調節エレメントによって制御され得る。
【0072】
「外来性」とは、本開示の微生物の外側に起源がある核酸又はタンパク質を指す。例えば、外来性遺伝子又は酵素は、人工的又は組換え的に作成され、本開示の微生物に導入されるか、又はそこで発現され得る。外来性遺伝子又は酵素はまた、異種微生物から単離され、本開示の微生物に導入されるか、又はそこで発現され得る。外来性核酸は、本開示の微生物のゲノムに組み入れるように、又は本開示の微生物、例えばプラスミドにおける染色体外の状態で留まるように適合され得る。
【0073】
「異種」は、本開示の微生物が誘導される元である野生型又は親微生物に存在しない核酸又はタンパク質を指す。例えば、異種遺伝子又は酵素は、異なる株又は種から誘導されてもよく、本開示の微生物に導入されるか、又はそこで発現され得る。異種遺伝子又は酵素は、異なる株又は種で生じる形態で、本開示の微生物に導入されるか、又はそこで発現され得る。代替的に、異種遺伝子又は酵素は、いくつかの方法で、例えば、本開示の微生物における発現のためにそれをコドン最適化することによって、又は機能を変化させるように、例えば酵素活性の方向を逆転させるように、若しくは基質特異性を変化させるように、それを操作することによって修飾され得る。
【0074】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用される。それらは、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドのいずれか、又はそれらの類似体を指す。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有し得て、既知又は未知の任意の機能を果たし得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子断片のコード領域又は非コード領域、連鎖解析から定義される座位(複数可)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(messenger RNA、mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、短干渉RNA(short interfering RNA、siRNA)、短ヘアピンRNA(short-hairpin RNA、shRNA)、マイクロRNA(micro-RNA、miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体などの1つ以上の修飾されたヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造の修飾は、ポリマーの組織化の前又は後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって割り込まれ得る。ポリヌクレオチドは、重合の後、例えば標識構成要素との共役により、更に修飾され得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがDNA鋳型から(例えば、mRNA若しくは他のRNA転写物へ)転写されるプロセス、及び/又は転写されたmRNAが、続いて、ペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質へ翻訳されるプロセスを指す。転写物及びコードされたポリペプチドは、集合的に「遺伝子産物」と称され得る。
【0076】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸によって割り込まれていてもよい。この用語はまた、修飾されたアミノ酸ポリマーを包含し、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識成分との共役などの任意の他の操作がある。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシン、D又はL光学異性体の両方、並びにアミノ酸類似体及びペプチド模倣体を含む天然及び/又は非天然若しくは合成アミノ酸を含む。
【0077】
「酵素活性」又は単に「活性」は、広範には、酵素の活性、酵素の量、又は反応を触媒するための酵素の可用性を含むがこれらに限定されない、酵素的な活性を指す。したがって、酵素活性を「増加させること」は、酵素の活性を増大させること、酵素の量を増加させること、又は反応を触媒するための酵素の可用性を増加させることを含む。同様に、酵素活性を「低下させること」は、酵素の活性を低下させること、酵素の量を低下させること、又は反応を触媒するための酵素の可用性を低下させることを含む。
【0078】
「変異した」は、本開示の微生物が誘導される元である野生型又は親微生物と比較して、本開示の微生物において修飾されている核酸又はタンパク質を指す。一実施形態では、変異は、酵素をコードする遺伝子中の欠失、挿入、又は置換であってもよい。別の実施形態では、変異は、酵素中の1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、又は置換であってもよい。
【0079】
具体的には、「破壊的変異」は、遺伝子又は酵素の発現又は活性を低減又は排除(すなわち「破壊する」)する変異である。破壊的変異は、遺伝子又は酵素を、部分的に不活性化し得るか、完全に不活性化し得るか、又は欠失し得る。破壊的変異は、酵素によって産生される産物の生合成を低減、防止、又は阻害する任意の変異であり得る。破壊的変異は、ノックアウト(knockout、KO)変異であり得る。破壊はまた、遺伝子、タンパク質、又は酵素の発現又は活性を低減するが、完全に排除しないノックダウン(knockdown、KD)変異でもあり得る。KOは、産物の収率を高めるのに概して有効であるが、特に非増殖結合産物について、利益を上回る増殖欠陥又は遺伝的不安定性の不利益をもたらす場合がある。破壊的変異は、例えば、酵素をコードする遺伝子における変異、酵素をコードする遺伝子の発現に関与する遺伝子調節エレメントにおける変異、酵素の活性を低下又は阻害するタンパク質を産生する核酸の導入、又は酵素の発現を阻害する核酸(例えば、アンチセンスRNA、siRNA、CRISPR)若しくはタンパク質の導入を含み得る。破壊的変異は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して導入されてもよい。
【0080】
破壊的変異の導入は、本開示の微生物が誘導される元である親微生物と比較して、標的産物を産生しないか、又は産物を実質的に産生しないか、又は標的産物の量を減少させる、本開示の微生物をもたらす。例えば、本開示の微生物は、標的産物を産生しないか、又は親微生物よりも、少なくとも約1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、若しくは95%少ない標的産物を産生し得る。例えば、本開示の微生物は、約0.001、0.01、0.10、0.30、0.50、又は1.0g/L未満の産物を産生し得る。
【0081】
「コドン最適化」とは、特定の株又は種における核酸の最適化又は改善された翻訳のための、遺伝子などの核酸の変異を指す。コドン最適化により、より速い翻訳速度、又は翻訳の精度を生じることができる。一実施形態では、本開示の遺伝子は、Clostridium、特にClostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiでの発現のためにコドン最適化される。更なる一実施形態では、本開示の遺伝子は、DSMZ受託番号DSM23693で寄託されている、Clostridium autoethanogenum LZ1561での発現のためにコドン最適化される。
【0082】
「過剰発現した」とは、本開示の微生物が誘導される元である野生型又は親微生物と比較して、本開示の微生物における核酸又はタンパク質の発現の増加を指す。過剰発現は、遺伝子コピー数、遺伝子転写速度、遺伝子翻訳速度、又は酵素分解速度の変更を含む、当該技術分野において既知の任意の手段によって達成することができる。
【0083】
「バリアント」という用語は、核酸及びタンパク質の配列が、従来技術分野において開示されるか又は本明細書に例示される参照核酸及びタンパク質の配列などの、参照核酸及びタンパク質の配列から変化する、核酸及びタンパク質を含む。本開示は、参照核酸又はタンパク質と実質的に同じ機能を実行するバリアント核酸又はタンパク質を使用して実践され得る。例えば、バリアントタンパク質は、参照タンパク質と実質的に同じ機能を実行するか、又は実質的に同じ反応を触媒する場合がある。バリアント遺伝子は、参照遺伝子と同じ、又は実質的に同じタンパク質をコードしてもよい。バリアントプロモータは、参照プロモータと実質的に同じ、1つ以上の遺伝子の発現を促進するための能力を有してもよい。
【0084】
そのような核酸又はタンパク質は、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。例として、核酸の機能的に同等のバリアントには、対立遺伝子バリアント、遺伝子の断片、変異した遺伝子、多型などが含まれ得る。他の微生物からの相同遺伝子も、機能的に同等なバリアントの例である。これらとしては、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、又はClostridium ljungdahliiなどの種の相同遺伝子が挙げられ、それらの詳細は、Genbank又はNCBIなどのウェブサイトで公開されており入手可能である。機能的に同等なバリアントとしてはまた、特定の微生物のコドン最適化の結果として配列が変化している核酸が挙げられる。核酸の機能的に同等なバリアントは、好ましくは、参照核酸と少なくとも約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又はそれを超える核酸配列同一性(相同性パーセント)を有する。タンパク質の機能的に同等なバリアントは、好ましくは、参照タンパク質と少なくとも約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又はそれを超えるアミノ酸同一性(相同性パーセント)を有する。バリアントの核酸又はタンパク質の機能的同等性は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して評価することができる。
【0085】
「相補性」とは、従来のワトソン-クリック型又は他の非従来型のいずれかによって、核酸が別の核酸配列と水素結合を形成する能力を指す。相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(例えばワトソン-クリック塩基対合)を形成することができる核酸分子内の残基の割合(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、及び100%の相補性として、10のうちの5、6、7、8、9、10)を示す。「完全な相補性」とは、核酸配列の全ての隣接する残基が、第2の核酸配列の同数の隣接する残基と水素結合するであろうことを意味する。本明細書で使用される場合、「実質的な相補性」とは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、又はそれ以上のヌクレオチドの領域にわたる、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の相補性の程度を指すか、あるいは厳格な条件下では、ハイブリダイズする2つの核酸を指す。
【0086】
本明細書中で使用される場合、ハイブリダイゼーションについての「厳格な条件」とは、標的配列に対して相補性を有する核酸が、標的配列と優勢にハイブリダイズし、かつ非標的配列と実質的にハイブリダイズしない条件を指す。厳格な条件は、概して、配列依存性であり、多くの因子に依存して変化する。概して、配列が長いほど、その配列がその標的配列に特異的にハイブリダイズする温度は高くなる。厳格な条件の非限定的な例は、当該分野で周知である(例えば、Tijssen,Laboratory techniques in biochemistry and molecular biology-hybridization with nucleic acid probes,Second Chapter「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay,」Elsevier,N.Y,1993)。
【0087】
