(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】ヘッドフォーム衝撃試験性能を高めた自動車内装用ガラス物品
(51)【国際特許分類】
B60K 37/00 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
B60K37/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514420
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 US2021046065
(87)【国際公開番号】W WO2022051078
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】チャァ,カイカイ
(72)【発明者】
【氏名】ラヨーニ,カレド
(72)【発明者】
【氏名】カラウシュ,ユスフ カイエド
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA01
3D344AA27
3D344AB01
3D344AC04
(57)【要約】
乗物内装システムのためのガラス物品を開示する。ガラス物品は、ガラスシート、支持部材、および、載置要素を含む。ガラスシートと載置要素は、支持部材の反対側に配置される。支持部材は、GPaで表した第1のヤング率(E1)およびMPaで表した第1の降伏強度(Y1)を有し、39MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≧471.288*exp(-0.0294*Y1)+10であり、223MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≦1.941e5*exp(-0.0336*Y1)+48である。更に、載置要素は、GPaで表した第2のヤング率(E2)、および、MPaで表した第2の降伏強度(Y2)を有し、10MPaから950Mpaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≧605.1203*exp(-0.0303*Y2)+3.9であり、78MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≦765.0928*exp(-0.0094*Y2)+85である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物内装システムのためのガラス物品において、
第1の主面、および、該第1の主面の反対側の第2の主面を有するガラスシートと、
第1の支持面、および、該第1の支持面の反対側の第2の支持面を有する支持部材であって、前記ガラスシートが該第1の支持面に配置されたものである支持部材と、
前記支持部材の前記第2の支持面に配置された載置要素と
を含み、
前記支持部材は、GPaで表した第1のヤング率(E
1)、および、MPaで表した第1の降伏強度(Y
1)を有し、39MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y
1)について、E
1≧471.288*exp(-0.0294*Y
1)+10であり、223MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y
1)について、E
1≦1.941e5*exp(-0.0336*Y
1)+48であり、
前記載置要素は、GPaで表した第2のヤング率(E
2)、および、MPaで表した第2の降伏強度(Y
2)を有し、10MPaから950Mpaの第2の降伏強度(Y
2)について、E
2≧605.1203*exp(-0.0303*Y
2)+3.9であり、78MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y
2)について、E
2≦765.0928*exp(-0.0094*Y
2)+85であるガラス物品。
【請求項2】
前記支持部材は、少なくとも100N/mmの第1の剛性を有するものである、請求項1に記載のガラス物品。
【請求項3】
前記ガラス物品に、FMVSS201に規定のヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、該ヘッドフォームは、80g(約784m/s
2)の減速度を3ミリ秒より長く連続して超えないものである、請求項1または2に記載のガラス物品。
【請求項4】
前記ヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、前記ガラスシートは、50mm未満で曲がるものであり、
前記ガラスシートは、前記ヘッドフォーム衝撃試験を終えても破損しないものである、請求項3に記載のガラス物品。
【請求項5】
前記ガラスシートは、前記ヘッドフォーム衝撃試験中に、前記第1の主面でも、前記第2の主面でも、800MPaより大きい最大主応力を経験しないものである、請求項3に記載のガラス物品。
【請求項6】
前記載置要素は、前記乗物内装システムに取り付けるように構成された複数の載置ブラケットを含むものである、請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項7】
各前記複数の載置ブラケットは、第1のアーム部、第2のアーム部、および、該第1のアーム部と該第2のアーム部を連結する横部材を含み、該第2のアーム部は、前記支持部材の前記第2の支持面に接続し、該第1のアーム部は、前記乗物内装システムに取り付けるように構成されたものである、請求項6に記載のガラス物品。
【請求項8】
前記ガラスシートの前記第2の主面に配置された表示部を、
更に含み、
前記表示部は、発光ダイオード(LED)表示部、有機LED(OLED)表示部、マイクロLED表示部、プラズマ表示部、液晶表示部(LCD)、または、有機LCDの少なくとも1つを含むものである、請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項9】
前記支持部材の前記第1の支持面は、湾曲部を含み、前記ガラスシートは、該支持部材の該湾曲部に一致するように冷間成形されたものである、請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項10】
前記載置要素および前記支持部材の有効剛性は、270N/mmより大きいものである、請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下、2020年9月1日出願の米国仮特許出願第63/073,229号の優先権の利益し、その内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、乗物内装システムのためのガラス物品、特に、ヘッドフォーム衝撃試験要件を満たすように構成されたガラス物品に関する。
【背景技術】
【0003】
乗物内装は曲面を含み、そのような曲面に、表示部を組み込みうる。そのような曲面を形成するのに用いる材料は、典型的には、ポリマーに限られるが、ガラスのような耐久性および光学性能を示さない。したがって、特に表示部のカバーとして用いる場合、湾曲したガラス基板が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような湾曲したガラス基板を形成する既存の方法である熱成形などは、高いコスト、光学的歪み、および、表面の傷を含む欠点を有する。したがって、本発明者は、湾曲したガラス基板を、費用効果の高い方法で、ガラスの熱成形処理に典型的につきものである問題を生じることなく組み込みうる乗物内装システムの必要性を認識した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様によれば、本開示の実施形態は、乗物内装システムのためのガラス物品に関する。そのガラス物品は、第1の主面、および、第2の主面を有するガラスシートを含む。第2の主面は、第1の主面の反対側である。ガラス物品は、第1の支持面、および、第2の支持面を有する支持部材も含む。第2の支持面は、第1の支持面の反対側である。ガラスシートは、第1の支持面に配置されたものである。ガラス物品は、更に、支持部材の第2の支持面に配置された載置要素を含む。支持部材は、GPaで表した第1のヤング率(E1)、および、MPaで表した第1の降伏強度(Y1)を有し、39MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≧471.288*exp(-0.0294*Y1)+10であり、223MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≦1.941e5*exp(-0.0336*Y1)+48である。更に、載置要素は、GPaで表した第2のヤング率(E2)、および、MPaで表した第2の降伏強度(Y2)を有し、10MPaから950Mpaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≧605.1203*exp(-0.0303*Y2)+3.9であり、78MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≦765.0928*exp(-0.0094*Y2)+85である。
【0006】
他の態様によれば、本開示の実施形態は、乗物内装システムのためのガラス物品に関する。そのガラス物品は、第1の主面、および、第1の主面の反対側の第2の主面を有するガラスシートを含む。ガラス物品は、更に、第1の支持面、および、第1の支持面の反対側の第2の支持面を有する支持部材を含む。ガラス物品は、更に、支持部材の第2の支持面に配置された載置要素を含む。ガラス物品に、FMVSS201に規定のヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、ヘッドフォームは、80g(約784m/s2)の減速度を3ミリ秒より長く連続して超えないものであり、ヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、ガラスシートは、50mm未満で曲がるものである。
