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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(54)【発明の名称】インビボでのリンパ静脈吻合
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230919BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230919BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230919BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230919BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230919BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230919BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230919BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20230919BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
A61P9/00
A61K35/76
A61K31/7088
A61K48/00
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514959
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 US2021048404
(87)【国際公開番号】W WO2022051265
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】63/074,890
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】セーン,チャンダン・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ハサイネイン,アラジン
(72)【発明者】
【氏名】シンハ,ミトゥン
【テーマコード(参考)】
4B029
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B029AA24
4B029BB11
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA36
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA36
(57)【要約】
隣接した静脈系血管とリンパ静脈吻合を形成するようにリンパ組織を誘導するためにリンパ組織をリプログラミングするための組成物ならびにインビトロおよびインビボでの方法が本明細書で開示される。
【選択図】図5C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ管新生を必要とする対象においてインビボでリンパ管新生を誘導するための方法であって、プロスペロホメオボックスタンパク質1(Prox 1)、SH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP-76)、及びポドプラニン(Pdpn)からなる群から選択されるタンパク質のインビボ活性を増加させる遺伝子産物をコードする核酸を含む組成物を該対象の皮膚組織にトランスフェクトするステップを含む、上記方法。
【請求項2】
皮膚組織が、Prox 1、Slp 76、及びPdpnからなる群から選択されるタンパク質をコードする核酸配列でトランスフェクトされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
皮膚組織が、Prox 1をコードする核酸配列でトランスフェクトされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
トランスフェクトされる核酸が、配列番号3と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
皮膚組織のトランスフェクションが組織ナノトランスフェクションによる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
隣接した静脈系血管とリンパ静脈吻合(LVA)を形成することに対する受容性がより高いようにリンパ組織の細胞をリプログラミングする方法であって、
脾臓チロシンキナーゼ(Syk)核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;及び
Prox 1をコードする第3の核酸配列;
を含むDNAを、リンパ組織の細胞の中へ細胞内送達するステップを含む、上記方法。
【請求項7】
1つ又は複数の発現ベクターがリンパ組織の細胞の中へ細胞内送達され、該発現ベクターが第1、第2、及び第3の核酸配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1、第2、及び第3の核酸配列がそれぞれ、インビボでリンパ組織の細胞のサイトゾルへ同時に送達される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
第1、第2、及び第3の核酸配列のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、該発現ベクターが、2つ以上の第1、第2、及び第3の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、該多重コード配列が、2つ以上の第1、第2、及び第3の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第1、第2、及び第3の核酸配列のそれぞれが単一の発現ベクターに位置する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞内送達が組織ナノトランスフェクションによる、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
リンパ浮腫を有する対象においてインビボで、リンパ静脈吻合(LVA)形成を誘導する方法であって、
リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みを増強する条件下で標的リンパ組織の細胞をリプログラミング組成物と接触させることによって、インビボで標的リンパ組織をリプログラミングしてリプログラミング化リンパ組織を生じるステップを含み、
該リプログラミング組成物が
Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;及び
Prox 1をコードする第3の核酸配列;
を含む、上記方法。
【請求項13】
Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAが配列番号5又はその相補体の連続した10ヌクレオチドを含み、及びSlp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAが配列番号1又はその相補体の連続した10ヌクレオチドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みが組織ナノトランスフェクションにより誘導される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
第1、第2、及び第3の核酸のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、該発現ベクターが、第1、第2、及び第3の核酸配列のうちの2つ以上を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、該多重コード配列が、第1、第2、及び第3の核酸配列のうちの2つ以上のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
