(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(54)【発明の名称】癌を患う患者を処置し、層別化する方法。
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20230915BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230915BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20230915BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230915BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20230915BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C12Q1/6851 ZNA
A61K45/00
A61K31/495
A61K31/496
A61K31/5377
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516081
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2021075132
(87)【国際公開番号】W WO2022053691
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】522478330
【氏名又は名称】アンスティチュ・ドゥ・カンセロロジー・ドゥ・ルゥエスト
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT DE CANCEROLOGIE DE L‘OUEST
(71)【出願人】
【識別番号】507421289
【氏名又は名称】ナント・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】NANTES UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】カルトロン,ピエール-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ブーグラス-カルトロン,グヴェノラ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX02
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC411
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086BC73
4C086CB05
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
癌を患う患者を治療および層別化する方法
本発明は、癌に罹患している患者の層別化と治療に関する。抗PD1療法はリンパ球を標的とし、抗癌剤治療の効率は腫瘍細胞への影響によって測定されるという事実に起因して、本発明者らは、抗PD1療法の耐性の分子メカニズムを研究することは、リンパ球と腫瘍細胞の間の既存の細胞間コミュニケーションを考慮に入れるべきだと仮定した。エキソソームは、化学療法抵抗性の原因となるmiRNAの細胞間伝達のためのキャリアであるため、彼らは、抗PD1療法にT細胞を曝露することで、がん細胞の化学療法抵抗性を引き起こすエキソソームmiRNA(exomiR)の発現を促進できるかどうかを調べた。その結果、抗PD1療法を受けたT細胞は、エキソソームmiRNA-4315の濃縮を促進することが判明した。また、エキソソームmiRNA-4315を受け取ったがん細胞は、従来の化学療法に対してアポトー抵抗性という現象を引き起こすことを指摘した。分子レベルでは、このアポトーシス抵抗性現象は、miRNA-4315を介したアポトーシス促進タンパク質であるBimのダウンレギュレーションと関連していることを発見した。また、細胞やマウスモデルにおいて、BH3模倣剤ABT263がこの抵抗性を回避することが確認された。したがって、本発明は、エキソソームmiRNA-4315を用いた層別化方法およびBH3模倣剤を用いた癌に苦しむ患者の治療方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)患者からのサンプルにおけるエキソソームmiRNA-4315の発現レベルを決定すること、ii)前記発現レベルを所定の基準値と比較すること、iii)エキソソームmiRNA-4315の発現レベルが所定の基準値より優れている場合、患者が抗PD1療法に対する耐性を有するかまたは発症する危険性があると結論付け、エキソソームmiRNA-4315の発現レベルが所定の基準値より劣る場合、患者が抗PD1療法に対する耐性を有するかまたは発症しない危険がないと結論付けることからなる工程を含む、抗PD-1療法に対する耐性を有するか又は発症するリスクのある患者を特定する方法。
【請求項2】
i)患者から得られたサンプルにおいて、エキソソームmiRNA-4315の発現レベルを決定すること、ii)前記発現レベルを所定の基準値と比較すること、iii)エキソソームmiRNA-4315の発現レベルが所定の基準値より優れている場合に、患者が抗PD1療法に反応しないと結論付け、エキソソームmiRNA-4315の発現レベルが所定の基準値より劣っている場合に患者が抗PD1療法に反応すると結論付けることを含む、その必要がある癌に罹患している患者の抗PD-1療法の奏効を予測するための方法。
【請求項3】
抗PD-1療法が、ニボルマブ、ペムブロリズマブまたはセミピリマブである、請求項1に記載の識別方法または請求項2に記載の予測方法。
【請求項4】
試料が、血液、血漿、血清試料、T細胞由来エキソソームまたは癌生検である、請求項1に記載の識別方法または請求項2に記載の予測方法。
【請求項5】
患者が、抗PD-1療法と同時に、別々に、または逐次的に標準化学療法を受けることができる、請求項1、3または4に記載の識別方法または請求項2、3または4に記載の予測方法。
【請求項6】
標準化学療法が、オキサリプラチン、シスプラチン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドキソルビシンまたはパクリタキセルである、請求項5に記載の識別方法または予測方法。
【請求項7】
請求項1に記載の抗PD-1療法に対する耐性を有する、または有するであろう、または発症するであろうとして同定された対象における癌の治療において使用するためのBH3模倣剤。
【請求項8】
請求項2に記載の抗PD-1療法に反応しない被験者の治療に使用するための、BH3模倣剤。
【請求項9】
BH3模倣剤が、以下:ABT-737、ベネトクラックス(ABT-199)およびナビトクラックス(ABT-263)からなる群から選択され得る、請求項7または8に記載の使用のためのBH3模倣剤。
【請求項10】
がんが、膠芽腫(GBM)、肺がん、乳がんまたは卵巣がんである、請求項1に記載の同定方法または請求項2に記載の予測方法、または請求項7~9に記載のBH3模倣剤。
【請求項11】
本発明による抗PD-1療法に対する耐性を有するか、または有するであろう、または発症するであろうとして識別された対象に、治療有効量のBH3模倣剤を投与することを含む、癌を治療するための方法。
【請求項12】
請求項1に記載の抗PD-1療法に対する耐性を有するか、または有するであろうか、または発症するであろうとして識別された対象における癌の治療において使用するための、本発明によるBH3模倣剤を含む治療組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、癌に罹患している患者の層別化と処置に関する。
【0002】
発明の背景
免疫チェックポイントインヒビターは、ファーストラインまたは従来の化学療法との併用で、抗がん剤治療として大きな期待が寄せられている(1)。抗PD1療法は、現在までのところ、最も効果的な抗がん剤免疫療法の1つである。この成功にもかかわらず、かなりの数の患者がこの治療法に対して耐性を獲得し、あるいは将来的に獲得する(2-3-4-5)。抗PD1療法に対する生得的な耐性は、メラノーマ患者の60%に認められ(6)、25%は客観的奏効の初期段階の後に耐性を獲得する(7)。非小細胞肺がんでは、Gettingerらが抗PD1療法に対する獲得抵抗性という現象を特徴とする患者を同定した(8)。抗PD1療法に対する耐性は臨床で観察されているが、その分子的な原因は完全には解明されていない。そのため、抗PD1療法への耐性に関連するバイオマーカーの記述を完成させるためには、広範な研究を行う必要がある。さらに、これらの革新的なバイオマーカーが明らかになれば、抗PD1療法に対する耐性に対する治療標的を提供できる可能性がある。
【0003】
発明の概要
抗PD1療法はリンパ球を標的とし、抗癌剤治療の効率は腫瘍細胞への影響によって測定されるという事実のため、本発明者らは、抗PD1療法の耐性の分子メカニズムを研究するには、リンパ球と腫瘍細胞間の既存の細胞間コミュニケーションを考慮するべきだと仮定した。エキソソームは、化学療法抵抗性の原因となるmiRNAの細胞間移動のためのキャリアであることから(9-10-11-12)、彼らは、抗PD1療法にT細胞を曝露することにより、がん細胞の化学療法抵抗性を引き起こすエキソソームmiRNA(exomiR)の発現が促進されるかどうかを調べた。その結果、抗PD1療法を受けたT細胞は、エキソソームmiRNA-4315の濃縮を促進することが判明した。また、エキソソームmiRNA-4315を受け取ったがん細胞は、従来の化学療法に対してアポトー抵抗性という現象を引き起こすことを指摘した。分子レベルでは、このアポトーシス抵抗性現象は、miRNA-4315を介したアポトーシス促進タンパク質であるBimのダウンレギュレーションと関連していることを発見した。細胞およびマウスモデルでは、BH3模倣剤ABT263がこの抵抗性を回避することが確認された。エキソソームの血液を用いた縦断的研究により、miRNA-4315とシトクロムcを用いて、ABT263療法の追加によりがん細胞死が効果的に増加し、抗PD1耐性を回避できる期間を定義できることが示された。この研究のおかげで、本発明者らは、エキソソームmiRNA-4315が、抗PD1抗体療法に対する耐性現象を発症している患者の層別化のための血液バイオマーカーとして使用できることを示し、この耐性現象を制限するための治療代替法(BH3模倣薬の使用)を特定した。
したがって、本発明は、エキソソームmiRNA-4315を用いた層別化方法およびBH3模倣薬を用いた癌に苦しむ患者の治療方法に関するものである。特に、本発明は、その特許請求の範囲によって定義される。
【0004】
発明の詳細な説明
予後診断法
第1の態様において、本発明は、i)前記患者からのサンプルにおけるエキソソームmiRNA-4315の発現レベルを決定すること、ii)前記発現レベルを所定の基準値と比較し、iii)エキソソームmiRNA-4315の発現レベルが所定の基準値より優れている場合、患者が抗PD1療法に対する耐性を有するか又は発現するリスクがあると結論付け、エキソソームmiRNA-4315の発現レベルが所定の基準値より劣る場合、患者が抗PD1療法に対する耐性を有しないか又は発現しないリスクがないと結論付ける工程を含む、抗PD-1療法に対する耐性を有するかまたは発症するリスクのある患者を特定する方法に関する。
【0005】
すなわち、本発明は、抗PD-1療法により治療される患者の層別化方法に関するものである。
