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  • 特表-抗原特異的抗体の同定及び産生 図1
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  • 特表-抗原特異的抗体の同定及び産生 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(54)【発明の名称】抗原特異的抗体の同定及び産生
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230919BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230919BHJP
   C40B 40/08 20060101ALN20230919BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20230919BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20230919BHJP
   A01K 67/027 20060101ALN20230919BHJP
   C12N 1/15 20060101ALN20230919BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20230919BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20230919BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230919BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20230919BHJP
【FI】
C12N15/13
C12P21/08
C40B40/08 ZNA
C12Q1/6869 Z
C12N15/54
A01K67/027
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516124
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 US2021049887
(87)【国際公開番号】W WO2022056276
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/077,133
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/077,140
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ヤシュ
(72)【発明者】
【氏名】グオ, チュングアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, チアン
(72)【発明者】
【氏名】レベンコバ, ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, アンドリュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】オルソン, ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR48
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA25
4H045AA20
4H045CA40
4H045DA76
(57)【要約】
免疫された遺伝子改変非ヒト哺乳動物から、特定の抗原に特異的な抗体の免疫グロブリン可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を得る方法が開示される。また、特定の抗原に対する抗体を作製するための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列を同定する方法であって、
前記抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列を得ることと、
ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリを、前記複数のペプチド配列と照合し(ここで、前記ライブラリは、前記免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列を含む)、それにより、前記抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列を得ることと、を含み、
前記免疫されたげっ歯類が、その生殖細胞系列ゲノムに、
1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、前記重鎖可変領域が定常領域に作動可能に連結されている前記免疫グロブリン重鎖可変領域と、
1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、前記軽鎖が定常領域に作動可能に連結されている前記免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む、前記方法。
【請求項2】
抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列を同定する方法であって、
前記抗原で免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列を含むヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリを得ることと、
前記抗原で免疫された前記げっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列と、前記ライブラリを照合することと、を含み、
前記免疫されたげっ歯類が、その生殖細胞系列ゲノムに、
1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、前記重鎖可変領域がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている前記免疫グロブリン重鎖可変領域と、
1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、前記軽鎖がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている前記免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む、前記方法。
【請求項3】
前記ライブラリの前記複数のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列が、前記げっ歯類の骨髄及び/または脾臓からのB細胞の集団を含む試料をシーケンシングすることから得られた、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ライブラリの前記複数のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列が、再編成された重鎖VDJ配列及び/または再編成された軽鎖VJ配列を含むcDNAをシーケンシングすることから得られた、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記シーケンシングが、次世代DNAシーケンシングによるものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗原で免疫された前記げっ歯類によって産生された抗体集団を含む前記試料が、前記げっ歯類の血清、血漿、リンパ器官、腸、脳脊髄液、脳、脊髄、及び/または胎盤に由来する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列が、質量分析(MS)によって得られたまたは決定された、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列が、液体クロマトグラフィーと質量分析との組み合わせ(LC-MS)によって得られたまたは決定された、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗原で免疫された前記げっ歯類によって産生された抗体集団を含む前記試料が、MS解析の前に変性された、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗原で免疫された前記げっ歯類によって産生された抗体集団を含む前記試料が、MS解析の前にタンパク質分解的に消化された、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗原で免疫された前記げっ歯類によって産生された抗体集団を含む前記試料が、MS解析の前に1つ以上の特徴について濃縮された、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗原で免疫された前記げっ歯類によって産生された抗体集団を含む前記試料が、前記抗原に結合する抗体について濃縮された、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗原で免疫された前記げっ歯類によって産生された抗体集団を含む前記試料が、第2の異なる抗原に結合する抗体が枯渇していた、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリを、前記複数のペプチド配列と照合することが、前記ペプチド配列を互いに、及び前記複数のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列と、アラインメントすることを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ライブラリが、ヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列のライブラリであり、前記複数のペプチド配列と照合することが、
(1)前記ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリ中のCDR3配列の、MSによって得られたまたは決定されたユニークなペプチドとの一致、
(2)前記ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリ中のユニークなCDR1及び/またはCDR2配列の、MSによって得られたまたは決定された1つ以上のユニークなペプチドとの一致、
(3)前記ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリ中の1つ以上のフレームワーク配列の、MSによって得られたまたは決定された1つ以上のユニークなペプチドとの一致、
(4)前記ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリ中の配列の次世代シーケンシングのカウント数、
(5)メチオニンを有するCDR配列の除外、ならびに
(6)Nグリコシル化の可能性のあるCDR配列の除外、
のうちの1つ以上に基づくものである、請求項7~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ライブラリを照合することにより、前記抗原に特異的な抗体の複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列が同定され、前記複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列がランク付けされる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記げっ歯類が、ラットである、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記げっ歯類が、マウスである、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫グロブリン重鎖可変領域が、マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されている、及び/または前記免疫グロブリン軽鎖可変領域が、マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
マウス重鎖定常領域に作動可能に連結された前記免疫グロブリン重鎖可変領域が、内因性マウス重鎖遺伝子座にある、及び/またはマウス軽鎖定常領域に作動可能に連結された前記免疫グロブリン軽鎖可変領域が、内因性マウス軽鎖遺伝子座にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫グロブリン重鎖可変領域が、複数のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、複数のヒトD遺伝子セグメントと、複数のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含み、前記重鎖可変領域が、ネズミ科重鎖定常領域に作動可能に連結されており、
前記免疫グロブリン軽鎖可変領域が、
(i)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、単一のヒトV遺伝子セグメントと、単一のヒト軽J遺伝子セグメントと、を含む再編成されたヒト軽鎖可変領域を含むユニバーサル軽鎖コード配列;
(ii)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、2つの非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む制限された軽鎖可変領域;または
(iii)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含み、非ヒスチジン残基に対する少なくとも1つのヒスチジンの置換もしくは挿入を更に含む、ヒスチジン改変軽鎖可変領域
を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫グロブリン軽鎖可変領域が、複数のヒト軽鎖V遺伝子セグメント及び複数のヒト軽鎖J遺伝子セグメントを含み、前記軽鎖可変領域が、ネズミ科軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、前記免疫グロブリン重鎖可変領域が、
(i)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、単一のヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む制限された非再編成重鎖可変領域;
(ii)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、単一のヒトV遺伝子セグメントと、単一のヒトD遺伝子セグメントと、単一のヒトJ遺伝子セグメントと、を含む単一の再編成されたヒト重鎖可変領域を含むユニバーサル重鎖コード配列;
(iii)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含み、非ヒスチジン残基に対する少なくとも1つのヒスチジンの置換または挿入を更に含む、ヒスチジン改変非再編成重鎖可変領域
を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫グロブリン軽鎖可変領域が、単一のヒトVκ遺伝子セグメントと、単一のヒト軽Jκ遺伝子セグメントと、を含む再編成されたヒト軽鎖可変領域を含むユニバーサル軽鎖コード配列を含み、前記再編成されたヒト軽鎖可変領域が、内因性マウスκ軽鎖遺伝子座にあり、かつマウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、
前記免疫グロブリン重鎖可変領域が、複数のヒト重鎖V遺伝子セグメント、複数のヒトD遺伝子セグメント、及び複数のヒト重鎖J遺伝子セグメントを含み、前記重鎖可変領域が、ネズミ科重鎖定常領域に作動可能に連結されている、
請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫グロブリン軽鎖可変領域が、ヒトJλ遺伝子セグメントに接合されたヒトVλ遺伝子セグメントを含む、単一の再編成されたヒト免疫グロブリンλ軽鎖可変領域を含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座を含み、
前記免疫グロブリン重鎖可変領域が、複数のヒト重鎖V遺伝子セグメント、複数のヒトD遺伝子セグメント、及び複数のヒト重鎖J遺伝子セグメントを含み、前記重鎖可変領域が、ネズミ科重鎖定常領域に作動可能に連結されている、
請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記遺伝子改変マウスが、機能的ADAM6遺伝子を更に含み、任意選択で、前記機能的ADAM6遺伝子が、マウスADAM6遺伝子である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記遺伝子改変マウスが、外因性末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)遺伝子を更に発現する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
同定したヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を、組換え抗原結合タンパク質中で発現させることを更に含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記組換え抗原結合タンパク質が、ヒト抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組換え抗原結合タンパク質が、二重特異性抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
抗体を作製するための方法であって、
(a)宿主細胞中で、
(i)免疫グロブリン重鎖定常領域配列に作動可能に連結されたヒト免疫グロブリン重鎖可変領域配列を含む免疫グロブリン重鎖をコードする核酸、及び
(ii)免疫グロブリン軽鎖定常領域配列に作動可能に連結されたヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域配列
を含む免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸を発現させることであって、
前記ヒト免疫グロブリン重鎖可変領域配列及び/または前記ヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域配列が、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法によって同定されたヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び/またはヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインをそれぞれコードする、前記発現させることと;
(b)前記宿主細胞が前記免疫グロブリン重鎖及び前記免疫グロブリン軽鎖を含む抗体を発現するような条件下で、前記宿主細胞を培養することと、
を含む、前記方法。
【請求項31】
完全ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または完全ヒト免疫グロブリン軽鎖を作製する方法であって、
(a)請求項1~26のいずれか1項に記載の方法によって、ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列を同定することと;
(b)前記ヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を、ヒト免疫グロブリン重鎖定常ドメインをコードする核酸と作動可能に連結させて、完全ヒト免疫グロブリン重鎖を形成すること、及び/または
前記ヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインをコードする核酸を、ヒト免疫グロブリン軽鎖定常ドメインをコードする核酸と作動可能に連結させて、完全ヒト免疫グロブリン軽鎖を形成することと;
(c)前記完全ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または前記完全ヒト免疫グロブリン軽鎖を発現させることと、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月11日に出願された米国仮特許出願第63/077133号及び2020年9月11日に出願された米国仮特許出願第63/077140号の利益を主張するものであり、それら両方の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
抗原に特異的な抗体アミノ酸配列、例えば、可変ドメインアミノ酸配列をコードする核酸を得るための方法が提供される。第1の試料からの抗体配列をコードする核酸配列、及び第2の試料からの目的の抗原を対象とする複数の抗体を、その抗原またはその一部に特異的なヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を得るために、免疫された宿主から得ることを含む方法が開示される。目的の抗原を対象とする抗体を作製する方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
抗体は通常、重鎖成分を含み、重鎖単量体はそれぞれ軽鎖と会合しており、これらの鎖の可変ドメインが組み合わさって抗原結合部位を形成している。抗体、特にモノクローナル抗体には、診断及び治療において幅広い用途がある。
【0004】
モノクローナル抗体の調製には、ハイブリドーマ技術及び(例えば、ファージ、酵母、または細菌系での)DNAディスプレイという2つの従来のアプローチが使用されてきた。ハイブリドーマ技術では、通常、免疫された動物のB細胞を骨髄腫細胞株と融合させて、抗原を分泌するハイブリドーマ株を産生させる。目的のモノクローナル抗体を産生する細胞を単離し、培養して増殖させ、得られた所望の抗体を精製する。夾雑物を除去するためには、高品質の精製が極めて重要である。したがって、ハイブリドーマ技術による抗体の単離は、ハイブリドーマ培養のスループットが限られているため、効率的ではない。
【0005】
ディスプレイ技術には、ファージ、酵母、または哺乳動物のライブラリからのリード抗体候補の産生が含まれる。抗体発現B細胞からのDNAの直接単離を利用することができるが、DNAライブラリは、ファージ、酵母、または細菌系などの細胞発現系で発現され、次いで「パニング」または滴定されて、高親和性の抗体が選択される。ディスプレイ技術では、もたらされる多様性が限られているものの、高品質のタンパク質ライブラリを得ることができる。その結果、in vitro変異誘発に基づく親和性成熟は、しばしば、そのようなライブラリに由来する高親和性抗体を生成する際の次のステップである。
【0006】
更に、抗体は、血漿、血清、腹水、細胞培養培地、及び細菌培養物から発現され、単離されることが多い。これらは全て、多数の夾雑物を含有する供給源である。したがって、そのような供給源からの抗体の効率的な精製が必要とされている。それ故に、標的抗原に対する必要な特異性及び結合親和性を有する抗体の効率的な生成及び単離が、当該技術分野で依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、特に、質量分析(「MS」)と次世代シーケンシング(「NGS」)との組み合わせを使用して抗体を得るための方法を記載する。また、抗体を作製するための方法も開示される。
【0008】
提供される方法によって、ヒト免疫グロブリン可変ドメインの配列及び/または抗体の相補性決定領域(CDR)配列、特に、目的の抗原で免疫されている宿主(例えば、遺伝子改変非ヒト動物、例えばげっ歯類)からの抗体の効率的な同定及び/または選択が可能となる。いくつかの実施形態では、提供される方法は、宿主の複数の抗体配列(例えば、NGSによって生成された抗体配列のライブラリ)を、宿主からの抗体ペプチドのMS解析と、及び/または宿主からの抗体ペプチドのMS解析に対して、比較及び/または照合するステップを含む。本明細書で使用される場合、「データベース」は、例示的な「ライブラリ」であり得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、複数の免疫グロブリン可変ドメイン及び/またはCDR配列(例えば、ライブラリ)を、目的の抗原で免疫された宿主から(例えば、非ヒト動物、例えばげっ歯類のB細胞から)得ること及び/または産生させることを含む。いくつかの実施形態では、抗体配列のライブラリは、NGSによって得られた複数の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体配列のライブラリは、複数のCDR3配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、目的の抗原で免疫されている宿主(例えば、げっ歯類)から得られた抗体の試料のMS解析を含む。本開示は、MS解析用の抗体の試料が、所望の特徴についてin vivo及び/またはex vivoで濃縮され得るという認識を包含する。例えば、抗体の試料は、in vivo局在化に基づいて濃縮され得る。したがって、いくつかの実施形態では、抗体の試料は、宿主内の任意の所望の供給源、例えば、血清、血漿、リンパ器官、腸、脳脊髄液、脳、脊髄、胎盤、またはそれらの組み合わせから得ることができる。いくつかの実施形態では、抗体の試料は、1つ以上の所望の特徴(例えば、抗原結合、細胞への結合など)についてex vivoで濃縮され得る。本開示は、提供される方法と組み合わせたそのような濃縮により、他の方法では同定することが(例えば、低力価で存在するため)困難であり得る、抗体の同定が可能となるという見識を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたは相補性決定領域(CDR)を得る方法を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、第1の試料からの複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を、第2の試料からの抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列と照合することを含む。場合によっては、照合ステップを実施することにより、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列を得る。いくつかの実施形態では、照合は、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を互いに、及び複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列と、アラインメントすることを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR(例えば、CDR3)は、特定の抗原で免疫された宿主から得られる。いくつかの実施形態では、宿主は、遺伝子改変非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では、宿主は、そのゲノム、例えば、その生殖細胞系列ゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメント(ヒトV遺伝子セグメントとも称される)と、1つ以上のヒトD遺伝子セグメント(ヒトD遺伝子セグメントとも称される)と、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメント(ヒトJ遺伝子セグメントとも称される)と、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、定常領域(例えば、免疫グロブリン重鎖定常領域)に作動可能に連結されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、宿主は、そのゲノム、例えば、その生殖細胞系列ゲノムに、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメント(ヒトV遺伝子セグメントを有するとも称される)と、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメント(ヒトJ遺伝子セグメントを有するとも称される)と、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、定常領域(例えば、免疫グロブリン軽鎖定常領域)に作動可能に連結されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、免疫された宿主からの第1の試料から複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸を得て、コードされた複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を決定することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、免疫された宿主から、抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を得て、そこから抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、宿主は、げっ歯類、例えば、ラットまたはマウスである。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列を得ることまたは決定することと、(ii)ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリを、MSによって決定された複数のペプチド配列と照合し(ここで、このライブラリは、免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列を含む)、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列を得ることと、を含む方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列を含むヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリを得ることと、(ii)その抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列と、そのライブラリを照合することと、を含む方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、その生殖細胞系列ゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、その生殖細胞系列ゲノムに、限られた免疫グロブリン軽鎖レパートリーを含む。いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、その生殖細胞系列ゲノムに、単一の再編成されたヒト軽鎖V/Jを含む。いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、その生殖細胞系列ゲノムに、2つのヒト軽鎖V遺伝子セグメント及び1つ以上のヒト軽鎖Jセグメントを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、2つの免疫グロブリン重鎖と、2つの免疫グロブリン軽鎖と、を含む抗体を産生する。いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、単一ドメイン抗体、重鎖のみの抗体、及び/またはナノボディを産生しない。いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、その生殖細胞系列ゲノムに、限られた免疫グロブリン重鎖レパートリー、例えば、ユニバーサル重鎖を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、その生殖細胞系列ゲノムにCH1欠失改変を含む。いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、単一ドメイン抗体、重鎖のみの抗体、及び/またはナノボディを産生する。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の試料(すなわち、配列解析用の試料)は、一次または二次リンパ器官からのB細胞の集団、例えば、骨髄試料及び/または脾臓試料からのB細胞、リンパ節からのB細胞、パイエル板からのB細胞などを含む。いくつかの実施形態では、第1の試料から複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得ることは、核酸配列からcDNAを調製して、第1の試料中の再編成された重鎖VDJ配列及び/または再編成された軽鎖VJ配列をシーケンシングすることを含む。いくつかの実施形態では、第1の試料から複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得ることは、次世代DNAシーケンシングなどのDNAシーケンシング技術を使用することを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、第2の試料(すなわち、ペプチド配列解析用の試料)は、抗体を含む任意の体液であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、第2の試料は、血清、血漿、リンパ器官、腸、脳脊髄液、脳、脊髄、胎盤、もしくはそれらの組み合わせであるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、第2の試料のペプチド配列は、第2の試料中の抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの質量分析(MS)解析(例えば、液体クロマトグラフィーと質量分析との組み合わせによるもの(LC-MS))を介して得られる。更に、いくつかの実施形態では、質量分析解析の前に、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのタンパク質分解消化が実施され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、ペプチド配列解析用の抗体の試料は、1つ以上の所望の特徴について(例えば、MS解析の前に)ex vivoで濃縮され得る。いくつかの実施形態では、第2の試料を得ることは、特定の抗原を対象としない抗体を第2の試料から枯渇させることを更に含む。いくつかの実施形態では、第2の試料を得ることは、特定の抗原を対象とする抗体について第2の試料を濃縮することを更に含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の試料からの複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を第2の試料からの抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列と照合することは、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を、複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列と、及び任意選択で互いに、アラインメントすることを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする得られたヌクレオチド配列を、第2の組換え抗体中で発現させることを含む。いくつかの実施形態では、ヒト可変ドメインをコードするヌクレオチド配列は、ヒト免疫グロブリン定常領域と作動可能に連結されて細胞株中で発現され得る。より具体的には、いくつかの実施形態では、ヒト可変ドメインは、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域と作動可能に連結されて発現されヒト免疫グロブリン重鎖を生成する、ヒト重鎖可変ドメインである。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリン重鎖は、ヒト免疫グロブリン軽鎖とともに細胞株中で発現される。ヒト可変ドメインがヒト軽鎖可変ドメインである一実施形態では、その可変ドメインはヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域と作動可能に連結されて発現され、ヒト免疫グロブリン軽鎖を生成し得る。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリン軽鎖は、ヒト免疫グロブリン重鎖とともに細胞株中で発現される。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする得られたヌクレオチド配列を組換え抗原結合タンパク質中で発現させることを更に含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、組換え抗原結合タンパク質は、ヒト抗体、例えば、ヒト二重特異性抗体である。
【0028】
いくつかの実施形態では、組換え抗原結合タンパク質は、精製される。いくつかの実施形態では、特定の抗原に対する精製された組換え抗原結合タンパク質の親和性及び/または特異性が決定される。
【0029】
いくつかの実施形態では、宿主は、遺伝子改変マウスであって、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変マウスである。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン重鎖可変領域は、マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されている、及び/または免疫グロブリン軽鎖可変領域は、マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されている。また更に、免疫グロブリン重鎖可変領域は、内因性マウス重鎖遺伝子座にあるマウス重鎖定常領域に作動可能に連結され得、及び/またはマウス軽鎖定常領域に作動可能に連結された免疫グロブリン軽鎖可変領域は、内因性マウス軽鎖遺伝子座にある。
【0030】
いくつかの実施形態では、宿主は、遺伝子改変マウスであって、そのゲノム(その生殖細胞系列ゲノムを含む)に、複数のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、複数のヒトD遺伝子セグメントと、複数のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域がネズミ科重鎖定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、ネズミ科軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、厳密に2つの非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントと、5つの非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変マウスである。いくつかの実施形態では、厳密に2つの非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、ヒトVκ1-39遺伝子セグメント及びヒトVκ3-20遺伝子セグメントである。
【0031】
いくつかの実施形態では、宿主は、遺伝子改変マウスであり得、そのゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)は、内因性重鎖遺伝子座に、(i)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、複数の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、複数の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、複数の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;(ii)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、単一のヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む制限された非再編成重鎖可変領域;(iii)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結された単一の再編成されたヒト重鎖可変領域を含むユニバーサル重鎖コード配列;(iv)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含み、非ヒスチジン残基に対する少なくとも1つのヒスチジンの置換もしくは挿入を更に含む、ヒスチジン改変非再編成重鎖可変領域;(v)重鎖定常領域(非IgM遺伝子、例えばIgG遺伝子が機能的CH1ドメインをコードする配列を欠いている)に作動可能に連結されており、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む重鎖のみの免疫グロブリンをコードする配列;または(vi)マウス免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子に作動可能に連結されており、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、宿主は、遺伝子改変マウスであり得、そのゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)は、内因性軽鎖遺伝子座に、(i)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、複数の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントと、複数の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域;(ii)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結された単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域を含むユニバーサル軽鎖コード配列;(iii)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、2つの非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントと、を含む制限された軽鎖可変領域;または(iv)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含み、非ヒスチジン残基に対する少なくとも1つのヒスチジンの置換もしくは挿入を更に含む、ヒスチジン改変軽鎖可変領域を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、宿主は機能的ADAM6遺伝子を含み、任意選択で、宿主は遺伝子改変マウスであり、機能的ADAM6遺伝子はマウスADAM6遺伝子である。いくつかの実施形態では、宿主は、外因性末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)遺伝子を含み得る、及び/または発現し得る。
【0033】
本開示はまた、抗原に特異的な抗体の免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRを得る方法であって、その抗原で免疫された宿主から得られた試料からの抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を、複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインを含むアミノ酸配列のライブラリに対して照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列を得ることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、抗原を対象とする抗体集団を含む試料をその抗原で免疫された宿主から得ることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することを含む。
【0034】
本開示はまた、特定の抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRを同定するための方法であって、当該抗原で免疫された動物によって産生された複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列によってコードされた複数のアミノ酸配列を、その抗原を対象とする抗体集団から産生された軽鎖及び/または重鎖可変ドメインからのペプチドフラグメントを含むアミノ酸配列と比較することと;それにより、当該抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列を同定することと、を含む方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態では、免疫された宿主は、遺伝子改変非ヒト哺乳動物であって、その生殖細胞系列ゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、特定の抗原で免疫された宿主から、当該抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDRを得る方法であって、その宿主から得られた複数の核酸配列によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を得ることと;免疫された宿主から得られた抗体集団のヒト重鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することと;コードされた複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインのアミノ酸配列を、抗体集団のヒト重鎖可変ドメインのペプチド配列と照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDRを得ることと、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、宿主は、遺伝子改変マウスであって、そのゲノム(その生殖細胞系列ゲノムを含む)に、複数のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、複数のヒト重鎖D遺伝子セグメントと、複数のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、単一のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、単一のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域である免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、ヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域が、ネズミ科軽鎖定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変マウスである。
