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▶ ガンマデルタ セラピューティクス リミティッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】免疫療法組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20230915BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230915BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230915BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61K35/17
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515068
(86)(22)【出願日】2021-09-04
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 IB2021058083
(87)【国際公開番号】W WO2022049550
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】2013962.2
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519391608
【氏名又は名称】ガンマデルタ セラピューティクス リミティッド
【氏名又は名称原語表記】GAMMADELTA THERAPEUTICS LTD
【住所又は居所原語表記】1 Kingdom Street, W2 6BD London, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】リカルディン、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】シモエス、アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ヌスバウマー、オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】コヴァックス、イストヴァン
(72)【発明者】
【氏名】パテル、ミヒル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065BB19
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZB32
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA60
(57)【要約】
本発明は、特に養子免疫療法で使用するための、ナチュラルキラー(NK)細胞及びγδT細胞を含む組成物に関する。本発明はまた、試料を抗TCRデルタ可変1(抗Vδ1)抗体と接触させることを含む、そのような組成物を調製するための方法を提供する。
【選択図】図16C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルキラー(NK)細胞及びγδT細胞を含む単離された組成物であって、前記組成物中に存在する前記γδT細胞の少なくとも40%がCD56brightである、前記単離された組成物。
【請求項2】
NK細胞及びγδT細胞を含む単離された組成物であって、前記組成物中に存在する前記γδT細胞の少なくとも50%がCD56を発現する、前記単離された組成物。
【請求項3】
前記組成物中に存在する前記細胞の少なくとも90%がNK細胞及びγδT細胞からなる、請求項1または請求項2に記載の単離された組成物。
【請求項4】
前記組成物中に存在する前記細胞の少なくとも30%がγδT細胞である、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【請求項5】
前記γδT細胞が、Vδ1T細胞及びVδ2T細胞を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【請求項6】
前記組成物中に存在する前記細胞の少なくとも30%がNK細胞である、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【請求項7】
細胞を含む単離された組成物であって、前記細胞の少なくとも90%がNK細胞及びγδT細胞からなり、前記細胞の少なくとも10%がVδ1T細胞であり、前記細胞の少なくとも5%がVδ2T細胞であり、前記細胞の少なくとも30%がNK細胞である、前記単離された組成物。
【請求項8】
前記組成物中に存在する前記γδT細胞の少なくとも40%がCD56を発現する、請求項7に記載の単離された組成物。
【請求項9】
前記γδT細胞が、Vδ1T細胞を含み、前記Vδ1T細胞の少なくとも15%がNKp30を発現する、請求項1~8のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【請求項10】
前記γδT細胞が、Vδ1T細胞を含み、前記Vδ1T細胞の50%未満がCD27を発現する、請求項1~9のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【請求項11】
前記単離された組成物が、改変されたNK細胞及びγδT細胞を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【請求項12】
治療法で使用するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【請求項13】
がん、感染症または炎症性疾患の治療方法で使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【請求項14】
インターロイキン-15(IL-15)の存在下及びインターロイキン-4(IL-4)の非存在下で抗TCRデルタ可変1(抗Vδ1)抗体またはその断片を使用してγδT細胞及びNK細胞を含む混合細胞集団を刺激すること、ならびに前記混合細胞集団を培養することを含む、非γδ+MHC非拘束性リンパ球の増殖方法。
【請求項15】
MHC非拘束性リンパ球が濃縮された細胞集団を含む組成物の調製方法であって、前記方法が、
(1)対象から取得した試料を、
(i)抗Vδ1抗体またはその断片、及び
(ii)IL-15の存在下、IL-4の非存在下で培養すること(前記培養の初日から)、及び
(2)前記試料から培養した前記細胞集団を単離することを含む、前記調製方法。
【請求項16】
前記方法のステップ(1)が、前記試料を少なくとも7日間、例えば少なくとも14日間培養することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(2)で単離した前記細胞集団中に存在する前記MHC非拘束性リンパ球の少なくとも70%がCD56を発現する、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(2)で単離した前記細胞集団がγδT細胞を含み、前記γδT細胞の少なくとも40%がCD56を発現する、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(2)で単離した前記細胞集団の少なくとも90%がNK細胞及びγδT細胞からなり、前記細胞の少なくとも10%がVδ1T細胞であり、前記細胞の少なくとも5%がVδ2T細胞であり、前記細胞の少なくとも30%がNK細胞である、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記活性化抗Vδ1抗体またはその断片が、アミノ酸領域:
(i)配列番号1の3~20;及び/または
(ii)配列番号1の37~77内に1つ以上のアミノ酸残基を含むγδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープに結合する、請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記エピトープが、配列番号1のアミノ酸領域5~20及び62~77、50~64、37~53及び59~72、59~77、または3~17及び62~69内の1つ以上のアミノ酸残基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗Vδ1抗体またはその断片が、
配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3、
配列番号26~37及び配列A1~A12(表2の)のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2、及び/または
配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1のうちの1つ以上を含む、請求項14~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記試料が、造血試料またはその画分である、請求項15~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記試料から、前記培養の前にαβT細胞を枯渇させる、請求項15~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記培養を、2.5%の血漿を含む培地中で実施する、請求項15~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法のステップ(1)が、前記試料を約12日間、例えば12日間培養することを含む、請求項15~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項14~26のいずれか1項に記載の方法によって取得可能な、例えば取得される、MHC非拘束性リンパ球が濃縮された細胞集団。
【請求項28】
請求項14~26のいずれか1項に記載の方法によって取得可能な、例えば取得される、細胞集団を含む組成物。
【請求項29】
治療法に使用するための、請求項27に記載の細胞集団または請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
がん、感染症または炎症性疾患の治療方法で使用するための、請求項27に記載の細胞集団または請求項28に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に養子免疫療法で使用するための、ナチュラルキラー(NK)細胞及びγδT細胞を含む組成物に関する。本発明はまた、試料を抗TCRデルタ可変1(抗Vδ1)抗体と接触させることを含む、そのような組成物を調製するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
最近の非細胞免疫療法(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)及び細胞免疫療法(例えば、αβCAR-T細胞を標的とするCD19療法)の成功により、未改変及び遺伝子改変されたTreg、iNK-T、γδT細胞、NK細胞及びマクロファージを利用した新規免疫療法アプローチの開発が促進されている。そのような高度な治療薬(ATMP)の製造には、様々なサイトカイン、培地、刺激ビーズ、フィーダー細胞の組み合わせを利用した複雑なプロセスが必要である。現在、これらの治療法の広範な応用は、複雑な製造プロセスと根底にある物流上の課題により、扱いにくく費用がかかる。
【0003】
例えば、CAR修飾αβT細胞療法の大部分は自家移植に限定されており、製造実行の成功はドナー材料の品質によって大きく左右される。これらの治療法にはいくつかの欠点がある。第1に、αβT細胞はMHC拘束性であるため、同種異系環境で致死的な移植片対宿主病を生じさせる。第2に、CAR-T療法の大部分は、サイトカイン放出症候群、神経毒性、オンターゲットのオフ腫瘍毒性(on-target off-tumour toxicities)などの望ましくない副作用と関連している。第3に、αβT細胞の固形腫瘍部位への移動が不十分であるため、固形腫瘍を標的とするアプローチの治療効果が妨げられる。
【0004】
同種異系環境でのこの画期的な技術の使用を支援するために、本科学分野では2つの主な戦略が追求される:(1)洗練された遺伝子編集法を使用して(例えば、天然のαβTCRをノックアウトすることにより)T細胞MHCを非拘束性にするか、または(2)本質的にMHC非拘束性の細胞型(すなわち、NK細胞及びγδT細胞)を送達ビヒクルとして利用して、真の同種細胞産物を生成する。どちらのアプローチにもそれぞれ課題があり、遺伝子編集では製造プロセスと品質管理のステップが困難になり、一方、非拘束性細胞型の培養には明確なサイトカイン環境及び/またはフィーダー細胞系が必要である。血液源または細胞株のいずれかからNK細胞を増殖させる確立された方法があるが、これらの方法のほとんどは、放射線を照射して後で除去する必要がある同種フィーダー細胞の使用を含む。ほとんどの方法は、製造中にフィーダー層として遺伝的に導入された膜結合サイトカインと共刺激分子を使用する照射腫瘍細胞株(K562)を使用するところまで行く。いくつかの場合(すなわち、NK細胞療法)では、細胞産物の凍結保存が不十分であり、その後の細胞傷害性の可能性が低下するため、この療法の広範な既製の適用が妨げられている。
【0005】
外来性サイトカインの添加を使用するγδT細胞の増殖方法は、以前に記載されており、WO2017/072367及びWO2018/212808を参照されたい。薬理学的に改変された形態のヒドロキシ-メチルブタ-2-エニルピロリン酸(HMBPP)または臨床的に承認されたアミノビスホスホネートを使用する患者自身のγδT細胞の増殖方法もまた、記載されている。これらのアプローチにより、250人を上回るがん患者が治療を受けており、一見安全に見えるが、完全な寛解はごくまれである。多数のγδT細胞を増殖させることができる方法が依然として必要である。
【0006】
NK細胞とγδT細胞は、MHCの拘束を受けず、その活性化がMHC結合抗原の認識に依存しないため、特に魅力的な免疫療法剤である。それらはいくつかの特定の機能を共有しているが(例えば、健康な細胞と悪性の細胞を識別する能力、天然の細胞傷害性受容体の存在など)、それらは進化的に保存されており、各細胞型は独自の免疫学的特性を備えている。これには、NK細胞を介した自己及びNCRリガンド認識の欠落の概念、ならびに抗体依存性細胞傷害(ADCC)を実行するために抗体と協働する可能性など、各細胞型のユニークな作用機序が含まれるが、これらに限定されない。NCRに加えて、Vδ1細胞はMHC非拘束性TCRも使用して、腫瘍関連抗原を認識し、特定の組織部位に移動する。Vδ2T細胞は、変異したp53がん遺伝子を有する悪性細胞に関連する特徴であるメバロン酸経路の代謝活性の増加を感知することにより、悪性細胞を認識することができるユニークな不変型TCRを有する。広範囲の標的認識と細胞傷害性様式に加えて、先天性リンパ球は、炎症を持続的な適応反応に橋渡しする。例えば、γδT細胞はB細胞と相互作用し、免疫グロブリン(IG)クラスの切り替えを促進して、腫瘍抗原に対する抗体応答を向上させることができる。NK細胞とγδT細胞の両方が抗原提示細胞を引き付けて成熟させ、長期にわたる免疫応答を開始させる可能性を有する患者自身の免疫系にドナー細胞を正式に橋渡しする。NK細胞とγδT細胞によって作成された炎症環境は、従来のαβT細胞をさらに引き付けて活性化する。
【0007】
NK細胞は、感染症(例えば、ウイルス、細菌、または真菌によって引き起こされる)と戦うのに非常に強力であり、一方、Vδ1γδT細胞は、CMVの再活性化(免疫不全患者、例えば、移植レシピエント及び重度の治療を受けたがん患者における重大な問題)に対する認識と保護の基本となる。さらに、CMV活性化Vδ1γδT細胞は、移植後の免疫抑制剤治療患者における二次性悪性腫瘍のリスクを有意に低減する。
【0008】
Vδ2γδT細胞は、HMBPP(主に原核生物及び一部の真核細胞型によって主に使用される非メバロン酸経路の非常に高親和性の中間体)の認識を通じてマイコバクテリア感染症を認識し、排除する上で基本的に重要である。Vδ2細胞は、原生動物も認識し、マラリア感染症に対する免疫応答に大きく貢献する。
【0009】
理想的には、同種異系の市販の細胞療法製品は、上記の細胞型のそれぞれが独自に所有するすべての利点、すなわち、悪性細胞に対する細胞傷害性の強化、ウイルス及び細菌感染症に対する広範な保護などを組み合わせ、同時に、各特異な細胞産物の制限を緩和し、抗原ドリフト、腫瘍逃避または免疫抑制のリスクを軽減する。現在、そのような併用療法は利用できず、細胞の種類ごとに個別の製造を行った後、事前に定義された比率で細胞を混合する必要がある。本発明は、この主要な製造上の課題を克服することを目的としている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様により、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも40%がCD56brightである、ナチュラルキラー(NK)細胞及びγδT細胞を含む単離された組成物を提供する。
【0011】
本発明のさらなる態様により、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも50%がCD56を発現する、NK細胞及びγδT細胞を含む単離された組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらなる態様により、細胞を含む単離された組成物を提供し、その場合、少なくとも90%の細胞がNK細胞及びγδT細胞からなり、少なくとも10%の細胞がVδ1T細胞であり、少なくとも5%の細胞がVδ2T細胞であり、少なくとも30%の細胞がNK細胞である。
【0013】
本発明のさらなる態様により、インターロイキン-15(IL-15)の存在下及びインターロイキン-4(IL-4)の非存在下で抗TCRデルタ可変1(抗Vδ1)抗体またはその断片を使用してγδT細胞及びNK細胞を含む混合細胞集団を刺激し、この混合細胞集団を培養することを含む、非γδ+MHC非拘束性リンパ球の増殖方法を提供する。
【0014】
本発明のさらなる態様により、MHC非拘束性リンパ球を濃縮させた細胞集団を含む組成物の調製方法を提供し、この方法は、
(1)対象から取得した試料を、
(i)抗Vδ1抗体またはその断片、及び
(ii)IL-15の存在下、IL-4の非存在下で培養すること(前記培養の初日から)、及び
(2)試料から培養した細胞集団を単離することを含む。
【0015】
本発明のさらなる態様により、本明細書で定義される方法によって得られる組成物を提供する。
【0016】
本発明のさらなる態様により、本明細書で定義される方法によって得た組成物を提供する。
【0017】
本発明のさらなる態様により、治療薬に使用するための本明細書で定義される組成物を提供する。
【0018】
本発明のさらなる態様により、がん、感染症または炎症性疾患を治療する方法で使用するための、本明細書で定義される組成物を提供する。
【0019】
本発明のさらなる態様により、NK細胞及びγδT細胞を含む治療有効量の組成物を投与することを含む、がん、感染症または炎症性疾患の治療をそれが必要な対象で行う方法を提供し、その場合、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも40%がCD56を発現する。
【0020】
本発明のさらなる態様により、細胞を含む治療有効量の組成物を投与することを含む、がん、感染症または炎症性疾患の治療をそれが必要な対象で行う方法を提供し、その場合、少なくとも90%の細胞がNK細胞とγδT細胞からなり、少なくとも10%の細胞がVδ1T細胞であり、少なくとも5%の細胞がVδ2T細胞であり、少なくとも30%の細胞がNK細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】条件1、2、及び3の細胞培養レジームの概略図。条件1では、細胞を播種し、抗Vδ1抗体、IL-4、IL-1β、IL-21及びIFNγと共に培養する。条件1の培養物にはさらに、回収するまで定期的に抗Vδ1抗体、IL-21及びIL-15を供給する。条件2では、細胞を播種し、抗Vδ1抗体及びIL-15と共に培養する。条件2の培養物にはさらに、回収するまで定期的に抗Vδ1抗体及びIL-15を供給する。条件3では、細胞を播種し、抗Vδ1抗体、IL-15、IL-4、IL-1β、IL-21及びIFNγと共に培養する。条件3の培養物にはさらに、回収するまで定期的にα-Vδ1抗体、IL-21及びIL-15を供給する。条件1、2、及び3の培養を終了し、11~14日目の間に細胞を回収する。
図2】条件1、2または3で培養した場合の、回収した細胞の総収量を示すグラフ。細胞を播種し、24ウェルGREXプレートで培養する。回収後、細胞を濃縮し、NucleoCounter NC250を使用して計数した。条件1と2は、同等の細胞収量を生成するが、条件3は、条件1に比べて細胞収量を増加させる。
図3】異なる培養レジーム(条件1、2または3)で培養した場合の、回収した細胞の免疫細胞組成を示すグラフ。具体的には、この図は、Vδ1+γδT細胞、Vδ2+γδT細胞、及びNK(CD3-CD56+)細胞の全CD45+リンパ球に対する割合を示す。異なる細胞集団の割合を、フローサイトメトリーによって評価した。条件1及び3では、Vδ1+T細胞が高度に濃縮された細胞産物が生成され、一方、条件2では、Vδ1+T細胞、Vδ2+T細胞及びNK細胞の混合集団を含む細胞産物が生成される。
図4】異なる培養レジーム(条件1、2または3)で培養したVδ1+γδT細胞における主要な表現型マーカーの細胞表面マーカーの発現を示すグラフ。より具体的には、NKp30、CD27及びNKG2D細胞表面発現をVδ1+γδT細胞内で試験した。表現型の表面特徴決定を、フローサイトメトリーによって評価した。条件1及び3から生成されたVδ1+T細胞は、CD27及びNKG2Dについて高度に陽性であり、NKp30については低い。条件2から生成されたVδ1+T細胞は、CD27の発現が低いが、NKp30及びNKG2Dの発現が増強される。
図5】様々な抗Vδ1抗体または抗CD3抗体及びIL-15を用いて播種し、培養した場合の、回収した細胞の免疫細胞組成。具体的には、この図は、Vδ1+γδT細胞、Vδ2+γδT細胞、及びNK(CD3-CD56+)細胞の全CD45+リンパ球に対する割合を示す。異なる細胞集団の割合を、フローサイトメトリーによって評価した。2つの別々の抗Vδ1抗体クローンを使用すると、NK細胞とγδT細胞が濃縮される。抗CD3抗体を使用すると、γδT細胞のみが濃縮される。
図6】細胞傷害性。(A)は、異なる培養レジーム(条件1、2または3)で培養し、回収した細胞との共培養によるNALM-6 ALL腫瘍細胞株の殺傷の割合を示す。20~22時間の共培養後、フローサイトメトリーによって殺傷率を評価した。(B)は、CD56陽性リンパ球及びCD56陽性γδT細胞の全CD45+リンパ球に対する割合を示す。異なる細胞集団の割合を、フローサイトメトリーによって評価した。条件2と3はいずれも、NALM-6腫瘍細胞に対する細胞傷害活性を著しく増強する。殺傷の増強は、条件間のCD56発現と相関している。
図7】培養前、及び条件1及び2からの回収後のPBMCにおけるVδ1細胞及びVδ2細胞のCD56発現プロファイル。CD56表面発現を、フローサイトメトリーによる染色強度の分析により測定した。条件2は、固有のPBMCレベルと比較して、Vδ1細胞及びVδ2細胞でのCD56発現強度を大幅に高める。
図8】培養前、及び条件2からの回収後のPBMCにおけるγδT細胞及びNK細胞でのCD56発現。CD56表面発現を、フローサイトメトリーによって測定した。条件2は、γδT細胞とNK細胞の両方でCD56-bright細胞の割合を大幅に高める。
図9】異なる培養レジーム(条件1または2)で生成された細胞の凍結保存後の生存率及び全細胞回収率。NucleoCounter NC250とフローサイトメトリーの両方を使用して、全細胞生存率を評価した。全細胞回収率は、培養終了及び回収後に凍結させた細胞の量に対する、凍結保存細胞の解凍及び洗浄後に計数した全細胞から外挿する。凍結保存後の条件1と2の間で、同等の生存率と細胞回収率が観察される。
図10】凍結保存後の細胞表現型。(A)は、凍結保存前及び凍結保存後の条件2の培養レジームに従って生成された細胞産物の免疫細胞組成の代表的なフロープロットを示す。(B)は、凍結保存前及び凍結保存後に条件2の培養レジームに従って生成された細胞産物に存在する3つの主要な集団(Vδ1+γδT細胞、Vδ2+γδT細胞及びNK(CD3-CD56+)細胞)の表現型細胞表面マーカーの特徴決定を示す。より具体的には、NKp30、CD27、NKG2D及びCD56の細胞表面発現を、存在するすべての免疫細胞集団で分析し、凍結保存前及び凍結保存後のその発現と比較した。条件2は、凍結保存前後で同等の免疫細胞組成と細胞表面マーカーの表現型を示す。
図11】凍結保存後の細胞傷害性。グラフは、広範囲のエフェクター対標的比で、凍結保存後の条件1及び2の培養レジームから生成された細胞産物と共培養した場合のNALM-6 ALL腫瘍細胞株の溶解率を示す。20~22時間の共培養後、フローサイトメトリーによって殺傷率を評価した。条件2は、条件1と比較して、エフェクター対標的比の範囲にわたって、凍結保存後のNALM-6細胞に対する細胞傷害性の増強を示す。
図12】形質導入の許容度の増加。条件1及び2から生成された産物を構成するすべての免疫細胞のレンチウイルスベクターによる形質導入の(A)グラフ及び(B)代表的なフロープロットを示す。形質導入は、レトロネクチンの存在下で実施した。形質導入された細胞産物は、未精製の凍結保存材料を使用して生成した。CAR19陽性細胞の割合は、形質導入の96時間後にフローサイトメトリーによって測定する。フロープロットは、CAR発現Vδ1+γδT細胞の代表的なプロットを示す。条件2は、条件1に比べて形質導入に対する許容度が高いことを示している。
図13A】条件2の培養レジームから生成された細胞の増強されたCAR媒介性細胞傷害性のグラフ及び代表的なフロープロット。より具体的には、広範囲のエフェクター対標的比での条件2培養レジームから生成されたCAR19形質導入及び非形質導入細胞との共培養時にNALM-6死細胞(Sytox+veのCTV+ve)の割合を示す。条件2から生成されたCAR19形質導入細胞は、NALM-6細胞に対する細胞傷害性の増強を示す。エフェクター対標的比が1:100程度に低い場合に、細胞傷害性ターゲティングが観察される。
図13B】条件2の培養レジームから生成された細胞の増強されたCAR媒介性細胞傷害性のグラフ及び代表的なフロープロット。より具体的には、NALM-6との共培養時に条件2から生成された形質導入細胞のエフェクター対標的比1:50(上部右側)及びアポトーシス標的細胞識別(下部右側)の代表的なフロープロットを示す。条件2から生成されたCAR19形質導入細胞は、NALM-6細胞に対する細胞傷害性の増強を示す。エフェクター対標的比が1:100程度に低い場合に、細胞傷害性ターゲティングが観察される。
図14】細胞の割合及び収量。(A)培養レジメンの概略図。細胞を播種し、抗Vδ1抗体(クローンC08)及びIL-15と共に培養する。この実験設定では、12日目に回収するまで、6日目と9日目に細胞にIL-15を補充した。(B)(A)に記載したプロセスを使用して培養した場合の回収された細胞の免疫細胞組成(上)、ならびに5人のドナーから採取した細胞の総収量及び生存率(下)を示すグラフ。
図15】複数のドナー由来の細胞比率。(A)無作為に選択された15人の健康なドナーを使用して、図14Aに記載のように増殖させた場合の、回収した細胞の免疫細胞組成を示すグラフ。具体的には、この図は、Vδ1+γδT細胞、Vδ2+γδT細胞、及びNK(CD3-CD56+)細胞の全CD45+リンパ球に対する割合を示す。(B)生の値を示す表。
図16A】CD56発現と細胞傷害性との関連性。蛍光強度中央値(MFI)として表される、γδT細胞とNK細胞からなる自然免疫細胞の組み合わせ(コンボ)でのCD56発現の誘導。
図16B】CD56発現と細胞傷害性との関連性。図14Aに示すように細胞を培養した場合の0~12日目のコンボ内の異なる免疫細胞サブセットに対するCD56+の割合として表される、γδT細胞とNK細胞からなる自然免疫細胞の組み合わせ(コンボ)でのCD56発現の誘導。
図16C】CD56発現と細胞傷害性との関連性。8人のドナー由来のCD3+細胞(γδT細胞)でのCD56発現と細胞傷害性との相関。グラフは、sytox+標的細胞の割合とCD56+T細胞の割合の間の線形回帰を示す(R=0.93,p=0.0001)。
図17】ホーミング/ケモカイン免疫細胞コンボの受容体プロファイル。図14Aに記載のように細胞を培養し、次いで凍結保存した。解凍後、示したマーカーに対する抗体で細胞を染色し、フローサイトメトリーで取得した。グラフは、3人のドナー由来の目的のマーカーを発現する各免疫サブセットの割合を示す。
図18A】免疫細胞コンボにおけるCD56発現と形質導入能との相関。図14Aに示すように細胞を培養し、実施例8に記載のように形質導入した。回収時の形質導入効率を示す。グラフは、免疫細胞コンボの全形質導入効率及び各表示メンバーの形質導入効率を示す。
図18B】免疫細胞コンボにおけるCD56発現と形質導入能との相関。CD56発現によって階層化されたVδ1+サブセット内の形質導入効率。
図18C】免疫細胞コンボにおけるCD56発現と形質導入能との相関。図14Aに示すようにC08及びIL-15を使用して、またはOKT3+IL-4+IL-21+IFNγ+IL-1β(実施例1の修正条件1)を使用して培養したVδ1+細胞でのCD56発現を示すフローサイトメトリーデータ(上部パネル)。グラフ(下部パネル)は、CD56発現によって階層化された、OKT3+IL-4+IL-21+IFNγ+IL-1βを使用して培養した細胞由来のVδ1+サブセット内の形質導入効率を示す。より低いCD56発現が観察され、この条件での形質導入効率に対するCD56発現の影響は、図14Aに記載のプロセスを使用して培養した細胞と比較してはるかに低い。
図19】免疫細胞の組み合わせ(「コンボ」)による固形腫瘍標的の細胞傷害性ターゲティング。図14Aに記載されているように生成されたエフェクター細胞を使用した、示されるエフェクター:標的比での(A)OVCAR細胞(卵巣癌起源)及び(B)HeLa(子宮頸癌起源)の標的細胞溶解率。形質導入されていない免疫細胞コンボと、4-1BB及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体を標的とするメソセリンで形質導入された遺伝子改変コンボ細胞の比較。対照として、同じ結合剤及びシグナル伝達ドメインを使用する最先端のαβCAR-T細胞を使用した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書で使用する場合、以下の用語は、下記のそれぞれ与えられる意味を有する。
【0023】
ガンマデルタ(γδ)T細胞は、表面に別個の定義されたT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞の小さいサブセットを表す。このTCRは、1つのガンマ(γ)鎖及び1つのデルタ(δ)鎖から構成されている。各鎖には、可変(V)領域、定常(C)領域、膜貫通領域、及び細胞質尾部が含まれている。V領域には、抗原結合部位が含まれている。ヒトγδT細胞には2つの主要なサブタイプがあり、1つは末梢血で優勢であり、もう1つは非造血組織で優勢である。2つのサブタイプは、細胞に存在するδ及び/またはγの種類によって定義され得る。例えば、末梢血で優勢なγδT細胞は、主にデルタ可変2鎖(Vδ2)を発現する。非造血組織において優性である(すなわち、組織常在性である)γδT細胞は、主にデルタ可変1(Vδ1)鎖を発現する。Vγをコードする主なTGRV遺伝子セグメントは、TRGV2、TRGV3、TRGV4、TRGV5、TRGV8、TRGV9及びTRGV11、ならびに非機能遺伝子TRGV10、TRGV11、TRGVA及びTRGVBである。最も頻度の高いTRDV遺伝子セグメントは、Vδ1、Vδ2、及びVδ3をコードし、さらにVδ及びVαの両方の名称を有するいくつかのVセグメントをコードする(Adams et al.,296:30-40(2015)Cell Immunol.)。
【0024】
「Vδ1T細胞」への言及は、Vδ1鎖を有するγδT細胞、すなわち、Vδ1T細胞を指す。
【0025】
「デルタ可変1」への言及は、Vδ1またはVd1とも称され得るが、一方、この領域を含むTCR鎖をコードするヌクレオチドは、「TRDV1」と称され得る。γδTCRのVδ1鎖と相互作用する抗体またはその断片はすべて、事実上、Vδ1に結合する抗体またはその断片であり、「抗TCRデルタ可変1抗体またはその断片」あるいは「抗Vδ1抗体またはその断片」と称され得る。
【0026】
本明細書では、「デルタ可変2」鎖などの他のデルタ鎖をさらに参照する。これらも同様に参照することができる。例えば、デルタ可変2鎖はVδ2と称され得るが、この領域を含むTCR鎖をコードするヌクレオチドは「TRDV2」と称され得る。好ましい実施形態では、γδTCRのVδ1鎖と相互作用する抗体またはその断片は、Vδ2などの他のデルタ鎖とは相互作用しない。
【0027】
本明細書では、「ガンマ可変鎖」への言及も行う。これらはγ鎖またはVγとも称され得るが、この領域を含むTCR鎖をコードするヌクレオチドはTRGVと称され得る。例えば、TRGV4は、Vγ4鎖を指す。好ましい実施形態では、γδTCRのVδ1鎖と相互作用する抗体またはその断片は、Vγ4などのガンマ鎖とは相互作用しない。
【0028】
「ナチュラルキラー細胞」すなわち「NK細胞」への言及は、TCRまたはCD3を発現せず、大部分がCD56の発現に対して陽性である自然様リンパ球であるナチュラルキラー細胞を指す。NK細胞は、FC受容体CD16、ならびにNKp44及びNKp46及びNKG2Dなどの天然の細胞傷害性受容体も発現することができる。ヒトNK細胞は、CD56の細胞表面密度に基づいて2つのサブセット(CD56brightとCD56dim)に分けることができ、それぞれ異なる表現型特性を有する。末梢血中のほとんどのNK細胞はCD56dimであるが、CD56bright NK細胞は組織内により豊富に存在している。CD56発現は活性化のマーカーであると考えられており、CD56dim NK細胞は、そのCD56発現を上方制御してCD56bright免疫表現型を採用している(Van Acker et al.(2017)Front.Immunol.8:892)。
【0029】
「MHC非拘束性リンパ球」または「非MHC拘束性リンパ球」への言及は、認識または免疫応答の開始のために、エフェクターと標的細胞との間の主要組織適合性複合体(MHC)適合性を必要としないリンパ球を指す。したがって、これらのリンパ球がMHC認識を必要としないため、この用語はNK細胞とγδT細胞を指す。
【0030】
「非γδ+MHC非拘束性リンパ球」への言及は、γδTCRを発現しない(すなわち、γδ-)MHC非拘束性リンパ球を指す。したがって、この用語はNK細胞を指す。