多重コード配列が、第1、第2、及び第3の核酸配列の3つ全部を含み、それぞれが、配列内リボソーム進入部位によって進められ、かつ単一の真核生物プロモーターと作動可能に連結されている、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
第1、第2、及び第3の核酸配列が、非ウイルスベクターの一部である、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
リンパ組織のインビボでのトランスフェクションを行うためのキットであって、
使い捨てナノトランスフェクションデバイス;ならびに
リプログラミングカクテル溶液が、
Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;及び
Prox 1をコードする第3の核酸配列;
を含む、リプログラミングカクテル
を含む、上記キット。
【請求項19】
ナノトランスフェクションデバイスが、リプログラミングカクテル溶液を受けるための1つ又は複数のコンパートメントを有する中空マイクロニードルアレイを含む、請求項18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2020年9月4日に出願された米国仮特許出願第63/074,890号の優先権を主張し、その米国仮特許出願の開示は、明示的に本明細書に組み入れられている。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組入れ
本明細書と同時に提出されかつ以下の通り識別される、コンピュータ可読ヌクレオチド/アミノ酸配列表は、全体として参照により組み入れられている:2021年8月24日に作成され、「342974_ST25.txt」と名付けられた、24キロバイトのACII(テキスト)ファイル。
【背景技術】
【0003】
リンパ浮腫は、リンパ液の蓄積による肢の腫脹を指し、リンパ節の除去またはリンパ節の損傷により引き起こされる。リンパ浮腫は、最も一般的には、癌の処置に起因するが、それは、原発性リンパ浮腫と呼ばれる稀な先天性状態の結果として起こり得る。リンパ浮腫は通常、癌手術後または放射線療法により起こり、世界中で約2億5千万人の人々を冒す慢性消耗性状態である。リンパ浮腫を治癒させる現在の処置は存在しない。
【0004】
前記状態は、主として、罹患部位においてリンパ管を静脈と融合することに頼るリンパ静脈吻合(LVA)の外科的介入を通して管理される。これは、リンパ液を循環系へ戻して排出するのを助ける。その技術は、最も一般的にはインドシアニングリーン(ICG)での画像化および蛍光画像化を通しての、リンパチャネルの同定に依存する。しかしながら、コンピュータ断層撮影法(CT)、リンパシンチグラフィ、および磁気共鳴リンパ管造影法を含むリンパチャネルの同定に用いられている追加の技術がある。
【0005】
いったん適切なチャネルが同定されたならば、レシピエント静脈が、スーパーマイクロサージャリー技術を用いる前記2つの間での吻合を生じるのに必要とされる。ICGリンパ管造影法を使って、リンパ管は容易に可視化される;しかしながら、レシピエント静脈および細静脈もまた、蛍光によるのではなく、リンパ管を交差する影として同定することができる。静脈の局在性について記載されている他の技術には、超音波検査法またはエコー検査法が挙げられる。
【0006】
リンパ管およびレシピエント静脈のミリメートル未満のサイズを考慮すると、吻合術は独特な困難を呈する。特に、リンパチャネルは、静脈より小さい場合が多く、リンパ管の壁は特に薄く、自重崩壊する場合が多く、針を管腔へ入れることを難しくしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、リンパ機能が欠損した対象において限局性リンパ管新生を誘導する治療的方法および作用物質の必要性が存在する。そのようなリンパ管新生は、リンパ浮腫を防止または処置するために用いることができる。本開示は、リンパ浮腫を防止/処置するために限局性リンパ管新生を、任意で組織ナノトランスフェクションテクノロジーの使用を通して、誘導するための標的治療を用いる方法を提供する。本明細書で開示されているように、限局性リンパ管新生はまた、マイクロサージャリーに関して直面する困難を回避するリンパ管とレシピエント静脈/細静脈との間での吻合を生じるために用いることができる。本明細書で開示されているように、組織ナノトランスフェクション(TNT)テクノロジーは、リンパ静脈シャントを形成するように天然組織を誘導する方法として用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
リンパ浮腫についての治療法はない。その状態は、保存的(例えば、加圧)および外科的介入を通して管理される。外科的介入は、1mm未満のリンパ管が静脈とマイクロサージャリー的に接続されるリンパ静脈吻合(LVA)による。
【0009】
本開示の一実施形態によれば、リンパ管新生を必要とする対象において限局性リンパ管新生を増加させる組成物および方法が提供される。一実施形態によれば、リンパ管新生作用物質、例えば生理活性ペプチドをコードする核酸を含む、組成物が、医薬組成物として製剤化される。一実施形態において、インビボでProx 1活性を増加させる遺伝子産物をコードする核酸配列を含む組成物が、皮膚組織へのトランスフェクションに適した組成物として製剤化される。一実施形態において、本明細書に開示されたリンパ管新生組成物の核酸は、組織ナノトランスフェクション(TNT)の使用を通して皮膚組織へトランスフェクトされる。一実施形態において、限局性リンパ管新生を増加させるためにリンパ管新生カクテルが皮膚細胞へトランスフェクトされる、リンパ機能が欠損した患者を処置する方法が提供される。一実施形態において、リンパ管新生カクテルは、Prox 1をコードする核酸を含む。一実施形態において、リンパ管新生カクテルは、プロスペロホメオボックスタンパク質(Prospero homeobox protein)1(Prox 1)、SH2ドメイン含有白血球タンパク質(Slp-76)、およびポドプラニン(Pdpn)からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸を含む。一実施形態において、Prox 1をコードする核酸配列を含む非ウイルスベクターが提供され、前記核酸配列が、哺乳動物細胞においてコード化遺伝子産物の発現を可能にする制御配列と作動可能に連結されている。一実施形態において、制御配列は、真核生物プロモーターを含み、任意で、前記プロモーターが異種性プロモーターである。一実施形態によれば、リンパ管新生カクテルの核酸は、インビボで、ナノトランスフェクション(TNT)によって、より具体的には、実施例1に記載されかつ図2A~2Cに示されているようなTNTデバイスを用いて、皮膚組織細胞のサイトゾルへ導入される。
【0010】
本明細書で開示されているように、天然組織は、LVAを形成するように誘導することができ、それにしたがって、マイクロサージャリー的介入の必要性を回避する。胎児発生中、リンパ管は静脈から発生する。いったんリンパ管が形成されると、2つの遺伝子である、SH2ドメイン含有白血球タンパク質76(Slp-76)および脾臓チロシンキナーゼ(Syk)の発現が活性化され、そのことが、リンパ管が静脈から分離されたままであることを保証する。本出願人は、これらの2つの遺伝子の発現が下方制御されたならば、リンパ管が静脈へ融合して戻ることを発見した。そのプロセスは、リンパ管の成長を、任意でリンパ管新生を増加させるProx 1遺伝子のリンパ管細胞への送達を通して、増加させることにより、さらに促進させることができる。TNTを通して送達された遺伝子カクテルは、リンパ管およびリンパ静脈接続の増加を生じ、それは、最終的に、蓄積されたリンパ液を排出するのに役立つ。
【0011】
本開示の一実施形態によれば、リンパ管新生および/またはLVA形成は、TNTテクノロジーを用いて、外科的介入なしにインビボで、患者において遺伝子(Slp-76およびSyk)をサイレンシングさせ、かつProx 1遺伝子の発現を増加させることにより、生理的に刺激される。本手順は、外科的介入なしに、初めて成功裏にインビボで誘導されたリンパ管新生およびLVAを表す。
【0012】