【0037】
いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域は、単一のヒト軽鎖Vκ遺伝子セグメントと、単一のヒト軽鎖Jκ遺伝子セグメントと、を含む単一の再編成されたヒトカッパ軽鎖可変領域である。いくつかの実施形態では、単一のヒト軽鎖Vκ遺伝子セグメントは、Vκ1-39またはVκ3-20遺伝子セグメントであり、単一のヒト軽鎖Jκ遺伝子セグメントは、Jκ1またはJκ5遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒトカッパ軽鎖可変領域は、Vκ1-39遺伝子セグメント及びJκ5遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒトカッパ軽鎖可変領域は、Vκ3-20遺伝子セグメント及びJκ1遺伝子セグメントを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、ネズミ科軽鎖定常領域は、マウスカッパ軽鎖定常領域である。いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域は、マウスカッパ軽鎖定常領域に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域は、内因性マウスカッパ軽鎖遺伝子座にあるマウスカッパ軽鎖定常領域に作動可能に連結されている。
【0039】
いくつかの実施形態では、宿主は機能的ADAM6遺伝子またはそのフラグメントを含み、任意選択で、宿主は遺伝子改変マウスであり、機能的ADAM6遺伝子はマウスADAM6遺伝子である。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1の試料は、一次または二次リンパ器官からのB細胞の集団、例えば、骨髄試料及び/または脾臓試料からのB細胞、リンパ節からのB細胞、パイエル板からのB細胞などを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1の試料から複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得ることは、核酸配列からcDNAを調製して、第1の試料中の再編成された重鎖VDJ配列をシーケンシングすることを含む。
【0042】
特定の実施形態では、第1の試料から得られた複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列は、DNAシーケンシング技術を使用して決定される。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2の試料は、抗体を含む任意の体液であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、第2の試料は、血清、血漿、リンパ器官、腸、脳脊髄液、脳、脊髄、または胎盤であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、第2の試料からペプチド配列を決定することは、第2の試料中の抗体集団の重鎖可変ドメインの質量分析による(例えば、液体クロマトグラフィー及び質量分析(LC-MS)を含む)解析を含む。本明細書に記載の方法は、質量分析解析の前に、抗体集団の重鎖可変ドメインのタンパク質分解消化を含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、特定の抗原を対象としない抗体を第2の試料から枯渇させることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、異なる抗原及び/または同じ抗原の異なるエピトープ(例えば、宿主を免疫するために使用されたもの)を対象とする抗体を第2の試料から枯渇させることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、目的の抗原(例えば、宿主を免疫するために使用されたもの)を対象とする抗体について第2の試料を濃縮することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインのアミノ酸配列を抗体集団のヒト重鎖可変ドメインのペプチド配列と照合することは、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を、複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列と、及び任意選択で互いに、アラインメントすることを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列を得ることと、(ii)ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリを、その複数のペプチド配列と照合し(ここで、このライブラリは、免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列を含む)、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列を得ることと、を含む方法を提供する。
【0047】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列を含むヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列のライブラリを得ることと、(ii)その抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列と、そのライブラリを照合することと、を含む方法を提供する。
【0048】
いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、その生殖細胞系列ゲノムに、複数のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、複数のヒトD遺伝子セグメントと、複数のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域と、免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、(i)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、単一のヒトV遺伝子セグメントと、単一のヒト軽J遺伝子セグメントと、を含む再編成されたヒト軽鎖可変領域を含むユニバーサル軽鎖コード配列;(ii)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、2つの非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む制限された軽鎖可変領域;または(iii)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含み、非ヒスチジン残基に対する少なくとも1つのヒスチジンの置換もしくは挿入を更に含む、ヒスチジン改変軽鎖可変領域、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態では、提供される方法は、抗原で免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列を含むヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列のライブラリを得ることと、(ii)その抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインの複数のペプチド配列と、そのライブラリを照合することと、を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、その生殖細胞系列ゲノムに、マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、複数の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、複数の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域と、免疫グロブリン重鎖可変領域であって、(i)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、単一のヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む制限された非再編成重鎖可変領域;(ii)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、単一のヒトV遺伝子セグメントと、単一のヒトD遺伝子セグメントと、単一のヒトJ遺伝子セグメントと、を含む単一の再編成されたヒト重鎖可変領域を含むユニバーサル重鎖コード配列;または(iii)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含み、非ヒスチジン残基に対する少なくとも1つのヒスチジンの置換もしくは挿入を更に含むヒスチジン改変非再編成重鎖可変領域、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態では、提供される方法は、抗原で免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン配列を含むヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン配列のライブラリを得ることと、(ii)その抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列と、そのライブラリを照合することと、を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、抗原に特異的な抗体のヒト重鎖可変ドメインのヌクレオチド配列を得ることと、抗原結合タンパク質中でヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする得られたヌクレオチド配列を発現させることと、を含み得る。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、第2の(例えば、組換え)抗体である。
【0051】
いくつかの実施形態では、ヒト重鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列は、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域と作動可能に連結されて細胞株中で発現され、ヒト免疫グロブリン重鎖を生成する。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリン重鎖は、ヒト免疫グロブリン軽鎖とともに細胞株中で発現され得る。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリン軽鎖は、マウスに存在するものと同じ単一の再編成された可変領域配列、またはその体細胞変異バージョンに由来し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする得られたヌクレオチド配列を組換え抗原結合タンパク質中で発現させることを含む。いくつかの実施形態では、組換え抗原結合タンパク質は、第2の組換え抗体である。いくつかの実施形態では、第2の抗体は、ヒト抗体であり、二重特異性抗体であり得る。第2の抗体を精製し、精製した第2の抗体の親和性及び/または特異性を特定の抗原について決定することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定するための試料は、抗体を含む任意の体液であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、第2の試料は、血清、血漿、リンパ器官、腸、脳脊髄液、脳、脊髄、もしくは胎盤、またはそれらの組み合わせであるか、あるいはそれらを含む。いくつかの実施形態では、重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することは、MS解析(例えば、LC/MS解析)を含む。いくつかの実施形態では、重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することは、抗原で免疫された宿主から得られた抗体を含む試料のMS解析(例えば、LC/MS解析)を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインを含むアミノ酸配列のライブラリは、抗原で免疫された宿主から得られた複数の核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインを含むアミノ酸配列のライブラリは、骨髄及び/または脾臓試料などのB細胞試料から得られた複数の核酸によってコードされる。
【0055】
本開示で提供されるこれら及び他の特質及び利点は、添付の特許請求の範囲と併せて、以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。特許請求の範囲は、本明細書に記載される特質及び利点の特定の議論によってではなく、特許請求の範囲の中の記載によって定義されることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】例示的な目的の抗原について、次世代シーケンシングと並行してLC-MSを使用して抗体を得るための例示的な方法の模式的概略を含む。
【0057】
図2A】CD22で免疫されたマウスドナーの脾臓及び骨髄から得られたIgGにおける、ヒト重鎖V遺伝子の使用の多様性を示す(配列の%(Y軸)として表す)グラフを含む。
図2B】CD22で免疫されたマウスドナーの脾臓及び骨髄から得られたIgGにおける、ヒト重鎖J遺伝子の使用の多様性を示す(配列の%(Y軸)として表す)グラフを含む。
【0058】
図3A】次世代シーケンシング解析によって決定された、異なるマウスからの脾臓におけるHCDR3の重複(約2%重複)を示す。
図3B】次世代シーケンシング解析によって決定された、同じマウスからの骨髄及び脾臓におけるHCDR3の重複(10~14%重複)を示す。
【0059】
図4】相同なCDR3配列を含有する抗体群からの質量スペクトルの一致及びNGSカウントに基づいた抗CD22抗体の選択の例を示す。図4の上部は、抗CD22抗体重鎖可変ドメインの配列である。破線枠は、(左から右へそれぞれ)CDR1、CDR2、及びCDR3配列を描写している。下線は、質量分析解析によるシーケンスカバレッジを示しており、CDR1は100%カバレッジ、CDR2は0%カバレッジ、CDR3は100%カバレッジである。
【0060】
図5】ユニバーサル軽鎖マウスから得た表されたCDR3配列に基づく抗体の多様化を示す。抗体を、そのCDR3配列の相違に基づいて分類し、更なるクローニング及び特徴付けのために多様なレパートリーを選択した。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本開示は、質量分析と次世代シーケンシングとの組み合わせを使用して、ヒト可変ドメインを有する抗体を得るための方法を提供する。本開示は、抗体を作製するための方法を更に提供する。
【0062】
特定の定義
本開示に従って利用される場合、別途示されない限り、以下の用語は、以下の意味を有すると理解されるものとする。文脈により別途要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0063】
更に、文脈により別途明確に示されない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」には複数形の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「方法(a method)」への言及は、本明細書に記載されるタイプの1つ以上の方法及び/またはステップを含み、及び/または本開示を読むことで当業者に明らかになるであろう。
【0064】
「約」または「およそ」という用語は、値の意味のある範囲内にあることを含む。「約」または「およそ」という用語によって包含される許容変動は、試験中の特定の系に依存し、当業者であれば容易に理解することができるであろう。
【0065】
「抗原」という用語は、免疫適格宿主に導入された場合に、宿主の免疫系により認識され宿主による免疫応答を誘発する、任意の作用物質(例えば、タンパク質、ペプチド、多糖、脂質、糖タンパク質、糖脂質、ヌクレオチド、核酸、ポリマー、及び/またはそれらの部分または組み合わせ)を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、体液性応答(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発する。
【0066】
「抗体」、「抗原結合タンパク質」、または「エピトープ結合タンパク質」などの用語は、モノクローナル抗体、IgA抗体、IgG抗体、IgE抗体、またはIgM抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、逆キメラ抗体、重鎖に軽鎖可変遺伝子セグメントを含む抗体、軽鎖に重鎖可変遺伝子セグメントを含む抗体、ならびに一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、イントラボディ、ミニボディ、ダイアボディ、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗原特異的TCRに対する抗Id抗体を含む)、ならびに上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントを指す。したがって、抗原結合分子の「抗原結合フラグメント」及び「抗原結合部分」及び「エピトープ結合フラグメント」もまた本明細書に包含され、これらは、抗原に結合する能力を保持するフラグメントを指す。「抗原結合タンパク質」という用語には、例えば、単一ドメイン抗体、重鎖のみの抗体、米国特許出願公開第20070004909号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているものなどの共有結合ダイアボディ、及び米国特許出願公開第20090060910号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているものなどのIg-DARTSも含まれる。いくつかの特定の実施形態では、抗体は、少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖(例えば、ジスルフィド結合によって相互連結されている)を含む、カノニカル抗体である。
【0067】
「特異的に結合する」、「特異的な形で結合する」、「抗原特異的」などの用語は、特異的結合に関与する分子が、(1)生理学的条件下で互いに安定して結合する(例えば、会合する、例えば分子間非共有結合を形成する)ことが可能であり、かつ(2)生理学的条件下で、特定の結合対以外の他の分子と安定して結合することが不可能であることを示す。特異的結合はまた、低マイクロモルからピコモルの範囲までの平衡解離定数(K)によって特徴付けることができる。高度な特異性は低ナノモル範囲にあり得、非常に高度な特異性はピコモル範囲にある。2つの分子が特異的に結合するか否かを判定するための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、平衡透析及び表面プラズモン共鳴が含まれる。
【0068】
「宿主」とは、注射または他の適切な経路を介して宿主に導入された外来分子または抗原に応答して免疫系タンパク質を産生する動物または非ヒト哺乳動物を指す。宿主への抗原または他の異物の導入は、抗体産生及び関連する免疫応答を誘発する。
【0069】
「非ヒト哺乳動物」などの用語は、ヒトではない任意の脊椎動物を指す。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、円口類、硬骨魚類、軟骨魚類(例えば、サメまたはエイ)、両生類、爬虫類、哺乳動物、及び鳥類である。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物は、霊長類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ウシ、またはげっ歯類である。様々な非ヒト動物が、本明細書で更に後述される。更に、本明細書で使用される場合、「遺伝子改変非ヒト哺乳動物」という用語は、上記の「非ヒト哺乳動物」であって、例えば、非ヒト哺乳動物の遺伝子配列を導入、欠失、増強、抑制、または変異させるために、非ヒト哺乳動物の遺伝物質が遺伝子工学技法を使用して変更されたものを指す。
【0070】
「ヒト化」、「キメラ」、「ヒト/非ヒト」などの用語は、配列(例えば、核酸、タンパク質など)を含む抗体(または抗原結合タンパク質、もしくは抗体成分)であって、その配列の少なくとも一部がヒトに由来する抗体、またはその配列の少なくとも一部が非ヒト起源(例えば、げっ歯類のもの、例えばマウスのもの)であった場合、改変(例えば、ヒト化、キメラ化、ヒト/非ヒトなど)分子がその生物学的機能を保持するように、及び/または保持された生物学的機能を果たす構造を維持するように、対応するヒト抗体(または抗原結合タンパク質、もしくは抗体成分)配列の対応する部分で置き換えられている抗体を指すために一般的に使用される。例えば、キメラ抗体は、第1の種(例えば、ヒト)に見られるV及びV領域配列と、第2の異なる種(例えば、非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウス)に見られる定常領域配列とを含む。いくつかの実施形態では、非ヒト定常領域(例えば、マウス定常領域)に連結されたヒトV及びV領域を有する抗体は、「逆キメラ抗体」と称される。対照的に、「ヒト」抗体などは、ヒト起源のもののみを有する配列(例えば、ヒトヌクレオチド及び/またはタンパク質配列)を包含する。
【0071】
「遺伝子改変非ヒト動物」及び「遺伝子操作非ヒト動物」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の天然に存在しない非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えばラットまたはマウス)であって、非ヒト動物の細胞の1つ以上が、目的のポリペプチドをコードする異種核酸及び/または異種遺伝子(複数可)を全体としてまたは部分的に含有するものを指す。例えば、いくつかの実施形態では、「遺伝子改変非ヒト動物」または「遺伝子操作非ヒト動物」は、本明細書に記載される導入遺伝子または導入遺伝子コンストラクトを含有する非ヒト動物を指す。いくつかの実施形態では、異種核酸及び/または異種遺伝子は、意図的な遺伝子マニピュレーションによる、例えば、マイクロインジェクションによるまたは組換えウイルスでの感染による、前駆細胞への導入によって、直接的にまたは間接的に細胞に導入される。遺伝子マニピュレーションという用語は、古典的な交配技法を含まず、むしろ組換えDNA分子(複数可)の導入を対象とする。この分子は、染色体内に組み込まれ得る。「遺伝子改変非ヒト動物」または「遺伝子操作非ヒト動物」という語句は、異種核酸及び/または異種遺伝子についてヘテロ接合性またはホモ接合性である動物、及び/または異種核酸及び/または異種遺伝子の単一または複数のコピーを有する動物を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「生殖細胞系列構成」という用語は、野生型動物(例えば、マウス、ラット、またはヒト)の内因性生殖細胞系列ゲノムに見られる配列(例えば、遺伝子セグメント)の編成を指す。免疫グロブリン遺伝子セグメントの生殖細胞系列構成の例は、例えば、LeFranc,M-P.,The Immunoglobulin FactsBook,Academic Press,May,23,2001(本明細書では「LeFranc 2001」と称される)で見ることができる:
・ヒト重鎖可変領域遺伝子セグメント及びヒト重鎖定常領域遺伝子の例示的な構成は、LeFranc 2001のp.47で見ることができる;
・ヒトλ軽鎖可変領域遺伝子セグメント及びヒトλ軽鎖定常領域遺伝子の例示的な構成は、LeFranc 2001のp.61で見ることができる;
・ヒトκ軽鎖可変領域遺伝子セグメント及びヒトκ軽鎖定常領域遺伝子の例示的な構成は、LeFranc 2001のp.53で見ることができる;
・マウス重鎖可変領域遺伝子セグメント及びマウス重鎖定常領域遺伝子の例示的な構成は、Lucas,J.et al.,Chapter 1:The Structure and Regulation of the Immunoglobulin Loci,Molecular Biology of B Cells,2nd Edition,Academic Press,2015(Lucas)で見ることができる;
・マウスλ軽鎖可変領域遺伝子セグメント及びマウスλ軽鎖定常領域遺伝子の例示的な構成は、LeFranc,M-P et al.,Chapter 4:Immunoglobulin Lambda(IGL)Genes of Human and Mouse,Molecular Biology of B Cells,1st Edition,Academic Press,2004(LeFranc 2004)で見ることができる;ならびに
・マウスκ軽鎖可変領域遺伝子セグメント及びマウスκ軽鎖定常領域遺伝子の例示的な構成は、Christele,M-J,et al.,Nomenclature and Overview of the Mouse(Mus musculus and Mus sp.)Immunoglobulin Kappa(IGK)Genes,Exp Clin Immunogenet 2001,18:255-279(Christele)で見ることができる。
【0073】
上に列挙されたLeFranc 2001、Lucas、LeFranc 2004、及びChristeleの引用されたセクションの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「生殖細胞系列ゲノム」という用語は、動物の形成において使用される胚細胞(例えば、配偶子、例えば精子または卵子)に見られるゲノムを指す。動物の細胞にとって、生殖細胞系列ゲノムはゲノムDNAの供給源である。したがって、生殖細胞系列ゲノムに改変を有する動物(例えば、マウスまたはラット)は、その細胞の全てのゲノムDNAに改変を有するものと考えられる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「生殖細胞系列配列」という用語は、野生型動物(例えば、マウス、ラット、もしくはヒト)の内因性生殖細胞系列ゲノムに見られるDNA配列、または動物(例えば、マウス、ラット、またはヒト)の内因性生殖細胞系列ゲノムに見られるDNA配列によってコードされるRNAもしくはアミノ酸配列を指す。免疫グロブリン遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列配列は、例えば、LeFranc 2001で見ることができる:
・本明細書に記載されるいくつかの実施形態において利用され得るヒトV遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列ヌクレオチド配列及びヒトV遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列アミノ酸配列は、LeFranc 2001の107~234頁で見ることができる;
・本明細書に記載されるいくつかの実施形態において利用され得るヒトD遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列ヌクレオチド配列及びヒトD遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列アミノ酸配列は、LeFranc 2001の98~100頁で見ることができる;
・本明細書に記載されるいくつかの実施形態において利用され得るヒトJ遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列ヌクレオチド配列及びヒトJ遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列アミノ酸配列は、LeFranc 2001の104頁で見ることができる;
・本明細書に記載される非ヒト動物のいくつかの実施形態において利用され得るヒトVλ遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列ヌクレオチド配列及びヒトVλ遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列アミノ酸配列は、LeFranc 2001の350~428頁で見ることができる;ならびに
・本明細書に記載される非ヒト動物のいくつかの実施形態において利用され得るヒトJλ遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列ヌクレオチド配列及びヒトJλ遺伝子セグメントの代表的な生殖細胞系列アミノ酸配列は、LeFranc 2001の346頁で見ることができる。
【0076】
上に列挙されたLeFranc 2001の引用されたセクションの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
「相補性決定領域」という語句または「CDR」という用語には、生物の免疫グロブリン遺伝子の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列が含まれ、この配列は、通常(すなわち、野生型動物において)、免疫グロブリン分子(例えば、抗体)の軽鎖または重鎖可変ドメインの2つのフレームワーク(FR)領域の間に見られる。CDRは、例えば、生殖細胞系列配列または再編成された配列もしくは非再編成配列によって、及び例えばナイーブB細胞または成熟B細胞によってコードされ得る。CDRは、体細胞変異され(例えば、動物の生殖細胞系列にコードされた配列とは異なり)、ヒト化され、及び/またはアミノ酸の置換、付加、もしくは欠失により改変され得る。一部の状況では(例えば、CDR3の場合)、CDRは、2つ以上の配列(例えば、生殖細胞系列配列)によってコードされ得、この配列は、(例えば、非再編成核酸配列では)隣接していないが、B細胞核酸配列では、例えば、配列の接続(例えば、重鎖CDR3を形成するためのV-D-J組換え)の結果として隣接している。CDRの境界を定義するための特定の体系が、当該技術分野で確立されている(例えば、Kabat、Chothiaなど)。当業者は、これらの体系間の相違を理解し、特許請求された発明を理解して実施するのに必要な程度までCDRの境界を理解することができる。
【0078】
「遺伝子セグメント」または「セグメント」という語句には、可変(V)遺伝子セグメント(例えば、免疫グロブリン軽鎖可変(V)遺伝子セグメントもしくは免疫グロブリン重鎖可変(V)遺伝子セグメント)、免疫グロブリン重鎖多様性(D)遺伝子セグメント、または接合(J)遺伝子セグメント、例えば、免疫グロブリン軽鎖接合(J)遺伝子セグメントもしくは免疫グロブリン重鎖接合(J)遺伝子セグメントへの言及が含まれ、これらセグメントには、再編成(例えば、内因性リコンビナーゼによって媒介される)に関与して、再編成された軽鎖V/Jまたは再編成された重鎖V/D/J配列を形成することができる、免疫グロブリン遺伝子座にある非再編成配列が含まれる。別途示されていない限り、非再編成V、D、及びJセグメントは、12/23ルールに従ってV/J組換えまたはV/D/J組換えを可能にする組換えシグナル配列(RSS)を伴っている。
【0079】
本明細書で使用される場合、「再編成された」という用語は、一緒に(直接的にまたは間接的に)接合された2つ以上の免疫グロブリン遺伝子セグメントを含むことにより、接合された遺伝子セグメントが免疫グロブリンの可変領域をコードするDNA配列を一緒に有する、DNA配列を表す。再編成されたDNA配列の2つ以上の免疫グロブリン遺伝子セグメントは、機能する組換えシグナル配列(RSS)をもはや伴わず、したがって、更なる再編成を受けることができない。再編成されたDNA配列の2つ以上の免疫グロブリン遺伝子セグメントが、更に再編成され得ない場合があるが、これは、同じ遺伝子座内の他の免疫グロブリン遺伝子セグメントが、例えば、二次再編成を受けることができないことを意味するものではないことを当業者は認識する。当業者は、再編成された遺伝子セグメント(例えば、再編成された免疫グロブリン可変領域内のもの)が、天然VDJ組換えプロセスを介して一緒に接合され得ることを理解するであろう。当業者はまた、再編成された遺伝子セグメント(例えば、再編成された免疫グロブリン可変領域内のもの)が、例えば、標準的な組換え技法を使用して遺伝子セグメントを接合することによって、一緒に接合されるように操作され得ることを理解するであろう。再編成された免疫グロブリン可変領域は、典型的には、2つ以上の接合された免疫グロブリン遺伝子セグメントを含む。例えば、再編成された免疫グロブリンλ軽鎖可変領域は、Jλ遺伝子セグメントと接合されたVλ遺伝子セグメントを含み得る。再編成された免疫グロブリン重鎖可変領域は、接合されたV遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメントを含み得る。当業者はまた、全てのまたは実質的に全ての遺伝子間配列が、通常、再編成された免疫グロブリン可変領域の免疫グロブリン遺伝子セグメント間で除去されることを理解するであろう。当業者は更に、再編成された配列が、遺伝子セグメントに、特にイントロンを含み得ることを理解するであろう。
【0080】
本明細書で使用される場合、「非再編成」という用語は、2つ以上の免疫グロブリン遺伝子セグメントであって、組換え事象を受けておらず、またはそうでなければ接合されておらず、そのためそれらの間に遺伝子間配列(複数可)を含む、2つ以上の免疫グロブリン遺伝子セグメントを含むDNA配列を表す。当業者は、非再編成V遺伝子セグメント及び非再編成J遺伝子セグメントは、インタクトな組換えシグナル配列(RSS)を伴い得ることを理解するであろう。非再編成D遺伝子セグメントには、2つのインタクトな組換えシグナル配列(RSS)が隣接し得る。当業者は更に、非再編成遺伝子セグメント(例えば、非再編成V遺伝子セグメント)が、特にイントロンを含み得ることを理解するであろう。
【0081】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」または互換的に「ポリペプチド」という用語は、あらゆる種類の天然に存在する及び合成のタンパク質を包含し、これには、任意長のタンパク質フラグメント、ペプチド、融合タンパク質、及び改変タンパク質(糖タンパク質を含むがこれに限定されない)、ならびに他の全てのタイプの改変タンパク質(例えば、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、パルミトイル化、グリコシル化、酸化、ホルミル化、アミド化、ポリグルタミル化、ADPリボシル化、PEG化、及びビオチン化から生じるタンパク質を含むがこれらに限定されない)が含まれる。
【0082】
「核酸」及び「ヌクレオチド」という用語は、別途明記されない限り、DNA及びRNAの両方を包含する。特に、「核酸」及び「ヌクレオチド配列」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0083】
「作動可能に連結された」などの用語は、記載されている構成要素が、それらが意図された形で機能することを可能にする関係にある並置状態を指す。例えば、非再編成可変領域遺伝子セグメントは、その非再編成可変領域遺伝子セグメントが、抗原結合タンパク質のポリペプチド鎖として定常領域遺伝子とともにB細胞またはその前駆細胞中で発現される再編成された可変領域遺伝子を形成するように再編成することができる場合、隣接する定常領域遺伝子に「作動可能に連結され」ている。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、コード配列の発現が制御配列と適合する条件下で達成されるような方法で配置されている。「作動可能に連結された」配列は、目的遺伝子と隣接する発現制御配列と、トランスでまたは一定の距離で作用して目的遺伝子(または目的配列)を制御する発現制御配列の両方を含む。「発現制御配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列であって、それらがライゲーションされているコード配列の発現及びプロセシングをもたらすのに必要なポリヌクレオチド配列を含む。発現制御配列には、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、及びエンハンサー配列;スプライシングシグナル及びポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);ポリペプチド安定性を高める配列;ならびに必要に応じて、ポリペプチドの分泌を高める配列が含まれる。そのような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。例えば、原核生物では、そのような制御配列には一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列が含まれるのに対し、真核生物では、通常そのような制御配列には、プロモーター及び転写終結配列が含まれる。「制御配列」という用語は、存在が発現及びプロセシングに必須かつ有益である成分を含むことが意図されており、また、存在が有利である追加の成分、例えば、リーダー配列も含み得る。
【0084】
「異種」という用語は、異なる供給源からの作用物質または実体を指す。例えば、特定の細胞または生物に存在するポリペプチド、遺伝子、または遺伝子産物に関して使用される場合、この用語は、関連するポリペプチド、遺伝子、または遺伝子産物が、1)人の手によって操作されたこと;2)人の手を通して(例えば、遺伝子操作を介して)細胞もしくは生物(もしくはその前駆体)に導入されたこと;及び/または3)天然では関連する細胞もしくは生物(例えば、関連する細胞タイプもしくは生物タイプ)によって産生されず、その中に存在もしないこと、を明確にする。「異種」にはまた、通常は特定の天然細胞または天然生物に存在するが、例えば、変異により、または天然では関連しない制御(また、いくつかの実施形態では、非内因性の調節エレメント(例えば、プロモーター))の下に置かれることにより、変更または改変されたポリペプチド、遺伝子、または遺伝子産物が含まれる。
【0085】
抗体「重鎖」は、通常、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び免疫グロブリン重鎖定常ドメインを含む。可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に更に細分され得る。別途明記されない限り、重鎖可変ドメインは、3つの重鎖CDR及び4つのFR領域(例えば、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4)を含む。重鎖のフラグメントには、CDR、CDR及びFR、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。一般に、完全長重鎖は、N末端からC末端へ、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む、重鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、完全長重鎖は、CH4ドメインも含む(例えば、IgE及びIgMアイソタイプ抗体)。重鎖の機能的フラグメントには、エピトープを特異的に認識することができ(例えば、マイクロモル、ナノモル、またはピコモル範囲のKでエピトープを認識することができ)、細胞から発現可能及び分泌可能であり、かつ少なくとも1つのCDRを含む、フラグメントが含まれる。
【0086】
「軽鎖」という語句は、任意の生物からの免疫グロブリン軽鎖配列を含み、別途明記されない限り、ヒトκ及びλ軽鎖、ならびに代替軽鎖(例えば、VpreB、λ5などを含む)を含む。別途明記されない限り、軽鎖可変ドメインは通常、3つの軽鎖CDR及び4つのフレームワーク(FR)領域を含む。一般に、完全長軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へ、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含むVドメイン、及び軽鎖定常ドメインを含む。軽鎖には、例えば、軽鎖が現れるエピトープ結合タンパク質によって選択的に結合される第1または第2のエピトープのいずれにも選択的に結合しないものが含まれる。軽鎖にはまた、軽鎖が現れるエピトープ結合タンパク質によって選択的に結合される1つ以上のエピトープに結合及び認識するもの、または重鎖がそれらに結合及び認識することを補助するものが含まれる。軽鎖の例には、ユニバーサル軽鎖または共通軽鎖、例えば、本明細書に記載のヒトVκ1-39Jκ5またはヒトVκ3-20Jκ1などの単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域に由来するものが含まれ、また、それらの体細胞変異した(例えば、親和性成熟した)バージョンが含まれる。
【0087】
非再編成可変領域及び/または非再編成可変領域遺伝子セグメントに「由来する」再編成された可変領域遺伝子または可変ドメインに関して使用される場合の「由来する」という語句は、その再編成された可変領域遺伝子または可変ドメインの配列が、この可変ドメインを発現する再編成された可変領域遺伝子を形成するように再編成された非再編成可変領域遺伝子セグメントのセットまで遡ることができることを指す(該当する場合、スプライシングの相違及び体細胞変異を考慮する)。例えば、体細胞超変異を受けた再編成された可変領域遺伝子によって、それが非再編成可変領域遺伝子セグメントに由来するという事実が変わることはない。更に、ユニバーサル軽鎖の文脈における「由来する」という語句は、発現された抗体配列を、マウスのゲノムに存在するユニバーサルまたは単一の再編成された軽鎖まで遡ることができることを指し得る。ゲノム内の単一の再編成された軽鎖配列に由来するそのような軽鎖は、体細胞超変異によって単一の再編成された軽鎖配列とは異なっている可能性がある。
【0088】
本明細書で使用される場合、「遺伝子座」という用語は、一連の関連する遺伝子エレメント(例えば、遺伝子、遺伝子セグメント、または調節エレメント)を含有する、染色体上の領域を指す。例えば、非再編成免疫グロブリン遺伝子座は、免疫グロブリン可変領域遺伝子セグメントと、1つ以上の免疫グロブリン定常領域遺伝子と、V(D)J組換え及び免疫グロブリン発現を誘導する関連調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、スイッチエレメントなど)と、を含み得る。遺伝子座は、内因性または非内因性であり得る。「内因性遺伝子座」という用語は、特定の遺伝子エレメントが天然に見られる染色体上の位置を指す。
【0089】
本明細書の開示に従って、当業者の範囲内の従来の分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技法を用いることができる。そのような技法は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition.Cold Spring Harbor,NY:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989(本明細書では、「Sambrook et al.,1989」)、DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985)、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.1984)、Nucleic Acid Hybridization[B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985)]、Transcription And Translation[B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984)]、Animal Cell Culture[R.I.Freshney,ed.(1986)]、Immobilized Cells And Enzymes[IRL Press,(1986)]、B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)、Ausubel,F.M.et al.(eds.).Current Protocols in Molecular Biology.John Wiley & Sons,Inc.,1994(これらの刊行物の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。これらの技法には、部位特異的変異誘発が含まれる。例えば、Kunkel,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488-492(1985)、米国特許第5,071,743号、Fukuoka et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.263:357-360(1999)、Kim and Maas,BioTech.28:196-198(2000)、Parikh and Guengerich,BioTech.24:4 28-431(1998)、Ray and Nickoloff,BioTech.13:342-346(1992)、Wang et al.,BioTech.19:556-559(1995)、Wang and Malcolm,BioTech.26:680-682(1999)、Xu and Gong,BioTech.26:639-641(1999)、米国特許第5,789,166号及び同第5,932,419号、Hogrefe,Strategies l4.3:74-75(2001)、米国特許第5,702,931号、同第5,780,270号、及び同第6,242,222号、Angag and Schutz,Biotech.30:486-488(2001)、Wang and Wilkinson,Biotech.29:976-978(2000)、Kang et al.,Biotech.20:44-46(1996)、Ogel and McPherson,Protein Engineer.5:467-468(1992)、Kirsch and Joly,Nucl.Acids.Res.26:1848-1850(1998)、Rhem and Hancock,J.Bacteriol.178:3346-3349(1996)、Boles and Miogsa,Curr.Genet.28:197-198(1995)、Barrenttino et al.,Nuc.Acids.Res.22:541-542(1993)、Tessier and Thomas,Meths.Molec.Biol.57:229-237、ならびにPons et al.,Meth.Molec.Biol.67:209-218(これらの刊行物の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)におけるものを参照されたい。