【0007】
更に他の態様によれば、本開示の実施形態は、ガラス物品の製造方法に関する。ガラス物品は、第1の主面および第2の主面を有するガラスシートと、第1の支持面および第2の支持面を有する支持部材と、載置要素とを含む。方法は、ガラスシートの第2の主面を、支持部材の第1の支持面に接着する工程を含む。更に、載置要素は、支持部材の第2の支持面に取り付けられる。支持部材は、Gpaで表した第1のヤング率(E1)、および、MPaで表した第1の降伏強度(Y1)を有し、39MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≧471.288*exp(-0.0294*Y1)+10であり、223MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≦1.941e5*exp(-0.0336*Y1)+48である。更に、載置要素は、GPaで表した第2のヤング率(E2)、および、MPaで表した第2の降伏強度(Y2)を有し、10MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≧605.1203*exp(-0.0303*Y2)+3.9であり、78MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≦765.0928*exp(-0.0094*Y2)+85である。
【0008】
更なる特徴および利点を、次の詳細な記載に示し、それは、部分的には、当業者には、その記載から明らかであるか、または、次の詳細な記載、請求項、および、添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって分かるだろう。
【0009】
ここまでの概略的記載および次の詳細な記載の両方が例示にすぎず、請求項の本質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図すると理解すべきである。添付の図面は、更なる理解のために含められたものであり、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。
【0010】
組み込まれて本明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明のいくつかの態様を示し、その記載と共に、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例示的な実施形態によるガラス物品を有する乗物内装システムを備えた乗物内装の斜視図である。
【
図2A】例示的な実施形態によるV字状のガラス物品の側面図である。
【
図2B】例示的な実施形態によるC字状のガラス物品の側面図である。
【
図3A】ヘッドフォーム衝撃試験中の例示的な実施形態によるガラス物品を示す。
【
図3B】例示的な実施形態による
図3Aのガラス物品の分解図である。
【
図4A】例示的な実施形態によるガラス物品のヘッドフォーム衝撃試験性能を、ヘッドフォームの押込みを基に支持部材の降伏強度およびヤング率の関数として示す。
【
図4B】例示的な実施形態によるガラス物品のヘッドフォーム衝撃試験性能を、ヘッドフォームの減速度を基に支持部材の降伏強度およびヤング率の関数として示す。
【
図4C】例示的な実施形態によるガラス物品のヘッドフォーム衝撃試験性能を、最大主応力を基に支持部材の降伏強度およびヤング率の関数として示す。
【
図5】支持部材について、例示的な実施形態による性能がヘッドフォーム衝撃試験に合格する設計ウインドウを示すグラフである。
【
図6A】例示的な実施形態によるガラス物品のヘッドフォーム衝撃試験性能を、ヘッドフォームの押込みを基に載置要素の降伏強度およびヤング率の関数として示す。
【
図6B】例示的な実施形態によるガラス物品のヘッドフォーム衝撃試験性能を、ヘッドフォームの減速度を基に載置要素の降伏強度およびヤング率の関数として示す。
【
図6C】例示的な実施形態によるガラス物品のヘッドフォーム衝撃試験性能を、最大主応力を基に載置要素の降伏強度およびヤング率の関数として示す。
【
図7】載置要素について、例示的な実施形態による性能がヘッドフォーム衝撃試験に合格する設計ウインドウを示すグラフである。
【
図8】例示的な実施形態によるガラス物品の性能が、支持部材および載置要素の両方を考慮して、ヘッドフォーム衝撃試験に合格する設計ウインドウを示すグラフである。
【
図9】例示的な実施形態によるガラス物品を冷間成形で製造するのに適したガラスシートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、ヘッドフォーム衝撃試験性能を高めるように構成されたガラス物品の様々な実施形態を詳細に記載し、例を添付の図面に示す。本明細書に記載のガラス物品は、支持部材に接着したガラスシートを含み、ガラス物品は、1つ以上の載置要素を用いて、乗物内装システムに接続されるように構成される。下記のように、ガラス物品は、支持部材および載置要素のヤング率および降伏強度をバランスさせることで、ヘッドフォーム衝撃試験性能を高めるように構成される。具体的には、ヘッドフォームを、最大力が80g(約784m/s2)を3ミリ秒より長く連続して超えないように減速させながら、(反り、または、最大主応力限度に達するかのいずれかで生じる)ガラスシートの破損を防ぐように、ヤング率および降伏強度を選択する。本明細書に記載の実施形態は、例示のためであって、限定するものではない。
【0013】
概して、乗物内装システムは、表示面など、様々な異なる曲面および平面を含みうる。そのような乗物の表面をガラス材料から形成することで、従来から乗物内装で見うけられる典型的な湾曲プラスチックパネルと比べて、多くの利点を提供する。例えば、ガラスは、プラスチックカバー材料と比べて、表示部利用およびタッチスクリーン利用などの多くのカバー材料利用例で、典型的に高い機能およびユーザ使用感を提供すると考えられる。
【0014】
図1は、3つの異なる実施形態の乗物内装システム20、30、40を含む乗物の例示的な内装10を示している。乗物内装システム20は、センターコンソール基部22として示す基部を含み、それは、表示部26を含む曲面24を有する。乗物内装システム30は、ダッシュボード基部32として示す基部を含み、それは、表示部36を含む曲面34を有する。ダッシュボード基部32は、典型的には、計器パネル38を含み、それも表示部を含みうる。乗物内装システム40は、ハンドル基部42として示す基部を含み、それは、曲面44および表示部46を有する。1つ以上の実施形態において、乗物内装システムは、アームレスト、ピラー、シートバック、フロアボード、ヘッドレスト、ドアパネル、または、乗物内装の曲面を含む任意の部分である基部を含む。
【0015】
本明細書に記載のガラス物品の実施形態を、例えば、各乗物内装システム20、30、40で用いうる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のガラス物品は、ダッシュボード、センターコンソール、ハンドル、ドアパネルなどの非表示面も覆うカバーガラスシートを含みうる。そのような実施形態において、ガラス材料を、質量および美的外観に基づいて選択して、それに、パターン(例えば、ブラシ加工金属調、木目調、レザー調、色付きなど)を含む被膜(例えば、インクまたは顔料被膜)を与えて、ガラス構成要素を、隣接した非ガラス構成要素と視覚的に調和するようにしうる。特定の実施形態において、そのようなインクまたは顔料被膜は、表示部26、36、38、46が作動しない時にデッドフロントまたは色マッチング機能を提供するための透明度を有しうる。更に、
図1は、自動車(例えば、車、トラック、バスなど)の形状の乗物の内装を示しているが、本明細書に開示のガラス物品は、電車、船舶(ボート、船、潜水艦など)、航空機(例えば、ドローン、飛行機、ジェット機、ヘリコプターなど)など、他の乗物にも組み込みうる。
【0016】
実施形態において、曲面24、34、44は、
図2A、2Bに各々示したV字形またはC字形など、様々な湾曲形状の任意のものでありうる。まず、
図2Aを参照すると、V字状ガラス物品50の実施形態の側面図である。ガラス物品50は、第1の主面54、第1の主面54の反対側の第2の主面56、および、第1の主面54を第2の主面56につなぐ周縁面58を有するガラスシート52を含む。第1の主面54と第2の主面56は、ガラスシート52の厚さTを画定する。実施形態において、ガラスシート52の厚さTは、0.3mmから2mm、特に、0.5mmから1.1mmである。乗物において、第1の主面54は、車内の人に向く。
【0017】
実施形態において、第1の主面54、および/または、第2の主面56は、1つ以上の表面加工部を含む。第1の主面54および第2の主面56の一方または両方に与えうる表面加工部の例は、防眩膜、反射防止膜、タッチ機能付与膜、装飾(例えば、インクまたは顔料)膜、または、掃除が容易な膜の少なくとも1つを含む。
【0018】
図2Aから分かるように、ガラスシート52は、第1の平坦部分62aと第2の平坦部分62bの間に配置された湾曲領域60を有する。実施形態において、湾曲領域60は、20mmから、略平坦または平面(例えば、R=10m)未満の曲率半径Rを有する。更に、
図2Aに示すように、湾曲領域60は、凹状湾曲部を、第1の主面54に対して画定するが、他の実施形態において、その代わりに、湾曲領域60は、凸状湾曲部を、第1の主面54に対して画定する。
【0019】
