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特表2023-540689運転中のディーゼル発電機の技術的状態を監視する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(54)【発明の名称】運転中のディーゼル発電機の技術的状態を監視する方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20230919BHJP
【FI】
G01M99/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512782
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 RU2020000637
(87)【国際公開番号】W WO2022050863
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】2020128924
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518312460
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー“ロスエネルゴアトム”
(71)【出願人】
【識別番号】523060909
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ ニュークリア ユニバーシティ メフィ(モスクワ エンジニアリング フィジックス インスティチュート)
(71)【出願人】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】アビドバ, エレナ・アレクサンドロフナ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルブノフ, イゴール・ゲンナデビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ニキフォロフ, ヴィクトル ニコラエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】プガチェバ, オルガ ウルエフナ
(72)【発明者】
【氏名】ソロフエフ, ヴィクトル イワノビッチ
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD23
2G024BA27
2G024CA13
2G024CA17
2G024DA09
(57)【要約】
本発明は、技術診断に関する。方法は、ディーゼル発電機の監視ポイントに取り付けられた振動センサーを使用して、互いに直交する3平面で振動加速度を測定することに関する。振動加速度は、動作していて故意してないことが明らかな運転可能なディーゼル発電機の監視ポイントで測定される。その後、振動加速度は、ディーゼル発電機の運転中に、監視ポイントで所定の間隔で測定される。温度と超音波信号の強度を監視ポイントでさらに測定し、超音波信号強度、温度、振動加速度の二乗平均平方根値を求める。測定された振動加速度値に基づいて、振動速度と振動変位の二乗平均平方根値が計算される。以前の測定値のクラスタ間の距離が決定され、ディーゼル発電機の運転状態に関する結論が下される。技術的結果は、定期的な測定の実行と得られた計算結果の相互比較により、ディーゼル発電機の動作上の欠陥を適切なタイミングで検出できるようにすることにある。それによって、工場内の処理設備の安全性も確保される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル発電機の複数の監視ポイントに設置された振動センサーを使用して、互いに直交する3平面での振動加速度値を測定することに関し、
故障のないことが明らかな運転可能なディーゼル発電機の前記複数の監視ポイントでの振動加速度値の一次測定を事前に実行し、
運転中のディーゼル発電機の前記複数の監視ポイントでの振動加速度値の二次測定を所定の間隔で実行し、
前記複数の監視ポイントで温度と超音波信号の強度の追加測定を行い、超音波信号の強度、温度、振動加速度の二乗平均平方根値を求め、