【0090】
抗原特異的抗体の同定方法
本開示は、ヒト可変ドメインを有する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の配列を同定及び/または選択するための方法を提供する。本明細書に記載の様々な方法は、核酸シーケンシング及び質量分析(MS)を利用して、特定の抗原に結合する抗体配列(例えば、可変ドメイン配列またはCDR配列)を選択する。例示的な実施形態では、LC-MS及び次世代シーケンシング(NGS)を使用して、複数の可変ドメイン配列から抗体または可変ドメイン配列を選択する。いくつかの実施形態では、LC-MS及びNGSは、ヒト免疫グロブリン可変ドメインに関する情報を利用して、所与の抗原を対象とする抗体を同定及び取得する。いくつかの実施形態では、目的の抗体の相補性決定領域3(CDR3)が同定及び取得される。
【0091】
様々な実施形態では、本明細書に記載の方法により、例えば従来方法によって容易に検出され得ない遺伝子改変非ヒト動物からの抗原特異的抗体配列の同定が可能になる。遺伝子改変動物から抗体を同定するための公知の方法は、一般に、生存B細胞の存在、及び/またはB細胞の表面での抗体発現(例えば、ハイブリドーマ技術によるもの)に依拠している。本明細書で提供される方法により、生存細胞(例えば、B細胞)の非存在下での抗体の同定/単離が可能となる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法により、(例えば血清中の)分泌抗体の同定/単離が可能となる。本明細書で提供される方法により、従来の抗体同定法では通常使用されない抗体源からの抗体の同定も可能となる。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、目的の抗原に対して遺伝子改変動物から得られた抗体のプールを濃縮及び/または増加させるために、従来の抗体同定/単離法と併せて使用することができる。例えば、本明細書に記載の方法は、ハイブリドーマ技術と併せて、または抗原陽性B細胞からの直接単離を含む方法と併せて使用することができる。例えば、米国特許第7,582,298号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0093】
適応免疫応答は、非常に特異的であり、将来の抗原遭遇のために記憶を保持する長期的な免疫防御として機能する。適応免疫応答は、抗原特異的であり、V(D)J組換えまたは再編成によって部分的に媒介される。免疫グロブリンV(D)J組換えは、骨髄の発生中のB細胞で起こり、広範な抗原の認識を可能にする。VDJ再編成は、免疫グロブリンの重鎖における可変(V)、接合(J)、及び多様性(D)遺伝子セグメントの再編成である。このプロセスは軽鎖でも同様であるが、軽鎖はD遺伝子セグメントを欠いているため、VJ再編成のみが行われる。
【0094】
重要なことは、V(D)J組換え、ならびに接合部ヌクレオチドの付加/除去及び体細胞超変異などの抗体多様化の他のプロセスにより、限られた数の遺伝子から抗体の大きなレパートリーが生成されることである。これらのプロセスにより、様々な抗原に対する特異的な高親和性抗体の生成が可能となる。抗体を生成するこの能力は、ヒト標的に対する治療用抗体を生成するために遺伝子改変動物で利用されている。ヒトV(D)J遺伝子セグメントを含む遺伝子改変マウス(例えば、米国特許第5,633,425号、同第5,770,429号、同第5,814,318号、同第6,075,181号、同第6,114,598号、同第6,150,584号、同第6,998,514号、同第7,795,494号、同第7,910,798号、同第8,232,449号、同第8,703,485号、同第8,907,157号、及び同第9,145,588号(その各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ならびに米国特許公開第2008/0098490号、同第2010/0146647号、同第2013/0145484号、同第2012/0167237号、同第2013/0167256号、同第2013/0219535号、同第2012/0207278号、及び同第2015/0113668号(その各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ならびにPCT公開第WO2007117410号、同第WO2008151081号、同第WO2009157771号、同第WO2010039900号、同第WO2011004192号、同第WO2011123708号、同第WO2014093908号、同第WO2014093908号、同第WO2006008548号、同第WO2010109165号、同第WO2016062990号、同第WO2018039180号、同第WO2011158009号、同第WO2013041844号、同第WO2013041846号、同第WO2013079953号、同第WO2013061098号、同第WO2013144567号、同第WO2013144566号、同第WO2013171505号、同第WO2019008123号、及び同第WO2020169022号(その各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているもの)を、目的の抗原に対して免疫し、抗原特異的抗体を同定し、精製して、続いて所望の治療特性についてスクリーニングする。ヒトV(D)J遺伝子セグメントを含む他の遺伝子改変マウス(例えば、米国特許第6,596,541号、同第6,586,251号、同第8,642,835号、同第9,706,759号、同第10,238,093号、同第8,754,287号、同第10,143,186号、同第9,796,788号、同第10,130,081号、同第9,226,484号、同第9,012,717号、同第10,246,509号、同第9,204,624号、及び同第9,686,970号(その各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ならびに米国特許公開第2013/0212719号、同第2015/0289489号、同第2017/0347633号、同第2019/0223418号、同第2018/0125043号、同第2019/0261612号、及び同第2019/0380316号(その各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、PCT公開第WO2013138680号、同第WO2013138712号、同第WO2013138681号、同第WO2015042250号、同第WO2012148873号、同第WO2013134263号、同第WO2013184761号、同第WO2014160179号、同第WO2017214089号、同第WO2016149678号、及び同第WO2017123808号、ならびにMurphy,A.,“VelocImmune:Immunoglobulin Variable Region Humanized Mouse,”in Recombinant Antibodies for Immunotherapy,New York,NY,Cambridge University Press,101-107(2009)(その各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているもの)を、目的の抗原に対して免疫し、抗原特異的抗体を同定し、精製して、続いて所望の治療特性についてスクリーニングする。本明細書に記載の方法で使用することができる特定の例示的な遺伝子操作非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばラットまたはマウスの詳細な実施形態は、以下の別のセクションで更に詳述される。本発明の様々な実施形態により、免疫された動物から直接得られる分泌抗体分子から、所望の特性を有する治療用抗体を得ることが可能となる。分泌抗体分子を得るために、細胞表面に抗体を発現する生存細胞が存在している必要はない。本明細書に記載されるように、抗体集団から所望の特性を有する抗体を得ることは、本明細書で論じられるように質量分析を使用して実現することができる。
【0095】
本明細書に記載の様々な実施形態では、本方法によって得られる/同定される抗体は、任意のアイソタイプ、例えば、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEの抗体であり得る。いくつかの実施形態では、本方法によって得られる/同定される抗体は、IgGアイソタイプのものである。他の実施形態では、本方法によって得られる/同定される抗体は、IgMアイソタイプのものである。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法によって得られる/同定される抗体または抗原結合タンパク質は、単一ドメイン抗体、重鎖のみの抗体、及び/またはナノボディではない。
【0097】
様々な実施形態では、当該抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインを得る方法が本明細書で提供され、本方法は、特定の抗原で免疫された宿主からの第1の試料から得られた複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得ることと;その抗原を対象とする抗体集団を含む、宿主からの第2の試料から得られた抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することと;コードされた複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列と照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインを得ることと、を含む。いくつかの実施形態では、照合は、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を互いに、及び複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列と、アラインメントすることを含む。
【0098】
様々な実施形態では、本方法は、抗原に特異的な抗体のヒト可変ドメインのヌクレオチド配列を得ることを更に含む。遺伝暗号の縮重により、複数のヌクレオチド配列が、抗原に特異的な抗体のヒト可変ドメインをコードする場合があり、本明細書に記載のいくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、例えば、細胞中での発現のために、例えば哺乳動物細胞中での発現のために、最適化され得る。
【0099】
シーケンシング用の試料
本開示は、特定の結合特性を有する特定の抗体に関する情報が、本明細書に更に記載されるように、NGS及びMS技法を使用して同定され得るという認識を包含する。本明細書に記載の方法で使用するための抗体をコードする核酸及び抗体自体の供給源は動物に限定されるものではないが、本明細書に開示される方法は、動物(例えば、本明細書に記載の遺伝子改変動物)が核酸試料と抗体試料の両方の供給源である場合に、特に有利である。本明細書に記載の方法は、それでもなお、例えばファージディスプレイまたはインテリジェントデザインアプローチを使用するものを含む、他の抗体プラットフォーム技術または他の抗体発現技術とともに使用することもできる。
【0100】
更に、本開示は、制限された重鎖または軽鎖可変配列に由来する抗体が、NGS及びMS解析の簡素化を可能にするという認識を提供する。これは、この解析が、可変ドメインまたはCDR、例えばCDR3、制限されていない免疫グロブリン鎖のみのレパートリー決定に焦点を合わせることができるためである。本開示はまた、制限された重鎖または軽鎖可変配列に由来する抗体を、遺伝子改変非ヒト動物、例えば、制限された重鎖または軽鎖可変配列を含む非ヒト動物から得ることができることを認識する。そのような動物は、例えば、それらが産生する抗体が天然の免疫系プロセスを経ているという点で利益をもたらしており、そのため特に、高親和性かつ特異的な結合を示す可能性が増加し得ると同時にまた、免疫原性となる可能性が低下し得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、NGSによって解析される抗体配列は、制限された軽鎖レパートリーを有する抗体の集団、例えばユニバーサル軽鎖抗体の集団を含む。いくつかの実施形態では、NGSによって解析される抗体配列は、制限された重鎖レパートリーを有する抗体の集団、例えばユニバーサル重鎖抗体の集団を含む。
【0102】
そうであっても、現行技術は、単一細胞シーケンシングアプローチを使用して、複数の免疫グロブリン分子における完全長の重鎖及び軽鎖の同定を可能にする(例えば、DeKosky et al.(2015)Nat.Med.21(1):85-91、Goldstein et al.(2019)Commun.Biol.2:304、及びSingh et al.(2019)Nat.Commun.10(1):3120(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。したがって、いくつかの実施形態では、複数の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖可変ドメインをコードする複数の核酸配列は、単一B細胞次世代シーケンシングアプローチを使用して第1の試料から同時に得ることができ、したがって、本方法は、軽鎖または重鎖配列の制限のない、非ヒト動物宿主からの同定を包含し得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、目的の抗原は、疾患関連抗原である。いくつかの実施形態では、疾患関連抗原は、腫瘍抗原である。様々な腫瘍抗原が、T細胞規定(T cell-defined)腫瘍抗原のデータベースに列挙されている(van der Bruggen P,Stroobant V,Vigneron N,Van den Eynde B.Peptide database:T cell-defined tumor antigens.Cancer Immun 2013)。いくつかの他の実施形態では、目的の抗原は、感染症抗原、例えばウイルス抗原または細菌抗原である。非ヒト動物は、当該技術分野で公知の技法を使用して、DNA形態またはタンパク質形態の目的の抗原で免疫され得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、第1の試料は、B細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、B細胞の集団は、骨髄試料及び/または脾臓試料から単離される。追加の実施形態では、第1の試料は、他のリンパ器官、例えば、リンパ節、腸内のパイエル板などから得ることができる。
【0105】
当業者は、「B細胞」が、形質芽細胞、形質細胞(例えば、長寿命形質細胞)、メモリーB細胞、ならびにB-2細胞、FO B細胞、及びMZ B細胞を含むがこれらに限定されない、幅広いB細胞サブタイプを指し得ることを理解するであろう。当業者は、本明細書に記載の方法で得られる抗体の所望の供給源に応じて、異なる供給源のB細胞が第1の試料に使用され得ることを理解するであろう。
【0106】
シーケンシング解析
試料の調製
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、複数の核酸分子を含む核酸ライブラリを作り出すことを含み得る。いくつかの実施形態では、核酸ライブラリを作り出すことは、宿主から複数の核酸を単離することを含む。いくつかの実施形態では、複数の核酸は、複数のRNA分子、例えばmRNA分子である。
【0107】
いくつかの実施形態では、核酸ライブラリを作り出すことは、cDNAライブラリを作り出すことを含む。いくつかの実施形態では、cDNAライブラリは、宿主から単離された複数のmRNA分子に対応する複数のcDNA分子を含む。いくつかの実施形態では、複数のcDNA分子は、二本鎖cDNA分子である。
【0108】
本発明の様々な実施形態では、複数の免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRをコードする複数の核酸配列は、免疫された宿主から得られた試料(すなわち、上記のシーケンシング用試料または第1の試料)から得られる。
【0109】
いくつかの実施形態では、複数の免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRをコードする複数の核酸配列は、免疫された宿主から第1の試料を得た後に、当該第1の試料から得られる。いくつかの実施形態では、複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする第1の試料から得られた複数の核酸配列は、核酸配列からcDNAを調製して、第1の試料中の再編成された重鎖VDJ配列及び/または再編成された軽鎖VJ配列をシーケンシングすることを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、核酸ライブラリを作り出すことは、複数の核酸分子について濃縮することを含む。いくつかの実施形態では、複数の核酸分子を濃縮することは、複数の核酸分子を、例えばPCR、例えばネステッドPCRによって増幅することを含む。いくつかの実施形態では、複数の核酸分子を濃縮することは、複数の核酸分子を捕捉することを含む。捕捉技法には、例えばハイブリッド捕捉技法が含まれ得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、核酸ライブラリの各核酸分子にインデックスを付着させることを含む。インデックスは、試料特異的であり得る。いくつかの実施形態では、インデックスは、1~25ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、インデックスは、1~10ヌクレオチド長である。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、シーケンシングプライマー及び/またはその相補配列を核酸ライブラリの各核酸分子に付着させることを含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、核酸ライブラリ中の複数の核酸分子は、フラグメント化されている。いくつかの実施形態では、核酸分子は、機械的(例えば、超音波処理)または化学的(例えば、酵素)方法によってフラグメント化されている。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、核酸ライブラリ中の核酸分子に対してサイズ選択を実施することを含む。サイズ選択パラメータは、実施されるシーケンシングのタイプに基づいて決定され得る。例示的なサイズ選択では、核酸は、200~1000bp、例えば400~900bp、例えば400~700bpの範囲の長さでサイズ選択される。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、核酸ライブラリ中の核酸の量を定量することを含む。いくつかの実施形態では、量は、総量、例えばナノグラムの核酸であり得る。いくつかの実施形態では、量は、濃度、例えばナノグラム毎ミリリットルの核酸であり得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列は、次世代シーケンシング技術を使用して決定される。いくつかの実施形態では、複数の核酸配列は、特定の抗原に結合する免疫グロブリン可変ドメインを同定するのに十分な数のアミノ酸配列をコードする。代表的なアミノ酸配列の数の例は、数十、数百、数千、または数万の配列を含み得る。いくつかの実施形態では、次世代シーケンシング技術を使用して決定された複数の免疫グロブリン可変領域から構築された最終参照配列データベースからは、シーケンシングエラーの影響を低減させるため、単一リード配列(例えば、シーケンシングランの間に単一のリード配列のみが生じる配列)が除外され得る。したがって、いくつかの実施形態では、核酸配列によってコードされるユニークなアミノ酸配列数は、そのような単一リード配列を除外した後に決定され得る。
【0117】
次世代シーケンシング(NGS)
本明細書で提供される方法は、NGSシーケンシングを実施することを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、1種以上のNGS技法を実施することを含み得る。
【0118】
本明細書で使用される場合、超並列シーケンシングまたはディープシーケンシングとも称される「次世代シーケンシング」(NGS)は、何百万ものDNAの小さなフラグメントを並行してシーケンシングし、核酸配列中のバリアントを検出することができるシーケンシング技術に関する。いくつかの実施形態では、高忠実度かつ高深度の結果を得るために、核酸を複数回シーケンシングする。NGSシーケンシングは、個々の反応を物理的に分離することなく実施することができる。理論に束縛されることを望むわけではないが、核酸抽出に続いて、NGSシーケンシングは、標的化シーケンシング、全エクソームシーケンシング、及び全ゲノムシーケンシングと、それに続くライブラリまたはテンプレートの生成、及びバイオインフォマティクスを使用したデータ解析を含む、幅広い機器及び技法を使用して実施することができる。一般に、NGS及びデータ解析を実施するための幅広いプラットフォーム及びバイオインフォマティクスツールが存在する。例えば、Levy S.E.and Myers R.M.,2016 Annu.Rev.Genom.Hum.Genet.17:95-115、Behjati S.and Tarpey P.S.,2013 Arch Dis Child Pract Ed.98(6):236-238、Alekseyev,et al.2018 Academic Pathology,5:1-11を参照されたい。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、より深いシーケンシングによって、抗体レパートリーのカバレッジが増加する。
【0119】
本開示に従って使用するための例示的なNGS法には、「第2世代シーケンシング」、「第3世代シーケンシング」、及び「第4世代シーケンシング」技法を含むシーケンシング技法が含まれる。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法には、454パイロシーケンシング、Ion Torrentシーケンシング、及びIlluminaシーケンシングを含むがこれらに限定されない技法によるシーケンシングが含まれる。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法には、454パイロシーケンシングによるシーケンシングが含まれる。454パイロシーケンシングは、ヌクレオチド取り込みの副産物であるピロリン酸を検出し、特定の塩基が伸長中のDNA鎖に取り込まれたか否かを報告する((Ronaghi,Karamohamed,Pettersson,Uhlen,& Nyren,Anal.Biochem.1996 Nov 1;242(1):84-9)、また、Slatko,Gardner,& Ausubel,Curr.Protoc.Mol.Biol.2018;122(1):e59も参照されたい。これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。典型的な454シーケンシング法では、個々のDNAフラグメント(例えば400~900bp、例えば400~700bpの長さ)をアダプターにライゲーションし、個々のエマルジョン「ビーズ」(emPCR)反応においてPCRによって増幅する。ビーズ上のDNA配列はアダプター上の配列に相補的であり得るため、DNAフラグメントがビーズに直接結合することができ、理想的には1つのフラグメントが各ビーズに結合する。次に、DNA合成とそれに続くDNA合成反応の化学的検出が行われ、ピロリン酸放出が測定される。試料を含むピコリットルサイズのチャンバを、4つのヌクレオチドのうちのいずれかを含有するシーケンシング試薬で満たす。正しいヌクレオチドが合成鎖に取り込まれたとき、光生成反応を利用してピロリン酸の放出が測定される。配列内のヌクレオチドのホモポリマー「ラン」は、反応によって生じる光の強度を測定することによって検出され得る。歴史的に、454シーケンシング技術は、ゲノムアセンブリを促進する、通常実現される長いリード長(最大600~800nt)及び比較的高いスループット(2500万塩基、4時間のランで99%以上の精度)を理由として、ゲノムシーケンシング及びメタゲノム試料に使用されてきた。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、Ion Torrentシーケンシングによるシーケンシングを含む。Ion Torrent(商標)技術は、半導体チップ上でヌクレオチド配列をデジタル情報に直接変換する(Rothberg et al.,Nature 475,348-352(2011)(その全体が参照により組み込まれる))。DNA合成反応において、正しいヌクレオチドが、伸長中のDNA鎖内のそのヌクレオチドに相補的な塩基の向かい側に取り込まれたときに水素イオンが放出される。水素イオンの放出によって溶液のpHが変化し、これを、pHメーターと極めて類似したイオンセンサーによって電圧変化として記録することができる。ヌクレオチドが取り込まれていない場合、電圧スパイクは生じない。4つのヌクレオチドのうち一度に1つだけを含むシーケンシング試薬で「シーケンシングチャンバ」を連続的に満たし、洗い流すことにより、適切なヌクレオチドが取り込まれたときに電圧変化が生じる。隣接する2つのヌクレオチドが同じヌクレオチドを取り込むと、2つの水素が放出され、電圧が2倍になる。したがって、単一ヌクレオチドの「ラン」も判定することができる。
【0123】
Ion Torrentシーケンシングは、DNAを200~1500塩基のフラグメントにフラグメント化することから始まり、これをアダプターにライゲーションする。DNAフラグメントを、ビーズ及びアダプター上の相補的配列によってビーズに付着させ、次いで、エマルジョンPCR(emPCR)によってビーズ上で増幅する。次に、1つのビーズのみが個々のウェルに入ることができるように、ビーズをチップ含有ウェル全体に流す。次に、シーケンシング試薬をウェル全体に流すと、適切なヌクレオチドが取り込まれたときに水素イオンが放出され、シグナルが記録される。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、Illuminaシーケンシングによるシーケンシングを含む。Illuminaシーケンシングは、「ブリッジ増幅」として知られる技法に基づくものであり、この技法では、適切なアダプターが両端にライゲーションされたDNA分子(約500bp)が、ライゲーションされたアダプターに相補的なオリゴヌクレオチド配列を含有する固体支持体上で増幅合成反応を繰り返すための基質として使用される。支持体上のオリゴヌクレオチドは、その後増幅ラウンドに繰り返し供されるDNAが各オリゴヌクレオチドフラグメントの約1000コピーからなるクローン「クラスター」を生み出すように間隔が空いている。各支持体には、何百万もの並行するクラスター反応を含めることができる。合成反応中に、4つの塩基の各々に対応する、それぞれ異なる蛍光標識を有する改変ヌクレオチドが取り込まれ、次いで検出される。ヌクレオチドは、各反応の合成のターミネーターとしても機能し、次の合成ラウンドの検出後にブロックが解除される。反応は300ラウンド以上繰り返される。蛍光検出を使用すると、カメラベースのイメージングとは対照的に、直接イメージングにより検出速度が増大する。
【0125】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、単一分子リアルタイム(SMRT)シーケンシングによるシーケンシングを含む。SMRTシーケンシングは、最大30~50kb、またはそれ以上の非常に長いフラグメントをシーケンシングすることができる。SMRTシーケンシングは、操作したDNAポリメラーゼを、シーケンシング対象である結合したDNAとともに、SMRTフローセル内のウェル(ゼロモード導波路(ZMW))の底部に結合させることを含む。ZMWは、照明光の波長と比較して、小さな寸法の領域に光エネルギーを導く小型チャンバである。ZMWの設計及び利用される光の波長によって、イメージングは、DNAに結合したDNAポリメラーゼが伸長中の鎖に各塩基を取り込む、ZMWの底部でのみ生じることが多い。4つのヌクレオチドは、差次的検出のために異なるリン酸結合フルオロフォアで標識されている。ヌクレオチドが伸長中の鎖に取り込まれるとき、イメージングは、正しい蛍光標識ヌクレオチドが結合された際にミリ秒単位で行われる。取り込まれた後、リン酸結合蛍光部分が放出され、それ以降は検出不可となる。続いて、次のヌクレオチドが取り込まれ得る。各塩基が、伸長中のDNA鎖に取り込まれる際に同定されるように、イメージングはヌクレオチドの取り込み速度とのタイミングについて調整される。これは、SMRTセル内の単一チップ上に存在する最大100万ゼプトリットルのZMWで同時に並行して行われる。
【0126】
SMRTシーケンシングに伴うテンプレートの調製には、テンプレート上でDNA合成を開始するために使用されるプライマーに相補的な既知のアダプター配列を有する環状二本鎖DNA分子である、「SMRTbell」を作り出すことが含まれる。この構成により、ポリメラーゼは、ポリメラーゼが停止するまで各ZMW内の環状分子を行き来することにより、大型のテンプレートを何度も読み取り、コンセンサス配列(CCS、環状コンセンサス配列)を構築することができる。インサートの両側にライゲーションされたアダプターはそれぞれDNA合成プライミング部位を有するため、シーケンシングポリメラーゼはいずれかのDNA鎖上で5’から3’方向に環状SMRTbellを行き来して、ds「SMRTbell」の両鎖から相補的な情報を提供することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、ナノポアシーケンシングによるシーケンシングを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、in situシーケンシング(ISS)によるシーケンシングを含む。
【0128】
バイオインフォマティクス
いくつかの実施形態では、シーケンシングによって生じたデータを解析するためにバイオインフォマティクスが使用される。例えば、いくつかの実施形態では、バイオインフォマティクスを使用して、解析対象の抗体または抗原結合タンパク質の特定の領域、例えば、免疫グロブリン可変領域の核酸配列、免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列、フレームワーク領域もしくは相補性決定領域をコードする核酸配列、またはフレームワーク領域もしくは相補性決定領域のアミノ酸配列を描写することができる。
【0129】
NGSシーケンシングでは、通常、大量のシーケンシングデータが生じる。いくつかの実施形態では、配列リードは逆マルチプレックス化(de-multiplexed)され得る。いくつかの実施形態では、逆マルチプレックス化は、シーケンシングされた核酸が得られた試料または供給源に基づいた、配列リードのin silico選別を含む。逆マルチプレックス化は、付随したインデックスに基づいて配列リードをin silico選別することにより実施され得る。いくつかの実施形態では、逆マルチプレックス化の実施後、インデックスの配列は配列リードから除去され得る。いくつかの実施形態では、インデックス、供給源、または試料の同定は、配列リードに関連する配列情報に追加され得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、配列リードは、品質スコア(例えば、Phredスコア)に基づいて、更なる解析から除去される(「選別除去される」)。いくつかの実施形態では、品質スコアは、配列リード中の1つ以上のヌクレオチドが誤ってコールされる確率を表す。いくつかの実施形態では、品質スコアは、リード内の特定の塩基に信頼度を付与する方法である。
【0131】
いくつかの実施形態では、配列リードは、配列リード長に基づいて、更なる解析から除去される(「選別除去される」)。例えば、短すぎるまたは長すぎる配列リードはいずれも、解析から除去され得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、配列リードは、既知の配列に対する配列リードの一部の同一性に基づいて、更なる解析から除去される(「選別除去される」)。例えば、いくつかの実施形態では、プライマー(例えば、IgG定常領域プライマー)に対応する配列リードの一部が、プライマーの既知の配列に対して90%未満、95%未満、100%未満の同一性を有する場合、配列リードは更なる解析から除去され得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、配列リードは、特定の核酸配列について検出されたリードが少数であったことから更なる解析から除去される。
【0134】
いくつかの実施形態では、非生産的再編成(例えば、終止コドンまたはアウトオブフレーム再編成を有するもの)は、解析前に除去され得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、ペアエンドシーケンシングの実施を含むNGSを実施することを含み、本方法は、重複するペアエンドリードをマージすることを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、重複リードは除去され得る。重複リードは、同じ元のDNAフラグメントに対応するリードである。重複リードは、例えば、シーケンシング技法における増幅ステップによって生成される可能性がある。いくつかの実施形態では、重複リードの除去は、核酸配列ライブラリ中の複数の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を決定する前に行われる。
【0137】
いくつかの実施形態では、NGSの実施によって得られたシーケンシング情報を使用して、シーケンシングされた元のDNAフラグメントに対応するコンセンサス配列を決定する。
【0138】
いくつかの実施形態では、NGSから得られたヌクレオチド配列がランク付けされる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、cDNAの存在量、リード長、及び/またはヌクレオチド配列の信頼度に基づいてランク付けされる。いくつかの実施形態では、NGS解析の上位1,000配列がランク付けされる。いくつかの実施形態では、NGS解析の上位500配列がランク付けされる。いくつかの実施形態では、MSによって得られた上位400個のペプチドがランク付けされる。いくつかの実施形態では、NGS解析の上位300配列がランク付けされる。いくつかの実施形態では、NGS解析の上位200配列がランク付けされる。いくつかの実施形態では、NGS解析の上位100配列がランク付けされる。
【0139】
いくつかの実施形態では、NGSを介して得られた複数の核酸配列(例えば、免疫グロブリン可変ドメインをコードするもの)は、生殖細胞系列V(D)J配列にアラインメントされる。いくつかの実施形態では、NGSを介して得られた複数の核酸配列(例えば、免疫グロブリン可変ドメインをコードするもの)は、生殖細胞系列V(D)J配列にアラインメントされ、更に解析されて、例えば、可変領域配列、可変ドメイン配列、フレームワーク配列、及び/またはCDR配列(例えば、CDR3配列)に関する情報が抽出される。
【0140】
いくつかの実施形態では、シーケンシングリードを解析し、それらがコードするアミノ酸配列を(例えば、in silico翻訳によって)決定して、配列をユニークなインフレームの完全長アミノ酸配列にまとめる。いくつかの実施形態では、提供される方法は、シーケンシングリード(例えば、配列リードライブラリのもの)をin silico翻訳することによって、アミノ酸配列のライブラリを生成することを含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、これらの抽出された核酸配列またはCDR3配列のアミノ酸配列を解析し、対応する核酸またはCDR3配列のアミノ酸配列を(例えば、in silico翻訳によって)得て、配列をユニークなインフレームの完全長アミノ酸配列にまとめることによって、それらのアミノ酸配列を決定する。いくつかの実施形態では、これらのユニークなアミノ酸配列を使用して、複数の免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリンCDRを表すアミノ酸配列のライブラリを構築する。
【0142】
本明細書で使用される場合、複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸配列は、約10,000、約15,000、約20,000、約25,000、約30,000、約35,000、約40,000、約45,000、約50,000、約55,000、約60,000、約65,000、約70,000、約75,000、約80,000、約85,000、約90,000、約95,000、約100,000、約110,000、約120,000、約130,000、約140,000、約150,000、約160,000、約170,000、約180,000、約190,000、約200,000、約250,000、約300,000、約350,000、約400,000、約450,000、または約500,000のユニークなアミノ酸配列を含む、約10,000~500,000のユニークなアミノ酸配列をコードする核酸配列を包含する。いくつかの実施形態では、複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸配列は、約10~100,000のユニークなアミノ酸配列、または約10、約25、約50、約75、約100、約250、約500、約750、約1000、約1500、約2000、約2500、約3000、約3500、約4000、約4500、約5000、約10,000、約15,000、約20,000、約25,000、約30,000、約35,000、約40,000、約45,000、約50,000、約55,000、約60,000、約65,000、約70,000、約75,000、約80,000、約85,000、約90,000、約95,000、もしくは約100,000のユニークなアミノ酸配列をコードする核酸配列を包含し得る。いくつかの実施形態では、複数の核酸配列は、約10,000~80,000のユニークなアミノ酸配列をコードし、かつ約10,000、約15,000、約20,000、約25,000、約30,000、約35,000、約40,000、約45,000、約50,000、約55,000、約60,000、約65,000、約70,000、約75,000、または約80,000のユニークなアミノ酸配列を包含し得る。更に、いくつかの実施形態では、特定の抗原に結合する免疫グロブリン可変ドメインを同定するために、単一のアミノ酸配列のみが必要である場合がある。
【0143】
ペプチド解析用の試料
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、抗体の試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列を得ること及び/または決定することを含む。いくつかの実施形態では、抗体の試料は、免疫された宿主から得られた抗体集団を含む。
【0144】
本開示は、ペプチド解析用の試料が、所望の特徴を有する抗体についてin vivoで濃縮され得るという認識を包含する。例えば、抗体の試料は、in vivo局在化に基づいて濃縮され得る。したがって、いくつかの実施形態では、抗体を含む試料は、宿主内の任意の所望の供給源、例えば、血清、血漿、リンパ器官、腸、脳脊髄液、脳、脊髄、胎盤、またはそれらの組み合わせから得ることができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の試料は、抗体を含む任意の体液であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の試料は、血清、血漿、リンパ器官、腸、脳脊髄液、脳、脊髄、胎盤、もしくはそれらの組み合わせから得られた試料であるか、またはそれを含む。いくつかの特定の実施形態では、ペプチド解析用の試料は、免疫された宿主(例えば、非ヒト動物、例えばげっ歯類)の血清から得られた抗体であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の試料(「第2の試料」)は、組織溶解物から得ることができる。いくつかの実施形態では、第2の試料は、単離及びシーケンシングされ得る様々なレベルの循環抗体を含有し得る。上記のように、いくつかの実施形態では、第2の試料は、特定の抗体源からの抗体の評価が望まれる場合、その特定の抗体源、例えば、分泌抗体源に由来し得る。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の試料には、特定の組織から得られた抗体が、その組織に局在化する抗体について濃縮するために含まれる。
【0146】
いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の試料は、抗体集団を含む。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の試料は、所望の特徴を有する抗体についてex vivoで濃縮される。いくつかの実施形態では、試料は、例えばイオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを使用して抗体について濃縮される。いくつかの実施形態では、試料は、例えばアフィニティークロマトグラフィーを使用して、特定の標的に対する親和性を有する抗体について濃縮される。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーは、特定の望ましくない(例えば、オフターゲット)結合親和性を有する抗体を除去するために使用される。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の試料は、抗体の安定性を選択するために、1つ以上の条件、例えば、熱及び/または酸化に抗体を曝露させることによって、所望の特徴を有する抗体について濃縮される。
【0147】
いくつかの実施形態では、第2の試料は、免疫された宿主からの目的の抗原を対象とする抗体を含み、目的の抗原を対象としない抗体が枯渇している。試料の枯渇は、クロマトグラフィー、アフィニティー精製法、サイズ排除法、緩衝液交換、アルブミン枯渇技法、プロテアーゼ阻害剤、免疫グロブリン枯渇技法、及び高存在量タンパク質枯渇を含むがこれらに限定されない様々な方法を使用して実現され得る。いくつかの実施形態では、非ヒト動物の免疫中に免疫原がアジュバントと複合体を形成する場合、第2の試料から、そのアジュバントを対象とする抗体を枯渇させることができる。免疫原がFc部分に融合しているいくつかの実施形態では、第2の試料は、Fcを対象とする抗体が枯渇している。他の実施形態では、免疫原がタグ、例えばHis、FLAG、Myc、HA、GST、GFP、V5などに融合している場合があり、第2の試料はそのタグを対象とする抗体が枯渇している。
【0148】
いくつかの実施形態では、第2の試料は、目的の抗原を対象とする抗体が濃縮されている。枯渇法と同様に、試料の濃縮は、クロマトグラフィー、アフィニティー精製法、サイズ排除法などを含む様々な方法を使用して実現され得る。いくつかの実施形態では、第2の試料は、抗原免疫原への結合を含む様々な方法によって濃縮され得る。濃縮ステップはポリペプチドへの抗体の結合に依存し得るため、このステップでは、目的の抗体に関する特定の特性について抗体プールが照合され得る。一例では、第2の試料は、目的の抗体について、特異的結合条件下で抗原に結合するその能力に基づいて濃縮され得る。例えば、第2の試料は、目的の抗体について、抗原の特定のアイソフォーム/バリアント、抗原の特定のフラグメント/エピトープ、抗原の単量体形態もしくはオリゴマー形態、または抗原の他の所望の立体構造に結合するその能力に基づいて濃縮され得る。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の試料は、例えば、プロテインA(または他の主要なIgクラスのアフィニティー精製用の抗IgA及び抗IgM抗体)を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって、特定のIgクラスについて濃縮される。
【0149】
いくつかの実施形態では、抗体集団を含む試料は、ペプチド解析の前に消化及び/またはフラグメント化される。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の抗体の試料は、ペプチドへと消化される。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の抗体の試料は、(例えば、トリプシン及び/またはペプシンを使用して)ペプチドへと酵素的に消化される。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の抗体の試料は、消化前に変性及び還元される。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の抗体の試料は、消化前に(例えば、ヨードアセトアミドを使用して)アルキル化される。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の抗体の試料は、変性され、還元され、及び/またはアルキル化され、次いで(例えば、トリプシン及び/またはペプシンを使用して)酵素的に消化される。いくつかの実施形態では、試料は、異なる酵素で及び/または異なる時間にわたって消化される複数のアリコートに分けられる。いくつかの実施形態では、試料は、少なくとも2つの異なる酵素で消化される少なくとも2つのアリコートに分けられる。
【0150】
いくつかの実施形態では、抗体は、ペプチドへと消化され、MS解析(例えば、タンデム質量分析)を使用してシーケンシングされる。いくつかの実施形態では、MS解析からのペプチド配列は、抗体配列のライブラリに対して照合される。
【0151】
いくつかの実施形態では、抗体のペプチドは、クロマトグラフィー、例えば液体クロマトグラフィーによって分離及び/または分割される。いくつかの実施形態では、抗体のペプチドは、高速液体クロマトグラフィーによって分離及び/または分割される。いくつかの実施形態では、抗体のペプチドは、逆相クロマトグラフィーによって分離及び/または分割される。
【0152】
