(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(54)【発明の名称】紫外光を遮断するコーティングされた医薬品包装
(51)【国際特許分類】
C03C 17/32 20060101AFI20230919BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20230919BHJP
A61J 1/00 20230101ALI20230919BHJP
【FI】
C03C17/32 Z
C03C17/34
A61J1/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514916
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 US2021049104
(87)【国際公開番号】W WO2022051645
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ファディーヴ,アンドレイ ゲナディエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】アンリ,ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ラキャリエール,ヴァレリー クロディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ピーナスキー,ジョン スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ロイ チョードゥリー シュレヤ
(72)【発明者】
【氏名】サイモントン,クリスティ リン
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ブライアン ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】セロン,ジャン-ジャック ベルナルド
【テーマコード(参考)】
4C047
4G059
【Fターム(参考)】
4C047AA02
4C047AA05
4C047AA27
4C047BB01
4C047BB35
4C047CC03
4C047GG02
4G059AA04
4G059AA18
4G059AC07
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4G059AC18
4G059FA07
4G059FA27
4G059GA01
4G059GA04
(57)【要約】
本明細書に開示される1つ以上の実施形態によれば、コーティングされた医薬品包装は、第1の表面と該第1の表面とは反対側の第2の表面とを備えたガラス容器を含むことができ、ここで、第1の表面はガラス容器の外面であり、コーティングされていない状態のガラス容器は、コーティングされた包装の単一の壁を通過する少なくとも50%のUVB及びUVCスペクトルにおける平均光透過率を有する。コーティングされた医薬品包装は、ガラス容器の第1の表面の少なくとも一部の上に位置づけられたコーティングをさらに含むことができ、ここで、コーティングされた医薬品包装は、コーティングされた包装の単一の壁を通過する50%未満のUVCスペクトルにおける平均光透過率を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた医薬品包装において、
第1の表面と前記第1の表面とは反対側の第2の表面とを備えたガラス容器であって、前記第1の表面が前記ガラス容器の外面であり、コーティングされていない状態の前記ガラス容器が、前記コーティングされた包装の単一の壁を通過する少なくとも50%のUVB及びUVCスペクトルにおける平均光透過率を有する、ガラス容器、及び
前記ガラス容器の前記第1の表面の少なくとも一部の上に位置づけられたコーティングであって、前記コーティングされた医薬品包装が、前記コーティングされた包装の単一の壁を通過する50%未満の前記UVCスペクトルにおける平均光透過率を有する、コーティング
を含み、
前記コーティングされた医薬品包装が、(i)400nmから450nmまでのすべての波長において、20%未満の光透過率を有するか、又は(ii)可視的に無色である、
コーティングされた医薬品包装。
【請求項2】
前記コーティングされた医薬品包装が、USP<660>着色ガラス容器についての分光透過(Spectral Transmission for Colored Glass Containers)の基準を満たす、請求項1に記載のコーティングされた医薬品包装。
【請求項3】
前記コーティングが、ポリマーと、銅、銀、又は鉄のうちの1つ以上とを含む、請求項1又は2に記載のコーティングされた医薬品包装。
【請求項4】
前記コーティングが還元剤をさらに含む、請求項3に記載のコーティングされた医薬品包装。
【請求項5】
前記コーティングが、
シラン及び銀、銅、又は鉄のうちの1つ以上、及び
ポリイミドを含むポリマー層
を含むカップリング剤層
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティングされた医薬品包装。
【請求項6】
前記コーティングが、
ポリイミド、
チタニア、アルミナ、又はジルコニアのうちの1つ以上、及び
銀、銅、又は鉄のうちの1つ以上
を含む混合層
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティングされた医薬品包装。
【請求項7】
前記コーティングが、少なくとも高屈折率層と低屈折率層とを含むBraggミラーを含み、前記高屈折率層が、前記低屈折率層の屈折率より少なくとも0.5大きい屈折率を有する、請求項1に記載のコーティングされた医薬品包装。
【請求項8】
前記コーティングが少なくとも高屈折率層と低屈折率層とを含むハイパスフィルタを含み、前記高屈折率層が前記低屈折率層の屈折率より少なくとも0.5大きい屈折率を有する、請求項1に記載のコーティングされた医薬品包装。
【請求項9】
前記コーティングが、
前記ガラス容器と接触し、かつポリイミドと、アルミナ、チタニア、又はジルコニアのうちの1つ以上とを含む、第1の層、及び
前記第1の層の上にあり、ポリイミドからなる第2の層
を含む、請求項1に記載のコーティングされた医薬品包装。
【請求項10】
前記コーティングが空洞を含み、前記コーティングの屈折率が前記空洞の屈折率より少なくとも0.5大きい、請求項1に記載のコーティングされた医薬品包装。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2020年9月4日出願の「Ultraviolet Light-Blocking Coated Pharmaceutical Packages」と題された米国仮特許出願第63/074,915号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、ガラス物品に関し、より詳細には、医薬品包装などのガラス物品のコーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に、ガラスは、気密性、光学的透明性、及び他の材料と比較して優れた化学的耐久性の理由から、医薬品の包装にとって好ましい材料として使用されてきた。一部の医薬組成物は、紫外光に敏感であり、紫外光に曝露されると分解を受けやすい可能性がある。UV光を少なくとも部分的に遮断する幾つかのガラス組成物が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのガラス組成物は、限定はしないが、ガラスの層間剥離及び/又は外面の摩擦係数に関して、特性が劣っている可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングされた医薬品包装は、第1の表面と該第1の表面とは反対側の第2の表面とを備えたガラス容器を含むことができ、ここで、第1の表面がガラス容器の外面であり、コーティングされていない状態のガラス容器は、コーティングされた包装の単一の壁を通過する少なくとも50%のUVB及びUVCスペクトルにおける平均光透過率を有する。コーティングされた医薬品包装は、ガラス容器の第1の表面の少なくとも一部の上に位置づけられたコーティングをさらに含むことができ、ここで、コーティングされた医薬品包装は、コーティングされた包装の単一の壁を通過する50%未満のUVCスペクトルにおける平均光透過率を有し、コーティングされた医薬品包装は、400nmから450nmまでのすべての波長において、20%未満の光透過率を有する。
【0006】
1つ以上の追加の実施形態によれば、コーティングされた医薬品包装は、第1の表面と該第1の表面とは反対側の第2の表面とを備えたガラス容器を含むことができ、ここで、第1の表面はガラス容器の外面であり、コーティングされていない状態のガラス容器は、コーティングされた包装の単一の壁を通過する少なくとも50%のUVB及びUVCスペクトルにおける平均光透過率を有する。コーティングされた医薬品包装は、ガラス容器の第1の表面の少なくとも一部の上に位置づけられたコーティングをさらに含むことができ、ここで、コーティングされた包装は、コーティングされた包装の単一の壁を通過する50%未満のUVCスペクトルにおける平均光透過率を有し、コーティングされた医薬品包装は可視的に無色である。
【0007】
ガラス物品をコーティングするために使用することができるコーティング、コーティングされたガラス物品、並びにその製造方法及び製造プロセスのさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0008】
前述の概要及び以下の詳細な説明はいずれも、さまざまな実施形態を説明しており、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図していることが理解されるべきである。添付の図面は、さまざまな実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載されるさまざまな実施形態を例証しており、その説明とともに、特許請求の範囲の主題の原理及び動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、コーティングを備えたガラス容器の概略的な断面図
【
図2】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、コーティングを備えた
図1のガラス容器の概略的な拡大断面図
【
図3】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、2つの表面間の摩擦係数を決定するための試験ジグの概略図
【
図4】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、本明細書のコーティングの走査電子顕微鏡画像
【
図5】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、本明細書のコーティングの走査電子顕微鏡画像
【
図6】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、金属酸化物層又は副層の光吸収スペクトル
【
図7】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、例となる実施形態の光透過スペクトル
【
図8】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、例となる実施形態の光透過データ
【
図9】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、例となる実施形態の光透過スペクトル
【
図10】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、例となる実施形態の光透過スペクトル
【
図11】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、例となる実施形態の摩擦係数データ
【
図12】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、例となる実施形態の光透過スペクトル
【
図13】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、例となる実施形態の光透過スペクトル
【
図14】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、例となる実施形態の光透過スペクトル
【発明を実施するための形態】
【0010】
琥珀色のガラス容器など、紫外線(本明細書では「UV」と記載されることもある)の透過を遮断するように設計された従来のガラス医薬品包装は、概して、UV光を遮断するように機能するガラス組成物を利用する。すなわち、ガラス自体がUV光を遮断する役割を果たしている。このようなガラスは、可視スペクトルで着色されているように見えるだけでなく、UV光を遮断する、琥珀色のガラス組成物の場合のような色素性の材料を含みうる。このような従来の包装は、UV透過に実質的に影響を与えるように機能する、ガラスの表面に施されたコーティングを含まない。
【0011】
1つ以上の実施形態によれば、UV光のすべて又は一部を遮断するコーティングを含むガラス容器(医薬品包装など)が本明細書に記載される。コーティングのない容器は、UV光を所望される程度まで実質的に遮断しない可能性がある。このようなコーティングにより、遮断することが望まれるUV光のすべては遮断しないガラス組成物を利用することが可能となる。幾つかの実施形態では、コーティングは、可視光の透過を可能にしつつ、概してUV光を遮断することができる。このような実施形態は、1つ以上の実施形態では、従来の琥珀色のガラス組成物とは対照的に改善された特性を有する「透明な」ガラスを利用することができ、及び/又はコーティングされたガラス容器はUV光を遮断する機能を有しつつ透明に見えうるため、有利でありうる。追加の実施形態では、コーティング(及び、コーティングされた物品)は、着色されているように見え、UV遮断機能をもたらすことができる。これらの実施形態は、着色ガラス容器ではなく「透明な」ガラス容器を利用することができるため、有益でありうる(着色ガラスはガラスが劣化しやすい可能性があり、及び/又は大量生産するのにより費用がかかる可能性がある)。例えば、単一の製造装置において着色ガラスと無着色ガラスを切り替えると、所望の着色ガラス組成物と無着色ガラス組成物との間を移行する際に多くのガラスが浪費されるため、費用がかかる可能性がある。コーティングは、ガラス本体の表面と比較して摩擦係数の低減などの望ましい特性をさらに提供することができ、発熱物質除去(医薬品充填に一般的に用いられる加熱プロセス)を通じて熱的に安定しうる。
【0012】
これより、その例が図面に概略的に示されている、コーティング、コーティングを有するガラス物品、及びその製造方法のさまざまな実施形態を詳細に参照する。このようなコーティングされたガラス物品は、医薬品包装を含むがこれに限定されない、さまざまな包装用途での使用に適したガラス容器でありうる。コーティングされたガラス物品は、本開示に記載されているコーティングされた医薬品包装を指しうるものと理解されたい。1つ以上の実施形態では、コーティング及び/又はコーティングされた医薬品包装は、容器への紫外光の透過を少なくとも部分的に遮断する。しかしながら、ガラス組成物及び/又はコーティングされていないガラス容器は、概して、コーティングされたガラス物品のUV遮断に感知できるほどに寄与するUV遮断特性を有していない可能性がある。これらの医薬品包装は、医薬組成物を含む場合と含まない場合がある。