【0031】
用語「抗体」には、少なくとも1つの抗原結合部位(ABS)を含む少なくとも1つの抗体可変ドメインを含む、任意の抗体タンパク質構築物が含まれる。抗体には、IgA型、IgG型、IgE型、IgD型、IgM型(及びそのサブタイプ)の免疫グロブリンが含まれるが、これらに限定されない。2つの同一の重(H)鎖ポリペプチド及び2つの同一の軽(L)鎖ポリペプチドから組み立てられた免疫グロブリンG(IgG)抗体の全体的な構造は十分に確立されており、哺乳動物で高度に保存されている(Padlan(1994)Mol.Immunol.31:169-217)。
【0032】
従来の抗体または免疫グロブリン(Ig)は、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖を含むタンパク質である。各鎖は、定常領域と可変ドメインに分割される。重(H)鎖可変ドメインは本明細書ではVHと略され、軽(L)鎖可変ドメインは本明細書ではVLと略される。これらのドメイン、それに関連するドメイン及びそれに由来するドメインは、本明細書では免疫グロブリン鎖可変ドメインと称され得る。VHドメイン及びVLドメイン(VH領域及びVL領域とも称される)は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存されている領域と共に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される領域にさらに細分され得る。フレームワーク領域及び相補性決定領域は、明確に定義されている(Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition U.S.Department of Health and Human Services,(1991)NIH Publication Number 91-3242)。例えば、Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883に記載されているような、CDR配列についての別の番号付け規則もある。従来の抗体において、各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列される、3つのCDR及び4つのFRで構成される。2つの免疫グロブリン重鎖及び2つの免疫グロブリン軽鎖の従来の抗体四量体は、例えばジスルフィド結合によって相互接続された免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖、ならびに同様に接続された重鎖で形成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2及びCH3を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。重鎖の可変ドメイン及び軽鎖の可変ドメインは、抗原と相互作用する結合ドメインである。抗体の定常領域は、通常、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の構成要素(C1q)を含めた、宿主組織または因子への抗体の結合を媒介する。
【0033】
本明細書で使用する場合、抗体の断片(「抗体断片」、「免疫グロブリン断片」、「抗原結合断片」または「抗原結合ポリペプチド」とも称され得る)は、標的に特異的に結合する抗体の一部(または前記一部を含有する構築物)、γδT細胞受容体のデルタ可変1(Vδ1)鎖(例えば、1つ以上の免疫グロブリン鎖が完全長ではないが標的に特異的に結合する分子)を指す。抗体断片という用語に含まれる結合断片の例には、以下が含まれる。
(i)Fab断片(VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1ドメインからなる一価の断片)、
(ii)F(ab’)2断片(ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により結合される2つのFab断片からなる二価の断片)、
(iii)Fd断片(VHドメイン及びCH1ドメインからなる)、
(iv)Fv断片(抗体の単一群のVLドメイン及びVHドメインからなる)、
(v)一本鎖可変断片scFv(組換え法を使用して、VL領域とVH領域が対になって1価の分子を形成する1本のタンパク質鎖として作製されるのを可能にする合成リンカーによって結合したVLドメイン及びVHドメインからなる)、
(vi)VH(VHドメインからなる免疫グロブリン鎖可変ドメイン)、
(vii)VL(VLドメインからなる免疫グロブリン鎖可変ドメイン)、
(viii)ドメイン抗体(dAb、VHドメインまたはVLドメインのいずれかからなる)、
(ix)ミニボディ(CH3ドメインを介して結合するscFv断片の対からなる)、及び
(x)ダイアボディ(小さなペプチドリンカーによって接続された1つの抗体由来のVHドメインと、別の抗体由来のVLドメインからなる、scFv断片の非共有結合二量体からなる)。
【0034】
「ヒト抗体」とは、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を指す。前記ヒト抗体を投与されたヒト対象は、前記抗体内に含有される一次アミノ酸に対する種間抗体応答(例えば、HAMA-ヒト抗マウス抗体-応答と称される)を生成しない。前記ヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、ランダムまたは部位特異的突然変異誘発または体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含み得る。しかしながら、前記用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図していない。宿主細胞内に形質転換された組換え発現ベクターを使用して発現した抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子について遺伝子導入した動物(例えば、マウス)から単離された抗体などの組換え手段により調製、発現、作成もしくは単離されたヒト抗体、または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含有する任意の他の手段により調製、発現、作成もしくは単離された抗体は、「組換えヒト抗体」とも称され得る。
【0035】
非ヒト免疫グロブリン可変ドメインのフレームワーク領域の少なくとも1つのアミノ酸残基をヒト可変ドメイン由来の対応する残基で置換することは、「ヒト化」と称される。可変ドメインのヒト化は、ヒトの免疫原性を低下させ得る。
【0036】
「特異性」とは、特定の抗体またはその断片が結合できる異なる種類の抗原または抗原決定基の数を指す。抗体の特異性は、特定の抗原を固有の分子実体として認識し、それを別の抗原と区別する抗体の能力である。抗原またはエピトープに「特異的に結合する」抗体は、当技術分野でよく理解されている用語である。分子が、他の標的と反応する場合よりも特定の標的抗原またはエピトープとより頻繁に、より迅速に、より持続的に及び/またはより高い親和性で反応する場合、前記分子は「特異的結合」を示すと言われる。抗体が、他の物質と結合する場合よりも高い親和性、結合活性で、より容易に及び/または高い持続性で結合する場合、前記抗体は、標的抗原またはエピトープに「特異的に結合する」。
【0037】
抗原と抗原結合ポリペプチドとの解離に関する平衡定数(KD)によって表される「親和性」とは、抗原決定基と抗体(またはその断片)上の抗原結合部位との間の結合強度の尺度である。KDの値が小さいほど、抗原決定基と抗原結合ポリペプチドとの間の結合強度は強くなる。あるいは、親和性は、親和定数(KA)、1/KDとして表すこともできる。親和性は、目的の特定の抗原に応じて、既知の方法で決定することができる。
【0038】
10-6未満の任意のKD値は、結合を示しているとみなされる。抗体またはその断片の抗原または抗原決定基への特異的結合は、例えば、スキャッチャード分析及び/またはラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイなどの競合結合アッセイ、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光法(例えば蛍光アッセイを使用する)、ならびに当技術分野で公知のこれらの様々な変形を含む、任意の好適な既知の方法で決定することができる。
【0039】
「結合活性」は、抗体またはその断片と関連する抗原との間の結合の強さの尺度である。結合活性は、抗原決定基と抗体上のその抗原結合部位との間の親和性、及び抗体上に存在する適切な結合部位の数の両方に関連している。
【0040】
「ヒト組織Vδ1+細胞」ならびに「造血及び血液Vδ1+細胞」ならびに「腫瘍浸潤リンパ球(TIL)Vδ1+細胞」は、それぞれヒト組織もしくは造血血液系もしくはヒト腫瘍に含まれるか、またはそれらに由来する、Vδ1+を発現する(Vδ1+)細胞として定義される。すべての前記細胞型は、それらの(i)位置またはそれらが由来する場所、及び(ii)Vδ1+TCRのそれらの発現によって同定することができる。
【0041】
「調節抗体」は、細胞周期、及び/または細胞数、及び/または細胞生存率、及び/または1つ以上の細胞表面マーカー、及び/または1つ以上の分泌分子(例えば、サイトカイン、ケモカイン、ロイコトリエンなど)の分泌、及び/または抗体が結合する標的を発現する細胞に接触または結合する際の機能(標的細胞または疾患細胞に対する細胞傷害性など)における測定可能な変化を含むがこれらに限定されない、測定可能な変化を与える抗体である。
【0042】
細胞またはその集団を「調節する」方法は、前記細胞(複数可)または細胞からの分泌物における少なくとも1つの測定可能な変化において、1つ以上の「調節された細胞」を生成するように誘発される方法を指す。
【0043】
「免疫応答」は、例えば、調節抗体の添加などの際の、免疫系の少なくとも1つの細胞、または1つの細胞型、または1つの内分泌経路、または1つの外分泌経路における測定可能な変化である(細胞媒介性応答、体液性応答、サイトカイン応答、ケモカイン応答を含むが、限定されない)。
【0044】
「免疫細胞」は、CD34+細胞、B細胞、CD45+(リンパ球共通抗原)細胞、アルファ-ベータT細胞、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、形質細胞、好中球、単球、マクロファージ、赤血球、血小板、樹状細胞、食細胞、顆粒球、自然リンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞及びガンマデルタT細胞を含むがこれらに限定されない免疫系の細胞として定義される。一般的には、コンビナトリアル細胞表面分子分析(例えば、フローサイトメトリーによる)を用いて免疫細胞を分類して、同定またはグループ化またはクラスター化して、免疫細胞を部分集団に区分する。次いでこれらを、追加の分析でさらに細分化することができる。例えば、CD45+リンパ球を、さらにvδ陽性集団とvδ陰性集団に細分化することができる。
【0045】
「疾患細胞」は、がんなどの疾患、ウイルス感染症などの感染症、または炎症状態もしくは炎症性疾患の進行に関連する表現型を示す。例えば、疾患細胞は、腫瘍細胞、自己免疫組織細胞またはウイルス感染細胞であり得る。したがって、前記疾患細胞は、腫瘍性、またはウイルス感染性、または炎症性と定義され得る。
【0046】
「健康な細胞」とは、疾患にかかっていない正常な細胞を指す。それらは、「正常」または「非疾患」細胞とも称され得る。非疾患細胞には、非がん細胞、または非感染細胞、または非炎症細胞が含まれる。前記細胞は、医薬品によって付与される疾患細胞特異性を判定し、及び/または医薬品の治療指数をよりよく理解するために、多くの場合、関連する疾患細胞と一緒に使用される。
【0047】
「疾患細胞特異性」は、エフェクター細胞またはその集団(例えば、Vδ1+細胞の集団など)が、非疾患細胞すなわち健康な細胞に危害を加えない一方で、がん細胞などの疾患細胞を区別して殺傷するのにどれだけ効果的であるかの尺度である。この可能性は、モデル系で測定することができ、エフェクター細胞、またはエフェクター細胞の集団が、疾患細胞を選択的に殺傷または溶解する傾向と、前記エフェクター細胞(複数可)が非疾患細胞すなわち健康な細胞を殺傷または溶解する可能性とを比較することを含み得る。前記疾患細胞特異性から、医薬品の潜在的な治療指数を知ることができる。
【0048】
「増強された疾患細胞特異性」は、例えばVδ1+細胞またはその集団などのエフェクター細胞の表現型を表し、疾患細胞を特異的に殺傷するその能力をさらに高めるように調節されている。この増強は、疾患細胞殺傷特異性または選択性の倍数変化または割合の増加を含む、様々な方法で測定することができる。
【0049】
好適には、本発明の抗体またはその断片(すなわち、ポリペプチド)は、単離されている。「単離された」ポリペプチドまたは組成物は、元の環境から除去されたポリペプチドまたは組成物である。用語「単離された」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すために用いられ得る(例えば、Vδ1に特異的に結合する単離された抗体またはその断片は、Vδ1以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。
【0050】
好適には、本発明で使用される組成物は、単離されている。「単離された」組成物は、元の環境から除去された組成物である。例えば、天然の組成物は、それが天然の系で共存する材料のいくつかまたはすべてから分離されている場合に、単離されている。組成物は、例えば、それがin vitroまたはex vivoで調製される場合、単離されているとみなされる。
【0051】
抗体またはその断片は、天然の対立遺伝子バリアント及び突然変異体または任意の他の非天然バリアントも含む「機能的に活性なバリアント」であってもよい。当技術分野で公知のように、対立遺伝子バリアントは、ポリペプチドの生物学的機能を本質的に変化させない1つ以上のアミノ酸の置換、欠失または付加を有することを特徴とする(ポリ)ペプチドの代替形態である。非限定的な例として、CDRを含有するフレームワークを改変する場合、CDR自体を改変する場合、前記CDRを代替のフレームワークにグラフトする場合、またはN末端もしくはC末端の伸長を組み込む場合、前記機能的に活性なバリアントは依然として機能し得る。さらに、CDR含有結合ドメインを、異なるパートナー鎖、例えば、別の抗体と共有される鎖と対合させてもよい。いわゆる「共通の」軽鎖または「共通の」重鎖と共有される場合、前記結合ドメインは依然として機能し得る。さらに、前記結合ドメインは、多量体化された場合に機能し得る。さらに、「抗体またはその断片」はまた、VHもしくはVLもしくは定常ドメインが異なるカノニカル配列(例えば、IMGT.orgに記載されているような)から離れてまたはそれに向かって改変され、かつ依然として機能する機能性バリアントを含み得る。
【0052】
2つの密接に関連するポリペプチド配列を比較する目的で、第1のポリペプチド配列と第2のポリペプチド配列との間の「%の配列同一性」を、NCBI BLAST v2.0を使用し、ポリペプチド配列の標準設定(BLASTP)を使用して計算してもよい。2つの密接に関連するポリヌクレオチド配列を比較する目的で、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間の「%の配列同一性」を、NCBI BLAST v2.0を使用し、ヌクレオチド配列の標準設定(BLASTN)を使用して計算してもよい。
【0053】
ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、それらがその全長にわたって100%の配列同一性を共有する場合、他のポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列と同じまたは「同一」であると言及される。配列内の残基は、左から右へ、すなわちポリペプチドのN末端からC末端へ、ポリヌクレオチドの5’末端から3’末端へと番号付けされる。
【0054】
配列間の「差異」とは、第1の配列と比較して、第2の配列の位置における単一のアミノ酸残基の挿入、欠失または置換を指す。2つのポリペプチド配列は、1つ、2つまたはそれ以上のそのようなアミノ酸の差異を含むことができる。第1の配列と他の点では同一である(100%の配列同一性)第2の配列の挿入、欠失または置換により、%配列同一性が減少する。例えば、同一の配列が9アミノ酸残基長である場合、第2の配列の1つの置換により、88.9%の配列同一性になる。第1のポリペプチド配列及び第2のポリペプチド配列が9のアミノ酸残基長であり、6の同一の残基を共有する場合、第1のポリペプチド配列及び第2のポリペプチド配列は、66%を超える同一性を共有する(第1のポリペプチド配列及び第2のポリペプチド配列は、66.7%の同一性を共有する)。
【0055】
あるいは、第1の参照ポリペプチド配列を第2の比較ポリペプチド配列と比較する目的で、第2の配列を生成するために第1の配列に対して行われた付加、置換及び/または欠失の数を確認してもよい。「付加」とは、第1のポリペプチドの配列への1つのアミノ酸残基の付加である(第1のポリペプチドのいずれかの末端での付加を含む)。「置換」とは、第1のポリペプチドの配列における1つのアミノ酸残基を1つの異なるアミノ酸残基で置換することである。前記置換は、保存的でも非保存的でもよい。「欠失」とは、第1のポリペプチドの配列からの1つのアミノ酸残基の欠失である(第1のポリペプチドのいずれかの末端での欠失を含む)。
【0056】
「保存的」アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の化学構造の別のアミノ酸残基で置き換えられ、ポリペプチドの機能、活性または他の生物学的特性にほとんど影響を及ぼさないと予想されるアミノ酸置換である。そのような保存的置換は、好適には、以下の群内の1つのアミノ酸が同じ群内からの別のアミノ酸残基によって置換される置換である。
【0057】
【表1】
【0058】
好適には、疎水性アミノ酸残基は非極性アミノ酸である。より好適には、疎水性アミノ酸残基は、V、I、L、M、F、WまたはCから選択される。
【0059】
本明細書で使用する場合、ポリペプチド配列の番号付けならびにCDR及びFRの定義は、Kabatシステムに従って定義されるとおりである(Kabat et al.,1991、その全体が参照により本明細書に援用される)。第1のポリペプチド配列と第2のポリペプチド配列との間の「対応する」アミノ酸残基は、第2の配列のアミノ酸残基とKabatシステムに従って同じ位置を共有する第1の配列のアミノ酸残基であり、一方で第2の配列のアミノ酸残基は、第1の配列とは同一性が異なる場合がある。フレームワーク及びCDRがKabatの定義に従って同じ長さである場合、好適に対応する残基は同じ番号(及び文字)を共有する。アラインメントは、手動で、または例えば、標準設定を使用するNCBI BLAST v2.0(BLASTPまたはBLASTN)などの配列アラインメントのための既知のコンピューターアルゴリズムを使用することによって達成することができる。
【0060】
本明細書での「エピトープ」への言及は、抗体またはその断片によって特異的に結合される標的の一部を指す。エピトープは「抗原決定基」とも称され得る。抗体は、両方が同一または立体的に重複するエピトープを認識する場合、別の抗体と「本質的に同じエピトープ」に結合する。2つの抗体が同一または重複するエピトープに結合するかどうかを判断するために一般的に使用される方法は、競合アッセイであり、これは、標識抗原または標識抗体のいずれかを使用して複数の様々な形式で構成され得る(例えば、放射性標識もしくは酵素標識を使用したウェルプレート、または抗原発現細胞でのフローサイトメトリー)。
【0061】
タンパク質標的に認められるエピトープは、「線状エピトープ」または「配座エピトープ」として定義され得る。線状エピトープは、タンパク質抗原のアミノ酸の連続配列によって形成される。配座エピトープは、タンパク質配列が不連続であるが、タンパク質がその三次元構造に折りたたまれると一緒になるアミノ酸で形成されている。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、それと連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すことが意図されている。ベクターの一種には「プラスミド」があり、これは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る円形の二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクターならびにエピソーム哺乳動物及び酵母ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらと作動可能に連結した遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技法で利用される発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形態である。本明細書において「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、同じ意味で使用され得る。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)、ならびにバクテリオファージ及びファージミド系などの他の形態の発現ベクターを含むことが意図されている。本明細書で使用する場合、用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を指すことが意図されている。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫を指すことが意図されている(例えば、前記子孫が、その後任意に保存、提供、販売、譲渡、または本明細書に記載の抗体もしくはその断片を製造するために利用される細胞株または細胞バンクを作製するために利用される場合)。
【0063】
「対象」、「患者」または「個体」への言及は、治療される対象、特に哺乳動物対象を指す。哺乳動物対象には、ヒト、非ヒト霊長類、家畜(ウシなど)、スポーツ動物、またはイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラットもしくはマウスなどのペット動物が含まれる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。別の実施形態では、対象は、マウスなどの非ヒト哺乳動物である。
【0064】
用語「十分な量」とは、所望の効果を生成するのに十分な量を意味する。用語「治療有効量」とは、疾患または障害の症状を改善するのに有効な量である。予防は治療とみなすことができるため、治療有効量は「予防有効量」であり得る。
【0065】
本明細書で使用する場合、本明細書で使用する場合の用語「約」は、指定された値より最大で10%(10%を含む)高い値及び最大で10%(10%を含む)低い値を含み、好適には指定された値より最大で5%(5%を含む)高い値及び最大で5%(5%を含む)低い値を含み、特に指定された値を含む。用語「間」には、指定された境界値が含まれる。
【0066】
疾患もしくは障害の徴候もしくは症状の重症度、そのような徴候もしくは症状が対象によって経験される頻度、またはその両方が減少する場合、その疾患または障害は「改善」する。
【0067】
本明細書で使用する場合、「疾患または障害を治療すること」とは、対象が経験した疾患もしくは障害の少なくとも1つの徴候もしくは症状の頻度及び/または重症度を低減することを意味する。
【0068】
本明細書で使用する場合、「がん」とは、細胞の異常な増殖または分裂を指す。一般的に、がん細胞の増殖及び/または寿命は、その周囲の正常な細胞及び組織の増殖及び/または寿命を超えており、協調していない。がんは、良性、前悪性または悪性であり得る。がんは、口腔(例えば、口、舌、咽頭など)、消化器系(例えば、食道、胃、小腸、結腸、直腸、肝臓、胆管、胆嚢、膵臓など)、呼吸器系(例えば、喉頭、肺、気管支など)、骨、関節、皮膚(例えば、基底細胞、扁平上皮細胞、髄膜腫など)、乳房、生殖器系(例えば、子宮、卵巣、前立腺、精巣など)、泌尿器系(例えば、膀胱、腎臓、尿管など)、眼、神経系(例えば、脳など)、内分泌系(例えば、甲状腺など)、及び造血系(例えば、リンパ腫、骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病など)を含む様々な細胞及び組織で発生する。
【0069】
組成物
本明細書において、特に有利な「三つ組」の細胞型:NK細胞、Vδ1細胞及びVδ2細胞を含む組成物を提供する。NK細胞とγδT細胞はどちらもMHC拘束性を欠いており、活性化にMHCを必要としない。これらの細胞はいくつかの生物学を共有しており、健康な細胞に危害を加えない一方で腫瘍細胞を認識することができるが、サブセットを含むNK細胞とγδT細胞は、特定の1つの細胞型にのみ存在し、すべての自然リンパ球には認められない進化的に保存されたユニークな特性を特徴とする。したがって、望ましい細胞アプローチは、各細胞型の利点を組み合わせて、患者自身の適応免疫系と相互作用し、より大きく持続的な免疫応答を調整することができる、ほぼ完全で高度にプライミングされた自然免疫系を患者に補うことである。
【0070】
本発明の一態様により、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも40%がCD56brightである、NK細胞及びγδT細胞を含む組成物を提供する。
【0071】
本発明の別の態様により、組成物中に存在するNK細胞の少なくとも50%がCD56brightである、NK細胞及びγδT細胞を含む組成物を提供する。
【0072】
本発明の一態様により、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも50%がCD56を発現する、NK細胞及びγδT細胞を含む組成物を提供する。
【0073】
神経細胞接着分子(NCAM)としても知られるCD56は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの接着分子であり、NK細胞、αβT細胞、及びγδT細胞における高い細胞傷害性と相関している。CD56は、リンパ球の活性化に寄与する、それ自体へのシス及びトランス結合に関与することが示されている。CD56はまた、リンパ球、リンパ球と抗原提示細胞(APC)、及びリンパ球と標的細胞の間の免疫学的シナプス形成に必要であることも示されている(Nussbaumer and Thurnher(2020)Cells 9(3):772)。
【0074】
細胞の表現型は、CD56の細胞表面密度によって定義することもできる。したがって、CD56bright及びCD56dim細胞の当技術分野で公知のサブタイプが認識されている。本発明の組成物中に存在するγδT細胞上のCD56の発現及び/または強度の増加は、殺傷の増強と相関関係を有することが本明細書で示され、これは本明細書に記載の組成物の治療可能性を示している。
【0075】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約40%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも45%、例えば少なくとも46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約50%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約55%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約60%がCD56brightである。
【0076】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在するNK細胞の少なくとも約50%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するNK細胞の少なくとも60%、例えば少なくとも61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するNK細胞の少なくとも約70%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するNK細胞の少なくとも約75%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するNK細胞の少なくとも約80%がCD56brightである。
【0077】
CD56の表面発現は、フローサイトメトリーによる染色強度分析など、当技術分野で公知の方法を使用して測定することができる。細胞をCD56bright及びCD56dimに分けることは、例えば、Van Acker et al.(2017)Front.Immunol.8:892に記載されているように、当技術分野で理解されている。そのような方法は、試料集団を、NK細胞を含む細胞集団など、既知のCD56発現レベルの参照集団と比較する。NK細胞は、bright及びdimとして識別できる明確なCD56発現レベルを有しているため、この参照集団を使用してゲーティング戦略を確立することにより、本発明の目的のために、試料集団をCD56bright画分とCD56dim画分にソーティングすることもできる。
【0078】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約40%がCD56を発現する。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも45%、例えば少なくとも46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%がCD56を発現する。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約50%がCD56を発現する。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約55%がCD56を発現する。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約60%がCD56を発現する。他の実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも70%、例えば少なくとも75%がCD56を発現する。一実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも80%、例えば少なくとも85%がCD56を発現する。さらなる実施形態では、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも80%が、本明細書に記載の培養の約12日後(12日など)にCD56を発現する。
【0079】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも80%、例えば、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%が、NK細胞及びγδT細胞を含む。一実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも85%が、NK細胞及びγδT細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも90%が、NK細胞及びγδT細胞を含む。さらに別の実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも95%が、NK細胞及びγδT細胞を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも80%、例えば、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%が、NK細胞及びγδT細胞からなる。一実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも85%が、NK細胞及びγδT細胞からなる。さらなる実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも90%が、NK細胞及びγδT細胞からなる。さらに別の実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも95%が、NK細胞及びγδT細胞からなる。
