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特表2023-540598皮膚由来エキソソームを通じて筋損失抑制又は筋生成促進効果を示す組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】皮膚由来エキソソームを通じて筋損失抑制又は筋生成促進効果を示す組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/33 20150101AFI20230915BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20230915BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
A61K35/33
A61K35/36
A61P21/00
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515390
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-03-07
(86)【国際出願番号】 KR2021017497
(87)【国際公開番号】W WO2022181936
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0026492
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523046981
【氏名又は名称】イーエックス ヘルスケア インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】EX Healthcare Inc.
【住所又は居所原語表記】508-19, 579, Jungbu-daero, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン ヒ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA94
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB63
4C087MA23
4C087MA27
4C087MA28
4C087NA14
4C087ZA94
(57)【要約】
細胞外小胞体内でマイクロRNA-26aのレベルを増加させる組成物及びその用途に関し、前記組成物は細胞から分泌されるエキソソーム内でマイクロRNA-26a(miRNA-26a)のレベルを増加させ、前記エキソソームは筋肉減少に関与するバイオマーカーであるマフ1(MURF1)、アトロジン-1(atrogin-1)、ミオスタチン(myostatin)の発現は減少させ、筋生成に関与するマイオジ(myoD)の発現は増加させることができる。従って、細胞外小胞体内でマイクロRNA-26aのレベルを増加させる組成物は筋損失抑制及び筋生成促進用途に活用することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベタイン(betaine)、椿の花抽出物、カメリアシドA(camelliaside A)、ミリセチン(myricetin)、ナリンゲニン(naringenin)、ノビレチン(nobiletin)、コジルカルボキシジペプチド-23(kojyl carboxy dipeptide-23)、L-カルノシン(L-carnosine)及び銅トリペプチド(copper tripeptide)からなる群から選択される物質又はそれらの組み合わせを含む
ことを特徴とする細胞外小胞体(extracellular vesicle)内でマイクロRNA-26a(miRNA-26a)のレベルを増加させる組成物。
【請求項2】
前記細胞外小胞体はエキソソームである
請求項1に記載の細胞外小胞体内でマイクロRNA-26aのレベルを増加させる組成物。
【請求項3】
前記細胞外小胞体は線維芽細胞から分泌される
請求項1に記載の細胞外小胞体内でマイクロRNA-26aのレベルを増加させる組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む筋損失抑制又は筋生成促進用組成物。
【請求項5】
前記組成物はマフ1(muncle Ring-finger protein-1、MURF1)、アトロジン-1(アトロギン-1)及びミオスタチン(myostatin)からなる群から選択される筋肉減少関連遺伝子の発現を減少させる
請求項4に記載の筋損失抑制又は筋生成促進用組成物。
【請求項6】
前記組成物は筋生成を促進するマイオディ(myoD)遺伝子の発現を増加させる
請求項4に記載の筋損失抑制又は筋生成促進用組成物。
【請求項7】
前記組成物はクリーム、ローション、軟膏又はゲルの剤形である
請求項4に記載の筋損失抑制又は筋生成促進用組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む
ことを特徴とする筋肉減少関連筋疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項9】
前記筋肉減少関連筋肉疾患は筋肉減少症(sacopenia)、筋萎縮症(muscular atrophy)、筋異栄養症(muscular dystrophy)及び筋無力症からなる群から選択される
