(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(54)【発明の名称】高純度及び高効率の自然殺害細胞の製造方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20230919BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20230919BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230919BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230919BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N1/00 G
C12N1/00 T
A61K35/17
A61P35/00
A61P31/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540451
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 KR2021012514
(87)【国際公開番号】W WO2022060056
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0118655
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523084916
【氏名又は名称】ティエス バイオ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジャ オク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AC20
4B065BA23
4B065BB19
4B065CA44
4C087AA02
4C087BB64
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZB32
(57)【要約】
本発明は、高純度及び高効率の自然殺害細胞(NK cells)の製造方法に関するものであって、より具体的には、NK細胞の増殖及び活性増進用組成物、及び増殖及び活性が増進したNK細胞の製造方法に関するものである。本発明によるNK細胞の製造技術は、高純度及び高効率のNK細胞を収得することができ、放射線照射された癌細胞を支持細胞として用いる従来技術による限界点を克服することができるので、本発明による方法によって製造されたNK細胞は、高純度及び優れた癌細胞殺傷能力に基づいて癌、自己免疫疾患などの関連疾患の治療分野で有用に用いられうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-2、インターロイキン-12及び抗CD16抗体を有効成分として含む、自然殺害細胞の増殖及び活性増進用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、インターロイキン-15、インターロイキン-18、抗CD3抗体及び抗CD56抗体で構成された群から選択される1種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、自己血清をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(a)ヒトを含む哺乳動物の末梢血液から単核球を分離する段階と、
(b)抗CD3抗体、抗CD16抗体及び抗CD56抗体で構成された群から選択される1種以上がコーティングされた培養フラスコに前記単核球及び培養液を入れた後、5~7日間1次培養する段階と、
(c)前記培養された細胞を回収し、培養液と共に5~7日間2次培養する段階と、を含む自然殺害細胞の製造方法であって、
前記培養液は、インターロイキン-2、インターロイキン-12、インターロイキン-15及びインターロイキン-18で構成された群から選択される1種以上、及び自己血清を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項5】
前記自己血清は、5~15%に添加されることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法によって製造された、自然殺害細胞。
【請求項7】
請求項6に記載の自然殺害細胞を有効成分として含む、ガン治療用細胞治療剤。
【請求項8】
請求項6に記載の自然殺害細胞を有効成分として含む、感染性疾患治療用細胞治療剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、高純度及び高効率の自然殺害細胞(Natural Killer cells;NK cells)の製造方法に係り、より具体的には、NK細胞の増殖及び活性増進用組成物、及び該増殖及び活性が増進したNK細胞の製造方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