【0013】
コーティング、コーティングを有するガラス物品、及びその製造方法のさまざまな実施形態が、添付の図面を特に参照して、本明細書でさらに詳細に説明される。本明細書に記載されるコーティングの実施形態はガラス容器の外面に適用されるが、記載されるコーティングは、非ガラス材料を含む多種多様な材料上、及びガラスディスプレイパネルなどを含むがこれらに限定されない容器以外の基板上のコーティングとして使用することができるものと理解されたい。
【0014】
概して、コーティングは、医薬品包装として使用することができる容器などのガラス物品の表面に施すことができる。コーティングは、UV光の遮断、摩擦係数の低下、及び耐損傷性の向上など、コーティングされたガラス物品に有利な特性を提供することができる。摩擦係数の低下は、ガラスへの摩擦による損傷を軽減することにより、ガラス物品に改善された強度及び耐久性を与えることができる。さらには、コーティングは、例として、例えば発熱物質除去、凍結乾燥、オートクレーブなどの医薬品の包装に利用される包装及び包装前の工程中に経験するような高温及び他の条件への曝露の後に、前述の改善された強度及び耐久性の特性を維持することができる。したがって、コーティング及びコーティングを有するガラス物品は、発熱物質除去に利用される条件などの条件において熱的に安定しうる。
【0015】
図1は、コーティングされたガラス物品の断面、具体的にはコーティングされたガラス容器100を概略的に示している。コーティングされたガラス容器100は、ガラス本体102及びコーティング120を含む。ガラス本体102は、外面108(すなわち、第1の表面)と内面110(すなわち、第2の表面)との間に延びるガラス容器壁104を有する。ガラス容器壁104の内面110は、コーティングされたガラス容器100の内容積106を画成する。コーティング120は、ガラス本体102の外面108の少なくとも一部に位置づけられる。本明細書で用いられる場合、コーティングは、外面108と該外面108の上に位置づけられたコーティングとの間に中間層が存在する場合など、外面108とは直接接触していないが、外面108「上に位置づけ」られうる。幾つかの実施形態では、コーティング120は、実質的にガラス本体102の外面108全体に位置づけることができる。幾つかの実施形態では、
図1に示されるように、コーティング120はガラス本体102の外面108に結合されうる。
図1の実施形態では、コーティング120は、外面122、並びにガラス本体102とコーティング120との界面のガラス本体接触面124を有する。
【0016】
一実施形態では、コーティングされたガラス容器100は医薬品包装である。例えば、ガラス本体102は、バイアル、アンプル(ampoule、ampul)、ボトル、フラスコ、ガラス小容器(phial)、ビーカ、バケット、カラフ、バット、シリンジ本体などの形状でありうる。コーティングされたガラス容器100は、任意の組成物を収容するために使用することができ、一実施形態では、医薬組成物を収容するために使用することができる。医薬組成物は、医学的診断、治癒、治療、又は疾患の予防に使用することを目的とした任意の化学物質を含みうる。医薬組成物の例には、医薬、薬物、薬剤、治療薬などが含まれるがこれらに限定されない。医薬組成物は、液体、固体、ゲル、懸濁液、粉末などの形態でありうる。
【0017】
次に
図1及び2を参照すると、一実施形態では、コーティング120は単層構造を含む。例えば、コーティング120は、ポリマーを含む実質的に均質な組成物を有しうる。2つ以上の成分がコーティング120に含まれる場合、該コーティング120は混合されてもよいが、完全には均質でなくてもよい。例えば、1つ以上の実施形態では、混合物の1つ以上の化学成分は、コーティング120の界面(例えば、ガラス本体102又は外面122との界面)に集合しうる。このような実施形態では、化学成分の局所濃度は、コーティング120の異なる領域にわたって異なりうる。しかしながら、本明細書で用いられる「混合」という用語は、少なくとも2つの化学成分の少なくとも幾らかの分散を有する層を指し、完全に均質ではない層を含むものと理解されたい。概して、混合層は、コーティング混合物に含まれる2つ以上の化学成分の混合物として堆積される。しかしながら、追加の実施形態によれば、コーティング120は2つ以上の別個の層を含みうる。追加の実施形態によれば、コーティング120は、2つ以上の別個の層を有する、多層状であってもよい。例えば、コーティング120は、外面108に接触するカップリング剤層と、カップリング剤層の上のポリマー層とを含むことができる。
【0018】
物品を通過する電磁スペクトル(すなわち、光)の透明度は、分光光度計を使用して光透過を測定することによって評価することができる。測定は、コーティングされていない医薬品容器、コーティングされた容器、及びコーティングされている又はコーティングされていない平面的なガラスシートを通して行うことができる。
【0019】
1つ以上の実施形態では、ガラス本体102は、(少なくとも市販の琥珀色のバイアルと比較して)UV光を透過させることができる。コーティング120はUV遮断の大部分をもたらすことができる。加えて、コーティングはUV遮断をもたらすことができるが、1つ以上の実施形態では、コーティングは、可視光に対して透過性にすることができ、したがって、着色されていない。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器100は、可視光に対して透過性でありうるが、UV光を遮断することができる。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器は、一部の可視光を遮断することができ(すなわち、着色する)、さらにUV光を遮断することができる。これらの光透過特性は、本明細書において定量的に記載される。本明細書に記載されるように、UV光が「遮断される」場合、UV光のすべて又は一部が遮断され、UV光を遮断しないと言われているガラス組成物においてさえ、一部の少量のUV放射はすべての波長で透過するとは限らないものと理解されたい。
【0020】
本明細書に記載されるように、UV光(UVスペクトルの光と呼ばれることもある)は、200から400nmの波長を有する光を指す。UV光は、UVA光、UVB光、及びUVC光を含みうる。本明細書に記載されるUVA光とは、200から290nmの波長を有する光を指す。本明細書に記載されるUVB光とは、290から320nmの波長を有する光を指す。本明細書に記載されるUVC光とは、320から400nmの波長を有する光を指す。本明細書に記載される可視光とは、400から700nmの波長を有する光を指す。本明細書に記載されるように、波長範囲にわたる「平均光透過率」は、特定の波長範囲にわたって分光光度計によって決定することができる平均透過率を指す。波長範囲における「最大光透過率」とは、波長範囲内の単一波長における最大透過率を指す。
【0021】
光透過率が、「コーティングされていない状態」のガラス組成物、ガラス容器、又はガラス壁に関して記載されている場合には、コーティングされていない容器又はガラス基板を試験することによって、測定値を得ることができる。本明細書に別段の記載がない限り、光透過率は、コーティングされたガラス容器の単一の壁を通して測定される。コーティングされていない状態とは、コーティングを有しないガラス物品を指す。
【0022】
コーティングされたガラス容器100、ガラス本体102(コーティングされていない)、又はコーティング120に関して本明細書に開示されている記載された透過率は、コーティングされている又はコーティングされていない容器を通して(2つの壁を通過)又は容器(コーティングされている又はコーティングされていない)の単一の壁を通して、又は医薬品包装と同様の厚さを有する(コーティングされている又はコーティングされていない)平面的なガラスシートを通して測定することができるものと理解されたい。コーティング120の光透過率は、基板材料(例えば、ガラス本体120)及びコーティングされたガラス容器100を通る光透過率を別々に測定し、測定された2つの試験片間の差を決定することによって決定することができる。
【0023】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングされたガラス容器100は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0024】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングされたガラス容器100は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVAスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0025】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングされたガラス容器100は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVBスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0026】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングされたガラス容器100は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVCスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0027】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングされたガラス容器100は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVスペクトルにおける最大光透過率を有しうる。
【0028】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングされたガラス容器100は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVAスペクトルにおける最大光透過率を有しうる。
【0029】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングされたガラス容器100は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVBスペクトルにおける最大光透過率を有しうる。
【0030】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングされたガラス容器100は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVCスペクトルにおける最大光透過率を有しうる。
【0031】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス本体102(コーティングされていない)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%のUVスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0032】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス本体102(コーティングされていない)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%のUVAスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0033】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス本体102(コーティングされていない)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%のUVBスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0034】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス本体102(コーティングされていない)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%のUVCスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0035】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス本体102(コーティングされていない)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%のUVスペクトルにおける最小光透過率を有しうる。
【0036】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス本体102(コーティングされていない)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%のUVAスペクトルにおける最小光透過率を有しうる。
【0037】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス本体102(コーティングされていない)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%のUVBスペクトルにおける最小光透過率を有しうる。
【0038】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス本体102(コーティングされていない)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%のUVCスペクトルにおける最小光透過率を有しうる。
【0039】
1つ以上の実施形態によれば、コーティング120は、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0040】
1つ以上の実施形態によれば、コーティング120は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0041】
1つ以上の実施形態によれば、コーティング120は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVAスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0042】
1つ以上の実施形態によれば、コーティング120は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVBスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0043】
1つ以上の実施形態によれば、コーティング120は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVCスペクトルにおける平均光透過率を有しうる。
【0044】
1つ以上の実施形態によれば、コーティング120は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVスペクトルにおける最大光透過率を有しうる。
