(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】ヒストトリプシのための送受信機能を備えた超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
A61N 7/00 20060101AFI20230915BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
A61N7/00
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513613
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 US2021048008
(87)【国際公開番号】W WO2022047193
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500376829
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】ホール,ティモシー・ルイス
(72)【発明者】
【氏名】スコビッチ,ジョナサン・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ジェン
(72)【発明者】
【氏名】マコスキー,ジョナサン・ジェンナー
【テーマコード(参考)】
4C160
4C601
【Fターム(参考)】
4C160JJ34
4C160JJ35
4C160JJ38
4C601FF11
4C601FF16
(57)【要約】
組織の処置のために構成されたヒストトリプシ治療システムが提供され、ヒストトリプシ治療システムは任意の数の特徴を含むことができる。本明細書では、有効な非侵襲性および低侵襲性の治療、診断、および研究手順を提供するシステムおよび方法が提供される。特に、本明細書では、介在/非標的組織または構造に、所望されない組織損傷を引き起こすことなく、様々な異なる領域で、および様々な異なる条件下で、標的化された有効なヒストトリプシを提供する最適化されたシステムおよび方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒストトリプシシステム用の送受信駆動電子機器であって、
送信モードで超音波パルスを送信し、受信モードで超音波反射および/または音響キャビテーション放射を受信するように構成された少なくとも1つのトランスデューサ要素と、
前記受信モード中に前記送受信駆動電子機器における電流を測定するように構成された電流検知抵抗器と、
前記少なくとも1つのトランスデューサ要素および前記電流検知抵抗器に電気的に結合されたバイパス回路であって、前記電流検知抵抗器をバイパスするために、前記送信モード中にオンに切り替えられ、前記電流検知抵抗器が前記電流を測定することを可能にするために、前記受信モード中にオフに切り替えられるように構成されたバイパス回路と、
前記電流検知抵抗器および低感度抵抗器に電気的に結合された利得調整回路であって、前記電流検知抵抗器がオンに切り替えられ、前記低感度抵抗器がオフに切り替えられる高感度設定において動作するように構成され、前記電流検知抵抗器および前記低感度抵抗器がオンに切り替えられる低感度設定で動作するようにさらに構成される、利得調整回路と
を備える、送受信駆動電子機器。
【請求項2】
前記少なくとも1つのトランスデューサ要素に電気的に結合された駆動変圧器をさらに備える、請求項1に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項3】
前記バイパス回路はさらに、一対のバイパストランジスタを備える、請求項1に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項4】
前記バイパス回路はさらに、一対のバイパスダイオードを備える、請求項1に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項5】
前記利得調整回路はさらに、一対のトランジスタを備える、請求項1に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項6】
前記電流検知抵抗器は、前記低感度抵抗器よりも高い抵抗を有する、請求項1に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項7】
前記電流検知抵抗器は、約200オームの抵抗を有し、前記低感度抵抗器は、約5オームの抵抗を有する、請求項1に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項8】
ヒストトリプシシステム用の送受信駆動電子機器であって、
超音波トランスデューサアレイと、
前記超音波トランスデューサアレイに結合され、1つまたは複数のヒストトリプシパルスを生成するために、前記超音波トランスデューサアレイに最大数千ボルトを提供するように構成された高電圧送信電子機器と、
前記超音波トランスデューサアレイに結合され、送信された1つまたは複数のヒストトリプシパルスからの入力電圧信号を受信するように構成された第1の受信電子機器であって、前記入力電圧信号を、90~99%減衰させるように構成された、第1の受信電子機器と、
1Vを超えるすべての減衰された入力電圧信号を圧縮するように構成された第2の受信電子機器と、
前記減衰された入力電圧信号を電圧シフトするように構成された第3の受信電子機器と、
ADC変換のために、前記第3の受信電子機器から、前記電圧シフトされた減衰された入力電圧信号を受信するように構成されたアナログデジタル変換器と
を備える、送受信駆動電子機器。
【請求項9】
前記第1の電子機器は、分圧器を備える、請求項8に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項10】
前記分圧器は、容量性分圧器を備える、請求項9に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項11】
前記容量性分圧器は、前記超音波トランスデューサアレイの第1のトランスデューサ要素と並列の、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを備える、請求項10に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項12】
前記第2の受信電子機器は、ダイオード抵抗分圧器を備える、請求項8に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項13】
前記第3の受信電子機器は、前記減衰された入力電圧信号を、前記アナログデジタル変換器のための適切な電圧範囲に電圧シフトするように構成される、請求項8に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項14】
送信駆動電子機器は、送信専用ヒストトリプシ駆動システムを含む既存のヒストトリプシシステムに後付けされるように構成された別個の回路構成基板を備える、請求項8に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項15】
前記送信駆動電子機器は、前記送信専用ヒストトリプシ駆動システムに並列に追加され、送信専用電子機器に影響を与えることなく、信号を受動的に受信するように構成される、請求項14に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項16】
前記送信された1つまたは複数のヒストトリプシパルス、受信された入力電圧信号、および前記ADC変換の時間クロックを同期させて、各ヒストトリプシパルス送信後に適切な時間ウィンドウを取得するようにさらに構成される、請求項8に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項17】
前記アナログデジタル変換器に結合され、単一のクロックを用いて前記送受信駆動電子機器の送受信動作を制御するように構成された、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)基板をさらに備える、請求項8に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項18】
前記1つまたは複数のFPGAは、受信信号のデータ負荷を低減するように構成されたソフトウェアまたはファームウェアを含む、請求項17に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項19】
前記1つまたは複数のFPGAは、前記アナログデジタル変換器からの入力データを人為的にダウンサンプルするように構成される、請求項17に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項20】
前記1つまたは複数のFPGAは、信号対ノイズ比(SNR)を高めるために、受信信号をオーバサンプルおよび平均化するように構成される、請求項17に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項21】
キャビテーション検出のために送受信ヒストトリプシシステムを使用する方法であって、
送信電子機器およびヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、高電圧ヒストトリプシ治療パルスを標的組織に送信して、前記標的組織にキャビテーションを生成するステップと、
受信電子機器および前記ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、前記キャビテーションから低電圧音響キャビテーション放射信号を受信するステップと、
処置の進行を監視するために、前記受信した音響キャビテーション放射信号を処理するステップと
を備える、方法。
【請求項22】
前記送信されたパルスによって生成されるキャビテーションの3Dマップをリアルタイムで生成するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
収差補正のために送受信ヒストトリプシシステムを使用する方法であって、
複数のトランスデューサ要素を有するヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、ヒストトリプシ治療パルスを標的組織に送信して、前記標的組織にキャビテーションを生成するステップと、
前記ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、前記キャビテーションから音響キャビテーション放射信号を受信するステップと、
前記受信した音響キャビテーション放射信号に基づいて、前記キャビテーションから超音波トランスデューサアレイの各トランスデューサ要素までの移動時間を計算するステップと、
後続のヒストトリプシ治療パルスが、前記標的組織に同時に到着するように、前記計算された移動時間に基づいて、前記複数のトランスデューサ要素のうちの少なくとも1つのトランスデューサ要素のための送信時間遅延を調整するステップと
を備える、方法。
【請求項24】
前記移動時間を計算するステップは、前記音響キャビテーション放射にエンコードされた情報を使用するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記情報は、キャビテーション膨張から生成される前記音響キャビテーション放射の開始時間を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記情報は、キャビテーション崩壊から生成される前記音響キャビテーション放射の開始時間を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記情報は、キャビテーション崩壊からのピーク時間を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
既存の送信専用ヒストトリプシシステムの1つまたは複数のトランスデューサ要素に後付けされるように構成された受信駆動回路であって、
第1のトランスデューサ要素に電気的に結合されるように構成された分圧器であって、前記第1のトランスデューサ要素によって受信された電圧信号を減衰するように構成された、分圧器と、
前記分圧器に電気的に結合されたダイオード抵抗分圧器であって、所定の電圧を超える信号を圧縮するために、非線形減衰を提供するように構成され、前記受信された信号をアナログデジタル変換器にAC結合するようにさらに構成された、ダイオード抵抗分圧器と
を備える、受信駆動回路。
【請求項29】
前記分圧器および前記ダイオード抵抗分圧器は、第1の回路構成基板に配置されるように構成され、別個の第2の回路構成基板に配置された高電圧ヒストトリプシ駆動電子機器に電気的に結合されるように構成される、請求項28に記載の受信駆動回路。
【請求項30】
前記受信駆動回路および高電圧ヒストトリプシ駆動電子機器は、単一の回路構成基板に配置される、請求項28に記載の受信駆動回路。
【請求項31】
送受信ヒストトリプシシステムであって、
トランスデューサ要素と、
前記トランスデューサ要素に結合され、ヒストトリプシパルスを前記トランスデューサ要素に供給するように構成された送信電子機器と、
前記トランスデューサ要素に結合された非線形コンプレッサ受信電子機器であって、第1の電圧信号を第1の減衰で圧縮するように構成され、第2の電圧信号を第2の減衰で圧縮するようにさらに構成され、前記第1の電圧信号は、前記第2の電圧信号よりも高く、前記第1の減衰は、前記第2の減衰よりも高い、非線形コンプレッサ受信電子機器と
を備える、送受信ヒストトリプシシステム。
【請求項32】
ヒストトリプシシステム用の送受信駆動電子機器であって、
トランスデューサ要素と、
前記トランスデューサ要素に電気的に結合された2次変圧器コイルと、
前記2次変圧器コイルに隣接して配置された1次変圧器コイルであって、前記2次変圧器コイルを介して前記トランスデューサ要素において超音波パルスを生成するように構成された、1次変圧器コイルと、
前記2次変圧器コイルに隣接して配置された第3の変圧器コイルであって、前記トランスデューサ要素によって受信された電圧信号を、所定量減衰させるように構成された、第3の変圧器コイルと
を備える、送受信駆動電子機器。
【請求項33】
前記第3の変圧器コイルは、前記受信された電圧信号を、90~99%減衰させるように構成される、請求項32に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項34】
前記第3の変圧器コイルは、前記2次変圧器コイルよりも約7~10倍少ない巻線で巻かれる、請求項33に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項35】
前記第3の変圧器コイルは、超音波パルスの送信中に飽和するように構成される、請求項32に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項36】
前記第3の変圧器コイルは、超音波パルスの送信中に飽和するように構成されるように、特別に選択されたコア材料およびサイズを有する信号変圧器に結合される、請求項35に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項37】
ヒストトリプシシステムの送受信駆動電子機器であって、
超音波トランスデューサアレイと、
前記超音波トランスデューサアレイに結合され、1つまたは複数のヒストトリプシパルスを送信して、標的組織にキャビテーションを生成するように構成された送信電子機器と、
前記キャビテーションから音響キャビテーション放射を受信するように構成された受信電子機器と、
前記1つまたは複数のヒストトリプシパルスの送信中に、前記送信電子機器のみを有効化するように構成された送受信スイッチであって、受信信号を減衰させることなく送信信号を遮断するために、前記1つまたは複数のヒストトリプシパルスの送信後、所定の時間において、前記受信電子機器のみを有効化するようにさらに構成された、送受信スイッチと
を備える、送受信駆動電子機器。
【請求項38】
前記受信電子機器の受信感度を最大化するために、その振幅に基づいて前記受信信号の選択された部分を増幅または減衰するために、異なる線形利得が、前記送受信スイッチに続く、請求項37に記載の送受信駆動電子機器。
【請求項39】
方法ヒストトリプシ治療であって、
ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、標的組織にヒストトリプシ治療パルスを送信して、前記標的組織にキャビテーションを生成するステップと、
前記ヒストトリプシ治療トランスデューサを用いて、前記キャビテーションから、音響キャビテーション放射信号を受信するステップと、
選択された音響キャビテーション放射特徴を検出して、組織信号から分離するステップと、
前記ヒストトリプシ治療パルスによって生成された組織損傷と相関するキャビテーションパラメータを計算するステップと、
処置の進行と相関する前記キャビテーションパラメータにおける変化を判定するステップと、
処置の完了と相関する前記キャビテーションパラメータにおける変化を判定するステップと
を備える、方法。