【0081】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも30%がγδT細胞である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約30%のγδT細胞、例えば、少なくとも約31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%または50%のγδT細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物は、少なくとも約40%のγδT細胞、例えば約45%超のγδT細胞を含む。他の実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも15%、例えば少なくとも20%がγδT細胞である。一実施形態では、組成物は、少なくとも約20%のγδT細胞を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在する細胞の80%未満がγδT細胞である。いくつかの実施形態では、組成物は、約80%未満のγδT細胞、例えば、約79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、60%、68%、57%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%または50%未満のγδT細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物は、約60%未満のγδT細胞を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約30%~80%のγδT細胞、例えば、約30%~60%のγδT細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物は、約50%のγδT細胞を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約10%のVδ1T細胞、例えば、少なくとも約11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%のVδ1T細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物は、少なくとも約20%のVδ1T細胞を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約10%~55%のVδ1T細胞、例えば、約10%~30%のVδ1T細胞を含む。一実施形態では、組成物は、約30%のVδ1T細胞を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約5%のVδ2T細胞、例えば、少なくとも約6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%のVδ2T細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物は、少なくとも約7%のVδ2T細胞を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約7%~30%のVδ2T細胞を含む。一実施形態では、組成物は、約15%~20%のVδ2T細胞を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、γδT細胞は、Vδ1細胞、Vδ2細胞、Vδ3細胞、Vδ5細胞、及びVδ8細胞を含む。いくつかの実施形態では、γδT細胞は、Vδ1T細胞及びVδ2T細胞を含む。いくつかの実施形態では、γδT細胞の少なくとも70%、例えば少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%、特に、少なくとも90%が、Vδ1T細胞及びVδ2T細胞からなる。いくつかの実施形態では、γδT細胞は、Vδ1T細胞及びVδ2T細胞からなる。いくつかの実施形態では、γδT細胞は、非Vδ1/Vδ2T細胞を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも30%がNK細胞である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約30%のNK細胞、例えば、少なくとも約31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%または50%のNK細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物は、少なくとも約40%のNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約80%未満のNK細胞、例えば、約79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、60%、68%、57%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%または50%未満のNK細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物は、約60%未満のNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約20%~70%のNK細胞、例えば、約30%~60%のNK細胞を含む。他の実施形態では、組成物は、約40%~50%のNK細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物は、約50%のNK細胞を含む。他の実施形態では、組成物中に存在する細胞の少なくとも約10%がNK細胞である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約10%のNK細胞、例えば、少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%のNK細胞を含む。一実施形態では、組成物は、約10%~75%のNK細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物は、少なくとも約20%のNK細胞を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、組成物は、約10%未満のαβT細胞、例えば、約5%、4%、3%、2%、1.5%、1%、0.5%、0.2%、0.1%または0.05%未満のαβT細胞を含む。さらなる実施形態では、組成物は、約1%未満のαβT細胞を含む。αβ受容体を有するT細胞は非常に反応性が高く、したがって、本発明に関して患者への投与に好適な細胞集団は、低レベルのαβT細胞のみを含み得る。
【0088】
本発明の組成物はまた、組成物中に存在するMHC非拘束性リンパ球の割合によって定義され得る。したがって、本発明のさらなる態様により、細胞を含む組成物を提供し、その場合、少なくとも90%の細胞がNK細胞及びγδT細胞からなり、少なくとも10%の細胞がVδ1T細胞であり、少なくとも5%の細胞がVδ2T細胞であり、少なくとも30%の細胞がNK細胞である。Vδ1、Vδ2及びNK細胞の割合は、本明細書で前述したとおりであってもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも13%の細胞がVδ1T細胞であり、少なくとも7%の細胞がVδ2T細胞であり、少なくとも35%の細胞がNK細胞である。いくつかの実施形態では、少なくとも20%の細胞がVδ1T細胞であり、少なくとも10%の細胞がVδ2T細胞であり、少なくとも40%の細胞がNK細胞である。他の実施形態では、少なくとも30%の細胞がVδ1T細胞であり、少なくとも20%の細胞がVδ2T細胞であり、少なくとも35%の細胞がNK細胞である。
【0089】
本明細書に記載されるように、γδT細胞は、Vδ1T細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物中に存在するVδ1T細胞は、高レベルのNKp30を発現する。例えば、Vδ1T細胞の約10%超、例えば、約15%、20%または25%超がNKp30を発現する(すなわち、NKp30+)。いくつかの実施形態では、γδT細胞はVδ1T細胞を含み、前記Vδ1T細胞の少なくとも15%がNKp30を発現する。
【0090】
いくつかの実施形態では、組成物中に存在するVδ1T細胞は、低レベルのCD27を発現する(CD27low)。例えば、Vδ1T細胞の約70%未満、例えば、約50%、40%または30%未満がCD27を発現する(すなわち、CD27+)。いくつかの実施形態では、γδT細胞はVδ1T細胞を含み、前記Vδ1T細胞の50%未満がCD27を発現する。
【0091】
改変細胞を含む組成物
自然リンパ球は、1つの受容体を介して増殖、活性化、サイトカイン産生、及び殺傷を制御しない。したがって、本明細書に記載の組成物により、αβT細胞において、または特に1つの先天性細胞型内においてさえ、不可能またはあまり有利ではない遺伝子改変戦略が可能になるであろう。例えば、非シグナル伝達CAR、例えば、WO2019180279に記載されている非シグナル伝達CARを使用することができる。特定のドメインを使用すると、バランスの取れた応答が開始され、例えば、DAP10は、NK細胞の活性化と殺傷、Vδ1T細胞のTh1サイトカイン産生などの応答を引き起こし得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、単離された組成物は、改変NK細胞及びγδT細胞を含む。本明細書に提供する実施例に示されるように、特許請求する組成の細胞は、形質導入に対する寛容性が向上しており、それにより、この細胞は遺伝子改変方法に適したものとなっていることが示されている。
【0093】
当該組成の細胞を、例えば、膜結合タンパク質(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)などの細胞表面受容体、αβTCR、天然の細胞傷害性受容体(例えば、NKp30、NKp44、またはNKp46)、サイトカイン、サイトカイン受容体(例えば、IL-12受容体)、ケモカイン受容体(例えば、CCR2受容体))、選択マーカー(例えば、レポーター遺伝子)、または自殺遺伝子をコードし得る1つ以上の導入遺伝子を発現するように改変してもよい。いくつかの場合では、本発明は、CAR及び任意選択で1つ以上の追加の導入遺伝子コードタンパク質(例えば、アーマータンパク質)を発現するように改変されたMHC非拘束性リンパ球の集団を提供する。いくつかの実施形態では、1つ以上の導入遺伝子は、コドン最適化されている。
【0094】
いくつかの実施形態では、改変NK細胞及びγδT細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する。用語「キメラ抗原受容体」または「CAR」とは、細胞を活性化する活性化シグナルを伝播する細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む組換えポリペプチド構築物を指す。いくつかの実施形態では、CARは、CAR融合タンパク質のN末端に任意選択のリーダー配列を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、改変された細胞の少なくとも20%(例えば、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的にすべて)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変された細胞の少なくとも50%(例えば、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的にすべて)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変された細胞の20%~80%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。他の実施形態では、改変された細胞の約20%~60%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変された細胞の40%~70%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。
【0096】
いくつかの実施形態では、改変されたNK細胞の少なくとも約20%(例えば、少なくとも20%、25%、30%、35%または40%)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変されたNK細胞の少なくとも40%(例えば、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的にすべて)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変されたNK細胞の少なくとも50%(例えば、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的にすべて)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。他の実施形態では、改変されたNK細胞の少なくとも70%(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または実質的にすべて)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変されたNK細胞の40%~95%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変されたNK細胞の50%~80%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。他の実施形態では、改変されたNK細胞の約20%~70%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。
【0097】
いくつかの実施形態では、改変されたγδT細胞の少なくとも20%(例えば、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的にすべて)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変されたγδT細胞の少なくとも30%(例えば、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的にすべて)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変されたγδT細胞の少なくとも約50%(例えば、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または実質的にすべて)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変されたγδT細胞の20%~60%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変されたγδT細胞の30%~55%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。他の実施形態では、改変されたγδT細胞の約35%~60%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。
【0098】
本明細書に提供する実施例にも示されるように、特許請求する組成のCD56+細胞は、形質導入に対する寛容性がなお向上しており、それにより、この細胞は遺伝子改変方法に特に適したものとなっていることが示されている。
【0099】
いくつかの実施形態では、改変されたCD56+細胞の少なくとも20%(例えば、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。他の実施形態では、改変されたCD56+細胞の少なくとも約40%(例えば、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または80%)が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、改変されたCD56+細胞の約20%~80%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。他の実施形態では、改変されたCD56+細胞の約45%~75%が導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合タンパク質もしくは可溶性タンパク質を発現する。
【0100】
医薬組成物
本発明のさらなる態様により、本明細書で定義される方法によって得た組成物を提供する。本発明のさらなる態様により、本明細書で定義される方法によって得た細胞集団を含む医薬組成物を提供する。そのような実施形態において、組成物は、任意選択で他の賦形剤と組み合わせて、細胞を含み得る。1つ以上の追加の活性薬剤(例えば、本明細書に記載の疾患を治療するのに適した活性薬剤)を含む組成物も含まれる。
【0101】
医薬組成物は、MHC非拘束性リンパ球、特に本明細書に記載の増殖したMHC非拘束性リンパ球を、1つ以上の薬学的もしくは生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含み得る。そのような組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化物質、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、及び防腐剤を含み得る。本発明の医薬組成物に使用し得る凍結保存溶液は、例えばDMSOを含む。組成物は、例えば静脈内投与のために製剤化することができる。
【0102】
一実施形態では、医薬組成物は、汚染物質、例えば、エンドトキシンまたはマイコプラズマを実質的に含まない(例えば、検出可能なレベルで存在しない)。
【0103】
好ましい投与様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、髄腔内)である。好ましい実施形態では、組成物を静脈内注入または注射によって投与する。別の好ましい実施形態では、組成物を筋肉内注射または皮下注射によって投与する。
【0104】
そのような疾患の治療に通常使用される他の確立された治療の補助として、またはそれと組み合わせて、本明細書に記載の疾患の治療のための治療方法において本発明の医薬組成物を使用することは、本発明の範囲内である。
【0105】
本発明のさらなる態様では、細胞集団、組成物または医薬組成物を、少なくとも1つの活性薬剤と共に、連続的に、同時にまたは別々に投与する。
【0106】
MHC非拘束性リンパ球が濃縮された組成物の調製方法
本発明は、MHC非拘束性リンパ球が濃縮された組成物の調製方法を提供する。そのような方法は、治療効果がMHC適合性によって拘束されないため、同種異系使用に適した組成物を調製するのに特に有利である。
【0107】
本発明の態様により、インターロイキン-15(IL-15)の存在下及びインターロイキン-4(IL-4)の非存在下で抗TCRデルタ可変1(抗Vδ1)抗体またはその断片を使用してγδT細胞及びNK細胞を含む混合細胞集団を刺激し、この混合細胞集団を培養することを含む、非γδ+MHC非拘束性リンパ球の増殖方法を提供する。前記混合細胞集団は、本明細書でより詳細に記載されるように、試料から取得し得ることが理解されるであろう。
【0108】
本発明者らは、驚くべきことに、抗Vδ1抗体及びIL-15が存在することにより、完全MHC非拘束性CD56+免疫療法である組成物の産生が刺激されることを見出した。理論に拘泥するものではないが、Vδ1T細胞は、Vδ1TCRに特異的に結合し、予想外に非Vδ1細胞の増殖、例えばNK細胞の増殖をサポートする抗体の存在によって刺激されるようである。理論に拘泥するものではないが、NK細胞増殖などのこの非Vδ1細胞増殖は、NK細胞表面に発現する抗Vδ1抗体及びCD16を介して媒介され得る。本発明の方法によって生成されるユニークな細胞組成物は、非常に有望な治療用途を有する細胞の混合物を提供する。
【0109】
本発明の態様により、MHC非拘束性リンパ球を濃縮させた細胞集団を含む組成物の調製方法を提供し、この方法は、
(1)対象から取得した試料を、
(i)抗TCRデルタ可変1(抗Vδ1)抗体またはその断片、及び
(ii)インターロイキン-15(IL-15)の存在下、インターロイキン-4(IL-4)の非存在下で、培養すること(前記培養の初日から)、及び
(2)試料から培養した細胞集団を単離することを含む。
【0110】
培養ステップは、in vitroまたはex vivoで実施し得ることが理解されるであろう。最初の試料は、混合細胞集団、例えば、γδT細胞、NK細胞及び任意選択でαβT細胞、好ましくはγδT細胞及びNK細胞のみなどの複数の免疫細胞型を含む細胞集団を含み得る。したがって、一実施形態では、試料は、γδT細胞及びNK細胞を含む混合細胞集団を含む。
【0111】
さらなる実施形態では、培養前、例えば、抗Vδ1抗体またはその断片の投与前に、試料をT細胞について濃縮する。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗Vδ1抗体またはその断片の投与前に、試料から、試料中に存在するMHC非拘束性リンパ球以外の細胞型を枯渇させ、例えば、NK細胞及びγδT細胞以外の細胞型を枯渇させる。例えば、試料を培養する前に、試料をT細胞について濃縮し、及び/またはαβT細胞を枯渇させてもよい。一実施形態では、最初に試料からαβT細胞を枯渇させる。濃縮または枯渇を、当技術分野で公知の技術を使用して、例えば、濃縮/枯渇させようとする表現型に関連する細胞表面上の分子に結合する抗体でコーティングされた磁気ビーズを使用して達成してもよい。
【0113】
細胞培養物中にリンパ球以外の細胞型が存在することにより、MHC非拘束性リンパ球増殖が阻害され得る。そのような細胞、例えば、間質、上皮、腫瘍及び/またはフィーダー細胞を、培養前に除去してもよい。したがって、一実施形態では、細胞集団は、培養中に間質細胞と直接接触しない。間質細胞の例として、線維芽細胞、周皮細胞、間葉細胞、ケラチノサイト、内皮細胞及び非血液腫瘍細胞が挙げられる。好ましくは、培養中、リンパ球は線維芽細胞と直接接触しない。一実施形態では、細胞集団は、培養中に上皮細胞と直接接触しない。一実施形態では、細胞集団は、培養中の腫瘍細胞及び/またはフィーダー細胞と直接接触しない。
【0114】
一実施形態では、この方法は、実質的な間質細胞接触の非存在下でMHC非拘束性リンパ球を培養することを含む。さらなる実施形態では、この方法は、実質的な線維芽細胞接触の非存在下でMHC非拘束性リンパ球を培養することを含む。
【0115】
一実施形態では、この方法は、血漿(例えば、ヒト血漿)を含む培地中で試料を培養することを含む。さらなる実施形態では、試料を、2.5%血漿、例えば2.5%ヒト血漿を含む培地中で培養する。
【0116】
一実施形態では、この方法は、血清を実質的に含まない培地(例えば、無血清培地または血清代替物(SR)を含有する培地)中で試料を培養することを含む。したがって、一実施形態では、この方法は、無血清培地中で培養することを含む。そのような無血清培地はまた、血清代替培地を含み得、この血清代替物は、ヒトまたは動物由来の血清の使用を避けるために、化学的に定義された成分に基づく。別の実施形態では、この方法は、血清(例えば、ヒトAB血清またはウシ胎仔血清(FBS))を含有する培地中で培養することを含む。一実施形態では、培地は、血清代替物を含有する。一実施形態では、培地は、動物由来製品を含有しない。
【0117】
無血清培地中で培養した試料は、濾過、沈殿、汚染、及び血清の供給に関する問題を回避するという利点を有することが理解されるであろう。さらに、動物由来製品は、臨床グレードのヒト治療薬の製造に使用するのに適していない。細胞、特にVδ1T細胞に無血清培地を使用すると、AB血清を含有する培地を使用した場合と比較して、試料から得られる細胞の数が実質的に増加する。
【0118】
一実施形態では、抗Vδ1抗体またはその断片は、可溶性または固定化形態である。例えば、抗体またはその断片を、可溶性形態で試料に投与してもよい。あるいは、抗体またはその断片がビーズまたはプレートなどの表面に結合または共有結合している場合(すなわち、固定化形態である場合)、抗体またはその断片を試料に投与してもよい。一実施形態では、抗体を、Fcコーティングされたウェルなどの表面に固定化する。あるいは、抗体またはその断片を、細胞の表面に結合させる(例えば、抗原提示細胞(APC)の表面に固定化する)。別の実施形態では、細胞集団を抗体と接触させる場合、抗体を表面に固定化しない。
【0119】
抗Vδ1抗体またはその断片を接触させた細胞集団を、様々な種類の試料から取得してもよい。一実施形態では、試料は造血試料またはその画分である(すなわち、細胞集団を造血試料またはその画分から取得する)。本明細書における「造血試料」または「造血組織試料」への言及には、血液(末梢血または臍帯血など)、骨髄、リンパ組織、リンパ節組織、胸腺組織、及びそれらの画分または濃縮部分が含まれる。試料は、好ましくは、末梢血もしくは臍帯血を含む血液、またはバフィーコート細胞、白血球除去産物、末梢血単核球(PBMC)及び低密度単核球(LDMC)を含むそれらの画分である。いくつかの実施形態では、造血試料は、低密度単核球(LDMC)または末梢血単核球(PBMC)からなる。いくつかの実施形態では、試料は、ヒト血液またはその画分である。密度勾配遠心分離などの当技術分野で公知の技術を使用して、血液試料から細胞を取得してもよい。例えば、全血を等量のFICOLL-HYPAQUEに重層し、続いて室温で400xgで15~30分間遠心分離する。界面物質は低密度の単核球を含有し、これを培地中で回収し、洗浄し、室温にて200xgで10分間遠心分離することができる。いくつかの実施形態では、細胞集団を、特定のタイプの試料、例えば、皮膚などの非造血組織試料から取得しない。
【0120】
別の実施形態では、試料は非造血組織試料である。本明細書における「非造血組織」または「非造血組織試料」への言及には、皮膚(例えば、ヒトの皮膚)及び腸(例えば、ヒトの腸)が含まれる。非造血組織とは、血液、骨髄、リンパ組織、リンパ節組織、または胸腺組織以外の組織である。一実施形態では、非造血組織試料は皮膚(例えば、ヒトの皮膚)である。いくつかの実施形態では、細胞集団を、皮膚(例えば、ヒトの皮膚)から取得し、これは当技術分野で公知の方法によって取得することができる。例えば、非造血組織試料からの細胞の流出を促進するように構成された合成足場上で非造血組織試料を培養することによって、非造血組織試料から細胞集団を取得してもよい。あるいは、胃腸管(例えば、結腸または腸)、乳腺、肺、前立腺、肝臓、脾臓、膵臓、子宮、膣及び他の皮膚、粘膜または漿膜から得られる細胞集団(例えば、γδT細胞)に、本方法を適用することができる。
【0121】
がん組織試料(すなわち、γδT細胞及びNK細胞もがん組織試料に存在し得る)、例えば、乳房または前立腺の腫瘍から試料を取得してもよい。いくつかの実施形態では、試料は、ヒトがん組織試料(例えば、固形腫瘍組織)由来であってもよい。他の実施形態では、試料は、ヒトがん組織以外の供給源(例えば、実質的な数の腫瘍細胞を含まない組織)に由来し得る。例えば、試料は、近位のまたは隣接するがん組織から離れた皮膚の領域(例えば、健康な皮膚)由来の試料であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、試料をがん組織(例えば、ヒトがん組織)から取得しない。
【0122】
試料を、ヒトまたは非ヒト動物の組織から取得してもよい。したがって、この方法は、ヒトまたは非ヒト動物の組織から試料を取得するステップをさらに含んでもよい。一実施形態では、試料は、ヒトから取得されている。別の実施形態では、試料は、非ヒト動物対象から取得されている。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗Vδ1抗体またはその断片を接触させる細胞集団を、少なくとも約10mL、例えば、約15mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mLまたはそれ以上の容量で培養する。一実施形態では、細胞集団を、約30mL中で培養する。別の実施形態では、細胞集団を、約100mL中で培養する。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗Vδ1抗体またはその断片を接触させる細胞集団を、少なくとも約0.5×10細胞/cm、例えば、約1×10細胞/cm、1.5×10細胞/cm、2×10細胞/cm、2.5×10細胞/cmまたは3×10細胞/cmの細胞密度で培養する。一実施形態では、細胞集団を、約1×10細胞/cmの細胞密度で培養する。別の実施形態では、細胞集団を、約2×10細胞/cmの細胞密度で培養する。
【0125】
したがって、本発明は、濃縮されたMHC非拘束性リンパ球集団を産生するためのex vivoでの方法を提供する。濃縮された集団は、単離された混合細胞集団(例えば、患者/ドナーから採取した試料から取得した)から、混合細胞集団またはその精製画分を抗体またはその断片と接触させることを含む方法により、生成することができる。
【0126】
したがって、本明細書において、取得可能な、例えば、本明細書で定義される方法に従って取得される、MHC非拘束性リンパ球が濃縮された細胞集団を提供する。本発明のこの態様により、そのような増殖したMHC非拘束性リンパ球集団を、in vitroまたはex vivoで取得し、及び/または増殖させ得ることが理解されるであろう。一態様では、取得可能な、例えば、本明細書で定義される方法に従って取得される増殖したMHC非拘束性リンパ球集団を提供し、その場合、集団を、in vitroまたはex vivoで単離し、増殖させる。
【0127】
また、本明細書で定義される方法に従って取得される増殖したNK細胞集団も提供する。本発明のこの態様により、そのような増殖したNK細胞集団を、in vitroまたはex vivoで取得し、及び/または増殖させ得ることが理解されるであろう。一態様では、本明細書で定義される方法に従って取得される増殖したNK細胞集団を提供し、その場合、NK細胞集団を、in vitroまたはex vivoで単離し、増殖させる。
【0128】
また、本明細書で定義される方法に従って取得される増殖したγδT細胞集団も提供する。本発明のこの態様により、そのような増殖したγδT細胞集団を、in vitroまたはex vivoで取得し、及び/または増殖させ得ることが理解されるであろう。一態様では、本明細書で定義される方法に従って取得される増殖したγδT細胞集団を提供し、その場合、γδT細胞集団を、in vitroまたはex vivoで単離し、増殖させる。
【0129】
本明細書に記載の抗体またはその断片は、MHC非拘束性リンパ球を増殖する方法で使用してもよい。これらの方法は、in vitroまたはex vivoで実施してもよい。この増殖方法をin vitroで実施する場合、抗体(またはその断片)を、上記のように取得した単離細胞集団に適用してもよい。いくつかの実施形態では、造血組織試料、例えば、血液試料から単離した細胞集団から、細胞を増殖させる。
【0130】
MHC非拘束性リンパ球の増殖は、本明細書に記載の抗体またはその断片、及びインターロイキン-15(IL-15)の存在下で試料を培養することを含む。そのような培養を、他のサイトカインの存在下または非存在下で行ってもよい。サイトカインには、インターロイキン、リンホカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子、及びケモカインが含まれ得る。本明細書に提示するデータは、培養開始時からIL-15の存在下及びインターロイキン-4(IL-4)の非存在下で試料を培養すると、MHC非拘束性リンパ球が優先的に増殖することを示している。したがって、本明細書に記載の方法は、培養の開始時(すなわち、初日)から、抗Vδ1抗体(またはその断片)及びIL-15の存在下、IL-4の非存在下で試料を培養することを含む。本明細書に記載のサイトカインへの言及には、培養物中のMHC非拘束性リンパ球に対する同様の生理学的効果を促進する能力に関して前記サイトカインと同じ活性を有する任意の化合物が含まれ得ると共に、模倣物、またはその任意の機能的同等物が含まれるが、これらに限定されないことが理解されるであろう。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、培養の開始時(すなわち、初日)に抗Vδ1抗体(またはその断片)を添加することを含む。さらなる実施形態では、本明細書に記載の方法は、培養の開始時のみ(すなわち、初日のみ)に抗Vδ1抗体(またはその断片)を添加することを含む。他の実施形態では、本明細書に記載の方法は、培養期間中の1つ以上の追加の時点(例えば、1つまたは2つの追加の時点)で抗Vδ1抗体を添加することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、培養の開始時(すなわち、初日)にIL-15を添加することを含む。さらなる実施形態では、本明細書に記載の方法は、培養の開始時のみ(すなわち、初日のみ)にIL-15を添加することを含む。他の実施形態では、本明細書に記載の方法は、培養期間中の1つ以上の追加の時点(例えば、1つまたは2つの追加の時点)でIL-15を添加することを含む。容易に理解されるように、抗Vδ1抗体及び/またはIL-15の添加頻度を低下させると、培養操作の低減、例えば取り扱いの低減という利点がもたらされる。そのような操作/取り扱いの低減は、製造性の向上につながり得る。
【0132】
培養ステップは、他のサイトカインの存在下または非存在下で実施してもよい。サイトカインの例として、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-18(IL-18)、インターロイキン-21(IL-21)、インターロイキン-33(IL-33)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、及び間質細胞由来因子1(SDF-1)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
使用するサイトカイン(例えば、インターロイキン)は、ヒトまたは動物起源であってよく、好ましくはヒト起源である。それは、野生型タンパク質または任意の生物学的に活性な断片もしくはバリアント(すなわち、その受容体に結合することができる)であってよい。そのような結合は、本発明による方法の条件下でγδT細胞の活性化を誘導し得る。より好ましくは、サイトカインは、別の分子、例えば、ペプチド、ポリペプチドまたは生物学的に活性なタンパク質と融合または複合体化した可溶型であり得る。好ましくは、ヒト組換えサイトカインを使用する。より好ましくは、インターロイキン濃度の範囲は、1~10000ng/ml、さらにより好ましくは1~1000ng/mlで様々に異なり得、例えば約100ng/mlである。いくつかの実施形態では、IL-15の濃度は100ng/mlである。したがって、一実施形態では、培養ステップを、100ng/mlのIL-15の存在下で実施する。
【0134】
一実施形態では、サイトカインは、インターロイキン-15様活性を有する成長因子、すなわち、培養物中のMHC非拘束性リンパ球に対する同様の生理学的効果を促進する能力に関してIL-15と同じ活性を有する任意の化合物であり、IL-15及びIL-15模倣物、またはIL-2及びIL-7を含むIL-15の任意の機能的等価物が含まれるが、これらに限定されない。
【0135】
一実施形態では、培地は、IL-15の存在下にある。一実施形態では、培地は、IL-4の非存在下にある。
【0136】
本明細書で使用される場合、「増殖した」または「増殖した集団」への言及には、増殖していない集団に比べて、より大きい、またはより多くの細胞を含む細胞集団が含まれる。そのような集団は、多数、少数、または集団内の割合または特定の細胞型の増殖を伴う混合集団であってもよい。用語「増殖方法」とは、増殖または増殖した集団をもたらすプロセスを指すことを理解されたい。したがって、増殖または増殖した集団は、増殖ステップを行っていない集団または増殖ステップの前の集団と比較して、より多数であるか、またはより多くの細胞を含み得る。増殖を示すために本明細書に示される任意の数字(例えば、倍数増加または倍数増殖)は、細胞集団の数もしくはサイズまたは細胞数の増加を示すものであり、増殖量の指標であることがさらに理解されるであろう。
【0137】
一実施形態では、この方法は、試料を少なくとも5日間(例えば、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも18日間、少なくとも21日間、少なくとも28日間、またはそれ以上、例えば、5日間~40日間、7日間~35日間、14日間~28日間、または約21日間)培養することを含む。さらなる実施形態では、この方法は、試料を少なくとも7日間、例えば、少なくとも11日間または少なくとも14日間培養することを含む。
【0138】