【0006】
また、本発明は、i)患者から得られたサンプルにおいて、エキソソームmiRNA-4315の発現レベルを決定すること、ii)前記発現レベルを所定の基準値と比較すること、iii)エキソソームmiRNA-4315の発現レベルが所定の基準値より優れている場合に、患者が抗PD1療法に反応しないと結論付け、エキソソームmiRNA-4315の発現レベルが所定の基準値より劣っている場合に患者が抗PD1療法に反応すると結論付けることを含む、癌に罹患している患者の抗PD-1療法の奏効を予測するための方法に関する。
【0007】
本発明によれば、本発明の方法は、特にin vitroの方法である。
【0008】
一実施形態では、癌は、任意の固体癌または液体癌であってもよい。典型的には、癌は、胆管癌(たとえば、肝周囲癌、遠位胆管癌、肝内胆管癌)、膀胱癌、骨癌(例えば。骨芽細胞腫、骨軟骨腫、血管腫、軟骨性線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨巨細胞腫、脊索腫、リンパ腫、多発性骨髄腫)、脳・中枢神経系がん(たとえば、髄膜腫、星細胞腫、乏突起膠腫、膠芽腫、上衣腫、神経膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、シュワノーマ、胚芽腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(たとえば、in situ乳管がん、浸潤性乳管がん、浸潤性、小葉がん、in、situ小葉がん、女性化乳房)、キャッスルマン病(たとえば、巨大リンパ節過形成、血管毛包性リンパ節過形成)、頸がん、大腸がん、子宮内膜がん(たとえば、子宮内膜腺癌、腺癌、乳頭状漿液腺癌、明細胞)、食道癌、胆嚢癌(粘液性腺癌、小細胞癌)、消化管カルチノイド腫瘍(たとえば、絨毛癌、絨毛腺腫デストルエンス)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓がん(腎細胞がんなど)、喉頭・下咽頭がん、肝臓がん(たとえば、血管腫、肝腺腫、巣状結節性過形成、肝細胞がん)、肺がん(たとえば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん)、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔・副鼻腔がん(たとえば、エステシオネーロブラストーマ、正中線肉芽腫)、上咽頭がん、神経芽腫、口腔・中咽頭がん、卵巣がん、すい臓がん、陰茎がん、下垂体がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(たとえば、胚性横紋筋肉腫、肺胞性横紋筋肉腫、多形横紋筋肉腫)、唾液腺がん、皮膚がん(たとえば、メラノーマ、非メラノーマ皮膚がん)、胃がん、精巣がん(たとえば、セミノーマ、非セミノーマ胚細胞がんなど)、胸腺がん、甲状腺がん(たとえば、濾胞がん、未分化がん、低分化がん、甲状腺髄質がん、甲状腺リンパ腫)、膣がん、外陰がん、子宮がん(たとえば、子宮平滑筋肉腫)である。
【0009】
特定の実施形態では、癌は、膠芽腫(GBM)、肺癌、乳癌または卵巣癌である。
【0010】
特定の実施形態では、膠芽腫は多形膠芽腫(GBM)であり、肺癌は肺腺癌である。
【0011】
典型的には、本発明による試料は、血液、血漿、血清試料、T細胞由来エキソソーム又は癌生検であり得る。
【0012】
本発明によれば、用語「患者」または「対象」は、齧歯類、ネコ、イヌ、および霊長類のような哺乳類を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトの乳児である。特に、対象は、癌、特に、GBM、肺癌、乳癌または卵巣癌を有するヒトを示す。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「miRNA-4315」は、17番染色体(17q21.31)上に位置し、miRBaseデータベースにおいてID番号MI0015844の下でアクセス可能なmiRNA遺伝子を示す。
【0014】
特に、miRNA-4315は、hsa-mir-4315-1であり、成熟miRNA-4315の核酸配列は、(5’-3’):CCGCUUCUGAGCUGGAC(配列番号1)である。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「エキソソームmiRNA-4315」は、エキソソームにおけるmiRNA-4315の存在を示す。特定の実施形態では、「エキソソームmiRNA-4315」は、抗PD-1療法に曝露したT細胞由来のmiRNA-4315を含むエキソソームである。
【0016】
本明細書で使用されるように、用語「エキソソームmiRNA-4315の発現レベル」又は「エキソソームmiRNA-4315のレベル」は、miRNA-4315の全体と比較したエキソソームmiRNA-4315のレベルを表す。
【0017】
本明細書で使用されるように、用語「抗PD-1療法」は、患者の癌を治療するための少なくとも1つの抗体抗PD-1の使用を示す。例えば、抗体抗PD-1は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ又はセミプリマブであり得る。
【0018】
特定の実施形態では、患者は、抗PD-1療法と同時に、別々に、または逐次的に、標準化学療法を受けることができる。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「標準化学療法」は、シタラビン、アントラサイクリン、フルダラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、メトトレキサート、タキソール、タキソテール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シクロホスファミド、イフォスファミド、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなどの白金錯体、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド、テニポシド、カンパテシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノミシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、L-アスパラギナーゼ、ドキソルビシン、エピンビム、5-フルオロウラシル、ドセタキセルやパクリタキセルなどのタキサン系、ロイコボリン、レバミソール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、ナイトロジェンマスタード、BCNU、カルムストメやロムスチンなどのニトロソウレア剤、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンなどのビンカアルカロイド、メシル酸イマチン、ヘキサメチルアミン、トポテカン、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、ATPase阻害剤、ティルホスチン、プロテアーゼ阻害剤、阻害剤ハービミクイフォスファミド、エルブスタチンおよびラベントスチンAからなるがそれだけに限らない群から選択される古典的抗癌剤を示す。
一実施形態では、追加の抗癌剤は、以下のクラスの薬剤の1つまたは組み合わせから選択され得るが、これらに限定されるものではない:アルキル化剤、植物アルカロイド、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、抗フォレート、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、DNA代謝拮抗剤、タキサン、ポドフィロトキシン、ホルモン療法、レチノイド、光増感剤または光力学的療法、血管形成阻害剤、抗微生物剤、アイソプレニル化阻害剤、細胞周期阻害剤、アクティノマイシン、ブレオマイシン、MDR阻害剤およびCa2+ATPase阻害剤。
【0020】
特に、標準化学療法は、オキサリプラチン、シスプラチン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドキソルビシンまたはパクリタキセルであり得る。
【0021】
別の実施形態では、癌、特に膠芽腫に罹患した患者は、最大限の外科的切除、放射線療法、およびテモゾロミドのような補助標準化学療法の併用からなる標準治療で治療することもできる。
【0022】
一実施形態において、また本発明の方法によれば、本発明のエキソソームmiRNA-4315の発現レベルの決定は、患者の抗PD-1療法による治療の開始前または開始後に決定され得る。
【0023】
上記で使用される「発現レベルの決定」という用語は、対照を参照するか否かを問わず、定性的及び/又は定量的な検出(レベルを測定すること)を含む。典型的には、本発明のmiRの発現レベルは、例えば、RNA-免疫沈降法、架橋免疫沈降法、qRT-PCRの実施、及び試料に対する全てのRNA配列決定法によって測定され得る。
【0024】
基準値」は、健康な対象、すなわち、いかなる癌、特に膠芽腫にも罹患していない対象であってもよい。特に、前記対照は、健常者でない対象である。別の実施形態では、「基準値」は、抗PD-1療法に対する耐性を有しない癌を有する対象であり得る。
【0025】
miRの発現レベルの測定は、当技術分野でよく知られている様々な技術によって行うことができる。本発明の場合、本発明のmiRのレベルを決定する前に、T細胞由来のエキソソーム(T cell-derived exosome)は、それを可能にする任意の技術によって単離および定量される(例えば、本願の材料および方法部分を参照)。特に、エキソソームの単離には、「ExoQuick」(材料及び方法の部分を参照)を使用することができる。
【0026】
miRの量を決定するための方法は、当該技術分野において周知である。たとえば、試料(たとえば、患者から調製した細胞または組織)に含まれる核酸は、まず標準的な方法に従って抽出され、たとえば、溶解酵素または化学溶液を使用するか、または製造者の指示に従って核酸結合樹脂によって抽出される。次に、抽出されたmiRは、ハイブリダイゼーション(たとえば、ノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション)及び/又は増幅(たとえば、RT-PCR)により検出される。
【0027】
増幅の他の方法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写媒介増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)などが挙げられる。
【0028】
少なくとも10ヌクレオチドを有し、本明細書で関心のあるmiRに対して配列相補性または相同性を示す核酸は、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーとして有用である。そのような核酸は同一である必要はないが、典型的には、同等のサイズの相同領域と少なくとも約80%同一、より詳細には85%同一、さらに詳細には90~95%同一であることが理解される。特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションを検出するために、検出可能なラベルなどの適切な手段と組み合わせて核酸を使用することが有利になるであろう。
【0029】