【請求項40】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル膨張信号のタイミングを備える、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル膨張信号の振幅を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル崩壊信号のタイミングを備える、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル崩壊信号の振幅を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル反発信号のタイミングを備える、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル反発信号の振幅を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記キャビテーションパラメータは、前記キャビテーションの崩壊時間を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記崩壊時間は、前記キャビテーションの膨張信号と崩壊信号との間の時間を備える、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記キャビテーションパラメータは、前記キャビテーションの膨張信号のピーク振幅を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記キャビテーションパラメータは、前記キャビテーションの崩壊信号のピーク振幅を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記キャビテーションパラメータは、前記キャビテーションの成長ACE信号の振幅比を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記キャビテーションパラメータは、前記キャビテーションの崩壊ACE信号の振幅比を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記キャビテーションパラメータは、反発関連ACE信号振幅の減衰率を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項53】
処置の進行と相関する前記キャビテーションパラメータにおける変化を判定するステップはさらに、前記キャビテーションパラメータにおける増加勾配を特定するステップを備える、請求項39に記載の方法。
【請求項54】
処置の完了と相関する前記キャビテーションパラメータにおける変化を判定するステップはさらに、前記キャビテーションパラメータにおける変化の飽和を特定するステップを備える、請求項39に記載の方法。
【請求項55】
ヒストトリプシ中のキャビテーション検出のための方法であって、
ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、標的組織にヒストトリプシ治療パルスを送信して、前記標的組織にキャビテーションを生成するステップと、
前記ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、前記キャビテーションから、音響キャビテーション放射信号を受信するステップと、
選択された音響キャビテーション放射特徴を検出して、組織信号から分離するステップと、
前記選択された音響キャビテーション放射特徴に基づいてキャビテーションマップを処理および形成するステップと、
前記キャビテーションマップを前記標的組織の画像にオーバレイするステップと
を備える、方法。
【請求項56】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル膨張信号のタイミングを備える、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル膨張信号の振幅を備える、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル崩壊信号のタイミングを備える、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル崩壊信号の振幅を備える、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル反発信号のタイミングを備える、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
前記選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル反発信号の振幅を備える、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
ヒストトリプシ治療中に収差補正を実行する方法であって、
ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、標的組織にヒストトリプシ治療パルスを送信して、前記標的組織にキャビテーションを生成するステップと、
前記ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、前記キャビテーションから、音響キャビテーション放射信号を受信するステップと、
前記標的組織で生成された前記キャビテーションを検出するために、前記音響キャビテーション放射信号を分析するステップと、
前記検出されたキャビテーションにおけるピーク信号振幅を最大化できる一連の送信時間遅延を選択するために、送信時間遅延のプリセットを試験するステップと、
後続のヒストトリプシ治療パルスが、前記標的組織に同時に到着するように、前記選択された一連の送信時間遅延を適用するステップと
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2020年8月27日に出願された「ULTRASOUND TRANSDUCER WITH TRANSMIT-RECEIVE CAPABILITY FOR HISTOTRIPSY(ヒストトリプシのための送受信機能を備えた超音波トランスデューサ)」と題された米国仮特許出願第63/071,301号の利益を主張し、その全内容は本明細書に援用される。
政府の権利
[0002]本発明は、国立衛生研究所によって授与されたCA211217,EB028309およびNS108042の下で、ならびに米国海軍研究局によって授与されたN00014-17-1-2058およびN00014-18-1-2625の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
参照による組込み
[0003]本明細書で言及されたすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれるように示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0004]本開示は、音響キャビテーションを生成するように構成された新規のヒストトリプシシステム、健康な、病気の、および/または損傷した組織の最小かつ非侵襲的な処置(non-invasive treatment)のための方法、デバイス、および手順を詳述する。ヒストトリプシとも呼ばれる、本明細書で説明されるヒストトリプシシステムおよび方法は、患者の軟組織に包括的な処置および治療を提供するために、トランスデューサ、駆動電子機器、位置決めロボット、撮像システム、および統合処置計画および制御ソフトウェアを含むことができる。
【背景技術】
【0003】
[0005]多くの病状は、侵襲的な外科的介入(surgical intervention)を必要とする。侵襲的手順は、多くの場合、切開や、筋肉、神経、および組織に対する外傷や、出血や、瘢痕や、臓器に対する外傷や、痛みや、手順中および手順後の麻酔の必要性や、入院や、感染のリスクを含む。そのような問題を回避または低減するために、可能であれば、非侵襲的かつ低侵襲的な手順が好まれることがよくある。残念ながら、非侵襲的かつ低侵襲的な手順は、多くの種類の病気や状態の処置に必要な正確性、有効性、または安全性に欠ける場合がある。好ましくは、治療効果のために電離または熱エネルギを必要とせずに、非侵襲的かつ侵襲性を最小限に抑えた、強化された手順が必要とされる。
【0004】
[0006]ヒストトリプシ、またはパルス超音波キャビテーション治療は、音響エネルギの非常に短く強力なバーストが、焦点体積(focal volume)内で制御されたキャビテーション(マイクロバブル形成)を誘発する技術である。これらマイクロバブルの活発な膨張および崩壊により、焦点体積内の細胞および組織構造が機械的に均質化される。これは、熱的アブレーションの特徴である凝固性壊死(coagulative necrosis)とは非常に異なる最終結果である。非熱的なヒストトリプシ領域内で動作するために、低デューティサイクルの高振幅音響パルスの形態で、音響エネルギを供給する必要がある。
【0005】
[0007]従来の焦点超音波技術と比較して、ヒストトリプシには重要な利点がある。1)焦点における破壊プロセスは機械的であり、熱的ではなく、2)キャビテーションは、超音波撮像で明るく現れるため、処置の正しい標的化および位置特定を確認でき、3)常にという訳ではないが、処置を受けた組織は一般に、超音波撮像ではより暗く(より低エコーで)現れるため、操作者は、何が処置されたかを知ることができ、4)ヒストトリプシは、制御された正確な方式で、病変を生成する。マイクロ波、無線周波数、および高密度焦点超音波(HIFU)などの熱的アブレーション技術とは異なり、ヒストトリプシは、組織破壊のためにキャビテーションの機械的作用に依存していることを強調することが重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0016]ヒストトリプシは、短い高圧の超音波パルスによって生成される高密度のエネルギッシュなバブルクラウドによって組織の分画を生成する。2サイクルよりも短いパルスを使用する場合、これらエネルギッシュなバブルクラウドの生成は、ピーク負圧(P-)が媒体でキャビテーションを誘発するための固有のしきい値(典型的には、水分含有量の多い軟組織では、26~30MPa)を超える場所にのみ依存する。
【0007】
[0017]送信モードで超音波パルスを送信し、受信モードで超音波反射および/または音響キャビテーション放射を受信するように構成された少なくとも1つのトランスデューサ要素と、受信モード中に送受信駆動電子機器における電流を測定するように構成された電流検知抵抗器と、少なくとも1つのトランスデューサ要素および電流検知抵抗器に電気的に結合されたバイパス回路であって、電流検知抵抗器をバイパスするために、送信モード中にオンに切り替えられ、電流検知抵抗器が電流を測定することを可能にするために、受信モード中にオフに切り替えられるように構成されたバイパス回路と、電流検知抵抗器および低感度抵抗器に電気的に結合された利得調整回路であって、電流検知抵抗器がオンに切り替えられ、低感度抵抗器がオフに切り替えられる高感度設定において動作するように構成され、電流検知抵抗器および低感度抵抗器がオンに切り替えられる低感度設定で動作するようにさらに構成される、利得調整回路とを備える、ヒストトリプシシステム用の送受信駆動電子機器が提供される。
【0008】
[0018]いくつかの実施形態では、送受信駆動電子機器はさらに、少なくとも1つのトランスデューサ要素に電気的に結合された駆動変圧器を備える。
[0019]いくつかの例では、バイパス回路はさらに、一対のバイパストランジスタを備える。他の実施形態では、バイパス回路はさらに、一対のバイパスダイオードを備える。
【0009】
[0020]いくつかの実施形態では、利得調整回路はさらに、一対のトランジスタを備える。他の実施形態では、電流検知抵抗器は、低感度抵抗器よりも高い抵抗を有する。
[0021]1つの例では、電流検知抵抗器は、約200オームの抵抗を有し、低感度抵抗器は、約5オームの抵抗を有する。
【0010】
[0022]超音波トランスデューサアレイと、超音波トランスデューサアレイに結合され、1つまたは複数のヒストトリプシパルスを生成するために、超音波トランスデューサアレイに最大数千ボルトを提供するように構成された高電圧送信電子機器と、超音波トランスデューサアレイに結合され、送信された1つまたは複数のヒストトリプシパルスからの入力電圧信号を受信するように構成された第1の受信電子機器であって、入力電圧信号を、90~99%減衰させるように構成された、第1の受信電子機器と、1Vを超えるすべての減衰された入力電圧信号を圧縮するように構成された第2の受信電子機器と、減衰された入力電圧信号を電圧シフトするように構成された第3の受信電子機器と、ADC変換のために、第3の受信電子機器から、電圧シフトされた減衰された入力電圧信号を受信するように構成されたアナログデジタル変換器とを備える、ヒストトリプシシステム用の送受信駆動電子機器が提供される。
【0011】
[0023]いくつかの実施形態では、第1の電子機器は、分圧器を備える。
[0024]他の実施形態では、分圧器は、容量性分圧器を備える。
[0025]1つの実施形態では、容量性分圧器は、超音波トランスデューサアレイの第1のトランスデューサ要素と並列の、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを備える。
【0012】
[0026]1つの実施形態では、第2の受信電子機器は、ダイオード抵抗分圧器を備える。別の実施形態では、第3の受信電子機器は、減衰された入力電圧信号を、アナログデジタル変換器のための適切な電圧範囲に電圧シフトするように構成される。
【0013】
[0027]いくつかの実施形態では、送信駆動電子機器は、送信専用ヒストトリプシ駆動システムを含む既存のヒストトリプシシステムに後付けされるように構成された別個の回路構成基板を備える。
【0014】
[0028]1つの例では、送信駆動電子機器は、送信専用ヒストトリプシ駆動システムに並列に追加され、送信専用電子機器に影響を与えることなく、信号を受動的に受信するように構成される。
【0015】
[0029]いくつかの実施形態では、送受信駆動電子機器はさらに、送信された1つまたは複数のヒストトリプシパルス、受信された入力電圧信号、およびADC変換の時間クロックを同期させて、各ヒストトリプシパルス送信後に適切な時間ウィンドウを取得するように構成される。
【0016】
[0030]1つの実施形態では、送受信駆動電子機器はさらに、アナログデジタル変換器に結合され、単一のクロックを用いて送受信駆動電子機器の送受信動作を制御するように構成された、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)基板を備える。いくつかの例では、1つまたは複数のFPGAは、受信信号のデータ負荷を低減するように構成されたソフトウェアまたはファームウェアを含む。他の実施形態では、1つまたは複数のFPGAは、アナログデジタル変換器からの入力データを人為的にダウンサンプルするように構成される。別の実施形態では、1つまたは複数のFPGAは、信号対ノイズ比(SNR)を高めるために、受信信号をオーバサンプルおよび平均化するように構成される。
【0017】
[0031]送信電子機器およびヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、高電圧ヒストトリプシ治療パルスを標的組織に送信して、標的組織にキャビテーションを生成するステップと、受信電子機器およびヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、キャビテーションから低電圧音響キャビテーション放射信号を受信するステップと、処置の進行を監視するために、受信した音響キャビテーション放射信号を処理するステップとを備える、キャビテーション検出のために送受信ヒストトリプシシステムを使用する方法が提供される。
【0018】
[0032]いくつかの例では、方法はさらに、送信されたパルスによって生成されるキャビテーションの3Dマップをリアルタイムで生成することを備える。
[0033]複数のトランスデューサ要素を有するヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、ヒストトリプシ治療パルスを標的組織に送信して、標的組織にキャビテーションを生成するステップと、ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、キャビテーションから音響キャビテーション放射信号を受信するステップと、受信した音響キャビテーション放射信号に基づいて、キャビテーションから超音波トランスデューサアレイの各トランスデューサ要素までの移動時間を計算するステップと、後続のヒストトリプシ治療パルスが、標的組織に同時に到着するように、計算された移動時間に基づいて、複数のトランスデューサ要素のうちの少なくとも1つのトランスデューサ要素のための送信時間遅延を調整するステップとを備える、収差補正のために送受信ヒストトリプシシステムを使用する方法が提供される。
【0019】
[0034]いくつかの実施形態では、移動時間を計算することは、音響キャビテーション放射にエンコードされた情報を使用することを含む。
[0035]1つの例では、情報は、キャビテーション膨張から生成される音響キャビテーション放射の開始時間を備える。
【0020】
[0036]いくつかの実施形態では、情報は、キャビテーション崩壊から生成される音響キャビテーション放射の開始時間を備える。
[0037]1つの実施形態では、情報は、キャビテーション崩壊からのピーク時間を備える。
【0021】
[0038]第1のトランスデューサ要素に電気的に結合されるように構成された分圧器であって、第1のトランスデューサ要素によって受信された電圧信号を減衰するように構成された、分圧器と、分圧器に電気的に結合されたダイオード抵抗分圧器であって、所定の電圧を超える信号を圧縮するために、非線形減衰を提供するように構成され、さらに、受信された信号をアナログデジタル変換器にAC結合するように構成された、ダイオード抵抗分圧器とを備える、既存の送信専用ヒストトリプシシステムの1つまたは複数のトランスデューサ要素に後付けされるように構成された受信駆動回路が提供される。
【0022】
[0039]いくつかの実施形態では、分圧器およびダイオード抵抗分圧器は、第1の回路構成基板に配置されるように構成され、別個の第2の回路構成基板に配置された高電圧ヒストトリプシ駆動電子機器に電気的に結合されるように構成される。
【0023】
[0040]別の実施形態では、受信駆動回路および高電圧ヒストトリプシ駆動電子機器は、単一の回路構成基板に配置される。
