(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】車内遊戯検出識別装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/04 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
G01M17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515343
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 IB2021058091
(87)【国際公開番号】W WO2022049553
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】BE-2020/5613
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523081546
【氏名又は名称】ピーディティ・エンジニアリング・ベスローテン・フェンノートシャップ・メット・ベペルクテ・アーンスプラーケレイクヘイト
【氏名又は名称原語表記】PDT Engineering bvba
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ランブレヒト,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ランブレヒト,ウィリー
(57)【要約】
本発明は、直線的に変位可能なキャリッジ(2)と、車両の車輪を支持するように構成された支持プレート(3)とを備え、前記支持プレート(3)が回転可能である、車両の車輪、ステアリングアセンブリおよびサスペンション部品の遊びの検出および識別ならびに取り付けをチェックする装置(1)に関する。キャリッジ(2)は、車両の横方向に対応する方向に支持プレート(3)に対して変位可能である。キャリッジ(2)は、回転軸を中心として支持プレート(3)を回転させるように構成された回転可能構造(8、9、10)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪、ステアリングアセンブリ及びサスペンション部品の遊びを検出及び識別し、取り付けをチェックするための装置(1)であって、
前記装置(1)は、直線的に変位可能なキャリッジ(2)及び車両の車輪を支持するように構成されている回転可能な支持プレート(3)を含み、
前記キャリッジ(2)は、前記支持プレート(3)に対して前記車両の横方向に対応する方向に変位可能であり、
前記キャリッジ(2)は、回転軸を中心に前記支持プレート(3)を回転させるように設けられた回転可能構造(8、9、10)を備えており、
前記回転可能構造は、回転可能な車軸(9)と、前記車軸(9)の回転運動を前記支持プレート(3)に伝達するように構成された伝達機構(8;10)とを備え、
前記装置は、さらに、前記キャリッジ(2)が直線的に変位可能に支持する第1のガイド手段(5)および第2のガイド手段(6)を備え、
前記第1ガイド手段(5)は下方に位置する構造体に設けられ、
前記第2ガイド手段(6)は前記支持プレート(3)の下面に設けられ、
前記伝達機構は、回転可能な前記車軸(9)に接続された伝達要素(8)と、前記伝達要素(8)に設けられて前記第2のガイド手段(6)に変位可能な少なくとも1つのガイド要素(10)とを備え、
前記装置(1)が第1の駆動手段(13)および第2の駆動手段(14)を有し、
前記第1の駆動手段(13)は、前記支持プレート(3)に対して前記キャリッジ(2)を変位させるように構成され、
前記第2の駆動手段(14)は、回転可能な前記車軸(9)を時計方向及び/又は反時計方向に回転させるように構成された、装置(1)。
【請求項2】
前記キャリッジ(2)は第1の位置へ変位可能で、
前記第1の位置において、前記支持プレート(3)の支持面上の車輪の突起の中心を通って延びる第1の回転軸を中心に前記回転可能構造(8、9、10)が回転可能である、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記キャリッジ(2)は第2の位置に変位可能で、
