(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】核酸の脱塩基部位を検出するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20230915BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20230915BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230915BHJP
【FI】
C12Q1/68 100Z
C12Q1/34 ZNA
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580777
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 US2021049722
(87)【国際公開番号】W WO2022056169
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】マオ,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ランドール
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QR10
4B063QR32
4B063QR41
4B063QX02
(57)【要約】
脱塩基部位を検出するための方法が提供される。方法は、基材に結合された複数のオリゴヌクレオチドを有する基材上に溶液を流すことを含み得る。オリゴヌクレオチドの少なくとも1つは、脱塩基部位を含む。溶液は、反応性基に結合されたフルオロフォアを含み得る。方法は、反応性基を脱塩基部位と反応させて、フルオロフォアを脱塩基部位に結合させ、フルオロフォアからの蛍光を使用して脱塩基部位を検出することを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱塩基部位を検出するための方法であって、
基材上に結合された複数のオリゴヌクレオチドを有する基材上に溶液を流す工程であって、
前記オリゴヌクレオチドの少なくとも1つは、脱塩基部位を含み、
前記溶液は、反応性基に結合されたフルオロフォアを含む、溶液を流す工程と、
前記反応性基を前記脱塩基部位と反応させて、前記フルオロフォアを前記脱塩基部位に結合させる工程と、
前記フルオロフォアからの蛍光を使用して前記脱塩基部位を検出する工程と、
を含む、脱塩基部位を検出するための方法。
【請求項2】
前記脱塩基部位が、前記オリゴヌクレオチドへの損傷によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基が、前記脱塩基部位に結合されたそれぞれの前記フルオロフォアからの非放射エネルギー散逸を阻害する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フルオロフォアが、回転可能なC-C結合によって分離されたπ共役構成要素を含む分子ロータ色素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基が、前記C-C結合の回転を制限し、前記π共役構成要素を互いに整列させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応性基に結合された前記分子ロータ色素が、9-(2-カルボキシ-2-シアノビニル)-ジュロリジン(CCVJ1)、(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1,2-ジメチル-1-H-イミダゾール-5(4H)-オン(DFHBI)、及び1-メチル-4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]キドリミウム(チアゾールオレンジ)からなる群から選択される、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応性基に結合された前記フルオロフォアが、
【化1】
からなる群から選択され、式中、Xはリンカーであり、Zは前記反応性基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記脱塩基部位がアルデヒドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応性基がヒドロキシルアミン基を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応性基がヒドラジン基を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応性基を前記脱塩基部位と反応させることが、オキシム結合を形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
組成物であって、
複数のオリゴヌクレオチドが結合された基材と、
脱塩基部位を含む、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも1つと、
前記脱塩基部位に結合されたフルオロフォアであって、前記脱塩基部位が、前記フルオロフォアからの蛍光を使用して検出可能である、フルオロフォアと、
を含む、組成物。
【請求項13】
前記脱塩基部位が、前記オリゴヌクレオチドへの損傷によって生成される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基が、前記脱塩基部位に結合されたそれぞれの前記フルオロフォアからの非放射エネルギー散逸を阻害する、請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記フルオロフォアが、回転可能なC-C結合によって分離されたπ共役構成要素を含む分子ロータ色素を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基が、前記C-C結合の回転を制限し、前記π共役構成要素を互いに整列させる、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記反応性基に結合された前記分子ロータ色素が、9-(2-カルボキシ-2-シアノビニル)-ジュロリジン(CCVJ1)、(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1,2-ジメチル-1-H-イミダゾール-5(4H)-オン(DFHBI)、及び1-メチル-4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]キドリミウム(チアゾールオレンジ)からなる群から選択される、請求項15又は請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記反応性基に結合された前記フルオロフォアが、
【化2】
からなる群から選択され、式中、Xはリンカーであり、Zは前記反応性基である、請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記脱塩基部位がアルデヒドを含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記反応性基がヒドロキシルアミン基を含む、請求項13~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記反応性基がヒドラジン基を含む、請求項13~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記反応性基を前記脱塩基部位と反応させることが、オキシム結合を形成する、請求項13~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
方法であって、
(i)グリコシラーゼと、(ii)オリゴヌクレオチドと、(iii)反応性基に結合されたフルオロフォアと、を含む溶液を調製する工程と、
前記グリコシラーゼを使用して、前記溶液中の前記オリゴヌクレオチド中に脱塩基部位を生成する工程と、
前記反応性基を前記脱塩基部位と反応させて、前記フルオロフォアを前記脱塩基部位に結合させる工程と、
前記脱塩基部位に結合された前記フルオロフォアからの蛍光を使用して前記グリコシラーゼの活性を測定する工程と、
合成による配列決定操作において前記グリコシラーゼを使用する工程と、
を含む、方法。
【請求項24】
前記脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基が、前記脱塩基部位に結合されたそれぞれの前記フルオロフォアからの非放射エネルギー散逸を阻害する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記フルオロフォアが、回転可能なC-C結合によって分離されたπ共役構成要素を含む分子ロータ色素を含む、請求項23又は請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基が、前記C-C結合の回転を制限し、前記π共役構成要素を互いに整列させる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記反応性基に結合された前記分子ロータ色素が、9-(2-カルボキシ-2-シアノビニル)-ジュロリジン(CCVJ1)、(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1,2-ジメチル-1-H-イミダゾール-5(4H)-オン(DFHBI)、及び1-メチル-4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]キドリミウム(チアゾールオレンジ)からなる群から選択される、請求項25又は請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記反応性基に結合された前記フルオロフォアが、
【化3】
