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特表2023-540426前立腺癌診断スコアを算出するための方法及びそれの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】前立腺癌診断スコアを算出するための方法及びそれの使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6851 20180101AFI20230915BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230915BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230915BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20230915BHJP
【FI】
C12Q1/6851 ZNA
G01N33/50 P
C12Q1/686 Z
C12N15/113 110Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581715
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 KR2020012128
(87)【国際公開番号】W WO2022054976
(87)【国際公開日】2022-03-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523002091
【氏名又は名称】ウロテック. カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ピル ドゥ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB03
2G045DA14
2G045FB02
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX02
(57)【要約】
【要約】
本明細書は、少なくとも2つの値を組み合わせることによって前立腺癌のための診断スコアを算出する方法を提供する。方法は、サンプルを調製する段階、第1の値を取得する段階、第2の値を取得する段階、及び診断スコアを算出する段階を備える。サンプルは、被験体由来の尿サンプルであり、第1の値は、サンプル中の細胞外小胞に由来するhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679-5pの量に対応し、第2の値は、サンプル中の細胞外小胞に由来するmiRNAに対応する。第1の値及び第2の値の両方は、被験体が前立腺癌を発症しているかどうかについての情報を含み、第2の値は、第1の値のために特殊化された正規化係数に対応する。方法に従って算出される前立腺癌のための診断スコアは、前立腺癌を診断することができることによって特徴付けられる。本明細書は、前立腺癌のための診断スコアの使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの値を組み合わせることによって前立腺癌のための診断スコアを算出する方法であって、
被験体のサンプルを調製する段階であって、
前記サンプルは尿サンプルである、被験体のサンプルを調製する段階と;
前記サンプル中の第1の標的の量に関連する第1の値を取得する段階であって、
前記第1の標的は、前記サンプル中の細胞外小胞に由来するhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679であり、
前記第1の値は、前記被験体の前記前立腺癌を診断する能力を有する第1の情報を反映し、
前記第1の値は前記第1の情報と同時に第1のノイズも反映するため、前記第1の値それ自体を単独で使用して前記被験体の前記前立腺癌を診断することができず、
前記第1のノイズは、前記前立腺癌に関連する要因から独立した内生要因によって引き起こされる、前記サンプル中の第1の標的の量に関連する第1の値を取得する段階と;
前記サンプル中の第2の標的の量に関連する第2の値を取得する段階であって、
前記第2の標的は、前記サンプル中の細胞外小胞に由来するmiRNAであり、
前記第2の値は、前記被験体が前記前立腺癌を有するかどうかに関連する第2の情報を反映し、
前記第2の値は、前記内生要因に関連する第3の情報を反映し、
前記第3の情報は、前記第1のノイズと強く相関しており、
それにより前記第1の値において反映される前記第1のノイズは、前記第2の値を使用することによって制御することができる、前記サンプル中の第2の標的の量に関連する第2の値を取得する段階と;
前記第1の値及び前記第2の値を使用することによって、前記前立腺癌のための前記診断スコアを算出する段階と、を備え、
それにより前記診断スコアを使用して前立腺癌を診断することができる、
方法。
【請求項2】
前記第2の標的はhsv2-miR-H9-5p又はhsa-miR-1913である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記診断スコアは、前記第1の値の前記第2の値に対する比である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記内生要因は、
前記サンプルに関連する第1の状態;及び
前記被験体に関連する第2の状態
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の状態は、
前記サンプルの量、サンプル採取時間、前記サンプルを採取する方法、サンプル保管期間、サンプル保管温度、及び前記サンプルを分割する方法
からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の状態は、
前記被験体の性別、前記被験体の年齢、前記被験体の人種、前記被験体の体重、前記被験体の腎機能、前記被験体の水分補給状態
からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の値を前記取得する段階は、
前記サンプル中の前記第1の標的の第1のcDNAを合成する段階;
第1のプライマを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって、前記第1のcDNAを増幅する段階、
前記第1のプライマは、SEQ ID NO 1~SEQ ID NO 2からなる群から選択される配列を有する;及び
前記第1のcDNAを前記増幅する段階の結果から、前記第1の値を決定する段階
をさらに有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の値を前記取得する段階は、
前記サンプル中の前記第2の標的の第2のcDNAを合成する段階と;
第2のプライマを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって、前記第2のcDNAを増幅する段階であって、
前記第2のプライマは、前記第2の標的に相同的である配列、又は前記第2の標的に相補的である配列を含む配列を有する、前記第2のcDNAを増幅する段階と;
前記第2のcDNAを前記増幅する段階の結果から、前記第2の値を決定する段階と、
をさらに有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の標的はhsv2-miR-H9-5p又はhsa-miR-1913であり、
前記第2のプライマは、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:5からなる群から選択される配列を有する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前立腺癌を診断するための検査基準を決定する方法であって、
第1のデータのセットを取得する段階であって、
前記第1のデータのセットは、
前記前立腺癌を有するかどうか、コホートの各被験体の状態のリスト、及び
請求項1に従って算出される、前記コホートの各被験体の診断スコアのリスト
を含み、
前記コホートは、正常な状態又はBPH状態を有する少なくとも1の被験体、及び前記前立腺癌を有する少なくとも1の被験体を含む、第1のデータのセットを取得する段階と、;
前記第1のデータのセットから、前記前立腺癌のための前記検査基準を決定する段階と、
を備える方法。
【請求項11】
前記検査基準は、前記診断スコアと同じ次元を有する単一の値である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記検査基準は、前記前立腺癌を有する確率を表す1又は複数の値を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
被験体の前立腺癌を診断するための方法であって、
請求項1に記載の被験体の前記診断スコアを算出する段階;及び
少なくとも1つの所定値を参照することによって前記診断スコアからリスク要因を決定する段階
を備える方法。
【請求項14】
