IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノルディック バイオサイエンス エー/エスの特許一覧

<>
  • 特表-がんを評価するためのアッセイ 図1
  • 特表-がんを評価するためのアッセイ 図2
  • 特表-がんを評価するためのアッセイ 図3
  • 特表-がんを評価するためのアッセイ 図4
  • 特表-がんを評価するためのアッセイ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】がんを評価するためのアッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20230915BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230915BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230915BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
G01N33/574 A
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516055
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2021074996
(87)【国際公開番号】W WO2022053646
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】2014323.6
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522403778
【氏名又は名称】ノルディック バイオサイエンス エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジェノベーゼ,フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルムセン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】リース-ピーターセン,アレクサンダー,リンジ
(72)【発明者】
【氏名】サン,シュウ
(72)【発明者】
【氏名】カースダル,モーテン,アッセル
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ96
4B063QR72
4B063QS03
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA51
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書において、患者のがんを検出および/またはモニタリングするためのイムノアッセイの方法であって、XXVIII型コラーゲンのC末端のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体と患者由来の生体液サンプルを接触させるステップ、ならびに前記モノクローナル抗体と前記サンプル中のペプチドとの間の結合の量を検出および決定するステップとを含む、イムノアッセイの方法が記載される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のがんを検出および/またはモニタリングするためのイムノアッセイの方法であって、
(i)XXVIII型コラーゲンのC末端のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体と患者由来の生体液サンプルを接触させるステップと、
(ii)前記モノクローナル抗体と前記サンプル中のペプチドとの間の結合の量を検出および決定するステップと、
(iii)ステップ(ii)で決定した前記モノクローナル抗体の結合の量を、正常な健常な対象に関連する値および/または既知のがんの重症度に関連する値および/または以前の時点で前記患者から得た値および/または所定のカットオフ値と相関させるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記がんが、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、または膵がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者のがんのステージを検出または予後を決定するための方法である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体が、C末端のアミノ酸配列QETCIQG(配列番号1)に特異的に結合する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体が、QETCIQGA(配列番号2)である前記C末端のアミノ酸配列の伸長されたバージョンを認識しないかまたは特異的に結合しない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体が、QETCIQ(配列番号3)である前記C末端のアミノ酸配列のトランケートされたバージョンを認識しないかまたは特異的に結合しない、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体が、アミノ酸配列QETCIQG(配列番号1)を有する合成ペプチドに対して産生される、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記生体液が、血液、血清、血漿、尿、または細胞もしくは組織培養物由来の上清である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記イムノアッセイが、競合アッセイまたはサンドイッチアッセイである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記イムノアッセイが、ラジオイムノアッセイまたは酵素結合免疫吸着測定法である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者のがんを検出および/またはモニタリングするためのイムノアッセイに関する。がんは、特に、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、または膵がんであり得る。イムノアッセイは、特定の実施形態では、患者のがんのステージを検出するためまたは患者のがんの予後を決定するためのものであり得る。
【背景技術】
【0002】
XXVIII型コラーゲンは、文献での記載が不十分であるが、その物理的な役割を伴う研究が徐々に出現している。これは、主に、末梢神経および後根神経節に局在しているが、同様に、皮膚でも見出されている1、2。XXVIII型コラーゲンは、VI型コラーゲンに構造上類似しているビーズ状のコラーゲンであり、528アミノ酸のコラーゲン性ドメインに隣接する2つのフォン・ヴィルブランド因子Aドメインを有する。XXVIII型コラーゲンは、健常な肺組織では非常に低いレベルで見出されたが、ブレオマイシンを誘導する肺損傷では過剰発現し、これはXXVIII型コラーゲンを発現する細胞が組織修復プロセスに関与し得ることを表し得る。またXXVIII型コラーゲンは、マウス肝細胞癌でアップレギュレートされることが以前に見られている
【発明の概要】
【0003】
ここで本発明者らは、XXVIII型コラーゲンの形成が、がん、特に肺がん、乳がん、結腸直腸がん、または膵がんなどでアップレギュレートされることを決定し、また、XXVIII型コラーゲンのC末端を標的とするモノクローナル抗体を利用した競合ELISAを開発したが、このELISAは、がんを検出および/またはモニタリングし、がんのステージおよび/または予後を決定するために使用できる。
【0004】
よって、本発明は、患者のがんを検出および/またはモニタリングするためのイムノアッセイの方法であって、
(i)XXVIII型コラーゲンのC末端のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体と患者由来の生体液サンプルを接触させるステップと、
(ii)前記モノクローナル抗体と前記サンプル中のペプチドとの間の結合の量を検出および決定するステップと、
(iii)ステップ(ii)で決定した前記モノクローナル抗体の結合の量を、正常な健常な対象に関連する値および/または既知のがんの重症度に関連する値および/または以前の時点で前記患者から得た値および/または所定のカットオフ値と相関させるステップと
を含む、方法を提供する。
【0005】
イムノアッセイは、限定するものではないが、競合アッセイまたはサンドイッチアッセイであり得る。イムノアッセイは、たとえば、ラジオイムノアッセイまたは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)であり得る。このようなアッセイは、当業者に知られている技術である。
【0006】
がんは、特定の実施形態では、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、卵巣がん、および/または膵がんであり得る。特に、がんは、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、および/または膵がんであり得る。
【0007】
本方法は、特定の実施形態では、患者のがんの重症度を検出するための方法であり得る。たとえば、本方法は、患者のがんのステージを検出するための方法、および/または患者のがんの予後を決定する(たとえば、可能性のある患者の生存時間または生存確率を決定するなどの)方法であり得る。
【0008】
特定の実施形態では、患者は、たとえば、がんの治療を経験した患者であり得、本方法は、患者のがんをモニタリングするステップを含み得る。
【0009】
