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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 9/00 20060101AFI20230915BHJP
   F28F 3/06 20060101ALI20230915BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230915BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
F28D9/00
F28F3/06 Z
B23K1/00 330H
B23K1/19 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515070
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 GB2020052124
(87)【国際公開番号】W WO2022049359
(87)【国際公開日】2022-03-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523077181
【氏名又は名称】クリーン パワー ハイドロジェン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン、ナイジェル デヴィッド リスター
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA05
3L103AA11
3L103BB26
3L103CC21
3L103DD22
3L103DD53
3L103DD55
3L103DD56
3L103DD92
(57)【要約】
熱交換器は、平板なフローガイドプレート(1)と熱伝達プレート(2)との交互のスタックによって形成された複数のセルを備え、各熱伝達プレートは、それを貫通する少なくとも3つの開口(3、4、6)を有し、各開口は、熱交換器内の少なくとも3つの流体流路のそれぞれの1つの一部を画定する。各フローガイドプレートは、少なくとも2つの流路に対応する貫通する開口と、当該フローガイドプレートが間に位置する熱伝達プレートの面を渡って残りの流路内の流体を案内するように構成された、より大きい貫通する開口(5、7、8)とを有し、スタック内の各連続するフローガイドプレートは、スタック内の先行するそれとは異なる流路の一部を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板なフローガイドプレートと熱伝達プレートとを交互にスタックして形成される複数のセルを備える熱交換器であって、
各熱伝達プレートは、当該熱伝達プレートを貫通する少なくとも3つの開口を有し、各開口は、熱交換器内の少なくとも3つの流体流路の各1つの一部分を画定し、
各フローガイドプレートは、当該フローガイドプレートを貫通すると共に少なくとも2つの流体流路に対応する開口と、当該フローガイドプレートを貫通すると共に、残りの他の流路内の流体を、間に当該フローガイドプレートが位置する熱伝達プレートの面を渡って案内するように構成されたより大きい開口と、を有し、
スタック内の連続するフローガイドプレートは、スタック内の先行するフローガイドプレートとは異なる流体流路の一部を構成する、
熱交換器。
【請求項2】
前記セルの少なくともいくつかが、乱流誘発マトリックスを備える、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記マトリックスが、前記セル内に溶接又は織物メッシュインサートを含む、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記マトリックスが、前記セルをその間に画定する前記熱伝達プレートのうちの少なくとも1つの表面上の形成物を含む、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記プレートがステンレス鋼から形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記プレートが銅ろう付けによって互いに接合されている、請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記プレートは、平面視で長方形である、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記プレートのスタックが挟持される一対のエンドプレートを備え、前記エンドプレートは、当該エンドプレートを貫通する流れ接続部を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記スタック内の前記セルが、前記3つの流路の間で均等に分割されていない、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記流路のそれぞれにおける前記熱伝達プレートの面を渡る流れの方向が、前記スタックの長さに沿って変化する、請求項4に記載の熱交換器。