からなる群から選択され、式中、Xはリンカーであり、Zは前記反応性基である、請求項23又は請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記脱塩基部位がアルデヒドを含む、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記反応性基がヒドロキシルアミン基を含む、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記反応性基がヒドラジン基を含む、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記反応性基を前記脱塩基部位と反応させることが、オキシム結合を形成する、請求項23~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
グリコシラーゼ活性を測定するための溶液であって、
(i)グリコシラーゼと、(ii)オリゴヌクレオチドと、(iii)反応性基に結合されたフルオロフォアと、を含み、
前記オリゴヌクレオチドは、前記溶液中の前記グリコシラーゼによって生成される脱塩基部位を含み、
前記フルオロフォアは、前記脱塩基部位に結合されており、
前記脱塩基部位は、前記フルオロフォアからの蛍光を使用して検出可能である、
グリコシラーゼ活性を測定するための溶液。
【請求項34】
前記脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基が、前記脱塩基部位に結合されたそれぞれの前記フルオロフォアからの非放射エネルギー散逸を阻害する、請求項33に記載の溶液。
【請求項35】
前記フルオロフォアが、回転可能なC-C結合によって分離されたπ共役構成要素を含む分子ロータ色素を含む、請求項33又は請求項34に記載の溶液。
【請求項36】
前記脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基が、前記C-C結合の回転を制限し、前記π共役構成要素を互いに整列させる、請求項35に記載の溶液。
【請求項37】
前記反応性基に結合された前記分子ロータ色素が、9-(2-カルボキシ-2-シアノビニル)-ジュロリジン(CCVJ1)、(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1,2-ジメチル-1-H-イミダゾール-5(4H)-オン(DFHBI)、及び1-メチル-4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]キドリミウム(チアゾールオレンジ)からなる群から選択される、請求項35又は請求項36に記載の溶液。
【請求項38】
前記反応性基に結合された前記フルオロフォアが、
【化4】
からなる群から選択され、式中、Xはリンカーであり、Zは前記反応性基である、請求項33又は請求項34に記載の溶液。
【請求項39】
前記脱塩基部位がアルデヒドを含む、請求項33~38のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項40】
前記反応性基がヒドロキシルアミン基を含む、請求項33~39のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項41】
前記反応性基がヒドラジン基を含む、請求項33~39のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項42】
前記反応性基を前記脱塩基部位と反応させることが、オキシム結合を形成する、請求項33~41のいずれか一項に記載の溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年9月11日に出願された「Compositions and Methods for Detecting an Abasic Site」と題された米国仮特許出願第63/077,119号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年9月7日に作成された当該ASCIIコピーの名称はIP-2017-PCT_SL.txtであり、サイズは752バイトである。
【背景技術】
【0003】
クラスタ増幅は、例えば、遺伝子配列決定における使用のためのポリヌクレオチドを増幅するためのアプローチである。標的ポリヌクレオチドは、フローセル内の基材表面に結合されたオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、P5及びP7プライマー)によって捕捉され、表面上のランダムな場所に「シード」を形成する。増幅サイクルを実行して、例えば、「架橋増幅」を使用して、各シードの周りの表面上のアンプリコンのクラスタを形成する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で提供される実施例は、脱塩基部位を検出することに関する。そのような検出を行うための組成物及び方法が開示される。
【0005】
本明細書のいくつかの例では、脱塩基部位を検出する方法が提供される。方法は、基材に結合された複数のオリゴヌクレオチドを有する基材上に溶液を流すことを含み得る。オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、脱塩基部位を含み得る。溶液は、反応性基に結合されたフルオロフォアを含み得る。方法は、反応性基を脱塩基部位と反応させて、フルオロフォアを脱塩基部位に結合させ、フルオロフォアからの蛍光を使用して脱塩基部位を検出することを含み得る。
【0006】
いくつかの例では、脱塩基部位は、オリゴヌクレオチドへの損傷によって生成される。
【0007】
いくつかの例では、脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基は、脱塩基部位に結合されたそれぞれのフルオロフォアからの非放射エネルギー散逸を阻害し得る。
【0008】
いくつかの例では、フルオロフォアは、回転可能なC-C結合によって分離されたπ共役構成要素を含む分子ロータ色素を含み得る。いくつかの例では、脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基は、C-C結合の回転を制限し得、π共役構成要素を互いに整列させることができる。
【0009】
いくつかの例では、反応性基に結合された分子ロータ色素は、9-(2-カルボキシ-2-シアノビニル)-ジュロリジン(CCVJ1)、(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1,2-ジメチル-1-H-イミダゾール-5(4H)-オン(DFHBI)、及び1-メチル-4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]キドリミウム(チアゾールオレンジ)からなる群から選択される。
【0010】
いくつかの例では、反応性基に結合されたフルオロフォアは、
【0011】
【化1】
からなる群から選択され、式中、Xはリンカーであり、Zは反応性基である。
【0012】
いくつかの例では、脱塩基部位はアルデヒドを含む。いくつかの例では、反応性基は、ヒドロキシルアミン基を含む。いくつかの例では、反応性基はヒドラジン基を含む。いくつかの例では、反応性基を脱塩基部位と反応させることは、オキシム結合を形成する。
【0013】
本明細書のいくつかの例では、組成物が提供される。組成物は、基材に結合された複数のオリゴヌクレオチドを有する基材を含み得る。オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、脱塩基部位を含み得る。組成物は、脱塩基部位に結合されたフルオロフォアを含み得る。脱塩基部位は、フルオロフォアからの蛍光を使用して検出可能であり得る。
【0014】
いくつかの例では、脱塩基部位は、オリゴヌクレオチドへの損傷によって生成される。
【0015】
いくつかの例では、脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基は、脱塩基部位に結合されたそれぞれのフルオロフォアからの非放射エネルギー散逸を阻害する。
【0016】
いくつかの例では、フルオロフォアは、回転可能なC-C結合によって分離されたπ共役構成要素を含む分子ロータ色素を含み得る。いくつかの例では、脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基は、C-C結合の回転を制限し、π共役構成要素を互いに整列させる。いくつかの例では、反応性基に結合された分子ロータ色素は、9-(2-カルボキシ-2-シアノビニル)-ジュロリジン(CCVJ1)、(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1,2-ジメチル-1-H-イミダゾール-5(4H)-オン(DFHBI)、及び1-メチル-4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]キドリミウム(チアゾールオレンジ)からなる群から選択される。
【0017】
いくつかの例では、反応性基に結合されたフルオロフォアは、
【0018】
【化2】
からなる群から選択され、式中、Xはリンカーであり、Zは反応性基である。
【0019】
いくつかの例では、脱塩基部位はアルデヒドを含む。いくつかの例では、反応性基は、ヒドロキシルアミン基を含む。いくつかの例では、反応性基はヒドラジン基を含む。いくつかの例では、反応性基を脱塩基部位と反応させることは、オキシム結合を形成する。
【0020】
本明細書のいくつかの例では、方法が提供される。方法は、(i)グリコシラーゼと、(ii)オリゴヌクレオチドと、(iii)反応性基に結合されたフルオロフォアと、を含む溶液を調製することを含み得る。方法は、溶液中のオリゴヌクレオチド中のグリコシラーゼ、脱塩基部位を使用して生成することを含み得る。方法は、反応性基を脱塩基部位と反応させて、フルオロフォアを脱塩基部位に結合することを含み得る。方法は、脱塩基部位に結合されたフルオロフォアからの蛍光を使用して、グリコシラーゼの活性を測定することを含み得る。この方法は、合成による配列決定操作においてグリコシラーゼを使用することを含み得る。