患者の生体液サンプルは、限定するものではないが、血液、血清、血漿、尿、または細胞もしくは組織培養物由来の上清であり得る。好ましくは、生体液は、血清または血漿、最も好ましくは血清である。
【0010】
本明細書中使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、全抗体、および全抗体の結合特異性を保持するそのフラグメント、たとえばFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、一本鎖Fvフラグメント、または当業者に知られている他のこのようなフラグメントなどを表す。よく知られているように、全抗体は、通常、各対が1つの「軽」鎖および1つの「重」鎖から作製されている、同一の2対のポリペプチド鎖である「Y型」の構造を有する。各軽鎖および重鎖のN末端領域は可変領域を含み、各重鎖および軽鎖のC末端部は定常領域を構成する。可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、これらは主に抗原認識に寄与している。定常領域は、抗体に、免疫系の細胞および分子を動員させる。結合特異性を保持する抗体フラグメントは、少なくとも、CDRおよび上記結合特異性を保持するために十分な可変領域の残りの部分を含む。
【0011】
本発明の方法では、当該分野で知られているいずれかの定常領域を含むモノクローナル抗体が使用され得る。ヒト定常領域の軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖に分類される。重鎖定常領域は、μ、δ、γ、α、またはεに分類され、それぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEと定義する。IgGアイソタイプは、限定するものではないが、IgGl、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むいくつかのサブクラスを有する。モノクローナル抗体は、好ましくはIgGl、IgG2、IgG3、またはIgG4のいずれか1つを含むIgGアイソタイプであり得る。
【0012】
抗体のCDRは、Kabatらにより記載されるものなどの当該分野で知られている方法を使用して決定され得る。抗体は、実施例に記載されるようにB細胞クローンから作製され得る。抗体のアイソタイプは、ヒトIgM、IgG、もしくはIgAのアイソタイプ、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のサブクラスに特異的なELISAにより決定され得る。作製された抗体のアミノ酸配列は、標準的な技術を使用して決定され得る。たとえば、RNAは、細胞から単離され、逆転写によりcDNAを作製するために使用され得る。次に、cDNAは、抗体の重鎖および軽鎖を増幅するプライマーを使用するPCRに供される。たとえば、全てのVH(可変重鎖)配列のリーダー配列に特異的なプライマーが、以前に決定したアイソタイプの定常領域に位置する配列に結合するプライマーと共に使用され得る。軽鎖は、VκまたはVλのリーダー配列にアニーリングするプライマーと共に、κまたはλ鎖の3’末端に結合するプライマーを使用して増幅され得る。完全長の重鎖および軽鎖が作製され、シーケンシングされ得る。
【0013】
本発明に係る方法の一部の実施形態では、生体液サンプルは、C末端のアミノ酸配列QETCIQG(配列番号1)(本明細書中「PRO-C28」とも呼ばれる)に特異的に結合するモノクローナル抗体と接触される。好ましくは、上記モノクローナル抗体は、QETCIQGA(配列番号2)である前記C末端のアミノ酸配列の伸長されたバージョンを認識しないかまたは特異的に結合しない。好ましくは、上記モノクローナル抗体は、QETCIQ(配列番号3)である前記C末端のアミノ酸配列のトランケートされたバージョンを認識しないかまたは特異的に結合しない。
【0014】
好ましくは、C末端のアミノ酸配列QETCIQG(配列番号1)に対する上記抗体の親和性の、伸長されたC末端のアミノ酸配列QETCIQGA(配列番号2)に対する上記抗体の親和性に対する比率は、少なくとも10:1であり、より好ましくは少なくとも50:1、少なくとも100:1、少なくとも500:1、少なくとも1,000:1、少なくとも10,000:1、少なくとも100,000:1、または少なくとも1,000,000:1である。
【0015】
好ましくは、C末端のアミノ酸配列QETCIQG(配列番号1)に対する上記抗体の親和性の、トランケートされたC末端のアミノ酸配列QETCIQ(配列番号3)に対する上記抗体の親和性に対する比率は、少なくとも10:1であり、より好ましくは少なくとも50:1、少なくとも100:1、少なくとも500:1、少なくとも1,000:1、少なくとも10,000:1、少なくとも100,000:1、または少なくとも1,000,000:1である。
【0016】
本明細書中使用される場合、用語「C末端」は、ポリペプチドの末端、すなわちポリペプチドのC末端にあるC末端ペプチド配列を表し、その一般的な方向の意味として解釈されるべきではない。