測定値に基づいて振動速度と振動変位の二乗平均平方根値を計算し、
得られた値を行列の形で表示し、
得られた二乗平均平方根値を正規化し、
固有ベクトルと固有値を求めるため、共分散行列とその特異値分解の計算を実行し、
得られたデータを固有ベクトル成分へ投影することによって、固有ベクトル成分の空間内の各点での測定値に対応するクラスタを形成し、
以前の測定で得られたクラスタ間の距離の範囲から基準間隔を決定し、
現在の測定で得られたクラスタの50%以上が基準間隔内の場合、ディーゼル発電機に障害(フォールト)がないと判定し、
現在の測定で得られたクラスタの50%未満が基準間隔内の場合、ディーゼル発電機に機能不全(マルファンクション)が存在すると判定し、
クラスタの50%以上が基準間隔の下限を下回っている場合、ディーゼル発電機に障害(フォールト)が存在すると判定する。
ことを特徴とする運転中のディーゼル発電機の技術的状態の監視方法。
【請求項2】
振動センサー設置のため、ディーゼルの支持部および固定ポイント、並びに、ディーゼルの容器、並びに、ディーゼルの支持部、ターボコンプレッサ、ウォーターポンプおよびオイルポンプの近傍エリア、並びに、発電機の支持部、フレームおよびそのベアリングブロックに、ディーゼル発電機の監視ポイントを選択することを特徴とする
請求項1に記載のディーゼル発電機の技術的状態の監視方法。
【請求項3】
超音波信号強度の測定のため、シリンダーとその高圧燃料ポンプ、ベースベアリングのアンカータイ、カムシャフトスリーブタイプのベアリング、発電機、ウォーターポンプおよびオイルポンプに、追加の監視ポイントを選択することを特徴とする
請求項1に記載のディーゼル発電機の技術的状態の監視方法。
【請求項4】
温度測定のため、発電機のベアリング、シリンダーの排気ノズル、高圧燃料ポンプ、点検用ハッチ、ディーゼル冷却用のウォーターポンプの筐体、ブースト空気冷却用のウォーターポンプ、オイルポンプ、および発電機に、追加の監視ポイントを選択することを特徴とする
請求項1に記載のディーゼル発電機の技術的状態の監視方法。
【請求項5】
サーマル撮像素子を使用して温度を測定する
請求項1に記載のディーゼル発電機の技術的状態の監視方法。
【請求項6】
振動加速度、温度、および超音波信号強度の値を3か月に1回の頻度で測定することを特徴とする
請求項1に記載のディーゼル発電機の技術的状態の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、技術的診断に関し、特に、ディーゼル発電機を含むレシプロ機器を主な対象物として、対象物の技術的状態を判定する方法に関する。
【0002】
本発明は、原子力発電所において制御および保護システムを駆動する、電気駆動設備、ディーゼル発電機および燃料補給装置の監視に用いることができる。
【0003】
本発明は、診断、パラメータの監視、監視結果の処理および表示、ディーゼル発電機ユニットの修理に関する推奨事項および指示の発行に用いることができる。
【背景技術】
【0004】
プロセスコントローラの状態を判定するために振動データを使用する方法および装置が知られている(特許文献1)。この方法によれば、振動データは、キャリブレーションの過程でプロセスコントローラの状態を判定するために使用される。この場合、一次振動データに基づいてコントローラの運転限界が計算され、コントローラに関する運転データが収集される。運転データは、コントローラに関連する耐用年数を示す。そして、上記運転データに基づいて運転限界を更新する。更新後の運転限界は、コントローラに関連する残存する耐用年数の減少を示す。第1のセンサーからの二次振動データが振動監視回路のキャリブレーションに続いて収集され、二次振動データが更新後の運転限界を超えるか否かによってコントローラの状態が判定される。センサーから受信機へのデータ伝送のための一連の動作および方法に基づく従来の技術の枠組み内でのプロセス制御の問題は、既知の発明および記載された既知の方法の類似発明において解決される。
【0005】
既知の方法では、運転中のディーゼル発電機の構成要素の振動診断を実行することや、メンテナンスの必要性を評価することはできない。
【0006】
