(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(54)【発明の名称】高度に精製されたセルロース繊維を含む多層片艶仕上げ紙を生産するための方法及び生産される多層片艶仕上げ紙
(51)【国際特許分類】
D21H 25/04 20060101AFI20230919BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20230919BHJP
D21F 5/02 20060101ALI20230919BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
D21H25/04
D21H27/00 E
D21F5/02
D21H11/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513565
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 IB2021057942
(87)【国際公開番号】W WO2022049484
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン, イスト
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク, カイ
(72)【発明者】
【氏名】カウッピ, アンナ
(72)【発明者】
【氏名】カンクネン, ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】コルヴェニエミ, ユハ
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AF09
4L055AF46
4L055BD16
4L055CE78
4L055CF03
4L055EA01
4L055EA03
4L055EA04
4L055EA05
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA10
4L055EA12
4L055EA13
4L055EA14
4L055EA32
4L055EA40
4L055FA13
4L055FA19
4L055FA22
4L055FA30
(57)【要約】
本発明は、高度に精製されたセルロース繊維を含む多層片艶仕上げ紙を製造するための方法であって、高度に精製されたセルロース繊維を含む少なくとも1つの第1のパルプ懸濁液を第1のワイヤ上に塗布することにより第1の湿潤ウェブを形成する工程;第1の部分的に脱水されたウェブを得るために、第1の湿潤ウェブを部分的に脱水する工程;高度に精製されたセルロース繊維を含む少なくとも1つの第2のパルプ懸濁液を第2のワイヤ上に塗布することにより第2の湿潤ウェブを形成する工程;第2の部分的に脱水されたウェブを得るために、第2の湿潤ウェブを部分的に脱水する工程;多層ウェブを得るために、第1及び第2の部分的に脱水されたウェブを接合する工程;脱水ユニット内で多層ウェブを任意選択で脱水する工程、並びに高度に精製されたセルロース繊維を含む多層片艶仕上げ紙を得るために、少なくとも1つの艶仕上げユニット内で多層ウェブを艶仕上げする工程を含む、方法に関する。本発明は、本方法に従って生産されるマルチプライMG紙にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度に精製されたセルロース繊維を含む多層片艶仕上げ紙を製造するための方法であって、
a)高度に精製されたセルロース繊維を含む少なくとも1つの第1のパルプ懸濁液を第1のワイヤ上に塗布することにより第1の湿潤ウェブを形成する工程;
b)第1の部分的に脱水されたウェブを得るために、第1の湿潤ウェブを部分的に脱水する工程;
c)高度に精製されたセルロース繊維を含む少なくとも1つの第2のパルプ懸濁液を第2のワイヤ上に塗布することにより第2の湿潤ウェブを形成する工程;
d)第2の部分的に脱水されたウェブを得るために、第2の湿潤ウェブを部分的に脱水する工程;
e)多層ウェブを得るために、第1及び第2の部分的に脱水されたウェブを接合する工程;
f)脱水ユニット内で多層ウェブを任意選択で脱水する工程、並びに
g)高度に精製されたセルロース繊維を含む多層片艶仕上げ紙を得るために、少なくとも1つの艶仕上げユニット内で多層ウェブを艶仕上げする工程
を含む方法。
【請求項2】
第1及び/又は第2のパルプ懸濁液が、パルプ懸濁液の全乾燥重量に基づいて0,1~50wt%の高度に精製されたセルロース繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1及び/又は第2のパルプ懸濁液中の高度に精製されたパルプが、規格ISO 5267-1により決定されるとき65~99の範囲内、好ましくは80~95の範囲内のショッパー・リーグラー(SR)値を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
高度に精製されたセルロース繊維がミクロフィブリル化セルロース(MFC)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1及び/又は第2のパルプ懸濁液が、パルプ懸濁液の全乾燥重量に基づいて50~99.9wt%の間、好ましくは60~98wt%の間、より好ましくは70~95wt%の間の、精製されていないか又はわずかに精製されたセルロース繊維を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1及び第2のパルプ懸濁液が同じ組成を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1及び第2のパルプ懸濁液が異なる組成を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1及び/又は第2の湿潤ウェブが2つ以上の層を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
接合工程の前の第1及び第2の部分的に脱水されたウェブの乾燥固体含有量が、1.5~8wt%の範囲内、好ましくは2.5~6wt%の範囲内、より好ましくは3~4.5wt%の範囲内である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
接合することが、第1及び第2の部分的に脱水されたウェブのウェットラミネーションにより実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
任意選択の脱水工程後の多層ウェブの乾燥固体含有量が、25~45wt%の範囲内である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法