請求項8に記載の筋肉減少関連筋疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項10】
細胞にベタイン、椿の花抽出物、カメリアシドA、ミリセチン、ナリンゲニン、ノビレチン、コジルカルボキシジペプチド-23、L-カルノシン及び銅トリペプチドからなる群から選択される物質又はそれらの組み合わせを処理して得られる細胞外小胞体を有効成分として含む
ことを特徴とする組成物。
【請求項11】
前記細胞は線維芽細胞であり、前記細胞外小胞体はエキソソームである
請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞外小胞体はマイクロRNA-26aのレベルが増加したものである
請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む
ことを特徴とする筋損失抑制又は筋生成促進用組成物。
【請求項14】
細胞にベタイン、椿の花抽出物、カメリアシドA、ミリセチン、ナリンゲニン、ノビレチン、コジルカルボキシジペプチド-23、L-カルノシン及び銅トリペプチドからなる群から選択される物質又はそれらの組み合わせを処理するステップ;及び、
細胞培養液から細胞外小胞体を回収するステップを含む
ことを特徴とするマイクロRNA-26aのレベルが増加した細胞外小胞体を産生する方法。
【請求項15】
前記細胞は線維芽細胞であり、前記細胞外小胞体はエキソソームである
請求項14に記載のマイクロRNA-26aのレベルが増加した細胞外小胞体を産生する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞外小胞体内でマイクロRNA-26a(miRNA-26a)のレベルを増加させる組成物及び前記組成物を含み、皮膚由来エキソソームを通じて筋損失抑制又は筋生成促進効果を示す組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筋肉(muscle)は人の運動能力器官としての役割を果たすだけでなく、骨や血管、神経、肝、心臓、膵臓などの身体全般に亘って影響を及ぼす。骨は筋肉により引っ張ったり押し出したりしながら、その力により密度を維持する。そのため、筋肉の力が減ると骨も弱くなって、骨粗鬆症が起こりやすい。また、筋肉が減少すると筋肉で作られる様々な物質の影響で新しい血管や神経が生じることを妨げ、最終的には認知機能の低下を引き起こす恐れがある。
【0003】
筋肉損失又は筋肉減少は約30歳で始まり、生涯に亘って進行する過程である。この過程で筋肉組織量、筋線維の数及びサイズが漸進的に減少する。筋損失の結果は筋肉量と筋力の漸進的な消失に繋がる。軽度の筋力損失は一部の関節(例えば、膝)に対するストレスを増加させ、関節炎又は転倒に脆弱になる恐れがある。なお、急速に収縮する筋線維はゆっくり収縮する筋線維よりも老化の影響を多く受ける。従って、老化が進むにつれて筋肉の急速な収縮が難しくなり、それによる生活の不便さをもたらすようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような状況で本発明者らは線維芽細胞に特定物質を処理すると、細胞から分泌されるエキソソーム内でマイクロRNA-26a(miRNA-26a)のレベルが増加し、前記エキソソームが筋肉減少に関与する遺伝子の発現を減少させる一方、筋生成に関与する遺伝子の発現は増加させることを確認した。
【0005】
従って、本発明の目的はベタイン(betaine)、椿の花抽出物、カメリアシドA(camelliaside A)、ミリセチン(myricetin)、ナリンゲニン(naringenin)、ノビレチン(nobiletin)、コジルカルボキシジペプチド-23(kojyl carboxy dipeptide-23)、L-カルノシン(L-carnosine)及び銅トリペプチド(copper tripeptide)からなる群から選択される物質又はそれらの組み合わせを含む、細胞外小胞体内でマイクロRNA-26a(miRNA)-26a)のレベルを増加させる組成物を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は前記組成物を有効成分として含み、皮膚由来エキソソームを通じて筋損失抑制又は筋生成促進効果を示す組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するために、本発明の一態様はベタイン、椿の花抽出物、カメリアシドA、ミリセチン、ナリンゲニン、ノビレチン、コジルカルボキシジペプチド-23、L-カルノシン及び銅トリペプチドからなる群から選択される物質又はそれらの組み合わせを有効成分として含む、細胞外小胞体内でマイクロRNA-26aのレベルを増加させる組成物(以下、マイクロRNA-26aレベル増加用組成物と称する)を提供する。
【0008】
ベタインはトリメチルグリシン(trimethylglycine、TMG)とも呼ばれ、サトウキビ、ビート、枸杞子などの植物に多量に含有されており、肌の保湿力に優れることが知られているので、化粧品原料として使用されている。ミリセチンは酸化防止剤、皮膚コンディショニング剤などとして使用され、ナリンゲニンも皮膚コンディショニング剤として使用される化粧品原料である。