【0021】
いくつかの例では、脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基は、脱塩基部位に結合されたそれぞれのフルオロフォアからの非放射エネルギー散逸を阻害し得る。
【0022】
いくつかの例では、フルオロフォアは、回転可能なC-C結合によって分離されたπ共役構成要素を含む分子ロータ色素を含み得る。いくつかの例では、脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基は、C-C結合の回転を制限し得、π共役構成要素を互いに整列させることができる。いくつかの例では、反応性基に結合された分子ロータ色素は、9-(2-カルボキシ-2-シアノビニル)-ジュロリジン(CCVJ1)、(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1,2-ジメチル-1-H-イミダゾール-5(4H)-オン(DFHBI)、及び1-メチル-4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]キドリミウム(チアゾールオレンジ)からなる群から選択される。
【0023】
いくつかの例では、反応性基に結合されたフルオロフォアは、
【0024】
【化3】
からなる群から選択され得、式中、Xはリンカーであり、Zは反応性基である。
【0025】
いくつかの例では、脱塩基部位はアルデヒドを含む。いくつかの例では、反応性基は、ヒドロキシルアミン基を含む。いくつかの例では、反応性基はヒドラジン基を含む。いくつかの例では、反応性基を脱塩基部位と反応させることは、オキシム結合を形成する。
【0026】
本明細書のいくつかの例では、グリコシラーゼ活性を測定するための溶液が提供される。溶液は、(i)グリコシラーゼと、(ii)オリゴヌクレオチドと、(iii)反応性基に結合されたフルオロフォアと、を含み得る。オリゴヌクレオチドは、溶液中のグリコシラーゼによって生成された脱塩基部位を含み得る。フルオロフォアは、脱塩基部位に結合され得る。脱塩基部位は、フルオロフォアからの蛍光を使用して検出可能であり得る。
【0027】
いくつかの例では、脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基は、脱塩基部位に結合されたそれぞれのフルオロフォアからの非放射エネルギー散逸を阻害し得る。
【0028】
いくつかの例では、フルオロフォアは、回転可能なC-C結合によって分離されたπ共役構成要素を含む分子ロータ色素を含み得る。いくつかの例では、脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基は、C-C結合の回転を制限し得、π共役構成要素を互いに整列させることができる。いくつかの例では、反応性基に結合された分子ロータ色素は、9-(2-カルボキシ-2-シアノビニル)-ジュロリジン(CCVJ1)、(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1,2-ジメチル-1-H-イミダゾール-5(4H)-オン(DFHBI)、及び1-メチル-4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]キドリミウム(チアゾールオレンジ)からなる群から選択される。
【0029】
いくつかの例では、反応性基に結合されたフルオロフォアは、
【0030】
【化4】
からなる群から選択され、式中、Xはリンカーであり、Zは反応性基である。
【0031】
いくつかの例では、脱塩基部位はアルデヒドを含む。いくつかの例では、反応性基は、ヒドロキシルアミン基を含む。いくつかの例では、反応性基はヒドラジン基を含む。いくつかの例では、反応性基を脱塩基部位と反応させることは、オキシム結合を形成する。
【0032】
本明細書に記載されるような本開示の態様のそれぞれの任意の対応する特徴/実施例は、任意の適切な組合わせで共に実施されてもよく、また、これらの態様のうちの任意の1つ又は複数からの任意の特徴/実施例は、本明細書に記載されるような利点を得るために、任意の適切な組合わせで本明細書に記載されるような(複数の)他の態様の特徴のいずれかと共に実施されてもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】オリゴヌクレオチドへの損傷によって引き起こされるような脱塩基部位を検出するための例示的な組成物を示す概略図である。
【
図1B】オリゴヌクレオチドへの損傷によって引き起こされるような脱塩基部位を検出するための例示的な組成物を示す概略図である。
【
図2】オリゴヌクレオチドへの損傷によって引き起こされるような、脱塩基部位を検出するための例示的な方法における操作を示す概略図である。
【
図3A】グリコシラーゼ活性を測定するため等の、脱塩基部位の量を測定するための例示的な組成物を示す概略図である。
【
図3B】グリコシラーゼ活性を測定するため等の、脱塩基部位の量を測定するための例示的な組成物を示す概略図である。
【
図3C】グリコシラーゼ活性を測定するため等の、脱塩基部位の量を測定するための例示的な組成物を示す概略図である。
【
図4】グリコシラーゼ活性を測定するため等の、脱塩基部位の量を測定するための例示的な方法における操作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書で提供される実施例は、脱塩基部位を検出することに関する。本明細書で提供されるいくつかの例は、オリゴヌクレオチドに対する損傷を検出すること、又はグリコシラーゼ活性を測定すること、に関する。そのような検出及び測定を行うための組成物及び方法が開示される。
【0035】
本明細書における脱塩基部位は、DNA脱塩基部位を指し得る。DNA脱塩基部位(アプリン/アピリミジン部位、又は「AP」とも呼ばれる)は、例えばDNAグリコシラーゼによって意図的に生成され得る。例えば、グリコシラーゼは、「ブリッジ増幅」を使用して生成されたアンプリコンを線形化する等のために、1つ又は複数の合成による配列決定(「SBS」)操作で使用され得る。例示的に、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)は、dU塩基で脱塩基部位を生成するために使用され得、次いで、脱塩基部位は、エンドヌクレアーゼによって処理されて、ホスホジエステル骨格の切断を生成し、したがってアンプリコンを線形化することができる。DNA脱塩基部位はまた、例えば、酸性媒体への曝露から等のDNAへの損傷によって、意図せずに生成され得る。プライマー等のオリゴヌクレオチドへの損傷を検出することは、そのような損傷によって生成される脱塩基部位が後の操作で不注意に切断され得るため、有用であり得る。更に、グリコシラーゼが不十分な速度でアンプリコンに脱塩基部位を生成する場合、アンプリコンは不十分に線形化される可能性があり、後続のSBS操作に悪影響を及ぼす可能性があるため、グリコシラーゼの活性を測定することは有用であり得る。
【0036】
本明細書で提供されるように、脱塩基部位(例えば、グリコシラーゼ活性によって、又は損傷によって)の意図的又は非意図的な生成は、フルオロフォアを脱塩基部位にカップリングすることによって検出され得る。例えば、フルオロフォアは、反応性部分に結合され得、脱塩基部位と反応し、したがってフルオロフォアを脱塩基部位に結合させる。例示的に、脱塩基部位は、アルデヒドを形成し得、ヒドロキシルアミン又はヒドラジン等の反応性部分と反応すると、オキシムを形成し、これを介して、フルオロフォアが脱塩基部位に結合される。いくつかの例では、フルオロフォアからの蛍光は、フルオロフォアが脱塩基部位に結合されているときに、オンになるか、又は増強され得る。例示的に、脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基は、フルオロフォアからの非放射エネルギー散逸を阻害し得、したがって、フルオロフォアからの蛍光の強度を増強し得るか、又はフルオロフォアが脱塩基部位に結合されたときにのみ検出可能に蛍光発光され得る。
【0037】
最初に、本明細書で使用されるいくつかの用語を簡単に説明する。次いで、オリゴヌクレオチドへの損傷によって引き起こされるか、又はグリコシラーゼ活性を測定するための、脱塩基部位を検出するためのいくつかの例示的な組成物及び例示的な方法が記載される。
【0038】
用語
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。用語「含む(including)」、並びに他の形態、例えば、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含まれる(included)」の使用は、限定的ではない。更に、用語「有する(having)」、並びに他の形態、例えば、「有する(have)」、「有する(has)」、及び「有した(had)」の使用は、限定的ではない。本明細書で使用されるとき、移行句又は請求項の本文において、用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」は、オープンエンドの意味を有するものとして解釈されるべきである。すなわち、上記の用語は、語句「少なくとも有する」又は「少なくとも含む」と同義であると解釈されるべきである。例えば、プロセスの文脈において使用される場合、用語「含む(comprising)」は、プロセスが少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含み得ることを意味する。化合物、組成物、又はデバイスの文脈で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、化合物、組成物、又はデバイスが少なくとも列挙された特徴又は構成要素を含むが、追加の特徴又は構成要素も含み得ることを意味する。
【0039】