前記第2の位置において、前記第1の回転軸に対して偏心している第2の回転軸を中心に前記回転可能構造が回転可能である、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記装置(1)は、前記支持プレート(3)の回転を決定する第1の測定手段と、発生した回転力を測定する第2の測定手段とを備え、
前記装置(1)は、前記測定手段によって発生した信号に基づいて遊びを示すように構成されている、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記キャリッジ(2)が、前記回転可能構造(8、9、10)を支持するための4点ベアリング(4)を備える、請求項1-4のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項6】
前記キャリッジ(2)は、前記第1のガイド手段(5)において変位可能な少なくとも1つのガイドプロファイル(7)を備える、請求項1-5のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項7】
前記ガイド要素(10)は、前記第2のガイド手段(6)内で直線的に移動するように構成されたガイド部分(11)を備え、また、前記第2のガイド手段(6)と係合するように構成された係合部分(12)を備え、
回転可能な前記車軸(9)の回転が前記支持プレート(3)の回転をもたらす、請求項1-6のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項8】
前記支持プレート(3)が、車輪の位置を決定するための1つまたは複数の圧力センサを備える、請求項1-7のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項9】
車両および/または航空機の1つまたは複数の車輪、前記車輪のステアリングアセンブリおよびサスペンションの1つまたは複数の部品の遊びを検出するための請求項1-8のいずれかに記載の装置(1)の使用。
【請求項10】
車両の車輪、ステアリングアセンブリおよびサスペンションの部品の遊びを検出および識別し、取り付けをチェックするためのシステム(15)であって、
請求項1-8のいずれかに記載の第1の装置および第2の装置を含み、
前記第1の装置の支持プレート(3)が前記車両の左側車輪を支持するように構成され、
前記第2の装置の支持プレート(3)が前記車両の右側車輪を支持するように構成された、システム(15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方において、車両の車輪、ステアリングアセンブリおよびサスペンション部品の遊びを検出し取り付けを確認するための装置に関し、直線的に変位可能なキャリッジと、車両(例えば、乗用車またはローリー、トレーラまたは飛行機等)の車輪を支持するように構成されている回転可能な支持プレートとを備えており、前記キャリッジが、支持プレートに対して車両の横方向に対応する方向に変位可能で、また、前記キャリッジが、回転車軸を中心に支持プレートを回転するように構成された回転可能な構造を有する。他方、本発明は、車輪、ステアリングアセンブリおよびサスペンション部品の少なくとも2つを有する車両の車輪、ステアリングアセンブリおよびサスペンション部品の遊びを検出し、取り付けをチェックするためのシステム、特に測定システムに関する。
【0002】
本発明は、特に、摩耗しやすい部品の遊びを、より合理的かつ高品質に検出(記録)し、識別するのに好適な装置に関するものである。接続技術部品の例としては、単軸車両または多軸車両のホイールベアリング、ステアリングジョイント、サスペンションアームおよび振動ダンパー(サイレントブロック)などが挙げられる。より具体的には、車輪に直接または間接的に接続され、ステアリングや走行安定性に悪影響を与え、安全性に影響を与える遊びの影響を受けやすい部品に関するものである。
【背景技術】
【0003】
「遊び」という用語は、自動車産業において、例えば自動車整備工場や専門試験場では、部品の相対的な遊びとして解釈され、目視評価によってオリジナルの遊びと非オリジナルの遊びの間で区別がなされる。
【0004】
自動車のステアリングアセンブリやサスペンション部品は、車輪に機械的に結合されており、摩耗により車輪に様々な種類の遊びを生じさせることがある。これらの遊びの種類は、3次元空間において以下のように位置づけることができる。
【0005】
- 縦方向の遊び(X)。この方向は、車両の対称軸と一致する。
- 横方向の遊び(Y)。縦方向と直角の方向である。
