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特表2023-5404172,3,6-トリメチルフェノールの光酸化
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  • 特表-2,3,6-トリメチルフェノールの光酸化 図1a
  • 特表-2,3,6-トリメチルフェノールの光酸化 図1b
  • 特表-2,3,6-トリメチルフェノールの光酸化 図2a
  • 特表-2,3,6-トリメチルフェノールの光酸化 図2b
  • 特表-2,3,6-トリメチルフェノールの光酸化 図2c
  • 特表-2,3,6-トリメチルフェノールの光酸化 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】2,3,6-トリメチルフェノールの光酸化
(51)【国際特許分類】
   C07C 46/08 20060101AFI20230915BHJP
   C07C 50/02 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C07C46/08
C07C50/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566019
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2021063446
(87)【国際公開番号】W WO2021234078
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】20175622.8
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(71)【出願人】
【識別番号】512154932
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート・バーゼル
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT BASEL
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】メドロック, ジョナサン アラン
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】スパール, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ブッフホルツ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミラディノフ, ドラガン
(72)【発明者】
【氏名】ウェルラウアー, ジョエル
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC44
4H006BA95
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC35
4H006BD81
4H006BE30
(57)【要約】
本発明は、2,3,5-トリメチルベンゾキノンを得るために、水及びアルコールの溶媒混合物中でメチレンブルーを光増感剤として使用し、可視スペクトルの長波長領域の光を使用して、2,3,6-トリメチルフェノールを光酸化することに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の化合物から式(I)の化合物を製造する方法であって:
【化1】

酸素及び式(III):
【化2】

(式中、R、R8’、R8’’、及びR8’’’は、互いに独立に、H若しくはC1~4アルキル基のいずれかを表すか;
又は
とR8’及び/若しくはR8’’とR8’’’がNと一緒になって5又は6員環を形成しており;
但し、R基、R8’基、R8’’基、及びR8’’’基の少なくとも1つはHではなく;
は、陰イオンを表す)の光増感剤を、
水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物中で使用し、
そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を使用して光酸化を行うことによる、方法。
【請求項2】
使用される光は、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が585~625nmの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用される光は、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が625~740nmの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光の80%超の波長が525~780nmの間にあり、好ましくは、放出される前記光の80%超の波長が525~700nmの間にあり、より好ましくは、前記光の65%超の波長が550~650nmの間にあることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒混合物は、水及びメタノール及び/又はエタノール及び/又はイソプロパノールの混合物であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水のC1~8アルカノール及びC2~4アルキレンジオールの総和に対する体積比は、1:10~1:1の範囲、特に1:5~1:2の範囲にあることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光の光源は、赤色又は橙色LEDランプであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光の光源は、500nm未満の波長、特に625nm未満の波長を遮断するフィルターを組み合わせた白色LEDランプであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
