(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(54)【発明の名称】熱交換器及びその使用
(51)【国際特許分類】
F23L 15/00 20060101AFI20230919BHJP
【FI】
F23L15/00 A ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513424
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2021070894
(87)【国際公開番号】W WO2022048824
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ツィアヴァ、レミ
(72)【発明者】
【氏名】マー、チエフー
(72)【発明者】
【氏名】ホウ、モン
【テーマコード(参考)】
3K023
【Fターム(参考)】
3K023QA03
3K023QA06
3K023QC08
(57)【要約】
熱交換器及びその使用であって、熱交換器は、マントル(13)を有するシェル(10)と、シェル(10)の内部の中実の内側コア(30)とを有し、少なくとも1つの第1の流路(40)は、コア(30)の内部に設けられ、及び複数の迂回する第2の流路(51、52)は、コア(30)を通して且つ/又はコア(30)とマントル(13)との間に延び、それにより、少なくとも1つの第1の流路(40)は、非ゼロの直線距離ΔLにわたって第2の流路(51、52)によって囲まれる、熱交換器及びその使用。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・長手方向Dに第1の端部(11)から第2の端部(12)まで延び、且つ前記第1の端部(11)から前記第2の端部(12)まで延びるマントル(13)を含むシェル(10)と、
・コア材料で作られ、且つ前記シェル(10)内に配置された中実の内側コア(30)であって、方向Dにおいて、前記第1の端部(11)に向かう第1の末端(31)から、前記第2の端部(12)に向かう第2の末端(32)まで延びる中実の内側コア(30)と
を含む熱交換器であって、
・少なくとも1つの第1の流路(40)は、前記コア(30)の内部に設けられ、それぞれの第1の流路(40)は、前記コア(30)の前記第1の末端(31)から前記第2の末端(32)まで延び、
・n個の迂回する第2の流路(51、52)は、前記コア(30)を通して且つ/又は前記コア(30)と前記マントル(13)との間に延び、それにより、前記少なくとも1つの第1の流路(40)は、方向Dにおいて、非ゼロの直線距離ΔLにわたって前記n個の第2の流路(51、52)によって囲まれ、nは、1より大きい整数であり、
それぞれの第2の流路(51、52)は、外壁を有し、前記外壁は、
・前記第2の流路(51、52)が前記コア(30)を通して延びる場合に前記コア材料によって形成され、及び
・前記第2の流路(51、52)が前記コア(30)と前記マントル(13)との間に延びる場合、前記コア材料と前記シェル(10)の前記マントル(13)との組み合わせによって形成される、熱交換器。
【請求項2】
前記第2の流路(51、52)は、前記少なくとも1つの第1の流路(40)の周囲で螺旋状になる、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
それぞれの第2の流路(51、52)は、前記コア(30)の前記第1の末端(31)における入口(53)から、前記コア(30)の前記第2の末端(32)における出口まで延びる、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
・前記シェル(10)の前記第1の端部(11)と、前記コア(30)の前記第1の末端(31)との間の入口プレナムであって、前記第2の流路(51、52)の前記入口(53)に流体接続され、前記少なくとも1つの第1の流路(40)に流体接続されない入口プレナム、及び/又は
・前記シェル(10)の前記第2の端部(12)と、前記コア(30)の前記第2の末端(32)との間の出口プレナムであって、前記第2の流路(51、52)の前記出口(54)に流体接続され、前記少なくとも1つの第1の流路(40)に流体接続されない出口プレナム
を更に含み、好ましくは入口プレナム及び出口プレナムを含む、請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
それぞれの第2の流路(51、52)は、前記コア(30)の前記第1の末端(31)における入口(53)から、前記コア(30)の前記第1の末端(31)における出口まで延びる、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記シェル(10)の前記第1の端部(11)と、前記コア(30)の前記第1の末端(31)との間に入口プレナム及び/又は出口プレナムを更に含み、
・前記入口プレナムは、前記n個の第2の流路(51、52)の前記入口(53)に流体接続されるが、前記少なくとも1つの第1の流路(40)に流体接続されず、及び
・前記出口プレナムは、前記第2の流路(51、52)の前記出口(54)に流体接続されるが、前記少なくとも1つの第1の流路(40)に流体接続されない、請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
2*m個の第1の流路(40)を含み、mは、1以上、好ましくは1より大きい整数であり、前記2*m個の第1の流路は、
・m個の第1の流路(40)の第1のセット(41)と、
・m個の第1の流路(40)の第2のセット(42)と
に分割され、前記第1のセット(41)は、方向Dにおいて、前記コア(30)にわたってその第1の末端(31)からその第2の末端(32)まで延びる正中面(I)の一方の側に配置され、及び前記第2のセット(42)は、前記正中面(I)の他方の側に配置される、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
・燃焼器と、
・請求項1~7のいずれか一項に記載の2つの熱交換器と