一実施形態によれば、インビボでSlp-76およびSyk活性を減少させ、および任意で、インビボでProx 1活性を増加させる遺伝子産物をコードする核酸配列を含む組成物が提供される。一実施形態において、Slp-76およびSyk活性を減少させる遺伝子産物は、天然Slp-76およびSyk遺伝子の発現を阻害するiRNAまたは他の因子を含む。一実施形態において、Prox 1活性を増加させる核酸配列は、Prox 1をコードする核酸配列である。一実施形態において、Slp-76活性の阻害剤をコードする第1の核酸配列、Sykの阻害剤をコードする第2の核酸配列、およびProx 1をコードする第3の核酸配列を含み、前記第1、第2、および第3の核酸配列が、哺乳動物細胞においてコード化遺伝子産物の発現を可能にする制御配列と作動可能に連結されている、非ウイルスベクターが提供される。一実施形態において、非ウイルスベクターは、前記第1、第2、および第3の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、前記多重コード配列が、第1、第2、および第3の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む。一実施形態において、真核生物プロモーターは異種性プロモーターである。
【0013】
一実施形態によれば、リンパ管の、標的限局性エリアにおいて、隣接した静脈系血管と融合し、リンパ静脈吻合を形成する能力を増強するための方法が提供される。方法は、Slp-76およびSykの1つまたは複数の阻害剤をコードする遺伝子および任意で、Prox 1をコードする遺伝子のカクテルを、リンパ静脈吻合が望まれる限局性エリアへ導入するステップを含む。一実施形態において、遺伝子カクテルは、TNTの使用を通して、標的組織の細胞のサイトゾルへ送達される。一実施形態において、リンパ系の細胞が、トランスフェクトされた細胞内でSlp-76および/もしくはSyk活性の阻害剤ならびに/またはProx 1をコードする遺伝子を発現しまたはその発現を誘導する核酸配列をトランスフェクトされる。
【0014】
一実施形態において、リンパ組織が、Slp-76の阻害剤をコードする第1の核酸配列、Sykの阻害剤をコードする第2の核酸配列、およびProx 1をコードする第3の核酸配列をトランスフェクトされ、前記第1、第2、および第3の核酸配列のそれぞれが、トランスフェクトされた細胞において遺伝子産物の発現(転写および翻訳)を可能にする制御配列と作動可能に連結されている。一実施形態によれば、皮膚組織、任意でリンパ組織は、第1、第2、および第3の核酸配列を含む組成物をトランスフェクトされ、任意で、前記第1、第2、第3、および第4の核酸配列のそれぞれが、別々のプラスミドで提供される。一実施形態において、リンパ組織は、第1、第2、および第3の核酸配列を含む組成物をトランスフェクトされ、第1、第2、および第3の核酸配列のうちの2つ以上が単一のプラスミドに位置し、一実施形態において、第1、第2、および第3の核酸配列の3つ全部が、単一のプラスミドに位置する。
【0015】
本開示によれば、標的リンパ組織は、本明細書に開示されたリプログラミングカクテルのいずれかを、当業者に知られた任意の形質転換技術を用いて、トランスフェクトされることができる。一実施形態によれば、リプログラミングカクテルの核酸は、ナノトランスフェクション(TNT)によって、より具体的には、実施例1に記載されかつ図2A~2Cに示されたTNTデバイスを用いて、インビボでリンパ細胞のサイトゾルへ導入される。
【0016】
一実施形態によれば、実施例2に記載されかつ図5A~5Bに示されているように、リンパ組織をリプログラミングカクテル(例えば、PROX-1プラスミド)でターゲットすることによる、リンパ浮腫を防止もしくは最小限にし、または既存の浮腫を処置するための方法が提供される。
【0017】
一実施形態によれば、リンパ組織のインビボでのトランスフェクションを行い、リンパ組織の細胞を、隣接した静脈系血管とのLVAを形成するように誘導するためのキットが提供される。一実施形態において、キットは、使い捨てナノトランスフェクションデバイスおよびリプログラミングカクテルを含む。一実施形態において、ナノトランスフェクションデバイスは、リプログラミングカクテル溶液を受けるための1つもしくは複数のコンパートメントまたはリプログラミングカクテルを含むカートリッジを有する中空マイクロニードルアレイを含む。一態様において、中空マイクロニードルアレイは、デバイスのコンパートメントへ負荷される溶液との接触のために位置する電極(すなわち、任意で金めっきまたは銀めっきされた、陰極)、および患者の皮膚の皮内への挿入のために位置するニードル対電極(すなわち、陽極)を含む。一態様において、リプログラミングカクテル溶液は、Slp-76の阻害剤をコードする第1の核酸配列、Sykの阻害剤をコードする第2の核酸配列、およびProx 1をコードする第3の核酸配列を含む。一実施形態において、阻害剤は、Slp-76およびSyk、それぞれに特異的なコード化iRNAである。一態様によれば、ナノトランスフェクションデバイスは、リプログラミングカクテル溶液をあらかじめ負荷される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、剥離した皮膚上で行われ、かつ中空マイクロニードルにより媒介される、中空マイクロニードルアレイを有するチップに基づいたTNTプロセスの概略図を提供する。プラスミドDNA溶液(5)は、リザーバー(1)において保持され、中空マイクロニードルアレイの複数のマイクロニードル(2)と流体連結している。プラスミドDNA溶液(5)は、マイクロ秒レベルで与えられる方形電気パルスの下、表皮層(3)および真皮層(4)を含む皮膚組織へ送達される。
図2A図2A~Cは、様々なナノチャネルおよびマイクロニードルアレイを有するTNTチップの概略図を提供する。図2Aは、平らな先端を有するI型中空マイクロニードルアレイを示す。図2Bは、鋭い先端および中心にある穿孔を有するII型中空マイクロニードルアレイを示す。図2Cは、鋭い先端および中心からずれた穿孔を有するIII型中空マイクロニードルアレイを示す。各型のTNTチップについて、横断面図もまた示されている。
図2B】同上。
図2C】同上。
図3図3は、平らな先端を有するI型中空マイクロニードルアレイを用いて、タンパク質コード配列をマウスの細胞へ送達するためのTNTプロセスに関する詳細を提供する。より具体的には、タンパク質Slp 76をコードする核酸配列が、TNTによって送達された。TNTを用いるカーゴ送達の効率は、マウス尾でのFAM標識DNA送達を通して観察された。遺伝子slp 76(NM_010696)は、slp 76遺伝子についてのオープンリーディングフレーム(ORF)を含むプラスミドの形をとって、送達された。図3に示されているように、定量的リアルタイムPCRによって測定された場合、リンパ管新生促進性遺伝子slp 76の発現の増加が、TNTから72時間後、観察された。
図4A図4A~Cは、尾リンパ浮腫の回復中のリンパ管新生性遺伝子産物の発現の増加を示すデータを提供する。マウスは、リンパ浮腫を誘発するためにそれらの尾における切除手術に供せられ、リンパ管新生性遺伝子産物の発現が、手術後、モニターされた。リンパ浮腫の回復期中、定量的リアルタイムPCRによって測定された場合、手術後から75日目以降において、正常な尾、n=11(マウス)と比較して、Slp 76(図4A)、Prox 1(図4B)、及びPdpn(図4C)についてのリンパ管新生性遺伝子の発現の増加が観察された(p<0)。
図4B】同上。
図4C】同上。
図5A図5A~Cは、リンパ浮腫に対する保護としてのTNT処置の効力を示す。図5A及び図5Bは、TNTシャム対Prox-1をコードする核酸配列のTNTで処置されたマウス尾の写真である。TNT治療は、実験的リンパ浮腫マウス尾モデルにおいて、有意に、腫脹の量を減少させ、かつリンパ浮腫を最小限にする。図5Cは、マウス尾体積が、TNT処置Prox-1群においてベースライン近くに保持され、一方、TNTで処置されたが核酸を含有しなかったシャム群は、リンパ浮腫を示し、動物モデルについての標準としての自発的改善を生じていることを示すグラフである。
図5B】同上。
図5C】同上。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本発明を記載および主張することにおいて、以下の専門用語が、下記に示された定義に従って用いられる。
【0020】
