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特表2023-540524対象物を適応的に追跡するためのライダー技術に基づく方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】対象物を適応的に追跡するためのライダー技術に基づく方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/66 20060101AFI20230915BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20230915BHJP
   G01S 17/86 20200101ALI20230915BHJP
【FI】
G01S17/66
G01S7/481 A
G01S17/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514837
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 FR2021051486
(87)【国際公開番号】W WO2022049337
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】2008892
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523073976
【氏名又は名称】アリアングループ・エス・ア・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケンテル,アラン
(72)【発明者】
【氏名】モーリス,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA10
5J084AB03
5J084AB04
5J084AD01
5J084AD05
5J084BA03
5J084BA11
5J084BA50
5J084BB14
5J084BB28
5J084CA03
5J084EA23
(57)【要約】
本発明は、ライダー装置(1)の使用に基づいて対象物(50)を追跡する方法に関する。この方法は、特に、対象物(50)を追跡するステップCを含む。対象物(50)を追跡するステップCは、特に、対象物(50)の推定位置を含み、且つ対象物(50)の推定位置及びライダー装置(1)の位置を通る線に垂直な垂直面に沿って、プローブレーザービーム(60A)によって通過する追跡パターン(61)を決定するサブステップを含み、ライダー装置(1)に対する追跡パターン(60A)の少なくとも1つの角度パラメータ(A)は、対象物(50)の推定位置から決定され、特に対象物(50)とライダー装置(1)との距離(D)を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライダー装置(1)の使用に基づいて対象物(50)を追跡する方法であって、前記ライダー装置(1)は、プローブレーザービーム(60A)を放射するためのレーザー源(10)と、前記プローブレーザービーム(60A)の向きを変更する、前記プローブレーザービーム(60A)を移動するためのシステム(20)とを備え、前記方法は、
(A)追跡する対象物(50)を識別するステップと、
(B)前記対象物(50)の位置を推定するステップであって、前記対象物(50)の前記位置は前記対象物(50)と前記ライダー装置(1)との間の距離(D)を有し、
(C)前記対象物(50)を追跡するステップと、
を備え、
前記対象物(50)を追跡する前記ステップCは、
(C1)プローブレーザービーム(60A)が通過する、パラメトリック曲線の追跡パターン(61)を決定するサブステップであって、前記追跡パターンは、前記ライダー装置(1)に対する前記追跡パターン(61)の前記パラメトリック曲線の少なくとも1つの角度パラメータ(α)を有する前記パラメトリック曲線に対応し、対象物(50)の前記推定位置から決定され、前記対象物(50)と前記ライダー装置(1)との間の前記距離(D)を有し、
(C2)前記プローブレーザービーム(60A)を移動システム(20)によって移動させるサブステップであって、ステップC1において決定された前記追跡パターン(61)に沿って前記プローブレーザービーム(60A)を移動させ、前記プローブレーザービーム(60A)の移動中に前記プローブレーザービーム(60A)によって前記対象物(50)の遮断点を識別し、
(C3)前記識別された対象物(50)によって前記プローブレーザービーム(60A)の遮断点から前記対象物(50)の位置を決定するステップであって、前記決定された位置は、前記対象物(50)と前記ライダー装置(1)との間の距離(D)を構成し、
を備え、
追跡ステップCの実行時に、ステップC1~C3が順次かつ反復して再現され、ステップC1において使用された前記対象物(50)の前記推定位置は、1回目のイテレーションでは、ステップBにおいて取得された前記対象物(50)の推定位置、又はnが2以上の整数であるn回目のイテレーションでは、n-1回目のイテレーションのステップC3において決定される前記対象物(50)の前記位置であり、n-1回目のイテレーションでは、前記対象物(50)の位置を決定するサブステップC3において、サブステップC1において使用された前記推定位置及びサブステップC3において決定された前記位置に基づいて、前記対象物(50)の移動方向をさらに決定し、
ステップCの実行時に、nが2以上の整数であるn回目のイテレーションでは、前記追跡パターン(61)を決定するサブステップC1において、さらに、n-1回目のイテレーションのステップC3において決定された前記対象物(50)の前記移動推定方向に基づいて、前記追跡パターン(61)の前記パラメトリック曲線の少なくとも1つの他のパラメータ(φ)を決定する。
【請求項2】
請求項1に記載の対象物(50)を追跡する方法であって、
前記対象物(50)の位置を決定するサブステップC3において、サブステップC1で使用された前記推定位置及びサブステップC3で決定された位置に基づいて、対象物(50)の移動の推定速度 (V)をさらに決定し、
ステップCを実行する時に、nが2以上の整数であるn回目のイテレーションでは、追跡パターン(61)を決定する前記サブステップC1において、n-1回目のイテレーションのステップC3で決定された対象物(50)の移動の推定速度(V)に基づいて、追跡パターン(61)の少なくとも1つの他のパラメータ(φ)をさらに決定する。
【請求項3】
請求項2に記載の対象物(50)を追跡する方法であって、
前記対象物(50)の位置を決定するサブステップC3と、対象物(50)の推定加速度とを決定するサブステップC3と、をさらに決定し、ステップCの実行時に、nが2以上の整数であるn回目のイテレーションでは、追跡パターン(61)を決定するサブステップC1において、推定加速度から前記追跡パターン(61)の少なくとも1つの他のパラメータ(φ)をさらに決定する。
【請求項4】
請求項2~3のいずれか1項に記載の対象物(50)を追跡する方法であって、
