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特表2023-540733アルキルオキサシクロアルキル部分を含むスルファモイル尿素誘導体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(54)【発明の名称】アルキルオキサシクロアルキル部分を含むスルファモイル尿素誘導体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/12 20060101AFI20230919BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
C07D405/12 CSP
A61K31/4155
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P37/06
A61P25/00
A61P35/00
A61P1/16
A61P19/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P11/00
A61P13/12
A61P19/04
A61P3/04
A61P3/10
A61P17/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P35/04
A61P1/00
A61P31/12
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514910
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 US2021049001
(87)【国際公開番号】W WO2022051582
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】63/074,521
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519331246
【氏名又は名称】ノッドセラ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ボック マーク ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】スカンロン ジェーン イー.
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC73
4C063CC78
4C063DD22
4C063EE01
4C063EE05
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC36
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZC31
4C086ZC35
(57)【要約】
本開示は、式(I)の化合物、およびそれらの薬学的に許容される塩、薬学的組成物、使用方法、およびそれらの調製のための方法に関する。本明細書に開示される化合物は、インフラマソームを阻害することでIL-1ファミリーのサイトカインの成熟を阻害するために有用であり、インフラマソーム活性が関与する障害、例えば炎症性疾患、自己炎症性疾患、および自己免疫疾患、ならびにがんの処置において使用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であって、
式中、
R1
であり、ここでn1aおよびn1bが、それぞれ独立して0または1であり;
R2が、-(CH2n2-R2Sであり、ここでn2が、1または2であり;
R2Sが、少なくとも1個のヘテロ原子がOである4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルが、1個または複数のR2SSで置換されていてもよく;
各R2SSが、独立して、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6ハロアルキル、ハロ、-CN、-OH、-O(C1~C6アルキル)、-NH2、-NH(C1~C6アルキル)、-N(C1~C6アルキル)2、またはオキソであり;
R3が、1個または複数のR3Sで置換されていてもよい5員または6員ヘテロアリールであり;
各R3Sが、独立して、ハロ、C1~C6アルキル、またはC1~C6ハロアルキルである、
前記化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R1
であり、ここでn1aおよびn1bが、それぞれ独立して、0または1であり;
R2が、-(CH2n2-R2Sであり、ここでn2が、1または2であり;
R2Sが、少なくとも1個のヘテロ原子がOである4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルが、1個または複数の-OHで置換されていてもよく;
R3が、1個または複数のC1~C6アルキルで置換されていてもよい5員または6員ヘテロアリールである、
前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項3】
n1aおよびn1bがどちらも1である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項4】
R1
である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
R1
である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
R1
である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
R2が、-CH2-R2Sである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
R2が、-CH2-R2Sであり、
R2Sが、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルであり、該テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルが、1個または複数の-OHで置換されていてもよい、
前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
R2が、-(CH22-R2Sである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
R2が、-(CH22-R2Sであり、
R2Sが、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルであり、該テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルが、1個または複数の-OHで置換されていてもよい、
前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
R2Sが、少なくとも1個のヘテロ原子がOである5~6員ヘテロシクロアルキルであり、該5~6員ヘテロシクロアルキルが、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
R2Sが、1個のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子が、Oであり、該5~6員ヘテロシクロアルキルが、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
R2Sが、1個のヘテロ原子を有する5員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子が、Oであり、該5員ヘテロシクロアルキルが、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
R2Sが、1個のヘテロ原子を有する6員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子が、Oであり、該6員ヘテロシクロアルキルが、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項15】
少なくとも1個のR2SSが-OHである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項16】
R2Sが、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルであり、該テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルが、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項17】
R2Sが、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルであり、該テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルが、1個または複数の-OHで置換されていてもよい、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項18】
R2Sが、1個または複数の-OHで置換されていてもよいテトラヒドロフラニルである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項19】
R2Sが、テトラヒドロフラニルである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項20】
R2Sが、1個または複数の-OHで置換されたテトラヒドロフラニルである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項21】
R2Sが、テトラヒドロピラニルである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項22】
R2Sが、1個または複数の-OHで置換されたテトラヒドロピラニルである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項23】
R3が、1個または複数のR3Sで置換された5員または6員ヘテロアリールである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項24】
R3が、1個または複数のC1~C6アルキルで置換された5員または6員ヘテロアリールである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項25】
R3が、1個または複数のC1~C6アルキルで置換されたピラゾリルである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項26】
R3
である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項27】
R3
である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項28】
式(Ia-1)または(Ia-2):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項29】
式(Ib-1)または(Ib-2):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項30】
式(Ic-1)、(Ic-2)、または(Ic-3):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項31】
式(Id-1)または(Id-2):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項32】
式(Ie-1)、(Ie-2)、(Ie-3)、または(Ie-4):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項33】
化合物番号1、1A、1B、2、2A、2B、3、3A、3B、4、4A、4B、5、5A、5B、6、6A、6B、7A、7B、8A、および8B、ならびにそのプロドラッグおよび薬学的に許容される塩から選択される、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項34】
前記請求項のいずれか一項記載の化合物の同位体誘導体である、化合物。
【請求項35】
本明細書に記載の方法によって得ることができるかまたは得られた化合物であって、
任意で、前記方法が、スキーム1~3に記載の1つまたは複数の工程を含む、化合物。
【請求項36】
前記請求項のいずれか一項記載の化合物を調製するための方法によって得られた中間体であって、
任意で、実施例1~12に記載の中間体から選択される、中間体。
【請求項37】
前記請求項のいずれか一項記載の化合物と、薬学的に許容される希釈剤または担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項38】
細胞を、有効量の前記請求項のいずれか一項記載の化合物と接触させる段階を含む、インフラマソーム活性を阻害する方法であって、
任意で、インフラマソームがNLRP3インフラマソームであり、活性がインビトロまたはインビボである、方法。
【請求項39】
疾患または障害を処置または予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、
該対象に、治療有効量の前記請求項のいずれか一項記載の化合物または前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する段階を含む、方法。
【請求項40】
インフラマソーム活性を阻害することにおける使用のための前記請求項のいずれか一項記載の化合物または薬学的組成物であって、
任意で、インフラマソームがNLRP3インフラマソームであり、活性がインビトロまたはインビボである、化合物または薬学的組成物。
【請求項41】
疾患または障害を処置または予防することにおける使用のための、前記請求項のいずれか一項記載の化合物または薬学的組成物。
【請求項42】
インフラマソーム活性を阻害するための医薬の製造における、前記請求項のいずれか一項記載の化合物の使用であって、
任意で、インフラマソームがNLRP3インフラマソームであり、活性がインビトロまたはインビボである、使用。
【請求項43】
疾患または障害を処置または予防するための医薬の製造における、前記請求項のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項44】
疾患または障害が、インフラマソーム活性の関与と関連し、
任意で、疾患または障害が、インフラマソーム活性が関与する疾患または障害である、
前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項45】
疾患または障害が、炎症性障害、自己炎症性障害、自己免疫障害、神経変性疾患、またはがんである、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項46】
疾患または障害が、炎症性障害、自己炎症性障害または自己免疫障害であり、
任意で、疾患または障害が、クリオピリン関連自己炎症性症候群(CAPS;例えば家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群/新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID))、家族性地中海熱(FMF)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、痛風、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患(CKD)、線維症、肥満、2型糖尿病、多発性硬化症、皮膚疾患(例えば、ざ瘡)、およびタンパク質ミスフォールディング疾患(例えばプリオン病)において生じる神経炎症より選択される、
前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項47】
疾患または障害が神経変性疾患であり、
任意で、疾患または障害がパーキンソン病またはアルツハイマー病である、
前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項48】
疾患または障害ががんであり、
任意で、がんが、転移性がん、脳がん、胃腸がん、皮膚がん、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、または結腸直腸腺癌である、
前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項49】
疾患または障害が炎症性疾患である、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項50】
炎症性疾患が感染と関連する、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項51】
感染がウイルス感染である、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項52】
ウイルス感染が一本鎖RNAウイルスによって引き起こされる、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項53】
一本鎖RNAウイルスがコロナウイルスである、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項54】
コロナウイルスが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV 2)である、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項55】
炎症性疾患が、2019新型コロナウイルス疾患(COVID-19)につながるSARS-CoV 2による感染と関連する、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項56】
炎症性疾患がサイトカイン放出症候群(CRS)を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項57】
CRSがCOVID-19と関連する、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項58】
CRSが養子細胞療法と関連する、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【請求項59】
養子細胞療法がキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法、化合物、薬学的組成物または使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年9月4日に出願された米国仮出願第63/074,521号の優先権を主張し、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の分野
本開示は、インフラマソーム阻害活性を有し従ってヒトまたは動物の身体の処置方法において有用である、アルキルオキサシクロアルキル部分を含むスルファモイル尿素誘導体、そのプロドラッグ、およびその薬学的に許容され得る塩に関する。本開示はまた、これらの化合物の調製のための方法、それらを含む薬学的組成物、ならびに、インフラマソーム活性が関与する障害、例えば炎症疾患、自己炎症性疾患、および自己免疫疾患、ならびに腫瘍学的疾患の処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
自己免疫疾患は炎症性因子の過剰産生に関連している。それらのうち1種はインターロイキン1(IL-1)であり、活性化マクロファージ、単球、線維芽細胞、および自然免疫系の他の構成要素、例えば樹状細胞によって産生される。IL-1は、細胞の増殖、分化、およびアポトーシスを含む種々の細胞活動に関与している(Masters, S. L., et. al., Annu. Rev. Immunol. 2009. 27:621-68(非特許文献1))。
【0004】
ヒトにおいて、22種のNLRタンパク質は、N末端ドメインに準拠して4つのNLRサブファミリーに分けられる。NLRAはCARD-ATドメインを含み、NLRB(NAIP)はBIRドメインを含み、NLRC(NOD1およびNOD2を含む)はCARDドメインを含み、NLRPはパイリンドメインを含む。複数のNLRファミリーメンバーがインフラマソーム形成に関連している。
【0005】
インフラマソーム活性化は病原体に対する宿主免疫の重要な構成要素として進化したようであるが、NLRP3インフラマソームは、内因性の無菌性危険シグナルに応答して活性化される能力があるという点で独特である。多くのこれらの無菌性シグナルが解明されており、それらの形成は特定の疾患状況に関連している。例えば、痛風患者に見られる尿酸結晶は、NLRP3活性化の有効なトリガーである。同様に、アテローム性動脈硬化症患者に見られるコレステロール結晶もNLRP3活性化を促進しうる。NLRP3活性化因子としての無菌性危険シグナルの役割の認識により、IL-1およびIL-18は、代謝障害、生理学的障害、炎症性障害、血液障害、および免疫障害を含む広範な病態生理学的徴候に関与する。
【0006】
本開示は、NLRP3依存性細胞プロセスの特異的調節のためのさらなる化合物を提供する必要性によって生まれたものである。特に、既存の化合物に比べて改善された物理化学特性、薬理学特性、および薬学特性を有する化合物が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Masters, S. L., et. al., Annu. Rev. Immunol. 2009. 27:621-68
【発明の概要】
【0008】
概要
いくつかの局面において、本開示は、式(I):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩に関し、
式中、
R1
であり、ここでn1aおよびn1bはそれぞれ独立して0または1であり;
R2は、-(CH2n2-R2Sであり、ここでn2は1または2であり;
R2Sは、少なくとも1個のヘテロ原子がOである4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルは1個または複数のR2SSで置換されていてもよく;
各R2SSは、独立して、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6ハロアルキル、ハロ、-CN、-OH、-O(C1~C6アルキル)、-NH2、-NH(C1~C6アルキル)、-N(C1~C6アルキル)2、またはオキソであり;
R3は、1個または複数のR3Sで置換されていてもよい5員または6員ヘテロアリールであり;
各R3Sは、独立して、ハロ、C1~C6アルキル、またはC1~C6ハロアルキルである。
【0009】
いくつかの局面において、本開示は、本明細書記載の化合物を調製するための方法(例えばスキーム1および2に記載の1つまたは複数の工程を含む方法)によって得ることができるかまたは得られた化合物を提供する。
【0010】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書記載の化合物と1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0011】
いくつかの局面では、本開示は、本明細書に記載の化合物を調製するための方法における使用に好適である、本明細書に記載の中間体を提供する(例えば、中間体は実施例1~12に記載の中間体より選択される)。
【0012】
いくつかの局面では、本開示は、インフラマソーム(例えばNLRP3インフラマソーム)活性を(例えばインビトロまたはインビボで)阻害する方法であって、細胞と有効量の本開示の化合物とを接触させる段階を含む方法を提供する。
【0013】
いくつかの局面では、本開示は、本明細書に開示される疾患または障害を処置または予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、該対象に治療有効量の本開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または本開示の薬学的組成物を投与する段階を含む方法を提供する。
【0014】
いくつかの局面では、本開示は、インフラマソーム(例えばNLRP3インフラマソーム)活性を(例えばインビトロまたはインビボで)阻害することにおける使用のための、本開示の化合物を提供する。
【0015】
いくつかの局面では、本開示は、本明細書に開示される疾患または障害を処置または予防することにおける使用のための、本開示の化合物を提供する。
【0016】
いくつかの局面では、本開示は、インフラマソーム(例えばNLRP3インフラマソーム)活性を(例えばインビトロまたはインビボで)阻害するための医薬の製造における、本開示の化合物の使用を提供する。
【0017】
いくつかの局面では、本開示は、本明細書に開示される疾患または障害を処置または予防するための医薬の製造における、本開示の化合物の使用を提供する。
【0018】
いくつかの局面では、本開示は、本開示の化合物の方法を提供する。
【0019】
いくつかの局面では、本開示は、本明細書に記載の1つまたは複数の工程を含む、化合物を調製する方法を提供する。
【0020】
別途定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書では、文脈上別途明らかな指示がない限り、単数形は複数も含む。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により組み入れられる。本明細書において引用される参考文献は、特許請求される本発明の先行技術であるとは認められない。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示的なものでしかなく、限定的であるようには意図されていない。化学構造と本明細書に開示される化合物の名称との間に矛盾がある場合は、化学構造が優先する。
【0021】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
自己免疫疾患は炎症性因子の過剰産生に関連している。それらのうち1種はインターロイキン1(IL-1)であり、活性化マクロファージ、単球、線維芽細胞、および自然免疫系の他の構成要素、例えば樹状細胞によって産生され、細胞の増殖、分化、およびアポトーシスを含む種々の細胞活動に関与している(Masters, S. L. et al., Annu. Rev. Immunol. 2009. 27:621-68)。
【0023】
IL-1ファミリーのサイトカインは高活性であり、また、重要な炎症メディエーターとして、主に急性および慢性炎症に関連している(Sims J. et al. Nature Reviews Immunology 10, 89-102 (February 2010))。IL-1の過剰産生はいくつかの自己免疫疾患および自己炎症性疾患のメディエーターであると考えられる。自己炎症性疾患は、自己抗体、感染症、または抗原特異的Tリンパ球の非存在下での再発性および特発性の炎症を特徴とする。
【0024】
IL-1スーパーファミリーの炎症性サイトカインとしてはIL-1α、IL-1β、IL-18、およびIL-36α、β、λが挙げられ、病原体および他の細胞ストレッサーに応答して、宿主自然免疫応答の一部として産生される。小胞体およびゴルジ体からなる標準的な細胞分泌器官によって処理および放出される多くの他の分泌サイトカインとは異なり、IL-1ファミリーメンバーは、小胞体移行に必要なリーダー配列を欠いており、したがって翻訳後に細胞内に保持される。さらに、IL-1β、IL-18、およびIL-36α、β、λは、標的細胞上の同族受容体に結合するのに最適なリガンドになるためにタンパク質分解活性化を必要とするプロサイトカインとして合成される。
【0025】
現在、IL-1α、IL-1β、およびIL-18の場合、インフラマソームとして知られる多量体タンパク質複合体が、IL-1βおよびIL-18のプロ形態の活性化、ならびにこれらのサイトカインの細胞外放出の原因であることが認識されている。通常、インフラマソーム複合体は、NLR(ヌクレオチドオリゴマー化ドメイン(NOD)様受容体)などのセンサー分子と、アダプター分子ASC(CARD(カスパーゼ動員ドメイン)を含むアポトーシス関連speck様タンパク質)と、プロカスパーゼ1とからなる。病原体関連分子パターン(PAMP)および危険関連分子パターン(DAMP)を含む種々の「危険シグナル」に応答して、インフラマソームのサブユニットはオリゴマー化して細胞内に超分子構造を形成する。PAMPとしては、ペプチドグリカン、ウイルスDNAまたはRNA、および細菌DNAまたはRNAなどの分子が挙げられる。他方、DAMPは、尿酸一ナトリウム結晶、シリカ、ミョウバン、アスベスト、脂肪酸、セラミド、コレステロール結晶、およびβ-アミロイドペプチド凝集物を含む広範な内因性または外因性の無菌性トリガーからなる。インフラマソームプラットフォームの構築により、プロカスパーゼ1の自己触媒作用が促進されることで、pro-IL-1βおよびpro-IL-18の活性化および放出の原因である高活性システインプロテアーゼが生じる。したがって、これらの高炎症性サイトカインの放出は、特定の分子危険シグナルを検出しかつそれに応答するインフラマソームセンサーに応答してのみ実現される。
【0026】
ヒトにおいて、22種のNLRタンパク質は、N末端ドメインに準拠して4つのNLRサブファミリーに分けられる。NLRAはCARD-ATドメインを含み、NLRB(NAIP)はBIRドメインを含み、NLRC(NOD1およびNOD2を含む)はCARDドメインを含み、NLRPはパイリンドメインを含む。NLRP1、NLRP3、NLRP6、NLRP7、NLRP12、およびNLRC4(IPAF)を含む複数のNLRファミリーメンバーがインフラマソーム形成に関連している。
【0027】
PYHINドメインを含む2種の他の構造的に別個のインフラマソーム構造(パイリンおよびHINドメイン含有タンパク質)、すなわちAbsent in Melanoma 2(AIM2)およびIFNλ誘導性タンパク質16(IFI16)(Latz et al., Nat Rev Immunol 2013 13(6) 397-311)は、細胞内DNAセンサーの役割を果たす。パイリン(MEFV遺伝子によってコードされる)は、proIL-1β活性化に関連する別の種類のインフラマソームプラットフォームとなる(Chae et al., Immunity 34, 755-768, 2011)。
【0028】
IL-1βおよびIL-18の活性化ならびにそれらの単球およびマクロファージからの放出を実現するためにインフラマソームプラットフォームの構築が必要であることから、間違いなく、2段階プロセスによるそれらの産生が慎重に設定される。第一に、細胞が必ずプライミングリガンド(例えばTLR4受容体リガンドLPS、またはTNFαなどの炎症性サイトカイン)と遭遇することで、NLRP3、pro-IL-1β、およびpro-IL-18のNFkB依存性転写が行われる。新たに翻訳されたプロサイトカインは、産生細胞が第2のシグナルに遭遇することでインフラマソームスキャフォールドの活性化およびプロカスパーゼ1の成熟が生じることがない限り、細胞内および不活性にとどまる。
【0029】
pro-IL-1βおよびpro-IL-18のタンパク質分解活性化に加えて、活性カスパーゼ1も、ガスダーミンDの切断を通じて、ピロトーシスとして知られる炎症性細胞死の一形態の引き金を引く。ピロトーシスによって、IL-1βおよびIL-18の成熟形態が、高移動度ボックス1タンパク質(HMGB1)、IL-33、およびIL-1αなどのアラーミン分子(炎症を促進し、自然免疫および適応免疫を賦活化する化合物)の放出と共に外在化される。
【0030】
インフラマソーム活性化は病原体に対する宿主免疫の重要な構成要素として進化したようであるが、NLRP3インフラマソームは、内因性および外因性の無菌性危険シグナルに応答して活性化される能力があるという点で独特である。多くのこれらの無菌性シグナルが解明されており、それらの形成は特定の疾患状況に関連している。例えば、痛風患者に見られる尿酸結晶は、NLRP3活性化の有効なトリガーである。同様に、アテローム性動脈硬化症患者に見られるコレステロール結晶もNLRP3活性化を促進しうる。NLRP3活性化因子としての無菌性危険シグナルの役割の認識により、IL-1βおよびIL-18は、代謝障害、生理学的障害、炎症性障害、血液障害、および免疫障害を含む広範な病態生理学的徴候に関与する。
【0031】
ヒト疾患との関連は、機能獲得をもたらすNLRP3遺伝子の変異が、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、および新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID)を含む、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)として総合的に知られる一連の自己炎症性状態を生じさせるという発見によって最もよく例示される(Hoffman et al., Nat Genet. 29(3) (2001) 301-305)。同様に、NLRP3の無菌性メディエーター誘導活性化は、関節変性(痛風、関節リウマチ、変形性関節症)、心血管代謝障害(2型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、高血圧)、中枢神経系障害(アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症)、胃腸障害(クローン病、潰瘍性大腸炎)、肺障害(慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、特発性肺線維症、および肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む広範な障害に関与している。さらに、NLRP3活性化は、腎炎症を促進し、したがって慢性腎疾患(CKD)の一因であると考えられる。
【0032】
IL-1が病態形成の寄与因子として関与する疾患に対する現行の処置オプションとしては、IL-1受容体アンタゴニストアナキンラ、IL-1受容体およびIL-1受容体アクセサリータンパク質の細胞外ドメインのFc含有融合構築物(リロナセプト)、ならびに抗IL-1βモノクローナル抗体カナキヌマブが挙げられる。例えば、カナキヌマブはCAPS、腫瘍壊死因子受容体関連周期性症候群(TRAPS)、高免疫グロブリンD症候群(HIDS)/メバロン酸キナーゼ欠損症(MKD)、家族性地中海熱(FMF)、および痛風について認可されている。
【0033】