さらなる実施形態では、方法は、試料を、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団を生成するのに有効な量で、ある期間(例えば、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも18日間、少なくとも21日間、少なくとも28日間、またはそれ以上、例えば、5日間~40日間、7日間~35日間、14日間~28日間、または約21日間)培養することを含む。
【0139】
一実施形態では、試料を、5~60日間、例えば、少なくとも7~45日間、7~21日間、または7~18日間培養する。一実施形態では、試料を、11~14日間培養する。さらなる実施形態では、試料を12日間培養して、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団を生成する。別の実施形態では、試料を、14日間培養する。さらに別の実施形態では、Ki-67などの活発な増殖のマーカーの発現が下方制御されるまでの期間、すなわち、そのような下方制御を検出し得る前の期間に、試料を培養する。したがって、一実施形態では、Ki-67などの活発な増殖のマーカーの発現が下方制御される前の期間に、試料を培養する。特定の実施形態では、活発な増殖のマーカーの発現が下方制御されるまでの/前の培養期間は12日間である。一実施形態では、Ki-67の発現が下方制御されるまでの/前の培養期間は12日間である。
【0140】
この方法は、培養中の抗Vδ1抗体もしくはその断片及び/または成長因子の定期的な添加を含み得る。例えば、抗Vδ1抗体もしくはその断片及び/または成長因子を、2~7日ごと、より好ましくは3~4日ごとに添加することができる。一実施形態では、(初回投与後)抗Vδ1抗体もしくはその断片及び/または成長因子を、培養の7日後に添加し、その後3~4日ごとに添加する。
【0141】
本発明の方法は、参照集団よりも数が多い、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団を提供する。いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、増殖ステップ前の単離されたMHC非拘束性リンパ球集団よりも数が多い(例えば、増殖ステップ前の単離されたMHC非拘束性リンパ球集団に比べて、少なくとも2倍の数、少なくとも5倍の数、少なくとも10倍の数、少なくとも25倍の数、少なくとも50倍の数、少なくとも60倍の数、少なくとも70倍の数、少なくとも80倍の数、少なくとも90倍の数、少なくとも100倍の数、少なくとも200倍の数、少なくとも300倍の数、少なくとも400倍の数、少なくとも500倍の数、600倍の数、少なくとも1,000倍の数、またはそれ以上)。一実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、増殖ステップ前の単離されたMHC非拘束性リンパ球集団と比較して、数が5倍~10倍多い。さらなる実施形態では、増殖した集団は、本明細書で定義される培養期間の後、増殖前の単離された集団と比較して、数が5倍~10倍多い。さらに別の実施形態では、増殖した集団は、12日間の培養期間の後、増殖前の単離された集団よりも、数が5倍~10倍多い。別の実施形態では、増殖した集団は、14日間の培養期間の後、増殖前の単離された集団と比較して、数が5倍~10倍多い。一実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、抗体またはその断片の非存在下で同じ長さの時間培養した集団よりも数が多い。一実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球、特にNK細胞の集団は、IL-4の存在下で同じ長さの時間培養した集団よりも数が多い。
【0142】
本発明の方法は、本明細書に記載のように特徴付けられ得る、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本方法を使用して単離された細胞集団に存在するMHC非拘束性リンパ球の少なくとも70%がCD56を発現する。
【0143】
いくつかの実施形態では、本方法を使用して単離された細胞集団は、γδT細胞を含み、γδT細胞の少なくとも40%がCD56を発現する。いくつかの実施形態では、γδT細胞の少なくとも約45%がCD56を発現する。いくつかの実施形態では、γδT細胞の少なくとも45%、例えば少なくとも46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%がCD56を発現する。いくつかの実施形態では、γδT細胞の少なくとも約50%がCD56を発現する。いくつかの実施形態では、γδT細胞の少なくとも約55%がCD56を発現する。いくつかの実施形態では、γδT細胞の少なくとも約60%がCD56を発現する。
【0144】
本発明の方法は、参照集団(例えば、出発物質/試料)と比較してより高い割合のCD56bright細胞を有するMHC非拘束性リンパ球の集団を提供し得る。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するCD56brightγδT細胞の数は、少なくとも40%増加している。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するCD56brightγδT細胞の数は、少なくとも45%、例えば少なくとも46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%増加している。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するCD56brightγδT細胞は、数が少なくとも約50%増加している。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するCD56brightγδT細胞は、数が少なくとも約55%増加している。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するCD56brightγδT細胞は、数が少なくとも約60%増加している。
【0145】
いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約40%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも45%、例えば少なくとも46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約50%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約55%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも約60%がCD56brightである。
【0146】
いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するCD56brightNK細胞は、数が少なくとも50%増加している。いくつかの実施形態では、増殖した組成物中に存在するCD56brightNK細胞は、数が少なくとも60%、例えば少なくとも61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%増加している。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するCD56brightNK細胞は、数が少なくとも約70%増加している。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するCD56brightNK細胞は、数が少なくとも約75%増加している。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するCD56brightNK細胞は、数が少なくとも約80%増加している。
【0147】
いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するNK細胞の少なくとも約50%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するNK細胞の少なくとも60%、例えば少なくとも61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するNK細胞の少なくとも約70%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するNK細胞の少なくとも約75%がCD56brightである。いくつかの実施形態では、増殖させた組成物中に存在するNK細胞の少なくとも約80%がCD56brightである。
【0148】
増殖方法は、参照集団よりも高い割合のNK細胞を有する増殖したMHC非拘束性リンパ球集団を提供し得る。いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、少なくとも約30%のNK細胞、例えば、少なくとも約31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%または50%のNK細胞を含む。さらなる実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、少なくとも約40%のNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約80%未満のNK細胞、例えば、約79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、60%、68%、57%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%または50%未満のNK細胞を含む。さらなる実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約60%未満のNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約20%~70%のNK細胞、例えば、約30%~60%のNK細胞を含む。さらなる実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約50%のNK細胞を含む。
【0149】
増殖方法は、参照集団よりも高い割合のγδT細胞を有する増殖したMHC非拘束性リンパ球集団を提供し得る。いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、少なくとも約30%のγδT細胞、例えば、少なくとも約31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%または50%のγδT細胞を含む。さらなる実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、少なくとも約40%のγδT細胞、例えば約45%超のγδT細胞を含む。いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約80%未満のγδT細胞、例えば、約79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、60%、68%、57%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%または50%未満のγδT細胞を含む。さらなる実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約60%未満のγδT細胞を含む。いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約30%~60%のγδT細胞を含む。さらなる実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約50%のγδT細胞を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、少なくとも約10%のVδ1T細胞、例えば、少なくとも約11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%のVδ1T細胞を含む。さらなる実施形態では、増殖したVδ1T細胞集団は、少なくとも約20%のVδ1T細胞を含む。いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約10%~55%のVδ1T細胞、例えば、約10%~30%のVδ1T細胞を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、少なくとも約5%のVδ2T細胞、例えば、少なくとも約6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%のVδ2T細胞を含む。さらなる実施形態では、増殖したVδ1T細胞集団は、少なくとも約7%のVδ2T細胞を含む。いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約7%~30%のVδ2T細胞を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約10%未満のαβT細胞、例えば、約5%、4%、3%、2%、1.5%、1%、0.5%、0.2%、0.1%または0.05%未満のαβT細胞を含む。さらなる実施形態では、増殖したMHC非拘束性リンパ球集団は、約1%未満のαβT細胞を含む。αβ受容体を有するT細胞は非常に反応性が高く、したがって、本発明に関して患者への投与に好適な細胞集団は、低レベルのαβT細胞のみを含み得る。本明細書に記載の抗体を使用して、MHC非拘束性リンパ球を選択的に増殖させてもよく、これにより、増殖後のαβT細胞除去のための大規模な精製方法の必要性が低減される。
【0153】
いくつかの実施形態では、この方法を使用して単離された細胞集団の少なくとも90%がNK細胞及びγδT細胞からなり、その場合、少なくとも10%の細胞がVδ1T細胞であり、少なくとも5%の細胞がVδ2T細胞であり、少なくとも30%の細胞がNK細胞である。
【0154】
細胞表面マーカーの発現の増加または減少は、追加的または代替的に使用して、CD27及び/またはNKp30を含む、1つ以上の増殖したMHC非拘束性リンパ球集団を特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、MHC非拘束性リンパ球集団に存在する増殖したVδ1T細胞集団は、参照集団(本発明の方法を使用して増殖させていない集団など)と比較して、より低いレベルのCD27を発現する。いくつかの実施形態では、MHC非拘束性リンパ球集団に存在する増殖したVδ1T細胞集団は、低レベルのCD27を発現する(CD27low)。例えば、増殖したVδ1T細胞集団の約70%未満、例えば、約50%、40%または30%未満がCD27を発現する(すなわち、CD27+)。いくつかの実施形態では、MHC非拘束性リンパ球集団に存在する増殖したVδ1T細胞集団は、参照集団(本発明の方法を使用して増殖させていない集団など)と比較して、より高いレベルのNKp30を発現する。例えば、増殖したVδ1T細胞集団の約10%超、例えば、約15%、20%または25%超がNKp30を発現する(すなわち、NKp30+)。
【0155】
いくつかの実施形態では、MHC非拘束性リンパ球集団に存在する増殖したVδ1T細胞集団は、高レベルのNKG2Dを発現する(NKG2Dhigh)。例えば、増殖したVδ1T細胞集団の約80%超、例えば、約85%、90%または95%超がNKG2Dを発現する(すなわち、NKG2D+)。
【0156】
γδT細胞の増殖に使用するのに適した多数の基礎培地、特にCTS OpTmizer(Thermo Fisher)AIM-V、Iscoves培地及びRPMI-1640(Life Technologies)、EXVIVO-10、EXVIVO-15またはEXVIVO-20(Lonza)などの培地が、任意選択で血清または血漿の存在下で、利用可能である。本明細書で定義される他の培地因子、例えば、血清、血清タンパク質及び選択用薬剤、例えば抗生物質を培地に補充してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、RPMI-1640培地は、2mMグルタミン、10%FBS、10mM HEPES、pH7.2、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム(1mM;Life Technologies)、非必須アミノ酸(例えば、100μM Gly、Ala、Asn、Asp、Glu、Pro及びSer;1×MEM非必須アミノ酸(Life Technologies))、ならびに10μl/L β-メルカプトエタノールを含有する。別の実施形態では、AIM-V培地にCTS免疫血清代替物及びアムホテリシンBを補充してもよい。好都合には、培養中、好適な培地中で、5%COを含有する加湿雰囲気中、37℃で細胞を培養する。NK細胞及び/またはVδ2T細胞などの特定の細胞の増殖を特異的にサポートする因子を、培地にさらに補充してもよい。したがって、一実施形態では、培地は、NK細胞及び/またはVδ2T細胞サプリメントを含む。培地サプリメントの例として、Miltenyi Biotech製のNKサプリメントが挙げられる。そのようなサプリメント(複数可)の存在により、標的細胞の増殖能力が増強し、したがって、増殖した集団におけるそのような細胞の割合が増加し得る。
【0157】
本明細書に記載されるように、抗体(またはその断片)を、試料から得られた細胞集団に適用してもよい。一実施形態では、抗Vδ1抗体またはその断片を投与する前に、試料から細胞集団を単離する。
【0158】
本明細書における細胞、特にγδT細胞の「単離」または「単離すること」への言及は、組織または細胞のプールから細胞を、除去、分離、精製、濃縮、または別の方法で取り出す方法またはプロセスを指す。そのような言及には、「分離された」、「除去された」、「精製された」、「濃縮された」などの用語が含まれることを理解されたい。γδT細胞の単離には、インタクトな非造血組織試料からの、または非造血組織の間質細胞(例えば、線維芽細胞または上皮細胞)からの細胞の単離または分離が含まれる。そのような単離は、代替的にまたは追加的に、他の造血細胞(例えば、αβT細胞または他のリンパ球)からのγδT細胞の単離または分離を含み得る。単離は、例えば、組織外植片もしくは生検を単離培養物に入れた時点から開始し、遠心分離もしくは単離した細胞集団を増殖培養物に移すための他の手段などによって培養物から細胞を回収するか、または他の目的に使用するか、あるいは培養物から元の組織外植片もしくは生検を除去する時点で終了する、定義された期間のものであり得る。単離ステップは、少なくとも約3日間~約45日間のものであり得る。一実施形態では、単離ステップは、少なくとも約10日間~少なくとも28日間のものである。さらなる実施形態では、単離ステップは、少なくとも14日間~少なくとも21日間のものである。したがって、単離ステップは、少なくとも3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、30日間、31日間、32日間、約35日間、約40日間、または約45日間のものであり得る。細胞増殖は、この単離ステップ中に実質的ではない場合があるが、必ずしも存在しないというわけではないことを理解することができる。実際、当業者には、単離された細胞が分裂を開始して、試料を含有する単離容器内で複数のそのような細胞が生成される場合もあることが認識される。
【0159】
非造血組織試料などのヒトまたは非ヒト動物試料由来のリンパ球、特にVδ1T細胞の単離を可能にする任意の好適な方法によって細胞集団を取得してもよい。そのような方法の1つが、Clark et al.(2006)J.Invest.Dermatol.126(5):1059-70に記載されており、この文献には、ヒトの皮膚からリンパ球を単離するための三次元皮膚外植片プロトコルが記載されている。外植片を合成足場に接着させて、外植片から足場へのリンパ球の放出を促進してもよい。合成足場とは、細胞増殖をサポートするのに好適な非天然の三次元構造を指す。合成足場は、ポリマー(例えば、天然または合成ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリメチルメタクリレート、メチルセルロース、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン)、セラミック(例えば、リン酸三カルシウム、アルミン酸カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト)、または金属(タンタル、チタン、プラチナ、ならびにプラチナ、ニオブ、ハフニウム、タングステン、及びそれらの合金の組み合わせと同じ元素グループの金属)などの材料から構築され得る。生物学的因子(例えば、コラーゲン(例えば、コラーゲンIまたはコラーゲンII)、フィブロネクチン、ラミニン、インテグリン、血管新生因子、抗炎症因子、グリコサミノグリカン、ビトロゲン、抗体及びその断片、サイトカインを、足場表面にコーティングするか、または足場材料内にカプセル化して、当技術分野で公知の方法に従って、細胞の接着、遊走、生存、または増殖を増強してもよい。この方法及び他の方法を使用して、多くの他の非造血組織型、例えば、腸、前立腺及び乳房から細胞集団を単離することができる。好適な単離方法の他の例は、免疫細胞、特にMHC非拘束性リンパ球の単離または分離を誘導するのに十分なサイトカイン及び/またはケモカイン存在下で細胞集団及び/または試料を培養することを含み得る「クロールアウト」法を利用する。
【0160】
間質細胞、例えば、真皮線維芽細胞から非造血組織常駐リンパ球を採取し、例えば、しっかりとピペッティングすることによって分離することができる。処理中に緩んだ可能性のある線維芽細胞凝集体を保持するために、採取したリンパ球を40μmのナイロンメッシュに通してさらに洗浄してもよい。リンパ球はまた、例えばCD45抗体を使用する蛍光または磁気関連細胞分離法を使用して単離してもよい。
【0161】
本明細書における「培養」への言及は、試料から単離、分離、除去、精製、または濃縮した細胞を含む試料を、細胞及び/または試料に必要な及び/または好ましい成長因子及び/または必須栄養素を含む培地に添加することを含む。そのような培養条件は、試料から単離する細胞もしくは細胞集団に従って適合させてもよく、または試料から単離し、増殖させる細胞もしくは細胞集団に従って適合させてもよいことが理解される。
【0162】
培地には、γδT細胞の成長及び増殖を支援することができる他の成分をさらに含めてもよい。添加してもよい他の成分の例として、血漿または血清、アルブミンなどの精製タンパク質、低密度リポタンパク質(LDL)などの脂質源、ビタミン、アミノ酸、ステロイド、ならびに細胞増殖及び/または生存をサポートするかまたは促進する任意の他のサプリメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
抗体またはその断片
本明細書で提供される方法で使用される抗体は、γδT細胞受容体(TCR)のデルタ可変1鎖(Vδ1)に特異的に結合することができる抗体またはその断片である。一実施形態では、抗Vδ1抗体またはその断片は、活性化抗Vδ1抗体またはその断片である。驚くべきことに、特定の培養条件下で抗Vδ1抗体の存在下で細胞集団を培養すると、予想どおりVδ1T細胞だけでなく、すべてのMHC非拘束性リンパ球を同時に濃縮することができることが判明している。いくつかの実施形態では、抗Vδ1抗体を、42ng/mlの濃度で使用する。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の方法の培養ステップを、42ng/mlの抗Vδ1抗体の存在下で実施する。
【0164】
一実施形態では、抗体またはその断片は、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、可変ドメイン(例えば、VHもしくはVL)、ダイアボディ、ミニボディまたはモノクローナル抗体である。さらなる実施形態では、抗体またはその断片はscFvである。
【0165】
本明細書に記載の抗体は、任意のクラス、例えば、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、またはこれらのアイソタイプであり得、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖を含み得る。一実施形態では、抗体は、IgG抗体、例えば、アイソタイプ、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のうちの少なくとも1つである。さらなる実施形態では、抗体は、エフェクター機能を低下させ、半減期を延長し、ADCCを変更し、またはヒンジ安定性を向上させるように変異させたFcを有するなど所望の特性を与えるように改変されているIgG型などの形式であってもよい。そのような改変は、当技術分野で周知である。
【0166】
一実施形態では、抗体またはその断片はヒトである。したがって、抗体またはその断片は、ヒト免疫グロブリン(Ig)配列に由来し得る。抗体(またはその断片)のCDR、フレームワーク及び/または定常領域は、ヒトIg配列、特にヒトIgG配列に由来し得る。CDR、フレームワーク及び/または定常領域は、ヒトIg配列、特にヒトIgG配列について実質的に同一であり得る。ヒト抗体を使用する利点は、ヒトでの免疫原性が低いか、まったくないことである。
【0167】
抗体またはその断片はまた、キメラ、例えばマウス-ヒト抗体キメラであり得る。
【0168】
あるいは、抗体またはその断片は、マウスなどの非ヒト種に由来する。そのような非ヒト抗体は、ヒトにおいて自然に生成される抗体バリアントとの類似性を高めるように改変することができ、したがって、抗体またはその断片は、部分的または完全にヒト化され得る。したがって、一実施形態では、抗体またはその断片はヒト化されている。
【0169】
エピトープを標的とする抗体
本明細書において、γδTCRのVδ1鎖のエピトープに結合する抗体(またはその断片)を提供する。そのような結合は、任意選択で、活性化または阻害などのγδTCR活性に影響を及ぼし得る。
【0170】
一実施形態では、エピトープは、γδT細胞の活性化エピトープであり得る。「活性化」エピトープは、例えば、TCR機能を刺激すること、例えば、脱顆粒、TCR下方制御、細胞傷害性、増殖、動員、生存の延長もしくは消耗に対する耐性、細胞内シグナル伝達、サイトカインもしくは成長因子分泌、表現型の変化、または遺伝子発現の変化を含み得る。例えば、活性化エピトープの結合は、γδT細胞集団、好ましくはVδ1T細胞集団の増大(すなわち、増殖)を刺激し得る。したがって、これらの抗体を使用して、γδT細胞の活性化を調節し、それによって免疫応答を調節することができる。したがって、一実施形態では、活性化エピトープの結合は、γδTCRを下方制御する。追加のまたは別の実施形態では、活性化エピトープの結合は、γδT細胞の脱顆粒を活性化する。さらなる追加のまたは別の実施形態では、活性化エピトープの結合は、γδT細胞の殺傷を活性化する。
【0171】
あるいは、抗体(またはその断片)は、別の抗体または分子の結合または相互作用を阻止することによって遮断効果を有し得る。一実施形態では、本発明は、Vδ1を遮断し、TCR結合を阻止する(例えば、立体障害を介して)単離された抗体またはその断片を提供する。Vδ1を遮断することにより、抗体は、TCRの活性化及び/またはシグナル伝達を阻止し得る。エピトープは、γδT細胞の抑制性エピトープであり得る。「抑制性」エピトープは、例えば、TCR機能を遮断し、それによってTCR活性化を阻害することを含み得る。
【0172】
エピトープは、好ましくは、γδTCRのVδ1鎖の少なくとも1つの細胞外、可溶性、親水性、外部または細胞質部分で構成される。
【0173】
特に、エピトープは、γδTCRのVδ1鎖の超可変領域、特にVδ1鎖のCDR3に認められるエピトープを含まない。好ましい実施形態では、エピトープは、γδTCRのVδ1鎖の非可変領域内にある。そのような結合は、非常に可変性のあるTCRの配列(特にCDR3)に制限されることなく、Vδ1鎖のユニークな認識を可能にすることが理解されよう。MHC様ペプチドまたは抗原を認識する様々なγδTCR複合体は、Vδ1鎖の存在のみによって、このように認識され得る。したがって、任意のVδ1鎖を含むγδTCRは、γδTCRの特異性に関係なく、本明細書で定義される抗体またはその断片を用いて認識され得ることが理解されよう。一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域1~24及び/または35~90内の1つ以上のアミノ酸残基、例えば、CDR1及び/またはCDR3配列の一部ではないVδ1鎖の一部を含む。一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域91~105(CDR3)内のアミノ酸残基を含まない。
【0174】
良好に特性評価されたαβT細胞と同様に、γδT細胞は、体細胞性に再構成された可変(V)、多様性(D)、結合(J)及び定常(C)遺伝子の異なるセットを利用するが、γδT細胞には、αβT細胞よりも少ないV、D及びJセグメントが含まれている。一実施形態では、抗体(またはその断片)が結合するエピトープは、Vδ1鎖のJ領域(例えば、ヒトデルタ1鎖生殖系列にコードされる4つのJ領域:配列番号131(J1*0)または132(J2*0)または133(J3*0)または134(J4*0)のうちの1つ)に認められるエピトープを含まない。一実施形態では、抗体(またはその断片)が結合するエピトープは、Vδ1鎖のC領域(例えば、C末端の膜近傍/膜貫通領域を含む配列番号135(C1*0))に認められるエピトープを含まない。一実施形態では、抗体(またはその断片)が結合するエピトープは、Vδ1鎖のN末端リーダー配列(例えば、配列番号129)に認められるエピトープを含まない。したがって、抗体または断片は、Vδ1鎖のV領域(例えば、配列番号130)にのみ結合し得る。したがって、一実施形態では、エピトープは、γδTCRのV領域のエピトープ(例えば、配列番号1のアミノ酸残基1~90)からなる。
【0175】
エピトープへの言及は、Luoma et al.(2013)Immunity 39:1032-1042、及び配列番号1:
AQKVTQAQSSVSMPVRKAVTLNCLYETSWWSYYIFWYKQLPSKEMIFLIRQGSDEQNAKSGRYSVNFKKAAKSVALTISALQLEDSAKYFCALGESLTRADKLIFGKGTRVTVEPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESS(配列番号1)
として示されるRCSBタンパク質データバンクエントリ:4MNH及び3OMZに記載されている配列に由来するVδ1配列に関連して行われる。
【0176】
配列番号1は、V領域(可変ドメインとも称される)、D領域、J領域及びTCR定常領域を含む可溶性TCRを表す。V領域はアミノ酸残基1~90を含み、D領域はアミノ酸残基91~104を含み、J領域はアミノ酸残基105~115を含み、定常領域はアミノ酸残基116~209を含む。V領域内で、CDR1は、配列番号1のアミノ酸残基25~34として定義され、CDR2は、配列番号1のアミノ酸残基50~54として定義され、CDR3は、配列番号1のアミノ酸残基93~104として定義される(Xu et al.,PNAS USA 108(6):2414-2419(2011))。
【0177】
したがって、一実施形態では、単離された抗体またはその断片は、アミノ酸領域:
(i)配列番号1の3~20;及び/または
(ii)配列番号1の37~77内に1つ以上のアミノ酸残基を含むγδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープに結合する。
【0178】
本明細書に記載の抗体のエピトープマッピングを、PCT出願第PCT/GB2020/051956号(これらは参照により本明細書に援用される)の実施例1及び9に記載されているように実施した。
【0179】
さらなる実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号128のアミノ酸残基1~90のエピトープを含む多型V領域をさらに認識する。したがって、配列番号1のアミノ酸1~90と多型生殖系列バリアント配列(アミノ酸1~90 配列番号128)は、本明細書に記載のエピトープを定義する場合、互換性があるとみなされ得る。本発明の抗体は、この生殖系列配列の両方のバリアントを認識することができる。例として、本明細書で定義される抗体またはその断片が、配列番号1のアミノ酸領域1~24及び/または35~90内の1つ以上のアミノ酸残基を含むエピトープを認識すると記載されている場合、これはまた、配列番号128の同じ領域、具体的には、配列番号128のアミノ酸領域1~24及び/または35~90を指す。
【0180】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号1のアミノ酸領域1~90内の1つ以上のアミノ酸残基、及び配列番号128の領域1~90の同等位置のアミノ酸を認識する。より具体的には、一実施形態では、本明細書で定義される抗体またはその断片は、ヒト生殖系列エピトープを認識し、前記生殖系列は、配列番号1の71位でアラニン(A)またはバリン(V)のいずれかをコードする。
【0181】
一実施形態では、エピトープは、記載された領域内に1つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10以上のアミノ酸残基を含む。
【0182】
さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域3~20内の1つ以上(例えば5つ以上、例えば10以上)のアミノ酸残基を含む。別の実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域37~77内(例えばアミノ酸領域50~54)に1つ以上(例えば5つ以上、例えば10以上)のアミノ酸残基を含む。さらに別の実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域3~20内(例えば5~20または3~17)の1つ以上(例えば5つ以上、例えば10以上)のアミノ酸残基、及びアミノ酸領域37~77内(例えば62~77または62~69)に1つ以上(例えば5つ以上、例えば10以上)のアミノ酸残基を含む。
【0183】
前記抗体(またはその断片)は、定義された範囲内のすべてのアミノ酸に結合する必要はないことがさらに理解されよう。そのようなエピトープは、線状エピトープと称され得る。例えば、配列番号1のアミノ酸領域5~20内のアミノ酸残基を含むエピトープに結合する抗体は、前記範囲のアミノ酸残基、例えば、任意選択で範囲内のアミノ酸(すなわち、アミノ酸5、9、16及び20)を含む、範囲の両端のアミノ酸残基(すなわち、アミノ酸5及び20)の1つ以上とのみ結合し得る。