前記パターンの少なくとも1つの他のパラメータは、パラメトリック曲線のタイプにそれぞれ対応する予め定義されたパターンの群から選択されるパターンタイプを構成し、前記パターンタイプは、移動の推定方向及び/又は利用可能であれば移動の推定速度(V)に従って、当該予め定義されたパターンの群から選択される。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の対象物(50)を追跡する方法であって、
前記対象物t(50)を識別するステップA及び対象物(50)の位置を推定するステップBの一方において、前記対象物(50)の前記推定位置を含み、かつ前記対象物(50)の前記推定位置及び前記ライダー装置の前記位置を通る線に垂直な垂直面における、対象物(50)の少なくとも1つの推定寸法(R)をさらに決定し、
前記追跡パターン(61)を決定するサブステップC1において、前記追跡パターン(61)の少なくとも1つの角度パラメータ(α)が前記推定寸法(R)からさらに決定される。
【請求項6】
請求項5に記載の対象物(50)を追跡する方法であって、
前記対象物(50)の位置を推定するステップBは、
(B1)前記対象物(50)の予備位置を取得し、前記推定される予備位置は前記対象物(50)とライダー装置(1)との間の距離(D)を含み、
(B2)前記対象物(50)の前記推定される予備位置を含み、かつ前記対象物(50)の前記推定位置及び前記ライダー装置(1)の前記位置を通る線に垂直な垂直面に沿って前記プローブレーザービーム(60A)が通過する識別パターン(63)を決定し、前記ライダー装置(1)と前記対象物(50)の間の推定予備距離(D)、及び前記対象物(50)の推定される予備位置から少なくとも1つの角度パラメータ(A’)を決定し、
(B3)前記プローブレーザービーム(60A)を前記移動システムによって移動させて、ステップB2で決定された前記識別パターン(63)に沿って前記プローブレーザービームを移動させ、前記プローブレーザービームの移動中に前記対象物(50)と前記プローブレーザービーム(60A)との交点を識別し、
(B4)前記識別された対象物(50)によって、前記プローブレーザービーム(60A)の遮断点から前記対象物(50)の推定位置を決定し、前記決定された位置は前記対象物(50)と前記ライダー装置(1)の間の距離を構成し、前記垂直面における前記対象物(50)の推定寸法は、前記識別された対象物(50)による前記プローブレーザービーム(60A)の遮断点からも決定する。
【請求項7】
請求項6に記載の対象物(50)を追跡する方法であって、
識別パターン(63)を決定するステップB2において、前記識別パターン(63)は、ステップC1において決定された前記追跡パターンと異なるタイプのパラメトリック曲線に対応する。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の対象物(50)を追跡する方法であって、
前記対象物(50)の位置を推定するステップBは、
(B’1)前記移動システム(20)によって前記プローブレーザービーム(60A)を移動させ、前記プローブレーザービーム(60A)の移動中に追跡すべき前記対象物(50)が位置すると推定される空間領域を走査し、かつ前記対象物(50)と前記プローブレーザービーム(60A)の交点を識別し、
(B’2)前記識別された対象物(50)による前記レーザービームプローブ(60A)の遮断点から前記対象物(50)の推定位置を決定し、前記決定された位置は、前記対象物(50)と前記ライダー装置(1)との間の距離(D)を構成し、前記垂直面における前記対象物(50)の前記推定寸法も、前記識別された対象物により前記レーザービームの遮断点から決定される。
【請求項9】
ライダー装置(1)から対象物(50)を追跡するシステムであって、前記システムは、
プローブレーザービーム(60A)を放射する構成であるレーザー源(10)と、
前記プローブレーザービーム(60A)の向きを変更する構成である、前記プローブレーザービーム(60A)を移動するための移動システム(20)であって、前記レーザー源(10)及び前記移動システム(20)はライダー装置(1)の形成に関与し、
前記プローブレーザービーム(60A)を移動させるための前記移動システム(20)を制御する制御ユニット(35)と、
を備え、
前記追跡システムは、前記制御ユニット(35)がさらに請求項1~8のいずれか1項に記載の追跡する方法の少なくともステップCを実行する構成であることを特徴とする。
【請求項10】
請求項9に記載のライダー装置から対象物(50)を追跡するシステムであって、
前記システムは、光学カメラ及びレーダー装置を構成する群から選択される少なくとも1つの撮像装置をさらに備え、
前記撮像装置は、少なくともステップAを実施し、且つ制御ユニット(35)にステップBを実施できるようにするために必要な指示を提供し、前記制御ユニット(35)は、前記追跡方法のステップBを実施するように構成される。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のライダー装置から対象物(50)を追跡するシステムであって、
前記システムは、ステップAに従って追跡対象物を識別した観測者がステップBを実施するための必要な指標を提供できる前記制御ユニット(35)と、通信するための装置を備え、前記制御ユニット(35)は前記追跡方法のステップBを実施する構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の追跡の分野に関する。
より具体的には、本発明は、対象物を追跡する方法、及び対象物を追跡する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙でのランデブーの場合、無人機、航空機、衛星、又はドッキング装置の追跡等、いくつかの応用のために、比較的大きな距離範囲(例えば、無人機の追跡の場合、数十メートル~1キロメートル)にわたって機能し、且つこのような対象物の高い相対速度に適合する対象物追跡を有することが必要である。
【0003】
このようなトラッキングは、現在、2つの原理に基づいて行われている。
(i)受動撮像であって、主に光学カメラ又は電波センサを用いて行うものであり、放射率の範囲及び追跡対象物の環境によっては音波センサを用いてもよい。
(ii)アクティブトラッキングであって、例えばライダー又はレーダーのようなシステムの内部にある電磁放射線源の使用に基づくものである。
【0004】
パッシブイメージングまたはアクティブトラッキングに基づいても、トラッキングは、トラッキング装置の「視野」内にあるときに、トラッキングすべき対象物を検出することを可能にする利点を有するため、トラッキングすべき対象物を識別及び検出するために特に適している。
【0005】
しかしながら、この種のトラッキングは、一般的に、光学カメラに使用される焦点距離に直接結び付いた比較的小さな距離範囲にわたってトラッキングし、レーダーに関しては角分解能が低いように構成されるという欠点を有する。この距離範囲を拡大するために、光学カメラ又はフラッシュライダーシステムの場合、1つの光学ズームシステム又は複数のカメラを使用する必要があり、このような使用は、特に追跡対象物が高速で移動している場合、実装するのが比較的複雑である。
