(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(54)【発明の名称】末梢体液の多重バイオマーカーによる中枢神経系疾患の検出方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20230920BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230920BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20230920BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230920BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20230920BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230920BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
G01N33/536 B
G01N33/536 C
G01N33/536 D
G01N33/536 E
C07K16/18
C07K16/40
C12N15/13
C12M1/34 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568816
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2021092983
(87)【国際公開番号】W WO2021228067
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】202010390614.0
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522441046
【氏名又は名称】ザ ファースト アフィリエイテッド ホスピタル チョーチアン ユニヴァーシティー スクール オブ メディシン
【氏名又は名称原語表記】THE FIRST AFFILIATED HOSPITAL ZHEJIANG UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE
【住所又は居所原語表記】No.79 Qingchun Road, Shangcheng District, Hangzhou, Zhejiang 310003, China
(71)【出願人】
【識別番号】517000704
【氏名又は名称】エックスワイ エバーグリーン テクノロジー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】郭▲貞▼
(72)【発明者】
【氏名】宋雪茹
(72)【発明者】
【氏名】韓卿卿
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
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2G045FB03
4B029AA07
4B029BB17
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4B029GA08
4B029GB06
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4H045AA11
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4H045BA70
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は中枢神経系疾患を診断する方法、システム、組成物及びキットを提供し、診断するシステムは、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する第1検出モジュールと、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する第2検出モジュールと、第1検出モジュール及び第2検出モジュールのそれぞれによって取得された中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーの検出結果に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断する診断モジュールと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系疾患を診断する方法であって、
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出するステップと、
被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出するステップと、
中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーの検出結果に基づいて被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断するステップとを含む方法。
【請求項2】
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーの検出と被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーの検出は同時に行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験者の生体体液を取得して前処理し、生体体液中の生体サンプルを濃縮するステップをさらに含み、
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出することは、被験者の濃縮生体サンプル中の中枢神経系由来マーカーを検出することであり、
被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出することは被験者の濃縮生体サンプル中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出することである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの数を統計する、及び/又は
中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの粒径を測定するステップと、
前記生体サンプルの数及び/又は前記生体サンプルの粒径に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断するステップと、をさらに含む請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記生体サンプルは細胞外小胞であり、
好ましくは、前記細胞外小胞はニューロン由来の細胞外小胞、アストロサイト由来の細胞外小胞、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞又はミクログリア由来の細胞外小胞である請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記生体体液は血液、血清、血漿、唾液、尿、リンパ液、精液又は乳汁から選択される1種又は2種以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記中枢神経系疾患は、脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記変性性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記中枢神経系由来マーカーは、成熟ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア、未成熟ニューロン、シュワン細胞、放射状グリア細胞、中間型前駆細胞、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロンのニューロン又は細胞に由来するバイオマーカーである請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記中枢神経系由来マーカー及び/又は中枢神経系疾患関連マーカーはそれぞれタンパク質、核酸、脂質から選択される1種又は2種又は3種類である請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記中枢神経系由来マーカーは、Gタンパク質共役型受容体162(GPR162:G Protein-Coupled Receptor 162)、過分極活性化環状ヌクレオチドゲートカリウムチャネル1(HCN1:Hyperpolarization Activated Cyclic Nucleotide-Gated Potassium Channel 1)、γ-アミノ酪酸A型受容体サブユニットδ(GABRD:Gamma-Aminobutyric Acid Type A Receptor Subunit Delta)、ニューロリギン3(NLGN3:Neuroligin 3)、SHISA9、コンタクチン-1(CNTN1:contactin-1)、NeuN、MAP2、ニューロフィラメント-L(NF-L:neurofilament light)、ニューロフィラメント-M(NF-M:neurofilament medium)、ニューロフィラメント-H(NF-H:neurofilament heavy)、シナプトフィジン(synaptophysin)、シンタキシン(syntaxin)、PSD95、L1CAM、ダブルコルチン(doublecortin)、β3-チューブリン(beta III tubulin)、NeuroD1、TBR1、スタスミン1(stathmin 1)、MPZ、NCAM、GAP43、S100、CNP酵素(CNPase)、olig 1、olig 2、olig 3、MBP、OSP、MOG、SOX10、NG2、GFAP、GLAST(EAAT1)、GLT1(EAAT2)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、S100-β、ALDH1L1、CD11b、CD45、Iba1、F4/80、CD68、CD40、ビメンチン(vimentin)、ネスチン(nestin)、PAX6、HES1、HES5、GFAP、GLAST、BLBP、TN-C、Nカドヘリン(N-cadherin)、SOX2、TBR2、MASH1(Ascl1)、vGluT1、vGluT2、NMDAR、グルタミナーゼ(glutaminase)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、GABA トランスポータ1(GAT1:GABA transporter 1)、GABA
B 受容体1(GABA
B receptor 1)、GABA
B 受容体2(GABA
B receptor 2)、GAD65、GAD67、チロシンヒドロキシラーゼ(TH:tyrosine hydroxylase)、ドーパミントランスポータ(DAT:dopamine transporter)、FOXA2、GIRK2、Nurr1、LMX1B、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH:tryptophan hydroxylase)、セロトニントランスポータ(serotonin transporter)、Pet1、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:choline acetyl transferase)、小胞アセチルコリントランスポータ(VAChT:vesicular acetylcholine transporter)、アセチルコリンエステラーゼ(AchE:acetylcholinesterase)から選択される1種又は2種以上であり、
好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーは中枢神経系由来の細胞外小胞の表面に位置するマーカーであり、
さらに好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーはL1CAM、SHISA9、CNP酵素、GLT1(EAAT2)から選択される1種又は2種以上である請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記中枢神経系疾患関連マーカーは、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、プリオンタンパク質から選択される1種又は2種以上のタンパク質である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記中枢神経系疾患関連マーカーは、アルツハイマー病(AD)のバイオマーカーであるDNA又はRNA、パーキンソン病(PD)及びパーキンソン症候群(例えば、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型認知症(DLB))のバイオマーカーであるDNA又はRNAから選択される1種又は2種以上の核酸である請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ADのバイオマーカーであるDNA又はRNAは、遺伝子UBAP2L、YBX1、SERF2、UBE2B、RPL10A、H3F3AP4、PPP2CA、NMD3、RNF7、RPLP0、SPARC、WTAP、HNRNPU、LINC00265、INMT、SLC35E2、CT60、SYNCRIP、RGS2、SMC6、ARSA、SPDYE7P、SMIM17、TRAF3IP2-AS1、KCNC2、SLC24A1、HLCS、GOSR1、MN1、MGAT5、NBPF14、FBXO31、WDR52、TBC1D2B、ZNF648、NBPF16、PAGR1、AQP2、PRKCI、SCN2B、DPYSL3、TMEM26、TSPAN11、ELL2、FAM186A、CD59、THSD4、GOLGA6B、ARHGEF5、PKD1、BPTF、FLG、POM121L10P、NXPH3、H3F3A、SH3TC2、GGCX、及びGREB1に関連するDNA又はRNAを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PDのバイオマーカーであるDNA又はRNAは、遺伝子BLOC1S1、UBE2L3、RNF149、FAM89B、LCE6A、NT5DC2、PPP1CC、CCL5、HDLBP、HNRNPAB、NXN、SLC9A4、EIF2AK1、PAPOLA、TRIM50、SIX4、RAB3IP、VANGL2、DHRSX、FOXP4、SYNM、ZNF543、ATF6、LOC100132832、及びBLOC1S1-RDH5に関連するDNA又はRNAを含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
被験者の生体体液を取得して前処理し、生体サンプルを濃縮する方法は遠心分離、超遠心分離、限外ろ過管によるろ過、重合沈降、特異的抗体捕捉から選択される1種又は2種以上を含む請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記中枢神経系由来マーカーはタンパク質であり、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系由来マーカーに特異的に反応する標識抗体と反応させることと、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系由来マーカーの存在及び含有量を判断することとを含む請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系疾患関連マーカーに特異的に反応する標識抗体と反応させることと、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系疾患関連マーカーの存在及び含有量を判断することとを含む請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記標識は、蛍光標識、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識から選択される1種又は2種以上である請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記中枢神経系由来マーカーは核酸であり、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を溶解し、DNA又はRNAプローブ又はシーケンシング技術によって中枢神経系由来の核酸の存在及び含有量を検出することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記中枢神経系疾患関連マーカーは核酸であり、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を溶解し、DNA又はRNAプローブ又はシーケンシング技術によって中枢神経系疾患に関連する核酸の存在及び含有量を検出することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項23】
中枢神経系疾患を診断するシステムであって、
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する第1検出モジュールと、
被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する第2検出モジュールと、
第1検出モジュール及び第2検出モジュールのそれぞれによって取得された中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーの検出結果に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断する診断モジュールと、を含むシステム。
【請求項24】
前記第1検出モジュール及び前記第2検出モジュールは被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーの検出と被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーの検出とを同時に行い、又は
前記第1検出モジュール及び前記第2検出モジュールは、同一モジュールとして、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーと被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを同時に検出する請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
被験者の生体体液を取得して前処理し、生体体液中の生体サンプルを濃縮する濃縮モジュールをさらに含み、
第1検出モジュール及び第2検出モジュールは被験者の濃縮生体サンプル中の中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーを検出する請求項23又は24に記載のシステム。
【請求項26】
中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの数を統計する数量統計モジュール、及び/又は