癌患者において、抗ガン剤を利用した治療過程には、患者の免疫細胞が減少して免疫機能が低下する副作用がある。したがって、体外で増殖及び活性化させた免疫細胞を患者の体内に移植して減少した免疫細胞の数と機能とを活性化させる治療技術は、従来の抗ガン治療法と並行時に、シナジー効果を期待することができ、既存の抗ガン治療後、残存癌及び微細残存癌に対する除去効果があるために、癌の再発を防止することができる。
【0003】
免疫細胞治療法に用いられている自然殺害細胞(NK cells)は、形態学的に細胞質に大きな顆粒を有する細胞であって、血液内リンパ球の約5~15%を占める。NK細胞は、T細胞やB細胞のようにリンパ球前駆細胞(common lymphoid progenitor)から分化され、腫瘍細胞やウイルスに感染された細胞を除去する役割を行う細胞毒性リンパ球(cytotoxic lymphocyte)である。しかし、NK細胞は、既存のB細胞、T細胞及び樹状細胞(Dendritic cells;DC cells)とは差別的に抗原提示のような活性化過程なしに自ら癌細胞を認識することができ、グランザイム(granzyme)及びパーフォリン(perforin)などの酵素を用いて直接に癌細胞を殺傷することができる。このようなNK細胞の分化と活性での欠陥は、乳癌、黒色腫癌、肺癌など多様な癌腫と関連していることが報告されており、NK細胞の優れた殺傷能力は、固形癌及び感染性疾患の治療及び骨髄や臓器移植に対する拒絶反応の防止のための新たな免疫細胞治療法に応用される。
【0004】
しかし、NK細胞は、前記のような多様な疾患に対する治療剤としての可能性にも拘らず、体内に存在する細胞数が多くなく、細胞治療に効果的に利用するためには、多数のNK細胞を確保することが何よりも重要である。しかし、NK細胞は、正常者の細胞数においても少ないが、特に、癌患者では、NK細胞の数、分化及び機能が低下しており、治療剤への利用のための十分な細胞数の確保が困難であり、試験管内(in vitro)で大量増殖及び培養が容易ではない。
【0005】
このような側面において、NK細胞を実際有用なレベルに増幅及び活性化させるための培養技術についての多様な研究が行われてきた。例えば、従来にIL-2またはその他のサイトカイン及び化合物(chemical)を利用したNK細胞培養技術は、初期に比べて、NK細胞数を飛躍的に増加させることができなかったと報告され、支持細胞を利用した培養技術として放射線照射した癌細胞、MICA、4-1BBL、及びIL-15を発現するように形質転換されたK562細胞などを用いてNK細胞の増殖を効果的に向上させた結果が報告されたが(Tissue Antigens,76(6):p467-475,2010)、このような技術は、いずれも癌細胞を利用したものであって、前記癌細胞が細胞治療剤の製剤に混合される可能性など臨床適用において重要な安全性を保証するのに適していない方法を使用したという点で限界を有する。
【0006】
したがって、このような従来の問題点を克服することができながら十分な癌細胞殺傷能を保持するNK細胞の多量確保のための高純度及び高効率のNK細胞を収得することができる方法が切実に要求される。
【0007】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者らは、前記従来の問題点を克服し、高純度及び高効率のNK細胞を収得することができる最適化されたNK細胞の製造技術を確立するために鋭意研究した結果、血液内NK細胞を活性化及び増殖を目的とする培養を区分する工程を含み、癌細胞などの支持細胞の利用なしにCD抗体及びサイトカインの添加のみで増殖及び活性が著しく増進したNK細胞の製造方法を開発したので、これにより、本発明を完成した。
【0008】
これにより、本発明は、自然殺害細胞(NK細胞)の増殖及び活性増進用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、増殖及び活性が増進した自然殺害細胞(NK細胞)の製造方法を提供することを他の目的とする。
【0010】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、前述した課題に制限されず、言及されていないさらに他の技術的課題は、下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【0011】
〔課題を解決するための手段〕
前記のような本発明の目的を果たすために、本発明は、インターロイキン-2(Interleukin-2)、インターロイキン-12(Interleukin-12)及び抗CD16抗体を有効成分として含む自然殺害細胞の増殖及び活性増進用組成物を提供する。
【0012】
本発明の一具現例として、前記組成物は、インターロイキン-15(Interleukin-15)、インターロイキン-18(Interleukin-18)、抗CD3抗体及び抗CD56抗体で構成された群から選択される1種以上をさらに含むものである。
【0013】