=R8’=R8’’=R8’’’=CHであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
は、ハロゲン化物、特に塩化物を表すことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記光酸化の開始時点における式(II)の化合物の濃度は、0.002~2.0mol/Lの範囲、好ましくは0.01~0.2mol/Lの範囲にあることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式(III)の化合物の式(II)の化合物に対する比率は、0.005~20mol%の範囲、好ましくは0.05~20mol%の範囲、より好ましくは0.2~10mol%の範囲にあることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記光酸化は、フロー型反応器、特に螺旋流反応器で実施されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、2,3,5-トリメチルベンゾキノンの調製、特に、2,3,6-トリメチルフェノールの光酸化の分野に関する。
【0002】
[発明の背景]
2,3,5-トリメチルベンゾキノンは、2,3,5-トリメチルヒドロキノン又はα-トコフェロールのそれぞれの製造における重要な中間体である。
【0003】
Murtinho D.et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.2,2000,2441-2447には、2,3,5-トリメチルフェノールを光増感剤の存在下に酸素を使用して光酸化することによって2,3,5-トリメチルベンゾキノンを得ることが提案されている。特に、アセトニトリル及びジクロロメタンの混合物中で1,5-ジヒドロキシナフタレンを得るための光増感剤として、メチレンブルーが開示されている。しかしながら、収率が78~82%と余り高くないことから、これに替えてポルフィリン型の光増感剤を使用することが提案されている。この種のポルフィリン化合物は、多少高価である上に、商業的に入手することが容易ではない。他方、アセトニトリルもジクロロメタンも、環境保護的及び環境毒性学的に不利益が大きな溶媒である。
【0004】
更に、フェノールを酸化することはナフトールを酸化することよりもはるかに難しいことが知られている。
【0005】
代替的な手法において、2,3,5-トリメチルベンゾキノンは、基本的には2,3,6-トリメチルフェノールを酸化することによっても得ることが可能である。
【0006】
メチレンブルーは光反応における光増感剤としてよく使用されており、様々な供給業者から商業的に入手することが容易である。
【0007】
[発明の概要]
したがって、本発明が解決しようとする課題は、2,3,6-トリメチルフェノールから2,3,5-トリメチルベンゾキノンを高収率及び高選択率で合成する効率の高い方法を提供することにある。
【0008】
驚くべきことに、請求項1に記載する光酸化が、この課題を解決する効率の高い方法を提供することが見出された。
【0009】
本発明においては、容易に入手可能であり、且つ費用対効果が高い、非常に魅力的な光増感剤であるメチレンブルーを使用することができ、高い転化率で収率が非常に高くなるのみならず、非常に高い選択率で所望の生成物を得ることができる。特に有利には、本方法は、塩素系溶媒の非存在下に実施することができる。したがって、前記方法は工業用途に非常に魅力的である。
【0010】
本発明の更なる態様は、他の独立請求項の主題である。特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0011】
[発明の詳細な説明]
本発明は、式(II)の化合物から式(I)の化合物を製造する方法であって:
【化1】

酸素及び式(III):
【化2】

(式中、R、R8’、R8’’、及びR8’’’は、互いに独立に、H若しくはC1~4アルキル基のいずれかを表すか;
又は
とR8’及び/若しくはR8’’とR8’’’がNと一緒になって5又は6員環を形成しており;
但し、R基、R8’基、R8’’基、及びR8’’’基の少なくとも1つはHではなく;
は、陰イオンを表す)の光増感剤を、
水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物中で使用し、
そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を使用して光酸化を行うことにより、式(II)の化合物から式(I)の化合物を製造する、方法に関する。
【0012】
明確にするために、本文書で使用されている幾つかの用語を以下のように定義する。
【0013】
本文書において、「Cx~yアルキル」基とは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基であり、即ち、例えば、C1~3アルキル基は、1~3個の炭素原子を含むアルキル基である。アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。例えば、-CH(CH)-CH-CHはCアルキル基とみなされる。
【0014】