典型的には、核酸プローブは、たとえば、開示されたプローブを用いた標的核酸分子の検出を可能にするために、1つまたは複数のラベルを含む。in situハイブリダイゼーション手順などの様々な用途において、核酸プローブは標識(たとえば、検出可能な標識)を含む。検出可能な標識」とは、サンプル中のプローブ(特に、結合またはハイブリダイズしたプローブ)の存在または濃度を示す検出可能なシグナルを生成するために使用できる分子または材料である。したがって、標識核酸分子は、サンプル中の標的核酸配列(たとえば、ゲノム標的核酸配列)(標識一意性核酸分子が結合またはハイブリダイズしたもの)の存在または濃度の指標を提供する。1つまたは複数の核酸分子(開示された方法によって生成されたプローブなど)に関連する標識は、直接的または間接的に検出され得る。ラベルは、光子(無線周波数、マイクロ波周波数、赤外線周波数、可視周波数および紫外線周波数の光子を含む)の吸収、放出および/または散乱を含む任意の既知のまたはまだ発見されていないメカニズムによって検出され得る。検出可能なラベルには、着色、蛍光、燐光および発光の分子および材料、ある物質を別の物質に変換して検出可能な差異を提供する触媒(酵素など)(たとえば、無色物質を着色物質に変換することまたはその逆、あるいは沈殿物を生成またはサンプル濁度を増加させることによって)、抗体結合相互作用によって検出できるハプテン、ならびに常磁および磁気分子または材料が挙げられる。
【0030】
検出可能なラベルの特定の例には、蛍光分子(またはフルオロクロム)が含まれる。多数のフルオロクロムが当業者に知られており、たとえば、Life Technologies(旧Invitrogen)、たとえば、The Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies)参照から選択することができる。核酸分子(一意的に特異的な結合領域など)に付着(たとえば、化学的に結合)させることができる特定のフルオロフォアの例は、Nazarenkoらの米国特許第5,866,366号、たとえば、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’ジスルホン酸、アクリジンおよびアクリジンイソチオシアネートなどの誘導体、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-[3ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド-3,5 ジスルホン酸塩(ルシファーイエローVS)、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントル1ラニルアミド、ブリリアントイエロー、クマリン及びクマリンなどの誘導体、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(クマリン151);シアノシン;4’,6-ジアルニジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5’,5”ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン;ジエチレントリアミン五酢酸;4,4’-ジイソチオシアナトジヒドロチルベン-2,2’-ジスルホン酸;4,4”-ジイソチオシアナトチルベン-2,2’-ビスルホ1酸.5-[ジメチルアミノ]ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、塩化ダンシル);4-(4’-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC);エオシンおよびエオシンイソチオシアネートなどの派生物;エリスロジンおよびエリスロジンB、エリスロジンイソチオシアネートなどの派生物など;エチジウム;フルオレセインおよび5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6 ジクロトリアジン-2-yダルミノフルオレセイン)(DTAF)、2’7’ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオロセイン、フルオロセンシアン(FITC)およびQFITC Q(RITC)といった誘導体など;2’,7’-ジフルオロフルオレセイン(OREGON GREENR);フルオレアミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラロサニリン;フェノールレッド;B-フィコエリスリン;o-フタルアルデヒド;ピレンおよびピレン、ピレンブチレートおよびスクシンイミドリル1ピレンブチレートなどの誘導体など;リアクティブレッド4(シバクロン ブリリアントレッド3B-A);ローダミンおよびその誘導体(6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンX イソチオシアネート、ローダムグリーン、サルフォローダムB、シルフォルローダム101およびサルフォルローダム101の塩化スルホニル誘導体(テキサスレッド)); N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ローソク酸およびテルビウムキレート誘導体などである。他の適切なフルオロフォアとしては、約617mnで発光するチオール反応性ユーロピウムキレート(Heyduk and Heyduk, Analyt. Biochem. 248:216-27, 1997; J. Biol. Chem. 274:3315-22, 1999)、ならびにGFP、Lissamine(商標)、ジエチルアミノクマリン、フルオレッセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレッセイン、4,7-ジクロロローダムおよびキサンテン(リーらへの米国特許第5,800,996号に記載)およびそれらの誘導体である。当業者に知られている他のフルオロフォアも使用することができ、たとえば、Life Technologies(Invitrogen;Molecular Probes(Eugene,Oreg.))から入手可能で、ALEXA FLUORRシリーズの色素を含む(たとえば、米国特許第5,696,157号、6,130,101号および6,716,979号に記載)、BODIPYシリーズ色素(ジピロメテンボロンジフルオリド色素、たとえば、米国特許第4,774,339号、第5,187,288号、第5,248,782号、第5,274,113号、第5,338,854号、第5,451,663号、第5,433,896号)、Cascade Blue(U.S.Pat.1 に記載のスルフォン化ピレンのアミン反応型誘導体)、Cascade Blue(U.S. No. 5,132,432号)、Marina Blue(米国特許第5,830,912号)に記載されているような色素を含む。
【0031】
上述の蛍光色素に加えて、蛍光ラベルは、蛍光ナノ粒子、たとえば、半導体ナノ結晶、たとえば、QUANTUM DOTTM(たとえば、Life Technologies(QuantumDot Corp、Invitrogen Nanocrystal Technologies、Eugene、Oreg)から入手できる;また、米国特許第6,815,064号;同第6,682,596号;および同第6,649,133号を参照。半導体ナノ結晶は、サイズに依存した光学的および/または電気的特性を有する微小な粒子である。半導体ナノ結晶を一次エネルギー源で照射すると、半導体ナノ結晶に使用されている半導体材料のハンドギャップに対応する周波数のエネルギーの二次放出が発生する。この発光は、特定の波長の色光や蛍光として検出することができます。異なる分光特性を有する半導体ナノ結晶は、たとえば、米国特許第6,602,660号、6,602,671号などに記載されている。たとえば、Bruchezら、Science 281 :20132016, 1998; Chanら、Science 281:2016-2018, 1998; および米国特許第6,274,323号に記載の技術により、種々の生体分子(dNTPsおよび/または核酸を含む)または基質に結合できる半導体ナノクリスタルが挙げられる。様々な組成の半導体ナノ結晶の形成は、たとえば、米国特許第6,927,069号、第6,914,256号、第6,855,202号、第6,709,929号、第6,689,338号、第6,500,622号、第6,306,736号、第6,225,198号、第6,207,392号、第6,114,038号、第6,048,616号、第5,990,479号、第5,690,807号、第5,571,018号、第5,505,928号、第5,262,357号及び米国特許公開第2003/0165951号、PCT公開第99/26299号(1999年5月27日発行)にも記載されている。半導体ナノ結晶の別個の集団は、それらの異なるスペクトル特性に基づいて識別可能であるように製造することができる。たとえば、半導体ナノ結晶は、その組成、サイズ、またはサイズと組成に依存して異なる色の光を放出するように製造することができる。たとえば、本明細書で開示するプローブの蛍光ラベルとして好適な、サイズに基づいて異なる波長で発光する量子ドット(565mn、655mn、705mn、または800mn発光波長)は、ライフテクノロジー(カリフォルニア州カールシャッド)から入手できる。
【0032】
その他のラベルとしては、たとえば、放射性同位元素(3Hなど)、Gd3+などの放射性または常磁性金属イオンのDOTAやDPTAキレートなどの金属キレート、およびリポソームがある。
【0033】
核酸分子と共に使用できる検出可能なラベルには、酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、ベータグルクロニダーゼ、またはベータラクタマーゼなどもある。
【0034】
あるいは、酵素はメタログラフィック検出スキームで使用され得る。たとえば、銀インサイチュハイブリダイゼーション(SISH)手順は、ハイブリダイズしたゲノム標的核酸配列の同定および局在化のためのメタログラフィック検出スキームを含む。メタログラフィック検出方式は、アルカリホスファターゼなどの酵素を、水溶性金属イオンと酵素の酸化還元活性基質と組み合わせて使用することを含む。基質は酵素によって酸化還元活性剤に変換され、酸化還元活性剤は金属イオンを還元し、検出可能な沈殿物を形成させる。(たとえば、米国特許出願公開第2005/0100976号、PCT公開第2005/003777号および米国特許出願公開第2004/0265922号を参照)。メタログラフィーの検出方法はまた、水溶性金属イオン、酸化剤および還元剤とともにオキシド-還元酵素(ワサビペルオキシダーゼなど)を使用して、再び検出可能な沈殿物を形成することを含む。(たとえば、米国特許第6,670,113号参照)。
【0035】
開示された方法を用いて製造されたプローブは、ISH手順(例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、発色in situハイブリダイゼーション(CISH)および銀in situハイブリダイゼーション(SISH))または比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)などの核酸検出に使用できる。
【0036】