中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの粒径を測定する粒径測定モジュールと、
前記生体サンプルの数及び/又は前記生体サンプルの粒径に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断する診断モジュールと、をさらに含む請求項23~25のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記生体サンプルは細胞外小胞であり、
好ましくは、前記細胞外小胞はニューロン由来の細胞外小胞、アストロサイト由来の細胞外小胞、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞又はミクログリア由来の細胞外小胞である請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記生体体液は血液、血清、血漿、唾液、尿、リンパ液、精液又は乳汁から選択される1種又は2種以上である請求項23~27のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
前記中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上である請求項23~28のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項30】
前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含む請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記変性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記中枢神経系由来マーカーは、成熟ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア、未成熟ニューロン、シュワン細胞、放射状グリア細胞、中間型前駆細胞、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロンのニューロン又は細胞に由来するバイオマーカーである請求項23~31のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項33】
前記中枢神経系由来マーカー及び/又は中枢神経系疾患関連マーカーはそれぞれタンパク質、核酸、脂質から選択される1種又は2種又は3種類である請求項23~32のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項34】
前記中枢神経系由来マーカーは、Gタンパク質共役型受容体162(GPR162:G Protein-Coupled Receptor 162)、過分極活性化環状ヌクレオチドゲートカリウムチャネル1(HCN1:Hyperpolarization Activated Cyclic Nucleotide-Gated Potassium Channel 1)、γ-アミノ酪酸A型受容体サブユニットδ(GABRD:Gamma-Aminobutyric Acid Type A Receptor Subunit Delta)、ニューロリギン3(NLGN3:Neuroligin 3)、SHISA9、コンタクチン-1(CNTN1:contactin-1)、NeuN、MAP2、ニューロフィラメント-L(NF-L:neurofilament light)、ニューロフィラメント-M(NF-M:neurofilament medium)、ニューロフィラメント-H(NF-H:neurofilament heavy)、シナプトフィジン(synaptophysin)、シンタキシン(syntaxin)、PSD95、L1CAM、ダブルコルチン(doublecortin)、β3-チューブリン(beta III tubulin)、NeuroD1、TBR1、スタスミン1(stathmin 1)、MPZ、NCAM、GAP43、S100、CNP酵素(CNPase)、olig 1、olig 2、olig 3、MBP、OSP、MOG、SOX10、NG2、GFAP、GLAST(EAAT1)、GLT1(EAAT2)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、S100-β、ALDH1L1、CD11b、CD45、Iba1、F4/80、CD68、CD40、ビメンチン(vimentin)、ネスチン(nestin)、PAX6、HES1、HES5、GFAP、GLAST、BLBP、TN-C、Nカドヘリン(N-cadherin)、SOX2、TBR2、MASH1(Ascl1)、vGluT1、vGluT2、NMDAR、グルタミナーゼ(glutaminase)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、GABA トランスポータ1(GAT1:GABA transporter 1)、GABA
B 受容体1(GABA
B receptor 1)、GABA
B 受容体2(GABA
B receptor 2)、GAD65、GAD67、チロシンヒドロキシラーゼ(TH:tyrosine hydroxylase)、ドーパミントランスポータ(DAT:dopamine transporter)、FOXA2、GIRK2、Nurr1、LMX1B、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH:tryptophan hydroxylase)、セロトニントランスポータ(serotonin transporter)、Pet1、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:choline acetyl transferase)、小胞アセチルコリントランスポータ(VAChT:vesicular acetylcholine transporter)、アセチルコリンエステラーゼ(AchE:acetylcholinesterase))から選択される1種又は2種以上であり、
好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーは中枢神経系由来の細胞外小胞の表面に位置するマーカーであり、
さらに好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーはL1CAM、SHISA9、CNP酵素、GLT1(EAAT2)から選択される1種又は2種以上である請求項32又は33に記載のシステム。
【請求項35】
前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、前記タンパク質は、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、プリオンタンパク質から選択される1種又は2種以上である請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記中枢神経系疾患関連マーカーは核酸であり、前記核酸は、アルツハイマー病(AD)のバイオマーカーであるDNA又はRNA、パーキンソン病(PD)及びパーキンソン症候群(例えば、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型認知症(DLB))のバイオマーカーであるDNA又はRNAから選択される1種又は2種以上である請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
前記ADのバイオマーカーであるDNA又はRNAは、遺伝子UBAP2L、YBX1、SERF2、UBE2B、RPL10A、H3F3AP4、PPP2CA、NMD3、RNF7、RPLP0、SPARC、WTAP、HNRNPU、LINC00265、INMT、SLC35E2、CT60、SYNCRIP、RGS2、SMC6、ARSA、SPDYE7P、SMIM17、TRAF3IP2-AS1、KCNC2、SLC24A1、HLCS、GOSR1、MN1、MGAT5、NBPF14、FBXO31、WDR52、TBC1D2B、ZNF648、NBPF16、PAGR1、AQP2、PRKCI、SCN2B、DPYSL3、TMEM26、TSPAN11、ELL2、FAM186A、CD59、THSD4、GOLGA6B、ARHGEF5、PKD1、BPTF、FLG、POM121L10P、NXPH3、H3F3A、SH3TC2、GGCX、及びGREB1に関連するDNA又はRNAを含む請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記PDのバイオマーカーであるDNA又はRNAは、遺伝子BLOC1S1、UBE2L3、RNF149、FAM89B、LCE6A、NT5DC2、PPP1CC、CCL5、HDLBP、HNRNPAB、NXN、SLC9A4、EIF2AK1、PAPOLA、TRIM50、SIX4、RAB3IP、VANGL2、DHRSX、FOXP4、SYNM、ZNF543、ATF6、LOC100132832、及びBLOC1S1-RDH5に関連するDNA又はRNAを含む請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
前記濃縮モジュールは、遠心分離、超遠心分離、限外ろ過管によるろ過、重合沈降、特異的抗体捕捉のうちの1種又は2種以上のステップを行うサブモジュールを有する請求項25に記載のシステム。
【請求項40】
前記中枢神経系由来マーカーはタンパク質であり、第1検出モジュールは被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系由来マーカーに特異的に反応する標識抗体と反応させ、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系由来マーカーの存在及び含有量を判断する請求項33に記載のシステム。
【請求項41】
前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、第2検出モジュールは被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系疾患関連マーカーに特異的に反応する標識抗体と反応させ、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系疾患関連マーカーの存在及び含有量を判断する請求項33に記載のシステム。
【請求項42】
前記標識は蛍光標識、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識から選択される1種又は2種以上である請求項40又は41に記載のシステム。
【請求項43】
前記中枢神経系由来マーカーは核酸であり、第1検出モジュールは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を溶解し、DNA又はRNAプローブ又はシーケンシング技術によって中枢神経系由来の核酸の存在及び含有量を検出する請求項33に記載のシステム。
【請求項44】
前記中枢神経系疾患関連マーカーは核酸であり、第2検出モジュールは被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を溶解し、DNA又はRNAプローブ又はシーケンシング技術によって中枢神経系疾患に関連する核酸の存在及び含有量を検出する請求項33に記載のシステム。
【請求項45】
中枢神経系疾患を検出する組成物であって、
中枢神経系由来マーカーを標的とする抗体と、中枢神経系疾患関連マーカーを標的とする抗体と、を含む組成物。
【請求項46】
前記中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上である請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含む請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記変性性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記中枢神経系由来マーカーは、成熟ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア、未成熟ニューロン、シュワン細胞、放射状グリア細胞、中間型前駆細胞、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロンのニューロン又は細胞に由来するバイオマーカーである請求項45~48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
前記中枢神経系由来マーカーは、Gタンパク質共役型受容体162(GPR162:G Protein-Coupled Receptor 162)、過分極活性化環状ヌクレオチドゲートカリウムチャネル1(HCN1:Hyperpolarization Activated Cyclic Nucleotide-Gated Potassium Channel 1)、γ-アミノ酪酸A型受容体サブユニットδ(GABRD:Gamma-Aminobutyric Acid Type A Receptor Subunit Delta)、ニューロリギン3(NLGN3:Neuroligin 3)、SHISA9、コンタクチン-1(CNTN1:contactin-1)、NeuN、MAP2、ニューロフィラメント-L(NF-L:neurofilament light)、ニューロフィラメント-M(NF-M:neurofilament medium)、ニューロフィラメント-H(NF-H:neurofilament heavy)、シナプトフィジン(synaptophysin)、シンタキシン(syntaxin)、PSD95、L1CAM、ダブルコルチン(doublecortin)、β3-チューブリン(beta III tubulin)、NeuroD1、TBR1、スタスミン1(stathmin 1)、MPZ、NCAM、GAP43、S100、CNP酵素(CNPase)、olig 1、olig 2、olig 3、MBP、OSP、MOG、SOX10、NG2、GFAP、GLAST(EAAT1)、GLT1(EAAT2)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、S100-β、ALDH1L1、CD11b、CD45、Iba1、F4/80、CD68、CD40、ビメンチン(vimentin)、ネスチン(nestin)、PAX6、HES1、HES5、GFAP、GLAST、BLBP、TN-C、Nカドヘリン(N-cadherin)、SOX2、TBR2、MASH1(Ascl1)、vGluT1、vGluT2、NMDAR、グルタミナーゼ(glutaminase)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、GABA トランスポータ1(GAT1:GABA transporter 1)、GABA
B 受容体1(GABA
B receptor 1)、GABA
B 受容体2(GABA
B receptor 2)、GAD65、GAD67、チロシンヒドロキシラーゼ(TH:tyrosine hydroxylase)、ドーパミントランスポータ(DAT:dopamine transporter)、FOXA2、GIRK2、Nurr1、LMX1B、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH:tryptophan hydroxylase)、セロトニントランスポータ(serotonin transporter)、Pet1、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:choline acetyl transferase)、小胞アセチルコリントランスポータ(VAChT:vesicular acetylcholine transporter)、アセチルコリンエステラーゼ(AchE:acetylcholinesterase)から選択される1種又は2種以上であり、
好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーは中枢神経系由来の細胞外小胞の表面に位置するマーカーであり、
さらに好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーはL1CAM、SHISA9、CNP酵素、GLT1(EAAT2)から選択される1種又は2種以上である請求項45~49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
前記中枢神経系疾患関連マーカーは、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、プリオンタンパク質から選択される1種又は2種以上である請求項45~50のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
前記中枢神経系由来マーカーを標的とする抗体及び前記中枢神経系疾患関連マーカーを標的とする抗体は標識抗体であり、好ましくは、前記標識は蛍光標識、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識から選択される1種又は2種以上である請求項45~51のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項53】
被験者の中枢神経系疾患を検出するキットであって、
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬と、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬と、を含むキット。
【請求項54】
前記被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬及び被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬は請求項45~52のいずれか1項に記載の組成物である請求項53に記載のキット。
【請求項55】
前記被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬は中枢神経系由来マーカーを標的とするプライマー又はプローブであり、
前記被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬は中枢神経系疾患関連マーカーを標的とするプライマー又はプローブである請求項53に記載のキット。
【請求項56】
被験者の生体サンプルを取得する試薬と装置、好ましくは、被験者の細胞外小胞を取得する試薬と装置をさらに含む請求項53に記載のキット。
【請求項57】
前記中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上である請求項53に記載のキット。
【請求項58】
前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含む請求項57に記載のキット。
【請求項59】
