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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(54)【発明の名称】スメルトの粉砕方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 19/06 20060101AFI20230919BHJP
   F23G 7/04 20060101ALI20230919BHJP
   F23J 1/08 20060101ALI20230919BHJP
   F23J 1/00 20060101ALI20230919BHJP
   F22B 37/54 20060101ALI20230919BHJP
   D21C 11/12 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
B02C19/06 B
F23G7/04 601E
F23J1/08
F23J1/00 A
F22B37/54 A
D21C11/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515879
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 US2021049784
(87)【国際公開番号】W WO2022056208
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/076,665
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/470,618
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509106500
【氏名又は名称】ザ・バブコック・アンド・ウイルコックス・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Babcock&Wilcox Company
【住所又は居所原語表記】1200 E. Market Street, Suite 650, Akron, Ohio 44305 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シモン・ユセフ
(72)【発明者】
【氏名】トニー・ハビブ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ショーバー
【テーマコード(参考)】
3K161
4D067
4L055
【Fターム(参考)】
3K161AA06
3K161AA25
3K161BA04
3K161CA01
3K161DA72
3K161EA35
3K161HA37
3K161LA02
3K161LA16
3K161LA35
4D067CA02
4D067CA06
4D067GA11
4L055AC06
4L055BC05
4L055FA22
4L055FA30
(57)【要約】
スメルト粉砕装置は、入口オリフィス、出口オリフィス、及び入口オリフィスと出口オリフィスとの間の流体経路を含む。収束発散ゾーンは、入口オリフィスと出口オリフィスの間に位置する。例示的な一構成では、第1の分離可能セクションは入口オリフィスを含み、第2の分離可能セクションは出口オリフィスと収束発散ゾーンの発散ゾーンとを含む。いくつかの構成では、入口オリフィスと流体連通する第2の出口オリフィスがあってもよい。複数の粉砕ジェットにわたって均一性を提供するために、第1の出口オリフィスは断面寸法を有することができ、第2の出口オリフィスは、第1の出口オリフィスから断面寸法の約4倍~約10倍の間の距離に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口オリフィス;
出口オリフィス;
前記入口オリフィスと前記出口オリフィスとの間の流体経路と;及び
前記入口オリフィスと前記出口オリフィスとの間に位置する収束発散ゾーン
を含む、スメルト粉砕装置。
【請求項2】
第1の分離可能セクションが前記入口オリフィスを含み、
第2の分離可能セクションが前記出口オリフィス、及び前記収束発散ゾーンの発散ゾーンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記収束発散ゾーンの収束ゾーンは、前記第1の分離可能セクションで始まる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