同様に、Cx~yアルカノール又はCx~yアルキレンジオールは、それぞれ1個又は2個のOH基を有し、それぞれアルキル基又はアルキレン基を有する、x~y個の炭素原子を含むアルコールである。
【0015】
本文書において、複数の式中に、記号又は基に関する同じ添え字が存在する場合、1つの特定の式に関連してなされた前記基又は記号の定義は、同じ添え字を含む他の式にも適用される。
【0016】
ピーク波長とは、スペクトルの強度が最大となる波長である。
【0017】
前記方法においては、2,3,6-トリメチルフェノール(=式(II)の化合物)が光酸化されることにより、2,3,5-トリメチルベンゾキノン(=式(I)の化合物)が得られる。
【0018】
2,3,6-トリメチルフェノールは公知の化学物質であり、様々な供給業者から商業的に大量に入手することが可能である。
【0019】
この光酸化には、式(III):
【化3】

(式中、R、R8’、R8’’、及びR8’’’は、互いに独立に、H若しくはC1~4アルキル基のいずれかを表すか;
又は
とR8’及び/若しくはR8’’とR8’’’がNと一緒になって5又は6員環を形成しており;
但し、R基、R8’基、R8’’基、及びR8’’’基の少なくとも1つはHではなく;
は、陰イオンを表す)の光増感剤が使用される。
【0020】
一実施形態においては、RとR’及び/又はR8’’とR8’’’が一緒になって、-(CH-又は-(CH-NH-(CH-又は-(CH-N(C1~4アルキル)-(CH-又は-(CH-S-(CH-又は-(CH-O-(CH-を形成している。
【0021】
更に好ましくは、R=R8’’であり、及び/又はR8’=R8’’’である。より好ましくは、R=R8’=R8’’=R8’’’である。
【0022】
より好ましくは、置換基R、R8’、R8’’、及びR8’’’はC1~4アルキル基を表し、更に好ましくは、R=R8’=R8’’=R8’’’=メチル又はエチルである。
【0023】
最も好ましくは、R=R8’=R8’’=R8’’’=CHである。
【0024】
式(III)中、Xは陰イオンを表す。陰イオンの役割は、上式の角括弧([)(])内の部分として表されている陽イオンの電荷に対し電荷のバランスをとることにある。したがって、原則としてあらゆる陰イオンを使用することができる。
【0025】
式(III)中、Xは陰イオンを表す。陰イオンの役割は、上式の角括弧([)(])内の部分として表されている陽イオンの電荷に対し電荷のバランスをとることにある。したがって、原則としてあらゆる陰イオンを使用することができる。
【0026】
好ましくは、Xは、ハロゲン化物を表し、最も好ましくは、塩化物を表す。
【0027】
好ましくは、式(III)の化合物はメチレンブルーである。更に好ましくは、式(III)の化合物は、塩化亜鉛との複塩の形態にあり、特に、メチレンブルーと塩化亜鉛との複塩であるか、又は水和物の形態、好ましくはメチレンブルー水和物(CAS:122965-43-9)の形態にある。
【0028】
式(III)の光増感剤が式(II)の化合物の光酸化に特に適していることが見出された。
【0029】
上述の光酸化を行うためには、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を使用することが必須である。
【0030】
好ましい一実施形態においては、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が625~740nmの範囲にある光が使用される。これは、赤色として知覚される光に相当する。
【0031】
他のより好ましい実施形態においては、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が585~625nmの範囲にある光が使用される。これは橙色として知覚される光に相当する。
【0032】
この光は主として可視スペクトルの長波長領域にある光である。
【0033】
更なる好ましい実施形態において、使用される光は、光の80%超の波長が525~780nmの間、好ましくは、光の80%超の波長が525~700nmの間、より好ましくは、放出される光の65%超の波長が550~650nmの間にあることを特徴とする。
【0034】
したがって、580nm未満の波長の光を多く含まないスペクトルを持つ光を使用することが重要である。緑、青、及び紫色の光又はそのスペクトルに緑、青、及び紫を多く含む色の光は上述の光酸化に適していないことが見出されたことが極めて重要である。
【0035】
一実施形態において、光酸化に使用する光は、光源からの望ましくない波長の光をフィルターで除去することにより得ることができる。例えば、多色又は白色発光光源を、望ましくない光を遮断するフィルターを用いて選別することができる。
【0036】
公知の市販されているこの種のフィルターとして、光を選別するための様々な物理的方法を用いた吸収フィルター、ダイクロイックフィルター、単色フィルター、バンドパスフィルター、ショートパスフィルター、又はウェッジフィルターなど、様々な可能性がある。
【0037】
特に、吸収フィルター又はカットオフフィルターが有用である。
【0038】
図1aは、本実施形態の概略図である。光源(1)は、所望の波長(2a)及び望ましくない波長(2b)を有する様々な波長の光を発する。光源は、好ましくは白色光源、より好ましくは白色LEDである。フィルター(6)は、光源(1)と透明な壁部(4)を有する光反応器との間に配置されている。フィルター(6)は、望ましくない波長の光を除去することにより、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を供給する。フィルター(6)は、好ましくは「橙色フィルター」又は「赤色フィルター」、即ち、波長が585~625nmの間又は625~740nmの間にある光のみを透過させるフィルターである。光反応器(5)の中には、少なくとも、酸素及び式(II)の化合物及び水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物を含む反応混合物(3)が入れられている。