を含む燃焼器ユニットであって、各熱交換器の前記少なくとも1つの第1の流路は、前記コア(30)の前記第2の末端(32)及び前記シェル(10)の前記第2の端部(12)を介して前記燃焼器の流体入口に流体接続される、燃焼器ユニット。
【請求項9】
・燃焼器と、
・請求項7に記載の熱交換器と
を含む燃焼器ユニットであって、前記m個の第1の流路(40)の第1のセット(41)及び前記m個の第1の流路(40)の第2のセット(42)は、前記コア(30)の前記第2の末端(32)及び前記シェル(10)の前記第2の端部(12)を介して前記燃焼器の流体入口にそれぞれ流体接続される、燃焼器ユニット。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の2つの熱交換器により、燃焼領域内に噴射される流体を予熱するためのプロセスであって、
・前記燃焼領域内で発生した燃焼ガスは、前記2つの熱交換器の前記n個の第2の流路(51、52)に供給され、それにより前記2つの熱交換器の前記コア材料を加熱し、
・前記噴射される流体は、時間的に交互に、前記2つの熱交換器の一方の前記少なくとも1つの第1の流路(40)と、前記2つの熱交換器の他方の前記少なくとも1つの第1の流路(40)とを通して流され、それにより、前記噴射される流体は、前記噴射される流体が流れる前記熱交換器の前記加熱されたコア材料との熱交換によって加熱され、及び
・前記このように加熱された流体は、前記燃焼領域内に噴射される、プロセス。
【請求項11】
請求項7に記載の熱交換器により、燃焼領域内に噴射される流体を予熱するためのプロセスであって、
・前記燃焼領域内で発生した燃焼ガスは、前記熱交換器の前記n個の第2の流路(51、52)に供給され、それにより前記コア材料を加熱し、
・前記噴射される流体は、時間的に交互に、前記m個の第1の流路(40)の第1のセット(41)と、前記m個の第1の流路(40)の第2のセット(42)とを通して流され、それにより、前記噴射される流体は、前記加熱されたコア材料との熱交換によって加熱され、及び
・前記このように加熱された流体は、前記燃焼領域内に噴射される、プロセス。
【請求項12】
前記噴射される流体は、燃焼酸化剤、燃料又は不活性流体である、請求項10又は11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記加熱された流体は、前記燃焼領域内へのその噴射のために燃焼器に供給される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
・炉であって、燃焼領域と、前記燃焼領域内で発生した燃焼ガスを前記炉から取り出すための送気管とを有する炉と、
・前記燃焼領域内に流体を噴射するための1つ又は複数の噴射器と、
・配管網と、
・請求項1~7のいずれか一項に記載の2つの熱交換器と
を含む燃焼設備であって、前記熱交換器のそれぞれは、
・前記n個の第2の流路(51、52)と流体接続する高温流体供給口及び高温流体出口と、
・前記少なくとも1つの第1の流路(40)と流体接続する低温流体供給口及び低温流体出口と
を有し、前記配管網は、
・前記炉から取り出された燃焼ガスを、前記送気管を介して前記2つの熱交換器の前記高温流体入口に供給すること、
・前記燃焼領域内に噴射される流体を、時間的に交互に、前記熱交換器の一方の前記低温流体供給口と、前記2つの熱交換器の他方の前記低温流体供給口とに供給すること、
・前記噴射される流体を、前記流体が供給された前記熱交換器の前記低温流体出口から前記1つ又は複数の噴射器の少なくとも1つに、前記噴射される流体を前記1つ又は複数の噴射器の前記少なくとも1つによって前記燃焼領域内に噴射するために輸送すること
を行うように適合される、燃焼設備。
【請求項15】
・炉であって、燃焼領域と、前記燃焼領域内で発生した燃焼ガスを前記炉から取り出すための送気管とを有する炉と、
・前記燃焼領域内に流体を噴射するための1つ又は複数の噴射器と、
・配管網と、
・請求項7に記載の交換器と
を含む燃焼設備であって、前記熱交換器は、
・前記n個の第2の流路(51、52)と流体接続する高温流体供給口及び高温流体出口と、
・前記第1のセット(41)の前記第1の流路(40)と流体接続する第1の低温流体供給口及び第1の低温流体出口と、
・前記第2のセット(42)の前記第1の流路(40)と流体接続する第2の低温流体供給口及び第2の低温流体出口と
を有し、前記配管網は、
・前記炉から取り出された燃焼ガスを、前記送気管を介して前記熱交換器の前記高温流体入口に供給すること、
・前記燃焼領域内に噴射される流体を、時間的に交互に、前記第1の低温流体供給口と前記第2の低温流体供給口とに供給すること、
・前記噴射される流体を、
○前記流体が前記第1の低温流体入口に供給された場合には前記第1の低温流体出口から、及び
○前記流体が前記第2の低温流体入口に供給された場合には前記第2の低温流体出口から、
前記1つ又は複数の噴射器の少なくとも1つに、前記噴射される流体を前記1つ又は複数の噴射器の前記少なくとも1つによって前記燃焼領域内に噴射するために輸送すること
を行うように適合される、燃焼設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【0002】
本発明は、排ガス、特に燃焼プロセスで発生した排ガスに存在する廃熱から有用な熱を回収するのに適した熱交換器に関する。
【背景技術】
【0003】
当技術分野では、燃焼排ガスから廃熱を回収することと、このように回収された熱を使用して、燃焼酸化剤などの燃焼反応物が燃焼プロセスで消費される前に前記燃焼反応物を予熱することとが知られている。
【0004】
本明細書に関連して、「予熱」という用語は、最終的に流体を使用する前にその流体を加熱することを説明するために使用される。燃焼プロセスに関連して、「予熱」という用語は、燃焼室に材料を導入する前又は後、特に燃焼プロセスで材料を使用する前に材料を加熱することを指す。
【0005】
一方で、このような公知のプロセスでは、蓄熱式熱回収と伝熱式熱回収との間で区別がなされている。
【0006】
蓄熱式熱回収は、燃焼排ガスからの廃熱の高効率な回収を可能にする。この技術は、多くの場合、圧延加熱炉、鍛造炉、熱処理炉及び溶解炉などの高温炉で使用されて、燃料消費量を削減し、したがってエネルギーコストを削減し、CO2排出量を削減する。
