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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】塩及び結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20230915BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20230915BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C07D487/04 153
C07D487/04 CSP
A61P3/04
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/36
A61K31/551
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515354
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 AU2021051033
(87)【国際公開番号】W WO2022047548
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】2020903196
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522089516
【氏名又は名称】キノシス・セラピューティクス・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー・アルソプ
(72)【発明者】
【氏名】トリスタン・リーキー
(72)【発明者】
【氏名】ロニー・マックスウェル・ローレンス
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB05
4C050CC11
4C050EE04
4C050FF01
4C050GG01
4C050HH01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB11
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA02
4C086ZA18
4C086ZA70
4C086ZC39
(57)【要約】
本発明は、低吸湿性及び改善された熱安定性などの望ましい薬物動態学的性質を有する1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の固体形態に関する。これらの固体形態には、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の結晶形態、並びに1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基のリン酸塩及びL-酒石酸塩が含まれる。これらの固体形態を含む医薬組成物、薬剤及びキットも記載される。様々な疾患、病態及び障害を処置するためにこれらの形態を使用する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸付加塩。
【請求項2】
X線回折(XRD)パターンにおいて、約12°及び約18°2θでの強いピークを特徴とする、結晶形態の請求項1に記載のリン酸付加塩。
【請求項3】
XRDパターンにおいて、約12°、14°、17.5°、18°、19°、20°、20.8°、22.5°、24°、24.8°、26°、26.5°及び27.8°2θでのピークを特徴とする、請求項1又は2に記載のリン酸付加塩。
【請求項4】
約200℃の融点を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のリン酸付加塩。
【請求項5】
無水結晶としての、請求項1~4のいずれか一項に記載のリン酸付加塩。
【請求項6】
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのL-酒石酸付加塩。
【請求項7】
結晶形態の、請求項6に記載のL-酒石酸付加塩。
【請求項8】
無水結晶としての、請求項7に記載のL-酒石酸付加塩。
【請求項9】
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの結晶。
【請求項10】
無水結晶としての、請求項9に記載の結晶。
【請求項11】
・1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基、溶媒、及びリン酸を含む溶液を調製すること、及び
・過剰な溶媒及びリン酸を分離して、リン酸付加塩を得ること
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のリン酸付加塩を調製するプロセス。
【請求項12】
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとを、リン酸の存在下で、溶媒中で反応させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のリン酸付加塩を調製するプロセス。
【請求項13】
前記溶媒は、1,4-ジオキサン、2-ブタノール、2-エトキシエタノール、2-メチルテトラヒドロフラン、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、アニソール、エタノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコール及び水又はそれらの組み合わせから選択される、請求項11又は12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記溶媒は、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、tert-ブチルメチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル及びメチルエチルケトン又はそれらの組み合わせを含まない、請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
・1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基、溶媒、及びL-酒石酸を含む溶液を調製すること、及び
・過剰な溶媒及びL-酒石酸を、L-酒石酸付加塩から分離すること
を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のL-酒石酸付加塩を調製するプロセス。
【請求項16】
・1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの塩酸塩と飽和重炭酸塩水溶液との溶液を調製すること、及び
・前記溶液を有機溶媒に接触させて、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基を前記溶液から抽出すること
を含む、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の結晶形態を調製するプロセス。
【請求項17】
請求項1~8のいずれか一項に記載の塩又は請求項9若しくは10に記載の結晶を含む薬剤。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか一項に記載の塩又は請求項8若しくは9に記載の結晶を含む医薬組成物。
【請求項19】
・対象における反社会的行動を処置若しくは予防する、及び/又は
・対象における社会的行動の緊急及び長期の制御を提供する、及び/又は
・対象における物質乱用障害を処置若しくは予防する、及び/又は
・対象における社会的機能不全を処置若しくは予防する、及び/又は
・主要な又は二次的な特徴として社会的機能不全を特徴とする精神障害の治療の一部として、対象における精神障害を処置若しくは予防する、及び/又は
・対象における体重減少を引き起こす、及び/又は
・対象における体重を管理する、及び/又は
・対象における食欲を抑制する、及び/又は
・対象における食物摂取を減少させる、及び/又は
・対象におけるオピオイド離脱及び/若しくはその症状を処置若しくは予防する
方法であって、
前記対象に、有効量の、請求項1~8のいずれか一項に記載の塩、請求項9若しくは10のいずれか一項に記載の結晶、請求項17に記載の薬剤、又は請求項18に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項20】
物質乱用障害に罹患しているか、若しくはそれを発症するリスクのある対象、又は物質乱用障害から回復し、持続的な物質の節制の維持を求めている対象を処置する方法であって、前記対象に、有効量の、請求項1~8のいずれか一項に記載の塩、請求項9若しくは10に記載の結晶、請求項17に記載の薬剤、又は請求項18に記載の医薬組成物を投与して、それにより、物質乱用障害を処置又は予防することを含む方法。
【請求項21】
・対象における反社会的行動を処置若しくは予防するため、及び/又は
・対象における社会的行動の緊急及び長期の制御を提供するため、及び/又は
・対象における物質乱用障害を処置若しくは予防するため、及び/又は
・対象における社会的機能不全を処置若しくは予防するため、及び/又は
・主要な又は二次的な特徴として社会的機能不全を特徴とする精神障害の治療の一部として、対象における精神障害を処置若しくは予防するため、及び/又は
・対象における体重減少を引き起こすため、及び/又は
・対象における体重を管理するため、及び/又は
・対象における食欲を抑制するため、及び/又は
・対象における食物摂取を減少させるため、及び/又は
・対象におけるオピオイド離脱及び/若しくはその症状を処置若しくは予防するため
の薬剤の製造における、請求項1~8のいずれか一項に記載の塩又は請求項9若しくは10に記載の結晶の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年9月7日に出願された豪国仮特許出願第2020903196号明細書に基づく優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの塩及び結晶に関する。
【背景技術】
【0003】
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピン二塩酸塩は、国際公開第2017/004674号パンフレットに、オルソステリックなオキシトシン受容体結合部位又はオルソステリックなバソプレシン受容体結合部位に有意な結合親和性を示さずに、オキシトシンアゴニストに類似の生物学的活性を有するとして記載されている。このため、この化合物を含む医薬品の開発に関心がもたれている。
【0004】
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンは、次の構造:
【化1】
を有する。
【0005】
この化合物は、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロベンゾ[b]ピラゾロ[3,4-e][1,4]ジアゼピンと呼ばれることもある。1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピン及び1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロベンゾ[b]ピラゾロ[3,4-e][1,4]ジアゼピンへの言及は、本明細書で使用する場合、互換的であるものとする。
【0006】
有望な生物学的活性を誘導することができる一方で、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピン二塩酸塩のさらなる開発において、この塩形態は、高吸湿性を示すことが発見された。材料の動的蒸気収着(DVS)分析によると、60%相対湿度(RH)超で形態変化が、30%RH未満で可逆的な重量変化が示された。有用な実験室調査手段は残っているが、高吸湿性のため、二塩酸塩のさらなる開発は不適である。
【0007】
したがって、医薬製品に組み入れるための1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの代替の形態を提供する必要性がある。有利には、代替の形態は、60%RH以上で1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピン二塩酸塩より吸湿性が低い材料を提供することになる。
【0008】
本明細書に引用され得る全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0009】