船舶用ディーゼル発電機の技術的状態を監視する方法(特許文献2)は、センサーからの垂直方向、軸方向および横方向の振動信号並びに振動加速度、振動速度および振動変位の値、の測定と処理を含む。センサーは、ターボコンプレッサの筐体、並びに、エンジンおよびエンジンのクランクシャフトのブローオフおよびガス吸気システムの構成要素、並びに、エンジン支持脚、並びに、発電機支持筐体および発電機支持脚、並びに、ディーゼル発電機の支持部および基部、に設置される。そして、測定された信号を振動加速度、振動速度、振動変位の狭帯域スペクトルに変換し、振動パラメータが確立された運転限界を超える点を判定する。この方法は、請求された技術的な解決策の最も近い類似発明である。
【0007】
監視されたパラメータの傾向を判定することによってディーゼル発電機の状態を評価することに関していかなる可能性も存在しないことが、最も近い類似発明の問題点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ロシア実用特許第2640387号
【特許文献2】ロシア実用特許第2682839号
【発明を実施するための形態】
【0009】
提案発明によって達成される目的は、ディーゼル発電機の技術的状態を判定して、修理なしでさらに動作する可能性を分析することである。このタイプの設備の以前に記録されたデータを考慮して、さまざまな性質の診断データの複合分析によってディーゼル発電機ユニットの早期故障検出の有効性を高めることも、提案発明によって達成される目的である。
【0010】
本発明によって達成される技術的成果は、定期的な測定および得られた計算結果の相互比較による、ディーゼル発電機の故障の適切なタイミングでの検出の可能性の提供を含む。その結果、発電所の処理設備について産業上の安全性が保証される。
【0011】
本発明の本質は、運転中のディーゼル発電機の技術的状態を監視する方法であって、ディーゼル発電機の複数の監視ポイントに設置された振動センサーを使用して、互いに直交する3平面での振動加速度値を測定することに関し、次の事項が提案される。
【0012】
故障のないことが明らかな運転可能なディーゼル発電機の複数の監視ポイントでの振動加速度値の一次測定を事前に実行する。運転中のディーゼル発電機の複数の監視ポイントでの振動加速度値の二次測定を所定の間隔で実行する。複数の監視ポイントで温度と超音波信号の強度の追加測定を行い、超音波信号の強度、温度、振動加速度の二乗平均平方根値を求める。測定値に基づいて振動速度と振動変位の二乗平均平方根値を計算する。得られた値を行列の形で表示する。得られた二乗平均平方根値を正規化する。固有ベクトルと固有値を求めるため、共分散行列とその特異値分解の計算を実行する。得られたデータを固有ベクトル成分へ投影することによって、固有ベクトル成分の空間内の各点での測定値に対応するクラスタを形成する。以前の測定で得られたクラスタ間の距離の範囲から基準間隔を決定する。現在の測定で得られたクラスタの50%以上が基準間隔内の場合、ディーゼル発電機に障害(フォールト)がないと判定する。現在の測定で得られたクラスタの50%未満が基準間隔内の場合、ディーゼル発電機に機能不全(マルファンクション)が存在すると判定する。クラスタの50%以上が基準間隔の下限を下回っている場合、ディーゼル発電機に障害(フォールト)が存在すると判定する。
【0013】
振動センサー設置のため、ディーゼルの支持部および固定ポイント、並びに、ディーゼルの容器、並びに、ディーゼルの支持部、ターボコンプレッサ、ウォーターポンプおよびオイルポンプの近傍エリア、並びに、発電機の支持部、フレームおよびそのベアリングブロックに、ディーゼル発電機の監視ポイントを選択することが提案される。
【0014】
超音波信号強度の測定のため、シリンダーとその高圧燃料ポンプ、ベースベアリングのアンカータイ、カムシャフトスリーブタイプのベアリング、発電機、ウォーターポンプおよびオイルポンプに、追加の監視ポイントを選択することが提案される。
【0015】
温度測定のため、発電機のベアリング、シリンダーの排気ノズル、高圧燃料ポンプ、点検用ハッチ、ディーゼル冷却用のウォーターポンプの筐体、ブースト空気冷却用のウォーターポンプ、オイルポンプ、および発電機に、追加の監視ポイントを選択することが提案される。
【0016】
サーマル撮像素子を使用して温度を測定すること、および、振動加速度、温度、および超音波信号強度の値を3か月に1回の頻度で測定すること、が提案される。
