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特表2023-540613運転者支援システムを試験するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】運転者支援システムを試験するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
G01M17/007 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515814
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 AT2021060321
(87)【国際公開番号】W WO2022056564
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】A50781/2020
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・シュレミシェル
(72)【発明者】
【氏名】エルカン・ジーヤ
(57)【要約】
本発明は、試験運転データを基にエゴ車両の運転者支援システムを試験するためのコンピュータ実施方法に関し、この方法は、エゴ車両の特に直近にあって試験運転データに取り込まれた他の車両に属性を割り当てるステップであって、これらの属性が、試験運転データ内の時点における、エゴ車両に対する他の車両のそれぞれの相対位置を指定し、関係する時点に関連付けられる、ステップと、それぞれの場合において、エゴ車両または他の車両のうち1台の位置の、道路のコースに対する垂直な変化によって特徴付けられる基本横運動、ならびにそれぞれの場合において、エゴ車両または他の車両のうち1台の、特に同じ車線における前方車間距離および/または後方車間距離の変化によって特徴付けられる基本縦運動が、発生しているかどうか、試験運転データを検査するステップであって、基本運動が所定の基本運動のリストから選択され、基本運動の発生が少なくとも1つの関連する時点とも関連付けられる、ステップと、発生した基本運動を基に、所定のシナリオの発生を識別するステップであって、所定のシナリオが基本運動および属性の集団によって特徴付けられる、ステップと、識別されたシナリオにおいて運転者支援システムの運転挙動を分析するステップとの手順のステップを含む。本発明は、対応するシステムにも関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験運転データ(6)を基にエゴ車両(2)の運転者支援システム(1)を試験するためのコンピュータ実施方法(100)であって、
特に前記エゴ車両(2)の直近の周囲にあって前記試験運転データ(6)に取り込まれた他の車両(3a、3b、...)に、属性(Tx-yyy)を割り当てるステップ(101)であって、前記属性(Tx-yyy)が、前記試験運転データの範囲内の時点における、前記エゴ車両(2)に対する前記他の車両(3a、3b、...)のそれぞれの相対位置を規定し、前記属性(Tx-yyy)が、関連する時点に関連付けられる、ステップと、
それぞれの場合において道路のコースに対する前記エゴ車両または前記他の車両のうち1台の位置の垂直な変化によって特徴付けられる基本横運動(LCL、LCR、IL)、ならびにそれぞれの場合において、特に同じ車線で、前記エゴ車両(2)または前記他の車両(3a、3b、...)のうち1台の前方車間距離および/または後方車間距離の変化によって特徴付けられる基本縦運動(GO、GC、FL)が、発生しているかどうか、前記試験運転データ(6)を検査するステップ(102)であって、前記基本運動(LCL、LCR、IL、GO、GC、FL)が所定の基本運動(LCL、LCR、IL、GO、GC、FL)のリストから選択され、前記基本運動(LCL、LCR、IL、GO、GC、FL)の発生が少なくとも1つの関連する時点にも関連付けられる、ステップ(102)と、
発生した前記基本運動(LCL、LCR、IL、GO、GC、FL)を基に、前記試験運転データ(6)における所定のシナリオの発生を識別するステップ(103)であって、前記所定のシナリオが基本運動(LCL、LCR、IL、GO、GC、FL)および属性(Tx-yyy)の集団によって特徴付けられる、ステップ(103)と、
特に、もっぱら前記識別されたシナリオにおいて、前記運転者支援システム(1)の運転挙動を分析するステップ(104)と
の手順のステップを含む、コンピュータ実施方法(100)。
【請求項2】
前記試験運転データが、もっぱら前記所定のシナリオに含有されている前記属性(Tx-yyy)および/または基本運動(LCL、LCR、IL、GO、GC、FL)について検索される、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記識別されたシナリオにおける前記運転者支援システム(1)の前記運転挙動を分析するために、試験走行が、前記試験運転データ(6)を使用して試験台(14)上で行われ、前記試験台(14)が、好ましくは、車両試験台、車両インザループ試験台、ハードウェアインザループ試験台またはソフトウェアインザループ試験台である、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