【0045】
1つ以上の実施形態によれば、コーティング120は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVAスペクトルにおける最大光透過率を有しうる。
【0046】
1つ以上の実施形態によれば、コーティング120は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVBスペクトルにおける最大光透過率を有しうる。
【0047】
1つ以上の実施形態によれば、コーティング120は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、又はさらに1%以下のUVCスペクトルにおける最大光透過率を有しうる。
【0048】
1つ以上の実施形態では、コーティングされたガラス容器100は、USP<660>の「着色ガラス容器の分光透過(Spectral Transmission for Colored Glass Containers)」の要件を満たすことができる。概して、このような標準は、USP<660>に定義されており、290~450nmの波長を測定するUV-Vis分光分析を利用する。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器100は、任意の角度で見た場合に、人間の肉眼には無色透明であると認識されうる。他の幾つかの実施形態では、コーティング120は、該コーティング120が着色されたポリマーを含む場合など、知覚可能な色合いを有することができる。1つ以上の実施形態では、コーティングされたガラス容器100を通る光透過率は、約400nmから約700nm波長で、コーティングされていないガラス容器を通る光透過率の約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、又はさらに約90%以上である。しかしながら、追加の実施形態では、コーティングされたガラス容器100は、琥珀色、茶色、又は黄色などの色で着色されてもよい。
【0049】
1つ以上の実施形態では、コーティングされたガラス容器100は、本明細書に記載されるUSP<660>の基準と一致する、400~450nmの波長の放射線からの保護を有しうる。例えば、コーティングされたガラス容器100は、400nmから450nmまでのすべての波長において、20%未満の光透過率を有しうる。追加の実施形態では、コーティングされたガラス容器100は、400nmから450nmまでのすべての波長において、15%未満、10%未満、又はさらに5%未満の光透過率を有しうる。このような実施形態では、コーティングがより高い波長の可視放射を顕著に遮断しない場合、コーティングされたガラス容器100は琥珀色又は茶色の知覚可能な色を有しうる。
【0050】
1つ以上の実施形態では、コーティングされたガラス容器100は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%の可視スペクトルにおける平均光透過率を有しうる。追加の実施形態では、ガラス本体102は、400~450nm、450~500nm、500~550nm、550~600nm、600~650nm、650~700nmのスペクトル、又はこれらの範囲のいずれかの組合せにおいて、このような平均光透過率を有しうる。
【0051】
1つ以上の実施形態では、コーティングされたガラス物品100は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%の可視スペクトルにおける最小光透過率を有しうる。追加の実施形態では、ガラス本体102は、400~450nm、450~500nm、500~550nm、550~600nm、600~650nm、650~700nmの波長範囲について記載された範囲のスペクトル、又はこれらの範囲のいずれかの組合せにおいて、このような最小光透過率を有しうる。
【0052】
本明細書に記載されるように、光透過率は、本明細書に記載される熱処理などの環境処理の前、又は環境処理の後に測定することができる。例えば、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃で30分間の熱処理の後、又は凍結乾燥条件への曝露後、又はオートクレーブ条件への曝露後に、開示された光透過特性を観察することができる。
【0053】
1つ以上の実施形態では、ガラス本体102(コーティングされていない)は、可視的に無色であるか、又は少なくとも、伝統的な琥珀色の着色ガラスのように着色されていない。例えば、コーティングされていない状態のガラス本体102は、任意の角度で見た場合に、人間の肉眼には無色透明であると認識されうる。本明細書に記載されるように、可視的に無色とは、平均的な人間の目によって知覚できない色を指す。1つ以上の実施形態では、コーティングされていない状態のガラス本体102を通過する光透過率は、可視スペクトルのすべての波長で、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、又はさらに約90%以上でありうる。参考までに、透明なアルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩ガラスは、可視スペクトルのすべての波長で、約87~88%の光透過率を有する。
【0054】
コーティング102は、多種多様な組成及び構造を有することができる。幾つかの実施形態では、UV遮断特性をもたらすコーティングを適用することができる。1つ以上の実施形態では、コーティングは、紫外光の透過を低減するのに十分な厚さを含みうる。1つ以上の実施形態では、紫外光を低減するのに十分な厚さは、少なくとも10nmでありうる。例えば、コーティングの厚さは、少なくとも10nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、少なくとも400nm、少なくとも500nm、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも900nm、又はさらに少なくとも1000nm、少なくとも2μm、少なくとも3μm、少なくとも4μm、少なくとも5μm、少なくとも6μm、少なくとも7μm、少なくとも8μm、少なくとも9μm、少なくとも10μm、少なくとも15μm、少なくとも20μm、又はさらに少なくとも25μmでありうる。
【0055】
1つ以上の実施形態では、コーティングは1つ以上のポリマーを含みうる。1つ以上の実施形態では、1つ以上のポリマーは、紫外光の透過を低減するのに十分な厚さで堆積された場合、人間の目によって検出可能な色を示しうる。1つ以上の実施形態では、色は暖色でありうる。例えば、コーティングは、人間の目に見える赤、黄、橙、又は琥珀色を示すことができる。
【0056】
1つ以上の実施形態では、1つ以上のポリマーは、透明なコーティングをもたらすことができる。1つ以上の実施形態では、コーティングは、該コーティングを含むバイアルの内容物の自動目視検査を可能にするのに十分な透明度を有することができる。コーティングはまた、医療専門家又は最終ユーザによる手動検査など、容器の内容物の手動検査を可能にするのに十分な透明度を有することができる。これは、容器内のガラスの層間剥離の検出にとって特に重要でありうる。
【0057】
1つ以上の実施形態では、コーティングは、ポリイミドなどのポリマー、及び場合によってはシラン又は金属酸化物などのカップリング剤を含む、可視的に着色している熱安定性コーティングでありうる。幾つかの実施形態では、ポリマー及び/又はカップリング剤は、顔料として機能し、少なくともUV光から保護し、着色された外観を生成する、銀、銅、鉄、又はこれらの組合せなどの金属を含みうる。銅、鉄、及び/又は銀を含むコーティングは、USP<660>の下で資格を得るために必要になりうる、琥珀色又は茶色の外観を有しうる。銀、銅、又は鉄を組み込むことができる、ポリマー及び/又はカップリング剤を含む適切なコーティングシステムの例としては、その内容がここに参照することにより本明細書に組み込まれる、「Glass Articles with Low-Friction Coatings」と題された米国特許第9,763,852号明細書、「Glass Articles With Mixed Polymer and Metal Oxide Coatings」と題された米国特許出願公開第2017/0121058号明細書、及び「Halogenated Polyimide Siloxane Chemical Compositions and Glass Articles with Halogenated Polyimide Siloxane Low-Friction Coatings」と題された米国特許出願公開第2017/0088459号明細書が挙げられる。本明細書に記載されるように、UV保護を促進し、コーティングを視覚的に着色する金属は、ポリマー層に、カップリング剤層に、又はカップリング剤とポリマーの混合層を有するコーティングに組み込むことができる。
【0058】
幾つかの実施形態によれば、任意の硬化工程の前に容器に施されるコーティング材料は、コロイド状の金属粒子が存在するポリイミドを含みうる。コロイド状の金属粒子は、ポリイミド又はポリアミド酸溶液中に懸濁させることができ、あるいは金属イオンの還元によってポリマー層内でin-situで調製することができる。このような実施形態では、コーティングは還元剤を含みうる。企図される金属イオンは、銀イオン、銅イオン、及び鉄イオンから選択される。in-situ還元プロセスの場合、可溶性金属イオンは、還元剤の存在下でポリイミド又はポリアミド酸溶液中に溶解される。この還元剤は、金属イオンの還元が還元性雰囲気内で行われる場合には省略することができるが、還元剤の添加が望ましい場合もある。例えば、還元は空気などの通常の雰囲気内で行うことができるため、還元剤の添加が望ましい場合がある。
【0059】
本明細書に記載される実施形態では、金属イオンは、例えば硝酸塩などの無機塩の形態で、又は酢酸塩などの有機塩の形態で使用することができる。トリフルオロ酢酸銀及びトリフルオロアセチルアセトネート銀が特に企図されている。しかしながら、銀、銅、又は鉄を含む他の材料が適している場合もある。
【0060】
還元剤の例には、限定はしないが、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどのアミノシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、アミノプロピルシルセスキオキサン、N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシランなどの他のアミノシランが含まれるが、このリストは限定的ではない。幾つかの実施形態では、還元剤はシランでありうる。このような実施形態では、還元剤は、コーティングにおけるカップリング剤として作用することができ、ガラスへのポリマーフィルムの接着を改善することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、コーティングは、ポリマー層中に銅、鉄、又は銀を含むポリマーを含んでいてもよく、ここで、ガラス表面とポリマー層との間にはカップリング剤層が存在する。カップリング剤層は、アミノプロピルシルセスキオキサンなどのアミノシランを含みうる。追加の実施形態では、カップリング剤材料は、銀、銅、又は鉄とともにポリマーに混合することができる。
【0062】
追加の実施形態では、コーティングは、銀、銅、又は鉄のうちの1つ以上を含むカップリング剤層と、該カップリング剤層の上のポリマー層とを含む。このような実施形態では、カップリング剤層はUV保護を提供することができ、一方、ポリマー層は良好な摩擦係数特性と良好な熱特性を提供することができる。例えば、ポリマー層はポリイミドを含みうる。
【0063】
UV遮断性のカップリング剤層は、例えば、金属ナノ粒子をシラン溶液中に分散させることによって調製することができ、あるいは金属イオンのin-situ還元によりナノ粒子を形成することによって製造することができる。後者の場合、金属イオンは、接着促進剤、例えばシランと、少なくとも1つの還元剤とを含む溶液に溶解させることができる。幾つかの実施形態では、還元剤は、接着を促進するシランなどのカップリング剤である。還元剤として作用するこのようなカップリング剤は、限定はしないが、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、及びビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、アミノプロピルシルセスキオキサンなどのアミノシランから選択することができる。
【0064】
追加の実施形態によれば、コーティングは、ポリイミド、銀、銅、又は鉄のうちの1つ以上、並びに他の金属酸化物、例えばアルミナ、チタニア、又はジルコニアを含みうる。例えば、ポリイミドと、アルミナ、チタニア、又はジルコニアのうちの1つ以上とを含むコーティングの実施形態は、「Glass Articles with Mixed Polymer and Metal Oxide Coatings」と題された米国特許出願公開第2017/0121058号明細書に開示されている。アルミナ、チタニア、及びジルコニアに加えて、UV透過率を幾らか低下させる可能性があるが、コーティングの可視色には概して影響を及ぼさない他の金属酸化物を利用することができるものと認識されたい。
【0065】
1つ以上のさらなる実施形態では、1つ以上のポリマーは、銀、銅、又は鉄などの着色金属を使用せずに、UV放射を遮断するポリイミド又は他の熱的に安定なポリマーを含みうる。例えば、ポリマーは、PMDA-ODAポリイミドを含みうる。
【0066】
1つ以上の実施形態では、コーティングはBraggミラーを含みうる。本明細書に記載される場合、「Braggミラー」は、高屈折率材料と低屈折率材料の交互の層を使用して、近づいてくる光の反射を引き起こす層状の材料である。1つ以上の実施形態では、Braggミラーは、高屈折率材料の少なくとも1つの層と低屈折率材料の少なくとも1つの層とを含みうる。高屈折率材料と低屈折率材料との屈折率の差は、少なくとも0.5でありうる。例えば、高屈折率材料と低屈折率材料との屈折率の差は、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、又はさらに少なくとも1.0でありうる。
【0067】
1つ以上の実施形態では、高屈折率層は、低屈折率材料の屈折率より少なくとも0.5大きい屈折率を有する任意の材料を含みうる。1つ以上の実施形態では、高屈折率材料は金属酸化物を含みうる。例えば、高屈折率層は、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、又はアルミナ(AlO2)を含みうる。1つ以上の実施形態では、高屈折率層はTiO2を含みうる。ポリイミドのマトリクスにチタニア、ジルコニア、又はアルミナを含む層の例は、「Glass Articles with Mixed Polymer and Metal Oxide Coatings」と題された米国特許出願公開第2017/0121058号明細書に記載されている。
【0068】
1つ以上の実施形態では、低屈折率層は、高屈折率材料の屈折率より少なくとも0.5小さい屈折率を有する材料を含みうる。1つ以上の実施形態では、低屈折率材料は、可視的に無色であるポリイミドを含みうる、又はそれからなる。追加の実施形態では、低屈折率材料はフッ素化合物を含みうる。1つ以上の実施形態では、低屈折率材料はシリカ化合物を含みうる。例えば、低屈折率材料はSiO2を含みうる。
【0069】