「ハイブリダイゼーション」とは、1つ以上のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化されている複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソンクリック塩基対合、フーグスティーン結合、又は任意の他の配列に特異的な様式で起こり得る。複合体は、二重構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズ鎖、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCRの開始、又は酵素によるポリヌクレオチドの切断など、より広範なプロセスにおけるステップを構成し得る。所与の配列とハイブリダイズ可能な配列は、所与の配列の「補体」と称される。
【0088】
核酸は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して、本開示の微生物に送達され得る。例えば、核酸は、裸の核酸として送達されてもよく、リポソームなどの1つ以上の薬剤とともに配合されてもよい。核酸は、必要に応じて、DNA、RNA、cDNA、又はそれらの組み合わせであってもよい。ある特定の実施形態では、制限阻害剤を使用してもよい。追加のベクターには、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、及び人工染色体が含まれ得る。一実施形態では、核酸は、プラスミドを使用して本開示の微生物に送達される。例として、形質転換(形質導入又はトランスフェクションを含む)は、エレクトロポレーション、超音波処理、ポリエチレングリコール媒介形質転換、化学的又は自然のコンピテンス、プロトプラスト形質転換、プロファージ誘発、又は共役によって達成され得る。活性制限酵素系を有するある特定の実施形態では、核酸を微生物に導入する前に核酸をメチル化する必要があり得る。
【0089】
更に、核酸は、特定の核酸の発現を増加又は別の方法で制御するために、プロモータなどの調節エレメントを含むように設計されてもよい。プロモータは、構成的プロモータ又は誘導性プロモータであり得る。理想的には、プロモータは、Wood-Ljungdahl経路プロモータ、ピルベート、フェレドキシンオキシドレダクターゼプロモータ、Rnf複合体オペロンプロモータ、ATPシンターゼオペロンプロモータ、又はホスホトランスアセチラーゼ/アセテートキナーゼオペロンプロモータである。
【0090】
「微生物」は、顕微鏡生物、特に細菌、古細菌、ウイルス、又は真菌である。本開示の微生物は、典型的には細菌である。本明細書で使用される場合、「微生物」の引用は、「細菌」を網羅するものと解釈されるべきである。
【0091】
「親微生物」は、本開示の微生物を生成するために使用される微生物である。親微生物は、自然発生型の微生物(すなわち、野生型微生物)又は以前に修飾されたことのある微生物(すなわち、変異体又は組換え微生物)であり得る。本開示の微生物は、親微生物において発現又は過剰発現されなかった1つ以上の酵素を発現又は過剰発現するように修飾され得る。同様に、本開示の微生物は、親微生物によって含有されなかった1つ以上の遺伝子を含有するように修飾され得る。本開示の微生物は、親微生物において発現されたより少ない量の1つ以上の酵素を発現しないように、又は発現するようにも修飾され得る。一実施形態では、親微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiである。一実施形態では、親微生物は、Inhoffenstrasse 7B,D-38124 Braunschweig,Germanyに所在するDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、ブダペスト条約の条項下で、2010年6月7日に寄託され、受託番号DSM23693を付与された、Clostridium autoethanogenum LZ1561である。この株は、国際公開第2012/015317号として公開されている国際特許出願第NZ2011/000144号に記載されている。
【0092】
「から誘導される」という用語は、新しい核酸、タンパク質、又は微生物を産生するように、核酸、タンパク質、又は微生物が異なる(例えば、親又は野生型)核酸、タンパク質、又は微生物から修飾又は適合されることを示す。そのような修飾又は適合は、典型的には、核酸又は遺伝子の挿入、欠失、変異、又は置換を含む。概して、本開示の微生物は、親微生物から誘導される。一実施形態では、本発明の親微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiから誘導される。一実施形態では、本開示の微生物は、DSMZ受託番号DSM23693の下で寄託される、Clostridium autoethanogenum LZ1561から誘導される。
【0093】
本開示の微生物は、官能的特性に基づいて更に分類され得る。例えば、本開示の微生物は、C1固定微生物、嫌気性生物、アセトゲン、エタノロゲン、カルボキシド栄養生物(carboxydotroph)、及び/又はメタン資化性菌(methanotroph)であっても、それらから誘導されてもよい。表1は、微生物の代表的なリストを提供し、微生物の機能特性を特定する。
【0094】
【表1】
1 Acetobacterium woodiiは、ガスからではなく、フルクトースからエタノールを生産することができる。
2 Clostridium magnumがCOで増殖することができるか否かは調査されていない。
3 Moorella thermoacetica、Moorella sp.HUC22-1の1つの株は、ガスからエタノールを産生することが報告されている。
4 Sporomusa ovataがCOで増殖することができるか否かは調査されていない。
5 Sporomusa silvaceticaがCOで増殖することができるか否かは調査されていない。
6 Sporomusa sphaeroidesがCOで増殖することができるか否かは調査されていない。
【0095】
「Wood-Ljungdahl」とは、例えば、Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008に記載される炭素固定のWood-Ljungdahl経路を指す。「Wood-Ljungdahl微生物」は、予想通り、Wood-Ljungdahl経路を含む微生物を指す。概して、本開示の微生物は、天然のWood-Ljungdahl経路を含有する。本明細書において、ウッド-ユングダール経路は、天然の未修飾のウッド-ユングダール経路であり得るか、あるいはCO、CO2、及び/又はH2をアセチル-CoAに変換するように依然として機能する限り、ある程度の遺伝子修飾(例えば、過剰発現、異種発現、ノックアウトなど)を有するウッド-ユングダール経路であり得る。
【0096】
「C1」は、1炭素分子、例えば、CO、CO2、CH4、又はCH3OHを指す。「C1酸素化物」は、少なくとも1つの酸素原子も含む1炭素分子、例えば、CO、CO2、又はCH3OHを指す。「C1炭素源」とは、本開示の微生物のための部分的又は唯一の炭素源として機能する1つの炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO2、CH4、CH3OH、又はCH2O2のうちの1つ以上を含み得る。好ましくは、C1炭素源は、CO及びCO2のうちの1方又は両方を含む。「C1固定微生物」は、C1炭素源から1つ以上の産物を産生する能力を有する微生物である。典型的には、本開示の微生物は、C1固定細菌である。一実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるC1固定微生物から誘導される。
【0097】
「嫌気性生物」は、増殖のために酸素を必要としない微生物である。嫌気性生物は、酸素が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応を示し得るか、又は死滅し得る。しかしながら、いくつかの嫌気性生物は、低レベルの酸素(例えば、0.000001~5%の酸素)を許容可能である。典型的には、本開示の微生物は、嫌気性生物である。一実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定される嫌気性生物から誘導される。
【0098】
「アセトゲン」は、エネルギー節約のため、並びにアセテートなどのアセチル-CoA及びアセチル-CoA誘導産物の合成のためのその主要機構としてWood-Ljungdahl経路を使用する、偏性嫌気性細菌である(Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008)。特に、アセトゲンは、Wood-Ljungdahl経路を、(1)CO2からのアセチル-CoAの還元合成のための機構、(2)末端電子受容、エネルギー節約プロセス、(3)細胞炭素の合成におけるCO2の固定(同化)のための機構として使用する(Drake,Acetogenic Prokaryotes,In:The Prokaryotes,3rd edition,p.354,New York,NY,2006)。全ての自然発生するアセトゲンは、C1固定、嫌気性、独立栄養性、及び非メタン資化性である。典型的には、本開示の微生物は、アセトゲンである。一実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるアセトゲンから誘導される。
【0099】
「エタノロゲン」は、エタノールを産生する、又は産生することが可能である微生物である。典型的には、本開示の微生物はエタノロゲンである。一実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるエタノロゲンから誘導される。
【0100】
「独立栄養生物」は、有機炭素の不在下でも増殖することが可能な微生物である。代わりに、独立栄養生物は、CO及び/又はCO2などの無機炭素源を使用する。典型的には、本開示の微生物は、独立栄養生物である。一実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定される独立栄養生物から誘導される。
【0101】
「カルボキシド栄養生物」は、炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてCOを利用することが可能な微生物である。典型的には、本開示の微生物は、カルボキシド栄養生物である。一実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるカルボキシド栄養生物から誘導される。
【0102】
「メタン資化性菌」は、炭素とエネルギーの唯一の供給源としてメタンを利用することが可能な微生物である。特定の実施形態では、本開示の微生物は、メタン資化性菌であるか、又はメタン資化性菌から誘導される。他の実施形態では、本開示の微生物は、メタン資化性菌ではないか、又はメタン資化性菌から誘導されない。
【0103】
より広くは、本開示の微生物は、表1で特定される任意の属又は種から誘導されてもよい。例えば、微生物は、Acetobacterium、Alkalibaculum、Blautia、Butyribacterium、Clostridium、Eubacterium、Moorella、Oxobacter、Sporomusa、及びThermoanaerobacterからなる群から選択される属のメンバーであってもよい。特に、微生物は、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Butyribacterium methylotrophicum、Clostridium aceticum、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium coskatii、Clostridium drakei、Clostridium formicoaceticum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium magnum、Clostridium ragsdalei、Clostridium scatologenes、Eubacterium limosum、Moorella thermautotrophica、Moorella thermoacetica、Oxobacter pfennigii、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、及びThermoanaerobacter kivuiからなる群から選択される親細菌から誘導されてもよい。