【0017】
C末端のアミノ酸配列QETCIQG(配列番号1)に特異的に結合するモノクローナル抗体は、当該分野で知られているいずれかの適切な技術を介して作製され得る。例として、モノクローナル抗体は、たとえば、げっ歯類(または他の適切な哺乳類)を、任意選択で免疫原性担体タンパク質(キーホールリンペットヘモシアニンなど)に結合し得る配列QETCIQG(配列番号1)からなる合成ペプチドで免疫処置し、単一の抗体を産生する細胞を、単離およびクローニングし、得られたモノクローナル抗体を、それらの望ましい特異性の保有を確保するためにアッセイすることなどにより、アミノ酸配列QETCIQG(配列番号1)を有する合成ペプチドに対して産生され得る。C末端のアミノ酸配列QETCIQG(配列番号1)に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するための例示的なプロトコルは、以下に記載される。
【0018】
本発明に係る方法の一部の実施形態では、XXVIII型コラーゲンのC末端のエピトープに特異的なモノクローナル抗体の結合の量を、正常な健常な対象に関連する値および/または既知のがんの重症度に関連する値および/または以前の時点で患者から得た値と相関させる。
【0019】
本明細書中使用される場合、用語「正常な健常な対象に関連する値および/または既知のがんの重症度に関連する値」は、健常、すなわちがんを有さないとみなされた対象で上述の方法により決定された標準化された量、および/または既知の重症度を伴うがんを有すると知られている対象で上述の方法により決定された標準化された量を意味する。よって、たとえば、本方法は、肺がん、乳がん、または結腸直腸がんを検出するための方法である場合、モノクローナル抗体の結合の量は、健常な対象で本方法により決定された標準化された量、および/または既知の重症度を伴う上記がんを有すると知られている対象で本方法により決定された標準化された量と相関され得る。
【0020】
本発明に係る方法の一部の実施形態では、XXVIII型コラーゲンのC末端のエピトープに特異的なモノクローナル抗体の結合の量を、1つ以上の所定のカットオフ値と相関させる。
【0021】
本明細書中使用される場合、「カットオフ値」は、患者において、がんの尤度が高いこと、または特定のステージもしくは他の重症度のレベルのがんの尤度が高いことを表すと統計的に決定される結合の量を意味する。たとえば、カットオフ値は、統計上のカットオフ値以上である患者サンプルにおけるバイオマーカーの結合の測定された値が、患者におけるがんまたはがんの特定のステージもしくは他の重症度のレベルの存在または尤度の少なくとも70%の確率、好ましくは少なくとも80%の確率、好ましくは少なくとも85%の確率、より好ましくは少なくとも90%の確率、および最も好ましくは少なくとも95%の確率に対応するように選択され得る。
【0022】
XXVIII型コラーゲンのC末端のエピトープに特異的なモノクローナル抗体の結合の量に関する所定のカットオフ値は、たとえば少なくとも50ng/mLであり得、より好ましくは少なくとも60ng/mL、少なくとも70ng/mL、少なくとも80ng/mL、少なくとも90ng/mL、または少なくとも100ng/mLであり得る。これに関して、統計分析の使用を介して、上記カットオフ値以上のXXVIII型コラーゲンのC末端のエピトープに特異的なモノクローナル抗体の結合の測定された量(たとえば少なくとも60ng/mLのカットオフ値が使用される場合測60ng/mL以上の測定された量)が、様々ながんを表し得ることが見出されている。また、モノクローナル抗体の結合の測定された量が高いことが、より後期のステージのがんおよびより悪い予後と統計上相関することが見出されている。よって、本方法が患者のがんのステージを検出するための方法である場合、がんの各ステージのカットオフ値が使用されてよく、ここで高いカットオフ値は、より後期のステージで使用される。同様に、本方法が患者のがんの予後を決定するための方法である場合、特定の予後(たとえば可能性のある生存の期間または生存の確率)に対応するカットオフ値が使用され得る。このような統計的なカットオフ値を使用することにより、本発明の方法を利用して高いレベルの信頼度を伴う診断を提供することが可能である。このような統計的なカットオフ値を適用することは、これが単独独立型の診断アッセイをもたらす、すなわち、診断の結論に達するために、健常な個体および/または既知のがんの重症度を有する患者との直接的な比較の必要性を完全に排除するため、特に好適である。またこれは、(たとえば医療の専門家での身体検査および/または診断により決定される)一般的にがんを表す医学的な兆候または症状をすでに有する患者を評価するためアッセイを利用する場合、これは、最初の診断を実証するための迅速かつ確定的なツールとして作用し、よって潜在的に、より侵襲的な手法の必要性を除外し、適切な処置レジメンの開始を早めることが可能であるため、特に好適であり得る。またこれは、長期入院の必要性を回避し得る。特定のがんの場合、早められた診断は、疾患がより早期のステージで検出され得、よって、総合的な生存の確率を改善し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】抗体の特異性。標準的なペプチド(QETCIQG(配列番号1))、伸長されたペプチド(QETCIQGA(配列番号2))、ナンセンスペプチド(GLRPGSEYTV(配列番号4))、およびナンセンスコーター(GLRPGSEYTV-K-ビオチン(配列番号5))を使用して、反応性を試験した。