【0184】
一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基3、5、9、10、12、16、17、20、37、42、50、53、59、62、64、68、69、72または77のうちの少なくとも1つを含む。さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基3、5、9、10、12、16、17、20、37、42、50、53、59、62、64、68、69、72または77から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12アミノ酸を含む。
【0185】
一実施形態では、エピトープは、配列番号1(または配列番号128,上記のとおり)の以下のアミノ酸領域内の1つ以上のアミノ酸残基を含む:
(i)3~17、
(ii)5~20、
(iii)37~53、
(iv)50~64、
(v)59~72、
(vi)59~77、
(vii)62~69、及び/または
(viii)62~77。
【0186】
さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域:5~20及び62~77、50~64、37~53及び59~72、59~77、または3~17及び62~69内の1つ以上のアミノ酸残基を含む。さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域:5~20及び62~77、50~64、37~53及び59~72、59~77、または3~17及び62~69内の1つ以上のアミノ酸残基からなる。
【0187】
さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基:3、5、9、10、12、16、17、62、64、68及び69を含むか、または好適には、配列番号1のアミノ酸残基:3、5、9、10、12、16、17、62、64、68及び69からなる。さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基:5、9、16、20、62、64、72及び77を含むか、または好適には、配列番号1のアミノ酸残基:5、9、16、20、62、64、72及び77からなる。さらに別の実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基:37、42、50、53、59、64、68、69、72、73及び77を含むか、または好適には、配列番号1のアミノ酸残基:37、42、50、53、59、64、68、69、72、73及び77からなる。さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基:50、53、59、62及び64を含むか、または好適には配列番号1のアミノ酸残基:50、53、59、62及び64からなる。さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基:59、60、68及び72を含むか、または好適には、配列番号1のアミノ酸残基:59、60、68及び72からなる。
【0188】
一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域5~20及び/または62~77内に1つ以上のアミノ酸残基を含む。さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域5~20及び62~77内の1つ以上のアミノ酸残基からなる。別のさらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域5~20または62~77内の1つ以上のアミノ酸残基を含む。そのようなエピトープを有する抗体またはその断片は、1245_P01_E07の配列の一部またはすべてを有し得るか、またはそのような抗体またはその断片は、1245_P01_E07由来であり得る。例えば、1245_P01_E07の1つ以上のCDR配列を有する抗体もしくはその断片、または1245_P01_E07のVH及びVL配列の一方もしくは両方が、そのようなエピトープに結合し得る。
【0189】
一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域50~64内の1つ以上のアミノ酸残基を含む。さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域50~64内の1つ以上のアミノ酸残基からなる。そのようなエピトープを有する抗体またはその断片は、1252_P01_C08の配列の一部もしくはすべてを有し得るか、またはそのような抗体もしくはその断片は、1252_P01_C08由来であり得る。例えば、1252_P01_C08の1つ以上のCDR配列を有する抗体もしくはその断片、または1252_P01_C08のVH及びVL配列の一方もしくは両方が、そのようなエピトープに結合し得る。
【0190】
一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域37~53及び/または59~77内に1つ以上のアミノ酸残基を含む。さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域37~53及び59~77内の1つ以上のアミノ酸残基からなる。別のさらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域37~53または59~77内の1つ以上のアミノ酸残基を含む。そのようなエピトープを有する抗体またはその断片は、1245_P02_G04の配列の一部またはすべてを有し得るか、またはそのような抗体またはその断片は、1245_P02_G04由来であり得る。例えば、1245_P02_G04の1つ以上のCDR配列を有する抗体もしくはその断片、または1245_P02_G04のVH及びVL配列の一方もしくは両方が、そのようなエピトープに結合し得る。
【0191】
一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域59~72内に1つ以上のアミノ酸残基を含む。さらなる実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域59~72内の1つ以上のアミノ酸残基からなる。そのようなエピトープを有する抗体またはその断片は、1251_P02_C05の配列の一部またはすべてを有し得るか、またはそのような抗体またはその断片は、1251_P02_C05由来であり得る。例えば、1251_P02_C05の1つ以上のCDR配列を有する抗体もしくはその断片、または1251_P02_C05のVH及びVL配列の一方もしくは両方が、そのようなエピトープに結合し得る。
【0192】
一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域11~21内のアミノ酸残基を含まない。一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域21~28内のアミノ酸残基を含まない。一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域59及び60内のアミノ酸残基を含まない。一実施形態では、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域67~82内のアミノ酸残基を含まない。
【0193】
一実施形態では、エピトープは、TS-1またはTS8.2などの市販の抗Vδ1抗体が結合するエピトープと同じではない。WO2017197347に記載されているように、δ1鎖がVδ1 J1及びVδ1 J2配列を含むが、Vδ1 J3鎖を含んでいなかった場合、TS-1及びTS8.2の可溶性TCRへの結合が検出され、TS-1及びTS8.2の結合に重要な残基が、デルタJ1及びデルタJ2領域に含まれていたことが示された。
【0194】
本明細書における「~内」への言及は、定義された範囲の端を含む。例えば、「アミノ酸領域5~20内」は、残基5(残基5を含む)~残基20(残基20を含む)のアミノ酸残基のすべてを指す。
【0195】
どのエピトープが抗体によって結合されるかを確定するための様々な技術が、当技術分野で公知である。例示的な技術には、例えば、日常的なクロスブロッキングアッセイ、アラニン走査変異分析、ペプチドブロット分析、ペプチド切断分析、結晶学的実験、及びNMR分析が含まれる。さらに、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出及び化学修飾などの方法を使用することができる。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析によって検出された水素/重水素交換である(実施例9に記載されているように)。一般的な用語において、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素で標識し、その後、抗体を重水素で標識したタンパク質に結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移動させ、抗体複合体によって保護されているアミノ酸内の交換可能なプロトンは、界面の一部ではないアミノ酸内の交換可能なプロトンよりも遅い速度で重水素から水素への逆交換を受ける。その結果、タンパク質/抗体の界面の一部を形成するアミノ酸は、重水素を保持し得、そのため、界面に含まれていないアミノ酸と比較して比較的高い質量を示す。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断及び質量分析に供し、それにより、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。
【0196】
抗体配列
単離された抗Vδ1抗体またはその断片を、それらのCDR配列を参照して記載してもよい。
【0197】
一実施形態では、抗Vδ1抗体またはその断片は、
配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3、
配列番号26~37及び配列A1~A12のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2、及び/または
配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1のうちの1つ以上を含む。
【0198】
一実施形態では、単離された抗Vδ1抗体またはその断片は、配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号26~37及び配列A1~A12(表2の)のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含む。
【0199】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号26~37及び配列A1~A12(表2の)のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含む。
【0200】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号26~37及び配列A1~A12(表2の)のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列からなるCDR2を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列からなるCDR1を含む。
【0201】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を共有するCDR3配列を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む。
【0202】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む。
【0203】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む。
【0204】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む。
【0205】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~7、特に2~6、例えば、2、3または4のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び配列番号14~19、特に14~18、例えば、14、15または16のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~7、特に2~6、例えば、2、3または4のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び配列番号14~19、特に14~18、例えば、14、15または16のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む。
【0206】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~7、特に2~6、例えば、2、3または4のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~19、特に14~18、例えば、14、15または16のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~7、特に2~6、例えば、2、3または4のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~19、特に14~18、例えば、14、15または16のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む。
【0207】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~7、特に2~6、例えば、2、3または4のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~19、特に14~18、例えば、14、15または16のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2~7、特に2~6、例えば、2、3または4のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~19、特に14~18、例えば、14、15または16のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む。
【0208】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号8~13、特に8、9、10または11のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20~25、特に20、21、22または23のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号8~13、特に8、9、10または11のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20~25、特に20、21、22または23のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む。
【0209】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号8~13、特に8、9、10または11のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20~25、特に20、21、22または23のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号8~13、特に8、9、10または11のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20~25、特に20、21、22または23のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む。
【0210】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号8~13、特に8、9、10または11のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20~25、特に20、21、22または23のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号8~13、特に8、9、10または11のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20~25、特に20、21、22または23のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む。
【0211】
本明細書で「少なくとも80%」または「80%以上」に言及している実施形態は、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%など80%以上のすべての値の配列同一性を含むと理解されるであろう。一実施形態では、抗体またはその断片は、指定された配列に対して少なくとも85%、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を含む。
【0212】
配列同一性の割合の代わりに、実施形態はまた、1つ以上のアミノ酸変化、例えば、1つ以上の付加、置換及び/または欠失で定義され得る。一実施形態では、配列は、最大5つのアミノ酸変化、例えば最大3つのアミノ酸変化、特に最大2つのアミノ酸変化を含み得る。さらなる実施形態では、配列は、最大5つのアミノ酸置換、例えば最大3つのアミノ酸置換、特に最大1つまたは2つのアミノ酸置換を含み得る。例えば、抗体またはその断片のCDR3は、配列番号2~25のいずれか1つと比較して、2つ以下、より好適には1つ以下の置換(複数可)を有する配列を含むか、またはより好適にはそれからなる。
【0213】
好適には、配列番号2~61及び配列A1~A12におけるそれらの対応する残基とは異なるCDR1、CDR2またはCDR3の任意の残基は、それらの対応する残基に関して保存的置換である。例えば、配列番号2~25におけるそれらの対応する残基とは異なるCDR3の任意の残基は、それらの対応する残基に関して保存的置換である。
【0214】
一実施形態では、抗体またはその断片は、
(i)配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、
(ii)配列番号26~37のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVH領域、
(iii)配列番号38~49のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVH領域、
(iv)配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域、
(v)配列A1~A12のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVL領域、及び/または、
(vi)配列番号50~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVL領域を含む。
【0215】
一実施形態では、抗体またはその断片は、
(i)配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、
(ii)配列番号26~37のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVH領域、及び
(iii)配列番号38~49のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVH領域を備えた重鎖を含む。
【0216】
一実施形態では、抗体またはその断片は、
(i)配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域、
(ii)配列A1~A12のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVL領域、及び
(iii)配列番号50~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVL領域を備えた軽鎖を含む。
【0217】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号2、3、4、5または6、例えば、2、3、4または5、特に2、3または4のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域を含む(またはからなる)。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号26、27、28、29または30、例えば、26、27、28または29、特に26、27または28のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVH領域を含む(またはからなる)。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号38、39、40、41または42、例えば、38、39、40または41、特に38、39または40のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVH領域を含む(または、それからなる)。
【0218】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号8、9、10または11のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域を含む(または、それからなる)。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号32、33、34または35のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVH領域を含む(または、それからなる)。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号44、45、46または47のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVH領域を含む(または、それからなる)。
【0219】
一実施形態では、VH領域は、配列番号2の配列を含むCDR3、配列番号26の配列を含むCDR2、及び配列番号38の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号2の配列からなり、CDR2は配列番号26の配列からなり、及びCDR1は配列番号38の配列からなる。
【0220】
一実施形態では、VH領域は、配列番号3の配列を含むCDR3、配列番号27の配列を含むCDR2、及び配列番号39の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号3の配列からなり、CDR2は配列番号27の配列からなり、及びCDR1は配列番号39の配列からなる。
【0221】
一実施形態では、VH領域は、配列番号4の配列を含むCDR3、配列番号28の配列を含むCDR2、及び配列番号40の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号4の配列からなり、CDR2は配列番号28の配列からなり、及びCDR1は配列番号40の配列からなる。
【0222】
一実施形態では、VH領域は、配列番号5の配列を含むCDR3、配列番号29の配列を含むCDR2、及び配列番号41の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号5の配列からなり、CDR2は配列番号29の配列からなり、及びCDR1は配列番号41の配列からなる。
【0223】
一実施形態では、VH領域は、配列番号6の配列を含むCDR3、配列番号30の配列を含むCDR2、及び配列番号42の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号6の配列からなり、CDR2は配列番号30の配列からなり、及びCDR1は配列番号42の配列からなる。
【0224】
一実施形態では、VH領域は、配列番号8の配列を含むCDR3、配列番号32の配列を含むCDR2、及び配列番号44の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号8の配列からなり、CDR2は配列番号32の配列からなり、及びCDR1は配列番号44の配列からなる。
【0225】
一実施形態では、VH領域は、配列番号9の配列を含むCDR3、配列番号33の配列を含むCDR2、及び配列番号45の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号9の配列からなり、CDR2は配列番号33の配列からなり、及びCDR1は配列番号45の配列からなる。
【0226】
一実施形態では、VH領域は、配列番号10の配列を含むCDR3、配列番号34のCDR2配列、及び配列番号46のCDR1配列を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号10の配列からなり、CDR2は配列番号34の配列からなり、及びCDR1は配列番号46の配列からなる。
【0227】
一実施形態では、VH領域は、配列番号11の配列を含むCDR3、配列番号35のCDR2配列、及び配列番号47のCDR1配列を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号11の配列からなり、CDR2は配列番号35の配列からなり、及びCDR1は配列番号47の配列からなる。
【0228】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号14~25、例えば、配列番号14、15、16、17または18、例えば、14、15、16または17、特に、14、15または16のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む(または、それからなる)。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列A1~A12(表2の)、例えば、配列A1、A2、A3、A4またはA5、例えば、A1、A2、A3またはA4、特にA1、A2またはA3のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVL領域を含む(または、それからなる)。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号50~61、例えば、配列番号50、51、52、53または54、例えば、50、51、52または53、特に、50、51または52のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVL領域を含む(または、それからなる)。
【0229】
一実施形態では、VL領域は、配列番号14の配列を含むCDR3、配列A1の配列を含むCDR2、及び配列番号50の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号14の配列からなり、CDR2は配列A1の配列からなり、及びCDR1は配列番号50の配列からなる。
【0230】
一実施形態では、VL領域は、配列番号15の配列を含むCDR3、配列A2の配列を含むCDR2、及び配列番号51の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号15の配列からなり、CDR2は配列A2の配列からなり、及びCDR1は配列番号51の配列からなる。
【0231】
一実施形態では、VL領域は、配列番号16の配列を含むCDR3、配列A3の配列を含むCDR2、及び配列番号52の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号16の配列からなり、CDR2は配列A3の配列からなり、CDR1は配列番号52の配列からなる。
【0232】
一実施形態では、VL領域は、配列番号17の配列を含むCDR3、配列A4の配列を含むCDR2、及び配列番号53の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号17の配列からなり、CDR2は配列A4の配列からなり、及びCDR1は配列番号53の配列からなる。
【0233】
一実施形態では、VL領域は、配列番号18の配列を含むCDR3、配列A5の配列を含むCDR2、及び配列番号54の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号18の配列からなり、CDR2は配列A5の配列からなり、及びCDR1は配列番号54の配列からなる。
【0234】
一実施形態では、VL領域は、配列番号20の配列を含むCDR3、配列A7の配列を含むCDR2、及び配列番号56の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号20の配列からなり、CDR2は配列A7の配列からなり、及びCDR1は配列番号56の配列からなる。
【0235】
一実施形態では、VL領域は、配列番号21の配列を含むCDR3、配列A8の配列を含むCDR2、及び配列番号57の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号21の配列からなり、CDR2は配列A8の配列からなり、及びCDR1は配列番号57の配列からなる。
【0236】
一実施形態では、VL領域は、配列番号22の配列を含むCDR3、配列A9の配列を含むCDR2、及び配列番号58の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号22の配列からなり、CDR2は配列A9の配列からなり、及びCDR1は配列番号58の配列からなる。
【0237】
一実施形態では、VL領域は、配列番号23の配列を含むCDR3、配列A10の配列を含むCDR2、及び配列番号59の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、CDR3は配列番号23の配列からなり、CDR2は配列A10の配列からなり、及びCDR1は配列番号59の配列からなる。
【0238】
一実施形態では、VH領域は、配列番号2の配列を含むCDR3、配列番号26の配列を含むCDR2、配列番号38の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号14の配列を含むCDR3、配列A1の配列を含むCDR2、及び配列番号50の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号2の配列からなり、HCDR2は配列番号26の配列からなり、HCDR1は配列番号38の配列からなり、LCDR3は配列番号14の配列からなり、LCDR2は配列A1の配列からなり、LCDR1は配列番号50の配列からなる。
【0239】
一実施形態では、VH領域は、配列番号3の配列を含むCDR3、配列番号27の配列を含むCDR2、配列番号39の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号15の配列を含むCDR3、配列A2の配列を含むCDR2、及び配列番号51の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号3の配列からなり、HCDR2は配列番号27の配列からなり、HCDR1は配列番号39の配列からなり、LCDR3は配列番号15の配列からなり、LCDR2は配列A2の配列からなり、LCDR1は配列番号51の配列からなる。
【0240】
一実施形態では、VH領域は、配列番号4の配列を含むCDR3、配列番号28の配列を含むCDR2、配列番号40の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号16の配列を含むCDR3、配列A3の配列を含むCDR2、及び配列番号52の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号4の配列からなり、HCDR2は配列番号28の配列からなり、HCDR1は配列番号40の配列からなり、LCDR3は配列番号16の配列からなり、LCDR2は配列A3の配列からなり、LCDR1は配列番号52の配列からなる。
【0241】
一実施形態では、VH領域は、配列番号5の配列を含むCDR3、配列番号29の配列を含むCDR2、配列番号41の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号17の配列を含むCDR3、配列A4の配列を含むCDR2、及び配列番号53の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号5の配列からなり、HCDR2は配列番号29の配列からなり、HCDR1は配列番号41の配列からなり、LCDR3は配列番号17の配列からなり、LCDR2は配列A4の配列からなり、LCDR1は配列番号53の配列からなる。
【0242】
一実施形態では、VH領域は、配列番号6の配列を含むCDR3、配列番号30の配列を含むCDR2、配列番号42の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号18の配列を含むCDR3、配列A5の配列を含むCDR2、及び配列番号54の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号6の配列からなり、HCDR2は配列番号30の配列からなり、HCDR1は配列番号42の配列からなり、LCDR3は配列番号18の配列からなり、LCDR2は配列A5の配列からなり、LCDR1は配列番号54の配列からなる。
【0243】
一実施形態では、VH領域は、配列番号7の配列を含むCDR3、配列番号31の配列を含むCDR2、配列番号43の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号19の配列を含むCDR3、配列A6の配列を含むCDR2、及び配列番号55の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号7の配列からなり、HCDR2は配列番号31の配列からなり、HCDR1は配列番号43の配列からなり、LCDR3は配列番号19の配列からなり、LCDR2は配列A6の配列からなり、LCDR1は配列番号55の配列からなる。