【0006】
なお、ここで、または本明細書の残りの部分で、「トラッキング距離範囲」とは、トラッキング対象物とトラッキング装置、例えばカメラやライダー装置との間の距離範囲を意味し、この距離範囲にわたってトラッキング装置は対象物を追跡するように構成される。
【0007】
上述したように、一部のアクティブトラッキング動作は、追跡する対象物の放射率に基づくことができる。より具体的には、特定の追跡対象物は、例えば、電波の分野(WIFI又は航空機の航空無線通信を介して無線制御ユニットと通信する無人機)において、特定の放射率特性を有する。それにもかかわらず、これらの追跡方法は、波長がレーダーレーダーシステムのそれに類似した波に基づいており、同じ欠点を有し、それゆえ、ある応用に対して十分に大きな角分解能での追跡を提供することができない。
【0008】
走査ライダーによる撮像に関して、より大きな角分解能にもかかわらず、広い視野での走査時間が長過ぎることが証明され、高速移動する対象物に関して追跡を可能にできない。
【0009】
このように、トラッキング装置では、相対的に高速移動する対象物を追跡するのに適していると共に、相対的に大きな距離にわたってトラッキングを行うのに適しているものは存在しない。
【0010】
ジェーエーベラルチン及びその共著者らが2000年に科学雑誌「オプティカルエンジニアリング」第39号、196~212頁に教示したアクティブトラッキングは、この問題を部分的に解決することを可能にする。実際のところ、このタイプのアクティブトラッキングは、ライダー技術に基づいて、図1Aに示すように、ライダーレーザービームを対象物(ここでは無人機)の想定位置の周りの角度追跡パターンに沿って通過させることからなる。レーザービームによって対象物の遮断点を識別することによって、対象物の実際の位置を決定し、図1Bに示すように、対象物の中心に位置するように追跡パターンを移動させることができる。このように、リサージュ曲線のような比較的単純なパターンに基づいて、比較的高いトラッキング周波数で追跡する対象物の移動を追跡することができ、その周波数がレーザービームプローブが追跡パターンの全体に沿って通過するのにかかる時間によってのみ制限されるためである。
【0011】
それにもかかわらず、このようなアクティブトラッキングは、選択された追跡パターンの形状に依存する比較的小さな距離範囲に適している。
【0012】
このように、我々の知る限り、比較的遠い距離範囲にわたって対象物を追跡することを可能にし(即ち、例えば、約10メートル~数キロメートルを追跡するのに適している)、低速の対象物と同様に、比較的高速の対象物(即ち、例えば、無人機の場合、80km/hよりも高速であってもよい)にも等しく適しているようなトラッキング方法は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、これらの欠点を軽減し、比較的大きな距離範囲にわたって対象物を追跡することができる対象物追跡方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ライダー装置の使用に基づいて対象物を追跡する方法に関し、ライダー装置は、
プローブレーザービームを放射するためのレーザー源と、
プローブレーザービームの向きを変更する、プローブレーザービームを移動させる移動システムと、
を備え、
本方法は、以下のステップを含む。
(A)追跡する対象物を識別する。
(B)対象物の位置を推定し、対象物の位置は対象物とライダー装置との間の距離を含む。
(C)オブジェクトを追跡する。
オブジェクトを追跡するステップCは、以下のサブステップを含む。
(C1)プローブレーザービームが通過する、パラメトリック曲線の追跡パターンを決定し、ライダー装置に対する追跡パターンの少なくとも1つの角度パラメータは、対象物の推定位置から推定され、特に対象物とライダー装置との間の距離を含む。
(C2)ステップC1で決定された追跡パターンに沿ってプローブレーザービームを移動させるとともに、プローブレーザービームの移動中にプローブレーザービームにより対象物の遮断点を識別するように、移動システムによりプローブレーザービームを移動させる。
(C3)識別された対象物によってプローブレーザービームの遮断点から対象物の位置を決定し、決定された位置は対象物とライダー装置との間の距離を構成する。
【0015】
このような方法は、対象物とライダー装置との間の距離に対する追跡パターンの少なくとも1つの角度パラメータの依存性に起因して、対象物の距離及び形状に適した追跡パターンで、対象物を能動的に追跡することを可能にする。このように、対象物とライダー装置との間の距離がどのようなものであっても、追跡パターンを好適に構成することができるので、従来技術の方法に比べて広い距離範囲にわたってトラッキングを得ることができる。なお、パターンは比較的シンプルであってもよく、能動トラッキングの原理によれば、このような方法は高周波数トラッキングに対応でき、したがって比較的高速な移動速度で対象物を追跡することに使用できる。
【0016】
追跡ステップCの実施時に、ステップC1~C3を順次且つ反復して再現し、ステップC1で使用された対象物の推定位置は、1回目のイテレーションでは、ステップBにおいて取得された対象物の推定位置、又はnが2以上の整数であるn回目のイテレーションでは、n-1回目のイテレーションのステップC3において決定される対象物の位置である。このようにして、追跡する対象物の連続的な追跡を保証することができる。
【0017】
オブジェクトの位置を決定するサブステップC3において、サブステップC1において用いられた推定位置及びサブステップC3において決定された位置に基づいて、オブジェクトの移動方向をさらに決定する。
【0018】
ステップCの実施時に、nが2以上の整数であるn回目のイテレーションでは、追跡パターンを決定するサブステップC1において、n-1回目のイテレーションのステップC3で決定された対象物の推定移動方向に基づいて、追跡パターンの少なくとも1つの他のパラメータを決定する。
【0019】
ステップC1において、追跡パターンはパラメトリック曲線タイプであり、少なくとも1つの角度パラメータはパラメトリック曲線の角度パラメータである。
【0020】
追跡対象物の移動方向を考慮して追跡パターンを規定することにより、対象物の移動を考慮して、レーザーが追跡パターンに沿って移動するときの対象物におけるエコーの数(すなわち、プローブレーザービームによる対象物の遮断点の数)を最大にすることができる。これにより、より良好な対象物の位置推定を得ることができる。
【0021】
オブジェクトの位置を決定するサブステップC3において、サブステップC1において使用された推定位置及びサブステップC3において決定された位置に基づいて、オブジェクトの推定移動速度をさらに決定してもよい。
【0022】
ステップCの実施時に、nが2以上の整数であるn回目のイテレーションでは、追跡パターンを決定するサブステップC1において、n-1回目のイテレーションのステップC3で決定された対象物の移動の推定速度に基づいて、追跡パターンの少なくとも1つの他のパラメータをさらに決定する。