特定の実施形態では、CDR3ペプチドは、無関係なペプチドから、そのようなペプチドの精製を可能にするチオール特異的試薬を用いた、CDR3配列の末端でのユニークなCysの特異的コンジュゲーションを介して濃縮され得る。いくつかの実施形態では、ペプチド解析用の抗体の試料は、複数のペプチドへと消化され(例えば、酵素的に消化され)、この複数のペプチドは、チオール特異的試薬を使用してCDR3ペプチドについて濃縮される。
【0153】
MS及びライブラリの照合
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、質量分析(MS)を利用する。質量分析は、分子をイオン化し、その飛行時間あるいは電場及び/または磁場に対する分子軌道の反応のいずれかを測定することにより、化学的化合物の分子量及び構造情報を取得する。
【0154】
本開示は更に、あらゆるMS法が本開示の方法における使用のために適合され得ることを企図する。例示的なMS法としては、タンデムMS(MS/MS)、LC-MS、LC-MS/MS、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)、フーリエ変換質量分析(FTMS)、質量分析を備えたイオンモビリティ分離(IMS-MS)、電子移動解離(ETD-MS)、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。そのような方法は、例えば、Pitt,Clin.Biochem.Rev.30:19-34(2009)に記載されている。本開示の方法で使用することができる質量分析計は、当該技術分野において公知であり、例えば、Agilent Inc.、Bruker Corporation、及びThermo Scientificから市販されている。
【0155】
いくつかの実施形態では、第2の試料のペプチド配列は、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの質量分析解析を使用して決定される。いくつかの実施形態では、質量分析解析は、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのタンパク質分解消化の後に続く、液体クロマトグラフィーと質量分析とを組み合わせたもの(LC-MS)である。しかしながら、加速器質量分析、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)、イオンモビリティ分光-MS、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI-TOF)、及び表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI-TOF)を含む、代替の分離法及び質量分析法を使用することができる。一般に、インタクトタンパク質を消化せずに解析することによりインタクトタンパク質の質量情報を保持する、トップダウンプロテオミクスも使用することができる。Chen et al.2018 Anal Chem.90(1):110-127を参照されたい。いくつかの実施形態では、提供される方法には、多次元高圧液体クロマトグラフィー(LC/LC)及び/またはタンデム質量分析(MS/MS)が組み込まれる。
【0156】
いくつかの特定の実施形態では、MS解析は、定量的である。
【0157】
いくつかの実施形態では、MS解析から得られたペプチド配列は、ランク付けされる。いくつかの実施形態では、ペプチド配列は、ペプチド存在量及び/またはペプチド信頼度に基づいてランク付けされる。いくつかの実施形態では、MSによって得られた上位1,000個のペプチドがランク付けされる。いくつかの実施形態では、MSによって得られた上位500個のペプチドがランク付けされる。いくつかの実施形態では、MSによって得られた上位400個のペプチドがランク付けされる。いくつかの実施形態では、MSによって得られた上位300個のペプチドがランク付けされる。いくつかの実施形態では、MSによって得られた上位200個のペプチドがランク付けされる。いくつかの実施形態では、MSによって得られた上位100個のペプチドがランク付けされる。いくつかの実施形態では、上位にランク付けされたペプチド配列のMSスペクトル品質は、手作業で確認される。
【0158】
様々な実施形態では、(例えば、第2の試料の)MS解析を通じて得られたペプチド配列(例えば、重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列)は、(例えば、第1の試料の)配列解析から得られた複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列と照合される。いくつかの実施形態では、ペプチド配列は、(例えば、第1の試料の)NGSによって得られたヌクレオチド配列の翻訳によって得られたアミノ酸配列と照合される。
【0159】
いくつかの実施形態では、複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列と照合することは、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を互いに、及び複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列と、アラインメントすることを含む。本明細書で使用される場合、アラインメントはまた、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列と比較すること、また任意選択で、互いに比較することも意味する。第2の試料の質量分析解析を通じて得られたペプチド配列は、いくつかの実施形態では、第1の試料から得られた複数の可変ドメインを含有するライブラリに対してスクリーニングされ得る。本開示によって企図されるように、アミノ酸配列の照合は、様々な方法を使用して実施され得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、第2の試料の質量分析解析を通じて得られたペプチド配列は、(例えば、第1の試料の)シーケンシング解析から得られた抗体配列(例えば、可変ドメイン配列及び/またはCDR配列)のライブラリに対して、市販のソフトウェア(例えば、Mascot(Martix Science)、PEAKS(Bioinformatics Solutions,Inc.)、Sequest(ThermoFisher Scientific)、Byonic(Protein Metrics))を使用して、マッピング及び/または検索される。様々な基準に基づいて、目的の抗体の可変ドメインの配列が得られる。
【0161】
いくつかの実施形態では、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインまたはCDRを得ることは、(1)第2の試料から得られたユニークなペプチドの、第1の試料から得られたアミノ酸配列中のCDR3配列との一致(例えば、特定の相同性)、(2)第2の試料から得られたユニークなペプチドの、第1の試料から得られたアミノ酸配列中のCDR1及び/またはCDR2配列との一致(例えば、特定の相同性)、(3)第2の試料から得られた1つ以上のユニークなペプチドと、第1の試料から得られたアミノ酸配列中の1つ以上のフレームワーク配列との一致(例えば、特定の相同性)、(4)次世代シーケンシングのカウント数、(5)メチオニンを有するCDR配列の除外、ならびに(6)Nグリコシル化の可能性のあるCDR配列の除外、のうちの1つ以上に基づく。いくつかの実施形態では、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメインまたはCDRを得ることは、これらのパラメータの2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ全ての組み合わせに基づく。
【0162】
いくつかの実施形態では、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDRを得ることは、ライブラリ中のCDR配列及び/またはフレームワーク配列に対するMS解析から得られたユニークなペプチドの相同性に基づく。いくつかの実施形態では、ライブラリは、(例えば、免疫された宿主から得られた第1の試料の)NGSによって得られた核酸配列に対応する抗体重鎖可変ドメインのアミノ酸配列を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、MS解析から得られたペプチド配列を使用してライブラリを照合し、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を共有するアミノ酸配列のみを選択する。
【0164】
いくつかの実施形態では、照合は、MS解析を通じて得られたペプチド配列(例えば、CDR配列)と相同な配列についてライブラリに照会することを含む。いくつかの実施形態では、照合は、MS解析を通じて得られたCDR3ペプチド配列と相同な配列についてライブラリに照会することを含む。いくつかの実施形態では、照合は、MS解析を通じて得られたCDR3ペプチド配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同な配列についてライブラリに照会することを含む。いくつかの実施形態では、照合は、MS解析を通じて得られたCDR3ペプチド配列と100%相同な配列についてライブラリに照会することを含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、第2の試料のMS解析を通じて得られたペプチド配列は、シーケンシング解析から得られた抗体配列(例えば、可変ドメイン配列及び/またはCDR配列)のライブラリに対して、以下の検索パラメータ:酵素切断部位、酵素消化特異性、酵素によるミスクリベージ、質量許容差、及び/または固定修飾、のうちの1つ以上を使用して検索される。いくつかの実施形態では、試料のMSを通じて得られた抗体可変ドメインのCDR(例えば、CDR3)に対応するペプチド配列は、(例えば、第1の試料の)シーケンシング解析から得られた抗体配列(例えば、CDR配列)のライブラリに対して、市販のソフトウェアを使用してマッピング及び/または検索される。
【0166】
本発明の様々な実施形態では、第2の試料の質量分析解析から得られたペプチドの、NGSを通じて生成されたアミノ酸配列のライブラリとの一致には、NGSで得られた配列と80%以上同一であるペプチドが含まれる。いくつかの実施形態では、NGSを通じて生成されたアミノ酸配列のライブラリに対する、第2の試料の質量分析解析から得られたペプチドの同一性パーセントは、NGSで得られた配列と、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である。「同一性」という用語は、ペプチド配列とNGSで得られた配列とのアラインメントまたは比較と関連して本明細書で使用される場合、ヌクレオチド配列及び/またはアミノ酸配列同一性を測定するために使用される当該技術分野で公知の多数の異なるアルゴリズムによって決定される同一性を指す。更なる実施形態では、一致は、NGSで得られた配列とのペプチド配列の厳密な一致であり得る。いくつかの実施形態では、MS解析から得られたペプチドは、NGSデータベース内のCDRまたはフレームワーク配列の全体またはその一部をカバーし得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、得られた抗体、可変ドメイン、及び/またはCDR配列は、1つ以上の基準に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、抗体配列(またはその一部)は、相同性に基づいて分類される。いくつかの実施形態では、得られた抗体及び/または可変ドメイン配列は、1つ以上のCDRの相同性に基づいて分類される。いくつかの実施形態では、得られた抗体及び/または可変ドメイン配列は、CDR3の相同性に基づいて分類される。
【0168】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列は、相同性に基づいて分類される。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン配列は、相同性に基づいて分類される。
【0169】
いくつかの実施形態では、シーケンシング解析から得られた抗体配列(例えば、可変ドメイン配列及び/またはCDR配列)のライブラリ上にマッピングされたペプチド配列は、ランク付けされる。いくつかの実施形態では、ペプチド配列は、シーケンスカバレッジ及び/またはペプチド信頼度に基づいてランク付けされる。いくつかの実施形態では、上位1,000個の抗体のヒットがランク付けされる。いくつかの実施形態では、上位500個の抗体のヒットがランク付けされる。いくつかの実施形態では、上位400個の抗体のヒットがランク付けされる。いくつかの実施形態では、上位300個の抗体のヒットがランク付けされる。いくつかの実施形態では、上位200個の抗体のヒットがランク付けされる。いくつかの実施形態では、上位100個の抗体のヒットがランク付けされる。いくつかの実施形態では、上位にランク付けされたペプチド配列のMSスペクトル品質は、手作業で確認される。
【0170】
いくつかの実施形態では、同定された免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列は、組換え抗原結合タンパク質(例えば、抗体)として発現される。いくつかの実施形態では、同定された免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列は、コドン最適化され、組換え抗原結合タンパク質として発現される。
【0171】
いくつかの実施形態では、同定された可変ドメイン配列を含む組換え抗原結合タンパク質(例えば、抗体)は、特徴付けが行われる。いくつかの実施形態では、標的に対する結合親和性は、同定された可変ドメイン配列を含む組換え抗体について評価される。
【0172】
非ヒト動物
本明細書で提供される方法は、非ヒト動物の使用を含む。本開示の方法で使用するための例示的な非ヒト動物は、以下に詳述される。但し、簡潔に述べると、様々な実施形態では、宿主(例えば、免疫された宿主)は、遺伝子改変非ヒト動物、例えば、非ヒト哺乳動物であって、そのゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変非ヒト動物である。
【0173】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変非ヒト動物は、任意の非ヒト動物であり得る。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、脊椎動物である。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ科動物(例えば、雌ウシ、雄ウシ、スイギュウ)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)からなる群から選択され得る。好適な遺伝子改変可能なES細胞が容易に入手可能できない非ヒト動物については、本明細書に記載の遺伝子改変を含む非ヒト動物を作製するために、他の方法を用いることができる。そのような方法には、例えば、非ES細胞ゲノム(例えば、線維芽細胞または人工多能性細胞)を改変すること、及び核移植を用いて、改変されたゲノムを卵母細胞などの好適な細胞に移植し、その改変された細胞(例えば、改変された卵母細胞)を胚の形成に好適な条件下で非ヒト動物内で成長させることが含まれる。
【0174】
いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、小型の哺乳動物、例えば、Dipodoidea上科またはMuroidea上科の動物である。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、げっ歯類である。特定の実施形態では、げっ歯類は、マウス、ラットまたはハムスターである。いくつかの実施形態では、げっ歯類は、Muroidea上科から選択される。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、Calomyscidae科(例えば、マウス様ハムスター)、Cricetidae科(例えば、ハムスター、ニューワールドラット及びマウス、ハタネズミ)、Muridae科(例えば、純種のマウス及びラット、アレチネズミ、トゲマウス、タテガミラット)、Nesomyidae科(例えば、キノボリマウス、ロックマウス、オジロラット、マダガスカルラット及びマウス)、Platacanthomyidae科(例えば、トゲヤマネ)、及びSpalacidae科(例えば、メクラネズミ、タケネズミ、及びモグラネズミ)から選択される科に由来する。いくつかの実施形態では、げっ歯類は、純種のマウスまたはラット(Muridae科)、アレチネズミ、トゲマウス、及びタテガミネズミから選択される。いくつかの実施形態では、マウスは、Muridae科の一種に由来する。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、げっ歯類である。いくつかの実施形態では、げっ歯類は、マウス及びラットから選択される。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、マウスである。
【0175】
いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、C57BL系統のマウスである。いくつかの実施形態では、C57BL系統は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/Olaから選択される。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、129系統のマウスである。いくつかの実施形態では、129系統は、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である系統からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子改変マウスは、129系統とC57BL系統の混合系である。いくつかの実施形態では、マウスは、129系統の混合系及び/またはC57BL/6系統の混合系である。いくつかの実施形態では、129系統の混合系は、129S6(129/SvEvTac)系統である。いくつかの実施形態では、マウスは、BALB系統(例えば、BALB/c)である。いくつかの実施形態では、マウスは、BALB系統と別系統(例えば、C57BL系統及び/または129系統)の混合系である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される非ヒト動物は、前述の系統の任意の組み合わせに由来するマウスであり得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される非ヒト動物は、ラットである。いくつかの実施形態では、ラットは、ウィスターラット、LEA系統、スプラーグドーリー系統、フィッシャー系統、F344、F6、及びダークアグーチから選択される。いくつかの実施形態では、ラット系統は、ウィスター、LEA、スプラーグドーリー、フィッシャー、F344、F6、及びダークアグーチからなる群から選択される2つ以上の系統の混合系である。
【0177】
したがって、いくつかの実施形態では、免疫された非ヒト動物宿主は、げっ歯類、例えば、ラットまたはマウスである。したがって、いくつかの実施形態では、宿主は、遺伝子改変げっ歯類であって、そのゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメント(ヒトV遺伝子セグメントとも称される)と、1つ以上のヒトD遺伝子セグメント(ヒトD遺伝子セグメントとも称される)と、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメント(ヒトJ遺伝子セグメントとも称される)と、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変げっ歯類である。
【0178】
いくつかの実施形態では、宿主は、遺伝子改変マウスであって、そのゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変マウスである。
【0179】
一態様では、ヒト重鎖V、D、及びJ遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン重鎖可変領域は、マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、ヒト軽鎖V及びJ遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域は、マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されている。更なる態様では、マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されたヒト重鎖V、D、及びJ遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン重鎖可変領域は、内因性マウス重鎖遺伝子座に存在し、マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されたヒト軽鎖V及びJ遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン軽鎖可変領域は、内因性マウス軽鎖遺伝子座に存在する。遺伝子改変非ヒト動物、例えば、げっ歯類、例えばマウスの様々な実施形態は、本明細書でより詳細に後述される。
【0180】
いくつかの実施形態では、宿主は、制限された重鎖または制限された軽鎖可変配列を含む(例えば本明細書で後述される、重鎖または軽鎖可変V(D)J遺伝子セグメントの限られたレパートリー、例えば単一の再編成された重鎖または軽鎖可変配列を含む)、遺伝子改変非ヒト動物である。
【0181】
抗原特異的抗体を同定するための遺伝子改変宿主
本発明の抗体は、最初に非ヒト動物宿主を目的の抗原で免疫することによって得られる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫された非ヒト動物宿主は、げっ歯類、例えばラットまたはマウスである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫された非ヒト動物宿主は、遺伝子改変非ヒト動物宿主、例えば、遺伝子改変げっ歯類である。遺伝子改変非ヒト動物、例えば、げっ歯類、例えばラットまたはマウスの様々な実施形態は、本明細書でより詳細に後述される。
【0182】
いくつかの実施形態では、免疫された非ヒト動物宿主は、げっ歯類、例えば、ラットまたはマウスである。いくつかの実施形態では、宿主は、遺伝子改変げっ歯類であって、そのゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変げっ歯類である。
【0183】
いくつかの実施形態では、宿主は、遺伝子改変マウスであって、そのゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域がネズミ科(例えば、ラットまたはマウス)定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変マウスである。
【0184】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリン重鎖可変領域は、マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、免疫グロブリン軽鎖可変領域は、マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、マウス重鎖定常領域に作動可能に連結された免疫グロブリン重鎖可変領域は、内因性マウス重鎖遺伝子座に存在し、マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結された免疫グロブリン軽鎖可変領域は、内因性マウス軽鎖遺伝子座に存在する。1つの例示的な実施形態は、Macdonald et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 111:5147-52及び補足情報(www.pnas.org/cgi/content/short/1323896111)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。遺伝子改変非ヒト動物、例えば、げっ歯類、例えばラットまたはマウスの様々な実施形態は、本明細書でより詳細に後述される。
【0185】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子(例えば、1つ以上の内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子)の上流にある(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座)を含む。そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、本明細書では「HoH遺伝子座」と称される。HoH遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第6,596,541号、同第8,642,835号、及び同第8,697,940号、ならびにMurphy,A.,“VelocImmune:Immunoglobulin Variable Region Humanized Mouse,”in Recombinant Antibodies for Immunotherapy,New York,NY,Cambridge University Press,101-107(2009)に例示されており、その各々はその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0186】
いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも6つのヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも18個のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも39個のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも80個のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、少なくとも27個のヒトD遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、少なくとも6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、全ての機能的ヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、80個未満のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、39個未満のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、18個未満のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、10個未満のヒトV遺伝子セグメントを含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも18個のヒトV遺伝子セグメントを含み、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、27個のヒトD遺伝子セグメントを含み、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、本明細書では「VelocImmune(登録商標)1 HoH遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも39個のヒトV遺伝子セグメントを含み、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、27個のヒトD遺伝子セグメントを含み、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、本明細書では「VelocImmune(登録商標)2 HoH遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも80個のヒトV遺伝子セグメントを含み、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、27個のヒトD遺伝子セグメントを含み、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、本明細書では「VelocImmune(登録商標)3 HoH遺伝子座」と称される。
【0189】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけ重鎖を含む抗体を産生し、各重鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)重鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒト重鎖可変ドメインを含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座)を含み、更に、非ヒスチジン残基に対する少なくとも1つのヒスチジンの置換または挿入を含んでおり、その結果、非再編成免疫グロブリン重鎖遺伝子配列は、相補性決定領域3(CDR3)をコードする配列に、ヒスチジンコドンによる少なくとも1つの非ヒスチジンコドンの置換または少なくとも1つのヒスチジンコドンの挿入を含む(例えば、PCT公開第WO2013/138712号及び同第WO2013/138681号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。ヒスチジン残基による非ヒスチジン残基の置換またはヒスチジン残基の挿入を含む遺伝子改変げっ歯類を免疫することにより、本明細書及び実施例に記載のレパートリーシーケンシングとMS法との組み合わせを使用して、抗原に対するpH依存特性を示す抗体を同定することが容易になる。
【0191】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、限られたヒト重鎖可変領域レパートリーを含む制限された重鎖可変領域配列を含むものなどの、操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子(例えば、1つ以上の内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子)の上流にある(例えば、それに作動可能に連結された)、単一のヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座)を含む。そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座)を有する遺伝子改変げっ歯類は、例えば、米国特許公開第2019/0261612号及び米国特許第10,238,093号に例示されており、その各々はその全体が参照により組み込まれる。
【0193】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)定常領域遺伝子の上流の(例えば、それに作動可能に連結された)、単一の再編成されたヒト重鎖可変領域を含む操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座)を含む。そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、本明細書では「UHC遺伝子座」または「ユニバーサル重鎖遺伝子座」または「共通重鎖遺伝子座」と称される。UHC遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第9,204,624号に例示されており、これはその全体が参照により組み込まれる。
【0194】
いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒト重鎖可変領域は、単一のヒトV遺伝子セグメント、単一のヒトD遺伝子セグメント、及び単一のヒトJ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、単一のヒトV遺伝子セグメントはヒトV3-23であり、単一のヒトD遺伝子セグメントはヒトD4-4であり、単一のヒトJ遺伝子セグメントはヒトJ4である。
【0195】
いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒト重鎖可変領域は、単一のヒトV遺伝子セグメント及び単一のヒトJ遺伝子セグメントを含み、これらは2つのアミノ酸によって分離されている。いくつかの実施形態では、単一のヒトV遺伝子セグメントはヒトV3-23であり、単一のヒトJ遺伝子セグメントはヒトJ4であり、2つのアミノ酸はグリシン及びチロシンである。
【0196】
いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類(例えば、マウスまたはラット)重鎖定常領域遺伝子は、1つ以上の内因性げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)重鎖定常領域遺伝子である。
【0197】
いくつかの実施形態では、UHC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけ免疫グロブリン鎖を含む抗体を産生し、各免疫グロブリン鎖は、定常ドメインに作動可能に連結されたヒト重鎖可変ドメインを含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子(例えば、1つ以上の内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子)の上流にある(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座)を含む。いくつかの実施形態では、そのような遺伝子改変げっ歯類は、軽鎖(例えば、軽鎖可変領域)配列と重鎖(例えば、重鎖定常領域)配列の両方を有するハイブリッド重鎖遺伝子座を含む。そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、本明細書では「LoH遺伝子座」と称される。LoH遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第9,686,970号及び米国特許公開第2013/0212719号に例示されており、その各々はその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメント及び1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメント及び1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメント及び1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、1つ以上の非再編成ヒトVλ遺伝子セグメント及び1つ以上の非再編成ヒトJλ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoH遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoH遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0199】
いくつかの実施形態では、LoH遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけ免疫グロブリン鎖を含む抗体を産生し、各免疫グロブリン鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)重鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒト軽鎖可変ドメインを含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、2つの免疫グロブリン重鎖と、2つの免疫グロブリン軽鎖と、を含む抗体を産生する。いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、単一ドメイン抗体、重鎖のみの抗体、及び/またはナノボディを産生しない。
【0201】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、本明細書で「CH1欠失改変」と称される、内因性IgG定常領域遺伝子のCH1ドメインをコードする核酸配列の欠失を含む改変を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、CH1欠失改変を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、とりわけ免疫グロブリン重鎖を含むIgG重鎖抗体を産生し、各免疫グロブリン重鎖は、CH1ドメインを全てまたは部分的に欠いている。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性重鎖定常領域と作動可能な連結状態にある非再編成ヒト重鎖可変領域を含む重鎖のみの免疫グロブリンをコードする配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有しており、この内因性重鎖定常領域は、(1)軽鎖と会合するIgMアイソタイプをコードするインタクトな内因性IgM遺伝子、及び(2)機能的CH1ドメインをコードする配列を欠く非IgM遺伝子、例えばIgG遺伝子を含み、この非IgM遺伝子は、軽鎖定常ドメインと共有結合可能なCH1ドメインを欠く非IgMアイソタイプをコードする。いくつかの実施形態では、産生されたIgG抗体はまた、同性質の軽鎖を欠き、IgG重鎖のみの抗体をその血清中に分泌する。CH1欠失改変を含む例示的なげっ歯類は、例えば、米国特許第8,754,287号、米国特許公開第2015/0289489号、ならびにPCT公開第WO2006/008548号、同第WO2010/109165号、及び同第WO2016062990号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。いくつかの実施形態では、免疫されたげっ歯類は、単一ドメイン抗体、重鎖のみの抗体、及び/またはナノボディを産生する。
【0202】
いくつかの実施形態では、本開示は、CH1欠失改変を含む重鎖免疫グロブリン可変領域を生殖細胞系列ゲノムに含むげっ歯類からの抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫された遺伝子改変げっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインの複数のペプチド配列を得ることと、(ii)ヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列のライブラリをその複数のペプチド配列と照合することと、を含み、ここで、このライブラリが、免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列を含む、方法を提供する。
【0203】
いくつかの実施形態では、本開示は、CH1欠失改変を含む重鎖免疫グロブリン可変領域を生殖細胞系列ゲノムに含むげっ歯類からの抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列を含むヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列のライブラリを得ることと、(ii)その抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインの複数のペプチド配列と、そのライブラリを照合することと、を含む方法を提供する。
【0204】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、機能的な内因性げっ歯類Adam6遺伝子を欠いている、操作された免疫グロブリン重鎖(例えば、HoH、UHC、LoH)遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座)を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6aであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6bであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6a及びマウスADAM6bであるか、またはそれらを含む。1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第8,642,835号、同第8,697,940号、同第9,706,759号、同第10,130,081号、同第10,238,093号、及び米国特許公開第2013/0212719号(その各々はその全体が参照により組み込まれる)に例示されている。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントを発現する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、操作された免疫グロブリン重鎖(例えば、HoH、UHC、LoH)遺伝子座と同じ染色体上に含まれる、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む、操作された免疫グロブリン重鎖(例えば、HoH、UHC、LoH)遺伝子座を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を、ヒトAdam6偽遺伝子の代わりに有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、ヒトAdam6偽遺伝子から置き換わる、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。
【0205】
いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類は、第1及び第2のヒトV遺伝子セグメントを含む1つ以上のヒトV遺伝子セグメントと、第1のヒトV遺伝子セグメントと第2のヒトV遺伝子セグメントとの間の1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列と、を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、第1のヒトV遺伝子セグメントはV1-2であり、第2のヒトV遺伝子セグメントはV6-1である。
【0206】
いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、ヒトV遺伝子セグメントとヒトD遺伝子セグメントとの間にある。
【0207】
いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、雄げっ歯類の受精能を回復させるかまたは高める。
【0208】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上の免疫グロブリン軽鎖定常領域遺伝子の上流にある(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン軽鎖遺伝子座)を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメント及び1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメント及び1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメント及び1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、1つ以上の非再編成ヒトVλ遺伝子セグメント及び1つ以上の非再編成ヒトJλ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成免疫グロブリン軽鎖定常領域遺伝子は、Cκであるか、またはCκを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成免疫グロブリン軽鎖定常領域遺伝子は、Cλであるか、またはCλを含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン軽鎖遺伝子座)は、非天然リーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、シグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、非天然シグナルペプチドを含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、Cκ遺伝子の上流にある(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン軽鎖遺伝子座)を含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、本明細書では「KoK遺伝子座」と称される。KoK遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第6,596,541号、同第8,642,835号、及び同第8,697,940号に例示されており、その各々はその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座の免疫グロブリンκ軽鎖定常領域遺伝子は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座の免疫グロブリンκ軽鎖定常領域遺伝子は、内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座の免疫グロブリンκ軽鎖定常領域遺伝子は、内因性免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座にある内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、KoK遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、KoK遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0211】
いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけκ軽鎖を含む抗体を産生し、各κ軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)κ軽鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒトκ軽鎖可変ドメインを含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも6つのヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも16個のヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも30個のヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも40個のヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、少なくとも5つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも16個のヒトVκ遺伝子セグメントを含み、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、少なくとも5つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、本明細書では「VelocImmune(登録商標)1 KoK遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも30個のヒトVκ遺伝子セグメントを含み、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、少なくとも5つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、本明細書では「VelocImmune(登録商標)2 KoK遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも40個のヒトVκ遺伝子セグメントを含み、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、少なくとも5つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、本明細書では「VelocImmune(登録商標)3 KoK遺伝子座」と称される。
【0214】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上の非再編成ヒトJλ遺伝子セグメント及び1つ以上のCλ遺伝子の上流の(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトVλ遺伝子セグメントを含む操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン軽鎖遺伝子座)を含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、本明細書では「LoL遺伝子座」と称される。LoL遺伝子座を含むマウスは、例えば、米国特許第9,012,717号、同第9,226,484号、同第9,029,628号、及び米国特許公開第2018/0125043号に例示されており、その各々はその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、LoL遺伝子座の1つ以上の非再編成ヒトJλ遺伝子セグメント及び1つ以上のCλ遺伝子は、Jλ-Cλクラスターに存在する。いくつかの実施形態では、LoL遺伝子座の1つ以上のCλ遺伝子は、1つ以上のヒトCλ遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、LoL遺伝子座の1つ以上のCλ遺伝子は、1つ以上のマウスCλ遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、LoL遺伝子座の1つ以上のCλ遺伝子は、1つ以上のヒトCλ遺伝子及び1つ以上のマウスCλ遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、LoL遺伝子座の1つ以上のマウスCλ遺伝子は、マウスCλ1遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoL遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoL遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0215】
いくつかの実施形態では、LoL遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけλ軽鎖を含む抗体を産生し、各λ軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)λ軽鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、LoL遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけλ軽鎖を含む抗体を産生し、各λ軽鎖は、ヒトλ軽鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。
【0216】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、Cκ遺伝子の上流の(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトVλ遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJλ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座を含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、本明細書では「LoK遺伝子座」と称される。LoK遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第9,006,511号及び同第9,035,128号に例示されており、その各々はその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、LoK遺伝子座のCκ遺伝子は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、LoK遺伝子座のCκ遺伝子は、内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、LoK遺伝子座のCκ遺伝子は、内因性免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座にある内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoK遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoK遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0217】
いくつかの実施形態では、LoK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけ軽鎖を含む抗体を産生し、各軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)κ軽鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、Cλ遺伝子の上流の(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトVλ遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJλ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)を含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、本明細書では「LiK遺伝子座」と称される。LiK遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、米国特許公開第2019/0223418号(米国特許第11,051,498号として発行)に例示されており、これはその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、LiK遺伝子座のCλ遺伝子は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cλ遺伝子である。いくつかの実施形態では、LiK遺伝子座のCλ遺伝子は、マウスCλ1遺伝子である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LiK遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LiK遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0219】
いくつかの実施形態では、LiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけλ軽鎖を含む抗体を産生し、各λ軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)λ軽鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。
【0220】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上の非再編成ヒトJλ遺伝子セグメント及び1つ以上のヒトCλ遺伝子の上流の(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトVλ遺伝子セグメントを含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)を含む。いくつかの実施形態では、そのような操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座の1つ以上の非再編成ヒトJλ遺伝子セグメント及び1つ以上のCλ遺伝子は、Jλ-Cλクラスターに存在する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのような操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座についてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのような操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、そのような操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけλ軽鎖を含む抗体を産生し、各λ軽鎖は、ヒトλ軽鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーを含む生殖細胞系列ゲノムを有する。
【0222】
限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーを含む生殖細胞系列ゲノムを有するヒトV(D)J遺伝子セグメントを含む例示的な遺伝子改変げっ歯類は、例えば、米国特許第9,796,788号、同第10,130,081号、同第10,143,186号、同第10,167,344号、同第10,412,940号、及び同第10,130,081号、ならびにWO2019/008123、WO2020/247623、及びWO2020/132557に記載されており、その各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、限られた数のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、限られた数のヒトV遺伝子セグメントは、2つのヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、限られた数のヒトV遺伝子セグメントは、1つのヒトV遺伝子セグメントを含む。例えば、いくつかの実施形態では、限られた数のヒトV遺伝子セグメントは、1つのヒトVκ遺伝子セグメントである。1つのヒトVκ遺伝子セグメントは、例えば、ヒトVκ1-39遺伝子セグメント、ヒトVκ3-15遺伝子セグメント、ヒトVκ3-11遺伝子セグメント、またはヒトVκ3-20遺伝子セグメントであり得る。いくつかの実施形態では、限られた数のヒトV遺伝子セグメントは、1つのヒトVλ遺伝子セグメントである。1つのヒトVλ遺伝子セグメントは、例えば、ヒトVλ1-51遺伝子セグメント、ヒトVλ5-45遺伝子セグメント、ヒトVλ1-44遺伝子セグメント、ヒトVλ1-40遺伝子セグメント、ヒトVλ3-21遺伝子セグメント、またはヒトVλ2-14遺伝子セグメントであり得る。
【0223】
いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、1つ以上のJ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、1つのJ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つのJ遺伝子セグメントは、Jκ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、1つのJ遺伝子セグメントは、Jλ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、1つのJ遺伝子セグメントは、ヒトJ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、1つのJ遺伝子セグメントは、マウスJ遺伝子セグメントである。
【0224】
いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、(i)ヒトVκ遺伝子セグメント及びヒトJκ遺伝子セグメント、(ii)ヒトVκ遺伝子セグメント及びマウスJκ遺伝子セグメント、(iii)ヒトVκ遺伝子セグメント及びヒトJλ遺伝子セグメント、または(iv)ヒトVκ遺伝子セグメント及びマウスJλ遺伝子セグメントを含む。
【0225】
いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、(i)ヒトVλ遺伝子セグメント及びヒトJλ遺伝子セグメント、(ii)ヒトVλ遺伝子セグメント及びマウスJλ遺伝子セグメント、(iii)ヒトVλ遺伝子をセグメント及びヒトJκ遺伝子セグメント、または(iv)ヒトVλ遺伝子セグメント及びマウスJκ遺伝子セグメントを含む。
【0226】
いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、(i)ヒトVκ1-39遺伝子セグメント及びヒトJκ5遺伝子セグメント、(ii)ヒトVκ1-39遺伝子セグメント及びヒトJκ1遺伝子セグメント、(iii)ヒトVκ3-20遺伝子セグメント及びヒトJκ1遺伝子セグメント、または(iv)ヒトVκ3-20遺伝子セグメント及びヒトJκ5遺伝子セグメントを含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、(i)ヒトVκ1-39遺伝子セグメント及びマウスJκ2遺伝子セグメント、(ii)ヒトVκ3-20遺伝子セグメント及びマウスJκ2遺伝子セグメント、または(iii)ヒトVκ3-15遺伝子セグメント及びマウスJκ2遺伝子セグメントを含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、(i)ヒトVλ1-51遺伝子セグメント及びヒトJλ2遺伝子セグメント、(ii)ヒトVλ5-45遺伝子セグメント及びヒトJλ2遺伝子セグメント、(iii)ヒトVλ1-44遺伝子セグメント及びヒトJλ2遺伝子セグメント、(iv)ヒトVλ1-40遺伝子セグメント及びヒトJλ2遺伝子セグメント、(v)ヒトVλ3-21遺伝子セグメント及びヒトJλ2遺伝子セグメント、または(vi)ヒトVλ2-14遺伝子セグメント及びヒトJλ2遺伝子セグメントを含む。
【0229】
いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、Cκ遺伝子セグメントに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、Cκ遺伝子セグメントは、ヒトである。いくつかの実施形態では、Cκ遺伝子セグメントは、マウスである。いくつかの実施形態では、マウスCκ遺伝子セグメントは、例えば内因性マウス免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座にある、内因性マウスCκ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、マウスCκ遺伝子セグメントは、内因性マウス免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座にある。
【0230】
いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、Cλ遺伝子セグメントに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、Cλ遺伝子セグメントは、ヒトである。いくつかの実施形態では、Cλ遺伝子セグメントは、マウスである。いくつかの実施形態では、マウスCλ遺伝子セグメントは、例えば内因性マウス免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座にある、内因性マウスCλ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、マウスCλ遺伝子セグメントは、内因性マウス免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座にある。
【0231】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変マウスは、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーについてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変マウスは、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーについてホモ接合性である。
【0232】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーを含む、制限された軽鎖可変領域配列を含む操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン軽鎖遺伝子座)を含む。いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、1つまたは2つのヒト軽鎖V遺伝子セグメント及び1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーは、軽鎖定常領域遺伝子セグメントに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーを含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、軽鎖定常領域配列に作動可能に連結された、厳密に2つの非再編成ヒト軽鎖V遺伝子セグメント及び1つ以上の非再編成ヒト軽鎖J遺伝子セグメントを含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、本明細書では「DLC遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーを含む遺伝子改変げっ歯類は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、単一のヒト軽鎖J遺伝子セグメントへと再編成された単一のヒト軽鎖V遺伝子セグメントを含む単一の再編成された軽鎖可変領域遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、限られたヒト軽鎖可変領域レパートリーを含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、軽鎖定常領域配列に作動可能に連結された単一の再編成された軽鎖可変領域遺伝子座を含み、この単一の再編成された軽鎖可変領域遺伝子座は、単一のヒト軽鎖J遺伝子セグメントへと再編成された単一のヒト軽鎖V遺伝子セグメントを含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、本明細書では「ULC遺伝子座」と称される。本明細書で使用される場合、「ULC遺伝子座」という語句は、「ユニバーサル軽鎖遺伝子座」または「共通軽鎖遺伝子座」と互換的である。
【0233】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、限られたヒトκ軽鎖可変領域レパートリーを含む生殖細胞系列ゲノムを有する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、限られたヒトκ軽鎖可変領域レパートリーを含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)を含む。いくつかの実施形態では、限られたヒトκ軽鎖可変領域レパートリーは、1つまたは2つのヒトVκ遺伝子セグメント及び1つ以上のヒトJκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、限られたヒトκ軽鎖可変領域レパートリーは、軽鎖定常領域遺伝子セグメントに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類は、Cκ遺伝子セグメントに作動可能に連結された限られたヒトκ軽鎖可変領域レパートリーを含む。
【0234】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、限られたヒトκ軽鎖可変領域レパートリーを含み、この限られたヒトκ軽鎖可変領域レパートリーは、単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域(Vκ/Jκ)を含む。単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域は、ヒトJκ遺伝子セグメントに接合されたヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、Cκ遺伝子の上流の(例えば、それに作動可能に連結された)、単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域を含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)を含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、「κULC遺伝子座」と称され、これはULC遺伝子座の一例である。κULC遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第10,130,081号及び同第10,143,186号に例示されており、その各々はその全体が参照により組み込まれる。
【0235】
いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域は、ヒトVκ遺伝子セグメント及びヒトJκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、ヒトVκ遺伝子セグメントは、ヒトVκ1-39遺伝子セグメントまたはヒトVκ3-20遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、ヒトJκ遺伝子セグメントは、ヒトJκ1遺伝子セグメント、ヒトJκ2遺伝子セグメント、ヒトJκ3遺伝子セグメント、ヒトJκ4遺伝子セグメント、またはヒトJκ5遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、ヒトVκ遺伝子セグメントはヒトVκ1-39遺伝子セグメントであり、ヒトJκ遺伝子セグメントはヒトJκ5遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域は、ヒトVκ1-39/Jκ5である。いくつかの実施形態では、ヒトVκ遺伝子セグメントはヒトVκ3-20遺伝子セグメントであり、ヒトJκ遺伝子セグメントはヒトJκ1遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域は、ヒトVκ3-20/Jκ1である。いくつかの実施形態では、ヒトVκ遺伝子セグメントは、ヒトVκ3-11遺伝子セグメントであり、ヒトJκ遺伝子セグメントは、ヒトJκ1遺伝子セグメント、ヒトJκ2遺伝子セグメント、ヒトJκ3遺伝子セグメント、ヒトJκ4遺伝子セグメント、またはヒトJκ5遺伝子セグメントから選択される。いくつかの実施形態では、ヒトVκ遺伝子セグメントはヒトVκ3-11遺伝子セグメントであり、ヒトJκ遺伝子セグメントはヒトJκ1遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域は、Vκ3-11/Jκ1である。
【0236】
いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座のCκ遺伝子は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、κULC遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、κULC遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0237】
いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性κ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性Vκ及び/またはJκ遺伝子セグメントを欠いている。いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性λ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性Vλ及び/またはJλ遺伝子セグメントを欠いている。
【0238】
いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけκ軽鎖を含む抗体を産生し、各κ軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)κ軽鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒトκ軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のB細胞によって発現される全てのκ軽鎖は、単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域またはその体細胞超変異バージョンから発現されるヒトκ軽鎖可変ドメインを含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、Cκ遺伝子の(例えば、Cκ遺伝子に作動可能に連結された)κ軽鎖定常領域配列に作動可能に連結されており、厳密に2つの非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)を含む。そのような操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座は、本明細書では「κDLC遺伝子座」と称され、これはDLC遺伝子座の一例である。κDLC遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第9,796,788号、同第10,167,344号、同第10,412,940号、及び同第10,130,081号に例示されており、その各々はその全体が参照により組み込まれる。
【0240】
いくつかの実施形態では、厳密に2つの非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、ヒトVκ1-39遺伝子セグメント及びヒトVκ3-20遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、2つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、3つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、4つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、5つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、ヒトJκ1遺伝子セグメント、ヒトJκ2遺伝子セグメント、ヒトJκ3遺伝子セグメント、ヒトJκ4遺伝子セグメント、ヒトJκ5遺伝子セグメント、またはそれらの組み合わせを含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、κDLC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)に、正確に2つの非再編成ヒトVκ遺伝子セグメント及び5つの非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、正確に2つの非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、ヒトVκ1-39遺伝子セグメント及びヒトVκ3-20遺伝子セグメントを含み、5つの非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、ヒトJκ1遺伝子セグメント、ヒトJκ2遺伝子セグメント、ヒトJκ3遺伝子セグメント、ヒトJκ4遺伝子セグメント、及びヒトJκ5遺伝子セグメントを含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、κDLC遺伝子座のCκ遺伝子は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、κDLC遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、κDLC遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0243】
いくつかの実施形態では、κDLC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性免疫グロブリンκ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性免疫グロブリンVκ及び/またはJκ遺伝子セグメンを欠いている。いくつかの実施形態では、κDLC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性λ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性Vλ及び/またはJλ遺伝子セグメントを欠いている。
【0244】
いくつかの実施形態では、κDLC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけκ軽鎖を含む抗体を産生し、各κ軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)κ軽鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒトκ軽鎖可変ドメインを含む。
【0245】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)を含み、この限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーは、1つまたは2つのヒトVλ遺伝子セグメント及び1つ以上のヒトJλ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、軽鎖定常領域遺伝子セグメントに作動可能に連結された限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子セグメントに作動可能に連結された限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cλ遺伝子セグメントに作動可能に連結された限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有し、この限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーは、単一の再編成されたヒト免疫グロブリンλ軽鎖可変領域(Vλ/Jλ)を含む。単一の再編成されたヒトλ軽鎖可変領域は、ヒトJλ遺伝子セグメントに接合されたヒトVλ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)CκまたはCλ遺伝子セグメント(例えば、マウスCλ1遺伝子セグメント)に作動可能に連結された限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、ULC遺伝子座の一例であり、本明細書では「ULCiK遺伝子座」と称される。ULCiK遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、WO2020/247623に例示されており、これはその全体が参照により組み込まれる。
【0247】
いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントは、Vλ4-69、Vλ8-61、Vλ4-60、Vλ6-57、Vλ10-54、Vλ5-52、Vλ1-51、Vλ9-49、Vλ1-47、Vλ7-46、Vλ5-45、Vλ1-44、Vλ7-43、Vλ1-40、Vλ5-37、Vλ1-36、Vλ3-27、Vλ3-25、Vλ2-23、Vλ3-22、Vλ3-21、Vλ3-19、Vλ2-18、Vλ3-16、Vλ2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3、及びVλ3-1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントは、Vλ5-52、Vλ1-51、Vλ9-49、Vλ1-47、Vλ7-46、Vλ5-45、Vλ1-44、Vλ7-43、Vλ1-40、Vλ5-37、Vλ1-36、Vλ3-27、Vλ3-25、Vλ2-23、Vλ3-22、Vλ3-21、Vλ3-19、Vλ2-18、Vλ3-16、Vλ2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3、及びVλ3-1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントは、Vλ1-51、Vλ5-45、Vλ1-44、Vλ1-40、Vλ3-21、及びVλ2-14からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントは、Vλ1-51またはVλ2-14である。いくつかの実施形態では、ヒトJλ遺伝子セグメントは、Jλ1、Jλ2、Jλ3、Jλ6、及びJλ7からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヒトJλ遺伝子セグメントは、Jλ1、Jλ2、Jλ3、及びJλ7からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヒトJλ遺伝子セグメントは、Jλ2である。
【0248】
いくつかの実施形態では、ULCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性κ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性Vκ及び/またはJκ遺伝子セグメントを欠いている。いくつかの実施形態では、ULCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性λ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性Vλ及び/またはJλ遺伝子セグメントを欠いている。
【0249】
いくつかの実施形態では、ULCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけ軽鎖を含む抗体を産生し、各軽鎖は、(例えば、ラットまたはマウス)軽鎖定常ドメイン(例えば、CλまたはCκドメイン)に作動可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ULCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のB細胞によって発現される全ての軽鎖は、単一の再編成されたヒトλ軽鎖可変領域またはその体細胞超変異バージョンから発現されるヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。
【0250】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有し、この限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーは、2つの非再編成ヒトVλ遺伝子セグメント及び1つ以上の非再編成ヒトJλ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーは、2つの非再編成ヒトVλ遺伝子セグメント及び4つの非再編成ヒトJλ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーは、2つの非再編成ヒトVλ遺伝子セグメント及び5つの非再編成ヒトJλ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cλ遺伝子セグメント(例えば、マウスCλ1遺伝子セグメント)に作動可能に連結された限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む。そのような操作された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座は、DLC遺伝子座の一例であり、本明細書では「DLCiK遺伝子座」と称される。DLCiK遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、WO2020/247623に例示されており、これはその全体が参照により組み込まれる。
【0251】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類の生殖細胞系列ゲノムは、限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座についてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類の生殖細胞系列ゲノムは、限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座についてヘテロ接合性である。
【0252】
いくつかの実施形態では、DLCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性免疫グロブリンκ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性免疫グロブリンVκ及び/またはJκ遺伝子セグメンを欠いている。いくつかの実施形態では、DLCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性λ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性Vλ及び/またはJλ遺伝子セグメントを欠いている。
【0253】
いくつかの実施形態では、DLCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけ軽鎖を含む抗体を産生し、各軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)軽鎖定常ドメイン(例えば、CλまたはCκドメイン)に作動可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。
【0254】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、外因性末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)遺伝子を含む。外因性TdTを含むげっ歯類は、例えば、米国特許公開第2019/0223418号及びPCT公開第WO2017/210586号に例示されており、その各々はその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性TdT遺伝子を含まないげっ歯類と比較した場合、外因性TdT遺伝子を含むげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、抗原受容体の多様性を増加させることができる。
【0255】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のげっ歯類は、転写制御エレメントに作動可能に連結された外因性TdT遺伝子を含むゲノムを有する。
【0256】
いくつかの実施形態では、転写制御エレメントは、RAG1転写制御エレメント、RAG2転写制御エレメント、免疫グロブリン重鎖転写制御エレメント、免疫グロブリンκ軽鎖転写制御エレメント、免疫グロブリンλ軽鎖転写制御エレメント、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0257】
いくつかの実施形態では、外因性TdTは、免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座、免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座、免疫グロブリン重鎖遺伝子座、RAG1遺伝子座、またはRAG2遺伝子座に位置する。
【0258】
いくつかの実施形態では、TdTは、ヒトTdTである。いくつかの実施形態では、TdTは、TdTの短いアイソフォーム(TdTS)である。
【0259】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びKoK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びLoL遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座、KoK遺伝子座、及びLoL遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座、KoK遺伝子座、LoL遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0260】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座、KoK遺伝子座、及びLoK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座、KoK遺伝子座、及びLiK遺伝子座を含む。
【0261】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びLoK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座、LoK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0262】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びLiK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座、LiK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0263】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びULC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座、ULC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0264】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びDLC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座、DLC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0265】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びκULC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座、κULC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0266】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びκDLC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座、κDLC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0267】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びULCiK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座、ULCiK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0268】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びDLCiK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座、DLCiK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0269】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にHoH遺伝子座及びHULC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座、HULC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0270】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びKoK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びLoL遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座、KoK遺伝子座、及びLoL遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座、KoK遺伝子座、LoL遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0271】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座、KoK遺伝子座、及びLoK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座、KoK遺伝子座、及びLiK遺伝子座を含む。