【0244】
一実施形態では、VH領域は、配列番号8の配列を含むCDR3、配列番号32の配列を含むCDR2、配列番号44の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号20の配列を含むCDR3、配列A7の配列を含むCDR2、及び配列番号56の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号8の配列からなり、HCDR2は配列番号32の配列からなり、HCDR1は配列番号44の配列からなり、LCDR3は配列番号20の配列からなり、LCDR2は配列A7の配列からなり、LCDR1は配列番号56の配列からなる。
【0245】
一実施形態では、VH領域は、配列番号9の配列を含むCDR3、配列番号33の配列を含むCDR2、配列番号45の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号21の配列を含むCDR3、配列A8の配列を含むCDR2、及び配列番号57の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号9の配列からなり、HCDR2は配列番号33の配列からなり、HCDR1は配列番号45の配列からなり、LCDR3は配列番号21の配列からなり、LCDR2は配列A8の配列からなり、LCDR1は配列番号57の配列からなる。
【0246】
一実施形態では、VH領域は、配列番号10の配列を含むCDR3、配列番号34の配列を含むCDR2、配列番号46の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号22の配列を含むCDR3、配列A9の配列を含むCDR2、及び配列番号58の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号10の配列からなり、HCDR2は配列番号34の配列からなり、HCDR1は配列番号46の配列からなり、LCDR3は配列番号22の配列からなり、LCDR2は配列A9の配列からなり、LCDR1は配列番号58の配列からなる。
【0247】
一実施形態では、VH領域は、配列番号11の配列を含むCDR3、配列番号35の配列を含むCDR2、配列番号47の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号23の配列を含むCDR3、配列A10の配列を含むCDR2、及び配列番号59の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号11の配列からなり、HCDR2は配列番号35の配列からなり、HCDR1は配列番号47の配列からなり、LCDR3は配列番号23の配列からなり、LCDR2は配列A10の配列からなり、LCDR1は配列番号59の配列からなる。
【0248】
一実施形態では、VH領域は、配列番号12の配列を含むCDR3、配列番号36の配列を含むCDR2、配列番号48の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号24の配列を含むCDR3、配列A11の配列を含むCDR2、及び配列番号60の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号12の配列からなり、HCDR2は配列番号36の配列からなり、HCDR1は配列番号48の配列からなり、LCDR3は配列番号24の配列からなり、LCDR2は配列A11の配列からなり、LCDR1は配列番号60の配列からなる。
【0249】
一実施形態では、VH領域は、配列番号13の配列を含むCDR3、配列番号37の配列を含むCDR2、配列番号49の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号25の配列を含むCDR3、配列A12の配列を含むCDR2、及び配列番号61の配列を含むCDR1を含む。一実施形態では、HCDR3は配列番号13の配列からなり、HCDR2は配列番号37の配列からなり、HCDR1は配列番号49の配列からなり、LCDR3は配列番号25の配列からなり、LCDR2は配列A12の配列からなり、LCDR1は配列番号61の配列からなる。
【0250】
一実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるように1つ以上のCDR配列を含む。さらなる実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1252_P01_C08の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1245_P01_E07の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1245_P02_G04の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1245_P02_B07の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1251_P02_C05の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1139_P01_E04の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1245_P02_F07の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1245_P01_G06の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1245_P01_G09の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1138_P01_B09の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、表2に記載されるクローン1251_P02_G10の1つ以上(例えばすべて)のCDR配列を含む。
【0251】
【表2】

【0252】
好適には、上記のVH領域及びVL領域はそれぞれ、4つのフレームワーク領域(FR1~FR4)を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62~85のいずれか1つのフレームワーク領域と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3及び/またはFR4)を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62~85のいずれか1つのフレームワーク領域と少なくとも90%、例えば少なくとも95%、97%または99%の配列同一性を有する配列を含むフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3及び/またはFR4)を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62~85のいずれか1つの配列を含むフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3及び/またはFR4)を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62~85のいずれか1つの配列からなるフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3及び/またはFR4)を含む。
【0253】
本明細書に記載の抗体は、それらの完全な軽鎖可変配列及び/または重鎖可変配列によって定義され得る。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0254】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH領域を含む。さらなる実施形態では、VH領域は、配列番号62、63、64、65または66、例えば62、63、64または65、特に62、63または64のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、VH領域は、配列番号62、63、64、65または66、例えば62、63、64または65、特に62、63または64のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。さらなる実施形態では、VH領域は、配列番号68、69、70、71、72または73、例えば68、69、70または71のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、VH領域は、配列番号68、69、70、71、72または73、例えば68、69、70または71のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0255】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVL領域を含む。さらなる実施形態では、VL領域は、配列番号74、75、76、77または78、例えば、74、75、76または77、特に74、75、または76のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、VL領域は、配列番号74、75、76、77または78、例えば、74、75、76または77、特に74、75、または76のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。さらなる実施形態では、VL領域は、配列番号80、81、82、83、84または85、例えば80、81、82または83のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、VL領域は、配列番号80、81、82、83、84または85、例えば80、81、82または83のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0256】
さらなる実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。さらなる実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVL領域を含む。
【0257】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号63(1252_P01_C08)のアミノ酸配列を含むVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62(1245_P01_E07)のアミノ酸配列を含むVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号64(1245_P02_G04)のアミノ酸配列を含むVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号68(1139_P01_E04)のアミノ酸配列を含むVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号69(1245_P02_F07)のアミノ酸配列を含むVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号70(1245_P01_G06)のアミノ酸配列を含むVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号71(1245_P01_G09)のアミノ酸配列を含むVH領域を含む。
【0258】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号63(1252_P01_C08)のアミノ酸配列からなるVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62(1245_P01_E07)のアミノ酸配列からなるVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号64(1245_P02_G04)のアミノ酸配列からなるVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号68(1139_P01_E04)のアミノ酸配列からなるVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号69(1245_P02_F07)のアミノ酸配列からなるVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号70(1245_P01_G06)のアミノ酸配列からなるVH領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号71(1245_P01_G09)のアミノ酸配列からなるVH領域を含む。
【0259】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号75(1252_P01_C08)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号74(1245_P01_E07)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号76(1245_P02_G04)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号80(1139_P01_E04)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号81(1245_P02_F07)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号82(1245_P01_G06)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号83(1245_P01_G09)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0260】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号75(1252_P01_C08)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号74(1245_P01_E07)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号76(1245_P02_G04)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号80(1139_P01_E04)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号81(1245_P02_F07)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号82(1245_P01_G06)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号83(1245_P01_G09)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。
【0261】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号63(1252_P01_C08)のアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号75(1252_P01_C08)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62(1245_P01_E07)のアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号74(1245_P01_E07)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号64(1245_P02_G04)のアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号76(1245_P02_G04)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号68(1139_P01_E04)のアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号80(1139_P01_E04)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号69(1245_P02_F07)のアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号81(1245_P02_F07)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号70(1245_P01_G06)のアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号82(1245_P01_G06)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号71(1245_P01_G06)のアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号83(1245_P01_G09)のアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0262】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号63(1252_P01_C08)のアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号75(1252_P01_C08)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号62(1245_P01_E07)のアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号74(1245_P01_E07)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号64(1245_P02_G04)のアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号76(1245_P02_G04)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号68(1139_P01_E04)のアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号80(1139_P01_E04)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号69(1245_P02_F07)のアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号81(1245_P02_F07)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号70(1245_P01_G06)のアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号82(1245_P01_G06)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号71(1245_P01_G09)のアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号83(1245_P01_G09)のアミノ酸配列からなるVL領域を含む。
【0263】
VH領域及びVL領域の両方を含む断片の場合、これらは、共有結合(例えば、ジスルフィド結合またはリンカーを介して)または非共有結合のいずれかで結合し得る。本明細書に記載の抗体断片は、scFv、すなわち、リンカーによって結合されたVH領域及びVL領域を含む断片を含み得る。一実施形態では、VH領域及びVL領域は、(例えば、合成)ポリペプチドリンカーによって結合されている。ポリペプチドリンカーは、(GlySer)リンカーを含み得、n=1~8、例えば、2、3、4、5または7である。ポリペプチドリンカーは、[(GlySer)(GlyAlaSer)リンカーを含み得、n=1~8、例えば、2、3、4、5または7であり、m=1~8、例えば、0、1、2または3であり、及びp=1~8、例えば、1、2または3である。さらなる実施形態では、リンカーは、配列番号98を含む。さらなる実施形態では、リンカーは、配列番号98からなる。
【0264】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号86~97のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号86~97のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号87(1252_P01_C08)のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号86(1245_P01_E07)のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号88(1245_P02_G04)のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号92(1139_P01_E04)のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号93(1245_P02_F07)のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号94(1245_P01_G06)のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号95(1245_P01_G09)のアミノ酸配列を含む。
【0265】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号86~97のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。さらなる実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号86~97のいずれか1つのアミノ酸配列からなる。さらに別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号87(1252_P01_C08)のアミノ酸配列からなる。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号86(1245_P01_E07)のアミノ酸配列からなる。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号88(1245_P02_G04)のアミノ酸配列からなる。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号92(1139_P01_E04)のアミノ酸配列からなる。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号93(1245_P02_F07)のアミノ酸配列からなる。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号94(1245_P01_G06)のアミノ酸配列からなる。別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号95(1245_P01_G09)のアミノ酸配列からなる。
【0266】
当業者であれば、scFv構築物を設計し、翻訳、精製及び検出を支援するためのN末端及びC末端修飾を含めて作成し得ることを理解されよう。例えば、scFv配列のN末端に、追加のメチオニン及び/またはアラニンアミノ酸残基を、カノニカルVH配列の前に含めてもよい(例えば、開始QVQまたはEVQ)。C末端(すなわち、IMGTの定義に従って終了するカノニカルVLドメイン配列のC末端)には、追加の配列、例えば、(i)定常ドメインの部分配列及び/または(ii)精製及び検出を支援するためのHisタグ及びFlagタグなどのタグを含む追加の合成配列を含めてもよい。一実施形態では、配列番号124を、配列番号86、88~90、92~97のいずれか1つのC末端に付加する。一実施形態では、配列番号125を、配列番号86、88~90、92~97のいずれか1つのC末端に付加する。一実施形態では、配列番号126を、配列番号87または91のいずれか1つのC末端に付加する。一実施形態では、配列番号127を、配列番号87または91のいずれか1つのC末端に付加する。前記scFv NまたはC末端配列は任意選択であり、別のscFv設計、翻訳、精製または検出戦略を採用する場合、除去、改変または置換され得ることがよく理解される。
【0267】
本明細書に記載されるように、抗体は任意の形式であり得る。好ましい実施形態では、抗体はIgG1型である。したがって、一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号111~122のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号111~122のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号111~116、例えば、配列番号111~113及び116のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号117~122、例えば、配列番号117~120のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号111、112、116~120、例えば、配列番号111、112もしくは116、または配列番号117~120のアミノ酸配列を含む。
【0268】
一実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号111~122のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。さらなる実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号111~122のいずれか1つのアミノ酸配列からなる。さらに別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号111~116、例えば、配列番号111~113及び116のアミノ酸配列からなる。さらに別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号117~122、例えば、配列番号117~120のアミノ酸配列からなる。さらに別の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号111、112、116~120、例えば、配列番号111、112もしくは116、または配列番号117~120のアミノ酸配列からなる。
【0269】
一実施形態では、抗体は、本明細書で定義される抗体もしくはその断片と同じもしくは本質的に同じエピトープに結合するか、またはそれと競合する。当技術分野で公知の日常的な方法を使用することにより、抗体が参照抗Vδ1抗体と同じエピトープに結合するか、または結合についてそれと競合するかどうかを容易に判定することができる。例えば、被験抗体が参照抗Vδ1抗体と同じエピトープに結合するかどうかを判定するために、参照抗体を、飽和条件下でVδ1タンパク質またはペプチドに結合させることができる。次に、Vδ1鎖に結合する被験抗体の能力を評価する。被験抗体が参照抗Vδ1抗体との飽和結合に続いてVδ1に結合することができる場合、被験抗体は、参照抗Vδ1抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。他方、参照抗Vδ1抗体との飽和結合後に被験抗体がVδ1鎖に結合することができない場合、被験抗体は、参照抗Vδ1抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合し得る。
【0270】
本発明はまた、本明細書で定義される抗体もしくはその断片、または本明細書に記載の例示的な抗体のいずれかのCDR配列を有する抗体とVδ1への結合について競合する、抗Vδ1抗体を含む。例えば、どのタンパク質、抗体及び他のアンタゴニストがVδ1鎖への結合について抗体と競合するか及び/またはエピトープを共有するかを判定するために、抗体を用いて競合アッセイを実施することができる。これらのアッセイは、当業者には容易に知られ、タンパク質、例えばVδ1上の限られた数の結合部位についてのアンタゴニストまたはリガンド間の競合を評価する。抗体(またはその断片)を競合の前後に固定化または不溶化し、Vδ1鎖に結合した試料を、例えば、デカント(抗体を事前に不溶化した場合)または遠心分離(抗体が競合反応後に沈殿した場合)によって非結合試料から分離する。また、競合結合は、タンパク質への抗体の結合または結合の欠如によって機能が変化するかどうか、例えば抗体分子が、例えば標識の酵素活性を阻害するかまたは増強するかどうかによって判定され得る。当技術分野で公知でありかつ本明細書に記載されているように、ELISA及び他の機能アッセイを使用してもよい。
【0271】
2つの抗体は、それぞれが他方の標的抗原への結合を競合的に阻害(遮断)する場合、同じまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、1倍、5倍、10倍、20倍または100倍過剰な1つの抗体は、競合結合アッセイで測定した場合、他方の結合を少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%または99%までも阻害する。あるいは、一方の抗体の結合を低下または排除する標的抗原の本質的にすべてのアミノ酸変異が、他方の結合を低下または排除する場合、2つの抗体は同じエピトープを有する。
【0272】
次いで、追加の日常的な実験(例えば、ペプチド変異及び結合分析)を実行して、観察された被験抗体の結合の欠如が、実際に参照抗体と同じエピトープへの結合によるものかどうか、または立体遮断(または、別の現象)が観察された結合の欠如の原因であるかどうかを確認することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、または当技術分野で利用可能な他の任意の定量的もしくは定性的抗体結合アッセイを使用して実施することができる。
【0273】
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、Asn297(Kabat番号付けスキーム)に連結された糖への改変によって修飾されたエフェクター機能を含む。さらなる前記修飾において、Asn297は、フコシル化されていないか、または減少したフコシル化を示す(すなわち、脱フコシル化抗体または非フコシル化抗体)。フコシル化には、分子への糖フコースの付加、例えば、N-グリカン、O-グリカン及び糖脂質へのフコースの結合が含まれる。したがって、脱フコシル化抗体では、フコースは定常領域の糖鎖に結合していない。抗体を修飾して、抗体のフコシル化を防止または阻害してもよい。一般的には、グリコシル化修飾は、標的改変によるか、または標的もしくは偶然の宿主もしくはクローン選択による、代替グリコシル化プロセシング能力を含む宿主細胞における前記抗体またはその断片の発現を伴う。これら及び他のエフェクターの修飾は、Xinhua Wang et al.(2018)Protein & Cell 9:63-73及びPereira et al.(2018)mAbs 10(5):693-711(本明細書に援用される)による最近の概説でさらに考察されている。
【0274】
抗体配列の改変
既知の方法を使用して、抗体及びその断片を改変してもよい。本明細書に記載の抗体分子への配列改変は、当業者であれば容易に取り入れることができる。以下の例は非限定的である。
【0275】
ファージライブラリ由来の抗体の探索及び配列回収の間に、所望の抗体可変ドメインは、サブクローン化によって完全長IgGに再編成され得る。プロセスを加速するために、多くの場合、制限酵素を使用して可変ドメインを移す。これらのユニークな制限酵素部位は、付加的/代替的なアミノ酸を導入し、カノニカル配列から離れ得る(そのようなカノニカル配列は、例えば、international ImMunoGeneTics[IMGT]情報システムで見いだされ得る。http://www.imgt.orgを参照のこと)。これらは、カッパまたはラムダ軽鎖配列改変として導入され得る。
【0276】
カッパ軽鎖の改変
可変カッパ軽鎖の可変配列は、完全長IgGに再編成する際に制限酵素部位(例えばNhe1-Not1)を使用することによりクローニングされ得る。より具体的には、カッパ軽鎖のN末端に、クローニングをサポートするために追加のAla-Ser配列を導入した。好ましくは、この追加のAS配列を、その後、カノニカルN末端配列を作製するようなさらなる開発の間に除去する。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の抗体を含有するカッパ軽鎖は、それらのN末端にAS配列を含まず、すなわち、配列番号74、76~78及び80~85は、最初のAS配列を含まない。さらなる実施形態では、配列番号74及び76~78は、最初のAS配列を含まない。この実施形態は、この配列を含有する本明細書に含まれる他の配列にも適用されることが理解されよう(例えば、配列番号86、88~90及び92~97)。
【0277】
クローニングをサポートするために、追加のアミノ酸変更を行ってもよい。例えば、本明細書に記載の抗体の場合、カッパ軽鎖可変ドメイン/定常ドメイン境界で、バリンからアラニンへの変更を導入して、クローニングをサポートした。これにより、カッパ定常ドメインが改変された。具体的には、これにより、定常ドメインは
【0278】
【化1】
【0279】
(NotI制限酵素部位から)で開始することになる。好ましくは、この配列をさらなる開発中に改変して、
【0280】
【化2】
【0281】
で開始するカノニカルカッパ軽鎖定常領域を作製することができる。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の抗体を含有するカッパ軽鎖は、配列RTVで開始する定常ドメインを含有する。したがって、一実施形態では、配列番号111~114及び117~122の配列
【0282】
【化3】
【0283】