前記所定値は、請求項10に記載の検査基準を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験体の尿に含まれるバイオマーカの発現量を測定することによって前立腺癌の発病の診断についての情報を提供することができる診断スコアを算出するための方法に関する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原理的には、前立腺癌を診断する標準的な方法は、被験体から少量の前立腺組織が採取され、次いで癌細胞の発症が決定される生検である。しかしながら、生検は被験体にとって非常に苦痛の多いプロセスが伴う。したがって、被験体が前立腺癌の発病が疑われる症状(例えば、例えば多尿症及び排尿痛などの泌尿器症状)を示すという理由のみで生検を行うことは望ましくない。したがって、被験体が前立腺癌の発病が疑われる症状を示す場合、被験体から体液(例えば、血液又は尿)を採取し、前立腺癌の発病を調べる間接的な検査を行い、次いで、これらの結果に基づいて、生検が必要であるかどうかを決定することが一般的である。現在、臨床診療において、前立腺特異抗原(prostate-specific antigen:PSA)検査が一般に行われてきており、被験体から血液を採取して、血液サンプル中のPSAの濃度が測定される。しかしながら、PSA検査は、その精度及び診断能力に関して議論を引き起こしているため、非侵襲的に前立腺癌を診断する、信頼性のある方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの態様は、被験体が前立腺癌を発症しているかどうかについての情報を提供することができる診断スコアを算出する方法を提供することである。
【0004】
本発明の別の態様は、診断スコアから前立腺癌の診断のための診断基準を決定する方法を提供することである。
【0005】
本発明のさらに別の態様は、診断スコアから前立腺癌の診断についての情報を提供する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によれば、少なくとも2つの値を組み合わせることによって前立腺癌のための診断スコアを算出する方法が提供される。方法は、被験体のサンプルを調製する段階、ここでサンプルは尿サンプルである;サンプル中の第1の標的の量に関連する第1の値を取得する段階、ここで第1の標的は、サンプル中の細胞外小胞に由来するhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679である、ここで第1の値は、被験体の前立腺癌を診断する能力を有する第1の情報を反映する、ただし、第1の値は第1の情報と同時に第1のノイズも反映するため、第1の値それ自体を単独で使用して被験体の前立腺癌を診断することができない、ここで第1のノイズは、前立腺癌に関連する要因からは独立した内生要因によって引き起こされる;サンプル中の第2の標的の量に関連する第2の値を取得する段階、ここで第2の標的はサンプル中の細胞外小胞に由来するmiRNAである、ここで第2の値は、被験体が前立腺癌を有するかどうかに関連する第2の情報を反映する、ここで第2の値は、内生要因に関連する第3の情報を反映する、ここで第3の情報は第1のノイズと強く相関しており、それにより第1の値において反映される第1のノイズは、第2の値を使用することによって制御することができる;及び第1の値及び第2の値を使用することによって前立腺癌のための診断スコアを算出する段階、それにより診断スコアを使用して前立腺癌を診断することができる、を備える。
【0007】
1つの実施形態において、ここで第2の標的はhsv2-miR-H9-5p又はhsa-miR-1913である。
【0008】
1つの実施形態において、ここで診断スコアは、第1の値と第2の値の比によって算出される。
【0009】
1つの実施形態において、ここで内生要因は、サンプルと関連付けられた第1の状態、及び被験体と関連付けられた第2の状態を含む。
【0010】
1つの実施形態において、ここで第1の状態は、サンプルの量、サンプル採取時間、サンプルを採取する方法、サンプル保管期間、サンプル保管温度、及びサンプルを細分化する方法からなる群から選択される1又は複数を含む。
【0011】
1つの実施形態において、ここで第2の状態は、被験体の性別、被験体の年齢、被験体の人種、被験体の体重、被験体の腎機能、被験体の水分補給状態からなる群から選択される1又は複数を含む。
【0012】
1つの実施形態において、ここで第1の値を取得する段階は、サンプル中の第1の標的の第1のcDNAを合成する段階;第1のプライマを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって第1のcDNAを増幅する段階、ここで第1のプライマは、SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:2からなる群から選択される;及び第1のcDNAの増幅結果から第1の値を決定する段階をさらに含む。
【0013】
1つの実施形態において、ここで第2の値を取得する段階は、サンプル中の第2の標的の第2のcDNAを合成する段階;第2のプライマを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって第2のcDNAを増幅する段階、ここで第2のプライマは、第2の標的の配列に対し相同性を有する配列又は第2の標的の配列に相補的に結合可能な配列を有する;及び第2のcDNAの増幅結果から第2の値を決定する段階をさらに含んでもよい。
【0014】
1つの実施形態において、ここで第2の標的は、hsv2-miR-H9-5p又はhsa-miR-1913であってもよく、第2のプライマは、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:5からなる群から選択されてもよい。
【0015】
本明細書によれば、前立腺癌の診断のための診断基準を決定する方法が提供される。方法は、第1のデータセットを取得する段階、ここで第1のデータセットは、コホートの各被験体が前立腺癌を発症しているかどうかのリスト、及び前立腺癌のための診断スコアを算出する方法に従ってコホートの各被験体に関して算出された診断スコアのリストを含む、ここでコホートは、正常であるか、又は良性前立腺過形成を発症している少なくとも1の被験体、及び前立腺癌を発症している少なくとも1の被験体を含む、及び第1のデータセットから前立腺癌の診断のための診断基準を決定する段階を備える。
【0016】
1つの実施形態において、ここで診断基準は、診断スコアと同じ次元を有する単一の値を含む。
【0017】
1つの実施形態において、ここで診断基準は、1又は複数の、前立腺癌を発症する確率値を含む。
【0018】
本明細書によれば、被験体における前立腺癌の発病の診断についての情報を提供する方法が提供される。方法は、診断スコアを算出する方法に従って被験体における前立腺癌のための診断スコアを算出する段階、及び少なくとも1つの所定値を参照して前立腺癌のための診断スコアからリスク要因を決定する段階を備える。
【0019】
1つの実施形態において、ここで所定値は、診断基準を決定する方法に従って決定された診断基準である。
【発明の効果】
【0020】
被験体の尿サンプルから前立腺癌の非侵襲性診断をするための情報は、本明細書で提供される診断スコアを算出する方法を用いて提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】前立腺癌のための診断スコアを算出する方法のフローチャートを示す。 この場合、第1の値を取得する工程及び第2の値を取得する工程は、並行して独立して行われてもよい工程を表す。
【0022】
図2】すべての被験体実験群に関する、実施例1及び実施例2において説明される良性前立腺過形成(benign prostatic hyperplasia:BPH)被験体の群と前立腺癌(prostate cancer:PCa)被験体の群との診断スコアの差異の統計的有意性を示すグラフを示す。 (a)は、実施例1の結果(hsv2-miR-H9対hsa-miR-3659)を示し、(b)は、実施例2の結果(hsa-miR-1913対hsa-miR-3659)を示す。
【0023】
図3】すべての被験体実験群に関する、実施例3及び実施例4において説明される良性前立腺過形成(BPH)被験体の群と前立腺癌(PCa)被験体の群との診断スコアの差異の統計的有意性を示すグラフを示す。 (a)は、実施例3の結果(hsv2-miR-H9対hsa-miR-3679-5p)を示し、(b)は、実施例4の結果(hsa-miR-1913対hsa-miR-3679-5p)を示す。
【0024】
図4】すべての被験体実験群に関する、実施例5及び実施例6において説明される良性前立腺過形成(BPH)被験体の群と前立腺癌(PCa)被験体の群との診断スコアの差異の統計的有意性を示すグラフを示す。 (a)は、実施例5の結果(hsv1-miR-H18対hsa-miR-3659)を示し、(b)は、実施例6の結果(hsv1-miR-H18対hsa-miR-3679-5p)を示す。
【0025】
図5】すべての被験体実験群に関して比較例1及び比較例2において説明される良性前立腺過形成被験体(BPH)の群と前立腺癌被験体(PCa)の群との診断スコアの差異の統計的有意性を示すグラフを示す。 (a)は、比較例1の結果(hsa-miR-30a-5p対hsa-miR-31-5p)を示し、(b)は、比較例2の結果(hsa-miR-30c-5p対hsa-miR-31-5p)を示す。
【0026】