前記変性性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む請求項58に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医薬の技術分野に関し、特にインビトロ診断及び検出の技術分野に関し、特に二重マーカー及び/又は多重マーカーを用いた検出方法及びシステム、好ましくは、二重マーカー及び/又は多重マーカーを用いた同時検出方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展に伴い、バイオマーカーの検出は疾患の診断、鑑別診断や病状進展のモニタリングにますます重要な役割を果たしている。
【0003】
現在、中枢神経系疾患バイオマーカーの検出は主に脳脊髄液の検出と末梢体液の直接検出に基づいて開発が進められている。脳脊髄液を用いた検出は、脳脊髄液が脳と脊髄に直接接触し、中枢神経系の変化をよりよく反映できるため、良好なパフォーマンスを示した。しかし、脳脊髄液の取得は侵襲性であり、患者の受容度が悪いため、脳脊髄液バイオマーカーの更なる開発、臨床転化や広範な応用が極めて制限された。末梢体液を用いた検出はパフォーマンスが悪く、主に以下の2つの問題が存在する。1つは、血液脳関門が存在するため、全ての中枢神経系由来の成分が末梢体液中で検出されるわけではなく、末梢体液中に存在する中枢神経系由来のバイオマーカー、特にタンパク質でも、その存在度は非常に低いことであり、もう1つは、多くの中枢神経疾患関連マーカーは中枢神経系で特異的に発現されるものではなく、末梢の他の器官及び/又は系でも産生されるので、中枢神経系由来のシグナルは末梢成分の影響を受けやすいことである。
【0004】
そして、中枢神経系疾患は脳領域特異性の特徴を持つ。例えば、アルツハイマー病の主な病理変化は頭頂葉、側頭葉、海馬などの大脳皮質の萎縮であり、パーキンソン病は主に基底核の黒質-線条体のドーパミン回路病変や損傷によるドーパミン分泌不足によるものである。現在、異なる脳領域に対してマーカーの検出分析を特異的に行うことができるのは脳部生検しかなく、現在のインビトロ検出技術はいずれも由来の区別を行うことができず、異なる疾患に対する診断効果に差異が存在し、また、疾患診断の精度も一定の向上の余地が存在する。
【0005】
そのため、如何に末梢体液から中枢神経系疾患の変化を反映できるバイオマーカーを効率的に濃縮し、かつ特異的に標識するかが当分野の研究の焦点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した通り、本分野では、末梢体液を利用して中枢神経系疾患を効果的に検出するシステム、方法及びキットが存在しておらず、本願は、末梢体液中で様々な中枢神経系由来のマーカーを効果的に認識し、疾患関連マーカーと組み合わせて検出することができ、多重標識を同時に検出することにより、脳脊髄液を取得することなく、末梢体液サンプルを用いて中枢神経系変化を反映する効果を果たすことを意図している。
【0007】
すなわち、本願は、初めて、末梢体液中で中枢神経系由来のバイオマーカーを認識することにより中枢神経系疾患を診断する概念及び検出方法を提案している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、本願は以下の内容に関する。
1. 中枢神経系疾患を診断する方法であって、
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出するステップと、
被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出するステップと、
中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーの検出結果に基づいて被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断するステップと、を含む、方法。
2. 被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーの検出と被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーの検出は同時に行われる、前記項1に記載の方法。
3. 被験者の生体体液を取得して前処理し、生体体液中の生体サンプルを濃縮するステップをさらに含み、
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出することは、被験者の濃縮生体サンプル中の中枢神経系由来マーカーを検出することであり、
被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出することは被験者の濃縮生体サンプル中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出することである、前記項1又は2に記載の方法。
4. 中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの数を統計するステップ、及び/又は
中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの粒径を測定するステップと、
前記生体サンプルの数及び/又は前記生体サンプルの粒径に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断するステップと、をさらに含む、前記項1~3のいずれか1項に記載の方法。
5. 前記生体サンプルは細胞外小胞であり、
好ましくは、前記細胞外小胞はニューロン由来の細胞外小胞、アストロサイト由来の細胞外小胞、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞又はミクログリア由来の細胞外小胞である、前記項3又は4に記載の方法。
【0009】
6. 前記生体体液は血液、血清、血漿、唾液、尿、リンパ液、精液又は乳汁から選択される1種又は2種以上である、前記項1~5のいずれか1項に記載の方法。
7. 前記中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上である、前記項1~6のいずれか1項に記載の方法。
8. 前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含む、前記項7に記載の方法。
9. 前記変性性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む、前記項8に記載の方法。
10. 前記中枢神経系由来マーカーは、ニューロン又は細胞として、成熟ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア、未成熟ニューロン、シュワン細胞、放射状グリア細胞、中間型前駆細胞、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロンに由来するバイオマーカーである、前記項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【0010】
11. 前記中枢神経系由来マーカー及び/又は中枢神経系疾患関連マーカーはそれぞれタンパク質、核酸、脂質から選択される1種又は2種又は3種類である、前記項1~10のいずれか1項に記載の方法。
12. 前記中枢神経系由来マーカーは、Gタンパク質共役型受容体162(GPR162:G Protein-Coupled Receptor 162)、過分極活性化環状ヌクレオチドゲートカリウムチャネル1(HCN1:Hyperpolarization Activated Cyclic Nucleotide-Gated Potassium Channel 1)、γ-アミノ酪酸A型受容体サブユニットδ(GABRD:Gamma-Aminobutyric Acid Type A Receptor Subunit Delta)、ニューロリギン3(NLGN3:Neuroligin 3)、SHISA9、コンタクチン-1(CNTN1:contactin-1)、NeuN、MAP2、ニューロフィラメント-L(NF-L:neurofilament light)、ニューロフィラメント-M(NF-M:neurofilament medium)、ニューロフィラメント-H(NF-H:neurofilament heavy)、シナプトフィジン(synaptophysin)、シンタキシン(syntaxin)、PSD95、L1CAM、ダブルコルチン(doublecortin)、β3-チューブリン(beta III tubulin)、NeuroD1、TBR1、スタスミン1(stathmin 1)、MPZ、NCAM、GAP43、S100、CNP酵素(CNPase)、olig 1、olig 2、olig 3、MBP、OSP、MOG、SOX10、NG2、GFAP、GLAST(EAAT1)、GLT1(EAAT2)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、S100-β、ALDH1L1、CD11b、CD45、Iba1、F4/80、CD68、CD40、ビメンチン(vimentin)、ネスチン(nestin)、PAX6、HES1、HES5、GFAP、GLAST、BLBP、TN-C、N-カドヘリン(N-cadherin)、SOX2、TBR2、MASH1(Ascl1)、vGluT1、vGluT2、NMDAR、グルタミナーゼ(glutaminase)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、GABA トランスポータ1(GAT1:GABA transporter 1)、GABAB 受容体1(GABAB receptor 1)、GABAB 受容体2(GABAB receptor 2)、GAD65、GAD67、チロシンヒドロキシラーゼ(TH:tyrosine hydroxylase)、ドーパミントランスポータ(DAT:dopamine transporter)、FOXA2、GIRK2、Nurr1、LMX1B、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH:tryptophan hydroxylase)、セロトニントランスポータ(serotonin transporter)、Pet1、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:choline acetyl transferase)、小胞アセチルコリントランスポータ(VAChT:vesicular acetylcholine transporter)、アセチルコリンエステラーゼ(AchE:acetylcholinesterase)から選択される1種又は2種以上であり、
好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーは中枢神経系由来の細胞外小胞の表面に位置するマーカーであり、
さらに好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーはL1CAM、SHISA9、CNP酵素、GLT1(EAAT2)から選択される1種又は2種以上である、前記項10又は11に記載の方法。
13. 前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、前記タンパク質は、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、プリオンタンパク質から選択される1種又は2種以上である、前記項11に記載の方法。
14. 前記中枢神経系疾患関連マーカーは核酸であり、前記核酸は、アルツハイマー病(AD)のバイオマーカーであるDNA又はRNA、パーキンソン病(PD)及びパーキンソン症候群(例えば、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型認知症(DLB))のバイオマーカーであるDNA又はRNAから選択される1種又は2種以上である、前記項11に記載の方法。
15. 前記ADのバイオマーカーであるDNA又はRNAは、遺伝子UBAP2L、YBX1、SERF2、UBE2B、RPL10A、H3F3AP4、PPP2CA、NMD3、RNF7、RPLP0、SPARC、WTAP、HNRNPU、LINC00265、INMT、SLC35E2、CT60、SYNCRIP、RGS2、SMC6、ARSA、SPDYE7P、SMIM17、TRAF3IP2-AS1、KCNC2、SLC24A1、HLCS、GOSR1、MN1、MGAT5、NBPF14、FBXO31、WDR52、TBC1D2B、ZNF648、NBPF16、PAGR1、AQP2、PRKCI、SCN2B、DPYSL3、TMEM26、TSPAN11、ELL2、FAM186A、CD59、THSD4、GOLGA6B、ARHGEF5、PKD1、BPTF、FLG、POM121L10P、NXPH3、H3F3A、SH3TC2、GGCX、及びGREB1に関連するDNA又はRNAを含む、前記項14に記載の方法。
【0011】
16. 前記PDのバイオマーカーであるDNA又はRNAは、遺伝子BLOC1S1、UBE2L3、RNF149、FAM89B、LCE6A、NT5DC2、PPP1CC、CCL5、HDLBP、HNRNPAB、NXN、SLC9A4、EIF2AK1、PAPOLA、TRIM50、SIX4、RAB3IP、VANGL2、DHRSX、FOXP4、SYNM、ZNF543、ATF6、LOC100132832、及びBLOC1S1-RDH5に関連するDNA又はRNAを含む、前記項14に記載の方法。
17. 被験者の生体体液を取得して前処理し、生体サンプルを濃縮する方法は、遠心分離、超遠心分離、限外ろ過管によるろ過、重合沈降、特異的抗体捕捉から選択される1種又は2種以上である、前記項3に記載の方法。
18. 前記中枢神経系由来マーカーはタンパク質であり、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系由来マーカーに特異的に反応する標識した抗体と反応させることと、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系由来マーカーの存在及び含有量を判断することとを含む、前記項11に記載の方法。
19. 前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系疾患関連マーカーに特異的に反応する標識した抗体と反応させることと、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系疾患関連マーカーの存在及び含有量を判断することとを含む、前記項11に記載の方法。
20. 前記標識は蛍光標識、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識から選択される1種又は2種以上である、前記項18又は19に記載の方法。
21. 前記中枢神経系由来マーカーは核酸であり、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を溶解し、DNA又はRNAプローブ又はシーケンシング技術によって中枢神経系由来の核酸の存在及び含有量を検出することを含む、前記項11に記載の方法。
22. 前記中枢神経系疾患関連マーカーは核酸であり、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を溶解し、DNA又はRNAプローブ又はシーケンシング技術によって中枢神経系疾患に関連する核酸の存在及び含有量を検出することを含む、前記項11に記載の方法。
【0012】
23. 中枢神経系疾患を診断するシステムであって、
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する第1検出モジュールと、
被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する第2検出モジュールと、
第1検出モジュール及び第2検出モジュールのそれぞれによって取得された中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーの検出結果に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断する診断モジュールと、を含む、システム。
24. 前記第1検出モジュール及び前記第2検出モジュールは被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーの検出と被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーの検出とを同時に行い、又は
前記第1検出モジュール及び前記第2検出モジュールは、同一モジュールとして、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーと被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを同時に検出する、前記項23に記載のシステム。
25. 被験者の生体体液を取得して前処理し、生体体液中の生体サンプルを濃縮する濃縮モジュールをさらに含み、
第1検出モジュール及び第2検出モジュールは被験者の濃縮生体サンプル中の中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーを検出する、前記項23又は24に記載のシステム。
26. 中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの数を統計する数量統計モジュール、及び/又は
中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの粒径を測定する粒径測定モジュールと、
前記生体サンプルの数及び/又は前記生体サンプルの粒径に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断する診断モジュールと、をさらに含む、前記項23~25のいずれか1項に記載のシステム。
27. 前記生体サンプルは細胞外小胞であり、
好ましくは、前記細胞外小胞はニューロン由来の細胞外小胞、アストロサイト由来の細胞外小胞、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞又はミクログリア由来の細胞外小胞である、前記項25又は26に記載のシステム。
28. 前記生体体液は血液、血清、血漿、唾液、尿、リンパ液、精液又は乳汁から選択される1種又は2種以上である、前記項23~27のいずれか1項に記載のシステム。
29. 前記中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上である、前記項23~28のいずれか1項に記載のシステム。
30. 前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含む、前記項29に記載のシステム。
【0013】
31. 前記変性性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む、前記項30に記載のシステム。
32. 前記中枢神経系由来マーカーは、ニューロン又は細胞として、成熟ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア、未成熟ニューロン、シュワン細胞、放射状グリア細胞、中間型前駆細胞、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロンに由来するバイオマーカーである、前記項23~31のいずれか1項に記載のシステム。
33. 前記中枢神経系由来マーカー及び/又は中枢神経系疾患関連マーカーはそれぞれタンパク質、核酸、脂質から選択される1種又は2種又は3種類である、前記項23~32のいずれか1項に記載のシステム。