【0039】
光反応によって、式(II)の化合物が、酸素と、特に酸素を少なくとも20体積%含む気体混合物中で光化学的に反応することにより、式(I)の化合物が生成する。
【0040】
この実施形態の特定の好ましい例は、白色LEDである。その光は、所望の波長を有しない全ての光を遮断するか、又は少なくとも大部分を吸収するように選別される(例えば、「橙色フィルター」(585~625nmの間にある光のみを透過させる)又は「赤色フィルター」(625~740nmの間にある光のみを透過させる)を使用する)。
【0041】
したがって、その光の光源は、好ましくは白色LEDランプを、500nm未満、特に625nm未満の波長を遮断するフィルターと組み合わせたものである。
【0042】
更なる実施形態において、光酸化に使用される光は、所望の波長の光を放出する個別の光源によって生成することができる。
【0043】
図1bは、この実施形態の概略図である。光源(1)は、所望の波長(2a)の光を発することにより、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を供給する。光源は、好ましくは橙色又は赤色光源であり、より好ましくは、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光源を用いて光を供給するための橙色又は赤色LEDである。
【0044】
光反応器(5)の中には、少なくとも酸素及び式(II)の化合物及び水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物を含む反応混合物(3)が入れられている。光反応により、式(II)の化合物が酸素と光化学的に反応し、式(I)の化合物が生成する。
【0045】
この実施形態の光源の具体例としては、赤色LED又は赤色若しくは橙色レーザー、好ましくは赤色又は橙色LEDランプが挙げられる。赤色及び橙色LEDランプは商業的に広く入手可能である。赤色及び橙色LEDは高強度の赤色又は橙色光を供給することができる。好ましい実施形態においては、複数の個別のLEDが可撓性帯状体(flexible strip)に組み込まれている。それにより、例えば、透明な管状体などの湾曲した面の周囲に、前記帯状体を、好ましくは螺旋状に単に巻き付けるだけで、管状体の周囲に複数のLEDを確実に放射状方向に配置することが可能になる。
【0046】
光酸化は、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物中で実施される。
【0047】
1~8アルカノールは、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘプタノール、及びヘキサノールからなる群から選択され、より好ましくは、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選択される。
【0048】
2~4アルキレンジオールは、好ましくは、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、及びブタン-2,3-ジオールからなる群から選択され,好ましくはエタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、及びプロパン-1,3-ジオールからなる群から選択される。
【0049】
好ましくは、溶媒混合物は、均質な相を形成する、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの混合物である。
【0050】
好ましくは、溶媒混合物は、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの混合物である。より好ましくは、溶媒混合物は、水とC1~8アルカノールとの混合物である。
【0051】
より好ましくは、溶媒混合物は、水とメタノール及び/又はエタノール及び/又はイソプロパノールとの混合物である。
【0052】
好ましくは、水のC1~8アルカノール及びC2~4アルキレンジオールの総和に対する体積比は、1:10~1:1の範囲、特に1:5~1:2の範囲にある。
【0053】
非常に好ましい実施形態において、溶媒混合物は水及びメタノールの混合物であり、好ましくは水対メタノールの体積比は、1:20~1:2の範囲、好ましくは1:10~1:2の範囲、より好ましくは1:6~1:3の比の範囲にあり、最も好ましくは1:4である。
【0054】
本発明の重要な利点は、環境保護的及び環境毒性学的に非常に好ましく、経済的にも有利な溶媒である、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物中で光酸化が実施されることにある。したがって、上述の方法が塩素系溶媒の非存在下に実施されることは非常に好ましいことである。
【0055】
好ましくは、光酸化開始時点における式(II)の化合物の濃度は、0.002~2.0mol/lの範囲、好ましくは0.01~0.2mol/lの範囲にある。
【0056】
更に好ましくは、式(III)の化合物の式(II)の化合物に対する比率は、0.005~20mol%の範囲、好ましくは0.05~20mol%の範囲、より好ましくは0.2~10mol%の範囲にある。