【請求項11】
48~200個のセルを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項12】
貫通する3つの流路を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項13】
混合気体流から水素と酸素とを分離する装置であって、
絶縁コンテナ内の液体窒素に少なくとも部分的に浸漬された凝縮コイルに接続される混合気体入口と、
前記凝縮コイルに接続される液体酸素容器と、
前記凝縮コイルからの水素ガス出口と、
前記液体酸素容器に接続される酸素流制御バルブと、
請求項12に記載の熱交換器と、
を備え、
前記混合気体入口は前記熱交換器の第1の流路に接続され、前記水素ガス出口は前記熱交換器の第2の流路に接続され、前記酸素流制御バルブは前記熱交換器の第3の流路に接続される、
装置。
【請求項14】
前記熱交換器は、前記液体窒素容器の上方の真空チャンバ内に取り付けられる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記混合気体流は、電気分解による水の分解によって生成される、請求項13又は14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電解的に生成された酸素と水素を分離するための極低温システムにおいて使用するための熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、化石燃料に取って代わる燃料としての水素の効率的かつ費用対効果の高い製造が著しく活発になっており、その結果、安定して、費用対効果が高く、効率のよい電解技術の需要が指数関数的に増加している。例えば、太陽電池アレイの使用による太陽エネルギーの獲得は、多くの国で重要な電力源となっている。しかし、このようなアレイによる最大発電量は必ずしも需要と一致しないため、エネルギーの貯蔵が必要となる。蓄電池の使用はコストがかかり、比較的非効率であり、またその重量のために、道路及び鉄道車両にとって理想的な解決策ではなく、また充電のための間隔は重大な制限となる。途切れない太陽光と土地の利用可能性とを有するアレイの設置のために適切な場所は、必ずしも電気が必要とされる場所の近くにはないので、エネルギーの貯蔵は、より一層重要な問題となる。
【0003】
水を水素と酸素に電気分解するためにソーラーアレイなどからの電気を使用することにより、例えば、工業プロセスで使用する酸素と共に、容易に輸送可能な燃料としての水素を製造することができる。これにより、太陽電池アレイを、居住地域から離れた場所であって、強い太陽光を受け、或いは生産には適さない土地に配置することが可能になる。
【0004】
水素ガス発生のための電気分解システムは、国際公開第2014/170337A1号及びGB2515292Aに記載されている。これらは混合気体流を生成し、次いで、混合気体流を、例えば酸素の極低温蒸留によって分離する必要がある。国際公開第2015/118073A1号は、スタック(積層)セルを有し、電解質の流れを使用して気体を別々の流体回路によりそれぞれの脱気ユニットへ運び、生成された水素又は酸素を除去する代替的な構成を開示している。
【0005】
混合気体流を生成する場合、極低温蒸留システムは、冷却された水素及び酸素流を使用するために、流入する混合気体流の温度を低下させるための熱交換器を必要とする。熱交換器は、以下の特性を必要とする。
1.3つの独立した別々のストリームの提供(ほとんどのものは2ストリームのユニットである)。
2.極低温(約70K)での動作性。
3.動作時の耐圧性、真空容器内に収納した状態で内圧50bar(g)以上。
4.流れと流れとの間の最大の熱伝達を確実にするために、全ての流れに乱流を提供する能力。
5.システム内の気体の内部爆発に耐える能力。
6.圧力・熱過渡現象全体を通じて完全に漏れのない状態。
7.製造が比較的簡単。
8.製造コストの低さ。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、平板なフローガイドプレートと熱伝達プレートとを交互にスタックして形成される複数のセルを含む熱交換器を提供し、各熱伝達プレートは、それを貫通する少なくとも3つの開口を有し、各開口は、熱交換器内の少なくとも3つの流体流路の各1つの一部分を画定し、各フローガイドプレートは、それを貫通すると共に少なくとも2つの流体流路に対応する開口と、それを貫通すると共に、残りの他の流路内の流体を、間にフローガイドプレートが位置する熱伝達プレートの面を渡って案内するように構成されたより大きい開口と、を有し、スタック内の連続するフローガイドプレートは、スタック内の先行するフローガイドプレートとは異なる流体流路の一部を構成する。