in situハイブリダイゼーション(ISH)は、メタフェーズまたはインターフェーズの染色体調製(スライドにマウントした細胞または組織サンプルなど)の文脈で、標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)を含むサンプルを、標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)に対して特異的に混成可能または特異的に標識したプローブと接触させる。スライドは任意に前処理され、例えば、均一なハイブリダイゼーションを妨害し得るパラフィンまたは他の材料を除去するために処理される。サンプルとプローブは、二本鎖核酸を変性させるために、例えば、加熱処理される。プローブ(適切なハイブリダイゼーションバッファーに配合)とサンプルを、ハイブリダイゼーションが起こるのに十分な条件と時間(通常は平衡に達するまで)で結合させる。染色体を洗浄し、過剰なプローブを除去し、染色体標識の検出を標準的な手法で行う。
【0037】
たとえば、ビオチン化プローブは、フルオレセイン標識アビジンまたはアビジン-アルカリホスファターゼを用いて検出することができる。フルオロクロム検出の場合、フルオロクロムを直接検出することもできるし、たとえばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識アビジンと共に試料をインキュベートすることもできる。FITCシグナルの増幅は、必要に応じて、ビオチン結合ヤギ抗アビジン抗体とのインキュベーション、洗浄、FITC結合アビジンとの2回目のインキュベーションによって行うことができる。酵素活性による検出の場合、サンプルは、たとえば、ストレプトアビジンとインキュベートし、洗浄し、ビオチン結合アルカリホスファターゼとインキュベートし、再度洗浄し、(たとえば、アルカリホスファターゼ(AP)バッファー中で)予め平衡化することができる。in situハイブリダイゼーション手順の一般的な説明については、たとえば、米国特許第4,888,278号に記載されている。
【0038】
FISH、CISH、およびSISHのための多数の手順が、当技術分野で知られている。たとえば、FISHを行うための手順は、米国特許第5,447,841号;第5,472,842号;および第5,427,932号;ならびにたとえば、Pir1kelら、Proc. Natl. Acad. Sci. 83:2934-2938, 1986;Pinkelら, Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9138-9142, 1988;およびLichterら, Proc. Natl. Acad. Sci.85:9664-9668、1988に記載されている。CISHは、たとえば、Tannerら、Am.1.Pathol. 157:1467-1472, 2000および米国特許第6,942,970号に記載されている。追加の検出方法は、米国特許第6,280,929号に記載されている。
【0039】
感度、分解能、または他の望ましい特性を改善するために、FISH、CISH、およびSISH手順と併用して多数の試薬および検出スキームを採用することができる。上述のように、蛍光色素で標識されたプローブ(蛍光色素およびQUANTUM DOTSRを含む)は、FISHを行う際に直接光学的に検出することができる。あるいは、プローブは、ハプテンなどの非蛍光分子で標識することができる(以下の非限定的な例のようなもの: ビオチン、ジゴキシゲニン、DNP、および種々のオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリル、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオ尿素、ロテノン、クマリン、クマリン系化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシン系化合物およびそれらの組み合わせ)、リガンドまたは他の間接検出可能部分)。このような非蛍光性分子で標識されたプローブ(およびそれらが結合する標的核酸配列)は、次に、サンプル(たとえば、プローブが結合している細胞または組織サンプル)を、選択したハプテンまたはリガンドに特異的な抗体(または受容体、または他の特異的結合パートナー)等の標識検出試薬に接触させて検出できる。検出試薬は、フルオロフォア(たとえば、QUANTUM DOTR)または別の間接的に検出可能な部分で標識することができ、またはフルオロフォアで標識することができる1つまたは複数の追加の特異的結合剤(たとえば、二次抗体または特異的抗体)と接触させることができる。
【0040】
他の例では、プローブ、または特異的結合剤(抗体、たとえば一次抗体、受容体または他の結合剤など)は、蛍光性または発色性組成物を検出可能な蛍光、着色または他の検出可能なシグナル(たとえば、SISHにおける検出可能な金属粒子の沈着におけるように)に変換することができる酵素でラベル化される。上記に示したように、酵素は、関連するプローブまたは検出試薬にリンカーを介して直接または間接的に付着させることができる。適切な試薬(たとえば、結合試薬)および化学物質(たとえば、リンカーおよび付着化学物質)の例は、米国特許出願公開第2006/0246524号;第2006/0246523号、および2007/0117153号に記載されている。
【0041】
標識されたプローブ特異的結合剤ペアを適切に選択することにより、単一のアッセイ(たとえば、単一の細胞または組織サンプル上、または複数の細胞または組織サンプル上)において複数の標的核酸配列(たとえば、ゲノム標的核酸配列)の検出を促進する多重検出スキームを製造できることが当業者には理解されるであろう。たとえば、第一標的配列に対応する第一プローブは、ビオチンなどの第一ハプテンで標識することができ、第二標的配列に対応する第二プローブは、DNPなどの第二ハプテンで標識することができる。サンプルをプローブに曝露した後、結合したプローブを検出するには、サンプルを第1の特異的結合剤(この場合、第1の蛍光体、たとえば、第1のスペクトル的に異なるQUANTUM DOTRで標識したアビジン、たとえば、585mnで発光する)および第2の特異的結合剤(この場合、第2の蛍光体(たとえば、705mnで発光する第2の蛍光体)で標識された抗DNP抗体、または抗体フラグメント)。プローブと結合剤のペアは、他の蛍光色素を使用して、多重検出スキームに追加することができる。直接法、間接法(1段階、2段階、またはそれ以上)の多くのバリエーションが想定されるが、これらはすべて、開示したプローブとアッセイの文脈に適している。
【0042】
プローブは、通常、10~1000ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸からなり、例えば、10~800、より詳細には15~700、典型的には20~500の長さである。プライマーは、通常、10~25ヌクレオチド長の短い一本鎖核酸であり、増幅されるべき目的の核酸と完全に、またはほぼ完全に一致するように設計される。プローブとプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に対して「特異的」であり、すなわち、それらは特に高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件(最高融解温度Tmに対応し、例えば、50%ホルムアミド、5xまたは6xSCC.(SCCは、0.15M NaCl、0.015M Na-クエン酸)。
【0043】
上記増幅・検出方法に用いられる核酸プライマーまたはプローブは、キットとして組み立てることができる。このようなキットには、コンセンサスプライマーと分子プローブが含まれる。また、特定のキットは、増幅が起こったかどうかを判定するために必要な成分を含む。キットはまた、例えば、PCR緩衝液および酵素;陽性対照配列、反応制御プライマー;ならびに特定の配列を増幅および検出するための説明書を含み得る。
【0044】
特定の実施形態では、本発明の方法は、卵丘細胞から抽出された全miRを提供するステップと、miRを増幅および特定のプローブへのハイブリダイゼーション、より詳細には定量または半定量RT-PCRによる方法に供するステップとを含む。
【0045】
別の特定の実施形態では、発現レベルは、DNAチップ分析によって決定される。このようなDNAチップ又は核酸マイクロアレイは、マイクロチップ、スライドガラス又はミクロスフェアサイズのビーズであり得る基板に化学的に付着された異なる核酸プローブからなる。マイクロチップは、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖類、シリカまたはシリカ系材料、炭素、金属、無機ガラス、またはニトロセルロースで構成することができる。プローブは、約10~約60塩基対のcDNAやオリゴヌクレオチドなどの核酸で構成される。発現レベルを決定するために、被験体からのサンプルは、任意で最初に逆転写に供され、標識され、ハイブリダイゼーション条件下でマイクロアレイと接触し、マイクロアレイ表面に付着したプローブ配列に相補的な標的核酸間の複合体の形成に至る。標識されたハイブリダイゼーション複合体は、その後検出され、定量化または半定量化することができる。標識化は、例えば放射性標識または蛍光標識の使用など、様々な方法によって達成され得る。マイクロアレイハイブリダイゼーション技術の多くの変形が、当業者に利用可能である(たとえば、Hoheiselによるレビュー、Nature Reviews、Genetics、2006、7:200-210を参照)。
【0046】
遺伝子の発現量は、絶対発現量または正規化発現量として表すことができる。典型的には、発現レベルは、患者の癌ステージを決定するのに関連しない遺伝子、たとえば、構成的に発現するハウスキーピング遺伝子の発現と比較することにより、遺伝子の絶対発現レベルを補正することによって正規化される。正規化に適した遺伝子としては、アクチン遺伝子ACTB、リボソーム18S遺伝子、GUSB、PGK1及びTFRCのようなハウスキーピング遺伝子が挙げられる。本発明によれば、使用されたハウスキーピング遺伝子は、GAPDH、GUSB、TBPおよびABL1であった。この正規化により、1つのサンプル、たとえば患者サンプルにおける発現レベルを、別のサンプルと、または異なる供給源からのサンプル間で比較することができる。
【0047】
典型的には、「閾値」、「閾値レベル」、「基準値」または「カットオフ値」は、実験的、経験的、または理論的に決定することができる。閾値はまた、当業者によって認識されるであろう、既存の実験及び/又は臨床条件に基づいて任意に選択することができる。特に、当業者は、本発明の方法に従って得られた本発明のmiRの発現レベルを、定義された閾値と比較することができる。
【0048】
特に、前記閾値は、健康な個体の集団の本発明のmiRの平均発現レベルである。本明細書で使用する場合、用語「健康な個体」は、健康であることが知られているヒト、すなわち、癌、特に膠芽腫を患っておらず、医療を必要としないヒトを表す。
【0049】
典型的には、当業者は、健康であるか否かが知られている100人の生物学的試料、特に、たとえば、膠芽腫癌の生検における本発明のmiRの発現レベルを決定し得る。次に、得られた発現レベルの平均値を、周知の統計解析に従って決定し、本発明のmiRの平均発現レベルを得る。この値は、正常であるとみなされるため、閾値となる。本発明のmiRの発現量をこの閾値と比較することで、医師は癌を分類し、予後を診断することができるようになる。
【0050】
したがって、医師は、癌に罹患している生命を脅かす重篤な状態にある患者に対して、適切な医療を適応し最適化することができるようになる。前記予後の決定は、フォローアップケアおよび臨床的意思決定に非常に適切である。
【0051】
本発明はまた、本発明のmiRを検出するための手段を含む、本発明の方法に有用なキットに関する。
【0052】
治療方法