図6】PSAグレイゾーン(3~10ng/mL)にある被験体の群に関する、実施例1及び実施例2において説明される良性前立腺過形成(BPH)被験体の群と前立腺癌(PCa)被験体の群との診断スコアの差異の統計的有意性を示すグラフを示す。 (a)は、実施例1の結果(hsv2-miR-H9対hsa-miR-3659)を示し、(b)は、実施例2の結果(hsa-miR-1913対hsa-miR-3659)を示す。
【0027】
図7】PSAグレイゾーン(3~10ng/mL)にある被験体の群に関する、実施例3及び実施例4において説明される良性前立腺過形成(BPH)被験体の群と前立腺癌(PCa)被験体の群との診断スコアの差異の統計的有意性を示すグラフを示す。 (a)は、実施例3の結果(hsv2-miR-H9対hsa-miR-3679-5p)を示し、(b)は、実施例4の結果(hsa-miR-1913対hsa-miR-3679-5p)を示す。
【0028】
図8】PSAグレイゾーン(3~10ng/mL)にある被験体の群に関する、実施例5及び実施例6において説明される良性前立腺過形成(BPH)被験体の群と前立腺癌(PCa)被験体の群との診断スコアの差異の統計的有意性を示すグラフを示す。 (a)は、実施例5の結果(hsv1-miR-H18対hsa-miR-3659)を示し、(b)は、実施例6の結果(hsv1-miR-H18対hsa-miR-3679-5p)を示す。
【0029】
図9】PSAグレイゾーン(3~10ng/mL)にある被験体の群に関する、比較例1及び比較例2において説明される良性前立腺過形成(BPH)被験体の群と前立腺癌(PCa)被験体の群との診断スコアの差異の統計的有意性を示すグラフを示す。 (a)は、比較例1の結果(hsa-miR-30a-5p対hsa-miR-31-5p)を示し、(b)は、比較例2の結果(hsa-miR-30c-5p対hsa-miR-31-5p)を示す。
【0030】
図10】PSA検査における被験体の群すべてに関するROC(receiver operating characteristic:ROC)曲線を示すグラフである。
【0031】
図11】実施例1及び実施例2において説明される被験体の群すべてに関するROC曲線を示すグラフを示す。 (a)は、実施例1のROC曲線(hsv2-miR-H9対hsa-miR-3659)を示し、(b)は、実施例2のROC曲線(hsa-miR-1913対hsa-miR-3659)を示す。
【0032】
図12】実施例3及び実施例4において説明される被験体の群すべてに関するROC曲線を示すグラフを示す。 (a)は、実施例3のROC曲線(hsv2-miR-H9対hsa-miR-3679-5p)を示し、(b)は、実施例4のROC曲線(hsa-miR-1913対hsa-miR-3679-5p)を示す。
【0033】
図13】実施例5及び実施例6において説明される被験体の群すべてに関するROC曲線を示すグラフを示す。 (a)は、実施例5のROC曲線(hsv1-miR-H18対hsa-miR-3659)を示し、(b)は、実施例6のROC曲線(hsv1-miR-H18対hsa-miR-3679-5p)を示す。この場合、診断能が基準に届かなかったため、感度及び特異度の値は別々に示されていない。
【0034】
図14】比較例1及び比較例2において説明される被験体の群すべてに関するROC曲線を示すグラフを示す。 (a)は、比較例1のROC曲線(hsa-miR-30a-5p対hsa-miR-31-5p)を示し、(b)は、比較例2のROC曲線(hsa-miR-30c-5p対hsa-miR-31-5p)を示す。この場合、診断能が基準に届かなかったため、感度及び特異度の値は別々に示されていない。
【0035】
図15】PSA検査においてPSAグレイゾーン(3~10ng/mL)にある被験体の群に関するROC曲線を示すグラフである。この場合、診断能が基準に届かなかったため、感度及び特異度の値は別々に示されていない。
【0036】
図16】実施例1及び実施例2における、PSAグレイゾーン(3~10ng/mL)にある被験体の群に関するROC曲線を示すグラフを示す。 (a)は、実施例1のROC曲線(hsv2-miR-H9対hsa-miR-3659)を示し、(b)は、実施例2のROC曲線(hsa-miR-1913対hsa-miR-3659)を示す。
【0037】
図17】実施例3及び実施例4における、PSAグレイゾーン(3~10ng/mL)にある被験体の群に関するROC曲線を示すグラフを示す。 (a)は、実施例3のROC曲線(hsv2-miR-H9対hsa-miR-3679-5p)を示し、(b)は、実施例4のROC曲線(hsa-miR-1913対hsa-miR-3679-5p)を示す。
【0038】
図18】実施例5及び実施例6における、PSAグレイゾーン(3~10ng/mL)にある被験体の群に関するROC曲線を示すグラフを示す。 (a)は、実施例5のROC曲線(hsv1-miR-H18対hsa-miR-3659)を示し、(b)は、実施例6のROC曲線(hsv1-miR-H18対hsa-miR-3679-5p)を示す。この場合、診断能が基準に届かなかったため、感度及び特異度の値は別々に示されていない。
【0039】
図19】比較例1及び比較例2における、PSAグレイゾーン(3~10ng/mL)にある被験体の群に関するROC曲線を示すグラフを示す。 (a)は、比較例1のROC曲線(hsa-miR-30a-5p対hsa-miR-31-5p)を示し、(b)は、比較例2のROC曲線(hsa-miR-30c-5p対hsa-miR-31-5p)を示す。この場合、診断能が基準に届かなかったため、感度及び特異度の値は別々に示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[最良の形態]
以下に、いくつかの特定の実施形態及び例に関して添付図面を参照しながらさらに詳細に、ここで開示される主題を説明する。添付図面は、本発明のいくつかの、しかしすべてではない実施形態を包含することに留意されるべきである。ここで開示される主題は、多くの異なる形式において具現化されてもよく、本明細書に記載される特定の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供されている。実際、本発明の多くの修正及び他の実施形態は、ここで開示される主題が関連する分野の当業者であれば思い付くであろう。したがって、ここで開示される主題が、開示される特定の実施形態に限定されるべきものではないこと、及び修正及び他の実施形態が添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されることは理解されるべきである。
【0041】
用語の定義

本明細書において使用される「約」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、重量、又は長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%の程度まで変更される、量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、数量、重量、又は長さを指す。
【0042】
被験体
本明細書において使用される「被験体」という用語は、ある特定の物質(例えば、ペプチドなど)に暴露される個別の生物を指す。被験体は、例えばヒト及び動物などの独立した生物を意味することがあり、例えば組織及び細胞の一部などの、独立した生物のいくつかの構成要素を意味することもある。この意味は、文脈において適宜解釈されてもよい。また、「被験体」という用語は、当業者によって認識される他の意味すべてを包含してもよい。
【0043】
診断
本明細書において使用される「診断」という用語は、被験体がある特定の疾患と関連付けられるかどうかを決定する、すべてのタイプの直接及び間接の行為を集合的に指す。この場合、「ある特定の疾患と関連付けられる」という語句は、関連した障害の発病、及び関連した障害が発症した場合の障害の進行についての情報などを含んでもよい。本明細書において、「ある特定の疾患を診断する」という用語が本明細書に記載されている場合、この用語は、ある特定の疾患の発病の確認、並びにある特定の疾患の発症の確率、リスク、及び/又は尤度などを包含することが広く理解されるべきである。この意味は、文脈において適宜解釈されてもよい。また、「診断」という用語は、当業者によって認識される他の意味すべてを包含してもよい。
【0044】
バイオマーカ
本明細書において使用される「バイオマーカ」という用語は一般に、被験体の身体における変化を感知し得、タンパク質、DNA、RNA、及び/又は他の代謝物質を含む指標を指す。より狭い意味において、「バイオマーカ」という用語は、被験体がある特定の疾患を有するかどうかについての情報を反映する標的物質(例えば、ある特定のタンパク質又はmiRNA)を指すことが多い。この意味は、文脈において適宜解釈されてもよく、「バイオマーカ」という用語は、当業者によって認識される他の意味すべてを包含してもよい。
【0045】
miRNA