【0104】
一実施形態では、本開示の微生物は、Clostridium autoethanogenum種、Clostridium ljungdahlii種、及びClostridium ragsdalei種を含むClostridiaのクラスターから誘導される。これらの種は、Abrini,Arch Microbiol,161:345-351,1994(Clostridium autoethanogenum)、Tanner,Int J System Bacteriol,43:232-236,1993(Clostridium ljungdahlii)、及びHuhnke,国際公開第2008/028055号(Clostridium ragsdalei)によって最初に報告され、特徴付けられた。
【0105】
これらの3つの種は、多くの類似点を有する。特に、これらの種は全て、C1固定、嫌気性、アセトゲン性、エタノロゲン性、及びカルボキシド栄養性のClostridium属メンバーである。これらの種は、同様の遺伝子型及び表現型並びにエネルギー節約及び発酵代謝のモードを有する。更に、これらの種は、99%を超えて同一である16S rRNA DNAを有するクロストリジウムrRNA相同性群I内に群生し、約22~30mol%のDNA G+C含有量を有し、グラム陽性であり、同様の形態及びサイズを有し(0.5~0.7×3~5μmの対数成長細胞)、中温性であり(30~37℃で最適に成長する)、約4~7.5の同様のpH範囲を有し(約5.5~6の最適pHを有する)、シトクロムを欠いており、Rnf複合体を介してエネルギーを節約する。また、カルボン酸のそれらの対応するアルコールへの還元が、これらの種において示されている(Perez,Biotechnol Bioeng,110:1066-1077,2012)。重要なことに、これらの種は全て、COを含有するガスで強い独立栄養増殖も示し、主な発酵産物としてエタノール及びアセテート(又は酢酸)も産生し、ある特定の条件下で少量の2,3-ブタンジオール及び乳酸も産生する。
【0106】
しかしながら、これら3つの種は、いくつかの違いも有する。これらの種は、ウサギの腸からのClostridium autoethanogenum、養鶏場の廃棄物からのClostridium ljungdahlii、及び淡水堆積物からのClostridium ragsdaleiの、異なる源から単離された。これらの種は、様々な糖(例えば、ラムノース、アラビノース)、酸(例えば、グルコン酸、クエン酸)、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン)、及び他の基質(例えば、べタイン、ブタノール)の利用において異なる。更に、これらの種は、特定のビタミン(例えば、チアミン、ビオチン)に対する栄養要求性において異なる。これらの種は、Wood-Ljungdahl経路遺伝子及びタンパク質の核酸及びアミノ酸配列に違いを有するが、これらの遺伝子及びタンパク質の一般的な組織及び数は、全ての種で同じであることがわかっている(Kopke,Curr Opin Biotechnol,22:320-325,2011)。
【0107】
したがって、要約すると、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiの特徴の多くは、その種に特有ではなく、むしろC1固定、嫌気性、アセトゲン性、エタノロゲン性、及びカルボキシド栄養性のClostridium属のメンバーのこのクラスターの一般的な特徴である。しかしながら、これらの種は、実際は、全く異なるため、これらの種のうちの1つの遺伝子修飾又は操作は、これらの種のうちの別のものにおいては同一の効果がない場合がある。例えば、増殖、性能、又は産物産生における違いが観察され得る。
【0108】
本開示の微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiの分離株又は変異体からも誘導され得る。Clostridium autoethanogenumの分離株及び変異体としては、JA1-1(DSM10061)(Abrini,Arch Microbiol,161:345-351,1994)、LZ1560(DSM19630)(国際公開第2009/064200号)、及びLZ1561(DSM23693)(国際公開第2012/015317号)が挙げられる。Clostridium ljungdahliiの分離株及び変異体としては、ATCC49587(Tanner,Int J Syst Bacteriol,43:232-236,1993)、PETCT(DSM13528、ATCC55383)、ERI-2(ATCC55380)(米国特許第5,593,886号)、C-01(ATCC55988)(米国特許第6,368,819号)、O-52(ATCC55989)(米国特許第6,368,819号)、及びOTA-1(Tirado-Acevedo,Production of bioethanol from synthesis gas using Clostridium ljungdahlii,PhD thesis,North Carolina State University,2010)が挙げられる。Clostridium ragsdaleiの分離株及び変異体としては、PI 1(ATCC BAA-622、ATCC PTA-7826)(国際公開第2008/028055号)が挙げられる。
【0109】
「基質」とは、本開示の微生物のための炭素及び/又はエネルギー源を指す。概して、基質は、ガス状であり、C1炭素源、例えば、CO、CO2、及び/又はCH4を含む。好ましくは、基質は、CO又はCO+CO2のC1炭素源を含む。基質は、H2、N2、又は電子などの他の非炭素構成要素を更に含み得る。
【0110】
基質は、概して、約1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100mol%のCOなどの少なくともいくらかの量のCOを含む。基質は、約20~80、30~70、又は40~60mol%のCOなど、ある範囲のCOを含み得る。好ましくは、基質は、約40~70mol%のCO(例えば、製鋼所又は高炉ガス)、約20~30mol%のCO(例えば、塩基性酸素高炉ガス)、又は約15~45mol%のCO(例えば、合成ガス)を含む。いくつかの実施形態では、基質は、約1~10又は1~20mol%のCOなどの比較的低い量のCOを含み得る。本開示の微生物は、典型的には、基質中のCOの少なくとも一部分を産物に変換する。いくつかの実施形態では、基質は、COを含まないか、又は実質的に含まない(1モル%未満)。
【0111】
基質は、いくらかの量のH2を含み得る。例えば、基質は、約1、2、5、10、15、20、又は30mol%のH2を含み得る。いくつかの実施形態では、基質は、約60、70、80、又は90mol%のH2などの比較的多量のH2を含み得る。更なる実施形態では、基質は、H2を含まないか、又は実質的に含まない(1モル%未満)。
【0112】
基質は、いくらかの量のCO2を含み得る。例えば、基質は、約1~80又は1~30mol%のCO2を含み得る。いくつかの実施形態では、基質は、約20、15、10、又は5mol%未満のCO2を含み得る。別の実施形態では、基質は、CO2を含まないか、又は実質的に含まない(1モル%未満)。
【0113】
基質は典型的にはガス状であるが、基質はまた、代替的な形態で提供されてもよい。例えば、基質は、マイクロバブル分散物発生装置を使用して、CO含有ガスで飽和した液体中に溶解されてもよい。更なる例として、基質は、固体支持体上に吸着されてもよい。
【0114】
基質及び/又はC1炭素源は、自動車の排出ガス又はバイオマスガス化からなど、産業プロセスの副産物として得られる、又は何らかの他の源からの廃ガスであってもよい。特定の実施形態では、産業プロセスは、製鋼所製造などの鉄金属生成物製造、非鉄金属生成物製造、石油精製、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される。これらの実施形態では、基質及び/又はC1炭素源は、任意の簡便な方法を使用して、それが大気中に放出される前に産業プロセスから捕捉されてもよい。
【0115】
基質及び/又はC1炭素源は、石炭若しくは精錬残渣のガス化、バイオマス若しくはリグノセルロース物質のガス化、又は天然ガスの改質によって得られる合成ガスなど、合成ガスであってもよい。別の実施形態では、合成ガスは、都市固形廃棄物又は産業固形廃棄物のガス化から得てもよい。基質及び/又はC1炭素源は、熱分解油のその後の部分酸化を伴う又は伴わない熱分解から誘導されてもよい。
【0116】
基質の組成は、反応の効率及び/又は費用に著しい影響を及ぼし得る。例えば、酸素(O2)の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減させ得る。基質の組成に応じて、基質を処理、スクラブ、又は濾過して、毒素、望ましくない成分、又はちり粒子などのいかなる望ましくない不純物も除去すること、及び/又は所望の成分の濃度を増加させることが望ましくあり得る。
【0117】
特定の実施形態において、水素の存在は発酵プロセスの全体的効率の改善をもたらす。
【0118】
合成ガス組成を改善して、望ましい又は最適なH2:CO:CO2比を提供することができる。合成ガス組成は、ガス化プロセスに供給される供給原料を調整することによって改善され得る。望ましいH2:CO:CO2比は、発酵プロセスの望ましい発酵産物に依存する。エタノールに対しては、エタノール産生のための化学量論を満たすために、最適なH2:CO:CO2比は、
【0119】
【0120】
【0121】
水素の存在下で発酵プロセスを動作すると、発酵プロセスによって生成されるCO2の量を減らすという追加の利点がある。例えば、最小限のH2を含むガス状基質は、通常、次の化学量論[6CO+3H2O→C2H5OH+4CO2]により、エタノール及びCO2を生成する。C1固定細菌によって利用される水素の量が増加する場合、生成されるCO2の量が減少する[例えば、2CO+4H2→C2H5OH+H2O]。
【0122】
COがエタノール生成の唯一の炭素及びエネルギー源である場合、次のように炭素の一部分がCO2に失われる。
6CO+3H2O→C2H5OH+4CO2 (ΔG°=-224.90kJ/molエタノール)
【0123】
基質で利用可能なH2の量が増加すると、生成されるCO2の量は減少する。2:1(H2:CO)の化学量論比で、CO2の生成は完全に回避される。
5CO+1H2+2H2O→1C2H5OH+3CO2 (ΔG°=-204.80kJ/molエタノール)
4CO+2H2+1H2O→1C2H5OH+2CO2 (ΔG°=-184.70kJ/molエタノール)
3CO+3H2→1C2H5OH+1CO2 (ΔG°=-164.60kJ/molエタノール)
【0124】
「流れ」とは、例えば、あるプロセスから別のプロセスへ、あるモジュールから別のモジュールへ、及び/又はあるプロセスから炭素捕捉手段へと通されることができる任意の基質を指す。
【0125】
本明細書で使用される場合、「反応物質」は、化学反応中の変化に関与し、化学反応中に変化する物質を指す。特定の実施形態では、反応物質としては、CO及び/又はH2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
本明細書で使用される「微生物阻害剤」は、微生物を含む特定の化学反応又は別のプロセスを減速又は防止する1つ以上の構成物を指す。特定の実施形態では、微生物阻害剤には、酸素(O2)、シアン化水素(HCN)、アセチレン(C2H2)、及びBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0127】
本明細書で使用される場合、「触媒阻害剤」、「吸着性阻害剤」などは、化学反応の速度を低下させるか、又は化学反応を防止する1つ以上の物質を指す。特定の実施形態では、触媒及び/又は吸収性阻害剤には、硫化水素(H2S)及び硫化カルボニル(COS)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0128】
「除去プロセス」、「除去モジュール」、「クリーンアップモジュール」などには、ガス流から微生物阻害剤及び又は触媒阻害剤を変換すること、及び/又は除去することのいずれかを行うことができる技術が含まれる。特定の実施形態では、触媒阻害剤は、下流の除去モジュールにおける1つ以上の触媒の阻害を防止するために、上流の除去モジュールによって除去されなければならない。