を、配列
【0284】
【化4】
【0285】
で置き換える。
【0286】
ラムダ軽鎖の改変
上記のカッパの例と同様に、ラムダ軽鎖可変ドメインも、完全長IgGに再編成する際に制限酵素部位(例えばNhe1-Not1)を導入することによりクローニングされ得る。より具体的には、ラムダ軽鎖のN末端に、クローニングをサポートするために追加のAla-Ser配列を導入してもよい。好ましくは、この追加のAS配列を、その後、カノニカルN末端配列を作製するようなさらなる開発の間に除去する。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の抗体を含有するラムダ軽鎖は、それらのN末端にAS配列を含まず、すなわち、配列番号75及び79は、最初のAS配列を含まない。この実施形態は、この配列を含有する本明細書に含まれる他の配列にも適用されることが理解されよう(例えば、配列番号87、91、115及び116)。一実施形態では、配列番号75は最初の6残基を含まず、すなわち、ASSYEL配列が除去されている。
【0287】
別の例として、本明細書に記載の抗体の場合、ラムダ軽鎖可変ドメイン/定常ドメイン境界で、リジンからアラニンへの配列変更を導入して、クローニングをサポートした。これにより、ラムダ定常ドメインが改変された。具体的には、これにより、定常ドメインは
【0288】
【化5】
【0289】
(NotI制限酵素部位から)で開始することになる。好ましくは、この配列を、さらなる開発中に改変して、
【0290】
【化6】
【0291】
で開始するカノニカルラムダ軽鎖定常領域を作製することができる。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の抗体を含有するラムダ軽鎖は、配列GQPKで開始する定常ドメインを含有する。したがって、一実施形態では、配列番号115または116の配列
【0292】
【化7】
【0293】
を、配列
【0294】
【化8】
【0295】
で置き換える。
【0296】
重鎖の改変
通常、ヒト可変重鎖配列は、塩基性グルタミン(Q)または酸性グルタミン酸(E)のいずれかで開始する。しかしながら、そのような配列は両方とも、その後、酸性アミノ酸残基であるピログルタミン酸(pE)に変換されることが知られている。QからpEへの変換により抗体の電荷が変化するが、EからpEへの変換は抗体の電荷を変化させない。したがって、経時的な電荷変化の変動を回避するための1つの選択肢は、最初に開始重鎖配列をQからEに改変することである。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の抗体の重鎖は、N末端にQからEへの改変を含有する。特に、配列番号62、64及び/または67~71の最初の残基を、QからEに改変してもよい。この実施形態は、この配列を含有する本明細書に含まれる他の配列にも適用されることが理解されよう(例えば、配列番号86、88、91~97及び111、112、115、117~120)。
【0297】
さらに、IgG1定常ドメインのC末端はPGKで終結する。しかしながら、末端の塩基性リジン(K)は、その後多くの場合、発現中に切断される(例えば、CHO細胞中で)。これにより、C末端のリジン残基が様々に失われることにより、抗体の電荷が変化する。したがって、1つの選択肢は、最初にリジンを除去して、PGで終結する均一で一貫した重鎖C末端配列を生じさせることである。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の抗体の重鎖は、そのC末端から除去された末端Kを有する。特に、本発明の抗体は、末端リジン残基が除去されている配列番号111~122のいずれか1つを含み得る。
【0298】
任意選択のアロタイプの改変
抗体の探索中に、特定のヒトアロタイプを使用してもよい。任意選択で、抗体を、開発中に異なるヒトアロタイプに切り替えることができる。非限定的な例として、カッパ鎖には、3つのKm対立遺伝子を定義するKm1、Km1,2及びKm3と称される3つのヒトアロタイプがある(アロタイプ番号付けを使用)。Km1はバリン153(IMGT V45.1)及びロイシン191(IMGT L101)と相関し、Km1,2はアラニン153(IMGT A45.1)及びロイシン191(IMGT L101)と相関し、Km3はアラニン153(IMGT A45.1)及びバリン191(IMGT V101)と相関する。したがって、任意選択で、標準的なクローニングアプローチによって、1つのアロタイプから別のアロタイプに配列を改変することができる。例えば、L191V(IMGT L101V)の変更により、Km1,2アロタイプがKm3アロタイプに変換される。そのようなアロタイプのさらなる詳細については、Jefferis and Lefranc(2009)MAbs1(4):332-8を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。
【0299】
したがって、一実施形態では、本明細書に記載の抗体は、同じ遺伝子の別のヒトアロタイプに由来するアミノ酸置換を含有する。さらなる実施形態では、抗体は、cドメインをkm1,2からkm3アロタイプに変換するためのカッパ鎖へのL191V(IMGT L101V)置換を含有する。
【0300】
抗体結合
抗体またはその断片は、表面プラズモン共鳴によって測定される1.5×10-7M(すなわち、150nM)未満の結合親和性(KD)でγδTCRのVδ1鎖に結合し得る。好ましい実施形態では、KDは1.5×10-7M(すなわち150nM)未満である。さらなる実施形態では、KDは、1.3×10-7M(すなわち、130nM)以下、例えば1.0×10-7M(すなわち、100nM)以下である。さらに別の実施形態では、KDは、5.0×10-8M(すなわち、50nM)未満、例えば4.0×10-8M(すなわち、40nM)未満、3.0×10-8M(すなわち、30nM)未満または2.0×10-8M(すなわち、20nM)未満である。例えば、一態様により、表面プラズモン共鳴によって測定される1.5×10-7M(すなわち、150nM)未満の結合親和性(KD)でγδTCRのVδ1鎖に結合するヒト抗Vδ1抗体を提供する。
【0301】
一実施形態では、抗体またはその断片は、表面プラズモン共鳴によって測定される4.0×10-8M(すなわち、40nM)未満、3.0×10-8M(すなわち、30nM)未満または2.0×10-8M(すなわち、20nM)未満の結合親和性(KD)でγδTCRのVδ1鎖に結合する。
【0302】
本明細書に記載の抗体の結合親和性分析を、PCT出願第PCT/GB2020/051956号(これらは参照により本明細書に援用される)の実施例1及び5に記載されているように実施した。
【0303】
一実施形態では、抗体またはその断片の結合親和性は、抗体またはその断片を直接または間接的に(例えば、抗ヒトIgG Fcによる捕捉によって)センサーの表面上(例えば、アミン高容量チップまたは同等物)にコーティングすることによって確立され、その場合、抗体またはその断片と結合した標的(すなわち、γδTCRのVδ1鎖)をチップ上で流して、結合を検出する。好適には、PBS+0.02%Tween20ランニングバッファー中、25℃、30μl/分でMASS-2機器(Sierra SPR-32とも称される)を使用する。
【0304】
抗体機能を定義するために使用し得る他のアッセイを、本明細書に記載する。例えば、本明細書に記載の抗体またはその断片を、γδTCRの関与、例えば、抗体結合時のγδTCRの下方制御を測定することによって評価してもよい。抗体またはその断片の適用(任意選択で細胞の表面に提示させる)後に、γδTCRの表面発現を、例えばフローサイトメトリーによって測定することができる。本明細書に記載の抗体またはその断片はまた、γδT細胞の脱顆粒を測定することによって評価してもよい。例えば、γδT細胞への抗体またはその断片の適用(任意選択で細胞の表面に提示させる)後に、細胞脱顆粒のマーカーであるCD107aの発現を、例えばフローサイトメトリーによって測定することができる。本明細書に記載の抗体またはその断片はまた、γδT細胞の殺傷活性を測定することによって評価してもよい(抗体がγδT細胞の殺傷活性に影響を与えるかどうかを試験するために)。例えば、標的細胞を、抗体またはその断片の存在下(任意選択で細胞の表面に提示させる)でγδT細胞と共にインキュベートしてもよい。インキュベーション後、培養物を細胞生死判別色素で染色して、生きている標的細胞と死んでいる標的細胞を区別してもよい。次いで、死細胞の割合を、例えばフローサイトメトリーによって測定することができる。
【0305】
本明細書に記載されるように、アッセイで使用する抗体またはその断片を、表面、例えば、Fc受容体を含む細胞などの細胞の表面に提示させてもよい。例えば、抗体またはその断片を、TIB-202(商標)細胞(American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能)などのTHP-1細胞の表面に提示させてもよい。あるいは、抗体またはその断片を、アッセイで直接使用してもよい。
【0306】
そのような機能アッセイにおいて、「EC50」または「50%有効濃度」とも称される最大濃度の半分を計算することによって、出力を測定してもよい。用語「IC50」とは、阻害濃度を指す。EC50及びIC50の両方は、フローサイトメトリー法などの当技術分野で公知の方法を使用して測定してもよい。誤解を避けるために、本出願におけるEC50の値は、IgG1型抗体を使用して提供されている。そのような値は、抗体形式の分子量に基づいて、以下のように同等の値に簡単に変換することができる。
(μg/ml)/(kDa中のMW)=μM
抗体(または断片)結合時のγδTCRの下方制御のEC50は、0.50μg/ml未満、例えば0.40μg/ml、0.30μg/ml、0.20μg/ml、0.15μg/ml、0.10μg/mlまたは0.05μg/ml未満であり得る。好ましい実施形態では、抗体(または断片)結合時のγδTCRの下方制御のEC50は0.10μg/ml未満である。特に、抗体(または断片)結合時のγδTCRの下方制御のEC50は、0.06μg/ml未満、例えば0.05μg/ml、0.04μg/mlまたは0.03μg/ml未満であり得る。特に、前記EC50値は、抗体がIgG1型で測定された場合の値である。例えば、EC50 γδTCR下方制御値は、フローサイトメトリーを使用して測定することができる(例えば、実施例6のアッセイに記載されるように)。
【0307】
抗体(または断片)結合時のγδT細胞脱顆粒のEC50は、0.050μg/ml未満、例えば0.040μg/ml、0.030μg/ml、0.020μg/ml、0.015μg/ml、0.010μg/mlまたは0.008μg/ml未満であり得る。特に、抗体(または断片)結合時のγδT細胞脱顆粒のEC50は、0.005μg/ml未満、例えば0.002μg/ml未満であり得る。好ましい実施形態では、抗体(または断片)結合時のγδT細胞脱顆粒のEC50は0.007μg/ml未満である。特に、前記EC50値は、抗体がIgG1型で測定された場合の値である。例えば、γδT細胞脱顆粒のEC50値は、フローサイトメトリーを使用してCD107a発現(すなわち、細胞脱顆粒のマーカー)を検出することによって測定することができる(例えば、実施例7のアッセイに記載されるように)。一実施形態では、CD107a発現を、抗ヒトCD107a BV421(クローンH4A3)(BD Biosciences)などの抗CD107a抗体を使用して測定する。
【0308】
抗体(または断片)結合時のγδT細胞殺傷のEC50は、0.50μg/ml未満、例えば0.40μg/ml、0.30μg/ml、0.20μg/ml、0.15μg/ml、0.10μg/mlまたは0.07μg/ml未満であり得る。好ましい実施形態では、抗体(または断片)結合によるγδT細胞殺傷のEC50は0.10μg/ml未満である。特に、抗体(または断片)結合によるγδT細胞殺傷のEC50は、0.060μg/ml未満、例えば、0.055μg/ml未満、特に0.020μg/mlまたは0.010μg/ml未満であり得る。特に、前記EC50値は、抗体がIgG1型で測定された場合の値である。例えば、EC50 γδT細胞殺傷値は、抗体、γδT細胞及び標的細胞のインキュベーション後にフローサイトメトリーを使用して死細胞の割合を検出することによって(すなわち、細胞生死判別色素を使用して)測定することができる(例えば、実施例8のアッセイに記載されるように)。一実施形態では、標的細胞の死を、細胞生死判別色素であるViability Dye eFluor(商標)520(ThermoFisher)を使用して測定する。
【0309】
これらの態様で説明されるアッセイにおいて、抗体またはその断片を、THP-1細胞、例えばTIB-202(商標)(ATCC)などの細胞の表面に提示させてもよい。THP-1細胞は、CellTracker(商標)Orange CMTMR(ThermoFisher)などの色素で任意選択で標識されている。
【0310】
本明細書に記載の抗体の機能分析を、WO2021032961(PCT出願第PCT/GB2020/051956号)の実施例1、6、7及び8に記載されているように実施した(これらは参照により本明細書に援用される)。本明細書に記載の抗体の結合特性及び機能特性の概要を、表3に示す。
【0311】
【表3】
【0312】
抗体(または断片)は、例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2012)4th Edition Cold Spring Harbour Laboratory Pressに開示されている技術を使用して取得及び操作することができる。
【0313】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して、特定の抗体産生B細胞を、組織培養で増殖する能力及び抗体鎖合成の欠如のために選択される骨髄腫(B細胞癌)細胞と融合させることによって産生することができる。
【0314】
決定された抗原に対するモノクローナル抗体は、例えば、
a)ハイブリドーマを形成するために、決定された抗原で、不死細胞で及び好ましくは骨髄腫細胞で以前に免疫化された動物の末梢血から得られたリンパ球を不死化させ、
b)形成された不死化細胞(ハイブリドーマ)を培養し、所望の特異性を有する抗体を産生する細胞を回収することによって得ることができる。
【0315】
あるいは、ハイブリドーマ細胞を使用する必要はない。本明細書に記載の標的抗原に結合することができる抗体は、例えば、当技術分野で公知のファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、または哺乳動物ディスプレイ技術を使用して、通常の慣例を介して好適な抗体ライブラリから単離され得る。したがって、モノクローナル抗体は、例えば、
a)ベクターに、特にファージ及びより具体的には糸状バクテリオファージ、リンパ球、特に動物の末梢血リンパ球から得られたDNAまたはcDNA配列(好適には決定された抗原で以前に免疫されている)にクローニングするステップ、
b)抗体の産生を可能にする条件で、上記のベクターで原核細胞を形質転換するステップ、
c)抗体を抗原親和性選択に供することにより、抗体を選択するステップ、
d)所望の特異性を有する抗体を回収するステップを含むプロセスによって得ることができる。
【0316】
ポリヌクレオチド及び発現ベクター
本発明の方法で使用するための抗Vδ1抗体または断片をコードするポリヌクレオチドもまた、提供する。一実施形態では、抗Vδ1抗体または断片は、配列番号99~110と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなるポリヌクレオチドによってコードされる。一実施形態では、抗Vδ1抗体または断片は、配列番号99~110のVH領域を含む発現ベクターによってコードされる。別の実施形態では、抗Vδ1抗体または断片は、配列番号99~110のVL領域を含む発現ベクターによってコードされる。さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号99~110を含むか、またはそれらからなる。さらなる実施形態では、前記ポリヌクレオチドを含むcDNAを提供する。
【0317】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号99~110と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、発現ベクターは、配列番号99~110のVH領域を含む。別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号99~110のVL領域を含む。さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号99~110を含むか、またはそれらからなる。さらなる態様では、前記ポリヌクレオチドを含むcDNAを提供する。
【0318】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号99~101または105~108と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、発現ベクターは、配列番号99~101または105~108のVH領域を含む。別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号99~101または105~108のVL領域を含む。さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号99~101または105~108を含むか、またはそれらからなる。さらなる態様では、前記ポリヌクレオチドを含むcDNAを提供する。
【0319】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号99~101と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、発現ベクターは、配列番号99~101のVH領域を含む。別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号99~101のVL領域を含む。さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号99~101を含むか、またはそれらからなる。さらなる態様では、前記ポリヌクレオチドを含むcDNAを提供する。
【0320】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、コードされた免疫グロブリン鎖可変ドメインのCDR1、CDR2及び/またはCDR3をコードする配列番号99~110の一部のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、コードされた免疫グロブリン鎖可変ドメインのCDR1、CDR2及び/またはCDR3をコードする配列番号99~101または105~108の一部のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、コードされた免疫グロブリン鎖可変ドメインのCDR1、CDR2及び/またはCDR3をコードする配列番号99~101の一部のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなる。
【0321】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、コードされた免疫グロブリン鎖可変ドメインのFR1、FR2、FR3及び/またはFR4をコードする配列番号99~110の一部のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、コードされた免疫グロブリン鎖可変ドメインのFR1、FR2、FR3及び/またはFR4をコードする配列番号99~101または105~108の一部のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、コードされた免疫グロブリン鎖可変ドメインのFR1、FR2、FR3及び/またはFR4をコードする配列番号99~101の一部のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなる。
【0322】
本発明のポリヌクレオチド及び発現ベクターはまた、コードされたアミノ酸配列を参照して記載され得る。したがって、一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号62~85のいずれか1つのアミノ酸配列をコードする配列を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、発現ベクターは、配列番号62~73のいずれか1つのアミノ酸配列をコードする配列を含む。別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号74~85のいずれか1つのアミノ酸配列をコードする配列を含む。
【0323】
抗体またはその断片を発現させるために、本明細書に記載の部分長または完全長の軽鎖及び重鎖をコードするポリヌクレオチドを、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、発現ベクター内に挿入する。したがって、一実施形態では、発現ベクターは、配列番号99~110、例えば、配列番号99、100、101、105、106、107または108のVH領域を含む。別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号99~110、例えば、配列番号99、100、101、105、106、107または108のVL領域を含む。
【0324】
本明細書に記載のヌクレオチド配列は、翻訳、精製及び検出を支援するアミノ酸残基をコードする追加の配列を含むが、使用する発現系に応じて別の配列を使用し得ることが理解されるであろう。例えば、配列番号99~110の最初(5’末端)の9ヌクレオチド及び配列番号99~100、102~103、105~110の最後(3’末端)の36ヌクレオチド、または配列番号101及び104の最後(3’末端)の39ヌクレオチドは、任意選択の配列である。別の設計、翻訳、精製、または検出戦略を採用する場合、これらの任意選択の配列を除去、修飾、または置換することができる。
【0325】
ポリペプチドのアミノ酸配列に関してサイレントであるが特定の宿主における翻訳のための好ましいコドンを提供するポリペプチドをコードするDNAまたはcDNAに、突然変異を起こすことができる。例えば、E.coli及びS.cerevisiae、ならびに哺乳動物、特にヒトにおける核酸の翻訳のための好ましいコドンが知られている。
【0326】
ポリペプチドの突然変異は、例えば、ポリペプチドをコードする核酸への置換、付加または欠失によって達成することができる。ポリペプチドをコードする核酸への置換、付加または欠失は、例えば、エラープローンPCR、シャッフリング、オリゴヌクレオチド指定突然変異、アセンブリPCR、PCR突然変異誘発、in vivo突然変異誘発、カセット突然変異誘発、再帰アンサンブル突然変異誘発、指数アンサンブル突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、遺伝子再構築、人工遺伝子合成、遺伝子部位飽和突然変異誘発(GSSM)、合成ライゲーション再構築(SLR)、またはこれらの方法の組み合わせを含む多くの方法によって導入され得る。核酸への修飾、付加または欠失はまた、組換え、再帰的配列組換え、ホスホチオエート修飾DNA突然変異誘発、ウラシル含有テンプレート突然変異誘発、ギャップ二重鎖突然変異誘発、ポイントミスマッチ修復突然変異誘発、修復欠損宿主株突然変異誘発、化学的突然変異誘発、放射性突然変異誘発、欠失突然変異誘発、制限選択突然変異誘発、制限精製突然変異誘発、アンサンブル突然変異誘発、キメラ核酸多量体作製、またはこれらの組み合わせを含む方法によって導入され得る。
【0327】
特に、人工遺伝子合成を使用してもよい。本明細書に記載のポリペプチドをコードする遺伝子は、例えば、固相DNA合成によって合成的に生成することができる。前駆体テンプレートDNAを必要とせずに、遺伝子全体をde novo合成してもよい。所望のオリゴヌクレオチドを得るために、ビルディングブロックを、生成物の配列によって必要とされる順序で、成長するオリゴヌクレオチド鎖に連続的に結合させる。鎖構築が完了すると、生成物は固相から溶液に放出され、脱保護され、回収される。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により生成物を単離し、所望のオリゴヌクレオチドを高純度で得ることができる。
【0328】
発現ベクターとして、例えば、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、酵母人工染色体(YAC)及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)由来エピソームが挙げられる。ベクター内の転写及び翻訳制御配列がポリヌクレオチドの転写及び翻訳を調節する意図された機能を果たすように、ポリヌクレオチドをベクターにライゲーションする。発現及び/または制御配列は、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、コード配列の5’側の開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナル及び終止コドンを含み得る。発現ベクター及び発現制御配列は、使用する発現宿主細胞と適合するように選択される。配列番号99~110は、合成リンカー(例えば、配列番号98をコードする)によって連結されたVH領域及びVL領域を含む、本発明の一本鎖可変断片をコードするヌクレオチド配列を含む。本発明のポリヌクレオチドまたは発現ベクターは、VH領域、VL領域、またはその両方(任意選択でリンカーを含む)を含み得ることが理解されよう。したがって、VH領域及びVL領域をコードするポリヌクレオチドを別々のベクターに挿入することができ、あるいは両方の領域をコードする配列を同じ発現ベクターに挿入する。ポリヌクレオチド(複数可)を、標準的な方法(例えば、ポリヌクレオチド及びベクターの相補的制限酵素部位のライゲーション、または制限酵素部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入する。
【0329】
便利なベクターは、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするベクターであり、本明細書に記載されるように、任意のVH配列またはVL配列を容易に挿入及び発現できるように改変された適切な制限酵素部位を有している。発現ベクターはまた、宿主細胞からの抗体(またはその断片)の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドが抗体のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ポリヌクレオチドをベクターにクローニングしてもよい。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0330】
宿主細胞は、抗体またはその断片の軽鎖をコードする第1のベクター、及び抗体またはその断片の重鎖をコードする第2のベクターを含み得る。あるいは、重鎖及び軽鎖の両方が、宿主細胞に導入された同じ発現ベクター上にコードされる。一実施形態では、ポリヌクレオチドまたは発現ベクターは、抗体またはその断片と融合した膜アンカーまたは膜貫通ドメインをコードし、抗体またはその断片を宿主細胞の細胞外表面に提示させる。
【0331】
形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の既知の方法によるものであり得る。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入する方法は当技術分野で周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソームへのポリヌクレオチド(複数可)の封入、遺伝子銃注射、DNAの核への直接マイクロインジェクションが含まれる。さらに、ウイルスベクターによって核酸分子を哺乳動物細胞に導入してもよい。
【0332】
発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。これらには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、及び他の多くの細胞株が含まれる。哺乳動物宿主細胞には、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ及びハムスター細胞が含まれる。特に好ましい細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有するかを判定することによって選択される。使用し得る他の細胞株は、昆虫細胞株、例えばSf9細胞、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞及び真菌細胞である。scFv断片及びFv断片などの抗体の抗原結合断片は、当技術分野で公知の方法を使用して単離し、E.coli中で発現させることができる。
【0333】
抗体は、宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくは宿主細胞が増殖する培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を使用して培地から回収され得る。
【0334】
本発明の抗体(または断片)は、例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2012)4th Edition Cold Spring Harbour Laboratory Pressに開示されている技術を使用して取得し、操作することができる。
【0335】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して、特定の抗体産生B細胞を、組織培養で増殖する能力及び抗体鎖合成の欠如のために選択される骨髄腫(B細胞癌)細胞と融合させることによって産生することができる。
【0336】
決定された抗原に対するモノクローナル抗体は、例えば、
a)ハイブリドーマを形成するために、決定された抗原で、不死細胞で及び好ましくは骨髄腫細胞で以前に免疫化された動物の末梢血から得られたリンパ球を不死化させ、
b)形成された不死化細胞(ハイブリドーマ)を培養し、所望の特異性を有する抗体を産生する細胞を回収することによって得ることができる。
【0337】
あるいは、ハイブリドーマ細胞を使用する必要はない。本明細書に記載の標的抗原に結合することができる抗体は、例えば、当技術分野で公知のファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、または哺乳動物ディスプレイ技術を使用して、通常の慣例を介して好適な抗体ライブラリから単離され得る。したがって、モノクローナル抗体は、例えば、
a)ベクターに、特にファージ及びより具体的には糸状バクテリオファージ、リンパ球、特に動物の末梢血リンパ球から得られたDNAまたはcDNA配列(好適には決定された抗原で以前に免疫されている)にクローニングするステップ、
b)抗体の産生を可能にする条件で、上記のベクターで原核細胞を形質転換するステップ、
c)抗体を抗原親和性選択に供することにより、抗体を選択するステップ、
d)所望の特異性を有する抗体を回収するステップを含むプロセスによって得ることができる。
【0338】
治療方法
本発明の組成物は、臨床応用において特定の用途に用いられる。組成物に存在する三つ組の免疫細胞型の抗がん及び健康な細胞保護活性に加えて、NK細胞はまた、ウイルス、細菌、または真菌によって引き起こされる感染症と戦う上でも非常に強力である。Vδ1T細胞は、移植患者や治療前のがん患者の場合のように免疫不全患者における重大な問題であるCMVの再活性化に対する認識及び保護の基本であるという確立された実績を有する。CMV活性化Vδ1は、移植後の広範な免疫抑制剤を使用している患者の二次性悪性腫瘍のリスクを実際に有意に低減する。
【0339】
Vδ2T細胞は、非メバロン酸経路の中間体、すなわち、原核生物と一部の真核生物のみが使用するHMBPPを非常に高い親和性で認識するという点でユニークである。これらの細胞は、マイコバクテリア感染を認識して戦う上で基本的に重要であり、活動性感染症の患者の血液中の全T細胞の50%超を占め得る。Vδ2はまた、原生動物も認識し、マラリアに対する免疫応答に大きく貢献する。
【0340】
したがって、本明細書に記載の組成物は、免疫療法における死亡率に寄与し得るウイルス再活性化及び細菌感染などのがん療法または移植誘発性合併症に対する広範な保護を提供する。一度に1つの細胞型の保護ではカバーすることができないであろう。
【0341】
同じ理由で、この組成物は感染症の治療にも魅力的である。実際、NK細胞が、コロナウイルス(COVID-19)の治療のために試験されている。したがって、この組成物を、COVID、CMV、HIV、マラリア、及び任意のマイコバクテリア感染症の治療に使用してもよい。
【0342】
本発明のさらなる態様により、治療薬に使用するための本明細書で定義される組成物を提供する。
【0343】
本発明のさらなる態様により、がん、感染症または炎症性疾患を治療する方法で使用するための、本明細書で定義される組成物を提供する。
【0344】
本発明の方法によって得られる細胞集団及び組成物はまた、治療に使用してもよい。したがって、本発明のさらなる態様により、医薬品として使用するための、本明細書で定義される方法によって得られる細胞集団を提供する。本明細書における、医薬品としてまたは治療における「使用のための」細胞集団への言及は、対象への細胞集団の投与に限定される。
【0345】
一実施形態では、細胞集団は、がん、感染症または炎症性疾患の治療に使用するためのものである。さらなる実施形態では、細胞集団は、がんの治療に使用するためのものである。
【0346】
本発明のさらなる態様により、医薬品として使用するための、本明細書で定義される細胞集団を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、細胞集団を含む医薬組成物は、がん、感染症または炎症性疾患の治療に使用するためのものである。さらなる実施形態では、細胞集団を含む医薬組成物は、がんの治療に使用するためのものである。
【0347】
本発明のさらなる態様により、本明細書で定義される治療有効量の組成物を投与することを含む、免疫応答の調節を、それを必要とする対象において行う方法を提供する。
【0348】