本発明の第2の態様は、本発明による抗PD-1療法に対する耐性を有する、または有するであろう、または発症するであろうとして同定された対象における癌の治療において使用するためのBH3模倣剤に関連する。
【0053】
言い換えれば、本発明は、本発明による抗PD-1療法に反応しない対象の処置に使用するためのBH3模倣剤に関する。
【0054】
したがって、本発明はまた、i)前記患者からのサンプルにおけるエキソソームmiRNA-4315の発現レベルを決定すること、ii)前記発現レベルを所定の基準値と比較し、iii)エキソソームmiRNA-4315の発現レベルが所定の基準値より優れている場合、患者が抗PD1療法に対する耐性を有するかまたは発現する危険性があると結論づけ、患者が抗PD1療法に対する耐性を有するかまたは発現しない危険がないと結論づけることからなる工程を含む、抗PD-1療法に対する耐性を有するかまたはそのリスクを有する患者を特定する方法に関する。エキソソームmiRNA-4315の発現量が所定の基準値より劣る場合にPD1療法を行い、抗PD1療法に対する耐性を有するか、またはそのおそれがある患者に対してBH3模倣薬を投与することになる。
【0055】
すなわち、本発明は、i)患者から得られたサンプルにおいて、エキソソームmiRNA-4315の発現レベルを決定すること、ii)前記発現レベルを所定の基準値と比較すること、およびiii)エキソソームmiRNA-の発現レベルが高い場合、患者が抗PD1療法に反応しないと結論づけること、4315が所定の基準値より優れており、エキソソームmiRNA-4315の発現量が所定の基準値より劣る場合に、患者が抗PD1療法に反応すると結論付け、抗PD1療法に反応しない患者にBH3模倣薬を投与することを含む、その必要があるがんを患う患者の抗PD-1療法の効果を予測する方法に関する。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「BH3模倣剤」は、抗アポトーシスタンパク質であるBcl-2に対する作用(阻害)を有する全ての化合物を示し、BH3のみのタンパク質を模倣することができ、したがってアポトーシスを誘発する全ての小分子を含む(たとえば、Haiming Dai et al. Mitochondrial apoptosis and BH3 mimeticsを参照。2016)。BH3模倣剤は、ABT-737、venetoclax(ABT-199)およびnavitoclax(ABT-263)で構成される群から選択され得る。
【0057】
別の実施形態では、本発明はまた、本発明による抗PD-1療法に対する耐性を有するか、または有するであろう、または発症するであろうとして識別された対象における癌の治療における使用のための抗miRNA-4315(antago-miR)にも関連する。
【0058】
言い換えれば、本発明は、本発明による抗PD-1療法に反応しない対象の治療に使用するための抗miRNA-4315(antago-miR)にも関する。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「処置」または「処置する」は、予防的または予防的治療と、治癒的または疾患修飾的治療の両方を指し、疾患に罹患するリスクのある、または疾患に罹患した疑いのある対象、ならびに疾患または病状に苦しんでいると診断された対象に対する治療を含み、臨床再発の抑制を含む。治療法は、疾患または再発する障害の1つまたは複数の症状を予防、治癒、発症の遅延、重症度の軽減、または改善するために、またはそのような治療がない場合に予想されるよりも被験者の生存期間を延長するために、医学的障害を有する被験者に投与され得るか、最終的にその障害を獲得し得る被験者に適用される。治療レジメン」とは、病気の治療のパターン、例えば、治療中に使用される投薬のパターンを意味する。治療レジメンは、導入レジメン及び維持レジメンを含み得る。導入レジメン」又は「導入期間」という語句は、疾患の初期治療に使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を意味する。導入レジメンの一般的な目標は、治療レジメンの初期期間中に被験者に高レベルの薬物を提供することである。導入レジメンは、(部分的又は全体的に)「負荷レジメン」を採用することができ、これには、医師が維持レジメン中に採用するよりも多量の薬剤を投与すること、医師が維持レジメン中に薬剤を投与するよりも頻繁に薬剤を投与すること、又はその両方を含むことができる。維持レジメン」又は「維持期間」という語句は、病気の治療中に被験者の維持のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指し、例えば、被験者を長期間(数ヶ月又は数年)寛解状態に維持するためである。維持レジメンは、連続療法(例えば、一定間隔、例えば、毎週、毎月、毎年、薬剤を投与する)又は間欠療法(例えば、中断治療、間欠治療、再発時の治療、又は特定の所定の基準[例えば、疾患発現など]を達成したときの治療)を採用し得る。
【0060】
本発明はまた、i)抗PD-1療法およびii)BH3模倣剤であって、本発明による抗PD-1療法に対する耐性を有する、または有するであろう、もしくは発症するであろう対象における癌の治療において使用するための、同時、別々、または逐次用の組み合わせ調製物に関する。
【0061】
本発明はまた、i)抗PD-1療法およびii)BH3模倣剤であって、本発明による抗PD1療法に反応しない対象における癌の治療に使用するための、同時、別々または逐次の組み合わせ製剤に関する。
【0062】
本発明はまた、i)本発明による抗PD-1療法、ii)BH3模倣剤およびiii)標準化学療法を、本発明による抗PD-1療法に対する耐性を有するかまたは有するようになるかまたは発症すると識別された対象における癌の処置に使用するための、同時、分離または連続の組み合わせ調製物に関する。本発明はまた、i)本発明による抗PD-1療法、ii)BH3模倣剤およびiii)標準化学療法を、本発明による抗PD1療法に反応しない対象における癌の治療に使用するための、同時、別々または逐次の組み合わせ調製物に関する。
【0063】
特定の実施形態では、対象は、放射線療法または放射線療法剤によって治療することもできる。
【0064】
本明細書で使用する場合、「放射線治療」は、ガンマ線照射、X線照射、電子または光子、外部放射線治療またはキュリセラピーからなり得る。
【0065】
本明細書で使用されるように、用語「放射線治療剤」、は、限定されることなく、癌を治療または改善するのに有効であることが当業者に知られている任意の放射線治療剤を指すことが意図される。たとえば、放射線治療剤は、ブラキセラピーまたは放射性核種治療において投与されるような薬剤であり得る。そのような方法は、任意に、化学療法、および/または別の放射線療法に限定されないが、そのような1つまたは複数の追加の癌治療薬の投与をさらに含むことができる。
【0066】
一実施形態において、本発明による癌は、GBM、肺癌、乳癌または卵巣癌である。
【0067】
一実施形態において、および処置の方法に従って、癌は、任意の固体または液体の癌であってもよい。典型的には、癌は、癌は、胆管癌(たとえば、肝周囲癌、遠位胆管癌、肝内胆管癌)、膀胱癌、骨癌(例えば。骨芽細胞腫、骨軟骨腫、血管腫、軟骨性線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨巨細胞腫、脊索腫、リンパ腫、多発性骨髄腫)、脳・中枢神経系がん(たとえば、髄膜腫、星細胞腫、乏突起膠腫、膠芽腫、上衣腫、神経膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、シュワノーマ、胚芽腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(たとえば、in situ乳管がん、浸潤性乳管がん、浸潤性、小葉がん、in、situ小葉がん、女性化乳房)、キャッスルマン病(たとえば、巨大リンパ節過形成、血管毛包性リンパ節過形成)、頸がん、大腸がん、子宮内膜がん(たとえば、子宮内膜腺癌、腺癌、乳頭状漿液腺癌、明細胞)、食道癌、胆嚢癌(粘液性腺癌、小細胞癌)、消化管カルチノイド腫瘍(たとえば、絨毛癌、絨毛腺腫デストルエンス)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓がん(腎細胞がんなど)、喉頭・下咽頭がん、肝臓がん(たとえば、血管腫、肝腺腫、巣状結節性過形成、肝細胞がん)、肺がん(たとえば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん)、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔・副鼻腔がん(たとえば、エステシオネーロブラストーマ、正中線肉芽腫)、上咽頭がん、神経芽腫、口腔・中咽頭がん、卵巣がん、すい臓がん、陰茎がん、下垂体がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(たとえば、胚性横紋筋肉腫、肺胞性横紋筋肉腫、多形横紋筋肉腫)、唾液腺がん、皮膚がん(たとえば、メラノーマ、非メラノーマ皮膚がん)、胃がん、精巣がん(たとえば、セミノーマ、非セミノーマ胚細胞がんなど)、胸腺がん、甲状腺がん(たとえば、濾胞がん、未分化がん、低分化がん、甲状腺髄質がん、甲状腺リンパ腫)、膣がん、外陰がん、子宮がん(たとえば、子宮平滑筋肉腫)である。
【0068】
特定の実施形態では、膠芽腫は、GBM、肺がん、乳がんまたは卵巣がんである。
【0069】
本発明の別の目的は、本発明による抗PD-1療法に対する耐性を有する、または有するであろう、または発症するであろうとして識別された対象に、治療上有効な量のBH3模倣剤を投与することを含む、癌を治療するための方法に関する。
【0070】
治療用組成物
本発明の別の目的は、本発明による抗PD-1療法に対する耐性を有する、または有するであろう、または発症するであろう、と識別された対象における癌の治療において使用するための、本発明によるBH3模倣剤を含む治療組成物に関する。
【0071】
本発明のさらに別の目的では、本発明による抗PD-1療法に反応しない対象における癌の治療に使用するための、本発明によるBH3模倣剤を含む治療組成物に関するものである。
【0072】
本発明の任意の治療薬は、薬学的に許容される賦形剤、および任意で生分解性ポリマーなどの徐放性マトリックスと組み合わせて、治療用組成物を形成することができる。
【0073】
「薬学的に」または「薬学的に許容される」とは、哺乳類、特にヒトに投与したときに、有害反応、アレルギー反応または他の不快な反応を生じない分子実体および組成物を適宜示す。薬学的に許容される担体または賦形剤とは、任意のタイプの非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料または製剤補助剤を指す。
【0074】
医薬組成物の形態、投与経路、投与量及びレジメンは、当然ながら、治療すべき状態、疾患の重症度、患者の年齢、体重及び性別等に依存する。
【0075】
本発明の医薬組成物は、外用、経口、鼻腔内、非経口、眼内、静脈内、筋肉内または皮下投与等の目的で製剤化することができる。
【0076】
特に、医薬組成物は、注射可能な製剤として薬学的に許容されるビヒクルを含む。これらは、特に等張、無菌、生理食塩水(リン酸一ナトリウムまたは二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウムなどまたはこれらの塩の混合物)、または乾燥、特に凍結乾燥組成物で、場合により滅菌水または生理食塩水を加えることにより、注射液の構成が可能となる。
【0077】