1つ以上の実施形態では、Braggミラーは交互の層を含みうる。交互の層は、高屈折率層と低屈折率層でありうる。1つ以上の実施形態では、Braggミラーの隣接する層は、少なくとも0.5の屈折率の差を有しうる。例えば、コーティングは、第1の高屈折率層、第1の低屈折率層、及び第2の高屈折率層を含んでよく、ここで、第1の低屈折率層は第1の高屈折率層と第2の高屈折率層との間に位置づけられる。
【0070】
1つ以上の実施形態では、Braggミラーの交互の高屈折率層と低屈折率層は、紫外光を反射することができる。理論に束縛されることは望まないが、各層の境界は、波長範囲内の波の部分反射を引き起こしうる。1つ以上の実施形態では、部分波反射は建設的干渉を生成し、1つ以上の波長の光の反射を増強しうる。1つ以上の実施形態では、交互の高屈折率層と低屈折率層の厚さを最適化して、1つ以上の所望の波長の反射を増強することができる。1つ以上の実施形態では、Braggミラーによって反射される波長範囲は、紫外光を含む波長を含みうる。
【0071】
1つ以上の実施形態では、コーティングはハイパスフィルタを含みうる。本明細書に記載される「ハイパスフィルタ」は、ある特定のカットオフ波長よりも長い波長を含む光を透過する材料でありうる。1つ以上の実施形態では、少なくとも1つの高屈折率層と少なくとも1つの低屈折率層とを位置決めして、ハイパスフィルタを形成することができる。1つ以上の実施形態では、紫外光は、ハイパスフィルタのカットオフ波長より下の波長を含みうる。1つ以上の実施形態では、ハイパスフィルタは、可視光を透過させ、かつコーティングを通過する紫外光の透過を低減することができる。例えば、カットオフ波長は、可視光の透過を可能にするが紫外光の透過を防止しうる、400nmでありうる。
【0072】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングは、本明細書に記載されるように、ポリイミドとチタニア、ジルコニウム、又はアルミニウムのうちの1つ以上との混合層を含みうる。この層の上には、実質的な量の金属酸化物を含まない(1質量%未満、又は0質量%でさえある)、ポリイミドの層を位置づけることができる。このような実施形態では、Braggミラー及び/又はハイパスフィルタ機能を形成することができる。
【0073】
1つ以上の実施形態では、ハイパスフィルタはファブリ・ペロー空洞でありうる。本明細書に記載されるように、「ファブリ・ペロー空洞」は、2つの平行な反射面を含むことができ、ファブリ・ペロー空洞と共鳴しない波長を有する光の透過を防止することができる構造である。1つ以上の実施形態では、ファブリ・ペロー空洞は、少なくとも1つの高屈折率層、少なくとも1つの吸収層、及び少なくとも1つの低屈折率層から形成することができる。例えば、ファブリ・ペロー空洞は、吸収層によって分離された高屈折率層と低屈折率層とを含みうる。ファブリ・ペロー空洞の反射面は、吸収層と高屈折率層又は低屈折率層との間の界面に位置しうる。1つ以上の実施形態では、ファブリ・ペロー空洞は、コーティングを通過する紫外光の透過を低減することができる。このような実施形態は、本明細書に記載されるように、ポリイミドと金属酸化物の混合層とポリイミド層との交互の層を含みうる。
【0074】
1つ以上の実施形態では、コーティングは、連続相と非連続相とを含みうる。非連続相は、連続相内に本体又は含有物を含みうる。1つ以上の実施形態では、連続相の1つ以上の材料と非連続相の1つ以上の材料との屈折率の差は、少なくとも0.5でありうる。例えば、連続相の1つ以上の材料と非連続相の1つ以上の材料との屈折率の差は、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、又はさらに少なくとも1.0でありうる。理論に縛られることは望まないが、連続相と非連続相との屈折率の差は、紫外光を含みうる光の反射及び散乱を引き起こしうる。連続相と非連続相とを含むコーティングは、コーティングの厚さ、含有物のサイズ、含有物の形状、及び含有物の分散を調整することによって、紫外光の反射及び散乱を最適化することができると考えられる。
【0075】
1つ以上の実施形態では、連続相を含む1つ以上の材料は、可視光より少なくとも50%多い紫外光を吸収しうる。例えば、1つ以上の実施形態では、連続相を含む材料は、可視光より少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又はさらに少なくとも90%多い紫外光を吸収しうる。1つ以上の実施形態では、連続相は金属酸化物を含みうる。例えば、連続相は、TiO2、ZrO2、Al2O3、又はこれらの組合せを含みうる。少なくとも1つの実施形態では、連続相はTiO2を含みうる。
【0076】
1つ以上の実施形態では、非連続相は、1つ以上のポリマー又は1つ以上の無機粒子を含みうる。1つ以上の実施形態では、1つ以上のポリマーはポリイミドを含みうる。1つ以上の実施形態では、無機粒子は中空でありうる。
【0077】
1つ以上のさらなる実施形態では、コーティングは、TiO
2連続相と非連続相のポリイミド含有物とを含みうる。
図4及び
図5は、連続TiO
2コーティング中にポリイミド含有物を含むコーティングを示している。1つ以上の実施形態では、ポリイミド含有物の不規則な形状、並びにTiO
2とポリイミドとの屈折率の差は、光の反射及び散乱に役立ちうる。
【0078】
1つ以上の実施形態では、コーティングは空洞を含むことができ、コーティングの屈折率は空洞の屈折率より少なくとも0.5大きい。例えば、コーティングの屈折率は、空洞の屈折率より少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、又はさらに少なくとも1.0大きくなりうる。
【0079】
1つ以上の実施形態では、空洞は、犠牲材料の分解又は揮発によって形成されうる。本明細書に記載されるように、「犠牲材料」は、熱硬化プロセス中に分解又は揮発する材料である。1つ以上の実施形態では、犠牲材料は、コーティングプロセス中及び熱硬化プロセスの前にコーティングに導入することができる。その後、犠牲材料は、熱硬化プロセス中に、コーティング内に空洞を生成しうる。1つ以上の実施形態では、コーティングの屈折率と空洞の屈折率の差は、光の反射及び散乱をもたらしうる。1つ以上の実施形態では、コーティングと空洞の屈折率の差は、紫外光の反射及び散乱をもたらしうる。
【0080】
1つ以上の実施形態では、コーティングは、少なくとも10nmの厚さを有する層を含むことができ、この層は、可視光より少なくとも50%多い紫外光を吸収する材料を含む。例えば、層は、少なくとも10nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、少なくとも400nm、少なくとも500nm、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも900nm、又はさらに少なくとも1000nmの厚さを有しうる。さらなる例では、層は、可視光より少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又はさらに少なくとも90%多い紫外光を吸収する材料を含みうる。
【0081】
1つ以上の実施形態では、層は、金属酸化物を含みうる。例えば、層は、TiO
2、ZrO
2、及びAl
2O
3のうちの1つ以上を含みうる。1つ以上の実施形態では、コーティングはTiO
2を含みうる。1つ以上の実施形態では、
図6に示されるTiO
2のUV-Vis吸収スペクトルに示されているように、TiO
2は、250nmから400nmの間の波長を有する紫外光に対して高い吸光度を有しうる。1つ以上の実施形態では、TiO
2層の厚さを調整して、コーティングの紫外光吸収特性を高めることができる。例えば、1つ以上の実施形態では、TiO
2層の厚さが増加するにつれて、TiO
2層による紫外光の吸光度は増加しうる。
【0082】
1つ以上の実施形態では、コーティングは、紫外光を吸収し、紫外光から吸収したエネルギーの少なくとも50%を熱として放散する、1つ以上の化合物を含みうる。例えば、該化合物は、紫外光を吸収し、紫外光から吸収したエネルギーの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はさらに少なくとも99%を熱としてを放散することができる。1つ以上の実施形態では、これらの化合物は、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、及びオキサルアニリド類を含みうる。
【0083】
1つ以上の実施形態では、コーティングは1つ以上のフォトクロミック化合物を含みうる。本明細書に記載される場合、「フォトクロミック化合物」とは、フォトクロミック化合物が紫外光に曝露されると変化する吸収スペクトルを有する化合物でありうる。1つ以上の実施形態では、フォトクロミック化合物の吸収スペクトルは、フォトクロミック化合物が紫外光に曝露されると紫外光の吸収が増加するように変化しうる。1つ以上の実施形態では、紫外光に曝露されて吸収スペクトルの変化を被ったフォトクロミック化合物は、紫外線への曝露が止まると元の吸収スペクトルに戻ることができる。例となるフォトクロミック化合物は、日本国神奈川県YS-A4所在のNemoto Lumi Materials Companyによって製造されており、色が白色であり、UV光を吸収し、赤色光を透過することができる、赤色素性の染料である。
【0084】
1つ以上の実施形態では、フォトクロミック化合物は第1の吸収スペクトルと第2の吸収スペクトルとを含むことができ、十分な強度の紫外光に十分な時間曝露したときに、フォトクロミック化合物は第2の吸収スペクトルを示す。1つ以上の実施形態では、フォトクロミック化合物が第2の吸収スペクトルを示すのに必要な紫外光の強度及び時間の長さは、用いられるフォトクロミック化合物に応じて異なりうる。1つ以上の実施形態では、太陽光は、フォトクロミック化合物が第2の吸収スペクトルを示すのに十分な強度の紫外光を提供することができる。1つ以上の実施形態では、必要な時間は0.5秒から20分でありうる。例えば、必要な時間は、0.5秒から20分、0.5秒から15分、0.5秒から10分、0.5秒から9分、0.5秒から8分、0.5秒から7分、0.5秒から6分、0.5秒から5分、0.5秒から4分、0.5秒から3分、0.5秒から2分、0.5秒から1分、0.5秒から50秒、0.5秒から40秒、0.5秒から30秒、0.5秒から20秒、0.5秒から10秒、0.5秒から5秒、又はさらに0.5秒から1秒でありうる。1つ以上の実施形態では、第2の吸収スペクトルは、第1の吸収スペクトルより少なくとも5%多い紫外光を吸収しうる。例えば、第2の吸収スペクトルは、第1の吸収スペクトルより少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はさらに少なくとも99%多い紫外光を吸収しうる。
【0085】
1つ以上の実施形態では、フォトクロミック化合物の分子は、フォトクロミック材料が紫外光に曝露されると、立体配座変化を被る可能性がある。この立体配座変化は、フォトクロミック化合物の吸収スペクトルの変化を引き起こしうる。
【0086】
1つ以上の実施形態では、フォトクロミック化合物は、紫外光に曝露されるとより多くの可視光を吸収しうる。これにより、紫外光に曝露されると、コーティングが黒ずむか、又は発色することがある。1つ以上の実施形態では、この着色は可逆的であり、コーティングが紫外光に曝露されなくなると消失する。
【0087】
1つ以上の実施形態では、フォトクロミック化合物は有機化合物であっても無機化合物であってもよい。例えば、1つ以上のフォトクロミック化合物は、ヘキサアリールビイミダキソール類、ジアリールエテン類、フォトクロミックキノン類、又は亜鉛化合物でありうる。加えて、眼鏡用の調光レンズでの使用に適したフォトクロミック化合物を含む、当技術分野で知られている他の好適なフォトクロミック化合物をコーティングに使用することができる。
【0088】
1つ以上の実施形態では、コーティングを含む1つ以上の層は、スプレーコーティングによってバイアル表面に施すことができる。1つ以上の実施形態では、スプレーコーティングは、ポリマー、ポリイミド、PMDA-ODA、高屈折率層、低屈折率層、吸収層、金属酸化物層、チタニア層、アルミナ層、ジルコニア層、シリカ層、連続相と非連続相とを含む層、犠牲材料を含む連続層、フォトクロミック化合物を含む層、及びこれらの組合せを堆積するのに適した方法でありうる。1つ以上の実施形態では、スプレーコーティングは、少なくとも10nmの厚さの層の堆積に適しうる。例えば、スプレーコーティングは、少なくとも10nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、少なくとも400nm、少なくとも500nm、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも900nm、又はさらに少なくとも1000nmの厚さの層の堆積に適しうる。
【0089】
再び
図1及び2を参照すると、コーティング120は、該コーティング120が単一の層を含んでいる単一の堆積工程において施すことができる。堆積は、浸漬プロセスによるものであってよく、あるいは、コーティング120をスプレー又は他の適切な手段によって施し、任意選択的に乾燥させてもよい。本明細書に記載されるコーティング120に適した堆積方法の説明は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、「Glass Articles with Low-Friction Coatings」と題された米国特許第9,763,852号明細書に見出すことができる。追加の実施形態では、複数の堆積を利用することができる。例えば、前駆体の第2のコーティングが硬化層上に施されるように、複数のコーティング前駆体の堆積を行った後に硬化させるか、又は各堆積工程に続いて硬化させることができる。
【0090】
1つ以上の実施形態では、ガラス本体102に施されるコーティング120は、約100μm以下、約10μm以下、約8μm以下、約6μm以下、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下、又はさらに約1μm以下の厚さを有しうる。幾つかの実施形態では、コーティングの厚さ120は、約800nm以下、約600nm以下、約400nm以下、300nm、約200nm以下、又はさらに約100nm以下の厚さでありうる。他の実施形態では、コーティング120は、約90nm未満の厚さ、約80nm未満の厚さ、約70nm未満の厚さ、約60nm未満の厚さ、約50nm未満、又はさらに約25nm未満の厚さでありうる。実施形態では、コーティング120は、少なくとも約10nm、少なくとも約15nm、少なくとも約20nm、少なくとも約25nm、少なくとも約30nm、少なくとも約35nm、少なくとも約40nm、又はさらに少なくとも約45nmの厚さを有しうる。例示的な実施形態は、約20nmから約50nm、約25nmから約45nm、又は約30nmから約40nmの厚さを有しうる。理論に束縛されるものではないが、比較的薄いコーティング(すなわち、20nm未満)は、ガラスを十分に保護することができず、バイアル同士の接触中にガラス表面に浅割れ目が生じる可能性があると考えられる。加えて、このような比較的薄いコーティングは、発熱物質除去プロセスに耐えられない可能性がある。一方、比較的厚いコーティング(すなわち、50nm超)は、より容易に損傷を受ける可能性があり、バイアル同士の接触によりコーティングの摩耗痕が現れる場合がある。比較的厚いコーティングの場合、磨耗痕はガラスではなくコーティングにおける変形であると考えられることに留意されたい。本明細書に記載されるように、摩耗痕は、コーティング上の摩耗によって引き起こされ、痕跡又は擦り傷を残す、可視的な痕跡である。幾つかの実施形態では、磨耗痕は、ガラスの浅割れ目及び/又は比較的高い摩擦係数(例えば、0.7以上)を意味しうる。