- 車輪の上下の動き(Z)に沿った遊び。
- X、Y、Zの組み合わせを基準として差別化された方向の遊び。
【0006】
車輪の遊びとこれらの部品の遊びとの間には因果関係がある。車輪の正常な幾何学的位置からのずれは、これらの部品の遊びの大きさに比例する。
【0007】
これまで、目に見える遊びによる部品の不合格や交換は、評価を行う技術者の主観や、覆い隠された部品がもたらす視覚的な制限に左右されることが多かった。このような場合、遊び検出器を使用することができる。この種の装置は、その動作原理が、検査される車両の車輪が載置され、車両の横方向または縦方向に対応する方向に前後に移動可能な可動プレートに基づいており、特に、ベルギー特許BE 772697および欧州特許EP 1 327 117(本願の出願人の名前)に記載されて公知である。
【0008】
しかしながら、車両のステアリングシステムおよび安定性は、ますます高くなる道路交通の要求を満たさなければならないので、ステアリングアセンブリおよびサスペンション部品の遊びを調査する場合、この世代の装置はもはや適切ではないことが実際に判明している。その理由は、高価格帯の車両セグメントにおける車輪とシャーシの間の機械的な接続が、ボールジョイント、ロッド、アーム、回転点などのより複雑な幾何学的配置に進化しているためである。さらに、国内および国際的なレベルで、自動車の公認試験センター、カーサービス支部、公的機関が、遊びを調査する分野において、より統一性と専門性を求めていることがわかった。
【0009】
数年前、特許権者は、3Dホイールマニピュレーターの形をした遊び検出器について欧州特許EP 2 488 823(WO 2011/045664)を取得した。この遊び戯検出器は、車輪に作用する3方向(X、Y、Z)の運動を発生させることができる支持手段を有する。それぞれの支持手段は、車両の対称軸に平行な第1の長手方向(X)に移動可能であり、車輪クランプ手段を備えているキャリッジ形式の伝達部材(トランスミッション)を有する。車輪クランプ手段は、重ね合わせに従って、キャリッジの車輪に向けられた第2の方向(Y)に移動し、キャリッジの車輪を持ち上げる第3の方向(Z)に移動する。このように、持ち上げの活性化は、横方向の活性化の関数に比例している。このような装置は、車両の車輪に異なる(三次元的な)力を及ぼすことができる。しかしながら、それぞれの遊び検出器は、異なる軌道幅(すなわち同じ車軸上の2つの車輪間の距離)を有する車両を測定目的でチェックするために使用できないという欠点がある。さらに、遊びを記録することができる適切な測定システムを組み込むことが困難であることが判明している。
【0010】
欧州特許公報EP 0 011 100には、自動車における車輪のサスペンションとステアリングの部品間の遊びを決定するために使用される装置が記載されており、この装置では、1つの単一の支持プレートのみが、その上に配置された車輪を反対方向に駆動するために使用され、車軸上の他の車輪は固定的に支持されている。
【0011】
アメリカ特許公報US4,966,376及び国際特許公報WO96/07884にも、車両の車輪、ステアリングアセンブリ及びサスペンション部品の取り付けを検査するための装置が記載されている。
【0012】
従って、本発明の目的は、検査される車両のトラック幅、ホイール直径及び/又はタイヤ幅に関係なく、定量的に遊びを検出することが可能な、遊びを検出し識別するための装置を提供することである。本発明の追加の目的は、好ましくは、同じ車軸の2つの車輪を装置上に直接配置することによって、特に追加の補助手段を接続することなく、遊びを記録することができる装置を作成することである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、車両の車輪、ステアリングアセンブリおよびサスペンション部品の遊びを検出し識別し、それらの取り付けをチェックするための装置であって、直線的に変位可能なキャリッジと、車両の車輪を支持するように構成されている回転可能な支持プレートとを備える装置を提供することにより達成され、
前記キャリッジは、前記支持プレートに対して、前記車両の横方向に対応する方向に変位可能であり、
前記キャリッジは、前記支持プレートを回転軸を中心に回転させるように設けられた回転可能な構造を備え、
前記回転可能な構造は、回転可能な車軸と、前記車軸の回転運動を前記支持プレートに伝えるように構成された伝達機構を有し、