いくつかの小分子がNLRP3インフラマソームの機能を阻害することが報告されている。例えば、グリブリドは、インビボでは達成可能でありそうにないマイクロモル濃度であっても、NLRP3活性化の特異的阻害剤となる。パルテノライド、Bay 11-7082、および3,4-メチレンジオキシ-β-ニトロスチレンなどの非特異的な剤は、NLRP3活性化を損なうことが報告されているが、電子吸引基での置換によって活性化されるオレフィンからなる共通の構造的特徴を共有することから、治療有用性が限定的であると見込まれる。この置換によって、タンパク質を有するチオール基との共有結合性付加体の望ましくない形成が生じることがある。いくつかの天然産物、例えばβ-ヒドロキシ酪酸、スルホラファン、ケルセチン、およびサルビアノール酸もNLRP3活性化を抑制することが報告されている。同様に、Gタンパク質共役型受容体TGR5アゴニスト、ナトリウム・グルコース共輸送阻害剤エンパグリフロジン、ドパミン受容体アンタゴニストA-68930、セロトニン再取り込み阻害剤フルオキセチン、フェナム酸系非ステロイド性抗炎症薬、およびβ-アドレナリン受容体遮断剤ネビボロールを含む、他の分子標的に関する数多くのエフェクター/モジュレーターが、NLRP3活性化を損なうことが報告されている。NLRP3依存性炎症性障害の慢性処置用の治療薬としてのこれらの分子の有用性は依然として確立されていない。一連のスルホニル尿素含有分子が、pro-IL-1βの翻訳後プロセシングの強力かつ選択的な阻害剤として既に同定された(Perregaux et al., J Pharmacol. Exp. Ther. 299, 187-197, 2001)。この研究の例示的分子CP-456,773がNLRP3活性化の特異的阻害剤として特徴づけられた(Coll et al., Nat Med 21.3 (2015): 248-255.)。
【0034】
本開示は、NLRP3依存性細胞プロセスの特異的調節に有用な化合物に関する。特に、既存のNLRP3調節化合物に比べて改善された物理化学特性、薬理学特性、および薬学特性を有する化合物が望まれている。
【0035】
定義
別途記載がない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される以下の用語は、以下に記載の意味を有する。
【0036】
この記述によって制限されることは望まないが、可変部についてはさまざまな選択肢が本明細書に記載され、本開示は、それらの選択肢の組み合わせを有する機能的な態様を包含するものであることが理解されよう。本開示は、それらの選択肢の一定の組み合わせを原因とする非機能的な態様を排除すると解釈されうる。
【0037】
本開示の化合物は、中性型、陽イオン型(例えば1個または複数の正電荷を有するもの)または陰イオン型(例えば1個または複数の負電荷を有するもの)で表すことができ、それらはいずれも本開示の範囲に含まれるものとされることを理解すべきである。例えば本開示の化合物が陰イオン型で表される場合、そのような記載は、その化合物のさまざまな中性型、陽イオン型および陰イオン型にも言及していることを理解すべきである。別の一例として、本開示の化合物が陰イオン型で表される場合、それは、その化合物の陰イオン型のさまざまな塩(例えばナトリウム塩)にも言及していることを理解すべきである。
【0038】
「治療有効量」とは、疾患を処置するために哺乳動物に投与された場合に、その疾患のそのような処置を達成するのに十分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度、ならびに処置される哺乳動物の年齢、体重などに依存して変動するだろう。
【0039】
本明細書において使用される「アルキル」、「C1、C2、C3、C4、C5、もしくはC6アルキル」、または「C1~C6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5、またはC6直鎖(直鎖状)飽和脂肪族炭化水素基およびC3、C4、C5、またはC6分岐飽和脂肪族炭化水素基を含むように意図されている。例えば、C1~C6アルキルはC1、C2、C3、C4、C5、およびC6アルキル基を含むように意図されている。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、またはn-ヘキシルなどであるがそれに限定されない、1~6個の炭素原子を有する部分が挙げられる。いくつかの態様では、直鎖または分岐アルキルは6個以下の炭素原子を有し(例えば直鎖ではC1~C6、分岐鎖ではC3~C6)、別の態様では、直鎖または分岐アルキルは4個以下の炭素原子を有する。
【0040】
本明細書において使用される「置換されていてもよいアルキル」という用語は、非置換アルキル、または炭化水素骨格の1個もしくは複数の炭素上の1個もしくは複数の水素原子を置き換える所定の置換基を有するアルキルを意味する。これらの置換基としてはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を例えば挙げることができる。
【0041】
本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、先に記載のアルキルと長さおよび可能な置換において類似しているが、少なくとも1つの二重結合を含む、不飽和脂肪族基を含む。例えば、「アルケニル」という用語は直鎖アルケニル基(例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)および分岐アルケニル基を含む。特定の態様では、直鎖または分岐アルケニル基は骨格中に6個以下の炭素原子を有する(例えば直鎖ではC2~C6、分岐鎖ではC3~C6)。「C2~C6」という用語は、2~6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。「C3~C6」という用語は、3~6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
【0042】
本明細書において使用される「置換されていてもよいアルケニル」という用語は、非置換アルケニル、または1個もしくは複数の炭化水素骨格炭素原子上の1個もしくは複数の水素原子を置き換える所定の置換基を有するアルケニルを意味する。これらの置換基としてはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を例えば挙げることができる。
【0043】
本明細書において使用される「アルキニル」という用語は、先に記載のアルキルと長さおよび可能な置換において類似しているが、少なくとも1つの三重結合を含む、不飽和脂肪族基を含む。例えば、「アルキニル」は直鎖アルキニル基(例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)および分岐アルキニル基を含む。特定の態様では、直鎖または分岐アルキニル基は骨格中に6個以下の炭素原子を有する(例えば直鎖ではC2~C6、分岐鎖ではC3~C6)。「C2~C6」という用語は、2~6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。「C3~C6」という用語は、3~6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。本明細書において使用される「C2~C6アルケニレンリンカー」または「C2~C6アルキニレンリンカー」は、C2、C3、C4、C5、またはC6(直鎖または分岐鎖)二価不飽和脂肪族炭化水素基を含むように意図されている。例えば、C2~C6アルケニレンリンカーはC2、C3、C4、C5およびC6アルケニレンリンカー基を含むように意図されている。
【0044】
本明細書において使用される「置換されていてもよいアルキニル」という用語は、非置換アルキニル、または1個もしくは複数の炭化水素骨格炭素原子上の1個もしくは複数の水素原子を置き換える所定の置換基を有するアルキニルを意味する。これらの置換基としてはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を例えば挙げることができる。
【0045】
他の置換されていてもよい部分(例えば置換されていてもよいシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール)は、非置換部分、および1個または複数の所定の置換基を有する部分の両方を含む。例えば、置換ヘテロシクロアルキルは、1個または複数のアルキル基で置換されたヘテロシクロアルキル、例えば2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジニルおよび2,2,6,6-テトラメチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジニルを含む。
【0046】
本明細書において使用される「シクロアルキル」という用語は、3~30個の炭素原子を有する(例えばC3~C12、C3~C10、またはC3~C8)、飽和または部分不飽和の単環式または多環式(例えば縮合環、架橋環、もしくはスピロ環)炭化水素系を意味する。シクロアルキルの例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレニル、およびアダマンチルが挙げられるがそれに限定されない。多環式シクロアルキルの場合、シクロアルキル中の環のうち1つしか非芳香族である必要はない。
【0047】
本明細書において使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、別途指定がない限り、窒素、酸素、および硫黄からなる群より独立して選択される1個または複数のヘテロ原子(例えばO、N、S、P、またはSe)、例えば1個もしくは1~2個もしくは1~3個もしくは1~4個もしくは1~5個もしくは1~6個のヘテロ原子、または例えば1、2、3、4、5、もしくは6個のヘテロ原子を有する飽和または部分不飽和の3~8員単環系、7~12員二環系(縮合環、架橋環、もしくはスピロ環)、または11~14員三環系(縮合環、架橋環、もしくはスピロ環)を意味する。ヘテロシクロアルキル基の例としてはピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、イソインドリニル、インドリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、トリアゾリジニル、オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、ピラニル、モルホリニル、テトラヒドロチオピラニル、1,4-ジアゼパニル、1,4-オキサゼパニル、2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタニル、2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタニル、1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4.5]デカニル、1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカニル、1-オキサスピロ[4.5]デカニル、1-アザスピロ[4.5]デカニル、3'H-スピロ[シクロヘキサン-1,1'-イソベンゾフラン]-イル、7'H-スピロ[シクロヘキサン-1,5'-フロ[3,4-b]ピリジン]-イル、3'H-スピロ[シクロヘキサン-1,1'-フロ[3,4-c]ピリジン]-イル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル、1,4,5,6-テトラヒドロピロロ[3,4-c]ピラゾリル、3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロピリド[4,3-d]ピリミジニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-c]ピリジニル、5,6,7,8-テトラヒドロピリド[4,3-d]ピリミジニル、2-アザスピロ[3.3]ヘプタニル、2-メチル-2-アザスピロ[3.3]ヘプタニル、2-アザスピロ[3.5]ノナニル、2-メチル-2-アザスピロ[3.5]ノナニル、2-アザスピロ[4.5]デカニル、2-メチル-2-アザスピロ[4.5]デカニル、2-オキサ-アザスピロ[3.4]オクタニル、2-オキサ-アザスピロ[3.4]オクタン-6-イルなどが挙げられるがそれに限定されない。多環式ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロシクロアルキル中の環のうち1つしか非芳香族である必要はない(例えば4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[c]イソオキサゾリル)。
【0048】
本明細書において使用される「アリール」という用語は、1個または複数の芳香環を有する「共役系」または多環系を含み、かつ環構造中にヘテロ原子を含まない、芳香族性を有する基を含む。アリールという用語は一価の種および二価の種の両方を含む。アリール基の例としてはフェニル、ビフェニル、ナフチルなどが挙げられるがそれに限定されない。好都合には、アリールはフェニルである。
【0049】
本明細書において使用される「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子と窒素、酸素、および硫黄からなる群より独立して選択される1個または複数のヘテロ原子、例えば1個または1~2個または1~3個または1~4個または1~5個または1~6個のヘテロ原子、あるいは例えば1個、2個、3個、4個、5個、または6個のヘテロ原子とからなる、安定な5員、6員、または7員の単環式芳香族複素環、あるいは7員、8員、9員、10員、11員、または12員の二環式芳香族複素環を含むように意図されている。窒素原子は置換されていても置換されていなくてもよい(すなわちNまたはNRであり、ここでRはHまたは定義される他の置換基である)。窒素および硫黄ヘテロ原子は酸化されていてもよい(すなわち、N→OおよびS(O)p、ここでp=1または2である)。芳香族複素環中のS原子およびO原子の総数が1を超えないことに留意すべきである。ヘテロアリール基の例としてはピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンなどが挙げられる。多環式系を形成するために、ヘテロアリール基は、芳香族ではない脂環式またはヘテロ環式環と融合されるかまたは架橋され得る(例えば、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[c]イソキサゾリル)。
【0050】
さらに、「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、多環式アリール基およびヘテロアリール基、例えば三環式、二環式、例えばナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インドール、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、インドリジンを含む。
【0051】
シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環、またはヘテロアリール環は1つまたは複数の環位置(例えば環を形成する炭素原子またはNなどのヘテロ原子)において上記の置換基、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分で置換されていてもよい。多環系(例えばテトラリンや、ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イルなどのメチレンジオキシフェニル)を形成するように、アリール基およびヘテロアリール基と芳香族ではない脂環式環または複素環とを縮合または架橋させてもよい。
【0052】
本明細書において使用される「置換された」という用語は、所定の原子の通常の原子価を越えずかつ置換によって安定な化合物が得られることを条件に、所定の原子上の任意の1個または複数の水素原子が指定の基からの選択によって置き換えられていることを意味する。置換基がオキソまたはケト(すなわち=O)である場合、原子上の2個の水素原子が置き換えられている。ケト置換基は芳香族部分上には存在しない。本明細書において使用される環二重結合とは、2個の隣接する環原子(例えばC=C、C=N、またはN=N)の間に形成される二重結合のことである。「安定な化合物」および「安定な構造」は、反応混合物からの有用な純度での単離、および有効な治療剤への製剤化に耐えるほど十分に頑強である化合物を示すように意図されている。
【0053】
置換基への結合が環中の2個の原子を接続する結合を横切ると示される場合、当該置換基は環中のどの原子に結合していてもよい。ある置換基が、所与の式の化合物の残りに結合する当該置換基の原子が示されることなく列挙される場合、当該置換基は当該の式中のどの原子を通じて結合していてもよい。置換基および/または変動要素の組み合わせは、当該の組み合わせによって安定な化合物が得られる場合にのみ許容される。
【0054】
ある化合物の任意の構成要素中または式中で任意の変動要素(例えばR)が2回以上出現する場合、出現毎のその定義は他の出現毎のその定義とは無関係である。したがって、例えば、ある基が0~2個のR部分で置換されていると示される場合、その基は最大2個のR部分で置換されていてもよく、出現毎のRは独立してRの定義より選択される。また、置換基および/または変動要素の組み合わせは、当該の組み合わせによって安定な化合物が得られる場合にのみ許容される。
【0055】
本明細書において使用される「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語は、-OHまたは-O-を有する基を含む。
【0056】
本明細書において使用される「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
【0057】
「ハロアルキル」または「ハロアルコキシル」という用語は、1個または複数のハロゲン原子で置換されたアルキルまたはアルコキシルを意味する。
【0058】
本明細書において使用される「置換されていてもよいハロアルキル」という用語は、非置換ハロアルキル、または1個もしくは複数の炭化水素骨格炭素原子上の1個もしくは複数の水素原子を置き換える所定の置換基を有するハロアルキルを意味する。これらの置換基としてはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を例えば挙げることができる。
【0059】
本明細書において使用される「アルコキシ」または「アルコキシル」という用語は、酸素原子に共有結合している置換および非置換のアルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基を含む。アルコキシ基またはアルコキシル基の例としてはメトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、およびペントキシ基が挙げられるがそれに限定されない。置換アルコキシ基の例としてはハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基はアルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分などの基で置換されていてもよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例としてはフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、およびトリクロロメトキシが挙げられるがそれに限定されない。
【0060】
別途指示がない限り、本明細書において使用される「A、B、またはCのうち1つまたは複数」、「1つまたは複数のA、B、またはC」、「A、B、およびCのうち1つまたは複数」、「1つまたは複数のA、B、およびC」、「A、B、およびCからなる群より選択される」、「A、B、およびCより選択される」などという表現は、互換的に使用されるものであり、いずれも、A、B、および/またはCからなる群からの選択、すなわち、1つまたは複数のA、1つまたは複数のB、1つまたは複数のC、あるいはそれらの任意の組み合わせを意味する。
【0061】
本明細書において使用される「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV 2)」とは、2019新型コロナウイルス病(COVID-19)の原因となったコロナウイルスを指す。COVID-19は2019年に中国の武漢で初めて特定され、進行中の世界的パンデミックをもたらした。2020年8月までに、世界全体で2500万例超が報告され、推定848,000例の死亡をもたらしている。COVID-19の一般的症状には、発熱、咳、疲労、息切れ、ならびに嗅覚および味覚の喪失が含まれる。症状は軽度である人々が多いが、一部の人々は、おそらくはサイトカイン放出症候群(CRS)を原因とする急性呼吸窮迫症候群、多臓器不全、敗血症性ショックおよび凝血塊を発症する。ウイルスへの曝露から症状発現までの時間は、典型的には5日前後であるが、2~14日の範囲に及びうる。いくつかの態様において、SARS-CoV 2は、2019新型コロナウイルス病(COVID-19)の原因となったコロナウイルスの変異種(mutation)を指す。
【0062】
いくつかの態様において、コロナウイルスは、SARS-CoV(すなわちSARS)、SARS-CoV-2、MERS-CoV(すなわちMERS)、またはそれらの変異体(mutant)および/もしくはバリアント(variant)であることができる。いくつかの態様において、対象は、MERSおよび/またはそのバリアントと関連する疾患または病変を有する。いくつかの態様において、対象は、SARSおよび/またはそのバリアントと関連する疾患または病変を有する。いくつかの態様において、対象は、SARS-CoV-2および/またはそのバリアントと関連する疾患または病変を有する。「バリアント」は、コロナウイルスの1つまたは複数の公知の株に関して新規な遺伝子変異が起きているような、コロナウイルスの遺伝的バリアントを指す。変異(例えば置換または欠失)は、コロナウイルスのゲノム中の任意のヌクレオチドに起こりうる。バリアントは、注目すべきバリアント、懸念されるバリアント、または甚大な被害が想定されるバリアントであり得る。例えばB.1.1.7(アルファ)、B.1.351(ベータ)、B.1.617(デルタ)、およびP.1(ガンマ)、B.1.526(イオタ)、B.1.427(イプシロン)、B.1.429(イプシロン)、B.1.1.7(アルファ)、P.2(ゼータ)、ならびにそれらの系統は、SARS-CoV-2のバリアントとして分類される。新規な変異または変異のセットを持つコロナウイルスの新しいバリアントが生じる可能性があり、それらも本明細書にいう「コロナウイルス」という用語に包含されることが理解されよう。
【0063】
本明細書において使用される「サイトカイン放出症候群(CRS)」は、限定するわけではないが、薬物、SARS-CoV 2などの感染、およびキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)治療などの免疫治療を含むさまざまな要因が引き金になりうる全身性の炎症応答を指す。CRSでは、多数の免疫細胞(例えばT細胞)が活性化され、炎症性サイトカインを放出し、それが結果として、さらなる免疫細胞を活性化する。症状には、発熱、疲労、食欲不振、筋関節痛、悪心、嘔吐、下痢、発疹、呼吸不全、低血圧、発作、頭痛および錯乱が含まれる。CRSは、IL-6受容体阻害および高用量のステロイドに応答しうる。
【0064】
本明細書において使用される「養子細胞療法」は、がんなどの疾患を処置するために免疫細胞を使用する、処置の一形態を指す。免疫細胞、例えばT細胞を、対象または他の供給源から収集し、大量に増殖させ、免疫系が疾患と闘うのを助けるために、対象に移植する。養子細胞療法のタイプとしては、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法およびT細胞受容体T細胞(TCR-T)療法が挙げられる。
【0065】
本明細書において使用される「キメラ抗原受容体(CAR)」という用語は、例えば人工的T細胞受容体、キメラT細胞受容体、またはキメラ免疫受容体を指し、特定の免疫エフェクター細胞上に人工的特異性を移植する操作された受容体を包含しうる。CARは、モノクローナル抗体の特異性をT細胞に付与し、それによって多数の特異的T細胞を、例えば養子細胞療法用に生成させることを可能にするために使用されうる。例えばCARは、そのCARを発現する細胞の特異性を腫瘍関連抗原に向かわせうる。いくつかの態様において、CARは、細胞内活性化ドメインと、膜貫通ドメインと、抗原結合ドメインを含む細胞外ドメインとを含み、任意で細胞外ヒンジを含む。抗原結合ドメインは、抗体、Fab、F(ab')2、ナノボディ、単一ドメイン抗原結合ドメイン、scFv、VHHなどに由来する抗原結合ドメインを含む、当技術分野において公知の任意の抗原結合ドメインであることができる。特定の局面において、CARは、CD3の膜貫通ドメインおよびエンドドメインに融合されたモノクローナル抗体由来の単鎖可変フラグメント(scFv)の融合物を含む。一定の例では、CARは、CD3、FcR、CD27、CD28、CD137、DAP10、および/または0X40などといった、追加の共刺激シグナル伝達のためのドメインを含む。
【0066】
「T細胞受容体(TCR)」は、T細胞、すなわちTリンパ球の表面に見いだされるタンパク質複合体であり、これは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合したペプチドとしての抗原フラグメントの認識を担っている。T細胞受容体は、特定の抗原に特異的な抗原結合ドメインを発現するように操作することができ、本明細書記載の養子細胞療法において使用することができる。
【0067】
本開示が、本明細書に記載のいずれかの式の化合物の合成のための方法を提供することを理解すべきである。本開示はまた、以下のスキームおよび実施例に示されるスキームによる、本開示の様々な開示される化合物の合成のための詳細な方法を提供する。
【0068】
本明細書を通じて、組成物が特定の成分を有する、包含する、または含むものとして記載される場合、組成物が記載される成分から本質的になるかまたはそれからなることもあると想定されることを理解すべきである。同様に、方法(method)または方法(process)が特定の工程を有する、包含する、または含むものとして記載される場合、方法は記載される工程から本質的になるかまたはそれからなることもある。さらに、本発明が実行可能であり続ける限り、工程の順序または特定の行為を行うための順序は重要ではないと理解すべきである。さらに、2つ以上の工程または行為を同時に行ってもよい。
【0069】
本開示の合成方法が多種多様な官能基を許容しうるものであり、したがって様々な置換出発原料が使用可能であることを理解すべきである。本方法は一般に、プロセス全体の最後またはその近くで所望の最終化合物を与えるが、特定の場合では、該化合物をその薬学的に許容される塩にさらに変換することが望ましいことがある。
【0070】
本開示の化合物が、当業者に公知であるかまたは本明細書の教示に照らせば当業者に明らかであろう標準的な合成方法および合成手順を使用することで、市販の出発原料を使用して、文献公知の化合物を使用して、または容易に調製される中間体から、種々の様式で調製可能であることを理解すべきである。有機分子の調製用の標準的な合成方法および合成手順、ならびに官能基の標準的な変換および操作は、関連する科学文献から、または当分野の標準的な教科書から得ることができる。任意の1つまたはいくつかの出典に限定されるものではないが、参照により本明細書に組み入れられるSmith, M. B., March, J., March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th edition, John Wiley & Sons: New York, 2001; Greene, T.W., Wuts, P.G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley & Sons: New York, 1999; R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); およびL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)などの古典的なテキストが、当業者に公知である有機合成の有用でかつ認められた参考教科書である。
【0071】
当業者は、本明細書に記載の反応順序および合成スキーム中に、保護基の導入および除去などの特定の工程の順序を変更することができることに留意するであろう。当業者は、特定の基が、保護基の使用による反応条件からの保護を必要としうることを認識するであろう。保護基を、分子中の類似の官能基を識別するために使用してもよい。保護基のリスト、ならびにこれらの基をどのようにして導入および除去するかはGreene, T.W., Wuts, P.G.M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley & Sons: New York, 1999に見ることができる。
【0072】
別途記載がない限り、処置方法に関する任意の記載が、本明細書に記載の処置または予防を行うための本化合物の使用、および該状態を処置または予防するための医薬を調製するための本化合物の使用を含むことを理解すべきである。処置は、げっ歯類および他の疾患モデルを含むヒトまたは非ヒト動物の処置を含む。
【0073】
本明細書において使用される「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物、ならびに細胞株、細胞培養、組織、および器官を包含する。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、例えばヒトまたは適当な非ヒト哺乳動物、例えば霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタであることができる。対象はトリまたは家禽であることもできる。いくつかの態様において、対象はヒトである。
【0074】
本明細書において使用される「それを必要とする対象」という用語は、疾患を有するか疾患の進行のリスクが増加している対象を意味する。それを必要とする対象は、本明細書に記載の疾患または障害を有すると既に診断または同定された対象でありうる。また、それを必要とする対象は、本明細書に記載の疾患または障害に罹患している対象でありうる。あるいは、それを必要とする対象は、集団全体に比べてそのような疾患または障害を発生させる危険性が増加している対象(すなわち、集団全体に比べてそのような障害を発生させやすい対象)でありうる。それを必要とする対象は、難治性または抵抗性の本明細書に記載の疾患または障害(すなわち、処置に応答しないかまたはまだ応答していない本明細書に記載の疾患または障害)を有することがある。対象は、処置開始時に抵抗性を示すことがあり、または処置中に抵抗性を得ることがある。いくつかの態様では、それを必要とする対象は、本明細書に記載の疾患または障害に対するすべての公知の有効な治療法を受けたが、うまくいかなかった。いくつかの態様では、それを必要とする対象は少なくとも1つの従来の治療法を受けた。
【0075】
本明細書において使用される「処置すること」(treating)または「処置する」(treat)という用語は、疾患、状態、または障害と戦うための患者の管理およびケアを表し、疾患、状態、もしくは障害の症状もしくは合併症を緩和するための、または疾患、状態、もしくは障害を除去するための、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物の投与を含む。また、「処置する」という用語はインビトロでの細胞の処理、または動物モデルの処置を含みうる。
【0076】
本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物を、関連性のある疾患、状態、もしくは障害を予防するために使用するかまたは当該の目的に好適な候補を同定するために使用することができるかまたはそうしてもよいことを理解すべきである。
【0077】
本明細書において使用される「予防すること」、「予防する」、または「~に対して保護すること」という用語は、当該の疾患、状態、または障害の症状または合併症の発症を減少させるかまたは排除することを記述するものである。
【0078】
当業者が、本明細書において説明される公知の技術またはその同等の技術の詳細な説明に関する一般的な参考テキストを参照することができることを理解すべきである。これらのテキストとしてはAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. (2005); Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2000); Coligan et al., Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, N.Y.; Enna et al., Current Protocols in Pharmacology, John Wiley & Sons, N.Y.; Fingl et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics (1975), Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 18th edition (1990)が挙げられる。当然、これらのテキストを、本開示の一局面を作り出すかまたは使用する上で参照してもよい。
【0079】
本開示がまた、本明細書に記載の任意の化合物と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤または担体との組み合わせを含む、薬学的組成物を提供することを理解すべきである。
【0080】
本明細書において使用される「薬学的組成物」という用語は、対象への投与に好適な形態で本開示の化合物を含む製剤のことである。一態様では、薬学的組成物はバルクまたは単位剤形である。単位剤形は、カプセル剤、点滴用バッグ、錠剤、エアロゾル吸入器上の単一のポンプ、またはバイアルを例えば含む種々の形態のうちのいずれかである。組成物の単位剤形中の有効成分(例えば、開示される化合物またはその塩、水和物、溶媒和物、もしくは異性体の製剤)の量は、有効量であり、関係する特定の処置によって変動する。当業者は、患者の年齢および状態に応じて投与量の日常的な変更を行うことが時として必要であることを認識するであろう。投与量は投与経路にも依存する。経口、肺内、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、頬側、舌下、胸膜内、くも膜下腔内、鼻腔内などを含む種々の経路が想定される。本開示の化合物の局所投与または経皮投与用の剤形としては散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ剤、および吸入剤が挙げられる。一態様では、有効化合物は滅菌条件下で、薬学的に許容される担体、および必要な任意の保存料、緩衝剤、または噴霧剤と混合される。
【0081】
本明細書において使用される「薬学的に許容される」という用語は、正しい医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用する上で好適であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わず、妥当なベネフィット/リスク比に相応している、化合物、アニオン、カチオン、材料、組成物、担体、および/または剤形を意味する。
【0082】
本明細書において使用される「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、一般に安全で、無毒であり、かつ生物学的にもその他の点でも望ましくないということがない薬学的組成物を調製する上で有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用およびヒトでの薬学的使用に許容される賦形剤を含む。本明細書および特許請求の範囲において使用される「薬学的に許容される賦形剤」は、1つのそのような賦形剤および2つ以上のそのような賦形剤の両方を含む。
【0083】