【請求項12】
多層ウェブを艶仕上げする前の多層ウェブの乾燥固体含有量が、35~85wt%の範囲内、好ましくは45~85wt%の範囲内にある、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
脱水工程f)が、脱水ユニット内で行われ、前記脱水ユニットが、シュープレス又はベルトプレスなど、拡張ニップ加圧設備である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
艶仕上げユニットが、ヤンキーシリンダー、グラシンカレンダー、又はシューカレンダー若しくはベルトカレンダーなどの拡張ニップカレンダーである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
接着調整添加剤が、0.1~10gsmの量で艶仕上げユニットの表面に加えられる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、高度に精製されたセルロースを含む多層片艶仕上げ紙。
【請求項17】
全乾燥固体含有量に基づいて0.1~50wt%の間の高度に精製された繊維を含む、請求項16に記載の多層片艶仕上げ紙。
【請求項18】
25~160g/m
2の範囲内、好ましくは30~140g/m
2の範囲内、より好ましくは40~130g/m
2の範囲内の坪量を有する、請求項16又は17に記載の多層片艶仕上げ紙。
【請求項19】
ASTM D-3985に従って200cc/m
2/24時間を下回る酸素透過率(OTR)値(23℃、50% RH)を有する、請求項16から18のいずれか一項に記載の多層片艶仕上げ紙。
【請求項20】
規格ISO 5636/6に従って測定されるとき少なくとも25000秒/100ml、より好ましくは少なくとも40000秒/100mlのガーレー・ヒル値を有する、請求項16から19のいずれか一項に記載の多層片艶仕上げ紙。
【請求項21】
ISO 8791-4に従って5μmを下回り、好ましくは2μmを下回る表面粗さPPS値を有する少なくとも1つの艶仕上げ表面を有する、請求項16から20のいずれか一項に記載の多層片艶仕上げ紙。
【請求項22】
60gsm紙に対してTAPPI UM-403に従って測定される1500J/m
2を上回るスコットボンド値を有する、請求項16から21のいずれか一項に記載の多層片艶仕上げ紙。
【請求項23】
規格ISO 16532-2に従って測定される少なくとも6のKIT値を有する、請求項16から22のいずれか一項に記載の多層片艶仕上げ紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高度に精製されたセルロース繊維を含む多層片艶仕上げ(MG)紙、特にミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含む多層MG紙を生産するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
片艶仕上げ(MG)紙は、ラベル用紙、特殊な印刷用途並びに様々な食品及び衛生包装用途において使用される紙である。通常、紙の1つの表面が艶仕上げされ、すなわち、紙の表面の光沢が増加するように処理される。紙の少なくとも1つの表面の艶仕上げは、あまりにも多くの嵩を失うことなく紙に光沢の改善及び表面密度の増加をもたらすために行われる。艶仕上げ面は、それが表面に改善された印刷特性を与えるのみならず、バリア特性、特にグリース及び油に対する改善されたバリアを改善する。良好なバリア特性を有することに加えて、MG紙は、それが様々な最終用途において高需要に対処するために良好な機械的強度も有することが重要である。
【0003】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、紙又は板紙製品を生産するとき強度添加剤又はバリア添加剤として使用されることが既知である。しかし、MFCは非常に高い水結合能を有し、したがって、ミクロフィブリル化セルロースを含むスラリーの水含有量を減少させることが非常に困難であり、多量のMFCを含む生成物に対する脱水需要は非常に高い。したがって、生成物の機械的特性又はバリア特性を劣化させることなく多量のMFCを含む生成物を脱水することが困難である。
【0004】
片艶仕上げ紙の生産中、紙の走行性が改善されることが重要である。紙にバリア添加剤又は強度添加剤を加えることにより、乾燥及び艶仕上げの間にウェブのリフティング又はブリスタリングのリスクがある。
【0005】
したがって、良好な強度特性及びバリア特性を有する改善されたMG紙を効率的な方法で生産する新しい方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の目的は、先行技術の方法に関連する上述の問題の少なくともいくつかを緩和する、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)など、高度に精製されたセルロース繊維を含む片艶仕上げ紙を製造するための方法を提供することである。
【0007】
本開示のさらなる目的は、改善された強度特性及びバリア特性を有する、高度に精製されたセルロース繊維を含む片艶仕上げ紙を効率的な方法で製造するための方法を提供することである。
【0008】
本開示のさらなる目的は、抄紙機又は板紙抄紙機タイプのプロセスにおいて高度に精製されたセルロース繊維を含む多層MG紙を製造するための改善された方法を提供することである。
【0009】
本開示のさらなる目的は、強く、かつ再生可能原料に基づくバリア包装材料として有用である多層片艶仕上げ紙を提供することである。
【0010】
上述の目的、並びに本開示に照らして当業者により実現されるであろう他の目的は、本開示の様々な態様により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に例示される第1の態様によれば、高度に精製されたセルロース繊維を含む多層片艶仕上げ紙を製造するための方法であって、
a)高度に精製されたセルロース繊維を含む少なくとも1つの第1のパルプ懸濁液を第1のワイヤ上に塗布することにより第1の湿潤ウェブを形成する工程;
b)第1の部分的に脱水されたウェブを得るために、第1の湿潤ウェブを部分的に脱水する工程;
c)高度に精製されたセルロース繊維を含む少なくとも1つの第2のパルプ懸濁液を第2のワイヤ上に塗布することにより第2の湿潤ウェブを形成する工程;
d)第2の部分的に脱水されたウェブを得るために、第2の湿潤ウェブを部分的に脱水する工程;
e)多層ウェブを得るために、第1及び第2の部分的に脱水されたウェブを接合する工程;
f)脱水ユニット内で多層ウェブを任意選択で脱水する工程、並びに