前記装置は、さらに、前記キャリッジが直線的に変位可能な第1および第2のガイド手段を備え、
前記第1のガイド手段は、下に位置する構造体に設けられ、
前記第2のガイド手段は、前記支持プレートの下側に設けられ、
前記伝達機構は、前記回転可能な車軸に接続された伝達要素を備え、前記伝達要素に設けられ、前記第2のガイド手段に変位可能な少なくとも一つのガイド要素を有し、
前記装置は、第1および第2の駆動手段を備え、
前記第1の駆動手段は、支持プレートに対して前記キャリッジを変位させるように構成され、
第2の駆動手段は、回転可能な車軸を時計方向および/または反時計方向に回転させるように構成される。
【0014】
このような装置は、その機能性が、再生を記録する測定システムに適合するという利点を提供する。
【0015】
本発明による装置では、第1の好ましい実施形態において、支持プレートは固定位置に留まる。固定位置において、支持プレートは、車両の横方向に対応する方向に回転可能であるが、直線的に変位可能ではない。支持プレートに対して移動するのは、キャリッジである。その結果、キャリッジは、チェックすべきキャリッジのトラック幅を基準として、それ自体を位置決めすることができる。位置が決まると、あらゆる(可能な)遊びの検出を開始するために、支持プレートを回転させることができる。
【0016】
第2の好ましい実施形態では、支持プレートは固定位置から横方向に直線的に変位可能である。これを達成するために、装置の第2のガイド手段の変位は機械的に阻止され、支持プレートは第1のガイド手段の直線的な変位に追従するようになる。
【0017】
支持プレートは、好ましくは金属製である。支持プレートは、上面及び下面を有し、上面は、検査対象である車両の車輪の支持面を形成する。支持面は、好ましくは、高い摩擦係数を有する適切な材料の表面を備える。好ましい実施形態では、車輪の最適な位置決めを達成するために、支持プレートはV字形断面を有する。V字型断面は、車輪の直径に関係なく、車輪を支持プレートの中心に置くことができるという利点を提供する。別の実施形態では、支持プレートは、車両の車輪に最適な接触面を形成することができる凹部を含むことができる。また、車両の長手方向に対応する方向に支持プレートを直線的に変位させるために、自由度を追加した実施形態を開発することも可能である。
【0018】
遊びのための車両の車輪をチェックするために、好ましくは本発明による2つの装置、特に左側の装置と右側の装置が使用され、車両の前輪と後輪をチェックするために、好ましくは対称的に間隔を空けて配置される。それぞれの距離は、最小および/または最大のトラック幅に対応できるように選択される。このような2つの装置は、遊びを検出し識別するためのシステムを形成する。好ましい実施形態では、支持プレートは、支持プレート上に配置された車輪の位置を決定するために、1つまたは複数の圧力センサ、好ましくは支持プレートあたり2つの圧力センサを含んでいる。代替実施形態では、支持プレート上に配置された車輪の位置は、光学カメラによって決定することができる。
【0019】
本発明による装置の好ましい実施形態では、前記キャリッジは、回転可能な構造が、支持プレートの支持面上の車輪の投影の中心を通って延びる第1の回転軸を中心として回転可能である第1の位置に変位可能である。
【0020】
本発明による装置のより好ましい実施形態では、前記キャリッジは、前記回転可能な構造が、前記第1の回転軸に対して偏心している第2の回転軸を中心として回転可能である第2の位置まで変位可能である。
【0021】
この装置によって、遊びを測定し記録することもできる。特定の実施形態において、この目的のための装置は、支持プレートの回転を決定する第1の測定手段と、発生した回転力を測定する第2の測定手段とを備え、装置は、測定手段によって発生した信号に基づいて遊びを示すように構成される。この目的のために、好ましくは、装置は、目的に適し、発生した回転力を変位に対してプロットする図の形で表示装置上で可視化できる発生した信号を変換できる処理装置を含んでいる。このようにして、実際の遊びがあるかどうかを判断することができる客観的な表示システムを作成することが可能になる。計測の最終結果はリスク分析に基づく。このような装置は、特に自動車のテストセンターやガレージに設置することができ、遊びが検出された場合に、ステアリングアセンブリやサスペンション部品の的を絞ったメンテナンスを行うことが可能になる。
【0022】