本発明の他の具現例として、前記組成物は、自己血清をさらに含むものである。
【0014】
また、本発明は、(a)ヒトを含む哺乳動物の末梢血液から単核球を分離する段階;(b)抗CD3抗体、抗CD16抗体及び抗CD56抗体で構成された群から選択される1種以上がコーティングされた培養フラスコに前記単核球及び培養液を入れた後、5~7日間1次培養する段階;及び(c)前記培養された細胞を回収し、培養液と共に5~7日間2次培養する段階;を含む自然殺害細胞の製造方法であって、前記培養液は、インターロイキン-2、インターロイキン-12、インターロイキン-15及びインターロイキン-18で構成された群から選択される1種以上、及び自己血清を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0015】
本発明の一具現例として、前記自己血清は、5~15%に添加されるものである。
【0016】
また、本発明は、前記方法によって製造された自然殺害細胞を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記自然殺害細胞を有効成分として含むガン治療用細胞治療剤を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記自然殺害細胞を有効成分として含む感染性疾患治療用細胞治療剤を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記自然殺害細胞を、それを必要とする個体に投与する段階を含む癌または感染性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、癌または感染性疾患の予防または治療用薬剤の製造のための前記自然殺害細胞の用途を提供する。
【0021】
〔発明の効果〕
本発明によるNK細胞の製造技術は、NK細胞の増殖及び活性を著しく向上させて高純度及び高効率のNK細胞を収得することができ、癌細胞を支持細胞として用いる従来技術の限界点を克服することができるので、本発明による方法によって製造されたNK細胞は、高純度及び優れた癌細胞殺傷能力に基づいて癌、感染疾患、自己免疫疾患など多様な関連疾患の治療に有用に用いられうる。
【0022】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕本発明によるNK細胞の製造工程で1次活性化培養及び2次増殖培養後、得られた培養物に対してNK細胞が占める比率を調べるためにFACS分析を実施した結果である。
【0023】
〔
図2〕本発明によるNK細胞の製造工程で1次活性化培養及び2次増殖培養後、得られたNK細胞の癌細胞殺傷率を分析した結果である。
【0024】
〔
図3〕本発明によるNK細胞の製造工程で1次活性化培養及び2次増殖培養過程で活性化されたNK細胞の顕微鏡イメージ写真を示す結果である。
【0025】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明を詳しく説明する。
【0026】
本発明者らは、前記従来のNK細胞の製造技術の限界点を克服し、高純度及び高効率のNK細胞を収得することができる最適化されたNK細胞の製造方法を確立するために鋭意研究した結果、CD抗体及びサイトカインの添加のみで増殖及び活性が増進したNK細胞を製造することができる方法を開発したので、これにより、本発明を完成した。
【0027】
これにより、本発明は、インターロイキン-2、インターロイキン-12及び抗CD16抗体を有効成分として含む自然殺害細胞の増殖及び活性増進用組成物を提供する。
【0028】
本発明で使われる用語、「細胞増殖」は、細胞が一連の細胞分裂段階を経て培養物内細胞の数が増加するか、または分化することを意味する。本発明において、「自然殺害細胞(NK細胞)の増殖」は、NK細胞が細胞分裂段階を経て培養物でNK細胞の数が増加するか、未成熟血液細胞でNK細胞への分化によって細胞数が増加することを意味する。
【0029】
本発明で使われる用語、「自然殺害細胞(NK細胞)の活性増進」は、未成熟状態のNK細胞が成熟したNK細胞になるか、非活性状態のNK細胞が活性化されることにより、培養物内腫瘍細胞やウイルスに感染された細胞を除去する細胞殺傷能を有する細胞の数が増加するか、個別NK細胞が有する細胞殺傷効率が増進することをいずれも含む。
【0030】
本発明において、前記増殖及び活性増進の原料となるNK細胞は、商業的に購入するか、ヒトまたは動物から採取することができ、望ましくは、NK細胞による治療を必要とするヒトから供給されたものである。
【0031】
また、前記NK細胞は、生体内任意の組織供給源から分離されるが、望ましくは、生体から採取された血液中に含まれたものであり、さらに望ましくは、全血、臍帯血、骨髄または末梢血液であり、最も望ましくは、末梢血液から分離される。
【0032】
本発明において、前記組成物は、インターロイキン-15、インターロイキン-18、抗CD3抗体及び抗CD56抗体で構成された群から選択される1種以上をさらに含むものである。
【0033】