コジルカルボキシジペプチド-23は酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、皮膚保護剤機能を有し、下記化学式1の構造を有する化合物である。
【0009】
【化1】
【0010】
前記化学式1中、Rはジペプチド-23である。
【0011】
銅トリペプチドはトリペプチドの銅複合体(GHK-Cu)であって、皮膚コンディショニング剤として使用され、カメリアシドAは緑茶(Camellia sinensis)に含まれた成分であって、しわ改善効果があることが知られている(韓国特許登録第10- 0757175号公報)。また、ノビレチンは柑橘果皮に多量に存在するポリメトキシフラボンであって、抗炎効果に優れることが知られている(韓国特許公開第2018-0046245号公報)。
【0012】
L-カルノシンはヒスチニーとアラニンの2種のアミノ酸で構成されているジペプチドであって、抗酸化や抗糖尿活性を有することが知られているので、栄養剤やサプリメントとして使用されている。
前述したように本発明の組成物に使用される物質は化粧品や栄養剤の原料であるか、又は天然物から由来するものであるので、人体に使用しても安全である。
【0013】
本明細書で使用される用語「抽出物」は、抽出処理により得られる抽出液、前記抽出液の希釈液や濃縮液、前記抽出液を乾燥して得られる乾燥物、前記抽出液の粗精製物や精製物、又はそれらの混合物などのように、抽出液自体及び抽出液を用いて形成可能な全ての剤形の抽出物を含む。本発明の前記抽出物は、前記それぞれの当該植物の天然、雑種又は変種植物から抽出することができ、植物組織培養物からも抽出することが可能である。
【0014】
前記椿の花抽出物を抽出する方法は特に限定されず、当該技術分野で通常に使用する方法によって抽出することができる。前記抽出方法の非限定的な例としては、溶媒抽出法、熱水抽出法、超音波抽出法、濾過法、還流抽出法などが挙げられ、これらの方法は単独で行ってもよいし、2種以上の方法を組み合わせて行ってもよい。
【0015】
前記椿の花抽出物に使用される抽出溶媒は特に限定されず、当該技術分野で公知された任意の溶媒を使用することができる。具体的に、椿の花抽出物は水、酢酸エチル、ジクロロメタン、炭素数1~4のアルコール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれかの溶媒で抽出することができ、好ましくは、エタノールを溶媒として用いて抽出することができる。
【0016】
液状の椿の花抽出物は減圧濾過などの方法で植物の乾燥破砕物から分離した後、濃縮又は乾燥の過程を経ることができる。例えば、前記液状の抽出物を真空回転濃縮器で減圧濃縮した濃縮液であり得、前記液状の抽出物を乾燥して粉末化した抽出物を得ることもできる。このように濃縮又は粉末化した抽出物は必要によって水、アルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はそれらの混合溶媒に溶けて使用することができる。
【0017】
本発明者らは皮膚線維芽細胞に前記物質をそれぞれ処理して培養した後、エキソソームを分離すると、前記物質を処理しなかった場合と比較して、エキソソーム内でマイクロRNA-26a(miRNA-26a)のレベルが増加することを確認した(表1)。従って、前記細胞外小胞体はこれに限定されないが、線維芽細胞、具体的には、皮膚線維芽細胞から分泌されるものであり得る。
【0018】
本明細書で使用される用語「細胞外小胞体(extracellular vesicle)」は、タンパク質、脂質、核酸などの物質を細胞間で交換することができるようにして生理学的信号伝達の媒体として役割を果たす非常に小さいサイズの放出小胞体である細胞外小胞をいい、ほぼすべての細胞が細胞外小胞体を分泌する。これはサイズと生成過程によってエキソソーム(exosome)とマイクロベシクル(microvesicle)に大きく分類される。生成過程を調べて見ると、エキソソームは細胞内で小胞が生成されて細胞膜が内側に折り畳まれながら分泌されるもので、30~200nm程度のサイズを有する。マイクロベシクルは細胞膜が外側に飛び出して分離されながら細胞外に分泌されるもので、50~1000nm程度のサイズを有する。
本発明の一実施形態によれば、前記細胞外小胞体はエキソソームであり得る。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記マイクロRNA-26aレベル増加用組成物は有効成分(皮膚由来エキソソーム分泌促進物質)を組成物の総重量に基づいて0.00001重量%以上で含むことができる。より具体的に、有効成分を組成物の総重量に基づいて0.00001重量%以上、0.0001重量%以上、0.0005重量%以上、0.001重量%以上、0.005重量%以上、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、5.0重量%以上、10重量%以上又は50重量%以上含み、なお70重量%以下含むものであり得る。好ましくは、前記組成物は有効成分を0.00001重量%~10重量%又は0.005~10重量%含むものであり得る。
本発明の他の態様は前記マイクロRNA-26aレベル増加用組成物を有効成分として含む筋損失抑制又は筋生成促進用組成物を提供する。