【0007】
このような蓄熱式熱回収システムは、一般に、蓄熱式蓄熱体が付随する又は組み込まれた交互に入れ替わる燃焼ユニットの対に依拠する。各蓄熱体は、燃焼室の近くの高温側開口部と、燃焼室から離れた反対側にある低温側開口部とを有する。
【0008】
第1の燃焼ユニットが燃焼中であり、第2の燃焼ユニットが燃焼中でないとき、燃焼中の第1の燃焼ユニットで発生した燃焼排ガスは、燃焼中でない第2の燃焼ユニットの蓄熱体を高温側開口部から低温側開口部に通過し、それにより、前記蓄熱体は、排ガスからの熱エネルギーを蓄積し、加熱される。次の段階では、第2の燃焼ユニットが燃焼し、第1の燃焼ユニットが燃焼しない場合、燃焼酸化剤は、前記燃焼中の第2の燃焼ユニットの加熱された蓄熱体を低温側開口部から高温側開口部に通過し、前の段階で前記蓄熱体が回収した熱エネルギーを吸収する。このようにして、燃焼酸化剤が予熱され、それにより燃焼効率が向上する。これにより、第2の燃焼ユニットの蓄熱体は、徐々に冷却される。一方、燃焼中の第2の燃焼ユニットで発生した燃焼排ガスは、燃焼中でない第1の燃焼ユニットの蓄熱体を高温側開口部から低温側開口部に通過し、それにより、加熱システムが第1の段階に戻るまでの間、燃焼していない第1の燃焼ユニットの蓄熱体は、前記排ガスによって加熱され、以降も同様である。
【0009】
燃焼中の燃焼ユニットの蓄熱体が徐々に冷却されることに起因して、燃焼酸化剤が加熱される温度も同様に対応する燃焼段階の初めから終わりまで低下する。酸化剤が加熱される温度の著しい変化を避けるために、燃焼段階の持続時間を短くし、切り替え頻度を多くする必要がある。
【0010】
代替策は、予熱された燃焼酸化剤の温度が実質的に安定である伝熱式熱回収システムを使用することである。しかしながら、伝熱式熱交換器の材料の制約は、伝熱式熱交換器が、通常、蓄熱式熱交換器で実現される温度よりもかなり低い酸化剤温度で動作するか、又は特に酸化剤の温度及び/若しくは酸素含有量が高い場合、非実用的なほどに高価であることである。
【0011】
蓄熱式熱回収では、反対方向且つ異なる時点ではあるが、蓄熱体を通る同じ流路を排ガス及び燃焼酸化剤のために使用することにより、排ガスから蓄熱体を介して燃焼酸化剤への熱回収率を向上させることができるが、同じ流路を使用することにより、燃焼ガスが著しく多量の可燃性物質を含み、且つ酸化剤が空気よりも著しく高い酸素含有量を有する問題を燃焼システムに呈する。実際、その場合、可燃性物質と酸化剤とが蓄熱体内、特に蓄熱体内において高温で直接接触すると、蓄熱体内において、前記可燃性物質は、破局的になり得る発火に至る可能性がある。
【0012】
この問題を克服するために、国際公開第A-2018/114993号パンフレットでは、2つの蓄熱式熱交換器/蓄熱体を備えた蓄熱式燃焼システムを使用することが提案されており、これが上述の蓄熱体と異なる点は、前記熱交換器/蓄熱体における燃焼ガスの流路と酸化剤の流路とが物理的に分離されるが、互いに熱的に接触する点である。具体的な実施形態によれば、蓄熱体/熱交換器の両方の酸化剤流路は、同じ燃焼器の酸化剤入口に接続される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、蓄熱式熱交換器と伝熱式熱交換器との利点を組み合わせた更に改善された熱交換器と、そのような熱交換器を使用するためのプロセス及び設備とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による熱交換器は、長手方向Dに第1の端部から第2の端部まで延び、且つ第1の端部から第2の端部まで延びるマントルを含むシェルを含む。マントルは、通常、円筒形である。
【0015】
コア材料で作られた中実の内側コアがシェル内に配置される。前記コアは、方向Dにおいて、第1の端部に向かう第1の末端から、第2の端部に向かう第2の末端まで延びる。
【0016】
少なくとも1つの第1の流路は、コアの内部に設けられる。それぞれの第1の流路は、コアの第1の末端からコアの第2の末端まで延びる。
【0017】
本発明によれば、n個の迂回する第2の流路は、コアを通して且つ/又はコアとマントルとの間に延び、それにより、少なくとも1つの第1の流路は、方向Dにおいて、非ゼロの直線距離ΔLにわたって前記n個の迂回する第2の流路によって囲まれ、nは、1より大きい整数である。
【0018】
したがって、コア材料は、それぞれの第1の流路を囲む。
【0019】
第2の流路がコアを通して延びる場合、コア材料は、前記第2の流路の外壁を形成する。第2の流路がコアとマントルとの間に延びる場合、前記第2の流路の外壁は、熱交換器のコア材料とマントルとの組み合わせによって形成される。
【0020】
高温流体、すなわちその温度がコアの温度よりも高い流体が熱交換器のn個の第2の流路を通して流される場合、それにより、高温流体に存在する熱(すなわち熱エネルギー)は、前記n個の第2の流路に熱的に接触するコア材料によって吸収されるため、コア材料が加熱されると共に、高温流体が冷却される。低温流体、すなわちその温度がコアの温度よりも低い流体が熱交換器の少なくとも1つの第1の流路を通して流される場合、コア材料に蓄えられた熱は、低温流体によって吸収されるため、低温流体が加熱され、コア材料が冷却される。
【0021】
以下では、「高温流体」という表現は、体系的に且つ別途明示的に指示されない限り、コア材料を加熱するために使用される流体、すなわち熱交換器に供給される時点(及びそれ以前)から、熱交換器を離れる時点(及びそれ以降)までの流体を指すために使用される。
【0022】
同様に、以下では、「低温流体」という表現は、体系的に且つ別途明示的に指示されない限り、熱交換器において加熱される流体、すなわち熱交換器に供給される時点(及びそれ以前)から、熱交換器を離れる時点(及びそれ以降)までの流体を指すために使用される。
【0023】
したがって、熱交換器のコア材料は、
・少なくとも1つの第1の流路をn個の第2の流路から物理的に分離し、且つまた複数の第1の流路がある場合には第1の流路を互いに分離し、
・任意選択で、熱交換器のマントルと一緒に個々の第2の流路を画定し、