本発明で使われるサイトカインは、インターロイキンの種類であって、インターロイキンは、リンパ球や単球及び大食細胞など免疫担当細胞が生産するタンパク質性生物活性物質を総称するものである。本発明において、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)及びインターロイキン-18(IL-18)からなる群から選択されるものであって、特に、IL-2及びIL-12を使用することができ、望ましくは、前記IL-2、IL-12、IL-15及びIL-18をいずれも使用することができる。
【0034】
本発明で使われる「抗CD抗体」は、抗CD16抗体、抗CD3抗体及び抗CD56抗体からなる群から選択されるものであって、特に、抗CD16抗体を利用することができ、望ましくは、前記抗CD16抗体、抗CD3抗体及び抗CD56抗体をいずれも使用することができる。
【0035】
本発明の前記NK細胞の増殖及び活性増進用組成物は、前記インターロイキン及び抗CD抗体以外に、NK細胞の増殖及び活性増進のために自己血清を含めて、他の必須成分またはその他の担体、または補助体をさらに含みうる。
【0036】
本発明の他の様態として、本発明は、(a)ヒトを含む哺乳動物の末梢血液から単核球を分離する段階;(b)抗CD3抗体、抗CD16抗体及び抗CD56抗体で構成された群から選択される1種以上がコーティングされた培養フラスコに前記単核球及び培養液を入れた後、5~7日間1次培養する段階;及び(c)前記培養された細胞を回収し、培養液と共に5~7日間2次培養する段階;を含む自然殺害細胞の製造方法であって、前記培養液は、インターロイキン-2、インターロイキン-12、インターロイキン-15及びインターロイキン-18で構成された群から選択される1種以上、及び自己血清を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0037】
本発明の前記段階(a)で、前記末梢血液単核球(PBMC)は、哺乳動物、望ましくは、ヒトの末梢血液から分離されたものであって、主に、B細胞、T細胞、自然殺害細胞のような免疫細胞、及び好塩球(basophil)、好酸球(eosinophil)、好中球(neutrophil)のような顆粒球などを含む。前記PBMCは、生体から採取された末梢血液から通常の方法によって準備しうる。例えば、本発明では、フィコール(Ficoll)を利用した比重遠心分離法を用いて末梢血液から分離した。
【0038】
また、前記末梢血液単核球は、治療を必要とする個体から得られること、すなわち、自己(autologous)末梢血液単核球である。前記末梢血液単核球が自己由来である場合、増殖したNK細胞集団で一部T細胞が存在するとしても、あらゆる細胞が患者本人由来であるために、T細胞を除去する必要がないという長所がある。
【0039】
本発明の前記段階(b)は、末梢血液単核球内NK細胞を活性化させるための培養段階である。
【0040】
本発明の前記段階(b)で、前記抗CD抗体を培養フラスコにコーティングする方法は、DPBSと前記抗CD3抗体、抗CD16抗体及び抗CD56抗体とを混合したコーティング液を培養フラスコに入れ、均一に分散させた後、37℃で2~6時間、望ましくは、4時間、または冷蔵条件で16~24時間、望ましくは、18時間静置し、以後、洗浄してコーティング液を除去する過程を通じて行われる。
【0041】
前記コーティングされた培養フラスコに段階(a)で分離した単核球及び培養液を入れた後、5~7日間培養することができ、望ましくは、6日間培養することができるが、当業者が所望するNK細胞の収得のために、前記培養日数範囲内で適切に設定することができる。接種細胞数は、T75フラスコを基準に1×106 cells以上の細胞を接種することが望ましい。
【0042】
本発明の具体的な実施例では、前記段階(b)の1次培養進行結果、細胞数の増加、少なくとも87.6%以上の高い細胞生存率を確認し、NK細胞の比率が平均13.9%から47.1%に増加し、活性化培養期間が1日増える場合、NK細胞の比率が平均的に15%増加することを確認した。
【0043】
本発明の前記段階(c)は、NK細胞の数を著しく増加させるための増殖培養段階である。
【0044】
本発明の前記段階(c)は、前記段階(b)を通じて培養された細胞を回収し、段階(b)と同じ組成の培養液を用いて5~7日間培養することで行われ、望ましくは、6日間培養することができるが、当業者が所望するNK細胞の収得のために、前記培養日数範囲内で適切に設定することができる。
【0045】
本発明の具体的な実施例では、前記段階(c)の2次培養進行結果、収得された約3×109個細胞のうち、NK細胞が94.42%の非常に高い比率を占め、93.2%の高い生存率を示すことを確認し、胸腺腫細胞株であるK562細胞に対して平均70%の癌細胞殺傷率を示すことを確認した。
【0046】
前記段階(b)及び段階(c)で、培養条件は、通常の細胞培養条件、すなわち、約37℃、CO2培養器で行われる。培養容器は、本発明で培養フラスコ、より望ましくは、T75フラスコを利用したが、商業的に利用可能な培養ディッシュ、フラスコ、プレート、マルチウェルプレート、培養バッグで当業者が適切に選択して適用することができる。