【0023】
パターンを規定するための基礎として、追跡する対象物の速度を使用することにより、対象物の移動をより適切に考慮し、レーザーが追跡パターンに沿って移動するときの対象物へのエコーの数をさらに改善することができる。
【0024】
オブジェクトの位置を決定するサブステップC3において、オブジェクトの推定加速度をさらに決定してもよい。
【0025】
ステップCの実施時に、nが2以上の整数であるn回目のイテレーションでは、追跡パターンを決定するサブステップC1において、さらに、推定された加速度から追跡パターンの少なくとも1つの他のパラメータを決定する。
【0026】
このパターンの少なくとも1つの他のパラメータは、予め定義されたパターンの群から選択されたパターンタイプを構成してもよく、パターンタイプは、パラメータ曲線のそれぞれのタイプに対応する予め定義されたパターンの群から選択され、移動の推定方向及び/又は移動の推定速度が利用可能である場合、予め定義されたパターンの群から選択される。
【0027】
このようにして、追跡する対象物の移動の速度及び/又は方向に特に適したパターンを選択することができる。このようにして、最適化されたトラッキングが保証される。
【0028】
追跡対象物を識別するステップAと、対象物の位置を推定するステップBとの一方のステップにおいて、対象物の推定位置を含み、かつ対象物の推定位置とライダー装置の位置とを通る線に垂直な垂直面における、対象物の少なくとも1つの推定寸法をさらに決定してもよい。
【0029】
サブステップC1において、追跡パターンを決定し、さらに、推定された寸法から追跡パターンの少なくとも1つの角度パラメータを決定する。
【0030】
このように、本方法は、追跡する対象物のサイズがどのようなものであっても好適に構成することができる。このように、本発明による装置を適切に構成することで、数十センチメートルの対象物、例えば小さなサイズの特定の無人機、又は飛行機等のはるかに大きな対象物の追跡を可能にする。
【0031】
オブジェクトの位置を推定するステップBは、以下のサブステップを含んでもよい。
(B1)対象物とライダー装置との間の距離を含む対象物の予備位置を求める。
(B2)対象物の推定される予備位置を含み、かつ前記対象物の推定される予備位置及び前記ライダー装置の位置を通る線に垂直な垂直面に沿って、前記プローブレーザービームが通過する識別パターンを決定し、ライダー装置と対象物との推定予備距離及び対象物の推定される予備位置から識別パターンの少なくとも1つの角度パラメータを決定する。
(B3)プローブレーザービームを移動システムによって移動させ、ステップB2で決定された識別パターンに沿ってプローブレーザービームを移動させ、プローブレーザービームの移動中に対象物とプローブレーザービームとの交点を識別する。
(B4)識別された対象物によって、プローブレーザービームの遮断点から対象物の推定位置を決定し、決定された位置は対象物とライダー装置との間の距離を構成し、垂直面における対象物の推定寸法は、識別された対象物によるプローブレーザービームの遮断点からも決定する。
【0032】
このような識別パターンは、対象物又はシーンの完全な撮像を実行する必要がないので、対象物のサイズを推定し、且つ最小限の時間でそれを追跡することを可能にする。
【0033】
識別パターンを決定するステップB2において、この識別パターンは、ステップC1で決定された追跡パターンのタイプ以外のパラメトリック曲線に対応してもよい。
【0034】
オブジェクトの位置を推定するステップBは、以下のサブステップを含んでもよい。
(B’1)移動システムによってプローブレーザービームを移動させ、プローブレーザービームの移動中に、追跡対象物が位置すると推定される空間領域を走査し、対象物とプローブレーザービームとの交点を識別する。
(B’2)識別された対象物によるプローブレーザービームの遮断点から対象物の推定位置を決定し、決定された位置は、対象物とライダー装置との間の距離を含み、垂直面における対象物の推定寸法もまた、識別された対象物によるレーザービームの遮断点から決定される。
【0035】
このような走査により、追跡対象物の画像を取得することができ、これにより、追跡対象物の識別を可能にする。
【0036】
このように、対象物の推定寸法を提供することができるだけでなく、追跡対象物のタイプに関する情報を取得し、このタイプに追跡パターンを適切に構成することができる。
【0037】
本発明は、さらに、ライダー装置を用いて対象物を追跡するシステムに関し、このシステムは、
プローブレーザービームを放射するように構成されたレーザー源と、
プローブレーザービームの向きを変更するように構成された、プローブレーザービームを移動させる移動システムであって、レーザービーム源と、ライダー装置の構成に関与する移動システムと、
プローブレーザービームを移動させる移動システムを制御する制御ユニットと、
を構成し、
前記制御ユニットは、本発明による追跡方法の少なくともステップCを実行するためにさらに構成される。
【0038】
このような対象物追跡システムは、本発明による方法を実施し、本発明による方法に関連する利点を得ることを可能にする。
【0039】
このシステムは、光学カメラ及びレーダー装置を含む群から選択された少なくとも1つの撮像装置をさらに備えてもよく、この撮像装置は、少なくともステップAを実施し、且つ制御ユニットにステップBを実施するために必要な指示を提供するように構成され、この制御ユニットは、追跡方法のステップBを実施するように構成される。
【0040】
このような撮像装置によれば、比較的広い範囲にわたって追跡対象物を連続的に検出することができる。このように、本発明の方法によれば、低解像度で広視野でのパッシブトラッキングと、アクティブトラッキングの精度を向上を両立させることができる。
【0041】
このシステムは、ステップAに従って追跡対象物を識別した観測者が、ステップBを実行するように制御ユニットに必要な指標を提供することができる、制御ユニットと通信するための装置を含んでもよく、制御ユニットは、追跡方法のステップBを実行するように構成される。
【0042】
このように、観測者が追跡対象物を検出すると、上述したように、検出した対象物を追跡するように、本発明に係る追跡方法を容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明は、添付の図面を参照しつつ、例示であって決して限定ではない例示的な実施例の説明を読むことで、より理解されるであろう。
図1A図1Aは、従来技術によるアクティブタイプのトラッキング方法の第1のステップ及び第2のステップを示す。
図1B図1Bは、従来技術によるアクティブタイプのトラッキング方法の第1のステップ及び第2のステップを示す。
図2図2は、本発明による追跡方法の主なステップを示すフローチャートである。
図3A図3Aは、本発明による、第1のライダー測定原理によるトラッキング装置を示す。
図3B図3Bは、本発明の文脈で且つライダー測定の文脈で実施される移動システムによるレーザービームの移動原理を示す。
図3C図3Cは、本発明によるトラッキング装置と、第2のライダー測定原理によるトラッキング装置を示す。