【0020】
既に述べたように、前記マイクロRNA-26aレベル増加用組成物を細胞、具体的には、皮膚細胞に処理すると、マイクロRNA-26aのレベルが増加した細胞外小胞体、具体的にエキソソームを得ることができる。
【0021】
一方、エキソソームは細胞間コミュニケーション手段として使用されることがよく知られている。例えば、骨内の幹細胞から分泌されたエキソソームが心臓に到達して信号を伝達したりする式である。体内の臓器間の信号伝達は主にホルモンが担うと知られた過去に比べて、最近はエキソソームもやはり臓器間の信号伝達に使用されることが明らかになった。皮膚は身体の最大の臓器であるので、エキソソームの分泌が非常に活発であると予想される。しかし、皮膚から分泌されるエキソソームの役割に関する研究はあまり多く行われていない。
【0022】
エキソソームのこのようなコミュニケーション機能は本発明でも確認することができる。具体的に、筋線維細胞にベタインなどの物質を直接処理すると、筋損失及び筋生成関連遺伝子の発現に有意な変化はなかった。反面、前記物質を処理して得られたmiRNA-26aのレベルが増加したエキソソームを処理すると、有意なレベルで筋損失関連遺伝子の発現は減少し、筋生成関連遺伝子の発現は増加することを確認した(図4~7、図9及び10)。このような実験結果は線維芽細胞から由来し、miRNA-26aのレベルが増加したエキソソームが筋線維細胞内で筋生成促進及び筋損失抑制関連信号の伝達に関与することを意味する。
【0023】
前記筋損失関連遺伝子はマフ1(MURF1)、アトロジン-1(atrogin-1)、及びミオスタチン(myostatin)からなる群から選択され、筋生成関連遺伝子はマイオディ(myoD)であり得る。
【0024】
本発明の筋損失抑制又は筋生成促進用組成物は当該技術分野で通常に製造されるいかなる剤形にも製造することができる。例えば、この組成物は溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化することができるが、これに限定されるものではない。より詳細には、本発明の組成物は線維芽細胞に作用するので、クリーム、ローション、軟膏又はゲルの剤形を有することができ、皮膚外用剤の形態で使用することができる。このような剤形の組成物は当該技術分野の通常的な方法によって製造することができる。
【0025】
本発明の筋損失抑制又は筋生成促進用組成物は有効成分の以外に、一般的な化粧料組成物に含まれる成分を更に含むことができる。含まれ得る配合成分としては保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などが挙げられる。
【0026】
本発明の剤形がクリーム又はゲルである場合には、担体成分として動物繊維、植物繊維、ワックス、パラフィン、デンプン、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク又は酸化亜鉛などを用いることができる。
【0027】
本発明の剤形がパウダー又はスプレーである場合には、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート又はポリアミドパウダーを用いることができる。特に、スプレーである場合には、更にクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルのような促進剤を含むことができる。
【0028】
本発明の剤形が溶液又は乳濁液の場合には、担体成分として溶媒、溶媒和剤又は乳濁化剤が用いられ、例えば水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルが用いられる。
【0029】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として水、エタノール、プロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガ又はトラカントなどを用いることができる。
【0030】
本発明のまた他の態様は前記マイクロRNA-26aレベル増加用組成物を有効成分として含む筋肉減少関連筋疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0031】
前記筋肉減少関連筋肉疾患は筋肉減少症(sacopenia)、筋萎縮症(muscular atrophy)、筋異栄養症(muscular dystrophy)及び筋無力症からなる群から選択することができる。
【0032】
筋肉減少症は栄養不足、運動量の減少、老化などにより正常な筋肉量と筋力及び筋機能が減少する疾患をいい、筋萎縮症は遺伝などの原因により対称的な筋肉の弱化や消失が現れる臨床的、遺伝学的に様々な疾患群を意味する。
【0033】
筋異栄養症又は筋ジストロフィー(muscular dystrophy、MD)は運動器の衰えを生じ、運動能力を妨げる筋肉症であって、漸進的に骨格筋が弱くなり、筋肉タンパク質が欠乏し、筋肉細胞と組織が壊死する特徴がある。筋無力症は筋肉の力が異常に弱くなったり疲れたりする疾患であって、適切に治療を受けないと突然筋力弱化がひどくなる恐れがあり、ひどい場合には呼吸筋肉まで弱くなって呼吸麻痺を招く恐れもある。
【0034】