基本運動を検査するとき、基本運動に関して既に分類されている試験運転データを基に機械学習によって生成されたパターン、詳細には試験運転データにおける基本運動(LCL、LCR、IL、GO、GC、FL)を認識するためのモデルが使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記リストが、左への車線変更(LCL)、右への車線変更(LCR)、車線内走行(IL)、車線外走行、右への進路変更、左への進路変更といった基本横運動グループのうち少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記リストが、初期の始動、間隔の拡大(GO)、間隔の縮小(GC)、車両に後続、空いた車線の走行(FL)、停止、といった基本縦運動グループのうち少なくとも1つを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記試験運転データが、基本コーナリング運動が発生しているかどうかさらに検査され、前記基本コーナリング運動が、湾曲なしの直進走行、曲率の絶対値が増加するコーナリング、曲率の絶対値が減少する出口のコーナリング、曲率一定のコーナリング、左旋回、右旋回、環状交差点走行といった基本コーナリング運動グループのうち少なくとも1つを含むリストから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記属性(Tx-yyy)が、前記エゴ車両(2)に対して、別の車両(3a、3b、...)が、同じ車線または右側車線もしくは左側車線にあるのか、また、道路のコースに関して、前記別の車両(3a、3b、...)が、前記エゴ車両(2)の前方にあるのか、後方にあるのか、それとも並んでいるのか、といったことを指示する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記属性(Tx-yyy)が、前記エゴ車両(2)に対する前記他の車両(3a、3b、...)の距離(da、db、dc)に依拠することなく、前記エゴ車両(2)の前記属性を判定するためのセンサ(4)の測定範囲内の定義された距離にのみ割り当てられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記試験運転データが実際の試験運転を基に生成され、前記エゴ車両(2)および前記他の車両(3a、3b、...)の車線が、好ましくは前記エゴ車両(2)に搭載したインテリジェントカメラ(4)によって判定される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記エゴ車両(2)および前記他の車両(3a、3b、...)の前記車線を判定するために、特に前記インテリジェントカメラ(4)によって取り込まれた高解像度マップといった参照システムに対する陸上の目印の既知の位置がさらに使用される、請求項10に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記試験運転データが実際の試験運転を基に生成され、前記他の車両(3a、3b、...)の前記エゴ車両(2)に対する相対位置が、インテリジェントカメラ(4)、ライダおよび/またはレーダによって判定され、これらは、それぞれの場合に、好ましくは前記エゴ車両(2)に搭載されたものである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項13】
コンピュータによって実行されたとき、前記コンピュータに、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように促す命令を含有しているコンピュータプログラム製品。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラム製品が記憶されているコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
エゴ車両(2)の試験運転データ(6)を基に運転者支援システム(1)を試験するためのシステム(10)であって、
特に前記エゴ車両(2)の直近の周囲にあって前記試験運転データに取り込まれた他の車両(3a、3b、...)に、属性(Tx-yyy)を割り当てるための手段(11)であって、前記属性(Tx-yyy)が、前記試験運転データの範囲内の時点における、前記エゴ車両(2)に対する前記他の車両(3a、3b、...)のそれぞれの相対位置を規定し、前記属性(Tx-yyy)が、関連する時点に関連付けられる、手段(11)と、
それぞれの場合において道路のコースに対する前記エゴ車両(2)または前記他の車両(3a、3b、...)のうち1台の位置の垂直な変化によって特徴付けられる基本横運動(LCL、LCR、IL)、ならびにそれぞれの場合において、特に同じ車線で、前記エゴ車両(2)または前記他の車両(3a、3b、...)のうち1台の前方車間距離および/または後方車間距離の変化によって特徴付けられる基本縦運動(GO、GC、FL)が、発生しているかどうか、前記試験運転データ(6)を検査するための手段(12)であって、前記基本運動が所定の基本運動のリストから選択され、前記基本運動(LCL、LCR、IL、GO、GC、FL)の発生が少なくとも1つの関連する時点にも関連付けられる、手段(12)と、
発生した前記基本運動(LCL、LCR、IL、GO、GC、FL)を基に所定のシナリオの発生を識別するための手段(13)であって、前記所定のシナリオが基本運動および属性の集団によって特徴付けられる、手段(13)と、
特に、もっぱら前記識別されたシナリオにおいて、前記運転者支援システム(1)の運転挙動を分析するための手段(14)と
を備えるシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験運転データを基にエゴ車両の運転者支援システムを試験するためのコンピュータ実施方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車と商用車の両方の分野で、運転者支援システム(先進運転者支援システム(ADAS))の普及が絶えず進んでいる。アクティブ交通安全の拡大に対する運転者支援システムの寄与は重要であり、運転の快適さの増進に役立つ。
【0003】