【0129】
本明細書で使用される場合、「構成物」、「汚染物質」などの用語は、ガス流に見られ得る微生物阻害剤及び/又は触媒阻害剤を指す。特定の実施形態では、構成物は、硫黄化合物、芳香族化合物、アルキン、アルケン、アルカン、オレフィン、窒素化合物、リン含有化合物、粒子状物質、固体、酸素、ハロゲン化化合物、シリコン含有化合物、カルボニル、金属、アルコール、エステル、ケトン、過酸化物、アルデヒド、エーテル、及びタールを含むが、これらに限定されない。
【0130】
「処理済みガス」及び「処理済み流れ」などの用語は、少なくとも1つの除去モジュールを通り、1つ以上の構成物が除去及び/又は変換されたガス流を指す。
【0131】
「所望の組成」という用語は、例えば、合成ガスを含むがこれに限定されないガス流などの物質中の成分の望ましい濃度及び種類を指すために使用される。より具体的には、ガスは、それが特定の成分(例えば、CO、H2、及び/又はCO2)を含有する、及び/又は特定の成分を特定の割合で含有する、及び/又は特定の成分(例えば、微生物に有害な汚染成分)を含有しない、及び/又は特定の成分を特定の割合で含有しない場合、「所望の組成」を有すると考えられる。ガス流が望ましい組成物を有しているかどうかを決定する際に、複数の成分が考慮され得る。
【0132】
基質の組成は、反応の効率及び/又は費用に著しい影響を及ぼし得る。例えば、酸素(O2)の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減させ得る。基質の組成に応じて、基質を処理、スクラブ、又は濾過して、毒素、望ましくない成分、又はちり粒子などのいかなる望ましくない不純物も除去すること、及び/又は所望の成分の濃度を増加させることが望ましくあり得る。
【0133】
本明細書で使用される場合、「炭素捕捉」という用語は、CO2及び/若しくはCOを含む流れからのCO2及び/若しくはCOを含む炭素化合物の隔離、並びに
CO2及び/若しくはCOを産物に変換すること、又は
CO2及び/若しくはCOを長期貯蔵に好適な物質に変換すること、又は
CO2及び/若しくはCOを長期貯蔵に好適な物質中に閉じ込めること、
又はこれらのプロセスの組み合わせのいずれかを指す。
【0134】
特定の実施形態では、発酵は、糖、デンプン、リグニン、セルロース、又はヘミセルロースなどの炭水化物基質の不在下で実施される。
【0135】
本開示の微生物は、1つ以上の産物を産生するようにガス上基質とともに培養され得る。例えば、本開示の微生物は、2-フェニルエタノールに加えて、エタノール(国際公開第2007/117157号)、アセテート(国際公開第2007/117157号)、1-ブタノール(国際公開第2008/115080号、国際公開第2012/053905号、及び国際公開第2017/066498号)、ブチレート(国際公開第2008/115080号)、2,3-ブタンジオール(国際公開第2009/151342号及び国際公開第2016/094334号)、ラクテート(国際公開第2011/112103号)、ブテン(国際公開第2012/024522号)、ブタジエン(国際公開第2012/024522号)、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(国際公開第2012/024522号及び国際公開第2013/185123号)、エチレン(国際公開第2012/026833号)、アセトン(国際公開第2012/115527号)、イソプロパノール(国際公開第2012/115527号)、脂質(国際公開第2013/036147号)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)(国際公開第2013/180581号)、イソプレンを含むテルペン(国際公開第2013/180584号)、脂肪酸(国際公開第2013/191567号)、2-ブタノール(国際公開第2013/185123号)、1,2-プロパンジオール(国際公開第2014/036152号)、1-プロパノール(国際公開第2017/066498号)、1-ヘキサノール(国際公開第2017/066498号)、1-オクタノール(国際公開第2017/066498号)、コリスマート誘導産物(国際公開第2016/191625号)、3-ヒドロキシブチレート(国際公開第2017/066498号)、1,3-ブタンジオール(国際公開第2017/066498号)、2-ヒドロキシイソブチレート又は2-ヒドロキシイソブチル酸(国際公開第2017/066498号)、イソブチレン(国際公開第2017/066498号)、アジピン酸(国際公開第2017/066498号)、1,3-ヘキサンジオール(国際公開第2017/066498号)、3-メチル-2-ブタノール(国際公開第2017/066498号)、2-ブテン-1-オール(国際公開第2017/066498号)、イソバレレート(国際公開第2017/066498号)、イソアミルアルコール(国際公開第2017/066498号)、及びモノエチレングリコール(国際公開第2019/126400号)を産生することができるか、又はこれらを産生するように操作することができる。特定の実施形態では、微生物バイオマス自体が産物とみなされ得る。これらの産物は、更に変換されて、ディーゼル、ジェット燃料、及び/又はガソリンのうちの少なくとも1つの成分を産生し得る。特定の実施形態では、2-フェニルエタノールは、香料、精油、香味料、及び石鹸中の成分として使用され得る。加えて、微生物バイオマスは更に処理されて、単細胞タンパク質(single cell protein、SCP)を産生し得る。
【0136】
「単細胞タンパク質」(SCP)は、タンパク質が豊富なヒト及び/又は動物用飼料に使用され得る微生物バイオマスを指し、多くの場合、大豆又は魚粉などの従来のタンパク質補給源に取って代わる。単細胞タンパク質又は他の産物を産生させるために、本方法は、追加の分離、加工、又は処理の工程を含み得る。例えば、本方法は、微生物バイオマスを滅菌すること、微生物バイオマスを遠心分離すること、及び/又は微生物バイオマスを乾燥させることを含み得る。特定の実施形態では、微生物バイオマスは、噴霧乾燥又はパドル乾燥を使用して乾燥される。核酸含有量の高い食事を摂取すると、核酸分解産物の蓄積及び/又は胃腸障害が生じ得るため、本方法は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して、微生物バイオマスの核酸含有量を低減させることも含み得る。単細胞タンパク質は、家畜やペットなどの動物への給餌に好適であり得る。具体的には、動物用飼料は、1頭以上の肉用牛、乳用牛、豚、羊、山羊、馬、ラバ、ロバ、鹿、バッファロー/バイソン、ラマ、アルパカ、トナカイ、ラクダ、バンテン、ガヤル、ヤク、鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウ、ウズラ、ホロホロ鳥、ひなバト/ハト、魚、エビ、甲殻類、猫、犬、及びげっ歯類に給餌するのに好適であり得る。動物用飼料の組成は、異なる動物の栄養要件に合わせて調整され得る。更に、本方法は、微生物バイオマスを1つ以上の賦形剤と混合すること又は組み合わせることを含み得る。
【0137】
「賦形剤」は、動物用飼料の形態、特性、又は栄養含有量を強化又は変更するために、微生物バイオマスに添加され得る任意の物質を指し得る。例えば、賦形剤は、炭水化物、繊維、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、水、香料、甘味料、酸化防止剤、酵素、防腐剤、プロバイオティクス、又は抗生物質のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、賦形剤は、干し草、わら、貯蔵生牧草、穀物、油若しくは脂肪、又は他の植物材料であってもよい。賦形剤は、Chiba,Section 18:Diet Formulation and Common Feed Ingredients,Animal Nutrition Handbook,3rd revision,pages 575-633,2014に特定されている、任意の飼料構成成分であってもよい。
【0138】
「天然産物」は、遺伝子修飾されていない微生物によって産生される産物である。例えば、エタノール、アセテート、及び2,3-ブタンジオールは、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、及びClostridium ragsdaleiの天然産物である。「非天然産物」は、遺伝子組換えされた微生物によって産生されるが、遺伝子組換えされた微生物が誘導される元である遺伝子組換えされていない微生物によって産生されない産物である。
【0139】
「選択性」は、微生物によって産生される全発酵生成物の産生に対する標的産物の産生の比率を指す。本開示の微生物は、ある特定の選択性で、又は最小の選択性で産物を産生するように操作され得る。一実施形態では、標的産物は、本開示の微生物によって産生される全発酵産物の少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、50%、又は75%を占める。一実施形態では、標的産物は、本開示の微生物が少なくとも10%の標的産物に対して選択性を有するように、本開示の微生物によって産生される全発酵産物の少なくとも10%を占める。別の実施形態では、標的産物は、本開示の微生物が少なくとも30%の標的産物に対して選択性を有するように、本開示の微生物によって産生される全発酵産物の少なくとも30%を占める。
【0140】
「効率を増大させること」、「増大した効率」などは、増殖速度、産物産生速度若しくは体積、消費される基質の体積当たりの産物体積、又は産物選択性を増大させることを含むが、これらに限定されない。効率は、本開示の微生物が誘導される元である親微生物の性能に対して測定され得る。
【0141】
典型的には、培養は、バイオリアクター中で実施される。「バイオリアクター」という用語は、連続撹拌槽反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)、固定化細胞反応器(immobilized cell reactor、ICR)、トリクルベッド反応器(trickle bed reactor、TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、又はガス-液体接触に適した他の容器若しくは他のデバイスなどの1つ以上の容器、塔、又は配管配置からなる培養/発酵デバイスを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、第1の増殖反応器及び第2の培養/発酵反応器を含み得る。基質は、これらの反応器のうちの1つ又は両方に提供され得る。本明細書で使用する場合、「培養」及び「発酵」という用語は、同じ意味で使用される。これらの用語は、培養/発酵プロセスの増殖期と産物生合成期との両方を包含する。
【0142】
培養物は概して、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、及び/又は無機物を含有する水性培地中で維持される。好ましくは、水性培地は、最小嫌気性微生物増殖培地などの嫌気性微生物培地である。好適な培地は、当該技術分野において既知である。
【0143】
培養/発酵は、望ましくは、標的産物の産生に適切な条件下で実施されるべきである。典型的には、培養/発酵は、嫌気性条件下で実施される。考慮すべき反応条件は、圧力(又は分圧)、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のガスが制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、及び産物阻害を回避するための最大産物濃度を含む。具体的には、基質の導入速度は、産物がガス制限条件下での培養によって消費され得るため、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを確実にするように制御されてもよい。
【0144】