【0057】
一実施形態において、酸素は、酸素及び不活性ガスを含む混合物の形態で使用される。好ましくは、酸素及び不活性ガスを含むこの種の混合物中の酸素の量は、少なくとも15体積%、特に少なくとも20体積%である。この種の混合物は、例えば、酸素/窒素混合物又は酸素/アルゴン混合物又はこれに類するものなどの二元混合物とすることができる。前記混合物は、2種以上の不活性ガスからなるか又は2種以上の不活性ガスを含むものであってもよい。特に好ましくは、酸素及び不活性ガスを含むこの種の混合物として空気が使用される。
【0058】
好ましい実施形態において、酸素は実質的に純粋な形態で使用される。即ち、気体中の酸素の量は、90%~100%、より好ましくは95%~100%、更に好ましくは99%~100%である。
【0059】
光酸化は、常圧下でも加圧下でも行うことができる。好ましくは、酸化は、加圧下で、特に2barを超え、好ましくは3barを超える圧力下、より好ましくは2~20barの間の圧力下で行われる。
【0060】
光酸化は好適な光反応器内で実施される。好ましい光反応器はフロー型反応器であり、特に螺旋流反応器(spiral flow reactor)である。
【0061】
個々の成分は、光反応器に別々に又は混合物として導入することができる。好ましくは、光反応器に流入させる前に反応混合物を調製しておく。
【0062】
好ましい実施形態の一つにおいては、酸素を含む溶媒混合物を、光反応器に流入させる前に式(II)の化合物と混合する。
【0063】
他の好ましい実施形態においては、溶媒混合物を光反応器に流入させる前に、既に酸素を含む式(II)の化合物と混合する。
【0064】
最も好ましい実施形態において、酸素は、少なくとも式(II)の化合物及び溶媒混合物を含む予備混合物に添加される。
【0065】
この反応は、好ましくは、酸素の圧力を適切な弁及びマスフローコントローラにより制御する方法で処理される。液体及び気体を使用して光反応を行うためのこの種のプロセス制御装置及び方法は当業者に知られている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1a】そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を生成するための光源及びフィルターを用いた光酸化の概略図を示す。
図1b】そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光源を用いた光酸化の概略図を示す。
図2a】一つの実験配置の概略図を示す。
図2b】異なる実験配置の概略図を示す。
図2c】他の異なる実験配置の概略図を示す。
図3】橙色フィルター及び白色光を使用する実験において光酸化に使用する光の規格化された発光スペクトルを示す。
【0067】
図2aに好ましい実験配置図の一つを示す。少なくとも式(II)の化合物及び式(III)の光増感剤及び水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物を含む予備混合物(10)を含む容器から光反応器(5)にポンプ(7)を用いて送液する。予備混合物が光反応器(5)に流入する前に酸素(11)を混合し、光酸化反応混合物(3)を形成する。混合する酸素の量はマスフローコントローラ(8)で調整する。直線状の管型光反応器(5)の透明な壁部(4)の周囲に、光源(1)を、特にLEDが螺旋状に整列するように配置する。光源(1)は、好ましくは白色LEDである。透明な壁部(4)と光源(1)との間にフィルター(6)を配置することにより、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光(2a)を供給することが可能になる。フィルター(6)は、具体的には、その光が持つスペクトルのピーク波長(λmax)がそれぞれ585~625nmの範囲又は625~740nmの範囲にある特定の光を供給するための橙色フィルター又は赤色フィルターである。光反応器(5)は、好ましくは、螺旋流反応器である。光反応器の出口には、生成物を回収する回収容器(12)の手前に背圧レギュレータ(9)が配置されている。
【0068】
この実験配置、特にこの光源及び光反応器の組合せは、好ましくは、より大量の光反応に使用される。
【0069】
図2bに他の好ましい実験配置図を示す。少なくとも式(II)の化合物及び式(III)の光増感剤及び水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物を含む予備混合物(10)を含む容器から光反応器(5)にポンプ(7)を用いて送液する。予備混合物が光反応器(5)に流入する前に酸素(11)を混合し、光酸化反応混合物(3)を形成する。混合する酸素の量はマスフローコントローラ(8)で調整する。
【0070】
光反応器(5)の透明な壁(4)と光源(1)、好ましくは白色LEDとの間にフィルター(6)が配置されることにより、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580及び780nmの範囲にある光(2a)を供給することが可能になる。本図面には、1つの光源(1)及び1つのフィルター(6)のみが示されている。当然のことながら、複数のこの種の光源(1)をフィルター(6)と組み合わせて、螺旋流反応器の形態にある光反応器(5)の周囲に配置することも可能であり、光反応器(5)全体を均等に照射できるように配置することが可能になる。フィルター(6)は、具体的には、その光が持つスペクトルのピーク波長(λmax)がそれぞれ585~625nmの範囲又は625~740nmの範囲にある特定の光を供給するための橙色フィルター又は赤色フィルターである。望ましくない波長(2b)を有する光はフィルター(6)で遮断される。光反応器の出口には、最終的に生成物を回収する回収容器(12)の手前に背圧レギュレータ(9)が配置されている。