【0007】
セルの少なくともいくつかは、乱流誘発マトリックスをその中に含むことができる。マトリックスは、セル内に溶接又は織物メッシュインサート、又はセルがその間に画定される熱伝達プレートのうちの少なくとも1つの表面上の形成物を含むことができる。
【0008】
プレートは、ステンレス鋼から適切に形成され、好ましくは、銅ろう付けによって互いに接合される。ステンレス鋼は、銅と同様の線熱膨張係数を有する316Lステンレス鋼が好適である。プレートは、平面視では概ね長方形であってよいが、他の外形を採用することもできることを理解されたい。
【0009】
一対のエンドプレートが適切に設けられ、その間にプレートのスタックが挟持され、エンドプレートはそれを貫通する流れ接続部を有する。
【0010】
スタック内のセルは、3つの流路の間で均等に分割される必要はない。例えば、酸素の熱伝導率は水素の熱伝導率よりも小さいため、酸素の還流路を水素のそれよりも長くすることが望ましい場合がある。あるいは、またはさらに、セルの内部配置は、異なる熱伝導率を考慮に入れて変更されてもよい。
【0011】
スタックの長さに沿って各流路内の熱伝達プレートの面を渡る流れの方向を変えるために、スタックにセルの配向を逆にすることが望ましい場合がある。
【0012】
本発明の熱交換器は、混合気体流から複数の気体を分離する際に使用できるように、3つ以上の流路を取り扱うように構成することができ、例えば、水の加水分解から生成される水素と酸素の分離装置に使用することができる。
【0013】
したがって、本発明の別の態様は、混合気体流から水素と酸素とを分離する装置を提供し、当該装置は、絶縁コンテナ内の液体窒素に少なくとも部分的に浸漬された凝縮コイルに接続される混合気体入口と、前記凝縮コイルに接続される液体酸素容器と、前記液体酸素容器からの水素ガス出口と、前記液体酸素容器に接続される酸素流制御バルブと、先行する請求項のいずれかに記載の熱交換器と、を備え、前記混合気体入口は熱交換器の第1の流路に接続され、前記水素ガス出口は熱交換器の第2の流路に接続され、前記酸素流制御バルブは熱交換器の第3の流路に接続される。
【0014】
熱交換器は、好ましくは、液体窒素容器の上方の真空チャンバ内に取り付けられる。
【0015】
混合気体流は、電気分解による水の分解によって発生させることができる。
図面により、本発明の実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による熱交換器で使用される一連のプレートの一例を示す。
図2図1に示された種類のプレートを組み込んだ完全な熱交換器の斜視図である。
図3】熱交換器への組み立て前の、別の実施形態による一連のプレートの分解図である。
図4】本発明の熱交換器を具体化した気体分離装置の図である。
図5図1に示されるものに対する代替的な一連のプレートを示す。
図6図1に示されるものに対する代替的な一連のプレートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず図1を参照すると、熱交換器は、2つの一般的なタイプの一連の薄いプレート、すなわちフローガイドプレート1(典型的には厚さ約1.5mm~2.5mm)と、熱伝達プレート2(典型的には厚さ約0.5mm~1.5mm)とが交互にスタック(積層)されて形成されている。図に示された実施形態では、3つの異なるフローガイドプレート1a、1b、1cと、3つの異なる熱伝達プレート2a、2b、2cがあり、それぞれに貫通する開口を有し、各開口が熱交換器を通る3つの流体流路のうちの1つの一部分を形成する。図中、3つの流路に係る開口は、黒、灰、白の円でそれぞれ示されている。図1は、スタック内の12枚の一連のプレートを示すが、その数はこれに限定されない。典型的な熱交換器は、流量が小さい場合は48個のセルを含むことができ、より大きなシステムでは最大200個以上のセルを含むことができる。図示の順序でプレートを見ると(これは説明のためであり、他の構成も可能である)、第1のフローガイドプレート1aは、丸みを帯びた角部を有する概ね正方形のフレームの形態であり、各プレートは同一の外形を有する。フレームの一縁部は、フレームの一方の角部に第2経路の一部を形成する開口3と、他方の角部に第3流路の一部を形成する開口4を収容するように広げられている。フレーム内の領域5は、矢印によってそれらの間の流れの方向が示される黒い円として示される第1の流路のための離間配置された入口及び出口と整列するように成形されるが、入口及び出口は実際にはプレート1aの一部を形成しない。
【0018】