【0017】
提案方法は、以下のように実施される。
【0018】
まず、振動センサーを使用して、互いに直交する3平面で、運転中の故障のないことが明らかなディーゼル発電機で振動加速度の一次測定が実行される。温度と超音波信号強度値も測定される。
【0019】
これらの測定結果は、後で得られた測定結果との比較のため、記録される。
【0020】
振動センサーは、ディーゼル発電機の監視ポイントに設置される。監視ポイントは、例えば、ディーゼルの支持部および固定ポイント、並びに、ディーゼルの容器、並びに、ディーゼルの支持部、ターボコンプレッサ、ウォーターポンプおよびオイルポンプの近傍エリア、並びに、発電機の支持部、フレーム、およびそのベアリングブロックなどである。例えば、VS-3Dタイプのセンサーは、ワイヤレス3次元センサーとして使用されてもよい。センサーの設置中、信号の存在が確認される必要があり、少なくとも1秒間の記録が実行される必要がある。
【0021】
提案方法は、ベアリングの位置に近い容器上のポイントにあるターボコンプレッサ、ウォーターポンプ、オイルポンプなどの、取り外し可能な機器の監視も提供する。
【0022】
ディーゼルのインライン配置は、シリンダーの1列配置(15D-100、AS-803およびAS-808)または2列配置(ASD-5600、DG-4000)を提供する。上部および下部クランクシャフトのベアリングは、メインベアリングが左右に沿って配置されているエリア内のエンジン容器で監視されてもよい。
診断中に、サイトグラスを通して高圧燃料ポンプ、ノズル、シリンダーを直接監視することができる。
【0023】
ディーゼル発電機ユニットに含まれる発電機は、静的固定子とスリーブ型ベアリングで回転する回転子で構成される同期電動機である。すべての同期電動機と同様に、回転子は整流子を介して直流電流が供給される電磁石を表す。電動機の操作性は、主に固定子巻線とベアリングの状態によって決まる。整流子を介した回転子の供給に関する問題は、同期電動機の運転中に頻繁に発生し、監視する必要がある。
【0024】
振動のモニタリングは、機器の運転可能性の観点から、機器の一般的な検査を目的としている。監視ポイントでの振動レベルの振動監視を行い、振動パラメータと特定の設計の機器用に決定された基準値との比較を行うことによって、ユニットのさらなる運転可能性について結論を出すことができる。振動信号は、監視対象の機器内の局所的な振動プロセスだけでなく、機器内のすべてのプロセス(複合パラメータ)にも敏感である。
【0025】
ディーゼルの温度監視により、必要なディーゼル運転プロセスを妨げる燃料噴射装置の欠陥(ディフェクト)を適切なタイミングで検出できる。監視は、ディーゼルの必要な電力関連、経済的、および環境的特性を迅速に回復する可能性を提供する。さらに、燃料噴射装置のコンポーネントの工程内監視により、修理の品質を評価し、ディーゼルの技術的状態を改善する必要がある場合に関連する対策を実施することができる。シリンダー排気ノズルの温度または排気ガスの温度、作動媒体の温度、各シリンダーの最大燃焼圧力の監視は、全体として、シリンダーの運転均一性とディーゼルの効率運転を特徴付ける。ディーゼルフレームとその基本ユニットの温度状態を監視することで、温度パターンが急激に変化している領域を特定できる。これは、明らかに、接合されたディーゼルの部品(アセンブリ)および部品(パーツ)の抵抗(摩擦)の増加が原因である。
【0026】
温度は、Testo890-2などのサーマル撮像素子を使用して、測定対象をポインティングし、手動または自動で焦点を合わせ、サーモグラフィスキャンをデバイスのメモリに保存することにより、測定される。測定対象は、発電機のベアリング、シリンダーの排気ノズル、高圧燃料ポンプ、点検用ハッチ、ディーゼル冷却用のウォーターポンプの筐体、ブースト空気冷却用のウォーターポンプ、オイルポンプ、および発電機の設置エリアである。V型および直列ディーゼルのクランクシャフトベアリングの熱監視は、クランクシャフトベアリングの潤滑のために供給されるオイルで洗浄されたサイトグラスの温度に応じて十分に実行される。
【0027】
