(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】コンディショニングチャンバデュアルインターフェース流体システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515389
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 NL2021050540
(87)【国際公開番号】W WO2022055345
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595115802
【氏名又は名称】ネーデルランセ オルハニサチエ フォール トゥーヘパスト-ナツールウェーテンシャッペルック オンデルズク テーエヌオー
【氏名又は名称原語表記】Nederlandse Organisatie voor toegepast-natuurwetenschappelijk onderzoek TNO
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドンケルス、ヨアンネ マリスカ
(72)【発明者】
【氏名】エスラミ アミラバジ、ホセイン
(72)【発明者】
【氏名】ストリークストラ、エフェリーネ ユリア
(72)【発明者】
【氏名】バウハウス、ヨセ ヨハン ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】スフーレン、フランク ヘンリ ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】オッセンドレイフェル、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ステーフ、エフィータ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029BB20
4B029FA15
4B029GB04
4B029GB09
(57)【要約】
膜(T)を調査するためのシステム(100)は、液体容器を収容する封止チャンバ(10)を備える。液体容器(11)は、封止チャンバ(10)内の制御された雰囲気(10a)と連通する液体媒体(M1)を保持するように構成される。フローセル(30)は、封止チャンバ(10)の外側に配置され、組織によって分離された流路(31,32)を備える。一組の液体ダクト(L13、L31)は流路(31)のうちの1つに接続されており、液体媒体(M1)を液体容器(11)から、封止チャンバ(10)のバリア(10b、10t)を介して、流路(31)の流路(30)への入口を通って、流路(30)から流路(31)を出る液体媒体(M1’)の少なくとも一部を流路(30)から液体容器(11)へと戻すように構成さ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜(T)を調査するためのシステム(100)であって、
第1の封止チャンバ(10)であって、前記第1の封止チャンバ(10)の内部に第1の制御された雰囲気(10a)を維持するために、前記第1の封止チャンバ(10)の内部を周囲環境(E)から封止するように構成された第1の障壁(10b,10t)を有する、第1の封止チャンバ(10)と、
前記第1の封止チャンバ(10)の内部に収容された第1の液体容器(11)であって、前記第1の液体容器(11)は前記第1の封止チャンバ(10)の内部で前記第1の制御された雰囲気(10a)と開放連通している第1の液体媒体(M1)を保持するように構成されている、第1の液体容器(11)と、
前記第1の封止チャンバ(10)の外側に配置されたフローセル(30)であって、前記フローセル(30)は、第1の流路(31)と、第2の流路(32)と、前記流路(31,32)の間の開口部の上に掛け渡された前記膜(T)を保持するように構成されたクランプ構造(33)とを備え、前記膜(T)が前記開口部を挟んで前記流路(31,32)を通ってそれぞれの流れを分離するように構成されている、フローセル(30)と、
前記第1の流路(31)に接続され、前記第1の液体媒体(M1)を前記第1の液体容器(11)から運び、前記第1の障壁(10b,10t)を通って前記第1の流路(31)の前記フローセル(30)への入口まで前記第1の液体媒体(M1’)を運び、前記第1の流路(31)から出る前記第1の液体媒体(M1’)の少なくとも一部を前記フローセル(30)から前記第1の液体容器(11)へと運び戻すように構成された、第1の組の液体ダクト(L13,L31)と、
前記第1の流路(31)と前記第1の封止チャンバ(10)との間の前記第1の組の液体ダクト(L13,L31)に接続され、第1の流れ分配器(15)の入口ポート(15a)において、前記第1の液体媒体(M1’)の流入流を、前記第1の流れ分配器(15)のそれぞれの出口ポート(15b)におけるそれぞれの出口流に選択的に導くように構成された、第1の流れ分配器(15)と、
を備え、
前記出口ポート(15b)の少なくとも1つは、前記第1の液体媒体(M1’)の少なくとも一部を前記第1の液体容器(11)に戻すように方向付けるための前記第1の障壁(10b,10t)を通して液体ダクトに接続され、
前記第1の封止チャンバ(10)はさらに、前記第1の封止チャンバ(10)の内部の前記第1の制御された雰囲気(10a)に配置され、前記第1の液体容器(11)とは別個の、前記第1の液体媒体(M1)の液体試料を受け取って保持するように構成された1つまたは複数の試料容器(12)であって、前記第1の流れ分配器(15)の前記出口ポート(15b)の少なくとも1つが、前記第1の液体媒体(M1’)の少なくとも一部を1つまたは前記複数の試料容器(12)のそれぞれの試料容器内に導くための前記第1の障壁(10b,10t)を通る液体ダクトに接続される、1つまたは複数の試料容器(12)を含む、
システム。
【請求項2】
前記第1の封止チャンバ(10)は5リットル未満の容量を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第2の液体媒体(M2)を保持するように構成された第2の液体容器(21)と、
前記第2の流路(32)に接続され、前記第2の液体容器(12)から前記第2の流路(33)の前記フローセル(30)への入口まで前記第2の液体媒体(M2)を運ぶように構成された第2の組の液体ダクト(L23,L32)と、
を備え、
前記第2の組の液体ダクト(L23,L32)は、前記第2の流路(32)を出る前記第2の液体媒体(M2’)の少なくとも一部を前記フローセル(30)から前記第2の液体容器(21)に戻すようにさらに構成される、
請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
第2の封止チャンバ(20)であって、前記第2の封止チャンバ(20)の内部に第2制御された雰囲気(20a)を維持するための前記周囲環境(E)から前記第2の封止チャンバ(20)の内部を封止するように構成された第2バリアを含む、第2の封止チャンバ(20)を備え、
第2の液体容器(21)は前記第2の封止チャンバ(20)の内部に収容され、