スタック内の次のプレート2aは、熱伝達プレートであり、貫通する3つの開口3、4、及び6が設けられ、開口3、4はプレートの一縁部に隣接して、プレートがスタックされるとフローガイドプレート1aの開口3及び4と整列し、他方の開口6は一方側で、第1のフローガイドプレート1aの領域5内に開口し、熱交換器を通る第1の流路の一部を形成する。
【0019】
フローガイドプレート1bは、スタック内の第3のプレートとされ、前段の熱伝達プレート2aの開口3、6と整列する開口3、6を収容するために縁部が幅広とされたフレーム状とされている。フレームによって取り囲まれた空間領域7は、熱伝達プレート2aの開口4と連通し、気体がプレートの面を渡って、先行する熱伝達プレートの開口4から正方形の反対側の角に隣接して位置する次の熱伝達プレート2bの開口4へ流れることを可能にする。
【0020】
第3のフローガイドプレート1cは、フレームの一方側の中心にフレーム内に侵入するように位置する開口6と、フレームの反対側の角部であって、それに対応して幅が広くされた角部にある開口4と、を有するフレームの形状とされている。フレーム内の空間領域8は、先行する熱伝達プレート2bの開口3と、第3の熱伝達プレート2cの反対側の角部にある開口3と連通しており、この熱伝達プレート2cは、第3のフローガイドプレート1cの開口6に対応する開口6と、これと反対側の2つの角部にある開口3、4とを有している。
【0021】
次の6つのプレートで同じ一連のフローガイドプレート1及び熱伝達プレート2が繰り返されるが、これらのプレートは、熱伝達プレートの面を渡る流れ方向が最初の6つのプレートに対して逆になるように反転される。次の6枚のプレートは最初の6枚のパターンに戻り、このパターンがスタック全体にわたって繰り返される。したがって、この特定の構成では、フローガイドプレートの3つの異なる設計と熱伝達プレートの3つの異なる設計のみを製造する必要があることが分かるであろう。
【0022】
気体の流量に応じて、熱交換器スタック内のセルの数を実質的に変えることができる。
【0023】
図2は、2つのエンドプレート20と21の間に組み立てられたプレートのスタックを示し、エンドプレート間に整列ピン22が延出してプレートを整列状態に保持し、ねじ付きタイロッド23とナット24とがアセンブリを挟持する。また、各エンドプレート20、21には、交換器内の3つの流路を外部の気体流路管に接続するための接続栓25、26、27が設けられている。
【0024】
この設計の熱交換器は、熱サイクル中に蓄積し、熱交換器の長さ全体にわたって勾配が生じ得る応力を回避するために、非常に類似した線熱膨張係数を有する材料を使用する。そのために、熱交換器は、316Lのステンレス鋼部品を用いて全体を構成し、その構成部品間に高温の銅ろう付け接合を施している。316Lステンレススチールと銅とは、いずれも線熱膨張率が約16×10-6mm/℃であり、これらの用途での協働使用に適している。
【0025】
ユニットが水素製造システムに要求される圧力で作動するためには、熱交換器は適切な壁厚で構成されなければならない。この要件は、気体輸送システム内の任意の点での爆発に耐え、爆発に関連する半径外側方向の力に抵抗する必要性によって、より一層大きくなる。
【0026】
同様に、このユニットは、このような条件下での線形セル間分離力に耐えるように設計されなければならない。これは、ユニットの各接合部において、相当な厚さのエンドプレート及びタイロッドによって補助された、相当面積の高信頼性ろう付けインタフェースを必要とする。また、各フローガイドプレートと各熱伝達プレートとの間には、最終的にユニットを接合する高温真空ろう付け工程において、ステンレス鋼板同士の高強度接合を形成する銅箔が予め形成されている。
【0027】
各気体通路の各端部のコネクタは、上述の圧力及び圧力スパイクに故障なく耐えることが必要とされる。これは即ち、熱交換器のエンドプレートと各コネクタとの接合部の完全性を同様に高くする必要がある。このようなコネクタは、嵌合技術に依存して、構造がねじ式であっても管状であってもよい。
【0028】
熱伝達を改善するために、セルは、気体が自由に流れることができる一方でより大きな乱流を生じさせる金属製のマトリックスを有してもよい。これは、溶接又は織物メッシュ形態であってもよく、又はセルプレートの外面に直接組み付けられてもよい。図3に示されるように、形成されたインサート30は、溶接又は織り構造とすることができるステンレス鋼メッシュから作製される。あるいは、熱伝達プレートは、同じ結果を得るために、プレス又はスタンピングによって組み付けられて形成される形態を有してもよい。
【0029】
これらのインサートの機能は3つある。
a.インサートは、それらの外形を横切って通過する気体の乱流を生成し、それによって熱エネルギー伝達の潜在能力を増加させる。
b.インサートは、熱伝達を改善するために気体に対する追加の表面積を提供する。
c.インサートは、セル間に著しい差圧がある場合に、熱伝達プレートの変形に対する抵抗を提供する。