本明細書におけるいずれの従来技術の参照も、任意の管轄においてその従来技術が共通一般知識の一部を形成すること、又はその従来技術が当業者によって理解され、妥当であるとみなされ、及び/若しくは従来技術の他の部分と組み合わされることを当然のように期待され得ることを、容認又は示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】豪国仮特許出願第2020903196号
【特許文献2】国際公開第2017/004674号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、本発明の化合物の以前に記載された薬学的に許容される形態(本発明の化合物の二塩酸塩を含む)より低い吸湿性を有する、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの固体形態(「本発明の化合物」)を提供する。本明細書に記載される固体形態は、以前に探求された本化合物の形態と比較して、改善された熱安定性も示すことができ、投与後に対象に対して少なくとも実質的に同等の、生物学的に利用可能な本発明の化合物となる。
【0012】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の化合物のリン酸付加塩及びL-酒石酸付加塩、並びに本発明の化合物の遊離塩基の結晶形態が、これらの改善された性質のうち1つ又は複数を有することを発見した。
【0013】
一態様において、本発明は、本発明の化合物のリン酸付加塩を提供する。このリン酸付加塩は、代わりに、本発明の化合物のリン酸塩と呼ぶことができる。
【0014】
別の態様において、本発明は、本発明の化合物のL-酒石酸付加塩を提供する。このL-酒石酸付加塩は、代わりに、本発明の化合物のL-酒石酸塩と呼ぶことができる。
【0015】
一部の実施形態では、本発明の化合物のリン酸塩及び/又はL-酒石酸塩は、結晶形態である。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、本発明の化合物の結晶形態を提供する。この結晶形態は、本発明の化合物の遊離塩基の結晶形態と呼ぶこともできる。
【0017】
別の態様において、本発明は、
・1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基、
・1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸塩、又は
・1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのL-酒石酸塩
から選択される本発明の化合物の固体形態、典型的には結晶形態を提供する。
【0018】
・対象における反社会的行動を処置若しくは予防する、及び/又は
・対象における社会的行動の緊急及び長期の制御を提供する、及び/又は
・対象における物質乱用障害を処置若しくは予防する、及び/又は
・対象における社会的機能不全を処置若しくは予防する、及び/又は
・主要な又は二次的な特徴として社会的機能不全を特徴とする精神障害の治療の一部として、対象における精神障害を処置若しくは予防する、及び/又は
・対象における体重減少を引き起こす、及び/又は
・対象における体重を管理する、及び/又は
・対象における食欲を抑制する、及び/又は
・対象における食物摂取を減少させる、及び/又は
・対象におけるオピオイド離脱及び/若しくはオピオイド離脱に関連する症状を処置若しくは予防する
方法の中に含む、これらの本発明の化合物の塩及び結晶形態を使用する方法も本明細書に記載される。
【0019】
本明細書で使用する場合、文脈上、他の意味が要求される場合を除き、「含む(comprise)」という用語並びにその用語の変形、例えば、「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised)」は、さらなる添加物、構成要素、整数又はステップを排除するものではない。
【0020】
なお、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a(ある)」、「an(ある)」及び「the(その)」は、文脈が明快に否定しない限り、複数の参照物を含む。したがって、例えば、「a(ある)症状」及び/又は「少なくとも1つの症状」と言及する場合、1つ又は複数の症状を含み得ることなどである。
【0021】
「及び/又は」という用語は、「及び」又は「又は」を意味することができる。
【0022】
名詞の後につく「(s)」という用語は、単数形若しくは複数形又はその両方を企図する。
【0023】
本発明の様々な特徴が、ある特定の値、又は値の範囲に関連して記載される。これらの値は、様々な適切な測定技術の結果に関するものであり、したがって、いずれの特定の測定技術においても固有の誤差範囲を含むと解釈されるべきである。本明細書に記載される値のうち一部は、このばらつきを少なくとも一部説明するために「約」という用語によって表される。「約」という用語は、値を記載するために使用される場合、その値の±10%以内、±5%以内、±1%以内又は±0.1%以内の量を意味し得る。
【0024】
本発明のさらなる態様及び前出の段落に記載されている各態様のさらなる実施形態は、例として、及び添付の図面を参照して記載される以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】結晶の1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基のX線回折(XRD)パターンを示す。
図2】結晶の1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の分析の熱重量(TG)プロットを示す。
図3】結晶の1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の示差走査熱量測定(DSC)プロットを示す。
図4】結晶の1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基のDVS等温線プロットを示す。
図5】結晶の1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基のDVSによる質量の変化のプロットを示す。
図6】実施例1及び6に記載の、結晶の1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の参照(上)粉末X線回折(XRPD)パターンと1週間の安定性試験後のXRPDパターンとの比較を示す。
図7】1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸付加塩の多形形態(リン酸塩形態1)のXRDパターンを示す。
図8】1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸付加塩の多形形態(リン酸塩形態1)のTGA/DTAプロットを示す。
図9】1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸付加塩の遊離塩基(上)及び多形形態1(中)及びパターン2(下)の積み重ねXRDパターンを示す。
図10】1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのL-酒石酸付加塩の結晶形態のXRDパターンを示す。
図11】1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのL-酒石酸付加塩の結晶形態のTGA/DTAプロットを示す。
図12】1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのL-酒石酸付加塩の結晶形態のDSCサーモグラム(第1の加熱)を示す。
図13】1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのL-酒石酸付加塩の結晶形態のDVS等温線プロットを示す。
図14】1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのL-酒石酸付加塩の結晶形態のDVSによる質量の変化のプロットを示す。
図15】本発明の化合物(CMPD1)を、二塩酸塩(2HCL)として又はリン酸塩形態1(リン酸塩)として、生理食塩水ベースの製剤及びmethocel製剤で、5mg/kgの標的用量で経口投与した後の、雄スプラーグ・ドーリーラットにおける本発明の化合物の平均血漿濃度のグラフを示す。全ての用量及び濃度は、遊離塩基当量として表される。データは、平均±SD(n=3動物/群)を表す。
図16】C57BL/6マウスにおいて、オキシコドン離脱がナロキソン投与によって誘発された後の、処置群(ビヒクルのみ、オキシコドン、オキシコドンの後に本発明の化合物のリン酸塩形態1、及びオキシコドンの後に本発明の化合物の二塩酸塩による跳躍の頻度のグラフを示す(実施例10の足振戦の結果)。
図17】1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸付加塩(リン酸塩形態1)の重量測定蒸気収着(Gravimetric Vapour Sorption:GVS)等温線プロットを示す。
図18】1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸付加塩(リン酸塩形態1)のGVS動力学的プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、本発明の化合物の塩及び/又は結晶形態に関する。これらの塩及び/又は結晶形態は、
・本発明の化合物のリン酸付加塩、
・本発明の化合物のL-酒石酸付加塩、
・本発明の化合物の結晶形態(遊離塩基)
を含む。
【0027】
まとめて、上記の本発明の化合物の塩及び結晶形態は、本明細書において、本発明の塩及び/又は結晶と呼ばれる。
【0028】
本発明の塩及び/又は結晶の各々は、驚くべきことに、本発明の化合物の生体有効性を維持しながら、その低吸湿性という点で望ましい性質を有することが分かった。18の酸の対イオン及び5種の溶媒系のスクリーニングから、本明細書に記載される塩及び/又は結晶形態は、これらの性質を有する本発明の化合物の最適の形態であった(実施例1を参照)。
【0029】
本発明の塩及び/又は結晶は、少なくとも約60%RH、70%RH、75%RH又は80%RHの最小相対湿度の環境に曝露された場合、実質的に非吸湿性であり得る。本発明の塩及び/又は結晶は、約90%以下、85%以下、80%以下又は75%以下の最大相対湿度の環境に曝露された場合、実質的に非吸湿性であり得る。本発明の塩及び/又は結晶は、これらの最小値のうちいずれかからこれらの最大値のうちいずれかまでの相対湿度を有する環境に曝露された場合、最小値が最大値より低ければ、実質的に非吸湿性であり得る。例えば、一部の実施形態では、本発明の塩及び/又は結晶は、約60%~約90%又は約75%~約85%の相対湿度の環境に曝露された場合、実質的に非吸湿性である。約90%RH以上の相対湿度で、本発明の塩及び/又は結晶は、水を吸収するため、質量において、約2wt%以下、1.5wt%以下、1wt%以下、0.9wt%以下、0.8wt%以下、0.7wt%以下、0.6wt%以下又は0.5wt%以下増加し得る。質量における増加は、DVSによって、例えば、本明細書に記載される任意の手順に従って、測定することができる。
【0030】
本発明の塩及び/又は結晶は、長期間にわたり、実質的に安定でもあり得る。例えば、塩及び/又は結晶は、1週間、1、2、3、4、5、6カ月以上の期間、25℃及び60%RHで貯蔵すると安定であり得る。塩及び/又は結晶はまた、1週間、1、2、3、4、5、6カ月以上、加速貯蔵条件下、例えば、40℃、75%RHで貯蔵すると安定であり得る。一部の実施形態では、塩及び/又は結晶は、これらの貯蔵条件のうちいずれかの下で貯蔵すると、少なくとも約95%、96%、97%、98%、98.5%又は99%の純度を維持する。
【0031】
本発明の塩及び/又は結晶は、任意の適切な手段によって調製された1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンから調製することができる。1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピン及びその二塩酸塩の合成は、以前に国際公開第2017/004674号パンフレット(米国特許第11033555号明細書)に記載され、含んでおり、これは全体が参照により本明細書に援用される。
【0032】
一部の実施形態では、本発明の塩及び/又は結晶は、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンを得るために、N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとを、溶媒中で、酸の存在下で反応させることによって調製された1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンから調製される。反応を媒介することができる任意の酸を使用することができる。適切な酸には、酢酸及びリン酸などが含まれる。以下にさらに記載されるように、リン酸がこの反応ステップに含まれる場合、生成物は本発明の化合物のリン酸付加塩であり得る。