34. 前記中枢神経系由来マーカーは、Gタンパク質共役型受容体162(GPR162:G Protein-Coupled Receptor 162)、過分極活性化環状ヌクレオチドゲートカリウムチャネル1(HCN1:Hyperpolarization Activated Cyclic Nucleotide-Gated Potassium Channel 1)、γ-アミノ酪酸A型受容体サブユニットδ(GABRD:Gamma-Aminobutyric Acid Type A Receptor Subunit Delta)、ニューロリギン3(NLGN3:Neuroligin 3)、SHISA9、コンタクチン-1(CNTN1:contactin-1)、NeuN、MAP2、ニューロフィラメント-L(NF-L:neurofilament light)、ニューロフィラメント-M(NF-M:neurofilament medium)、ニューロフィラメント-H(NF-H:neurofilament heavy)、シナプトフィジン(synaptophysin)、シンタキシン(syntaxin)、PSD95、L1CAM、ダブルコルチン(doublecortin)、β3-チューブリン(beta III tubulin)、NeuroD1、TBR1、スタスミン1(stathmin 1)、MPZ、NCAM、GAP43、S100、CNP酵素(CNPase)、olig 1、olig 2、olig 3、MBP、OSP、MOG、SOX10、NG2、GFAP、GLAST(EAAT1)、GLT1(EAAT2)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、S100-β、ALDH1L1、CD11b、CD45、Iba1、F4/80、CD68、CD40、ビメンチン(vimentin)、ネスチン(nestin)、PAX6、HES1、HES5、GFAP、GLAST、BLBP、TN-C、N-カドヘリン(N-cadherin)、SOX2、TBR2、MASH1(Ascl1)、vGluT1、vGluT2、NMDAR、グルタミナーゼ(glutaminase)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、GABA トランスポータ1(GAT1:GABA transporter 1)、GABAB 受容体1(GABAB receptor 1)、GABAB 受容体2(GABAB receptor 2)、GAD65、GAD67、チロシンヒドロキシラーゼ(TH:tyrosine hydroxylase)、ドーパミントランスポータ(DAT:dopamine transporter)、FOXA2、GIRK2、Nurr1、LMX1B、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH:tryptophan hydroxylase)、セロトニントランスポータ(serotonin transporter)、Pet1、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:choline acetyl transferase)、小胞アセチルコリントランスポータ(VAChT:vesicular acetylcholine transporter)、アセチルコリンエステラーゼ(AchE:acetylcholinesterase))から選択される1種又は2種以上であり、
好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーは中枢神経系由来の細胞外小胞の表面に位置するマーカーであり、
さらに好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーはL1CAM、SHISA9、CNP酵素、GLT1(EAAT2)から選択される1種又は2種以上である、前記項32又は33に記載のシステム。
【0014】
35. 前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、前記タンパク質は、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、プリオンタンパク質から選択される1種又は2種以上である、前記項34に記載のシステム。
36. 前記中枢神経系疾患関連マーカーは核酸であり、前記核酸は、アルツハイマー病(AD)のバイオマーカーであるDNA又はRNA、パーキンソン病(PD)及びパーキンソン症候群(例えば、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型認知症(DLB))のバイオマーカーであるDNA又はRNAから選択される1種又は2種以上である、前記項34に記載のシステム。
37. 前記ADのバイオマーカーであるDNA又はRNAは、遺伝子UBAP2L、YBX1、SERF2、UBE2B、RPL10A、H3F3AP4、PPP2CA、NMD3、RNF7、RPLP0、SPARC、WTAP、HNRNPU、LINC00265、INMT、SLC35E2、CT60、SYNCRIP、RGS2、SMC6、ARSA、SPDYE7P、SMIM17、TRAF3IP2-AS1、KCNC2、SLC24A1、HLCS、GOSR1、MN1、MGAT5、NBPF14、FBXO31、WDR52、TBC1D2B、ZNF648、NBPF16、PAGR1、AQP2、PRKCI、SCN2B、DPYSL3、TMEM26、TSPAN11、ELL2、FAM186A、CD59、THSD4、GOLGA6B、ARHGEF5、PKD1、BPTF、FLG、POM121L10P、NXPH3、H3F3A、SH3TC2、GGCX、及びGREB1に関連するDNA又はRNAを含む、前記項36に記載のシステム。
38. 前記PDのバイオマーカーであるDNA又はRNAは、遺伝子BLOC1S1、UBE2L3、RNF149、FAM89B、LCE6A、NT5DC2、PPP1CC、CCL5、HDLBP、HNRNPAB、NXN、SLC9A4、EIF2AK1、PAPOLA、TRIM50、SIX4、RAB3IP、VANGL2、DHRSX、FOXP4、SYNM、ZNF543、ATF6、LOC100132832、及びBLOC1S1-RDH5に関連するDNA又はRNAを含む、前記項36に記載のシステム。
【0015】
39. 前記濃縮モジュールは、遠心分離、超遠心分離、限外ろ過管によるろ過、重合沈降、特異的抗体捕捉のうちの1種又は2種以上のステップを行うサブモジュールを有する、前記項25に記載のシステム。
40. 前記中枢神経系由来マーカーはタンパク質であり、第1検出モジュールは被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系由来マーカーに特異的に反応する標識した抗体と反応させ、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系由来マーカーの存在及び含有量を判断する、前記項33に記載のシステム。
41. 前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、第2検出モジュールは被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系疾患関連マーカーに特異的に反応する標識した抗体と反応させ、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系疾患関連マーカーの存在及び含有量を判断する、前記項33に記載のシステム。
42. 前記標識は蛍光標識、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識から選択される1種又は2種以上である、前記項40又は41に記載のシステム。
43. 前記中枢神経系由来マーカーは核酸であり、第1検出モジュールは被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を溶解し、DNA又はRNAプローブ又はシーケンシング技術によって中枢神経系由来の核酸の存在及び含有量を検出する、前記項33に記載のシステム。
44. 前記中枢神経系疾患関連マーカーは核酸であり、第2検出モジュールは被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を溶解し、DNA又はRNAプローブ又はシーケンシング技術によって中枢神経系疾患に関連する核酸の存在及び含有量を検出する、前記項33に記載のシステム。
【0016】
45. 中枢神経系疾患を検出する組成物であって、
中枢神経系由来マーカーを標的とする抗体と、中枢神経系疾患関連マーカーを標的とする抗体と、を含む、組成物。
46. 前記中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上である、前記項45に記載の組成物。
47. 前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含む、前記項46に記載の組成物。
48. 前記変性性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む、前記項47に記載の組成物。
49. 前記中枢神経系由来マーカーは、ニューロン又は細胞として、成熟ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア、未成熟ニューロン、シュワン細胞、放射状グリア細胞、中間型前駆細胞、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロンに由来するバイオマーカーである、前記項45~48のいずれか1項に記載の組成物。
【0017】
50. 前記中枢神経系由来マーカーは、Gタンパク質共役型受容体162(GPR162:G Protein-Coupled Receptor 162)、過分極活性化環状ヌクレオチドゲートカリウムチャネル1(HCN1:Hyperpolarization Activated Cyclic Nucleotide-Gated Potassium Channel 1)、γ-アミノ酪酸A型受容体サブユニットδ(GABRD:Gamma-Aminobutyric Acid Type A Receptor Subunit Delta)、ニューロリギン3(NLGN3:Neuroligin 3)、SHISA9、コンタクチン-1(CNTN1:contactin-1)、NeuN、MAP2、ニューロフィラメント-L(NF-L:neurofilament light)、ニューロフィラメント-M(NF-M:neurofilament medium)、ニューロフィラメント-H(NF-H:neurofilament heavy)、シナプトフィジン(synaptophysin)、シンタキシン(syntaxin)、PSD95、L1CAM、ダブルコルチン(doublecortin)、β3-チューブリン(beta III tubulin)、NeuroD1、TBR1、スタスミン1(stathmin 1)、MPZ、NCAM、GAP43、S100、CNP酵素(CNPase)、olig 1、olig 2、olig 3、MBP、OSP、MOG、SOX10、NG2、GFAP、GLAST(EAAT1)、GLT1(EAAT2)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、S100-β、ALDH1L1、CD11b、CD45、Iba1、F4/80、CD68、CD40、ビメンチン(vimentin)、ネスチン(nestin)、PAX6、HES1、HES5、GFAP、GLAST、BLBP、TN-C、N-カドヘリン(N-cadherin)、SOX2、TBR2、MASH1(Ascl1)、vGluT1、vGluT2、NMDAR、グルタミナーゼ(glutaminase)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、GABA トランスポータ1(GAT1:GABA transporter 1)、GABAB 受容体1(GABAB receptor 1)、GABAB 受容体2(GABAB receptor 2)、GAD65、GAD67、チロシンヒドロキシラーゼ(TH:tyrosine hydroxylase)、ドーパミントランスポータ(DAT:dopamine transporter)、FOXA2、GIRK2、Nurr1、LMX1B、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH:tryptophan hydroxylase)、セロトニントランスポータ(serotonin transporter)、Pet1、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:choline acetyl transferase)、小胞アセチルコリントランスポータ(VAChT:vesicular acetylcholine transporter)、アセチルコリンエステラーゼ(AchE:acetylcholinesterase)から選択される1種又は2種以上であり、
好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーは中枢神経系由来の細胞外小胞の表面に位置するマーカーであり、
さらに好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーはL1CAM、SHISA9、CNP酵素、GLT1(EAAT2)から選択される1種又は2種以上である、前記項45~49のいずれか1項に記載の組成物。
51. 前記中枢神経系疾患関連マーカーは、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、プリオンタンパク質から選択される1種又は2種以上である、前記項45~50のいずれか1項に記載の組成物。
52. 前記中枢神経系由来マーカーを標的とする抗体及び前記中枢神経系疾患関連マーカーを標的とする抗体は標識した抗体であり、好ましくは、前記標識は蛍光標識、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識から選択される1種又は2種以上である、前記項45~51のいずれか1項に記載の組成物。
【0018】
53. 被験者の中枢神経系疾患を検出するキットであって、
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬と、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬と、を含む、キット。
54. 前記被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬及び被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬は項45~52のいずれか1項に記載の組成物である、前記項53に記載のキット。
55. 前記被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬は中枢神経系由来マーカーを標的とするプライマー又はプローブであり、
前記被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬は中枢神経系疾患関連マーカーを標的とするプライマー又はプローブである、前記項53に記載のキット。
56. 被験者の生体サンプルを取得する試薬と装置、好ましくは、被験者の細胞外小胞を取得する試薬と装置をさらに含む、前記項53に記載のキット。
57. 前記中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上である、前記項53に記載のキット。
58. 前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含む、前記項57に記載のキット。
59. 前記変性性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む、前記項58に記載のキット。
【発明の効果】
【0019】
本願の方法、システム、キット及び組成物によれば、被験者の末梢体液だけでも、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断することができる。
本願の方法、システム、キット及び組成物によれば、末梢体液から中枢神経系疾患変化を反映できるバイオマーカーを効果的に濃縮し、かつ特異的に標識することができ、末梢体液中の疾患関連マーカーを直接検出する場合よりも、診断効果がより高い。
本願の方法、システム、キット及び組成物によれば、末梢体液を効果的に利用して検出を行い、これによって、被験者の脳脊髄液を侵襲的に取得することを回避し、被験者からのサンプリングのリスクを大幅に低減させ、検出し難さを大幅に低減させ、検出の臨床的な使用及び普及を大きく促進する。
本願の方法、システム、キット及び組成物によれば、中枢神経系由来マーカーと疾患関連マーカーを同時に検出することができ、サンプルの検出時間を短縮させ、より効率的かつ簡便にする。
本願のカギは二重マーカー及び/又は多重マーカーを用いた検出方法及びシステムであり、二重マーカー及び/又は多重マーカーの同時検出が可能であり、すなわちマーカーを利用して生体サンプル、特に細胞外小胞中の中枢神経系由来の部分を確認し、これに基づいて、疾患関連マーカーを利用し、このように共検出の結果として、疾患の診断、鑑別診断、追跡及び薬品評価に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1Aは、実施例1において、血漿中の単一標識SHISA9タンパク質陽性細胞外小胞の、細胞外小胞総数に対する比に関しては、60~100nmの粒径、100~150nmの粒径及び全粒径範囲で、AD群と健常対照群(CT群)のいずれにおいても、有意差が認められる(**:p<0.01)ことを示している。
【
図1B】
図1Bは、実施例1において、血漿中の単一標識p-tau217タンパク質陽性細胞外小胞の、細胞外小胞総数に対する比に関しては、60~100nmの粒径、及び全粒径範囲で、AD群とCT群のいずれにおいても、非常に大きな有意差が認められ(****:p<0.0001)、100~150nmの粒径範囲で、AD群とCT群のいずれにおいても、有意差が認められる(**:p<0.01)ことを示している。
【
図1C】
図1Cは、実施例1において、血漿中のSHISA9タンパク質-p-tau217タンパク質二重陽性細胞外小胞の、細胞外小胞総数に対する比に関しては、100~150nmの粒径範囲、及び全粒径範囲で、AD群とCT群のいずれにおいても、非常に大きな有意差が認められる(***:p<0.001)ことを示している。
【
図1D】
図1Dは、実施例1において、受信者動作特性曲線(ROC:receiver operating characteristic curve)分析の結果、SHISA9タンパク質一重マーカーは、60~100nmの粒径範囲での曲線下面積(area under curve, AUC)が0.749であり、SHISA9タンパク質とp-tau217タンパク質の二重マーカーは、100~150nmの粒径範囲でのAUCが0.890であり、ロジスティック回帰分析Enter方法によりSHISA9 60~100nm及びSHISA9+ p-tau217 100~150nmデータを導入すると、AUCは0.891であることを示している。
【
図1E】