[0041]トランスデューサ要素と、トランスデューサ要素に結合され、ヒストトリプシパルスをトランスデューサ要素に供給するように構成された送信電子機器と、トランスデューサ要素に結合された非線形コンプレッサ受信電子機器であって、非線形コンプレッサ受信電子機器は、第1の電圧信号を第1の減衰で圧縮するように構成され、さらに、第2の電圧信号を第2の減衰で圧縮するように構成され、第1の電圧信号は、第2の電圧信号よりも高く、第1の減衰は、第2の減衰よりも高い、非線形コンプレッサ受信電子機器とを備える、送受信ヒストトリプシシステムが提供される。
【0024】
[0042]トランスデューサ要素と、トランスデューサ要素に電気的に結合された2次変圧器コイルと、2次変圧器コイルに隣接して配置された1次変圧器コイルであって、2次変圧器コイルを介してトランスデューサ要素において超音波パルスを生成するように構成された、1次変圧器コイルと、2次変圧器コイルに隣接して配置された第3の変圧器コイルであって、トランスデューサ要素によって受信された電圧信号を、所定量減衰させるように構成された、第3の変圧器コイルとを備える、ヒストトリプシシステム用の送受信駆動電子機器も提供される。
【0025】
[0043]いくつかの実施形態では、第3の変圧器コイルは、受信された電圧信号を、90~99%減衰させるように構成される。別の実施形態では、第3の変圧器コイルは、2次変圧器コイルよりも約7~10倍少ない巻線で巻かれる。
【0026】
[0044]いくつかの実施形態では、第3の変圧器コイルは、超音波パルスの送信中に飽和するように構成される。
[0045]別の実施形態では、第3の変圧器コイルは、超音波パルスの送信中に飽和するように構成されるように、特別に選択されたコア材料およびサイズを有する信号変圧器に結合される。
【0027】
[0046]超音波トランスデューサアレイと、超音波トランスデューサアレイに結合され、1つまたは複数のヒストトリプシパルスを送信して、標的組織にキャビテーションを生成するように構成された送信電子機器と、キャビテーションから音響キャビテーション放射を受信するように構成された受信電子機器と、1つまたは複数のヒストトリプシパルスの送信中に、送信電子機器のみを有効化するように構成された送受信スイッチであって、受信信号を減衰させることなく送信信号を遮断するために、1つまたは複数のヒストトリプシパルスの送信後、所定の時間において、受信電子機器のみを有効化するようにさらに構成された、送受信スイッチとを備える、ヒストトリプシシステムの送受信駆動電子機器が提供される。
【0028】
[0047]1つの実施形態では、受信電子機器の受信感度を最大化するために、その振幅に基づいて受信信号の選択された部分を増幅または減衰するために、異なる線形利得が、送受信スイッチに続く。
【0029】
[0048]ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、標的組織にヒストトリプシ治療パルスを送信して、標的組織にキャビテーションを生成するステップと、ヒストトリプシ治療トランスデューサを用いて、キャビテーションから、音響キャビテーション放射信号を受信するステップと、選択された音響キャビテーション放射特徴を検出して、組織信号から分離するステップと、ヒストトリプシ治療パルスによって生成された組織損傷と相関するキャビテーションパラメータを計算するステップと、処置の進行と相関するキャビテーションパラメータにおける変化を判定するステップと、処置の完了と相関するキャビテーションパラメータにおける変化を判定するステップとを備える、方法ヒストトリプシ治療が提供される。
【0030】
[0049]1つの例では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル膨張信号のタイミングを備える。
[0050]別の例では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル膨張信号の振幅を備える。
【0031】
[0051]いくつかの実施形態では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル崩壊信号のタイミングを備える。
[0052]別の実施形態では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル崩壊信号の振幅を備える。
【0032】
[0053]いくつかの実施形態では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル反発(rebound)信号のタイミングを備える。
[0054]1つの実施形態では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル反発信号の振幅を備える。
【0033】
[0055]別の実施形態では、キャビテーションパラメータは、キャビテーションの崩壊時間を備える。
[0056]いくつかの例では、崩壊時間は、キャビテーションの膨張信号と崩壊信号との間の時間を備える。
【0034】
[0057]別の実施形態では、キャビテーションパラメータは、キャビテーションの膨張信号のピーク振幅を備える。
[0058]いくつかの実施形態では、キャビテーションパラメータは、キャビテーションの崩壊信号のピーク振幅を備える。
【0035】
[0059]別の実施形態では、キャビテーションパラメータは、キャビテーションの成長ACE信号の振幅比を備える。
[0060]いくつかの実施形態では、キャビテーションパラメータは、キャビテーションの崩壊ACE信号の振幅比を備える。
【0036】
[0061]別の実施形態では、キャビテーションパラメータは、反発関連ACE信号振幅の減衰率を備える。
[0062]1つの例では、処置の進行と相関するキャビテーションパラメータにおける変化を判定することはさらに、キャビテーションパラメータにおける増加勾配を特定することを備える。
【0037】
[0063]別の例では、処置の完了と相関するキャビテーションパラメータにおける変化を判定することはさらに、キャビテーションパラメータにおける変化の飽和を特定することを備える。
【0038】
[0064]ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、標的組織にヒストトリプシ治療パルスを送信して、標的組織にキャビテーションを生成するステップと、ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、キャビテーションから、音響キャビテーション放射信号を受信するステップと、選択された音響キャビテーション放射特徴を検出して、組織信号から分離するステップと、選択された音響キャビテーション放射特徴に基づいてキャビテーションマップを処理および形成するステップと、キャビテーションマップを標的組織の画像にオーバレイするステップとを備える、ヒストトリプシ中のキャビテーション検出のための方法が提供される。
【0039】
[0065]いくつかの例では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル膨張信号のタイミングを備える。他の例では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル膨張信号の振幅を備える。追加の例では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル崩壊信号のタイミングを備える。1つの実施形態では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル崩壊信号の振幅を備える。いくつかの実施形態では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル反発信号のタイミングを備える。別の例では、選択された音響キャビテーション放射特徴は、キャビテーションバブル反発信号の振幅を備える。
【0040】
[0066]ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、標的組織にヒストトリプシ治療パルスを送信して、標的組織にキャビテーションを生成するステップと、ヒストトリプシ治療トランスデューサアレイを用いて、キャビテーションから、音響キャビテーション放射信号を受信するステップと、標的組織で生成されたキャビテーションを検出するために、音響キャビテーション放射信号を分析するステップと、検出されたキャビテーションにおけるピーク信号振幅を最大化できる一連の送信時間遅延を選択するために、送信時間遅延のプリセットを試験するステップと、後続のヒストトリプシ治療パルスが、標的組織に同時に到着するように、選択された一連の送信時間遅延を適用するステップとを備える、ヒストトリプシ治療中に収差補正を実行する方法が提供される。
【0041】
[0008]本発明の新規の特徴は、後述する特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって取得されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1A】[0009]超音波撮像および治療システムを例示する図である。
【
図1B】超音波撮像および治療システムを例示する図である。
【
図2A】[0010]ヒストトリプシシステム用の送受信駆動電子機器を例示する概略図である。
【
図2B】ヒストトリプシシステム用の送受信駆動電子機器を例示する概略図である。
【
図2C】ヒストトリプシシステム用の送受信駆動電子機器を例示する概略図である。
【
図2D】ヒストトリプシシステム用の送受信駆動電子機器を例示する概略図である。
【
図3A】[0011]ヒストトリプシシステム用の電流検知電子機器の実施形態を示す図である。
【
図3B】ヒストトリプシシステム用の電流検知電子機器の実施形態を示す図である。
【
図3C】ヒストトリプシシステム用の電流検知電子機器の実施形態を示す図である。
【
図4】[0012]患者にヒストトリプシ治療を提供する方法を示す図である。
【
図5】[0013]人間の頭蓋骨などの骨を介したキャビテーションマッピングを例示する図である。
【
図6】[0014]患者にヒストトリプシ治療を提供する方法を示す図である。
【
図7】[0015]処置の進行および組織の分画を予測するために、ヒストトリプシ治療から受信した超音波信号を介して収集されたデータを例示する図である。
【
図8】
図8Aは、処置の進行および組織の分画を予測するために、ヒストトリプシ治療から受信した超音波信号を介して収集されたデータを例示する図である。
図8Bは、処置の進行および組織の分画を予測するために、ヒストトリプシ治療から受信した超音波信号を介して収集されたデータを例示する図である。
【
図9】処置の進行および組織の分画を予測するために、ヒストトリプシ治療から受信した超音波信号を介して収集されたデータを例示する図である。
【
図10】処置の進行および組織の分画を予測するために、ヒストトリプシ治療から受信した超音波信号を介して収集されたデータを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[0067]本明細書では、有効な非侵襲性および低侵襲性の治療、診断、および研究手順を提供するシステムおよび方法が提供される。特に、介在/非標的組織または構造に、所望されない組織損傷を引き起こすことなく、様々な異なる領域および様々な異なる条件下で、標的化された有効なヒストトリプシを提供する最適化されたシステムおよび方法が、本明細書で提供される。
【0044】
[0068]標的領域における所望の組織破壊と、非標的領域への損傷の回避とのバランスを取ることは、技術的な課題を提示する。これは特に、時間効率のよい手順が望まれる場合である。高速で効果的に組織破壊を提供する条件は、非標的組織において過度の加熱を引き起こす傾向がある。過度の加熱は、エネルギを低減するか、エネルギの供給を遅くすることで回避できるが、どちらも高速で効果的に標的組織を破壊するという目標に反する。非標的領域に所望されない損傷を与えることなく、高速で効果的な標的処置を個々におよび集合的に可能にする多くの技術が、本明細書で提供される。
【0045】
[0069]本開示のシステム、方法、およびデバイスは、体外、経皮、内視鏡、腹腔鏡、および/またはロボット対応の医療システムおよび手順に統合されているものを含む、最小または非侵襲性の音響キャビテーション、および健康な、病気の、および/または、損傷した組織の処置に使用され得る。以下に説明されるように、ヒストトリプシシステムは、カート、治療、統合撮像化、ロボット、結合およびソフトウェアを含む、様々な電気的、機械的、およびソフトウェアサブシステムを含む場合がある。システムはまた、患者の表面、テーブルまたはベッド、コンピュータ、ケーブルおよびコネクタ、ネットワークデバイス、電源、ディスプレイ、引出/収納、ドア、車輪、イルミネーションおよび照明、ならびに、様々なシミュレーションおよびトレーニングツールなどを含むがこれらに限定されない、他の様々な構成要素、付属品、およびアクセサリを備えてもよい。ヒストトリプシを作成/制御/供給するすべてのシステム、方法、および手段は、本明細書に開示された新たな関連発明を含む、本開示の一部であると見なされる。
【0046】
[0070]1つの実施形態では、ヒストトリプシシステムは、移動式治療カートとして構成され、これはさらに、一連の物理的制御を備えた統合された制御パネルを備えたタッチスクリーンディスプレイと、ロボットアームと、ロボットの遠位端に配置された治療ヘッドと、システムを操作および制御するための患者結合システムおよびソフトウェアとを含む。
【0047】
[0071]移動式治療カートアーキテクチャは、ヒストトリプシ治療発電機、高電圧電源、変圧器、配電、ロボットコントローラ、コンピュータ、ルータおよびモデム、ならびに超音波撮像エンジンを含む、標準的なラック取付フレームに収容される内部構成要素を備えることができる。前面システムインターフェースパネルは、2つの超音波撮像プローブ(ハンドヘルド、および、治療トランスデューサに同軸に取り付けられたプローブ)、ヒストトリプシ治療トランスデューサ、AC電源スイッチおよび回路ブレーカスイッチ、ネットワーク接続、およびフットペダルを含む、接続のための入出力位置を備えることができる。カートの後部パネルは、側面、上部、および下部のパネルに位置する排気口に気流を向けるための吸気口を備えることができる。カートの側面パネルは、ホルスターと、ハンドヘルド撮像プローブを保持するためのサポート機構とを含む。カートのベースは、ラックに取り付けられた電子機器とインターフェースし、側面パネルと上部カバーへのインターフェースを提供するキャストベースで構成できる。このベースは、単一の完全ロック機構を有する4つの埋込式キャスタも含む。治療カートの上部カバーは、ロボットアームのベースとインターフェース、およびカート本体の輪郭に沿った円周ハンドル(circumferential handle)を備えることができる。カートは、技術者が、アクセスパネルを介してカート構成要素にアクセスできるようにする内部取付機能を備えることができる。
【0048】
[0072]タッチスクリーンディスプレイおよび制御パネルは、ともに撮像パラメータおよび治療パラメータ、ならびにロボットを制御するように構成された、6つのダイヤル、スペースマウスおよびタッチパッド、インジケータライトバー、および緊急停止の形態で、物理的制御を含むユーザ入力機能を含んでもよい。タッチスクリーンサポートアームは、立位と座位、およびタッチスクリーンの向きと視野角の調整をできるように構成される。サポートアームはさらに、システムレベル電源ボタンと、USBおよびイーサネットコネクタを備えることができる。
【0049】
[0073]ロボットアームは、様々な駆動モードで、準備から、手順、および取出しまで、患者/手順作業空間へアームの使用場所の到着および容易さを可能にする十分な高さのアームベース上において、移動式治療カートに取り付けることができる。ロボットアームは、6つの回転ジョイント、850mmのリーチ、および5kgの最大ペイロードを有する6つの自由度を備えることができる。アームは、ヒストトリプシシステムソフトウェアと、グラフィカルユーザインターフェースを備えた12インチのタッチスクリーンポリスコープとを介して制御してもよい。ロボットは、3.5Nの正確性および4.0Nの精度での50Nの範囲の力(x,y,z)と、0.2Nmの正確性および0.3Nmの精度での10.0Nmの範囲のトルク(x,y,z)とを有する力検知およびツールフランジを備えることができる。ロボットは、+/-0.03mmの姿勢再現性と、1m/s(39.4インチ/秒)の典型的なTCP速度を有する。1つの実施形態では、ロボット制御ボックスは、16のデジタル入力、16のデジタル出力、2つのアナログ入力、2つのアナログ出力および4つの直交デジタル入力、ならびに24V/2AのI/O電源を含む、複数のI/Oポートを有する。制御ボックス通信は、500Hzの制御周波数、Modbus TCP、PROFINET、イーサネット/IP、およびUSB2.0および3.0を備える。
【0050】
[0074]治療ヘッドは、4つのヒストトリプシ治療トランスデューサの選択グループのうちの1つと、超音波撮像システム/プローブとを備えることができ、超音波撮像システム/プローブは、治療トランスデューサ内に同軸に配置され、前記撮像プローブを、治療トランスデューサとは独立して、知られている場所に回転させるためのエンコード機構と、ロボットを起動するためのユーザ入力を含む、治療ヘッドの粗い位置決めと精密な位置決め(たとえば、自由駆動位置決め)とを可能にするハンドルとを有する。いくつかの例では、治療トランスデューサは、サイズ(22×17cmから28×17cm)、12~18cmの焦点距離、12~16のリング内に含まれる、48要素から64要素の範囲である要素数、およびすべてが、700kHzの周波数で変動する場合がある。治療ヘッドサブシステムは、治療ヘッドの取外しおよび/または変更を可能にし、(たとえば、異なる数の要素および幾何形状の)代替治療トランスデューサ設計の洗浄、交換および/または選択を可能にするクイック解放機構を含む、ロボットアームへのインターフェースを有し、各治療トランスデューサは、システムソフトウェアにおける自動特定のために電子的にキー設定される。