【0033】
一部の実施形態では、本発明の塩及び/又は結晶は、以下のステップ:
・1-メチル-1H-ピラゾール-5-アミンと1-フルオロ-2-ニトロベンゼンとを、有機溶媒(典型的にはテトラヒドロフラン)中で、塩基(典型的にはアルコキシド、例えばカリウムtert-ブトキシド)の存在下で反応させて、2-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-アミノ)-1-ニトロベンゼンを得るステップ、
・2-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-アミノ)-1-ニトロベンゼンを、典型的にはパラジウム触媒(例えばパラジウム担持炭素)の存在下で、極性溶媒(例えば非プロトン性極性溶媒、例えば酢酸エチル及びアセトニトリルなど、又はプロトン性溶媒、例えばメタノールなど)中で還元して、N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンを得るステップ、及び
・N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとを、溶媒中で、酸の存在下で反応させて、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンを得るステップ
によって調製される1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンから調製される。
【0034】
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸付加塩
第1の態様において、本発明は、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸付加塩を提供する。この塩形態は、本明細書において、本発明のリン酸塩と呼ぶことができる。
【0035】
本発明のリン酸塩は、本発明の化合物のリン酸水素塩、リン酸二水素塩又はリン酸塩であり得る。一部の実施形態では、リン酸塩は、本発明の化合物のリン酸二水素塩である。
【0036】
典型的には、本発明のリン酸塩は、結晶である。本発明のリン酸塩の結晶形態は多型を示すことが分かっており、本明細書においてリン酸塩形態1及びリン酸塩パターン2と呼ばれる2つの異なる多形が確認されている。リン酸塩形態1は、本発明のリン酸塩の安定な結晶形態であるが、形態2は、不安定であり、経時で形態1に変換することも分かっている。したがって、一部の実施形態では、本発明のリン酸塩は、リン酸塩形態1として提供される。
【0037】
リン酸塩形態1は、そのX線回折(XRD)パターンによって特性決定され得る。リン酸塩形態1のXRDパターンは、約12°及び約18°2θに特徴的に強いピークを含む。
【0038】
加えて、リン酸塩形態1は、XRDパターンにおいて、約12°、14°、17.5°、18°、19°、20°、20.8°、22.5°、24°、24.8°、26°、26.5°及び27.8°2θでのピークによって特性決定され得る。
【0039】
典型的には、リン酸塩形態1は、図7に示されているXRDパターンによって特性決定され得る。
【0040】
リン酸塩形態1は、追加として又は代替として、その融点によって特性決定され得る。リン酸塩形態1の融点(約200℃)は、リン酸塩パターン2の融点より約8℃高いことが分かっており、それは結晶性がより高く、したがって安定性がより高いことを示す。リン酸塩パターン2のDT分析によると、約201℃の開始から広い融解吸熱が示され、206℃でピークになり、その後すぐに熱分解された。対照的に、DT分析によると、リン酸塩形態1について、約209℃の開始から大幅な吸熱融解転移が示され、214℃でピークになった。したがって、一部の実施形態では、本発明の化合物のリン酸塩は、約200℃の融点を有することができる。
【0041】
本発明の化合物のリン酸塩は、典型的には無水結晶である。この結晶形態の無水の性質は、熱重量分析によって決定することができる。
【0042】
本発明のリン酸塩は、周囲条件下又は加速貯蔵条件下で貯蔵された場合に、実質的に無水、及び実質的に変化しない純度レベルを維持し得る。加速貯蔵条件は、高温(例えば40℃又は80℃)及び/又は高い相対湿度を含み得る。一部の実施形態では、リン酸塩は、例えば、少なくとも1、2又は3週間、1、2、3、4、5、6カ月以上、高温(例えば40℃)で、及び約60%RHまで、70%RHまで又は75%RHまでで貯蔵すると、実質的に無水を維持し得る。典型的には、リン酸塩は、これらの貯蔵条件下で安定も維持し、期間中ずっと実質的に純粋を維持し、例えばHPLCによって検出可能な分解生成物が約2%まで、1.5%まで又は1%までになる。HPLCは、本明細書に記載される技術のうちいずれかによって行うことができる。
【0043】
本発明のリン酸塩は、任意の適切な手段によって調製することができる。そのプロセスは、適切な溶媒中でリン酸を本発明の化合物と組み合わせることを必要とし得る。このプロセスは、単離された遊離塩基材料で行ってもよく、又は本発明の化合物を調製する最終合成ステップを伴うワンポットプロセスで行ってもよく、その場合、塩は、遊離塩基を単離せずに形成される。
【0044】
広範囲に及ぶ溶媒のスクリーニングを行って、どの条件が結晶形態-形態1及びパターン2の形成に影響するかを決定した(実施例4を参照)。形態1は、塩の溶解度のため、水、N-メチルピロリジン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)などの高極性溶媒中を除くほとんどの条件下で、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン及びtert-ブチルメチルエーテルの加熱冷却サイクルを施した各濃溶液中に静置した場合に、又はtert-ブチルメチルエーテル中で熟成させた場合に、得られる形態であることが分かった。形態1とパターン2との混合物は、ギ酸エチル(加熱サイクル後に熟成及び静置)、酢酸イソプロピル(加熱サイクル後に静置)、メチルエチルケトン(加熱サイクル後に静置)、及びクロロホルム(加熱サイクル後に静置すると微量のパターン2)の場合に得られた。
【0045】
したがって、
・1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基、溶媒、及びリン酸を含む溶液を調製すること、及び
・過剰な溶媒及びリン酸を分離して、リン酸塩を得ること
を含む、本発明のリン酸塩を調製するプロセスも提供される。
【0046】
一部の実施形態では、本方法は、リン酸塩及び最小体積の結晶化溶媒の結晶化溶液を調製して結晶化溶液を形成することをさらに含む。結晶化溶液は、結晶形成を可能にするために、周囲条件下で静置させてもよく、及び/又は冷却されてもよく、及び/又は濃縮されてもよい。
【0047】
形態1が所望される実施形態では、結晶化溶媒は、典型的には、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、tert-ブチルメチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、及びメチルエチルケトン又はそれらの組み合わせを含まない。一部の実施形態では、溶媒は、さらにクロロホルムを含まない。
【0048】
形態1が所望される場合、結晶化溶媒は、1,4-ジオキサン、2-ブタノール、2-エトキシエタノール、2-メチルテトラヒドロフラン、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、アニソール、エタノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコール及び水又はそれらの組み合わせから選択することができる。
【0049】
リン酸塩パターン2が所望される場合、結晶化溶媒は、好ましくはtert-ブチルメチルエーテルである。
【0050】
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとを、リン酸の存在下で、溶媒中で反応させて、本発明の化合物のリン酸付加塩を得ることを含む、本発明のリン酸塩を調製するプロセスも提供される。
【0051】
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとの反応は、任意の適切な溶媒、例えば、本明細書に記載される結晶化溶媒のうち任意のものの中で行うことができる。N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとの反応は、N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとリン酸との溶媒中溶液を形成すること、及びホルムアルデヒドを溶液に添加することをさらに含むことができる。溶液は、任意の適切な溶媒を含むことができる。一部の実施形態では、溶媒は、水性溶媒である。一部の実施形態では、溶媒は、1,4-ジオキサン、2-ブタノール、2-エトキシエタノール、2-メチルテトラヒドロフラン、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、アニソール、エタノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコール及び水又はそれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、溶媒は、アセトニトリル、水又はそれらの組み合わせから選択される。溶媒の組み合わせは、構成要素の任意の適切な混合物を含んでもよく、例えば、アセトニトリルと水となどの2溶媒混合物は、約1:1~約2:1のアセトニトリル対水の重量比とすることができる。
【0052】
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとの反応は、昇温で進行することができる。一部の実施形態では、反応の温度は、約25℃~約50℃、約25℃~約45℃又は約35℃~約45℃である。一部の実施形態では、この反応の温度は、約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45℃の温度で実現することができる。反応温度は、これらの温度のうちいずれかから、これらの温度のうち他のいずれかまでとすることができる。
【0053】
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとの反応は、任意の適切な量のリン酸を含んでもよい。典型的には、リン酸は、このステップにおいて、N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンに対して約1モル当量の量で存在する(したがって反応生成物も)。一部の実施形態では、リン酸は、N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンに対してモル過剰で、例えば、少なくとも約1、1.05、1.1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5当量以上で供給される。リン酸のモル当量は、これらの値のうちいずれかからこれらの値のうち他のいずれかまで、例えば、N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンに対して約1~約5当量のリン酸とすることができる。
【0054】
これらの方法で生成される本発明のリン酸塩は、結晶、例えば、リン酸塩形態1であり得る。しかしながら、一部の実施形態では、そのプロセスは、リン酸付加塩を含む結晶化溶液を形成するステップをさらに含むことができ、これは、本明細書に記載される任意のそのようなステップに従って行うことができる。
【0055】
反応ステップの次に、プロセスは、典型的には、過剰な溶媒及びリン酸を分離して、リン酸塩を得ることを含む。一部の実施形態では、分離は、濾過によって実現される。
【0056】
一部の実施形態では、本発明のリン酸塩を調製するプロセスは、
・1-メチル-1H-ピラゾール-5-アミンと1-フルオロ-2-ニトロベンゼンとを、有機溶媒(典型的にはテトラヒドロフラン)中で、塩基(典型的にはアルコキシド、例えばカリウムtert-ブトキシド)の存在下で反応させて、2-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-アミノ)-1-ニトロベンゼンを得ること、