・前記高温流体がn個の第2の流路を通して流される場合、高温流体から回収された熱の蓄熱媒体として機能し、
・低温流体が少なくとも1つの第1の流路を通して流される場合、高温流体から回収されてコア材料によって吸収された熱が低温流体に伝達されるため、高温流体と低温流体との間の伝熱媒体として機能し、
・例えば、低温流体の流量が変化した場合又は高温流体の流量若しくは温度が変動した場合に熱緩衝材として機能する。
【0024】
熱交換器を通る高温流体の流れのために複数の迂回する第2の流路を使用することにより、高温流体とコア材料との間の接触表面積が増え、それによりコア材料による高温流体からの熱の回収をより効果的にし、増大させることが可能となる。実際、同じ総流路容積では、複数の流路の方が同一形状の単一流路よりも熱伝達に利用可能な表面積が大きい。
【0025】
「迂回する」流路は、定義上、直線ではない流路であって、その流路の長さが、その流路が及ぶ直線距離ΔLより長い、流路である。同じ流路断面及び同じ直線距離ΔLでは、迂回する流路が提供する熱伝達に利用可能な表面積は、前記直線距離ΔLにわたる直線流路が提供する熱伝達のための表面積よりも大きい。
【0026】
第2の流路は、通常、蛇行した第2の流路、すなわち距離ΔLにわたって複数回(2回以上、好ましくは6回以上、より好ましくは8回以上又は10回以上)転回及び/又は捻れを呈する流路である。したがって、このような第2の流路は、前記距離ΔLにわたり、1つ又は複数の曲がりくねった、ジグザグの、蛇行した、渦巻き状の、波状の及び/又は螺旋状のセクションを有し得る。
【0027】
コア材料は、
・熱交換器が対象とする高温流体及び低温流体にコア材料が適合するように、すなわち熱交換器が対象とする高温流体及び低温流体の各温度において、固体材料と流体(高温及び低温)とが互いに反応せず、
・コアが使用される温度で内側コアの適切な蓄熱容量を確保し、それにより、内側コアの蓄熱容量が内側コアの総質量に更に依存する
ように選択される。
【0028】
コア材料は、有利には、高温流体が熱交換器に入る温度において、少なくとも400J/(K*kg)、好ましくは少なくとも600J/(K*kg)、より好ましくは少なくとも800J/(K*kg)の比熱容量を有する。多くの場合、前記比熱容量は、1250J/(K*kg)以下である。
【0029】
コア材料は、好ましくは、耐熱材料、特にセラミック耐熱材料である。例えば、コア材料は、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)及びコーディエライトからなる群から選択され得る。
【0030】
第2の流路の本数nは、通常、2~16、好ましくは3~12、より好ましくは4~10又は4~8である。
【0031】
距離ΔLは、有用には、方向Dにおけるコアの第1の末端と第2の末端との間の直線距離の少なくとも50%に対応し、第1の末端と第2の末端との間の前記距離の好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80又は90%に対応し、且つ最大で方向Dにおけるコアの第1の末端と第2の末端との間の全距離(100%)に対応する。
【0032】
少なくとも1つの第1の流路は、コアの第1の末端から第2の末端まで直線状に延び得る。少なくとも1つの第1の流路は、例えば、少なくとも1つの第1の流路に沿って流れる低温流体とコア材料との間の接触表面積を増やし、それにより内側コアから低温流体への熱伝達を増やすために非直線状でもあり得る。
【0033】
特に有利な一実施形態によれば、n個の第2の流路は、少なくとも1つの第1の流路の周囲で螺旋状になる。しかしながら、他の構成も可能である。例えば、少なくとも1つの第1の流路は、距離ΔLに沿ってジグザグのパターン又は波状のパターンで延びるn個の第2の流路によって囲まれ得る。
【0034】
有利には、第2の流路の距離ΔLにわたる長さは、少なくとも1.5*ΔL、より好ましくは少なくとも2.5*ΔL、より好ましくは少なくとも4*ΔLである。第2の流路の距離ΔLにわたる長さは、例えば、最大20*ΔL又は最大30*ΔL、更に有利には最大40*ΔLであり得る。
【0035】
1つの有用な実施形態によれば、熱交換器のそれぞれの第2の流路は、コアの第1の末端における入口から、コアの第2の末端における出口まで延びる。その場合、熱交換器は、通常、第1の端部又は第1の端部の側にあるマントルにおける高温流体供給口(又は入口)と、第2の端部又は第2の端部の側にあるマントルにおける高温流体出口とを有する。
【0036】
しかしながら、熱交換器の両方の端部又はその付近に高温流体供給口及び高温流体出口を有することは、例えば、熱交換器の外側の利用可能な空間が限られることに起因して、又は例えば安全上の理由から工場内の特定の場所に高温流体の流れを制限することが望まれることから、非実用的である場合がある。その場合、高温流体供給口及び高温流体出口は、シェルの同じ端部又はその付近にあることが望ましい場合がある。
【0037】
それに対して、一実施形態によれば、第2の流路がコアの第1の末端の入口からコアの第2の末端の出口まで延びる場合、熱交換器は、シェルのマントルを囲むスリーブを更に含み得、少なくとも1つの戻り流路は、マントルとスリーブとの間に画定され、前記少なくとも1つの戻り流路は、第2の流路の出口と流体接続し得る。これにより、戻り流路と流体接続する高温流体供給口及び高温流体出口の両方を、シェルの第1の端部に及び/又は前記第1の端部の側にあるマントルに配置することができる。
【0038】
一実施形態によれば、熱交換器は、n個の第2の流路に高温流体を供給するための複数の高温流体供給口(又は入口)、例えばそれぞれの第2の流路について、それぞれの第2の流路と流体接続する1つの高温流体供給口を有し得る。n個の第2の流路は、複数の相互に排他的な第2の流路群にもグループ化され、各高温流体供給口が第2の流路群の1つのみに流体接続され得る。
【0039】
代わりに、熱交換器は、n個の第2の流路のすべてに高温流体を供給するための、したがってn個の第2の流路のそれぞれと流体接続する単一の高温流体供給口を設けられ得る。
【0040】
熱交換器から高温流体を除去するための1つ又は複数の高温流体出口についても同様の考慮が適用される。