【0091】
幾つかの実施形態では、コーティング120は、ガラス本体102の全体にわたって均一な厚さでなくてもよい。例えば、コーティングされたガラス容器100は、コーティング120を形成する1つ以上のコーティング溶液とガラス本体102を接触させるプロセスに起因して、一部の領域でより厚いコーティング120を有しうる。幾つかの実施形態では、コーティング120は、不均一な厚さを有しうる。例えば、コーティングの厚さは、コーティングされたガラス容器100の異なる領域にわたって変化させることができ、これにより、選択された領域における保護を促進することができる。
【0092】
コーティング120を施すことができる医薬品包装のガラス容器は、さまざまな異なるガラス組成物から形成することができる。ガラス物品の特定の組成は、ガラスが物理的特性の所望のセットを有するように、特定の用途に従って選択することができる。1つ以上の実施形態によれば、ガラスは、アルカリホウケイ酸塩ガラスなどの化学的耐久性と低熱膨張性を示すことが知られている組成物でありうる。別の実施形態によれば、ASTM規準E438-922準拠するタイプI、クラスBのガラスから形成されうる。
【0093】
ガラス容器は、約25×10-7/℃~80×10-7/℃の範囲の熱膨張係数を有するガラス組成物から形成することができる。例えば、本明細書に記載される幾つかの実施形態では、ガラス本体102は、イオン交換による強化に適したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物から形成される。このような組成物は、概して、SiO2、Al2O3、少なくとも1つのアルカリ土類酸化物、並びにNa2O及び/又はK2Oなどの1つ以上のアルカリ酸化物の組合せを含む。これらの実施形態の幾つかでは、ガラス組成物は、ホウ素及びホウ素を含む化合物を含まない可能性がある。他の幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、例えば、SnO2、ZrO2、ZnO、TiO2、As2O3などの少量の1つ以上の追加の酸化物をさらに含みうる。これらの成分は、清澄剤として、及び/又はガラス組成物の化学的耐久性をさらに高めるために、添加することができる。別の実施形態では、ガラス表面は、SnO2、ZrO2、ZnO、TiO2、As2O3などを含む金属酸化物コーティングを含みうる。
【0094】
本明細書に記載される幾つかの実施形態では、ガラス本体102は、イオン交換強化などによって強化することができ、これは、本明細書では「イオン交換されたガラス」と呼ばれる。例えば、ガラス本体102は、約300MPa以上又はさらに約350MPa以上の圧縮応力を有しうる。幾つかの実施形態では、圧縮応力は約300MPaから約900MPaの範囲でありうる。しかしながら、幾つかの実施形態では、ガラスの圧縮応力は300MPa未満又は900MPa超であってもよいものと理解されたい。幾つかの実施形態では、ガラス本体102は、20μm以上の層の深さを有しうる。これらの実施形態の幾つかでは、層の深さは、50μm超又はさらに75μm以上でありうる。さらに他の実施形態では、層の深さは、最大で100μm、又は100μm超であってもよい。イオン交換強化は、約350℃~約500℃の温度で維持された溶融塩浴中で行うことができる。所望の圧縮応力を達成するため、ガラス容器(コーティングされていない)を、約30時間未満、又はさらには約20時間未満、塩浴に浸漬することができる。例えば、一実施形態では、ガラス容器は、100%のKNO3塩浴に450℃で約8時間、浸漬することができる。
【0095】
特に例示的な一実施形態では、ガラス本体102は、2012年10月25日に出願され、Corning,Incorporated社に譲渡された「Glass Compositions with Improved Chemical and Mechanical Durability」と題された係属中の米国特許出願第13/660,894号明細書に記載されているイオン交換可能なガラス組成物から形成することができる。
【0096】
しかしながら、本明細書に記載されるコーティングされたガラス容器100は、イオン交換可能なガラス組成物及び非イオン交換可能なガラス組成物を含むがこれらに限定されない、他のガラス組成物から形成することができるものと理解されたい。例えば、幾つかの実施形態では、ガラス容器は、例えば、Schottのタイプ1Bのホウケイ酸塩ガラスなど、タイプ1Bのガラス組成物物から形成することができる。
【0097】
本明細書に記載される幾つかの実施形態では、ガラス物品は、USP(アメリカ合衆国薬局方)、EP(欧州薬局方)、及びJP(日本薬局方)などの規制当局が、それらの耐加水分解性に基づいて記載した医薬品ガラスの基準を満たすガラス組成物から形成することができる。USP660及びEP7に従い、ホウケイ酸ガラスはタイプIの基準を満たしており、日常的に非経口包装に使用されている。ホウケイ酸ガラスの例には、限定はしないが、Corning(登録商標)Pyrex(登録商標)7740、7800、及びWheaton 180、200、及び400、Schott Duran、Schott Fiolax、KIMAX(登録商標)N-51A、Gerrescheimer GX-51 Flint、並びに他のものが含まれる。ソーダ石灰ガラスはタイプIIIの基準を満たしており、溶液又は緩衝液を作るためにその後に溶解される乾燥粉末の包装に許容されている。タイプIIIのガラスはまた、アルカリに対して鈍感であることが判明している液体製剤の包装にも適している。タイプIIIのソーダ石灰ガラスの例には、Wheaton 800及び900が含まれる。脱アルカリ処理されたソーダ石灰ガラスは、水酸化ナトリウム及び酸化カルシウムのレベルが高く、タイプII基準を満たしている。これらのガラスは、タイプIのガラスよりも浸出に対する耐性が低く、タイプIIIのガラスよりも耐性がある。タイプIIのガラスは、保存期間に、pHが7未満のままである製品に使用することができる。例には、硫酸アンモニウム処理されたソーダ石灰ガラスが含まれる。これらの製薬用ガラスは、さまざまな化学組成を有しており、20~85×10-7℃の範囲の線熱膨張係数(CTE)を有している。
【0098】
本明細書に記載されるコーティングされたガラス物品がガラス容器の場合には、コーティングされたガラス容器100のガラス本体102は、さまざまな異なる形態をとることができる。例えば、本明細書に記載されるガラス本体は、バイアル、アンプル、カートリッジ、シリンジ本体、及び/又は医薬組成物を保管するための他の任意のガラス容器などのコーティングされたガラス容器100を形成するために使用することができる。さらには、コーティング前にガラス容器を化学的に強化する能力を利用して、ガラス容器の機械的耐久性をさらに改善することができる。したがって、少なくとも1つの実施形態では、ガラス容器は、コーティングを施す前にイオン交換強化することができるものと理解されたい。あるいは、米国特許第7,201,965号明細書に記載されるような、熱焼き戻し、火炎研磨、及び積層などの他の強化方法を使用して、コーティング前にガラスを強化することができる。
【0099】
コーティングされたガラス容器のさまざまな特性(すなわち、摩擦係数、水平圧縮強度、4点曲げ強度)は、コーティングされたガラス容器がコーティングされたままの状態にあるとき(すなわち、該当する場合には、硬化以外の追加の処理なしにコーティングを施した後)に、あるいは、洗浄、凍結乾燥、発熱物質除去、オートクレーブなどを含むがこれらに限定されない、医薬品充填ラインで行われる処理と類似又は同一の処理などの1つ以上の加工処理の後に、測定することができる。
【0100】
発熱物質除去は、発熱物質を物質から除去するプロセスである。医薬品包装などのガラス物品の発熱物質除去は、試料を高温に一定時間加熱する、試料に適用される熱処理によって行うことができる。例えば、発熱物質除去は、ガラス容器を、約250℃から約380℃の間の温度に、20分、30分、40分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、及び72時間を含むがこれらに限定されない、約30秒~約72時間の時間、加熱することを含みうる。熱処理の後、ガラス容器を室温まで冷却する。製薬業界で一般的に採用されている従来の発熱物質除去条件の1つは、約250 ℃の温度で約30分の熱処理である。しかしながら、より高い温度が利用される場合には、熱処理の時間が短縮されうることが想定される。本明細書に記載されるコーティングされたガラス容器は、高温に一定時間、曝露されうる。本明細書に記載される高温及び加熱時間は、ガラス容器からの発熱物質除去に十分である場合もあれば、そうでない場合もある。しかしながら、本明細書に記載される加熱の温度及び時間の幾つかは、本明細書に記載されるコーティングされたガラス容器などのコーティングされたガラス容器からの発熱物質除去に十分であるものと理解されたい。例えば、本明細書に記載されるように、コーティングされたガラス容器は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度に、30分間、曝露されうる。発熱物質除去プロセスは、30分以外の時間を有していてもよく、本開示を通じて、例えば、定義された発熱物質除去条件への曝露後の摩擦係数試験など、比較目的で、発熱物質除去温度とともに30分が用いられることが認識される。
【0101】
本明細書で用いられる場合、凍結乾燥条件(すなわち、フリーズドライ)とは、試料がタンパク質を含む液体で満たされ、次に-100℃などの低温で凍結され、続いて真空下、-15℃などの温度で20時間などの時間、水を昇華させるプロセスを指す。
【0102】
本明細書で用いられる場合、オートクレーブ条件とは、試料を100℃で10分などの時間、蒸気パージし、その後、試料を121℃の環境に曝露する20分の滞留時間に続いて、121℃で30分間熱処理することを指す。
【0103】
コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数(μ)は、同じガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス容器の表面より低い摩擦係数を有しうる。摩擦係数(μ)は、2つの表面間の摩擦の定量的測定値であり、表面粗さを含む第1及び第2の表面の機械的及び化学的特性、並びに限定はしないが温度及び湿度などの環境条件の関数である。本明細書で用いられる場合、コーティングされたガラス容器100の摩擦係数測定値は、第1のガラス容器の外面(約16.00mmから約17.00mmの間の外径を有する)と第1のガラス容器と実質的に同一の第2のガラス容器の外面との間の摩擦係数として報告され、ここで、第1及び第2のガラス容器は、同じ本体及び同じコーティング組成(施される場合)を有しており、かつ、製造前、製造中、及び製造後に同じ環境に曝されている。本明細書に別段の記載がない限り、摩擦係数とは、本明細書に記載されているように、バイアル・オン・バイアル試験ジグで測定された30Nの通常の荷重で測定された最大摩擦係数を指す。しかしながら、特定の荷重で最大摩擦係数を示すコーティングされたガラス容器は、より小さい荷重でも同じ又はより良好な(すなわち、より低い)最大摩擦係数を示すものと理解されたい。例えば、コーティングされたガラス容器が50Nの荷重下で0.5以下の最大摩擦係数を示す場合、該コーティングされたガラス容器は25Nの荷重下でも0.5以下の最大摩擦係数を示す。最大摩擦係数を測定するためには、試験開始時又はその近くでの極大値が静的摩擦係数を表すことから、試験開始時又はその近くでの極大値は除外される。本明細書の実施形態で説明されるように、容器の互いに対する速度が約0.67mm/秒の場合の摩擦係数が測定された。
【0104】
本明細書に記載される実施形態では、ガラス容器(コーティングされたものとコーティングされていないものの両方)の摩擦係数は、バイアル・オン・バイアル試験ジグで測定される。試験ジグ200は
図3に概略的に示されている。同じ装置を使用して、ジグ内に位置づけられた2つのガラス容器間の摩擦力を測定することもできる。バイアル・オン・バイアル試験ジグ200は、交差構成で(すなわち、互いに垂直に)配置された、第1のクランプ212及び第2のクランプ222を備えている。第1のクランプ212は、第1のベース216に取り付けられた第1の固定アーム214を備えている。第1の固定アーム214は、第1のガラス容器210に取り付けられ、第1のガラス容器210を第1のクランプ212に対して静止して保持する。同様に、第2のクランプ222は、第2のベース226に取り付けられた第2の固定アーム224を備えている。第2の固定アーム224は、第2のガラス容器220に取り付けられ、それを第2のクランプ222に対して静止して保持する。第1のガラス容器210の長軸と第2のガラス容器220の長軸とが、互いに約90°の角度で、x-y軸によって画成される水平面上に位置づけられるように、第1のガラス容器210は第1のクランプ212上に位置づけられ、第2のガラス容器220は第2のクランプ222に位置づけられる。
【0105】
第1のガラス容器210は、接触点230で第2のガラス容器220と接触して位置づけられる。x-y軸によって画成される水平面に直交する方向には、垂直力が印加される。垂直力は、静止した第1のクランプ212上の第2のクランプ222に印加される静止重量又は他の力によって印加することができる。例えば、第2のベース226上におもりを位置づけることができ、第1のベース216は安定した表面上に置くことができ、したがって、接触点230において第1のガラス容器210と第2のガラス容器220との間に測定可能な力を誘導することができる。あるいは、UMT(万能機械試験機)機などの機械装置を用いて力を加えることができる。
【0106】
第1のクランプ212又は第2のクランプ222は、第1のガラス容器210及び第2のガラス容器220の長軸と45°の角度の方向に相対的に移動しうる。例えば、第1のクランプ212は静止状態に保持することができ、第2のクランプ222は、第2のガラス容器220が第1のガラス容器210を横切ってx軸方向に移動するように移動させることができる。同様のセットアップが、R. L. De Rosa et al., in “Scratch Resistant Polyimide Coatings for Alumino Silicate Glass surfaces” in The Journal of Adhesion, 78: 113-127, 2002に記載されている。摩擦係数を測定するために、第2のクランプ222を移動させるのに必要な力と第1及び第2のガラス容器210、220に印加される垂直力をロードセルで測定し、摩擦力と垂直力の商として摩擦係数を計算する。ジグは、25℃及び相対湿度50%の環境で動作する。
【0107】
本明細書に記載される実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分は、上述のバイアル・オン・バイアルジグで決定して、同様にコーティングされたガラス容器に対して約0.7以下の摩擦係数を有する。他の実施形態では、摩擦係数は約0.6以下、又はさらに約0.5以下でありうる。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分は、約0.4以下、又はさらに約0.3以下の摩擦係数を有する。約0.7以下の摩擦係数を有するコーティングされたガラス容器は、概して、摩擦による損傷に対する耐性の向上を示し、その結果、改善された機械的特性を有する。例えば、従来のガラス容器(コーティングなし)は、0.7超の摩擦係数を有しうる。