【0047】
本発明において、NK細胞の製造のために培養液に添加される基本培地としては、RPMI1640培地、CellGro培地、AIM-V培地及びXVIVO 20のような当該技術分野で通用される動物細胞培養用培地を利用することができ、本発明では、RPMI1640培地を利用したが、培地の種類は、当業者が適切に選択して応用することができる。また、前記培養用培地には、必要に応じて前記記載された添加物質の以外に、NK細胞の増殖及び培養に必要なその他の成分がさらに含まれる。
【0048】
本発明において、前記培養液にさらに添加される自己血清は、5~15%に添加されるものであり、望ましくは、7~12v/v%、さらに望ましくは、9~11v/v%、最も望ましくは、10v/v%に添加される。
【0049】
本発明は、実施例を通じてPBMCと比較して、前記NK細胞の製造方法を通じて高純度及び高効率のNK細胞を収得することができるということを具体的に立証した。
【0050】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、前記方法によって製造された自然殺害細胞を提供する。
【0051】
また、本発明は、前記自然殺害細胞を有効成分として含むガン治療用細胞治療剤を提供する。
【0052】
前記癌は、固形癌及び血液癌を含むあらゆる種類の癌を含みうる。固形癌とは、血液癌とは異なって、臓器で塊を成して形成された癌を意味し、ほとんどの臓器で発生する癌がこれに該当する。本発明によるNK細胞を用いて治療可能な癌腫には、特別な制限はなく、胃癌、肝癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌、子宮頸部癌、甲状腺癌、喉頭癌、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経母細胞腫、網膜母細胞腫、頭頸部癌、唾液腺癌、リンパ腫などを含む。
【0053】
また、本発明は、前記自然殺害細胞を有効成分として含む感染性疾患治療用細胞治療剤を提供する。
【0054】
前記感染性疾患は、ウイルスまたは病原菌の感染によって発生する疾患であって、呼吸器及び血液、皮膚接触などを通じて伝染して感染される疾患をいずれも含む概念である。
【0055】
このような感染性疾患の非制限的な例として、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus;HPV)感染、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)感染、ウイルス性呼吸器疾患及びインフルエンザなどが含まれる。
【0056】
用語「治療」は、前記自然殺害細胞の投与によって個体の癌または感染性疾患に対する症状が好転または有利に変更されるあらゆる行為を意味する。
【0057】
前記細胞治療剤は、有効成分を単独で含むか、1つ以上の薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含んで細胞治療剤として提供されうる。
【0058】
具体的に、前記担体は、例えば、コロイド懸濁液、粉末、食塩水、脂質、リポソーム、微小球体(microspheres)またはナノ球状粒子である。これらは、運搬手段と複合体とを形成するか、関連し、脂質、リポソーム、微粒子、金、ナノ粒子、ポリマー、縮合反応剤、多糖類、ポリアミノ酸、デンドリマー、サポニン、吸着増進物質または脂肪酸のような当業者に公知の運搬システムを使用して生体内運搬される。
【0059】
前記細胞治療剤が製剤化される場合には、通常の懸濁剤、保存剤、充填剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propyleneglycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使われる。また、局所投与のために、生体高分子(biopolymer)などの有機物、ヒドロキシアパタイトなどの無機物、具体的には、コラーゲンマトリックス、ポリ乳酸重合体または共重合体、ポリエチレングリコール重合体または共重合体及びその化学的誘導体などと組み合わせるものも含みうる。前記細胞治療剤が注射に適当な剤形で調剤される場合には、前記自然殺害細胞は、薬学的に許容可能な担体中に溶解されているか、または溶解されている溶液状に凍結されたものである。前記例示されたものを含めて、本発明に適した薬学的に許容される担体及び製剤は、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,1995]に詳しく記載されている。前記細胞治療剤は、当業者が容易に実施することができる方法によって、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量の形態で製造されるか、たは多容量容器内に内入させて製造可能である。
【0060】