【0041】
本発明の有用な実施形態によれば、高温流体のための入口プレナムは、シェルの第1の端部とコアの第1の末端との間に設けられる。この入口プレナムは、第2の流路の入口に流体接続されるが、少なくとも1つの第1の流路に流体接続されない。同様に、高温流体のための出口プレナムは、シェルの第2の端部とコアの第2の末端との間に設けられ得る。このような出口プレナムは、第2の流路の出口に流体接続されるが、ここでも同様に熱交換器の少なくとも1つの第1の流路に流体接続されない。
【0042】
したがって、高温流体供給口を介して熱交換器に流入する高温流体は、入口プレナムを介して第2の流路の入口に分配/分割され得る。したがって、それぞれの出口を介して異なる第2の流路を出る高温流体は、高温流体出口を介して熱交換器を離れる前に出口プレナムに集められ得る。
【0043】
このような高温流体入口プレナム又は高温流体出口プレナムは、シェルの第1の端部を通して延び、コアの第1の末端で少なくとも1つの第1の流路に流体接続される低温流体輸送ダクトを囲むことが有利であり得る。同様に、このような高温流体入口プレナム又は高温流体出口プレナムは、シェルの第2の端部を通して延び、コアの第2の末端で少なくとも1つの第1の流路に流体接続される低温流体輸送ダクトを囲むことが有利であり得る。特に、高温流体入口プレナム及び高温流体出口プレナムの一方は、シェルの第1の端部を通して延び、少なくとも1つの第1の流路に流体接続される第1の低温流体輸送ダクトを囲み、高温流体入口プレナム及び高温流体出口プレナムの他方は、シェルの第2の端部を通して延び、コアの第2の末端で少なくとも1つの第1の流路に流体接続される第2の低温流体輸送ダクトを囲み得る。
【0044】
このような場合、低温流体ダクトを囲む高温流体プレナムは、熱交換器の付加的な熱交換領域を構成し、熱交換器を通して高温流体と低温流体との両方を同時に流したとき、高温流体と低温流体との間の付加的な熱交換を提供する。
【0045】
更なる有利な実施形態によれば、n個の第2の流路は、コアの第1の末端における入口から、同じくコアの第1の末端における出口まで延びる一方、入口と出口との間では、n個の第2の流路は、方向Dにおいて非ゼロの直線距離ΔLにわたって少なくとも1つの第1の流路を囲む。換言すれば、n個の第2の流路は、コアの第1の末端における入口から、コアの第2の末端に向かった後、コアの第1の末端における出口に戻るように延びる。これにより、ここでも同様に、第2の流路の入口と流体接続する高温流体供給口及び第2の流路の出口と流体接続する高温流体出口の両方を、シェルの第1の端部又は前記第1の端部の側にあるマントルに配置することができる。
【0046】
その場合、熱交換器は、
・シェルの第1の端部とコアの第1の末端との間に配置され、n個の第2の流路の入口に流体接続された高温流体入口プレナム、及び/又は
・シェルの第1の端部とコアの第1の末端との間に配置され、n個の第2の流路の出口に流体接続された高温流体出口プレナム
を含み得、前記入口プレナム、対応して前記出口プレナムは、熱交換器の少なくとも1つの第1の流路に流体接続されない。
【0047】
次いで、前記高温流体入口プレナム及び/又は出口プレナムは、好ましくは、シェルの第1の端部を通して延び、コアの第1の末端で少なくとも1つの第1の流路に流体接続された第1の低温流体輸送ダクトを囲み、それにより、高温流体と低温流体との両方が同時に熱交換器を通して流されるとき、高温流体と低温流体との間の熱交換のための付加的な熱交換領域を熱交換器に提供する。したがって、低温流体輸送ダクトは、高温流体入口プレナム、高温流体出口プレナム又は高温流体入口と高温流体出口プレナムとの組み合わせによって囲まれ得る。
【0048】
好ましい実施形態によれば、熱交換器は、複数の第1の流路を含む。このようにして、同じ合計の第1の流路容積で、コア材料から低温流体に熱が伝達され得る、前記合計の第1の流路容積を縁取るコア材料の表面積を増加させ得る。
【0049】
本明細書で使用及び利点を後述する熱交換器の具体的な実施形態によれば、熱交換器は、2*m個の第1の流路を含み、mは、1以上、好ましくは1より大きい整数である。
【0050】
整数mは、例えば、2以上且つ24以下、好ましくは4以上且つ20以下、より好ましくは8以上且つ20以下であり得る。
【0051】
2*m個の第1の流路は、
・m個の第1の流路の第1のセットと、
・m個の第1の流路の第2のセットと
に分割され得る。
【0052】
m個の第1の流路の第1のセットは、方向Dにおいて、内側コアにわたってその第1の末端からその第2の末端まで延びる正中面の一方の側に配置される一方、m個の第1の流路の第2のセットは、前記正中面の他方の側に配置される。
【0053】
本発明による熱交換器は、特に高温の燃焼ガスなどの高温流体から回収された熱により、燃焼器の上流の低温流体を加熱するために使用され得る。その場合、低温流体は、燃焼反応物、すなわち燃料又は燃焼酸化剤、好ましくは燃焼酸化剤であり得る。低温流体は、リサイクル排ガス又はCO2など、燃焼器に供給される更なるガス、特に不活性ガスでもあり得る。本明細書に関連して、「不活性ガス」とは、燃焼器で発生する燃焼反応に関与しないガスを指す。
【0054】
したがって、本発明は、燃焼器に動作可能に接続された上記のような少なくとも1つの熱交換器を含む燃焼器ユニットにも関する。
【0055】
本明細書に関連して、「動作可能に接続される」とは、熱交換器が流体、いわゆる「低温流体」を加熱するために使用されるとき、このようにして加熱された流体の少なくとも一部、好ましくは全部が燃焼器に供給されるように熱交換器が燃焼器に接続されることを意味する。
【0056】
このような燃焼器ユニットは、特に、
・燃焼器と、
・本発明による2つの熱交換器と
を含み、各熱交換器の少なくとも1つの第1の流路は、コアの第2の末端及びシェルの第2の端部を介して燃焼器の流体入口に流体接続される。燃焼器の流体入口は、熱交換器によって加熱される(ことになる)低温流体の性質に応じて、燃焼器の燃料入口、燃焼酸化剤入口及び不活性ガス入口からなる群から選択される。
【0057】
上述のように、熱交換器は、それぞれm個の第1の流路の2つのセットを含み、燃焼器は、代わりに、
・燃焼器と、