乗用車や商用車の分野において、ABS(アンチロックブレーキシステム)およびESP(電子的安定性プログラム)などの特に安全運転に役立つシステムに加えて、たとえば車庫入れ支援、適応型クルーズコントロール、車線支援などの複数の運転者支援システムが推奨されている。これらの運転者支援システムは、危機的な状況を運転者に警告することによって交通安全性を向上するばかりでなく、たとえば非常ブレーキ機能を作動させることによって事故を防止するかまたは事故の影響を緩和するために自律介入を開始する。加えて、自動の車庫入れ、自動の車線維持および自動の接近制御のような機能が運転の快適さを増進する。
【0004】
支援システムによる安全性および快適さの改善が車両の乗員によって肯定的に知覚されるのは、運転者支援システムによる支援が安全かつ確実で可能な限り便利なときのみである。
【0005】
なおまた、すべての運転者支援システムが、その機能に依拠して、所与の交通シナリオを、車両自体については最高の安全性で、他の車両または他の道路ユーザはそれぞれ危険に晒すことのないように、扱う必要がある。
【0006】
このため、運転者支援システムまたは運転者支援システムによる運転の挙動をそれぞれ分析して最適化する必要がある。
【0007】
文献WO2015/032508は、
少なくとも1つの運転者支援システムAが活性化されているかどうかを検査するステップと、
車両の動作状態を特徴付けるのに適する少なくとも1つの車両パラメータ関数および/または車両の環境を特徴付けるのに適する少なくとも1つの環境パラメータ関数を検知するステップと、
特に、少なくとも1つの車両パラメータ関数および/または少なくとも1つの環境パラメータ関数に少なくとも基づいて、車両の運転状況を特徴付ける少なくとも1つの運転状況の特性関数を決定するステップと、
少なくとも1つの運転者支援システムAの活動を特徴付けるのに適する少なくとも1つの制御介入特性関数を決定するステップと、
少なくとも1つの制御介入特性関数および少なくとも1つの運転状況特性関数に依拠する補正関数であって、少なくとも1つの車両パラメータ関数および/または少なくとも1つの環境パラメータ関数を基に、少なくとも1人の車両乗員の、運転者支援システムAの活動の主観的認識を特徴付けるのに特に適する補正関数を決定するステップとの、
手順のステップを含む、少なくとも1つの運転者支援システムを最適化するための方法に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2015/032508
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題の1つは、運転者支援システムを試験するための改善された方法を規定することである。特に、本発明の課題は、運転者支援システム試験の範囲内で試験運転中に生じる運転状況の判定を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は独立請求項の教示によって解決される。有利な実施形態は従属請求項において特許請求される。
【0011】
本発明の第1の態様は、試験運転データを基にエゴ車両の運転者支援システムを試験するためのコンピュータ実施方法に関し、前記方法は、
エゴ車両の特に直近にあって試験運転データに取り込まれた他の車両に、属性を割り当てるステップであって、これらの属性が、試験運転データ内の時点における、エゴ車両に対する他の車両のそれぞれの相対位置を規定し、関係する時点に関連付けられる、ステップと、
それぞれの場合において、エゴ車両または他の車両のうち1台の位置の、道路のコースに対する垂直な変化を特徴とする基本横運動、ならびにそれぞれの場合において、エゴ車両または他の車両のうち1台の、特に同じ車線における前方車間距離および/または後方車間距離の変化を特徴とする基本縦運動が、発生しているかどうか、試験運転データを検査するステップであって、基本運動が所定の基本運動のリストから選択され、基本運動の発生が少なくとも1つの関連する時点とも関連付けられる、ステップと、
発生した基本運動を基に、所定のシナリオの発生を識別するステップであって、所定のシナリオが基本運動および属性の集団によって特徴付けられる、ステップと、
識別されたシナリオにおいて運転者支援システムの運転挙動を分析するステップとの、
手順のステップを含む。
【0012】
本発明の第2の態様は、エゴ車両の運転者支援システムの、試験運転データに基づく機能的検査ためのシステムに関し、このシステムは、
エゴ車両の特に直近にあって試験運転データに取り込まれた他の車両に、属性を割り当てるための手段であって、これらの属性が、試験運転データ内の時点における、エゴ車両に対する他の車両のそれぞれの相対位置を規定し、関係する時点に関連付けられる、手段と、
それぞれの場合において、エゴ車両または他の車両のうち1台の位置の、道路のコースに対する垂直な変化を特徴とする基本横運動、ならびにそれぞれの場合において、エゴ車両または他の車両のうち1台の、特に同じ車線における前方車間距離および/または後方車間距離の変化を特徴とする基本縦運動が、発生しているかどうか、試験運転データを検査するための手段であって、基本運動が所定の基本運動のリストから選択され、基本運動の発生が少なくとも1つの関連する時点とも関連付けられる、手段と、
発生した基本運動を基に、所定のシナリオの発生を識別するための手段であって、所定のシナリオが基本運動および属性の集団によって特徴付けられる、手段と、
識別されたシナリオにおける運転者支援システムの運転挙動を分析するための手段と
を備える。
【0013】
本発明のさらなる態様は、命令を含有しているコンピュータプログラム製品ならびにそのようなコンピュータプログラム製品を記憶するコンピュータ可読媒体に関し、コンピュータは、この命令を実行することにより、本発明の第1の態様による方法のステップを実行するように促される。
【0014】