収束ゾーンは、前記第1の分離可能セクションと前記第2の分離セクションとの間の境界で始まる、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記収束発散ゾーンの前記発散ゾーンは、前記第2の分離可能セクション内の流体経路によって画定されるプロファイルを有する、請求項2~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記収束発散ゾーンの収束ゾーンは、前記収束発散ゾーンの発散ゾーンの上流の流体経路によって画定されるプロファイルを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
さらに、前記入口オリフィスと流体連通する第2の出口オリフィスを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の出口オリフィスは断面寸法を有し、前記第2の出口オリフィスは、前記第1の出口オリフィスから断面寸法の約4倍~約10倍の距離に位置する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の出口オリフィスの断面寸法は、前記第2の出口オリフィスの断面寸法より大きい、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記収束発散ゾーンは、前記入口オリフィスと前記出口オリフィスとの間の流体経路の狭窄部を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
入口オリフィス;
出口オリフィス;及び
狭窄部を有する、前記入口オリフィスと前記出口オリフィスとの間の流体経路
を含む、スメルト粉砕ノズル。
【請求項12】
前記入口オリフィスを含む第1のセクション;及び
前記出口オリフィスを含む第2のセクション
を含み、前記第1のセクションと前記第2のセクションは一緒に固定されて前記流体経路を画定し、前記狭窄部は前記第1のセクションと前記第2のセクションの間の界面に画定される、請求項11に記載のスメルト粉砕ノズル。
【請求項13】
前記第2のセクションの前記流体経路の部分は、前記界面から前記出口オリフィスまで広がる、請求項12に記載のスメルト粉砕ノズル。
【請求項14】
前記界面において、前記第1のセクションにおける前記流体経路の部分は、前記第2のセクションにおける前記流体経路の部分より大きい直径を有する、請求項13に記載のスメルト粉砕ノズル。
【請求項15】
前記狭窄部から前記出口オリフィスまで延びる前記流体経路の部分は、前記狭窄部から前記出口オリフィスまで広がる、請求項11に記載のスメルト粉砕ノズル。
【請求項16】
前記入口オリフィスから前記狭窄部まで延びる前記流体経路の部分は、狭窄して前記狭窄部に至る、請求項15に記載のスメルト粉砕ノズル。
【請求項17】
請求項11に記載のスメルト粉砕ノズルを複数含み、
前記スメルト粉砕ノズルの前記出口オリフィスが直径を有し、複数の前記スメルト粉砕ノズルの前記出口オリフィス間の間隔が前記直径の8倍以下である、スメルト粉砕装置。
【請求項18】
入口オリフィス、出口オリフィス、前記入口オリフィスと前記出口オリフィスとの間の流体経路、及び前記入口オリフィスと前記出口オリフィスとの間に位置する収束発散ゾーンを含む、スメルト粉砕装置を提供すること;
前記流体経路を通して流体ストリームを流して、流体ジェットを生成すること;
前記流体ジェットをスメルトストリームと接触させて、前記スメルトストリームを粉砕スメルトに変換すること;及び
前記粉砕スメルトを溶解タンクに投入すること
を含む、スメルトの粉砕方法。
【請求項19】
前記流体ストリームはスチームを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
さらに、クラフトパルプミルを使用して、回収ボイラーで黒液を燃焼させることにより、前記スメルトストリームを生成することを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月10日に出願された「スメルトの粉砕方法及び装置」という名称の米国仮出願第63/076,665号の利益を主張する。2020年9月10日に出願された「スメルトの粉砕方法及び装置」という名称の米国仮出願第63/076,665号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、スメルト(smelt)処理、クラフト(Kraft)木材パルプ化プロセス、クラフト木材パルプ化ミル、黒液回収プロセス及び装置、ならびに関連分野に関する。
【0003】
木材から木材パルプへの変換は、通常、クラフトプロセスを使用して行われる。木材チップは、水、水酸化ナトリウム、及び硫化ナトリウムを含む混合物で蒸解される。一般に白液と呼ばれるこの混合物は、繊維を一緒に保持しているリグニンからセルロース繊維(木材パルプ)を分離するのに役立つ。次いで、分離されたセルロース繊維が除去され、典型的には黒液と呼ばれる廃棄物が残る。