・2-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-アミノ)-1-ニトロベンゼンを、典型的にはパラジウム触媒(パラジウム担持炭素など)の存在下で、極性溶媒(例えば非プロトン性極性溶媒、例えば酢酸エチル及びアセトニトリルなど、又はプロトン性溶媒、例えばメタノールなど)中で還元して、N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンを得ること、及び
・N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとを、溶媒中で、リン酸の存在下で反応させて、本発明のリン酸塩を得ること
を含むことができる。
【0057】
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのL-酒石酸付加塩
第2の態様において、本発明は、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのL-酒石酸付加塩を提供する。この塩形態は、本明細書において、本発明のL-酒石酸塩と呼ぶことができる。
【0058】
典型的には、本発明のL-酒石酸塩は、結晶形態で提供される。結晶形態は、XRDによって特性決定され得る。したがって、一部の実施形態では、L-酒石酸塩は、図10に示されているXRDによって特性決定される。
【0059】
本発明のL-酒石酸塩は、追加として又は代替として、その融点によって特性決定され得る。一部の実施形態では、本発明のL-酒石酸塩の融点は約181℃である。
【0060】
本発明のL-酒石酸塩は、無水結晶であり得る。この結晶形態の無水の性質は、TGAによって決定することができる。
【0061】
本発明の化合物のL-酒石酸塩は、周囲条件下又は加速貯蔵条件下で貯蔵された場合に、実質的に無水、及び実質的に変化しない純度レベルを維持し得る。加速貯蔵条件は、高温(例えば40℃又は80℃)及び/又は高い相対湿度を含み得る。一部の実施形態では、L-酒石酸塩は、例えば、少なくとも1週間、高温(例えば40℃)で、及び約60%RHまで、70%RHまで又は75%RHまでで貯蔵すると、実質的に無水を維持し得る。典型的には、L-酒石酸塩は、これらの貯蔵条件下で安定も維持し、期間中ずっと実質的に純粋を維持し、例えばHPLCによって検出可能な分解生成物が約2%まで、1.5%まで又は1%までになる。HPLCは、本明細書に記載される技術のうちいずれかによって行うことができる。
【0062】
本発明のL-酒石酸塩は、任意の適切な手段によって調製することができる。典型的には、本発明のL-酒石酸塩の調製は、本発明の化合物をL-酒石酸に曝露することを含む。
【0063】
したがって、
・1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基、溶媒、及びL-酒石酸を含む溶液を調製すること、及び
・過剰な溶媒及びL-酒石酸を、L-酒石酸塩から分離すること
を含む、本発明のL-酒石酸塩を調製するプロセスも提供される。
【0064】
一部の実施形態では、このプロセスは、L-酒石酸塩及び最小体積の結晶化溶媒の結晶化溶液を調製して結晶化溶液を形成することをさらに含む。結晶化溶液は、結晶形成を可能にするために、周囲条件下で静置させてもよく、及び/又は冷却されてもよく、及び/又は濃縮されてもよい。
【0065】
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとをL-酒石酸の存在下で反応させて、本発明の化合物のL-酒石酸付加塩を得ることを含む、本発明のL-酒石酸塩を調製するプロセスも提供される。
【0066】
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとの反応は、任意の適切な溶媒、例えば、本明細書に記載される結晶化溶媒のうちいずれかの中で行うことができる。N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとの反応は、N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンの溶液を形成すること、及びホルムアルデヒドをその溶液に添加することをさらに含むことができる。溶液は、任意の適切な溶媒、例えば、本明細書に記載される酒石酸塩を形成するための結晶化溶媒のうちいずれかを含むことができる。
【0067】
これらの方法で生成される本発明のリン酸塩は、結晶であり得る。しかしながら、一部の実施形態では、プロセスは、L-酒石酸付加塩を含む結晶化溶液を形成するステップをさらに含むことができ、これは、本明細書に記載される任意のそのようなステップに従って行うことができる。
【0068】
一部の実施形態では、本発明のL-酒石酸塩を調製するプロセスは、
・1-メチル-1H-ピラゾール-5-アミンと1-フルオロ-2-ニトロベンゼンとを、有機溶媒(典型的にはテトラヒドロフラン)中で、塩基(典型的にはアルコキシド、例えばカリウムtert-ブトキシド)の存在下で反応させて、2-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-アミノ)-1-ニトロベンゼンを得ること、
・2-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-アミノ)-1-ニトロベンゼンを、典型的にはパラジウム触媒(パラジウム担持炭素など)の存在下で、極性溶媒(例えば非プロトン性極性溶媒、例えば酢酸エチル及びアセトニトリルなど、又はプロトン性溶媒、例えばメタノールなど)中で還元して、N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンを得ること、及び
・N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとを、溶媒中で、L-酒石酸の存在下で反応させて、本発明のL-酒石酸塩を得ること
を含むことができる。
【0069】
結晶の1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基
第3の態様において、本発明は、本発明の化合物の結晶を提供する。この結晶は、本明細書において、本発明の遊離塩基結晶と呼ぶことができる。
【0070】
典型的には、本発明の遊離塩基結晶は、無水結晶である。
【0071】
本発明の遊離塩基結晶は、図1に示されているそのXRDパターンによって特性決定され得る。追加として又は代替として、本発明の遊離塩基結晶は、DTA及びDSC分析によって約200℃であると決定された、その融点によって特性決定され得る。
【0072】
本発明の遊離塩基結晶は、任意の適切な手段によって調製することができる。典型的には、本発明の遊離塩基結晶の調製は、本発明の化合物の塩(本発明の化合物の塩酸塩など)を塩基水溶液(重炭酸ナトリウムなど)に曝露して酸付加対イオンを中和し、次いで、有機溶媒で液液抽出して、有機相中の遊離塩基化合物を抽出することを含む。
【0073】
したがって、
・1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの塩酸塩(例えば二塩酸塩)と飽和重炭酸塩水溶液との溶液を調製すること、及び
・その溶液を有機溶媒に接触させて、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基を溶液から抽出すること
を含む、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の結晶形態を調製するプロセスも提供される。
【0074】
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の結晶形態を調製するプロセスであって、当該プロセスは、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの溶液を用意すること、及び1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンを結晶化させることを含み、当該溶液は酸を実質的に含まない、プロセスも提供される。
【0075】
これらの方法において、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンは、本明細書に記載される合成を含む合成によることを含む任意の適切な手段によって得ることができる。
【0076】
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとを、溶媒中で、酸の存在下で反応させること、次いで、反応生成物を塩基に曝露すること、及び任意選択により結晶化して1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の結晶形態を得ることを含む、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の結晶形態を調製するプロセスも提供される。
【0077】
一部の実施形態では、酸は、酢酸である。
【0078】
一部の実施形態では、塩基は、塩基水溶液、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、及び炭酸カリウムなどの水溶液である。曝露するステップは、反応生成物の塩基での複数回の洗浄を含んでもよい。
【0079】
塩基に曝露した後の生成物は、結晶形態であり得るか、又はプロセスは、それに続く結晶化ステップを必要とする場合がある。結晶化ステップは、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの溶液を用意すること、及び1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンを結晶化させることを含むことができる。本明細書に記載される任意の適切な結晶化ステップを、これらのプロセスに使用することができる。
【0080】
医薬組成物
本発明の塩及び/又は結晶のうちいずれか1つ又は複数を含む薬剤も提供される。
【0081】
本発明の塩及び/又は結晶のうちいずれか1つ又は複数を含む医薬組成物も提供される。医薬組成物は、典型的には、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は添加剤をさらに含む。
【0082】
薬剤及び医薬組成物は、経口、経直腸、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、非経口(筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内を含む)投与用のもの、又は吸入若しくは吹送による投与に適した形態のものを含む。したがって、本発明の塩及び/又は結晶は、任意選択により従来の補助剤、担体又は希釈剤と一緒に、医薬組成物及びその単位投与量の形態の中に入れることができ、そのような形態において、全て経口使用のための、錠剤若しくは充填されたカプセル剤などの固体として、又は溶液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤若しくはそれを充填したカプセル剤などの液体として、或いは非経口(皮下を含む)使用のための滅菌注射液の形態で、使用することができる。典型的には、本発明の塩及び/又は結晶は、固体状態におけるそれらの好都合な性質のため、固体として使用される。
【0083】
本発明の塩及び/又は結晶の医薬組成物は、好都合には、投与量単位形態で提供することができ、薬学の技術分野において周知の方法のいずれかによって調製することができ、薬学の技術分野において公知のように、任意の従来の担体、希釈剤及び/又は添加剤を含むことができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,2005,Lippincott Williams & Wilkinsを参照)。典型的には、本明細書に記載される医薬組成物の調製は、活性成分、例えば本発明の塩及び/又は結晶のうちいずれか1つを、1つ又は複数の副成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、医薬組成物は、活性成分、例えば本発明の塩及び/又は結晶を、液体担体若しくは微粉固体担体又はその両方に均質且つ密接に会合させること、次に、必要な場合、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。本発明の塩及び/又は結晶は、医薬組成物中に、所望の効果を生じさせるのに十分な量で含まれる。
【0084】
本明細書に記載される医薬組成物は、本明細書に記載される方法のうちいずれかにおいて使用することができる。
【0085】
処置の方法