本発明の意味の範囲内で、運転者支援システムを試験することは、運転者支援システムまたは運転者支援システムの運転挙動の分析または最適化に役立つ。このことは、道路の運転動作または特に仮想環境の開発プロセスにおいても起こり得る。
【0015】
本発明の意味の範囲内の手段は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアとして構成され得、特に処理ユニット、特にデジタル処理ユニットを備え、好ましくは、メモリまたはバスシステムにデータまたは信号が接続され、特に、マイクロプロセッサユニット(CPU)ならびに/あるいは1つまたは複数のプログラムまたはプログラムモジュールを有する。CPUは、それによって、記憶システムに記憶されたプログラムとして実施される命令を処理し、データバスからの入力信号を検知し、かつ/または出力信号をデータバスに送るように設計され得る。記憶システムは、特に、1つまたは複数の異なる記憶媒体、詳細には、光学的記憶媒体、磁気的記憶媒体、ソリッドステート記憶媒体および/または他の不揮発性記憶媒体を備えることができる。CPUが、本明細書で説明された方法のステップを実行して、特に試験される車両を分析することができるように、そのような方法を具現するかまたは実行することができるように、プログラムが用意され得る。
【0016】
本発明の意味の範囲内のシナリオは、好ましくは、空間的な、特に静的場面の時間的順序によって形成される。それによって、空間的場面は、好ましくは、エゴ車両に対する、たとえば道路ユーザまたは車線マーキングなどの静止物体の集団といった少なくとも1つの他の物体の空間的配置を指示する。シナリオは、特に、エゴ車両として知られている、たとえばエゴ車両の少なくとも1つの車両機能を自律的に実行する運転者支援システムを備えた車両が、運転者支援システムによって少なくとも部分的に制御される運転状況を含む。
【0017】
本発明の意味の範囲内の車線または交通車線は、好ましくは舗装道路であり、詳細には、指定された方向に進むように意図された路面上の交通車線である。好ましくは、車線または交通車線はマーキングを示す。
【0018】
本発明の意味の範囲内の基本運動は、好ましくは基本横運動、基本縦運動および/または基本コーナリング運動である。
【0019】
本発明の意味の範囲内の基本横運動は、好ましくはエゴ車両の進行路のコースに対して横方向の運転の運動である。
【0020】
本発明の意味の範囲内の縦運動は、好ましくは少なくとも実質的にエゴ車両の進行路の方向の運転の運動である。
【0021】
本発明の意味の範囲内の基本コーナリング運動は、好ましくはエゴ車両の軌道が曲線を表す運転の運動である。
【0022】
本発明の意味の範囲内の試験運転データは、好ましくは値に関し、詳細には、環境および/または試験運転中のエゴ車両の動作を特徴付けるパラメータのデータセットに関する。
【0023】
本発明の意味の範囲内の車両は、好ましくは道路ユーザであり、したがって、詳細には、交通において移動している物体である。
【0024】
本発明の意味の範囲内の運転挙動は、好ましくは運転者支援システムの運転特性によって特徴付けられる。詳細には、運転挙動は、運転者支援システムの、その環境内の作用と、その環境に対する反応とによって特徴付けられる。
【0025】
本発明は、運転者支援システムの機能を確認しかつ検証するためのシナリオベースの評価を実施する手法に基づくものである。そのようなシナリオベースの評価では、特定のシナリオにおいて、運転者支援システムの運転挙動が観測され、分析され、かつ/または評価される。
【0026】
本発明の教示は、エゴ車両の試験運転データによってこれを実現するものであり、このデータは、好ましくは実際の運転動作中に取り込まれ、構成されてから、シナリオにおける基本運動について検索される。試験される運転者支援システムに関連する所定のシナリオに対応する試験運転データのデータフィールドが分析される。本発明の方法により、試験されるそれぞれの運転者支援システムの、関連するデータフィールドの特に高信頼の識別が可能になる。これは、結果として特に高品質の試験結果をもたらす。その上、車両からの試験運転データのセットは、運転者支援システムの種々のバージョンおよび/または他の運転者支援システムを試験するために繰り返し使用され得る。それによって、試験運転データを生成するために必要な実際の試験運転または仮想試験運転の回数を大幅に減少させることが可能になる。特に、実際の試験運転データに関して、そのような試験運転データを生成するために必要な、通常は実際の運転者による走行距離が大幅に短縮され得る。
【0027】
なおまた、本発明の方法は、特定の機能に関して試験運転データを評価するとき、試験技術者に高度の融通性を提供する。詳細には、試験技術者は、試験運転データが検索され得る異なるシナリオの数を無制限に定義することができる。これによって、運転者支援システムの特定の機能の試験に最適なシナリオを生成することが可能になる。また、一連の試験運転の中から、それぞれの運転者支援システムの運転挙動の分析に最適な試験運転データが識別され得る。
【0028】
この方法の有利な実施形態の1つでは、試験運転データは、もっぱら所定のシナリオに含有されているそれらの属性および/または基本運動について検索される。
【0029】
この実施形態により、検索に包含されるのは、試験運転データに関連する可能性のあるデータフィールドのみになるので、試験運転データの検査が、計算能力および/または計算時間に関して大幅に低減され得る。
【0030】
この方法のさらに有利な実施形態では、識別されたシナリオにおける運転者支援システムの運転挙動を分析するために、試験走行は、試験運転データを使用して試験台上で行われる。試験台は、好ましくは、車両試験台、車両インザループ試験台、ハードウェアインザループ試験台またはソフトウェアインザループ試験台である。
【0031】