本開示の薬学的組成物が所期の投与経路に適合するように製剤化されることを理解すべきである。投与経路の例としては非経口投与、例えば静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口(例えば吸入)投与、経皮(局所)投与、および経粘膜投与が挙げられる。非経口適用、皮内適用、または皮下適用に使用される溶液剤または懸濁液剤は以下の成分を含みうる: 注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤; ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤; アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤; エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート化剤; 酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの浸透圧の調整のための剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整可能である。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または多用量バイアルに封入可能である。
【0084】
本開示の化合物または薬学的組成物を、化学療法的処置に現在使用されている多くの周知の方法において、対象に投与することができることを理解すべきである。例えば、本開示の化合物を、血流もしくは体腔に注射するか、または経口摂取させるか、またはパッチによって皮膚を通じて適用することができる。選択される用量は、有効な処置を構成するために十分であるが、許容されない副作用を引き起こすほど高くないはずである。疾患状態(例えば本明細書に記載の疾患または障害)の状況および患者の健康を、処置中、および処置後の相当な期間において注意深くモニタリングすることが好ましいはずである。
【0085】
本明細書において使用される「治療有効量」という用語は、同定された疾患もしくは状態を処置し、寛解させ、もしくは予防するか、または検出可能な治療効果もしくは阻害効果を示す、薬剤の量を意味する。効果は、当技術分野において公知である任意のアッセイ法によって検出可能である。対象についての正確な有効量は、対象の体重、サイズ、および健康; 状態の性質および程度; ならびに投与向けに選択される治療薬または治療薬の組み合わせに依存する。所与の状況での治療有効量は、臨床医の技量および判断の範囲内である日常的な実験によって確定可能である。
【0086】
任意の化合物について、最初に治療有効量を、例えば新生細胞の細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル、通常はラット、マウス、ウサギ、イヌ、またはブタのいずれかにおいて推定可能であることを理解すべきである。また、動物モデルを、適切な濃度範囲および投与経路を確定するために使用することができる。次に、この情報を、ヒトにおける有用な用量および投与経路を確定するために使用することができる。治療/予防有効性および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順、例えばED50(集団の50%に治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量)によって確定可能である。毒性効果と治療効果との間の用量比を治療指数とし、それはLD50/ED50比で表すことができる。大きい治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。投与量は、使用する剤形、患者の感受性、および投与経路に応じて、この範囲内で変動しうる。
【0087】
投与量および投与は、十分なレベルの有効剤を与えるように、または所望の効果を維持するように調整される。考慮に入れることができる要因としては、疾患状況の重症度、対象の全身的健康、対象の年齢、体重、および性別、食事、投与時間および投与頻度、薬物組み合わせ、反応感受性、ならびに治療に対する耐性/応答が挙げられる。長時間作用型の薬学的組成物を、特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて、3~4日に1回、毎週、または2週間に1回投与することができる。
【0088】
本開示の有効化合物を含む薬学的組成物を、一般に公知であるやり方で、例えば通常の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥のプロセスによって製造することができる。薬学的組成物を、薬学的に使用可能な製剤に有効化合物を加工することを促進する、1つまたは複数の賦形剤および/または助剤を含む薬学的に許容される担体を使用して、従来のように製剤化することができる。当然、適切な製剤化は選択される投与経路に依存する。
【0089】
注射用に好適な薬学的組成物としては、滅菌水溶液剤(水溶性の場合)または水性分散液剤、および滅菌注射用溶液剤または分散液剤の即時調製用の滅菌散剤が挙げられる。静脈内投与では、好適な担体として生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州Parsippany)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合でも、本組成物は滅菌されていなければならず、また、容易なシリンジ注入可能性が存在する程度に流動的でなければならない。本組成物は製造条件および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対抗するように保存されなければならない。担体は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにその好適な混合物を例えば含む溶媒または分散媒でありうる。適当な流動性を、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散液剤の場合における必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の阻止を様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどで実現することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、およびソルビトールなどの多価アルコール、ならびに塩化ナトリウムを本組成物に含めることが好ましい。注射用組成物の長期吸収を、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを本組成物に含めることでもたらすことができる。
【0090】
滅菌注射用溶液剤は、所要量の有効化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて上記で列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に組み入れた後、濾過滅菌を行うことで調製可能である。一般に、分散液剤は、塩基性分散媒および上記で列挙した必要な他の成分を含む滅菌媒体に有効化合物を組み入れることで調製される。滅菌注射用溶液剤の調製用の滅菌散剤の場合、調製方法としては、有効成分と任意のさらなる所望の成分との粉末を、既に滅菌濾過したその溶液から得る、真空乾燥および凍結乾燥がある。
【0091】
経口組成物は、不活性希釈剤または薬学的に許容される食用担体を一般に含む。経口組成物はゼラチンカプセル剤に封入されてもよく、錠剤に圧縮されてもよい。治療用経口投与の目的で、有効化合物を賦形剤と共に組み入れ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用することができる。また、洗口液として使用される経口組成物を流体担体を使用して調製することができる。洗口液では、流体担体中の本化合物が経口適用されて、すすがれて、吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合性のある結合剤および/または補助材料が組成物の一部として含まれうる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または同様の性質の化合物のいずれかを含みうる: 結晶セルロース、トラガントゴム、もしくはゼラチンなどの結合剤; デンプンもしくは乳糖などの賦形剤; アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤; ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの潤滑剤; コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤; ショ糖もしくはサッカリンなどの甘味料; またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバーなどの香味料。
【0092】
吸入による投与では、本化合物は、好適な噴霧剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーから、エアロゾルスプレー剤の形態で送達される。
【0093】
全身投与は経粘膜または経皮的手段によるものでもよい。経粘膜または経皮投与では、透過すべき障壁に適した浸透剤が製剤中で使用される。これらの浸透剤は当技術分野において一般に公知であり、例えば経粘膜投与では界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は経鼻スプレー剤または坐薬の使用を通じて達成可能である。経皮投与では、有効化合物は、当技術分野において一般に公知の軟膏剤、塗擦剤、ゲル剤、またはクリーム剤として製剤化される。
【0094】
有効化合物は、身体からの急速な排除に対して該化合物を保護する薬学的に許容される担体と共に、移植片およびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤として調製可能である。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性・生体適合性ポリマーを使用することができる。これらの製剤の調製のための方法は当業者には明らかであろう。材料はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手してもよい。リポソーム懸濁液(感染細胞を標的とするリポソームをウイルス抗原に対するモノクローナル抗体と共に含む)を薬学的に許容される担体として使用することもできる。これらは、米国特許第4,522,811号に例えば記載の、当業者に公知の方法に従って調製可能である。
【0095】
投与が容易でありかつ投与量が均一であることから、単位剤形で経口または非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書において使用される単位剤形とは、処置される対象用の単位剤形として適した物理的に分離された単位を意味し、各単位は、所望の治療効果を生成するように計算される所定量の有効化合物と所要の薬学的担体との組み合わせを含む。本開示の単位剤形の規格は、有効化合物の独自の特性および実現すべき特定の治療効果によって決定づけられかつそれに直接依存する。
【0096】
治療用途では、本開示に従って使用される薬学的組成物の投与量は、選択される投与量に影響を与える要因のなかでも特に、剤、レシピエント患者の年齢、体重、および臨床的状態、ならびに治療を実行する臨床医または開業医の経験および判断に応じて変動する。一般に、用量は、本明細書に記載の疾患または障害の症状を遅延させ、好ましくは退行させ、好ましくは疾患または障害の完全な退行を引き起こすために十分であるはずである。投与量は1日当たり約0.01mg/kg~1日当たり約5000mg/kgの範囲でありうる。好ましい局面では、投与量は1日当たり約1mg/kg~1日当たり約1000mg/kgの範囲でありうる。一局面では、用量は、単一用量、分割用量、または持続用量で約0.1mg/日~約50g/日; 約0.1mg/日~約25g/日; 約0.1mg/日~約10g/日; 約0.1mg~約3g/日; または約0.1mg~約1g/日の範囲である(この用量はkg単位の患者の体重、m2単位の体表面積、および年単位の年齢に応じて調整可能である)。薬剤の有効量とは、臨床医または他の認定観察者によって認められる客観的に同定可能な改善を実現する量のことである。生存率および増殖率の改善は、退行を示すものである。本明細書において使用される「投与量が有効な様式(dosage effective manner)」という用語は、対象または細胞において望ましい生物学的効果を生成する有効化合物の量を意味する。
【0097】
薬学的組成物を投与用説明書と共に容器、パック、またはディスペンサーに収容することができることを理解すべきである。
【0098】
塩をさらに形成可能な本開示の化合物について、すべてのこれらの形態も特許請求される本開示の範囲内であると想定されることを理解すべきである。
【0099】
本明細書において使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、親化合物がその酸性塩または塩基性塩を作り出すことで修飾された、本開示の化合物の誘導体を意味する。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩、などが挙げられるがそれに限定されない。薬学的に許容される塩としては、無毒の無機酸または有機酸から例えば形成される親化合物の通常の無毒の塩または四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、これらの通常の無毒の塩としては、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸(hydrabamic)、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸(napsylic)、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、塩基性酢酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、および一般に生じるアミン酸、例えばグリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなどより選択される無機酸および有機酸に由来する塩が挙げられるがそれに限定されない。
【0100】
いくつかの態様では、薬学的に許容される塩はナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ジエチルアミン塩、コリン塩、メグルミン塩、ベンザチン塩、トロメタミン塩、アンモニア塩、アルギニン塩、またはリジン塩である。
【0101】
薬学的に許容される塩の他の例としてはヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ムコン酸などが挙げられる。本開示はまた、親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンで置き換えられるか、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基に配位する場合に形成される塩を包含する。塩形態では、本化合物対塩のカチオンまたはアニオンの比は1:1、または1:1以外の任意の比、例えば3:1、2:1、1:2、もしくは1:3でありうると理解されよう。
【0102】
薬学的に許容される塩に対するすべての言及が、同じ塩の本明細書において定義される溶媒付加形(溶媒和物)または結晶形(多形)を含むことを理解すべきである。
【0103】
本化合物またはその薬学的に許容される塩は経口投与、経鼻投与、経皮投与、肺内投与、吸入投与、頬側投与、舌下投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、直腸投与、胸膜内投与、くも膜下腔内投与、および非経口投与される。一態様では、本化合物は経口投与される。当業者は、特定の投与経路に関する利点を認識するであろう。
【0104】
本化合物を利用する投与レジメンは、患者の種類、種、年齢、体重、性別、および医学的状態; 処置される状態の重症度; 投与経路; 患者の腎機能および肝機能; ならびに使用される特定の化合物またはその塩を含む、種々の要因に従って選択される。通常の技量を有する医師または獣医は、状態を予防するか、状態に対抗するか、または状態の進行を停止させるために必要な薬物の有効量を容易に確定および処方することができる。
【0105】
本開示の開示される化合物の製剤化および投与用の技術はRemington: the Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, Mack Publishing Co., Easton, PA (1995)に見ることができる。一態様では、本明細書に記載の化合物、およびその薬学的に許容される塩は、薬学的製剤中で、薬学的に許容される担体または希釈剤との組み合わせで使用される。好適な薬学的に許容される担体としては不活性固体充填剤または不活性希釈剤、および滅菌水溶液または滅菌有機溶液が挙げられる。本化合物は当該の薬学的組成物中に、本明細書に記載の範囲の所望の投与量を与えるために十分な量で存在する。
【0106】
本明細書において使用されるすべてのパーセントおよび比率は、別途指示がない限り重量比である。本開示の他の特徴および利点は、異なる実施例から明らかになる。提示される実施例は、本開示を実施する上で有用な異なる成分および方法論を示す。実施例は、特許請求される本開示を限定するものではない。当業者は、本開示に基づいて、本開示を実施するために有用な他の成分および方法論を同定および使用することができる。
【0107】
本明細書に記載の合成スキームにおいて、単純化するために化合物を1つの特定の立体配置で描写することがある。これらの特定の立体配置は、本開示を1つのまたは別の異性体、互変異性体、位置異性体、または立体異性体に限定するものとして解釈されるべきではなく、異性体、互変異性体、位置異性体、または立体異性体の混合物を排除するものでもない。しかし、所与の異性体、互変異性体、位置異性体、または立体異性体が別の異性体、互変異性体、位置異性体、または立体異性体よりも高レベルの活性を示しうることが理解されよう。
【0108】
本明細書において引用されるすべての刊行物および特許文献は、当該の各刊行物または文献が参照により本明細書に組み入れられるように具体的かつ個別に指示されているかのように、参照により本明細書に組み入れられる。刊行物および特許文献の引用は、何かが関連の先行技術であることを承認するものとしては意図されておらず、これらの内容または日付に関する承認を構成するものでもない。本発明がここで書面での記載によって説明されていることから、当業者は、本発明が種々の態様において実施可能であること、ならびに、前述の説明および以下の実施例が例示を目的としており、後続の特許請求の範囲を制限することを目的としていないことを認識するであろう。
【0109】
本明細書において使用される「開示の化合物」という語句は、本明細書に一般的に開示される化合物および具体的に開示される化合物の両方を意味する。
【0110】
本開示の化合物
いくつかの局面において、本開示は、式(I):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩に関し、
式中、
R1
であり、ここでn1aおよびn1bはそれぞれ独立して0または1であり;
R2は、-(CH2n2-R2Sであり、ここでn2は1または2であり;
R2Sは、少なくとも1個のヘテロ原子がOである4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルは1個または複数のR2SSで置換されていてもよく;
各R2SSは、独立して、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C6ハロアルキル、ハロ、-CN、-OH、-O(C1~C6アルキル)、-NH2、-NH(C1~C6アルキル)、-N(C1~C6アルキル)2、またはオキソであり;
R3は、1個または複数のR3Sで置換されていてもよい5員または6員ヘテロアリールであり;
各R3Sは、独立して、ハロ、C1~C6アルキル、またはC1~C6ハロアルキルである。
【0111】
いくつかの局面において、本化合物は、
R1
であり、ここでn1aおよびn1bが、それぞれ独立して、0または1であり;
R2が、-(CH2n2-R2Sであり、ここでn2が、1または2であり;
R2Sが、少なくとも1個のヘテロ原子がOである4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルが、1個または複数の-OHで置換されていてもよく;
R3が、1個または複数のC1~C6アルキルで置換されていてもよい5員または6員ヘテロアリールである、
式(I)の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩である。
【0112】
式(I)の化合物について、R1、R2、R2S、R3、およびR3Sはそれぞれ、本明細書記載の基から適宜選択することができ、R1、R2、R2S、R3、およびR3Sのいずれかについて本明細書に記載する任意の基は、R1、R2、R2S、R3、およびR3Sのうちの残りの1つまたは複数について本明細書に記載する任意の基と、適宜組み合わせることができることが理解されよう。
【0113】
いくつかの態様において、n1aは0である。
【0114】
いくつかの態様において、n1aは1である。
【0115】
いくつかの態様において、n1bは0である。
【0116】
いくつかの態様において、n1bは1である。
【0117】
いくつかの態様において、n1aおよびn1bは、どちらも0である。
【0118】
いくつかの態様において、n1aおよびn1bのうちの一方は0であり、他方は1である。
【0119】
いくつかの態様において、n1aおよびn1bは、どちらも1である。
【0120】
いくつかの態様において、R1
である。
【0121】
いくつかの態様において、R1
である。
【0122】
いくつかの態様において、R1
である。
【0123】
いくつかの態様において、R2は、-CH2-R2Sである。
【0124】
いくつかの態様において、R2は、-(CH22-R2Sである。
【0125】
いくつかの態様において、R2Sは、少なくとも1個のヘテロ原子がOである4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい。
【0126】
いくつかの態様において、R2Sは、少なくとも1個のヘテロ原子がOである5~6員ヘテロシクロアルキルであり、該5~6員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい。
【0127】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい。
【0128】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOであり、該5~6員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい。
【0129】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する5員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOであり、該5員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい。
【0130】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する6員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOであり、該6員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい。
【0131】
いくつかの態様において、各R2SSは、独立して、C1~C6アルキル、ハロ、-CN、-OH、-NH2、またはオキソである。
【0132】
いくつかの態様において、各R2SSは、独立して、-OHまたは-NH2である。
【0133】
いくつかの態様において、少なくとも1個のR2SSは、-OHである。
【0134】
いくつかの態様において、各R2SSは、-OHである。
【0135】
いくつかの態様において、R2Sは、少なくとも1個のヘテロ原子がOである4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数のC1~C6アルキル、ハロ、-CN、-OH、-NH2またはオキソで置換されていてもよい。
【0136】
いくつかの態様において、R2Sは、少なくとも1個のヘテロ原子がOである5~6員ヘテロシクロアルキルであり、該5~6員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数のC1~C6アルキル、ハロ、-CN、-OH、-NH2またはオキソで置換されていてもよい。
【0137】
いくつかの態様において、R2Sは、少なくとも1個のヘテロ原子がOである4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数の-OHまたは-NH2で置換されていてもよい。
【0138】
いくつかの態様において、R2Sは、少なくとも1個のヘテロ原子がOである5~6員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数の-OHまたは-NH2で置換されていてもよい。
【0139】
いくつかの態様において、R2Sは、少なくとも1個のヘテロ原子がOである4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数の-OHで置換されていてもよい。
【0140】
いくつかの態様において、R2Sは、少なくとも1個のヘテロ原子がOである5~6員ヘテロシクロアルキルであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数の-OHで置換されていてもよい。
【0141】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する4~8員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOであり、該4~8員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数の-OHで置換されていてもよい。
【0142】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する5~6員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOであり、該5~6員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数の-OHで置換されていてもよい。
【0143】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する5員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOであり、該5員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数の-OHで置換されていてもよい。
【0144】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する5員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOである。
【0145】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する5員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOであり、該5員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数の-OHで置換されている。
【0146】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する6員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOであり、該6員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数の-OHで置換されていてもよい。
【0147】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する6員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOである。
【0148】
いくつかの態様において、R2Sは、1個のヘテロ原子を有する6員ヘテロシクロアルキルであり、該ヘテロ原子はOであり、該6員ヘテロシクロアルキルは、1個または複数の-OHで置換されている。
【0149】
いくつかの態様において、R2Sは、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルであり、該テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルは、1個または複数のR2SSで置換されていてもよい。
【0150】
いくつかの態様において、R2Sは、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルであり、該テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルは、1個または複数の-OHで置換されていてもよい。
【0151】
いくつかの態様において、R2Sは、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルである。
【0152】
いくつかの態様において、R2Sは、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルであり、該テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルは、1個または複数の-OHで置換されている。
【0153】
いくつかの態様において、R2Sは、1個または複数のR2SSで置換されていてもよいテトラヒドロフラニルである。
【0154】
いくつかの態様において、R2Sは、1個または複数の-OHで置換されていてもよいテトラヒドロフラニルである。
【0155】
いくつかの態様において、R2Sはテトラヒドロフラニルである。
【0156】
いくつかの態様において、R2Sは、1個または複数の-OHで置換されたテトラヒドロフラニルである。
【0157】
いくつかの態様において、R2S
である。
【0158】
いくつかの態様において、R2S
である。
【0159】
いくつかの態様において、R2S
である。
【0160】
いくつかの態様において、R2Sは、1個または複数のR2SSで置換されていてもよいテトラヒドロピラニルである。
【0161】
いくつかの態様において、R2Sは、1個または複数の-OHで置換されていてもよいテトラヒドロピラニルである。
【0162】
いくつかの態様において、R2Sは、テトラヒドロピラニルである。
【0163】
いくつかの態様において、R2Sは、1個または複数の-OHで置換されたテトラヒドロピラニルである。
【0164】
いくつかの態様において、R2S
である。
【0165】
いくつかの態様において、R2S
である。
【0166】
いくつかの態様において、R2S
である。
【0167】
いくつかの態様において、R3は、5員または6員ヘテロアリールである。
【0168】
いくつかの態様において、R3は、1個または複数のR3Sで置換された5員または6員ヘテロアリールである。
【0169】
いくつかの態様において、R3は、1個または複数のC1~C6アルキル(例えばメチル)で置換された5員または6員ヘテロアリールである。
【0170】
いくつかの態様において、R3は、1個または複数のR3Sで置換されていてもよい5員ヘテロアリールである。
【0171】
いくつかの態様において、R3は、1個または複数のC1~C6アルキル(例えばメチル)で置換されていてもよい5員ヘテロアリールである。
【0172】
いくつかの態様において、R3は、5員ヘテロアリールである。
【0173】
いくつかの態様において、R3は、1個または複数のR3Sで置換された5員ヘテロアリールである。
【0174】
いくつかの態様において、R3は、1個または複数のC1~C6アルキル(例えばメチル)で置換された5員ヘテロアリールである。
【0175】
いくつかの態様において、R3は、1個または複数のR3Sで置換されていてもよいピラゾリルである。
【0176】
いくつかの態様において、R3は、1個または複数のC1~C6アルキル(例えばメチル)で置換されていてもよいピラゾリルである。
【0177】
いくつかの態様において、R3は、ピラゾリルである。
【0178】
いくつかの態様において、R3は、1個または複数のR3Sで置換されたピラゾリルである。
【0179】
いくつかの態様において、R3は、1個または複数のC1~C6アルキル(例えばメチル)で置換されたピラゾリルである。
【0180】
いくつかの態様において、各R3Sは、独立して、ハロである。
【0181】
いくつかの態様において、各R3Sは、独立して、C1~C6アルキルまたはC1~C6ハロアルキルである。
【0182】
いくつかの態様において、各R3Sは、独立して、C1~C6アルキルである。
【0183】
いくつかの態様において、各R3Sは、メチルである。
【0184】
いくつかの態様において、R3
である。
【0185】
いくつかの態様において、R3
である。
【0186】
いくつかの態様において、R3
である。
【0187】
いくつかの態様において、R3
である。
【0188】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ia-1):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R2およびR3は本明細書に記載の通りである。
【0189】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ia-2):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R1S、R2およびR3は本明細書に記載の通りである。
【0190】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ib-1):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R1、R2S、およびR3は本明細書に記載の通りである。
【0191】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ib-2):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R1、R2S、およびR3は本明細書に記載の通りである。
【0192】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ic-1):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R1、R2、およびR3Sは本明細書に記載の通りである。