上昇した圧力でバイオリアクターを操作することは、気相から液相へのガス物質移動の増加した速度を可能にする。したがって、概して、大気圧よりも高い圧力で培養/発酵を実施することが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ保持時間がバイオリアクターの必要な容積を示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの容積、及びその結果として培養/発酵装置の資本コストを大幅に削減することができる。これは更に、バイオリアクター中の液体体積を入力ガス流量で除算したものとして定義される保持時間が、バイオリアクターが大気圧よりも上昇した圧力に維持されるときに減少され得ることを意味する。最適反応条件は、使用される特定の微生物に部分的に依存する。しかしながら、概して、大気圧より高い圧力で発酵を行うことが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保持時間を達成することがバイオリアクターの必要な体積を更に示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの体積、及びその結果として発酵装置の資本コストを大幅に低減することができる。
【0145】
特定の実施形態において、発酵は、光の不在下で、又は光合成微生物のエネルギー要求を満たすには不十分な量の光の存在下で行われる。特定の実施形態では、本開示の微生物は、非光合成微生物である。
【0146】
本明細書で使用される場合、「発酵ブロス」又は「ブロス」という用語は、細胞及び栄養培地を含む、バイオリアクター中の成分の混合物を指す。本明細書で使用される場合、「分離器」は、バイオリアクターから発酵ブロスを受け取り、ブロスをフィルターに通して「保持液」及び「透過液」を得るように適合されたモジュールである。フィルターは、膜、例えば、クロスフロー膜又は中空繊維膜であってもよい。「透過液」という用語は、分離器を通るブロスの実質的に可溶性の成分を指すために使用される。透過液は、典型的には、可溶性発酵産物、副産物、及び栄養素を含有する。保持液は、典型的には、細胞を含有する。本明細書で使用される場合、「ブロスブリード」という用語は、バイオリアクターから取り出され、分離器に通されない発酵ブロスの一部を指すために使用される。
【0147】
標的産物は、例えば、分留蒸留、蒸発、浸透蒸発、ガスストリッピング、相分離、及び例えば、液-液抽出を含む抽出発酵を含む、任意の方法又は当該技術分野において既知の方法の組み合わせを使用して、発酵ブロスから分離又は精製することができる。特定の実施形態において、標的産物は、ブロスの一部分をバイオリアクターから連続的に取り出し、微生物細胞をブロスから(濾過により簡便に)分離し、1つ以上の標的産物をブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコール及び/又はアセトンは、例えば、蒸留によって回収され得る。酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞は、好ましくは、バイオリアクターに戻されてリサイクルされる。標的産物が取り出された後に残存している無細胞透過液も、好ましくは、バイオリアクターに戻される。追加の栄養素が、無細胞透過液に添加されて、培地を補充した後に、バイオリアクターに戻され得る。
【0148】
本明細書で言及される場合、「シャトル微生物」は、メチルトランスフェラーゼ酵素が発現され、目的微生物とは異なる微生物である。
【0149】
本明細書で言及される場合、「目的微生物」は、発現構築物/ベクターに含まれる遺伝子が発現される微生物であり、シャトル微生物とは異なる。これは、宿主微生物とも呼ばれる。
【0150】
「主な発酵産物」という用語は、最も高い濃度及び/又は収率で産生される1つの発酵産物を意味することが意図される。1つ以上の発酵産物が存在してもよい。最も普及しているものが、最も商業的に価値のあるものであってもなくてもよい。
【0151】
「一酸化炭素を含む基質」という語句及び類似の用語は、一酸化炭素が、例えば、増殖及び/又は発酵のために細菌の1つ以上の株に利用可能である任意の基質を含むと理解されるべきである。
【0152】
「一酸化炭素を含むガス状基質」という語句並びに同様の語句及び用語は、あるレベルの一酸化炭素を含有する任意のガスを含む。特定の実施形態では、基質は、少なくとも約20体積%~約100体積%のCO、20体積%~70体積%のCO、30体積%~60体積%のCO、及び40体積%~55体積%のCOを含有する。特定の実施形態では、基質は、約25体積%、又は約30体積%、又は約35体積%、又は約40体積%、又は約45体積%、又は約50体積%のCO、又は約55体積%のCO、又は約60体積%のCOを含む。
【0153】
COを含む基質が任意の水素を含有することは必要ではないが、H2の存在は本開示の方法による産物形成に有害であるべきではない。特定の実施形態において、水素の存在はアルコール生成の全体的効率の改善をもたらす。例えば、特定の実施形態では、基質は、約2:1又は1:1又は1:2の比のH2:COを含み得る。一実施形態では、基質は、約30体積%以下のH2、20体積%以下のH2、約15体積%以下のH2、又は約10体積%以下のH2を含む。他の実施形態において、基質流は、低濃度のH2を、例えば、例えば5%未満、若しくは4%未満、若しくは3%未満、若しくは2%未満、若しくは1%未満を含むか、又は実質的に水素を含まない。基質はまた、例えば、約1体積%~約80体積%のCO2、又は1体積%~約30体積%のCO2をなど、ある程度のCO2を含有し得る。一実施形態では、基質は約20体積%以下のCO2を含む。特定の実施形態では、基質は、約15体積%以下のCO2、約10体積%以下のCO2、約5体積%以下のCO2を含むか、又は実質的にCO2を含まない。
【0154】
「二酸化炭素を含む基質」という語句及び類似の用語は、二酸化炭素が、例えば、増殖及び/又は発酵のために細菌の1つ以上の株に利用可能である任意の基質を含むと理解されるべきである。二酸化炭素を含む基質は、水素及び/又は一酸化炭素を更に含み得る。
【0155】
「二酸化炭素を含むガス状基質」という語句並びに同様の語句及び用語は、あるレベルの二酸化炭素を含有する任意のガスを含む。特定の実施形態では、基質は、少なくとも約10体積%~約60体積%のCO2、20体積%~50体積%のCO2、30体積%~60体積%のCO2、及び40体積%~55体積%のCO2を含有する。特定の実施形態では、基質は、約20体積%、約25体積%、又は約30体積%、又は約35体積%、又は約40体積%、又は約45体積%、又は約50体積%のCO、又は約55体積%のCO、又は約60体積%のCO2を含む。
【0156】
好ましくは、CO2を含む基質は、あるレベルのCO又はH2も含有する。特定の実施形態では、基質は、少なくとも約1:1、又は少なくとも約1:2、又は少なくとも約1:3、又は少なくとも約1:4、又は少なくとも約1:5のCO2:H2比を含む。
【0157】
以下の説明において、本開示の実施形態は、「CO及び/又はCO2を含有するガス状基質」を送達及び発酵することに関して説明される。しかしながら、ガス状基質は、代替形態で提供されてもよいことを理解されたい。例えば、CO及び/又はCO2を含有するガス状基質は、液体に溶解して提供されてもよい。本質的に、液体を一酸化炭素含有ガスで飽和させ、次いで、その液体をバイオリアクターに添加する。これは、標準的な方法論を使用して達成され得る。例として、マイクロバブル分散生成器(Hensirisak et.al.Scale-up of microbubble dispersion generator for aerobic fermentation;Applied Biochemistry and Biotechnology Volume 101,Number 3/October 2002)が使用され得る。更なる例として、COを含有するガス状基質は、固体支持体上に吸着されてもよい。そのような代替方法は、「CO及び/又はCO2を含有する基質」などの用語の使用によって包含される。
【0158】
本開示の特定の実施形態では、CO含有ガス状基質(又はCO2若しくはCO及びCO2若しくはCO2及びH2及びCOを含むガス状基質)は、工業的オフガス又は産業廃棄物ガスである。「産業廃棄物又はオフガス」は、工業プロセスによって生成されるCO及び/又はCO2を含む任意のガスを含み、鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製プロセス、石炭のガス化、バイオマスのガス化、電力生産、カーボンブラック生成、及びコークス製造の結果として生成されるガスを含むように広く解釈されるべきである。更なる例は、本明細書の他の箇所で提供され得る。
【0159】
文脈上別段の要求がない限り、本明細書で使用される「発酵」、「発酵プロセス」、又は「発酵反応」などの句は、プロセスの増殖期及び産物生合成期の両方を包含することを意図している。本明細書で更に記載されるように、いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、第1の増殖反応器及び第2の発酵反応器を含み得る。したがって、発酵反応への金属又は組成物の添加は、これらの反応器のいずれか又は両方への添加を含むと理解されるべきである。
【0160】
「バイオリアクター」という用語は、連続撹拌槽反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)、固定化細胞反応器(immobilized cell reactor、ICR)、トリクルベッド反応器(trickle bed reactor、TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、又はガス-液体接触に適した他の容器若しくは他のデバイスを含む1つ以上の容器、及び/又は塔、又は配管配置からなる発酵デバイスを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、第1の増殖反応器及び第2の発酵反応器を含み得る。したがって、バイオリアクター又は発酵反応への添加に言及する場合、適切な場合には、これらの反応器のいずれか又は両方への添加を含むと理解されるべきである。
【0161】
本開示は、それらが実質的に同じ機能を果たすという条件で、その配列が本明細書に具体的に例示される配列と異なる核酸を使用して実施され得ることを理解すべきである。タンパク質又はペプチドをコードする核酸配列について、これは、コードされたタンパク質又はペプチドが実質的に同じ機能を有することを意味する。プロモータ配列を表す核酸配列に関して、バリアント配列は、1つ以上の遺伝子の発現を促進する能力を有する。そのような核酸は、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。例として、核酸の機能的に等価なバリアントとしては、対立遺伝子バリアント、遺伝子のフラグメント、変異(欠失、挿入、ヌクレオチド置換など)及び/又は多型などを含む遺伝子が挙げられる。他の微生物由来の相同遺伝子もまた、本明細書中に具体的に例示される配列の機能的に等価なバリアントの例として考慮され得る。
【0162】
これらとしては、Clostridium ljungdahlii、Chloroflexus aurantiacus、Metallosphaera、又はSulfolobus sppなどの種の相同遺伝子が挙げられ、それらの詳細は、Genbank又はNCBIなどのウェブサイトで公開されており入手可能である。「機能的に同等なバリアント」という語句はまた、特定の微生物のコドン最適化の結果として配列が変化している核酸を含むことが考慮されるべきである。本明細書において核酸の「機能的に等価なバリアント」は、同定された核酸と、好ましくは、少なくとも約70%、好ましくは、約80%、より好ましくは、約85%、好ましくは、約90%、好ましくは、約95%以上の核酸配列同一性を有する。
【0163】
本開示は、その配列が本明細書に具体的に例示されるアミノ酸配列と異なるポリペプチドを使用して実施され得ることも理解されるべきである。これらのバリアントは、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。タンパク質又はペプチドの機能的に等価なバリアントは、同定されたタンパク質又はペプチドと少なくとも40%、好ましくは50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは75%、好ましくは80%、好ましくは85%、好ましくは90%、好ましくは95%以上のアミノ酸同一性を共有し、かつ目的のペプチド又はタンパク質と実質的に同じ機能を有するタンパク質又はペプチドを含む。このようなバリアントは、その範囲内に、タンパク質又はペプチドのフラグメントを含み、ここで、このフラグメントは、ポリペプチドの短縮形態を含み、その欠失は、1~5、~10、~15、~20、~25アミノ酸であってもよく、このポリペプチドのいずれかの末端で残基1~25に伸長してもよく、欠失は、この領域内の任意の長さであってもよく、又は内部位置にあってもよい。本明細書中の特定のポリペプチドの機能的に等価なバリアントはまた、例えば、先行する段落において例示されるような、細菌の他の種における相同遺伝子によって発現されるポリペプチドを含むと解釈されるべきである。