前記第2の液体容器(21)は第2の液体媒体(M2)を前記第2の封止チャンバ(20)の内部において第2制御雰囲気(20a)に開放連通するように保持するように構成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の液体容器(11)から前記第1の流路(31)を通って前記第1の液体容器(11)に戻る前記第1の組の液体ダクト(L13,L31)を通る第1の流路は第1の経路長を有し、
前記第2の液体容器(21)から前記第2の流路(32)を通って前記第2の液体容器(21)に戻る第2の組の液体ダクト(L23,L32)を通る前記第2の流路は第2の経路長を有し、
前記第1および第2の経路長は、本質的に同じである、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の組の液体ダクトおよび/または第2の組の液体ダクトの経路に配置され、前記フローセル(30)の前記流路(31,32)のそれぞれを通るそれぞれの流れを制御するように構成された蠕動ポンプ(40)を備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の封止チャンバ(10)の内部の前記第1の制御された雰囲気(10a)の制御された圧力を前記周囲環境(E)の圧力と同じに維持するように構成された圧力制御システム(16)を備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の障壁(10b,10t)を通り、前記第1の封止チャンバ(10)の内部の第1の制御された雰囲気(10a)を確立し及び/又は維持するために、大気制御装置を前記第1の封止チャンバ(10)に接続するように構成されている、
大気制御弁(13)を備える、
請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の封止チャンバ(10)の内部に前記第1の制御された雰囲気(10a)を確立および/または維持するように構成された大気コントローラを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
大気制御装置を大気制御弁(13)に接続すると、前記大気制御弁(13)は前記大気制御装置によって前記第1の制御された雰囲気(10a)を最初に確立するために、前記第1の障壁(10b、10t)を通して交換ダクトを開くように構成される。
請求項8または請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記大気制御装置を前記大気制御弁(13)から切り離すと、前記大気制御弁(13)は前記大気制御装置の不在下で前記第1の制御された雰囲気(10a)を維持するための前記交換ダクトを閉じるように構成される。
請求項10に記載にシステム。
【請求項12】
前記第1の液体容器(11)内の前記第1の液体媒体(M1)中の酸素の濃度を測定するように構成されたセンサ(18)と、
測定された濃度が閾値を上回ることに基づいて、前記第1の封止チャンバ(10)の内部の嫌気性空気を供給および/または補充するように構成された大気再供給ユニット(17)を備える、
請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の流れ分配器(15)のそれぞれの出口ポート(15b)に接続され、前記第1の液体媒体(M1’)の少なくとも一部を選択的に受け入れるように構成された第1の廃棄物容器(W1)を備え、
前記第1の廃棄物容器(W1)は前記第1の封止チャンバ(10)の外側に配置される、
請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
第1の封止チャンバ(10)の内部の第1の液体容器(11)内に第1の液体媒体(M1)を提供すること、
第1の組の液体ダクト(L13,L31)を介して接続されたフローセル(30)内に膜(T)を提供し、前記フローセルの第1の流路(31)を介して前記第1の液体媒体(M1)を再循環させること、
前記第1の封止チャンバ(10)の内部の第1の制御された雰囲気(10a)を確立すること、
前記第1の液体媒体(M1)中のガスが前記第1の制御された雰囲気(10a)と交換するのを待つこと、
前記第1の液体媒体(M1)が、前記第1の組の液体ダクト(L13、L31)を介して前記フローセル(30)の前記第1の流路(31)を通って流れるようにすること、
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステムの使用。
【請求項15】
前記第1の制御された雰囲気(10a)が、大気制御装置を前記第1の封止チャンバ(10)の大気制御弁(13)に接続することによって確立され、
前記大気制御装置が前記第1の制御された雰囲気(10a)を確立した後、前記第1の液体媒体(M1)を前記フローセル(30)に流しながら、前記第1の封止チャンバ(10)から切り離される、
請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料膜を調査するためのシステム、およびこのシステムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、(上皮)バリア、(新鮮な)組織外植片、細胞層、足場、または他の膜などの様々なタイプの生物学的膜および非生物学的膜を調査するために使用することができる。例えば、組織外植片は、細胞単層もしくは二重層、またはチップに注入された細胞の懸濁液と区別することができる異なる細胞型を含み得る。マイクロ流体チップ内に配置されたバリアは「バリアオンチップ」、例えば、「ガットオンチップ」、「腸オンチップ」、「肺オンチップ」、「皮膚オンチップ」等とも称され得る。例えば、「バリヤーオンチップ」は第1のチャネルを通って流れるある種の化合物(例えば、膜の内腔/頂端側を模倣する)がバリヤーを通過し、最終的に第2のチャネルを通過する(例えば、膜の血液/側底側を模倣する)条件および程度を研究することを可能にすることができる。いくつかの実装形態では、一方のチャネルを通る嫌気性液体流を有する一方で、他方のチャネルを通る好気性液体流を有することによって、例えば腸または肺における特定の条件をシミュレートすることが望ましい場合がある。このようにして、上皮組織の一方の側の酸素含有量は高く、他方の側の酸素含有量は低い。
【0003】
背景として、国際公開第2017/131839号パンフレットは多様な微生物叢を培養することを目的とし、嫌気性チャンバと、嫌気性チャンバ内に取り外し可能に挿入された少なくとも1つのマイクロ流体デバイスとを含む低酸素システムを記載している。マイクロ流体デバイスは第1のレベルの酸素が維持される第1のマイクロチャネルと、第2のレベルの酸素が維持される第2のマイクロチャネルとを含み、第2のレベルの酸素は、第1のレベルの酸素よりも高い酸素濃度を有する。マイクロ流体デバイスは第1のマイクロチャネルと第2のマイクロチャネルとの間の界面領域に位置する膜をさらに含み、膜は、酸素が第2のマイクロチャネルから第1のマイクロチャネルに流れて、第1のマイクロチャネル内に酸素勾配を形成する複数の細孔をさらに有する。システムは、第1のマイクロチャネル内に提供され、酸素感受性嫌気性細菌を含む培養システムをさらに含む。
【0004】