図2Aのガラス物品50において、ガラスシート52の第2の主面56は、支持部材64に接着する。実施形態において、ガラスシート52は、支持部材64に、接着層66を介して取り付けられる。実施形態において、支持部材64をガラスシート52に連結する接着層66は、強化エポキシ、可撓性エポキシ、アクリル、シリコーン、ウレタン、ポリウレタン、感圧接着剤、シラン変性ポリマーなどの構造的接着剤である。実施形態において、接着層66は、支持部材64とガラスシート52の間に2mm以下の厚さを有する。更に、支持部材64は、第1の支持面68、および、第1の支持面68の反対側の第2の支持面70を有し、ガラス物品50は、第2の支持面70に接続した1つ以上の載置要素72を含む。
【0020】
図2Aに示すように、ガラス物品50は、1つ以上の表示部73も含みうる。実施形態において、表示部73は、平坦部分62a、62bに位置する。他の実施形態において、表示部73は、湾曲して、湾曲領域60の上に配置されうる。実施形態において、表示部73は、ガラスシート52の第2の主面56に、例えば、光学的に透明な接着剤を用いて連結される。更に、実施形態において、支持部材64は、表示部73のサイズおよび厚さに応じて表示部73を収容するようなサイズを有する1つ以上の開口部を含み、そうでない場合には、表示部73を、ガラスシート52と支持部材64の間に配置しうる。実施形態において、各表示部73は、任意の必要なバックライト部を含む発光ダイオード(LED)表示部、有機LED(OLED)表示部、マイクロLED表示部、プラズマ表示部、液晶表示部(LCD)、または、有機LCD(OLCD)の少なくとも1つである。
【0021】
図2Bは、ガラス物品50の他の実施形態、特に、C字状のガラス物品50を示している。
図2AのV字状のガラス物品50と比べて、
図2BのC字状のガラス物品50は、より大きい湾曲領域60、および、より短い平坦部分62a、62bを含む。V字形状およびC字形状は、本開示により生成しうる湾曲したガラス物品50の2つの例にすぎない。他の実施形態において、ガラス物品50は、例えば、反対向きの湾曲部を有する湾曲領域60を含んで、S字形状を生成するか、湾曲領域60の後に平坦部分62aを含んで、J字形状を生成するか、湾曲領域60を平坦部分62aが分けるようにして、U字形状を生成しうる。更に、後述する実施形態に関して示すように、ガラス物品50は、平坦でありうる。
【0022】
図2A、2Bに示すような実施形態において、ガラスシート52は、湾曲領域60が永久ではないように形成される。つまり、ガラスシート52は、弾性で変形し、ガラスシート52が堅い支持部材64に接着しないと、平面で、湾曲ではない(つまり、平坦な)構成に跳ね戻りうる。したがって、ガラスシート52に応力を生じさせて、湾曲部を生成し、ガラス物品50の耐用期間、応力を生じさせたままにする。ガラス物品50が湾曲した実施形態において、そのようなガラス物品50を、冷間成形技術によって形成しうる。概して、冷間成形処理は、ガラスシート52が湾曲した形成面を有する処理チャックに位置する間に、ガラスシート52に曲げ力を加える工程を含み、ガラスシート52は、湾曲した形成面と一致するように曲げられる。その後、支持部材64の第1の支持面68が、ガラスシート52の第2の主面56に接着する。実施形態において、支持部材64をガラスシート52に連結する接着層66は、処理チャック上で硬化されるか、または、他の実施形態において、支持部材64をガラスシート52にクリップして、接着層66は、オフラインで(つまり、処理チャックから離れてから)硬化される。支持部材64をガラスシート52に接着する前に、載置要素72を支持部材64に連結するか、または、支持部材64をガラスシート52に接着した後に、載置要素72を支持部材64に連結しうる。
【0023】
有利なことに、ガラスシート52に湾曲部を生成する前に、表面加工部を平坦なガラスシート52に付与する方が容易であり、(熱間成形技術につきものである高温が表面加工部を破壊する傾向があるので、より複雑な処理で、湾曲した物品に表面加工部を与える必要があるのと比べて、)冷間成形は、処理したガラスシート52を、表面処理部を破壊せずに曲げるのを可能にする。実施形態において、冷間成形処理は、ガラスシート52の軟化点より低い温度で行われる。特に、冷間成形処理を、室温(例えば、約20℃)、または、例えば、200℃以下、150℃以下、100℃以下、または、50℃以下など、僅かに高温で行いうる。
【0024】
ここで、
図3A、3Bに示したガラス物品50について記載する。
図3Bは、
図3Aのガラス物品の分解図である。
図3A、3Bから分かるように、ガラス物品50は、平坦であるが(つまり、湾曲部を有さないが)、ガラス物品50についての記載は、(
図2A、2Bに示したような)湾曲したガラス物品50にも適用される。
図3A、3Bに示した斜視図は、支持部材64および載置要素72に関連するいくつかの機能を説明するのも助ける。特に、載置要素72は、乗物内装の基部(
図1に示したセンターコンソール基部22、ダッシュボード基部32、および/または、ハンドル基部42など)を係合するように構成される。更に、
図2A、2Bに示した湾曲したガラス物品50について、支持部材64の第1の支持面68は湾曲して、ガラスシート52を、(少なくとも湾曲領域60において)湾曲形状で保持する。更に、支持部材64および載置要素72は、十分な曲げ剛性を提供するように構成されて、ガラスシート52を、ヘッドフォーム衝撃試験(HIT)中に支持する。したがって、
図3A、3Bは、HITを行うのに用いうるヘッドフォーム74も示している。ガラス物品50は、北米のFMVSS201、EUのECE R21、および、中国のGB115522009などの規格に定義されたHIT要件を満たすように構成される。
【0025】
具体的には、このような規格によるHIT要件を満たすために、ガラス物品50は、ガラスシート52の破損も防ぎながら、(実施形態では、15ポンド(約6.8kg)の質量および6.5インチ(約16.5cm)の直径を有する)ヘッドフォームを、80g(約784m/s2)の力が3ミリ秒より長く連続するのを防ぐように減速させる必要がある。破損は、2つの形態で現れうる。第1は、ガラスシート52が、割れるまで反り返りうる。したがって、実施形態において、反り(または、押込み)を、50mm以下に維持する。第2は、ガラスシート52に生じる最大主応力が、ガラスシート52の降伏強度より大きくなり、ガラスシート52が破損しうる。実施形態において、最大主応力を、800MPa未満に維持する。概して、HIT性能に最も寄与する2つは、支持部材64および載置要素72である。つまり、支持部材64および載置要素72を、所定のガラスシート52がHITに合格するのに必要な特性を提供するために設計し、接着層66は、ヤング率または降伏強度について、HIT性能にほとんど寄与しないものでありうる。
【0026】
本明細書に記載のように、HIT性能は、部分的には、各構成要素の曲げ剛性から予測しうるもので、それは、次の数式1により特定しうる:
【0027】
【0028】
但し、Dは、曲げ剛性であり、Eは、材料のヤング率であり、Tは、厚さであり、νは、材料のポアソン比である。この点について、曲げ剛性は、剛性に関係し、ガラス物品50の剛性は、材料物性、並びに/若しくは、支持部材64および載置要素72の幾何学形状を変えることで変化しうる。曲げ剛性を剛性に関係付ける式は、次の数式2である:
【0029】
【0030】
但し、Kは、剛性であり、Dは、曲げ剛性であり、wは、ガラス物品の幅であり、lは、ガラス物品の長さであり、νは、ポアソン比である。数式1、2から、ガラス物品50の幾何学形状(つまり、幅w、長さl、および、厚さTの特定の選択)および材料物性(つまり、ヤング率)は、曲げ剛性および剛性に大きく影響することが分かる。概して、幅および長さは、特定の利用例および顧客毎の仕様によって決定され、厚さ(D∝T3)およびヤング率Eは、変数であることが多く、HIT性能を満たすのに望ましい剛性および曲げ剛性を実現するように操作される。
【0031】
各構成要素の降伏強度を更に考慮することによって、ガラス物品50の設計の可能性が更に高められる。特に、支持部材64および載置要素72の降伏強度を考慮することで、HIT中の支持部材64および載置要素72の最大弾性応答を考慮しうる。
【0032】
HIT性能を高めるために、支持部材64および載置要素72の特定の構造および形状は、各構成要素の全体としての剛性または曲げ剛性並びに降伏強度ほどには、重要ではない。既に記載したように、形状は、主に、特定の美的設計要求によって決定され、下記のように、材料の選択により、剛性および曲げ剛性要件に取り組みうる。例えば、
図3A、3Bに示した実施形態において、支持部材64は、バッキングプレートである。そのような支持部材64の剛性または曲げ剛性は、例えば、材料物性(つまり、ヤング率、および/または、降伏強度)を変化させるか、または、厚さを変化させることによって変化しうる。アルミニウム合金などの所定の材料のバッキングプレートについて、例えば、バッキングプレートの厚さを変化させることによって、剛性を変化させうる。特に、厚さを増加させることで、剛性が高まる。更に、バッキングプレートの所定の厚さについて、剛性は、例えば、それを製作する材料を変化させることで、変化しうる。特に、支持部材64の剛性は、それを製作する材料の弾性率または降伏強度が増加すると高まる(例えば、鋼鉄の支持部材64の剛性は、同じ形状を有するアルミニウムの支持部材64より高くなる)。実施形態において、支持部材64は、金属、プラスチック、または、複合材から作られる。更に、実施形態において、支持部材64は、バッキングプレート、縁枠、若しくは、格子またはグリッド構造物の形状である。実施形態において、支持部材64は、少なくとも100N/mmの剛性を提供するような材料で作られ、設計される。
【0033】
更に、
図3A、3Bに示した実施形態において、1つ以上の載置要素72は、複数、特に、4つの載置ブラケット76を含む。各載置ブラケット76は、第1のアーム部78、第2のアーム部80、および、第1のアーム部78と第2のアーム部80を連結する横部材82を有するU字状である。第1のアーム部78は、支持部材64の第2の支持面70に固定(留められるか、溶接されるか、接着されるか、連結されるか、嵌合されるかなど)され、第2のアーム部80は、乗物内装の基部(