本明細書全体を通して使用される用語「実質的に」、「およそ」、及び「約」は、処理のばらつき等による小さな変動を説明及び考慮するために使用される。例えば、それらは、±10%以下、例えば±5%以下、例えば±2%以下、例えば±1%以下、例えば±0.5%以下、例えば±0.2%以下、例えば±0.1%以下、例えば±0.05%以下を指すことができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズする」は、第1のポリヌクレオチドをそれらのポリマーの長さに沿って第2のポリヌクレオチドに非共有結合的に会合して二本鎖「二重鎖」を形成することを意味することを意図している。例えば、2つのDNAポリヌクレオチド鎖は、相補的な塩基対合を介して会合し得る。第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間の会合の強度は、それらのポリヌクレオチド内のヌクレオチドの配列間の相補性と共に増大する。ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションの強度は、二重鎖の50%が互いに解離する融解温度(Tm)によって特徴付けられ得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語は、糖及び少なくとも1つのリン酸基を含む分子を意味することが意図され、いくつかの例では、核酸塩基も含む。核酸塩基を欠くヌクレオチドは、「脱塩基」と呼ぶことができる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、ペプチドヌクレオチド、修飾ペプチドヌクレオチド、修飾ホスファート糖骨格ヌクレオチド、及びそれらの混合物を含む。ヌクレオチドの例としては、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、及びデオキシウリジン三リン酸(dUTP)が挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語はまた、天然に存在するヌクレオチドと比較して、修飾された核酸塩基、糖、及び/又はリン酸部分を含むヌクレオチドの種類である任意のヌクレオチド類似体を包含することが意図される。修飾核酸塩基の例としては、イノシン、キサタニン(xathanine)、ヒポキサニン(hypoxathanine)、イソシトシン、イソグアニン、2-アミノプリン、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、2-アミノアデニン、6-メチルアデニン、6-メチルグアニン、2-プロピルグアニン、2-プロピルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、2-チオシトシン、15-ハロウラシル、15-ハロシトシン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、5-ウラシル、4-チオウラシル、8-ハロアデニン又はグアニン、8-アミノアデニン又はグアニン、8-チオールアデニン又はグアニン、8-チオアルキルアデニン又はグアニン、8-ヒドロキシアデニン又はグアニン、5-ハロ置換ウラシル又はシトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニン等が挙げられる。当技術分野で知られているように、特定のヌクレオチド類似体は、ポリヌクレオチド、例えば、アデノシン5’-ホスホスルファート等のヌクレオチド類似体に組み込まれることができない。ヌクレオチドは、任意の好適な数のホスファート、例えば、3、4、5、6、又は6を超えるホスフェートを含み得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、互いに結合したヌクレオチドの配列を含む分子を指す。ポリヌクレオチドは、ポリマーの非限定的な一例である。ポリヌクレオチドの例としては、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、及びそれらの類似体が挙げられる。ポリヌクレオチドは、RNA又は一本鎖DNA等のヌクレオチドの一本鎖配列、二本鎖DNA等のヌクレオチドの二本鎖配列であるか、又はヌクレオチドの一本鎖及び二本鎖配列の混合物を含み得る。二本鎖DNA(dsDNA)は、ゲノムDNA及びPCR及び増幅産物を含む。一本鎖DNA(ssDNA)はdsDNAに変換され得、逆もまた同様である。ポリヌクレオチドは、エナンチオマーDNA等の非天然DNAを含み得る。ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの正確な配列は、既知であるか、又は不明であり得る。以下は、ポリヌクレオチドの例であり、遺伝子又は遺伝子フラグメント(例えば、プローブ、プライマー、発現配列タグ(EST)、又は遺伝子発現の連続分析(Serial Analysis of Gene Expression:SAGE)タグ)、ゲノムDNA、ゲノムDNA断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、プライマー、又は前述のいずれかの増幅されたコピーが挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドをポリヌクレオチドに重合することによってポリヌクレオチドを組み立てる活性部位を有する酵素を意味することを意図している。ポリメラーゼは、プライミングされた一本鎖標的ポリヌクレオチドに結合することができ、成長中のプライマーにヌクレオチドを順次付加して、標的ポリヌクレオチドの配列に相補的な配列を有する「相補的コピー」ポリヌクレオチドを形成することができる。次いで、別のポリメラーゼ又は同じポリメラーゼは、その相補的コピーポリヌクレオチドの相補的コピーを形成することによって標的ヌクレオチドのコピーを形成することができる。そのようなコピーのいずれも、本明細書では「アンプリコン」と称され得る。DNAポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチドに結合し、次いで、標的ポリヌクレオチドを、成長ポリヌクレオチド鎖(成長アンプリコン)の3’末端の遊離ヒドロキシル基に連続的に添加する標的ポリヌクレオチドを移動させることができる。DNAポリメラーゼは、DNA鋳型から相補的DNA分子を合成し得、RNAポリメラーゼは、DNA鋳型(転写)からRNA分子を合成し得る。ポリメラーゼは、短いRNA又はDNA鎖(プライマー)を使用して鎖の成長を開始することができる。いくつかのポリメラーゼは、鎖に塩基を付加している部位の上流で鎖を置換し得る。そのようなポリメラーゼは、鎖置換であると言うことができ、これは、ポリメラーゼによって読み取られる鋳型鎖から相補鎖を除去する活性を有することを意味する。鎖置換活性を有する例示的なポリメラーゼには、Bst(バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus))ポリメラーゼ、エキソ-クレノウポリメラーゼ又は配列決定グレードT7エキソ-ポリメラーゼの大きな断片が含まれるが、これらに限定されない。一部のポリメラーゼは、それらの前の鎖を分解し、それを後ろの成長中の鎖(5’エキソヌクレアーゼ活性)で効果的に置き換える。いくつかのポリメラーゼは、それらの後ろの鎖を分解する活性を有する(3’エキソヌクレアーゼ活性)。いくつかの有用なポリメラーゼは、3’及び/又は5’エキソヌクレアーゼ活性を低減又は排除するために変異又は他の方法のいずれかで修飾されている。
【0045】
本明細書で使用される場合、「プライマー」という用語は、ヌクレオチドが遊離3’OH基を介して付加され得るポリヌクレオチドとして定義される。プライマー長は、任意の適切な数の塩基長であり得、天然及び非天然ヌクレオチドの任意の適切な組合わせを含み得る。標的ポリヌクレオチドは、プライマーにハイブリダイズする(相補的な配列を有する)「アダプター」を含み得、プライマーの遊離3’OH基にヌクレオチドを付加することによって相補的コピーポリヌクレオチドを生成するように増幅され得る。プライマーは、基材に結合され得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、本明細書に記載の構成物の担体として使用される材料を指す。例示的な基材材料は、ガラス、シリカ、プラスチック、石英、金属、金属酸化物、有機シリケート(例えば、多面体有機シルセスキオキサン(POSS))、ポリアクリレート、酸化タンタル、相補金属酸化物半導体(CMOS)、又はそれらの組合わせを含み得る。POSSの一例は、Kehagias et al.,Microelectronic Engineering 86(2009),pp.776-778に記載されているものであり得、これは、参照によりその全体が組み込まれる。いくつかの例では、本出願で使用される基材は、ガラス、縮合シリカ、又は他のシリカ含有材料等のシリカ系基材を含む。いくつかの例では、基材は、シリコン、窒化ケイ素、又は水素化シリコーンを含み得る。いくつかの例では、本出願で使用される基材は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリ(メチルメタクリレート)等のプラスチック材料又は構成要素を含む。例示的なプラスチック材料としては、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、及び環状オレフィンポリマー基材が挙げられる。いくつかの例では、基材は、シリカ系材料又はプラスチック材料あるいはそれらの組合わせであるか、又はそれらを含む。特定の例では、基材は、ガラス又はケイ素系ポリマーを含む少なくとも1つの表面を有する。いくつかの例では、基材は金属を含むことができる。いくつかのそのような例では、金属は金である。いくつかの例では、基材は、金属酸化物を含む少なくとも1つの表面を有する。一例では、表面は、酸化タンタル又は酸化スズを含む。アクリルアミド、エノン、又はアクリレートはまた、基材材料又は構成要素として利用され得る。他の基材材料としては、ヒ化ガリウム、リン酸インジウム、アルミニウム、セラミック、ポリイミド、石英、樹脂、ポリマー、及びコポリマーを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの例では、基材及び/又は基材表面は、石英であり得るか、又は石英を含み得る。いくつかの他の例では、基材及び/又は基材表面は、GaAs又はITO等の半導体であり得るか、又はそれを含むことができる。前述のリストは、本出願を例示するが、限定することを意図しない。基材は、単一の材料又は複数の異なる材料を含むことができる。基材は、複合材又は積層体とすることができる。いくつかの例では、基材は、有機シリケート材料を含む。基材は、平坦、円形、球形、棒状、又は任意の他の好適な形状とすることができる。基材は、剛性又は可撓性であり得る。いくつかの例では、基材はビーズ又はフローセルである。