【0193】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ic-2):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R1およびR2は本明細書に記載の通りである。
【0194】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ic-3):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R1およびR2は本明細書に記載の通りである。
【0195】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Id-1):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R1およびR2Sは本明細書に記載の通りである。
【0196】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Id-2):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R1およびR2Sは本明細書に記載の通りである。
【0197】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ie-1):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R2Sは本明細書に記載の通りである。
【0198】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ie-2):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R2Sは本明細書に記載の通りである。
【0199】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ie-3):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R2Sは本明細書に記載の通りである。
【0200】
いくつかの態様において、本化合物は、式(Ie-4):
の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中、R2Sは本明細書に記載の通りである。
【0201】
本明細書記載の式のいずれかの化合物について、R1、R2、R2S、R3、およびR3Sはそれぞれ、本明細書記載の基から適宜選択することができ、R1、R2、R2S、R3、およびR3Sのいずれかについて本明細書に記載する任意の基は、R1、R2、R2S、R3、およびR3Sのうちの残りの1つまたは複数について本明細書に記載する任意の基と、適宜組み合わせることができることが理解されよう。
【0202】
いくつかの態様において、本化合物は、表1に記載の化合物ならびにそのプロドラッグおよび薬学的に許容される塩より選択される。
【0203】
いくつかの態様において、本化合物は、表1に記載の化合物およびその薬学的に許容される塩より選択される。
【0204】
いくつかの態様において、本化合物は、表1に記載の化合物より選択される。
【0205】
(表1)
【0206】
いくつかの局面では、本開示は、本明細書に開示される式の化合物のうちいずれか1つの同位体誘導体(例えば同位体標識化合物)である化合物を提供する。
【0207】
いくつかの態様では、本化合物は、表1に記載の化合物ならびにそのプロドラッグおよび薬学的に許容される塩のうちいずれか1つの同位体誘導体である。
【0208】
いくつかの態様では、本化合物は、表1に記載の化合物およびその薬学的に許容される塩のうちいずれか1つの同位体誘導体である。
【0209】
いくつかの態様では、本化合物は、表1に記載の化合物のうちいずれか1つの同位体誘導体である。
【0210】
同位体誘導体が、当技術分野において認識されている多様な技術のいずれかを使用して調製可能であることが理解されよう。例えば、同位体誘導体は、非同位体標識試薬の代わりに同位体標識試薬を使用して、本明細書に記載のスキームおよび/または実施例に開示されている手順を行うことで一般に調製可能である。
【0211】
いくつかの態様では、同位体誘導体は重水素標識化合物である。
【0212】
いくつかの態様では、同位体誘導体は、本明細書に開示の式の化合物のうちいずれか1つの重水素標識化合物である。
【0213】
いくつかの態様では、本化合物は、表1に記載の化合物のうちいずれか1つの重水素標識化合物、ならびにそのプロドラッグおよび薬学的に許容される塩である。
【0214】
いくつかの態様では、本化合物は、表1に記載の化合物のうちいずれか1つの重水素標識化合物、およびその薬学的に許容される塩である。
【0215】
いくつかの態様では、本化合物は、表1に記載の化合物のうちいずれか1つの重水素標識化合物である。
【0216】
重水素標識化合物が、0.015%である重水素の天然存在比を実質的に超える重水素存在比を示す、重水素原子を含むことが理解されよう。
【0217】
いくつかの態様では、重水素標識化合物は各重水素原子について少なくとも3500(各重水素原子において52.5%の重水素取り込み)、少なくとも4000(60%の重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素取り込み)、少なくとも5000(75%の重水素)、少なくとも5500(82.5%の重水素取り込み)、少なくとも6000(90%の重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素取り込み)、少なくとも6600(99%の重水素取り込み)または少なくとも6633.3(99.5%の重水素取り込み)の、重水素濃縮係数を示す。本明細書において使用される「重水素濃縮係数」という用語は、重水素存在比と重水素の天然存在比との間の比を意味する。
【0218】
重水素標識化合物が、当技術分野において認識されている多様な技術のいずれかを使用して調製可能であることが理解されよう。例えば、重水素標識化合物は、非重水素標識試薬の代わりに重水素標識試薬を使用して、本明細書に記載のスキームおよび/または実施例に開示されている手順を行うことで一般に調製可能である。
【0219】
上記重水素原子を含む、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、本発明の範囲内である。さらに、重水素(すなわち2H)による置換は、代謝安定性の増加によって得られる特定の治療上の利点、例えばインビボ半減期の増加または所要投与量の減少を生じさせることができる。
【0220】
疑義を避けるために記すと、本明細書において、ある群が「本明細書に記載の」と述べられる場合、当該の群が、一義的かつ最も広範な定義、および当該の群のあらゆる特定の定義を包含することを理解すべきである。
【0221】
本開示の化合物の好適な薬学的に許容される塩は、例えば、十分に塩基性である本開示の化合物の酸付加塩、例えば、無機酸または有機酸など、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、クエン酸、メタンスルホン酸、またはマレイン酸との酸付加塩である。さらに、十分に酸性である本開示の化合物の好適な薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩もしくはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩もしくはマグネシウム塩、アンモニウム塩、または薬学的に許容されるカチオンを与える有機塩基との塩、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリン、もしくはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミンとの塩である。
【0222】
本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物ならびにその任意の薬学的に許容される塩が、該化合物の立体異性体、立体異性体混合物、すべての異性形態の多形を含むことが理解されよう。
【0223】
本明細書において使用される「異性」という用語は、同一の分子式を有するが原子の結合順序または原子の空間配置が異なる化合物を意味する。原子の空間配置が異なる異性体を「立体異性体」と呼ぶ。互いの鏡像ではない立体異性体を「ジアステレオ異性体」と呼び、互いに重ね合わせられない鏡像である立体異性体を「鏡像異性体」、または時に光学異性体と呼ぶ。キラリティーが反対である等量の個々の鏡像異性形態を含む混合物を「ラセミ混合物」と呼ぶ。
【0224】
本明細書において使用される「キラル中心」という用語は、4個の同一ではない置換基に結合した炭素原子を意味する。
【0225】
本明細書において使用される「キラル異性体」という用語は、少なくとも1個のキラル中心を有する化合物を意味する。2個以上のキラル中心を有する化合物は個々のジアステレオマー、または「ジアステレオマー混合物」と呼ばれるジアステレオマーの混合物として存在しうる。1個のキラル中心が存在する場合、立体異性体はそのキラル中心の絶対配置(RまたはS)を特徴としうる。絶対配置とは、キラル中心に結合する置換基の空間配置を意味する。考慮されるキラル中心に結合する置換基はCahn、IngoldおよびPrelogの順位則に従って順位づけられる(Cahn et al, Angew. Chem. Inter. Edit. 1966, 5, 385; errata 511; Cahn et al., Angew. Chem. 1966, 78, 413; Cahn and Ingold, J. Chem. Soc. 1951 (London), 612; Cahn et al., Experientia 1956, 12, 81; Cahn, J. Chem. Educ. 1964, 41, 116)。
【0226】
本明細書において使用される「幾何異性体」という用語は、二重結合またはシクロアルキルリンカー(例えば1,3-シクロブチル)の周りの回転障害に起因して存在するジアステレオマーを意味する。これらの配置はシスおよびトランスまたはZおよびEという接頭辞によって名称が区別され、これら接頭辞は、Cahn-Ingold-Prelog則に従って複数の基が分子中の二重結合の同一側または反対側に存在することを示す。
【0227】
本開示の化合物を異なるキラル異性体または幾何異性体として示すことができることを理解すべきである。また、化合物がキラル異性形態または幾何異性形態を有する場合に、すべての異性形態が本開示の範囲に含まれるように意図されていること、および、該化合物の命名が任意の異性形態を排除するものではないことを理解すべきであり、すべての異性体が同レベルの活性を示すわけではないことがあることが理解されよう。
【0228】
本開示において説明される構造および他の化合物がすべてのそのアトロプ異性体を含むことを理解すべきである。また、すべてのアトロプ異性体が同レベルの活性を示すわけではないことがあることを理解すべきである。
【0229】
本明細書において使用される「アトロプ異性体」という用語は、2種の異性体の原子が異なって空間配置される立体異性体の一種のことである。アトロプ異性体は、中心結合の周りの大きな基の回転障害によって引き起こされる回転制限に起因して存在する。これらのアトロプ異性体は通常、混合物として存在するが、クロマトグラフィー技術の最近の進展の結果として、限定的な場合に2つのアトロプ異性体の混合物を分離することが可能になった。
【0230】
本明細書において使用される「互変異性体」という用語は、平衡状態で存在しかつ1つの異性形態から別の異性形態に容易に変換される、2つ以上の構造異性体のうちの1つである。この変換によって、隣接する共役二重結合の切り替えを伴う水素原子のホルマール移動が生じる。互変異性体は溶液中の一組の互変異性体の混合物として存在する。互変異性化が可能な溶液中で、互変異性体の化学平衡に到達する。互変異性体の正確な比率は、温度、溶媒、およびpHを含むいくつかの要因に依存する。互変異性体が互変異性化によって相互変換可能であるという概念を互変異性と呼ぶ。ありうる様々な種類の互変異性のうち2つが一般的に観察される。ケト-エノール互変異性では電子および水素原子の同時移動が生じる。グルコースが示すように、環鎖互変異性は、糖鎖分子中のアルデヒド基(-CHO)が同一分子中の1個のヒドロキシ基(-OH)と反応することで該分子が環状(環形)形態になる結果として生じる。
【0231】
本開示の化合物を異なる互変異性体として示すことができることを理解すべきである。また、化合物が互変異性形態を有する場合に、すべての互変異性形態が本開示の範囲に含まれるように意図されていること、および、該化合物の命名が任意の互変異性形態を排除するものではないことを理解すべきである。特定の互変異性体が他の互変異性体よりも高レベルの活性を示すことがあることが理解されよう。
【0232】
同じ分子式を有するが原子の性質もしくは結合順序または原子の空間配置が異なる化合物を「異性体」と呼ぶ。原子の空間配置が異なる異性体を「立体異性体」と呼ぶ。互いの鏡像ではない立体異性体を「ジアステレオマー」と呼び、互いに重ね合わせられない鏡像である立体異性体を「鏡像異性体」と呼ぶ。例えば、化合物が不斉中心を有する場合、不斉中心は4個の異なる基に結合しており、一対の鏡像異性体が可能である。鏡像異性体は、不斉中心の絶対配置によって特徴づけることができ、CahnおよびPrelogのR-およびS-順位則によって、または分子が偏光面を回転させる様式によって記述され、右旋性または左旋性(すなわちそれぞれ(+)または(-)-異性体)と命名される。キラル化合物は個々の鏡像異性体またはその混合物として存在しうる。等しい割合の鏡像異性体を含む混合物を「ラセミ混合物」と呼ぶ。
【0233】
本開示の化合物は1個または複数の不斉中心を有しうる。したがって、該化合物を個々の(R)- または(S)-立体異性体またはその混合物として生成することができる。別途指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲における特定の化合物の記述および命名は、個々の鏡像異性体およびそのラセミ混合物または他の混合物の両方を含むように意図されている。立体異性体の立体化学配置確定および分離のための方法、例えば光学活性出発原料からの合成による方法またはラセミ体の分割による方法は、当技術分野において周知である("Advanced Organic Chemistry", 4th edition J. March, John Wiley and Sons, New York, 2001の第4章における説明を参照)。本開示のいくつかの化合物は幾何異性中心を有しうる(E-およびZ-異性体)。本開示が、インフラマソーム阻害活性を有するすべての光学異性体、ジアステレオ異性体、および幾何異性体、ならびにそれらの混合物を包含することを理解すべきである。
【0234】
本開示はまた、1個または複数の同位体置換を含む本明細書に定義される本開示の化合物を包含する。
【0235】
本明細書に記載の任意の式の化合物が、該化合物それ自体、ならびにそれらの塩およびそれらの溶媒和物を適宜含むことを理解すべきである。例えば、塩は本明細書に開示の置換化合物上でアニオンと正に帯電した基(例えばアミノ)との間で形成されうる。好適なアニオンとしては塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、スルファミン酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、グルタミン酸イオン、グルクロン酸イオン、グルタル酸イオン、リンゴ酸塩イオン、マレイン酸イオン、コハク酸イオン、フマル酸イオン、酒石酸イオン、トシル酸イオン、サリチル酸イオン、乳酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、および酢酸イオン(例えばトリフルオロ酢酸イオン)が挙げられる。
【0236】
本明細書において使用される「薬学的に許容されるアニオン」という用語は、薬学的に許容される塩を形成するために好適なアニオンを意味する。同様に、塩は本明細書に開示の置換化合物上でカチオンと負に帯電した基(例えばカルボキシレート)との間でも形成されうる。好適なカチオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびテトラメチルアンモニウムイオンまたはジエチルアミンイノンなどのアンモニウムカチオンが挙げられる。また、本明細書に開示の置換化合物は、第四級窒素原子を含んだ塩を含む。
【0237】
本開示の化合物、例えば本化合物の塩が水和形態もしくは非水和(無水)形態で、または他の溶媒分子との溶媒和物として存在しうることを理解すべきである。水和物の非限定的な例としては一水和物、二水和物などが挙げられる。溶媒和物の非限定的な例としてはエタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。
【0238】
本明細書において使用される「溶媒和物」という用語は、化学量論的量または非化学量論的量の溶媒を含有する溶媒付加体を意味する。いくつかの化合物は、固定されたモル比の溶媒分子を結晶性固体中に捕捉することで溶媒和物を形成する傾向を有する。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコール和物である。水和物は、1個もしくは複数の水分子と、水が分子状態をH2Oとしてその中で保持する物質の1個の分子との組み合わせによって形成される。
【0239】
本明細書において使用される「類似体」という用語は、別の化合物と構造的に類似しているが、組成がわずかに異なる(例えば、1個の原子が異なる元素の原子で置き換えられているか、または特定の官能基が存在するか、または1個の官能基が別の官能基で置き換えられている)、化合物を意味する。したがって、類似体は、参照化合物と機能および外観が同様または同等であるが、構造または起源が同様または同等ではない、化合物である。
【0240】
本明細書において使用される「誘導体」という用語は、共通のコア構造を有するが、本明細書に記載の様々な基で置換されている、化合物を意味する。
【0241】
本明細書において使用される「生物学的等価体」という用語は、原子または原子群を大体類似した別の原子または原子群に交換することで得られる化合物を意味する。生物学的等価体置換の目的は、親化合物と同様の生物特性を有する新規化合物を創製することにある。生物学的等価体置換は物理化学的または形態的なものでありうる。カルボン酸生物学的等価体の例としてはアシルスルホンイミド、テトラゾール、スルホネート、およびホスホネートが挙げられるがそれに限定されない。例えばPatani and LaVoie, Chem. Rev. 96, 3147-3176, 1996を参照。
【0242】
また、本明細書に開示の式のうちいずれか1つの特定の化合物が溶媒和形、および例えば水和形などの非溶媒和形で存在しうることを理解すべきである。例えば、好適な薬学的に許容される溶媒和物は半水和物、一水和物、二水和物、または三水和物などの水和物である。本開示が、インフラマソーム阻害活性を有するすべてのこれらの溶媒和形を包含することを理解すべきである。
【0243】
また、本明細書に開示の式のうちいずれか1つの特定の化合物が多形性を示しうること、および、本開示が、インフラマソーム阻害活性を有するすべてのこれらの形態またはその混合物を包含することを理解すべきである。結晶性材料がX線粉末回折分析、示差走査熱量測定、熱重量分析、拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)分光法、近赤外(NIR)分光法、溶液および/または固体核磁気共鳴分光法などの従来の技術を使用して分析可能であることが一般に知られている。これらの結晶性材料の含水量はカールフィッシャー分析によって確定可能である。
【0244】
本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物はいくつかの異なる互変異性形態として存在することがあり、式(I)の化合物への言及はすべてのこれらの形態を含む。疑義を避けるために記すと、化合物がいくつかの互変異性形態のうち1種として存在することがあり、かつ1種のみが特に記載または図示されている場合、すべての他の互変異性形態はそれでもやはり式(I)に包含される。互変異性形態の例としてはケト体、エノール体、およびエノラート体、例えば以下の互変異性対: ケト/エノール(以下に示す)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、およびニトロ/アシ-ニトロが挙げられる。
【0245】
アミン官能基を含む本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物はN-オキシドを形成してもよい。本明細書における、アミン官能基を含む式(I)の化合物への言及は、N-オキシドも含む。化合物が数個のアミン官能基を含む場合、1個または複数の窒素原子は酸化されてN-オキシドを形成してもよい。N-オキシドの特定の例としては、窒素含有複素環の第三級アミンまたは窒素原子のN-オキシドがある。N-オキシドは、対応するアミンを過酸化水素または過酸(例えばペルオキシカルボン酸)などの酸化剤で処理することで形成可能である。例えばAdvanced Organic Chemistry, by Jerry March, 4th Edition, Wiley Interscience, pages.を参照。より具体的には、N-オキシドは、アミン化合物とメタ-クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)とを例えばジクロロメタンなどの不活性溶媒中で反応させるL. W. Deady (Syn. Comm. 1977, 7, 509-514)の手順によって作製可能である。
【0246】
本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物は、ヒトまたは動物の体内で分解されて本開示の化合物を放出するプロドラッグの形態で投与可能である。プロドラッグを使用することで本開示の化合物の物理特性および/または薬物動態特性を改変することができる。本開示の化合物が、特性改変基がそこに結合可能である好適な基または置換基を含む場合に、プロドラッグが形成されうる。プロドラッグの例としては、本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物におけるスルフォニル尿素基での、インビボで開裂可能なアルキルまたはアシル置換基を含む誘導体が挙げられる。
【0247】
したがって、本開示は、有機合成によって利用可能になる場合の、およびそのプロドラッグの開裂によってヒトまたは動物の体内で利用可能になる場合の、上記定義の本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物を含む。したがって、本開示は、有機合成手段によって生成される本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物、ならびに、前駆体化合物の代謝によってヒトまたは動物の体内で生成される該化合物を含み、すなわち、本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物は合成によって生成される化合物または代謝によって生成される化合物でありうる。
【0248】
本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物の好適な薬学的に許容されるプロドラッグは、ヒトまたは動物の身体への投与に好適であって、望ましくない薬理活性を伴わず、かつ過度の毒性を伴わないという、合理的な医学的判断に基づく、プロドラッグである。プロドラッグの様々な形態は例えば以下の文献に記載されている: a) Methods in Enzymology, Vol. 42, p. 309-396, edited by K. Widder, et al. (Academic Press, 1985); b) Design of Pro-drugs, edited by H. Bundgaard, (Elsevier, 1985); c) A Textbook of Drug Design and Development, edited by Krogsgaard-Larsen and H. Bundgaard, Chapter 5 "Design and Application of Pro-drugs", by H. Bundgaard p. 113-191 (1991); d) H. Bundgaard, Advanced Drug Delivery Reviews, 8, 1-38 (1992); e) H. Bundgaard, et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, 77, 285 (1988); f) N. Kakeya, et al., Chem. Pharm. Bull., 32, 692 (1984); g) T. Higuchi and V. Stella, "Pro-Drugs as Novel Delivery Systems", A.C.S. Symposium Series, Volume 14; およびh) E. Roche (editor), "Bioreversible Carriers in Drug Design", Pergamon Press, 1987。
【0249】
ヒドロキシ基を有する本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物の好適な薬学的に許容されるプロドラッグは、例えばそのインビボで開裂可能なエステルまたはエーテルである。ヒドロキシ基を含む本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物のインビボで開裂可能なエステルまたはエーテルは、例えばヒトまたは動物の体内で開裂して親ヒドロキシ化合物を生成する薬学的に許容されるエステルまたはエーテルである。ヒドロキシ基の好適な薬学的に許容されるエステル形成基としてはリン酸エステル(ホスホロアミド酸環状エステルを含む)などの無機エステルが挙げられる。ヒドロキシ基のさらなる好適な薬学的に許容されるエステル形成基としてはアセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、ならびに置換ベンゾイル基および置換フェニルアセチル基などのC1~C10アルカノイル基、エトキシカルボニル基、N,N-(C1~C6アルキル)2カルバモイル基、2-ジアルキルアミノアセチル基、および2-カルボキシアセチル基などのC1~C10アルコキシカルボニル基が挙げられる。フェニルアセチル基およびベンゾイル基上の環置換基の例としてはアミノメチル、N-アルキルアミノメチル、N,N-ジアルキルアミノメチル、モルホリノメチル、ピペラジン-1-イルメチル、および4-(C1~C4アルキル)ピペラジン-1-イルメチルが挙げられる。ヒドロキシ基の好適な薬学的に許容されるエーテル形成基としてはアセトキシメチル基およびピバロイルオキシメチル基などのα-アシルオキシアルキル基が挙げられる。
【0250】
カルボキシ基を有する本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物の好適な薬学的に許容されるプロドラッグは、例えばそのインビボで開裂可能なアミド、例えば、アンモニア、メチルアミンなどのC14アルキルアミン、ジメチルアミン、N-エチル-N-メチルアミン、またはジエチルアミンなどの(C1~C4アルキル)2アミン、2-メトキシエチルアミンなどのC1~C4アルコキシ-C2~C4アルキルアミン、ベンジルアミンなどのフェニル-C1~C4アルキルアミン、およびグリシンなどのアミノ酸またはそのエステルなどのアミンと共に形成されるアミドである。
【0251】
アミノ基を有する本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物の好適な薬学的に許容されるプロドラッグは、例えばそのインビボで開裂可能なアミド誘導体である。アミノ基に由来する好適な薬学的に許容されるアミドとしては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、ならびに置換ベンゾイル基および置換フェニルアセチル基などのC1~C10アルカノイル基と共に形成されるアミドが挙げられる。フェニルアセチル基およびベンゾイル基上の環置換基の例としてはアミノメチル、N-アルキルアミノメチル、N,N-ジアルキルアミノメチル、モルホリノメチル、ピペラジン-1-イルメチル、および4-(C1~C4アルキル)ピペラジン-1-イルメチルが挙げられる。
【0252】
本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物のインビボ効果は、本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物の投与後にヒトまたは動物の体内に形成される1つまたは複数の代謝産物によって中程度に発揮されることがある。また、先に記載のように、本明細書に開示の式のうちいずれか1つの化合物のインビボ効果は、前駆体化合物(プロドラッグ)の代謝によって発揮されることがある。
【0253】
好適には、本開示は、本明細書に定義される生物活性を有さない任意の個々の化合物を排除する。
【0254】
合成方法
いくつかの局面では、本開示は、本開示の化合物を調製する方法を提供する。
【0255】
いくつかの局面では、本開示は、本明細書に記載の1つまたは複数の工程を含む、化合物の方法を提供する。
【0256】
いくつかの局面では、本開示は、本明細書に記載の化合物を調製するための方法によって得ることができるか、または得られたか、または直接得られた化合物を提供する。
【0257】
いくつかの局面では、本開示は、本明細書に記載の化合物を調製するための方法における使用に好適である、本明細書に記載の中間体を提供する。
【0258】
本開示の化合物を、当技術分野において公知である任意の好適な技術によって調製することができる。これらの化合物の調製のための特定の方法を付随する実施例においてさらに説明する。
【0259】
本明細書に記載の合成方法、および出発原料を調製するために使用される任意の言及される合成方法の記述においては、溶媒、反応雰囲気、反応温度、実験時間、およびワークアップ手順の選択を含むすべての提示される反応条件が当業者によって選択可能であることを理解すべきである。
【0260】
有機合成分野の当業者には、分子の様々な部分上に存在する官能基が、利用される試薬および反応条件に適合しなければならないことが理解されよう。
【0261】
本明細書に定義される方法における本開示の化合物の合成中に、または特定の出発原料の合成中に、特定の置換基を保護してそれらの望ましくない反応を防止することが望ましい場合があることが認識されよう。熟練した化学者は、その保護がいつ必要になるか、およびこれらの保護基をどのようにして配置し、後に除去することができるかを認識しているであろう。保護基の例については、本件に関する多くの一般的テキストの1つ、例えばTheodora Green『Protective Groups in Organic Synthesis』(出版社: John Wiley & Sons)を参照。問題となる保護基の除去のために適宜、保護基を、文献に記載されているかまたは熟練した化学者に公知である任意の好都合な方法によって除去することができ、これらの方法は、分子中の他の箇所の基に対する妨害を最小化しながら保護基の除去を実行するように選択される。したがって、反応物が例えばアミノ、カルボキシ、またはヒドロキシなどの基を含む場合、本明細書に言及されるいくつかの反応において基を保護することが望ましいことがある。
【0262】
一例として、アミノ基またはアルキルアミノ基の好適な保護基は、例えば、アシル基、例えば、アルカノイル基、例えばアセチル、アルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、もしくはt-ブトキシカルボニル基、アリールメトキシカルボニル基、例えばベンジルオキシカルボニル、またはアロイル基、例えばベンゾイルである。上記保護基の脱保護条件は、保護基の選択によって必然的に変動する。したがって、例えば、アルカノイル基もしくはアルコキシカルボニル基またはアロイル基などのアシル基は、例えばアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムなどの好適な塩基による加水分解によって除去可能である。あるいは、tert-ブトキシカルボニル基などのアシル基は、例えば塩酸、硫酸、もしくはリン酸、またはトリフルオロ酢酸などの好適な酸による処理によって除去可能であり、ベンジルオキシカルボニル基などのアリールメトキシカルボニル基は、例えばパラジウム炭素などの触媒上での水素添加、またはルイス酸、例えばボロントリス(トリフルオロアセテート)による処理によって除去可能である。第一級アミノ基の好適な代替の保護基は、例えばフタロイル基であり、これはアルキルアミン、例えばジメチルアミノプロピルアミン、またはヒドラジンによる処理によって除去可能である。
【0263】
ヒドロキシ基の好適な保護基は、例えば、アシル基、例えば、アルカノイル基、例えばアセチル、アロイル基、例えばベンゾイル、または、アリールメチル基、例えばベンジルである。上記保護基の脱保護条件は、保護基の選択によって必然的に変動する。したがって、例えば、アルカノイル基またはアロイル基などのアシル基は、例えばアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、またはアンモニアなどの好適な塩基による加水分解によって除去可能である。あるいは、ベンジル基などのアリールメチル基は、例えばパラジウム炭素などの触媒上での水素添加によって除去可能である。
【0264】
カルボキシ基の好適な保護基は、例えばエステル化基、例えばメチル基またはエチル基であり、これは例えば水酸化ナトリウムなどの塩基による加水分解によって除去可能であり、あるいは、例えばtert-ブチル基であり、これは例えば酸、例えばトリフルオロ酢酸などの有機酸による処理によって除去可能であり、あるいは、例えばベンジル基であり、これは例えばパラジウム炭素などの触媒上での水素添加によって除去可能である。
【0265】
式(I)の化合物が本明細書に定義されるいずれか1つの方法によって合成されたとき、該方法は以下のさらなる工程をさらに含みうる: (i) 存在する任意の保護基を除去する工程; (ii) 式(I)の化合物を式(I)の別の化合物に変換する工程; (iii) その薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を形成する工程; および/または(iv) そのプロドラッグを形成する工程。
【0266】
得られた式(I)の化合物を、当技術分野において周知の技術を使用して単離および精製することができる。
【0267】