本明細書において使用される「miRNA」又は「マイクロRNA」という用語は、植物、動物、及びウイルスなどに見出されている、20~25のヌクレオチドからなる発現されていない小さなRNA分子を指す。miRNAは、例えば、遺伝子発現の制御などの機能を有することが公知である。miRNAは、細胞中に見出され、細胞外液中にも見出される。ヒトの場合特に、miRNAは、例えば、血清、血漿、尿、唾液、及び涙液など、体のほぼすべての体液中に特に見出される。したがって、細胞外液中に見出されるmiRNAは、ある特定の疾患(例えば癌)のための診断バイオマーカとして使用するために積極的に研究されてきている。「miRNA」又は「マイクロRNA」という用語は、当業者によって認識される他の意味すべてを包含してもよい。
【0046】
細胞外小胞
本明細書において使用される「細胞外小胞」という用語は、細胞由来の脂質二重層によって取り囲まれ、自己複製機能を有しない微粒子形態の構造を指す。細胞外小胞の直径は、約20~30ナノメートルに、最大約10ミクロンまで広く変動する。細胞外小胞は、被験体の体において様々な機能を有する。この場合、細胞外小胞は、細胞外小胞において様々な機能を有するタンパク質及び脂質などを包み込み、それらを細胞外へ送達するという代表的な機能を有する。細胞外小胞は、すべてのタイプのエクトソーム、微小胞、微粒子、エキソソーム、アポトーシス小体、ラージオンコソーム、及びエキソファを包含するように言及されるが、本発明はそれらに限定されない。「細胞外小胞」という用語は、当業者によって認識される他の意味すべてを包含してもよい。
【0047】
背景:前立腺癌の診断
前立腺癌の診断-概観
原理的には、前立腺癌を診断する標準的な方法は、被験体から少量の前立腺組織が採取され、次いで癌細胞の発達が決定される生検である。しかしながら、生検は被験体にとって非常に苦痛の多いプロセスが伴う。したがって、被験体が前立腺癌の発病が疑われる症状(例えば、例えば多尿症及び排尿痛などの泌尿器症状)を示すという理由のみで生検を行うことは望ましくない。したがって、被験体が前立腺癌の発病が疑われる症状を示す場合、PSA検査によって、生検が必要であるかどうかを最初に決定することが一般的である。前立腺特異抗原(PSA)検査は、被験体から血液を採取して血液サンプル中のPSAの濃度を測定し、被験体が前立腺癌を発症する確率を推定することを含む診断方法である。以下に、診断方法のそれぞれがさらに詳細に説明される。
【0048】
PSA検査
PSA検査は、前立腺癌の発病が疑われる被験体の静脈から血液を採取し、血中の前立腺特異抗原(以下、「PSA」と呼ばれる)の濃度を測定し、PSAの濃度に基づいて前立腺癌を発症する確率を予測することを含む、一種の診断方法である。前立腺特異抗原は、主に前立腺の細胞によって産生されるタンパク質である。PSAは前立腺癌を有しない正常な被験体の血中に少量で含まれるが、PSAの濃度は一般に、前立腺癌患者の血中で増大する傾向がある。したがって、血中のPSA濃度は、前立腺癌の発病を決定するための指標として有用に使用されてもよいが、専門家らは、1)血中のPSA濃度は一般に年齢とともに増大する傾向がある、及び2)血中のPSA濃度は、被験体が癌を発症する場合でさえ前立腺癌のタイプによって増大しないなど、PSA濃度の精度に関して様々な見解を有する。文献において開示される特定の数値には差異がある程度あるが、一般に、血中のPSA濃度が測定されて3ng/mL~10ng/mLの範囲である場合、グレイゾーンにあると考えられ、グレイゾーンにおいては、PSA検査のみを使用して、被験体が、被験体が前立腺癌を発症する高リスク群に入るかどうかを確認することが困難である。
【0049】
生検
実際には、被験体が前立腺癌を発症するかどうかを確認するためには、生検によって前立腺癌の発病を診断することが必要である。これは、被験体から微量の前立腺組織を採取して前立腺組織中に癌細胞が存在するかどうかを直接的に検査することを含む方法によって達成される。これには、1)目的の試料を採取するために生検針が被験体の肛門に通されるため、患者がかなりの痛みを感じる、2)癌細胞が存在する部位が正確に突き止められない場合、生検針が通る部位の周辺部の試料を採取してしまうため、誤診のリスクがある、及び3)検査工程中に被験体の直腸などに傷が生じ、感染などにいたることがある、という点で問題がある。したがって、生検の信頼性を向上させ、検査が実際に必要な患者に限定して生検を行うための補助的な診断方法が必要とされる。PSA検査は、これらの補助的な診断方法の1つとして使用されてきたが、その信頼性が低下しており、検査結果がグレイゾーン内にある場合などに、前立腺癌が発症するかどうかを正確に決定することが不可能であるという点で、多くの制約を有する。
【0050】
背景-miRNAバイオマーカをスクリーニングすること
ある特定の疾患を被験体が有するかどうかを決定するためにバイオマーカとしてある特定のmiRNAを使用するためには、何よりもまず、ある特定のmiRNAが、ある特定の疾患を有する被験体において、正常な被験体と比較して異常に発現されているかどうかを決定する必要がある。miRNAマイクロアレイは、ある特定のmiRNAをスクリーニングする方法を代表する。miRNAマイクロアレイは、被験体の体液サンプルから、ヒトにおいて発現されることが公知であるほとんどのmiRNAの発現量をスクリーニングする方法である。この場合、被験体のサンプル中のmiRNAの発現量は、主に、当技術分野において予め製造されたキット(例えば、RNA 6000 Pico Chip Kit、Agilent Technologies、米国、カリフォルニア州、サンタクララ)を使用して測定される。ヒトにおいて発現されるタイプのmiRNAは、約1,400個のmiRNA(ヒト由来の約1,200個のmiRNA及びウイルス由来の約150個のmiRNAを含む)を含み、その数は公知のヒト遺伝子の数より比較的低い。また、miRNAの配列は当技術分野において公知である。したがって、被験体のほぼすべてのmiRNAをスクリーニングすることが可能である。市販されているキットを使用する場合、被験体のサンプル中のmiRNAの発現量をおおよそで得ることが可能である。これらの結果に基づいて、前立腺癌を有する被験体及び正常な被験体からのサンプル中のmiRNAの発現量が比較されると、前立腺癌を有する被験体において、どのmiRNAが異常に発現されているのかを見出すことが可能である。しかしながら、キットは、スクリーニング目的でのみ、およその発現量を得るために使用され得、かつ正規化の問題も有するため、正確な分析能を有するバイオマーカを見出すための追加の分析がさらに必要とされる。miRNAマイクロアレイは、前立腺癌の診断に使用され得るバイオマーカの候補群を迅速に見出すことが可能であるという点で利点を有し、したがって完全な分析作業に先立って、分析の被験体のためのスクリーニングをするために広く使用されてきた。
【0051】
先行技術の制約
尿サンプルの使用における利点
被験体の体液サンプルからある特定の疾患の感染、及び疾患の進行程度などを診断する必要がある場合、被験体の尿は、体液サンプルとして使用されるため、様々な利点を有する。最初に、血液又は組織がサンプルとして使用される場合とは異なり、注射針の使用を必要としないため、サンプルを採取することが容易であり、被験体に痛みを与えるおそれがない。さらに、ある特定の疾患が男性の泌尿器疾患である場合、泌尿器疾患は尿の流れによって尿路の比較的近い近傍で生じる。したがって、男性の泌尿器疾患についての直接的な情報は、血液サンプルと比較して、尿サンプル中に含まれていると思われる。したがって、多くの面で、男性の泌尿器疾患が診断される場合に尿サンプルを使用することは望ましい。
【0052】
細胞外小胞由来のバイオマーカを標的とすることにおける利点
細胞外小胞は、脂質二重層からなり、したがって安定した構造を有するという特徴を有する。したがって、細胞外小胞に含まれる核酸(例えば、DNA、RNA、又はmiRNAなど)、又はタンパク質断片などは、細胞外小胞が意図的に破壊されない限り、時間がたっても安定状態に保たれ得る。これは、体液サンプル(血液及び尿など)中に直接的に含まれる核酸、又はタンパク質断片などが、外部要因によって経時的に容易に分解されるという事実とは反対である。したがって、細胞外小胞中に含まれる物質がバイオマーカ標的として使用される場合、サンプルを長期間保管し得るという利点がある。細胞外小胞は尿サンプル中にも含まれるため、細胞外小胞由来の物質が、適切な前処理工程に供された後、尿サンプルにおけるバイオマーカ標的として使用されてもよい。
【0053】
尿中の細胞外小胞由来のバイオマーカを測定することにおける問題
尿中の細胞外小胞由来の物質をバイオマーカ標的として使用する場合、1)サンプルを確保することが容易である、2)男性の泌尿器疾患を診断することが有利である、及び3)前述の特徴に起因してサンプルを保管することが容易であるという点で利点を有する。しかしながら、細胞外小胞由来の物質は利点だけでなく明白な欠点も有する。すなわち、それは、1)尿中に含まれる細胞外小胞由来の物質(例えば、miRNAなど)の絶対量が少ない、及び2)尿中に含まれるバイオマーカ標的の量はサンプル又は被験体の状態に依存して大きく変動するという点で欠点を有する。サンプル中に含まれるバイオマーカ標的の発現量に基づいてある特定の疾患を診断するためには、複数の被験体から複数のサンプルを採取してそれぞれのサンプル中のバイオマーカ標的の発現量を比較することが必要である。したがって、前述の欠点を克服して、バイオマーカ標的として尿中の細胞外小胞由来の物質を使用する診断方法を開発しなければならない。前述の欠点を克服するためには、サンプル中のバイオマーカ標的の発現量における、信頼性のある正規化処理が必要とされる。
【0054】