この実施形態により、運転者支援システムの運転挙動の分析、評価および/または最適化において特に高い品質が実現され得る。
【0032】
さらに有利な実施形態では、試験運転データは、機械学習で訓練された基本運動のモデルを使用して、基本運動が発生しているかどうか検査される。詳細には、基本運動を検査するとき、試験運転データにおける基本運動を認識するためのパターンが使用され、これらのパターンは、運動に関して既に分類されている試験運転データを基に機械学習によって生成されたものである。好ましくは、試験運転データは、それによって人手で分類され、次いで、機械学習アルゴリズム、特に人工ニューラルネットワークにインポートされる。
【0033】
この実施形態には、それ自体が基本運動であってシナリオではなく、機械学習モデルのプロセスにおいて訓練されるという利点がある。これは、新規のシナリオの定義に関して、新規のシナリオが、個々のパターンから、またはそれぞれ基本運動のモデルから、モジュール方式でコンパイルされ得るので、高度な融通性をもたらす。原理的に、カスタマイズされたシナリオが、このようにそれぞれの用途向けにコンパイルされ得る。
【0034】
この方法のさらに有利な実施形態では、リストは、左への車線変更、右への車線変更、車線内走行、車線外走行、右への進路変更、左への進路変更といった、基本横運動のグループのうち少なくとも1つを含む。
【0035】
この方法のさらに有利な実施形態では、リストは、初期の始動、間隔の拡大、間隔の縮小、車両に後続、空いた車線の走行、停止といった基本縦運動のグループのうち少なくとも1つを含む。
【0036】
この方法のさらに有利な実施形態では、試験運転データは、基本コーナリング運動が発生しているかどうか、さらに検査され、基本コーナリング運動は、湾曲なしの直進走行、曲率の絶対値が増加するコーナリング、曲率の絶対値が減少する出口のコーナリング、曲率一定のコーナリング、左旋回、右旋回、環状交差点走行といった基本コーナリング運動グループのうち少なくとも1つを含むリストから選択される。
【0037】
基本運動にコーナリング運動を含めると、試験運転データのさらに分化された分類が可能になる。
【0038】
この方法のさらに有利な実施形態では、属性は、エゴ車両に対して、別の車両が、同じ車線または右側車線もしくは左側車線にあるのか、また、道路のコースに関して、この別の車両が、エゴ車両の前方にあるのか、後方にあるのか、それとも並んでいるのか、といったことを指示する。それによって、他の道路ユーザが明瞭に識別され得る。
【0039】
この方法のさらに有利な実施形態では、属性は、車線におけるどの車両がエゴ車両に対するこの別の車両であるかをさらに指示する。
【0040】
この方法のさらに有利な実施形態では、属性は、エゴ車両の進行方向に対する、この別の車両の進行方向をさらに指示する。
【0041】
この方法のさらに有利な実施形態では、属性は、エゴ車両に対するこの別の車両の距離に依拠することなく、エゴ車両の属性を判定するためのセンサの測定範囲内で定義された距離以下にのみ割り当てられる。結果として、試験運転データに含有される情報が、基本運転操作の定義に実際に関連する情報へと低減される。
【0042】
それによって、データ処理がより高速になり得、かつ/または必要とされる計算能力がより低くなり得る。
【0043】
この方法のさらに有利な実施形態では、試験運転データは実際の試験運転データを基に生成され、エゴ車両およびこの別の車両の車線は、好ましくはエゴ車両に搭載されたインテリジェントカメラによって判定される。
【0044】
この方法のさらに有利な実施形態では、参照システム、詳細にはインテリジェントカメラで取り込んだ高解像度マップに関する陸上の目印の既知の位置が、エゴ車両およびこの別の車両の車線を判定するためにさらに使用される。
【0045】
インテリジェントカメラを使用すると、試験運転データの特に分化された分析が可能になる。
【0046】
この方法のさらに有利な実施形態では、試験運転データは実際の試験運転を基に生成され、エゴ車両に対するこの別の車両の相対位置は、それぞれの場合において好ましくはエゴ車両に搭載されたインテリジェントカメラ、ライダおよび/またはレーダによって判定される。
【0047】
本発明のさらなる特徴および利点が、図を参照する以下の説明によって明らかになる。図は、少なくとも一部が概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1a】試験運転中のエゴ車両の図である。
図1b】運転者支援システムを試験するためのシステムの例示的な実施形態の図である。
図2】運転者支援システムを試験するための方法の例示的な実施形態の流れ図である。
図3】他の車両の属性を表現する図である。
図4】他の車両の属性の動的推移を表現する図である。
図5図5aは、エゴ車両による追越し運動の時間的順序を表す図である。図5bは、図5aの追越し運動の図的表現である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1aは道路5において試験運転中の車両2を示す。
【0050】
試験運転中に、車両2は、交通状況における基準として働くエゴ車両として、試験運転データ6を収集する。エゴ車両2は、好ましくは、交通状況および車両の周囲の環境を記録するための複数のセンサを有する。図1aは、特にインテリジェントカメラであるカメラ4を有するエゴ車両2を、単なる一例として示す。好ましくは、そのようなカメラ4は、エゴ車両2の周囲の全体の環境を監視するために360°の視野を有する。さらに可能なセンサは、レーダ、ライダ、超音波などを含む。インテリジェントカメラ4は、たとえば、他の車線を認識して、他の道路ユーザを車線に関連付けること、ならびにたとえば高解像度のマップに関連してエゴ車両2の正確な位置を判定する際に役立ち得る交通標識や陸上の目印を認識することができる。その上、エゴ車両は、好ましくは、インテリジェントカメラ4および存在し得る任意の他のセンサによって収集された試験運転データ6を記憶するように構成されたデータ記憶装置(図示せず)を有する。図1aでは、試験運転データはファイルフォルダ6によって表されている。