g)高度に精製されたセルロース繊維を含む多層片艶仕上げ紙を得るために、少なくとも1つの艶仕上げユニット内で多層ウェブを艶仕上げする工程
を含む、方法が提供される。
【0012】
本明細書において使用される片艶仕上げ紙という用語は、少なくとも1つの艶仕上げ表面を有する紙製品を一般に指す。片艶仕上げ紙は、好ましくは、25~160g/m2の範囲内の坪量を有する。
【0013】
本発明の方法は、抄紙機タイプのプロセスにおける高度に精製されたセルロース繊維を含む多層片艶仕上げ紙の製造を可能にする。本発明により、改善された強度特性及びバリア特性を有する、高度に精製された繊維、好ましくはミクロフィブリル化セルロースを含む多層MG紙をより効率的な方法で生産することが可能であることが見出された。
【0014】
製造方法は、少なくとも2つのウェブの別々の調製及び部分的な脱水を伴い、2つのウェブは、完成多層MG紙と比較してより低い坪量を有する。部分的に脱水された、しかし依然として湿潤したウェブは、より高い坪量の多層ウェブを形成するために接合され、それは、続いて任意選択で、より乾燥した多層ウェブを得るために、さらに脱水され、かつ乾燥される。ウェブが依然として湿潤している間にそれらを接合することは、層間の良好な接着を確実にする。実際、2つの層の組成が同一である場合、生じる多層紙は、対応する厚さの単層紙と区別することが困難であることさえある。部分的な脱水及び部分的に脱水された状態のウェブのラミネーションは、完成多層紙内のピンホールの発生を実質的に排除する一方、依然として高い生産速度を可能にすることが見出された。先行技術において、脱水速度の増加は、時には、凝集の増加を引き起こしながら、プロセスのウェットエンドにおいて大量の保持及び排出化学薬品を使用することにより達成されてきた。しかし、保持及び排出化学薬品は、より多孔質のウェブ構造の原因となることもあり、したがってそのような化学薬品の使用を最小限にすることが必要とされている。本発明の方法は、保持及び排出化学薬品の添加への依存がより少ない、脱水速度を増加させる代替方法を提供する。接合された多層ウェブは、その後、高度に精製されたセルロース繊維を含む多層片艶仕上げ紙を得るために、少なくとも1つの艶仕上げユニット内で艶仕上げされる。
【0015】
抄紙機(又は製紙機)は、高速で大量に紙を作り出すためにパルプ及び紙産業において使用される産業機械である。最近の製紙機は、典型的には、フォードリニア・マシンの原理に基づいており、それは、移動する織メッシュである「ワイヤ」を使用して、パルプ懸濁液中に保持された繊維を濾過して取り出し、連続的に移動する繊維の湿潤ウェブを生産することにより連続ウェブを作り出す。この湿潤ウェブは、機械内で乾燥されて、強い紙ウェブを生産する。
【0016】
本発明の方法の形成、脱水及び接合工程は、好ましくは、ウェットエンドと一般に呼ばれる抄紙機の形成セクションにおいて実施される。湿潤ウェブは、抄紙機の形成セクション内の異なるワイヤ上で形成される。本発明との使用のための形成セクションの好ましいタイプは、支持ワイヤと組み合わせた2つ又は3つのフォードリニアワイヤセクションを含む。ワイヤは、好ましくはエンドレスワイヤである。本発明の方法において使用されるワイヤは、好ましくは、速い脱水及び高い排出能を可能にするために比較的高い多孔度を有する。
【0017】
少なくとも1つの第1のパルプ懸濁液及び少なくとも1つの第2のパルプ懸濁液は、セルロースベースの繊維性材料と任意選択で非繊維性添加剤との水懸濁混合物を含む水性懸濁液である。本発明の方法は、高度に精製されたセルロース繊維を含むパルプ懸濁液を使用する。セルロースパルプのリファイニング、又は叩解は、それらに所望の特性を与えるためのセルロース繊維の機械的処理及び改質を指す。高度に精製されたセルロース繊維は、異なる原材料、例えば針葉樹パルプ又は広葉樹パルプから生産することができる。高度に精製されたセルロース繊維は、好ましくは未乾燥セルロース繊維である。
【0018】
本明細書において使用される高度に精製されたセルロース繊維という用語は、好ましくは、規格ISO 5267-1により決定されるとき65以上、好ましくは70以上、好ましくは85を上回る、好ましくは75~100の間又はさらにより好ましい85~99の間のショッパー・リーグラー(SR)値を有する精製されたセルロース繊維を指す。
【0019】
第1及び/又は第2のパルプ懸濁液の乾燥固体含有量は、典型的には0.1~0.7wt%の範囲内、好ましくは0.15~0.5wt%の範囲内、より好ましくは0.2~0.4wt%の範囲内である。
【0020】
第1及び/又は第2のパルプ懸濁液は、高度に精製されたセルロース繊維、精製されていないか、又はわずかに精製された繊維と任意選択の他の成分又は添加剤との混合物を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のパルプ懸濁液は、パルプ懸濁液の全乾燥重量に基づいて少なくとも0.1wt%、好ましくは少なくとも2wt%、より好ましくは少なくとも5wt%又は少なくとも10wt%の高度に精製されたセルロース繊維を含む。第1及び/又は第2のパルプ懸濁液が0.1~50wt%の、好ましくは2~40wt%の間又は5~30wt%の間又はさらにより好ましい10~25wt%の間の高度に精製された繊維を含むことが好ましい。高度に精製された繊維は、白色紙製品を生産するために晒パルプから、又は褐色紙製品を生産するために未晒パルプから生産されてよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のパルプ懸濁液の高度に精製されたセルロース繊維は、精製されたクラフトパルプである。精製されたクラフトパルプは、典型的には、少なくとも10%のヘミセルロースを含むことになる。したがって、いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のパルプ懸濁液は、高度に精製されたセルロース繊維の量の10~25%の範囲内の量でヘミセルロースを含む。
【0022】
第1及び/又は第2のパルプ懸濁液は、天然デンプン若しくはデンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体、充填剤、保持及び/若しくは排出化学薬品、凝集添加剤、解膠添加剤、乾燥強度添加剤、柔軟剤、架橋助剤、サイジング化学薬品、色素及び着色剤、湿潤強度樹脂、固定剤、脱泡助剤、微生物及びスライム抑制助剤、又はそれらの混合物などの添加剤をさらに含んでよい。第1及び/又は第2のパルプ懸濁液は、ラテックス及び/又はポリビニルアルコール(PVOH)などの、混合物及び/又は生産された紙の異なる特性を改善することになる添加剤をさらに含んでよい。本発明の方法は、保持及び排出化学薬品の添加への依存がより少ないが、より少量の保持及び排出化学薬品が依然として使用されることがある、脱水速度を増加させる代替方法を提供する。