好都合には、該化合物の反応を、各反応条件下にて、好ましくは不活性である好適な溶媒の存在下で行う。好適な溶媒の例としてはヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどの炭化水素; トリクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロメタン、クロロホルム、またはジクロロメタンなどの塩素化炭化水素; メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、またはtert-ブタノールなどのアルコール; ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、またはジオキサンなどのエーテル; エチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテルまたはエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)などのグリコールエーテル; アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、またはブタノンなどのケトン; アセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはN-メチルピロリジノン(NMP)などのアミド; アセトニトリルなどのニトリル; ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド; ニトロメタンまたはニトロベンゼンなどのニトロ化合物; 酢酸エチルまたは酢酸メチルなどのエステル; あるいは該溶媒の混合物または水との混合物が挙げられるがそれに限定されない。
【0268】
反応温度は、使用される反応工程および条件に応じて、好適には約-100℃~300℃である。
【0269】
一般に、反応時間は、各化合物の反応性および各反応条件に応じて、1分未満~数日の範囲である。好適な反応時間は当業者に公知の方法、例えば反応モニタリングによって容易に確定可能である。上記に示す反応温度に基づけば、好適な反応時間は一般に10分~48時間の範囲である。
【0270】
さらに、本明細書に記載の手順を当技術分野における通常の技量との組み合わせで利用することで、本開示のさらなる化合物を容易に調製することができる。当業者は、以下の調製手順の条件およびプロセスの公知の変形を使用してこれらの化合物を調製することができることを容易に理解するであろう。
【0271】
有機合成分野の当業者が理解するように、本開示の化合物は様々な合成経路によって容易に入手可能であり、そのうちいくつかを付随する実施例において例示する。当業者は、本開示の化合物を得るために、必要または有用である場合は常に、任意の特定の例において、どの種類の試薬および反応条件を使用すべきか、ならびにどのようにしてそれらを適用および応用すべきかを容易に認識するであろう。さらに、本開示の他の化合物を好適な条件下で反応させることで、例えば、還元反応、酸化反応、付加反応、または置換反応のような当業者に周知である標準的な合成方法を適用することによって本開示の化合物またはその好適な前駆体分子中に存在する1個の特定の官能基を別の官能基に変換することで、本開示のいくつかの化合物を容易に合成することができる。同様に、当業者は、必要または有用である場合は常に、合成保護基を適用するであろう。好適な保護基ならびにそれらを導入および除去するための方法は化学合成分野の当業者に周知であり、より詳しくは、例えばP.G.M. Wuts, T.W. Greene, "Greene's Protective Groups in Organic Synthesis", 4th edition (2006) (John Wiley & Sons)に記載されている。
【0272】
本出願の化合物の調製の一般的経路を本明細書のスキーム1および2において説明する。
【0273】
スキーム1
【0274】
スキーム1において、L1は、適切な脱離基(例えばClまたは他のハライド)である。
【0275】
反応(i)は、アミン1をイソシアネート2と、適切な溶媒(例えばジイソプロピルエーテルまたはジクロロメタン)中、任意で低温(例えば0℃または-15℃)において反応させることによって行うことができ、中間体3を与える。いくつかの態様において、中間体3は、溶液として直接使用することができ、単離しなくてもよい。
【0276】
反応(ii)は、アミン4を酸5と、適切な溶媒(例えばDMF)中、カップリング剤(例えばHATUまたはEDCI)の存在下で反応させることによって行うことができ、中間体6を与える。
【0277】
反応(iii)は、アミド6を、適切な還元剤(例えばLiAlH4)と、適切な溶媒(例えばTHF)中、任意で(例えば70℃に)加熱しながら反応させることによって行うことができる。中間体7は、精製(例えばフラッシュカラムクロマトグラフィーによるもの、または分取HPLCによるもの)によって単離することができる。いくつかの態様において、中間体7は、遊離アミンとして、または塩(例えばトリフルオロ酢酸塩)として、単離される。
【0278】
反応(iv)は、中間体3を中間体7と、適切な溶媒(例えばテトラヒドロフラン)中、塩基(例えば水素化ナトリウムまたは水酸化ナトリウム)の存在下で、また任意で触媒(例えば4-(ジメチルアミノ)-ピリジン)の存在下で、反応させることによって行うことができ、式(I)の化合物を与える。式(I)の化合物は精製(例えばフラッシュカラムクロマトグラフィーによるもの、または分取HPLCによるもの)によって単離することができる。いくつかの態様において、式(I)の化合物は、中性化合物として、または塩(例えばナトリウム塩)として、単離される。
【0279】
スキーム2
【0280】
スキーム2において、L1は、適切な脱離基(例えばClまたは他のハライド)である。
【0281】
反応(i)は、イソシアネート1をtert-ブタノールと、適切な溶媒(例えばテトラヒドロフラン)中、任意で低温(例えば0℃)において反応させることによって行うことができ、中間体2を与える。いくつかの態様では、次に中間体2を溶液として直接使用し、直接単離することはしない。
【0282】
反応(ii)は、アミン3を酸4と、適切な溶媒(例えばDMF)中、カップリング剤(例えばHATUまたはEDCI)の存在下で反応させることによって行うことができ、中間体5を与える。
【0283】
反応(iii)は、アミド5を、適切な還元剤(例えばLiAlH4)と、適切な溶媒(例えばTHF)中、任意で(例えば70℃に)加熱しながら反応させることによって行うことができる。中間体6は、精製(例えばフラッシュカラムクロマトグラフィーによるもの、または分取HPLCによるもの)によって単離することができる。いくつかの態様において、中間体7は、遊離アミンとして、または塩(例えばトリフルオロ酢酸塩)として、単離される。
【0284】
反応(iv)は、中間体6を中間体2と、適切な溶媒(例えばテトラヒドロフラン)中、塩基(例えばジイソプロピルエチル-アミン)の存在下で反応させることによって行うことができ、中間体7を与える。中間体7は、精製(例えばフラッシュカラムクロマトグラフィーによるもの、または分取HPLCによるもの)によって単離することができる。
【0285】
反応(v)は、中間体7を適切な酸(例えば塩酸またはトリフルオロ酢酸)と、適切な溶媒(例えば1,4-ジオキサンまたはジクロロメタン)中、任意で低温(例えば0℃)において反応させることによって行うことができ、中間体8を与える。中間体8は、精製(例えばフラッシュカラムクロマトグラフィーによるもの、または分取HPLCによるもの)によって単離することができる。いくつかの態様において、中間体8は、遊離アミンとして、または塩(例えばトリフルオロ酢酸塩)として、単離される。
【0286】
反応(vi)は、第一級アミン9を適切な試薬(例えばトリホスゲン)と、適切な塩基(例えばジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミン)の存在下および適切な溶媒(例えば1,4-ジオキサン)の存在下、任意で高温(例えば40℃)において反応させることによって行うことができ、中間体10を与える。
【0287】
反応(vii)は、中間体8を中間体10と、適切な溶媒(例えばテトラヒドロフラン)中、塩基(例えば水素化ナトリウムまたは水酸化ナトリウム)の存在下で、また任意で触媒(例えば4-(ジメチルアミノ)-ピリジン)の存在下で、反応させることによって行うことができ、式(I)の化合物を与える。いくつかの態様において、反応(vii)は、低温(例えば0℃)で行うことができる。式(I)の化合物は精製(例えばフラッシュカラムクロマトグラフィーによるもの、または分取HPLCによるもの)によって単離することができる。いくつかの態様において、式(I)の化合物は、中性化合物として、または塩(例えばナトリウム塩)として、単離される。
【0288】
上に示した説明および式において、さまざまな基は、別段の表示がある場合を除き、本明細書に定義される通りであることを理解すべきである。さらにまた、合成を目的とする場合、スキーム中の化合物は、単に、本明細書において開示する一般的合成方法を例証するための、選ばれた置換基を持つ代表例に過ぎない。
【0289】
式(I)の中性化合物は、当技術分野における日常的方法(例えばpH調節および任意で(例えば有機相への)抽出)を使って、塩(例えばナトリウム塩)に変換することができることが理解されよう。さらにまた、式(I)の化合物の塩(例えばナトリウム塩)を、当技術分野における日常的方法(例えばpH調節および任意で(例えば水相への)抽出)を使って、中性化合物に変換することもできる。
【0290】
化合物がCH2CH2スペーサーを含む場合(すなわち、R2が-(CH2n2-R2Sであり、式中、n2が2である場合)、中間体6は、上述の反応を使ってスキーム3のように調製することができる。
【0291】
スキーム3
【0292】
生物学的アッセイ
上述の方法によって設計され、選択され、かつ/または最適化された化合物を生産したら、当業者に公知のさまざまなアッセイを使ってそれらを特徴づけて、それらの化合物が生物学的活性を有するかどうかを決定することができる。例えば、限定するわけではないが後述のアッセイを含む従来のアッセイによって、分子を特徴づけることで、それらが、予想される活性、結合活性および/または結合特異性を有するかどうかを決定することができる。
【0293】
さらにまた、ハイスループットスクリーニングを使って、そのようなアッセイを使った解析をスピードアップすることもできる。結果として、当技術分野において公知の技法を使って、本明細書記載の分子を迅速にスクリーニングすることが可能になりうる。ハイスループットスクリーニングを行うための一般的方法は、例えばDevlin(1998)High Throughput Screening,Marcel Dekker、および米国特許第5,763,263号に記載されている。ハイスループットアッセイでは、限定するわけではないが後述するものを含めて、1種または複数種の異なるアッセイ技法を使用することができる。
【0294】
本開示の化合物の効果を検出するには、さまざまなインビトロまたはインビボでの生物学的アッセイが適しうる。これらインビトロまたはインビボでの生物学的アッセイとしては、酵素活性アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、レポーター遺伝子アッセイ、インビトロ細胞生存性アッセイ、および本明細書記載のアッセイを挙げることができるが、それらに限定されるわけではない。
【0295】
いくつかの態様において、生物学的アッセイは、末梢血単核球(PBMC)におけるNLRP3活性化時のIL-1β放出に対する阻害活性を試験する生物学的アッセイである。
【0296】
いくつかの態様において、生物学的アッセイはPBMC IC50決定アッセイである。いくつかの態様において、生物学的アッセイはPBMC IC50決定アッセイである。
【0297】
薬学的組成物
いくつかの局面では、本開示は、本開示の化合物を有効成分として含む、薬学的組成物を提供する。
【0298】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の化合物と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、表1より選択される少なくとも1つの化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0299】
本明細書において使用される「組成物」という用語は、所定の成分を所定量で含む生成物、および、所定量での所定の成分の組み合わせによって直接的または間接的に得られる任意の生成物を包含するように意図されている。
【0300】
本開示の化合物を経口投与用に錠剤、カプセル剤(いずれも持続放出製剤または時限放出製剤を含む)、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液剤、シロップ剤、および乳剤などの形態で製剤化することができる。また、本開示の化合物を、いずれも薬学分野の当業者に周知の形態を使用する静脈内(ボーラスもしくは注入)投与、腹腔内投与、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、または経皮(例えばパッチ)投与用に製剤化することができる。
【0301】
本開示の製剤は、水性媒体を含む水溶液の形態でありうる。水性媒体成分は水および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含みうる。好適な許容される賦形剤としては、溶解度向上剤、キレート剤、保存料、等張化剤、粘度調整剤/懸濁化剤、緩衝剤、およびpH調整剤、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される賦形剤が挙げられる。
【0302】
任意の溶解度向上剤を使用することができる。溶解度向上剤の例としてはシクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ランダムメチル化β-シクロデキストリン、エチル化β-シクロデキストリン、トリアセチル-β-シクロデキストリン、ペルアセチル化β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、硫酸化β-シクロデキストリン(S-β-CD)、マルトシル-β-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル、分岐β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、ランダムメチル化γ-シクロデキストリン、およびトリメチル-γ-シクロデキストリン、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるシクロデキストリンが挙げられる。
【0303】
任意の好適なキレート剤を使用することができる。好適なキレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸およびその金属塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、およびエデト酸四ナトリウム、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるキレート剤が挙げられる。
【0304】
任意の好適な保存料を使用することができる。保存料の例としては、ハロゲン化ベンザルコニウム(好ましくは塩化ベンザルコニウム)などの四級アンモニウム塩、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ベンジル、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ネオデカン酸フェニル水銀、メルチオラート、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、プロピルアミノプロピルビグアナイド、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、およびソルビン酸、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される保存料が挙げられる。
【0305】
水性媒体は、浸透圧を調整するための等張化剤を含んでもよい。等張化剤はグリコール(例えばプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール)、グリセロール、ブドウ糖、グリセリン、マンニトール、塩化カリウム、および塩化ナトリウム、ならびにそれらの混合物からなる群より選択可能である。
【0306】
水性媒体は粘度調整剤/懸濁化剤を含んでもよい。好適な粘度調整剤/懸濁化剤としては、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール(例えばポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに架橋アクリル酸ポリマー(カルボマー)、例えばポリアルケニルエーテルまたはジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸ポリマー(Carbopol 934、Carbopol 934P、Carbopol 971、Carbopol 974、およびCarbopol 974PなどのCarbopol)、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるものが挙げられる。
【0307】
製剤を許容されるpH(通常はpH範囲約5.0~約9.0、より好ましくは約5.5~約8.5、特に約6.0~約8.5、約7.0~約8.5、約7.2~約7.7、約7.1~約7.9、または約7.5~約8.0)に調整するために、製剤はpH調整剤を含みうる。通常、pH調整剤は鉱酸または金属水酸化物塩基であり、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、および塩酸、ならびにそれらの混合物、好ましくは水酸化ナトリウムおよび/または塩酸の群より選択される。これらの酸性および/または塩基性pH調整剤を加えることで、製剤を目標の許容されるpH範囲に調整する。したがって、酸および塩基の両方を使用することが必要ではないことがある。製剤によっては、混合物を所望のpH範囲にするために、酸または塩基の一方を加えれば十分なことがある。
【0308】
水性媒体はpHを安定化するための緩衝剤を含んでもよい。使用する場合、緩衝剤はリン酸緩衝剤(例えばリン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウム)、ホウ酸緩衝剤(例えばホウ酸、または四ホウ酸二ナトリウムを含むその塩)、クエン酸緩衝剤(例えばクエン酸、またはクエン酸ナトリウムを含むその塩)、ならびにε-アミノカプロン酸、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0309】
製剤は湿潤剤をさらに含んでもよい。好適なクラスの湿潤剤としては、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体(ポロキサマー)、ポリエトキシ化ヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレン化ソルビタンエステル(ポリソルベート)、オキシエチル化オクチルフェノールポリマー(Tyloxapol)、ステアリン酸ポリオキシル40、脂肪酸グリコールエステル、脂肪酸グリセリルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される湿潤剤が挙げられる。
【0310】
経口組成物は、不活性希釈剤または薬学的に許容される食用担体を一般に含む。経口組成物はゼラチンカプセル剤に封入されてもよく、錠剤に圧縮されてもよい。治療用経口投与の目的で、有効化合物を賦形剤と共に組み入れ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用することができる。また、洗口液として使用される経口組成物を流体担体を使用して調製することができる。洗口液では、流体担体中の本化合物が経口適用されて、すすがれて、吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合性のある結合剤および/または補助材料が組成物の一部として含まれうる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または同様の性質の化合物のいずれかを含みうる: 結晶セルロース、トラガントゴム、もしくはゼラチンなどの結合剤; デンプンもしくは乳糖などの賦形剤; アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤; ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの潤滑剤; コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤; ショ糖もしくはサッカリンなどの甘味料; またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバーなどの香味料。
【0311】
本開示のさらなる局面によれば、上記定義の本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物と、薬学的に許容される希釈剤または担体との組み合わせを含む、薬学的組成物が提供される。
【0312】
本開示の組成物は、経口使用に好適な形態(例えば錠剤、舐剤、硬もしくは軟カプセル剤、水性もしくは油性懸濁液剤、乳剤、分散性散剤もしくは顆粒剤、シロップ剤、またはエリキシル剤)、局所使用に好適な形態(例えばクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、または水性もしくは油性の溶液剤もしくは懸濁液剤)、吸入投与に好適な形態(例えば微粉散剤または液体エアロゾル剤)、吹送投与に好適な形態(例えば微粉散剤)、あるいは非経口投与に好適な形態(例えば静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、もしくは筋肉内投与用の滅菌水性もしくは油性溶液剤、または直腸投与用の坐薬)でありうる。
【0313】
本開示の組成物を、当技術分野において周知である従来の薬学的賦形剤を使用する従来の手順によって得ることができる。したがって、経口使用向けの組成物は、例えば1種または複数の着色料、甘味料、香味料、および/または保存料を含みうる。
【0314】
治療における使用のための本開示の化合物の有効量とは、本明細書において言及されるインフラマソーム関連状態を処置もしくは予防するために、その進行を遅くするために、かつ/または該状態に関連する症状を減少させるために十分な量のことである。
【0315】
式(I)の化合物の治療または予防目的での用量のサイズは、周知の医療原理に従って、状態の性質および重症度、動物または患者の年齢および性別、ならびに投与経路に応じて当然変動する。
【0316】
使用方法
いくつかの局面では、本開示は、インフラマソーム(例えばNLRP3インフラマソーム)活性を(例えばインビトロまたはインビボで)阻害する方法であって、細胞と有効量の本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩とを接触させる段階を含む方法を提供する。
【0317】
いくつかの局面では、本開示は、本明細書に開示される疾患または障害を処置または予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、該対象に治療有効量の本開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または本開示の薬学的組成物を投与する段階を含む方法を提供する。
【0318】
いくつかの態様では、疾患または障害は、インフラマソーム活性の関与を伴う。いくつかの態様では、疾患または障害は、インフラマソーム活性が関与する疾患または障害である。
【0319】
いくつかの態様では、疾患または障害は、炎症性疾患、自己炎症性障害、自己免疫障害、神経変性疾患、またはがんである。
【0320】
いくつかの態様では、疾患または障害は、炎症性疾患、自己炎症性障害、および/または自己免疫障害である。
【0321】
いくつかの態様では、疾患または障害は、サイトカイン放出症候群(CRS)である。
【0322】
いくつかの態様では、疾患または障害はクリオピリン関連自己炎症性症候群(CAPS; 例えば家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS))、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群、新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID)、家族性地中海熱(FMF)および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、痛風、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患(CKD)、線維症、肥満、2型糖尿病、多発性硬化症、皮膚の疾患(例えば、ざ瘡)ならびにタンパク質ミスフォールディング疾患(例えば、プリオン病)において生じる神経炎症より選択される。
【0323】
いくつかの態様では、疾患または障害は神経変性疾患である。
【0324】
いくつかの態様では、疾患または障害はパーキンソン病またはアルツハイマー病である。
【0325】
いくつかの態様では、疾患または障害は皮膚の疾患である。
【0326】
いくつかの態様では、皮膚の疾患はざ瘡である。
【0327】
いくつかの態様では、疾患または障害はがんである。
【0328】
いくつかの態様では、がんは転移性がん、胃腸がん、皮膚がん、非小細胞肺がん、脳のがん(例えば、膠芽腫)または結腸直腸腺がんである。
【0329】
いくつかの態様では、がんは、乳がんである。
【0330】
いくつかの局面において、本開示は、自己炎症性障害、自己免疫障害、神経変性疾患またはがんを処置または予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、該対象に治療有効量の本開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または本開示の薬学的組成物を投与する段階を含む方法を提供する。
【0331】
いくつかの局面において、本開示は、クリオピリン関連自己炎症性症候群(CAPS;例えば家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群/新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID))、家族性地中海熱(FMF)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、痛風、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患(CKD)、線維症、肥満、2型糖尿病、多発性硬化症、皮膚疾患(例えばざ瘡)およびタンパク質ミスフォールディング疾患(例えばプリオン病)において生じる神経炎症より選択される炎症性障害、自己炎症性障害および/または自己免疫障害を処置または予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、該対象に有効量の本開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩または本開示の薬学的組成物を投与する段階を含む方法を提供する。
【0332】
いくつかの局面において、本開示は、サイトカイン放出症候群(CRS)を処置または予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、該対象に治療有効量の本開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩または本開示の薬学的組成物を投与する段階を含む方法を提供する。
【0333】
いくつかの態様において、CRSはCOVID-19と関連する。いくつかの態様において、CRSは養子細胞療法と関連する。
【0334】
いくつかの局面において、本開示は、神経変性疾患(例えばパーキンソン病またはアルツハイマー病)を処置または予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、該対象に治療有効量の本開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩または本開示の薬学的組成物を投与する段階を含む方法を提供する。
【0335】
いくつかの局面において、本開示は、がんを処置または予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、該対象に治療有効量の本開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩または本開示の薬学的組成物を投与する段階を含む方法を提供する。
【0336】
いくつかの局面において、本開示は、インフラマソーム(例えばNLRP3インフラマソーム)活性を(例えばインビトロまたはインビボで)阻害することにおける使用のための、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0337】
いくつかの局面において、本開示は、本明細書に開示する疾患または障害を処置または予防することにおける使用のための、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0338】
いくつかの局面において、本開示は、炎症性障害、自己炎症性障害、自己免疫障害、神経変性疾患またはがんを処置または予防することを必要とする対象においてそれを行うことにおける使用のための、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0339】
いくつかの局面において、本開示は、クリオピリン関連自己炎症性症候群(CAPS;例えば家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群/新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID))、家族性地中海熱(FMF)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、痛風、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患(CKD)、線維症、肥満、2型糖尿病、多発性硬化症およびタンパク質ミスフォールディング疾患(例えばプリオン病)において生じる神経炎症より選択される炎症性障害、自己炎症性障害および/または自己免疫障害を処置または予防することを必要とする対象においてそれを行うことにおける使用のための、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0340】
いくつかの局面において、本開示は、CRSを処置または予防することを必要とする対象においてそれを行うことにおける使用のための、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0341】
いくつかの局面において、本開示は、神経変性疾患(例えばパーキンソン病またはアルツハイマー病)を処置または予防することを必要とする対象においてそれを行うことにおける使用のための、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0342】
いくつかの局面において、本開示は、がんを処置または予防することを必要とする対象においてそれを行うことにおける使用のための、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0343】
いくつかの局面において、本開示は、インフラマソーム(例えばNLRP3インフラマソーム)活性を(例えばインビトロまたはインビボで)阻害するための医薬の製造における、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0344】
いくつかの局面において、本開示は、本明細書に開示する疾患または障害を処置または予防するための医薬の製造における、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0345】
いくつかの局面において、本開示は、炎症性障害、自己炎症性障害、自己免疫障害、神経変性疾患またはがんを処置または予防することを必要とする対象においてそれを行うための医薬の製造における、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0346】
いくつかの局面において、本開示は、クリオピリン関連自己炎症性症候群(CAPS;例えば家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群/新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID))、家族性地中海熱(FMF)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、痛風、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患(CKD)、線維症、肥満、2型糖尿病、多発性硬化症、皮膚障害(例えば、ざ瘡)およびタンパク質ミスフォールディング疾患(例えばプリオン病)において生じる神経炎症より選択される炎症性障害、自己炎症性障害および/または自己免疫障害を処置または予防することを必要とする対象においてそれを行うための医薬の製造における、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0347】
いくつかの局面において、本開示は、CRSを処置または予防することを必要とする対象においてそれを行うための医薬の製造における、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0348】
いくつかの局面において、本開示は、神経変性疾患(例えばパーキンソン病またはアルツハイマー病)を処置または予防することを必要とする対象においてそれを行うための医薬の製造における、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0349】
いくつかの局面において、本開示は、がんを処置または予防することを必要とする対象においてそれを行うための医薬の製造における、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0350】
本開示は、インフラマソーム活性の阻害剤として機能する化合物を提供する。それゆえに本開示は、インビトロまたはインビボでインフラマソーム活性を阻害する方法であって、細胞を、有効量の本明細書において定義される化合物またはその薬学的に許容される塩と接触させる段階を含む方法を提供する。
【0351】
本開示の化合物の有効性は、当技術分野において記載され、最新の一般的知識に見いだされるような、それを明らかにする標準的慣行に従って、業界で受け入れられているアッセイ/疾患モデルによって決定することができる。
【0352】
本開示は、インフラマソーム活性が関与する疾患または障害の処置を必要とする患者においてそのような処置を行う方法であって、該患者に治療有効量の本明細書記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩または薬学的組成物を投与する段階を含む方法も提供する。
【0353】
一般的には、IL-1ファミリーのサイトカインの成熟を阻害する本開示の化合物は、IL-1サイトカインファミリーに属するサイトカインの活性型のレベルの上昇が媒介するまたはそのような上昇と関連する、あらゆる治療適応症において有効である(Sims J.et al.Nature Reviews Immunology 10,89-102(February 2010)。
【0354】