・このような熱交換器と
を含み得る。
【0058】
熱交換器のm個の第1の流路の第1のセット及びm個の第1の流路の第2のセットは、コアの第2の末端及びシェルの第2の端部を介して燃焼器の流体入口にそれぞれ流体接続され、前記流体入口は、熱交換器によって加熱される低温流体の性質に応じて、燃料入口、燃焼酸化剤入口及び不活性ガス入口からなる群から選択される。その場合、第1のセットと第2のセットとは、同じカテゴリーの燃焼器の異なる入口燃焼器の同じ入口にそれぞれ接続され得る。
【0059】
本発明は、前記熱交換器の1つ又は2つにより、燃焼領域内に噴射される流体を予熱するためのプロセスにも関する。
【0060】
したがって、一方では、燃焼領域において酸化剤との燃料の燃焼によって発生する燃焼ガスを用いて、燃焼領域内に噴射される流体を予熱するための従来の伝熱式熱交換器の使用と同様に、本発明による熱交換器を使用することが可能である。その場合、燃焼領域内で発生した燃焼ガスは、(高温流体として)熱交換器のn個の第2の流路に供給され、それによりコア材料を加熱する一方、燃焼領域内に噴射される流体は、(低温流体として)少なくとも1つの第1の流路に供給され、前記流体は、加熱されたコア材料によって加熱され、したがって加熱された流体が燃焼領域内に噴射される。
【0061】
代替的な実施形態によれば、燃焼領域内に噴射される流体は、本発明による2つの熱交換器によって予熱される。前記実施形態によれば、
・燃焼領域内で発生した燃焼ガスは、高温流体として、2つの熱交換器のn個の第2の流路に供給され、それにより前記2つの熱交換器のコア材料を加熱し、
・燃焼領域内に噴射される流体は、低温流体として、時間的に交互に2つの熱交換器のそれぞれの少なくとも1つの第1の流路を通して流され、それにより、噴射される流体は、流体が流れる熱交換器の加熱されたコア材料との熱交換によって加熱される。
【0062】
このように加熱された流体が燃焼領域内に噴射される。
【0063】
このようにして、流体は、2つの熱交換器の一方と他方とで時間的に交互に加熱されると共に、燃焼ガスは、両方の前記熱交換器のコア材料を連続的に加熱する。
【0064】
m個の第1の流路の第1のセットと、m個の第1の流路の第2のセットとを有する、本発明による熱交換器が使用される場合、前記熱交換器は、有利には、以下のようにも使用され得る。
・燃焼領域内で発生した燃焼ガスは、高温流体として、熱交換器のn個の第2の流路に供給され、それにより熱交換器のコア材料を加熱し、
・燃焼領域内に噴射される流体は、低温流体として、時間的に交互に、m個の第1の流路の第1のセットと、m個の第1の流路の第2のセットとを通して流され、それにより、噴射される流体は、加熱されたコア材料との熱交換によって加熱される。
【0065】
このように加熱された流体が燃焼領域内に噴射される。
【0066】
実際に、第1のセットのm個の第1の流路が正中面の一方の側で一緒にグループ化される一方、第2のセットのm個の第1の流路が正中面の他方の側で一緒にグループ化されるため、低温流体として機能する加熱される流体がm個の第1の流路の第1のセットに供給される場合、正中面の第1のセットと同じ側にあるコア材料は、正中面の他方の側、すなわち第2のセットが位置する正中面の側にあるコア材料よりはるかに大きい効果で前記流体による冷却作用を受ける。同様に、加熱される流体がm個の第1の流路の第2のセットに供給される場合、第2のセットが位置する正中面の側にあるコア材料は、m個の第1の流路の第1のセットが位置する正中面の反対側にあるコア材料よりはるかに大きい効果で前記流体による冷却作用を受ける。
【0067】
このように、加熱される流体を、m個の第1の流路の第1のセットと、m個の第1の流路の第2のセットとの間で交互に流すことにより、上記のように加熱される流体を2つの熱交換器の少なくとも1つの第1の流路に交互に供給する場合と同様の効果を得ることができるが、その場合には単一の熱交換器を用いる。このような実施形態は、流体の予熱に利用可能な空間が限られている場合に特に有用である。加えて、2つの異なる熱交換器が使用される場合と比較して、環境への熱損失が低減される。
【0068】
燃焼ガス(高温流体)と噴射されるガス(低温流体)との両方は、シェルの第1の端部から第2の端部に向かう、熱交換器を通る大域的(又は全体的)な流れ方向を呈し得る(並流動作)。
【0069】
代わりに、燃焼ガス(高温流体)は、シェルの第1の端部から第2の端部に向かう、熱交換器を通る大域的な流れ方向を呈する一方、噴射されるガス(低温流体)は、シェルの第2の端部から第1の端部に向かう大域的な流れ方向を呈し得る(向流動作)。
【0070】
高温流体供給口及び高温流体出口の両方がシェルの第1の端部又は前記第1の端部の側にあるマントルに配置される場合、噴射されるガスは、シェルの第1の端部から第2の端部又は第2の端部から第1の端部に向かう大域的な流れ方向を呈し得る。
【0071】
上記のように熱交換器が高温流体入口プレナムを有する場合、燃焼ガスは、高温流体入口プレナムを介してn個の第2の流路に供給される。同様に、上記のように熱交換器が高温流体出口プレナムを有する場合、n個の第2の流路を離れる燃焼ガスは、高温流体出口プレナムを介して熱交換器から除去される。
【0072】
熱交換器は、低温流体輸送ダクトを含み得、低温流体輸送ダクトを介して、噴射される(且つ熱交換器において予熱される)流体が熱交換器、より具体的には熱交換器の少なくとも1つの第1の流路に供給されるか、又は少なくとも1つの第1の流路で予熱された流体が熱交換器から除去される。熱交換器は、第1の低温流体輸送ダクト及び第2の低温流体輸送ダクトも含み得、第1の低温流体輸送ダクト及び第2の低温流体輸送ダクトの一方は、噴射される(且つ熱交換器で予熱される)流体を熱交換器に供給するために使用され、第1の低温流体輸送ダクト及び第2の低温流体輸送ダクトの他方は、予熱された流体を熱交換器から除去するために使用される。
【0073】