【0023】
高度に精製された繊維は、好ましくはミクロフィブリル化セルロース(MFC)である。
【0024】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、本特許出願の文脈において、1000nm未満の少なくとも1つの寸法を有するナノスケールセルロース粒子繊維又はフィブリルを意味すると理解されるものとする。MFCは、部分的に、若しくは完全にフィブリル化したセルロース又はリグノセルロース繊維を含む。遊離したフィブリルが100nm未満の直径を有する一方、実際のフィブリルの直径又は粒子サイズ分布及び/又はアスペクト比(長さ/幅)は、源及び製造方法に依存する。最小のフィブリルはエレメンタリーフィブリルと呼ばれ、およそ2~4nmの直径を有し(例えばChinga-Carrasco,G.、Cellulose fibres,nanofibrils and microfibrils,:The morphological sequence of MFC components from a plant physiology and fibre technology point of view、Nanoscale research letters 2011年、6:417参照)、一方、ミクロフィブリルとしても定義される、エレメンタリーフィブリルの凝集形態(Fengel,D.、Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides、Tappi J.、1970年3月、第53巻、第3号。)は、例えば拡張リファイニングプロセス又は圧力降下分解プロセスを使用することにより、MFCを製造するとき得られる主生成物であることが一般的である。源及び製造プロセスに応じて、フィブリルの長さは、およそ1マイクロメートルから10マイクロメートル超まで変化し得る。粗いMFCグレードは、かなりの割合のフィブリル化繊維、すなわち仮道管(セルロース繊維)から突出しているフィブリルを、仮道管(セルロース繊維)から遊離したある一定量のフィブリルと共に含み得る。
【0025】
MFCには、セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリル状セルロース、ミクロフィブリル凝集体及びセルロースミクロフィブリル凝集体などの異なる頭字語が存在する。MFCは、その大きい表面積、又は水中に分散したときに低固形物(1~5wt%)でゲル様材料を形成するその能力などの様々な物理的若しくは物理化学的特性によっても特徴付けることができる。
【0026】
1回又は複数回のパスリファイニング、前加水分解とその後に続くリファイニング又は高剪断分解又はフィブリルの遊離など、MFCを製造する様々な方法が存在する。MFC製造をエネルギー効率的かつ持続可能にするために、1つ又はいくつかの前処理工程が通常必要とされる。したがって、利用されるパルプのセルロース繊維を、例えば酵素的又は化学的に前処理して、繊維を加水分解したり、若しくは膨潤させたり、又はヘミセルロース若しくはリグニンの量を減少させたりしてよい。セルロース分子が、天然セルロースに見出されるもの以外の(より多くの)官能基を含むように、セルロース繊維が、フィブリル化前に化学修飾されてよい。そのような基には、とりわけ、カルボキシメチル(CMC)、アルデヒド及び/又はカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化、例えば「TEMPO」により得られるセルロース)、第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)又はホスホリル基が含まれる。上記の方法のうちの1つにおいて修飾又は酸化された後、繊維をMFC又はナノフィブリルへと分解するのはより容易である。
【0027】
ナノフィブリル状セルロースは、数種のヘミセルロースを含んでよく、その量は、植物源に依存する。前処理された繊維、例えば加水分解、前膨潤、又は酸化されたセルロース原材料の機械的分解は、リファイナー、粉砕機、ホモジナイザー、コロイダー、摩擦粉砕機、超音波ソニケーター、マイクロフルイダイザー、マクロフルイダイザー又はフルイダイザー型ホモジナイザーなどのフルイダイザーなどの適した設備を用いて行われる。MFC製造方法に応じて、生成物は、微細繊維、又はナノ結晶セルロース、又は木材繊維中又は製紙プロセス中に存在する他の化学薬品も含み得る。生成物は、効率的にフィブリル化されていない様々な量のミクロンサイズの繊維粒子も含み得る。
【0028】
MFCは、広葉樹繊維及び針葉樹繊維の両方からの木材セルロース繊維から生産される。それは、微生物源、麦わらパルプ、竹、バガスなどの農業繊維、又は他の非木材繊維源からも作ることができる。それは、好ましくは、バージン繊維からのパルプ、例えばメカニカル、ケミカル及び/又はサーモメカニカルパルプを含むパルプから作られる。それは、損紙又は再生紙からも作ることができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、MFCの少なくとも一部はMFC損紙から得られる。
【0030】
高度に精製されたセルロース繊維に加えて、第1及び/又は第2のパルプ懸濁液は、ある一定量の精製されていないか、又はわずかに精製されたセルロース繊維を含む。本明細書において使用される精製されていないか、又はわずかに精製された繊維という用語は、好ましくは、規格ISO 5267-1により決定されるとき30を下回る、好ましくは28を下回るショッパー・リーグラー(SR)値を有するセルロース繊維を指す。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のパルプ懸濁液は、パルプ懸濁液の全乾燥重量に基づいて50~99.9wt%の間、好ましくは60~98wt%の間、より好ましくは70~95wt%の間又はさらにより好ましい75~90wt%の間の精製されていないか、又はわずかに精製されたセルロース繊維を含む。精製されていないか、又はわずかに精製されたセルロース繊維は、例えば、クラフトパルプなどのケミカルパルプ、メカニカル若しくはケミメカニカルパルプ又は他の高収率パルプから得ることができる。精製されていないか、又はわずかに精製されたセルロース繊維は、晒又は未晒パルプから得ることができる。精製されていないか、又はわずかに精製されたセルロース繊維は、好ましくは、未乾燥セルロース繊維からのパルプである。
【0031】
第1及び第2のパルプ懸濁液の組成は同じでも、異なっていてもよい。
【0032】