例示的な疾患および対応する参考文献を以下に掲載する:炎症、自己炎症および自己免疫疾患、例えばCAPS(Dinarello,C.A.Immunity.2004 Mar;20(3):243-4、Hoffman,H.M.et al.Reumatologia 2005;21(3))、痛風、関節リウマチ(Gabay,C.et al.Arthritis Research&Therapy 2009,11:230、Schett,G.et al.Nat Rev Rheumatol.2016 Jan;12(1):14-24)、クローン病(Jung Mogg Kim Korean J.Gastroenterol.Vol.58 No.6,300-310)、COPD(Mortaz,E.et al.Tanaffos.2011;10(2):9-14)、線維症(Gasse,P.et al.Am.J.Respir.Crit.Care Med.2009 May 15;179(10):903-13)、肥満、2型糖尿病((Dinarello,C.A.et al.Curr.Opin.Endocrinol.Diabetes Obes.2010 Aug;17(4):314-21))多発性硬化症(Coll、R.C.et al.Nat.Med.2015 Mar;21(3):248-55のEAEモデル参照)、およびその他多数(Martinon,F.et al.Immunol.2009.27:229-65)、例えばパーキンソン病またはアルツハイマー病(Michael,T.et al.Nature 493,674-678(31 January 2013)、Halle,A.et al.,Nat.Immunol.2008 Aug;9(8):857-65、Saresella,M.et al.Mol.Neurodegener.2016 Mar 3;11:23)およびいくつかの腫瘍学的障害。
【0355】
本開示の化合物は、適宜、サイトカイン放出症候群(CRS)、炎症性疾患、自己炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患およびがんからなる群より選択される疾患の処置に使用することができる。該炎症性疾患、自己炎症性疾患および自己免疫疾患は、クリオピリン関連自己炎症性症候群(CAPS;例えば家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群/新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID))、家族性地中海熱(FMF)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、慢性腎疾患(CKD)、痛風、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、COPD、線維症、肥満、2型糖尿病、多発性硬化症、皮膚疾患(例えば、ざ瘡)、およびタンパク質ミスフォールディング疾患、例えばプリオン病において生じる神経炎症からなる群より、適宜選択される。該神経変性疾患には、パーキンソン病およびアルツハイマー病が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0356】
したがって本開示の化合物は、クリオピリン関連自己炎症性症候群(CAPS;例えば家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群/新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID))、家族性地中海熱(FMF)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、慢性腎疾患(CKD)、痛風、関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、COPD、線維症、肥満、2型糖尿病、多発性硬化症、皮膚疾患(例えば、ざ瘡)、タンパク質ミスフォールディング疾患、例えばプリオン病において生じる神経炎症、神経変性疾患(neurogenerative disease)(例えばパーキンソン病、アルツハイマー病)、および腫瘍学的障害からなる群より選択される疾患の処置に使用することができる。
【0357】
感染と関連する炎症性疾患
いくつかの態様において、疾患または障害は、炎症性疾患である。
【0358】
いくつかの態様において、炎症性疾患は、感染と関連する。
【0359】
いくつかの態様において、炎症性疾患は、ウイルスによる感染と関連する。
【0360】
いくつかの態様において、炎症性疾患は、RNAウイルスによる感染と関連する。いくつかの態様において、RNAウイルスは、一本鎖RNAウイルスである。一本鎖RNAウイルスには、グループIV(プラス鎖)およびグループV(マイナス鎖)一本鎖RNAウイルスが含まれる。いくつかの態様において、グループIVウイルスには、コロナウイルスが含まれる。
【0361】
いくつかの態様において、炎症性疾患は、コロナウイルスによる感染と関連する。いくつかの態様において、コロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV 2)、SARSコロナウイルス(SARS CoV)または中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS)である。
【0362】
いくつかの態様において、炎症性疾患は、SARS-CoV 2による感染と関連する。いくつかの態様において、SARS-CoV 2感染は、2019新型コロナウイルス病(COVID-19)につながる。いくつかの態様において、SARS-CoV 2感染は、2019新型コロナウイルス病(COVID-19)の新規バリアントにつながる。
【0363】
いくつかの態様において、炎症性疾患は、肺の炎症性疾患である。
【0364】
いくつかの態様において、肺の炎症性疾患は、SARS-CoV 2による感染と関連する。
【0365】
いくつかの態様において、炎症性疾患は、サイトカイン放出症候群(CRS)を含む。
【0366】
いくつかの態様において、サイトカイン放出症候群(CRS)は、SARS-CoV 2による感染と関連する。
【0367】
いくつかの態様において、サイトカイン放出症候群(CRS)は、SARS-CoV 2のバリアントによる感染と関連する。
【0368】
いくつかの態様において、SARS-CoV 2のバリアントは、その感染が2019新型コロナウイルス病(COVID-19)の新規バリアントにつながる変異型SARS-CoV 2である。
【0369】
サイトカイン放出症候群および免疫療法
いくつかの態様において、疾患または障害は、炎症性疾患である。
【0370】
いくつかの態様において、炎症性疾患は、免疫療法と関連する。
【0371】
いくつかの態様において、免疫療法は、サイトカイン放出症候群(CRS)を引き起こす。
【0372】
CAR-Tなどの免疫療法の有効性は、そのような治療がサイトカイン放出症候群を誘導する頻度によって阻害される。理論に束縛されることは望まないが、免疫療法が誘導するCRSの重症度は、IL-6、IL-1およびNO産生によって媒介されると考えられる(Giavridis et al.Nature Medicine 24,731-738(2018))。あるいは、または上記に加えて、CRSは、養子細胞療法の標的となる細胞が、プログラム細胞死の一形態で高度に炎症性であるピロトーシスを起こす場合にも起こりうる。ピロトーシスは、マクロファージによる炎症誘発性サイトカインの産生を刺激する因子の放出につながり、それがCRSをもたらす(Liu et al.Science Immunology 5,eaax7969(2020))。
【0373】
いくつかの態様において、免疫療法は、抗体または養子細胞療法を含む。
【0374】
いくつかの態様において、養子細胞療法は、CAR-TまたはTCR-T細胞療法を含む。
【0375】
いくつかの態様において、養子細胞療法は、がん療法を含む。いくつかの態様において、がん療法は、B細胞リンパ腫またはB細胞性急性リンパ芽球性白血病の処置である。いくつかの態様において、養子細胞は、CD19+B細胞性急性リンパ芽球性白血病細胞を標的とするCARを発現しうる。
【0376】
いくつかの態様において、養子細胞療法は、T細胞、B細胞またはNK細胞の投与を含む。
【0377】
いくつかの態様において、養子細胞療法は、T細胞の投与を含む。いくつかの態様において、養子細胞療法は、B細胞の投与を含む。いくつかの態様において、養子細胞療法は、NK細胞の投与を含む。
【0378】
いくつかの態様において、養子細胞療法は、自家である。
【0379】
いくつかの態様において、養子療法は、同種異系である。
【0380】
がんにおける処置; インフラマソームとの関連
慢性炎症応答が様々な種類のがんに関連していることが観察されるようになって久しい。悪性形質転換またはがんの治療中にインフラマソームが危険シグナルに応答して活性化されることがあり、この活性化はがんにおいて有利でも有害でもありうる。
【0381】
IL-1β発現は種々のがん(乳がん、前立腺がん、結腸がん、肺がん、頭頸部がん、および黒色腫を含む)において上昇し、IL-1β産生腫瘍を有する患者は一般に予後が比較的悪い(Lewis, Anne M., et al. "Interleukin-1 and cancer progression: the emerging role of interleukin-1 receptor antagonist as a novel therapeutic agent in cancer treatment." Journal of translational medicine 4.1 (2006): 48)。
【0382】
上皮細胞に由来するがん(癌)または腺上皮に由来するがん(腺癌)は不均一性であり、多くの異なる細胞型からなる。これは線維芽細胞、免疫細胞、脂肪細胞、内皮細胞、および周皮細胞を特に含みうるものであり、いずれもサイトカイン/ケモカイン分泌性でありうる(Grivennikov, Sergei I., Florian R. Greten, and Michael Karin. "Immunity, inflammation, and cancer." Cell 140.6 (2010): 883-899)。これによって免疫細胞浸潤を通じたがん関連炎症が生じうる。腫瘍中の白血球の存在は公知であるが、炎症性微小環境がすべての腫瘍の必須構成要素であることが明らかになったのはつい最近のことである。大部分の腫瘍(90%超)は生殖細胞系列変異よりもむしろ体細胞変異または環境因子の結果であり、がんの多くの環境的原因は慢性炎症に関連している(がんの20%は慢性感染症に、30%は喫煙汚染物質/吸入汚染物質に、35%は食事因子に関連している(すべてのがんのうち20%は肥満に関連している))(Aggarwal, Bharat B., R. V. Vijayalekshmi, and Bokyung Sung. "Targeting inflammatory pathways for prevention and therapy of cancer: short-term friend, long-term foe." Clinical Cancer Research 15.2 (2009): 425-430)。
【0383】
胃腸がん
胃腸(GI)管がんは慢性炎症にしばしば関連している。例えば、ピロリ菌(H. pylori)感染症は胃がんに関連している(Amieva, Manuel, and Richard M. Peek. "Pathobiology of Helicobacter pylori-Induced Gastric Cancer." Gastroenterology 150.1 (2016): 64-78)。結腸直腸がんは、炎症性腸疾患に関連している(Bernstein, Charles N., et al. "Cancer risk in patients with inflammatory bowel disease." Cancer 91.4 (2001): 854-862)。胃内の慢性炎症はIL-1および他のサイトカインの上方制御を生じさせ(Basso, D., et al., (1996) Helicobacter pylori infection enhances mucosal interleukin-1 beta, interleukin-6, and the soluble receptor of interleukin-2. Int J Clin Lab Res 26:207-210)、IL-1β遺伝子の多形性は胃がんの危険性を増加させうる(Wang, P., et al., (2007) Association of interleukin-1 gene polymorphisms with gastric cancer: a meta-analysis. Int J Cancer 120:552-562)。
【0384】
胃がんの症例の19%において、ステージ、リンパ節転移、および生存時間と相関するカスパーゼ1発現が減少している(Jee et al., 2005)。マイコプラズマ・ハイオリニス(Mycoplasma hyorhinis)は胃がんの発生に関連しており、それによるNLRP3インフラマソームの活性化はそれによる胃がん転移の促進に関連しうる(Xu et al., 2013)。
【0385】
皮膚がん
紫外線は皮膚がんの最大の環境リスクであり、皮膚がんはDNA損傷、免疫抑制、および炎症を引き起こすことで促進される。最も悪性度の高い皮膚がんである黒色腫は、いずれもIL-1βによって制御されうる炎症性サイトカインの上方制御を特徴とする(Lazar-Molnar, Eszter, et al. "Autocrine and paracrine regulation by cytokines and growth factors in melanoma." Cytokine 12.6 (2000): 547-554)。全身炎症は、インビボでIL-1依存性機構による黒色腫細胞の転移および増殖の亢進を誘導する。チモキノンを使用することで、B16F10マウス黒色腫モデルにおける転移の阻害がNLRP3インフラマソームの阻害に依存することが示された(Ahmad, Israr, et al. "Thymoquinone suppresses metastasis of melanoma cells by inhibition of NLRP3 inflammasome." Toxicology and applied pharmacology 270.1 (2013): 70-76)。
【0386】
神経膠芽腫
NLRP3は神経膠腫における放射線療法抵抗性の一因である。電離放射線はNLRP3を発現しうるが、NLRP3阻害によって放射線療法後に腫瘍増殖が減少し、マウス生存時間が延長された。したがって、NLRP3インフラマソーム阻害は、放射線抵抗性神経膠腫に対する治療戦略を実現しうる(Li, Lianling, and Yuguang Liu. "Aging-related gene signature regulated by Nlrp3 predicts glioma progression." American journal of cancer research 5.1 (2015): 442)。
【0387】
転移
より広範には、本出願人らはNLRP3が転移の促進に関与すると考えており、したがってNLRP3の調節はおそらくこれを遮断するはずである。IL-1は腫瘍発生、腫瘍浸潤、腫瘍転移、腫瘍宿主相互作用(Apte, Ron N., et al. "The involvement of IL-1 in tumorigenesis, tumor invasiveness, metastasis and tumor-host interactions." Cancer and Metastasis Reviews 25.3 (2006): 387-408)、および血管新生(Voronov, Elena, et al. "IL-1 is required for tumor invasiveness and angiogenesis." Proceedings of the National Academy of Sciences 100.5 (2003): 2645-2650)に関与する。
【0388】
IL-1遺伝子は、いくつかの種類のヒトがんを有する患者からの転移においてしばしば発現される。例えば、IL-1mRNAは、非小細胞肺がん、結腸直腸腺がん、および黒色腫の腫瘍試料を特に含むすべての試験された転移性ヒト腫瘍試料のうち半数超において高度に発現された(Elaraj, Dina M., et al. "The role of interleukin 1 in growth and metastasis of human cancer xenografts." Clinical Cancer Research 12.4 (2006): 1088-1096)。IL-1RAはIL-1産生腫瘍中で異種移植片増殖を阻害するが、インビトロでは抗増殖効果を示さない。
【0389】
さらに、IL-1シグナル伝達は、骨転移を発生させる危険性が増加した乳がん患者を予測するためのバイオマーカーとなる。マウスモデルにおいて、IL-1βおよびその受容体は、骨に転移する乳がん細胞中で、骨に転移しない細胞に比べて上方制御される。マウスモデルにおいて、IL-1受容体アンタゴニストアナキンラは、骨ターンオーバーマーカーIL-1βおよびTNFαを減少させるという腫瘍環境に対する著しい効果を発揮したことに加えて、増殖および血管新生を減少させた(Holen, Ingunn, et al. "IL-1 drives breast cancer growth and bone metastasis in vivo." Oncotarget (2016))。
【0390】
IL-18は、ヒト白血病細胞株HL-60中でMMP-9の産生を誘導することで、細胞外マトリックスの分解ならびにがん細胞の遊走および浸潤を促進した(Zhang, Bin, et al. "IL-18 increases invasiveness of HL-60 myeloid leukemia cells: up-regulation of matrix metalloproteinases-9 (MMP-9) expression." Leukemia research 28.1 (2004): 91-95)。さらに、IL-18は、肝類洞内皮上でVCAM-1の発現を誘導することで、肝臓中での腫瘍転移の発生を支援することがある(Carrascal, Maria Teresa, et al. "Interleukin-18 binding protein reduces b16 melanoma hepatic metastasis by neutralizing adhesiveness and growth factors of sinusoidal endothelium." Cancer Research 63.2 (2003): 491-497)。
【0391】
CD36
脂肪酸スカベンジャー受容体CD36は、pro-IL-1βの遺伝子転写をプライミングしかつNLRP3インフラマソーム複合体の構築を誘導するという二重の役割を果たす。CD36およびTLR4-TLR6ヘテロ二量体はoxLDLを認識し、oxLDLは、NLRP3およびpro-IL-1βの転写上方制御を生じさせるシグナル伝達経路を開始する(シグナル1)。また、CD36はリソソーム区画へのoxLDLの内部移行を媒介し、リソソーム区画において、リソソーム破裂およびNLRP3インフラマソーム活性化を誘導する結晶が形成される(シグナル2)(Kagan, J. and Horng T., "NLRP3 inflammasome activation: CD36 serves double duty." Nature Immunology 14.8 (2013): 772-774)。
【0392】
ヒト口腔がん細胞の亜集団は、高レベルの脂肪酸スカベンジャー受容体CD36を発現するものであり、転移を開始する能力があるという点で独特である。パルミチン酸または高脂肪食はCD36+細胞の転写能をブーストした。ヒト口腔がんの同所性マウスモデルにおいて、抗CD36抗体を中和することで転移が遮断された。CD36+転移開始細胞の存在は、数多くの種類のがんの予後不良と相関している。食事脂質が転移を促進しうることが示唆される(Pasqual, G, Avgustinova, A., Mejetta, S, Martin, M, Castellanos, A, Attolini, CS-O, Berenguer, A., Prats, N, Toll, A, Hueto, JA, Bescos, C, Di Croce, L, and Benitah, SA. 2017 "Targeting metastasis-initiating cells through the fatty acid receptor CD36" Nature 541:41-45)。
【0393】
肝細胞がんにおいて、外因性パルミチン酸は上皮間葉転換(EMT)様プログラムを活性化し、遊走を誘導した。この遊走はCD36阻害剤スルホ-N-スクシンイミジルオレエートによって減少した(Nath, Aritro, et al. "Elevated free fatty acid uptake via CD36 promotes epithelial-mesenchymal transition in hepatocellular carcinoma." Scientific reports 5 (2015))。肥満度指数はEMTの程度に関連していなかった。このことは、実際に重要なのはCD36および遊離脂肪酸であるということを強調するものである。
【0394】
がん幹細胞(CSC)は、それらの維持を促進するためにCD36を使用する。神経膠芽腫においてCD36のリガンドである酸化リン脂質が存在し、酸化LDLへの曝露によってCSCの増殖が増加したが、非CSCの増殖は増加しなかった。また、CD36は患者の予後に相関していた。
【0395】
化学療法抵抗性
化学療法剤は、直接的な細胞毒性効果に加えて、抗腫瘍活性の一因である宿主免疫系を利用する。しかし、ゲムシタビンおよび5-FUは、骨髄由来サプレッサー細胞中でNLRP3を活性化することで、抗腫瘍有効性を減少させるIL-1βの産生をもたらすことが示された。機構的に言えば、これらの剤はリソソームを不安定化してカテプシンBを放出することでNLRP3を活性化した。IL-1βはCD4+ T細胞からのIL-17の産生を促進し、IL-17は化学療法の有効性を弱めた。NLRP3-/-もしくはCaps1-/-マウス、またはIL-1RAで処置されたWTマウスにおいて腫瘍が樹立された際に、ゲムシタビンおよび5-FUの両方の比較的高い抗腫瘍効果が観察された。したがって、骨髄由来サプレッサー細胞NLRP3の活性化は、ゲムシタビンおよび5-FUの抗腫瘍有効性を制限する(Bruchard, Melanie, et al. "Chemotherapy-triggered cathepsin B release in myeloid-derived suppressor cells activates the Nlrp3 inflammasome and promotes tumor growth." Nature medicine 19.1 (2013): 57-64.)。したがって、本開示の化合物は、一連のがんを処置するための化学療法において有用でありうる。
【0396】
本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩は、単剤療法として単独で投与してもよく、1種または複数の他の物質および/または処置薬と併せて投与してもよい。この併用療法は処置の個々の構成要素の同時投与、順次投与、または個別投与によって実現可能である。
【0397】
例えば、補助剤の投与によって治療有効性を向上させることができる(すなわち、補助剤は、それ自体では最小限の治療効果しか示さないことがあるが、別の治療剤との組み合わせで、個体に対する全体的な治療効果が向上する)。あるいは、単に一例として、式(I)の化合物を、やはり治療効果を示す別の治療剤(治療レジメンも含む)と共に投与することで、個体が経験する効果を増加させることができる。
【0398】
本開示の化合物を他の治療剤との組み合わせで投与する場合、本開示の化合物を他の治療剤と同じ経路で投与しなくてもよく、物理特性および化学特性が異なることから、異なる経路で投与してもよい。例えば、本開示の化合物を経口投与することでその良好な血中レベルを生成および維持することができ、一方、他の治療剤を静脈内投与することができる。当技術分野において公知である既定のプロトコルに従って初期投与を行うことができ、次に観察された効果に基づいて投与量、投与様式、および投与時間を熟練医が修正することができる。
【0399】
他の治療剤の特定の選択は、主治医の診断、ならびに個体の状態および適切な処置プロトコルに関する主治医の判断に依存する。本開示のこの局面によれば、上記定義の本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩と、別の好適な剤とを含む、インフラマソーム活性が関与する疾患の処置における使用のための組み合わせが提供される。
【0400】
本開示のさらなる局面によれば、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩と、好適な薬学的に許容される希釈剤または担体との組み合わせを含む、薬学的組成物が提供される。
【0401】
式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩は、治療的医療におけるその使用に加えて、新規治療剤の模索の一部としてのイヌ、ウサギ、サル、ラット、およびマウスなどの実験動物におけるインフラマソーム阻害剤の効果の評価のための、インビトロおよびインビボ試験系の開発および標準化における薬理学的手段としても有用である。
【0402】
本開示の上記の薬学的組成物、プロセス、方法、使用、医薬、および製造上の特徴のいずれかにおいて、本明細書に記載の本開示の巨大分子の代替態様のいずれかも適用される。
【0403】
投与経路
本開示の化合物、またはこれらの化合物を含む薬学的組成物を、全身/末梢であれ、局所(すなわち所望作用の部位)であれ、任意の好都合な投与経路で対象に投与することができる。
【0404】
投与経路としては経口(例えば経口摂取); 頬側; 舌下; 経皮(例えばパッチ剤、プラスター剤などを含む); 経粘膜(例えばパッチ剤、プラスター剤などを含む); 鼻腔内(例えば点鼻薬); 眼内(例えば点眼薬); 肺内(例えば、エアロゾル剤を例えば使用する、口または鼻を例えば通じた、吸入療法または吹送療法); 直腸(例えば坐薬または浣腸); 膣内(例えばペッサリー); 皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、くも膜下腔内、脊髄内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、および胸骨内を含む、非経口、例えば注射; 例えば皮下または筋肉内へのデポーまたはリザーバの埋め込みが挙げられるがそれに限定されない。
【実施例
【0405】
例示のために、実施例では、式(I)の化合物の塩を合成し、試験する。式(I)の中性化合物も、実施例で述べる例示的手順を使って同様に合成し、試験しうることが理解されよう。さらにまた、式(I)の化合物の塩(例えばナトリウム塩)を、当技術分野における日常的方法(例えばpH調節および任意で(例えば水相への)抽出)を使って、対応する中性化合物に変換しうることも理解されよう。
【0406】
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、記載の通り、400MHzまたは300MHzで、別段の記載がある場合を除き、300.3Kにおいて記録した。化学シフト(δ)は百万分率(ppm)で報告する。スペクトルは、BrukerまたはVarianの機器を使用し、8回、16回、または32回のスキャンで記録した。
【0407】
LC-MSのクロマトグラムおよびスペクトルは、Agilent 1200またはShimadzu LC-20 AD&MS 2020機器を使用し、Luna-C18 2.0×30mmまたはXbridge Shield RPC18 2.1×50mmなどのC-18カラムを使って記録した。注入量は0.7~8.0μLとし、流量は典型的には0.8または1.2mL/分とした。検出方法はダイオードアレイ(DAD)または蒸発光散乱法(ELSD)および陽イオンエレクトロスプレーイオン化法とした。MS範囲は100~1000Daとした。溶媒はトリフルオロ酢酸または炭酸アンモニウムなどの調整剤(典型的には0.01~0.04%)を含有する水およびアセトニトリルの勾配とした。
【0408】
略号:
ACN アセトニトリル
AcOH 酢酸
aq. 水性
DCM ジクロロメタン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO-d6 ヘキサジュウテロジメチルスルホキシド
eq. 当量
MS ES 陽イオンエレクトロスプレーイオン化質量分析
EDCI 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ESI エレクトロスプレーイオン化
EtOAc 酢酸エチル
FCC フラッシュカラムクロマトグラフィー
h 時間
HATU N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタナミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC-MS 液体クロマトグラフィー-質量分析
MeOD メタノール-d4
MeOH メタノール
Min 分
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
RM 反応混合物
Rt 室温
sat. 飽和
SM 出発物質
T3P プロピルホスホン酸無水物
TBSCl tert-ブチルジメチルシリルクロリド
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Y 収率
【0409】
一般的手順A
カルボン酸(1当量)のDMF溶液(0.9M)にHATU(1.2当量)を加え、その溶液を0℃で1時間攪拌した。アミン(1.1当量)およびDIPEA(2当量)を加え、RMを0℃で2時間攪拌した。RMを反応停止し(水)、その混合物を抽出した(EtOAc)。合わせた有機層を洗浄し(ブライン)、乾燥し(Na2SO4)、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0410】
一般的手順B
アミド(1当量)のTHF溶液(1M)に、0℃でLiAlH4(10当量)を加え、N2下で20分、攪拌した。その混合物を、N2下、70℃で1時間攪拌した。RMを0℃で反応停止した(H2OおよびNaOH水溶液)。その混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮することで所望の生成物を得た。
【0411】
一般的手順C
スルファモイルクロリド(1当量)およびアミン(1当量)のTHF溶液(0.2M)に、N2下、0℃で、NaOH(1当量)またはNaH(4当量)を加えた。その混合物を0℃で2時間攪拌した。その反応をN2気流下で蒸発させた。
【0412】
一般的手順D
窒素下で-30℃まで冷却したクロロスルホニルイソシアネート(1当量)のイソプロピルエーテル溶液(0.4M)に、イソプロピルエーテル中のアミン(1当量)(0.4M)を加えた。RMを-30℃で0.5~2時間攪拌し、LC-MSによって(メチルスルホネートの出現について)監視した。生成物をイソプロピルエーテル溶液(0.2M)として直接使用した。
【0413】
一般的手順E
アミン(1当量)のTHF溶液(0.5M)に、DIPEA(2当量)およびtert-ブチル N-クロロスルホニルカルバメート(INT-C)(1.5当量)を、0℃で加えた。その混合物を0℃で1時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮した。残渣を希釈した(H2O)。その混合物を抽出した(EtOAc×3)。合わせた有機層を洗浄し(ブライン)、乾燥し(Na2SO4)、減圧濃縮した。
【0414】
一般的手順F
EtOAc中のtert-ブチル スルファモイル カルバメート(1当量)と4M HClとの混合物を(0.2M)を25℃で1時間攪拌した。RMを濾過し、濾過ケーキを25℃でH2Oに溶解した。Na2CO3の水溶液を、多少の固形物が沈殿してpHが8に達するまで、25℃で滴下した。10分後にTHFを加えて沈殿物を溶解させた。その溶液を無水Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮することで、標記化合物を遊離塩基として得た。
【0415】
一般的手順G
スルファモイルアミン(1当量)およびイソシアネート(1当量)のTHF溶液(0.23M)に、0℃で、NaOH(1当量)を加えた。その混合物を0℃で12時間攪拌した。
【0416】
一般的手順H
アミン(1当量)のジオキサン溶液(0.1M)にトリホスゲン(1.1当量)および塩基を加えた。RMを完了まで40℃で1時間攪拌した。溶媒を減圧除去することで所望の生成物を得た。
【0417】
中間体の合成
中間体A. {[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル]アミノ}スルホニルクロリド
【0418】
1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-アミンの合成については、特許出願WO9832733A1を直接的な参考文献として使用しうる。クロロスルホニルイソシアネート(185μL、2.13mmol)のイソプロピルエーテル(20mL)溶液に、-15℃で、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-アミン(369mg、2.13mmol)を加えた。その混合物を-15℃で0.5時間攪拌した。反応生成物を次の工程に直接使用した。MeOHでのLC-MS(ESI):m/z:[MH]=311。
【0419】
中間体B. 4-イソシアナト-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン
【0420】
1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-アミンの合成については特許出願WO9832733A1を参照されたい。窒素下で0℃まで冷却したDCM(5mL)中のトリホスゲン(1.71g、5.77mmol)の混合物に、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-アミン(1.00g、5.77mmol)およびトリエチルアミン(1.69mL、12.12mmol)を少しずつ加えた。その混合物をrtで5時間攪拌した。その混合物を減圧下で濃縮することで、標記化合物を白色固形物として得た。MeOHでのLC-MS(ESI):m/z:[M+MeOH+H]=232
【0421】
中間体C. tert-ブチル N-(クロロスルホニル)カルバメート
【0422】
0℃に冷却したN-(オキソメチレン)スルファモイルクロリド(307μL、3.53mmol)のDCM(6mL)溶液に、tert-ブタノール(338μL、3.53mmol)のDCM(6mL)溶液を加えた。その混合物を0℃で2時間攪拌した。その溶液を次の工程に直接使用した。
【0423】
中間体D. 2-イソシアナトトリシクロ[6.2.0.03,6]デカ-1,3(6),7-トリエン
標記化合物を特許出願WO2019023147A1に記載されているように調製し、直ちに使用した。Y=98%。MeOHでのLCMS(ESI):m/z:[M+MeOH+H]=204.0。
【0424】
中間体EおよびF.