熱交換器がm個の第1の流路の2つのセットを含む場合、熱交換器は、2つの低温流体輸送ダクトを含み得、2つの低温流体輸送ダクトを介して、噴射される(且つ熱交換器で予熱される)流体は、時間的に交互に、熱交換器の第1の流路の第1のセットと、第1の流路の第2のセットとに供給される。噴射される流体が時間的に交互に供給されるm個の第1の流路の2つのセットを熱交換器が含む場合、熱交換器は、2つの低温流体輸送ダクトを含むこともでき、2つの低温流体輸送ダクトの一方は、第1の流路の2つのセットの一方で加熱された流体を熱交換器から除去するために使用され、2つのダクトの他方は、第1の流路の2つのセットの他方で加熱された流体を熱交換器から除去するために使用される。
【0074】
先に示したように、噴射される流体(低温流体)は、中性ガス又は燃焼反応物、すなわち燃焼酸化剤若しくは燃料であり得る。
【0075】
燃焼器は、予熱された流体を燃焼領域内に噴射するために使用され得る。燃焼領域は、例えば、圧延加熱炉、鍛造炉、熱処理炉及び溶解炉などの炉の燃焼領域であり得る。
【0076】
本発明は、燃焼設備における燃焼により発生する(「高温流体」に対応する)燃焼ガスにより、燃焼設備の燃焼領域内噴射される(「低温流体」に対応する)流体を予熱するための上記のような1つ又は複数の熱交換器を有する燃焼設備にも関する。
【0077】
このような燃焼設備は、炉であって、燃焼領域と、燃焼領域内で発生した燃焼ガスを炉から取り出すための送気管、すなわち排気装置とを有する炉を含む。燃焼設備はまた、配管網又はシステムと、燃焼領域内に流体を噴射するための1つ又は複数の噴射器と、本発明による少なくとも1つの熱交換器とを含み、熱交換器は、(a)熱交換器のn個の第2の流路と流体接続する高温流体供給口及び高温流体出口と、(b)熱交換器の少なくとも1つの第1の流路と流体接続する低温流体供給口及び低温流体出口とを含む。
【0078】
燃焼設備の配管網は、
・炉から取り出された燃焼ガスを、送気管を介して熱交換器の高温流体供給口に供給すること、
・燃焼領域内に噴射される流体を熱交換器の低温流体供給口に供給し、且つ前記流体を熱交換器の低温流体出口から噴射器又は噴射器の1つ又は複数に、前記流体を燃焼領域内に噴射するために輸送すること
を行うように適合される。
【0079】
燃焼設備の配管網は、熱交換器の高温流体出口から、場合により更なる熱回収装置及び/又は燃焼ガス処理装置を介して煙突まで燃焼ガスを輸送するようにも適合され得る。
【0080】
1つ若しくは複数の噴射器又は1つ若しくは複数の噴射器の1つ若しくはいくつかは、燃焼器に組み込まれ得る。
【0081】
上記のように熱交換器が単に伝熱式熱交換器として使用される場合、配管網は、通常、熱交換器に燃焼ガス及び流体を連続的に供給するように適合される。
【0082】
上記のように2つの熱交換器が時間的に交互に流体を予熱するために使用される場合、燃焼設備は、本発明による2つの熱交換器を含み、熱交換器のそれぞれは、n個の第2の流路と流体接続する高温流体供給口及び高温流体出口と、少なくとも1つの第1の流路と流体接続する低温流体供給口及び低温流体出口とを有する。次いで、燃焼設備の配管網は、
・炉から取り出された燃焼ガスを、送気管を介して2つの熱交換器のそれぞれの高温流体供給口に(すなわち同時に)供給すること、
・燃焼領域内に噴射される流体を、時間的に交互に、2つの熱交換器の一方の低温流体供給口と他方の低温流体供給口とに供給すること、及び
・前記噴射される流体を、噴射される流体が供給された熱交換器の低温流体出口から噴射器又は噴射器の1つ若しくは複数に、噴射される流体を噴射器又は噴射器の1つ若しくは複数によって燃焼領域内に噴射するために輸送すること
を行うように適合され得る。
【0083】
次いで、燃焼設備の配管網は、各熱交換器の高温流体出口から、場合により更なる熱回収装置及び/又は燃焼ガス処理装置を介して煙突まで燃焼ガスを輸送するようにも適合され得る。
【0084】
上記のようにm個の第1の流路の第1のセット及びm個の第1の流路の第2のセットを有する熱交換器が流体を予熱するために使用される場合、前記熱交換器は、(a)熱交換器のn個の第2の流路と流体接続する高温流体供給口及び高温流体出口と、(b)m個の第1の流路の第1のセットと流体接続する第1の低温流体供給口及び第1の低温流体出口と、(c)m個の第1の流路の第2のセットと流体接続する第2の低温流体供給口及び第2の低温流体出口とを有する。次いで、燃焼設備の配管網は、
・炉から取り出された燃焼ガスを、送気管を介して熱交換器の高温流体供給口に供給すること、
・燃焼領域内に噴射される流体を、時間的に交互に、熱交換器の第1の低温流体供給口と第2の低温流体供給口とに供給すること、及び
・噴射される流体が第1の低温流体供給口に供給される場合、第1の低温流体出口から噴射器又は噴射器の1つ若しくは複数に噴射される流体を輸送し、及び噴射される流体が第2の低温流体供給口に供給される場合、第2の低温流体出口から噴射器又は噴射器の1つ又は複数に噴射される流体を輸送すること
を行うように適合される。
【0085】
次いで、燃焼設備の配管網は、熱交換器の高温流体出口から、場合により更なる熱回収装置及び/又は燃焼ガス処理装置を介して煙突まで燃焼ガスを輸送するようにも適合され得る。
【0086】
本発明は、このような燃焼設備の使用であって、燃料は、炉の燃焼室で酸化剤と燃焼され、炉から取り出された燃焼ガスは、1つ又は複数の熱交換器(該当する場合)に供給され、流体は、前記1つ又は2つの熱交換器によって上述の方法で予熱され、このように予熱された流体は、炉の燃焼領域内に噴射される、使用にも関する。
【0087】
先に示したように、予熱された流体は、燃焼領域で燃焼される燃料若しくは酸化剤又は不活性流体などの異なる流体であり得る。
【0088】
以下では、本発明による熱交換器の特定の実施形態の概略図である添付の図面を参照して、本発明及びその利点を以下の例で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】本発明による熱交換器の特定の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図示の熱交換器は、第1の端部11から第2の端部12まで延びるシェル10を有する。円筒形の横マントル13は、図示の熱交換器の軸の方向に対応する長手方向Dに第1の端部11から第2の端部12まで延びる。
【0091】
シェルは、熱交換器から周囲の環境への熱損失を低減し、したがって危険な高温からの設置担当者の保護もする断熱材量の層20によって囲まれる。