図1に示したようなセンターコンソール基部22、ダッシュボード基部32、および/または、ハンドル基部42)に取り付けるように構成される。そのような実施形態において、載置要素72の剛性を、アーム部78、80および横部材82の厚さを変化させるか、ブラケット76の材料(つまり、ヤング率または降伏強度)、ブラケット76の数、ブラケット76の位置、または、ブラケット76の形状を変化させることによって、調節しうる。他の実施形態において、載置要素72は、任意の様々な他の適した構造でありうるもので、様々な金属合金、プラスチック、複合材、または、それらの1つ以上の組合せの任意のもので製作されうる。
【0034】
このような観点から、
図3A、3Bに示す構造を有する様々なガラス物品50について、ヤング率および降伏強度を支持部材64および載置要素72の材料について変えて、シミュレーションを行った。シミュレーションについて、構成要素は、次の表1に示す物性を有するものだった。
【0035】
【0036】
図4A~4Cは、HIT性能評価を、支持部材64の降伏強度(x軸)およびヤング率(y軸)の関数としてモデル化している。各シミュレーションについて、ガラス物品50を、約1200N/mmの剛性を有する鋼鉄の載置要素72を有するものとしてモデル化した。
図4Aは、ガラスシートの押込みを、降伏強度およびヤング率に基づいて示している。既に記載したように、押込みを、50mm未満に保つべきである。
図4Aは、約35GPa以上のヤング率は、押込みを、50mm以下に保つ傾向があることを示している。更に、降伏強度が約125MPaより高いと、押込みを50mm以下に保つ傾向がある。したがって、押込みについての設計ウインドウは、グラフの降伏強度>125MPaとヤング率>35GPaの交わり部分の外側である。
【0037】
図4Bは、ヘッドフォームが3ミリ秒減速する間の最大力のHIT性能評価を連続して示している。既に記載したように、最大力は、3ミリ秒に亘って、80g(約784m/s
2)以下であるべきである。
図4Bは、降伏強度が約250MPa未満の場合に、(図示したスケールについて)ヤング率は限定されずに、最大力を80g(約784m/s
2)未満に保ちうることを示している。
図4Bは、ヤング率が約35GPa未満の場合に、(図示したスケールについて)降伏強度は限定されずに、最大力を80g(約784m/s
2)未満に保ちうることも示している。したがって、減速中に3ミリ秒に亘り連続する最大力についての設計ウインドウは、降伏強度<250MPaとヤング率<35Gpaの内側のグラフ領域である。
【0038】
図4Cは、ガラスシートに生じる最大主応力のHIT性能評価を示している。既に記載したように、ガラスシートに生じる最大主応力は、800MPa未満に保たれるべきである。
図4Cのグラフにおいて、ヤング率が約35Gpaより高い場合、最大主応力は、概して、800MPa未満に保たれる。
【0039】
図4A~4Cで生成した情報を用いて、(
図3A、3Bに示したような)ガラス物品50のHIT性能を、様々な組合せのヤング率(E
1)および降伏強度(Y
1)を有する支持部材64について、シミュレーションした。
図5は、シミュレーションの結果を示しており、HITに合格するヤング率と降伏強度の組合せを丸印で示し、HITに合格しないヤング率と降伏強度の組合せを、×印で示している。2つの曲線f1、f2の間の斜線領域は、(GPaで表した)ヤング率、および、(MPaで表した)降伏強度について、ガラスが破損することなく、HITに合格する支持部材64の設計ウインドウを示している。
【0040】
曲線f1、f2は、次式によって与えられる:
f1:E1=471.288*exp(-0.0294*Y1)+10;(39≦Y1≦520)
f2:E1=1.941e5*exp(-0.0336*Y1)+48;(223≦Y1≦520)。
【0041】
支持部材64の降伏強度およびヤング率が曲線f1上か、それより上で、かつ、曲線f2上か、それより下の場合には、そのように構成された支持部材64を含むガラス物品50は、合格HIT性能を有するはずである。斜線領域の中で、1つめの星印は、アルミニウム合金の支持部材64の例示的な実施形態を示し、2つめの星印は、マグネシウム合金の支持部材64の例示的な実施形態を示している。
【0042】
載置要素72について、同様の分析を行った。特に、
図6A~6Cは、HIT性能評価を、載置要素72の降伏強度(x軸)およびヤング率(y軸)の関数としてモデル化している。各シミュレーションについて、ガラス物品50を、約320N/mmの剛性を有するアルミニウム合金の支持部材64を有するものとしてモデル化した。
図6Aは、ガラスシートの押込みを、降伏強度およびヤング率に基づいて示している。ここでも、押込みを、50mm未満に保つべきである。
図6Aは、約20GPa以上のヤング率は、押込みを、50mm以下に保つ傾向があることを示している。
図6Aは、ヤング率の効果が、約200MPaと400MPaの間で低下することも示している。したがって、押込みに基づく設計ウインドウは、ヤング率が約20GPaより大きい場合、(図示したスケール内の)任意の降伏強度で略開放しており、降伏強度が200MPaから400MPaに高まると、ヤング率についての設計ウインドウは、より広く開放される。
【0043】
図6Bは、ヘッドフォームが3ミリ秒減速する間の最大力のHIT性能評価を連続して示している。ここでも、最大力は、3ミリ秒に亘って、80g(約784m/s
2)以下であるべきである。
図6Bは、降伏強度が約150MPa未満の場合に、(少なくとも図示したスケールについて)ヤング率の制限なく、最大力を80g(約784m/s
2)未満に保ちうることを示している。
図6Bは、ヤング率が約85GPa未満の場合に、(少なくとも図示したスケールについて)降伏強度の制限なく、最大力を80g(約784m/s
2)未満に保ちうることを示している。したがって、減速中の3ミリ秒に亘る最大力についての設計ウインドウは、降伏強度<150MPaとヤング率<85GPaの内側のグラフ領域である。
【0044】
図6Cは、ガラスシートに生じる最大主応力のHIT性能評価を示している。ここでも、ガラスシートに生じる最大主応力は、800MPa未満に保たれるべきである。
図6Cのグラフにおいて、ヤング率が約50Gpa未満の場合、(少なくとも図示したスケール内で)降伏強度の制限なく、最大主応力は、概して、800MPa未満に保たれる。更に、降伏強度が約275MPa未満の場合、(少なくとも図示したスケール内で)ヤング率の制限なく、最大主応力は、概して、800MPa未満に保たれる。
【0045】
図6A~6Cで生成した情報を用いて、(
図3A、3Bに示したような)ガラス物品50のHIT性能を、様々な組合せのヤング率(E
2)および降伏強度(Y
2)を有する載置要素72について、シミュレーションした。
図7は、シミュレーションの結果を示しており、HITに合格するヤング率と降伏強度の組合せを丸印で示し、HITに合格しないヤング率と降伏強度の組合せを、×印で示している。2つの曲線f3、f4の間の斜線領域は、(GPaで表した)ヤング率、および、(MPaで表した)降伏強度について、HITに合格する載置要素72の設計ウインドウを示している。
【0046】
曲線f3、f4は、次式によって与えられる:
f3:E2=605.1203*exp(-0.0303*Y2)+3.9;(10≦Y2≦950)
f4:E2=765.0928*exp(-0.0094*Y2)+85;(78≦Y2≦950)。
【0047】
載置要素72の降伏強度およびヤング率が曲線f3上か、それより上で、かつ、曲線f4上か、それより下の場合には、そのように構成された載置要素72を含むガラス物品50は、合格HIT性能を有するはずである。斜線領域の中で、1つめの星印は、鋼鉄の載置要素72の例示的な実施形態を示し、2つめの星印は、マグネシウム合金の載置要素72の例示的な実施形態を示し、3つめの星印は、アルミニウム合金の載置要素72の例示的な実施形態を示している。
【0048】
図5、7から、ある観察結果を取得しうる。特に、支持部材64の降伏強度が増加すると、相対的剛性が高まり、それにより、最大押込みが減少し、ヘッドフォームの減速度が増加した。ガラスシート52に生じる最大主応力は、支持部材64の降伏強度の増加に対して、限定的にのみ変化した。更に、支持部材のヤング率が増加すると、相対的剛性が高まり、それにより、最大押込みが減少し、ヘッドフォームの減速度が増加した。更に、ガラスシート52に生じる最大主応力も減少した。載置要素72について、降伏強度が増加すると、相対的剛性が高まり、それにより、最大押込みが減少し、ヘッドフォームの減速度が増加した。更に、ガラスシート52に生じる最大主応力が、増加した。載置要素72のヤング率が増加すると、相対的剛性が高まり、それにより、最大押込みが減少し、ヘッドフォームの減速度が増加した。ここでも、ガラスシート52に生じる最大主応力が、増加した。
【0049】
更に、
図5、7に示した設計ウインドウから、合格HIT性能を得るための全体の設計ウインドウを
図8に示しており、具体的には、減速度は、80g(約784m/s
2)を3ミリ秒より長く連続して超えず、最大主応力が800MPa未満の設計である。
図8から分かるように、設計ウインドウを、載置要素72(つまり、モデル化した実施形態について、載置ブラケット76)および支持部材64の剛性について示している。
図8において、第1の曲線84は、HITに対するガラス物品50の応答への降伏強度の寄与を考慮せずに、HIT性能に合格することを検討している。特に、第1の曲線84の下の合格設計は、次の数式3による270N/mmの最大有効剛性(K
2)に基づいて生成される:
【0050】
【0051】
但し、K1およびK2は、支持部材および載置要素の剛性である。本明細書に記載のように降伏強度の寄与も考慮することによって、設計ウインドウを、270N/mmの有効剛性を過ぎて第2の曲線86まで広げる。つまり、支持部材64および載置要素72について、変形の弾性限度を考慮することによって、ガラスが破損することなく、HITに合格する設計ウインドウを、曲線86の下の領域まで広げて、より柔軟な設計を可能にする。