前記薬学的組成物で言及した用語又は要素のうち、前記マイクロRNA-26aレベル増加用組成物に関する説明で言及したものは、請求したマイクロRNA-26aレベル増加用組成物に関する説明で言及したものと同様であることを理解するだろう。
【0035】
本発明の薬学的組成物は有効成分の以外に、薬学的に許容される担体を含むことができる。この時、薬学的に許容される担体は製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシア、ゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。また、前記成分の以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを更に含むことができる。
【0036】
本発明の薬学的組成物は目的とする方法によって経口投与したり、非経口投与(例えば、皮膚塗布、静脈内、皮下、腹腔内注射又は局所に適用)したりすることができるが、非経口投与であることが好ましい。
【0037】
経口投与の目的で本発明の有効成分を錠剤、カプセル剤、チューイン錠、粉末剤、液剤、懸濁剤などの製剤に剤形化する場合、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、微結晶性セルロース又はゼラチンのような結合剤、りん酸二カルシウム又はラクトースのような賦形剤、アルギン酸、トウモロコシデンプン又はジャガイモデンプンなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムのような滑澤剤、スクロース又はサッカリンなどの甘味料、及びペパーミント、メチルサリチル酸塩又はフルーツフレーバーのような香味剤を含むことができる。
【0038】
また、前記非経口投与形態としては経皮投与剤形であり得、例えば、注射剤、接着剤、軟膏、ローション、ゲル、クリーム、スプレー、懸濁剤、乳剤、坐剤、パッチなどの剤形であり得るが、これに限定されるものではない。
【0039】
更に、前記薬学的組成物は皮膚外用剤の形態であり得、前記皮膚外用剤は皮膚外に塗布するいかなるものでも含むことができる総称として、様々な剤形の医薬品がこれに含まれる。
【0040】
本発明の薬学的組成物は薬学的に有効な量で投与する。本発明において「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは患者の疾患の種類、症状の重さ、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与時間、投与経路及び排出率、治療期間、同時に用いられる薬物を含む要素、及び他の医学分野で周知された要素によって決定することができる。例えば、本発明の薬学的組成物は1μg/kg~200mg/kg、好ましくは50μg/kg~50mg/kgの用量で1日1回、又は1日3回に分割して投与することができる。前記投与量はいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0041】
本発明に係る薬学的組成物は個々の治療剤として投与するか、又は他の治療剤と組み合わせて投与することができ、従来の治療剤と順次又は同時に投与することができ、単一又は複数回投与することもできる。前記要素をすべて考慮して副作用なしに最低限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0042】
本発明のまた他の態様は細胞にベタイン、椿の花抽出物、カメリアシドA、ミリセチン、ナリンゲニン、ノビレチン、コジルカルボキシジペプチド-23、L-カルノシン及び銅トリペプチドからなる群から選択される物質又はそれらの組み合わせを処理して得られる細胞外小胞体を有効成分として含む組成物(以下、細胞外小胞体組成物と称する)、前記細胞外小胞体組成物を有効成分として含む筋損失抑制又は筋生成促進用組成物を提供する。
【0043】
本発明者らは皮膚由来線維芽細胞に前述した物質を処理すると、線維芽細胞から分泌されるエキソソーム内でマイクロRNA-26aのレベルが増加することを確認し、前記エキソソームが筋損失抑制又は筋生成促進効果を有することを確認した(図4~7、9及び10)。
【0044】
前記細胞外小胞体組成物で言及した用語又は要素のうち、前記マイクロRNA-26aレベル増加用組成物に関する説明で言及したものは、請求したマイクロRNA-26aレベル増加用組成物に関する説明で言及したものと同様であることを理解するだろう。
【0045】
本発明のまた他の態様は下記のステップを含むマイクロRNA-26aのレベルが増加した細胞外小胞体を産生する方法を提供する:
【0046】
細胞にベタイン、椿の花抽出物、カメリアシドA、ミリセチン、ナリンゲニン、ノビレチン、コジルカルボキシジペプチド-23、L-カルノシン及び銅トリペプチドからなる群から選択される物質又はそれらの組み合わせを処理するステップ;及び
細胞培養培地から細胞外小胞体を回収するステップ。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、前記細胞は皮膚由来線維芽細胞であり、前記細胞外小胞体はエキソソームであり得るが、これに限定されない。
【0048】