本発明の化合物に関与する処置の方法は、国際公開第2017/004674号パンフレット、国際公開第2020/102857号パンフレット及び国際公開第2021/042178号パンフレットに記載されている。本発明の塩及び/又は結晶は、低吸湿性及び改善された安定性を有する好都合な固体形態であるため、それらはこれらの処置の方法のうちいずれかにおいて使用することができると想定される。
【0086】
したがって、別の態様において、
・対象における反社会的行動を処置若しくは予防する、及び/又は
・対象における社会的行動の緊急及び長期の制御を提供する、及び/又は
・対象における物質乱用障害を処置若しくは予防する、及び/又は
・対象における社会的機能不全を処置若しくは予防する、及び/又は
・主要な又は二次的な特徴として社会的機能不全を特徴とする精神障害の治療の一部として、対象における精神障害を処置若しくは予防する、及び/又は
・対象における体重減少を引き起こす、及び/又は
・対象における体重を管理する、及び/又は
・対象における食欲を抑制する、及び/又は
・対象における食物摂取を減少させる、及び/又は
・対象におけるオピオイド離脱及び/若しくはオピオイド離脱に関連する症状を処置若しくは予防する
方法であって、当該対象に、有効量の、本発明の塩及び/又は結晶のうちいずれか1つ又は複数を投与することを含む方法が提供される。
【0087】
別の態様において、物質乱用障害に罹患しているか、若しくはそれを発症するリスクのある対象、又は物質乱用障害から回復し、持続的な物質の節制の維持を求めている対象を処置する方法であって、当該対象に、有効量の、本発明の塩及び/又は結晶のうちいずれか1つ又は複数を投与して、それにより、物質乱用障害を処置又は予防することを含む方法も提供される。
【0088】
一部の実施形態では、本発明の方法は、有効量の、本発明の塩及び/又は結晶、並びに薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は添加剤を含む医薬組成物を投与することを含む。
【0089】
一部の実施形態では、対象における反社会的行動を処置又は予防する方法は、対象における向社会的行動を刺激することを含む。
【0090】
一部の実施形態では、精神障害は、自閉症スペクトラム障害、物質乱用障害、統合失調症、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0091】
一部の実施形態では、物質乱用障害は、オピオイド、オピエート、アルコール、コカイン又はそれらの組み合わせのうちいずれか1つの嗜癖及び/又は依存から選択される。
【0092】
一部の実施形態では、本発明の方法は、オピオイド離脱の症状を処置する。オピオイド離脱の症状は、心理的、肉体的及び/又は身体的症状を含む。
【0093】
オピオイド離脱の肉体的及び身体的症状は、振戦、ふるえ、ホットフラッシュ又はコールドフラッシュ、鳥肌、発汗、呼吸促迫、心拍数上昇、血圧上昇、身体の痛み、嘔吐、下痢及び発熱を含む。一部の実施形態では、本方法は、オピオイド離脱の肉体的及び/又は身体的症状を処置する。一部の実施形態では、肉体的及び/又は身体的症状は、振戦及びふるえから選択される。
【0094】
オピオイド離脱の心理的症状は、神経不安、不安、不穏状態、易刺激性、不眠症、あくび、幻覚、痛覚過敏、ハイパーカティフィテイア(hyperkatifiteia)、及び食欲不振を含む。これらの症状は、肉体的/身体的ではないが、オピオイド離脱の症状であり、オピオイド投薬の中止又は減量から生じる、及び/又はオピオイドアンタゴニスト投与によって誘導される、生理学的変化に起因すると考えられる。一部の実施形態では、本方法は神経不安を処置する。
【0095】
オピオイド離脱の症状は、神経不安、不安、不穏状態、易刺激性、不眠症、あくび、幻覚、振戦、ふるえ、ホットフラッシュ又はコールドフラッシュ、鳥肌、くしゃみ、発汗、呼吸促迫、心拍数上昇、血圧上昇、散瞳、立毛、頭痛、身体の痛み、筋けいれん、筋肉痛、骨痛、関節痛、痛覚過敏、ハイパーカティフィテイア、眼及び鼻からの水性分泌物(流涙及び鼻漏)、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振及び発熱を含む。上記のようなオピオイド離脱に関して開発された診断ツールの1つがDSM-5である。DSM-5は、オピオイド離脱の診断を受けようとする対象について、以下の9症状のうち3症状が、オピオイド曝露の中止(又は減量)、又はオピオイドアンタゴニスト若しくは部分アゴニストの投与のいずれかから数分~数日以内に発症しなければならないことを規定している。DSM-5による症状は、(1)不快気分、(2)悪心、(3)筋肉痛、(4)流涙又は鼻漏、(5)散瞳、立毛又は発汗、(6)下痢、(7)あくび、(8)発熱及び(9)不眠症である。したがって、一部の実施形態では、対象は、これらのDSM-5による症状のうち少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8又は9症状を経験し、好ましくは式(I)の化合物の投与は、対象が経験する症状のうち少なくとも1つを処置する。
【0096】
離脱症状の重症度は、依存を引き起こすオピオイド、用量及び処置又は乱用の長さ、オピオイド使用をいかに速く中止するか、並びに年齢、性別、体重などを含む対象の特性に依存する。
【0097】
したがって、一部の実施形態では、本方法は、振戦、ふるえ、ホットフラッシュ若しくはコールドフラッシュ、鳥肌、発汗、呼吸促迫、心拍数上昇、血圧上昇、身体の痛み、嘔吐、下痢、発熱、神経不安、不安、不穏状態、易刺激性、不眠症、あくび、幻覚、痛覚過敏、ハイパーカティフィテイア、及び食欲不振、又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるオピオイド離脱症状を処置する。
【0098】
投与
本発明の塩及び/又は結晶は、任意の適切な手段によって、例えば、経口、経直腸、経鼻、経腟、局所(頬側及び舌下を含む)、非経口、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内又は大槽内注射によるもの、吸入、吹送、輸注又は移植技術(例えば、滅菌の注射可能な水性又は非水性の溶液又は懸濁液として)によって投与することができる。
【0099】
本発明の塩及び/又は結晶は、本明細書に記載される薬剤及び/又は医薬組成物のうちいずれかを含む任意の適切な剤形として提供され得る。
【0100】
本発明の塩及び/又は結晶は、対象の体重につき、約0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.5、1、2、3、5、10、15、20、25又は30mg/kgの用量で投与することができる。一部の実施形態では、用量は、これらの量のうちいずれかから他のいずれかの量まで、例えば、約0.001mg/kg~約30mg/kg、約0.2mg/kg~約30mg/kg又は約0.2mg/kg~約10mg/kgとすることができる。しかし、当然のことながら、任意の特定の対象についての特定の用量レベル及び投与頻度は変更される場合があり、使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与方式及び時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、特定の病態の重症度、及び治療を受けている宿主を含む様々な因子に依存することになる。
【0101】
本発明の塩及び/又は結晶は、「有効量」で、例えば、適切な量が医薬組成物中に含まれている場合に投与され得る。「有効量」は、本発明の塩及び/若しくは結晶、又は本発明の塩及び/若しくは結晶を含む組成物を投与する研究者、獣医師、医師又は他の臨床医によって求められている、組織、系、動物又はヒトの所望の生物学的又は医学的応答を引き出す化合物の量を意味すると理解される。一部の実施形態では、有効量は、「治療有効量」とすることができ、その場合、本発明の塩及び/又は結晶の量は、対象に現れた病態及び/又はその症状を処置するのに有効である。他の実施形態では、有効量は、「予防的有効量」とすることができ、その場合、本発明の塩及び/又は結晶の量は、病態及び/又はその症状の発症を予防的に処置するために、及び/又は予防するために、或いは症状が現れた場合、病態及び/又はその症状の重症度を、式(I)の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩及び/又はプロドラッグでの処置を受けていない対象の集団における病態及び/又はその症状の平均重症度と比較して低いレベルに抑えるために、十分である。
【0102】
「有効量」は、処置されようとする対象の健康状態、症状の重症度、化合物の製剤、及び/又は医学的状態の専門的評価を含む複数の因子に依存することになる。対象の体重及び年齢も、当業者にとって、対象が受けるべき本発明の塩及び/又は結晶の量を決定する場合に因子となり得る。
【0103】
本発明の塩及び/又は結晶「の投与」及び又は「を投与すること」という表現は、目的の活性化合物を、それを必要とする対象に提供することを意味するものと理解されるべきである。
【0104】
本明細書において提供される場合、開示されている本発明の塩及び/又は結晶から生じる有益な又は所望の臨床結果には、以下に限定されないが、目的の疾患、障害若しくは病態の症状の停止、目的の疾患、障害若しくは病態の症状の重症度の軽減、目的の疾患、障害若しくは病態の症状の発症の予防、及び/又は目的の疾患、障害若しくは病態の症状の管理、例えば、症状の重症度の悪化を予防すること、又は症状を重症度において低減させること、若しくは予想された時間より短い時間内に停止させることが含まれる。治療措置又は予防措置のいずれかが実現され得る。処置を必要とするものには、目的の疾患、障害又は病態を既に経験しているもの、及び目的の疾患、障害又は病態が予防されようとしているものが含まれる。処置とは、処置をしない場合と比較して、目的の疾患、障害又は病態の症状の増加を阻害すること又は減少させることを意味し、必ずしも該当する病態の完全な停止を意味するものではない。
【0105】
したがって、一般に、「処置(treatment)」(及び「処置すること(treating)」を含むその変形)という用語は、上記の有益な又は所望の臨床結果を含む、所望の薬理学的な及び/又は生理学的な効果が得られるように、対象、組織又は細胞に影響を及ぼすことを意味する。
【0106】
キット
別々のパーツの中に、
・本発明の塩及び/又は結晶のうち1つ又は複数、及び
・本発明の方法のうちいずれかにおけるその使用のための説明書
を含むキットオブパーツも提供される。
【0107】
本明細書に開示されているキットのうちいずれかにおいて、本発明の塩及び/又は結晶は、任意選択により薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は添加剤と一緒に、医薬組成物として製剤化されてもよい。医薬組成物は、経口、経直腸、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、非経口(筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内を含む)投与を含む、本明細書に開示されている任意の経路による投与のために、又は吸入若しくは吹送による投与に適した形態に、製剤化されてもよい。
【実施例
【0108】
一般的方法
粉末X線回折(XRPD)
XRPD分析は、PIXcel検出器(128チャンネル)を備えたPANalytical X’pert proで、3~35°2θの間で試料を走査して行った。材料を穏やかに粉砕して凝集体をいずれも放出し、試料を担持するためのKapton又はMylarのポリマーフィルムとともにマルチウェルプレートに載せた。次いで、マルチウェルプレートを回折計の中に置き、Cu K照射(α1λ=1.54060Å、α2=1.54443Å、β=1.39225Å、α1:α2比=0.5)を使用し、透過モードで実行し(ステップサイズ0.0130°2θ、ステップ時間18.87秒)、40kV/40mA発生装置設定を使用して分析した。データを可視化し、HighScore Plus4.7デスクトップアプリケーション(PANalytical、2017)を使用して画像を生成した。
【0109】
偏光顕微鏡法(PLM)
結晶性(複屈折)の存在は、交差偏波レンズ及びMoticカメラを備えたOlympus BX50顕微鏡を使用して判定した。画像は、Motic Images Plus 2.0を使用して取得した。他に記載がない限り、全ての画像を、20×対物レンズを使用して記録した。
【0110】
熱重量/示唆熱分析(TGA/DTA)
およそ5mgの材料を開口アルミニウム皿の中に秤量し、同時熱重量/示唆熱分析装置(TG/DTA)に入れ、室温に維持した。次いで、試料を10℃/分の速度で20℃から300℃まで加熱し、その間、試料重量の変化を任意の示唆熱イベントとともに記録した(DTA)。窒素をパージガスとして、300cm/分の流速で使用した。
【0111】
示差走査熱量測定(DSC)