図1Eは、実施例1において、ROC分析の結果、p-tau217タンパク質一重マーカーは、60~100nmの粒径範囲でのAUCが0.877、SHISA9タンパク質とp-tau217タンパク質の二重マーカーは100~150nmの粒径範囲のAUCが0.890であり、ロジスティック回帰分析Enter方法によりp-tau217 60~100nm及びSHISA9+ p-tau217 100~150nmデータを導入すると、AUCは0.910であることを示している。
【
図2A】
図2Aは、実施例2において、血漿中の単一標識GLT1タンパク質陽性細胞外小胞の数及び単一標識α-synタンパク質(syn211とMJFR14は全て抗α-synタンパク質抗体である)陽性細胞外小胞の数を示している。
【
図2B-C】
図2BおよびCは、実施例2において、血漿中の単一標識GLT1タンパク質又はα-synタンパク質陽性細胞外小胞の数、GLT1タンパク質-α-synタンパク質二重陽性細胞外小胞の数を示している。
【
図3】
図3AおよびBは、実施例2において、血漿中のGLT1タンパク質-α-synタンパク質二重陽性細胞外小胞の数について、PD群ではMSA群とCT群よりも有意に高く(***:p<0.001)、MSA群とCT群との間で有意差が認められないことを示している。
【
図4A】
図4Aは、実施例3において、血漿中のCNPaseタンパク質陽性細胞外小胞の数について、MSA群とPD群との間で有意差が認められず、MSA群とHC群との間で有意差が認められる(*:p<0.05)ことを示している。
【
図4B】
図4Bは、実施例3において、血漿中のCNPaseタンパク質-α-synタンパク質(抗MJFR14抗体標識)二重陽性細胞外小胞の数について、MSA群、PD群及びHC群の間で有意差が認められないことを示している。
【
図4C】
図4Cは、実施例3において、血漿中のCNPaseタンパク質-α-synタンパク質二重陽性細胞外小胞の数を血漿中の細胞外小胞総数で正規化したところ、MSA群とHC群、MSA群とPD群との間で有意差が認められる(*:p<0.05)ことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施例をさらに詳細に説明する。図面において本発明の具体的な実施例が示されているが、本発明は各種の形態で実施されてもよく、ここでの実施例に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、これらの実施例は本発明をより完全に理解し、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供されるものである。
【0022】
なお、明細書及び特許請求の範囲において特定の用語が特定の構成要素を指すために使用される。当業者によって明らかなように、技術者が異なる名詞を利用して同一の構成要素を記載してもよい。本明細書及び特許請求の範囲では、構成要素は名詞の相違により区別されるのではなく、機能の違いを区別の原則とする。明細書及び特許請求の範囲を通じて使用される「包含」又は「含む」はオープンな用語であるので、「を含むが、これに限定されない」として解釈されるべきである。以下の明細書では本発明を実施する好適な実施形態が記載されているが、前記説明は明細書の一般的な原則を目的とし、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の特許範囲は添付の特許請求の範囲により定められる。
【0023】
本願の1つの特定実施形態では、本願は、中枢神経系疾患を診断する方法であって、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出するステップと、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出するステップと、中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーの検出結果に基づいて被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断するステップと、を含む方法に関する。
【0024】
本願の1つの特定実施形態では、本願は、中枢神経系疾患を診断する方法であって、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出するステップと、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出するステップと、中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーの検出結果に基づいて被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断するステップと、を含み、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーの検出と被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーの検出は同時に行われる方法に関する。
【0025】
本願の1つの特定実施形態では、本願は、中枢神経系疾患を診断するシステムであって、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する第1検出モジュールと、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する第2検出モジュールと、第1検出モジュール及び第2検出モジュールのそれぞれによって取得された中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーの検出結果に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断する診断モジュールと、を含むシステムに関する。
【0026】
本願の1つの特定実施形態では、本願は、中枢神経系疾患を診断するシステムであって、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する第1検出モジュールと、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する第2検出モジュールと、第1検出モジュール及び第2検出モジュールのそれぞれによって取得された中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーの検出結果に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断する診断モジュールと、を含むシステムに関する。前記第1検出モジュール及び前記第2検出モジュールは被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーの検出と被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーの検出とを同時に行い、又は前記第1検出モジュール及び前記第2検出モジュールは、同一モジュールとして、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーと被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを同時に検出する。
【0027】
前記の通り、本願の方法及びシステムにおいて、本発明者らは新しい方法及びシステムを開発し、すなわち、異なる作用を有する二重マーカー及び/又は多重マーカーを用いて検出し、特にこのような二重マーカー及び/又は多重マーカーを用いて同時検出を行うことができ、これにより、末梢体液だけでも中枢神経系疾患を効果的に検出することができる。このような検出方法及びシステムでは、患者の脳脊髄液を抽出する必要がないため、患者のサンプリングのリスクを大幅に低減させる。また、中枢系由来のマーカーと検出対象疾患に関連するマーカーを標識する二重標識及び/又は多重標識を採用するため、検出精度を大幅に向上させ、さらに同時検出を行うと、全体の検出効率を高めることもできる。一方、従来の他の方法では、診断用の生体サンプルを取得するのに複雑な抽出、濃縮や精製ステップなどが必要である。本願は、操作ステップを簡素化し、中枢神経系由来のマーカーを革新的に利用して由来を表記し、疾患関連マーカーと組み合わせることにより、疾患検出の精度や効率の向上を図る。
【0028】
さらに、本願の方法は、被験者の生体体液を取得して前処理し、生体体液中の生体サンプルを濃縮するステップをさらに含み、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出することは、被験者の濃縮生体サンプル中の中枢神経系由来マーカーを検出することであり、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出することは被験者の濃縮生体サンプル中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出することである。
【0029】
さらに、本願の方法は、中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの数を統計するステップ、及び/又は中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの粒径を測定するステップと、前記生体サンプルの数及び/又は前記生体サンプルの粒径に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断するステップと、をさらに含む。具体的には、通常、中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルは二重陽性生体サンプルと呼ばれ、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かは二重陽性生体サンプルの数及び/又は粒径に基づいて診断される。
【0030】
さらに、本願のシステムは、被験者の生体体液を取得して前処理し、生体体液中の生体サンプルを濃縮する濃縮モジュールをさらに含み、第1検出モジュール及び第2検出モジュールは被験者の濃縮生体サンプル中の中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーを検出する。
【0031】
さらに、本願のシステムは、中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの数を統計する数量統計モジュール、及び/又は、中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの粒径を測定する粒径測定モジュールと、前記生体サンプルの数及び/又は前記生体サンプルの粒径に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断する診断モジュールと、をさらに含む。具体的には、通常、中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルは二重陽性生体サンプルと呼ばれ、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かは二重陽性生体サンプルの数及び/又は粒径に基づいて診断される。
【0032】
本願はまた、中枢神経系由来マーカーを標的とする抗体と、中枢神経系疾患関連マーカーを標的とする抗体と、を含む中枢神経系疾患を検出する組成物に関する。
【0033】
本願はまた、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬と、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬と、を含む被験者の中枢神経系疾患を検出するキットに関する。
【0034】
1つの特定実施形態では、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬及び被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬は本願に記載の上記組成物である。
【0035】
1つの特定実施形態では、前記被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬は中枢神経系由来マーカーを標的とするプライマー又はプローブであり、前記被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬は中枢神経系疾患関連マーカーを標的とするプライマー又はプローブである。
【0036】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、生体体液は血液、血清、血漿、唾液、尿、リンパ液、精液又は乳汁である。好ましい生体体液は血液、血清、血漿、唾液又は尿である。被験者の生体体液を取得する方法は当業者に公知の任意の方法であってもよい。当業者は選択される生体体液の取得方法によって被験者から取得してもよい。
【0037】
1つの特定実施形態では、本願の生体サンプルは細胞外小胞である。本明細書に係る細胞外の小胞(EV:Extracellular Vesicles、細胞外小胞とも呼ばれる)は、細胞膜から脱落した又は細胞から分泌された二重膜構造の小胞状の小体であり、直径が40nm~1000nmである。細胞外小胞は主に微小小胞体(MV:Microvesicles)とエクソソーム(Ex:Exosomes)から構成され、微小小胞体は細胞の活性化、損傷又はアポトーシス後に細胞膜から脱落した直径約100nm~1000nmの微小小胞である。エクソソーム(Exosomes)は細胞内の多胞体(Multivesicular Bodies)が細胞膜と融合してエクソソームの形態として細胞外に放出され、直径が約30~150nmであり、多くの異なるタイプの細胞により放出され、細胞間通信、抗原提示、タンパク質や核酸移動など、様々な細胞機能を発揮することができる。細胞外小胞は細胞培養上清及び各種の体液(血液、リンパ液、唾液、尿、精液、乳汁)に広く存在しており、細胞由来の複数の関連タンパク質、脂質、DNA、mRAN、miRNAなどを持っており、細胞間通信、細胞移動、血管新生や免疫調節などのプロセスに関与する。1つの特定実施形態では、好ましくは、前記細胞外小胞はニューロン由来の細胞外小胞、アストロサイト由来の細胞外小胞、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞又はミクログリア由来の細胞外小胞である。
【0038】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、被験者の生体体液を取得して前処理し、生体体液中の生体サンプルを濃縮し、特に細胞外小胞を取得する方法は遠心分離、超遠心分離、限外ろ過管によるろ過、重合沈降又は特異的抗体捕捉であってもよい。本明細書では、遠心分離、超遠心分離、限外ろ過管によるろ過、重合沈降又は特異的抗体捕捉は全て当業者が理解できる意味であり、当業者は取得対象の細胞外小胞によって適切な方法を選択してもよい。
【0039】
本願の方法又はシステムの一実施形態では、超遠心分離方法を用いて、生体体液から細胞外小胞、特にニューロン由来の細胞外小胞、アストロサイト由来の細胞外小胞、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞又はミクログリア由来の細胞外小胞を濃縮する。
【0040】
本願の方法又はシステムの一実施形態では、通常の遠心分離又は限外ろ過管によるろ過によって、細胞外小胞、特にニューロン由来の細胞外小胞、アストロサイト由来の細胞外小胞、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞又はミクログリア由来の細胞外小胞を濃縮する。
【0041】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上である。
【0042】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含む。さらに、前記変性性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む。
【0043】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系疾患はアルツハイマー病である。
【0044】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系疾患はパーキンソン病である。
【0045】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカー及び/又は中枢神経系疾患関連マーカーはそれぞれタンパク質、核酸、脂質から選択される1種又は2種又は3種類である。
【0046】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーは全てタンパク質である。
【0047】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーは全て核酸である。
【0048】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーは全て脂質である。
【0049】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーはタンパク質であり、中枢神経系疾患関連マーカーは核酸である。
【0050】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーは核酸であり、中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質である。
【0051】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーはタンパク質であり、中枢神経系疾患関連マーカーは脂質である。
【0052】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーは核酸であり、中枢神経系疾患関連マーカーは脂質である。
【0053】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーは脂質であり、中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質である。
【0054】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーは脂質であり、中枢神経系疾患関連マーカーは核酸である。
【0055】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーは、ニューロン又は細胞として、成熟ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア、未成熟ニューロン、シュワン細胞、放射状グリア細胞、中間型前駆細胞、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロンに由来するバイオマーカーである。本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、好ましくは、中枢神経系由来マーカーはニューロン由来のバイオマーカーである。本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、好ましくは、中枢神経系由来マーカーはアストロサイト及び/又はオリゴデンドロサイト由来のバイオマーカーである。