例えば、いくつかの実施形態において、パルプ懸濁液のうちの1つは、他のパルプ懸濁液と比較して、より多くの量の高度に精製された繊維を含んでよい。1つの可能性は、より速い脱水をもたらすために、より低いSR値を有するあまり高度に精製されていないセルロース繊維及び/又はより多くの量の精製されていないか、若しくはわずかに精製されたセルロース繊維を含む第1のパルプ懸濁液、並びに良好なバリア特性及び高い強度を提供するために、より高いSR値を有するより高度に精製されたセルロース繊維及び/又はより少量の精製されていないか、若しくはわずかに精製されたセルロース繊維を含む第2のパルプ懸濁液を有することである。懸濁液中でより少量の高度に精製された繊維を使用して、艶仕上げユニットと直接接触しているウェブを形成することが好ましいことがある。その結果、懸濁液の組成を変更することにより、艶仕上げユニットと直接接触していないウェブが、より多くの量、好ましくは20~50wt-%の量、好ましくは25~40wt-%の量の高度に精製された繊維を含むことになるようにマルチプライウェブを設計することが可能である。このようにして、良好な強度を有する多層片艶仕上げ紙を効率的な方法で生産することが依然として可能である
【0033】
いくつかの実施形態において、第1及び第2のパルプ懸濁液は、2つの異なるヘッドボックスから供給される。ヘッドボックスは、わずかに異なるように、例えば異なるコンシステンシー、ヘッドボックスジェット角度、又はジェット対ワイヤ比で操作することができるため、これは有利であり得る。
【0034】
1つを超えるマルチプライヘッドボックスを使用することも可能であり得る。このようにして、第1の懸濁液を、1つを超える層を含む第1のウェブ、すなわち第1のマルチプライ湿潤ウェブを形成する第1のマルチプライヘッドボックスに供することができ、第2の懸濁液を、1つを超える層を含む第2のウェブ、すなわち第2のマルチプライ湿潤ウェブを形成する第2のマルチプライヘッドボックスに供することができる。このようにして、第1の懸濁液からの1つを超える湿潤ウェブ層及び第2の懸濁液からの1つを超える湿潤ウェブ層を含むマルチプライウェブが形成される。第1のマルチプライ湿潤ウェブが、第1の懸濁液からの層だけでなく、例えば、第3、第4又は追加の懸濁液からの層も含むことが好ましいことがある。第2のマルチプライ湿潤ウェブが、第2の懸濁液からの層だけでなく、例えば、第5、第6又は追加の懸濁液からの層も含むことが可能であり得る。第1及び/又は第2のマルチプライ湿潤ウェブを形成するために1種を超える懸濁液を使用するとき、懸濁液の組成が異なることが好ましい。マルチプライMG紙の内側又は中間プライを形成する懸濁液が、より多くの量の高度に精製された繊維を含むことが好ましい。外側プライにおいて使用される懸濁液が、より少量の高度に精製された繊維を含むことが好ましいことがある。中間プライ又は内側プライにおいて使用される懸濁液は好ましくは、懸濁液の全乾燥固体含有量に基づいて15~50wt%の、好ましくは25~40wt%の間の高度に精製された繊維を含む。外側プライにおいて使用される懸濁液は好ましくは、懸濁液の全乾燥固体含有量に基づいて0.1~10wt%の量の、好ましくは1~5wt%の間の高度に精製された繊維を含む。
【0035】
本発明の方法において使用されるワイヤは、好ましくは、速い脱水及び高い排出能を可能にするために比較的高い多孔度を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、第1及び第2のパルプ懸濁液は、同じ組成を有する。これは、ただ1つのパルプ懸濁液源が必要とされるので、プロセスを単純化することができる。
【0037】
ウェブの全乾燥重量に基づく第1及び/又は第2の湿潤ウェブのそれぞれの坪量は、好ましくは、80g/m2未満、より好ましくは60g/m2未満である。低い坪量は、ピンホール形成がほとんどない湿潤ウェブの急速な部分的な脱水を可能にすることが見出された。ウェブの全乾燥重量に基づく第1及び/又は第2の湿潤ウェブの坪量は、好ましくは少なくとも5g/m2である。したがって、いくつかの実施形態において、ウェブの全乾燥重量に基づく第1及び/又は第2の湿潤ウェブの坪量は、5~80g/m2の範囲内、より好ましくは10~60g/m2の範囲内である。
【0038】
形成された後、第1及び第2の湿潤ウェブは部分的に脱水される。ワイヤ上のウェブの脱水は、当技術分野において既知の方法及び設備を使用して実施されてよく、例には、テーブルロール及びフォイル、無摩擦脱水並びに超音波支援脱水が含まれるが、これらに限定されない。部分的な脱水は、湿潤ウェブの乾燥固体含有量がパルプ懸濁液の乾燥固体含有量と比較して減少するが、脱水されたウェブが依然として著しい量の水を含むことを意味する。いくつかの実施形態において、湿潤ウェブの部分的な脱水は、第1及び第2の部分的に脱水されたウェブの乾燥固体含有量が1wt%を上回るが、15wt%を下回ることを意味する。いくつかの実施形態において、湿潤ウェブの部分的な脱水は、第1及び第2の部分的に脱水されたウェブの乾燥固体含有量が1wt%を上回るが、10wt%を下回ることを意味する。この範囲内の第1及び第2の部分的に脱水されたウェブの乾燥固体含有量は、多層ウェブ内に第1及び第2の湿潤ウェブを接合するのに特に適していることが見出された。いくつかの実施形態において、接合工程の前の第1及び第2の部分的に脱水されたウェブの乾燥固体含有量は、1.5~~8wt%の範囲内、好ましくは2.5~6wt%の範囲内、より好ましくは3~4.5wt%の範囲内でよい。
【0039】
部分的に脱水された、しかし依然として湿潤したウェブは、より高い坪量の多層ウェブを形成するために接合される。それらが接合されるときの第1及び第2の部分的に脱水されたウェブの乾燥固体含有量は、好ましくは、1wt%を上回るが、15wt%を下回り、より好ましくは1wt%を上回るが、10wt%を下回る。いくつかの実施形態において、それらが接合されるときの第1及び第2の部分的に脱水されたウェブの乾燥固体含有量は、1.5~8wt%の範囲内、好ましくは2.5~6wt%の範囲内、より好ましくは3~4.5wt%の範囲内である。部分的に脱水されたウェブは、好ましくは、ウェットラミネーションにより接合される。パルプ懸濁液がワイヤ上で脱水されるとき、目に見える境界線が、反射水層を有する、ウェブがそこから進む点からこの反射層が消える点まで現れることになる。反射ウェブと無反射ウェブの間のこの境界線は水線と呼ばれる。水線は、ウェブのある一定の固体含有量を示している。ウェブは、好ましくは、水線の後に接合される。ウェブが依然として湿潤している間にそれらを接合することは、層間の良好な接着を確実にする。接合することは、部分的に脱水されたウェブのうちの1つを他のウェブの上に付与することにより達成することができる。接合することは、非ワイヤ側に対して非ワイヤ側で、又は非ワイヤ側に対してワイヤ側で行われてよい。形成された多層ウェブの接合及びさらなる脱水は、様々な追加の操作により改善され得る。いくつかの実施形態において、接合することは、第1及び第2の部分的に脱水されたウェブを一緒にプレスすることをさらに含む。いくつかの実施形態において、接合することは、接合された第1及び第2の部分的に脱水されたウェブに吸引を適用することをさらに含む。形成された多層ウェブへの圧力及び/又は吸引の適用は、ウェブ層間の接着を改善する。抄紙機のワイヤセクションは、ブレード、テーブル及び/若しくはフォイル要素、サクションボックス、無摩擦脱水、超音波支援脱水、クーチロール、又はダンディロールなどの様々な脱水デバイスを有してよい。