本発明による装置のより特定の実施形態によれば、前記キャリッジは、回転可能な構造体を支持するための4点ベアリングを備える。4点軸受またはスルーリング軸受は、発生した軸方向力および半径方向力を吸収する。
【0023】
この装置は、前記キャリッジが直線的に変位可能な第1および第2のガイド手段を備え、第1のガイド手段は、下に位置する構造体に設けられ、第2のガイド手段は、支持プレートの下側、好ましくは底面に対して設けられる。好ましくは、下に位置する構造は、例えばアルミニウム製のベースプレートであり、これも装置の一部を構成する。
【0024】
第1のガイド手段は、好ましくは、遊びをチェックされるべき車両の横方向に対応する方向に延びる2つの平行な直線ガイドレールを有する。前記キャリッジは、それぞれのガイド手段内を往復移動可能である。本発明による装置の好ましい実施形態では、この目的のキャリッジは、第1のガイド手段において変位可能な少なくとも1つのガイドプロファイルを有する。それぞれのガイドプロフィールは、好ましくは、C字形の断面を有する。好ましくは、キャリッジは、上記ガイドレールを横切って又は上記ガイドレール内で摺動する2つの平行なガイドプロファイルを有する。正確な案内性能を確保するために、ガイドレールは、ガイドプロファイルを収容するのに適した形状を有する。
【0025】
本発明による装置では、伝達機構は、回転可能な車軸に接続された伝達要素と、伝達要素に設けられ、第2のガイド手段内で変位可能な少なくとも1つのガイド要素とを有する。回転可能な車軸の回転中、少なくとも1つの、好ましくは2つの、ガイド要素(複数可)は、共に回転する。好ましい実施形態では、前記ガイド要素は、第2のガイド手段内で直線的に移動するように構成されたガイド部を備え、ガイド部はさらに、第2のガイド手段と係合するように構成された係合部を備えているので、回転可能な車軸の回転は、支持プレートの回転をもたらす。キャリッジが変位し、支持プレートの下のガイド手段がブロックされると、支持プレートは横方向に直線的に移動する。
【0026】
本発明による装置は、第1および第2の駆動手段を備え、第1の駆動手段は、支持プレートに対して前記キャリッジを変位させるように構成され、第2の駆動手段は、回転可能な車軸を時計方向および/または反時計方向に回転させるように設けられる。好ましくは、前記駆動手段は、電気機械式、空気圧式および/または油圧式の駆動手段である。
【0027】
本発明はまた、車両及び/又は航空機の1つ又は複数の車輪、ステアリング及びサスペンションの1つ又は複数の部分の遊びを検出及び/又は表示するための特許請求の範囲に記載の装置の使用にも関する。
【0028】
本発明はさらに、遊びを検出および識別し、車両の車輪、ステアリングアセンブリおよびサスペンション部品の取り付けをチェックするためのシステムであって、第1および第2の装置を含み、第1の装置の支持プレートは、車両の左側車輪を支持するように構成され、第2の装置の支持プレートは、車両の右側車輪を支持するように構成される、請求項に記載の装置に関する。
【0029】
本発明の特性をさらに説明し、その追加の利点および特徴を示すために、次に、本発明による装置のより詳細な説明が続く。以下の説明のいずれも、特許請求の範囲に定義された保護範囲の制限を構成するものとして解釈され得ないことは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
参照数字は、この説明において、添付の図面を参照するために使用される。
【0031】
【
図1】
図1は、本発明による2つの互いに対称な装置で構成された、遊びを検出し識別するためのシステムの透視図である。
【
図2】
図2は、本発明によるデバイスの一部の水平断面を示す。
【
図3】
図3は、回転可能な構造を有する支持プレートが4点ベアリングから切り離された、本発明による装置の表現を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明による装置の透視図を示し、キャリッジは、回転軸の軸が支持プレートの支持面上の車輪の突起の中心を通って延びる第1の同心円位置にあることを示す。
【
図5】
図5は、キャリッジが第2の偏心位置にある、本発明によるデバイスの透視図を示す。
【
図6】
図6は、支持プレートが回転運動を行った、
図5に示される装置の透視図である。
【
図7】
図7は、遊びのないステアリング組立て部品の遊びについて実施された調査のグラフィック表現を示す図である。
【
図8】