超音波信号強度は、シリンダーおよびその高圧燃料ポンプ、ベースベアリングのアンカータイ、カムシャフトスリーブタイプのベアリング、発電機、ウォーターポンプおよびオイルポンプで測定される。記録は、監視ポイントにSDT-270超音波装置のコンタクトキャリパーの設置によって調整される。
【0028】
シリンダーをV字型に配置したディーゼル(12ZV40/48+S2445-12、ZVEZDA-6000С-MTUタイプのディーゼル発電機ユニット)のクランクギアで発生するすべての振動は、エンジンケースによって吸収される。クランクシャフトは、ピンを使用してエンジンケースに取り付けられたベースベアリングのカバーに配置され、エンジンケース下部の剛性を高めるために、各ベースベアリングの平面内に横アンカータイが配置される。バルブギア機構のカムシャフトは、エンジンケースの左右に配置されている。クランクシャフトベアリングの超音波検査は片側から行うことができる。これは、クランクシャフトのベースベアリングから負荷を受けるアンカータイを介して行うと便利である。左右のカムシャフトベアリングの超音波パラメータは、エンジンケース(フレーム)のみ監視できる。V字型ディーゼルの設計により、各高圧燃料ポンプと左右に沿って配置されたシリンダーブッシングの超音波検査が可能になる。
【0029】
一次測定の完了後、振動加速度、温度、および超音波信号強度の二次測定は、運転中のディーゼル発電機の同じ監視ポイントで、運転組織の規則で定められた間隔、たとえば 3か月に1回、で実行される。
【0030】
各監視ポイントでの振動記録の時間は、ディーゼルシャフトの定格回転数によって決まる。記録期間内の回転数は、構造部品の信頼できる監視のため、少なくとも10でなければならない。推奨記録時間は1秒である。定格電力での設備の運転中に監視を行う。標準装備グループに対応する2または3の技術的状態パラメータを同時に記録し、n次元領域でのデータの表示、データクラスタの中心および中心間距離の計算することで、包括的な評価を行うことができる。異なる時間に記録されたデータサンプル間の距離は、機器の状態変化の複合指標を表す。
【0031】
上記の測定が完了した後、超音波信号強度、温度、および振動加速度の二乗平均平方根値が計算される。次に、測定された振動加速度値に基づいて、振動速度と振動変位の二乗平均平方根値が計算される。
【0032】
得られた値は、次のような行列の形式で表される。
【0033】
【数1】
ここで
【0034】
【数2】
は、機器の同じポイントで数回記録された互いに直交する3平面における振動速度の二乗平均平方根値と最大値である。ここで、Kは測定数、Lはポイントの数である。
【0035】
温度と超音波信号強度の値は、同様の行列の形式で表される。
【0036】
次に、パラメータが(各列の確率平均が0に対応し、分散が1に対応するように)正規化され、共分散行列が計算される。
【0037】
【数3】
共分散行列は、固有ベクトルと固有値を取得するために、特異値分解を使用して分解される。
【0038】
【数4】
ここで、Unは固有ベクトル(最大分散方向)であり、λnは固有値(関連するベクトル方向のパラメータの分散部分)である。
【0039】
次に、得られたデータを固有ベクトル成分に投影し、固有ベクトル成分の空間内の各点での測定値に対応するクラスタを形成する。次に、以前の測定クラスタ間の距離の範囲として形成される基準間隔が決定される。現在の測定クラスタの50%以上が基準間隔内にある場合、ディーゼル発電機に障害(フォールト)がないと判定される。現在の測定クラスタの50%未満が基準間隔内にある場合、ディーゼル発電機の機能不全(マルファンクション)が存在すると判定される。クラスタの50%以上が基準間隔の下限を下回っている場合、ディーゼル発電機に障害(フォールト)が存在すると判定される。
【0040】
説明されている方法は、ノボヴォロネジ、スモレンスク、およびロストフNPPで運用されている15D-100、12ZV40/48+S2445-12、ZVEZDA6000BC-MTUタイプのディーゼル発電機ユニットの診断に適用されており、他の原子力発電所で運用されているASD-5600、DG-4000、АS-803およびAS-808型のディーゼル発電機ユニットの診断に使用できる。
【0041】
説明した方法を適用すると、ディーゼル発電機の技術的状態を迅速に判断し、適切なタイミングで機能不全(マルファンクション)を特定することができる。
【国際調査報告】