【0425】
工程1. 1-エチル 3-メチル 2-(2,3-ジヒドロキシプロピル)プロパンジオエート
1,3-ジエチル 2-(プロパ-2-エン-1-イル)プロパンジオエート(52.5mL、265mmol)のギ酸(239mL)溶液に、0℃で、H2O2(27.3mL、28%溶液、265mmol)を加えた。RMを、N2下、0℃で0.5時間、次に25℃で23.5時間、攪拌した。H2O2がすべて消費されたことをヨウ素デンプン試験紙が示すまで飽和Na2SO3を加えることにより、RM混合物を反応停止した。RMを抽出した(DCM、100mL×3)。合わせた有機相を洗浄し(ブライン、50mL)、乾燥し(Na2SO4)、減圧濃縮することで、標記化合物を無色の油状物として得た。Y=89%。
【0426】
工程2. 2-(2,3-ジヒドロキシプロピル)プロパンジアミド
1-エチル 3-メチル 2-(2,3-ジヒドロキシプロピル)プロパンジオエート(54g、231mmol)のEtOH(500mL)溶液にNH3(ガス)を0℃でバブリングした。RMを0℃で1時間攪拌し、濾過することで、標記化合物を白色固形物として得た。Y=86%。
【0427】
工程3. 3-ブロモ-5-(ヒドロキシメチル)-2-オキソオキソラン-3-カルボキサミド
2-(2,3-ジヒドロキシプロピル)プロパンジアミド(25g、142mmol)のAcOH(500mL)溶液を40℃で2時間攪拌した。Br2(7.32mL、41.9mmol)を0℃で加え、25℃で26時間攪拌した。混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮することで得た標記化合物を、それ以上精製することなく使用した。
【0428】
工程4. 4-ヒドロキシオキソラン-2,2-ジカルボキサミド
NH3の溶液を、3-ブロモ-5-(ヒドロキシメチル)-2-オキソ-テトラヒドロフラン-3-カルボキサミド(33g、139mmol)のEtOH(400mL)溶液に、0℃でバブリングした。RMを50℃で6時間攪拌した。RMを濾過し、濾過ケーキを減圧乾燥することで標記化合物を白色固形物として得て(Y=79%)、それを、次の工程に直接使用した。
【0429】
工程5. 4-ヒドロキシオキソラン-2,2-ジカルボン酸
4-ヒドロキシオキソラン-2,2-ジカルボキサミド(10g、57.4mmol)と6M HCl(105mL)との混合物を、N2下、50℃で、4時間攪拌した。RMを減圧濃縮することで標記化合物を黄色固形物として得て、それを次の工程に直接使用した。
【0430】
工程6. 4-ヒドロキシオキソラン-2-カルボン酸
H2O(12mL)中の4-ヒドロキシオキソラン-2,2-ジカルボン酸(2.0g、11.36mmol)を、封管中で、マイクロ波加熱を使って、150℃で1.5時間加熱した。同じスケールでさらに4つのバッチを並行して処理した。反応混合物を合わせ、減圧濃縮することで標記化合物を白色固形物として得て、それを、それ以上精製することなく使用した。
【0431】
工程7. 4-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]オキソラン-2-カルボン酸
0℃に冷却した4-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-カルボン酸(10g、75.7mmol)のTHF(300mL)溶液に、TBSCl(18.6mL、151mmol)およびイミダゾール(25.8g、378mmol)を加えた。RMを25℃で3時間攪拌した。RMを減圧濃縮した。残渣を希釈し(水、300mL)、その結果得られた混合物を抽出した(EtOAc、100mL×3)。合わせた有機層を洗浄し(ブライン、100mL)、乾燥し(Na2SO4)、減圧濃縮することで標記化合物を褐色油状物として得て、それを、それ以上精製することなく使用した。
【0432】
工程8. 4-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキソラン-2-カルボキサミド
4-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]オキソラン-2-カルボン酸(6.3g、25.6mmol)のDMF(60mL)溶液に、0℃でHATU(11.7g、30.7mmol)を加え、1時間攪拌した後、DIPEA(8.91mL、51.1mmol)および1-メチルピラゾール-4-アミン(2.73g、28.1mmol)を加えた。その混合物を0℃で1時間攪拌した。反応混合物を希釈し(水、100mL)、その結果得られた混合物を抽出した(EtOAc、100mL×3)。合わせた有機層を洗浄し(ブライン、100mL)、乾燥し(Na2SO4)、減圧濃縮することで褐色油状物を得た。それをFCC(SiO2、石油エーテル中の0-50%EtOAc)で精製することで標記化合物を黄色ゴム質として得た(Y=6%)。
(注:二組のシグナル)。
【0433】
工程9. syn-N-[[4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-1-メチル-ピラゾール-4-アミンおよびanti-N-[[4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-1-メチル-ピラゾール-4-アミン
4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ-N-(1-メチルピラゾール-4-イル)テトラヒドロフラン-2-カルボキサミド(400mg、1.23mmol)と1M BH3.THF(8.0mL、8.0mmol)との混合物を0℃で0.5時間攪拌した。RMを80℃に1時間加熱した。RMを0℃で反応停止し(MeOH、3mL)、減圧濃縮した。分取HPLC(カラム:Phenomenex Gemini-NX C18、3μm、75×30mm;移動相:[水(0.04%NH3H2O+10mM NH4HCO3)-ACN];B:30-60%、10分)により、syn-N-[[4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-1-メチル-ピラゾール-4-アミン(Y=21%)およびanti-N-[[4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-1-メチル-ピラゾール-4-アミン(Y=18%)を白色固形物として得た。
【0434】
syn-N-[[4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-1-メチル-ピラゾール-4-アミン
【0435】
anti-N-[[4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-1-メチル-ピラゾール-4-アミン
【0436】
中間体G. [({トリシクロ[6.2.0.03,6]デカ-1,3(6),7-トリエン-2-イル}カルバモイル)アミノ]-スルホニルクロリド
【0437】
トリシクロ[6.2.0.03,6]デカ-1(8),2,6-トリエン-2-アミンを使って一般的手順Dに従うことで標記化合物を白色固形物として得て(Y=63%)、それを直ちに使用した。LC-MS(ESI):m/z:[M+MeOH-Cl]=283.2。
【0438】
実施例1(化合物1). ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[(オキソラン-2-イル)メチル]スルファモイル]アザニド
【0439】
工程1. N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキソラン-2-カルボキサミド
オキソラン-2-カルボン酸および1-メチル-1H-ピラゾール-4-アミンを使って一般的手順Aに従った。FCC(SiO2、石油エーテル中の50-100%EtOAc)により、標記化合物を黄色油状物として得た。
【0440】
工程2. 1-メチル-N-[(オキソラン-2-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-アミン
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキソラン-2-カルボキサミドを使って一般的手順Bに従うことで、標記化合物を黄色ガム質として得た(Y=79%)。
【0441】
工程3. ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[(オキソラン-2-イル)メチル]スルファモイル]アザニド
1-メチル-N-(テトラヒドロフラン-2-イルメチル)ピラゾール-4-アミン、{[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル]アミノ}スルホニルクロリド(中間体A)およびNaHを使って、一般的手順Cに従った。分取HPLC(カラム:Agela DuraShell C18、10μm、250×50mm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-can];B:2-35%、23分)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=5%。
【0442】
実施例2(化合物1A). ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2S)-オキソラン-2-イル]メチル})スルファモイル]アザニド
【0443】
工程1. (2S)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキソラン-2-カルボキサミド
(2S)-テトラヒドロフラン-2-カルボン酸および1-メチルピラゾール-4-アミンを使って一般的手順Aに従った。分取HPLC(カラム:Phenomenex Luna C18、10μm、250×100mm;移動相:[水(0.1%TFA)-ACN];B:0-14%、40分)により、標記化合物を褐色ゴム質として得た。Y=74%。
【0444】
工程2. 1-メチル-N-{[(2S)-オキソラン-2-イル]メチル}-1H-ピラゾール-4-アミン
(2S)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキソラン-2-カルボキサミドを使って一般的手順Bに従うことで標記化合物を、それ以上精製することなく使用した。Y=55%。
【0445】
工程3. tert-ブチル N-[(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2S)-オキソラン-2-イル]メチル})スルファモイル]カルバメート
1-メチル-N-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]ピラゾール-4-アミンを使って一般的手順Eに従った。FCC(SiO2、石油エーテル中の0-50%EtOAc)により、標記化合物を無色のゴム質として得た。Y=76%。
【0446】
工程4. N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-N-{[(2S)-オキソラン-2-イル]メチル}アミノ-スルホンアミド
N-[(1-メチルピラゾール-4-イル)-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]スルファモイル]カルバメートを使って一般的手順Fに従うことで、標記化合物を無色のゴム質として得た。Y=85%。
【0447】
工程5. ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2S)-オキソラン-2-イル]メチル})スルファモイル]アザニド
1-メチル-4-[スルファモイル-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]アミノ]ピラゾール(1.2g、4.61mmol)および4-イソシアナト-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン(919mg、4.61mmol)のTHF(20mL)溶液に、0℃で、NaOH(184mg、4.61mmol)を加えた。その混合物を0℃で12時間攪拌した。反応混合物を濾過することで透明な濾液を得た。MTBE(40mL)を加え、その結果生じた固形物を濾過によって収集し、水から凍結乾燥することで、標記化合物を白色固形物として得た。Y=66%。
【0448】
実施例3(化合物3A). ナトリウム[(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2S)-オキソラン-2-イル]メチル})スルファモイル]-({トリシクロ[6.2.0.03,6]デカ-1,3(6),7-トリエン-2-イル}カルバモイル)アザニド
0℃の1-メチル-4-[スルファモイル-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]アミノ]-ピラゾール(85mg、286μmol)のTHF(1mL)溶液に、NaOH(45.8mg、1.15mmol)を加えた。15分後に、10-イソシアナトトリシクロデカ-(6),7(9),8(10)-トリエン(中間体D)(49.0mg、286μmol)を加え、RMを0℃で1時間攪拌した。反応を減圧濃縮した。分取HPLC(カラム:Waters Xbridge BEH C18、10μm、100×30mm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-ACN];B:12-42%、8分)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=24%。
【0449】
実施例4(化合物1B). ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2R)-オキソラン-2-イル]メチル})スルファモイル]アザニド
【0450】
工程1. (2R)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキソラン-2-カルボキサミド
(2R)-オキソラン-2-カルボン酸(150g、1.29mol)および1-メチル-1H-ピラゾール-4-アミニウムクロリド(190g、1.42mol)のEtOAc(900mL)溶液に、0℃で、DIPEA(501g、3.88mol)およびT3P(EtOAc中の50%溶液、1.29mol)を滴下した。RMを15~20℃で12時間攪拌した。RMを濾過し、濾液を減圧濃縮した。FCC(SiO2、石油エーテル中の20-50%EtOAc)により、標記化合物を黄色固形物として得た(Y=78%)。
【0451】
工程2. 1-メチル-N-{[(2R)-オキソラン-2-イル]メチル}-1H-ピラゾール-4-アミン
(2R)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキソラン-2-カルボキサミド(75.0g、384mmol)のTHF(450mL)溶液に、N2下、0℃で、LiAlH4(72.9g、1.92mol)を加えた。その混合物を、N2下、80℃で、1時間攪拌した。RMを0℃に冷却し、その溶液に、0~5℃で、水(75mL)、NaOH(75mL、15重量%、水中)、および水(225mL)を順に、滴下した。その懸濁液を濾過し、濾過ケーキを洗浄した(THF、150mL×4)。濾液を減圧濃縮することで標記化合物を油状物として得た(Y=77%)。
【0452】
工程3. tert-ブチル N-[(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2R)-オキソラン-2-イル]メチル})スルファモイル]カルバメート
0℃の1-メチル-N-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]ピラゾール-4-アミン(115g、635mmol)のTHF(690mL)溶液に、THF(880mL)中のDIPEA(221mL、1.27mol)およびtert-ブチル N-(クロロスルホニル)カルバメート(205g、952mmol)を加え、RMを0℃で1時間攪拌した。RMを希釈し(水、1.5L)、抽出した(EtOAc、1L×2)。合わせた有機相を水(1.0L)およびブライン(1.0L)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮した。FCC(SiO2、石油エーテル中の10-30%EtOAc)により、粗生成物を得た。20℃のMTBE(600mL)で2時間摩砕した後、濾過し、45℃で4時間減圧乾燥することにより、標記化合物を白色固形物として得た。Y=76%。
【0453】
工程4. N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-N-{[(2R)-オキソラン-2-イル]メチル}アミノ-スルホンアミド
N-[(1-メチルピラゾール-4-イル)-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]スルファモイル]-カルバメート(205g、569mmol)をEtOAc中の4M HCl(1200mL)に溶解し、15~20℃で12時間攪拌した。RMを減圧濃縮し、残渣を、20℃において30分、EtOAc(500mL)で摩砕した。固形物を濾過によって収集した。固形物を水(600mL)に溶解し、飽和Na2CO3水溶液でpHを8に調節した。その溶液を抽出した(EtOAc、500mL×2)。合わせた有機相を水(500mL)およびブライン(500mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮することで、標記化合物を白色固形物として得た。Y=80%。
【0454】
工程5. ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2R)-オキソラン-2-イル]メチル})スルファモイル]アザニド
0℃の1-メチル-4-[スルファモイル-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]アミノ]ピラゾール(59.5g、229mmol)および4-イソシアナト-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン(45.5g、229mmol)のTHF(900mL)溶液に、NaOH(9.14g、229mmol)を加え、RMを15℃で12時間攪拌した。RMを濾過した。MTBE(5.4L)を濾液に滴下し、固形物を濾過によって収集し、MTBE(500mL×2)で洗浄し、減圧乾燥し、水(1L)から凍結乾燥することで、標記化合物をオフホワイトの固形物として得た。Y=73%。
【0455】
実施例5(化合物3B). ナトリウム[(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2R)-オキソラン-2-イル]メチル})スルファモイル]-({トリシクロ[6.2.0.03,6]デカ-1,3(6),7-トリエン-2-イル}カルバモイル)アザニド
1-メチル-4-[スルファモイル-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]アミノ]ピラゾールおよび10-イソシアナトトリシクロデカ-(6),7(9),8(10)-トリエンを使って一般的手順Gに従った。分取HPLC(カラム:Waters Xbridge BEH C18、10μm、100×30mm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-ACN];B:12-42%、8分)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=14%。
【0456】
実施例6(化合物2A). ナトリウム((1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル)(N-((cis-4-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルファモイル)アミド
【0457】
工程1. 1-[[(2S,4S)-4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル-(1-メチルピラゾール-4-イル)スルファモイル]-3-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)尿素、ナトリウム塩
syn-N-[[(2S,4S)-4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-1-メチル-ピラゾール-4-アミン(60mg、192.62μmol)のTHF(1mL)溶液に、0℃で15分、NaH(鉱油中60%、46.2mg、1.16mmol)を加え、次に、N-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イルカルバモイル)スルファモイルクロリド(1.38mL、イソプロピルエーテル中0.14M、193μmol)を加えた。RMを0℃で30分攪拌し、減圧濃縮することで、標記化合物を白色固形物として得た。LCMS(ESI):m/z:[M+H]=590.3。
【0458】
工程2. 1-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-3-[[(2S,4S)-4-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル-(1-メチルピラゾール-4-イル)スルファモイル]尿素
25℃の1-[[(2S,4S)-4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル-(1-メチルピラゾール-4-イル)スルファモイル]-3-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)尿素(50mg、81.6μmol)のTHF(1mL)溶液に、フッ化水素ピリジン(0.2mL、2.22mmol)を加えた。RMを0℃で30分攪拌し、NaH(鉱油中60%、444mg、11.1mmol)で処理した。RMを0℃で10分攪拌し、減圧濃縮した。分取HPLC(カラム:Waters Xbridge BEH C18、10μm、100×30mm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-ACN];B:5-35%、8分)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=4%。
【0459】
実施例7(化合物2B). 1-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-3-[[(2R,4S)-4-ヒドロキシテトラヒドロ-フラン-2-イル]メチル-(1-メチルピラゾール-4-イル)スルファモイル]尿素、ナトリウム塩
【0460】
工程1. 1-[[(2R,4S)-4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル-(1-メチルピラゾール-4-イル)スルファモイル]-3-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)尿素、ナトリウム塩
0℃のanti-N-[[(2R,4S)-4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-1-メチル-ピラゾール-4-アミン(60mg、192.62μmol)のTHF(1mL)溶液に、NaH(鉱油中60%、46.2mg、1.16mmol)を加え、RMを15分攪拌した。N-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イルカルバモイル)スルファモイルクロリド(0.14M、イソプロピルエーテル中1.38mL、193μmol)を0℃で加え、RMを30分攪拌した。RMを減圧濃縮することで、標記化合物を白色固形物として得て、それを、それ以上精製することなく使用した。LCMS(ESI):m/z:[M+H]=590.3。
【0461】
工程2. 1-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-3-[[(2R,4S)-4-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル-(1-メチルピラゾール-4-イル)スルファモイル]尿素
25℃の1-[[(2R,4S)-4-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル-(1-メチルピラゾール-4-イル)スルファモイル]-3-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)尿素(60mg、97.9μmol)のTHF(1.5mL)溶液にフッ化水素ピリジン(0.3mL、3.33mmol)を加えた。25℃で30分攪拌した後、反応を0℃に冷却し、NaH(133mg、鉱油中60%、3.33mmol)で処理した。RMを0℃で10分攪拌した。反応混合物を減圧濃縮した。分取HPLC(カラム:Waters Xbridge BEH C18、10μm、100×30mm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-ACN];B:5-35%、8分)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=4%。
【0462】
実施例8(化合物4). ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[(オキソラン-2-イル)メチル]スルファモイル]アザニド
【0463】
工程1. N-(1-メチルピラゾール-4-イル)テトラヒドロフラン-3-カルボキサミド
テトラヒドロフラン-3-カルボン酸および1-メチルピラゾール-4-アミンを使って一般的手順Aに従った。FCC(SiO2、EtOAc中の5-50%MeOH)により、標記化合物を白色固形物として得た(Y=59%)。
【0464】
工程2. N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキソラン-2-カルボキサミド
N-(1-メチルピラゾール-4-イル)テトラヒドロフラン-3-カルボキサミドを使って一般的手順Bに従うことで標記化合物を無色の油状物として得て(Y=79%)、それを、それ以上精製することなく次の工程に直接使用した。
【0465】
工程3. ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[(オキソラン-2-イル)メチル]スルファモイル]アザニド
1-メチル-N-(テトラヒドロフラン-3-イルメチル)ピラゾール-4-アミン、{[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル]アミノ}スルホニルクロリド(中間体A)およびNaHを使って一般的手順Cに従った。分取HPLC(カラム:Waters Xbridge BEH C18、5μm、100×25mm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-ACN];B:10-40%、10分)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=16%。
【0466】
実施例9(化合物6)
ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[(オキサン-2-イル)メチル]スルファモイル]アザニド
【0467】
工程1. N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキサン-2-カルボキサミド