【0004】
黒液からの蒸解薬品の再生及び再利用は、製紙プロセスに関連するコストを制御するために望ましい。回収プロセス中に、黒液は約65~80%の固形分を含む溶液に濃縮される。濃縮溶液は、回収ボイラーとも呼ばれる化学還元炉の内部容積に噴霧される。黒液は回収ボイラーで燃焼され、使用済みのパルプ化薬品が回収され、さまざまなプロセスで使用されるスチームと電力が生成される。燃焼の結果、ボイラーの底部に、主に炭酸ナトリウム(Na2CO3)と硫化ナトリウム(Na2S)からなる溶融スメルトプールが形成される。溶融スメルトは、密度が約2000kg/m3、表面張力が約0.21N/mで、数本の排出口から、排出口あたり約1L/sの流量で約780~830℃(1440~1530°F)でボイラーから連続的に流出する。好ましくは、スメルトストリームは、粉砕ジェットによって数ミリメートルの小さな液滴に粉砕される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉砕されたスメルトの液滴は溶解タンクに落下し、そこで弱い洗浄液(苛性化プラントからリサイクルされた水)に溶解して緑液を形成する。溶融スメルトと緑液の間の相互作用は、騒がしくて激しいものである。極端な場合、溶解タンクの爆発が発生し、機器の損傷、人身事故、及びボイラーの停止を引き起こす可能性がある。これらの極端なケースは望ましくないため、規制がますます厳しくなっている。効果的で安全な溶解タンク操作のための新しく改良されたスメルトノズルと方法の開発は、パルプ工場操作における最優先事項である。
【0006】
本明細書では、特定の改良が開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
非限定的な例として本明細書に開示されるいくつかの例示的な実施形態では、スメルト粉砕装置は、入口オリフィス、出口オリフィス、入口オリフィスと出口オリフィスとの間の流体経路、及び入口オリフィスと出口オリフィスとの間に位置する収束発散ゾーンを含む。いくつかのそのような実施形態では、第1の分離可能セクションは入口オリフィスを含み、第2の分離可能セクションは出口オリフィス及び収束発散ゾーンの発散ゾーンを含む。いくつかの実施形態では、入口オリフィスと流体連通する第2の出口オリフィスがあってもよい。いくつかのそのような実施形態では、第1の出口オリフィスは断面寸法を有することができ、第2の出口オリフィスは、第1の出口オリフィスから断面寸法の約4~約10倍の距離に位置する。
【0008】
非限定的な例として本明細書に開示されるいくつかの例示的な実施形態では、スメルト粉砕ノズルは、入口オリフィス、出口オリフィス、及び狭窄部を有する入口オリフィスと出口オリフィスの間の流体経路を含む。いくつかのそのような実施形態では、ノズルは、入口オリフィスを含む第1のセクションと、出口オリフィスを含む第2のセクションとを含み、第1のセクションと第2のセクションは一緒に固定されて流体経路を画定し、狭窄部は第1のセクションと第2のセクションとの間の界面で画定される。いくつかのそのような実施形態では、第2のセクションにおける流体経路の部分は、界面から出口オリフィスまで広がる。いくつかのそのような実施形態では、第1のセクションにおける流体経路の部分は、第2のセクションにおける流体経路の部分より大きい直径を有する。いくつかの実施形態では、入口オリフィスから狭窄部まで延びる流体経路の部分は狭窄して狭窄部に至る。
【0009】
非限定的な例として本明細書に開示されるいくつかの例示的な実施形態では、スメルト粉砕装置は、直前の段落で説明したスメルト粉砕ノズルを複数含む。スメルト粉砕ノズルの出口オリフィスは直径を有し、複数のスメルト粉砕ノズルの出口オリフィス間の間隔は当該直径の8倍以下である。
【0010】
非限定的な例として本明細書に開示されるいくつかの例示的な実施形態では、スメルトの粉砕方法が開示される。入口オリフィス、出口オリフィス、入口オリフィスと出口オリフィスとの間の流体経路、及び入口オリフィスと出口オリフィスとの間に位置する収束発散ゾーンを含む、スメルト粉砕装置を提供する。流体ストリームを流体経路を通って流し、流体ジェットを生成する。流体ジェットは、スメルトストリームと接触して、スメルトストリームを粉砕スメルトに変換する。粉砕スメルトを溶解タンクに投入する。いくつかの実施形態では、流体ストリームはスチームを含む。いくつかの実施形態では、方法は、クラフトパルプミルを使用して、黒液を回収ボイラーで燃焼させることによって、スメルトストリームを生成することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、溶解タンクに供給している、スメルト粉砕装置を図式的に示している。
図2図2は、溶解タンクに入る粉砕スメルトの(A)上面図及び(B)側面図を図式的に示す。