先行技術の技術的解決法及び制約
先行技術によれば、正規化処理の1つとして、尿中の細胞外小胞由来のバイオマーカ(例えば、miRNA)のためのハウスキーピング遺伝子の発見が試みられてきたが、試みは失敗した。また、サンプル中のmiRNAの総量を使用して正規化すること(Yun et al.、Int Neurourol J 2015;19:17-84)、及び上方発現されたバイオマーカと下方発現されたバイオマーカの比を算出することによって正規化の必要性を回避すること(US15/550416)が試みられてきたが、それは、効果が限定的であるという点で制約がある。
【0055】
前立腺癌のための診断スコアを算出する方法
診断スコアを算出する方法-概観
本明細書は、少なくとも2つの値を使用して前立腺癌のための診断スコアを算出する方法を提供する。診断スコアを算出する方法は、サンプルを調製する段階、第1の値を測定する段階、第2の値を測定する段階、及び診断スコアを算出する段階を備える。この場合、被験体の尿サンプルがサンプルとして使用される。第1の値は、第1の標的と関連付けられた値、すなわち、細胞外小胞に由来するhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679である。この場合、miRNAは、前立腺癌の発病についての情報を含む。しかしながら、第1の値は、内生要因の作用を反映するため、前立腺癌の診断において使用するために第1の値を正規化することが必要である。第2の値は、第2の標的、すなわち、サンプル中の細胞外小胞に由来するmiRNAと関連付けられた値である。例えば、第2の標的は、細胞外小胞に由来するhsv2-miR-H9-5p又はhsa-miR-1913であってもよいが、本発明はそれらに限定されない。第2の値は、第1の値の正規化係数として使用されてもよく、第2の値は、前立腺癌の発病についての情報も含む。第1の値を測定する段階及び/又は第2の値を測定する段階は、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)によって第1の標的及び/又は第2の標的を増幅させる段階、及び結果を決定する段階を含んでもよい。診断スコアは、上述の工程において取得された第1の値及び第2の値に基づいて算出される。この場合、診断スコアは、被験体における前立腺癌の発病を診断することができる。
【0056】
診断スコアを算出する方法の第1の特徴-尿サンプルを使用すること
本明細書において提供される診断スコアを算出する方法を使用して、被験体が前立腺癌を発症しているかどうかを診断し得る。診断スコアを算出する方法は、尿サンプルを使用して、尿サンプル中に含まれるバイオマーカを測定することによって特徴付けられる。これは、サンプルを採取する方法は簡便かつ安価であり、被験体に痛みを与えるおそれがないという点で利点を有する。また、前立腺細胞から分泌される物質は尿中に直接的に含まれ得るため、診断スコアを算出する方法は、血液サンプルからの、前立腺癌と関連付けられたバイオマーカを測定する方法と比較して、より直接的な方法であり得るという点で利点を有する。
【0057】
診断スコアを算出する方法の第2の特徴-細胞外小胞由来のmiRNAを測定すること
本明細書において提供される診断スコアを算出する方法は、サンプル中の少なくとも2つのバイオマーカの発現量を測定することによって、前立腺癌のための診断スコアを算出することである。この場合、バイオマーカは、それが、尿中の細胞外小胞に含まれるmiRNAであることを特徴とする。細胞外小胞は、脂質二重層によって取り囲まれて安定した構造を有するため、細胞外小胞に含まれる物質(例えば、miRNA)は、外部環境の作用から効果的に保護される。したがって、細胞外小胞は、細胞外小胞が破壊されない限り、その中の物質を保持するという特徴を有する。したがって、測定されることになる標的として、細胞外小胞に含まれるmiRNAが使用される場合、サンプルが被験体から採取された後、サンプルは長期間保管され得るという点で利点を有する。また、サンプルの保管状態は、診断スコアの算出結果に大きい影響を有しないという点で利点を有する。
【0058】
診断スコアを算出する方法の第3の特徴-hsa-miR-3659又はhsa-miR-3679の発現量を測定すること
大韓民国特許出願第10-2018-0045062号において開示されているように、hsa-miR-3659又はhsa-miR-3679は、前立腺癌のためのバイオマーカとして使用されてもよい。本明細書において提供される診断スコアを算出する方法は、被験体におけるhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679の発現量と関連付けられた値を基本的に使用するため、方法によって算出された診断スコアは、前立腺癌の発病を診断することができる。
【0059】
診断スコアを算出する方法の第4の特徴-hsa-miR-3659又はhsa-miR-3679のために特殊化された正規化係数を使用すること本明細書において提供される診断スコアを算出する方法は、尿サンプル中に含まれるhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679の発現量のために特殊化された正規化係数を使用することによって特徴付けられる。一般に、ハウスキーピング遺伝子のためのバイオマーカが見出され、バイオマーカの発現量を正規化するために使用されるが、本明細書において提供される診断スコアを算出する方法では、標的であるhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679のために特殊化された正規化係数を使用する。ハウスキーピング遺伝子のためのバイオマーカが正規化係数として使用される場合、それは、1)一般にハウスキーピング遺伝子のためのバイオマーカを見出すことは非常に困難な作業である、2)尿中の細胞外小胞に由来するmiRNAに関して、ハウスキーピング遺伝子と関連付けられたバイオマーカは明確に明らかにされていないという点で困難である。他方で、標的のために特殊化された正規化係数が使用される場合、1)ハウスキーピング遺伝子のためのバイオマーカを見出す困難を避けることが可能である、2)標的の発現量に関してより信頼性のある結果を得ることが可能であるという点で利点を有する。
【0060】
診断スコアを算出する方法の第5の特徴-前立腺癌に関連付けられた要因を正規化係数として使用すること
本明細書において提供される診断スコアを算出する方法において、正規化係数はまた、被験体が前立腺癌を発症しているかどうかについての情報を含むことによって特徴付けられる。したがって、1又は複数のタイプの処理された情報は、hsa-miR-3659又はhsa-miR-3679の発現量を含む前立腺癌についての情報と、正規化係数に含まれる前立腺癌についての情報とを組み合わせることによって演繹されてもよい。例えば、処理された情報は、前立腺癌の発病についての情報を増幅することによって得られてもよい。
【0061】
診断スコアの使用
本明細書において提供される診断スコアを、1)使用して前立腺癌の発病のための診断基準を決定してもよい、及び2)診断基準を参照する、前立腺癌を診断する方法のために使用してもよい。
【0062】
サンプルの調製
サンプルの調製-概観
本明細書において提供される診断スコアを算出する方法に含まれる被験体のためのサンプルの調製は、被験体のための尿サンプルを調製することを含む。尿サンプルの調製は、適切な前処理を行って尿サンプル中に含まれる細胞外小胞に由来するmiRNAの量を測定することをさらに含んでもよい。1つの実施形態によれば、サンプルの調製は、尿サンプル中に含まれる細胞外小胞を破壊することを含んでもよい。
【0063】
サンプルのタイプ
サンプルは被験体由来の尿サンプルである。1つの実施形態によれば、尿サンプルは、朝一番に被験体から採取された尿サンプルであってもよい。1つの実施形態によれば、尿サンプルは被験体から採取された尿の上清サンプルであってもよい。1つの実施形態によれば、尿サンプルは、被験体の尿が遠心分離された後得られる生成物の上清サンプルであってもよい。
【0064】
サンプルの体積
尿サンプルの体積は特に限定されず、必要に応じて適切に選択されてもよい。
【0065】
サンプル保管温度
尿サンプルの保管温度は、サンプル中に含まれる標的バイオマーカが安全に保管され得る温度である限り特に限定されない。
【0066】
細胞外小胞を含むサンプル
尿サンプルは、被験体の細胞から分泌された細胞外小胞を含む。1つの実施形態によれば、細胞外小胞はエキソソームであってもよい。1つの実施形態によれば、細胞外小胞は、エキソソーム、微小胞、及びアポトーシス小体からなる群から選択される1又は複数を含んでもよい。
【0067】
サンプルの細分化
尿サンプルは、必要である場合細分化した後使用されてもよい。1つの実施形態によれば、第1のサンプルは、第1のサブサンプル及び第2のサブサンプルに分割されてもよい。1つの実施形態によれば、第2のサンプルは、3つ又はそれより多くのサブサンプルに分割されてもよい。
【0068】
サンプルの調製-例