図4図4は、本発明による方法の追跡ステップのサブステップを示すフローチャートである。
図5図5は、追跡対象物の距離及び寸法に基づいて、追跡パターンの角度パラメータを決定する原理を示す。
図6図6は、本発明による方法に従って追跡パターンの寸法を適応させる原理を示す。
図7図7は、本発明による方法の第1の変形例による、対象物の寸法を推定するための推定ステップに関連して用いられる推定パターンの原理を示す。
図8図8は、図7に示されるような推定パターンに基づく、第1の変形例による方法の対象物の位置を推定するステップ内のサブステップを示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の第2の変形例による、対象物の位置を推定するステップに関連して実施されるライダー撮像サブステップを示す。
図10図10は、撮像サブステップが実施される第2の変形例に係る推定ステップのサブステップを示すフローチャートである。
図11A図11Aは、実質的にゼロである対象物の推定速度に基づく、第2の実施例による追跡パターンの適応を示す。
図11B図11Bは、中間である対象物の推定速度に基づく、第2の実施例による追跡パターンの適応を示す。
図11C図11Cは、比較的大きい対象物の推定速度に基づく、第2の実施例による追跡パターンの適応を示す。
図12A図12Aは、実質的にゼロである対象物の推定速度に基づく、第2の実施例の変形例による追跡パターンの適応を示す。
図12B図12Bは、中間である推定速度に基づく、第2の実施例の変形例による追跡パターンの適応を示す。
図12C図12Cは、比較的大きい対象物の推定速度に基づく、第2の実施例の変形例による追跡パターンの適応を示す。
【0044】
図面間のやり取りを容易にするために、様々な図面と同じ、類似した、又は等価な部分には同じ参照符号を付す。図面に示されている様々な部分は、図面を見やすくするために、必ずしも均一な縮尺で示されているとは限らない。様々な可能性(変形例及び実施例)は、互いに排他的であると理解されるべきではなく、互いに組み合わせられてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図2は、図3に示されるようなライダー装置1を用いたアクティブトラッキングの原理に基づく、本発明による追跡方法の主なステップを示すフローチャートである。
【0046】
なお、本実施例において、追跡対象物は無人機50である。本発明は、無人機の追跡に特に適している場合もあるが、当該応用のみに限定されるものではなく、ライダー装置1に対して相対移動可能な任意のタイプの対象物の追跡でもよい。本発明の方法は、無人機、航空機、又は人工衛星等の移動体を地上から追跡することに関与することができるが、例えば宇宙ステーション又は人工衛星との間のランデブーのコンテキストにおいてシャトルを取り付けるライダー装置等のライダー装置に対して相対移動する対象物を追跡するコンテキストにおいて実施されてもよい。このような追跡方法は、本発明による追跡システム1によって構成され、図3に示されるライダー装置1に基づく。ライダー装置1は、プローブレーザービーム60Aを放射するレーザー源10と、プローブレーザービーム60Aを移動させるため、プローブレーザービーム60Aの向きを変更する構成のシステム20と、追跡対象物50により後方散乱されたプローブレーザービーム60Aの一部を検出し、プローブレーザービーム60Aの放射とプローブレーザービーム60Aの後方散乱部分の検出との時間的オフセットに基づいて、測定対象物50とライダー装置1との間の距離を決定する測定システム30と、を備える。
【0047】
なお、「追跡対象物50とライダー装置1との間の距離」とは、追跡対象物の1つの点、例えばレーザービーム60が後方散乱される前述の反射面の1つの点と、装置の基準点、例えば移動システム20又は移動システム20と測定システム30との間に配置される仮想基準点との間の距離を意味する。
【0048】
なお、ライダー装置1による測定は、図3A及び図3Bに示す原理に基づいて、一般的には、プローブレーザービーム60Aに含まれるレーザーパルスの放射と、例えば追跡対象物の表面50によって後方散乱されたレーザーパルスの一部の測定システム30による受信との間の時間測定に基づいて行われる。光速で測定された時間を乗じ、2で割ることで、表面とライダー装置1との間の距離を直接推測することができる。このように、移動システムによるプローブレーザービームの向き及びその距離に基づいて、プローブレーザービームの後方散乱の原点における表面の位置を決定することができる。
【0049】
このような時間測定を可能にするために、複数のライダー測定原理を実施することができる。図3Aに示す第1の測定原理によれば、レーザー源10がパルスレーザービーム60を放射可能なパルスレーザー源であることに加え、ライダー装置は、レーザー源10が放射したパルスレーザービーム60をプローブレーザービーム60Aと参照レーザービーム60Bとに分離するため、ビームセパレータ37をさらに備える。
【0050】
この測定システム30は、
ビームセパレータ37と、
プローブレーザービーム60Aが分離された後、参照レーザービーム60Bを検出し、プローブレーザービーム60Aの放射のために時間基準を提供する、光検出器(例えば光電子増倍管)のような第1の放射線検出装置31と、
プローブレーザービーム60Aの後方散乱部分60Cを検出し、プローブレーザービーム60Aの後方散乱部分60Cの受信の時間測定を提供する、光検出器(例えば光電子増倍管)のような第2の放射線検出装置32と、
第1の放射線検出装置31が提供した時間基準と、第2の放射線検出装置31が提供した受信の時間測定とに基づいて、ライダー装置の表面との間の距離を演算し、移動システム20がプローブレーザービーム60Aに提供した向きからこの表面の位置を決定する、演算ユニット33と、
本発明による方法を実施するため、移動システム20と演算ユニットとを制御する制御ユニット35と、
を備える。
【0051】
図3Bは、移動システム20によるレーザービームの角運動の原理を示す。この原理に基づいて、且つ1組のミラー(特に図3Cに示す)に基づいて、移動システム20は、レーザービーム60を、水平座標系の2つの異なる軸、水平面内の座標θに対応する方位軸(θは、0°から最大で360°の間に含まれる)、及び座標φ(φは、0°から90°の間に含まれる)に対応する垂直軸の周りで角運動させることを可能にする。このようにして、レーザービーム60は、どのような経路であっても対象物を追跡するように移動させることができる。
【0052】
第2のライダー測定原理によれば、図3Cに基づいて、測定システム30は、プローブレーザービーム60の後方散乱部分60Cを検出する1つの放射線検出装置31を備え、ビームセパレータ37を備えず、レーザービーム60の全体がプローブレーザービームとして機能させることが可能である。この可能性によれば、レーザービーム60は、穴の開いた放物面鏡を通過して移動システム20に伝送され、移動システム20がレーザービームを追跡パターン61に沿って対象物50に向かって移動させるようにする。レーザービーム60が対象物50の表面等の表面に当たると、前述の部分60Cは移動システムに向けて後方散乱される。次に、後方散乱レーザービーム60の部分60Cは、図3Cに示すように、移動システム20によって受け取られ、放物面鏡によって放射線検出装置31に向かって分割される。