図3図3は、(A)スメルトのタンクへの入口領域における粉砕スメルトの濃度が低い場合、及び(B)入口領域における粉砕スメルトの濃度が高い場合における、スメルトと水の相互作用を図式的に示す。
図4図4は、図1のスメルト粉砕ノズルの拡大側面断面図を図式的に示す。
図5図5~11は、本明細書に記載の様々な流量計算を示す。
図6図5~11は、本明細書に記載の様々な流量計算を示す。
図7図5~11は、本明細書に記載の様々な流量計算を示す。
図8図5~11は、本明細書に記載の様々な流量計算を示す。
図9図5~11は、本明細書に記載の様々な流量計算を示す。
図10図5~11は、本明細書に記載の様々な流量計算を示す。
図11図5~11は、本明細書に記載の様々な流量計算を示す。
図12図12及び13は、(A)斜視図及び(B)断面斜視図において、別の実施形態によるスメルト粉砕ノズルを図式的に示す。
図13図12及び13は、(A)斜視図及び(B)断面斜視図において、別の実施形態によるスメルト粉砕ノズルを図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、溶解タンクに供給する、スメルト破砕装置が示されている。クラフトパルプミルを使用して、黒液を回収ボイラー(図示せず)で燃焼させることにより、スメルトストリームが生成される。スメルトノズル10は、水などの溶媒流体(例えば、苛性化プラントからリサイクルされた水を含む弱い洗浄液)を含む溶解タンク14に、スメルトストリーム12を送り出し、緑液16を形成する。粉砕ジェットノズル20(内部流体経路22を明らかにするために図1の断面図で示されている)は、例示としてスチーム24などの流体ストリーム24を受け取り、これは、流体経路22を通って流れ、流体ジェット26を生成し、スメルトストリーム12と接触して、スメルトストリーム12を粉砕スメルト28に変換し、これはその後、溶解タンク14に投入される。任意選択で、溶解タンクは、緑液16を循環させて粉砕スメルト28の処理を補助するための羽根車30などを含んでもよい。
【0013】
溶解タンクの安全性について多くの研究が行われてきた。その結果、溶融スメルトの液滴は、水に接触してもすぐに爆発しないことが多く、むしろ爆発する前に数秒間水中で安定していることがわかった。さらに、1つの液滴の爆発が近くの他の液滴の爆発を引き起こし、一連の複数の液滴の爆発につながる可能性があることが観察された。これらの調査結果は、1)溶解タンク内でスメルトを効果的に溶解するには、液滴規模又は「ミニ」なスメルト-水爆発が必要であること、2)大規模な爆発は、溶融スメルトの1つの大きな破片、又は狭い限られた領域内の多数の小さな液滴によって引き起こされることを意味する。
【0014】
図2は、スメルト排出口10からのスメルトと溶解タンク14内の水との間の相互作用を、(A)上面図及び(B)側面図から図式的に示す。スメルト液滴(すなわち、粉砕スメルト28の液滴)の分布と、液滴が連続して落下する投影面積は、スメルトの粉砕によって大きく影響を受ける。液滴が液中に到達し、沈み続けると、それらは、スメルト-緑液の混合物の円筒形体積32を形成する(図2のA部分では長方形のボックスとして、図2のB部分では円として図式的に示されている)。極端なケースのシナリオは、制御体積32の境界内のすべてのスメルト液滴が同時に爆発する場合に発生する。
【0015】
ヒックス・メンジーズの原理に基づく熱力学モデルを開発して、溶解タンク内の大きなスメルト-水相互作用によって放出されるエネルギーを計算した。その結果、全爆発エネルギーとスメルトに蓄えられた利用可能な熱エネルギーの比である変換比(conversion ratio、CR)は、緑液温度と緑液対スメルトの体積比の増加に伴って増加することが示された。これは、溶解タンクの爆発の可能性を減らすために、溶融スメルトの液滴が緑液の広い領域に均一に分布できるように、粉砕ジェットの設計を最適化する必要があることを意味する。
【0016】
スメルト粉砕ジェットの設計及び粉砕方法は、ミルごとに大きく異なり、ノズルの設計、構成、及び操作に関する明確なガイドラインは業界には存在しない。通常、ノズルは飽和スチーム(3.5~15.5バール、50~225psigに相当;及び150~250℃、300~480°Fに相当)で作動し、結果として生じる粉砕ジェットは垂直に下向きに、又はスメルトの流れの方向に対してわずかに反対に向けられる。
【0017】