一方、細胞培養液から細胞外小胞体及び/又はエキソソームを分離する方法は実施例1~2に開示した通りである。しかし、細胞培養液から細胞外小胞体及び/又はエキソソームを分離する方法としては前述したような分離方法の以外にも、当該技術分野で知られている様々な方法を用いることができる。
【0049】
例えば、細胞外小胞体及び/又はエキソソームの分離のために、超微細濾過法(ultrafiltration)、密度勾配遠心法(density gradient centrifugation)、接線流濾過法(tangential flow filtration)、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)、イオン交換クロマトグラフィー(ion exchange chromatography)、免疫親和性分離法(immunoaffinity capture)、マイクロ流体分離技術(microfluidics-based isolation)、沈殿法(exosome precipitation)、又はポリマー基盤沈殿法(polymer based precipit)などの公知の分離方法を用いることができる。しかし、エキソソーム分離方法は前述したような方法に限定されず、当該技術分野で使用されているか、又は将来使用され得る様々な分離方法が採用可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0050】
本発明の一実施形態に係る細胞外小胞体内でマイクロRNA-26aのレベルを増加させる組成物を用いると、マイクロRNA-26aのレベルが増加したエキソソームを製造することができる。前記エキソソームは筋肉減少に関与するバイオマーカーであるマフ1(MURF1)、アトロジン-1(atrogin-1)、ミオスタチン(myostatin)の発現は減少させる一方、筋生成に関与するマイオジ(myoD))の発現は増加させることができる。従って、前記細胞外小胞体内でマイクロRNA-26aのレベルを増加させる組成物は筋消失性筋損失抑制又は筋生成促進用途に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】線維芽細胞(A)及び筋線維細胞(B)に異なる濃度のベタインを処理した後、細胞生存率を確認した結果を示す。
図2】筋線維細胞に蛍光標識された線維芽細胞由来エキソソームを処理した後、細胞内に取り込まれるか否かを確認した結果を示す。
図3】異なる濃度のベタインを処理して分離した線維芽細胞由来エキソソーム内でmiRNA-26aのレベルを確認した結果を示す。
図4】筋線維細胞にベタイン又は線維芽細胞由来エキソソームを処理した後、筋損失マーカーであるマフ1、アトロジン1及びミオスタチンの発現レベルを確認した結果を示す。
図5】筋線維細胞にベタイン又は線維芽細胞由来エキソソームを処理した後、筋生成マーカーであるMyoDの発現レベルを確認した結果を示す。
図6】筋線維細胞にベタイン又は線維芽細胞由来エキソソームを処理した後、筋損失マーカーであるマフ1、アトロジン1及びミオスタチンのタンパク質レベルを確認した結果を示す。
図7】筋線維細胞にベタイン又は線維芽細胞由来エキソソームを処理した後、筋生成マーカーであるMyoDのタンパク質レベルを確認した結果を示す。
図8】筋線維細胞にデキサメタゾンを処理した後、miRNA-26a類似体の処理濃度によるマフ1及びMyoDの発現レベルを確認した結果を示す。
図9】線維芽細胞に椿の花抽出物を処理した後、分離したエキソソームでmiRNA-26aのレベルを確認した結果を示す。
図10】椿の花抽出物又は椿の花抽出物を処理した線維芽細胞から分離したエキソソームを筋線維細胞に処理した後、筋損失マーカーであるマフ1(A)及びミオスタチン(B)の発現レベルを確認した結果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、1つ以上の実施形態を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は1つ以上の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例1:エキソソームの分離及び分析
1-1.ベタインの細胞毒性確認
【0054】
ヒト皮膚真皮細胞は成人試料から分離したNormal Human Dermal Fibroblasts(NHDF、線維芽細胞)をLONZA(Cat. CC-2511)から購入した。筋線維細胞はC3Hマウスから分離培養した筋原細胞(myoblast)であるC2C12細胞をATCC(CRL-1772)から購入した。
【0055】
96ウェルプレート(well plate)に継代培養したpassage 27であるヒト真皮細胞(human fibroblast)HS68(以下、FBと称する)又はC2C12を1x10個/ウェル濃度で接種し、5% CO、37℃培養器で24時間培養した。培養後、細胞に異なる濃度のベタインを処理して24時間更に培養し、対照群(control)としては無処理群を用いた。PBSで細胞を洗浄した後、CCK-8(DONGJIN、CK04-11)で2時間更に培養し、マイクロプレートリーダー(microplate reader)で450nmで吸光度を測定した。測定した結果から対照群の値を100としてベタイン処理濃度による相対的な細胞生存率を計算した。
その結果、ベタインを処理してもFB及びC2C12の生存率には変化がないことを確認した(図1のA及びB)。