【0053】
このように、第1の検出器31は、プローブレーザービーム60Aの後方散乱部分60Cを検出し、プローブレーザービーム60Aの前記部分60Cを受信する時間を測定する。
【0054】
なお、この第2の測定原理によれば、第1の測定原理による測定システム30とは異なり、レーザービーム源10に送信される制御信号から時間基準を決定してもよい。このように、演算ユニット33は、制御ユニット35が送信した制御信号及び第1の放射線検出装置31が供給した受信時間の測定値から、表面とライダー装置との間の距離を算出し、移動システム20がプローブレーザービーム60Aに与える向きから表面の位置を決定するように構成される。この第2の測定原理による制御ユニット35の構成は、第1の測定原理によるものと同様である。
【0055】
もちろん、測定システム30のこれらの2つの構成例は、例示に過ぎず、決して限定的ではない。実際のところ、当業者は、本教示を、ライダー測定の文脈で実施され得る異なる距離検出原理に適応させることができる。このように、本発明は、ホモダイン又はヘテロダインである電子同期検出タイプの測定システムを実施するライダー測定システム、又はドップラー効果光ヘテロダイン検出タイプの測定を実施するライダー測定システムに適用されることが想定され得る。
【0056】
どのような測定システム30が採用されても、本発明の方法は、図2に示すように、
(A)追跡対象物50を識別するステップと、
(B)対象物50とライダー装置1との間の距離を構成する、対象物50の位置を推定するステップと、
(C)対象物50を追跡するステップと、
を含む。
【0057】
ステップAにおいて、対象物の識別は、
(i)ライダー装置の外部にある装置、例えば、光学カメラ、レーダー、電波検出器、音響センサ、又は操作者による観察、又は、
(ii)ライダー装置1をそのまま使用、
によって行われてもよい。
【0058】
可能性(i)によれば、追跡システムは、図示しない外部装置をさらに備えてもよい。この外部装置は、対象物50が出現する可能性のある空間を監視する。外部装置が対象物を検出した場合、その近似位置に基づいてステップBを実行できるように、対象物の近似位置を制御ユニット35に送信することができる。この可能性に基づいて、制御ユニットは、対象物50を識別したオペレータが、制御ユニット35がステップBを実施できるように必要な指示を提供可能な入力装置を備えることも想定され得る。
【0059】
可能性(ii)に関して、ライダー装置1は、ライダー装置1が対象物50が見える可能性のある空間をスキャンするように構成される撮像構成を有してもよい。この走査動作において、追跡対象物50に対応する可能性がある異常が検出された場合、制御ユニット35は、対象物50の存在を確認し且つ対象物50の位置を推定するために、ステップBを実施するように構成されてもよい。
【0060】
ステップBにおいて、制御ユニット35は、ライダー測定原理に基づいて対象物50の位置を推定することを可能にする。このような推定は、移動システムによって、ステップAで取得した対象物の近似位置にプローブレーザービームを向け、プローブレーザービームの後方散乱部分の検出に基づいて、対象物50とライダー装置1との間の距離を測定することによって、可能となる。このようなステップは、対象物50とライダー装置1との間の距離を構成する対象物の推定位置を提供可能にする。
【0061】
対象物50を追跡するステップCは、図4に示すように、以下のサブステップかを含む。
(C1)プローブレーザービーム60Aが通過する、パラメトリック曲線の追跡パターン61を決定するサブステップであって、ライダー装置1に対する追跡パターン61の少なくとも1つの角度パラメータは、特に対象物50とライダー装置1との間の距離Dを含んむ、対象物50の推定位置から決定され、
(C2)プローブレーザービーム60Aを移動システム20によって移動させるサブステップであって、ステップC1で決定された追跡パターン61に沿ってプローブレーザービーム60Aを移動させ、プローブレーザービーム60Aの移動中に、プローブレーザービーム60Aによって対象物50の遮断点を識別し、
(C3)識別された対象物50によるプローブレーザービーム60Aの遮断点から対象物50の位置を決定するサブステップであって、決定された位置は、対象物50とライダー装置1との間の距離を構成する。
【0062】
本実施例において、図5に示すように、対象物50の推定位置付近で、パラメータp=2、q=3のリサージュ曲線を選択する。
なお、リサージュ曲線は、以下のパラメータ方程式で定義される。
【0063】
【数1】
【0064】
x(t)、y(t)を垂直面におけるパターンの座標とし、Aをリサージュ曲線の振幅パラメータとし、p、qは、q>p(ここでは、p=2、q=3)である正弦波運動の「パルス」に対応し、fを基準周波数とし、x0、y0を追跡パターン61のずれに対応し、追跡パターンが対象物50の推定位置に合致するようにする。
【0065】
もちろん、図5に示されるリサージュ曲線は、本発明に適合する追跡パターンの一例に過ぎず、本発明の範囲から逸脱することなく、他のパターンも完全に想定することができ、例えば、追跡パターンを螺旋状又は円形にすることができる。なお、どの場合であっても、追跡パターンは、好ましくは、対象物50におけるエコーの数(プローブレーザービームによる対象物の遮断点の数)を最適化する能力と、漏れの可能性を低減することによって対象物を「捕捉」する能力とを有するように選択される。
【0066】
このように、ステップC1において、図5に示すように、特に対象物50とライダー装置との間の距離Dを含む追跡対象物の推定位置に基づいて、追跡パターン61の角度パラメータを規定する。
【0067】
実際のところ、本発明の原理によれば、追跡パターンのサイズが対象物の推定又は予想寸法Rになるように構成されるので、振幅パラメータAは、推定又は予想寸法Rに比例し、この比例関係は、予想される最大移動速度に基づいて選択された及び/又は対象物50におけるエコーの数を最大にするように係数βで具体化されてもよい。このように、このパラメータAは、β・Rに等しくてもよく、ここで、βは比例係数であり、Rは、推定又は予想される対象物50の寸法である。実際のところ、追跡対象物のタイプが予め分かっている場合(本実施例では、無人機)、この対象物の予想される寸法を定義することができ、例えば、無人機のタイプに基づいて50cm又は1mとすることができる。本発明の第1の可能性によれば、リサージュ曲線であるパターンの場合、パラメータAは固定かつ予め決定されてもよい。変形例として、図6図8に関連して後述するように、ステップA及びステップBで決定された対象物50の推定寸法Rから算出してもよい。
【0068】