【0047】
いくつかの例では、基材はパターン化表面を含む。「パターン化された表面」は、基材の露出層内又は露出層上の異なる領域の配置を指す。例えば、1つ又は複数の領域は、1つ又は複数の捕捉プライマーが存在する特徴であり得る。この特徴部は、捕捉プライマーが存在しない介在領域によって分離され得る。いくつかの例では、パターンは、行及び列にある特徴のx-yフォーマットであり得る。いくつかの例では、パターンは、特徴及び/又は間隙領域の繰返し配置であってもよい。いくつかの例では、パターンは、特徴及び/又は間隙領域のランダムな配置であってもよい。いくつかの例では、基材は表面にウェル(窪み)のアレイを含む。ウェルは、実質的に垂直な側壁によって提供され得る。ウェルは、フォトリソグラフィ、スタンピング技術、成形技術、及びマイクロエッチング技術を含むがこれらに限定されない様々な技術を使用して、当技術分野において一般的に知られているように製造することができる。技術分野において理解されるように、使用される技術は、アレイ基板の組成及び形状に依存する。
【0048】
基材のパターン化された表面の特徴は、ガラス、シリコン、プラスチック、又はポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド)(PAZAM)等のパターン化された共有結合ゲルを有する他の適切な材料上のウェル(例えば、マイクロウェル又はナノウェル)のアレイのウェルを含むことができる。このプロセスにより、配列決定に使用されるゲルパッドが作製され、これは多数のサイクル数で実行される配列決定にわたって安定であり得る。ポリマーをウェルに共有結合することは、様々な用途において、構造化された基材の寿命にわたってゲルの構造化された特徴を維持するのに有用であり得る。しかしながら、多くの例では、ゲルは、ウェルに共有結合される必要はない。例えば、いくつかの条件では、構造化基材のいずれの部分にも共有結合していないシラン非含有アクリルアミド(SFA)をゲル材料として使用してもよい。
【0049】
特定の例では、構造化基材は、適切な材料をウェルでパターニングし(例えば、マイクロウェル又はナノウェル)、パターニングされた材料をゲル材料でコーティングし(例えば、PAZAM、SFA又はそれらの化学修飾バリアント、例えばSFAのアジド分解バージョン(アジド-SFA))、例えば化学的又は機械的研磨によってゲルコーティングされた材料の表面を研磨し、それによってウェル内にゲルを保持するが、ウェル間の構造化基材の表面上の間隙領域から実質的に全てのゲルを除去又は不活性化することによって作製され得る。プライマーは、ゲル材料に結合され得る。次いで、複数の標的ポリヌクレオチド(例えば、断片化されたヒトゲノム又はその一部)を含む溶液を、個々の標的ポリヌクレオチドがゲル材料に付着したプライマーとの相互作用を介して個々のウェルを播種するように、研磨された基材と接触させることができる。しかしながら、標的ポリヌクレオチドは、ゲル材料が存在しないか、又は不活性であるため、中間部領域を占有しない。間質領域におけるゲルの非存在又は不活性が成長中のクラスタの外向き移動を阻害し得るため、標的ポリヌクレオチドの増幅はウェルに限定され得る。プロセスは、好都合に製造可能であり、スケール変更可能であり、従来のマイクロ又はナノ製造方法を利用する。
【0050】
パターン化基材は、例えば、スライド又はチップにエッチングされたウェルを含むことができる。ウェルのエッチング及び幾何学形状のパターンは、様々な異なる形状及びサイズを取ることができ、そのような特徴は、互いに物理的又は機能的に分離可能であり得る。そのような構造的特徴を有する特に有用な基材は、ミクロスフェア等の固体粒子のサイズを選択することができるパターン化基材を含む。これらの特性を有するパターン化基材の例は、BEAD ARRAY technology(Illumina,Inc.,San Diego,Calif.)に関連して使用されるエッチング基材である。
【0051】
いくつかの例では、本明細書に記載の基板は、フローセルの少なくとも一部を形成するか、又はフローセル内に位置するか、又はフローセルに結合される。フローセルは、複数のレーン又は複数のセクタに分割されるフローチャンバを含み得る。本明細書に記載の方法及び構成物で使用することができるフローセル及びフローセルの製造のための基材の例には、Illumina,Inc.(San Diego,CA)から市販されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2つ以上の異なるメンバーの集団を意味することを意図している。複数のサイズは、小、中、大から非常に大きいものまでの範囲であり得る。小さな複数のサイズは、例えば、数メンバーから数十メンバーの範囲であり得る。中サイズの複数は、例えば、数十メンバー~約100メンバー又は数百メンバーの範囲であり得る。大きな複数は、例えば、約数百のメンバーから約1000のメンバー、数千のメンバー及び最大数万のメンバーの範囲であり得る。非常に大きな複数は、例えば、数万のメンバーから約数十万、百万、数百万、数千万、最大で数億を超えるのメンバーの範囲であり得る。したがって、複数は、2から1億をはるかに超えるメンバーのサイズの範囲、並びにメンバーの数によって測定される全てのサイズの間及び上記の例示的な範囲よりも大きい範囲であり得る。複数のポリヌクレオチドの例としては、例えば、約1×105以上、5×105以上又は1×106以上の異なるポリヌクレオチドの集団が挙げられる。したがって、この用語の定義は、2より大きい全ての整数値を含むことが意図される。複数の上限は、例えば、試料中のポリヌクレオチド配列の理論的多様性によって設定され得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「標的ポリヌクレオチド」という用語は、分析又は作用の対象であるポリヌクレオチドを意味することが意図される。分析又は作用は、ポリヌクレオチドを増幅、配列決定及び/又は他の手順に供することを含む。標的ポリヌクレオチドは、分析される標的配列に追加のヌクレオチド配列を含み得る。例えば、標的ポリヌクレオチドは、プライマー結合部位として機能するアダプターを含む1つ以上のアダプターを含み得、そのフランク(複数可)は、分析される標的ポリヌクレオチド配列である。
【0054】
用語「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、本明細書において交換可能に使用される。異なる用語は、特に明記しない限り、サイズ、配列、又は他の特性の特定の違いを示すことを意図しない。説明を明確にするために、この用語は、いくつかのポリヌクレオチド種を含む特定の方法又は組成物を説明するときに、ある種のポリヌクレオチドを別のポリヌクレオチドから区別するために使用され得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「アンプリコン」という用語は、ポリヌクレオチドに関して使用される場合、ポリヌクレオチドを複製する産物を意味することを意図し、ここで産物は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の少なくとも一部と実質的に同じであるか、又は実質的に相補的であるヌクレオチド配列を有する。「増幅」及び「増幅すること」は、ポリヌクレオチドのアンプリコンを作製するプロセスを指す。標的ポリヌクレオチドの第1のアンプリコンは相補的コピーであり得る。更なるアンプリコンは、第1のアンプリコンの生成後に、標的ポリヌクレオチド又は第1のアンプリコンから作製されるコピーである。後続のアンプリコンは、標的ポリヌクレオチドに実質的に相補的であるか、又は標的ポリヌクレオチドと実質的に同一である配列を有し得る。ポリヌクレオチドのアンプリコンを作製するとき、ポリヌクレオチドの少数の突然変異(例えば、増幅アーチファクトに起因する)が起こり得ることが理解されよう。
【0056】
本明細書で使用される場合、「グリコシラーゼ」という用語は、グリコシル化合物を加水分解する酵素を指す。いくつかの例では、グリコシラーゼが加水分解するグリコシル化合物は、ポリヌクレオチドに含まれ得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖であり得る。DNA及びRNAは、本明細書で提供されるような様式でグリコシラーゼが使用され得るポリヌクレオチドの非限定的な例である。いくつかの例では、本明細書で提供されるような方法で使用され得るグリコシラーゼは「単官能性」であり、これはグリコシラーゼ活性を超える更なる活性を欠くことを意味することを意図している。比較すると、「二官能性」DNAグリコシラーゼはまた、DNAのホスホジエステル結合を切断し得る。本明細書で使用される場合、グリコシラーゼの「活性」は、グリコシラーゼが、時間の関数としてグリコシル化合物を加水分解する速度を表し得る。
【0057】