図8は、遊びのあるステアリングアセンブリ部品の遊びを調査した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
異なる軌道幅を有する車両の車輪(17)の遊びを連続してチェックできるようにするために、本発明は、遊びを検出および識別し、車両の車輪、ステアリングアセンブリおよびサスペンション部品の取り付けをチェックするのに適したシステム(15)を提供する。
【0033】
このようなシステム(15)は、
図1に表されており、本発明の主題の一部を構成する2つの同様の装置(1)によって構成されている。一方の装置(1)は、左側の車輪(17)の遊びをチェックするために使用され、他方の装置(1)は、右側の車輪(17)の遊びをチェックするために使用される。以下の説明では、使用される装置(1)について、より詳細に説明する。
【0034】
図3に表されている本発明による装置(1)は、直線的に変位可能なキャリッジ(2)と、車両の車輪(17)を支持するように構成されている回転可能な支持プレート(3)とを有する。キャリッジ(2)は、支持プレート(3)に対して、車両の横方向に対応する方向に変位可能である。
【0035】
キャリッジ(2)は、いわゆる第1ガイド手段(5)および第2ガイド手段(6)内を直線的に変位可能である。第1のガイド手段(5)は、例えばアルミニウム製のベースプレート(18)上に設けられている。当然ながら、第1のガイド手段(5)は、例えば地表のような別の構造物(下に位置する)に対して配置することもできる。図示の装置では、第1のガイド手段は、遊びをチェックされるべき車両の横方向に対応する方向に延びる2つの平行な直線ガイドレールを有する。前記キャリッジは、それぞれのガイド手段内を往復して移動可能である。この目的のために、キャリッジ(2)は、ガイドレール上またはガイドレール内で摺動する、好ましくはC字形の断面を有する2つの平行なガイドプロファイル(7)を有する。良好な案内のために、ガイドレールは、ガイドプロファイル(7)を収容するのに適した形状を有している。
【0036】
第2のガイド手段(6)は、支持プレート(3)の下面に対して設けられる。第2のガイド手段は、遊びをチェックすべき車両の横方向に対応する方向に延びる直線状のガイドレールとして設計されている。それぞれのガイドレールは、好ましくは、C字形状の断面を有する。
【0037】
支持プレート(3)の上面は、チェックされる車輪の支持面を形成する。車輪の正確な位置決めを達成するために、支持プレートにはV字型のホイールウェルが設けられている。ホイールウェルの両側には、グリップストリップが設けられている。もちろん、支持プレートにホイールウェルを設ける代わりに、支持プレートをホイールウェルが支持プレートと一体になるような形状にすることも可能である。支持プレート(3)は、金属、好ましくはステンレス鋼で作られている。支持プレート(3)の寸法は、車両の種類(例えば、乗用車又はローリー)に依存する。したがって、乗用車用の支持プレートは、750mm×400mm×20mm(L×W×D)の寸法を有することができる。支持プレート(3)には、支持プレート(3)上の車輪(17)の位置を決定するために、1つ以上のセンサ、好ましくは圧力センサも設けられる。支持プレート(3)上の車輪(17)の位置を決定するための別の選択肢は、光学カメラを使用することである。
【0038】
遊びのチェックは、まず支持プレート(3)を回転させることによって行われる。車輪の支持面における同心・偏心の活性化に関して、支持プレート(3)を回転させることができるようにするために、キャリッジ(2)は、回転軸を中心に支持プレート(3)を回転させるように構成された回転可能な構造、特にスルーリング軸受を有する。回転可能な構造は、回転可能な車軸(9)と、車軸(9)の回転運動を支持プレート(3)に伝達するように構成されている伝達機構(8;10)とを有する。
【0039】
伝達機構は、伝達要素(8)により構成されている。図示の装置では、伝達要素(8)は板状のデザインであり、回転可能な車軸(9)の端部が係合する開口部を備えている。その結果、車軸(9)の回転は、伝達要素(8)の回転をもたらすことになる。伝達要素(8)はまた、第2のガイド手段(6)(特に支持プレート(3)の下側に設けられたガイドレール)に変位可能に配置された2つのガイド要素(10)を備えている。それぞれのガイド要素(10)は、第2のガイド手段内を直線的に移動するように構成されたガイド部(11)を有し、さらに、第2のガイド手段と係合するように構成された係合部(12)を有する。