本明細書で用いられる場合、用語「約」は、述べられた値または値の範囲より、10パーセント、大きいまたは小さいことを意味するが、いかなる値または値の範囲も、このより広い定義だけに限定されることを意図するものではない。用語「約」が前に付く各値または値の範囲はまた、述べられた絶対的な値または値の範囲の実施形態を包含することも意図される。
【0021】
本明細書で用いられる場合、用語「精製された」および同様の用語は、生来のまたは天然の環境において分子または化合物に通常、付随した夾雑物を実質的に含まない形をとる分子または化合物の単離に関する。本明細書で用いられる場合、用語「精製された」は、絶対的な純度を必要としない;むしろ、それは、相対的な定義として意図される。用語「精製されたポリペプチド」は、非限定的に核酸分子、脂質、および糖質を含む他の化合物から分離されているポリペプチドを記載するように本明細書で用いられる。
【0022】
用語「単離された」は、言及された材料が、それの本来の環境(例えば、それが天然に存在するならば、天然環境)から取り出されることを必要とする。例えば、生きている動物に存在する天然に存在するポリヌクレオチドは単離されていないが、その天然の系で共存する材料の一部または全部から分離された、同じポリヌクレオチドは、単離されている。
【0023】
組織ナノトランスフェクション(TNT)は、ナノスケールで、核酸配列およびタンパク質を細胞のサイトゾルへ送達する能力があるエレクトロポレーションに基づいた技術である。より具体的には、TNTは、アレイされたナノチャネルを通しての、非常に強くかつ集中的な電場を用い、並んでいる組織細胞メンバーに優しくナノポアを形成し、カーゴ(例えば、核酸またはタンパク質)を細胞へ電気泳動的に運ぶ。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「調節エレメント」または「制御配列」は、エンハンサー、プロモーター、5’および3’の非翻訳領域を含む、機能性遺伝子の非翻訳領域であり、宿主細胞のタンパク質と相互作用して、転写および翻訳を実行する。そのようなエレメントは、それらの強度および特異性で異なり得る。「真核生物制御配列」は、エンハンサー、プロモーター、5’および3’の非翻訳領域を含む、機能性遺伝子の非翻訳領域であり、哺乳動物細胞を含む真核細胞において、真核細胞の宿主細胞のタンパク質と相互作用して、転写および翻訳を実行する。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「プロモーター」は、遺伝子の転写開始部位に対して相対的に固定された位置にある場合に機能するDNAの1つまたは複数の配列である。「プロモーター」は、RNAポリメラーゼおよび転写因子の基本的な相互作用に必要とされるコアエレメントを含有し、上流エレメントおよび応答エレメントを含有することができる。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「エンハンサー」は、転写開始部位からの距離とは無関係に機能するDNAの配列であり、転写ユニットの5’側か3’側のいずれかにあり得る。さらに、エンハンサーは、イントロン内に、加えて、コード配列自体の内にあり得る。それらは、通常、長さが10bpから300bpの間であり、シスに機能する。エンハンサーは、近くのプロモーターからの転写を増加させるように機能する。プロモーターのように、エンハンサーもまた、しばしば、転写の制御を媒介する応答エレメントを含有する。エンハンサーは、発現の制御を決定する場合が多い。
【0027】
本明細書で用いられる場合、用語「同一性」は、2つ以上の配列間の類似性に関する。同一性は、同一の残基の数を残基の総数で割り、その結果に100を掛けて、パーセンテージを得ることにより、測定される。したがって、正確に同じ配列の2つのコピーは100%同一性を有し、一方、お互いに比べてアミノ酸欠失、付加、または置換を有する2つの配列はより低い程度の同一性を有する。BLAST(Basic Local Alignment Search Tool、Altschulら、(1993)J.Mol.Biol. 215:403~410)などのアルゴリズムを用いるものなどのいくつかのコンピュータプログラムが、配列同一性を決定するのに利用可能であることを当業者は認識しているだろう。
【0028】
本明細書で用いられる場合、用語「薬学的に許容される担体」は、標準の薬学的担体のいずれをも含み、例えば、リン酸緩衝食塩水溶液、水、油/水または水/油乳剤などの乳剤、および様々な型の湿潤剤などである。その用語はまた、ヒトを含む動物における使用について、米国連邦政府の規制当局により承認された、または米国薬局方に収載された作用物質のいずれをも包含する。
【0029】
本明細書で用いられる場合、用語「処置すること」は、特定の傷害もしくは状態に関連した症状の軽減、および/または前記症状を防止もしくは除去することを含む。
本明細書で用いられる場合、薬物の「有効」量または「治療的有効量」は、所望の効果を与えるための薬物の無毒だが、十分な量を指す。「有効」である量は、対象によって、または対象内でも時間とともに、個体の年齢および全身状態、投与様式、ならびにその他同種類のものによって、異なる。したがって、正確な「有効量」を特定することは常に可能とは限らない。しかしながら、任意の個々の症例における適切な「有効」量は、日常的な実験を用いて、当業者により決定され得る。
【0030】
本明細書で用いられる場合、さらなる指定なしでの用語「患者」は、医師の監督下であろうとなかろうと、治療的処置を受ける任意の温血脊椎動物の飼いならされた動物(例えば、非限定的に、家畜、ウマ、ネコ、イヌ、および他のペットを含む)およびヒトを包含することを意図される。
【0031】
用語「担体」は、コンパウンドまたは組成物と組み合わせた時、そのコンパウンドまたは組成物の調製、保存、投与、送達、有効性、選択性、または任意の他の特徴を、それの意図された使用または目的のために、助けまたは促進する、コンパウンド、組成物、物質、または構造を意味する。例えば、担体は、活性成分のいかなる分解も最小限にし、かつ対象におけるいかなる有害副作用も最小限にするように選択され得る。
【0032】
用語「阻害する」は、活性、応答、状態、疾患、または他の生物学的パラメータの減少を指す。これは、活性、応答、状態、または疾患の完全な消失を含み得るが、それに限定されない。これはまた、例えば、天然または対照レベルと比較した、活性、応答、状態、または疾患における10%低下を含み得る。したがって、低下は、天然または対照レベルと比較した、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または間の任意の量の低下であり得る。
【0033】
用語「ベクター」または「構築物」は、そのベクター配列が連結されている別の核酸を細胞へ輸送する能力がある核酸配列を示す。用語「発現ベクター」は、細胞による発現に適した形で(例えば、転写調節エレメントと連結された)遺伝子構築物を含有する任意のベクター(例えば、プラスミド、コスミド、またはファージ染色体)を含む。プラスミドが、ベクターの一般的に用いられる形であるため、「プラスミド」および「ベクター」は交換可能に用いられる。さらに、本発明は、等価の機能を果たす他のベクターを含むことを意図される。
【0034】
用語「作動可能に連結された」は、核酸の別の核酸配列との機能的関係を指す。プロモーター、エンハンサー、転写および翻訳終止部位、ならびに他のシグナル配列は、他の配列と作動可能に連結され得る核酸配列の例である。例えば、DNAの転写調節エレメントとの作動可能な連結は、そのようなDNAの転写が、そのDNAを特異的に認識し、結合し、かつ転写するRNAポリメラーゼによってプロモーターから開始されるような、DNAとプロモーターとの間の物理的および機能的関係を指す。
【0035】
実施形態