【0164】
本開示の微生物は、組換え微生物を産生させるための当技術分野で公知の任意の数の技法を使用して親微生物及び1つ以上の外来性核酸から調製されてもよい。例として、形質転換(形質導入又はトランスフェクションを含む)は、エレクトロポレーション、超音波処理、ポリエチレングリコール媒介形質転換、化学的又は自然のコンピテンス、又は共役によって達成され得る。適切な形質転換技術は、例えば、Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T:Molecular Cloning:A laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,1989に記載されている。
【0165】
特定の実施形態では、形質転換される微生物において活性である制限系に起因して、微生物に導入される核酸をメチル化することが必要である。これは、以下に記載される技術を含む様々な技術を使用して行うことができ、本明細書の以下の実施例の節において更に例示される。
【0166】
例として、一実施形態では、本開示の組換え微生物は、以下の工程:i)本明細書に記載される発現構築物/ベクター、及び(ii)メチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むメチル化構築物/ベクターのシャトル微生物への導入と、メチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現と、シャトル微生物からの1つ以上の構築物/ベクターの単離と、1つ以上の構築物/ベクターの目的微生物への導入と、を含む方法によって産生される。
【0167】
一実施形態では、工程Bのメチルトランスフェラーゼ遺伝子は、構成的に発現される。別の実施形態では、工程Bのメチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現が、誘導される。
【0168】
シャトル微生物は、発現構築物/ベクターを構成する核酸配列のメチル化を容易にする微生物、好ましくは制限陰性微生物である。特定の実施形態では、シャトル微生物は、制限陰性E.coli、Bacillus subtilis、又はLactococcus lactisである。
【0169】
メチル化構築物/ベクターは、メチルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を含む。
【0170】
発現構築物/ベクター及びメチル化構築物/ベクターがシャトル微生物に導入されると、メチル化構築物/ベクター上に存在するメチルトランスフェラーゼ遺伝子が誘導される。誘導は、任意のプロモータ系によって行われてよいが、本開示の特定の一実施形態では、メチル化構築物/ベクターは、誘導性lacプロモータを含み、ラクトース又はその類似体、より好ましくは、イソプロピル-β-D-チオ-ガラクトシド(IPTG)の添加によって誘導される。他の適切なプロモータとしては、ara、tet、又はT7系が挙げられる。本開示の更なる一実施形態では、メチル化構築物/ベクタープロモータは、構成的プロモータである。
【0171】
特定の一実施形態では、メチル化構築物/ベクターは、メチル化構築物/ベクター上に存在する任意の遺伝子がシャトル微生物中で発現されるように、シャトル微生物の同一性に特異的な複製起点を有する。好ましくは、発現構築物/ベクターは、発現構築物/ベクター上に存在する任意の遺伝子が目的の微生物中で発現されるように、目的の微生物の同一性に特異的な複製起点を有する。
【0172】
メチルトランスフェラーゼ酵素の発現は、発現構築物/ベクター上に存在する遺伝子のメチル化をもたらす。次いで、発現構築物/ベクターは、多数の公知の方法のいずれか1つにしたがってシャトル微生物から単離され得る。ほんの一例として、以下に記載される実施例の節に記載される方法論は、発現構築物/ベクターを単離するために使用され得る。
【0173】
特定の一実施形態では、構築物/ベクターの両方が同時に単離される。
【0174】
発現構築物/ベクターは、任意の数の公知の方法を使用して目的微生物に導入され得る。しかし、例として、以下の実施例の節に記載される方法論が使用され得る。発現構築物/ベクターはメチル化されているので、発現構築物/ベクター上に存在する核酸配列は、目的微生物に組み込まれ、首尾よく発現されることができる。
【0175】
メチルトランスフェラーゼ遺伝子をシャトル微生物に導入し、過剰発現させてもよいことが想定される。したがって、一実施形態では、得られるメチルトランスフェラーゼ酵素は、公知の方法を使用して収集され、発現プラスミドをメチル化するためにインビトロで使用されてもよい。次いで、発現構築物/ベクターは、発現のために目的微生物に導入され得る。別の実施形態では、メチルトランスフェラーゼ遺伝子をシャトル微生物のゲノムに導入し、続いて発現構築物/ベクターをシャトル微生物に導入し、シャトル微生物から1つ以上の構築物/ベクターを単離し、次いで発現構築物/ベクターを目的微生物に導入する。
【0176】
上記で定義した発現構築物/ベクター及びメチル化構築物/ベクターを組み合わせて、物質の組成物を提供することができることが想定される。このような組成物は、制限バリア機構を回避して本開示の組換え微生物を産生させるのに特に有用である。
【0177】
特定の一実施形態では、発現構築物/ベクター及び/又はメチル化構築物/ベクターは、プラスミドである。
【0178】
当業者であれば、本開示の微生物の産生に有用ないくつかの適切な多数のメチルトランスフェラーゼを理解するであろう。しかしながら、例として、Bacillus subtilisファージΦT1メチルトランスフェラーゼ及び以下の本明細書中の実施例に記載されるメチルトランスフェラーゼが使用され得る。適切なメチルトランスフェラーゼをコードする核酸は、所望のメチルトランスフェラーゼの配列及び遺伝子コードを考慮して容易に認識される。
【0179】
メチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を可能にするように適合された任意の数の構築物/ベクターが、メチル化構築物/ベクターを生成するために使用され得る。
【0180】
本開示は、組換え微生物を使用して、CO及び/又はCO2を含む基質を発酵させることを含む微生物発酵による、3-HP、及び任意選択的に1つ以上の他の産物の産生のための方法を提供する。好ましくは、3-HPが主な発酵産物である。本開示の方法は、工業プロセスからの総合的な大気炭素排出を低減するために使用され得る。
【0181】
好ましくは、発酵は、本開示の組換え微生物を使用して少なくとも3-HPを産生させるために、バイオリアクター中で基質を嫌気的に発酵させる工程を含む。
【0182】
一実施形態では、方法は、
(a)CO及び/又はCO2を含む基質を、本開示の1つ以上の微生物の培養物を含有するバイオリアクターに提供する工程と、
(b)バイオリアクター内で培養物を嫌気的に発酵させて、少なくとも3-HPを産生させる工程と、を含む。
【0183】
一実施形態では、方法は、
(a)工業プロセスの結果として産生されるCO及び/又はCO2を含有するガスが大気中に放出される前に、そのガスを捕捉する工程と、
(b)本開示の1つ以上の微生物を含有する培養物によって、少なくとも3-HPを産生させるために、CO及び/又はCO2を含有するガスを嫌気的に発酵させる工程と、を含む。
【0184】
一実施形態では、基質はCOを含む。一実施形態では、基質はCO2及びCOを含む。別の実施形態では、基質は、CO2及びH2を含む。別の実施形態では、基質は、CO2及びCO及びH2を含む。
【0185】
本開示の特定の一実施形態では、微生物によって発酵されるガス状基質は、COを含有するガス状基質である。ガス状基質は、工業的プロセスの副産物として得られても、自動車の排出ガスからなどの何らかの他の供給源からの、CO含有廃ガスであってもよい。特定の実施形態では、産業プロセスは、製鋼所などの鉄金属生成物製造、非鉄金属生成物製造、石油精製プロセス、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される。これらの実施形態では、CO含有ガスは、任意の簡便な方法を使用して、それが大気中に放出される前に産業プロセスから捕捉されてもよい。COは、合成ガス(一酸化炭素及び水素を含むガス)の成分であってもよい。工業プロセスから生成されるCOは、通常、燃やされてCO2を生成し、したがって、本開示は、CO2温室効果ガス排出を低減し、バイオ燃料として使用するためのブタノールを生成するのに特に有用である。ガス状CO含有基質の組成に応じて、発酵に導入する前に、それを処理して粉塵粒子などの任意の望ましくない不純物を除去することが望ましい場合もある。例えば、ガス状基質は、公知の方法を使用して濾過又は洗浄され得る。
【0186】
本開示の特定の実施形態では、微生物によって発酵されるガス状基質は、CO2及びH2を含むガス状基質である。CO2/H2含有基質は、工業プロセスの副産物として得られる廃ガスであってもよい。特定の実施形態では、工業プロセスは、水素生成からなる群から選択される。特定の実施形態では、CO2及びH2を含むガス状基質は、混合されたガス流であってもよく、ガス流の少なくとも一部は、1つ以上の工業プロセスから誘導され、CO2又はH2の少なくとも一部と混合されて、ガス状基質のCO2:H2比を最適化する。これは、CO2又はH2のいずれかが豊富な工業用ガス流にとって特に有益であり得る。CO2及びH2基質、又はCO2及びH2混合基質の供給源として使用することができる副産物ガス流を生成する工業プロセスの例としては、コークス製造、精製所プロセス、アンモニア生成プロセス、メタノール生成プロセス、酢酸生成、天然ガス精製所、及び発電所が挙げられる。
【0187】
細菌の増殖及び3-HPを含む産物へのガスの変換が起こるためには、CO及び/又はCO2含有基質ガスに加えて適切な液体栄養培地がバイオリアクターに供給される必要があることが理解されよう。基質及び培地は、連続的、バッチ又はバッチ供給様式でバイオリアクターに供給され得る。栄養培地は、使用される微生物の増殖を可能にするのに十分なビタミン及びミネラルを含有する。CO及び/又はCO2を使用して1つ以上の産物を産生させるための発酵に好適な嫌気性培地は、当技術分野において公知である。例えば、適切な培地はBiebel(2001)に記載されている。本開示の一実施形態では、培地は、本明細書の以下の実施例の節に記載されている通りである。
【0188】
発酵は、望ましくは、3-HPを含む産物へのガスの変換が起こるのを支援する、発酵に適した条件下で行われるべきである。考慮すべき反応条件は、圧力(又は分圧)、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のCO及び/又はCO2が制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、及び産物阻害を回避するための最大産物濃度を含む。
【0189】
加えて、基質流のCO及び/又はCO2濃度(又はガス状基質中のCO及び/又はCO2分圧)を増加させ、したがってCO及び/又はCO2が基質である発酵反応の効率を増加させることが望ましいことが多い。増加した圧力で操作することは、CO及び/又はCO2が、気相から、3-HPを含む産物を作製するための炭素源として微生物によって取り込まれ得る液相に移動する速度の有意な増加を可能にする。これは更に、バイオリアクター中の液体体積を入力ガス流量で除算したものとして定義される保持時間が、バイオリアクターが大気圧よりも上昇した圧力に維持されるときに減少され得ることを意味する。最適反応条件は、使用される本開示の特定の微生物に部分的に依存する。しかしながら、概して、周囲圧力より高い圧力で発酵を行うことが好ましい。また、所与のCO及び/又はCO2の少なくとも3-HPへの変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保持時間を達成することがバイオリアクターの必要な体積を更に示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの体積、及びその結果として発酵装置の資本コストを大幅に低減することができる。米国特許第5,593,886号に与えられた実施例によれば、反応器容積は、反応器操作圧力の増加に線形比例して減少させることができ、すなわち、10気圧で操作されるバイオリアクターは、1気圧で操作されるバイオリアクターの容積の10分の1しか必要としない。