【0052】
次の段落では、ガラスシート52の様々な幾何学的、機械的、および強化特性、並びに、ガラスシートの組成を提供する。
図9を参照し、ガラスシート52の更なる構造的詳細を示し、記載する。既に記載したように、ガラスシート52は、第1の主面54と第2の主面56の間の距離として画定された略一定の厚さTを有する。様々な実施形態において、Tは、ガラスシートの平均厚さ、または、最大厚さを称しうる。更に、ガラスシート52は、厚さTに直交し第1の主面54または第2の主面56の一方の第1の最大寸法として画定された幅W、および、厚さおよび幅の両方に直交し第1の主面54または第2の主面56の一方の第2の最大寸法として画定された長さLを有する。他の実施形態において、WおよびLは、各々、ガラスシート52の平均幅および平均長さでありうる。
【0053】
様々な実施形態において、平均または最大厚さTは、0.3mmから2mmの範囲である。様々な実施形態において、幅Wは、5cmから250cmの範囲であり、長さLは、約5cmから約1500cmの範囲である。既に記載したように、ガラスシート52の曲率半径(例えば、
図2A、2Bに示したR)は、約30mmから約1000mmである。
【0054】
実施形態において、ガラスシート52を、強化しうる。1つ以上の実施形態において、ガラスシート52は、表面から圧縮深さ(DOC)まで延伸する圧縮応力を含むように強化されうる。圧縮応力領域は、引張応力を示す中心部分と釣り合う。DOCにおいて、応力は、正の(圧縮)応力から、負の(引張)応力に変わる。
【0055】
様々な実施形態において、物品の部分同士の間の熱膨張率のミスマッチを利用して、圧縮応力領域と引張応力を示す中心領域を生成することによって、ガラスシート52を機械的に強化しうる。いくつかの実施形態において、ガラスをガラス転移点より高い温度まで加熱して、次に急冷することによって、ガラスシートを熱的に強化しうる。
【0056】
様々な実施形態において、ガラスシート52を、イオン強化によって、化学強化しうる。イオン交換処理において、ガラスシートの表面、または、その近くのイオンが、同じ原子価または酸化状態を有する、より大きいイオンと置き換えられるか、交換される。ガラスシートがアルカリアルミノケイ酸ガラスを含む実施形態において、物品の表面層のイオン、および、より大きいイオンは、Li+、Na+、K+、Rb+、および、Cs+などの一価のアルカリ金属カチオンである。その代わりに、表面層の一価のカチオンは、アルカリ金属カチオン以外である、Ag+などの一価のカチオンと置き換えられうる。そのような実施形態において、ガラスシートの中に導入された一価のイオン(または、カチオン)は、応力を生成する。
【0057】
イオン交換処理は、典型的には、ガラスシートを、ガラスシートの中の小さいイオンと交換される大きいイオンを含む溶融塩浴(または、2つ以上の溶融塩浴)に浸漬させることによって行われる。塩水溶液浴も用いうることに留意すべきである。更に、浴(または、複数の浴)の組成物は、1つより多くの種類の大きいイオン(例えば、Na+、および、K+)、または、単一の大きいイオンを含みうる。限定するものではないが、浴の組成および温度、浸漬時間、ガラスシートを塩浴(または、複数の浴)に浸漬させる回数、多数の塩浴の使用、並びに、アニーリング、洗浄などの追加の工程を含むイオン交換処理のパラメータは、概して、(物品の構造、および、任意の結晶相があるかを含む)ガラスシートの組成、並びに、強化により生じるのが望ましいガラスシートのDOCおよびCSによって決定されることが、当業者には分かるだろう。例示的な溶融浴の組成物は、大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および、塩化物を含みうる。典型的な硝酸塩は、KNO3、NaNO3、LiNO3、NaSO4、および、それらの組合せを含む。溶融塩浴の温度は、典型的には、約380℃から約450℃の範囲であり、浸漬時間は、ガラスシートの厚さ、浴の温度、および、ガラス(または、一価のイオン)の拡散率に応じて、約15分から約100時間である。しかしながら、上記温度および浸漬時間とは異なるものも用いうる。
【0058】
1つ以上の実施形態において、ガラスシート52を、約370℃から約480℃の温度を有する100%NaNO3の溶融塩浴、100%KNO3の溶融塩浴、または、NaNO3とKNO3の組合せの溶融塩浴に浸漬させうる。いくつかの実施形態において、ガラスシートを、約5%から約90%のKNO3、および、約10%から約95%のNaNO3を含む溶融混合塩浴に浸漬させうる。1つ以上の実施形態において、ガラスシートを、第1の浴に浸漬させた後に、第2の浴に浸漬させうる。第1の浴と第2の浴は、互いに異なる組成、および/または、温度を有しうる。第1および第2の浴への浸漬時間は、異なりうる。例えば、第1の浴への浸漬は、第2の浴への浸漬より長くしうる。
【0059】
1つ以上の実施形態において、ガラスシートを、約420℃未満(例えば、約400℃、または、約380℃)の温度を有するNaNO3およびKNO3(例えば、49%/51%、50%/50%、51%/49%)を含む溶融混合塩浴に、約5時間未満、または、約4時間以下浸漬させうる。
【0060】
イオン交換条件を調整して、「スパイク」を提供するか、または、応力プロファイルの傾斜を、結果的に得られるガラスシートの表面または表面近くで増加させうる。スパイクは、大きい表面CS値を生じうる。このスパイクは、単一の浴、または、多数の浴によって、単一の組成または混合組成を有する浴(または、複数の浴)を用いて、本明細書に記載のガラスシートで用いられるガラス組成物の特有の物性により実現しうる。
【0061】
1つより多くの一価のイオンがガラスシートの中に導入される1つ以上の実施形態において、異なる一価のイオンは、ガラスシートの中の異なる高さに導入される(そして、ガラスシートの中の異なる深さで異なる大きさの応力を生成する)。その結果、応力生成イオンの相対深さが決定されて、応力プロファイルの異なる特徴を生じる。
【0062】
CSは、株式会社折原製作所製造のFSM-6000などの市販の計器を用いた表面応力メータ(FSM)など、従来から知られた手段を用いて測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関係する応力光学係数(SOC)の正確な測定に依存する。次に、SOCを、ファイバ曲げ法、4点曲げ法など、従来から知られた方法で測定し、どちらの方法も、ASTM規格C770-98(2013)に「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」という名称で記載されており、その内容は、参照により、全体として本明細書に組み込まれる。本明細書で用いるように、CSは、圧縮応力層内で測定された最高圧縮応力値である「最大圧縮応力」でありうる。いくつかの実施形態において、最大圧縮応力は、ガラスシートの表面に位置する。他の実施形態において、最大圧縮応力は、表面より下の深さで生じて、「埋まったピーク」が現れる圧縮プロファイルを生じる。
【0063】
DOCを、強化方法および条件に応じて、FSM、または、(Glasstress Ltd.、Tallinn、Estoniaから入手可能なSCALP-04散乱光偏光器などの)散乱光偏光器(SCALP)によって測定しうる。ガラスシートをイオン交換によって化学強化する場合、どのイオンをガラスシートの中にイオン交換で導入するかに応じて、FSMまたはSCALPを用いうる。カリウムイオンをガラスシートの中に導入することによって、ガラスシートに応力を生成する場合、FSMを用いて、DOCを測定する。ナトリウムイオンをガラスシートの中に導入することによって、ガラスシートに応力を生成する場合、SCALPを用いて、DOCを測定する。カリウムイオンとナトリウムイオンの両方をガラスシートの中に導入することによって、ガラスシートに応力を生成する場合、SCALPを用いて、DOCを測定し、なぜなら、ナトリウムイオンの交換深さはDOCを示し、カリウムイオンの交換深さは、圧縮応力の大きさ変化(但し、圧縮応力から引張応力への変化ではない)を示すと考えられるからであり、そのようなガラスシートの中のカリウムイオンの交換深さは、FSMによって測定する。中心張力またはCTは、最大引張応力であり、SCALPによって測定される。
【0064】
1つ以上の実施形態において、ガラスシートは強化されて、(本明細書に記載のように)ガラスシートの厚さTの部分として示されるDOCを示しうる。例えば、1つ以上の実施形態において、DOCは、約0.05Tから約0.25Tの範囲でありうる。いくつかの例において、DOCは、約20μmから約300μmの範囲でありうる。1つ以上の実施形態において、強化されたガラスシートは、(ガラスシートの表面、または、ガラスシートの中のある深さで見つけうる)約200MPa以上、約500MPa以上、または、約1050MPa以上のCSを有しうる。1つ以上の実施形態において、強化されたガラスシートは、約20MPaから約100MPaの範囲の最大引張応力または中心張力(CT)を有しうる。
【0065】
ガラスシート52として用いるのに適したガラス組成物は、ソーダライムガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウアルミノケイ酸ガラス、含アルカリアルミノケイ酸ガラス、含アルカリホウケイ酸ガラス、および、含アルカリホウアルミノケイ酸ガラスを含む。
【0066】
別段の記載がない限りは、本明細書に開示のガラス組成物は、酸化物を基準に分析したモルパーセント(モル%)で記載している。
【0067】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、SiO2を、約66モル%から約80モル%の範囲の量で含む。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、Al2O3を、約3モル%から約15モル%の量で含む。1つ以上の実施形態において、ガラス物品を、アルミノケイ酸ガラス物品として、または、アルミノケイ酸ガラス組成物を含むものとして記載している。そのような実施形態において、ガラス組成物、または、それから形成された物品は、SiO2およびAl2O3を含み、ソーダライムケイ酸ガラスではない。