既知のシステムをさらに改善する、例えば、それらをよりアクセス可能にし、長期間にわたって動作可能にする必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
従来技術のシステムの1つの問題はシステムを監視し、より長い期間にわたって高品質のサンプルを採取することが困難であり得ることである。例えば、従来技術のシステムは、一定の嫌気性(窒素)ガス流を必要とする場合がある。また、例えば酸素による試料の分解を回避するために、システム全体を嫌気性グローブボックスに入れて嫌気性サンプリングを行う必要がある。本発明者らは制御されたガス組成物を一定に再供給することなく、システムがより長い時間運転される場合であっても、試料を採取し、制御された、例えば嫌気性条件下で保存することができるシステムを設計した。
【0006】
本開示のいくつかの態様は膜、例えば、組織を調査するためのシステムとして具体化することができる。システムは、本明細書ではシーリングチャンバ(封止チャンバ、sealing chamber)とも呼ばれるコンディショニングチャンバ(conditioning chamber)を備える。チャンバはバリア、例えば、嫌気性ボックスまたは他の気密容器を形成する壁および/または蓋を備える。バリアは、チャンバの内部を周囲環境から(気密に)封止するように構成される。このようにして、チャンバ内の制御された、例えば嫌気性の雰囲気を維持することができる。液体容器はチャンバ内に配置することができ、例えば、チャンバ内に配置され、ガスの自由な交換を可能にするビーカーまたは他の開放容器である。したがって、液体容器は、チャンバ内の制御された雰囲気と開いた連通状態にある液体媒体を保持するように構成される。フローセル(flow cell)、例えばマイクロ流体チップは、第1の封止チャンバの外側に配置される。フローセルは、典型的には流路間の開口部にまたがる組織を保持するように構成される。言い換えれば、流路を通るそれぞれの流れは、それらの間の開口にまたがる組織によって(排他的に)分離される。第1の組の液体ダクト、例えば、チューブは、流路のうちの1つに設定される。ダクトは第1の液体容器から、第1のバリア(障壁)、例えば、ボックスの蓋またはカバーを通って(シールを維持しながら)、フローセルへの第1の流路の入口まで、第1の液体媒体を運ぶように構成される。したがって、組織の第1の側に沿って第1の流路を通る第1の液体媒体の第1の流れを達成することができる。フローセルから第1の流路を出る第1の液体媒体の少なくとも一部は例えば、第1の封止チャンバの内側を含む同じ壁または他の壁を通して、第1の液体容器に戻される。
【0007】
封止チャンバの外側にフローセルを設けることによって、チャンバおよび/または膜に容易にアクセスすることができる。システムの一部のみを封止チャンバ内に保持することによって、チャンバは比較的小さくすることができ、例えば、チャンバ内の雰囲気をより容易に制御することができる。フローセルに加えて、大気の測定および制御のための他の装置もチャンバの外部に保持され、この装置のアクセス性をさらに改善し、サイズ要件を低減することができる。このようにして、チャンバは、全ての構成要素、例えば大きなグローブボックスを収容する必要があるシステムと比較して、比較的小さくすることができる。例えば、封止チャンバは、一定のフラッシングなしにその雰囲気を維持することができる閉じたボックスによって形成することができる。液体容器を封止チャンバ内で開いた状態に保つことによって、これは、液体媒体中に溶解したガスとの第1の制御された雰囲気を形成するガスの自由な交換を可能にすることができる。例えば、制御された雰囲気が嫌気性である場合、これは、その中に溶解した任意の酸素を制御された雰囲気に放出することによって、液体媒体を同様に嫌気性にするかまたは嫌気性のままにすることができる。さらに、液体媒体を容器に再循環させることによって、制御された雰囲気と絶えず交換することができる限られた媒体供給しか必要とされない。また、封止チャンバ内に試料ホルダを設けることによって、これらを使用して、同じ制御された雰囲気下で液体媒体の試料を受け取り、保持することができる。
【0008】
本開示の他のまたはさらなる態様は、システムを使用する方法として具現化することができる。いくつかの実施形態では、使用がチャンバ内部の液体容器内に液体媒体を提供することと、液体ダクトを介して接続された細胞内に組織を提供して、細胞の流路のうちの1つを介して液体媒体を再循環させることと、チャンバ内部の制御された雰囲気を確立することと、液体媒体中のガスが制御された雰囲気と交換することを可能にするのを待機することと、液体媒体を流路を介して液体ダクトを介して流動させることとを含む。好ましくは、制御された雰囲気が大気コントローラを第1の封止チャンバのバルブに接続することによって確立される。有利には、大気制御装置が制御された大気を確立した後で、第1の液体媒体をフローセルに流しながら、切り離すことができる。したがって、例えば窒素流による大気の一定のリフレッシュは必要とされない。
【0009】
本開示の装置、システム、および方法のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面からよりよく理解されるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、膜を調査するためのシステムを図示する。
【
図2A】
図2Aは、システムのプロトタイプセットアップの写真を示す。
【
図2B】
図2Bは、システムのプロトタイプセットアップの写真を示す。
【
図3A】
図3Aは、組織を配置するための好ましいフローセルを示す。
【
図3B】
図Bは、組織を配置するための好ましいフローセルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特定の実施形態を説明するために使用される用語は、本発明を限定するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は文脈が明らかにそわないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数の任意のおよびすべての組合せを含む。用語「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は述べられた特徴の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴の存在または追加を排除しないことが理解されるのであろう。方法の特定のステップが別のステップの後と呼ばれる場合、別段の指定がない限り、特定のステップを実施する前に、前記他のステップに直接従うことができ、または1つ以上の中間ステップを実施することができることがさらに理解されるのであろう。同様に、構造または構成要素間の接続が記載される場合、この接続は特に明記しない限り、直接的に、または中間構造または構成要素を介して確立され得ることが理解されよう。
【0012】