オキサン-2-カルボン酸および1-メチルピラゾール-4-アミンを使って一般的手順Aに従った。FCC(SiO2、石油エーテル中の10-100%EtOAc)により、標記化合物を黄色固形物として得た(Y=68%)。
【0468】
工程2. 1-メチル-N-[(オキサン-2-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-アミン
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキサン-2-カルボキサミドを使って一般的手順Bに従うことで標記化合物を無色の油状物として得て(Y=82%)、それを、それ以上精製することなく次の工程に直接使用した。
【0469】
工程3. ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[(オキサン-2-イル)メチル]スルファモイル]アザニド
1-メチル-N-[(オキサン-2-イル)メチル]-1H-ピラゾール-4-アミン、{[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル]アミノ}スルホニルクロリド(中間体A)およびNaHを使って一般的手順Cに従った。分取HPLC(カラム:Phenomenex Gemini-NX C18、3μm、75×30mm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-ACN];B:20-40%、8分)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=8%。
【0470】
実施例10(化合物5). ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[2-(オキソラン-2-イル)エチル]スルファモイル]アザニド
【0471】
工程1. 2-(オキソラン-2-イル)酢酸
0℃のエチル 2-(オキソラン-2-イル)アセテート(500mg、3.16mmol)のH2O(2.5mL)およびMeOH(2.5mL)溶液に、LiOH.H2O(133mg、3.16mmol)を加え、RMを0℃で30分攪拌した。RMをpHが5に達するまで1M HClで滴下処理した。その溶液を抽出した(EtOAc、10mL×5)。合わせた有機層を減圧濃縮することで得た標記化合物を、それ以上精製することなく使用した。
【0472】
工程2. N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-(オキソラン-2-イル)アセトアミド
2-(オキソラン-2-イル)酢酸および1-メチルピラゾール-4-アミンを使って一般的手順Aに従った。FCC(SiO2、石油エーテル中の0-100%EtOAc)により標記化合物を得た。
【0473】
工程3. 1-メチル-N-[2-(オキソラン-2-イル)エチル]-1H-ピラゾール-4-アミン
N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-(オキソラン-2-イル)アセトアミドを使って一般的手順Bに従うことで標記化合物をゴム質として得て、それを、それ以上精製することなく次の工程に直接使用した。
【0474】
工程4. ナトリウム[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル][(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[2-(オキソラン-2-イル)エチル]スルファモイル]アザニド
1-メチル-N-[2-(オキソラン-2-イル)エチル]-1H-ピラゾール-4-アミン、{[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル]アミノ}スルホニルクロリド(中間体A)およびNaHを使って一般的手順Cに従った。分取HPLC(カラム:Waters Xbridge Prep OBD C18、10μm、40×10mm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-ACN];B:20-40%、8分)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=10%。
【0475】
実施例11(化合物7B). ナトリウム[(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2R)-オキサン-2-イル]メチル})スルファモイル]-({トリシクロ[6.2.0.03,6]デカ-1,3(6),7-トリエン-2-イル}カルバモイル)アザニド)
【0476】
工程1. (2R)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキサン-2-カルボキサミド
(2R)-オキサン-2-カルボン酸および1-メチルピラゾール-4-アミンを使って一般的手順Aに従った。FCC(SiO2、EtOAc中の5-50%MeOH)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=83%。
【0477】
工程2. 1-メチル-N-{[(2R)-オキサン-2-イル]メチル}-1H-ピラゾール-4-アミン
(2R)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキサン-2-カルボキサミドを使って一般的手順Bに従うことで標記化合物を無色の油状物として得て(Y=89%)、それを、それ以上精製することなく次の工程に使用した。
【0478】
工程3. ナトリウム[(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2R)-オキサン-2-イル]メチル})スルファモイル]-({トリシクロ[6.2.0.03,6]デカ-1,3(6),7-トリエン-2-イル}カルバモイル)アザニド
メチル-N-{[(2R)-オキサン-2-イル]メチル}-1H-ピラゾール-4-アミン、[({トリシクロ[6.2.0.03,6]-デカ-1,3(6),7-トリエン-2-イル}カルバモイル)アミノ]スルホニルクロリド(中間体G)およびNaHを使って一般的手順Cに従った。分取HPLC(カラム:Waters Xbridge Prep OBD C18、10μm、150×40mm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-ACN];B:15-45%、8分)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=12%。
【0479】
実施例12(化合物7A). ナトリウム[(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2S)-オキサン-2-イル]メチル})スルファモイル]-({トリシクロ[6.2.0.03,6]デカ-1,3(6),7-トリエン-2-イル}カルバモイル)アザニド
【0480】
工程1. (2S)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキサン-2-カルボキサミド
(2S)-オキサン-2-カルボン酸および1-メチルピラゾール-4-アミンを使って一般的手順Aに従った。FCC(SiO2、EtOAc中の5-50%MeOH)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=69%。
【0481】
工程2. 1-メチル-N-{[(2S)-オキサン-2-イル]メチル}-1H-ピラゾール-4-アミン
(2S)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)オキサン-2-カルボキサミドを使って一般的手順Bに従うことで標記化合物を油状物として得て(Y=65%)、それを、それ以上精製することなく次の工程に使用した。
【0482】
工程3. ナトリウム[(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)({[(2S)-オキサン-2-イル]メチル})スルファモイル]-({トリシクロ[6.2.0.03,6]デカ-1,3(6),7-トリエン-2-イル}カルバモイル)アザニド
メチル-N-{[(2S)-オキサン-2-イル]メチル}-1H-ピラゾール-4-アミン、[({トリシクロ[6.2.0.03,6]-デカ-1,3(6),7-トリエン-2-イル}カルバモイル)アミノ]スルホニルクロリド(中間体G)およびNaHを使って一般的手順Cに従った。
【0483】
分取HPLC(カラム:Waters Xbridge Prep OBD C18、5μm、100×25mm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-ACN];B:10-50%、10分)により、標記化合物を白色固形物として得た。Y=21%。
【0484】
実施例13(化合物8A). 1-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-3-[1H-ピラゾール-4-イル-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]スルファモイル]尿素
【0485】
工程1. tert-ブチル 4-ニトロピラゾール-1-カルボキシレート
4-ニトロ-1H-ピラゾール(15g、132.7mmol)のTHF(150mL)溶液に、0℃で、ジ-tert-ブチル ジカーボネート(33.5mL、145.9mmol)、DIPEA(23.1mL、132.7mmol)およびDMAP(1.62g、13.3mmol)を加えた。その混合物を25℃で2時間攪拌した。水(100mL)を加え、その結果得られた混合物をEtOAc(100mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、石油エーテル中の20-25%)で精製することで、標記化合物を白色固形物として得た。Y=50%。
【0486】
工程2. tert-ブチル 4-アミノピラゾール-1-カルボキシレート
tert-ブチル 4-ニトロピラゾール-1-カルボキシレート(5.0g、23.45mmol)のMeOH(100mL)溶液に、N2雰囲気下で、10%Pd炭素(水中に50%wt.、1.0g)を加えた。その懸濁液を脱気し、H2で3回パージした。混合物を、H2(15psi)下、25℃で、1時間攪拌した。反応混合物をセライトで濾過し、濾液を減圧下で濃縮することにより、標記化合物を白色固形物として得た。Y=93%。
【0487】
工程3. tert-ブチル 4-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-カルボニル]アミノ]ピラゾール-1-カルボキシレート
(2S)-テトラヒドロフラン-2-カルボン酸(951mg、8.19mmol)のDMF(30mL)溶液に、tert-ブチル 4-アミノピラゾール-1-カルボキシレート(1.5g、8.19mmol)、DIPEA(5.70mL、32.75mmol)およびT3P(EtOAc中の50%溶液、5.73g、9.01mmol)を加えた。RMを25℃で2時間攪拌した。水(20mL)を加え、生成物を酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル中の10-30%EtOAc)で精製することで、標記化合物を固形物として得た。Y=91%。
【0488】
工程4. tert-ブチル 4-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチルアミノ]ピラゾール-1-カルボキシレート
0℃のtert-ブチル 4-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-カルボニル]アミノ]ピラゾール-1-カルボキシレート(1.8g、6.40mmol)のTHF(100mL)溶液に、10Mボラン・ジメチルスルフィド錯体(2.56ml、25.6mmol)を加えた。RMを80℃で3時間攪拌した。RMを0℃に冷却し、MeOH(50mL)に滴下した。その混合物を減圧下で濃縮することで標記化合物を黄色ゴム質として得て、それを精製することなく使用した。LCMS(ESI):m/z:[M+H]=268.2。
【0489】
工程5. 1-(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-3-[1H-ピラゾール-4-イル-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]スルファモイル]尿素
tert-ブチル 4-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-イル]メチルアミノ]ピラゾール-1-カルボキシレート、{[(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)カルバモイル]アミノ}スルホニルクロリド(中間体A)およびNaHを使って一般的手順Cに従った。分取HPLC(カラム:Phenomenex Titank C18 Bulk 250×70mm 10μm;移動相:[水(10mM NH4HCO3)-ACN];B:15-45%、20分)により、0.5当量の標記化合物のナトリウム塩を白色固形物として得た。Y=12%。
【0490】
本開示の化合物のインビトロプロファイリング
本明細書記載のアッセイを利用して、本開示の化合物の生物活性を決定した。
【0491】
PBMC IC50決定アッセイ。 本開示の化合物を、末梢血単核細胞(PBMC)におけるNLRP3活性化時のIL-1β放出に対するそれらの阻害活性について試験した。
【0492】
プロトコールA。 PBMCを、Histopaque-1077(Sigma、カタログ番号10771)での密度勾配遠心分離によって、バフィーコートから単離した。単離された細胞を96ウェルプレートのウェル中に播種し、リポ多糖(LPS)と共に3時間インキュベートした。培地交換後に、本開示の化合物を加え(1ウェルにつき1化合物)、細胞を30分インキュベートした。次に、細胞をATP(5mM)またはナイジェリシン(10μM)で1時間刺激し、さらなる分析のためにウェルから細胞培養培地を収集した。培地へのIL-1βの放出は、eBioscienceカタログ番号88-7261-88のIL-1β酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)Ready-SET-Go!を使用する培地中のIL-1βの定量的検出によって決定した。簡単に述べると、第1工程では、高親和性結合プレート(high affinity binding plate)(Corning Costar 9018またはNUNC Maxisorpカタログ番号44-2404)を、キットに含まれる特異的捕捉抗体(抗ヒトIL-1β、製品番号14-7018-68)を使って、4℃で終夜コーティングした。続いて、ブロッキング緩衝液を使ってプレートを室温(rt)で1時間ブロッキングし、緩衝液(0.05%Tween-20を含むPBS)で洗浄した後、タンパク質標準物質および培養培地と共にインキュベートした。室温で2時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、キットに含まれるビオチン化検出抗体(抗ヒトIL-1βビオチン、製品番号33-7110-68)と共に室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、HRP-ストレプトアビジンと共に室温で30分インキュベートし、再び洗浄した。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン-ペルオキシダーゼ(TMB)の添加後、呈色するまでシグナルを生成させ、2M H2SO4で反応を停止させた。マイクロプレート分光測光器(BioTek)を使用し、450nmでシグナルを検出した。IL-1β ELISAの検出範囲は2~150ng/mlであった。
【0493】
プロトコールB。 PBMCを、Histopaque-1077(Sigma、カタログ番号10771)での密度勾配遠心分離によって、バフィーコートから単離した。単離された細胞を96ウェルプレートのウェル中に播種し(280,000細胞/ウェル)、リポ多糖(LPS、1mg/mlストック溶液から1000倍希釈した1μg/ml)と共に3時間インキュベートした。本開示の化合物を加え(1ウェルにつき1化合物)、細胞を30分インキュベートした。次に、細胞をATP(最終濃度は100mMストック溶液から20倍希釈した5mM)で1時間刺激し、さらなる分析のためにウェルから細胞培養培地を収集した。培養培地へのIL-1βの放出は、HTRF(登録商標)、CisBioカタログ番号62HIL1BPEHを使用する培地中のIL-1βの定量的検出によって決定した。簡単に述べると、HTRF(登録商標)ドナーとHTRF(登録商標)アクセプターで標識された抗体が入っているアッセイプレートに、細胞培養上清を直接分注した。マイクロプレート分光測光器(BMG)を使って、655nmおよび620nmにおいてシグナルを検出した。IL-1β HTRF(登録商標)の検出範囲は39~6500pg/mlであった。
【0494】
IC50値の決定はGraph Pad Prismソフトウェアを使って行った。測定された本開示の化合物のIC50値を下記表Aに示す(「++++」は<0.1μMを意味し、「+++」は≧0.1かつ<1μMを意味し、「++」は≧1かつ<3μMを意味し、「+」は≧3かつ<10μMを意味する)。これらの結果は、本開示の化合物がインフラマソーム活性化時のIL-1β放出を阻害できることを示している。
【0495】
(表A)PBMCアッセイにおける活性
【0496】
P-gp MDCK-MDR1研究。 本開示の化合物が排出タンパク質P-糖タンパク質(P-gp)によって細胞から能動的に排出されるかどうかを評価するために、それらをMDCK-MDR1透過性アッセイにおいて試験した。
【0497】
プロトコール。 継代数6~30のMDCK-MDR1細胞を使用した。Millipore Multiscreenトランスウェルプレートに細胞を3.4×105細胞/cm2で播種した。細胞はDMEM中で培養し、3日目に培地を換えた。4日目にP-gp阻害研究を行った。細胞培養およびアッセイインキュベーションは、5%CO2雰囲気下、相対湿度95%、37℃で実行した。アッセイの日に、温めた(37℃の)トランスポート緩衝液(25mM HEPESおよび4.45mMグルコースを含有するpH7.4のハンクス平衡塩類溶液[HBSS])で頂端面と側底面の両方をすすぐことによって、単層を調製した。次に、頂端部コンパートメントと側底部コンパートメントの両方に試験化合物または陽性対照阻害剤(エラクリダル)を含有するトランスポート緩衝液と共に、細胞を37℃で30分インキュベートした。ドージング溶液は、ジゴキシンと、適宜、試験化合物とを、最終ジゴキシン濃度が5μM(最終DMSO濃度が1%v/v)になるように希釈することによって調製した。蛍光性の完全性マーカーであるルシファーイエローを、媒体または試験化合物含有トランスポート緩衝液中のレシーバー溶液に調製した。プレインキュベーション後に、頂端部コンパートメントと側底部コンパートメントの両方からトランスポート緩衝液を取り除き、適当なドージング溶液またはレシーバー溶液で置き換えた。
【0498】
B-A透過性の評価のために、トランスポート緩衝液を側底部コンパニオンプレートから取り除き、ドージング溶液で置き換えた。ルシファーイエローと、適宜、試験化合物とを含有する新鮮なトランスポート緩衝液(最終DMSO濃度が1%v/v)を頂端部コンパートメントインサートに加え、次にそれをコンパニオンプレートに入れた。90分のインキュベーション後に、頂端部コンパートメントインサートとコンパニオンプレートを分離し、コンパートメントから解析用試料を採取した。媒体対照(0μM)の他に7つの濃度の試験化合物(最大100μM)を評価した。各濃度につき三重に決定した。陽性対照阻害剤を並行して評価した。[3H]-ジゴキシンは、壊変毎分(dpm)を与える液体シンチレーション計数によって定量した。蛍光光度分析を使ってルシファーイエローの透過を監視することにより、実験全体を通した単層の完全性をチェックした。
【0499】
BCRPおよびP-gp Caco-2研究。 本開示の化合物が、排出タンパク質P-糖タンパク質(P-gp)または乳がん耐性タンパク質(BCRP)によって細胞から能動的に排出されるかどうかを評価するために、それらをCaco-2透過性アッセイにおいて試験した。
【0500】
プロトコール。 継代数40~60のCaco-2細胞を使用した。Millipore Multiscreenトランスウェルプレートに細胞を×105細胞/cm2で播種した。細胞はDMEM中で培養し、2日ごとまたは3日ごとに培地を換えた。18~22日目にBCRP阻害研究を行った。細胞培養およびアッセイインキュベーションは、5%CO2雰囲気下、相対湿度95%、37℃で実行した。アッセイの日に、温めた(37℃の)トランスポート緩衝液(25mM HEPESおよび4.45mMグルコースを含有するpH7.4のハンクス平衡塩類溶液[HBSS])で頂端面と側底面の両方をすすぐことによって、単層を調製した。次に、頂端部コンパートメントと側底部コンパートメントの両方に試験化合物または陽性対照阻害剤(ノボビオシン)を含有するトランスポート緩衝液と共に、細胞を37℃で30分インキュベートした。阻害研究のために、平衡化期間中は単層の両側に、P-gp阻害剤またはBCRP阻害剤を含めた。ドージング溶液は、エストロン3-硫酸と、適宜、試験化合物とを希釈して、最終エストロン3-硫酸濃度が1μM(最終DMSO濃度が1%v/v)になるように希釈することによって調製した。蛍光性の完全性マーカーであるルシファーイエローを、媒体または試験化合物含有トランスポート緩衝液中のレシーバー溶液に調製した。プレインキュベーション後に、頂端部コンパートメントと側底部コンパートメントの両方からトランスポート緩衝液を取り除き、適当なドージング溶液またはレシーバー溶液で置き換えた。B-A透過性の評価のために、トランスポート緩衝液を側底部コンパニオンプレートから取り除き、ドージング溶液で置き換えた。ルシファーイエローと、適宜、試験化合物とを含有する新鮮なトランスポート緩衝液(最終DMSO濃度が1%v/v)を頂端部コンパートメントインサートに加え、次にそれをコンパニオンプレートに入れた。90分のインキュベーション後に、頂端部コンパートメントインサートとコンパニオンプレートを分離し、コンパートメントから解析用試料を採取した。媒体対照(0μM)の他に7つの濃度の化合物(最大100μM)を評価した。各濃度につき三重に決定した。陽性対照阻害剤を並行して評価した。[3H]-エストロン3-硫酸は、壊変毎分(dpm)を与える液体シンチレーション計数によって定量した。蛍光光度分析を使ってルシファーイエローの透過を監視することにより、実験全体を通した単層の完全性をチェックした。プローブ基質の、補正された見かけのB-A透過性(Papp)は、最高濃度の陽性対照阻害剤(100%輸送体阻害を与える)の存在下で決定されたその平均受動Pappを差し引くことによって算出した。媒体ウェル(0μM試験化合物)からの平均補正B-A Pappを100%輸送活性と定義し、次にこの値を使って、他のすべての試験化合物濃度についてパーセンテージ対照輸送活性を算出した。パーセンテージ対照輸送活性を試験化合物濃度に対してプロットし、フィッティングを行って、IC50値を算出した。
【0501】
PAMPA研究。 受動経細胞透過を評価するために、本開示の化合物をPAMPA透過性アッセイにおいて試験した。
【0502】
プロトコール。 10mMのストック溶液をDMSOで希釈することによって、0.2mMのワーキング溶液を調製した。20μLのワーキング溶液を380μLのPBSで希釈することによって、10μMドナー溶液(5%DMSO)を調製した。150μLの10μMドナー溶液を、5μLの1%レシチン/ドデカン混合物でプレコートされたPVDF膜を持つドナープレートの各ウェルに加えた。複製物を調製した。PTFEアクセプタープレートの各ウェルに300μLのPBSを加えた。ドナープレートとアクセプタープレートを組み合わせ、300rpmで振とうしながら室温で4時間インキュベートした。T0試料の調製:20μLのドナー溶液を新しいウェルに移し、次に、T0試料として、250μLのPBS(DF:13.5)、130μLのACN(内部標準を含有するもの)を添加した。アクセプター試料の調製:プレートをインキュベータから取り出した。270μLの溶液を各アクセプターウェルに移し、アクセプター試料として、130μLのACN(内部標準を含有するもの)と混合した。ドナー試料の調製:20μLの溶液を各ドナーウェルから移し、ドナー試料として、250μLのPBS(DF:13.5)、130μLのACN(内部標準を含有するもの)と混合した。アクセプター試料およびドナー試料はすべてLC-MS/MSで解析した。透過率(Pe)を決定するために使用した等式は次のように示される:
VD=0.15mL; VA=0.30mL; 面積=0.28cm2; 時間=14400s;
“[薬物]アクセプター=(Aa/Ai×DF)アクセプター;
[薬物]ドナー=(Aa/Ai*DF)ドナー;
Aa/Ai:分析物と内部標準のピーク面積比;
DF:希釈倍率”。
【0503】
熱力学的溶解度研究。 本開示の化合物を平衡溶解度アッセイにおいて試験した。
【0504】
プロトコール。 適当量の試験化合物および対照化合物をWhatman Mini-UniPrepバイアルの下側チャンバに秤量した。それらに50mM pH7.4 リン酸緩衝液(450μL)を加えることで、過飽和懸濁液を得た。試料を少なくとも2分間ボルテックスした。Whatman Mini-UniPrepバイアルを、振とう機上、室温、800rpmで24時間振とうした。それらのバイアルを20分遠心分離した(例えば4000rpm)。試料に圧をかけ、HPLCシステムに注入するための濾液を調製し、濃度を標準曲線で算出した。表Bに、選択された本開示の化合物について、特性を示す。表に示される通り、本開示の化合物は、強化された力価、溶解度、膜透過性および輸送体による排出など、(例えば先行技術の化合物と比較して)改良された特性を示しうる。
【0505】
本開示の化合物の排出比(ER)値を下記表Bに示す(「****」は<3を意味し;「***」は3≧かつ<10を意味し;「**」は≧10かつ<30を意味し;「*」は≧30を意味する)。
【0506】
本開示の化合物のPAMPA透過性測定値を下記表Bに示す(「$$$$」は>10nmを意味し/「$$$」は≧3かつ<10nm/sを意味し;「$$」は≧1かつ<3nm/sを意味し;「$」は<1nm/sを意味する)。
【0507】
本発明の化合物の熱力学的安定性の測定値を下記表Bに示す(
は≧3かつ<10mg/mLを意味し;
は≧1かつ<3mg/mLを意味し;
は≧0.3および<1mg/mLを意味し;
は<0.3mg/mLを意味する)。
【0508】
(表B)
【0509】
等価物
本明細書では本開示の1つまたは複数の態様についてその詳細を説明している。本開示の実施または試験では、本明細書に記載するものと類似するか等価な任意の方法および材料を使用することができるが、ここでは好ましい方法および材料を説明する。本開示の他の特徴、目的および利点は、本明細書および特許請求の範囲から明白になるであろう。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、複数の指示対象を包含する。別段の定義がある場合を除き、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において言及する特許および刊行物はいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0510】
上記の説明は、例示のために提示されているに過ぎず、添付の特許請求の範囲による限定を除けば、本開示を、開示されている形態そのものに限定する意図はない。
【国際調査報告】