【0068】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、B2O3を、約0.01モル%から約5モル%の範囲の量で含む。但し、1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、B2O3を実質的に含まない。本明細書で用いるように、組成物中の要素について、「実質的に含まない」という用語は、その要素が、積極的にも意図的にも、最初の調合中に組成物に加われたのではないが、約0.001モル%未満の量の不純物として存在しうるという意味である。
【0069】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、任意で、P2O5を約0.01モル%から2モル%の量で含む。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、P2O5を、実質的に含まない。
【0070】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、R2Oを、約8モル%から約20モル%の範囲の合計量(Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、および、Cs2Oなどのアルカリ金属酸化物の合計量)で含みうる。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、Rb2O、または、Cs2O、または、Rb2OとCs2Oの両方を実質的に含まないものでありうる。1つ以上の実施形態において、R2Oは、Li2O、Na2O、および、K2Oの合計量のみを含みうる。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、Li2O、Na2O、および、K2Oから選択された少なくとも1つのアルカリ金属酸化物を含み、アルカリ金属酸化物は、約8モル%以上の量で存在しうる。
【0071】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、Na2Oを、約8モル%から約20モル%の範囲の量で含む。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、K2Oを、約0モル%から約4モル%の範囲の量で含む。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、K2Oを、実質的に含まないものでありうる。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、Li2Oを、実質的に含まない。1つ以上の実施形態において、組成物中のNa2Oの量は、Li2Oの量より多いものでありうる。いくつかの例において、Na2Oの量は、Li2OとK2Oの量の組合せより多いものでありうる。1つ以上の代わりの実施形態において、組成物中のLi2Oの量は、Na2Oの量、または、Na2OとK2Oの量の組合せより多いものでありうる。
【0072】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、ROを、約0モル%から約2モル%の範囲の合計量(CaO、MgO、BaO、ZnO、および、SrOなどのアルカリ土類金属酸化物の合計量)で含みうる。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、CaOを、約1モル%未満の量で含む。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、CaOを、実質的に含まない。いくつかの実施形態において、ガラス組成物は、MgOを、約0モル%から約7モル%の量で含む。
【0073】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、ZrO2を、約0.2モル%以下の量で含む。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、SnO2を、約0.2モル%以下の量で含む。
【0074】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、ガラス物品に色または色合いを与える酸化物を含みうる。いくつかの実施形態において、ガラス組成物は、ガラス物品が紫外線に曝された時にガラス物品の変色を防ぐ酸化物を含む。そのような酸化物の例は、限定するものではないが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ce、W、および、Moの酸化物を含む。
【0075】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、Fe2O3として表されるFeを含み、Feは、1モル%以下の量で存在する。ガラス組成物がTiO2を含む場合、TiO2は、約5モル%以下の量で存在しうる。
【0076】
例示的なガラス組成物は、SiO2を、約65モル%から約75モル%の範囲の量で、Al2O3を、約8モル%から約14モル%の範囲の量で、Na2Oを、約12モル%から約17モル%の範囲の量で、K2Oを、約0モル%から約0.2モル%の範囲の量で、MgOを、約1.5モル%から約6モル%の範囲の量で含む。任意で、SnO2を、本明細書で別に開示した量で含みうる。ここまでのガラス組成物についての段落では、範囲を概数で表しているが、他の実施形態において、ガラスシート52を、任意の上記正確な数値範囲に当てはまる任意のガラス組成物から製作しうると理解すべきである。
【0077】
本開示の態様(1)は、乗物内装システムのためのガラス物品に関し、それは、第1の主面、および、第1の主面の反対側の第2の主面を有するガラスシートと、第1の支持面、および、第1の支持面の反対側の第2の支持面を有する支持部材であって、ガラスシートが第1の支持面に配置されたものである支持部材と、支持部材の第2の支持面に配置された載置要素とを含み、支持部材は、GPaで表した第1のヤング率(E1)、および、MPaで表した第1の降伏強度(Y1)を有し、39MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≧471.288*exp(-0.0294*Y1)+10であり、223MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≦1.941e5*exp(-0.0336*Y1)+48であり、載置要素は、GPaで表した第2のヤング率(E2)、および、MPaで表した第2の降伏強度(Y2)を有し、10MPaから950Mpaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≧605.1203*exp(-0.0303*Y2)+3.9であり、78MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≦765.0928*exp(-0.0094*Y2)+85である。
【0078】
態様(2)は、態様(1)のガラス物品に関し、支持部材は、少なくとも100N/mmの第1の剛性を有するものである。
【0079】
態様(3)は、態様(1)または(2)のガラス物品に関し、ガラス物品に、FMVSS201に規定のヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、ヘッドフォームは、80g(約784m/s2)の減速度を3ミリ秒より長く連続して超えないものである。
【0080】
態様(4)は、態様(3)のガラス物品に関し、ヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、ガラスシートは、50mm未満で曲がるものである。
【0081】
態様(5)は、態様(3)または(4)のガラス物品に関し、ガラスシートは、ヘッドフォーム衝撃試験を終えても破損しないものである。
【0082】
態様(6)は、態様(3)から(5)のいずれか1つのガラス物品に関し、ガラスシートは、ヘッドフォーム衝撃試験中に、第1の主面でも、第2の主面でも、800MPaより大きい最大主応力を経験しないものである。
【0083】
態様(7)は、態様(1)から(6)のいずれか1つのガラス物品に関し、載置要素は、乗物内装システムに取り付けるように構成された複数の載置ブラケットを含むものである。
【0084】
態様(8)は、態様(7)のガラス物品に関し、各複数の載置ブラケットは、第1のアーム部、第2のアーム部、および、第1のアーム部と第2のアーム部を連結する横部材を含み、第2のアーム部は、支持部材の第2の支持面に接続し、第1のアーム部は、乗物内装システムに取り付けるように構成されたものである。
【0085】
態様(9)は、態様(1)から(8)のいずれか1つのガラス物品に関し、ガラスシートは、第1の主面と第2の主面の間に、0.3mmから2.0mmのガラス厚さを有するものである。
【0086】
態様(10)は、態様(1)から(9)のいずれか1つのガラス物品に関し、ガラスシートは、熱的または化学的に強化されたものである。
【0087】
態様(11)は、態様(10)のガラス物品に関し、ガラスシートは、ソーダライムガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウアルミノケイ酸ガラス、含アルカリアルミノケイ酸ガラス、含アルカリホウケイ酸ガラス、または、含アルカリホウアルミノケイ酸ガラスを含むものである。
【0088】
態様(12)は、態様(1)から(11)のいずれか1つのガラス物品に関し、ガラスシートの第2の主面に配置された表示部を、更に含む。
【0089】