およそ5mgの材料を、アルミニウムDSC皿の中に秤量し、穴を開けたアルミニウム蓋で密封しないように塞いだ。次いで、試料皿をSeiko DSC6200(冷却器を備えた)に入れ、冷却し、20℃に維持した。安定な熱流反応が得られると、試料及び参照物を10℃/分の走査速度で250℃まで加熱し、得られた熱流反応をモニターした。窒素をパージガスとして、50cm/分の流速で使用した。
【0112】
核磁気共鳴(NMR)
NMR実験を、DCHクライオプローブを備えたBruker AVIIIHD分光計で、プロトンについて500.12MHzで操作して実行した。実験は、重水素化DMSO中で実行し、各試料を約10mM濃度に調製した。
【0113】
動的蒸気収着(DVS)
およそ10~20mgの試料を、メッシュ蒸気収着バランス皿中に置き、Surface Measurement SystemsによるDVS Intrinsic動的蒸気収着バランス中に入れた。試料を10%増加刻みで40%~90%の相対湿度(RH)の傾斜プロファイルに供し、試料を各ステップで安定な重量が得られるまで(dm/dt 0.004%、最小ステップ長さ30分、最大ステップ長さ500分)25℃に維持した。収着サイクルの完了後、同じ手順を使用して試料を0%RHに乾燥し、次いで、第2の収着サイクルで40%RHに戻した。2サイクルを実行した。収着/脱着サイクル中の重量変化をプロットし、試料の吸湿性を決定することを可能にした。次いで、保持された任意の固体についてXRPD分析を行った。
【0114】
重量測定蒸気収着(GVS)
およそ10~20mgの試料を、メッシュ蒸気収着バランス皿中に置き、Hiden AnalyticalによるIGASorp Moisture Sorption Analyserバランス中に入れた。試料を10%増加刻みで40%~90%の相対湿度(RH)の傾斜プロファイルに供し、試料を各ステップで安定な重量が得られるまで(98%ステップ完了、最小ステップ長さ30分、最大ステップ長さ60分)25℃に維持した。収着サイクルの完了後、同じ手順を使用して試料を0%RHに乾燥し、最後に開始点の40%RHに戻した。2サイクルを実行した。収着/脱着サイクル中の重量変化をプロットし、試料の吸湿性を決定することを可能にした。
【0115】
高速液体クロマトグラフィー-紫外検出法(HPLC-UV)
機器:Dionex Ultimate 3000
カラム: Agilent SB-Phenyl 150mm×4.6mm、3.5μm
カラム温度:30℃
オートサンプラー温度:5℃
UV波長:275nm
注入量:3μl
流速:1ml.min-1
移動相A:95-5水:MeCN中0.1%TFA
移動相B:MeCN中0.1%TFA
【0116】
【表1】
【0117】
液体クロマトグラフィー-質量分析法
機器:Dionex Ultimate 3000
Thermo Finnigan LCQ Advantage MS
カラム:Ace Excel 2 C18-PFP、75mm×4.6mm、2μm
カラム温度:30℃
オートサンプラー温度:5℃
UV波長:275nm
注入量:10μl
流速:1ml.min-1
移動相A:水中0.1%ギ酸
移動相B:MeCN中0.1%ギ酸
【0118】
【表2】
【0119】
実施例1 - 1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基の、その二塩酸塩からの調製
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基を、塩の一次スクリーニング(実施例2)において使用するために、以下の手順を使用して調製した。
・約5.5gの1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの二塩酸塩を、1L丸底フラスコに添加し、脱イオン水中に調製した飽和NaHCO溶液200mLと混合した。
・500mLのジクロロメタン(DCM)及び200mLの酢酸エチル(EtOAc)をフラスコに添加した。
・混合物を激しく混合し、有機相を分離した。
・水性相を、追加の200mLのDCMで抽出した。
・分離した有機相を合わせ、Na2SO4で乾燥し、濾過した。
・濾過した溶液を真空中で濃縮して、ベージュ色固体を得た。
・固体をtert-ブチルメチルエーテル(TBME)でトリチュレートした後に濾過し、フィルターベッド上で乾燥させた(例えば約1時間)。材料は、任意選択により、減圧下にて約40℃でさらに乾燥させてもよい。
【0120】
単離された1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基は、上記に詳説されている方法により、TG/DTA、DSC、DVS及びポストDVS、XRPD、HPLC、H NMR並びにLC-MSによって特性決定した。1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基を40℃/75%相対湿度(RH)で1週間貯蔵して、高いRHでの材料の安定性を判定し、水和物の形成の可能性を特定した。
【0121】
以下の結果が遊離塩基の調製中に得られた。
・3.627gの遊離塩基が単離された。
・単離された材料は、XRPDにより、高結晶性であることが判明した(図1)。
・材料は、TG分析により、無水であることが判明し、有意な質量損失は観察されなかった。おそらく結晶性材料中に捕捉された溶媒(約0.12当量のEtOAc、0.12当量のDCM、又は0.6当量の水)が原因で、約1.6%の質量損失が、観察された融解転移中に観察された(図2)。
・DT分析は、約201℃の開始から大きく急な融点を示し、206℃でピークになった。他の熱イベントは観察されなかった(図2)。
・DSC分析は、約199℃の開始から大幅な融解吸熱を示し、約206℃でピークになり、DT分析において観察された融解転移に対応していた(図3)。DSC分析の冷却及び第2の加熱の間に観察された熱イベントはなかった。
・材料は、DVSにより、70%RHを超えると吸湿性であることが判明し、70~90%RHの間で約2.74%の質量増加があった(約0.31当量の水)。0~70%RHの間では、材料は非吸湿性であり、約0.11%の質量増加があった(図4及び図5)。形態の変化は、XRPDポストDVS分析により観察されなかった。
H NMRスペクトルは、予測どおりの構造の結合性を示した。微量のEtOAc及びDCMが観察された。
・HPLC分析は、材料が98.4%の高純度(面積%による)を示すことを確証した。
・LC-MSは、201.03m/z陽イオン化[M+H]の質量を示し、これは200.24g/molの予測質量に対応していた。
・40℃/75%RHで1週間貯蔵した後に、パターンにおける有意な変化は観察されなかった。材料は、XRPDによると、1週間の安定性試験の前の試料のXRPDと比較して、より結晶性であることが判明した。新たな小ピークが、約10.2、11.9及び14.3°2θで観察され、結晶性における改善又は水和物の形成開始の可能性に関連していた(図6)。
【0122】
本発明の化合物の遊離塩基を生成することに成功し、十分に特性決定をした。材料は、XRPDにより、高結晶性であることが分かった。材料は、TG分析により、無水であることが判明した。DTA及びDSC分析は、約200℃の融点を確証した。遊離塩基は、DVSにより、吸湿性であることが判明し、70~90%RHの間で約2.74%の質量増加があった。0~70%RHの間では、材料は、非吸湿性であることが判明し、約0.11%の質量増加がある。形態の変化は、XRPDポストDVS分析により、観察されなかった。収集されたH NMRスペクトルは、予測どおりの得られた構造の結合性を示した。98.4%の高純度が、HPLC分析により、確証された。LC-MSは、201.3のm/zを示し、これは200.24g/molの予測質量に対応していた。40℃/75%RHで1週間貯蔵した遊離塩基材料は、XRPDにより、形態の変化を示さなかった。
【0123】
実施例2 - 塩の一次スクリーニング
塩のスクリーニングは、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基について、5種の溶媒系及び18の酸の対イオンを使用して行った(表1を参照)。
【0124】
この塩のスクリーニングに使用した溶媒系は、(1)エタノール(EtOH)、(2)テトラヒドロフラン(THF)、(3)酢酸イソプロピル、(4)アセトン、及び(5)95%2-プロパノール、5%水(%v/v)であった。
【0125】
以下の手順を使用した。
・およそ30mgの1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基を、5×1.5mLガラスバイアル中に秤量した。
・300μLの選択された溶媒系を各バイアルに添加して、移動スラリーを形成し、ベージュ色スラリーが観察された。
・1.05(又は半実験の場合0.525)当量の酸の対イオン(表1を参照)を各試料に添加し、初回観察を記録した。
・試料に、周囲温度~40℃の間の温度サイクルを4時間サイクルで約72時間施した。
・試料を回収し、観察を行った。
・固体が観察された試料を遠心分離によって濾過し、固体をマルチウェルXRPDプレートに載せ、XRPDによって分析した。
・固体が観察されなかった試料は、蓋を取り、平穏に静置して、周囲温度で蒸発させた。蒸発後、全ての試料中に褐色ガム状物が観察された。
・XRPDプレートをオーブン内に40℃で約24時間置いた。乾燥した試料をXRPDにより分析して、パターン/無水塩の可能性の変化をいずれも特定した。
・次いで、XRPDプレートを、安定性チャンバー内に40℃/75%RHで約24時間置いた。
・安定性後の試料をXRPDにより分析して、水和物の形成及び塩の不均化の可能性を特定した。
・乾燥し、40℃/75%RHで貯蔵すると、安定であることが観察して分かったパターンを、TG/DTAにより分析して、スケールアップに適した塩形態を特定した。
【0126】
試験された18の酸の対イオンの塩の一次スクリーニング中、16が化合物の固体塩形態の候補を生成した。しかしながら、熱分析に基づく適切な性質及び観察されたパターンの40℃/75%RHでの安定性を有していたのはリン酸塩及びL-酒石酸塩のみであった。
【0127】
【表3】
【0128】
この塩スクリーニングの結果は、表2にまとめられている。
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】
【0132】
上記の結果から、リン酸塩及びL-酒石酸塩のみが、許容される熱安定性及び吸湿性を有していた。
【0133】
多形の一次スクリーニング中、16の塩形態の候補を特定した。40℃/75%RHで安定であることが判明した塩形態の候補を、TG/DTAにより分析して、望ましい熱性質を有する塩形態を特定した。TG/DTA分析は、望ましい熱性質を有する4つの塩形態の候補、即ち、リン酸塩パターン1(リン酸塩形態1)、L-酒石酸塩パターン1(L-酒石酸塩形態1)、トシル酸塩パターン1及びトシル酸塩パターン3を特定した。熱分析は、リン酸塩形態1及びL-酒石酸塩形態1が無水であることを示した。
【0134】
実施例3 - 1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸塩形態1の調製
この実施例は、1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸付加塩を調製するためのプロトコルを説明する。
【0135】
実施例3.1 - 遊離塩基からの調製
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸塩形態1は、以下の手順を使用して調製した。
・およそ500mgの1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基を、20mLシンチレーションバイアル中に秤量した。
・5mLのエタノールを材料に添加して、移動スラリーを形成した。
・2.62ml(1.05当量)の1Mリン酸ストック溶液(THF中に調製)を材料のスラリーに添加した。酸の対イオンを添加すると、ピンク色スラリーが観察された。
・次いで、スラリーに、周囲温度~40℃の間の温度サイクルを4時間サイクルで撹拌しながら約24時間施した。40℃で約2時間撹拌した後、ピンク色濃厚スラリーが観察された。
・約24時間後に試料を回収し、プラスチックピペットを使用して少量の材料を単離し、湿っている間にXRPDによって分析した。
・塊状材料を、ブフナー漏斗を使用して濾過し、フィルターベッド上で約1時間乾燥させた。材料は急速に濾過され、流動的なピンク色粉末が観察された。
・塊状材料を、真空下にて40℃で約16時間乾燥させた。
【0136】
乾燥した材料を、上記に詳説されている方法により、TG/DTA、DSC、DVS及びポストDVS、XRPD、HPLC、H NMR並びにLC-MSによって十分に特性決定した。
【0137】