【0272】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びLoK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座、LoK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0273】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びLiK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座、LiK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0274】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びULC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座、ULC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0275】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びDLC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座、DLC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0276】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びκULC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座、κULC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0277】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びκDLC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座、κDLC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0278】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びULCiK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座、ULCiK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0279】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びDLCiK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座、DLCiK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0280】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にUHC遺伝子座及びHULC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座、HULC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0281】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座及びKoK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座及びLoL遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座、KoK遺伝子座、及びLoL遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoH遺伝子座、KoK遺伝子座、LoL遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0282】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座、KoK遺伝子座、及びLoK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座、KoK遺伝子座、及びLiK遺伝子座を含む。
【0283】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座及びLoK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoH遺伝子座、LoK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0284】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座及びLiK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoH遺伝子座、LiK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0285】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座及びκULC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoH遺伝子座、κULC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0286】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座及びκDLC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoH遺伝子座、κDLC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0287】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座及びULCiK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoH遺伝子座、ULCiK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0288】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座及びDLCiK遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoH遺伝子座、DLCiK遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0289】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)にLoH遺伝子座及びHULC遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、LoH遺伝子座、HULC遺伝子座、またはそれらの組み合わせにおいてホモ接合性である。
【0290】
カッパユニバーサル軽鎖遺伝子座を含む例示的なげっ歯類
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、可変領域の幅広いレパートリーを生成する能力が制限された免疫グロブリン遺伝子座のうちの1つを有するゲノムを含む遺伝子改変非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウスを、非制限免疫グロブリン鎖のレパートリー配列及び質量分析に基づく解析に依拠する方法で便利に利用することができる。いくつかの実施形態では、制限された免疫グロブリン鎖は、軽鎖、例えばカッパ軽鎖である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子(例えば、1つ以上の内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子)の上流にある(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座)(すなわち、HoH遺伝子座)と、Cκ遺伝子の上流の(例えば、それに作動可能に連結された)単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域(Vκ/Jκ)を含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)(κULC遺伝子座)と、を含む。HoH遺伝子座及びκULC遺伝子座を含む例示的なげっ歯類は、例えば、米国特許第10,130,081号及び同第10,143,186号に例示されており、その各々はその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座及び/またはκULC遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座及びκULC遺伝子座においてホモ接合性である。
【0291】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも6つのヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも18個のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも39個のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも80個のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、少なくとも27個のヒトD遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、少なくとも6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。
【0292】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも18個のヒトV遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、27個のヒトD遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。本明細書で論じられる場合、そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、「VelocImmune(登録商標)1 HoH遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも39個のヒトV遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、27個のヒトD遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。本明細書で論じられる場合、そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、「VelocImmune(登録商標)2 HoH遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも80個のヒトV遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、27個のヒトD遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。本明細書で論じられる場合、そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、「VelocImmune(登録商標)3 HoH遺伝子座」と称される。
【0293】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座及びκULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)はまた、機能的な内因性げっ歯類Adam6遺伝子を欠くゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座及びκULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)はまた、そのゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6aであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6bであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6a及びマウスADAM6bであるか、またはそれらを含む。HoH遺伝子座及びκULC遺伝子座を含み、かつ1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第10,130,081号に例示されており、これはその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントを発現する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座と同じ染色体上に含まれる、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むHoH遺伝子座を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を、ヒトAdam6偽遺伝子の代わりに有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、ヒトAdam6偽遺伝子から置き換わる、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。
【0294】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座及びκULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類は、第1及び第2のヒトV遺伝子セグメントを含む1つ以上のヒトV遺伝子セグメントと、第1のヒトV遺伝子セグメントと第2のヒトV遺伝子セグメントとの間の1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列と、を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を含む。いくつかの実施形態では、第1のヒトV遺伝子セグメントはV1-2であり、第2のヒトV遺伝子セグメントはV6-1である。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、ヒトV遺伝子セグメントとヒトD遺伝子セグメントとの間にある。
【0295】
いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、雄げっ歯類の受精能を回復させるかまたは高める。
【0296】
いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座にある単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域は、ヒトVκ遺伝子セグメント及びヒトJκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、ヒトVκ遺伝子セグメントは、ヒトVκ1-39遺伝子セグメントまたはヒトVκ3-20遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、ヒトJκ遺伝子セグメントは、ヒトJκ1遺伝子セグメント、ヒトJκ2遺伝子セグメント、ヒトJκ3遺伝子セグメント、ヒトJκ4遺伝子セグメント、またはヒトJκ5遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、ヒトVκ遺伝子セグメントはヒトVκ1-39遺伝子セグメントであり、ヒトJκ遺伝子セグメントはヒトJκ5遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座にある単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域は、ヒトVκ1-39/Jκ5である。いくつかの実施形態では、ヒトVκ遺伝子セグメントはヒトVκ3-20遺伝子セグメントであり、ヒトJκ遺伝子セグメントはヒトJκ1遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座にある単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域は、ヒトVκ3-20/Jκ1である。
【0297】
いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座は、非天然リーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、シグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、非天然シグナルペプチドを含む。
【0298】
いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座のCκ遺伝子は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、κULC遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、κULC遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0299】
いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性κ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性Vκ及び/またはJκ遺伝子セグメントを欠いている。いくつかの実施形態では、κULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性λ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性Vλ及び/またはJλ遺伝子セグメントを欠いている。
【0300】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座及びκULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけ、(a)重鎖であって、各重鎖がげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)重鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒト重鎖可変ドメインを含む重鎖と、(b)κ軽鎖であって、各κ軽鎖が、κ軽鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒトκ軽鎖可変ドメインを含むκ軽鎖と、を含む抗体を産生する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)によって発現される全てのκ軽鎖は、単一の再編成されたヒトκ軽鎖可変領域またはその体細胞超変異バージョンから発現されるヒトκ軽鎖可変ドメインを含む。
【0301】
いくつかの実施形態では、単一の再編成されたヒトκ可変領域を含むκULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、その軽鎖可変領域(例えば、そのCDR3領域)の少なくとも1つの非ヒスチジン残基の、ヒスチジン領域による置換を更に含む。そのような遺伝子改変げっ歯類は、米国特許第9,801,362号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ヒスチジン残基による非ヒスチジン残基の置換またはヒスチジン残基の挿入を含む遺伝子改変げっ歯類を免疫することにより、本明細書及び実施例に記載のレパートリーシーケンシングとMS法との組み合わせを使用して、抗原に対するpH依存特性を示す抗体を同定することが容易になる。
【0302】
いくつかの実施形態では、本開示は、κULC遺伝子座を生殖細胞系列ゲノムに含むげっ歯類からの抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫された遺伝子改変げっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインの複数のペプチド配列を得ることと、(ii)ヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列のライブラリをその複数のペプチド配列と照合することと、を含み、ここで、このライブラリが、免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列を含む、方法を提供する。
【0303】
いくつかの実施形態では、本開示は、κULC遺伝子座を生殖細胞系列ゲノムに含むげっ歯類からの抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列を含むヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列のライブラリを得ることと、(ii)その抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインの複数のペプチド配列と、そのライブラリを照合することと、を含む方法を提供する。
【0304】
ラムダユニバーサル軽鎖遺伝子座を含む例示的なげっ歯類
本発明の他の実施形態では、本方法は、制限されたラムダ軽鎖を利用する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子(例えば、1つ以上の内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子)の上流にある(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座)(すなわち、HoH遺伝子座)と、限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリー(この限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーは、単一の再編成されたヒト免疫グロブリンλ軽鎖可変領域(Vλ/Jλ)を含み、軽鎖定常領域遺伝子の上流にある(例えば、それに作動可能に連結されている))を含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)(ULCiK遺伝子座)と、を含む。HoH遺伝子座及びULCiK遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、WO2020/247623に例示されており、これはその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座及び/またはULCiK遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座及びULCiK遺伝子座においてホモ接合性である。
【0305】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも6つのヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも18個のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも39個のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも80個のヒトV遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、少なくとも27個のヒトD遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、少なくとも6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。
【0306】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも18個のヒトV遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、27個のヒトD遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。本明細書で論じられる場合、そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、「VelocImmune(登録商標)1 HoH遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも39個のヒトV遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、27個のヒトD遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。本明細書で論じられる場合、そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、「VelocImmune(登録商標)2 HoH遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントは、少なくとも80個のヒトV遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントは、27個のヒトD遺伝子セグメントを含み、HoH遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントは、6つのヒトJ遺伝子セグメントを含む。本明細書で論じられる場合、そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、「VelocImmune(登録商標)3 HoH遺伝子座」と称される。
【0307】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座及びULCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)はまた、機能的な内因性げっ歯類Adam6遺伝子を欠くゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を含む。いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座及びULCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)はまた、そのゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6aであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6bであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6a及びマウスADAM6bであるか、またはそれらを含む。HoH遺伝子座及びULCiK遺伝子座を含み、かつ1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第10,130,081号に例示されており、これはその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントを発現する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、HoH遺伝子座と同じ染色体上に含まれる、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むHoH遺伝子座を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を、ヒトAdam6偽遺伝子の代わりに有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、ヒトAdam6偽遺伝子から置き換わる、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。
【0308】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座及びULCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類は、第1及び第2のヒトV遺伝子セグメントを含む1つ以上のヒトV遺伝子セグメントと、第1のヒトV遺伝子セグメントと第2のヒトV遺伝子セグメントとの間の1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列と、を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を含む。いくつかの実施形態では、第1のヒトV遺伝子セグメントはV1-2であり、第2のヒトV遺伝子セグメントはV6-1である。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、ヒトV遺伝子セグメントとヒトD遺伝子セグメントとの間にある。
【0309】
いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、雄げっ歯類の受精能を回復させるかまたは高める。
【0310】
いくつかの実施形態では、ULC遺伝子座にある単一の再編成されたヒトλ軽鎖可変領域は、ヒトVλ遺伝子セグメント及びヒトJλ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントは、Vλ4-69、Vλ8-61、Vλ4-60、Vλ6-57、Vλ10-54、Vλ5-52、Vλ1-51、Vλ9-49、Vλ1-47、Vλ7-46、Vλ5-45、Vλ1-44、Vλ7-43、Vλ1-40、Vλ5-37、Vλ1-36、Vλ3-27、Vλ3-25、Vλ2-23、Vλ3-22、Vλ3-21、Vλ3-19、Vλ2-18、Vλ3-16、Vλ2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3、及びVλ3-1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントは、Vλ5-52、Vλ1-51、Vλ9-49、Vλ1-47、Vλ7-46、Vλ5-45、Vλ1-44、Vλ7-43、Vλ1-40、Vλ5-37、Vλ1-36、Vλ3-27、Vλ3-25、Vλ2-23、Vλ3-22、Vλ3-21、Vλ3-19、Vλ2-18、Vλ3-16、Vλ2-14、Vλ3-12、Vλ2-11、Vλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3、及びVλ3-1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントは、Vλ1-51、Vλ5-45、Vλ1-44、Vλ1-40、Vλ3-21、及びVλ2-14からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントは、Vλ1-51またはVλ2-14である。いくつかの実施形態では、ヒトJλ遺伝子セグメントは、Jλ1、Jλ2、Jλ3、Jλ6、及びJλ7からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヒトJλ遺伝子セグメントは、Jλ1、Jλ2、Jλ3、及びJλ7からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヒトJλ遺伝子セグメントは、Jλ2である。
【0311】
いくつかの実施形態では、ULC遺伝子座は、非天然リーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、ULC遺伝子座は、単一の再編成されたヒトλ軽鎖可変領域及びVκリーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、シグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、非天然シグナルペプチドを含む。
【0312】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)CκまたはCλ遺伝子セグメント(例えば、マウスCλ1遺伝子セグメント)に作動可能に連結された限られたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含む。
【0313】
いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントはVλ1-51であり、ヒトJλ遺伝子セグメントはJλ2であり、軽鎖定常領域遺伝子はげっ歯類Cλ(例えば、マウスCλ1)である。いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントはVλ1-51であり、ヒトJλ遺伝子セグメントはJλ2であり、軽鎖定常領域遺伝子はげっ歯類Cκである。いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントはVλ2-14であり、ヒトJλ遺伝子セグメントはJλ2であり、軽鎖定常領域遺伝子はげっ歯類Cλ(例えば、マウスCλ1)である。いくつかの実施形態では、ヒトVλ遺伝子セグメントはVλ2-14であり、ヒトJλ遺伝子セグメントはJλ2であり、軽鎖定常領域遺伝子はげっ歯類Cκである。
【0314】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、ULCiK遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、ULCiK遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0315】
いくつかの実施形態では、ULCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性κ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性Vκ及び/またはJκ遺伝子セグメントを欠いている。いくつかの実施形態では、ULCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、内因性λ軽鎖可変領域を形成するように再編成することができる内因性Vλ及び/またはJλ遺伝子セグメントを欠いている。
【0316】
いくつかの実施形態では、HoH遺伝子座及びULC遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけ、(a)重鎖であって、各重鎖がげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)重鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒト重鎖可変ドメインを含む重鎖と、(b)軽鎖であって、各軽鎖が、(例えば、ラットまたはマウス)軽鎖定常ドメイン(例えば、CλまたはCκドメイン)に作動可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む軽鎖と、を含む抗体を産生する。いくつかの実施形態では、ULCiK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のB細胞によって発現される全ての軽鎖は、単一の再編成されたヒトλ軽鎖可変領域またはその体細胞超変異バージョンから発現されるヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。
【0317】
いくつかの実施形態では、本開示は、ULCiK遺伝子座を生殖細胞系列ゲノムに含むげっ歯類からの抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫された遺伝子改変げっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインの複数のペプチド配列を得ることと、(ii)ヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列のライブラリをその複数のペプチド配列と照合することと、を含み、ここで、このライブラリが、免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列を含む、方法を提供する。
【0318】
いくつかの実施形態では、本開示は、ULCiK遺伝子座を生殖細胞系列ゲノムに含むげっ歯類からの抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列を含むヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン配列のライブラリを得ることと、(ii)その抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインの複数のペプチド配列と、そのライブラリを照合することと、を含む方法を提供する。
【0319】
ユニバーサル重鎖遺伝子座を含む例示的なげっ歯類
他の実施形態では、本明細書に記載の方法で利用されるマウスの制限された免疫グロブリン鎖は、重鎖である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)定常領域遺伝子の上流の(例えば、それに作動可能に連結された)、単一の再編成されたヒト重鎖可変領域を含む操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座)(すなわち、UHC遺伝子座または共通重鎖遺伝子座)と、Cκ遺伝子の上流にある(例えば、それに作動可能に連結された)、1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントと、を含む操作された免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(例えば、操作された内因性げっ歯類免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座)(すなわち、KoK遺伝子座)と、を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座及び/またはKoK遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座及びKoK遺伝子座においてホモ接合性である。
【0320】
いくつかの実施形態では、UHC遺伝子座にある単一の再編成されたヒト重鎖可変領域は、単一のヒトV遺伝子セグメント、単一のヒトD遺伝子セグメント、及び単一のヒトJ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、単一のヒトV遺伝子セグメントはヒトV3-23であり、単一のヒトD遺伝子セグメントはヒトD4-4であり、単一のヒトJ遺伝子セグメントはヒトJ4である。
【0321】
いくつかの実施形態では、UHC遺伝子座にある単一の再編成されたヒト重鎖可変領域は、単一のヒトV遺伝子セグメント及び単一のヒトJ遺伝子セグメントを含み、これらは2つのアミノ酸によって分離されている。いくつかの実施形態では、単一のヒトV遺伝子セグメントはヒトV3-23であり、単一のヒトJ遺伝子セグメントはヒトJ4であり、2つのアミノ酸はグリシン及びチロシンである。
【0322】
いくつかの実施形態では、UHC遺伝子座にある1つ以上のげっ歯類(例えば、マウスまたはラット)重鎖定常領域遺伝子は、1つ以上の内因性げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)重鎖定常領域遺伝子である。
【0323】
いくつかの実施形態では、UHC遺伝子座及びKoK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、機能的な内因性げっ歯類Adam6遺伝子を欠いている。いくつかの実施形態では、UHC遺伝子座及びKoK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6aであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6bであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドは、マウスADAM6a及びマウスADAM6bであるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントを発現する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、UHC遺伝子座と同じ染色体上に含まれる、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むUHC遺伝子座を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を、ヒトAdam6偽遺伝子の代わりに有する。いくつかの実施形態では、提供される遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、ヒトAdam6偽遺伝子から置き換わる、1つ以上のげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)ADAM6ポリペプチド、その機能的オルソログ、機能的ホモログ、または機能的フラグメントをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むゲノム(例えば、生殖細胞系列ゲノム)を有する。
【0324】
いくつかの実施形態では、1つ以上のげっ歯類ADAM6ポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、雄げっ歯類の受精能を回復させるかまたは高める。
【0325】
いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも6つのヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも16個のヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも30個のヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも40個のヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、少なくとも5つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。
【0326】
いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも16個のヒトVκ遺伝子セグメントを含み、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、少なくとも5つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。本明細書に記載される場合、そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、本明細書では「VelocImmune(登録商標)1 KoK遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも30個のヒトVκ遺伝子セグメントを含み、KoK遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、少なくとも5つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。本明細書に記載される場合、そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、本明細書では「VelocImmune(登録商標)2 KoK遺伝子座」と称される。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントは、少なくとも40個のヒトVκ遺伝子セグメントを含み、KoK遺伝子座にある1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントは、少なくとも5つのヒトJκ遺伝子セグメントを含む。本明細書に記載される場合、そのような操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、本明細書では「VelocImmune(登録商標)3 KoK遺伝子座」と称される。
【0327】
いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座の免疫グロブリンκ軽鎖定常領域遺伝子は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座の免疫グロブリンκ軽鎖定常領域遺伝子は、内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、KoK遺伝子座の免疫グロブリンκ軽鎖定常領域遺伝子は、内因性免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座にある内因性げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Cκ遺伝子である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、KoK遺伝子座においてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、KoK遺伝子座においてヘテロ接合性である。