本開示の一実施形態によれば、リンパ機能が欠損した患者を処置する方法であって、リンパ機能不全により影響された組織が、リンパ管新生カクテルと、リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みを増強する条件下で接触する、方法が提供される。一実施形態において、リンパ管新生カクテルは、限局性リンパ管新生を増加させるために皮膚細胞へトランスフェクトされる。一実施形態によれば、方法は、リンパ機能が欠損した領域に非常に近い組織に、例えばProx 1の活性を増加させることを含む、リンパ管新生に関与する作用物質の活性を増強する核酸配列をトランスフェクトするステップを含む。一実施形態において、リンパ管新生カクテルは、罹患組織の細胞のサイトゾルへ導入され、Prox 1をコードする核酸を含む。一実施形態において、リンパ管新生カクテルは、Prox 1、Slp 76、およびPdpnからなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸配列を含む。一実施形態において、欠損したリンパ機能を示す組織の細胞は、配列番号2、配列番号3、および配列番号4からなる群から選択されるタンパク質と少なくとも95%配列同一性を有するタンパク質をコードする核酸配列をトランスフェクトされる。
【0036】
一実施形態において、リンパ機能が欠損している身体の領域(例えば、脚)に関連した皮膚組織が、限局性リンパ管新生を増強する核酸配列をトランスフェクトされる。一実施形態において、皮膚組織は、配列番号2、配列番号3、および配列番号4からなる群から選択されるタンパク質と少なくとも95%配列同一性を有するタンパク質をコードする核酸をトランスフェクトされる。一実施形態において、皮膚組織は、配列番号3と少なくとも95%配列同一性を有するタンパク質をコードする核酸をトランスフェクトされる。一実施形態において、本明細書に開示された核酸のいずれも、組織ナノトランスフェクション(TNT)の使用を通してインビボで標的組織の細胞へトランスフェクトされ得る。しかしながら、当業者に知られたトランスフェクション技術の代替方法もまた、本発明の核酸を細胞へトランスフェクトするために用いることができる。一実施形態において、Prox 1をコードする核酸配列を含む非ウイルスベクターであって、核酸配列が、哺乳動物細胞においてコード化遺伝子産物の発現を可能にする制御配列と作動可能に連結されている、ウイルスベクターが提供される。一実施形態において、制御配列は、真核生物プロモーターを含み、任意で、プロモーターは、異種性プロモーターである。一実施形態によれば、リンパ管新生カクテルの核酸は、ナノトランスフェクション(TNT)によって、より具体的には、実施例1に記載されかつ図2A~2Cに示されているようなTNTデバイスを用いて、インビボで皮膚組織細胞のサイトゾルへ導入される。
【0037】
本開示の別の実施形態において、リンパ組織においてProx 1の発現を増強し、ならびに任意で、Slp-76およびSykの発現を阻害するように、インビボで組織および細胞をトランスフェクトするための組成物および方法が提供される。一実施形態において、標的限局性領域においてリンパ静脈吻合(LVA)の形成を増強する方法が、リンパ浮腫を患う患者を処置するために提供される。一実施形態において、方法は、リンパ組織においてProx 1の発現を増強し、ならびに任意で、Slp-76およびSykの発現を阻害するようにインビボで組織および細胞をトランスフェクトするステップを含む。一実施形態によれば、リンパ浮腫を有する対象においてインビボでリンパ静脈吻合(LVA)形成を誘導する方法であって、標的リンパ組織が、限局性リンパ管新生を誘導しかつリンパ管とレシピエント静脈/細静脈との間に吻合を生じるように、インビボでリプログラミングされる方法が提供される。方法は、標的リンパ組織の細胞を、リプログラミング組成物と、リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みを増強する条件下で接触させるステップを含む。一実施形態において、リプログラミング組成物は
i)Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;または
ii)Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;または
iii)Prox 1をコードする第3の核酸配列;または
iv)i)およびiii)の組合せ;または
v)ii)およびiii)の組合せ;または
vi)i)、ii)、およびiii)の組合せ
を含む。
【0038】
一実施形態において、iRNAは、標的遺伝子、またはそれぞれの同定された遺伝子のコード化mRNAと特異的に結合する少なくとも10ヌクレオチドの核酸配列である。一実施形態において、Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAは、配列番号5またはその相補体の連続した10ヌクレオチド、15ヌクレオチド、20ヌクレオチド、または30ヌクレオチドの断片を含み、Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAは、配列番号1またはその相補体の連続した15ヌクレオチド、20ヌクレオチド、または30ヌクレオチドの断片を含む。
【0039】
本開示のポリヌクレオチドは、リンパ組織へ、遺伝子銃、そのような送達に適したマイクロ粒子もしくはナノ粒子、そのような送達に適したリポソームもしくは他の膜結合性ベシクル、DNAもしくはウイルスに基づいたベクターの注射、または3次元ナノチャネルエレクトロポレーション、組織ナノトランスフェクション(TNT)デバイス、もしくは深部局所組織ナノエレクトロインジェクションデバイスを用いるエレクトロポレーションによるトランスフェクションによって送達され得る。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターが用いられ得る。しかしながら、他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ウイルス性に送達されない。
【0040】
エレクトロポレーションは、細胞膜の透過性を増加させて、カーゴ(例えば、リプログラミング因子)を細胞へ導入させるために、電場が細胞に印加される技術である(図1参照)。エレクトロポレーションは、外来DNAを細胞へ導入するための一般的な技術である。図2A~2Cは、インビボで体細胞にトランスフェクトするために用いることができるマイクロチャネルおよびマイクロニードルアレイの例を提供する。そのようなデバイスに関する追加の詳細は、米国特許出願第62/903,298号および第62/877,060号に記載されており、その特許出願の開示は、明示的に参照により組み入れられている。
【0041】
組織ナノトランスフェクションは、アレイされたナノチャネルを通して非常に強くかつ集中的な電場を印加し、その印加が、並んでいる組織細胞メンバーに優しくナノポアを形成し、カーゴを細胞へ電気泳動的に運ぶことにより、カーゴ(例えば、リプログラミング因子)の細胞への直接的サイトゾル送達を可能にする。
【0042】
本発明の組成物は、薬学的担体をさらに含み得る。薬学的担体は当業者に知られている。これらは、最も典型的には、薬物のヒトへの投与のための標準担体であり、それには、滅菌水、食塩水、および生理的pHにおける緩衝溶液などの溶液が挙げられる。組成物は、筋肉内にまたは皮下に投与することができる。他のコンパウンドは、当業者に用いられる標準手順に従って投与される。
【0043】
TNTは、少しの実験手順の必要性もなしに、インビボでの免疫監視下で組織機能の直接的変換を引き起こす、限局性遺伝子送達のための方法を提供する。TNTをプラスミドと共に用いることにより、遺伝子の発現を時間的にかつ空間的に調節することが可能である。TNTでの空間的調節は、他の組織のトランスフェクションなしに、皮膚組織の一部分などの標的エリアのトランスフェクションを可能にする。
【0044】
実施例においてより詳細に開示されているように、核酸配列を含む負荷された薬物の効率的な皮膚性送達を可能にする中空ニードルアレイ構造がデザインされている。穿孔直径のサイズがnmからμmまでの範囲である、(図2A~2Cに概略的に示されているような)3つの異なる型のシリコン中空ニードルアレイが、TNT適用のために調製され得る。1秒足らずで、本明細書に開示されたシリコン中空ニードルアレイは、マウス、ラット、およびヒト組織において特定の深さまでの活性因子の送達を可能にする。
【0045】
一実施形態によれば、細胞および組織をリプログラミングし、より具体的には、インビボでリンパ組織をリプログラミングするための組成物が提供される。一実施形態において、その組成物は、Slp-76の阻害剤をコードする第1の核酸配列;Sykの阻害剤をコードする第2の核酸配列;Prox 1をコードする第3の核酸配列を含み、前記第1、第2、および第3の核酸配列のそれぞれが、哺乳動物細胞を含む真核細胞におけるコード化タンパク質の発現のための制御配列と作動可能に連結されている。一実施形態において、組成物は、第1、第2、および第3の核酸配列のそれぞれを含む。一実施形態において、組成物は、第1、第2、および第3の核酸、ならびに薬学的に許容される担体からなり、任意で、第1、第2、および第3の核酸配列のそれぞれが、異種性プロモーターと作動可能に連結されている。