態様(13)は、態様(12)のガラス物品に関し、表示部は、発光ダイオード(LED)表示部、有機LED(OLED)表示部、マイクロLED表示部、プラズマ表示部、液晶表示部(LCD)、または、有機LCDの少なくとも1つを含むものである。
【0090】
態様(14)は、態様(1)から(13)のいずれか1つのガラス物品に関し、支持部材の第1の支持面は、湾曲部を含み、ガラスシートは、支持部材の湾曲部に一致するように冷間成形されたものである。
【0091】
態様(15)は、態様(1)から(14)のいずれか1つのガラス物品に関し、載置要素および支持部材の有効剛性は、270N/mmより大きいものである。
【0092】
態様(16)は、乗物内装システムのためのガラス物品に関し、それは、第1の主面、および、第1の主面の反対側の第2の主面を有するガラスシートと、第1の支持面、および、第1の支持面の反対側の第2の支持面を有する支持部材であって、ガラスシートが第1の支持面に配置されたものである支持部材と、支持部材の第2の支持面に配置された載置要素とを含み、ガラス物品に、FMVSS201に規定のヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、ヘッドフォームは、80g(約784m/s2)の減速度を3ミリ秒より長く連続して超えないものであり、ヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、ガラスシートは、50mm未満で曲がるものである。
【0093】
態様(17)は、態様(16)のガラス物品に関し、支持部材は、GPaで表した第1のヤング率(E1)、および、MPaで表した第1の降伏強度(Y1)を有し、39MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≧471.288*exp(-0.0294*Y1)+10であり、223MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≦1.941e5*exp(-0.0336*Y1)+48である。
【0094】
態様(18)は、態様(16)または(17)のガラス物品に関し、載置要素は、GPaで表した第2のヤング率(E2)、および、MPaで表した第2の降伏強度(Y2)を有し、10MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≧605.1203*exp(-0.0303*Y2)+3.9であり、78MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≦765.0928*exp(-0.0094*Y2)+85である。
【0095】
態様(19)は、態様(16)から(18)のいずれか1つのガラス物品に関し、ガラスシートは、ヘッドフォーム衝撃試験中に、第1の主面でも、第2の主面でも、800MPaより大きい最大主応力を経験しないものである。
【0096】
態様(20)は、態様(16)から(19)のいずれか1つのガラス物品に関し、ガラスシートは、ヘッドフォーム衝撃試験を終えても破損しないものである。
【0097】
態様(21)は、態様(16)から(20)のいずれか1つのガラス物品に関し、ガラスシートの第2の主面に配置された表示部を、更に含む。
【0098】
態様(22)は、態様(16)から(21)のいずれか1つのガラス物品に関し、載置要素は、乗物内装システムに取り付けるように構成された複数の載置ブラケットを含むものである。
【0099】
態様(23)は、態様(22)のガラス物品に関し、各載置ブラケットは、第1のアーム部、第2のアーム部、および、第1のアーム部と第2のアーム部を連結する横部材を含み、第2のアーム部は、支持部材に接続し、第1のアーム部は、乗物内装システムに取り付けるように構成されたものである。
【0100】
態様(24)は、態様(16)から(23)のいずれか1つのガラス物品に関し、載置要素および支持部材は、270N/mmより大きい有効剛性を有するものである。
【0101】
態様(25)は、ガラス物品の製造方法に関し、ガラス物品は、第1の主面および第2の主面を有するガラスシートと、第1の支持面および第2の支持面を有する支持部材と、載置要素とを含むものであり、方法は、ガラスシートの第2の主面を、支持部材の第1の支持面に接着する工程を、含み、載置要素は、支持部材の第2の支持面に取り付けられるものであり、支持部材は、Gpaで表した第1のヤング率(E1)、および、MPaで表した第1の降伏強度(Y1)を有し、39MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≧471.288*exp(-0.0294*Y1)+10であり、223MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≦1.941e5*exp(-0.0336*Y1)+48であり、載置要素は、GPaで表した第2のヤング率(E2)、および、MPaで表した第2の降伏強度(Y2)を有し、10MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≧605.1203*exp(-0.0303*Y2)+3.9であり、78MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≦765.0928*exp(-0.0094*Y2)+85である。
【0102】
態様(26)は、態様(25)の方法に関し、ガラス物品に、FMVSS201の少なくとも1つに規定のヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、ヘッドフォームは、80g(約784m/s2)の減速度を3ミリ秒より長く連続して超えないものである。
【0103】
態様(27)は、態様(26)の方法に関し、ヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、ガラスシートは、50mm未満で曲がるものである。
【0104】
態様(28)は、態様(26)または(27)の方法に関し、ガラスシートは、ヘッドフォーム衝撃試験中に、第1の主面でも、第2の主面でも、800MPaより大きい最大主応力を経験しないものである。
【0105】
態様(29)は、態様(25)から(28)のいずれか1つの方法に関し、支持部材の第1の支持面は、湾曲部を含むものであり、方法は、接着する工程の前に、ガラスシートを、200℃以下の温度で、処理チャックの曲面と一致するように曲げる工程を、更に含む。
【0106】
態様(30)は、態様(25)から(29)のいずれか1つの方法に関し、支持部材は、少なくとも100N/mmの第1の剛性を有するものである。
【0107】
別段の記載がない限りは、本明細書に示した、いずれの方法も、工程が特定の順序で行われることを要すると解釈されることを意図しない。したがって、方法の請求項が、工程の行われる順序を実際に記載しないか、または、そうではなく、請求項または明細書の記載で、工程は特定の順序に限定されると記載しない場合には、いかなる点でも、特定の順序が推測されることを意図しない。更に、本明細書において用いるように、原文の英語で単数を表す不定冠詞は、1つ以上の構成要素または要素を含むことを意図し、1つのみに解釈されることを意図しない。
【0108】
当業者であれば、開示した実施形態の精神および範囲を逸脱することなく、様々な変更および変形が可能なことが明らかだろう。当業者は、本開示の精神および実質を組み込んで、開示した実施形態に、変更、組合せ、部分組合せ、および、変形を行いうるので、開示した実施形態は、添付の請求項、および、その等価物の範囲内の全てを含むものであると解釈されるべきである。
【0109】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0110】
実施形態1
乗物内装システムのためのガラス物品において、
第1の主面、および、該第1の主面の反対側の第2の主面を有するガラスシートと、
第1の支持面、および、該第1の支持面の反対側の第2の支持面を有する支持部材であって、前記ガラスシートが該第1の支持面に配置されたものである支持部材と、
前記支持部材の前記第2の支持面に配置された載置要素と
を含み、
前記支持部材は、GPaで表した第1のヤング率(E1)、および、MPaで表した第1の降伏強度(Y1)を有し、39MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≧471.288*exp(-0.0294*Y1)+10であり、223MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≦1.941e5*exp(-0.0336*Y1)+48であり、
前記載置要素は、GPaで表した第2のヤング率(E2)、および、MPaで表した第2の降伏強度(Y2)を有し、10MPaから950Mpaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≧605.1203*exp(-0.0303*Y2)+3.9であり、78MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≦765.0928*exp(-0.0094*Y2)+85であるガラス物品。
【0111】
実施形態2
前記支持部材は、少なくとも100N/mmの第1の剛性を有するものである、実施形態1に記載のガラス物品。
【0112】
実施形態3
前記ガラス物品に、FMVSS201に規定のヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、該ヘッドフォームは、80g(約784m/s2)の減速度を3ミリ秒より長く連続して超えないものである、実施形態1または2に記載のガラス物品。
【0113】
実施形態4
前記ヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、前記ガラスシートは、50mm未満で曲がるものである、実施形態3に記載のガラス物品。