【0056】
1-2.エキソソームの分離
【0057】
継代培養したpassage 27であるFBにベタインを48時間処理した培地を集め、3000×gで30分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液のみを回収してUltra-15 Centrifugal Filter Units(Amicon(登録商標)、MERCK、C7715)に移し替え、4000×gで40分間遠心分離した。上澄み液のみを回収してTotal Exosome Isolation Reagent(Invitrogen、Cat No#4478539)を上澄み液体積の1/2だけを加え、4℃で一晩反応させた。翌日、10000×gで1時間遠心分離し、上澄み液をサクション(suction)で除去した後、最終エキソソームペレットをPBSに再懸濁させた。本実施例で得られたエキソソームを以下では「線維芽細胞由来エキソソーム」と称する。
【0058】
線維芽細胞(FB)由来エキソソームのサイズを確認するために、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Worcestershire、UK)で動的光散乱(dynamic light scattering)を測定し、測定結果をDynamic V6 softwareで分析した。
分析の結果、線維芽細胞由来エキソソームのサイズは50~150nmの範囲であることが示された。
【0059】
更に、線維芽細胞(FB)由来エキソソームを定量するために、EXOCET Exosome Quantitation Kit(System Biosciences、USA)で405nmで吸光度を測定した。
分析結果に基づいて全ての実験群に線維芽細胞由来エキソソームを20μg/mlの濃度で処理した。
【0060】
1-3.線維芽細胞エキソソームの細胞取り込みの可否確認
【0061】
線維芽細胞由来エキソソームがC2C12細胞に取り込まれるか否かを確認した。C2C12細胞をLab-Tek chamber slides(Nunc Penfield, NY)に1.5×10個接種して培養し、線維芽細胞由来エキソソームにはbodipy TR ceramide染色試薬を20分間処理した後、クリーンアップキット(cleanup kit)で余分な染色試薬を除去した。染色試薬が標識された線維芽細胞由来エキソソームをC2C12細胞に30分間処理した後、共焦点顕微鏡で観察した。
【0062】
観察の結果、C2C12細胞でエキソソームを示す赤い点状の信号が確認できたので、線維芽細胞由来エキソソームが細胞内に取り込まれることがわかった(図2)。
【0063】
1-4.ベタインを処理した線維芽細胞由来エキソソーム内でmiRNA‐26aレベルの確認
【0064】
75TフラスコにFB細胞を2×10個接種して24時間培養した後、ベタイン(0.1、1及び10mM)を処理した。48時間更に培養した後、実施例1-2の方法によってエキソソームを分離し、培地から分離したエキソソームからRNeasy plus mini kit(Qiagen、ドイツ)で製造業者のプロトコルによってmicroRNA(以下、miRNAと称する)を抽出した。
【0065】
リアルタイム(Real-time)qPCRは成熟(mature)RNAを標的とするtaqmanプローブで進行した。細胞内標的miRNAの相対的な発現量はmiRNA定量時にハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene)として使用するRNU48の発現量で平準化した後、相対的%で表した。エキソソーム内のmiRNA-26aの相対的発現量は線維芽細胞エキソソームのmiRNA定量時にハウスキーピング遺伝子として使用するmicroRNA-26aの発現量で平準化した後、相対的%で表した。全てのリアルタイムqPCR分析はapplied biosystems 7500(Applied Biosystems)機器を使用した。
【0066】
分析の結果、ベタインを処理しなかった対照群と比較して、ベタインを処理したFB細胞から分離したエキソソームではmiRNA-26aのレベルが増加することが確認できた(図3)。
【0067】
1-5.追加的なエキソソームの分離
【0068】
FBに下記表1の物質を処理してから実施例1-1の方法と同様にエキソソームを分離し、実施例1-4の方法によってエキソソーム内でmiRNA-26aのレベルを確認した。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例2:筋線維細胞の遺伝子発現の変化確認
2-1.筋損失/筋生成マーカー発現の変化確認_qPCR
【0071】
C2C12細胞を6ウェルプレートに1.5×10/ウェル濃度で接種し、24時間培養した。その後、2%ウマ血清(horse serum)を添加した培地と交換し、72時間更に培養してC2C12細胞の分化を促進させた。分化が完了した後、ベタイン0.5mM又は実施例1~2で得られた線維芽細胞由来エキソソーム(約20μg/ml)を処理して48時間更に培養した。RNeasy plus mini kitでtotal RNAを抽出し、SuperScriptTMIII(Invitrogen、USA)でcDNAを合成した。その後、ターゲット遺伝子のtaqmanプローブでqPCRを進行した後、分析した。