【0092】
中実の内側コア30がシェル10の内部に配置される。コア30は、セラミック材料で作られ、且つ方向Dにおいて、第1の端部11に向かう第1の末端31から、第2の端部12に向かう第2の末端32まで延びる。
【0093】
24の第1の流路40は、コア30の内部、より具体的にはコア30の長手方向の中心に設けられる。
【0094】
それぞれの第1の流路は、コア30の第1の末端31における入口43から第2の末端32における出口(図示せず)まで延びる。第1の流路40は、図において平面Iの左側に位置する12の第1の流路40の第1のセット41と、図において平面Iの右側に示す12の第1の流路40の第2のセット42とに分割される。
【0095】
図示の実施形態では、第1の流路40は、コア30の第1の末端31と第2の末端32との間に直線的に延びる。しかしながら、前記第1の流路40は、例えば、湾曲していてもよい。
【0096】
図示の熱交換器は、2つの第2の流路51、52を有する。それぞれの第2の流路51、52は、コア30の第1の末端31にある入口を有し、コア30の第2の末端32までコアの全長にわたって延びた後、同じくコア30の第1の末端31に配置された出口に戻る。
【0097】
明確にするために、図では、第2の流路52の入口53及び出口54のみを示している。
【0098】
2つの第2の流路51、52は、それぞれの入口53と出口54との間において、図示の実施形態ではコア30の全長に対応する距離ΔLにわたり、22の第1の流路40の周囲で螺旋状になる。
【0099】
図示の実施形態では、2つの第2の流路51、52は、コア30とマントル13との間に延びる。
【0100】
したがって、高温流体が第2の流路51、52を通して流される場合、コア30は、前記高温流体が前記第2の流路51、52の入口53から出口に流れる際に前記高温流体から熱エネルギーを吸収して、コア30の温度を上昇させる。
【0101】
断熱層20は、マントル13を介した熱損失を最小限に低減することを確保する。
【0102】
低温流体が加熱されたコアの第1の流路40を通して流される場合、低温流体は、様々な第1の流路40の入口43から出口に流れる際、コア30に蓄えられていた熱を吸収して、コア30を冷却させ、低温流体の温度を上昇させる。
【0103】
コア30の蓄熱/熱緩衝容量に起因して、本発明による熱交換器は、高温流体及び低温流体が熱交換器に連続的に供給され、それにより、それぞれの流量及び供給温度が一定であるときに熱交換平衡が確立され得る場合と、第2の流路を通して流れる高温流体によってコアが加熱される第1の段階と、第1の流路を通して流れる低温流体によってコアが冷却される第2の段階との間で熱交換器が時間的に交互に動作される場合とのいずれでも有効であることが理解されるであろう。
【0104】
熱交換器の好ましい使用によれば、動作は、第2の流路を通して流れる高温流体によってコアが加熱される第1の段階と、高温流体によるコアの加熱を同時に継続しながら、低温流体によってコアが冷却される第2の段階との間で交互に入れ替わる。この動作方法では、コアの温度がより狭い高温領域に維持され、その結果、低温流体が加熱される温度も同様により高く狭い温度領域内になる。通常、本発明による熱交換器を時間的に交互に動作させる場合、熱交換器を対で動作させて、対の一方の熱交換器が第1の段階にあるとき、対の他方の熱交換器が第2の段階にあるようにし、その逆も同様であるようにする。このようにして、加熱された低温流体の連続的供給を確保することができる。
【0105】
上述のように、図示の熱交換器は、空間的に分離された第1の流路40の2つのセット41、42を含む。
【0106】
これにより、第1の流路40の第1のセット41のみ又は第1の流路40の第2のセット42のみのいずれかで時間的に交互に低温流体を供給しながら、熱交換器の第2の流路51、52に高温流体を連続的に供給する点において、単一の熱交換器による、加熱された低温流体の連続的供給を伴う時間的に交互の動作が可能になる。実際、その場合、低温流体が第1のセット41のみを通して流れるとき、コア30に対する冷却作用は、平面Iの同じ側(左側)にあるコアの部分に概ね限られる一方、低温流体が第2のセット42のみを流れるとき、コア30に対する冷却作用は、第2のセット42が同じ側(右側)に位置する平面Iの側にあるコアの部分に概ね限られ、それにより単一のシェル10内で2つの熱交換器が交互に入れ替わる作用が実質的に再現される。
【0107】
シェル10は、通常、金属シェルである。
【0108】
先に示したように、コア30は、通常、セラミックである。
【0109】
シェル内に配置されたコア30を有する熱交換器を使用することは、熱交換器の効率が熱交換器の内部の物理的若しくは化学的劣化又は第1の流路若しくは第2の流路の部分的若しくは完全な閉塞によって影響され得る場合に特に有利である。これは、例えば、低温流体若しくは高温流体がシェル内の熱交換器の部分のエロージョン若しくはコロージョンを引き起こす場合又は高温流体が同伴粒子及び/若しくは凝縮性物質などの物質を含み、それが対応する流路内に堆積され得る場合に起こり得る。
【0110】
本発明による1つ又は複数の熱交換器を使用することにより、このような場合、熱交換器全体及び燃焼設備の他の部分へのその流体接続を実際に交換することなしに熱交換器を改修することが可能であり、したがって燃焼設備の改修コスト及び停止時間を低減することが可能である。
【0111】
実際、コア材料で作られたコア30をシェル10内に配置させた本発明による熱交換器の場合、シェルを所定位置に保持したまま、熱交換器のコアを新しいコアに交換するのみでよい。なお、シェル10からコア30を一体的に取り外すことができない場合、例えば、第2の流路51、52がコア30とマントル13との間に延び、高温流体中の凝縮性物質がコア30を前記第2の流路51、52に沿ってマントル13に付着させた場合、改修時、シェル内のコア材料から構成された古いコアを分解し、その破片をシェルから取り除いた後、そこに新しいコアを導入することが可能である。
【0112】
当然のことながら、改修時に熱交換器全体を交換することも依然として可能である。
【国際調査報告】