【0108】
本明細書に記載される幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、同じガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス容器の表面の摩擦係数より少なくとも20%少ない。例えば、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、同じガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス容器の表面の摩擦係数より少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、又はさらに少なくとも50%少なくなりうる。
【0109】
幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度への30分間の曝露後に、約0.7以下の摩擦係数を有しうる。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度への30分間の曝露後に、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、又はさらに約0.3以下)の摩擦係数を有しうる。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、約250℃(又は、約260℃)の温度への30分間の曝露後に、約30%を超えて増加しない可能性がある。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度への30分間の曝露後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、又はさらに約10%)を超えて増加しない可能性がある。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度への30分間の曝露後に、約0.5(すなわち、約0.45、約0.4、約0.35、約0.3、約0.25、約0.2、約0.15、約0.1、又はさらに約0.05)を超えて増加しない可能性がある。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度への30分間の曝露後に、まったく増加しない可能性がある。
【0110】
幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分は、約70℃の温度で10分間、水浴に浸漬させた後に、約0.7以下の摩擦係数を有しうる。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分は、約70℃の温度で5分、10分、20分、30分、40分、50分、又はさらに1時間、水浴に浸漬させた後に、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、又はさらに約0.3以下)の摩擦係数を有しうる。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、約70℃の温度で10分間、水浴に浸漬させた後に、約30%を超えて増加しない可能性がある。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、約70℃の温度で5分、10分、20分、30分、40分、50分、又はさらに1時間、水浴に浸漬させた後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、又はさらに約10%)を超えて増加しない可能性がある。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、約70℃の温度で5分、10分、20分、30分、40分、50分、又はさらに1時間、水浴に浸漬させた後に、まったく増加しない可能性がある。
【0111】
幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分は、凍結乾燥条件への曝露後に約0.7以下の摩擦係数を有しうる。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分は、凍結乾燥条件への曝露後に、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、又はさらに約0.3以下)の摩擦係数を有しうる。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に約30%を超えて増加しない可能性がある。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、又はさらに約10%)を超えて増加しない可能性がある。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に、まったく増加しない可能性がある。
【0112】
幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分は、オートクレーブ条件への曝露後に約0.7以下の摩擦係数を有しうる。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分は、オートクレーブ条件への曝露後に、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、又はさらに約0.3以下)の摩擦係数を有しうる。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への曝露後に約30%を超えて増加しない可能性がある。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への曝露後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、又はさらに約10%)を超えて増加しない可能性がある。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器のコーティングを備えた部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への曝露後に、まったく増加しない可能性がある。
【0113】
本明細書に記載されるコーティングされたガラス容器は、水平圧縮強度を有する。本明細書に記載される水平圧縮強度は、コーティングされたガラス容器100を、ガラス容器の長軸に平行に配向された2つの平行なプラテン間に水平に位置づけることによって測定される。次に、ガラス容器の長軸に垂直な方向にプラテンを用いて、コーティングされたガラス容器100に機械的負荷が印加される。プラテンに配置する前に、ガラス容器を2インチ(約5.08cm)のテープで包み、突き出た部分を切り取るか、又は容器の底部の周りに折り畳む。次に、容器を、試験片の周りにステープラー止めしたインデックスカード内に位置づける。バイアル圧縮の負荷率は0.5インチ/分(約1.27cm/分)であり、これは、プラテンが0.5インチ/分(約1.27cm/分)の速度で互いの方へと移動することを意味する。水平圧縮強度は、25℃±2℃及び50%±5%の相対湿度で測定される。幾つかの実施形態では、医薬品充填ラインの状態をシミュレートするために、発熱物質除去に続いて1時間以内(及び24時間以内)に水平圧縮試験を実施することが望ましい。水平圧縮強度は、破損時の荷重の測定値であり、水平圧縮強度の測定値は、選択された通常の圧縮荷重での破損確率として得ることができる。本明細書で用いられる場合、破損は、ガラス容器が、少なくとも試料の50%において水平圧縮下で破断したときに発生する。したがって、水平方向の圧縮は、試料の1つのグループに対して提供される。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器は、コーティングされていないバイアルより少なくとも10%、20%、又は30%大きい水平圧縮強度を有しうる。
【0114】
次に、
図1及び3を参照すると、水平圧縮強度の測定は、磨耗させたガラス容器でも行うことができる。具体的には、試験ジグ200の動作は、コーティングされたガラス容器100の強度を弱める表面の引っかき傷又は摩耗など、コーティングされたガラス容器の外面122に損傷を生じさせることができる。次に、ガラス容器は、上記の水平圧縮手順に供され、該容器は2つのプラテンの間に置かれ、引っかき傷はプラテンに平行に外側を向いている。引っかき傷は、バイアル・オン・バイアルジグによって印加される選択された常圧と引っかき傷の長さによって特徴付けることができる。特に明記されていない限り、水平圧縮手順用の摩耗したガラス容器の引っかき傷は、30Nの通常の荷重によって生成される引っかき傷の長さが20mmであることによって特徴付けられる。プラテンに対して90°±5°の角度で引っかき傷を入れることが望ましいであろう。
【0115】
コーティングされたガラス容器は、熱処理後の水平圧縮強度について評価することができる。熱処理は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度への30分間の曝露でありうる。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器の水平圧縮強度は、上述したものなどの熱処理に曝露させ、次に上記のように摩耗させた後に、約20%、30%、又はさらに40%を超えて減少しない。一実施形態では、コーティングされたガラス容器の水平圧縮強度は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の熱処理に30分間、曝露させ、次に摩耗させた後に、約20%を超えて減少しない。
【0116】
本明細書に記載されるコーティングされたガラス物品は、少なくとも250℃(又は、260℃、又は280℃、又は300℃)の温度で30分間の加熱後に、熱的に安定でありうる。「熱的に安定」という用語は、本明細書で用いられる場合には、ガラス物品に施されるコーティングが、高温に曝された後、ガラス物品の表面に実質的に無傷のまま残り、その結果、曝露後に、コーティングされたガラス物品の機械的特性、具体的には、摩擦係数及び水平圧縮強度は、もしあったとしても最小限の影響しか受けないことを意味する。これは、コーティングが高温への曝露後も、ガラスの表面に付着したままであり、摩耗、衝撃などの機械的損傷からガラス物品を保護し続けていることを示唆している。
【0117】
本明細書に記載される実施形態では、指定された温度に加熱され、指定された時間その温度に留まった後に、コーティングされたガラス物品が摩擦係数基準及び水平圧縮強度基準の両方を満たす場合に、該コーティングされたガラス物品は、熱的に安定していると見なされる。摩擦係数の基準が満たされているかどうかを判断するために、第1のコーティングされたガラス物品の摩擦係数は、
図3に記載される試験ジグ及び30Nの荷重の印加を使用して、受け取ったままの状態で(すなわち、熱曝露の前に)決定される。第2のコーティングされたガラス物品(すなわち、第1のコーティングされたガラス物品と同じガラス組成及び同じコーティング組成を有するガラス物品)は、所定の条件下で熱的に曝露され、室温に冷却される。その後、第2のガラス物品の摩擦係数は、
図3に示される試験ジグを使用して、コーティングされたガラス物品を30Nの荷重印加で摩耗させ、約20mmの長さの摩耗(すなわち、「引っかき傷」)を生じさせて、決定される。第2のコーティングされたガラス物品の摩擦係数が0.7未満であり、摩耗領域における第2のガラス物品のガラスの表面に観察可能な損傷を有していない場合、摩擦係数基準は、コーティングの熱安定性を決定する目的について、満たされている。「観察可能な損傷」という用語は、本明細書で用いられる場合、LED又はハロゲン光源を使用して100倍の倍率でNomarski又は微分干渉コントラスト(DIC)分光顕微鏡で観察したときに、ガラス物品の摩耗領域のガラス表面に、摩耗領域の長さ0.5cmあたり6個未満のガラス割れが含まれていることを意味する。ガラス割れ又はガラス浅割れ目の標準的な定義は、G. D. Quinn, “NIST Recommended Practice Guide: Fractography of Ceramics and Glasses,” NIST special publication 960-17 (2006)に記載されている。
【0118】
水平圧縮強度基準が満たされているかどうかを判断するために、第1のコーティングされたガラス物品を
図3に記載される試験ジグで30Nの荷重下で摩耗させて、20mmの引っかき傷を形成する。次に、第1のコーティングされたガラス物品は、本明細書に記載されるように、水平圧縮試験に供され、第1のコーティングされたガラス物品の保持された強度が決定される。第2のコーティングされたガラス物品(すなわち、第1のコーティングされたガラス物品と同じガラス組成及び同じコーティング組成を有するガラス物品)は、所定の条件下で熱的に曝露され、室温に冷却される。その後、第2のコーティングされたガラス物品を
図3に記載される試験ジグで30Nの荷重下で摩耗させる。次に、第2のコーティングされたガラス物品は、本明細書に記載されるように、水平圧縮試験に供され、第2のコーティングされたガラス物品の保持された強度が決定される。第2のコーティングされたガラス物品の保持強度が第1のコーティングされたガラス物品と比較して約20%を超えて低下しない(すなわち、破壊荷重が20%を超えて減少しない)場合には、コーティングの熱安定性を決定する目的について水平圧縮強度基準が満たされる。
【0119】
コーティングされたガラス容器を少なくとも約250℃(又は、260℃若しくは280℃)の温度に少なくとも約30分間曝露した後に、摩擦係数の基準と水平圧縮強度の基準が満たされる(すなわち、コーティングされたガラス容器が少なくとも約250℃(又は、260℃若しくは280℃)の温度で約30分間熱的に安定している)場合、コーティングされたガラス容器は熱的に安定していると見なされる。熱安定性はまた、約250℃(又は260℃若しくは280℃)から約400℃までの温度で評価することができる。例えば、幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器は、約30分間、少なくとも約270℃又はさらに約280℃の温度で基準を満たす場合に、熱的に安定していると見なされる。さらに他の実施形態では、コーティングされたガラス容器は、約30分間、少なくとも約290℃又はさらに約300℃の温度で基準を満たす場合に、熱的に安定していると見なされる。さらなる実施形態では、コーティングされたガラス容器は、約30分間、少なくとも約310℃又はさらに約320℃の温度で基準を満たす場合に、熱的に安定していると見なされる。さらに他の実施形態では、コーティングされたガラス容器は、約30分間、少なくとも約330℃又はさらに約340℃の温度で基準を満たす場合に、熱的に安定していると見なされる。さらに他の実施形態では、コーティングされたガラス容器は、約30分間、少なくとも約350℃又はさらに約360℃の温度で基準を満たす場合に、熱的に安定していると見なされる。他の幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器は、約30分間、少なくとも約370℃又はさらに約380℃の温度で基準を満たす場合に、熱的に安定していると見なされる。さらに他の実施形態では、コーティングされたガラス容器は、約30分間、少なくとも約390℃又はさらに約400℃の温度で基準を満たす場合に、熱的に安定していると見なされる。