【0072】
分析の結果、筋線維細胞であるC2C12細胞にベタインを直接処理すると、対照群と比較して、筋損失マーカーであるマフ1(MURF1, muscle ring finger 1)とアトロジン-1(atrogin-1)の発現は若干増加し、ミオスタチン(myostatin)の発現はほぼ同様のレベルであることを確認した。しかし、3つの遺伝子はすべて有意なレベルの変化ではなかった。反面、C2C12細胞に線維芽細胞由来エキソソームを処理すると、筋損失マーカーであるマフ1、アトロジン-1及びミオスタチンの発現が有意なレベルまで減少することがわかった(図4のA~C)。
【0073】
更に、筋線維細胞であるC2C12細胞にベタインを直接処理すると、対照群と比較して、筋生成マーカーであるMyoD(myogenic differentiation 1)の発現が増加したが有意なレベルではなかった。反面、線維芽細胞由来エキソソームを処理すると、筋生成マーカーであるMyoDの発現が有意なレベルまで増加することが確認できた(図5)。
【0074】
2-2.筋損失/筋生成マーカー発現の変化確認_ウェスタンブロット(western blotting)
【0075】
C2C12細胞を6ウェルプレートに5×10個/ウェル濃度で接種し、24時間培養した。その後、2%ウマ血清を添加した培地と交換し、72時間更に培養してC2C12細胞の分化を促進させた。分化が完了した後、ベタイン(0.1、0.5mM)又は線維芽細胞由来エキソソームを処理して48時間更に培養した。その後、C2C12細胞にタンパク質分解酵素阻害剤を含んだ溶解バッファー(1%NP40、0.05M Tris-HCl、pH7.5、0.15M NaCl及び0.01M MgCl)を添加して細胞を溶解させ、BCA(bovine carbonic anhydrase)法でタンパク質濃度を測定した。定量したタンパク質をSDS-PAGEで分離してPVDF膜に移し、抗体で各筋損失マーカーのタンパク質発現量を確認した。
【0076】
確認の結果、C2C12細胞にベタインを0.1又は0.5mM濃度で直接処理すると、筋損失マーカーの発現に変化はなかったが、線維芽細胞由来エキソソームを処理すると、筋損失マーカーであるマフ1(muscle Ring-finger protein-1)、アトロジン1及びミオスタチンの発現が減少することが確認できた(図6)。更に、筋生成マーカーであるMyoDの発現はC2C12細胞にベタインを直接処理すると変化はなかったが、線維芽細胞由来エキソソーム処理によっては増加することがわかった(図7)。
【0077】
実施例3:miRNA-26aによる遺伝子発現の変化確認
【0078】
ベタイン処理により線維芽細胞由来エキソソーム内でmiRNA-26aのレベルが増加することを確認したので、miRNA-26aによる筋損失抑制と筋生成促進効能を次のように確認した。C2C12細胞に筋損失を引き起こすことが知られているデキサメタゾン(dexamethasone)を100μM処理し、miRNA-26a類似体(mimic)を10及び20nM処理して培養した。その後、ウェスタンブロットで筋損失及び筋生成マーカーの発現変化を確認した。
【0079】
確認の結果、miRNA-26a類似体処理により筋損失抑制マーカーであるマフ1の発現は減少し、筋生成促進マーカーであるMyoDの発現は増加することがわかった(図8)。
【0080】
実施例4:椿の花抽出物を処理したエキソソームの効能確認
4-1.椿の花抽出物の製造及びエキソソームの分離
【0081】
椿の花(Camellia Japonica Flower)を熱風乾燥機を用いて50℃で一晩乾燥させ、粉砕した。乾燥させた椿の花(100g)を70%(v/v)エタノールで室温で一晩抽出した。濾過過程を経た後、回転式真空蒸発器で溶媒を除去し、凍結乾燥させて椿の花抽出物を調製した。
【0082】
その後、線維芽細胞(FB)に椿の花抽出物を48時間処理した後、前記実施例1-2の方法によってエキソソームを分離した。また、実施例1-4の方法によって培養培地から分離したエキソソームでmiR-26aのレベルを確認した。確認の結果、無処理群である対照群(Control)と比較して、椿の花抽出物を50ppm濃度で処理したFBから分離したエキソソームはmiRNA-26aのレベルが増加したことが確認できた(図9)。
【0083】
4-2.筋損失/筋生成マーカー発現の変化確認_qPCR
【0084】
C2C12細胞を6ウェルプレートに1.5×10個/ウェル濃度で接種し、24時間培養した。その後、2%ウマ血清を添加した培地と交換し、72時間更に培養してC2C12細胞の分化を促進させた。分化が完了した後、椿の花抽出物50ppm又は実施例4-1で得られたエキソソーム(約20μg/ml)を処理して48時間更に培養した。その後、実施例2-1の方法によってqPCRで標的遺伝子の発現変化を確認した。
【0085】
その結果、無処理群である対照群及び椿の花抽出物を直接処理した実験群と比較して、実施例4-1で得られたエキソソームを処理した実験群で筋損失マーカーであるマフ1とミオスタチンの発現が有意に減少することがわかった(図10のA及びB)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】