【0056】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーは中枢神経系由来の細胞外小胞の表面に位置するマーカーである。
【0057】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来のマーカーは、Gタンパク質共役型受容体162(GPR162:G Protein-Coupled Receptor 162)、過分極活性化環状ヌクレオチドゲートカリウムチャネル1(HCN1:Hyperpolarization Activated Cyclic Nucleotide-Gated Potassium Channel 1)、γ-アミノ酪酸A型受容体サブユニットδ(GABRD:Gamma-Aminobutyric Acid Type A Receptor Subunit Delta)、ニューロリギン3(NLGN3:Neuroligin 3)、SHISA9、コンタクチン-1(CNTN1:contactin-1)、NeuN、MAP2、ニューロフィラメント-L(NF-L:neurofilament light)、ニューロフィラメント-M(NF-M:neurofilament medium)、ニューロフィラメント-H(NF-H:neurofilament heavy)、シナプトフィジン(synaptophysin)、シンタキシン(syntaxin)、PSD95、L1CAM、ダブルコルチン(doublecortin)、β3-チューブリン(beta III tubulin)、NeuroD1、TBR1、スタスミン1(stathmin 1)、MPZ、NCAM、GAP43、S100、CNP酵素(CNPase)、olig 1、olig 2、olig 3、MBP、OSP、MOG、SOX10、NG2、GFAP、GLAST(EAAT1)、GLT1(EAAT2)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、S100-β、ALDH1L1、CD11b、CD45、Iba1、F4/80、CD68、CD40、ビメンチン(vimentin)、ネスチン(nestin)、PAX6、HES1、HES5、GFAP、GLAST、BLBP、TN-C、Nカドヘリン(N-cadherin)、SOX2、TBR2、MASH1(Ascl1)、vGluT1、vGluT2、NMDAR、グルタミナーゼ(glutaminase)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、GABA トランスポータ1(GAT1:GABA transporter 1)、GABAB 受容体1(GABAB receptor 1)、GABAB 受容体2(GABAB receptor 2)、GAD65、GAD67、チロシンヒドロキシラーゼ(TH:tyrosine hydroxylase)、ドーパミントランスポータ(DAT:dopamine transporter)、FOXA2、GIRK2、Nurr1、LMX1B、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH:tryptophan hydroxylase)、セロトニントランスポータ(serotonin transporter)、Pet1、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:choline acetyl transferase)、小胞アセチルコリントランスポータ(VAChT:vesicular acetylcholine transporter)、アセチルコリンエステラーゼ(AchE:acetylcholinesterase))から選択される1種又は2種以上である。
【0058】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーはL1CAM、SHISA9、CNP酵素、GLT1(EAAT2)から選択される1種又は2種以上である。これらのマーカーのうち、L1CAM及びSHISA9はニューロン由来のバイオマーカーであり、GLT1(EAAT2)はアストロサイト由来のバイオマーカーであり、CNP酵素はオリゴデンドロサイト由来のバイオマーカーである。
【0059】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、成熟ニューロン由来のバイオマーカーはL1CAM、SHISA9、コンタクチン-1(CNTN1:contactin-1)、NeuN、MAP2、ニューロフィラメント-L(NF-L:neurofilament light)、ニューロフィラメント-M(NF-M:neurofilament medium)、ニューロフィラメント-H(NF-H:neurofilament heavy)、シナプトフィジン(synaptophysin)、シンタキシン(syntaxin)、PSD95などを含む。
【0060】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、オリゴデンドロサイト(Oligodendrocytes)由来のバイオマーカーは、CNP酵素(CNPase)、olig 1、olig 2、olig 3、MBP、OSP、MOG、SOX10、NG2などを含む。本明細書では、CNP酵素は2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼである。
【0061】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、アストロサイト(Astrocytes)由来のバイオマーカーはGFAP、GLAST(EAAT1)、GLT1(EAAT2)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)、S100-β、ALDH1L1などを含む。本明細書では、GLT1(EAAT2)はグルタミン酸トランスポータ1である。GLT1(EAAT2)は中枢神経系内のアストロサイト特異的グルタミン酸トランスポータであり、アストロサイトのマーカーの1つである。
【0062】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、ミクログリア(Microglia)由来のバイオマーカーはCD11b、CD45、Iba1、F4/80、CD68、CD40などを含む。
【0063】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、未成熟ニューロン(Immature neurons)由来のバイオマーカーはダブルコルチン(doublecortin)、β3-チューブリン(beta III tubulin)、NeuroD1、TBR1、スタスミン1(stathmin 1)などを含む。
【0064】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、シュワン細胞(Schwann cells)由来のバイオマーカーはMPZ、NCAM、GAP43、S100などを含む。
【0065】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、放射状グリア細胞(Radial glia)由来のバイオマーカーはビメンチン(vimentin)、ネスチン(nestin)、PAX6、HES1、HES5、GFAP、GLAST、BLBP、TN-C、Nカドヘリン(N-cadherin)、SOX2などを含む。
【0066】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、中間型前駆細胞(Intermediate progenitors)由来のバイオマーカーはTBR2、MASH1(Ascl1)などを含む。
【0067】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、グルタミン酸作動性ニューロン(Glutamatergic neurons)由来のバイオマーカーはvGluT1、vGluT2、NMDAR、グルタミナーゼ(glutaminase)、グルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase)などを含む。
【0068】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、GABA作動性ニューロン(GABAergic neurons)由来のバイオマーカーはGABA トランスポータ1(GAT1:GABA transporter 1)、GABAB 受容体1(GABAB receptor 1)、GABAB 受容体2(GABAB receptor 2)、GAD65、GAD67などを含む。
【0069】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、ドーパミン作動性ニューロン(Dopaminergic neurons)由来のバイオマーカーはチロシンヒドロキシラーゼ(TH:tyrosine hydroxylase)、ドーパミントランスポータ(DAT:dopamine transporter)、FOXA2、GIRK2、Nurr1、LMX1Bなどを含む。
【0070】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、セロトニン作動性ニューロン(Serotonergic neurons)由来のバイオマーカーはトリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH:tryptophan hydroxylase)、セロトニントランスポータ(serotonin transporter)、Pet1などを含む。
【0071】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、コリン作動性ニューロン(Cholinergic neurons)由来のバイオマーカーはコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:choline acetyl transferase)、小胞アセチルコリントランスポータ(VAChT:vesicular acetylcholine transporter)、アセチルコリンエステラーゼ(AchE:acetylcholinesterase)などを含む。
【0072】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、前記タンパク質は、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、プリオンタンパク質から選択される1種又は2種以上である。
【0073】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、アルツハイマー病(AD)に関連するバイオマーカーは、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0074】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、パーキンソン病(PD)及び多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、パーキンソン病認知症(PDD)、およびレビー小体型認知症(DLB)を含むパーキンソン症候群に関連するバイオマーカーは、α-synucleinタンパク質、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質を含むが、これらに限定されない。α-シヌクレインタンパク質(α-synタンパク質)はレビー小体(Lewy body)の主なタンパク質成分であり、多くの研究から明らかなように、パーキンソン病の発症に緊密に関連している。
【0075】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、プリオン病に関連するバイオマーカーはプリオンタンパク質である。
【0076】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系疾患関連マーカーは核酸であり、前記核酸は、アルツハイマー病(AD)のバイオマーカーであるDNA又はRNA、パーキンソン病(PD)及びパーキンソン症候群(例えば、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型認知症(DLB))のバイオマーカーであるDNA又はRNAから選択される1種又は2種以上である。
【0077】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記ADのバイオマーカーであるDNA又はRNAは、遺伝子UBAP2L、YBX1、SERF2、UBE2B、RPL10A、H3F3AP4、PPP2CA、NMD3、RNF7、RPLP0、SPARC、WTAP、HNRNPU、LINC00265、INMT、SLC35E2、CT60、SYNCRIP、RGS2、SMC6、ARSA、SPDYE7P、SMIM17、TRAF3IP2-AS1、KCNC2、SLC24A1、HLCS、GOSR1、MN1、MGAT5、NBPF14、FBXO31、WDR52、TBC1D2B、ZNF648、NBPF16、PAGR1、AQP2、PRKCI、SCN2B、DPYSL3、TMEM26、TSPAN11、ELL2、FAM186A、CD59、THSD4、GOLGA6B、ARHGEF5、PKD1、BPTF、FLG、POM121L10P、NXPH3、H3F3A、SH3TC2、GGCX、及びGREB1に関連するDNA又はRNAを含む。被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬は中枢神経系由来マーカーを標的とするプライマー又はプローブであり、上記DNA又はRNAを標的とするプライマー又はプローブである。
【0078】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記PDのバイオマーカーであるDNA又はRNAは、遺伝子BLOC1S1、UBE2L3、RNF149、FAM89B、LCE6A、NT5DC2、PPP1CC、CCL5、HDLBP、HNRNPAB、NXN、SLC9A4、EIF2AK1、PAPOLA、TRIM50、SIX4、RAB3IP、VANGL2、DHRSX、FOXP4、SYNM、ZNF543、ATF6、LOC100132832、及びBLOC1S1-RDH5に関連するDNA又はRNAを含む。被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬は中枢神経系由来マーカーを標的とするプライマー又はプローブであり、上記DNA又はRNAを標的とするプライマー又はプローブである。
【0079】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーはタンパク質であり、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系由来マーカーに特異的に反応する標識抗体と反応させることと、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系由来マーカーの存在及び含有量を判断することとを含み、前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系疾患関連マーカーに特異的に反応する標識抗体と反応させることと、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系疾患関連マーカーの存在及び含有量を判断することとを含む。さらに、特定実施形態では、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系由来マーカーに特異的に反応する標識抗体と、中枢神経系疾患関連マーカーに特異的に反応する標識抗体との両方と反応させ、これにより、二重マーカー及び/又は多重マーカー陽性細胞外小胞を効率的に追跡することができる。
【0080】
さらに、本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプル(例えば細胞外小胞)の数を統計する、及び/又は中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプル(例えば細胞外小胞)の粒径を測定するステップをさらに含み、これにより、二重マーカー及び/又は多重マーカー陽性生体サンプル、例えば細胞外小胞を追跡した後、このような生体サンプルの数及び/又はその粒径を十分に考慮して、これらの指標の結果と組み合わせて被験者の罹患リスクを分析することができる。
【0081】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記標識は蛍光標識、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識から選択される1種又は2種以上である。
【0082】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、蛍光標識物はQdot525、Qdot545、Qdot565、Qdot585、Qdot605、Qdot625、Qdot655、Qdot705、Qdot800、Alexa350、Alexa 405、Alexa488、Alexa 532、Alexa546、Alexa555、Alexa 568、Alexa 594、Alexa647、Alexa700、Alexa750から選択される1種又は2種以上である。
【0083】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識は全て当業者に公知の方法を用いてもよい。
【0084】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーは核酸であり、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を溶解し、DNA又はRNAプローブ又はシーケンシング技術によって中枢神経系由来の核酸の存在及び含有量を検出することを含み、前記中枢神経系疾患関連マーカーは核酸であり、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出するステップは、被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を溶解し、DNA又はRNAプローブ又はシーケンシング技術によって中枢神経系疾患に関連する核酸の存在及び含有量を検出することを含む。さらに、特定実施形態では、好ましくは、被験者の細胞外小胞について、DNA及びRNAプローブを利用して中枢神経系由来の核酸の存在及び含有量と中枢神経系疾患に関連する核酸の存在及び含有量を同時に検出することによって、二重マーカー及び/又は多重マーカー陽性細胞外小胞を効率的に追跡する。
【0085】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系由来マーカーの存在及び含有量を判断することは、例えばイムノアッセイを採用してもよく、例えばELISA、Luminex、MSD、Quanterix、Singulex、eCL8000、Cobasはタンパク質バイオマーカーを測定するのに好適な方法である。