本発明のさらなる態様により、NK細胞及びγδT細胞を含む治療有効量の組成物を投与することを含む、がん、感染症または炎症性疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法を提供し、その場合、組成物中に存在するγδT細胞の少なくとも40%がCD56を発現する。前述の組成物について記載された実施形態は、本発明のこの態様に等しく適用され得ることが理解されよう。
【0349】
本発明のさらなる態様により、細胞を含む治療有効量の組成物を投与することを含む、がん、感染症または炎症性疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法を提供し、その場合、少なくとも90%の細胞がNK細胞とγδT細胞からなり、少なくとも10%の細胞がVδ1T細胞であり、少なくとも5%の細胞がVδ2T細胞であり、少なくとも30%の細胞がNK細胞である。
【0350】
本発明のさらなる態様により、例えばがん、感染症または炎症性疾患の治療における、医薬品の製造のための本明細書で定義される細胞集団の使用を提供する。
【0351】
養子T細胞療法
本発明の方法によって得られる組成物は、例えば養子T細胞療法のための医薬品として使用してもよい。これには、患者への免疫細胞の移植が含まれる。治療は自家性であってもよく、すなわち、免疫細胞を得た同じ患者に戻してもよく、または治療は同種異系であってもよく、すなわち、ある人の免疫細胞を異なる患者に移してもよい。同種移植を伴う場合、組成物は、αβT細胞を実質的に含まない場合がある。例えば、αβT細胞を、例えば増殖後に、当技術分野で公知の任意の好適な手段を使用して(例えば、磁気ビーズを使用する陰性選択によって)、組成物から枯渇させてもよい。治療方法は、ドナー個体から得られた試料を提供すること、本明細書に記載のように試料から得られた免疫細胞を培養して、例えば、増殖集団を生成すること、及び培養した免疫細胞をレシピエント個体に投与することを含む。
【0352】
治療しようとする患者または対象は、好ましくは、ヒトがん患者(例えば、固形腫瘍の治療を受けているヒト癌患者)またはウイルス感染患者(例えば、CMV感染患者またはHIV感染患者)である。いくつかの場合では、患者は固形腫瘍を有する及び/または治療中である。それらは通常、非造血組織に常駐しているため、組織常駐のVδ1T細胞はまた、全身の血液常駐の対応物よりも腫瘍塊にホーミングして保持される可能性が高く、これらの細胞の養子移入は、固形腫瘍及び潜在的に他の非造血組織関連免疫病理を標的とする際に、より効果的である可能性が高い。
【0353】
γδT細胞とNK細胞は非MHC拘束性であるため、これらが移植された宿主を異物として認識せず、これは、移植片対宿主病を引き起こす可能性が低いことを意味する。これは、例えば、同種異系養子T細胞療法のために、それらを「既製品」で使用し、任意のレシピエントに移すことができることを意味する。
【0354】
本明細書に記載の方法によって得られたMHC非拘束性リンパ球は、NKG2Dを発現し、NKG2Dリガンド(例えば、MICA)に応答する場合があり、これは悪性腫瘍と強く関連している。それらはまた、活性化がなくても細胞傷害プロファイルを発現する可能性があり、したがって、腫瘍細胞を殺傷するのに効果的である可能性が高い。
【0355】
いくつかの実施形態では、腫瘍を有する個体の治療方法は、ドナー個体から得られた前記腫瘍の試料を提供すること、上記のように、試料から得られたMHC非拘束性リンパ球を培養すること、及びMHC非拘束性リンパ球の集団を、腫瘍を有する個体に投与することを含み得る。
【0356】
いくつかの場合では、上記の方法のいずれかによって得られた治療有効量のMHC非拘束性リンパ球を、治療有効量で対象に投与することができる(例えば、がんの治療のために、例えば、固形腫瘍の治療のために)。いくつかの場合では、MHC非拘束性リンパ球の治療有効量は、1用量あたり10×1012細胞未満(例えば、1用量あたり9×1012細胞未満、1用量あたり8×1012細胞未満、1用量あたり7×1012細胞未満、1用量あたり6×1012細胞未満、1用量あたり5×1012細胞未満、1用量あたり4×1012細胞未満、1用量あたり3×1012細胞未満、1用量あたり2×1012細胞未満、1用量あたり1×1012細胞未満、1用量あたり9×1011細胞未満、1用量あたり8×1011細胞未満、1用量あたり7×1011細胞未満、1用量あたり6×1011細胞未満、1用量あたり5×1011細胞未満、1用量あたり4×1011細胞未満、1用量あたり3×1011細胞未満、1用量あたり2×1011細胞未満、1用量あたり1×1011細胞未満、1用量あたり9×1010細胞未満、1用量あたり7.5×1010細胞未満、1用量あたり5×1010細胞未満、1用量あたり2.5×1010細胞未満、1用量あたり1×1010細胞未満、1用量あたり7.5×10細胞未満、1用量あたり5×10細胞未満、1用量あたり2.5×10細胞未満、1用量あたり1×10細胞未満、1用量あたり7.5×10細胞未満、1用量あたり5×10細胞未満、1用量あたり2.5×10細胞未満、1用量あたり1×10細胞未満、1用量あたり7.5×10細胞未満、1用量あたり5×10細胞未満、1用量あたり2.5×10細胞未満、1用量あたり1×10細胞未満、1用量あたり7.5×10細胞未満、1用量あたり5×10細胞未満、1用量あたり2.5×10細胞未満、1用量あたり1×10細胞未満、1用量あたり7.5×10細胞未満、1用量あたり5×10細胞未満、1用量あたり2.5×10細胞未満、または1用量あたり1×10細胞未満)である。
【0357】
いくつかの実施形態では、MHC非拘束性リンパ球の治療有効量は、治療過程にわたって、10×1012細胞未満(例えば、治療過程にわたって、9×1012細胞未満、8×1012細胞未満、7×1012細胞未満、6×1012細胞未満、5×1012細胞未満、4×1012細胞未満、3×1012細胞未満、2×1012細胞未満、1×1012細胞未満、9×1011細胞未満、8×1011細胞未満、7×1011細胞未満、6×1011細胞未満、5×1011細胞未満、4×1011細胞未満、3×1011細胞未満、2×1011細胞未満、1×1011細胞未満、9×1010細胞未満、7.5×1010細胞未満、5×1010細胞未満、2.5未満×1010細胞未満、1×1010細胞未満、7.5×10細胞未満、5×10細胞未満、2.5×10細胞未満、1×10細胞未満、7.5×10細胞未満、5×10細胞未満、2.5×10細胞未満、1×10細胞未満、7.5×10細胞未満、5×10細胞未満、2.5×10細胞未満、1×10細胞未満、7.5×10細胞未満、5×10細胞未満、2.5×10細胞未満、1×10細胞未満、7.5×10細胞未満、5×10細胞未満、2.5×10細胞未満、または1×10細胞未満)である。
【0358】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のMHC非拘束性リンパ球の用量は、約1×10、1.1×10、2×10、3.6×10、5×10、1×10、1.8×10、2×10、5×10、1×10、2×10、または5×10細胞/kgを含む。いくつかの実施形態では、MHC非拘束性リンパ球の用量は、最大約1×10、1.1×10、2×10、3.6×10、5×10、1×10、1.8×10、2×10、5×10、1×10、2×10、または5×10細胞/kgを含む。いくつかの実施形態では、MHC非拘束性リンパ球の用量は、約1.1×10~1.8×10細胞/kgを含む。いくつかの実施形態では、MHC非拘束性リンパ球の用量は、約1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、または5×10細胞を含む。いくつかの実施形態では、MHC非拘束性リンパ球の用量は、少なくとも約1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、または5×10細胞を含む。いくつかの実施形態では、MHC非拘束性リンパ球の用量は、最大約1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、または5×10細胞を含む。
【0359】
一実施形態では、対象の体重1kgあたり10~10のMHC非拘束性リンパ球を対象に投与する。一実施形態では、対象に、MHC非拘束性リンパ球の集団の初期投与(例えば、対象の体重1kgあたり10~10のMHC非拘束性リンパ球、例えば、対象の体重1kgあたり10~10のMHC非拘束性リンパ球の初期投与)、及びMHC非拘束性リンパ球の1回以上(例えば、2、3、4、または5回)のその後の投与(例えば、対象の体重1kgあたり10~10のMHC非拘束性リンパ球、例えば、対象の体重1kgあたり10~10のMHC非拘束性リンパ球の1回以上のその後の投与)を与える。一実施形態では、1回以上のその後の投与は、前回の投与から15日未満、例えば、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2日後、例えば、前回の投与から4、3、または2日未満で行う。一実施形態では、対象に、MHC非拘束性リンパ球集団の少なくとも3回の投与の過程にわたって、対象の体重1kgあたり合計約10のMHC非拘束性リンパ球を与え、例えば、対象に、1×10のMHC非拘束性リンパ球の回の初回投与、3×10のMHC非拘束性リンパ球の2回目の投与、及び6×10のMHC非拘束性リンパ球の3回目の投与を与え、例えば、各投与を、前回の投与から4、3、または2日未満で行う。
【0360】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の治療薬を対象に投与することができる。追加の治療薬は、免疫療法剤、細胞傷害剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、または2つ以上のそれらの薬剤の組み合わせからなる群から選択してもよい。追加の治療薬は、MHC非拘束性リンパ球の投与と同時に、投与前、または投与後に投与してもよい。追加の治療薬は免疫療法剤であってもよく、対象の体内の標的(例えば、対象自身の免疫系)及び/または移行させたMHC非拘束性リンパ球に作用する可能性がある。
【0361】
組成物の投与は、任意の簡便な方法で実施してもよい。本明細書に記載の組成物は、経動脈、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内注射により、または例えば皮内もしくは皮下注射により腹腔内で、患者に投与してもよい。MHC非拘束性リンパ球の組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位に直接注射してもよい。
【0362】
遺伝子改変
本発明の方法によって得られるMHC非拘束性リンパ球細胞はまた、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法などの治療特性を増強するために遺伝子改変してもよい。これには、新規特異性、例えば、モノクローナル抗体の特異性でT細胞を再プログラムするための改変された受容体(例えば、CAR)の生成が含まれる。改変された受容体は、リンパ球を悪性細胞に対して特異的にする可能性があり、したがってがん免疫療法に有用である。例えば、リンパ球は、対象組織由来の正常な体細胞によって発現されない腫瘍関連抗原などの腫瘍抗原を発現するがん細胞を認識し得る。したがって、CAR改変リンパ球を、例えばがん患者の養子T細胞療法に使用してもよい。
【0363】
本明細書に記載のすべての実施形態は、本発明のすべての態様に適用され得ることが理解されよう。
【0364】
条項
本発明及びその好ましい態様を定義する条項のセットは以下のとおりである。
【0365】
1.ナチュラルキラー(NK)細胞及びγδT細胞を含む単離された組成物であって、前記組成物中に存在する前記γδT細胞の少なくとも40%がCD56brightである、前記単離された組成物。
【0366】
2.NK細胞及びγδT細胞を含む単離された組成物であって、前記組成物中に存在する前記NK細胞の少なくとも50%がCD56brightである、前記単離された組成物。
【0367】
3.NK細胞及びγδT細胞を含む単離された組成物であって、前記組成物中に存在する前記γδT細胞の少なくとも50%がCD56を発現する、前記単離された組成物。
【0368】
4.前記組成物中に存在する前記細胞の少なくとも80%が、NK細胞及びγδT細胞を含む、条項1~3のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0369】
5.前記組成物中に存在する前記細胞の少なくとも90%が、NK細胞及びγδT細胞からなる、条項1~4のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0370】
6.前記組成物中に存在する前記細胞の少なくとも20%がγδT細胞である、条項1~5のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0371】
7.前記組成物中に存在する前記細胞の少なくとも30%がγδT細胞である、条項1~6のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0372】
8.前記組成物中に存在する前記細胞の80%未満がγδT細胞である、条項1~7のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0373】
9.前記γδT細胞が、Vδ1T細胞及びVδ2T細胞を含む、条項1~8のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0374】
10.前記組成物中に存在する前記細胞の少なくとも20%がNK細胞である、条項1~9のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0375】
11.前記組成物中に存在する前記細胞の少なくとも30%がNK細胞である、条項1~10のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0376】
12.細胞を含む単離された組成物であって、前記細胞の少なくとも90%がNK細胞及びγδT細胞からなり、前記細胞の少なくとも10%がVδ1T細胞であり、前記細胞の少なくとも5%がVδ2T細胞であり、前記細胞の少なくとも30%がNK細胞である、前記単離された組成物。
【0377】
13.前記組成物中に存在する前記γδT細胞の少なくとも40%がCD56を発現する、条項12に記載の単離された組成物。
【0378】
14.前記組成物中に存在する前記細胞の80%未満がγδT細胞である、条項12または条項13に記載の単離された組成物。
【0379】
15.前記γδT細胞が、Vδ1T細胞を含み、前記Vδ1T細胞の少なくとも15%がNKp30を発現する、条項1~14のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0380】
16.前記γδT細胞が、Vδ1T細胞を含み、前記Vδ1T細胞の50%未満がCD27を発現する、条項1~15のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0381】
17.前記単離された組成物が、改変されたNK細胞及びγδT細胞を含む、条項1~16のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0382】
18.前記改変されたNK細胞及びγδT細胞が、キメラ抗原受容体を発現する、条項17に記載の単離された組成物。
【0383】
19.治療法で使用するための、条項1~18のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0384】
20.がん、感染症または炎症性疾患の治療方法で使用するための、条項1~18のいずれか1項に記載の単離された組成物。
【0385】
21.インターロイキン-15(IL-15)の存在下及びインターロイキン-4(IL-4)の非存在下で抗TCRデルタ可変1(抗Vδ1)抗体またはその断片を使用してγδT細胞及びNK細胞を含む混合細胞集団を刺激すること、ならびに前記混合細胞集団を培養することを含む、非γδ+MHC非拘束性リンパ球の増殖方法。
【0386】
22.前記混合細胞集団を少なくとも7日間、例えば少なくとも14日間培養することを含む、条項21に記載の方法。
【0387】
23.前記増殖させた非γδ+MHC非拘束性リンパ球の少なくとも50%がCD56brightである、条項21または22のいずれか1項に記載の方法。
【0388】
24.MHC非拘束性リンパ球が濃縮された細胞集団を含む組成物の調製方法であって、前記方法が、
(1)対象から取得した試料を、
(i)抗Vδ1抗体またはその断片、及び
(ii)IL-15の存在下、IL-4の非存在下で培養すること(前記培養の初日から)、及び
(2)前記試料から培養した前記細胞集団を単離することを含む、前記調製方法。
【0389】
25.前記方法のステップ(1)が、前記試料を少なくとも7日間、例えば少なくとも14日間培養することを含む、条項24に記載の方法。
【0390】
26.前記MHC非拘束性リンパ球が、NK細胞及びγδT細胞を含む、条項24または条項25に記載の方法。
【0391】
27.ステップ(2)で単離した前記細胞集団中に存在する前記MHC非拘束性リンパ球の少なくとも70%がCD56を発現する、条項24~26のいずれか1項に記載の方法。
【0392】
28.ステップ(2)で単離した前記細胞集団がγδT細胞を含み、前記γδT細胞の少なくとも40%がCD56を発現する、条項24~27のいずれか1項に記載の方法。
【0393】
29.ステップ(2)で単離した前記細胞集団の80%未満がγδT細胞である、条項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【0394】
30.ステップ(2)で単離した前記細胞集団の少なくとも90%がNK細胞及びγδT細胞からなり、前記細胞の少なくとも10%がVδ1T細胞であり、前記細胞の少なくとも5%がVδ2T細胞であり、前記細胞の少なくとも30%がNK細胞である、条項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【0395】
31.前記活性化抗Vδ1抗体またはその断片が、アミノ酸領域:
(i)配列番号1の3~20;及び/または
(ii)配列番号1の37~77内に1つ以上のアミノ酸残基を含むγδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープに結合する、条項21~30のいずれか1項に記載の方法。
【0396】
32.前記エピトープが、配列番号1のアミノ酸領域5~20及び62~77、50~64、37~53及び59~72、59~77、または3~17及び62~69内の1つ以上のアミノ酸残基を含む、条項31に記載の方法。
【0397】
33.前記抗Vδ1抗体またはその断片が、
配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3、
配列番号26~37及び配列A1~A12(表2の)のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2、及び/または
配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1のうちの1つ以上を含む、条項21~32のいずれか1項に記載の方法。
【0398】
34.前記抗Vδ1抗体またはその断片が、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む、条項21~33のいずれか1項に記載の方法。
【0399】
35.前記抗Vδ1抗体またはその断片が、配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、条項21~34のいずれか1項に記載の方法。
【0400】
36.前記抗Vδ1抗体またはその断片が、配列番号86~97のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、条項21~35のいずれか1項に記載の方法。
【0401】
37.前記試料が、造血試料またはその画分である、条項24~36のいずれか1項に記載の方法。
【0402】
38.前記造血試料が、末梢血、臍帯血、リンパ組織、胸腺、骨髄、リンパ節組織またはその画分から選択される、条項37に記載の方法。
【0403】
39.前記造血試料が、低密度単核球(LDMC)または末梢血単核球(PBMC)からなる、条項37または条項38に記載の方法。
【0404】
40.前記試料を、ヒトまたは非ヒト動物の組織から取得する、条項24~39のいずれか1項に記載の方法。
【0405】
41.前記試料を、前記培養の前にT細胞について濃縮する、条項24~40のいずれか1項に記載の方法。
【0406】
42.前記試料から、前記培養の前にαβT細胞を枯渇させる、条項24~41のいずれか1項に記載の方法。
【0407】
43.前記培養を、2.5%の血漿を含む培地中で実施する、条項24~42のいずれか1項に記載の方法。
【0408】
44.条項21~43のいずれか1項に記載の方法によって得られる組成物。
【0409】
45.治療法で使用するための、条項44に記載の組成物。
【0410】
46.がん、感染症または炎症性疾患の治療方法で使用するための、条項44に記載の組成物。
【0411】
47.NK細胞及びγδT細胞を含む治療有効量の組成物を投与することを含む、がん、感染症または炎症性疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記組成物中に存在する前記γδT細胞の少なくとも40%がCD56を発現する、前記方法。
【0412】
48.細胞を含む治療有効量の組成物を投与することを含む、がん、感染症または炎症性疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記細胞の少なくとも90%がNK細胞とγδT細胞からなり、前記細胞の少なくとも10%がVδ1T細胞であり、前記細胞の少なくとも5%がVδ2T細胞であり、前記細胞の少なくとも30%がNK細胞である、前記方法。
【0413】
49.前記方法のステップ(1)が、前記試料を少なくとも12日間、例えば約12日間培養することを含む、条項24~43のいずれか1項に記載の方法。
【0414】
50.条項21~43または条項49のいずれか1項に記載の方法によって取得される、MHC非拘束性リンパ球が濃縮された細胞集団。
【0415】
51.治療法に使用するための条項50に記載の細胞集団。
【0416】
52.がん、感染症または炎症性疾患の治療方法で使用するための、条項50に記載の細胞集団。
【0417】
53.条項21~43のいずれか1項に記載の方法によって得られる細胞集団を含む組成物。
【0418】
本発明の他の特徴及び利点は、本明細書に提供される詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、この説明及び特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示してはいるが、当業者には様々な変更及び修正が明らかになるので、例示のためにのみ与えられていることが理解されよう。次に、本発明を、以下の非限定的な実施例を用いて説明する。
【実施例
【0419】
実施例1.材料及び方法
細胞増殖
下記及び図1に要約される条件下で細胞を増殖させた。
【0420】
条件1:2.5%の同種異系プール血漿(Octaplas、Octapharma)及びGlutamax(ThermoFisher)を補充した無血清培地(CTS OpTmizer、Thermo Fisher)を使用して、αβ-TCR+枯渇末梢血単核球からVδ1+γδT細胞を生成した。単離した細胞を、組換えIL-4、IL-1β、IL-21、IFNγ及び可溶性抗Vδ1モノクローナル抗体の存在下で播種した(1252_P01_C08-社内抗体クローン)。設定後、加湿インキュベーター内で培養物を37℃、5%COでインキュベートした。増殖中の細胞に、新鮮なIL-15、IL-21及び抗Vδ1抗体を再補充した。11~14日間の培養後に細胞を回収し、混合集団としてCryostor5(STEMCELL Technologies)で凍結保存した。
【0421】
条件2:2.5%の同種異系プール血漿(Octaplas、Octapharma)及びGlutamax(ThermoFisher)を補充した無血清培地(CTS OpTmizer、Thermo Fisher)を使用して、αβ-TCR+枯渇末梢血単核球からCD56+リンパ球を生成した。単離した細胞を、組換えIL-15及び可溶性抗Vδ1モノクローナル抗体(社内抗体クローン)の存在下で増殖させた。設定後、加湿インキュベーター内で培養物を37℃、5%COでインキュベートした。増殖中の細胞に、新鮮なIL-15及び抗Vδ1抗体を定期的に再補充した。11~14日間の培養後に細胞を回収し、混合集団としてCryostor5(STEMCELL Technologies)で凍結保存した。
【0422】
条件3:条件1で記載したように、αβ-TCR+枯渇末梢血単核球からVδ1+γδT細胞を生成した。しかしながら、組換えIL-4、IL-1β、IL-21及びIFNγならびに可溶性抗Vδ1モノクローナル抗体(社内抗体クローン)に加えて、組換えIL-15の存在下で細胞を播種した。設定後、加湿インキュベーター内で培養物を37℃、5%COでインキュベートした。増殖中の細胞に、新鮮なIL-15、IL-21及び抗Vδ1抗体を再補充した。11~14日間の培養後に細胞を回収し、混合集団としてCryostor5(STEMCELL Technologies)で凍結保存した。
【0423】
細胞純度及び表面表現型のフローサイトメトリー評価
MACSQuant16フローサイトメーターを使用して、免疫表現型検査を実施した。eFluor 780 fixable viability dyeを使用して死細胞を除外した。Miltenyi及びBioLegendから入手可能な、FITC抗CD45、PE抗TCR α/β、APC抗TCRγ/δ、VioBlue抗TCR Vδ1、FITC抗CD27、PE抗NKp30、PE-Vio770抗NKG2D、PE抗CD19、PerCP-Vio770抗CD14、PE-Vio770抗CD56、APC抗CD3、PE抗TCR Vδ3及びPE-Vio770抗TCR Vδ2抗体を使用して、表面マーカーの発現について細胞を分析した。
【0424】
CD19キメラ抗原受容体をコードするレンチウイルスによる形質導入
RetroNectinコーティング(20μg/mL)し、非組織培養処理した24ウェルプレート中で、CD19標的化キメラ抗原受容体をコードするレンチウイルスベクターを、条件1及び2由来の増殖細胞に形質導入した。ウイルスベクターを、CTS OpTmizer(IL-15及び抗Vδ1抗体を補充した)で希釈した免疫細胞と混合し、32℃、800×gで45分間遠心接種した。形質導入の4日後にフローサイトメトリーによって形質導入効率を決定した。
【0425】
凍結保存培養物の解凍
凍結したクライオバイアルを37℃のウォーターバスで解凍し、事前に加温したOpTmizer+2.5%同種異系血漿に加えた。細胞を300gで7分間遠沈し、計数して生存率を評価し、次いで表現型解析及び下流のアッセイのために1mLあたり2×10細胞で再懸濁した。
【0426】
細胞傷害性アッセイ
条件1~3で増殖させた細胞を、CellTrace Violet標識NALM-6腫瘍標的細胞と共に、96ウェル丸底プレート中で様々なエフェクター対標的比で共培養した。対照(Ctrl)は、エフェクター細胞の非存在下で標的細胞のみを試験した。20時間後、MACSQuant10フローサイトメーターでの取得前にSYTOX AADVANCED Dead Cell Stainを培養液に加えた。CellTrace Violet(CTV)染色により、NALM-6腫瘍細胞が同定され、SYTOXに対して陽性であることにより、死細胞と生細胞を区別した。
【0427】
実施例2.細胞培養条件の比較
実施例1に記載し、図1に要約されている条件1~3のうちの1つを使用して、細胞集団を増殖させた。次いで、増殖した細胞集団を分析し、比較した。
【0428】
回収時の細胞収量を図2に示す。条件2では、条件1と同等の細胞収量が得られる。条件3では、条件1に比べて細胞収量が増加する。
【0429】
免疫細胞組成を分析した。条件1及び3では、Vδ1T細胞が高度に濃縮された集団が生成されるが、条件2では、Vδ1+、Vδ2+及びNK細胞を含む混合集団が生成された。したがって、条件2は予想外に、すべてのMHC非拘束性リンパ球の同時濃縮を示した。結果を図3に示す。条件2を使用して培養した3人のドナー由来の個々の細胞組成を表4にまとめる。
【0430】
【表4】
【0431】
Vδ1T細胞の表面表現型を分析した。条件1及び3に由来するVδ1T細胞は、CD27及びNKG2Dに対して陽性である。条件2に由来するVδ1T細胞では、条件1及び3に比べてCD27の発現が少ないが、NKp30の発現が多く、これはエフェクター表現型と一致する。結果を図4に示す。
【0432】
実施例3.抗Vδ1抗体の比較
条件2を使用して、ただし異なる抗体の存在下で細胞集団を増殖させた。結果を図5に示す。条件2における2つの個別の社内抗Vδ1抗体クローン(1252_P01_C08及び1245_P01_B07)を使用することにより、NK細胞とγδ細胞が濃縮される。これを、γδT細胞のみを効果的に濃縮する抗CD3抗体(OKT-3、BioLegend)と比較する。
【0433】
実施例4.細胞組成物の細胞傷害性
条件1~3によって生成された細胞組成物を、実施例1に記載の細胞傷害性アッセイにおいて、1:1の低いエフェクター:標的比を用いて試験した。条件2は最大の細胞傷害活性を示したが、条件1と3の両方がNALM-6腫瘍細胞に対する細胞傷害活性を著しく増強した(図6A)。殺傷の増強は、条件間のCD56発現と相関している(図6B)。
【0434】
CD56表面発現を、フローサイトメトリーによる染色強度の分析によっても測定した。条件2は、固有のPBMCレベルと比較して、Vδ1細胞及びVδ2細胞でのCD56発現強度を大幅に高める(図7)。さらに、最初のPMBC出発物質と比較して、条件2の回収から得られたγδ細胞集団とNK細胞集団の両方でCD56-bright細胞の存在量の増加が示されている(図8)。
【0435】
実施例5.保存後の細胞の機能性
凍結とその後の解凍の保存ステップ後の細胞の機能性も調査した。条件1及び2を使用して培養した細胞の一部を11~14日目に取り出し、凍結した。次いで、細胞を実施例1に記載のように解凍した。凍結保存後の条件1と2との間で細胞の生存率及び回収率は同等である(図9)。
【0436】
条件2を使用した増殖後に凍結保存した細胞の表現型も分析した。条件2は、凍結保存前後で同等の免疫細胞組成と細胞表面表現型を示す(図10)。
【0437】
最後に、凍結保存後の細胞の細胞傷害性を調べた。条件2は、条件1と比較して、エフェクター対標的比の範囲にわたって、凍結保存後のNALM-6腫瘍細胞に対する細胞傷害性の増強を示す(図11)。
【0438】
実施例6.細胞組成物の形質導入
条件2を用いて得られた細胞組成物を、実施例1に記載されるようにレンチウイルスベクターで形質導入した。条件2で産生された細胞は、条件1と比べて形質導入に対する許容性の向上を示す(図12)。さらに、CARを形質導入する条件2は、NALM-6細胞に対する細胞傷害性をさらに高め、1:100の低いエフェクター対標的比で殺傷が観察される(図13)。
【0439】
実施例7.最適化された方法の条件
方法をさらに最適化した。以下の変更を加えて、実施例1の条件2に記載のように、αβ-TCR+枯渇末梢血単核球からCD56+リンパ球を生成した。培地には、1×NKサプリメント(NK MACS(登録商標)、Miltenyi Biotec)が含まれていた。特に明記しない限り、可溶性抗Vδ1モノクローナル抗体は培養の開始時にのみ提供し、それ以上添加しなかった。社内可溶性抗Vδ1モノクローナル抗体(WO2021032961に記載される)のC08及びG04の両方を試験し、同様の結果を得たが、特定されない限り、C08を使用した。増殖状態を示すKi-67発現が低下するという観察に基づいて特に明記しない限り、細胞を11日目(12日間の増殖)に回収した。
【0440】
この方法はロバストであり、より短いD11の回収及び0日目での可溶性抗Vδ1モノクローナル抗体の単回供給により、適切な細胞型で良好な細胞増殖が得られることが判明した(図14)。追加のドナーを使用して実験を繰り返すと、このプロセスのロバスト性がさらに示される(図15)。培養容量、開始時の細胞密度、容器の種類、NKサプリメントの添加などの他のパラメーターは、悪影響を及ぼさないか、または多少のプラス効果をもたらした(データは示さず)。
【0441】
さらに、各細胞型由来の細胞で、CD56の発現レベルが増加し(MFIの増加によって示されるように、図16A)、通常はCD56の高発現細胞ではないγδ細胞画分のCD56陽性率も増加した(図16B)。CD56発現の増加は、細胞傷害性の増加と相関する(図16C)。
【0442】
最後に、細胞表面のケモカイン受容体の発現レベルを図17に示す。これは、これらの細胞が広範囲の細胞型を標的にする可能性があることを示している。
【0443】
実施例8.γレトロウイルスベクターによる形質導入
図14Aに記載するように細胞を培養した。比較として、以下の例外を除いて実施例1の条件2に記載のように細胞を播種し、培養した:可溶性抗Vδ1モノクローナル抗体の代わりに可溶性抗CD3モノクローナル抗体(クローンOKT3)を使用した。次いで、細胞を、CD19を標的とするキメラ抗原受容体をコードするGALVまたはRD114偽型γ-レトロウイルスベクターで形質導入した。ウイルスベクターをCTS OpTmizerで希釈し、RetroNectinコーティング(20μg/mL)され、非組織培養物でコーティングされた6ウェルプレートに、遠心分離(2000×g、32℃で2時間)により接着させた。培養した細胞を、ウイルスをプレロードしたプレートに移した。細胞を32℃で45分間、800×gで遠心分離するか(「スピン」)、または静置した(「スピンなし」)。形質導入の6日後にフローサイトメトリーによって形質導入効率を決定した(図18A)。
【0444】
本方法のCD56+細胞は、CD56-細胞よりもはるかに形質導入能が高いことも示された(図18B)。これは、CD56の状態による影響が少なかったWO2021032961の方法によって生成された細胞とは異なる(図18C)。
【0445】
ヘムを標的としたCAR(CD19)で形質導入された場合、細胞組成物は血液系の標的を殺傷することができることが以前に示されている。図19は、メソテリンを標的とするCARで形質導入された場合、細胞組成物が、固形腫瘍標的を効率的に殺傷することができることを示している。実際、本発明の形質導入されていない組み合わせの細胞集団は、従来のCAR発現αβT細胞と同等またはそれ以上の性能を発揮するが(最も下側の線)、CARを発現する組み合わせの細胞集団は、両方を実質的に上回る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18A
図18B
図18C
図19
【配列表】
2023540551000001.app
【国際調査報告】