【0114】
実施形態5
前記ガラスシートは、前記ヘッドフォーム衝撃試験を終えても破損しないものである、実施形態3または4に記載のガラス物品。
【0115】
実施形態6
前記ガラスシートは、前記ヘッドフォーム衝撃試験中に、前記第1の主面でも、前記第2の主面でも、800MPaより大きい最大主応力を経験しないものである、実施形態3から5のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0116】
実施形態7
前記載置要素は、前記乗物内装システムに取り付けるように構成された複数の載置ブラケットを含むものである、実施形態1から6のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0117】
実施形態8
各前記複数の載置ブラケットは、第1のアーム部、第2のアーム部、および、該第1のアーム部と該第2のアーム部を連結する横部材を含み、該第2のアーム部は、前記支持部材の前記第2の支持面に接続し、該第1のアーム部は、前記乗物内装システムに取り付けるように構成されたものである、実施形態7に記載のガラス物品。
【0118】
実施形態9
前記ガラスシートは、前記第1の主面と前記第2の主面の間に、0.3mmから2.0mmのガラス厚さを有するものである、実施形態1から8のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0119】
実施形態10
前記ガラスシートは、熱的または化学的に強化されたものである、実施形態1から9のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0120】
実施形態11
前記ガラスシートは、ソーダライムガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウアルミノケイ酸ガラス、含アルカリアルミノケイ酸ガラス、含アルカリホウケイ酸ガラス、または、含アルカリホウアルミノケイ酸ガラスを含むものである、実施形態10に記載のガラス物品。
【0121】
実施形態12
前記ガラスシートの前記第2の主面に配置された表示部を、
更に含む、実施形態1から11のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0122】
実施形態13
前記表示部は、発光ダイオード(LED)表示部、有機LED(OLED)表示部、マイクロLED表示部、プラズマ表示部、液晶表示部(LCD)、または、有機LCDの少なくとも1つを含むものである、実施形態12に記載のガラス物品。
【0123】
実施形態14
前記支持部材の前記第1の支持面は、湾曲部を含み、前記ガラスシートは、該支持部材の該湾曲部に一致するように冷間成形されたものである、実施形態1から13のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0124】
実施形態15
前記載置要素および前記支持部材の有効剛性は、270N/mmより大きいものである、実施形態1から14のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0125】
実施形態16
乗物内装システムのためのガラス物品において、
第1の主面、および、該第1の主面の反対側の第2の主面を有するガラスシートと、
第1の支持面、および、該第1の支持面の反対側の第2の支持面を有する支持部材であって、前記ガラスシートが該第1の支持面に配置されたものである支持部材と、
前記支持部材の前記第2の支持面に配置された載置要素と
を含み、
前記ガラス物品に、FMVSS201に規定のヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、該ヘッドフォームは、80g(約784m/s2)の減速度を3ミリ秒より長く連続して超えないものであり、
前記ヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、前記ガラスシートは、50mm未満で曲がるものであるガラス物品。
【0126】
実施形態17
前記支持部材は、GPaで表した第1のヤング率(E1)、および、MPaで表した第1の降伏強度(Y1)を有し、39MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≧471.288*exp(-0.0294*Y1)+10であり、223MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≦1.941e5*exp(-0.0336*Y1)+48である実施形態16に記載のガラス物品。
【0127】
実施形態18
前記載置要素は、GPaで表した第2のヤング率(E2)、および、MPaで表した第2の降伏強度(Y2)を有し、10MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≧605.1203*exp(-0.0303*Y2)+3.9であり、78MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≦765.0928*exp(-0.0094*Y2)+85である実施形態16または17に記載のガラス物品。
【0128】
実施形態19
前記ガラスシートは、前記ヘッドフォーム衝撃試験中に、前記第1の主面でも、前記第2の主面でも、800MPaより大きい最大主応力を経験しないものである、実施形態16から18のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0129】
実施形態20
前記ガラスシートは、前記ヘッドフォーム衝撃試験を終えても破損しないものである、実施形態16から19のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0130】
実施形態21
前記ガラスシートの前記第2の主面に配置された表示部を、
更に含む、実施形態16から20のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0131】
実施形態22
前記載置要素は、前記乗物内装システムに取り付けるように構成された複数の載置ブラケットを含むものである、実施形態16から21のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0132】
実施形態23
各載置ブラケットは、第1のアーム部、第2のアーム部、および、該第1のアーム部と該第2のアーム部を連結する横部材を含み、該第2のアーム部は、前記支持部材に接続し、該第1のアーム部は、前記乗物内装システムに取り付けるように構成されたものである、実施形態22に記載のガラス物品。
【0133】
実施形態24
前記載置要素および前記支持部材は、270N/mmより大きい有効剛性を有するものである、実施形態16から23のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0134】
実施形態25
ガラス物品の製造方法において、
前記ガラス物品は、第1の主面および第2の主面を有するガラスシートと、第1の支持面および第2の支持面を有する支持部材と、載置要素とを含むものであり、
前記方法は、
前記ガラスシートの前記第2の主面を、前記支持部材の前記第1の支持面に接着する工程を、
含み、
前記載置要素は、前記支持部材の前記第2の支持面に取り付けられるものであり、
前記支持部材は、Gpaで表した第1のヤング率(E1)、および、MPaで表した第1の降伏強度(Y1)を有し、39MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≧471.288*exp(-0.0294*Y1)+10であり、223MPaから520MPaの第1の降伏強度(Y1)について、E1≦1.941e5*exp(-0.0336*Y1)+48であり、
前記載置要素は、GPaで表した第2のヤング率(E2)、および、MPaで表した第2の降伏強度(Y2)を有し、10MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≧605.1203*exp(-0.0303*Y2)+3.9であり、78MPaから950MPaの第2の降伏強度(Y2)について、E2≦765.0928*exp(-0.0094*Y2)+85である方法。
【0135】
実施形態26
前記ガラス物品に、FMVSS201の少なくとも1つに規定のヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、該ヘッドフォームは、80g(約784m/s2)の減速度を3ミリ秒より長く連続して超えないものである、実施形態25に記載の方法。
【0136】
実施形態27
前記ヘッドフォーム衝撃試験を行った場合、前記ガラスシートは、50mm未満で曲がるものである、実施形態26に記載の方法。
【0137】
実施形態28
前記ガラスシートは、前記ヘッドフォーム衝撃試験中に、前記第1の主面でも、前記第2の主面でも、800MPaより大きい最大主応力を経験しないものである、実施形態26または27に記載の方法。
【0138】
実施形態29
前記支持部材の前記第1の支持面は、湾曲部を含むものであり、
前記方法は、前記接着する工程の前に、
前記ガラスシートを、200℃以下の温度で、処理チャックの曲面と一致するように曲げる工程を、
更に含む、実施形態25から28のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
実施形態30
前記支持部材は、少なくとも100N/mmの第1の剛性を有するものである、実施形態25から29のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0140】
50 ガラス物品
26、36、38、46 表示部
52 ガラスシート
64 支持部材
72 載置要素
【国際調査報告】