【0046】
本出願人は、マウスにおいて、インビボで、外科的介入なしに、TNTテクノロジーを用いて、遺伝子(Slp-76およびSyk)をサイレンシングし、かつProx 1遺伝子の発現を増加させることにより、LVAを生理的に刺激した。これは、外科的介入なしにLVAを成功裏に誘導した初めてのアプローチである。
【0047】
一実施形態において、インビボでリンパ組織の細胞をトランスフェクトする方法であって、以下のステップ:
リンパ組織の前記細胞内に細胞内へと送達するステップであり
Syk核酸配列を含む第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列を含む第2の核酸配列;
および/または
Prox 1をコードする第3の核酸配列
を含むDNAを送達するステップ、
を含む方法が提供される。
【0048】
実施形態1によれば、リンパ管新生を必要とする対象においてインビボでリンパ管新生を誘導するための方法であって、プロスペロホメオボックスタンパク質1(Prox 1)、SH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP-76)、およびポドプラニン(Pdpn)からなる群から選択されるタンパク質のインビボ活性を増加させる遺伝子産物をコードする核酸を含む組成物と前記対象の皮膚組織を、組成物コンポーネントの取込みのための導電性の条件下で、接触させるステップを含み、任意で、組成物コンポーネントが、リンパ管新生を誘導する産物をコードする核酸である、方法が提供される。
【0049】
実施形態2によれば、対象の組織(例えば、皮膚)が、Prox 1、Slp 76、およびPdpnからなる群から選択されるタンパク質をコードする核酸配列をトランスフェクトされる、実施形態1に記載の方法が提供される。
【0050】
実施形態3によれば、皮膚組織がProx 1をコードする核酸配列をトランスフェクトされる、実施形態1または2に記載の方法が提供される。
実施形態4によれば、前記トランスフェクトされる核酸が、配列番号3のProx 1ペプチド配列と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0051】
実施形態5によれば、皮膚組織のトランスフェクションが組織ナノトランスフェクションによる、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法が提供される。
実施形態6によれば、隣接した静脈系血管とリンパ静脈吻合(LVA)を形成することに対する受容性がより高いようにリンパ組織の細胞をリプログラミングする方法であって、リンパ組織の前記細胞内に細胞内へと送達するステップであり、
Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;および
Prox 1をコードする第3の核酸配列
を含むDNAを送達するステップ
を含む方法が提供される。
【0052】
実施形態7によれば、1つまたは複数の発現ベクターが、前記リンパ組織の細胞内に細胞内へと送達され、前記発現ベクターが前記第1、第2、および第3の核酸配列を含む、実施形態6に記載の方法が提供される。
【0053】
実施形態8によれば、前記第1、第2、および第3の核酸配列がそれぞれ、インビボで前記リンパ組織の細胞のサイトゾルへ同時に送達される、実施形態6~7のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0054】
実施形態9によれば、前記第1、第2、および第3の核酸のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、発現ベクターが、前記2つ以上の第1、第2、および第3の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、前記多重コード配列が、前記2つ以上の第1、第2、および第3の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、実施形態6~8のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0055】
実施形態10によれば、前記第1、第2、および第3の核酸配列のそれぞれが単一の発現ベクターに位置する、実施形態6~9のいずれか1つに記載の方法が提供される。
実施形態11によれば、細胞内送達が組織ナノトランスフェクションによる、実施形態6~10のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0056】
実施形態12によれば、リンパ浮腫を有する対象においてインビボで、リンパ静脈吻合(LVA)形成を誘導する方法が提供され、
該方法は、インビボで標的リンパ組織をリプログラミングして、リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みを増強する条件下で標的リンパ組織の細胞をリプログラミング組成物と接触させることによって、リプログラミング化リンパ組織を生じるステップを含み、
該リプログラミング組成物は、
Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;および
Prox 1をコードする第3の核酸配列;
を含む。
【0057】
実施形態13によれば、Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAが配列番号5またはその相補体の連続した10ヌクレオチドを含み、およびSlp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAが配列番号1またはその相補体の連続した10ヌクレオチドを含む、実施形態12に記載の方法が提供される。
【0058】
実施形態14によれば、リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みが組織ナノトランスフェクションにより誘導される、実施形態12~13のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0059】
実施形態15によれば、前記第1、第2、および第3の核酸のうちの2つ以上が、発現ベクターの一部であり、発現ベクターが、前記第1、第2、および第3の核酸配列のうちの2つ以上を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、前記多重コード配列が、前記第1、第2、および第3の核酸配列のうちの2つ以上のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、実施形態12~4のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0060】
実施形態16によれば、前記多重コード配列が、前記第1、第2、および第3の核酸配列の3つ全部を含み、それぞれが、配列内リボソーム進入部位によって進められ、かつ前記単一の真核生物プロモーターと作動可能に連結されている、実施形態12~15のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0061】
実施形態17によれば、第1、第2、および第3の核酸配列が非ウイルスベクターの一部である、実施形態12~16のいずれか1つに記載の方法が提供される。
実施形態18によれば、リンパ組織のインビボでのトランスフェクションを行うためのキットであって、
使い捨てナノトランスフェクションデバイス;および
リプログラミングカクテル溶液が、Prox 1をコードする核酸配列を含む、リプログラミングカクテル
を含む、キットが提供される。
【0062】
実施形態19によれば、Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする核酸配列;および任意で、Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする核酸配列と共に、実施形態18に記載のキットがさらに提供される。