【0120】
本明細書に開示されるコーティングされたガラス容器はまた、ある温度範囲にわたって熱的に安定にすることができ、これは、コーティングされたガラス容器が範囲内の各温度で摩擦係数基準と水平圧縮強度基準を満たすことによって、熱的に安定していることを意味する。例えば、本明細書に記載される実施形態では、コーティングされたガラス容器は、少なくとも約250℃(又は、260℃又は280℃)から約400℃以下の温度まで熱的に安定でありうる。幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器は、少なくとも約250℃(又は、260℃又は280℃)から約350℃までの範囲で熱的に安定でありうる。他の幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器は、少なくとも約280℃から約350℃以下の温度まで熱的に安定でありうる。さらに他の実施形態では、コーティングされたガラス容器は、少なくとも約290℃から約340℃まで熱的に安定でありうる。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器は、約300℃から約380℃の範囲の温度で熱的に安定でありうる。別の実施形態では、コーティングされたガラス容器は、約320℃から約360℃の範囲の温度で熱的に安定でありうる。
【0121】
本明細書に記載されるコーティングされたガラス容器は4点曲げ強度を有する。ガラス容器の4点曲げ強度を測定するため、コーティングされたガラス容器100の前駆体であるガラス管が測定に利用される。ガラス管は、ガラス容器と同じ直径を有するが、ガラス容器の基部又はガラス容器の口を備えていない(すなわち、管をガラス容器へと成形する前)。次に、ガラス管を4点曲げ応力試験に供し、機械的破損を誘発する。試験は、相対湿度50%で、外側接触部材を9インチ(約22.86cm)離間させ、内側接触部材を3インチ(約7.62cm)離間させて、10mm/分の負荷速度で実施する。
【0122】
4点曲げ応力測定は、コーティングし、摩耗させた管に対しても行うことができる。摩耗させたバイアルの水平圧縮強度の測定で説明したように、試験ジグ200の動作により、管の強度を弱める表面引っかき傷などの管表面の摩耗が生じうる。次に、ガラス管を4点曲げ応力試験に供し、機械的破損を誘発する。試験は、9インチ(約22.86cm)離間させた外側プローブと3インチ(約7.62cm)離間させた内側接触部材を使用して、10mm/分の負荷速度で、25℃及び相対湿度50%で行われるが、管は、試験中に引っかき傷が張力下に置かれるように位置づけられる。
【0123】
幾つかの実施形態では、摩耗後のコーティングを有するガラス管の4点曲げ強度は、同じ条件下で摩耗させたコーティングされていないガラス管より、平均で少なくとも10%、20%、又はさらに50%高い機械的強度を示す。
【0124】
幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器100を30Nの垂直力で同一のガラス容器によって摩耗させた後、コーティングされたガラス容器100の摩耗領域の摩擦係数は、同じ場所で30Nの垂直力で同一のガラス容器による別の摩耗の後に、約20%を超えて増加しないか、又はまったく増加しない。他の実施形態では、コーティングされたガラス容器100を30Nの垂直力で同一のガラス容器によって摩耗させた後、コーティングされたガラス容器100の摩耗領域の摩擦係数は、同じ場所で30Nの垂直力で同一のガラス容器による別の摩耗の後に、約15%又はさらに10%を超えて増加しないか、又はまったく増加しない。しかしながら、コーティングされたガラス容器100のすべての実施形態がこのような特性を示す必要はない。
【0125】
幾つかの実施形態では、コーティングされたガラス容器100は、接着ラベルを受け入れることができるコーティング120を有しうる。すなわち、コーティングされたガラス容器100は、接着剤ラベルがしっかりと付着するように、コーティングされた表面に接着剤ラベルを受け入れることができる。しかしながら、接着剤ラベルを付着させる能力は、本明細書に記載のコーティングされたガラス容器100のすべての実施形態の要件というわけではない。
【0126】
幾つかの非限定的な態様が本明細書に開示される。第1の態様は、コーティングされた医薬品包装を含み、該コーティングされた医薬品包装は、第1の表面と該第1の表面とは反対側の第2の表面とを備えたガラス容器であって、第1の表面がガラス容器の外面であり、コーティングされていない状態のガラス容器がコーティングされた包装の単一の壁を通過する少なくとも50%のUVB及びUVCスペクトルにおける平均光透過率を有する、ガラス容器;及び、ガラス容器の第1の表面の少なくとも一部の上に位置づけられたコーティングであって、コーティングされた医薬品包装がコーティングされた包装の単一の壁を通過する50%未満のUVCスペクトルにおける平均光透過率を有し、コーティングされた医薬品包装が、400nmから450nmまでのすべての波長において、20%未満の光透過率を有する、コーティングを含む。
【0127】
別の態様は、コーティングされた包装がUSP<660>着色ガラス容器についての分光透過(Spectral Transmission for Colored Glass Containers)の基準を満たす、前述の態様のいずれかを含む。
【0128】
別の態様は、コーティングされていない状態のガラス容器が可視的に無色である、前述の態様のいずれかを含む。
【0129】
別の態様は、コーティングが、ポリマーと、銅、銀、又は鉄のうちの1つ以上とを含む、前述の態様のいずれかを含む。
【0130】
別の態様は、ポリマーがポリイミドである、前述の態様のいずれかを含む。
【0131】
別の態様は、コーティングが還元剤をさらに含む、前述の態様のいずれかを含む。
【0132】
別の態様は、還元剤がシランである、前述の態様のいずれかを含む。
【0133】
別の態様は、コーティングが、シランと、銀、銅、又は鉄のうちの1つ以上とを含むカップリング剤層を含み、ポリイミドを含むポリマー層をさらに含む、前述の態様のいずれかを含む。
【0134】
別の態様は、コーティングが、ポリイミド;チタニア、アルミナ、又はジルコニアのうちの1つ以上;及び、銀、銅、又は鉄のうちの1つ以上を含む、混合層を含む、前述の態様のいずれかを含む。
【0135】
別の態様は、コーティングされた医薬品包装を含み、該コーティングされた医薬品包装は、第1の表面と該第1の表面とは反対側の第2の表面とを備えたガラス容器であって、第1の表面はガラス容器の外面であり、コーティングされていない状態のガラス容器は、コーティングされた包装の単一の壁を通過する少なくとも50%のUVB及びUVCスペクトルにおける平均光透過率を有する、ガラス容器;及び、ガラス容器の第1の表面の少なくとも一部の上に位置づけられたコーティングであって、コーティングされた医薬品包装が、コーティングされた包装の単一の壁を通過する50%未満のUVCスペクトルにおける平均光透過率を有し、コーティングされた医薬品包装が可視的に無色である、コーティングを含む。
【0136】
別の態様は、コーティングが、少なくとも高屈折率層と低屈折率層とを含むBraggミラーを含み、高屈折率層が、低屈折率層の屈折率より少なくとも0.5大きい屈折率を有する、前述の態様のいずれかを含む。
【0137】
別の態様は、コーティングが少なくとも高屈折率層と低屈折率層とを含むハイパスフィルタを含み、高屈折率層が低屈折率層の屈折率より少なくとも0.5大きい屈折率を有する、前述の態様のいずれかを含む。
【0138】
別の態様は、ハイパスバンドフィルタが、少なくとも、吸収層によって分離された高屈折率層と低屈折率層とを含むファブリ・ペロー空洞フィルタを含み、高屈折率層が、低屈折率層の屈折率より少なくとも0.5大きい屈折率を有する、前述の態様のいずれかを含む。
【0139】
別の態様は、コーティングが、ガラス容器と接触し、かつポリイミドと、アルミナ、チタニア、又はジルコニアのうちの1つ以上とを含む第1の層;及び、第1の層の上にあり、ポリイミドからなる第2の層を含む、前述の態様のいずれかを含む。
【0140】
別の態様は、コーティングが空洞を含み、コーティングの屈折率が空洞の屈折率より少なくとも0.5大きい、前述の態様のいずれかを含む。
【0141】
別の態様は、空洞が、熱処理中に、犠牲材料の分解又は揮発によって形成される、前述の態様のいずれかを含む。
【0142】
別の態様は、コーティングが1つ以上の化合物を含み、該1つ以上の化合物が紫外光を吸収し、吸収されたエネルギーの少なくとも50%を熱として放散する、前述の態様のいずれかを含む。
【0143】
別の態様は、1つ以上の化合物が、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、及びオキサルアニリド類のうちの1つ以上を含む、前述の態様のいずれかを含む。
【0144】
別の態様は、コーティングが1つ以上のフォトクロミック化合物を含み、該1つ以上のフォトクロミック化合物が第1の吸収スペクトルと第2の吸収スペクトルとを示し;十分な強度の紫外光に十分な時間曝露したときに、フォトクロミック化合物が第2の吸収スペクトルを示し;かつ、第2の吸収スペクトルが第1の吸収スペクトルより少なくとも5%多い紫外光を吸収する、前述の態様のいずれかを含む。
【0145】
別の態様は、1つ以上のフォトクロミック化合物がヘキサアリールビイミダキソール類、ジアリールエテン類、フォトクロミックキノン類、又は亜鉛化合物のうちの1つ以上を含みうる、前述の態様のいずれかを含む。
【実施例】
【0146】
コーティングを有するガラス容器のさまざまな実施形態は、以下の実施例によってさらに明らかになるであろう。実施例は本質的に例示であり、本開示の主題を限定するものと理解されるべきではない。すべての実施例において、コーティングされていないバイアルは、別段の指定がない限り、肉眼では無色であったことが理解されるべきである。また、すべての光透過は、ガラスバイアルの単一の壁を通過するものとして報告されるが、これは、バイアルを半分に切断することによって、又はバイアルの2つの壁を通る光透過測定量を計算することによって測定することができる。
【0147】
実施例1 - ポリイミド単層
イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスバイアル(外径16.75mm)をPMDA-ODA Kaptonポリイミドコーティングでコーティングした。バイアルは、コーティング前は、目視では無色であった。分光透過データは、コーティングされていないバイアル(301)、コーティングされたバイアル(302)、及び市場で一般的な比較用の琥珀色のバイアル(303)について
図7に提供されている。バイアルの2つの壁を通過する光のスペクトルデータを収集した。
図7に示されるように、コーティングされたバイアルは、多くのUV波長で琥珀色のバイアルと同等の適切なUV保護をもたらした。UVスペクトル全体にわたり、10%未満の透過率が観察された。
【0148】
実施例2 - 金属酸化物/ポリイミド混合層
アルミノケイ酸塩ガラスにコーティングを施した。コーティングは、Tyzor BTP(市販のn-ブチルポリチタネート)をNexolve CP1(市販のポリイミド)と、95/5のTyzor BTP/CP1の重量比で混合することによって調製した。コーティング混合物は、3.35質量%の固形分(すなわち、Tyzor BTP及びCP1)を含み、残りは溶媒であった。7/93及び10/90の追加の固体比も試験した。溶媒は、n-プロピルアセテート及びDowanol PMAからなり、重量比は89/7であった。エアレススプレーで多数のバイアルにコーティングを噴霧した。次に、コーティングを対流式オーブン内で350℃で硬化させた。
【0149】
コーティングの厚さは、噴霧時間と、使用する固形分の割合を制御することによって変化させた。表1は、コーティングの噴霧時間と結果の平均厚さ、並びに試験した試料の数を示している。試料はすべて0.5未満の摩擦係数を有していた。
【0150】
表1の試料A~Kの各々について光透過率を試験した。光透過率が
図13に示されており、表1には各試料に対応する図番号が提示されている。光透過率は、3か所で測定され、平均された1つのバイアルから決定した。
【0151】
【0152】
表1及び
図13のデータから分かるように、コーティングの厚さに関係なく、UV保護は比較的良好であった。追加のコーティングを施しても、実質的により多くのUV保護は得られなかった。フィルムの厚さと高い反射率に起因する薄膜の光干渉効果の理由から、厚さを増加しても減衰が直線的に増加するわけではないと考えられる。
【0153】
実施例3 - ポリイミド/金属酸化物の混合下層とポリイミド上層
Tyzor BTP(市販のn-ブチルポリチタネート)とNexolve CP1(市販のポリイミド)とを95/5のTyzor BTP/CP1重量比で含むコーティングを、実施例2と同様に3.35の固形分質量%で施した。実施例2に開示されるように、コーティングを施し、硬化させた。次に、最初の層の上に、溶媒中のCP1の固形分質量%を変化させたCP1のみの層を施し、噴霧時間及び/又は浸漬を制御して、外側コーティング層の所望の厚さを達成した。CP1の外側コーティング層も同様に350℃で硬化させた。
【0154】
表2の試料L~Oの各々について光透過率を試験した。試料Pは剥き出しのガラス(コーティングされていない)を示している。光透過率が
図14に示されており、表2には各試料に対応する図番号が提示されている。光透過率は、3か所で測定され、平均された1つのバイアルから決定した。試料はすべて0.5未満の摩擦係数を有しており、肉眼では無色であった。
【0155】
【0156】
ポリイミド上層の厚さの変化から分かるように、フィルムの厚さと高い反射率に起因する薄膜の光干渉効果の理由から、厚さが増加しても減衰が直線的に増加するわけではない。
【0157】
実施例4 - アミノプロピルシルセスキオキサン下層とポリイミド上層
コーティングされた医薬品包装を次のように調製した。コーティングするバイアルを脱イオン水で洗浄し、窒素を吹き付けて乾燥させ、最後にコーティング前に酸素プラズマに15秒間曝露することによって洗浄した。次に、バイアルを以下のように浸漬コーティングした。最初に、アミノプロピルシルセスキオキサン(SSQ)の密着層を、4質量%のSSQを使用した浸漬コーティングによってガラス表面に施した。4質量%のSSQ溶液は、ABCR社から参照AB127715、CAS番号29159-37-3で入手可能な22~25%のストックSSQ溶液から調整し、メタノールと水の混合液で希釈した。
【0158】
SSQ密着層を、200mm/分の引き上げ速度で浸漬コーティングによって堆積させ、150℃で8分間硬化させた。得られた150nmの厚さのSSQ密着層をPMDA-ODAポリイミド層でオーバーコートした。ポリイミド層は、NMP/キシレン(参照575771でSigma Aldrich社から入手可能なCAS 25038-81-7)中のPMDA-ODAポリアミド酸から調整し、そのトリエチルアミン(TEA)塩の形態に変換し、メタノールに溶解させた。PMDA-ODA-TEA溶液の濃度は3.6質量%であった。異なる厚さを示すコーティングは、50、200、400、700、1000mm/分の範囲の引き上げ速度で浸漬コーティングによって調製した。PMDA-ODAコーティングを360℃で15分間硬化させ、イミド化反応を生じさせた。コーティングされたバイアルは可視的に黄色であり、厚さとともに黄色の強度が増加した。
【0159】