いくつかの実施形態では、本教示を使用して、潅流システム(perfusion system)のためのデュアルインターフェースを作り出すことを可能にするガス制御チャンバを提供することができる。このチャンバは例えば、腸の生理学的状況を再現するために使用することができ、腸の生理学的状況は、血液に面する側において、管腔、食品および細菌を含有する酸素のレベルが低く、または完全に嫌気的なレベルである。しかしながら、ガス制御チャンバ内のガス混合物は、任意の(マイクロ流体)潅流システム内に様々な界面を形成するように変更することができる。いくつかのセットアップ(設定)では、チャンバが微小流体チップにチューブで接続された嫌気性媒体を含む。チップは、その管腔側で嫌気性媒体(ガス制御チャンバから来る)に面するエクスビボ(ex vivo)腸組織、およびその血液に面する側で通常の好気性媒体(通常の実験室環境に置かれたリザーバから来る)を保持する。蠕動(peristaltic)ポンプでは、嫌気性および好気性媒体の両方がチップおよびリザーバを通って再循環する。異なる収集管上で再循環媒体を分割することができるフローディストリビュータ、セレクタ、または他のフローコントローラ(「スプリッタ」)を使用することにより、サンプルを収集するために嫌気性グローブボックス内のシステムを切り離して開く必要がなく、または酸素と接触する好気性環境内で嫌気性サンプルを収集する必要がない。チャンバはまた、例えば、室温から37度のインキュベータ内にガス制御チャンバを配置するときに生じ得る圧力差に対処するために、圧力センサおよび圧力レギュレータ、例えば、バルーンまたは尿バッグなどの可撓性リザーバへの接続を有することができる。別の接続部を介して、必要に応じて新鮮な嫌気性空気を注入することができる。さらに、酸素センサはチャンバ内の酸素レベルを監視するために、チャンバに一体化されるか、または接続されることができるが、媒体リザーバ内も正確に監視することができる。この酸素センサはまた、マイクロ流体回路内の他の場所に配置することもできる。
【0013】
一方向潅流の代わりに再循環を使用することは、より費用効果的であり得る。窒素での連続的なフラッシングの必要はない。さらに、ガス制御チャンバを完全に閉じることができるので、ガス組成物の注入を制御する機械を用いて、任意のガス混合物をチャンバに提供することができる。ガス制御チャンバ内の予め調整された流体を外界に接続するために、複数の可能性を提供することができる。試料を採取するために、システムを嫌気性グローブボックスに運ぶ必要はない。例えば、本明細書に記載のシステムは嫌気性グローブボックスに持ち込むことなく、または好気性環境でサンプルを採取し、したがって、それらを酸素で「汚染」することなく、セットアップ自体でサンプルを嫌気的に採取する可能性を提供することができる。システムはまた、例えば、チャンバ内の酸素レベルおよびチャンバの異なる区画(例えば、媒体リザーバ)の制御された監視を提供することができる。システムはまた、ガス制御チャンバの内外の圧力差を感知し、調節する方法を提供することができる
【0014】
本発明は、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下でより完全に説明される。図面において、システム、構成要素、層、および領域の絶対的および相対的なサイズは、明確にするために誇張されている場合がある。実施形態は、場合によっては理想化された本発明の実施形態および中間構造の概略図および/または断面図を参照して説明することができる。本明細書および図面において、同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。相対的な用語およびその派生語は、そのとき記載されているような、または議論中の図面に示されているような配向を指すと解釈されるべきである。これらの相対的な用語は説明の便宜上のものであり、特に明記しない限り、システムが特定の方向に構築または操作されることを必要としない。
【0015】
図1は、膜Tを調査するためのシステム100を示す。
【0016】
いくつかの実施形態では、システムが嫌気性ボックスまたは他の気密容器を形成する第1のバリア10b、10t、例えば壁および/または蓋を備える第1の封止チャンバ10を備える。好ましくは、第1の封止チャンバ10が第1の封止チャンバ10の内部を周囲環境Eから(気密に)密閉するように構成される。このようにして、第1の制御された雰囲気10aを第1の封止チャンバ10の内部に維持することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1の液体容器11が第1の封止チャンバ10の内部に収容され、例えば、チャンバ内に配置され、ガスの自由な交換を可能にするビーカーまたは他の開放容器である。例えば、第1液体容器11は、第1封止チャンバ10内において、第1被制御雰囲気10aに連通した第1液体媒体M1を保持する。
【0018】
いくつかの実施形態では、フローセル30、例えば、マイクロ流体セルが第1の封止チャンバ10の外側に配置される。好ましくは、フローセル30が少なくとも第1の流路31および第2の流路32を備える。一実施形態では、クランプ構造33または他のインターフェースが流路31、32の間の開口部にまたがる膜Tを保持するように構成される。したがって、流路31、32を通るそれぞれの流れは、それらの間の開口にまたがる膜Tによって分離される。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の組の液体ダクトL13、L31、例えばチューブが第1の流路31に接続される。例えば、液体ダクトは第1の液体媒体M1を第1の液体容器11から、第1の障壁10b、10t(シールを維持しながら)、例えばボックスの蓋またはカバーを通って、第1の流路31のフローセル30への入口まで運ぶように構成される。このようにして、ダクトは、膜Tの第1の側に沿って第1の流路31を通る第1の液体媒体M1の第1の流れを容易にすることができる。好ましい実施形態では、液体ダクトがフローセル30から第1の流路31を出る第1の液体媒体M1’の少なくとも一部を、例えば、第1の封止チャンバ10の内側を含む同じ壁10tまたは他の壁を通して、第1の液体容器11に戻すように構成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、システムが第2の液体媒体M2を保持するように構成された第2の液体容器21を備える。典型的には、第2の液体媒体M2が第1の液体媒体M1とは異なる組成を有する。例えば、第2の液体媒体M2は異なる(量の)溶質、例えば、酸素、または栄養素、医薬などの他の成分を有する。場合により、媒体自体は、例えば異なる溶媒によって形成されてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では第2の組の液体ダクトL23,L32が第2の流路32に接続され、第2の液体媒体M2を第2の液体容器12から第2の流路33の入口に運ぶように構成され、第2の液体媒体M2の第2の流れを、膜Tの第2の側に沿って第2の流路32を通す。好ましくは第2の組の液体ダクトL23,L32が第2の流路32を出る第2の液体媒体M2’の少なくとも一部を、フローセル30から第2の液体容器21に戻すようにさらに構成される。換言すれば、第2の液体媒体の少なくとも一部も再循環させることができる。あるいは、第1および/または第2の液体媒体の一部または全部がフローセル30を横断した後に廃棄することができる。