図2】健常な対照およびがん患者の血清におけるPRO-C28のレベル。PRO-C28のレベルは、がん患者由来の混合性サンプル(Asterand、P=0.002)および肺がんサンプル(Proteogenex、P<0.0001)において有意に高かった(図2A)。統計的差異は、ANOVAおよびダネットの多重比較検定を使用して評価した。PRO-C28は、健常な個体と、混合性がん患者(図2B)および肺がん患者(図2C)のコホートとの間を有意に区別することができた(それぞれP=0.0007、P<0.0001)。
図3】健常な対照および臓器により定義される様々な固形腫瘍を有する患者由来の血清におけるPRO-C28のレベル。
図4】がんのステージによりグループ分けされる様々ながん患者由来の血清におけるPRO-C28のレベル。線は、線形回帰分析から適合される。
図5】化学療法を経験した膵がん患者のKaplan Meier法による全生存率曲線。この患者は、PRO-C28の前処置レベルにより三分位(Q1、Q2、およびQ3)に分けられ、グループ分けされる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施例
本明細書中開示される実施形態は、以下の実施例で記載されており、これは、本開示の理解を支援するために記載されており、以下に続く特許請求の範囲に定義される本開示の範囲をいかなる方法でも限定するようには解釈すべきではない。以下の実施例は、記載される実施形態を作製および使用する方法の完全な開示および記載を当業者に提供するために提示されており、本開示の範囲を限定するようには意図されておらず、本発明者らは、以下の実験が行われた実験の全てまたは唯一の実験であることを表すようには意図していない。使用される数(たとえば量、温度など)に関する正確性を保証するための試みがなされているが、一部の実験上の誤差および偏差が考慮されている。他の記載がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセ氏温度であり、圧力は大気圧または大気圧に近い。
【0025】
以下の実施例では、以下の材料および方法を使用した。
【0026】
材料および方法
この実験で使用した全ての試薬は、Sigma Aldrich(St. Louis, MO, USA)およびMerck(Whitehouse Station, NJ, USA)などの企業からの高品質規格であった。免疫処置およびアッセイの開発で使用した合成ペプチドは、Genscript(New Jersey, USA)から購入した。
【0027】
PRO-C28を標的とするモノクローナル抗体の作製
XXVIII型コラーゲンのC末端を標的とするモノクローナル抗体を、XXVIII型コラーゲンのC末端で見出された7アミノ酸配列QETCIQG(配列番号1)(「PRO-C28」)に対する抗体を産生させることにより作製した。システイン残基の数を低減し、これにより抗体を作製するために使用されていた免疫原性ペプチドでのシス-シス架橋の形成を回避するために、より長い配列、たとえば10アミノ酸C末端配列KECQETCIQG(配列番号6)ではなく、この7アミノ酸配列が選択された。
【0028】
PRO-C28を標的とするモノクローナル抗体の作製のため使用されるプロトコルは、以下の通りであった。
【0029】
6~7週齢の雌性Balb/Cマウス(体重14~18g)の免疫処置を、Stimune Immunogenic Adjuvant(SPECOL)(Cat #7925000, Invitrogen)において100μgの免疫原性ペプチドKLH-CGG-QETCIQG(配列番号7)(ここで「KHL」はキーホールリンペットヘモシアニンを表し、CGGは結合リンカーである)を含む200μLの乳化した抗原溶液の皮下注射により開始した。この免疫処置を、安定した血清抗体力価のレベルに到達するまで、2週間ごとに反復した。最も高い血清力価および最良の阻害を伴うマウスを融合のため選択し、最後の免疫処置の後少なくとも3週間休息させた。その後、マウスに、細胞融合のための脾臓の単離の3日前に、100μgの免疫原性ペプチドを含む100μLの0.9%のNaCl溶液を静脈内にブーストした。ハイブリドーマ細胞を産生させるため、マウスの脾臓細胞を、Gefterらに記載されるようにSP2/0ミエローマ細胞と融合した。このハイブリドーマ細胞は、半固体培地法を使用して培養皿でクローン化した。