【0071】
この実験配置、特にこの光源及び光反応器の組合せは、好ましくは、より少量の光反応に使用される。
【0072】
図2cに他の好ましい実験配置図を示す。少なくとも式(II)の化合物及び式(III)の光増感剤及び水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物を含む予備混合物(10)を含む容器から光反応器(5)にポンプ(7)を用いて送液する。予備混合物が光反応器(5)に流入する前に酸素(11)を混合し、光酸化反応混合物(3)を形成する。混合する酸素の量はマスフローコントローラ(8)で調整する。
【0073】
この実施形態において、好ましくは白色LEDである光源(1)は、螺旋流反応器(5)を螺旋状に巻くことにより形成される空洞の空間に配置されている。光源(1)の周囲、即ち、光反応器(5)の透明な壁部(4)と光源(1)との間にフィルター(6)が配置されており、それによって、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの間にある光(2a)を供給することが可能になる。フィルター(6)は、具体的には、その光が持つスペクトルのピーク波長(λmax)がそれぞれ585~625nmの範囲又は625~740nmの範囲にある特定の光を供給するための橙色フィルター又は赤色フィルターである。望ましくない波長(2b)を有する光はフィルター(6)で遮断される。光反応器の出口には、最終的に生成物を回収する回収容器(12)の手前に背圧レギュレータ(9)が配置されている。
【0074】
この実験配置、特にこの光源及び光反応器の組合せは、好ましくは、より少量の光反応に使用される。
【0075】
更なる実施形態においては、図2b)及び2c)の光源(1)及びフィルター(6)を組み合わせる。換言すれば、フィルター及び光源を光反応器の壁部の外側に配置し、螺旋流光反応器(5)を螺旋状に巻くことにより形成される空間の内側にも外側にも配置することが可能である。
【0076】
[実施例]
本発明を以下の実験により更に説明する。
【0077】
[実験配置]
以下に示す実験及び実験配置は、図2cに概略的に図示したものを用いた。
【0078】
溶媒又は溶媒混合物及び光酸化しようとする物質に加えて光増感剤を含む予備混合物(10)を含む容器から、螺旋流反応器(4.6mLのコイル型反応器)である光反応器(5)にポンプ(7)を用いて送液する。予備混合物が光反応器(5)に流入する前に酸素(11)を混合し、光酸化反応混合物(3)を形成する。混合する酸素の量はマスフローコントローラ(8)で調整する。光源(1)である白色LED(4000lm、32W、4100K)の光(LSo;発光スペクトルは図3参照)は、所望の波長(2a)を有する光が光反応器(5)の透明な壁部(4)に当たるように、望ましくない波長(2b)の光を遮断するための橙色フィルター(6)により選別される。送風機で冷却されているLEDランプ(1)が円筒ガラスに囲まれており、この円筒ガラスを内側にして、光反応器(5)がその上に巻き付けらており、LEDランプと光反応器(5)の壁部との間に各フィルター(6)が備えられている。光反応器の出口には、最終的に生成物を回収する回収容器(12)の手前に背圧レギュレータ(9)が配置されている。酸素の圧力及び流量並びに滞留時間(t)は各実験毎に指定する。
【0079】
生成物の生成量は、GC-FID及びデュレンを内部標準として使用するH-NMRによって求める。
【0080】
光酸化実験に使用する光は、
-白色LED光(LSw)
-橙色フィルターを用いた白色LED光(LSo)
のいずれかとする。
【0081】
図3は、光酸化実験に使用する、波長が325~700nmの間にある光のスペクトルを、光反応器の透明な壁部に入射する光の規格化された相対強度(Ie,norm)を用いて示したものである。
【0082】
[実験系列1]
第1系列では、35℃で、空気(10bar、1.35mL/分)及びメチレンブルー(0.9mol%)を使用し、様々な基質(メタノール/水の4/1(vol/vol)溶媒混合物中0.02mol/L)を光酸化した(流速0.25mL/分、t=23分)。
【0083】
結果を表1にまとめる。
【0084】
【表1】
【0085】
表1の結果から、この条件下では、2,3,6-トリメチルフェノールは、他のフェノール系化合物と比較して、所望の生成物に変換される量がはるかに多いことが分かる。
【0086】
[実験系列2]
第2系列では、35℃で、空気(10bar、0.25~1.35mL/分)及びメチレンブルー(0.9mol%)を使用して、様々な基質(メタノール/水の4/1(vol/vol)溶媒混合物中0.02mol/L)を光酸化した。滞留時間は転化率が99%を超えるように選択した。
【0087】
結果を表2にまとめる。
【0088】
【表2】
【0089】
表2から、光酸化の出発物質(基質)として2,3,6-トリメチルフェノールを用いると、類似の構造を有する他のフェノールを用いた場合と比較して、対応するキノン(生成物)の収率がはるかに高くなることが分かる。
【符号の説明】
【0090】
1 光源
2a 所望の波長の光
2b 望ましくない波長の光
3 光酸化反応混合物
4 光反応器の透明な壁部
5 光反応器
6 フィルター
7 ポンプ
8 マスフローコントローラ
9 背圧レギュレータ
10 予備混合物
11 酸素
12 回収容器
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3
【国際調査報告】