【0051】
試験運転データ6を符号化するために、いわゆるOSIドキュメンテーションが特に使用される。OSIはオープンシミュレーションインターフェースを表し、仮想シナリオにおいて自動化された運転機能が環境を認識するための汎用インターフェースである(https://opensimulationinterface.github.io/osi-documentation/)。
【0052】
試験運転中(オンライン)または試験運転の後(事後)に、試験運転データ6が、図1a図1bの矢印によって指示されるように、運転者支援システムを試験するためのシステム10に供給される。
【0053】
図1bは、運転者支援システムを試験するためのシステム10を示す。
【0054】
システム10は、好ましくは、収集された試験運転データ6の評価と、試験運転データ6が生成された試験運転中に運転者支援システム1が示していたはずの運転挙動の分析とに役立つ。
【0055】
図1bのシステム10は、特に、図2の運転者支援システム1を試験する方法100を実施するように構成されている。
【0056】
それによって、属性Tx-yyyを割り当てるための手段11、試験運転データ6を検査するための手段12、および識別手段13は、好ましくは、データ処理システムの、それぞれ割り当てられた機能を実現するように構成された手段である。
【0057】
運転挙動を分析するための手段14も、データ処理システムの中で実施され得る。好ましくは、この場合、特にソフトウェアインザループの方法によって、運転者支援システム1をシミュレートすること、またはそのソフトウェアのみ検査することも提供される。
【0058】
しかしながら、さらに好ましくは、運転者支援システム1の運転挙動を分析するための手段14は、試験台、特に、車両試験台、車両インザループループ試験台、ハードウェアインザループ試験台として設計される。
【0059】
好ましくは、運転者支援システム1は、そのような試験台14にインストールされるかまたは接続され、識別されたシナリオに対応する試験運転データ6のデータフィールドは、運転者支援システム1に、または適切なインターフェースを介して運転者支援システム1に情報を供給するセンサに、利用可能になる。これは、図1bにおいて矢印で指示されている。
【0060】
インテリジェントカメラ4の場合には、そのようなインターフェースは、シナリオに対応する試験運転データ6のデータフィールドを基に車両の周囲の環境をカメラ4に示す1つまたは複数の画面であり得る。レーダの場合には、そのようなインターフェースは、たとえばレーダ標的エミュレータであり得る。あるいは、そのようなインターフェースは、運転者支援システム1のセンサチップまたは前記センサチップのソフトウェアのみに直接与えられ得るように、さらに処理される試験運転データ6にも与えられ得る。
【0061】
好ましくは、運転者支援システム1の運転挙動を特徴付ける反応または作用は、結果として、図1bのさらなる矢印によって指示されたさらなるインターフェースによって試験台14に供給される。
【0062】
試験台14は、たとえば運転者支援システム1または運転者支援システム1による試験台14上の車両2'の制御によって出力された制御信号といったパラメータを基に運転挙動を分析することができる。
【0063】
詳細には、運転者支援システム1の記録された運転挙動が参照データと比較され得る。
【0064】
図1bに示された運転者支援システム1を試験するためにエゴ車両2の外部に配置されたシステム10の例示的な実施形態の代わりに、システム10は、たとえば運転者支援システム1も試験運転データを生成するエゴ車両2内に直接配置されるときには、エゴ車両2内にも配置され得、試験運転データ6は、特にインテリジェントカメラ4であるローカルセンサによって直接供給される。
【0065】
図2は、図1bに示されたシステム10によって特に実施され得る運転者支援システム1を試験するためのコンピュータ実施方法の例示的な実施形態である。
【0066】
第1の手順のステップでは、エゴ車両2の試験運転中に記録され、したがって試験運転データに含有されている属性Tx-yyyが、他の車両に割り当てられる。それによって、Tx-yyyの参照シンボルにおいて、xは、「後」、「横」、および「前」の代りの文字R、SおよびAを示す。それぞれの場合におけるシンボル「y」は、エゴ車両2に関する車線を指示する数および進行方向におけるその位置を表す。
【0067】
他の道路ユーザに対する属性Tx-yyyの例示の割り当てが図3に示されている。図3に示されたマトリクスのそれぞれの行は、好ましくは車線に対応し、したがって、黒で描かれたエゴ車両2は中央車線にある。
【0068】
エゴ車両2の周囲のそれぞれの道路ユーザは、Tから始まる属性によって識別される。文字「R」、「S」および「A」は、「後の」、「横の」および「前の」を表す。ハイフンの後の最初の桁は、他の道路ユーザの車線が、エゴ車両の車線と同じ車線であるか、それとも別の車線であるかを指示する。表された例示的な実施形態では、数「1」はエゴ車両2の右側の車線を表し、数「2」はエゴ車両2と同じ車線を表し、数「3」はエゴ車両2の左側の車線を表す。示された例示的な実施形態では、ハイフンの後の最後の2桁は、この例示的な実施形態では車両である表された道路ユーザの、前方または後方の道路ユーザの車線位置を表す。
【0069】
属性Tx-yyyは、好ましくはエゴ車両2からの他の道路ユーザのそれぞれの距離とは無関係に割り当てられる。
【0070】