【0328】
いくつかの実施形態では、UHC遺伝子座及びKoK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、抗原刺激に応答して、とりわけ、(a)重鎖であって、各重鎖がげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)重鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒト重鎖可変ドメインを含む重鎖と、(b)κ軽鎖であって、各κ軽鎖が、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)κ軽鎖定常ドメインに作動可能に連結されたヒトκ軽鎖可変ドメインを含むκ軽鎖と、を含む抗体を産生する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)によって発現される全ての重鎖は、単一の再編成されたヒト重鎖可変領域またはその体細胞超変異バージョンから発現されるヒト重鎖可変ドメインを含む。
【0329】
いくつかの実施形態では、UHC遺伝子座及びKoK遺伝子座を含む遺伝子改変げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)はまた、外因性末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)遺伝子も含む。いくつかの実施形態では、外因性TdT遺伝子を含まないげっ歯類と比較した場合、外因性末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)遺伝子を含むげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)は、抗原受容体の多様性を増加させることができる。
【0330】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のげっ歯類は、転写制御エレメントに作動可能に連結された外因性末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)遺伝子を含むゲノムを有する。
【0331】
いくつかの実施形態では、転写制御エレメントは、RAG1転写制御エレメント、RAG2転写制御エレメント、免疫グロブリン重鎖転写制御エレメント、免疫グロブリンκ軽鎖転写制御エレメント、免疫グロブリンλ軽鎖転写制御エレメント、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0332】
いくつかの実施形態では、外因性TdTは、免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座、免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座、免疫グロブリン重鎖遺伝子座、RAG1遺伝子座、またはRAG2遺伝子座に位置する。
【0333】
いくつかの実施形態では、TdTは、ヒトTdTである。いくつかの実施形態では、TdTは、TdTの短いアイソフォーム(TdTS)である。
【0334】
いくつかの実施形態では、本開示は、UHC遺伝子座を生殖細胞系列ゲノムに含むげっ歯類からの抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫された遺伝子改変げっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列を得ることと、(ii)ヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン配列のライブラリをその複数のペプチド配列と照合することと、を含み、ここで、このライブラリが、免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン配列を含む、方法を提供する。
【0335】
いくつかの実施形態では、本開示は、UHC遺伝子座を生殖細胞系列ゲノムに含むげっ歯類からの抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインまたはCDR配列(例えば、CDR3配列)を同定する方法であって、(i)その抗原で免疫されたげっ歯類のB細胞によってコードされる複数のヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン配列を含むヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン配列のライブラリを得ることと、(ii)その抗原で免疫されたげっ歯類によって産生された抗体集団を含む試料から得られたヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインの複数のペプチド配列と、そのライブラリを照合することと、を含む方法を提供する。
【0336】
生成された抗原特異的抗体
目的の抗体(例えば、目的の可変ドメイン及び/または目的のCDR配列(複数可))を、本明細書に記載の方法を使用して遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えばラットまたはマウス)から同定した後、本方法は、得られた抗体(すなわち、第1の抗体)またはその一部(例えば、可変領域)をコードするヌクレオチド配列を、抗原結合タンパク質または第2の組換え抗体中で発現させることを更に含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって同定された抗体配列は、続いて宿主細胞中で発現される。いくつかの実施形態では、本明細書で同定された抗体の可変領域配列は、宿主細胞中で発現される第2の組換え抗体にクローニングされる。第2の組換え抗体の様々な実施形態が、本明細書で後述される。様々な実施形態では、本明細書に記載の方法によって得られた抗体を更に試験して、抗原免疫原への結合を確認するか、または抗体の動力学的結合パラメータを決定する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって得られた第2の抗体を発現する(例えば、トランスフェクトされた)細胞からの上清または精製タンパク質を、様々なアッセイでスクリーニングして、抗原に対する結合親和性及び/または特異性を決定する。使用することができる様々なアッセイには、前述の例に記載されたもの、及び当業者には明らかな他のものが含まれる。様々な実施形態では、抗体は、目的の抗原または目的の抗原上のエピトープに、(例えば、マイクロモル、ナノモル、またはピコモル範囲のKで)特異的に結合する。
【0337】
いくつかの実施形態では、得られた抗体をコードするヌクレオチド配列は、免疫された宿主(例えば、遺伝子改変非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウスまたはラット)からのものであり、この宿主は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、重鎖及び/または軽鎖可変領域の制限されたレパートリーを含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列は、免疫された宿主(例えば、遺伝子改変非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウスまたはラット)から得られ、この宿主は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、制限された免疫グロブリン軽鎖可変領域レパートリーを含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列は、免疫された宿主(例えば、遺伝子改変非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウスまたはラット)から得られ、この宿主は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、制限された免疫グロブリン重鎖可変領域レパートリーを含む。
【0338】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列は、免疫されたげっ歯類(例えば、マウス)から得られ、このげっ歯類は、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、単一の軽鎖V遺伝子セグメント及び単一の軽鎖J遺伝子セグメント、例えば、単一のヒト軽鎖Vκ遺伝子セグメント及び単一のヒト軽鎖Jκ遺伝子セグメント、または単一のヒト軽鎖Vλ遺伝子セグメント及び単一のヒト軽鎖Jλ遺伝子セグメントを含む、単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域を含む(ULC遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第10,143,186号及び同第10,130,081号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。したがって、目的の抗原でそのようなげっ歯類(例えば、マウス)を免疫すると、本明細書に記載の方法によって、目的の抗原を対象とする抗体の重鎖可変領域(例えば、重鎖CDR3)配列の解析、及び重鎖可変領域配列の選択が可能となる。
【0339】
いくつかの実施形態では、免疫された宿主(例えば、遺伝子改変非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウスまたはラット)からの得られた抗体をコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。いくつかの実施形態では、得られた重鎖及び/または軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の得られたCDR配列をコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。
【0340】
いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリン可変ドメイン(例えば、重鎖及び/または軽鎖可変領域)をコードする得られたヌクレオチド配列は、抗原結合タンパク質の発現のためにコンストラクトに挿入される。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、抗体である。
【0341】
いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする得られたヌクレオチド配列は、抗体がヒト定常領域の上流にヒト可変領域を有する完全ヒト抗体として発現されるように、ヒト免疫グロブリン定常領域と作動可能に連結されてコンストラクトに挿入される。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び/またはヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を得ることに続いて、(i)ヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を、ヒト免疫グロブリン重鎖定常ドメインをコードするヌクレオチド配列と接合またはライゲーションし、それにより完全ヒト免疫グロブリン重鎖をコードするヒト免疫グロブリン重鎖配列を形成すること、及び/または(ii)ヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(例えば、ヒト免疫グロブリンκ及び/またはλ軽鎖可変ドメイン)をコードするヌクレオチド配列を、ヒト免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(例えば、ヒト免疫グロブリンκ及び/またはλ軽鎖定常ドメイン)をコードするヌクレオチド配列と接合またはライゲーションし、それにより完全ヒト免疫グロブリンκ及び/またはλ軽鎖をコードするヒト免疫グロブリンκ及び/またはλ軽鎖配列を形成することを更に含む。特定の実施形態では、ヒト免疫グロブリン重鎖配列、及びヒト免疫グロブリンκ及び/またはλ軽鎖配列は、完全ヒト免疫グロブリン重鎖及び完全ヒト免疫グロブリンκ及び/またはλ軽鎖が発現され、ヒト抗体を形成するように、細胞(例えば、宿主細胞、哺乳動物細胞)中で発現される。いくつかの実施形態では、ヒト抗体は、細胞または細胞を含む培地から単離される。
【0342】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質(例えば、第2の抗体)は、ヒト抗体及び/または二重特異性抗体である。「二重特異性抗体」という語句には、2つ以上のエピトープに選択的に結合することができる抗体が含まれる。二重特異性抗体は、一般に、2つの非同一重鎖を含み、各重鎖は、異なるエピトープ、すなわち、2つの異なる分子上のもの(例えば、2つの異なる免疫原上の異なるエピトープ)または同じ分子上のもの(例えば、同じ免疫原上の異なるエピトープ)のいずれかに特異的に結合する。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープ及び第2のエピトープ)に選択的に結合することができる場合、第1のエピトープに対する第1の重鎖の親和性は、一般に、第2のエピトープに対する第1の重鎖の親和性よりも少なくとも1桁から2桁または3桁または4桁以上低く、逆もまた同様である。二重特異性抗体によって特異的に結合されるエピトープは、同じまたは異なる標的上(例えば、同じまたは異なるタンパク質上)にあり得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ免疫原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作製することができる。例えば、同じ免疫原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列を、同じまたは異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合させることができ、そのような配列を免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞中で発現させることができる。典型的な二重特異性抗体は、2つの重鎖を有し、そのそれぞれが3つの重鎖CDRを有し、その後に(N末端からC末端へ)CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン、ならびに免疫グロブリン軽鎖が続き、この免疫グロブリン軽鎖は、エピトープ結合特異性を付与しないが、各重鎖と会合することができるか、または各重鎖と会合することができ、かつ重鎖エピトープ結合領域によって結合されるエピトープのうちの1つ以上に結合することができるか、または各重鎖と会合することができ、かつ一方もしくは両方のエピトープへの一方もしくは両方の重鎖の結合を可能にする。
【0343】
例えば、抗原結合タンパク質(例えば、第2の抗体)が二重特異性抗体である場合、いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、遺伝子改変非ヒト動物、例えば、げっ歯類、例えばマウスまたはラット(重鎖及び/または軽鎖可変領域の制限されたレパートリーをそのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に含む)を免疫することによって生成される。いくつかの実施形態では、非ヒト動物はマウスであり、このマウスは、そのゲノム(例えば、その生殖細胞系列ゲノム)に、単一の軽鎖V遺伝子セグメント及び単一の軽鎖J遺伝子セグメント、例えば、単一のヒト軽鎖Vκ遺伝子セグメント及び単一のヒト軽鎖Jκ遺伝子セグメント、または単一のヒト軽鎖Vλ遺伝子セグメント及び単一のヒト軽鎖Jλ遺伝子セグメントを含む、単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域を含む(ULC遺伝子座を含むげっ歯類は、例えば、米国特許第10,143,186号及び同第10,130,081号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。したがって、第1の目的の抗原でそのようなマウスを免疫すると、本明細書に記載の方法によって、第1の目的の抗原を対象とする抗体の重鎖可変領域(例えば、重鎖CDR3)配列の解析、及び二重特異性抗体で使用するための第1の重鎖可変領域配列の選択が可能となる。本方法は、第2の目的の抗原に対する第2の重鎖可変領域を得るために、本明細書に記載の方法を使用して、単一の軽鎖V遺伝子セグメント及び単一の軽鎖J遺伝子セグメント(例えば、第1のマウスに存在するものと同じ軽鎖V及びJ遺伝子セグメント)を含む、単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域を同様に含む第2のマウスを免疫し、当該第2のマウスから第2の重鎖可変領域を得ることによって繰り返される。あるいは、第2の重鎖可変領域配列は、当該技術分野で公知の方法(例えば、米国特許第10,143,186号及び第10,130,081号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のハイブリドーマ技術または他の方法を使用して得ることができる。第1及び第2の重鎖可変領域は、二重特異性抗体を生成するために、第1及び第2のマウスまたはその体細胞変異バージョンに存在するものと同じ軽鎖とともに、第1及び第2の重鎖(例えば、第1及び第2のヒト重鎖)中で発現される。
【0344】
いくつかの実施形態では、例えば、抗原結合タンパク質(例えば、第2の抗体)が二重特異性抗体である場合、ヒト免疫グロブリン可変ドメイン、例えば、ヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする得られたヌクレオチド配列は、ヒト重鎖免疫グロブリン定常領域と作動可能に連結されてコンストラクトに挿入され、その際、重鎖のFcドメインは、重鎖ヘテロ二量体の形成を促進するための、及び/または重鎖ホモ二量体の形成を阻害するための改変を含む。そのような改変は、例えば、米国特許第5,731,168号、同第5,807,706号、同第5,821,333号、同第7,642,228号、及び同第8,679,785号、ならびに米国特許公開第2013/0195849号(その各々は参照により本明細書に組み込まれる)に提供されている。更に別の実施形態では、例えば、第2の抗体が二重特異性抗体である場合、ヒト免疫グロブリン可変ドメイン、例えば、ヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする得られたヌクレオチド配列は、ヒト重鎖免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒトIgG定常領域)と作動可能に連結されてコンストラクトに挿入され、その際、二重特異性抗体の重鎖のうちの一方が改変されてプロテインA結合決定基が取り除かれ、ホモ二量体抗原結合タンパク質の親和性は、ヘテロ二量体抗原結合タンパク質とは差が生じることになる。したがって、二重特異性抗体の一方の免疫グロブリン重鎖は、IgG1、IgG2、及びIgG4から選択されるヒトIgGの第1のCH3領域を含み、この第1のCH3領域はプロテインAに結合し、第2の免疫グロブリン重鎖は、IgG1、IgG2、及びIgG4から選択されるヒトIgGの第2のCH3領域を含み、この第2のCH3領域はプロテインAへの第2のCH3領域の結合を低減させるかまたは排除する改変を含み、他方、二重特異性抗体の免疫グロブリン軽鎖は、両方の免疫グロブリン重鎖と対形成する。この論点に対処する組成物及び方法は、米国特許第9,309,326号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0345】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって得られるヒト可変ドメインをコードするヌクレオチド配列は、完全ヒト抗体が生成されるように、ヒト免疫グロブリン定常領域と作動可能に連結されて細胞株中で発現される。いくつかの実施形態では、完全ヒト抗体を発現する細胞株は、組換え核酸配列の発現に好適な任意の細胞である。細胞には、原核生物及び真核生物のもの(単細胞または多細胞)、細菌細胞(例えば、E.coli、Bacillus spp.、Streptomyces spp.などの系統)、マイコバクテリウム細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、P.methanolicaなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、Trichoplusia niなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマなどの細胞融合物が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、真核性であり、以下の細胞:CHO(例えば、CHO Kl、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vera、CVl、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60、(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT 060562、セルトリ細胞、BRL 3A細胞、HTl 080細胞、10骨髄腫細胞、腫瘍細胞、及び前述した細胞に由来する細胞株から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のウイルス遺伝子を含む、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)。
【0346】
抗体を産生するために使用される哺乳動物宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。Ham F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に好適である。培地には、必要に応じて、ホルモン及び/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシンなど)、微量要素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物と定義される)、ならびにグルコースまたは同等のエネルギー源が補充され得る。当業者に公知のように、他の任意の補充物も適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどの培養条件は、様々な実施形態では、発現用に選択された宿主細胞でこれまでに使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
【0347】
抗原結合タンパク質及びそれをコードする核酸配列の作製方法
本明細書の開示には、目的の抗原で免疫された宿主(すなわち、本明細書に記載の遺伝子改変宿主)から抗体の軽鎖及び/または重鎖のアミノ酸配列及び/またはヌクレオチド配列を得るための方法が記載される。
【0348】
いくつかの実施形態では、本方法は、当該抗原に特異的な第1の抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を得ることを含み、これは、複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列を含む、免疫された宿主からの第1の試料を得て、複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を決定することと、目的の抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得て、そこから抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することと、複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列と照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト可変ドメインの配列を得ることと、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を得ることと、を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、抗原結合タンパク質(例えば、第2の抗体)中のヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする得られたヌクレオチド配列を利用することを更に含む。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質中のヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。
【0349】
いくつかの実施形態では、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を得る方法であって、その抗原で免疫された宿主からの第1の試料から、複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得て、コードされた複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を決定することと;目的の抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得て、そこから抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することと;コードされた複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列と照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインを得ることと;その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を得ることと、を含む方法が、本明細書で提供される。
【0350】
いくつかの実施形態では、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインCDR(例えば、CDR3)配列をコードするヌクレオチド配列を得る方法であって、その抗原で免疫された宿主からの第1の試料から、複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得て、コードされた複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を決定することと;目的の抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得て、そこから抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することと;複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を、第2の試料からの抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列と照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインCDR(例えば、CDR3)配列を得ることと、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインCDR(例えば、CDR3)配列をコードするヌクレオチド配列を得ることと、を含む方法が、本明細書で提供される。
【0351】
いくつかの実施形態では、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメイン配列を得る方法であって、その抗原で免疫された宿主からの第1の試料から、複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得て、コードされた複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を決定することと;目的の抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得て、そこから抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することと;複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメイン配列を得ることと、を含む方法が、本明細書で提供される。
【0352】
いくつかの実施形態では、抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインCDR(例えば、CDR3)配列を得る方法であって、その抗原で免疫された宿主からの第1の試料から、複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得て、コードされた複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を決定することと、目的の抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得て、そこから抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することと、複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列と照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインCDR(例えば、CDR3)配列を得ることと、を含む方法が、本明細書で提供される。
【0353】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して得られる、ヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸配列、またはヒト免疫グロブリン可変ドメインCDR(例えば、CDR3)をコードする核酸配列が、本明細書で提供される。他の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して得られる免疫グロブリン軽鎖または重鎖をコードする核酸配列が、本明細書で提供される。
【0354】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して得られるヒト可変ドメインまたはCDR(例えば、CDR3)のアミノ酸配列もまた、本明細書で提供される。他の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して得られる免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸配列が、本明細書で提供される。
【0355】
いくつかの実施形態では、抗体を作製するための方法であって、宿主細胞中で、(i)免疫グロブリン重鎖定常領域配列に作動可能に連結されたヒト免疫グロブリン重鎖可変領域配列を含む免疫グロブリン重鎖をコードする核酸、及び(ii)免疫グロブリン軽鎖定常領域配列に作動可能に連結されたヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域配列を含む免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸を発現させることを含み、このヒト免疫グロブリン重鎖可変領域配列及び/またはヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域配列が、本明細書に提供される方法のいずれかによって同定された方法もまた、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、宿主細胞が免疫グロブリン重鎖と免疫グロブリン軽鎖とを含む抗体を発現するような条件下で培養される。
【0356】
いくつかの実施形態では、完全ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または完全ヒト免疫グロブリン軽鎖を作製する方法であって、(a)本明細書で提供される方法のいずれかによって、ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン配列を同定すること;(b)ヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を、ヒト免疫グロブリン重鎖定常ドメインをコードする核酸と作動可能に連結させて、完全ヒト免疫グロブリン重鎖を形成すること、及び/またはヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインをコードする核酸を、ヒト免疫グロブリン軽鎖定常ドメインをコードする核酸と作動可能に連結させて、完全ヒト免疫グロブリン軽鎖を形成すること;ならびに(c)完全ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または完全ヒト免疫グロブリン軽鎖を発現させること、を含む方法もまた、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、完全ヒト免疫グロブリン重鎖及び/または完全ヒト免疫グロブリン軽鎖は、宿主細胞中で発現される。
【0357】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して得られる配列を含む抗体もまた、本明細書で提供される。
【0358】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって得られるヒト免疫グロブリン可変ドメインに由来する抗原結合タンパク質を発現する細胞が提供される。いくつかの実施形態では、細胞は、抗原結合タンパク質の製造、例えば、対象に投与するための抗原結合タンパク質の製造に使用される細胞株である。
【0359】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法によって産生される、または本明細書に開示される方法によって産生される抗体、核酸、もしくはその治療的に関連する部分に由来する、抗原結合タンパク質、抗原結合タンパク質をコードする核酸、またはその治療的に関連する部分は、対象(例えば、ヒト対象)に投与され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示される非ヒト動物によって産生される抗体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、緩衝液、希釈剤、賦形剤、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、組成物はまた、所望により、1つ以上の追加の治療的活性物質を含有し得る。
【0360】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は、主に、ヒトへの倫理的投与に好適な医薬組成物に向けられているが、そのような組成物は、通常、全ての種類の動物への投与に好適であることが当業者によって理解される。組成物を様々な動物に対する投与に好適なものとするためのヒトへの投与に好適な医薬組成物の改変は十分に理解されており、通常の知識を有する獣医薬理学者は、そのような改変を、もしある場合には通例の実験によって設計及び/または実施することができる。
【0361】
例えば、本明細書で提供される医薬組成物は、減菌注射可能な形態(例えば、皮下注射または静脈内注入に好適な形態)であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、注射に好適な液体剤形で提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、任意選択で真空下で、注射前に水性希釈剤(例えば、水、緩衝液、塩溶液など)で再構成され得る粉末(例えば、凍結乾燥及び/または滅菌されたもの)として提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、水、塩化ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、ベンジルアルコール溶液、リン酸緩衝生理食塩水などで希釈及び/または再構成される。いくつかの実施形態では、粉末は、水性希釈剤と穏やかに混合されるべきである(例えば、振盪しない)。
【0362】
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で公知のまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。通常、そのような調製方法は、活性成分を希釈剤もしくは別の賦形剤及び/または1つ以上の他の補助成分と会合させ、次いで、必要に応じて及び/または所望により、生成物を所望の単一または複数用量単位に成形及び/または包装するステップを含む。
【0363】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法によって産生される抗体を含む医薬組成物は、保存または投与用の容器、例えば、バイアル、シリンジ(例えば、IVシリンジ)、またはバッグ(例えば、IVバッグ)に含まれ得る。本開示による医薬組成物は、バルクで、単一単位用量として、及び/または複数の単一単位用量として調製、包装、及び/または販売され得る。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、既定量の活性成分を含む医薬組成物の個別量である。活性成分の量は、通常、対象に投与されるであろう活性成分の投薬量及び/または例えば、そのような投薬量の2分の1または3分の1などのそのような投薬量の好都合な割合と等しい。
【0364】
本開示による医薬組成物における活性成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/または任意の追加の成分の相対量は、処置される対象の固有性、サイズ、及び/または状態に応じて、ならびに更に組成物が投与される経路に応じて変動することになる。例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0365】
医薬組成物は、本明細書で使用される場合、所望の特定の剤形に好適となるように、あらゆる全ての溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、滑沢剤などを含む薬学的に許容される賦形剤を追加的に含み得る。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro(Lippincott,Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2006)は、医薬組成物の製剤化において使用される様々な賦形剤及びそれを調製するための公知の技術を開示している。任意の従来の賦形剤媒体が、任意の望ましくない生物学的作用をもたらす、またはそうでなければ医薬組成物の任意の他の成分(複数可)と有害な形で相互作用することなどにより、物質またはその誘導体と不適合である場合を除き、その使用は、本開示の範囲内であることが企図される。
【0366】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%純粋である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、ヒトにおける使用のために及び獣医学的使用のために承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は、医薬品グレードである。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/または国際薬局方の基準を満たす。
【0367】
医薬組成物の製造において使用される薬学的に許容される賦形剤には、不活性希釈剤、分散剤及び/または造粒剤、表面活性剤及び/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、滑沢剤、及び/または油が含まれるがこれらに限定されない。そのような賦形剤は、医薬製剤に任意選択で含まれ得る。賦形剤、例えば、カカオ脂及び坐剤ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、及び/または芳香剤は、製剤者の判断に従って、組成物に存在し得る。
【0368】
いくつかの実施形態では、提供される医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤(例えば、防腐剤、不活性希釈剤、分散剤、表面活性剤及び/または乳化剤、緩衝剤など)を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の防腐剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、防腐剤を含まない。
【0369】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、冷蔵及び/または冷凍可能な形態で提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、冷蔵及び/または冷凍不可の形態で提供される。いくつかの実施形態では、再構成された溶液及び/または液体剤形は、再構成後に所定期間(例えば、2時間、12時間、24時間、2日、5日、7日、10日、2週間、1ヶ月、2ヶ月、またはそれ以上)保存され得る。いくつかの実施形態では、特定の時間よりも長い間の抗体組成物の保存は、抗体分解をもたらす。
【0370】
液体剤形及び/または再構成された溶液は、投与前に粒子状物質及び/または変色を含み得る。いくつかの実施形態では、溶液は、変色及び/または混濁している場合、及び/または粒子状物質が濾過後に残留する場合、使用されるべきではない。
【0371】
医薬物質の製剤化及び/または製造における一般的考慮事項は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005(参照により本明細書に組み込まれる)で見ることができる。
【0372】
キット
本開示は、本明細書に記載の方法によって得られた、少なくともタンパク質(単一または複合体(例えば、抗体またはそのフラグメント))が充填された1つ以上の容器を含むパックまたはキットを更に提供する。キットは、任意の適用可能な方法(例えば、研究方法)において使用され得る。そのような容器(複数可)には、医薬品または生物製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式の文書を任意選択で添付してもよく、文書は、(a)ヒト投与のための製造、使用または販売に関する当局による承認、(b)使用に関する指示、及び/または(c)材料及び/または生物製品(例えば、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト細胞)を2つ以上の実体及びこれらの組み合わせの間で移送することを管理する契約を示すものである。
【0373】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって得られたアミノ酸(例えば、抗体またはそのフラグメント)を含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって得られた抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸(例えば、抗体またはそのフラグメントをコードする核酸)を含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって同定された配列(アミノ酸配列及び/または核酸配列)を含むキットが提供される。
【0374】
いくつかの実施形態では、治療または診断のための薬物(例えば、抗体またはそのフラグメント)の製造及び/または開発において使用するための本明細書に記載されるキットが提供される。
【0375】
いくつかの実施形態では、疾患、障害または状態の処置、予防または緩和のための薬物(例えば、抗体またはそのフラグメント)の製造及び/または開発において使用するための本明細書に記載されるキットが提供される。
【0376】
特定の実施形態の他の特質は、以下の例示的な実施形態の説明の過程において明らかになるであろう。これらは例示のために提供されるものであり、特定の実施形態の他の特質を限定することを意図するものではない。
【0377】
本発明を、多数の実施形態を参照して具体的に示し、説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される様々な実施形態に対して形態及び詳細の変更がなされ得ること、また本明細書に開示される様々な実施形態が、特許請求の範囲を制限するように機能することを意図するものではないことが、当業者によって理解されるであろう。
【0378】
例示的な実施形態
実施形態1.特定の抗原で免疫された宿主から、当該抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRを得る方法であって、(i)免疫された宿主からの第1の試料から、複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸を得て、コードされた複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を決定することと;(ii)抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得て、そこから抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することと;(iii)第1の試料からのコードされた複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を、第2の試料からの抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列と照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列を得ることと、を含み;この宿主が、遺伝子改変非ヒト哺乳動物であって、そのゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物である、方法。
【0379】
実施形態2.宿主が、げっ歯類である、実施形態1に記載の方法。
【0380】
実施形態3.宿主が、ラットである、実施形態2に記載の方法。
【0381】
実施形態4.宿主が、マウスである、実施形態2に記載の方法。
【0382】
実施形態5.第1の試料が、B細胞の集団を含む、実施形態1に記載の方法。
【0383】