【0051】
[0075]患者結合システムは、手術/介入テーブルレールにインターフェースするように設計された取付ブラケットで構成された、6つの自由度の、6つの関節の機械式アームを備えることができる。アームは、約850mmの最大リーチと、50mmの平均直径とを有する場合がある。アームの遠位端は、フレームシステムと上部および下部ブーツとを含む、超音波媒体容器とインターフェースするように構成することができる。下部ブーツは、患者に密着する患者接触フィルム、または弾性ポリマー膜のいずれかをサポートするように構成されており、どちらも、フレームおよびブーツ内で患者に直接接触するか、または、膜/ブーツ構造内で、超音波媒体(たとえば、脱気された水または水の混合物)を含むように設計されている。下部ブーツは、1つの例では、超音波媒体容器を有し、患者の腹部に位置特定された治療トランスデューサを配置するために、それぞれ約46cm×56cmおよび26cm×20cmの上部および下部の窓を提供する。上部ブーツは、ロボットの遠位端が治療ヘッドおよび/またはトランスデューサに接続できるようにし、水漏れ/こぼれを防止するように構成してもよい。好ましい実施形態では、上部ブーツは、密閉システムである。フレームはまた、密閉システムにおいて、バブル管理のための空気抜きのみならず、充填および排出も含むが、これらに限定されない、超音波媒体容器と超音波媒体源(たとえば、リザーバまたは流体工学管理システム)との間の双方向の流体連通を可能にするように構成される。
【0052】
[0076]システムソフトウェアおよびワークフローは、超音波撮像パラメータおよび治療パラメータを含むがこれらに限定されない、タッチスクリーンディスプレイおよび物理的制御を介して、ユーザが、システムを制御できるように構成することができる。システムのグラフィカルユーザインターフェースは、1)患者を登録/選択するステップと、2)計画するステップとからなる一般的な手順ステップを有する作業フローベースのフローを備え、フリーハンド撮像プローブを用いた患者(および標的位置/解剖学的構造)の撮像と、最終的な粗い標的化および精細な標的化のために、トランスデューサヘッドを用いたロボット支援された撮像とを備え、これは、典型的には球状であり、本質的に楕円形である標的およびマージン輪郭を用いて標的の輪郭を取ることと、バブルクラウド較正ステップと、較正開始しきい値および他の患者/標的特定パラメータ(たとえば、処置深さ)を評価するための体積内の一連の所定の位置とを含む試験プロトコル(たとえば、試験パルス)を実行することとを含み、これらがともに、前記標的の位置および音響経路と、ヒストトリプシを開始および維持するための駆動振幅のレベルの変動を必要とすることがある関連する任意の遮断(たとえば、組織界面、骨など)とを考慮する処置計画を通知する。較正および複数位置試験パルスを備える、試験プロトコルの一部として測定される前記パラメータは、システム内で、必要/所望に応じて(たとえば、標的クロスヘアへ適切に較正された)空間内のバブルクラウドの位置を更新するためのみならず、体積全体でしきい値が確実に達成されるように、処置体積内のすべてのバブルクラウド処置位置間で必要な振幅を判定/補間するための入力/フィードバックを提供するように構成される。さらに、深さおよび駆動電圧を含むがこれらに限定されない前記パラメータは、(たとえば、シーケンス、パターンと経路、および標的の深さ/遮断の、知られている任意の、または計算された組合せに対してt43曲線の下に留まる)ロバストなキャビテーションおよび介在/付随的な熱効果が管理されることを確実にするために、追加の冷却(たとえば、処置パターン動作間にロボット動作に割り当てられる時間に加えて、オフ時間)が必要であるかを判定するために、組み込まれた処置可能性マトリクスまたはルックアップテーブルの一部として使用してもよい。システムソフトウェアにおいて実施されるように、計画のこれら側面に関連付けられた作業フローおよび手順のステップは自動化することができ、ロボットおよび制御システムは、試験プロトコルおよび位置特定を自律的または半自律的に実行するように構成される。計画に続いて、手順作業フローの次のフェーズである3)手順フェーズは、ユーザが、処置計画を受け入れ、処置のためにシステムを開始した後に開始される。このコマンドに続いて、システムは、規定された体積処置が完了するまで、処置プロトコルを実行して、自律的に処置を供給するように構成される。処置の状態(および、バブルクラウドの位置)は、総処置時間と残りの処置時間、駆動電圧、処置輪郭(標的/マージン)およびバブルクラウド/点位置、処置パターンにおける現在位置(たとえば、スライスおよび列)、撮像パラメータ、および、他の追加のコンテキストデータ(たとえば、オプションのDICOMデータ、ロボットからの力トルクデータなど)を含むがこれらに限定されない、様々な処置パラメータに隣接してリアルタイムで表示される。処置に続いて、ユーザは、治療ヘッドプローブを、後続して、フリーハンド超音波プローブを使用して、システムユーザインターフェースを介して制御される/見られるように、処置を確認および検証する場合がある。追加の標的位置が必要な場合、ユーザは、追加の標的を計画/処置するか、それ以上の処置が計画されていない場合は、カートのホームポジションにロボットをドッキングしてもよい。
【0053】
[0077]
図1Aは、治療トランスデューサ102、撮像システム104、ディスプレイおよび制御パネル106、ロボット位置決めアーム108、およびカート110を備える、本開示によるヒストトリプシシステム100を全体的に例示する。システムはさらに、図示されていない超音波結合インターフェースおよび結合媒体源を含むことができる。
【0054】
[0078]
図1Bは、治療トランスデューサ102および撮像システム104の底面図である。図示されるように、撮像システムは、治療トランスデューサの中心に配置することができる。しかしながら、他の実施形態は、治療トランスデューサ内の他の位置に配置された、または治療トランスデューサに直接統合された撮像システムを含むことができる。いくつかの実施形態では、撮像システムは、治療トランスデューサの焦点において、リアルタイムの撮像を生成するように構成される。
【0055】
[0079]ヒストトリプシシステムは、1つまたは複数の治療トランスデューサを介して音響キャビテーション/ヒストトリプシを作成、適用、焦点、および供給できる治療サブシステムと、処置部位のリアルタイムでの可視化と、手順中のヒストトリプシ効果とを可能にする統合撮像サブシステム(または、そのための接続)と、治療トランスデューサを機械的および/または電子的に操作し、さらに、結合サブシステムとの接続/サポートまたは相互作用を有効化し、治療トランスデューサと患者との間の音響的結合を可能にするロボット位置決めサブシステムと、システムおよびコンピュータベースの制御システム(および他の外部システム)と通信、制御、およびインターフェースするソフトウェアと、1つまたは複数のユーザインターフェースおよびディスプレイを含む他の様々な構成要素、付属品、およびアクセサリと、関連するガイド付き作業フローとを含む様々なサブシステムのうちの1つまたは複数を備える場合があり、これらはすべて部分的に、またはともに動作する。システムはさらに、ポンプ、弁および流量制御、温度および脱気制御、灌注および吸引能力、ならびに流体の提供および貯蔵を含むがこれらに限定されない、様々な流体工学および流体管理構成要素を備える場合がある。システムはまた、様々な電源および保護装置を含んでもよい。
カート
[0080]カート110は、一般に、特定の用途および手順に基づいて、様々な手法およびフォームファクタで構成され得る。場合によっては、システムは、類似または異なる配置で構成された複数のカートを備える場合がある。いくつかの実施形態では、カートは、放射線環境で、場合によっては撮像(たとえば、CT、コーンビームCT、および/またはMRIスキャン)と連携して使用されるように構成および配置してもよい。他の実施形態では、カートは、手術室および無菌環境、またはロボット操作が有効化された手術室における使用のために構成してもよく、および単独で、または手術ロボット手順の一部として使用してもよく、手術ロボットは、システムの使用前、間、または後に特定のタスクを実行して、音響キャビテーション/ヒストトリプシの供給を実行する。したがって、前述した実施形態に基づく手順環境に応じて、カートは、十分な作業スペースと、患者の様々な解剖学的位置(たとえば、胴体、腹部、脇腹、頭および首など)へのアクセスとを提供するように配置してもよいだけでなく、他のシステム(たとえば、麻酔カート、腹腔鏡タワー、手術ロボット、内視鏡タワーなど)にも作業スペースを提供する。
【0056】
[0081]カートはまた、患者の表面(たとえば、テーブルまたはベッド)と連携してもよく、患者の提示、および多くの場所、角度、および向きでの再配置を可能にし、手順の前、近く、および後にこれら変更を可能にすることを含む。カートはさらに、(たとえば、ヒストトリプシの前、近く、および/または後に画像データを収集するためのコーンビームCT作業空間内で互換性がある)物理的/機械的相互運用性を含む、使用の手順および/または環境をサポートするために、1つまたは複数のモダリティの超音波、CT、蛍光透視法、コーンビームCT、PET、PET/CT、MRI、光学、超音波、および画像融合およびまたは画像フローに限定されない、1つまたは複数の外部撮像システムまたは画像データ管理および通信システムと、インターフェースして通信する機能を備えてもよい。
【0057】
[0082]いくつかの実施形態では、1つまたは複数のカートが協働するように構成してもよい。例として、1つのカートは、治療トランスデューサ、治療用発電機/増幅器などを用いて有効化された1つまたは複数のロボットアームを装備されたベッドサイドの可動式カートを備える場合がある一方、協働して動作し、患者と離れているコンパニオンカートは、手術用ロボット構成およびマスタ/スレーブ構成に類似した、ロボットファセットおよび治療ファセットを制御するための、統合された撮像およびコンソール/ディスプレイを備えてもよい。
【0058】
[0083]いくつかの実施形態では、システムは、音響キャビテーション手順を行うように装備された、すべてが1つのマスタカートに従属している複数のカートを備える場合がある。配置および場合によっては、1つのカート構成は、特定のサブシステムを、離れた場所に保管して、手術室の混乱を減らすことができるが、別のカート構成では、基本的にベッドサイドサブシステムおよび構成要素類(たとえば、供給システムおよび治療)を備えてもよい。
【0059】
[0084]カート設計の多数の置換および構成を想定することができ、これら例は、決して本開示の範囲を限定するものではない。
【0060】
ヒストトリプシ
[0085]ヒストトリプシは、標的とする組織の分画および破壊が可能な、高密度でエネルギッシュな「バブルクラウド」を生成するための、短い高振幅の焦点超音波パルスを備える。ヒストトリプシは、組織/流体界面を含む組織界面に向けられた場合、制御された組織浸食を作成できるのみならず、バルク組織を標的とする場合、細胞内レベルで、明確に区別された組織の分画および破壊を行うことができる。熱および放射線ベースのモダリティを含むアブレーションの他の形態とは異なり、ヒストトリプシは、組織を処置するために熱またはイオン化(高)エネルギに依存しない。代わりに、ヒストトリプシは、焦点で生成された音響キャビテーションを使用して、組織構造に機械的に影響を与え、場合によっては、組織を細胞内成分に液化、懸濁、可溶化、および/または破壊する。
【0061】
[0086]ヒストトリプシは、以下を含む様々な形態で適用することができる。1)固有のしきい値ヒストトリプシ。媒体に固有のバブル核のクラスタが、慣性キャビテーションを受けるのに十分な、少なくとも単一の負/引張りフェーズを備えたパルスを提供する。2)衝撃散乱ヒストトリプシ。典型的には、持続時間において3~20サイクル、パルスを供給する。パルスの引張りフェーズの振幅は、媒体内のバブル核が、パルスの持続時間全体にわたって焦点ゾーン内で慣性キャビテーションを受けるのに十分である。これら核は、入射衝撃波を散乱させ、入射波を反転させ、入射波と建設的に干渉して、固有の核形成のためのしきい値を超える。3)沸騰ヒストトリプシ。持続時間において約1~20ms、パルスを適用する。衝撃を受けたパルスの吸収は、媒体を急速に加熱し、それによって、固有の核のためのしきい値を低下させる。この固有のしきい値が、入射波のピーク負圧と一致すると、焦点において沸騰バブルが形成される。
【0062】
[0087]焦点において生成される大きな圧力により、音響キャビテーションバブルのクラウドが、特定のしきい値を超えて形成され、これによって、組織に局所的な応力および歪みが生じ、顕著な熱沈着なしに機械的破壊が生じる。キャビテーションが生成されない圧力レベルでは、焦点における組織で最小限の影響が観察される。このキャビテーション効果は、10から30MPaのピーク負圧のオーダで、同様のパルス持続時間に対して水中の慣性キャビテーションのしきい値を規定する圧力レベルよりも大幅に大きい圧力レベルでのみ観察される。
【0063】
[0088]ヒストトリプシは、複数の手法で、異なるパラメータの下で実行する場合がある。ヒストトリプシは、焦点型超音波トランスデューサを患者の皮膚上に音響的に結合し、その上にある(および介在する)組織を介して焦点ゾーン(処置ゾーンおよび部位)に経皮的に音響パルスを送信することにより、完全に非侵襲的に実行してもよい。ヒストトリプシによって生成されたバブルクラウドが、たとえばBモード超音波画像上で非常に動的なエコー発生領域として見える可能性があることを考えると、超音波撮像による直接的な視覚化の下で、さらに標的を絞り、計画し、指示し、観察することができ、その使用(および関連する手順)を介した連続的な視覚化が可能となる。同様に、処置および分画された組織は、処置の評価、計画、観察、および監視に使用できる、エコー原性の動的な変化(典型的には、減少)を示す。
【0064】
[0089]一般に、ヒストトリプシ処置では、3つ以上の音響サイクルを伴う超音波パルスが印加され、バブルクラウドの形成は、最初に引き起こされ、まばらに分布しているバブル(または単一のバブル)からの、正の衝撃面(時には100MPa、P+を超える)の圧力解放散乱に依存する。これは、「衝撃散乱メカニズム」と呼ばれる。
【0065】
[0090]このメカニズムは、トランスデューサの焦点におけるパルスの最初の負の半サイクルで引き起こされた1つ(または、まばらに分布している数個)のバブルに依存する。次に、これらまばらに引き起こされたバブルからの高いピークの正の衝撃正面の圧力解放後方散乱により、マイクロバブルのクラウドが形成される。これら後方散乱された高振幅の希薄波(rarefactional wave)は、固有のしきい値を超え、局所的な高密度のバブルクラウドを生成する。その後の各音響サイクルは、バブルクラウドの表面からの後方散乱によって、さらなるキャビテーションを誘発し、これは、トランスデューサに向かって成長する。その結果、超音波の伝搬方向とは反対の音響軸に沿って成長する細長い高密度のバブルクラウドが、衝撃散乱メカニズムで観察される。この衝撃散乱プロセスにより、バブルクラウドの生成は、ピーク負圧だけでなく、音響サイクルの数と、正の衝撃の振幅にも依存するようになる。非線形伝播によって発達する少なくとも1つの強い衝撃面がなければ、負の半サイクルのピークが、固有のしきい値を下回ると、高密度のバブルクラウドは生成されない。
【0066】
[0091]2サイクル未満の超音波パルスが印加される場合、衝撃散乱を最小化することができ、高密度のバブルクラウドの生成は、媒体の「固有のしきい値」を超える、印加された超音波パルスの負の半サイクルに依存する。これは「固有しきい値メカニズム」と呼ばれる。
【0067】
[0092]このしきい値は、人体の組織など、含水量の多い軟組織の場合、26~30MPaの範囲であることができる。いくつかの実施形態では、この固有のしきい値メカニズムを使用して、病変の空間範囲が明確に画定され、より予測可能となる場合がある。ピーク負圧(P-)が、このしきい値よりも顕著に高くない場合、トランスデューサの-6dBのビーム幅の半分ほどのサブ波長の再現可能な病変が生成されてもよい。
【0068】
[0093]高周波数ヒストトリプシパルスを用いると、再現可能な病変の最小のサイズがより小さくなり、これは正確な病変生成を必要とする用途において有益である。しかしながら、高周波数パルスは、減衰および収差の影響を、より受けやすく、より深い浸透深度では(たとえば、体内深部のアブレーションなど)、または、非常に収差の大きい媒体を介した場合では(たとえば、経頭蓋手順、または、パルスが骨を介して送信される手順など)、問題のある処置をもたらす。ヒストトリプシはさらに、低周波数「ポンプ」パルス(典型的には、2サイクル未満で、100kHzから1MHzの間の周波数を有する)が、高周波数「プローブ」パルス(典型的には、2サイクル未満で、2MHzよりも高い、または、2MHzから10MHzの範囲の周波数を有する)とともに印加できるように、印加されてもよく、ここで、低周波数パルスおよび高周波数パルスのピーク負圧は、建設的に干渉して、標的組織または媒体内の固有のしきい値を超える。低周波数パルスは、減衰および収差に対してより耐性があり、関心領域(ROI)のピーク負圧P-レベルを上げることができる一方、より正確性の高い、高周波数パルスは、ROI内で標的位置を正確に特定でき、ピーク負圧P-を、固有のしきい値よりも高める。このアプローチは、「二重周波数」、「二重ビームヒストトリプシ」、または「パラメトリックヒストトリプシ」と呼ばれることがある。
【0069】