グリコシラーゼには、DNAグリコシラーゼが含まれ、DNAグリコシラーゼは、その塩基とデオキシリボースとの間のN-グリコシド結合を加水分解することによって損傷又はミスペアリングされたDNA塩基を認識して除去し、したがってアルデヒド基と平衡状態にあるヘミアセタール基を含む脱塩基部位を生成する。単官能性グリコシラーゼの非限定的な例としては、シトシン脱アミノ化から生じ得るような脱塩基部位をdU塩基に生じさせるために使用され得る、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG);3-meA(3-アルキルアデニン)及びヒポキサンチンで脱塩基部位を生成するために使用され得るAlkA/AlkE/Mag1/MPG(N-メチルプリンDNAグリコシラーゼ);A:8-オキソGに脱塩基部位を生成するために使用され得るMutY/mHYH;U、hoU(5-ヒドロキシウラシル)、hmU(5-ヒドロキシメチルウラシル)又はfU(5-ホルミルウラシル)に脱塩基部位を生成するために使用され得るhSMUG1;T:Gミスペアリングにおいて脱塩基部位を生成するために使用され得るTDG又はMBD4;並びにアルキルプリンで脱塩基部位を生成するために使用され得るAlkC又はAlkDが挙げられる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「フルオロフォア」という用語は、第1の波長とは異なる第2の波長の光による励起に応答して第1の波長の光を放出する分子を意味することを意図している。フルオロフォアによって放出された光は、「蛍光」と呼ばれ得、適切な光学回路によって検出され得る。エネルギーを「放射的に」放出すると考えられ得る蛍光発光に加えて、フルオロフォアは、分子又はそのような分子の1つ以上の構成要素の回転等によってエネルギーを「非放射的に」散逸させ得る。非放射エネルギー散逸は、フルオロフォアが放射エネルギーを放出するために使用することができるエネルギー量を減少させることができる。例示的なフルオロフォアは「分子ロータ色素」であり、これは、2つのπ共役構成要素の間に炭素-炭素(「C-C」)単結合回転軸を有するフルオロフォアを指す。C-C結合が自由に回転し得る場合、π共役構成要素は互いに整列しなくてもよく、分子が実質的に蛍光を発しない場合がある。これに対して、π共役構成要素を互いに十分に整列されて、構成要素のπ軌道が同士が互いに重なり合い、伸長したπ共役系集合体を形成するように、C-C結合の回転を制限すると、π共役構成要素が整列していない場合に比べて、得られる伸長したπ共役系集合体が比較的高い強度で検出可能に蛍光を発することができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、蛍光を「検出する」とは、フルオロフォアから光を受け取り、受け取った光に基づいて電気信号を生成し、電気信号を使用して、光がフルオロフォアから受け取られたことを決定することを意味することを意図している。蛍光は、フルオロフォアから受け取った光に基づいて電気信号を生成するための光学検出器と、電気信号を使用して、フルオロフォアから光を受け取ったことを決定するための電子回路とを含み得る任意の適切な光学検出回路を使用して検出され得る。一例として、光検出器は、光検出器によって受けとられた光に基づいて電気信号を生成するように構成された増幅光検出器のアレイを含むアクティブピクセルセンサ(APS)を含むことができる。APSは、当技術分野で知られている相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術に基づいてもよい。CMOSベースの検出器は、電界効果トランジスタ(FET)、例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を含み得る。特定の例では、例えば、蛍光寿命イメージング(FLIM)を実行するために、単一光子アバランシェダイオード(CMOS-SPAD)を有するCMOS imagerが使用されてもよい。他の例では、光検出器は、アバランシェフォトダイオード、電荷結合素子(CCD)、極低温光子検出器、逆バイアス発光ダイオード(LED)、フォトレジスタ、フォトトランジスタ、光電池、光電子増倍管(PMT)、量子ドット光伝導体又はフォトダイオード等のフォトダイオードを含むことができる。光学検出回路は、光学検出器から電気信号を受信するように光学検出器と動作可能に通信し、そのような信号に基づいて、例えばフルオロフォアからの光を検出する光学検出器に基づいて蛍光を検出するように構成されたハードウェアとソフトウェアとの任意の適切な組合わせを更に含んでもよい。例えば、電子回路は、メモリと、メモリに結合されたプロセッサと、を含み得る。メモリは、プロセッサに光検出器から信号を受信させ、そのような信号を使用してフルオロフォアを検出させるための命令を記憶することができる。例えば、命令は、光検出器からの信号を使用して、光検出器の視野内で蛍光が放出され、そのような決定を使用してフルオロフォアが存在することを決定することをプロセッサに決定させることができる。
【0060】
「測定」蛍光は、検出される蛍光の相対量又は絶対量を決定することを意味することを意図する。例えば、蛍光の量は時間の関数として変化してもよく、蛍光の量の変化は、初期蛍光量に対して、又は蛍光の絶対量として測定されてもよい。実例として、複数のオリゴヌクレオチド中の脱塩基部位の量は、例えばグリコシラーゼによる作用に応答して、時間の関数として変化し得、フルオロフォアは脱塩基部位に結合され得る。複数のフルオロフォアからの蛍光の量は、脱塩基部位の量及びグリコシラーゼの活性と相関し得る。例えば、上記の電子回路のメモリは、プロセッサに1回又は複数回電気信号のレベルを監視させ、そのようなレベルを脱塩基部位の量又はグリコシラーゼの活性と相関させる命令を格納し得る。
【0061】
オリゴヌクレオチドへの損傷等によって引き起こされる脱塩基部位を検出するための組成物及び方法
本明細書で提供されるいくつかの例は、オリゴヌクレオチドに対する損傷を検出するための方法に関する。例えば、オリゴヌクレオチドは、SBS操作が行われるアンプリコンのクラスタを生成するためのプライマーとして使用するために、例えばフローセル内で基材に結合され得る。オリゴヌクレオチドが不適切に保存された場合(例えば、温度が高すぎる場合、又は時間が長すぎる場合)、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部が損傷を受け、少なくとも1つの脱塩基部位の生成を引き起こすと予想され得る。そのような脱塩基部位は、それぞれフルオロフォアをそれに結合させることによって検出され得る。
【0062】
例えば、
図1A~
図1Bは、オリゴヌクレオチドへの損傷によって引き起こされるような脱塩基部位を検出するための例示的な組成物を概略的に示す。
図1Aに示す組成物100は、それに結合された複数のオリゴヌクレオチド110、120、130、140を有する基材101を含む。図示の例では、オリゴヌクレオチド110、120、130、140のそれぞれは一本鎖であるが、オリゴヌクレオチドは代わりに一本鎖であってもよいことが理解されよう。例えば、オリゴヌクレオチド110は、糖-リン酸骨格111及び塩基112を含み、オリゴヌクレオチド120は、糖-リン酸骨格121及び塩基122を含み、オリゴヌクレオチド130は、糖-リン酸骨格131及び塩基132を含み、オリゴヌクレオチド140は、糖-リン酸骨格141及び塩基142を含む。オリゴヌクレオチド110、120、130、140は、基材101の表面に結合されたプライマーを含み得る。
図1Aの異なる充填ボックスによって示唆されるような様式で、オリゴヌクレオチド110の塩基112は、オリゴヌクレオチド130の塩基132と同じ配列を有し得、オリゴヌクレオチド120の塩基122は、オリゴヌクレオチド140の塩基142と同じ配列(及びオリゴヌクレオチド110、130の塩基とは異なる配列)を有し得る。非限定的で純粋に例示的な一例では、オリゴヌクレオチド110、130はP5捕捉プライマーであり、オリゴヌクレオチド120、140はP7捕捉プライマーである。Illumina,Inc.(San Diego,CA)から市販されているP5捕捉プライマーは、配列5’-AATGATACGGCGACCACCGA-3’(配列番号1)を有する。また、Illumina,Inc.から市販されているP7捕捉プライマーは、配列5’-CAAGCAGAAGACGGCATACGA-3’(配列番号2)を有する。しかしながら、オリゴヌクレオチドの塩基は、任意の適切な1つ又は複数の配列を有し得ることが理解されよう。
【0063】
オリゴヌクレオチドの少なくとも1つは、そのオリゴヌクレオチドへの損傷によって生成され得る脱塩基部位を含み得る。例示的に、オリゴヌクレオチド140の塩基142のうちの1つは、脱塩基部位145で欠落している。
図1Aの挿入図に示すように、脱塩基部位145はアルデヒド143を含んでいてもよく、糖141a及び(例示的に)ピリミジン塩基142aを含む第1のヌクレオチドと、それに隣接する糖141b及び(例示的に)プリン塩基142bを含む第2のヌクレオチドとを有していてもよい。
【0064】
図1Aに示すように、組成物100は、脱塩基部位145に結合され得るフルオロフォア150を含み得る。例えば、フルオロフォア150は、
図1Bに示されるような様式でフルオロフォア150を脱塩基部位145に結合するように、脱塩基部位145と反応し得る反応性基151に結合され得る。反応性基151の非限定的な例としては、ヒドロキシルアミン及びヒドラジンが挙げられる。例えば、
図1Bの挿入図に示すように、ヒドロキシルアミン151はアルデヒド143と反応してオキシム結合152を形成し、それを介してフルオロフォア150が脱塩基部位145に結合される。脱塩基部位145は、例えば、好適な検出回路160を使用して、フルオロフォアからの蛍光を使用して検出可能であり得る。
【0065】
フルオロフォア150は、任意の好適なフルオロフォアを含み得ることが理解されよう。脱塩基部位145に隣接するヌクレオチド塩基は、その脱塩基部位に結合されたフルオロフォア150からの非放射エネルギー散逸を低減又は阻害し得る。例えば、フルオロフォア150は、回転可能なC-C結合によって分離されたπ共役構成要素を含む分子ロータ色素を含み得る。脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基142a、142bは、C-C結合の回転を制限し、π共役構成要素を互いに整列させることができる。このような回転制限は、脱塩基部位145に結合されたときに、溶液中の場合と比較してフルオロフォア150の蛍光を増強し得るか、又はフルオロフォア150を蛍光発光させることさえあり得る。いくつかの例では、反応性基151に結合された分子ロータ色素は、9-(2-カルボキシ-2-シアノビニル)-ジュロリジン(CCVJ1)、(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1,2-ジメチル-1-H-イミダゾール-5(4H)-オン(DFHBI)、及び1-メチル-4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]キドリミウム(チアゾールオレンジ)からなる群から選択される。リンカーXによる反応性基Zに結合されたCCVJの例示的な構造は、以下の通りである。