次に、このクローンを、さらなる増殖のため96ウェルマイクロタイタープレートに載置し、限界希釈法を適用してモノクローナルの増殖を促進させた。ストレプトアビジンでコーティングしたプレートで行った間接ELISAを、上清の反応性のスクリーニングに使用した。ビオチン-QETCIQG(配列番号8)を、スクリーニングペプチドとして使用し、標準的なペプチド(QETCIQG(配列番号1))、伸長されたペプチド(QETCIQGA(配列番号2))、ナンセンスペプチド(GLRPGSEYTV(配列番号4))、およびナンセンスコーター(GLRPGSEYTV-K-ビオチン(配列番号5))を、クローンの特異性のさらなる試験に使用した。上清をハイブリドーマ細胞から回収し、HiTrap親和性カラム(GE Healthcare Life Science, Little Chalfront, Buckinghamshire, UK)を製造社の指示にしたがい使用し精製した。全ての動物は、動物福祉のガイドラインにしたがい処置した。
【0030】
クローンの選択および性質決定
後述の競合ELISAにおいて標準的なペプチド(QETCIQG(配列番号1))に対する反応性に関して最良の抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングし、PRO-C28を標的とするモノクローナル抗体の産生に関して、最も高い反応性を示すクローンを選択した。抗体の特異性を、標準的なペプチド(QETCIQG(配列番号1))、伸長されたペプチド(QETCIQGA(配列番号2))、ナンセンスペプチド(GLRPGSEYTV(配列番号4))、およびナンセンスコーター(GLRPGSEYTV-K-ビオチン(配列番号5))を使用して試験した。モノクローナル抗体のアイソタイプは、Clonotyping System-HRP kit, cat. 5300-05(Southern Biotech, Birmingham, AL, USA)を使用して決定した。
【0031】
PRO-C28 ELISA
Roche製のcat.11940279の96ウェルのストレプトアビジンでコーティングしたELISAプレートを、アッセイバッファー(25mMのTBS-BTE+2g/lのNaCl、pH8)に溶解した100μL/ウェルのビオチン化ペプチドのビオチン-QETCIQG(配列番号8)でコーティングし、暗室で振とうさせながら20℃で30分間インキュベートし、その後、洗浄バッファー(20mMのTris、50mMのNaCl、pH7.2)にて5回洗浄した。その後、20μlのペプチド標準物質またはサンプルを適切なウェルに添加し、次に100μlの精製された抗体溶液(アッセイバッファーに溶解したPRO-C28に特異的なモノクローナル抗体)を添加し、振とうさせながら20℃で1時間インキュベートし、次に洗浄バッファーで5回洗浄した。次に、100μLの二次抗体溶液(PRO-C28に特異的なモノクローナル抗体で使用したものと同じアッセイバッファーに溶解した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した抗マウス抗体)を各ウェルに添加し、振とうさせながら20℃で1時間インキュベートし、次に洗浄バッファーで5回洗浄した。最後に、100μlのテトラメチルベンジニジン(benzinidine)(TMB)(Kem-En-Tec cat.:438OH)を各ウェルに添加し、プレートを暗室において20℃で15分間インキュベートし、反応を止めるため、ストップ溶液(1%のHSO)100μlを添加し、次にプレートを、参照としての650nmを伴い、450nmで、ELISAリーダーにおいて分析した(Molecular Devices, SpectraMax M, CA, USA)。検量線は、4-パラメトリック数学的適合モデルを使用してプロットした。
【0032】
PRO-C28 ELISAの技術的な評価
ヒトの血清、ヒトの尿、およびEDTA、ヘパリン、またはクエン酸塩で処置したヒト血漿サンプル(サンプルの各タイプのうち4つ)の2倍希釈物を使用して、直線性を評価した。直線性は、希釈していないサンプルの回収率のパーセンテージとして計算した。
【0033】
アッセイ内およびアッセイ間の変動は、5つのクオリティコントロール(QC)の10回の独立した実行と、二連の判定で行われる2つのキットコントロールにより決定した。
【0034】
アッセイの正確性は、標準的なペプチドでスパイクした健常なヒト血清サンプルで測定し、バッファーにおける血清の回収率のパーセンテージとして計算した。
【0035】
測定範囲の下限(LLMR)および測定範囲の上限(ULMR)は、アッセイ内およびアッセイ間の変動からの10の個々の標準曲線に基づき計算した。
【0036】
がんのバイオマーカーとしてのPRO-C28の生物学的なバリデーション