【0030】
スタック内のフローマニホールド(連結管)の配向は、必要とされる場合には、特定の環境でのアセンブリに適応するように変更することができる。この構成のさらなる利点は、流体が気体であろうと液体であろうと、流体から流体への熱伝達率の差に対応するように、所与の気体流におけるセルの数を変えることができることである。
【0031】
ここで図4を参照すると、本発明の熱交換器を使用する極低温システムの1つの構成は、液体窒素を収容するデュワーフラスコ40を含む。フラスコ40は、従来の方法でフラスコ内を低温に維持するためのコールドヘッド(cole head)41を備えている。凝縮コイル42は、その少なくとも大部分が液体窒素に浸漬され、液体酸素用の容器43に通じている。気体のままである水素は、デュワーフラスコ40の上方に位置する真空チャンバ45内に取り付けられた熱交換器44への第1の入口へと直接導かれる。液体酸素容器43は、配管46を介して真空チャンバ45内のフロー制御バルブ47と連通し、そこから出た気体の酸素が熱交換器への第2の入口へ導かれるようになっている。電解槽からの混合気体流は、その反対側の端部において交換器の第3の流路に入力される。
【0032】
このような構成のユニットを真空容器に収納することで、ユニットの一側を室温に近づけ、他側を70K~90K(-203.15℃~-183.15℃)程度の極低温とした状態で、効率的な熱エネルギーの交換を行うことができる。本発明による熱交換器を備えるシステムの一例を図4に示し、ここでは液体窒素のデュワー瓶をコールドヘッドで冷却状態に維持している。液体窒素(LN)には、酸素を回収するための容器が浸漬されている。酸素がLNから冷却力を得て、コールドヘッドは温度を維持する。
【0033】
上述の熱交換器は、デュワー瓶の上方の真空チャンバ内に位置し、水素及び酸素流を底部において取り込み、混合気体流を頂部から取り込む。流れがセルからセルへと通過するにつれて、熱エネルギーが伝達され、流入する流れは約70K~90Kに冷却され、流出する流れは周囲温度程度に温められ、それによって、デュワー瓶内のLNの温度を維持するのに必要な電力を絶対的最小限に低減する。そのため、電解水分解による水素・酸素製造の最初から最後までのプロセスの効率を最適化することができる。
【0034】
3ストリーム熱交換器の他の設計及び構成を、上記のユニットから導出することができる。決定的な点として、本出願は、前述の基準で動作する熱交換器を極低温システムとの組み合わせで使用することを包含する。
【0035】
以下の図において、混合気体流は、頂部から熱交換器に入り、それを通過して下方に移動し、混合気体流がセルからセルへと通過する際に冷却される。最後に、LN内に位置する凝縮コイルが気体流を冷却し、デュワー瓶の底部付近の酸素容器内に収集される酸素の99%+の分離を確実にする。
【0036】
液体酸素は、O容器から、流入気体流と流出気体流との差圧によって押し戻され、液体O流制御バルブを通過し、その後、熱交換器の底部に入る。
【0037】
同様に、水素流はO容器の頂部を出て熱交換器を通過する。他の設計の極低温システムを液化プロセスに使用することができるが、効率を最適化するためには3ストリーム熱交換器を必要とする。
【0038】
図5図6に示されるセルの構成では、4つの内部が異なって形成されたフローガイドプレート50a、50b、50c、50dと、3つの熱伝達プレート51a、51b、51c(各4セル群で1つを2回使用)が採用されている。混合気体流は黒色のポート及び矢印で表され、酸素流は灰色のポート及び矢印で表され、水素は白色のポートで表される。図6は、一群のセルを形成する一連のプレートを示し、熱伝達プレート51は、図の左側に配置されるフローガイドプレート50の上に配置され、次の列の最初のものは、前の列の最後のもののすぐ上に配置される。各フローガイドプレートは、フレーム内に織物メッシュインサート52と、フレームを貫通して別々の流路を画定する開口53、54、55とを有するフレームの形態である。そのため、フローガイドプレート50aは、酸素流路の一部を構成する開口53と、水素流路の一部を構成する開口54と、を有し、フレーム内の領域は、隣接する熱伝達プレート51aの面を渡って混合気体流の流れを導くようになっている。熱伝達プレート50aは、貫通する3つの開口53、54、55を有し、中央の開口55は混合気体流を受け、この混合気体流は、次の2つのプレート50b、51bの整列した開口55を通過した後、一連の次のフローガイドプレート50aによって画定される空間に入り、混合気体流がその空間を逆方向に渡って流れるように第1のフローガイドプレートに対して90°回転される。同様に、酸素流は、フローガイドプレート50bによって画定されたセルを通過して流れ、次いでフローガイドプレート50dを反対方向に渡って流れる。図6から分かるように、このように定義された一連の8つのセルでは、酸素流は混合気体流と熱交換し、一方、水素はその熱エネルギーを伝達することなく単に開口54を通って流れる。したがって、熱交換器全体として、酸素が通過するセルよりも水素が通過するセルが少なく、水素よりも熱伝導率の低い酸素流からの熱交換が水素の熱交換と均衡するように、セルのグループを構成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解的に生成された酸素及び水素を分離する極低温システムにおいて使用する、混合気体流と酸素と水素との間の交換を行うよう構成された熱交換器であって、