用語「投与」とは、適切な方法で個体に所定の物質を導入することを意味し、「個体」とは、癌または感染性疾患を保有することができるヒトを含むラット、マウス、家畜などのあらゆる生物を意味する。具体例として、ヒトを含む哺乳動物である。
【0061】
前記細胞治療剤は、非経口投与することができ、非経口投与時に、皮膚外用または腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、動脈内注射、骨髄内注射、心臓内注射、硬膜内注射、経皮注射、鼻腔内注射、腸管内注射、局所注射、舌下注射、直腸内注射または胸部内注射の注入方式を選択することができる。
【0062】
前記細胞治療剤は、薬学的に有効な量で投与する。用語、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な恵み/危険の比率で疾患の治療に十分な量を意味し、有効容量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使われる薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決定されうる。体重が70kgである大人患者を基準とする時、例えば、約1,000~10,000細胞/回、1,000~100,000細胞/回、1,000~1000,000細胞/回、1,000~10,000,000細胞/回、1,000~100,000,000細胞/回、1,000~1,000,000,000細胞/回、1,000~10,000,000,000細胞/回または1,000~100,000,000,000細胞/回に、一定時間間隔で1日1回ないし数回に分割投与することもでき、一定時間間隔で数回投与することができる。
【0063】
また、本発明は、前記自然殺害細胞を、それを必要とする個体に投与する段階を含む癌または感染性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0064】
用語「予防」は、前記自然殺害細胞の投与によって個体の癌または感染性疾患を抑制させるか、発病を遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0065】
また、本発明は、癌または感染性疾患の予防または治療用薬剤の製造のための前記自然殺害細胞の用途を提供する。
【0066】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0067】
〔実施例〕
<実施例1.高純度及び高効率のNK細胞の製造方法>
本発明者らは、高純度及び高効率のNK細胞を製造するために、下記のような過程によって実験を進行した。
【0068】
1)自己血液の採取
人体から血液を採血した後、Sodium Heparin TubeとPlain tubeとに入れて血液分離を準備した。
【0069】
2)培養フラスココーティング
50ml tubeにDPBS 13mlとCD3、CD16及びCD56混合物1mlとを混合してコーティング液を製造した。引き続き、前記コーティング液14mlをT75フラスコに入れ、全面積に均一に分散させた。以後、37℃で4時間または冷蔵状態で18時間静置した後、コーティング液を除去し、DPBS 10mlを入れて1回洗浄して準備した。
【0070】
3)血清準備
血液のうち、Plain tubeの血液を4℃で2000rpmで30分間遠心分離を実施した。遠心分離後、上澄み液を回収し、0.2μm membrane filterを用いて濾過させた後、冷蔵保管して培養に使用した。
【0071】
4)免疫細胞分離
Heparin tubeの血液をBSCに移し、50ml tubeに移して総量を確認した後、同量のDPBSを入れて混合した。血液と同量のフィコールとを50ml tubeに移して入れた後、フィコールが入れられているtubeにDPBSと血液との混合物を入れて十分に準備した。次いで、準備されたtubeを2000rpmで20分間4℃に遠心分離を行い、遠心分離終了後、バフィーコート(Buffy coat)層を回収して新たな50ml tubeに移した。回収したバフィーコートの2倍体積のDPBSを添加し、1200rpmで5分間4℃に遠心分離した。遠心分離後、上澄み液を除去し、細胞をよく解いた後、2倍体積のDPBSを20ml添加して1200rpmで5分間4℃に遠心分離した。以後、上澄み液を除去し、細胞を解いた後、培養液を添加して再浮遊し、細胞数を測定した。
【0072】
5)免疫細胞の活性化培養
RPMI培養液50mlにIL-2、IL-12、IL-15、IL-18と自己血清とを添加した。T75フラスコに準備された培養液を入れ、1,000,000 cells以上の免疫細胞を播種した。細胞は、37℃、5% CO2インキュベーターで6日間活性化培養した。
【0073】
6)免疫細胞の増殖培養