PRO-C28を、健常な対照の2つのコホート由来の血清サンプル(Lee Biosolutions, USAおよびValley BioMedical, USAから入手)、様々ながん種を有する患者のコホート由来の血清サンプル(Asterand, USAから入手、様々な腺がん、浸潤性乳腺癌、皮膚の悪性メラノーマ、および肺の小細胞癌/扁平上皮癌を有する患者由来のサンプルを含む)、ならびに肺がん患者のコホート由来の血清サンプル(ProteoGenex, USAから入手)において測定した。PRO-C28のレベルは、上述のPRO-C28 ELISAのプロトコルを使用して、盲検で測定した。インフォームドコンセントおよび地元の倫理委員会による承認の後、全ての血清サンプルを回収し、がん患者由来の全ての血清サンプルは、切除前に回収した。患者の人口動態を表1および2に示す。健常なコホート(Lee Biosolutionsから得たサンプル)のうちの1つの患者の平均年齢は、2つのがんのコホートの患者の平均年齢と有意に異なるものであったが、いずれのコホートにおいても年齢とPRO-C28のレベルとの間に相関はなかった。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
膵がんの予後マーカーとしてのPRO-C28の生物学的なバリデーション
PRO-C28を、ステージI~IVの膵がん(PC)を有する701名の患者のコホート由来の前処置血清サンプルにおいて測定した。全てのPC患者は、デンマークのBIOPAC(膵がんを有する患者のバイオマーカー)試験(NCT03311776)由来であった。2008年12月から2017年9月まで6つのデンマークの病院から患者を動員した。PC患者は、組織的に腫瘍が確認されており、国のガイドライン(www.gicancer.dk)にしたがい様々な種類の化学療法で処置されていた。この試験は、Health Research Ethicsでのデンマーク地域委員会(Danish Regional Committee)の推奨に従い行われた。BIOPACのプロトコルは、Health Research Ethicsでのデンマーク地域委員会(VEK ref. KA-20060113)およびデータ保護機関(Data Protection Agency)(j.nr. 2006-41-6848)により承認されたものであった。全ての対象は、ヘルシンキの宣言(バージョン8)に従いインフォームドコンセントに記入した。血清サンプルは、診断の時点または手術の前に入手した。サンプルは、血液に関して国により承認された標準的な術法により処理された(www.herlevhospital.dk/biopac.dk)。
【0040】
結果
クローンの選択および性質決定
標準的なペプチドに対する反応性および選択性に関して最良の抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングし、反応性に基づき、PRO-C28 ELISAの技術的および生物学的な評価での使用のためPRO-C28を標的とするモノクローナル抗体の産生のため、クローンNBH218#65 8C11-2F10-1H7を選択および使用した。このモノクローナル抗体は、アイソタイプ:IgG2b、kであった。伸長されたペプチド、ナンセンスペプチド、またはナンセンスコーターに対する反応性は見出されなかった(図1)。
【0041】
PRO-C28 ELISAの技術的な評価
一連の技術的なバリデーションを行い、PRO-C28 ELISAのアッセイを評価した。バリデーションデータの概要を、表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
がんのバイオマーカーとしてのPRO-C28の生物学的な評価
図2Aに示されるように、PRO-C28のレベルは、健常な対照のコホート(Lee Biosolutionsコホート)と比較して、混合種のがんを有する患者のコホートおよび肺がん患者のコホートにおいて有意に高かった。PRO-C28のレベルは、平均して、健常な対照(Lee Biosolutionsコホート)で49.77ng/ml(30.37)、混合性がん患者のコホートで78.32ng/ml(55.92)、および肺がん患者のコホートで140.8ng/ml(34.33)であると評価された(対照vs混合性P=0.002、対照vs肺P<0.0001)。PRO-C28は、健常と混合性がんとの間(図2B、AUC=0.68、P=0.0007)、および健常と肺がんとの間(図2C、AUC=0.98、P<0.0001)を有意に区別した。よって、PRO-C28は、健常な患者と様々な病因のがん患者との間を高い正確性および有意性で区別するために使用できる。
【0044】
がんの種類により分類される結果を、図3および表4に示す。肺がんおよび乳がんの患者は、使用される統計分析(ダンの多重比較検定またはマン・ホイットニー検定)のいずれかにより評価される場合、健常な対照(Valley BioMedicalコホート)と比較して有意に高いレベルのPRO-C28を有していた。また結腸直腸がんも、マン・ホイットニー検定により有意に高く、卵巣がんおよび膵がんでも同様に高い傾向があった。
【0045】
【表4】
【0046】