【0022】
例えば、図示のように、第1の組の液体ダクトL13,L31を通る第1の流路は第1の流路31を通って第1の流路11に戻る第1の流路長を有し、第2の組の液体ダクトL23,L32を通って第2の流路32を通って第2の液体容器21に戻る第2の流路長は、第2の流路長を有する。好ましい実施形態では、第1および第2の経路長が本質的に同じであり、例えば、10パーセント以内、好ましくは5パーセント以内、またはそれ以下、すなわち、実質的に同じである(測定許容範囲内)。同様の経路長(および同様のまたは同じ液体ダクト)を提供することによって、流れは、組織の両側で同様であり得る。これは、例えば、組織測定に影響を及ぼす可能性のある流れ間の圧力または他の差を防止し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、システムが液体ダクトの第1および/または第2の組の経路に配置されたポンプ40を備えるか、またはそれに結合される。例えば、ポンプ40は、フローセル30のそれぞれの流路31、32を通るそれぞれの流れを制御するように構成される。典型的な流れは、例えば、1時間当たり1~100ミリリットルに設定され得る。また、例えば、フローセル30および研究中の試料に応じて、他の流速を使用することもできる。いくつかの実施形態では、同じポンプが両方の組の液体ダクト内のそれぞれの流れを制御するために使用される。また、別個のポンプを使用することもできる。例えば、1つまたは複数のポンプを使用して、それぞれのチャネル31、32内の同じまたは異なる流量を設定することができる。いくつかの実施形態では例えば、図示のように、ポンプ40はそれぞれの液体容器11、12に戻るフローセル30のそれぞれの出口の後の流路内のそれぞれの液体ダクトL31、L32に沿って配置される。例えば、ポンプは、フローセル30とフロー分配器15、25(以下でさらに詳細に説明する)との間に配置される。あるいは、ポンプが他の場所、例えばフローセルの前の流路内のそれぞれの液体ダクトL13、L23に配置することもできる。好ましくは、ポンプがローラポンプとしても知られる蠕動ポンプである。例えば、流体は、それぞれの液体ダクトの少なくとも一部を形成する可撓性チューブ内に収容される。可撓性チューブは、ポンプケーシングの内部に取り付けることができる。円形ポンプケーシングでは、ロータの外周に取り付けられた多数の「ローラ」、「シュー」、「ワイパー」、または「ローブ」を有するロータを使用して、可撓性チューブを圧縮することができる。ロータが回転すると、圧縮下にあるチューブの一部が挟まれて閉じられ、これにより、ポンピングされる流体がチューブを通って移動するように強制される。加えて、カム流体の流れの通過がポンプに誘導された後、チューブがその自然状態に開くと、チューブは開く。典型的には、チューブを閉塞し、それらの間に流体の本体を捕捉する、2つ以上のローラーまたはワイパーが存在する。線形蠕動ポンプも使用することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、システムが第2の封止チャンバ20を備える。例えば、第2の封止チャンバ20は、第2の封止チャンバ20の内部を周囲環境Eから密閉するように構成された第2の障壁を備える。したがって、第2の封止チャンバ20の内部に第2の制御された雰囲気20aを維持することができる。他のまたはさらなる実施形態では、第2の液体容器21が第2の封止チャンバ20の内部に収容される。例えば、第2液体容器21は、第2封止チャンバ20内において、第2被制御雰囲気20aに連通した第2液体媒体M2を保持する。言い換えれば、システムは、類似または同一であり得る複数のシールチャンバを備え得る。例えば、フローセル30の各チャネル31、32は、それぞれの制御された雰囲気10a、20aと交換するそれぞれの液体媒体M1、M2を含むそれぞれの液体容器11、21を用いて、それぞれの封止チャンバ10、20に接続することができる。典型的には、各チャンバ内の雰囲気が異なる雰囲気を有するように制御される。例えば、第1の制御された雰囲気は嫌気性の比較的低い酸素含有量を有し、一方、第2の制御された雰囲気は、好気性の比較的高いまたは通常の酸素含有量であり得る。
【0025】
第2の液体容器21をそれぞれの封止チャンバ20内に封止する代わりに、第2の液体容器21または少なくともその封止を省略することができる。例えば、第2液体容器21は周囲環境Eと開放連通した状態を維持することができる。例えば、周囲環境Eが好気性である場合、環境の酸素を第2液体媒体M2と交換することによって、第2液体媒体M2を同様に好気性にすることができる。再循環流の有無にかかわらず、第2の液体媒体M2を保持する閉鎖された閉鎖容器も想定され得る。あるいはまたは加えて、第2の液体容器21は第1の液体容器11と同じ第1の封止チャンバ10内に収容されることも想定され得る。例えば、第1の液体媒体M1および第2の液体媒体M2の両方を、同じ第1の制御された雰囲気10aに曝露することができる。例えば、両方の液体M1、M2は同じ大気条件下に保たれるが、それらの、例えば、非気体含有量はこれらの条件とは無関係であり得る何らかの他の方法で異なり得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、システムが第1の流路31と第1の封止チャンバ10との間の第1の組の液体ダクトL13、L31に接続された第1の流れ分配器15または分割器/スプリッタを備える。好ましくは、第1の流れ分配器15が第1の流れ分配器15の入口ポート15aにおける第1の液体媒体M1’の流入流を、第1の流れ分配器15のそれぞれの出口ポート15bにおける1つまたは複数の出口流に選択的および/または制御可能に方向付けるように構成される。好ましい実施形態では、出口ポート15bの少なくとも1つは第1の液体媒体M1’の少なくとも一部を第1の液体容器11に戻すように方向付けるために、第1の障壁10b、10tを通って液体ダクトに接続される。例えば、それぞれの出口ポートには、それぞれの出口流を開閉するための1つ以上の制御可能な弁15vが設けられる。例えば、弁は、容器内へのダクトを形成するチューブ上の解放可能なクランプによって形成することができる。また、他のタイプの弁も想定され得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の封止チャンバ10が(第1の液体容器11とは別個の)第1の液体媒体M1の液体試料を受け入れて保持するように構成された1つまたは複数の試料容器12を含む。例えば、第1の流れ分配器15の出口ポート15bの少なくとも1つは、第1の液体媒体M1’の少なくとも一部を1つ以上の試料容器12のそれぞれの試料容器内に(選択的に)方向付けるために、第1の障壁10b、10tを通る液体ダクトに接続される。例えば、第1の流れ分配器15の出口15bにおけるそれぞれの弁15vは、第1の液体容器11内への、および/または試料容器12のうちの1つ以上への流れを制御するように動作させることができる。有利には、サンプル容器12が例えば、第1の流路31を通過した第1の液体媒体M1の流れから採取されたそれぞれのサンプルの劣化を防止することができる第1の制御された雰囲気10a内に保持することができる。複数の試料容器12a~12dを第1の封止チャンバ10の内部に設けることによって、第1の液体媒体M1の異なる試料を、例えば異なる時間に採取することができる。同様に、第2の液体媒体M2もサンプリングすることができる。例えば、第2の流れ分配器25が、第2の組の液体ダクトL23,L32に接続され、第2の液体媒体M2の流れを第2の液体容器21内および/または1つ以上の試料容器22内に選択的に方向付けるように構成される。試料容器22は所望の条件に応じて、第2封止チャンバ20内で第2液体容器21と共に封止されてもよいし、単に周囲環境Eに保持されてもよい。