サンプルの調製において、尿サンプルの調製は、それが第1の値及び第2の値を得るために必要とされる工程である限り特に限定されない。1つの実施形態によれば、サンプルの調製は、被験体由来の尿上清サンプルを調製することを含んでもよい。サンプルの調製は、サンプルを前処理することをさらに含んでもよい。サンプルの前処理は、目的の細胞外小胞由来のmiRNAの発現量に対応する値を測定するために必要とされる工程である限り特に限定されない。1つの実施形態によれば、尿サンプルの調製は、被験体の尿サンプルに好適なキットを使用して尿中のmiRNAを抽出することをさらに含んでもよい。この場合、公知のキットがキットとして使用されてもよく、例えば、Genolution尿中miRNA精製キット(Genolution Pharmaceuticals Inc.、韓国、ソウル)であってもよいが、本発明はそれに限定されない。
【0069】
第1の値を取得する段階
第1の値を取得する段階-概観
本明細書において提供される診断スコアを算出する方法において、第1の値は、前立腺癌を診断することができる、細胞外小胞由来のhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679と関連付けられた値である。1つの実施形態によれば、第1の値は、サンプル中に含まれる第1の標的の量に対応する値であってもよい。この場合、第1の標的は、細胞外小胞に由来するhsa-miR-3659及び/又はhsa-miR-3679である。第1の値は、被験体が前立腺癌を有するかどうかについての情報を反映する。しかしながら、第1の値においては、被験体が前立腺癌を有するかどうかについての情報とともに、様々な内生要因の作用が反映されるため、第1の値を単独で使用して、被験体が前立腺癌を有するかどうかを決定することは困難である。1つの実施形態によれば、第1の値は、前立腺癌を診断することができる第1の情報、及び第1の情報から独立した内生要因によって引き起こされる第1のノイズを同時に反映してもよい。第1の値を取得する方法は、細胞外小胞由来のhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679の量に対応する値を算出することができる方法である限り特に限定されない。1つの実施形態によれば、第1の値を取得する段階は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してサンプル中の1又は複数のmiRNAを増幅する段階、及び増幅の結果からサンプル中の1又は複数のmiRNAの量を算出する段階を含んでもよい。
【0070】
尿中の細胞外小胞由来のhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679を標的とすること第1の値は、前立腺癌を診断することができる、細胞外小胞由来のhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679と関連付けられた値である。これは、miRNAアッセイ法を使用して見出された、前立腺癌の発病についての情報を含むバイオマーカに対応する。本発明者は、研究を行い、被験体の尿中の細胞外小胞由来のhsa-miR-3659及びhsa-miR-3679は、前立腺癌を有する被験体において、正常な被験体と比較して下方発現されていることを見出した。したがって、本明細書において提供される診断スコアを算出する方法は、被験体の尿サンプル中に含まれる細胞外小胞由来のhsa-miR-3659及び/又はhsa-miR-3679を標的として使用して、サンプル中に含まれる標的の量を算出する段階を備える。
【0071】
第1の値を取得する方法の例-PCR
1つの実施形態によれば、第1の値を取得する段階は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、尿サンプル中の細胞外小胞由来のhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679を増幅する段階、及び増幅の結果から第1の値を取得する段階を含んでもよい。この場合、PCRを使用して増幅する方法は、当業者に公知の方法から適切に選択されてもよい。1つの実施形態によれば、第1の値を取得する段階は、第1の標的としてサンプル中の細胞外小胞由来のhsa-miR-3659及び/又はhsa-miR-3679を使用して第1の標的のcDNAを合成する段階;SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:2からなる群から選択される1又は複数のプライマを含む反応試薬とcDNAを混合してPCR増幅のための混合物を調製する段階;RT-PCRによってPCR増幅のための混合物を増幅する段階;及びRT-PCRの結果からサンプル中に含まれる第1の標的の量を算出する段階をさらに含んでもよい。1つの実施形態によれば、RT-PCRの結果は、反応サイクル数対蛍光シグナル強度のグラフ及び/又は融解曲線を含んでもよい。1つの実施形態によれば、第1の値を取得する段階は、公知のPCR装置を使用して行われてもよい。具体的には、PCR装置は、Rotor Gene 6000機器(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)であってもよいが、本発明はそれに限定されない。
【0072】
第1の値の単独使用の制約-内生要因の作用
被験体のサンプル中に含まれる細胞外小胞由来のhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679の量が、被験体が前立腺癌を発症しているかどうかについての情報を反映する場合でさえ、第1の値を単独で使用して前立腺癌の発病及び/又は前立腺癌の進行の程度を診断することはできない。これは、前立腺癌の発病についての情報及び情報から独立した内生要因の作用が、第1の値において同時に反映されるためである。したがって、内生要因の作用が除去、低減、且つ/又は制御されない限り、第1の値を単独で使用して前立腺癌の発病及び/又は前立腺癌の進行の程度を診断することは困難である。内生要因は、前立腺癌から独立した様々な要因を指し、以下のとおりさらに詳細に説明される。
【0073】
内生要因
内生要因-定義
ある特定の疾患に関するバイオマーカの発現量が測定される場合、バイオマーカの発現量に影響を有する様々な要因が存在する。本明細書において、「内生要因」という用語は、バイオマーカの発現量に影響を及ぼす要因の中でも、ある特定の疾患と関連付けられた要因(例えば、ある特定の疾患の発病及び進行)ではなく、サンプル又は被験体それ自体と関連付けられた要因を集合的に指す。サンプル中に含まれるバイオマーカの量は、ある特定の疾患の作用だけでなく内生要因の作用も反映するため、バイオマーカの発現量を使用してある特定の疾患を診断するためには、内生要因の作用を除去、低減、且つ/又は制御することは非常に重要である。
【0074】
内生要因の第1の例-サンプル関連要因
内生要因はサンプル関連要因を含んでもよい。「サンプル関連要因」という語句は、サンプル中のバイオマーカの発現量に影響を及ぼし得る要因の中でも、サンプルそれ自体の属性と関連付けられた要因を集合的に指す。1つの実施形態によれば、内生要因は、1又は複数のサンプル関連要因を含んでもよい。具体的には、サンプル関連要因は、サンプルの体積、サンプル採取時間、サンプルを採取する方法、サンプル保管期間、サンプル保管温度、又はサンプルを細分化する方法を含んでもよいが、本発明はそれらに限定されない。
【0075】
内生要因の第2の例-被験体関連要因
内生要因は、被験体関連要因を含んでもよい。「被験体関連要因」という語句は、サンプル中のバイオマーカの発現量に影響を及ぼし得る要因の中でも、被験体における、前立腺癌の発病から独立した生理活性及び状態などと関連付けられた要因を集合的に指す。1つの実施形態によれば、内生要因は、1又は複数の被験体関連要因を含んでもよい。具体的には、被験体関連要因は、サンプルの採取前に被験体の性別、被験体の年齢、被験体の人種、被験体の体重、被験体の腎機能、又は被験体の水分補給状態を含んでもよいが、本発明はそれらに限定されない。
【0076】
第2の値を取得する段階
第2の値を取得する段階-概観
第2の値は、サンプル中の細胞外小胞由来のmiRNAと関連付けられた値である。1つの実施形態によれば、第2の値は、サンプル中に含まれる細胞外小胞由来のmiRNAの量に対応する値であってもよい。具体的には、細胞外小胞由来のmiRNAは、hsv2-miR-H9-5p又はhsa-miR-1913であってもよいが、本発明はそれらに限定されない。また、第2の値は、被験体が前立腺癌を発症しているかどうかについての情報を含む。さらに、内生要因の作用が第2の値において反映される。この場合、第2の値において反映される内生要因の作用は、第1の値において反映される内生要因の作用の程度と緊密な相関関係を有する。したがって、第1の値は、第2の値を使用して正規化されてもよい。換言すると、第1の値において反映される内生要因の作用は、第2の値を使用して除去、低減、且つ/又は制御されてもよい。1つの実施形態によれば、第2の値は、被験体が前立腺癌を発症しているかどうかについての第2の情報、及び内生要因と関連付けられた第3の情報を反映する値であってもよい。この場合、第3の情報は、第1のノイズと緊密な相関関係を有し、したがって、第1の値は、第2の値を使用して正規化され得る。
【0077】
細胞外小胞由来のmiRNAを標的とすること