投与に使用される用量は、様々なパラメーターの関数として、特に、使用される投与様式、関連する病態の関数として、または代替的に治療の望ましい期間の関数として、適合させることが可能である。
【0078】
さらに、他の薬学的に許容される形態としては、例えば、経口投与用の錠剤または他の固体;タイムリリースカプセル;および現在使用できる他の任意の形態が挙げられる。
【0079】
本発明の医薬組成物は、さらなる治療用活性剤を含んでいてもよい。本発明はまた、本発明による化合物およびさらなる治療活性剤を含むキットに関する。
【0080】
一実施形態では、前記治療用活性剤は、抗がん剤であり得る。
【0081】
抗がん剤としては、メルファラン、ビンクリスチン(オンコビン)、シクロホスファミド(サイトキサン)、エトポシド(VP-16)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、リポソームドキソルビシン(ドキシル)、ベンダムスチン(トレアンダ)などが考えられる。
【0082】
その他の抗癌剤としては、例えばシタラビン、アントラサイクリン、フルダラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、メトトレキサート、タキソール、タキソテール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シクロホスファミド、イフォスファミド、ニトロソウレアなどを挙げることができる、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなどの白金錯体、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド、テニポシド、カンパテシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、マイトキサントロン、L-アスパラギナーゼ、ドキソルビシン、エピンビシル、5-フルオロウラシル、ドセタキセルやパクリタキセルなどのタキサン系、ロイコボリン、レバミソール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、ナイトロンジャード、BCNU、カルムストメやロムスチンなどのニトロソウレア、ビンブラスチンなどのビンカアルカロイド、ビンクリスチンおよびビノレルビン、メシル酸イマチン、ヘキサメチルアミン、トポテカン、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、ATPaイフォスファミドホスチン、プロテアーゼ阻害剤、阻害剤ハービミクA、ゲニスチン、エルブスタチン、およびラベントスチンA。一実施形態では、追加の抗癌剤は、以下のクラスの薬剤の1つまたは組み合わせから選択され得るが、これらに限定されるものではない:アルキル化剤、植物アルカロイド、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、抗フォレート、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、DNA代謝拮抗剤、タキサン、ポドフィロトキシン、ホルモン療法、レチノイド、光増感剤または光力学的療法、血管形成阻害剤、抗微生物剤、アイソプレニル化阻害剤、細胞周期阻害剤、アクティノマイシン、ブレオマイシン、MDR阻害剤およびCa2+ATPase阻害剤。
【0083】
追加の抗癌剤は、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、成長抑制因子、ホルモン、可溶性受容体、デコイ受容体、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、単一特異性、二重特異性または多特異性抗体、モノボディ、ポリボディから選択できるが、これらに限定はされない。
【0084】
追加の抗がん剤は、エリスロポエチンやトロンボポエチンなどの成長因子または造血因子、およびそれらの成長因子模倣物から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
癌を治療するための本発明の方法において、さらなる治療活性剤は、制吐剤であり得る。好適な制吐剤としては、メトクロプロミド、ドンペリドン、プロクロルペラジン、プロメタジン、クロルプロマジン、トリメトベンザミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、ヒドロキシジン、アセチルロイシンモノエタノールアミン、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキンアミドなどがあるが、それだけにとどまらない、ビエタナウチン、ブロモプライド、ブクリジン、クレボプライド、シクリジン、デュネンヒドリナート、ジフェニドール、ドラセトロン、メクリスム、メタラタル、メトピマジン、ナビロン、オキシペムジル、ピバマジン、スコポラミン・サルピリド、テトラヒドロカンビノール、シーフイルペラジン、チオプロペラジン及びトロピセトロンのいずれか。好ましい実施形態では、制吐剤は、グラニセトロンまたはオンダンセトロンである。
【0086】
別の実施形態では、さらなる治療活性剤は、造血コロニー刺激因子であり得る。好適な造血コロニー刺激因子としては、フィルグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチムおよびエポエチンαが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
さらに別の実施形態では、他の治療活性剤は、オピオイドまたは非オピオイド鎮痛剤であり得る。好適なオピオイド鎮痛剤としては、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、オキシモルフォン、オキシコドン、メトポン、アポモルフィン、ノミオイプヒネ、エトイプビン、ブプレノルフィン、メペジン、ロパミドがあるが、これらに限定はされない、アニレジン、エトヘプタジン、ピミニジン、ベタプロジン、ジフェノキシレート、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、レボルファノール、デキストロメトルファン、フェナゾドン、ペマゾシン、シクラゾシン、メタドン、イソメタドンおよびプロポキシフェン。好適な非オピオイド鎮痛剤としては、アスピリン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ジクロフィナク、ジフルジナル、エトドラク、フェノプロフェン、フルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、メクロフェナマート、メファナム酸、ナブメトン、ナプロクセン、ピロキシカム、スリンダクなどがあるがこれに限定はない。
【0088】
さらに別の実施形態では、さらなる治療活性剤は、抗不安剤であり得る。好適な抗不安剤としては、ブスピロン、およびジアゼパム、ロラゼパム、オキサザパム、クロラゼペート、クロナゼパム、クロルジアゼポキシドおよびアルプラゾラムなどのベンゾジアゼピンが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0089】
さらに別の実施形態では、さらなる治療活性剤は、チェックポイント遮断癌免疫療法剤であり得る。
【0090】
典型的には、チェックポイント阻害癌免疫療法剤は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)やプログラム細胞死1(PDCD1)など、活性化Tリンパ球が発現する免疫抑制受容体を阻害する薬剤である、PD-1として最もよく知られている)、またはキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)ファミリーの様々なメンバーのようにNK細胞によって、またはPD-1リガンドCD274(PD-L1またはB7-H1として最もよく知られている)のようにこれらの受容体の主要リガンドをブロックする薬剤である。
【0091】
一般的に、チェックポイント阻害型がん免疫療法剤は、抗体である。
【0092】
いくつかの実施形態において、チェックポイント遮断癌免疫療法剤は、抗CTLA4抗体、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗PDL2抗体、抗TIM-3抗体、抗LAG3抗体、抗IDO1抗体、抗TIGIT抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、抗BTLA抗体、及び抗B7H6からなる群から選択される抗体である。
【0093】
本発明は、以下の図および実施例によってさらに説明される。しかし、これらの実施例および図は、本発明の範囲を限定するものとしていかなる意味でも解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1A】
図1:抗PD1療法に曝露したT細胞のエキソソームは、miR-4315を介してテモゾロミドによる細胞死を減少させる。A.14日目に、抗PD-1曝露がmiR-4315のエキソソームレベルを増加させることを示すために、RT-qPCRを実施した。B.指示されたエキソソームに曝露した後のA1エキソソームmiR-4315レベルを検証するために、RT-qPCRを実行した。
【
図1B】
図1:抗PD1療法に曝露したT細胞のエキソソームは、miR-4315を介してテモゾロミドによる細胞死を減少させる。A.14日目に、抗PD-1曝露がmiR-4315のエキソソームレベルを増加させることを示すために、RT-qPCRを実施した。B.指示されたエキソソームに曝露した後のA1エキソソームけるmiR-4315レベルを検証するために、RT-qPCRを実行した。
【
図2】
図2:αPD1に曝露したT細胞由来のエキソソーム(Exo/αPD1)は、miR-4315を介してA549細胞のシスプラチン誘導アポトーシスの表現型を促進する。シスプラチン誘導性細胞死測定、PARPおよびCaspase-3切断を適用して、αPD1に曝露したT細胞由来のエキソソーム(Exo/αPD1)がシスプラチン誘導性アポトーシスのフェノタイプを促進することを示しました。RT-qPCRと細胞内ELISAにより、この現象がmiR-4315を介したBimのダウンレギュレーションと関連していることを明らかにした。
【
図3A】
図3:卵巣(OV90)(3A)および乳房(MCF7)>がん細胞のオキサリプラチンまたはパクリタキセルによる細胞死誘導に対するエキソソーム前処理の影響(3B)。
【
図3B】
図3:卵巣(OV90)(3A)および乳房(MCF7)>がん細胞のオキサリプラチンまたはパクリタキセルによる細胞死誘導に対するエキソソーム前処理の影響(3B)。
【
図4A】
図4:ABT263は、肺がんのin vivoモデルにおいて、抗PD1/exomiR-4315が誘発する化学療法への抵抗性を無効にする。A.シスプラチン誘導細胞死測定およびPARPおよびカスパーゼ3切断試験を適用して、αPD1(Exo/αPD1)に曝露したT細胞由来のエキソソームによって誘導されるシスプラチン抵抗性の表現型がABT263.A細胞の使用によって阻害されることを示す。B.腫瘍量に対する処置の影響を表すグラフ。各治療には4匹のマウスが含まれる。
【
図4B】
図4:ABT263は、肺がんのin vivoモデルにおいて、抗PD1/exomiR-4315が誘発する化学療法への抵抗性を無効にする。A.シスプラチン誘導細胞死測定およびPARPおよびカスパーゼ3切断試験を適用して、αPD1(Exo/αPD1)に曝露したT細胞由来のエキソソームによって誘導されるシスプラチン抵抗性の表現型がABT263.A細胞の使用によって阻害されることを示す。B.腫瘍量に対する処置の影響を表すグラフ。各治療には4匹のマウスが含まれる。