【0028】
当然のことながら、それぞれのシールチャンバのバリアを通るダクトは周囲環境Eとの制御された雰囲気(バリアによってチャンバ内に収容される)内のガスの交換を防止するように構成される。言い換えれば、それぞれのダクトは、シールチャンバのそれぞれのバリアと気密接続を形成する。例えば、液体ダクトは周囲環境Eの漏れを防止しながら、ダクト内部の液体媒体が障壁を通過することを排他的に可能にするように構成される。また、以下に記載されるように、他のシールされたダクトを使用することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、システムが第1の封止チャンバ10内の第1の制御された雰囲気10aの制御された圧力を維持するように構成された圧力制御システム16を備える。好ましくは、圧力制御システム16が周囲環境Eと同じ圧力を第1のシールチャンバ10の内部に維持するように構成される。例えば、第1のシールチャンバ10の内部の第1の制御された雰囲気10aは第1のシールチャンバ10の周囲環境Eと同じまたは同様の圧力(例えば、バールまたはパスカルで測定される)、例えば、外気圧の±5%以内、好ましくは±2%以内、より好ましくは±1%以内、またはそれ未満に維持される。これは、チャンバ内に漏れる外部雰囲気を緩和することができ、またはその逆も同様であり、また、例えば、サンプル膜上の不均一な圧力を緩和することができる。圧力制御システムは比較的単純であることができ、例えば、気体を交換することなく環境から容器内部へ圧力を中継することができる(好ましくは、最小の弾性を有する)可撓性バリア表面を備えることができる。例えば、可撓性バッグは、ダクトを介して、封止チャンバ10の内部の制御された雰囲気10aと接続することができる。あるいは第1の封止チャンバの壁が任意の圧力差を補償するために自由に移動することができるが、制御された雰囲気10aを維持するためのガスには通さない可撓性シートによって形成されることも想定され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、システムが第1の障壁10b、10tを通る大気制御弁13を備え、第1のシール10の内部に第1の制御雰囲気10aを確立するために、大気コントローラ(図示せず)を第1のシール10に(着脱可能に)接続するように構成される。例えば、大気制御弁13は、大気制御装置を着脱可能に接続するためのスナップシャット接続またはねじ接続を備える。
【0031】
一実施形態では、大気制御装置を大気制御弁13に接続すると、大気制御弁13は大気制御装置によって第1の制御雰囲気10aを最初に確立するために、第1の障壁10b、10tを通して交換ダクトを開くように構成される。別のまたはさらなる実施形態では大気制御弁13から大気制御装置を切り離すと、大気制御弁13は大気制御装置がない場合に第1の制御雰囲気10aを維持するための交換ダクトを閉じるように構成される。
【0032】
いくつかの実施形態では、システムが第1の封止チャンバ10内に第1の制御雰囲気10aを確立および/または維持するように構成された大気コントローラを備える。そのような大気コントローラの例は「Anoxomat(登録商標)III」として市販されており、これは「Advanced Instruments」から購入することができる。例えば、コントローラはガス混合物を供給し、封止チャンバを形成するために使用することができる。例えば、「A-box」(「Kentron Microbiology」から購入可能)は、大気コントローラを接続するためにスナップショットカップリングと共に使用することができる。本発明者らは例えば、液体/気体ダクト、センサファイバ等の管に適合するように気密孔を有する適合された蓋を設計することによって、封止チャンバの現在の目的を果たすようにボックスを適合させた。例えば、チャンバは、チャンバの壁(蓋)を通る(標準的である)高圧接続に適合する複数の継手を有するように適合され得る。いくつかの実施形態では、第2の封止チャンバ20が同じまたは異なる制御された雰囲気20aを確立するために、同様のまたは他の雰囲気コントローラに接続され得る。代替的に、第2の封止チャンバ20は周囲環境Eと開いた状態で連通し続けることができ、または完全に省略することができる。
【0033】
原則として、第1の封止チャンバ10は、コントローラを切り離した後に雰囲気を維持するために十分に密封することができる。必要に応じて、大気は、同じコントローラまたは他の手段によって補充することができる。いくつかの実施形態では、システムが第1の封止チャンバ10内の第1の制御された雰囲気10aを供給および/または補充するように構成された大気(再)供給ユニット17を備える。例えば、大気供給ユニット17は、第1の封止チャンバ10に供給することができる制御された大気10aの供給を含むことができる。大気供給ユニット17は有利には圧力制御システム16と組み合わせることができ、その結果、余分なガスの供給は、好ましくは第1の封止チャンバ10内の圧力を変化させない。
【0034】
いくつかの実施形態では、システムが例えば、圧力および/または酸素を測定し、その読み出しを報告し、任意選択で、例えば、1つまたは複数のリザーバに結合されたフィードバックおよび制御のために、1つまたは複数のセンサと接続するように構成される。例えば、システムは、例えば第1の液体容器11内の第1の液体媒体M1を測定するように構成されたセンサ18を備える。例えば、センサは、第1の液体媒体M1中の酸素および/または他の物質の濃度を測定するように構成される。有利には、これは大気供給ユニット17と組み合わせることができ、例えば、測定に応答して第1の封止チャンバ10内に余分なガスを供給させることができる。例えば、第1の液体媒体M1の酸素含有量が高すぎることが測定された場合、大気供給ユニット17を使用して、窒素(酸素なし)を封止チャンバ10内に供給することができる。また、他のセンサまたはさらなるセンサを、同様の方法で設けることができる。例えば、圧力センサは、第1の制御された雰囲気10a内に保持された圧力感知素子を備えることができる。有利には、センサの大部分がシールチャンバ10の外側に配置することができ、例えば、(制御された雰囲気10aのシールを維持しながら)バリア10b、10tを通して測定ファイバまたは他のワイヤのみを提供することができる。
【0035】
また、他のまたはさらなる手段が、封止チャンバ内部の制御された大気を維持するために提供され得る。例えば、酸素結合または吸収材料をチャンバ内に提供して、嫌気性雰囲気を確立および/または維持することができる。理解されるように、このような手段は、チャンバの容積が比較的小さければ特に効果的であり得る。