【0066】
【化5】
反応性基Zに結合されたDFHBIの構造例は、
【0067】
【化6】
である。反応性基Zに結合されたチアゾールオレンジの例示的な構造は、以下の通りである。
【0068】
【化7】
非限定的な例では、Zはヒドロキシルアミン(-O-NH
2)である。他の非限定的な例では、Zはヒドラジン(-NH-NH
2)である。Zは、フルオロフォア150と脱塩基部位145との間にオキシム結合を形成するように、アルデヒド143と反応し得る。
【0069】
分子ロータ色素以外の任意の好適なフルオロフォアは、好適には、脱塩基部位に結合され得る反応性基に結合され得ることが理解されよう。例示的に、反応性基151に結合されたフルオロフォアは、Alexa Fluor色素及び1,8-ナフタレンジイミドからなる群から選択され得る。Alexa Fluor色素は、ThermoFisher Scientific(Waltham,Massachusetts)から市販されている。非限定的な一例では、Alexa Fluor色素はAlexa Fluor488である。非限定的な一例では、1,8-ナフタレンジイミドは、6-ジメチルアミノ)-2-メチル-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1、3(2H)-ジオン(NP2)である。リンカーXによって反応性基Zに結合されたAlexa Fluor488の例示的な構造は、以下の通りである。
【0070】
【化8】
(2-(6-アミノ-3-イミノ-4,5-ジスルホナート-3H-キサンテン-9-イル)-4-((2-(アミノオキシ)エチル)カルバモイル)ベンゾエート)。リンカーXによって反応性基Zに結合された、6-ジメチルアミノ)-2-メチル-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1、3(2H)-ジオン(NP2)の例示的な構造は、以下の通りである。
【0071】
【化9】
非限定的な例では、Zは、ヒドロキシルアミン(-O-NH
2)である。他の非限定的な例では、Zはヒドラジン(-NH-NH
2)である。Zは、フルオロフォア150と脱塩基部位145との間にオキシム結合を形成するように、アルデヒド143と反応し得る。
【0072】
図2は、オリゴヌクレオチドへの損傷によって引き起こされるような、脱塩基部位を検出するための例示的な方法を概略的に示す。
図2に示す方法200は、それに結合された複数のオリゴヌクレオチドを有する基材上に溶液を流すことを含み得る(操作202)。オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、脱塩基部位を含み得る。いくつかの例では、脱塩基部位は、オリゴヌクレオチドへの損傷によって生成される。溶液は、反応性基に結合されたフルオロフォアを含み得る。例えば、反応性基151に結合された好適な溶媒(水又は緩衝液等)及びフルオロフォア150を含む溶液は、
図1Aを参照して記載された基材100上に流され得、オリゴヌクレオチド140は、そのオリゴヌクレオチドへの損傷によって生成され得る脱塩基部位145を含み得る。
【0073】
図2に示す方法200は、反応性基を脱塩基部位と反応させて、フルオロフォアを脱塩基部位に結合させることを含み得る(操作204)。例えば、反応性基151は、アルデヒド143と反応して、フルオロフォア150を、
図1Bを参照して記載されるような様式で脱塩基部位145に結合させることができる。
図2に示す方法200は、フルオロフォアからの蛍光を使用して脱塩基部位を検出することを含み得る(操作206)。例えば、好適な検出回路160は、フルオロフォア150からの蛍光を検出し得、これを使用して、脱塩基部位145が検出され得る。フルオロフォア150及び反応性基151の非限定的な例、並びに脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基(複数可)がフルオロフォア150を蛍光発光させ得るか、又は蛍光をフルオロフォア150の蛍光を増強し得る例示的な様式の非限定的な例は、
図1A~
図1Bを参照して記載される。
【0074】
グリコシラーゼの活性を測定する等、脱塩基部位を測定するための組成物及び方法
図1A~
図1B及び
図2を参照して記載されるような例は、表面に結合された一本鎖オリゴヌクレオチド上の意図せずに生成された脱塩基部位を検出するために使用され得るが、本発明の組成物及び方法は、任意のポリヌクレオチド、例えば、一本鎖又は二本鎖であり、表面(又は他の要素)に結合されているか、又は溶液中にあるポリヌクレオチド上の意図的及び意図せずに生成された脱塩基部位の両方を検出及び場合によっては測定するために適切に使用され得ることが理解されよう。
【0075】
本明細書で提供されるいくつかの例は、グリコシラーゼの活性を測定する等、脱塩基部位の量を測定する方法に関する。例えば、上記のように、例えば合成による配列決定に使用するためにクラスタを線形化するために、グリコシラーゼを使用してポリヌクレオチドに脱塩基部位を意図的に生成することができる。グリコシラーゼの活性が高いほど、グリコシラーゼは脱塩基部位をより生成する。しかしながら、グリコシラーゼの異なるバッチは、互いに異なる活性を有し得るか、又はグリコシラーゼの所与のバッチの活性が経時的に減少し得る。したがって、例えばグリコシラーゼが所望の生成物を達成するのに十分な時間にわたって使用され得るように、又はその活性が低すぎる場合にはグリコシラーゼが廃棄され得るように、グリコシラーゼによって生成される脱塩基部位の量の測定値を使用してグリコシラーゼの活性を測定することが有用であり得る。いくつかの例では、溶液中のグリコシラーゼの活性は、そのようなグリコシラーゼによって生成された脱塩基部位にフルオロフォアを結合させ、溶液からの蛍光の時間の関数として変化を測定することによって測定され得る。いくつかの例では、グリコシラーゼは単官能性グリコシラーゼである。
【0076】
例えば、
図3A~3Cは、グリコシラーゼ活性を測定するため等の、脱塩基部位の量を測定するための例示的な組成物を概略的に示す。
図3Aに示される組成物300は、溶液中の複数のオリゴヌクレオチド310、320、330を含む。図示の例では、オリゴヌクレオチド310、320、330のそれぞれは二本鎖であるが、オリゴヌクレオチドは代わりに一本鎖であってもよいことが理解されよう。例えば、オリゴヌクレオチド310は、第1の塩基312に結合された第1の糖-リン酸骨格311と、第1の塩基312にハイブリダイズする第2の塩基312’に結合された第2の糖-リン酸骨格311’と、を含み、オリゴヌクレオチド320は、第1の塩基322に結合された第1の糖-リン酸骨格321と、第1の塩基322にハイブリダイズした第2の塩基322’に結合された第2の糖-リン酸骨格321’とを含み、オリゴヌクレオチド330は、第1の塩基332に結合された第1の糖-リン酸骨格331と、第1の塩基332にハイブリダイズした第2の塩基332’に結合された第2の糖-リン酸骨格331’とを含む。
図3Aの異なる充填ボックスによって示唆されるような様式で、オリゴヌクレオチド310の塩基312は、オリゴヌクレオチド320の塩基322及びオリゴヌクレオチド330の塩基332と同じ配列を有し得る。しかしながら、オリゴヌクレオチドの塩基は、任意の適切な1つ又は複数の配列を有し得ることが理解されよう。
【0077】
溶液は、グリコシラーゼ360、反応性基351に結合されたフルオロフォア350、及び適切な溶媒(水又は緩衝液等)を更に含み得る。オリゴヌクレオチド310、320、330は、溶液中のグリコシラーゼ360によって生成された脱塩基部位を含み得る。グリコシラーゼ360が脱塩基部位を生成する速度は、部分的に、グリコシラーゼの活性に依存する。例えば、
図3Aに示される特定の時間において、所与のグリコシラーゼ360は、例えば、そのオリゴヌクレオチドの配列を使用して、オリゴヌクレオチド330に作用し得る。
図3Bに示される特定の時間において、グリコシラーゼ360の作用は、オリゴヌクレオチド330及び310において生成された脱塩基部位345を有し得る。後の時間(具体的には図示せず)までに、オリゴヌクレオチドに対するグリコシラーゼ360の作用は、更なる脱塩基部位345を生成し得る。
【0078】
フルオロフォア350は、脱塩基部位345に結合され得、脱塩基部位の量は、フルオロフォアからの蛍光を使用して測定され得る。例えば、
図3Bの挿入図に示されるように、脱塩基部位345は、
図1Aを参照して説明されるような様式でアルデヒドを含み得、糖341a及び(例示的に)ピリミジン塩基342aを含む第1のヌクレオチドと、糖341b及び(例示的に)プリン塩基342bを含む第2のヌクレオチドとをそれに隣接して有し得る。
図3Cに示すように、フルオロフォア350は、脱塩基部位345に結合され得る。例えば、フルオロフォア350は、
図3Bに示されるような様式でフルオロフォア350を脱塩基部位345に結合するように、脱塩基部位345と反応し得る反応性基351に結合され得る。反応性基351の非限定的な例としては、ヒドロキシルアミン及びヒドラジンが挙げられる。例えば、
図3Cの挿入図に示すように、ヒドロキシルアミン351は、アルデヒド343と反応してオキシム結合352を形成し、それを介してフルオロフォア350がそれぞれの脱塩基部位345に結合される。脱塩基部位345の量は、例えば、適切な検出回路370を使用して、フルオロフォアからの蛍光を使用して測定され得る。グリコシラーゼ360の活性は、時間の関数としての蛍光の強度の変化を使用して決定され得る。その後、グリコシラーゼは、SBS操作(例示的に、これに限定されないが、クラスタを線形化する)等の別のインビトロプロセスで使用され得る。