図3Bに関連して既に説明したように、移動システム20は、プローブレーザービーム60Aの向きを変更することができ、即ち、原点がライダー装置1である水平座標系に従う参照フレームによって、プローブレーザービーム60Aの角度座標の変更に対応して、垂直面に沿ったプローブレーザービーム60Aが追跡パターン61に沿って通過する角運動を行うことができる。
【0069】
上述したパラメータ方程式を採用すると、このような角度座標の変化によって、次のようになる。
【0070】
【数2】
【0071】
レーダー1を中心とした参照フレームにおける追跡パターンのプローブレーザービーム60Aの角度座標をθ(t)、φ(t)とし、θ(t)は方位軸に対応し、φ(t)は垂直軸に対応し、θ0、φ0は追跡パターン61の角度ずれに対応し、追跡パターンが対象物50の推定位置に合致するようにする。
【0072】
言い換えれば、比R/2Dが比較的小さいと予想されることを考慮に入れると、距離Dは、一般的に10mよりも大きく、又は50cm~1mの間の予想寸法では50mよりも大きい場合もある。arctan(R/D)に等しい対象物の角度振幅θは、R/Dによって近似することができ、したがって、上記式及び図5に示すように、パターンの角度振幅は、α=R/Dによって近似することができる。
【0073】
このように、上記パラメータ方程式は、以下のように書き換えられてもよい。
【0074】
【数3】
【0075】
図6は、対象物とライダー装置1との間の間隔Dとして機能するパターンの角度振幅の依存性を示しており、この2つの対象物50は、左側が相対的に遠く、角度振幅χ1を有し、右側が相対的にライダー装置に近く、角度振幅χ2を有する。これら2つに示すように、特に対象物50とライダー装置との間隔Dから求められる対象物50の角度振幅χ1、χ2を考慮して、角度振幅α1、α2を算出するために、対象物50の寸法及び位置に対して完全に構成された追跡パターン61を提供することができる。このような適合により、対象物50が逃げる危険性が大幅に低減される。
【0076】
もちろん、このような追跡パターンのパラメータ化の例は、例示に過ぎず、決して限定的ではない。このように、追跡パターン61の角度振幅αが対象物50の角度振幅θに比例する直接的な関係を有してもよい場合、この関係は本発明の範囲から逸脱することなく異なってもよいと考えられる。このように、例えば、対象物50がライダー装置1に相対的に近接している場合、より大きい角度振幅αの追跡パターン61を提供するために、追跡パターン61の角度振幅αは、角度振幅θの二乗でも変化することが想定されてもよい。
【0077】
本発明の文脈において、対象物50の連続的な追跡を提供するために、追跡ステップCを実施する時に、ステップC1~C3を順次且つ反復して再現することができ、ステップC1で使用された対象物の推定位置は、1回目のイテレーションでは、ステップBで取得された対象物50の推定位置となり、又はnが2以上の整数であってn回目のイテレーションでは、n-1回目のイテレーションのステップC3で決定された対象物の位置となる。
【0078】
このようにして、対象物50を連続的に追跡することに加え、この追跡は、対象物50の更新された推定位置、特に対象物50とライダー装置1との間の距離Dに基づいて、角度パラメータ、即ち本実施例では角度振幅αを決定する追跡パターンによって行われる。
【0079】
対象物50に特に適した追跡パターン61を提供するために、本発明の特定の変形例によれば、追跡する対象物を識別するステップA及び対象物の位置を推定するステップBのうちの1つにおいて、さらに、垂直面における対象物50の推定寸法Rを決定する。
【0080】
第1の変形例によれば、図7に示すように、識別パターン63に基づいてレーザービームを移動させることで、対象物50の寸法Rを推定してもよい。このように、ステップBにおいて、対象物50の少なくとも1つの推定寸法の決定が行われると、ステップBは、図8のフローチャートに基づいて、以下のサブステップを構成する。
(B1)対象物50の予備位置を取得し、推定される予備位置は対象物50とライダー装置1との間の距離を含み、
(B2)対象物50の推定される予備位置を含み、かつ対象物50の推定予備位置及びライダー装置1の位置を通る線に垂直な垂直面に沿って、プローブレーザービーム60Aが通過する識別パターン63を決定し、対象物50とライダー装置1の間の推定予備距離D、及び対象物の推定される予備位置から少なくとも1つの角度パラメータを決定し、
(B3)プローブレーザービーム60Aを移動システムによって移動させて、ステップB2で決定された識別パターン63に沿ってプローブレーザービームを移動させ、プローブレーザービームの移動中に対象物とプローブレーザービームの交点を識別し、
(B4)識別された対象物50によって、プローブレーザービーム60Aの遮断点から対象物50の推定位置を決定し、決定された位置は対象物50とライダー装置1の間の距離を構成し、垂直面における対象物50の推定寸法は、識別された対象物50によるプローブレーザービーム60Aの遮断点からも決定する。
【0081】
このように、サブステップB1のコンテキストにおいて、制御ユニット35は、対象物50の予備位置を取得する。そのために、制御ユニット35は、ステップAのコンテキストで使用される外部装置と通信するか、又はステップAのコンテキストで対象物を識別した操作者が提供した情報を使用して、対象物50の推定位置を決定するように構成されてもよい。なお、この文脈において、制御ユニット35は、この通信又はこの情報収集によって対象物のタイプを決定してもよい。
【0082】
対象物の予備位置に関するこの情報を取得した後、制御ユニット35は、サブステップB2のコンテキストにおいて、プローブレーザービーム60Aが垂直面内を通過する識別パターン63を決定し、対象物50の垂直面内の寸法を決定するために、構成される。このような識別パターン63は、例えば、図7に示すように、対象物50に期待される最大角度振幅よりも大きい角度振幅を有するバラ形状であってもよい。
【0083】
もちろん、このようなバラ形状は例示に過ぎず、決して限定するものではない。本発明は、星形又は螺旋形のパターンなど、任意の他のタイプの識別パターン63をカバーする。同様に且つ変形例として、識別パターン63は、本発明の範囲から逸脱することなく、追跡パターンと同一であってもよく、従って、本実施例において、リサージュ曲線であってもよい。
【0084】
図7に示すように、バラ形状、即ちエピトロコイドの例を取った場合、リサージュ曲線形状の追跡パターン61に関連して説明したのと同様の原理に基づいて、識別パターン63は、以下のパラメータ方程式に従うことができる。
【0085】
【数4】
【0086】
β’を比例係数とし、Rmaxを対象物50の垂直面における最大の期待寸法とし、θ’0、φ’0は追跡パターン61の角度ずれに対応し、追跡パターンが対象物50の予備位置に合致するようにする。
【0087】
距離Dを考慮すると、追跡パターンについて、パラメトリック方程式は、以下のように近似されることができる。
【0088】
【数5】
【0089】
このように、本第1の変形実施例のこの例示的な実施例によれば、識別パターン63の角度振幅A’は、最大予想寸法Rmaxと、対象物50の予備位置に含まれる予備距離Dとの比例係数β’の関数である。
【0090】