平板なフローガイドプレートと熱伝達プレートと交互に配置されたスタックにより形成される複数のセルを備え
各熱伝達プレートは、当該熱伝達プレートを貫通する少なくとも3つの開口を有し、各開口は、熱交換器内の少なくとも3つの流体流路の各1つの一部分を画定し、
各フローガイドプレートは、当該フローガイドプレートを貫通すると共に少なくとも2つの流体流路に対応する開口と、当該フローガイドプレートを貫通すると共に、残りの他の流路内の流体を、間に当該フローガイドプレートが位置する熱伝達プレートの面を渡って案内するように構成されたより大きい開口と、を有し、
スタック内の連続するフローガイドプレートは、スタック内の先行するフローガイドプレートとは異なる流体流路の一部を構成する、
熱交換器。
【請求項2】
前記平板なフローガイドプレートと前記熱伝達プレートとが交互に配置されたスタックを、タイロッドにより挟持する一対のエンドプレートを更に備える、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記タイロッドが、ねじ付きタイロッドであり、前記平板なフローガイドプレートと前記熱伝達プレートとが交互に配置されたスタックが、前記ねじ付きタイロッドとナットとにより挟持される、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記エンドプレート間に延出し、各プレートを整列状態に保持する整列ピンを更に備える、請求項2又は請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記エンドプレートは、当該エンドプレートを貫通する流れ接続部を有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記エンドプレートの各々に設けられ、熱交換器内の3つの流体流路を外部の気体流路管に接続するための接続栓を更に備える、請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記スタック内の前記セルが、前記3つの流路の間で均等に分割されていない、請求項1~のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記3つの流体流路は、1つの混合気体流路と、1つの水素流路と、1つの酸素流路と、を含み、前記混合気体流路及び前記酸素流路は、前記水素流路よりも長い、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記流路のそれぞれにおける前記熱伝達プレートの面を渡る流れの方向が、前記スタックの長さに沿って変化する、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項10】
混合気体流から水素と酸素とを分離する装置であって、
絶縁コンテナ内の液体窒素に少なくとも部分的に浸漬された凝縮コイルに接続される混合気体入口と、
前記凝縮コイルに接続される液体酸素容器と、
前記凝縮コイルからの水素ガス出口と、
前記液体酸素容器に接続される酸素流制御バルブと、
請求項1~9のいずれか一項に記載の熱交換器と、
を備え、
前記混合気体入口は前記熱交換器の第1の流路に接続され、前記水素ガス出口は前記熱交換器の第2の流路に接続され、前記酸素流制御バルブは前記熱交換器の第3の流路に接続される、
装置。
【請求項11】
前記熱交換器は液体窒素容器の上方の真空チャンバ内に取り付けられる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記混合気体流は、電気分解による水の分解によって生成される、請求項10又は請求項11に記載の装置。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の熱交換器、又は請求項10~12のいずれか一項に記載の装置を備える、電解的に生成された酸素及び水素を分離する極低温システム。
【請求項14】
酸素流路に接続された液体酸素容器を備える、請求項13に記載の極低温システム。
【請求項15】
混合気体流路に接続された電解槽を備える、請求項13又は請求項14に記載の極低温システム。
【国際調査報告】