コーティングの厚さは、ZYGO干渉計を使用して決定し、コーティングの合計の厚さを正確に測定した。0.5から約2.2μmの範囲の厚さが達成された。測定された厚さは、
図8に示されており、そこには、400nmでの各試料の光透過率も示されている。積分球DRA2500を備えたAgilent社の分光光度計Cary5000を使用して、バイアルの2つの壁を通過する光透過率を測定した。
図10は、コーティングされていないバイアル(370)に対し、400mm/分で浸漬された試料(372)の透過スペクトルを示している。
【0160】
次いで、ダイヤモンドを使用してバイアルを縦方向に半分に切断し、400mm/分の浸漬コーティング速度で調製したSSQ/PMDA-ODAコーティングの単一の壁を通して透過率を測定した。
図9は、コーティングされていないバイアルとコーティングされたバイアルについて得られた透過曲線を示している。以下の表3は、ポリイミド層の堆積(すなわち、PMDA-ODA外層)に利用した浸漬速度を示している。1つの試料は参照としてコーティングせず、別の試料は別の参照としてSSQでコーティングしたが、PMDA-ODAは用いなかった。
【0161】
【0162】
図9に示されるように、幾つかの試料では、UVB及びUVC放射の大部分又はすべてが遮断されているが、可視範囲の透過率は比較的良好なままである。
【0163】
コーティングされた医薬品包装から260℃で30分間発熱物質を除去し、バイアル・オン・バイアル試験ジグを使用して30Nの負荷で引っかき試験に供した。摩擦係数とは、バイアル・オン・バイアル試験ジグで測定した、30Nの垂直荷重で測定した摩擦係数を指す。COF試験は、硬化した試料、すなわち、360℃で15時間の熱処理の後に260℃で0.25時間の熱処理した後の試料において実施した。30Nの荷重で試験した後、表面に引っかき傷はなく、摩耗も見られなかった。平均摩擦係数(COF)は0.22と測定された。
【0164】
実施例5 - ポリイミドコーティングに取り込まれたコロイド銀
この実施例は、銀イオンのin-situ還元によって製造されたUV遮断性ポリイミドフィルムを有するガラス包装の調製を示す。0.9gのAgNO3を11mLのエタノールに溶解し、続いて7.68gのN-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(CAS番号1760-24-3、Sigma Aldrich社から参照104884の下で入手可能)を加えることにより、銀塩粒子懸濁液を調製した。懸濁液を室温で24時間熟成させた。次いで、この銀粒子懸濁液の上澄み液10gを、1.46gの、トリエチルアミン塩の形態のPMDA-ODAポリアミド酸、13gのメタノール、4.2gのNMP、及び1gのキシレンからなるポリアミド酸溶液20gに添加することによってコーティング組成物を作製した。手動混合によって溶液を均質化した。次いで、清潔なガラスバイアルを、上述のポリアミン酸/銀混合物の溶液を使用して浸漬コーティングした。その後、約500℃に設定されたエアガンによって供給される熱風を使用してコーティングされたバイアルを乾燥させ、続いて350℃で0.25時間熱処理した。
【0165】
コーティングされたバイアルは、銀を含まないPMDA-ODAコーティングよりも暗い茶色を示した。バイアル・オン・バイアル試験ジグを使用して、バイアルを30N荷重下で引っかき試験に供した。30Nの荷重で試験した後のコーティングの表面の顕微鏡写真は、表面に引っかき傷がなく、摩耗が見られず、平均摩擦係数(COF)が0.22である(y軸がCOFを表し、x軸が引っかき試験の時間又は距離を表す、
図11に示した)ことを示した。
【0166】
実施例6 - 別のポリイミドコーティングに取り込まれた銀
PMDA-ODAポリアミド酸をNEXOLVE社からLARC-CP1として市販されている6FDA-4-BDAFポリイミドに置き換えたことを除き、実施例5のプロトコルを繰り返した。酢酸n-プロピルに溶解した3.5質量%のLARC-CP1ポリイミド20mlに、実施例5で調製したものと同様であるが、異なる還元剤を使用して10mlのN-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン-AgNO3-EtOH混合物を添加することによって、溶液を調製した。浸漬コーティングの後、湿った層を約500℃に設定された穏やかな熱気流下で2~3分間乾燥させた後、琥珀茶色が現れた。次いで、コーティングを60℃で15分間、後硬化した。琥珀色のバイアルが得られた。
【0167】
実施例7 - 密着層アンダーコートに取り込まれた銅及び鉄
この実施例では、鉄イオンと銅イオンのin-situ還元によって作られたUV遮断性密着層を有し、かつ透明なLARC-CP1ポリイミドコーティング(NEXOLVE社から参照LARC-CP1として市販される、6FDA-4-BDAFポリイミド)で作られたオーバーコートを有する、ガラス包装の準備について説明する。
【0168】
0.126gの硝酸銅及び0.91gの硝酸鉄を13gのプルーフエタノールに溶解し、続いて8.75gのN-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンを添加することによって、銅と鉄の両方の塩粒子を含む懸濁液を調製した。この溶液を24時間熟成させた。次に、洗浄したガラスバイアルを300mm/分の引き上げ速度で浸漬コーティングして、この溶液をガラス上にコーティングした。その後、約600℃に設定されたエアガンによって供給される熱風を3分間使用して、コーティングされたバイアルを乾燥させた。密着層のみのCOFは約0.52であり、引っかき傷に対して良好なガラス保護を有することが判明した。COFをさらに低減するために、さらに、UV遮断性密着層が施されたバイアルを、続いて、酢酸n-プロピルに溶解したLARC-CP1から調製した、3.5質量%の透明なポリイミド溶液を使用して浸漬コーティングした。得られたコーティングは、ポリイミド上層を有する琥珀色の密着層でできており、約0.27のCOFを示した。ダイヤモンドを使用して1つのバイアルを縦方向に2つに切断し、1つの壁を通して透過率を測定した。コーティングされていないバイアル(380)及びコーティングされたガラスバイアル(382)の透過率がそれぞれ
図12に示されている。
【0169】
実施例8 - チタン/ポリイミドの混合コーティングに取り込まれた鉄
95gの酢酸n-プロピル中、3gのチタンブトキシド(5593-70-4、Sigma Aldrich社)及び2gのメタクリル酸鉄(III)(CAS# 94275-77-1、Gelest社)の溶液を調製し、室温で3日間保存した。この溶液は、非常に黄色がかった琥珀色をした着色複合体を形成した。この溶液に、0.25gのNexolve無色ポリイミドCP1を添加し、溶解するまで混合した(2時間)。バイアルを溶液に浸し、240mm/分で取り出した。次に、バイアルを吸い取り乾燥し、メッシュラック上に置き、続いて350℃で硬化させた。
【0170】
一部の試料では、最初の層の上にCP1ポリイミドの追加の外層を施し、硬化させた。CP1ポリイミドを、固形分3質量%の溶液中、240mm/分の浸漬速度で適用し、350℃で硬化させた。
【0171】
実施例9
実施例8と同一のコーティングを適用したが、メタクリル酸鉄(III)の代わりに、1.8gの2,4-ペンタンジオン酸鉄(III)(CAS#14024-18-1、Gelest社)を添加した。
【0172】
特許請求の範囲に記載の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態にさまざまな修正及び変更を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本明細書は、このような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に入る限り、本明細書に記載されるさまざまな実施形態の修正及び変更に及ぶことが意図されている。
【0173】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0174】
実施形態1
コーティングされた医薬品包装において、
第1の表面と前記第1の表面とは反対側の第2の表面とを備えたガラス容器であって、前記第1の表面が前記ガラス容器の外面であり、コーティングされていない状態の前記ガラス容器が、前記コーティングされた包装の単一の壁を通過する少なくとも50%のUVB及びUVCスペクトルにおける平均光透過率を有する、ガラス容器、及び
前記ガラス容器の前記第1の表面の少なくとも一部の上に位置づけられたコーティングであって、前記コーティングされた医薬品包装が、前記コーティングされた包装の単一の壁を通過する50%未満の前記UVCスペクトルにおける平均光透過率を有し、かつ前記コーティングされた医薬品包装が、400nmから450nmまでのすべての波長において、20%未満の光透過率を有する、コーティング
を含む、コーティングされた医薬品包装。
【0175】
実施形態2
前記コーティングされた医薬品包装が、USP<660>着色ガラス容器についての分光透過(Spectral Transmission for Colored Glass Containers)の基準を満たす、実施形態1に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0176】
実施形態3
コーティングされていない状態の前記ガラス容器が可視的に無色である、実施形態1又は2に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0177】
実施形態4
前記コーティングが、ポリマーと、銅、銀、又は鉄のうちの1つ以上とを含む、実施形態1から3のいずれかに記載のコーティングされた医薬品包装。
【0178】
実施形態5
前記ポリマーがポリイミドである、実施形態4に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0179】
実施形態6
前記コーティングが還元剤をさらに含む、実施形態4に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0180】
実施形態7
前記還元剤がシランである、実施形態6に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0181】
実施形態8
前記コーティングが、
シラン及び、銀、銅、又は鉄のうちの1つ以上、及び
ポリイミドを含むポリマー層
を含むカップリング剤層
を含む、実施形態1から7のいずれかに記載のコーティングされた医薬品包装。
【0182】
実施形態9
前記コーティングが、
ポリイミド、
チタニア、アルミナ、又はジルコニアのうちの1つ以上、及び
銀、銅、又は鉄のうちの1つ以上
を含む混合層
を含む、実施形態1から8のいずれかに記載のコーティングされた医薬品包装。
【0183】
実施形態10
コーティングされた医薬品包装において、
第1の表面と前記第1の表面とは反対側の第2の表面とを備えたガラス容器であって、前記第1の表面が前記ガラス容器の外面であり、コーティングされていない状態の前記ガラス容器が、前記コーティングされた包装の単一の壁を通過する少なくとも50%のUVB及びUVCスペクトルにおける平均光透過率を有する、ガラス容器、及び
前記ガラス容器の前記第1の表面の少なくとも一部の上に位置づけられたコーティングであって、前記コーティングされた医薬品包装が、前記コーティングされた包装の単一の壁を通過する50%未満の前記UVCスペクトルにおける平均光透過率を有し、かつ前記コーティングされた医薬品包装が可視的に無色である、コーティング
を含む、コーティングされた医薬品包装。
【0184】
実施形態11
前記コーティングが少なくとも高屈折率層と低屈折率層とを含むBraggミラーを含み、前記高屈折率層が前記低屈折率層の屈折率より少なくとも0.5大きい屈折率を有する、実施形態10に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0185】
実施形態12
前記コーティングが少なくとも高屈折率層と低屈折率層とを含むハイパスフィルタを含み、前記高屈折率層が前記低屈折率層の屈折率より少なくとも0.5大きい屈折率を有する、実施形態10に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0186】
実施形態13
前記ハイパスバンドフィルタが、少なくとも、吸収層によって分離された高屈折率層と低屈折率層とを含むファブリ・ペロー空洞フィルタであり、前記高屈折率層が前記低屈折率層の屈折率より少なくとも0.5大きい屈折率を有する、実施形態12に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0187】
実施形態14
前記コーティングが、
前記ガラス容器と接触し、かつポリイミドと、アルミナ、チタニア、又はジルコニアのうちの1つ以上とを含む、第1の層、及び
前記第1の層の上にあり、ポリイミドからなる第2の層
を含む、実施形態10に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0188】
実施形態15
前記コーティングが空洞を含み、前記コーティングの屈折率が前記空洞の屈折率より少なくとも0.5大きい、実施形態10に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0189】
実施形態16
前記空洞が、熱処理中に犠牲材料の分解又は揮発によって形成される、実施形態15に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0190】
実施形態17
前記コーティングが1つ以上の化合物を含み、前記1つ以上の化合物が紫外光を吸収し、前記吸収されたエネルギーの少なくとも50%を熱として放散する、実施形態10に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0191】
実施形態18
前記1つ以上の化合物が、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、及びオキサルアニリド類のうちの1つ以上を含む、実施形態17に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0192】
実施形態19
前記コーティングが1つ以上のフォトクロミック化合物を含み、ここで、
前記1つ以上のフォトクロミック化合物が、第1の吸収スペクトルと第2の吸収スペクトルとを示し、
前記フォトクロミック化合物が、十分な強度の紫外光に十分な時間曝露したときに、前記第2の吸収スペクトルを示し、かつ
前記第2の吸収スペクトルが、前記第1の吸収スペクトルより少なくとも5%多い紫外光を吸収する、
実施形態10に記載のコーティングされた医薬品包装。
【0193】
実施形態20
前記1つ以上のフォトクロミック化合物が、ヘキサアリールビイミダキソール類、ジアリールエテン類、フォトクロミックキノン類、又は亜鉛化合物のうちの1つ以上を含みうる、実施形態19に記載のコーティングされた医薬品包装。
【符号の説明】
【0194】
100 ガラス容器
102 ガラス本体
104 ガラス容器壁
106 内容積
108 外面
110 内面
120 コーティング
122 外面
124 ガラス本体接触面
200 バイアル・オン・バイアル試験ジグ
210 第1のガラス容器
212 第1のクランプ
214 第1の固定アーム
216 第1のベース
220 第2のガラス容器
222 第2のクランプ
224 第2の固定アーム
226 第2のベース
230 接触点
【国際調査報告】