[0094]衝撃散乱、固有のしきい値、ならびに、周波数合成およびバブル操作を可能にする様々なパラメータを使用して、最適化されたヒストトリプシを供給するための追加のシステム、方法、およびパラメータが、焦点の操作と位置決め、および処置部位において、または介在組織内で、組織効果(たとえば、焦点前の熱的な付随的損傷)の同時管理に関して、前記ヒストトリプシ効果を制御する追加の手段を含む、本明細書に開示されるシステムおよび方法の一部として本明細書に含まれる。さらに、限定されないが、周波数、動作周波数、中心周波数、パルス繰返し周波数、パルス、バースト、パルス数、サイクル、パルスの長さ、パルスの振幅、パルス周期、遅延、バースト繰返し周波数、前者のセット、複数のセットのループ、複数および/または異なるセットのループ、ループのセット、およびこれら様々な組合せまたは置換などの複数のパラメータを含んでもよく、そのような将来の想定される実施形態を含む本開示の一部として含まれる様々なシステムおよび方法が開示される。
【0070】
ヒストトリプシの技術的課題
[0095]ヒストトリプシなどの超音波治療を使用して、深部組織標的(たとえば、>8cm)を処置するか、または異種組織を介して処置するには、2つの技術的課題、すなわち、1)音響収差と、2)超音波治療のリアルタイムフィードバックとがある。
【0071】
[0096]音響収差は、ヒストトリプシを含む、超音波治療および撮像に影響を与える問題である。音響収差は、多層の不均一な組織を介した超音波の伝播により、焦点圧力を低下させ、焦点を歪める可能性がある。焦点圧力の低下は、効果のない処置、または処置効率の低下を引き起こす可能性がある。たとえば、ヒストトリプシでは、標的組織部位においてキャビテーションを生成するために、標的組織部位での焦点圧力が正確に制御される。収差による焦点圧力の低下により、キャビテーションの発生を防ぐことができる。焦点の歪みも、処置精度を低下させる可能性がある。典型的には、焦点型超音波トランスデューサは、トランスデューサ表面からのすべての位置から放射された音波が、同じ距離を通過して同時に焦点に到着するように、球面のセグメントとして形成される。しかしながら、骨および異種の軟組織間の音の速度の変動により、超音波トランスデューサアレイの異なる要素から焦点に到着するまでの移動時間は異なる場合がある。その結果、収差によって焦点圧力が失われ、焦点がずれ、処置の有効性および精度が低下する可能性がある。
【0072】
[0097]超音波は、非侵襲的な治療技法であるため、リアルタイムのフィードバックは、高い処置精度を達成し、潜在的な合併症を最小限に抑えるために重要である。ヒストトリプシによって生成されたキャビテーションが、超音波画像上で動的な明るいゾーンとして視覚化できるので、超音波撮像は、ヒストトリプシにリアルタイムのフィードバックを提供するために使用されてきた。典型的には、超音波撮像プローブは、ヒストトリプシトランスデューサの中心の穴に挿入されるため、2D超音波撮像平面は、ヒストトリプシ焦点を含む。その後、超音波撮像を使用して、ヒストトリプシの焦点を正しい標的組織に配置し、処置の進行を監視するように標的化をガイドできる。しかしながら、ヒストトリプシの唯一のガイダンスとして超音波撮像を使用することには、2つの主な制限がある。1)超音波撮像プローブが、患者の骨(たとえば、肋骨や頭蓋)で遮断されている場合、ヒストトリプシ焦点の超音波画像を取得できない。たとえば、ヒストトリプシは、部分的に胸郭(ribcage)の背後にある患者の肝臓の腫瘍体積を処置するために使用することができる。ヒストトリプシトランスデューサを機械的に移動させて、ヒストトリプシ焦点をスキャンし、腫瘍体積をカバーする場合、撮像プローブは、治療の特定の持続時間中、肋骨によって遮断される可能性があり、その時点では、肋骨によって遮断されているので、治療のリアルタイム撮像は利用可能ではない。この持続時間中にフィードバックがなければ、キャビテーションがまだ腫瘍の標的位置で生成されているか否か(すなわち、この持続時間にわたって処置が実施されているか否か)を知る手法はない。2)超音波撮像プローブは、ヒストトリプシ焦点を含む2D画像平面内の組織とキャビテーションしか観察できない。したがって、超音波撮像プローブは、画像平面の外側で発生する潜在的な望ましくないキャビテーションを観察できない。所望されないキャビテーションは、所望されないオフ標的損傷を生成する場合がある。
【0073】
[0098]上記で説明された問題は、本明細書で説明されたように、超音波信号を送信して、キャビテーションを生成し、ヒストトリプシを供給するように構成されるのみならず、超音波信号(すなわち、送受信ヒストトリプシアレイ)を受信するように構成された新規のヒストトリプシ超音波フェーズドアレイトランスデューサを用いて解決できる。
【0074】
[0099]たとえば、超音波治療トランスデューサが、フェーズドアレイを備える場合、位相補正技法を使用して収差を補正し、低減された焦点圧力を回復することができる。これは、フェーズドアレイの各トランスデューサ要素からの送信時の位相/時間遅延を調整して、音振動の速度による各アレイ要素から焦点までの移動時間の変動を補償することによって実現できる。そうすることで、収差を補正して焦点圧力を上げ、焦点を改善することができる。
【0075】
[0100]ヒストトリプシを供給し、音響キャビテーション放射信号を受信できる超音波フェーズドアレイトランスデューサはさらに、キャビテーションの検出、位置特定、およびマッピングを可能にするように構成することができる。現在、典型的なヒストトリプシシステムは、超音波パルスのみを送信して、焦点においてキャビテーションを生成する。送受信ヒストトリプシシステムは、超音波パルスを供給してキャビテーションを生成するために使用できるだけでなく、音響キャビテーション放射(ACE)信号などの信号を受信することもできる。ヒストトリプシ中のキャビテーションバブルの急速な膨張と急速な崩壊との両方が、音響受信機によって検出できる衝撃波を生成する。いくつかの実施形態では、主治療パルスの受信された反射(1~2サイクルを超える長さであり、キャビテーション生成事象において衝撃波に完全に変換されていない場合)、または後続の低振幅治療パルスは、以下に列挙される様々な受信用途で使用することができる。ヒストトリプシトランスデューサアレイシステムから受信したACE信号を、数百の要素および送受信機能で処理することにより、キャビテーションを検出して、位置を特定し、リアルタイムの3Dキャビテーションマップを提供できる。ヒストトリプシアレイによって受信された、ヒストトリプシ誘発キャビテーションマイクロバブルの成長および/または崩壊からの音響放射信号を使用すれば、超音波撮像プローブが骨によって遮断されている状況でも、キャビテーションを、3Dおよびリアルタイムで、位置特定および監視できる。3Dキャビテーションマッピングは、オフ焦点キャビテーションをリアルタイムで監視して、安全性を高め、望ましくないキャビテーションを特定することもできる。
【0076】
[0101]典型的なフェーズドアレイシステムにおいて見られる送受信駆動電子機器は、高圧ヒストトリプシパルスを生成するために必要とされる電圧(数千ボルト)が極端に高いために、ヒストトリプシフェーズドアレイトランスデューサに直接適合させることはできない。本明細書で説明される新規の駆動電子回路は、超音波トランスデューサアレイへの送信信号を安全に遮断または大幅に減衰させる一方で、受信した超音波信号の高い感度および高いダイナミックレンジを維持するように構成される。本開示は、送受信機能を備えたフェーズドアレイヒストトリプシトランスデューサアレイのためのハードウェアおよびソフトウェアの両方を提供する。本開示はさらに、収差補正およびキャビテーションマッピングのために送受信ヒストトリプシシステムとともに使用できる方法および信号処理アルゴリズムを説明する。
【0077】
送受信電気駆動システム
[0102]ヒストトリプシトランスデューサへの電気的な送信信号は、典型的には、キロボルトのオーダであるが、受信超音波信号は、典型的には、ミリボルトから数十ボルトの範囲である。したがって、本明細書で説明される送受信電気駆動回路は、数十ボルトのオーダの低振幅信号を受信するのに十分な感度とダイナミックレンジを有しながら、数千ボルトのオーダの高振幅送信波形信号を遮断または大幅に減衰させるように設計および構成されている。
【0078】
[0103]上記で記載された機能/目的を達成するための多くの駆動回路構成の実施形態および実装が、本明細書で説明される。いくつかの例では、駆動回路構成は、送受信機能を提供するために、既存の送信専用ヒストトリプシシステムに後付けまたは追加することができる。他の実施形態では、駆動回路構成は、まったく新しい送受信ヒストトリプシシステムに統合される。
【0079】
[0104]
図2Aは、送受信機能を有効化するために、既存の送信専用ヒストトリプシシステムに後付けされるように構成された新規の受信駆動回路構成200の1つの実施形態である。例示される概略図では、非線形コンプレッサは、ヒストトリプシ要素の各々に接続されたすべての信号を減衰できるが、高振幅信号の減衰は大きく、低振幅信号の減衰は小さい。たとえば、容量性分圧器202は、C1およびC2によって示されるように、最初に、トランスデューサ要素TX1からのすべての入力/受信電圧信号を、約1~10%減衰させる(または、信号を、90~99%減衰させる)ように構成することができる。次に、D1,D2およびC3によって示されるように、ダイオード抵抗分圧器204は、約1ボルトを超えるすべての信号を圧縮するために非線形減衰を提供し、交流電流(AC)は、アナログデジタル変換器(ADC)変換のために、信号を、ADCに結合するように構成される。ADCの前の最後の構成要素は、R2およびR3によって示される電圧レベルシフタ206であり、信号をADCのために適切な電圧範囲(たとえば、典型的には+/-0.5Vから+/-2Vの間)にする。上記で説明されたように、この回路構成は、既存の送信専用ヒストトリプシ駆動システムに後付けされるように構成される。たとえば、別の回路構成基板を追加して、既存の送信回路構成に接続し、受信機能を追加することができる。1つの実施形態では、受信回路構成は、送信電子機器に並列に追加され、送信電子機器に影響を与えることなく信号を受動的に受信する。
【0080】
[0105]
図2Bは、高電圧ヒストトリプシ駆動電子機器に組み込まれる駆動回路構成200aの1つの実施形態である。
図2Bの実施形態では、変圧器の1次コイル20と直列のコンデンサのバンク(図示せず)が、高電圧源によって充電される。次に、ドライバチップU1は、nチャネルMOSFETトランジスタQ1をトリガし、nチャネルMOSFETトランジスタQ1は、変圧器の1次コイルを通して高電圧ACパルスを送り、それによって、変圧器の2次コイル22内に、コイル間の巻数比に比例する電圧を有するACパルスを生成する。2次コイルは、トランスデューサ要素(この例示では、トランスデューサ要素TX1)の各々に電気的に結合することができる。1つの実装では、1次コイルと2次コイルとの間に、約1:3の巻数比が使用された。したがって、この受信駆動回路構成は、トランスデューサの中心周波数で、約3kVのオーダの単一サイクルパルスを生成することができる。他の巻数比を実装できることを理解されたい。
【0081】
[0106]
図2Cを参照して示すように、ヒストトリプシシステム用の受信駆動電子機器の別の実施形態が図示される。図示されるように、受信駆動電子機器は、トランスデューサ要素TX1に結合された2次変圧器コイル22を含むことができる。このシステムのドライバは、各チャネルの出力にすでに変圧器を含んでいるため、第3のコイル24を、各変圧器に追加して、受信電子機器のために使用することができ、それによって、ドライバ(たとえば、1次コイル20)と受信機(たとえば、第3のコイル24)との間の完全な分離を提供する。1つの実装では、受信すなわち第3のコイルは、2次変圧器コイル22よりも約10倍少ない巻線で巻くことができ、それによって、2次コイルと第3のコイルとの間の電圧を10分の1に減少させる。3次すなわち第3のコイルの巻線数は、特定の用途に合わせて調整でき、必ずしも2次コイルの10分の1である必要はない。この比は、受信信号の振幅に依存し、所望される電圧に基づいて調整できる。1つの実施形態では、
図2Cからの受信巻線(第3のコイル24)は、特別に選択されたコア材料およびサイズで、小さな信号用に設計された第2の変圧器に結合することができ、背後にあるアナログデジタル回路構成(ADC)を保護するために、送信パルス中に飽和するように構成されるであろう。しかしながら、信号を受信する場合、第2の小さな信号変圧器は、飽和しないように構成され、それによって、受信信号の適切な利得および感度が可能になるであろう。
【0082】
[0107]統合された受信可能なヒストトリプシシステムのための受信回路構成の概略設計が
図2Dに図示される。
図2Aにおける上記の実施形態と比較して、
図2Dに図示される実施形態における主な相違は、
図2Cの実施形態において説明された変圧器である。VGA回路は、
図2Dの実施形態に追加され、
図2Aに図示されるレベルシフタの代わりに、2つのコンデンサC3,C4が直列に接続された「平衡」入力は、デジタイザを含む。
【0083】
[0108]別の実施形態では、送受信駆動回路構成は、送受信スイッチを含むことができる。同じ基板上に送受信両方の回路構成を備えた統合駆動受信回路構成は、スイッチを使用して、受信信号を送信信号から分離できる。たとえば、ダイオードを備えた従来のTRスイッチは、受信信号を減衰させることなく、高電圧の送信信号を遮断する。異なる線形利得を有する回路は、感度を最大化するために、その振幅に基づいて、受信信号の選択された部分を適切に増幅または減衰させるために、スイッチの後に続くことができる。しかしながら、この設計は、多くの電力を浪費し、大きく、高価になる。
【0084】
[0109]
図3Aは、(上記で論じたように、受信中にトランスデューサで生成される電圧を測定する代わりに)トランスデューサTX1から駆動変圧器T1を通って逆流する電流を測定するように構成された駆動受信回路構成の別の実施形態を例示する。従来の撮像トランスデューサと比較して、治療トランスデューサアレイ要素の表面積が比較的大きいということは、トランスデューサアレイが比較的大きな電流を生成することを意味し、これにより、受信中の感度が高くなるが、撮像トランスデューサを用いた場合、音響信号によって誘発される電圧のみを測定することが現実的である。通常の超音波撮像要素は小さすぎて、使用可能な受信電流を生成できない。本明細書で説明された治療要素は、従来の撮像要素よりも表面積が数百倍から数千倍大きいため、電流はかなり大きく、(マイクロアンペアではなくミリアンペア範囲において)測定が容易である。例示される回路構成では、電流は、電気経路(R1)における検知抵抗器によって測定できる。駆動受信回路構成は、大きな反射からの、または、送信パルス中の過剰電流を、一連のバイパスダイオード(D1およびD2)に通過させるように構成される。送信電流は、40Aの大きさになることが可能である。駆動受信回路構成が、超音波反射信号および/または音響キャビテーション放射などの反射を受信している間、検知抵抗器は、それらの反射によって回路構成に誘発される電流を測定するように構成される。電流検知抵抗器にわたり生成された電圧は、バラン(T2)およびコンデンサC1,C2を介してADCに結合される。この平衡入力構成は、製造者が推奨するAFE5801デジタイザ用の回路である。接地に対するR1の電圧を直接測定することにより、このデジタイザまたは他のデジタイザのシングルエンド動作も可能となるであろう。
【0085】
[0110]
図3Aの駆動受信回路構成は、低利得モードおよび高利得モードで動作するように構成することができる。引き続き
図3Aを参照して示すように、この回路構成は、回路の全体的な感度を大幅に変更できるように、2つの電流検知抵抗器R1,R2を有することができる。図示されるように、これは、小さな値の抵抗器R2(低感度)と、大きな値の抵抗器R1(高感度)とを並列にオン/オフ切り替えするように構成された一対のトランジスタQ2,Q3を用いて実装することができる。これらトランジスタを使用して回路の抵抗を非常に迅速に変更し、(たとえば、骨からの超音波反射信号などの、高振幅の受信信号のような)受信したデータのバーストの一部に対する低い設定と、(たとえば、キャビテーション崩壊からの音響キャビテーション放射信号などの、低振幅の受信信号のような)数マイクロ秒後の高い設定との両方を使用することが有効化される。センサが直接変更されるため、通常は利得が高いほどSNRが悪化する可変利得アンプとは異なり、両方のスケールが、非常に高いSNRを有する。いくつかの実施形態では、より広いダイナミックレンジであっても、追加の検知抵抗器を同じ方式で実装することができる。
図3Aに図示される回路のために、高利得モードは、変圧器T2を介して回路構成に結合されたADCにおいて、5mAまでの電流を測定するように構成される一方、低利得モードは、ADCにおいて、200mAまでの電流を測定するように構成される。
【0086】
[0111]
図3Bは、バイパスダイオードの代わりに、大きな送信電流を通過させるために低ゲートしきい値MOSFETトランジスタQ4,Q5を実装できる代替実施形態を図示する。トランジスタの進歩に伴い、このバイパスの役割を担うダイオードよりも小型で安価で高性能なトランジスタが登場した。これらトランジスタは、単一のダイオードよりも高いターンオン電圧を有することができるため、ADCの全ダイナミックレンジを、より簡単に使用できる。
【0087】
[0112]
図3Cは、バイパストランジスタQ4,Q5が、能動的な送受信スイッチとして明示的に制御される第3の実施形態を図示する。トランジスタゲートは、トランジスタの駆動要件に応じて、たとえば+/-5Vになる可能性があるゲート駆動信号に接続され、トランジスタを完全にオン(送信モードの場合)または完全にオフ(受信モードの場合)にする。この構成により、送信中に生成されるRFノイズを低減することができるが、代わりに、受動的に切り替えられたバイパス構成要素を、超音波の周波数において迅速にオンおよびオフする必要がある。この設計には、複雑さがわずかに増加するというトレードオフがある。