【0036】
好ましい実施形態では、第1の封止チャンバ10が100リットル未満、50リットル未満、20リットル未満、10リットル未満、又は更には5リットル未満の容量(最大内部容積)を有する。チャンバ内部容積が小さいほど、制御された雰囲気を確立および/または維持することが容易になり得る。チャンバ内の内部容積の一部または大部分が、液体媒体および/または試料ホルダと共に液体容器によって取り込まれ得ることに留意されたい。したがって、制御されるべき実際の大気量は、さらに少なくなり得る。例えば、チャンバは、50センチメートル未満、30センチメートル未満、又は更には20センチメートル未満の最大内部寸法を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、システムが第1の流れ分配器15のそれぞれの出口ポート15bに接続され、第1の液体媒体M1’の少なくとも一部を選択的に受け入れるように構成された第1の廃棄物容器W1を備える。好ましくは、第1の廃棄物容器W1が第1の封止チャンバ10の外側に配置される。例えば、廃棄物容器は、再循環する必要がなく、廃棄することができる第1の液体媒体M1の初期または他の流れを捕捉するために使用することができる。例えば、初期流れは、第1の流路31および/または第1の組の液体ダクトL13、L31内に最初に存在し得る酸素または汚染物質を含有し得る。したがって、第1の廃棄物容器W1は好ましくは第1の封止チャンバ10の内部に保持されず、第1の制御された雰囲気10aを汚染し、かつ/または不必要な空間を占める可能性がある。同様に、第2の流れ分配器25も、周囲環境Eに保持することができる第2の廃棄物容器W2に接続することができる。任意選択で、同じ廃棄物容器を両方の流れに使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステム100が以下のように使用することができる。第1封止チャンバ10内の第1液体容器11には、第1液体媒体M1が設けられている。第1の組の液体ダクトL13、L31を介して接続された流れ30には、第1の液体媒体M1を流れの第1の流路31を介して再循環させるための膜Tが設けられている。第1の封止チャンバ10内の第1の制御雰囲気10aが確立され、第1の液体媒体M1中のガスを第1の制御雰囲気10aと交換させるための待機時間があり得る。この後、第1液体媒体M1は、第1組の液体ダクトL13、L31を介して、フローセル30の第1流路31を流れることができる。好ましくは、第1の制御雰囲気10aが大気制御装置を第1の封止チャンバ10の大気制御弁13に接続することによって確立される。例えば、大気制御装置は第1の制御雰囲気10aを確立した後、第1の液体媒体M1をフローセル30に流しながら、切り離される。いくつかの実施形態では第1の制御雰囲気10aが嫌気性であり、例えば、1パーセント未満、好ましくは1パーセントの半分未満、またはさらには1パーセントの10分の1未満、例えば、0.05%の酸素濃度を有する。一実施形態では、第1の液体媒体M1をフローセル30に流している間に、第1の液体媒体M1中の酸素の濃度が測定される。例えば、酸素の濃度が所定の閾値よりも高いことを測定すると、嫌気性空気のさらなる供給が第1の封止チャンバ10内に注入される。また、装置の他の使用も想定することができる。
【0039】
本明細書に記載のシステムは例えば、膜を通る物質の透過性を測定、試験、および/または分析するために使用することができる。例えば、膜は、(上皮)バリア、(新鮮である)組織外植片、細胞層、足場、または他の膜を含む。例えば、組織外植片は、細胞単層もしくは二重層、またはチップに注入された細胞の懸濁液と区別することができる異なる細胞型を含み得る。使用時には膜は流路31、32の間のキャビティ開口部に配置される。例えば、物質は流体流の少なくとも1つに、例えば異なる量で配置することができる。いくつかの実施形態では、第1および/または第2のリザーバ流中の物質のそれぞれの含有量を測定および/または監視して、膜を通る物質の交換を決定する。例えば、物質は、栄養成分、医薬などを含んでもよい。例えば、膜は組織試料、足場、例えば、細胞を有する3D構造、または他の膜、例えば、プラスチックもしくはポリエステルを含む。
【0040】
図2Aおよび2Bは、本明細書に記載のシステムのプロトタイプセットアップの写真を示す。
図2Aは、密閉された第1のチャンバ10と、開いた第2のチャンバ20とを示す。この場合、エクスビボ腸組織を含む2つのフローセル30は、それぞれのチューブおよび蠕動ポンプ40を介して接続される。
図2Bは、その下のボックスに密閉接続された蓋10tを含む第1のチャンバ10のさらなる詳細を示す。ガスバルブ13の他に、蓋は、そこを通るダクト及び繊維を可能にするためのいくつかのシール開口部を有する。例えば、図示されるような流れ分配器15は、チャンバ10内の多数の試料容器に接続される。試料ホルダの1つへのそれぞれの流れは、流体弁15vのそれぞれの1つを開くことによって選択することができる
【0041】
図3Aは、キャップ35によって閉じられたフローセル30(マイクロ流体デバイス)の斜視図を示す。一実施形態では例えば図示のように、フローセル30は少なくとも2つの流路31、32を形成するハウジングを有する。また、3つ以上のチャネルが想定され得る(図示せず)。図示の実施形態では、フローセル30は半透明であり、したがって、ハウジング38を通るチャネル31、32、ならびにチャネルの可能な内容が見える。これにより、キャップを開けることなく、ハウジング内部の流れを容易に見ることができる。また、他の、例えば不透明な材料を使用することができる。好ましくは、ハウジング38が例えば、プラスチックのような材料から本質的になる。好ましい実施形態では例えば、ここに示されるように、装置は3D印刷によって製造される。例えば、装置は、印刷可能な(硬化した)材料から作製される。また、他の製造方法および材料も想定することができる。
【0042】
一態様では、本開示が(試料)膜T、例えば組織を通る物質の透過性を分析するためのフローセル30を提供する。例えば、物質は、それぞれの流体流中に配置される。典型的には、フローセル30が流路31、32を有するハウジング38を備える。いくつかの実施形態では、第1の流路31が第1の入力コネクタ31aと第1の出力コネクタ31bとの間のハウジング38を通る第1の流体流を通過させるように構成される。他の又は更なる実施形態では、第2の流路12が第2の入力コネクタ32aと第2の出力コネクタ32bとの間でハウジング38を通る第2の流体流を通すように構成される。
【0043】
好ましい実施形態では、装置が第1の流路11を通って第2の流路12内に、外部からハウジング38内に延びるアクセスキャビティ(空洞)を備える。したがって、キャビティはキャビティ開口部33の上に膜Tを配置するために、ハウジング38の内側にアクセスするために使用され得る。最も好ましくは、キャビティ開口部33が流路31、32の重なり合う領域間に(排他的である)流体相互接続を形成する。好ましい実施形態では、アクセスキャビティがキャップ35によって開閉することができる。最も好ましくは、キャップ35がキャビティにアクセスし、例えば、膜Tを配置または置換するために、可逆的に除去され得る。例えば、キャップ35および/またはハウジングは、シールとハウジングとの間にゴムなどの弾性材料を含む。また、他の弾性構造を使用することができ、またはキャップをハウジングにねじ込むことができる。