【0086】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの数を統計する、及び/又は中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの粒径を測定する検出装置は、粒度計(Granulometer)、ナノフローサイトメータを含むが、これらに限定されない。例えば、ナノ粒子追跡技術を用いて細胞外小胞の粒径を検出し、ナノフロー分析技術を用いて上記二重陽性細胞外小胞の数を検出する。
【0087】
本願の方法、システム、組成物又はキットの特定実施形態では、核酸をバイオマーカーとする場合、核酸バイオマーカーを測定するに先立って、生体体液又は細胞外小胞を溶解する必要がある。核酸検出は当業者に公知の任意の方法、例えば、DNA又はRNAプローブ、又は公知のいずれかのシーケンシング技術によって行われてもよい。
【0088】
本願の1つの特定実施形態では、中枢神経系由来マーカーを標的とする抗体と、中枢神経系疾患関連マーカーを標的とする抗体と、を含む中枢神経系疾患を検出する組成物に関する。
【0089】
本願の1つの特定実施形態では、前記中枢神経系由来マーカーを標的とする抗体及び前記中枢神経系疾患関連マーカーを標的とする抗体は標識抗体であり、好ましくは、前記標識は蛍光標識、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識から選択される1種又は2種以上である。
【0090】
本願の1つの特定実施形態では、中枢神経系疾患を検出する組成物であって、SHISA9タンパク質を標的とする抗体と、リン酸化tau217(p-tau217)タンパク質を標的とする抗体と、を含む。
【0091】
本願の1つの特定実施形態では、中枢神経系疾患を検出する組成物であって、GLT1(EAAT2)タンパク質を標的とする抗体と、tauタンパク質を標的とする抗体と、を含む。本願の1つの特定実施形態では、中枢神経系疾患を検出する組成物は、GLT1(EAAT2)タンパク質を標的とする抗体と、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)を標的とする抗体と、を含む。本願の1つの特定実施形態では、中枢神経系疾患を検出する組成物であって、GLT1(EAAT2)タンパク質を標的とする抗体と、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質を標的とする抗体と、を含む。本願の1つの特定実施形態では、中枢神経系疾患を検出する組成物であって、GLT1(EAAT2)タンパク質を標的とする抗体と、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質を標的とする抗体と、を含む。本願の1つの特定実施形態では、中枢神経系疾患を検出する組成物であって、GLT1(EAAT2)タンパク質を標的とする抗体と、リン酸化tau(p-tau)タンパク質を標的とする抗体と、を含む。
【0092】
本願の1つの特定実施形態では、中枢神経系疾患を検出する組成物であって、CNP酵素(CNPase)を標的とする抗体と、tauタンパク質を標的とする抗体と、を含む。本願の1つの特定実施形態では、中枢神経系疾患を検出する組成物であって、CNP酵素(CNPase)を標的とする抗体と、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)を標的とする抗体と、を含む。
【0093】
本願は、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬と、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬とを含む、被験者の中枢神経系疾患を検出するキットに関する。前記被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬及び被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬は本願の上記組成物である。
【0094】
本願は、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬と、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬とを含む、被験者の中枢神経系疾患を検出するキットに関する。前記被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬は中枢神経系由来マーカーを標的とするプライマー又はプローブであり、前記被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬は中枢神経系疾患関連マーカーを標的とするプライマー又はプローブである。
【0095】
本願に係るキットでは、被験者の生体サンプルを取得する試薬と装置、好ましくは、被験者の細胞外小胞を取得する試薬と装置をさらに含む。細胞外小胞を取得する試薬と装置は当業者に公知の一般的なキットと装置を含んでもよい。
【0096】
本願の方法、システム、キット及び組成物によれば、被験者の末梢体液だけで被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断することができる。例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、多系統萎縮症などの疾患の診断や鑑別診断を効果的に行い、健常対照や他の疾患と効果的に区別することができる。
【0097】
本願の方法、システム、キット及び組成物によれば、末梢体液から中枢神経系疾患変化を反映できるバイオマーカーを効果的に濃縮し、かつ特異的に標識することができ、末梢体液中の疾患関連マーカーを直接検出する場合よりも、診断効果がより高い。例えば、L1CAMタンパク質、SHISA9タンパク質、GLT1タンパク質、CNPaseタンパク質などの中枢神経系由来の細胞外小胞バイオマーカーを生かして、中枢神経系疾患変化を反映できるバイオマーカーと組み合わせることができ、そして、好ましい形態では、L1CAMタンパク質、SHISA9タンパク質、GLT1タンパク質、CNPaseタンパク質などの中枢神経系由来の細胞外小胞バイオマーカーとAβ1-40タンパク質、Aβ1-42タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレイン(α-syn)タンパク質などの中枢神経系疾患変化を反映できるバイオマーカーと、を同時に検出し、同時検出結果に基づいて診断を行うことができる。2種のマーカーの二重陽性細胞外小胞の数及び/又はこのような細胞外小胞の粒径を同時に検出して診断を行ってもよい。例えば2種のマーカーの二重陽性細胞外小胞の、あるマーカー陽性細胞外小胞又は細胞外小胞の総数に対する比を補助として算出してもよく、これにより、診断効果をさらに高めることができる。
【0098】
本願の方法、システム、キット及び組成物によれば、末梢体液を効果的に利用して検出を行い、これによって、被験者の脳脊髄液を侵襲的に取得することを回避し、被験者からのサンプリングのリスクを大幅に低減させ、検出し難さを大幅に低減させ、検出の臨床的な使用及び普及を大きく促進する。本願の方法、システム、キット及び組成物によれば、中枢神経系由来マーカーと疾患関連マーカーを同時に検出することができ、サンプルの検出時間を短縮させ、より効率的かつ簡便にする。
【0099】
本願の方法、システム、組成物又はキットによれば、SHISA9タンパク質とリン酸化tau217(p-tau217)タンパク質を二重マーカーとして検出を効果的に行うことで、アルツハイマー病患者を健常人群と区別することができる。
【0100】
本願の方法、システム、組成物又はキットによれば、GLT1タンパク質とα-synタンパク質を二重マーカーとして検出を効果的に行うことで、パーキンソン病患者、多系統萎縮症患者を健常人群と区別することができる。
【0101】
本願の方法、システム、組成物又はキットによれば、CNPaseタンパク質とα-synタンパク質を二重マーカーとして検出を効果的に行うことで、パーキンソン病患者、多系統萎縮症患者を健常人群と区別することができる。
【実施例】
【0102】
実験方法1:
(a)末梢体液前処理-細胞外小胞の超遠心分離及び濃縮
1. 被験者由来の血漿を37℃恒温インキュベータで10~15分間溶解し、均一にボルテックス混合する。
2. 4℃の条件下で、10,000g回転数の遠心分離を30分間行う。
3. 遠心分離後の血漿100μLを超遠心分離管に吸引し、PBS緩衝液(0.22μmろ過)900μLを加え、均一に混合する。
4. 4℃の条件下で、100,000g回転数の超遠心分離を1時間行う。
5. 上清を捨てて、約100μLの沈殿を残す。
6. PBS緩衝液(0.22μmろ過)200μLを加え、200μLピペットで200回ピペッティングし、再懸濁させる。
7. 再懸濁液体にPBS緩衝液(0.22μmろ過)700μLを加え、均一に混合する。
8. 4℃の条件下で、100,000g回転数の超遠心分離を1時間行う。
9. 上清を捨てて、約50μLの沈殿を残す。
10. PBS緩衝液(0.22μmろ過)100μLを加え、200μLピペットを用いて200回ピペッティングし、再懸濁させ、使用時まで保管する。
(b)標識方法によるバイオマーカー検出用の抗体の標識
使用される試薬:
Alexa蛍光標識を用いて、中枢神経系由来の細胞外小胞バイオマーカーを標的とする抗体とアルツハイマー病バイオマーカーを標的とする抗体を標識する。中枢神経系由来の細胞外小胞バイオマーカーを標的とする抗体はSHISA9ポリクローナル抗体である。アルツハイマー病バイオマーカーを標的とする抗体はp-tau217ポリクローナル抗体である。ここで、標識した試薬について、SHISA9ポリクローナルの抗体標識は、Zenon(商標) Alexa Fluor(商標) 405として購入され、p-tau217ポリクローナルの抗体標識はZenon(商標) Alexa Fluor(商標) 488として購入される。
1. サンプルのブロック
1.1 上記方法によって超遠心分離した細胞外小胞10μLを1.5mL遠心分離管又はPCR管に入れる。
1.2 等体積の2%BSA溶液(0.22μmろ過)を加え、均一に混合する。
1.3 室温でインキュベートして1時間ブロックする。
1.4 PBS緩衝液(0.22μmろ過)10μLを加え、ブロック後のサンプルを希釈する。
2. サンプルの標識
本実験は神経特異的マーカー抗体SHISA9、疾患関連マーカー抗体p-tau217に関し、Zenon(商標) Alexa Fluor(商標) 405によりSHISA9を標識し、Zenon(商標) Alexa Fluor(商標) 488によりp-tau217を標識する。
2.1 PBS緩衝液中の抗体(0.2μg/μLを5μLPBSに)1μgを用意する。
2.2 染料5μLを抗体(1μg)に加え、均一に混合した後、室温(25℃)、遮光下20分間インキュベートする。
2.3 3.2ステップの溶液に遮断剤(IgG遮断剤を1μg/μLに希釈したもの)3μL(3μg)を加え、均一に混合した後、室温(25℃)、遮光下10分間インキュベートする。
2.4 PBS緩衝液(0.22μmろ過)を用いて上記混合物を全体積50μLまで希釈する。
2.5 Zenon(商標) Alexa Fluor(商標) 488標識p-tau217 5μLをステップ(a)で製造されたサンプルに加え、均一に混合した後、室温(25℃)、遮光下5分間インキュベートする。
2.6 Zenon(商標) Alexa Fluor(商標) 405標識SHISA9 3μLをステップ2.5のサンプルに加え、均一に混合した後、4℃、遮光下一晩インキュベートする。
3. サンプルの固定化
3.1 標識サンプルに4%PFA 20μLを加え、均一に混合した後、室温(25℃)、遮光下20分間インキュベートする。
3.2 PBS緩衝液(0.22μmろ過)170μLを用いて、固定化後のサンプルを希釈し、使用時まで保管する。
(c)検出
NanoFCMナノフローアナライザによって、標識シグナル強度と粒径分布を検出し、関連するバイオマーカーの存在及び含有量を確認する。
【0103】
実施例1
性別と年齢が一致するアルツハイマー病被験者(AD群)98例、健常対照(CT群)12例の血漿サンプルをそれぞれ採取し、上記実験方法1に従って実験を行った。
NanoFCMナノフローアナライザによって、SHISA9抗体単一蛍光標識、p-tau217抗体単一蛍光標識、SHISA9とp-tau217抗体二重蛍光標識の細胞外小胞の数をそれぞれ検出し、細胞外小胞総数に対するこれらの比を算出し、各粒径範囲の場合の各群の差を分析した。
血漿中の単一標識SHISA9タンパク質陽性細胞外小胞の、細胞外小胞総数に対する比に関しては、60~100nmの粒径、100~150nmの粒径、及び全粒径範囲では、AD群とCT群のいずれにおいても、有意差が認められ(**:p<0.01)(
図1A)、血漿中の単一標識p-tau217タンパク質陽性細胞外小胞の、細胞外小胞総数に対する比に関しては、60~100nmの粒径、及び全粒径範囲では、AD群とCT群のいずれにおいても、非常に大きい有意差が認められ(****:p<0.0001)、100~150nmの粒径範囲では、AD群とCT群において有意差が認められ(**:p<0.01)(
図1B)、血漿中のSHISA9タンパク質-p-tau217タンパク質二重陽性細胞外小胞の、細胞外小胞総数に対する比に関しては、100~150nmの粒径範囲、及び全粒径範囲では、AD群とCT群のいずれにおいても、非常に大きい有意差が認められた(***:p<0.001)(
図1C)。
受信者動作特性曲線(ROC:receiver operating characteristic curve)分析によって診断効率評価を行った結果、SHISA9タンパク質一重マーカーは、60~100nmの粒径範囲での曲線下面積(AUC:area under curve)が0.749であり、SHISA9タンパク質及びp-tau217タンパク質二重マーカーは、100~150nmの粒径範囲でのAUCが0.890であり、ロジスティック回帰分析Enter方法によってSHISA9 60~100nm及びSHISA9+p-tau217 100~150nmデータを導入すると、AUCは0.891(
図1D)である。p-tau217タンパク質一重マーカーは、60~100nmの粒径範囲でのAUCが0.877であり、SHISA9タンパク質及びp-tau217タンパク質二重マーカーは、100~150nmの粒径範囲でのAUCが0.890であり、ロジスティック回帰分析Enter方法によってp-tau217 60~100nm及びSHISA9+p-tau217 100~150nmデータを導入すると、AUCは0.910(
図1E)である。
実施例1の結果から、SHISA9タンパク質陽性細胞外小胞、p-tau217タンパク質陽性細胞外小胞、及びSHISA9タンパク質-p-tau217タンパク質二重陽性細胞外小胞は、全てアルツハイマー病診断において、特にp-tau217タンパク質陽性細胞外小胞とSHISA9タンパク質+p-tau217タンパク質二重陽性細胞外小胞とを併用して診断する場合、潜在力が高かった。
【0104】
実験方法2:
(a)末梢体液前処理-細胞外小胞の超遠心分離及び濃縮
1. 被験者の血漿を37℃水浴にて1分間かけて急速に溶解し、4℃の条件下で2,000gの遠心分離を15min行い、別の1.5mL遠心分離管に移した後、4℃で、12,000gの遠心分離を30分間行う。
2. 血漿100μLを1.5ml超遠心分離管に移し、0.22μmろ過後のPBS 900μLを加えて希釈し、4℃で、100,000gの遠心分離を30分間行う。
3. 上清800μLを慎重に捨てた後、等体積の0.22μmろ過後のPBSを加え、均一に混合した後、さらに4℃で100,000gの遠心分離を30分間行い、上清200μLを残し、ガンヘッドを用いて管壁を繰り返してピペッティングし、細胞外小胞を再懸濁させて均一に混合し、個包装して-80℃で保存する。
4. 細胞外小胞20μLを100kDa限外ろ過管に移し、0.1% Triton X-100/PBS 200μLを加え、室温で30分間インキュベートする。
5. 限外ろ過管を4℃で12,000gの遠心分離を3分間行い、0.22μmろ過後のPBS 200μLを加え、さらに遠心分離する。
6. 限外ろ過管に残った液体を新しい1.5ml遠心分離管に移し、使用時まで保管する。
(b)標識方法によるバイオマーカー検出用の抗体の標識
Alexa蛍光標識を用いて、中枢神経系由来の細胞外小胞バイオマーカーを標的とする抗体とアルツハイマー病バイオマーカーを標的とする抗体を標識する。中枢神経系由来の細胞外小胞バイオマーカーを標的とする抗体はGLT1モノクローナル抗体であり、パーキンソン病バイオマーカーを標的とする抗体はα-シヌクレイン(α-syn)モノクローナル抗体(syn211及びMJFR14)である。ここで、標識した試薬について、GLT1モノクローナル抗体の標識は、Zenon(商標) Alexa Fluor(商標) 405として購入され、α-シヌクレイン(α-syn)モノクローナル抗体の標識はZenon(商標) Alexa Fluor(商標) 488として購入される。
1. 製品の取扱書に従ってZenon(商標) Alexa Fluor(商標) 405キットを利用してGLT1抗体を標識する:5μL 蛍光二次抗体+1μg GLT1抗体を用いて、室温、遮光下5分間インキュベートした後、IgG5μLを加え、室温、避光下5分間インキュベートする。
2. サンプルごとにGLT1抗体0.2μgを加え、室温、遮光下30minインキュベートする。
3. 製品の取扱書に従ってZenon(商標) Alexa Fluor(商標) 488キットを使用してα-シヌクレインモノクローナル抗体(syn211又はMJFR14)を標識する:5μL 蛍光二次抗体+1μg α-syn抗体を用いて、室温、遮光下5分間インキュベートした後、IgG5μLを加え、室温、遮光下5分間インキュベートする。
4. サンプルごとにα-syn抗体(syn211又はMJFR14)0.2μgを加え、室温、遮光下30minインキュベートする。
5. 0.22μmろ過後のPBSを用いてサンプルを400μLまで希釈し、使用時まで保管する。
(c)検出
Apogeeナノフローアナライザによって標識シグナル強度を検出し、末梢体液中の中枢神経系由来の疾患関連バイオマーカーの存在及び含有量を確認する。
【0105】
実施例2
上記実験方法2によって、臨床コホート(パーキンソン病(PD)被験者103名、多系統萎縮症(MSA)被験者45名及び年齢と性別が一致する健常対照(CT)106名)の血漿サンプルを採取し、Apogeeナノフローサイトメータを用いた免疫蛍光標識技術により検出した。
Apogeeナノフローアナライザを用いた免疫蛍光標識技術によって、GLT1タンパク質陽性細胞外小胞、及びα-synタンパク質(syn211とMJFR14は全て抗α-synタンパク質抗体)陽性細胞外小胞(
図2A)をそれぞれ検出してもよく、GLT1タンパク質-α-synタンパク質二重陽性細胞外小胞を同時に検出してもよく、優れた信頼性及び再現性がある(
図2B及びC)。
上記実験方法2によって、臨床コホート(パーキンソン病(PD)被験者103名、多系統萎縮症(MSA)被験者45名及び年齢と性別が一致する健常対照(CT)106名)の血漿サンプルを採取し、Apogeeナノフローサイトメータを用いた免疫蛍光標識技術によって、血漿中のGLT1タンパク質-α-synタンパク質二重陽性細胞外小胞の数を検出した結果、PD群では、MSA群及びCT群よりも有意に高く(***:p<0.001)、一方、MSA群とCT群との間で有意差が認められなかった(