【0088】
[0113]上記で説明されたアナログ受信信号は、デジタル信号に変換され、その後、収集され、処理される。ヒストトリプシトランスデューサアレイから受信された信号は、たとえば、骨または軟組織からの反射、またはキャビテーションからの音響放射信号である場合がある。これら信号は、典型的には、ヒストトリプシパルス後の特定の時間ウィンドウ(たとえば、治療パルスの送信後、数十から数百マイクロ秒)で受信される。したがって、本明細書で説明されたハードウェアおよびソフトウェアは、送信、受信、およびADC変換およびサンプリングの時間クロックを同期させて、所望の受信信号を含む各ヒストトリプシパルスの後に適切な時間ウィンドウを取得するように構成される。同期および時間ウィンドウが適切に設定されていれば、所望される受信信号を収集して処理できる。
【0089】
[0114]適切な同期および時間ウィンドウを達成するために、本明細書で説明された送受信駆動電子機器のいずれも、ADCに接続された単一のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)デバイスを使用して、ヒストトリプシシステムのすべてのチャネルのまたはいくつかのセブセットのためのADCのみならず、トランスデューサの送受信両方の動作を制御することができる実施形態を含むことができる。個別のサブシステムによって実行される動作のタイミングが基づいている単一のクロックオフをFPGAに提供することにより、特に複数のFPGAを使用して、ヒストトリプシトランスデューサ要素の様々なサブセットを制御する場合に、サブシステム間の同期を保証できる。次に、信号を受信するための適切な時間ウィンドウの設定が、FPGAのプログラミング時に、それぞれの動作のタイミングを適切に割り当てることによって達成できる。複数のFPGAが必要とされる場合、たとえば1つのデバイスから制御するにはトランスデューサ要素が多すぎるアレイでは、同期のために1つのクロックラインをそれらすべてにファンアウトし、集中型の「マスタ」FPGAを使用して、適切な時間ウィンドウ内で動作の実行をトリガできる。
【0090】
[0115]あるいは、本明細書で説明された送受信駆動電子機器のいずれも、マルチFPGAシステムを含むことができ、単一の共有クロックラインを発行/ファンアウトするために、または個々の基板の動作の実行をトリガするために、集中型の「マスタ」FPGAが必要とされない「ヘッドレス」モードで動作するように設定できる。そのようなモードでは、各FPGAは、独自のクロックで動作し、システム全体によって共有されるオープンドレインハードウェアIOラインである、2つの共通「プログラム実行状態」と、1つの共通「動作実行」とを監視および更新するように設定される。オープンドレインラインは、単一のFPGAがラインに低信号を印加すると、ライン上の任意の場所で測定された信号を低に登録し、すべてのFPGAが高信号をラインに印加した場合にのみ、ライン上のあらゆる場所で測定された信号を高に登録する。2つの「プログラム実行状態」ラインを、FPGAに使用して、システム全体の1)「実行準備完了」信号と、2)「実行完了」信号とを発行し、デフォルトで、各FPGAは、低信号をこれら各ラインに印加し、各FPGAは、高信号を「動作実行」ラインに印加するであろう。プログラムの実行中に、プログラム内の新たな実行可能命令に達すると、各FPGAは、「実行準備完了」ラインを更新して、高信号を印可し、待機状態に入り、ここで、「実行準備完了」ラインと「動作実行」ラインとの両方の信号を監視する。すべてのFPGAが「実行準備完了」状態に達すると、「実行準備完了」ラインに登録された信号が高になり、「実行準備完了」ラインにおける高状態を検出する、システムにおける最初のFPGAは、「プログラム実行」ラインに低信号を発行し、すべての場所を低に登録する。「プログラム実行」ラインで低信号を検出すると、各FPGAは、「プログラム実行」ラインの独自の端子の値を低に設定し、格納されているコマンドを実行する。各FPGAは、それぞれのコマンドの実行を終了すると、「実行完了」ラインと「プログラム実行」ラインとの両方に高信号を印可する。「実行完了」ラインと「プログラム実行」ラインとの両方に高が登録されると、FPGAは、すべての共有オープンドレインライン値をデフォルトにリセットし、プログラムにおける次の命令をロードし、プログラムが完了するまで、各命令に対してプロセスを繰り返す。
【0091】
[0116]完全に接続された一連の受信要素は、大量のデータを生成することができるので、治療中の監視ニーズを満たすために、獲得された信号をリアルタイムで転送および処理できるようにするために、データ負荷を軽減する戦略が提案される。これら戦略は、本明細書において説明された送受信駆動電子機器のいずれにも適用することができる。そのような戦略は、(たとえば、ADCによって生成された1つおきのデータ点のみを、または、複数の獲得サイクル間で生成されたデータ点の平均を格納することによって)たとえば、ADCからの入力データを、FPGAで実行しているファームウェアに人為的にダウンサンプリングすることを含む場合がある。これにより、サンプリング周波数が効果的に減少するため、データ負荷が軽減されるが、時間正確性や、ダイナミックレンジが犠牲になることはなく、システムにおけるノイズの増加をもたらすこともない。第1の時点後に捕捉されたすべてのデータが、隣接する時点で捕捉された値の間の差として格納される、差分圧縮スキームも適用される場合がある。たとえば、時間1におけるXと、時間2におけるYとの値の場合、Yの値を直接格納する代わりに、時間2において、YとXとの差の値D=Y-Xを格納し、その後、処理中に、Yの実際の値を、Y=X+Dとして計算することができる。このように、組み合わせて4バイトのデータを表す、たとえばX=64000およびY=63900の公称値は、X=64000およびD=-100として格納でき、これらは組み合わせて3バイトのデータを表し、Yの値の完全な復元を可能にする。データレコードの長さが長くなるにつれて、この圧縮戦略により、実際の値を格納するために必要な変数のサイズと比較された、差分値を格納するために必要な変数のサイズの比率に比例してデータが減少し、これは、一般に、現在のシステムでは、データ負荷を30%~50%低減させるが、個々のデータ要素のサイズが大きいシステムでは、大幅に低減させる可能性がある。リアルタイムの処理/圧縮を必要としない用途では、オーディオファイルの圧縮に適用される方法と同様の方法を使用して周波数領域変換を行うことで、データサイズのさらなる低減を達成できる。
【0092】
[0117]ヒストトリプシ治療中に監視する必要がある事象のいくつかは、(たとえば、個々のキャビテーション事象からの信号のように)非常に高い時間正確性を必要とするが、(たとえば、頭蓋骨、肋骨、組織界面など、大きな境界から離れた信号の反射のような)他のものは、ほとんど正確性を必要とせず、圧縮比を動的に変更する戦略を実施して、リアルタイム用途のために入力データを十分に活用することができる。そのために、データ獲得を制御するファームウェアおよびソフトウェアは、獲得中に使用されるサンプリング周波数および圧縮戦略を、アレイ内のチャネル毎に設定でき、個人の獲得事象の最中でさえも、独立してリアルタイムで更新できるように構成される。これにより、必要なサンプリング周波数および圧縮設定で、治療の異なる特徴を監視するように、アレイの異なるサブアパーチャを設定できるのみならず、潜在的に弱い信号の短命の事象を監視するように必要とされると、受信システムを、アレイのすべての要素間で、最大のサンプリング周波数/最小の圧縮設定に設定できるようになり、その後、最大限の監視を必要とするウィンドウの外側で、より高い圧縮設定で、より低いサンプリング周波数に戻る。これにより、能動的に監視される場の物理的サイズの縮小や、治療中の監視速度の大幅な低下につながる可能性のあるデータ負荷を低減するために、獲得を中断する必要なく、このタイプの短命の事象を完全に監視できる。
【0093】
[0118]状況によっては、受信信号振幅が低く、ノイズが高く、結果として、信号対ノイズ比(SNR)が低くなる場合がある。ノイズを低減し、SNRを向上させる1つの方法は、データを格納する前にファームウェア(たとえば、FPGAファームウェア)でオーバサンプリングして平均化することである。これは、ダイナミックレンジを拡大し、メモリ要件を低減するのにも役立つ。もう1つの技法は、動的可変サンプルレートを実装することである。たとえば、ADCは常に50MHzで動作するように構成できるが、データレコードの特定の部分でのみ高い時間正確性が必要になる場合がある。そのような高いフレームレートが必要とされない信号の部分では、サンプルをデシメートまたは平均化して、ストレージ要件を大幅に低減できる。
【0094】
[0119]治療トランスデューサ要素の帯域幅は典型的には低いが、良好なタイミング正確性のために、サンプリングのために高いサンプリングレートを使用することができる。受信データは、フーリエ領域で非常に良好に(少なくとも10倍、場合によってはそれ以上)圧縮される。FPGAは、ファームウェアまたはソフトウェアで保存または送信する前に、この圧縮を実行するように構成できる。データ圧縮は、リアルタイム監視を実施するための鍵であり、システムは、収集された受信データの量に圧倒されるであろう。
【0095】
[0120]リアルタイム監視が必須ではない用途、または各パルス後に完全な獲得信号をユーザのコンピュータに同時に転送しながら処置速度を可能な限り高速に維持する必要がある用途では、システムは、部分信号のみを転送するように構成することができ、および/または、獲得した信号をFPGAデバイス自体に直接格納して、後で制御コンピュータに転送するように構成することもできる。これにより、処置速度を制限することなく、供給されたすべてのパルスから信号を途切れなく獲得できる。そのような機能は、獲得した信号における長期的な変化を監視するのに役立つ。たとえば、標的組織のアブレーション状態に関連付けられたACE信号の特徴には固有の変動性があり、組織の状態をパルス毎に追跡することは困難であるが、ACE信号における特徴的な変化は、組織のアブレーション状態の評価を可能にする、(たとえば、20を超える印加されたパルスのような)より長い処置時間スケールで存在する。部分的な信号をリアルタイムで転送して、キャビテーション事象の位置特定とマッピングをパルス毎に実行できるようにする一方で、FPGAに記録長の長い信号を格納して断続的に転送し、治療標的のアブレーションの状態を評価することができる。
【0096】
[0121]状況によっては、治療中にキャビテーションを生成するために、名目上必要とされるものの2倍をはるかに超える焦点圧力を生成することが可能であり、そのような場合、ヒストトリプシトランスデューサアレイ要素の半分未満を使用してキャビテーションを生成できる可能性がある。ヒストトリプシアレイを制御するソフトウェアにより、アレイの要素を個別に制御可能なサブアパーチャに容易に分割できるようになり、単一の物理的ヒストトリプシトランスデューサアレイを、複数の別個のヒストトリプシアレイとして効果的に動作させることができる。このように、アレイの別々のサブアパーチャを使用して、焦点体積内の複数の位置を同時に処置の標的とすることができ、パルスが供給される速度を増加させる必要なく、処置速度を増加させることができる。
【0097】
収差補正技法
[0122]以下に、ヒストトリプシ治療に特有の新たな収差補正方法および技法の例が説明される。
【0098】
[0123]送受信ヒストトリプシアレイによって有効化される収差補正の1つの実施形態は、ヒストトリプシ誘発キャビテーションバブルの最初の急速な膨張によって放射される強力な衝撃波の到着時間を利用する。これは、音響キャビテーション放射(ACE)信号と呼ぶことができる。この衝撃波構造は、焦点キャビテーション領域からヒストトリプシ治療アレイに向かって球状に放射される。伝播経路におけるいずれの収差も、焦点キャビテーション部位から各ヒストトリプシアレイ要素までの移動時間を計算することによって決定できる。各要素によって受信されたACE信号の到着時間を処理した後、各トランスデューサ要素それぞれの後続の送信に、各要素の補正時間遅延を適用することができ、これにより、各ヒストトリプシアレイ要素によって生成された超音波パルス波が、焦点キャビテーション場所に同時に到着するようになる。これは、ACE信号の飛行時間における変化を、各ヒストトリプシアレイ要素への送信パルス信号に適用することによって行われ、これにより、送信信号が同時にキャビテーション部位に到着し、収差を補正し、焦点を改善するようになる。
【0099】
[0124]ACEベースの収差補正のために、以下の動作を含む、
図4におけるフローチャートによって例示される特殊な方法およびアルゴリズムを実施できる。ステップ402において、この方法は、超音波トランスデューサアレイを用いて、ヒストトリプシ治療パルスを標的組織内に送信して、標的組織内にキャビテーションを生成させることを含むことができる。上記で説明されたように、アレイの複数のトランスデューサ要素は各々、別々のヒストトリプシパルスを組織に送信することができる。次に、動作404において、この方法は、ヒストトリプシ誘発キャビテーションから生じる音響キャビテーション放射(ACE信号)を受信することを含むことができる。ACE信号の受信は、たとえば、上記で説明されたシステムまたは駆動電子機器のいずれかを利用することができる。次に、動作406において、方法は、これらACE信号にエンコードされた情報(たとえば、キャビテーションバブル膨張から生成された放射の開始時間、キャビテーションバブル崩壊からのピーク時間)を使用して、ヒストトリプシアレイの各要素から、標的組織におけるキャビテーションへの移動時間を計算することができる。最後に、動作408において、方法は、各アレイ要素への駆動電気信号の時間遅延を調整して移動時間の差を補正することを含むことができ、これにより、各要素によって供給される超音波パルスが、後続の送信において同時に焦点/標的組織に到着するように構成される。この方法は、経路内の骨または異種組織の収差補正のために使用できる。
【0100】
[0125]上記で説明された方法は、キャビテーションの急速な膨張からのACE送信の受信について議論しているが、キャビテーションバブル崩壊から音響衝撃波/信号を受信するために同じ技法を使用することができる。各アレイ要素によって受信されたキャビテーションバブル崩壊からの信号は、キャビテーション膨張信号と同様に使用され、上記で説明されたように収差補正のための飛行時間を計算することができる。
【0101】
[0126]衝撃波圧力は、ヒストトリプシ焦点圧力の増加に伴って直線的に増加する傾向がある。これら衝撃波の飛行時間解析の1つの実施形態は、ヒルベルト変換を使用して、これら衝撃波のエンベロープを計算することを含む。次に、相互相関アルゴリズムを使用して、これらエンベロープ信号を再調整するために必要な時間シフトを決定できる。次に、これら時間シフトを反転させて、ヒストトリプシ要素間の飛行時間の変動を補正し、その後、上記で説明されたように後続のパルスに適用する。これら信号を分析する他の方法は、衝撃波のピーク圧力を検出すること、またはウィンドウ平均化フィルタおよびエッジ検出アルゴリズムを使用して、衝撃波の到着時間を判定することを含む。収差補正なしでは、サブキャビテーションしきい値振幅における焦点圧力は、49.7%に低下し、キャビテーションを誘発するのに必要なトランスデューサ電力は、3倍になる。上記で説明されたACE収差補正方法を使用すると、失われた圧力の20%以上を回復することができ、キャビテーションを誘発するために必要なトランスデューサの電力が、約31.5%低減される。
【0102】
[0127]音響キャビテーション放射(ACE)信号は、(たとえば、組織/骨を通って伝搬することによる減衰効果のため)常に検出可能であるとは限らず、および/または、収差補正を実行するのに十分なレベルで、バックグラウンド信号成分から識別可能であるとは限らない(たとえば、ACE信号は、ヒストトリプシパルスの反射/残響を伴いアレイ要素に同時に到着する場合がある)。そのような場合、収差補正の基礎としてキャビテーション事象を使用することは、一方はキャビテーション事象を生成するために使用され(サブアパーチャA)、他方は質問パルスを発射するために使用される(サブアパーチャB)複数のサブアパーチャに、ヒストトリプシアレイ要素を分割することにより、パルスエコー技法を使用して達成してもよい。このシナリオでは、サブアパーチャAのすべての要素が、たとえば時間=0において、標的においてキャビテーション事象を生成するのに十分な振幅でヒストトリプシパルスを発射する。たとえば時間=100μsにおいて、生成されたキャビテーション事象のサイズが成長した後、要素サブアパーチャBが、事象に向けてパルスを発射する。サブアパーチャAによって生成されたキャビテーション事象に到着すると、サブアパーチャBからのパルスは、キャビテーション事象から反射され、アレイに向かって散乱される。次に、両方のサブアパーチャのアレイ要素を使用して、キャビテーション事象から反射された信号を受信し、これら信号の到着タイミングを使用して、[69]および[70]で説明された方法に従って収差補正遅延を計算できる。この技法の主な利点は、サブアパーチャBからのパルスのタイミングを任意に設定でき、これにより、反射/散乱信号が、アレイ要素に戻り、バックグラウンド成分が最小の信号領域で検出されることである。
【0103】
[0128]別の実施形態では、収差補正は、軟組織からの散乱信号に基づくことができる。