実施形態6.第1の試料が、骨髄試料及び/または脾臓試料である、実施形態5に記載の方法。
【0384】
実施形態7.第1の試料から複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得ることが、核酸配列からcDNAを調製して、第1の試料中の再編成された重鎖VDJ配列及び/または再編成された軽鎖VJ配列をシーケンシングすることを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0385】
実施形態8.第1の試料から複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸を得ることが、DNAシーケンシング技術を使用して決定される、実施形態7に記載の方法。
【0386】
実施形態9.DNAシーケンシング技術が、次世代DNAシーケンシングである、実施形態8に記載の方法。
【0387】
実施形態10.第2の試料が、血清、血漿、リンパ器官、腸、脳脊髄液、脳、脊髄、または胎盤からなる群から選択される、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0388】
実施形態11.第2の試料からペプチド配列を決定することが、第2の試料中の抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインの質量分析解析を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0389】
実施形態12.質量分析解析が、液体クロマトグラフィーと質量分析とを組み合わせたもの(LC-MS)である、実施形態11に記載の方法。
【0390】
実施形態13.質量分析解析の前に、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのタンパク質分解消化を更に含む、実施形態11または12に記載の方法。
【0391】
実施形態14.特定の抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得ることが、特定の抗原を対象としない抗体を第2の試料から枯渇させることを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0392】
実施形態15.特定の抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得ることが、特定の抗原を対象とする抗体について第2の試料を濃縮することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0393】
実施形態16.第1の試料からの複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を、第2の試料からの抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列と照合することが、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を互いに、及び複数の免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列と、アラインメントすることを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0394】
実施形態17.抗原に特異的な抗体のヒト可変ドメインのヌクレオチド配列を得ることを更に含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0395】
実施形態18.ヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする得られたヌクレオチド配列を、第2の組換え抗体中で発現させることを更に含む、実施形態17に記載の方法。
【0396】
実施形態19.ヒト可変ドメインをコードするヌクレオチド配列が、ヒト免疫グロブリン定常領域と作動可能に連結されて細胞株中で発現される、実施形態18に記載の方法。
【0397】
実施形態20.ヒト可変ドメインが、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域と作動可能に連結されて発現されヒト免疫グロブリン重鎖を生成するヒト重鎖可変ドメインである、実施形態19に記載の方法。
【0398】
実施形態21.ヒト免疫グロブリン重鎖が、ヒト免疫グロブリン軽鎖とともに細胞株中で発現される、実施形態20に記載の方法。
【0399】
実施形態22.ヒト可変ドメインが、ヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域と作動可能に連結されて発現されヒト免疫グロブリン軽鎖を生成するヒト軽鎖可変ドメインである、実施形態19に記載の方法。
【0400】
実施形態23.ヒト免疫グロブリン軽鎖が、ヒト免疫グロブリン重鎖とともに細胞株中で発現される、実施形態22に記載の方法。
【0401】
実施形態24.第2の抗体が、完全ヒト抗体である、実施形態18~23のいずれか1つに記載の方法。
【0402】
実施形態25.第2の抗体が、二重特異性抗体である、実施形態18~24のいずれか1つに記載の方法。
【0403】
実施形態26.第2の抗体を精製し、特定の抗原に対する精製された第2の抗体の親和性及び/または特異性を決定することを更に含む、実施形態18~25のいずれか1つに記載の方法。
【0404】
実施形態27.宿主が、遺伝子改変マウスであって、そのゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変マウスである、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0405】
実施形態28.免疫グロブリン重鎖可変領域が、マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されている、及び/または免疫グロブリン軽鎖可変領域が、マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されている、実施形態27に記載の方法。
【0406】
実施形態29.マウス重鎖定常領域に作動可能に連結された免疫グロブリン重鎖可変領域が、内因性マウス重鎖遺伝子座にある、及び/またはマウス軽鎖定常領域に作動可能に連結された免疫グロブリン軽鎖可変領域が、内因性マウス軽鎖遺伝子座にある、実施形態28に記載の方法。
【0407】
実施形態30.宿主が、遺伝子改変マウスであって、そのゲノム(その生殖細胞系列ゲノムを含む)に、複数のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、複数のヒトD遺伝子セグメントと、複数のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域がネズミ科重鎖定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、ネズミ科軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、厳密に2つの非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントと、5つの非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含み、この厳密に2つの非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントが、ヒトVκ1-39遺伝子セグメント及びヒトVκ3-20遺伝子セグメントである、遺伝子改変マウスである、実施形態27~29のいずれか1つに記載の方法。
【0408】
実施形態31.宿主が、遺伝子改変マウスであって、そのゲノムが、(a)内因性重鎖遺伝子座に、(i)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、複数の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、複数の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、複数の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;(ii)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、単一のヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む制限された非再編成重鎖可変領域;(iii)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結された単一の再編成されたヒト重鎖可変領域を含むユニバーサル重鎖コード配列;(iv)マウス重鎖定常領域に作動可能に連結されており、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含み、非ヒスチジン残基に対する少なくとも1つのヒスチジンの置換もしくは挿入を更に含む、ヒスチジン改変非再編成重鎖可変領域;(v)重鎖定常領域(非IgM遺伝子、例えばIgG遺伝子が機能的CH1ドメインをコードする配列を欠いている)に作動可能に連結されており、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む重鎖のみの免疫グロブリンをコードする配列;もしくは(vi)マウス免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子に作動可能に連結されており、1つ以上の非再編成ヒトV遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJ遺伝子セグメントと、を含む操作された内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含み;及び/または(b)内因性軽鎖遺伝子座に、(i)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、複数の非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントと、複数の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域;(ii)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結された単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域を含むユニバーサル軽鎖コード配列;(iii)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、2つの非再編成ヒトVκ遺伝子セグメントと、1つ以上の非再編成ヒトJκ遺伝子セグメントと、を含む制限された軽鎖可変領域;もしくは(iv)マウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されており、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含み、非ヒスチジン残基に対する少なくとも1つのヒスチジンの置換もしくは挿入を更に含む、ヒスチジン改変軽鎖可変領域を含む、遺伝子改変マウスである、実施形態27に記載の方法。
【0409】
実施形態32.遺伝子改変マウスが、機能的ADAM6遺伝子を更に含み、任意選択で、機能的ADAM6遺伝子が、マウスADAM6遺伝子である、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0410】
実施形態33.遺伝子改変マウスが、外因性末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)遺伝子を更に発現する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0411】
実施形態34.特定の抗原で免疫された宿主から、当該抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDRを得る方法であって、免疫された宿主からの第1の試料から、複数の免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする複数の核酸を得て、コードされた複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を決定することと、特定の抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得て、そこから抗体集団のヒト重鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することと、複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインのアミノ酸配列を、抗体集団のヒト重鎖可変ドメインのペプチド配列と照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDRを得ることと、を含み;この宿主が、遺伝子改変マウスであって、そのゲノム(その生殖細胞系列ゲノムを含む)に、複数のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、複数のヒトD遺伝子セグメントと、複数のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域がネズミ科定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、単一のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、単一のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域である免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、ヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域が、ネズミ科軽鎖定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変マウスである、方法。
【0412】
実施形態35.単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域が、単一のヒト軽鎖Vκ遺伝子セグメントと、単一のヒト軽鎖Jκ遺伝子セグメントと、を含む単一の再編成されたヒトカッパ軽鎖可変領域である、実施形態34に記載の方法。
【0413】
実施形態36.単一のヒト軽鎖Vκ遺伝子セグメントが、Vκ1-39またはVκ3-20遺伝子セグメントであり、単一のヒト軽鎖Jκ遺伝子セグメントが、Jκ1またはJκ5遺伝子セグメントである、実施形態35に記載の方法。
【0414】
実施形態37.ネズミ科軽鎖定常領域が、マウスカッパ軽鎖定常領域である、実施形態35に記載の方法。
【0415】
実施形態38.単一の再編成されたヒト軽鎖可変領域が、内因性マウスカッパ軽鎖遺伝子座にあるマウス軽鎖定常領域に作動可能に連結されている、実施形態35に記載の方法。
【0416】
実施形態39.遺伝子改変マウスが、機能的ADAM6遺伝子を更に含み、任意選択で、機能的ADAM6遺伝子が、マウスADAM6遺伝子である、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
【0417】
実施形態40.第1の試料が、B細胞の集団を含む、実施形態39に記載の方法。
【0418】
実施形態41.第1の試料が、骨髄試料及び/または脾臓試料である、実施形態40に記載の方法。
【0419】
実施形態42.第1の試料から複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得ることが、核酸配列からcDNAを調製して、第1の試料中の再編成された重鎖VDJ配列をシーケンシングすることを含む、実施形態34~41のいずれか1つに記載の方法。
【0420】
実施形態43.第1の試料から複数の免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列を得ることが、DNAシーケンシング技術を使用して決定される、実施形態42に記載の方法。
【0421】
実施形態44.DNAシーケンシング技術が、次世代DNAシーケンシングである、実施形態43に記載の方法。
【0422】
実施形態45.第2の試料が、血清、血漿、リンパ器官、腸、脳脊髄液、脳、脊髄、または胎盤からなる群から選択される、実施形態34~44のいずれか1つに記載の方法。
【0423】
実施形態46.第2の試料からペプチド配列を決定することが、第2の試料中の抗体集団の重鎖可変ドメインの質量分析解析を含む、実施形態34~45のいずれか1つに記載の方法。
【0424】
実施形態47.質量分析解析が、液体クロマトグラフィーと質量分析とを組み合わせたもの(LC-MS)である、実施形態46に記載の方法。
【0425】
実施形態48.質量分析解析の前に、抗体集団の重鎖可変ドメインのタンパク質分解消化を更に含む、実施形態46または47に記載の方法。
【0426】
実施形態49.特定の抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得ることが、特定の抗原を対象としない抗体を第2の試料から枯渇させることを含む、実施形態34~48のいずれか1つに記載の方法。
【0427】
実施形態50.特定の抗原を対象とする抗体集団を含む第2の試料を免疫された宿主から得ることが、特定の抗原を対象とする抗体について第2の試料を濃縮することを含む、実施形態34~49のいずれか1つに記載の方法。
【0428】
実施形態51.複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインのアミノ酸配列を抗体集団のヒト重鎖可変ドメインのペプチド配列と照合することが、抗体集団のヒト重鎖可変ドメインのペプチド配列を互いに、及び複数のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインのアミノ酸配列と、アラインメントすることを含む、実施形態34~50のいずれか1つに記載の方法。
【0429】
実施形態52.抗原に特異的な抗体のヒト重鎖可変ドメインのヌクレオチド配列を得ることを更に含む、実施形態34~51のいずれか1つに記載の方法。
【0430】
実施形態53.ヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする得られたヌクレオチド配列を第2の組換え抗体中で発現させることを更に含む、実施形態52に記載の方法。
【0431】
実施形態54.ヒト重鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列が、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域と作動可能に連結されて細胞株中で発現され、ヒト免疫グロブリン重鎖を生成する、実施形態53に記載の方法。
【0432】
実施形態55.ヒト免疫グロブリン重鎖が、ヒト免疫グロブリン軽鎖とともに細胞株中で発現される、実施形態54に記載の方法。
【0433】
実施形態56.ヒト免疫グロブリン軽鎖が、マウスに存在するものと同じ単一の再編成された可変領域配列、またはその体細胞変異バージョンに由来する、実施形態55に記載の方法。
【0434】
実施形態57.第2の抗体が、ヒト抗体である、実施形態53~56のいずれか1つに記載の方法。
【0435】
実施形態58.第2の抗体が、二重特異性抗体である、実施形態53~57のいずれか1つに記載の方法。
【0436】
実施形態59.第2の抗体を精製し、特定の抗原に対する精製された第2の抗体の親和性及び/または特異性を決定することを更に含む、実施形態53~58のいずれか1つに記載の方法。
【0437】
実施形態60.抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインまたはCDRを得ることが、(1)第2の試料から得られたユニークなペプチドの、第1の試料から得られたアミノ酸配列中のCDR3配列との一致、(2)第2の試料から得られたユニークなペプチドの、第1の試料から得られたアミノ酸配列中のCDR1及び/またはCDR2配列との一致、(3)第2の試料から得られた1つ以上のユニークなペプチドと、第1の試料から得られたアミノ酸配列中の1つ以上のフレームワーク配列との一致、(4)次世代シーケンシングのカウント数、(5)メチオニンを有するCDR配列の除外、ならびに(6)Nグリコシル化の可能性のあるCDR配列の除外、のうちの1つ以上に基づく、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0438】
実施形態61.抗原に特異的な抗体の免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRを得る方法であって、抗原を対象とする抗体集団を含む試料をその抗原で免疫された宿主から得て、抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定することと、試料からの抗体集団の重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのペプチド配列を、複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインを含むアミノ酸配列のライブラリと照合し、それにより、その抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDR配列を得ることと、を含み;この免疫された宿主が、遺伝子改変非ヒト哺乳動物であって、その生殖細胞系列ゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物である、方法。
【0439】
実施形態62.複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインを含むアミノ酸配列のライブラリが、抗原で免疫された宿主から得られた複数の核酸配列によってコードされ、この免疫された宿主が、遺伝子改変非ヒト哺乳動物であって、その生殖細胞系列ゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む、遺伝子改変非ヒト哺乳動物である、実施形態61に記載の方法。
【0440】
実施形態63.試料が、血清、血漿、リンパ器官、腸、脳脊髄液、脳、脊髄、または胎盤からなる群から選択される、実施形態61~62に記載の方法。
【0441】
実施形態64.複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインを含むアミノ酸配列のライブラリが、骨髄及び/または脾臓試料であるB細胞試料から得られた複数の核酸によってコードされる、実施形態62~63に記載の方法。
【0442】
実施形態65.特定の抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRを同定するための方法であって、当該抗原で免疫された動物によって産生された複数のヒト免疫グロブリン可変ドメインをコードする複数の核酸配列によってコードされた複数のアミノ酸配列を、その抗原を対象とする抗体集団から産生された軽鎖及び/または重鎖可変ドメインからのペプチドフラグメントを含むアミノ酸配列と比較することと;それにより、当該抗原に特異的な抗体のヒト免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRを同定することと、を含み、当該宿主が、遺伝子改変非ヒト哺乳動物であって、そのゲノムに、1つ以上のヒト重鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒトD遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト重鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン重鎖可変領域であって、重鎖可変領域が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変領域と、1つ以上のヒト軽鎖V遺伝子セグメントと、1つ以上のヒト軽鎖J遺伝子セグメントと、を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域であって、軽鎖が定常領域に作動可能に連結されている免疫グロブリン軽鎖可変領域と、を含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物である、方法。
【0443】
実施形態66.複数の核酸及びペプチドフラグメントが、抗原で免疫された動物から得られる、実施形態65に記載の方法。
【実施例
【0444】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって更に説明される。これらの実施例は、本発明の理解を助けるために記載されるが、本発明の範囲をいかようにも制限することを意図せず、またそのように解釈されるべきではない。実施例は、当業者に周知であろう従来の方法(分子クローニング技法など)の詳細な説明を含まない。別途示されていない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏で示される。当業者は、ステップの順序が必ずしも絶対的なものではなく、特定の実施形態では同じ結果を達成するために変更することができることを理解するであろう。
【0445】
プロセスの例示的な概要を本明細書の図1に示す。簡潔に述べると、また以下の実施例に記載の通り、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)を目的の抗原(例えば、CD22-Fc融合タンパク質など)で免疫し、抗抗原力価を評価する。採血で高い抗抗原力価を示す動物を屠殺し、骨髄及び/または脾臓を得て、B細胞を精製し、次世代シーケンシング(NGS)によって処理して、免疫グロブリン配列(例えば、可変ドメイン配列、例えば重鎖可変ドメイン配列)のデータベースを生成する。血清(または代替の所望の試料)も同じ屠殺動物から得て、抗原特異的抗体について濃縮する(以下の例示的な実施形態では、抗Fc力価を枯渇させ、抗CD22力価について濃縮する)。抗原について濃縮した抗体を、ペプチドへと酵素的に消化して、これらのペプチドを質量分析によってシーケンシングする。消化したペプチド配列を、生成したNGSデータベースに対して検索し、目的の抗原に対して特異的な抗体の可変ドメイン配列(例えば、重鎖可変ドメイン配列)を決定する。
【0446】
実施例1.ユニバーサル軽鎖マウスの免疫
免疫
カッパユニバーサル軽鎖(κULC)マウス(マウスCκに作動可能に連結された単一の再編成されたヒトVk1-39Jκ5またはVk3-20Jκ1のいずれかを含み、また、マウス重鎖定常領域に作動可能に連結された複数のヒト重鎖V、D、及びJ遺伝子セグメントも含むマウス;それぞれULC1-39またはULC3-20と称されるマウス)を、ヒトCD22.Fcキメラ(hCD22.hFc)免疫原で免疫した。カッパユニバーサル軽鎖マウスは、以前に、例えば米国特許第10,130,081号、同第10,143,186号、及びUS2019/0090462に記載されており、これらはその全体が本明細書に組み込まれる。免疫開始前に、マウスから免疫前血清を収集した。標準的なアジュバント及び免疫プロトコルを使用して、マウスを様々な時間間隔で追加免疫した。マウスから定期的に採血し、抗血清力価をそれぞれの抗原についてアッセイした。
【0447】
抗血清力価の決定
タンパク質で:
免疫原に対する血清中の抗体力価を、ELISAを使用してタンパク質で決定した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Irvine Scientific)中のhCD22またはヒトFcタンパク質各2μg/mlで、96ウェルマイクロタイタープレート(Thermo Scientific)を4℃で一晩コーティングした。0.05% Tween20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS-T、Sigma-Aldrich)でプレートを洗浄し、PBS中の0.5%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich)300μlで1時間、室温でブロッキングした。免疫前抗血清及び免疫抗血清を0.5% BSA-PBSで3倍に段階希釈し、室温で1時間、プレートに添加した。プレートを洗浄し、ヤギ抗マウスIgG-Fc-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート二次抗体(Jackson Immunoresearch)をプレートに添加して、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、製造業者の推奨手順に従ってTMB/Hを基質として使用して展開し、分光光度計(Victor、Perkin Elmer)を使用して450nmでの吸光度を記録した。Graphpad PRISMソフトウェアを使用して抗体力価を算出し、抗体力価を結合シグナルがバックグラウンドの2倍である補間血清希釈係数として定義した。
【0448】
細胞で:
免疫原に対する血清中の抗体力価を、Meso Scale Discovery(MSD)細胞結合ELISAを使用して細胞で決定した。PBS中の40,000細胞/ウェルのRaji及びJurkat細胞で、96ウェルのカーボン表面プレートを37℃で1時間コーティングした。細胞コーティング溶液をデカントし、プレートをPBS中の2%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich)150μLで1時間、室温(RT)でブロッキングした。プレート洗浄機(Molecular DevicesのAquaMax(登録商標)2000)を使用して、プレートをPBSで3回洗浄した。免疫前抗血清及び免疫抗血清を1% BSA-PBSで3倍に段階希釈し、室温で1時間プレートに添加した。プレートを洗浄し、次いでヤギ抗マウスIgG-Fcルテニウムコンジュゲート二次抗体をプレートに1μg/mLで添加して、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、MSDの4×界面活性剤不含Read Buffer T(1×に希釈)をウェルあたり150μlで添加することにより展開して、MSD SECTOR(商標)イメージャー600機器で読み取った。Graphpad PRISMソフトウェアを使用して抗血清力価を算出し、抗体力価を結合シグナルがバックグラウンドの2倍である補間血清希釈係数として定義した。
【0449】
結果
ULC1-39及びULC3-20マウスにおける体液性免疫応答を、hCD22タンパク質免疫原による免疫後に調査した。血清中の抗体力価を、ELISAを使用してヒトCD22及びヒトFcタンパク質で決定し、MSD細胞結合アッセイを使用してRaji及びJurkat細胞で決定した。マウスの抗血清は、hCD22及びhFcタンパク質に対して高い力価を示した。Raji細胞で特異性の高い力価が誘発された(表1)。抗体力価を、結合シグナルがバックグラウンドの2倍である補間血清希釈係数として定義した。
【表1】
【0450】
次世代シーケンシング(NGS)実験用に、全てのマウスから脾臓及び骨髄を採取した。各マウスからの血清を、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)実験で使用した。
【0451】
実施例2.次世代シーケンシング及び参照抗体データベースの構築
実施例2.1.次世代シーケンシング(NGS)
次世代シーケンシング、またはレパートリーシーケンシングを、マウス骨髄及び脾細胞で実施した。2.5%ウシ胎児血清(FBS)を含有する1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Gibco)で大腿骨をフラッシングすることにより、骨髄をCD22免疫マウスの大腿骨から収集した。単一細胞懸濁液をマウス脾臓から調製した。脾臓及び骨髄調製物からの赤血球をACK溶解緩衝液(Gibco)で溶解した。抗CD19(マウス、B細胞用マーカー)磁気ビーズ及びMACS(登録商標)カラム(Miltenyi Biotech)を使用して、磁気細胞選別によって全脾細胞から脾臓B細胞を陽性濃縮した。レパートリーシーケンシング用に、各マウス組織を4つの複製に処理した。製造業者の指示書に従ってRNeasy Plus RNA単離キット(Qiagen)を使用して、骨髄及び精製脾臓B細胞から全RNAを単離した。
【0452】
SMARTer(商標)RACE cDNA増幅キット(Clontech)及びオリゴdTプライマーを使用して逆転写を実施して、IgG定常領域配列を含有するヒト重鎖cDNAを生成した。逆転写の間、テンプレートスイッチング(TS)プライマーの逆相補体であるDNA配列を、新たに合成されたcDNAの3’末端に付着させた。精製したcDNAを2ラウンドのセミネステッドPCRによって増幅して、mRNAを得た細胞によって発現した全IgG可変ドメイン相補体をコードする複数のcDNAを生成し、続いて3ラウンド目のPCRを行ってシーケンシングプライマー及びインデックスを付着させた。IgGレパートリーライブラリの構築に使用した例示的なプライマーを表2に示す。
【表2】
【0453】
ヒト可変ドメインcDNAを、Pippin Prep(SAGE Science)を使用して400~700bpでサイズ選択し、KAPAライブラリ定量キット(KAPA Biosystems)を使用してqPCRによって定量してから、試料を2×300サイクルのシーケンシングのためにMiSeqシーケンサー(Illumina)にロードした。
【0454】
実施例2.2.抗体参照データベースの構築
マウス特異的タンパク質配列データベースを、ULCマウスの可変多様性接合(VDJ)領域配列を使用して構築し、各マウス試料の組織ごとに分類した。NGSにより得たVDJ配列データを、まず逆マルチプレックス化して、品質、長さ、及びIgG定常領域プライマーとの完全な一致に基づいてフィルタリングした。重複するペアエンドリードをマージし、公開されているIgBLAST(NCBI、v2.2.25+)のローカルインストールを使用して解析し、再編成された重鎖配列をヒト生殖細胞系列V及びJ遺伝子データベースに対してアラインメントした。International Immunogenetics Information System(IMGT)境界を使用して、CDR3配列を抽出した。IMGTクローン型(AA)を、保存されたCDR3-IMGTアンカー(システインC104、トリプトファンW118、またはフェニルアラニンF118)、及びユニークなCDR3-IMGT AA接合配列を有する、ユニークなV-(D)-J再編成として定義した。各タンパク質配列及びHCDR3の出現頻度を計算した。MSによる抗体同定に使用した参照配列データベースの構築では、シーケンシングエラーの影響を低減させるために、単一リード配列を除外した。
【0455】
追加のフィルタを適用して、終止コドン及びアウトオブフレーム再編成を有する非生産的配列を除去した。フレームワーク領域の不完全なアラインメントを含有するトランケートされた配列も、データベースの作成中に除去した。
【0456】
骨髄及び脾臓試料から合計6,452,901リードを得た。
【0457】
VDJコード配列をアミノ酸配列に基づいてまとめ、合計927,191のユニークな完全長インフレームVDJ遺伝子を参照配列データベースの構築に使用した。CD22免疫ULCマウスの全組織の結果を使用して、血清由来抗体から同定した可変ドメインペプチドによる照合が可能なデータベースを構築した。
【0458】
遺伝子使用及び血清IgGレパートリーを構成する抗体クローン型を、CD22で免疫したULCマウスで描写した。多様な重鎖可変遺伝子セグメント(IGHV;図2A)及び重鎖接合遺伝子セグメント(IGHJ:図2B)の使用を、脾臓及び骨髄で確認した。脾臓及び骨髄試料で検出された個別のHCDR3配列の数を表3に要約する。個別のヒトCDR3配列の数は、リード数の増加に伴って増加した(データは示さず)。


【表3】
【0459】
異なるマウス間で観察された、公開されているHCDR3アミノ酸配列の数は限られていた。複数のマウスの同じ組織内で観察されたHCDR3配列は2%を構成していた(図3A)。HCDR3アミノ酸配列の10~14%が、同じマウスの骨髄試料と脾臓試料間で共有されていることが判明した(図3B)。ハイスループットシーケンシングパイプラインによって生成したマウス特異的参照配列データベースを使用して、プロテオミクス解析を通じて得たペプチド質量スペクトルを解釈した(図1を参照されたい)。
【0460】
実施例3.抗hFc及び抗hCD22のアフィニティー捕捉による所望の特徴を有する抗体の例示的な濃縮
実施例3.1.血清の抗hFc枯渇
全てのULCマウスの血清には、hCD22及びhFcに対する抗体力価が含まれていた。連続的アフィニティー捕捉ステップを適用し、抗hFc抗体及び抗hCD22抗体をそれぞれ単離した(図1)。免疫したULCマウスの血清試料をPBSで最終容量1mLに希釈し、hFcコンジュゲートアガロースカラムに通して、試料から抗Fc抗体を枯渇させた。PBS(1mL)をカラムに添加し、フロースルーを合わせ、300ダルトン(分子量)カットオフフィルタを使用して最終容量100μLまで濃縮した。抗hFc枯渇血清のフロースルーは、抗CD22の濃縮用に下流で使用した。アガロースカラムを1mLの20mM Tris-HCl、pH8.0で3回、1mLのddH2Oで1回洗浄した。結合した抗hFc抗体を2mLの300mM酢酸で溶出した。抗hFc抗体溶離液をSpeedvacで乾燥させ、タンパク質をSDSゲルにより分離し、タンパク質をLC-MS解析用に調製した(抗Fc抗体の後続のデータは示さず)。
【0461】
実施例3.2.抗CD22抗体の単離
抗hFc枯渇血清試料から抗CD22抗体を単離した。ビオチン化ヒトCD22細胞外ドメインポリペプチド(100μg/mL)をストレプトアビジン常磁性ビーズ(100μL)に固定し、96ディープウェルプレートで抗Fc枯渇血清とともに室温で2時間インキュベートした。常磁性ビーズを、HBS-SPを含む3×600μL、1x600μLの水、及び1×600μLの10%アセトニトリルで洗浄した。抗hCD22抗体を、ストレプトアビジンビーズを30%アセトニトリル/70%水中の1%ギ酸70μLとともに室温で15分間インキュベートすることにより溶出させた。次に、各試料をエッペンドルフチューブに移し、LC-MS解析の前に完全に乾燥させた。
【0462】
実施例4.液体クロマトグラフィー-質量分析及びデータベース検索
実施例4.1.液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)
抗hFc抗体及び抗hCD22抗体をそれぞれ個々に、37℃で1時間、20mM Tris-HCl(pH8.0)中の10μLの8M尿素及び20mMのTCEPに溶解させた。次に、変性及び還元させた試料を5mMヨードアセトアミドで30分間アルキル化し、続いて37℃で一晩、トリプシン(w/v=1:20)で消化した。トリプシンペプチドを、Q Exactive質量分析計に接続されたnano-LC1200高速液体クロマトグラフィーによって解析した。ペプチドを、まず75μm×2cmのC18トラップカラムに流量4μL/分でトラップし、続いて75μm×25cmのC18カラムを使用して40℃、250nL/分で次の勾配:5%~30%アセトニトリルで157分、30%~40%のアセトニトリルで15分、40%~90%のアセトニトリルで2分間、及び90%のACNで15分間、で分離した。質量スペクトルは、次のパラメータを使用して正モードで取得した:MS1分解能:70,000;MS1ターゲット:1E6;最大注入時間:100ms;スキャン範囲:350~1,800m/z;MS/MS分解能:17,500;MS/MSターゲット:2e5;上位N:10;単離ウィンドウ:2Th;チャージエクスクルージョン:1、>5;ダイナミックエクスクルージョン:30秒。
【0463】
実施例4.2.データベース検索
各免疫ULCマウス血清試料から取得したLC-MSデータを、Protein Metrics製のByonic(商標)検索エンジンを使用して、NGSシーケンシングによって生成した対応するデータベースに対して検索した。検索パラメータは次の通りであった:切断部位:リジンまたはアルギニン;切断部位:C末端;消化特異性:完全に特異的;ミスクリベージ:2;前駆体質量許容差:10ppm;フラグメント化タイプ:HCD;フラグメント質量許容差:20ppm;固定修飾:システインにおけるカルバミドメチル。上位200件のヒットをシーケンスカバレッジ及びペプチド信頼度に基づいてランク付けし、手作業でチェックした。
【0464】
実施例5.抗体配列の選択
一致したCDR3ペプチド全てのスペクトル品質について、上位200件の配列ヒットを手作業でチェックし、フラグメントイオンの大半が、割り当てられたペプチド配列によって解釈可能であることを確認した。抗体配列を確実に同定するには、スペクトル品質が良好である1つ以上のユニークなCDR3ペプチドが必要であった。配列をCDR3データベースにマッピングし、CDR3に基づいて分類した。次のパラメータに基づいてクローニング用の抗体を選択した:1)ユニークなCDR3ペプチドの厳密な一致;2)ユニークなCDR1及びCDR2ペプチドの厳密な一致;3)ユニークなフレームワークペプチドの厳密な一致;4)次世代シーケンスのカウント数;5)メチオニンを有する及びNグリコシル化の可能性を有するCDR配列の除外。相同なCDR3配列を含有する抗CD22抗体の群から質量分析スペクトルの一致及びNGSに基づいて抗CD22抗体Bone629(BM_629、mAb14)を選択する例を、図4に示す。手作業でのチェックの結果、発現及びクローニング用に合計50個の抗体を得た。クローニング用に抗体カバレッジのより多様なレパートリーを得るために、ユニバーサル軽鎖マウスの配列をCDR3相同性に基づいて分類した。多様なCDR3群を表す23個の特異的な抗CD22抗体を図5に示す。
【0465】
実施例6.クローニング及びトランスフェクション
hCD22抗体候補(n=23)の可変ドメインヌクレオチド配列を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞発現用にコドン最適化し、gblocks(Integrated DNA Technologies)として合成した。可変ドメインのgblocksを、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域と作動可能に連結させてベクターにクローニングした。Lipofectamine(Thermo Fisher Scientific)を使用してCHO K1細胞の9cmウェルに一過性にトランスフェクションするために、重鎖ベクター(1μg)を、ヒト免疫グロブリンカッパ軽鎖定常領域と作動可能に連結させたULC3-20を含む軽鎖ベクター(1μg)、またはヒト免疫グロブリンカッパ軽鎖定常領域と作動可能に連結させたULC1-39を含む軽鎖ベクター(1μg)のいずれかと対にした。トランスフェクションのおよそ84時間後に上清(500μL)を収集し、濃縮して、濃縮物をBIAcore結合解析に使用した。還元条件下でのウェスタンブロッティングによってトランスフェクション効率を確認した。
【0466】
実施例7.クローン化抗CD22抗体の動力学的結合
実施例7.1.クローン化抗CD22抗体とヒトCD22との相互作用の動力学的結合パラメータ
SPR-Biacore技術を使用して、CD22に対する結合親和性及び特異性について全てのトランスフェクト細胞からの上清を解析した。トランスフェクトしたCHO細胞の上清からの抗体を、シグナルがおよそ165~202相対単位(RU)に達するまで、そのFcγドメインを介してCM5チップ表面上に固定化したヤギ抗ヒトFcγポリクローナル抗体に捕捉することにより、各クローン化抗体へのCD22の結合を25℃、pH7.4で測定し、続いてCD22タンパク質を注入した。濃度範囲が0.313nM~10.0nMの組換えCD22、及び濃度範囲が1.25nM~40.0nMの陰性対照を、流速50μL/分で3分間、抗CD22を捕捉した表面及び参照表面(抗CD22を捕捉していない、抗Fcγが結合したチップ表面)上へと個々に注入し、続いて10分間の(CD22)解離段階を設け、結合シグナルの変化を記録した。10mMグリシン-HCl pH1.5の40秒のパルスを使用して、チップの再生を行った。
【0467】
二重参照手順を使用して、特異的SPR-Biacore動的センサーグラムから動力学的結合パラメータを求めた。二重参照は、実験用表面(Fcγを捕捉した抗CD22表面)上に注入したCD22のシグナルから参照表面(ヤギ抗ヒトFcγ結合表面のみ)上に注入したCD22のシグナルを差し引くことによって行い、これにより屈折率変化の寄与を除去した。更に、動力学的結合パラメータを計算する際に、ヤギ抗ヒトFcγポリクローナル抗体対照緩衝液の注入(CD22なし)からの捕捉した抗CD22の解離に起因するシグナル変化の差異も考慮した。
【0468】
計算した動力学的結合パラメータを表4に要約する。
【表4-1】
【表4-2】
【0469】
上記の表4のデータから明らかなように、CD22の結合について解析した23個の上清のうち、多くは1.0×10-8M未満のKDでヒトCD22に対して高い親和性を示した。これらのうち、11個を抗体精製に供した。11個の精製抗体は全て、ヒトCD22への特異的結合を示したがマウスCD22への特異的結合は示さなかった(データは示さず)。
【0470】
重鎖可変ドメインの、重鎖可変ドメインに対する抗CD22 mAB BM_629の配列相同性のみに基づいて、BiaCore解析用に追加の16個のモノクローナル抗体配列を選択した。16個のモノクローナル抗体全てが、CD22に対する結合特性の大幅な低減または喪失を示した(表5)。このことは、LC-MSスペクトルが抗体の選択に不可欠な情報を提供することを示唆している。
【表5】
【0471】
したがって、本明細書に記載の例示的な方法は、所望の特徴を有する免疫された宿主内の抗体の特定のin vivo供給源(例えば、血清)からの抗体可変ドメイン配列を同定することができる。提供される方法は、遺伝子改変非ヒト動物(例えば、げっ歯類、例えばマウス)から所望の特徴(例えば、高い結合親和性)を有する抗体について、抗体を迅速に同定するための強力な手段を提供する。
【0472】
参照による組み込み
本明細書で述べられる全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、または特許出願が参照によって組み込まれることが具体的かつ個々に示されるかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合には、本明細書中のいかなる定義も含め、本出願が優先される。
【0473】
等価物
当業者であれば、通例の実験を使用するだけで、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の等価物を数多く認識または確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
【配列表】
2023540808000001.app
【国際調査報告】