第2の値は、サンプル中の細胞外小胞由来のmiRNAと関連付けられた値である。第1の値において反映される内生要因の作用を除去するためには、第1の値から独立しており、かつ同じ内生要因の作用を反映する値が必要とされる。細胞外小胞由来のmiRNAの発現量と関連付けられた値は、好ましくは第2の値として使用され、このことは、それが、第1の値も細胞外小胞由来のmiRNA(hsa-miR-3659又はhsa-miR-3679)の発現量と関連付けられた値であるため、同じ又は類似の内生要因の作用を有すると考えられるためである。1つの実施形態によれば、第2の値は、サンプル中に含まれる細胞外小胞由来のmiRNAの量に対応する値であってもよい。
【0078】
第2の値の第1の特徴-内生要因についての情報を含むこと
第1の値と同様に、第2の値は内生要因の作用を反映する。上述したように、内生要因は、1又は複数のサンプル関連要因、及び/又は1又は複数の被験体関連要因を含む。
【0079】
第2の値の第2の特徴-前立腺癌と関連付けられた情報を含むこと
第1の値と同様に、第2の値も、被験体が前立腺癌を発症しているかどうかについての情報を含む。ただし、第2の値に含まれる前立腺癌の発病についての情報は、第1の値に含まれる情報から独立している。1つの実施形態によれば、第2の値は、サンプル中に含まれる第2の標的の量に対応する値であってもよい。この場合、第2の値は、被験体が前立腺癌を発症しているかどうかについての第2の情報を反映してもよい。1つの実施形態によれば、第2の標的は、正常な被験体又は良性前立腺過形成を有する被験体と比較して、前立腺癌を発症している被験体において上方制御されていてもよい。さらに別の実施形態によれば、第2の標的は、正常な被験体又は良性前立腺過形成を有する被験体と比較して、前立腺癌を発症している被験体において下方制御されていてもよい。1つの実施形態によれば、第2の標的は、細胞外小胞に由来するhsv2-miR-H9-5p、hsv1-miR-H18、又はhsa-miR-1913であってもよい。
【0080】
第2の値の第3の特徴-第1の値において反映される内生要因の作用との緊密な相関関係そのため、第2の値は、1)細胞外小胞由来のmiRNAを標的とすること、2)前立腺癌と関連付けられる情報を含むこと、及び3)内生要因についての情報を含むことによって特徴付けられる。しかしながら、第2の値がこれら3つの状態を満たす場合でさえ、本明細書において提供される診断スコアを算出する方法において、第2の値として利用されないことがある。これは、第2の値を取得する目的が、第1の値において反映される内生要因の作用を除去、低減、且つ/又は制御することであるためである。したがって、第2の値において反映される内生要因の作用は、第1の値において反映される内生要因の作用と緊密な相関関係を有しなければならない。本明細書において提供される第2の値が使用される場合、第1の値において反映される内生要因の作用は、除去、低減、且つ/又は制御され得る。1つの実施形態によれば、第2の値は、第1の値において反映される内生要因の作用である第1のノイズと緊密な相関関係を有する第3の情報を含んでもよい。
【0081】
第2の値を取得する方法の例-PCR
1つの実施形態によれば、第2の値を取得する段階は、PCRによって尿サンプル中の細胞外小胞由来のmiRNAを増幅する段階、及び増幅の結果から第2の値を取得する段階を含んでもよい。具体的なPCR法は、「第1の値を取得する方法の例-PCR」のセクションにおいて説明されるとおりである。この場合、cDNAと混合された反応試薬に含まれるプライマの特異的な配列は、第2の値を算出するための標的としての細胞外小胞由来のmiRNAの配列に依存して変動してもよい。1つの実施形態によれば、第2の標的として細胞外小胞由来のhsv2-miR-H9-5p及び/又はhsa-miR-1913を使用して第2の値を取得する段階を行う場合、反応試薬に含まれるプライマは、SEQ ID NO:3~SEQ ID NO:4からなる群から選択される1又は複数の配列を有してもよい。
【0082】
第1の値を取得する工程と第2の値を取得する工程との関係
本明細書において提供される前立腺癌のための診断スコアを算出する方法に含まれる、第1の値を取得する段階及び第2の値を取得する段階が、前述の状態及び特徴を満たす場合、各順序及び方法は特に限定されない。1つの実施形態によれば、第1の値を取得する段階及び第2の値を取得する段階は、同時に行われてもよい。別の実施形態によれば、第1の値を取得する段階及び第2の値を取得する段階は、順次的に行われてもよい。例えば、第1の値が取得された後、第2の値が取得されてもよい。別の例として、第2の値が取得された後、第1の値が取得されてもよい。1つの実施形態によれば、第1の値を取得する段階及び第2の値を取得する段階は、同じ方法によって行われてもよい。具体的には、第1の値を取得する段階及び第2の値を取得する段階は、同じPCR法によって行われてもよい。さらに、第1の値を取得する段階及び第2の値を取得する段階は、同じPCR装置を使用して行われてもよい。さらに別の実施形態によれば、第1の値を取得する段階及び第2の値を取得する段階は、異なる方法によって行われてもよい。1つの実施形態によれば、第1の値を取得する段階及び第2の値を取得する段階は、他の分離工程なしにサンプル中で行われてもよい。別の実施形態によれば、サンプルが2つ又はそれより多くのサブサンプルに細分化された後で、第1の値を取得する段階及び第2の値を取得する段階は、サブサンプルに対し別々に行われてもよい。具体的には、サンプルは、第1のサブサンプル及び第2のサブサンプルに細分化されてもよく、第1の値は第1のサブサンプルから取得されてもよく、次いで第2の値は第2のサブサンプルから取得されてもよい。
【0083】
診断スコアを算出する段階
診断スコアを算出する段階-概観
本明細書において提供される診断スコアを算出する方法は、上述したような第1の値を取得する段階及び第2の値を取得する段階から取得された第1の値及び第2の値を使用して診断スコアを算出する段階を備えてもよい。1つの実施形態によれば、前立腺癌のための診断スコアを算出する段階は、第1の値及び第2の値を使用して行われる。結果として、診断スコアを使用して前立腺癌を診断してもよい。
【0084】
診断スコアの特徴-前立腺癌関連バイオマーカについての情報を反映すること
診断スコアは、第2の値を使用して第1の値において反映される内生要因の作用を正規化することによって取得されるため、診断スコアは、第1の値において反映される前立腺癌の発病及び/又は前立腺癌の進行の程度と関連付けられた情報を含む。したがって、診断スコアは前立腺癌を診断することができる。
【0085】
診断スコアを算出する方法の例
診断スコアの算出は、以下の2つの条件、1)第1の値及び第2の値の両方を使用すること、及び2)診断スコアにおける第1の値及び第2の値において反映される内生要因の作用を除去、低減、且つ/又は制御することを満たす限り特に限定されない。1つの実施形態によれば、診断スコアは第1の値と第2の値の比によって算出されてもよい。
【0086】
前立腺癌の診断のための検査基準を決定する方法
前立腺癌の診断のための検査基準を決定する方法-概観
本明細書は、前立腺癌のための診断スコアを使用して前立腺癌の診断のための検査基準を決定する方法を提供する。前立腺癌のための診断スコアは、前立腺癌を発症している被験体の群及び前立腺癌を発症していない被験体の群に関して、異なるパターン(例えば、被験体の個別の群に関する診断スコアの異なる平均値)を有するため、個別の被験体における前立腺癌の発病が予めわかっているコホートに関して、個別の被験体に関する診断スコアの分布が分析される場合に、前立腺癌検査の診断基準は決定され得る。1つの実施形態によれば、前立腺癌の診断のための検査基準を決定する方法は、コホートに含まれる被験体から、前立腺癌の発病についての情報及び前立腺癌のための診断スコアを含むデータセットを取得する段階;及びデータセットから前立腺癌の診断のための検査基準を決定する段階を備える。この場合、コホートは、前立腺癌を発症している1又は複数の被験体、及び前立腺癌を発症していない1又は複数の被験体を含む。また、前立腺癌のための診断スコアは、本明細書において提供される前立腺癌のための診断スコアを算出する方法によって算出される。
【0087】
コホート
前立腺癌の診断のための検査基準を決定する方法は、1又は複数の被験体における前立腺癌の発病についての情報、及び前立腺癌のための診断スコアを必要とする。したがって、方法は、前立腺癌を発症していない1又は複数の被験体及び前立腺癌を発症している1又は複数の被験体を含むコホートを標的とする。1つの実施形態によれば、前立腺癌の診断のための検査基準を決定する方法は、正常であるか又は良性前立腺過形成を発症している1又は複数の被験体、及び前立腺癌を発症している被験体を含むコホートに対し行われてもよい。
【0088】
データセットを取得する段階
前立腺癌の診断のための検査基準を決定する方法は、コホートに含まれる被験体のそれぞれからの前立腺癌の発病についての情報及び前立腺癌のための診断スコアを含むデータセットを取得する段階を備える。1つの実施形態によれば、前立腺癌の診断のための検査基準を決定する方法は、第1のデータセットを算出する段階、ここで第1のデータセットは、コホートの各被験体が前立腺癌を発症しているかどうかについての情報のリスト、及びコホートの個別の被験体のための診断スコアのリストを含む、を備える。この場合、診断スコアは、本明細書において提供される前立腺癌のための診断スコアを算出する方法によって算出される。
【0089】
前立腺癌の診断のための検査基準を決定する段階