[0129]受信信号に基づく収差補正のために、焦点ディザ方法を使用することもできる。軟組織からの散乱信号または反射信号を使用する際の課題は、標的組織からの散乱信号からの振幅が、小さい、および/または、他の組織からの散乱信号のバックグラウンド信号に埋もれる、ことが多いことである。アレイ焦点が幾何学的焦点にある散乱信号は、アレイのすべての要素(Sc1n、nは要素番号)から受信される。その後、アレイ焦点を幾何学的焦点から少し離れた距離(たとえば、1/2波長または3/2波長)にディザリングすることができ、散乱信号もアレイのすべての要素(Sc2n、nは要素番号)から受信される。これら信号は両方とも、経路内のすべての異種組織からのバックグラウンド散乱信号を含んでいるが、差分(Sc2n-Sc1n)は、逆位相のディザ焦点からの散乱信号のみによる。すべての要素に対する位相または時間遅延の組合せを試験して、差分(Sc2n-Sc1n)を最大化できる位相または時間遅延の組合せを決定する。この結果の組合せは、収差補正に使用できる。組織間の音の速度の差が小さいため、要素間の異種の軟組織経路による飛行時間の変動は小さいと予想される。したがって、遅延の組合せの事前設定を事前に計算して、試験に使用することができる。この方法により、キャビテーションを生成せずに収差補正が可能となり、処理のために良好な十分なSNRを維持できる可能性がある。
【0104】
[0130]超音波治療のために、トランスデューサアレイから患者の皮膚へ超音波を確実に送信するための結合媒体として、水がしばしば使用される。水と軟組織との間の音の速度の違いにより、焦点の位置が大幅に(たとえば、数ミリメートル)ずれることがある。水と皮膚との界面からの反射信号を、各アレイ要素で受信して、各要素の表面から水と皮膚の界面までの飛行時間を判定し、その飛行時間の判定を使用して、結合媒体によって生じた焦点シフトを補正することができる。
【0105】
[0131]骨からの反射信号は、高い振幅を有する可能性がある。本明細書で説明される方法およびアルゴリズムは、肋骨によって遮断されたトランスデューサ要素を(高振幅の反射信号を介して)検出し、これらトランスデューサ要素をオフにすること、またはこれらトランスデューサ要素への送信信号の振幅を低減(振幅収差補正)して、ヒストトリプシ治療中の肋骨または骨の加熱の可能性を低減することを含むこともできる。
【0106】
[0132]様々な組織表面および層からの反射信号は、各アレイ要素によって受信され、組織層をモデル化することができる。文献値を使用した各組織層の音の速度に基づいて、各要素からアレイ焦点までの飛行時間を、収差補正のために計算することができる。この方法は、粗い収差補正しか提供しない。
【0107】
キャビテーションの位置特定とマッピング
[0133]上記で説明された送受信ヒストトリプシトランスデューサアレイによって受信されたACE信号を使用して、標的組織内のキャビテーションを位置特定し、マッピングすることができる。各ヒストトリプシトランスデューサアレイ要素の、知られている位置により、超音波撮像および受動的なキャビテーションマッピングで使用される従来のビームフォーミングの方法を使用することができる。しかしながら、各要素の経路内の音の速度が異なる可能性があるため、骨または、肋骨などの他のアベレータの背後にあるキャビテーションを、頭蓋骨を通して、または深く覆われた組織を通して撮像するために、既存のビームフォーミングまたは受動的なキャビテーションマッピングアルゴリズムに対する変更が必要とされ、本明細書で論じられたように、異なる要素が焦点に到着するまでの移動時間の変動を考慮する。移動時間の差は、ビームフォーミング後に焦点キャビテーション領域内の信号振幅を最大化する反復方法を使用して考慮できる。
【0108】
[0134]たとえば、総当たり方法(brute force method)を使用して、すべてのヒストトリプシアレイ要素について反復的に超音波移動時間遅延の範囲を試験することができる。合計されたACE信号の最大振幅をもたらす時間遅延の組合せは、キャビテーションの位置特定とマッピングに使用できる。これは、リアルタイム撮像のための十分な速さで達成できる。以下の例は、送受信ヒストトリプシシステムおよび総当たり方法に基づいた1.5mm以内の精度で切除された人間の頭蓋骨を通るキャビテーション位置特定のための70Hzのフレームレートを図示している。骨からの強い反射信号がヒストトリプシアレイによって受信され、処理のために分離されるため、同じ方法を使用して、経路にある頭蓋骨表面または肋骨のマッピングを取得できることに留意されたい。
【0109】
[0135]例:経頭蓋キャビテーションの位置特定とマッピング。この例では、総当たり反復方法を使用して、人間の頭蓋骨を通るキャビテーションを位置特定できる。同じ方法を適用して、肋骨を介してキャビテーションマッピングを生成し、肋骨の背後のキャビテーションを監視できる。キャビテーションの位置特定およびマッピングは、以下の2つのステップで達成される。1)頭蓋骨反射信号からACE信号を分離するために信号処理すること。2)アレイの各要素によって獲得されたACE信号を場に投影し、それらの信号振幅を合計することにより、キャビテーションマップを生成すること。
【0110】
[0136]頭蓋骨反射信号からACE信号を分離するための信号処理は、3つの基本的なステップを含むことができる。第1に、低振幅のサブキャビテーションしきい値ヒストトリプシパルスを標的組織に供給することができ、介在組織からのパルスの反射を、トランスデューサアレイ要素を使用して記録することができる。次に、これら信号をスケールアップし、ACE信号をバックグラウンドから分離するために、高振幅ヒストトリプシパルスを供給した後に生成されるACE含有信号から差し引くことができる。次に、移動ウィンドウ平均を使用して信号を平滑化し、位置特定結果に対する獲得信号のノイズのスプリアス効果(spurious effect)を低減できる。信号の大きさは、その後、位置特定アルゴリズムの前提条件として使用できる。
【0111】
[0137]キャビテーション事象の位置特定およびマッピングは、獲得されたACE信号を場に投影し、トランスデューサの焦点領域で、投影された信号振幅の体積マップを生成することによる、総当たり反復方法によって達成することができる。計算において使用される体積マップは、場におけるキャビテーション事象の予想される位置を中心としたボクセルのグリッドに生成できる。ヒストトリプシトランスデューサ要素の知られている位置と、体積グリッド内の各ボクセルからの距離とに基づいて、ボクセルとトランスデューサとの間を伝搬する音響パルスの往復飛行時間を、音の速度はその間どこでも一定であり、知られている音の速度は一定であるという仮定の下で計算できる。次に、各それぞれのボクセルで、対応する時間に各トランスデューサから測定された信号振幅を合計して、各ボクセルでの合計信号振幅を判定することができる。トランスデューサとボクセルとの間の音の速度は、それらの間に組織が存在するために一定ではないという事実を考慮するために、測定された信号振幅が取得された、獲得されたACE信号内の時点を選択するプロセスを、各ボクセル要素において計算された往復飛行時間について時間をかけて反復し、各時間ステップにおいて信号振幅場を再計算することによって繰り返すことができる。反復計算の終了時における各ボクセルでの合計信号振幅は、全反復ウィンドウ内の各ボクセルにおいて計算された最大値であると見なすことができる。このプロセスは、最終結果のみを考慮することにより、超音波伝播に対する組織の音の速度と厚さの複合効果を考慮し、この単純化された場合では、トランスデューサ要素での信号到着時間の均一な変調を生成する。これにより、計算の複雑さを大幅に低減し、反復的な時間シフト演算による位置特定プロセス中、組織の影響を考慮することができる。キャビテーション事象の位置は、振幅が、検出された最大値の90%を超えるボクセルグリッド内のすべての点の重心を見つけることによって計算できる。
【0112】
[0138]この方法を使用して、3Dキャビテーション位置特定は、肋骨または人間の頭蓋骨などの骨を通して達成することができる。ACEフィードバック位置特定の結果は、生成されたキャビテーション事象の質量中心の(光学撮像で測定された)実際の場所から1.5mm以内の正確度である。バブルの物理的サイズを考慮すると、90%を超える場合で、位置特定の結果が、バブルに囲まれた体積の1mm未満に収まることが知られている。説明された方法を使用して、実験中に、最大70Hzのレートで、リアルタイムでキャビテーションの位置特定が達成されたが、ベンチマーク試験は、位置特定アルゴリズムが効率的にスケーリングされるため、より強力なハードウェアを使用すると、より高いレートが可能になる可能性が高いことを示している。
【0113】
[0139]
図5Aを参照して示すように、しきい値以下のキャビテーション圧力における頭蓋骨からの反射信号と、しきい値を超えるキャビテーション圧力における頭蓋骨反射信号およびACE信号と、頭蓋骨反射信号を差し引くことによって獲得される処理後のACE信号とを含む、送受信ヒストトリプシアレイの各要素から受信された信号が図示されている。
図5Bは、総当たり反復方法を使用してACE信号を処理することによって生成された頭蓋骨表面マップおよび焦点キャビテーション位置特定/マップを例示する。
【0114】
[0140]別の実施形態では、経頭蓋キャビテーションをマッピングするために説明された方法は、標的が非常に不均一なアベレータ(すなわち、肋骨)の下にある場合、または標的に至る途中の組織を通る経路長の変動が著しい場合(たとえば、標的に焦点を合わせるために、トランスデューサを組織表面に対して斜めに揃える必要があるとき)における用途での使用のために拡張される。上記で説明されたものと同じ信号処理および位置特定の方法は、2つの重要な追加で適用できる。
【0115】
[0141]信号処理:不均一なアベレータおよび傾斜面の存在を考慮するために、信号処理において追加のステップが必要とされ得る。まず、アレイの各要素が個別に発射され、組織からのパルスの反射が、すべてのアレイ要素によって記録される。トランスデューサ要素の知られている場所と、結合媒体の音の速度とが与えられると、従来の遅延和ビームフォーミングを使用して、獲得された信号から、組織表面とその下にある特徴(すなわち、肋骨)との3Dマップを生成できる。
【0116】
[0142]2)キャビテーションの位置特定およびマッピング:組織の知られている表面形状、および/または肋骨などの下にある特徴の位置が与えられると、キャビテーション事象を位置特定するために使用される時間反復プロセス中に獲得されるACE信号に不均一な遅延が適用される可能性がある。肋骨の場合、場に投影された信号振幅を最大化して、キャビテーション事象の位置を特定するために、その知られている場所に基づいて、肋骨を通って伝播することが知られているACE信号に割り当てられた遅延が、そうではないものに対して固定されたオフセットを割り当てられる。または、斜めに揃えられたトランスデューサに対して、組織の知られている表面形状が与えられた場合、各アレイ要素に到着するためにACE信号が通過する必要がある組織の異なる経路長を考慮するために、各要素に割り当てられた時間遅延を段階的に設定できる。
【0117】
[0143]別の実施形態では、説明された方法は、標的が、音の速度がよく知られていない可能性があるほぼ一様なアベレータ(すなわち、肝臓)内にある場合、特に、標的までの途中で組織を通る経路長の変化が顕著である場合(たとえば、標的に焦点を合わせるために、組織表面に対してトランスデューサを斜めに揃える必要がある場合)の用途での使用のために拡張される。説明されたものと同じ信号処理および位置特定方法、ならびに上記で説明された組織表面形状をマッピングするための方法は、以下の追加で適用することができる。
【0118】
[0144]組織の知られている表面形状、結合媒体の音の速度、および生成されたACE信号のタイミングが与えられると、キャビテーション事象の位置のみならず、核形成媒体自体の音の速度は、屈折を説明するスネルの法則の適用により、連立方程式を最小化することで決定できる。組織表面に対するアレイ要素の知られている場所が与えられると、各要素から組織表面上のすべての点までの飛行時間、およびそれに対するパルスのそれぞれの軌跡を計算することができる。組織を出ると、キャビテーション事象からのACE信号の軌跡は、スネルの法則に従って、組織と結合媒体との間の音の速度の違いにより変化するであろう。結合媒体の音の速度、およびアレイ要素から組織表面上のすべての点までの距離は知られているが、各アレイ要素によって獲得されたACE信号の受信部分が組織表面のどの点から発生したのかは分からず、組織の音の速度と、マッピングされているキャビテーション事象の位置も不明である。個々のアレイ要素でのACE信号のタイミングtACE,nは、tACE,n=[Dcm,n/Ccm,n+Dt,n/Ct,n]として、結合媒体と組織とを伝搬する距離と、それぞれの音の速度とにのみ依存し、式中、「D」および「C」はそれぞれ「移動距離」と「媒体の音の速度」に対応し、下付き文字「cm」、「t」、および「n」はそれぞれ「結合媒体」、「組織」、および「要素番号」に対応する。これら変数のうち3つの値(Dcm,n,Dt,n,Ct,n)は不明であるが、Dcm,nの値は、Dt,nおよびCt,nが分かれば、それらの値に関して純粋に再表現できるので、組織結合媒体の境界でのスネルの法則の適用によって重要ではなくなる。次に、ΣtACE,n,exp-tACE,nによって返される値を最小化することにより、媒体の音の速度と、生成されたキャビテーションの位置とを解くことができ、式中、tACE,n,expは、Ct,nの値と、(Dt,nの値で表現される)組織内のキャビテーションバブルの位置とを調整することによって、実験的に測定されるACE信号のタイミングである。
【0119】
リアルタイム処置監視
[0145]上記で論じたように、ヒストトリプシは、キャビテーションを生成して、標的組織を機械的に分画する。投与量または治療の増加に伴い、処置された組織はますます柔らかくなり、最終的に液化して無細胞破片(acellular debris)になる。その結果、処置の過程で、生成されたキャビテーションのバブルが大きく成長し、崩壊するのに、より時間がかかり、最終的にキャビテーション活動は、流体における強いキャビテーション活動を模倣する。キャビテーションの膨張と崩壊の信号は、送受信ヒストトリプシアレイによって受信された音響キャビテーション放射(ACE)信号を介して検出でき、これを処理して、処置の進行を定量的に監視し、処置の完了を判定できる。たとえば、最大のキャビテーションバブル成長までの時間、およびバブル崩壊時間は、処置中に増加し、標的組織が液化して処置が完了すると最終的に飽和する。この増加する傾向は、特定のアルゴリズムを介してACEを処理することで検出でき、処置が進行しているときを示し、飽和傾向は、特定のアルゴリズムによって検出され、処置が完了したことをすべてリアルタイムで判定できる。そのようなアルゴリズムの例は、獲得された波形のピーク検出を個別に使用して、バブルの成長および崩壊に関連付けられたACE信号を特定し、これらACE信号間のタイミングを測定することを含む。信号が、強力なバックグラウンド環境に埋もれている場合、個々の波形を自己相関によって処理して、波形内の自己相似領域間のタイミング(すなわち、成長ACE信号および崩壊ACE信号)を特定できる。個々の信号のバックグラウンド環境は互いに同等ではないため、ACE信号は、各アレイ要素からの個々の自己相関結果のすべてを互いに比較することによって特定でき、たとえば、それら自己相関結果をメディアンフィルタリングすることによって、バブルの寿命に対応する時間において、一貫したピークが示される。獲得された信号を、時間の関数として体積を撮像する場に逆投影すると、同様に、成長ACE信号および崩壊ACE信号に対応する時間において、画像形成された体積内の投影信号振幅におけるピークが示される。
【0120】
[0146]しかしながら、これらACE信号の音響は、非常に複雑であり、処置の進行監視のために所望される判定基準を取得するために、多くの異なる手法で分析することができる。したがって、以下の機能を含む特殊なアルゴリズムが必要とされる。
図6のフローチャートを参照して示すように、ヒストトリプシ処置の進行監視の方法は、ステップ602において、選択されたACE特徴(たとえば、キャビテーションバブル膨張信号、崩壊信号、および/または反発信号のタイミングおよび振幅)を検出して、組織信号から分離することと、ステップ604において、ヒストトリプシによって生成された組織損傷と相関するキャビテーションパラメータ(たとえば、崩壊時間、すなわち、膨張信号と崩壊信号との間の時間、膨張信号のピーク振幅、崩壊信号のピーク振幅、成長ACE信号と崩壊ACE信号との振幅比、または反発関連のACE信号振幅の減衰率)を計算することと、ステップ606において、正常な処置の進行と相関する変化(たとえば、選択されたキャビテーションパラメータの増加勾配)を判定することと、ステップ608において、処置の完了と相関する変化(たとえば、選択されたキャビテーションパラメータの変化の飽和)を判定することとを含むことができる。
【0121】
[0147]キャビテーションパラメータ崩壊時間の例が提供される。この例は、キャビテーション崩壊時間の増加および飽和が、処置の進行および完了と相関していることを示している。ヒストトリプシ処置中のキャビテーションバブルクラウドの崩壊時間(tcol)における変化は、ヒストトリプシ治療中の組織分画プロセスの進行の指標である。
【0122】
[0148]実験では、500kHz,112要素のヒストトリプシアレイを使用して、様々な剛性レベルの組織模倣寒天ファントムのみならず、エクスビボのウシ肝臓サンプル内に、単一位置の病変を生成した。キャビテーション崩壊信号が受信され、透明な組織を模倣したファントムにおいて、高速度カメラを使用して、キャビテーションが撮像された。t
colの高速カメラ獲得測定は、音響ハイドロフォン測定を光学的に検証する。t
colの増加は、ファントム剛性の低下と、印加されるパルス数が増加するヒストトリプシ処置全体との両方で観察される。ヒストトリプシ処置全体にわたるt
colの増加傾向は、組織模倣ファントムで生成された病変形成の進行と良好に相関した(R2=0.87)(
図7)。
図7を参照して示すように、t
col(左y軸)および平均病変強度(MLI)(右y軸)対100パルス中のパルス数が図示されている。ROIにわたる平均ピクセル強度として定義されるMLIは、処置の進行(0-処置なし、1-処置の完了)を示すために、0から1までの正規化されたスケールで処置全体にわたって計算された。t