【0040】
ワイヤに向いているウェブの表面はワイヤ側と呼ばれ、ワイヤと反対の方向を向いているウェブの表面は非ワイヤ側と呼ばれる。
【0041】
高度に精製されたセルロース繊維を含むウェブ、特にMFCをワイヤ上で脱水するとき、非ワイヤ側とワイヤ側の間に微細繊維含有量の差が生じることが見出された。微細繊維は、典型的には非ワイヤ側で濃縮され、より多くの微細繊維が、脱水が起こるワイヤ側から洗い落とされる。ウェブ組成のこの差又は不均衡は、湿度の変化に起因する完成紙のカーリングの問題を引き起こす。本発明に従って多層紙を形成することは、ウェブ組成の不均衡を軽減することにより、この問題を解決又は改善することができる。
【0042】
ウェブの接合は、好ましくは、非ワイヤ側に対して非ワイヤ側で、又はワイヤ側に対して非ワイヤ側で行われてよい。非ワイヤ側に対して非ワイヤ側で、又は非ワイヤ側に対してワイヤ側でウェブを接合することは、微細繊維のより大部分が多層紙の中央に向かって濃縮されるという点で追加の利点を与える。微細繊維のこの濃縮は、層間の接着及び紙のバリア特性の両方に寄与する。微細繊維は自己治癒現象にも寄与することができ、ここで、微細繊維は再分布して、湿潤ワイヤ上のフェルト状シート内のボイドを充填し、したがって、生産される紙の多孔性をより低くする。別の利点は、艶仕上げされる表面上の微細繊維の量が減少することであり、それは、艶仕上げユニットの表面へのウェブの接着特性及び走行性を改善する。
【0043】
非ワイヤ側に対して非ワイヤ側でウェブを接合することが好ましく、その理由は、i)微細繊維が中央で濃縮されることになる、ii)紙構造が対称になり、カーリング問題を軽減する、iii)接触表面における高濃度の微細繊維が、層間の良好な結合を確実にすることになる、iv)より多孔質の外面(ワイヤ側)が、プレスセクションにおけるより効率的な脱水及びより速い乾燥を可能にするからである。
【0044】
多層ウェブの乾燥固体含有量は、典型的には、接合工程の間にさらに増加する。乾燥固体含有量の増加は、ワイヤ上の多層ウェブの脱水並びにウェブに適用される任意選択の圧力及び/又は吸引によることができ、さらに接合の間又は直後に実施される乾燥操作、例えばインピンジメント乾燥又は空気若しくは蒸気乾燥によることができる。接合、並びに圧力及び/又は吸引の任意選択の適用後の多層ウェブの乾燥固体含有量は、典型的には8wt%を上回るが、28wt%を下回る。いくつかの実施形態において、さらなる脱水及び任意選択の乾燥工程の前の多層ウェブの乾燥固体含有量は、8~28wt%の範囲内、好ましくは10~20wt%の範囲内、より好ましくは12~18wt%の範囲内である。
【0045】
ウェブの全乾燥重量に基づく、多層ウェブ、及び多層MG紙の坪量は、典型的には160g/m2未満、好ましくは140g/m2未満、より好ましくは130g/m2未満である。いくつかの実施形態において、ウェブの全乾燥重量に基づく、多層ウェブ、及び多層片艶仕上げ紙の坪量は、25~160g/m2の範囲内、好ましくは30~140g/m2の範囲内、より好ましくは40~130g/m2の範囲内である。
【0046】
本発明は、高度に精製されたセルロース繊維を含む2つのウェブ層から多層MG紙が形成される実施形態を主に参照して本明細書に記載される。しかし、多層MG紙は、高度に精製されたセルロース繊維を含む追加のウェブ層も含んでよいことが理解される。したがって、形成される多層MG紙は、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つの層など、高度に精製されたセルロース繊維を含む3つ以上のウェブ層から形成されることも可能である。追加の各層の形成、組成及び構造は、第1及び第2のウェブ層を参照して上記したようにさらに特徴付けることができる。したがって、いくつかの実施形態において、多層紙を製造するための方法は、
c2)高度に精製されたセルロース繊維を含む第3のパルプ懸濁液を第3のワイヤ上に塗布することにより第3の湿潤ウェブを形成する工程;
d2)第3の部分的に脱水されたウェブを得るために、第3の湿潤ウェブを部分的に脱水する工程;
e2)多層ウェブを得るために、第1、第2及び第3の部分的に脱水されたウェブを接合する工程
をさらに含む。
【0047】
3つ以上のウェブ層を含むMG紙が生産される場合、第1及び第3の懸濁液が、好ましくはより少量の高度に精製された繊維を含む同じ組成を有し、第1の層と第3の層の間に位置することになる第2の層を生産するための第2の完成紙料が、より多くの量の高度に精製された繊維を含むことが好ましいことがある。第1及び第3のパルプ懸濁液が、0.1~10wt%の間、好ましくは1~5wt%の量の高度に精製された繊維を含み、第2のパルプ懸濁液が、15~50wt-%の間、好ましくは25~40wt-%の間の高度に精製された繊維を含むことが好ましいことがある。
【0048】
マルチプライウェブの脱水後、ウェブをさらなる脱水に供することが可能であることがある。さらに脱水することは、典型的には、できるだけ多くの水を絞り出すためにウェブをプレスすることを含む。さらに脱水することは、例えば、形成された多層ウェブを抄紙機のプレスセクションに通過させることを含んでよく、ここで、ウェブは、できるだけ多くの水を絞り出すために高圧下で負荷された大きいロール間を通過する。除去された水は、典型的には、ファブリック又はフェルトにより受け取られる。いくつかの実施形態において、さらなる脱水後の多層ウェブの乾燥固体含有量は、15~40wt%の範囲内、好ましくは18~35wt%の範囲内、より好ましくは20~30wt%の範囲内である。
【0049】