【実施例】
【0095】
材料及び方法および
細胞培養。
T細胞はStem Cell Technology社(フランス)から入手し、10%のウシ胎児血清、1%のペニシリン-ストレプトマイシンを添加したRPMI培地で培養された。A172細胞およびMCF7細胞は、10%のウシ胎児血清、1%のペニシリン-ストレプトマイシンを添加したDMEM(4.5g/Lグルコース)培地中で培養した。SKOV3細胞およびA549細胞は、10%のウシ胎児血清、1%のペニシリン-ストレプトマイシンを添加したRMPI培地で培養した。MCF7細胞は、10%のウシ胎児血清、1%のペニシリン-ストレプトマイシンを添加したEMEMで培養された。すべての細胞は、5%CO2インキュベーターで37℃の温度で培養された。
【0096】
FOXO1活性。
FOXO1活性の推定には、TransAM(登録商標) FKHR/FOXO1 kit (Active Motif, France)を使用しました。 簡単に言うと、指示された時間と条件で、細胞を採取し、Nuclear Extraction Kit (Active Motif, France)を用いてタンパク質の核抽出に使用した。各ポイント(技術的二重、独立した生物学的三重)には、Active Motifの説明書に従って、15μgの核抽出物を使用した。ELISAプレートのO.D.は、Victor(商標)x3分光光度計(Perkin-Elmer,France)で読み取った。
【0097】
細胞の細胞毒性アッセイ
Colorimetric Cell Cytotoxicity Assay Kit (Abcam,France)を使用して、細胞生存率を推定した。簡単に言うと、細胞を96ウェルプレートに播種した。製造者の指示に従った後、Victor(商標)x3分光光度計(Perkin-Elmer,France)を用いて570nmと605nmで吸光度を読み取った。
【0098】
カスパーゼ3およびポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)切断の測定。
切断型カスパーゼ-3および切断型PARPのレベルは、いずれもアポトーシスのバイオマーカーとして考えられています。これら2つのパラメーターの測定は、Human Cleaved PARP1 and Human Cleaved Caspase-3 ELISA Kits (Abcam,France)を用いて、製造者のプロトコールに従って実施された。
【0099】
In-Cell ELISA。
細胞内ELISAは、Bim Colorimetric Cell-Based ELISAキット(Aviva Systems Biology、フランス)を用いて、製造者の説明書に従って実施した。簡単に説明すると、5,000個の細胞を96ウェルプレートに播種し、指示したエキソソームまたはmiRNAに曝露するかしないかを決定した。その後、細胞を固定液(4%パラホルムアルデヒド溶液)で、室温で10分間処理しエキソソームは、4℃で一晩インキュベートした。適切なHRP標識二次抗体を、室温で1時間インキュベートした。検出は450nmで行った。
【0100】
洗浄後、各ウェルの細胞を、製造者の指示に従って、クリスタルバイオレット溶液と室温で5分間インキュベートした。吸光度を595nmで読み取り、「Bimシグナル」を正規化するために使用した。
【0101】
ルシフェラーゼプロモーターおよび3’UTRレポーターアッセイ。
細胞を24ウェルプレートに播種し、SV40-renillaコントロールベクターとともに、指示したホタルルシフェラーゼ構築物でトランスフェクトした。40時間後に溶解液を調製し、Dual Luciferase Reporter Assay system(Promega, France)とルミノメーター(MicroLumat Plus,EG&G Berthold,France)を使用してルシフェラーゼ活性を測定した。
【0102】
細胞由来のエキソソームの単離
抗PD1曝露後、製造者の説明書に従って、ExoQuickキット(Ozyme、フランス)を用いてT細胞由来のエキソソームを単離した。簡単に言うと、細胞培養上清を採取し、3000g/15分で遠心分離した。ExoQuick溶液を上清とともに4℃/一晩でインキュベートした。最初の遠心分離(1500g/30分)の後、上清を吸引し、残留溶液を遠心分離した(1500g/5分)。エキソソームペレットをPBSに再懸濁した。ブラッドフォードアッセイ(Bio-Rad Laboratories,France)を用いて精製エキソソーム総タンパク質濃度を測定し、精製エキソソームを使用するまで-80℃で保存した。
【0103】
ナノサイト実験により、Exoquick製剤は主に80~120nmのサイズ範囲に含まれる細胞外ベスクル、すなわちエキソソームを定義するサイズ範囲からなることが示された(追加ファイル1)。従って、本稿では「エキソソーム」という用語を使用した。
【0104】
エキソソームおよび/またはmiRによる細胞処理。
T0では、7.105個の細胞を12ウェルプレートに播種した。1日後、細胞をT細胞由来のエキソソーム(150μg)及びα-アマニチン(50ug/ml)(Sigma,France)と共インキュベートした。残留するエキソソームは、PBS溶液で3回の細胞洗浄を経て除去した。α-amanitinは、DNA依存性RNAポリメラーゼII活性を阻害するため、実験条件によって引き起こされる推定miRNAの転写をブロックするために使用された39。細胞内のエキソソームが送達したmiRNAの量は、qRT-PCRを用いて、エキソソームのあるα-amanitin処理細胞とない細胞とのCt値の差により推定した。
【0105】
抗miRNAを用いたエキソソームローディング。
Exo-Fect Exosome Transfection reagent(Ozyme,France)を用いて、エキソソームをanti-miRNAでトランスフェクションした。簡単に説明すると、抗miRNAをエキソソーム(300μgのエキソソームタンパク)とシェーカーで37℃、15分間インキュベートした。ExoQuick-TC solutionを加えて反応を停止させた後、混合物を氷上で30分間インキュベートした。遠心分離後、トランスフェクトされたエキソソームペレットを300μLのPBSに再懸濁させてから使用した。ブラッドフォードアッセイ(Bio-Rad Laboratories,France)を用いて精製エキソソーム総タンパク質濃度を測定した。
【0106】
ミミック-miR,ミミック-突然変異-miR,miRインヒビター(anti-miRとも呼ばれる)を用いた細胞のトランスフェクションには、HiPerFect Transfection Reagents (Qiagen,France)を使用した。これらの試薬は、ミミック-miR-4315:5’CCGCUUCUGAGCUGGAC(Syn-hsa-miR-4315 miScript miRNA ミミック),ミミック-突然変異-miR-4315:5’CCGAAAUCUGAGCUGGAC,およびanti-miR-4315(miScript miRNA Inhibitor and miScript Inhibitor Neg. Control(Qiagen、フランス)。
【0107】
血漿サンプル。
血漿は、”Institut de Cancerologie de l’Ouest”(ICO, http://www.ico-cancer.fr)で治療を受けたGBM患者から収集した。採取した患者はすべて、署名入りのインフォームドコンセントを行った。収集したすべてのサンプルと関連する臨床情報は、フランス研究省によって検証されたデータベース(N°DC-2018-3321)に登録された。生物資源は「Centre de Ressources Biologiques-Tumorotheque」(Institut de Cancerologie de l’Ouest,Saint-Herblain,F44800,France)で保管した。
【0108】
血液からのエキソソームmiRNAの単離。
K+EDTAチューブで採取した血液サンプルから、10ml全血の2回の遠心分離(10分/1900g/4℃、10分/16000g/4℃)を介して、4~5mlの血漿を分離した。1mlの血漿を、ExomiRNeasy serum/plasma kit (Qiagen, France)を用いて、メーカーの説明書に従って、miRNAの分離のために処理した。
【0109】
miRNA RT-qPCR.
miScript II RT with miScriptHiSpec buffer、miScript SYBR Green PCR kits、miScript Primer Assays(Qiagen、フランス)を用いて、Rotor-Gene Q(Qiagen、フランス)上でRT-qPCRを実施しました。miRNAの定量と純度は、それぞれQubit(Thermo, France)とAgilent 2100(Small RNA kit, Agilent, France)を用いて、それぞれメーカーの説明書に従って解析した。
【0110】
RT-qPCR解析。
RNA抽出は、RNeasy Mini QIAcube KitおよびQIAcube(Qiagen、フランス)を用いて行う。RT-qPCRは、QuantiTect Reverse Transcription Kit、Rotor-Gene SYBR Green PCR Kit、QuantiTect Primer Assays、Rotor-Gene Q as real-time thermocycler(Qiagen, France)を使用して行う。参照遺伝子RPLP0を使用し、2-ΔΔCt相対定量法で行った。
【0111】
In vivo実験。
動物を用いた実験手順は、Institutional Animal Care guidelinesおよびFrench National Committee of Ethicsに従った。また、すべての実験は、「Institut de Recherche en Sante de l’Universite de Nantes(IRS-UN)」内の「Plate-forme Animalerie」での動物実験に関する規則に従って行われ、フランス国家倫理委員会から承認を受けた。培養したA549細胞をトリプシン処理で回収し、洗浄後、生理食塩水に再懸濁した。細胞懸濁液を7-8週齢のマウス(Janvier、フランス)の脇腹に皮下注射(s.c.)した。ノギス測定に基づく腫瘍体積は、修正楕円体式(腫瘍体積=1/2(長さ×幅2))を使用して算出した。
【0112】
統計解析と結果
指示がある場合を除き、データは3回の独立した実験から算出された平均値と標準偏差の代表値である。平均値±標準偏差の差の有意性は、Student-t検定を用いて計算した。2つのパラメーター間の相関の有意性は、ピアソン検定を用いて計算された。P<0.05を統計的有意性の基準として使用した。
【0113】
結果
抗PD1療法を受けたT細胞のエキソソームは、miR-4315を介してテモゾロミド誘発細胞死を減少させた
抗PD1抗体(αPD1)療法がT細胞に与える影響については、精製したヒトT細胞をαPD1に曝露することで解析した(データは未掲載)。抗PD1療法がTリンパ球のFoxO1の転写活性を促進することは、これまでに証明されている1。本モデルでは、1μg/mLのαPD1で処理したT細胞におけるFoxO1の転写活性が強く上昇した(p<0.0001)(データ未掲載)。そこで、miRGen.v3プログラムで行った予測研究に従って、FoxO1が制御する5つのmiRNA(miR-101-5p,miR-612,miR-3671,miR-4315,miR-let7i)の発現を解析した。RT-qPCRにより、これら5つのmiRNAのT細胞における発現が確認され(