【0040】
したがって、回転可能な車軸(9)の回転中、伝達要素(8)上に配置されたガイド要素(10)も共に回転することになる。ガイド要素(10)の一部、特に係合部(12)は、支持プレートに設けられている第2のガイド手段と係合するので、回転可能な車軸(9)の回転は、支持プレート(3)の回転をもたらす。
【0041】
回転可能な車軸(9)は、時計方向または反時計方向に回転可能である。回転可能な車軸(9)は、第2の駆動手段(14)によって回転されることになる。装置(1)はまた、キャリッジ(2)を支持プレート(3)に対して変位させるための第1の駆動手段(13)を有する。この駆動手段は、好ましくは、電気機械式、空気圧式および/または油圧式の駆動手段である。
【0042】
回転可能な車軸(9)は、発生する軸方向および半径方向の力を吸収する4点ベアリング(4)に取り付けられる。
図3に見られるように、4点ベアリング(4)は、可動キャリッジ(2)の一部も構成する可動取付板(16)上に装着されている。第1の駆動手段は、取り付け板(16)に係合する。
【0043】
キャリッジ(2)が変位可能であるために、回転軸を変位させることも可能である。したがって、キャリッジ(2)は、例えば、
図4に例示される第1の位置(同心位置)に変位可能であり、この位置で、回転可能な構造は、支持プレート(3)の支持面上の車輪(17)の突起の中心を通って延びる第1の回転軸を中心として回転可能であり、またはキャリッジは、
図5に例示される第2の位置に移動可能であり、回転可能な構造は第1の回転軸に対して偏心している第2の回転軸を中心として回転可能である。
【0044】
車両のどの部分の遊びをチェックするかは、キャリッジの位置によって決定される。キャリッジ(2)の第1の位置では、ホイールベアリング、ステアリング機構、ボールジョイントがチェックされ、キャリッジ(2)が第2の位置にあるときには、回転点、サイレントブロック、またボールジョイントをチェックすることができる。
【0045】
チェックする車両の車輪を支持プレート上に配置すると、支持プレートの下に位置するキャリッジ(2)は、所望の位置に達するまで移動を開始する。キャリッジ(2)の位置決めは、一方では検査対象車両のトラック幅に基づき、他方ではどの検査(同心または偏心)を行うかに基づき行われる。本発明による装置(1)を用いて、車輪に様々な検査(方法論)を施すことが可能である。多くの可能な方法論が、例示の目的で以下に説明される。
【0046】
遊びのために車両部品を方法論的に調査する1つの可能な選択肢は、左側および右側の装置の支持プレートが、同じ車軸の車輪の支持面において、時計回り方向および反時計回り方向に回転運動を行うようにすることによって決定される。
【0047】
車輪の取り付け部、車輪の軸受、サブフレーム、ステアリングアセンブリおよびサスペンション部品に関する遊びの具体的な調査を行うことを第1の選択肢とする。そこでは、装置(1)のキャリッジ(2)が同心円状に配置され、この位置決めが車輪の接触面の中心とも一致する。この方法は、装置(1)の支持プレート(3)が作動すると同時に、最小負荷から最大負荷まで、部品に比例した力の増加を加えることを特徴とする。この遊びの調査は、制動時と非制動時の両方で行われる。
【0048】
両装置(1)の支持プレート(3)は、時計方向と反時計方向に同時に回転し、システムの左側の支持プレートと右側の支持プレートは行き来するが、互いに向かって回転し、互いに離れるように逆方向で回転する。
【0049】
繰り返される活性化プロセスは、周期化を介して制御され構造化された方法で漸進的に構築される。ステアリングアセンブリとホイールサスペンションの部品には、比例して負荷がかかる。装置の支持プレートが動くと同時に、車輪の支持面に力が発生する。調査中、力は最大負荷に達するまで蓄積される。
【0050】
調査手順中に力の間隔が生じると、当初プログラムされていた回転運動サイクルは停滞し、自動的に反復振動往復制限サイクルに変化する。このサイクルの間、データ指標である力と遊び(サイドスリップ角)が記録される。
【0051】
選択肢1に記載された部品の遊びに関する調査を行うための第2の選択肢(より具体的には、車輪のたわみとサイドスリップ角に関して、遊びの効果と同じ車軸の左側と右側の車輪(17)の間の相関関係を調査する選択肢において、装置(1)のキャリッジ(2)は同心に配置され、この配置は車輪接触面の中心とも一致する。