図3を参照すると、(A)溶解タンク14内の緑液16へのスメルトの入口領域における粉砕スメルト28の濃度が低い場合、及び(B)入口領域における粉砕スメルト28の濃度が高い場合における、スメルトと水の相互作用が図式的に示されている。図3はまた、図1を参照して前述したように、スメルト排出口10、スメルトストリーム12、及び粉砕ジェット26を図式的に示す。溶解タンクの操作の混乱は、スメルトの流れが粉砕ジェットの能力を超えた場合によく発生する。このようなオーバーフローの状況には、スメルトの越流(スメルトの流れの急激な増加)と「ゼリーロール」(Jellyroll)スメルトが含まれる。ゼリーロールスメルトは、溶融スメルトの突然の凍結、落下した堆積物、又は大量の未燃炭の混入によって引き起こされる可能性がある。この動きの遅い粘性のあるスメルトは、スメルト12の粉砕をより困難にし、それが取り除かれると、その後ろにある溶融スメルトの急増が越流の状況につながる可能性がある。これが発生すると、スメルトの流れがスメルト粉砕ジェットの能力を圧倒し、効果がなくなる。その結果、溶融スメルトは通常、図3(B)に図式的に示すように、排出口の真下の領域に集中し、爆発エネルギーが増加する。したがって、通常のスメルトの流れと混乱状態の両方を処理するのに十分な粉砕エネルギーを有する粉砕ジェットが望ましい。
【0018】
いくつかの場合において、粉砕ジェット26は、スメルトの流れ特性の変化により、スメルトの流れ12の一部又は全部を逃すことができる。したがって、広範囲をカバーする粉砕ジェットも望ましい。さらに、スメルト粉砕は最適な液滴分布を達成するべきであるが、運転コストを削減するためにスチーム消費を最小限に抑えたいという要望もある。
【0019】
したがって、本明細書では、粉砕ジェットノズルが複数の基準を満たすことができることが望ましいことが認識される:i)高い粉砕エネルギーを生成すること、ii)広範囲のカバーが可能であること、及びiii)スチームの消費を最小化すること。本明細書に開示されるのは、これらの複数の基準(例えば、通常のスメルトとの流れと混乱状態の両方を処理するのに十分な粉砕エネルギーを有し、広いカバー範囲を提供し、スチームの消費を最小限に抑えること)に対処する、粉砕ジェットノズルの実施形態、及びスメルト粉砕を実行する方法である。
【0020】
図4を参照すると、図1の粉砕ジェットノズル20の拡大側面断面図が示されている。スチームの消費を最小限に抑えながら粉砕ジェットの強度を向上させるために、粉砕ジェットノズル20は、収束発散(converging-diverging、CD)ノズル設計を備える。例示的な設計では、粉砕ジェットノズル20は、入口オリフィス40、出口オリフィス42、及び入口オリフィス40と出口オリフィス42との間の内部流体経路22を含む。出口オリフィス42は、断面寸法Doを有し、これは、出口オリフィス42が円形の断面を有するときの直径Doである。スチーム又は他の作動流体の流れは、「流れ」の矢印によって示されるように、図1に示されるノズル20の向きで左から右へと流れる。すなわち、スチームは入口オリフィス40に入り、流体経路22を通過し、出口オリフィス42を出る。
【0021】
流体経路22は、狭窄部又はスロート44を有し、これは、流体経路22を、入口オリフィス40からスロート44までの間の収束ゾーン46と、スロート44から出口オリフィス42までの間の発散ゾーン48とに分割する。「狭窄部」及び「スロート」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、収束ゾーン46と発散ゾーン48を分ける流体経路22の狭窄部分を指す。一般に、スチームは、狭窄部又はスロート44内で収束するにつれて、収束ゾーン46内を高圧及び低速で流れる;その後、スチームはスロート44を出るときに発散し、その結果、発散ゾーン48内のスチームは、収束ゾーン46内のそれぞれ高圧及び低速と比較して、低圧及び高速になる。発散ゾーン48は、狭窄部又はスロート44から出口オリフィス42まで広がる。収束ゾーン46、すなわち入口オリフィス40から狭窄部44まで延びる流体経路22の部分は、任意選択で狭窄して狭窄部44に至る。ただし、他の実施形態では、一定の内腔直径であってもよい(例えば、図13を参照)。収束ゾーン46、狭窄又はスロート44、及び発散ゾーン48の組み合わせは、本明細書では、入口オリフィス40と出口オリフィス42との間に位置する収束発散ゾーンと呼ばれることがある。示されたスチームの流れに対して、収束ゾーン46は発散ゾーン48の上流にある;又は、逆に、発散ゾーン48は収束ゾーン46の下流にある。
【0022】
粉砕ジェットノズル20の複雑な流体力学は、スチームの流れがスロート又は狭窄部44で音速に到達し、出口、すなわち出口オリフィス42でさらにそれ以上に到達することを可能にする。出口直径Do、狭窄部又はスロート44のスロート直径Dth、発散ゾーン48の拡張角度Adiv、及びノズル長さを含む要因により、様々なスメルト流動特性と共に使用するための粉砕ジェットノズル20のカスタマイズが可能になる。
【0023】
適切に設計されたスロートと出口のオリフィス面積比R:
【数1】