前立腺癌の診断のための検査基準を決定する方法は、データセットから前立腺癌の診断のための検査基準を決定する段階を備える。前立腺癌の診断のための検査基準は、前立腺癌の発症が不明である被験体から診断スコアが取得される場合に被験体が前立腺癌を発症しているかどうかを決定するための標準を提供する。1つの実施形態によれば、データセットから前立腺癌の診断のための検査基準を決定する段階は、検査基準の感度及び特異度を考慮して行われてもよい。例えば、検査基準は、感度及び特異度を最大化するための標準を提供してもよい。別の例として、検査基準は、ある特定の感度値より大きいか等しい値を表すための標準を提供してもよい。さらに別の例として、検査基準は、ある特定の特異度値より大きいか等しい値を表すための標準を提供してもよい。1つの実施形態によれば、前立腺癌の診断のための検査基準は、診断スコア値に応じて、前立腺癌を発症する確率を提供してもよい。
【0090】
前立腺癌の診断についての情報を提供する方法
本明細書は、診断スコアを使用して前立腺癌の診断についての情報を提供する方法を開示する。この場合、前立腺癌の診断のための検査基準が使用されてもよい。1つの実施形態によれば、前立腺癌の診断についての情報を提供する方法は、被験体における前立腺癌のための診断スコアを算出する段階;及び1又は複数の所定値を参照して、診断スコアから前立腺癌に関するリスク要因を決定する段階を備えてもよい。この場合、1又は複数の所定値は、前立腺癌の診断のための検査基準であってもよい。
【0091】
前立腺癌のための診断スコアを算出する方法-概要
本明細書は、少なくとも2つの値を組み合わせることによって前立腺癌のための診断スコアを算出する方法を提供する。前立腺癌のための診断スコアを算出する方法は、サンプルを調製する段階、第1の値を取得する段階、第2の値を取得する段階、及び診断スコアを算出する段階を備える。サンプルはそれが被験体の尿サンプルであることを特徴とし、第1の値は、サンプル中に含まれる第1の標的の量に対応する値であり、ここで、サンプル中に含まれる細胞外小胞に由来するhsa-miR-3659又はhsa-miR-3679-5pは第1の標的として使用される、且つ第2の値は、サンプル中に含まれる第2の標的の量に対応する値であり、ここで、サンプル中に含まれる細胞外小胞に由来するmiRNAは第2の標的として使用される。第1の値及び第2の値の両方は、被験体が前立腺癌を発症しているかどうかについての情報を含み、第2の値は、第1の値のために特殊化された正規化係数に対応する。したがって、方法に従って算出される前立腺癌のための診断スコアは、前立腺癌を診断することができることによって特徴付けられる。本明細書は、前立腺癌のための診断スコアの使用を提供する。1)前立腺癌のための診断基準は、前立腺癌のための診断スコアを使用して決定されてもよい、及び2)前立腺癌のための診断スコアを使用する前立腺癌の発病の診断についての情報及び前立腺癌のための診断基準が提供されてもよい。
【実施例
【0092】
[発明の形態]
以下に、本明細書において提供される本発明を、実験例及びそれらの実施例を参照しながらさらに詳細に本発明を説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明を説明する目的のためだけに提供されるのであり、本明細書に記載される本開示の範囲を限定するものとして解釈されることを意図しないことは、当業者にとって明白となろう。
【0093】
実験例1:検査被験体及びサンプルの調製
実験例1.1:検査被験体
前立腺癌のための診断スコアを算出するために、サンプルを採取されることになる被験体の実験群を調製した。被験体実験群は、前立腺癌を発症しない、良性前立腺過形成(BPH)を有する患者、及び前立腺癌を発症している患者の両方を含んだ。被験体の実験群の特徴は、下記の表1に列挙されるとおりである。
【表1】
BPH:良性前立腺過形成;PCa:前立腺癌;SD:標準偏差;PSA:前立腺特異抗原;TURP:経尿道的前立腺切除術。P値は、BPH及びPCaを有する被験体由来の尿サンプルを使用することによって、マン・ホイットニーのU検定によって算出される値である。
【0094】
実験例1.2:サンプルの調製
実験例1.1において調製された被験体の各群からサンプルを調製した。サンプルの調製は以下のとおりであった。
(1)朝に被験体の尿を採取した。
(2)遠心分離機を使用して2,500rpmで15分間、尿サンプルを遠心分離した。
(3)サンプルとして尿の上清を採取し、次の工程で使用するまで-20℃で保管した。
【0095】
実験例1.3:サンプルの前処理
実験例1.2において調製された尿サンプルを、第1の値及び第2の値を算出するための前処理工程に供した。この工程は以下のとおりである。
(1)Genolution尿中miRNA精製キット(Genolution Pharmaceuticals Inc.、韓国、ソウル)を使用して尿サンプルを精製した。
(2)Genolutionが商標権を有するmiRNA分離溶液を含有するチューブに500μLの尿サンプル上清を加え、20秒間ボルテックスした。
(3)チューブに200μLのクロロホルムを加え、10秒間ボルテックスした。
(4)段階(3)の後、4℃、及び13,000rpmで10分間、チューブを遠心分離機にかけた。
(5)段階(4)の後、チューブの上部から650μLの液相を除去した。この場合では、チューブ中の白色沈殿物を除去しないように注意した。
(6)段階(5)の後、チューブ中に残るサンプルを新しい1.5mLチューブに移し、これに0.8mLのイソプロパノールを加えた。
(7)段階(6)の後、4℃、及び15,000rpmで20分間、チューブを遠心分離機にかけた。
(8)段階(7)の後、RNAペレットの反対方向にチューブを傾けて液相を注ぎ出した。
(9)段階(8)の後、チューブに500μLの70%EtOHを加えた。
(10)段階(9)の後、4℃、及び15,000rpmで20分間、チューブを遠心分離機にかけた。
(11)段階(10)の後、残存するエタノールをチューブから除去し、次いで、残りのペレットを40μLのRNaseフリー水に溶解させ、使用するまで-80℃で保管した。
【0096】
実験例2:サンプル中に含まれる標的miRNAの量の測定
実験例1において調製されたサンプル中に含まれる標的miRNAの量をPCR法によって算出した。具体的なPCR法は以下のとおりである。
(1)Mir-XTM miRNA First Strand cDNA Synthesisキット(TAKARA BIO、日本、大津)を使用して、実験例1.3において調製されたサンプルからcDNAを合成した。この場合では、製造業者のプロトコルに従ってcDNA合成法を行った。
(2)SYBR Premix EX Taq(TAKARA BIO)を含有する微量反応チューブ(Corbett Research、オーストラリア、モートレイク)に、10μLの最終体積で段階(1)の生成物を加え、Rotor-Gene Q機器(Qiagen、米国、カリフォルニア州、バレンシア)を使用するRT-PCR分析に供した。この場合では、標的miRNAにそれぞれ対応するプライマ(RNAオリゴヌクレオチド)(Integrated DNA Technologies (IDT)、韓国、ソウル)を使用して標的miRNAの標準曲線をプロットした。使用した標的miRNA及びプライマの配列を下記の表2に列挙する。
【表2】
(3)2.25×105~2.25×108の範囲で標準曲線をプロットし、すべてのサンプルを3連で測定した。この場合では、製造業者のプロトコルに従って、RT-PCRの条件を設定した。
(4)Rotor-Gene Qソフトウェア2.3.1.49を使用して出力としてのスペクトルデータを収集し分析した。
【0097】
実験例3:統計解析
実験例3.1:診断スコアの算出
第1の値又は第2の値として実験例2において取得したサンプル中に含まれる標的miRNAの量を使用して診断スコアを算出した。サンプル中に含まれる2つの標的miRNAの量の比によって、診断スコアを算出した。下記の表3に実施例において使用した特定の標的を列挙する。
【表3】
【0098】
実験例3.2:各実施例における分析能の確認
実験例3.1において算出されたそれぞれの実施例の診断スコアを使用して前立腺癌を診断する能力を確認するために、以下のとおり統計解析を行った。
(1)マン・ホイットニーのU検定を使用して、それぞれの実施例の診断スコアを算出し、被験体の群間で診断スコアに統計的有意差があるかどうかを決定した。i)すべてのBPH被験体に対して、前立腺癌を発症しているすべての被験体、及びii)PSAグレイゾーン(PSA濃度:3ng/L~10ng/L)にあるBPH被験体の群に対して、PSAグレイゾーンにある前立腺癌被験体の群に関して、統計的有意性を算出した。
(2)最も高い特異度及び感度を演繹することができる最適なカットオフ標準を設定するために、各実施例における被験体実験群に関して受信者動作特性(ROC)曲線を導出した。また、ROC曲線に関して、曲線下面積(the area under the curve:AUC)及び最適な感度及び特異度を導出した。ROC曲線は、i)被験体のすべての群、及びii)PSAグレイゾーンにある被験体の群それぞれに関して導出した。
図1
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【配列表】
2023540426000001.app
【国際調査報告】