単離された材料は、XRPDにより、高結晶性であることが判明した(図7)。
・PLM顕微鏡写真は、明確な形態のない複屈折の小粒子を示す(図示せず)。形態の欠如は、スケールアッププロセスにおける撹拌子の使用が原因であり得る。
・TG分析は、約200℃超で熱分解するまで質量損失を示さなかった(図8)。
・DT分析は、約209℃の開始から大幅な吸熱融解転移を示し、214℃でピークになった(図8)。
【0138】
リン酸塩形態1を、上記のプロセスによって調製することに成功した。単離された材料は、XRPD及びPLMにより、高結晶性であることが判明した。観察された結晶は、PLMにより、明確な形態が示されなかった。これは、調製中の撹拌子の使用が原因であり得る。TG分析は、材料が無水であることを確証した。DT及びDSC分析は、約200℃の融点を特定し、これは、一次スクリーニングのデータと一致していた。材料は、DVSにより、わずかに吸湿性であることが判明し、90%RHで約0.4%の質量増加があった(図17及び18)。形態変化又は水和物形成の証拠は、XRPDポストDVS分析では認められなかった。収集したH NMRスペクトルは、得られた構造に予測どおりの結合性を示した。定量的な31P NMRにより、材料中に1当量のリンの存在が確認された。HPLC分析は、98.7%の高純度(面積%による)を確証し、遊離塩基投入材料からの純度のわずかな上昇を示した。
【0139】
実施例3.2 - 合成による調製
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸塩形態1を、N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンとホルムアルデヒドとを、リン酸の存在下で反応させることによって調製した。N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンは、Katte,TA;Reekie,TA;Jorgensen,WT;and Kassiou,M;J.Org.Chem.2016,81(11),4883-4889に記載されているように調製することができ、この文献は、全ての支援情報を含め、全体が参照により援用される。
【0140】
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンを、以下の反応に組み入れる前に、酢酸エチル及びヘプタンから再結晶させた。再結晶したN-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミンは、HPLCにより、従来の分離技術を使用して評価された99.4面積%の純度を有していた。当然のことながら、再結晶化は、以下のホルムアルデヒドとの反応の正常完了に必須というわけではない。
【0141】
1リットルフラスコに、冷却器、均圧添加漏斗、窒素入口及び磁気撹拌子を装着し、窒素でパージした。再結晶化したN-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-ベンゼン-1,2-ジアミン(37.2g)をフラスコに添加し、次いで、予め脱気しておいたアセトニトリル(184.6g)と水(145.0g)との混合物を添加した。この混合物を30℃に加熱し、リン酸(23.1g)と水(26.3g)との混合物2.9gを添加した直後に、水(14.9mL)で洗浄した。10分後、37%ホルムアルデヒド(15.9g)水溶液を、温度を36℃~43℃の間に維持しながら25分かけて添加した。この溶液を、水(14.9mL)で10分以内に洗浄した。ホルムアルデヒドの添加を開始して70分後、混合物を、窒素でパージした受器の中に濾過し、反応フラスコをアセトニトリル(7.9mL)で洗い流し、洗浄物にフィルターを通過させた。液体フラスコを窒素でパージし、34℃に再加熱した。残存するリン酸を、アセトニトリル(49.2g)をさらに使用して希釈し、35分かけて34℃~39℃で添加し、アセトニトリル(5.8g)で洗浄した。この混合物を5分間撹拌し、次いで2時間かけて19℃に冷却し、次いで氷浴で105分間冷却した。6℃で、混合物を濾過し、ケークをアセトニトリル(26.4g)と水(22.8g)との混合物のおよそ3分の2で洗浄し、次いでケークを圧縮した。濾過ケークを、残存する3分の1のアセトニトリル/水混合物で洗浄し、シンター(sinter)で窒素ブランケットを用いて2分間乾燥させた。淡ピンク色固体(66.9g)をオーブンに移し、40℃で115時間乾燥させて、リン酸塩形態1を得た(収量51.0g、86.5%)。
【0142】
実施例4 - リン酸塩の多形のスクリーニング及び1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのリン酸塩パターン2の調製
本発明の化合物のリン酸の凍結乾燥した材料を、以下の手順を使用して調製した。
・およそ1gの遊離塩基を秤量し、100mL丸底フラスコに添加した。
・15mLの1,4-ジオキサンを添加して、移動スラリーを形成した。
・1.05当量(357.7μL)の無溶媒のリン酸を添加した。撹拌すると、ピンク色スラリーが観察された。
・60mLの脱イオン水をフラスコに添加し、この混合物を、溶解が観察されるまで穏やかに加熱した。
・得られた透明のピンク色溶液を25×20mLバイアルに分け、試料を凍結した。各バイアルは、約40mgのリン酸塩を含有していた。
・次いで、試料を約72時間かけて凍結乾燥した。
・凍結乾燥後、淡ピンク色の飛散性固体が観察された。
・材料のXRPD分析は、それまでに観察されていない、結晶性が不十分なパターンを示した。このパターンをリン酸塩パターン2と呼ぶことにした(遊離塩基の形態1及びパターン2についてのXRPDパターンの違いは図9に示されている)。
【0143】
溶媒の溶解度
選択した溶媒を、50μLの分割量で、およそ10mgの結晶性が不十分なリン酸塩パターン(上記の凍結乾燥から得られた)に添加した。各添加の間に、混合物を溶解についてチェックし、溶解が明らかでない場合、混合物を約40℃に加熱し、再度チェックした。この手順を、溶解が観察されるまで、又は2mLの溶媒を添加してしまうまで継続した。溶解が観察された試料は、蓋をせず周囲温度で貯蔵し、蒸発させた。溶解が観察されなかった試料は、遠心分離により濾過した。観察された固体は全て、XRPDにより分析した。溶媒の溶解度スクリーニング中に使用した溶媒系は、表3に詳細がある。
【0144】
溶媒の溶解度スクリーニング中、以下の結果が得られた。
・低溶解度(<5mg/mL)が、大多数の溶媒系に観察された。
・中等度の溶解度(10>x>100mg/mL)が、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン及び脱イオン水に観察された。
・溶解度試験後に残った固体のXRPD分析は、優勢にリン酸塩形態1を特定した。
・結晶性が不十分なリン酸塩パターン2は、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン及びtert-ブチルメチルエーテルから観察された。
・リン酸塩形態1及びパターン2の混合物は、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル及びメチルエチルケトンから観察された。
【0145】
【表7】
【0146】
リン酸塩形態1は、クロロホルム(微量のパターン2が観察された)、ジメチルスルホキシド(固体なし)、酢酸エチル(パターン2)、ギ酸エチル(形態1とパターン2との混合物)、酢酸イソプロピル(形態1とパターン2との混合物)、メチルエチルケトン(形態1とパターン2との混合物)、メチルイソブチルケトン(パターン2)、N-メチルピロリドン(固体なし)、tert-ブチルメチルエーテル(パターン2)及び水(固体なし)を除いて、上記の試料の大多数において生成された。
【0147】
熟成実験
以下の手順を、多形のスクリーニングの熟成実験中に使用した。
・選択された溶媒系の1mLの分割量を、約30mgの材料が溶解するまで、又は20mLの溶媒を添加してしまうまで(バイアルの最大体積)各試料に添加した。選択した溶媒は、表4にまとめられている。
・次いで、試料に、周囲温度~40℃の間の温度サイクルを、4時間サイクルで撹拌しながら約48時間施した(水を含有する試料には温度サイクルを約72時間施した)。リン酸塩パターン2が観察される可能性のある溶媒には、材料の安定性に関する懸念のため、温度サイクルを48時間施した。
・試料を回収し、観察を行った。
・観察された固体を単離し、XRPDにより分析した。
【0148】
【表8】
【0149】
リン酸塩形態1は、熟成実験において優勢に観察された。形態1とパターン2との混合物は、ギ酸エチルから観察された。リン酸塩パターン2は、tertブチルメチルエーテルのみから観察された。
【0150】
リン酸塩パターン2の特性決定
tert-ブチルメチルエーテルから単離されたリン酸塩パターン2の材料を回収し、真空下にて40℃で約2時間乾燥させた。乾燥した材料を回収し、TG/DTAにより分析した。
【0151】
以下の観察及び結果が、リン酸塩パターン2の特性決定中に得られた。
・TG分析は、過剰な表面溶媒の損失に関連する、加熱の開始からの約0.6%の質量損失を示した。
・DT分析は、約201℃の開始から広い融解吸熱を示し、206℃でピークになった。融解吸熱のすぐ後に熱分解が起こった。
・観察された融点は、リン酸塩形態1の融点より約8℃低かった。
・XRPD分析は、リン酸塩パターン2の試料は、40℃/75%RHで貯蔵すると、全て形態1に変換したことを示した。
【0152】
溶媒の溶解度スクリーニングで観察されたリン酸塩パターン2の材料を含有するXRPDマルチウェルプレートを回収し、安定性チャンバー内に40℃/75%RHで約16時間貯蔵した。試料をXRPDにより分析した。
【0153】
リン酸塩パターン2は、形態1より低い融点を有すると判定された。これは、その材料の安定性がより低いことを示す。40℃/75%RHで貯蔵すると、リン酸塩パターン2の材料は、形態1に完全に変換し、パターン2がそのリン酸塩の準安定性の形態であることが確証された。
【0154】
実施例5 - 1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンのL-酒石酸塩の調製
1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンL-酒石酸塩を、以下の手順を使用して調製した。
・およそ500mgの1-メチル-1,4,5,10-テトラヒドロピラゾロ[3,4-b][1,5]ベンゾジアゼピンの遊離塩基を20mLシンチレーションバイアル中に秤量した。
・5mLのエタノールを材料に添加して、移動スラリーを形成した。
・2.62ml(1.05当量)の1M L-酒石酸ストック溶液(THF中に調製)を、材料のスラリーに添加した。暗ピンク色溶液中に懸濁した少量のベージュ色固体が観察された。
・次いで、スラリーに、周囲温度~40℃の間の温度サイクルを、4時間サイクルで撹拌しながら約24時間施した。40℃で約2時間撹拌した後、濃厚なオフホワイト色スラリーが観察された。
・試料を約24時間後に回収し、少量の材料を、プラスチックピペットを使用して単離し、湿っている間にXRPDによって分析した。
・塊状材料を、ブフナー漏斗を使用して濾過し、フィルターベッド上で約1時間乾燥させた。材料はゆっくりと濾過され、濃厚な凝集したオフホワイト色粉末が観察された。
・塊状材料を、真空下にて40℃で約16時間乾燥させた。
・乾燥した材料を、XRPDにより分析した。
【0155】
乾燥した材料を、上記に詳説されている方法により、TG/DTA、DSC、DVS及びポストDVS、XRPD、HPLC、H NMR並びにLC-MSによって十分に特性決定した。
【0156】
単離された材料は、XRPDにより、高結晶性であることが判明した(図10)。
・PLM顕微鏡写真は、明確な形態のない、複屈折の粒子の小凝集体を示し(図示せず)、これは、スケールアッププロセスにおける撹拌子の使用が原因であり得る。
・TG分析は、約200℃超で熱分解するまで質量損失を示さなかった。
・DT分析は、約181℃の開始から熱分解を伴う大幅な吸熱融解転移を示し、183℃でピークになった(図11)。
・DSC分析は、約182℃の開始から大幅な吸熱融解転移を示し、185℃でピークになった(図12)。冷却ステップ及び第2の加熱ステップの最中に観察された熱イベントはなかった。DSCデータは、TG/DTAデータに対応する。
・材料は、DVSにより、わずかに吸湿性であることが判明し、90%RHで約0.6wt.%の質量増加があった。形態の変化は、DVS動力学プロットには観察されなかった。等温線プロットに観察されたヒステリシスは、実験中の非結晶の内容物の結晶化を示唆している(図13及び図14)。
・ポストDVS材料のXRPD分析は、形態の変化を示さなかった。
H NMRにより、微量の不純物がL-酒石酸塩の試料中に存在することが判定されたが、これは投入されたL-酒石酸中にも特定された。