を備えた収束発散(CD)ノズルは、より少ないスチーム消費量で同じ強度を達成するより効果的なジェット膨張により、所定のスチームの流れで、円筒孔ノズルよりも高い衝撃圧力を実現する。ノズルの流量は、次の式で計算できる:
【数2】
式中、mは質量流量、Cdは流量係数、Aはチョークポイントの断面積である(すなわち、
【数3】
)。γはスチームの熱容量比、ρoは入口圧力Poと温度における密度である。
【0024】
広いカバー範囲を達成するために、複数の出口オリフィス42を互いに隣接して配置して、より広い圧力プロファイルを達成することができる。(例えば、単一の入口オリフィス40及び2つの出口オリフィス42を有する図12及び13の実施形態を参照されたい)。隣接する出口オリフィス42間の間隔ΔD(図12及び13を参照)は、好ましくは、全体の性能を最適化するように設計される。間隔ΔDが小さすぎると、必要なカバー範囲が得られない場合がある。一方、間隔ΔDが大きすぎると、隣接するオリフィス42間に低圧領域が生じる可能性がある。
【0025】
図6を参照すると、二次元非対称計算流体力学モデリングに基づいて、150psigの入口蒸気圧を有するCDノズルから発生した単一ジェット(図6(A))の速度等高線が示されている。この結果は、このジェットの場合、隣接するオリフィス間の最適な間隔が8Do(オリフィスの直径Doの8倍に等しい距離)を超えてはならないことを示している。そうでないと、望ましくない低圧領域が中央に形成される可能性がある。したがって、収束発散マルチジェットノズル設計は、スチームの消費を最小限に抑えながら、強度とカバー範囲の両方を備えたジェットを生成できる。図6(B)は、150psigの入口蒸気圧でCDノズルから発生したデュアルジェットの速度等高線を示している。この結果は、6Doの間隔が望ましくない低圧領域を生成しないことを示している。
【0026】
CDマルチジェットノズルの性能を評価するために、様々な設計パラメータを調査したが、従来の多孔(非CD)ノズルも性能比較のために試験した。実験条件の概要を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
この研究で使用される実験装置では、スチームをシミュレートするために実験で圧縮空気が使用された。テスト対象のノズルの前にピトー管アレイを配置して、ジェットのピーク衝撃圧力を測定した。これは、粉砕ジェットの強度を示す。ピトー管の位置は、x、y、z方向に調整できる。x位置とy位置の変化によってジェット圧力プロファイルが生成され、z位置の変化によってノズルとピトー管の間の距離が変化する。
【0029】
図6を参照すると、1/4インチ、5/16インチ、11/32インチ、3/8インチ、及び1/2インチの異なるスロート径を有する5つのCDシングルジェットノズルのノズル性能が示されている。図6は、さまざまなオリフィスサイズ(距離:20インチ、圧力:150psig)での粉砕ジェットの圧力プロファイルをプロットしたものである。結果は、一般に、オリフィスのサイズが大きいほど、ジェットの強度が高くなることを示している。参考として使用される従来の多孔ノズルは、総開口面積に基づいて計算された0.48インチの等価オリフィス直径を持ち、1/2インチの最大のCDノズルよりわずかに小さい。オリフィスの数が多いため、CDシングルジェットノズルよりも広い範囲をカバーするが、同様のオリフィスサイズのCDノズルより強度が大幅に低下する。
【0030】
図7及び8を参照すると、ノズルの数及びCDオリフィス間の間隔の影響も調査した。図7は、デュアルジェットノズルとトリジェットノズル(距離:20インチ、圧力:150psig)の圧力プロファイルを示し、図8は、オリフィス間の間隔が異なる(8Do(直径の8倍)と16Do)のデュアルジェットノズルの圧力プロファイルを示す。図8でも、距離は20インチで、圧力は150psigである。結果は、ノズルの数を増やすと、中心線で同様のピーク衝撃圧力を持つより広い圧力プロファイルが生成されることを示している。オリフィスを離しすぎると、中央に低圧領域が形成され、粉砕ジェットの効果が低下する。
【0031】
図9を参照すると、オリフィス間隔は同じであるがスロートサイズ(Dth)が異なる2つのCDデュアルジェットノズルの圧力プロファイルと、比較のための従来の多孔粉砕ジェットノズルの圧力プロファイルが示されている。この結果は、図4の収束発散マルチジェットノズル20が、より少ないスチームを消費しながら、より高いエネルギーとより広いカバー範囲を達成することにより、従来の粉砕ジェットノズルよりも優れた性能を発揮できることを示している。図9に示される最適化されたノズルと従来のノズルからのジェット圧力プロファイルの比較も、24インチの距離と150psigの圧力に対するものである。
【0032】