【0052】
両装置(1)の支持プレート(3)は時計方向と反時計方向に回転し、一方では、支持プレート(3)は同時に往復移動するが、互いに向かい合う方向と互いに離れる反対方向に回転し、他方では、互いに独立して移動する可能性もある。この遊びの調査は、ブレーキをかけて行われる。方法論は、最大回転負荷における左側および右側車輪(17)のサイドスリップ角度を互いに比較することによって特徴付けられる。
【0053】
ステアリングアセンブリ及びホイールサスペンションの部品は、最大荷重を受ける。
【0054】
選択肢1に記載の部品について遊びの調査を行う第3の選択肢であって、サイレントブロック、サブフレーム、ボールジョイント、サスペンション部品について遊びの調査を対象として行う場合、装置(1)のキャリッジ(2)は、車輪の接触面の中心に対して偏心して配置される。この結果、長手方向に車輪が活性化される。この方法は、装置(1)の支持プレート(3)が作動すると同時に、部品にかかる力を最小荷重から最大荷重まで比例的に増加させることを特徴とする。この遊びの調査は、ブレーキがかかった状態でのみ実行される。サイクルの間、力と遊び(車輪の変位角、サイドスリップ角と直角)のデータ指標が記録される。
【0055】
第4の選択肢は、選択肢2に記載された部品の遊びに関する調査を実施し、サイレントブロックの遊びに関する特定の調査を実施することで、そこでは、装置(1)のキャリッジ(2)は、車輪の接触面の中心に対して偏心して配置される。この方法論は、同一の偏心回転負荷において、制動方向における左側及び右側の車輪(17)の車輪変位角度を互いに比較することを特徴とする。この遊びの調査は、ブレーキがかかった状態においてのみ行われる。
【0056】
選択肢1に記載された部品について遊びの調査を行う第5の選択肢、より具体的には、ボールジョイントについて遊びの調査を行う場合、装置(1)は、支持プレート(3)の横方向の活性化(横方向の変位)を提供する。この場合、ガイド要素(10)は、第2のガイド手段(6)によって機械的にブロックされる。
【0057】
上述した方法論を用いることで、可能な限りの遊びを検出し、記録することが可能である。スリップ/遊び曲線とリスク分析を合成することにより、遊びが車両のステアリングと走行安定性に及ぼす影響を、安全または危険と判断する。
【0058】
装置(1)により、遊びを測定し記録することも可能である。この目的のために、装置は、支持プレートの回転および横方向の変位を決定する第1の測定手段と、発生した回転力および/または横方向の力を測定する第2の測定手段とを備え、装置は、測定手段によって発生した信号に基づいて遊びを指示するように構成される。この目的のために、好ましくは、装置は、目的に適した処理装置を備え、発生した回転力を変位に対してプロットする図の形で表示装置上で可視化できる発生した信号を変換することができる。これにより、遊びを具体的に検出できる客観的な表示システムを実現することができる。このような装置は、特に自動車のテストセンターやガレージに設置することができ、遊びが検出された場合に、ステアリングアセンブリやサスペンション部品の的を射たメンテナンスを行うことが可能になる。
【0059】
本発明による装置(1)、ひいてはシステムによって、車輪の支持面で測定される車輪の遊びと比例する車輪の方向の変化(特にサイドスリップ角)を客観的、数値的、および/またはグラフ的に識別することが可能である。
【0060】
試験段階において、上述の選択肢1に対応する遊びの調査が行われ、その際、遊びがないことが知られているステアリングアセンブリ部品が、本発明による装置を用いた遊びの調査に最初に供された。その後、それぞれのステアリングアセンブリ部品に1mmの遊びが導入され、導入された遊びを検出(記録)できるかどうかを確認するために、これらのステアリングアセンブリ部品が再び遊びの調査に付される。調査の結果は、
図7及び
図8に示すグラフに示されている。
図7は遊びのないステアリングアセンブリ部品を対象とした遊びの調査のグラフ、
図8は予め1mmの遊びを導入したステアリングアセンブリ部品を対象とした遊びの調査のグラフである。X軸は支持プレートの位置(mm)、Y軸は作用(回転)力(Newton)を示している。両グラフを比較すると、
図8のグラフでは、存在していた遊び(
図8のグラフの丸で囲った部分参照)が認識できることがわかる。
【国際調査報告】