それぞれの割り当てられた属性Tx-yyyは、試験運転データ6の時点における別の道路ユーザの相対位置を反映する。したがって、試験運転データ6にデータが記憶される時間のそれぞれの増分について、好ましくは、含まれる他の道路ユーザの属性も記憶される。あるいは、データ低減のために、属性Tx-yyyに対する変更は一度に1つだけ保存され得る。
【0071】
好ましくは、属性Tx-yyyは、エゴ車両2から定義された距離以内にのみ割り当てられる。さらに好ましくは、この距離は、エゴ車両2に対する他の道路ユーザの相対位置を検知するセンサの測定範囲内にある。好ましくは、以前に説明したように、このセンサはインテリジェントカメラ4であり得る。
【0072】
属性Tx-yyyには、エゴ車両2に対する別の道路ユーザの進行方向に関する情報がさらに含有され得る。それによって、たとえば属性の先頭に追加の文字が付加され得る。たとえば、図3に示されるように、(「opposing」の代わりの)文字「o」は、属性oTA-101によって、近づいてくる車両を識別することができ、(「crossing」の代わりの)文字「c」は、属性cTA-302によって、交差交通の車両を識別することができる。
【0073】
図4は、属性Tx-yyyの道路ユーザ3a、3bの例示の時間順の進行を表す。エゴ車両2は中央車線にある。
【0074】
第1の道路ユーザ3aは、中央車線から右側車線に車線変更することにより、エゴ車両2よりも高速で運転する。したがって、道路ユーザ3aの属性Tx-yyyはTA-201からTA-301に変化する。
【0075】
第2の道路ユーザ3bは、エゴ車両2の車線の左側車線において、エゴ車両2の後方を運転し、同様にエゴ車両2よりも高速で運転しているので、エゴ車両2を追い越すところである。対応して、後の時点において第2の道路ユーザ3bがエゴ車両2と並んだとき、第2の道路ユーザ3bの属性はTR-101からTS-101に変化する。
【0076】
既に明らかにされたように、第1の道路ユーザ3aの距離daおよび第2の道路ユーザ3bの距離dbは、好ましくは属性Tx-yyyの割り当てに影響しない。しかしながら、第2の道路ユーザ3bがエゴ車両2の後方からエゴ車両2に並ぶところまで移動し、第1の道路ユーザ3aが中央車線から右側車線に移動するということが重要である。
【0077】
図2による方法100の第2のステップ102において、試験運転データは、基本運動が発生しているかどうか検査される。この検査は、基本横運動LCL、LCR、ILおよび基本縦運動GO、GC、FLの既知のパターンを求める試験運転データ6の検索を実質的に構成する。その上、検索は、好ましくは基本コーナリング運動を求めて行われる。ここでの必要条件は、それぞれの基本運動について、試験運転データ6に含有されているパラメータプロファイルおよびパラメータ集団と比較され得るパターンまたはモデルが定義されることである。そのようなパターンは、たとえばモデルとして記憶され得る。好ましくは、これらのモデルは機械学習を使用して生成され得、この場合、モデルは、好ましくは、基本運動に関して既に分類されている試験運転データを使用して訓練される。それによって、好ましくは教師付き機械学習が使用され、この場合、人が試験運転データを分類し、次いで、たとえば人工ニューラルネットワークといったアルゴリズムが、このデータを基に訓練される。
【0078】
このようにして生成されたパターンは、好ましくは、所定の基本運動としてリストに記憶され、検査する手順のステップ102において試験運転データ6と比較される。
【0079】
例示の基本横運動には、「左への車線変更」LCL、「右への車線変更」LCR、「車線内走行」IL、「車線外走行」、「右への進路変更」、「左への進路変更」がある。
【0080】
例示の基本縦運動には、「初期の始動」、「間隔の拡大」GO、「間隔の縮小」GC、「車両に後続」、「空いた車線の走行」FL、「停止」がある。
【0081】
例示の基本コーナリング運動には、「カーブなしの直進走行」、「曲率の絶対値が増加するコーナリング」、「曲率の絶対値が減少する出口のコーナリング」、「曲率一定のコーナリング」、「左旋回」、「右旋回」および「環状交差点走行」がある。
【0082】
図4を参照して、第2の道路ユーザ3bは、空いた車線の基本縦運動FLおよび車線内走行の基本横運動ILをしている。対照的に、表された基本横運動の期間中に、第1の道路ユーザ3aは、最初に車線内走行ILの基本横運動、次いで、左への車線変更LCLの基本横運動、最後に車線内走行ILの基本横運動に戻る。第1の道路ユーザ3aが、全体の期間を通して表した基本縦運動は空いた車線の走行FLである。
【0083】
第3の手順のステップ103では、試験運転データの中に、試験運転中の所定のシナリオの発生が識別される。それによって、これらのシナリオは、好ましくは基本運動LCL、LCR、IL、GO、GC、FLおよび属性Tx-yyyの集団で構成される。
【0084】
それによって、エゴ車両2の基本運動LCL、LCR、IL、GO、GC、FLのみを考慮に入れるシナリオが可能になる。しかしながら、シナリオは、通常、エゴ車両2の、他の道路ユーザ3a、3bとの相互作用を含む。
【0085】
そのような所定のシナリオの例には、車線の中へ別の道路ユーザ3a、3bの前に入る、車線の中へエゴ車両の前に入る、別の道路ユーザ3a、3bを追い越す、エゴ車両2が別の道路ユーザ3a、3bによって追い越される、別の道路ユーザ3a、3bが車線を出る、エゴ車両2が車線を出る、といったものがある。
【0086】
シナリオは、好ましくは試験技術者によって自由に定義され得、それによって、属性Tx-yyyと、エゴ車両2および他の道路ユーザ3a、3bの基本運動LCL、LCR、IL、GO、GC、FL、が所定のシナリオへと組み合わされる。
【0087】