疾患のステージとPRO-C28との間の関連を評価するために、がん患者の結果を、患者がステージ1(n=15)、ステージ2(n=35)、ステージ3(n=40)、またはステージ4(n=22)のがんを有しているかどうかにより同様にグループ分けし、ステージの情報が入手可能ではない13名の患者は考慮しなかった。これら各グループの患者のPRO-C28のレベルは、図4に示されており、表5に統計的にまとめられている。示されるように、PRO-C28のレベルは、疾患のステージと相関しており、PRO-C28のレベルが腫瘍量、よって恐らくは同様に予後に関連していることをさらに示唆している。
【0047】
【表5】
【0048】
膵がんにおける予後マーカーとしてのPRO-C28の生物学的な評価
カプランマイヤー曲線およびlog-rankのp値を使用して、膵がん患者のコホートの全生存率(OS)曲線を比較した。ここでの患者は、PRO-C28の前処置レベルにより三分位(Q1、Q2、およびQ3)に分けられている。p値 p<0.05は、統計的に有意とみなした。単変量コックス比例ハザード回帰モデルは、PRO-C28バイオマーカーの三分位:Q1と比較したQ2およびQ3あたりのOSの95%の信頼区間(CI)でのハザード比(HR)を計算することであった。
【0049】
表5および図5に示される場合、PRO-C28の前処置レベルとOSとの間の関連を評価する場合、「高い」PRO-C28のレベル(Q3)および「中程度の」PRO-C28のレベル(Q2)は、「低い」PRO-C28のレベル(Q1)と比較して短いOSを予測した。ここで、Q2およびQ3の患者は、Q1の患者(HR=1.0)と比較して53%(HR=1.53)および24%(HR=1.24)高い死亡するリスクを有している。同様に、各三分位のカプランマイヤー曲線は有意に異なり(log rankのp値<0.0001)、OS時間の中央値の数値は、Q1→Q2→Q3と低くなった。これらデータは、PRO-C28が、PC患者において予後の値を有することを表している。
【0050】
【表6】
【0051】
本明細書では、他の意味が明示されない限り、用語「または」は、条件の1つのみが満たされることを必要とする演算子(operator)「排他的論理和(exclusive or)」とは対照的に、複数の記載された条件のうちのいずれかまたは両方が満たされる場合に真の値を返す演算子の意味で使用される。用語「~を含む(comprising)」は、「~からなる(consisting of)」の意味よりも「~を含む(including)」の意味で使用される。上記で認識されている全ての従来の教示は、本明細書によって参照により組み込まれている。本明細書中の従来より公開されている全ての文書の承認は、その教示が本明細書の日付でオーストラリアまたは他の場所で共通する一般的な知識であったことを承認または表すものとすべきではない。
【0052】
参照文献
1. Gebauer, J. M., Kobbe, B., Paulsson, M. & Wagener, R. Structure, evolution and expression of collagen XXVIII: Lessons from the zebrafish. Matrix Biol. 49, 106-119 (2016).
2. Veit, G. et al. Collagen XXVIII, a novel von Willebrand factor A domain-containing protein with many imperfections in the collagenous domain. J. Biol. Chem. 281, 3494-3504 (2006).
3. Annis, D. S., Mosher, D. F. & Roberts, D. D. NIH Public Access. 27, 339-351 (2009).
4. Schiller, H. B. et al. Time- and compartment-resolved proteome profiling of the extracellular niche in lung injury and repair. Mol. Syst. Biol. 11, 819-819 (2015).
5. Lai KKY, Shang S, Lohia N, Booth GC, Masse DJ, Fausto N, et al. (2011) Extracellular Matrix Dynamics in Hepatocarcinogenesis: a Comparative Proteomics Study of PDGFC Transgenic and Pten Null Mouse Models. PLoS Genet 7(6): e1002147. https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1002147
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023540617000001.app
【国際調査報告】