脱水工程f)において脱水ユニット内で多層ウェブを追加の脱水に任意選択で供することが可能であることがある。脱水ユニットは、好ましくは、少なくとも150mmのニップ長さを有するシュープレス、ベルトプレス又は同様の拡張ニップ加圧設備である。シュープレス、ベルトプレス又は同様の拡張ニップ加圧設備の使用は、ウェブのウェットブリスタリングのリスクを増加させたり、多層MG紙のバリア特性を損なったりすることなく多層ウェブの脱水を改善することを可能にすることが見出された。拡張ニップ加圧設備は、好ましくは、少なくとも150mm、好ましくは少なくとも200mm、好ましくは150~350mmの間、さらにより好ましい200~300mmの間のニップ長さを有する。拡張ニップ加圧設備における線荷重は、好ましくは250~1500kN/mの間であり、すなわち、これは、設備、例えばシュープレスにおいて使用される最大線荷重である。使用される線荷重は、多層ウェブの処理の間に変更されることが好ましい。拡張ニップ加圧設備における線荷重を徐々に、又は段階的に増加させることにより、バリア特性を損なうことなくウェブの脱水は改善され、すなわち、より高い乾燥固体含有量を有するウェブを生産することができる。ニップにおける処理の間に線荷重をパルスで増加させる、すなわち、シュープレスにおける多層ウェブの処理の間に少なくとも1パルスに少なくとも1回、線荷重を増加させることも可能である。これを拡張ニップ加圧設備における処理の間に繰り返すことができる。1つを超える拡張ニップ加圧設備、例えばシュープレスが使用される場合、両方の設備において同じ線荷重プロファイルを使用することが可能である。しかし、脱水された多層ウェブのバリア特性を劣化させることなく脱水が改善されるように異なる線荷重プロファイルを使用して、線荷重プロファイルを設計することがしばしば好ましい。
【0050】
シュープレスにより、シュープレスニップを備える拡張ニップ加圧設備を意味する。任意の既知のシュープレスを使用することができる。シュープレスニップは、シューとロールを使用することにより、又は大直径ソフトロールとロールを使用することにより形成することができる。ロールは、好ましくは合成ベルトを有するが、それは、金属ベルトを有することもできる。大直径ソフトロールは、1.5~2メートルの直径を有することができる。繊維性ウェブに対するシューの位置は、シュープレスの傾斜角を変更することにより変更することができる。少なくとも1つのシュープレスの傾斜角は、好ましくは7~24度の間である。傾斜角は、ピーク線荷重に影響し、かつ線荷重を調整して、ウェブの脱水効率を改善する手段である。ニップ時間は、好ましくは少なくとも30msである。ニップ長さ及び生産速度に応じて、多層ウェブがシュープレスにおいて圧力を受ける時間は変化する。
【0051】
任意選択の脱水工程後のマルチプライウェブの乾燥固体含有量は、好ましくは25~45wt%の間である。
【0052】
ベルトプレスにより、ベルトを備える拡張ニップ加圧設備を意味する。任意の既知のベルトプレスを使用することができる。
【0053】
少なくとも2つの拡張ニップ加圧設備、好ましくは少なくとも2つのシュープレスを使用すること、及び2つの拡張ニップ加圧設備が互いの後に位置していることが好ましいことがある。次いで、マルチプライウェブが、まず第1のシュープレスを通じて、次いで第2のシュープレスを通じて導かれる。このようにして、MFCの量を増加させることができることを意味するウェブの脱水をいっそう改善すること、及び生産効率を改善することが可能であることが見出された。第1のシュープレスにおいて使用されるニップ圧は、好ましくは、第2のシュープレスにおいて使用されるニップ圧よりも低い。少なくとも2つのシュープレスは、好ましくは、前記ウェブの異なる側に位置する。このようにして、繊維性ウェブを通じて両方向からウェブを脱水することが可能である。1つを超えるシュープレスが使用されるとき、全ニップ長さ、すなわち各シュープレスのニップ長さの合計が、350mmを上回る、好ましくは400mmを上回る、さらにより好ましい450mmを上回ることが好ましい。少なくとも2つのシュープレスの幾何学的設計は、好ましくは異なり、例えば、1つのシュープレスは凹状設計を有することができ、1つのシュープレスは凸状設計を有することができる。
【0054】
脱水ユニット内での任意選択の脱水工程後、マルチプライウェブの少なくとも片側が艶仕上げされる艶仕上げユニットを通じてマルチプライウェブが導かれる。艶仕上げユニットは、ヤンキーシリンダー、グラシンカレンダー又はシューカレンダー若しくはベルトカレンダーなどの拡張ニップカレンダーでよい。艶仕上げユニットは、好ましくはヤンキーシリンダーである。艶仕上げユニットとしてのヤンキーシリンダーの使用は、マルチプライウェブの少なくとも1つの表面を乾燥すること、及びマルチプライウェブの少なくとも1つの表面に艶仕上げ表面を与えることの両方を可能にすることが見出された。ヤンキーシリンダーは、非常に多孔質な材料であるティッシュペーパーを乾燥するために通常使用される。ヤンキーシリンダーの使用及び乾燥が紙にどのように影響するのかは、Walkerにより論文「High temperature Yankee Hoods Save Energy and Improve Quality、P&P、2007年7月によく記載されている。生成物を乾燥するためにヤンキーシリンダーを使用するとき、生成物中の液体は、ヤンキーシリンダーに向かって、すなわち、熱、及び乾燥中に生成される蒸気に向かって生成物を通じて流れる。本発明者らのケースの生成物の液体はまた、紙の滑らかにされた艶仕上げ表面上でミクロフィブリルの濃度の増加が達成されることになるミクロフィブリルを含む。
【0055】
多層ウェブを艶仕上げする前の多層ウェブの乾燥固体含有量は、好ましくは、35~85wt%の範囲内、好ましくは45~85wt%の範囲内である。艶仕上げ処理ができるだけ効率的であることを保証するために、多層ウェブの乾燥固体含有量が制御されることが重要である。また、ウェブの正確な乾燥固体含有量は、艶仕上げユニットの表面上のウェブの接着問題のリスクを最小限にすることになる。
【0056】
艶仕上げユニットの温度は、好ましくは100℃を上回り、好ましくは110~190℃の間である。マルチプライウェブの第1の側は、艶仕上げユニットと直接接触することになり、例えば、ヤンキーシリンダー、拡張ニップカレンダー又はグラシンカレンダーの表面と直接接触することになる。艶仕上げユニット、例えばヤンキーシリンダーへの繊維性ウェブの接着を調整するために、接着調整添加剤を艶仕上げユニットの表面に加えることが好ましいことがある。繊維性ウェブ内のミクロフィブリル化セルロースは繊維性ウェブを緊張させすぎる傾向があり、それは、艶仕上げユニットの表面からのウェブのリフティング又はブリスタリングの原因となるため、ミクロフィブリル化セルロースが使用されるとき、艶仕上げユニットの表面への接着を調整することが重要であることが見出された。接着調整添加剤は、艶仕上げユニットの表面へのウェブの十分な接着をもたらすことになる。適した接着調整添加剤は、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリアミド-アミン誘導体、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド及び/又はポリアクリルアミド誘導体などの水溶性又は部分的に水溶性のポリマーであり得る。使用されるPVOHの加水分解度は、好ましくは99%未満、さらにより好ましい98%未満である。変性PVOH、好ましくはエチレン、カルボキシル化、カチオン化又はシリコナイズドPVOHなど、変性ポリマーを使用することも可能である。接着調整添加剤はまた、ナノクレイ及び/又はナノセルロースなど、ナノ粒子を含んでよい。接着調整添加剤はまた、全乾燥重量に基づいて0.5~20wt-%の間のナノ粒子を含んでよい。艶仕上げユニットの表面への接着調整添加剤の量は、好ましくは0.1~10gsm乾燥重量の間である。接着調整添加剤は、好ましくは、吹付により艶仕上げユニットの表面に加えられる。接着調整添加剤は、好ましくは、溶液として、又は泡として艶仕上げユニットの表面に加えられる。