【0190】
例として、高圧でガスからエタノールへの発酵を行う利点が記載されている。例えば、国際公開第02/08438号は、30psig及び75psigの圧力下で行われたガスからエタノールへの発酵を記載しており、それぞれ150g/l/日及び369g/l/日のエタノール多産性を与える。しかしながら、大気圧で同様の培地及び投入ガス組成を使用して実施された例示的な発酵は、1日当たり1リットル当たり10~20倍少ないエタノールを産生することが見出された。
【0191】
CO及び/又はCO2含有ガス状基質の導入速度は、液相中のCO及び/又はCO2の濃度が制限的にならないことを確実にするようなものであることも望ましい。これは、CO及び/又はCO2制限条件の結果が、1つ以上の産物が培養物によって消費されることであり得るためである。
【0192】
発酵反応に供給するために使用されるガス流の組成は、その反応の効率及び/又はコストに有意な影響を及ぼし得る。例えば、O2は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減し得る。発酵の前又は後の発酵プロセスの段階における望ましくない又は不必要なガスの処理は、そのような段階に対する負荷を増加させ得る(ガス流がバイオリアクターに進入する前に圧縮される場合を含む産物に対して、不必要なエネルギーが、発酵において必要とされないガスを圧縮するために使用され得る)。したがって、望ましくない成分を除去し、望ましい成分の濃度を増加させるために、基質流、特に産業源から誘導される基質流を処理することが望ましい場合がある。
【0193】
特定の実施形態では、本開示の細菌の培養物は、水性培養培地中で維持される。好ましくは、水性培養培地は、最小嫌気性微生物増殖培地である。適切な培地は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,173,429号及び同第5,593,886号並びに国際公開第02/08438号に記載されており、本明細書の以下の実施例の節に記載されている。
【0194】
3-HP、又は3-HP及び/若しくは1つ以上の他の産物を含有する混合流は、分別蒸留又は蒸発、浸透気化、ガスストリッピング、及び例えば液液抽出を含む抽出発酵などの当技術分野で公知の方法によって発酵ブロスから回収することができる。
【0195】
本開示の特定の実施形態では、3-HP及び1つ以上の産物は、ブロスの一部分をバイオリアクターから連続除去し、微生物細胞をブロスから分離し(濾過により簡便に)、かつ1つ以上の産物をブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコールは、例えば、蒸留によって都合よく回収され得る。アセトンは、例えば、蒸留によって回収され得る。産生された任意の酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞は、好ましくは、発酵バイオリアクターに戻される。任意のアルコール及び酸が取り出された後に残存している無細胞透過液も、好ましくは、発酵バイオリアクターに戻される。追加の栄養素(ビタミンBなど)が、無細胞透過液に添加されて、栄養培地を補充した後に、バイオリアクターに戻され得る。
【0196】
また、活性炭への酢酸の吸着を増強するために、ブロスのpHが上記のように調整された場合、pHは、バイオリアクターに戻される前に、発酵バイオリアクター中のブロスのpHと同様のpHに再調整されるべきである。
【0197】
3-HPは、浸透気化、逆浸透、及び液体抽出技術を含むが、これらに限定されない任意の適切な方法論を使用して、発酵後に回収され得る。
【0198】
一実施形態は、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ及びマロン酸セミアルデヒドレダクターゼを含む外来性酵素の群をコードする核酸を含む、炭素源から3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)を産生することができる、組換えC1固定細菌を対象とする。
【0199】
ピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、及びアスパラギン酸デカルボキシラーゼを含む外来性酵素の群をコードする核酸を更に含み、この核酸は、プロモータに作動可能に連結されている、実施形態に記載の細菌。
【0200】
アラニンデヒドロゲナーゼ及び2,3-アラニンアミノムターゼを含む外来性酵素の群をコードする核酸を更に含み、この核酸は、プロモータに作動可能に連結されている、実施形態に記載の細菌。
【0201】
Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Clostridium aceticum、Clostridium formicoaceticum、Clostridium magnum、Butyribacterium methylotrophicum、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Eubacterium limosum、Moorella thermoacetica、Moorella thermautotrophica、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、Oxobacter pfennigii、及びThermoanaerobacter kivuiからなる群から選択される、一実施形態による細菌。
【0202】
C.ljungdahlii及びC.autoethanogenumからなる群から選択されるClostridium種である、一実施形態による細菌。
【0203】
アセチル-コエンザイムAカルボキシラーゼをコードする核酸を更に含み、この核酸は、細菌における発現のためにコドン最適化されている、一実施形態による細菌。
【0204】
アセチル-コエンザイムAカルボキシラーゼが、Clostridium、Metallosphaera、Sulfolobus、又はChloroflexus属のメンバーから誘導される、一実施形態による細菌。
【0205】
β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ及びマロン酸セミアルデヒドレダクターゼを含む外来性酵素の群をコードする核酸が、細菌における発現のためにコドン最適化されている、一実施形態による細菌。
【0206】
アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼを含む外来性酵素の群をコードする核酸を更に含み、核酸がプロモータに作動可能に連結されている、一実施形態による細菌。
【0207】
外来性酵素の群をコードする核酸が、1,3-プロパンジオールの産生を可能にする、一実施形態による細菌。
【0208】
アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、又はそれらの任意の組み合わせから選択される酵素をコードする遺伝子に少なくとも1つの破壊的変異を更に含む、一実施形態による細菌。
【0209】
3-HPが、アクリル酸、アクリロニトリル、塗料、紙、接着剤、織物、特殊コーティング、インク、超吸収性ポリマーポリアクリレート、1,3-プロパンジオール、溶媒、接着剤、化粧品、ポリトリメチレンテレフタレート、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、食品、飼料添加物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料に変換される、一実施形態による細菌。
【0210】
ガス状CO含有及び/又はCO2含有基質を、請求項1に記載の組換えC1固定細菌の培養物を培養培地中に含有するバイオリアクターに通して、細菌によりCO及び/又はCO2が3-HPに変換されるようにすることと、バイオリアクターから3-HPを回収することと、を含むプロセスである、CO及び/又はCO2を3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)に変換する方法。
【0211】
細菌を、ガス状炭素源を含む培地中で増殖させることを含み、炭素源がCO及び/又はCO2を含む、一実施形態に記載の細菌を培養する方法。
【0212】
細菌を、エネルギー源を含む培地中で増殖させることを含み、エネルギー源がCO及び/又はCO2を含む、一実施形態に記載の細菌を培養する方法。
【0213】
培養が、偏性嫌気性である、一実施形態に記載の方法。
【0214】
培養が、偏性嫌気性である、一実施形態に記載の方法。
【0215】
炭素源が、産業廃棄物又はオフガスを含む、一実施形態に記載の方法。
【0216】
エネルギー源が、産業廃棄物又はオフガスを含む、一実施形態に記載の方法。
【0217】
3-HPが、アクリル酸、アクリロニトリル、塗料、紙、接着剤、織物、特殊コーティング、インク、超吸収性ポリマーポリアクリレート、1,3-プロパンジオール、溶媒、接着剤、化粧品、ポリトリメチレンテレフタレート、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、食品、飼料添加物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料に変換される、一実施形態による方法。
【0218】
3-HPが、アクリル酸、アクリロニトリル、塗料、紙、接着剤、織物、特殊コーティング、インク、超吸収性ポリマーポリアクリレート、1,3-プロパンジオール、溶媒、接着剤、化粧品、ポリトリメチレンテレフタレート、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、食品、飼料添加物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料に変換される、一実施形態による方法。
【実施例】
【0219】
以下の実施例は、本開示の方法及び組成物を更に例示するが、いかなる方法によってもその範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【0220】
この研究では、アスパラギン酸-1-デカルボキシラーゼ(PAND)、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(BAPAT)、γ-アミノブチル酸トランスアミナーゼ(GABT)、マロン酸セミアルデヒドレダクターゼ(MSR)、2,3-アラニンアミノムターゼ(AAM)、アラニントランスアミナーゼ(AT)、及びアラニンデヒドロゲナーゼ(ALADH)のコンビナトリアル分析をC1固定細菌において実施して、3-HPの選択性及び産生を改善した。3-HP生合成経路及び以下の実施例において異種発現された遺伝子は、
図1において強調されている。
【0221】
実施例1.Schottボトル中のC.autoethanogenumの3-HP耐性
3-HPは、Synechococcus elongatusなどの微生物に対して毒性であり、最小阻害濃度が180mg/Lであることが示されている(Begemann et al.,PLoS One.2013;8:e76594)。C.autoethanogenumの独立栄養増殖に対する3-HPの毒性を研究するために、3-HPチャレンジ実験(0、0.2、0.5、1、2、5及び10g/Lにて)を、合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2、及び10%のN
2)を伴うSchottボトルにて、アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(AOR)酵素を欠失させた株を用いて、行った(
図2)。非チャレンジ培養物と比較して、5g/Lの3-HPは、増殖速度を低下させ、ピークOD
600nmを22%低下させた。10g/Lの3-HPでは、40%のピークOD