図1A)、αPD1処理によってその発現が変化することはないようであった。しかし、驚くべきことに、miR-4315は、αPD1に曝露したT細胞由来のエキソソーム(Exo/αPD1)において、IgGコントロール(Exo)に曝露したT細胞由来のエキソソームよりも10倍多く発現していた(
図1A)。
【0114】
次に、コントロールまたはαPD1処理したT細胞が産生するエキソソームが、神経膠腫細胞株U172に与える影響を解析した。RT-qPCRにより、A172膠芽腫細胞におけるmiR-4315の細胞内レベルは、Exo/αPD1、α-amanitinおよびIgGコントロール(Exo)に曝露したT細胞由来のエキソソーム存在下で用量依存的に増加した(
図1B)。この観察から、Exo/αPD1から腫瘍細胞へのmiR-4315の取り込みと移動の可能性が示唆された(α-amanitinはmiR-4315のde novo産生をブロックするために使用したため)。
【0115】
テモゾロミド(TMZ)は、膠芽腫(GBM)細胞の死滅に用いられる標準的な化学療法剤である。そこで我々は、Exo/αPD1の存在下または非存在下で、A172に対するTMZの効果を、その細胞毒性およびPARP1およびCaspase-3の切断型(アポトーシスバイオマーカー)の検出によるアポトーシス誘導能の測定によって調べた。本実験では、TMZ(50μM、72時間)処理前の細胞に、表示されたエキソソームを48時間曝露しました。その結果、Exo/αPD1がTMZによるアポトーシスを抑制することが確認された(データ示さず)。このプロセスにおけるmiR-4315の寄与を決定するために、Exo/αPD1を抗miR-4315でトランスフェクトした。データは、抗miR-4315の存在が、Exo/αPD1の添加に関連するTMZ耐性を有意に減少させたことを示している。全体として、我々のデータは、エキソソームmiR-4315が化学療法薬によって誘導されるアポトーシスを制限することを実証した。また、この効果は、miR-4315単独で見られた効果と同様である(データは示さず)。
【0116】
抗PD1への曝露は、exomiR-4315/Bim軸を介して、いくつかのがん細胞タイプにおいて化学療法抵抗性の表現型を促進する
エキソソームmiR-4315がアポトーシスを制限することを示す以前のデータから、このmiRはBCL2ファミリーのプロアポトーシス蛋白質を標的とする可能性があると推測された。これらの蛋白質はアポトーシス実行の中心であるため。Target Scan Humanのウェブサイトは、アポトーシス促進タンパク質であるBimがmiR-4315の標的である可能性を示唆している(データは示されていない)。そこで、このタンパク質に着目して研究を行った。不活性変異体ではないものの、miR-4315のミミックは、タンパク質およびmRNAレベルでBimをダウンレギュレートし(データ示さず)、A172の3’UTR/Bimプラスミドに関連したルシフェラーゼ活性を低下させた(データ示さず)。Exo/αPD1はA172細胞のBim発現を減少させ、抗miR-4315はExo/αPD1によって誘導されるBim発現の減少を有意に制限した。GW182-CLIP-qPCRにより、T細胞由来Exo/αPD1で処理したA172細胞において、miR-4315は3’UTR/Bimと共沈していたが、T細胞由来Exoでは共沈していなかった(データ示さず)。同様に、抗miR-4315も、3’UTR/BimおよびGW182と共沈したmiR-4315のレベルを低下させたが、抗miR-Ctrlは影響を与えなかった(データは示さず)。
【0117】
同様の検討を、A549(肺がん細胞株)、OV90(卵巣がん細胞株)、MCF7(乳がん細胞株)に、それぞれのがんの化学療法であるオキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセルを投与または非投与で行った。A172神経膠腫細胞株で見られたように、Exo/αPD1は各薬剤によって誘導される細胞死を減少させ、これらの効果は抗miR-4315によって打ち消された(
図2、
図3Aおよび3B)。予想通り、細胞死の抑制は、Bim発現のダウンレギュレーションとPARPおよびCaspase-3切断の減少に関連していた(
図2、
図3Aおよび3B)。
【0118】
ここでは、αPD1に曝露したT細胞由来のエキソソームが、exomiR-4315を介してBimの発現を低下させることを明らかにした。また、miR-4315をがん細胞株に取り込むと、アポトーシスが抑制され、化学療法に対する耐性が向上することを明らかにした。
【0119】
抗PD1療法を受けた肺がん患者において、exomiR-4315の縦断的な発現がアポトー抵抗性の血清バイオマーカーと関連する
今回の観察結果の臨床的関連性を判断するため、αPD1で治療した肺がん患者4名において、exomiR-4315の発現と血清シトクロムc濃度を調べた(データ示さず)。血清シトクロムc濃度は、細胞死バイオマーカーとして選択された13。exomiR-4315とシトクロムcの血清濃度は、抗PD1治療期間中、動的に調節されていた(データは示さず)。患者における2回のαPD1投与間のexomiR-4315発現を比較することにより、10/15例でexomiR-4315発現が増加することに注目した。また、exomiR-4315と血清チトクロームc濃度は、αPD1投与期間中、反平行または鏡像的に変化していることが確認された(データ示さず)。さらに、ピアソンの相関検定により、採用したすべての患者において、縦断的なexomiR-4315の発現が血清シトクロムc濃度と逆相関していることが明らかになった(データは示さず)。全体として、これらのデータは、exomiR-4315の縦断的な発現が、αPD1による治療を受けた肺がん患者におけるアポトーシス抵抗性の血清バイオマーカーと逆相関していたことを実証している。
【0120】
ABT263は、肺がんのin vivoモデルにおいて、抗PD1/exomiR-4315が誘発する化学療法への抵抗性を無効化する
exomiR-4315とシトクロムcの血清レベルの動的かつ反平行な発現は、がん細胞死を誘導する治療法の有効性が、有効・無効の異なる段階を経て変動し、治療を通して細胞死を促進することを示唆している。シスプラチン+αPD1療法の無効とexomiR-4315によるBimダウン発現を関連付けた上述のデータに鑑み、次に、Exo/αPD1に曝露したA549細胞のシスプラチンに対する耐性に対するABT263などの「Bim/BH3模倣薬」の効果について検討した。次に、A549肺がん細胞を、シスプラチン(CIS、5μM)および/またはABT263(15μM)の添加前にExo/αPD1およびExoに曝露した。ABT263は、Exo/αPD1が誘導するCISに対する耐性を無効にした(
図4A)。
【0121】
次に、ABT263の有効性をA549を接種した異種移植マウスで評価した(データは示さず)。予想通り、CIS投与は、A549誘導腫瘍の体積を減少させた(
図4B)。Exoの投与は、A549腫瘍に対するCISの効果を変化させず、Exo/αPD1接種がCISの抗腫瘍活性を無効化したのとは対照的であった。また、Exo/αPD1接種により、腫瘍におけるBimの発現量(タンパク質およびmRNAレベル)が低下することも確認された。ABT263は同様の活性を誘導し、Exo/αPD1によるがん細胞のCIS耐性に対する有害な効果を抑制した(
図4B)。この結果から、ABT263はExo/αPD1が誘導するシスプラチン治療への耐性を無効にするために使用できることが示された。さらに、腫瘍に対する治療の影響と血清シトクロムcレベルとの間に有意な逆相関が観察された(r=-0.9566;p=0.0028)(データは示さず)。
【0122】
結論
抗PD1耐性という現象を支配する分子メカニズムの理解における最近の進歩により、この現象のいくつかの主要な原因(14-15):ネオアンチゲンランドスケープの進化(16)、JAK1/2変異の存在(17)、β2-ミクログロブリン変異の存在(18)、CD8+T細胞の記憶能の限定的獲得(19-20)を明らかにすることが可能になった。最新の論文では、抗PD1耐性という現象を支配する分子メカニズムに関連するシグネチャーを特定したり、説明したりしているが、Bertrandら(2017)は、TNFα遮断がマウス実験メラノーマモデルにおいて抗PD1に対する耐性を克服することを示し、抗PD1抗体と抗TNF抗体の使用が抗PD1耐性というプロセスを抑制する治療ソリューションとなり得ることを示唆した(21)。T細胞由来のExomiR-4315発現/Bimdown-regulation軸を、抗PD1療法への耐性現象に関連する事象の「汎癌カスケード」として特定することにより、本研究は、この現象を支配する分子メカニズムのリストを完成させた。このように、私たちの研究は、抗PD1療法に対する耐性現象の伝達において、水平的なRNA転移のプロセスが重要であることを初めて明らかにした。この水平RNA転移(22)では、ドナー細胞は抗PD1療法にさらされたT細胞、レシピエントT細胞は腫瘍細胞、エキソソームは転移の手段、そしてmiR-4315は転移した生物情報である。
【0123】
過去10年間、がん分野におけるmiR研究は、miRが診断、予後、薬効予測のためのバイオマーカーとして、またオンコまたは腫瘍抑制miRのような治療薬として特定されてきた(23-24)。このような多方面にわたる文献の中で、miR-4315に関する文献は乏しいように思われる。しかし、miR-4315は、乳がん組織では非がん組織と比較してがん組織で発現が増加し(25)、大腸がんでは発現が減少し(26)、原発性肺腺がん組織では非がん組織と比較して発現が増加する(27)ことが確認されている。このように、我々の研究は、exomiR-4315の発現を、miR-4315の抗がん剤治療効果を予測するための推定バイオマーカー値と関連付けた最初のものである。
【0124】
転移性メラノーマ患者において、Bimの発現量が抗PD1療法に対する反応を予測するために使用できることは、すでに文献で報告されている(28-29)。これらの論文では、CD8+T細胞におけるBimレベルの測定は、抗PD-1療法に対する反応を予測するための有望な低侵襲戦略であると述べられている。本研究は、1)CD8+T細胞だけでなくT細胞を含むこと、2)Bimの制御は免疫細胞ではなく腫瘍細胞で起こること、3)T細胞だけでなくT細胞とがん細胞との細胞間コミュニケーションに関わること、からこれらの知見とは大きく異なっている。さらに、Dronca and al. (2016) (29)では分子的な原因は指摘されていなかったが、本研究ではエキソソームmiRNA-4315をBim発現制御の分子的原因として同定した。このように、我々のデータは腫瘍細胞のBimに着目し、T細胞のBimに着目していないため、文献に存在するデータと重複することはない。
【0125】
こ の論文は、抗PD-1薬や抗PD-1薬と化学療法の併用に反応しない特定の患者を(exomiR-4315のレベルをモニターすることによって)検出する可能性を開くものである。
【0126】
参考文献
本出願を通じて、様々な参考文献が、本発明が関係する技術の状態を記述している。これらの文献の開示は、参照により本開示に組み込まれる。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【配列表】
【国際調査報告】