【0057】
マルチプライウェブは、艶仕上げユニットを通じて導かれた後、少なくとも1つのカレンダーにおいてカレンダー処理されてよい。マシンカレンダー、マルチニップカレンダー、ソフトニップカレンダー、ベルトカレンダーなど、任意の既知のカレンダーを使用することができる。シューカレンダー又は任意の他の拡張ニップカレンダーを使用することが好ましいことがある。片艶仕上げ紙の片側又は両側をカレンダー処理することが可能である。カレンダーにおける処理は、好ましくはインラインで行われる。
【0058】
繊維性ウェブは、カレンダー処理された後にデカーリングユニット内で処理されてよい。このようにして、紙のカーリング傾向をいっそう低減することが可能である。
【0059】
生産された多層片艶仕上げ紙は、好ましくは、コーティング組成物で少なくとも片側にコーティングされる。コーティング組成物は好ましくは、デンプン、カルボキシメチルセルロース及び/又はミクロフィブリル化セルロースを含む。コーティングがMG紙の艶仕上げ表面に塗布されることが好ましい。コーティング組成物は、紙のバリア特性をさらに改善することになる。驚くべきことに、紙への高度に精製された繊維の添加が紙のコーティング特性を改善する、すなわち、紙の表面上のコーティングの被覆が強く改善されることが明らかになった。1つの理論は、艶仕上げ表面の密度が増加することであり、これは、コーティングが紙の表面上に「留まり」、コーティング量を低減し、かつ依然として表面上の完全なコーティング被覆を達成することができることが可能であることを意味する。コーティングが0.1~5gsm、好ましくは0.2~4gsmの間、さらにより好ましい0.3~3gsmの間の量で塗布されることが好ましい。任意の既知のコーティング技法がコーティング組成物を紙の表面に塗布するために使用されてよい。
【0060】
多層MG紙は、好ましくは、高い再パルプ性を有する。いくつかの実施形態において、多層MG紙は、PTS-RH 021/97試験法に従ってカテゴリーII材料として試験されるとき、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満の不合格を示す。
【0061】
本明細書に例示される第2の態様によれば、本発明の方法により得ることができる、高度に精製されたセルロースを含む多層片艶仕上げ紙が提供される。
【0062】
多層片艶仕上げ紙は好ましくは、全乾燥固体含有量に基づいて0.1~50wt%の間、より好ましくは2~40wt%の間、さらにより好ましくは5~30wt%の間の高度に精製された繊維を含む。
【0063】
多層片艶仕上げ紙は、好ましくは、25~160g/m2の範囲内、好ましくは30~140g/m2の範囲内、より好ましくは40~130g/m2の範囲内の坪量を有する。
【0064】
多層片艶仕上げは、好ましくは、ASTM D-3985に従って200cc/m2/24時間を下回る、好ましくは150cc/m2/24時間を下回る、さらにより好ましい100cc/m2/24時間を下回る酸素透過率(OTR)値(23℃、50% RH)を有する。
【0065】
多層片艶仕上げ紙は、好ましくは、規格ISO 5636/6に従って測定されるとき少なくとも25000秒/100ml、より好ましくは少なくとも40000秒/100mlのガーレー・ヒル値を有する。
【0066】
多層片艶仕上げ紙は、好ましくは、ISO 8791-4に従って5μmを下回り、好ましくは2μmを下回る表面粗さPPS値を有する少なくとも1つの艶仕上げ表面を有する(任意の最終的なコーティングを加える前に測定される)。
【0067】
多層片艶仕上げ紙は、好ましくは、60gsm紙に対してTAPPI UM-403に従って測定される1500J/m2を上回る、より好ましくは1600J/m2を上回る、最も好ましくは1800J/m2を上回るスコットボンド値を有する。その結果、生産される多層MG紙は、非常に高い強度を有する。
【0068】
多層MG紙は、典型的には、グリース及び油に対する良好な耐性を示すことになる。紙の耐グリース性は、規格ISO 16532-2に従ってKIT試験により評価される。試験は、ヒマシ油、トルエン及びヘプタンの一連の混合物を使用する。溶媒に対する油の割合が減少するにつれて、粘度及び表面張力も低下し、続く混合物が耐えるのはより困難となる。性能は、15秒後にシートを黒ずませない最大の数が付けられた溶液により格付けされる。不良を引き起こすことなく紙の表面上に残留する最大の数が付けられた溶液(最も攻撃的)が「kit格付け」(最大12)として報告される。いくつかの実施形態において、多層MG紙のKIT値は、規格ISO 16532-2に従って測定されるとき少なくとも6、好ましくは少なくとも8、さらにより好ましい少なくとも10である。
【0069】
本発明の多層片艶仕上げ紙は、包装材料として、特に食品又は衛生用品の包装として特に適している。
【0070】
一般に、生成物、ポリマー、材料、層及びプロセスは、様々な構成要素又は工程「を含む」という表現で記載されるが、生成物、ポリマー、材料、層及びプロセスは、様々な構成要素及び工程「から本質的になる」又は「からなる」こともできる。
【0071】
本発明は、様々な例示的な実施形態を参照して記載されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更が加えられてよく、その要素を均等物で置換してよいことが当業者により理解されるであろう。加えて、その本質的な範囲から逸脱することなく特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正が加えられてよい。したがって、本発明は、本発明を行うために企図される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されないこと、しかし、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。
【国際調査報告】