そのようなシナリオの一例、すなわちエゴ車両2の追越し運転が、図5の、それぞれ与えられる、属性Tx-yyyと、時間tの関数としての基本運動LCL、LCR、IL、GO、GC、FLとを指示する構造化の図表に示されている。詳細には、この図は、エゴ車両の、基本縦運動GO、GC、FLおよび基本横運動LCL、LCR、ILにおける変化と、図5bにおける車両として表された第1の道路ユーザ3aの、基本縦運動GO、GC、FLおよび基本横運動LCL、LCR、ILの変化、ならびにそれぞれの所与の属性Tx-yyyとを、時間tの関数として示すものである。
【0088】
属性Tx-yyyおよび基本運動LCL、LCR、IL、GO、GC、FLのそのような集団または系列は、試験運転データ6の分析中に判定され、エゴ車両2の追越し運動のシナリオに対応するデータフィールドが、試験運転データ6において識別され得る。
【0089】
第1の道路ユーザ3aは、運動の全体の時間にわたって車線内走行ILの基本横運動をしている。
【0090】
エゴ車両2は、当初は車線内走行ILの基本横運動をしているが、3秒の時点において追い越しを開始することにより、左への車線変更LCLを開始する。車線変更は7秒の時間tにおいて終了する。エゴ車両は、この時点から20秒の時間tまで車線内走行ILの基本横運動をする。エゴ車両は、20秒の時間tにおいて、第1の道路ユーザ3aを追い越すことにより右側車線への変更を開始し、それによって、再び、右への車線変更LCRの基本横運動を開始する。これは24秒の時間tにおいて終了する。エゴ車両2は、次いで右側車線に戻り、ここで車線内走行の基本横運動を継続する。
【0091】
対応して、エゴ車両2の基本縦運動が時間tにわたって進展する。最初に、エゴ車両2は第1の道路ユーザ3aに接近し、これは間隔の縮小GCの基本縦運動である。中央車線には他の道路ユーザがいないので、左への車線変更LCLの基本横運動の結果として、空いた車線の縦走行FLの状態が生じる。第1の道路ユーザ3aの右側車線の前方に他の道路ユーザがいないので、右側への車線変更LCRの後にもこの状態が継続する。
【0092】
他方では、第1の道路ユーザ3aは、右側車線の前方が空いているので、当初は空いた車線の走行FLの基本縦運動をしている。エゴ車両2は、追越し運動に続いて、第1の道路ユーザ3aの車線においてその前に入った後は、同じ(右側)車線において、第1の道路ユーザ3aを、より高い速度で引き離すので、縦走行状態は23秒の時間tにおいて間隔の拡大GOに変化する。
【0093】
エゴ車両に関連して第1の道路ユーザ3aに割り当てられる属性は、図5aの最下行に指示されている。第1の道路ユーザ3aは、当初は第1の車両がエゴ車両2に先行しているので、TA-101の属性を受ける。第1の道路ユーザ3aは、エゴ車両が左への車線変更LCLをした後はエゴ車両の車線の右側の車線にいるので、TA-301の属性を得る。エゴ車両2が第1の道路ユーザ3aに追いついて追い越すとき、第1の道路ユーザは、エゴ車両2の右側の車線においてエゴ車両2の隣にいるので、TS-301の属性を受ける。第1の道路ユーザ3aは、エゴ車両2によって完全に追い越されると、エゴ車両2の右側の車線においてその後方にいるので、TR-301の属性を受ける。エゴ車両が右への車線変更の過程で再び右側車線に戻ると、第1の道路ユーザ3aは、同じ車線においてエゴ車両2の後方にいるのでTR-101の属性を受ける。
【0094】
最後の手順のステップ104において、識別されたシナリオにおける運転者支援システムの運転挙動が、最終的に試験され、試験運転データ6を基に分析される。
【0095】
そのために、試験走行は、好ましくは識別されたシナリオにおいて試験台14上で行われ、運転者支援システム1および/または運転者支援システム1が配置された車両2'は、試験運転データ6によって規定された条件下で試験走行する。試験運転データ6は、エゴ車両2に対する他の道路ユーザ3a、3bの位置に由来する境界条件に加えて、好ましくは、道路のコース、道路標識からの法的必要条件、天候、トポロジ、などを含有している。
【0096】
好ましくは、試験走行では、試験されているそれぞれの運転者支援システムが所与の境界条件の下で作用する様子または反応する様子が観察され、または分析される。運転者支援システムのこの運転挙動は、運転者支援システム1を評価するため、また、必要に応じて較正を最適化するために、好ましくは参照データと比較される。
【0097】
それによって、運転者支援システムは、好ましくは、試験運転データ6の、もっぱら、それぞれ試験される運転者支援システム1の運転挙動に関連するシナリオが識別されるデータフィールドに基づいて試験走行される。これによって、運転者支援システム1を試験するための所要時間または必要な試験走行の距離を、それぞれ大幅に短縮することが可能になる。
【0098】
以前に説明されたように、それによって、試験台14は、車両試験台としてばかりではなく、車両2'の必須部分および/または運転者支援システム1のみをシミュレートする試験台としても設計され得る。
【0099】
前述の例示的な実施形態は、単なる例であり、本発明の保護、用途および構成の範囲を制限する意図はない。むしろ、前述の説明は、当業者に、少なくとも1つの例示的実施形態を実施するための指針を提供するためのものであり、それによって、特に説明された構成要素の機能および配置に関して、特許請求の範囲および特徴の等価な組合せに由来する保護の範囲から逸脱することなく様々な修正形態が作製され得る。
【符号の説明】
【0100】
1 運転者支援システム
2、2' エゴ車両
3a、3b 他の道路ユーザ
4 カメラセンサ/カメラ
5 道路
6 試験運転データ
10 システム
11 属性を割り当てるための手段
12 試験運転データを検査するための手段
13 所定のシナリオの発生を識別するための手段
14 運転挙動を分析するための手段/試験台
LCL 左への車線変更
LCR 右への車線変更
IL 車線内走行
GO 間隔の拡大
GC 間隔の縮小
FL 空いた車線の走行
Tx-yyy 属性
図1a-1b】
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】