前記5~7日間の活性化培養後、培養物をいずれも50ml tubeに回収し、1200rpm、5min、4℃で遠心分離した。引き続き、上澄み液を除去し、細胞を解いた後、培養液を添加して再浮遊し、細胞数を測定した。細胞をIL-2、IL-12、IL-15、IL-18が添加されたRPMI培養液総量が200mlになるように浮遊して1000mlポリビニル培養液に播種した。この際、自己血清は4%添加した。細胞は、37℃、5% CO2インキュベーターで6日間培養した。
【0074】
7)免疫細胞の培地追加
3~5日経過後、培養液が黄色に変わり、コロニーが形成されれば、細胞数及び生存率を測定し、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18が添加されたRPMI培養液に総量が1000mlになるように培養液を添加した。
【0075】
8)免疫細胞の回収及び充填
培養液を250ml tube 4個に移した後、1200rpm、10分、4℃で上澄み液を捨て、遠心分離した。以後、上澄み液を捨て、細胞をよく解いた後、100ml Nomal salineに懸濁して細胞数及び生存率を測定した。
【0076】
<実施例2.活性化培養結果分析-細胞数/生存率/NK細胞比率>
本発明者らは、前記実施例1の過程によって増殖及び活性が増進したNK細胞を製造した。このために、まず、4人の供与者から血液を採取し、前記血液内PBMCの特性を分析し、その結果は、下記表1に示した通りである。
【0077】
【0078】
次いで、前記各供与者の血液内PBMCを2×10^7/50mlの接種細胞数及び4×10^5/mlの接種細胞密度で前記実施例1に記載した方法によって活性化培養を実施し、培養後、細胞数、生存率及びNK細胞が占める比率を分析した。
【0079】
まず、細胞数分析結果、下記表2から分かるように、培養6日目に平均10.0×10^7細胞を回収し、少なくとも8.23×10^7細胞を獲得することができた。
【0080】
【0081】
次いで、細胞の生存率を測定した結果、下記表3に示すように、6日目に平均細胞生存率が88.85%であり、少なくとも87.6%以上の生存率を示した。
【0082】
【0083】
最後に、NK細胞が占める比率を分析した結果、培養6日目にNK細胞が47.1%比率で存在すると表われ、活性化培養期間が1日追加される場合、NK細胞の比率が平均15%増加することが分かった。さらに詳しい結果は、下記表4に示した。
【0084】
【0085】
<実施例3.増殖培養結果分析-細胞数/生存率/NK細胞比率/癌細胞殺傷率>
前記実施例2の方法によって活性化培養を行った後、6日間増殖培養を進行し、細胞数、細胞生存率、NK細胞の比率及び癌細胞殺傷率を測定した。
【0086】
まず、細胞数分析結果、下記表5に示すように、増殖培養6日目には、約30億個の細胞が得られ、各供与者別に活性化培養6日及び増殖培養7日を実施した結果、下記のような結果が表われた。
【0087】
【0088】
次いで、細胞生存率を分析した結果は、下記表6に示した通りであり、培養6日目には、93.2%の生存率を示した。
【0089】
【0090】
次いで、FACSを通じてNK細胞が占める比率を測定した。その結果、
図1に示すように、CD56を発現するNK細胞は、全体で94.42%を占め、CD3(T細胞)は、2.10%、CD19(B細胞)は、1.84%、CD14(単核球)は、0.79%を示した。
【0091】
最後に、前記培養されたNK細胞の癌細胞に対する殺傷率を分析した。このために、6日間の活性化培養及び7日間の増殖培養を経たNK細胞を利用し、K562胸腺腫細胞株にそれぞれの他の供与者から製造された細胞(sample 1、2、3)を処理した。その結果、
図2から分かるように、NK細胞が平均的に70%の癌細胞殺傷率を示すことが分かった。
【0092】
また、
図3には、培養過程中の活性化されたNK細胞を示す顕微鏡写真を示した。
前記実施例を通じて本発明によるNK細胞の製造工程は、NK細胞が占める相対的比率を5~15%から94.42%まで飛躍的に増加させ、癌細胞に対する殺傷能を約70%まで増加させることを確認したので、高純度及び高活性のNK細胞治療剤の製造が可能であることが分かった。
【0093】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、当業者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるであろう。したがって、前述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないということを理解せねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】本発明によるNK細胞の製造工程で1次活性化培養及び2次増殖培養後、得られた培養物に対してNK細胞が占める比率を調べるためにFACS分析を実施した結果である。
【
図2】本発明によるNK細胞の製造工程で1次活性化培養及び2次増殖培養後、得られたNK細胞の癌細胞殺傷率を分析した結果である。
【
図3】本発明によるNK細胞の製造工程で1次活性化培養及び2次増殖培養過程で活性化されたNK細胞の顕微鏡イメージ写真を示す結果である。
【国際調査報告】