【0044】
図3Bは、様々な構成要素を有するフローセル30の切り欠き/分解図を示す。好ましい実施形態では、フローセル30がクランプリング34を備える。一実施形態では例えば、図示のように、クランプリング34は接続構造を備える。例えば、接続部構造は、アクセスキャビティ内のハウジングの対応する接続部構造と係合するように構成される。したがって、クランプリング34は、試料膜Tをキャビティ開口部33の上の適所に保持するために使用することができる。典型的には、膜Tが使用時に、膜Tの両側の流路31、32を通って流れるそれぞれの流体に曝露される。好ましい実施形態では開口部は円形であるが、他の形状も想定することができる。典型的には、封止リング36が膜Tに(使用中に)接触するように構成される。
【0045】
一実施形態では、ハウジング38がキャビティ座と共に延在し、流路31、32の重なり合う領域の間のキャビティ開口部33の周りにプラットフォームを形成し、キャビティ座とクランプリング34との間に膜Tを直接的または間接的に保持する。例えば、膜Tは、キャビティ座に直接配置することができる。例えば、クランプリング34は、膜Tを直接クランプすることができる。好ましくはシールリング36が膜Tの片側又は両側に配置される。一実施形態では、例えば図示のように、少なくとも1つのシールリング36が使用時に、膜Tとクランプリング34との間に配置される。これは、封止を改善し、かつ/またはクランプリングが膜Tを損傷(例えば、切断)するのを防ぐことができる。また、他のまたはさらなる構造を、クランプリング34と膜Tとの間、および/または膜Tとキャビティ座との間に配置することができる。例えば、メッシュを設けて、膜Tをさらに支持するのを助けることができる。いくつかの実施形態では例えば、図示のように、膜Tはシールリング36とキャビティ座との間に配置される。また、他のまたはさらなる構成も想定され得る。一実施形態では、膜Tの一方の側のキャビティ開口部33および膜Tの他方の側のクランプリング34を通るリング開口部が使用時に、膜Tを流路31、32内のそれぞれの流体流に露出させるように構成される。
【0046】
図4A~4Cは、時間(時間[h]単位のT)に応じた酸素濃度(O
2%)を示す。
図4Aは封止チャンバの雰囲気10aを形成する空気中の酸素濃度を示し、
図4Bは、封止チャンバに収容される液体媒体M1中の酸素濃度を示す。ガス制御チャンバを嫌気性にするための「アノキソマット(Anoxomat)」手順の後、空気は(例えば、酸素を捕捉するチャンバ内の触媒の助けを借りて)さらに急速に低下する0.20%未満の酸素濃度を有する。手順の後、媒体M1は酸素が依然として豊富であり、これは、次の12時間で0.20%未満のレベルに急速に低下する。媒体中の酸素に富む空気は、チャンバー内の嫌気性空気と共に拡散する。
【0047】
図4Cはチューブおよび空のチップを用いた対照実験中に、嫌気性装置内部の嫌気性媒体中で測定された酸素パーセンテージを示す。ガス制御チャンバーおよびチャンバー内部の培地(媒体)を嫌気性にした24時間後、それをチューブ、マイクロ流体チップ(腸組織を含まない)、および蠕動ポンプに接続した。システムを2ml/hrで72時間実行した。スプリッタからの空気の吸引による最初の酸素レベルのわずかな上昇を除いて(おそらく、ボックス内の圧力下の結果であり、スプリッタ内の配管の十分な接続がなされなかったことの結果であり、これは後に改善された)、チャンバ内の嫌気性媒体は72時間嫌気性のままであった。
【0048】
これらのいわゆる「乾燥」実験(腸組織またはシステムに接続された他の生物学的材料を含まない)の後、マイクロ流体チップに取り付けられた腸組織を用いた実験も行われている。これらの初期実験から、システムは、チャンバの内外の圧力差に敏感であり得ることが観察された。例えば、ガス制御チャンバと大気圧との間の圧力差は、マイクロ流体チップに問題を引き起こす可能性がある(組織を通る大きな蛍光分子の漏出、および頂端から側底媒体へのクロスフロー、およびその逆によって反映される組織損傷)。したがって、気圧を感知および/または調節するために手段を使用することが好ましい。
【0049】
図5Aおよび5Bは、2つの異なる実験において、大気圧と比較してシステム内部で観察された圧力差を示す。
図5Aは、静水物理試験を用いて測定された差をcmで示す。
図5Bは、外部リザーバを使用して測定された差を示す。チャンバーはアノキソマット手順後に大気圧を有していたが、37度のインキュベーター内に置かれたときに圧力は増加したが、例えば触媒が酸素の最後のビットを消費するために、後に再び低下した。低圧になっている間、システムを媒体から洗い流すか、または室温に保つ。可撓性エアーリザーバによって、および例えばシリンジを介してエアーを注入することによって、圧力差を調節することができる。異なるスプリッタ出口を使用することによる、チャンバ内の出発媒体の再循環およびサンプリングは、さらなる圧力差を引き起こさなかったことが観察された(
図5Bの点5、6、7)。
【0050】
このプロトタイプのシステムの1つの目的は腸内に生息する厳密に嫌気性の細菌に腸膜を曝露し、宿主-微生物相互作用を研究することができることである。これらの細菌は、厳密な嫌気性環境下でのみ生存するので(いくつかは酸素レベル>0.5%で既に死滅している)、嫌気性細菌株が本発明者らのシステムにおいて生存し得るかどうかを評価するための実験を行った(腸組織、2ml/時間でチューブを通る細菌を有する培地はない)。2つの異なる培地、Williams EおよびSIEMを試験した。SIEM培地で培養された細菌は生存し、24時間の間に増殖を示したが、Williams Eで培養された細菌は死亡した(表1)。
図6Aおよび6Bに示すように、Williams EおよびSIEMの両方において酸素レベルは低いままであった。
【0051】
【0052】
添付の特許請求の範囲の解釈において、「含む」という語は所与の特許請求の範囲に列挙されたもの以外の他の要素または行為の存在を排除しないことを理解されたい;要素に先行する「a」または「an」という語が複数のそのような要素の存在を排除しない;特許請求の範囲における任意の参照符号がそれらの範囲を限定しない;いくつかの「手段」が同じまたは異なるアイテム(複数可)または実装された構造もしくは機能によって表され得る;開示された装置またはその部分のいずれも、特に明記しない限り、一緒に組み合わされ得るか、またはさらなる部分。1つの請求項が別の請求項に言及する場合、これは、それらのそれぞれの特徴の組み合わせによって達成される相乗的利点を示し得る。しかし、特定の手段が相互に異なる請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることもできないことを示すものではない。したがって、本実施形態は、各請求項が文脈によって明確に除外されない限り、原則として、任意の先行する請求項を指すことができる、請求項のすべての動作組合せを含むことができる。
【国際調査報告】