図3A及びB)。
GLT1タンパク質-α-synタンパク質二重陽性細胞外小胞の数は、臨床診断に用いると、PD患者と健常対照、PD患者とMSA患者を効果的に区別することができ、パーキンソン病の診断やMSA鑑別診断において、臨床的な潜在力があった。
CN106062559Bにおいて、L1CAMをマーカーとして、まず、中枢神経系由来のエクソソーム(細胞外小胞の1種、直径が約30~150nm範囲)を濃縮し、次に、Luminex検出プラットフォームを用いてエクソソーム中の関連マーカーを検出することが報告されている。
パーキンソン病患者(PD群)267名と、年齢と性別が一致する健常者対照(CT群)215名のコホートを用いて、血漿関連タンパク質マーカーα-synの検出を行い、すなわち、血漿中のα-synタンパク質を直接検出した結果、PD群とCT群との間では、統計学的差がなく(CN106062559Bの
図1及び
図2参照)、一方、抗L1CAMにより捕捉された血漿エクソソーム中のα-synタンパク質、及び血漿の総α-synタンパク質に対するこのα-synタンパク質の比は、PD群では、統計学的に有意に上昇し(**:p<0.01)(CN106062559Bの
図1及び
図2参照)、脳脊髄液中のα-synタンパク質と比較すると、差の有意性が相当した(臨床コホート:パーキンソン病患者100名、健常対照100名)(**:p<0.01)(CN106062559Bの
図1及び
図2参照)。
さらに、抗L1CAMにより捕捉された血漿エクソソーム中のα-synタンパク質の、パーキンソン病の臨床診断に対する補助潜在力を評価し、このα-synタンパク質について、Pearson相関性分析及び受信者動作特性曲線(ROC:Characteristic Operation Curve)分析を行った。その結果、抗L1CAMにより捕捉された血漿エクソソーム中のα-synタンパク質のレベルは、パーキンソンUPDRS運動スコアや疾患の重篤度とは相関性があることを見出した(r=0.176,p=0.004,Pearson相関)(CN106062559Bの
図3C参照)。エクソソーム中のα-synタンパク質の濃度(AUC=0.654、感度=70.1%、特異性=52.9%)(CN106062559Bの
図3A参照)及びこの濃度と血漿の総α-synタンパク質との比(AUC=0.657、感度=71.2%、特異性=50.0%)は全て中程度の診断効率を提供でき、脳脊髄液中のα-synタンパク質の診断効率に相当した(AUC=0.724、感度=76.8%、特異性=53.5%)(CN106062559Bの
図3B参照)。
出願番号201810136747.8の中国発明特許出願においては、臨床コホート(多系統萎縮症患者(MSA群)46名、パーキンソン病患者(PD群)49名、及び年齢と性別が一致する健常対照(CT群)50名)の血漿サンプルを採取し、Nanosightナノ粒子追跡アナライザを用いて、蛍光標識GLT1(EAAT2)細胞外小胞濃度を測定し、GLT1蛍光標識を含有する細胞外小胞濃度のPD診断における潜在力を評価した。受信者動作特性曲線分析(ROC analysis:Receiver Operating Characteristic Analysis)を行った。多系統萎縮症とパーキンソン病の鑑別診断効率を観察した結果、パーキンソン病に対する診断効率は中程度であり(AUC=0.6750、敏感性=66.00%、特異性=70.45%)、パーキンソン病と多系統萎縮症の鑑別診断効率は中程度であった(AUC=0.6948、敏感性=65.91%、特異性=78.57%)(中国出願201810136747.8の
図3参照)。
前記の通り、報告されている方法と比較すると、本願のシステム又は方法は、類似のPD診断効果を達成させ、一方、本願の方法は生体体液中の2種以上のマーカーを同時に検出するため、多重マーカーの検出により時間を短縮させ、効率を高め、臨床への適用が広くなり、使用性が期待できる。
【0106】
実験方法3:
(a)末梢体液前処理-限外ろ過及び遠心分離
1. 約100μLの被験者の血漿を37℃水浴にて溶融し、4℃の条件下で2,000gの遠心分離を15min行い、新しい1.5mL遠心分離管に移した後、4℃の条件下で、12,000gの遠心分離を30分間行う。
2. 遠心分離後の血漿上清を新しい1.5ml遠心分離管に移し、均一に混合する。
3. 100kDa限外ろ過管に0.22μmろ過後の0.1% Triton X-100/PBS 200μLを加え、次に、遠心分離後の血漿50μLを加え、室温で30分間インキュベートする。
4. インキュベート終了後、4℃の条件下で、12,000gの遠心分離を3.5分間行う。
5. 限外ろ過管に0.22μmろ過後の0.1% Triton X-100/PBS 200μLを加え、さらに、4℃の条件下で、12,000gの遠心分離を3.5分間行う。
6. ろ過後に残った部分(限外ろ過管内芯の部分)をピペットで吸引し、20μL/本で反応単位毎に必要な体積分注し、使用時まで保管する。
(b)標識方法によるバイオマーカー検出用の抗体の標識
使用される試薬:
Alexa蛍光標識によって、中枢神経系由来の細胞外小胞バイオマーカーを標的とする抗体とアルツハイマー病バイオマーカーを標的とする抗体を標識する。中枢神経系由来の細胞外小胞バイオマーカーを標的とする抗体はCNPaseモノクローナル抗体である。多系統萎縮症バイオマーカーを標的とするのはα-シヌクレイン(α-syn)モノクローナル抗体である。標識試薬について、CNPaseモノクローナル抗体の標識は、Zenon(商標) Alexa Fluor(商標) 488として購入され、α-シヌクレイン(α-syn)モノクローナル抗体の標識はZenon(商標) Alexa Fluor(商標) 405として購入される。
1. 製品の取扱書に従ってZenon(商標) Alexa Fluor(商標) 488キットを使用してCNPase抗体を標識する:5μL 蛍光二次抗体+1μg CNPase抗体を用いて、室温、遮光下15分間インキュベートした後、IgG 5μLを加え、室温、遮光下5分間インキュベートする。
2. サンプル(20μL)毎にCNPase抗体0.2μgを加え、室温、遮光下30minインキュベートする。
3. 製品の取扱書に従ってZenon(商標) Alexa Fluor(商標) 405キットを使用してα-シヌクレインモノクローナル抗体を標識する:5μL 蛍光二次抗体+1μg α-syn抗体を用いて、室温、遮光下15分間インキュベートした後、IgG 5μLを加え、室温、遮光下5分間インキュベートする。
4. サンプル(20μL)毎にα-syn抗体0.2μgを加え、室温、遮光下30minインキュベートする。
5. 0.22μmろ過後のPBSを用いてサンプルを400μLまで希釈し、使用時まで保管する。
(c)検出
Apogeeナノフローアナライザによって標識シグナル強度を検出し、末梢体液中の中枢神経系由来の疾患関連バイオマーカーの存在及び含有量を確認する。
【0107】
実施例3
Apogeeナノフローサイトメータを用いた免疫蛍光標識技術によって、上記実験方法3に従って、小型臨床コホート(パーキンソン病(PD)被験者15名、多系統萎縮症(MSA)被験者17名、及び年齢と性別が一致する健常対照(HC)17名)の血漿サンプルを検出した結果、血漿中のCNPaseタンパク質陽性細胞外小胞を検出しており、その数に関しては、MSA群とPD群との間で有意差が認められず、一方、MSA群とHC群との間で有意差が認められた(*:p<0.05)(
図4A)。CNPaseタンパク質-α-synタンパク質(抗MJFR14抗体標識)二重陽性細胞外小胞の数に関しては、MSA群、PD群及びHC群の間で有意差が認められず(
図4B)、血漿中の細胞外小胞総数で正規化したところ、MSA群とHC群、MSA群とPD群との間で有意差が認められた(*:p<0.05)(
図4C)。
CNPaseタンパク質-α-synタンパク質二重陽性細胞外小胞の数は、多系統萎縮症(MSA)の診断及び多系統萎縮症(MSA)とパーキンソン病(PD)との鑑別診断において、潜在力が期待できる。
【0108】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を何ら制限するものではなく、当業者であれば、上記した技術内容を変更したり、等同変化を受けた等価実施例に変形したりすることができる。本発明の技術案の内容を逸脱することなく、本発明の技術の趣旨に基づいて以上の実施例について行われる簡単な修正、同等変化や変形は全て本発明の技術案の特許範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系疾患を診断するシステムであって、
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する第1検出モジュールと、
被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する第2検出モジュールと、
第1検出モジュール及び第2検出モジュールのそれぞれによって取得された中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーの検出結果に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断する診断モジュールと、を含
み
前記第1検出モジュール及び前記第2検出モジュールは被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーの検出と被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーの検出とを同時に行い、又は
前記第1検出モジュール及び前記第2検出モジュールは、同一モジュールとして、被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーと被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを同時に検出し、
前記中枢神経系由来マーカーはL1CAM、SHISA9、CNP酵素、GLT1(EAAT2)から選択される1種又は2種以上であり、
前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、前記タンパク質は、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、プリオンタンパク質から選択される1種又は2種以上である、
システム。
【請求項2】
被験者の生体体液を取得して前処理し、生体体液中の生体サンプルを濃縮する濃縮モジュールをさらに含み、
第1検出モジュール及び第2検出モジュールは被験者の濃縮生体サンプル中の中枢神経系由来マーカー及び中枢神経系疾患関連マーカーを検出
し、
好ましくは、前記濃縮モジュールは、遠心分離、超遠心分離、限外ろ過管によるろ過、重合沈降、特異的抗体捕捉のうちの1種又は2種以上のステップを行うサブモジュールを有する
、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの数を統計する数量統計モジュール、及び/又は
中枢神経系由来マーカーと中枢神経系疾患関連マーカーの両方が検出された生体サンプルの粒径を測定する粒径測定モジュールと、
前記生体サンプルの数及び/又は前記生体サンプルの粒径に基づいて、被験者が中枢神経系疾患に罹患しているか否かを診断する診断モジュールと、をさらに含む請求項
1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記生体サンプルは細胞外小胞であり、
好ましくは、前記細胞外小胞はニューロン由来の細胞外小胞、アストロサイト由来の細胞外小胞、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞又はミクログリア由来の細胞外小胞
であり、又は
前記生体体液は血液、血清、血漿、唾液、尿、リンパ液、精液又は乳汁から選択される1種又は2種以上である
請求項
2又は
3に記載の方法。
【請求項5】
前記中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上であ
り、
好ましくは、前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含み;
前記変性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む;
請求項
1~
4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記中枢神経系由来マーカーは、成熟ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア、未成熟ニューロン、シュワン細胞、放射状グリア細胞、中間型前駆細胞、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロンのニューロン又は細胞に由来するバイオマーカー
であり、
好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーは中枢神経系由来の細胞外小胞の表面に位置するマーカーである
、請求項
1~
5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前
記第1検出モジュールは被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系由来マーカーに特異的に反応する標識抗体と反応させ、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系由来マーカーの存在及び含有量を判断する請求項
1に記載のシステム。
【請求項8】
前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、第2検出モジュールは被験者の生体体液、好ましくは、被験者の細胞外小胞を中枢神経系疾患関連マーカーに特異的に反応する標識抗体と反応させ、反応後の標識シグナルの強度を検出して、中枢神経系疾患関連マーカーの存在及び含有量を判断する請求項
1に記載のシステム。
【請求項9】
前記標識は蛍光標識、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識から選択される1種又は2種以上である請求項
7又は
8に記載のシステム。
【請求項10】
中枢神経系疾患を検出する組成物であって、
中枢神経系由来マーカーを標的とする抗体と、中枢神経系疾患関連マーカーを標的とする抗体と、を含
み、
前記中枢神経系由来マーカーはL1CAM、SHISA9、CNP酵素、GLT1(EAAT2)から選択される1種又は2種以上であり、
前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、前記タンパク質は、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、プリオンタンパク質から選択される1種又は2種以上である、
前記組成物。
【請求項11】
前記中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上であ
り、
前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含み、
前記変性性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む、
請求項
10に記載の組成物。
【請求項12】
前記中枢神経系由来マーカーは、成熟ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリア、未成熟ニューロン、シュワン細胞、放射状グリア細胞、中間型前駆細胞、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロンのニューロン又は細胞に由来するバイオマーカー
であり、
好ましくは、前記中枢神経系由来マーカーは中枢神経系由来の細胞外小胞の表面に位置するマーカーである
、
請求項
10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記中枢神経系由来マーカーを標的とする抗体及び前記中枢神経系疾患関連マーカーを標的とする抗体は標識抗体であり、好ましくは、前記標識は蛍光標識、同位体標識、酵素標識、化学発光剤標識、量子ドット標識又は金コロイド標識から選択される1種又は2種以上である請求項
10~
12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
被験者の中枢神経系疾患を検出するキットであって、
被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬と、被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬と、を
含み、
前記中枢神経系由来マーカーはL1CAM、SHISA9、CNP酵素、GLT1(EAAT2)から選択される1種又は2種以上であり、
前記中枢神経系疾患関連マーカーはタンパク質であり、前記タンパク質は、Aβ1-40(Aβ40)タンパク質、Aβ1-42(Aβ42)タンパク質、オリゴマーAβ(oligo-Aβ:oligomeric Aβ)タンパク質、tauタンパク質、リン酸化tau(p-tau)タンパク質、α-シヌクレインタンパク質(α-synucleinタンパク質)、129位リン酸化α-シヌクレイン(pS129)タンパク質、オリゴマーα-シヌクレイン(oligomeric α-synuclein, oligo-α-syn)タンパク質、プリオンタンパク質から選択される1種又は2種以上であり、
好ましくは、前記被験者の生体体液中の中枢神経系由来マーカーを検出する試薬及び被験者の生体体液中の中枢神経系疾患関連マーカーを検出する試薬は請求項10~13のいずれか1項に記載の組成物であり、
さらに好ましくは、被験者の生体サンプルを取得する試薬と装置、好ましくは、被験者の細胞外小胞を取得する試薬と装置をさらに含む
、前記キット。
【請求項15】
前記中枢神経系疾患は脳血管障害、脊髄病変、中枢神経系感染症、神経系遺伝性疾患、神経系発達異常症、自律神経系疾患、神経系脱髄性病変、てんかん、及び神経系変性疾患から選択される1種又は2種以上であ
り、
前記脳血管障害は脳梗塞、脳出血、脳血流不足、一過性脳虚血発作を含み、
前記脊髄病変は急性脊髄炎、ポリオ、脊髄空洞症を含み、
前記中枢神経系感染症は脳炎、髄膜炎を含み、
前記神経系遺伝性疾患は神経皮膚症候群、脊髄小脳性失調症を含み、
前記神経系発達異常症は先天性水頭症、脳性麻痺を含み、
前記自律神経系疾患は自律神経機能不全であり、
前記神経系変性疾患は変性性痴呆、運動障害性疾患、プリオン病(Prion病)を含み;
前記変性性痴呆はアルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉痴呆症(FTD)、パーキンソン病認知症(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)を含み、
前記運動障害性疾患は運動ニューロン疾患(MND)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病(HD)、小舞踏病(Sydenham舞踏病)、肝レンズ核変性症(WD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む、請求項
14に記載のキット。
【国際調査報告】