【0063】
実施形態20によれば、ナノトランスフェクションデバイスが、前記リプログラミングカクテル溶液を受けるための1つまたは複数のコンパートメントを有する中空マイクロニードルアレイを含む、実施形態18または19に記載のキットが提供される。
【実施例
【0064】
実施例1
リンパ浮腫のマウス尾モデルにおける遺伝子を送達および発現するためのTNTの使用
Slp 76オープンリーディングフレームを含むプラスミドベクターを、TNTを用いてマウス皮膚組織のサイトゾルへ送達した。60μgのSlp 76コードプラスミドを、TNTデバイスのリザーバーに負荷した。方形波パルス電気刺激(10×10msパルス、250V、10mA)を、電極にわたって与えて、アレイされたナノチャネルを通して、プラスミドを組織へ運んだ。TNTの検証を、定量的リアルタイムPCRによって測定された場合の、TNTから72時間後のSlp 76の発現の増加によって評価した。
【0065】
図3および図4A~4Cに示されているように、本出願人は、インビボで核酸配列をマウス細胞へ送達する能力、およびコード化遺伝子産物の発現を増強する能力を実証した。
実施例2
尾リンパ浮腫の回復中のリンパ管新生性遺伝子産物の発現の増強
リンパ浮腫のマウスモデルを用いて、手術誘発性リンパ浮腫後の遺伝子発現をモニターした。マウス(n=11)を、リンパ浮腫を誘発するためにそれらの尾における切除手術に供し、リンパ管新生性遺伝子産物の発現を、手術後、モニターした。図4A~4Cに示されているように、リンパ管新生性遺伝子産物の発現の増加が、尾リンパ浮腫の回復中、観察された。より具体的には、定量的リアルタイムPCRによって測定された場合、手術後75日目以降において、Slp 76(図4A)、Prox 1(図4B)、およびPdpn(図4C)について、正常な尾、n=11(マウス)と比較して、リンパ管新生性遺伝子の発現の増加が観察された(p<0)。
【0066】
実施例3
マウス尾モデル系におけるリンパ浮腫の処置
十分特徴づけられたマウス尾モデルを用いて、手術誘発性リンパ機能不全により影響された組織へリンパ管新生性遺伝子を導入する効果を研究した。簡単に述べれば、皮膚の2mm円周区域および尾の付け根から20mmの深リンパ管を切除することにより、リンパ鬱滞を誘発した。Prox 1をコードするプラスミドDNA(60μg)を、TNTデバイスのリザーバーに負荷し、方形波パルス電気刺激(10×10msパルス、250V、10mA)を、電極にわたって印加して、アレイされたナノチャネルを通して、プラスミドを組織へ運んだ。TNT後0日目および28日目におけるTNTシャム対照(Prox 1コード配列を欠く)処置マウス尾の代表的な画像が図5Aに示されている。TNT後0日目および28日目におけるProx 1 TNT(TNTProx 1)トランスフェクト化マウス尾の代表的な画像が図5Bに示されている。TNTProx 1を受けたマウスのコホートは、リンパ浮腫の発生に関連した尾腫脹を示さなかった。56日間の期間にわたる両方の群(各群においてN=6のマウス)におけるリンパ浮腫の進行を描く線グラフが図5Cに示されており、TNTProx 1処置の効力を実証している。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
【配列表】
2023540750000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ管新生を必要とする対象においてインビボでリンパ管新生を誘導するための方法であって、プロスペロホメオボックスタンパク質1(Prox 1)のインビボ活性を増加させる遺伝子産物をコードする核酸を含む組成物を該対象の皮膚組織にトランスフェクトするステップを含む、上記方法。
【請求項2】
皮膚組織が、Prox 1をコードする核酸配列、並びに、SH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP-76)及びポドプラニン(Pdpn)からなる群から選択されるタンパク質のインビボ活性を減少させる遺伝子産物をコードする核酸でトランスフェクトされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
皮膚組織が、Prox 1をコードする核酸配列でトランスフェクトされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
トランスフェクトされる核酸が、配列番号3と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
皮膚組織のトランスフェクションが組織ナノトランスフェクションによる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
隣接した静脈系血管とリンパ静脈吻合(LVA)を形成することに対する受容性がより高いようにリンパ組織の細胞をリプログラミングする方法であって、
脾臓チロシンキナーゼ(Syk)核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;及び
Prox 1をコードする第3の核酸配列;
を含むDNAを、リンパ組織の細胞の中へ細胞内送達するステップを含む、上記方法。
【請求項7】
1つ又は複数の発現ベクターがリンパ組織の細胞の中へ細胞内送達され、該発現ベクターが第1、第2、及び第3の核酸配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1、第2、及び第3の核酸配列がそれぞれ、インビボでリンパ組織の細胞のサイトゾルへ同時に送達される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
第1、第2、及び第3の核酸配列のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、該発現ベクターが、2つ以上の第1、第2、及び第3の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、該多重コード配列が、2つ以上の第1、第2、及び第3の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第1、第2、及び第3の核酸配列のそれぞれが単一の発現ベクターに位置する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞内送達が組織ナノトランスフェクションによる、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
リンパ浮腫を有する対象においてインビボで、リンパ静脈吻合(LVA)形成を誘導する方法であって、
リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みを増強する条件下で標的リンパ組織の細胞をリプログラミング組成物と接触させることによって、インビボで標的リンパ組織をリプログラミングしてリプログラミング化リンパ組織を生じるステップを含み、
該リプログラミング組成物が
Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;及び
Prox 1をコードする第3の核酸配列;
を含む、上記方法。
【請求項13】
Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAが配列番号5又はその相補体の連続した10ヌクレオチドを含み、及びSlp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAが配列番号1又はその相補体の連続した10ヌクレオチドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みが組織ナノトランスフェクションにより誘導される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