図10及び11を参照すると、スメルトストリームと粉砕ジェットとの間の入口圧力及び距離も、粉砕ジェットの性能に影響を与える可能性がある。図10は、さまざまな蒸気圧での粉砕ジェット圧力プロファイルをプロットすることにより、CDデュアルジェットノズルの性能をさまざまな入口圧力で比較している。図11は、ピトー管までのさまざまな距離での粉砕ジェットのプロファイルをプロットすることにより、CDデュアルジェットノズルの性能をピトー管からのさまざまな距離で比較している。図10及び11に示される結果は、圧力の増加及び距離の減少が、より高いジェット強度及びより広い適用範囲につながることを示している。
【0033】
要約すると、開示された粉砕ジェットの設計(例えば、図4の例示的な粉砕ジェットノズル20によって具現化されるもの)は、スメルト粉砕の有効性及び溶解タンク操作の安全性を改善する。
【0034】
ここで図12及び13を参照すると、収束発散(CD)アプローチを採用する別の例示的な粉砕ジェットノズル120が図式的に示されている。図12は、2つの出口オリフィス42を有するデュアルジェット設計である粉砕ジェットノズル120の斜視図を示し、一方、図13は、内部流体経路122を明らかにするための粉砕ジェットノズル120の斜視断面図を示す。この実施形態では、ノズルは、収束ゾーン46が形成される第1のセクション126と、発散ゾーン48が形成される第2のセクション128とを含む。第1のセクション126及び第2のセクション128が接合される界面134は、狭窄部又はスロート44の輪郭を描く。2つのセクション126及び128は、ボルト140(図示のように)を介して、又はクリップ、溶接、ねじなどの他の接続手段によって互いに接続され得る別個の部品である。図12及び13の例示的な粉砕ジェットノズル120では、第1のセクション126は入口オリフィス40を含み、第2のセクション128は出口オリフィス42(又は、例示的な2ジェット設計では2つの出口オリフィス42)を含む。第1のセクション126及び第2のセクション128は、一緒に固定されて、入口オリフィス40と各出口オリフィス42との間に流体経路122を画定し、図13の断面図に見られるように、単一の入口オリフィス40が両方の出口オリフィス42にスチームを供給することを可能にするために、流体経路122は「Y」分岐を有する。この実施形態では、狭窄部又はスロート44は、第1のセクション126と第2のセクション128との間の界面134に画定される。第2のセクション128内の流体経路の部分(すなわち、発散ゾーン48)は、界面134(狭窄部又はスロート44に対応する)から出口界面42まで広がる。図13に見られるように、界面134において、第1のセクション126における流体経路122の部分(すなわち、収束ゾーン46)は、第2のセクション128における流体経路122の部分(すなわち、発散ゾーン48)より大きい直径を有する。結果として生じる界面134での流体経路122の直径の急激な減少は、狭窄部又はスロート44を画定する。
【0035】
図13では、蒸気を単一の入口オリフィス40とともに2つの出口オリフィス42に供給するために「Y」分岐を採用しているが、より一般的には、流体経路122は、単一の入口オリフィスがスチームをN個の出口オリフィスに供給する1対Nのマニホルドを含むことができる。
【0036】
図12及び13の粉砕ジェットノズル120は、オリフィスの数、オリフィスの断面形状、オリフィスの断面積、各部分内の収束及び/又は発散プロファイル、及び出口オリフィスの指向性アウトプットなどさまざまな特性(ただし、これらに限定されない)を有する、収束及び/又は発散部分126、128の選択的な対を介した現場での調整を可能にする。
【0037】
出口オリフィス42間の幾何学的な間隔は、所望の衝突圧力プロファイルを維持しながらスチームパターンを広げることを可能にする。少なくとも1つの実施形態では、デュアルジェットノズル120のオリフィス出口42間の間隔ΔDは4Doであり、ここでDoはオリフィス出口42の直径である(Do図12にのみ表示されている)。別の実施形態では、間隔ΔDは、約4Do~約16Dの範囲であり、より好ましくは、約4Do~約8Doである。いくつかの実施形態では、出口オリフィスは異なるサイズであってもよく、例えば、第1の出口オリフィスの断面寸法は、第2の出口オリフィスの断面寸法より大きくてもよい(デュアルジェットノズル120の両方の出口オリフィス42について同じDoを有する図12及び13では、変形が示されていない)。
【0038】
上記の説明は本発明の好ましい実施形態を構成するが、本発明は、添付の特許請求の範囲の適切な範囲及び公正な意味から逸脱することなく、修正、バリエーション、及び変更が容易であることが理解される。
図1
図2(A)】
図2(B)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】