colおよびMLIにおける変化の大部分は、処置の早期に同時に発生する。t
colにおける変化は、最初の数パルスにおけるMLIの変化よりも大きいが、両方の判定基準は迅速に均一になり、40パルス付近でプラトーしきい値に達する。
【0123】
[0149]最後に、ヒストトリプシ処置に対するt
colの増加傾向が、エクスビボのウシ肝臓で検証された。t
colは、処置を通して約50μsの全体的な平均増加を経験し、40から50のヒストトリプシパルス付近でこの定常状態値に達した(
図8A~
図8B)。
図8A~
図8Bにおいて、エクスビボのウシ肝臓(n=4)における最初の100パルス(右、線形スケール)および1000パルス(左、対数スケール)の崩壊時間t
colが図示される。t
colにおける変化の大部分は、パルス100とパルス1000との間でほとんど、またはまったく変化がなく、処置の最初の100パルス以内で観察される。
【0124】
[0150]ヒストトリプシ治療中にキャビテーションクラウドによって生成される音響キャビテーション放射(ACE)信号も、処置中の組織の完全性に対する潜在的なフィードバック機構として調査された。500kHz、112要素のフェーズドヒストトリプシアレイを使用して、位置毎に、30~1000パルスで219の位置をスキャンすることにより、エクスビボのウシ肝臓組織内に約6×6×7mmの病変を生成した。カスタム非線形電圧コンプレッサは、アレイの8つの要素が、ヒストトリプシパルスを送信し、病変内の中央処置位置からACE信号を受信できるように設計および構築された。ACE信号は、処置中のピーク圧力到着時間の変化を測定することによって定量的に分析された。ACEピーク圧力到着時間は、処置が進行するにつれて減少し、最終的に飽和した(
図9)。
図9を参照して示すように、ピーク圧力到着時間を使用して、定量化されたACEが図示される。処置中のピーク圧力の到着によって示される傾向は、この判定基準に影響を与える物理的変化の大部分が、最初の200パルスで発生することを示唆している。非線形最小二乗最適線は、黒で図示される。最適線は、80パルスで指数減衰時定数に達した。
【0125】
[0151]処置された組織の組織学を分析し、それに対応して、細胞数、レチクリン染色III型コラーゲン領域、およびトリクローム染色I型コラーゲン領域はすべて、ヒストトリプシ処置の過程で減少した(
図10)。ピアソン相関係数(PCC)を使用して、有意水準0.05を使用して、異なる数のパルスによって生成された病変の組織学的分析とACE信号とが比較された。組織学的分析は、生細胞数、レチクリン染色III型コラーゲン領域、およびトリクローム染色I型コラーゲン領域を含んでいた。ピーク圧力到着時間の減少は、0.72のPCC(p=0.043)で、レチクリン染色III型コラーゲン領域の減少と統計的に有意な相関があることが分かった。これは、ヒストトリプシ処置監視の指標として、ACEピーク圧力到着時間を使用する可能性を示している。送受信のハードウェアおよびソフトウェアを大幅に改善して、この検出の感度を向上させることができる。
図10を参照して示すように、様々な投与量で42のヒストトリプシ処置されたサンプルの組織学的分析が図示される。
図10Aは、撮像された媒体に残っている生細胞数を図示する。この細胞数は、処置の初期に最大量の破壊を受けた。
図10Bは、無傷のレチクリン染色コラーゲンのパーセント面積を図示し、
図10Cは、無傷のトリクローム染色コラーゲンのパーセント面積を図示する。どちらのコラーゲン判定基準も、残りの細胞数よりもゆっくりとした量の破壊を受けた。非線形最小二乗最適線は、赤で図示される。各プロットにおいてp値で示されるように、正規分布と比較すると、すべての最適線は統計的有意性を示した。
【0126】
[0152]本明細書で説明された送受信ヒストトリプシフェーズドアレイの利点は、以下のように要約することができる。
[0153]1)収差補正-送受信ヒストトリプシは、超音波経路における音の速度の変動による収差を補正し、焦点を改善することができる。各アレイ要素に補正を適用する必要があるため、各要素によって受信された信号に基づく補正方法が、最も正確な収差補正を提供する。高度な送受信ヒストトリプシのハードウェアおよびソフトウェアと特殊な収差補正アルゴリズムにより、処置の直前または処置中でさえもオンザフライで収差補正を有効化できる。
【0127】
[0154]2)キャビテーションの位置特定およびマッピング-キャビテーションは、ヒストトリプシが損傷を生じさせる原因因子であるため、リアルタイムの3Dキャビテーションマップは、たとえ経路内に肋骨または頭蓋骨があっても、標的化および処置の監視を容易にすることができる。3Dキャビテーションマップを使用すると、標的において意図されたキャビテーションと、望ましくない可能性のあるオフ標的キャビテーションとの両方を検出することもできる。したがって、送受信ヒストトリプシトランスデューサアレイによって提供されるリアルタイム3Dフィードバックは、以前に説明された超音波撮像フィードバックの2つの主な制限を克服できる。
【0128】
[0155]3)処置モニタリング-キャビテーションダイナミクスは、ヒストトリプシによって生成される組織損傷のレベルと相関する。受信したACE信号を処理して、処置の進行状況を監視し、処置の完了をリアルタイムで判定できる。3Dキャビテーションマッピングは、処置前のMRIまたはCTスキャンに同時登録またはオーバレイすることもできる。
【0129】
[0156]4)コンパクトなシステム-送受信ヒストトリプシアレイシステムは、コンパクトであり、送信専用ヒストトリプシシステムと同様のサイズであるが、上記で説明したように、多くの機能が追加されている。送受信ヒストトリプシアレイは、ヒストトリプシフィードバックに現在使用されている超音波撮像とは独立して、および/またはそれを補足するために使用できる。
【0130】
[0157]5)自動登録-トランスデューサ受信によって生成されたキャビテーションのマップは、治療側座標系に自動的に登録される。処置精度は、その後、治療トランスデューサと処置計画撮像との間の単一の登録にのみ依存する。
【0131】
使用の方法
[0158]本明細書で説明された送受信超音波システムは、一般的な振幅収差補正を提供して、治療をより効率的にする超音波および/またはヒストトリプシ治療を有効化でき、さらに、焦点シフトの補正を提供することができる。これら方法は、以下に説明される。
【0132】
[0159]一般的な振幅収差補正
[0160]超音波治療中に、一般的な振幅収差補正を提供する方法が提供される。これら方法は、超音波パルスを単一の試験パルス位置(たとえば、標的組織と揃えられた計画された処置体積の中心)に送信することと、単一位置から時間遅延を受信することとを含むことができる。次に、受信された遅延時間は、計画された処置体積全体(たとえば、計画された処置体積内のすべての処置パターン位置)の代表的な収差補正マップとして使用することができる。その後、収差補正を後続の超音波処置パルスに適用して、処置の効率を高めることができる。
【0133】
[0161]いくつかの例では、複数の別個の試験パルス位置(たとえば、7点試験位置)を使用することができる。この方法は、各試験位置/場所で時間遅延を受信することと、受信した遅延をモデル化して、計画された処置体積全体の収差補正マップを補間することとを含むことができる。
【0134】
[0162]あるいは、方法は、リアルタイム試験を含むことができる。たとえば、方法は、各試験パルスおよび処置位置において、収差補正のために受信信号を使用することと、治療中にリアルタイムで収差補正を更新することとを含むことができる。
【0135】
[0163]いくつかの例では、試験パルスシーケンスは、治療パルスに移行する前に、収差/しきい値を評価するために、より小さなクラウドまたはより熱的に有利なシーケンスを提供するために、治療パルス(自動処置)とは異なっていてもよい。
【0136】
[0164]焦点シフトの補正
[0165]超音波/ヒストトリプシ治療の間、典型的には「Z」軸に沿って、主に水(結合媒体)と組織の音の速度の違いによる焦点シフトを見ることができるのが一般的である。これは、典型的には、撮像システム(たとえば、超音波撮像)を使用してバブルクラウドを視覚化することにより、超音波システムにおいて補正される。本明細書で説明されるように、システムの受信能力を使用して、水と皮膚との界面からの反射信号をマッピングし、各要素の表面から、水と皮膚との界面までの飛行時間を判定し、カップリング媒体によって引き起こされる焦点シフトを補正するために、その飛行時間の判定を使用することができる。
【0137】
[0166]この方法を構築および拡張するために、他の入力を使用して、焦点シフトの予測をより正確にすることができる。たとえば、焦点シフト補正は、(たとえば、計画された処置体積の中心における)単一の試験パルスに基づくか、または体積にわたって補間された複数の試験パルスに基づくことができる。
【0138】
[0167]システムによって受信された受信データは、撮像システムからの撮像データとともに登録され、キャビテーションに関するより視覚的なフィードバックを提供することができる。それに加えて、受信データおよび撮像データを、治療システムのロボット位置決めアームに登録することができるため、画像/受信データは、位置決めアームの6つの自由度に関連付けられる。
【0139】
[0168]上記で説明された方法は、(焦点ゾーンが骨または別のアベレータの背後にある場合のように)撮像システムが不明瞭な場合、焦点シフト/収差を補正するために使用することができる。
【0140】
[0169]特徴または要素が本明細書において別の特徴または要素の「上」にあると呼ばれる場合、それは他の特徴または要素のすぐ上にあることができるか、または、介在する特徴および/または要素も存在する場合がある。対照的に、特徴または要素が別の特徴または要素の「直接上」にあると呼ばれる場合、介在する特徴または要素は存在しない。特徴または要素が、別の特徴または要素に「接続されている」、「取り付けられている」、または「結合されている」と呼ばれる場合、他の特徴または要素に直接接続、取り付け、または結合することができること、または、介在する特徴または要素が存在する場合があることも理解されよう。対照的に、特徴または要素が、別の特徴または要素に「直接接続」、「直接取り付け」、または「直接結合」されていると呼ばれる場合、介在する特徴または要素は存在しない。1つの実施形態に関して説明または図示されているが、そのように説明または図示された特徴および要素は、他の実施形態に適用することができる。別の特徴に「隣接して」配置された構造または特徴への言及は、隣接する特徴と重なる、またはその下にある部分を有する場合があることも、当業者に理解されるであろう。
【0141】
[0170]本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的としており、本発明を限定することは意図されていない。たとえば、本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確にそうではないことを示さない限り、複数形も含むと意図される。本明細書で使用される場合、「備える」および/または「備えている」という用語は、記載された特徴、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1つまたは複数の他の特徴、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。本明細書で使用されるように、「および/または」という用語は、関連付けられたリスト項目の1つまたは複数の任意およびすべての組合せを含み、「/」と省略される場合がある。
【0142】
[0171]「下に」、「下方に」、「下部に」、「上に」、「上部に」などの空間的に相対的な用語は、説明を容易にするために、図面に例示されるように、1つの要素または特徴の、別の要素(複数可)または特徴(複数可)との関係を説明するために本明細書で使用される場合がある。空間的に相対的な用語は、図に示される向きに加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる向きを包含するように意図されていることを理解されたい。たとえば、図中のデバイスが反転された場合、他の要素または特徴の「下に」または「真下に」として説明された要素は、他の要素または特徴の「上に」に向けられる。したがって、例示的な「下に」という用語は、上および下の両方の向きを包含することができる。デバイスは、別の方向(90度回転または他の方位)に向けられてもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。同様に、「上向き」、「下向き」、「垂直」、「水平」などの用語は、別段の指示がない限り、説明の目的でのみ使用される。
【0143】
[0172]「第1の」および「第2の」という用語は、本明細書では様々な特徴/要素(ステップを含む)を説明するために使用され得るが、文脈が別段指示していない限り、これら特徴/要素はこれら用語によって限定されるべきではない。これら用語は、1つの特徴/要素を別の特徴/要素と区別するために使用され得る。したがって、本発明の教示から逸脱することなく、以下で論じられる第1の特徴/要素を、第2の特徴/要素と呼ぶことができ、同様に、以下で論じられる第2の特徴/要素を、第1の特徴/要素と呼ぶことができる。
【0144】
[0173]本明細書および以下の特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の要求がない限り、「備える」という語、および「備える」および「備えている」などの変形は、方法および物品において様々な構成要素(たとえば、デバイスおよび方法を含む組成物および装置)をともに適用できることを意味する。たとえば、「備えている」という用語は、記載されたいずれの要素またはステップをも含むが、他のいずれの要素またはステップも除外しないことを意味するように理解される。
【0145】
[0174]本明細書および特許請求の範囲において、例で使用されるものを含めて使用される場合、特に別段の指定がされていない限り、すべての数字は、たとえその用語が明示的に現れていなくても、「約」または「およそ」という単語が前置きされているかのように読むことができる。「約」または「およそ」という語句は、大きさおよび/または場所を説明するときに、説明された値および/または場所が、値および/または場所の妥当に期待される範囲内にあることを示すために使用する場合がある。たとえば、数値は、記載された値(または値の範囲)の+/-0.1%、記載された値(または値の範囲)の+/-1%、記載された値(または値の範囲)の+/-2%、記載された値(または値の範囲)の+/-5%、記載された値(または値の範囲)の+/-10%などである値を有する場合がある。本明細書で与えられる任意の数値は、文脈上別段の指示がない限り、約またはほぼその値を含むと理解されるべきである。たとえば、「10」という値が開示されている場合、「約10」も開示される。本明細書に列挙される任意の数値範囲は、そこに含まれるすべての下位範囲を含むことが意図される。値が開示される場合、当業者によって適切に理解されるように、その値「以下」、「その値以上」、およびそれら値の間の可能な範囲も開示されると理解される。たとえば、値「X」(たとえば、ここで、Xは数値である)が開示される場合、「X以下」のみならず、「X以上」も開示される。本願を通じて、データは多数の異なる形式で提供され、このデータは終点と始点、およびデータ点の任意の組合せの範囲を表すことも理解される。たとえば、特定のデータ点「10」と、特定のデータ点「15」とが開示されている場合、10および15より大きい、10および15以上、10および15未満、10および15以下、10および15に等しいことが、10と15との間で同様に開示されていると見なされると理解される。2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されると理解される。たとえば、10と15とが開示されている場合、11,12,13および14も開示される。
【0146】
[0175]様々な例示的な実施形態が上記で説明されているが、特許請求の範囲によって説明されている本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に対して任意の数の変更がなされる場合がある。たとえば、説明された様々な方法ステップが実行される順序は、代替実施形態では変更されることが多く、他の代替実施形態では、1つまたは複数の方法ステップが完全に省略される場合がある。様々なデバイスおよびシステムの実施形態のオプション機能は、いくつかの実施形態に含まれてもよく、他の実施形態には含まれなくてもよい。したがって、前述の説明は、主に例示を目的として提供されたものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0147】
[0176]本明細書に含まれる例および図解は、限定ではなく例示として、主題が実施することがある特定の実施形態を図示する。すでに述べたように、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更がなされるように、他の実施形態を利用して、そこから導出してもよい。本発明の主題のそのような実施形態は、実際に、1つよりも多くが開示されている場合、本願の範囲を、任意の単一の発明または発明的概念に自発的に限定することを意図することなく、本明細書では単に便宜上「発明」という用語によって個別にまたは集合的に呼ばれる場合がある。したがって、特定の実施形態が本明細書に例示および説明されたが、同じ目的を達成するために計算された任意の構成が、図示された特定の実施形態に置換されてもよい。この開示は、様々な実施形態のあらゆる適合または変形を網羅するように意図される。上記の実施形態の組合せ、および本明細書に特に説明されていない他の実施形態は、上記の説明を検討することで当業者に明らかになるであろう。
【国際調査報告】