第1、第2、及び第3の核酸のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、該発現ベクターが、第1、第2、及び第3の核酸配列のうちの2つ以上を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、該多重コード配列が、第1、第2、及び第3の核酸配列のうちの2つ以上のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
多重コード配列が、第1、第2、及び第3の核酸配列の3つ全部を含み、それぞれが、配列内リボソーム進入部位によって進められ、かつ単一の真核生物プロモーターと作動可能に連結されている、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
第1、第2、及び第3の核酸配列が、非ウイルスベクターの一部である、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
リンパ組織のインビボでのトランスフェクションを行うためのキットであって、
使い捨てナノトランスフェクションデバイス;ならびに
リプログラミングカクテル溶液が、
Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;及び
Prox 1をコードする第3の核酸配列;
を含む、リプログラミングカクテル
を含む、上記キット。
【請求項19】
ナノトランスフェクションデバイスが、リプログラミングカクテル溶液を受けるための1つ又は複数のコンパートメントを有する中空マイクロニードルアレイを含む、請求項18に記載のキット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
実施例3
マウス尾モデル系におけるリンパ浮腫の処置
十分特徴づけられたマウス尾モデルを用いて、手術誘発性リンパ機能不全により影響された組織へリンパ管新生性遺伝子を導入する効果を研究した。簡単に述べれば、皮膚の2mm円周区域および尾の付け根から20mmの深リンパ管を切除することにより、リンパ鬱滞を誘発した。Prox 1をコードするプラスミドDNA(60μg)を、TNTデバイスのリザーバーに負荷し、方形波パルス電気刺激(10×10msパルス、250V、10mA)を、電極にわたって印加して、アレイされたナノチャネルを通して、プラスミドを組織へ運んだ。TNT後0日目および28日目におけるTNTシャム対照(Prox 1コード配列を欠く)処置マウス尾の代表的な画像が図5Aに示されている。TNT後0日目および28日目におけるProx 1 TNT(TNTProx 1)トランスフェクト化マウス尾の代表的な画像が図5Bに示されている。TNTProx 1を受けたマウスのコホートは、リンパ浮腫の発生に関連した尾腫脹を示さなかった。56日間の期間にわたる両方の群(各群においてN=6のマウス)におけるリンパ浮腫の進行を描く線グラフが図5Cに示されており、TNTProx 1処置の効力を実証している。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]リンパ管新生を必要とする対象においてインビボでリンパ管新生を誘導するための方法であって、プロスペロホメオボックスタンパク質1(Prox 1)、SH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP-76)、及びポドプラニン(Pdpn)からなる群から選択されるタンパク質のインビボ活性を増加させる遺伝子産物をコードする核酸を含む組成物を該対象の皮膚組織にトランスフェクトするステップを含む、上記方法。
[態様2]皮膚組織が、Prox 1、Slp 76、及びPdpnからなる群から選択されるタンパク質をコードする核酸配列でトランスフェクトされる、態様1に記載の方法。
[態様3]皮膚組織が、Prox 1をコードする核酸配列でトランスフェクトされる、態様1に記載の方法。
[態様4]トランスフェクトされる核酸が、配列番号3と少なくとも95%配列同一性を有するペプチドをコードする、態様3に記載の方法。
[態様5]皮膚組織のトランスフェクションが組織ナノトランスフェクションによる、態様4に記載の方法。
[態様6]隣接した静脈系血管とリンパ静脈吻合(LVA)を形成することに対する受容性がより高いようにリンパ組織の細胞をリプログラミングする方法であって、
脾臓チロシンキナーゼ(Syk)核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;及び
Prox 1をコードする第3の核酸配列;
を含むDNAを、リンパ組織の細胞の中へ細胞内送達するステップを含む、上記方法。
[態様7]1つ又は複数の発現ベクターがリンパ組織の細胞の中へ細胞内送達され、該発現ベクターが第1、第2、及び第3の核酸配列を含む、態様6に記載の方法。
[態様8]第1、第2、及び第3の核酸配列がそれぞれ、インビボでリンパ組織の細胞のサイトゾルへ同時に送達される、態様6又は7に記載の方法。
[態様9]第1、第2、及び第3の核酸配列のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、該発現ベクターが、2つ以上の第1、第2、及び第3の核酸配列を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、該多重コード配列が、2つ以上の第1、第2、及び第3の核酸配列のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、態様7に記載の方法。
[態様10]第1、第2、及び第3の核酸配列のそれぞれが単一の発現ベクターに位置する、態様9に記載の方法。
[態様11]細胞内送達が組織ナノトランスフェクションによる、態様6に記載の方法。
[態様12]リンパ浮腫を有する対象においてインビボで、リンパ静脈吻合(LVA)形成を誘導する方法であって、
リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みを増強する条件下で標的リンパ組織の細胞をリプログラミング組成物と接触させることによって、インビボで標的リンパ組織をリプログラミングしてリプログラミング化リンパ組織を生じるステップを含み、
該リプログラミング組成物が
Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;及び
Prox 1をコードする第3の核酸配列;
を含む、上記方法。
[態様13]Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAが配列番号5又はその相補体の連続した10ヌクレオチドを含み、及びSlp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAが配列番号1又はその相補体の連続した10ヌクレオチドを含む、態様12に記載の方法。
[態様14]リプログラミング組成物コンポーネントの細胞取込みが組織ナノトランスフェクションにより誘導される、態様12に記載の方法。
[態様15]第1、第2、及び第3の核酸のうちの2つ以上が発現ベクターの一部であり、該発現ベクターが、第1、第2、及び第3の核酸配列のうちの2つ以上を含む多重コード配列と作動可能に連結された単一の真核生物プロモーターを含み、該多重コード配列が、第1、第2、及び第3の核酸配列のうちの2つ以上のそれぞれの前に存在する配列内リボソーム進入部位をさらに含む、態様12に記載の方法。
[態様16]多重コード配列が、第1、第2、及び第3の核酸配列の3つ全部を含み、それぞれが、配列内リボソーム進入部位によって進められ、かつ単一の真核生物プロモーターと作動可能に連結されている、態様15に記載の組成物。
[態様17]第1、第2、及び第3の核酸配列が、非ウイルスベクターの一部である、態様12に記載の組成物。
[態様18]リンパ組織のインビボでのトランスフェクションを行うためのキットであって、
使い捨てナノトランスフェクションデバイス;ならびに
リプログラミングカクテル溶液が、
Syk核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第1の核酸配列;
Slp-76核酸配列と特異的に結合するiRNAをコードする第2の核酸配列;及び
Prox 1をコードする第3の核酸配列;
を含む、リプログラミングカクテル
を含む、上記キット。
[態様19]ナノトランスフェクションデバイスが、リプログラミングカクテル溶液を受けるための1つ又は複数のコンパートメントを有する中空マイクロニードルアレイを含む、態様18に記載のキット。
【国際調査報告】