600nmの減少が観察され、増殖速度のより顕著な減少を伴った。
図2Aは、増殖プロファイルを示す。
図2Bは、ピークバイオマスを示す。Unc=未チャレンジ;N=2;エラーバー=S.D。
【0222】
実施例2.C.autoethanogenumにおける外部から添加された3-HPの1,3-プロパンジオール(1,3-PDO)への変換
C.autoethanogenumのゲノムは、2つのAOR酵素バリアントをコードし、それらは、ある範囲のカルボン酸(プロパン酸及び酪酸を含む)を対応するアルデヒドに還元し、その後、天然アルコールデヒドロゲナーゼ活性がアルコールをもたらすことが示された(Liew et al.,Metabolic Engineering.2017:104-114)。C.autoethanogenumが、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドを介して3-HPを1,3-プロパンジオール(1,3-PDO)に変換することができるかを試験するために、外来性3-HPをC.autoethanogenumの増殖培地へ25mM(2.25g/L)の濃度で添加し、Schottボトル中で独立栄養増殖に供した。
図3に示されるように、C.autoethanogenumの野生型(wild-type、WT)株は、同様のモル濃度で、添加された3-HPの一部を1,3-PDOに変換することができる。対照的に、aor欠失株は、同じ増殖条件下でいかなる1,3-PDOも生成することができなかった。
【0223】
実施例3. 3-HP経路のコンビナトリアル分析
3-HPの生合成のための最適なフラックス及び遺伝子バリアントを決定するために、ゴールデンゲート(GG)法を用いた3-HP経路遺伝子及びプロモータのコンビナトリアルアセンブリを、C1利用微生物への形質転換の前にEscherichia coliにおいて最初に実施した(
図4)。アセンブリのスクリーニングを容易にするために、ゴールデンゲート部位GG1及びGG6に隣接するccdBトキシン-抗トキシン対抗選択マーカーを、最初にClostridium-E.coliシャトルベクターpMTL8225にクローニングした(Heap,J Microbiol Methods,78:79-85,2009)。これらのシャトルベクターは、プレクローニングされたクロストリジウムプロモータ(
図4においてP
1として示される)及びターミネーター(
図4においてT
3として示される)を有する。アスパラギン酸-1-デカルボキシラーゼ(PAND)、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(BAPAT)、γ-アミノブチル酸トランスアミナーゼ(GABT)、マロン酸セミアルデヒドレダクターゼ(MSR)、及び2,3-アラニンアミノムターゼ(AAM)をコードする遺伝子を、2つのドナーベクター(ターミネーター及びプロモータを提供するpDonor2及びpDonor4)とともに、GGアセンブリのためにシャトルベクターに加えた。プロモータ配列。ゴールデンゲート部位及びアセンブリワークフローは、Karim et al.Synthetic Biology.2020;5(1):ysaa019に記載されている。ermB抗生物質選択マーカーを有する得られたコンビナトリアルプラスミドは、隔離された様式でMSR、PAND/AAM、及びBAPAT/GABTの各々を発現するためのプロモータ及びターミネーターを有する。コンビナトリアル解析に含まれた遺伝子バリアント(7xMSR(配列番号1~7)、5xPAND(配列番号8~12)、4xBAPAT/GABT(配列番号13~16)、及び2xAAM(配列番号17~18)を表2に示す。遺伝子当たり3つのクロストリジウムプロモータの選択と組み合わせた場合、このコンビナトリアルライブラリーの全順列は5292(3×7×3×7×3×4から)である。
【0224】
【0225】
E.coliにおけるコンビナトリアルプラスミドのアセンブリ効率性を決定するため、並びにプロモータ及び遺伝子バリアントの組み合わせを調査するために、192個のプラスミドを、形質転換されたE.coli株NEB10-βから抽出し、配列決定に供した。配列決定結果の分析は、99%のアセンブリ率を示し、使用された全てのプロモータ及び遺伝子バリアントは、有意なバイアスなしで表された。これらの配列検証されたコンビナトリアルプラスミドのC.autoethanogenumへの形質転換後、合計111個のコンビナトリアル株を12ウェルプレート中での独立栄養増殖に供した。
【0226】
増殖実験を、2mLの最少培地及び200kPaの合成ガスミックス(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2、及び10%のN
2)を含む12ウェルプレート中、37℃で8日間実施した(
図5A~
図5C)。次いで、バイオマス測定及びLC-MS分析のためにブロス試料を採取して、3-HP力価を決定した。
【0227】
8日間のインキュベーション後、3-HPコンビナトリアル株は、0.5~1.2gのDCW/Lのバイオマス濃度に達した(
図5B)。これらの111個のコンビナトリアル株のうち、33個の株が1mg/L超の3-HPを産生した。7個の株は、10mg/Lを超える3-HPを産生した(17mg/Lが最も高かった)(
図5A)。上位20個の3-HP産生株の遺伝子型を表3に示す。バイオマス濃度によって正規化した3-HP力価を
図5Cに示す。
【0228】
【0229】
18個の3-HPコンビナトリアル株を、150kPaの合成ガスミックス(50%のCO、10%のH
2、30%のCO
2、及び10%のN
2)の存在下、37℃で14日間、10mL最少培地を含む250mLのSchottボトル中での独立栄養増殖に更に供し、バイオマス測定及び3-HP分析のために定期的にサンプリングした。WT対照におけるわずか0.23±0.02mg/Lの3-HPと比較して、24.09±7.95mg/Lまでの3-HPがこれらのコンビナトリアル株において検出された(
図6)。
【0230】
実施例4.CSTRにおける合成ガス発酵からの3-HP及び1,3-PDO産生
3-HPコンビナトリアル株「A59B」、「B2A」、及び「A63B」(表3)を、バッチモード下でCSTRにおいて特徴付けて、それらの3-HP産生をWTC.autoethanogenumと比較した。大気圧で、合成ガスブレンド(50%のCO、10%のH2、30%のCO2、及び10%のN2)を含む2LのCSTR用の接種菌液として、Schottボトルからの活発に増殖している(初期指数関数的)培養物を使用した。3-HPコンビナトリアル株「A59B」(表3)もまた、連続モード下で、CSTRにおいて特徴付けられた。
【0231】
A59B株は、3.8gのDCW/Lのピークバイオマス濃度を達成し(
図7A)、3260mmol/L/dのピークCO取り込みに達した(
図7B)。50g/Lのピークエタノール濃度に加えて(
図7A)、この株は、278.5mg/Lのピーク3-HP力価及び99.5mg/Lのピーク1,3-PDO力価に達した(
図7C)。
【0232】
B2A株は、2.7gのDCW/Lのピークバイオマス濃度まで増殖し(
図8A)、2497mmol/L/dのピークCO取り込みを達成したが(
図8B)、16.6g/Lの最大エタノール力価を生じた(
図8A)。定常増殖期において、144.2mg/Lのピーク3-HP力価及び148mg/Lのピーク1,3-PDO力価は、それぞれLC-MS及びGC-MSを用いて測定された(
図8C)。
【0233】
A63B株は、1.3gのDCW/Lのピークバイオマス濃度を達成し(
図9A)、880mmol/L/dのピークCO取り込みに達した(
図9B)。低いピークCOガス取り込みにもかかわらず、この株は、23.5g/Lの最大エタノール力価(
図9A)、99.2mg/Lのピーク3-HP力価、及び40.2mg/Lのピーク1,3-PDO濃度(
図9C)を産生することができた。
【0234】
A59B株を使用する連続CSTR条件下で、0.5/日の希釈(D)速度を1.2日目に開始した後、2.2日目に0.75/日のDに増加させ、最終的に3.9日目~12日目の間に1/日のDに到達した。バイオマス濃度は4.6gのDCW/Lのピーク濃度まで蓄積し(
図10A)、COガス取り込みは、3574mmol/L/dのピークに達した(
図10B)。1/日のDへの切り替えに続いて、この株は、5日目に358mg/L/dの3-HP及び7日目に82.2mg/L/dの1,3-PDOのピーク多産性を達成した(
図10C)。
【0235】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が、あたかも参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における任意の先行技術への言及は、その先行技術が任意の国の努力傾注分野において共通の一般知識の一部をなすという認識ではなく、そのように解釈されるべきではない。
【0236】
本開示を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示語の使用は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに相反することがない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるものとする。「備える(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、別段の断りのない限り、非限定的な用語(すなわち、「を含むがこれらに限定されない」ことを意味する)と解釈されるものとする。「から本質的になる」という用語は、組成物、プロセス、又は方法の範囲を、特定の材料、又はステップ、又は組成物、プロセス若しくは方法の基本的及び新規の特性に実質的に影響しないものに限定する。選択詞の使用(例えば、「又は」)は、選択詞のいずれか1つ、両方、又はこれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別段の指示がない限り、指示された範囲、値、又は構造の±20%を意味する。
【0237】
本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内に入る各個々の値を個々に言及する省略法としての役割を果たすことを単に意図し、各個々の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。例えば、任意の濃度範囲、パーセント範囲、比率範囲、整数範囲、サイズ範囲、又は厚さ範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合、その分数(整数の10分の1、及び100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0238】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と別段明らかに相反することがない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例又は例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く解明することを単に意図し、別段の主張がない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書におけるいかなる言葉も、本開示の実践に不可欠な任意の請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0239】
本開示の実施形態が本明細書に記載される。それらの実施形態の変化形は、上記の説明を読むことによって当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変化形を採用することを予想し、本発明者らは、本開示が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実践されることを意図する。したがって、本開示は、適用法によって許可された通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正物及び同等物を含む。更に、その全ての考えられる変化形における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と別段明らかに相反することがない限り、本開示によって包含される。
【配列表】
【国際調査報告】