【0079】
いくつかの例では、例示的に、脱塩基部位を有するフルオロフォアの反応速度が、グリコシラーゼが脱塩基部位を生成する速度よりも速い場合、リアルタイム検出が達成され得、その結果、新たに形成された脱塩基部位は、それぞれのフルオロフォアに比較的迅速に結合し、蛍光の発生又は増強をもたらし得る。経時的に、蛍光の増加は、グリコシラーゼが生成する脱塩基部位の数と直接相関し得る。動態曲線(蛍光対時間)の勾配は、グリコシラーゼの活性を表すために使用され得る。他の例では、工程ごとの検出を使用して、グリコシラーゼのバッチ間活性を比較することができる。例えば、第1の工程では、グリコシラーゼがポリヌクレオチド(DNA又はRNA等)と反応して脱塩基部位を生成し、続いてフルオロフォアが脱塩基部位と反応して蛍光を発生又は増強する第2の工程が行われ得る。
【0080】
フルオロフォア350は、任意の好適なフルオロフォアを含み得ることが理解されよう。脱塩基部位345に隣接するヌクレオチド塩基は、その脱塩基部位に結合されたフルオロフォア350からの非放射エネルギー散逸を低減又は阻害し得る。例えば、フルオロフォア350は、回転可能なC-C結合によって分離されたπ共役構成要素を含む分子ロータ色素を含み得る。脱塩基部位に隣接するヌクレオチド塩基342a、342bは、C-C結合の回転を制限し、π共役構成要素を互いに整列させることができる。そのような回転の制限は、脱塩基部位345に結合されている場合、溶液中にある場合と比較してフルオロフォア350の蛍光を増強し得るか、又はフルオロフォア350からの蛍光を「オン」にし得る。いくつかの例では、反応性基351に結合された分子ロータ色素は、9-(2-カルボキシ-2-シアノビニル)-ジュロリジン(CCVJ1)、(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1,2-ジメチル-1-H-イミダゾール-5(4H)-オン(DFHBI)、及び1-メチル-4-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]キドリミウム(チアゾールオレンジ)からなる群から選択され、その構造例は上に提供されており、Zはアルデヒド343と反応してフルオロフォア350と脱塩基部位345との間にオキシム結合を形成し得る。
【0081】
分子ロータ色素以外の任意の好適なフルオロフォアは、好適には、脱塩基部位に結合され得る反応性基に結合され得ることが理解されよう。例示的に、反応性基351に結合されたフルオロフォアは、Alexa Fluor色素及び1,8-ナフタレンジイミドからなる群から選択され得る。1つの非限定的な例では、Alexa Fluor色素は、Alexa Fluor488であり、その例示的な構造は、上に示され、Zは、アルデヒド343と反応して、フルオロフォア350と脱塩基部位345との間にオキシム結合を形成し得る。1つの非限定的な例では、1,8-ナフタレンジイミドは、6-ジメチルアミノ)-2-メチル-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオン(NP2)であり、その構造例は上に示されており、Zは、アルデヒド343と反応して、フルオロフォア350と脱塩基部位345との間にオキシム結合を形成し得る。
【0082】
図4は、グリコシラーゼ活性を測定するため等の、脱塩基部位の量を測定するための例示的な方法における操作を概略的に示す。
図4に示す方法400は、(i)グリコシラーゼと、(ii)オリゴヌクレオチドと、(iii)反応性基に結合されたフルオロフォアと、を含む溶液を調製すること(操作402)を含み得る。例えば、溶液は、水又は緩衝液等の適切な溶媒中で、
図3Aを参照して説明したように、グリコシラーゼ360、オリゴヌクレオチド310、320、330、及び反応性基351に結合されたフルオロフォア350を一緒に混合することによって調製され得る。
【0083】
図4に示す方法400は、グリコシラーゼを使用して、溶液中のオリゴヌクレオチドに脱塩基部位を生成する工程(操作404)を更に含み得る。例えば、
図3A~
図3Bを参照して説明したような様式で、グリコシラーゼ360はオリゴヌクレオチド310、320、330に作用し、それによって脱塩基部位345を生成し得る。
図4に示される方法400は、反応性基を脱塩基部位と反応させて、フルオロフォアを脱塩基部位に結合させることを更に含み得る(操作406)。例えば、
図3Cを参照して説明されるような様式で、反応性基351は、脱塩基部位345と反応して、フルオロフォア350を脱塩基部位に結合させることができる。
図4に示す方法400は、脱塩基部位に結合されたフルオロフォアからの蛍光を使用するグリコシラーゼの活性を測定することを更に含み得る(操作408)。例えば、グリコシラーゼ360の活性は、例えば
図3A~
図3Cを参照して説明したような方法で、時間の関数としての蛍光の強度の変化を使用して測定され得る。
【0084】
図4に示す方法400は、合成による配列決定操作においてグリコシラーゼを使用することを更に含み得る。例示的に、グリコシラーゼ360は、クラスタ増幅中に形成され得るようなアンプリコンを線形化するために使用され得、例えば、アンプリコンの定義された位置に脱塩基部位を生成するために使用され得、その後、それらのアンプリコンの骨格は、脱塩基部位で切断され得る。グリコシラーゼは、代わりに任意の他の種類の操作で使用されてもよく、SBSでの使用に限定されないことが理解されよう。
【0085】
追加の実施例
以下の実施例は、純粋に例示的であり、限定することを意図するものではない。
【0086】
実施例1.CCVJ1ヒドロキシルアミンの合成
一例では、反応性基ヒドロキシルアミンに結合された分子ロータ色素CCVJ1が合成される。
【0087】
手短に言えば、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)によって保護されたO-(2-アミノエチルヒドロキシルアミン)を、以下の反応を用いて調製する。
【0088】
【0089】
CCVJ1コアを、2-シアノ酢酸と9-ホルミルジュロリジンとのアルドール縮合を介して合成し、次いで、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いて脱保護したO-(2-アミノエチルヒドロキシルアミン)と反応させて、以下の反応を用いてCCVJ1ヒドロキシルアミンを得る。
【0090】
【0091】
実施例2.NP2ヒドロキシルアミンの合成
別の例では、反応性ヒドロキシルアミンに結合されたフルオロフォアNP2が合成される。
【0092】
簡潔には、以下の反応に示されるように、市販の4-ブロモ-1,8-ナフタレン酸無水物から始まる、ナフタレンジイミドのコア構造は、実施例1に記載されるように調製されるBoc保護O-(2-アミノエチル)ヒドロキシルアミンとの縮合によって合成される。次に、ジメチルアミンを4位臭素の求核芳香族置換を介して導入する。NP2ヒドロキシルアミンは、TFA及び事前処理を使用してBoC脱保護後に得られる。
【0093】
【0094】
実施例3.DFHBIヒドロキシルアミンの合成
別の例では、反応性基ヒドロキシルアミンに結合された分子ロータ色素DFHBIを合成する。
【0095】
簡潔には、4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロベンズアルデヒドを無水酢酸中のN-アセチルグリシンと還流下で縮合させる。得られた化合物を脱保護O-(2-アミノエチル)ヒドロキシルアミン(実施例1参照)と反応させ、これによりオキサゾール環がイミダゾールに変換されて、以下の反応スキームに示すようにDFHBIヒドロキシルアミンが得られる。
【0096】
【0097】
実施例4.チアゾールオレンジヒドロキシルアミンの合成
別の例では、ヒドロキシルアミン反応性基に結合されたフルオロフォアチアゾールオレンジが合成される。
【0098】
手短に言えば、以下の反応スキームに示すように、N置換キノロン及びN置換ベンゾチアゾール化合物を、それぞれヨウ化メチル及びブロモ酢酸とのSN2反応によって調製し、互いに反応させてチアゾールオレンジ色のコア構造を得、これをBoc(tert-ブチルオキシカルボニル)保護O-(2-アミノエチル)ヒドロキシルアミンと反応させ、次いで、TFA(実施例1参照)を用いて脱保護して、チアゾールオレンジ色ヒドロキシルアミンを得る。以下の反応スキームにおいて、Et3Nはトリメチルアミンを表し、PyBOPはベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(カップリング試薬)を表し、EDCは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(代替的なカップリング剤)を表し、DIEAはN-N-ジイソプロピルエチルアミン(カップリング反応に使用される塩基)を表し、DMFはジメチルホルムアミドを表し、DCMはジクロロメタンを表す。
【0099】
【化14】
これらの実施例から、反応性基に結合された異なる色素が合成され得ることが理解され得る。
【0100】
他の実施例
様々な例示的な実施例が上述されているが、本発明から逸脱することなく、様々な変更及び修正がその中で行われ得ることは、当業者には明らかであろう。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲内にある、そのような全ての変更及び修正を網羅することを意図している。
【0101】
本明細書に記載されるような本開示の態様のそれぞれの任意の対応する特徴/実施例は、任意の適切な組合わせで共に実施されてもよく、また、これらの態様のうちの任意の1つ又は複数からの任意の特徴/実施例は、本明細書に記載されるような利点を得るために、任意の適切な組合わせで本明細書に記載されるような(複数の)他の態様の特徴のいずれかと共に実施されてもよいことを理解されたい。
【配列表】
【国際調査報告】