・HPLC分析は、99.0%の高純度(面積%による)を確証した。
【0157】
L-酒石酸塩形態1の塩を、上記のプロセスによって調製することに成功した。単離された材料は、XRPD及びPLMにより、高結晶性であることが判明した。観察された結晶は、PLMにより、明確な形態が示されなかった。これは、調製中の撹拌子の使用が原因であり得る。粒子の凝集が、PLM分析において観察された。TG分析は、材料が無水であることを確証した。DT及びDSC分析は、約181℃の融点を特定し、これは、一次スクリーニングのデータと一致していた。材料は、DVSにより、わずかに吸湿性であることが判明し、90%RHで約0.6%の質量増加があった。形態変化又は水和物形成の証拠は、XRPDポストDVS分析では認められなかった。収集したH NMRスペクトルは、得られた構造に予測どおりの結合性を示した。およそ1当量のL-酒石酸が、H NMRスペクトルにおいて観察された。わずかな不純物が、H NMRスペクトルにおいて観察され、これは後に、L-酒石酸の投入材料中に特定された。HPLC分析は、99.0%の高純度(面積%による)を確証し、遊離塩基投入材料からの純度のわずかな上昇を示した。
【0158】
実施例6 - 1週間の安定性試験
1週間の安定性試験を、遊離塩基(実施例1)、リン酸塩形態1(実施例3)及びL-酒石酸塩形態1(実施例5)の各塩について、以下の手順を使用して行った。
・およそ20mgの各形態を、3×2mLガラスバイアル中に秤量した。
・各形態につき1つのバイアルを、以下の条件下で1週間貯蔵した。
1.周囲温度、光及び湿気(非密封バイアル)
2.40℃/75%RH(非密封バイアル)
3.80℃(密封バイアル)
・試料を1週間後に回収し、観察を行った。
・固体をXRPD及びHPLCにより分析した。
【0159】
1週間の安定性試験中、リン酸塩形態1及びL-酒石酸塩形態1の各塩には、XRPDにより、形態の変化が特定されなかった。HPLC分析により、当該塩試料において純度における有意な変化はいずれも特定されなかった。
【0160】
40℃/75%RH及び80℃で貯蔵された遊離塩基試料は、形態又は純度に変化を示さなかった。追加のピークが、周囲条件下で貯蔵された遊離塩基試料のXRPDディフラクトグラムに観察され、これは、形態の変化又は分解の可能性を示すものであった。2週間後に回収された追加のXRPDパターンは、回折パターンにおけるさらなる変化を示した。HPLC分析は、純度において有意な変化を何ら示さなかった。データは、遊離塩基が、周囲光下で不安定であり得るが、それ以外では温熱条件下で安定であり得ることを示す。
【0161】
実施例7 - 塩の不均化試験及び水和の試験
リン酸塩形態1及びL-酒石酸塩形態1の各塩の、脱イオン水中での塩の不均化の可能性、及び水和物形成の可能性を評価するため、以下の実験を、様々な水分活性を有する溶媒/水混合物を使用して行った。
【0162】
以下の手順を塩の不均化試験中に使用した。
・およそ20mgのリン酸塩形態1(実施例3)及びL-酒石酸塩形態1(実施例5)を、2mLガラスバイアル中に秤量した。
・脱イオン水を、各試料に100μLの分割量で、移動スラリーが観察されるまで添加した。
・スラリーを周囲温度で約24時間撹拌した。
・スラリーを回収し、遠心分離によって濾過した。
・単離された固体を、XRPDにより分析した。
・母液のpHを記録した。
【0163】
以下の手順を、水和の試験中に使用した。
・およそ20mgのリン酸塩形態1(実施例3)及びL-酒石酸塩形態1(実施例5)を、2mLガラスバイアル中に秤量した。
・選択されたメタノール/脱イオン水混合物(表5を参照)を、100μLの分割量で、各試料に、移動スラリーが観察されるまで添加した。
・スラリーを周囲温度で約24時間撹拌した。
・スラリーを回収し、遠心分離によって濾過した。
・単離された固体を、XRPDにより分析した。
・母液のpHを記録した。
【0164】
【表9】
【0165】
以下の結果が、リン酸塩形態1(実施例3)及びL-酒石酸塩形態1(実施例5)の各塩の、塩の不均化試験中に得られた。
・塩の不均化は、塩の試料中に観察されなかった。
・XRPDパターンの変化は、水中にスラリー化したリン酸塩パターン1の材料中に観察されなかった。
・XRPDパターンの変化は、水中にスラリー化したL-酒石酸塩パターン1の材料中に観察されなかった。
【0166】
以下の結果が、リン酸塩形態1(実施例3)及びL-酒石酸塩形態1(実施例5)の各塩の水和の試験中に得られた。
・水和物形成は、溶媒/水混合物中の塩の試料中に観察されなかった。
・XRPDパターンの変化は、KNX-100リン酸塩パターン1の試料中に観察されなかった。
・XRPDパターンの変化は、KNX-100 L-酒石酸塩パターン1の試料中に観察されなかった。
【0167】
水和物形成又は塩の不均化の証拠は、リン酸塩形態1及びL-酒石酸塩において観察されなかった。
【0168】
実施例8 - 熱力学溶解度評価
遊離塩基(実施例1)、リン酸塩形態1(実施例3)及びL-酒石酸塩形態1(実施例5)の熱力学溶解度を、以下の手順に従って、pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液中で評価した。
・およそ30mgの各形態を、2mLガラスバイアル中に秤量した。
・100μLの緩衝溶液を、部分的分離が観察されるまで各バイアルに添加した。
・観察されたスラリーを、周囲温度で約24時間撹拌した。
・試料を回収し、観察を記録した。
・試料を、遠心分離により濾過した。
・母液のpHを記録した。
・母液の濃度を、HPLCにより記録した。
【0169】
以下の結果(表6にまとめられている)が、遊離塩基(実施例1)、リン酸塩形態1(実施例3)及びL-酒石酸塩形態1(実施例5)の熱力学溶解度評価中に得られた。
・HPLC分析は、pH7.4のPBS緩衝液中遊離塩基について、0.3mg/mLの溶解度を特定した。
・HPLC分析は、pH7.4のPBS緩衝液中リン酸塩形態1の塩について、7.4mg/mLの溶解度を特定した。
・HPLC分析は、pH7.4のPBS緩衝液中L-酒石酸塩形態1の塩について、6.3mg/mLの溶解度を特定した。
【0170】
【表10】
【0171】
熱力学溶解度のスクリーニング中、KNX-100遊離塩基は、pH7.4のPBS緩衝液中で溶解度が0.3mg/mLであり、最低溶解度を有することが分かった。これより高い溶解度は、塩形態において特定された。KNX-100 L-酒石酸塩形態1は、6.3mg/mLの溶解度を有し、KNX-100リン酸塩パターン1は、7.4mg/mLという最高溶解度を有することが分かった。
【0172】
実施例9 - 本発明の化合物のリン酸塩形態1及びジヒドロクルリド(dihydrochlride)塩の薬物動態学的性質
この実施例は、雄スプラーグ・ドーリーラットにおける薬物動態学的実験を説明する。この実施例は、本発明の化合物(CMPD1)のリン酸塩形態1としての経口投与が、薬物の投与に使用されるのが生理食塩水であろうとmethocelビヒクルであろうと、二塩酸塩形態で投与された本発明の化合物と同等の曝露プロファイルをもたらすことを示す。
【0173】
方法
N=3のラットを4条件の各々で試験した。
(1)生理食塩水中2HCL塩
(2)methocel中2HCL塩
(3)生理食塩水中リン酸塩形態1
(4)methocel中リン酸塩形態1
【0174】
投与の日に、固体化合物を、生理食塩水(0.9%)又はMilli-Q水中0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel E3 Premium LV)のいずれかに溶解した。次いで、製剤を十分にボルテックスして、無色溶液を生成した。
【0175】
水を自由に摂れるようにして終夜絶食させたラットに、ラット用の用量の種々の形態の本発明の化合物を、強制経口投与(PO)により、3ml/kgの用量体積及び5mg/kg遊離塩基当量の用量で投与した。投与から4時間後に給餌を復活させた。投与から24時間後までに動脈血の試料を採取した。採取後、試料を遠心分離し、血漿を除去し、-80℃で凍結貯蔵した後で、LC-MSにより分析した。尿試料を、投与の前、0~4時間後、4~7時間後及び7~24時間後に採取し、抽出後にLC-MSにより分析した。
【0176】
結果
有害反応又は化合物に関連する副作用は、投与後24時間のサンプリング期間中、いずれのラットにおいても観察されなかった。
【0177】
各製剤中の二塩酸塩及びリン酸塩形態1の経口投与後の、時間に対する本発明の化合物の平均血漿濃度のプロファイルが図15に示され、本発明の化合物の平均曝露パラメーターが表7にまとめられている。
【0178】
【表11】
【0179】
本発明の化合物の時間に対する血漿濃度のプロファイルは、4処置群全てについて極めて類似していた。これは、用量を基準に正規化したCmax値及びAUC0-inf値の類似において反映されており、塩形態も製剤ビヒクルも、対象の本発明の化合物への曝露に実質的な影響を及ぼさなかったことを示唆している。
【0180】

実施例10 - 本発明の化合物の二塩酸塩と比較した際の、リン酸塩形態1の生物学的有効性
この実施例は、オピオイド離脱(オキシコドン投与後のナロキソン誘発性離脱)のC57BL/6マウスモデルにおける実験、及び離脱症状を処置するために同じ遊離塩基当量の用量で投与された2つの異なる塩形態の本発明の化合物の可能性を説明する。この実験は、以前に記載された本発明の化合物の形態の場合と実質的に類似の生物学的活性が、リン酸塩形態1について実現されることを確証する。
【0181】
実験10.1:二塩酸塩(CMPD1-2HCL)としての、及びリン酸塩形態1(CMPD1-PO4)としての本発明の化合物の、ナロキソン誘発性オキシコドン離脱に対する効果を評価すること
成体雄C57BL/6マウスの2つのコホートについて実験し、7.3mg/kg遊離塩基当量(FBE)のIPの、二塩酸塩形態(CMPD1-2HCL)及びリン酸塩形態1(CMPD1-PO4)の本発明の化合物の、ナロキソン誘発性離脱により引き起こされる跳躍に対する効果を評価した。
【0182】
第1のコホートのマウス(N=30)を以下の条件に分けた。
(1)ビヒクル、0mg/kg(n=10)、
(2)オキシコドン、2HCL塩形態の本発明の化合物FBE 0mg/kg(n=10)、
(3)オキシコドン、2HCL塩形態の本発明の化合物FBE 7.3mg/kg(n=10)。
【0183】
第2のコホートのマウス(N=24)を以下の条件に分けた。
(1)ビヒクル、0mg/kg(n=8)、
(2)オキシコドン、PO4塩形態の本発明の化合物FBE 0mg/kg(n=8)、
(3)オキシコドン、PO4塩形態の本発明の化合物FBE 7.3mg/kg(n=8)。
【0184】
オキシコドン条件のマウスに、表8に記載されたスケジュール及び用量に従って、オキシコドンのi.p.注射を5日間投与した。午前の投与と午後の投与は7時間空けた。ビヒクル条件のマウスに、オキシコドンではなくビヒクル生理食塩水の注射を投与した。5日目の午前の注射から1時間45分後、マウスに本発明の化合物のi.p.投与を施した。15分後、マウスに10mg/kgナロキソン(オキシコドン群)又は生理食塩水(ビヒクル群)のi.p.注射を投与し、速やかに試験に入った。
【0185】
【表12】
【0186】
試験には、マウスを個々に20(長さ)×20(幅)×30(高さ)cmの領域に30分間入れることを含めた。セッションを、サイドビュー高速度(120fps)高解像度(4K)カメラによってキャプチャーした。跳躍の回数は、条件を盲検化された熟練実験者により、ビデオからスコア化された。
【0187】
データを、SPSSにより、一元配置ANOVA及び計画対比を使用して分析した。
【0188】
跳躍
跳躍のデータは、図16に示されている。コホート1のマウスのデータは、四角形記号で示され、コホート2のマウスのデータは、円形記号で示されている。
【0189】
跳躍の全体的なANOVA評価は、有意であった[F3,50=21.52、p<0.0001]。計画対比により、オキシコドン離脱状態にあるマウスは、試験セッション中、跳躍する回数が有意に多いことが明らかになった[VEH_VEH vs OXY_VEH、p<0.0001]。
【0190】
7.3mg/kg FBEの本発明の化合物は、リン酸塩形態(CMPD1-PO4)及び2HCl塩形態(CMPD1-2HCL)の両方において、試験した全ての用量で、オキシコドン離脱により引き起こされる跳躍を有意に阻害した[OXY_VEH vs:OXY_CMPD1-PO4、p<0.01;OXY_CMPD1-2HCL、p<0.001]。さらに、2つの塩形態のFBEの投与後の結果は、離脱により引き起こされる跳躍において互いに有意差はなかった[OXY_CMPD1-PO4 vs OXY_2HCL、p=0.901](図16)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】