第1の実施例の第2の変形例によれば、図9に示すように、対象物50の予備位置の付近で、対象物50の最大予想寸法Rmaxよりも大きいサイズの空間領域を覆うように撮像するステップによって、対象物50の推定寸法を取得してもよい。この推定された寸法は、対象物50を識別するステップA又は対象物50の位置を推定するステップBのいずれかにおいて得ることができる。
【0091】
本発明の第2の変形例によれば、被写体50の位置を推定するステップBを実行することにより推定次元を得ることを考慮して、ステップBを推定することは、図10に示すように、以下のサブステップを含むことができる。
(B’1)移動システム20によりレーザービームを移動させ、レーザービームの移動中に、追跡すべき被写体が位置すると推定される空間領域を走査し、被写体50とプローブレーザービーム60Aとの交点を識別し、
(B’2)識別された対象物50によるレーザービームの遮断点から対象物50の推定位置を決定し、決定された位置は対象物50とライダー装置1との間の距離Dを構成し、垂直面における対象物50の推定寸法も、識別された対象物50によりプローブレーザービーム60Aの遮断点から決定される。
【0092】
本発明の第3の変形例によれば、ステップA又はステップBにおいて、対象物50のタイプを識別するサブステップを含んでもよい。この可能性に基づいて、識別された対象物50のタイプに基づいて1つ又は複数のパラメータを変更することができる。
例えば、この第1の実施例の文脈において、無人機の追跡は、
(1)マイクロドローン、
(2)中位の高度で飛行する無人機、又は
(3)飛行翼型の無人機、
のいずれかであると識別されてもよい。
【0093】
次に、識別された無人機のタイプに予想される寸法特性及び移動に基づいて、追跡パターン61を決定するステップC1において、追跡パターン61を選択してもよい。
【0094】
もちろん、本発明のこれらの第1、第2、及び第3の変形例において、推定次元は推定ステップBの文脈において取得されてもよいが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、追跡対象物を識別するステップAの文脈において取得するために、これらの変形例に係る方法を変更することができる。
【0095】
図11A図11Cは、第2の実施例による方法で実施される対象物50の移動に基づく追跡パターン61の適応性を示す。
【0096】
この第2の実施例によるトラッキング方法は、第1の実施例によるトラッキング方法と比較して、追跡パターン61を決定するサブステップC1において、前のステップC3を実行することで決定された対象物50の移動情報に基づいてこれを決定する点が異なる。
【0097】
このように、この第2の実施例によれば、オブジェクトの位置を決定するサブステップC3において、サブステップC1において使用された推定位置及びサブステップC3において決定された位置に基づいて、対象物50の移動方向を決定し、場合によっては移動速度を推定する。
【0098】
ステップCの実施時に、nは2以上の整数であり、n回目のイタレーションの場合、次に追跡パターンを決定するサブステップC1において、n-1回目のイタレーションのステップC3において決定された対象物50の移動の推定速度に基づいて、追跡パターンの少なくとも1つの他の角度パラメータをさらに決定する。
【0099】
このように、第2の実施例によれば、追跡パターン61が第1の実施例によるリサージュ曲線である場合、且つ対象物50がx軸に沿って移動していると考えられる場合、リサージュ曲線のx軸とy軸との間に位相シフトφを移動速度の関数として適用することができる。従って、このような位相シフトφは、以下のパラメータ方程式に従う追跡パターン61の角度補正とすることができる。
【0100】
【数6】
【0101】
γを第2の比例係数とし、Vは対象物50の推定移動速度であり、Vmは対象物の最大予想速度である。
【0102】
なお、移動速度に加え、対象物の推定加速度に基づいて、リサージュ曲線のx軸とy軸との間の位相シフトφを補正してもよい。このため、オブジェクトの位置を決定するサブステップC3において、対象物50の推定加速度をさらに決定してもよい。
【0103】
図12A図12Cに示すように、位相シフトによって推定された速度を考慮して、対象物50の所望の位置におけるプローブレーザービームの通過密度をより大きくすることができる。図11Aに示す静止対象物の場合、追跡パターン61は変形しないが、比較的高速の場合、図11Cに示すように、追跡パターンは強く変形し、対象物の予想位置が考慮される。
【0104】
もちろん、以下に説明する変形は一例に過ぎず、当業者は、本開示に基づいて、対象物50の推定速度Vを考慮に入れるように、異なるタイプの変形を行ってもよい。特に、本発明の範囲から逸脱することなく、追跡パターンの他のパラメータは、推定された移動方向にのみ基づいて、又は近似的な速度及び/又は移動方向に基づいて決定されてもよいことが、十分に想定され得ることに留意されたい。
【0105】
同様に、本発明の1つの可能性によれば、1回目のイテレーションの場合、推定された移動方向から追跡パターン61の少なくとも1つのパラメータを決定し、nは2以上の整数であって、n回目のイテレーションの場合、移動方向及び推定された移動速度から追跡パターン61の少なくとも1つのパラメータを決定することが想定されてもよい。
【0106】
図12A図12Cに示す本第2の実施例の変形例によれば、パターンのタイプを変更することで、速度に基づく追跡パターン61の適応を取得してもよい。このように、本実施例及び図12Aに示すように、追跡パターン61は、静止対象物、又は比較的低速の対象物に対して、第1実施例で説明したリサージュ曲線として選択される。移動が大きい対象物50の場合、図12B及び図12Cに示すように、追跡パターン60は、対象物50の移動方向と対称軸を一致させるエピタロコイドとして選択され、このパターンは、中心に点を置きつつ、縁部で高いビーム密度を有する。
【0107】
速度V及び比例係数δの関数としての軸θに基づく変形の例を有する式は以下の通りに表される。
【0108】
【数7】
【0109】
なお、このエピタロコイド曲線の角度パラメータは、エコーの数を最大にするように、対象物の速度Vの関数として決定される。
【0110】
このように、第2の実施例の変形例によれば、所定のパターン群から選択された1つのタイプのパターンであって、速度が利用可能である場合、推定された移動方向及び/又は推定された移動速度Vに基づいて、前記所定のパターン群から選択される1つのタイプのパターンである、対象物の推定された移動方向から決定された少なくとも1つの他の追跡パターンのパラメータ。ここで、パターン群は、第1の実施例によるリサージュ曲線と、エピタロコイド曲線とを備え、このエピタロコイド曲線の対称軸は、追跡する対象物の移動方向の関数として配向される。
【0111】
同様に、この変形例の文脈において、追跡パターンの少なくとも1つの他のパラメータは、対象物50の推定加速度から決定されてもよい。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
【国際調査報告】